○中谷
委員 そこで、今後検討いただきたい問題として、「本
改正法施行前にした
出願について
出願公開制度を適用することが
憲法違反とならない理由」という
特許庁見解について、気にかかった点を数点指摘をしておきたいと思います。
まず第一点は次の点であります。
いわゆる「旧法
出願の
出願人の期待権を侵害し、
憲法違反であるという
意見はあたらない。」
長官はすでに
特許法については専門家でありまするから、いわゆる期待権としての
出願人の
発明権以前の
権利、それを期待権としてとらえることは私は正しいと思います。しかし同時に、その
出願人の持っている
出願したところのもの、それは結局司法的に言いますならば、単に国に対する期待権というものだけではなしに、少なくとも財産的な価値のあるものというものであろうと私は思う。
ドイツの十二月十五日の決定で問題にいたしておりますのは、まさにそのような財産的価値あるものを財産権としてあざやかにとらえている。単に財産的価値あるものを財産権としてとらえているだけではなしに、精神的財産権ということばをもってとらえている。したがって、論点はまさにその点にあったわけであります。単に期待権を持っている
出願人の法的な地位を
論議の対象にしようとしたのではないということ、この点についての見解なるものは、私の指摘した点についてまつ正面から答えておられない。この点は一点指摘をせざるを得ないのであります。
それから同じく見解の二については、「
出願公開制度を導入した
趣旨が、
出願公告の遅延により
重複研究、
重複投資、
重複出願が行なわれる等、
国民経済的にみて大きな損失となっていること」云々、この点であります。いわゆる
重複研究、
重複投資の防止、そして現在どのようにそれが行なわれているか、
早期公開によってそれが防止できるのかどうかなどの問題については、すでに指摘をいたしました。その点については重ねてお尋ねはいたしませんけれども、少なくとも
権利侵害があるのだという者の
立場、それが公共の福祉とのバランスをとろうとする者の
立場から言いますると、
重複研究や
重複投資が行なわれている、そしてまた審理の遅延が行なわれているということは、
出願人の責めに帰すべき事由ではないはずであります。そのことをもって、公共の福祉という名によって
出願人の
権利がおおいかぶせられるということは、ここに
権利侵害があるのではないか。事、憲法問題でありまするから、断定的には申しません。そのような立論がなし得るという点を私は指摘をしたのであります。この点については明確にお答えになっていない。要するにすでに私が指摘した問題について玄関でお話しになっている。私が問題として指摘したことを、奥の間に入っていかないで玄関でお話しになっている点であります。
次に問題になる点は、私は率直に申しまして、この憲法見解なるものの中には驚くべきものがあると思います。
早期公開の時期、方法について私たちは憲法問題を
論議をしたわけです。それについて、
特許出願をした者は
公開をされることは当然予想できることなのだから、このことについては何ら
法律問題は生じないと思います
——一体、
滞貨ということばで大ぜいの人が言いました未
処理案件、そのような状態にみずから置かれるということを
出願人は予想したでありましょうか。いつこのような
早期公開になるというようなことを予想したでありましょうか。いつこのようなかっこうで
公開されるということを、公にされるということを予想したでありましょうか。それらの問題について当然予想できたというならば、一体どこのだれがいつどのような方法で予想されたのか。
公開されることが予想できたということと、どんなかっこうで
公開されるかということとは、おのずから別個の問題であります。これらの問題についての掘り下げは、これまたきわめて不十分であるし、われわれは六十一
国会以来、長い間にわたって指摘した点について、柔軟な対応とみずみずしい感覚によってお答えをしていただいていない、こういうことを申し上げざるを得ないのであります。
それから、すでに六十一
国会において指摘をいたしましたけれども、西
ドイツにおいては、このような場合に、
出願公開制度をいわゆる公用徴収としてとらえている、この点が間違いだということであります。われわれは憲法第二十九条の三項の問題としてこの問題をとらえ得る余地があるのだ、むしろ三項の問題なんだということを指摘したわけであります。公共の福祉によって財産権の内容が単に制限されるだけではなしに、同時にこれは
公開というところの行政処分なんだ、したがってこれは公用徴収なんだ、こういう指摘をしたわけであります。そうでないならないという点についてのお答えがなければならないと思います。これらの問題についての
——短い文章でけっこうではありまするけれども、短い文章なら短い文章の中に、そんな点についての問題意識を持った点についてのお答えがなかったことについては遺憾である、こういうふうに申し上げざるを得ないのであります。
同時に、遡及効の問題についてでありまするけれども、民法の遡及効の問題についてはかなり論文等があるようでありまするけれども、行政法の遡及効の問題については、あまり新しい論文、古い論文等は見当たりません。そんな中で行政法における遡及効をどのようにとらえるのか。このような点について、
特許庁がどのようにお考えになっているかもいまなお不明確である。時間でありますので
答弁を求めるわけにいきませんが、一点だけ私はこの機会に
本法案の
改正を通じてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、遡及をしても
権利侵害にならないのだと言われる。単に期待権ではなしに、財産的な価値を持ったものだとするならば、
本法案に似たような遡及をしたところの行政法令というのは、ここ十年間この
国会において立法されたことがあるでしょうか。私は、ないというふうに理解をしているのです。戦後の混乱時代ならいざ知らず、このような遡及をして
権利侵害をすることはないというふうに私は聞いておる。遡及するのは公務員のベースアップくらいだというふうに聞いておる。そういう点で、遡及効の行政法上の地位をどのように位置づけるか、これについてひとつお答えをいただきたいと思います。
質問はその一点であります。
実はきょうは、
長官と憲法問題について息の長い論争ができると思って楽しみにして参りましたけれども、
質問時間が十五分でありまするのでこの
程度にいたしておきますが、最後に一点だけ要望をいたしておきます。
十二月十五日の決定というのは、私はこれは、かなり実務家の問においても、学界においても問題になると思います。
特許庁の見解が望まれるところであります。したがいまして、
特許庁の
立場から、
ドイツ特許裁判所の違憲
判断、十二月十五日の決定について、この決定文の理由の詳細を反論する文章をひとつ
努力しておつくりになる意思はないかどうか。これはひとつそのようなかっこうで、
特許庁を単に
特許法の専門家に終わらせずに、
特許法の基礎にあるところの、基
本法であるところの憲法の問題についての
特許庁全体の水準を上げるためにも、私は決して無
意味な作業ではないと思うのです。私はそういうことを要望をいたしまして、その点に限って
答弁をいただいて私の
質問を終わりたいと思います。