○石川委員 どうもいまの回答では答弁にならないと思うのですけれ
ども、いまのようなスピードでやっていきますと、何十時間かかっても終わりそうもないから先に急ぎます。回答をもとにしてさらにまた
質問をしたいと思いますが、きょうはどんどん前に進むことに重点を置きたいと思うのです。
ドイツとオランダは、御承知のように早期公開になったわけです。ドイツなどでは、早期公開することについて非常に物議をかもしたといいますか、国内で反響、反発というものがあったわけですね。その内容を見ますと、いろいろいわれているのですけれ
ども、一々申し上げる時間の余裕もございませんが、この工業所有権審議会というものについて私は多少の
意見があるのです。これは大体発明とか発見をするような人がほとんど入ってないのです。これを処理する特許庁側と民間の企業側だけが答申をしておるというところに、非常に問題があったのではないかと思うのです。また、こういうふうな案をつくる場合に、ドイツにおいても非常に問題になりましたのは、特許法についての実地経験から、立法を行なうに際して
審判官と審査官がその計画に参加することが必要である、そういう立法に際しては必ずこういう者の
意見をいれろということがいわれているわけです。これは当然だと思う。したがって、そういう者の
意見をくまないで、この工業所有権審議会、しかも発明家は全然入っていないという形の審議会で出た答申をもとにして、
審判官、審査官というものの参加を求めないままでこのような答申をしたというところに、非常に大きな問題があるのではないかと私は
考えないわけにはまいりません。
そこで、ドイツにおいてもいろいろ問題があったわけでありますが、オランダも早期公開をやりましたけれ
ども御承知のように、IIBという機関、そこで事前に審査をしてから、それが特許庁のほうへ正式に出願するというような事前審査の機関があるわけですが、
日本にはそういうものが全然ない。ドイツなんかは全国で十ヵ所の特許権の裁判所があって、そこでてきぱきと処理をしていくというような機能がある。そういうふうな前提条件が、
基礎条件が全然整わないままで、オランダ、ドイツと同じような早期公開をやるということについては、たいへん私は問題が多いんではないか。うまくいくだろうか。率直にいって、こういうふうな滞貨を何とか処理しなければならぬという気持ちは、あなたと私
どもも同じだと思うのです。だから、こういうふうな前提条件を抜きにして、いきなりぱっと早期公開するということについての混乱というものを、むしろ私は、現在の
日本の状態ではおそれないわけにはまいらぬわけであります。
そこで、アメリカでは、早期公開というものが出まして、これが
反対にあって流産をしたわけであります。その後、この流産をしたままで非常な滞貨――アメリカの特許件数を見ますと、二十数万件滞貨をしたというのですが、これは、
日本と
向こうとのやり方が多項制という
関係で違いますから、
日本のものに直しますと、大体八十万件近くあったと思うのですよ。それが最近では、審査期間二年以下というふうな状態にまで戻っているわけです。しかし、これは早期公開をやっているんではないのですよ。早期公開をやらないで戻っているわけですね。どういうふうにやったかということについては、われわれはしろうとでありましてよくわからないのでありますので、一体、アメリカでは、どうしてそういうふうな状態にまで、早期公開とか審査請求
制度という方法をとらないで、理想的な状態にまで立ち直ることができたかということについての資料といいますか、それをひとつ提出を願いたいと思います。これは大いに私は参考にすべきものではないか、こう
考えないわけにはまいりません。
それは
行政努力でいっているわけであります。
日本のように非常に大ざっぱな――大ざっぱなといいますか、強引なやり方でやっているのではなくて、
行政能力を増し、処理能力を三三%増しておるというようなことがいわれておるわけでありまして、それは、先ほど申し上げましたようなオランダあるいはドイツと同じように、
日本においても、なくなられた清瀬一郎さんなんかの
意見がありまして、その特許審査の内容は、先行技術を
調査をする、そうしてその
調査に基づいて特許性の判断、これを鑑定の名目でもって弁理士に事前にやらせる。これは事前
調査の機関ですね。事前にやって、それをもとにして、七〇%から八〇%までの出願は弁理士がやっておりますから、そこで作業をして事前に振り落としていく。大体出願は、添付資料があるにかかわらず、特許性がある、こういうふうなことを弁理士がつけて特許庁に出せば、それはそのまま特許として認められる、こういうようなやり方をやっておるわけであります。
日本の場合、端的に結論を申し上げますと、私は、処理ができなくなって無審査になると思っている。このやり方は無審査です。無審査ではあまりにも芸がなさ過ぎる。特許
行政としては最低でありますから。無審査の状態にならないようにするためには、やはり事前のこういうような条件というものを整えなければ、私は、このような早期公開というものは非常な危険性があるし、混乱が出てくると思わざるを得ないわけです。先行技術の
調査というものは、新規性
調査機関というものを利用させるとか、こういうふうな前提条件をぜひ整えるということのほうが、早期公開に踏み切るよりは先決条件ではなかろうか、こう私は
考えておるわけであります。
そこで、また別に
一つ問題があるわけでありますが、早期公開になりますと、前にも言われておりますように、先願が後願を盗用するという問題がございます。特に後願のほうは、特許の範囲にないノーハウというものが必ずついておるわけです。ノーハウというものは特許の範囲に入っておりません、これは企業機密でありますから。特許というものには出さないという形のノーハウというふうなものも先願者が盗み取る、盗用するということになる危険性がきわめて大きいんではないかと思っております。
そこで申し上げたいんでありますが、これは、元
特許庁長官ですね。久保敬二郎さんという方が、どういうことを工業所有権審議会で言っているかというと、いまさら私が申し上げるまでもないと思うのでありますが、これは公聴会においても、町の発明家その他の人々からたいへん悲痛な叫びとしてあげられたものと同じことであります。それはどういうことかというと、この強制公開は、出願人が特許庁の窓口で追いはぎにあって、その追いはぎが出願人の明細書を町の中でばらまいてしまうようなものである、いわゆるどろぼう市場だということを言っておるわけです。こういうふうに後願者の権利というものを先願者が盗み取りをするというようなことが出てくるわけでありますが、その危険はないと御判断されますか。