○伊藤(卯)
委員 大臣の時間も差し迫っておるようでありますから、もう何点かありましたけれども、いま一点だけお伺いしたいと思います。
それは、実は、
炭価が
原料炭と
一般炭とでそれぞれ四十五
年度は上げられることがすでに
決定されております。ところが、それで安定をするかというと、安定いたしません。というのは、たとえば労働
賃金が、これは毎年上げなければならぬようになってくるわけですが、いままでの例から見まして、たとえば今日どのくらい労働
賃金を上げなければならぬものが出てくるだろうかということを見てみますと、大体トン当たり三百円に該当する労働
賃金あるいは月給を上げなければならぬようになっております。そうすると、四千万トンは出ませんけれども、これを四千万トン出たと仮定して、三百円、三、四、十二で、百二十億円近くのものを労働
賃金としてこれは上げなければなりません。しかし、それでも他産業と比較をすれば安いから、少ないから、したがって
炭鉱に行き手がないというような
現状でありますから、ほんとうからいけば、まだまだこれは値上げをしてやらなければ、熟練工を
炭鉱に引きとめるということはできないわけです。けれども、トン当たり三百円上げたとしても、とにかく百二十億要るのです。一体百二十億を、いまの
炭鉱が、今度の値上げされたそれで払い得るだろうか。今度だけは何とかかんとか無理をして払ったとしても、一体あとをどうするんだという問題があります。でありますから、
政府みずからやれる、
石炭需要者を相手にしなくて
政府みずからがやれるいわゆる
安定補給金、この
安定補給金をいま三百円
政府は出しておりますが、これを二百円どうかして五百円にする。もちろん、五百円にしたからといって、これで賃上げの分に該当はいたしません。けれども、しかし、
炭鉱の健全経営を何とかしてつくってやる。この安定化に加えていこうとされるならば、一番やりやすい方法としては、大蔵省との
関係もありますけれども、
安定補給金を、現在三百円のものを五百円に
引き上げてやる。こういうことは一時しのぎということになりますけれども、まあしかし、
一般炭と
原料炭を上げて、それを健全経営の一つのかてとするというためには、いまのような
安定補給金を二百円
引き上げてやってやる。こういうこと等をやらない限りにおいては、明年でも同じようなことが出てまいります。でありますから、大臣、この
安定補給金を三百円を五百円に
引き上げてやる、そうして健全経営をひとつ——まあ健全経営とまでいかなくても、とにかく何とか
閉山させないようにしてやろうというようなことをお
考えになられるかどうかという点であります。
それからついでながら申しておきますが、合理化、能率化はもう最高にきているのです。私も専門家でありますからよくわかっていますけれども、山々で
坑内条件が違いますから一定には言えませんけれども、いまの日本の
炭鉱では、いま
機械化しておる点では最高の能率をあげている。これより以上の合理化と能率をあげられぬというところまでがんばってきておることを私は知っております。でありますから、そういう点から見ても、やはり安定化、健全化あるいは
炭鉱従業員を山にとどめさしていく、また
閉山した
従業員を他の
炭鉱に行くようにする、これは大事なことです。そういう点からも、いまの問題を解決するために大臣が一はだ脱がれなければだめだということを私はいま
考えておるわけです。
それから、
炭鉱というと、何か借りたものを払わぬようなことを言われがちであります。ところが、私は長い目で見てみまして、三井にしても、三菱にしても、古河にしても、多くの大
会社でも、三十年、五十年、百年やってきたそういう
炭鉱で、財産をつくったというものは一体あるだろうか、ありません。ちょっとやって、景気のいいときにすぐだれかに
炭鉱を売って、もう山から手を引いた人は、それで何人か財をなした人はおりましょう。しかし、三十年、五十年、八十年とやってきたものでは、大
会社といえども
炭鉱で産をなしたものはおりません。そういう点から見ますと、
炭鉱につぎ込んだ金は
炭鉱が
閉山したら何にもならない。たとえ話に、手に負えないのは鬼の死骸だ、鬼の死骸は
引き取り手があるかという話がありますが、それと同じです。工場なら、その工場がやめても土地建物がありますから、他の製品をつくるためにその工場は生きてきます。しかし、
炭鉱に何百億円つぎ込んであっても、
炭鉱が
閉山したら、それはもう何にも価値はないのです。全くやっかいものです。やはりこの
石炭問題を取り扱われるについては、そういう点をよくよくお
考えになって
石炭対策を立てられないとうまくいきませんから、私は、そういう点等も含めて、大臣の時間の
関係もありますから、二つばかりくっつけて
意見を述べたわけでありますが、そういう点についてあわせてひとつ大臣の
意見をお聞かせ願いたい。