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1970-09-22 第63回国会 衆議院 商工委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月二十二日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 橋口  隆君 理事 前田 正男君    理事 岡本 富夫君 理事 塚本 三郎君       大橋 武夫君    神田  博君       北澤 直吉君    小峯 柳多君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    進藤 一馬君       増岡 博之君    山田 久就君       石川 次夫君    中井徳次郎君       中谷 鉄也君    横山 利秋君       近江巳記夫君    多田 時子君       松尾 信人君    川端 文夫君       吉田 泰造君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         法務省民事局長 新谷 正夫君         大蔵大臣官房審         議官      嶋崎  均君         農林省農林経済         局企業流通部長 森  整治君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省企業         局参事官    井上  保君         通商産業省公害         保安局長    荘   清君         通商産業省公害         保安局公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省重工         業局次長    山形 栄治君         通商産業省化学         工業局長    山下 英明君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         特許庁審査第三         部長      竹内 尚恒君         中小企業庁長官 吉光  久君         労働省労働基準         局監督課長   大坪健一郎君         自治大臣官房長 鎌田 要人君     ————————————— 委員の異動 九月十六日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     小沢 辰男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。石川次夫君。
  3. 石川次夫

    石川委員 通産大臣が見えてないので、いずれまた通産大臣が見えましたときに要点だけを再度質問をするということで、一部質問を保留させていただきまして、最近、新聞紙上をにぎわしておりますカラーテレビダンピングの問題について、アメリカとの間にいろいろな紛争があるようでありますので、その経緯について伺いたいと思っておるわけであります。ただしカラーテレビの問題は、これとの関連におきまして国内における二重価格の問題が出ておりますので、非常にデリケートな問題でございますけれども、あとから、わが党の横山委員のほうから二重価格の問題については質問をすることになっておりますので、主としてアメリカとの交渉経緯に関連しての質問だけに限定をしてまいりたいと思っておるわけであります。  御承知のように、先般の繊維規制の問題につきましては、この委員会におきましては、総力をあげて、被害のないところには規制はないのだ、あるいはまた二国間の協定というものはあり得ないのだということで、非常に強硬な決議まで取りつけました結果、結果としては決裂に終わったわけでありますけれども、とにもかくにも通産省としては、政府としては、筋を通したという結果になっておるわけであります。  この繊維関係は、大体において五億ドルくらいの輸出がありまして、その二億ドルくらいが規制問題の対象というかっこうで、今回非常な論議の的になったわけでありますけれども、今回テレビに問題を発しますところの電子機器関係になりますと、これより影響するところがはるかに甚大であるということが予想されるわけであります。大体十億ドルくらいの輸出がありまして、従業員にいたしましても、繊維とは比較にならぬほど関係従業員も多い。テレビの問題がもしダンピングというふうに決定をするということになれば、テレビだけでいいますと二億六千万ドルくらいの輸出でありますけれども、耐久消費財として初めてのこういう規制を受けるということになりまして、今後影響するところきわめて甚大である。こういう点でこの取り扱いについては官民ともに非常な関心の的になっておるわけであります。大体アメリカ国内におけるところの日本からの輸入が、エレクトロニクス関係電子機器関係で占めるところの割合というのは三・五%しかございません。日本の場合には逆に、アメリカからの輸入が一体何%を占めておりますかというと、五・四%にのぼっておるわけでありまして、絶対額そのもの日本からの輸出のほうがかなり多いわけでありますけれども、アメリカ日本との経済力比較、規模というふうなものを考えますときに、日本だけが一方的にこのような影響を受けるという結果になることは、忍びないところではないかと思っておるところであります。  しかし、理屈がどの程度存在するかという点でこれから質問したいと思うのでありますが、実はこの問題は、アメリカにおいて四十三年六月に調査を開始しておりまして、二年ばかりかけて昭和四十四年の末に一応この調査が終了いたしております。それで、公正価格維持の保証書というものを出すことによって、大体この問題はケリがついた。いわば内定の意味では、これは白であるというような形に一応決着がついた性質のものであったはずであります。それが、国内での二重価格の問題とかに便乗したのかどうかわかりませんけれども、そのときの資料というのは、大体四十二年の十二月から四十三年の四月という、きわめて古い資料に基づいてこういう白という決定がなされたのに、ことしの五月になって財務省がさらに運用を強化いたしまして、重ねていろいろな資料を要求し、要求された資料というものがとうてい提出することができないような、いわば無理難題という形の資料というものの提出を求められて、結局、計算方式が変えられたかっこう追加資料を出させられまして、事情聴取というものがほとんどなしに今度の評価差しとめというふうな結果になったといういきさつは、通産省でよくご存じだろうと思うのであります。このように態度急変をして、にわかにダンピングというものにこれをひっかけるといいますか、これをダンピングであるという断定をしようとすることの理由、その裏にある事情、これは一体どういうところにあるのか、この点をひとつ御説明を願いたいと思うのであります。
  4. 山形栄治

    山形説明員 お答えいたします。  テレビダンピング経緯につきましては、いま先生のおっしゃいましたとおりでございまして、古い資料でございますけれども、長い時間かかって調査をしておったのが、五月に至りまして、日本でいうと省令といいますか、米国内規取り扱い規程が変わりまして、現在それに基づいてダンピング容疑があるということで関税評価差しとめになっておる現段階でございます。  われわれといたしましては、米国側からの各社に対する調査内容公示等がまだ非常に数の少ない現段階でございますので、詳細なところはよくわかりかねる点があるわけでございますけれども、その少ない資料もとにして考えましても、若干日本商慣習等についての配慮が欠けている点があるのではないかということで、今後再調査の要請をいたしたい、現在こう考えておる次第でございます。
  5. 石川次夫

    石川委員 私が質問しているのは、そういう事情を聞いているのじゃなくて、なぜそういうふうに態度急変してダンピング容疑があるというふうな形に変わってきたのか、この点の裏にある事情は一体何か、このことを伺っておるわけであります。
  6. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 その点については、政府といたしましては、在米日本大使館を通じ、なぜそのような態度急変をしたのかということをいま調査中でございます。
  7. 石川次夫

    石川委員 いま交渉段階でありますから、あまり突っ込んだいろいろな憶測は避けるべきだという配慮があるかもしれませんけれども、大体アメリカ国内の不況というもの、特に、エレクトロニクス関係の三百億ドルという生産の中で、軍と宇宙の関係というものは六〇%を占めておる、こういう需要というものが大幅に減退をした。大体六十億ドル、こういわれております。したがって国内市場でそれを何とかカバーしていかなくちゃならぬ、こういうようなアメリカ国内経済事情というものが強く影響しているのではなかろうか。したがって、純粋にこれがダンピングとかなんとかいうことではなくて、何とかアメリカ国内における過剰生産になりかねないものを吸収させるためには、結局保護貿易というかっこうにたよらざるを得ないのだ。しかしながらアメリカは、御承知のように自由貿易の旗というものはおろすわけにはいかない。こういうことで、いわば国内法だということでダンピング法という穴埋めを考えてきたのではないかというふうに考えても、たいして誤りではないのではなかろうかと私は思っておるわけでありますけれども、その点はどうお考えになっておりますか。
  8. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 その点は繊維交渉等にも、米国保護色というものが出てまいりました。御承知のとおりわれわれも、被害のないところには規制なしという態度を貫いております。そういう問題については、米国政府等に対して、保護色を強くするようなことは国際貿易の上で非常に重大な問題ができてくるということを要請いたしておりますので、今後日米間の交渉は、そういう問題が大きな問題になるかと存じております。
  9. 石川次夫

    石川委員 一方、アメリカ労働組合事情をよく調べてみますと、アメリカでは、何とか安いエレクトロニクス関係機器をつくりたいということで、台湾、韓国、東南アジアというものに対して相当進出をはかっております。そこの安い賃金でできた品物を逆にアメリカ輸入をするということになると自分の職場を失うんだという、これまた労働界の強い抵抗がありまして、なかなか海外進出も思うようにならないということになって、業者が苦しまぎれに販路を国内において拡大をするということでは保護貿易にならざるを得ない、こういうふうに追い詰められた形から、このような、自由貿易の旗をおろさないで何とか保護貿易の形をとるという窮余の一策が、保護貿易の別な形でダンピング法適用ということになり、そのことに基づいて、計算方式なども非常に無理な形で、証明のできないものは全部受け取りを出せというようなかっこうで要求をしてきていることにつながってきておるのではないかというふうに考えられるので、端的に言うと、アメリカ国内事情のために無理に保護貿易という形をとらせるための手段としての、このような理不尽な変更ということになるのではないか、こう思わざるを得ないわけなんです。この点は政務次官、どうお考えになっていますか。
  10. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 確かに、そういう労働問題、あるいは中間選挙というような問題が影響されているかもしれませんけれども、これはアメリカ国内の問題でございます。しかし政府といたしましては、保護貿易色を強めるということは、国際貿易上の問題で非常に暗い面が出てまいりますので、こういうことに対しては、そういう面を排除していく方針を貫いている次第でございます。
  11. 石川次夫

    石川委員 ガット関係でアンチダンピングコード、この国際コードでは一体どういうふうになっていますか。ダンピングに対する規制のしかたの基準というものがあるわけですね。それをひとつ教えてもらいたいのです。
  12. 山形栄治

    山形説明員 ガットのアンチダンピングコードによりますと、いろいろと詳細なことがございますが、一番のポイントは、ダンピングであるかどうかの判定の基準といたしまして、それを判定いたします場合に、同一段階、たとえば卸段階であるなら卸値の段階、その同一段階比較すべきであるということが一つと、それから、各国のそれぞれの特有の国内商慣習等はこれを尊重しなければいかぬということが二つでございます。もう一つは、手続的に見まして、ダンピングであるということを判定いたします場合には、その相手国に対しまして通報の義務を当然持つということの三点が主たる内容でございます。
  13. 石川次夫

    石川委員 まあ大体いまのようなことであろうと思うのでありますけれども、これはアメリカのほうでは、行政府の側ではこれを了解しているが、国会のほうではこれを批准をしておらないということになっていますが、その間のいきさつはどういうことになっていますか。
  14. 山形栄治

    山形説明員 その辺の事情につきましては、まことに恐縮でございますけれども、アメリカ国内の問題でもございまして、つまびらかにいたしておりません。
  15. 石川次夫

    石川委員 私は、向こう政治情勢というのは日本の場合とはだいぶ違いますから、一がいに内部干渉にわたるようなことは言いたくないと思うのでありますけれども、行政府が了解をしながら国会批准をしていないという、非常に複雑怪奇な形になっておりますが、結局そういうことがアメリカ恣意的判断というものを許しているという根拠になっているのではないか。また恣意的判断というものは絶対にやってはならぬというのがアンチダンピング法根拠になっていると思うのであります。こういうことから今度の問題が派生をしたのであって、アメリカはこの国際コードに準拠をしたという形にはなっておらぬのではないか、こう思われるのですが、その点の判断はどうなりますか。
  16. 山形栄治

    山形説明員 現在アメリカの行なっておりますテレビについての措置国際アンチダンピングコードに抵触するかどうかということでございますが、詳細な資料が実はわれわれのほうへまだ入っておりません。  もっと具体的に申し上げますと、ダンピング容疑対象になっておりますテレビ機種はほぼ百くらいの機種に及ぶのではないかということでございますが、具体的な機種ごとダンピング容疑の詳細な資料につきましては、数機種しか現在まだ提示されておりませんので、この辺の詳細な多数の資料を、現在われわれとしては要求いたしておるわけでございます。  いずれにしましても、非常に乏しい資料で詳細なことはわかりませんが、その乏しい資料の範囲内におきまして、われわれのほうの観察によりますと、日本商慣習等についてどうも配慮の足りない点があるのではないかということでございますので、九月二十一日から現在ガットのアンチダンピング委員会が開催されておりますが、その委員会においても、まだ資料の不十分な点はございますが、一応われわれのほうの考え方なりはこの委員会において申し入れる手はずになっておるわけでございます。
  17. 石川次夫

    石川委員 これは、それぞれの企業の機密というふうなことがありまして、なかなか値段の内訳というものが詳細にならないという点があるだろうと思うのですが、公取委員会管理価格決定についても言えることでありますけれども、大体、通産省あるいは公正取引委員会で、原価計算専門家というのはいらっしゃるんですか。
  18. 山形栄治

    山形説明員 詳細に何人というようなことは申し上げられませんけれども、通産省価格関係事務を取りまとめております企業局、それから企業経営関係を取りまとめておりますやはり企業局職員、及び各原局——いわゆる原局といいますと、物資原局の中にも若干専門家——まあ、この辺非常に語弊がございますかもしれませんけれども、全然おらないわけではございません。
  19. 谷村裕

    谷村説明員 公正取引委員会は、価格の直接の問題に携わっておるわけじゃございませんので、特に原価計算専門にしておるという職員はございません。実は、私自身が、物価統制をやっておったときに、原価計算を受け持つことをやった経験がございます。それは戦後のことでございましたが、さように、一種経済統制と申しますか、物価統制的なことをやっておりますときは、政府サイドにおいても、それを見る立場の者がおると思います。たとえば公共料金等については、一種政府の認可にかかっているようなものでございますので、そういうあれがあると思いますが、一般に自由経済もとにおいて、政府側においては、特にそういう体制というものはなかなかできていないのではないか、かように私は考えております。
  20. 石川次夫

    石川委員 その問題は、あまり深く触れることはやめましょう。ということは、管理価格であるかどうかを決定する、独占価格であるかどうかを決定するという根本も、原価計算知識が十分でないと確認できないのですよ。たとえば、大量に市場で独占するものがある、片っ方は新製品があるという場合に、割り掛けしかたいかんによって、これが不当に高くなっている、新製品の場合には不当に安くなっているという原価計算のしかたは幾らでもできるのです。そういうようなところまで専門的に突っ込んで干渉しなければ、ほんとうの意味管理価格決定というものはできないのです。  いまは管理価格の問題について質問しているわけではございませんけれども、いまの問題につきましても、物品税荷づくり梱包、金利、運賃、当該商品報償費当該商品広告費、こういうものは、大体向こう卸売り値段にプラスした形でもって認められるというかっこうになっておるわけでありますけれども、総合広告費とか総合報償費販売促進費、それからフリーオンボードまでの倉庫料というのは、向こう計算のしかたでは全然認められないのです。しかも、その一つ一つのものについては、全部受け取りを出せというかっこうになっている。なかなかこういうものについては受け取りというものは出せないのです。そういう証拠がなければこれは価格としては認められないということで、この値段が不当に高いのではないかという材料にされてしまう結果になっておる。これは非常に専門的にむずかしいことでございましょうけれども、そういったような不当な計算方式に基づいてのダンピングの認定になってくるのではなかろうか。  しかも、今度はテレビだけでありますけれども、このあと相当広範囲にわたって、現在日本輸出しているエレクトリック全般にまたがって、こういうダンピング適用される危険性があるということになると、この点についての相当正確な実際的な知識というものがなければ、これがダンピングでないのだということの対抗上の理論を打ち立てることは非常に困難ではないか、こう思うのであえて私は、原価計算専門家が一体どのくらいの知識を持っているのかということを申し上げたわけでありまして、私はどう考えても、この計算のしかたは不当ではないかと思わざるを得ないのです。そういう点でのよほどの資料を持ってアメリカとの交渉に当たってもらわなければならぬ、こう思うのであえて御忠告を申し上げるわけでありますけれども、しからば、ダンピング容疑が濃いということに対して、世界、特にヨーロッパあたり反響は、一体どういうことになっておりますか。
  21. 山形栄治

    山形説明員 現在までのところ、ヨーロッパからの反響というようなことは、特段にわれわれのほうに入っておりません。  いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、テレビダンピングにつきましては、非常に極端に言うと、まだアメリカ側措置が始まったばかりでございまして、御存じだと思いますけれども、九月四日に関税評価差しとめがございまして、それから三カ月以内に財務省内部におきまして公聴会等の手続も踏みまして、そこでダンピング容疑があるということでありますと、これが関税委員会に送付され、またそこで三カ月の被害の有無につきましての検討が行なわれるというような段階でございますので、これからわれわれといたしましても、公聴会の場を通じ、また在外公館等を通じましていろいろと折衝いたしたいと思っておりますし、また、俗なことばで余裕もございますので、私の推測でございますけれども、ヨーロッパ側も、もう少し事態が進展いたしますのを慎重に見守っておるということではないかと推測いたすわけでございます。
  22. 石川次夫

    石川委員 これは四十三年六月にも調査を開始しているのですね。あのときダンピングではないかという懸念をもって調査を開始している。結局のところは、四十四年の末に大体白だということで一応終了しているので安心をされたのかもしれませんけれども、四十三年には、すでにダンピングの疑いありということで調査を開始しておる時点で国際的な世論が全然つかめないということは、私は少し怠慢ではないかと思うのです。これはいわば、自由貿易の旗をおろしてないかもしれないけれども、完全な保護貿易に出るための苦肉の策だとわれわれは考えておるのでありまして、そういった点で、各国反響というものが全然つかめないということは、これはあるいは外務省関係かもしれませんが、私は怠慢過ぎると思うのです。もちろん、私もよくわかりませんけれども、ヨーロッパあたりでは、わりあい対岸の火災のようなかっこうで、あまり深い関心は持っておらないというような情勢ではあるように漏れ承っておるわけでありますけれども、もうさきに一回判定したあとで、またさらに計算をし直して容疑にひっかけるというようなことはむちゃではないか、こういうふうな雰囲気がかなり強いというふうにわれわれ漏れうかがっておるわけでありますけれども、その点、全然聞いておりませんですか。
  23. 山形栄治

    山形説明員 ただいま申し上げましたように、現時点においては詳細な情報が入っておらないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、二十一日から二十三日まで開かれますガットのアンチダンピング委員会日本側から、いま先生のおっしゃいましたような、突如としてその内規を変えて、白といわれておったものを黒の容疑があるというふうに変えた点も含め、われわれのほうで入っております情報もとにして、日本商慣習を無視しておるではないかというようなことも含めまして、申し入れといいますか、委員会の正式の議題として発言いたすようなことになっておりますので、その辺を通じまして、各国のこれに対する反響等も入手できるのではないか、われわれといたしましては、こういう期待を持っておる次第でございます。
  24. 石川次夫

    石川委員 これは外務省の管轄なのかもしれませんけれども、国際会議の場で資料を求めるというようなかっこうではなしに、もっと多角的にそういう情報というものを収集することがあなた方の責任じゃないかと思うのですよ。ということは、繊維でもってあれだけの大騒ぎをしておるのです。ところが繊維よりもはるかに大きな影響日本貿易界に与える大問題であると思うのです。しかもそれが、自由貿易という旗をおろさないでやろうというダンピング法適用ということは、これは明らかに保護貿易を何らかの形でやろうということのあらわれであって、実質的には保護貿易の旗を完全に掲げたということになりかねないという、きわめて本質的な、深刻な問題をはらんでいるのではないかということでありますから、いまのように、今度は国際会議があるから、その場でもって資料が集まるだろうというような受け身のかまえで対処できる問題ではないのじゃないか。もちろんカラーテレビの問題は、国内において二重価格の問題がありますので、これはなかなか複雑で微妙な問題に関連をしてまいります。したがって、非常にやりにくい問題であろうということは容易に察知できますけれども、やはり通すべき筋は通す、しかも国際的な世論というものを喚起するという努力だけは怠ってはならぬと思うのであります。  そういう点で、今度は関税委員会でもって審査をやっておるわけでありますけれども、この決定というものに対しては、行政機関でありますだけに、大統領の拒否権というものがあるいはあり得るのではないか、こう思いますけれども、その点は私はつまびらかにいたしておりません。この点はどういうことになりますか。
  25. 山形栄治

    山形説明員 われわれのほうで知っておる限りにおきましては、大統領の拒否権というようなものは発動されるべき性質のものではないというふうに聞いておる次第でございます。
  26. 石川次夫

    石川委員 その点はよく検討していただいて、場合によってはそこまでいくんだくらいのつもりでないと、この影響はきわめて大きいと思うのです。おそらくカラーテレビがひっかかればほとんど全面的にひっかかってくるのではないか。そうすると、日本の貿易、日本でこれに関連する従業員あるいは商店というものは非常に大きな数にのぼっておるわけでありますから、きわめて大きな問題であるし、また先ほど申し上げたように、アメリカ保護貿易というものを打ち立てる橋頭堡になっていく、こういう点で重大な関心をもってこれに対処して、場合によっては、大統領の拒否権というものが使えないということになればこれはやむを得ないということでありますが、そこまで政治的な折衝を深めるというくらいのき然たる態度が必要ではないか。逆に言いますと、日本ではICの関係ダンピングの要因が多いということで、業界は調査を開始しておるというわけでありますけれども、その点の現在の経緯は一体どうなっておりますか。
  27. 山形栄治

    山形説明員 アメリカからのICの日本に対する輸出という問題でございますが、現在これを調査してみようという動きもございますけれども、現段階では調査をまだいたしておりません。今後事態の推移に応じまして、必要があれば調査をすることになるかもしれませんが、現在のところは調査に入っておりません。
  28. 石川次夫

    石川委員 これは報復行為というふうなかっこうになりますと、交渉上も非常に障害があろうかという感じがいたしますから私はあえて申し上げませんけれども、このICは国内の大体四割安ですね。とても日本ではこれに対抗できない。いま懸命にこれに対抗するための方策を考えておりますけれども、ちょっとその望みはない。これは常識的にいってダンピングではないかというような感じが、向こうカラーテレビダンピングであると思う以上に、そういう感じがしてならないわけなんです。これは、向こう商慣習原価計算のしかたや、いろいろ食い違いがあるというふうなことがあって、そう簡単な問題ではないでありましょうけれども、先ほど申し上げましたように、日本国内におけるところのアメリカエレクトロニクス関係というものは五・四%を占めておる。アメリカにおいてエレクトロニクスの中で日本製品が占めておるのは三・五%です。そういうことで、日本においてもアメリカのものをかなり輸入しておるわけです。向こうだけが一方的にダンピング適用するというふうなことは、どうも国民的立場で釈然としない感じが強く残るということだけを申し上げておきたいと思うのでありますけれども、とにもかくにも、証明書のついた経費だけを認めるというふうな、非常に苛酷な、できないような条件をつけて計算方式を変えてくるということで、無理やりにダンピングにひっかけるというような態度は、われわれとしてはどうしても納得できないし、これが将来影響するところはきわめて甚大であるということで、もっと真剣にこの問題に取り組んでもらわなければならぬと思うわけです。  ただ問題は、さてそれでカラーテレビというものがダンピングではないのだということになりますと逆に今度は国内の二重価格の問題、管理価格の問題というものが新たに提起をされるということにならざるを得ないと思うのです。この安い値段ダンピングではないのだということになると、末端の小売り業でもって売っているカラーテレビ値段——これは二重価格の問題もからんでまいりますけれども、そこの流通経費あるいは適正利潤を越えた利益というふうなものも、当然問題になってくると思うわけであります。ダンピングではないのだときめれば、その時点で逆に、国内の新たな二重価格の問題、管理価格の問題というものが出てくる。この点で公正取引委員会は、いまカラーテレビにはどういうふうな見解を持っておられますか。
  29. 谷村裕

    谷村説明員 現実にはカラーテレビ国内価格は、御指摘のように二つあると思います。一つはいわゆる現金正価といわれるもので、これはわれわれは、メーカーの希望小売り価格というふうに考えております。第二番目は、系列店であるいはそれ以外の店で売られている現実の小売り価格でございます。そしていまおっしゃるように、そこにいわゆる現金正価なるものが非常に高く示され過ぎているのではないかという問題があることは、かねがね御指摘も受けておりましたし、私どももまた指摘していたところでございます。したがって、いまその具体的な姿がどのようになっているかということを、私どもはある程度一面では調査をいたしておりますが、全体としていまのような状況のもとで、非常にこの問題は各方面から認識され、また具体的にメーカー段階においてもこの問題の処理について考えているようでありますので、いまそれをいわば見ておるというふうな姿であると申し上げてよろしいかと思います。
  30. 石川次夫

    石川委員 カラーテレビダンピングではないというふうな規定をしますと、国内の流通機構の問題、あるいは現金でもって系列以外に売っているところにはどんどん安い値段で売っちゃって、系列の小売店のほうには値段をくずさないで押しつけていくというふうな、国内における販売の二重価格制度、こういうふうな問題が新たに大きな問題としてクローズアップされてくると思うのであります。横山委員のほうから、あらためて国内カラーテレビ価格の問題については質問があるということでありますので、その点につきましては私から申し上げませんけれども、ここで公取委員会のほうに、管理価格の問題で一、二点だけ伺います。  私、きょうは準備不十分のために、あまり質問ができないのはたいへん残念でありますけれども、独禁法の中では、管理価格の問題で公取としては立ち入り検査ができる形になっておるわけなんですが、管理価格の問題で立ち入り検査というものをやったことがあるかどうか、その点を伺いたいと思うのです。
  31. 谷村裕

    谷村説明員 管理価格の問題でというふうにおっしゃいましたけれども、私どもは、たとえばある一つの動きがあり、その動きが独禁法違反の疑いがあると見られるようなときには、これは一つの具体的な事件になれば四十六条による調査、それからそれのいわばもう一つ段階くらいであれば独禁法四十条による調査という形のことをいたしますが、現実にいわゆる立ち入り検査という形でやっておりますのは、一つの被疑事件というような形になって出ておりますものについてやっておりますので、いま俗にいわれております管理価格問題というのについて、さような権限を行使して立ち入り検査をするようなことはいたしておりません。
  32. 石川次夫

    石川委員 そういうことをカバーする意味で、今度は監視機構というものを別につくれというようなことにもなってきたんではないかと思うのでありますけれども、しかしながら、独禁法によって管理価格を立ち入り検査をするという権限がなくて監視機構をつくってみたところでやはり同じようなことでただ調査の実態を報告をしたということに終わってしまうのではないか。そういう意味の監視機構ではナンセンス。ただ国民にていさいをつくろっただけの結果に終わってしまうことになりはせぬかと私は思うのです。  したがって、この立ち入り検査ということは管理価格でいままでやったことはないはずなんです。しかし、国民が一番重大な関心を持っているのはこの管理価格がどうかという問題で、しかも物価の問題で一番問題になりますのは、これは生産の合理化ということもありましょう、あるいは政府の経済政策財政政策、金融政策がどうなるかという問題もありましょうけれども、自由な競争価格が維持されておるかどうか、大企業影響下において価格というものは下方硬直性になっていないかどうか、これが価格の問題については一番のポイントだと思うのです。その管理価格の重要な問題で、公取が独禁法の番人としてやるべき役割は、国民の期待にこたえ得るという方法としては、やはりき然として管理価格の問題で立ち入り検査ができるというかっこうに独禁法というものが解釈をされるか、改正をされるか、そういうかっこうでなければほんとうに国民の期待にこたえるゆえんではないのではないか、こう思うのですが、その点公取委員長どうお考えになっていますか。
  33. 谷村裕

    谷村説明員 御質問が二点あると思います。  第一点は、先ほど申し述べられました、もし今後、政府全体がそういった一つの寡占企業あるいは大企業価格形成の状態等について監視機構を設けるとするならば、そのときどういうふうに考えるかという問題であろうかと思います。それにつきましては、まだいわば問題が提起されているというだけで、具体的な問題まで進んでおりません。企画庁長官などとも御相談申し上げておりますけれども、それを具体的にどういう姿にするかということについては、まだ研究段階にあるというふうに申せると思います。  それから第二点は、現行の独禁法に従って管理価格問題がどの程度まで具体的に調査できるか。御承知のように、現行の独禁法の四十条というのは罰則を伴っている強制的に調査ができる権限でございますけれども、これは何でも広く一応見当をつけていろいろ勉強しようと思えばこれが使えるというわけではございませんで、やはり具体的に関連しているというところでやれることだと思います。さような点で、管理価格の問題も、ただ何かないかということで一般的に調べるというだけではなくて、具体的にある一つの事実を見、その事実の裏に何があるかという具体的な問題としてつかまえますときには、私は公正取引委員会にも、現在でも権限がないとは申せないと思います。ただ、これの使い方というのは、罰則を伴う強制調査権でございますだけに、他の法律等における調査権限と同様に、かなり慎重にやってまいらなければならない、かように思っております。
  34. 石川次夫

    石川委員 いまの慎重にやらなければならぬということは、職権乱用とかなんとかいうことになりかねないということになりますから、非常にむずかしいとは思いますけれども、国民の期待からはかなりかけ離れているということだろうと思うのです。そこまで踏み込んでやってくれという期待はほうはいとしてあると思うのです。だからそういう点で、独禁法の改正、あるいは公取委員会だけの機構でできないとすれば、政府全体としてやるというようなお考えのようですから、それを含めてぜひ国民の物価に対する強い関心というものをもとにして、公取委員会に対する強い期待、こういうことで、ひとつ独禁法の改正まで一歩進んだ考え方になってもらわなければならぬ段階にきている。こう私はあえて申し上げたいと思います。  たとえばフィルムの問題、あるいはアルミ地金の問題、公取でもってお調べになった結果を見ますと、あれは明らかに管理価格ですね。どう考えても管理価格だと思うのです。ところが、あなた方のほうは、価格の形成の過程を調べたということだけで、実態を調査したということだけで、これは管理価格であるというきめつけ方も何にもしておりません。何にもしてないで、ただこうなっておるのですよということだけでは、何のために公取が存在しているかということを疑わざるを得ない。したがって、あれは管理価格というふうに御認定になったのかどうか、その点をまず伺いたいと思うのです。
  35. 谷村裕

    谷村説明員 管理価格問題というのは、よく御存じのように各国でも議論されておりますけれども、そのこと自体をどう理解するかということについては、まだ議論が煮詰まっているとは申せませんし、私自身も、そういう問題についてずいぶん勉強もさしていただきましたが、日本国内でも、一つのはっきりとした、これがこうだというふうにきめつけるようなものにまだなっていないというふうに思います。  そして第二に、かりにそういう一つの実態があったとして、その実態がたとえば独占禁止法上の規定に触れることになるのか、あるいはいかなる問題としてそれを——きめつけるというおことばがありましたけれども、法律の問題としてはそれを取り上げるのかということになってまいりましたときに、そこにもまだやはり、きっちりした一つ基準なり、こういうことでいけないのだ、いいのだという、それがあるわけではございません。さようなわけで、今後大きな問題になると私は思いますが、いわばまだ日本では、問題が提起されておるという状態であって、もちろんそれが独禁法に違反しているものであれば、私どもは独禁法に従って必要な措置をとるわけでございますけれども、そこがなかなかうまくつかまらない問題である、非常にむずかしい点であるということで、そのきめつけるとか、だからどうするんだという問題には実はなっていない、かように御理解いただきたいと思います。
  36. 石川次夫

    石川委員 答弁を聞いていますと、いつでも感じるのですけれども、非常に熱心に積極的に取り組んでおられることは認めるのですけれども、どう考えても国民の感覚からいえば隔靴掻痒の感ですね。これはたとえばフィルムなんかは二社、あるいはまたアルミ地金なんかは四社ですか、それがほとんど特定のアルミ地金をそれぞれつくっておって、そこに系列がありまして、それ以外のものは使えない。ですから一つ一つの地金については、全部独占みたいなものです。そういう形でもって価格を自由に操作できる力を持ち、しかも下方硬直性をちゃんと示されておって、価格形成過程がこうなっておるのですよというような報告だけに終わっておるけれども、あれはどう考えても管理価格です。だれが何と言おうと管理価格です。これは国民の偽らざる感覚だろうと思います。それでなおかつ、ただそう発表されたということだけで公取の任務が終われりというのでは、公取委員会がほんとうに独禁法を守ってくれているのか、あるいは一歩進んで物価の下方硬直性を管理をする、自由な競争市場日本国民経済の立場に立ってこれを進めるという役割というものを重分に果たしておるかどうかという点で、非常な不満を持っておると思うのです。法律解釈にあまりにも終始し過ぎるのではないか。したがって、法律解釈というもの、あるいは経済理論としての管理価格という定義は非常にむずかしいということは、私自身も、いろいろな意見があるのでよく承知はいたしておりますけれども、庶民の感覚はそれをはるかに飛び越えているのです。これは明らかに管理価格だというのがたくさん現実にあるわけです。ビールにしてもそのとおりです。あれだけ大量に出しているのに、片方につぶれている会社がある。しかし同じ価格でこれができるものかどうかということは、どう考えてもわれわれとしては納得ができないのです。そこには自由競争価格というものが何にもない。全部百三十円の値段でもってきまっておるという点もこれを管理価格と言わなかったら、一体何を管理価格と言うのだという疑問というものは、ひとしく持っておると思うのです。こういう点について、もっと国民の期待にこたえるような、自由な競争市場というものが展開できるような力を持ってそういう権限を発動できるような体制というもの、あまり現在の法律に固執しないような自由な考え方でもって国民の期待にこたえてもらいたいという考えが強いのでありますが、その点をどうお考えになっておりますか。
  37. 谷村裕

    谷村説明員 やはり法治国でございますから、法律の定めておりますことを解釈するのにも限界があると思います。そこで私どもは、むしろそういったたとえばいま御指摘になったように、世の中には一物一価の法則ということも片方でございますけれども、なぜ市場一つ値段に期せずしてみんななっていて、しかもそれが動かないか。ある時点ではそれは、一物一価の法則で値段が一緒になることもありましょう。しかし、それが維持されておる、あるいは変わらないといったようなことの裏に何があるのか。しかもそういう問題のために、われわれと申しますか、政府全体は一体どういうふうに考えたらいいのかという問題提起をしているわけでございまして、私はいまの石川委員の御質問を、むしろこれから私ども、あるいは政府全体を含めまして、そういう問題にどういう形で取り組むのがいいのかということについて、おまえらも十分しっかりやれ、こう言っていただいていることだと思って受け取りたいと思います。現在の法律なり何なりの上からできることには、私は限界があるというふうに思います。
  38. 石川次夫

    石川委員 私これで質問をやめますけれども、独禁法の十五条なんかにいたしましても、経済学的にはたいへん問題が多い。しかし法律的に言うと、あの範囲内でもって制約されるということがいかに実態に沿わないものであるかということは、この前の新日本製鉄ができたときにも、私は苦い汁を吸わされたわけなんでありまして、こういうふうに、実態に合わないような法律解釈だけで局面を済まされるというだけではなく、やむを得ずそうならざるを得ないとすれば、一歩進んで、積極的に前向きに国民の立場に立って法律を解釈するというような、積極的な取り組みをすることを通じて、経済政策の大きな柱である独禁法の番頭——番頭と言っては語弊があるかもしれませんけれども、守り本尊としての公取委員会が十分に機能が発揮できるように、前進できるような体制をぜひつくってもらいたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  39. 八田貞義

  40. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうはきわめて限られた時間しかございませんので、万博が終了いたしまして初めての委員会でもございますし、そうした意味で、万博のあと地問題等についてお聞きをしたいと思っております。  いろいろとこの開催中には問題があったわけでございますが、しかし特に極端に大きな事故もなく終えたということについて、直接のそうした関係者の方々も非常な努力を払われてきたと思います。そうした努力に対して卒直に敬意を表したいと思います。  いよいよ万博が終了したわけでございますが、この時点で簡単に報告といいますか、感想をまじえて聞きたいと思います。政務次官か井上参事官か、どちらでもけっこうです。
  41. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 万博が国民の御協力によって成功裏に終わった、たいへん喜ばしいことでございます。万博開催にあたって、六千万人もの人が万博を見た。世界各国の文化、技術、将来、そういうものについて大ぜいの方がごらんになって、いろいろな面で理解し、特に私が申し上げたいことは、未来をになう青少年の方々が、アジアで初めての万博を日本が開催して、それにいろいろな形で参加したということは、非常に意義深いものであろうと思います。また、世界各国から元首をはじめ大ぜいの方々が見えられて日本の実情を調査したということ、また実情をからだで感じて帰ってもらったということも、非常に意義深いことではないかと思っております。  最後に、私、何回か万国博覧会会場に参りましたけれども、万国博覧会を開催するにあたっていろいろな技術が駆使された、また試験的に行なわれたものが今後の日本の技術開発に大きな貢献をするのではないかということを期待しております。  以上が私の感想でございます。
  42. 近江巳記夫

    ○近江委員 井上さんから何かありますか。時間がありませんから簡潔にお願いします。
  43. 井上保

    ○井上説明員 それでは政務次官の御答弁を補足しまして、運営状況をごく概括的に御説明申し上げます。  百八十三日間の会期でございましたが、その間入場者が六千四百万人ということでございます。これは御承知のとおり史上最高の入場者であるということでございまして、モントリオールの五千三十万人をはるかにこえておるということでございます。  それから、ナショナルデー、スペシャルデー等を合計いたしますと八十八回でございまして、各国の元首あるいは総理大臣、王族その他を入れまして、八十六人の方が出席されているということでございます。  さっき近江先生からも御指摘がございました会場の事故でございますが、三月中には小さな事故がやや継続的に出てまいりまして、政府といたしましても、非常に苦慮いたしまして各種の対策を講じました。その後、四月の三日に動く歩道の再開あるいは空中ビュッフェの再開というようなことをいたしまして以後は、ほとんど事故が絶無というようなことになっておるわけでございます。  また外人の入場者は、当初予定百万人を考えておりましたが、最近の推定によりますと百七十万人ということで、当初予定よりはだいぶ外人も多く来ているというようなことでございます。  簡単でございますが……。
  44. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、いよいよ終了してあと地利用の問題になるわけでございますが、諸外国の例を見ましても、最初にあと地利用ということを計画して、そして万博を開催しておるわけであります。私も初めて国会に籍を置かしていただいた四十二年に、たしか五月であったと思いますが、万博のことを質問しまして、あと地利用はいつ出されるのですかと聞くと、その年の六月か七月には出しますということだった。それからすでに三年数カ月経過しているわけです。ところが万博が終わってからも、一向にまだそういうことがきまらない。しかも最近は、通産省の担当の方に聞いても、今度は大蔵大臣に担当がきまったからということで、何となしに大蔵省に譲ってしまったような感じがある。大蔵省に聞いてみても、何となしにその辺に自信がない。こういうことでいいのかということなんですが、一体このあと地の利用計画というのはいつ出すのですか。
  45. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 あと地利用については、御承知のとおり担当が大蔵大臣になりまして、大蔵大臣は適当な諮問機関——審議会とかいうようなものをつくりまして、この諮問を得てあと地利用については考えていきたいということでございます。
  46. 近江巳記夫

    ○近江委員 適当な諮問機関というようにおっしゃっておりますが、いまあと地についての諮問機関というのは、たとえば菅野さん個人のそうした諮問機関というようなものはいままであったように思うのです。政府政府としての政府部内の意見もまとめておられるように思いますけれども、正式なそういう機関もたしかないように思うのです。これから実際にその構想をまとめていく、そうした委員会というようなものも当然設置しなければならないわけですが、いまだにない。実際具体的にどういう手順であと地構想というものを練っているのですか。大蔵省がおられたら大蔵省から承りたい。
  47. 井上保

    ○井上説明員 お答えいたします。  先般御承知のとおり、大蔵大臣があと地利用担当大臣ということに決定したわけでございますけれども、現在まだ事務的な引き継ぎを十分に大蔵省にいたしておりませんので、便宜従来の経緯を御説明いたしたいと思います。  菅野大臣のときの諮問機関は、菅野大臣の個人的な諮問機関ということで、学識経験者、地元の人、いわゆる国民各層の意見を代表する人を網羅しようということで、三十九人の委員をお願いいたしまして、意見をこまかく聞いてまいったわけでございます。今度大蔵大臣のもとにできます諮問機関と申しますか、機関は、私はよく知りませんけれども、おそらく同じような学識経験者を入れた政府部内の諮問機関になるんじゃないか、こういうふうに考えております。予算の要求等もぼつぼつ出る時期でございますので、おそらく早急にそういうものがつくられるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  48. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するにそうした諮問機関も、単なる大臣の個人的な諮問機関しかなかった。そういうようなことで、実際に国民の意見にこういう意見があるんだとまとめていくような機関もない。しかもその構想を具体化していく担当の委員会もない。それで、あと地について考えております、そのうちに何とかいたします——何年同じことをやっているのですか。これは大体なぜ大蔵大臣が担当しなければいけないのですか。それは財産の処理とかなんとか、そういういろいろなことはあるかもしれぬけれども、あの土地だっていま大阪府の土地ですよ。  私は非常に心配なのは、あのあと地利用というものを、ほんとうに国民の皆さんがすべてが納得のできる、そういうあと地にしていかなければならぬわけですよ。大蔵省に移るというのは、経済効率一本でそういう土地開発といいましょうか、そういうふうなことを考えているんじゃないか。そういうような心配もあるわけです。大蔵大臣になった根本的な理由は何ですか。
  49. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 そのいきさつは存じあげませんけれども、内閣総理大臣が任命したようでございます。
  50. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは総理がおりませんので残念であります。ここへ来てもらうのがほんとうなんですが、来れますか。ちょっと無理でしょう。それは今度の機会に聞くとしますが、いずれにしても、たとえば総理府に移るというなら、総合的にある程度なるほど——これは大蔵省は経済効率一本で来るんじゃないか、非常にそういうふうな心配もしておるわけです。きょうは大蔵省も来ておられますが、いろいろ大臣とも打ち合わせをされておると私は思うのですが、どうですか、経済効率一本でいくわけですか、このあと地利用の開発については。
  51. 嶋崎均

    ○嶋崎説明員 お答えいたします。  先般の閣議で福田大蔵大臣が、万博のあと地利用の担当大臣ということで指名をされたということをわれわれ承知しておるわけでございます。何しろ当時さっそくIMFに御出立になられる直前でございましたので、詳細な御意見は大臣からもまだ聞いていない段階でございます。しかしいずれにしましても、万博のあと地につきましては、万博を記念するにふさわしい何らかの事業を行なう必要があるんじゃないかというのは、すでに菅野先生が設けられた諮問委員会でもそういうことであったように聞いておりますし、それからいろいろな意見につきましては、ほとんど出尽くしたような感じであるということも漏れ聞いておるわけです。  いずれにいたしましても、ただ単に、御指摘になっておるように、経済効率一本というようなことでこの万博を記念するにふさわしい事業というものが考えられるのかどうかということになりますと問題がありましょうし、うちの大臣も記者会見等でそういうことを言っておられますので、御指摘のようなことはないんじゃなかろうかというふうに判断をしておるわけでございます。いずれにいたしましても、近くIMFからお帰りになりまして、よく相談をして今後の進め方を検討していきたいというふうに思っております。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、ほんとうにまだそれを進めていく委員会もないし、諮問機関といいますか、それはいろいろなことが考えられると思うのですが、そういうような諮問機関的なものもないし、まずこういう組織づくりから始めなければならぬというような、こんなおくれたぶざまなことはない。万博はどうにか終ったけれども、日本は一体何をしているのだ。世界各国は終わると同時にあと地のそうしたこともやっているわけですよ。ところが、いまからこういうことをやっていかなければならない。全く情けないと思うのですね。いっこういうような委員会をつくるのですか。  それから、私もう一つ聞きたいのは、何となしに大蔵大臣に任命になったのだから、通産省は万博を開催までは責任持つけれども、あとは大蔵省に聞いてくださいというような態度がありありとあらわれているように見えるのですよ。私は非常にその点おかしいと思うのですね。たとえば万博のことについて、残余財産の処分については万博協会理事三分の二以上の同意が必要である、しかも通産大臣の許可が要る、こうなっているわけですよ。何も通産省は切れたわけじゃないのですよ。その点、大蔵省と通産省はもっと団結をして、こういうようなあと地利用の問題について、真剣に私は取っ組まなければいけないと思うのです。だれかがやるだろうというようなことで、いまではかえって前よりも悪化しておると思うのです。責任をお互いが転嫁していると思うのです。非常によくないと思うのですね。この点について、きょうは最高の責任者として小宮山政務次官も来られておるのですから、今後この進め方についてどうされますか、その点を聞かしていただきたいと思うのです。
  53. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 現在各パビリオンの取りこわしその他がございます。これが六カ月以内にやらなければいけない、そういう点もございますし、あと余剰金についてはどうするのだというような問題も、いろいろ協会と大蔵省その他と打ち合わせをしなければいけないかと思います。この点について今後積極的に協議をして、意に沿うようにやっていきたいと思っております。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、早急にこのあと委員会なり、それはつくられますか。あと地利用対策運営委員会、仮称ですけれども、その辺のことについての話はどうなっていますか。
  55. 嶋崎均

    ○嶋崎説明員 先ほどお答えいたしたとおりでございますが、大臣がお帰りになりましたらさっそく御相談をいたしまして、何らかの形で万博のあと地の利用懇談会というようなものを発足させたい、発足の時期につきましてはできるだけ早し発足いたしたいというのが、現在事務当局の考えておるところでございます。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 実際にのれんに腕押しといいますか、全く何をしているのかという卒直な感じです。  それで、もう一つ聞きたいのですが、この万博が開催になりまして、地域は非常に万博公害ということで苦しんだ。たとえば物価がほかの地域より非常に高くなるし、あるいは特に建設作業中には賃金にしてもどんどん上昇する。したがって、たとえば公共建築物、学校建築物一つにしても、補助金をもらうだけでは足らない、そういうことで非常に財政的にも苦しんだわけですよ。ところが、万博が終わってからでも、一たん上がったものはなかなか下がらないわけですよ、物価にしたって何にしたって。そういう点をこのまま放置しておいていいかということです。その辺について、きょうは経企庁の方も来られておりますし、そうした地域に与えた影響等も、どのように今後調査され、対策をとっていかれるか、それについて聞きたいと思うのです。
  57. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 お答えを申し上げます。  物価の動きにつきまして、先般の経済閣僚協議会の際に月例経済報告をいたしましたが、この際に、御承知のように、消費者物価につきましては、全国は一カ月おくれでございまして、東京が一カ月早く出る。まあ先行的な役目をいたしておるわけですが、七月に東京の対前年同期比四・四%というぐあいに非常に下がりました。八月が四・八と比較的落ちついたわけですが、これに対して全国の指数が七月六・二というぐあいで、あまり期待したように下がらなかったということから、いろいろ分析をいたしてみますと、どうも三月ごろから物価の一種の西高東低と申しますか、そういう動きがあるということがわかっておるわけでございます。  そこで、これが通貨の発行等の問題についても地域的にやや関西のほうが多いというようなこと、いろいろの指標から見て、万博というものが消費者物価にかなり影響しておるのではないか、こういう議論が出ました。私どものほうでもその点いろいろ調査をいたしましたが、いま問題になっておる消費者物価の西高東低と申しますか、そういう傾向につきましては、どちらかといいますと、生鮮食品等の価格は西のほうが非常に高い。その理由としては、七月ごろ集中豪雨の問題等による農作物被害ということがある程度響いておるようでございまして、高いのは近畿だけではございませんで、中国、四国、九州、この辺の西日本がやはり同じように高い水準を示しております。こういったことで一応七月の物価の数字が出ておるわけでございますが、その後の指数は近く出てまいります。  いずれにいたしましても、全体で六千万人というような非常に大きな人が集まった行事でございますから、経済的にもいろいろな影響があるだろうということは当然予想されるわけでございまして、特に会期が終わったあとどういう影響が出てくるか、こういった問題をいろいろ閣僚協議会でも議論がございました。私のほうの調査局あるいは私の局等を中心にこの影響等の調査を進めてまいろうということで、関係各省とも御相談をいたしまして、こういった意味調査をいま進めておるところでございまして、間もなくその結果をまとめたい、こういう状況でございます。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 それではひとつその調査は、上をなでるだけの調査ではなくして、深く入ったそうした調査をさらに進めていただきたいし、その報告をすみやかにしていただき、そしてまた対策をとっていただきたい。このことを特に強く要望しておきます。  もうあまり時間もありませんので、あと一、二点聞きたいのですが、現在、大阪府が持っておる土地でありますが、これは政府が一括して買い上げるのかどうか、これが一点です。  それから、大阪大学が約十万坪、ちょうどまん中あたりに土地を持っておったわけですが、いろいろな大学も希望しておりますが、特に大阪大学のこの十万坪の返還等についてどう考えておるか。  それから、いまいろいろなあと地構想があるわけですが、また今後やりますというだけであっては、全然締めくくりができないと思うのです。そういうことで大体おくれた段階まではもう一応しかたがないとして、大体いつをめどにそのあと地構想を出すか。  その三点についてお聞きしたいと思うのです。わかっている関係者の方でけっこうです。
  59. 嶋崎均

    ○嶋崎説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、現在万博のあと地につきましては大阪府の所有になっておるわけでございます。これを政府が一括買い上げしたらどうかという点でございますけれども、あの万博を開催するにあたりまして、その土地につきましては地元で提供をするというような経緯があったやに私聞いておるわけでございますが、何しろあれだけ大阪市の近く、特に市だけじゃなしに、あるのは吹田市であるそうでございますけれども、近郊の都市の発展というものが非常に目ざましいところ、そういうところにある相当広大な用地でございます。これをできるだけ一括して、切り売りがされない状態で活用を考えるということが非常に大事な問題になってきて、それを国が買い上げなければそういう一括した利用というものが考えられないのかどうかというところは、問題は別であろうかというふうに考えておる次第でございます。しかしいずれにいたしましても、現在これは大阪府の所有になっておるわけでございますので、これを一括共同して保有をするというような事柄につきましては、大阪府ともよく協議をしていく必要があるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  そういうことで、このあと地の利用の問題とその所有の関係、あるいは政府が一括買い上げするかどうかという問題は、必ずしも同じ次元の問題じゃなしに、どちらかというと、利用の計画がきまって、それに対応して、どういうような形の保有が適切であるかということが検討される。両者非常に相関関係にある問題ではありますけれども、政府が買い上げるということが必ず条件であるかどうかということについては、私まだ十分に問題を詰めて考えておりませんが、別の問題じゃなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  それから、それらの点についていつまでに答えを出すかということでございますが、この問題につきましては、万博の記念事業を行なう。万博のあと地をどういうぐあいに利用するかという問題と、それから万博の先ほど出ておりました収益の処理をどういうぐあいに考えるか。それから所有の問題をどういうぐあいに解決していくか。またどういうことにしておいたほうが一括利用するような形をとっていく場合にいいかという問題。この三つに分けて考えられるわけでございます。  当面、この懇談会等を設けて検討するのは、第一の今後の万博あと地の利用をどういうぐあいにしていくかということに限定をして考えていくほうがいいのではないか。たとえば第三の問題であるところの、現在大阪府が所有しているものをどういう形で切り売りされないようにしていくかというのは、現在の所有者である大阪府とよく協議をして検討すべき問題であろうと思うし、それから二番目の黒字の処理というような問題も、利用の形態というものがきまるということとの関連において、それらのものを、巷間いわれているような何らか記念財団的なものをつくるかつくらないか。つくった場合に、あと地利用との関係あるいは記念事業との関係をどういうぐあいに考えていくかというようなこと、それは別の管理運営の問題として考えていけばいいのじゃなかろうかというふうに思います。まだそういう話が出てから日がありませんので、十分詰めてはおりませんけれども、そういうふうに考えていくべき問題じゃなかろうかというふうに思っております。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 これで終わりますが、答えがぐるぐる同じところばかり回って、私の聞いておるポイントというものは全然答えていないように思うのですよ。だから、あと地利用問題についてもいつ構想を出すか、大体こういうぐあいはやります——言いにくいかもしれないけれども、やはりもう少し自信を持った答えを言ってもらいたいと思うのです。  大体、いま万博が終了になっても、こんなほっぽり出している通産省が私はよくないと思うのです。大蔵省は、言うならば万博についてしろうとみたいなものです。いまから勉強してあと地構想を描いているのじゃないかと思うのです。こんなことでいいかということです。これは商工委員会全体として問題だと思うのです。いままで万博を担当してきた委員会としても、こういう政府のあり方については問題じゃないかと思う。ですから私は委員長にお願いしたいのですが、本委員会終了後、理事会でもって、あと地問題をこういう形でまかしておいていいかどうか、ひとつ理事の皆さんに検討してもらいたいと思うのです。その点を強く委員長にお願いしたいと思うのです。委員長よろしゅうございますか。
  61. 八田貞義

    八田委員長 はい、承知いたしました。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと通産省にも大蔵省にも申し上げたいのですが、万博が終わったあとであれだけの土地をほっておくわけです。土地は逃げないからいいじゃないか、あせる必要はないじゃないかというお話もありますけれども、私はこれはやはり、政府の責任としてもっと指導性というものを発揮して、そうしたビジョンというものを打ち出していく、そういう前進的なものがなかったらいけないと思うのです。国民の皆さんがみんないらいらしているんじゃないですか。そういう点で非常に取り組みの姿勢が甘い、無責任であるということを私は申し上げて、きょうの質問を終わらせていただきたいと思います。  以上です。
  63. 八田貞義

    八田委員長 松尾信人君。
  64. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 私はまず、ただいまアメリカのほうでタリフクォータの問題を起こしております金属洋食器の問題、次には来年度の公害予算の問題、そして時間がありますれば再販にからむ問題につきましてお尋ねしたい、このように考えております。  まず最初に金属洋食器の点でございますけれども、八月二十八日にアメリカのほうで七百万グローバルクォータという問題が発生いたしました。ただいま政府も、また現地の工業組合、生産業者等も、必死になっていろいろ対策を講じておる実情でございます。  私も、この問題は非常に中小企業に及ぼす影響が重大でありまするので、現地に参りまして、つぶさに、業界の方々、また生産の工場の実態というものを調査してまいりました。その結果申し上げたいことは、燕市というところが全国でできる金属洋食器の九五%を生産しておる。また、そのうちの八〇%が輸出されておりまして、四十四年度の実績では百七十三億円ございます。また燕市の人口が四万余でございますけれども、この金属洋食器の従業員また下請関係その他、この金属洋食器関連で生活しておる人々は燕市の約七五%だといわれておるように、非常に燕市全体としても重大なる問題でございます。それでございまして、この七百万グローバルクォータというものがどのようにおさまっていくかということを、現地も非常に心配しておりまするし、政府のこの問題解決に大きく期待しておるわけでございます。  それできょうは、そのほうに現地からもこの十八日にもう出発しておる。小沢新潟県出身代議士も団長で行かれておる、そのようなこと。また、アメリカ現地の日本の大使館が具体的にはいま折衝しているわけでありますけれども、この問題をどのように受けとめて、そうしてこれをどのように解決していこうとするか、その基本的な考え方。できますれば、いままでの大体の交渉経緯と見通しにつきまして、まずお伺いしたいと思うのであります。   〔委員長退席、前田委員長代理着席〕
  65. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 いま先生のおっしゃいましたように、金属洋食器に対しては非常にきびしい内容のものでございます。御承知のとおり、八月二十八日に米側の正式提案で、米側は金属洋食器に関税割り当て制度を導入することといたしておりますけれども、このワクが小さいことも問題でございますから、一次税率が非常に禁止的税率であるということで、非常にきびしい内容でございます。政府といたしましては、在米日本大使館を通じまして再三再四の折衝をいたしております。また業界を代表されても行かれておりますし、いま先生がおっしゃいました、当委員会の浦野委員、小沢委員、武藤委員も、十八日にアメリカに参りまして、当方の実情その他の折衝もいたしておる実情でございます。この問題は、今後の金属洋食器業界に与える影響、またほかの業界に与える影響も非常に大きうございますので、全力をあげて対処していかなければいけない、そういうふうに考えております。
  66. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 お話は原則でありまして、そのとおり、原則どおりでありますけれども、問題はやはり具体的になっていくわけであります。でありますから、アメリカが一たんそのような非常識とも見られるような七百万グローバルというようなクォータを出して、どこまでこれが引き下がるか、これは非常に問題が多い。政府も重大視しておられるわけでありますけれども、よくよくこれはわれわれが交渉の基本というものをがっちりとしておりませんといかぬのじゃないか。繊維の問題に引き続いた金属洋食器でありますので、今回のこの金属洋食器に対する日本政府の折衝というものが、あらゆる対米輸出品に関して一つのモデルケースとなっていくのじゃないか、このようにも考えるわけであります。  現地の業界といたしましては、これはもう死活の問題だ。かりに七百万というようなことがグローバルに行なわれて、その中の大部分を日本側に割り当てをもらったところで、これは燕というものをアメリカがとりつぶすんだ、日本の金属洋食器というものをつぶそうとするアメリカの動きである、どうしてもこれは強い政府の姿勢でがっちりとおさめてもらいたい、このような強い要望でございます。  ただいま折衝の段階でありますから、いまは突き進んだことは申せないと思いますけれども、そのような基本を踏まえられまして、そしてこの交渉には第一番目としては、このような関税割り当てをなくするという基本的な態度であろう。かりに何かの輸入制限、数量の制限というものをなされる場合には、まず日本側としてどこまでものむべきであるかというようなことも、現地の人々と私は腹を割って話してきました。千五百万というようなグローバルの割り当てであるならばわれわれは生活ができるどうなりやっていけるというようなことも申しておりますけれども、だんだん下がりまして、一千万というようなレベルに下がってまいりますると、これはよくよく重大な問題でございます。これは腹を据えてひとつしっかり交渉していただきたい、このように重ねて申し上げておきます。  なお、対米輸出の実績を見てみますと、非常に急増いたしております。年別に数字を申し上げてもよろしゅうございますけれども、それは省きますが、非常にふえておる。また、ことしの一−七月の輸出にしましても九百万ダースをこえておる。そのようなことでありまして、この金属洋食器に対するアメリカ輸入制限の動きというものは、すでに昨年の九月に、ガットに対しまして二十八条の適用ということで申し入れておる点もありまするので、やはりある程度は日本側の業界の指導、適正なる輸出というものに対する見通しもちょっと論ぜられるわけでありますが、そのようなことをここで論じますと、悪い影響が出てはまずいので、その点はきょうは全部省きますけれども、そのような点も反省されまして、今後の輸出数量のある程度の自主規制というものは免れぬのではないか。どうとかしてこのグローバルなクォータをやめさせる。現地でいえば、何かかわりの代償を出してくれ、むしろ何か日本がこの際譲歩をして、そして金属洋食器についてはこのワクをはずしてもらいたい、このような非常に強い要望もあります。かわりの代償の問題は、アメリカ日本にはすでにやっているんだ、日本はもうこのようなものをやっているんだ、代償問題は御破算だからこの金属洋食器についてはあらためて要求するというようなお話も出ておるようでありますけれども、そのようなことの前に、金属洋食器が割り当てをされて、そして衰えていって、かわりに何をもらっても燕には何の役にも立たないわけでありますから、このおさめ方につきましては、いろいろのことを考慮されまして、そしてひとつ現地に被害のないような御配慮を願いたい。  その一つといたしまして、あまり輸出というものがアメリカに片寄っております。でありますから、市場の分散と申しますか、なお数十カ国に幸い金属洋食器というものは輸出されておりまするので、そのような世界各国の地域に新しい販路を開拓していくための政府の施策というものはどのようにあるべきか、どのようにお考えになるかということを、次にお聞きしたいわけであります。
  67. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 先生のおっしゃるとおりでございまして、金属洋食器の問題は、これが破れますと、燕あるいは関に働いていらっしゃる労働者の方々あるいは中小企業が、たいへん多大な迷惑、被害をこうむることは事実でございます。われわれもその点を踏んまえてやっていこう。しかしその業態の中でやらなければいけない問題もあろうかと思います。  それは、短期的な問題はいま申し上げたとおりでございますが、長期的な問題では、やはり一ダース三ドルとかそういうようなものではなく、もっと長期的な、いわゆる恒久化をねらっていかなければいけない。それから、先生のおっしゃいますように、市場の多角化ということで対米依存度をもう少し少なくしていく、そういうことも積極的にやらざるを得ないというふうに考えております。ことしの七月統一ブランド法によって統一ブランドを燕には付しております。そういうようなこと。あるいは政府といたしましては、ジェトロを通じて展示会をやろう、またやってまいりました。そういう、市場アメリカ依存度を少なくさしていく、また多角的にさしていくということがどうしても必要であろう。ほかにいろいろ問題がございますけれども、四十四年の九月に近促法の指定を受けております。この問題ももう少し見直しをしていく必要があるかと思っております。
  68. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまお答えのとおりでありまして、具体的には、何といっても中小企業で力も弱いものでありますので、そのような政府の大きなバックアップ、そういう意味におきましてジェトロを活用していただきたい。  なお、この金属洋食器の輸出業者というのが約百八十社ほどございます。中にはあまり役に立っていないような輸出業者もおるようであります。昨年はペーパー業者というのはある程度粛清といいますか、されたようでありますけれども、なお、小さな割り当てしか持たないであまり有効に働いていないような業者もあると仄聞をしております。そういうこともありますので、ひとつ輸出入取引法の運用、それにからまる輸出業者の輸出割り当ての決定の問題等につきましても、ひとつ慎重に、また燕の工業組合また生産業者が喜んでいけるような、そのような措置をとっていただきたいと思います。  それから、いまからやるということでありますけれども、市場の多角化、それはうんとバックアップが必要でありますので、もうひとつ速急にこのジェトロを呼んで具体的な話し合いをされまして、また輸出業者も招集されて、そうして輸出業者が各国輸出しているわけでありますから、その各国輸入業者とタイアップさせて、そうしておのおのがある程度の各国輸入業者と話し合いをつけて、この市場を多角化していくためのものを速急にやっていただきたい、これを要望しておきます。  なお、何かの数量制限等をこうむることになりますれば、現地でもやはり操業短縮の問題が起こったらたいへんでありますし、また転業等の問題が起こったらたいへんでございますので、そういう点における最終的な資金面で政府がよくめんどうを見ていくというような、基本のものははっきりと固めていただきたいと思います。  以上は要望でありますけれども 取りまとめまして次官のお考えを聞いておきたいと思います。
  69. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 最初に、ペーパー業者といわれるもの、先生のおっしゃいましたように、本年の一月から八月までには百八十三社がございまして、そのうち実績がございましたのが百四十社でございまして、四十三社が実績がないということであります。昨年の十二月から、このような輸出については輸出ワクの算定に入れないということで処理いたしております。  もう一つはジェトロの問題でございますけれども、ジェトロ等とも連絡し、今後ともそういう多角化の問題を考えていきたい。またそれを、通産省といたしましても、輸出業者あるいは総合商社等を通じましても、そういう方面に働きかけをやっていきたいと考えております。  最後の問題、これはまだ先の問題で、どう結論が出るかわかりません。受注減というような問題が出てまいりましたときには、通産省といたしましては、資金面についてはまた考えざるを得ないのではないかと思っております。
  70. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 以上諸点につきましてはよろしくお願いしておきます。  次は、通産省の来年度の公害予算の問題でありますけれども、わが党の公害実態調査というもの、特に日本の汚染されておる主要港湾につきましての実態調査というものは、ほとんど完了いたしました。九州の洞海湾、有明、また博多湾、きちっとその実態調査の結果が出ております。やがて日本全国のそのような汚染された地図というものを明確にいたしまして、そうしてわが党といたしましては、それぞれ汚染源である企業に対しまして申し入れを行なうというような段階にいまなりつつございます。  実態調査でございますけれども、私も洞海湾のほうに一緒に実態調査に参りまして、もうその汚染の度合いというものがいかにひどいかということにつきまして、ほんとうに驚きました。相なるべくはこの商工委員会におきましても、ひとつ実態調査をされてはどうか。一回そのような実態調査をされますると、いかに公害というものがひどいか、もう机上の空論じゃなくて、一回現地に行かれただけで、これは見過ごし相ならぬということがおわかりだと思うのです。海岸にずっと工場が建っておりますけれども、工場別によって出てくる排水が全部色が変わっておりまして、その工場の排水がそれぞれ色をなしております。湾というよりも、むしろこれは工場の排水溝のかたまりだ。もう公共のために、人々のために、漁民のためにというような湾じゃございません。人々は全部湾から立ち去らなくちゃできない。湾変じて、海変じて企業の排水溝になってしまっております。そのような実態でありまして、これは一日も早く具体的に手を染めていかなくちゃ相ならぬということでございます。公明党といたしましても、今度は実態調査に基づいて申し入れするわけでありますけれども、そういう観点から、いよいよ企業が反省をいたしまして、そうして公害防止の施設を容易にやっていこう、このようになってこなければ相なりませんし、そのようになしていかなければ相なりません。  その観点から通産省の公害予算というものをながめて見ますと、非常にこれは問題にならぬのじゃないか。一般予算約三十二億でありますけれども、これは政府の施策であります。いよいよ企業が反省して公害防除施設というものをつくっていこうとするときになりますとお金が要るわけでありますが、その資金の調達というものにつきましては、どうしてもある程度政府がその誘い水をしてやらなくちゃ相ならぬ。その点で財政投融資をながめてみますると、全体で八百八十一億でございまして、その中の開発銀行の融資というものがわずか三百三十二億にすぎない。この資金というものが、主として大きな企業に対する公害防除施設、そういうものの一つの誘い水的な資金になっていくわけでありますけれども、かりに、いま公害で騒がれておる企業というものが良心的に反省いたしまして、じゃ防除施設をやりましょうと言ったときに、どのくらいの資金の需要になってくるものか。概算でいいからそういうものをお出しになったことがあるのか、いまからそういうものを出そうと計画されておるのか、まだ全然そういう計画がないのか、この点についてまずお伺いいたします。
  71. 荘清

    ○荘説明員 御指摘のとおり、公害防止政策を強力に推進する上で、今後企業の所要資金の確保、これに対する政府の助成ということがきわめて肝要であると通産省としては考えております。通産省で従来所要資金の調査を行なっておりますが、大体、従業員三百名以上の中堅企業以上のもので昭和四十三年当時で六百億ちょっとでございました。これは設備投資の実績でございます。当時の設備投資に対しまして二%強でございます。四十四年度はそれがかなりふえてまいりまして、総投資の五%強で、千億円を少しこえた水準に達しております。今後は公害に対する規制の強化等も当然ございますので、企業の資金需要というのはなおふえる傾向にあろう、こういうことで考えております。  調査の点だけ報告いたします。
  72. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いま昭和四十三年というようなお話がありましたけれども、もう昨年とことしだけでも公害に関する認識というものは根本的に変わっております。でありますので、企業といたしましても反省をだんだん示してまいりまして、これでは相ならぬ、申しわけなかったということで、いままでのようなことでなくて、画期的にこの資金の需要というものが出てこなくちゃうそである。出てこなければ、これは企業が無責任であり、われわれをなめておるわけでありますから、これは徹底的に追及していかなければできません。追及していって彼らが反省するならば、そこには資金需要というものが必ず出てくる。  これは一例でありますけれども、田子の浦のほうにおきまして約百五十社、それからその中でもおもな製紙工場が十五社、その十五社の中でも、まだまだ公害防止のための施設に対しまして資金的な計画は出ておりません。わかっておるのが大昭和製紙が四十何億、それから——これは政府のほうでわかっておりますか。それではあなたのほうからおっしゃってください。  それで私の言いたいのは、これは一つの例でありますが、そのようにいたしまして、その富士の方面における製紙工場だけでも相当のものが出てくるのじゃないか。それを日本じゆうに広げて考えてみますると、これはけた違いの数字が出てくるのじゃなかろうか。そのときに、開銀資金が三百億とか三百三十億とかいうようなもので、はたしてつじつまが合うのか。資金の面でめんどうを見ることができませんということになりますと、公害というものが防除されずに野放しにされていく、そのような結果を与えるのじゃないか。むしろこの公害予算というものは、彼らが言ってきたものは、ほんとうに実態調査をいたしまして、そうしてどんどんとそれを実現さしていくという姿勢がはたしてあるのか、こういう点を聞きたいわけであります。わかっておれば、その富士の方面における製紙工場の公害防除施設の予算ですね、資金、そういうものを教えてください。
  73. 荘清

    ○荘説明員 田子の浦の関係の資金需要でございますが、大企業関係が約七十億、中小企業関係が約三十億でございます。七十億の大企業関係の中で、大昭和製紙が中心でございまして、約三十五億、次いで本州製紙が八億程度、これがおもなものでございます。
  74. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 それはわかりました。私の聞いておるのとはちょっと違いますけれども。  それで、大企業、中小企業のお話が出ましたけれども、また田子の浦港のしゅんせつと申しますか、そういうヘドロの排除作業、これも県が一億二千万、また国からも何か当てにしておるようでありますけれども、七億。そういうものは企業が一応最終的な負担をするというような話もついておると聞いておりますけれども、いずれにいたしましても私が言いたいのは、膨大なる資金需要があるであろうということですよ。このめんどうを見ていくのは通産予算の財政投融資以外にないのではないかということです。そうしますと、この財政投融資の面でせっかくの企業の公害防除というものが制約されていったら大ごとである。でありますから、この公害の防除というものに対しましては、財政投融資の資金の流れをひとつ考えたらどうか。前年の何%、何割、何倍というような考え方でなくて、新たな、ほんとにこれはもうどうしようもない問題であり、早急に取り組まなければならない問題であり、早急に改善していかなければならない問題であるから、この資金の流れだけはとどめないというような強い姿勢がなくちゃ相ならぬ、そういうものがありまして来年度の財政投融資の予算の計画ができたのか。またそういう考えがなくて、前年の三・三倍だからたいしたものだというようなお考えであるならば、これは基本的に考え方が違うのだし、資金量というものもそのような甘いものじゃない、こういうことについて訴えており、また御回答いただきたいと思うわけであります。
  75. 荘清

    ○荘説明員 財政投融資の要求関係を三・三倍にふやしておるのはまだまだ足りないという御指摘でございますけれども、国全体の財政投融資の伸びが全体として一〇数%程度で年々推移いたしておるという原資の制約等もございまして、できますならば三・三倍をもう少し上に持っていきたいという気持ちを、われわれ事務当局としては実は持っておるわけでございますけれども、何ぶん国全体の財投原資という限られたワク内で、極力重点的に現在こういう線で通産省としては財投要求原案をまとめておるわけでございます。  なお、ちょっとお話も出ております田子の浦の差し迫った資金需要の問題でございますけれども、今年度工事の進捗ともにらみ合わせまして、公害防止事業団から十億円の緊急融資ということを決定いたしておるわけでございますが、そういう関係で今年度の公害防止事業団の融資の総ワクというものが窮屈になってくるというふうな事態が予想されますので、そういう場合には、われわれといたしましては、たとえば公害防止事業団について要すれば年度内補正を行なうというような積極的な姿勢で取り組みたいと思いまして、現在検討しておるところでございます。  なお、この際追加いたしまして、ひとつ御答弁させていただきたいと思うわけでございますけれども、政府の財政投融資による金融の円滑化ということは当然根幹をなす施策だと存じておりますけれども、同時に、特に中小企業の場合などには、市中金融からの公害防止関係への借り入れというものがなかなか困難なようでございます。これは大企業でございますと、社債を出すとかその他大きな資金需要の中で対処をいたしますので、中小企業はそういう点で非常に困難であるという点もございますので、現在通産省といたしましては、特に中小企業に対します中小企業金融公庫等からの融資の拡大と別に、信用保険制度を改正いたしまして、市中金融の円滑化をこの制度の創設を通じまして極力推進いたしたい、この信用保険制度の創設によって少しでもそういうふうに持っていきたい、そういうことで鋭意検討いたしておる状況でございます。  なお、いろいろと財投資金を借りるとか、あるいは信用保険制度等によって市中銀行から借りるという、いわゆる借金のほかに、企業自身にひとつ何らかの免税措置を伴うような形で——公害の設備投資その他、公害の公共投資に対する負担でございますとか、こういういろいろな企業の負担がございますので、何らかの免税措置を伴う形での準備金制度の創設ということを現在事務的にいろいろ検討しておりまして、ぜひ来年度からはこの準備金制度もあわせて実現させたい。  あの手この手で、直接、間接に政府がめんどう見ました形で、こういう準備金とか信用保険制度というものも突っかい棒にいたしまして総合的な効果をあげてまいりたいと、鋭意努力をしておる次第でございます。
  76. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 公害というものの実態を御存じないのではないかと思うのですよ。考え方が違うのですね。三・三倍だとか、また保険の制度とか、中小企業に対して——中小企業金融公庫が五十五億でしょう、国民金融公庫二十億、このようなワクも承知しておるわけでございますけれども、そのようなワクを承知した上で質問しておるわけであります。土台が違うのではないかということです。見積もり、考えというものの土台が非常に違う。もうこれは日本の重大問題である、われわれの生存権につながった問題である。石油だけでも五年で倍。日本は三年で倍の消費量を使っております。いろいろもう日本人自体の生存の問題でありまして、国をあげて公害の防除、排除というものについては取り組んでいかなければできない問題でありまして、どのような金をつぎ込んでも足らない。あらゆる金をここには投入しなくちゃ相ならぬ。これは財政投融資の中で最重点の大きな流れとして盛り上げていかなければ相ならないものである、このように私は感ずる。また必ずそのような結果が企業から出るに違いありません。これは公害の実態調査をしてみて、現地でつぶさにそれを見てみると明らかであります。そういう甘い姿勢では、大蔵省にこの予算さえ削られてみたり——また補正というような問題ですが、この予算が足らなくて補正でやるような、そういう時代でもないと思う。ほんとうに根こそぎ考えを変えまして、資金の流れというものを公害というものに大きく振り向けていかなければ相ならない時代だ、これを強く訴えたい、またそのようになるに違いない、われわれはそのように思っております。心配しております。また、そのようにやらなくちゃ日本というものはきれいに相なりません。その点において次官の決意を承りたいと思います。
  77. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 先生の御趣旨よくわかります。公害防止ということは、やはり設備投資の一環であるという考え方でなければいかぬかと思います。昨日も、宇都宮の一日内閣で総理は、経済成長より福祉ということばをおっしゃっております。そういう意味でも、今後公害防止にいかにすべきか。財投の問題が、先生は、今度三・三倍になったが、でも少ないじゃないかということ、もちろんそういうこともございましょう。しかし、私が先ほど述べましたように、公害防止ということは設備投資の一環であるという考え方で、できるだけ企業が自己資金でやっていただくという方向に指導しなければ十分ではない。また企業の責任という問題も追及していかなければいけません。そういう点で今後とも大いに努力する考えでございます。
  78. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 企業の責任とかなんとかをぼかしていうような考えは、私、毛頭ありません。企業の責任を追及していけばいくほど、彼らが反省し、やる気を起こしてくる。そのやる気を起こしたときの資金のめんどうというものを、ある程度見てあげぬといかぬのじゃないか。自己資金というものでやってもらったらけっこうでありますけれども、なかなか自己資金でまかなえる部分は少なかろう。それをやはり政府が財投で、せっかくその気になったんだからおまえもうんとやれ、というような気持ちのものがあらわれてこなくちゃ相ならぬ。それで、いまの予算というものは話にならぬ、非常に少ない、こういうことを強調しているわけであります。でありますから、あくまでも企業の責任を追及し、公害罪というもの——これはもう公害罪が設定されようとされまいと、現在の公害は公害罪ですよ。これはもうほんとうに公害罪として告発すべきものだと思いますが、それを改めるためには、ほんとうに政府がしっかり考えなさい。公害というものはわれわれが全力をこめてやっていく問題だ。その具体的なあらわれは予算ではないか。その予算の中で、一般予算につきましても、また財投につきましても、ひとつ力いっぱいやっていこうではないか、やっていただきたい、これが国民の声であり、全部の声だと思うのですよ。そういう意味におきまして、今後ともしっかりお願いしたい。最後にもう一回次官の決意を聞いて終わりたいと思います。
  79. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 確かに予算が公害に対する熱意のあらわれということも一面あるかもしれません。しかし企業の側にも、やはりその費用負担という原則が貫かれなければいけないと考えております。そういう意味で、今後とも企業側の自己資金でできる部分を大いに調整していく、そういうことで進めていこうと思っております。
  80. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 もちろんです。いま次官のおっしゃったとおりですよ。何もかにも政府が金のめんどうを見ていく、私はそういうことを申し上げたのではありません。相なるべくは自己資金でしっかりがんばれ、そこまでがんばったならば足らないところはめんどうを見てあげよう、そのめんどう見る部分につきましては思い切ってやっていこうじゃないか、それをお願いしたい、このように言っているわけですから、誤解のないように。また今後ともお願いいたします。  時間が参りましたので、公取委員長にははなはだ申しわけございませんでしたが、また次の機会にひとつよろしくお願いいたします。
  81. 前田正男

    ○前田委員長代理 次に中谷鉄也君。
  82. 中谷鉄也

    ○中谷委員 公害の問題について、最初に特許庁に特許行政の問題としてお尋ねをいたしたいと思います。  アメリカの商務長官が発言をし措置をしたからといってあと追いをするわけではありませんが、次のような点についてまとめてお尋ねをいたしますから、お答えをいただきたいと思います。  特許庁のほうからの資料によりますと、特許庁に差し出されている公害防止技術分野に関する。出願——公害防止技術分野というものについての定義は必ずしも明確ではないという前提に立って申し上げますが、資料によりますと、内燃機関関係が出願件数千二百、未処理案件二千四百、汚物処理関係が同じく四百で八百、浄化関係が四百で八百、分離の関係では機械的分離が千百七十で二千三百四十、電気的分離が二百で四百、ヘドロ関係が百で二百、振動音響の測定が五十で百、有毒ガスの測定が七百六十で千五百二十、こういうふうな出願及び未処理案件があるということを資料として拝見をいたしました。  そこでお尋ねをいたしたいのは、日本の特許法のもとにおいては、いわゆる出願順に基づくところの審理をするということではありますけれども、いわゆる公害防止技術特許出願について、公害防止技術出願を優先的に審理をするということは可能かどうか、この点について検討しておられるかどうか。ことにアメリカの商務長官談話によれば、公害防止技術の特許出願については、他の出願に優先して審査をするという点について配慮をしている。アメリカ特許法におけるところの審査の内容、そのやり方等については調査される意思があるかどうか。これらについてひとつまとめて御答弁をいただきたい。
  83. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 お答えいたします。  現行法におきましては、特に公害の問題を優先的に審査することは、法律的に不可能ではないと思います。明文の規定がございませんので、そういうふうにできると思っております。実際問題といたしまして、たとえばおもちゃのような分野では、ほかのものに比べまして、現在でも非常に早く審査をやっていることがございます。そういうような意味合いで、公害技術関係につきましても、先生がいま御指摘になりましたように、何が公害出願かということを選ぶことについて一つの問題点はございますと思いますが、かりにそれをある一つの定義を求めて、それだといたしました場合に、それだけをピックアップいたしまして、その分野において先願順にやっていけば、現行特許法の先願主義というものはそのまま置いたままで、公害というものをほかのものに比べて早く審査をすることは審査の実務上可能である、このように存じております。  もう一つの御質問であります、新聞に出ましたアメリカの優先審査というのは、われわれが知り得る範囲、調査の範囲でございますけれども、公害に関係なく、たとえば年齢が六十六歳以上の出願人の場合とか、あるいは現在非常にからだをこわしているとか、あるいはこれからものをつくりたいとか、あるいは現在侵害をされておるとか、こういう一つの現象がございました場合に、アメリカの場合は、この事実を長官のほうに申請いたしまして、それが認められますと優先的に審査するという制度はございます。それ以外にもう一つ実務的には、出願人のほうで公知例を調べましたということを宣誓いたしました出願につきましても、特にほかに比べて優先的に審査をする、こういうような制度は現行でやっておるように聞いております。ただ、新聞に載っておりました公害技術についてどういうふうにやるか、たとえば、何か公害というタイトルをつければそういうふうにするかどうかにつきましては、残念ながら現在まで調査がしてありませんので、早急に向こうに連絡をとりまして、実際に公害の問題のときにどういうふうに優先審査をやるかという手続的な点について調査をしていきたい、このように思っているわけでございます。
  84. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そうすると、先ほど部長のほうから答弁があったように、日本の特許法の体系からいうと、特許分類が産業別分類だという点の一つのネックというか、難点はあると思いますが、私はやはり公害防止技術の開発ということは非常に大事なことだと思う。特許庁もその問題についてアプローチされることが——私は、そういう意欲を持っておられることをいま御答弁で伺いましたけれども、検討されて早急にそういうふうな体制を確立されるというふうに、私はお伺いをしたいと思うのです。そういうことであってほしいと思う。  しかし同時に、そのことについては、特許庁として措置をしなければならない問題、たとえば人員、予算等の問題についてのネックがあるとすれば、これはひとつ、公害防止というのは重要な政策課題でありますから、この機会にあなたのほうから、そういう点についての措置が必要だということがあれば御答弁をいただきたいと思います。
  85. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 特許の審査につきましては、御承知かと思いますけれども、人間の力でやっている向きが非常に多うございますので、予算的な措置によって特にこの公害の問題を早めるというような施策はちょっとないんじゃないかと私は思っております。やはり公害について審査を早めるためには、審査官の増員という問題以外にはないんじゃないか、このように考えておりまして、われわれといたしましては、現在採用し得る人員の中でも、特にそういう点を重点的に新人を配置するというような方法によってその技術の審査を促進をしたいということにしたいと思っております。したがいまして、先生の御指摘の点につきましては、審査官の増員という以外にはしかるべき措置はないんじゃないか、このように私は思っております。
  86. 中谷鉄也

    ○中谷委員 要するに、先ほど資料として私のほうから援用させていただいたものが産業別分類になっているわけですから、そういうふうな分類、そういう担当についての強化ということが当面の問題になるわけでございますね。そういうことで、特許庁に対する非常に実務的な質問をいたしましたが、質問はこの程度です。  昨日総理が、福祉なくして成長なしと言われた。何かときどき総理はああいうことを言われるのですけれども。私はこの前のこの委員会でも発言したのですけれども、経済調和条項の削除というふうなことは、このこと自体にはたいして意味がないと私は思う。もっと、そのことによって何をするかが問題だということを前提として大臣に質問したと私は思うのです。  そこで、通産省の局長に御答弁をいただきたいと私、思いますけれども、要するに公害防止について、総理が企業者の責任を追及するんだと言う意味は、私はやはり分けてもう少し考えていただきたいと思うのです。先ほどの松尾委員の発言等とある部分では合致しますが、私はやはりああいう考え方では少し違うのです。要するに企業者責任というのは、設備それ自体——だから小宮山さんが、設備投資の一環としてとおっしゃったこの考え方は、事業所内における公害防止、設備投資というのと、いま一つは対策基本法の二十二条の、要するに企業の全額及び一部についての負担というものと、二つあると私は思います。  そこで通産省に、試算をしておられるかどうかということを私なりに聞くとするならば、まず総理が、企業に責任があるんだ、企業責任を追及するということは、この二つをあわせて言っておられると私は思うのです。そうすると、基本法の二十二条のいわゆる責任、企業が負担すべきものは一体どの範囲になるのか。どの程度の範囲でどのようなものを通産省としては試算しておられるか。  たとえば一例をあげて言いますならば、水質汚濁の防止ということは、五十年に市街地化される地区の下水道整備のためには四兆円要るということは、もうすでに建設省が指摘しております。産業廃棄物の中間処理と最終処理で昭和五十年でほぼ一兆円になるだろうということも、これは厚生省が指摘している。そうすると、そのようなもののどの部分、どの程度の金額を企業が負担するということを通産省は試算しておられるのか。  だから要するに二つあります。企業の公害防止、事業所における直接の設備投資は、昭和五十年をめどにして一体どの程度になるだろうか、この点について試算がなければおかしいと私は思う。ただ、経済調和条項の削除だとか、福祉なくして成長なしなんていうことばだけでは、国民は納得できないと思う。この点について試算がなければおかしい。お答えをいただきたい。もちろん二十二条の関係の法律はいまなおできておらないということはわかっておる。だからといって試算がないというわけにはいかない。通産省いかがでしょうか。
  87. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  第一点の公害対策基本法二十二条の対象になる公共事業でございますが、実はこの公共事業は、それぞれ主管の各省が大体の見込みを立てまして、それに基づいて企業負担をどう考えるかというところで通産省との関係が出てまいりますので、事業費そのものの推定というのは、実は通産省ではやっておりません。たとえば下水道四兆円の中で、都市下水につきましては、これは企業の関与する余地は非常に少ないわけでございまして、特別都市下水路等につきましては、現在では大体四分の一の負担で、さらに料金制という形でやっておりますので、それらをさらに建設省の計画を詳細に詰めませんと、通産省としてどの程度持つかという正確な数字が出てこないのが実情でございます。  第二点でございますが、第二点の昭和五十年の設備投資の中に占める割合でございますが、昭和五十年の設備投資自身推定が非常にむずかしい点がございまして、正確な数字はわれわれ持ち合わせないのですが、最近の、たとえば新日鉄の大分工場とか、あるいは日本鋼管の扇島工場とか、そういった昭和五十年に近い線にかかる設備設資につきましてはデータを持ち合わせてないのですが、設備投資総額の大体一〇%ないし一五%が公害防止投資に向けられておる。一例を扇島にとりますと、約千六百億の投資のうち、二百億が公害防止投資である、こういった個々の数字を積み上げまして概略の推定値を出すというのが現在の状況でございます。
  88. 中谷鉄也

    ○中谷委員 また来月委員会があるようですから、もう少し詰めてお尋ねをいたしますけれども、何か御自分で御答弁になっていても、私の質問と違うということを——答弁しなければならぬから答弁しておられるような感じですね。私の申し上げたのは、新経済社会発展計画の中の——あとでそれは経済企画庁にお聞きしようと思うけれども、その中で一体企業それ自体として事業所が負担する負担分は、通産省としてはどの程度試算されたんだろうか。要するに計画の達成年度までにどれだけ負担すると試算しておられるか。  もう一つは、二十二条の関係の法律がいまなお成案を見ておらないけれども、これは通産省としては、こういうふうなものであって、それについては、この部分については負担が相当膨大な額になってくると思うのです。  いま一つ。じゃ局長のほうから早急に——試算を急がれるのは当然のことだと思いますけれども、試算していただきたい。これはあとでまとめて御答弁いただきたいと思います。そういうふうな試算がなくて、ただ総理が一日内閣で、企業責任はきびしく追求するんだ、こういうようなことを言われたって、国民は信用しないというのが私の考え方なんです。  そこでいま一点、今度は経済企画庁にお尋ねをいたします。  要するに、福祉なくして成長なしというふうなことを総理は言われたというわけですね。そうして総理は常に、経済成長と公害防止とを二者択一に考えたくはないと言っておられる。当委員会でたしか前回、大臣から石川委員質問に対して、経済成長の鈍化があってもやむを得ないだろうというふうな答弁があったと私承りました。しかし問題は、公害防止ということ、たとえば下水道の整備のために四兆円要る。産業廃棄物の処理のために一兆円要る。これは水質汚濁だけ、産業廃棄物の処理だけでもそれだけ要る。そうでなければ公害防止ができないということになってくると、経済企画庁にお尋ねいたしますけれども、新経済社会発展計画というのは当然修正を必要とするのではないでしょうか。要するに、公害防止というものを出発点、スタートにしまして、そして、その公害防止をするためにはどういうふうな社会資本の投資が必要なんだろうか、どのような措置が必要なんだろうかというふうなことになってまいりますと、経済成長率を主として出発点にしてお立てになっているところの経済社会発展計画というものは、完全に修正をされざるを得ないと私は思うのです。だから私はお尋ねいたしたいのは、経済企画庁としては、公害防止、公害防止ということを盛んに総理は言われますけれども、しかし新経済社会発展計画は無修正のままで維持されるのですかどうか。そんな中で公害防止ができるということなんでしょうか。成長政策との関連が不十分だという点については、すでにもう昨日の総理の発言に対して批判かありますし、私もそう思います。この点についてお答えをいただきたい。
  89. 矢野智雄

    ○矢野説明員 お答えいたします。  新経済社会発展計画は豊かな経済社会の建設を目ざして作成されておりまして、その中では、公害防止、あるいは公害も含めた福祉の増大が重要な一環になっております。そのために、御指摘の公害対策につきましても諸般の政策を進めることか、この計画達成のための重要な前提になっております。   〔前田委員長代理退席、橋口委員長代理着席〕 したがいまして、ただいま先生が御指摘になりました点は、むしろこの経済社会発展計画を達成するためにも非常に必要な条件でありまして、特にいまの段階でこの計画を修正する必要はないと考えております。
  90. 中谷鉄也

    ○中谷委員 前回もそういうふうな御答弁が長官からございましたですね。要するに計画には四つの課題を設けておられるわけでしょう。一つは「国際的視点にたつ経済の効率化」、二つは「物価の安定」、三つ目は「社会開発の推進」、四つ目は「適正な経済成長の維持と発展基盤の培養」ということであって、そうして「社会開発の推進」の中に今度は五項目あって、その中の五項目の一項目として「公害対策の強化」が載せられているわけでございますね。そうすると逆に言いますと、四つの課題のうちの一つの中の五つの課題の一つというかっこうで公害防止対策というものが政策課題になっているのが経済社会発展計画。だからもしそうではなしに、計画における四つの課題の中の公害防止というものを一番重大なものとして、それをとにかく引き出してきて、それを据えて経済社会発展計画というものをつくってみたとするならば、これはかなり様相の変わったものになるはずでございますね。そういうふうな意思はない、要するにとにかく現在の政策の論理の中で公害防止というものをやっていく——そうすると、たとえばどういうことになるのでしょうか。下水道の問題については、水質汚濁が経済企画庁の所管だからお尋ねをいたしますけれども、たとえば四十六年度については下水道整備事業費は、国の一般会計では六百六十億だといわれている。これは建設省の関係だと思います。まあしかし、お互い水質汚濁ということでは関係がある。ところが片一方の建設省の試算では、四兆円要りますよという試算がある。これは一体どういうふうに結びつけていくかということを私は聞きたいのです。要するに、水質汚濁を防止するということになれば、下水道の整備のための昭和四十六年度における投資額というものは、国の予算額においてもおそらく六百六十億というようなことでは済まないはずです。膨大なものが要るに違いない。そんなことをしなくて、四十六年度の六百六十億で下水道の整備をやって、そうして水質汚濁の目的が達せられるのかどうか。どこかで社会経済発展計画が変更さるべきではないか。また、いまのままではどうにもならないのじゃないか。だから逆に言いますと、公害防止というものを最重点の政策として取り上げた場合に、企業かどこかにしわ寄せがいく、それはやむを得ないじゃないかというような考え方。だからこの経済社会発展計画の経済成長率の指数、国際収支の考え方、物価の考え方、その中で公害防止はできるんだというその論理が私にはわからない。もう一度その点についてお答えいただきたいと思います。
  91. 矢野智雄

    ○矢野説明員 新経済社会発展計画では、ただいま先生が御指摘になりましたような幾つかの課題をかかえておりまして、それをすべて含めまして一つの整合性のある計画数値を出しておるわけでございます。その中に公害防止対策、それが四項目の中の一つの項目のまた幾つかということを別にしまして、すべてそこに整合性を持った数字としてできております。  ただ、いま先生が具体的な例で御指摘になりました、たとえば下水道の計画につきましては、新経済社会発展計画は、社会資本投資としてこの六カ年間で全部で五十五兆円になっておりますが、その中で下水道整備計画につきましては二兆三千億を一応予定しております。今般建設省で四十六年度も含む五カ年計画の概算を、まだ政府としてきまったものではございませんが、建設省で出しておられますが、それによりますと、四十六年度を出発点にしまして、五十年度までの五カ年間で二兆六千億を予定しております。その関連でありますが、新計画で二兆三千億、これは六カ年間でありますので、四十五年度の実績見込みを引きますと、あとの五カ年間は二兆一千億になります。したがいまして、二兆一千億と二兆六千億のその分に若干違いがございます。この点は今後の課題でございますが、経済社会発展計画では調整費を若干とってございますので、あるいはその中で調整する必要が起こるかと思いますが、これは今後政府部内で詰めてまいりたい、かように思います。
  92. 中谷鉄也

    ○中谷委員 だから公害というのは、公害対策基本法の第二条に掲げられている公害以外に、土壌汚染も出てまいりましたし、その他のいろいろ新しいものが出てまいりましたですね。ですから公害というのは、公害対策基本法の公害としてだけ限定するのもおかしいような問題が出てきたし、これは当然法の改正の中で追加されていく問題でしょうから。たとえば水質汚濁との関係で下水道事業をとってみてもそういうことになるでしょう、というのが私の一つの問題提起なんです。ですから私はそんな中ではたして、いまの経済社会発展計画の基本的な、国際収支だとか経済成長率だとかいうようなものの指数の変更なしに公害防止ができるということは、逆に言ったならば、いままでどおりのやり方をするのかということにしかならない。そういうふうな言い方だってできるのではないかというふうに私は思うわけです。  それで、大臣に突然質問して恐縮ですけれども、新経済社会発展計画というのは修正さるべきではないかということをいま経済企画庁の局長にお尋ねをしていたわけです。そこで、福祉なくして成長なしと、こうきのう総理はおっしゃったというのですけれども、私は問題は、福祉なくして成長なしということば、それは一つのものですけれども、そのままのことなら、それは単なるスローガンにしかならないと思うので、大臣はどのようにお考えになるでしょうか。新経済社会発展計画は修正されねばならないのじゃないか。  公害防止というものをここにとにかく最重点施策として取り上げていくということになれば、他に影響していくということが非常に大きいだろう。たとえば、企業責任ということを昨日総理は言っておられますけれども、これは単に事業所の中における企業責任だけではなしに、法の二十二条との関係の責任も出てくるということになれは、企業の負担というものは相当なものになっていくだろう、それは一体物価にどういうふうに影響してくるだろうかというふうな問題も私はあると思うのです。ですから、ここで公害防止を最重点施策として取り上げていくということになれば、経済社会発展計画というものは修正せざるを得ないのじゃないか、また修正すべきではないか、こんなふうに私は考えるのでございますけれども、この点、大臣はいかがでございましようか。
  93. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはお尋ねの意味は、問題意識としてはよく理解ができるところだと私は思いますせんだっても申し上げましたように、公害防止ということになりますと、国の財政においても、企業の設備投資においても、あるいは国民の消費においても、内容が変わってまいります。そうして、それらの支出は次の段階まで考えますと、いわゆる物的には非再生産的な性格を持つであろうということも、これも御質問の中にある内容なんで、私もそうであろうと思います。ただ、一次的には、国がたとえば下水道を従来以上にやるとか、企業が公害防止のための設備投資をするとかいうことは、その段階におきましては、やはり投資であることに変わりませんから、それなりの財なり労働力なりの需要になることは、これはお認めいただけるだろうと思うのです、第一次の段階におきましては。ただ、それらのものが将来にわたってプロダクティブであるかないかという、次の段階で何かの影響が出てくるであろう、私はこういうお尋ねだろうと思います。  新経済社会発展計画は、十分に公害といったような意識を、むしろ各省の行政意識よりもはるかに早くとらえておりますから、全体としては、公害問題が新しく新経済社会発展計画につけ加わるというものではありません。むしろかなりその意識ははっきりそこに出ていると思います。それにもかかわらずさらに問題を詰めていきますと、計数的に計画をとらえるならば、あの計画は計数のほうはバックデータでありまして、計画そのものはものの考え方をいっておるわけでありますが、過去のバックデータのいわゆるパラメーターみたいなものの中にはそんなに大きな——過去においては、国なり企業なり、あるいは個人の支出もそうでありますが、公害的な要因はいままでなかったわけでありますね。したがって、その投影としての将来の見通しというものは、いまのパラメーターの中にはないのではないかとおっしゃれば、私は理屈の上ではそうであろうと思います。思いますが、それならば、いま新しいパラメーターが使えるかといえば、いま使えるわけではございませんですね。おそらく、これから国なり企業なり個人消費なりの公害防止に対する支出というものが出ていって、それが何年かたってどのようなものになるかという、そういう傾向を見なければ、数値的にもそれからあとの経済成長率ということを占うことはできない。それはいまの段階ではないと思うのでございます。  ですから、マクロ的に問題意識は私はわからないわけではありませんし、むしろ逆に言えば、それだけ公害防止のための国民経済の費用が重くなりまして、どうしても成長は何ポイントが落ちそうだということ、そこまで公害投資というものが進めば、私はそれはむしろ喜ばしいことではないだろうかと思っていますが、それをいま計数的にどうせよと言われましても、それはできないことでありますし、いわんや新経済社会発展計画は、計数的なものはバックデータとしてしかございませんので、その底にある考え方を変える必要があるというふうには思わないわけでございます。
  94. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ経済企画庁に。私もまく整理できていないのですけれども、次のような点についてのことを計量化したり、モデル化したりというのでしょうか。そういうことは可能でしょうか。たとえば環境基準とか水質基準というものがございますね。環境基準というのは、一つの特定の大気汚染地区のということになっていますが、とにかく日本のもう北海道から鹿児島まで、同じく国後、択捉から沖繩までというような、全部にかけて汚染されていくのじゃないかという危機感がわれわれにはあるのですね。そういうものから、そういう公害というものを計量化して、そして昭和三十年当時の川あるいは空——非常に感覚的な言い方になってきましたけれども、そういうふうなものをとにかく設定をして、そういうふうにするためには一体どれだけの費用が要るだろうかというふうな計算は、経済企画庁としては可能でしょうか。要するに、公害というものを出発点にして、それがためにはどれだけの予算的な措置と制度的な改正というものが必要だというふうなことは試算できますか。
  95. 矢野智雄

    ○矢野説明員 いま御指摘のありました、たとえば環境集準がきまっておるとしまして——全国的には環境基準がきまっておりまして、その環境基準を達成するために現状の汚染状況との間にどの程度ギャップがあるか、そのギャップを埋めるためにはどういう対策をとったらいいか。この対策の中には、御承知のように、幾つかの対策が入ってまいります。その中には、はたして全部計数的にあらわせるものばかりであるかどうか疑問がございます。しかし、その中からなるべく計数でつかまえる努力をしまして、ある程度の計算をすることは可能かと思います。まだ現在その点の計算が必ずしも確立しておりませんが、ある程度接近することは可能かというように思います。そのための費用として、これも環境基準を達成するための対策の内容によってくるわけでありますが、その対策の内容いかんによっては、その中でかなり計量化し、そのための費用かどらかということは、ある程度可能であるかと思います。
  96. 中谷鉄也

    ○中谷委員 時間が来たようですので、一点あと労働省に問題提起といいますか、問題提起まではいきませんが、ひとつこんなことは一体どうなるのだろうか、こういうふうな問題が必ず公害というものが国民的な課題になってくる中では起こってくるだろうと思われることについて、さらに今後他の委員会、社労等でも労働省にこの問題を詰めてみたいと思いますが、お尋ねをしておきたいと思います。  労働組合の活動、要するに企業にこのような公害がある、自分の勤務している、自分の所属している企業にはこういうふうな公害防止上の欠陥があるということを、その労働組合が市民等に発表するというふうなことは、労働組合の正当な組合活動ということになるでしょうか。こういう問題は、やはり今後の問題にかなりなってくると私は思います。ニクソンが市民に対して協力を呼びかけたり、要するに労働者自身が労働者としての衛生、安全という立場と公害の防止ということは、どこかで結びついていくと思います。そんなことは許されるだろうか。許さるべきだと思いますけれども、この点についてはケース・バイ・ケースだというようなことだけでなしに、一つ考え方をお答えいただきたい。  いま一つは、過去十年間非常に多くの問題を——私たちは公害の防止の努力の中で反省点が出てまいったと思いますけれども、企業の中におけるところの組合というものが、みずからの企業の公害防止ということについての努力をどの程度しただろうかというようなことが、私は一つの反省点だろうと思う。そういう中で、現在の公害防止技術というのは生産工程の技術とどこかで密接に重っているような中で、企業に対する忠誠義務だとか就業規則順守義務なんていうものもある。そういうものをその企業従業員が、そのようなみずからの企業の公害防止の欠陥等を、露骨な言い方をすれは暴露をする、あるいは市民に対してそのことを知らせるというのは、就業規則違反というようなことになるのだろうか。そういうふうなことでは、結局、いつまでたっても住民はわからない状態の中で、企業から資料を得られない状態の中で、公害の被害者になり得るということもあるではないか。また、そういうふうなことを認識した従業員、一人の人間がそのことを多くの人に知らせるということは、社会的な責任を果たすことになるではないかというふうなことも私は考えます。こういうふうな問題について労働省は一体どういうようにお考えになりますか。  同時に、たとえば労働組合法には不当労働行為という制度がある。立法論としては、みずからの企業のそういう公害防止についての欠陥を役所あるいは第三者に申告をしたというふうなことは、そのような申告をしたことによって不利益な取り扱いを受けないというふうな法の改正だって、私はあってもいいんじゃないかとさえ思う。  これらの点について、まとまらないことをお尋ねしましたけれども、私は今後そういう問題は必ず起こってくるだろうと思うのです。労働省としての見解を承っておきたい。
  97. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 お答え申し上げます。  私は労働基準局の監督課長でございまして、いま先生の御質問労働組合関係が主でございますので、ちょっとその点についてはお答え申し上げかねるかと思いますが、可能な限りお答え申し上げたいと思います。  一つの点は、公害防止上の問題点なり欠陥を労働組合が市民に訴え得るかという問題でございますが、これは労働組合が当該労働組合の活動として行なうということでなくて、普通の広報宣伝活動なり何なりで行なうということであれば、これは別に問題はないと思います。ただその場合に、馘首なり何なりの問題が起こってきたときに、一体それが正当な労働組合活動として法の保護を受け得るかどうかという問題であろうかと思います。この問題は非常にむずかしい問題でございまして、私としてはちょっとお答え申しかねる問題でございます。  それから次の、生産工程などと結合しておるような場合が多いので、そういう生産工程などの内容をある程度暴露しないと公害防止の問題が果たせない、そういうことをした場合に、これは就業規則違反になるのかどうかというようなお話でございます。  労働基準法上の労働者の保護は、実は、当該企業において、業務上の障害を受けた場合などについてのみ解雇制限がございまして、その他の場合は原則として解雇は自由であるという立場から法律の規定がございます。ただ、解雇の自由が労働者に不利益をもたらすことがあってはまずいので、解雇予告という制度があるわけでございます。その他の問題は、すべて就業規則の問題として就業規則上の規制にかかわらしめております。  したがいまして、就業規則にどう書き込まれておるか、それから、その就業規則に書き込まれた解雇該当条項なり懲戒条項というものにこれがどの程度当てはまるかという問題は、個々のケースで考えざるを得ません。たぶん問題が出ましたときには裁判所の御判断を仰がざるを得ないと思いますけれども解雇権の乱用なり懲戒権の乱用なりという問題が伴なう場合もあり得るかと思います。  たいへん抽象的なお答えでございますが、以上のように申し上げたいと思います。
  98. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ質問を終わりますか、労働省はきょうは何か非常に答弁しにくかったようですけれども、必ずこの秋ごろからそういう問題が私は起こってくると思うのです。そういう場合は、就業規則に盛り込んであるから就業規則違反であるというふうなことでは処理ができない問題だろうと思います。また同時に、企業秘密よりも公害防止という社会的な利益、社会に対する責任が重いんだというものの考え方が優先してくるような風潮も、もう十分にあり得ると思う。だから私自身もきょうは、就業規則だとか懲戒権の乱用の問題だとかいう問題についてあまり詰めた話はしませんでしたけれども、これはひとつ部内であらためて検討しておいてください。こういう問題については、やはり、公害を国民のものとしてどのようにして防止していくか、そういうことになれば、一番公害発生源で働いている労働者が、みずからの公害についてその点を告白し発表するということは、私は当然労働者として、一人の人間としての義務ではないかとさえ思うわけです。そういうふうなことが、大根やナスビを切るように懲戒の対象になったらたまったものじゃないというのが私の感覚的な感じなんです。この問題は、いろいろな論理的な問題もあると思いますが、労働省もひとつこの問題について、次回もう一度私はお尋ねいたしますから、御検討いただきたいと思います。  質問を終わります。
  99. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 横山利秋君。
  100. 横山利秋

    横山委員 大臣は二時に御退席だそうでありますから、途中で問題が整理できないおそれがありますが、簡潔に質問をします。  まず、最初に、カラーテレビの問題であります。同僚委員が午前中に若干触れましたが、問題は三つあると思うのであります。一つは、アメリカから、ダンピング輸出しているのではないかという問題であります。一つは、輸出価格に比べて国内価格が高過ぎるという国内から出ている声であります。それから三つ目は、二重価格が通常化しているが、販売店ごとに格差があり過ぎる。町のラジオ屋さんで買った場合、秋葉原で買った場合、あるいはスーパーで買った場合、あまりにも格差があり過ぎる。この三つであります。この三つが微妙にからみ合っておりまして、実はこう質問をいたす場合におきましても、この問題が複雑化してくるわけでありますが、いずれにしても、この三つの問題を整理しなければなりません。  そこで、大臣にまず伺いたいのですが、第一のダンピング輸出の疑いについてであります。けさほどの通産省の御意見を聞きますと、現在非常に微妙な段階であるから答弁が十分にできないような雰囲気のもとでありました。しかし、問題は、やはり私は日本政府として直接交渉の問題ではないけれども、少なくとも日本政府としての見解を明らかにしてもらいたい。一つは、日本政府としてダンピングをしておると認めるのかどうかということであります。もう一つの問題は、けさほど同僚委員から言われましたが、ダンピングではないけれども、要するに、アメリカにおける保護政策のあらわれである、こういうふうな判断をすることであるかどうかということであります。  まず、アメリカが提起をいたしましたダンピングについての疑いについて、通産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  101. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 横山委員がすでに前提の中で暗々裏に言われましたように、この問題は国内だけの問題でございませんために、お尋ねをくださるほうもまたお答えを申し上げますほうも、かなりその点を留意しなければならない問題であることは御指摘のとおりでございますので、その点を当然お含みおきいただいておりますわけですが、前もって申し上げたいと思います。  それで、現在わが国から輸出されたテレビジョンについて、過去のある段階において、ダンピング容疑が濃厚であるとアメリカ財務省考えておるわけでありますが、私どもとして、一体どのような根拠に基づいて——これは具体的な機種についてかくかくというようなことがわかりませんので、一般論では議論ができないわけでございますけれども、そういう具体的なデータを突き合わせて検討をいたしてみませんと、先方が容疑だと考えておることがはたしてそうであるのかどうか、私どもに判断をすることができません。ただいまのところ、そういうきわめて具体的なデータというものを私ども入手しておりませんので、アメリカ側判断国際的に通用するものであるかどうかということはにわかに判断ができない、私どもにはいま判断をなし得ないという立場にあるわけでございます。
  102. 横山利秋

    横山委員 午前中の局長の答弁では、最近国際会議があるから、ガットのアンチダンピング委員会において、突如としてこういう問題がアメリカの内部で出てきたことについて問題を提起する、また会議でおそらく話があるであろう、こういう話がございました。その場合に日本政府はどういう主張をなさるおつもりでありますか。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはただいまのところこのように考えております。  御承知のように、私ども先年、国際ダンピングコードというものについて各国間の合意を見たわけでございますけれども、現在のアメリカダンピング関係の法令なり行政なりが、このコードにそのとおり沿ったものであるかどうかという問題提起、これが一つでございます。  その次に、この問題については、在来のアメリカの行政のやり方では、ある段階輸出国側、輸出メーカーに対していわゆる念書を求めて、そうして事案を打ち切るというようなことがしばしば行なわれてまいりましたが、今回の場合には、そのような行政のやり方が変わりまして、一度そういう段階に達したと解されるにもかかわらず問題の再提起があった。それはどのようないきさつであったのか、この二つをただいま仰せになりました場合において提起をしてみようか、こう考えておるわけでございます。
  104. 横山利秋

    横山委員 対アメリカとの問題では二つの問題があると思うのであります。一つダンピングであるというならばその証拠を出してもらいたい、われわれもそれに対する反証をあげるであろうからという、合理主義に沿った問題の展開が一つであろうと思うのであります。  もう一つの問題は、潜在的にアメリカの経済界が持っておる、アメリカ政府が持っております保護貿易主義の台頭であります。この問題が解決し得ない限り、繊維であり、テレビであり、あらゆる問題が続出してくる問題だと私は思うのです。根本的なアメリカ保護貿易政策の台頭に対して、政府はどういうふうに今後対処なさろうとするのか、その点を伺いたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たとえば世上ときどきいわれますことは、このダンピングの問題、あるいは金属洋食器の輸入制限の問題というものと、先般長いこと問題になりましたわが国の繊維輸出の問題とが、一連のアメリカ政府側のわが国に対するいわば新しい姿勢である。俗にしっぺい返しというようなことばを使われておりますが、そのような解釈がしばしばございますが、私はそれはそう考えてはならないであろうと思っております。具体的な事案に徴しますのに、このテレビダンピングの問題などは一九六八年ごろのできごとでございますから、新しく問題が提起されたわけではない。ただ、それはそうといたしまして、一般に保護主義的な風潮、土壌というものが生まれてきておるのではないかという点では私も横山委員の言われるように思います。  それにどう対処するかということでありますが、私は、目には目をというような対処のしかたは、最も賢明でないというふうに考えております。わが国が、自由貿易主義を正しい、世界のためにいいと考えるのであれば、また事実考えておるのでありますが、わが国自身がそれらの原則に沿って一つ一つ実績を積み重ねてまいらなければならないわけで、わが国自身にまだしなければならないことがたくさんございます。そういうほうの努力を推し進めていくことが、先方のそのような新しい風潮、これをやわらげるゆえんであるというふうに私は考えておるわけでございます。
  106. 横山利秋

    横山委員 時間の関係で私の意見を申し上げる時間がいまございませんので、次の質問に移りたいと思うのであります。  繊維の問題とこのカラーテレビの問題とは違う面が一、二ある。それは言うまでもありませんが、このカラーテレビの問題は、アメリカ政府あるいはアメリカの行政運営の問題という面が非常に強いということであります。したがって、私の日本政府に対する質問は、くつの裏から足をかくような気持ちがややないではありませんが、もう一つの違いは、繊維の場合には非常に業界が団結をしておった。ところがこの電気機械メーカーの場合においては、いささか過当競争、企業エゴが強過ぎるのではないか、そこに誤解がまた生じているのではないか、金額面でも非常に複雑な体系になっているのではないか、こういう点を私は感ずるのであります。私のその感じ方が一つの解決への要素になるのではないか。こういう言い方は非常にデリケートな言い方ではございますけれども、メーカー側においても、この際ひとつ十分団結をして、企業エゴを排し、協調体制をとるべき必要性があるのではないか。いまは国際的な意味質問をしておるのでありますが、国内的になればなおさらのことではあるまいか。こう言いますと今度公取の問題に発展してしまいますけれども、企業エゴが強過ぎる、過当競争が強過ぎる、それで、あとで入っていきますけれども、それが国内販売価格のめちゃくちゃな状況になっておる、こういうふうになります。しかし、さしあたり私は対米問題につきまして、そういう点について企業側に考えさせなければならない点があるのではないか、こう思いますが、大臣はどうお考えでございましょう。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで問題を二つにはっきり分けてしまったほうがいいのではないかと思っております。つまり対米の問題としては、私どもはダンピングというようなことはないというふうに考えておりますけれども、どのような計数に基づいて先方がそういう主張をするのであるかをしっかり知りました上で、政府として申さなければならないことがあれば申したいと考えております。  その問題と国内の問題とは別でありまして、別として観念すべきものだと思うのでありますが、国内の流通機構とメーカーとの関係というようなことには、いろいろ私どもも十分に知り得ないところがございますので、先般も申し上げましたとおり、これは私どもの役所で調査の要項をひとつ決定をいたしまして、それらの調査項目に基づいて大がかりに実態を調べてみたい、実はこう考えておるわけでございます。
  108. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げているのはまだアメリカへの輸出段階における質問でありますが、私が申し上げておることは、カラーテレビの対アメリカ折衝なり、アメリカに対する資料の提出なり、あるいは輸出なり、数量の今後の問題、金額の問題につきましても、もう少しメーカー側が協調体制をとるべき必要があるのではないか、こういうことを申し上げておるのですが、今回の対米問題についてメーカー側に対する政府の意向といいますか、意見、要望というもの、そういうものはありますまいか。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはございます。事情が各メーカーによって申すまでもなく別々でございますから、各メーカーは自分の持っておるデータ、それをそのまま隠すことなく、アメリカ側との協議なりあるいは先方の審議なりに際して向こう差し示すべきである。企業間には企業間の秘密がございますから、そういうことが一緒の場でできるとは私は考えません。おのおの別々の事情でありますから、別々のデータをできるだけ先方にも利用できるようにしたらよかろう。当然これは先方が秘密を守るということが前提でございますけれども、そう考えておるわけでございます。
  110. 横山利秋

    横山委員 ところが、それで国内及び輸出価格モデルというものが天下に発表されました。それとこの国内の問題とストレートに議論をするについては、私は問題があるとは思うのであります。しかし、このモデル価格というものが一挙に国内において問題を起こしたということはいなみがたい事実になってしまったと思うのであります。  このモデル価格を見ますと、十九インチのカラーテレビが現金正価十四万八千円、これが一つのモデル価格になっておるようであります。これを一見しますと、要するに小売り屋のマージンは二二%である。卸屋のマージンは八%である。販売促進費、据えつけ費が八%である。物品税は一万一千九百七十円であるということを中心にして明らかにされました。しかしそれならば、メーカーの原価、メーカーのもうけは一体幾らなんだということについては、発表をしておらないのであります。あたかも国内的には、小売り屋さんはもうかっております、卸屋さんもまあまあです、そういうことを言うたために、一挙に小売り屋及び消費者に問題の焦点がすりかえられてしまったという感じがするわけであります。このメーカーの原価及びメーカーのもうけがどのくらいであるかということを明らかにしませんと問題の処置がうまくいかない。  モデル価格は、輸出価格国内販売価格とを比べて、大体輸出の船積み価格が六万四千八百円である、したがって国内価格においてもほぼこれと同様であるというふうに、最後は逃げてしまっておる。だから国内において、きのう、おとついも小売り商の全国総決起大会が開かれるという一因になったのも、ここにあると思うのであります。  まず最初の質問は、メーカーのコスト、メーカーのもうけ、その問題について、問題を明らかにするために発表する必要があるのではないかと思いますが、どうお考えでございましょう。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 業界で十九型カラーテレビ国内及び輸出モデル価格というものを発表されたということ、これはいままであまり例のないことでございますが、そしていろいろ業界に聞いてみますと、これは非常に良心的な資料に基づくものであるそうでございますから、私はそのこと自身をとやかく申すつもりはございませんけれども、おそらくこれは幾つかのメーカーの幾つかの機種の平均値であろうと思います。平均値でありますと、何もこれをもとアメリカダンピングの議論をするわけにはおそらくいかないはずでありますし、国内的にも、画一的にこういうふうになっておるものかどうか、その点もこれだけでは判断できない。  こういう努力をされたことは、私はそれとして了といたしますけれども、やはり私どもの考えております経済のあり方というものは、各メーカー、その流通機構が自由に競争をするということでありまして、そういう自由競争の中から経済の合理化、生産性の向上というものがなされることが最も望ましい姿であって、各企業について私どもが、原価をお出しなさいという、あるいは知らなければならないといったものとしては、私は考えていないわけであります。原価というものは各企業にとって最も大切なものでありますから、それをひとつ言ってごらんなさいというような注文は、どっちかといえばやぼな注文である。それならばわれわれの経済はどうやって動いておるかといえば、自由な競争の中で原価が下がり、そうしてそれが消費者を含めてみんなの人に適正に配分される、そういう経済が私どもの考えておる経済の姿であるというふうに考えておるわけです。
  112. 横山利秋

    横山委員 ごもっともだと思いますよ、大臣。ごもっともだと思うけれども、それならばメーカーは、自分のところのコスト、もうけを言わない。それは商売だからしようがないとおっしゃるならば、そのメーカーが、卸屋はこれだけもうかっております、小売り屋はこれだけもうかっております、なぜそれを言うのでありましよう。しかも卸屋は八%である、小売り屋は小売り販売のマージンと販売促進費、据えつけ費を合計すれば三〇%ももうかっておりますよ、こういう言い方をしておる。おかしいじゃありませんか。自分は言わない。卸屋、小売り屋のもうけだけははっきり言って世間にわかるようにしたわけです。しかもそれでは、三〇%なり八%、世間は画一的にそうなっておると思っておるわけです。ところが消費者の立場から言うと、十四万八千円現金正価が一般の専門店では十二万円、これは七〇掛けを一〇%引きで行なわれた場合。それから段々が十段階くらいあって、四六掛けでおろされる場合においては、驚くなかれ七万八千円です。だから小売り屋さんは、また卸屋さんもそうでありますが、どこにそんな利益がある、三〇%もおれのところに利益がある、ばかにするにもほどがある、こういうことになってきたわけです。しかもこのメーカーから卸、小売りに行く流通段階において、普通の小売り屋さんには七八掛け、卸仕切りで十一万五千四百円。だんだん中級の量販店に行きますと、六二掛けで二〇%引きになっておる。それから特別契約のスーパーや量販店に参りますと五〇掛け、あるいは四六掛けというものも生じてくる。だから、流通過程においてはまるっきりめちゃくちゃであるにもかかわらず、世間に、国民に発表したメーカー側の言い分は、小売り屋は二二%、卸屋は八%で三〇%もうかっております、そういう問題の所在をすっかりすりかえてしまったメーカーの態度というものは、国内的にはたいへん非良心的である。だから主婦連が、これはもう一年買うなと言い始めた。確かにカラーテレビの売れ行きは減りました。それから小売り屋さんはそれに対して激高して、きのう、おととい熱海で大会を開いて、メーカー側に反省を求めるということに発展したわけです。何もこれは、このモデル価格が起因になったとは言いません。こんなものはほんとうに導火線になっただけで、潜在的なメーカーのこのカラーテレビの販売政策のあり方に、私は最も遺憾な点を考える。この点はどうですか。
  113. 赤澤璋一

    赤澤説明員 業界が発表いたしました価格モデルでございますが、これは御承知のように、数年前から国会委員会等でも、輸出のものはFOBで約六万五千円じゃないか、国内では十九万八千円に売られている、おかしいじゃないかという議論がしばしばございまして、私どもとしても当時、そういったものについては、国内の流通経費あるいは宣伝費、販売経費こういったものがいろいろ違う、あるいは物品税も含まれていない、こういう御説明を申し上げてきておったのであります。  御承知のように、いま横山先生も御指摘になりましたが、国内問題につきましては、いまの輸出価格との問題と、現実に売られておる、いわゆる二重価格といわれておる問題と二つございます。そこで、いまアメリカにおけるダンピング問題というものが起こってまいりましたので、メーカー側といたしましては、とりあえずこの国内価格アメリカへの輸出価格について何らかのモデルを示すことによって一般の方々の御認識を得たい、かつまたこれの国内のモデル価格というものを類推をしていただけば、他の、要するにアメリカに売っていない型の国内のものについてもある程度の御認識が得られるであろう、こういうことを考えてモデル価格の発表に踏み切ったものと私は了解をいたしております。  いま御指摘の流通経費の問題でございますが、この点は、私ども承っておりますると、約二日間にわたって関係者の首脳部が連日非常な議論をいたしました。こういった流通経費というものについて発表するかどうかという点が非常に大きな問題であったように承知をしております。ただ、アメリカ価格比較をいたすということになりますと、どうしてもそこで——アメリカ側の流通経費というのが同じように小売り店経費二五%、卸店の経費一一%というものが、これは「TVダイジェスト」というところから引っぱってきておりますが、これが出ておりますので、これとの対比で、国内との流通経費についてもやはり触れざるを得ないであろうというのが、二日間の社長会議の結論として出てきた、こういうことに私は承知をしております。もちろんそういった議論が二日間にわたって行なわれたということは、いまお話のように、小売り店その他からいろいろ問題が出るだろう、こんなにもうかっておるのかという議論が消費者側から起こり、したがって小売り店についていろいろな問題が出てくるということについての議論であったように承知をしております。しかし結論的には、そういった議論の結果、踏み切って発表したものというふうに思います。  次に、いま御指摘の流通経路の問題でありますが、これはきわめて私も複雑な経路であるというふうに考えております。  大ざっぱに申しまして、テレビの流通経路は二つあるわけであります。一つは大体主として系列下にある販売ネットワーク、こういった経路であります。これにつきましては、一般的にはメーカーから全国一社の販売店、大体メーカーの子会社でございまするが、そこへおろし、それから、今度は地域別の販売店、一種の卸でありますが、これにおろし、それから小売り店に行く、こういったような系列が一つございます。この点につきましても、カラーテレビというのは四十年から売り出されまして、きわめて価格が高い、商業資本というものがあまり発達していない、こういった段階で高価な電気製品を売りさばくというために、ある程度メーカーがいわば流通市場というものを確立しなければならぬということ。それからもう一つは、アフターサービスの問題がどうしてもカラーテレビについてはつきまとってまいりますので、このアフターサービス網というものを確立しなければならぬ、こういったことから生まれてきたやむを得ない一つの販売経路であったように私は思います。  第二の流通経路は、いわばメーカーの系列外の家電製品専門店、まあ秋葉原でありますとか、あるいは大阪で申しますと日本橋というのですか、あのあたりに集中をしておるようでありまするが、こういった専門店におろす場合であります。こういったものにつきましては、大量の販売ということでありますので、いわば大量仕入れ。一般の小売り店にはそういう例が多いようでありますが、返品を認めるか認めないか、こういった大量販売の場合には返品を認めていないようであります。さらに現金決済、こういったようなルートで売られておるのが第二のルートのようであります。  このほかにももちろんいろいろ複雑な御指摘のような経路があるようでありまして、かつリベートの問題等も、その間にもメーカーによって区々まちまちで非常な偉いがあるようでありますが、こういった点につきましても、先ほど大臣が申し上げましたように、私どもとしては可能な限りいろいろな手だてを使いまして、この流通の経路、またこれに要しておる費用等につきまして今後調査を進めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  114. 横山利秋

    横山委員 輸出のほうの問題は、メーカーの言っているような二つの問題でデリケートな問題がある。つまり国際的に輸出しておるテレビ国内的に販売しておるテレビとはちょっと物が違うんだという主張。それから金額を比較するのに同一時点で比較してもらいたい、こういう主張。まあその主張をこの際一応了としておきましょう。しかし、それと切り離した国内価格については、どうしてもこの際政府の行政指導をする必要があると私は痛感するわけであります。それでなければ、今日の国内における過当競争、あるいはもうめちゃくちゃな、同じ十九インチテレビを例にひきましても、十四万八千円で売っておったり、あるいは十万円で売っておったり、八万円や七万円で売っておったり、そういうばかばかしいことがこのまま推移すべきものとは私は思いません。この際、全般的にカラーテレビ国内販売価格を値下げをさせるように行政指導をしてもらいたい、これが第一であります。  第二番目に、流通経路についてそうするためにはどうあるべきかという点であります。私はきょう新聞を見まして、小売り商団体が言っておる点につきまして、なかなか考えさせられる点があると思いますから、大臣はお読みになったか知りませんけれども、一応申し上げますと、「販売の地域別の廃止、一地区一販売会社で小売り店が地域外から仕入れができないのは不当だ。メーカー系列店と安売り店の仕入れ価格に差があるのは不当で、系列店にも安い仕入れ価格でおろすべきだ。実際の価格と隔たりのある定価を値下げすべきだ。メーカーのリベートを簡素化して、消費者にも納得のいく流通方式にすべきだ。普通の小売り店も安売り店のように一括して大量に安く共同仕入れできるようにすべきだ。系列小売り店にも他のメーカーの製品を売らせるようにすべきだ」。このすべてがいま直ちに行ない得るか、あるいはスムーズに行ない得るかは別といたしましても、少なくともこういう点について考慮をすべき段階であり、しかも全般的に言うならば、カラーテレビ国内価格は断固としてこの際下げさせるべきだ、こういうふうに私は考えるのでありますが、大臣もお時間でございますから、えらいたくさんの問題で恐縮ですが、最後的に大臣の御意見をひとつこの問題に限って伺いたい。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ問題があるようでございますので、改善をすべき点があれば、私どもいわゆる行政の立場から改善を促したいと考えるものでございますが、そのためには実態というものを知っておく必要がございます。もうけ過ぎておる、高過ぎると仰せられますが、私どもとしてそれを申しますためには、かくかくのゆえをもってということを申さなければなりませんので、先ほど調査と申し上げましたのも、実は調査に終わるということではございませんで、そういうことを調べました上で改善を促すべき点がございますと、それに基づきまして改善を促したい、こう考えておるわけでございます。
  116. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 この際おはかりいたします。  先般、各地の産業経済の実情を調査するため委員を派遣いたしましたが、派遣委員からそれぞれその報告書が提出されております。これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————
  118. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 午後二時四十五分から本委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後二時一分休憩      ————◇—————    午後二時五十分開議
  119. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  120. 横山利秋

    横山委員 先ほどのカラーテレビにつきまして、大臣から最後的に御答弁を伺いましたが、もう一つだけ具体的な問題についてただしておきたいと思います。  局長にお伺いしたいのでありますが、私が先ほど新聞記事を引用いたしまして、一つには、全体的な消費者価格を下げろということ。それからもう一つ目としては、具体的に討議の内容をお話をいたしまして、流通過程における混乱を調整をしろ、こういうことを申し上げました。  その第二番目の流通過程における混乱といいますか、この原因は、先ほど申し上げたとおり、現金正価を中心にいたしまして七〇掛け、六〇掛け、五〇掛けというようなめちゃくちゃな状況は、これは是正をしなければいかぬということを申し上げました。それらの具体的な流通過程の改善策について、担当局長から御意見を伺いたいのです。
  121. 赤澤璋一

    赤澤説明員 テレビの流通問題あるいは流通の機構等につきましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、きわめて複雑でございまして、いろいろな形があるということをお答え申し上げたとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、一つには、先ほども横山委員から御指摘がありましたように、今後テレビ価格を下げる方向で考えていきたい。先般、価格モデルの発表と同時に、私どもにも業界の代表者から報告がありましたが、その際にも私は、今後テレビ価格を引き下げる方向で考えてもらいたいということを要望いたしたのでございます。そういう点が一つ。それから第二点は、テレビ価格を下げると同時に、全国に約六万軒余りといわれておりまするが、これら中小の小売り店、こういったものが適正なマージンを得て、そしてお互いに競争しながらも生活をしていけるということがやはり必要であろうと思います。こういった両面の要請というものを満足させるためにはどういうふうにすればいいかということが、当面の問題であるかと考えております。  そこで、いまお尋ねの流通の整備をどういうふうにするかということでございますが、先ほどお読み上げになりましたように、小売り商の連合会からも六点あまりにわたって問題点が指摘をされております。私どもまだ十分この点につきましては調査もしておりませんので、今後調査を進めるかたわら、こういった問題点をお伺いしてまいりたいと考えておりますが、とりあえず私はこの点を拝見をいたしましても、この中には、当然私どもとしてもなるほどなと思うような点も指摘をされているように私は感じております。こういった点を含めまして、今後メーカーと流通機構、卸、小売りの段階につきまして十分なデータも整備し、そういったものに基づきまして適正な流通が行なわれるように私ども行政指導してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  122. 横山利秋

    横山委員 次に、中小企業と公害について十分な時間をいただきたいと思うのでありますが、また別途の機会にいたしまして、いま予算編成過程でもありますから、準備段階、検討段階でもありますから、総合的な要望を申し上げまして、大臣をはじめ各担当局長、各省の御意見を伺いたいと思います。  先般も、商工会議所の会議、あるいはそのほかの各団体での会合で、中小企業と公害が議論されています。いま公害は、主として国民の目は大企業に向いていますけれども、実際、町の周辺で身近にもっと具体的に体験をいたしますのが、中小企業の工場等から出ます公害であります。しかもそれらは、実際問題として除去に非常に困難であり、庶民的な問題がきわめて多いのであります。公害が、いま国民の目は大企業に向いておるけれども、日ならずして町のかどかどでその問題が大きく問題になることは言うまでもありません。この意味におきまして、私どもも中小企業と公害についていろいろと検討をし、各団体からの意見も聞いてまいりました。いま時間の関係上、一応議事録にも残していただく意味におきまして列挙をいたします。総合的に大臣から、あるいは、もし具体的な点につきまして御意見が伺えるならば、きわめて簡潔でけっこうでございますから、各担当の御意見を伺いたいと思います。  1 中小企業公害防止資金貸付制度を次により創設し、少なくとも初年度二〇〇億円程度の資金を確保すること。   (1) 無利子貸付とすること。   (2) 貸付率を全額とすること。   (3) 貸付最高額を三、〇〇〇万円とすること。   (4) 貸付期間を十五年とすること。   (5) 担保を徴収しないこと。  2 公害防止事業団に対する政府出資および財政投融資を大幅に増額し、同事業団の行なう中小企業向け融資事業、工場移転用地の造成および工場アパート等の建設事業について画期的に拡大するとともに融資手続の簡素化をはかること。  3 中小企業金融公庫および国民金融公庫の公害防止貸付の資金枠を大幅に拡大するとともに、公害防止融資の期間の延長、金利の引下げを行なうこと。  4 公害防止事業団、中小企業金融公庫および国民金融公庫の行なう公害防止融資のうち、公害防止施設における担保は徴収しないこと。  5 公害防止融資を促進するため「公害防止保険制度」を創設し保険料率を低率化するとともにてん補率を引上げること。  6 地方公共団体は、工場移転のための工場用地の造成および土地あっ旋を積極的に行なうこと。  7 中小企業の公害防止技術および公害防止施設・機材の開発を促進するため、公私の試験研究機関の活用と助成措置を強化するとともに、中小企業に対して公的試験研究機関による技術者指導を強化すること。  8 公害防止を促進するため中小企業振興事業団の行なう工場団地、共同工場、公害防止共同施設への助成を拡大すること。  9 公害防止に関する情報を的確迅速に関係業者または団体に伝達すること。  10 地域ごとに公害規制基準が異なる場合があるので、これが斉合性をはかること。  11 汚水処理施設、ばい煙処理施設と同様、騒音・振動・悪臭などの公害防止施設に関する固定資産税を非課税とすること。  12 中小企業団体中央会に中小企業公害防止指導員の設置を助成し、業界ぐるみの公害防止対策を促進すること。  以上であります。  この一つ一つに、実は私は具体的な引用をいたして、いかにこのままでは中小企業の産業公害の防止がかけ声倒れに終わるおそれがあるかということを申したかったのでありますし、総理大臣が言われるように、公害防止のためにコストが高くなり、製品の値上げをしてもやむを得ないというような発想が中小企業関係ではいかに困難であるか等を、さまざまな理由をあげて列挙をいたしたかったのでありますが、時間がございませんし、一カ月に一回の商工委員会でありますから、具体的にまとめてこれだけはぜひやってもらいたいという点だけを、ただいま列挙をいたしたわけであります。  この点につきまして大臣の御答弁と、もしいまの私どもが要望したことについて御意見がございますれば、時間の関係で簡潔でけっこうでございますが、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公害の問題が大きくなるにつれまして、大企業においては何とかしてこれに対処し得る場合が多かろうと思いますが、中小企業の場合は文字どおり現在の生産だけでも手一ぱい。金融のほうはむしろつらいほうでございますから、公害という新しい問題が起きましたときに、国において特にいろいろな特別のめんどうを見なければならないであろうということは、私は全面的に横山委員の御主張の根幹に賛成でございます。したがって一般的に申しまして、中小企業関係の金融機関に対して、公害関係の資金ワクの増大あるいは金利、期間等貸し付け条件の緩和、これらはやはり私どもとして考えてまいらなければならないと思います。  それから、いわゆる公害を起こしますがための移転に伴う用地の先行造成といったようなことについては、現在でも公害防止事業団はそういう仕事をやっておりますし、また府県等が、いわゆる土地取得のための公社のようなもの、そういう機構をつくりましてやっておる場合がございますが、こういう場合には、中小企業がそこへ入りますときに、それなりの金融を上屋等についてはしてやることができるようにはなっております。  それからまた、中小企業のための公害防止技術の開発ということは、中小企業だけに限ったわけではございませんが、従来とも工業試験所等々国の機関でやっております。特にしかし、中小企業のためのものにつきましても力を入れてまいらなければならないと思います。  それから固定資産税の問題でございますが、現在免除されておるものが若干ありいたしますが、十分ではございませんから、免除あるいは軽課の方向について、来年度には私どもとしては予算要求の形で考えてみたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、国の規制基準と地方の規制基準との関連でございますけれども、国が一定の規制基準をきめました場合に、地方によって特にそれ以上の規制基準を必要とする場合、従来法律の関係でかなり複雑な問題になっておりますけれども、これらは、場合によりまして法改正でもいたしまして、両者が矛盾をしない関係に立たせるようにするためのくふうが必要ではないかというふうに、私としてはただいま考えております。  それから御指摘の中で、なかなかそのものずばりはむずかしかろうと思いますものは、公害防止のための貸し付けにあたって担保を取るなといわれます点でございます。この点は、御指摘の点についての心がまえとしては、ことに国の金融機関でございますから、それ自身生産的でないようなこれらの投資は、ともすれば貸し付け条件が逆に非常にきびしくなりやすい。それらの融資からは利益を生みにくいという関係にございますから、したがって、ともすればかなりきびしい融資条件になりやすいと思いますので、そういうことがありませんように私どもとして努力しなければならないと思っております。  それから、公害防止保険と言われましたことは、私どもとしては、現在ございます信用補完制度を、公害関係の融資についてはもう少しゆるく幅広く読んでいきたいといったように考えております。  以上のことは、多くのものが来年度の予算要求あるいは新しい施策に関連をいたしますので、政府全体として、かくかくはっきりきまりましたと申し上げるわけにはまいりませんが、私どもといたしましては、そういう施策なり予算要求をしてまいりたいというふうに考えております。したがって、御指摘の御趣旨につきましては、私ども全面的にそういう心がまえで方向は進めてまいりたいと思っております。要すれば、中小企業庁長官からなお具体的に申し上げます
  124. 吉光久

    ○吉光説明員 ただいま大臣からお答えいただきましたとおりでございまして、御発言の順序に沿ってもう少し具体的にお答えを申し上げたいと思います。第一の新しい貸し付け制度の創設でございますけれども、現在私どもといたしましては、既存の公害関係につきまして、御承知のとおり、公害防止事業団あるいはまた中小企業金融公庫、国民金融公庫等既存の制度がございますので、その既存制度の拡充及び制度の内容の改善によりまして、実質的に中小企業の公害防止についての資金を確保してまいるという方向で考えさせていただいておるわけでございます。したがいまして。既存制度の拡充及び運用の改善ということで中小企業関係の公害防止の資金に不足を来たさないよう措置をいたすつもりでございます。  それから、第二の公害防止事業団に対する政府出資あるいは財投の関係でございますけれども、その中の特に中小企業向けの融資事業その他について画期的な拡大というようなことの御指摘でございますけれども、この点につきましては、現に厚生省及び公害保安局が中心になりまして、いろいろとこの拡充の内容について話を詰め、同時に財政当局とも話し合いを進めてまいるということになっております。  それから、第三番目の中小企業金融公庫、国民金融公庫関係の公害防止貸し付け資金の増大の問題でございます。これにつきましては、私どももそういう点に留意いたしまして、財政当局とも十分に御相談してまいりたいと考えております。  それから第四番目の担保の問題でございます。これは先ほども大臣からお答えがございましたように、これは金融でございます関係上、やはり担保を徴収するということはやむを得ないのではないかと思うわけでございますけれども、ただ担保を徴収いたします場合、ともすれば過大担保になりがちでございます。そういう点につきましては、これが公的機関でございますと同時に、貸し付け対象が公害防止施設であるという点を十分に留意して実際の運営上やってまいりますよう、行政指導によって指導してまいりたいと考えます。  それから、第五番目の公害防止保険制度、これも大臣から先ほどお答えございました。新しく公害防止関連の保険制度を創設いたしまして、市中金融機関からの資金の調達をこの制度によってカバーしてやるということを考えたいと思っております。これも主務当局と相談をいたしておる段階でございます。  それから、第七番目にございました、公害防止技術なり防止施設、機材の開発、あるいは試験研究機関の活用、助成措置あるいは技術指導というふうな点でございますけれども、現在も公設試験研究機関に対しまして、技術開発その他につきまして国から相当の援助をいたしておるわけでございますけれども、特に公害防止関係の機材の開発、あるいはまた試験研究の促進につきましては、来年度予算におきましても特に重点的に考えてまいりたいと考えております。と同時に、公設試験研究機関の技術スタッフを活用いたしまして、ともすれば公害防止への意欲はありながら防止技術の選択に苦しんでおる中小企業者に対しまして、指導員を増員いたしまして、そういう問題の巡回指導その他の技術指導に当たらせたいというふうに考えております。  それから八番目の、一般的な工場団地、共同工場公害共同防止施設への助成の拡大の関係でございますが、私どもも、中小企業の公害防止施策を進めてまいります場合に、やはり現在中小企業振興事業団がやっております高度化事業と一体となってやってまいる、事業を進めてまいるということが、非常に多くなってまいるのではないかというふうに考えておりまして、そういう心づもりで関係省庁と折衝いたしてまいりたいと考えております。  それから情報伝達のことは、これは申し上げるまでもないわけでございますけれども、中央会その他の組織を有効適切に活用いたしまして、正確な公害防止に関する情報の伝達につとめたいと考えております。  それから、大臣のお答えになりませんでした十二番目の関係でございますが、中小企業団体中央会に公害防止指導員の設置を助成するという提案でございますけれども、すでに御承知のように、本年度から商工会議所に相談室を設置いたしたわけでございまして、来年度はさらにこの拡充につとめてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。もちろん、団体中央会の機能の許す限りにおきまして、団体中央会にもいろいろと指導をしてもらわなければならない事項もあるかと思いますけれども、当面の問題といたしましては、商工会議所の公害相談室の拡充、それから先ほどお答え申し上げました公立試験研究機関の技術指導員による技術指導の強化というところに重点を置いてまいりたいと考えております。
  125. 横山利秋

    横山委員 時間の関係でさらに注文をいたしたいのでありますが、いまのお答えを了といたしまして、最後に、吉田さん見えていますね。時間がございませんので、意見だけ申し上げて、よろしければよろしいということでけっこうでございます。  先ほどから委員長谷村さんにもお聞き願って、カラーテレビについて今後のあり方について注文をいたしました。要すれば消費者価格を下げろということ、それから流通過程について改善をしろということであります。しかし公取としては、四十二年以来カラーテレビについていろいろと問題があるわけであります。私の意見としては、四十二年当時の状況といまの過当競争の段階とは、やや性格が異なっていると思うのであります。ですから、公取のやっていらしゃることについて、引き続きのことについてとやこう言うつもりはさらさらないが、いま私がこの委員会で、全般の価格を下げろ、流通過程を改善をしろということについては、どうしても業者間における自主的な努力というものが必要になってくる。自主的な努力が公取の仕事に抵触をするおそれなしとはしない。そこで私は、行政当局が十分この点を配慮しながら行政指導を十分やれ、結論的に言いますとそういうことなんです。その点について、気持ち、目的はよくわかっていただけるのであるから、行政当局の指導ということについて、公取として十分理解をして目的を達するように協力してやってもらいたい。私の言わんとすることはわかりますね。よろしゅうございますか。
  126. 吉田文剛

    吉田説明員 お答えを申し上げます。  御趣旨はよく私、了解いたしました。行政当局でもって価格を下げさせるという御指導をなさることについて、公正取引委員会としては、それを違反であるとかいうふうに取り上げる気持ちはございません。行政当局の御指導は御指導でけっこうであるというふうに考えております。
  127. 横山利秋

    横山委員 私の質問を終わります。
  128. 八田貞義

    八田委員長 岡本富夫君。
  129. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、最近に起こりました事例をもって、現在非常にやかましくいわれておるところの公害防止についてお尋ねをいたします。  公害防止協定、これは周知のごとく、国の法令の不備を補完し、また国の立法過程におけるところの産業界の政治的圧力によったところの妥協的な姿で制定された公害施策の不備を、何とかして地方自治体において公害防除のために尽くそうというような観点から、任意的協力の形式をとりつつ当該地区の公害防止協定をつくってきた、こういうような経過から見まして、公害防止については、この公害防止協定というものは、最近はきわめて重要な役割りを果たしておると思うのです。そこで大臣にお聞きしたいのですが、こうした公害防止協定、これがどのくらいの効力を持っておるのか。企業と地方自治体との間においてこの協定が結ばれることについて、通産省として、あるいはまた国務大臣として、どういうような姿勢でこの問題を考え、そしてこの公害防止に当たられるか、これについてひとつお聞きしたいのです。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一般的にそのような協定は、内容によりまして、これが私法上の契約とみなされる、あるいは公法上の契約とみなされる、さらにはそれほどのものでなく一種の紳士協定である、いろいろあるであろうと思います。しかし、いずれの場合でも協定を結びました以上は、道徳的にはその協定の精神に従ってそれが行なわれなければならないということまでは明らかであると思うのであります。具体的には、しかし一義的にきめることが困難でございますから、内容によるものと思いますが、それにつきましては、やはりそのほうの法理の研究委員会が報告を出しておられるようでありまして、たとえば燃料として用いる重油は低硫黄分の重油を用いるというような協定があったといたしますと、この低硫黄と言われるだけでは、どこまでをもって低硫黄と言うかという基準がたとえば不明確ではないか。したがって、厳格にそれが法的にどのような効果を持つかということは問題ではないかといったようなこと。あるいはまたもっとそれを、たとえば何を何%というような協定であれば、それはおそらく契約として有効であろう。私はいろいろであろうと思いますので、一義的に詰めて申し上げることはできないと思いますが、しかし、協定を結びました以上、かりに紳士協定でありましても、その精神というものは関係者を拘束をする、行政の立場からはそういうふうに考えておけばよろしいのではないかと思っております。
  131. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは法務省の局長さん、あなた早く退席しないと、何か用事があるらしいですから先に聞きますけれども、公害防止協定の効果あるいはまた意義、こういうものについて法務省の見解を述べていただきたいと思います。
  132. 新谷正夫

    ○新谷説明員 公害防止協定はいろいろの観点から結ばれておるようでございます。私どものほうでは、直接にその協定の内容がどのようになっておるかということを存じませんけれども、一般論として申し上げますならば、先ほど通産大臣からお答えございましたように、紳士協定の形をとるものもありましょうし、あるいはもっと明確な法律上の契約という形をとるものもございましょう。しかし、いずれにいたしましても、協定であるからには、これは当事者間の約束ごとでございまして、法律的にどの程度の強制力があるかということは個々の契約によって違うだろうと思いますけれども、紳士協定といえどもやはり当事者を拘束することは間違いないと思います。  ただ、俗に紳士協定といっておりますものは、法律上の強制力をもって強制的に履行を求めるという性質のものではなくて、相手方の信頼にまかせる。双方の信用関係にまかせて、紳士的に相手の任意の履行を期待するという程度のものであろうかと思うのでございますけれども、それにいたしましても、それもやはり一種の契約でございますので、契約であるからには、これを履行しなければならないという義務は当然発生すると思います。またその内容によりましては、非常に具体的に双方の権利義務というものを契約の内容に盛り込む場合も考えられるのでございまして、こういう場合には、具体的な請求権という形でそれを行使できる場合もあろうかと思います。これは公害防止協定の個々の内容によって違うことでございますし、一がいにどうということは申し上げられませんけれども、いずれにいたしましても、協定が成立いたしましたからには、それを双方が守っていく義務は当然生ずるもの、このように考えております。
  133. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、法務省の見解としては、紳士協定であれ、あるいはまたはっきりとうたわれたところの法的制約を受ける協定であれ、これはやはり守っていくのが普通である、こういうお考えだと思います。  そこで例をあげますが、これはきわめて重要な問題です。なぜかといいますと、調べますと、全国で二、三百はもうすでにこの協定が結ばれておると思うのです。したがって、そのうちの一つがくずれることになりますと、あとの協定というものはもう何の拘束もないということになれば、子供だましみたいなものになるということで、全国的にきわめて重大な問題でありますから私はきょう取り上げたわけですが、最近起こっております問題の中で、兵庫県と姫路市、この二者と、それから出光興産、石油会社でありますが、これが姫路に製油所を誘致、建設するときに協定書をつくっておるわけであります。  その中に設備の分が入っておりまして、それを示しておりますが、その示したものを兵庫県の公害審議会が一々チェックをし、話し合って設備をつくる。その中に、脱硫装置を必ずつくるということになっておりまして、四十五年の十月に操業することになっておりますが、ところが六月十八日に県の立ち入り検査によりますと、この排煙脱硫装置がない。こういうことは協定違反であるということで現在騒いでおるわけでありますけれども、設備の中に明確にあらわされているものがないということは協定違反ではないか。それに対する、たとえば訴えるとかそういう法的な処置、あるいはまた法的な拘束力はどういうものがあるか、これをひとつ法務省に聞きたい事例をはっきりあげて申し上げたのですよ。
  134. 新谷正夫

    ○新谷説明員 防止協定の中に脱硫装置を設けることという一項目があるようでございますが、その法律上の拘束力と申しますと、会社のほうで脱硫装置を設けるという責任は当然生じておると思います。ただしかし、単に脱硫装置というだけで、はたして具体的にどういうものを設置するかというところまで書いてあるのかどうか存じませんけれども、そこまでないと、具体的な請求をすることがちょっと困難ではあるまいかという感じはいたします。単に脱硫装置というだけで、はたしてその責任を追及できるだけの根拠になるかどうか。あるいはそこに書いてあるいろいろの協定を結ぶまでの情勢、あるいはその事情、そういうものによっておのずからわかることかもしれませんけれども、その辺は、ただいまお読みになりましたその条文だけから、どういうことが請求できるかということはちょっと具体的には判断いたしかねると思います。しかし一般的に、脱硫装置を設けなければならない義務があるということだけは言えるのじゃないかと思います。
  135. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう一ぺん聞きますが、これは突如としてですから、あなたもお考えがまとまらぬかわからぬけれども、四十三年九月の契約当時に——この出光石油の脱硫装置は同じように千葉県にあるのですよ。八十億の予算をもって千葉と同じ脱硫装置をつけるというのが契約のときの設備の中にきちっとある。なおこの契約の協定の第三条に、「会社は、姫路製油所の主要施設及び公害防止施設に著しく変更を加えようとするときは、事前に県及び市と協議し、県及び市より提出される公害、災害及び事故の発生防止に関する意見を尊重するものとする。」、こういうことになっておるのです。ところが事前に何の連絡もなく、県の立ち入り検査によって全然その装置がしてないということがわかったわけです。そういう場合に、これだけ明確なことでありますから、あなたはどういうように考えられるか、お聞きしたいと思います。
  136. 新谷正夫

    ○新谷説明員 先ほども申し上げましたように、具体的な請求権として、これは公法上の問題であるか、私法上の問題であるかは別問題といたしまして、契約によって生じたその権利を行使する内容がはっきりいたしませんと、その装置を設けろということが言えないのではないかという感じがするのであります。一般的に八十億円相当の装置をするというだけのことで、はたしてその内容が具体的に固まっているかどうかという点に若干疑問はあるわけでありますが、しかし、ごく大ざっぱに申し上げまして、そういう八十億円の規模の装置をつくらなければならないという責任は会社に当然生じておるわけであります。したがいまして、その協定の当時の当事者の意思その他の事情もそこで勘案されまして、具体的にどういうものが設けられるべきかということは、おのずからそれによってきまってくるのではなかろうか、このように考えます。具体的に県なり市のほうから、こういうものを設けろということを言えるかどうかについては、ただいまの条項だけからははっきりしないような感じがいたします。
  137. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちゃんと金額も明示し、それから契約のときに、これは千葉でやっているので、それと同じものをつけて、低硫黄、低サルファの重油を配給します、これを設備しますということをはっきり協定の中にうたい、それをみな信頼をしてこのとき協定を結び、住民も納得した。それについて、いまあなたがおっしゃっておるのには、何かそれをつけなければならぬのか、あるいはまたどうしなければならぬということは判断できないというのはちょっとおかしいと思うのです。これは、これをつけなければ協定違反ということになると思う。協定違反ということになれば、現在十月に操業することができない、こういうように考えられるのですが、法務当局の考えはどうですか。
  138. 新谷正夫

    ○新谷説明員 協定の内容でございますけれども、脱硫装置を設けることが操業の条件になっているということなのかどうかということになるんじゃないかと思います。それが厳格な意味での操業開始の条件になっておるということでありますれば、これはできないという結論になります。そうではなくて、脱硫装置を設けるということが一つの付帯条項として書かれておるということであれば、義務不履行の問題だけしか生じない、このように考えます。
  139. 岡本富夫

    ○岡本委員 ここであなたと押し合いしてもしかたがないから、そこで通産大臣にお聞きしたいのですが、御承知のように、出光石油が姫路に来るときには相当な問題が起こりまして、約一年間はおくれた。その間にこうした協定を再検討して、そして、これならということで住民も納得し、できたわけでありますけれども、その中でこうした一つの条項が履行されない。それも県から立ち入り検査して初めてわかった。大企業ですから企業モラルもある、というように私どもは考えておりましたけれども、そうしたいいかげんさを考えるときに——おそらく姫路製油所を許可するときには、地域の地方自治体あるいは住民ともよく連携をとり、また契約の上でやるようにという指示をされておると思うのです。したがって、この問題については、通産大臣としてどういうように指導なさるおつもりか、これをお聞きしたいのです。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 具体的なケースでございますので、要すれば後ほど鉱山石炭局長から申し上げますが、脱硫装置そのものが御承知のように比較的最近のものでございますし、千葉でいたしました施設につきましても、その効率等に問題なしとしないというふうに聞いておりますから、姫路の場合にそれが予定どおりにいかなかった、遅延をしたということになったのかと思います。ただその場合に、かりにそうであるといたしますと、それにかわる処置というものは当然しなければならないはずでありまして、たとえば低硫黄の原油のしたくをするとか、一般的にそれにかわる、つまり公害に至らないような処置というものは当然いたしませんといけないわけであろうと思いますから、そういうような行政指導をおそらく役所としてはしておるのではないだろうか。そうしてそれによって、当初の協定にありますような結果が結果として確保されるのであれば、それは操業をしてもいいでありましょうし、またそうでないということになりますと、これは先ほど御指摘のように問題になるであろう、その辺の見通しの問題になるのではなかろうか。私、具体的なケースをよく存じませんので、なお必要があれば鉱山局長から御答弁申し上げます。
  141. 岡本富夫

    ○岡本委員 鉱山石炭局長、この問題についてはおそらくあなたが許可したのですから、新設工場においてこうした協定違反をしたケースがいままであるか、これが一点。  それから、この問題についての考え方あるいは指導のしかた、これをお聞きしたい。
  142. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  いままで、設備許可に関連してこのような問題になったことはございません。  今回の出光の許可につきましては、許可にあたりまして、公害防止対策については当者の指示に従うということを条件としてつけておりまして、そして会社から出された計画では、重油の供給計画が硫黄との関連になるわけでございますが、平均いたしまして全重油として二%のS分、硫黄含有率以下のものを供給するという計画になっておりまして、二%以下のものを供給するについては、出光の姫路製油所については、会社の事業計画では四万バーレルの直接脱硫装置を設置するということになっておったわけでございます。ところが、昨年の秋ごろに出光のほうから、脱硫装置の建設につきまして、技術的に装置の方式が確定しがたい状態になっておるので延期をさせてもらいたいという申し出がございました。  と申しますのは、御指摘のように、千葉製油所で世界的には初めての実用の直接脱硫装置を設けたわけでございますが、実験室のデータをそのまま実用化したために、たとえば触媒の効率が実験室よりははるかに劣ったとか、あるいはジョイントの部分が予定以外のところが腐食するとか、あるいは操作上のノーハウがわからないので適正な温度、圧力というものを操作しながら確定していったというようなことがありまして、なかなか当初の予定の実績があがらないという状況であったわけでございます。そこで、さらに時間をかけてこれらの問題を整理した上で直接脱硫装置をいたしたい、こういう申し出があったわけでございますが、われわれといたしましては、はたしてそうかどうかということについて検討いたしまして、また御承知のように、脱硫には間接脱硫装置があるわけでございますが、間接脱硫装置に切りかえて早急に建設するのがいいか悪いかということも研究してもらったわけでございますが、脱硫効果としては、効果の劣る間接脱硫方式よりも、脱硫効果のあがる直接脱硫方式の問題点を解決して予定どおりやるほうがいい、こういうことで、あと一年程度の余裕があればこれらの問題の解明もできるということで、一応そういう考え方をとらざるを得ないのではないかというふうに考えたわけでございます。ただし予定の重油について、硫黄含有率が予定よりも上がるということでは困るので、これに対しましては、出光興産に対しまして、低硫黄の原油、さらに不足な場合は低硫黄の重油の確保をはかりましてこれによって当初の供給計画を満たす生産計画を立てるように指導いたしたわけでございます。  したがいまして、われわれとしても、出光興産の脱硫設備建設遅延の申し出の際に、地元も異論のない低硫黄燃料の供給計画を確実に実行できるような対策を講ずるようにということで指導いたしたわけでございまして、現在の段階におきましては低サル原油を貯油しておりまして、大体現在のところは、平均一%以下の低サル原油を一・五カ月弱をすでに貯油をいたしておりまして、当初の供給計画に沿う低硫黄の燃料の供給は可能だという状態にはなっておるわけでございます。
  143. 岡本富夫

    ○岡本委員 自治省に伺いますけれども、こうして地方自治体と企業が取り結んだところの協定の効力、あるいはまたそれに対して違反した場合の地方自治体に対する指導、これはどういうように考えておるか、その点について……。
  144. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 お答えいたします。  自治体が公害防止協定を結ばざるを得ない理由と申しますか、原因といたしましては、やはり一つは、現在の地方自治体の首長に与えられている権限では公害防止のために適切な措置が打てない、これがあるだろうと思うわけでございます。これを補う。もう一つは、やはり千差万別の公害を出す実態でございますから、その実態に画一的でなしに、個々の実情に応じた手が打てるように協定を結ぶ、こういう両面の理由があるだろうと思うわけでございます。  ただ、先ほど来御論議がございますように、公害防止協定の法的な拘束力ということになりますと、率直に申しまして、具体的な契約的な側面を持っておりますものについては、これは担保の道があるわけでございますけれども、そうでない精神的な規定、こういったものがございますと、これはやはりいわゆる紳士協定的なものになってしまう、そういうことでございまして、私ども現在、全都道府県を対象といたしまして公害防止協定の点検をいたす予定にいたしておるわけでございますが、できるだけ具体的な内容のものをまず協定としてはつくってまいる。  それから、現在ありますものにつきまして、そういう協定違反という事実に対しましては、これは訴訟の手段によって措置ができないものにつきましては、やはり最後は住民の世論の盛り上がり、これを背景にして実施を迫ってまいる、これよりほかにはないだろうと思います。そういう方向で指導いたしております。
  145. 岡本富夫

    ○岡本委員 確かにあなたおっしゃるように、協定に対しては、紳士協定あるいはまた法的に拘束される場合もある。そうした紳士協定というのは、結局は気休めみたいなものになってしまうわけです。これを裏切られたということで住民が大きな憤りを感じて、ちょうど二年前だったですか、相当大きな反対の運動があったわけです。私は、いたずらに住民の皆さんの感情を高ぶらせ、そして反対運動を起こさせたりする——みな仕事もしておりますから、そういうことばかりを考えておってはならない。やはり住民の皆さんは県や市を信頼しておるわけです。それに対して、いまの自治省のお答えの中に、住民の意思を反映する——これはおそらくあなたのおっしゃったのは、県あるいはまた市の意思をと、こう私は考えていいと思いますけれども、もしも住民の皆さんの猛運動ということになれば、これはまたたいへんなことが起こると思うのです。だからその点をもう一度明確にしてください。何か住民の皆さんをあふるような考えはいけないと思いますね。
  146. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 お答えいたします。  ただいまの私の答弁で用語に不適当なところがございましたとすれば、それはまことに恐縮でございます。おっしゃるとおりの趣旨でございまして、いたずらにあふり、そそのかすこと左、私申し上げているつもりは毛頭ございません。基本的にはやはり、現在の協定の内容になっておりますものを全部点検をいたしておるわけではございませんけれども、中には、今後地方自治体の首長に権限の委譲という形で、たとえば立ち入り調査あるいは設備の改善命令、こういったものにつきましては、権限の委譲という形で立法的に解決せられる問題もあるだろうと思います。あるいはまた、そうでない、たとえば硫黄分の低い油を使え、何%以下のものを使え、こういったようなものにつきましては、これはやはり具体的に債務的な内容を持つだろうと思います。それ以外のものにつきましては、最後にはどういたしましてもいわゆる紳士協定的な側面というものは残るだろう。それにつきましては、やはり相互の良識、相手方の誠意ある履行、それを裏づけるものといたしましては、先ほど適切に御指摘いただいたわけでありますが、県なり市なりあるいは住民の意思、こういったものを背景にして実施を担保する、こういうことではないかというふうに考える次第でございます。
  147. 岡本富夫

    ○岡本委員 ぼくの言わんとするところは、もっと自治省しっかり指導してもらいたいということなんですよ。協定を結ぶについてもはっきりした態度を持ってもらいたい。  それで、この問題で何ぼ言ってもしかたがないから、もとへ戻しまして通産大臣にお聞きしたいのですが、先ほどからお聞き及びのとおりでございまして、結局は出光石油の脱硫装置ができなかったことは出光石油の見込み違いと思うのです。要するに、千葉の製油所にあるのと同じものをつくるんだ、そしてちゃんと口では設備しますと言うたけれども、それが最初の一年間は満足にうまくいかなかった。稼働率が五〇%くらいしか満たなかったというようなことを言っておりますけれども、これはその当時に出光石油がわかっておれば、そんなことは言わなかったはずですが、あるいはわかっていて、この姫路製油所を稼働するために、欺瞞だと言ったら話が変になりますけれども、四十三年九月に契約するときに、千葉と同じものをつくるんですと、千葉にもみんな連れてきて、そして非常に有効なものだというようなことをしておきまして、現在に至っては県が立ち入りするまではわからないというようなことでは、これは非常に出光石油の姿というものがおかしいと私は思うのです。  そこで大臣、先ほど本田局長から話がありましたように、千葉製油所の脱硫装置がうまく動かなかったのだというならば、これは出光石油の見込み違いではないか、決して当地の住民の皆さんの責任ではない、こういうように思うのですが、通産大臣いかがでございましょうか。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 八十億円もの金をかけて動かない装置をつくりましては、これは会社がたいへんな損でございますから、人をだまかすためにそういうことをやったとはとうてい考えられないわけでございまして、おそらくその段階では千葉の装置が十分に動くものというふうに考えまして、同じような装置をいたします、それでよかろうというお話になったものと思われます。不幸にして、千葉の装置が十分に動かないということがわかってまいりましたのでそこで、動かない装置をいたしましても約束が充足できないことになるわけでありますから、先ほど局長が申し上げましたように、間接脱硫ではどうであろうかというふうに考えたこともある。しかしそれは効果が十分でない、こういうことであったと思います。したがって、この間に悪意を推定する必要はないわけでございますが、要するに現地の公共団体とのお約束が守られるような他の方法というものが可能であるか、低硫黄原油を使う、あるいは低硫黄の重油まで使う、それで公害関係の条件が充足をするような形で操業をしてもらいたい。また精製のほうの許可の関係から申しますと、これは御承知のように需給関係考えて施設を許可しておりますから、地元との関係が充足するような条件でひとつ操業をしてもらうことが私どもとしては大切だ、こういうふうに考えるわけでございます。
  149. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、最後に一点聞きますけれども、そうすると、要するに、地元の地方自治体あるいはまた住民の皆さんが納得するまでは、操業延期をせざるを得ないんではないでしょうか。
  150. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  先ほど大臣から申し上げましたように、現在需給の状況に見合って設備を許可しておるという状況でございまして、この十一万バーレルというのは相当な比率を占めております。したがって、これの操業が必要だという需給の状況であるというふうに御理解を賜わりたいわけでございますが、御指摘のような事情があるわけでございますので、われわれといたしましては、計画どおりの低硫黄重油の生産を確認する、また直接脱硫装置の建設計画を明確にするということによりまして、県、市の御了解を得て操業をすみやかに開始させるようにいたしたいというふうに考えるわけでございます。
  151. 岡本富夫

    ○岡本委員 県や市あるいは住民の人たちの納得があれば、ぼくは操業をしてよいと思うのですよ。しかし、そのほうの納得がなくてもこれは十月の一日から操業させる、こういうあなたの考え方、要するに重油の需給計画だけでもってものごとを推しはかっていく、こういう考え方は大いに間違っておると思うのです。したがって、契約した相手が納得するかしないか、これはまだわからぬことです。ですからその点について、当事者であるところの兵庫県あるいは姫路市、これが納得をするならばこれはよいと思うのです。しかし、納得しないのに操業を開始するということは相ならぬ、こういうふうに思うのですが、その点について。
  152. 本田早苗

    ○本田説明員 先ほど申し上げましたように、計画に沿う低硫黄重油の生産を確認することと、それから直接脱硫装置の設置計画を明確にすることによりまして、御指摘のように、県、市の御了解を得てすみやかに操業できるようにやりたい、こういうことでございます。
  153. 岡本富夫

    ○岡本委員 協定というのは、非常に紳士協定のようなというようなことでありますけれども、たとえば水俣病の患者は、会社との間に、判を押せということで協定してしまったために、非常に安い補償金額をきめられてしまった。こういうことも考えますと、この協定というものは非常に大きな力を持っていなければならないと思うのです。今後の指導においても、この協定をつくったからには必ず守っていくように、こういうようにひとつ通産大臣に御指導願いたい。またそういうようなところでなければ許可をしないというふうにしていただきたいと思うのです。いかがでございましょうか。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはそのとおりであると思います。  そこで、この協定の具体的な給付の内容は、推察しますのに、八十億円の金をかけて千葉と同じ施設をつくりますということ、このこと自身ではおそらくないのでありまして、そのとおりいたしましても千葉の状況から見ますと、協定の目的というものは実は達せられないことになるでございましょうからそれが給付の内容ではなくて、公害をこれこれの程度に防止したいということでございましょうと思いますから、不幸にして千葉と同じ施設をやりましてもその目的が達せられない。それならばほかにどういう方法があるか。先ほど低硫黄のお話がございましたが、そういうものを供給するということであれば協定の目的を達することができると私どもが考えましたら、それによって地元の納得も得て操業してもらいたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  155. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間がありませんから……。  次に今度は、公害の視察で参りましたときに、尼崎市におけるところの関西電力の四つの発電所がございまして、このうちで第一火力、第二火力、こういうのが古くからあったわけでありますけれども、四十二年に第三火力発電所を設置する際に、関西電力のほうから市に対して、あるいは県に対して明示したところによると、第一発電所、第二発電所はこれで非常に操業、稼働を落とす、あるいは廃止するというような一つの設計書を示しておるわけでございます。しかしその後第三と、それから次に東、第四になるわけですね、こうした発電所ができまして毛、そのことが実行されず、この四つの発電所は、非常にすごい亜硫酸ガスの量を含んでおるところの尼崎市の大気汚染の約八〇%の原因をなしておるのだということで、非常に市会でも問題になり、住民の中でも問題になっておるわけでありますが、それについて関西電力のほうの答弁では、最近非常に電力状況が逼迫してきてたくさん要るようになったので、前と見込み違いなんだというようなことでありましたが、少なくとも設計書を示したということは、これは社長の判を押してなかったとかなんとかということも答弁しており幸したが、大企業である者が、少なくとも県や市に設計書を示したものを、それに対して履行できない、こういうことでは、先ほどの公害防止協定ではないけれども、一つの設計を示しただけであるというような簡単な考えを持っておることになる。これに対するところの通産省としての考え方、あるいはまた指導のしかた、これについてひとつお聞きしたい。
  156. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 関西電力の電力の需給関係につきましては、御指摘のように、かなりことしの夏も苦しい段階があったわけでございますけれども、これは御承知のように、非常に端的に申しますと、長いこと建設の準備をしておりました地点における火力の建設が、いろいろの事情でなかなかできてこなかったことに無関係ではないわけでございます。それはそれといたしまして、そういうことがありましたこともあって、かなり老朽の火力を動かさなければならないところへ追い込まれたというふうにも考えられるわけであります。それにしても、しかし地元ではそれはある意味で迷惑なことに違いないわけでございますから、私どもとしても、その尼崎の第一、第二でございますか、煙突を高くするとか、あるいはまた低硫黄になりますが、低硫黄をできるだけ使うことで、四つの発電所を通じてサルファのコンテントを何年にはどのくらい、何年にはどのくらい、平均そこへ押えろというようなことは電力会社にも申しております。これはおそらく、電力会社が地元と約束をしたものと私どもに対して約束をしたものと異なるはずはございませんので、そういう条件を守らした上で、需給状況にもよりますけれども、なるべく使ってもらわないことが望ましいことに違いありませんが、使わなければならないということの状況であれば、そういう条件のもとで動かしてもらう。これは電力会社に守ってもらわなければならないと思います。
  157. 岡本富夫

    ○岡本委員 事実、尼崎市におきましては、いま基準が〇・〇五ですが、〇・〇八四PPMです。亜硫酸ガスがもう年間通じてですね。もっと多い場合もあるのです。おそらくもうぎりぎりの限界にきておる。そのときにあって、この八〇%も大気汚染に寄与するところの発電所を何とかしてもらいたいというわけですが、電力事情もございましょう。そこで今度は関西電力のほうの言い分を聞くと、原油のなまだきの許可をしてもらいたい、それから電力会社が直接原油を輸入することを許可してもらいたい、そうでなかったならば原料の入手が非常に困難であるというような意見も言っておりました。  それから、ここは第二でしたか、石炭をたいておるのですが、三井三池のサルファの非常に高いものをたいています。これもやはり若干通産省のほうの石炭対策ではあろうと思うのですが、片一方を立てたら片一方は立たずで、非常にむずかしいと思いますけれども、さしあたって国民の健康を一番中心にして考えるときに、いろいろな問題はあろうと思いますが、最重点的はやはり生命の尊厳でなければならないと思うのです。したがって、今度は公害対策に対しては佐藤総理も非常に力を入れていらっしゃるけれども、こうしたきめのこまかい配慮がなければ、私は全部架空の空論になってしまうのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、通産大臣にその点について、御決意並びに今後これを改善していく御用意があるかどうかをお聞きしたいと思います。
  158. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 申すまでもないことで、国民の生命、健康ということが一番大切でございます。これも申すまでもないことでございますが、電力の円滑な供給ということは非常に大切なそのための一つの条件でございますから、どうしても需給関係上やむを得ないということであれば、与えられた条件のもとで老朽になりました施設も動かさざるを得ない。これは私やむを得ないことであろうと思っております。と同時に、実はこの問題の起こりましたもとといえば、もうすでに今年当然動いていなければならなかったよその地点における火力の建設が、私どもとしては納得のいかない理由でおくれているのでございますから、今後立地の問題の解決につきましても、関係方面の協力も得、また私どもも努力をして、こういった事態が再度起こらないようにしなければならないと考えております。
  159. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょっと答弁漏れですので。  原油のなまだき、あるいは電力会社の油の直輸入に対しての認可あるいは許可については、御考慮されるお考えがあるか。これをひとつ、いますぐ、さあやるというわけにはいかぬでしょうが、いかがでしょうか。
  160. 本田早苗

    ○本田説明員 原油なまだきの問題につきましてはかねて総合エネルギー調査会におきましていろいろ検討したわけでございますが、輸入したエネルギー資源の合理的利用という線からまいりまして、原油をナフサ、ガソリンに分解した上で利用する。しかしながら、それでも重油の輸入は相当大量に上がっておるわけでございますので、その範囲内で原油のなまだきをやろう、こういうことになっておるわけでございますが、昨年は四百萬キロリットルを原油なまだきということでやったわけでございます。四十五年度はこれに二百九十萬キロリットル上乗せいたしまして六百九十萬キロリットルということで、七割方の増加をいたしたわけでございますが、今後も、いまの状況から申しますと重油輸入量の期待量というのは増加する傾向にございますので、その点については考慮いたしたいというふうに考えております。  それから、原油についての買い付けを、直接買うのがいいではないかということについての問題でございますが、御承知のように、原油については現在買い手市場というふうにいわれておりますが、先般来石油の事情は若干変更が出てまいっておりまして、ことに低硫黄原油の世界的な需給状況といたしましては、かなり基調が変わってまいったということになっております。したがいまして、買い付けをするものがあまり多数にわたって買い付けを行なうということによって、価格の必要以上の引き上げが起こる可能性が生じております。したがって、それらの点も考慮して判断することが必要だということでございまして、われわれといたしましては、その点についてよく事情考えつつ判断せなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから三池の炭につきましては、これは石炭対策上、最も大きな事業部門である電力部門において一般炭の消費が確保されなければ、一般炭需要の道がないというような状況でございました一面、ばいじんあるいはサルファの問題がございまして、これも石炭対策と公害との開顕で非常に苦慮するところでございますが、逐年減らさざるを得ないというふうに考えておりまして、三池におきましては選炭設備を入れて、できるだけ原料炭を大量にとって一般炭のほうは少なくするという措置を講じつつある次第でございます。
  161. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題は、時間がありませんからこのくらいにしておきますが、もうあと一点だけ……。  愛媛県の伊予三島あるいは川之江、ここへ参りましたときに、ここに製紙業者がたくさんありまして、これは地場産業ですが、ちょうど田子の浦と同じようなヘドロの問題で騒いでおりました。これは十数年来からこういうことがあったわけでありますけれども、最近特に問題化してきましたのは、第十号台風、これが底にあるヘドロを浮き上がらした。こういうわけで魚が大量に死んだというところから、テレビあるいはまた各報道機関が取り上げまして問題化したわけでありますけれども、あそこへ行ってまいりますと、決して最近の問題ではない。また一般の人に聞きますと、ここ十年、十数年の問題であります。そこで、水質基準、こういうものがまだきまっていない。どういうわけできまってないかと申しますと、三十九年に経済企画庁から調査がされておるわけですけれども、その後この水質基準がきまってない。これはおそらく公共用水域の水質の保全に関する法律の第六条の「知事の意見をきかなければならない。」というのを取り違えたのかどうか知りませんが、まだきまってないというような状態で企業も、じゃどのくらいに落としたらいいのかということがわからないというような状態で、たれ流しであります。これに対して経企庁長官にひとつ御意見を承りたいと思うのです。
  162. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま御指摘になりました三島、川之江水域でありますが、お話のように、これにつきましては三十九年当時すでに調査をしたようであります。調査をいたしたのでありますけれども、一種のその地域だけの地場産業といいますか、パルプの産業というものによって立っておる町であるというようなことで、当時は、全体としての公害問題に対する意識も、率直に言いまして十分でなかったのだろうと思います。これにつきましていろいろと県の意向等も徴したのでありますけれども、いわゆる水質基準を設定するという、そうした雰囲気がまだ十分に熟成していなかった、そういうこともありまして、なかなかこの基準の設定に至らなかったという過去の経験があったように聞いております。そういうことで延び延びになっておったのだろうと思います。今般は、今日の事態においてそういうことも許されませんし、また地元の空気というものもだいぶ変わってきております。そういうことで、企画庁といたしましては、県を指導してできるだけすみやかにこれを設定するようにと、こういうことで県と相談をしておこるところであります。
  163. 岡本富夫

    ○岡本委員 明地に参りますと、そんなできるだけすみやかというような考えではとてもしんぼうできないというところへきておるのです。漁業者の皆さんは工場の排水の口へどろを持っていって積んでおる。これが出てくると魚がとれぬ、私らの生活はどないしてくれるのだ。しかも瀬戸内海の国立公園の中にあるのです。こういうような状態ですから、もうすみやかというような簡単なことではない。経企庁のほうからも、ここに調査に一緒に行ったときによくわかっていると思うのですが、その後検討なさったと思うのですが、いつ水質基準をきめ、どういう対策を立てられるか、もう時間ありませんからひとつ。
  164. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 当初は地元の——これは地元といってもいろいろあるわけであります。漁業側の意見もありましょう。企業側の意見もありましょうしかしいわゆる県当局では、四十六年に調査をして四十七年に指定をしてほしい、こういう要求が出てきましたが、これはいまとてもそういう事態ではないじゃないか、こういうことでいろいろと相談をいたしまして、そして早急にこれについてひとつ設定をしようということになっております。ただいまのところでは、できるだけすみやかに、年内にでもこうしたものを調査、指定を行なうように、こういうことで相談をしておるわけであります。
  165. 岡本富夫

    ○岡本委員 では年内に水質基準をきめてもらうということに了解しておきます。  それでは最後に通産大臣、こうした製紙工場のヘドロ問題がずいぶん大きく出てきておりますので、この製紙工場の排水の設備、こういうものはどうなっているかということを総点検をして、そして適切な指導をする、こうしなければ、問題が起こってから絶えず騒ぐというようなことでは相ならないのじゃないかと思うのですが、その点についての御意見を承りたい。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 現状にかんがみまして、そういう必要があると思っておりますので、その準備を進めております。
  167. 岡本富夫

    ○岡本委員 では時間が来ましたから終わります。
  168. 八田貞義

    八田委員長 塚本三郎君。
  169. 塚本三郎

    ○塚本委員 昨年の暮れにチクロ入り混合甘味料の使用が禁止されまして今日に至っておりますが、その間かん詰め等の処分につきましては、九月一ぱいの販売は認められて今日に至っております。そこでいよいよ今月末をもってこのかん詰め等のチクロ入りの処分をしなければならないというような段階になってまいりました。そこで業界としても、連日これが対策につきまして協議をしており、関係当局にもいろいろと陳情いたしておるようでございます。  この食品の業界を振り返ってみますると、その相当部分あるいは大部分が中小の業者であることは、御承知のとおりでございます。一面から言いますると、かん詰めなどは即時に中止をするのでなくして、九月一ぱいまで販売を延ばしてやったということはたいへんな温情ではないか、こういう意見もございます。確かにそれがために直ちに倒産は免れた、こういうような事例はたくさんあるようでございまするが、しかし何せこういう業界は、何年か先まで見越して大量に生産をしておったという実績がございます。そういうような経過からいたしますると、その期限が切れました十月一日からの混乱というものが予想されるわけでございます。したがいまして、私どももこの業界の意見等を耳にいたしますので、ここでそれが具体的な対処のしかたについてお尋ねがしてみたいと思っております。  第一に、今月末をもって販売が禁止をされる、そして十月一日からは厚生省がこれを調査する。厚生省だけではなくして警察まで実はその店を調べるのだというようなことが新聞に報道されております。確かに危険なものを庶民に売ってもらては困る。そしてまた売るべきでないということも業界は自覚をいたしております。さすれば、九月末日をもって終わったこの有毒と思われる食品、すなわちチクロ入り混合甘味剤を使ったこの食品はどう処分するのか具体的に処分の方法がどのように計画されておるかこれなは農林省でございますか、お聞きしたいと思います。
  170. 森整治

    ○森説明員 お答えいたします。  厚生省のほうとよく連絡をとりまして、厚生省の指示に従いまして、もし処分をする場合には、たとえば焼却をするとか、そういうことで始末をするというふうに話し合っておるわけでございます。
  171. 塚本三郎

    ○塚本委員 これは処分をしなければ何らか災いになるのじゃございませんか。確かに売ってはいけないということでございますけれども、厚生省の検査だけならばいいけれども、おそらく警察まで一緒に合同で店頭に出しておるかどうかを調べる、こういうようなことをいたしますると、実は店に並べてなくても、持っておっても、これは内緒で売るのじゃないかとかいろいろな嫌疑等がかけられて、いや、うちで自家消費するだけだとか、お友だちにやるだけだ、というような言いのがれが出てきてしまうから、すでにそのことは新聞で取りざたされておりますように、何らかの処分をしてしまわなければ安心できないというような形で、厚生省だけならばやわらかくいくかもしれませんけれども、警察までも乗り出すというようなことを聞かされると、処分しなければやはりおれなくなってしまうのではございませんか。この辺はどうでしょう。
  172. 森整治

    ○森説明員 厚生省の通達では、そういう誤解が生じないように処置をするようにという指導がなされておるわけでございます。ただいま先生の御指摘がございましたような問題は、確かに業界としましてはそういう誤解を受けないという意味から、私ども聞いておるところでは、社員に配分をするとか、そういうようなことを実際上やっておるというふうに聞いておるわけでございます。
  173. 塚本三郎

    ○塚本委員 何か自信のない御答弁のようですけれど、おそらく百六十万箱残るであろう、もう半分あるいは三分の一でもともかく売ってしまってくれというようなことで、ダンピングしてでも売ろうというようなことで、いま業界はたいへんな出血で売っておるようでございますね。しかし、それにもかかわらずおそらく百六十万箱残ると業界は推定をいたしております。全国にそれが散らばっております。こんなに大量のものをどう処分するのか。何かこれははっきりと処分方法きめないと、また公害が起こってしまう形になりはいたしませんか。もう日にちがきちっと九月三十日ときまっておるんですから、十月一日からはこういう方向で処分をするのだ、あるいはまた、自分たちが自家用で食べるんだとかというなら、それできちっと届けさせるとか、何か具体的なことをしないといけないんではございませんか。それをせよというのではありませんけれど、無責任にこれを売ってはいけないというだけでおいただけでは、何らかの混乱が起こりませんか。
  174. 森整治

    ○森説明員 先生のおっしゃいました百六十万箱というのは、御承知と思いますが、五月三十一日現在の業界の推定数字でございます。その後の数字につきまして、われわれも業界からいろいろ報告を求めておりますが、業界の推定も、その後夏場の最盛期に入りまして、相当スーパーマーケット等の協力を得て在庫は非常に少なくなったという一応の報告を受けておるわけでございます。ただ、全然在庫がないかということになりますと、これは九月三十日になってみませんと、なかなか把握がむずかしいという問題がございます。  それから、先ほど申されました処分の問題でございますれども、その時点で業界のほうか円相談があれば、その処理方法については指示をするという厚生省とのお話し合いになっておるわけでございます。
  175. 塚本三郎

    ○塚本委員 その数字に間違いとおっしゃるけれど、私どもに来ておる数字と、あなたのほうで言っておる数字と違っておるはずないと思うのですよ。これが来ておるのはたしか六月だと思いますけれど、それに「全面禁止となる十月一日現在の残存在庫製品は約百六十万箱、四十億円と予想されますので」、こういうふうにきちっと言っておるのですよ。だからそれは五月の在庫だとおっしゃるけれど、六月に十月一日に残ると予想される在庫百六十万箱、こういうふうに来ておるのですからたいへんな違いだと思うのですが、どうでしょう。
  176. 森整治

    ○森説明員 ちょっとことばが足らなかったかもしれませんが、五月三十一日現在で十月一日の在庫がどのくらいになるであろうかと推定をしました数字が、たしか先生のおっしゃいました数字でございます。
  177. 塚本三郎

    ○塚本委員 わかりました。それならいいです。だから、百六十万箱が若干あるいは相当減ればけっこうなことだと思いますが、先ほどの答弁ですと、五月で百六十万箱ということならば、もうなくなっていいはずだと私は思いましたので、その数字の点は了解いたします。  なぜ私がこのことをお尋ねするかといいますと、実は処分することが明記されておらなければ、これは農林省や厚生省は詳しくその間の事情承知しておるからいいと思いますが、警察等が加わりますと、業界もこのことを心配しておるわけですが、店に置いてだめじゃないか、こんなものは早く返せ、こういうようなことで、処分方法がきまっておらないとすると、これが無責任に問屋さんに戻され、問屋さんがまたメーカーに戻される。こういうことでこれがもとに全部戻ってしまうということになると、業界はたいへんな混乱をする。すでにそのことを予測いたしまして、九月三十日現在で持っておりますところでその責任を果たしてもらいたい、業界はそのように約束をし、そのように指導してほしいという陳情を農林省や厚生省に何度か働きかけ、これは地方自治体にも働きかけておることは御承知のとおりであります。処分方法を具体的に明示してなければ、返せ返せ、出しておいていけないじゃないか——別に問屋に戻せ、メーカーに責任を負わせようという意図はないにしても、第一線に出ていきます厚生省の役人さんやあるいは警察等がそういうようなことを言ったら、これ幸いとばかりに、どっといわゆる一次問屋やメーカーに戻されたら、業界はたいへんな混乱をする。  もっと言いますならば、ただでさえもそういうきずのある商品でございますから、今日もう半分以下でも売っておる。しかし返すときには、それがいつ仕入れたものか年月日は書いてございませんから、メーカーや一次問屋等は、これを受け取るときに正常な価格で受け取らされるということです。警察がそう言ったんだ、農林省や厚生省がそう言ったんだ、返せ返せ、こうなったたらこれはどうなりましょうか。だからそういうことの混乱を防ぐためにも、そしてまた世人の疑いを晴らすためにも、この際は具体的に廃棄処分を明示する必要があるというふうに判断をいたしますが、どうでしょう。
  178. 森整治

    ○森説明員 先ほどお答えいたしましたように、厚生省のほうから通達が出されておりまして、先生御指摘のように、所有している者の責任において焼却なり埋没なり、あるいはかんをあけるとか、また廃棄場所、いろいろそういう具体的なことについても指示をして処理をするということが、一応政府側考え方として各都道府県に示されておるわけでございます。
  179. 塚本三郎

    ○塚本委員 そういたしますと、何かそれは厚生省がやってくれるということでございますけれど、具体的にこれだけのものがあると業界から申し出れば、厚生省がきちっと廃棄処分をしてくれることに農林省との間に話はできておるのですか。何かできておるような、具体的なものを示されれば廃棄処分することになっておりますというお話ですけれど、それは、業界から申し出れば廃棄処分してくれることに、厚生省との間にもう話はできておるわけですか。
  180. 森整治

    ○森説明員 厚生省と相談をいたしまして、業界の相談があれば保健所でしかるべく処分方法、場所その他を指示いたします、こういうことに話し合いができております。
  181. 塚本三郎

    ○塚本委員 なるほどいまそういう回答しかできないかもしれませんけれども、そうすると、持っておるだけで問題をあとに残すということに——これは期日、期間がきまっておるのですから、はっきりと明示してやるほうが親切じゃないかというふうに私は思っておるわけでございますが、これはなお、私も、いまどうせよということを決しかねておりますから、この点はもう少し私も時を見てみたいと思っております。  そこで通産大臣にお尋ねいたしますが、すでにこの問題は、前にチクロそのものの甘味業者が通産省にお願いいたしまして、金融等の救済の手段を講じていただいて、その業者は小康状態を保っております。今度のかん詰め、びん詰め等の業者は数がたいへん多いわけです。  これらの諸君が言いまするには、かつての甘味業者と同じような言い分でありますけれども、私もこれは業者の立場に立てばたいへん気の毒なケースだと判断をいたしております。だから、憲法二十九条に基づきましてこれは補償せよという言い分は、私は正しいと思っております。公共の用に供しなければいけない。しかしながら、公共の用に害するということになったら、法律の力でこれを禁止することもできる。しかし、その場合は、やはり基本的には国家が補償をしなければならない性質のもの。いまどうこうすることは立法的にむずかしいかもしれないけれども、基本的には国家がこれを補償してしかるべきケースだと私は常識的に判断いたしますが、どうでしょうか。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはたしか、ことしの春の予算委員会で、やはりそのようなお尋ねがございましたときに、政府を代表して一、二の閣僚が答弁をされておったように私は記憶をいたします。そのときには、ただいま言われましたように、補償というようなことを申し上げたように私は聞いた記憶ではございませんが、いずれにしても、このようなことは当該業者諸君の責任であるといって済ませられることではないであろう、たしかこういうニュアンスの政府側の答弁であったかと思います。したがって、それは補償ということを政府が申し上げたわけではないのでありますが、金融等々の措置などは少なくとも考えなければならないという、その程度のニュアンスのある答弁でなかったかと思っておりますが、九月末から流通ができないようになりますので、いずれにいたしましても、その実態というものをこれから把握をいたさなければなりません。それによりまして政府としても所要の措置を、かつて昨年暮れにとりましたような類似の措置考えなければならないのではないか。先ほども農林省の部長が言われましたように、一応どの程度のものがあるか、どの程度の損失を生じるのであるかという実態把握をいたさなければならない段階かと思います。
  183. 塚本三郎

    ○塚本委員 憲法の二十九条台二項に、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」ということですから、実はかつて、ズルチン等が危険であるから、ズルチンはいけませんということで、公共の福祉に適合しないということでこれを禁止して、そうしてそのかわりに政府が指導なさって、チクロならばだいじょうぶでございます、そして特別にこれに対する保証の証書までこの甘味料にはつけて、これはお金と同じ価値がありますというようないわゆる保証の証書を張って売らせておった。それを買って実はいろいろと食品業界にこれを添加して売っておったと、こういう経緯だと思います。  ところが、憲法二十九条の第三項になりますけれども、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」ということで、これを逆に言うならば、公共の福祉のためにこれを禁止することもできる、こういうことでもあろうと思っております。したがって、前段におきまして、正当な補償の下にと、こういうことでたければ、この憲法第二十九条の第三項によって全く裏表の解釈が成り立って正当な補償のもとにこれを禁止することができると、こういうふうに判断することがすなおな判断であるというふうに思いまするので、基本的にそういう立場に立って善処していただくことが必要だと思いますが、いかがでしょう。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十分にお答えするだけの知識をその観点からは持っておりません。国の損害賠償の対象になるものであるか、その場合、故意または過失を国の側の要件とするものであるかどうか、そういう問題とも関係がありそうに存じますけれども、憲法との関係を私お答え申し上げるだけの勉強をいたしておりませんので、お尋ねのございました件は、なお法制局等ともよく相談をいたしまして、政府としていかに対処すべきかを決定しなければならないと思います。
  185. 塚本三郎

    ○塚本委員 まさか故意ではないと思っておりますが、過失に当たるのでもない。これはだいじょうぶですといって、しかも特別にこの証書を与えるに対しては、政府としてはいわゆる税金らしきものを取っておったはずでございますね。それが、だめでございます——この証書は金券、いわゆるお札と同じ価値がありますということで貼付をさせたことを私は記憶いたしております。しかしそのことは、いま大臣のお答えのように法制局の回答をまたなければなりませんが、しかしそういうふうにもとれるような気の毒な内容であることは、大臣もお認めだと思っております。  業界等の声を聞いてみますると、昨年の十一月以降六月までに倒産したのは五十一社、そして負債総額は百五十三億というふうな金額がもたらされております。おそらくその後もある程度これにプラスされておると私どもは判断をいたしております。しかし、何せその後は何でもいいから売れというようなことで、相当に売ってはおるようでございまするが、今月末をもってその一切の総決算をしなければいけないということになってくるわけでございます。そういたしますと、実はいままででもすでに業界としましては、先ほど申し上げた採算を度外視して、ともかく売りなさい売りなさいということで売っておりまするから、このときを目がけて相当に混乱がくることは、業界としても見ておりまするし、心配いたしております。  そこで金融の措置でありまするが、具体的にこの諸君に対する金融の処置は、いまどういうことをお考えになっておるか、これを中小企業庁から先にお聞きしたいと思います。
  186. 吉光久

    ○吉光説明員 実は、昨年チクロの禁止が実施されましたその段階におきまして、十一月及び十二月、二度にわたりまして、私ども所管いたしております中小企業関係の三機関に対しまして、このチクロの禁止に伴う被害を最小限にとどめますために金融上の協力方を要請いたしたわけでございます。と同時にまた、信用保証協会の全国連合会に対しましても、信用保証の面につきましても積極的に協力するようにというふうな通知を出しておりまして、その結果といたしまして、それぞれの機関、それぞれ申し出のありました金融の援助をいたしておるところでございます。  それからなお、混合甘味剤メーカーに対しましては、その後混合甘味剤メーカーの製品の圧倒的部分がチクロ入りの混合甘味剤であるというふうな事情、あるいはまたそのために、使用禁止に伴いまして返品が相当どんどんなされてきたというふうな具体的事情等を判断いたしまして、これは三月十九日付で中小企業信用保険法に基づきます倒産関連の特例の指定を行なったわけでございます。この特例指定によりまして、混合甘味剤メーカーも特別ワク、要するに特例でございますので、保証限度につきましての特例とか、あるいは料率の引き下げとか、その他の特例を受けて、この範囲内で混合甘味剤メーカーを救済したというふうなことでございまして、現在のかん詰め業界の問題につきましては、先ほども農林省のほうからお答えがございましたように、いままでの金融ベースでの措置の一環としての配慮はいたしておりますけれども、いずれかといえば、農林省からお答えがあるかと思いますが、農中のほうにも関係しておる問題でございますので、そちらのほうの応援もいただいておりますが、同時にまた、いろいろの実態調査、九月末現在におきます実態調査を現在お進めになっておられるということでございますので、そこらの実際の具体的数字がどの程度になるか、よく農林省のほうと話し合いをいたしまして、さらに必要な金融援助措置があればそれを実施いたしてまいりたいと考えております。
  187. 森整治

    ○森説明員 いま長官からお答えがございましたように、業界から実態を現在いろいろ調査をさせておりますけれども、御承知のように、この問題は九月三十日現在でどういう在庫が残ったかということは、これはわりにそういう意味では簡単だと思います。  もう一つ、業界が非常に言っておりますことの中に、先ほど言いましたように、安売りをしておるということ、これは決してうそではない、事実であろうと思いますけれども、その実態なり、それから実際に個々の企業がどのくらい打撃を受けておるかということの調査というのは、少なくとも現在の段階ではなかなか把握しがたい事情がございます。したがいまして、いまの段階では、先ほど先生もいろいろ御指摘がございましたように、現在持っておるものはともかく処分をするのだという、そういう指導で九月三十日までやってまいりたいと思いますが、その後の時点で実際の在庫等がどういうふうになりますか、それを見た上で関係の各省と十分協議いたしまして、検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  188. 塚本三郎

    ○塚本委員 在庫ということの問題はさておきまして、すでにいままでに、ともかく三〇%から五〇%引き。言うきょうこのごろになってくると、おそらく三分の一くらいで寮や会社や、そういうところへ投げ売りしておるだろうと思われております。ともかく今月末で全部それが金をかけなければ処分できないという形になってくるのですから、ともかく一日一日これは値を下げてでもばらまかなければならぬ状態に立たされておるわけです。こんなばかな経済というのは私はないと思いまするが、しかしそういうことで、在庫の量によってきまるというよりも、ずっと在庫を少なくするために、いままででもそうですけれども、たいへんな赤字を背負い込んで、ともかく九月三十日までに、その製品価格がゼロになるよりはいいということで、在庫をなくすることに懸命の努力をしておりまするから、それを見た上でと言いまするけれども、これは明らかにたいへんな犠牲と被害がこの諸君にかかっておることは事実です。ですから、何らかの形で具体的にはっきりとするということだけは明言をしていただかなければ気の毒じゃないかというふうに思いますが、どうでしょう、農林省。
  189. 森整治

    ○森説明員 先ほど申しましたように、現在の段階でだれにどういうことをやるかということをいまはっきりさせるということと、それからいま指導しておりますそういう指導方針と、場合によりましては相矛盾をすることもあり得るかというふうに思います。それにいたしましても、金融を特に何か円滑化する措置は必要ではなかろうかということでわれわれも検討をいたしておるわけでございますが、今度はその前提になります、具体的にどういう段階でどれだけの損害があったのかということが、やはりまたそういう措置をとるためにも必要なことにな、まして、どうも回りくどくてたいへん恐縮でございますけれども、そういう全体の問題を考えながら、実は内部で寄り寄り検討をいたしておる次第でございます。お答えになったかどうかよくわかりませんが……。
  190. 塚本三郎

    ○塚本委員 立場はよくわかっておりますから…。いまから金融すれば、早く売ってしまえということと矛盾するような形になるでしょうし、それは立場はわかりまするが、しかし私は、ゆるく見ておりますと、期日が過ぎてもなかなか処置することができないうちに倒産が相次ぐということを懸念して、いまから先回りをして申し上げておいたわけです。  そこで、中小企業庁の長官に再度お尋ねいたしまするが、三月十九日付の信用保険法に基づきます中小企業関連倒産の特例を適用させること、このことを私が当委員会で強くお願いいたしまして、直ちに中小企業庁としてはその処置をとっていただいたことを私は記憶いたしております。今度の場合も、やはり同じような処置をなさっていただく必要が私はあると思いまするので、この点は、中小企業庁から大蔵当局にも強くこのことを働きかけていただかなければいけないというふうに思っておりますが、いかがでしょう。
  191. 吉光久

    ○吉光説明員 先ほどのお答えの中でお答え申し上げたのでございますけれども、混合甘味剤メーカーにつきまして、これは実は実態がきわめてはっきりいたしておりまして、混合甘味剤メーカーの製品の圧倒的部分がチクロ入りの製品であるということ、そしてまた混合甘味剤メーカーに対しまして相当の返品がなされ、その返品の結果、混合甘味剤メーカーが経済的にも相当大きな打撃を受けるおそれがはっきりしてきたというふうな実態が非常に明白につかめたわけでございます。そういう意味で倒産関連の指定を行たったところでございます。  ところが、いま問題になっておりますかん詰め等につきまして、先ほども農林省のほうからお答えがございましたように、実態の把握に現在つとめていただいておるという状況でございまして、これは私から申し上げるまでもなく御承知のとおりでございますけれども、生鮮食料品業界、特にかん詰め業界等のメーカー、それから卸、流通組織の段階、二次、三次、いろいろと込み合った事情がございます。同時にまた、先ほどもお話がございましたように、小売り商も非常に多いという状況でございます。どこでどういうふうに流通秩序が混乱され、どこを押えればどうなっていくのかということは、すべていまから農林省のほうでおやりになります実態把握の点にかかってまいります。したがいまして、農林省の実態把握の結果をいただきまして検討さしていただきたいと考えております。
  192. 塚本三郎

    ○塚本委員 これは長官がおっしゃったように全くむずかしい。原因が一つあると私は思うのです。というのは、小売り業者も三次問屋くらいも、いまここのところでこんな発言をしてどうかと思いますけれども、いけなければ返せばいいというふうな状態があるのです。だから小売り業者のごときは、相手は大きいんだからいけなければ差っ引けばいい、こういう形で、いいか悪いかわかりませんが、いわゆるいままでのそういう商慣習に基づいてということだから、上へ戻す、上へ戻すということになってまいりますると、一次問屋なりメーカーが全部これを背負わなければならないという形になるわけです。これは全くそのことが予測されるから、通達やチラシまで出したり、アンケートまでとって、あらゆることをして——業者はともかくいまは、引き取ってくれということで渡しておる。値段については文句は言わないからどんどん下げて渡しておる。こんなのがどっと来られたらかないませんから、あらゆるかん詰め、びん詰めば返品できません、こう言って再三にわたってやっておる。ところが、いま申し上げたように、返品はさせないときちっと言っておるけれども、いざとなったらどっと戻ってくる。またいままで一切の商品は、メーカーの名前がきちっと入っておりまするが、日にちが入ってない。これが困るのですね。だから、ともかくもとへ戻してくれというような形にすればいいわというような腹が、先にいけば先にいくほど業者の中には強いのではないか。だからこそ実態が把握できない。実はそのことにメーカーや一次問屋はおびえておるのです、現実の状態は。絶対にそんなことはさせないと言ってがんばります。がんばりますると、今度いわゆる資金力のある者が、私のほうは犠牲をして取りましょう、こう言ってルートを変えてしまって、このときこそ独占的にルートを広げてしまうということになったならば一体どうしましょうか。これはまたよからざる商業の道ができてしまうのではないか。だからやはり実態把握なさる必要があります。それでなければ、具体的に特別の金融措置というものはできにくいでございましょう。  しかしながら、実態が明確にならなければ動き出せないということになりますると、ここで業界の混乱はさらに大きくなってしまうというふうに思うわけです。だから、どこの段階だけはしますということは、長官の立場ではおっしゃることはできないでしょうが、ともかく犠牲の大きいところの業界に対しては、かつて三月十九日の通達と同じようなことを適用していただきたい。いまどの段階にこれをせよということは私は申し上げませんけれども、被害の大きい部門に対しては適用することが必要だということだけはお答えいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  193. 吉光久

    ○吉光説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、非常に流通経路が複雑でございます。したがいまして、どの段階のどこに、あるいはメーカーに出るのか、一次卸か二次卸か、あるいは小売りか、どこにどういう被害がどういうふうに出てくるかということが、現実の段階としましては皆目わかっておらない、こういう状況でございます。したがいまして、農林省のほうでせっかくおやりになります実態把握を待ちまして、補償の適用問題について検討いたしたいと思っておるわけでございます。  ただ、この際申し添えさしていただきたいのでございますけれども、その実際の実態がどこにどうなるかということによりましては、非常に複雑な問題が出てまいります。したがいまして技術的にも、どこをどう指定すればいいんだ——これは指定するという方向で考えました場合の難点でございますけれども、指定するという方向で考えました場合も、その被害の出てくる場所によりましては、非常にまた技術的に指定がしにくい。これは御承知のとおり、一々市町村長の証明にかかっておりますので、したがって、ほんとうに市町村長で証明できるかどうかは、技術的に非常にむずかしい要素をも含んでおるわけでございます。したがいまして、いま農林省のほうで実態把握を最終的におやりいただくわけでございますので、その実態把握の結果を待ちまして、よく農林省とも相談をいたしたいと考えます。
  194. 塚本三郎

    ○塚本委員 時間が参りましたから、最後に大臣にお願い申し上げたいと思います。  これは察するところ、数としては中小企業分野が圧倒的に多く被害をこうむりまするが、今回はおそらくしわ寄せば、相当大きなメーカーや一次の問屋のほうにいわゆる一番大きな犠牲が、いままででもかかっておりましたし、最終的にもこれはかかると見なければなりません。したがいまして、中小企業におけるかつてのような特例だけではなくして、この際は金額等も百六十億などというような数字を出してきております。しかし幸い相当の努力をして、農林省の御説明のように、少なくなっていきつつあればけっこうなことでございまするが、しかし百億を下ることはむずかしいと私は想定いたしております。したがって相当大きな金額を、いわゆるメーカーや一次問屋あたりには融資をする必要に迫られてくるだろうと私は判断いたしております。したがって、これらに対しても特別の金融の措置を講じていただく必要があるというふうに思いまするので、それに対する御答弁がいただきたいと思います。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、この問題について、法律的に国がどういう責任があるかないかということは一つあろうと思います。おそらくは、これは損害賠償法に照らせば、国に故意や過失があったわけではないということになるのではないかと思いますけれども、他方でことしの予算委員会政府がお答え申し上げている点もございますから、ただほうっておいていい問題だとは考えません。その場合に、非常に金融力のあるところは、そう政府あるいは政府機関にたよってほしくない、どちらかといえば零細なところを私どもは助けなければならないと思いますけれども、あるいはそればかりで済まぬこともあるかもしれない。いずれにしてももう少し実態を見まして、関係各省の間で最終的な取り扱いをきめたいと思っております。
  196. 塚本三郎

    ○塚本委員 故意や過失があったという御見解ですが、私は、過失があったんだというふうに判断いたしております。しかし、そんなことをいまここで議論しようと思っておりません。いずれにしても気の毒な状態だということははっきりしておることだということと、中小企業に対しては優先的に処置しなければならないし、この道は、おそらくいままででも再三あらゆる部面に相当努力してみえるから、これはてきばきと解決していただけるものだと私は確信を持っております。だが、今度の問題はやはり大きいところにしわ寄せが行くであろう、そしてまた大きいところこそ、今度の場合は、金融力はあることも承知しておりますけれども、最も大きな被害を受ける立場に立たされておるんだ、だからこういう問題については特別な金融の措置考えていただきたい、このことを強く御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  197. 八田貞義

    八田委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会      ————◇—————