運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-11-20 第63回国会 衆議院 商工委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月二十日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君    理事 塚本 三郎君      稻村左四郎君    久保田円次君       左藤  恵君    田中 六助君       林  義郎君    藤井 勝志君       山田 久就君    加藤 清二君       中井徳次郎君    松平 忠久君       横山 利秋君    松尾 信人君       川端 文夫君    西田 八郎君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         大蔵省銀行局特         別金融課長   北田 栄作君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         中小企業庁長官 吉光  久君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 委員の異動 十一月二十日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     藤井 勝志君   進藤 一馬君     久保田円次君   藤尾 正行君     林  義郎君   増岡 博之君    稻村左四郎君   中井徳次郎君     加藤 清二君   吉田 泰造君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     増岡 博之君   久保田円次君     進藤 一馬君   林  義郎君     藤尾 正行君   藤井 勝志君     坂本三十次君   加藤 清二君     中井徳次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件  通商に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、通商に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 小宮山政務次官お尋ねします。  昨日はからだが不調であったというわけで御出席でなかったわけですが、私、理事会で決定のとおり五時までやったわけです。ところが、答弁に当たった通産省は、通商局の次長が出席をしただけです。委員側出席もまことに悪かったわけですが、政府側の熱意のなさにも驚いたようなことです。しかし、あなたが病気だったんで出席できなかったことは、あまり言うとこれは人権じゅうりんになるから、これはやむを得ないと思うのです。  そこで、あなたに前に、諫早のノリカドミウム汚染の問題で、消費者が非常に不安に思っている、したがって、どの程度まで食べたらいわゆる人体に有害でないのか、生産者もまた、消費者が不安に思うことはノリを食べることをちゅうちょすることになるから困るし、また卸、販売、小売り店全部が非常に苦しくなってくるということにつながっていくわけなんです。そうすると、不要な不安を除去するためには、この際ひとつ、厚生大臣であるとか農林大臣から、この程度食べても人体に有害でないのだということを表明する必要があるのではないか。実は委員会でもって申し入れをしようとしたのに対して、あなたがみずから発言を求められて、私が各省政務次官連絡をとって大臣談話を発表させることにいたします、というお答えであった。そのとおりに取り扱いをされたのかどうか、まずそれを伺っておきたいと思います。
  4. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 昨日、中座いたしましたことはおわび申し上げます。  いまのカドミの件でございますけれども、これはどのくらい食べたら人体影響があるのかというような問題、非常にむずかしい問題でございます。その点については、各省にいかにしたらいいかということのはからいをやっております。しかし、私に戻ってまいります返事は、なかなかむずかしい、時間をいただきたいということで返事が戻っておりますので、速急にやるようにということで再度要求いたしました。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 それで、責任を持ってそういう措置をなさいますか。
  6. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 これは、人体実験がなかなかしにくい問題もございますので、その点なかなか先生の意に沿うようなことができるかどうか、私いま非常に不安に考えておるのでございますけれども、できるだけ先生の意に沿うように、速急に回答できるようにしたいと思っております。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 宮崎局長お尋ねいたしますが、私の先般の質問に対して、さっそく経済企画庁中心になられて各省との連絡をおとりになって、三百万円の調査費を支出されるという緊急な措置をおとりになったことについては、敬意を表したいと存じます。その後どのような調査内容になっているのか、原因が明らかになるのはいつごろであろうか、また原因考えられるものは、いまの調査段階ではどういうことであるのか、それらの点ひとつ伺ってみたいと思います。
  8. 宮崎仁

    宮崎説明員 有明海汚染の問題につきましては、先般の御質問の際に、関係各省庁と御相談をして早急に調査をしたいということをお答え申し上げたわけでございますが、十月十七日に関係各省庁の調査計、画についての御相談をいたしました。その結果、大体各省の分担をきめまして、いま調査実施しておるところでございます。  その内容としましては、経済企画庁におきましては海域の水質及び底質、底のどろの問題です。運輸省におきましては大牟田港の水質及び底質通産省におきましては有明海関係工場排水口調査建設省におきましては有明海に流入する主要河川水質及び底質調査厚生省におきましては有明海関係水域及び地域の汚染状況総合的調査、こういうことを実施することにいたしまして、十月二十一日、佐賀県庁において、関係各県及び関係行政機関実施計画の打ち合わせを行ないまして、十一月から調査にかかることになっております。この関係予算は、経済企画庁関係が百七万円、運輸省関係、これも経済企画庁調整費から出しておりますが、七十二万円、水産庁二十四万円、建設省二百九万円、厚生省十九万円、通産省三十二万円、合計四百六十万程度予算を使って実施をすることにいたしております。  この調査緊急性から見まして、できるだけ早くこれは結論を出したいわけでございますが、こういった調査でございますから、それ相当の時間もかかると思いますが、予算のたてまえといたしましても、調整費等は繰り越しのできない予算でございますので、おそくとも本年度末には結果が出る、こういうことに考えております。この調査の結果を見まして、その後の規制措置等について措置をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、住民の不安も非常にあることでございますし、生産漁民も、どうなることかとこれまた不安に思っているわけですから、できるだけすみやかにひとつ結論が出ますように、なおまた、大牟田の製錬所からの廃液が原因ではないのかといろいろいわれておるわけです。そこらあたりは、ともすると、大企業に対してはどうも役所は弱いんだというような、そうした考え方等もあるわけですが、実は相当深くなっているわけです。そこらあたりを一掃するためにも、できるだけ適切な、そうしたすみやかな調査をやっていただきたいということを要請をいたしておきます。それでは、時間の関係もありますから、公害に関する問題はこれで終わっておきます。  次に、中小企業庁長官に年末融資の問題でお尋ねをいたしますが、年末融資需要はどの程度見ているのか。それから、金融引き締め影響相当出ているわけですから、資金需要は非常に大きいのではないかと思うのです。いただきました資料で大体考え方はわかってはおりますけれども、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  10. 吉光久

    吉光説明員 年末金融対策関係でございますけれども、いまの年末のみならず、下期全体を通じまして、中小企業関係資金手当てをしてまいる必要がある、こういうふうに考えたわけでございまして、先般、金融引き締めにつきましての解除措置がとられましたけれども、これが中小企業業界に浸透いたしますまでにはまた相当期間がかかるという状況でございますし、現に政府関係機関に対します中小企業者からの資金借り入れ申し出相当多くなっております。やはり一方におきましては、省力化投資その他の投資を速急に進めなければならない、そういう要請が一つございますと同時に、他方におきまして、特に対米輸出関係で不振となっておりますモザイクタイルその他の陶磁器製品、あるいは合板、金属洋食器その他の製品につきまして、ここで何らかの滞貨金融的な措置をも考えなければならないのではないか、こういう情勢も出てまいっております。それらの事情と、さらにまた、ことしだけの特徴でございますけれども、例の台風九号、十号の関係中小企業関係の被災が相当多うございまして、したがいまして、これらにつきましても、やはりこの際ある程度手当てをしておく必要があるというふうに考えたわけでございまして、それらを総合勘案いたしまして、先般、下期の貸し出し規模の増加といたしまして、千五百九十億円を決定していただいたわけでございまして、それに見合う政府財政投資をもあわせてこの際行なったわけでございます。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 千五百九十億ということになってまいりますと、昨年と比較いたしまして約一四%程度の伸びではないかと、こう思うのですが、申し込みに対する実行額というのが——これは年末融資でございますから、これから受け付けてみなければわからないわけですが、下期全般的なものとして考えたということでございますから、いままでのところ、政府関係金融機関申し込みに対しての貸し付け実行額は何パーセントくらいになっていますか。時間の関係がありますから、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  12. 吉光久

    吉光説明員 三機関別申し込みに対する実績数字をただいま持ち合わせておりませんので、後ほど御報告申し上げたいと思います。  ただ、上期と下期との全体の貸し出し計画関係でございますけれども、今回の追加財投を入れましたことによりまして、年間の全体一兆一千四百八十五億のうち、下期、したがいまして十月から来年三月までの分が、全体の約五五%を占めておる比率になっております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 全体の五五%ということになってまいりますと、なかなか需要を満たすことはできない、こういうことになってまいります。  それから、民間金融機関に対して二千億円の貸し出し増を要望したということでございますが、そのための資金措置というのは日銀等から特別な配慮がなされておるのかどうかという点です。  それから、民間金融機関融資の際は、ここ数年前からは、その資金に対する手当て日銀から相当やったという関係等もありまして、それがほかに流れないように、中小企業に必ず融資が行なわれるような規制措置が実は考えられておったわけですが、最近はそれがないわけなのです。いま、民間に対して単なる要望だけなのか、何か確実に融資が行なわれるような措置考えているのかどうか、いかがでしょう。
  14. 吉光久

    吉光説明員 お示しのように、今回民間金融機関に対しましても、昨年度実績にプラス約二千億、一兆六千億円の年末の融資目標額をきめていただいたわけでございまして、これは実は、先般来の金融引き締め措置に伴いまして、公定歩合が下がり、あるいはまたポジション指導等の点につきましても日銀のほうで配慮されるという前提に立っておるわけでありまして、この一兆六千億の貸し出しは十分に確保されるものだと思っております。  なお、ちなみに昨年の実績でございますけれども、昨年も計画を上回った実績で年末融資応援をいただいておりますし、したがいまして、そこら事情から判断いたしまして、この一兆六千億円を上回る中小企業向け金融が確保できるものと私どもは確信をいたしております。  なお、この中小企業向け貸し出し実績につきましては、いずれまた銀行側から報告を聴取するようになっておりまして、したがいまして、この目標実績との関係も把握できる体制で処理いたしておるところでございます。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 ここで、あなたのほうでお考えおきをいただきたいのは、中小企業規模というのが非常に大きくなってきたということですよ。したがって、いままでは政府関係金融機関にたよっていなかった中小企業が、これをたよるようになってきたということが一つ言えると思うのです。民間金融機関にも、やはりそのことは当てはまっていくのではないか。そこで、二千億ということが、昨年と比較をいたしまして上回っておるとはいいながら、どうしても信用力の強い中堅企業的なものに、中小企業では規模の大きいほうに資金が流れていくという傾向が実はあるということなのです。そこで、ほんとうに年末資金に困っておる零細企業というものには貸し出しがなかなかうまく行なわれないという点がありますから、そこいらの配慮は十分なさる必要があるということだけをひとつ注意を喚起しておきたいと思います。  なお、金融機関に対して歩積み口建て預金改善について引き続き努力を求めたということが資料にあるわけですが、具体的な事例を指摘して改善を要望されたのかどうか、その点いかがでしょう。
  16. 吉光久

    吉光説明員 御承知のように、歩積み建て自粛問題につきましては、機会あるごとにその自粛徹底方要請いたしておるところでございます。もちろんこれは、中小企業庁は直接的に銀行行政にタッチいたしておりませんので、銀行局を通じて常に自粛をお願いいたしておるところでございます。銀行局調査によりましても、長期的には歩積み。両建て自粛の姿があらわれておるわけでございますけれども、先般、公正取引委員会抽出調査をやられました調査資料によりますと、長期的には自粛の姿があらわれておりますけれども、特に昨年の十一月から今年の五月の調査期間中に、昨年の十一月のほうがより改善ができておりまして、ことしの五月末のほうが、昨年の五月末に比べれば成績は上がっておるわけでございますけれども、いささか少し自粛措置について改善が後退したかの感を与えるような、そういう数字も出ておるわけでございます。したがいまして、こういう情勢でございますし、特に年末金融という金融繁忙期になりますので、この際あらためて銀行側に対して自粛要請いたすということにいたしたわけでございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 公正取引委員会指摘によっても、歩積み口建てというのはなかなか功妙になってきた。いろいろ形を変えてやっておる。拘束という形をとってないが、実質的には拘束というものが現に行なわれておるということが私は言える思うわけです。歩積み・両建ての問題は、あらためてまた公正取引委員会の御意見も伺いながら深く私ども考え方を申し上げてみたい、こう思っておりますが、少なくともこの年末融資に対しては、歩積み・両建てをやるなとか——いま相当歩積み・両建てをやっておるわけですから、年末にはある程度これの取りくずしをしろというくらい強く要求銀行の協力を求めるという態度が望ましいと思うのですが、そこまでの配慮はお考えになっておられませんか。
  18. 吉光久

    吉光説明員 今回の年末追加財投をいたしますに際しまして、こういう金融情勢なので、銀行のほうも貸し出しに協力してもらいますと同時に、歩積み・両建て自粛について一そう努力してもらいたい、こういうふうな要請をいたしたわけでございまして、そこら努力あり方等につきまして、さらに担当部局である銀行局その他とも相談をいたしまして、よくこれらの趣旨が徹底されるようはかってまいりたいと考えます。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵省銀行局との連絡をとりながら、金融機関に強く要求をしていくという態度を要望しておきたいと思います。  なお、この千五百九十億の中にはマル食資金追加も含んでいるわけですか。
  20. 吉光久

    吉光説明員 これは全体といたしまして、一般ワクとしての追加拡大でございまして、いわゆる国民金融公庫で申しますならば、生鮮食料品その他の特利ワクにつきましては、年度当初にきめましたワクの範囲でまかなえるという前提で、一般金融対策として追加を行なったところでございます。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、銀行局北田特金課長お尋ねいたしますが、マル食資金環衛マル環資金ということになりますが、これの追加は年末どの程度考えになっていらっしゃるでしょう。
  22. 北田栄作

    北田説明員 ただいまお話のございました国民公庫マル食資金並びに環衛公庫関係資金につきましては、現在のところの貸し付け状況から申しまして、年度内のワクで十分やっていけるという見通しのようでございますので、現在のところ、追加については考えておりません。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 マル食資金とかマル環資金ということになってくると、大蔵省はこれはどうしても締めたがるんですよ。ある程度理解もできるようなものですけれども、この金融制度ができましてから、どうしても一般プロパー資金環衛業者のほうへ回らないという点があるわけですよ。ですからこれのみに環衛関係業者は期待をしているということなんですね。そこで運転資金は貸さないわけですね。そこで運転資金も、それでは国民金融公庫一般プロパー資金から融資ができるではないか。なるほど道は閉ざされてはいないのです。ですけれども、どうしても資金需要が多いということになってまいりますと、その環衛業者というのは、環衛金融公庫融資の道があるのだからということで押えがちなんですね。そこで、いまあなたは資金余裕があるようなお考え方のようですけれども、私どもがいろいろな面で関係することがあるわけですが、なかなかそういかないのです。申し込みをするけれども信用がどうだこうだと言って、なかなか融資してもらえない。申し込み額の三分の一とか半分に減額をされるといったようなことでして、また、申し込みから貸し付けまでの期間というものは相当期間があるんですね。だから、それらのことを考えてみると、資金需要に必ずしもゆとりはないということだと私は考えるのです。年末に対して何らかの配慮というものは例年してきたわけですが、ことしもおやりにならなければ、これは相当深刻な状態になるのじゃないかと思いますが、そうお考えになっていませんか。
  24. 北田栄作

    北田説明員 お答え申し上げます。  現在、お話のございました運転資金につきましては、一般ワクで見ることになっておりますので、今回の追加の中で十分見られるものと考えております。設備につきまして、ただいま環衛関係設備資金についてのお話がございましたが、これは従来から、申し込み状況等を十分勘案いたしまして、申し込みがあまり積滞いたしませんように十分配慮をいたしまして、資金配分をいたしておるところでございます。現在のところ、例年に比べましてわりあいに貸し付けも順調にいっているように見受けているところでございまして、現在のところ追加をする必要はないものと考えておりますが、今後とも十分申し込み状況貸し出し状況、そういったものを勘案して、円滑な貸し付けができるように十分配慮をしていきたい、こういうふうに考えております。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 たてまえはいまおっしゃったとおりです。私もよく承知をしているわけですよ。ですけれども、現実はなかなかそうはいかないですね。運転資金プロパー資金から借りますから、その申し込み書を出すわけです。設備資金のほうは環衛公庫資金になりますから、また借り入れ申し込み書を出す。二通出すわけですね。ところが取り扱いをする者は一人なんです。ですからどうしても総額という形になってまいりまして、設備資金の額が大きくなるということになってまいりますと、一般プロパー資金一般中小企業者に対する貸し付けの額と比較をすると、どうしても設備資金の額が大きくなる。経営の規模といったようなことと、表面から見ますと、どうも大き過ぎるじゃないかというような感情というものも出てくるのですね。それは、第一線の担当者はベテランですから、そうした感情というようなことではなくて、十分調査をして融資はされるでありましょうけれども、なかなかそうもいかない面があります。ですから、そこらあたり十分配慮をしていかれる必要があるであろうということだけは申し上げておきたいと思います。  なお、信用保険公庫に対しては、年末追加というのは、中小企業庁からいただきました資料の中には出ていないようですが、これはどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  26. 吉光久

    吉光説明員 例年、年末追加につきましては、政府関係金融機関についてのみ行なっておりまして、保険公庫に対する追加財投は行なっていないのでございます。ただ今年は、保証協会業務の中で、災害関係で特に大きな融資業務をやらなければならなくなった土地につきましては、保険公庫で留保しておりました融資基金の一部をそれらの保証協会に、融資応援と申しましょうか、一部それらの保証協会のほうへ出して融資応援に当たっておるという状況でございまして、追加財投一般としては、保険公庫については取り扱っておりません。現在持っております融資基金の運用によって対処いたしておるという状況でございます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 それは、保険公庫資金余裕があると、それでいいんだろうと思うのですよ。ところがなかなか窮屈だ。窮屈だから、この前も貸し付け利率を二・五%から三・五%に引き上げるというような措置をおとりになった。結局、公庫の赤字というものを保証協会に転嫁した。保証協会に転嫁することは、中小企業者に転嫁をすることになるわけです。信用保証協会保証を受ける業者というのは小規模企業でございますから、これは相当な負担であろうことは言うまでもないわけですね。ですから、そんな安易なことではなくても、もっと信用力を強化していくというような方向で手当てをされる必要があるのではないかというように思います。来年度はどの程度増額をしようとしているんですか。この融資基金準備基金を。
  28. 吉光久

    吉光説明員 来年度手当てといたしまして、これはまだ予算の折衝の過程でございますので、最終結論は得ていないわけでございますけれども、一応私ども考えておりますのは、保険準備基金といたしまして九十億円と、融資基金といたしまして百億円程度のものを準備いたしたい、このように考えております。  なお先ほどの、ことしの、いまの保証協会業務繁忙に伴います融資基金のほうの融資額の問題でございますけれども、先般、保険公庫中心にいたしまして、各都道府県の保証協会と下期の実行計画についての詰めを行なったわけでございます。大体、各保証協会ともある程度妥当なと申しましょうか、あるいは順当なと申しましょうか、そういう線でそれぞれの保証協会別融資基金配分もきまっておりまして、したがいまして、ことしはそれで何とかいけるのではないであろうか。ただし来年度につきましては、いま御指摘ございましたように、融資基金につきましても相当応援の度合いを深めてやらなければならないものと、このように考えております。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 私は、そんなに甘くないということを、私の調査に関する限りは考えているわけです。しかし、きょうは時間がございませんからあらためてお尋ねをすることにいたします。  徳田さんお見えですか。まだですね。
  30. 八田貞義

    八田委員長 まだです。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 それでは長官、この来年度予算概算要求で、あなたのほうの所管だけで四百八十億八千五百万円、これは全体の伸び率を押えられておるということで、控え目な要求になったのだろうと思うのですが、今日の中小企業の状態から考えてみると、これではどうにもならないのじゃないかというように思うのですね。それから特に小規模事業に対しては五十億八百万円、これもお話にならないです。中小企業団体の職員の共済制度というのも、ことしは見送りになっていると私は感じます。農業団体関係は、御承知のとおり職員は共済制度になっているんです。公的年金制度ですね。中小企業だけはどんどんどんどんふくれ上がりつつあるんです。にもかかわらず、依然として任意の共済制度のまま放置しているということは私は問題だと思うのですよ。もっと希望を持たせる、そうして質のいい職員を中小企業団体に吸収していくためには、採用していくためには、年金制度なんというのを公的年金に、少なくとも農業団体に劣らないような方向で確立をしていくということでなければならないのではないでしょうか。そこらのあなたのほうの積極さが足りないと私は思います。  それから、指導員や補助員の手当にいたしましても、ベースアップあるいはまた期末手当というのは国家公務員と同率にはなりました。なりましたけれども、基本給そのものが低いわけでしょう。いま四万円や五万円ではどうにもならないじゃありませんか。これで質のいい指導員を求めようとしたって、できるものではございません。身分の保障といっても、これは公務員にはなかなか持っていけない。してみると、やはり報酬の面において、国家公務員には劣らないような給与の支給というようなものがなされなければ——これは地方ですから、地方公務員とこれも大体変わりませんが、その程度までは持っていくということにしなければならないと思いますね。ところが小規模企業予算ということではどうにもならない。若干の量的伸びがあったのであって、そうした質の面においては、来年度予算の中でも無視されてきている。これは問題だと思います。あなたはそうお考えになりませんか。
  32. 吉光久

    吉光説明員 まず最初に、全体の要求額の問題でございますけれども、御承知のように、各省別に新しく要求できます限度と申しましょうか、そういうふうなものがあらかじめ閣議で決定いたしておるわけでございますけれども通商産業省で持っております新規財源と申しましょうか、要求できる幅と申しましょうか、そのうち半分、約五割に相当するところは、中小企業施策費の伸びの中に全部突っ込んでもらったわけでございまして、省といたしましては、最大限の努力を払った要求を出しておるというふうに御了承いただきたいのでございます。  それから、小規模企業対策としてやっております指導員に対します報酬あるいは身分安定等に関する措置に関連してでございます。私どもも、現状で十分だというふうな感じは持っていないわけでございますが、先生も御承知のように、本年度実は期末手当につきまして、長年の懸案でございました国家公務員並みの期末手当を補助金として出すというふうなことに踏み切ったわけでございます。それからベースのほうにつきましても、ベースアップ率は毎年国家公務員並みに上げてもらっておるという状況でございまして、したがいまして、さらにこの際、基本的なベースそのものについて再検討の要がありはしないかという御指摘でございます。その点につきましてもいろいろ勉強いたしておりますけれども、どうも地域によりまして、その市町村の職員の給与との関連と申しましょうか、等の問題その他がございまして、いまのベースが大都市周辺では、周辺の職員のベースに比べて、あるいは低いか——ところが農村部に至りますと、むしろその基準を上回っておるというふうな問題等もございまして、むしろ全体といたしまして、そこらの手当の出し方その他についてもう一度再検討してみる必要があるのではないかというふうには考えておりますけれども、さしあたり来年度の編成には間に合わなかったというのが実情でございまして、さらにこの点につきましては勉強さしていただきたいと思っております。  それから、身分安定の問題も御指摘のとおりなんでございますけれども、特に身分安定その他、質のいい職員を得るためにというふうなことで、期末手当等についての増額もいままでやってまいったわけでございますが、公的な年金制度その他の採用につきましても、いろいろと事務的に詰めておりましたが、なかなか問題点もございまして、結局、煮詰めるまでに至らなかったというのが実情でございます。こういう身分安定措置を強化してまいるということは、非常に重要な事項でございますので、いま御指摘ございましたようにもう少し時間をいただきまして、そういう安定施策につきまして、積極的な施策をさらに将来検討してまいりたいと考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 私の調査している限り、商工会の指導員が地方公務員のベースを上回っている、あるいはそれと大体同額だということは、まあ年齢とか勤務年限とか、いろいろな面を比較してみますと、そういうことはあり得ない、ずっと下回っているというように考えております。  それから、もう一つお考えにならなければならぬことは、私は公的年金制度のことを申し上げましたけれども、公務員は公的年金制度という形において保障されていますよ。しかし、商工会の指導員とか補助員というのは、その保障がないではありませんか。それらの点を十分配慮することなく、ただベースの問題だけを大体同額のところもあるからとおっしゃることは、私は問題だと思う。だからあなたが、地方公務員との比較において、それと大体均衡をとるという方向で検討したいとおっしゃるならば、それでけっこうなんです。ただ、給与ベースだけでなくて、すべての待遇の面において均衡をとるような扱いをしなければならぬということを申し上げておきます。そのかまえで取り組んでいかれますか。
  34. 吉光久

    吉光説明員 先ほどお答え申し上げましたのが、個別的事項ごとにお答え申し上げましたので、あるいは舌足らずであったかと思いますけれども、基本的にはやはり、この指導員の持っておる役割りというのは非常に大きなものでございます。私ども、この指導員の役割りの重要性ということにつきましては、常にその立場で考えておるわけでございまして、御指摘になりましたようないろいろの施策を含めまして、指導員の身分安定、資質向上に資することができるよう努力してまいりたいと考えます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、時間がありませんからこれで終わりますが、商工会館の建設に対する助成であるとか融資の問題、これもなかなか、検討しよう検討しようということだけで、来年度の中にも考慮されていないのではないかと思います。やっておるということであればけっこうでございますが、いただきました資料に関する限りは、あまり具体的な資料でございませんのでわからないのですけれども、あまり考えられていないように私は見受けました。ですから、商工会館の建設というのは、地方の中小零細企業の発展にいろいろな面において非常に役立つわけですから、特別な配慮が望ましいと思います。ともかく、製造業関係というようなものは、高度化資金等々におけるところの融資の道もあるけれども、流通関係というのは、どうしても消極的な扱いしか受けていないというところに問題がありますから、物価対策の面等々からいたしましても、流通の事業というのは重要な意味を持つわけです。そこらあたり十分配慮されるように要請しておきたいと思います。  それから、昨日、私はバナナの輸入の問題について通商局の次長にお尋ねをいたしました。これはお答えは要りませんから、留意していただきたいということは、バナナの輸入は専門業者において過去ずっとなされてきた。ところが最近、総合商社と外国資本というのが入ってまいりまして、この率がぐんぐん上がりまして、南米ものは五〇%をオーバーするというところまでなってきたわけです。それで、専門業者であるところの中小企業が圧迫されまして、欠損に欠損続きで、倒産続出という状態に実はあるわけです。このままでは放置できない。  そこでこれは、公取委員長もお見えですからお聞き取りを願っておきたいのですけれども、台湾ものはかって自由化であったわけですね。ところが、売り手市場になるというところで、まだ完全統制ではありませんけれども、外貨の割り当てという形になって後退をしてきたわけです。ところが南米ものが、今度はその当時の台湾ものと同じような状況を呈しておりまして、売り手市場ということに実はなっているわけですね。そこで台湾と南米と、片や自由化、片や半自由化ということではなくて、同じような扱いをしてもらいたいということも業界としては考えているようですけれども、とりあえず業界のほうで輸入を自粛していこうというところで、いろいろと安定委員会をつくって検討されたようでございますが、過去の輸入実績に基づいてずっと減していくというような扱いをしようとした。ところが、これは独禁法違反になるのだということで、まかりならぬということになった。結局、自分たちの自助努力ということでやろうとしたことも、通産省と公取と、それから総合商社の反対にあって、どうにもならなくておるという深刻な状態だということを実は伺っているわけです。  それで私は、きのう通商局次長にいろいろお尋ねをいたしまして、確かに秩序ある取引というもの、輸入というものは大切なんだから、できるだけひとつそうした専門業者が困らないように協力をし指導もしていきたいという御答弁があったわけです。だからそれでけっこうだと思う。そういうことでひとつ強力にやっていただきたいということを要請いたしておきましたが、公取も中小企業庁も、それらの点を十分配慮されて、原局である通商局連絡をとりながら、いま非常な苦しい状態に追い込まれている専門業者を救済をするように配慮していただきたいということを要請をいたしておきたいと思います。  それでは次に、公取委員長に再販問題について若干お尋ねをいたしますが、独禁懇が開かれたようでございますが、結論が出ないで十二月十五日とかに何かまた開くということの新聞報道でございますが、どのようなことが議論されたのでございましょうか。
  36. 谷村裕

    ○谷村説明員 ただいま御質問の中に、独禁懇では結論が出ないでというふうなお話でございましたが、場合によれば、皆さま方の一致したお考えというものがある程度のものが出てくるかということも考えられるわけでございますが、問題が問題でありますので、いろいろな角度からの御意見があれば、その御意見を承る機会というふうにも考えておりますので、その結論というような形における、何か一貫したまとまったものが出てくるかどうかは、必ずしも私ども考えておりません。ある程度の何かお考えの筋というものがお示しいただければと、そういうような気持ちでおります。そういうわけで、十二月の十五日にもう一回そういう御意見を交換していただく場をお願いしたわけでございますが、大体出ております議論は、もう申し上げるまでもなく、御承知のようなことかと思いますけれども、大筋としては、やはり特別の独禁法の例外としての制度であるから、その本来の目的というものを逸脱しないように、公取としてはそれに対していわゆるチェックと申しますか、あるいは監視と申しますか、それが消費者の利益をそこなわないように、本来の目的に向かって正しく適正に運用されるようにつとめるべきであるというようなのが、大体の皆さま方の、抽象的ではございますがお考えのように承りました。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 お答えがいただけるのかどうかわかりませんが、谷村委員長とされては、この再販ははずさなければならぬというようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。あるいは、まあ一挙にはずしてしまうと混乱をするから洗い直しということを考えなければならぬ、というようにお考えになっていらっるのでしょうか、いかがでしょう。
  38. 谷村裕

    ○谷村説明員 はずすというふうなおことばでございますが、現在、法律としては現に二十四条の二という形で、一定の法益のためには、さようないわゆる再販制度ということによるやり方も独禁法の例外として認めようという法律があるわけでございますから、この法律をただいまの段階で前提とする限り、いかに適正に運用していくかということが問題でありまして、個々の品目について、あるいは指定要件に該当するかどうかという問題はございますが、そのはずすというおことばがいかなる意味に言っておられるのかによっては、答弁の申し上げ方が違うかと思います。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 あなた、むずかしく言わなくともわかっておることですよ。再販制度というものはこのままでやるのか、あるいはそういう指定商品をはずしてしまう、再販制度というそのものをなくするのかということは、もう前から古いくらいの議論なんです。政治問題化したような傾向すらあるわけです。だから前委員長のときは、再販制度というものをなくしようというような、いわゆる指定商品をはずそう、そういうような考え方もあったわけですけれども、洗い直しということでとどまってきておるということ。それを引き継がれた——これはもちろん、委員長単独でおやりになるわけではない、合議制ですから。わかるわけですけれども、現在の公取としてはどのようにお考えになっておられるのかということを私は聞いておるのです。そうことばであまりむずかしく議論しなくても、わかり切ったことですから、わかり切ったことをわかり切ったこととして了解されてお答えいただいてけっこうですよ。
  40. 谷村裕

    ○谷村説明員 たいへんことばというものを慎重に使うことになれておりますので、はなはだ申しわけないのでございますが、おっしゃる意味が、再販制度全体をこの際なくすというふうにおまえ考えているかという意味であれば、私どもは、冒頭御答弁申し上げましたように、再販制度の法益に向かって適正に運用してまいるということでただいまは考えております。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 適正に運用するというのは、どうしようというのですか。
  42. 谷村裕

    ○谷村説明員 再販制度が設けられまして、消費者、あるいは流通業者、あるいはメーカー、そういった三者のそれぞれの立場において、それぞれの考え方というのはあるでありましょうが、それが持っております国民経済的な意義に最も適したように運営され、そしてそれが消費者の利益を阻害しないということにおいて意味を持つように運営してまいりたい、こういう意味でございます。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、再販制度が恩恵を受けておるのは実はメーカーなんだ、メーカーの超過利潤というものが実はあるということが、多くの者からそういった意見というものが絶えず述べられておるわけですね。そうすると、消費者の利益を守るというようなこと、あるいは消費者の利益が不当に害されているということはどういうことなのか。それから、メーカーの超過利潤というようなものは、これはその基準というものはどういうことなのか。これは少なくとも、公取委員長はこれらの点を明確にしていくのでなければ、いわゆる適正な運営というものはできないのではないか。それから、絶えずいわれておることですけれども、運用を強化していきたい、こういうのです。強化をするというけれども、その基準というものが明確にならなければ、なかなか強化なんということもできないであろうと思います。それらの点に対してはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  44. 谷村裕

    ○谷村説明員 御指摘のとおり、再販制度によって、一つは、メーカーが自分の大体希望する、しかもそれは競争場裏において希望する一つの価格を設定し得るという形が与えられておるわけでありますが、その自由な競争というものがかりに十分に行なわれない状況であるといたしますれば、いまおっしゃいましたような意味での、メーカーとしてのかなりの、たとえば価格を有利に設定することができるという状況が出てくるかもしれないわけであります。そういう問題をどう考えるかが第一点であり、第二点はまた、いわゆる末端における価格競争がないということによって、競争はむしろ流通とメーカーとの間におけるマージンあるいはリベートというような形において行なわれていく、いわばそこに問題があるということも、第二に御指摘になったような点があろうかと思います。そうして、それを具体的にどの線で大体妥当であり、適正であると考えるか、これをまさにおまえはどう考えておるかというふうにお聞きになっておられると思いますが、そこが非常にむずかしいところでございまして、目下鋭意検討しているという段階でございます。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 だからあなたが、再販制度というものは現在の独禁法の中にあるわけだから、これをはずすということについて言っているんだったら答弁が違う、こうおっしゃった。別に私はあげ足をとって、あなたとかたくなな議論を取りかわそうとは考えていないのです。いつも質問をしてきたような再販制度に対する考え方でもってお尋ねもしたわけです。あなたからああいった答弁を受けようということは考えなかったのですね。  それで、再販制度というものは、競争制限的なものであることは間違いないのです。小売り価格というものをメーカーがきめているんですから。そこに超過利潤というようなものがメーカーにもたらされてきていることも事実なんです。いかに適正な運用をしようとしても、小売り価格というものはメーカーがきめてしまう。このことは競争制限的であり、寡占化の方向に進むことは間違いないんです。適正な運用をするといったって、それはどうするのかということになってくると、いまあなたがお答えになりましたように、たいへん問題なんだから、そこのところを慎重に実は検討しておることだということで終始する以外にないではありませんか。いままでもずっとそうであったわけですよ。だから、そこが問題なんだから、多くの人たちからいろんな議論が出てきている。再販制度というものを物価対策の面で見ることは適当であるとか、あるいは適当でないとかという議論も出る。あるいは中小企業問題として再販制度を考えることは無理があるのではないか。中小企業問題としてこれをとらえるならば、医薬品とか化粧品だけではなくて、今日四百万の中小企業の事業所の中に流通関係は約半ばに達している。それらの業種の中小企業者がいろんな商品を販売してきているわけです。医薬品と化粧品というのはその一部にすぎない。中小企業対策という面から見るならば、その他全般的に同じようなことが言えるのではないかといういろんな議論が出てまいります。ですからこの再販制度というものは、切り口上ではなくて、真剣に考えていくということでなければならない。やはり消費者の利益をまず第一前提として考えなければならないでしょうし、流通関係中小企業というようなものも、それなりに育成をしていかなければならない。重要な役割りを果たしているんですから、これもやはり守ってやらなければならないであろう。そうなってくると、この再販制度によって、メーカーのみが恩恵を受ける、超過利潤というものがメーカーに特権的に与えられておるというような問題については、真剣に考えていかなければならないのではなかろうかど実は考えるわけです。それらの点に対して、あなたも非常に苦労しておられるだろう。私はむしろ、同情ということばはたいへんあなたに失礼かもしれないけれども、政治問題化して非常にあなたも苦しい状態にあるんではなかろうか。一刀両断にはあなたの考え方を実行できないというような点もあるだろうというあなたの立場を、私はむしろ理解をして、できるだけ協力的な考え方の上に立って私ども取り組んでいかなければならぬとすら私は考えているのですから、ここであなたも、フランクな気持ちであなたの考え方も聞かしていただく、こういうことにしていただきたいと思うのです。いかがでございますか。
  46. 谷村裕

    ○谷村説明員 たいへん御親切なことばをいただきまして、ありがとうございます。確かにむずかしい問題なんでございます。しかしながら、やはり私はある程度、本件がいかに適正に運営されていくかということの考え方をいろいろな角度から取り上げて、まとめてみなければならない問題であると考えております。  御指摘の点が、特にメーカーの問題だけに触れられましたけれども、私も同様に、メーカーが小売りに、たとえば有利な価格存設定し得るような条件をかりに持っておって、そうしてそれをつけているのではないかというふうな気持ちがもし消費者のほうにあるとすれば、そしてそれが再販制度によって守られているとすれば、やはりそこは、たとえば、その商品なら商品の価格なり、流通上のいろいろなマージンなりについてもっと不審存解くように、いわば一種のディスクロージャーと申しますか、公開と申しますか、そういうことも一つの問題としてあるのではないか、そういう点も一つ考えております。ここで、いま検討している問題点をいろいろと申し上げるとたいへん長くなりますのですが、基本的には、先生が御指摘になったようなところ、それぞれいろいろと慎重に、しかし必ず一つの何らかの方向を打ち出す問題として考えております。いろいろありがとうございます。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 ともかく、この再販制度が昭和二十八年に設けられたが、そのときの保護法益と申しますか、これは第一に廉売からの商標品の保護にあったのです。それから第二は品質の維持、粗悪品というようなものや競争の中から製造してはいけない。それから第三にやはり中小企業者の保護というのがあったわけです。この前も私が申し上げたとおりですね。ところが、当時の保護法益が現在もそのとおりであるかということになってくると、第一、第二というものはもう考える必要はないのではないか。第三だけは、若干事情は変わってきていると思いますけれども、依然として問題は残ってきているのです、今日の中小企業の過当競争という状態は。ところが私は、先ほどメーカーの超過利潤ということ存申し上げたが、この再販制度というものは、寡占状態をつくり上げ、系列化を非常に強めてくるということだけは避けられないであろうと実は考えるのですが、そこに私は問題としてあなたに考えおきをいただきたい。  むしろ前提としてこれを取り上げて、取り組んでもらわなければならないと考えておることは、再販制度によって、あまりにもメーカーが一方的に小売り店に対して締めつけをやっているということなんです。いわゆる取引の契約内容ですよ。どういうことをやっているのか。リベートもマージンも一方的にメーカーがきめるのですよ。それから、新製品ができるでしょう。新製品ができたち、その小売り店が望まなくても押しつけるのですよ。それから、メーカーがつくっている全商品を小売り店は買わされるのですよ。これは要りません、これは売れませんからというわけにいかないのです。一方的なんですよ。それから、年二回仕切って、そしてリベートや計算するわけです。ところが、一方的に押しつけていて、支払い日がぴしっときめられている。そのとき支払うことができなければ、どうしても支払いはおくれることになるが、半年の間に一回だっておくれておったら、そのリベートはもらえないのですよ。こういう契約内容です。もし定められた小売り価格以下に、医薬品でも化粧品でも売ったならば、特別のサービスをしたならば、小売り店からはずされるんでしょう。それがこわいから、メーカーの言うままになっているのです。言うままになっているから、メーカーはそれをいいことにして一方的に押しつけをやっている。だからそれによって、メーカーはどんどんもうかっていくわけです。そういったような、メーカーの優越的地位存利用した不当な取引を排除していくということでなければならぬと私は思う。そこらが排除されるならば、この再販制度というものにだけ小売り店がすがりついているというようないまの状態は変わってくるであろう。そういう点を改善されるならば、たとえ再販制度がそのままでありましても、小売り価格をもっと下げることができるのではないか。メーカーにほどほどにもうけてもらう、そして小売り店の利益も保証し、消費者に対しては安い化粧品や医薬品を供給することができる、この点が非常に大切だと私は思うのです。ところが、いま議論されているような点については、そこらの点はあまり真剣に検討されていないような感じがしてなりません。またメーカーは一番ここをおそれるのです。そういう点をひとつ十分にメスを入れてもらいたいということを要望しておきたいと思うのです。  それから商品の差別化というようなことも、これは私は問題があると思います。先ほどあなたがおっしゃったように、この再販制度というものは自由な取引ができることということです。それがあるわけですね。それから商品の差別化というようなことがあってはならぬということです。それがおっしゃった、いわゆる適正にこの再販制度が運用されておるかどうかということをきめるバロメーターになっていくのであろう。ところが、現実はそうではないということ。私が指摘序し、あなたも非常に苦労しておられるような点が、お答えの中で明らかになっておるわけでありますが、商品の差別化がどうして起こるのであろうか。これはあまりにも過当広告をやるということです。どんどん広告をいたします。いたしますからして、消費者はイメージが変わるのです。盛んに宣伝をする。どうしてもその商品がよほどいいもののように感じさせる。そうすると、広告によってその商品の差別が起こってくるということになってまいりましょう。ここに私は問題があると思う。ですから、この誇大広告、過当広告を抑制をしていくというようなことですね。そして誤ったイメージを消費者に与えないというようなやり方。そのことが、あまり金のかかった欲求をある程度抑制をしていくとか、大量広告を押えていくとかいうことによってコストが変わってまいりますから、安い商品を消費者に供給することだって可能だろう、そういうこともこの再販制度の検討とあわせて十分配慮していかれる必要があるのではなかろうかというように考えるのです。  一方的に私は申し上げましたが、時間の関係から申し上げたわけですが、これらの点に対して十分配慮していただきたい。この際ひとつ御意見を伺っておきたいと思います。
  48. 谷村裕

    ○谷村説明員 いろいろ問題点を御指摘いただきました。私どももさような点にも触れて、問題としていろいろ慎重にいま検討しているところでございます。なお、それは再販と結びついた問題でもございますが、近ごろのような、経済社会一般に通じるいろいろな問題も、いま御指摘の中には含まれているように思います。これからの私どもの大切な検討課題であると、かように考えております。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 私も、再販制度のもとにこうあるべきだと、いろいろな問題点は申し上げましたが、結論的に申し上げたい点もあります。ですけれども、党内におきまして、現状これをどうするかというまだ結論を出しておりません。いずれまた次の機会にでも、私どものまとまった考え方ということを申し上げて、あなたの御意見も伺いたい。どうかひとつ、政治問題に巻き込まれることなく、公取委員長として冒頭お答えになりましたように、適正な運用であるとか処理というものができるように対処していただくように、ひとつ要望しておきたいと思います。  それでは時間ですから、これで終わります。
  50. 八田貞義

    八田委員長 岡本富夫君。
  51. 岡本富夫

    ○岡本委員 午前中の時間が非常に短くなりましたから、明確にお答えを願いたいと思います。  十一月四日に、公明党の商工部会として、通産省並びに大蔵省に申し入れましたように、中小企業向けの年末金融措置に関するところの要望存出したわけでありますが、倒産件数が前年度比較して二四・八%、負債額が四一・七%増というように、非常に中小企業の倒産が多くなっておる。御承知のように、これは昨年の九月以降十四カ月にわたるところの政府金融引き締め政策が中小企業にしわ寄せをしてきた。しかも、いよいよ年末を控えて、こうしたところの事業に必要な金が非常に多くなっておる。これを踏んまえたところの申し出てありまして、まず最初は、中小企業の年末のつなぎ資金、また米国によるところの繊維の対日輸入規制、こういうようなことによって滞貨が出ておる。したがって、この中小企業向けの金融融資ワクを大幅に確保してもらいたい、なお、この資金については、返済条件の緩和をしてもらいたい、こういう一項目少申し入れたわけでありますが、それについてのお答えを願いたいと思います。
  52. 吉光久

    吉光説明員 年末追加財投問題につきまして、いろいろと御激励なりいただいたわけでございます。同時にまた、正式に意見書としての御要請をいただいたわけでございまして、私どもも、この金融引き締めが解除されたとはいえ、中小企業に対する浸透は、むしろ金融引き締め期間中のしまいになるほど浸透度が高まっていく、こういう状況であったわけでございます。したがいまして、この年末の金融のみならず、下期財投全体について、もう一度ここで見直しを行なう必要があるというところから、今回の追加財投計画をきめたわけでございます。  御指摘のように、全体として資金需給がまだ相当逼迫いたしておりますと同時に、いま御指摘ございましたような、たとえばモザイクタイルその他の陶磁器でございますとか、金属洋食器でございますとか、その他輸出不振のために滞貨が出ており、あるいはまた近く出るであろうと懸念されるようなそういう業種も、また別の角度からこれに対する何らかの金融措置が必要であるというふうな判断要素も入ってまいりました。あるいはまた、これも御指摘の中にございましたけれども、九号、十号の台風の影響で、特に中小企業の被害というものが従前に増して多かったわけでございまして、そこら資金手当てもしなければならない。いろいろな要請がございまして、したがいまして、それらを含めまして、貸し出し計画におきまして、千五百九十億円というふうなものを追加いたしたわけでございます。これに伴いまして、必要な財政資金といたしまして、千百六十億円というものをこの三機関に対して準備をいたしたところでございます。  なお、融資条件の緩和等の問題につきましては、現実にそれぞれの制度等がございまして、たとえば災害関係でございますれば、それに応じた問題がございますし、それらの特殊要因につきましては、それぞれの特殊要因で考えられることになっておるわけでございまして、今回は一般的な追加財投を行なって、量的な不足をこれによって緩和しよう、こういう試みで追加財投をやったわけでございます。
  53. 岡本富夫

    ○岡本委員 その追加財投、あるいはまた追加されたのは、昨年度対比幾らになっておりますか。
  54. 吉光久

    吉光説明員 昨年度追加財投、この貸し付け計画のほうでございますが、これが千三百八十五億でございますので、二百五億円の増、したがいまして一四・八%の増でございます。  なお、これをまかないましたところの財政資金のほうでございますけれども、これは昨年度が九百九十五億円でございまして、ことしが千百六十億円でございますので、一六・六%を上回っておる数字になっております。
  55. 岡本富夫

    ○岡本委員 最近の倒産は、いよいよ本年は戦後第二位の倒産であるということを言われておりますように、十月度の倒産を見ますと、件数が九百七十一件、負債が七百十二億八千七百万円、これを前年度比で見ますと、倒産件数は二一・五%、しかし負債額は二六・五%というように、経済成長の政策によってインフレ傾向を起こしておるとあえて言いたいのでありますが、そういうように、倒産件数は前年比二一・五%、ところがその負債額は二六・五%ということになりますと、昨年は、御承知のように引き締めが昨年の九月ですから、中小企業に響くのは約半年、大かた一年くらいかかる。じわじわとくるわけです。したがって、ことしの年末というのは、昨年に比べますと非常に深刻になる。でありますのに、一四・八%、あるいはまた一六・六%では、非常に計算違いではないか、こういうように私は考えるのでありますが、その点についてお答え願いたい。
  56. 吉光久

    吉光説明員 確かに、今回の金融引き締め措置中小企業業界に対する浸透のしかたには、従前と違ったパターンがあったわけでございまして、従前でございますと、引き締めの効果は先に中小企業のほうにあらわれて、大企業のほうがあとになるという例が多かったわけでございますけれども、今回は、引き締めの効果の浸透は大企業のほうに先に参りまして、中小企業関係にいろいろの条件で引き締めが浸透してまいりましたのは、実はこの春、三月以降からだんだんと浸透度を深めていったという状況であろうかと思います。したがいまして、倒産件数にいたしましても、三月を境にいたしまして、月八百件をこすあるいは八百件前後というふうなところまでで、ずっと高原状況でまいっておったわけでございまして、先ほどお示しのように、十月が本年のうちで一番高い倒産件数を示したわけでございます。  いろいろの事情を総合的に勘案しながら、今回の追加財投をきめたわけでございまして、実は事実問題としましては、すでに先般の引き締め解除というふうなことによりまして解除措置がとられたわけでございますけれども、引き締めの影響力、浸透度はこの下期にまだ続いて入るというふうな前提に立ちまして、たとえば前回、引き締めの緩和策でございました四十三年度におきます財投資金追加投入額は、七百六十億円でございました。前年度比に対しまして九・四%増というふうな増加率であったわけでございます。それを今回の場合には、そういった前回の緩和措置がとられたときにおける追加財投的な考えは捨てまして、むしろ、引き締めはなお浸透しつつある、こういう前提に立ちまして、追加財投を組んだわけでございます。前回の引き締め緩和がとられましたときに比べれば、相当思い切った増加額で組んだつもりでおるわけでございます。
  57. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、私この申し入れに行ったときも申し上げましたように、今度の公定歩合の引き下げによって緩和されるのは、ほとんど大企業のほうでこれが消化されてしまう。これが中小企業に来るのはおそらく半年以上になる。あるいはもっと先になるかもわからない。あるいは中小企業に及ぼさないかもわからぬ。そういう状態でありますから、特に中小企業に対するところの金融問題については、昨年と本年と比べてこの負債額を見ると二六・五%、こういうことを考えますと、あなたは相当思い切った要求をなさった、こういうようなお話でありますけれども、これはあまりにも中小企業の実態からかけ離れておるんではないか。これは常識で考えてもそういうように思われるわけでありまして、ちょっと弱腰ではないか。私ども中小企業省を提唱するのもそこにある。したがって長官、これでもう相当大幅になったんだというお考えは、これは勘違いをなさっているんではないかとも考えられる。一昨年の七百六十億から九・四%上がった、そんなにどんどん日本の経済は進んでいるわけですよ。大型になっておる。それに予算だって、昨年と今年の予算を比べますとすごい変わりがある。二五%、三〇%も大きくなっている。それが中小企業だけはこうしてわずか一四・八%、一六・六%ですか、これで相当大幅になったんだとお考えになるようではちょっとおかしいんではないか、こういうように私はあえて申し上げたい。  大蔵省、来ておりますか。——あなたは大蔵政務次官の中川さんから、この話をお聞きになりましたか。
  58. 北田栄作

    北田説明員 ただいまの御要望の件は、政務次官から聞いております。したがいまして、そういった御意向も十分取り入れた上で、中小企業庁等の御意向も十分お伺いいたしまして、今回の年末追加ワク等について決定いたしたわけでございます。
  59. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで、年末の金融の返済資金というものは、大体翌月からどんどん返済していかなければならぬ、これは御承知だと思いますが、それではことしの年末はとても乗り切ることができない。また、乗り切れたといたしましても、立ち直る期間が必要であります。昨年と比べまして、中小企業の金詰まりの状態というものは全然違っておる。さらに現在この中小企業の状態というのは、人手不足の上に売り上げがどんどん低くなっておる。頭打ちになっておる。こういう状態から見ますと、翌月から返済ということは、これはまことに過酷であると私、思うのです。したがって、半年ぐらいの余裕考える用意があるか、これをひとつ検討する用意があるか、まず大蔵省にお聞きしたい。
  60. 北田栄作

    北田説明員 政府関係機関の国民、中小公庫等におきます貸し付け条件等につきましては、やはり返済の条件につきまして必要な据え置き期間を置いておるところでございまして、たとえば運転資金につきましては、国民公庫におきましては六カ月の据え置き期間、中小公庫におきましては一年以内の据え置き期間をそれぞれ設けているところでございます。
  61. 岡本富夫

    ○岡本委員 さらに年末の返済資金については、極力、法の許せる範囲において延ばすように指導をしていただきたい。  次に、大企業への売り掛け代金。いま下請代金支払遅延等防止法というのがございますが、大企業からの支払いがどんどん延びておる。御承知のように、昨年の金融引き締めから、大企業のほうも若干金詰まりになってきて、そうして手形サイトが長期化されたり、あるいは現金が手形になったり、こうしたところの状態になっておることは御存じだと思うんです。それについて公正取引委員会委員長から、ひとつ現在の状況をどういうふうに把握なさっておるのか、これをお聞きしたいと思うんです。
  62. 谷村裕

    ○谷村説明員 突然の御質問でございますので、私、手元に資料を持っておりません。吉光企業庁長官のほうが何かお答えになるとおっしゃっておられますので、御了承いただきたいと思います。
  63. 吉光久

    吉光説明員 私どものほうでやりました調査によりますと、これは時系列をとっておりまして、全国で二千五百の下請企業について、それを総合集計したものでございますけれども金融引き締めの始まりました四十四年九月時点と、ことしの八月時点における統計で申し上げますと、まず現金比率でございますけれども、四十四年九月が四七・六%でございましたものが、四十五年八月に四二・八%というふうに、全体として大幅な低下を見ております。それから手形サイトでございますが、引き締め開始時に九十四・七日、これが今年の八月に百・三日。また売り掛け期間でございますけれども、開始時の九月が三十八・三日でございましたものが、今年の八月には四十・三日。一見この数字だけでは非常に少ないように見えますけれども、これは全体の総平均でございます。したがいまして、業種、業態によりましては相当のここに凹凸がございますので、平均値でこれだけの差か出たということは、相当これらの内容が悪化しておるということを示すものだと考えております。
  64. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで公取委員長に、そういうように、たとえば手形がこの数字で見ると、わずか四日か五日、あるいは三日か四日、こういうようになっておりますけれども、現実に見ますと、いままで現金で払われておったのが手形になっておるわけです。しかも、いままでは九十日の手形と、それから現金はそのうちすぐまた払う、こういう比率で払っておったやつが、現金が手形に変わった。そうすると、手形サイトは両方足して二で割りますから、短くなったように見えますけれども、現金率がなくなった。こういうような状態ですが、あなたはそういうことを把握なさっておるのかどうかをお聞きしたかったのです。それが一点。  もう一つは、下請代金、下請代金と、こういうことで物の製造あるいは製造委託、こればかりを見ておりましても、そういうものも親企業と取引しておるが、ほかのいろいろなものも、一般商品もそこに一緒に取引しておるという場合があります。また、一般商品が主であって、物の製造というようなものは従である、こういうようなときもあるのです。したがって、下請代金のみでなく、売り掛け代金もここで検討しなきゃならないのではないか、こういうように思うのですが、その点いかがでしょうか。
  65. 谷村裕

    ○谷村説明員 第一段に実態認識の点でございますが、私も過去一年間に、いろいろとそういった会議とか、あるいは報告資料とか、そういうもので大体の傾向を承知しておりました。おっしゃるとおり、現金比率が低下しておること、あるいは手形期間が、ある業種ある企業によっては、いま企業庁のほうからお答えがありましたように、大きく延びておるというふうなこと、承知いたしております。ただし具体的にこまかい数字を、私は記憶いたしておりません。  それから第二に、さような状況に対しまして、公正取引委員会といたしましては、中小企業庁のほうとも御連絡をいたしまして、事業所等に立ち入り検査をする、あるいは必要なら報告をとる、あるいは場合によっては改善命令を勧告をするというふうな措置を、それぞれできるだけ一生懸命やってまいっておるつもりでございますが、あるいはまだ不十分なところもあるかもしれません。一生懸命その点はやるようにいたしたいと思います。  第三番目に、御質問のありました売り掛け。一般の中にいろいろそういった下請のような実態がありはしないかという問題、これはあるいはそういうことがあろうかと思います。法律では、先生指摘のとおり、製造委託あるいは修理委託というようなものをやった場合には、すべてこれは下請代金でありまして、それをどういう形式で経理しておっても、実態が下請代金ということであればさように扱うわけでございまして、そのように書面もつくらせ、帳簿も整理させるというのが、御指摘のような法律の趣旨でございますから、その線に沿って、たとえどういう経理をしておりましても、さような実態をつかまえて見ていくようにしなければならない、かように考えております。
  66. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間があれですから最後に……。  この一九七〇年代は、御承知のように、公害防止が一番の課題になってまいります。そこで私どもは、各所の公害の総点検をいたしますと、大企業のほうでは、大体公害防除の設備は自分の社でできる。しかし中小企業については、もう公害倒産がずいぶん出ております。公害倒産といわれるように出ておりますが、中には、小さいのはとうふ屋さんまで倒れておるというのですね。こういうようなことを考えますと、この公害を除去しなければわれわれの生存が将来危ぶまれる。しかし公害対策については、中小企業に対しては、相当大幅な資金あるいはまた補助金、こういうものを考えないと企業が倒れてしまう、こういうジレンマにあるわけですが、これについての中小企業庁考え方、あるいはまた、通産省政務次官が幸いお見えになっておりますから、はっきりしたところの方針というものを、ひとつお聞かせ願いたい。
  67. 吉光久

    吉光説明員 中小企業者といえども、公害につきまして防止すべき社会的責務を負っておりますこと、お話のとおりでございます。ただ御承知のとおり、中小企業の場合におきましては、いまも御指摘の中にございましたように、資本力あるいは資金調達力等で非常にウイークなところもあるわけでございます。そういう意味から、特に中小企業関係の公害防止施設費については、相当国がめんどうを見てやる必要があろうかと思うわけでございます。  そういう点から、実は従来とも、御承知のとおり公害防止事業団でございますとか、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等に、それぞれ特利によります防止費用を準備いたしておるわけでございます。ただ、相当公害防止施設の整備をスピーディーにやらなければならない、こういう時間的要請もございますので、したがいまして、これらの諸機関の持っております機能の拡充、あるいは金利の引き下げ、貸し付け条件の緩和その他を通じまして、これらの融資が十分に中小企業者に利用されるよう、さらに制度の改善につとめてまいりたいと考えておるところでございます。  なお、中小企業施策のうちにはいろいろあるわけでございますけれども、たとえば設備近代化資金によりますところの設備、あるいは機械貸与事業によります機械貸与、これは小規模あるいは零細規模層を中心に運用されておるわけでございますが、これらの既存の制度につきましても、公害防止の観点から、いろいろと制度的な改善を検討いたしてまいりたいと考えておるところでございます。
  68. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 いま中小企業庁長官が申しましたように、中小企業の公害防止については、今後とも大いに留意しなければいけない点だと思います。また、安い金利の金を貸し付けるというようなことも考えることだと考えておりますけれども、いま中小企業庁長官が申しましたほかに、いま通産省では、中小企業信用保険制度の中に公害防止保険制度というものを検討して、零細企業にもそういう恩典に浴させようということで考えております。
  69. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは答弁要りませんが、もう一度よく、現在の各中小企業の実態、公害防止の実態、そういうものを検討し、さらに、現在政府のとっておるところの施策、これとがうまくマッチするかしないかをよく検討していただきたい。どうも私は、その点が合ってない、こう思いますので、基本法の経済との調和条項も削られるときでありますから、ひとつ再点検をして、政府の施策がきちっと答えが出るような、効果あるような施策にしていただきたい。これを最後に要望して終わります。
  70. 八田貞義

    八田委員長 川端文夫君。
  71. 川端文夫

    ○川端委員 時間がおくれておりますので、一、二の問題だけ重点的にお尋ねして私の質問を終わりたいと存じます。  まず第一番に、今年の年末の特に中小企業の置かれている立場というものを、どのように御理解願って年末金融の対策を立てられたのか。もう大蔵省との折衝済みの数字があらわれておるわけですから、本年の年末金融に対する企業庁の心がまえというもの、長官の心がまえというものが、どのような立場でものを考えられておったのか。いま金融引き締めによる影響がだんだん深刻にあらわれてきておる。さらに加えて、日米繊維問題に見るがごときいろいろな市況の問題も深刻になろうとしているやさきに、単に従来のような年末金融だけではいけないのではないか。社会不安を惹起するおそれがないのかあるのかという点を、どのように御理解の上年末金融の対策に当たられたかという心がまえの問題を、先に聞きたいと思うのです。
  72. 吉光久

    吉光説明員 御承知のように、先般、金融引き締めは解除されたわけでございますけれども、ただ、この解除の効果が中小企業界に浸透するのには、まだまだ相当時間がかかるという判断をいたしておるわけでございまして、これは先ほども質問の中に御指摘ございましたように、現在倒産件数がしり上がりにふえつつあるということ、あるいは現金比率その他のいろいろの様相から見ましても、条件はまだ改善されるに至っていない、要するにこれが改善されるには、まだある程度の時間が必要であるというふうな状況であろうかと思うわけでございます。こういう金融引き締めによる一般的な影響が、まだ後遺症として相当残るであろうということが第一の前提でございます。  そして第二には、これもいま御質問の中で御指摘ありましたように、特に対米輸出が頭打ちあるいは不安であるというふうな状況前提にいたしまして、たとえばモザイクタイルその他陶磁器でございますとか、合板でございますとか、金属洋食器でございますとか、いろいろの商品に、いわゆる不況商品と申しましょうか、滞貨の出るようなきざしが見え始めておるわけでございます。したがいまして、これは従前の年と違った特徴的な要素として頭に置いておく必要がある、こういうふうに考えたわけでございまして、現実に私どもが、中小企業界からいろいろとアンケート調査その他によりまして調査をいたしてみましても、製品在庫が全般的に過剰ぎみでございますとか、あるいはまた減益傾向に一そう拍車をかけておりますとか、あるいはまた設備投資は鎮静ぎみでございますけれども、いろいろの販売条件その他につきまして悪化のきざしがまだ残っておりますとか、したがいまして、いろいろ中小企業につきまして資金繰りは一そう深刻化しておる、そういう回答をいただいておるわけでございます。これらの要素を十分に頭に置いて、年末金融対策をやる必要があるというふうに考えたわけでございます。
  73. 川端文夫

    ○川端委員 具体的にお尋ねいたす一、二の問題を並べて申しますと、一つは十月の倒産件数がふえたけれども、十一月、十二月はもっとふえるであろう、私はこういう感じを強く受けておるわけでありまして、この点に対するそれらの対策は、どのように立てるべきかという問題が一つと、もう一つは、中小企業庁が非常に熱心にやっておいでの構造改善事業、これは設備中心でありますから、構造改善をやっておった企業そのものが引き締めによる影響を受けて、あるいは倒産するんじゃないかというおそれすら感じられておるわけですが、これらの構造改善事業を実施中、あるいは実施しようと準備しているものに対して、何か年末金融の中に織り込んだ形跡があるのかないのか、この点と、もう一つは、先ほどからもお話がありました燕の食器なりあるいは陶器なりいろいろな問題が出てきておるのですが、これらのものが、言うならば、昨年度より一四・八%の金融上乗せをした、こういう話でありますが、これらをどの程度に織り込んだ上に立っての折衝結果であったのか、この点を御答弁願いたいと思うのです。
  74. 吉光久

    吉光説明員 いま御指摘いただきましたような商品につきまして、それぞれの業界から、必要とするであろうと思われる資金量を一応出さしております。今回の追加財投を最終的にきめる場合に、その資金量等も前提に入れまして決定をいたしておるところでございます。特に、こういうふうなものの対策といたしましては、どうしても設備資金よりか運転資金需要相当多くなるわけでございます。そういう観点から、特に運転資金需要の強い国民金融公庫及び商工組合中央金庫のほうの増し分に、そういう運転資金需要が入ってくるということを、十分に念頭に置きました上で追加額の全体を決定いたしております。
  75. 川端文夫

    ○川端委員 要望も交えて御質問したいわけですが、四年か五年の高原景気と申しますか、比較的好調の時代が長かったわけでありますから、かなり中小企業といえども蓄積を持っておったと思うわけです。しかしながら、この段階にまいりましてほとんど蓄積がなくなってきている状況がありますので、一つ市況不安というか不況が出てまいりますと、ばたばたと倒産のおそれが出てまいる。特に、先ほどから申しているような立場から考えると、年末融資を返済しなければならない来年の四、五月、年度がわり等がたいへん心配になるという感じを持っているのですが、それらに対しては、心配ない対策を立てておいでになるのかどうか。かりに四十六年度予算がきまりましても、これは四月なり五月までかかるわけですから、実施はおくれると思うのです。本年度内においてこの年末融資の返済時期が一番危険だと思うのだが、この点に対しては、いまから何かそれらに対する備えがあるのかどうかという点をお尋ねしておきたいと思うのです。
  76. 吉光久

    吉光説明員 最初に、年末追加財投というふうに俗に言っておりますけれども、これは年度末までに返済される金についての追加財投を行なったわけではないわけでございまして、したがいまして、これは貸し付け期間はそれぞれの用途に応じまして変わってまいると思いますけれども、短期のものもあれば長期のものも——長期が圧倒的に多いわけでございまして、したがいまして、下期の財投計画全体の追加でございます。したがいまして、三月末までに全部払わなければならない金をこの追加で出してまいるというふうなわけのものではないわけでございます。  ただ、いまの御指摘のように、だんだんと不況状況、まだ深刻化してまいる様相もないとは言えないわけでございます。金融引き締め緩和措置の効果も、あるいは逐次出てまいると思いますけれども、しかしこれが中小企業界に及ぶのには、まだ時間がかかってまいるだろうというふうな気がいたしておるわけでございます。したがいまして、この年度末等につきまして、特に、御指摘のように、三月というのは決算期でもございますし、あるいはまた納税期でもございますし、資金需要相当タイトになってまいる、そういう月でございます。そういう意味から、やはりこの貸し付け計画の運用にあたりましても、そこらの点を十分頭に置きました上で、慎重に弾力的な配慮ができるという方向で考えてまいる必要があろうかと思うわけでございます。
  77. 川端文夫

    ○川端委員 いろいろお尋ねしたいことはありますが、北田特金課長さんにも残ってもらった関係もありますので、別な角度でひとつ金融問題に対してお尋ねしておきたいと思うのです。これは北田課長がすぐ答えられなければけっこうです。  前々から商工委員会のたびに私が申し上げている中に、特に運転資金貸し付けは、大かた中小企業公庫なりは代理貸しなんですね。したがって、設備でない運転資金の代理貸し等の場合においては銀行がそれを自己資金で貸したような条件をつけておるという事実に対して、これらの問題に対しては、やはり政策金融であるという考え方に立って市中金融機関を指導できるかどうか、この点が一つです。  もう一つは、先般資料要求いたしまして、いまいただいておるわけですが、政府系政策金融の三機関が、なるほど数字の上乗せをしても、たいして要らぬ人に貸して、要るべき人に金が回らないという結果が出てくるのではないか。政策金融と銘打って、政府がいろいろな中小企業対策と称しながら、これらの金融の窓口になって貸し付ける場合においては、普通金融扱いと変わらないきびしい審査をいたしておる事実を、私は幾多知っておるわけです。したがって、これらの中に貸し倒れ的な延滞が出ておるものはどれくらいあるのか、これらによって国がどれだけ迷惑しているのか、ということの資料をいただきたいといって委員長要求申し上げていただいたのですが、もらってみるとあまりにも少ないのです。延滞金なりあるいは貸し倒れ的な性格の金が少ないのです。しかも、この内容を承りますと、貸し倒れ的なものの穴埋めは、国民金融公庫なり、中小企業金融公庫なり、あるいは商工中金なりの運営資金の中から年々これを償却して落としているという事実を聞かされて、それではやはり自分たちの運営上差しつかえが出てくるおそれがあるという立場に立って、きびしい貸し付け条件が出てくることは当然ではないのか。政府が政策金融と銘打っていろいろな宣伝をされる以上は、PRをされる以上は、これらの金融扱いに対しては、貸し倒れの一部を政府一般会計から助成していくなり、補助を出していくというぐらいの、もっと突っ込んだ立場に立っての中小企業対策があってしかるべきではないか。なるほど、金融をゆるめるために数字を上げろという要求はしておっても、いよいよ窓口に行くと、たいして要らない人は借りられて、どうしても必要な者は借りられないという現実が起きてくるのではないか。特に、今日のような国際的な分業化への道を歩んでおる七〇年代を迎えた場合に、中小企業の変化なり対応のしかたが、いろいろ借りる条件等変わっていかざるを得ない場合もあるのだが、根こそぎ担保を取って貸して、ほかの金融がつかないという条件をつくっていく姿が、はたして政策金融のあり方かどうかということを私は懸念いたすわけです。  もちろん私はこの場所において、何%が妥当かという数字を断定的にいま申し上げる心の準備もないし、資料もありませんけれども、私も企業をやっている立場から見て、この三金融機関の延滞的な比率というものと、それを償却している姿から見て、あまり健全経営過ぎて政策的なメリットというものを軽く見ているように感じられてならないのです。この点は、通産政務次官企業庁長官とお二人に、ひとつ今後どういうふうに中小企業金融に当たろうとする考えがあるかということでお答え願いたいと思うわけです。
  78. 吉光久

    吉光説明員 中小企業金融につきまして、特に政府の三機関というものが設けられておるわけでございますが、全体といたしまして金融ベースでの話でございます。したがいまして、金融的な意味でのある程度のチェック機能というものは、やはり必要になってまいるだろうかと思うわけでございます。  ただ、いま御指摘の中にございましたように、これがそういう政策的意図を持った金融機関であるというところに、また別の面の特徴があるわけでございまして、したがいまして、通常の金融機関のように、非常に厳格な審査機関を経て金を貸すというふうなことから、勢い申し込みから貸し付けまでの間に事務がきわめて渋滞してまいるというふうなことがあってはならないわけでございまして、やはり他面、それが政府の政策金融機関でもあるという立場にも立つわけでございますので、そういうふうな面につきまして、従来から三機関に対しましていろいろのお話をいたしておるところでございますが、そこらの両者の面をどううまく調整してまいるかということの御指摘であろうかと思うわけでございまして、私ども、そういう点につきまして、やはり三機関が設けられたその設置の理由という根本のところまでさかのぼりまして、将来の基本的な態度を確立してまいりたいと考えるわけでございます。
  79. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 いま川端先生の御質問は、年末金融から今後の中小企業のあり方というような非常に大きな問題でございます。  年末金融については、いま中小企業庁長官からもお答えがございましたように、年末あるいは来年三月に向かうこれからの決算期に、中小企業が何とかこの危機を乗り切れるような処置をしていきたいと思います。  また、一九七〇年代における中小企業の地位というような問題については、たいへんむずかしい問題でございますけれども政府三機僕その他をもっと強化して、中小企業対策をやっていかなければならないということで考えております。
  80. 川端文夫

    ○川端委員 これで質問の形は終わりますけれども、ひとつ要望を申し上げておきたいと思います。  第一の問題は、年末金融はほとんど運転資金であろうと存じますので、代理貸しが多い。したがって金融機関は、代理貸しの名において、自己資金を貸したと同じような——そのときは直ちに両建て要求してはいないと私も信じて疑わないのですが、何らかの形で後日歩積み・両建て要求している事実は幾多持っておるわけですから、これらの点に対して厳重な監督をして、政府配慮による金融に対しては、市中銀行が心から協力できるような御指導を願いたいということが一点です。  もう一つは、先ほどから申しておりますように、これは通常国会で十分留さんとともに御審議を願いたいと思いますけれども、政策金融たるもののその扱い方の中に、もちろん政府金融ベースを主にして三金融機関をつくられているけれども、少なくともこれからの変化に対応できろ中小企業の指導のあり方として、特恵関税の問題なりあるいはいろんな問題が考えられる金融に対して、通産省みずからが、万一の場合においては、金融機関に責任や負わせるのではなく、一般会計から助成していくなりあるいは補助金を出すというぐらいの用意なくしては、七〇年代の中小企業対策をやっているとは言えないのじゃないか。このことを、私は深く憂えるのあまり要望申し上げておきたいと存じます。  後日また機会を得て、これらの問題に対しての御審議を賜わりたいと存じまして、質問を終わりたいと存じます。
  81. 八田貞義

    八田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後一時十六分開議
  82. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商に関する件について調査を進めます。  この際、委員長より通商産業大臣に一言申し上げます。  一昨年よりの日米繊維交渉に関して当委員会において、昨年四月四日、米国の繊維品輸入制限に関する件につき決議を行なったのでありますが、その際、通商産業大臣も、決議の趣旨を尊重する旨を表明されました。最近の情勢を見ますと、決議の趣旨に合致しない結果となるおそれがあるように感ぜられます。今後の交渉にあたっては、十分決議の意を体して努力されたいと存じます。  宮澤通産大臣。
  83. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの委員長の御発言につきましては、十分その御趣旨を体してやってまいる所存でございます。
  84. 八田貞義

    八田委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。武藤嘉文君。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  85. 武藤嘉文

    ○武藤委員 ただいま大臣から、十分当委員会の決議の趣旨を尊重してというお話がございましたが、私どもは、そういう意味合いからいってたいへん心配をいたしておるわけでございます。と申しますのは、すでに現在通商法案も下院を通過いたしておりますし、また日米脚の政府の繊維交渉も、決して容易な形で妥結が行なわれるようにもわれわれ想像できないわけでございます。へたをすれば、これが一つの契機となりまして、自由主義体制に向かっておる現在の世界貿易の体制が、一九三〇年代のいわゆる保護貿易に転落する可能性を非常に秘めておるという感じがいたします。そういう意味で、私自身も何回となく、この問題につきましては質問も続けてまいりましたが、私の意図するところは、どうしてもこの問題によって保護貿易体制ができ上がることを阻止しなければいけない、こういう勧点から私は従来から質問もしてきたつもりであります。ですから、日本の経済界の一部の方からは御反対がある面、たとえば自由化の問題、こういうものは極力日本も進めるべきである、同時にアメリカに対しても、もちろん譲るべき点と申しますか、日本が妥協できる点は妥協しなければならないといたしましても、しかし、その妥協できる限界というものはおのずとあるのではなかろうか、こういう感じかち私はいろいろやってきたつもりでございます。どうか大臣も、この問題は非常に政治的な問題になっておりますし、大臣のお立場はたいへん苦しいお立場だということも私はよく理解ができますけれども、大臣も自由貿易論者の一人でございます。ひとつ、その線だけはくずれないようにぜひ御努力願いたいことをあらかじめお願いをいたしまして、あと質問に入らせていただきます。  第一点でございますけれども、私どもが多少新聞で見たり、あるいはいろいろの情報から承知をいたしておりますところで申し上げますと、今度の日米間の交渉は、第二回の佐藤・ニクソン会談でこの問題が取り上げられた以上は、とにかくどうしても妥結をはからなければいけない、こういうこと。あるいは、通商法案の審議が行なわれるということからも何とか妥結を早くしなければいけない、こういうことだったろうと思うのでございますけれども、その辺、業界の反対を押し切ってまでいわゆる見切り発車をされた、それは私はそのような想像をいたしております。どういう点で見切り発車をされたのか、これをまずお答えを願いたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 武藤委員が自由貿易を守らなければならないと言われましたが、その点は私どももまことに同感でございまして、世界の自由貿易がいま危機におちいろうとしている、何とかしてこの危機を回避しながら自由貿易の流れをさらに進めていかなければならないと考えておるわけでございます。  そこで、ただいまのお尋ねでございますが、今日はこの問題につきましての御質問が非常に多いようでございますので、最近の経緯を簡単に御報告することをお許し願いたいと思います。  今年の六月に、私とアメリカのスタンズ商務長官との本件についての話し合いが不首尾に終わったわけでございますが、その後、日米間の経済関係には幾つかの問題が生じてまいっております。このことは、繊維のみならず、わが国の繊維以外の業界にも影響を持つような幾つかの問題が生まれてきつつあるわけでございますが、他方で、一時はおそらく成立することはあるまいと考えられておった新通商法案なるものが、アメリカの国会において成立するのではないかと見られるに至ったわけでございます。佐藤総理大臣が、国連訪問の途次ニクソン大統領と会談をされましたのは、そのような背景においてであったわけでありまして、この新通商法案が成立した暁には、先ほどお話しのように、世界の自由貿易の何十年かの積み重ねは一挙にして崩壊をするような内容の法案でございますので、何とかしてこの法案の成立発効を阻止したいというふうに総理大臣は考えられたわけでございます。しかも、この法案の直接の動機となりましたものが対日繊維輸入の制限という問題でございますし、またニクソン政権も、現在アメリカの議会にございます通商法案については、繊維の部分については賛成である、しかしその他の部分については必ずしも賛成でないという態度というふうに承知をいたしておりますので、そこで、この繊維の問題が、わが国の業界の納得を得た上で、しかも日米相互の互譲の上に解決をするならば、新通商法案を阻止し得るというふうに私ども考えるわけであります。他国のことでありますので、確言することはできませんが、そのためにとにかく全力を傾けようということが、佐藤総理大臣が先月のニクソン会談後、互譲の精神で妥結の目的をもってすみやかに交渉を再開しようということを決心されました背景というふうに考えております。  そこで、見切り発車と申しますことは、私どもが使いましたことばではないのでございますが、業界といろいろ話をいたしますが、当然のことながら、むろん業界としては、そうおいそれと譲ってもよいということにはなりません。ただ米側としては、佐藤・ニクソン会談後に一つの提案をいたしてまいりましたので、われわれとしてはその提案から、さらに米側にどのくらいの譲歩の用意があるのか、いわゆる互譲の程度がどのくらいであるかということを見きわめる必要があると考えたわけでございます。しかし、それを見きわめますためには、こちら側から反対提案をしなければその見きわめというものがつかない。しかも、反対提案を業界の了解を得て出すということは事実上困難であるという事態に逢着いたしました。これが、新通商法案というものの関係さえなければ、つまり時間的に非常に迫っておるという制約がなければ、ゆっくり業界と話をいつまでもしているということが考えられるわけでございますけれども、米国議会の関係から、米国新通商案の成立、不成立ということには時間的な要因がございますので、私としては、やむなく業界の納得を得ないままわれわれのカードを示して、それに対してアメリカがどれくらいの譲歩の用意があるかということを、ただいまこの時点、現在でさぐりつつあるわけでございます。  私どもとしまして、幸いにアメリカ側も譲歩をし、またわが国も譲歩をして、政府間で大体これならば合意し得るというものが浮かび上がってまいりましたときには、原則に返りまして、わが国の業界に対して、ひとつこれで納得をしてほしい、自主的に協力をしてほしいということを当然申さなければならないわけでございますから、そういうプロセスはいまこれから残されておるわけでございます。そういう意味では、見切り発車と申しますことは、何かもうこれで御縁は切れましたというような印象を一般に与えると思いますけれども、実はそうではございませんで、私どもは、両国政府間でまず合意ができるという線が浮かび上がりましたら、業界に対して、ひとつまことに御苦労なことではありますけれども御協力を願えないか、こういうところへもう一ぺん返らなければならないというふうな、ただいま道程におるわけでございます。
  87. 武藤嘉文

    ○武藤委員 いまのお話を承っておりますと、新通商法案が通る可能性が非常に強い、ぜひともそれを阻止したいから急いでおるというタイムリミットのお話がございました。そこでまずその点と、いま一つ、見切り発車について——見切り発車というのは運輸の一つの専門語だそうでございまして、汽車に乗りおくれまいとしているお客さんがあるのを振り切っていくのが見切り発車だそうでございますが、そういう点からいって私は、少なくとも業界はもう少し待ってほしい、もう少し煮詰めてほしいというようなお話もあったように聞いております。どうもそれは特に——ワクと四ワクとの問題にちょっと入らせていただきますか、とにかくそういうような問題からも、私は見切り発車の色彩が非常に強いという感じを持っております。  その点はともかくといたしまして、そこでまず、その法案の成立を阻止するというのが目的であるという点からいけば、たとえば法案が、今度上院においても、どういう形にいたしましても、この繊維の輸入制限を含んだ内容で通ったといたしました場合、自主規制はそうすれば必要ない。向こうが今度輸入制限をやるのでございますから、こちらの輸出のほうの自主規制は必要がなくなると思うのでございますけれども——これは仮定の問題でございます。ぜひ御協力いただいて法案の阻止ということは考えなければなりませんが、法案が通ったとした場合には自主規制はもう必要がないから、それはもう自動的になくなるものなのか、それとも何かそれはそのまま残るものなのか、その辺のかね合いを——向こうが輸入制限という法案に基づいてやられる、こちらは輸出自主規制。そうすると極端にいけば、こちらが自主規制をして、向こうの輸入制限はたいへん事務的にも繁雑だと思いますから、そういうものをこちらの政府が助けてやる。向こうの輸入制限を、いろいろ仕事をするのに事務的にこちらが助けてやるというような形で残る可能性もあるんじゃないかという感じが私はするのでございますけれども、あくまでも法案の阻止が目的であれば、それが通ったときには自主規制は私は必要がないという感じがいたしますが、そういう問題をまずお聞きしたいと思います、あと四ワクと六ワクの問題は次に譲りまして……。
  88. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもは、できるだけ日米間で妥結をして新通商法案の成立を阻止しよう、また、おそらくニクソン政権も同様な考え方であると考えますので、そのために、ただいま全力をあげておるところでございます。したがいまして、それがそうならなかった場合というのは、実は仮定のことにもなりますし、日米間の実は交渉の内容にも多少かかわり合いがございますので、あまりその点を突き詰めて申し上げることは、できるならばお許しをいただきたいと考えております。  仮定の問題として考えますと、かなりその際に複雑ないろいろの見方が起こるであろうと思われます。第三国との関係がどうなるのか。新通商法で定めておるところの規制の基準というものはかなりきびしいものでございますので、それとの関係がどうなるのか等々、いろいろな問題があろうと思いますけれども、ただいまの段階では、これ以上申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。ただ、武藤委員の言われましたお考えの論理、お気持ちというものは、十分私どもよく考えました上で交渉を進めてまいらなければならないと思います。
  89. 武藤嘉文

    ○武藤委員 ただいま私申し上げましたのは、たいへん突っ込んでまで——いま交渉の最中でございますから、少なくとも私は突っ込んだことをお聞きしたいとは思いませんけれども、やはり外交交渉でもございますし、私といたしましては、法案を阻止するということで、いま業界の反対まで押し切って政府がおやりをいただいておるわけでございますから、向こうに対しては、おまえの法案が成立するんだったら、おれのほうは、こんな自主規制も何も業界の反対まで押し切って政府はやることないんだぞ、という姿勢はおとりいただいたほうが、これはまあ一つの外交交渉としてプラスじゃないか、こういうふうに私は思いましたので、これはそういう論理はいまよく御理解をいただいたと思いますので、ひとつそういう論理でお進めいただきたいと思います。  それから次に、私ども聞いておりますのは、先ほどの話で、急がれたためにそういう業界の反対といいますが、業界の納得が得られないままに政府案を提出されたわけでございますけれども、毛並びに化合繊を、それぞれ衣服とその他の二つのグループに分けてそれぞれのワクごとの規制数量を設ける、こういう考え方については、私ども業界の方々からも承っておりますのに、大体政府と業界とのお話し合いのときに、それについてはやむを得ない、業界の中に反対もあったけれども、やむ昂得ないという御意見で、責任を持つとおっしゃったということまで私ども漏れ承っておるわけでございますが、それをあえて六ワクにされたということ。これは、六ワクにすればアメリカが妥協してくれる、四ワクであればアメリカは妥協できない、こういう観点からそういう形にされたのか。あるいは六ワクの場合は、ある程度個別の品目にまで規制が及ぶ形をとることになると思うのでございますけれども、そういうことがいわゆる向こうの言っておられる品目別というものに近づくという意味において、どうも四ワクの形だけでは向こうの言っておることに近づいていないからということの判断か、私どもよくわかりませんけれども、いずれにしても、四ワクでなく六ワクにされたのは、あくまでそれで妥協できる、こういう見通しに立っておやりいただいたと思うのでございますけれども、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 米側の提案は、佐藤総理並びに愛知外務大臣の訪米を背景にしてわがほうになされたわけでございますが、この提案が出された背景というものをその訪米された方々から承っておりますと、これに対する反対提案によってアメリカがどの程度の譲歩をするであろうかということを、どうしてもわれわれとしては知り得ませんと互譲ということにならない。この問題には幾つかの要素がございますわけで、五つぐらいの要素がございまして、ただいま武藤委員の御指摘になりましたのは、そのうちの一つの要素でございますが、これは大切な要素でございますけれども、この五つの点についてアメリカがどのような譲歩存するのかということを、われわれとして交渉を通じて探り出す必要がある。また譲歩を求める必要がある。そのためには、われわれの反対提案というものもある程度のものでありませんと、先方とそのような目的を持った交渉に入って、しかも互譲という、いわゆるアメリカ側の譲歩を導き出すことがなかなか困難である。私がそういうふうに判断少いたしたわけでございます。そこで、こちらから出すものは、少なくとも先方がそれをベースにして向こう側の譲歩の用意を示す程度のものでなければならないであろう、こう考えましたので、それがこちら側の反対提案という形になったわけでございます。  それで、私どもの反対提案そのままで事が決着いたしますならば、これは不幸中の幸いでございますけれども、交渉でございますからなかなかそうもまいらないであろう。現に反対提案をいたしましてから数日経過しておるわけでございます。ただ私どもとしては、これからの交渉の成り行きいかんにもよりますが、反対提案に盛られました基本的な考え方考え方の大ワクというものは、これはくずすことができない、くずさないで交渉しなければならない、かように考えております。
  91. 武藤嘉文

    ○武藤委員 そこで、いま私のお聞きしたかったのは、アメリカから、向こうから引き出すためにそういうものの提案をせざるを得ないということでございますが、そういうことである場合に、これは仮定の問題でございますが、それじゃ四ワクで提案したのではとても引き出せないという感触で六ワクにされたのか、その点はどうでございましょうか。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私としては、ほぼそのような判断をいたしたわけでございます。
  93. 武藤嘉文

    ○武藤委員 そういたしますと、六ワクにされて向こうからの譲歩を引き出すということでございますが、それで日本の線まで譲歩してくれば、たとえばほかの、いまの新聞でもいろいろいわれているように、基準年度あるいは伸び率、そういうものはこちらが譲歩するといたしましても、少なくともワクの問題についてはこれが一発回答、最終であるという。あるいは通産省当局においても、この六ワクというものをはずしたらこれはたいへんだというお考え方をお持ちのように、新聞で私ども読んでおるわけでございますけれども、その点、六ワクというものは相手の譲歩を引き出すためにやったんだ。しかし、そのほかはある程度また今度譲歩するかもしれないが、この六ワクというワクそのものについてはもう譲歩しないということなのか。相手がまだ譲らないときには、この六ワクをまたふやしていくということなのか。今後の見通しといいますか、その辺は、今後どういうお考え方でお進めになるのか、お聞かせいただければと思います。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の反対提案をいたしました際には、総理大臣以下関係閣僚集まりまして、慎重に協議をいたしました結果、提案をいたしたわけでございまして、しかもその提案の中で、ただいま言われました点は非常に大事な要素でございます。交渉のことでございますので、ただいま先まで見通して申し上げることはできませんけれども、ただいまのところ、この点はきわめて重要な要素でございますから、簡単に私ども態度を変えるわけにはいかない、こう考えております。
  95. 武藤嘉文

    ○武藤委員 簡単に態度を変えるわけにいかないということよりは、私は、六ワクでも業界が必ずしも納得していないわけでございますので、後々のことを考えた場合に、絶対にこれは譲れない線ではないかという感じがいたしておるわけでございます。そういう意味でひとつ、将来のことはわからないにいたしましても、総理も一発回答であるということを記者団にもおっしゃっておられるという点から見ても、私は何としてもこれは譲れない点ではなかろうか。いわゆる互譲の精神ということでございますから、譲る限度というものはおのずとあると思うのでございます。ですから、そのほかの基準年次なり伸び率なり、そういうもので多少譲れる点はあろうかと思うのでございますけれども、この六ワクというものを譲ったとなりますと、これはどこまでもべた折れに折れていくという形になっていくと私は思うのでございます。ですから、これだけはぜひひとつがんばっていただきたいと思うのでございますけれども、その辺はどうでございましょうか。もう少しお答えが願えればと思うのでございます。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げたことで尽きておるかと思いますが、ただいまの段階で武藤委員がその点々強調されますことは、私にもきわめてよくわかることでございまして、御趣旨を体して交渉をしてまいりたいと考えます。
  97. 武藤嘉文

    ○武藤委員 それから、それに関連をいたしますけれども、総理が業界の方にお目にかかれたときに、縮小均衡はないということがあったはずでございます。この六ワクというものがたとえば妥結をした場合——これは業界の問題は別といたしまして、政府間の交渉でそれが妥結された場合に、縮小均衡しないためには、たとえば伸び率、あるいは基準年次、こういうものを、これは局長からでもけっこうでございますが、縮小均衡にならないという点は、どういう形ならば縮小均衡にならないのか、少し教えていただきたいと思うのです。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、繊維というものが御承知のようにかなり特殊な製品でございますために、たとえばある種の品物、かりにパンタロンならパンタロンとさしていただきます。流行によってことしはかりにパンタロンが非常に伸びた。ところが来年は流行が変わって、何も規制があるなしにかかわらず、もうパンタロンというのは売れなくなってしまった。かりにスカートのどういうものが売れたということがおのおのの品物についてしょっちゅうあるわけでございます。したがって、縮小均衡しないということを論理的に考えますならば、繊維、化合繊なら化合繊といたします。全体の輸出量として前年よりも減ることがない、そういうふうに考えるしか、品物の性質上考えようがないわけでございまして、私どもそういう意味に解しております。
  99. 武藤嘉文

    ○武藤委員 そうすると、少なくとも毛にしろ——毛と合繊の二つに分かれておりますので、毛のほうも化合繊のほうも、全体においては少なくともいままでの量が減らない、減らさない、こういう形になるような結果は招来をする、それだけは確保をする、こういうことでよろしゅうございますか。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでよろしいわけでございますが、化合繊につきましては、従来、前年の実績よりも数量が減ったということはないわけでございますので、プラスの伸び率をつけるということでよろしいわけですが、毛の場合には、これは規制云々ということでなく、数量的に自然に減っているという傾向が最近ございます。しかしその場合にも、かりにそういうことが現実にあるいは起こるかもしれませんが、合意の内容としてはプラスの伸び率序つけておくべきものである、こう考えておるわけです。
  101. 武藤嘉文

    ○武藤委員 その毛のほうは、確かにいま輸出が減ってきておりますので、問題は別といたしまして、化合繊の場合、いまおっしゃるとおり非常に伸びておるわけですが、これの伸び率は、そうすると最低どの程度に押えなければいけないのか。いわゆる縮小均衡ということからいけば、伸び率はそんなに伸ばさなくてもいいということかもしれませんけれども、従来の輸出よりも減らないという点において、いまお話を承っておりますと、多少伸び率を加えなければならないだろうというような大臣のお話がございましたが、それは大体どの辺をめどにしておられるわけですか。
  102. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はその点がただいま交渉の一つの問題でございまして、私どもには私どもの希望がございますし、先方には先方の言い分があるわけで、普通に理屈だけ考えますと、これはマイナスであるということはもちろんあり得ないことでございますが、結果として流行のはやすたりがあるということの多い業界でありますので、ある程度のプラスの伸び率を与えておくことが必要であろう。つまり、たとえば毛の場合に、私は一%云々ということを申し上げましたのは、毛が漸減の傾向にあるので、そう申し上げましたのですが、化繊はそうはまいりませんので、実質的なある程度のプラスの伸び率をつけておかなければならない。それがどの辺かということになると、これは交渉の一つの大きな問題でありますので、両者の話し合いがまだ歩み寄っていないということでございます。
  103. 武藤嘉文

    ○武藤委員 時間が来たようでございますが、残念でございます。  それでは最後、少し話題を変えまして、法案が成立した場合と自主規制、政府間の交渉が妥結をしたとした場合、この両方で一括してお答えを願いたいと思うのでございますが、法案の成立した場合には、この間、新聞によりますと、貿易法案反対の口上書の中で、日本政府といたしましては、日本の利益が侵される場合には、その利益を保護するため必要な措置をとる権利や留保する、こういうことを口上書で出されたということが新聞で書かれておりますが、これは報復措置として受け取っていいものなのか。あるいは報復措置としては、たとえば小麦の買い入れ制限をするとか、いろいろそういう具体的な問題にまで政府はいまお考えなのか。もちろん法案を阻止するということが目的ですから、そんなことは考えていないということかもしれませんが、万が一のときに備えて何かそういう報復措置考えておられるのかどうか。  それからもう一方、そうでなくて、今度政府間の交渉が成立した場合——いまはっきりおっしゃっていただけないという点においても、交渉がまだこれからいろいろ問題があるわけでございますが、いずれにしても妥結をした場合、あくまで業界が納得しないとされた場合には、これはどういうふうに——たとえば新聞その他でいわれておりますように、貿易管理令を発動される、されない、あるいはその他特別立法を考えておられるのかどうか。いずれにしても、実際に政府間交渉ができた場合に、それを実際業界がやっていただくため、あくまで業界が納得されないときには、どういう形でこれを収拾されようとしておられるのか。この二つの点についてちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  104. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の問題でございますが、新通商法案に対してわが国の立場存米国政府に正式に表明をいたしたわけでございまして、これにはガット上の権利を留保するということもしておるわけでございますので、ガットにございますあらゆる権利を留保したものと考えております。もちろん私どもとして、報復のし合いになる、報復合戦になるというようなことは、冒頭にお述べになりました自由貿易の立場から、好ましいとは考えませんので、報復というものがいわゆる抑止力になる、そういうことであることを期待いたしております。  後段の問題でございますが、かりに日米間で妥結の線が浮かび上がってきて、しかもわが国の業界がなかなか納得をしない、承知をしないということになりますと、政府としては文字どおり剣が峰に立たされるわけでございますので、私ども全力を傾けて業界の協力を得るために尽くさなければならない、それ以外に私どものできることはないことになるわけでございます。  貿管令のようなものを発動するかというお尋ねでございますが、私としては、ただいまそういう考えは持っておりませんので、あくまで業界に対して、私どもの信ずるところ、こいねがうところを説いて協力を得たい、こう考えておるのみでございます。
  105. 武藤嘉文

    ○武藤委員 要望だけしております。  そういうことから考えましても、業界が幾ら説得されても、やはり業界も、ついていけることと、ついていけないことがあると思うのでございます。そういう意味からも、貿易管理令というものは実際効力はどんな形でできるか、非常にむずかしいと思いますし、政府ではたしてできるのかどうか。あるいは訴訟の問題が起きてきたらたいへんだと思いますし、そういうことからも、最終的に業界のまあまあしんぼうできるところでしか、この問題は幾ら妥結といっても限度があるのじゃないか、その限度だけはひとつしっかりと踏んまえてやっていただきたい、こういうことだけ申し上げまして私の質問を終わります。
  106. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 中村重光
  107. 中村重光

    中村(重)委員 宮澤大臣もずいぶん苦慮しておられる、こう思うのですが、苦慮しておられるあなたにたいへん意地悪な質問になるわけですが、先ほど委員長が発言をいたしましたように、当委員会で、自主規制に対するアメリカ側の要求は自由貿易を阻害する、これに従うべきではない、あくまで自由貿易を守り抜いていく、そして両国間の交渉ではなくて、ガットの場ですべて話し合いをしていかなければならないという趣旨の決議をいたしまして、これは本会議の決議となりましたことは大臣御承知のとおりでありますが、当委員会におきましての決議をいたしました際も、決議の趣旨を尊重するという御発言でありましたし、また、交渉を見てみますと、非常に重大な段階に差しかかってきているし、そのことは、委員会並びに本会議の決議の線に沿っていないという考え方で、先ほど、けさの理事会でいろいろ議論いたしまして、再度何らかの意味の決議をしようではないかという話し合いもいたしました。しかし、委員長発言ということでよろしかろうということで、理事会の意見一致でただいまの委員長発言ということになったわけであります。   〔浦野委員長代理退席、武藤委員長代理着席〕 ところが大臣は、ただいままた、この発言の趣旨を尊重するというお答えが実はあったわけですがいま進めておりますアメリカ側の要求する自主規制序受け入れるというあり万は、少なくとも委員会並びに本会議の決議の趣旨に反するというふうに私どもは判断をいたします。したがって大臣が、決議の趣旨を尊重いたしますとか、あるいは委員長発言の趣旨を尊重いたしますということと、矛盾してくるのではないかというふうに考えられるわけですが、大臣はどのような受け取り方をしておられるのか、率直にひとつ見解を伺ってみたいと思います。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題に関しまする本委員会の決議は昭和四十四年四月四日、本会議の決議は五月九日でございます。決議の趣旨とされますところは、ただいま中村委員も言われました、ガットの精神違反云々ということから「米国政府に対し、かかる輸入制限を断念するよう強く要請すべきである。」、こういう御決議でございます。  そこで、私どもとしては、このような米国の動きに対して再三その非なることを申し述べてまいったわけでございますけれども、この御決議以来一年有半にいたしまして、事態は米国側において一方的に悪化してまいりまして、いわゆる新通商法案なるものがすでに下院を今日通過したというような情勢になっておるわけでございます。この点は、私ども努力にもかかわらず、米国政府と申しますよりは米国議会と申すべきでございましょうが、まことに驚くべき輸入制限の内容を持ったところの悪法が、少なくとも下院を通過したというのが今日の情勢でございます。  そこで、私どもとしては、先ほど武藤委員にも申し上げましたように、何とかしてこの法案が成立しないためにどうすればよいかということで、先ほども申し上げましたような総理大臣とニクソン大統領との合意になった、こういうような経緯と考えておりますので、一見、当時の御決議が、繊維の話についておかしな話し合いをするなよという、そういう御趣旨が確かに含まれておったわけでございますけれども、実はただいまの私どもの判断では、ミルズ法案という、新通商法案という、まさに輸入制限をアメリカが法律によってしようとするような、そういう基本的な事態に対処して、これをどうしたら防げるかということに腐心をしておる、そういう現状であるわけでございます。
  109. 中村重光

    中村(重)委員 宮澤・スタンズ交渉が不首尾に終わったそれ以来の動きについては、大臣のおっしゃるとおりであろうと思うのです。それに対応してこられた政府側考え方というものは、これまた、ただいま大臣のお答えになったとおりであろうと、私どもも理解はいたしておりました。だがしかし、そのことが自由貿易を阻害する結果になるというような危機感というもの存私ども持っておったことは事実であるわけです。それで大臣が、時間的な関係、そこで業界の納得を得てからということは無理があるというような判断をしたということなんですね、先ほどの御発言は。ところが、きょうなんかの新聞を見てみますと、アメリカ側が若干譲ってきた、だがしかし、一番問題点は依然としてアメリカは頑強に譲る気配というものがない。したがって昨日の新聞では、再度首相の裁断を仰ぐのかというようなことがありましたが、きょうは、再度譲歩するのではないか、せざるを得ないのではないかというような見込み記事が実は出ているわけですね。そのように、ずっといま牛場大使との間の話し合いというものは進んでおるわけでございますか円、したがって事態はずっと進展をしてくるであろう、アメリカ側が受け入れることだってあり得る。そうすると妥結の可能性というものが出てくるというように思うのです。  そうなってくると、日本政府がアメリカ側に対して考え方、案を示された。一応これは、打診するというような考え方があったというふうにおっしゃったのですけれども、示したことは間違いないわけですね。それから数日こうしてたってきているわけですね。その間、業界との間に了解工作というようなものが続けられておるようには見受けないわけですが、大臣は、話し合いがついたならば、妥結したならば、業界に対して、これを納得してもらうように最大に努力少するのだとおっしゃったわけです。しかし、そういうことできまってしまってからではなくて、当初、時間的にどうしても間に合わないものだから、日本の案というようなものを、意向打診というような意味も含めて実は出したのだが、何とかひとつ業界はこれに納得をしてもらえないものかというような、再度の努力を続けていくということでなければ、筋が通らないと私は思う。また業界の反発というものは、さらに強まってくるだろうと思うのです。  いま一つは、委員会の決議、国会の決議もある。これが全会一致であることは大臣御承知のとおりでありますから、与党との間には、繊維関係の特別委員長である福田さんと何か総理が会われたとかなんとかいうようなことも報道されたわけですが、少なくとも私ども野党に対しましては、政府のほうからも、与党の側からも、何らの話し合いというものはなされていないわけです。少なくとも国会の決議が全会一致でなされた以上は、その経緯を、この委員会においての答弁だけではなくて、何らかの形をもって野党側の了解もやはり受けるというような努力をあわせてなさるということが必要ではなかったのか、そのように私は考えます。それらの点に対しては大臣はどのようにお考えになっておられましょうか。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもがアメリカ側にいたしました反対提案自身が、業界の了解を得て行なわれたものではございませんので、したがってその後の交渉で、両方それからの互譲ということになれば、内容的にはさらに業界にとりましてはきつくなっていくということは、これはもう普通に考えられることでございます。ですから、いわんや最初のものでも御納得がないのですから、その後のものはさらに納得しにくかろうということは想像にかたくございません。したがって私どもは、業界をオミットした形にしては、これはそもそもいけないのでございますから、そういうふうにはいたしておりませんが、しかし、交渉の段階、段階でのありさまは、非公式には実は業界も知らせてくれということでございますので、私どもも知らせておるわけでございます。その一つ一つの段階で了解を求めるということは、実はいまの中途の段階ではあまり意味がない。というのは、さらにそれが変化をしてまいる可能性が多うございますので、そこで私どもとしては、かりに最終的にほぼこれで日米政府としては合意できるということになりましたら、これでおしまいだ、これが最終だということで業界とお話しをしてみたい、そういうふうに考えておるわけでございます。  なお、本件については、野党におかれましても、国民的な立場からいろいろ御関心をお持ちいただいておりますことは、よく存じております。したがいまして、話が最終的になりましたならば、私ども御説明を申し上げる。委員会ではもちろんでございますが、委員会外におきましても、お求めがありましたら、そういたさなければならないと思っております。
  111. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど武藤委員質問に対しまして——通商法案を一方的に向こうが成立させたということになると、これは業界としても何も言うことはない、こう思うのですね。しかしながら、反対提案をなされた、さらにまた譲歩をするというような、いろいろな形でもって妥結をしたということになってきた場合ですね。そして業界がこれを受け入れなかったということになると、いま大臣は、そうなってきたら剣ケ峰に立たされるのだ、政府としての強権発動という形ではなくて、何としても業界の納得を得られるように最大限の努力をしたい、こうおっしゃったわけですが大臣はいまお答えになったような考え方でもって、途中で了解工作をいろいろやることではなくて、きまってからというようなことでしょうが、一般の人情と申しましょうか、あるいは常識と申しましょうか、そういった場合は、いままで当委員会におきましても、私ども質問しました場合、大臣は、業界の意向を無視して妥結をすることはあり得ない、こういうことをきっぱりとお答えになってきたわけですね。そういうことはみな業界の人たちも知っておるわけですよ。してみるとやはり、日本側が反対提案をしたということは時間的な関係があったのだというようなことの了解を受けるように努力をする。そして、アメリカ側との間に妥結をしたというような段階においては、またそれなりに業界との間の話し合いをするというような努力があってこそ、円満に問題は解決をするという形になるのではなかろうかと私は思うのですがね。  そうでなくて、業界が反対だ、反対だ、こう言っている。そして決起集会等々を開いておる。しかも、業界が非常に反発を感じておるであろうことは、経団連その他、日米経済関係が非常にうまくいかない、悪化するということをおそれるというので、繊維を犠牲にするというような感じを受ける。実は業界は卒直にそういう感じを受けておるだろうと思うのですよ。ならば、アメリカ側の言っていることは筋が通らないのだから、不当なんだから、業界の言い分が正しいわけだから、その意思に沿わないような妥結をする場合は、最大限の努力政府側が続けていくということでなければならぬと私は思います。そうはお感じになりませんか。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、仰せになります気持ちはよくわかるのでありますけれども、実は私どもが、どっちみち業界としてははなはだ不承不承の話でございますから、ひとつこれで御苦労願いたいと業界に申しましたときに、これでもうおしまいでございますね、これ以上のことはございませんねと、当然先方としては念を押されるわけで、私どもは自信をもって、はい、ここまでですと、こう申せなければ、実は、決心をしてくださいと言うのにも、ほんとうのところは申しあげられないものでございますから、交渉の途中の段階でそれをするということが、実はそういう意味ではなかなかむずかしいわけでございます。でありますから、私どもは、業界に迷惑をかけないような形で、内々実情はお話しはしておりますけれども、それで業界が納得したというふうに私どももとりませんし、先方もとられては困る、こういう状態であるわけでございます。
  113. 中村重光

    中村(重)委員 まあ業界にもいろいろな意見があるというように伺っているわけですが、万一妥結をしたという場合、業界を説得し得るという自信をお持ちになっていらっしゃいますか。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは何ともただいまから申し上げにくいことでございますけれども、少なくともこれならば納得をしてもらえそうなものだと考える範囲を越えた妥結をしてはならない、こう考えております。
  115. 中村重光

    中村(重)委員 それから、これもまた武藤委員お尋ねをしたところでございますが、妥結をしないで新通商法案が、下院は御承知のとおり通過をいたしましたが、上院も通過成立をするという形になってまいりまして、これが実施された場合自主規制をやらないとか、あるいは報復措置をとるといったようなことについては、いろいろな問題がかもし出されてくるので、事態を避けたいというようなお答えであったように思いますが、だがしかし、アメリカの不当な扱いというものに対して日本が一方的にこれに屈服をするということはあってはならないというように私は考えるのです。自由貿易を守るという立場から、日本側はき然たる態度をとるべきであると私は考えるわけですが、その点はいかがでございますか。
  116. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる新通商法案というものは、自由貿易の立場から申しますと非常な悪法でございますから、この成立を阻止するために、また、万一成立をするようなことがありましたら、それが有効に発動されるのを阻止するために、ガット上にもいろいろの権利を与えられておるわけでございますから、それは十分に行使をする用意がなければならないと思います。
  117. 中村重光

    中村(重)委員 交渉をする用意があるとおっしゃったわけですか。私は聞き落としたのですけれども。ガット等の交渉というようにおっしゃったのですか。アメリカ側とは交渉も何にもないのだろうと思いますがね。一方的に向こうが通商法案を成立させてしまって、これは実施する、実施した、その段階に立って私はお尋ねしたわけですね。その場合は、日本側としては、自由貿易をあくまで守り抜くという立場の上に立って、報復措置も必要であればやらなければなりますまい。少なくともアメリカがとった態度というものは国際的に非難されなければならない問題でございますから、日本としてはき然たる態度をとって、あらゆる手段を講じていくということでなければならぬ、こう私は考えるわけです。  交渉とおっしゃいましたが、どのような交渉の余地というものがあるのか、その点、私は聞き漏らしたのだろうと思うのでございますが、いかがでございますか。
  118. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 交渉と申し上げたつもりはなかったのでございまして、われわれとしては、そういうふうな法案が法律になり、それが実際に発動されるということになりますれば、それに対してガット上のいろいろな権利を持っておるわけでありますから、その行使をするという用意は当然なければならないわけでございます。
  119. 中村重光

    中村(重)委員 いまのわかりました。交渉と行使と私が聞き間違いました。それは、行使する態度はそのとおりだろうと思います。  それから、アメリカの新通商法案に対するところのEECの反応、並びに、日本側がいま反対提案をしたり、いろいろな努力をしておられるわけですが、そのことは、少なくとも、自由貿易を守り抜いていこうとするEEC諸国の考え方というものには、必ずしも一致しないというふうにも考えられるわけですが、そうした日本政府態度といったものに対するEEC側の反応はいかがでございますか。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは非常に正式なという話ではございませんがしかし、ほぼ間違いないと私が考えておりますところは、繊維についての自主規制云々というアメリカの話というのは、いかにもガット等々から考えると正常な話ではない。いかにも異常な話である。しかしながら、自由世界第一位及び第二位の両国間で事がこれ以上こじれていくと、新通商法という希代の悪法が成立することにもなるので、ともかく日米間で何とか話し合ってくれないであろうか、こういうふうに考えておるようでございます。新通商法そのものにつきましては、すでにEECも、これは正式に米国に対して警告もいたしておるわけでございますし成立の暁には云々ということも申しておるわけでございますが、この成立をはばみ得るものがあるとするならば、それは日米間の繊維についての合意ができることである。したがって日本としてはまことに不本意でもあろうが、何とか話をつけてくれないかと、こういうところがほぼEECの真意であるというふうに私は承知をいたしております。
  121. 中村重光

    中村(重)委員 開発途上国の反応はいかがですか。
  122. 原田明

    ○原田説明員 開発途上国のうち、極東の諸国で輸出国の立場に立っている国がございます。これらの国々が、通商法案の中の制限条項が非常に悪い形ででき上がるということに対しまして、たいへんな反感を持っているという点は、ほとんど疑いの余地のない事実でございます。その他の輸出関心の非常に少ない国々につきましては、それほど強い関心はないかと存じますけれども、この法案が持つ保護的な色彩というものを防止して、自由世界、自由貿易の推進力というものを世界に維持すべきであるという立場には、ほぼ変わりはなかろうかと存じております。
  123. 中村重光

    中村(重)委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、先ほどのEEC側の考え方が、日米間の話し合いが何らかの形において妥結することを望んでおる。日本に対しては気の毒だと、むしろ同情的な気持ちを持っているようにうかがわれたわけです。だが、新通商法案という、自由貿易を阻害するような法律が制定施行されるということを、何としても阻止したいという考え方であろう。したがって日本側の、日米間の交渉妥結の問題にいたしましても、やはり自由貿易を守っていくのだという、その一線はくずさない形の妥結を私は望んでおると思うわけですね。   〔武藤委員長代理退席、浦野委員長代理着席〕  その点を十分配慮される必要があるだろう。  それから、開発途上国の考え方についても、いま局長からお答えがあったとおりであります。私は、これの動向、日本側のとる態度といったものは、日本の国際的な信用というような問題にも重大な影響を来たすであろう、そのように実は考えます。慎重な態度をおとりいただきたいということ。  それから、日米経済は協調の時代から対決の時代へ進んできたということが、御承知のとおり言われているわけですね。そこで、経済成長、貿易の伸びが非常に強くなってきたということになってまいりますと、どうしても日米関係というようなものも経済的に相一致しない。対立の面が出てくるということは避けられないと私は思います。したがいまして、日米経済関係というものが非常に悪化してくるのだということで、日本側のみが悩むのではなくて、新しい自由貿易を守っていく。それは、筋の通った業界の主張というものはあくまで守ってやらなければならぬという考え方の上に立って、最後までその態度をくずさない。先ほど宮澤大臣がお答えになりましたように、委員会の決議を尊重する、委員長の発言を尊重するのだという、そのことが食言にならないように、これは私は国会の権威の面からも強く大臣に要請をしておきたいと思います。  これで終わります。最後にひとつ御発言を願います。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御発言の点よくわかりましたので、十分留意いたしたいと思います。
  125. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 横山利秋君。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 いろいろと同僚委員質問がありましたから、少し詰める意味で、恐縮でございますが、いろいろな角度から確かめたいと思います。  十三日の夜、総理大臣が永野商工会議所会頭と会われた際に、こういうことを言われたそうであります。御承知でございますが、できるだけ日本の業界が規制を受けないような規制案を考えたいが、現状ではある程度の被害は避けられない。これは繊維業界の罪ではなく、日米協力という国策に協力して起こる被害なので、政府としては財政金融、税制面で十二分の補償措置考える。このことばどおりでなくとも、この趣旨については通産大臣は御承知でございますか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その会談につきましては、直接何も聞いておりません。ただ総理大臣として、できるだけ被害が出ないような形での妥結——万々一出るとすれば、そこを具体的に財政、金融、税制云々と言われたかどうかは私存じませんけれども、もし出るようであれば、政府として万全の措置を講じたい、そういう総理大臣のお考えでありますことは事実であろうと思います。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 金融、税制はともあれ、財政的十二分の措置をとるという言明については、通産大臣は間違いはありませんか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、財政、金融、税制といったような具体的な表現を総理大臣から聞いたことはございません。
  130. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの意見を聞いておるのです。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点につきましては、かりに妥結ができるといたしまして、どのような姿になりますかがはっきりいたしませんし、業界に対しまして意見を求めましても、いまそういうことは言うつもりはないという業界の——もっともな話でございますが、話でございますので、どのようなことを具体的に考え得るかということは、私ども具体案をまだ持っておりません。
  132. 横山利秋

    ○横山委員 この間、本委員会で私が報復手段を考えるべきではないかということをただした際に、あなたは、そういう考えはないとおっしゃいました。その際私は、ほかの委員会で外務次官と通産政務次官との意見が違うということを材料にして申し上げたところ、あなたは、報復手段は考えることはないとおっしゃった。米国に与えられた口上書におきましては報復手段に若干触れておられるのでありますが、いまの心境を伺いたい。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 新通商法案がかりに成立したときにはガット上の権利を留保するということは、当然に報復ということがあり得るという、これはそういうふうに読みますことは当然であると思いますけれども、私がせんだって申し上げましたことは、報復のし合い、報復合戦ということが世界じゅうにとめどもなく起こることは、ほんとうに好ましくないことでございますから、できるならば報復という権利は抑止力として持っておりたい、できるならばそうしておりたいということを申し上げたわけでございます。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 私は、もうお気持ちが、回答が違っておると思うのですが、抑止力であってもよろしい。しかし抑止力とおっしゃるのは、とめどもない報復のし合いということは別といたしまして、少なくとも抑止力としての報復手段の現実的な発動は考えていらっしゃるのでありましょうね。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、たとえは悪うございますけれども、核兵器と同じでございまして、絶対に使わないというのであれば抑止力にはなり得ないわけでございます。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 私は先般申し上げたのだが、この勝負は、この交渉はどうもけんかにならない。なぜならば、日本政府はアメリカ政府及びアメリカ議会の善意と良識にたよっておる。向こうは実力行使の手段を背景としておる。こちらは、実力行使はしないと何回も誓約をしておる、あらゆるところにおいてそう言っておる、したがって勝負にならぬと私は言うわけであります。もしあなたが、抑止力としての報復手段をいまごろになって考えるならば、なぜ最初からそれを言わなかったであろうか、いまになって抑止力としての報復手段はガットにも定められていることであるから考えるのは当然ですと言っても、もうそれはすでに事の峠が越えようとしておるではないか。やるのだったら、現実的効果のあるような時期に言明をしなければならぬのであって、出しおくれた証文にひとしいと私は思うのでありますが、私の言っていることは違っていましょうか。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、腹というものは実は一つにきまっておるわけでございますけれども、事態の進展の段階でそれをどのように表明したらいいのか、あるいは言わないで済ますのがいいのか、いろいろな段階がございますから、前のように申し上げた段階もあったと思います。が、いまのこの時点において、日本政府が新通商法案についてどう考えておるかということは、先ほどから御引用のエードメモワールの中に、文章の形ではっきりいたしておるわけでございます。
  138. 横山利秋

    ○横山委員 次に、最近、政府及びマスコミが見切り発車ということばを盛んに使っています。私は国鉄でありますから、見切り発車の語源をよく知っておるわけであります。見切り発車ということは、お客さまがおるのに途中で汽車を走らしてしまうということです。しかし、あとに残ったお客さまは、その汽車には乗れないけれども、あとの汽車に乗っていけるのですよ。つまりわずかの間被害がある、その汽車に乗れない、それだけのことなんで、必ずしもそれが被害と言えるかどうかわからない。この国鉄の見切発車ということを引用して、何か感覚を変えようとしておるという感じがしてならぬ。見切り発車ということは、犠性があるということを覚悟の上でやることだという点については、御異存はないでしょうね。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 見切り発車ということばを政府が用いたことはございませんので、これは、あちらのほうのお方の、たいへんにわかりやすいことばだと思いますけれども、しかし、わかりやすいだけに多少誤解を与える点もあろうかと思います。  と申しますのは、先ほども武藤委員にも申し上げましたように、私どもはいま自分の責任でカードを出し合っているけれども、これは最終的には業界の不承不承でも納得がなければできないことでございますので、そこへ戻ってまいらなければなりません。そういう意味で、一見見切り発車ということばが与える印象と、私どものいたそうとしておることは異なるわけでございます。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 いずれにしても、犠性が伴うということを覚悟したわけだと思います。  そこで政府に伺いたいのは、本事案は、本来、政府の主体的な仕事で、かつ政府が交渉を妥結する権能を持っておるという事案ではないと私は考えるわけです。それを政府が、自分の責任においてアメリカと話し合いをつけるという覚悟をされたからには、自分にその交渉権限、当事者能力がないのだから、本来の当事者である人に対して二つの手段をとらなければならぬ。言うまでもなくそれは、先ほどからるるお話しのように、説得をするというのが第一の手段であります。説得ができなかったら今度は強権を発動しなければならぬ。政府のあるべき本来の仕事ではないのですから、間接的にそれをまとめるのだけれども、おまえらにかわっておれが話をつけるという立場に立つ以上、いま言ったように、つけたことについて、自分の仕事でなく業界のやる仕事ですから、説得をするか、強権を発動するか、どちらかをしなければ政府の立場が全然ない。アメリカと話をつけたところで、だれもそれを守りはしないということになりますと、国の立場というものが実におかしなことになる。そこで私どもが心配をするわけです。説得がきくかきかぬかという判断の問題が一つあると思うのです。  そこでお伺いしたいのは、決裂もまだあり得るかということであります。あなたの先ほどの話を聞きますと、説得ができないような結果にはならないと思う——これは希望的観測である。しかし、交渉の中でこれはとても説得ができないという場合には、決裂もいまなおあり得ると考えていらっしゃるかどうか。
  141. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お話の筋道はそのとおりでございますので、申すまでもないことですが、いま米国と折衝をいたしておりますけれども、実はこれは政府のいわゆる互譲の精神に基づいた考えであって、業界の納得を得ているものではないという……(「互譲じゃない、一方的だよ」と呼ぶ者あり)
  142. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 静粛に願います。
  143. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 業界の納得に基づいているものではないということは、はっきり米側に申してあるわけでございます。これは米側もよく承知をいたしております。したがって、かりにそういうことで話ができるとしても、これは私ども業界を説得できるであろう、これならば不承不承でもついてきてくれるだろうというところでなければ、実はこれで話がきまりましたというわけにはまいらぬわけでございますから、交渉の私どもが譲歩し得ることにもおのずから限界がある、こう申し上げなければならないと思います。  なお、強権云々につきましては、私はただいま、いわゆる強権を発動して云々ということは考えておりませんことは、先ほど申し上げましたとおりであります。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、とてもこれはのみそうもない話には乗れない、つまり決裂もあり得るとこういうふうに確認いたします。  第二番目に、これならばまあのんでもらいたいと思うと、あなたの主観で判断をなさるとする。しかし業界といえども、一つの組織じゃない。株式会社じゃない。天皇がおって、業界の天皇がよいと言えば、それで全部通ずる組織ではない。これは御存じのとおりであります。あなたが二、三のキャップに対して、これはのんでくれ、わかりました、それほどまで言われるなら私は努力をいたしますというだけであって、下部すべての商売人に対して、それを徹底させる強権力を業界は持っていない。ここがまた問題なんですね。そうすると、どうころんでも糸の乱れが出るわけですね。糸の乱れはどうなさる。つまり、業界がある程度納得をしたにしても、私はそんなことはいやだという人が出ることは必然であります。そういう場合にどうなさいますか。
  145. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一般に、かりにこの話と無関係なことについて申し上げるわけでございますけれども、いわゆる自主規制というケースは従来幾つかあるわけでございます。その場合には、業界の多数はまあこれでやむを得まいと思っても、少数の人は必ずしもそう考えないというときには、多数の合意に基づいて少数を規制するという方法は一般によく使われるわけでございます。そういうことは、今回も考え得るかもしれない。しかしこれは、いわゆる強権によるというものとは、私は混同して考えてはならないと思っております。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。要するにあなたのお話は、輸出入取引法によって、キャップが相当数うんと言えば、そういう意味においてやれるというふうにお考えのように思うのでありますが、間違っておればあとで言ってもらいたい。しかし、この輸出入取引法によって——内容にもよるけれども、とてもいかない場合があるわけですね。  そういう意味において、新聞にちらほらいたしますのは、輸出貿易管理令第一条第六項であります。これはまず少し局長にでもはっきりさしておいてもらいたいのだが、この管理令第一条の第六項の「国際収支の均衡を維持し、並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため必要があると認めるときは、」ということになっている。この法律を今回適用するに妥当であるかどうか、法律解釈を伺っておきたい。
  147. 原田明

    ○原田説明員 御指摘の法律は、外国為替及び外国貿易管理法第一条の趣旨にございます、「外国貿易の正常な発展を図り、国際収支の均衡、通貨の安定及び外貨資金の最も有効な利用を確保するために必要な」場合という趣旨を受けていると存じます。したがいまして、そういう目的に合致するかどうかということを、いろいろな要素に当てはめて考えた上で判断をするということになろうかと考えておる次第でございます。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、答弁をしてはいかぬですよ、あなたは局長なんだから。  じょうだんじゃないですよ。いま引用された外国為替及び外国貿易管理法の第一条は、抽象的なことをいっておる。そしてそれを発動する場合においては、管理令の一条の第六項において厳密に適用される。この一条の六項以外のことで、承認をせず、または同項の承認に条件を付することはできないのですよ。法の第一条を受けておることは私もある程度認めましょう。しかし発動する場合には、明白に「国際収支の均衡を維持し、並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため」ということになっておるのですから、今回の事案が一条の第六項に該当するかどうかということを聞いておる。もっと具体的に例をもって説明しなさい。
  149. 原田明

    ○原田説明員 先生のおっしゃるとおり、第六項の国際収支の均衡の維持、外国貿易及び国民経済の健全な発展のために必要かどうかという判断は、非常にいろいろな要素を入れなければならないと存じております。今回の場合も、相手国の市場に非常に大きな混乱を起こし、ガットのルール、被害または被害のおそれを与えつつあるかとかというような原則にもとり、または日本の過当競争によって日本の輸出それ自体が非常に問題を起こし、みずから損害をこうむりつつあるというようなことのために、外国貿易の健全な発展をはかるという見地から必要であるという判断をするに至りますれば、その場合にはできることになろうかと思いますが、もしそういう条件が熟していないというふうに考えるならばできないということになるわけであります。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 あほらしくて、委員長、聞いておれぬですよ。それじゃ大臣に聞きましょう。要するに局長は、あなたの顔色を見つつ説明している、こういうふうに思います。  率直に言って、今日の事態に当てはまらぬと私は思っておるのですけれども、論戦をする時間がない。しかし、あなたにいま聞きたいのは、この六項を今日の事案に当てはめる気持ちがあるのかないのか。率直に考えを聞かしていただきたい。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま局長の申し上げましたことは、私は非常に正確であると実は思うのでございます。と申しますのは、日本の貿易のイメージというものが非常に外国に対して悪くなったといったような要件があれば云々というふうに申し上げておるのでございますから、お答えとしては、私は正確なお答えであると思います。思いますが、おまえはどう考えておるのか、そういうことを離れてというお話でございますから、私は、私自身ただいま、そういういわゆる強権というものを発動する考えはございません。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 法律の解釈を聞いておるのですよ。いまのお答えは、私の質問の先回りをしていらっしゃるのだが、この第一条第六項は、現状において、これは適用をし得る解釈かいなかということを聞いておるのです。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は私は、これを発動する気持ちがございませんでしたので、いままで中身をあまり見たことも、ほんとうを申しますとなかったわけでございます。正直なところでございますが……。  六項の「外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため必要があると認めるとき」——私も法律の専門家ではございませんけれども、ただいま局長の申しましたような、ガットでいうところの重大な被害またはそのおそれを生じておって、しかも日本の貿易政策というものが非常に世界全体からきらわれるというようなことになりますれば、それは外国貿易及び国民経済の健全な発展をはかることにはならない。字句としてはそういうことになるのであろうかと思います。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。論争は避けますが、少なくともあなたは、今日の事態に適用される解釈をとられたということがわかりました。この論争はあとにいたします。  それから先さらに進んで、あなたは、先ほどから何回も答弁されるのは、今日はこれを適用する意思はないということです。今日はというのはきょうだけですか、率直に聞きますけれども。失礼な言い方ですけれども、報復手段の問題についても、国会の議決についても、あなたは話が違ってきておるのですから、少なくとも今日の繊維に関するアメリカとの交渉の帰結、妥結、結果等を通じて貿易管理令を適用する意思はない、こう解釈してよろしゅうございますか。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府を代表してお答えを申し上げます場合でございますので、いかなるときにもいかなる状況でもこういうことはいたしませんとか、いたしますとかということは、これはめったに申し上げるべきでないという気持ちがありますので、それであのように申し上げておるわけでございますが、この貿易管理令といったようなものをこういう事態に発動することは、どうも適当なことでない、私はそう考えておるわけでございます。
  156. 横山利秋

    ○横山委員 結論に少しずつ入っていくのですが、念のためにですが、あなたもお読みになったと思うのですが、繊維連盟の大会における決議を一ぺん読んでみましょう。「日米繊維問題は互譲という美名のもとに、政府は数回の言明をホゴにし、業界の納得なき、いわゆる見切り発車の交渉を行ない、わが国の一方的な譲歩により、早期妥結を図ろうとしている。われわれはこのような政府態度を容認することはできない。日米友好の見地から、秩序ある輸出のための自主的な規制なら応するのにやぶさかではない。それなのに米国は身勝手な規制案を迫ってきている。われわれは結束を固め不当な譲歩にはあくまで反対し、強権的な解決には総力をあげて最後まで抗争する決意である。重ねて政府に警告する。」この大会の雰囲気もいろいろ聞いたわけですけれども、こういう雰囲気の中で説得が実際問題としてはできないと私は思うのです。おそらくできなかろう。個々の人をつかまえて、あなたの政治信念をも披瀝をされてお話しをされれば、個々の人はあるいはわかるかもしれぬ。しかし、業界全般としてはこれはだめではないか、こう思いますよ。だから、説得がきかなければ強権にせざるを得ない。しかし、あなたは強権は避けたいと言う。それではさかのぼって、もう交渉について決裂をせざるを得ないのではないかと私は思うのです。先ほど、この勝負は勝負にならぬと言いましたが、それでも政府が意図したことの中に、何とかしてあの法律の議会通過を避けるためにという大義名分があったわけですね。しかし、それはもうだめでしょう。そうすると、ある意味では恥を忍んで、ある場合によっては罵倒をも忍んで、何のためにかくまでやっておるんであるかということについて、私は疑いたくなる。  ここから先はもう完全な社会党の言い方になりますけれども、沖繩の交渉のときに、たいへんなことをなさったなあということになるのです。私はそれならばまだわかるというのです。それならばわかる。私どもは、たいへんなことをなさったという意味が反対ですけれども、それならばまだそれも一つの取引としてわかる。しかしあなた方、あくまでそうではないと、こう言う。そうでないと言うならば、これは何のために、いま、かくまでばかなことをやっているか。あなたに、かさ屋の小僧が骨を折ってしかられておると私は先般申し上げましたが、もう少し、いままでのしがらみや、いろいろないきさつを避けて、客観的に大局的な立場にいまお立ちになったらどうであろうか、こういうふうに私は考えます。この法律を通過させないためにという一つの大義名分は、もはやだめではないか。そうすると、その法律よりはまだちょっとよいということなんです。しかしこの段階において、簡単なそろばんだけでは私は議論はできないと思う。十円もらいたかったけれども五円でももらえるんだからという理論は、大局的な立場でないと私は思うのです。だから、いよいよ進退きわまったようなあなたに対して、ひとつこの際一歩抜け出たらどうか。通産大臣が総理大臣の指示を受けておやりになるということは当然なことでありましょう。しかし、産業界なり一般の国民の気持ち、また政治を預かる者として、宮澤さんは一体何を考えているんだ、あなた自身はどうなんだということを迫られていますよ。御意見を伺いたい。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最終的には業界が了解をしてくれなければ自主規制というのはできないのでございますから、政府間交渉といえども、これにはおのずからより得る限度があるということは、先ほど申し上げましたとおりでございます。そこで、新通商法はもうだめではないか、そういうにしきの御旗を掲げても、もうこれのほうはきまっておるではないかと言われますけれども、それは、外務大臣が先般訪米された際、米国政府から受けました印象とは違うわけでございまして、外務大臣の受けた印象によりますと、下院並びに上院及び両院協議会等々を通じて最善の努力を尽くすというのがニクソン政権の方針である由であります。私はそれをそのように信じております。下院で今朝の表決で相当多数の反対者が出たということは、これはおそらくはアメリカの良識をあらわしておるものと考えますから、下院をかりに通過したという事実をとって、もうこれで結論は出たというふうに考えることはない。私ども決して、ミルズ法案、新通商法案の成立、発効ということを阻止する運動をあきらめたわけではございません。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、念のためにひとつやぼな質問を最後にしますが、法案も成立する、交渉も譲歩して妥結する、そういうことは絶対あり得ないと考えてよろしいのですか。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほど武藤委員にも申し上げましたとおり、かなりいろいろ複雑な問題を含んでおりますので、交渉の途中でございますから、ちょっと申し上げることは御遠慮さしていただきたい、こう思っておるのでございます。どういう複雑なという、これはいろいろございますけれども、たとえば新通商法のもとにおける規制というのは、かなりきつい規制を法律としては書いておるわけでございます。そういたしますと、かりにわれわれの考えておりますような合意ができるといたしますと、そのような合意と今度成立した法律が設けておるかなりきつい基準とがどのような関係に立つかというようなことが、日米双方とも、これ、おのおのの立場から、いろいろな見方ができるわけでございますので、そのような複雑な要素がほかにもございますがいたしますので、ただいまの点につきましては、交渉の途中でもございますので、これ以上申し上げることをどうぞお許しいただきたいと思います。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 まあ、交渉の途中だから複雑なことについては答弁を避けさしてほしいという点は了承します。しかしそれは、ほんとうに複雑な問題であるばかりでなくて、踏んだりけったりだという印象を世間に与えるばかりではなくて、政府の交渉の大失敗であるというらく印を押されるということだけははっきり申し上げておきます。  私の質問を終わります。
  161. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 松尾信人君。
  162. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いままで質疑応答を聞いてまいったわけでありますけれども、その中で特に私が痛感いたしますのは、もともと政治問題として取り上げる問題ではないこの貿易上の繊維の問題、やっと六月に話が決裂になりましてほっとしておったというのが偽らざる国民の感情だと思います。それがまたまた、いまお話によりますれば、アメリカのほうから提案もあった、さらに通商法案の阻止という大きな意味もある、アメリカの保護貿易化というものを阻止していきたい、そのような大義名分上のお話でありまして、さらにこれを政治問題として取りあげられた、こういうことであります。けれども、もともとが問題の取り上げ方が誤っておる。だから、いままで苦労をされておられて、さらに問題を政治問題として取り上げられたばかりに、またいま非常に御苦労なさっておる、このように感ずるものであります。それが第一点です。このような問題というものは、あくまでも本来の貿易上の問題に還元されまして、そしてお互いに論議を尽くす、政府はその民間の交渉の足らざるところを補うというのが本筋であろうと、かたく信ずるものであります。  大義名文というものを今回言われましたけれども、それによってはたしてアメリカの保護貿易の傾向というものを阻止できるか。かりにこの通商法案というものが阻止できたにいたしましても、今回政府が決意されました、アメリカのそのような保護貿易の傾向というものをとめるんだということが、はたしてできるかどうか、そういう点について、非常に根本的に私は疑問を持っております。繊維問題以外にも、アメリカのほうでいまダンピングの容疑で関税評価の差しとめもされておりますし、また調査中のものがたくさんございます。そういうものをひっくるめて公正取引に反するんだというような立場から、アメリカのほうでは、日本のそのような製品というものを広く一括して総体的に輸入禁止をしていこう、このような傾向もあるわけでありまして、この日米繊維交渉の結果によって、アメリカの保護貿易化というものがはたして阻止できるかどうか、この点につきまして、最初に大臣のお見通し、見解というものを聞きたいと思うのであります。
  163. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 六月に私とスタンズ商務長官との話が不首尾に終わりまして、この問題は純粋の経済問題に返ったわけでございましたが、その後再び新しい二つのできごと、一つは、ただいま御指摘のような、繊維以外の分野における日米経済通商関係に起こった一連のできごと、もう一つは新通商法案がいまやきわめて成立の可能性が強まりつつある、この二つのできごとによって、再び本件は政治的な色彩を帯びるに至ったわけでございます。  そこで、先般、外務大臣が総理大臣に随行して訪米をされまして、そしてニクソン大統領としては、日米間で繊維の話がつけば、新通商法案の成立発効ということは全力を傾けて阻止をするという意向であるという判断を、外務大臣が確認されましたので、それに基づきまして、総理大臣とニクソン大統領とが交渉を再開するという合意をされたわけでございます。したがって私どもはいま、そういうニクソン大統領並びにニクソン政権のそのような決意というものをいわば支援する、そうして通商法案を阻止する目的を持ってこの交渉を進めておるわけでございます。   〔浦野委員長代理退席、武藤委員長代理着席〕
  164. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 ニクソン政権の意向を聞いた、また通商法案というものを阻止する、向こうの気持ちもわかった、だから向こうの提案を受けたんだ、このようなお話でございますけれども、反対の意見も相当出たというものの、すでに下院では通っておる。これも上院でどうなるのか、日本との約束で最終的にニクソン大統領が拒否権を発動するかどうか、これはまた機微に触れるから言えない、こうおっしゃると思うのでありますけれども、いま横山議員からも質問がありましたとおりに、繊維交渉は譲るだけ譲って妥結した、通商法案は通ったというようなことになりますれば、だれが悪いか、これは外務大臣になるわけでありますけれども、やはりそれを受けて一生懸命やっていらっしゃる大臣が、一番御苦労された上に、結果的には非常に損な立場になられるのではないか。そこで、この辺で見通しをしっかり立てて、そしてしっかり日本の行く方向をおきめになるのが、大臣の一番大事ないまの責務ではないか、このように感じますがいかがでしょう。
  165. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私といたしましては、外務大臣の先ほど申し上げましたような御判断、これが私どもの持ち得る最高の権威のある判断でございますので、それに従いまして交渉をただいまいたしておるところでございます。
  166. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 それはよくわかりました。わかりましたけれども、これも私がかりにということになると、また、かりにには答えられないということになりますけれども、どうも下院の動き、また上院の動き、そういうものを見ますと、そのような期待というものはすでに持てないというときにきておるのじゃないか。そこで、はっきりいま見通しをして、そして期間の問題だとか、いろいろそういう点でさらに譲歩をなされようとしていらっしゃることは、そのような見通しからいえば誤った方向にさらに進んでいらっしゃるというような感じがしてなりません。その点を聞いておるわけであります。
  167. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そんたくいたしますのに、ニクソン大統領として新通商法案に正式に反対であるということを表明できませんのは、その中に繊維に関する条項があるからではないかと考えております。そういたしますと、わが国その他極東の関係国との間に繊維についての話がかりに成立いたしますならば、ニクソン大統領としては、新通商法案に対して全面的に反対の態度ができる。そういう立場に立つのではないかというのが、私どもの推察であるわけであります。
  168. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 繊維もあります。また、はきものもございます。また通商法案の中には、かりに通れば、いろいろのものがいまから追加されていくことは当然予見されます。その中で、繊維が特にニクソン大統領の問題点である。だから、日本が繊維を譲って交渉を妥結するならば、ニクソン大統領としてはこの新通商法案というものをつぶす自信がある、このように信頼をされておるわけでありますけれども、繊維とはきものくらいであるならば通商法案はつぶさないというような意向も伝わったことがございます。つまり、ニクソン政権というものをどのくらい信用するかしないかということになりまして、非常にこれは問題でありますけれども、はたしてこれだけの力があるかどうかということが非常に心配でございます。これは水かけ論になりますので、ここで打ち切りますけれども、そのような流れというものがある。そのような見方というものが強くある。だから、今後はどのようにしていくべきかという決意だけは、確固たる方向に固めていかれるのが至当であろう、このように思うわけであります。  次に、そのような取り上げ方自体が大体政府間ベースのものじゃないかということによりまして谷口会長もやめたい。また、日本輸出縫製品工業組合連合会の近藤理事長も、もう政府のやり方にはがまんができない、心身ともに疲れ果てた、このようなことで自信がなくなったと言うて、辞意を表明しておることもあります。さらに、日本商工会議所の開催しました日米繊維問題に関する懇談会におきまして、産地代表の商工会議所の会頭等が口をそろえて、日本案について政府は業界との話をもっと詰めてはしい、見切り発車などしないで、われわれが泣き泣きでもいいからついていけるところまで詰めることが必要だ、補償措置は国民の税金を繊維業界だけで使うものであって問題だ、補償が必要でないような政府案づくりが必要だ、このようなことを申しまして、それぞれ非常に苦しい業界の代表者または産地の代表者の方方でございます。それで結局、業界の納得のないままで発車されまして、さらに新しい訓令が出されようとしておる。そのようなことで、先ほどこれもここで質疑応答がかわされましたけれども、はたして業界の納得ができるかどうか、この点につきまして私は非常に疑問がある。先ほどこれは答弁なされましたので、もう答弁は要りませんけれども、非常にその点は疑問がある、こういうことでございます。  次に、私がお伺いいたしたいと思いまするのは繊維交渉が成立した、これと通商法案との関係でございますけれども、どちらも成立した、このようなことは、いま大臣としては、通商法案というものは成立しない、これはニクソン政権をいま信頼しておるのだ、このようなことでありますけれども、かりに——かりにということばは非常に悪いですけれども、この両方、繊維交渉も成立した、また通商法案も成立したということになりました場合に、国会に対する日本政府の責任、こういうものはどのようになされるか。ちょっと念のためというようなことばをいまは使わなくてはいけないのでありますが、その点も承っておきたいと思います。
  169. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、先ほど武藤委員にもまた横山議員にも申し上げたところでございますけれどもお尋ねの含意はよくわかっておりますけれども、ただいまかなり微妙な交渉の段階、途中でございますので、その点につきましてのお答えは御遠慮さしていただきたい、こう申しあげておるわけでございます。
  170. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 じゃ、そういう非常に危惧の念がある、そのようになるおそれがあるということを、重ねて申しあげることにとどめておきましょう。  それから、先般も私が当委員会で御質問申しあげまして、あくまでも互譲の精神でいくのだ、このようなことでありました。総理もよくこのことばを使われます。互譲というのは、読んで字のごとく、お互いに譲り合うということでなくては相ならないと思います。であるならば、アメリカの繊維業界にどれだけの被害があったか、だからその被害をどうしていくのか、そのために日本の繊維業界としてはこのくらい輸出規制をするのだというような、あくまでもお互いに譲り合って、話し合って納得したものが互譲というものであろう、こう思います。それを一挙に飛び越えまして、そして政府だけが互譲だ。その互譲という内容も、われわれ国民一同ながめてみますると、一方的にアメリカのほうから押しまくられておるような、また弱腰である、このような感じを強く受けております。これは新聞論調もそのとおりでございますけれども、互譲というものはいかにあるべきか。この繊維問題につきましても、互譲というならばどのようにあるべきかということも深く反省さるべきであろう。この点について非常に疑問がございますけれども、いまの政府の案で、これが日本のほんとうの意味の互譲だ、世界にこれを叫んでも少しも恥ずかしくないというようなお考えであるかどうか。われわれとしては、譲りすぎておる、このような感じがいっぱいでありますけれども、互譲という意味をはっきりしていただきたいと思います。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 業界自身の決議等々におきましても、原則に立った筋道のあることであれば自分たちは考えないではないのだと言われておりますが、そういう意味で自主規制というものは考えるのだということでございますから、これはもういかにもわが国あるいはわが国業界として譲歩であるということは、私は間違いがないであろうと思います。それに対して先方の譲歩とは何かということになりますが、佐藤・ニクソン会談後、先方がいわゆる提案をいたしてまいったわけでございます。その提案と、かりに最終的にこの話がまとまったといたしますと、そのまとまった姿との間、これが向こう側の譲歩になる、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  172. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 まとまった姿が互譲でありますといわれますけれども、その譲り方がやはり国民の注視のまとでございます。どうしてもまとめたいというほうがいろいろ譲るのでありまして、筋の立った互譲というものの、その繊維に関する一定の範囲ですね、そういうものは当然あるべきだ。そういうものがはっきりしないということ自体にこの繊維問題の取り上げ方が本来からおかしかったのだ。だから業界に対する話し合いもできない。政府だけが互譲という精神でやられましても、だれもそれをほんとうの互譲というふうに感じていない、こう思います。  さらに、いまの交渉がいろいろ新しい訓令に基づきましてできあがったとするならば、繊維交渉が妥結したとするならば、それを相互の互譲と言うものはだれもいない。ただ政府が、互譲だ、やっと互譲の精神でここまで来たのだ、このように言われるだけではないか、このように強く感じます。くどいようでありますが、もう一度お答え願いたいと思います。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 世界の第三者から見ました場合に、わが国ないしわが国の業界が自主規制を考えるというのでございますから、これはもう何と言っても非常に大きな譲歩だということは、私は疑いないと考えるのでございます。それに対してアメリカ側の要請——ほんとうは要請と申したいところでございますけれども、いっときは要求のように聞こえたこともあるくらいで、私ははなはだ不愉快に思っておりますが、そういうものは、六月のスタンズの立場等々からわかっておるわけでございます。そこからアメリカ側も、事態の本質にかんがみてこれだけのものはなるほど譲ってきたなというふうに私どもがわからなければ、そういうふうに感じるのでなければ、これは向こう側はちっとも譲らなかったということになるわけでございますから、したがって私は、そういう従来からのアメリカの立場から、アメリカがどれだけわれわれの真意を了解して譲ってくるか、これをいま交渉しておるところであるわけでございます。
  174. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 それは、お話はわかったようなわからぬようなことになるわけでありますけれども、どうも一方的な向こうの言い方をのんでいくというような感じが一ぱいでございます。はたしてこれでいいのかというような感じが一ぱいです。もうこれは繰り返して申しませんけれども。  最後に、わが国の貿易政策と申しますか、このような貿易上の交渉の基本的態度でございますけれども、この保護貿易というものに踏み込んだアメリカというものが、今後ともに次々と輸入制限措置というものをとることは間違いないと思います。通商法案が成立するかしないかという問題にかかわらず、アメリカは、日本がどのような誠意を示そうとも、どのように繊維で譲歩しようともそれはそれでありまして、やはり次々にいろいろと貿易輸入制限措置というものをとることは必至じゃないか、このようにわれわれは見るのでございますけれども、これについて大臣のお考えはどうでございましょう。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の時間によりまして今朝、米国の下院で新通商法案の表決が行なわれましたときに、相当——百六十五票でございましたか、程度の反対があったわけでございます。これは一方において米国の一部の良識を示すものと思いますが、同時に、反対する者、賛成する者、かなり多くの人が、わが国のいわゆる自由化のおくれというものに、意見の表明の中で触れたというふうに伝えられております。この点は、私どもとしてもよほど考えてみなければならないことでございまして、そういう意味で、われわれが世界の保護貿易への流れを阻止するために、日本としてやるべきこと、やれることがたくさんある、これが一つだと思います。それはしなければならないと思います。  私は、それにもかかわらず、アメリカのいわゆるここへ来ましての保護貿易的な考え方というのは、かなりよって来たるところが深いと考えておりますので、いわば振り子の振りのようなものでありまして、そう簡単にすぐとまるというふうに楽観するわけにはいかない、基本的にはそのように考えております。しかしながら同時に、ここでそれが新通商法というような法律の形になってあらわれるということは、もうそういう事態をいわば法的に追認すると申しますか、確定することになるわけでございますから、そのこと自身がまたそういう方向をもう一つはっきり法の形で方向づけるということになりますから、さらに事態を悪化させるであろう、こう考えておるのでありまして、したがって、当面はこの法律案を阻止することがきわめて大切である、こう思うわけでございます。それができたならば振り子は直ちにもとへ戻ってくるのかというお尋ねであれば、私は、なかなかそのようには楽観ができない、正直にはそう考えておりますけれども、しかし、この新通商法案をほうむれるかほうむれないかということが、今後の動きに重大な影響を持つということは、おそらく申しあげて間違いないのではなかろうか、かように思っております。
  176. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 まあアメリカの今後の保護貿易化というものは間違いない、こういうことはいま大臣もおっしゃったわけでありますが、ただ、この通商法案を阻止するというところにいま重点を置いておる、それが振り子でだんだん大きくならないように、まずそこをとめる、このような御説明でございますけれども、そういうことでほんとうに日米の貿易関係というものが是正できるかどうか。むしろこれは、いくべきところまでいかせて、そうして政治問題としてこのような問題を取りあげないということが第一点であります。多くの自主規制等の問題が出てまいりますけれども、一つも民間の話し合いというものを飛び越えて政府がやられたことはないわけであります。繊維だけにこのように御熱心に一生懸命に政治折衝をやっていらっしゃるわけでありますけれども、これは貿易交渉の例外である、このようにおっしゃるのでありましょうか。なお、いろいろの自主規制または輸入規制の問題が日米にございますけれども、そういうものもつぎつぎと政府が政治交渉で解決するんだ、このようにお考えでございましょうか、お伺いいたします。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 振り子云々と申し上げましたのは、やはり一国の中の一つの潮の流れというものでございますから、流れには、やはり一定の物理的な運動の方向なり時間というものがあるであろうという意味で申し上げましたので、しかしさりとて、それが人間の努力によって何がしかは変更ができる、その幅を小さくできるものであるということは、これは申し上げるまでもないことで、また、そういうような意思が下院のある程度の反対票にもあらわれておると思いますので、私どもはそういう意味で、お互いにできる最善は尽くさなければならないというふうに考えております。その場合に、繊維というものがたまたま問題の品物になったということは、繊維業界にとって私はまことに気の毒なことだというふうに前々から考えておるのでありますけれども、現実には、いろいろな事情からそういうことになってしまっておるわけでございます。  そこで、幸いにしてミルズ法案、新通商法案というものが阻止されたといたしますと、そうすると、いままで起こっておる幾つかの日米間の経済問題というものは今後は起こらぬで済むのか、こういうお尋ねでございます。それは絶対に起こらぬで済むということは、これは先方のことでございますから申し上げることができませんが、少なくともわが国及び米国内における善意がこの悪法を阻止し得たということであれば、その人たちのこれからの自由貿易の努力に対して、非常なこれは励ましになることはもう明らかでございますから、そういう意味から、土壌というものは、雰囲気というものはやはり変わってき得る、そう期待してよろしいのではないかと思います。
  178. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 アメリカの良識に待つ、それは自由主義派も相当おる、このようなお答えでございますけれども、むしろ好むと好まざるにかかわらずアメリカはやるわけですよ。やりますから、そのような方向に向けておいて、そして自由貿易の立場から、アメリカの行き過ぎというものを世界じゅうが非難をして、そしてガットの場にのせて、そして日本もさらに言うべきことは言う、主張すべきことは主張をして、そして彼らに——彼らも伸ばしたいものがあるわけですから、同じ商品でも。大いに伸ばしたいものは彼らは伸ばしたい、防ぎたいものは防ぎたい。二十年も彼らは、企業の近代化だとか、設備の合理化というものを怠っておる。発展途上国から追い上げを食って、日本も非常に苦しんでおりますけれども、先進国同士の競争というものがあたりまえであります。それを自国の構造改善、近代化というものを怠っておいて、何でも被害、被害ということもあまり立証できないでおって、そして互譲と言うて相手に譲らしていくようなあり方というものが、はたして正当なる国際間の貿易交渉であろうかということについては、深い疑問を持ちます。今後ともにそのようなベースに乗るべきではない。あくまでも主義、主張を通しまして、そして反省させて、ほんとうの自由の場に彼らを乗せてやることが、真の意味における日米のパートナーシップであろう。経済大国日本といわれる、ここまで成長した日本の世界に対する義務でもあるのじゃないか、このようにしっかりとした自信というものを持たれまして、今後、日本貿易の行く手をしっかりと大臣に切り開いていただきたい、いまのままでは非常に心配である。このように思うのであります。大臣の所信を承りまして、質問の最後といたしたいと思います。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはいつぞやも申し上げたことでございますけれども、今日の自由貿易をささえておりますのは、御指摘のようにガットであります。しかしガットというものは、各国が主権をそこにゆだねてしまったものでないことも、御承知のとおりでございます。でございますから、今日ガットというものをこわそうと思えば、わが国もこわすことができますし、EECもできますし、アメリカもできるわけでございます。この三つの国は、いずれも自分だけの力でガット体制をこわすことができるだけの力を持っておると思うのでございます。で、かりに新通商法が成立したならば、これはガットの場で大いに非難をすればいいではないかとおっしゃいますけれども、新通商法が成立するような事態においては、おそらくガットというものがほとんど破壊されてしまうであろう。われわれがそういう鼓を鳴らして責める場というものが実際はもうなくなってしまうであろうというふうに、私どもはそれくらいに考えております。  これは私だけでございませんで、ガットのロング事務局長は前からそういうことを申しておりますことは、いつぞやも御報告をいたしたのでございますが、繊維の自主規制というようなことは、本来ガットからいえばまことに筋道のよくない話でございますけれども、われわれはそれをしてすらも、なお自由貿易、ガットの体制というものは救わなければならないのではないか。遺憾ながら、アメリカの主権の発動としての新通商法案というものは、まことに筋道の間違ったものでございますけれども、しかしそれだけに、それがガットの崩壊につながることを、われわれとしてはどうしても防がなければならないという意味で申し上げておるわけでございます。しかし、御指摘の点は私にはよくわかっておりますので、御質問の趣旨は、交渉いたしてまいりますときに十分生かしてまいりたいと思っています。
  180. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまの新通商法案、これは非常にガットの基本に関するものであるから、これをうんと阻止したいということでありますけれども、かりにこれが成立すればガットはくずれるわけであります。でありますから、アメリカのそのような基本的なものはだれも阻止することはできない。日本もできなければガットもできません。ただそれを非難することはできます。そして彼らに反省をさせて、対抗的なガット上のいろいろな措置もできるわけでございますから、ひとつ正々堂々と、いまのこれを阻止するんだというだけの焦点ではなくて、大きな大局的な意味から今後の貿易政策というものを確立していただきたい、これを重ねて念願する次第でございます。よろしくお願い申します。  以上です。
  181. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 加藤君。
  182. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は立法府の端くれでございます。立法府の端くれであるがゆえに、私は行政府に陳情はするかもしれませんけれども、立法の段階においてお願いをするなどとは申しませんから、さよう心得て御答弁を願いたい。  第一番、今度の国会では、臨時国会といわれておりまするけれども、主体は公害であり、繊維であるといわれております。公害も繊維も目下の急務だからでございます。ともに国家の存立をかけての問題でございます。そこで本日は、与えられた時間のうちに繊維のほんの一部についてお尋ねいたしまするが、いま日本政府がアメリカ政府と交渉しておりまするこの繊維交渉、これがもし佐藤・宮澤のラインによっていま計画していらっしゃるとおり実現したとなりましたら、日本の繊維局はどうなるでございましょう。あなたの傘下の繊維局と通商局はどうなるでございましょうか。これをまず念頭に置いていただきたい。なぜかならば、それは屈辱外交であるからだ。うそつき外交なんだ、秘密外交なんだ。その結果、佐藤内閣は九仭の功を一簣に欠くことになるでしょうし、私は再三あなたにも申し上げましたが、私が最も尊敬してやまない、今日の政界でも前途最も成長株であるといわれている宮澤さんが、第二の犬養さんになりかねないからであります。これは国家にとっても大きな損失だと思います。宮澤さんはなぜあえてそれをしなければならないのか。繊維局とは何ぞ。通産省に数多く局がございますけれども、銘柄別にあります局というのは、石炭と繊維なんです。それ以外にはない。重要だから銘柄別に局がある。その局は一体何のためにあるのです。アメリカの繊維業界を助けるためであって、日本の繊維業界を殺すためですか。日本の通商局は、アメリカの貿易の振興をはかることであって、日本の貿易はだんだんとじり貧にさせることですか。これは私が言うのではございません。あとでだんだんに証拠をごらんいただきまするが、権威のある学識経験者までがそれを言うておる。  通産大臣、まずうそつき外交からお尋ねする。あなたは、インジュリーのなきところ絶対に制限はなしという国会の決議、これは尊重すると言われた。けさほどもそれを言われた。なぜ再三にわたって当委員会がそのことを言わなければならぬかといえば、ここでおっしゃるところのことばと、ここから出向けられて、外に出られてからの態度がどうも一致しないからなんだ。業界に対しては、業界の賛成なしには絶対にこのことはいたさないと言うておきながら、業界にも、政界にも、関係労働界にも、かってに何とか発車をなさった。それは横山さんが専門でございますが、あれは何とか発車でしたな。(「見切り発車。」と呼ぶ者あり)うそつき発車でしょう。なぜうそを言わなければならぬ。まず第一番。
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過分のおことばをいただきましてどうも恐縮でございます。繊維局、通商局云々とおっしゃいますけれども、事は通商の問題でございますので、通商となりますと、これはやはり一方交通でなく双方交通でございますから、やはり相手の事情ということも考えていかなければなりませんことは、これはもう加藤委員にも御了解願えることだと思います。先ほどからも、るる御質問をされました委員の方々に申し上げておりますので省略いたしますけれども、要するに、ただいま私並びに通産省の立場は、行政の長でありますところの総理大臣が、合意に達するためにすみやかに交渉を開始することが適当であるという判断をされたのでありますから、その判断に従いまして行動をいたしておるわけでございます。  次に、インジュリー云々でございますが、この点は、厳密にガットのルールから申しますれば、確かに問題のあるところでございます。でありますが、一般に被害または被害のおそれというようなことについてのものの考え方は、私ども今回の日米交渉の中でも、それはかなり国会のそういうもののお考え、御趣旨というものは実は入れておるつもりなのでありまして、たとえば、アメリカに生産のないような品物についてはインジュリーは起こり得ないはずでございますし、ヨーロッパからの輸入が半分あるいはそれ以上であるというような場合には、極東の国がインジュリーを与えておるとも考えにくいではないかといったような議論は、実はいろいろにいたしておるわけでございます。したがってこの点、インジュリーあるいは被害というようなことについて、十分考えに入れつつやっておるつもりでございます。  で、業界の賛同なしにすることはないと言ったのに、しておるではないかというお尋ねでございましたが、これは、先ほどからるる申し上げておりますように、先方のいわゆる互譲というものが、文字どおり互譲であるかどうかということについて、やはり先方の提案に対して反対提案をしてみなければ、それはわかり得ないわけでございますから、しかもその反対提案に対して、それが最終のものであるという保証がございませんこともあって、業界が話に一向に乗ってこない。これは私は無理もないことだと思っておりますから、ただいまそういう段階を通っておりますけれども、もしまとまるようなことになりますれば、これは業界の納得、了承というものがなければこの話はまとまり得ない、こう考えておることには変わりがないわけでございます。
  184. 加藤清二

    加藤(清)委員 お互いにわかり合った人間が短い時間に能率を上げようとしているわけでございます。あなたは業界に対して、生産性の向上をしろしろとおっしゃる。ひとつ逃げて逃げて逃げまくらずに、ここの論議、審議も、能率を上げるよう、生産性を上げるように、車の歯車を合わせていただきたい。なぜうそを言わなければならないのか。なぜ秘密で見切り発車をしなければならないのか。いまのお答えでは一つも理解ができません。私は、インジュリーがないという問題についても、相手が互譲の精神どころかゴリ押しであるという材料も全部持っております。しかしそれを出せば、それだけで三十分は済んでしまう。きょうはこれで済みます。臨時国会、引き続いて本国会です。そのときは三十分や一時間では済ましませんから、そのときに詳細は譲るとして、本日は頂点だけを、わかり合った同士の大所高所の話をお願いしたい。なぜうそを言うのか。なぜ秘密で見切り発車をしなければならないのか。あなたは頭がいいけれども、こっちは頭が悪いのですから、わかりやすく説明していただきたい。国民一般がわかるように、一言でけっこうです。
  185. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 被害の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。  それから、いわゆる見切り発車ということばも、必ずしも適当でないということについては先ほども申し上げたとおりでございますけれども、これを秘密にいたしたことはございませんで、私は業界の首脳に対して、これからそうせざるを得ないということは前もって申し上げております。
  186. 加藤清二

    加藤(清)委員 しからば形を変えてお尋ねします。  これは総理の命令ですね。総理の意見とあなたの意見は一致しておりますね。外務大臣の意見も一致しておりますね。いかがです。
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最終的に国益を判断すべき人は、行政府におきましては総理大臣でございますから、外務大臣といえども、また私といえども、総理大臣の判断に服して仕事をしておるわけであります。
  188. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、経済閣僚をはじめとして、閣僚は本件についてどのような意見がございますか。自民党の閣僚は、一致結束してアメリカの屈従外交、屈辱外交に服すべきである、こういう意見ですか。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 特に閣僚会議を開く等々のことをいたしたことはございませんので、他の閣僚がどういう御意見をお持ちか存じませんけれども、内閣の閣員である限り、総理大臣の意向に従っていくことは当然であると思います。
  190. 加藤清二

    加藤(清)委員 冗談じゃない。かかる重大な案件を、しかもこの問題は、LTAの例に見るごとく、十何年も続くという想定——想定よりも、過去の実績から見てそうなることは明らかである。そういう重大な案件について閣議を開いてないとは、一体どういうことです。総理の言うことをあなたが、はい、はいといって聞いておったら、それで済むことですか。それほど軽々しい問題だとあなたは解釈してみえるのですか。なぜ閣議を開きなさらない。  もう一つお尋ねする。あなたは党人でございます。私も党人でございます。かかる重大案件を処理する場合には、必ずその属する派閥とも相談をなさるはずでございます。派閥で悪ければ、系統と言いましょうか、組織と言いましょうか、何でもいいです。あなたの直属の組織、その上司とは相談なさったですか、なさらぬですか。当然行なってしかるべきなんです。あなたが単独に行使できる権限としては、私はあまりにも重大だと思う。しかし、それをあえてあなたが一人ほっかむりして過ごそうというならば、詰め腹は自分一人で切ろうと覚悟していらっしゃるはずでございます。まず閣議から………。
  191. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この六月にスタンズ商務長官との会談に臨みます際、及び会談の結果につきましては、あらかじめ閣議で話もいたしました。したがって今回も、必要な段階になれば閣議に報告をいたすこともあろうかと思っております。  それから私どもの党、それから党の中のもう少し中のほうのことにつきましては、これはまあ私どものことでございますので何も申し上げませんが、私はこの主管大臣でございますので、別にそういうところに相談をするとかいうことではなく、自分の責任として考えております。
  192. 加藤清二

    加藤(清)委員 見方によれば、おのれ一人で責めを負うて腹を切るという覚悟はできておると見れば、あなたは古武士的な風格で、昔の方式からいえばりっぱなものでございましょう。しかし、今日的な政治のあり方、民主的な政治のあり方からいけば、かかる重大な案件は当然閣議にかけてしかるべきであるし、自分の古巣においては近親者と相談するのが当然だと思います。いずれ臨時国会までには、ぜひひとつそれを行なっておいていただきたい。また行なうのが礼儀というものだと思います。  さて、業界は見切りでいく。野党はつんぼさじきに置いておいてする。労働界も、本件は重大だからというので相談にあずかりたいと言うているのに、突如として君子が豹変したようです。これはしかし、下世話でいうと君子じゃございませんですね。こういうものを食い逃げという。その隣はどろぼうというのです。そういう悪評を買ってまでもなおなぜ行なわなければならないのか、なぜ急がなければならないのかという理由が、国民にはわかりません。同時に、これが国益とあなたおっしゃいましたが、どこに国益がありますか、承りたい。これを行なうことがどこに国益があるのか。日本国のだれかさんが利益をすることはあるかもしれません。しかし業界は、損をすればこそ、困ればこそ必死になっている。私はここへ出席するまで朝から関係者と話し合っておりました。みんな、もはや相談の域を越えて怒りに燃えておられます。うそを言われた、宮澤さんはあんな人じゃないと思うておったのにと、こういう声があちらからもこちらからも起きておりました。うそでございません。何でしたらあとでその名前を申し上げてもけっこうです。そういう不評を買ってまでもなぜ宮澤さんが踏み切らなければならないのか。いままでのあなたの公約からいき、民主主義の精神からいき、それを踏みにじってまでもなぜこの際急がなければならないのかわかりません。  もう一つお尋ねしたいことがある。しからば繊維局の事務の方々は、この問題についてどう考えてみえますか。このことをあえて行なって、今後、繊維局の業界に対する指導、育成強化の任務が達成できるとお考えでございますか。あなたは、いずれ終わっていかれるでいいでしょう。これで金鶏勲章をもらえば、通産大臣を卒業して次の登竜門になれるという道行き、希望もあるでしょう。しかし、残った繊維局の方々はどうなるのです。はたして業界が信用するとでも思ってみえますか。ここらあたりの空気を承りたい。私は実は一人一人聞いて知っております。
  193. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何ゆえに交渉をしておるのかということにつきましては、先ほどからるる新通商法案との関係を申し上げたとおりでございます。どうして急ぐのかということにつきましては、これは、その法案の成立、非成立に時間的な要素があるのでということも申し上げたところでございます。これによってどのような国益が得られるかということでございますけれども、これもるる申し上げましたとおり、新通商法案が成立するということは即ガット体制の崩壊につながり、そうして世界の自由貿易の流れを変えるものでございますから、これほど大きな国損はない。それを救うことは国益になるというふうに判断をいたしております。  なお、繊維局で若い人たちがどう考えておるかということにつきましては、通産大臣でございます限り私が通産省の方針は決定いたします。
  194. 加藤清二

    加藤(清)委員 方針を決定するのはあなたにきまっている、その決定が誤っておる場合に、今日のこの段階で繊維局がどう考えているか、あなたはどう把握しているかを聞きたい。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 憲法のもとでおのおの個人個人意見を持っておることは、そのとおりであろうと思いますけれども、役所の行政に関します限り私が全責任をもって指導をいたしてまいります。
  196. 加藤清二

    加藤(清)委員 責任を持つのはあたりまえなんだ。今後、業界が繊維局の言うことを聞かなくなったら、あなたその責任をどう持ちます。あなたが通産大臣をやめた後にその尾が引いたら、どう責任を負います。
  197. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 役人は国の公僕でございますから、全体の国益に従って仕事をするのが、公僕としての義務であると考えます。
  198. 加藤清二

    加藤(清)委員 よくても悪くても上司の命令に従うのが、これが公務員の任務でございますか。
  199. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 よくても悪くてもという判断はだれがするのかということでございます。通産行政の基本は私が決定いたします。
  200. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは全知全能ですか。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まことに乏しい知恵と才能を尽くして最善をはかっておるわけでございます。
  202. 加藤清二

    加藤(清)委員 権力者であり全知全能であるにもかかわらず、私はあなたのおっしゃることがわからない。それはあなたが頭がいいということであり、私が頭が悪いということが前提でしょう。しかし、その根底に流れるものは何かというたら、あなたは逃げて逃げて逃げまくりたいということなんです。逃げて逃げて逃げまくってこの場をうまく逃げれば、あとは自分の権限と、こういうことでございましょう。称してそれを昔からスコラ哲学という。しかしそれは歴史上批判を受けました。  さて、あなたにどうしても聞きたいのですが、先ほどから互譲、互譲、こう言っておられる。質問者も聞き、答弁者も答えてみえます。アメリカに、本件に関して何の互譲がありました。
  203. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それも先ほどからしばしば申し上げましたが、アメリカ側の本来これは要請であるべきなんでございますけれども、いっときは要求とも思えるような間違った言い方を先方がした段階もございますけれども、いずれにしてもその内容は、六月の私とスタンズとの会談でわかっておるわけでございます。そこで今回の交渉を通じて、そこからどれだけアメリカが考え直すか。先方にとっては、それが自分のほうの譲歩というふうに考えるのであろうと思います。
  204. 加藤清二

    加藤(清)委員 その答弁じゃ、何がどれだけ互譲があったかがわからない。第一次案、第二次案、トリガー方式だとかどうとか、こう言っているけれども、一つも互譲はない。互譲とはお互いに歩み寄ることと私は解釈しておりまするが、日米に関する限りは、日本が屈従することを互譲というのですか。私は、国語を習うときに、そういうふうには覚えてこなかったものですから、頭が悪いせいで、わからぬのです。あなたの互譲という内容を聞かしてもらいたいのです。
  205. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 互譲というのは、自分の希望しておること、こいねがっておることをお互いに譲るということと思います。
  206. 加藤清二

    加藤(清)委員 内容を聞きたい。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから何度も申し上げておることでございますけれども、ことしの六月の時点におけるアメリカ側のものの考え方、これは前にも御報告を申し上てげましたので、御存じでいらっしゃると思います。そこで、それと、今回かりに政府間の話し合いができましたときのアメリカ側の最終的な立場、これとの差が、これはそう言ってしまうと、まことにあたりまえのことを申し上げているというようなことになりますけれども、それが先方としては、自分のほうの譲った分、こういうふうに考えることになるわけでございます。それならば、今回の話の到達する先はどこかとおっしゃれば、これはただいま交渉中でございますから、申し上げることができない。私どもにもいまわかっておりません。
  208. 加藤清二

    加藤(清)委員 互譲でない。それは屈従である。歩み寄りは全部日本側がさせられて、相手は一歩も譲っていないという具体的事例を、全国の御婦人の方々にもわかるように——いまこの時間、テレビで専門家がやっております。私はその裏づけを元米国の欧州担当国務次官であり、OECD駐在米国大使であったジョン・M・レディさんの著書から抜き書きしたものを持っておりまするので、互譲でない、アメリカの無理押しつけであるということをあなたに申し上げてみたいと存じます。あなたは、こんなことは、たくさんの部下を持ってみえまするし、権力を持ってみえますから、先刻御案内でございましょうけれども一般国民はこれを知らないかもしれません。そこで、申し上げてみます。  「今や通商法案が議会審議の最終段階となったので、その蔭の推進力——繊維産業について理解することが必要となった」という書き出しでございます。「この重要な米国繊維産業は、本当に特別な取扱いを受けるべき正当な理由があるのか、それとも米国を高価な誤りの道に導こうとしているのか。一般大衆の犠牲において特定産業の利益を貫こうというやり方は、世界中で最も古いやり方ではないとしても、結構古臭いやり方であり、その主張は盾の半面しか見てないものが多い。その一つの例は、繊維業界の言うことはソ連式の統計の使い方である。」これは日本の繊維産業じゃありませんよ。相手のですよ。「輸入の増加率が大きいというけれども比較の基礎になる数字は言っていない。織物や衣料の輸入が十年間に倍になったというけれども、その輸入数量は一九六一年の三億四千万封度から、一九六八年の八億一千三百万封度にふえたのは事実であるが、その間に米国の生産は六十五億八千百万封度から百五億五千九百万封度にふえた。こうして、輸入の増加は五億封度足らずだが、国内生産はその七倍の三十七億封度も増加した。それでも輸入の増加が業界を深刻な困難に陥れたといえるであろうか。」大臣の所見を承りたいところです。  「又、米国の衣料産業の時間給は二弗三十一仙平均で、これでは香港の二十六仙や日本の三十九仙と到底太刀討出来ない」という論がアメリカ国内の労働者の中にある。企業家もそれをいっている。「しかし、それならば、どうして米国の紡織業が昨年中に税引後の正味利益七・九%をもうけ、衣料産業が一一・九%ももうけることが出来たのか。」インジュリーはどこにあるのでしょうか。「賃金比較はコストの一要素であり、国際競争に有力な役割も果して来た。しかし、今や、賃金だけでなく、資本、資源、立地条件、技術など、すべての要素の上に国際競争行われているのである。更に、インフレに敏感な米国人に対して、輸入が国内価格を引上げるという説明をしている。しかし、今日では子供でもこんなことにだまされはしない。若し繊維業者が、国内価格を引上げたくないのなら、何故輸入割当を主張するのか。輸入割当制は国内価桃を引上げるばかりである。」これについて反論がありましたら、どうぞ。  「他国の貿易政策が米国を公正に取扱って呉れないから保護が必要だ」という論がアメリカにある。「成る程、他の国には貿易障害がある。そして、日本の資本貿易の自由化はのろのろとしている。しかし、輸入制限は米国にだってある。」その次にずっとたくさんの例をあげていますが、時間の請求がありますので急ぎますが、制限が多いのは、LTAにおける日本のコットンまたしかりでございます。コットンだけでも六十四品目の縦割り、横割り、スイッチ不可能というがんじがらめの制限をいたしているのでございます。  そのほか、「石油の割当制を見よ。農産物の輸入制限を見よ、砂糖も、酪農品も、肉も制限せられている。」ここから先は私のことばです。カリフォルニアでサンキストやミカンのたぐいが余ったら、ニクソンさんは、それは日本へ輸出さしてやるでよろしとおっしゃった。その口の下から日本の繊維だけはなぜ制限しなければならないのか、わからないところでございます。日本は米があり余っております。これを織物用ののりにすれば、アメリカから輸入するところのコーン、トウモロコシは削減せざるを得ない。雑穀も減らすことが可能である。にもかかわらず、余った余ったというて米の始末に困りながら、なおその上、アメリカの農産物は買わされている。これが互恵平等でございましょうか。向こうが向こうならこちらもこちら、アメリカからの輸入農産物を制限するの法を野党が次の国会に提案したならば、一体通産大臣はどうおっしゃるか。これはすでに用意をされつつあるのでございます。しかも、アメリカの大使館の中にもそのことを私に注意してくれた人があります。名前をあげてもよろしい。  「問題は国内国外共にこのような制限をなくすことである。」そのとおりであります。「そのためには多数国間で一生懸命に協議しなければならぬ。繊維の輸入割当立法は正にこれに逆行するものである。」  それからずうっとあります。たくさんあります。が、時間を急げということですから削除しまして、「自由諸国の貿易、通貨、印本の相互依存は前代未聞である。これをブチこわす為には一九三〇年代の貿易戦争をもう一度はじめることがその方法である。」もしもアメリカがミルズ法案を通過させて、日本が対抗策をとり、世界じゅうが対抗策をとったら、まさにこれはチキン戦争でございます。アメリカの趣旨と逆行することでございます。「若し自由貿易への道を辿りつづけたいならば、繊維産業の言うことを聞け、繊維産業は特別の政治問題があるのだからという言訳けも聞く。」アメリカの繊維業者から。「しかし、これは正直ではあるが間違いである。」なぜ間違いか。「政府もミルズ委員長も気がついたであろうが、キャピトルの丘では古い馴れ合いが行われている。」もう一度そこを申し上げます。「キャピトルの丘では古い馴れ合いが行われている。」そこに日本人が参加しておらなければけっこうでございます。私はそれを希望するものでございます。  「ミルズ委員長が成立させたかったのは繊維とはき物の輸入割当であったであろうか、石油輸入制限手続も加わったし、輸入が少しでも国内生産者の気に食わぬようになれば、見渡す限りどこまでも輸入割当を拡げることの出来るトリガー機構がつけられてしまったのである。」どこに互譲があるでしょう。トリガーは、自分のねらうものは全部、自分の好きなように承服させるという手段である。「こういうことをやれば、報復と再報復が限りなくつづき、過去四半世紀の努力と苦心によって築かれた国際的な経済通貨の協力体制はその結果打ちこわされるであろう。」いわんやドル防衛に協力することも、日本は遠慮を申し上げなければならぬことに相なるでございましょう。「危険は甚だ大きい。しかも、このリスクの源泉である“米国の繊維産業は保護を必要とする”という議論は誤っている。この単純な事実が大衆討議にさらされるならば、未だ救われる道はあるのだが。」遺憾なことに、日本においてもアメリカにおいても、大衆討議が行なわれずに秘密裏に行なわれておるところに国民の疑問の念がわく。もって大臣、いかんとなされる。本日はもう与えられた時間がちょうどこれで参りましたので、私はこれで終わりまするが、この続きは臨時国会でゆっくりやらさしていただきますから。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御引用になりました論文でございますが、その中の多くのことは、私自身が実はアメリカ側にしょっちゅう申しておりますことでございますので、基本的に反論をしたいとは全然思っておりません。  それから先ほど、これはあるいは加藤委員のおことばで引用でない部分であったかと思いますが、日本がアメリカから農産物をたくさん買わされているというようなことは、私はないのではないか。やはりそのもののメリットによって、一番メリットのいいものを買っておるということではないかと思っております。
  210. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はこれでやめようと思いましたが、何やらまた食い逃げをおやりになって、私がうそを言ったような印象を新聞記者の諸君に与えては、私も片腹痛いですから申し上げます。  しからばお尋ねする。終戦後、日本は何がゆえにアメリカからコットンをあのように多量に買わされていたのか、何がゆえに豪州からウールを、好まざるウールより残りのウールを買わされていたのか、お答え願いたい。しかも、その値段はコストが高く、運賃は高く、しかもその上なおシップ・アメリカンであった。これによる日本の欠損、被害は重大なものである。それをあなたは、日本が好んで買ったとおっしゃるのか。そういうことをおっしゃるならば私は言いたい。今日のこの規制は無理やりに業者がのまされんとしている。自主とは何ぞ。それはアメリカの自主である。日本は屈従である。にもかかわらず五、六年たったら、ときの大臣は、日本の業界が自主規制したと言うて逃げるでございましょう。そういうことは許しません。
  211. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 終戦後しばらくの間、わが国は占領下にございましたので、その間、これはわが国自身の意思ですべてのことが行なわれたというわけではございません。これはやむを得なかったと思います。しかし、少なくとも独立いたしまして以来今日に及んで、わが国が自分の意思に反して何かを買わされるというようなことは、これはないことでありまして、私がメリット云々と申し上げましたのは、たとえばコットンについて申し上げますと、品物のメリットもございましょうし、金融上のメリットもございましょうし、業界が自主的にメリットの高いものを高いところから買う、こういう体制であるということを申し上げたのであります。
  212. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長、悪いけれども時間を許してください。  メリットがあるから、それはそのままの状態でおいた。ならば、他国から買ったほうがはるかにメリットがあるので、借款その他の関係においてメリットをげたをはかせておるという事実をあなたは否定なさいますか。私はこんなことを論争したくないのです。(「つまらぬ、つまらぬ。」と呼ぶ者あり)事実なんです。あなたはつまらぬ、つまらぬと言うけれども、終戦後ずっとあれしてきた。うそだとおっしゃるなら、私は現物をここへ持ってきておる。あなたたちがうそだとおっしゃるなら、つまらぬとおっしゃるなら——これはきょうテレビに出たんです。だけれども、もう時間だからやめます。(「次、次。」と呼ぶ者あり)いや、あなたが茶々を入れるからそういうことになる。うそだと言うなら、あとであなたにも大臣にも−それでは、あなたのそこまで持っていって終わりましょう。(品物を示す)ぼくは、何かこういうことでうそを言うようなことを言われたんでは、承知しません。どうぞあなたここで、どのようにやられたか一ぺんよく調べてください。そこから抜き出してごらんなさい。
  213. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 では加藤委員、よろしゅうございますね。——次に移ります。  では西田君。
  214. 西田八郎

    西田委員 日米の繊維交渉の問題につきましては、大臣とも何回か、委員会あるいはその他の場所でやりとりをしてきたわけでありますが、今度のこの繊維交渉の背景になったものの一つは、全くアメリカのお家の事情といいますか、国内の問題から発生してきているように私は判断するわけであります。  一つは、アメリカの経済が非常に力の政策というものをとってきた関係から、国内の経済が非常に不安におとしいれられた。その結果、インフレ傾向になり、そしてまた物価の上昇を見、失業が増大をする。こういうような形の中から、自然、持てる国アメリカの国内体制を整えるために、保護貿易という形で国内産業の保護という形が非常に強く打ち出されてきた。こうした背景が一つあるのではなかろうか。  もう一つは、そうしたものを何とか政治的に解決しようとしたニクソンが、結果的には現在のところそうした経済不安を押え切れない、非常な、むしろ失政といわれるところまで発展をしてきておる。そのために、次期大統領選挙には非常に不利な条件がそろい過ぎておる。何とかこの辺で自分の優勢というものをかちとりたい。それをいちずに十一月の中間選挙にかけたけれども、十一月の中間選挙の結果は、ニクソンに言わせればむしろ勝利であったというけれども一般的に政治通からながめれば、民主党が躍進し、共和党が思うほどの躍進ができなかった。ここにもう一つのあせりがあるように思うわけであります。  そうしたことを背景にして持ってきておりますので、従来のガットの精神によるところの、被害のないところに規制はしないという、そうした考え方も、あろうことか。あるいは世界の貿易秩序を守ること、こうしたことは、いうならば第二次世界大戦後アメリカが、特にケネディ大統領が世界の指導権をとってつくってきた一つの体制ではなかろうかと思うのですが、そうした先人の道を踏みにじってでも、何とかこの際アメリカの国内経済の立て直しというものをはかっていきたい、こういうあせりから出てきた背景があると思うのですが、これに対して通産大臣、どのように御見解を持っておられるか、お聞きをしたいわけであります。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 よその国の政治事情でございますので、あまりとやかく申したくはございませんけれども、私もただいま御指摘なさいましたことのほかに、ベトナム戦争、あるいは黒人問題等々、いろいろな意味での挫折感といったようなものも加わっておったのではないかと見ておるわけでございます。
  216. 西田八郎

    西田委員 そこで結果的には、従来の日米関係というもの、言いかえますならば、アメリカは日本に対して援助をしなければならない、日本は被援助国というような考え方で今日まで処してきたと思うのであります。しかし、最近の日本の経済成長のすばらしさ、過去十年の高度経済成長というものに対して、アメリカはもう、日本に対して友好は保っていかなければならぬけれども、援助をするというような形の国ではない、むしろ対等に経済を争うべき、競争相手というふうな見方に変わってきたのではなかろうかというふうに思うわけでありますが、そういうアメリカの対日観の相違というようなものを、実際にアメリカに渡って国務省の役人等とも接せられた通産大臣としては、どうお考えになるか。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かにそういう要素があるというふうに私は感じております。
  218. 西田八郎

    西田委員 そうだといたしますと、この交渉は日本がもっとき然とした態度で臨むべきではなかろうか。そういう意味で、大臣行かれて、この六月に交渉を決裂させてこられたときには、私は拍手かっさいを送ったわけであります。日本の政府の中にも骨のある大臣が一人や二人はおるものだということで、そのすぐあとの七月二十一日の委員会に出ましてそのことを申し述べるとともに、その後また多国間協定という問題が出まして、七月末に多国間協定をやろうという動きが出てまいりましたので、それに対してもひとつがんばってもらいたいという激励をしたわけであります。  ところが、最近突如として、ニクソン・佐藤会談が十一月に行なわれて以来、この問題が急激に持ち上がってきた。しかもアメリカは、被害の立証ということについては何の用意もしないのみか、むしろそうしたことにはふたをおおって、いたずらに、日本の繊維の輸出が多過ぎるのだ、アメリカに対しては輸入ですが、輸入が多過ぎるのだ、こういうことのみでこの今度の問題を日本に強く要請してきておる。先ほど屈辱外交と言われましたけれども、私は屈辱というよりも、むしろ強圧的にアメリカから持ってきた。それらに対して、どうして日本の政府が六月同様の強い態度で臨もうとされないのか。どこにそのような強圧的なアメリカの態度に応じなければならない国際的な信義があるのか。あるいは恩義というとおかしいのですけれども、日本がアメリカに対してそうした恩義を感じなければならないものがあるのか。その辺のところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは先ほどから何度か申し上げておりますけれども、六月の時点と最近の佐藤・ニクソン会談との時点の間では、一つはわが国の繊維以外の産業に対して、日米関係からいろいろなことが起こってきたということ。それから新通商法案というものがまさに成立しようかという情勢に展開してきたこと。二つとも、一つは行政府、一つは立法府のことでございますけれども、政治的なできごとが起こってきた。これらはいかにも非常に異常な事態である。アメリカとして決して冷静な正常な状態ではなくて、興奮した異常な状態だというふうに見ております。よってきたるところは、先ほど西田委員も言われたとおりのことだと思いますけれども、日米がよきパートナーでありたい、ことに貿易問題についてそうでありたいというときに、パートナーの一方が非常な興奮をして異常な状態になった場合に、他方がどう対処すべきか。同じように興奮をすることがいいのか、あるいは非常に冷静にこれを受けとめるほうがいいのかといえば、私はやはり後者であろうというふうに考えるのであります。ことに、事柄が将来の自由貿易、それも日米だけでない、世界全体につながってまいりますから、私はそういう判断をしておりますので、そのことを屈辱というふうには私ども一向に考えないわけであります。
  220. 西田八郎

    西田委員 若干質問の趣旨にそれたと思うのですが、私は屈辱外交というふうには思っていないわけであります。どうしてその高圧的なアメリカの、被害を立証もしなければ、実際にどうなっておるという詳しいデータも出さないままに、いたずらに日本の繊維製品の輸入をとめようとするのか。そのとめようとするほんとうの背景が何にあるのか。こうしたことをひとつお聞きしたいということを申したわけであって、屈辱的な外交だということは言っていない。アメリカが高圧的であるとは考えるけれども、それをなぜはねのけないのか。アメリカがそういう態度で出てくることに対して、どうしてそれを正直に受け入れようとするのか、私はその辺のところがどうも納得がいかない。
  221. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 失礼いたしました。西田委員が屈辱と言われたのではないことは私も承知しておりながら、先ほどどなたかの御質問にありましたので、それにちょっと申し上げたようなことになってしまいました。  そこで、アメリカのやっておりますこと、求めておりますことは、いかにもこれは乱暴なことだ。しかし主権というものは、やはりそういうふうになり得るものであると思います。ガットにいたしましても、さらに国連にいたしましてもさようでございますけれども、そこに主権が埋没してしまっているという現状ではございませんから、ガットのルールかあるからといっても、主権はそれを破ろうと思えば、それは破れるわけでございます。いまそのようなことになっておりますから、それに対してわれわれがどう対処するのが一番賢明であるかということが問題なのではないか、こう思うわけでございます。
  222. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、先ほどからの質問に対する答弁といまの答弁と総合して考えたときに、結局いまは向こうは非常に興奮している。興奮したもの同士がエキサイトし合ってぶつかり合ったらどうにもならぬことになってしまう。だから、こちらは興奮を静めてやるというパートナーシップの片側に立っての判断でこの問題を受けようとしているのだということなんですが、そうだとすると、たとえばこの繊維交渉というものが、かりに政府努力によってアメリカの古い分を、私どもから言えばかなり通して、妥結した場合に、けさほど下院を通過したミルズ法案、七〇年通商法というものが、大統領が完全に拒否権を発動してその法律の発効を停止するというようなものまで見通してやっておられるのかどうか。こういう点について、私はそんななまやさしい状態ではないと思うのです、アメリカの保護貿易の動きというものは。したがって、それに対してどうお考えになっておるのか。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これも先ほど何度か申し上げましたが、先般、佐藤・ニクソン会談がございましたときに、外務大臣も同行いたしまして、外務大臣のアメリカ当局者との接触の結果の所感として、繊維について日米間に合意ができるようであれば、ミルズ通商法案の成立、発効に対して大統領は最善を尽くしてこれを阻止する、そういう決心であるというのが、わが国の外務大臣の判断でございます。したがって、私どもはそれに協力をしよう、それに対してわれわれのできることをしようではないかと考えまして、ただいま交渉いたしておるわけでございます。
  224. 西田八郎

    西田委員 これは重大な大臣の発言であるわけですが、そうすると、外務大臣がそうした判断をしたということは、判断するに足る材料を十分持ったということなんですか。その辺のところを明らかにできないものかどうか。
  225. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 立法府と行政府との関係、アメリカにおきましての関係というものはまた一つのものがございますから、必ずどうなるというようなことを、むろん外務大臣としても言えるわけではございません。しかし外務大臣自身が、そのためにニクソン大統領が全力を尽くす決意であるというふうに自分は考えるに至った、米当局者との接触の結果。ということは、私が直接に外務大臣から承りましたものでありまして、それは可能な限りの判断を総合したものと考えております。
  226. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、外務大臣が直接おられないので、この質問には逃げられるかもわからないけれども、先ほどもこの会議の冒頭、委員長から通産大臣に一言申し上げられたことばがあるわけであります。それは昨年の五月九日の院議であります。したがって、議会制民主主義というものを守り、三権分立の民主主義体制というものを守っていこうという内閣総理大臣が、立法府におけるところの決議と外国におけるその政府の動きというものとをてんびんにかけられて、そして院議を無視してでも向こうの立法府の動きというものの予測の上に立った大臣の判断は正しかった、そのことが日本の国益を守る上において正しかったという判断のもとでこの交渉を進められたと解釈していいのかどうか。
  227. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 院議は、米国政府に対し、輸入制限を企図せざるよう強く要請すべきであるというような趣旨のことであります。で、いまや新通商法案という最もおそるべき全面的な輸入制限的な立法が成立しようとしておるのでありますから、これを阻止するために、私どもが全力を尽くしますことは、これは院議の示しておられることと一向にちがうことではない、かように思っております。
  228. 西田八郎

    西田委員 これは私がまだおらないときの院議でありますから、なんでありますが、議事録その他読んでみましたときには、ただ単に交渉せよという要請だけではなしに、その前文に、ガットの精神に基づいてということばが必ず入っておったはずであります。そのガットの精神をもう完全にアメリカ側は無視してきておるわけですね。それでもいいのですか。そういう解釈をとっておられるのか。
  229. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 院議には、アメリカのやろうとしていることは「明らかにガットの精神に違反するものである。」ということが前のほうに書いてございます。私もそうだと思います。そこで、先ほど申し上げましたように、ガットというものが不磨の大典のごとく、いわばアプリオリに、先験的に存在しておって、そうして、アメリカがどうかすればガットでたたけばいいといったふうに、私はガットというものを考えていないので、ガットというものは申し上げるまでもなく、アメリカ、わが国、EEC等の国で結成されているものでございますから、その中の一国がいわば主権をかってに行使するというのでありますれば、ガットというものはもうその場でつぶれてしまうわけでございますから、そこでそのようなガットの崩壊につながらないために、われわれとしては何をすべきかということを考えておるわけでございます。
  230. 西田八郎

    西田委員 政府の見解としてそれは聞きおきたいと思います、了承したわけではありませんが。  そこで、時間の通告を受けまして、もうちょっと突っ込んで議論したかったのですが、いずれまた臨時国会でもこの問題ございましょうから、そのときに譲るとして、かりにこの問題、日米間で協定が成立した場合、まず国内と国際貿易との関係があると思うのです。  そこでまず国内についてお伺いしたいのですが、この業界を説得し得られるかどうか。私はいまの業界の空気からして、政府の妥結した線に絶対納得はしないと思います。したがって、業界が納得しなかった場合、一体現行法規でこれらの政府間協定が有効に働くようにするための国内的措置というものがあるのかどうか、それを伺いたい。
  231. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 法律論といたしましては、先ほど政府委員も申し上げましたように、いろいろ議論の分かれるところであろうかと思います。しかし私は、ただいまのところ、いわゆる強権をもって政府の意思を業界に押しつけようという考えは持っておりません。
  232. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、やはり政府としては、行政府の責任者としていやしくも外国の代表との間に協定を結んだ場合、国内法規で強権発動できないから、こういうことでそのことをほごにするわけにはまいらないと思うのですよ。そうしますと、どうしても国内で強権発動できないというなら、むしろ私は、現在の法体系の中ではこれを処置する方法というものは、先ほども御説明があった為替管理令にしても非常に問題があるわけであります。したがって、それを納得づくでやろうとすれば、どうしても法的措置を講じなければならぬということになるわけであります。その辺、もし業界が納得しなければ、政府はこれに対して法的措置を講ずるのかどうか。そういう点のところをひとつ腹がまえとして聞かしていただきたい。
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、現在政府の責任において米側と交渉しておるわけでございますけれども、その前提として私どもは、これは日本の業界が承知をしておることではないということ、及び業界の自主的協力がなければ、政府の意思を押しつけて仕事を運ぶわけにはいかないということ、これはもう先方も存じておりますけれども、くどいようにはっきりさせてございます。したがって、両国間に取りきめができましたにいたしましても、それはそのような前提に立つものでございます。次に、しかしさりながら、そうやってできましたものは、そういう前提をなるべく満たすように私どもが全力を尽くさなければならぬわけでございますから、これはもう総理大臣以下私どもがどれだけ業界を説得し得るかということにかかると申し上げざるを得ない。新たにそのために法律案を提出するかでございますが、私はただいまそういう意図を持っておりません。
  234. 西田八郎

    西田委員 そうすると、くどいようですが、業界は一応納得してもらえるという、その線での妥結というものを前提にしてお考えになっておる、こういうことですから、裏返せば、業界はいまは反対しているけれども、納得せしめ得られるのだという判断だろうと思うのです。しかし、それはあくまでも判断の限りであって、もしも業界がどうしても納得しなかった場合、この政府町協定というものは一体生きるのか、あるいはそのまま空文になってしまうのか、いわゆるほごにしてしまうのか、その辺のところはいかがですか。
  235. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 話はできた、業界が納得しないということでは、これはもう実は何もできていないにひとしいことでございますから、そこで政府間交渉で私どもが越えられない制約というものがあるわけでございます。わが国の業界の動向をよほどよく考えまして、その制約というものの中で米国側との話し合いを進めなければならないという、非常にむずかしい、御推察のとおりの立場でございますけれども、それ以外方法はないというふうに考えております。
  236. 西田八郎

    西田委員 非常にむずかしいところで、まだワシントンで交渉の最中ですから、大臣も言及できないことであろうと思うのですけれども、大体の御答弁の中から察しがつきます。したがって私は、そうした背景があるということをあくまでも肝に銘じてひとつこの交渉を続けてもらいたい。そして業界は、少なくとも自主規制ならやる意思があるということをすでに表明をしておるわけでありますから、そういう点についても、なぜそういう方向でいけなかったかというような点にも、もっと今後十分対処していくべきではなかろうかということを、希望として申し上げておきたいと思います。  次に、このことから生じてまいります国内問題のもう一つとして、もうすでに播州西脇地方あるいは東北、金沢、石川県地方におきましては、この交渉が出だしましてから、経済にいろいろな大きな変動がありまして、西脇におきましては二万六千台ある織機のいわゆる操短等も行なっておるし、石川におきましても六万五千台の織機の操短が行なわれておる、あるいは工賃の引き下げが行なわれておるというようなことで、これは相当影響が出てきておるわけであります。この交渉が妥結すれば、これの被害は、アメリカがいまいわれているような繊維の受ける被害ではなしに、日本国内の繊維業界か受ける被害というものはきわめて大きいものがあると思います。それに対処するに際して、業界に対してどうされるのか、あるいは繊維に働いておる百二十万あるいは百七十万といわれる労働者の職場を守るそれらの対策についてどのようにお考えになっておるのか、聞かしていただきたいと思います。
  237. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 幾つかの産地で織機のスペースがふさがら切らないでおるということは、私も存じております。これにはいろいろな原因があるようでございまして、経済の基調といったようなことが一番に響いておるのではないかと思いますし、また、構造改善に入っておるものと、そうでないものとにも、かなりの違いがあるようでございます。しかし、いずれにいたしましても、こういういわゆる自主規制ということが何かの影響を与える——なるべく与えないようにいたしたいと思いますけれども、与えることは考えておかなければなりませんので、それで私どもとしては、その救済あるいは是正についてはいろいろな方面からできるだけのことをやりたい。もちろんその中に、要すれば離職者、転職者等の対策も含まなければならないと考えておるわけでございます。
  238. 西田八郎

    西田委員 もう一つは国際的な問題でありますけれども、日米間の交渉を見守っておるのは、ただ日本の繊維業者、あるいはこれに関連する労働者だけではなしに、カナダ、オーストラリアあるいはEEC諸国、こういうところがこの日米間の交渉に対して非常に関心を寄せているところではなかろうか。あるいは開発途上国としては韓国、台湾、香港あたりも、非常に関心を寄せておるところであろうと思います。そういう意味で、この七月には多国間ということでジュネーブで話をしようということになったわけですけれども、それも話がまとまらなかった、そして、日本が突き進んでアメリカとの間に協定を結んでしまったということになった場合、繊維貿易に関する限りガットというものが完全に崩壊をしてしまうわけですね。そしてまたカナダあるいはオーストラリア、EEC諸国からアメリカと同様の要請、貿易交渉というような問題が出てくるんではなかろうかというふうに懸念をするわけであります。そういう点について大臣はどうお考えになっておるのか。また、将来それについて、それらの諸国と話し合う予定をしておられるのかどうか。そこら辺のところをひとつお聞かせいただきたい。
  239. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 カナダにつきましては、私ここのところ接触しておりませんので、はっきり申し上げることができませんが、EECにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたとおり、ともかく日米で手を握ってくれろ、新通商法案をそのようにして回避をしてほしいということは、何度もわが国に申しておりますことでありまして、そのことばの裏側を申しますと、日本としてはどうもまことに気に染まぬことであろうが、というようなことでございますから、EECとしては、その結果に対しては良識を示してくると考える理由がございます。  台湾、韓国、香港等でございますけれども、これは発展途上国でもございますから、わが国としては巻き添えにしてはかわいそうだという気持ちもございますけれども、なかなかそうばっかりも申してはおれない。また国会における御決議も、実はその点もございますので、私どものたてまえは、それらの国と同じ協定、同じ取りきめができ、それが効力を発生するときにわれわれのものも同様に効力を発生する、こういうたてまえで交渉をいたさざるを得ないし、またいたしておるわけでございます。
  240. 西田八郎

    西田委員 どうも時間が刻々と迫り、予定をちょっとオーバーしておるのですが、もう一つ最後にお許しをいただきますが、いままでの通産政策、産業政策というものは、要するに生産第一主義といわれるように生産に重点を置いてとられてきた。しかしその結果、政府としては高度経済成長がなし遂げられたんだといわれておるわけでありますが、だんだんと労働力も不足をしてまいっておりますし、あるいは産業の立地というところから公害問題等もいろいろと出てまいっておるわけであります。そういう点から、これからの産業のあり方として、いわゆる脱工業というような形で進めをし、さらに労働力を主体にした労働力集約産業についてはこれが近代化をはかって、いわゆる装置産業の方向へ行こう、そういうところから四十年の特繊法ができまして、そして繊維産業自体も、いままでのテクスタイルインダストリーからむしろファッションインダストリーのほうへ転換すべきではないか、こういう政策をとってこられたわけであります。そうしてようやくその効が徐々にあらわれてきつつあるわけであります。まだ繊維全体の職種にわたってあらわれているとはいいませんが、徐々にその方向にあらわれておる。特に化合繊等におきましては、そうした方向を目ざして一気に努力をしてきておるわけであります。したがって、従来の繊維製品を売るという感覚から、今後は服飾を売るんだ、ファッションを売るんだという方向に変わってきておるわけであります。そのことはいわゆる流行を売るということになるわけであります。そうしたことは、いまフィーリング時代ということばも使われますが、今後の世相、また産業社会の発展というものから関連をして、きわめて重要な問題になってくるし、そのことがまた貿易の一つのパターンを変えていくことにもなろうかと思うわけであります。そういうときに、現在アメリカから輸入を規制されようとしておるものは、ほとんどそのすべてがファッションに属するものであるということになってまいりますと、日本のこれからとろうとする産業政策に対して非常に大きな打撃を受けることになるわけであります。  そういう点から考えて、いわゆる産業政策というものについて今後どういうふうに対処していかれるのが。今後も、これはアメリカだけとの関係である、従来の方針は変えないという方向でいかれるのかどうかということを、ひとつお伺いしたい。ということは、流行を売るということは、場合によっては、俗なことばでいえば、当たれば百です。百以上になるでしょう。しかし流行そのものが、その国の国情あるいはその他にマッチしない場合は、これはゼロ以下になってしまう可能性を持っております。百かゼロかというようなファッションの輸出について、一体こういうような規制が行なわれるということになれば、わが国の繊維産業にとってきわめて前途まっ暗ということにもなりかねないわけであります。またそれはいまとっておられる産業政策との関係においても好ましくない状態になるわけでありますが、そういう点について大臣はどう処理していかれるのか。
  241. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点が、まことに御指摘のように、この繊維産業の一つの特性でございまして、六月の私とスタンズとの論争の一番の一つの点になったわけでございます。アメリカのように賃金が高い国は、いわゆるただいま言われましたような知識産業としての付加価値、それを上げていくような方向に進まなければ、これはしょせん低賃金の国にはかなわない。またわが国自身も、実は同じ問題を韓国、台湾等との関係で持っておるわけでございますから、この原理というものを推し進めていかない限り、これを否定したのでは経済の進歩というものはあり得ない。また発展途上国もいくところがないわけでございます。ずいぶん議論をいたしましたが、なかなかこれは、理屈としてはわかっていながら、アメリカとしても悩んでおるところのようでございます。今度交渉いたしますのに、やはり非常にむずかしい問題になっておりますのはこの問題でございますから、私どもとしては、できるだけそのような知識産業としての付加価値向上の努力を阻害されないような形で交渉していこうと、実は腐心をしておる点でございます。  なお、わが国自身の体制といたしましては、たしかにそういうような産業に変わっていくわけでありますから、やはり機屋にしましても、あるいは染色にしましても、撚糸にいたしましても、紡績にしても、それらのものが一つのチームになるような、コンバーターというようなものの考え方に近いわけでありますけれども、チームになるような形で新しいファッションの付加価価をつくり出していく、そういう指導をいままでも多少やってまいっておるつもりですが、これからも強めてまいらなければならない、そういう施策を考えております。
  242. 西田八郎

    西田委員 これは最後に希望でありますが、いま進められておる交渉に水をさすようになるかもわかりませんが、やはり日本国政府としては、国内のメリットを守るということが最大の政治的任務でなければならないと思います。そういう意味で、願わくは第二次決裂もひとつ考えて、安易に妥協されないことを強く要望いたしまして、質問を終わります。
  243. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 米原君。
  244. 米原昶

    ○米原委員 時間がもう四時五十分でここを退場されるというのです。大臣に聞かなければ意味がないので、実際の質問時間わずか十分になってしまった、残念です。ただ、多くの議員から私の言いたいこともほぼ言い尽くされたので、繰り返そうとは思わないのです。  ただいまも、西田委員との間のやりとりで、屈従外交とかなんとかいうような話がありましたが、しかし、明らかに道理のないそういう高圧的な態度で来ているのに、結局それに屈従するんじゃ、屈従外交というほかないですよ。私たちは、アメリカに対する自民党政府態度は一貫して屈従的だと言ってきましたが、しかし、これほど屈従がきわまれりということはなかったと思うのです。そういう意味では、国会の決議についても全く都合のいいような——さっき、ことばづらをとって言われましたけれども、しかし実際は、ガットの精神に全く反したそういう輸入制限に反対しているのであって、こちらのほうが、実際は自主規制という形でその輸入制限をのむことになれば、決議の精神に反していることは明らかなんです。こういうような、言いわけはもうやめてもらって、あっさりと態度を言ってもらいたいのです。  先ほどから聞いていると、結局いまの段階では、いままでと違って、新通商法案を阻止するということに何か大義名分を求めておられるようですが、これについても、はたして、この日米交渉が成り立てば、ニクソン大統領が拒否権を発動して新通商法案をつぶすかどうか。これも愛知外務大臣が接触された感触だというのですが、しかし大きな目で見れば、そういうことは言えないんじゃないか。確かに一次的には、拒否権発動ということもいまの段階でないとは思いません。しかし、先ほどからの話でも出ておりますように、アメリカは自由貿易の方針を捨ててむしろ保護貿易の方向が強まっている。これは単に思想の問題ではないと思うのです。実際にアメリカの経済の深部の法則というか、そういう段階にきているのじゃないか。それが実情だと思うのです。ですから、先ほどからもいろいろ話がありましたように、これは単に繊維とはきものだけで済む問題ではなくて、現実にいろんな方面に、テレビの問題も出ていれは、金属洋食器の問題とか、さらに自動車、鉄鋼というふうな方向に発展する傾向があることは事実なんです。そういう方向にいやでも応でも進んでくるんじゃないか、そのことが、ああいう新通商法案を結局多数で下院でも押し切っているし、上院でも財政委員会を通っているということの中にあらわれているのであって、これを、拒否権を発動しましても——ニクソン大統領の立場というのは、今度の中間選挙でもああいう状態です。ニクソン大統領でも、それをやらざるを心ないかもしれませんが、決して有利でもない。これは当てにはできないと思うのです。それよりも日本の政府としての態度ですね。アメリカのそういう傾向があらわれているこれに対して、今後どういうふうに対処していくか。単に、新通商法案を阻止したら——阻止するのは一つの重大なポイントかもしれませんが、これはそれだけで済むような問題ではないように思うのです。いままでのようなアメリカに一貫して追随していくようなやり方で、はたしてやっていけるかどうかという、そこにほんとうは来ているのじゃないかというふうな印象を受けます。どうしても、こんな道理の通らぬものを認めていくのではなくて、もっと日本が自主的な態度をはっきり表明していく段階に来ているのではないか。少なくとも自由民主党の政府もそういうように進むべきところに来ているというのが、実際の世界経済情勢が示すところではないか、そういうふうに考えますが、こういう態度でこのまま続けられるつもりかということをほんとうに心配するのです。  沖繩の返還の問題についても、若干経済問題について質問しようと思っておりましたが、もう時間がありません。沖繩の返還の問題についても、きょうの閣議でいろいろきまったようですが、まだまだ最終的なものではないようですし、ずいぶんいろんな問題があると思うのです。この場合にも、やはり日本の自主的な態度というものを相当強く押していかないと、私たち自身が非常に困るところに来ている、そう思うのですが、こういう点についてひとつ最後に通産大臣の見解を伺いたいと思います。
  245. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の問題でございますけれども、事は貿易の問題、商売の問題でございますから、こっちが売ろうとしても相手が買わないというのであれば商売、貿易は成立しないわけであります。そこで、いまの新通商法案というものが、繊維ばかりでなく非常に広い種類のものにわたって、買わない、あるいは買う量を国家意思で制限するというようなことを試みようとしておる法律でございますから、そういうことを防ぐということが第一ではないか。そういうものが成立したあとでガットでそれを責めると言ってみても、そのときには、もう肝心のガットはなきにひとしいということではないかというのが、私どもが先ほどから申し上げておるところでございます。  よってきたるところは根は深かろうと言われますことは、私も先ほども申し上げましたが、この法律がつぶれたら全部がすべて解決するというようなことではない。やはりある程度、振り子のような物の慣性的な動き方はある。しかしこの法律ができれば、さらにそれが急速に悪くなるというふうに思っておるわけでございます。基本的に貿易政策として一つの国に三〇%という依存をしておるということは、やはりこれは大き過ぎると思います。できるだけ分散していくということが今後の方向でなければならないというふうに考えております。  なお、沖繩の問題についても御指摘がございました。これは、私どももちろんわれわれの国益ということを第一に考えるわけでございますが、同時に今日の世の中、世界でございますから、一国と他国との関係というものは、申し上げるまでもなく、相互に依存するところは多いわけでございます。かつてのように、全くよそと関係なく自分の国だけで事が処理できるという世の中ではございませんから、国際協調ということも、これも大事なことであろうと思っております。
  246. 米原昶

    ○米原委員 先ほどの説明の中で、この新通商法案に対して申し入れをされましたね。そしてガットの報復の権利を発動することをほのめかされたようなことを言われましたね。しかし実際問題としては、報復しようにも一体どんな措置をやるのか。せいぜい輸入制限くらいの措置だと思うのですがね。結局、望まれることとは逆の方向にいくわけですね。実際にはそのくらいのことしかできないことを、いかにもそういうことがあるように申し入れられたという印象しか受けないのですがね。実際には、そういうやり方からも抜け出たやり方を、この場合打たなくではだめじゃないか、私はそう考えるのです。思い切った立場をとらないと、これは方向転換できない。私たちの考え方を率直に言えば、もちろん、安保条約第二条そのものの日米経済協力というその根本が、これで否定されてきているという見地に立って、いろいろな措置を講ずべきだと思うのですが、一体それに対してどういう報復措置をとるつもりなのか、どんなことができるのかということを、ちょっとお伺いしておきたいのです。
  247. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 報復というのは、先ほど申しましたように、報復すること自身が目的ではありませんで、そういう抑止力のもとに相手に一つのことを思いとどまらせるというのが本来の目的でございますから、私ども何も、向こうがなぐったからこっちもなぐろうというようなことを、むやみにそれがいいことだと考えておるわけではございません。しかし、それでも現実の事態になったときにどうするかということになれば、これはやはりわが国としてもなし得ることはいろいろございますことは、御存じのとおりであります。
  248. 米原昶

    ○米原委員 問題はたくさんありますけれども、臨時国会でさらにやります。
  249. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十分散会