運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-04-28 第63回国会 衆議院 商工委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十八日(火曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 橋口  隆君 理事 前田 正男君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 塚本 三郎君       石井  一君    稲村 利幸君       宇野 宗佑君    遠藤 三郎君       小川 平二君   小此木彦三郎君       大久保武雄君    奥田 敬和君       海部 俊樹君    神田  博君       小峯 柳多君    左藤  恵君       坂本三十次君    進藤 一馬君       田中 六助君    中山 正暉君       藤尾 正行君    増岡 博之君       山田 久就君    石川 次夫君       岡田 利春君    中谷 鉄也君       松平 忠久君    横山 利秋君       近江巳記夫君    多田 時子君       松尾 信人君    川端 文夫君       吉田 泰造君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         特許庁長官   荒玉 義人君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 委員の異動 四月二十八日  辞任         補欠選任   石井  一君    小此木彦三郎君   北澤 直吉君     奥田 敬和君   始関 伊平君     中山 正暉君 同日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     石井  一君   奥田 敬和君     北澤 直吉君   中山 正暉君     始関 伊平君     ————————————— 四月二十七日  兵器の輸出の禁止に関する法律案伊藤惣助丸  君外一名提出衆法第二九号) 同日  グレープフルーツ等貿易自由化計画再検討に  関する請願(足立篤郎紹介)(第三九八一号)  同(木野晴夫紹介)(第三九八二号)  同(木部佳昭紹介)(第三九八三号)  同(高見三郎紹介)(第三九八四号)  同(古川丈吉紹介)(第三九八五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  八五号)  工業所有権制度抜本改善に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出があります。順次これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田委員 特許法改正について質問いたしますが、第六十一通常国会本法改正が出されて、長時間の本委員会においての審議が行なわれておるわけです。したがって私は、その後の経過を含めて、若干御質問いたしたいと存じます。  今度出されました改正案は、前回改正点にさらに二点の修正を加えて提出をされておるわけです。しかし、わが国特許制度あり方をめぐって、前通常国会また今度の六十三特別国会において、やはり依然として関係各層からいろいろな意見が実は出されておるわけです。この意見動向というものは前通常国会と私はほぼ変わらない状況にある、こう判断をいたしています。前国会でも、少なくとも関係各層合意を取りつけ、国民合意といいますか。少なくとも関係者合意が望ましい、このことはしばしば実は指摘をされたところでありますけれども、依然としてこの問題は解決されていないように私は思うわけです。再度本国会特許法改正提出するにあたって、六十一通常国会から本法改正案を本国会提出するまでの間、この間の努力を一体なされたのかどうか。もしなされたとするならば、そういう経過についてこの際承っておきたいと思います。
  4. 荒玉義人

    荒玉政府委員 反対の御意見の方は、外と中、二つございます。外につきましては、前回は、弁理士協会、これは条件つきで、たとえば審査期間延長等——これは優先審査を含んだ意味でございます。それで、いろいろそういったこともぜひできなければ賛成できないというような御意見がございまして、それは優先審査制度を採用することによりまして、合意を得たつもりでございます。それから、いわば個人発明の集団でございます擁護連盟、これは残念ながら合意を得ておりません。内部につきましては、たびたび私、代表者と会いまして、いろいろ論議を重ねてまいったわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、やはり人員増を主にした特許行政拡充ということのみで問題を解決しようという考え方につきまして、それのみではやっていけないということでいろいろ論議を重ねてまいりましたが、不幸にしてこれは合意を得ておりません。これが反対意見に対する私たちの努力経過でございます。
  5. 岡田利春

    岡田委員 依然として本法改正に対する反対意見、また現状認識から賛成意見もあるようでありますけれども、これらの意見を総括しますと、大体どのような関係各階層の意見になるのか。そういう点についてはどのように整理をして政府は把握をされておりますか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  6. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず特許庁人員拡充その他環境整備等努力すべきではないか。これは当然われわれといたしましても、制度改正のみで問題が解決できるとは申し上げておりませんし、当然将来もやっていかなければいけない。第二に、運用面改善、特にアメリカにおける新しい審査方式等はなぜやらないのか。これはたびたび本委員会で申し上げましたように、われわれといたしましても趣旨を実施しておるつもりでございます。つまりこの出願人との交渉におきまして、できるだけ問題点事前に明らかにしていく。そうして必要な場合には面会制度等によりまして一挙に問題を片づけていく。これはわれわれといたしましても二年前から実施しております。その他運用面改善等につきまして、当然われわれといたしましては並行してやらなければいけないと思っていますので、これは全くわれわれと同じ意見でございます。  法案中身につきましては、早期公開制度をやめたらどうかという御意見がございます。これはたびたび趣旨説明で申し上げましたように、われわれとしては、早期公開制度それ自身法案からなくするということは、これは法案のねらいから見ましてできないことでございますので、われわれは早期公開制度は維持していきたいと思っております。ただ、公開されたあとのアフターケアにつきましては、優先審査制度を導入することによりましてカバーをいたしたい。同時に、事実上の紛争処理機関といたしまして、発明協会を母体とした特殊の機関によりまして、できるだけ当事者の紛争解決するということで努力することによりまして、一つ反対の方々の御意見も当然考えていきたい。  あるいは審査請求制度それ自身につきまして、実効があがらぬじゃないかという御意見がございます。これもたびたび申し上げましたように、要するに請求率がどの程度になるかという問題がございます。われわれといたしましては、一応いまの見通しでは実効があがるということで考えておりますので、実効があがらないという意見に対しましては、やはり請求制度を維持していきたいということでございます。  その他いろいろ意見がございますが、大体一番大きな議論は法律以前の問題、同時に法律中身でございますが、それに対するわれわれの見解は以上述べたとおりでございます。
  7. 岡田利春

    岡田委員 賛成反対意見を私なりに総括してみますと、反対意見として第一に、わが国の国情から考えて、特許完全審査による出願者権利をまず保護すべきである、まして事前公開憲法違反の疑いすらあるではないか。いわゆる完全審査主義をあくまでも貫くという立場に立っての本法改正に対する反対意見であります。  第二には、本法改正の時期は尚早ではないかという意見ではなかろうかと思います。その時期尚早論には、今日の特許行政実務体制がきわめて不十分であり、しばしば本委員会国会でも指摘されておるのに、わが国出願されておる特許に対する処理体制というものがそれに伴っていない。その結果、今日一大ピンチを招いておるのではないか。だからまず、法律以前の技術革新の七 ○年代に対応して実務体制を整備すべきだ、そういう上に立って本法改正を考えるべきではないのか。また、時期尚早論問題点として、現在出されている改正案の内容は体系的に見ても非常に不十分であるという意見があると思います。たとえば、政府は、オランダドイツにおいてすでに本法と同じような方向特許法改正をされている、このように言いますけれども、新規性調査機関の問題。あるいはまた情勢的には、PCT発効時まで多項性の問題の解決。あるいはまた、物質特許の問題についても、薬品及び化学物質に対するそういう問題についても総合的に検討すべきではないのか。あるいは実用新案の基本的問題の解決をはかるべきである等々の、そういう内外の動向から判断しても、いま改正するよりも、もし昭和四十八年にPCT発効がなされるとするならば、本法改正しても早急にさらに大改正に着手しなければならない。こういう二つの時期尚早論、大体大別して三つの反対意見になっておるのではなかろうか、このように私は判断をいたしておるわけです。  また、賛成意見を検討いたしてまいりますと、賛成意見はほぼ統一されておりまして、一大ピンチを迎えているこの七十万件、今年度七十五万件といわれる滞貨処理のためにも、とにもかくにも早急に滞貨処理をはからなければならない、そのことによって、重複研究、あるいはまた重複出願、あるいは重複投資の弊害を解決して、新技術公開することによって技術開発の阻害を除去していくという意味で、賛成論に統一されるのではないかと思うわけであります。  大体、こういう本法改正案をめぐる賛成反対意見を総括しますと、いま長官からもいろいろ言われましたけれども、私はそのように総括をいたしておりますが、その認識については同じでありますか。
  8. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大体先生のおっしゃったポイントと私は同じに考えています。
  9. 岡田利春

    岡田委員 六十一通常国会長官は私の質問に対して、滞貨のいわゆるランニングストックといいますか、業務を円滑に進めていく場合に一定量滞貨というものは当然あるわけです。その滞貨の量につきましては、当時は大体二十万ないし三十万件程度ではないかといわれておるわけです。そういたしますと、いま一年間大体十五万件の処理能力が出てきておるように見ておるわけですが、マクロの三十万件をとってみても、これは実は二年分の審査量に匹敵するわけです。そういたしますと、今度の改正で一年半たって出願公開を行なう。だからいま七十万件の異常な滞貨がございますけれども、これを一応、一度正常に——特許庁がいう正常な滞貨ランニングストックという面での滞貨を考えるならば、そこまで処理ができるならば早期公開という意味は薄れるんではないですか。三十万件で十五万件処理できるとすれば、二年分でありますから。今度の改正によっても、早期公開というのは出願して一年半後に公開されるわけです。だからいま一時は異常でありますけれども、これを特許庁がいう正常な滞貨ランニングストックという面で考えていきますと、早期公開によって権利公開技術公開することによってメリットがあるというそのメリットの問題からいえば、三十万件にしてもわずか大体半年程度でありますから、そう大きなメリットとは私は言えないと思うわけです。  そういう判断からいきますと、いま申し上げました賛成論の、重複研究、あるいはまた重複出願重複投資という面については、滞貨の一応の処理が正常になれば、その賛成論の意義というものは失われるのではないか、このように判断せざるを得ないわけです。そういう点についてどういう理解を持っておられるか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  10. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず問題を二つの面から検討したいと思います。まず第一に、正常な滞貨、大体私、二年程度という意味で申し上げたつもりでございますが、そういうところにするまでの非常措置があるかどうかというのが一つでございます。第二は、かりに正常化いたしました場合におきましても、これはあくまで平均でございます。したがって、国民経済全体に大きな影響を与える技術というものは、むしろ平均よりおそくなる傾向にございます。そういう意味では、正常化したらいいじゃないかというのと、先ほど言いましたように、平均的では困るので、むしろ例外的に出てくるものの公開というものはやはり必要だというのと、二つ考え方があると思いますが、この問題に対する私の考え方は、むしろ、今後技術革新が激しくなればなるほど、いまのような傾向は助長されるわけであります。したがって、そういった平均的で異常におくれる分野、しかもなおかつそこに重要技術があるということも予想されますので、私は、正常化した暁でもこれをとる意味があるように考えてございます。  それから、前者非常措置でございますが、いま先生のおっしゃったように、非常措置というものをどういう形でとるか。あるいは運用面でそういった非常措置というものは私はなかなか困難かと思います。そうするとその特別措置法律でやるかということになるかと思います。ただそのとき、特許権といいますのは生んでからあと存続期間は十五年でございますか、十五年間の権利関係というものは残るわけです。そうすると、非常措置でやった特許権と、そうでない特許権というものは、同じように社会に機能をいたすわけです。そういうときに、非常措置権利と普通の権利とは一体どういうふうな関係になるのかといったあたりに非常に問題があると思いまして、実は非常措置というものをとらなかったわけでございますが、したがいまして、どういう非常措置をとっていくかというところに一つの問題があるように考えております。
  11. 岡田利春

    岡田委員 私は前国会でも質問し、意見の食い違いがあったわけですが、それはいま長官答弁された点にあるわけです。長官答弁は、七十万件に及ぶ滞貨がある、これを正常に戻す方法が一体あるのか、ないから本法改正するのだ。言うなれば、いままで特許出願の増大に対応する適応性に欠けていた特許行政、この失敗というものをここで法律改正によって解決をしよう、従来のそういう適応性を欠いた欠陥の是正と、量的な立場から本法改正というものをしなければならない、そのことによって今日の特許行政ピンチを救わなければならない、こういう物事考え方発想に基づいて本法改正が出されておると、私はいまの答弁からは受けとめるわけです。しかし、特許をめぐる国際環境から考え、技術革新の今日の動向から判断をして、特許法がいまのままでよろしいと言う者は私はだれもいないと思うのです。特許法は当然改正されなければならぬということは、識者の一致するところだと思うわけです。その意味は、滞貨があるからという量的な立場から本法改正するのではなくして、技術革新に対応し、そしてまた特許をめぐる国際環境動向に適応するために、質的にわが国特許法というものは改正しなければならない、これがいわゆる国際的な流れだと私は思うわけです。そして、そういう量的な発想本法改正提案しながら、なおかつ、そういういま私が申し上げました質的な面をある程度従的に処理をしようとする考え方、こういう趣旨で私は本法改正案が出されておるのではないかと思うのです。そういう考え方は、現時点で見るとちょっと倒錯した物事考え方ではないのか、むしろ、特許制度というものはどうあるべきなのか、そういう立場から進め、さらにまた、わが国の特殊な条件にある膨大な出願件数というものが整理をされ、そして量的にも問題が解決をされ、審査も質的に高まっていくという立場、少なくとも七〇年代に入っている特許法改正というものは、そういう立場提案されなければならないのではないか、こういう点について非常に本法改正に対する不信感が強いと、こう思うのでありますけれども、この点についてはいかがですか。
  12. 荒玉義人

    荒玉政府委員 今度の改正は、平たく言えば審査促進と言っておりますが、その背景はやはり技術革新ということの影響から考えるべきだと思います。先ほど、未処理案件が累増したのは政府責任——私はそれを否定するものではございません。われわれも当然責任を感じておりますし、われわれの責任だと思います。ただ問題は、今後どういう形でやっていくか、これが技術革新という面から当然考えてこなければならないと思います。といいますのは、技術革新といいますのは、企業側事情と国の側が全く相反する事態になっていく傾向でございます。といいますのは、企業つまり民間の側は、早いテンポで技術公開すべきである、あるいは早く権利を設定すべきである、こういう要請になってまいります。技術革新といいますのは、まずアイデアから開発して製品を得るまでの期間というものはきわめて急速に短くなっておるわけでございます。一昔前とは比べものにならないというようなこと。それから新製品が次から次へあらわれてくる。いわゆる製品のライフサイクルの短縮化ということは、前者から見れば早い情報の提供という要求になり、後者から見れば早期権利の設定という要求になってまいるかと思います。一方、技術革新は、国の側からいたしますと、もちろん国で人間その他を拡充いたしましても、そのままであるならばおくれるということでございます。といいますのは、技術革新出願の激増をもたらしております。特に日本におきましてその傾向が顕著でございます。第二に審査はますます複雑になります。公知文献は増加いたしますし、あるいは一つ出願中身自身がむずかしくなってまいります。他との比較をするということはだんだんむずかしくなってまいります。そうしますと、一人当たりの処理は低下いたします。それを補う人間その他の面から見ればなかなか合わせていけない客観情勢にございます。そうしますと、そういった相矛盾した要請をどこで合わしていくか。もちろん国が努力すべきことは当然でございますが、その努力のみではたしていまの矛盾を解決できるかどうかということから、やはりこの際早い情報ということで早期公開制度というものが出てくる。できるだけ出願のうちで必要なものだけを審査いたしまして、結果として早くするというのが審査請求制度でございます。したがいまして、そういう意味では今度の改正は今後の技術革新に即応する体制づくりをやっていくという意味があると私は考えております。
  13. 岡田利春

    岡田委員 いまの長官の強調された答弁からいえば、前国会でも私の質問に対して長官は、新規性調査機関がなければ審査請求制度は成り立たないというものではないが、業界自身も待望している面はある、したがって、全面的にできなくとも、業種に応ずるか、あるいは時間は多少かかっても、とにかくこれらの事項を当然検討し、新規性調査機関については何らか解決を考えてまいらなければならない、実はこういう趣旨の私に対する答弁が行なわれておるわけです。しかし、一方において、本法改正にあたって、大臣は「諸外国におきましても、審査期間短縮に腐心しており、たとえばオランダ及びドイツにおいてはすでに本法律案と同趣旨制度を実施して、着々とその効果を発揮し」と提案理由説明で述べられている。しかしオランダドイツの場合は、いずれもこれは事前審査あるいは公知性調査、すなわち新規性調査機関というものが制度的に組み込まれておるわけです。したがって、長官答弁からいっても、特に本法改正提案理由説明からいえば、これが除かれておるところに一つの大きな体系を乱しておる欠陥があるのではないかと、かように私は思うわけです。したがって、今日の技術革新動向から考えれば、むしろ特許法あり方としては、新規性というものについて、高度な技術、こういうものについて特に意を注ぐとするならば、現時点においてもこれは必要な制度ではないか、当然望ましい制度ではないのか、それがあったほうがよりベターではないのかと私は思うわけでありますが、この点についていかがですか。
  14. 荒玉義人

    荒玉政府委員 新規性調査機関早期に設立されることが望ましいことは、先生と全く同意見でございます。ただ、今度の請求制度の前提としてそういった機関がなければ成り立たないか、いわば必要条件かという点につきましては、私は必ずしも必要条件であるとは考えていません。しかし、望ましいことは同様でございます。といいますのは、大体請求制度といいますものは、出願時における発明の価値が不明である、したがって、その後の開発状況等から見て価値あるもののみを請求していく、こういうことでございますので、本来それを選択する事情というものは主として企業側といいますか、出願側にあるはずでございます。したがって、ただその際、新規性調査機関がございまして、いわゆるサーチレポートを受けて、こういうものが過去にあるがおりるかどうするかという意味判断資料が与えられることは、われわれとしても望ましいという見地から、われわれといたしましても、できるだけ特許法改正意味のみならず、将来民間から出願前のいわば照会、むしろそちらのほうが社会的意味が大きいかと思いますが、そういった出願前から、つまり研究開発する前から、こういったものがあるかどうかということを迅速に結論を出す機関はぜひ早くつくりたい、そういう方向努力いたしておる次第でございます。
  15. 岡田利春

    岡田委員 審査請求件数説明についても、前国会説明があったわけです。その出願件数の中で防衛的な出願が、業界アンケートの結果大体二〇%程度推計される、こういう説明が実は行なわれておるわけです。そして特に外国出願件数の中で、防衛的出願件数が非常に多いと推定される。だから請求率の面で見れば、審査換算係数換算すると、審査ロードの面ではさらに下がることが期待できるという認識を持っている、こういう説明が行なわれておるわけです。さらにその後、この動向については深く検討されておると思いますけれども、審査請求件数推計について、相当時間もたっておりますから、本法を実施した場合にはこうなるだろうという精度の高い推計が行なわれておるものと期待をいたしておるわけですが、この点についてはどういう推計が行なわれておるのか。それと外国出願にあたって防衛的なものが多い、それを審査換算係数換算した場合には、それがロードの面でどの程度低下をすると見られているか、あらためて数字で御説明願いたいと思います。
  16. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず先般の国会以来どの程度精密調査をしたか。これはこの前の調査が、過去に現実に各企業出願しているものについていろいろな条件を与えて、そうしてどの程度になるかという問題でございますので、特にその後事情は変わっておりませんからわれわれは調査はいたしませんでした。したがいまして、前国会提案の基礎になった数字を基準としてございます。  それから第二の、御承知のように、特許庁の中のロード計算といいますか、それによりまして、実用新案一に対しまして国内特許二、それから外国特許国内特許の四倍、つまり八という換算をいたします。それから、実用新案請求率は七〇%、国内特許が八〇%、それから外国特許オランダの実例がございますから、それは四〇%。こういった意味換算いたしますと、昭和四十二年約六〇%、それから四十三年六〇%、大体六〇%というふうな換算請求率になっております。
  17. 岡田利春

    岡田委員 本法案が流れたわけですから、この数字も当然狂ってまいるわけですが、前回出された処理五カ年計画によりますと、昭和四十八年は五十二万六千二百四十七件程度になる。したがって処理期間は二年と六カ月程度である。最近のデータによりますと、また処理能力が上がっているようでありますから、この五カ年計画でいえば、四十八年には処理期間が二年以内になる、こう思われるわけです。本法が今年改正になったと見て、処理五カ年計画についてはどういう変化があるか。それと同時に、特許庁説明をしているランニングストックといわれる三十万件程度になる時点はいつと想定をしておるか。この点について説明を求めたいと思います。
  18. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先般提出いたした処理計画と今度の場合とは差がございます。前提条件といたしまして、まず出願の今後の伸び率、これは前回は過去五カ年の平均値の四・五%という伸び率でございますが、今回は五・五%。今回のものは予算の基礎になっておる数字を使っておりますので、その差がございます。あるいは人員の増加は前回七十名でございますが、今回は一応予算面で四十五年度が七十名、四十六年、四十七年、四十八年、四十九年、これが八十五名。そこがまず差がございます。あと細部は省略いたしますが。そういう与件の変化をまず頭に描きまして、正常未処理案件つまり二年分くらいの時期をとりますと、四十九年度あたりがおおむねそれに近い状態になるというふうに一応予定しています。
  19. 岡田利春

    岡田委員 前回出された資料といま説明された資料では、相当食い違ってきていると思うのです。前回の審議の場合も、この処理五カ年計画が一体確信があるのかどうか、この問題については各委員からずいぶん質問されて、その議論の中で、大体この面でいけるという相当確信の高い答弁が行なわれたと私は思うのです。たとえば四・五%の伸び率が五・五%、ここですでに一%違うわけです。そしてまた今年度予算では新規採用が七十名。去年の説明では四十五年から四十八年は九十名、転出が二十名、ところが今度は四十六年から四十九年が八十五名。ここですでに審査官の人員の面で五名の食い違いが出ておるわけです。そしてまた滞貨は、前回は四十八年度で五十二万六千二百四十七件ともいわれておるわけです。こういうギャップが二つも重なっておるのに、四十九年にほぼランニングストックという滞貨状況に近づくであろうというのは、どうもこれは前国会と今国会説明ではギャップが二重になっておる。むしろマイナス要因が非常に多いのではないか。ことし一年間審査能力も上がりつつあるということは聞いておりますけれども、この点非常に不可解に思うわけですが、いかがですか。
  20. 荒玉義人

    荒玉政府委員 今回提案いたしましたのは、先ほど言いましたように、一応政府の予算の算定基礎の数字でございますが、そういう意味でまず出願率が違っておることは、昨年度とことしの計算の基礎は、予算それ自身の基礎が違っておりますので、四・五と五・五の差ができておるわけでございます。もちろん、これにつきましては先般も議論ございまして、もっと客観的な出願予測はできないかという議論があったかと思いますが、これはいろいろな係数をやりましても、はっきり当たるという係数がないものですから、大体過去の平均値をとっておるということが差でございます。  それから人員の計画でございますが、これはもちろん一応の見通しでございまして、別に、必ずこれだけの人間をやるというふうなことを政府全体としてコミットするような、いまの立て方になっておりません。人員は御承知のように毎年、年度年度で勝負がきまっております。われわれはもっと長期的な確定数字がほしいわけですが、現在そうなっておりません。したがって、これはわれわれといたしまして、大体四十九年度で二年程度にするためにはぜひこれは確保しなければいかぬという意味で、むしろほんとにほしいといいますか、われわれ自身が望ましい数字だという意味でございます。もちろん昨年度も、別に人員それ自身政府全体としてフィックスしておるわけではございませんですが、ことしもまたその同じ事情がございます。繰り返すようですが、そういった意味でわれわれとしては、二年程度にするためにはぜひこれだけほしいのだという、強い要望を兼ねた計画だと御理解願いたいと思います。
  21. 岡田利春

    岡田委員 通産大臣にこの機会に承りたいと思うのですが、わが国特許の実務がこのような一大ピンチを招く異常な滞貨を生み出しておるわけです。そして通産省の一つの庁として、行政機関としていろいろな計画を立ててくるけれども、それがなかなか進まない。いわば情勢に適応できないために今日のこういう異常な滞貨を生み出している。それには、審査官の確保の問題から、待遇の問題から、実務体制の万般にわたる多くの問題が私はあると思うのです。しかし、この特許行政の特殊性及び独立性という面を考える場合に、当然これに適応する体制がないと、新しく法律を変えてみても、それに適応化していけないという欠陥が再び生まれてくるのではないか、私はこういう心配を非常にいたすわけです。だから、むしろ特許法改正を行なうよりも、いま、特許法実務体制の適応化に関する法律といいますか、特許行政実務体制、実務が情勢に適応化でき得る体制を築くための法律——ドイツで石炭の適応化に関する法律というのがございますけれども、特許の実務の適応化に関する法律を先につくるほうがむしろ大事ではないか。そういう情勢に適応できる体制というものがむしろ法律的に保障されるということでなければ、いろいろな計画を立てても、人員の面では定員法に縛られてくる。あるいは審査官、審判官の待遇の問題では、これまた国家公務員の一つの流れでもって規制されて、一向にこの改善が行なわれない。法律改正オランダ改正趣旨とほほ同じですというような大臣提案理由説明をしながら、これらの面については全然比較がなされていない。そのまま放置されている。こういう適応性に欠けておるところに、今日一大ピンチを招いた特徴が私はあると思うのです。そう考えてまいりますと、これらが依然として長年の間解決できないとするならば、特許実務の適応化に関する法律をまず先に出して、まずそういう体制をつくり、そして今日の技術革新に適応でき得る特許法改正を行なう、こういうことに踏み切らなければ、いまの通産省の中にある一特許庁としてこれらの問題を解決することは不可能ではないか。歴代長官、歴代大臣、これは常に問題になりながら、この基本的な問題の解決ができなかったわけです。本法提案にあたって、通産大臣のこの面に関する見解をこの機会に承っておきたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 行政の定員をできるだけ低く押えたいという政府の基本方針にもかかわりませず、特許庁の定員は、年によって違いますが、毎年百人前後ずつふえてまいっておるわけでございます。これは各省の中でも最も異例に属することでございます。と同時に、審査官にいたしましても、相当専門的な知識及び経験を必要といたしますが、これらの人の多くは、本来持っておる技術民間産業界等においては相当待望される人もおりますのに、実質は官庁の給与は必ずしも十分とは言えないというようなことから、ことに成長産業などにおきましては、その方面の専門家の審査官を得ることがだんだん困難になってまいると思っております。従来特許庁としては、特許案件処理についてともかく全力をあげてきたと考えますけれども、何ぶんにも出願件数が毎年相当大きく成長してまいります。したがって処理件数、ただいまおそらく十五万件くらいになっておると思いますけれども、滞貨は累積をするばかりであって、まことに国民に対して申しわけないことだと思うのであります。そういう意味で、いま御指摘のような特許行政の効率化をやはり考えていかなければならないとすれば、それは一つはやはり体制といいますか、仕組みの問題にならざるを得ないと考えます。今回の特許法改正案は、まさにただいま御指摘のあったような行政の効率化をはかろう、こういうことを考えまして提案をいたしております。このほかにも新規性調査機関を置くといったような問題も、先ほどから長官が申し上げておりましたように、あろうと存じますが、ともかく国の行政組織法としてはやはりそのたてまえを、どう申しますか、法律化するために今回の御提案を申し上げておるというふうに私は考えておるわけでございます。
  23. 岡田利春

    岡田委員 あとからこの問題また触れますので、処理件数について質問いたしておりましたから……。  ではこの機会に、おそらく本法改正案を出すにあたっても、あらゆる角度から検討されたと思うわけです。もちろんわが国出願内容の特殊性といいますか、諸外国に機械的に比較ができないことはもちろんのことでありますけれども、しかし先ほど質問いたしておりますように、新規性調査機関制度的に採用した場合、審査請求は当然変わってくると思うのですね。もちろんわが国出願の内容の特殊性はありますけれども、それでもなおかつ新規性調査機関制度的に設けた場合には、当然審査請求が変わってくると思うわけです。もし本法新規性調査機関制度的に採用した場合には、請求率はどの程度ダウンすると考えられるのか。たとえばオランダの場合、四〇%の事前審査を行ない、そのうち二〇%が請求されるというような数字になっておるように思うわけですけれども、わが国の場合には、出願の内容はいろいろ違いますけれども、特殊性はありますけれども、なおかつ相当な請求率のダウンというものはあると思うわけです。この面の推計をしてみたことがありますか。もし検討されたとすれば、この点について説明いただきたいと思います。
  24. 荒玉義人

    荒玉政府委員 新規性調査機関の、おそらくどの程度事前調査があるかということに関係すると思います。といいますのは、オランダの場合IIBというのは大体個人のマンパワーでございます。したがってある意味におけるわれわれの通常の審査にきわめて類似しています。現在われわれ考えておりますいわゆる特許情報センター、これは機能的には新規性調査機関と同じでございますが、これはそういうマンパワーでなくして、厳密な機械検索ではございませんですが、一応電子計算機を使う。まず一次的には分類中心。分類の場合には、単に日本分類のみならず、あるいは国際分類、アメリカ分類、そういったものを総合してまず分類で検索する。それでは少し広過ぎるからキーワードを使って少し狭くするというようなこと。これはいま実は開発しつつある過程でございます。したがってそういう意味では、どの程度それが出てくるかということは、まだ具体的には出てこない。したがって、こういうものが出てくるからどうかという調査をするにしては、まだ熟しておりません。残念ながらこういう事前調査があればどの程度請求率が変わるかという調査はやっておりません。
  25. 岡田利春

    岡田委員 本法改正の実施は昭和四十六年の一月一日とされています。ある人は、たとえすぐれた制度でも、それを消化することができるような運用体制がなければ何の意味も持たない、むしろそれによって引き起こされる混乱の量だけがマイナスである、こういう指摘をする方もおるわけです。私は当然だと思います。  そこで、あらためてこの機会にお聞きしておきたいと思いますけれども、正常な体制に入る時期は一応昭和四十九年にそれに近ずくと長官は述べられましたけれども、正常な状態になる年次は、では一体昭和五十年なのか、五十一年なのか、この点についての確信のほどを聞かしていただきたい。  それと同時に、正常な滞貨については、前国会では二十万件ないし三十万件、こういう表現で長官は述べられたけれども、その後の処理能力の面から考え、あるいは出願件数の伸び率の変化にかんがみて、大体その時点の正常なランニングストック滞貨件数はどの程度だと思われますか。それもあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  26. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私、申し上げました趣旨は、要するに二年程度という意味でございます。したがって、十五万件処理できる能力があれば、おおむね二年ですから三十万件、そういう趣旨で申し上げておりますが、まあ、先ほど言いました、われわれの希望する人員その他が確保できるという前提で考えますと、おおむね四十九年程度におきまして大体二年二カ月。ですからおおむね二年程度。そのときには、これは厳密でございませんが、大体年度末の未処理案件約五十二万、その処理がおおむねこのとき二十四万。ずばり二年ではございませんですが、おおむねここらあたりが一つの目標かと考えています。
  27. 岡田利春

    岡田委員 早期公開について、きのう中谷委員からも、権利保護という面から、西ドイツの連邦裁判所の違憲判決の問題をめぐり問題が提起をされたように私は聞いております。早期公開というのは、結局技術及び権利公開ということに尽きるのだと私は思うわけです。しかしわが国では、出願されたうち公告がされるものは大体四〇%強だ。これが漸次上がっていく傾向はあるでしょうけれども、大体いままでの実績では四〇%強である。そのうちに公告されて実施されるものは大体四〇%程度であるということは、前の国会でも説明を受けておるわけです。そこで、質的な面から考えれば、一応の傾向として公告されるもの四〇%が漸次質的に上がっていくと見ても、実績に照らし合わせて、そういう膨大なものを早期公開をするということは、質的に見て一体どれだけの意味を持つのだろうか。技術公開といっても、実際それが新技術として値するもの、こういうものが四〇%程度であるとするならば、あとの六〇%は、公開はしたもののまあ役に立たないものである。技術公開意味をなすものではないし、まして賛成論重複投資重複研究技術早期公開に、これは役立つものでも何でもないわけです。したがって、膨大な情報だけが公開によってはんらんをして、ほんとうに必要なものは一部分であって公開された側も、この膨大な内容を調査をするのには相当なロードがかかる。むしろ、そういう混乱の面、マイナス面があるのではないかと私は思うわけです。  私はそういう面から考えてまいりますと、はたして早期公開というものが現時点でどうしても必要なのかどうか。むしろそれは、メリットよりもデメリットのほうが多くなる可能性すら持っている、こう私は思うわけです。まして新規性調査機関のない公開制度であるという点は、より一そうそういう面でマイナス要因が多いと思うわけです。私はそういう見解を持つわけですけれども、かえって特許行政としてそれに要するむだな浪費、むだなロードというものが非常にかかる、こう思うわけです。そして、先ほど来から質問し、説明を聞いておりますように、なかなか実務体制はいろんな制約があってその情勢に対応できない、こういう欠陥というものが依然としてなかなか解決されていかないということになりますと、私は、早期公開の意義というものは、本法改正案の意義というものは、そうメリットのあるものではない、むしろデメリットのほうが多い可能性すら持っている、こう私は思うのでありますけれども、この見解についてどうお考えになるか承っておきたいと思います。
  28. 荒玉義人

    荒玉政府委員 公開制度には、もちろんメリット、デメリット両面ございます。情報は、正確、つまり価値あるかどうかということと迅速、二つの面から評価されるだろうと思いますが、いまの考え方——もちろん時間がたてば、これは正確なものができることは事実でございます。しかし、それでは特許情報としての価値、つまり研究開発を進める場合に、特に開発を進める場合に、研究段階以上の非常に膨大な金がかかるわけです。それを回収するにはいわゆる特許独占でございます。したがって、そういう投資をする価値ありやなしやという判断に資するためには、やや精巧を期さない情報でも早く提供するということをねらったのがこの原案でございます。したがって、そういったタイミングと価値とは矛盾しますが、いずれをとるかといえばタイミングをとりました。そのほうがむしろ実際研究開発に役立つのではないか、こういうふうな考え方をとっておるわけでございます。
  29. 岡田利春

    岡田委員 まあ百歩譲って、早期公開審査請求制度本法改正案趣旨というものを一応容認するという立場に立っても、この制度にはやはり依然として問題があるわけです。もちろん権利保護という問題、特に独占権を保護する、保障するという立場に立っても、早期公開制度については問題がございます。そして先ほど前段で私が質問いたしましたように、これまたいろいろな問題があるわけです。ですから百歩譲って考えてみても、まず早期公開というのは、外国出願もございますし、精度の高い、しかも一字一句誤ってはならないものでありますから、相当な事務能力とロードがかかるわけです。なかなか実務体制はいまそこまで伴っていない。しかし、いま一年半後といいますけれども、実際問題としてすぐその準備にかからなければならないという問題も実はあるわけです。  そうしますと、そういう情勢から判断すれば、百歩譲っても、公開というのはリスト程度にするというようなことを考えたほうが、むしろ、いまの実務体制から検討しても、その程度のほうがいいんじゃないのか、百歩譲ってもそう判断するわけです。そういう意味で、あまりこの原案にこだわらないでけっこうではなかろうか。まして外国ではそういう判例も出ておるわけですし、あるいはまた、旧法において出願をしておる件数がすでに七十万件に達している。この人々の現行法における保障という問題もございますし、そういう点が当然このベースの中で考えても問題点として出てまいると思うのでありますけれども、そういう点について弾力的に対応する考え方はお持ちありませんかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  30. 荒玉義人

    荒玉政府委員 公開の方法といたしましては、おそらく三通りございます。第一は、原案の特許は全文公開、原案の実用新案は要部公開、すなわち図面並びに請求範囲。もう一つ、いわゆるリストで公開する。あと特許庁で閲覧に供する。大体三つございます。で、われわれは当初から、それぞれの案の長所短所を金銭的な面から、あるいは部内の事務体制の面から、あるいは外部の利用者の面、それぞれこれは利害が必ずしも一致いたしませんが、それぞれの角度から検討してまいりました。したがって、原案作成者といたしましては、私はいまの案が一番いいというので提案しておるわけでございます。といいますのは、特許庁の事務体制の問題でございますが、もちろん公報を印刷するまでの一つの手間というものは、全文公開の場合にかかります。もちろん印刷は、これは私、外注してやるつもりでございますから、それは関係ございませんですが、そういった意味ロードと、今度はリスト公開した場合に、あるいは閲覧の殺到をどう防いでいくかというあたりの内部的な問題でございます。したがって、そういう面と、それから利用者の立場になりますと、これはたとえば原案でございますと、特許百件を一つの束にいたしまして印刷するわけでございます。大体千円ちょっとぐらいおそらく売り値がかかるだろうと思いますが、これをかりに業者がハードコピーをとれば、あるいは十倍近いコストがかかる。と同時に、迅速に入手するかどうかという点につきましては、リストですと途中で時間がかかるという面もございます。したがいまして、全体の面を考慮いたしまして原案を提出した次第でございます。
  31. 岡田利春

    岡田委員 特許庁実務体制についてちょっと深めてお聞きいたしたいと思います。  まあ前通常国会でも、実務体制についていろいろ具体的な指摘、あるいはまたいろいろな角度から議論がなされたことは、御承知のとおりであります。したがって、そういう意見を基礎にして特許法改正が流れたわけですから、今年度予算要求にあたり、そしてまた昭和四十五年度に対する方針についていろいろな角度から検討されたと思うわけです。特に予算上あるいはまた実務体制の方針について、画期的な改革というものが行なわれたかどうか。行なわれないとすれば、そういう検討というものは行なわれておるのかどうか。まあ先ほど機械検索等の問題が出ましたけれども、では相当近いうちに画期的な改革を行なうという問題点があるのかないのか。もしそういう点があれば、この際明らかにしてもらいたいと思います。
  32. 荒玉義人

    荒玉政府委員 事務体制で一番われわれが重点を置いてやらなければならないと思っていますのは、例の出願の事務でございます。そして出願の事務の中で、いわゆるコンピューターを導入いたしまして、まあその功罪ということは、当然われわれは考えていかなければいかぬと思います。  といいますのは、計算機を入れるということによって、あるいは出願人の出す書類、内部の事務の体制——実はこれが電子計算機を中心に即応するような体制になっていないのが現実でございます。したがって、やはり電子計算機を導入した以上は、計算機を中心として、計算機が最も効率をあげるような事務体制、これは先ほどいいましたように、内部のみならず外部の協力を含めて、そういう一つの画期的な事務体制をつくらなければ、出願事務に電子計算機を入れた意味というものは発揮できない。この問題は最重点に考えております。そして、内部の専門家で総合的にやらしておりますが、同時に、これは一たび着手しますと、そう簡単なものでございませんので、今年度、四十五年度二百万の金を用意いたしまして、外部のそういった各界の専門家とタイアップいたしまして、どうすれば電子計算機を最も有効に活用して早く処理が流れるかということに重点を注いでまいりたいと考えております。
  33. 岡田利春

    岡田委員 事務の効率をあげるために電算機の導入をして、この事務をより効率的なものに完成をしていくということは、もちろん今日の趨勢としては大事だと思います。しかしながら、私はそれにもまして大事なことは、まず実務体制の面では、特許行政の特殊性及び独立性にかんがみて、これに対応するいわゆる人的な問題の解明、このことが何にもましてより大事ではなかろうかと思うわけです。  たとえば電算機が入ればキーパンチャーの人がおる。普通民間の場合ですと、電話交換手でも、キーパンチャーでも、特殊な労働条件を労使が協定をして健康の管理をはかる、こういうことがなされておるし、そのことによって効率をあげるということが当然労使協定で行なわれるわけです。国の機関の場合にはなかなかそういかないわけです。しかし、これから政府全体としても、こういう制度、電算機等の導入がどんどん進められていくわけですから、それに対応する制度を改革していく、こういう積極的な姿勢がなければならないのだ、私はこう思うわけです。ところが一向にして、この審査・審判官のいろいろな問題については、なかなか議論されても改革の方向に進んでいかないというのが現状であります。  私は、本法改正にあたって、これらの問題は、特許庁、通産省自身がかくあるべきが望ましいというものが当然検討されなければならなかったのではないかと思うのです。こういう点を通産省自体、検討されたのかどうか。こうあるべきが望ましいという、そういうものをお持ちなのかどうか。いや、それは単なる希望はあるけれども、それは人事院のほうでいろいろ検討してもらうのだ、こういう程度のものか。この点がやはり姿勢としてきちっと確立をされないと、なかなかこの特殊性のある、独立性のある特許行政というものの人的な体制というものができないと私は思うわけです。そういう点については一体どうなのか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  34. 荒玉義人

    荒玉政府委員 審査・審判官の待遇改善の問題かと思っていますが、御承知のように、現在、審査官補四%、審査官、審判官八%のいわゆる調整号俸が付加されております。大体これは現行法の改正の際の附帯決議の趣旨を尊重いたしまして、三十五年度から施行になっておりますが、われわれといたしましては、この増加を執拗に人事院当局に対して要求してまいったわけでございます。これはもちろん他の公務員に例を見ないところでございますが、これを拡充いたしたいというのが私たちの強い願望でございます。
  35. 岡田利春

    岡田委員 人事院からも来ておりますから伺っておきたいと思いますが、いまの長官答弁では、どうも従来の四%、八%の給与の問題について特にこの増額を期待しているという程度で、そう真新しいものではないと思うわけです。いずれ特許法改正もあるわけですから、実務体制の適応化について、特にこれらの問題を中心にして、やはり外国の例もありますし、また内外の意見も聞かれることも大事じゃないかと思うのです。でなければなかなか優秀な審査官を確保できない。ある一定の経験を経るとむしろやめて民間に行くというような傾向を、いまの見通しでは、さらに一そう助長するだけに終わるのではないか、こう思うので、特にそういう点については、通産省当局としても、積極的に資料を収集し、こうあるべきだということをやはり描いていくくらいの姿勢がないと、その下にある者が信頼をしていろいろな問題点に協力をするという意欲がなかなか出てこないのではないかと思いますので、その点指摘をいたしておきます。  人事院にお伺いするのでありますけれども、先般の国会でも、私はこの点について人事院から説明を求め、特にオランダにおける審査・審判官の待遇について述べて、当然これらの問題については調査をし検討されるべきではないのかと言って、その点については、これからの問題として、特許行政の特殊性、独立性にかんがみ、十分検討していきたいという答弁を実はいただいておるわけです。その後まだ一年たっておりませんけれども、一体そういう調査を進められておるのかどうかという問題、それと同時に、この審判官、審査官の特殊性、独立性にかんがみて、その待遇を考える場合には、まず一つには、こういう特殊的な業務でございますから、労働時間という問題が考えられる。第二にはそれにふさわしい給与という問題が考えられる。また、仕事の特殊性にかんがみて、昇格の面では普通の一般公務員のようなわけにはまいらぬわけでありますから、その昇格に見合う制度的な問題の解明、こういうものが当然考えられなければならないと思われるわけです。さらに、いま採用された者は一応官補として四%のアップをいただいて実務をしながら研修をしておるのが実態でございますけれども、ある一定期間、当然研修制度というものが設けられなければいかぬのではないのか、このように私は考えるわけです。もちろん、裁判官あるいは判事、検事の場合には特別職ではございますけれども、少なくとも、これに準ずる、これに見合うようなそういう労働条件あるいは待遇が確立されなければならないと思うわけです。そういう点について、その後の検討された内容、あるいはまた私のいま述べている点についての見解を、この機会に承っておきたいと思います。
  36. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 特許庁審査官、審判官の待遇の問題でございますけれども、この関係につきましては、現在一般の行政職の俸給表を適用をいたしております。さらに、これにつきましては、御指摘のように、調整額を八%、官補につきましては四%つけておるわけでございますが、この関係は、やはりその職務の独立性、困難性ということを主眼にいたしまして、かつ技術官としての採用の困難性というものを考えまして、つけてまいっておるわけでございます。こういう審査官、審判官的な職種は、行政のほかに、海難審判庁の審判官あるいは人事院の公平審理官というように、ほかにも幾つかございますけれども、そういうところについては、まだ問題はございますけれども、特別な優遇措置を講じていないわけでございますが、この特許庁関係につきましては、それなりの特別な優遇措置を現在講じてきているというふうに考えております。  さらに昇格問題でございますけれども、いま御指摘のように、たとえば審査官につきましては、官補あるいは審査官、審査長という職務の段階が三段階ということで、行政の課長補佐、係長、係員という段階とは違いますので、特別の俸給表をつくるような一つの理由もないわけではございません。しかしながら、そういう職種がほかにもたくさんございますし、かつ人数も少ないということで、俸給表は類似の俸給表と違いまして、特別な調整額を加味し、他面におきまして、昇格におきましては、審査官については、六等級から四等級までの昇格につきましてはスムーズに考えること、さらに三等級——これは行政におきましては総括課長補佐の等級でございますけれども、そこの上がり方につきましても、他の行政機関の上がり方に準じますように、たとえば本年新しい予算におきましても、十幾つかの定数を新たに設置しましてスムーズな上がり方を考慮していくということで現在対応しておりまして、その関係といたしましては、一応できるだけ措置してきているというように考えております。  なお、もっと根本的なお考えといたしまして、労働時間の問題と研修の問題等につきましてお話がございましたけれども、労働時間の問題そのものは、国の全体の問題、生産力の問題でもございますので、民間の一般の状況というものを考えて公務員全体として考えておるということにならざるを得ないわけでございますけれども、ただ前回私が申し上げましたように、審査官、審判官につきましては、いわば裁判官にパターンが似たような面もございまして、たとえば、現在の勤務時間四十四時間を適用しまして、それから一時間でも超過勤務をすればその分をやる、そういったようなやり方が適当かどうかという点については、そういう超過勤務手当制度というものがなじむかどうかという点については、若干の問題点を持っておるわけでございます。それはむしろ研究職員、あるいは現在問題になっております教員の超勤問題というものにつきましても同様でございまして、特に教員の問題などにつきましては、私どもとしては、むしろそういうところから改正をしていくべき必要があるのではないかという感じを持っておりますけれども、今後そういう問題について、ほかとの関連におきまして検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。  それから、外国調査につきましては、私どもといたしましては、それぞれの特殊な職種、たとえば教員の問題とか、あるいは警察の問題とか、いろいろ特殊な職種について外国ではどういうふうな状況になっておるかという点につきまして、だんだんに調査してまいりたいと思っておりますけれども、予算の関係もございますので、当面の問題は、こちらで調査をする段階がまいりますまでは、特許庁からいろいろ資料をいただきまして調査をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  37. 岡田利春

    岡田委員 特殊な俸給表をつくると他にもいろいろあるのでというお話でございますけれども、一般行政の中で、この審査・審判官のように特殊性——いわゆる自分が最終判断を下すわけですね。裁判官にも準ずるものじゃないかと私は思うのですが、この審査・審判官と同質のものが他にありますか、いかがですか。
  38. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 裁判官に似たようなパターンという面がある点につきましては私も同感でございますけれども、ほかにも、たとえばいま申し上げましたように、海難審判庁の審判官とか、人事院の公平審査官とか、あるいは社会保険審査官とか、そういう職種が幾つかございまして、やはりそういう問題とのからみもございますので、あわせましてやっぱり検討する必要があるのではないかというふうには考えております。
  39. 岡田利春

    岡田委員 似て非なるもの、似ていて全く同質のものもいろいろありますけれども、いまあげられた面でも、やっぱり似て非なるものもあると思うのですよ。私は同質のものは少ないと思うのですよ。私もいろいろ聞いてみたのですが、まあ限定されてくるのじゃないか。そうであれば、そういう点について、もう少し適用できるような点について鋭意検討を進め、結論を出されるように努力されたらどうか、こう思うわけです。  いま人事院では、官補四%、そしてそのあと審査官、審判官が八%の給与の上積みをしておる、こう言われますけれども、この資料によりますと、たとえば、通産省の本庁の技官と特許庁を比べますと、入庁十年で特許庁では号俸は四の三、本俸に八%含んで五万七千二十六円。これは昨年の七月一日現在です。本庁の技官は四の四で五万五千四百三十二円。ずっと差が縮まっておるわけですね。決して八%の差というのはないわけです。入庁二十年になれば、特別調整額二五%を含んで九万七千二百八十二円、これは全く本庁と同じであって変わりがない。こういう数字が明らかにされているわけですね。ですからそういう面で、八%を見ておるからそれが妥当だ、むしろ重複しているんだという点については、前段で申し上げた趣旨からいって、また実際の号俸表からいっても問題点があるのじゃないか、このように私は思うわけです。もしこれが違うなら違うということをお聞かせ願いたいと思うのです。あるいはまた、通産省の技官と昇格実績を比較いたしますと、これまた違いがあるわけですね。四G昇格時について比較すると、三〇K−三三Kで本省技官よりも一年のおくれがある。三四Kでは九カ月のおくれとなっている。まあこういう点は明らかなわけです。したがって、格差はなくなるようにしておりますけれども、しかし、それぞれの内容を調べてまいりますと、この昇格についても依然として格差がある。むしろ低い。上回っておるところはないのですから、昇格の面では下回っているわけですね。ですからオランダの場合は、昇格についても、むしろそういう点については、水準よりも下回らない程度に引き上げていくという形になっているわけですね。それは給与についても特別に扱う。労働時間については七時間であり、昼休みは一時間四十五分である、こういうぐあいに、この特殊性、独立性というものに対してやはり対応しているわけですね。ですから、もう七〇年代に入ってまいったわけでありますから、そういう体系整備が必要であり、特にいま申し上げている審査・審判官については急いでこれに対応するようにすべきではないか、こう思うわけでありますが、いま私が指摘した点について違いがあるならば、その違いを指摘していただきたいと思いますし、特に御意見があればこの機会に承っておきたいと思います。
  40. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 審査・審判官の調整額の問題でございますけれども、これはやはり職務の特殊性としまして、それぞれ独立的な責任を持ってやっておるというところに一つのポイントがございます。そういう意味合いで申しますと、やはり若くても相当な給与をとるということは必要でございますので、そういう点で、ほかの行政に比べまして相当高い給与を支給するということになろうかと存じます。しかし、一面におきまして、責任という面から見ますと、普通の行政技官の場合には、あるいは一般行政官の場合には、だんだん上がってきますと責任がだんだん非常に重くなってくるという面がございまして、そういう点から申しますと、審判官の場合には若くても責任という面で相当な厚みを持つ、そういう意味で上へ行くに従って若干の厚みといいますか、そういう点が縮小されるということは、これはその職務の性質として、大まかに言ってまずいことはないのじゃないかという感じがいたします。  で、問題点は、いま申されました昇格状況、行政技官あるいは事務官との昇格状況の違いの問題でございまして、その昇格状況は、一つにはやはり組織的な問題がございますものですから、人員の構成によりまして、ある年次では早かったりおそくなったりする、そういう面が若干ございます。したがってそういう点、私いま先生の御指摘になった点を、非常にこまかくには調査をしてみないと何とも申し上げかねますけれども、やはり行政技官等と昇格がほとんど違わないように、私どもとしては、昇格面についてできるだけ考慮していくということでやっておりまして、特許の場合には、ある年次で非常にたくさんとりまして、次の年次であまりとらなかったという、いわば非常に弾力性がだいぶ前にはございまして、そういった関係が若干響いている面もございますけれども、できるだけ、先ほど申し上げましたように、等級別定数面でバランスの欠くことのないように努力いたしておりますし、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  41. 岡田利春

    岡田委員 時間の催促でもうやめますけれども、やはりいまの制度に当てはめるとどうしても無理が伴うのですよ。いまの昇格の問題にしても、号俸についても、いまの制度では無理が伴う。いわゆる待遇が昇格に基づいているものですから、無理が伴うわけですよ。ですから基本的には、やはりこれにふさわしい、対応できる給与並びに制度というものをつくってやらなければならないということに尽きるのだと思うのですね。でなければ、いつまでいっても——擬制昇格させる方法もありますけれども、これまた制度を乱すことになると言われればそれまでですからやはり矛盾は解決できないと思うのですよ。したがってその点、特に強く、この機会に検討を要望しておきたいと思います。  ただ、最後に一つ人事院にお聞きしておきたいのは、四%、八%の科学的な根拠というものがあるのですか。
  42. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 この四%、八%は昭和三十五年に制定されたものでございまして、私としては、当時立ち会ったわけではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、やはり職務の特殊性ということで、独立的な機能として職務を行なうという点が第一のポイントでございますし、あわせまして、技官といたしましての採用がなかなか困難であるという二つの面からこの点が制定された。ほかの面に比べてやや有利だという感じで制定されたというふうに承知しておりますし、私もそう考えております。
  43. 岡田利春

    岡田委員 行政組織としての、特に特許行政審査・審判官というものを一体どう受けとめるのか、認識をするのか、どう認めるのか、それが定まらないとならないと私は思うのです。そういう点について重ねて問題の解決をこの機会に強く要望いたしたいと思います。  まだたくさんあるのですけれども、最後に、私はいままでずっと質問をしてまいったわけですが、一つには実務体制の適応化という点について特許庁はもう少し掘り下げて検討すべきだ。そういう体制をつくっていかなければならない。荒玉長官は、法案が流れておるから、これは長官として長いんじゃないかというような感じがするのですが、いままでは、とにかく長官も腰かけで次々とかわっておるのですから、通産省自体が大体特許行政をどう見ておるかという問題がございますし、また、特許行政の中における実務体制という問題についても、さらに深めていかなければならない問題がある。法律改正以前の問題が解明されていないというところに、致命的な問題があると私は思うのです。それと同時に、本法改正はいろいろ今日の情勢に対応するために審議をしておるけれども、結論的には、滞貨が激増してそういう意味処理をはからなければならない、そういう量的な面から本法改正の組み立てを行なったものと私は理解せざるを得ないわけです。私はむしろ今日の特許法の抜本的な改正をはからなければならない、現状に適合したものにしなければならないという点においては一致するわけでありまして、そういう意味では、ほんとうに体制を整備すると同時に、質的な面から特許法改正をはかる、こういうことでなければならないという考えを持っているわけです。したがって、PCT発効の情勢ともにらみ合わせて考える場合に、私は、いまここでどうしても無理をしてこの特許法改正を行なわなければならない、いま提出をされている改正案そのものを通過させなければならぬということについて、非常に多くの疑問を持つわけです。おそらく与党の諸君の場合でも、はたしてこれでいいのかどうかという点については、内心じくじたるものがあるのではないか、こう思うわけです。本法改正案審議にあたっても、そういう面で前回は非常に長い時間かけておりますけれども、幾つかの問題点が提起をされておるわけですから、そういう点では、政府はそういう審議の情勢に対応するというような謙虚な気持ちを持って処すべきではなかろうか、こう思うわけです。最後に、私の指摘に対して通産大臣から所信を承って、質問を終わりたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先刻も申し上げましたようなことでありまして、確かに、国際条約の問題であるとか、あるいは実用新案の問題であるとか、いろいろ議論されている問題はございますけれども、いかにもそれを待っておるということができないのが現状でありますので、ともかく現状を何とかして改善をいたしたいということで、御審議をお願いいたしておるようなわけでございます。
  45. 八田貞義

    八田委員長 塚本三郎君。
  46. 塚本三郎

    ○塚本委員 案件処理するにあたりまして、滞貨がたいへん累増しておるということが改正案の最もねらうところだろう、これを消化するためにこの案が出されたというふうに受け取っておりますが、しかし、滞貨処理するための根本的な問題は、何といってもこれをさばくべき人の数が少な過ぎるということが基本になっておることは、昨年もまた同じようなことが言われたはずでございます。普通の何らかの支障ができて滞貨がふえてきておるのではなくて、出願件数が非常にふえてきておるということが決定的であるとするならば、制度を変えるということも、それは一つの方法ですけれど、やはり処理すべきその人の数を出願件数と並行してふやしていかなければいけないということが基本だと思うわけです。にもかかわらず、この場合、総定員法という大ワクでもって縛られておるという根本的な矛盾を実は含んでおる。それを外からいろいろとゆさぶりをかけておるというのが今日の段階ではないか、こんな感じがするわけです。したがって、この特許の問題だけは普通の行政機構とは違うのだから、総定員法のワクに縛られない方法を講じなければ根本的な解決はあり得ないというふうに考えますが、大臣、いかがでしょう。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 特許の問題に特殊性がございますことは、私も認めておるわけでございます。したがって、先ほどから申し上げておりますとおり、年によりますけれども、毎年百人前後の増員も特許庁ではいたしてまいった。ですからこれは、全体の行政定員の据え置きなり削減なりということとは、まさに例外的に処置をしてきておるわけでございますけれども、過去における審査官の定員なり処理件数なり、あるいは滞貨なりを見ておりますと、定員はずいぶんふえてまいりました。ふえてきておりますけれども、滞貨のほうもまた非常にふえてきておるという状態で、定員をふやすのにも、またこれを充足するのにも、おのずから物理的な限度がございます。私はやはり仕組みをひとつ変えるということが——それはかりではいけませんけれども、どうしても必要になってくるのではないか。機械による処理というものは、事柄の性質上、非常にできやすいものへできにくいものとあるようでありまして、できるものはできるだけ進めてまいりますけれども、事の性質上非常にできにくいものがやはり多いようでございます。どうしてもやり方も変えさせていただきたいというのが、このたびの御提案申し上げました理由でございます。
  48. 塚本三郎

    ○塚本委員 それはもう私どもも十分承知をいたしております。しかし、何といっても人員がふえる割合よりも出願の割合のほうがはるかに上回っておる、ここに基本的な問題がある。そうするならば、一般の行政機構と比べてみて、ただ単に、他の省庁では減らすという方向だけれども特許庁はふやしておる——この努力は私ともも認めておりまするし、前大平大臣のときにも、そんなことのたいへんな努力、苦難の道も当委員会において御説明を承りました。しかし、今日の科学技術と産業の急激な膨張、それに先導的な役割りを果たしておる出願ということで比べてみると、こういった点どうしても人員をふやさなければならぬ。その基本的な確認が実は内閣においてなされていないのではないか。事情しかたがないからということだけで突き上げられて、いわばけなげな担当大臣努力によって若干ずつふやしておるというのが実情でありまして、もうそんな段階じゃない。こんなに出願件数が急激にふえてきているんだから、これは別個の問題として、特殊な問題として扱わなければ、基本的な権利は守られないというふうに考えますので、努力はわかりますけれども、そういう違った観点から、この問題はこの法律案とば別個に、大臣、閣議で努力していただかなければならぬ政治的な問題だと思いますが、いかがでしょうか。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この数字を見ておりますと、昭和三十七年度の出願件数が十五万二千件、これは暦年のようですが、四十四年の出願件数が二十二万九千件、ということはちょうど五割増しでございます。審査官の定員が、昭和三十七年に四百二十四人、四十四年に七百九十人です。定員の増のほうがかなり大きゅうございます。これは明らかに五割以上でございますから。それでいてこういうことになっている。ですから、やはりこれは仕組みにも問題があるのではないか、改善を要するのではないかというふうに私は思うので、定員増については従来も努力しておりましたし、これからもいたしますけれども、なおこのようなありさまでございます。
  50. 塚本三郎

    ○塚本委員 長官にお尋ねしますが、何かそういう数字だけを大臣からいま発表されると、長官の行政能力に責任を問われておるような受け取り方を私どもはしなければならなくなります。もちろん大臣はそんなつもりでおっしゃったわけじゃないと思いますけれども、数がふえれば、それだけに一件当たりに対する審査の量というものも、いままでとは違ってさらに倍加されてくることになりますから、単純な人数だけでは割り切れないと思いますが、それにしても、いわゆる出願の件数と人員との割合だけから見ると、実は、人員のほうがふえておるとおっしゃるならば、内部的にやはりもう一度検討しなければならぬということになると思いますが、長官どうでしょうか。
  51. 荒玉義人

    荒玉政府委員 確かに年々処理がむずかしくなってまいります。これは出願にプラス質的なむずかしさが加わっておるわけです。したがいまして、われわれの希望は、そういった処理のむずかしさを勘案したところで所要人員を確保するというのが基本でございます。おそらく大臣もそういう意味を含めて、ただそういった基本的なことで人員を確保するといいましても、一つの限度、いろいろな意味の限度がございますという意味ではないかと私は聞いております。
  52. 塚本三郎

    ○塚本委員 特許庁の中のいわゆる料金との関係で比較いたしてみますと、私どもはあまりよく詳しくは知りませんけれども、黒字になっておるんだ——もちろんそれは、人件費等の問題はいろいろと別の問題が含まれておるのかもしれませんが、黒字になっておるんだ、こういう意見がございます。確かに官庁でも、この特許庁はいわば現業官庁的な性格を持っておるというふうに私どもは判断をいたしております。それならば、一般の官庁と同じような形じゃなくて、業務量がふえてきたときには、やはりそれに応じたように予算をふやし、人員をふやして、独立採算制まがいの体制で進んでもいいのではないか。それがまた、責任のある審査が行ない得られるし、国民からそのほうが実は尊敬を受けるのではないかというふうに考えますが、一つの案として私は昨年もこんなことを申し上げた記憶がございますが、大臣いかがでしょう。
  53. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず問題の所在だけ私から申し上げたいと思います。  特許庁の収支じりは、四十五年度は二億一千二百万円、これは赤字でございますが、あとは大体十年間黒字を続けてまいりました。  私たちの特別会計に対する考え方は、基本的には特別会計をすべきだと私は思います。といいますのは、いろいろ経費の面で、事業の進行状況に応じまして費用を流動的に使うということは、むしろわれわれの目的に合うわけでございます。そういった意味で、現在の料金では収支整いませんが、幸いに新法になりましたら、そういったことは私は強く樹立に努力したいと思います。  ただ、いまの人間の問題につきましては、残念ながらこれは、一般会計も特別会計も、いまの政府の姿勢では全く同じでございまして、特別会計でこれだけ金が黒字になっておるから人員はふやすということは全くございません。これは今後われわれの努力すべきことかとも思いますが、いまのところそういう形はございません。そういう点は、特別会計にしたから人員がそれだけ楽になるというふうにはなっていないことを、御承知願いたいと思います。
  54. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、どうでしょう。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはなかなかむずかしい問題らしく思われますが、やはり公務員の人数というものは一定に押えておきたいという私どもの気持ちがございます。そこで、事業会計として成立するということであったとしても、だから人員をその事業会計の範囲内で幾らふやしてもいいというわけにもまいらない。かりに公社のようなことにいたしましても同じような問題が残るだろうと思いますので、政府が、歳入の範囲内でなら人間を幾ら雇ってもいいということにできるかといいますと、それは御承知のようにできませんから、やはり同じ問題が残るのではないかという感じがいたします。
  56. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、私は問題をつかんでみえないように思うのですよ。これは教育問題じゃないし、基本的にはやはり経済問題だと私は判断してかからなければいけないと思う。それならば専売公社が、たくさんたばこを吸う人がいるから、どんどん売れるんだから、これは合理化せよといったって、やはりそれに携わる人をうんとふやさなければいけないということと同じようなものを加味すべきじゃないか。もちろん、物を販売し製造するものと、国民に基本的に権利を付与すべきものとは違っておりますが、しかしながら、一面においては、半ばそういう経済問題として、そしてまた、独立採算を加味してやっていい経済問題が実は大きな部面を占めておりますから、だからこれは経済の発展成長と並行して進んでいかないと——これが単なる、いわゆる発明というものが、あるいはまた特許が教育問題だということなら別ですよ。だけれども、あくまで権利として、経済に切っても切れない関係で進んできておりまするから、そういうふうに基本的には割り切った態度で対処していかないと経済の伸展についていけないという形だから、独立採算的な要素を加味したそういう運用をすべきじゃないか、こういうふうに私は申し上げておるわけです。ただ専売公社なんかと違って、権利付与ですから、私は簡単にそれをせよというわけではないけれども、あくまでも運営責任者としてはそういう心がまえで臨まぬことには、逆にこのことが経済発展に対する大きなブレーキにさえもいまやならんとしておる。さらにこれが、開放経済体制が全面的に進んできたときには、日本だけは世界からいわゆるもの笑いのような状態になる心配さえもあると指摘をしたいわけです。そういう意味で、それに対処するためには、どうしても機構を充実するということでないと、いままでのような体制とは基本的に違った取り組み方がしてほしいというふうに考えるのですが、いかがでしょう。
  57. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういたしますと、人件費等々が上がった分だけは、登録料にしても登録税にしても上げていけばいい、こういうお考えでございますね。ということまで割り切るかどうかというような問題が残るだろうと私は思うのでございますが……。
  58. 塚本三郎

    ○塚本委員 もちろんそういうことも加味していいことだと私は思います。加味していいことだと思いまするけれど、しかし、料金を取って審査をしてやっておるのだから、これがどどっと来たときには、それに並行して消化できるような体制をとっていくということで、伸展しつつある経済体制に即応できるような——それは定員法というような一般の官庁と同じようなワクの中でふやそうとなさるから無理がある。だから、たとえば公社のような状態で、ふやさなくたって、件数がふえていき、能率をあげていけば、それだけ消化ができるし、それが確たるものになってくれば、さらにまた国民もいわゆる発明意欲というものがわいてくるでしょうから、だからいわば公社のごとき独立採算性を中心とするような形に方向づけをしていったらどうか、こういうことを聞いておるのです。
  59. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに私ども、特許庁の仕事で国家が、一般会計が、いわばもうけようというような意識はないわけでございますから、もしいまのような前提が成り立つものであれば、これは少し研究をさしてみていただきたいと思います。ちょっと私が気がつきましたことは、先ほどのような点でございますけれども、少し検討させてみていただきます。
  60. 塚本三郎

    ○塚本委員 といいますることは、この特許庁というものはいろいろな性格を持っておると思います。いわば専売公社のような、そういう独立採算にいくべき性格を一つ持っておる。だからそういう方向をひとつ検討しないと、いわゆる需要と供給という体制から見ても不似合いだという感じがするわけです。そしてもう一つ別の一面を持っている。たとえば裁判所のごとき、そういう一面を持っておると思うのです。そのときに私は、そういうことは経済面としては実は検討はむずかしいかもしれないと思います。しかし、それならばそれで、やはり裁判所のごとき世間から信頼と、そしてまた注目と宣伝と、あらゆる部面で大衆化された——いわゆる審査というものが注目される中においてクローズアップせられてくれば、私はまた、特許庁の意義もそれなりにこれから重要視されてくると思うのです。ところが、そういう一面を持っておりながら、実は特許庁というものは、それに関係するところの業界や弁理士さんをはじめとする特殊の人たちだけが、不平を持ち不満を持ち、そして持っておりながらたいへんな期待をかけておる。これがもっと裁判所のような重要視される必要があるのじゃないか。そうするならば——こんなものが許可になった、これはならぬ、おかしいじゃないかというようなこと等が、実はもう出願した人の中に渦巻いておるのです。だけれども、こんなばかなやり方があるかという声が出ておっても、そういうことが、第三者の目で重視され尊重された中において論ぜられることが、きわめて少ないわけでございます。もしこれが拒否されるか、あるいはまた、出願の許可がなるかということによって、その問題によっては、たいへんな分かれ道になってくる。にもかかわらずこれが軽々というと、これはちょっと軽率な発言かもしれませんけれども、軽々とこれがイエス、ノーがなされていって、そのことによって、イエスを受けた人とノーを受けた人では、受けるところの経済的な影響は、たいへんな影響力が与えられてきておると思うのです。だから私は、もっとそういう意味で、一面においては裁判所のような、いわゆるその人の企業が生きるか死ぬかというようなたいへんな力を実は握っておられるのだから、それだけにまた重要視されなければいけない。この双方を兼ね備えておるものがいわゆる特許庁の仕事だと思うのです。いままでは、そういう意味で特殊の熱意だけで——いわゆる経済もこんなに国際的でもなかったからよろしいのですけれども、これが国際的になり、しかもおそらく大々企業も、この特許がおりるかおりないか、あるいは守られるかどうかによって、企業のいわゆる生殺の権までも実は動かされてきつつある。しかもその力はこれからさらに倍加されてきつつあるというような、実は一面を握っておるわけです。だからそういう意味において、もっともっとこのことについては、人員の面でも、人的配置の面でも、私は重要視されなければいけない。おそらく、われわれ委員はいろいろな問題点を指摘するけれども、それ以上に、通産省の一部局としてこれが扱われておるというようなこと自身に危惧の念を持っておるというふうに私は判断いたします。いかがでしょう。
  61. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 なるほど、後段に言われましたことは、これは今度は国家公務員的な色彩を、確かにそのとおりでございますが、強調されたわけで、それで前段のことも私はごもっともだと思いますが、後段のことも、いかにもごもっともだと思います。そういたしますと、それをどのようにして充足させるかということになるわけかと思います。しかし、確かに傾聴すべき御意見だと思いますので、二つのいわば同質でないものが入っておる。非常な経済性と、片方で司法性みたいなものを持っておるわけですから、何かいい方法がございますかどうか、検討させてみていただきたいと思います。
  62. 塚本三郎

    ○塚本委員 私どもは、いま大臣率直におっしゃったから告白するのですが、私どもも実はぎめ手を持っておりません。持っておりませんから、しかたがないから昨年も、必死になって長官大臣努力なさるから、もうとにかく、確信はないけれども若干修正されるならば賛成してやれというふうな、われわれの気持ちであります。われわれにきめ手があるならば、こうすべきだということを主張したいと思うのです。だからその点、率直にいま大臣言われたこと、ぜひひとつ、これはもっと慎重に、そしていってみれば重大視して取り組んでいただき得べき問題だというふうに実は思うわけです。  そこで、私はさらにつけ加えたいのですけれども、実はこんな重要な問題であるのにかかわらず、いわば人事の配置においても、ここで長官を前に置いて恐縮ですけれども、実は通産省の一局長さんと同じような形で人員配置がすっすっとなされていく。なぜおまえたちは、長官と組合とがこんなに対立した形になるのだというようなことを、率直に私どもは聞いてみると、いや、長官や上の人は特許の仕事を何も御存じないのです、来ても一、二年たってまたかわってしまうから——こういうことですよ。御無礼だけれども、個人的にざっくばらんに話し合いますと、そういう反対を陳情なさる。中における実務員からは、そういう声が飛んでくるのです。もちろん、そんな軽々しくは扱ってみえるとは私思っておりませんけれども、しかしその年限等から見るならば、特許の重大性とその実務と、そういうものに少なくとも最低三年以上、五年くらいは長官がここへ居すわって、そして事態というものを十分把握した中にこの法律改正案が出てくるならば、われわれはこんな抗抵や反対の意思は表明しなかったでしょうというような声さえも、内部からは出てくるのでございます。その意見が正しいかどうかは、私はいまここでは申し述べませんけれども、しかし考えてみると、こんなにも重要なものを含んでおるのにもかかわらず、一局長さんたちと同じように人員が異動なされてくる、そういう扱い方を歴代の大臣はなさってきたのではないか。ここにやはり特許庁の持つ悩みが私はあるんじゃないかというふうに判断をいたすわけでございます。だからその両面あるというところをお認めいただいて掘り下げられたときには、やはり何といっても仕事は人だと思います。その人の配置のしかたに対しても、やはり御一考なさらなければいけないのではないか。そして、実務の諸君の一番不平不満となさるところの、おれたちの苦労や希望というものはわかっていただけないのだ、わかっていただけるなと思うような年限になったらまたかわってしろうとの方がおいでになる、こういうところに最も端的に抵抗の感情がわいてくるのじゃないかというふうに受け取れるのでございます。どうでしょうか、その点は。
  63. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もっともな点があると思います。
  64. 塚本三郎

    ○塚本委員 もちろんそう御返答いただきました限りは、それに善処するという御意思もあると受け取って御期待申し上げておきますが、最後に、私あまり時間をとらないつもりでございますから……。  出願してから何としても二年ないし三年後にはそれがおりてくるという形が、やはりいまの産業界においても、あるいはこの事務に携わる人たちにとっても、最も大切なことだということは当然だと思うのです。だから理想的に、二年ないし二年半ぐらいの間には出願したものがおりてくるということになるためには、この法律が通ったといたしますると、何年後にはそういう、いわゆる出したらすっと——見通しでございまするから、確たるものは出ないかもしれませんが、計算的にいくならば、いまなら四年半かかっておる、このままならすぐ五年くらい待たなければならなくなる、こういうふうな数字をわれわれは提示されておって、そしてこの改正案が出されたということでございますが、この法律を通したときには、何年後には二年ないし二年半でおりてくるようになる見通しなのか。どうでしょうか、これは。
  65. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これはもちろん前提条件がございます。出願がどの程度伸びるか、あるいは処理がどうなるか、いろいろ前提条件がございますが、われわれの目標は、大体四十八年におおむね二年半程度、四十九年に大体二年二カ月程度を目標に——もちろん人員の充足は当然前提条件になっておりますが、そういう目標で進めてまいりたい、かように計画しております。
  66. 塚本三郎

    ○塚本委員 早期公開を実施いたしますると、権利者がその中身を盗まれるという心配は再三議論になっております。これを補うために、実は打つ手としてはどういう手があるかということで、裁判よりしかたがないんじゃないか。しかし発明協会等が母体となって何らかのあっせん、調停の方途を考えていく、こんなことが先日の委員会で議論されました。あっせん、調停でございますから、これは発明協会の信頼度や、あるいはまたその能力にまたなければならぬものだと思いますが、もしそういうことになったならば、もっと権威のあるあっせんなり調停なりをしてあげなければ、ただ単に協会がいわゆる第三者の能力ある人を委嘱するということよりも、もっと特許庁が、あるいは通産省が、いわゆる権威のあるあっせんなり調停なりをするということを考えなければ、その作業自身が成功しないのではないか。裁判をやってみるとたいへんな時日がかかりますし、金のないやつはもう下がれということになるのが日本の裁判の——刑事事件は別でございますけれども、民事の場合にはほとんどそういう形になってきておるということでございます。裁判における和解をするにも相当の金がかかるという日本の裁判制度でございますね。この場合には、そんなことならばやはり強い者勝ちになってしまうから、あっせん、調停をするとするならば、もっと権威のあるものを考えておかなければ、それは功を奏しないし、被害者に対する権利保護ということにはならぬと思いますが、そういう意味で、もっと経済的裏づけを必要とするいわゆる権威ある処置をお考えになるつもりはないか。どうでしょうか。
  67. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これは御承知のように、事実上の効力しかないわけであります。その際、世の中の通常の状態を見ますと、あの人にものを頼んだらやはり公正に判断してもらうという、むしろ、あっせんする人の従来の経歴なりあるいは社会的な信用というのが、こういった事実行為の一つの問題を解決する一番大きな原因でございます。その際、国の機関にしたら権威があるかどうかということでございますが、われわれといたしましては、そういった社会的にいい人を選んでいくというのが、むしろ問題の解決を迅速にし、円満な解決をはかる方法だというふうに考えてございます。もちろんこれは、発明協会自身とわれわれの関係は、われわれもそういった仕事に対して、特許庁としてもちろん最大の協力をしていくつもりでございます。  あるいは金云々は、先般中村先生のご質問もございましたが、一応ファンドはもちろん協会のファンド、とりあえず五百万と聞いておりますが、必要に応じて逐次追加する。これは全体といたしまして、やはり公報の頒布の一つの利益があることはありますので、そういったものをもっと有効に使うというふうに指導いたしますことはわれわれの責任でございますから、そういった意味で指導し、できるだけの協力意思ということによって、有効な成果をおさめるべく努力をしてまいりたいと考えております。
  68. 塚本三郎

    ○塚本委員 約束の時間がまいりましたから、最後に一間だけで終わりますが、いままでは特許庁があまり社会的に重要視されておらなかった。だから、幾つかの不公平があっても、不満があっても、そう社会問題となるようなことはなかったというふうに私は判断しております。しかし、最近の産業界の急激な発展によりまして、特にその会社が技術というものを持つことによってその力を急激に伸ばしてきつつある。これは国際的にもそういう傾向になってまいりますと、これからは、たいへん特許がいわゆる注目を浴びるであろうと思っておりますし、またそうでなければ日本の産業界、経済界の躍進はあり得ない。そうすると、一つ一つ紛争や、あるいはまた、出願によって許可がおりてくることがおくれる、そのことでさえも、これからは単なる経済界の不平不満ではなくして、社会的な問題として提起されてくるときがやってくると思うわけです。いままでの経緯から見ますと、ほとんどすべてを経済界、産業界におぶさって、特許庁というものはお金をかけなくて、みんな向こうさまがやっておるということで、こちらは純粋の、いいか悪いかだけを実はさばいておるというようなことであるにすぎない。しかし、これからは特許庁が権威をもって実はさばかなければならぬとき、あるいは情報の提供等をはじめとするそういう力というものを特許庁自身が持ってこなければ、いわゆる産業界のいざこざやいろいろな紛争等があっても、もみくちゃにされてしまうだけになって、紛争はより大きくこれから出てくる形になってくるでしょう。だから、そういう意味から特許庁なるものは、たいへんな権威と実力を持っていかなければいけない。それにはやはり、すべてを産業界におまかせをする、こちらは頭脳だけでございます、技術判断だけでございますという時代から脱皮していかなければいけないというふうに、私ども判断いたしております。それに対処するために、これから、人的配置や予算その他の方面において、この特許行政を大きな期待と決意をもって推進をしていただかなければいけないというふうに思って希望申し上げておきますので、大臣から御決意だけ承って、質問を終わりたいと思います。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ごもっともの御意見であると思いますので、十分今後の行政に取り入れてまいりたいと思います。
  70. 八田貞義

    八田委員長 多田時子君。
  71. 多田時子

    ○多田委員 二十分という制約された時間の中で、簡単に三点くらいにまとめまして質問をお願いしたいと思います。  昨日、同僚の岡本委員質問の中に、この滞貨した案件処理するためにアメリカでは行政改革に努力をいたしまして、そしてうんと時間を短縮することができたという内容についての質問をいたしました。それに対して長官から、その短縮した時間について、二年半から二年に短縮したというふうな御答弁をいただき、また資料をいただいたように聞いておりますが、これは再び確めてお伺いしたいと思いますが、その御答弁に間違いはございませんでしょうか。
  72. 荒玉義人

    荒玉政府委員 資料を御配付しておりますので、むしろ詳細に申し上げたほうが正しいかと思います。新しい運用のやり方は一九六五年以来でございます。一九六二年二年二カ月、一九六三年二年九カ月、一九六四年二年十カ月、一九六五年、ここで二年になっております。それから一九六六年二年三カ月、一九六七年二年一カ月、一九六八年一年十カ月、そういった毎年の数字を先ほど省略して申し上げたわけでございます。
  73. 多田時子

    ○多田委員 そうしますと、きのう御答弁いただいたのとは若干違うわけでございましょうか。
  74. 荒玉義人

    荒玉政府委員 若干違うというつもりではございません。むしろ簡単に申し上げましたので、そういう表現をしたつもりでございます。
  75. 多田時子

    ○多田委員 昭和四十二年十月の工業所有権制度調査団の報告書の内容によりますと、一九六四年から一九七〇年、ことしを含めてのことになりましょうけれども、ここで通算いたしますと、四年半から二年に短縮したというふうに、明細な図解が説明されております。その辺の状況を、長官の把握の程度でけっこうでございますから、もう一つ、よろしくお願いしたいと思います。
  76. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これはわれわれの計算——実は本来ならば一件一件計算しなければ出ませんが、そういうことはもちろんアメリカでもやっておりません。それで、一応それぞれの年度末に未処理案件がございます。当該年度で処理した件数がございます。未処理案件を当該年度に処理した処理案件で割りますと、おおむね何年何カ月という数字が出ますが、それで一応どのくらいかかっておるかという目安にしておるわけでございまして、いま、調査団の四年何カ月というのは、どういう計算になるのか、私、存じません。
  77. 多田時子

    ○多田委員 この案件が審議されてから、ほんとに長官また大臣、お気の毒に思うくらいに、あらゆる角度から反対の議論が盛んでございます。この改革の一つの案は、どうしても行政改革によらなければならないということは、前国会でもずいぶんと審議し尽くされてきたようでございます。また、ちょっと古い話になりますけれども、昭和三十四年の三月二十七日に出されました、この特許法に対する附帯決議という中にも、そういう面がうたわれているわけでございます。ちょうど満十年たちまして、十年たった今日、また再び同じものを出してもいいのではないかと思うような状態であるわけでございます。特にその中で言えますことは、一、二、三、四、五までございますが、最初に「今回の改正による特許料、登録料及び手数料の値上げに伴う増収分は、あげて人員の増加を初め、審査、審判事務の促進のための経費に充当し、出来得れば補正予算で措置すること。」、二番目に「累積せる審査、審判件数の一掃につき、応急、恒久対策を樹立すること。」、三番目に「審査官、審判官については、その職務の特殊性並びに有能人材確保の困難性に鑑み、妥当適正な特別給与制度を考慮すること。」、こういうふうにうたわれているわけでございます。四、五もありますが、これはそのままいまの特許行政に当てはまるのではないか、こんなふうに思います。先ほども給与の問題でいろいろお話がございましたけれども、現在の給与制度についてまず一点お伺いしたいと思います。
  78. 荒玉義人

    荒玉政府委員 現在の給与制度は、特許庁の職務も一般の公務員でございまして、一般の公務員に適用されておる俸給表が給与制度でございます。
  79. 多田時子

    ○多田委員 これは先ほど塚本議員の話の中に出てまいりましたので、以上にいたします。  先ほど来ずっと長官の任期という問題についてお話が出ておりましたけれども、結論的に、従来いろいろと長官の問題で任期が短いということは困ったものだというふうに、いろいろな角度からいわれておりますが、私もそういう点では全く未知な者でございますから、長官の任期という点についてひとつ大臣のほうから御答弁いただきたいと思います。
  80. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまの荒玉長官が就任いたしましたのはたしか四十二年の八月でございますので、いま二年八カ月ぐらいでございますか、普通の内局の局長あたりでございますと、各省大体平均いたしまして、二年といえばやや長いほうかと思います。したがいまして、荒玉長官の場合はそれに比べますと比較的長く在任しておるということは申し上げられると思います。
  81. 多田時子

    ○多田委員 よくわかりました。それでアメリカの例でございますけれども、十年も同じいすにすわって、いまもお話がありましたけれども、それこそ話半分に聞いたといたしましても、机の位置から電話の位置まで、庁内明瞭に把握をしつつ累積した案件処理のために尽力をしてきた。こういう例から考えますと、そういう点は今後大いに考え直さなければならないという問題ではなかろうか、こう考えますが、その辺はいかがでございましょうか。
  82. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまOECDの事務局長をしております人が、ちょうどわが国に御承知のように来ておりますが、この人はオランダの大蔵次官を十七年やったという人でございます。したがって外国にはそういう例がございますが、やはりこれは公務員制度がいろいろ違ったあり方をしておることに関係があるのではないかと思います。ただ言えますことは、確かに特許庁のようなところは、非常に専門的な知識を必要といたしますし、また審査官等々、そういう人たちも特殊な職業でございますから、それを統括するという意味で、部内にも信任を得、またよく仕事もわかるということでなければなりません。そういう意味では、いわゆる政策判断というものはおそらく比較的少ない役所であろうと思います。したがってそういうところについては、比較的長く在勤するほうがいいということは私は申せると思いますが、ただ一般の公務員であるということから申しますと、その制度を変えますれば、これは別のことになりますけれども、やはりおのずから一定の限度というものがあるというふうに考えます。
  83. 多田時子

    ○多田委員 先ほど来、そういう高度な技術と、そして仕事もたいへんじみであるというふうな、いろいろな点があげられてきたわけでございますけれども、そうした点から、特に現在の特許庁——きのう近江委員のほうからも話があったことと思いますが、庁舎それ自体もたいへん古い。あるいはまた、環境が非常によくないというふうなことを聞いております。そうした仕事の性質から見ても、むしろ最高に整備された行政機能あるいは庁舎——現在は両方に分かれていて、そこをマイクロバスで往復しているというふうに聞いておりますけれども、機密に属するそうした貴重な案件等の持ち運び等も大いに危険のおそれがございますし、仕事の速度を早めるという意味では、そういう環境整備ということが大事な一つの問題ではないか。時間的なロスあるいは労力のロス等が、そういう点からも大きく言えるんじゃないかと思います。今後のそうした環境の整備についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  84. 荒玉義人

    荒玉政府委員 お説のように、特許庁の仕事はいわば流れ作業の面がございます。したがいまして、古い庁舎と新しい庁舎に分れておりますことは、われわれ最も遺憾に思っています。一日も早く統合したい、こう考えております。  具体的に言いますと、現在の新しい庁舎のすぐ横に増設がもうすでに計画されておりまして、四十五年度から近く着手いたしまして、大体三年間の計画で庁舎が完了する予定でございます。完了した暁には集中収容いたすつもりでございます。
  85. 多田時子

    ○多田委員 最後にもう一つお尋ねしたいのですが、特許情報処理センターというのが設立されることになっているんですか、どういうことですか。四月七日の朝日新聞にございましたが、審査のスピード化をはかるために特許情報処理センターが設立されると伺っております。これは荒玉長官も、その具体策の話し合いの中の一人としてここにもあげられておりますけれども、その辺の経緯と経過についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  86. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許情報センターをつくらなければいかないという問題は、現在の法律改正論議で強く先生方から御指摘があったわけでございますが、その前からやはり各企業でも、ただ出願後に自分の出願に対して公知文献があるかどうかということでなくして、むしろ研究に着手する際に、既存のものを研究開発するのは全く無意味でございますので、特にそういった民間側の要求がございます。それでその要求は、一年一年高まっております。それに対してどうこたえていくかというのがまず特許情報センターの設立動機でございますが、問題は、どういうやり方をすれば迅速にそういった要求に合致できるかどうかという、ここが一番ポイントでございます。具体的に言いますと、大体検索するためには一番手っ取り早いのは分類によることかと思います。分類といいましても、日本の分類がございますし、あるいは外国文献も相当参酌されますと、あるいはアメリカの分類あるいは国際分類、そういったそれぞれの分類から一つの検索を始めまして、一定の量の文献が出てくる。それでは出てくる文献の数が非常に多うございますから、もう少し狭めないと実際上の役に立たないという面がございます。そうかといっていわば機械検索をやりますと、これまた非常に精緻ではございますが、おのずから適用される分野というものが、いまの電子計算機なりソフトウェア等の関係で言いますと、やはりしぼられてくるという面がございます。したがって、同じ電子計算機を使う予定でございますが、まず分類を主にいたしまして、その分類で検索された範囲を、たとえばキーワードを使いましてさらに狭めていくということによって、ちょうど、分類による検索と、それから機械検索のまん中ぐらいのところをねらっておるつもりでございます。もちろん、それにはどういうシステムかといったような問題を現在研究中でございますが、研究すると同時に、やはりある程度インプットしてみないと、はたして所期の効果をあげるかどうかということが不明でございます。したがいまして、そういったシステムのいわば実験段階が現在でございますが、二千二百万円の費用を投じまして四十五年度で一応のシステムをまず目安をつけていく。それから、もともとこれは特許庁が使うというより、むしろ民間の需要に合わすためのものでございます。したがいまして、そういったシステムを具体的に業界に提示いたしまして、そうして、はたして日本の業界の実情なり需要に合ったものかどうかということがはっきりした暁に、具体的ないろいろ金をどの程度にするか、あるいはどういう構成にするかということを最終的にきめていきたいと思っております。しかし、いまはあくまでシステムを開発することがまず先決問題だという段階でございます。
  87. 多田時子

    ○多田委員 これは伺うだけにとどめておきますが、もう一つ伺っておきたいことがございます。それは、六十一国会提出された法案中の四十一条のただし書きを削除された理由、当時おりませんでしたので、その辺のところを、ひとつ簡単でけっこうでございますから御説明いただきたいと思います。
  88. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四十一条のただし書きは、先国会におきましても、ある意味において当初の書類の補正の中身を制限することでございますので、出願人立場から見ますと、なかなか不便で困る、あるいは不利益になるという御批判がございました。それから、一方また表現それ自身がむずかしい面がございまして、なかなかわかりにくいという御批判を得ております。当初のねらいは、いわゆる請求範囲の完全シフトといいますか、全く違ったものになるということでは、公衆が公開公報に対して検索するのに非常に不便だというところからきております。それで、いろいろ国会終了後各界と再調整いたしました結果、前者の見地から、一応現行法の四十一条の広い範囲のものに戻そう。ただし検索その他の面から見まして、ある程度分類を付加することによりまして、そういった完全変更があった場合にもできるだけ検索に支障のないような一つの方策を施すことによりまして、先般の国会の御議論に対して、新しいといいますか、現行法の四十一条に返したわけでございます。
  89. 多田時子

    ○多田委員 以上で終わりますが、その問題に対しては、いまの長官の御答弁とはちょっと違うように受け取っておりました。その点から、何か法案それ自体も朝令暮改式であるというふうな批判も聞いておりますけれども、 いずれにしましても、この審議を通しまして感じますことは、どうしても法改正によってものを解決するというのではなくて、もう一つ根本的な改革をしなければならないという問題がたくさんあるというふうに考えられます。その大きな問題もさまざまございますけれども、その根本的な改革という問題に対する長官一つの御決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  90. 荒玉義人

    荒玉政府委員 現在の状態といいますのは、先ほど岡田先生の御質問にお答えいたしました、技術革新というものはますます今後もそのスピードを早めることが予想されるわけでございます。     〔委員長退席、前田委員長代理着席〕 それに対する基本的な態度はやはり三つの方向から考えていくべきではないか、これは基本的な考え方でございます。  第一には、何といいましても、人員拡充なり、あるいは先ほど御指摘の環境整備をするなり、そういった、いわば基礎になるものをさらに拡充するという方向も考えなければいけません。もちろん第二には、いろいろ運用面改善、これは審査事務のやり方、あるいは先ほど申し上げましたように、出願等の事務のさらに一そうの合理化といった面を、われわれはさらに重視していかなければなりません。と同時に、やはり新しい衣をつくることによりまして、一つの適応できるような体制をつくっていく。これは制度改正になるかと思いますが、そういった三つの方向から問題を解決していくということで、基本的には私は、法律改正のみで問題が解決するとはいささかも思っておりません。
  91. 多田時子

    ○多田委員 以上で終わります。
  92. 前田正男

    ○前田委員長代理 次に、中谷鉄也君。
  93. 中谷鉄也

    ○中谷委員 大臣御所用があるようですから、御退席をいただいてけっこうです。  私のあとで石川委員のほうから総括的な取りまとめの質問をさしていただきます。したがいまして、私、十分か十五分程度、昨日の質問の取りまとめをしておく必要がありますので、お尋ねをしておきたいと思いますが、昭和四十四年の四月十五日、六十一国会改正案提案されましてから、私自身発言を許していただきました時間が大体十二、三時間であります。非常にいろんな問題について、あるべき特許行政の姿、あるべき審査、審判の理念等について私なりに考えてまいりました。そこで、やはり私自身は、最後のただ一言だけの質問にあたりましても、一番最初に、すなわち四十四年の五月であったと思いますが、私の第一回質問においてお尋ねをし、指摘をいたしました点を、あらためて申し上げておきたいと思うのであります。  事はきわめて簡単なことばについての私の感想であります。すなわち、未処理案件といわれているものが滞貨と呼ばれている。そうして同時にそれが、特許庁の官側の書類によれば、積み残しというふうなことばによって表現をされておる。私はそのようなことは遺憾なことだということを指摘をいたしました。したがって、国民のための特許庁、国民に開かれた特許庁、あるべき特許庁の姿というのは一体何だろうか。審査・審判官の待遇の改善、環境の整備、あるいはほんとうに審査、審判が迅速かつ公正に行なわれるところの審査官の地位の向上と能力の向上、ありとあらゆる問題はあろうかと思いますけれども、やはり私は、特許庁の中に発明権、すなわち人権、権利に対するところの燃えるような権利感覚あるいはまた憲法感覚、そのようなものがみなぎっていることが必要だ、こういうことを本審議を通じてあらためて感じ、そのことを要望いたしたいと思います。  しかし、同時にそのことは、特許庁の職員、特に審査・審判官に対するところの社会的尊敬と社会的信頼というふうなものがより一そう高められねばならない。そこで私は、この点については、そのようなことの私自身の感想的なことを申し上げながら、一つだけ長官提案をしておきたいと思います。  最高裁判所は、開かれた裁判所というふうな一つ考え方に基づきまして、すべての国民から公募をいたしまして、最高裁判所の新しい建物を建築をいたします。すでにその計画は実現をしようといたしております。特許庁も、特許制度とともに歩んできたような、あのような建物ではなしに、ほんとうに国民のための特許庁、開かれた特許庁、そういうふうな特許行政の理念に基づいたところのすばらしい建物を、国民の名において国民から公募をする、そんなことも考えらるべきときに来ているのではないか、こういうようなことを私は質問の冒頭にあたって申し上げたいと思うのであります。  そこで、昨日の質問を引き継ぎたいと思います。私が昨日お尋ねをいたしましたのは、十二月十五日決定に対するところの、それを援用いたしましての早期公開というものの憲法上の判断についてであります。そこで、特許庁の今後のあり方、憲法感覚と憲法感情というものを完全に身につけていただきたいという観点から、私は次のような要望を兼ねて申し上げたいと思うのでありますけれども、けさ特許庁のほうから、いわゆる早期公開憲法違反ではない、違法ではないとするところの憲法見解なるものが寄せられました。きわめて簡単な文書であります。本日、私自身は、文書が簡単であるということについての指摘や不服を申すつもりはございません。ただ、今後さらに予想される法改正特許行政あり方の中で、一つだけ長官の決意を承っておきたい。  あるできごとが、ある行政処分が、ある立法が、憲法に違反をしない、違法ではないということだけではたして提案として足るのだろうか。要するに、さらに掘り下げて、憲法感覚、憲法感情の面から見て、あるいは憲法の立場から見て、それが妥当でない、あるいはさらに一歩下がって、好ましくない、さらに一歩進んで、より一そう憲法を守る立場においてより一そういい法律があるはずだというふうなことが、むしろ今後考えられねばならないのではないか。憲法に違反しません、違法ではありませんというふうなことで、今後の法改正や行政処分がなされるというふうなことでは、国民に開かれたところの特許庁、国民の信頼を得る特許庁という観点からいっても、私はまことに好ましくないと思うのです。憲法論争をする時間がないようでありますが、その点についての長官の御所感を私は承りたいと思います。
  94. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれが考えますのは、憲法感覚と同時に、やはり国民の全体の立場から見て、どういったことをすれば全体の利益になるかということで考えてまいってきたわけでございます。したがってそれは、すなわち憲法の精神にも反しないとわれわれは考えております。     〔前田委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、いまおっしゃっていますボーダーラインでどうかという問題でございますが、われわれはやはり憲法精神に反することを考えていくつもりはございません。あくまで全体の福祉になるというもとで憲法も当然考えながら政策を進め、もちろん今後も法律提案していくつもりでございます。
  95. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、今後検討いただきたい問題として、「本改正法施行前にした出願について出願公開制度を適用することが憲法違反とならない理由」という特許庁見解について、気にかかった点を数点指摘をしておきたいと思います。  まず第一点は次の点であります。  いわゆる「旧法出願出願人の期待権を侵害し、憲法違反であるという意見はあたらない。」長官はすでに特許法については専門家でありまするから、いわゆる期待権としての出願人発明権以前の権利、それを期待権としてとらえることは私は正しいと思います。しかし同時に、その出願人の持っている出願したところのもの、それは結局司法的に言いますならば、単に国に対する期待権というものだけではなしに、少なくとも財産的な価値のあるものというものであろうと私は思う。ドイツの十二月十五日の決定で問題にいたしておりますのは、まさにそのような財産的価値あるものを財産権としてあざやかにとらえている。単に財産的価値あるものを財産権としてとらえているだけではなしに、精神的財産権ということばをもってとらえている。したがって、論点はまさにその点にあったわけであります。単に期待権を持っている出願人の法的な地位を論議の対象にしようとしたのではないということ、この点についての見解なるものは、私の指摘した点についてまつ正面から答えておられない。この点は一点指摘をせざるを得ないのであります。  それから同じく見解の二については、「出願公開制度を導入した趣旨が、出願公告の遅延により重複研究重複投資重複出願が行なわれる等、国民経済的にみて大きな損失となっていること」云々、この点であります。いわゆる重複研究重複投資の防止、そして現在どのようにそれが行なわれているか、早期公開によってそれが防止できるのかどうかなどの問題については、すでに指摘をいたしました。その点については重ねてお尋ねはいたしませんけれども、少なくとも権利侵害があるのだという者の立場、それが公共の福祉とのバランスをとろうとする者の立場から言いますると、重複研究重複投資が行なわれている、そしてまた審理の遅延が行なわれているということは、出願人の責めに帰すべき事由ではないはずであります。そのことをもって、公共の福祉という名によって出願人権利がおおいかぶせられるということは、ここに権利侵害があるのではないか。事、憲法問題でありまするから、断定的には申しません。そのような立論がなし得るという点を私は指摘をしたのであります。この点については明確にお答えになっていない。要するにすでに私が指摘した問題について玄関でお話しになっている。私が問題として指摘したことを、奥の間に入っていかないで玄関でお話しになっている点であります。  次に問題になる点は、私は率直に申しまして、この憲法見解なるものの中には驚くべきものがあると思います。早期公開の時期、方法について私たちは憲法問題を論議をしたわけです。それについて、特許出願をした者は公開をされることは当然予想できることなのだから、このことについては何ら法律問題は生じないと思います——一体、滞貨ということばで大ぜいの人が言いました未処理案件、そのような状態にみずから置かれるということを出願人は予想したでありましょうか。いつこのような早期公開になるというようなことを予想したでありましょうか。いつこのようなかっこうで公開されるということを、公にされるということを予想したでありましょうか。それらの問題について当然予想できたというならば、一体どこのだれがいつどのような方法で予想されたのか。公開されることが予想できたということと、どんなかっこうで公開されるかということとは、おのずから別個の問題であります。これらの問題についての掘り下げは、これまたきわめて不十分であるし、われわれは六十一国会以来、長い間にわたって指摘した点について、柔軟な対応とみずみずしい感覚によってお答えをしていただいていない、こういうことを申し上げざるを得ないのであります。  それから、すでに六十一国会において指摘をいたしましたけれども、西ドイツにおいては、このような場合に、出願公開制度をいわゆる公用徴収としてとらえている、この点が間違いだということであります。われわれは憲法第二十九条の三項の問題としてこの問題をとらえ得る余地があるのだ、むしろ三項の問題なんだということを指摘したわけであります。公共の福祉によって財産権の内容が単に制限されるだけではなしに、同時にこれは公開というところの行政処分なんだ、したがってこれは公用徴収なんだ、こういう指摘をしたわけであります。そうでないならないという点についてのお答えがなければならないと思います。これらの問題についての——短い文章でけっこうではありまするけれども、短い文章なら短い文章の中に、そんな点についての問題意識を持った点についてのお答えがなかったことについては遺憾である、こういうふうに申し上げざるを得ないのであります。  同時に、遡及効の問題についてでありまするけれども、民法の遡及効の問題についてはかなり論文等があるようでありまするけれども、行政法の遡及効の問題については、あまり新しい論文、古い論文等は見当たりません。そんな中で行政法における遡及効をどのようにとらえるのか。このような点について、特許庁がどのようにお考えになっているかもいまなお不明確である。時間でありますので答弁を求めるわけにいきませんが、一点だけ私はこの機会に本法案の改正を通じてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、遡及をしても権利侵害にならないのだと言われる。単に期待権ではなしに、財産的な価値を持ったものだとするならば、本法案に似たような遡及をしたところの行政法令というのは、ここ十年間この国会において立法されたことがあるでしょうか。私は、ないというふうに理解をしているのです。戦後の混乱時代ならいざ知らず、このような遡及をして権利侵害をすることはないというふうに私は聞いておる。遡及するのは公務員のベースアップくらいだというふうに聞いておる。そういう点で、遡及効の行政法上の地位をどのように位置づけるか、これについてひとつお答えをいただきたいと思います。質問はその一点であります。  実はきょうは、長官と憲法問題について息の長い論争ができると思って楽しみにして参りましたけれども、質問時間が十五分でありまするのでこの程度にいたしておきますが、最後に一点だけ要望をいたしておきます。  十二月十五日の決定というのは、私はこれは、かなり実務家の問においても、学界においても問題になると思います。特許庁の見解が望まれるところであります。したがいまして、特許庁立場から、ドイツ特許裁判所の違憲判断、十二月十五日の決定について、この決定文の理由の詳細を反論する文章をひとつ努力しておつくりになる意思はないかどうか。これはひとつそのようなかっこうで、特許庁を単に特許法の専門家に終わらせずに、特許法の基礎にあるところの、基本法であるところの憲法の問題についての特許庁全体の水準を上げるためにも、私は決して無意味な作業ではないと思うのです。私はそういうことを要望をいたしまして、その点に限って答弁をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  96. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御指摘の点十分検討いたしまして、詳細なる意見を世に問うつもりでございます。もちろんあわせてドイツの決定、あるいは今後連邦裁判所がどうなるか知りませんが、われわれは真剣にフォローいたしまして、世の中の方々の意見をさらに求めるべく、われわれも勉強してまいりたいと思います。
  97. 八田貞義

    八田委員長 石川次夫君。
  98. 石川次夫

    ○石川委員 私の与えられた時間もきわめて短い時間でありますので、申し上げたいことはたくさんありますけれども、簡単に二、三の点について特に大臣の所見を伺いたいと思うのであります。  工業所有権審議会の答申に基づいて今度の改正案が出されたわけでありますけれども、この工業所有権審議会それ自体が、血の出るような発明家、あるいはまた、直接特許事務に携わっておるところの審判官あるいは審査官の意見がほとんど反映をされておらないという点で、私は非常に欠陥があると思うのです。したがって、大所高所の立場に立って何とかこれを処理しなければいかぬというような、焦燥に似た感じからこの法案が出されたのではないか。そういう点でこの法案は非常に抜け穴だらけの欠陥が多い法案だということを、私どもが認識しておることをまず申し上げたいと思うのです。  それで、まず第一に伺いたいのでありますけれども、あとでこの法案改正に対するところのいろんな改善案に関する決議案が出ることになっております。私はけさ受け取ったのでありますが、この改正をやることによって一体どのくらいの効果というものが試算をされるかという表であります。この表の内容を見ますと、私がしろうと考えで見ただけでも、まことにずさんきわまるものであります。この点については、長官と一問一答をやっている時間がありませんから、二、三これを指摘するにとどめたいと思うのです。  まず第一に、四十四年の出願件数というのが二十二万九千九百六十二となっておりますが、実はこれは二十三万五千件近いはずであります。それから処理件数が十七万二千となっておりますけれども、これは十五万二千しか処理をされておらない。こういうふうな、四十四年度の出発点から非常にずさんな数字、それに基づいてこのような効果試算というものが出ておるということで、私は効果は非常に疑わしいという気持ちを持っております。それで、この中でたとえば出願の件数の伸び率、これが年率で五・五%になっております。これは、前には四・五%であるものが今回は五・五%になっておりますけれども過去の数字はどうなっておるかというと、たとえば二十八年から三十七年、それからさらに二十九年から三十八年というように、十年ずつ区切ったパーセントを見てみますと、平均で大体九%になっておるわけであります。なおその中で特許関係は一〇%くらいになっております。それに対してこの伸び率はわずかに五・五%という基礎でありますから、この数字の見通しは実にずさんきわまるものであるということが、まずあげられるのではないかと思うのです。さらに改正前は一人当たり処理数二百六十三件ということになっております。この二百六十三件というのもきわめてあいまいのようでありますけれども、改正をすると四十六年度以降は六%ダウンということになっております。「改正をやらない場合」ということも書いてある。改正をやる場合も、四十六年から六%ダウンというような数字も、われわれとしてはちょっとふに落ちない数字になっておると思います。それから、いろいろな点でありますけれども、たとえば審査請求率の問題でも、特許八〇%ということについても、われわれ疑念を持っておりますが、この中に一体外国特許をどのくらいに見ておるのかという点も、実は解明しておきたい点であるし、事前審査審査前置制度、こういう制度が今度の法案で生かされておるわけでありますけれども、これについての事務停滞、ダウンというものを一体どれくらいに見込んでおるのか。こういう点については、この効果試算表においては解明をされておりません。そういう点でこの効果試算というものはまことに疑わしいのでありますが、その中で審査官の数だけは、昭和四十六年からプラス八十五人というように出されております。ところで審査官は毎年大体二十名くらいやめておると思うのです。やめて、新しい審査官が入った年は一年間一〇%、二年目六〇%、三年目が一〇〇%、こうなっておりますけれども、実は審査官補の期限は三年間であります。四年目から一〇〇%というふうに計算するのが正しいと思うのでありますけれども、この点についてはあえて問わないにいたしましても、一年目にはわずかに一〇%しか能率があがらぬということになるとするならば、八十五人という定数を満足させるということのためには、これは実に百人以上の数をふやさなければ、処理案件というものはこの効果試算表どおりにはできない、こういうことになってくるのではなかろうか。こういう点で、たとえば八十五人という数字それ自体も非常に困難だと思います。と申しますことは、この前の国会におけるところの審査官の数というものは三十一名、これは大蔵省でそれしか認めないということで三十一名になっておったものが今度八十五名になっておる。しかもこの効果試算表によって、八十五名の実績をあげようとすれば百名くらいは少なくともふやさなければいかぬというようなことになるのであります。八十五名というのは実数はもっとふえるというようなことを考えてこの効果試算表が出ておるわけでありますけれども、一体大臣はそういう思い切った——ドイツまではいかなくとも、官庁の片すみにあるところの特許庁というものが、日本の科学技術の中核であり、そして日本の自主技術の確立のためにもほんとうに中核になれるし、産業の発展だけじゃなくて国の盛衰を左右する非常に重要なものであるという御認識があれば、当然この効果試算にある八十五名というものは最低確保しなければならぬ、こう考えるのでありますけれども、その点の大臣の所信を伺いたいと思うのです。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもといたしましては、工業所有権審議会の答申に基づきまして、また別途、特許庁部内でもいろいろ議論をいたしました。確かに異論もございましたが、特許庁長官責任におきまして、工業所有権審議会の答申に基づきまして御提案をいたしたわけでございます。と同時に、本委員会の審議の過程で出ましたいろいろな御議論を承っておりまして、今後の運営につきまして十分参考にしなければならないと考えた次第でございます。  なお、ただいまの定員の問題、審査官の増員の問題でございますが、これからしばらく非常に経過的にむずかしい時期を迎えますので、審査官の数につきましても、十分努力をいたしまして増員を期してまいりたいと考えております。
  100. 石川次夫

    ○石川委員 時間がないのでどうもたいへん残念なんですけれども、工業所有権に関する紛争処理を迅速に行なう、そういうことのために、あっせん、調停、あるいはまた特許情報サービスセンター、これもこの前質問したのでありますけれども、調査費がわずか二千二百万円足らずであります。民間から十五億くらい何とか引き上げてそういうものをつくろうというのでありますけれども、これこそは通産省のほんとうに重要な任務として官庁自体がやるべきことではないだろうか。したがって、民間の寄付を集めてこれを行なうということではなくて、新規性調査機関の充実なども含めての特許情報サービスセンターというようなものは、寄付にたよるということではなくて、通産省自体がほんとうに積極的にやらなければならない。また、それができなければ、それが伴わなければ——PCTに加入をする、国際的に歩調を合わせるというようなことも含め、あるいは今度の滞貨処理というものも含めて、どうしてもそれは必要欠くべからざる条件ではなかろうかと思うわけであります。したがって、このサービスセンターというようなものを、単に調査をする、いつできるかわからぬ、民間から金を集めるということではなくて、すぐにでも通産省自体がこれをつくるのだ、こういう決意がこの法案を実施するについて必要欠くべからざる条件であると思うので、その点の所信を伺いたいと思うのです。
  101. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどから申し上げましたように、やはりシステムを開発することが先でございます。したがって、そのシステムが業界のニードに合うと確信を持ち次第、至急に設立をはかりたいと考えております。
  102. 石川次夫

    ○石川委員 これは長官答弁ではなくて、大臣自体が、これはどうしても民間にたよらぬで自分のところでやる必要性があるのだ、こう決意をしていただかなければならぬ問題ではないかと思うのです。  それから、工業所有権制度については審議会の答申に基づいてと言われておりますけれども、これは関係発明者というふうなものも参画をしておりません。それから特にドイツにおいても、早期公開というものを実現する場合に非常に強い意見が出されておりますけれども、その中身は、審査官、審判官というこの事務に直接携わる人の意見を十二分に聞かなければならぬということがはっきりとうたわれておるわけでございますが、今度も決議案にはそのことが盛られるようでありますけれども、内外の関係者意見という中で、特に直接この事務に携わる審査官、審判官の意見を十二分に聞いてこれを反映するという必要があるのではなかろうかと思うのです。大臣の所見を伺いたいと思うのです。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の問題につきましては、御発言の御趣旨に沿うように将来措置をしてまいりたいと考えております。  後段につきましては、もとよりそのとおりでありまして、第一線に働く人たちの持っております知識、考えというものは、十分吸収してまいらなければならないと思います。
  104. 石川次夫

    ○石川委員 時間がございませんからこれでやめますけれども、ともかく劈頭から申し上げておりますように、特許の事務というものの重要性——ドイツでは、住宅をつくり、競輪場をつくり、交通網を整備する前に特許庁をつくったというようなことが、やはり日本でも考えていかなければならぬ重要な点ではないかと思うのです。そういう点で非常に置き去られた存在になっておる日本の特許庁の状態——これは、いまでは旧館と新館に分かれてその流通も非常に不便をいたしておる、また環境もあまりよくない、従業員の待遇もきわめて不十分である、人数も足りない、こういうような状態では、法を改正しても、必ずしも法の改正の効果というものが生きないし、この効果試算というものを見ても、このとおりになるとはとうてい考えられないところの内容を含んでおります。たとえば伸び率五・五%は実際は九%だというようなことだけ考えてもきわめて不十分である。こういうような点についても、ひとつ関係者とよく意見——効果試算などについても、十分に審査官の皆さん、審判官の人たちと腹を合わせて、お互いにあうんの呼吸を合わせてこの改正案というものを生かしていかなければこの改正は生きないのだということを、十分にお考えになっていただきたいと思うのであります。ほかにも申し上げたいことがたくさんありますけれども、ちょうど時間になりましてこれ以上質問できません。残念でございますけれども、いまの御趣旨をよく生かしてもらいたいということを最後にお願い申し上げます。
  105. 八田貞義

    八田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  106. 八田貞義

    八田委員長 本案に対し、武藤嘉文君外五名より、自由民主党及び民社党共同提案にかかる修正案が提出されております。  この際、修正案について提出者より趣旨説明を求めます。武藤嘉文君。
  107. 武藤嘉文

    ○武藤委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提案者を代表して趣旨の御説明を申し上げます。  案文を朗読いたします。  以上でございます。  お手元に配付いたしました要綱にありますように、修正点は、改正法施行前にされた出願に対する改正法の適用についてであります。原案では、施行前の出願に対しても原則として改正法の規定を適用することとしておりますが、従前の法律によって出願されたものに新制度を適用することは、財産権の保護という見地から必ずしも適当でないと考えまして、改正法施行前の出願に対しては改正法の規定を適用せず、従前の例によることとするよう、経過措置を修正するものであります。  以上、修正案提出趣旨を御説明申し上げました。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
  108. 八田貞義

    八田委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  109. 八田貞義

    八田委員長 これより討論に入るのでありますが、本案並びに修正案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず武藤嘉文君外五名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  110. 八田貞義

    八田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま議決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これを可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  111. 八田貞義

    八田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。     —————————————
  112. 八田貞義

    八田委員長 おはかりいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  113. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————  〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  114. 八田貞義

    八田委員長 左藤恵君外三名より、工業所有権制度抜本改善に関する件について、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同提案にかかる決議を行なわれたいとの動議が提出されております。      —————————————    工業所有権制度抜本改善に関する件  近年特許実用新案関係出願等の激増に伴い、特許庁における審査・審判は著しく遅延し、膨大な未処理案件が累積し、国民の発明意欲を失なわせ、また、産業及び技術の発展に重大な悪影響を及ぼしつつあることは周知の事実である。このような事態に対処するためには、審査処理能力の大幅な拡充をはかることが必要であるが、このための政府努力は不十分であり、今日の事態を招いたことは甚だ遺憾である。  今日、工業所有権を中心とする技術情報が極めて重大な役割をもつことにかんがみ、政府は次の諸点について抜本的な改善策を講ずべきである。 一、審査官等職員の大量増員、その待遇の改善、ならびに特許庁の施設、設備等職場環境の整備を早急に行なうと共に、職員の不断の研修、研究に資するため、必要な措置を講ずること。 二、工業所有権に関する紛争処理を迅速に行なうため、あつ旋、調停に必要な機関を設置すること。 三、特許協力条約(PCT)等に関連し、国際動向に即応するために必要な機構の整備拡充を行ない、特に新規性調査機関の設立を急ぐこと。 四、工業所有権制度に関わる内外の関係者意見を十分に尊重し、特許行政の円滑な運営を図るよう措置すること。 五、工業所有権制度の抜本的改善措置に関して引き続き検討すること。 六、特許行政に関する諸問題の解決のため、海外事情を含め不断の調査を実施し、その調査結果および講じた施策について定期的に公表すること。  右決議する。      —————————————
  115. 八田貞義

    八田委員長 本動議について議事を進めます。  まず、提出者より趣旨説明を求めます。左藤恵君。
  116. 左藤恵

    左藤委員 工業所有権制度抜本改善に関する決議案につきまして、提案者を代表して趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付したとおりでございます。  今日、特許庁において、特許実用新案だけで七十六万件にのぼる未処理案件が累積し、審査処理には平均五年を要するという異常な事態を招いておりますことは御承知のとおりでありますが、これは、審査機能の強化をはかるための努力が不十分であった政府責任の大半があったといわなければなりません。  先ほど議決されました特許法等改正案の審議の際にも、この点は繰り返し指摘されたところでありますが、あらためて、当委員会の決議によりまして、抜本的改善策を政府に強く要請したいと存ずるのであります。  さらに、最近における目ざましい技術革新の中にありまして、わが国産業の国際競争力を培養してまいりますために、特許情報等の工業所有権情報が果たすべき役割りはきわめて大きいのでありまして、この情報を正確、迅速に提供するという特許庁の使命もまたはなはだ重大であります。  この意味におきまして、特許行政及び工業所有権制度の充実、改善を進めるための不断の努力政府に要望するものであります。  以上の趣旨に基づきまして、第一に、審査官等の大量増員と待遇改善等、第二に紛争に関するあっせん調停機関の設置、第三に新規性に関する調査機関等必要な機構の整備、第四に特許行政の円滑な運営をはかる措置、第五に制度の抜本的改善に関する引き続いての検討、第六に海外事情等の不断の調査の各事項に関する決議案を提出した次第であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  117. 八田貞義

    八田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  118. 八田貞義

    八田委員長 採決いたします。  左藤君外三名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  119. 八田貞義

    八田委員長 起立総員。よって、左藤君外三名提出の動議のごとく決しました。  ただいまの決議に対し、政府より発言を求められております。これを許します。宮澤通商産業大臣
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして今後行政をやってまいる所存でございます。
  121. 八田貞義

    八田委員長 なお、本決議の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願います。  次回は、来たる五月六日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時三分散会