○
橋本(徳)
政府委員 北海道におきまして、相次ぐ
重大災害を起こしまして、まことに申しわけございません。その
状況につきまして、御
説明申し上げたいと思います。
資料といたしまして、「
夕張炭鉱の
落ばん災害について」という
資料をお配りしております。これは最初にいろいろ概要を書いたものと、それから
最後のところに
災害個所を中心にいたしました図面が入っておりますので、それを対照いたしながら御
説明さしていただきます。
災害を起こしましたのは、この一ページ目にございますように、
北海道炭砿汽船株式会社夕張炭鉱第一坑でございます。起こしました
場所は、この
夕張炭鉱は御
承知のように
千歳区域と
最上区域と二つございまして、それ以外に第二坑がございますが、
事故を起しましたのは
千歳区域の
立層の下部第
三流炭右六
中切、右七
中切という
個所でございます。
災害が一月二十七日の二時二十分ごろに起きました。
災害の
種類といたしましては、
落盤でございます。下のほうにございますように、死亡が四名、軽傷一名ということでございます。
災害の
概況でございますが、一月の二十六日の午後十一時ごろ
右中切坑道、これは
うしろのほうにこの
個所の地図がございます。この
中切坑道の入口から大体三メートル
程度の
坑道の
床面に穴があきまして、それを
係員二名と
鉱員七名計九名で
山固め作業をしておりました。それから大体三時間後の二十七日の二時二十分ごろでございますが、突然
底抜け崩落が発生いたしました。そこに働いて
山固めをしておりました七名の者は七
中切の奥に避難いたしまして、そこに閉じ込められたわけでございます。ところが、この七
中切の上に当たりまする六
中切の
坑道で休息しておったと思われる四名でございますが、それがその
崩落に引き込まれて、この四名が死亡したわけでございます。
災害後右七
中切坑道に閉じ込められました七名は当日の午後四時十五分までに
救出されたわけでございますが、その後引き続きその行くえ不明になっておりました四名の救助に全力を尽くしまして、五日後の二月一日の午前五時五分ごろに全
罹災者を収容いたしました。
こういうふうに五日間もおくれました理由は、この表でごらんいただきたいと思いますが、一番
最後の表にこの
災害個所を大きく書いた図がございます。この斜めに入っております第
三流炭坑、ここに
粉炭が御
承知のように
崩落いたしまして、ぎっしりと詰まっております。したがいまして、これを取り明けしながらの
救出作業になるわけでございますが、御
承知のようにこういった
崩落の
個所におきましては、相当慎重に取り明けていかないと、二次
崩落を引き起こし、またそこで
罹災者を出すというようなことで、きわめて慎重に、しかしできるだけ能率的にということで、非常に
ワク組みをしっかりとさせながら
作業を進めたわけでございます。そのために百二十三時間、約五日間の日にちを要したわけでございます。
災害の報に接しました札幌の
鉱山保安監督局からは、
局長以下
監督官五名が
現地に参りまして、
罹災者の
救出とそれから
原因の
究明等の指揮に当たったわけでございます。
その
原因でございますが、
原因、
対策につきまして次に申し述べたいと思います。
二ページのところに「
災害の
原因」というのがございますが、この
炭鉱は御
承知のように
水力採炭をしております。したがいまして、今回のこの
落盤事故につきましては非常にいろいろな問題を投げかけておりますので、さっそく
夕張炭鉱におきましてこの
落盤対策委員会というのを設置したわけでございます。
その
委員長は、三枚目にこの名簿を載せてありますが、
北海道大学の
磯部教授を
委員長といたしまして、
あと、こういったいわゆる
石炭関係の
技術的専門家の方に寄っていただき、それからまた御
承知のように、この
夕張炭鉱よりもこういった
水力採炭について経験の深い
三井砂川あたりからの人も入れまして、
委員会をつくり、
監督局は
オブザーバーというような形においてこれに参加いたしまして、こういった
委員会でこの
原因の
究明と、それから
対策について
審議をしたわけでございます。
その
委員会は二月の十日と十一日の二日間、第一回の
会合を持ちました。それから十八日に第二回の
会合を持ちまして、そこで
委員会としての
結論を出したわけでございます。その
結論がその次に書いてございますが、結局
災害の直接的な
原因といたしましては、右七
中切と右八
中切の抗道、特に八
中切の抗道でございますが、これはよく調べてみますと、掘採後かなりの期間放置されておる。したがいまして、
坑道の
矢木とかあるいは
ワクといったようなものが折損しておりまして、そのために
天盤の
間漏れとか
高落ち、こういったようなものを起こしております。したがってそういった
現象から
天盤自体にゆるみを生じておったというふうに推定されるわけでございます。八
中切のそういった
崩落の
あとを取り明けていく際に
天盤にゆるみを生じ、それから
坑道の
上部のほうに結局ゆるみが生じておりますために、
坑道の
上部と
炭柱との間に
空隙ができた。その
空隙が逐次拡大してまいりまして、結局
右中切坑道の
床面にまでこの
空隙が達したというふうに推定されております。この
空隙が結局右七
中切の
坑道の
ワク足の
沈下を引き起こしまして、そうしてその七
中切の
崩落を引き起こした。その七
中切の
崩落から順次波及いたしまして、流
炭昇の
下盤の
沈下を引き起こし、また六
中切の
坑道の
陥没落盤を引き起こした。これは順次こういう形で書いてはおりますが、非常に瞬間的にこういった
状態が発生したと推定されるわけで、これが直接の
原因であるという
結論に達しております。
われわれは、当初こういった問題が生じました場合に、こういった直接的な
原因のほかに、何か
水力採炭、いわゆる水が
炭層に作用したのではないかということを非常に懸念して、その面について特に
調査をいろいろ進めてもらったわけでございます。したがいまして、その
調査のために、単なる理論だけではなしに、
現地におきまして実際に
ボーリングの
実地調査をもやってもらったというふうなことをいたしましたところ、その結果といたしまして、その
周辺の
炭層に対して水の浸透の
影響はないというふうな
実地調査の結果が出たわけでございます。
いろいろそういったところから
検討をいたしますと、その次の「註」にございますように、六
中切坑道の
うしろ側といいますか、大体
場所といたしましては、この流
炭坑道と六
中切のクロスする
場所の奥のほうに、いわゆる潜在的な
断層があるということがわかりまして、しかも、その
断層の線が鏡はだで剥離しやすいということが突きとめられたわけでございます。したがって、直接的な
原因は、先ほど言ったような
坑道の
維持管理が不十分であって、それが直接的にいろいろ波及していってこういった
災害を起こしたが、それを助長したものとして、こういった潜在的な
断層があったのであろうというのが、最終的のこの
委員会としての
結論になったわけでございます。
監督局としては、もちろん
オブザーバーとして参加はいたしておりますが、やはり
監督官庁という
立場におきまして、
委員会の
結論は
委員会としてのものということで、また、
監督局が別個のサイドからいろいろ
検討を加えていったわけでございますが、そういった
現地調査その他の物的な証拠、科学的ないろいろな
調査といったものを総合いたしまして、結局、この
委員会の
結論が正しかろうというふうなことに実はなっておるわけでございます。ただ、
司法捜査の
関係もございますので、
監督局の
結論は、推定というふうなことにとどめておきたいというふうに考えております。
したがいまして、こういった
原因が
究明されました暁におきましては、問題は今後の
対策でございます。同時にこの
委員会は、引き続き、この今後の
対策等を
検討してもらった次第でございます。これをいろいろ
技術的な点から
検討いたしまして、次のようなことをやれば二度とこういった
種類の
災害は防止できるというふうなことがこの
委員会で
結論に得られましたので、二月二十日に、大体一カ月近く操業を停止しておりましたのを、掘進を開始させるというふうなことにしたわけでございます。
その
対策といたしましては、先ほど申しましたように、何といってもこういった
中切坑道というものの
維持管理が非常に根本的な問題であるというふうな
結論でございましたので、こういった
中切坑道の
維持管理に万全を期する。そのためには、
中切坑道の掘進と
水力採炭、これの
バランスをとっていく。従来は、どちらかといいますれば、この山においては、
中切坑道を相当
早目にやって、それから
あとで
水力採炭をやっておる。その間に
中切坑道のいろいろなそういった隘路が出てきておったというふうなことでございますので、極力
水力採炭とそういった
坑道の
作業の
バランスをとっていく。
次に、直接的な
方法といたしまして、結局
坑道の
崩落を防止するということで従来いろいろ――もちろん
坑道につきましては
施ワクはやっておりますが、これを一段と強化していくというために、たとえば、ここにございますように、総
矢木とか裏込め
踏前矢木、これは非常に
専門語でございますが、結局は
坑道の上下、両側面というものを非常に強くささえるというふうなことをすべきであるということになったわけでございます。
それから、第三番目には、今回の例に徴しまして、そういったいろいろな
坑道を維持する
施策をやったといたしましても、かりにその
周辺の
坑道において局部的な
崩落がもしあった場合には、さらにそれにつきまして
天井炭をさらに
崩落させないために、またそれに必要な
差し矢木とかあるいは
セメントミルクの注入といったような
方法で、十分の
山固めをやらせるということにしたわけでございます。
また、こういった特に
災害を発生した
区域の近傍におきましては、いわゆる専任の
係員がつきっきりでその監視に当たり、被災を免せるというふうなことで、こういったいろいろな
対策、これはいろいろな
対策をかなりまとめた形でございまして、非常に
専門的細部にわたりましては、いろいろな問題が
指摘されております。それの大きな
方向といたしましては、こういったような
対策をやることが緊急に必要であるというふうなことで、これを差し上げる次第でございます。
次に、同じ
北海道炭砿の
清水沢炭鉱で、この二日に
ガス突出がございましたので、それにつきまして、
概略の御
説明を申し上げたいと思います。
もう一枚の紙に、「
清水沢炭鉱の
ガス突出災害について」というのがございます。実はこれは、
災害が起きましてまだ完全な
調査が行き届いておりませんので、場合によりますれば、若干、後刻修正ということもあり得るかと思いますが、現
段階におきまして
承知しました範囲内のことで御
説明させていただきたいと思っております。
災害の
概況でございますが、この
清水沢と申しますのは、これは
夕張の來
炭層でございまして、ここの
生産炭はほとんど
原料炭でございます。
災害が起きましたのは、二日の十三時十四分ごろでございまして、
清水沢坑の五片八尺の
あと向きロングゲート引立、すなわち
先端でございますが、
先端で起きた。
災害の
種類といたしましては、
ガス突出ということで、
災害発見の端緒が次に書いてありますが、
採炭作業場で
作業を監視しておりました
係員が異常な
圧風と
ガスを感知いたしまして、それからまた、
可燃性ガス自動警報器を設置しておりますが、これが電源と
インターロックになっておるというところから、コンベヤーが自動的に停止されたというふうなことから
災害を知りまして、直ちに
救出作業に取りかかった。
災害が発生いたしましてから一時間
半程度の間に、四名全員を搬出いたしまして、さっそく病院に運び込み、
人工呼吸をいたしましたが、蘇生せず、全員死亡したという
状況でございます。
災害個所の
状況が次に書いてございますが、
災害が発生いたしましたのは、五片の八尺
あと向き払いの
原動機座から約十六メートル
先端ということで、これも一番
最後のところにその図がかいてありまして、
災害が起きましたのは、この一番下のところの、ちょっと飛び出たところでございます。ここの
先端から
ガスが
突出して、ここに
圧風で、掘進しておりました四名が、全員罹災した、こういうことでございます。
突出炭量は約五十八立方メートルということでございますので、
ガス突出としましては
規模はきわめて小さなものである。したがいまして、
倒ワクも崩壊もあまり見られないという
状況でございます。
次に、
災害個所の
管理状況につきまして、二ページ目に書いておりますが、実はそこで
ガス突出が起きましたが、昨年の十二月二十五日と、ことしの一月十八日に、こういった
ガス突出の
前兆らしいものが感知されております。もともとこの地域は、あまり
ガス突出という問題の起きない
場所ということになってはおりましたけれども、その二回にわたりまして、一・五
立米程度の
粉炭が
可燃性ガスを伴って出てきたということが
会社側で認められておりまして、さっそく
会社は、これは
ガス突出の
前兆ではなかろうかというふうなことから、
ガス突出対策を労使協議いたしまして実はつくったわけでございます。
ガス突出対策としまして次に①②③といろいろ書いてございますが、結局
ガス突出対策としましては、
ボーリングをいたしまして
ガスを抜き、そして安全な
状態において
作業をしていくというのが原則でございます。したがいまして、こういった
坑道を掘っていきますときに、
坑道の
上山側のほうは三十メートル
間隔で、
また下側のほうは二十メートル
間隔にそれぞれ
ガス抜きボーリング座を設けまして
ガス抜きの穴を掘り、そして特に
吸引によって
ガス抜きを行なうということで、これは現に行なっておりました。それからさらに
進行方向の
引き立てでございますが、
引き立てからは二本の
ボーリングをやって、これも
ガスの
吸引をやっております。
次のページへ参りますが、それからさらに先ほどのように
ガス突出の
前兆という判断に立っておりますので、
ガス突出の
前兆があった場合の避難の
方法その他につきましても、
労働者に
教育をやっておる。これも現実に調べましたところ、いろいろやっております。
こういった形で
災害発生の
防止措置は
現地としてはとっておったということでございます。また現にこれは
監督局のほうでその
実態を確認しております。しかも、これは少し
会社側に有利なことではございますが、ここの
ガス抜きのやり方、その次のパラグラフに書いてありますけれども、
通常の山でやっております以上の
ガス抜き対策をやっておるということが確認されておるわけでございます。といいますのは、
通常の場合におきましては
坑道の掘
進先あたりでのいわゆる
ガス抜きとしましては、六十ミリないし八十ミリ
程度の
口径の
ボーリングで、自噴によって
ガス抜きをやるというのが
通常の形態ではございますが、ここにおきましては特に百四十五ミリという大
口径の
ボーリングをし、しかも強制的な
ガス抜きを実施しておるというふうなことで、この限りにおきましては、
ガス抜き対策としてはほかの山よりもよくやっておるということがいえるわけなんでございます。現在
断定はできませんが、それではなぜ
ガス突出が起きたのであろうかというふうなことをいろいろ調べましたところ、
断定はしにくいとは思いますけれども、要するに
進行先に対しまして、あらゆる角度の
ガス抜きボーリングをやって、そして
ガスを排除するのに対しまして、どうも一カ所
進行先の上のほうに当たるかと思いますけれども、そういったところに
ボーリングが達していなかった。それは結局、
坑道を掘進していきますれば、三十メートル
間隔で
ボーリング座をつくるわけでございますが、そういった
払いの掘進と
坑道の掘進が
計画どおりには行なわれないために、それがアン
バランスを来たしておったので、もう数メートル早く
坑道が延びておりますれば、そこに今度
事故を起こした
原因と思われる
場所までの
ボーリングができたと思われるのですが、若干掘進のおくれがございましたために、むしろ次に置くべき
ボーリング座が置かれなかった。そのためにどうもそういった
進行方向の上側のほうにいわゆる死角ができて、そこに
ガスがたまっておったのが
突出したのではないかというふうに現在は推定されるわけでございます。したがって、
方法としてはほかの山以上のことをやり、いろいろその
危険性を予知してやっておったのですが、やる
技術においてどうもちょっと欠けるところがあったのではないかというふうな
感じを持っておるわけであります。これは、先ほど言いましたように、
最終的結論を出すのにはまだ
調査が不十分な
段階でございますので、さらに
検討を進めなければ
最終的結論は出ないかと思っております。したがいまして、現
段階におきましては、もちろんこういった
災害の
現場作業を中止し、
原因の
究明に当たっておるというのが
実態でございます。
概略以上のとおりでございます。
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