運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-02-27 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年二月二十七日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 金子 一平君    理事 藤井 勝志君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君    理事 永末 英一君       奧田 敬和君    木部 佳昭君       木村武千代君    佐伯 宗義君       坂元 親男君    田村  元君       高橋清一郎君    地崎宇三郎君       登坂重次郎君    中村 寅太君       丹羽 久章君    原田  憲君       福田 繁芳君    坊  秀男君       松本 十郎君    森  美秀君       吉田 重延君    阿部 助哉君       平林  剛君    堀  昌雄君       美濃 政市君    八木  昇君       貝沼 次郎君    二見 伸明君       春日 一幸君    竹本 孫一君       小林 政子君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         国税庁長官   吉國 二郎君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      大島 隆夫君         大蔵省主税局税         制第三課長   早田  肇君         国税庁税部長 佐藤 健司君         大蔵委員会調査         室長      抜井 光三君     ————————————— 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     二見 伸明君 同月二十七日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     西宮  弘君     ————————————— 二月二十六日  物品税法の一部を改正する法律等の一部を改正  する法律案内閣提出第三五号)  経済及び技術協力のため必要な物品外国政府  等に対する譲与等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第三六号) 同月二十五日  自動車新税創設反対に関する請願春日一幸君  紹介)(第二四三号)  同(塚本三郎紹介)(第二四四号)  同外一件(相川勝六紹介)(第二七四号)  同(渡辺武三紹介)(第四二五号)  減税に関する請願美濃政市紹介)(第二四五  号)  同(木島喜兵衞紹介)(第二七五号)  同(後藤俊男紹介)(第二七六号)  同(千葉七郎紹介)(第三二六号)  同(辻原弘市君紹介)(第三二七号)  同(戸叶里子紹介)(第三二八号)  貴石、貴金属製品等第一種物品税撤廃に関する  請願池田清志紹介)(第四二三号)  現物給与中食事に関する免税点引上げに関する  請願神田博紹介)(第四二四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  空港整備特別会計法案内閣提出第三一号)  国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第三二号)  国税通則法の一部を改正する法律案内閣提出  第一号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  空港整備特別会計法案及び国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 毛利松平

    毛利委員長 政府より、順次提案理由説明を求めます。中川大蔵政務次官
  4. 中川一郎

    中川政府委員 ただいま議題となりました空港整備特別会計法案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  政府におきましては、従来から、公共の用に供される空港整備又びその円滑な管理運用につとめてまいったのでありますが、これらの事業につきまして、昭和四十五年度以降特別会計設置し、一般会計と区分して経理することとし、もって空港整備促進等に資することが適切であると認められますので、ここに、この法律案提出することといたした次第であります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、この特別会計は、空港整備法規定する空港その他の飛行場で公共の用に供されるものの設置、改良、災害復旧管理等に関する経理を行なうことを目的とするもので、運輸大臣が管理することとしております。  第二に、この会計は、国の空港使用料収入空港整備法に基づく地方公共団体負担金一般会計からの繰り入れ金借り入れ金受託工事にかかる納付金及び附属雑収入をその歳入とし、空港整備事業に要する費用関連工事に要する費用受託工事に要する費用空港事務所等所掌事務の実施に要する費用借り入れ金償還金及び利子、他会計への繰り入れ金並び附属諸費をその歳出とすることといたしております。  第三に、空港整備事業にかかる施設の整備に要する費用を支弁するため必要があるときは、この会計負担において借り入れ金をすることができることといたしております。  その他この会計の予算及び決算の作成、提出決算上の剰余金処分等について必要な事項を定めるとともに、この会計設置に伴い必要な経過規定及び関係法律の諸規定整備を行なうことといたしております。  次に、国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近における国家公務員旅行実情等にかんがみ、内国旅行及び外国旅行における日当宿泊料移転料等定額を改定する措置等を講ずることとするものであります。  次に、改正概要を御説明申し上げます。  内国旅行につきましては、宿泊料金実態等を考慮し、日当宿泊料及び食卓料定額をおおむね四〇%程度引き上げることとするほか、車賃について若干の引き上げを行なうことといたしております。また、移転料につきましても、国家公務員赴任実態等にかんがみ、移転料定額を約三五%ないし二五%程度引き上げることといたしております。  外国旅行につきましては、宿泊料金実態等を考慮し、日当宿泊料及び食卓料定額を約一五%程度引き上げることといたしております。また、移転料につきましても、国家公務員赴任実態等にかんがみ、移転料定額を約三五%程度引き上げるほか、子女を随伴する場合における現行の加算割合を引き上げることといたしております。  以上、二法案につきまして、提案理由及びその概要を申し述べました。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 毛利松平

    毛利委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  6. 毛利松平

    毛利委員長 次に、国税通則法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部哉君
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 通則法の質問をいたしますが、その前に一つお伺いしたいことがあるのです。  地目が田畑で、そうしてまわりに宅地やら工場ができてきて農耕に不適格になったので、ここは耕していない、そういうところにもやはり標準税率で、耕作しておるものとみなして税金をかけておるという例があるわけでありますが、税務署のほうでは農業委員会証明を持っていらっしゃい、こう言うわけですね。ところが農業委員会のほうでは、地目変換をしていない限り証明書は出せませんと、こう言う。そういたしますと、所得税は御承知のように実質課税原則でありまして、明らかに耕していない、農業収穫はないというのがわかっておる、そういうときにもやはり税金を取るというのは、これはおかしいんではないかということなんですが、これはどうですか。それでもどうしても税金をかけるとされれば、どういう法律でこれはおかけになっておるのか、それを示していただきたいし、そうでなければ、これは簡単にしてもらいたいのですが、そういうのは取るべきではない、こうおっしゃるならばそのようにはっきりと言っていただきたいと思います。
  8. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 所得税はもちろん所得があるところに課税をするわけでございますから、農地であっても耕作していない、収穫がないというものに対しては課税をするいわれはございませんので、そういうことはありません。もちろん相続税その他の関係では土地の評価に応じて課税をされる、これは事実でございます。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そういうことで御指示なされば、私あえてここで税務署やなんかを申し上げませんけれどもあとでお知らせをしますのではっきり処置をしていただきたいと思います。  次に、いま税務署は非常にお忙しくなってきた、そういうことでありますが、中小法人の場合に、調査の場合に現況調査という方法があると聞いておるのでありますが、それはどんなことをおやりになるのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  10. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現況調査と申しますのは、実地納税者の本拠と申しますか、事業の場所に参りまして、そこの実際に動いております状況と帳簿との引き合わせをいたしまして、帳簿確認をするという性格調査でございます。昔から調査の常道といたしまして、その現金出納帳金びつ、つまり金庫の中の現金とを引き合わせるとか、それによって現金出納帳が確実に記載されておるか、あるいはたなおろしの実情とたなおろし帳とを比較するといったことで、いわば実際と帳簿との連絡を確認することを目的としたものを現況調査と呼んでおります。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんのほうの書いた「日本税務行政」という本にも、ちゃんとこれは述べてあるのですが、これは結局は権衡及び確定申告期における納税相談の際に活用される、こういうことになるわけですね。
  12. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その納税者によって違うと思いますが、帳簿があってそれによって確認が行なわれて申告が行なわれれば、必ずしも納税相談時にそれを使うということもない場合もございますけれども、一般的に納税相談を行なって申告をするという人については、それが参考になることはもちろんです。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その場合、この調査をされる場合に納税者調査する相手方にこれは通知をされておやりになるのか、それともだしぬけに不意打ちにこれをおやりになるのか、これはどうなんですか。
  14. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 納税者事前通知する場合もございます。場合によってはその事実の確認を明確にするために、あらかじめ通知をしないで臨場する場合もございます。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 通知をする場合もあるというお話でありますが、私の調べたところ、また東京税理士会の四十三年七月から四十四年六月までの調査等を見ましても、通知をしておやりになっておるところ、これはわずかあります。大半は通知をされないでこれは行なっておるようでありますが、そう見て間違いありませんね。
  16. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この調査性格から申しますと、事前通知をしない場合のほうが多いということは事実でございます。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは通知をしないで不意打ちにやるというのが原則だ、原則的に行なわれていると私は思うのであります。三十七年に東京国税局通達があるはずでありますが、これをひとつ、一ぺん見せていただけますか。
  18. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その通達と申しますのは、おそらく事務執行上のものでございまして、いわゆる解釈その他に関する通達ではございませんので、これは内部的なものとして、従来からも内容は申し上げておりますけれどもそのものの御提出は遠慮さしていただくということになっておる性質のものだと思います。おそらく毎年の事務執行の指示をしたものだと思います。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろとお話ありますけれども、やはり税金というのは取るプロセス自体、これはいろいろ問題があるので、そういうものを十分に国会で把握をしなければ、いま出ておりますこの法律、これが救済であるとかないとかいう議論、これもいろいろあるわけです。だけれども、そういうものがほんとうに解明されないじゃないか。問題は税金を取るプロセスというもの、私は民主主義という観点からすれば、これは何といっても非常に重大な問題だという感じがいたしまして、税務行政はことさらガラス張りでやっていただきたい、こう思うので、これはできるだけひとつ提出をして、国会で十分に納得のいくような形でおやりにならないと、これからの論議も困るわけでありますが、ひとつ御努力を願いたい。  それで、これには大体こういうことをおっしゃっておるでしょう。調査者も被調査者も、いやだから知らせない。これは前直税部次長であった野田さんが国税労組と交渉の際に述べたと、あの国税労組の記録には載っておるのでありまして、知らせる場合もあるし知らせない場合もあるという言い方じゃなしに、知らせないで不意打ちでやるというのが原則だというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  20. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私は、いまの納税者税務署関係については、納税者行政官庁とも改善をはかっていくべきものだと思っております。たとえば、納税者のほうにおきましてはできるだけ帳簿を整理し、また調査には常に率直に帳簿提出をし、自分の所得を明らかにする努力をすべきである。これが本来の納税者のあり方だと思いますし、税務行政のほうにおきましては、できるだけ納税者提出した書類を慎重に扱い、そうしてお互いに、根本は正しい所得申告されることが最終のものでございますから、その正しい申告をする方向にすべてを向けていかなければならないと思います。  ただ問題は、現況調査の場合は、そういう帳簿実態とが一致していなければこの帳簿自身意味がないわけでございますから、それを確認するために実態との突き合わせをやるわけでございます。そういう意味で誠実なと申しますか、納税者の場合、いかなる時期に来られても一つも心配はない。間違って帳簿がはずされておればそれは直せばいいはずでございますので、いわばこの実況調査というものは帳簿そのもの信頼性を確かめるものであるという意味では、私は事前通知という問題もおのずから今後解決をはかっていける問題だと思いますが、いまの段階では相当そごが多いという事実もございますので、事前通知を行なわずにやっている例が多いかと思います。しかし今後そういう点では納税者お互い理解を深めて、この現況調査というものが、要するに帳簿正確性を高めるためのものであるという意識をもって、相互に理解をもって調査を行ない、調査を受けるという体制をつくっていきたいものだ、かように考えておる次第でございます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 さっきの国税労組の四十三年十一月二十八日の新聞を見ますと、現況調査をやっておるのが調査の九〇%である、こう書いてあるわけであります。また、先ほどちょっと申し上げました税理士会調査アンケートによりますと、通知をしたのが千四百六十七件、通知をしないでやったのが三千四百五十一件、両方合わせまして大体四千九百件、まあ五千件であります。その中で実際に重加算税の対象になったのは四百十六件といいますから、大体一〇%ということになるわけですね。そうしますと、そういういろいろ問題のある調査をおやりになるやり方にも非常に問題がある。何か納税者を初めから犯罪人扱いにしておる感がなきにしもあらずだという点からいくと、この調査はやはり問題があるんじゃないかというふうに感ずるのですが、いかがですか。
  22. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現況調査やり方その他については改善すべき点は多いと私も思います。ただ基本的に、帳簿というものが架空のものであってはならない、実態との整合性がなければならぬという意味では、現況調査というのは、現況とは名づけておりますが、実は調査本質であると思います。その実態とつながりのない帳簿を幾らつけても、それは本物ではないのであります。その実態との結びつきを監査することが本来の調査本質であると思いますので、方法についてはなお現在も私も欠陥のある点もあると思います。大いにこれを改善をするということにおいてはやぶさかでないということを申し上げておきたいと思います。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 現況調査改善すべき点が多々あるとおっしゃったのですが、どういう点を改善すべきなのか、ひとつ具体的にお知らせ願いたい。
  24. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私が基本的に考えておりますのは、この現況調査が非常に納税者苦痛を与えるという感じを与える、これを何とかもっと納税者がすなおに理解してくれるようなやり方、これは具体的にはなかなかむずかしいわけでございますが、私が申し上げましたような本質が明らかになれば、納税者が不安を持ったり不愉快さを持つわけはないと思うのでございます。先生のおっしゃるように、犯罪捜査のようなかっこうをとるというところに非常に不愉快さがあるとすれば、その辺の改善要素というものは、今後実地訓練にいたしましても、あるいは精神訓練にいたしましても、いろいろ方法として考えられると思います。本質はあくまでも実態帳簿整合性を確保して帳簿信憑性を高める、これがお互いのための活動を容易にするゆえんでもある、かように考えるわけでございます。
  25. 阿部助哉

    阿部(助)委員 苦痛を与えておるから、実地訓練でとおっしゃるのだけれども、実際、私はこのあと資料で申し上げますが、この実地訓練が、私の見るところ、長官の意図されておるところとは逆な方向指導訓練が行なわれておるやに思われるのでして、この資料を見ましても、調査対象の店に臨む、身分証明書をちらつかせる——あまりよく見せないのですね。会計担当者を中心に仕事を停止させる。現金を出させ、帳簿を照合する。金庫をあけさせる。預金通帳を出させる。秘匿がないかどうか、机の引き出し等従業員私物検査を行なう。そしてこれをやるときに、相手はこわいから黙っておると、これは黙示の承諾だ、こういうことになる。納税者拒否をすれば、拒否犯という罪名があるということをおっしゃる。そうすると、これは私物まで見せなければならないということになるわけです。  一つ具体的な事例をあげますと、これは四十四年の四月二十八日、東京都台東区の清川というところで、真下という人のところへ浅草税務署から、名前は特に言いませんが、行った事件であります。十時ごろ突然事前調査といって臨店。調査官何々は、調査目的について納税者に何らの説明もせず、机の引き出しを開きかってに書類を取り出して調査した、こういうのですね。二番目には、納税者決算のため書類税理士のところへ行っていて見当がつかない状態だったにもかかわらず、強制的に、売り上げ漏れがあります、仕入れ漏れがあります等と調査官何々が下書きをして、そして納税者に提示してそれを書かせて判こを押さした、こういうことなんです。そしてさらに、まああまり詳しく読むのもあれですが、奥さんがハンドバッグを持って二階へ上がろうとしたら、階段のところまで追っかけていって、これは私物だというのにかかわらず強引にとられ、ハンドバッグを開き、中のものを出して調べた。そして四番目には銀行の調査等を行なった。結局これは抗議を申し込まれてその上司がおわびをしておるということで落ちついたようでありますけれども、こういうことが実際に——これはもっとあげろと言われればあげますが、たとえばこういうことがやられたのでは、納税者は全く、何といいますか、警察よりもこわいと言うのは当然のことになるのじゃないか。そういう点で、長官苦痛を与えておるから、いろいろ実地訓練やなんかでこれを改善していきたい、こうおっしゃったのだが、その改善のあれを長官からもう少し、ほんとに納税者に対して民主的な納税という点で私もう少しお伺いしたいし、できることならば——こういう調査警察ガサですよね。警察はやっぱりガサをするときには令状を持っていくのです。これは令状が要らない。こういう点で、こういう現況調査はやめるべきだ、こう思いますが、まあ吉國長官みたいににこにこして紳士であれば別でしょうけれども、なかなかそうはいかないということで、私は、こういう事件をたびたび起こすようなことでは現況調査はやめるべきだということを、長官、はっきりおっしゃるほうが正しいと思うのですが、いかがですか。
  26. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 角をためて牛を殺してはいけないわけでございまして、やり方が悪いから現況調査をやめるというわけにはまいりません。正しいやり方を、ことにただいま御指摘のございましたように、警察犯罪捜査をやっているわけでございます。税務署調査は、本来憲法に基づく基本的な義務である納税義務、したがってまた、その納税義務に基づく所得計算基礎資料の全部を整備し、これらを基礎にして行なうものでございます。したがいまして、犯罪捜査ではないので受け取り方もおのずから違うと思います。ただ、こちらの態度が犯罪捜査に類すると思われるようなやり方、これは改めなくちゃいかぬ、かように私は思います。もちろん調査目的と申すのは、先ほど申し上げましたとおり、帳簿実態とが符合しておるかどうか、そしてその帳簿自体信憑性があるかどうかということを確認するところにあるわけでございますから、そのことを明らかにして、また身分等を明らかにする、これも当然の第一歩でございます。さような点がまだ不十分であれば、さらに徹底して納税者の不安を除くということを考えなきゃならぬ。これは私どもも実は何回も改善について努力をいたしておるところでございます。現況調査そのものをやめるということではなくて、現況調査をより納税者理解しやすい正しいやり方改善をはかっていく——もちろん全部がいまそういうことをやっているとは思わないのでございますが、中には未熟でそういうことがあり得るということも私は否定をいたしません。ただ、税務職員が、御承知のとおり、いま東京局などにおきましては若年層が非常に多い。非常に努力し、もうほめてやっていただきたいくらい働いておりますけれども、単に先ばしった正義感だけでやると技術がこれに伴わない。伴わないために無理をしてさような非難を受ける事例も私も知っております。本人たちも純真な公務員としての、また全体の国民のためにできるだけ正しい申告を確保しようという努力、これを生かしながら、同時に、納税者立場理解し、納税者立場に立ってお互いに共同して正しい申告をするという方向にやっていくというように、今後私たちの一番大きな努力はこの点に注がれるべきだと考えます。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 長官、いま角をためて牛を殺すようなことがあってはならない、憲法規定された納税義務云々とおっしゃるけれども、これは政務次官、どうですかね。私はこの問題はむしろ憲法で保障された基本的人権の問題にかかると思う。そういう点で、このような——長官は何回も改善したとおっしゃるけれども改善してなおこれなのです。あとでまだ私資料を出しますけれども、実際は改善じゃなしに、逆行しておるのじゃないかと私には思われる節が多々あるのでございまして、こういう憲法上の問題ですね、これはむしろ一番根本的な憲法上の問題だと思うのですが、次官はこういうことが行なわれることがやむを得ないというふうにお考えになるのですか、どうですか。  また、いま長官お話では何回も改善努力したと、こうおっしゃるけれども、それならばどういう形で——抽象的な、訓練によってとかいろいろおっしゃるけれども、これは通達とか何か具体的なものがなければ、基本的人権はこういう形の中で侵されてくる。それは同時に、日本民主主義の破壊になるのじゃないかという点で私は不安を持つのでして、そういう点でこれは重大な政治問題だ、こう私は考えるので、政務次官からひとつお伺いしたいと思います。
  28. 中川一郎

    中川政府委員 阿部委員の御指摘になっておられます点は、私どもも全くそのとおりで、そういう基本的人権を侵すような調査やり方というものはあってはならないというふうに思います。思いますが、だからといって調査というものがやってはならぬというところまでいくこともいかがかと——ただいま吉國長官答弁いたしておりますように、身分を明らかにしない、あるいは調査目的を言わない、そして引き出しをあけるというようなやり方は、これは厳に慎まなければならないところでありまして、従来も通達その他、あるいは会議等を通じて指導しておるようでありますが、今後においてもそういったやり方についてはさらに一そう、もう絶滅をするというような方向努力をしてまいり、納税者の不安を除く方向に持っていきたいものだと思うわけであります。特に阿部委員の御指摘になっておる点は、われわれほんとうに反省しなければならぬというふうに思っておる次第であります。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま私が申し上げたようなことは絶対あってはならないと、こう政務次官おっしゃっておるのですが、そのあとが悪い。しかし調査のためには云々とおっしゃるのは、私はそれは次元が違うのじゃないか、こう言っておるのです。私は憲法民主主義を守る、このことがとにかく最大の問題だというふうに考えておるのであって、それを、だけれども調査のためにはやむを得ないなんてぼかされたのでは、日本民主主義は、だんだんだんだんそういう中から憲法が掘りくずされて欠けていくのじゃないか、私はそこに心配があるわけです。そこをはっきりしてもらって、それをはっきりしてもらえば、また次の解決策は出てくると思うので、私は前段のほうにはまことに敬意を表するのでありますが、後段の、だけれども調査は必要だとおっしゃる点は、そんな調査をしなくったって調査のしかたはあるのじゃないかということなのでして、憲法基本的人権というものは私は何ものにもかえがたい重大な問題だと思うのであって、このような調査はすべきではないというふうに考えるのですが、もう一度明快に、簡単明瞭に政務次官の御答弁をお願いしたい。
  30. 中川一郎

    中川政府委員 憲法にいう基本的人権が侵されるということは、これはもう絶対あってはならないことである。これはもう阿部委員指摘されるまでもなく、十分に考えなければならぬ、何よりも大事なことであることは当然であります。ただ、調査基本的人権を侵されるようなことがあった場合は、これまた許されないところであって、基本的人権を侵されない範囲の公正妥当な調査は、これを残さなければいかぬし、やっていかなければ、公平な税の徴収ということはできないのじゃないか。調査も必要であり、また基本的人権を守るということも厳然として実行された形での調査をこれからやっていくべきだ、このように申しておるつもりでございます。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまおっしゃるように、こういう基本的人権を侵すようなことは絶対にあってはならないという政務次官お話でありますが、そうすると、これをいま簡単に、いままでやってきた、そうして何回も改善したけれども依然としてそういう問題が起きておる、そしてまた、後ほど述べますような指令、通達みたいなものがあるということになると、もっと具体的に長官のほうからお知恵を出して、具体的な何らかの指示をされないと、依然として人権問題が起きてくる。憲法のいろいろな規定もあるけれども基本的人権の確保という問題がほんとうは生命線だと私は思っている。そういう点で、私はいまのような形での御答弁だけでは安心ができない。長官から具体策をひとつ御明示願いたい。
  32. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 もとより基本的人権というものは最も大事なものである、これはもう言うまでもないことでございます。同時に、憲法において義務規定しているものは納税義務だけでございます。いわば、この国が成立し国民が栄えていくためには、納税義務を果たすという納税者努力がなければ、これは不可能です。納税義務憲法が特にうたったということは、そこに大きな意味があると思うのです。したがいまして、納税義務者も、また同時に、この義務を果たすための準備、帳簿整備調査を受ける態度というものが同時に確保されなければ、基本的人権すら確保されない状態が現出するかもしれない。そういう意味におきまして、私ども基本的人権を侵すようなことはあくまでも行ないませんが、しかし納税者が正しい申告をする、それに対して正しくない申告が行なわれておるという実態を目前に置いた場合に、調査をしないということはできない。その調査があくまでも憲法の全体の趣旨に即するように行なわれるべきことは、言うまでもないところでございます。  具体策としては、もちろん私どもといたしまして、現況調査の実際のやり方、これについては今後とも本庁を通じ、局、署段階まで徹底をするように手段を講じていく覚悟でございますが、この調査自体の意味というものは、あくまでもはっきりいたしておきたいと思う次第でございます。
  33. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私、非常に不満足なんですが、これを署の末端まではっきりさせるというのはどういうことではっきりさせるのか、はっきりさした指令の内容はわれわれにも報告をしてくれますか。
  34. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 具体的な形でやっていく場合に、御承知のとおり調査方法執行やり方というようなものは、国税局長会議、直税部長会議、その他において本庁において指導いたします。それがさらに各国税局においては所得税課長会議あるいは法人税課長会議というものを通じて各段階に徹底されていくわけでございます。その指示いたしました事項等については、いずれ答弁で明らかに申し上げたい、かように考えております。
  35. 阿部助哉

    阿部(助)委員 念を押してこの問題を終わりたいと思いますけれども、とにかく警察でもガサをやるときには捜査令状というものを持って、それから臨むのでありますが、所得税の場合でもこのような調査が行なわれておる。そしていま吉國長官お話によると、調査が大事であるというけれども、こういう調査でなければほかの調査がないというわけではない。知恵のある長官でありますからもっと知恵を出して、こういうガサをやるような調査はやめる。ほんとうをいうと、これは憲法問題だから、政務次官もおられるけれども、大臣か総理大臣にぜひとも聞いてもらって御答弁を願いたい、こう私は思うのでありますけれども、どうもいまの御答弁では安心がいかないわけです。それは何も納税者立場とか、どうのこうのという問題よりも、税金を納める納めないという問題よりも、極端にいえば基本的人権がこれで侵されてくる、日本民主主義がこれでくずされてくる、税務署からくずされてくるということになったらたいへんな問題であろうということで、私はこの問題に非常に固執をするわけです。そういう点で、長官はこのような現況調査はやめて、別な形での調査を考えるべきだ、こういうことを私は主張するのでありますが、もう一度最後に御答弁願います。
  36. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまおっしゃいましたような、このような現況調査というものは、私もやめるべきだと思うのでございます。つまり、人権を無視するようなものがもしあったとすれば、それは当然やめなければならぬ。現況調査というものの性質は、先ほど来申し上げておりますように、国民として、納税義務者として開示すべき帳簿、それと実態との整合ということを明らかにするわけであります。この検査権の規定にいたしましても、あれはもっぱら憲法納税義務に由来し、納税義務者はほかの犯罪捜査に協力するのとは別な立場帳簿、記録その他を明らかにすることが義務として課されておるという意味で御解釈を願いたい。罰則を適用するなんという気持ちは、私どもさらさらない。あくまでも納税義務を確立するためにはその基礎帳簿は開示すべきものだという、国民的な義務規定したものだとお考え願いたいのであります。したがって、その信憑性を確かめる、それを人権を無視したようなことでやることはあくまでも避けなければなりませんが、これの調査自体を改善し、さような心配のないりっぱな調査にするという努力はもちろん今後とも続けてまいりたいと思いますし、また先般堀委員がおっしゃいましたように、今後資料提出等に全面的に協力する風習と申しますか慣習ができ上がってくれば、確かに新しい調査体系というものが出てくると思います。これはやはり全体の進歩というものと合わせて調査自体も進歩していく、原始的な調査だけですべてが解決する問題ではない、その点は御指摘のとおりだと思いますが、そのためにはあらゆる条件——現在資料提出に対してもなかなか容易に応じてくれないという実情、それらを改善することも同時に考えていく。それに応じた調査体系というものをつくる。いずれにいたしましても、私どもは、税務署調査というものをやるのは本質的には正しい申告が行なわれることを担保するため、それ以外の何ものでもないわけでございます。その点ははっきり申し上げておきたいと思うのであります。もちろん調査方法については常に改善を意図してまいりたいと思います。
  37. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その努力をできるだけ早く、ほんとうはこの通則法の上がる前にひとつお示しを願いたいのであります。  次に、いま確定申告が行なわれる段階で非常に忙しい、こういうときだと思いますのでお伺いするのでありますが、今年は東京国税局では——おそらくはかもそうだろうと思うのでありますが、例年になく事前調査に重点を置いている、こうお伺いしておるのでありますが、そうですか。
  38. 佐藤健司

    ○佐藤説明員 事前調査と申しますのは、現在私ども調査やり方の中で、確定申告期前のものとその後のものとに分けまして、前のものを事前調査と称しておるわけでございますが、これはやはり帳簿の備えつけ、それから記録等がよくなされておりません……(阿部(助)委員「私の質問に簡単に答えてくれればいい」と呼ぶ)最近の調査やり方としまして、特別に東京だけがやっておるというような事情はないと思います。
  39. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私のお伺いしたのは、ことしは事前調査に特に重点を置いておるそうだが、そういうことはあるのかないのか、こうお伺いしておるだけなんです。
  40. 佐藤健司

    ○佐藤説明員 東京国税局につきまして、例年よりは事前調査の数がふえておる点はあろうかと思います。
  41. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、事前調査をやって、納税者に来てもらって納税相談をするわけですね。そこで、税務署の見る調査額と申告額が相違した場合、これは税務署の見解で一方的に押しつけておるのかどうか。話し合いだとおっしゃるだろうけれども、ほんとうにこれは押しつけはしませんか。
  42. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 税務相談は、もちろん納税者申告内容というものを一応税務署と相談をし、そこで妥当であるかどうかということを見てもらうということが主眼であると思います。そういう意味では、御承知のとおり、ここで税法をきめていただきましても、非常にむずかしい税法でございますので、なかなか納税者ははっきりわからない点もございます。そういう意味では、私どもやはり忙しい思いをしてもできるだけ多くの納税者と相談をしたほうがいい。その際、先ほど直税部長が申しましたような方々、営業しておられる、しかし帳簿等が十分でないという方には、調査をして、大体これくらいの収入ではなかろうかという目安をもってお話をするということも事実ございます。その場合に、どうしてもそうではない、自分の帳簿はそんなになっておらぬというのであれば、それを無理に押しつけるということは絶対にやっておりません。ただ、話し合いをして、相手方が、なるほどそうであった、自分のほうが落ちておったと認められて税務署と意見が一致する場合も相当あることも事実でございます。そういうことでお互いに話し合いで正しい申告をやっていく。ただその場合に、どうしても明らかに違うというものは事後で実地調査をするということも起こりますけれども原則としては納税者の最後の判断が申告書に反映すべきものということはもちろんでございます。
  43. 阿部助哉

    阿部(助)委員 長官、そうおっしゃるけれども、実際はちょっと違うんじゃないですか。ちょっとじゃない、だいぶ違うんじゃないですか。これは東京国税局長が一月二十一日税務署長に出した「所臨十三号」「四十四年分の所得税納税相談にあたっての留意事項」、こういうことなんですが、この中へ出ておりますのを見ますと、ここで長官がおっしゃるようなそんなにやわらかなものではなしに、だいぶきびしいな。この間に、調査なんというのは半日だとかあるいは一日に六軒も歩くような調査をしておって、それでなおかつ、これを見ますと相当に押しつけと思われるような指示をしておられるわけですね。この十三号というものを長官御存じですか。これがわからないとちょっと話にならないのですが……。
  44. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 各国税局は国税庁の指示に基づいて具体的にいろいろこまかい指示を出しております。私その十三号というのは見ておりませんが、おそらく私が申し上げたようなことを書いておると信じておるわけでございます。  なお、先ほど理事会でお話がございましたが、ちょうどいい時期に税務署を視察していただくことになっておりますので、ひとつ現況調査をやっていただきまして、実態確認していただきたい、かように思うわけでございます。
  45. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろあるのですがね。じゃ一つ読んでお聞かせします。「納税者の申し立て及び提示した関係書類により調査に誤りがあることが判明した場合は次により措置する。」こうなっているのですね。「誤りであることが容易に判別できるものについては、直ちに上席調査官等の指示を受けて当該調査額を補正する。」これはいいです。その次に「この場合でも安易に納税者の主張に妥協するような補正は絶対に行なわないよう留意する。」税務署が間違っておったんですよ。「その場合でも安易に妥協するような補正は絶対に行なわないよう留意する。」こうなっているのです。これが一体押しつけじゃないですか。私はこれは押しつけだと思う。これで押しつけでないなんておっしゃったら、日本のことばをどういうふうに解釈したらいいかわからなくなるので、私は教えてもらわなければいかぬが、これは押しつけだと私は思うのですが、いかがですか。
  46. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのことば自体全体の関連で御判断をいただくべき問題だと思いますけれども調査そのものが万全でないというときに、それを修正する、全く間違っておったときには全部直す、一応不十分な点があった場合にはそこで十分に話し合いをする、翻訳をして私が申し上げるとそういう意味なんでございますが、官庁用語というのはとかくかたくなっておりますので、意味は同じだと思います。
  47. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや誤解してもらっては困るんです。もう一ぺんゆっくり読みますからね。「誤りであることが容易に判別できるものについては」、こういうことですからね。誤りが両方で簡単にわかるんですよ。それでも、「この場合でも安易に納税者の主張に妥協するような補正は絶対に行なわないよう留意する。」こうなっているのですからね。官庁用語だからかたくなるとかやわらかくなるとかというものじゃないんじゃないですかね、これは。これはどういうことですかね。
  48. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 たいへん恐縮でございますが、ちょっと現物を……。     〔阿部(助)委員書類を示す〕
  49. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまお読みいただいたとおりであると思います。「誤りであることが容易に判別できるものについては、直ちに上席調査官等の指示を受けて当該調査額を補正する。この場合でも安易に納税者の主張に妥協するような補正は絶対に行なわないよう留意する。」この文章はミスリーディングな感じがしないでもないと思います。ただ直すについても妥協的なことではなくて、正しい姿に直せという意味を言っているのだと思いますが、ややこのことばがうまくないということは、これは私もそのとおりだと思います。
  50. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはあなたの部下である東京国税局長の谷川さんが出されたんですから、えらいほうのあなたのほうからこれは訂正させるということが正しいんじゃないですか。それをおやりになりませんか。
  51. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 このことばが足りないと思うのは、私は事実だと思います。もう少し徹底して話をすべきじゃなかったか。つまり、いまここで言っておるのでございますが、納税者には雇い人がないという前提で調査をした。ところが、雇い人がありました。なるほど、それは確かにあった。その場合に、雇い人その他の金額については、そこでよく話し合いをしてやれよという意味だと思うのでございますが、その点、よく徹底するように、こちらからも読み方等について注意をするように申したいと思います。
  52. 阿部助哉

    阿部(助)委員 長官のいまの御答弁では、どなたも納得していないみたいですがね。日本語はやはりもっと明確にするのと、これを受けて——あなたが読めば、いかようにもこれはえらいほうで解釈するかもわからぬ。しかし、問題は、局長から出て署長へこれがいくわけですよ。そうしたら、その部下である署長や署員が、一体これをどう読むか。読み方が足らないという形で判断をされるというふうにお考えになるんですか。私は、常識ある吉國長官が、そんなような解釈をされるとはちょっと心外だし、そんなようなことでここで日本語の解釈をいろいろとされるんでは、もう国会の審議なんというものは意味なさないんじゃないかとさえ思うわけでして、私は、ここは明確に——だれだって間違いはある。だけれども、間違いを直すということは、これは決して恥ずかしいことじゃないと私は思う。私は、むしろ、ほんとうは言いたいのは、この文章にあらわれた精神が気に食わないということなんです。だけれども、そこまで言うのはこれは別にして、私はこれを指摘しておるわけでありまして、それをこじつけられれば、私もいろいろと言わなければいかぬことになってしまう。そういう点で、もう一度、吉國長官の明確な御答弁をお願いしたい。
  53. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その趣旨が、いわゆる妥協課税的なやり方になるなということを言っておる、その注意のしかたに誤解を生ずるおそれがあるという御指摘でございますが、そういう意味では、はっきりと、そういう趣旨があやまたないように補足させるということにいたしたいと思います。
  54. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、補足というよりは、これは補正をするとか——まあ税務署のほうで、国税庁長官以下そういうふうな態度であれば、税金を、まあガサといわれてもやむを得ないような調査をする。そうして、こういう態度で臨まれれば、まさに納税者犯罪人扱いだということになるんじゃないかというさっきの問題がからまってくるわけでして……。  もう一つあれをいたしますと、その次がまたたいへんに気に食わないわけであります。「納税相談の際に調査額を補正することが妥当でないと認められるものについては、事後において見直し調査を行なった上で見直し調査額により修正申告の慫慂を行なう。」それで、注がついているのですよ。この注が「補正額(補正後の調査額を含む)によって申告に応じない者については確定申告期限後のできるだけ早い時期において更正又は決定の処分を行なうことに留意する。」こうなっておる。これは完全な押しつけじゃないですか。どうです。
  55. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど私が申し上げましたように、税務署調査自体と差がある場合、税務署が間違っておる場合ももちろんございます。同時に、税務署としても、客観的に見て、これはどうしても申告と一致ができないというものは残しておきまして、その後、事後に調査をいたしまして、必要があれば更正を行なう。その事前と事後の調査の分かれ目というのが、申告が出た後に、その申告が妥当であるかどうか、前の調査をさらに確かめた上で更正をするというのがこれは筋道だと思うのです。通達というものは修飾なしに書いてございますので、非常にきつくお感じになるかもしれませんが、筋道は、私が先ほど申し上げたことだと思います。
  56. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、われわれがきつく感ずるのですから、ましてや納税者の人たちがもっときつく感ずるのは当然なんであって、この要領で上からぎゅうぎゅう税務署員を締めつけていったら、この締めつけられた税務署員がまた納税者に対して、もっと強くやってくるのは当然なんであって、このあれからいっても、できるだけ早い時期に更正または決定の処分を行なえ、文句あるなら言ってこい、こういうことなんでしょう。文句あるなら言ってこさせろ、とにもかくにも更正決定でやってしまえ、こういうことなんですね。これはとにかくもういいか悪いかなんていう判断じゃない通達だと私は思うのですがね。
  57. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そこにございますように、調査あとでして補正をして、その際には修正申告の慫慂をしてみる。しかし、修正申告には応じない。そうすれば、税務署調査と違うわけでありますから、これは更正せざるを得ない。私はその点特に申し上げておきたいのでございますが、税務署は、その更正をする前には、調査額を補正するというのは実地調査をやり、そうして調査額を補正するわけでございますので、本来、調査によって更正決定を行なうというのは、正しい税額である限り、これは当然の義務でございますので、それをやらないわけにはまいりません。ただその場合にも、修正申告を一ぺん慫慂してみる。しかし、それでも両者の見解が相違している。税務署調査額が正しいという信念があれば、これは更正すべきものであるということをその通達で言っているわけであります。修正申告期だけで、あとほうりっぱなしにしてしまうということでは、全体の納税者の公平がはかれないということを留意さしていることである、かように考えておるわけでございます。
  58. 阿部助哉

    阿部(助)委員 長官がそう開き直れば、私のほうもこれは少しこだわらざるを得なくなっちゃうんですな。一番当初に長官は、押しつけはしないんだということをおっしゃったけれども、前の項、この項を見ても、押しつけじゃないですか。調査調査で、されるのはいいだろう。それでまた、自主申告という原則申告納税という原則まで踏みにじるやり方は、私はやはり改めるべきだ。これがとにかく税の民主化の一番基本だと私は思うのですがね。その点で、いまのような長官のこじつけでいけば、谷川局長が出されたものが、まあことばがちょっと足らなかったとかあれだということのごまかしになってしまうのであって、基本的なものをもう少し親切に考えないと、私は、日本の税制から基本人権が侵される、民主主義は侵されてくるということになりはせぬかという心配をするから申し上げるのです。私は、どうも長官、そう開き直られれば、この問題を、もう少し材料があるから出して論議しなければいかぬことになるのですがね。先に進みたいのですがね。
  59. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いや、私、決して押しつけということを言っているわけではないのでございまして、その申告段階の相談というものは、それはむしろ、相手方がその間に話がつかぬというものについては、あと調査をやり直してみて補正をしてみる。そうして時期が過ぎてしまっておりますから、修正申告の慫慂はしてみろ。その上で更正をするということを言っておるのでございまして、所得税で御承知のとおり更正件数が非常に少ない。法人税が二十万件あるのに対して所得税が八万件程度であるということの前提には、申告慫慂ということで申告段階で片づくもの、さらに、その後の修正申告で片づくものが多いために、更正の件数が減っておるわけであります。これは、法人と所得やり方の違い。法人は一応みな帳簿を持ち、税法も知っておるであろう。したがって、間違っておれば更正をするという態度がとられておりますけれども所得税についてはできるだけ申告、さらに修正申告、そうしてどうしてもというときに更正する、こういう三段がまえをとっておることを、通達を離れまして、私として申し上げておきたいと思うのです。
  60. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この通達は、あなたのほうはえらいのだから、これは上から、間違いだから直せということを明確に御指示を願いたいということを、はっきり私申し上げて次へ進みたいのですが。
  61. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 阿部先生のお考えになって  おることは私もよくわかるのでございまして、そういう意味で、私どもとしてさらに検討して、不十分な点があればこれは注意して補正させたいの  ですけれども、筋道はさっき申し上げたとおりです。
  62. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、これだけ頭のいい長官が、いま言ったことが、検討して誤りがあればじゃなしに、これ自体誤っておると私は判断しておるのでして、これはほんとうを言うとけしからぬ、だからこれをやめさせろ、こう私は主張しておるのでして、これはまだこの文章、検討しなければいかぬですか。
  63. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 基本は、納税者基本的人権を侵してはならぬということにあると思います。で、その申告やり方その他については、できるだけそれを配意してやるべきことなのだ。(阿部(助)委員「そういうふうにこれはなっていない。」と呼ぶ)そこのところ、お互い若干の解釈の相違があるようには思いますけれども、不十分であると私たちも思えば、これは補正をさせるにやぶさかではない、こう申し上げておるわけでございます。
  64. 阿部助哉

    阿部(助)委員 こだわるようだけれども、これは不十分どころじゃない、狂っておるのですよ。こんな文章で下へやられたらたまらないですよ。間違いがあっても安易に妥協するななんという行き方は民主的な税務運営ではないと私は思う。これは明らかに、この文章が間違っておるか、精神が間違っておるか——私は間違っておると思うので、それをまだ長官がいい悪いの判断がおつきにならないというのでは、これはもうこれ以上、これからの問題を論議してもしようがないという感じなんだが、これが判断つきませんか。
  65. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほどから問題になっておりますように。間違ってもがんばれという意味では決してないので、間違ったものは直す、ただその場合に妥協的精神ではやってはならぬ、こう言っておるだけであって、言い方がちょっとへたくそであるということは私も認めるわけでございます。
  66. 阿部助哉

    阿部(助)委員 へたくそならへたくそを直せばいい。
  67. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 へたくそな限りにおいては直させる、あるいは補足させるということはやぶさかではありません。
  68. 阿部助哉

    阿部(助)委員 こういうところに異議申し立ての原因というものの大半が出てくるわけですね。法解釈の問題での異議申し立てというというものは、件数としてそう多くはないでしょう。事実問題の認定ということで、大半の争点は事実問題で出てくる。その出てくるもとはと言えば、いま私が申し述べたような税務署やり方に耐えられない中で異議申し立てが出てくるということなんであって、ここを直さなければ幾らでも異議申し立てば出る。ただ、もっともっと出るだろうけれども、この程度でおさまっておるのは、税務署はこわいから——これからお伺いしますけれども税務署がこわいからがまんしておる者があるからまだこの程度でおさまっておる、こういうことじゃないですか。私は論争の原因は、異議申し立て、不服のもとはここにあると思うのですが、いかがですか。
  69. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 おっしゃる点もあると思いますか、三百六十万の納税者の大部分が申告で済んでおる、さらに修正申告で済んでおる、そしてどうしても両者の意見が一致しないものが八万件くらいある、それについて異議申し立てが起こるということは、私はこれはあり得ることだと思います。事実認定の問題でございますから、お互いに歩み寄ってわかる場合もありますけれども、どうしても事実認定自体の相違というのもあり得ると思うのです。しかし、更正決定が三百六十万件の申告納税のうちで八万件とにかくあるということは、修正申告指導というものがかなり時間をかけて行なわれている結果ではないか。その申告指導を、不十分だとがまんしておる者がないとは私は申しません。しかし満足しておられる方が大部分であろう、かように思うわけであります。
  70. 阿部助哉

    阿部(助)委員 納税申告納税原則だろう、こう考えるのでありますが、次官、いかがですか。
  71. 中川一郎

    中川政府委員 申告原則であることは阿部委員指摘のとおりでありますが、それにはただしがついておりまして、正しい申告でなければならない、正しくない申告申告を認めることはできないというところに問題があるのではないか、このように考えております。
  72. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこで、この通達は局長から署長になされるわけですね。そうすると、署長はこれに従わなければならない。ところが、不服の申し立てをする納税者の言い分には必ずしも従わぬでもいい。何も従う義務はないということになっているわけですね。
  73. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっと角度が違うかと思いますが、事務運営について局長が指示したものに署長が従う、そのとおりであります。局長は所得の内容その他について指示しているわけではございませんので、局長がこれで決定しろなどということは決して申しておりません。その意味では、納税者の申し立てに理由があればもちろん従います。理由がなければもう一回調べ直してみようじゃないか、そして話し合ってみよう。どうしてもそこで話がつかなければ審判所でやってもらう、こういう段階になるわけです。通達そのもの事務運営の管理の問題でありまして、内容には何ら関与するものではないと思います。
  74. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だけれども、署長はおそらく更正決定やなんか決定をする場合には、それなりの確信をもって決定されておると思うのです。その点、私はそうだと思う。ところがそれに不服の申し立てをしてくる、文句を言ってくれば、人間であれば不愉快になる。私だって、自分が正しいと思ってやったことに文句を言われれば、何を、ということになってくる。それが人情の常だと思う。そうすると、一体こういう通達——署長としてはその決定をしてしまった、納税者の側から見れば、下世話なことばで言えば、頭をぶんなぐられたその署長のところへまた、不服がございますから救済してくださいと頭を下げていくということになる。これは一体どこが救済だとおっしゃるのか、私はそこがわからない。署長は正しいと思ってやったけれども納税者のほうは頭をぶんなぐられたようなつもりで、これではがまんできないということで、何とかしてくれといって助けてもらいに行っても、その行く相手がまた頭をなぐった本人のところへ、署長のところへ行くということが救済の規定だなんていうことが常識的に言えるかどうか。
  75. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 もちろん税務署長がみずから調査をするわけではございませんで、それぞれの部局で調査をいたします。したがいまして、税務署長自身が更正を出す場合に、署の職員を信頼して出す場合が多いと思います。ただそれに対して不服があれば、最近では、昨年の国会でお約束申しましたとおり担当者を変える。同じ担当者にやらせますと、なるほどそういう問題か起こるかもしれませんので、異議申し立ての処理は別の担当者を指定いたしまして、新しい観点で調べ直しをさせるということにいたしているわけでございます。現に異議申し立ての中で五〇%程度の修正、取り消しあるいは一部取り消しということが行なわれておるのは、それだけこだわっていないということを示すものではないかと思います。先日も申し上げましたが、その反面、それではいいかげんな決定をしているではないかと、去年亀徳長官がたいへんジレンマを感じるというふうに申しましたが、しかし私は、間違っておれば直すべきだと思うし、現にそれを実行しているということで、阿部先生御心配の点は担当者を変えるということで十分に補正ができているのではないか。また、それでもこだわっている者があれば、それは最後に審判所が第三者的立場ではっきりと見直す。今後、第三者的立場の審判所がもし誤りを見つけたということになれば困るという気持ちから、より一そう慎重な異議が行なわれることを私は期待をしておるわけでございます。
  76. 阿部助哉

    阿部(助)委員 吉國さんのように神さまみたいにいい人だとそういうことになるかもしれません。だけれども、私はそうではないのじゃないかと思う。やはり署でこれを決定した、それに不服を申し入れること自体がたいへんな勇気の要ることだと思うのですよ。だけれども、だれが見てもだいじょうぶだ、明らかに税務署のほうの間違いだということで勇をふるっていく、だから何ぼか直さなければいかぬというのがあるのであって、恩情あふるる気持ちで署員がこれを直す、署長が直すなんということは私は考えられない。そういう点で、片方である意味ではぶんなぐっておいて、またそれを救済するということなど自体私はナンセンスだと思うのだが、それならそれで救済の保障があるのだということを法律か政令ではっきりと私は示してもらわなければ困ると思うのです。私はいまの通則法のあれでは何としても納得ができない。
  77. 細見卓

    ○細見政府委員 御質問の趣旨、必ずしもよくわからないのでありますが、今回提案いたしておりまする国税通則法は、いずれにいたしましても納税者の真実の所得が何であるかということについて、白色申告の場合でありますれば異議申し立てを経、青色申告の場合であれば直接審判所において、真実の所得が何であるか、真実の所得を発見することが即納税者の権利を擁護することになるというたてまえでやっておりますので、この法律の精神全体がその意味におきましては阿部先生の御趣旨に沿っておるのではないかと考えておるわけでございます。
  78. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はどうもそうはとれないわけですね。先ほど来申しておるように、これが救済のためだ、こうおっしゃるけれども、同じ税務署でまたそれをやるなんということはどうも意味をなさない。大体不服の申し立てというものは、同じ税務署じゃなしに別のところならまだそれでもいいけれども、決定したそこへまたお願いに行くなんというのはどうも筋が通らない。それはみんな神さまみたいな人ばかりおるならいいですよ。ところがそうでないから、私が一例をあげたさっきのような問題が起きておるわけでしょう。そういう問題が起きてないというなら別ですけれども、そういう問題か所々に起きておる。そういうところへまた助けてくださいと言ってお願いに行くのは筋が通らない、私はこう思いますが、それなら、はそのときに、不服の申し立ての段階で税務署はまた見直し調査をすると思うのですが、やりますか。
  79. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それはもちろん見直し調査をやって修正をするわけであります。ただいまお話がございましたが、御承知の青色申告者につきましては、現在でも直接国税局長に異議申し立ての審査請求をする道が開かれております。税務署に行くか、それは自由になっておりますが、その自由になっているにかかわらず、税務署にまず調べてほしいという納税者が九〇%でございまして、直接国税局に行く青色申告者は一〇%しか実績がないのでありますが、そういう意味では納税者の、近いところで手っとり早く直してもらうほうがいいという御判断があるのではないか。いま先生、税務署は総額主義であるということのようにも仰せられましたが、私は必ずしもそうでないと思うのでありまして、税務署にもひとつ性善説を適用していただきたいと思います。
  80. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そのときいろいろまた調査をするのは、どういう法律でやるのですか、法的根拠は。
  81. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 税務署は、異議申し立てがあれば調査の上において決定をするということに制度上なっておりますので、再調査をいたすわけでございます。
  82. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは条文はどこにあるのですか。
  83. 細見卓

    ○細見政府委員 所得税法の二百三十四条、つまり異議の出ておりますのが所得税の税額でございますから、所得税の税額調査のために所得税法によって再調査する、こういうわけでございます。
  84. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはこの前もずいぶん論議したところですが、そのときには納税者が問題にしておる争点だけをやるわけですか、それとも全部をまた見直し調査をするわけですか。
  85. 細見卓

    ○細見政府委員 おそらく白色申告者の場合でございますから、いろいろ事実について必ずしも正確な記帳がない。したがって、ある事実があったかなかったか、あるいは総合的にその方の取引の全貌でどういうものであったかどうかというようなことを、やはり総括的に全貌をとらまえるというようなことにならざるを得ないのではないか。これは何といいますか、理屈の上でそういうふうに考えられるわけでございます。
  86. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、不服の申し立てをしたということを理由に、今度はさらに罰則を伴ってまたそれ以上、前よりもひどい調査をされるという危険がある。そうすると全くこれはばかはかしくなってしまうということになりはせぬですか。
  87. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 異議申し立てにつきましての調査は、もちろんたてまえは再調査ということでございますから所得全体を調査する。ことに事実問題の場合は争点というのは非常に限られてしまって、争点をあげることがむずかしい、所得全体が幾らであるという争いになりかねないということが多いものでございますから、その調査をいたしますけれども原則としては納税者の主張が正しいか、当署の決定が正しいかという観点からやっておりまして、そういう意味では、やはりいまの制度では、異議申し立てに対しては却下か棄却か一部取り消しか全部取り消しという処分になりますので、わざわざその納税者のよけいな所得があるかどうかまで調べるというやり方は、税務署の手数から申しましてもやるべきでないと思います。
  88. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、不服の申し立てというものはあまり賛成できないのですが、百歩譲ってそれをやるとしても、一般税法に基づく検査でなくして、これは拒否すれば納税者自体に多少不利になるかもしれないけれども、やってもらわぬでもいいということになればそれでいいじゃないかという気がするわけですけれども調査の範囲はいま長官がおっしゃったように、これははっきりと限定すべきだというふうに私考えるのですが、いかがですか。
  89. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私は実行上はそうすべきだと思っております。ただ、先般来申し上げておりますように、訴訟を通じた一つの理論というものがございまして、総額主義ということをいっておりますけれども、実際は先生のおっしゃっておるように、異議が正しいか当署側の範囲でいいか、そこをはっきりすればいいという態度でやるべきだということで従来からやっております。今後もその方針は変わらないと思います。
  90. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それはそういうことであれば、そういうことでの下へ通達か何か出しておきませんと、これはまた下のほうで長官の意に反した間違いをおかすおそれもあるので、ひとつ通達ではっきりしておいてもらいたい。
  91. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この問題は審査請求にもまたあるわけでございます。そういう意味では今後、私の権限ではなくなりますけれども、審査決定について審判所長が通達を出す予定であると思いますし、その準備も進んでおると思いますが、その内容ははっきりしてもらおうということで申し入れをすべきだと私は思っています。それとあわせて異議申し立ての考え方もそういうふうに処置をしたい。これは申し上げておきたいと思います。
  92. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、重ね重ねで恐縮ですが、特に念を押しておきたいのは、見直し調査では、冒頭に申し上げましたような現況調査でやるようなことをやって恐怖心を与えるなんということのないように、これは救済措置なんだから、ひとつその点をはっきりとしておいていただきたい。これはもうぜひとも、それを下に周知徹底するような通達等で私、出していただきたいということを重ねて確認していただきたいと思うのです。
  93. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど来申し上げておりますような趣旨、異議申し立ての処理の趣旨というものを、今後はこの審判所ができたのを機会に明らかにしていきたいということをはっきり申し上げておきます。
  94. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この前、法案は衆議院を通過して参議院では流れたわけであります。が、そのときの附帯決議で、いろいろと決議事項であるわけですね。第一では検討、努力するというようなことをいっておる。二番目には、たしか出訴と不服の申し立ての選択を納税者の自主的判断にまかすことが納税者の権利救済に一歩近づくんだというようなことをいってあるわけですが、十分御検討をなすっただろうと、こう思うのですが、そういう方向でまいりますか。
  95. 細見卓

    ○細見政府委員 将来の方向につきましては、より納税者の権利が保護されるような形に持っていく、よい慣行を互いにつくりながら、そういう新しい制度を生み出していく努力は続けてまいらなければなりませんが、その一歩前の現状よりは一歩前進した。この不服審判所そのものがまだ成立いたしておりませんので、まずこれができて、そこでよい慣行ができて、さらに一歩進むというふうにいたすのが順序ではないかというふうに考えております。
  96. 阿部助哉

    阿部(助)委員 与野党一致の希望でありますので、これはぜひとも早急に検討をし、その方向で進むべきだと、こう思うのであります。  次に、協議団の歴史というものを見ると、初めは実にいいことをおっしゃっておるのですね。まあ同じ穴のムジナ、こういわれてきたことは皆さんも耳にし、御承知になっているだろうと思いますが、いかがですか。
  97. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 同じ穴のムジナ論というのは確かにございます。ところが、この内容が同じ穴のムジナであるのか、かっこうが同じ穴のムジナであるのか、その点はちょっとはっきりいたしませんが、そういう論があったことはよく承知しております。
  98. 阿部助哉

    阿部(助)委員 同じ穴のムジナというようになったのは、当初からもそういう議論があったことはあったのですが、いまの協議団を審判所に変えなければいかぬというほど、これが何か零落してしまったというか、何か変えざるを得ないところにきた。この責任は一体どこにあるのですかな。
  99. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私は、協議団というものそのものが、一般の行政不服制度から見れば一歩前進していたことだと思うのです。つまり、一つの系統に調査をゆだねてやるという点で、私はやはりそれだけの評価は受けていいと思うのでございますが、ただ最後の決断をするときに国税局長の裁決になる、そこがどうも割り切れないという皆さんのお考えがだんだんと具体化してきたのではないか。そういう意味では、それにこたえるべくこれを直すということにいたしたわけでございまして、そういう意味では、協議団の運営が悪くてこういうふうに直さなくちゃならぬといったよりは、先ほど主税局長が申しましたように、一つの制度ができますと、それを運用しているうちにより高次のよい制度に移り得るということを示していると思います。協議団がなかったら一足飛びにこの不服審判所をつくれたかどうか、実際上これは私非常に疑問だと思う。そういう意味では、この不服審判所ができますと、さらに数年後あるいは十年後にはよりすぐれた制度に発展し得る可能性もある、かように考えます。
  100. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、協議団でもいいのだけれども、さらによくしたいという、こういうお話でありますが、実は協議団自体も当初の御意図とは非常に違った方向にきたのではないか。私、具体的にあとで申し上げますけれども。しかし、当初には、二十五年五月二十七日には当時の大蔵主税局調査課長、忠佐市さん、この人はいいことをおっしゃっているのですね。法令の解釈については他人の干渉を受けないとか、独自の立場で判断せよ、上司の命令は別だけれども、できるだけそうしろとか、身分については一般職と同じだけれども、裁判官に対すると同じような配慮が必要であるというようなことでおっしゃっておったのだけれども、だんだんそれがひん曲がってきたというか狂ってきた。さらに六月にはもっと具体的に、協議団は三人の合議のもとでその過半数で決する、こういうふうなことを言っておる。だけれども、この三人の合議制というものは今日まで守られてきたですか。
  101. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは、三人の協議で決するということは協議団令で明らかにしておりまして、いま御指摘のように最初の考え方と変わってきたという点がございますとすれば、むしろ法制的には、従来協議団の議を経て国税局長は裁決するといっておりましたものを、協議団の議に基づいてというふうに直して、協議団の独立性を少しずつ高めたことは事実なんでございます。  それから内容的にも、いわゆる主管部との協議をするについては一定額以上の大きなものだけにとどめて、その他は主管部との協議なしに直ちに裁決に持っていくというような運用もいたしまして、それなりの努力はいたしたのでございますけれども、やはり制度としての前進のほうがよりよいという結論で、思い切ってこの制度に切りかえようということをやったわけでございます。私は、協議団そのものが最初の意図と違って非常に運用が悪くなってきたと必ずしも考えないのでございますが、最初から理想を掲げたほどのものではなかったことも事実だったと思うのでございます。
  102. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうもその辺になるとだいぶ認識に相違があるようですね。皆さんのほうは先ほど来、私、御答弁をあれしても、確かに国会答弁というのは何とかかんとかうまく抜ければいいということなんでしょうけれども、それではほんとうのあれにならぬじゃないか。いまの協議団がそれほど進んだ、また当初に意図したほどうまく機能を発揮しておるとは、私ちょっと思えない。国、税庁長官の方針として、四十年に、国税庁の年報八一ページ、これによると、主管部も参加して協議するというようなことになってしまった。そうですね。
  103. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私も実は当時いなかったものでよくわかりませんですが、いま聞きますと、主管部審理のことを書いているようでございます。つまり、先ほど申しましたように、いまの協議団でございますと裁決の権能は国税局長にございます。国税局長が単独で判断できませんので、その場合の補佐をするのが主管部、したがって、主管部がその審理をして局長に御意見を申し上げる。そうすると、局長はどっちが正しいかなと思って——大部分は協議団が正しいとするのではございますけれども、たまたまちょっと待ったというのが出る可能性がある。その可能性を断ち切ってしまわないと、どうも同じ穴のムジナ論は解消しないということで、今度は裁決権を審判所へ移してしまいまして、国税局長は裁決権がない。したがって、主管部審理というものもあり得なくなるので、その点は御指摘のように、協議団がほんとうの最初の理想のとおり動かなかった一つのポイントではあったと思います。
  104. 阿部助哉

    阿部(助)委員 審判所の話は、いままだちょっと早いのですよ。課税権者とこの協議団の人たちが一緒に合議する、裁判官と検事が一緒になって判決を出すというようなものでして、これじゃとにかく権利救済だ何だということにはならぬ。どうも皆さんのほうからこれをくずしたんじゃないか。三人合議制というのもほんとうは守られていない。皆さんが、守られておるとここで突っぱるなら、私は参考人を、協議官を呼んでお伺いしてもようございます。私は、この三人の合議制というものをくずしたのは国税局当局じゃないかと思う。そこになおさら同じ穴のムジナ論とか、あるいは協議団がある意味でだらしがなくなった、こういうふうにもいわれる大きな原因があると私は受け取るのですが、それをそうではないのだ、守られておるとおっしゃるならば、私は委員長に要求して参考人なり証人なりを呼んでお伺いしてもいいと思います。
  105. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘の点は、おそらく合議のやり方が不十分であった、書面で合議をする、担当協議官が調べて書面で合議をしても、それで三人の合議が成立するという解釈をとってきたことを御指摘になっているんじゃないかと思います。そういう意味では、合議は合議でございますが、もっと生きた合議をやれということであろうと思います。
  106. 阿部助哉

    阿部(助)委員 生きた合議と言われるが、死んだ合議というのはどういうのか私わかりませんが、協議団提要というのがございますね、これをひとつ資料としてお見せ願えれば、この問題はもっと明瞭になるだろうと思うので、お見せを願いたいと思うのです。  こういう機構的にも問題があったし、またその権能、権限にも問題があったところに、私はこれが破られてきた一つの原因があると思うのです。何よりも重大なのは、国税庁長官以下の、救済機構としてこれをほんとうに育てていこうという熱意の欠除が、結局こうなったんじゃないか。私がこれを言うのは、今度の審判所が設置を見ても、また同じ運命をたどらざるを得ないのじゃないかという不安を持つからであります。発足当時の、先ほど申し上げました忠佐市さんや、いろいろな方々がこれにかけた期待、そしてその言明はまことにりっぱなものだと思う。だけれども、今日見る影もない、と言ったら失礼かもわからぬが、協議団になり下がってしもうたということを考えると、これはあなたと見解の相違かもわかりません。だけれども、事実そういうことになってきたには、やはり皆さん自体に大きな責任があると思う。何も私いまここでその責任を追及しようとも思わぬけれども、問題は、これから審判所が発足していくと仮定した場合に、これをほんとうに救済機構として意義あるものにしていくかどうかという、いま発足するかどうかの起点でありますので、私申し上げるのでありますが、この中で特に問題となるのは私はやはり人事の問題だと思うのです。そういう点で、この前広瀬委員からの御質問もありましたけれども、民間人の採用というものがやはり大きなウエートを持つと思う。それでなければやはりまた同じ穴のムジナと、こういわれる。一つは民間人の採用と民主的な運営、そしてこれは交流はあまりすべきではないと思う。局と税務署と行ったり来たりしておれば、やはりこれは本筋のほうにいきたくなるのは当然だと思う。そしてまた本筋のほうからくれば、いろいろなつながりや問題があって付属物になり下がってしまうというのは、これはまた当然のことなんです。そういうことで、民間人の採用という点と、それから人事の交流は原則としてしないということは、これは明瞭にしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  107. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま御指摘がございましたように、運用が不十分であって目的を達しないことになることは、これは私ども厳に警戒しなければいかぬ点だと思います。協議団の運用がもし御指摘のような点があったとするならば、それはやはり裁決権を国税局に留保したというところに大きな原因があると思うのです。今度はこの裁決権を審判所長に与えたわけでありますが、同時に人事につきましても、できるだけ審判所長の独立性というものを明らかにするような方向を考えるべきだと思っておりますし、民間人の採用につきましては、広瀬委員にお答え申しましたとおり、当座直ちに多数の民間人をとり入れることは実際的に無理だと思いますが、漸次そこで適任者を求めていくという努力を、今後十全にいたしたいと思います。ただ交流につきましては、前にもはっきり申し上げましたように、審判官についてはできるだけ逆の交流はしたくない。ただ民間人と入れかえる過程では若干起こるかもしれませんが、審判官はやはり独立の存在であるべきだと思います。また審判所が付属物であるということではならない。私はむしろ審判所は課税官庁よりも高い地位にあるというようなことでなければならぬと思います。この間も御説明申し上げましたが、今度の級別配置などにつきましても、地方の首席審判官は国税局長と全く同格である、各部長などよりは上の存在になるように措置をいたしております。このような点をその趣旨どおりに運用するように努力いたしまして、ほんとうに客観的な審判制度を実現してまいりたいと思います。
  108. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 関連して。吉國さん、いま阿部委員が、合議制の問題がどうなっておるかということを申し上げておったわけでありますが、審判官、副審判官、これの官庁ベースにおける地位というもの、それとうらはらの関係にある給与というものでも差別がある。当初の出発にあたって民間人をというわけになかなかいかぬ、そういう事情はわれわれわかるのだけれども、合議というものを私どもは党の案の中にも非常に強く入れておきましたし、これはやはりきわめて民主的な形に、何か階級的な差別なしに、審判官、副審判官ということでなしに、むしろ同列の審判官、同格の審判官というような形で合議も行なわれなければ、真実の意味における合議というものは成り立たぬのではないかということで、いまだに疑問を持ち、心配もあるわけなんです。一緒に相談をしてどうしようかということになっても、身分的に上だという格づけが官庁ベースでずっと持ち込まれておる。そうなればやはり階級秩序のようなもので、審判官が言うことには副審判官はもう従わざるを得ないというようなことを非常におそれる。だから、相談してやるのですよというたてまえにはなっておるけれども、そういう意味で、裁判官が合議をするというような形での、ほんとうに対等の立場での合議というものが成り立たぬのではないかというようなことで非常に心配がある。だから、将来はそういう合議制という方向をきっちり通則法の中にも書き入れ、そして副審判官というような制度などについても、これは裁判官と同じような一つの身分、一つの資格、そういうようなものにして合議制というものは担保をしていく、そういう方向に当然いくべきだろう。それで、実態的ないろいろな調査などをやる場合には審議官なり審査官というようなことで、それはそれとして裁判所の書記機構のようなものに直していく、こういうような方向づけについてどう考えられるか。その点を合議制の問題点とからめながら、将来についてどういうようにこれを改善していくお考えがあるかということについて、ちょっと関連して伺っておきたい。
  109. 細見卓

    ○細見政府委員 合議制を保障する法文といたしましては、九十八条におきまして「担当審判官及び参加審判官の議決に基づいて」ということで、「議決」でございますから、必ず合議をしなければならないということになっております。  広瀬先生御指摘の、もう一つ上下関係というのが官庁にはあるから、そういうものが働くのではないかという御心配でございますが、なかなか一挙には参らないかと思いますが、将来の方向といたしましては、審判官のほうを増員していって、いわば同格の人たちという方向へやっていくということにいたしたいと思います。ただ、役員をふやすとかあるいは待遇などにつきまして、ここでは御激励いただき、別のほうではけしからぬという話が出まして、なかなかむずかしいことではございますが、方向としては、同列の人たちが並んで、文字どおり対等に審議するという方向へ持っていくのがこの制度を生かすゆえんだと考えております。
  110. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 副審判官は合議には参加しないという最初からの考えでございましたか。そこの関係ですね。
  111. 細見卓

    ○細見政府委員 当初は副審判官も参加いたすことにいたしております。
  112. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 副審判官全部ではございませんが、首席審判官が指定した副審判官の場合は合議に参加するということでございます。これは、御指摘のように審判官の定員、級別定数というものがなかなか最初とれませんので、副審判官を使わざるを得ない結果が出てくると思います。ここでこういう陳情を申し上げては申しわけないのですけれども、何とか私どもといたしましては、将来は審判官の職級をできるだけふやしていただいて、副審判官というものは例外にするという方向にぜひお願いをしたい、かように考えておりますが、これは毎年の改善で進んでいくよりしかたがないと思います。いまの予算その他の状況から見まして……。
  113. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま審判官の身分はお話がありましたが、特にこの副審判官、審査官というものの身分の保障というものはどういう形でや、るのですか。何か保障というものははっきりするのですか。
  114. 細見卓

    ○細見政府委員 国家公務員法上の保障でございます。
  115. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ここへ入る場合に、もう少し何か政令で身分保障というようなものはお考えにならないのですか。
  116. 細見卓

    ○細見政府委員 現在の国家公務員法のたてまえで、特に司法官の身分をとりません。一般行政官になる限り、やはり海難審判所とかあるいはそのほかのいろいろな同種のより独立性の強いと従来いわれておりまする審判所などの所長につきましても、一般公務員のワク内にとどまっておる現状でございますので、将来の方向は別といたしまして、現状ではむずかしかろうと思います。
  117. 阿部助哉

    阿部(助)委員 一番最初、さっき申し上げましたように協議団発足当時でも、何らか裁判官に似たような配慮をすべきだ、こうおっしゃっておるのだけれども、この場合も何らかのものがないと、ただ一般公務員だけだ、こうおっしゃっただけでは、やはりまた協議官のような形になるのではないか。いまの協議官は、皆さんがこれで十分なんだ、こうおっしゃるあれもあるけれども、具体的に例をあげれば、試験で入っておりながらまださっぱり身分は上がらないという方もある。具体的に名前をあげてもようございますけれども、そういう方もおられるので、そういうことのないように、これはやっぱり何らかの保障はすべきだという感じがする。その点を一つお答え願いたいのと、もう一つは、この前からもお話がありますように、現在の協議官という人たちは何といっても試験で入って、ある意味では、皆さんは優遇したとおっしゃるかもわからぬが、常識的に見れば冷やめしを食わされたと見られる人たちが数多くおるわけです。そしてまだそこでいまなおこれらの仕事に携わっておるそういう人たちの身分というものは、やっぱり最大限度今度の制度にそのまま移行するということが私は当然だと思うのですが、その点はいかがですか。
  118. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 身分の保障という点は、私どもも答申をいただいてからずいぶん努力してみたわけでございますが、ついに実現しなかったわけでございます。これは一般公務員制度としてやむを得なかったかと思いますが、将来の問題としてはぜひ考えたいと思います。現在協議団におります人は現在の新しい定員よりも若干多くおります。これは不服ではなくて苦情相談所の仕事をしております職員がございます。そういう職員が一部転勤をしなければならぬということもあると思いますが、私は、現在の協議団で納税者の権利保護に十分な能力を持っている人はできるだけ残したい、かように考えます。その反面、納税者立場から申しまして十分な能力というものを私ども考えて処置をしなければならぬという制約はございますけれども、私は協議団が、先ほど先生おっしゃいましたように、そうリプレースされていくとは思わないのでございます。むしろ私は、国税局長をやっていた経験から申しますと、協議団の人はそういう諸官庁との間でも常に納税者立場に立って主張してきたように印象を受けております。相当のりっぱな人物もおります。そういう点では、いまの協議団の人が相当数審判所に移り得る、私はかように考えております。
  119. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ぜひそういう形でこの新しい協議の機構に入るように御努力を願いたいと思うし、いま審判官、副審判官、審査官というものの職務分掌といいますか任務分担といいますか、そういうものは大体検討はできておられるわけですか、これはやっぱりはっきりしておくべきだと思うのですが。
  120. 細見卓

    ○細見政府委員 主となりまして審判の仕事に当たりますいわば合議の主体になるのは審判官でございまして、特に不服審判所長に特命を受けた副審判官が合議に参加するという形になり、その下の審査官が主として事実関係調査でありますとか書類の審査でありますとかいうようななものに当たる、いわば補佐官として当たるということに考えております。
  121. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そういうものはやはり政令か何かで明確にされるわけですか。
  122. 細見卓

    ○細見政府委員 省令になろうかと思います。事務の具体的なやり方でございますので。
  123. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この制度自体何かやっぱり憲法上の問題もあるやに私は感じますし、いろいろ問題か多過ぎるという点でお伺いしたいものも多々あるのでありますが、特にこの制度にはやはり相当人員がまず必要なのじゃないか。十分に納税者の意見を聞いてやるというためには相当に人員も人手も要するのじゃないかという感じがするのであって、そういう点では十分にこれは配慮して、権利救済のほんとうに実の上がるようにしていただきたいと思うのでありますが、そこで、その要請をして、次もう少しお伺いしたいことがあるのです。  いよいよ三月十六日を迎えて税務署はたいへん忙しくなってきた。そこでこう忙しくなってくると、昼めしなんていうのもなかなか十分とれないということになると思うのでありますが、しかしやはり労働者の健康管理という観点からいけば、何といってもこれは法律でもきめられた休憩というものは必要だと思うのですが、これは与えるようになっておりますか。
  124. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この一カ月間というものは非常に、ことに後半期が忙しく、人が参ります。私ども税務職員の健康その他につきまして、税繁期と呼んでおりますが、この時期の前後に特別の健康診断をやり、またその期中にも健康に留意しながら、かなり無理な仕事だと思いながらやってもらっておるわけであります。できるだけ昼休みもとってもらいたいという気持ちでございますけれども、一方において納税者の方がたくさん待っておられるということで、、実情は、昼食時を交代で折衝しておるというのが実情でございます。これを無理にどうしても休めというのが筋かどうか、私もその点は非常に悩んだのでございますけれども税務署員自身も、納税者の方がたくさん昼めしも食べずに待っておられるという姿では、交代でやろうという気持ちがある。それ自身は、私は民間の各職場でも、一番その職場で忙しい時期には同じようなことが行なわれているのではないか。それに対する健康管理なり、これは私ども十全をはからなければいけないけれども、ここで昼になりましたから全部お帰りくださいといって、遠路来られた方にお帰り願う、あるいは一時間待っていただきたいということまで、はたして言えるのか。やはり税務署の署員の気持ちというものも勘案しますと、そこで無理やり休めということよりは、より健康に留意しつつこの重大な時期、納税者の共感を得る唯一のチャンスの時期には、税務署員の積極的な気持ちを尊重すべきではなかろうか。非常にここはむずかしいところだと思いますが、、私自身はそういうことを考えておるわけでございます。
  125. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこは少し狂っておるのじゃないですか。納税者立場をお考えになるというけれども、これはデパートの店員にしたところで交代で休まなくちゃ、忙しいのだからやれなんていうのは経営者の側に立った考えであって、これはやはり基準法等に見ても——そういうことを、忙しいのだからとか、こういうためだから、お国のためだなんていうことで押しつけられれば、だんだんそうならざるを得ない。だんだん日本はまた昔のように、私たちの若いころのように、何でもお国のためだといわれれば一も二もなくこれに従わざるを得なかった時代があった。私どもそれを経験してきた。これは民主主義が狂っていくもとなんです。私は、長官ともあろうものがいまのような答弁は、何としてもいただけないのですね。これはやはり原則として休憩を与える。しかしその中で組合との団体交渉であるとか、また本人が自発的にある程度配慮して努力するのはいいけれども長官たるものが、理事者の側が、忙しいのだから休憩はなるたけがまんせいみたいな気分でおられたのでは、下々はやはりいやであろうとどうであろうとこれに従わざるを得ないということになってくる。いろいろな技術的なものよりも、民主主義という点で、さっきから私が一番気にかかるのはそこなんですね。これはごくわずかなようだけれども、ここから日本民主主義がくずれてくるのじゃないか。決してあなたのあげ足をとろうと思っていないのですけれども、わずかなようだけれども、一番最初の、みんなのためだからみたいなことが、やがてはお国のためだということにつながってくる。やはり労働者はきちんと休むときは休むのだということを明示して、その中で、個人的な指示ではなしに、団体交渉であるとかあるいはまた本人たちが自発的にというならばまた私考えないでもないのですけれども、そこは私としては、わずかのようだけれども、きちんとしてもらいたいと思うのです。
  126. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 誤解があるといけませんから申し上げますが、私は休憩をとるなと申しておるわけじゃないのでございます。ただ休憩を、この期間は必ず休めと命令をして、納税者の方が大ぜいおいでになるのに、中で大ぜいの人がいながら手をつかねておれ、までは申せない。税務署員の気持ちとして、いま一番納税者との接触がたいへんな時期に、進んで時間を交代して昼休みをやめてもやってやろうじゃないかという機運があるときに、健康管理だからしかたがない、そういうことを言っておるのではないのです。休憩時間を休むなということを申すつもりはないのであります。そういういわば仕事がある時期には集中する。そのために超過勤務手当というものもございますが、そこに積極的な納税者との共感を持った行動が行なわれるときに、その場合に無理に休憩時間を守るべしというのは——そういう時期は三月の十五日間だと私は思うのです。その時期をどう考えるか。これはやはり問題ではあると思いますが、私自身はここで休憩時間を明らかにして、その間は一切受け付けをせぬというところまでやるのは、私としてもいまの時期には、税務署としても踏み切れないのではなかろうか。税務署実情に応じてひとつ考えてほしいということを申すゆえんでございます。
  127. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこは、税務署の職員がやろうというのにと、こうおっしゃるが、そこは長官の独善じゃないですか。やろうと思っておるかどうかわからない。上からの要請があってやっておるかもわからない。そこはやはり組合との団体交渉とか、そういうものでお互いが納得の上でなければいかぬのであって、話し合いをしてやるなら別だけれども、神奈川の税務署は、所得税の課員全員に日曜出勤を命じたと私は聞いておりますが、御存じありませんか。
  128. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 日曜出勤という問題は、私ども、署の実情に応じてやっておるところもあると思います。おそらく十五日は、完全に休む税務署はないと私は思います。何人かの交代要員が出て、少なくともあすの最終日を控えて日曜しか税務署に来られない人が来るというときに、日直者を置かないような税務署は私はないと思います。しかし、全員が出ておるということは私は必要ないと思います。全員出ろなんということは私は全く考えておりません。ただそういう日直者が置かれ、税務相談の若干が行なわれる態勢が残っておるだろうと私は信じております。
  129. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はそう聞いておるのですが、全員が出ろという必要はないですよ。ましてや申告納税がたてまえであるならば、日直がおって書類を受け付ければいいのであって、そこで大体間に合うことだと私は思うのだが、大体長官のいまのお考え自体が私は少しおかしいのじゃないだろうか。忙しいのだから、納税者のためだからという、こういうおっしゃり方自体——やはり昼は休むのだということに、国民のほうも納税者の側もこれは考えるべきだし、やはり上のほうもそういう考えで、なおかつそこでやむを得ないものは……(「約束の時間だ」と呼ぶ者あり)じゃ休憩してあとでやりましょうか。皆さんの御意思いかんで……。そういう形のものを私は基本的にやはり考えておかないと、もしどうしてもそれを要請するならば、やはりそれは個人でなしに、組合との話し合いというものが必要なんじゃないですか。そうでありませんか。
  130. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまお話がございましたが、忙しいから、納税者のためだからという、いわゆる昔の国民的なというようなことで言っているわけではないのでございまして、私はどこの職場でもピークがあると思うのです。超過勤務手当というものもそのために、ピークにはある程度やむを得ない面があると思います。税務署のほんとうのピークは何かというと、三月一日から十五日までであることは、先生も御承知だと思うのです。そういうときに税務署に来ている納税者との関係で、税務署長が判断をして職務命令を出す場合もありましょうし、おそらく進んでやる場合も多いと思いますが、そういうことは税務署にまかせるべきだと思うのです。そこをあえて——私はむしろ納税者の方に理解していただいて、二月の十五日から平均的に相談に来ていただくのが一番理想だと思いますし、昼だから税務署がかわいそうだから帰ろう、そういうことまで納税者理解していただくほど、税務行政理解していただけることが最善だと思います。税務署努力でそこまで御信頼を得る、御同情を得るということが必要なんだ。いまの段階ではまだそこまでいっておりません。遺憾ながらある税務署に一日五千人の人が来ているわけであります。これに対処すること、これがやはり一種の非常事態であることはお認め願えると思うのです。やはりそこは私は税務署の自主的な運営というものを尊重すべきだろうと思うのです。
  131. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、長官がどうもあげ足をとるような感じを受けられるか知らぬが、だから超過勤務手当を出したのだ、いいじゃないか、こういう考えは私はおかしいと思うな。超過勤務手当を出すのは、出すから使ってもいいのだということじゃない。私もそれを絶対にやっちゃいかぬと言っているのじゃない。やるならやるだけの手続をとって、話し合いの上で納得して、労使話し合いの上でやるならば、おやりになるということに対して私は異議を申し上げているわけではない。そこの話し合いなしに、ただ一方的に出勤しろという命令を下すのでは、やはり昔と同じような、お国のためだということにだんだんなるのではないか。それだからこそ、理事者であるとか経営者であるとかというものはいずれにしろ力が強いから、それを労働基準法はきめてあるのでありまして、そういう点を、私は当然のこと、法律上きまっておることを申し上げておるにすぎない。それを長官のほうでは、いや、そうじゃない、これは納税者のためだというふうにあれして、超過勤務手当を出しておるからいいじゃないかというお考えであるとすれば、私は納得ができない。
  132. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私の発言がたいへん不十分だったようでございますが、私は超過勤務手当を出すからいいじゃないかという気持ちで言っているのじゃないのでございます。ある時期にはピーク時がくる。そのピーク時には異常な勤務状態が起こるということを想定してあるがために超過勤務というものはあるはずなんです。あらゆる職場で毎日同じ量の労働量で済むということは考えられないわけです。そういう異常時に対処する道は考えていただきたい。また組合とも事前に話し合い——了承しなかったものもございますけれども、この問題については話し合いをしております。十分両者の意見が一致しなかった点ももちろんございますが、そこはいたしております。そうして私の考え方、いま申し上げたような考え方を明らかにしておるわけであります。それをオーケーとも申しませんでしたが、しかし私の考え方は一応述べて、そしてやっているわけであります。もちろん、もう一回繰り返して申し上げますが、出勤を命令したり、十五日は全部出勤しろというような命令は一切出しておりません。ただ全部休め、あるいはこの期間は特に職務が繁忙であるから、休憩時間は全部完全にとれという指令は出しておらないということでございます。
  133. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はそういう指令を出せと言っているわけじゃないのですよ。それでこの資料を見ますと、これはおたくのほうの東京国税局の指示区分表ですが、病人がずいぶん多いですね。比率はどの程度になっていますか。
  134. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 東京国税局というのがちょっと資料がございませんから、全体で申しますと、いわゆる職務に制限を加えなくちゃならないのは全国で約三%でございます。全官公庁の平均とほぼ一致しております。ただかなり高齢者が多いというために、このごろいわゆる成人病的なものがふえてきているという点が若干特色だと思いますが、全体の平均的な数字ではあると思います。
  135. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の手元にあるのは東京の国税局ですが、これはいろいろな病気を加えると、休まにゃいかぬというのも、どこまでが休まにゃいかぬのか、これはなかなか限界がむずかしい。また、いま私がここに持っておる資料のように、谷川さんや何かたいへん勇ましいハッパをかけておる。こうなると、まあしょうがない、出にゃいかぬということになってくれば——れは休まにゃいかぬかどうかという判断はわからぬが、大体四人に一人くらいの割りで病人がある。皆さんのほうで精密検査をしておるわけでしょう。だけれども、その精密検査の内容はこの人たちに詳細に指示し、そうして療養の方法等は指示してないですね。ただ注意しろというくらいのことはいっておるようだけれども……。
  136. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま仰せられましたのは、いわゆる指示区分じゃDまでお入れになっていると思います。Dというのは、すでに治癒をして治療を要しない者。過去において非常に結核性の病気が多かったことは事実でございます。そのために指示区分表Dというのがかなり多数ございます。しかし現在職務制限をしなくちゃならないような現在病気を持っておる者というのは、ほかの官庁とほとんど変わりはないということでございます。ただ、私どもがこういう言い方をするとたいへんしかられるのでありますが、健康管理には非常に力を入れておるものでございますから、ほんとうを申しますと、このD区分などというのはほかの官庁より非常に多くなっておりますが、これは精密検査をよけいやっておるためにY現在何ともないけれども過去の病気をはっきり見つけておるということで多いわけでございます。人事院の規則で定められておるのよりも税務官庁ではより多くの精密検査をやっておりますし、特別の、消化器系統などは人事院の規則ではないのでございます。それまでやっております。つまり消化器系統というのは、成人病関係がだいぶふえておりますので、非常に心配してそれをやっておるわけでございます。
  137. 阿部助哉

    阿部(助)委員 精神病関係が多いのは、実は仕事がきつ過ぎる、いやな仕事をよけいさせられるということじゃないのですか。  そこで平石直税部長の談話というのが局報に載っております。ちょっと読んでみますと、「まず所得税事務では事前調査対象を白色高額者に集中し、かつ白色高額者については新たに簡易事前調査を実施することにしました。このため事後調査分を含めると、調査率は昨年のちょうど二倍になっています。」こう言っているのですね。仕事の分量が二倍にもなっておるのですよ。そうすればやはりノイローゼにもなるだろうし、健康もそこねるだろうし、それだけに、税金の繁忙期だとおっしゃるけれども、なるたけ休養をとるときには休養を与えるような配慮こそが親心であって、まあ忙しいのだからやれということでは、これはどうにもならぬじゃないか。  もう一つは、この谷川さんの名前をたびたびあげてあれですが、たいへん勇ましいですね。「私は、何といっても国の基盤をささえている二つの機能、つまり治安の維持と財政の確立がしっかり行なわれてきたことが最大の原因だ、日本の繁栄はここにある、」こう言っている。そうして「昨年のゲバ学生の取り締まりに当たった若い機動隊員の皆さんが、おれたちがやらねばだれがやると烈々とした使命感に燃えながら任務を遂行している話を聞いて、強く心を打たれました。」こういって年頭所感で署員にハッパをかけておる。まあ機動隊が勇ましく学生を追い散らすと同じように納税者を切って捨てろ、こういうことなんでしょう。これはちょっと勇まし過ぎて、この調子でいったら、まず税務行政から先に大ファッショ化していくという、身ぶるいがするような思いが私はする。先ほどの事前調査現況調査といい、こういうように二倍に分量はふえる、そうしてこうやって勇ましい機動隊に見習えというハッパ、これはどういう意図かはわかりませんけれども、こういうものを見てくると、やはり病人の数はふえてくる。そこへ長官までが——温情あふれる長官だと私は信じておったのだけれども長官までが、忙しいんだからしようがないじゃないか、こうおっしゃっては、部下の連中は、休みたくとも、少しぐらい病気であっても、これは出にゃいかぬ、こういうことになるんじゃないかという、実は一連のことから私は不安を持つ。それならばそれなりで納得してやる場合は私たちあまり疲れません。まあ皆さん、だいぶ納得していないから疲れているようでありますが、大体納得した場合にはあまり疲れない。そういうふうに、これは十分に納得の上で超過勤務をしてもらうという態度こそが私は必要だと思う。そのためには、やはり団体交渉というものは、一年四回なんというけちなことをしないで、もう少し話し合うということが、私は労使の間で当然行なわれるべきであるということであろう、こう考えるのですが、どうですか。
  138. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 誤解があるといけませんから申し上げますが、私が申し上げたのは成人病でございまして、精神病じゃないのです。  それから、平石君の言っておりますのは、二倍になったと申しますのは、その反面に、いままでやっていた事務を振りかえまして、いわゆる事後処理事務を半分に減らしたのでございます。ですから、振りかえて調査の重点を切りかえたということでございますので、急に二倍の仕事をさせたわけではございません。  それから谷川君の言っておりますのは、私が推測いたしますには、職務においてはやはり忠実にやらなくちゃいかぬということを言っただけだと思います。機動隊の例を引いたのは、まあこれは職務専念を大いにやっておるじゃないかという意味で言ったのだと思います。  なお、先ほど申し上げましたように、税繁期の前には全国的な組合とは話し合いの場を持っております。一年四回というのも、なかなか回数をふやすのはむずかしいものでございますから、大事なときにはこの四回をうまく活用してやっていくということでやっておりますので、どうぞ御了承願いたいと思います。
  139. 阿部助哉

    阿部(助)委員 間もなく終わります。  誤解しちゃ困るのですが、事後の分を含めてああいうように少なくなったと言ってないんですよ。両方合わせると昨年の倍になったと、こう言っておるのですよ。これは局報だから、何も秘密文書じゃないようですから、あと長官ごらんになればいい。そういうことを言っているのであって、やはり健康管理やこういうものについても十分に配慮し、そして納得ずくであれしませんと、何といってもきつい仕事です。とにかく人のふところから金を持っていこうというのだから——いい悪いは別にして、法律があるとかないとかは別にして、人のふところから金を持っていこうというのだから、これはたいへんなきつい仕事です。そういう職員の健康管理というものには特に力を入れるべきであって、谷川さんの援護を長官としておやりになるという気分はわかるけれども、やはりこういうハッパのかけ方、この考え方にも、私はずいぶん問題があると思う。またそういう点で——時間をだいぶ催促しておりますのでやめますけれども、当局では人事異動等もずいぶんおやりになっておる。こういうときには、やはり多少事前に転勤の心の準備もあるだろうし、最近のような住宅難という問題もありますし、何も一週間や十日早く教えたからどうということは私はなかろうと思う。特に税務職員は転勤の多い職場であります。いろいろな配慮から転勤をさせるということになっておる職場であります。そういう点で、こういうことに対しては十分本人たちの意向も配慮し、そしておやりになるような御温情ある人事というものを私は立ててもらいたい、当然また立てるべきだ、こう考えるのですが、いかがですか。
  140. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 お説のとおり、この職場は非常にきびしい職場でもございますし、事務上の必要性というものも強うございます。したがいまして、人事異動には常に身上申告というもの、それらを引き合わせまして決定をいたしております。やはり一つの場所に行きたいという人はたくさんありますし、一つの場所に行きたくないという人もたくさんございます。それらを勘案して適正に処置をしていきたいと思っております。
  141. 阿部助哉

    阿部(助)委員 じゃ終わります。
  142. 毛利松平

    毛利委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  143. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
  144. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は今回初めてこの委員会において発言をするわけでありますけれども、何ぶんにもしろうとでありますから、ひとつ答弁の場合はだれにもわかるように答弁をしていただきたいと思います。これをまっ先にまずお願いしておきたいと思います。  そこで、六十一国会におきましてこの法案はかなり審議されましたけれども、しかし実際は参議院のほうで廃案になっておりますので、本来ならば今国会においては初めから審議をし直すのが当然であると思うわけでありますけれども、いろいろな都合もあると思いますので、私は初めからやるということはやりません。そこで、なるべく議事録等も全部読んでみまして整理をしてみたわけであります。しかしながら、質問側の言い分は非常に明瞭であり理路整然としておる。それにもかかわらず、答弁のほうの側を読んでみますと、まるで迷路にでも入ったような、いかにしてわからないようにすることが大事かというみたいな変な感じを起こさせるような個所がたまたま見受けられたわけであります。そこで、これから質問することも、前に議論されたところとダブるところが相当あると思いますが、私はまだ納得のいかない点がありますので、その点を質問をさせていただきたいと思うわけであります。くれぐれもお願いしたいことは、ずぶのしろうとでありますので、懇切丁寧にわかりやすく答弁をお願いしたいと思います。  そこで、まず初めに、この不服審判所の件につきまして、法できめるということも私は大事なことであるし、また意味があるし、十分審議はしなければならない。しかしながら、その審判所がなぜ必要かといえば、やはり大きなファクターとしては、不服を申し立てる人が多いということであると思うわけであります。不服を申し立てる人がいなければこれは必要のないものであります。そういうような観点から、どういうようなところからこの不服が出てくるのか、こういったことが実は私の知りたいところであります。  そこで、これから質問する順序につきましても、なるべく系統立てて聞いていく計算でおりますけれども、従来から脱線する傾向がかなりありますので、なるべく筋を自分でまとめてみたわけでありますが、場合によってはとんでもない方向にあるいはいくかもしれませんので、その点を先に了承していただきたいと思うのであります。  そこで、まずこの前いただきました資料の中で直税関係を見ますと、「異議の申立件数表」というのがありますが、この直税関係では「取消・変更」のパーセントがどの年度とも五〇%以上、こういうふうになっているわけであります。このことは各協議団あるいはその他においていろいろやった結果でありますので、問題はこの出てきた結果をどのように政治的に見るかということが私は大きな問題であると思うわけであります。したがいまして、この五〇%ということについて、年度に従って少しずつ減ってはおりますが、五〇%ということについて政務次官はどのようにお考えか説明をしていただきたいと思います。
  145. 中川一郎

    中川政府委員 五〇%といいますとかなりのパーセントになるわけであります。半分前後のものが一部もしくは全部取り消しということであります。見方によっては、これだけの不服があり、審判所に審査請求をして、いままでは協議団でありますが、これだけになったということは、一面からいえば税務署における処理が公正でなかった面もあるのではないかということもいえると思いますが、審査請求に出てきております数が、取り扱った数に比べると非常に少ない件数でございます。四十三年度について言うと、二万八千件。三百万件から扱っておる中の二万八千件でありますから、約一%、少々は違っておるかもしれませんが、一%前後のものについて出てきておる。それ以外は大体御納得をいただいた。その一%について、半分が一部もしくは全部の取り消しになったということは、ある意味では協議団がまじめに、真剣にその機能を発揮したという見方も、見方によってはできるのではないかというふうに思って、私はそういう評価をいたしておるわけであります。今後は異議の申し立てないしは不服審判所にくる件数が、事前に十分納得のいく処理をして少なくなるように努力をすると同時に、あがりましたものについては、もちろん公正、厳正に審判をいたさなければなりません。したがって、出てきたものについては多くなるくらいの気持ちで、せっかくあがってきた以上は、審判をしてもらってよかったと喜ぶ人が出る姿勢も一方では必要であります。また、事前にしっかりやることによって、せっかく出てはきたけれども事前の審査よろしきを得て、間違っておらなかったのだという納得がそこで得られるように、今後のあり方としてはそういうふうに持っていくべきだ。過去については従前申し上げたような評価をいたしておるわけであります。
  146. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま税務署の取り扱い等において公正ではなかった点もある、こういったところがあったと思いますが、具体的にはどのようなことがあったとお考えですか。
  147. 中川一郎

    中川政府委員 ちょっと質問の意味が、聞き漏らしたのですが、もう一度……。
  148. 貝沼次郎

    貝沼委員 税務署課税が妥当でないからこういった異議の申し立てが出ているということも考えられるわけでございますね。そういう場合に、大体統計的に見まして、こういった部類のもの、こういった部類のもの、こういうふうにあると思うのですね。日本の歴史は長いわけでありますから。この点はどのように政務次官はお考えですか。
  149. 中川一郎

    中川政府委員 事務的には事務当局から数字的には説明していただくことにいたしますが、事実関係について意見の違いがあった。たとえば所得と見るべきものはどれとどれであるとか、あるいは経費として見るものについての意見の違い、これが大部分ではなかったかと思っております。どれくらいのパーセントになるかは事務当局より説明してもらいます。
  150. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 実際の審査請求について見ますと、若干法律、税法解釈の適用の違いというものの度合いが高くなっておりますが、異議申し立てでは大体九五%が事実認定の相違ということになると思います。通常白色申告の場合は、帳簿等の提示がありましても不十分なものが多い。各種の資料を集めまして収入金額等を推計いたします。これは税法上帳簿の備えがない、青色申告でない場合は、所得について推計を許すという規定がございますので推計をいたしますが、推計であるために、そこに若干の食い違い、誤り等がある場合が多く出てまいります。そういう事実認定の食い違いが一番多いように思います。
  151. 貝沼次郎

    貝沼委員 事実関係について食い違いがある。そこでこの異議の申し立ての内容になるわけでありますが、きょういただいたこの資料から見ましても、これは堀先生の要求なさった資料でございますが、大体五百万円以下、ここのところが非常に多いと思うわけであります。これはいわばかなり小さな事業、こういったところが対象になるわけですが、こういったところから考えて、金額で百万までしかありませんけれども、百万以下としても、それ以下のものは金額が小さいためにもう黙っておこう、こういったものもかなりあると思うわけであります。そこで、少ないと思っていても申し立てをしない、こういう納税者は大体どれくらいあると推定されますか。
  152. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先般から申し上げておりますが、主として小さい納税者と申しますのは所得税納税者が多いと思います。法人も小さい法人がございますけれども、大体所得税のうちで中以上のものが法人成りをいたしておりますから、小さいのは所得税であると思いますが、所得税については、先ほど来申し上げておりますように、原則として申告指導ということで申告で片づいている一面が多いわけでございます。更正決定件数も実際上七、八万件ということでございます。したがいまして、その中で不服ながら黙っているというようなケースが幾らあるかという点は、確かに明確ではございませんが、全体の納税者三百数十万から見た場合に、そういう意味で泣き寝入りをしている納税者というものの数は、実際は非常に少ないということは言えると思う。ただ、更正決定を受けた中で、異議申し立てもせずに泣き寝入りをしたのは幾らかということになりますと、ちょっと私どもも推計がつけかねるのでございますけれども、実際問題といたしましては、更正の際にかなり修正申告その他の懲悪もやっており、その段階で納税者自身が内容を知っておるというような問題もございますので、私はそう多くの数が泣き寝入りでいるとは考えられないと申し上げていいかと思います。
  153. 貝沼次郎

    貝沼委員 おそらくその数字は、これは個人が黙っていることでありますからつかめないのは私は当然だと思うのであります。しかしながら、この権利救済という面を考えますと、権利救済という立場からこういう不服審判所等もできたわけでありますから、ある程度、やはり少ないんじゃないかということではなくて、何らかの方法を講じてそれをとらえていく、こういった努力なりあるいはいろいろな方法等が私はなければならないと思うわけであります。もしそれがはっきりしないとなれば、これはいたし方ございませんけれども、今後そういったものについて実態というものをつかまえていく態度、あるいはそういう考え方、そういったものがおありかどうか、これを承りたいと思います。
  154. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そういう観点から、御承知のように十一月には「納税者の声を聞く旬間」というものを設けまして、率直に納税者の声が反映するような努力をいたしておりますのと、従来からもございましたが、いわゆる苦情処理という制度を設けております。異議申し立てをどうこうしなかったけれども、どう考えても自分は正しいんだという方が来られた場合には、正規の異議申し立ての手続ではないけれども、それを受け付けて実態を明らかにするという苦情処理機関のようなものも設けております。今度の審判所ができたときには各国税局に相談室を設けますが、この納税者との相談室は、そういうものがかなりあらわれてくる場になるんじゃないかと期待しているわけでございます。そういうところを通じてできるだけ実態を明らかにしていきたい、かように考えております。
  155. 貝沼次郎

    貝沼委員 その点は特に力を入れて私はやっていただきたいと思います。私も、現在この年になって、税務署にほんとに気分よく行ったことは一度もない。小さいときに非常にいやな思いをしたことがございますので、そういったこともあると思うのです。そのときの態度でも、もう土足で入ってきたことがあるんです。これは私の家であったことです。しかし、これはもう終戦直後のことでありますから、そんなことは一々ここでどうこう言うわけでもありませんけれども、非常にたくさんの方々が、親しい税務署であるというふうな感じはないんじゃないか、そういうふうに思うので、その相談所並びにそういう機関をつくっても、はたして行くかどうか、それは非常に疑問であります。そこで、もっと行きやすい、それ以前のそういう問題もさらに検討していただきたいと思います。  さらにもう一つは、五〇%以上ということは、先ほど話がありましたように、これは協議団がかなり成功している、こういった数字をあらわしていると思いますが、これは私も同感であります。しかしながら、これを国税不服審判所にした場合、さらに、効率があがる見通しはどの程度あるのか。そしてまた、それはどのような理由によってこれからの見通し、たとえば何年後において現在の五〇%というものが何%ぐらいまではいくんだ、こういう見通しがあるかどうか、お聞きしたいと思います。
  156. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 審判所ができてからの件数の問題でございますけれども、これには二つの面があると思います。審判所というものが従来と違って別系統の存在であるということから、税務所においても、異議申し立ての処理についてかなり慎重を期すだろうということが考えられます。そういう意味では、審査請求にあがってくるものはよくよく意見の合わないものということになってくると思いますので、その面ではむしろ減ってくる面があるかと思います。それと、今度は逆に、審判所の裁決が非常に公正であるという評価があがれば、いまおっしゃっておりました潜在的な不服者が相当に表にあらわれてくる可能性がある、そういう意味では、これはふえる要素がある。いずれにいたしましても、出てまいりますものは、かなり自分の納税に確信のある人に集約されてくる可能性があると思います。それだけに、むしろ私は、審判所の裁決は、いままでよりも全部取り消し、一部取り消しの度合いが高くなる傾向は考えられると思います。
  157. 貝沼次郎

    貝沼委員 いままでよりもというお答えでありますが、いままでよりもというのは、非常にこれは幅が広いわけであります。もう、一つよくなってもいままでよりいいし、大半がよくなってもいままでよりいいわけであります。その辺の見通しをもうちょっとはっきりお知らせ願いたいと思います。
  158. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 確かに程度の差がだいぶ大きゅうございます、五〇%から一〇〇%までございますから。ただ私も、これは確信をもって何%くらいは減少するということは、ちょっといまの段階では申し上げかねるのでございますが、さっき、いままでよりはと申した意味は、プラスになる根拠のほうが非常に多いために、少なくともいままでよりょくなるという方向は明らかであるという意味で申し上げたのです。何%になるかは、ちょっと実際に動いてみないと見通しがつけられないような感じがいたします。
  159. 貝沼次郎

    貝沼委員 確信をもって言えないとなれば、これは実はつくるということ自体が問題になるわけであります。しかし、言えないものを言えと言っても、これもいたし方ないことなので、それならば、今後ある期間をおいて、たとえば年度ごととか、そういうふうにして、このような実績でございます、こういったものを出すお考えはあるのかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  160. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは毎年実績を報告するということを続けてまいりたいと思います。
  161. 貝沼次郎

    貝沼委員 実績を報告するということでございますけれども、その報告内容ですね。たとえば、私はこの委員会に初めて出たので、、日本国会で議論することでありますから、あらゆる資料がそろってそれで論議するのかと思って実は期待しておりました。しかしながら、出てくる資料は、実にこれがちぐはぐな、ほんとうに知りたいことが出てない、こういった資料だと思うのです。たとえば不服の申し立て自体にしても、あるいはその結果にしても、どういった所得のものがどれくらい、そしてまた少ないものがどれくらいとか、こういったことはもうまっ先に知りたいことである。ところが、それも資料請求した上でようやく出てくるとか、こういったことでございます。そこで、この報告をする様式、こういったことはどこで決定するのか、これをお聞きしたいと思います。
  162. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 各官庁は、それぞれその事務の整理をつけ、反省の機会を得るために統計を徴しておるわけでございます。御報告をいたします基礎になるのはこの統計報告しかないわけでございます。そのつどそのつど必要に応じてとるということも考えられますけれども税務署のような全国組織になりますと、それだけの事務を追加することは、末端に非常に大きく影響いたしますので、あらかじめできるだけ加工すれば幾つかの資料ができるような統計を選んでとっておるわけでございますが、最近内部事務その他の膨大化に伴いまして統計事務もだいぶ削減いたしております。そのために、先般も御指摘がありましたように、かなり重要な統計が足りないじゃないかというお話もございます。私ども、できるだけ一つの統計で幾つかに使えるような、とるときにはできるだけ意味のある統計をとるようにつとめておりますが、そういう意味で、御要求があれば、その既存の統計を分析することによって報告書を作成するということがいままでの通例でございます。そのために、あらかじめ必要な資料が出ないというお話もございますが、これはその統計の原資料というものをいかに組み合わせてつくるかという問題で、目的に応じて報告をいたすということにいたしておりますので、統計の及ぶ限りできるだけ私どもは的確な資料をつくりたい、かように考えております。
  163. 貝沼次郎

    貝沼委員 私がいま言ったのは、基礎的な統計をとること、それを特にふやせということではないのです。そうではなくて、この法案を審議する上においては、賢明なる大蔵の方々が考えれば、こういうものが必要だということがすぐわかるわけです。したがって、ただ法案を通すという考え方からだけ資料を出すのではなく、十分に審議をしてもらうという立場から、あるいはむしろ自分が野党だったらどういうものが必要なのかということまで考えるならば、私は資料をそろえることは決して至難なことではないと思うのであります。いま、一生懸命やるということでございますので、私は実はこの問題で時間をとろうとは思ってないのです。つい横にそれてしまったわけでありますが、特にそういう点を留意してひとつ今後お願いしたい、こう申し上げておきたいわけであります。  それから次に、こういう不服が出てくるということは、税金が課せられていることについて不公平、重税あるいは税法をよく知らないとか、いろいろあると思うわけでありますが、納税者の声というものはおそらく調べてあると思うわけであります。先日新聞でちょっと拝見したことがあるわけですが、その結果はどのようであったか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  164. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先般新聞等で記事が出ておりましたのは、納税者の声を聞く旬間にあたりまして、各税務署でアンケートを出しまして、そのアンケートを受けた結果を集計したものを発表したわけでございます。実施いたしました署数が三百八十五でございますが、回答者数が合計で四万七千人、そのうち事業者が二万九千人、サラリーマンが一万三千人、その他四千人というような回答でございます。  これに対して「課税は公平に行なわれていると思いますか。」 「税務職員の態度はよいでしょうか。」「税務署からの文書はわかりやすいでしょうか。」「納税者の声を聞く旬間をご存知ですか。」「税の相談日をご存知ですか。」といった項目を取り上げたわけでございますが、課税は公平に行なわれているとは思いませんというのが四三%、そう思うというのが二八%、わからないのが二八%。「税務職員の態度はよいでしょうか」というのは、イエスというのが五二%、ノーというのが一七%、不明が三〇%。「税務署からの文書はわかりやすいでしょうか」と申しますのが、はいというのが四八%。いいえ、わかりにくいというのが二七%、どうもどっちともわからぬというのが二四%。納税者の声を聞く旬間というのはあれだけ盛んにやっておりますが、知っているかといって、知っているというのが五三%、約半分でございます。それから税の相談日というのは、毎月五の日に相談をしておりますが、これを知っているというのが六八%、これはかなり知っているようでございます。
  165. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま示された統計からも、公平に行なわれていない、こういうのが実は四三%という答えがありましたけれども、この私のいただいた資料によりますと、サラリーマンは六一%、これを訴えているわけであります。こういうアンケートでありますが、わが党といたしましては、去年税制の総点検をやりまして、こういった納税者の声というものを一生懸命調べたわけであります。そのところから結果を述べ、そしてこれから一つ一つ当局の考え方を聞きたいと思いますが、その前に、このアンケートにあらわれている公平でない、これが平均で四三%、それから、税務署からの文書でわかりにくいというものですね、これはいま二七%とありましたが、そのうしろに「わからない」という項目がありまして、二四%あるわけであります。わからないというのは、わかればこういう答えがあるわけがないので、したがってわかりにくいという部類に入るわけであります。これは五一%になるわけであります。こういうような点から考えて、現在の税法自体に私は大きな問題があるのではないかと思います。この点、政務次官はどのようにお考えか、お答え願いたいと思います。
  166. 中川一郎

    中川政府委員 最初の、「課税は公平に行なわれていると思いますか」というのに対して、思わないというのが、先ほどお話がありましたように四三%あるわけです。そのうちの大きなものがサラリーマンの方々でありまして、六一%が公平ではないといっておるわけであります。ということは、御承知のように、サラリーマンにつきましては源泉徴収をやっておりますから、がっちり取られておる。法人税あるいは事業その他の方々、農業等がクロヨンとかトーゴサンとかいわれる不満がここに出ておるのではないかというふうに評価をいたします。そうしますと、事業者あるいはその他の人たちは三五%ないし四二%と、三分の一前後の人が、公平ではない、この人たちの公平でない中身も、クロヨンあるいはトーゴサンをさしておるものもかなり含んでおるのではないかということからいくと、一人一人の課税に対する不満というものは三五%の下ということに解釈できるのじゃないかというところからいけば、三分の一程度が公平でないという見方をしているわけであります。逆に言いますと、わからない者もどうだと言われますが、わからない人については、おそらくわからないから不公平だとも結論はしておらないわけでありまして、これらを折半いたしましても、過半数の者については——事業者とその他になりますが、約半数の者についてはまあまあいいではないかという評価もあるのではないか。しかしながら、これは一〇〇%けっこうですというところまで持っていかなければならぬことはこれからの努力の目標でありまして、当然とは思いますか、現在の評価としてはかなり御理解をいただいている人もあるのではないかというふうに考えるわけであります。  それから、「税務署からの文書はわかりやすいでしょうか」ということに対する答えでありますが、四八%がわかりやすい、わかります、こういうわけであります。わかりにくいとはっきりいっているのが二七%。「わからない」というのは、そういう方面についての知識がない、わからない、いいか悪いかもわからないという解釈が正しいのではないか。折半をいたすのはどうかわかりませんが、かなりの者がこれにまた含まれているといたしますと、四八%に相当のものが上積みになるであろうことを想像いたしますと、あれだけむずかしい税制について半分以上の者がわかるという傾向が出ておることも評価されるべきではないか。しかしながら、これまた同様に今後全員の者がわかるようにひとつ努力をいたしていかなければならない貴重な数字を示しておるもの、このように解釈いたしております。
  167. 貝沼次郎

    貝沼委員 半分以上の人がわかっているという話があったが、四八%しかわかっていないのですよ。日本の人口の四八%は何人になりますか。たいへんなことですよ。半分以上の人は文書の内容がわからなくて納税しているのです。しかもこのアンケートのとり方は、これを私は読んでみまして、これは税務署がやっているわけですね。そうやたらに知らないところばかり歩いたわけではないのですよ。税務署関係のあるところ——あるいは街頭もあると書いてありますが、それはそんなによけい返答が返ってくるはずがない。おもに税務署に来た人とか、そういう人が多いと思う。これは推測です。そういうような関係の人はかなり税制には知識を持っているといってもいいのであります。ウエートのかけ方は、これはすべて平等ではございません。したがって、このアンケートをとること自体についても、私はどれだけ検討したかということは疑問です。たとえばアトランダムにとったといってみても、これは統計上問題です。あるいは階層に応じてとったのか、どの曲線に乗っけて、その標準偏差をどういうふうにしてやったのかということを考えると、これは必ずしも正確ではない。しかしながら、アンケートであるから一応これを理解したといたしましても、先ほどの「わからない」というのは、書いてあること自体もわからない、これが税務署書類か何かもわからないというのも入っているわけであります。その人が文書のわかる道理がありません。したがって、これはすべてわからないということなんです。その点を了解しておいてもらいたいと思うのです。私は何もこれに時間をとろうとは思わない。なぜこういうことを持ち出しているかというと、不服審判所で議論されるのはけっこうだけれども、その前にやはりこういう大きな問題がある。  そこで、私たちが調べた結果によりますと、たとえば「税金が高い低いは別にして、あなたは納税についてどう思いますか。」こういう問いに対しまして「国のためだから進んで納税する」、あるいは「不公平や不正使用がなければ納税する」といったもの。あるいは「国民の義務だから仕方がない」「できれば納めないほうがよい」、こういうような不平の意見というものが四〇・八%あるのです。これは私たちが調べた。したがって、これは不公平感を訴えていると思うわけでありますけれども、しかもその中でも、義務だからしかたがないというのが非常に多いのです。こういうところから、重税感について、はたして当局はどれくらい理解をしているのか、ほんとうにこれを解消しようという気持ちがあるのか、あるならば、その具体的方法、それを簡単明瞭にひとつお願いしたいと思うのです。時間があまりありませんので、よろしくお願いします。
  168. 細見卓

    ○細見政府委員 税が公平でなければならないのは、ここで大臣が所信表明でも申し上げましたように、第一義でございます。やはり公平でありましても、払うものでありますから税は重く感ぜられる、これまた人情でありますので、私どもは一方で国の施策を行なうための財源は調達しなければならないという観点に立ちながらも、なるべく国民の重税感がなくなるような税制を考えていくのがわれわれの使命である、かように考えております。
  169. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうに努力していることは、私もよくわかります。わかるけれども、現実はこのように重税感の人が多いということなんです。  そこで、さらにそのような方々に対して、じゃ、そういう反対ならば、税法は重要なものだ、あなたは税法に対してどういう気持ちでいるのか、こう聞いてみますと、「税法は重要なものだし生活に関係あると思う」というのが八八・九%、したがって、非常に重税感を持っている人でも、税法というのは大事だ、税金は大事なことなんだということはわかっている。わかっているけれども、そういう重税感があるということなんです。これは重大な問題だと思うわけであります。この点特にひとつそういうことのないように、今後注意していただきたいと思うのであります。  重税感のほうはそれくらいにいたしまして、さらに四十二年度でありますが、「一年間で、所得税について税務署調査がありましたか。」、こういう調査をしたわけであります。その結果「調査がなかった」というのは四六・五%、「こちらがわから税務署へ出頭した」というのが二八%、「係官がきた」というのが二〇・七%、「わからない」というのが四・八%で、大体四八・七%、約半数の人は調査を受けているわけであります。納税者申告をしてそれを認めた場合、納税者通知もされてないということもありますけれども、この調査されたのが四八・七%もあったということについてどう思うか、ひとつお答え願いたいと思います。
  170. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私もその調査を拝見してやや疑問に思いましたのは、かなり調査が多く行なわれているという感触であります。もっとも、二〇%も税務署に行ったというのは、いま皆さんがおいでになっております申告相談の問題だろうと思いますから、それを除きましても、二〇%というのは相当高い率だと思います。ただ税務署調査をいたしまして更正をする件数は、先ほど申し上げたように八万とかいう数字でございますから、そういう意味では大体営業者だけをとってみましても五、六%を下ると思います。したがって、二〇%も調査を受けて、それが申告に反映をしたという方がやはり相当あるんだなという感じを受けたわけでありますが、税務署がいまやっておりますのは、この間申し上げました、営業者については事前調査で業種別に三分の一くらいずつ回っていくということで接触をいたしております。私は、調査といわずとも、納税者との間に税務署員の接触があり、その中から税に対する認識が生まれてくるということは、非常に大事なことだと思うので、四〇%接触があるということは、非常にけっこうだと思うのです。そうすれば、大体二年で全部回れる——実は少しその数字は過大じゃないかと思うのでございますが、むしろそのほうが理想に近いので、実際はもう少し少ないのではないか。母集団の関係税務署関係のあった人がわりあいに多く入っていたのか、その辺は私もちょっとわかりませんが、この接触が高いということは、調査という意味ではなくて、納税者と接触する度合いというものが高いということは、非常にけっこうなことだと思います。
  171. 貝沼次郎

    貝沼委員 納税者と徴収する側が接触が高いということはけっこうだと思う——それは一面そうです。しかしながら、これからずっと資料を出していきますけれども、われわれの申告あまり信用していない、こういった面も実は見られるので、こういう数字をいま出しているわけでございます。  そこで、その調査を受けた人の中に「調査の結果はどうでしたか。」と、こういうふうに調査したところ、「申告通り認められた」というのが六一・二%あるのです。「認められなかった」というのが三八・一%。そうすると、この調査は一体どういう意味なのかですね。ちょっとこの六一・二%まで認められているということについて、答弁を願いたいと思います。
  172. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど申し上げましたように、調査と言われる中に、税務署に出頭してこられた方の数字がおそらく入っているかと思いますが、そういう方は申告指導の段階で申告に応じられ、それが認められたという可能性が相当高いと思います。それから税務署調査も、事後調査等になりますと、先ほど御説明いたしましたように、申告とこちらの事前調査の結果が非常に開差がある、そういう方を調べておりますので、これは調査による申告の修正の度合いが非常に高いと思いますが、事前調査のほうは、その調査の結果申告指導を行ない、その結果見解が一致するということが相当あると思います。そういう意味では、全体の調査の幅が、あらゆる調査、さらに申告指導まで含まれておると考えますと、三分の一というのはやや高いかなという感じがいたします。もっと申告との差が少なくてしかるべきではないかという感じがいたします。
  173. 貝沼次郎

    貝沼委員 私はこうして調査実態を出して議論しておるわけでありますが、当局としてはこういった資料がございますか。
  174. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 こちらでは、その接触した結果としてどうあらわれてきているかという調査はいたしております。それによりますと、修正申告を期限後に出していただいた、そしてそれを認めたという件数が、十三万一千件ございます。これは営・庶業者だけでございます。更正決定をしたものが約二万件ございます。したがって、十五万件ばかりが最初の申告と違う結果になったということになるかと思います。そのうち、更正で変わったものは二万件くらいしかない。あとは修正申告で変わっておる。しかも、この営・庶業者は全体で二百万をこえておりますから、両方合わせました十五万件というのは、七%前後ということになるかと思います。そういう意味——もっとも接触度合いがその半分といたしますれば一五%前後になりますから、ややそちらでお示しの資料に近づいてくるという感じはいたします。
  175. 貝沼次郎

    貝沼委員 これを議論しておりますと長くなってしまいますので大体この程度にいたしますけれども、さらに、「認められなかったかたは、異議申請を出しましたか。」、こういうふうに調べたところ、「出した」というのが三一・一%、「出さない」というのが六八%、「わからない」というのが〇・九%でありました。異議申請を出さないのは、否認の内容に納得して出さなかったのか、初めからそのような制度があるということを知らないで出さなかったのかはっきりしないが、少なくとも異議の申請を出したとする三一・一%の人は、調査の内容に納得できないものがあったに違いないと思っております。このように出さない人が六八%もあるという実態をどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
  176. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 三〇%という数字は、当方から見ますと、若干高いと思います。ただ、営庶業所得についての不服申し立ての割合は、当方では約二一%くらいになっておりますから、ちょっと数字が違いますが、法人に比べて個人の申告の不服申し立て率はかなり高くなっております。法人の場合は三、四%であります。これはやはり先ほど申し上げましたように、申告で相当片づくということと、それから修正申告を慫慂するという形で、そこである程度話がつく。その残りについて更正決定が行なわれますので、その関係ではかなり意見の合わないものがしぼられてきているということを意味しているのではないかと思います。
  177. 貝沼次郎

    貝沼委員 異議の申請を出した人がもっと少ないだろう、こういうことでありますが、そうすれば出さない人がもっとふえるわけであります。これはなお問題であると私は思うわけであります。今後こういうようなことが少なくなるように、今度の不服審判所にしても、もっと民主的なものにならなければならないと思うわけであります。  さらに、この調査のときに係官の態度はどうであったかという調査におきましては、「大変よかった」というのが五・九%、「まあまあよかった」というのが四四・四%、「余りよくなかった」というのが三一・四%、「よくなかった」というのが一七・八%で、四九・二%の人がよくないという結果が出ているわけであります。愛される税務署とか親しまれる税務署、こういったことをよくいわれるわけでありますけれども、こういう結果を見ますと、必ずしもそうなっていない。そこで主税局長に、これについてどういうお考えか、お聞きしたいと思います。
  178. 細見卓

    ○細見政府委員 私を御指名になったのは、横からながめているからどう思うかという意味でだろうと思います。それはやはり皆さんに税法をわかっていただき、正しい申告ができるように税務職員がお手伝いできるというような相互信頼の関係ができるのが、一番望ましいと思っております。
  179. 貝沼次郎

    貝沼委員 望ましいのは、私も望ましいと思います。しかし、税制はいまに始まったわけではないのです。日本の税制の歴史は何年ありますか。その中で、おそらく毎年同じようなことを繰り返してきたと私は思うのです。それで、このような結果が出るということについて、一体責任はどこにあると思いますか、それをお聞きしたいと思います。
  180. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 調査の際に五〇%が態度がよくないと言われたのには、私はショックを受けるわけであります。税務署調査というのは、本来は全体の納税者の方の申告水準がそれによって上がっていき、正しい申告に近づいていくということを目途として行なわれるべきものでございまして、また、その調査を受けた人自身についても、そこで脱税額を摘発することだけが目的ではないのであって、それを通じて翌年以降の申告がよくなるということでなければならないと思うのです。そういう意味から申しますと、そのようにマイナスに受け取られている調査は、非常に残念であります。今後も、調査を受けて自分の間違いが直ればけっこうだというところまでできるだけ持っていくのが理想だと思いますが、まだ半分はそこまでいっていないということは、大いに努力の余地があるというように考えるわけであります。
  181. 貝沼次郎

    貝沼委員 大いに努力するということでありますから、今後どれだけ努力するか、私は今後を見ていきたいと思います。  さらに、その係官の態度がよくなかった方は、どのようによくなかったと思いますかという点について調べたところ、「威張っている」というのが七・六%、「不親切である」というのが四二・五%、「言い分を理解しようとしない」というのが三二・五%、「エチケットをわきまえない」というのが四%、「いんぎん無礼である」というのが二・九%、「何とも云えない」というのが一〇・五%あったわけであります。したがって、ここで目につくのは、不親切、言い分を理解しないというのが七五%あるわけですね。こういったことは官僚主義の発露ではないかと私は思うわけでありますが、泣く子も黙る税務署とか、こういったことの言われないような税務署にすることは、将来大きな問題であると思います。そこで、さらに税務がうまくいくということは日本の財政に大きな影響を与えるわけでありますから、こういう根本的な問題について政務次官はどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
  182. 中川一郎

    中川政府委員 税務はなかなかむずかしい問題であり、また大切な問題であろうと思います。特に私ども政務次官を離れて考えますと、税務署の前を通って必ずしも気持ちのよいものでないことは、貝沼委員指摘のとおりであります。これはだれしも考えておるのではないかと思いますが、立場を変えて税務署に入ってみますと、というか、一人一人に会ってみますと、それほど悪いものではないという一面も実はあるわけでありまして、若干食わずぎらいの点が国民の間にある点も理解していただきたいと存じます。いずれにいたしましても、やはりこれから愛される自民党と同様に……(「愛される自民党とは何か」と呼び、その他発言する者あり)失礼いたしました。愛される税務署になるように、ひとつ最善を尽くしてまいらなければならない。この点は、これからの税務行政の大事なポイントだと存じますので、これに対して善処をして、貝沼委員並びに国民の皆さんの期待にこたえてまいりたい、このように思っております。
  183. 貝沼次郎

    貝沼委員 愛される自民党なんてびっくりしたわけでありますが、これは取り消しますか。
  184. 中川一郎

    中川政府委員 愛される自民党というつもりで申し上げたのではありませんで、愛される税務署という気持ちで申し上げたことを訂正いたしておきます。
  185. 貝沼次郎

    貝沼委員 いままでこうして数字を並べてお尋ねしたのは、税務署の職員が悪いということばかり私は考えているわけではないわけです。やはりその制度にのればどうしてもそういうふうなことをしなければならないという場合もあると思います。したがって、これはただ人間そのものをいいとか悪いとか、注意しておけばいいとか、今後そういうことのないようにいたしますとか、そういったことだけでは絶対解決できない。これは、税法自体に実は大きな根底があると思うんです。こういったところから、今後そういう根底的な問題について抜本的に税法について改革をする、そういう態度なり、あるいは考えなり、こういったものが、政府として、政務次官として今後それをやるかどうか。これでは、実際に携わっている人たちあまりにもかわいそうだと私は思うのです。それについてお考えをお聞きしたいと思います。
  186. 中川一郎

    中川政府委員 この点につきましては、先般、大蔵大臣も当委員会において、今後の税制のあり方については鋭意検討して日進月歩、社会の情勢に合わしたいいものにしなければならぬということは申し上げたとおりであります。私としても、やはりわかりやすい、簡便な、しかも公平な税制というものについては、国民の皆さんの協力をいただいてがっちりやるべきだというふうに思っております。また、物品税に重点を置いていったらどうかという議論も、その一つではないか。それらを含めてやはり前向きで検討していくべきものであろう、このように思っております。
  187. 貝沼次郎

    貝沼委員 前向きで検討するというのは実にけっこうでありますが、しかし、大蔵大臣のあの財政演説も、非常に美辞麗句が多くて、具体的に何をつかもうというものがないわけです。実際わからない。飛行機に乗って空に上がってきますと、下から見ると雲が見えるけれども、一体どんなものがあるかわからないみたいな感じを受けるわけです。したがいまして、もっと具体性のある——先ほど申し上げましたように、日本の税制の歴史も決して浅くはないわけでありますから、私はもっともっと改良されてしかるべきであったと思うわけであります。逆に言うならば、いままでこのように改良されていないということは、怠慢ではなかったかと思うことすらあるわけであります。がっちりやるということでありますから、それはぜひお願いいたします。  もう一つ、これに関連したことで、二月の二十日付の新聞で、脱税番付が出たわけでありますが、これなどは非常に日本の恥ですね。脱税番付、しかもごまかし率のベストテンですか、こういったものが出ておるわけであります。私も、こういったものを見て実にびっくりしたわけであります。一番少ないというそば屋さんでも、ごまかしが八十二万円、これでもいま優秀な成績だそうであります。ところが、労働省で発表した四十四年度サラリーマンの給与調査によると、全サラリーマンの平均年収は七十七万二千円、「サラリーマンの年収は、ソバ屋さんの〃隠し所得”にも及ばない……。」と書いてあります。こういうようなことは非常に不祥事件でありますので、これをどのような態度でどういうふうにするのか、これを一度私はお聞きしたいと思うわけであります。去年もこういったことがあった。毎年こんなことを繰り返していていいのかどうか。サラリーマンから見ると、ちょっとこれは感情的におもしろくないということもあると思うんですね。だからといって倒産していいということもないし、こういったところをどういうふうにお考えなのか、当局の考えをお聞きしたいと思います。
  188. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘のございましたのは、毎年一つの広報としてその年間の税務署の活動状況を調べて出しておるものでございます。こういうような脱税番付というようなことで発表しておるわけではございませんが、それが非常に加工されて、おもしろおかしく伝えられておるという点は、発表についてもう少し配慮すべきだと私は思います。なお、ただいまの例は、特別調査と申しまして、特に脱税所得の多いと見られる事後調査の実績でございます。人数もそれほど多くはございません。したがいまして、特に脱税額の高い人を調べた結果が、いまのような数字で出てきておるわけでございます。毎年これが繰り返されるということはもちろん好ましいことではございませんが、私どもといたしましては、さような調査をしないでも申告は十分であるというような納税者立場というものが確立されるということを、まず国会としてもお考え願いたいと思うのです。税務署がそれを調べているだけでございます。申告が足りないのは、納税者の側にある。大部分の納税者の方は正しいにかかわらず、こういう方がおられて、これを発表しますと、これが全部ではないかというふうに新聞では扱います。その結果クロヨンとかトーゴサンというようなことがいわれますと、これはやはり一つのムードであると思うのでありまして、大部分の納税者の方は正しい申告をしておられると思うのでございます。しかし、不十分な申告はやはりこれを是正しなければ、正しい申告をされ、また源泉徴収された納税義務者の方には申しわけない。そういう意味で、税務署は非常に困難な現状を追いながら調査しておるわけでございますが、ただこの発表がこういうふうに扱われまして、非常に誤解を受けるような形式になったことについては、私どもまだまだ発表技術が不十分であったということを反省いたすわけでございます。
  189. 貝沼次郎

    貝沼委員 いまのお話ですと、納税者のほうに——脱税ですから、それもあるとは思うのです。しかしながら、私はきょうはこの議論はしたくないわけでありますけれども、もしも現在の税制にほんとうに忠実にやったら、中小企業は生活できるとあなたは思いますか。できないとは言い切れないと思いますけれども、私は、この議論は、今度の暫定法がありますので、そちらのほうでむしろやりたいと思います。だから、自分の生活、一日どれくらいの食費がかかって——三十九年ですか、大蔵省のいわゆる大蔵メニューというものが出ておりましたけれども、ああいったものを参考にしたって、とても現在の税法で生活することは困難なくらいにむずかしいですよ。そこで私は、納税者の側にも確かにある、あなたのおっしゃるとおりです。しかしながら、税法自体に問題があると私は言いたいのです。これはきょうは議論いたしません。そこでいま長官がおっしゃったように、さらに努力を重ねていただきたいと思います。これは要望にとどめます。  さらに、時間がもう過ぎてしまったのですが、一つだけお願いしたいのです。  国税不服審判所の人事について、これをお願いいたします。民間から採用するということは、何回も議論されておるわけでありますが、協議団ができた当初も、おそらくそういったことがあったと思うわけであります。そこで、協議団ができた当初、どのような方法で、あるいはどういう機構でこの採用が行なわれたのか、これをお聞きしたいと思います。  吉國(二)政府委員 協議団ができました当時、終戦後非常に少ない定員でございました税務職員の定員が急速に増大をしてまいりました。ちょうど国税庁ができ上がりまして、定員がほぼ現在の姿になってきたのが、当時の定員改正でございます。そういう意味では、実人員が非常に少ないために、急激に職員を採用いたしまして、このときには、そういう意味ではまだ人事院の試験制度というものが確立いたしておりませんでしたので、税務署部内で特別な試験を行ないまして、協議団の要員の確保のための試験、あるいは徴収官の確保のための試験、いわば現員を充足するための試験を、そういう新しい組織に合わして行なったわけでございます。そのために、大体試験によって必要な職員を充足することができたわけでありますが、その後、御承知のように、定員がほほ充足をされますと、それにちょうど時期を一にして人事院の試験制度も整ってまいりました。現在の採用は、もっぱら高校卒業生を普通公務員試験で採用いたしまして、一年間税務大学校で教育をするという形で採用を続けてきております。したがいまして、現在のところでは、試験採用というものは、初任者の採用だけになっております。人事院の採用試験も、試験制度によるものは上級公務員、中級公務員、初級公務員の試験だけになりまして、あとは選考採用ということになっているわけでございます。当時と事情が若干異なりますが、当時は試験採用でございました。
  190. 貝沼次郎

    貝沼委員 当初においては民間から入れたわけですか、それをお聞きします。
  191. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 当時は民間から、民間にすでに就職していた者を含んで、大学卒業生を相当数その試験で採用いたしております。
  192. 貝沼次郎

    貝沼委員 民間人の新規採用と、それから税務職員からの分と、どれくらいのパーセンテージでありましたか。それをお聞かせ願いたい。
  193. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 はっきりした数字を現在記憶しておりませんが、最初七割くらいではなかったかと思います。
  194. 貝沼次郎

    貝沼委員 私がつらつら聞いたところによりますと、大体五〇%と聞いておるわけであります。七割まで民間から採用したという答弁でありますが、それはそれでけっこうだと思います。  そこで、それは新規採用でありますが、その後退職もあったでしょうし、また入った人もいたでしょう。その後何回くらい試験をやり、民間人はどれくらい入ったのか、それをお聞きしたいと思います。
  195. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど申し上げましたように、定員が充足をいたしましたので、その後この種の試験はやっておりません。人事院の採用試験だけになったわけでございます。
  196. 貝沼次郎

    貝沼委員 人事院の採用試験というのは、全部民間ということですか。
  197. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 新卒業生の試験でございます。初任試験でございます。  なお申し上げておきますが、当時は実はこういう試験制度で相当数の人が採れたわけでございます。外地から帰国した人その他で相当多数の人が、このような試験で、また当時の給与でも十分採れた。事情が今日は非常に違っておるということを私聞いております。
  198. 貝沼次郎

    貝沼委員 確かに昭和二十五年といえば戦後のどさくさでありますから、事情が違う。その違うのも、現在よりはむしろ違い方がまた違うのです。現在のほうは、民間から採れといったら、ほんとうに民間になるのです。ところが、当時は満州から来ているとか、あるいは朝鮮から来ているとかいうふうに、かつて税務に関係した人たち、あるいは当時帝国日本の場合の特に国に直接関係していたような方々が入っているのじゃないかと私は疑いたくなるわけです。この点はいかがでしたでしょうか。
  199. 細見卓

    ○細見政府委員 私、当時試験などに関係いたしておりましたので、記憶で申し上げますと、確かにおっしゃるように、満州なり、あるいは朝鮮なり、台湾なりにおいてそういう役人の経歴を持たれた方もございましたが、しかし、協議官あるいは調査官あるいは徴収官として採用された方は、むしろ当時日本の企業がいろいろと集散したりしておりましたので、職場をかわられるために新たに税務に職場を求められたという方のほうが、ウエートとしてはかなり多かったかと記憶しております。
  200. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいま答弁がありましたように、私も実はそうではないかと思っておったわけであります。ただ、当時民間から、あるいは携わっていない人といっても、ずいぶん意味が違う。したがって、こういうことをなぜ言うかといいますと、今後の試験において、不服審判所の採用においてこういううしろ暗いようなことが——うしろ暗いとはことばが悪いわけでありますけれども、だれが見ても確かにこれは公平な民間人である、こういうような立場から試験されることを望むために、これを申し上げるわけであります。  そこで、だいぶ時間も超過してしまいましたので、お聞きいたしますけれども、ただ民間から入れるということははっきりしております。ところが、民間から入って実際の税務ということは、非常にむずかしいわけです。知識があるから、理論がわかるからといってできるものではありません。これは私どもしろうとから考えてもそうです。したがって、どのような仕事分野に何人くらいの民間の人たちを採用するのか、こういういわば実行計画的なものがおありかどうか。あったならば示していただきたいと思います。
  201. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは毎々申し上げておりますけれども、この制度が発足してから漸次充足をしていくべきものかと思います。ただこの最初の発足のときも、できれば民間の方を入れるという態勢で進みたいと思いますが、いかんせん、法律が成立いたしますと直ちに発足ということになります。その間審査事務をほっておくわけにいきません。一応は大部分は税務職員で充足することになると思いますが、今後はその中で審判官に相当する人をできるだけ民間人に置きかえていくということを考えていくべきだと思っております。審判官は、いわば実際の調査というものは主として副審判官にゆだねましても、最後の判断をする一番重要なポイントでございます。そういう人をできるだけ民間人から採用するということを考えていくべきであろう。もちろん税務のこまかいことを御存じないという点がございますけれども、大体大学の専門の教授、司法官、弁護士、税理士あるいは公認会計士の中で税についての知識、経験の深い方を選ぶと、審判官の職務というのが適正に執行されるということは望み得ると考えられるわけでございます。
  202. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうすると、こまかいところまでの民間人の採用という、そのパーセンテージはきめてないということですか。
  203. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在のところでは、私どももちょっと見当がつきかねておりますが、今後の成立後の人事その他においては一つの計画を立てていかなければならないと思いますし、いま審判官と申しましたが、場合によっては、若い人で、審査官なり副審判官で、知識は十分あるけれども経験がないという人は、ここから出発するということも考えてもいいのじゃないかということも、一応抽象的には考えております。
  204. 貝沼次郎

    貝沼委員 この点は、特に人事の問題は大事な問題でありますので、国民が納得のいくような人事をしていただきたいと思うのです。そういう意味から、私は心配で聞いておるわけであります。  さらに、現在の協議団が、午前中もありましたけれども、たとえば同じ穴のムジナであるとか、あるいはうば捨て山的であるとかいうふうにもいわれておるわけです。これは非常によくないと思うわけでありますけれども、しかし、反面、私がつらつら耳にするところによりますと、職権乱用的な要素も非常に心配になってきたわけであります。こういうような面、絶対にそういうことがない、させない、こういうことが言い切れるかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  205. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 もとより、この仕事は司法の仕事にも準ずべき重要な仕事でございますから、およそ職権乱用などということはあり得ないように、人選も十分に考えるつもりでございます。それだけの管理体制も十分に準備をいたしていくつもりでございます。
  206. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、何もみんなそれをやるというのではなくて、たとえば不服審判所に入ったその人は、一生涯不服審判所におるということはないと思うのですね。あるいはどこかに移るということもあるでしょう、やめることもあるでしょう、定年もあるでしょう。そういうところから、それにまつわる問題として、従来いろいろなところであったことがあるわけですね、そういう職権乱用的な問題が。そういうことがないように、ひとつここでお願いしておきたい。  それから、さらに今度は、実際調査に行く場合に、職員が行くと思うわけでありますけれども——これは第九十七条ですか、あるわけですが、この場合、この職員の国税局との間の人事の交流はどうか。あるのかないのか、この点をお聞きしたいと思うのです。
  207. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 審判官については、先ほど申し上げましたように、大体最初の、これは民間人と入れかわるという異動が考えられますけれども、これは大体審判官に専念をしてもらうというつもりでおりますが、副審判官、審査官につきましては、やはり一応全体の人事の停滞というようなことを打破するという意味からも、若干の交流を考えざるを得ないと思います。
  208. 貝沼次郎

    貝沼委員 若干の交流を考えた場合、調査に行った人は、国税局に入った場合、一たん見てきた伝票を忘れることは、どうでしょうか、できるでしょうか。そういう点から、私は独立性を叫んでいるこの不服審判所が、ひょっとするとそういうところから情報が漏れたりなんかして、そしてむしろ納税者に対して不利なことが起きやしないかと、ちょっとばかり心配なわけでありますけれども、この点はだいじょうぶでございますか。
  209. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘お話は、審査請求を行なっている段階で、納税者が別に所得があるというようなことが発見された、しかしそれで一応棄却にはなった、そのままになっていますか、あとで帰ったときにそれを調べるおそれあり、こういうことかと思いますけれども、これは、そもそも審査請求というもの自体の運用のしかた、それとも関連してくると思います。実際の運用としては、毎々申し上げておりますように、審査請求に理由があるかないかということを主眼にして調べる。それ以上に、全部の調査を各人についてやるというようなことはできるだけ避けるというたてまえをとっておりますから、そういう意味では、そういう資料自体がそうたくさん得られるということは、あり得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  210. 貝沼次郎

    貝沼委員 あり得ないというわけですね、いまのところ……。  そこで、私も実は、これはもしも国税局のほうに行かないとすれば、これは職業選択の自由ということがちょっと問題になりますので、非常にまずいと思いまして、ややこしい問題だなと思って、実は聞いたわけであります。まあそのような答弁があったわけでありますから、今後十分注意をして、親しまれる、国民のための、国民の権利を守ってあげる、ただ税金を徴収するということでなくて、国民の権利を守ってあげる、国民のための、こういうあたたかい不服審判所にしていただきたいと思うわけであります。時間ももう相当経過してしまいましたので以上で終わりたいと思いますが、くれぐれもあたたかい税務の問題、これをお願いしておきたいと思います。  以上で終わります。
  211. 毛利松平

  212. 春日一幸

    春日委員 われわれは、国民の財産権に国家権力として圧倒的な影響力を持つ徴税行政の、その中でもその諸法律の背骨をなす国税通則法、これについて質疑応答、審議を進めるのでありまするが、主としてわれわれは政策的な面において質疑を行なわなければならぬと考えるのであります。  しかるところ、その政策の責任者でありまする大蔵大臣、これは現在予算委員会が開会中だとはいいながら、とにかくこの質疑応答の答弁当事者としてここにお越しがいただけない。したがって、われわれがきわめて貴重な政策論を展開するにあたりまして、その答弁に立つ者は、主として吉國君とか、あるいは細見君とかいう片々たる官僚でしかないのである。中川副大臣がお見えにはなっておりますけれども、これはまことに失礼ではあるけれども、このような徴税行政については、お互いにまだ研究中の過程にあると思うものと見るべきであろう。  こういうような背景の中で熱心な貴重な論議がかわされておるのであるけれども、結局は責任者が不在のままに、結局は官僚が政策面に対して事務的な、技術的な答弁を行なうことによって時間がふさがれて過ぎていってしまうのである。したがって問題が結局解決をしないということである。私はここに質問を行なって、副大臣なり主税局長なり長官なりが責任的答弁に立って、是は是、非は非なりとして、これが政策的に大きく取り上げられて、政府の方針を制度として変えていくということであるならば、私は別に大臣の出席を求めるわけではございません。けれども、結局大臣は大臣、次官は次官、そうして徴税当局は徴税当局というような立場で、若干の打ち合わせはあるであろうけれども、ニュアンスとか、肝心の論議のコクとかいうようなものが伝わりようがない。だから、いま貝沼君が指摘されたように、わが国の徴税機関の歴史というものはすでに相当古いのであるけれども、しかし国民の不満というようなものは依然としてあのような圧倒的なシェアを占めておるのである。  こういうような形で、この徴税行政の政策論議、国民の財産権に至大の影響を持つ徴税行政について、このような形態で論議がされるということについて、適当であると思うか、あるいはこれは遺憾きわまる状態であると思うか、この際毛利委員長の所見を問う。
  213. 毛利松平

    毛利委員長 いま春日委員の発言、非常にごもっともでありますが、客観情勢上やむを得ざる点も御理解賜わりたいし、なお理事会で絶えず大臣の出席を協議し、求めております。
  214. 春日一幸

    春日委員 これはかねがね本委員会で論じられておるように、これは歳入委員会という一つの機能をも持っておる大蔵委員会である。したがってこの歳入行政並びに国民の財産権に大きな影響力を持つ委員会において、その重要法案が審議される過程において、衆議院において一カ月、参議院においてやや一カ月、二カ月間がほとんど所管大臣不在のままに政策論議がなされなければならぬという現在のこの国会における委員会構成というものは、私はすみやかに国益のために是正をはかられるべき必要があろうと思う。どうかそういう意味で、貴殿たち、常任委員長会議でもあったならば、よく私の意見を反映せしめて、少なくとも委員会を、歳入委員会を持つとか、予算委員会と分離した形で、午前、午後に歳出委員会、歳入委員会の構成をするとか、委員会の審議のあり方についてこの際根本的な再検討を加うる必要があると思うが、このことを委員長委員長会議の席において大きく強調するの意思はないか、御答弁願いたい。
  215. 毛利松平

    毛利委員長 御趣旨同感で、現に委員長会議ごとにこれを主張しております。
  216. 春日一幸

    春日委員 さすがに毛利君、あっぱれな御心境である。しかし、この問題については、そのような制度の改革が実現をされるまでの過渡期間として、私は特に副大臣に要請いたしたいのであるけれども、全く委員会の構成を分離分割せなければならないほど、ことほどさようにここにおける政策論議の内容は貴重なものでありますから、したがってあなたが大臣にかわって答弁をされる、大臣を目して質問をされるこの問題については、必ず福田大臣に十分伝えられて、そうしてわれわれの意のあるところを大いに政策の中に反映せしめられるよう最善の御努力を願いたい。  なお、現実の問題として、吉國長官も細見主税局長も、大臣権限を大きく干犯しながら答弁に立たれておるのでありますから、したがって、ただ徴税技術上とかあるいは法の構成上の技術面にこだわることなく答弁をされて、そうして現在の欠陥があるならば、それはただ単に保守的なマンネリズムではなくして、いいものはいい、悪いものは大いに改善しよう、こういう前向きの形で、現状を至上のものとして、これを動かし得ないものという立場から答弁されるのではなく、若干はそのような政治家的立場に立って——すなわち、あなた方は政治家でも何でもないが、そのようなとうといものではないけれども、しかし、いま現実にそういうような大臣答弁をもあわせて行なわれておる実情にかんがみて、大いにひとつ胸襟を開いた形で、前向きの形で御答弁を願いたいと思う。  かつてわれわれがここで論じた問題が大きく改善改革された例、これは吉國長官も細見君もよく知っておられる。池田大蔵大臣のごときは、お知らせ制度がいかぬじゃないか、なるほどそれは法律違反だ、よし、電報を全国に打ってこれを廃止せよとか、いろいろなここの論議を通じて改善改革がなされてきた。ところが最近はそういうことがほとんど——主税局長や長官あたりが答弁を横取りしてしまうものだから、したがって真に迫った必要不可欠の改善改革案が、結局君たちの官僚のコンクリートにさえぎられてしまって実らないということはきわめて遺憾千万、国民のために大きな損害であると思う。この点について反省はありますか。
  217. 細見卓

    ○細見政府委員 私どもも、せっかく的確ないろいろの御教示に対しては、真摯に耳を傾けてまいりたいと思っております。
  218. 春日一幸

    春日委員 耳を傾けるとは何事だ。私は耳なんか傾けてもらわぬでもいい。私は、胸襟を開いて、われわれのことばが五体のすみずみの端々にまでしみわたるようによう聞いて、それがいいと思ったことは大臣に献策、献言を行なって、即日これを改善、改革せよと言っておる。君らの耳なんかに傾けてもらう必要はない。われわれのこの意見は君らの耳など相手にしておるものではないのである。もう一ぺん答弁し直せ。
  219. 細見卓

    ○細見政府委員 大臣によく連絡いたしまして、毎日の審議の経過が大臣に伝わるように申します。
  220. 春日一幸

    春日委員 そのとおり。かくのごとき答弁でなければ……。  そこで、まず法律案の具体的内容に入りまする前に、基礎的な問題としてお伺いをいたしたいのであります。  最近の年度でよろしいが、異議申し立て並びに審査請求の総件数と、なかんずくその中で増額更正もしくは減額更正、この更正のなされたる件数、どのようなものでありますか。
  221. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昭和四十二年度におきましては、納税者数、申告所得税におきまして三百三十万七千という数字がございます。それから四十三年度においては三百六十九万九千。これは若干、前に主税局からお示しした数字と違っておる点がございますが、修正申告等は重複するとして除いてございますので若干減っておりますが、基礎は同じでございます。  これに対しまして、更正または決定をいたしました件数が、四十二年度におきまして十一万一千十件、四十三年度におきまして八万七千七百七十五件ございます。このうち、減額更正を除きまして、いわゆる増額更正分だけをとりますと、更正決定件数は、四十二年度八万七千九百三十七件、四十三年度六万八千三百五十九件となりまして、パーセンテージで申しますと、四十二年度の増額更正の割合が二・六%、四十三年度が一・八四%となっております。  これに対しまして、異議申し立て件数は、四十二年度が二万七百二十六、四十三年度一万四千八百五十、異議申し立て割合は、増額更正に対しましてはそれぞれの年度において二三・六%と二一・七%という数字になっております。  さらに、審査請求は、審査請求となりました件数が四十二年度五千五百五件、四十三年度四千三百三十七件というのが申告所得税の数字でございます。
  222. 春日一幸

    春日委員 私が質問をしたのは、そのような異議申し立てもしくは審査請求、これに対して増額決定もしくは減額更正等がなされた件数やいかに、こう申し上げておる。要するに、そのような異議申し立てや審査請求がなされて、調査の結果、減額更正を必要としたるもの、あるいはその調査の結果増額更正に至りたるもの、これはどういう数字か。
  223. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは先生御承知のとおり、現在の異議申し立てでは増額更正はございません。減額一本でございますので、その内容を申し上げますと、申告所得税におきましては、四十三年度の……。
  224. 春日一幸

    春日委員 まとめて言ってください、この四十二年度の二万七百二十六に対して。
  225. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 二万七百二十六に対して、取り下げが三千五十三件、却下六百三十七件、棄却五千十一件、全部取り消し四千七百七十一件、一部取り消し六千四百四十三件。さらに四十三年度で申しますと、取り下げが二千二百八十二件、却下四百九十五件、棄却三千九百五十三件、全部取り消し三千二百七十四件、一部取り消し五千二十六件、変更その他十五件という数字になっております。
  226. 春日一幸

    春日委員 この資料で明らかになりましたことは、四十二年度において、二万七百二十六件のうち、いろいろと税務行政機関が再検討をされた結果、減額を必要とする、こういうものの件数は六千四百四十三件と四千七百七十一件の合計数である。四十三年度においては、三千二百七十四件並びに五千二十六件なるものは、そのような異議申し立てもしくは不服を申請した者の趣意が通った、こういうぐあいに理解してよろしいか。
  227. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 主張の全部または一部が通ったということでございます。
  228. 春日一幸

    春日委員 一部にしろ全部にしろ、第一次的徴税行政機関が決定しておったことは誤っておったのであるか。
  229. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのとおりでございます。
  230. 春日一幸

    春日委員 そこで、今回のこの国税不服審判所は、このような不当な決定に対して、より民主的に、より憲法精神的に、その侵害されたる財産権の権利救済の意図に基づいて、そのような制度が制度化されんとするものであるか、この点はどうですか。
  231. 細見卓

    ○細見政府委員 その方向に向かった第一歩であります。
  232. 春日一幸

    春日委員 そうすると、法案の中に入る前に伺いたいが、憲法関係をさらっと常識的に読んでみましても——常識的といったところで、われわれのごとき専門家になりますとこれは相当専門的になるのだが、憲法二十九条「財産権は、これを侵してはならない。」とある。そうして「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」という「不法行為」というものを国家賠償法で調べてみますると、これは結局「故意又は過失」とある。したがって、徴税吏員が故意に税金を多くふっかけるということは、常識上平常の場合考えられないとすれば、法の解釈の過失によってそのように過大に査定をした課税を行なった、こういうぐあいに理解をせざるを得ないが、この辺の関係はどうなるか。
  233. 細見卓

    ○細見政府委員 それはやはり過失でなくて、そのときにおけるその人の全人格的な判断によって適法なるものと信じて行なったものであります。
  234. 春日一幸

    春日委員 国民の財産権は何人も侵してはならないとある。生命、財産権であって、生命に次ぐ財産権、これは何人も侵してはならないのである。そのような至上の基本的人権である。それを徴税吏員の全人格的の判断によって、ある者は百万円と査定し、ある者は一千万円と査定をする、こういうようなことが許されますか。われわれは、租税法定主義といって、法律に格段の定めな、くんば税金を一取られることはないのである。日本国において日本国民のための法律一つしかないのである。その一つ法律を、一つ憲法に基づいて行政を執行する場合、ある者はAの課税がなし得、ある者の判断によってはBの課税がなし得る、こういうようなことは許されてよいと思うか。政務次官、御答弁願いたい。
  235. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘の趣旨はよくわかるわけでありますが、課税の査定のしかたがAでありBであったことが、法律上財産権の侵害になるかどうかについては若干疑問があるのではないか。従来の法の解釈は、かりに裁判所あるいは不服審判所で違った決定がなされたとしても、公務員の過失あるいは故意による損害ではないという解釈がとられておるようでありますし、私もそう解釈しておるところであります。
  236. 春日一幸

    春日委員 そういうふうにはなりませんぞ。国家賠償法第一条は「公権力の行使にもとづく損害の賠償責任、求償権」、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とある。そして、国はそういうことをやった者に対してさらに求償権を発動することができる、こうありますね。だから、租税法定主義ということは、法律によらなければ何人も課税を受けるということはないのですね。法律一つである。解釈もまた一つでなければならぬ。しかるに、重大なる過失によって取らなくてもいい税金課税をした。そうして上級機関に権利救済を求めたら、その結果本人の申し立てが正しかった。そのことはそのまま第一次課税当事者が過失によって課税を行なったものであるという立証になる。この場合、過失によって課税をしたのだという事実関係がここに浮揚してくると思うがどうか。
  237. 細見卓

    ○細見政府委員 先ほど先生がお読みになりました条文で、ちょっと私、聞き漏らしたのですが、たしか「故意又は過失によって違法に他人に」というのがございまして、法律に従った行為はいいわけでございます。  そこで私、税法を見てまいりますと、所得税法に、百五十六条でございますか、いろいろ帳簿などがない場合には推計で課税していいということになっておるので、私はこの場合は違法ではないのじゃないかと思っておりますが……。
  238. 春日一幸

    春日委員 違法、それから不法、これはいろいろ裁判所の判例等を追及していかなければならぬと思いまするけれども、要するに私の言う事実関係は、税務署が一千万円と査定した、そうして後日それをいろいろと異議申し立てや審査請求をしたら、その申し立てが通ったものが現実にこんなにもたくさんある。四十三年度においては三千二百四十七件と五千二十六件、八千何件のそういう事実関係がここに実在するのである。これをどう見るかというのだ。日本国の徴税関係法律一つしかない。法律、政令、通達、判例、いずれも、税務署に対しても協議団に対しても、それは共通の一つのルールである。共通のルールを活用して、そうしてその査定を行なった場合、第一次の者が一千万円と査定した、上級の者が査定をしたらそれは誤っておったといって、一部取り消し、全面取り消しと、こういう事実関係がこんなにもある。これは過失である。明らかに過失である。過失でないものならば何のために取り消すのか。すなわち国家賠償法がいっておるところの過失ですね。故意または過失によって、法律一つなんだから、法律を間違って解釈をしたら違法の執行ではないか。法律に基づいてのみ徴税、課税ができるのであるから、その男が、百万円しか課税すべからざる対象に対して一千万円の課税をしたというならば、過失によって違法の課税を行なったことである。当然その男はそのような過失責任を負わなければならないであろうし、国家はその者に対してやはり権利救済の責務をになわなければならぬと思うが、この点、副大臣御見解はいかがです。
  239. 中川一郎

    中川政府委員 春日委員のお気特ちは私にも……(春日委員「気特ちじゃないよ」と呼ぶ)私も、言わんとするところはわかる……(春日委員「言わんとするところじゃないですよ、言うたところだ」と呼ぶ)言うており、言わんとするところの内容はわかるわけです。百万円が妥当なのに二百万円の課税があった。これは国民の大事な財産権——百万円に対して公務員が二百万円の取り立てをした。これに対しては国家賠償法で責任を持つべきではないかと主張されるわけでありますが、百万円しかないものを二百万円取ったそのやり方について、違法あるいは過失、当然課してはならないものを、故意にあるいは違法に課したという場合には、私はこれは国家損害賠償法の義務があるのではないか。しかし、そのやり方自体が適法であり、その当時の状況としてはそれ以上推測の方法がないという判断のもとにやった場合には、故意とも過失ともいえないのではないか。そのために、そういった間違いがないように、最終的には三審制のある裁判所でもって白黒をつける。その前段として審査請求または不服申し立て、こういう段階を経由しておるのではないか、このように私は解釈をいたしております。
  240. 春日一幸

    春日委員 私は、この法律を、そしてまた国税不服審判所というものの機能をどこに置くか、こういう問題と至大の関係があるので、この問題を明らかにして、それから法律条項の中に入らせていただきたいと思うのですが、私はむずかしい立法論やなんかを言っているのではない。ただ事実関係として、いま吉國長官指摘されたように、現実にそのような間違いがあるのです。現実に間違いがある。しかも、その間違いというものは、生命の次の財産権に対して国家が大いなる侵害を行なったわけなのだ。その間違いが現実の問題として、この中の一部取り消しだとか、これを全面取り消すとかいうような——金額はものによっては百万、二百万の場合もあるだろうし、大きいものは五千万、一億というものも私はそう少なくはないと思う。そういう間違いをやった場合は、憲法の精神からいけば、この二十九条の財産権をそのまま受けて、そうして同時に、十七条の国及び公共団体の賠償責任をそのまま受けて、国家賠償法という法律が現実に制定されておる。だから、警察なんかで基本的人権を侵害した——きのうだってあのような、裁判所で、別件逮捕の者は無罪だというようなことで、無罪になれば当然国家賠償は適用されてくると思うのだ。だから、基本的人権という中の大きな財産権を侵害した場合は、国家賠償ということが考慮されなければならぬ。これは当然の政策論ではないかと私は思うが、広瀬君、どうですか。——いや、お互いにみんなが研究したいと思うのだ、こういう基本的な重要な問題は。永末君どうだい、東大法科は。  このきのうの判決が出たことで、私はすぐちらっとここに着想を及ぼして、実際問題として、国が誤ってあるいは法律に違反をして、たとえば徴税法令に反して課税を行なった。そうした場合に、だれもそうしたものに対して求償権とか権利救済というものがなされないというようなことはおかしいと思うのだ。しかも、今度の国税不服審判所というものの性格、機能が、権利救済というよりもむしろ行政救済のところに ウエートを置かれておることにかんがみて、私は、この理論というものがその大前提として大きなきめ手になると思うから、くどくこの点を明らかにして論旨を進めたいと思う。いかがです。
  241. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど細見主税局長が申されましたように、春日委員が御指摘のとおり法律一つである。しかし、その法律を適用する段階におきまして、法律はすべて手続をきめているわけでございます。その適法なる手続を踏み、与えられたる段階において過失なく執行したものが、その後の資料その他において事実認定がくつがえるということは、法律が予想している問題だと思うのです。したがいまして、行政救済の手段を与え、また同時に、救済の結果としては還付加算金というような制度を当然に想定をして、制度自体として組み入れておると思います。もちろん、租税法の上におきましても、故意に、知りながら課税対象でないものに課税をした場合に、国家賠償法の問題が起こり得ることはあると思いますが、適法な行為として法律に従った手続によって行なわれた場合には、それに対する救済手続は、今回改正をしていただく審判所その他の法律と、さらに税法に定められたる還付加算金、いわゆる一種の遅延賠償金的なものでありますが、かようなものによって定型的に定められているものである。故意、過失というものの判定はきわめて困難ではありますけれども税務行政において故意、過失による国家賠償が起こり得ないとは私は思いませんが、それは一般の場合の異議申し立て、不服審査の制度として当然いまの税法の組織の中に定型的に組み入れられているものである、かく解すべきものと思うのであります。
  242. 春日一幸

    春日委員 私は、まず、税務署の査定に対して納得ができないと本人が思ったときは、これについて異議申し立てができて、さらにまた協議団に向かって不服申し立てもできる、こういうことは、納税者そのもの立場で有権的に判断すれば、それが最終決定ではないのである。異議申し立てなり不服申し立てなりをしていくことによって、自分の権利が当然認められると、こういうふうに解していけばそれはそれでいいと思う。すなわち、徴税機構全体としてその個人に対する最終責任はその時点においてけじめがつけられてくると思います。  ところが、その間に納めたところの税金ですね、あるいはその間に受けたところの精神的な苦痛、あるいは税金をたくさん取られたことによって金繰りが悪くなって破産をする、そういうような財産権侵害に伴って発生してくるところの犠牲、損害というもの、これに対して国家が賠償の責務がないと断定できるか。これは私は重大な疑義があると思う。あなたの兄さんは法制局のえらい人らしいけれども、あなたは税法のくろうとかもしれぬが、一般論についてはまずずぶのしろうとであると見るべきであろうと思う。この点どう思いますか。常識論として、実体論として、たとえば広瀬君が商売をやっておられたとする。ここに実際上、税法上、上級機関が最後の減額更正を行なった場合、百万円でよろしい、こういう査定を下した。ところが税務署が三千万円という課税を行なった。その調弁、調達かなわずして広瀬君のお店がつぶれたとする。その間の談判、交渉にもたいへんな苦労をされたとする。そのときでもなおかつ、税務署のあやまてるその課税が、全然国家的にこれが免責事項になるのかどうか。あなた、断言できますか。兄貴に一ぺん相談してみてください。
  243. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 まさに問題は故意、過失、違法の解釈にかかると思いますが、税法がかようなシステムをつくっておるということは、その中に法律の適用にあたって適法行為で誤り得るということを前提にしているものと思います。実定法のシステムとしては、特に故意または過失による違法というものが普通の税務行政の上には一応推定されないという前提でシステムが組まれていることは事実だと思いますが、それと同時に、故意または過失によって違法に財産権を侵害したという事実がある——その判定は非常にむずかしいと思いますが、そのような場合に、国家賠償法が完全に排除されているということではない、そのように思います。
  244. 春日一幸

    春日委員 そのとおりだと思う。だから、一番確実な手段は、だれかここで——昭和四十三年度においてはざっと八千何百人の諸君が、現にその申し立てが通っておるわけなんですね。そこには大なり小なりの損害があると思う。だからその諸君が国家に向かって、その間に受けた損害について、国家賠償法に基づいてその損害賠償の行政裁判を起こして、その判決を待ったら一番正確な答えが出てくると私は思う。違憲裁判というものは最高裁にゆだねられておると思うが、こういう問題については何か判例、判示がありますか。
  245. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その系統の訴訟は現在も起こっております。やはり故意、過失、違法という内容についての争いでありまして、勝訴を得たものもあり、敗訴の例もあるようであります。一ぺん判例を集めまして、ごらんに入れたいと思います。
  246. 春日一幸

    春日委員 要するに、勝訴の例もあり敗訴の例もあるということでは、これでは答弁にならないわけだ。たとえば、そのような不当な課税を受けたことによって、ゆえなくして不当な損害を受けた。ゆえに国家に向かって損害賠償請求の裁判を起こした事例があるかどうかということで、あるならばある、そしてその中のある判決はこういう理由によって国家は免責された、こういう理由によって国民の救済は認められた、このことを御答弁願いたい。
  247. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在判例を特ってきておりませんので的確なお答えができませんが、先般勝訴をいたしました判決の内容は、重役賞与の判定を誤った件でございますが、それについては、重役賞与の使用人重役の範囲について若干の疑義があった。したがって、その疑義があった段階において課税をしたことについては過失を問うことはできないということで勝訴になっているようでございます。
  248. 春日一幸

    春日委員 そのような法律上疑義のあるものは、言うならば灰色のものである。見ようによってはその第一次の課税段階において誤認をし得る場合もある、こういうことでしょう。けれども、私がいまここで提示をしている疑問点は、全面的に認められた、あるいは大きな金額についてその本人の異議申請が認められたといったような場合の行政裁判あるいは賠償裁判、こういうものが認められた判例があるかないか、 このことを言っておる。そういうような疑義のある、だれが見たところで白ともいえる、黒ともいえる、灰色のもの、これは間違えるのがあたりまえだ、だから責任はないぞ、こういうような判例では、われわれが政策の基本を審議する材料にはなり得ない。
  249. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま御指摘のような趣旨のものでございますと、まだ判決が下っていないと思いますけれども、異議申し立て中にかつては公売処分が許されたわけです。そのために相当な物件を公売をしたわけです。その場合、あとでその課税物件が非常な額にのぼる。そして課税は実際取り消された。しかし、すでに公売を受けてしまった。その損害を賠償すべきであるということが争いになった事件が一件、大きな金額でございます。これは場合によっては裁判経過をすぐ調べさせてみようと思いますが……。
  250. 春日一幸

    春日委員 まだ判決はおりておりませんか。
  251. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 判決はたしかおりていないと思います。
  252. 春日一幸

    春日委員 じゃ、あしたでもあさってでもいいからお調べいただきたい。  それじゃ私が指摘しております問題点というものは御理解願えたと思う。憲法で保障されております基本的人権の財産権を侵害してはならぬ。ところが、この財産権を侵害し得る立場にあるものは、いま徴税当局、徴税機関以外にはございませんね。民間ではどろぼうだとかギャングだとか、そういうものはあるけれども、ギャング、どろぼう、税務署、一緒に並列するのはいかがと思うけれども、とにかく個人の財産権に対して侵害能力を特つものは税務署である。したがって、その徴税行政というものは憲法の本義に基づいて、ほんとうに法律によらなければならない。だから法律に基づく執行は、ある者がこれを判断すれば百万円になり、他の者が判断をすれば五百万円になる、またその逆の場合もあり得るというようなものであってはならぬと思うのですよ。そのような二様の判断が出てくるということについては、これはごく少数、異例の事柄と見なければならぬ。ごく少数、異例の事態がどうして起きるかというと、それは故意である、あるいは過失である。そして故意と過失と、違法の執行を行なうことによってそういう結果が出てくるのである。われわれがいまここで論ぜんとする国税不服審判所は、そういうものを救済する機関である。こういうことであることを御理解願わなければこの審議の精神がぼやけてくると思うが、いかがですか。
  253. 細見卓

    ○細見政府委員 先ほど来、一部取り消しあるいは全部取り消しになった事案が多いことをとらまえられまして、徴税官署に、故意とまではいかないまでもいろいろ過失が多いのではないかというような御議論だと思いますが、しかし、実際ここで一部取り消しないしは全部取り消しになりました事案は、課税の段階ではそうした証拠なりあるいはそうした事実についての十分な申し立てがなされずに、異議申し立てなりあるいは審査の段階で、新たな事実、新たな証拠としてそういうものか申し出された。それに対して税務当局とすれば、従来とかく批判を受けたのは、じゃほかにもっと所得があるじゃないかというかっこうで、いろいろ争点といいますか、納税者の申し立て事項以外のことをあさるというような感触がある。それは改めるべきじゃないかというお話は承っておるわけでありますが、またそれはそれなりにそういうふうに運営してまいらなければならぬと思います。しかし、一部取り消しなり全部取り消しが多いというのは、税務職員の過失がこれだけあるということじゃなくて、むしろそういう大事な資料なりあるいは大事な説明が、当初課税の段階になされておらないというところに原因の大半はあると御認識願いたいのであります。
  254. 春日一幸

    春日委員 私は細見君に伺うが、あなたは税務署長あるいは国税局長、徴税機関の当事者として携わられた経験がどういう状態ですか。
  255. 細見卓

    ○細見政府委員 私は人が最もいやがります査察課長をいたしましたし、調査査察部長をいたしまして、むしろ個別的にいろいろな事案に接してきた経験がわりあい長うございます。
  256. 春日一幸

    春日委員 そういうエキスペリエンストならばなおさらのことなんだ。いまあなたが言われたことはサギをカラスと言いくるめようとする、詭弁もはなはだしいものである。よろしいか。納税者というものは自分が課税をできるだけ正当に受けるために、さらにわかりやすくいうならば、安く課税を受けるために、自分の有利な材料を出ししぶるということはあり得ないのである。自分に有利な材料は、損金算入をすべきだとか、ああだとかこうだとかいう材料は、常識論として当然ありとあらゆるものを充実してこれを課税当局に提示するのは人情の必然である。いまあなたは、第一次課税の時点においてはそういうような資料を欠いておったと言われるけれども、私もこの大蔵委員会に十八年間すわり込んでおる。まだ君たちがあちらこちら歩いていた小坊主のときからぼくはここでこの論議をやっている。だから、徴税行政の問題点の実態については、しばしば白熱の論戦が行なわれてきた。いまあなたは、そういうような減額更正がなされたという原因が大部分のものはすなわち本人の資料が不足しておった、自業自得だと言わんばかりである。もしもあなたがそうだというならば、私が知っておる事例だけでも、新しい判例、新しい通達、いろいろなものを提示することによってその権利救済がなされたところの事例、枚挙にいとまがない。あなたは査察として、とにかく取らんかな取らんかな、すなわち鬼のごとき細見君であったわけだ。平静なる課税行政の責任者であった経験はほとんど無にひとしい。したがって、あなたはそのようなたわけたことを言いたくなるのかもしれないけれども、私ども、十八年間大蔵委員会にすわり込んで真剣に徴税行政と取り組んできた者の判断からすれば、貴殿の答弁のごときはまことに牽強付会もはなはだしきものである。  吉國君の答弁を求めます。それは御両所お互いに対立してもよろしい。真剣に国家と国民のために政策を論じましょう。いま細見君の答弁は、減額更正が行なわれた主たる原因は本人が第一次課税の当時、資料提出を怠っていたから、自業自得でそうなったんだ、あとでそのような資料提出したことによってエクスキューズがなされたんだ、こう言わんばかりの答弁であったが、はたして減額更正の実態はそのような内容のものであるかどうか。いままで税務署が決定したものをその後協議団でいろいろと精査をする、そのときには法律のみならず、政令、通達、判例、あらゆるものを網羅して、あらためて判断を願ったときに、第一次のときは誤っておったのである、こうあるべしというのが減額更正の実態である。減らしたといって、それは何らの恩恵ではないのである。税金はゆえなくして、法律の根拠なくしてまけられるべき筋合いのものではない。したがって、法律に基づいて、誤っておったから直すんだ。こういうことなんだから、いま細見君が言われたような、鬼の査察部長の経験でもってそのような意見を述べられては、徴税行政を正しいものに改善、改革するためのわれわれの政策論議に有害である。いかがでありますか。
  257. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 減額を受けたものの内容について、春日委員の言われるように、解釈の誤りによるものももちろんございます。また、細見主税局長が申しましたように、本来全く帳簿がないという段階で認定をいたしまして、その後帳簿が出てまいりました例もございます。(春日委員「そんなものは少数事例だ」と呼ぶ)少数事例と申しますが、いわゆる事実認定の争いが相当数ございます。春日先生がおっしゃったような大物ももちろんございます。大きな帳簿等のあるものについての争いは、解釈の争いというのが相当あるのでございます。この解釈の争いも、先ほど判例で申しましたように、解釈そのものが明確であるものを誤ったという例よりは、解釈自体が二つに分かれておる、あるいは解釈について適当な通達がない。したがって、独自の立場で解決をしたが、具体妥当性から申せば法律の解釈はかくあるべしということから決定がくつがえされた、こういう例が多いように思います。おそらくそのあたりが、判決においても法律解釈に疑義があった段階においては過失が認められないということをいったものの一つの例だろうかと思います。私は両方あり得ると思うのでありまして、ただ言えることは、こういう争い、誤りをなくすという努力をまず考えるべきであるということは、もうこれは私自身がはっきりと肝に銘じていきたいと思います。
  258. 春日一幸

    春日委員 やや実態が明白に浮揚されてきたと思うのです。主税局長の述べられたところをそのまま聞くと、本人がいろいろ提示すべき証憑、書類が不備だったから、したがってそういうような高い税金をかけられてもやむを得なかったのだ。あと書類を出してきたら、それがみんな取り上げられるべき筋のものがあって、それで認められたんだ、こういうことではないのですよね。そういうものもある。それは白色申告の場合はより多くありましょう。けれども、大きな問題で税法の解釈を誤って——誤ってというても、いま長官も若干述べられたけれども、いままで貝沼君もあのようなアンケートの中のデータから述べられておるけれども、はなはだしく難解である。国民にとっても難解であり、徴税当局にとってもこれははなはだむずかしい。むずかしいといったところで、どんなにむずかしくても財産権の侵害に至らざるよう、それこそ万全の措置が講じられなければならぬのでありまするから、その見地に立っていかにあるべきかということならば、これは神ならぬ身のあやまちなきを期しがたいから、誤った場合はその侵害されたる権利というものをどう救済していくか、権利救済ということに皆さん方のポリシーの重点を置いてもらわないと、単なる技巧、技術であってはならぬということなんですよ。わかりましたか。——よろしい。  それでは、そのような訓示を前提にいたしまして、そこで問題になるのは、先国会においてわれわれ野党の議員がさまざま切磋琢磨をいたしまして、六項目の附帯決議が付されました。それで、その第一項目は、「国税不服審判所の人的構成及び運用についてその独立性を強めるよう留意し、今後における社会、経済の進展に即応しつつ、国税庁から独立した租税審判制度の創設、」これについて大臣は不断の真剣な検討をなせ、かくのごとくに院は附帯決議を付しております。この案件は、不幸にしてあのように審議未了になって、今度新規の提案になったけれども、不断の努力——去年からことしまでの間に数千時間というたいへんな時間が経過をしておるから、この間に国権の最高の機関たる国会の意思というものは、当然大蔵、徴税行政府において不断の検討がなされてしかるべきだと思うが、この委員会においての決議は——一応法案が流産したとはいいながら、その意思というものは当然尊重されてしかるべきものである。当時の大蔵大臣はこれに対して、十分尊重しますと答弁がなされておる。どのように尊重し、どのように研究して本日に至っておるか、この点についてお述べを願いたい。
  259. 細見卓

    ○細見政府委員 不幸本法案が流産を見たわけでありますが、この附帯決議にもございますように、絶えず前向きの姿勢で、新しい制度をも含めて検討しろという国会の意思を尊重いたしまして、ここにおります大島君に、専任で外国の租税裁判所あるいはドイツにおきます財政裁判所あるいはフランスにおきまする実情というようなものも調べさせまして、それらの国で、いますぐ取り上げられるもの、あるいは今後の検討にまつべきもの、そういうものの整理をいたしておる段階であります。
  260. 春日一幸

    春日委員 この際、大島国税審判所長候補者か、次長か、一体アメリカ系統ではあるいは大陸系統では、この問題の救済が現実にどういうようなマシナリーによってなされておるか、その機構、機能、こういうものについて御調査の結果、簡単でようございますから御報告願います。
  261. 大島隆夫

    ○大島説明員 外国の救済制度は、各国によりましてそれぞれ独自の制度があるわけでございます。それぞれ国情と国民性と歴史とを踏まえまして独自の制度が……。
  262. 春日一幸

    春日委員 そんなことはわかっておるから、アメリカとかイギリス、フランスその他を言ってくれよ。
  263. 大島隆夫

    ○大島説明員 独自の制度をなしてきておるのでございまして、なかなか一口に申しかねるわけでありますが、大別いたしまして、大陸系の諸国では特別裁判所を設けておる。それに対しまして英米系では、司法機関をもって最終の機関としておるわけでございます。日本におきましては、むしろこのアングロサクソン系の法体系にその意味で近い体系をなしておると思います。  それからなお大きな特色といたしまして、イギリスなりあるいはドイツなりで痛感いたしましたことは、イギリスの委員会とかあるいはドイツの特別裁判所等におきましては、その場面で増額決定をやる権限があるというのが非常に大きな特色でありました。  そのほかいろいろとこまかい点は多数ございますけれども日本はまたその歴史の段階が違いますので、ただいまの国情では、私見てまいりました結論といたしましても、やはり現在の審判所というようなあり方が、現在の日本の国情からいたしますと一番ぴったり合っているのじゃなかろうか、さような結論を持って戻ったような次第でございます。
  264. 春日一幸

    春日委員 やはり大島君も、ぼくは不安になってきたわけです。というのは、ぼくが質問をいたしましたのは、国税庁から独立した第三者機関の権威を、権能を持たしめるような国税不服審判所でなければならぬとわれわれ野党はこれを述べ、かつ与党もその方向を容認されて、満場一致の附帯決議がなされておる。よろしいか。その附帯決議は、国税庁から独立した租税審判制度の設置、こういうものについて絶えず真剣な検討を加える必要がある、こう言ったのですよ。しかるに貴公は外国へ視察に行って、そうしていま問いもしない増額決定ができる、そんなことを答弁するとは何事か。まさに三つ子の魂百までということがある。だからわれわれは、租税審判所というものは救済機関だが、あるいはその徴税機関たるの三つ子の魂の精神で八百長をやられてはかなわぬ、だからここに第三の機関を厳然として設置するの要あり、こういうふうに言うたので、これに基づいてあなたは、貴重な国民の血税を使ったか使わぬかは知らぬ、そんなけちなことはぼくは言わないが、とにかく欧米を視察された。あなたの答えは、すべからく、すなわち徴税当局と完全に分離した第三者的機関としてこのような不服審判所が設置されておるかどうか、こういうことを調査結果として御答弁が願わしきものであって、そのような機関が増額決定ができるなんというようなことを何のために言うか、たわけた答弁をしてくださるな。もっと真剣にやってもらいたい。
  265. 毛利松平

    毛利委員長 政府当局に申し上げます。答弁は的確に簡潔に行なうよう特に要望いたします。
  266. 大島隆夫

    ○大島説明員 先ほど申しました特別裁判所、これはまさに徴税当局から完全に独立した機構でございます。ただこの場合におきまして問題は、同じく前国会で議論が出ましたように、その完全に独立いたしました裁判所の決定に対しましては、いわゆる当局のほうからさらにこれを争うことができる、こういったような仕組みになっておるわけでございます。これも前国会で大いに議論がなされたところでございますが、このような制度をとりました場合には、通常の司法裁判の過程が省略されるか、あるいは全くそれを通らないというようなことになっているわけでございまして、一つの行政機関の措置に対しまして、他の行政機関がこれを批判して、しかもそれで終審になるというような制度は諸外国にもちょっと見当たらなかったということでございます。  なお、その裁判所の決定に対しまして徴税当局が争います場合には、アメリカにおきましてはさらに司法裁判ということになっておるわけでございまして、そのようなところから考えますと、いまの日本の全体の法秩序の中から、そのようなものを持ち込みますには、やはりまだ全体として熟していないのじゃなかろうか、かような感想を持っております。
  267. 春日一幸

    春日委員 問題はそこなんですよ。大陸系統では全部独立しておるのでございますね。そうして、いわんやアメリカ系統では司法裁判所的性格を持ってきておる。ただし、その機関訴訟ができるかできないかという問題なんです。すなわち、国税不服審判所、やがて貴殿が次長として赴任されんとするその審判所の決定に吉國君が不服だったら、吉國君が機関訴訟を起こせばそれでよろしい。できるできぬという問題じゃない。そんなことは日本で現在平気でやられておる。私はそんなことはできないということはないと思うが、どうです。あえて欧米でそのことにためらわれておる、その政策の根拠は何でございますか。
  268. 大島隆夫

    ○大島説明員 私は、そのような制度が制度といたしまして絶対に不可能だということを申し上げているわけではないわけでございます。ただ現在の日本の全体の体系からいたしますと、いかにもなじみにくいと申しますか、さらにそのような制度をとり入れるにつきましては、かすに時日をもっていたしまして、現在の不服審判所の制度、これらの適正な運営にまず全力を尽くしまして、その成果を見た上さらに検討するのがほんとうじゃなかろうかというように考えております。
  269. 春日一幸

    春日委員 それこそそれは政策論の分かれるところでございまして、貴殿たちの見解というようなものは、本委員会の政策論としては、これはまあ、あまり価値の乏しい意見ともいわなければならぬ。政策を論じたければ代議士になれということですね。問題はそういうことなんだ。村上君なんかあがってきたからなんだけれども……。  そこで問題は、これを司法機関とするか——準司法機関という問題ですね。私は先国会以来、吉國長官の御答弁を静かに聞いていると、断定的に、それは実際不可能だという不可能説をとっておられる。この説をあなたはアウフヘーベンしなければいかぬと思うのですよ。いつまでも石頭でそんなたわけたことを言っておってはいかぬと私は思うのですよ。欧米はもうその方向で踏み切っている。要するに、人権尊重ということに民主主義は徹しなければならぬということになれば、人権侵害というものは最高度にこれが救済をせねばならぬ。救済される前に保障されなければならぬ、そういうことでございますね。だから、質問する以上その司法と行政というやつを調べてみたのです。そうしてみると、行政は行政なんだが、司法というのは民事、刑事、行政事と三つあるわけだな。したがって、現在準司法機関の性格を持たして、権利救済に重点を置いた機能を個々に持たせるということになれば、そこで実際問題として民事、刑事、行政事があって、したがって、機関訴訟というものが近代行政機構の中では大きく容認されておる。しかも英米方式が日本の法制度の中に大きくとり入れられようとしておる。こういう傾向の中に立って、長官がいままでここで説をなしていられるような準司法機関としてこれを独立させるということは、何だかしらぬ、アブソリュートリー・ノーなんというああいう態度では、こういう政策案件のきれいな解決をはかることはできないのではないか、こう思うのです。この点について大島審議官調査結果をも参考にとり入れられて、あなたの見解は去年、ことし、なお変化するところがないかどうか。いかがですか。
  270. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私は竹本委員にお答えしたことがございますが、準司法機関を設けることがアブソリュートリー・ノーではないということを申し上げたわけでございます。実はわが国の司法組織、行政組織が、現在のところでは行政行為に対する準司法機関的なものがない。またそれをつくるとするならば準司法機関と司法機関との係属、たとえば第一審省略といったような制度上の大改革を起こさなければならぬということがあるのではないか。またそれをしなければ、屋上屋を架することによって納税者の救済の道が達せられない。そういう意味では、将来の問題としてこれが不可能であると私は思いません。ただ現段階のシステムの上では異例のものになるので、このような改革が短期間に行なわれる可能性はないということで踏み切ったわけでございますということを申し上げたわけでございます。アブソリュートリー・ノーではないのです。
  271. 春日一幸

    春日委員 それでは確認をいたしますが、行政行為を批判するというところの独立行政機関というものの設置ですね、これは去年の答弁では、あなたは終始、これはアブソリュートリー・ノーではないにしても、きわめて異例だとか、はなはだ困難だとかいうようなことを言ってきておるわけなんだ。ところが大島審議官が欧米に実地調査の結果得られた結果は、いましゃばじゅうやっておるけれども日本だけやっていないということなんだ。彼我あわせ比べ判断をして、あなたの判断あるいは日本の制度、こういうものがはなはだしく民主主義の時流におくれておるとは考えられないか。
  272. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私は、現在の各行政機構、司法機構のつながりから見て異例である。というのはわが国のでございます。外国のではなくてわが国では異例である。わが国では御承知のように大陸法系から欧米法系につぎ木をされたようなかっこうになっております。司法優位の原則がとられましたが、行政優位については大陸法糸が若干残っておる。それを考えますと、そのつぎ木のところを直すとすればまさに準司法機関的なもの、司法と行政をつなぐつなぎ目を新しく考え直さなければならぬ。それは行政機構全体にかかってくる問題である。ここだけで直し切れない問題であるということで申し上げたわけであります。
  273. 春日一幸

    春日委員 私は、その説だとすると、吉國長官のその設定は必ずしも日本の行政機構の実態を把握してないと思う。たとえば、行政機関と司法機関との橋渡し機関みたいな性格、機能を持つものですね。これははなはだしく異例であると言われておるけれども、たとえば人事院はどうですか。あるいはまた、これは民間の経済行為の公正を期するということであるけれども、公正取引委員会もそうでございましょう。あるいは土地調整委員会どもそうであって、いままでみんながこれを例示して論じてきたところである。だから、そのような準司法機関が日本の行政組織の中に絶無ではないのである。したがって、その権利救済のためというところに重点を置けば、欧米の例にならって、そのような独立した機関を設けて、機関訴訟をそこに認めていけば、行政と司法の均衡というものは十分確保されていくではないか。この点いかがですか。たとえば人事院あるいは公正取引委員会あるいは土地調整委員会——海難審判庁はどうだったか知らぬけれども、そういうものはどうです。
  274. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 準司法機関がわが国にございますのはもちろんでございます。ただ、私が申し上げておるのは、行政行為に対する裁断を仰ぐ準司法機関は異例だ。準司法機関といたしましては、アメリカが入りましてからいろいろ準司法機関ができたことはもちろんでありますが、そのうち多くのものは廃止されておりまして、残っておるものはいまおあげになったようなものでございますが、これらはいずれも、たとえば公正取引委員会であれば民間の行為に対する審決を行なう、そうしてそれは司法第二審につながるものでありまして、まさにむしろ司法機関とも称すべきもの、それを行政機関で行なっておるものでございますので、準司法機関でございます。土地調整委員会につきましても、境界の争いをさばくという意味で行政機関があって、それを批判する意味の準司法機関がないということを申し上げたわけで、これは一つの新しい発想としては考えられると思いますけれども、実定法秩序としてはいまのところない。それを踏み切れというのは一つのお考えかもわかりませんが、それを踏み切るとなれば第一審との調整という非常に困難な問題がそこに出てくる。そこで、まずいまの形で審判所をつくって、その実績とともに新しい段階を踏むという考え方が一番実際的ではないかということが税制調査会の考えでもございましたので、そういうことを申し上げたわけでございます。
  275. 春日一幸

    春日委員 それは、あなたの認識はおかしいと思うよ。というのは、人事院は結局、たとえば処分庁の職員に対する不利益処分を批判することができる。これは無効なら無効と批判することができる。あるいは土地調整委員会は、通商産業局長の鉱業権の不許可処分等についてこれを批判することができる。すなわち、行政庁の行なった行政処分を批判する権能を人事院と土地調整委員会は特っておるのですよ。あるいは公正取引委員会も同様の性格、機能を持っておる。いまあなたは、そういうものを持っていないと言うけれども、それは事実に反すると思うけれども、どうか。
  276. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 人事院は御承知のとおり内閣全体の人事についての権限を有しておる機関でございます。そういう意味では、みずからの権限を主として裁定その他を行なうということである。行政機関そのものが人事院の人事権のもとに服しておるという関係にある。それから土地調整委員会は、私は不敏にしてはっきりいたしませんが……。
  277. 細見卓

    ○細見政府委員 土地調整委員会のほうについて補足して説明申し上げますと、これは通産省とか、あるいはそのほかの役所との間に競合が生じます事柄について、内閣におきます最終的な統一解釈を下すのが土地調整委員会、そういう形になっております。
  278. 春日一幸

    春日委員 そんなことはわかってますよ。われわれはここで質問台に立つ以上は、その周辺の事柄をミクロ、マクロで十分調べてきているのだ。この土地調整委員会は、土地に関して鉱業、採石業等と農業、林業その他の産業及び一般公益との間の調整をはかる。調整をはかる以上は、所管庁の行政執行において、その執行された結果について訂正を求めるとか、そういう批判をすることの権能が与えられておるのであって、そういうことは厳然として与えられておる。それから人事院というものは、これはすべて国家公務員がその管轄下にありとはいいながら、しかし行政庁対人事院という関係でいうならば、所管庁の人事権者が人事行政を行なったその結果について不利益処分があったならば、それが不当不法であるということになれば、それを批判することができる。そういうふうですから、したがって、そういうような準司法的権限機能をこれらは持っておるものと解されておるのが一般的な理解だと思うのだ。あなたのように、そういう行政機関の行政執行に対してそれを批判する権限をこれらの二つの機関が持ってないというようなことは、これは間違った解釈だと思うが、どうですか。
  279. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 人事院につきましては、人事院そのものが人事の基準を定め、各省に対する最高機関という立場をとっておるわけでございまして、解釈によっては春日委員のような解釈もあり得るかと思いますが、明確に行政処分に対するその特定の不服裁定機関として存在するものではない、それらを含んだ上級機関としての立場にあるということがいえると思うのであります。その点で、単純なる行政行為に対する判定機関としての準司法機関とは若干様相を異にするかと思います。  土地調整委員会におきましては、これは鉱業と保健衛生、鉱業と文化財または公共施設の保護、鉱業と公園または温泉資源の保護、鉱業と農林業その他の産業との利益、これらを通じた複合的な利益を裁定するために、各行政分野の調整をはかるために特別の機関を設けたという性質のものでありまして、いわゆる通産行政に対する不服申し立ての異議申し立て機関とは、性格が若干異なっているのではないかということで、私は本質的に全く同じものとは考えられないのじゃないかということを申し上げたわけであります。
  280. 春日一幸

    春日委員 これは、行政機関と司法機関というものを類別すると、その司法機関の中には民事と刑事と行政事とがある。だとすれば、その行政事の中に、いま言うたような不服処理や権利侵害のことや、不適当なことやそういうことが実在する、そういうものを調整し、そういうものを批判し、そういうものを公益の名において公正に改善していくという、こういうものがあるわけなんだ。司法というのは民事と刑事ばかりでなしに行政事というものがありとすれば、行政事というものは何かといえば、それですよ。またそれ以外にないのだ。だから現にあるものは何かといえば、しいてまさぐれば、人事院だとか土地調整委員会だとかあるいは公正取引委員会だとかいうようなものがある。現実にある。だから、立法論として不能というのであるのか。立法論で不能でないとするならば、政策論としてこれが不適当だ、こういうのであるのか。理論の分かれるところだから、この点をひとつ明確にされたい。問題は、立法論として不能であるのか、政策論として不適当であるのか。あなたの長官としての見解、大蔵省としてこの見解はいまの時点でどうなっているのか。将来への展望を考えなければいけないですわ。
  281. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 司法機関の中に民事、刑事、行政事件の三つがあることは、これはそのとおりだと思います。行政事件についての最終判決機関としては司法裁判所であるということが確立されたために、従来民事、刑事であったものが、行政事を加えて三つになったということだと思います。そこで、民事についての前段階として準司法機関を設け得るとするならば、これはまた一つの考え方だと思います。刑事についても、ある意味では公正取引委員会などはその段階に入ると思います。問題は行政事件でございますが、行政事件も、先ほど申し上げましたような行政行為そのものを司法的な立場で行なう場合には、準司法機関としての行政機関というものがあり得ると思うのです。その場合に行政行為に対する裁定機関としての準司法機関ができるかできないかがいまの争点だと思うのでございますが、それ自身は、私はいまの日本の法体制ではできないことではない。ただこの分野は、いまのところは全くほかにはなくて、異例であるので、これだけをいまつくるとなるとかなりの大きな改革になり、それだけで相当な問題が生ずるのではないか。早急な解決をはかるためには前段階としてこれをやったほうがいい、そういう見解でございますので……。
  282. 春日一幸

    春日委員 それなら、問題点を変えて、この点をひとつさらに明らかに認識をし合いたいと思うのですけれども国税庁の決定というものは、いま行政機関としては徴税行政に対する終審ですね。それに対して不服がなされてくる。不服の救済を行なおうとする場合は、ここに租税不服審判所というものをつくるとすれば、それは独立した機関としてつくる場合、行政機関としてはこれは設置できないでしょう。国税庁から独立した機関として、そうして国税の不服審判を行なおうとすれば、独立した機関としてはこれは設置することが組織法上できないと思うが、どうですか。
  283. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 法制的な考え方からすれば、たとえば独立委員会というようなものが設置できないことはないと思います……。
  284. 春日一幸

    春日委員 いや、不服審判所というものは独立官庁として……。
  285. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまの内閣組織から申しますと、内閣の外局とかそういう形、あるいは大蔵省の外局とかいう形で設置されることになるだろうと思います。独立の官庁としては、独立委員会の形でなければおそらく不可能ではないかと思います。
  286. 春日一幸

    春日委員 そうすると、国税庁とは全然系統を別に、同じ徴税行政に関する行政機関を別に設置することの意義は何ですか。やはり国民の侵害されたる財産権とかそういうものを救済するという政策目的に出るものでございましょう。その点はどうなんですか。救済をする必要がありとするならば、それは国税庁の組織の中で完全救済の措置がとられてしかるべきものであって、全然別個の行政機関を国税庁機構と無関係に全然別個に設定しなければならぬ、こういうことはあり得ないと思うのだな。
  287. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 むしろそういう意味で、私ども国税庁の中に審判所をつくったほうがいいということを申し上げているわけでございます。
  288. 春日一幸

    春日委員 わかった。問題がだんだんはっきりしてきた。そういう意味国税庁の中につくったほうがいい。ならば、去年の委員会の決議は、国税庁から独立した租税審判所制度の創設、これを委員会の決議としておるわけだ。与党も賛成と言っておるわけだ。大蔵大臣は十分尊重しますと言っておるわけだ。この関係はどうなりますか。できっこないものを、そいつを賛成したのか。そして十分尊重するなんていうでたらめを言って口裏を合わせたのか、この関係はどうです。
  289. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはまさに春日委員指摘のように、国税庁と別個の独立の機関をつくれば、行政機関の内部において法律の解釈が二途に出るであろうから不適当ではないかという意味をおっしゃったと思うのであります。この委員会の決議は、むしろ準司法機関的な意味を持って、つまり国税庁より上位の機関として、その解釈が国税庁をしばるというような意味のものをつくり、同時にそれはいわば司法機関的なものでありますから、第一審を省略して、それこそ高等裁判所に直ちに係属をするという体制を考えろという意味をお含みだと私は考えるわけであります。そういう形が将来において不可能であるかどうかは、先ほど来申し上げておりますように、現在の日本の行政機構、司法機構が大きく変われば、外国にもよくある例であり、不可能なことではない。その時期をいつにするかを今後真剣に検討せよという意味として、大臣も十分今後も検討するとお答えをしたものと私は理解をいたしておるわけであります。
  290. 春日一幸

    春日委員 そうだとすれば、委員会の決議に基づいてその方向——大島君を海外に派遣をして、はたせるかな海外の実態も、要するに大陸の実態も英米の実態も、われわれが指摘したように・権利救済の実が確保されるように措置されておる。しかし、日本の社会情勢、経済情勢の実情がそれに即応し得るものか、なじみ得るものかどうかということは、これは政策論だ。そういう意味で問題点は、準司法機関としての創設をここで提唱しておるということは、御理解願えるかどうか。
  291. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その御趣旨であると思って検討をいたしておるわけであります。
  292. 春日一幸

    春日委員 われわれ委員委員会の決議は、すなわち準司法機関として国税庁の優位に置けということなんですよ。そしてそれに対して自由民主党もオーケーとおっしゃっておるのですね。大臣も協力しなければならぬと、ここに国民の前に意思を明らかに示しておる。その点を明らかにすれば、いまかりにこれが無修正で通ったとしても、さらにその方向に向かって制度の改善、改革が進められるか。進められるまでの間は、その運営の妙を発揮して、その実態を確保するか。これがなされなければならぬと思うが、この点はどうか。
  293. 細見卓

    ○細見政府委員 まず準司法機関として社会に権威を持った裁決ができるようになりますには、それにふさわしい審判官の人たちを得て、内容を充実していくことが必要だと思うのです。それがまた司法機関にも、第一審を省略してもだいじょうぶだという印象を与え、あるいは世論としてもそういうことを認めていただけるようになろうかと思う。そういう意味におきまして、われわれはまずこの制度を発足させていただきますれば、ここにおきましてできるだけよき人を得て、そしてりっぱな審査の決定の事例をつくり上げ、そういうものをつくり上げていく過程で、権利救済機関として準司法機関としての実が備わったものになるというふうに持っていく。それで、その段階で準司法機関としてあらためて要求するというふうに持っていくのが筋かと考えておるわけであります。
  294. 毛利松平

    毛利委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  295. 毛利松平

    毛利委員長 速記を始めて。
  296. 春日一幸

    春日委員 それでは、ただいま理事会の御協議がなされたようでございますが、あとの問題は大体四点にしぼられておりますけれども、いずれにしてもこの法案が一歩前進の役割りを果たすものという認識のもとに、早期の成立をはからなけれ、ばならぬという時限の制約もわれわれよく認識しております。けれども法案がここで議決される前に疑義はたださなければならぬと思う。そういう意味で日をあらためて私の質問をお許しいただくことにいたします。この際、時間的な制約かあるようでありますから、私の質問をこれで留保いたします。
  297. 毛利松平

    毛利委員長 春日委員の残余の質問は留保することとし、小林委員質疑を許します。小林政子君。
  298. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は国会に参りまして、前回、六十一国会で審議が行なわれておりました国税通則法の一部改正法案委員会の速記録を熟読いたしました。そして多くの問題点が質疑の中で明らかにされておりますが、納税者の権利救済ということでその手続の改正を行なうという趣旨のものでございますが、行政不服審査法の手続規定第二章の第一節から第三節までをはずして、国税通則法に不服審査の手続規定をあらためて規定したのは、ここに政府に深いねらいがあるのではないだろうかということを感じました。私はこの点を中心に質疑を行ないたいと思います。質問の時間等も限られておりますので、その手続規定の中でも、納税者にとってきわめて重大だと思われます九十七条関係を中心といたしまして、そのほか何点かについてお伺いをいたしたいと思います。  質問の第一は、今回の法改正では、異議の決定あるいはまた異議の申し立てを行ないまして三カ月たっても決定がない場合、その時点で更正決定の理由を明らかにする、こういうことになっておりますが、本日の委員会の中でもいろいろと論議が行なわれれておりますとおり、本来課税は厳格な法律上の根拠を有する、こういうことが法のたてまえであると同時に、また憲法の大原則でもある、私どもこのように考えております。したがって、審査請求が行なわれたこのことについてのみ理由を処分庁が付すということは、この大原則に違反した不当な課税になるのではないだろうか、私はこのように考えます。特に白色申告等に対する更正決定で理由の付記を義務づけていないのはなぜなのか。また、理由を付記できない理由等について明確に御答弁を願います。
  299. 細見卓

    ○細見政府委員 白色申告の場合は、御承知のように帳簿とか記録とかが十分整っておらないわけであります。したがいまして、そのような場合にはむしろ推計課税のほうを行なわなければならないということでありますので、推計課税につきまして、その推計課税の根拠というようなものはいろいろな、白色申告者が提出される断片的な資料によらざるを得ない、それが実情でございます。むしろ青色申告につきましては、青色申告の特典といたしまして、正確な記帳によって正確な納税額あるいは所得額が計算できることになっておりますので、それを記帳された記録を否認して更正するのであれば、当然それに対して理由を付すべきだというのが法の考え方であろうかと思います。
  300. 小林政子

    ○小林(政)委員 いま青色の場合にはともかくというお話でございますけれども、特に白の場合には根拠規定等が明確になっていないので、その時点では理由を付さないというか、付せない理由についてお述べになられたわけでございますけれども、税というものが本来厳格な法律上の根拠、それによって処分庁としても課税権を当然行使していく、こういう点から考えれば、申告をいたしました納税者が自分の所得実態について十分把握した上で申告を行なっている。それについて更正決定を行なう場合に、全然理由も付さずにこのようなことが行なわれるということは、本来のこの法の精神からいっても、相当問題があるのではないか。特にいまこの救済規定の論議が行なわれているわけでございますけれども課税の処分を行なった後、納税者の権利救済ということも重要な問題ではございますけれども、むしろ国家権力の恣意的な課税の処分というようなものを未然に防いでいくというようなことは、いまの時点ではきわめて重要ではないかというふうに考えますけれども、もう一度この点について御答弁を願います。
  301. 細見卓

    ○細見政府委員 税金の問題はまさに非常に重要なことでございまして、したがいまして、憲法でも納税義務というのがあり、その納税義務というのは、先ほど政務次官もお答え申し上げましたように、申告によって納税していただくのがたてまえであり、しかもその申告は正しい申告であるというのがたてまえであります。したがいまして、白色申告者でありましても、自分がかくかくの所得申告するのにあたっては、これこれの理由でこういう計算をして申告するのだというのがむしろ法の前に正確な納税義務を実施していただくためには必要なことだと思いますが、残念ながら現状におきましては、白色申告者については十分な資料あるいは十分な計算根拠を明らかにしていただくわけにいかない。したがいまして推計課税等のようなこともやむを得ず行なわざるを得ないというのが実情であります。したがいまして、それらが不服の段階にまで出てまいりますと、こういう点があなたの更正決定に対して問題があるのだというようなことになって初めて争点も明らかになり、理由も付記できる段階に至る、こういうわけでございます。
  302. 小林政子

    ○小林(政)委員 それではちょっとお伺いいたしますけれども、異議の申請を行ないまして、そして異議の申し立てが決定をいたしまして、協議団がその処分庁に対してそれに対する弁明書というようなものの提出を一応求めるたてまえになっておりますけれども、一年間の年間件数で大体この弁明書というものがいままでの実績の中でどのくらい提出されていたか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  303. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在の協議団の運営におきましては、協議団みずからが税務署に参りまして実際の調査をいたします。弁明書という形の慣習をつくらずに直接協議団が調べてくるという体制になっておりますが、今度の新しい制度では答弁書を提出をするということが義務づけられるわけでございます。
  304. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうすると、いまおっしゃったようなたてまえだから、したがって弁明の書というものはとらないたてまえをとっていた、したがって一ぺんもそういうものは出ていないというふうに解してよろしいのですか。
  305. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在のところはそのとおりでございます。
  306. 小林政子

    ○小林(政)委員 しかし、行政不服審査法の中にも明らかにこの点については明記されておりますし、協議団が実際には国税の当局の中の機構であるとはいえ、やはり権利救済という立場から異議の申し立てという制度が取り上げられている以上は、当然このような処分庁が弁明書というものを提出するということは、先ほど来から局長は納税者立場というものを尊重し、基本的な人権を認めていくのだということを再三おっしゃっておりますけれども、その中身の問題として、これらの問題についてはいままでやっていたことが非常に遺憾であったというふうなことが言えるのじゃないかと私は思いますが、その点をお聞きして次の問題に入りたいと思います。
  307. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 弁明書を提出させるという形でいわば一種の争点主義的な執行を行なうという考え方ももちろんあると思いますが、協議団ではむしろみずから処分庁の内容を調査をいたしまして、そうして弁明書というよりも直接資料を得て判断をいたしてきたのが実情でございます。そのほうがより的確であるという前提で、不服審査法においては「弁明書の提出を求めることができる。」ことになっておりますが、みずから弁明書にかわるべき調査を行なう。それは一つは税務部内にあるために税務部内の書類というものを上級官庁の国税局として徴するということが可能であるという点もあったかと思います。そういう意味で今回の不服審判所は国税局の系統から分かれますので、ちょうど行政不服審査法と同様に答弁書をとらざるを得なくなるという構成をとったわけでございます。
  308. 小林政子

    ○小林(政)委員 いまの御答弁、私まだまだ納得できませんけれども、しかし時間の関係等ございますので、これらの中身の問題等については後日に譲りたいと思います。  次にお伺いいたしたい問題は、更正決定に対しまして納税者が不服である、この不服審査の申し立てをいたしました場合に、その審理すべき対象、具体的に審理の対象というものはどこに置かれるのか、何なのかという点について明確に御答弁を願います。
  309. 細見卓

    ○細見政府委員 それは、争われますのが所得でございますので、総所得であろうかと思います。
  310. 小林政子

    ○小林(政)委員 争われるものが所得であるということでございますが、私は今回の、いま審議をいたしております国税審判所の設置等を含めての議題は、当然これは救済機関としてどうすべきかということが大前提になって討議がされているのだというふうに理解をしておりますが、その場合に、行政不服審査法の第一条にこれはその根本的な規定が明らかにされております。たとえば「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使」に対して国民の権利や利益の救済をはかるということが、第一条の法の精神で明らかにされているわけでございます。だとするならば、私は、税務の不服審査等に対する対象というものは、税務署が処分をしたその更正決定そのものが違法であるか、あるいはまた不当であるか、あるいはそうでないかということを審理の対象にすべきではなかろうか、法解釈はこのように解すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  311. 細見卓

    ○細見政府委員 税務の争訟におきまして争いとなりますものは所得であり、また正しい所得の決定が権利の救済にもなり、また裁判におきましても、正しい所得の発見が裁判による救済になっておるのが日本の現状でございまして、その意味でやはり税法によりまして正しく計算された所得が幾らであるか、何であるかというのが争いであると思います。
  312. 小林政子

    ○小林(政)委員 どうしても短い時間でやっておりますので、抽象的な論議といいますか、中身の問題になかなか入れないわけですけれども、私は、更正決定をかけてきた、処分を決定してきたというところに、やはりそれに対しての意見があるから申し立てをしているんだということで、ただ所得の総額が明らかになれば、速記録でも真実の発見ということばで言われておりますが、そういうことが明らかになればそれでいいんだということじゃなくて、当然争われるべき対象というものをもっと明確に規定をしておきませんと、これは私はいけないのじゃないか。局長は運用の面等について、これらの問題については総額主義、争点主義ということがあるけれども、運営の面で云々という先ほど御答弁等もございましたけれども、私は、自由に裁量できる運営の、面ということでなくて、より明確に運用するというたてまえをとっている以上、その立場をもっとはっきりさせていただきたいというふうに考えます。
  313. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 租税の問題は、租税法に基づいて先ほど春日委員が仰せられましたように、一義的に本来課税標準がきまるべきものでございます。その課税標準が正当であるということを通じて権利の救済が行なわれるというシステムであると考えます。したがいまして、租税法が要求される正当なる課税標準が侵害されているかどうかということが争いのもとであり、また正しい課税標準によって課税を受け、それが義務であり、権利であるという関係が租税法の特色であると思います。普通の行政処分と租税法の処分との違いがそこにあるかと思います。したがいまして、裁判所におきましても、この税務に関する訴訟はいわゆる債務不存在の確認の訴訟という性格を持ちます。つまりそれは租税法に基づくその人に対する租税債権は一つしかなく、それを確認する訴訟であるという構成でございます。そういう意味からは行政段階におきましても、課税標準が正しいか、課税標準が何であるかを追及するのが、それを通じてこそ初めて権利救済ができるという考え方でございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、納税者の異議というものが大部分においては自分の課税標準が正しいという前提で来ておるだけに、それに対して権利救済という立場をとるならば、その請求が正しくて課税標準がそれ以下であるかどうかということをもっぱら考えればいいではないかという立場をとれば、そういう意味では、理論的には別といたしまして、運用上はそれ以上の所得を追及するというやり方はやめて、その主張の範囲内で課税標準がその範囲内になるかどうかということだけ審査すればいいではないかということが先ほどの答えでございまして、審査請求も同じ立場でいくべきだ。その考え方は争点主義に近い考え方になりますけれども、租税関係の訴訟というものは本来総額主義的なものである。しかし運用を争点主義的にやることによって権利救済をより深めることができるのではないかということを申し上げたわけでございます。
  314. 小林政子

    ○小林(政)委員 たいへん専門的なことばなどが出てまいりまして、私どもしろうとにはちょっとよく理解できない面もございます。国民が聞いても、だれが聞いてもわかるようなことばで、専門家でございませんので、ひとつお答えを願いたいと思います。  それでは次の質問に入りますけれども、九十七条を中心にお伺いをいたしたいと思います。  九十七条の第一項、担当審判官は、審査請求人の申し立てがあれば原処分庁に対して帳簿書類など物件の提出を求め、また物件は留め置く、この九十七条の一項第一号から四号までに規定されております行為というものは、必ずこれは処分庁に対して実行をいたしますか。
  315. 細見卓

    ○細見政府委員 これは法文の中にも書いておりますように、「審理を行なうため必要があるときは、」ということになっておりまして、必要があると見ればそこに掲げております四号までの行為を行ないますし、それを行なわなくとももう明らかだというものについては行なわないこともあり得るというのがこの「必要があるときは、」という意味だろうと思います。
  316. 小林政子

    ○小林(政)委員 必要があると認めたときはということでございますが、ということは、必要がないことを認めることがあるということになるわけですね。そうしますと、行政不服審査法では審査請求人の申し立てによって、「物件の提出を求め、かつ、その提出された物件を留め置くことができる。」と、はっきり規定をいたしておって、今回のこの改正の中で「必要があるときは、」ということが書かれてきたわけでございまして、これでは、権利救済機関として行政不服審査法よりも納税者の権利救済については後退したのだということをいわざるを得ないと思うのですが、この点についてお伺いをいたします。
  317. 細見卓

    ○細見政府委員 「審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件」云々とありまして、「その提出された物件を留め置くことができる。」というわけでありまして、法意は、この九十七条と同じ意味で「必要があるときは、」できるという意味だと思います。
  318. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は法律用語というものはわかりませんけれども、何々することができるとかということが、よく法律の用語には使ってありますけれども、この場合にはそれを行なうということが一応いわれているというふうに解釈すべきだということを伺っております。しかし「必要があるときは、」ということがはっきりと今回の改正法案に明記されたということは、これは明らかに質的に違う次元の立場で入れられたのだというふうに考えます。そういう点から考えると、これはやはり、局側では、国税庁側では、権利の救済機構として、むしろよりよいものにしていくのだということで、第三者機関的な性格等も持たせながらということを盛んに御説明をされておりますけれども、私はむしろ、従来の法の考え方よりも後退しているんではないか、このように考えざるを得ません。この点については、もう一度明らかにしていただきたいと思います。
  319. 早田肇

    ○早田説明員 九十七条のいろいろの権限は、要するに担当審判官の権限を定めたもので、「必要があるときは、」という字句がなければ、必要がなくてもできるということになってしまうわけであります。むしろ、任意に行なってはいけない。合理的に必要と認める審理を行なう必要があるときにそういう権限を行使できるんだという規定でございます。
  320. 小林政子

    ○小林(政)委員 たとえば、納税者の方から、非常に自分にとっては有利な書類税務署にあるけれども、それの提出等をぜひひとつしていただきたいというような申し入れ等があったときに、「必要があるときは、」ということは、だれがそれを認定するんですか。いわゆる審判官ですか。必要がないということになれば、それはもう取り寄せないということにも通ずるので、この問題は、「必要があるとき」ということは単なる問題ではなくて、非常に大切な中身を含むのではないか、このように考えます。いまの解釈等についても、私は納得いたしておりません。したがって、同じような内容に入りますので、次の点について質問したいと思います。  職権の基準ということについて、審判官が職権で質問、検査をする場合には、これも九十七条の一項で「審査請求人の申立てにより、又は職権で、」というふうにいっていますけれども、このようなときに、普通どのような職権というものを行使するのか、この点について、まずお伺いいたします。
  321. 早田肇

    ○早田説明員 審査請求事案につき、処分庁あるいは審査請求人、そういう方から、いろいろ両方の御主張がある、それを調査するときに必要がある場合でございます。
  322. 小林政子

    ○小林(政)委員 いまの答弁、ちょっとよく聞こえなかったのですけれども……。
  323. 細見卓

    ○細見政府委員 「職権で」と申しますのは、審判官が正確な事実を知るために、必要があるときには、申し立て人から、審査請求人から何ら申し立てがなくても、自分でこういうものを見るべきだ、あるいは、こういうものの提出を求めるべきだということを自分で判断できるというのが「職権で」という意味でございます。
  324. 小林政子

    ○小林(政)委員 審判官が必要があるとき、そして、自分が判断を求めるときというようなことでございますけれども、私はやはり、これはどんなことを質問しても、あるいは、どのような物件の調査をしてもよいということではないと思います。必要だと認め、自分が判断の資料にしようと思うということの場合ということでございますけれども、どんなことを質問してもいい、どんな物件を調査してもいいというようなことではないと思います。職権で行なう調査の範囲というものがおのずからあるだろうというふうに考えますが、この点について、この際お伺いいたしておきます。
  325. 細見卓

    ○細見政府委員 そういう意味におきまして、審判官の権限をむしろ抑制する意味で「必要があるときは、」ということになっておるわけであります。
  326. 小林政子

    ○小林(政)委員 さっきの「必要」といま言われている「必要」とは、ちょっと違う内容のものでございますね。  そうしますと、お伺いしますけれども、きょうの委員会でも問題になっておりましたけれども、いままでも、税務当局が行なった調査の場合、調査権の乱用ではないか、あるいはまた不当な調査というようなことを実は私どもよく耳にいたします。たとえば直接、所得についての計算の要素である帳簿だとか書類、そういったようなもののほかに、私生活面の収支だとかあるいはまた私生活上の財産の調査だとか、現金などについてもいろいろ質問をしたりあるいは検査を行ない、きょうの例にも出ておりました戸だなとか机とか引き出しの中に至るまで職権で捜索しておるという事実を聞きますけれども、私は、これはやはり明らかに行き過ぎであり、このようなことは人権の侵害だというふうに考えます。したがって、審判官の審理は、争っている課税処分、それに限定することが当然だというふうに考えますが、この点、先ほどから何回か聞いておりますけれども、明確に御答弁願います。
  327. 細見卓

    ○細見政府委員 御承知のように、生活費は、所得税法におきまする経費でなくて、所得の処分であるわけであります。したがいまして、その所得の決定にあたりまして、帳簿書類等がある場合は別でございますが、帳簿書類等がない場合には、生活費というのも所得額の大小を決定する重要な要素になるわけでありまして、その限度において調査するわけであります。特定の生活費のどうこうを判断するということでなくて、所得額が幾らあって、その中の幾らが生活費として使われておるかということが所得を決定する上に必要だ、そういうわけであります。
  328. 小林政子

    ○小林(政)委員 生活費の問題についても、所得の問題としては、いまの答弁だと、幾らでも聞けるんだ、何を聞いてもかまわないんだ、あるいはどのような物件でも、必要だと思えばそれは提出させることができるんだということになりますね。きょうの質疑の中でも明らかになっていたように、各委員の方々から、やはり職権乱用が行なわれるんじゃないか、行き過ぎがあるんじゃないか、こういった幾多の事例が報告されて、ここでも討議がされております。私は、そういう点について、むしろそのようなものをなくしていくためにも、範囲なりあるいはまた課税処分というようなものに焦点を当てて、当然限界を明らかにすべきだと思いますけれども、こういうお考えは全然持っておられないで、ともかく所得関係があるということで、生活上のそういった収支の問題、財産の問題を聞くことはかまわないんだというような御答弁でございますか。
  329. 細見卓

    ○細見政府委員 従来の制度と比較してお考え願いたいと思うのでありますが、従来、審査請求におきまして、協議団では、所得税の審査請求につきましては、所得税法上の調査権がございまして、これには、質問、検査に対して不答弁等の場合は行政罰があるわけであります。それに比べまして今回の審査の請求は、審査請求を申し立てた人が、自分でこうした所得の内容を立証する事柄について積極的に何らの資料提出とか申し出をされないときには、その方の審査請求は棄却されることになるだけであって、従来のように、調査に協力しなかったということによる行政罰というものがなくなっておるだけでも、この制度は一〇〇%ではないとは思いますが、現在の日本におきましては権利救済のあり方としてはかなり進んだ制度であろうかと私どもは考えておるわけであります。
  330. 小林政子

    ○小林(政)委員 私の質問にもう少し明確にお答えいただきたいと思うのです。私は制度の問題をいまお聞きしていたのではございません。調査の問題等について課税処分に限定することが当然だというふうに考えるけれども、その点については幅を広げるというようなことで、何を調べてもいいんだ、こういうようなことは、いままでも幾多の越権行為その他の問題が起こっているので、課税処分に限定するということが当然だというふうにお聞きしているのであって、もっと簡潔に短くお答えをいただきたいと思います。
  331. 細見卓

    ○細見政府委員 総所得を決定するに必要な範囲の調査をいたし、それ以上のことをしてはいけませんし、それ以下でもいけない、かように思っております。
  332. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は何か非常に誠意のない御答弁のようにちょっととれまして、もう少し中身のある答弁でなければ、抽象的で、よくこちらも理解ができない、そういうような問題でございますので……。
  333. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり、現在の税制では、まず第一義的に納税者申告をする、それに対して税務署はその申告が正確であるかどうか調査をする義務を持つわけでございます。しかし、調査することが必要な場合に、帳簿書類等が整備をされておって、その提出を求めて直ちに提出されれば、質問検査権というものは必要ないわけでございます。したがいまして、調査のため必要な場合には質問、検査ができるというのがいまの一般の課税処分の場合の問題でございます。この審理の場合には、審査のために必要があるときには質問、検査が行なえる、審査のための調査に必要であれば質問、検査が行なえるという法制をとっております。御説のように、先ほど来申しておりますが、理屈としては総所得金額ということになりますけれども、この審査請求が正しいかどうか、それを判定する範囲では質問、検査権を行使しなければそれが明らかにならない場合がある。そういう意味で、審理のため必要な場合に限ってそういう権限を行なうんだ、こうお考え願ったらいいと思います。
  334. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題については一応私ども、救済機関という立場性格から考えても、課税処分というようなものにしぼっていくべきだということを主張いたしまして、次に私は参考人、関係人の問題についてお伺いいたしたいと思います。  一項一号の参考人、関係人の範囲というものはどこまでをさすのか、お伺いいたします。
  335. 早田肇

    ○早田説明員 関係人とは、その審査請求事案につきましての代理人あるいは審査請求人の使用人、その従業者等でございます。参考人とは、そういう人以外にも、審査請求事案につきまして審査機関がその判断の参考に供する意見を聞く場合の、その相手方でございます。
  336. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、この間提出をしていただきました政令の資料の中に特殊関係人、参考人という人たち規定をされております。そのほかに参考人、関係人というものはいないということでございますか。
  337. 早田肇

    ○早田説明員 特殊関係人と申しますのは、罰則の関係で、御本人と同視すべき人を規定しておるわけでございまして、法律で申しますと九十七条の第四項に「審査請求人と特殊な関係がある者で政令で定めるものを含む。」そこの「政令で定めるもの」を政令の要点でお示ししておるわけでございます。
  338. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、当事案に関連ありと認めるということですけれども、一体参考人とか関係人というのはどの範囲まで及ぶのだろうかということは私ども非常にはっきり聞いておきたいわけです。この範囲が規定してないと、参考人、関係人というのはどこまでなのかということがなければ、これは無限に広がっていく可能性があるわけです。どういう関係であるかというのは、間接的なこういう関係であるとか、あるいはその他の解釈もできましょうし、参考人、関係人というようなものは、これは当然無限に広がっていくのではないだろうか。したがって、審査請求を申請人がしようといたしましても、取引先やお得意先やあるいは親戚だとか縁者などに迷惑を及ぼしたらということをおそれて差し控えてしまうというようなことにもなりかねませんし、まして罰則が適用されるだけに、参考人、関係人の範囲は法律で明確に規定すべきだと考えますけれども、御所見をお伺いいたします。
  339. 早田肇

    ○早田説明員 質問検査権の対象はいまお話しのとおり、関係人、参考人でございますが、関係人、参考人ということでだれでもよいということではなくして、まず文言上、関係人、参考人と申します基準は、当該事案を審理をするために必要と認められる合理的な範囲内の人間である。したがいまして、その事案の内容等によりましてそれぞれ異なってくるかと思います。
  340. 細見卓

    ○細見政府委員 いま第三課長から申し上げたことに尽きるわけでありますが、小林先生非常に重要視しておられますので、私からも申し上げますが、この参考人及び関係人につきましても、必要がある場合というのがかかってくるわけでありまして、必要でない人に聞くとか、必要でない人を呼び立てるとかいうようなことはいたさないし、それに、先ほど来長官が申し上げておりますように、審理にあたっては実際的には争点主義のような運営をしていくということになりますれば、おのずから呼び出す人もきまってくる、その争点を決着つけるのに必要な人にしぼられてくる、こういうわけになろうかと思います。
  341. 小林政子

    ○小林(政)委員 罰則適用もされておりますので、私は、一応参考人、関係人というようなものは特殊な人で政令で定めてということになっておりますけれども、少なくともこういう場合には法律で明記すべきが妥当であろう、このように考えます。  次に、第九十七条の四項の「審査請求人等の主張の全部又は一部についてその基礎を明らかにすることが著しく困難になった場合には」その「主張を採用しない」ということが書かれておりますけれども、第一にお伺いいたしたいのは、主張の基礎を明らかにするということについてお伺いをいたしたいと思います。
  342. 早田肇

    ○早田説明員 主張の基礎を明らかにすると申しますのは、御本人の審査請求書に記載されました趣旨、理由を、記載されておりますその趣旨、理由が単に書かれておるということでは単なる主張にとどまるわけでございます。必要に応じましてその主張というものの実体を調査する必要もあるかと思います。そういう場合のことでございます。
  343. 小林政子

    ○小林(政)委員 趣旨と理由ではこれは主張であって、それにその趣旨と理由の実体ですか、具体的にはどういうことになるのですか。
  344. 早田肇

    ○早田説明員 要するに、御本人が、税務署のこういう処分が不服であると申されましたその不服、その主張の裏づけとなる基礎でございます。その主張が単なる紙に書かれたものではないということも、事案の内容によっては確認をいたす必要があります。
  345. 小林政子

    ○小林(政)委員 たとえば具体的には、主張している帳簿なり何かということですか。もう少しわかりやすく言ってもらいたいのですけれども……。
  346. 細見卓

    ○細見政府委員 私は百万円の仕入れ漏れがありまして、実は百万円仕入れがありますと言われた場合に、どこから仕入れたか、あるいはどういう品物を仕入れたかということがなくて、ただ百万円の仕入れ漏れがありますということだけ書かれたのでは困るわけで、どこどこからどういう品物を百万円仕入れました、そういうことがほしい、そういう意味です。
  347. 小林政子

    ○小林(政)委員 それではお伺いいたしますけれども、これは「審査請求人等」ということがうたわれておりますので、審査の請求人と当然処分庁が対象になると思いますけれども、主張の基礎を明らかにしなかった場合には、その処分は取り消されるのですね。
  348. 細見卓

    ○細見政府委員 書いてございますように、審査の請求のその部分の主張を取り上げない、したがって、その部分は棄却になるというわけでございます。
  349. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、推計課税の場合に、処分庁も審査請求人も、その主張の基礎というものが双方とも明らかにできなかった場合はどうなりますか、お伺いいたします。
  350. 細見卓

    ○細見政府委員 できるだけの審理を尽くして、可能な限り真実を発見していくこと、そして、ここで行政審査をいたしまして、なお真実が間違っていると思われる方は、地方裁判所なり何なりでさらに真実を発見していただく、それ以上のことは無理でないかと思います。
  351. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、処分庁も請求人もその基礎というものが明らかにできなかった場合、当然これは課税の根拠というものも証明されないのですから、原処分の主張というものは採用されず、権利救済制度という、たてまえからいっても、これが取り消しということが私は当然だと思いますけれども、そのように解釈してよろしゅうございますか。
  352. 細見卓

    ○細見政府委員 ここにございますのは、質問、検査に応じなくて主張を明らかにできないわけですから、質問、検査に応ぜられて、そして具体的なものを出された場合には、課税側の推計の根拠と提出されたものとの証拠としての価値判断を行なって、真実に近いものを取り上げるわけでありますし、この場合は、正当な理由がなくて質問や提出要求あるいは検査に応じない、つまり審査請求して直してくれとおっしゃっておって、いやわしはおまえの話は聞かぬ、あるいはおまえには何も言わぬと言われたのではさばきようがないではないないですかというのがこの四項でございます。
  353. 小林政子

    ○小林(政)委員 私がいま主張していることは、審判官に対して——これは書類審査ですね、ですから、申請人が一応書類で自分の主張なりをいたしますと、処分庁のほうでも、それにまた書類で自分の主張を裏づけるものといいますか、そういうものを出していく、こういうことが何回かやられ、あるいはまた審判官が自分で調査もした、そういう時点の中で、処分庁も請求人も両方主張はしているけれども、いろいろ書類お互いに出したりしてやっているけれども、その基礎というものが両方とも明らかにできない、こういった場合はどうなのかということを私はお聞きしているのです。
  354. 細見卓

    ○細見政府委員 審査請求された人が審査請求の理由を明らかにできないというのは、やはりそれなりに審査請求の理由がなくなるわけでありまして、現実に審査決定にあたってはより合理的な、より真実に近い方向で、神ならぬ身でありますから、そのときの状態で判断するということになるのではないかと思います。
  355. 小林政子

    ○小林(政)委員 そのような状態のもとでは原処分そのものが取り消されるということは、私は当然だと思いますが……。
  356. 細見卓

    ○細見政府委員 所得税法に合理的な推計課税規定があるわけでありまして、その推計が合理的であるものについては、課税処分としてはそれなりに正当なものだと私は思います。
  357. 小林政子

    ○小林(政)委員 これは水かけ論みたいですけれども課税の根拠というものが、双方やり合って明らかにならないことを前提として私はいま御質問しているのですよ。そうして、その主張の基礎というものが双方とも明らかにならなかった、こういった場合には、これは当然権利救済制度というたてまえから、基礎が明らかにならない更正決定のこの原処分を取り消すということは、これはだれが考えたって、法律はわからなくて常識で考えても、このことはあたりまえだと思うのですけれども
  358. 細見卓

    ○細見政府委員 まさに常識の領域に立ち返ってまいりますと、かくかくの処分が間違っておるというのであれば、常識的に考えれば、こういうわけで間違っておりますと言われるのが筋であって、それを何もおっしゃらないで、いや、おれも言われぬけれどもおまえもだめだと言うのはまさに常識外になると思いますが、いかがなものでございましょう。
  359. 小林政子

    ○小林(政)委員 両方言わないということを何かおっしゃっているけれども、私の先ほど申しましたのは、書類の審査だということでお互い書類で反論もするという中で、そして、その審判官が調査もして、その上なおかつこういう場合が出た場合には、これは、この更正決定の原処分は採用されないということは、権利救済制度のたてまえからいって私は当然だと思いますけれども、それを何か明確にされないということはどういうことですか。
  360. 細見卓

    ○細見政府委員 たびたび申し上げておりますように「第一項第一号から第三号まで又は第二項の規定による質問、提出要求又は検査に応じないため」とあり、その場合は主張を採用しないことができるというわけですから、提出なり質問に応じない人ということがかかっているわけですから、非常に常識的じゃないかと私は思うのでございますが。
  361. 小林政子

    ○小林(政)委員 だれが応じないのですか。
  362. 細見卓

    ○細見政府委員 それは「審査請求人等」となっておりまして、その「等」の中には「特殊な関係がある者」というので、四項に書いてあるそのとおりでございます。
  363. 小林政子

    ○小林(政)委員 私の言っていることを、主税局長よく理解してないのかしら。私が言っているのは、双方がその主張の基礎というか、そういうものを明らかにするということでいろいろとやりとりが書類の上であって、そして調査をして、審判官が調査も行なったという時点の中で、更正決定の基礎というものを処分庁は明らかにできない、あるいはまた申請人のほうも、そういう場合を十分明らかにするということができない、こういうような場合には原処分を取り消すということは当然じゃないですかと言っているので、応じないためとかいうようなことが何回か出てきますけれども、そういう点を想定して言っているわけではないのです。
  364. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっといま話がこんがらかっているように思います。この第四項は、主税局長が申しておりましたように、主張を採用するかしないかという場合に、その主張を裏づける質問、検査に答えないという場合にはその主張がなかったものとして扱いますよという意味です。いま先生がおっしゃっているのは、双方でそれぞれ質問、検査にも応じ、出してきたというときに、一体どっちがどうなるんだという話だと思います。たとえば営業をやっておる、取引もやっておるというときに、帳簿書類が全くない、全くなければ課税にならぬというものではないのでございまして、帳簿書類等がない場合、白色申告の場合は、生計費あるいは売り上げ高の推計を行なって課税をするというのがたてまえでございます。その場合に、両方が互いに言い合って、営業している、あなたはこれだけの生活をしておる、したがってこういう課税をしたんだということを片っ方は言う、片っ方はそんなものはないと言っておる。その場合の心証の問題は、そういう課税資料なり客観的ないろいろの主張なり、それを基礎づける資料なり、あるいは申請人の主張なり、それを裏づける資料なりを勘案いたしまして、そこで正当な判断を下すのが神聖な審判官の役目だ、課税資料がなければ、いわゆるバーゲン・オブ・プルーフと申しますか、挙証責任論というものではなくして、ここはどちらの資料を総合してどういう結論を出すかは、これはまさに審判官の心証だと思いますが、この四項の規定はそれとは全く関係なく、そういうときにこれに入れるべき主張の中で、相手方が質問、検査でその内容の開示を拒んだものはその主張の中からとってしまう、残りの主張と資料をもとにして判断するというようなのであります。
  365. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうすると、もう時間がありませんので簡潔にいたしますけれども、たとえば、私は九十七条関係について一項、二項と順を追っていままで質疑をしてまいりましたけれども、四項だけに限っているのではなくて、九十七条関係の中でこういう点、もうちょっと明確にお答え願います。  処分庁も請求人も、いろいろやってみたけれども基礎というものが明らかにできなかった場合なんですね。そうすると当然、これは課税の根拠が証明されないのですから、更正決定をかけた原処分庁の処分というものは、これは当然取り消されるといいますか——取り消されるわけですよね。
  366. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それはそういうことにはならないと思います。と申しますのは、課税処分というのは資料が全部出てこなければできないものではない。客観的に取引その他を推計もし、また実際に取引先を調べて取引の内容を推定するということで課税処分をする義務は、税務署としてはあるわけです。そういう意味課税資料を求めて課税をいたしておりますから、その基礎が明らかでない、しかし主張している相手方も全く基礎がないという場合に、客観的な資料をできるだけ求めて心証を得て判断をしなければならないという義務はあると思うのです。そこは心証のとり方の問題であると思うのです。
  367. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題、後に残したいと思います。そして、これらの問題についてもう少し明らかにしたいと思いますけれども、次へ進みたいと思います。  この問題も、一昨日のこの委員会の質問の中で問題になったものでございますが、審判官が調査権に基づいて新たに調査を行なった場合ですね、そして更正決定の処分のときにおいては不明だった新しい資料によって別に新たな所得が出てきた場合、これは裁決の根拠にいたしますか。
  368. 細見卓

    ○細見政府委員 理屈としては、争われておるのは総所得でありますから裁決の基礎になるわけでありますが、ただ運用におきましてはできるだけ争点主義でやっていきたい。そういう何かの、Aという部門がだめだったらBという部門をあさってでも、総所得を同じ大きさにしていこうという運営はいたしませんと言っておるわけでございます。
  369. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、審判官の調査で新しい資料が出てきて、そしてそれが新しく発見された所得として、一応運営の面ではいろいろ考えるけれども、裁決の根拠になるということでございますね。
  370. 細見卓

    ○細見政府委員 法律のたてまえ、あるいは現在の裁判制度を含めまして、現行のやり方はそういうふうになっております。
  371. 小林政子

    ○小林(政)委員 私はそれでは、審判庁がむしろ税務署にかわって所得や税額を認定したと同じことになるのではないかというふうに考えますが、これでは私は納税者の権利救済のための不服審査、そういうことではなくて、速記録の中にも、またきょうの委員会の中でもお話が出ておりましたけれども、戦前と同じように、税の洗い出しといいますか、洗い直しといいますか、所得の洗い直しといいますか、まさに見直し調査というものをやるのだというふうにいわなければならないような結果がここで明らかにされていると思います。私は、そうなってまいりますと、今回の改正というのは、この九十七条第四項によって見直し調査を法制化する、そのためにむしろ手続規定を変えたものじゃないだろうか、このような疑義を持つわけでございます。問題は、先ほどから討議されておりますとおり、一体だれのための救済の制度なのか、この点を私は考えますときに、これでは全く原処分庁を救済する手続なのだろうか、このようにいわざるを得ないと思います。今回のこの法の改正は、何か権利救済という形で前進というようなことを、第三者的な要素を深めたということを盛んに言われておりますけれども、こういうことになってまいりますと、明らかに改悪といわざるを得ないわけでございます。私、この点については、この九十七条の四項は非常に問題があるというふうに考えます。
  372. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この点が非常にむずかしいところだと思いますけれども、小林先生も、はっきりとした脱税があるときに、それを放置すべきだとはお考えにならないと思います。したがいまして、審査請求の段階でかりにそういうものが見つかっておるという場合に、それはどうすればいいか。一つの考え方としては、それを税務署に知らして、こっちは棄却をして税務署で決定させればいいという考え方があると思います。それは一つの考え方だと思います。しかし、どうせ税務署でまた決定をするということよりも、それ以上の増額ということはやらないにしても、一応そこで処分は結着をつけてしまうというやり方もある。これは広瀬先生が御指摘になったところでございますが、そういう意味では、どちらをとるかというのは政策の問題だと思いますが、同時に私ども言っておりますのは、常にそういうふうに疑ってかかるやり方はやるまい。その審査請求に対する処分が正しくないと主張しているのだから、それを中心にしてできるだけ調査を進めようという態勢でいきましょうということを言っておるわけでございます。ただ、そこに、そういう態勢で調べているのに、明らかに大きな脱税がそっち側にあるということがわかった場合、これを放置するのが個人の権利を救済するゆえんであるのか。国民全体としての立場から見れば、これは正しい所得でこそ救済が行なわれるのであって、税というものは見つからなければそれで救済であるとはいえないと私は思うのでございます。しかし、それはやり方としては、もう少し進めて、権利救済だけに限って、見つかったものはあと税務署がやればよろしい、権利救済機関はそういうことにはかかわり合わないというやり方もあると思うのです。しかしその場合でも、脱税額については税務署に通報せざるを得ないという問題が残りまして、かえって権利救済として妥当であるかどうか、その辺は一つの問題ではなかろうか。これは運用上、ただ、私どもはそういうものをあえてさがそうという態勢では運用したくないということを申し上げているわけでございます。
  373. 小林政子

    ○小林(政)委員 脱税等の場合はどうお考えになりますかというような、逆のお話、質問のような形でございますけれども、私はむしろ納税者立場に立って、納税者の自主的な申告制度、こういうものが税法の上でもはっきりとたてまえになっているのじゃないだろうか。それは、中には御指摘のとおり大きな脱税事件等も新聞等に報道されておりますけれども原則的な考え方は自主的な申告制度、これがやはり前提になっている。だとすれば、やはりもっと納税者の人たち申告の問題等についても、疑ってかかる、すべてが何かもう色めがねをかけて、あの申告はもう信用できないんだ、そういう立場ではなくて、やはり自主的な申告というものを、ほんとうにこれを前提にして認めてきちっと保障していくという原則を貫くべきじゃないだろうか。そして、その中でむしろ手続規定としていまこの問題が問題として論議をされているわけでございます。私は、先ほどの阿部委員からも御指摘ございましたけれども民主主義の問題はまさに手続の規定だというふうに考えます。ほんとうにこの中でもってこれを保障していく、権利救済機関としての性格をこの中で保障していくというようなたてまえこそが当然しかるべきだろうというふうに思いますけれども、そういう点について、先ほども申し上げましたとおり、今回のこの改正案は明らかに九十四条第四項によって、むしろ見直し調査そのものを法制化するために手続規定を変えたものだということを私はいわざるを得ないと思います。  こういう点を申し述べまして、私の質問を終わりたいと思います。
  374. 毛利松平

    毛利委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は、来たる三月三日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十一分散会