○春日
委員 もとより、画期的な転換を求める方式でございますから、慎重な
検討はむろん必要でございましょう。けれ
ども、そのような概念に基づく法の制定が企図されたことはかってございます。たしか貴殿が幹事長時代であられたか、そのもっと前であったかと思うが、例の特振法というものがございましたね。あのときは特定産業振興特別
措置法でございましたか、特に重要基幹産業についてはある種の国家調整を加えていく必要があるであろう、こういうことを提案をされまして、当時は財界の猛烈な反対があって、機運成熟せずしてそれは廃案になりました。けれ
ども、そのようなポリシーは、すでにして五、六年前にその
必要性が
政府部内におきましても痛感せられて、そのような法律案が国会に提出されたことがあるのでございます。
われわれはここで考えなければならぬことは、いま大
企業というものが、あるいは重要基幹産業なるものが国民経済に、また国民
生活に与える影響力というものは非常に強大なものになっておると思うのでございます。なお、私
企業というものの
実態を客観的に見てみまするならば、それはもはや利潤動機のみを基本にしてそうして
企業の意思を決定するというようなことは、もうその時期を過ぎておる、その限界を越えておると思うのでございます。
この間ある
資料を
調べてみた中でびっくりしたことは、三井物産株式会社、それから三菱商事株式会社の自己資本と他人資本の比率を
調べてみたのでありまするが、自己資本はたしか三井物産は五%かれこれのものである、借り入れ資本が九五%である。三菱も大体その
程度のものでございました。まさにピープルズキャピタリズムの時代が
現実に到来しておるのである。九五%が他人資本であり、その資本というものをたどっていけば、これはあるものは社債であろう、あるものは銀行からの借金であろう。借金のもとは国民の預金である。さらに、松下産業なんかの株も、これまたオーナーである松下さんが持っておりまする株も三〇%前後のものではあるまいか、七〇%はこれまた大衆に開放されておる株である。
だから、現在の
企業構成というものが、そのようなピープルズキャピタリズムの
立場に立って構成されておるのだし、さらに大きなことは、まず財政投融資、さらにはまた租税特別
措置法、いろいろなもので、国家の助成が大幅になされておるのである。そういうような
企業に対して、これが国民的規模でコントロールがされるということは、それはかつての戦争中の官僚統制の観念とは全然違うものであって、これは現代経済社会においてはむしろ世界の動向にも即したあり方であると考えますので、このことについてはぜひとも踏み切るべき段階ではないであろうか。
いま
大臣は、そういうようなことをやらないで、長期経済計画やその他の中でコントロールをなしていったほうが、と言われておりますけれ
ども、そのようなやり方で実効、効果があがるのであればそれもよろしからん。けれ
ども、
現実にはあなたがどんなことを言ったところでそういう結果にはなっていないのです。あなたのほうが
政府部内で幾つかの計画を立てられるけれ
ども、その実績を振り返ってみますと、結局いまここにあげておりますように、そんな結果にならない。一割や二割の違いならばこれは見込み違いということもあるが、結果は五割も違ってしまうのです。
こういうような情勢にかんがみて、自由経済のメカニズムというものはそれ自体がこのような、成長すれば成長するほどそのバイタリティーがそういうものを過熱せしめるとか、さらに加速度的な威力を加えていくとか、そのもの自体にそういう性向があることにかんがみまして、いまこそ何らかの公共的調整というものが必要不可欠の段階であり、そのことを行なうことなくしては、適正なる成長へ新しい道を開くという、当面する財政上の最大の課題を解決することはでき得ない、こういうふうに思うのだが、いかがですか。