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1970-04-27 第63回国会 衆議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十七日(月曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 橋口  隆君 理事 前田 正男君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君       石井  一君    稲村 利幸君       小川 平二君    大久保武雄君       海部 俊樹君    神田  博君       小峯 柳多君    左藤  恵君       始関 伊平君    田中 六助君       増岡 博之君    山田 久就君       中谷 鉄也君    松平 忠久君       近江巳記夫君    多田 時子君       松尾 信人君    川端 文夫君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         特許庁長官   荒玉 義人君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  八五号)      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出があります。順次これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 特許法改正案につきましては、早期公開制度をめぐりまして、それが憲法問題としての問題を内包しているのではないか、このような疑問がすでに各方面から提起をされてまいりました。前々国会等におきましても本員は、憲法二十九条の問題として早期公開の問題について若干の質疑をこころみました。さらに、早期公開が当時ほとんど掘り下げた論争にはならなかったわけではありますけれども、憲法三十一条の問題を、同時に本早期公開なる制度は含んでいるのではないか。この憲法問題ということになりますると話は重大であります。慎重な審議を要請されるゆえんであります。  ところが、最近、西ドイツ連邦特許裁判所が六九年の十二月十五日決定を出しました。その決定要旨については、資料等において拝見をいたしましたが、前回われわれが指摘をいたしました二十九条の問題、同時に、日本国憲法で申しますると十四条の問題。さらに、不遡及の原則ということになってまいりますると、憲法問題としてはやはり三十一条の問題。これらの問題について、非常に衝撃的な決定がなされていると私は理解をいたします。そういたしますと、これらの問題について、日本国憲法憲法秩序を守るという立場から、特許法改正案憲法違反疑いがある。その手がかり西ドイツ連邦特許裁判所の十二月十五日の決定、これはこの場合非常に重大な資料であり、材料であります。  そこで、冒頭お尋ねをいたしたいのでありますけれども、西ドイツ連邦特許裁判所六九年十二月十五日の決定は、特許庁はいつどのような経路入手されましたか。
  4. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ほぼ一カ月前でございます。
  5. 中谷鉄也

  6. 荒玉義人

    荒玉政府委員 経路は、実務家同士の、向こうの弁理士さんから日本弁理士さんにございまして、ただ、それは簡単でございましたので、われわれ、やはり本文自身ということで自発的な意思で取り寄せたということで、したがって経路は、実務家からわれわれはニュースを聞いた次第でございます。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 情報化時代といわれているわけですけれども、十二月十五日の決定が知り得る状態になったのは一体いつごろなのでしょうか。十二月十五日に決定が出されております。これは、西ドイツ特許関係者にとりましては、おそらく非常に重大な決定であり、衝撃的な決定であったと私は思うのでありますが、それが年を明けて、しかもほぼ一カ月前、要するにいつごろ知り得る状態にあったというふうに理解をされますか。
  8. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ほぼ一カ月といいますのは、三月二十六日にわれわれは入手いたしました。ただ原文は、雑誌が届くのがおくれて、最近入手した、こういうことでございます。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 非常に遺憾であります。と申しますのは、本改正案について、これは大臣ぜひお聞きをいただきたいと思うのですけれども、きょうは大臣には直接質問はございませんが、憲法問題であったわけです。そうしてわれわれは、あくまで日本国憲法のもとにおいて、特許法改正法案早期公開憲法違反疑いがあるという問題を提起したわけです。そんな中で、十二月十五日にそのような決定がなされた。ドイツ等の新聞においても、私はこれは大々的に報ぜられたと思います。そんなことが実務家、すなわちドイツ弁理士等のほうから情報が入って、しかもその決定原文入手が――だから私は、原文、すなわち決定についての交付申請というのがドイツ公館等を通じてとり得る状態というのは――一月当初に私はこれをとり得たと思うのです。  実は前回委員会、すなわち二十四日の委員会において、同僚委員のほうから西ドイツ決定についての資料要求がありました。本日資料を配付いただきました。すなわち、この資料によりますと、「Ⅰ 概要」、「Ⅱ 決定要旨」、「Ⅲ ドイツ事件経緯」、「Ⅳ 出願人異議申立理由」、「Ⅴ ドイツ連邦特許裁判所中間決定」、あと「参考」というのがついておる。ここでわれわれが知りたいのは、われわれが資料要求として求めたのは、「Ⅱ 決定要旨」、そして「Ⅲ ドイツ事件経緯」、「Ⅴ ドイツ連邦特許裁判所中間決定」、この部分に限るわけであります。そのような部分については、これはもう常識としては、ある程度のことはわれわれ承知をしておる。われわれが知りたいのは全文であります。決定はかなり膨大なものであるというふうに聞き及んでおる。それをわれわれ委員に詳細に分析検討する機会が与えられねばならないと私は思う。判決要旨というのは、どんな論理構成でどういうふうな操作がなされておるかということが、日本国憲法のもとにおける特許法改正案合憲なのか違憲なのかを解明する一つ手がかりになる。この資料というのはきわめて不十分。当然であります。皆さん方のほうでは、こういうものを配ろうとする意思がなかった。この点について二十四日になってから大急ぎでこれをお訳しになったでしょう。それまで、これについて商工委員会へ、こういうものが出ました――これはとにかく情報について早く知ろう。要するに発明家を保護しようとする従来の主張の線に沿っておるならば、これには当然注目し、万難を排して入手をしなければならない。私はそれほど入手が困難だと思わない。決定全文については当委員会にいつ配付されますか。この点についてお尋ねをいたしたいし、同時に資料要求をいたしたい。
  10. 荒玉義人

    荒玉政府委員 至急に要旨をいま一応翻訳をやりまして、もう一ぺん読んでおるということで、印刷に間に合わしまして、あすには提出いたしたいと思います。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、いただいた資料について問題点と申しますか、気のついた点を一、二点指摘をいたしておきます。  最初から最後まで指摘することになると思いますが、「Ⅰ 概要 ドイツでは、連邦憲法裁判所だけが法律違憲であるかどうかの決定権を有し、他の裁判所には違憲立法審査権はない。したがって連邦憲法裁判所旧法出願出願公開違憲だと判断しない以上は、ドイツ連邦特許裁判所違憲判決をくだすことはできない。」とあります。こんな概要冒頭に書かれているような資料要求をわれわれは求めているわけではないのです。これは評価です。一つ判断をお書きになっている。私たちが知りたいのは事実なんです。そこでお尋ねをいたしますけれども、「ドイツでは」とお書きになっておられますけれども、日本国憲法で申しますると、日本国憲法の八十一条、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」とあることは言うまでもありません。そうすると、法令抽象的違憲立法審査権、判例の違憲立法審査権、それらのものがドイツ連邦憲法裁判所に与えられているということでありますけれども、ドイツ連邦特許裁判所違憲判決を下したのではないけれども、ドイツ連邦特許裁判所判断違憲だという判断に立っていることは間違いございませんね、本件事例について。
  12. 荒玉義人

    荒玉政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 そこでしたがって、連邦憲法裁判所旧法出願出願公開違憲だと判断した場合、ここで経過規定特許法施行法第七章第一条第二項は、連邦憲法裁判所違憲判決を下した段階でどのような運命をたどるわけですか。と申しますのは、連邦憲法裁判所旧法出願出願公開違憲だと判断した場合には、ドイツ連邦特許裁判所が重ねて違憲判決を下すまでは、それは法律は無効にはならないのですか。
  14. 荒玉義人

    荒玉政府委員 連邦憲法裁判所最終判断は二通りあると思います。一つは、一般的に法律憲法違反だという場合と、一応違憲判断をいたしまして下級裁判所に返していくという二通りのケースがあるかと思います。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 連邦憲法裁判所権限は、抽象的違憲立法審査権と、連邦法が州法に合致するかどうかについての抽象的審査権と、他の裁判所申し立てによる違憲審査、四は憲法異議申し立てによる違憲審査、この四つの権限を付与されておりますが、本件訴訟はどれに当たるわけでしょうか。
  16. 荒玉義人

    荒玉政府委員 裁判所申し立てによる場合でございます。先生のおっしゃる第三の場合と考えております。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 本件の場合、決定要旨から推理、想像をいたしますならば、問題は、法律的な判断を求めていると同時に、公開の差しとめを求めているのではないかと考えられますが、本件のような場合には、そうすると、この概要の中にお書きになっておるように、破棄、差し戻しをされるんだということでこういうふうにお書きになったのですか。要するに、この資料全体を通じて、お書きになっておる資料の流れておるリズム、資料ムードというのは、燃え上がってきた西ドイツ連邦特許裁判所十二月十五日決定というものはたいしたものじゃないのだ、まだまだ連邦憲法裁判所決定があるんですということで、とにかく何としてもこの決定というものの評価を低くしよう、こういうふうな意図が明確に目的的にあらわれておる資料であります。私はそういうふうに読む。  したがって、冒頭のところをお尋ねするわけです。「連邦憲法裁判所違憲だと判断しない以上は、ドイツ連邦特許裁判所毒血一の判決を下すことはできない」とありますが、逆に連邦憲法裁判所違憲だと判断してしまった以上は、本件訴訟は終結するのかしないのか。戻ってくるのですか。
  18. 荒玉義人

    荒玉政府委員 連邦裁判所判断に、下級審でございます特許裁判所は拘束されまして、それで特許裁判所が最終的な結末をつけるということに事件はなると思います。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 ただ、ドイツ連邦憲法裁判所は、抽象的違憲立法審査権を持っているわけです。他の裁判所申し立てによる違憲審査は、同時に抽象的違憲立法審査権を含むわけですね。そうですね。他の裁判所、すなわち特許裁判所からの申し立てによる審査であっても、結局、連邦憲法裁判所が迫られているのは、抽象的な法令違憲審査判断せざるを得ない。そうなってきた場合に、具体的な本件ケースについては、特許裁判所に戻るにいたしましても、要するに経過規定七章の第一条第二項の運命は、連邦憲法裁判所判決があった段階でどういうことになるのですか、重ねて重ねてお聞きしているわけです。
  20. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御質問要旨は、個々の事件について裁判所が言っても、連邦憲法裁判所が一般的に、抽象的に、新しい経過措置それ自身違憲であるという一般的な判断をした場合どうなるかという御質問……。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一度整理します。  要するに、具体的な事件訴訟が起こってきた。ところが連邦憲法裁判所は、その具体的な判断の論理的な前提としては法令判断をしなければならない。その法令判断は、言うならば抽象的違憲立法審査をせねばならぬ。そうなってくると、具体的な事件連邦特許裁判所へ戻る。しかし、その七章一条の第二項が憲法違反だという判決は当然しなければならないわけです。することになると思うのです。そうした場合には、憲法違反だという判断が出た場合に、それは無効ということでありますね。そうなった場合に、そういう憲法違反だという判決が出た場合に、第七章第一条第二項の運命はどうなりますか。第七章第一条第二項は、判決があった段階で無効になるわけでしょうか。それは特許庁全体を拘束することになりますかという質問なんです。
  22. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一般的な違憲判断があれば、特許庁といたしましては、従来の経過措置そのままを運用するわけにはいかないことになると思います。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 そのあたりになるとはなはだあいまいでございますね。要するに論点が私はここにあったと思うのです。  大臣に私はきょうは質問はいたしませんが、聞いていただきたいのは、事は西ドイツの場合だけれども、すでに改正前に出願されたものについて公開をする。それから、前々国会におけるわれわれの論争というのは、早期公開全体を憲法違反だという点で、そういうかっこう論争をしたと思うのです。ところが私はやはり感じとして、三十一条問題が出ているなということは、すでに出願しているものと改正後に出願するものとは、何か仕分けをしなければならぬなという感じがあったわけです。そうすると、まさにドイツ判決というのは、改正前の出願について早期公開をすることは違憲だという判決ですね。そういう判決が出てきた。だとすると、いずれにしても、連邦裁判所判決特許庁に及ぼす効果その他についての話は、きょうはこの程度あとは詰めませんけれども、いずれにしても特許庁は、そうなってくると、すでに出願した分についての早期公開はできなくなりますね。同時に、それが無効なんだから、そうすると国会においても、その七章の一条二項については廃止手続をとらなければならないと思うのです。無効だから廃止手続をとらなくてもいいという考え方はあると思いますけれども、形式的には廃止手続をとらなければならぬ、こういうことになってくると思う。  そうすると日本の場合、改正案が出た、かりに法律になった、そうしたら、おそらく同じような訴訟は私はたくさん出てくると思う。すでに出願している分について早期公開されるということは権利の侵害だという訴訟が出てくる。あとで、どんなかっこう訴訟が予想されるかということについては私は特許庁にお聞きをしたいと思いますが、そういう訴訟が出てくる。そういうことで早期公開は違法だということになれば、最高裁までその訴訟係属をする。最高裁段階で違法ということになれば、法的安定性というものは全く壊滅状態に私はおちいると思うのです。ある部分はすでに公開されてしまっている。ある部分はだから違法だということになった。そうすると国家は、政府は、特許庁損害賠償一体何百億円用意するだろうかという問題だって出てくる。だから私は、まさに憲法論議として問題を前々国会から提起をしてまいった。非常に事は重大であります。  言うてみれば、ドイツ特許法制度は音を立てて崩壊しつつあるというふうな状態の中で、そのような危険な法改正を――憲法問題として問題が提起をされて、具体的なそれの判断の有力な材料があらわれてきた。それについて、数カ月等も前に出た判決であるけれども、なお十分な検討がされておらない。ようやく石川委員資料要求によって、土、日をお使いになって抄訳をされた。ところが、冒頭の、最初の四行を私、指摘をいたしましたけれども、これはわれわれが知りたい事実をお書きになっているのではなしに、西ドイツ連邦特許裁判所決定というものはたいしたことはないのだということを、火を消すために一生懸命になっておるところの資料でしかないと私は判断する。  というようなことで、そんな憲法問題についての究明がなされない段階で、商工委員会においてそういう法案を通すことの危険性というものはきわめて大きいと私は思う。特許庁の長の、憲法問題、憲法に反するとすることについての見解なるところの文章は、すでに前々国会でいただきました。いま読み返してみたら全く問題意識が足らない。はなはだ抽象的。憲法問題についてのドイツ裁判所判決と比べてみますると、理解においてわれわれのほうが劣っておったということを言わざるを得ない。だから私たちは、そういうふうな特許庁見解なるものも、あらためて合憲なら合憲理由というものが明確にされねばならないだろうと思う。要するに問題意識としてなかったというのは、すでに出願されている分についての早期公開と、改正後の早期公開についての仕分けをして、合憲論違憲論憲法問題を理解するという問題意識が欠除しておったことは指摘されてもやむを得ないと私は思うのです。いずれにいたしましても、全文はあしたいただくということなので、それを楽しみにいたしております。  次に、この点はぜひ調べてください。「Ⅲ ドイツ事件経緯」の「(14)手続中止決定 一九六九年十二月十五日」、そのあと事件はどのようになっておりますか。いつ連邦憲法裁判所係属をして、連邦憲法裁判所審理状況はどうなっていますか。
  24. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許裁判所自身手続中止状態でございます。連邦憲法裁判所のほうの審理状況はわれわれは存じませんが、おそらく相当事件がありますので、まだ何もやっていない状態ではないかと思います。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 手続中止決定が六九年十二月十五日、そのあとどういうふうに事件は継続していきますか。いつ受理され、いつ口頭弁論期日が指定されたというようなことについては、ないと思うという想像ですね、おっしゃっているのは。
  26. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろんわれわれ特許庁、むこうの特許庁に、その後の状況でどういうことになっておるのか、事実があればという照会をしております。したがいまして、いまのところ特許庁からの返事はございません。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 連邦憲法裁判所事件はすでに係属をしたのですか、しないのですか。したとすればいつですか。
  28. 荒玉義人

    荒玉政府委員 連邦憲法裁判所係属しております。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 いつ。
  30. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それは、ここにございますように、手続中止決定の日から係属しておるとわれわれは考えております。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 私、長官ドイツ特許法の御専門だとお聞きしておったのですが、そうなってないと思うのですよ。手続中止決定をして、先ほど長官自身の御答弁では、それから裁判所異議申し立てに基づく審査という場合があるのだ、こうおっしゃったのだから、手続中止決定をしておいて連邦特許裁判所異議申し立てをするわけですね。中止決定をしなければなりませんよ、最終判決は出ないんですよと。連邦特許裁判所のほうから異議申し立てをするのですから、いつ異議申し立てをして、いつそれが受理されたのですかということですね。ですから、中止決定イコール係属にはならないでしょう。それは当然のことですから、これ以上聞きません。そういうことはもう当然のことですね。  そこで、ひとつこの点だけは確かめておきます。特許庁資料の中でこういうふうにお書きになりましたね。要するに、何としてでも西ドイツ連邦特許裁判所中止決定というものの評価を低くしょう、そうして、そういうふうな連邦特許裁判所決定を重視すると非常にたいへんなことになりますという一つムードが、この資料の中にあらわれているように思うのです。  次の点ですが、いまも長官、答弁されたのですけれども、資料の一枚目の裏です。「この事件について連邦憲法裁判所判決がでるまでには二~三年かかるとのことである」、この点の資料根拠一体何でしょうか。何か、連邦憲法裁判所判決が出るまでには二、三年かかりますよ、だから特許裁判所で非常に精緻な憲法判断が出たからといって、この特許法改正案について通してもらわなければ困りますよ、という意図がありありとしていますよ。「二~三年かかる」、しかも「とのことである」と書いてある。そうして、あなたにいつ係属したかお聞きしたら、調べていないとおっしゃる。口頭弁論期日がいつ指定されたかということについても知らないという。一体ここ「二~三年かかるとのことである。」という情報はどこから入手されましたか。
  32. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ドイツ特許庁からの公式のニュースではございません。これはわれわれ実務家同士でいろいろニュースの交換がございます。そうして、そういった方の手紙にそういう事実といいますか、見通しの手紙がございました。そこらが根拠でございます。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 ドイツ連邦憲法裁判所審理期間は平均どの程度なのかという点についての、ドイツ連邦憲法裁判所裁判統計はお持ちになっておられてのお話なのでしょうか。
  34. 荒玉義人

    荒玉政府委員 統計を持っておりません。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、私は話を冒頭に戻します。十二月十五日の決定というのは、本委員会における審理において非常に重要なものだと思います。要するに比較法学的な立場からいっても、日本憲法のもとにおいてはどういうふうに適用さるべきであろうか。ドイツ特許法日本特許法日本国憲法の二十九条と基本法の十四条、それからその他三条ですか。それはとにかく、基本的な法構造においては変わっていないと思うのです。そうだとすると、かなり有力な手がかりを与えるし、また裁判所にも非常に貴重な心理的な影響を与えると思う。というふうな中で、あるいは極論をすれば、あなたのほうの情報入手は三カ月おくれから四カ月おくれですから、ドイツ連邦憲法裁判所判決が出ているかもしれないわけですね。出ていないということは、聞けばはっきりしているのでしょうが、どの程度審理が進んでいつごろ出るかわからない、二年から三年かかるということは根拠、いわれなき資料の記載である。こういう場合は、事は重大だ、この事件は急いでやろう、緊急審理をしよう、世界各国に与える影響も大きいだろうというふうなことで、いまから数カ月後に連邦憲法裁判所判決が出る場合だってあり得るわけですね。あり得ると思うのです。だから私は、やはりわれわれをおどかしてはいかぬと思うのですよ。連邦憲法裁判所判決は二、三年かかりますよというようなことは、これは削除していただけますか。
  36. 荒玉義人

    荒玉政府委員 誤解を招くというのでしたら、削除いたします。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 連邦憲法裁判所審理状況はどうなっておるかをあすまでに――これは事件番号その他お調べいただけますね。
  38. 荒玉義人

    荒玉政府委員 国際電話で、いま先生のおっしゃった事実を確認できるだけ確認してみたいと思います。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 大体この決定というのは、何という出願人が、ドイツ特許法の何条に基づいて、どういうふうな異議申し立てをしたのでしょうか。いずれにいたしましても、「Ⅲ ドイツ事件経緯」のうちの(1)から(7)までは意味のないことです。特許庁が、自分のところの早期公開を違法だとするはずがないですから。(8)以降の事件経過意味があるのでしょう。そこで、これは一体、何という出願人の、どんなことに関してのどんな申し立てなんですか。
  40. 荒玉義人

    荒玉政府委員 具体的にだれかというのは、ちょっといまございません。御承知のように、ドイツの場合ですと、これは公開予告通知というものを出願人に出すわけです。それに対して出願人一から異議申し立ててくる。その異議特許庁が却下した、その却下に対して特許裁判所に不服を申し立てたということでございますが、どういう出願人であるということは、ちょっといま資料がございません。
  41. 中谷鉄也

    中谷委員 ですから「出願人による異議申立」とあるはずで、これはだれが具体的な異議申し立てをしたわけですか。私が知りたいのは、これはドイツの場合、外国人なのか、ドイツ人なのかということです。ですから私は思うのですが、この特許法改正案をやった場合に、かなり手こずると思うのです。ドイツの連中は、集中的にそういう異議申し立てをしてくる可能性があると思います。そういう場合が当然予想できるでしょう、ドイツ連邦特許裁判所中止決定が出たわけですから。だから私は、そのあたりを知りたいと思うのです。別に事件の法的な性格、憲法問題には直接関係がありませんけれども、だれが出願したのかということも、どうも資料の中に出てこないわけですね。私はそのあたりもふしぎに思うのです。  それから、もう一点お尋ねいたしますけれども、連邦憲法裁判所への申し立て審理が二、三年かかるというお話でありまするが、それは取り消しになった。ところが、このドイツ事件の経過を見てみますと、ドイツ特許裁判所決定というのは、私は非常に早いと思うわけです。従来、実務家としての特許庁の御専門の方々の感じでは、この程度のスピードで審査はされるものですか。
  42. 荒玉義人

    荒玉政府委員 恐縮ですが、私の感じで、一般がどのくらいかかって、これはどうかという感じがございません。むしろ正確に特許庁に照会してお返事したほうがいいかと思います。
  43. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに私が言いたいのは、事はとにかく複雑な特許権そのものに対する判断ではないわけですね。早期公開というものが憲法に反するか、反しないかという法律判断ですからね。何べんも申し上げますけれども、連邦憲法裁判所判決も二、三年かかるというが、私はそんなにかからないと思うのです。案外、ひょっとすると、もうきょうぐらいに出ているかもしれない。そういうことになってまいりますと、これはもうたいへんな影響を及ぼしていくだろうということを私は指摘をするのです。だから、そういうふうな憲法問題としての対決といいますか、対応、そうして掘り下げを迫られている問題について、少なくとも本法案について――あす何時にお配りいただけるか知りませんけれども、将来日本裁判所で、憲法に違反したというふうな判決が絶対に出ないという保証は、長官できないと思うのですよ。大臣も、まさか憲法違反法律だというふうなことは思わないでしょう。しかし、そういうふうな判決が出る可能性はあるということは認めざるを得ない。そんなものについて、十分な詳細な掘り下げた検討の機会を与えていただかなければならないと私は思うのです。これは、もう同僚委員前回十時間以上質問をしたということになっているそうでありますが、それとても、特許庁憲法問題についての理解はきわめて不十分だったし、私自身も、違憲という問題についての論理構成はきわめて粗雑な面があったということになれば、新しい局面の展開だと思うのです。そういうふうな中で、その問題についての徹底的な究明をせずに――私は本法案についてその点を徹底的に審議をさせていただきたい。そうでないと、あした資料を配られて、それについて全文の判例評釈、判例批評を中谷委員やれと言われても、私は困難を感ずるのです。  そこで私は、きょうの質問で留保させていただきたいと思いますが、委員長にお願いしたいのですが、かつて特許庁がお配りになりましたところの、憲法違反だということについての特許庁見解、まとまった文章だと思いますけれども、私が指摘をいたしましたように、いまさらながら問題意識が非常に浅かったということは、特許庁としてやはり認めざるを得ないと思う。そこで、あしたまでにドイツ連邦特許裁判所決定に対する反論、これの詳細なものをひとつお書きいただけますか。
  44. 荒玉義人

    荒玉政府委員 承知いたしました。
  45. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、委員長にお願いしたいと思うのですが、あす、きょうのように十時半から委員会が開かれるわけです。そして、まず判決資料をいただいて、朝、拝見をする――今晩は無理なんですね。
  46. 荒玉義人

    荒玉政府委員 手書き先生のところへ提示したいと思います。
  47. 中谷鉄也

    中谷委員 そうしたら、あなたのほうのその判決に基、つくところの判例評釈的な反論というのは、同時にお届けいただけますか。
  48. 荒玉義人

    荒玉政府委員 同時にお届けいたします。
  49. 中谷鉄也

    中谷委員 念のために申し上げておきますが、「決定要旨」の1だけでけっこうです。2の「審査手続の進行を料金納付を義務づけられた審査請求にかからしめることに関する範囲では、憲法上の疑義がない。」というのはけっこうです。1だけでけっこうです。それと、「Ⅲドイツ事件経緯」の「出願」、「審査課による出願人の審尋」とありますが、これは一体どのような特許法根拠条文に基づいて行なわれてきたのかということ、それも資料をつくってください。  これは結局、日本特許法と違うから、日本の場合は合憲だというなら、そういう論理をつくってください。しかし、無理して合憲の論理をつくるというふうな、この資料のような考え方でしていただきたくないのです。憲法問題なんですから、無理して合憲論理構成をするのは危険だと思うのです。私はやはり、ドイツ特許法制度がとにかく崩壊しているような感じをいま受けますが、そういう中でわれわれは、特許法改正をするについては、きわめて慎重かつ真剣でなければならないと思うのです。そういう点で、長官が反論をあしたまでにとおっしゃり、またきょうまでにとおっしゃるのは、どんな反論が出るのか、非常に私、疑問があるのですけれども、それはそれとして、ではいただきます。日本憲法判例も引いていただけますね。要するに二十九条、十四条というような日本憲法判例は当然御引用になるわけでございましょうね。
  50. 荒玉義人

    荒玉政府委員 原則といたしまして、われわれ、ドイツ中間決定それ自身は、ドイツの事情で日本と違うという立場でおるわけでございます。もちろん詳細には文書にいたしたいと思います。したがって、急に無理して云々でございますが、われわれは別に無理しておるわけではなく、われわれの考えを率直に申し述べさせていただきたいと思います。
  51. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、要するに前にお出しになった特許庁見解を一歩も出ないということでしょうか。要するに遡及効の問題だとか、それから十四条の問題、基本法の三条というふうな問題については、問題として特許庁見解にはあらわれておりませんね。問題意識としてお持ちになっておらなかった。そうすると、それらの問題については、もはや論ずるまでもないという御見解なら、私はあすの質問としては、すでにいただいた特許庁見解に基づいて反論さしていただきます。要するに問題意識としての意識の問題――意識といいますか、問題の把握のしかたが浅かったという前提に立つならは、ドイツの判例――われわれは学者じゃないわけですから、なるほどおっしゃるように、ドイツの判例そのものの評釈をお願いしているのではなくて、日本国憲法立場からどうだという問題なんですから。その点について、もしそういうことはもはや論議の対象にならないのだというなら、前の特許庁見解だけでけっこうです。あわてて何か無理やりにおつくりいただく必要はないのです。いかがでしょうか。
  52. 荒玉義人

    荒玉政府委員 日本憲法との関係におきましては、基本的に従来の主張を変えるつもりはございません。ただドイツの場合には、もちろん憲法も全く一緒ではございませんし、あるいは特許並びに実用新案制度それ自身が違う面もございます。そういった点から、ドイツ決定に対してわれわれは見解を持っておるわけでございます。繰り返して申しますが、日本国憲法と今度の改正案の関係におきましては、そう基本的に変わった考え方はございません。
  53. 中谷鉄也

    中谷委員 資料要求的な質問をしておきますが、決定の中には、従来のドイツ憲法裁判所判決を当然参照しなさいという部分が何カ所かありますが、その決定ないしは判決は、重要判例として資料としてお出しいただけますかどうか。これが私の質問といいますか、資料要求です。それが手がかりだと言っているわけですね。  そうすると、遡及効の問題というのが新しく浮かび上がってきておりますが、遡及効の問題というのは、きょうは若干準備の必要上お聞きをしておきますが、不遡及の原則あるいは遡及の原則等の問題。不遡及の原則の問題については、憲法問題としては何条問題だというふうに御理解になるのでしょうか。それとも、それは憲法上の問題としては理解されずに、遡及効の問題として問題を展開されるのでしょうか。そのあたりはいかがですか。
  54. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず最初の御要求でございますが、ドイツの現行法で閲覧をさす場合に、特許権者、権利者の同意を得なければいかぬという憲法裁判所の見解でございますが、これはちょっと手元にございませんので、至急にお届けするというわけにはおそらくまいらぬのではないか。ただ結論は、長年そういう運用をしておることは事実でございます。  それから今度の改正案の――ちょっと違いますか。
  55. 中谷鉄也

    中谷委員 ちょっと違います。私がお聞きしておるのは、決定の中に、何カ所か従来の連邦憲法裁判所の判例を引いていますね。そらして、たとえば基本法の平等の権利、基本法の第三条第一項に違反しておる、そうしてそれは連邦憲法裁判所判決の判例集二〇八ページを見てください、こう書いてある。この判例について、日本国憲法のもとにおける特許法改正案合憲かどうかを議論するのだけれども、これはとにかく、このドイツ特許裁判所決定が正しいかどうかの向こうの言い分になるのだから、これは当然要るんじゃないですか、こういう話なんです。だからわれわれとしては、日本憲法判例も引いておいてくださいね、そういうことはおやりになりますか、そういうことをお聞きしておるのであって、要するに、公示をした、そうして閲覧がどうのこうのというようなことは、この決定の中には出ておりませんね。それは判決決定理由としては出ておりましても、判例を見なさいということは出ておりませんよ。
  56. 荒玉義人

    荒玉政府委員 できるだけ手元に入るように努力させていただきたいと思います。  それから経過措置につきまして、係属中の出願について早期公開制度を適用する問題につきましては、これは、いわゆる既得権をどこまで保護していくか、保護のしかたが公共の福祉に該当するかどうかという一般の経過措置の問題として考えております。もちろんそれは、憲法二十九条の「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」という精神から、われわれは経過措置の適当かどうかということを考えておるわけでございます。
  57. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに決定要旨は、「特許法等改正する法律第七章第一条第二項の規定は、この法律の施行前に提出された特許出願出願公開に服させる範囲において、基本法第三条第一項および第十四条の規定に合致しない。」とあって、「それは、また、法律の遡及的適用についての許容される限度を踰越している」。要するに、理性ある人については、このような者については許容しないだろうというようなことで判決決定の中に出ていますが、要するに、受忍の限度を越えておる、許容の限度を越えておるという点ですね。この遡及的適用――不遡及の原則というのは不遡及の原則として理解したらいいのか。それとも、これは憲法問題としては、二十九条の「公共の福祉」と私権の保護とのバランスをとる問題の一つとして、遡及効はそこにはめ込まれるのか。それは特許庁としては、現在どういうようにお考えになっていますか。しかし、はめ込まれるというふうに、簡単に言うてしまっていいものかどうかという問題があると思うのです。それとも、憲法三十一条の問題が生じてくるおそれはありませんか。
  58. 荒玉義人

    荒玉政府委員 後者の問題と考えております。したがって、経過措置をきめる場合においても、既得権はどこまで尊重さるべきか、それが公共の福祉との適合上何が適切であるかという見地からわれわれは考えております。
  59. 中谷鉄也

    中谷委員 いずれにいたしましても、早期公開について、かりに早期公開というふうなことが特許法改正案として認められた場合に、いろいろな法律的な手続の障害はあるでしょうけれども、どんなことを発明権者、特許出願人が、日本の場合、訴訟という法的手段、法的手続に訴えてくるだろうかということに、非常に私は関心があるし、そのことについて、率直に申しまして非常なおそれを感じます。そういうようなことで、下級裁判所において早期公開憲法違反だという判例が出た場合には、特許法改正案そのものは、早期公開制度は音を立てて崩壊するだろうというふうな危険をはらんでいる。そういうような中で、最高裁判所判決あと二年か三年かかるというわけにはいかないと私は思う。法律的安定性を私は乱すことははなはだしいと思うのですけれども、立法、司法、行政、要するに三権分立ですから、司法権の判断というものは、それ自体において尊重されねばならない。だから、やけどをするようなところに手を出すなということだと思うのです。そういう危険な内容については、詰めて詰めてしつこいくらい解明がされなければならない、これは私の考え方であります。  そういう点から言いますと、前国会以来、憲法問題についての疑義が提起されておった。そして、なお本日この段階において疑義が深まるばかりであるというふうな――私は委員長にお願いいたしたいのは、また御主管の通産大臣にお願いいたしたいのは、この問題については、一点の曇り、一点の疑義がないところまで解明の機会を与えらるべきだということです。要するに、本法案について賛成をしたとか反対をしたというようなことで、違法違反だというふうな判決が出た場合の責任は免れ得ないだろう。そういうふうなことで、本法案に反対したとか賛成したということと、将来、憲法違反判決が出たことによって、かりに特許制度そのものがそのことによって崩壊をしたというような場合には、われわれは共同責任をとらなければならない。そういうふうな願いと気持らの中で私は本法案についての審議に参画したいと思うのです。  したがいまして、あす資料をいただくということで、あす資料をいただいて――一夜づけということばがありますけれども、あすの朝十時に資料をいただいて、十時半から質問というのは、はなはだ質問者に対して酷な措置だと思うし、この問題については、私のほうの理事委員長ひとつ十分に協議をしていただきたい。憲法の問題について、そういうようなものをすぐ質問をするというのは無理だし、現に特許庁自身が、この判決入手されたのは一カ月前で、十分な訳文もお持ちになっていないというふうな中では乱暴きわまりない、こういうふうに私は言わざるを得ないと思うのです。委員長、そういうふうな次第でありまして、本日の質問はこの程度にさせていただいて、お願いをした資料はできるだけあすいただいて、審議を続けさせていただきたい。私はこの程度で本日は質問を留保させていただきたい、このように考えます。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいままで質疑応答を注意深く承っておりました。法律的な、ことに憲法との関連における本法案についての中谷委員のお考え方につきましては、私も敬意を表するにやぶさかでございません。そこで、私が承っておりまして感じておりますことを、二、三申し上げておきたいと思います。  第一は、ドイツにおけるこの問題についての最高裁判所決定というものが、おそらく私どもの知り得る範囲では、まだ決定連邦裁判所にあっては下されていないのであろうということが第一点であります。かりに、何かの時期に連邦憲法裁判所で、最終的に違憲であるという決定をいたしました際であっても、それは、いわばわれわれとは法体系を正確には同じにしていないところのドイツにおけるできごとであるということが、第一に申し上げられると思います。  次に、しかしこれは比較法学の立場からは、当然お互いに関心を持たなければならない問題であるということは、これは私も認めるにやぶさかでございません。  それから第二に、これは前段で御指摘がございましたが、最高裁判所による法令審査権と立法権との関連という問題があると思います。先ほど御質問にありましたように、最高裁判所が、法令の全部あるいは一部分を無効である、違憲であると判決をしたときに、それが直ちにどのような効力を発生するのかということについては、申し上げるまでもなくいろいろ学説がございます。現実的にはおそらく、最高裁判所違憲と判定をした部分について立法府が新たな立法をする――と申しますのは、一部分違憲でありましても、法律全体の構成からすれば、その部分は抜けてしまって法律としての機能を果たさない場合が現実にはしばしばあると思いますので、立法府が新たな立法をして、それによって違憲である部分合憲に改めるということかと思いますが、立法府がそういう処置をとるまでの間の法秩序というものはどうなるのか、いろいろ取引の安全というふうなものはどうなるのかということについては、学説も分かれておりますし、実際の事例も少ないと思います。  それから第三に、私どもが御提出いたしました資料についての御批判がございました。これは、私どもが御提出いたします資料は、厳密な意味での、たとえば法廷に対して提出する証拠書類といったようなものとは、多少私は性格を異にするであろうと思います。私どもは、できるだけ正確に資料を提出することを常に心がけておりますけれども、外国に起こった、しかもかなり高度に技術的なできごとについて、客観的な事実だけを文書に書きまして申し上げる場合も、これも一つの行き方でございましょうが、しかし委員の多くの方は、一体これは概要どういう事件なんだという関心を当然お持ちでありましょうから、いわゆるサマリーを最初につけますことも、これはお許し願えると思いますし、有効である場合も私はしばしばあろうと思いますので、そのサマリーの中にできるだけ客観的にサマライズしなければなりませんが、外国に起こったできごとを描写いたしますときには、ややそれが描写的になるということも、御理解を助けるという意味では、私は無意味ではないと思うのであります。ただ、それが主観的に不正確になるということは、これは避けなければならないと思いますので、私ども、この資料をそういう心がまえでつくりまして御提出したつもりでありまして、先ほどの二、三年間かかるという点につきまして、「かかるとのことである」と書きましたのはそういう趣旨であったかと思いますが、これはしかし、御質問で明らかになりましたように、先方における一部の専門家の判断を反映したものであるというふうに御理解を願っておきたいと思います。
  61. 中谷鉄也

    中谷委員 ちょっと資料要求といいますか、長官お尋ねをしておきたい点で落としましたが、オランダ、それからドイツのこのような訴訟、抗告、異議ですね。本件のようなもの、そういうようなものはほかには出ているのですか。たとえばそのあたりの資料は御入手になっておられますか。
  62. 荒玉義人

    荒玉政府委員 オランダでは、ドイツのような事例は私、全く聞いていませんが、全く聞いてないことは、絶対にないかどうか、それは御判断願いたいと思うのですが、私たち全然聞いておりません。  それから、ドイツの場合には三件、そういう似た事件があったと思います。
  63. 中谷鉄也

    中谷委員 その三件のあとの二件はどういうことになっているのですか。
  64. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これも推測で恐縮でございますが、そのままで係属しておるとわれわれは考えております。
  65. 中谷鉄也

    中谷委員 どこに。
  66. 荒玉義人

    荒玉政府委員 連邦特許裁判所係属しております。
  67. 中谷鉄也

    中谷委員 ですから、いまいろいろな資料を要求いたしましたので、先ほど申しましたように、質問を次回にさせていただきたい、こういうことで、きょうはこの程度で終わらしていただきたいと思います。
  68. 八田貞義

    八田委員長 岡本富夫君。
  69. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま中谷委員から、職業柄、憲法問題でいろいろとお話がありました。私は、今度は実態面からお聞きしたいと思います。  今回のこの改正の目的、これは審査促進になる、こういうようなお話でございましたが、どういう理由審査促進になるのか。あるいはまた、公開制度になっておりますと、どういうスケジュールのもとに、どういうプログラムで大体いまの滞貨が処理できるのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  70. 荒玉義人

    荒玉政府委員 審査促進に直接関係ございますのは、審査請求制度でございます。このねらいは、現在ですと出願を全部審査する。そうなりますと、むだな出願もあるわけでございます。したがって、民間の出願人の方々の御協方を得まして、必要なものだけを審査をしていく。といいますと、大体二割程度のものは審査をしなくても済む。それが全体としての審査の促進に役立つというような面では、審査関係は審査請求制度のほうでございます。  公開制度は、これは両面ございます。一つは、できるだけ早い機会に公開していくという面と、審査請求制度を裏づける一つの役割り、つまり審査請求制度と密接に結びついておるという二面がございます。したがいまして、審査促進に直接役立ちますのは、むしろ審査請求制度のほうでございます。
  71. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまのお答えの中からは、これからこの滞貨の状態を解決して、そしてPCTにも加盟していこうというような目的ではないかとも考えるわけであります。そこで、そのスケジュールといいますか、現在約八十万件ですか、それで大体二〇%ずつ早期公開で落とされたならば、これからの目標をどういうように立てておるのか、そのビジョンをひとつお聞きしたい。
  72. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれといたしましては、もちろん新法によりまして、請求のあったものをできるだけ早い機会に審査をやっていきたい。請求があってから大体二年程度を目標にいろいろな人員の整備なりをはかってまいりたい。ただ、新法が幸いに成立いたしました場合には、昭和四十六年一月一日から施行いたしたいと思います。当分はやはり未処理案件が累積しておりますので、すぐ目標の二年程度にはまいらないかと思いますが、少なくとも四十九年度ぐらいには、そういった目標のもとに施行いたし、人員その他の整備をはかってまいりたい、かように考えております。
  73. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、現在たまっておる、また今後もどんどんと出てくる出願に対して、どうすれば早く処理ができていくかということについての二つの方式がありますけれども、一つは、アメリカのように行政上努力をいたしまして、非常に早めて――何か聞きますと二年ぐらいになっておる。もう一つは、これは欧州方式だと思うのですが、こうした公開制度をとろうとしておる。こういうように二つの方式がありますけれども、なぜ米国のように、現在の法体系の中で、そうした法規改正をやらずに滞貨を減らしていく。すなわち、どんどん審査を促進していく、こうした努力はいままでどういう面に努力されたのか。これについてひとつお聞きしたいのですが、これは大臣長官両方にお聞きします。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは結局、審査官を増員するということが一つの方法でございまして、従来とも毎年、百人こえるときもございましたし、やや割ったときもございますが、増員をいたしてまいりました。今年度もそのようにお願いをいたしておるわけでございます。  それからもう一つは、電子計算機等を用いまして、従来から特許になっておりますもの、あるいは出願されておりますものを、系統的に分類をするならばある程度の検索が可能ではないかということで、そういう努力もいたしつつございますが、これは品物の種類によりまして、金属でございますとかなんとかという、そういうものについてはかなり定性的に分類ができますけれども、事の性質上、人間のアイデアに関するものでございますから、非常に分数しにくい。しかしただいま、そういう努力は続けて今日に及んでおるわけでございます。それらの努力にもかかわらず七十万件をこえる滞貨、今回増強していただきました人員なり陣容の処理能力から見ましても五年をこえるという滞貨をかかえるに至ったわけでございます。
  75. 荒玉義人

    荒玉政府委員 運用できる範囲といいますのは、もちろんわれわれとしては当然やらなければいかぬかと思いますが、アメリカの例を見ましても、大体新しい体制は一九六五年以降でございます。その前は大体二年二カ月から二年十カ月くらいの間を処理期間にしておったわけでございます。したがって、その後大体二年程度ということになっております。そういう意味では、大体半年くらいの短縮をアメリカはやったわけでございます。その程度のことは、もちろんわれわれとしても運用で改善すべきかと思います。ただ問題は、アメリカと違いまして、日本のように大幅のおくれというものは、もちろん人員の増強なり審査のやり方なり、いろいろな手はありますが、やはりある程度そういう運用のほかに制度自身という問題が起こってくるかと思います。
  76. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで特許庁では、全然滞貨がなくなるということはないわけでありますが、理想滞貨というものをどれくらいに見ておるか、これをひとつお聞きいたします。
  77. 荒玉義人

    荒玉政府委員 むしろ理想の処理案件というより、おおむね審査期間は幾らが理想かと言ったほうが的確だろうと思いますが、旧ければ早いほどよいという問題はございますが、ある程度審査主義をとる以上は、やはりおおむね二年程度というのが、いわば一つの目標期間かと考えております。
  78. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体二年くらいが、私のほうの調査によっても理想である、こういうように感じております。  そこで今度、五月二十五日からワシントンでPCTの国際会議が開かれて、条約に署名する、こういう方針であるように承っておりますけれども、もしもPCTに加入することが決定した場合、この改正案を見ますと、大体十八カ月目に公開することになっておるが、PCTの発効後は、日本の国民の出願が十八カ月で国語で公開される。それから外国人出願は、この条約を見ますと、特許庁のほうから、特許協力条約の最終草案、これの仮訳が出ておりますけれども、二十二条、出願人が十九カ月まで選択国をきめないとき、または三十九条、十九カ月まで選択国をきめないとき、に従って二十カ月または二十五カ月までに翻訳を提出することになる。そこで、国語で早期公開をしようとしましても、二十六カ月または三十一カ月より早く公開するのは不可能である。こういうことを比較いたしますと、早期公開するということを前提とした場合、日本人と外国人との公開が非常に不公平になるんではないか、こういうように感ずるわけですが、いかがですか、これは。
  79. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ただいまおっしゃいましたように、PCTに加入しますと、外国語のものは原語で、もちろん十八カ月で――BIRPIの公告によりますが、日本で翻訳になりますのは約二十三カ月かかると思います。その点はいろいろわれわれも、新法と同じように、できるだけ早い機会に外国も見たいということですが、これは各国それぞれいろんな事情がございまして、いまのBIRPIの案ですと、やはり翻訳で公開できますのは二十三カ月、そういうことになっております。
  80. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、このPCTに加入しますと、この法律がもしも公開制度になっておりますと、外国人日本人がこうした不公平になるということは、これは明らかであると私は思うのです。そうしますと、この公開制度というのは考えものではないか、こういうことをやってはいけないんじゃないかというように感ずるわけですが、これに対する御意見、いかがですか。
  81. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろん、先ほど言いましたように・われわれといたしましては、同じような期間に公開できるということが望ましいと考えています。ただ、十八カ月といいますのは、十八カ月前では公開できないということでございます。それで、特に同じような利害関係を持っておりますのは、公開制度を十八カ月にしておる国は、やはり大体日本と同じような事情にあるかと思います。もちろん、これは二十三カ月にいたしましたのは、各国それぞれの事情、つまり翻訳というものは相当手間がかかるし、そういったいろいろな事情を勘案して、いま一応の案は二十三カ月になっておるわけであります。しかし、先ほど言いましたように、十八カ月が望ましいということには変わりはございませんが、いろいろな事情でやむを得ないというふうな考え方に現在立っております。
  82. 岡本富夫

    ○岡本委員 その点は、まあやむを得ないということになればあれですが、外国のほうから見ますと、何か日本人のほうが優先で外国人のほうがおそくなる、こういう不公平は免れないと思うのです。でも、やむを得ないというようなお答えをされると、これはどうしようもないわけですけれどもね。  そこで、現行法のまま滞貨を処理する方法の一つとして、現在の弁理士に鑑定書をつけさせる、そういうようなことをすると非常に審査が省略されるのではないか、こういう意見も出ておるわけです。大体七〇%から八〇%の出願弁理士特許庁の代理をつとめる、こういうような方法があるという意見が出ておりますが、これに対する御意見を伺いたい。
  83. 荒玉義人

    荒玉政府委員 弁理士の鑑定の効力をどう見るかという問題はあるかと思いますが、かりにそれを非常に強くして、一応鑑定の結果、特許にすべきものは特許にするということにすることは、相当実効があがるかどうかということと、正鵠を期するかどうかという点につきまして、いろいろ疑問がございます。といいますのは、私も実は弁理士の資格はございます、登録すれば。しかし、おそらく先生、私が、これは実用新案登録すべきでないと言いましても、どこまで権威があるか、これは私自身おそれておるわけでございます。もちろん、当該技術についてきわめて専門的な知識を持っておる方もおるかと思いますが、その技術というものは、御承知のように非常に専門分野が多うございます。したがって、第一義的に鑑定するということは相当むずかしい。と同時に、専門的な技術分野の知識が要るということを考えますと、その弁理士の鑑定がはたして実効があがるかどうか。いま何十%とおっしゃいましたけれども、決してそういうふうに効果があるとはわれわれは考えておりません。
  84. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、早期公開をしたからといって、これが確実にうまくいくかどうかわからない、やってみなければわからない、こういうような意見をこの前も聞いたわけですけれども、それとこれとは同じ論法になってしまう。それで、弁理士が鑑定書をつけた、それに対して公開したときに異議が出た、そういうことになると、その弁理士はもうほんとうに鑑定能力がないのだということになって、出願する人たちがその弁理士を使わなくなってくる。こういうもので淘汰されていくわけですから、その弁理士も、特許庁の出先のような、オランダのIIBぐらいの力を持たなければ鑑定はできないということになると、相当勉強もし、鑑定料も取ると思いますけれども、促進するんじゃないか、こういう考えを持っておるのですが、いかがでしょうか。
  85. 荒玉義人

    荒玉政府委員 実は審査省でやるということがもちろん一番望ましいわけでございますが、外部に委託をしていくというのも、当然今後われわれは考えなければいかぬと思います。その際、弁理士の鑑定がいいのか。あるいは、各業種ごとにいろいろ専門団体がございます。たとえばガスライターでございますと、ガスライター振興協会というのがございまして、いろいろ特許その他の審査を自主的にやっておる面もございます。むしろそういった外部と連携工作をしていろいろ審査の促進をはかる、これは当然今後必要になると思います。従来でございますと、出願中の書類は全部秘密でございますから、外部へ漏らすということは法律の禁じておるところでございます。今度は公開していけば、そういった秘密性は解除されるわけでございます。今後、そういった各専門分野と連携工作をとりながら審査体制を拡充していくということのほうが、むしろ実効があるのではないかと私は思います。もちろん弁理士の方々の協力を得ることも必要だと思いますが、ただ、それを全般に制度化してはたしてどこまでいくのかという点は、ただいまのところ疑問なしといたしませんが、先ほど言いましたように、外部といかに連絡、協力していけば審査が促進されるかという点は、当然積極的に考えていきたいと考えております。
  86. 岡本富夫

    ○岡本委員 ことばじりをつかまえて悪いのですけれども、こんなにたくさんの反対もある公開制度を――また、先ほども中谷委員から話がありましたように、出願人出願をしたときはいまから四年も五年も前ですけれども、早期公開をしてもらいたいといって出願をしておるのではない。それを途中で、こうして法改正があったために公開になってしまったということになれば、これはいままで出願した人たちは承認できない。したがって、裁判にも行こう、こういうことになってくるわけです。そこで、この法改正の前に、米国がいろいろな努力をして非常に短くしているわけですから、やはりそうした努力がまず必要ではないか、そういうふうに思うのですが、その点いかがでしょうか。何かこの公開制度は滞貨一掃の特効薬のようなお考えを持っておる。ほかにももっともっと考えるべきことがあったのではないか、こういうふうに思うのですが、どうでしょうか。
  87. 荒玉義人

    荒玉政府委員 たびたび申し上げますように、問題は制度改正のみで解決するとは、われわれはいささかも思っておりません。運用上改善すべきことは当然やるべきだと思います。昨日石川先生から、アメリカの運用についての資料請求がございましたのですが、アメリカの運用でできるだけのことは、二年前にわれわれも着手いたしておるわけでございます。アメリカの場合の骨子は、できるだけ書類の往復の回数を少なくいたしまして、極端にいえば、一回勝負する、集中審理をする、こういうところに早くなった一つの大きな原因があると思います。それには、従来のように、一方的に出願人に通知をして、また意見を求めるというのではなくして、当該事案につきまして、アメリカのパテントアトーニー等のように、いわゆる弁理士さんが全権を持って審査官と折衝して、そうして事前に問題点を煮詰めて一発勝負していく、これがいわばアメリカのやり方の骨子でございます。それに応じましてわれわれは、出願人に対していわゆる拒絶理由といいますか、こういう理由で特許になりませんということを通知するわけでございます。その際は、できるだけ出願人が応答しやすいような詳細な拒絶理由をやっていく。それから面会制度を活用いたしまして、たびたび書類の往復するということを避けていきたい。これがアメリカのやり方で、日本ででき得る範囲でございます。もちろんそういった運用上の改善は当然やるべきであるし、また、われわれとしても過去において努力してまいったわけでございます。全く先生のおっしゃるとおりだとわれわれ考えております。
  88. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう一つ早期公開をしなくても運用面で解決する方法として提案するわけでありますが、昭和四十一年この特許法――これは長官か三十年当時ですか、非常に力を尽くしてつくられたという話ですが、それから四十一年に改正しておるわけですけれども、実用新案の審査にあたっても、やはり特許のほうを見なければいかぬ。実用新案と普通の特許との相違点というのは、御承知のように特許は発明ですね。実用新案のほうは、それに対する改造といいますか、創造になるわけでしょう。それが同じような状態審査しなければならぬ。実用新案のほうはもっと簡略にできないのか。私ちょっと聞きたいのは、現在ある滞貨の中で、実用新案が何ぼ、それから純然たる特許は何件、これをひとつお聞きしたい。そうして、いま私が提案したように、審査の手数をもっと省かなければならぬ、そうすればもっと審査がたくさんできるのじゃないか、促進ができるのじゃないか、こういうように思うのですが、その点御意見は……。
  89. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大体、特許、実用新案の比率は、特許が四五%、実用新案は五五%、毎年そういう傾向でございます。具体的に言いますと、いま特許、実用新案合わせて七十六万件でございますので、特許が三十三万件、実用新案が四十三万件、ほぼこういったところでございます。  実用新案は簡易にやったらいいじゃないかということですが、実は現在の法案を昨年提案する前に、実用新案を簡易に審査しようという法案を提案したわけでございます。これはいろいろな事情で審議未了になったいきさつがございます。したがって、国会の審議で実用新案の簡易審査というのは、いろんな事由で廃案になったわけでございます。したがって、それと別な構想で現在の法案を提案しておるわけでございます。  もちろん運用上、大体発明と考案といいますものは、いまの制度でございますと全く質が同じでございます。ただ、いわば発明のほうは高度なもののみ、実用新案のほうはやや発明よりは程度の低いもの。もちろん、高いものが実用新案として出願してきても登録になるわけでございますが、いわば程度の差でございます。したがって、先般簡易審査ということが廃案になったわけでございますので、それ以外の簡易審査というのは法律上の措置としてはそう考えられない。むしろわれわれ現在やっておりますものは、調査員等をできるだけ実用新案のほうに使っていくという、運用の面で私は考えております。そういう面でやっておるつもりでございます。
  90. 岡本富夫

    ○岡本委員 四十一年のときに法改正をあなたのほうで出された。すなわち考案と発明、これが原理が同じであるというところに、私はもう少し納得がいかないのです。発明のほうは原理のほうになる。それから実用新案のほうは考案になる。私も特許を昔からだいぶ申請したことがあって、これは実用新案の分、これは特許分、こういうように、弁理士に相談すると、あるいはまたいろいろなものを調べてみますと、はっきりしておるわけですから、これをちゃんぽんにして審査するところに、この滞貨がどんどんたまっていくという原因が一つあるんじゃないか。だからこれに向かってもやはりもっと努力をしなければならぬ。あなたは、四十一年に出してそれが通らなかった、廃案になったという話ですが、じゃそれにかわるべき早期公開、少し安易過ぎるんじゃないか。四十一年に提案したときの根拠というものははっきりしておったはずです。それをやったんだけれども、それが通らぬからまたこっちでいきましょう――ちょっとその特許庁の態度また考え方に、一つの問題があるのではないか、私はこういうように思うのですが、その点についてもう一度……。
  91. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先般の実用新案を簡易に審査するという制度につきます各界の批判の最大の理由は、発明といい考案といい質の差がないではないか、それを特許は審査をし実用新案は簡易にするとはどういうことか、おそらく御批判の最大の点はそこだったと思います。いま先生おっしゃったように、発明、考案というのは、そんなに簡単に振り分けがつくものだとは私は思いません。ただ何となく世の中にありそうなものは、これはいわばそう高度でないから実用新案だ、おそらくそういう程度だろうと思います。また、具体的にも、どちらも技術思想でございます。発明と考案の違いはどこかといえば、なかなかはっきり区別はつけにくい場合に、片や審査、片や簡易審査という点の御批判が最大の論点だったと思います。したがいまして、そういう意味では、各界の賛成を得られなかったということをわれわれは反省して、そういった制度をとるという考え方を捨てたわけでございます。
  92. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、実用新案のほうが半分以上、五五%、四十三万件ですか、これは実用新案のほうですから、これだけでも外部に出して、先ほど申しましたようなオランダのIIBですか、あるいはまた私が先ほど申しました弁理士を使うとか、こうして強力に推進すれば、これはもう半分以上減ってしまう。そういう面も考えられないわけはないと思うのです。簡略と申しましても、やはりある程度審査はしてもらわなければいけませんけれども、審査して公開されると、これはもう大体実用新案の考案のほうはいろいろな判断がつくわけです。それはもうすでに公知の事実である、あるいはそれはこうだということで、非常に早く審査が終わる、こういう考えも私はするわけですが、この点についていかがでしょうか。
  93. 荒玉義人

    荒玉政府委員 実用新案のほうは確かに、低度といっては語弊がありますが、高度でないものが多うございます。ただ、実用新案のみを委託するといいましても、発明と考案は質が同じでございますので、それぞれ先後願関係が残ります。つまり、すでに特許で出してあれば、実用新案は、同じものはあとから出願すれば登録にならない、こういった意味のいわば先後願関係が存在いたします。したがいまして、実用新案の入をそういった形でやるということは、どうもいまの制度から言いますと、いささか問題がございます。ただ、先ほど私申し上げましたように、今後、高度の先端技術あるいはその他、いろいろ外部の協力を得べき技術分野もございますので、特許、実用新案を含めて外部と適切な協力関係をつくっていきたい、こう言う意味は、やはり実用新案だけ切り離すということが制度上困難であるからでございます。
  94. 岡本富夫

    ○岡本委員 次にもう一つ、いま外国から日本に、要するにPCTに加入することを前提として、一年にどれくらいの申請があるのか、また、現在の滞貨の中でどのくらいたまっておるのか、これをお聞きします。
  95. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大体外国人出願は、特許で二六%、実用新案で五%程度でございます。ただ、外国人が七十六万件のうち幾らかという具体の数字はいま手元にございません。
  96. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体、外国からの出願は一年に二万七、八千というふうに私のほうで調査しておるわけですが、早期にPCTに入りますと、それだけは外国でやってくれるわけですから、その外人が自分の国に申請すれば、あとはいろいろな書類がこっちへ回ってくるわけですから、これだけでも大きく道が開けて、わが国で審査しなくてもよいというようにも考えられるわけですが、いかがでしょうか。
  97. 荒玉義人

    荒玉政府委員 外国出願はわれわれ非常に大きな負担になっております。それで、将来PCTに加入した場合に負担の軽減になるというふうには、われわれは一応考えてございます。と申しますのは、審査といいますのは、中身を読んですでに文献があるかどうかということをサーチするということは相当の負担になっておりますので、一応サーチした結果がついて来ておるわけでございます。したがって、そういう意味では負担軽減になるかと思います。ただ日本の場合は、ヨーロッパ諸国と違って、諸外国と同じようなメリットがあるかどうかという点ございますが、一応メリットがあるというふうに考えております。
  98. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体お聞きしたところによると、このPCTに加盟してサーチ国になってこれが動くのが五年ぐらいだ、こういう目標にしておるのだ、こういうことでありましたが、もっと早く批准をすれば、たとえば二年ぐらいで批推をすれば、外国から出願されている分だけでも少なくなってくる、審査せずに済む、こういうことに考えられるわけですが、その点について。
  99. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれといたしましても、できるだけ早期に批准をいたしたいとは思います。ただ国際的には、大体主要国もこれはある程度準備がございます。大体三年ないし五年程度はかかるであろう、それぞれ準備その他の関係でそういった方針のように聞いております。それから国内的には、やはり準備体制がございます。法律的には、いわば現在の一発明一項主義を捨てまして、一発明多項主義を採用するという問題がございます。それから、国際出願審査する場合には、やはり相当な資料整理という問題がございます。そういった法律的な問題、あるいは実際上の環境整備という点を考えますと、まあ大ざっぱで恐縮でございますが、批准は四、五年先というのがいまのわれわれの目標でございます。
  100. 岡本富夫

    ○岡本委員 確かに、現在あるところの文献を、ドイツ語やフランス語や、あるいはロシア語、英語に直したりするところの作業が、いろいろ必要であると思うのです。そのままいきますと、やはり五年ぐらいかかる。しかし、こうした公報を、すでにこれはもう公表されているものでありますから、民間人のアルバイトを三百人ぐらい使って、予算は私どもの計算では、三十億ぐらいかかるという検討をしておりますけれども、そうした考えで早く批准ができるようにするということは、また審査促進に大きくひとつ役立つんじゃないか、こういうように考えるわけですが、これに対する御意見を伺いたいと思います。
  101. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどから申し上げますように、できるだけ早く批准してまいりたいと思いますが、いまのところ、先ほど申し上げましたような、おおむね四年ないし五年ぐらいが、国内的、国際的動向をにらみ合わせて適切ではないか。むしろ外国出願は、その前に早く請求制度をしくことによって、実際に審査すべき外国出願の負担を軽くしていくということをPCT前に考えていきたい、審査請求制度を早く外国出願に適用してロードを軽くしたい、まずそれから先にやりたいと考えております。
  102. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣に御意見を伺いたいのですが、私、先ほどからずっと提案申し上げておりまして、これだけ反対される、あるいはまた、ひとつあとでお聞きしたいのですが、早期公開されますと、ほんとに町の発明家あるいは中小企業の発明家たち、そうした人たちが非常に危惧しておる、得するのは大企業だ、こういうような意見をずいぶん吐いているわけですが、したがって、早期公開のこの法改正前に、先ほど申しましたような、私が幾つか提案いたしました努力を十分されて、そしてこんなに努力をしたけれどもこうなったのだという、結果においての法改正なり、そういうようなお考えはいかがでございましょうか。大臣にひとつ、先ほど私ずっと数点あげて申し上げたのですが……。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから、弁理士の問題でありますとか、あるいは特許と実用新案の分離でございますとか、いろいろ御提案がございまして、私も特許庁長官に聞いておりますところでは、従来そういういろいろなことも考え、また法案も御提案申し上げておった。しかし、どうもなかなか実際に効率をあげるような方法がないということで、他方で、先ほど私、定員のことをちょっと申し上げ間違えましたが、百名云々と申し上げましたのは特許庁の定員という意味でございましたが、それと分類のための機械化、いろいろいたしましたが、依然出願件数が多いということでますます滞貨がふえていく、そういうことから今回のような御提案を申し上げた。先ほど中谷委員からもいろいろお尋ねがございましたが、私どもとしては、これはいまのわが国の憲法で認められている範囲内の御提案であるというふうに考えて申し上げておるわけでございます。
  104. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、私くどいようですが、こうした法改正をなされる前に、そらした提案をなされる前に、なぜもっと努力すべき、先ほどから数点申し上げたことをやらなかったのか。また、先ほど長官からも、その点、外部に審査を頼むとか、あるいはいろんなものを利用するとかいうことも、若干おくれておったという話でありますが、その点について、法改正さえすれば、しろうと目に見れば簡単にいける、こういうように考えていらっしゃるように思いますけれども、またそこにいろんな問題が出てくる。たとえば、先ほど申しましたように、特許法の目的の中に、「発明の保護」、そしてまた「発明を奨励」、こういうことばがあるのです。早期公開をしてそれをかってに使われたとしますと、これは、この前の国会でも相当論議されたところでありますけれども、特に発展途上国、こうしたところでこれが使用されますと、特に中小企業あるいはまた町の発明家たちが、発明意欲と申しますか、これをうんとそこなってくるのではないか、こういうように考えておるわけでありますけれども、それについての御意見あるいはまたお答えをまずいただきたい。
  105. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許法の第一条は「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」したがいまして、発明の保護、つまり権利者側のサイドと、利用、第三者側のサイド、両者を勘案することによって、全般的な発明を奨励し、そして産業の発達に寄与するというのが特許法の趣旨だと思います。したがいまして、絶えず権利者と第三者の利益調整をどこで調整していくか。現在のような場合ですと、非常に公開がおくれればむしろ片方の側の利益が害せられるということで、絶えず客観的なそのときの状況を勘案いたしまして、両者のバランスをとって、そうして特許法を考えなさいというのが、特許法の第一条の趣旨ではないかと考えております。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 お答えがもう一つ残っておりますが、それはあとにして、この法律がつくられた昭和三十四年ごろの状態では、大体自分のところで発明をし、それを実用化しておったように思われるのです。ところが現在の状態では、自分が発明をして、そしてそれを自分が使うのではなくして、それを会社に、あるいはまた企業に使っていただいて、そして利用されていくわけです。したがって、当時とはずいぶん現在の社会の状態というものが変わっておる、こういうふうに思うわけであります。そうしますと、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」のうち、「産業の発達」のほうに大きくウエートが行ってしまいまして、発明者の保護というものが非常におくれておる。おくれるというとおかしいけれども、ギャップができてしまっておる。そうしますと、今度はいい発明をしなくなる、そういう面が懸念されるわけですけれども、それについてひとつもう一度答弁いただきたい。
  107. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許法ほど強力な独占権、これはなかなかほかに例を見ないと私は思います。これはそういった意味で、特許法の適法な行使はいわゆる独禁法除外になっているきわめて強力な権利だろうと思います。したがって、一般的にそういう考え方、つまり新法によって発明意欲がそこなわれる、こういうことはないと思います。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 その考え方が私と意見を異にしておるわけです。また、社会の実情と意見が異になっておると思うのです。なぜかならば、先ほどからも論議されましたように、ヨーロッパにおいては、すなわちドイツにおいても、見ておりますと、特許裁判所ですか、そこで、もしも生まれたならば、あしたすぐにでも補償金を決定する。日本では、裁判所に訴えましても五年も十年もかかる。そうして盗用されても、裁判の費用が非常に高くついて、発明した人が非常に困っている実例は、私たびたびいままで見てきておるわけです。したがって、力の弱い発明者は、早期公開されることによって、特許にならぬうちに公開されてそれをまねされた、それに紛争が起こった場合ほとんどこれは救われておらない、こういう事例を見ましたときに、要するに力のない人は裁判費用がもたないわけです。そうしますと、いま長官がおっしゃったように、早期公開したからといって発明者に不利益をもたらすことは考えられないと言われたのと少し意見を異にしておりますが、それについての御答弁をいただきたいと思います。
  109. 荒玉義人

    荒玉政府委員 問題は、公開されて、補償金請求権、新しい優先審査、あるいは事実上におけるあっせん調停、そういった行為を積み重ねることによりまして発明者を保護してまいりたいというのが新しい法律の考え方でございます。したがって、そういったことによりまして公開時の保護をやっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 アメリカでは、これが問題になって、公開しなくて、そして努力して、いまのように二年余りの審議期間で終了をするようになってきた。しかしまた、片一方のヨーロッパのほうの公開制度については、非常に強力な予備審査のような情報機関といいますか、そういうものがあって、それから最後には特許裁判所がある。こうしたうしろと前とにきちっとした強力な特許法、発明者に対する保護があると思うのです。そうしたものをわが国でつくらなくて、ただ早期公開したときにはどういうことになるであろうか。もう次から次へと紛争が起こって、裁判所もたいへんなことになるし、また裁判するほうの費用というものは非常に大きなものであって、いまのままでやるということは問題があるんじゃないか、こういうように私ども考えるわけですが、それについてどういう意見を持っていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  111. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ドイツと比較した場合に、公開法律行為で違いますのは、補償金請求権の行使の時期がいつからかということでございます。特許裁判所は全く別な侵害訴訟はやりませんので関係ないと思いますが、一番の差は請求権行使の時期かと思います。これは制度的にはドイツと同じように、請求権行使の基礎が発生したときから直ちに請求することも可能だと思います。これは日本ドイツの差から、原案のように、請求権の行使は出願公告からとしたわけでございますが、第一には、ドイツの場合ですと昔から裁判所でも事実判断に非常になれております。といいますのは、実用新案はもともと無審査で登録性があるかどうかということを裁判所は長年運用してまいったということがございますので、一応特許されるかどうか、登録されるかどうかという判断日本より容易であるというのが第一点。  それから、日本の場合ですと、出願公開の時点では、いわば玉石混淆でございます。大体権利になるのが四割程度でございますので、そのときからいきなり請求権ということになりますと、実際上日本のような競争の激しい社会におきましては、むしろ権利乱用という問題が実際化するのではなかろうかという二点を参酌いたしまして、一応審査をいたして、おおむねよろしいという時期、すなわち出願公告から請求権を行使ということにしたわけでございます。したがって、それはそれぞれの国の一つの事情でございまして、基本的には私、ドイツとは何ら変わりはないのじゃないかと思っております。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもその点がぼくは納得できないのですが、この実用新案なんか無審査だ。これは御承知のように、出願する前に予備審査、こういう機関が強力にあってちゃんとしておるから、もうこれで出願したときは、先ほど私が提案したように、審査なしでも公開して、そしていろいろ苦情があればそれを変えるというようにできるわけですけれども、日本にはそれがいまのところできないわけです。だからそれもやっぱりつくらなければならぬのが一つと、それから、わが国のように、裁判に持ち込んでからこんなに長くかかるというような、非常に発明者にとっては保護をされにくい。また、されるとしましても、現実に訴訟が起こって、とうとう最後には涙金で終わる、あるいは訴訟した人たちがもう寿命がなくなったというようなことで、発明者としては非常に不利益な条件を何ぼか持ちながら公開するということは、私はこの特許法最初の目的に反するのではないか、こういうようにも考えられる。またあなたのほうで、産業の発達に寄与する、そっちにばかり重点を置かれると、これはいまのようなのでもいいと思いますけれども、やはり発明者の保護、それによって発明を奨励することになるわけです。先ほど長官がおっしゃったように、特許法の強力な独占権はない。しかし、それは自分で考えた技術を公表するわけですから、その引きかえにその独占権があるわけですから、何にもせずに権利を持っておるのじゃないわけです。したがって、やはり発明者の保護というものが相当強力でなければ、これは次々と新しい発想、発明というものをしなくなる。ひいてはどんどん外国に負けてしまう、こういうことのように考えるわけで、今度のこの法改正というものは、その点も強力に発明者の保護をしっかりしておきませんと、将来わが国に大きな禍根を残すのではないか、こういうことが考えられるわけでありますが、これについてひとつ聞きたいと思います。
  113. 荒玉義人

    荒玉政府委員 全体につきまして、現在ですと、発明者自身も、法律的な保護と同時に、審査がおそくなればそれだけ利益を害するわけです。したがって、今度の場合ですと、全体含めて、発明者自身も、現行法よりかより早い時期に権利を設定していくという利益もございます。もちろん発明者は、また次から次へ発明を開発していくわけでございます。したがって、早く特許情報等を入手することによりまして次の飛躍をはかっていくという意味で、発明者自身も全体として一つの利益を受ける。もちろん、先ほど言いましたように、先生の御心配のような、公開されてからその模倣が起こる、こういうことも考えられます。それは、先ほどから繰り返しますような、補償金等ということによりまして相互の調整をつける。全体を通じて発明者の利益を受けていくという意味からするならば、新法の成立によりまして発明者が発明意欲を失うということは、私はそういう御意見の方もおることは承知でおりますが、全体としてはそういうふうなことにはならないということを申し上げておるわけでございます。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも私それでは納得できないのです。いま、発明者の保護、あるいはまた産業の発達に寄与するためには早く審査したほうがよい。それは確かに、おもちゃのような、ああいうもので実用新案を出して、これがもう時期的におくれてしまったのじゃ、これは出した価値も何もないわけですけれども、先ほど申しました、早期公開をやったためにまねをされたりして、非常に損をするのは発明者です。そういうあぶないことをせずに、もっともっと努力をして、先ほど私が数点あげたいろいろな努力をして――それをやるときは、これは発明者に何も欠損をかけないわけですから、そうした意見を申し上げた。そういうものを強力にやった後に、さらにどうしてもという場合ならば、これはまたいたし方ないと思うのですが、発明者に対して全体的を通じて利益があるというような、あいまいな考え方に立った早期公開というものは、私は非常に心配である。また、そういう考えは、結局人権の無視、あるいはまた、発明者の次の発明をするところの意欲というものを大きく阻害するのではないか、こういうふうにも考えられるわけですが、その点についていかがですか。
  115. 荒玉義人

    荒玉政府委員 運用でやり得るならば、あるいはこういった方策をとることは問題になると思います。アメリカの場合は、先ほどから申し上げましたように、大体半年程度の短縮でございます。われわれは現在の事態から、半年程度の短縮ではとてもやっていけないということがございます。と同時に、アメリカのやり方は、先ほど言いましたように、そのいいところは、われわれもすでに採用しておるわけでございます。したがって、繰り返すようでございますが、運用面の努力というのは当然やらなければいかぬし、また、われわれ過去において百点満点だとは思っておりません。しかし、それのみでは解決できない事態だということを、まず御認識していただきたいと思います。したがって、そういう運用面なり、もちろん人員の拡充あるいは環境整備等々と同時に、やはり一つの新しい制度によりまして難局を打開したいというわけでございます。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 私、制度を変えたら何でもどんどんあがるというものでもないと思うのです。それはやはり審査というものは、物をつくったり、あるいはどんどん流れ作業で出ていく、そういうものではない。やはりいろいろな面を加味して審査をしなければならぬ。要はそのやる人の熱意、それによってずいぶん審査の促進もはかれると思います。  そこで、こんなことを言ってはだいぶんあれなんですが、優秀な審査官を多量に集める、質的に優秀な審査官をたくさんつくる、それにはやっぱり待遇も相当よくしてあげなければいけない。同時に、いかにお金を与えましても、たくさんお金を与えたから仕事をするかというとそうでもない。やはり将来の希望がなければいけない。この特許庁に、そうしたほんとうの希望を持った方が何人いらっしゃるか。ということは、これは大臣にはなはだ失礼なことでございますけれども、いままでの特許庁の姿を見ますと、通産省から来まして、しばらくいらっしゃってすぐもう出ていってしまう。要するに、そこに腰を落ちつけて特許行政を見ていこう、そうして強力に優秀な人材もつくっていこうということが、わずかな期間ですからできない。そうしたところの行き方、優秀な者はどんどん用いられていくんだということができない間に、長官がどんどんかわっていく。要するに、通産省から来て、いわば腰かけのようにすっすっ出ていかれるというようなところが、ちょっと私、これは考え方を改めなければならぬじゃないか。非常にこれは失礼な言い分ですけれども、審査官の皆さんの意欲の向上――それから、優秀な人材はみな本省、すなわち通産省に行きたがる。いまも優秀な方、いらっしゃると思いますけれども、もっともっと優秀な人材を集めるためには、やはりそうした特許行政の一番中核をなすところの長官の任期、あるいはそういうものが一番大きな影響をするんではないかとも考えられるわけでありますが、今後政府としてどういうようにやっていったら一番いいか、またはどういうような決意でいらっしゃるかということを、失礼ですけれども大臣からお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  117. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに御指摘のように、限られた人員で大きな仕事を処理するというのでありますから、職場の士気、いわゆるモラルの高揚ということは、非常に大切なことであると思います。ことに、この仕事は一見地味な仕事でございますところへ、最近のように、先進産業の技術者というものはよその職場で非常に優遇される場合が多いために、よけい私は士気の高揚ということは必要であると思いますし、待遇の改善も大切なことであると思います。並びに、特許庁行政を総括いたします特許庁長官がしょっちゅう入れかわるというようなことは、これはもともと士気を高揚させるゆえんではないということは、言われるとおりだと思います。椎名通産大臣でございましたか、現在の人事をやられましたときにも、腰を据えてひとつ特許行政をやるようにということで人事をやられたように私は承知をしておりますが、私どもも、そういう心がまえは当然今後とも必要なことと考えております。
  118. 岡本富夫

    ○岡本委員 荒玉長官に、特許庁におつとめになっている人たちが、ほんとうに仕事をしっかりやっていこうという意欲をわき立たせるような管理といいますか、ひとつそれをすくにも――もうこれは通った、すぐ次かわるんだということはないと思いますけれども、そういうことのないように、いま大臣から御誠意あるところの答弁をいただいたわけでありますから、よろしくお願いしたいと思います。  そこで、先ほどちょっと御答弁漏れがございましたのは、この公開制度にされますと、発展途上国あたりが、その公開した公報を見てどんどんまねをしていく。低賃金でどんどんそういうものができてきますと、日本の中小企業は非常に分野が侵されるのではないかという心配もあるわけですが、その産業政策上のお考えをちょっとお聞きしたいのです。
  119. 荒玉義人

    荒玉政府委員 後進工業地域につきまして、われわれといたしましては、できるだけお互いの権利を保護するということが当然でございます。もちろん周辺の国で、まだ特許権等の保護がない国がございます。したがいまして、そういう意味では、基本的には保護されるように体制つくりをするということが、まず第一義的にやるべきことかと思います。まあ大部分、保護していますが、確かに隣国で保護してない国もございます。  それから第二に、保護ができる国には出願をして、そして権利をとって、ということでございます。おそらくいま問題は、保護されていない国のことではないかと思います。先般の国会でも御指摘がございましたが、いわば高度の技術は、模倣するといいましても、これはむしろ技術水準が低うございますので、ございませんですが、すぐ役に立つもので、公報を見てできるというものも、私ないとは思いません。したがいまして、できるだけ、さっき言いましたような、早い機会にお互いに保護できるという体制づくりで解決すべきかと思っております。
  120. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは、長官に全部答えてもらいたいということはちょっと無理な話だと思いますが、これはもう一度、もう少し的確な政策を中小企業庁長官とも話があると思いますけれども、一応相談していただいて、納得のいけるところの産業政策をお返事いただきたい。これを要求しておきます。  それから、先ほど、アメリカは半年くらいの切り上げができたというような話がありましたけれども、私ちょっと意見が異なりますので、米国の資料をいただいておりませんので、この資料要求をいたしたいと思うのです、がこの点いかがでしょうか。
  121. 荒玉義人

    荒玉政府委員 詳細な数字を提出させていただきたいと思います。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 お約束の時間がたちましたので、最後に、これは大臣に御提案申し上げ、御意見を伺いたいのですが、先ほど申しましたように、工業所有権、この特許を発明した人が直ちに利用する昭和三十四年時代、そういうときの時代と現代とでは、現代は、企業でいろいろな発明がされて、そうしてそれを企業の発展のために使っているという時代で、だいぶん変わってきましたのが一つと、それから発明者の保護、そのことによって発明を奨励していくというこの基本線と、これを応用するところの発明の利用、あるいは産業の発展に寄与する、この二点があると思うのです。したがいまして、これが一緒になったところにいろいろ問題が起こってきておると思いますので、ここらで一つ御提案申し上げたいことは、発明の基本を示す基本法をつくっていかなければならないのじゃないか、こういうようにも考えられるわけでございますが、御検討いただけましょうかどうか、お答え願いたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 発明が完成したときには、その財産価値の保護ということになりますと、やはり特許法が、第一条に定めておりますように、それを主たる目的とする法律だと思いますが、それを離れて、一般に発明が生まれるような土壌をつくることでありますと、科学技術の振興あるいは教育という問題になるのではないかと思いますけれども、しかし、私もにわかに伺いましたので、問題の領域がはっきりつかめません。少し検討さしていただきたいと思います。
  124. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体お約束した時間が来ましたので、一応あとの御質問申し上げたい分を保留いたしまして、これで終わりたいと思います。
  125. 八田貞義

    八田委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十二分開議
  126. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米原君。
  127. 米原昶

    ○米原委員 先ほど、この法案について中谷委員から、憲法問題に関連する重大な疑惑があるというような意味質問が行なわれました。この点は非常に重要なので、さらに明日続けられるそうでありますから、私はその問題には触れませんが、この法案について――もちろん滞貨の解消というのは、何とかしなくちゃならぬ問題である。そういう点で、私たちも何とかしなくちゃならぬということを考えるのですが、いままで長官の説明されたようなことではたしてうまくいくかというようなことを、私たちは感ずるのです。新しいやり方に変えても、さらに複雑な条件がからんできて問題の解決を困難にするんじゃないかという印象を持っております。     〔橋口委員長代理退席、委員長着席〕 先ほど岡本委員からも、そういう点についていろいろ質問がありました。こういう点をさらに深める必要がありますが、私は重複を避けて別の方面から質問したいと思います。  第一に私がお尋ねしたいのは、審査官の問題なんです。先ほど岡本委員の発言の中でも、審査官を充実する問題、量的だけでなく質的にも優秀な審査官をとる必要があるということが強調されました。それだけでもちろんこの問題の解決になるとは私も考えませんが、やはり一つの重要な条件だろうと思うのです。そういう意味で、審査官を質、量ともに充実していくということは非常に大切だと思う。そういう意味では、特許庁の職場も、もっと明るい、豊かな、民主的な雰囲気の中で、質的にもりっぱな審査官がもっと能率的に仕事のできるような職場になってもらいたいと私も念願します。  それに関連してお尋ねしたいのですが、審査官の資格について、特許法によると四十七条に「審査官の資格は、政令で定める。」というように簡単に書いてある。そしてその「政令」というのは特許法の施行令だと思いますが、大体どういうことが資格として必要なのかということを、簡単に最初長官にお聞きしたいのです。
  128. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許法施行令の十二条でございます。法文は複雑ですから簡単にさせていただきますと、まず六等級またはこれに相当する等級以上の者であって、一、四年以上特許庁審査の事務に従事した者、普通ほとんどここに該当します。それから、産業行政または科学技術行政、つまり通産省並びに各省でそういった仕事をいたしまして、通算して六年以上従事し、うち二年以上特許庁審査の事務に従事したもの、これが第二。第三は、そういった一般行政つまり産業行政の事務に八年以上従事した者であって、大体、前に申し上げた者と同じような知識、経験を有するという者のうちから、工業所有権研修所、これは特許庁の中にございますが、ここで所定の研修を経たものというのが審査官の資格でございます。
  129. 米原昶

    ○米原委員 それでわかるのは、審査官の資格として規定されておるのは、大体が実務的な経験、それから経歴年数、そういうことで裏打ちされておる能力ということだと思うのです。  ところで、そういうことに関連して私はびっくりしたことが最近起こったのですが、これは特許庁の労働組合で出している会報です。この中でこういうことが書いてあるのです。  ことしの四月十日に、商標審査官補の面接試験が行なわれ、十二名が面接を受けた。そのとき花村総務部長、東秘書課長も試験官として列席していた。面接は、その試験を受けた一人ずつに行なわれた。商標官補面接試験は、当然商標法の専門家によって行なわれるべきものであるのにかかわらず、当日はもっぱら花村、東の二人だけで質問を行なった。商標課長らも出席したが、一言も質問していない。そして花村総務部長と東秘書課長の質問の内容は、十二人とも全く同じもので、こういう質問だったそうであります。君は今度の特許法改正に反対か賛成か、昨年特許法改正に反対の署名をしただろう、一たん閣議決定した法案に反対して組合員が国会請願することをいいことと思うか、こういうような質問だったというのです。それとからめて何か商標制度について質問があったのかというと、そういうことは全然一つもないと書いてありますね。そしてもう一度、四月十七日に前記の十二人のうちの特定の数人に対して再面接が行なわれた。その理由は、四月十日は法改正の話ばかりで、商標のことについては聞かなかったのでもう一ぺんやったというわけです。ところがまた、商標関係のことは一言も質問がたかった。やはり、今度の特許法改正に反対か賛成か、こういう質問をやったということが出ているのですが、こういう事実があったのかどうか、ひとつ長官にお聞きしたいのです。
  130. 荒玉義人

    荒玉政府委員 商標の審査官の試験は私、職員にまかしておりますが、そのとき制度改正質問があったというのは私聞いております。それが適当かどうかという点はありますが、私の聞いた限りでは、賛成しようが反対しょうが、それは試験は、御承知のように、結論はイエスでもノーでも同じでございます。ただその立論の過程がどうかということと私承知しておりますが、そういう意味で、試験に商標法といいましても、工業所有権として全部密接に結びついておりますので、一般的な素養として聞いたのではないかと私思いますが、改正の問題が口頭試問に出たというのはもちろん私承知しております。
  131. 米原昶

    ○米原委員 ただ、私、こういうことが出ているので、どういうことかと思って実は聞きに行ったのです。そういう質問が出て、答えなかった人もきっといると思うのですが、まつ正直に自分の考え方を言って、今度の特許法改正については、法改正に見合った事務処理の体制がまだできていない、そういうものをつくらないで法律だけ改正するのはおかしいじゃないか、こういうことを答弁したのもいたらしい。三人いたそうです。ところが三人は登用されないで、あとで登用されるのだろうとは思いますが、追試験に回された。つまり、法改正に反対だと、自分の意見として聞かれたからはっきり言った、そうしたらそれが追試験に回された、こういうことがいわれているのですが、そういうことになっているかどうかということです。
  132. 荒玉義人

    荒玉政府委員 詳細は、一々受け答えは承知しておりませんが、さっき言いましたように、法律改正一つの口頭試験の質問にあったことは事実でございます。われわれは別に、賛成した諸君だけを商標の審査官にする、そういう意思は毛頭ございません。要するに、考え方がどの程度しっかりしておるかどうかということが問題でございますので、それはそれぞれの見解から最も適切な答弁をすれば、本人の資質として十分かどうかを判断するわけでございます。したがって、先ほど言いましたように、反対したから採用しないという考え方はごうもございませんし、また実際そういうようにやっておるつもりでございます。
  133. 米原昶

    ○米原委員 反対したからといって採用しないということはないとおっしゃったから、もちろんこの問題はそうだろうと思うのです。当然そうなければならないし、これは法律的にいっても、もちろん公務員は、法律として採用された政府の方針そのものには従わなければならぬでしょう。しかし、まだきまってないわけですから、それについて反対の意見を述べても、これは問題にならないことだと思うのです。それで、そういうときに、そういう人だけ選んでもしも試験を落としたというようなことでもあったら、それこそむしろこれは公務員として職権乱用になるというくらいに私は考えます。  その問題と関連してもう一つ同じ文書があるのです。長官自身が出席されている、総務部長と組合の幹部との交渉の議事録というものが出ているのです。これは二月の二十七日で、この交渉の議事録では、長官も出席されていますが、長官はしゃべってはおられません。その中で、長官の前で総務部長がこういうことを言っていることが速記録に載っております。特許庁政府のきめた基本的方針に反対することは国家公務員として好ましくない、法案に反対するのは好ましくないということが繰り返し繰り返し言われている。しかしそれが問題になって、反対が望ましくないというのは法的な根拠で言っているのじゃないという弁明もしておりますが、しかし、こういうことを言っておる中で、その同じ人が試験で、あなたは賛成か反対かというような聞き方をするというのは、どうも実際上は非常な圧力をかけていることになるだろうと思う。権利侵害とは言いませんが、事実上非常に圧迫を受けていることになっていく。そういうような職場であっては私は困ると思うのです。もっと法規に従って公明正大な、そして賛成、反対の意見を自由に言ってもいいと思うけれども、しかし何かそれが基準になるような言い方は正しくないのではないか。この点について長官の意見を聞きたい。
  134. 荒玉義人

    荒玉政府委員 組合の諸君と私いろいろ話をしたとき、総務部長からそういう話があったことは事実でございます。その趣旨は、法律的に違法とかなんとかいうのではなくて、先ほどおっしゃったように、やはり賛否それぞれ意見があってしかるべきだろうと思います。現行法につきましてもいろいろ意見があってしかるべきです。それを忌憚なくお互いで討議することは望ましいことだと思います。ただ、そういったことで集団的にそういった行動をとることは、法律以前の問題としてお互いに慎んだらどうだという趣旨と私は理解しております。私もそういうふうに思います。したがいまして、あくまで、法律改正に対して個々の諸君がイエスかノーかと言うことによって、われわれは内部でその人を見る一つの基準というふうには考えておりません。
  135. 米原昶

    ○米原委員 では問題点を変えまして、私は別の問題を聞きます。  前々回の国会にこの特許法がかかったとき、私は国会にその当時いませんから、一通り速記録を読んだのです。ところが一つ、ちょっとこれは長官が間違った答弁をしているのじゃないかという答弁にぶつかりました。これはこの際はっきりしておいてもらいたい点なんです。  それは、参議院の商工委員会で、この特許権について共産党の須藤五郎議員が質問した中で、「明日をひらく特許」という本に、工業技術院勤務発明規程というのがこれに書いてある。この問題について尋ねているわけですが、この本に載っている勤務発明規程というのは、今日でも有効でしょうかどうでしょうかという質問があった。それに対して荒玉長官の答えは、これは昨年の春に新しい特許法三十五条の表現を使って改正されております。つまり、前のあれでは任務発明と勤務発明というふうに二つに分けてあるわけですが、今度の特許法ではそれが変わっているから、そういう点が改正されております、こう答えておられるのですが、そこで須藤君が、この「昭和二十七年一月二十九日付の百三十四号訓令というものは、これはいまもうないというふうに理解していいわけですか。」これに対して長官は、「だから改正されておるわけでございます。」と答えておるのです。しかし、私その後調べてみると、改正されたというのは出ていないんじゃないか。その点はどうも間違っていたんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  136. 荒玉義人

    荒玉政府委員 工業技術院の勤務発明規程は、私、すでに改正されたというような答弁をしたのは、訂正いたしたいと思います。と申しますのは、当時この特許白書をつくっておるとき、そこに掲載されてあるわけでありますが、いろいろ改正の話だというのを、私、すでに改正になったという答弁をいたして、それは訂正いたしますとさっそく須藤先生には申し上げて次の機会にと思いましたが、その機会はなくそのままにいたしましたのは、私の間違いでございます。
  137. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、このときの質問では、そういうふうに改正されている、あとで知らせるということで、ここで質問が終わってしまっている。そこで、これはかなり重要な点なんで聞きたいわけなんですが、そうしますと、改正されないとすると、前の訓令が現在でも生きているということになりますか。
  138. 荒玉義人

    荒玉政府委員 生きております。ただ、実質的な新法といいますか、三十五年法と大正十年法の旧法との差は、そういった職務発明の範囲につきましては、実務的な差はございません。したがいまして、表現上は旧法の表現を使っておるので、決して新法の表現を使っておりませんが、その後こういうように確かめたところ、大体実質的には差がないということで、旧法に基づいた訓令で事務を処理しているという状況でございます。
  139. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと少しは違う点があるけれども、前の訓令で任務発明、勤務発明と分けてあるところで、任務発明というところを職務発明と直せば大体同じようなものになるわけですか。ことばの違いだけですか。そういうふうに解してよろしいですか。
  140. 荒玉義人

    荒玉政府委員 実質的にはそう考えてよろしいかと思います。
  141. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、この訓令では任務発明ですが、特許法では職務発明ですね。この特許法にある職務発明の規定が適用されるというわけですが、職務発明の規定によると、「従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定の条項は、無効とする。」とか、第三十五条第三項では、「従業者等は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。」とか、こういうことがずっと出ておるわけですが、この訓令の内容は、ここに書いてある勤務規則に当たるのかどうかということを聞きたいのです。
  142. 荒玉義人

    荒玉政府委員 勤務規則に該当すると考えています。
  143. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと大きな問題が起こってくるのではないか。ここでいっている勤務規則は、労働協約や就業規則または雇用契約、使用者と個々の被用者または被用者団体との合意に達した契約を前提とするたてまえでなければならぬ。つまり、使用者と被用者とが対等のたてまえで結ぶ契約とか、その他対等の立場で結ぶ団体協約とか、大体そういう性格のものだと思います。ところが、この問題の勤務発明規程というのは、訓令という形で上からただ一方的に出たように思うのですが、そうすると、これはちょっと性格が違うのではないか、一体そういう訓令はどういう根拠があるのかということを聞きたくなりますが、一方的に上のほうから訓令という形で出す性質の問題と違うのではないですか。
  144. 荒玉義人

    荒玉政府委員 実はお答えする前に、この職務発明というものの基本についてちょっと御説明いたしたいと思います。そうしませんと、いまの契約でなければならないか、あるいは契約でなくてもいけるかというあたりが、おそらく御納得いただけないかと思います。  まず、職務発明について特許法で規定しておりますのは、発明をするというのは、そもそも自然人たる人に帰属すべきか、それとも法人かという問題がございますが、これは現行法では、やはり原始的には、自然人である個人または複数の場合とございますが、それに帰属するというふうにしておるわけであります。ただし、職務発明といいますのは、実際は会社の場合におきましては、会社の手足としていろいろ研究をするという過程で出てくる場合でございます。したがって、それは全く普通の人がする発明と違って、そこで法人といいますか、国との関係を、普通の場合の個人対個人というものの契約というのではないという意味で、特許法三十五条はいわば特則を定めたというふうに考えられるのであります。その場合に、職務発明につきましては、あらかじめ定めたことによりまして権利を承継することができますよ、その他のものはできませんよというのが三十五条二項に規定してあるわけであります。したがって、それは見方からすれば、あるいは実質的には法人発明だということも言えるわけです。だから、特許法が個人たる自然人だといいますのは、やはりそういう意味で、個人たる自然人に原始的に帰属させたほうがいわば発明奨励のためになるということで、現行法が個人に帰属しているのを、法人の貢献度等々を勘案いたしまして、職務発明はあらかじめ譲り受けることを定めてもよいというわけでございます。したがって、普通の場合と違いまして、必ず同意を得た契約ということでなければならないということで、特許法はそういうふうに考えておると、私は全体の趣旨から申しまして解釈いたしておるわけでございます。
  145. 米原昶

    ○米原委員 職務発明だけの問題なら、大体そういう解釈でも通用するかもしれませんけれども、この訓令に書いてあるのはそうじゃなくて、勤務発明規程、つまり現在の特許法のことばでいえば、職務発明でない勤務発明の規程です。そしてこの内容を見ますと、任務発明と勤務発明のどちらであるかというようなことを判定するのもこの中に出ているのですね。それを判定する審査会の問題も書いてある。そういう性格のものなんです。だから、そういう対等の契約に持ち込むべきものと、そうでないものとを区別するようなことを規定しているわけですね。そういう規程を一方的に出すことができるかというのが問題になります。
  146. 荒玉義人

    荒玉政府委員 旧法の任務発明、勤務発明といったら、大体勤務に関してなしたもっと広い概念になります。それを大体含めたのが現行法の職務発明でございます。ただ、この勤務に関してといった場合に、実はいろいろ争いがあるだろうと思います。はたして勤務に関したか、あるいは全く自由発明かというようなことにつきまして、いいろ具体的に決定するのは実際は簡単ではないので、ここで、そういったきめ方をどうしていくかということを定めておるわけでございます。したがって、それは現行法でいえば、職務発明かどうかということをきめる場合の一つ手続だと思います。したがってそれは、内部関係でどういうふうな手続できまるんだというのがこの規程でございますので、先ほどの、権利の帰属が契約か、あるいは一方的かという問題とは違うんじゃないか、いささか事務的な内部の手続ではないかと考えております。
  147. 米原昶

    ○米原委員 問題は、さっきから聞いているのですが、そういうようなものを訓令というような形で出せるのかどうかということなんです。訓令というのはおかしいじゃないですか。  というのは、さらにもっと考えてみますと、工業技術院というのは行政組織法の第八条に書いてある付属機関だと思うのですね。そうすると、訓令の問題は第十四条に書いてございますが、そういう付属機関は訓令など出せるはずはないのです。行政組織法でいうと、そういうところから訓令が出ることにはなっていないのです。これは訓令というのはおかしいじゃないか。
  148. 荒玉義人

    荒玉政府委員 工業技術院はもちろん付属機関でございますが、各省庁の命、つまり実質は大臣が委任しておりますが、大臣の命を受けて発せられたもの、したがって、工業技術院長だけの訓令ではなくて、全体として大臣の委任がございますが、そういう命を受けて発せられたものとしてわれわれは適法だというふうに考えておる次第でございます。
  149. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、もとの問題に戻りますが、こういう勤務発明の対価を決定するというようなことも書いてあるわけですが、一体そういうことをこういう訓令で一方的にきめることができるのかどうか、法的根拠はどこにあるのか聞きたい。
  150. 荒玉義人

    荒玉政府委員 全体の問題につきまして、私、特許法からしか申し上げられませんが、特許法の三十五条が職務発明について規定している趣旨からいいまして、いわば通常の契約でないもので定めましても違法ではないというのは私から申し上げられると思います。ただ、何が政府全体として一番いいかという問題につきましては、私、別にそういった権限はございませんが、特許法の趣旨から見れば、工業技術院の訓令は適法であるということのみを申し上げておるわけでございます。
  151. 米原昶

    ○米原委員 そこで、やはり特許法に返ってくるわけですが、さきに言われた、ここに書いてある例の「契約、勤務規則その他の定の条項」という問題ですが、特許法というと、これが適用されているということだと思うのです。しかし、このもとの法の考え方からいうと、これは、はっきりした契約とは若干違っても、勤務規則は、単に上からこういう形でつくるのじゃなくて、たとえばそこに職員のいろいろな団体とかいうようなものがあれば、それと団体的に話し合ってきめるとか、相当同意を得て話し合いできめるような規則だと理解しないと正しくないのじゃないかと思うのですが、一方的に、たとえば会社の社長がばっとこういうことをきめていいのですか。
  152. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどから申し上げますように、この職務発明というのは、制度を自由に考えれば、初めから法人の権利だという構成をとってもおかしくない分野の発明でございます。なぜそうしなかったかといいますのは、私、先ほど申しましたように、やはり権利的に個人に帰属さしたほうが発明奨励になるということでございまして、いわば普通の場合と異なった事態がございます。したがって、そういった場合には本来法人発明といわれるものだから、やはりある程度一方的と言ったら語弊がありますが、同意を得ないままで権利の帰属を定めても、特許法の三十五条の趣旨から見れば、それは違法ではないということが出てくると思います。
  153. 米原昶

    ○米原委員 そこで、それだとしたら、この中にある勤務発明審査会というのが開かれて、そこで、これは勤務発明か、任務発明かというようなこともきめるようですね。そうして勤務発明にした場合の対価を決定するとか、そういう問題が含まれているわけですが、大体ここに書いてある勤務発明審査会は、実際にはいままで行なわれたことが何回あるのか、それで何件この問題がここできまったかということを聞きたい。たとえばこの三、四年の間です。
  154. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれが工業技術院で聞いた限りでは、最近は問題になるケースがないので、やってはないというふうに聞いております。
  155. 米原昶

    ○米原委員 私も大体そういうふうに聞いたから質問しているのですが、三年から四年ほど審査会は全然開かれてない。つまり全部問題なく研究者の発明がこの訓令によって国家にどんどん収用されているわけです。そういうことが審査会にもかけられないでやられている。そういうことだとすると、この訓令に書いてあること自体も守られていない。なぜこんなことを私が繰り返して言うかといいますと、今度の特許法改正にしても、やはりこの発明者の権利というものを尊重して発明をどんどん発展させるということだろうと思うのですが、ところが、これでは全く発明者の権利が無視されてしまう。根本的にはこれは財産権ですから、そういうものは正当な補償のもとに国家に収用することができると憲法に覆いであるけれども、それが一体一方的にきめられるのかどうかという問題にからんできているので、非常に不明確だと思うのです。それを全部国家で収用するという認定を下すにしても、これは審査会にかけてやるのが当然だ。全然かけないでやると、どこから見ても法的に成り立たないようなことをやっているのじゃないか、私はそう思うのですが。
  156. 荒玉義人

    荒玉政府委員 やっていませんのは、要するに、私はこういう発明をいたしました、それは職務発明でございますというのをまず本人が出すわけでございます。したがってそこでは争いはないわけです。工業技術院のほうで、これは職務発明だ、本人はいやそれは個人発明だというところでそういう問題は起こるわけでございます。開かないのは、そういう意味で、本人が初めから職務発明でございますという場合のみだからというふうに聞いております。
  157. 米原昶

    ○米原委員 実際ははたしてその程度のことかどうか、私はそうでないということを聞いておりますが、これは事実を確かめる問題ですから、ここで討議は繰り返しません。  では次に、先ほど岡本委員も話しておりました滞貨の問題について若干聞きたいと思うのです。  いまある膨大な滞貨の中で、特に一部の大企業は相当な出願をしていると思うのです。たとえば特許、実用新案の出願の件数が一年に一千件以上突破しているような一流の大会社、そういうものの出願件数の総計でいいのですが、そういう大きなところは大体どのくらい出願していて、結局どのくらいが拒絶されて、どのくらいが未処理になっておるかという大体のパーセントを聞かしていただきたい。
  158. 荒玉義人

    荒玉政府委員 千件以上といいますと、ベスト二十社ぐらいがほぼ該当すると思います。特許、実用新案ともそれぞれ約二割のウエートでございます。  それから拒絶になったのは、その二十社について集計はございませんが、その中で一番多いのを御参考までに申し上げたいと思います。特許につきましては四十三年度で四千件、これが大体一番多いようでございます。これは出願でございます。それから、当該年度の出願が拒絶になるわけでございませんで、一々全部件数に当たりませんと、ちょっと数字が出ないので恐縮でございますが……。実用新案は五千四百三十件、これが大体一番多いものでございます。ただ、さっき言いましたように、拒絶がその会社で幾らありますかというのは、ちょっといまのところ明らかでございません。
  159. 米原昶

    ○米原委員 私はできたらその総計を聞きたかったのです。私自身計算しておいたのです。この法案の審議の中で前々回の国会のときに出された資料を見ますと、会社の出願状況というのがありますね。これは会社の名前が一つも書いてない。番号で書いてある。しかし「パテント」という雑誌がありますね。これは一九六六年の十二月号となっておりますが、これを見ますと、会社の名前がざあっと書いてあって、特許、実用新案、意匠、商標の出願件数が全部名前入りで出ているのです。それ以外未処理とかなんとかいうことは全然出ていない。だから、こっちのような数字は出ていない。政府国会に出された資料には詳しい数字が出ている。しかし会社の名前が番号で書いてある。これを合わせてみますと、たとえば日立製作が昭和三十九年に出願件数が二千四百八十八ある。こちらの表でも二千四百八十八となっていますから、ぱっと一致するのです。こう合わせてみますと、これはどこの会社かというのがみんなわかってしまうのです。それで見ますと、おも立った会社はわかるのです。しかし上位の二十社くらいのところが全体の二割だ。相当大きな数ですが、そういうことになっておる。それが拒絶になったのがどのくらいか。これは総計がわかればと思ったのです。松下とか日立とか東芝とかいうのはこれに出ています。これは番号を書いてあるけれども、どこが東芝か、これと合わせてみればすぐわかる。そうすると拒絶が何割出ておるか、これで計算してみますと、大体五〇%、五五%。一流の会社がみなそらですね。だからおそらくそれに近いんじゃないかと推定しているんですけれども、総計のことは私は全然わかりませんから。それがこれに近いんじゃないか。大体上位のおもだった会社を見ると、総合計か出てきますから、その数字を見て、ちょっと考えざるを得ないわけなんですよ。  つまり、一流のそういう会社の場合に、拒絶されているのがかなり多いわけですね。しかも、そういう会社のここに出ておる表を見てみますと、そういう会社はたいてい会社の中に特許部とか特許課とかそういう組織を持っているわけですね。これもここに出ております、政府の出された資料の中に。そうしますと、さっきの話じゃないが、審査の問題ですが、技術的にも一流の会社と自他ともに認めている、国民もそう思っているそこから出してきている出願が、何と半分、ところによっては五割以上も拒絶されている。そういうところは相当出している。しかもその出願が、一流のところだけで全体の二割というんですからね。そうすると、みんな半分は拒否なんだという状態なんですね。そういうところでは特許課とか特許部とかいう局があるんですから、そういうところこそ、一定のメンバーもそろえておけるところだと思うのですね。そういうところは、出願する府にもっとそこで自主的に調べて、自主規制できないものか。もちろんこれは出して入なければわからぬという面もあるでしょうから、全部が全部できるとは言いませんが、そういうところで前もって予備審査をやるというようなこと、これやらせる必要があるんじゃないかということを、いまの数字を聞きまして私感じたわけなんです。この点どうでしょうか。
  160. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大会社が出願が多いという中には、もともと発明が多い。と同時に、これはわれわれが業界でアンケートしたときも、たとえば請求率が特許は八割、実用新案は七割。実用新案のほうが請求率が低い。こちらのが多いわけです。そういうのをいろいろ聞いてみますと、やはり防衛的に出しておかないとあぶないという、いわば保護的思想が強いようでございます。いま先生のおっしゃったように、明らかにこれは特許になる、登録になる、あるいは他人と抵触しないということがきわめて明確ならば、そういう面はございませんか、大企業としては、特にそういった中心的なものを守るための一つ出願というものがやはり拒絶率を高くしておる、こういう原因が一番大きな原因だろうと思います。したがってそういった場合には、今度は、出願だけしておれば請求せずに済むというカテゴリーに入ってくる出願が、そういったものの中に相当あるだろうと思います。  そういった意味では、実際に防衛的なもので、審査しなくてもいいというのが新しい制度でございます。いまおっしゃったように、企業に下調べをさしたらいいじゃないか、それがいわば請求するかどうかという制度的な意義だろうと思います。われわれは、大企業にも、特にできるだけそういった意味の請求は差し控えるようにというのか、即それはよく調べて必要なものだけ請求してくださいということに合っていくのだろうと私は思います。
  161. 米原昶

    ○米原委員 私、こういう資料を番号をつけたやつをもらったのですけれども、こんな別の資料と合わせて見たら、どこの会社かすぐわかるのです。これはおかしいやり方だと思うのです。むしろ、こんなことなら堂々と名前を発表してしまったらどうか。そして、技術の松下だ、日立だ、東芝だといったってこんなものじゃないか、拒絶されているものがこれくらいあるんじゃないかという数字を公然と発表したほうがためになるのじゃないか。なぜこういうものを発表されないかという気がします。一つの方法としてです。そういうことを考えられませんか。
  162. 荒玉義人

    荒玉政府委員 どこまで企業秘密になるのか――少なくとも会社か、自分の名前のいまの具体的な点を非常に警戒しておることは事実でございます。ただ、個々に具体的な会社が幾ら出願があってどうなったかということを発表すること自身が、企業はおそらくいやがると思いますか、どこまで企業秘密かどうかという点が一つ気にはなります。と同時に、公表することが、そうすると差し控えるから、できるだけいい出願をするようになるから得ではないかという点、少し前向きで検討さしていただきたいと思います。
  163. 米原昶

    ○米原委員 先ほども申し上げましたが、結局滞貨か七十万以上もあるという問題をどうしても解決しなくちゃならぬというのが一つの点で今度の改正案が出ているわけですが、ここでちょっと大まかなことをお聞きしたいのです。  一年半たったら公開されるわけですね。そうすると、結局審査請求するのが八〇%くらいになるのじゃないかというようなお話でした。しかし七十万にしましても、八〇%といったら五十五万から六十万ですね。そういうものが審査請求に出る。いまの一年間の処理能力からいうと、十五万から二十万というところでしょう。そうすると、これだけで二年以上かかりますね。ところが実際は、その問にどんどん出願が、やはり一年に大体二十万出ているというように――最近の傾向はもっとふえておりますがね。そうすると、これは大まかな数字ですが、実際の話が、これは追いつけないのじゃないかということが簡単にいって出てくると思う。だから、おっしゃることは、一つ一つ部分的に聞くと、こういうふうに努力するということはわかるのですけれども、これでほんとうに解決になるのかということを、大まかな数字だけれども、感ぜざるを得ないわけです。  もう一つ、こういう問題があると思うのです。早期公開をやるためには、いま出願しているものが七十万も未処理のものがある。これを公開するというと、その記録全部を印刷会社に回さなければならぬわけでしょう。これは膨大な量だと第一に考えるのですが、これを印刷会社に全部回すということになると、それだけで一体何カ月くらいかかるだろうかということが一つ問題点です。しかも、これをやる場合に、審査中のものはどうしますかというと、審査中のものも全部一応公開するということになると、これは審査中止して印刷会社のほうに回すということにもなるのかどうか。そうするとずいぶん時間がかかるのじゃないか。どのくらいかかるだろうかということをある人に聞いたら、いや九カ月はかかるだろう――おそらくそんなにかからぬかもしれない、あるいはかかるか、私はしろうとでわかりません。しかし、とにかくそう簡単ではない。制度を、今度やり方を変えたために、新しくまたここで九カ月もそういうことのためにがかったとしたら、これは滞貨がなくなるどころか、さらにたまってくるのじゃないか、こう感ずるわけなんです。これは大まかな数字を見たってそう感ずる。その点をどう解決されるつもりか。
  164. 荒玉義人

    荒玉政府委員 何日かかってという問題でございますが、要するに七十六万件の付属分につきましては、一ぺんにやれるわけでございません。一番早いものからおそいもの、大体十八カ月の間で公開するというわけです。その手続に九カ月かかるというのは、ちょっと私何の数字かわかりませんが、その間に円滑に、それぞれ審査官なりあるいは印刷屋に回す手続をやるわけでございます。審査官の場合には、先日御答弁を申し上げたかとも思いますが、分類をつけるというようなことのために、十八カ月の間に一カ月一日半ぐらいのロードでやっていけるという計画にしておるわけでございます。ですから、一ぺんにそれをやるわけでなくて、十八カ月の間逐次業務の遂行状況を見て進めていくというわけでございます。それから、現在審査官が手元で拒絶理由を出しておるとか、あるいは異議があるとか、そういったものはもちろん公開いたしません。そのためには、大体公開準備をしまして、いつごろまでそういう状態になるものがあるかどうかあらかじめ見当をつけておきまして、公開するものと、従来どおり審査するものがきまっていくわけでございます。
  165. 米原昶

    ○米原委員 時間がありませんからこれで終わりますが、いまの点ですが、大まかな点しか申せなかったし、大まかなことしか実際わからないような情勢だと思うのです。ただ、大まかに見ましても、どうもこの制度を変えて、いろいろ転換点では、いま印刷の問題は実際どうかわかりませんが、とにかく七十万部以上のものを印刷するとなると、相当時間がかかることははっきりしていると思うのです。そういうものや審査中のものをどうするかとか、いろいろなどうしても混乱が伴うことは避けられないと思う。そういうことではたしてこれは解決に向かっていくのか。必ずしも確信をもって解決できると言えないような状態じゃないか。さらに、憲法違反疑いもあるというような、やっかいな問題をかかえております。そういう点では、相当慎重にやらないと、一歩あやまつと取り返しのつかないような混乱に踏み込まないとも知れないような感じを、御答弁から受けるわけであります。こういう問題を切に解決していただくようにお願いしまして、私の質問を終わります。
  166. 八田貞義

    八田委員長 川端文夫君。
  167. 川端文夫

    ○川端委員 最初に、この特許法の百七条の特許料の問題、これは品種別の差はないのか、あるのか。ちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  168. 荒玉義人

    荒玉政府委員 差はございません。
  169. 川端文夫

    ○川端委員 そういたしますと、たとえば、製品化されたもので市価五千円か一万円の商品でも、一つの商品が百万円の特許の内容のものも、差はないという解釈でございますか。
  170. 荒玉義人

    荒玉政府委員 そのとおりでございます。
  171. 川端文夫

    ○川端委員 この問題は後ほどまた意見を申し上げたいと存じますが、今日、科学技術の奨励という意味においての発明奨励を今回の法案はブレーキをかけようという一つ法令の趣旨になるわけですが、この問題の矛盾に対して、この法律から受けるメリットは何か、この点をひとつ最初にお聞かせ願いたいと思います。
  172. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず、審査を現在よりか早くいたしまして、そして出願人の利益にしようというのが第一でございます。  第二は公開制度にいたしまして、できるだけ早い機会に――出願後一年半でございます。に公開いたしまして、いわば現在のような状況でございますと、一応審査をして出願公告するということになりますと、だんだん公開がおくれ、そしておくれるということは、技術の進歩に対してむしろブレーキをかけていく、そういう事態を解決しようという、それが結局全体としての技術の発展に資するというふうに考えております。
  173. 川端文夫

    ○川端委員 一つは、そうであるとするならば、審査のおくれの過程に再提出ということも起きるのじゃないか。時代の変化に伴って、四年なり三年前に出したものと、あまり時代が変わってきているという形で、前のものを取り消さないでそのまま同じような形においての再提出というようなものが同一人から出る場合があると思うのですが、そういうものはございませんでしょうか。
  174. 荒玉義人

    荒玉政府委員 全く同じものであれば再提出する必要はないと思います。御承知のように出願というのは、出願日というのが非常に大きな問題でございます。したがって、再提出といいますと、全く同じものを新しく出していけば、これは無意味です。少し変わったものを再提出いたしましても、これは出願日を当初のものに繰り上げることも制度上おかしいわけでございまして、再提出するという意味がいささかわかりませんが、そういうふうに考えております。
  175. 川端文夫

    ○川端委員 もう一つ、素朴な質問ですから、意見を先に幾つか聞いて意見を申し上げたいと思うのでありますが、それならば、日本のこの特許制度の中に日本独特のものとして何か特徴あるものはあるのか、この点が一つと、もう一つは、他の先進諸国というか、諸外国と比較して、日本だけが滞貨せざるを得ない理由は何か、理由があるのかどうか、この点は日本審査能力が足らぬのかどうか、この点をひとつお尋ねしてみたいと思います。
  176. 荒玉義人

    荒玉政府委員 制度の中で日本特有なものは、しいて言えば実用新案まで審査をしておるという点は、諸国の制度からいえば特徴的でございます。  それから、審査負担に困っているという問題は、程度の差こそあれ、世界的な傾向でございます。ただ、日本の場合が悩みがきわめて大きいという程度の差はございます。
  177. 川端文夫

    ○川端委員 それならば、言うならば、この特別メリットのない審査を促進するという目的を重点に提案されている法律に対し、法律というものは、われわれの公共的な利益を促進する一面もあるが、拘束なり制限を加えることも当然伴ってくる場合があることもお考えになってこの法律を提案するまでにどれだけの努力をされた経験なり実績を、われわれに納得できるような御説明ができるか、お答え願いたいと思います。
  178. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四十一年度の実用新案を簡易審査にしようという提案が廃案になった直後、審議会を開きまして、そして二年にわたり、特に審査を促進する方法ということを中心にいたしまして、審議会の答申が四十三年十一月に出ました。その後各界といろいろ協議いたしまして、そうして昨年度法律の成案を得たわけでございます。したがいまして、審議会なり各界それぞれの意見の調整の結果、提案した次第でございます。
  179. 川端文夫

    ○川端委員 そういう抽象的というか、一般的な努力をされたであろうことは、立場上御説明あること、あらかじめわかっておるわけですが、いま私の手元にある資料によりますと、国際比較においても、日本出願件数二十八万九千に対して定員が千四百十四名、予算の上からいってもアメリカの約半分ですね。アメリカの出願件数は十二万六千件で、半分にも満たない件数に対し、人員も日本の倍ではないが二千五百五十八人という人がかかっておるわけですね。そういう意味にすると、どうも努力したというその姿がわれわれ納得できないように思うのだが、そのどこに障害があってその努力が実らなかったのか、この点をひとつ御説明願いたいと思います。
  180. 荒玉義人

    荒玉政府委員 主として問題になりますのは、人員の拡充が中心だと思います。大体最近、最高百四十四名、あるいは百十名、九十九名、昨年度が七十五名でございますが、したがって百名内外の人員を拡充してまいったわけでございます。もちろんそれでは足らぬじゃないか。私もそういうふうに思いますが、政府全体のことを私が申し上げるのも恐縮でございますが、一般的には三年間五%減らすという方針であると同時に、三年前におきましてもいわば凍結いたしまして使えない定数がある。その時期に先ほどのような人員の増加を見たわけでございます。したがって、もちろん百点満点ではございませんが、ほかから見れば最も定員の増加した官庁でございます。今後も、もちろん制度改正だけでなくて、定員の増加をやっていきたいということには変わりはございません。全体の特許行政から見ておしかりを受けるかもしれませんが、一応の努力はしてまいったつもりでございます。
  181. 川端文夫

    ○川端委員 行政上の節約というものは、安い税金という意味において、何人もこれは日本人である限り、いかなるイデオロギーを持とうとも、お互い意見が一致するところであろうと思う。したがって、いたずらに定員をふやせというわけではないが、この場合においては、やはり現業的な仕事であって、出願料というものを徴収されておるわけですね。したがって、単に行政監督上の行政官とは違うのであって、その意味において、現実に出願の件数がふえてきておる、この事実の上に立って処理するために、やはりそれは通産大臣の責任なのか、特許庁長官の力が弱いのかわかりませんけれども、そこら辺の努力のしかたというものが、何かもう一つわれわれは納得できないような気がするのです。この点はもう一つつけ加えていえば、先ほども委員からの質問がありましたように、かりにこの法案が通ったとして、優先審査制度が設けられても、七〇%なり六〇%がそれぞれ優先審査をした場合に、はたしてこの法律をつくっただけのメリットが十分に生まれてくるのかという点に対しては、どうしても納得できないように思うのだが、この点いかがですか。
  182. 荒玉義人

    荒玉政府委員 たびたびで恐縮でございますが、制度改正、あるいは人員の拡充とかその他を含めて、問題の解決をはかっていきたいという基本的な考え方でございます。したがって、先ほど、大体審査の目標をどのくらいか、理想はどうかという御質問があったと思います。おおむね二年程度と考えてみますと、やはりそれは制度改正のみでは成り立ちません。あるいは人員の拡充を含めて、そういうものと一本化したならば二年程度になる、またしなければいけない、こういう意味でございます。あくまで改正並びに拡充その他両両相まって解決していくべきことでございます。
  183. 川端文夫

    ○川端委員 この法案国会に提案をされて、あなたの指導のもとに協力して働いておいでになる特許庁からも、反対の陳情は私も受けております。したがって、このことはよく御存じだと思うのだが、それは単に職場の人ばかりではないということも御存じでしょうな。やはり中小企業関係と申しますか、発明者のグループの中にも、この法案の提出に対して強い反対の運動が起きておること御存じでしょうか。
  184. 荒玉義人

    荒玉政府委員 中小企業のそれぞれの団体の意見も私は承知しております。一部そういう方々で異なった意見があることも、二年このかた十分承知をしております。
  185. 川端文夫

    ○川端委員 長官、一部という表現は少しいかがかと思うのですが、たとえば一昨日の、発明協会の構成人員なりいろいろなものを、発明している人たちが全員信頼して加入しているかどうかという資料を要求いたしまして、もらったのを見ましても、全員が加入しておるようには、あなたのほうから出された資料にも出ていないように、私はいま見方は悪いかもしれぬけれども、いただいておるわけでして、その一部という見方は正しいかどうかということ。特に中小企業の発明関係者が反対が強いように私は受け取っているわけですが、この点どういう見方をされていますか。どういう話し合いをされたか。経過はここで発表できる範囲で発表していただけばありがたいと思います。
  186. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私が一部と申し上げますのは、中小企業団体それぞれございます。商工会議所も、あるいは中央会等中小企業団体ございます。私、特に従来異なる意見を持っておるというので話し合いましたのは、擁護連盟の所属の団体であります。あるいは中政連が昨年そういう話でございました。私、参っていろいろ懇談したわけですが、したがって、団体としては、擁護連盟所属の団体あるいは中政連というふうに、その方々とはお話ししたわけです。したがって、あえて一部と申し上げたのはそういう意味でございます。擁護連盟の団体につきましては、制度改正に入る前に二、三回聞きまして、いろいろお話はしました。ただ、どうもいまの制度で人をふやしてやればいいじゃないかという基本的なお考えのようでございます。どうしてもわれわれはそういったことに確信を持ち得ませんので、その後、大体そういった話し合いはしたつもりでございます。
  187. 川端文夫

    ○川端委員 この問題で、あまり討論になってはどうかと思うので申しませんけれども、私の手元にいただいている工業所有権審議会委員三十六名の中に、中小企業の関係の発明者の意見を代表できるという人は、甘く見ても五、六人しかないようです。それからもう一つの発明協会の役員名簿をいただいたんだが、私も一つの中小企業者ですから、私の知識の範囲で調べたけれども、これは後ほど申しますから申しませんけれども、中小企業者らしい人はほとんど一、二おざなりにお入りになっているだけで、御用学者と言っては言い過ぎかもしれませんけれども、どうも都合のいい人と相談されているんじゃないか。特許庁長官が、審議会をつくるにあたっても、自分の趣旨に賛成しそうな人を先取りして選んでおいでるように考えられてしょうがないのです。もちろん、選挙をやるわけにいかぬし、なかなかむずかしかろうとは思いますけれども、したがって、こういういろいろな答申が出ても反対が出てくるゆえんの中には、そういう要素もあるんだという反省をしていただくわけにいかないだろうか、こういうふうに申し上げたいのです。
  188. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御承知のように、審議会をつくる場合には、これは私が就任したときからできておったわけでございますが、一般的には各界それぞれの人を推薦していただくわけでございます。いま非常に強い反対は――擁護連盟の方々の代表も、われわれはだれかを推薦していただきたいということで、ある人が出てきているわけでございます。いずれにいたしましても、われわれはできるだけ各界の意見を反映したいということは当然でございます。ただ、だれをというわけにもまいらぬ場合も多うございますが、できるだけそれぞれの意見を代表する者で当然構成すべきかと思っております。
  189. 川端文夫

    ○川端委員 もう一点だけこの問題でお尋ねしておきたいんだが、工業所有権審議会四十三年十一月四日の「最終会における発言の要旨」というものを私もらっているのですが、ここには元特許庁長官の久保敬二郎委員が、私がここで言うも少し恥ずかしいようなきびしい態度で、この問題に対して発言されていることを御存じだと思うのですが、これらのことをやはり先輩として参考にされるべきではなかったろうかと思うのです。そういう点はどういうふうに理解されておるか、伺っておきたいと思います。
  190. 荒玉義人

    荒玉政府委員 そういう事実はございません。
  191. 川端文夫

    ○川端委員 すると、長官、この大条正義という人が印刷したもの、私の手元に来ているのは間違いであるということですか。こういうふうに書いているのです。「小委員会の審議過程で久保敬二郎委員は、「この強制公開は、出願人特許庁の窓口で追い剥ぎに会い、その追い剥ぎは出願人の明細書を市中でばら撒いてしまうようなものだ」との意見を述べられたが、まことにもっともである。」ということばを書いておるわけです。先ほど遠慮して読まなかったのですが、そういう事実はないとおっしゃれば、私はこれを持ってきた人に一ぺん抗議しなければいかぬわけです。
  192. 荒玉義人

    荒玉政府委員 らしき事実は過去にございます。らしきといいますのは、公開制度の論議も二年以上かかっております。最初のころ、公開した場合の出願人の保護をどうするかという点が白紙の時代がございました。そのとき、久保敬二郎氏がそういうことを言ったことは、私は聞いております。ただし、その後いろいろな論議の末一応の線が出た場合は全く別でございます。その点は誤解のないように御了承願いたいと思います。
  193. 川端文夫

    ○川端委員 これは久保さんから直接私は受け取った文書でありませんから、両方の文書をそのままで受け取らしていただいて、判断は別にさせていただくことにいたしたいと思います。  そこで、もう一つの問題は、午前中も別な角度で論議があったのですが、この法律の説明のときには、西独なりオーストラリアの例をあげて、そこではこういうふうに成功をおさめている、したがって、これを日本にも取り入れるということで法律準備にかかったという説明だったように私は記憶しているのです。オーストラリアのほうは、その後早期公開制度中止しているように私のところに訴えもありますし、西独のほうは午前中の審議の中にもあっただろうと思うのですが、憲法裁判所提起しているという問題も起きているようですが、これらの例を考えて――もちろん、この法律をおつくりになった時代には、そのことを具体的にわかっていなかっただろうとは思うけれども、その後の経過から見て、よそでも問題はかなり複雑に起きている。しかも、憲法問題まで議論が発展しているということを御理解いただいて、この法律の扱い方に対して、きょうの御見解をどういうふうにお持ちであるか。立案当時はこの事情はおわかりにならなかったんだから、それはそれでいいとして、きょうの段階に来て、そういうものとは関係ないのか。客観的というか、世界の体制の違いの中になお日本は押し切ってやらざるを得ないという理由をお聞かせ願いたいと思うのです。
  194. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ドイツの場合は、けさほど議論がございましたので省略いたします。  オーストラリアの場合は、本来公開制度を持っておった国でございます。ことしになりまして審査請求制度を新しく採用いたしたということでございますので、これは、そういう意味でわれわれ問題の国ではございません。  それからオランダの場合、これはますます所期の効果をあげておりまして、第六年目の請求率が四六・六%、国内が六五・八%、外国が四三・五%の請求率でございますので、オランダの場合は着々所期の成果をあげておるというふうに考えられます。  それからアメリカの例でございますが、アメリカの場合は、当初国際的な制度に近づけるというので、いわば早期公開並びに審査請求制度を考えておったようでございますが、最近の状況から見ますと、あえて早急に制度化する必要はないというのがアメリカの事情でございます。
  195. 川端文夫

    ○川端委員 これはせっかく見えている通産大臣に一言承りたいのですが、何かといえばアメリカを模範にしたがる一面が日本の政治の中にもあるわけですが、アメリカでは法律改正しなくとも行政措置の力においてそれを処理できる、やっているという事実に対して、もう一ぺんそれらのことを検討してみる用意がおありかどうか、通産大臣に承っておきたいと思います。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 詳しくは存じませんが、アメリカの場合とわが国の場合とでは、もともとの法体系がかなり違っておると思いますし、聞きますとアメリカでは、なるべく書類が何度も往復をしたりしないように、また本人に対して補正を呼びかけてある程度補正をさせるというような、そういう行政上の措置を最近やっておるように聞いておりますが、それで半年ほど短縮ができるかということだそうでございます。しかし、わが国のように、どちらかといいますと大陸法の系統の法律を設けておりますところは、役所がかってに本人を呼んで、君のこの申請のところはちょっと補正したらどうだ、そうすればパスさせることができるというようなことは、わが国の大陸法系の法制では、御承知のように非常にやりにくい。かなりきちっと書いてございますので、そういうこともあるのではないだろうか。つまり現在の行政を別行の法のたてまえでやるといたしますと、その間にそのような一種の便宜措置というものがとりにくいような、そもそもわが国の法体系がそういうふうにできておるということが、やはり一つあるのではないかと思います。行政上の態率を法の定められた範囲であげるということは、これはもとより大切なことでございますけれども、英米法の体系とやはりそこが違っておるということがあるように思います。
  197. 川端文夫

    ○川端委員 これも、私もしろうとですから、あまりむずかしく議論をしだすと、これが一番いいという条件を出すほど用意はございません。しかしながら、なぜ私どもがしつこくこういうことを、各委員の諸君も質問されておる中に重ねて言わなければならぬかといえば、第一に特許庁の内部の職員の中に反対がかなり多い。もう一つは中小企業と思われる――これは私も調査したわけではありませんが、私の知っておる範囲においては、中政連等でもきめているし、中小企業団体もきめている。中小企業団体が反対しているこの特許法をきめるのにあたって、しろうととしてはなかなか判断がつけにくいというところで、われわれも苦労しながら聞いているわけです。  この点で、やはりメリットがここにあるのだ、発明者に対してこれだけの有利な条件をわれわれは考えてあげているのだというメリットを強く打ち出してくれなければ、どうしてもなかなか判断がきめにくい、審議しにくいという一面があるので聞いておるわけです。この点もう一つ何か――ただ、おくれを取り戻すと言ってみても、やってみなければわからぬし、逆にいえば、全部が審査請求を出した場合においては、人員の充足ができないのだから、似たようなことになるというのじゃ、何のためにそういう屋上屋を重ねるような法律を重ねて加えなければならぬかということに、とまどってしまうわけです。しかも、国の予算からいっても、各国の例から見ても、特別、特許庁に対して日本が保護をしているように予算が出ておらないわけです。私のもらっている資料から見ましても、比較して、それほど日本がめんどう見ているとも思えない事情の中ではどうも納得できないので、われわれも困っているわけです。この点われわれ困らせぬように、びしっとした何か意見があったらもう一ぺんお聞かせ願いたいと思うのです。
  198. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどから人員の増加の問題ございますが、最近大体各国は横すべりでございます。確かに日本が過去において出おくれたことは事実でございます。全体の人員を百名近く増員する特許庁のようなところは、最近、ここ七、八年以来どこにもございません。そういった意味では、ある程度――もちろん十分満足すべき状態ではございませんが、国が最近非常に努力しておるという面は、ひとつ御理解願いたいと思います。  ただ、それだけでは問題が解決しないというのでこの制度を考えたわけでございますが、もちろん請求率がどうなるかというのが、この法案のまずねらいである、第一の目的である審査請求制度が成功するかどうかのかぎであることは事実でございます。一応最低の請求率、最小この程度の請求率だというその特許八〇%、実用新案三〇%で計算いたしますと、人員のある程度の増加を含めますと、大体四十九年度で二年程度――これは正確に二年程度と御理解願いたいと思いますが、そして制度改正しないのと比べて、大体一年半程度の差があるというのが第一のねらいと考えています。  それから第二は、先ほどから言いましたような、この早い技術革新の状況で早い情報を提供する。これは金額に換算できませんが、おそらく膨大な経済的な価値だ。大体二つのメリットと考えております。
  199. 川端文夫

    ○川端委員 これも私の手元に、特許、実用新案処理件数の比較というものが出ているのですが、内容が出ていないのだから、一人当たりの処理件数だけで、これがいいか悪いか、内容的にどう判断していいのかということはわかりませんけれども、一人当たりは、日本の場合は二百五十三件、アメリカ八十五件、ドイツ八十件という処理件数で、私はこれだけを見ておれば、現在の審査官の能力というものは、目一ぱいやっておるように受け取らざるを得ない。こういう面もあるので、単に言うなら優先審査だけが最大の道であるということが、どうしてもわかりにくい。もう一つ何か補助的な方法も考える余地があるのではないかと思われるのですが、ほかには何と考えてもないと言い切れますかどうか、この点もひとつ。
  200. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろん審査を促進する方法はいろいろございます。アメリカの例で早くなったのは、結局早く出願人審査官が意思疎通をはかる、いわばこういうことでございます。われわれも、二年以上前に、できるだけ出願人に詳細な理由を言って、返事が簡単にできるようなことをやれば早く問題が片づく。あるいは将来解決策を拡充するとか、あるいは公開制度によって外部機関と連携するとか、いろいろ運用上やるべきことは多々ございます。したがって、改正しようがすまいが、やらなければならないことは当然やる、われわれは改正しても当然やるべきことはやるというふうに御理解願いたいと思います。
  201. 川端文夫

    ○川端委員 この問題は、まだ十分納得できるようなお答えとは、ここでは申し上げにくいことを私は残念に思うわけですが、そのことはまた別の機会をいただくことといたしまして、おとといでしたか、塚本委員からの質問の中に出てまいりました紛争処理の問題に対して、発明協会に当たらしめるということが前国会においての質疑の中に出てきて、それを否定されることばもなかったように聞いたわけですが、これは省令でやるのですか、何でおやりになろうとするのか、お答え願いたいと思います。
  202. 荒玉義人

    荒玉政府委員 発明協会の内部的な仕事としてやっていただきたいと考えます。もちろん、われわれの側からいろいろな御指導はいたしますが、国の機関でもございませんので、政令でつくるといったような機構ではありません。
  203. 川端文夫

    ○川端委員 仏さんと神さんばっかりが住んでおれば法律要らぬわけですが、そういう意味において、全くこの発明協会の善意に期待するという以外には何らの方法がないということと承ってよろしいですか。
  204. 荒玉義人

    荒玉政府委員 やり方は、技術的な権威、あるいは法律的なあるいは経理的な権威者を常時登録いたしまして、案件に応じまして臨時編成して結論を出すという形でございます。したがって、この機関が成功するかどうかは、どういう人がやるかどうか。発明協会自身はそういったお世話をするということでございます。いつにかかって、仮称あっせん員と申しますか、そういう人にいい人を選ぶかどうかということに、私はかかっていると思います。
  205. 川端文夫

    ○川端委員 事業計画なり収支予算書をいただいておるわけですが、いろいろなことは書いてありますけれども、いまこの役員名簿を見ると、どれくらいの事務スタッフをお持ちであるのか知らぬが、少なくとも私が知っている常識では、この役員の人々があまりえら過ぎて、そういうことができる条件の人々がないと断定してもはばからない。いかに善意があっても、たとえば会長の松下幸之助さん、剛会長のソニーの井深さんとか、こういう人々がそういう問題にはたして理解を持てるような時間的な余裕がいまあるかどうかという問題もありますし、この点はどうも疑問に思えてならぬわけです。この点は、もし早期公開なり優先審査というものが新しい法律としてできた場合に、いろいろの紛争が起きた場合の紛争処理に対し、国が何らの関与もしないで、それらの善意にまって調停をしてもらおうというのでは少しどうかと思うのだが、この点いかがですか。
  206. 荒玉義人

    荒玉政府委員 国自身がつくったらどうかという議論に対しまして、国がやることは、問題の件に対して早く解決するということ、すなわち優先審査の手段か国でやるべきことではないかというふうに、まず考えておるわけでございます。といいますのは、あっせんするといたしましても、権利がある前提でやるか、ない前提でやるか。もちろん、ない前提ならあっせんもないと思いますが、ただ当事者で、ある、ないという場合の争いがあった場合に、やはり国としてイエスかノーかということを早く返事をしないと、実際の実効をあげ得ない。したがって、これは国で担当します、あとはその権利があるという前提に基づきまして、むしろぎしぎししたものでなくて、そういった権威ある者が事実上一つの案を提示することによって問題は解決するということで、それは新しい協会の機関でやる。それぞれ国のやるべきことと民間でやるべきことをむしろ分けていきたいというふうに考えております。
  207. 川端文夫

    ○川端委員 これも、私の資料の求め方が違っているかどうか知りませんけれども、西独の場合においては、この日本と似たような制度を取り入れるときに、新しく連邦特許裁判所というものをつくって、その出願者の秘密なり権利を守って、その合わせた力において処理を促進するというやり方を採用したように私は情報を聞いているわけですが、これは西独の場合においては、前からそういうことはあったのか、このような制度を実施するためにつくったのか。この点は私の情報の集め方が違っているかどうか、お答えを願いたいと思います。
  208. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許裁判所といいますのは、新しい公開制度と関係なく従来からございます。特許裁判所といいますのは、ちょうど日本でいいますと、特許庁の審判部と、あるいは高等裁判所の専属管轄になっておりますが、そういった、いわば行政庁の処分の有効か無効かといったようなことを争うのが特許裁判所でございまして、本件は補償金があるかどうかという金の点につきましては、全く普通の裁判所の系列に属するわけでございます。したがって、特許裁判所の成立と早期公開制度の問題とは、私は無関係だというふうに聞いています。
  209. 川端文夫

    ○川端委員 それも一つ情報として承りまして、信用したいわけですが、そうであるとするならば、もう一つお聞きしたいのは、この特許庁は設置法の中で審査五部までありますね。一部は事務的なことで、他の四部でおやりになっているのじゃないかと思うのですが、そのほかに審判部がある。そうであるとすれば、同じ役所の中におって一つ穴のムジナだと思われないように、何かそこに新しく西独のように、連邦特許裁判所のような権威のあるものをつくって、そこへかけ込めば、泣き込めば相談に乗ってもらえるというものは必要とお思いになりませんか。その点をお尋ねしたいと思います。
  210. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ドイツの場合には、特許裁判所というのは、いわゆる特別裁判所に該当すると思います。日本では特例裁判所憲法上設置できないということで、これはおそらくできない。むしろそういった技術面は特許庁の審判部で判断するという趣旨そのものが、先生の御提案の趣旨に合った制度だと私は思います。ただ、同じところにおってなれ合いはどうか。これは厳格に前審介入を排除しておりまして、同じ審査官が処分をした事件について、審判に来たからといいましても、それはメンバーにはなれない。むしろ審判制度自身が、いま先生の御提案に沿う制度ではないかと考えられます。
  211. 川端文夫

    ○川端委員 これは詳しく、こまかくは読んでおらないでものを申し上げてはなはだ失礼に当たるかもしれませんが、しかし審判部というものは、独立した機関として、身分上は初めから審判するためだけの人が集まっているのではなくて、やはり特許庁の中に人事交流というか、そういうものが行なわれているのではありませんか。それはそれなりの、審判するための特殊な立場を保障された姿においての審判部というものにはなっていないのじゃないかと思うのですが、役所の内部機構の中の問題、ひとつお答え願いたいと思います。
  212. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろん一番大きく違いますのは、裁判所の場合には完全な身分保障でございます。審判部といえども行政機構の内部でございますので、審判官は全く裁判官と同じだという意味の完全な身分保障はございません。その差を裁判官と同じにするためには、これは特別裁判所という問題が出るわけでございます。そういった行政庁の職員の裁判所と同じ身分保障の体系というのは、実際上私むずかしいんじゃないか、かように考えています。
  213. 川端文夫

    ○川端委員 あまり時間を食ってものを言っておってもどうかと思うので、最後に一つなお確かめたいのは、いまの段階では、この法律を提案している立場に立っては、紛争処理は発明協会に期待するというか、お願いするということを曲げていないというふうに私は受け取ってよろしいかどうか、もう一ぺん確認の意味で聞きたい。
  214. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど言いましたように、われわれは優先審査で早く結論を出し、あとの補償金その他につきましては協会の機関に依存したいという方針でございます。
  215. 川端文夫

    ○川端委員 優先審査、ことばはあまり好きではございませんけれども、滞貨処理ということに対しては何とかしてほしいということは、だれしもが一致しているところではないかと思うのです。やり方の問題に対していろいろ疑義のあるものを、納得しないまま法律を審議するのは良心がとがめるという立場に立っての、いろいろの角度からの質問を申し上げているわけですから、この点は、なおきょうここで結論をつける必要もなかろうと思うからこの程度にしておきますが、ただ一言、繰り返し言っておきたいのは、発明協会が紛争処理に当たり得るような機構になっておらぬのではありませんか。私は調査したわけではありません。いただいているこの名簿から見れば、言うならばそういう制度にはなっていないんじゃないか。褒賞を申請したりいろいろなことをやる、名誉職的なお互いの仕事をおやりになったり、ムードをつくることにおいては、ある程度の功績があったかもしれぬけれども、特に中小企業のこまかい人々のために、血の通った愛情をもって紛争処理に当たり得るような組織になっていないのに、その人々の努力に期待してこの法律を提案されているということに対しては、少し片手落ちがあるのではないか。この点を申し上げて、私のきょうの質問を終わりたいと思います。後ほどまた気づいた点があったら、あしたでもまた聞かしていただきたいと存じます。
  216. 八田貞義

  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどからの各委員質疑を通しまして、政府のそうしたお考えというものが述べられたわけであります。先ほどの川端委員質問に対しましても、結局メリットとしては、審査が早くできる、あるいは早い機会にそうした情報を提供できる、こうした二点のことについてお話があったように思うのであります。私はこのメリット、デメリットを考えた場合に、先ほどからもいろいろなお話がございましたが、国民の多くの皆さんが、本法案改正については非常に疑義を持っておられるわけです。私たちもいろいろと調査をしておりますが、結局この特許協会の意見に代表されるように、ごく一部の人しかこの法案については賛意を表しておらない。ほとんどはいろいろな点で心配をしておるわけであります。  大まかに、私たちも心配しておる点の一、二を申し上げたいと思うのですが、一つ憲法違反のそうした心配なのです。これは山谷委員のほうからも質問があったと聞いておりますが、そういうような問題。それから、大企業にとっては非常に有利ではあるけれども、もう個人発明家あるいは中小企業等にとっては、非常に不利な問題か出てきております。当然、そこには発明者のそうした発明意欲が喪失される、こうしたことがあるわけであります。また、問題になっておるこういう技術開発、特に私たちも科学技術特別委員会でいつも言うのですが、やはり自主技術の開発ということが非常に大きな問題になっているのですが、かえってそれが逆行するのではないかという心配です。また審査を逆におくらすのではないか。それは私は、あとずっといろいろなそうした要素というものを御質問させていただきたいと思いますが、そういう心配があります。あるいはまた、この特許において最も大事な問題である権利の不安定化を招き、紛争事件というものを増加させるのではないか。あるいは問題になっておる情報公害という問題です。この間も情報法案が通ったわけでありますが、このときにも情報公害ということを申し上げましたが、その先べんを特許庁がつけるのではないか。あるいは国費のそうしたむだづかいになるのではないか。あるいは利用者のそうした料金の引き上げということは非常に困るのではないか。いろいろなそういう問題を考えておるわけであります。  特に先ほども、外国の場合は非常に成果をあげておる、このようにおっしゃっておりましたが、外国の場合は日本とは客観的な条件が非常に違うわけです。これはもう御承知のように、たとえばオランダにはIIBという特許情報機関がすでにあるわけです。西ドイツでもこうした繰り延べ審査制の採用と同時に、同様のそうした調査機関というものをベルリンをはじめ設置しております。全国十カ所に特許裁判所というものがある。それとわが国のそれと同じようになるのか。こういう国情から見ても、そういういまおっしゃったメリットの根拠というものが非常にくずれてきているのではないか。しかも、早い情報を提供できるとおっしゃっておりますが、早い情報といっても、現在いろいろな学会で年に一回、学術講演会というものを開いて、どんどんそうした学会誌に論文が発表されておる。基本的な技術というものはたいがいわかっているわけであります。そうした点からしまして、いまおっしゃった二点のメリットというものは、はたしてわれわれが十分に納得できるだけのものであるかどうかというところに疑問があるわけです。これについてお聞きしたいと思います。
  218. 荒玉義人

    荒玉政府委員 近江先生、たくさん問題点をおっしゃいましたので、全部の問題にお答えできるかどうかわかりませんが……。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 あとの二点に特にしぼってもらいたい。
  220. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず、情報が学会等からあるではないか、あるいは情報公害といろいろ指摘がございましたが、特許情報というものと学会情報というものは、やはり基本的に違うわけでございます。なぜ産業界か早い時期に特許情報が必要かといいますと、御承知のように、研究開発の過程には、まずいろいろなものを調査して研究いたします。そして、おおむねそれが商品的な成功がはかれるかどうかという見通しをつけたときに、開発段階に移っていく。そして逐次いろいろな段階を重ねて生産段階に移行する、これが普通の企業の姿でございます。その際に、開発段階から非常に金がかかってくるわけでございます。したがって特に特許情報といいますのは、開発に金がかかっていく、したがってその金をかけるためには、はたして特許独占があるかどうかということを調査いたしませんと、思い切った金がかけられない。したがって、やはり特許情報というのは、そういう意味の、将来自分のばく大な投資に対して回収があるかどうかということが、企業の判断の際にきわめて重要だという意味では、学会の情報とは全く質的な差があるわけでございます。そういった意味におきましては、もちろん学会のニュースもそれ相当の価値があると思いますが、異なった意味において、企業一般にとって特許情報が重要な意味を持ってくるわけだと思います。  それから情報公害でございますが、公害とは、本人の意思に関係なく害を受けるのが私は公害だろうと思います。現在では、特許情報出願公告をして初めて見得るわけです。いまは、見ようと思いましても、本人の同意を得るか、あるいは産業スパイ以外見れない。したがって、そういった見れないのでは、先ほど言いましたいろいろ問題があるから、見せてあげましょうというのが公開制度でございます。したがって、公害のように、自分の好むと好まざるとにかかわらず降りかかってくる問題とは、私はいささか質を異にしておるかと思います。したがって、開発面から、その他あるいは投資面等々で、ほんとうに特許情報が必要な者のみが利用でき得る状態に置くのが公開制度でございますので、いわゆる情報公害ということばは私は当てはまらないのではないか、かように考えております。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからもう一点の、要するに各国と事情が違うというその点ですね。私いろいろ申し上げましたが、それはわれわれはこういうことを考えておるということを申し上げて、あとからまた項目に入っていくのですが、それを申し上げた。特に私がいま申し上げたのは二点ですね。要するに、技術情報ということをおっしゃったことと、それから、要するにこれが非常に審査の促進になると、外国の例を引かれておっしゃった。しかしわが国とは実情が違うということをぼくは申し上げた。ですから、それの根拠を聞きたいわけです。
  222. 荒玉義人

    荒玉政府委員 今度の制度は、早期公開制度審査請求制度で、主として外国と一番大きく違いますのは、いわゆる新規性調査機関を取り込んでおるかどうかという点だと思います。それで、これはたびたび私、御答弁申し上げたかと思いますが、確かに新規性調査機関があるということは、これは望ましい方法だと思います。ただ、新規性調査機関かなければ請求制度は成り立たないか、つまり必要欠くべからざる要件かという点につきましては、いささか私は疑問がございます。といいますのは、請求制度を成立する要件は、要するに発明者が、出願のときには発明の価値がわからない。それは、ただそれがパテンタブルかどうかというだけでなくて、要するにその発明を経済的に利用できるかどうかということがきわめて不十分である。いわば発明を比喩的にいいますと、まだ種の段階だ。したがって、出願後いろいろな事情を通じまして出願人が選択していく。したがって選択基準というものは、まず主体的には出願人の側にほとんど事情が存するということだと思います。もちろんその際、社内特有の事情のみならず、たとえばそれが特許見込みがあるかどうかということは、一応出願人は、公開公報がございますから、大体自分の競争相手が何をやっておるかというのはもちろん察知するでしょう。その際、もう他人が出しておれば自分が見込みないということで、自分で調べまして、そうしておりる場合もございましょう。新規性調査機関といいますのは、それを公的な機関にゆだねることであります。したがって、請求するかどうかという場合に、先ほどから言いましたように、そういった機関があることは望ましいわけでございますが、あらゆる判断をそこの機関がやるというものではないと私は思います。したがって、望ましいということは、繰り返して申しますが、私も望ましいし、将来――ただ新規性という、出願後の需要のみならず研究開発する前から、やはり日本にそういう機関があるということは当然望ましいし、またつくらなければならない。ただ、それがなければ制度自身が成り立たないかという点につきましては、先ほど申し上げた理由で、私自身疑問を持っております。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう機関があれば非常に望ましい、あらゆる情勢から判断されてそうおっしゃったと思うのですが、そういうことも現実に考えもせずこういうような法案を出された。そういう機関がなくてもできるというような言い方もされてはおりますが、非常に大きな疑問がそこにあるということをおっしゃったわけです。そういうような確信のないことでこうした法案を出していいかどうかということなんです。しかも、私どもにもいろいろな陳情が来ておりますが、共通した意見をあげてみますと、たとえば、私は十年来法改正を叫んできた、しかしこのような法改正では断固反対せざるを得ない、私の関係しているもので二億円からの開発費用をかけたものがある、これが無にひとしい権利、無にひとしい補償で公開されたらどうなる、特許庁の大きな課題は早期公開では解決できず、出願をほったらかしにするだけである、補償金請求権という権利がつくが、これは事実上行使できるものではない、早期公開制度は盗用奨励法ではないか、補償金がとれるということは無意味に近い――私、非常にこの人自身が独断的にいっているのかなあということで、こういう意味をずっと調べてみたんですが、なるほどやはりそうした根拠があるわけです。特に先ほど、技術のそうした公開ということのメリットもおっしゃったわけですが、これは大企業には言えるかもしれませんが、中小企業や個人発明家というものは、これは全然不利になっているわけです。なぜかならば、結局大企業の場合でしたら、それだけの公開公報が出ても、それだけの調査をするスタッフを整えているわけです。中小企業などはそういうものはできぬわけですよ。ですから、大企業の場合でしたらそれだけの体制が整っております。しかも、自分のやったその発明というものが取られたその場合、模倣、盗用のそれを訴える場合には、当然挙証責任というものが発明者にあるわけですが、そういう調査能力も調査権限もない個人の発明家や中小企業というものは、全国的に調査もできずに泣き寝入りしなければならぬ。たとえそのように立証したとしても、今回の法案というものは利用者の権利というものを強くしておるので、結局はロイアルティー程度で泣かなければならぬ、こういうようなことで、決してみんながそういう技術公開ということを望んでいるわけではないわけです。むしろそれよりも、権利というものを守ってもらいたいという、そういうほうが強いわけです。そのために発明意欲が喪失をしてくる。自主開発という日本の行くべき道を、逆に模倣の線を強くしていかないか、こういうような心配もあるわけです。  そこで、この審査が実際に早くなるのかどうかという点について、私いろいろな角度から質問をさせていただきたいと思っていますが、たとえば、実際にこの法案ができて早期公開されたときのことから、一ぺん考えてみたいと思うのですよ。そうしますと、一つの分類だけの問題を取り上げても、これを使用する方法、使用する側、そうしてまた特許庁の分類の方向、それぞれの立場からこれは問題が出てくるわけです。そこで、早期公開された場合どういう大きな混乱が伴うかということは、一分野である分類という面から見ていっても、それがおわかりになるんじゃないかと思うのです。したがって、一つの分野を取り上げてもそういうことなんですから、いかに今回の法改正というものは大混乱を起こすかということがおわかりになると思うのです。  そこで私は、一分野である分類のことから聞いていきたいと思いますが、分類というものは、要するに細分化が進んでおるということと正確度が高いという、この二点が当然要求されるんじゃないかと思うのです。ここで細分化が進んでおるということ、これはすなわち細分化が進んで、一つの小集団当たりに含まれる対象物が少ないほどよい分類と言えるわけです。細分化が進んでいなくて、調査対象となる情報量が調査可能な範囲をこえておるとすれば、もはやその分類というものは何の役にも立たないということが言えるわけです。これは前提としてずっとお話しているわけです。たとえば極端な例でありますが、特許、実用新案における分類を考えた場合に、機械、化学、電気、この三つの集団にしかもしも区分されていないとすれば、この特許、実用新案の出願というのは年間大体二十数万件あるわけです。ですからおのおのの集団に区分される出願というのは、大体十万件近くに達するわけです。そうすると、そういうように膨大になってくると調査はできない。分類の役目を果たしているということは言えないわけです。これは極端な例を申し上げているのですが。  それから正確度の問題ですが、もしもこの正確度が低くて、たとえば三〇%程度の間違い率があるとしますと、三つの例を申し上げたのですが、たとえば電気の集団に入っているものを調査するのに、機械あるいは化学の集団まで調査しなきゃならない。こういうような点で、この分類というものは実際に確実にできなければ、利用者のほうも、幾ら体制を整えてもたいへんなことになってくるということです。一つのことを考えてもそうなんです。そういう特殊なことですから、そんなばかげたことはないとおっしゃるかもしれませんが。  現在七十五万件の滞貨とこのように聞いておるわけです。そうしますと、公開公報の発行に伴って、七十五万件といわれる滞貨分の出願が短期間に公開されるわけです。そしてこの滞貨分を除いても、年間二十数万件以上の出願公開されるわけです。そうしますと、この分類対策というものがどれほど重大になってくるかということなんです。  そこで、まず質問の第一点は、この出願を一年六カ月経過したときに詳細な分類を付して公開する、このように言われておるわけですが、公開公報はどの程度まで細分化した分類づけを行なうかということなんです。まずこの点お聞きしたいと思います。
  224. 荒玉義人

    荒玉政府委員 分類のつけ方は二通りございます。一つは、現に係属しております未処理案件、いまの七十六万件、これは大体最終種目ですから、約二万種目でございます。それから新しい出願につきましては、公開分類としまして、約七千八百ぐらいの種目の分類を付する予定でございます。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 この新しいあれでいきますと、約七千八百といわれましたが、約八千種目ですね。じゃ、この八千種目にしぼった根拠は何であるかということです。それと審査官や一般利用者たちもその点について納得しておるかどうか、特にアンケート等とられたかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  226. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いま七千八百と一応考えていますのは、大体各類ごとによっていろいろな特殊の事情がございます。それでおおむね各担当審査官に、特に公開されて必要な場合どの程度かということを中心といたしまして、それぞれの分野の担当審査官と相談いたしまして、それを集計して大体七千八百、したがって各類その他によっていろいろな事情があるので、一律にどこまでということは言えない数でございます。
  227. 近江巳記夫

    ○近江委員 私、この分類の質問をさしていただく前に、要素として、要するに細分化のことと正確度ということを申し上げたわけです。そうした場合、この八千種目、こういう程度公開公報が有益に情報源となるように分類できるかどうかという問題なんです。できますか、これ。
  228. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一番望ましい姿は、二万全部いくのが一番私望ましい姿だと思います。ただこの分類といいますのは、非常に簡単なことではございませんので、相当各技術分野の専門家が必要でございます。それで、そういった面のわれわれのスタッフの現状、もちろん現在より拡充してまいるわけでございます。それと業界のいろいろな実情等々勘案しまして、おおむねこのあたりでとりあえず運用していきたいということでございます。そういった、いわば百点ではございませんが、おおむねこのあたりなら最低需要が果たせるというので、一つのとりあえずの目標に考えておいた数字だというふうに御理解願いたいと思います。
  229. 近江巳記夫

    ○近江委員 お聞きしておりまして、あまり裏づけとして私も確信もって、ああそうですかと聞き得ないような御返事のように思うのです。私もこの間の情報法案に関連しまして、特にその辺のところ、どういうような操作をしているかということに非常に深い関心を持ちまして、ずっと勉強したわけです。そこでもう少しそうした点、いろいろ検討した点を申し上げてみたいと思うのですが、どのように細分化されておるか、つまりある課題に対して調査の対象とすべき公報数が幾つくらいあるかということが、この分類の適、不適をきめる一つの大きな因子であるということが言えるわけです。ところが、この公開公報は未審査状態で発行されるわけです。そうしますと、公告公報のように、審査によって拒絶になる、公開されないということはないわけですから、総数において公告公報の約三倍近く発行されるんじゃないかと思うのです。そうしますと、種目数が約八千ということになりますと、公告公報の種目数というのは約二万ですから、同じ課題について公開公報の調査は公告公報の場合よりもどうなるかというと八千分の二万、そうするとその約三倍になるわけですから、約七・五倍の公報を調査しなければならないわけです。細分化は公告公報におけるよりもかたり後退をするわけです。あとまた副分類とか文献分類等の問題もありますから、一種目当たりに含まれるそういう公報数というのはさらに増大して、調査は困難になっていくのではないかと思うのです。  諸外国と比較してみますと、日本の特許、実用新案分類は、公告公報でもかなり細分化がおくれている。アメリカと比較してみますと、たとえば昭和四十二年度の出願件数は、わが国が約十九万ないし二十万件と思いますが、アメリカが、私の調査した範囲では八万五千件です。そこで、アメリカの種目数は六万四千あるわけですよ。ですから公告公報の場合でも、アメリカの場合の平均七・二倍になるわけです。それだけ調査しなければならぬ。公開公報について見れば何倍になるかといいますと、先ほど七・五倍というのを出しましたが、これをかけますと、アメリカの公報の五十四倍の文献を調査しなければならぬのです。こんなことがはたして中小企業や零細企業、個人発明家にできるかということです。しかもその内容たるや、あとでまた申し上げますが、分類だって誤ったものがふくそうしているわけです。誤った別の項目をさがさなければならぬ。こんなことでこれはできますか。ですから、約八千種目という公開公報の分類では、公開公報というものが情報源としての価値を十分発揮するだけの分類づけであるとは言えないわけです。この点どういうような御見解をお持ちか、さらにこの点をお聞きしたいと思うのです。
  230. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いま分類の将来の方向といたしましては、いまの分類をもう少し正確度をあげ、あるいは細分化していくということは必要なことだと思います。現行の分類におきましても、先ほど言いました二万種目でやればいいということも当然言えぬと思います。この点につきましては、分類そのものが必ずしも先進国並みの水準でないことも、われわれは反省しておるわけでございます。したがって、そういった面を逐次拡充して、いま先生のおっしゃったような体制に持っていくということは、将来の方向として私も必要だと思います。ただ、現状でできる限りの要望に沿っていくという一つの基本的な考え方で、一体どのあたりでとりあえず発足するかという問題を、まずわれわれの立場から実際的に考えての結果、一応の計画を私は申し上げた次第でございます。したがって、逐次将来こういったものをやはりもう少し拡充をするということは、御意見と全く同じ意見を持っています。
  231. 近江巳記夫

    ○近江委員 その必要性は十分認めていらっしゃるわけですね。そこで、要するに将来の問題ではないと私は思うのです。あくまでもこうした問題は基礎の問題です。ですから、いろんな陳情書の中にも書いておりましたが、今回の法改正というものは、たとえば霞が関ビルを建てるのに、基礎もなくそこに建てるのと一緒だ、こういうような言い方がありましたが、私はこういう分類の体系なんというものは基礎の問題じゃないかと思うのです。将来どうしていくという問題じゃないと思うのです。この辺をあくまで完ぺきな体制を立てて初めて、私は一応本法案を出されるかまえとしてはほんとうではないかと思うのです。ですから、こういう大事な基礎部門をこれから考えますというようなことでは、それ自体が私は大きな問題じゃないかと思うのです。  そこで、私もこの質問をさしていただくときに、たしか土曜日だったと思いますが、特許庁を見せてもらいに行きまして、そしてずっと出願からその辺の分類のところも全部見せていただきました。私自身感じたことに基づいていまも質問しているわけです。そこで、この審査官の方々が、たとえば御自分が担当されている分野の公報を手元にファイルされているわけですが、どのようにこの整理をするように指示を出されているのか、その辺何かこうだということはさまっているのですか。
  232. 荒玉義人

    荒玉政府委員 分類といまの審査官の手持ち資料の整理との関係でございますが、種目ごとに整理するように統一しております。
  233. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうですが。必ずしもこの種目分類表に基づいて整理されておるとはぼくは思わないのです。ということは、それはあくまで仕事のやりやすいように、それぞれ苦労されて整理されているわけですね。そうしますと、必ずしも分類表に基づいて整理はされてないけれども、その審査官は一番その資料をとりやすい状態でされているわけですね。いまこのくらいの公報量ですからいけますけれども、いま申し上げたように、将来これだけの増加をしてきたときに、はたして審査官が、いま苦労してそういうぐあいに置いておられる、それがそういう整理でいけるかどうかという問題なんです。こういう公開公報になった場合、どのように整理をするかという大きな心配点です。これについてはどうでしょうか。
  234. 荒玉義人

    荒玉政府委員 公開公報につきましては、公開分類の種目に従って整理していくという計画で進めております。
  235. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまお聞きしたことは、その分類づけのとおりに置かれているか、種目別に置かれているかどうかということの確認をもう一ぺんしているわけです。ぼくが見た範囲では、みなそれに苦労されて、別に置いていらっしゃるわけです。それは何をあらわすかといえば、結局分類表が現在でも不備である、ですからやむを得ずそれぞれ個人がとっておる応急対策じゃないかということなんです。だから、要するに本質的な解決を与えてないということです。そこへこれだけの公報がふえたときに、現在の応急対策でいいかということなんです。抜本的なそういう対策を立てずして、いまのままでいけるかということです。しかも一般利用者の立場から見ますと、よほどの人員と経費を注入しない限り、個人で再分類して整理をし直すということは不可能になるのじゃないかと思うのです。ですから、現在でも国民の立場を無視しておる。これが公開により一そうひどくなるのじゃないかと思うのです。この公開公報の発行によって公報数が飛躍的に増大するということが考えられるわけですが、先ほど申し上げましたように、担当審査官が従来のように別に整理するということは不可能になってくる。したがって、この実情に即した分類を正確にかつ詳細につけることがぜひとも要求されるのじゃないかと思うのです。これを、いま長官のおっしゃったような、そんな簡単なことでできるかどうかということです。もう一回お聞きします。
  236. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど申し上げましたように、われわれのいま持っておる能力を中心に、もちろん拡充はいたしてまいりたいわけですが、その場合には、漸進的な意味で、まず八千程度からスタートしていくということでとりあえず考えておるという考え方は、変わりございません。
  237. 近江巳記夫

    ○近江委員 たとえばこの昭和四十二年度の出願について、公告されるその約三分の一、これは仮定ですがやってみますと、出願件数を十九万とした場合、二万分の十九万です。それにかけることの三分の一、それからこの一出願平均一・七の分類が大体つけられておるのじゃないか。私もちょっと見学させてもらったときこういう答えがありました。そうすると、一・七かけますと約五・三件ということになる。そうしますと、上記出願をそのまま公開するとすれば、分類記入数を同一と仮定しても、八千分の十九万かける一・七で約四十件になるわけです。明治以来の特許実用出願公報数は約二百五十万、これは複合記入数も加えてということを聞いておりますが、そうしますと、一種目あたり分類される公報数は二万分の二百五十万、すなわち百二十五件です。そうすると、これが滞貨の未処理出願分は七十五万件、新法施行後一年六カ月以内に公開されることになるわけですが、これについての一種目あたりの公報数というものは、八千分の七十五万かける一・七、百五十九件となるわけです。そうしますと、これから一年六カ月以内に出る公開公報数だけについても、一課題について調査すべき公報数というものは、明治以来のものを入れても、すなわち百五十九対百二十五ですから、約一・三倍になるわけです。明治以来、特許制度始まって以来全部のもののまた一・三倍、こうなるわけです。しかも、この出願は増加の一途をたどっておるから、五年後、十年後は公開公報の数はばく大なものになるわけです。これで将来調査し切れるかという問題です。どうですか。この辺どうお考えになりますか。
  238. 荒玉義人

    荒玉政府委員 その面において従来と変わって複雑になることは、われわれ当然計画しておるわけでございます。そういったものの中には明らかに公知のものもあるわけでございます。そういった事項は逐次将来整理していく。これは一ぺんでございませんが、逐次整理していくということになって、おそらく関係のものは少なくなっていくということかと思います。  まあ分類は、先ほど言いましたように、繰り返すようで恐縮でございますが、二万そっくり最終種目までいくことが望ましいわけでございますが、いろいろ分類その他のやり方等の面から見て、とりあえず八千件くらいなら一応のサーチの便益に供せるということで、先ほど申しましたように、とりあえず発足させていただきたいという意味は、そういうことでございます。
  239. 近江巳記夫

    ○近江委員 審査官がこの審査のために情報検索、整備に要する時間というものはどのくらいかかるわけですか。どのように把握されておりますか。
  240. 荒玉義人

    荒玉政府委員 委員長、しばらく時間を……。
  241. 近江巳記夫

    ○近江委員 私がずっと視察をさせていただいていろいろ判断した結果、大体四〇%ぐらいじゃないかということを聞いておるのですが、間違いであれば訂正してください。そんなものですか。これはどうですか。
  242. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これは平均的な数字で見ますと、全時間のうちサーチする時間は大体四〇%ぐらいと見ています。
  243. 近江巳記夫

    ○近江委員 この特許白書にも載っておりましたが、これはアメリカにおける文献項目数の増加と審査官一人当たりの年間処理件数の低下との対応を示した表があるわけです。特許白書の第四-二図です。これを見ますと、要するに文献がどんどんふえてくれば、審査官の年間処理件数というものが非常に減ってきているわけです。たとえば昔は二百件ぐらいあったのか、現在ではもう七十ぐらいに落ちてきている。しかも文献もますます増大をしてくる。それと同じ線が引かれているわけです。そうしますと、これから公開公報されて、そういうようにどんどんふえてくる。それに対して情報検索と収集、そうした時間等を考えてみますと、四〇%もそれにかかる。そうしますと、あとは六割の時間しか使えないわけです。そうして考えていきますと、この基本時の文献数分の対象時の文献数、これをやりますと、先ほど私、計算して出しましたが、百二十五プラス百五十九を基本時の百二十五で割りますと一・五二倍です。ですから審査能率の低下というものは一・五二倍になってくるわけです。そうしますと、先ほどおっしゃったように審査が早くなってくるかどうかということなのです。それはもちろん、この審査請求というものはそこで歩どまりが減るのだ、このようにおっしゃっておりますが、決して審査請求は減りませんよ。その理由あとで申し上げますが、いま一たん審査段階に入ってきた場合を考えてみても、一・五二倍のそういう能率低下を来たすわけです。そういうことでいいかどうかということなのです。どうですか。
  244. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど少し資料の検索が四〇%と申し上げましたが、三〇%でございます。明細書の内容の理解が四〇%、資料の検索三〇%、それで大体公報増による負担増というものを一応われわれは計算いたしておるわけでございますが、大体平均しまして約三・七六%だけ審査官の負担増が入ってくる。公開公報は特に先後願の判断に使うわけでございますが、大体平均してそれくらいの処理のダウンがあるというふうに考えております。
  245. 近江巳記夫

    ○近江委員 三・七六%というような低い数字をどういうように出されたのか、ひとつその資料あとでください。科学的な根拠があれば私も納得します。私がいろいろ聞きながら出した数は、いま申し上げたように、審査能率の低下というものは一・五二倍という数字が出ているわけです。あまり大きな食い違いがあり過ぎるように思うのです。  それから次に、一種目当たりに包含される出願の数が大きいことのほかに、ばらつきが非常に大きいわけです。分類表というものは、本来同程度の数のものが一つの集団をなすように区分すべきじゃないかと思うのです。これはどういう対策を立てておられるかということなんです。たとえば四十二年度の出願を例にとりますと、一種目当たりの出願平均件数というものは九・五件になるはずであります。私もここに図を持っておりますが、白書にも出ておりますが、非常にばらつきが大きいわけです。たとえばゼロ件、これは四捨五入してやっておりますから、ゼロ件が七十四補助類、種目に直すと約六百種類ある反面、百件以上のものが四補助類ある。そういうばらつきによって、一種目当たりの公開公報は、平均値をはるかにこえて、年間数百件にのぼるものも出てくることが考えられるわけです。そういうばらつきがないように配慮しながら種目数を制限した、このようにおっしゃっておるようにも、前にちょっと聞いたことがあるのですが、このゼロ件のものもこのように多数残されておる。そういう一方、この巨大な出願量を収容し切れないでパンクした分類の展開は一体どうするかということです。このへんのばらつきについてはどのようにお考えになっておるわけですか。
  246. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いまそういった事態が起こりますのは、分類が適切でない一つの例だと思います。分類改正といいますのは、そういうものがないように、あるいは新しいものがあらわれますとどの分類にいくのかということを絶えず考えながらやっていくわけでございます。いまの場合は現行の分類が適切でない例で、逐次将来正しい分類にしていくという参考になる事実かと思います。
  247. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、この公開公報の分類というものはだれがつけるのですか。滞貨分と新法施行後の出願の両方についてお聞きしたいと思います。
  248. 荒玉義人

    荒玉政府委員 滞貨というのはちょっと適切でないのでございますが、未処理分につきましては、公開公報は大体担当審査官がつけるというたてまえにしています。それから新しい出願につきましては分類でつけていく。それで、現在の分類室の非常に経験の浅い諸君をベテランの諸君にかえる、あるいは将来増員をはかる、そういった人間の質的あるいは量的拡大によりまして、先ほどの七千八百種目につきまして公開分類を分類室でつけていきたい、こういう計画でございます。
  249. 近江巳記夫

    ○近江委員 私も、特許庁出願してからのそうした苦情なんかを、知っている方からもたくさん持ち込まれるわけですが、現状でも特許庁における出願処理の流れというものは非常に円滑でないように聞いておるのです。土曜日に見せてもらった範囲では、職場の皆さんも非常に真剣に取り組んでおられるわけですが、そういう出願処理の流れが円滑でないというのはもっと大きな原因があると思う。一生懸命皆さんも努力はされておるけれども、どうも流れが円滑でない。この公開公報の分類づけを担当審査官が行なうということになりますと、ますます実務手続は複雑になるのではないか。出願後一年六カ月で公開できなくなるのではないかという心配なんです。担当審査官が公開公報の分類づけをするのに要する時間はどのくらいかかるかということです。そして分類室でつける場合、出願課、それから分類室、それから公開準備、こうなっているわけです。担当審査官がつける場合には、出願課から分類室――私も見てきましたが、担当審査官がここで分類分けをして、そして分類室、それからまた担当審査官、公開準備。要するに、最初の担当審査官が正確な場合は公開準備、こうなるわけです。ところが、この問いろいろ聞きましたところ、現場の担当官が指定した場合でも間違い率は、ベテランの分類審査官が二〇%、調査官では五〇%間違っているというのです。こういう複雑な過程を経なければならない。しかも、そこに持ってきて今度は、四十一条の関係がありますが、補正書の提出はほとんど無制限に認められるようになるわけです。新法施行後の出願については出願後一年三カ月まで、滞貨分については、この規定がないので公開までたびたび補正書は提出されるわけです。ですから、補正書を最初出願に添付するための作業等は、書類の流れをますます複雑にしておるわけです。  それから従来、担当審査官は、明細書を詳細に読み、不明瞭な個所をただして、審査した後分類づけを行なうわけですが、従来はある程度そのように簡単にもいっておったのではないかと思いますが、この補正書の問題といい、その辺のことを考えていきますと、そこにたいへんな負担を要するのではないかと思うのです。滞貨分につきまして、現在一人当たり千件ということになっているわけです。また新法施行後の出願については、年間一人三百五十件程度処理する必要があるわけです。そうしますと、一件当たりどのくらいの時間で処理できるかということがまた問題になってくると思うのです。このように、こういうところに長時間を要するようなことになってきますと、全体としての審査の処理能力は大幅にダウンしてくるのではないかと思うのです。審査は促進できるとおっしゃいましたけれども、こういう一つ一つの要素を見ていきますと、大幅なダウンしか考えられないわけですよ。いま申し上げた点、どう思われますか。
  250. 荒玉義人

    荒玉政府委員 分類に関して申し上げますと、一応分類づけに要するダウンを計算しております。大体十八カ月で過去の係属分は公開作業に入るわけでございますが、審査官の手持ちのものにつきまして、計画的に毎月毎月、一カ月十八分の一ずつを分類をつけるという作業をしてまいるわけでございます。大体一カ月の所要時間は一日半で大体公開作業準備をやっていきたいという計画で目下考えております。
  251. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで次にお聞きしたいのですが、現状におけるそういう方の人数、併任者については、分類業務の実働時間等がわかっておればお聞きしたいと思うのです。また、公開公報に携わる者の構成員、その人数等はどういう計画をされておりますか。いろいろ考えておられると思うのですけれども、どうも現場を見てきた範囲からいきますと、ちょっと納得できない。
  252. 荒玉義人

    荒玉政府委員 現在の分類室の人員はまず二十七名。これは併任者で、本務をしながら分類の作業をやるわけです。大体本務の四分の一くらいの時間を分類指定にさいています。それから調査員が十六名ございます。それが現在の陣容でございます。  それから、やはりこういった仕事はベテランかどうかで非常に質が異なりますので、今後はベテランに時間的には半分この分類をやらせまして、二十七名を併任率五〇%でやっていく。あるいは調査員を現在の倍の三十名でやる。あるいは、現在は専任はございませんが、今度は専任の指定官を四名増強いたしまして、そういった量的――しかも大事なのは、先ほど言いました質的な素質の向上をはかってやらしたい、かように計画しております。
  253. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、分類づけの正解率というものは約七〇%ということを聞いておるわけですが、そうしますと、担当審査官によって分類づけが行なわれるのでなければ、いまのところ、八千種目についての分類づけを行なっても、この正確度は七〇%以下という非常にたよりない結果しか期待できないわけです。正確度についてどういう対策をお立てになっておるのですか。
  254. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御指摘の現在ミスがある理由は、私三つぐらいあるかと思います。一つは、先ほど言いましたように、経験の浅い者を中心として考えているというのが第一点。第二点は、現在の分類といいますのは、担当審査官を指定するということが主でございます。外に対しましては、最終決定に際して審査官がきめていくわけですから、したがって気が楽な面がございます。要するに担当審査官をきめていく。それからもう一つは、分類といいますのは、基本的にはある技術につきまして、つまり商品的な面を重く見るか、機能的な面を重く見るかということで分類の指定のしかたが全然違ってくるわけです。そうしますと、商品的な面にウエートを置くか、機能的な面に置くか、どっちか一つにきめなければいかぬわけです。そうしますと、そこでボーダーラインにつきましてはミスの発生原因があるというのが一つございます。今度の場合ですと、先ほど言いましたベテランを使うというのが現行法と違うところでございます。と同時に、対外的な一つ影響力を持っていく。第三には、その場合には、主分類と副分類と二つつけていくという形でございますので、ボーダーラインをどちらへ分類づけするかという難点は解消していくということになりますと、現在の状態とは変わって、ミスの少ないことになる予定でございます。
  255. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、分類を一個記入する場合よりも、二個、三個と記入した場合のほうが、どれか当たるわけですから確率が高くなることはわかるわけです。しかしこれも、ある程度の個数以上になれば頭打ちになるということも考えられるわけです。ところで、この分類がある程度改善されるというのは私わかりますが、これは分類の漏れ率の問題であって、正確度ではないと思うのです。この正確度については、いま申し上げたように、数を撃てばどれか当たる、こういう対策では、本来分類されるべきでない個所にまで分類されることが多くなってくる。この情報処理の見地から、百発百中、そうした正確度ということが要求されるのではないかと思うのです。その点、この正確度ということは、あなたがいまおっしゃった答弁からも、解決される答弁じゃないと思うのです。違いますか。
  256. 荒玉義人

    荒玉政府委員 第三点で申し上げたのは、あるいは本来分類が機能分類と商品分類はクロスして分類したほうがよかった――あるいは分類上の問題かと思います。したがいまして、へたな鉄砲数撃ちゃ当たるというのではなくて、本来ならば、商品的な面と機能的な面をあわせて分類すればいまの問題は解決する。ただ現在は、無理やりにどっちか一つにしろ、こうなっていますので、ミスが発生する原因になっておる、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  257. 近江巳記夫

    ○近江委員 この公開公報は、権利情報源としてのそういう価値もいわれておるわけですが、今回の改正法で補正的範囲は前回と違ってくるわけです。そうしますと、このクレームシフトというものが大幅に許されているので、公開後もこのクレームは大きく動くわけです。そうした場合、このクレームシフト対策としてどういうものを準備されているかということです。これについてどうですか。
  258. 荒玉義人

    荒玉政府委員 とりあえずは、現在のクレーム中心で主分類、副分類をつけまして、そうして分類指定の場合には、もちろん詳細なる説明のほうも参酌するわけです。そうして詳細なる説明で将来重要技術だと思われる場合には、参考といたしましてもう一つ分類を起こしていくという措置を考えて御疑問のような点をカバーしてまいりたい、かように思っています。
  259. 近江巳記夫

    ○近江委員 従来、公告公報には一出願当たり何個ぐらいの副分類、それから文献分類をつけていたか、それをまず一点お聞きしたいと思うのです。それから公開公報について何個ぐらい予想されておりますか。  基本的なことをずっとお聞きしておきますが、それからさらに、公開公報の分類は七千八百、約八千種類といわれたわけですが、この技術文献についても、同じように八千種類ぐらいまでつけるかどうかということです。この三点についてお聞きします。
  260. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大体、現在でございますと、一・七、それからプラスアルファが若干ございます。大体丁七。それから新しいですと大体二・〇ぐらいで、現在の公告公報、出願公告の分類よりはやや多い分類になるかと予定しています。
  261. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうことからいきますと、これはもう重複してサーチする必要が出てくるわけです。こういう分類ということについて私が見た現状点、そういうところからいろいろ御質問しておるわけでありますが、この一つの分野をとっても、今度の新法になればいかに多くの問題がそこに含まれておるかということは、この一事でもはっきりわかるわけですよ。ですから、こういう一つの分類という分野を見てもこういう状態でありますし、各委員からもいろいろな問題が出されてきております。大臣も六時に出られるそうでありますので、大臣に――あとはまた質問続行しますが、こういう分類の一つの問題を取り上げても、こういう大きな問題があるわけです。それでもこの法案は、先ほど長官がおっしゃった、おもだったメリットとして二点あげられたわけですが、そういうあげられたそのメリットのほうが大きい、こういうような問題はあくまでも小さな問題である、このようにお考えであるかどうか、大臣にお聞きしたいと思うのです。
  262. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 要するに、八十万に近い滞貨をかかえ込んでおって、それがほっておけばますますふえる趨勢にあるわけでございます。しかも、それらのいわゆる滞貨は、蔵にしまい込まれております限りは、出願者、それがいわゆる発明者、中小企業でありましょうとも、その人たちにとって財産的な価値にはなり得ませんし、また世の中で利用したいと思う人たちにとっても利用されない。いわば非常に貴重な財産である可能性のあるものを死蔵をしておるという形になるわけでございますから、それは私は特許法の趣旨に沿わないと思うのでございます。いろいろな増員あるいは機械化による方法等で能率をあげましても、とうていいまの情勢では事態が好転するとは思われない。そこで抜本的な策を――抜本的というほどではないかもしれませんけれども、制度の変更を考えたわけでございます。そういたしますと、ともかくこの蔵にあるものを一ぺん世の中に出さなければ、これは生きないということでございますから、何か一時的な処置を考えなければいけない。そのためには、特許庁に働く人たち、ことに審査官諸君等にはやはり特段の御苦労をおかけすることになると思いますし、また、八十万近いものを一年半たちますと世の中に出すということは、いっときは非常にいろいろむずかしい問題が起こる。それは私は、十分の配慮をいたしましても、経過的な問題としてある程度はやむを得ないと考えなければならないと思います。十分な配慮はいたすつもりでございますが、しかしそれをおそれておりますと、この蔵の中のいわば死蔵されておる財産というものは、ますます年とともに増大することが不可避でございますから、いつかは決心をしなければならない問題であったろう、こう私は考えておるわけでございます。
  263. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣、このPCTの問題は何回も出てきておりますが、いよいよこの五月にPCT条約に署名ということで、マスコミでも取り上げられておるわけです。そうしますと、このPCTが数年後に実際に発足するという段階になりますと、これは当然それに伴う改正もしなければならぬわけです。そうした場合、この制度改正に伴う大混乱がやっと落ちついたというとたんに、またしなければならぬ。ですから、大臣長官も、何とかしてこの滞貨の解消を促進しなければならぬというそのお気持ちはよくわかりますし、われわれも同じなんです。どうすればいいか。そこでやられることはわかるのですが、そうしたときに、ここ数年後にPCTの加入問題を控えておって、しかもこの五月には条約署名というところまでいくわけです。したがって、その辺の混乱を二度も繰り返すという点から考えたときに、いまここで行政として充実できるところを充実して、そしてこのPCT加入に向かっていろいろなあらゆる抜本的なそういう対策を織り込んで、そのときに大改正をやってもらいたい、こういう意見が、私どもいろいろな人に会って聞きますと非常に強いわけです。そういう考えに対してどうでしょうか。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 世の中に反対の意見を持っておられる方が相当おられるということは、私も知っておるわけでございます。しかし、そういう御意見を聞いてみますと、結局どうすればいいのですかということに対しては、それは審査官をうんとふやしたらいいのだというお答えになるわけでございます。しかし現実の問題として、毎年――これは審査官ばかりじゃありませんが、特許庁で百人近い定員をふやしているということは、これはいまわが国の政府として無常なことでございます。それだけのことをやりましてもなお事態は悪くなっていく。ただ抽象的に人をふやせばいいではないかとおっしゃっても、それはそう簡単なことではございません。ですから、私どもはそれを最大限にやりながら、何か方法を変えなければならぬではないかというふうに思うに至ったわけで、実際無限に有能な審査官がふやせるのでしたら、あるいはそれが最善であるかもしれぬ。そういうことが現実の問題としてできないのでございますから、制度のほうを一部改めるということを考えたわけでございます。国際協力条約を今年にでも署名しようかということは、おそらくそのとおりでありますけれども、これが現実に国内法の整備を待って批准をされて発効するというのは、先ほども特許庁長官が申し上げましたように、数年あとであろうと思われます。その数年あとの間にこの滞貨というものがどうなるのか、われわれはこれをほうっておいていいのかというのが、実は私どもの持っております問題意識でございます。
  265. 近江巳記夫

    ○近江委員 その辺のところが、われわれもたとえば分類の問題一点をついて申し上げたわけですが、それだけでもあれだけの混乱が予想されるわけです。そういう点で、この制度改正というものは普通の行政とは――この特許に関しては、私ども調査すればするほどやはり複雑なことになっておりますし、その辺の混乱というものを非常におそれるわけです。したがって、必ずしも、この制度が行なわれたからそれでこの滞貨の解消が促進できるということは、私どもちょっと考えられないわけです。それは見解の相違とおっしゃるかもしれませんが、その辺の心配があります。しかも先ほど申し上げたように、個人発明家や中小企業にとっては、まさに盗用そのままに野放しのような状態である。しかもその権利の補償を請求したところで、裁判で五年、十年引っかけられて、結局はあとはもうロイアルティー程度で終わってしまう。技術立国として立たなければならぬわが国が、そういう下の発明意欲をそこなわれるということは非常に心配なんです。しかも、政府は常に、特に通産大臣はおっしゃっておられますが、自主技術の開発をやっていかなければならぬ。ところが模倣するような感じになって、肝心のそういう基礎技術といいますか、それが最近、中央研究所等の投資を見ても若干下がりぎみになっているわけです。周辺技術の開発ということに非常に日本が走っておって、さらにそれに拍車をかけないか、こういうふうな心配もあるわけです。あるいは、たとえばドイツなどであれば特許裁判所等もありますし、紛争事件が起きても解決はしますけれども、わが国はそういうものもない。私も前に一つのメーターのことで本委員会で出したことがあるのですが、そういう紛争事件だって、裁判官自体もやはりそういう技術のことをあまり御存じない。結局、補助員のような人からいろいろな技術的なことを聞いて裁判をやっている。憲法で特別裁判所ができない、そう言うかもしれませんが、そういうようなことも、今後の紛争が起きたときに一体どうするか、真剣に考えなければならない問題なんです。膨大なそういう公開公報、そうした情報一体どうさばいていくか。そういう点を考えましても、もうこれだけの混乱が予想される。当然PCTのこともかかえておる。こうなってきますと、もう一回ここで大臣に、また長官に、もういよいよこの法案の審議に入っておるわけですが、私は再考をうながしたいと思うのです。
  266. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 なおそれに関連いたしまして、こういうことも考えてみておるのでございます。これはあるいは必ずしも御同意いただけないかもしれませんけれども、今度の改正に反対されるいわゆる町の発明家の中には、きわめてすぐれた方もありましようし、それから、ときとして多少マニアとでも申すような方もあると思うのでございます。その後者に属する人たちは、何か自分が出願しているものがもうたいへんなものである、そこで、これが公開されて盗用されれば自分の財産的なロスは非常なものであるというふうに、自然考えなさるであろうと思います。無理もないことです。実際は、審査までいきましたらあるいは拒絶されるものであっても、いわば釣りそこなった魚は大きいというような印象を持たれることは、私は無理もないと思います。そういう方でそういう危惧を抱いておる方も相当あるのじゃないかと思います。他方前者でございますが、ほんとうに価値のある発明であったといたしますと、おっしゃるように盗用の危険があるかもしれません。それに対して補償を請求するという権利の行使について、確かに時期的に若干の危惧を抱かれるのは無理もないと思います。その場合には、紛争が起これば審査は優先いたしますけれども、しかし考えてみますと、ほんとうに価値のあるものでありましたら、利用者が一年や二年でもってこれを捨てるということはなかなか考えにくい。ことに大企業といわれますが、もし大企業がその価値を認めてこれを実施しようとするのであれば、これはもういわゆる登録されましたら、ただでやっておればインジャンクションが働くわけでありますから、一年、二年のことを考えるわけにいかないので、先々やるとするならば、やっぱりこれは正規の交渉を発明者とやらなければいけないというふうに、当然考えるでございましょう。そういう事態と、五年なり六年なりお蔵に置いておかれる事態と、どっちがいいのかということを考えますと、これはやっぱり議論の分かれるところじゃないか。私どもが提案申し上げている理由一つはそんなところにございます。
  267. 近江巳記夫

    ○近江委員 早期公開制度の功罪とか審査請求制度、これ一つ一つに入っていきますと、いま申し上げたように、これは分類一つで、しかも、はしょってでもやはりあのくらい問題点がいろいろ出てくるわけです。確かにこの辺のところは、あくまで意見が平行線をたどっていくわけでありますが、われわれとしては、いろいろな角度から見まして、てんびんにかけた場合、そういったデメリットといいますか、そういう問題のほうが非常に重過ぎる、こういうことで、この辺のところはさらに慎重に考えなければいけないのではないか、こういう考えでおるわけでございます。  大臣、六時でございますからけっこうでございます。あと長官に若干伺います。  公開公報閲覧所の問題であります。いろいろ図書館とかそういうところで出してきておりますが、この制度改正に伴い、もしも大量の公開公報が発行された場合、各地方における閲覧所のそういう受け入れ態勢というものはどのようになるわけですか。
  268. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれといたしましては、やはり各地方の施設で、将来、業務といいますか、要するにスペースを拡充でき、受け入れられるかどうかということをいろいろ照会いたしました。そうして、大体受け入れ態勢が可能だという各それぞれの地区の希望を中心に閲覧させていきたい、そういうふうな計画でございます。大体北海道地区ではこれは要らない。仙台も大体要らない。東京では大体特許庁を中心にやります。名古屋、大阪、四国あるいは福岡等々、そういったところの希望がございますので、それに合わせて配付計画を考えております。
  269. 近江巳記夫

    ○近江委員 この問題、データを持っておりますが、地方閲覧所のあれを見ますと、いまでも、発行順にただ公報をとじてある、何の分類もしていない、そんなところがほとんどですよ。こういう点においても何ら受け入れ態勢がないわけです。ですから、今度こういうような制度をやった場合、いまでもこんな不備なところに膨大な公開公報が流れ込んでいったら、一体どうなるか。たいへんな地域格差というものがこれでまた一そう拡大すると思うのです。これはどうしますか。
  270. 荒玉義人

    荒玉政府委員 国の金で施設を補助していますのは、現在大阪の閲覧所はそういったことをしていますが、現在のところ、大体地方の自主性といいますか、スペースあるいは必要な人員、これは大体地方が計画を立てて、そしてぜひくれというところを中心に閲覧させておるわけでございます。したがいまして、あくまでそういう地方の希望を主にしておりますので、今度の公開公報の際、国の金でするということをやったらどうかという問題も起こるかと思いますが、こういったものは、閲覧すると同時にやはりいろいろな照会に応じてサービスしてやってくれという、そういうものがむしろ地方の自主性でやったほうが活発になるという面もございます。そういった意味で、繰り返すようでございますが、地方を主体に、希望のあり能力のあるというところに、われわれはすべて閲覧をさせていきたい。正確に言いますと、全国で照会いたしまして、現在は百十六カ所ございますが、一応いま名のりを上げておりますのが五十六カ所、約半分近くは全産業部門について要る。それからそのうちの一部分だけだというところが七カ所。したがって、大体従来の施設の半分が希望をしておる、能力、施設があるというふうに考えてございます。
  271. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうようなばらつきがある。非常に不公平であるということです。  それから大阪の場合ですが、現在大阪の特許室が近畿富山会館に移ったと、このように聞いておるのですが、現在坪数が百五十坪と聞いておるのです。ところが現在借りているのは四十坪でしょう。そうしますと、この百五十坪とのマイナスになる百十坪はだれがこれを維持しているのですか。どうなっておりますか。
  272. 荒玉義人

    荒玉政府委員 従来われわれ四十二坪を国の金で借りております。全体百五十坪で、その差は発明協会自身がいろいろ事業をするために借りたスペースでございます。
  273. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは、発明協会が事業をするという名目になっておるかもしれませんけれども、これはあくまで制度改正を見込んで借りておるということは、もうだれの目から見ても明らかなんです。しかし、そうおっしゃるのですから、これはそうとして受け取りますが、もしもそうでないとすれば、これは会計法違反になるわけです。だけど、そのように正式答弁されたわけですから、一応それでこの件については終わりますけれども、要するに、こうした各地に備えておるそういうような文献資料等についても、非常にまだまだ体制が整っておらない。要するに、どの面を見ても基礎が何にもできないところへビルを建てよう。そのビルが実際に建つかどうかということです。くずれるのはきまっておるわけです。ですから私は、このPCT加入のその時期を踏んまえてあらゆる基礎条件というものをつくりつつ、そしてPCT加入のときに大改正すればいいじゃないかという、一つ一つのこういう数点の事例をあげて申し上げておるわけです。きょうはお約束の時間も来ましたので、一応これで終わっておきたいと思いますが、あと大臣も途中で帰られましたので一応保留しまして、また今度時間があれば数点質問したいと思います。  では、これで終わりたいと思います。
  274. 八田貞義

    八田委員長 次回は、明二十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時十三分散会