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1970-04-24 第63回国会 衆議院 商工委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十四日(金曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 橋口  隆君 理事 前田 正男君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 塚本 三郎君       石井  一君    稲村 利幸君       宇野 宗佑君    小川 平二君       大久保武雄君    海部 俊樹君       北澤 直吉君    小峯 柳多君       左藤  恵君    進藤 一馬君       藤尾 正行君    増岡 博之君       石川 次夫君    岡田 利春君       中井徳次郎君    中谷 鉄也君       横山 利秋君    近江巳記夫君       多田 時子君    松尾 信人君       川端 文夫君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         特許庁長官   荒玉 義人君  委員外出席者         通商産業省重工         業局次長    山形 栄治君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ――――――――――――― 四月二十四日  国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第七三号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  八五号)  鉱工業に関する件  通商に関する件      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  通商に関する件及び鉱工業に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 中国へ行って四十五日間交渉してこられました自由民主党古井代議士、また同行、別の角度で話し合いをしてこられた松村、藤山両氏が帰られまして、その覚書貿易及び共同コミュニケに対しまして、政府態度が非常に強硬なようでありますが、この際、この基礎となります覚書貿易日中貿易の問題について、その所管大臣であります通産大臣所見を伺いたいのであります。  まず第一に伺いますのは、覚書貿易というものを、通産大臣としては支持し、了承し、援助をなさるおつもりであるかどうか、伺います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 積極的に対処すべきものと考えております。
  5. 横山利秋

    横山委員 今回のコミュニケによって生じております論争は、総理がきのう内閣委員会で言いましたように、内政干渉であるというきわめて強硬な態度一つであります。もしそういう態度を持続する限りにおいては、この密接不可分となっております覚書貿易もいやだと否定する立場になりかねない。こちらは自分都合のいいことだけとって、都合の悪いことは、あんなものはけしからぬという態度は、許されないと私は思うのであります。二者択一でありますから、この覚書貿易を支持していく限りにおいては、総理の言うようなあのような強硬態度は、その密接不可分の問題の根本をこわすものだ、こういうふうに私は考えるのでありますが、どうお考えでありますか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 貿易は、申し上げるまでもなく、双方の合意による双方交通のものでございますから、私どもは、何も中共に頼んで貿易をしてもらっているとは思っておりません。両方利益が合致するがゆえに貿易ができておるのだ、こう考えております。
  7. 横山利秋

    横山委員 両方利益が合致するのであるけれども、約七千万ドルにのぼる覚書貿易及びその基礎になっておりますこの七億ドルになんなんとする友好貿易、それは共同コミュニケの上に乗っておる、こういうふうに私どもは理解する。いい悪いはともかくとして、共同コミュニケがその基盤になっておると思うのであります。その共同コミュニケについて、日本側主張主張としてあるであろう。けれども外務大臣ことばによれば、売りことばに買いことばのように、けしからぬと言うておこるだけで一体話が済むのかどうか。いささかこれは、この貿易を伸ばそうとするのであれば、いかがなものかと私は思うのであります。あなたが総理大臣悪口をいまここで言えと言っているのではありません。しかし、貿易を伸長させるという意味においては、通産大臣としては、しからばこの共同コミュニケについてどうお考えでございますか。覚書貿易と関連する共同コミュニケについてはどうお考えでございますか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 共同コミュニケにつきましての政府統一見解は、今週火曜日に内閣官房長官がすでに発表されたところに尽きておりますが、私自身どう考えておるかというお尋ねでございます。  私は、あれを読みまして、非常に思想が硬直をしているというふうに感じました。同じ同文同種といいましても、ことば意味は、字は同じでもいろいろ両国で違うのでございましょうが、われわれのやまとことば表現をいたしましたら、あんな硬直したことは別に言わなくても済んだであろう、そういう感想を持っております。
  9. 横山利秋

    横山委員 そういう硬直したことばを言わなくてもいいであろうと思われるならば、またこちらも、硬直した言い方をしなくてもいいであろうと思われるのですが、そうは思いませんか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、やまとことば表現をいたしましたら、外務大臣の言われますように、われわれはわれわれのことばで対応したらいいのではないかというふうに思います。
  11. 横山利秋

    横山委員 間接的に、総理が言わずもがなのことを言うたというように表現していらっしゃるように思うのでありますが、ひとつ通産大臣としてあなたにお伺いしておきたいのは、いまは覚書貿易である、しかしこれは一年限りである、来年一体どうなるかわからない、総理のこのような考え方が続く限りにおいては、来年は覚書貿易がなくなるかもしれない。まさか中国側としては、総理がああ言ったから覚書貿易はもういやだといま急に言うとは思わないのですけれども、たいへん腹を立てていることは言うまでもないと思うのであります。  そうであるとするならば、基本的に日中貿易という立場においてあなたにお伺いしたいと思うのでありますが、日中貿易を今後ともあらゆる努力をして拡大をするという点について、御異存はございませんか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あれだけ激しいコミュニケを出しながら、しかし貿易協定そのものはまとまってきたということに、私としては関心を持っておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、あのような激しいことばにもかかわらず、この貿易をつないでおくことに、先方としても国家的な利益を感じておるのであろう、私はそう考えますので、将来においても同じような形で貿易が続いていくことを私としては希望いたしますし、また、そう希望する理由もあるというふうに考えます。
  13. 横山利秋

    横山委員 貿易をする上においては、向こう利益があるがこちらも利益があると先ほどおっしゃいました。こちらも利益がある。その双方利益をより拡大をいたしますためには、一つの基本的なものの考え方がなくてはなりません。それは、一番ネックになりますのが台湾問題であると向こうも言っている。古井さんやみんな帰ってきた人もそう言っている。台湾問題とは何か。要するにそれは、中国一つであるという考えを持つか持たないかということであります。  この点について総理は、基本的には一つ中国である、だから根本的には、この中国を選ぶかあるいは台湾を選ぶかということに直面するであろう、一九七〇年代にその大きな転換があるかもしれぬ、しかし当面すぐとは思わないという意味のことを言っていました。この点について、通産大臣も同意見でございますか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題につきましては、中国大陸台湾との間で、両者の間で解決をしなければならない問題でございますから、私どもが、その時期が早いであろうとかおそいであろうとかいうことを推測をいたしましても、あまり意味がないのではないだろうか。七〇年代と申せば、相当いろいろな変化の多い十年と考えますから、この十年間に解決がないであろうと、別に推測する理由も私はないと思います。
  15. 横山利秋

    横山委員 そうはまいりません。放置するのは許されない。われわれは全然他人ではないからであります。何となれば、国連代表権の問題がある。いまの日本政府佐藤内閣は、台湾政府国連における代表権であり、その提案国になっておるわけであります。ですから、自分が何もしないで手をこまねいて、相手が一緒になればそれでけっこうだと言うておるわけにはいかぬのです。自分一つの手で片一方しか握っていないのでありますから、したがって、この片一方だけ握っている手を、自分で手をはずすかどうかということは、日本に迫られておる常に毎年ある問題なのであります。  同時に、ココムの規制を日本がいつまでたっても守っておる。ほかの国は守っていないのに、日本だけがいつまでも守っておるというのも、また決して手ぶらではありません。それも手を携えておるわけであります。吉田書簡の問題がそうではありませんか。輸銀中国貿易に使用させないという問題もまたそうではありませんか。中国産の食肉を買わないと言っているのもそうではありませんか。決してあなたの言うように、中国台湾だけの問題でおれたちが知らぬことだというのでなくして、あなた方自身が、通産大臣としても、片一方に手を差し伸べておるだけで、その手を自分ではずそうとしないところに、日本政府の独自の問題があるわけであります。  したがって、私どもが、いまこの覚書貿易及び日中貿易を伸展しようとするならば、一つ一つその手を少しずつはずすということが喫緊の問題ではないか。私は、外務大臣きょう御都合が悪いそうでありますが、外務大臣に問題を提起するよりも、むしろこの際、先般も申し上げたように、通産大臣がこの貿易を伸長する立場において、閣議の中でも一歩ずつ前へ出るべき時期ではないか、こう言っておるわけであります。覚書貿易だけはとりましょう、コミュニケ反対です、そういうかってないい理屈だけでは通らないのではないか、そう思いますが、通産大臣いかがですか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる国連における重要事項指定方式につきましては、私自身のこれについての考えはございますけれども、これは総理大臣あるいは外務大臣から、国の外交方針として申し上げるべきことでございますから、私の意見を申し上げることは御遠慮いたします。  ただ一つ、もう少し問題の先を考えますと、中共の場合には、かりに代表権を与えられても、現在のような国連の姿であれば、中共国連に加盟する意思がないということを言っておるようでございますので、これも私は、実は言わずもがなのことではないかと思っておりますが、そのような事実がありますことは、申し上げておかなければならないと思います。  吉田書簡食肉問題等につきましては、何度かお答え申し上げておりますけれども食肉問題というのは、現実にどうもやはり口蹄疫家畜衛生の問題についてのわれわれの疑問が解けない。実は私も、政府におりましたときに数年間この問題にかかわり合いましたが、どうも真相が、やはり口蹄疫についての疑問が解けないということらしく思われます。政治の問題ではないように考えております。  ココムにつきましては、これは私ども、こういうものは時の変化とともに緩和し、あるいはいずれの日にか解消させていきたいと考えておりますが、ただいま私どもココムで大いに議論をしておりますことは、一部の国の中には、ソ連・東欧圏中共北鮮とを分けよう、後者をきつく差別待遇しようという考えがございまして、これには終始私ども反対をしてきております。横山議員のお立場からいえば、なお微温的であるという御批判はございましょうけれども、私どもは、少なくとも中共を他の共産国とさらに一段きびしく差別待遇するということには、反対立場を今日までとってまいっておりまして、しかるがゆえに、この差別はココム内部実現をしていない、関係国の中で実現をしていないというのが実情でございます。
  17. 横山利秋

    横山委員 もう一つ、あなたには答えにくい問題ではありましょうけれども閣僚の一人としてお伺いをしておきたいと思います。  それは、コミュニケの意義をどう考えるかについての各方面解釈、あるいは行ってこられた人たち解釈最低線でまとめますと、要するに、いまの佐藤内閣ではだめだという考え方一つあるようであります。それから第二番目には、佐藤内閣の言っておるように、あれは誤解だ、軍国主義化誤解だ、誤解を解くことが必要だと言っておるけれども、そんな小手先のことでは結局は本質を理解していないという判断が二つであります。この意味からいいましても、なかなか困難なことではあろうと思う。  しかしながら、第一番目の問題は、これは大きな政局の問題でありますから、どういうように閣僚の一人として御判断なさるか、お伺いしたいのでありますが、第二番目の問題は、そんな誤解を解くということよりも、具体的に行動であらわす必要があるのではないか。あなたがいまココムやあるいは中国産の食肉に言及されました。輸銀については何も言及されないようでありますが、そういう問題で一つ一つ貿易拡大を望むという行動をもって、通産大臣としては行動をすべきではないか、こういうように思いますが、この二点について御感想を伺いたいのであります。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中共貿易量拡大したいということは、私どもがかねて願っておるところでございます。同時に、自分の国の総理大臣は民主的な手続によって選ぶという制度は、私どもが最も大切な制度考えておるところでございます。両者が二者選択になったといたしましたら、私は、遠慮なく後者を大事だと考え選択をいたします。ちょうどこのことは、中国の先哲が、「熊掌もわが欲するところなり。義もまたわが欲するところなり。」熊掌と義といずれをとるかといったときに、自分は義をとると言ったことと同じだと私は思います。
  19. 横山利秋

    横山委員 この問題の最後の質問でありますが、この問題について、与党内においてはたいへん波乱があるようであります。政府のほうは、政府官房長官談話佐藤総理の発言とは、だいぶニュアンスが異なるようであります。この覚書貿易を最初あなたが支持し、それを善意をもって推進をするという立場が開口一番おっしゃったことでありますが、この問題について、自由民主党内部でいわゆるタカ派が、これはけしからぬというて党議をきめて突き上げたり、あるいはまた佐藤総理の言うような軍国主義化誤解である、内政干渉であるというような立場が、政府部内なり与党を支配するということになりますと、覚書貿易の前途、これからまた個別契約しなければなりませんが、その方面にたいへん悪い影響をもたらすのではないか、私はこういうように感じますが、現実具体的な問題として、今後のあり方についてどうお考えでございますか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自民党内にもいろいろな意見がございます。そして、それはまた、その意見をある程度は自由に申すことが、先方に対するわれわれ日本国民考え方を反響として示す意味でも、私は無意味ではないと思っております。  これと貿易との関係でございますが、冒頭に申し上げましたように、あれほど十分人悪口を言ってくれましたら、もうおまえとは取引しないというお話かと思ったら、案外そうでもございませんようでありますので、その点は、やはり先さまにもいろいろこまかい国益というようなものがおありになるのだろう、そのことは今後も続くのではないだろうかと私は思っております。
  21. 横山利秋

    横山委員 この機会に、先般来非常に社会に問題を投げかけております野球賭博及び、さらにそれと前後して発展しておりますオートレース賭博について、通産大臣意見を聞きたいと思うのであります。  野球のほうは、直接行政責任を持つ官庁は一応警察の問題。ところがオートレースの問題は、小型自動車競走法違反ということで、直接通産省行政監督責任を持っておるところであります。そして処罰につきましても、野球賭博につきましては、まあ刑法なりその他の法律がありますが、小型自動車競走法におきまして規定されておりますような、厳格な、そのものずばりの処罰規定がございません。競走法は実に綿密にその点を規定をしておるわけであります。私は、まことに驚いたことだと思うのでありますが、元大洋高山選手談話を聞きますと、競艇やオートレースには八百長つきものじゃありませんか、見つかったのが不運だと言わんばかりのことであります。野球賭博についてはずいぶん各委員会でも追及をいたしておりますが、このオートレース賭博と比べて、そういうことがあったのか、ふうん、というようなのが社会の現象であります。オートレース競輪につきましては、この高山選手がいみじくも述懐しておりますように、あるのがあたりまえじゃないかというようなことを公然と言わせておるということは、私はまことにゆゆしい問題だと思うのであります。  私どもは先年来、これらの競輪オートレースをもうやめたらどうだと言ってきておるのでありますが、それはこの八百長というものがわりあいにつきものであるという観点と同時に、家庭の破壊である、こういう観点を最も根底の原因として持っておるわけであります。もしも八百長つきものだ、見つかったのが不運だ、ああいうのはどこでもやっているよというようなことであるならば、これは単に選手生活態度なり選手態度という問題ではなくて、実は、その競輪なりあるいはオートレースなり、それらに付随する不可分の問題で、体質的な問題ではないか、こうまで考えられるのでありますが、どうお考えでございますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 競輪オートレース、競馬等々につきましては、従来いろいろ議論があり、また学識経験者所見を述べておられるところでありますが、結局その最大公約数の部分は、弊害がないような形で認めていくということになっておると思うのであります。  したがって、弊害というものが関係者努力で除去できるようなふうに行なわれなければならないわけでございますし、私はそのことは可能だと考えておりますが、私はその意見には賛成いたしませんけれども、もし八百長がもともと本質的にっきものであるというようなことになりますと、弊害なき限り云々という前提が成り立たないことになるわけでございます。私は、しかし関係者が、今回の事件もあって、よくものごとの本質考えられるならば、弊害のない形でやっていけると考えておりますから、いま廃止しなければならないとは思っておりませんけれども、いずれにいたしましても、今回の事件は、司直の手を待って理非曲直をはっきりさしておくべきだと考えております。
  23. 横山利秋

    横山委員 通商産業省としては、今回の大井船橋オートレースについての不祥事件について、どのくらい事情を明確にされておるか、まずその報告を受けたいと思います。
  24. 山形栄治

    山形説明員 お答え申し上げます。  現在捜査中でございますので、詳細はわれわれ存じ上げていない点もあるわけでございますけれども、昨年の六月と十一月に、船橋オートレース場で、竜邦彦という非常に強い選手でございますけれども、関西の元暴力団から現金で数十万円を受け取り、他の選手と共謀いたしまして不正の競走の謀議を行なったということで逮捕状が現在出されたものであると聞いております。逮捕につきましては、四月二日に逮捕されておると承知いたしております。
  25. 横山利秋

    横山委員 この逮捕されました元中日の田中選手、元大洋高山選手、それから小倉で逮捕された藤繩洋孝というのでありますか、これらの選手は、野球オートレース両方にまたがって賭博をしており、しかもその背後にいわゆる暴力団があるということは、いまや次第に明白になってまいりました。しかし、もう一つ暗い影が残りますのは、暴力団ばかりではないのではないかといううわさなのであります。そのことについて、通産省としてはどうお考えになっていますか。
  26. 山形栄治

    山形説明員 御存じのとおり、オートレース施行にあたりましては、日本小型自動車振興会という特殊法人がございまして、われわれと常時連絡をとっておるわけでございますけれども、いま先生の御指摘のように、一般的にそういう行為が行なわれておるということは、われわれ現在聞いておらない段階でございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 私の質問を何かそらしておみえになるようでありますが、私の聞いておるのは、これらの関係者背後暴力団があることは大体わかってきたけれども、黒いうわさはもう一つ暴力団ばかりではないのではないかという点についてどうお考えになりますか、こう言っておるのです。
  28. 山形栄治

    山形説明員 再度申し上げることなんでございますけれども、私、不敏にして存じ上げておらないわけでございますけれども……。
  29. 横山利秋

    横山委員 あなた方は、小型自動車振興会及び競走会、それを通じてその報告を受けて、事実をあとになって知った、ないしは知ってからあわてて、どうなっておるということを聞いておるだけであって、実際行政監督責任を全うしていないのではないかということを私は痛感をするわけであります。どういうふうに小型自動車競走が適正、公正に行なわれておるかということを、通産省として常に念査をしておるのですか。それとも報告を受けるだけでありますか。どういう監督を常にいたしておるわけでありますか。
  30. 山形栄治

    山形説明員 オートレース施行につきましては、先ほど申し上げましたように、日本小型自動車振興会という特殊法人がございまして、そこで選手のあっせん、養成、審判員登録等を行なっておりますが、実際の競走行為につきましては、全国に五つの競走会という団体をつくりまして、そこで施行者からの委託を受けまして、車券の発売とか審判実務等を行なっておる次第でございます。われわれのほうといたしましては、こういう全体のオートレース施行の組織に基づきまして、法律上におきましても、個別の開催のつど地元の通産局の担当職員オートレース場に出向きまして、その実際の競走に立ち会うということで、実情の把握を行なっておる次第でございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 通産省役人が現地に行っていつも監督しておるのにかかわらず、公然としてこれらのことが行なわれておるということの中に、私はたいへん疑問を感ずるわけであります。どういうふうにその現場へ行っており、あるいは報告を受けた上司が、公正な競走が行なわれておるかということについてきわめて形式的な念査しかしておらないのではないか。大井船橋支部所属の百二十人、これはどこでもそうでありますが、その百二十人の選手が、ほとんどが幾つかの派閥に分かれ、その派閥の上にボスがおり、ボスレースを指示し、そうして競走会なり振興会は、ボスを通じてこの選手を把握しておるという体質的なところに、もう問題は発生の原因があるわけであります。こういう点について、その現状をそのまま踏まえ、現状のままに監査し、現状のままに報告を受けて、それで了としておる。だから競走法に基づく適切な行政指導というものは、事オートレース等においては行なわれていないのではないか、こう考える。  通産大臣は、先ほど司直の手にゆだねられておるから、それを待って厳正に処断をすると、こうおっしゃったわけでありますが、やや意外でありますが、一体いまこういうような事態になっておるのに、しばらくはほかしておく、司直の手にまかしてその結果がわかってからやる、こういうふうなことなんでございますが、そう伺ってよろしいのですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは非常に率直に申し上げますが、役人がそのレースを見ておりまして、これは八百長だというようなことがわかるようになりますには、これはまたたいへんな熟練を要するかと思いますので、どうも本質的に役人監督には合いかねる。それがすぐわかるようでありましたら、これは相当な役人だということに逆になりかねないかと思います。かつての、いつぞやのように騒擾事件にでもなりますと、それを見ておりまして開催を禁止するというような処置もとったことも現実にございますけれども、どうもたいへん率直なお答えでおそれ入りますが、どれだけ役人の数をふやしてみましても、この内部の事情までわかるということには、正直なかなかなりかねるのではないであろうか、まことに恐縮なことでありますけれども、そういうふうに感じます。
  33. 横山利秋

    横山委員 それは本番前の試走で、手をあげたら成立だ、ガソリンコックをひねれば八百長オーケーだという現場を見て、ああ、あれは八百長だ、それまではあなたがおっしゃるようにわかるまいと思う。それがわかればすぐ警察が引っぱる。あなたのほうとしても首を切るということは、あなたのおっしゃるとおりであります。しかし、そういうふうになっていく体質が放置されておるということを、私は言いたいのであります。選手の養成なり、選手の教育なり、選手生活態度なり、そういうものが放任されておるから、また行政指導が適切ならざるから、そういう温床を与えておるということを私は考えるわけであります。  したがって、この際もう一ぺんこの小型自動車競走法の運用、監督についてたなおろしをする必要がありはしないか。司直の手にゆだねておかないで、一ぺん再点検をする必要があるのではないか。これは私は断言しておきますが、まだまだ広がりますよ。野球と同様に火を吹いたこの問題は、全国各地に広がりますよ。広がるのに、見つけることが困難だからしかたがないでは、あなた、済まされませんよ。もっと広がると断言してもよろしい。その点について、いまの御答弁では、あなたの答弁を何かの感じで読んだ人たちは、ああそんなものかいな、それじゃどうしようもないのかということでは、ますます増長させる結果になるのではないか、そういうことを私はおそれるのであります。重ねて答弁を伺いたい。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事務当局が私に報告をしてまいっておりますことでは、新しい選手の育成をオートスポーツセンターにおいて養成をしておる、あるいは選手の監視機構を小型自動車振興会に設置をする、新陳代謝を促進をする等々考えているようでございますけれども、たとえば、いつぞやか横山委員の御指摘になりました穀物市場、三品市場といったような問題になりますと、私ども経済官庁の役人でございますから、おそまきながらでもおかしなことはわかる、また処置もできるということでございますけれども、こういうレース八百長というようなことになりますと、いままでの体制ではなかなか処置ができない。しかし、ほうっておいてもいいかとおっしゃれば、ほうっておいていい道理はないのであります。したがって、やはりこの際振興会等々と相談をいたしまして、何か基本的なことを考えなければならないのかもしれません。確かにそうかもしれません。  ただ、それを役人の手ではとうてい行ない得ないと思いますから、やはりそのほうに経験のある――そのほうにというのは、八百長にという意味ではございませんで、そういうレースに現実に経験のある人たちでも振興会が依嘱してそれを監視するなり、何かそういうことでもこれから考えなければならないのではないであろうか。少し考えさしていただきたいと思います。
  35. 横山利秋

    横山委員 十分にお考えを願いませんと、さらに発展するであろうし、また、この種の問題から、オートレース場あるいは競輪場で暴力事案が起こる。この暴力事案ということは、八百長であるか八百長ではないかについて疑いが生じて、観客から暴力事件が起こる、そういう危険性を私は予想するわけであります。ですからこの問題については、放置することなく適切な措置を早急にとられるように、私は要望してやみません。  私の質問はこの二つでございましたが、最後に、ひとつ通産大臣に申し上げて御判断をいただきたいことがございます。  国会は、連休を前にしてもう大詰めに差しかかってまいりました。私どもに付託されております法案はまだ相当残っています。その残っております法案の中で、私どもまだ審議にかかっておりませんけれども、下請法案とかあるいは特許の法案とかいう重要な法案がまだ残っています。特許につきましては、いま質疑応答をするつもりはございませんが、私どもとしては、きわめて微温的で、大企業との癒着をむしろ強めはしないかという心配をたいへん持っておる法案であります。この会期終末においてそれらの法案を確かめますためには、率直にいって時間がございません。特許につきましても、七十万件のいま申請されている事案をほんとうに早急に解決し得られるものであるかどうかについて、与野党を通じてずいぶん疑問があると思うのであります。  そういう意味合いにおいて、政府は原案を固執されることなく、この際大幅に与野党の話し合いを尊重せられる意思があるかどうか。原案のままでは、私どもは率直にいって、賛成とか反対とかという前に、たくさんの疑問、たくさんの不安というものがございますので、これはなかなかそう簡単にはまいらないと思っておるのです。この際、通産大臣として、この両法案を中心として、一ぺん腹をきめられる必要がありはしないかということを考えるわけであります。まさか大臣がそう簡単に、ああそれは修正はどうでも応ずるとおっしゃるつもりは、この公式の席ではございますまいけれども、しかし、時間の関係を見計らって――私どももイデオロギーとかなんとかいうことでなくて、重要な問題点やあるいは法案の趣旨というものが、これでは通らないという疑問はあるわけであります。これらの点について、大臣として、この事態をもう一ぺん十分に再検討なさるおつもりがあるかどうかということを、ひとつ率直に私は聞いておきたいと思います。お答えができなければお答えできなくてもけっこうであります。一ぺん考えていただきたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府といたしましては、常に最善と信ずる案を御提案いたしておるつもりでございますけれども、私どもの視野もおのずから限られております。立法をつかさどられる立法府において、こういうほうが適当であるという御意見でございましたら、それに対しまして私ども所見は述べさしていただきたいと思いますけれども、しかし、お話を伺いまして、それがごもっともであるということであれば、私ども立法府の御意思に当然従うべきものであると考えております。従来もそういうことはしばしばございましたし、また御決議などに対しましても、常に御決議は尊重して行政をやっていくという心がまえでございます。  ただいま、具体的な案の御提示ではございませんしいたしますから、それについての意見を申し上げることはできませんけれども、一般的な心がまえとしてはそのように考えております。
  37. 八田貞義

    八田委員長 中村重光君。
  38. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣に簡単にお尋ねをしますが、いまの横山委員との質疑応答の中で、中国側考え方に対する批判があると思うのですが、思想が非常に硬直化しているということなんですが、妥結をいたしました貿易交渉そのものに対して、通産大臣としてはいただきかねる、そういったようなことなのかどうか。コミュニケの内容に対しての批判なのか、交渉が妥結したことに対しては歓迎をしておられるということなのか、その点いかがでしょう。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 率直に申しますと、貿易交渉を妥結させるためにわが国から行かれました方々は、非常に苦労をされて、そうして、その糸を切らないためにああいうコミュニケが出たのであろう、こう考えておりますので、私はその御苦労を多といたしますとともに、貿易交渉が成立いたしましたことを歓迎いたしております。
  40. 中村重光

    ○中村(重)委員 コミュニケとその貿易交渉、いわゆる覚書貿易ですね、それは不可分の関係にあると私は思うのです。ですから、この覚書貿易の性格というものを政府はどのように受け取っておられるのか。歴代の通産大臣に対しましては、私はその性格についてもお尋ねをしてまいったわけですが、宮澤通産大臣としては、これをどのように評価しているか。その性格に対しての認識といいますか、それをどのようにお考えになっていらっしゃるのか。いかがでしょう。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 覚書貿易は、現在、日中間の貿易の総量から申しますと一割といったように、非常に小さな割合になってまいりました。これは、あそこの議題になりますものが相当まとまった品物でなければならない、また両国間のバランスをなるべく均等にさせたいというような配慮にもよるものと思いますが、しかし割合は小さくなってきている。それからまた、かつてのように五年間ということではなく一年刻みになっておる。両方とも残念なことでございますけれども、しかし、ああやって両国の――もちろん正式ではございません。正式ではございませんが、少なくともわが国から申しますと、国会に議席を置かれる人たちが出ていかれて話し合いをされるという、そういう糸がつながっているということに、私は一番大きな意味を見出すわけであります。すなわち、経済的な側面もさることでございますけれども、あれの持っております政治的な意味というものに、私は、将来の日中関係考えまして、大切な意味を見出しているものであります。
  42. 中村重光

    ○中村(重)委員 この覚書貿易は、過去の経過から大臣がお考えになっても、これははっきりしていると思うのですが、準政府貿易政府間交渉、そういう理解の中にいままで進められてきたのではないか、これは、国会に議席を持っている者が行って話し合いをして、交渉が妥結しているのだということでございますけれども政府と事前に十分話し合いをされて、そうして政府もそれに了解を与えて訪中をしているし、それから、やはり交渉する過程で、いろいろ政府との連絡というものはあっているんだろうと私は思うのですが、その点に対しては、通産大臣としては、これを準政府貿易というように受けとめておられるのかどうか、その点いかがでしょう。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこは、あまり割り切らないほうが実態に即しておりますし、将来の両国の関係にとっていいのではないかと考えております。すなわち、完全に民間の、いわゆる友好商社とかりに申しますが、そのような性格のものでないことは明らかでございます。しかしながら、政府を代表してああいう話し合いが行なわれているのでないことも明らかでございます。私どもとしては、将来の日中関係考えますと、そういうものでも、かりに糸が全部切れてしまったことを考えましたら、現在のような姿が続いていくことが、経済が断たれるよりははるかに望ましいことである。あまりこれを規範的に、民間であるか政府であるかと割り切りませんほうが、将来の両国の関係のためによろしいのではないかというふうに考えております。
  44. 中村重光

    ○中村(重)委員 おっしゃるように、純民間貿易というのは友好貿易なんですね。さらにまた、この覚書貿易が正式の政府間協定というものではないということは私も理解しています。しかし、いままでいわれてきたのは、準政府貿易ということであったのですし、またこの妥結した内容に対しては、政府は少なくともいままで、これがそのとおりに遂行されるように、それなりの協力というのか、責任を持ってこられたと思うのですが、宮澤通産大臣としては、今回妥結をいたしましたその内容に対して、責任をもってこれを推進をするというお考え方なんでしょうか。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど横山委員にも申し上げましたように、あのような貿易の協定ができましたことを、私は歓迎をいたしておるものでございます。したがって、それが実現されるように、私どもとしても最善の努力をいたすべきものと考えます。
  46. 中村重光

    ○中村(重)委員 この覚書貿易と、それから友好貿易との関係ですが、これは、覚書貿易というものの交渉が妥結をしなければ、友好貿易そのものもやはりうまくいかない。したがってこれは相互関連するものであるというような評価をしていらっしゃるのでしょうね。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おそらくは無関係ではないと考えております。
  48. 中村重光

    ○中村(重)委員 そこで、日中友好親善をはかる、日中貿易の促進をはかっていくために、この後、中国の要人を招請をするといったようなことについて、通産大臣は今後それを努力をしていこうというお考え方を持っていらっしゃるのかどうか、いかがでしょう。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような意思を、今度北京に行かれた方が持っておられるという報道には接しましたけれども、必ずしもそうでないという報道にもまた接しました。それで、どのような方をどういう目的をもって来てもらうつもりなのであるかということがはっきりいたしません。したがって、その点は、今度行かれました方が帰ってこられましたので、やがて、どういう御意思であるかを直接聞きました上で、考えをきめたいと思っております。
  50. 中村重光

    ○中村(重)委員 向こうに行った者だけではなくて、自民党の外交調査会長も、相互理解に中国要人の招請をということで談話を発表しておられる。したがって、日中の友好親善をはかっていかなければならない、日中貿易を促進していかなければならぬというような考え方というのは、私は相当強いものがあるであろうと思うのです。そのためには、やはり中国要人の招請をしていくということについては、この後、最大限の努力通産大臣がなさらなければ、いまあなたが歓迎されると言ったけれども、それはことばだけに終わってしまうと思うのです。ですから通産大臣としては、これは担当大臣ですから、積極的な取り組みをされる必要があるだろう、こう思います。  なお、ケース・バイ・ケースということを政府はいつも言ってこられたのです。通産大臣もそのようなことばを使われたと思うのですが、このケース・バイ・ケースということは、私はそれなりにわかるのですが、日中貿易の場合に輸銀使用ということになるわけですが、これをケース・バイ・ケースでやるということについて、通産大臣はどのようにこれを現実にやっていこうとお考えになっていらっしゃるのですか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、日中間の貿易拡大することをこいねがっておりますけれども、いわゆる輸銀使用の問題というのは、従来のいきさつから、これは貿易の問題を越えまして両国間の関係のあり方、そこへ台湾が当然のことながら加わっておるわけでございますけれども、そういう国の基本的なもう一つ大きな問題になってきておりますので、ただ貿易量をふやすということだけの見地から決断をすることがむずかしい、これは御承知のとおりでございます。  ただ、私は前にも申し上げたことがあるかと思いますけれども、一切長期金融を行なわないのだという態度態度としては考えられますが、政府はそうは申しませんで、これはケース・バイ・ケースであると言っているところに、やはりいろいろな将来へ向かっての可能性を含んでいる、私はそういう判断をいたしております。そのケースが最近具体的にないではないかと言われれば、そのとおりだと申し上げるよりございませんが、それにもかかわらず、なおそういう長期金融はしないのだと政府が言っていないところに、私は将来へのいろんな可能性を含んでいる、こう考えたいと思うわけであります。
  52. 中村重光

    ○中村(重)委員 宮澤大臣がおっしゃる気持ち、それは私もわかるのですよ。しかし、それではだめなんです。貿易よりももう一段高いものがいわゆる政治問題、それから台湾との関係、アメリカとの関係、そういった国際的な関係ということを頭に置いていらっしゃるのだろうと思うのですけれども、しかし、少なくとも国会において、国民に向かって、日中貿易輸銀使用についてはケース・バイ・ケースでやりますと言って、何年同じようなことを繰り返してきたのですか。しかし、まだ一回だってケース・バイ・ケースでやっていないじゃありませんか。それほど国会を冒涜し、あるいは国民をごまかすということでよろしいものでしょうか。あなたは、少なくとも佐藤内閣の中における――私はこういった問題については、やはり自分が口にしたことについては責任をもってこれをやらなければならない。国民をごまかしてはならないのだということを強く感じていらっしゃると思うので、たいへんお追従なことばのようになるのですが、私はそういう意味において、あなたが通産大臣になられたことについては、やはり前進が期待されると思っておった。ケース・バイ・ケースということはあなたもおっしゃったわけですから、これはやはりそのことば責任を持つ。輸銀の性格からいっても、これは実際には民間貿易を推進するためにあるわけですから、決していまの政治問題の中にこれを巻き込んでいくということは私は正しくないと思う。そう思うのですが、この後自分が言ったことばにどう責任をお持ちになりますか。  また、少なくとも佐藤内閣がいままで繰り返して言ったいわゆるケース・バイ・ケースでやるということについて、その責任を持て、持たなければならぬということを閣内において、あなたはこの後どのように強く要求していこうとお考えになっていらっしゃいますか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは、通商の範囲だけに限ってお答えを申し上げますけれども、私どもといたしましては、かりに具体的にケースが生まれてまいったときに、これは長期金融を認めるかどうかということは、たとえば、それがわが国と台湾との貿易関係のみならず、今日は相当わが国の企業も台湾に進出をいたしておりますから、それらの関係にどのような影響を与えるであろうか。通商でございますから、おのずから、ことばは悪うございますけれども、プラスマイナスということを考えざるを得ないわけでございますが、そういうところまで判断をいたしませんと、事通商の分野に関します限り、やはりなかなか結論が出にくい。したがって、それはそのときの国際情勢にもよることでございましょうし、また関係者の理解なり、ものの考え方にもよるでございましょうけれども、そこがなかなか一がいに判断しにくい。これは事は通商の分野に限ってのことだけを申し上げましたが、いわんや、国全体の国益ということになりますと非常に複雑でございますから、そこでやはりケース・バイ・ケースという結論に落ちつかざるを得ない、こういうことだと思っております。
  54. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は率直にいって、ケース・バイ・ケースということばを軽率にお使いになるということそのものに問題がある。少なくともあなたは通産大臣として、輸銀というものが民間べースであるということはよくおわかりになっていらっしゃると思うのですね。それから、いまプラスマイナス、国際情勢とかいろいろお触れになったのですが、そういったようなこと等で、いままでケース・バイ・ケースとは言いながら実際は輸銀資金を使わせないできただろうと思うのですね。しかし、そういったようなことをいつまでも言えることではないと思うのですよ。そういうあいまいな態度、無責任態度というものは、もういつまでも言えるものではない。それだけは、少なくともあなたは認識をしていらっしゃるだろうと思うのですね。  それから、いろいろ覚書貿易の問題について、この純民間貿易とかあるいは政府間交渉とかということについてすっきりしないほうがいいのじゃないか、こうおっしゃった。しかし、それも私は限界があると思うのですね。少なくとも覚書貿易がこの後推進される。いわゆる交渉を妥結して今度推進されてくるわけですね。その果実というものは、少なくとも政府はこれを受け取っておられる。しかし、悪いことというのですか、何かそのコミュニケの内容というようなものが、軍国主義の復活であるとかなんとか、相当いわゆる佐藤内閣にとってマイナスになるという批判に対しては、思想の硬直化とかなんとかいうことで、そういう面だけは批判される。そして貿易によるところの果実というものについては、これを大いに歓迎しましょう、こういうことです。そんなえてかってな話というものはないと私は思う。少なくとも準政府貿易ということで推進をされたということは、これは過去の経過で明らかなんですから、この後は無責任態度ではなくて、もっと責任をもって問題の打開をはかっていくということが、私は少なくとも宮澤通産大臣に課せられた重大な責任であると思います。  最後に、ひとついま一度、あなたがこの後どのように取り組んでいこうとされるのか、日中友好親善をはかるために、日中貿易を促進するために、あなたの決意というものを伺っておきたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、貿易は一方交通のものでございませんから、あれだけ激しいコミュニケを出しながらなおも貿易交渉が成立したということは、これは私は、先方のわが国に対する一方的な好意であるというような考え方はいたしません。先方も国益があり、わが国も国益があって、それが一致したのであろうというふうに考えております。そのことは、したがって今後も続いていくのではないだろうか。続くことが望ましいと考えておるわけでございます。そういう努力をすべきだと思っております。  それから、輸銀の問題でございますけれども輸銀というものが純粋の民間機関でございましたら、このようなむずかしい問題は起こらなかったであろう。これはやはり政府が関与している機関であるということは、これは認めてかからなければならないのではないかと思います。
  56. 中村重光

    ○中村(重)委員 少なくとも輸銀は、輸銀法によって運営をしているんですよ。目的がはっきりしています。ですから、その法律というものを政府がかってにねじ曲げていくということは、私は全くこれは政府としては違法行為であると思っています。少なくとも政府が提案をし、国会において十分慎重審議をやって法律は制定されている。国民はそれによって拘束されているのです。それを国際情勢がどうだこうだといったようなことで、政府がこれをかってに運用していくということは、私は許されないと思う。あなたはそうお考えになりませんか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点について、私の答えをあまりお求めになると、かえって事が逆になる心配が実はございますのですが、まあ輸銀というものは、わが国輸出入貿易を振興するためにあるわけでございます。そこで、特定のある取引について輸銀を用いることが、その後その取引に関する限り振興いたすことは明らかでございますけれども、わが国全体の輸出入貿易を振興する結果になるか、あるいはならないかというような判断が、そこに入ってまいるのではないだろうか。これは一つの説明でございますけれども、しかしあまりその点について私は実は申し上げたくない。全体の環境が許せば、できるだけ前向きに考えたいという気持を持っておりますので、あまりその点を強調いたしたくはございませんけれども、一応そういう解決ではなかろうかと思います。
  58. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は歴代の通産大臣に、吉田書簡の問題、輸銀資金の問題等々、いつも考え方をただしてきたのです。ちょうどあなたと同じような答弁をしてくるんですよ。あまり追及されるとプラスにならないんじゃないでしょうかということを言うのです。私は無責任もはなはだしいと思うのですよ。初めはなるほど、椎名さんでありましたか、そういったことですから、こっちもそういう点は配慮して、あまり強くたださなかった、手控えてきたということはあるんですよ。ところが少しも前進がないんですね。そして強く吉田書簡の問題等々に触れると、あなたと同じような答弁を歴代の通産大臣は繰り返してくるのです。みずからやっていることが正しくないとお考えになるから、これではいけないとお考えになる。だから答弁に窮せられる。だから、そういったことはあまり強調しないほうがいいんじゃないか、私を追及するということは決してプラスではないんじゃないかという、いわゆる逃げ口上的に答えられてきたんです。  だから私、先ほど申し上げましたように、それには限界がありますよ、こう言ってる。もう少し責任を持ちなさい、私はこう言ってるんです。言わなければ、かえってそれで都合がいいというので少しも推進しないでしょう。言えばプラスにならないとおっしゃるんでしょう。そんなえてかってなことはないんじゃないでしょうか。むしろそうではなくて、強く強調してもらうということを内心歓迎して私はしかるべきだろうと思う。いろんな、台湾に対する気がねであるとか、アメリカに対する気がねであるとかいうようなことについて、思ったことができないでおるということがいまの状態です。いわゆる弱腰なんですから。ところが、やはりわれわれとしては、あるべき姿というものを強く政府に要求する。それを追及していくということは当然であろう。それに対して、あまり言わないほうがいいとかいうようなことは、そのこと自体が適当ではないんじゃないか。われわれに対して、当然のことを要求することを手控えてもらいたいというようなことを希望されること自体が、日本の国益にならないんじゃないか、そのように私は考えています。あなた自身としても、そうお考えになることが正しいと、私はこう思います。しかしこれには答弁は求めません。とにかくあなたに期待しているんですからね。やはりその期待にこたえるように、この後積極的に対処していただきたいということを要請いたしておきます。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おわかりいただいたと思いますので、繰り返してくどくは申し上げませんが、中村委員のお考えになっていらっしゃることと私の考えておりますこと、おそらく共通な問題は、この輸銀を使用することによってわが国全体の国益に、それだけ差し引きしまして加わるものがあると、そういう状態をいかにしてつくり出すかということが、この問題の中心であろうと思うのであります。一を得たが他を失ったというような問題にならずに――本来からいえは、輸銀の金を使うとか使わないとかいうことは、それ自身としては、私はそれはまことにそう大きな問題ではなかったのであろうと思いますけれども、現実の問題としては、非常に国益上大きな問題になってしまいましたので、したがって、全体の国益に加えるところがあって輸銀を使えるような環境、それをどうやってつくるかということが、私は問題なのであろうと思います。  政府が、従来ケース・バイ・ケースと申し上げておりますことを、ただ一つの言いのがれだというふうにおそらくお考えではないと思いますけれども、しかし、そういう論評に対しては、私どもは、政府としては、輸銀を使いながらなお日本の国益がネット増進するというような環境をつくるということに、やはり毎日努力をしておるということだけは、ひとつ御理解を願いたいと思います。
  60. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう時間がありませんからこれで終わりますが、ともかく政経分離であると強調してこられた。その中で、政治と経済は別なんだから、経済だけは積極的にこれを推進していくのだ、いわゆる貿易の促進をはかっていくのだとおっしゃってこられた。ところが、現実におやりになっていらっしゃることは、政経分離ではなくて政経不可分なものという形において、いわゆる台湾の干渉であるとか、あるいはその他国際情勢云々という形において、いままで、貿易の推進ではなくて、むしろこれを停滞させる役割りを果たしてきた。いわゆる政経分離という、ことばとしてはそういうことを言いながら、やっていることは逆なことをやってきたということを、私は強く反省を求めたいと思うんです。あらためてこの問題についてはお尋ねをしたい、こう思いますが、きょうはこれで終わります。
  61. 八田貞義

  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどから各委員から、日中貿易についていろいろな御質問がございました。私もできるだけ重複する問題は避けたいと思っておりますが、きのうの佐藤総理の発言は、国民としても、非常にいままでにない強硬な御意見である、このようにみな受け取っております。初めは、あのコミュニケが発表されたときには、比較的静観されておられたわけですが、きのうは総理のああいう発言になってあらわれた。なぜそこまで硬化したかということ。それともう一つは、この中国との覚書貿易、非常にだんだんと狭くなってきておるわけでありますが、まあ古井さんあるいは松村さん等の御努力によってつながった。非常にわれわれとしてはその点は敬意を表し、評価をしているわけでございますが、きのうの総理のあの強硬発言が、中国ののほうにどういう影響を与えるか。当然、コミュニケでもあれだけ激しい非難をしてはおるけれども、しかしまあ協定ができたその裏には、結局お互いが経済ベースの国益というものがあるのだ。しかし一面考えれば、中国という国は非常に筋を通す国でありますし、日本とはもうやめたということであれば、別に何も日本から、肥料にしたって鉄鋼にしたって、買う必要はないわけです。EECにしたってどこだって、ちょっと運賃はかさみますけれども、持ってこようと思えばできるわけです。その点、きのうのああいう硬化した発言の影響を心配ないかどうか、これをまずお聞きしたいと思うのです。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはいま判断を下せと言われましても、どうも私どもには判断をする材料がございません。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは外務大臣がお見えになると聞いておったのですが、お見えにならないものですから、一応外交問題のほうははずしたいと思います。  それから、このデータを見ますと、覚書貿易の比重がずっと低下してきておるわけですが、この辺大臣としては、特に六九年は一一%、六八年が二一%、六七年が二七%と漸次下がってきておりますが、この辺をどう受けとめておられますか。簡潔にお願いしたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一割程度の比重になりつつあるわけでありますが、これはやはり一つは、まとまったものについて商談をしなければならないということ、そこに制約がある。それから、なるべく両方のバランスをさせようという、こういう制約もまたございますが、他方で友好貿易というものの門が広くなってまいりますから、先方としては、ある程度そちらのほうを広げていけばいいという意思があるのであろうかと推察をいたしております。しかし、覚書貿易そのものを存続させることが、先方利益になっておると判断しておるのであろうと私は考えます。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この輸出入のバランスでございますけれども、これは非常にギャップがだんだん開いてきておるわけです。この点、今後やはり中国としても売りたいと思っておりますし、その点のだんだんとギャップが開いてきておる、これについては今後どうされるかということです。  それからもう一点、この品物を見ましても、大豆あるいは繊維製品とか生糸、あるいは松やに、それから塩、エビ、こうしたものなんですが、ほんとうはわれわれがほしいのは鉄鉱石なり銑鉄、石炭、こうしたあれじゃないかと思うんです。ところが、ほんとうにほしいものは、ほとんど輸入もされてないわけです。ですからこの点、こういうことも含めて、今後のこの輸出入のアンバランスをどう埋めるかということについてお聞きしたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにわれわれとしては、ただいま御指摘のような品物が、中国からわが国に送られまして、それによってわが国の出超傾向もまた改まるということが望ましい。それには疑問を差しはさむ余地がございません。それがなかなかそうなりませんのは先方の事情だと思いますが、そういう努力を絶えず私どもとしてはやっていくべきものと思います。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この周発言の四条件、これを、実際に向こうがきびしい態度で来た場合、たとえばわが国から輸出をしております化学肥料などは、輸出に占める。パーセントというのは五二・九%、こういうことで非常に大きなウエートを占めているわけです。ですから、向こうがほんとうに四原則を強硬にやってくるとなると、これは非常に心配なことが起きてくると思うのです。この辺のことを、大臣としてどのようにいまお考えになっていらっしゃるか。それは向こうの出方、いろいろあるわけですが、その辺のところ、業界ともいろいろ話をされていると思いますが、どう判断されておられますか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 発言の内容が必ずしもはっきりしておりませんので、これはその場におられました人から直接話を聞かなければならないと思います。次に、かりに発言の内容がはっきりいたしたといたしましても、先方には先方の国内の事情もいろいろございましょう。したがって、それをわれわれとしてどのように解釈すべきかという問題はまた残ると考えております。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、向こうとの決済はポンドになっておりますが、円・元決済ということがいままでも非常に強くいわれておったわけです。円・元決済についてどういう取っ組みをなさっていくおつもりか。そうした見通しなり、お考えをお聞きしたいと思います。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは昨年も議論がございまして、結局、最終的に銀行間のことをどうやるかということがきまらない。これがきまりませんと、実際は何もきまらぬに近いことでございますけれども、実際行ないます、実行し得る方法がございましたら、私は、それはそれでけっこうだ、基本的にはそういう態度でございます。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、先ほども輸銀の話が何回も出ておったのですが、これは私たちも機会あるたびに、この輸銀の活用ということを申し上げたわけですが、ケース・バイ・ケース、こういうことになってきたわけです。  そこでお聞きしたいのですが、輸銀が使えないわけですから、民間のほうでも若干出ているんじゃないかと思うのです。特に私は思うのですが、東銀なんか外国為替の取り扱いなど非常になれているわけです。当然輸銀を使っていくのが本筋でありますけれども、そういうところの活用も考えていけばいいのじゃないか、このように思うのですが、その辺の考え方をお聞きしたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 民間金融機関が何かの方法によりまして長期の延べ払いをする。内容にもよりましょうが、そういう契約ができましたら、私は基本的には許可をいたしたいと思います。
  74. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと確かに政治問題になる多くの問題をかかえているわけです。これは吉田書簡の破棄とか、あるいはまた輸銀の使用の問題、あるいはココム規制の問題、あるいは中国産の食肉輸入の問題等、いろいろな問題がたくさんあるわけでございますが、特に最後にココム吉田書簡の問題。これは輸銀の問題にもかかっておるわけですが、そこのところの考え方、それをひとつお聞きしたいと思います。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ココムにつきましては、われわれの基本の立場は、順次緩和をしていくべきものである、こういう考えでございます。輸銀につきましては、これを通産行政の面に限ってだけ考えましても、全体としてわが国の貿易量の増大に資するように、そういうことを考えなければなりませんし、また先ほども申し上げましたように、それが可能になるような環境をつくることに努力をすることであろうと思います。
  76. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、ひとつ積極的に取り組みをお願いしたいと思います。  これで終わります。
  77. 八田貞義

    八田委員長 川端文夫君。
  78. 川端文夫

    ○川端委員 大臣の時間がないようでありますから、私、重複を避けて簡単に一、二点だけお尋ねしておきたいわけです。  今回の、昨晩ですか古井代議士がお帰りになって、細い綱ではあっても日中覚書協定が継続されたということは、私はやはりここで心から歓迎すべきではないか、こう考えておるものでありますが、きのうの総理の発言から見ると、向こうことばが強いからおれも言わなければ損だという、目には目、歯には歯という感じを受けてならないわけです。この点に対しては、通産大臣が言われたわけではないから、ここで攻撃しても始まりませんけれども、私どもは遺憾だと考えておる。日中の外交のあり方に対しては、私ども民社党は、  一つ中国一つ台湾というこの方針を党の外交方針として立てておりますから、その意味において、なかなか苦心の要るところであると信じておるわけですが、特に今回の問題の中に、具体的に周総理が松村さんとの会談の中に、台湾を助ける企業とは貿易しない、こういう明確な発言をされておるわけです。  そこで、台湾日本との関係は、先ほどからもお話がありましたように、言うならば平和条約締結国としての国際信義の上から、台湾というものをいま直ちに日本が、中国のいわれるような姿に処理できないことはわれわれも理解はするのであるけれども、やはり隣に七億なり八億といわれている中国があるという事実の上に立って、どのような善意と誠意を示していくかということの積み重ねが、今日一番大事ではないかと私ども考えておるわけです。  そこで、そういう立場に立って、一挙にものごとの解決はできなくても、少なくとも自民党内部でも二つの意見があるとするならば、宮澤大臣は貿易という将来のことを考えた場合に、もっと前向きに中国に対処できる心の用意をされるべきではないか。内閣全体の統一した見解としてのものを機械的に言うのではなくて、貿易という立場から考えれば、現在の時点では、なるほど台湾中国との貿易量の格差のあることは、われわれとしては事実として知っておるけれども、もし情勢が変わって、中国との貿易がもう少し友好的に進められるとすれば、大きなマーケットというものになり、向こうにも貢献できる面も出てくるはずだから、どこか、そこらに対しての熱意というものがあってしかるべきだと思うのですが、この点は、先ほどから私、承っておっても、何か画一的な御答弁でお済ましになっているように考えるわけですが、ひとつ真意をお聞かせ願えれば――宮澤通産大臣としては、日中関係に対してこのようなことぐらいはしなければならぬという心の準備がおありではないかと考え、お尋ねするわけであります。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもとしては、少なくとも貿易政策の面においては、イデオロギーの差にとらわれずに貿易量拡大したいというふうに考えておるわけであります。  したがいまして、ただいま日中間及び日台間の貿易量を合計いたしますと、おそらく十数億ドルでございますが、この姿は非常に理想的な姿とは申し上げませんけれども、片方がゼロで片方が幾つということでなく、トータルとしては、一番多いと考え得る範囲で多い貿易量になっておるのではないか。その点では貿易政策としてはまあまあのところだ。ただ、これに将来の相手方の市場の潜在力というものも、実は頭の中ではいろいろ考えておかなければなりません。そういうことも加味しながら、先ほどから申し上げておりますように、最大の貿易量をあげていくのにはどうすればいいかということ及びそのような環境づくりに、努力をいたすべきだと考えておるわけでございます。
  80. 川端文夫

    ○川端委員 そこで、今度の問題の一番ネックになった問題点は、もちろん昨年の日米共同声明に端を発しているように感ずるわけですが、そのこととあわせて、台湾に対するわれわれの信義と、具体的な世界の変化に伴う環境に対しての応対のしかたというものが変わるべきだという基本が、日本にないのではないかという非難も一つあると理解できるのではないか。こういうふうに考えてみると、先日、われわれこの委員会で一応通産省からの提案の輸出信用保険その他の問題をきめたわけですが、言うならば、アメリカと日本がアジア政策として考えている方針の中に、後進性の強い新興国家群に対して日本がもっと経済援助をしろ、こういうことが、何かしらアメリカのいわゆる要求に従ってやっているように、世界にとられている一面があるのではないか。誤解だといえば誤解として片づけられる一面もあるのかもしれぬけれども、われわれ自身も、やはりアメリカとの話し合いの中にそういうものが出ておる事実は、どうしてもどこかしらんふっ切れない部面もないわけではないわけです。  そこで、台湾の後進性を高めていくために日本の経済援助を続けるということになれば、一方に古井さんのような努力をされる人があっても、やはり妨害しているといわれてもやむを得ない面が出てくるのではないか。そこで、台湾との関係に対して、政府がいままでつくっておるいろいろな国策的な政策の利用に対してある程度考慮しなければ、日中間の問題が解決できる、いわゆる通産大臣としての道にならないのではないか、こうも考えるんだが、やはり従来どおり、いままでのしきたりどおり、経緯どおり、台湾を援助し、台湾に協力するという方針は変えないということを考えておいでるかどうか承りたいと思います。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アジアにおける発展途上国を援助するということは、平和憲法に立ちますわが国として当然なさなければならない仕事でありますし、また、今日程度国力が出てまいりますと、それも相当の程度にできるようになったわけでございます。このことは、何もアメリカに頼まれたわけでもございませんし、また肩がわりをしておるわけでもない。わが国自身が世界平和を守っていく上に一番大事なことであると考えておりますから、そのような国に対する援助は、貿易はもちろんでございますが、今後も続けていくべきものだと考えます。
  82. 川端文夫

    ○川端委員 時間もないようでありますから、私どもは、古井さんなり藤山先生なりの向こうにおける交渉の経緯ももう少し詳しく承った上で、日本の隣国である中国なり台湾の問題に対処するために、政府に対して御意見をただしたり、御意見を申し上げる機会も持ちたいと考えております。したがって、きょうはまだ緊急性の問題でもありませんので、私の質問をここで終わらしていただきます。      ――――◇―――――
  83. 八田貞義

    八田委員長 次に、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出があります。順次これを許します。石川次夫君。
  84. 石川次夫

    ○石川委員 通産大臣が幾らもここに御在席にならないというお話なので、通産大臣にまず一点だけお話を申し上げておきたいのです。  御承知のように、日本が、非常な科学技術の進歩あるいは経済成長が著しいということで世界の注目を浴びてはおりますけれども、残念ながら科学技術の面の実質はそうはなっておらないわけです。たとえば、輸出技術というものは輸入技術に対してわずか一〇%足らずというような現状でありまして、最近では、日本に技術導入を許すとどうも日本がその上を行ってしまうというようなことがあって、日本に対しては技術導入を渋っておるというような実態になっておるようでありますから、日本がほんとうの意味自分の力でほかの国に追いついて追い越すということのためには、何としても科学技術というものを確立しなければならない、これは至上命令に近いものだろうと思うのです。  その中で、特許関係が非常に大きなファクターを占めておりますことは言うまでもないわけでありまして、これが、滞貨が非常に多くなったために、今回特許法の改正という運びになったことは、いまさら申し上げるまでもないのでありますけれども、こうなったことの背景が一体何かということになると、特許庁自体の責任だけだというわけにはいかないと私は思うのです。これは政府の姿勢自体が特許に対して非常に無関心ではないのか、こういうことが今日のような混乱あるいは滞貨をもたらした一番大きな原因ではないかということをふだんから痛感をいたしておるわけであります。  たとえば、ジュネーブで特許関係の、BIRPIといいますけれども、それの総会があります。そうすると、各国とも大体大臣クラスが全部出ております。日本側はどうかというと、こちらからわざわざ行きもしない。向こうにいる科学アタッシェを代理出席させるという程度の関心の薄さということが、特許に対していかに政府は無関心であるかということを、如実に物語っておるのではないかと私は思うのです。  それから、よくいわれる例でありますけれども、ドイツは御承知のように、日本と違って木造ではございませんけれども、終戦後爆撃のあとが瓦れきの山になってしまったわけです。敗戦後一番先に何をやったかということになりますと、日本だと、家をつくるとか、あるいは交通整理をして交通ができるようにするとかいうことを考えるでありましょうけれども、うちをつくる、あるいは停留所をつくるということの前に特許庁をつくったのです。特許庁の復旧をドイツはやりました。日本でこれをやると、かえっていろいろな物議をかもすことになるかもしれませんけれども、ドイツは技術によって国を建てるんだということが国民のほとんど常識化されておりますから、特許庁をまず先につくるということが国民の世論でもあった。こういうような世論の背景に基づいて、国も、特許というもの、技術というものに対して、非常に積極的に関心を持っておるという国柄でもあろうと思いますけれども、それにしても、日本の特許あるいは科学技術に対する関心がきわめて薄いということが、今日の特許法の混乱を招いておると私は考えておるのです。  たとえば民間では、それぞれ非常に熱心に取り組んでおるわけでありますけれども、特許の管理組織のことについてある資料を見ますと、一社平均大体九人くらいが特許を扱っております。これは大きな企業をとって言ったわけでありますが、一人当たりの特許数は大体年平均十一件扱って、対象になる研究者は十四人という統計が民間では出ております。ところが、国のほうの機関では一体どうなんだろうかといいますと、国立研究機関の関係では、特許管理の専任係一人当たり研究者の扱い方が実に百五十八人。とてもこれでは、特許関係の事務員がこれを処理することは不可能です。したがって、研究者みずからが出願の事務をやらなければならぬというのが実態でございます。国立研究機関がそのようでありますから、いかに国自体が特許というものに対して無関心であるかということが、この数字をもってしてもはっきり言えるんではないかとも私は常々考えております。したがって、こういうふうに、特許というものに関して、あるいは科学技術というものに関して――現在の日本の科学技術庁のあり方について見てもそうであります。ほかの国では大体副総理が科学技術庁を総括をする。日本でははっきり言って伴食です。こういうふうに、科学技術や特許というものに対する非常な無関心というものが、今日特許がこのように滞貨をしたということの一番根本原因をなしておると、私は断言してはばからないのです。こういう姿勢を直さなければ、特許法をいかに改正してももとのもくあみです。いまの状態で、早期公開で七十万件も一斉に公開するということで、それを審査請求制度によって処理をするといいますけれども、いまのように、政府が特許に対して、片すみに置いてあるのだというかっこうでは、日本の国の繁栄のための中核の技術であり、また特許であるという、こういうふうな考え方で接しない限りは、どんなに改正しても解決にはならない、こういうふうに私は断言します。その点、宮澤さんどういうふうにお考えになりますか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 概してただいまおっしゃいましたことに私も同感で、同じような考えを持っております。つまり、わが国ではお知恵拝借というようなことが非常に簡単に行なわれまして、お互いでございますと、これは公僕でございますから当然でございましょうが、弁護士に対しても、医者に対しても、ただ知恵を借りるということをやって怪しまないという、そういういわば風土的なものがあったかと思います。したがって、そういう社会においては、形のない無形の財産、アイデアとか、あるいはデザインというものもさようでございますが、そういうものがいままで財産として十分に尊重されなかった。その結果、やはり特許制度というようなものが、本来諸外国において占めるべき十分な地位を、わが国では占めていなかったというふうに考えるわけでございます。  そこで、この節急に情報化社会というようなことがいわれるようになりまして、アイデアというもの、あるいは発明というようなものの財産的な価値が、かなり急速に認識されるようになってまいりました。したがって、特許制度もそれに基づいて変化しなければなりませんし、その行政も、まことにおそまきではありましたが、いい方向へ向かってきたので、国民のものの考え方を伸ばすような方向で運営されなければならないと思っております。
  86. 石川次夫

    ○石川委員 通産大臣は、もう時間がないようですから、私の質問はこのくらいにしておきますけれども、いずれあらためて申し上げたいことがあります。  ただ、一言申し上げたいのは、今度の改正、これはある意味では荒療治でやむを得ないという面も確かにあるのです。ありますけれども、ほんとうに特許というものに対して重大な関心を持つという姿勢、政府のバックアップの体制というものがなければ、これは絶対に成功しません。かえって混乱を招く。いろいろな問題があります。これからその点を質問するつもりでおりますけれども、その点をしかと踏まえて、たとえば増員問題、待遇の問題――技術者は官庁の中ではほとんど主流を占めておらないのですが、きのうも情報化社会というようなことも問題になったわけでありますが、テクノクラートが将来はいろいろな意味で政治の主流になる。そういうことで、技術というものを片すみに置くというような考え方ではどうしてもいけない。特許法の改正というものができるかできないか、まだこれから先の話でありますけれども、この改正をしたとしてもとても解決にならないということで、よほどしっかり特許というものを充実させるという基本的なかまえをかまえてもらいたいということを、強くお願い申し上げておきます。  それから荒玉長官、この前の提案のときは八十時間になんなんとする長時間の審議をやって、ついにたな上げになってしまったわけですけれども、今回またこれが提案になったわけであります。問題点はこの前とあまり変わりありませんので、重複するような質問はしたくないと思いますけれども、この前の国会からあとに解散が一つ入っておりますので、これは引き続きという形にならないと思うので、問題の整理だけはしておかなければならぬ、こう思うのであります。  その前に、これは多少修正をされたようでありますが、再提出をされたその理由とその経緯を、一応御説明おき願いたいと思うのです。
  87. 荒玉義人

    荒玉政府委員 再提出いたしましたのは、最初に提出いたしましたころの情報、つまり未処理案件の累積という状態が、同様あるいはさらにそれ以上になりつつあるという傾向があるからでございます。四十四年度を見ますと、特許、実用新案の出願件数が約二十三万件でございます。処理がおおむね十五万件。累積が四十三年度、昨年度は約六十八万件でございますが、ことしの年度末には約七十六万件。つまり従来と同じ、あるいはさらにそういう傾向が続いておるという事実がございますので、したがいまして、先般申し上げたと同じ理由で再提出いたしたわけでございます。
  88. 石川次夫

    ○石川委員 その中で、多少修正を加えられた問題についてはあとで追ってまたお伺いすることにいたしまして、まず、これの一本の柱は早期公開であり、一本の柱は審査請求制度である。この点はこの前といささかも変わっておらないと思います。  そこで、早期公開制度で、私いろいろの資料を見てみまして、ちょっと意外に思ったのでありますが、八百九十七社にアンケートを出しまして、そのうち六百十三社から返ってきております。その中で、特許情報が一番必要な技術情報であるという回答が多く出ております。これは当然だと思います。生産技術情報、学術研究情報というふうなものがその次に続いておるようでありますけれども、何といっても特許情報というものが一番必要な情報である、こういう統計が出ておるわけです。  ところで、私は非常に意外に思ったのでありますが、この六百十三社の返ってきたアンケートの中で、情報収集上の問題点というものを問い合わせました結果、一番多いのが索引、目録が不足しておるとか、必要な技術情報についてのそういうものが不足しておるとか、あるいは必要とする技術情報の原著、論文が多種類の雑誌に分散をしておって困るとか、いろいろなことがいわれておりますが、全体の中でわずか一〇%が、入手する技術情報の内容が一般に古過ぎるという回答が出ておるわけです。したがってこれから言うと、早期公開ということはそれほど切実に感じていないのではないか。全体の一〇%程度のものが技術情報が古過ぎるということを訴えております。あとの九割はそういうことにはなっていない。古過ぎる技術情報では困るのだということにはなっておらないのだということになりますと、早期公開がそれほどのメリットがあるのか、それほど待望されておるのかということがこの統計から出てくるわけでありますが、その点はどうお考えになりますか。
  89. 荒玉義人

    荒玉政府委員 石川先生のおっしゃいますのは、工業技術院の行なった調査だろうと思いますが、二〇%の人が技術情報の内容が古過ぎる、こう言ったわけだと思います。工業技術院といろいろその点について話しましたのでございますが、その結果、まず第一に、本調査の対象は特許情報だけでなく、雑誌、論文等々一般的なものを全部含んでおります。それと、アンケートがきわめて簡単なアンケートでございましたので、受け取る側もいろいろな違った意味に理解したようでございます。たとえば、発表されてから入手するまでに非常に時間がかかったという意味と、あるいは発表してすぐ手に入れたがすでにそれが古かったとか、そういったきわめて異なった意味に理解した形跡がございますので、したがいまして、このアンケートの結果から、特許情報を早期に入手するということが、二割の人がそう思ったかどうかという点とは、私、全く関係のないことかと考えております。
  90. 石川次夫

    ○石川委員 二割、二割とおっしゃいますが、なるほど二割なんですけれども、これは一社で三つずつ回答を出しているんですね。ですから全部で、端的に言うと三百程度の中の二〇%なんですよ。ですから一割足らず、こう私はあえて言ったのです。この技術情報が古過ぎるという意見が非常に少ないので、実は私は意外だったんです。それからも、早期公開というものはそれほどのメリットはないんじゃないかという印象を受けたということだけ申し上げておきます。  それで、この早期公開なんですけれども、早期公開をするという論拠というのは、二重投資、二重研究というものを避けるのだというねらいがあって、早くその特許の申請の内容を知りたいということに基づいてやったということと、それと一つは、滞貨があるのでこれを一ぺんに処理してしまうという二つのねらいから、この早期公開ということを実施することになったのはやむを得ないと思うのであります。  そこで、二重投資、二重研究を避けるということで自主技術というものを確立する方向にいくのかというと、この面でいうと、そうはならないと思うのです。日本の科学者、技術者がほしがっているのは大体外国の技術なんですね。そうしますと、早くその外国の技術なり情報というものをつかんで導入するかどうかをきめるというようなことのほうに、より重点がかかっているというのが実態なんであります。したがって、この二重投資、二重研究を避けるのだという意味もありますけれども、それで技術を確立するということよりは、そのことによって技術導入に拍車をかけるということになる可能性のほうが多いという意味で、私はそれほど早期公開のその面における効果というものは高く評価したくないのです。日本は外国の情報をやたらにあさって、いまでも導入技術のほうがはるかに輸出技術のほうより多い。これではどうしようもない。何とか少なくとも、アメリカほどにはいかないまでも、ドイツ並み、フランス並みに輸出技術も出せるような技術を確立しなければならぬというのが、わが日本技術界におけるところの至上命令だと思いますから、早期公開をすることのねらっているのは、何とか向こうから持ってこようという、そういうねらいがあるわけですね。そういう点からいうと、いささか情けない民間の要望じゃないかという感じがしないでもないわけです。それでそのことによって、私は技術導入に拍車をかけ、模倣に走るというようなほうに重点が置かれてくるのではないかという懸念を持つわけであります。  そのことは一応別にいたしまして、一般的に公開をされますと、いま伺いますと七十八万件ですか、膨大な資料です。これは一ぺんに全部この七十八万件が出るというわけじゃございませんが、まあ短期間にこの七十八万件というものが出ますと、これを処理するほうの事務能力、いま審査官、審判官というのが盛んに滞貨を処理しようと苦労されておるわけでありますが、そこに今度の早期公開という事務が新たに加わってくる。これはたいへんな事務の負担じゃないか。そのことによって事務の渋滞が起こるということに対する見通しは、一体どうなっておりますか。
  91. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先生おっしゃいますように、現在、審査官がまずいわゆる公開準備というのをいたしますので、もちろんその程度の仕事がふえるということは、われわれ承知いたして計画を立てておるわけでございます。ただ、それが致命的に現在の仕事をストップするという、そういう問題じゃございません。当然われわれは計画的に支障が――もちろん普通よりはあることは事実でごさいますが、最小限度にとどめるように計画いたしておるつもりでございます。
  92. 石川次夫

    ○石川委員 どうも、最小限度にとどめるようにと言っても、具体的にどうするかという回答がないと、こんな膨大な資料を一体置く場所をどうするのだということから私は心配するわけなんですよ。はたして処理ができるのかどうかという心配をしているのに、まあできるように考えておりますということだけでは、私は回答にならないと思うんですね。私は、早期公開をして、ほんとうにてきぱきとそれが処理できるということになれば、この改正案というものはある程度のメリットがあるというふうなことも考えないわけでもないのですけれども、ななかかこの処理は非常にむずかしいものがあるのではないか。七十万件とか八十万件とか一口に言いますけれども、これはたいへんなことですよ。たとえば、一万件にしたってななかか容易じゃない。七十万件ということになりますと、これを早期公開をするという、ただ単なる単純な事務だけだということを計算いたしましてもたいへんなことになります。そういうことについて、審査の事務、審判の事務というものによけいな負担をかけないでこれを処理するということは、これは不可能だろうと思うのです。そういう点、いま具体的な回答がないのですけれども、何か具体的な方策がございますか。
  93. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先生のおっしゃった論点、私ちょっと誤解しているかもしれませんが、審査官の場合ですと、大体ペンディングな件数がおおむね千件ちょっとあるだろうと思います。それを審査官は、今度は公開をする場合に分類をつけるわけであります。大体読んで分類をつけるという仕事は、現在ですと、一応最終の決定をするときに分類をつければいいのですが、今度は公開いたしますので、公開するものにはすべて分類をつける、こういう分類づけが大きな仕事になるかと思いますが、審査官としては、そういった仕事あるいはデータシートをつくるという仕事が、係属している出願について労働アップになるという問題でございます。あとは印刷をどうしてするかという問題がございますが、特に審査官としては、いま申し上げた仕事だけだと思います。
  94. 石川次夫

    ○石川委員 どうもいまの回答では答弁にならないと思うのですけれども、いまのようなスピードでやっていきますと、何十時間かかっても終わりそうもないから先に急ぎます。回答をもとにしてさらにまた質問をしたいと思いますが、きょうはどんどん前に進むことに重点を置きたいと思うのです。  ドイツとオランダは、御承知のように早期公開になったわけです。ドイツなどでは、早期公開することについて非常に物議をかもしたといいますか、国内で反響、反発というものがあったわけですね。その内容を見ますと、いろいろいわれているのですけれども、一々申し上げる時間の余裕もございませんが、この工業所有権審議会というものについて私は多少の意見があるのです。これは大体発明とか発見をするような人がほとんど入ってないのです。これを処理する特許庁側と民間の企業側だけが答申をしておるというところに、非常に問題があったのではないかと思うのです。また、こういうふうな案をつくる場合に、ドイツにおいても非常に問題になりましたのは、特許法についての実地経験から、立法を行なうに際して審判官と審査官がその計画に参加することが必要である、そういう立法に際しては必ずこういう者の意見をいれろということがいわれているわけです。これは当然だと思う。したがって、そういう者の意見をくまないで、この工業所有権審議会、しかも発明家は全然入っていないという形の審議会で出た答申をもとにして、審判官、審査官というものの参加を求めないままでこのような答申をしたというところに、非常に大きな問題があるのではないかと私は考えないわけにはまいりません。  そこで、ドイツにおいてもいろいろ問題があったわけでありますが、オランダも早期公開をやりましたけれども御承知のように、IIBという機関、そこで事前に審査をしてから、それが特許庁のほうへ正式に出願するというような事前審査の機関があるわけですが、日本にはそういうものが全然ない。ドイツなんかは全国で十ヵ所の特許権の裁判所があって、そこでてきぱきと処理をしていくというような機能がある。そういうふうな前提条件が、基礎条件が全然整わないままで、オランダ、ドイツと同じような早期公開をやるということについては、たいへん私は問題が多いんではないか。うまくいくだろうか。率直にいって、こういうふうな滞貨を何とか処理しなければならぬという気持ちは、あなたと私どもも同じだと思うのです。だから、こういうふうな前提条件を抜きにして、いきなりぱっと早期公開するということについての混乱というものを、むしろ私は、現在の日本の状態ではおそれないわけにはまいらぬわけであります。  そこで、アメリカでは、早期公開というものが出まして、これが反対にあって流産をしたわけであります。その後、この流産をしたままで非常な滞貨――アメリカの特許件数を見ますと、二十数万件滞貨をしたというのですが、これは、日本向こうとのやり方が多項制という関係で違いますから、日本のものに直しますと、大体八十万件近くあったと思うのですよ。それが最近では、審査期間二年以下というふうな状態にまで戻っているわけです。しかし、これは早期公開をやっているんではないのですよ。早期公開をやらないで戻っているわけですね。どういうふうにやったかということについては、われわれはしろうとでありましてよくわからないのでありますので、一体、アメリカでは、どうしてそういうふうな状態にまで、早期公開とか審査請求制度という方法をとらないで、理想的な状態にまで立ち直ることができたかということについての資料といいますか、それをひとつ提出を願いたいと思います。これは大いに私は参考にすべきものではないか、こう考えないわけにはまいりません。  それは行政努力でいっているわけであります。日本のように非常に大ざっぱな――大ざっぱなといいますか、強引なやり方でやっているのではなくて、行政能力を増し、処理能力を三三%増しておるというようなことがいわれておるわけでありまして、それは、先ほど申し上げましたようなオランダあるいはドイツと同じように、日本においても、なくなられた清瀬一郎さんなんかの意見がありまして、その特許審査の内容は、先行技術を調査をする、そうしてその調査に基づいて特許性の判断、これを鑑定の名目でもって弁理士に事前にやらせる。これは事前調査の機関ですね。事前にやって、それをもとにして、七〇%から八〇%までの出願は弁理士がやっておりますから、そこで作業をして事前に振り落としていく。大体出願は、添付資料があるにかかわらず、特許性がある、こういうふうなことを弁理士がつけて特許庁に出せば、それはそのまま特許として認められる、こういうようなやり方をやっておるわけであります。日本の場合、端的に結論を申し上げますと、私は、処理ができなくなって無審査になると思っている。このやり方は無審査です。無審査ではあまりにも芸がなさ過ぎる。特許行政としては最低でありますから。無審査の状態にならないようにするためには、やはり事前のこういうような条件というものを整えなければ、私は、このような早期公開というものは非常な危険性があるし、混乱が出てくると思わざるを得ないわけです。先行技術の調査というものは、新規性調査機関というものを利用させるとか、こういうふうな前提条件をぜひ整えるということのほうが、早期公開に踏み切るよりは先決条件ではなかろうか、こう私は考えておるわけであります。  そこで、また別に一つ問題があるわけでありますが、早期公開になりますと、前にも言われておりますように、先願が後願を盗用するという問題がございます。特に後願のほうは、特許の範囲にないノーハウというものが必ずついておるわけです。ノーハウというものは特許の範囲に入っておりません、これは企業機密でありますから。特許というものには出さないという形のノーハウというふうなものも先願者が盗み取る、盗用するということになる危険性がきわめて大きいんではないかと思っております。  そこで申し上げたいんでありますが、これは、元特許庁長官ですね。久保敬二郎さんという方が、どういうことを工業所有権審議会で言っているかというと、いまさら私が申し上げるまでもないと思うのでありますが、これは公聴会においても、町の発明家その他の人々からたいへん悲痛な叫びとしてあげられたものと同じことであります。それはどういうことかというと、この強制公開は、出願人が特許庁の窓口で追いはぎにあって、その追いはぎが出願人の明細書を町の中でばらまいてしまうようなものである、いわゆるどろぼう市場だということを言っておるわけです。こういうふうに後願者の権利というものを先願者が盗み取りをするというようなことが出てくるわけでありますが、その危険はないと御判断されますか。
  95. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いま一般的に公開された結果の問題につきまして、おそらく先後願という関係は出てこなくて、私は一般論ではないかと思います。要するに、公開されまして第三者が模倣する機会が多くなる、一つの結果としてそういうことが起こるおそれがあるという問題は当然かと思います。ただ、そのとき、前回でもたびたび御説明いたしましたように、補償金請求権ということでそのバランスをとっていくということでございます。  それから、久保敬二郎氏の話がございましたが、確かに審議会の当初にそういう議論があったことは事実です。ただそのときは、公開した場合の効果――原案でございますと補償金請求権に該当する問題でございますが、そういったことのないときの議論でございます。本人はたびたび、そういう条件下であるということを申しておるので、その点は御了承願いたいと思います。
  96. 石川次夫

    ○石川委員 補償金請求権の問題は、これはあとでまた時間があれば質問したいと思うのですが、こんなものではとても問題にならないと思っているのです。実施の損害弁償みたいなものが、裁判の結果、五年も六年もたってからもらえるという程度でございます。  そこで、非常に問題になりますのは、これはあとで中谷君のほうから質問をしてもらうつもりでおりますけれども、西ドイツで、一九六九年十二月十五日、旧法によるところの、一般の早期公開になる前の滞貨分についてであろうと思うのでありますが、この早期公開というものは憲法違反であるという判決が出ております。その判決の全文が私の手元にはございません。大体の結論的なものしかございませんので、たいへんごやっかいだとは思いますけれども、ひとつこれの翻訳を出してもらいたいと思っておるのです。  御承知のように、ドイツでは、法のもとの平等ということが一つあります。それから財産権の保全という問題があります。その二つの理由で、これは法のもとの平等には一致しない。それから財産権の保障の関係では、許され得る法律遡及効の限界を越えているということで、連邦特許裁判所におきましては、これは憲法違反の疑いが濃い、そういう判決が出ておるわけです。日本におきましても、出願中の特許、ですから特許権にまだならない以前の権利というものは、一体財産権であるかどうかということについて、その侵害、その盗用は一体憲法違反になるかどうかということで、この前の国会でもいろいろ議論が行なわれておるわけでありますけれども、いろいろこまかいことを申し上げますと時間がかかりますから、これはあとであらためて私のほうの専門家に質問をしてもらいたいと思っておりますが、角田政府委員、法制局の第四部長、この方が、これは一応適法行為という法律上の構成をとっておる、盗んでも違法ではないんだ、こういうことを言っておるわけです。したがって、こういうふうな考え方が出るとすれば――これはこまかいことがいろいろ書いてありますが、結局第二十九条第二項の公共の福祉に適合するかどうかという実証的な説明ができない限り、これは憲法上の権利侵害ではないという考え方で、出願されてまだ権利として確立をされてないものを盗用するということは、違法ではないということになっておるわけです。したがってこれは、公告をされて権利になった場合に初めて損害賠償ということになるわけでありまして、こうなれば盗み取りかって自由だということになるわけです。したがって、先願者が後願者のやつを盗み取りする、あるいは第三者がこれを盗んだとしても、これは違法ではないということでありますから、たいへんな問題になるわけなんでございますけれども、しかしドイツにおいては、いま申し上げましたように、特許裁判所において、これは憲法上疑わしいということであろうと思います。そういうことで、これはこういうふうな判決が出ておるわけであります。したがって、早期公開というものは憲法違反であるというふうなことになっておるわけでございまして、これはドイツの法律日本法律と必ずしも完全に一致するものではございませんけれども、基本的には私は同じことじゃないかと思うのです。そういう点についてどうお考えになっておりますか。
  97. 荒玉義人

    荒玉政府委員 西ドイツで問題になりましたのは、旧法時に出願したものにつきまして、公開をすることが憲法違反かどうかという案件につきまして、ドイツ連邦特許裁判所で一応決定をいたしまして、それを連邦憲法裁判所に照会をしておるという問題でございます。御承知のように、西独では連邦憲法裁判所だけが違憲かどうかを判断できる権能を持っております。  その特許裁判所の判決の要旨は、二つの角度がございます。一つは、先ほどおっしゃいましたように、法的安全性を害する、第二、法治国家の原則を侵す、第三、法のもとの平等の原則に反する、第四、財産権の保障をしている原理を侵す、こういったことでございます。ただし、同時に、請求制度を適用したことにつきましては、違憲とは認めていない模様でございます。御承知のように、ドイツは過去の出願につきましても請求料を取っております。これは、日本の原案はそういうことになっておりませんが、それは全く憲法違反でないという判断をしております。  それで、あとでドイツの特殊事情をるる述べております。ドイツの特殊事情といいますのは、御承知のように実用新案権との対比の問題でございます。ドイツは実用新案は無審査でございまして、公開されますと特許権と全く同じ独占権が発生するわけでございます。したがいまして、ここで法のもとの平等云々という論拠は主として、実用新案は無審査で公開しながら審査をした特許権と同じ効力を与えるじゃないか、ここらあたりが最大の論拠になっておるとわれわれは考えております。日本は、そういった実用新案も、特許と同じような審査をしております。したがって、審査の結果生まれた権利と審査を経ないものの権利の差別を認めておるというのが原案でございますが、ドイツではその点、無審査の実用新案につきましても、排他的な独占権を認めておる。そのあたりの特殊な事情というものが、特に判決で論じられておる大きな点だとわれわれは考えております。もちろん、当委員会におきましても、先般来いろんな議論がございますが、ドイツにはその特殊な事情があるということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  98. 石川次夫

    ○石川委員 しかし、日本においても、この国会においてこの前、特許法改正の審議をする場合に、これは憲法違反、財産権の侵害ではないかということが非常に大きな問題になっておるのですよ。ドイツの特殊事情もさることながら、日本においてもこのことは発明考案者から非常に強く出されておるわけです。盗み取りではないか、権利侵害ではないかということが悲痛な叫びとして出ておることは、長官も御承知のとおりなんです。そういう点で私は、この点は前の法制局の見解は読んでみましたけれども、どうもこじつけのような感じがしてしかたがないし、日本の場合には何か大所高所から、国益のためなら町の発明家なんか少しぐらい不便でも、権利がつぶされても、しかたがないじゃないかという考え方がどうしても強い。しかしながら、基本的人権というものを尊重する、そういう歴史的過程を経た先進国では、基本的人権というものと公益というもの、こうありますと、公共の福祉というものよりは基本的人権が必ず優先をする、こういうたてまえであります。それが近代国家のあり方だと思うのです。したがって、基本的人権を尊重するたてまえからいえば、どう考えてもこじつけだ。憲法違反ではない、財産権の侵害ではない、違法ではないという考え方は、どう考えてもわれわれが納得できないものを多分に持っておる。このことは議論しても蒸し返しになるし、これはあとで中谷委員のほうからも質問が出ると思いますので、その資料という意味でいまの判決の全文、それから、先ほど資料提出をお願いしました、アメリカで現在処理能力をあげて大体完全に近いほどの解決をはかり得たその経過、これをひとつ資料としていただきたいと思うのです。今度は、この特許法を改正する熱意があるのかどうか知りませんが、さっぱり資料が来ておりません。この前は非常にたくさんの資料をいただいたのですが、今度は全然資料が来てない。特許法改正をあまり通さなくてもいいんじゃないかというふうにわれわれは理解をしておるわけでありますが、熱意がないようであります。資料がさっぱり出ておりません。したがって、その二つの資料をまずお願いをしておきたいと思います。  その次にまいりたいと思いますけれども、審査請求制度の問題です。これはいろいろなことを言われておりますので、いまさら申し上げるまでもないと思いますが、審査請求制度によってどの程度のパーセントが審査請求をされるというふうに見通しを持っておられるか、その点をまず伺いたいと思うのです。
  99. 荒玉義人

    荒玉政府委員 新しい出願につきましては、特許が八〇%、実用新案が七〇%、それから係属中のものにつきましては、込みで一五%、一応そういった予測を立てております。
  100. 石川次夫

    ○石川委員 よくわかりませんけれども、一五%というのは、一五%しか審査請求をしないということですか。
  101. 荒玉義人

    荒玉政府委員 失礼いたしました。八五%、一五%はダウンする。相済みませんでした。
  102. 石川次夫

    ○石川委員 八〇%ということになるとだいぶ高いですね。私の見方では、どうも審査請求というのは一〇〇%近くいくのではないか。ただ単に保全のための出願ということのものも若干はあるでしょうけれども、やってみないことには何とも見通しのつかない問題ではありますけれども、どうも一〇〇%近いほど審査請求が出るのじゃなかろうか。これは、一〇〇%出てしまったらもとのもくあみで、むしろ早期公開の手数というもの、あるいは先願、後願というものを調べ直すというふうな手数が付加されるだけであって、一〇〇%と仮定すれば、いまよりかえって渋滞をするということになるわけですね。だから、そういう点での見通しが非常に重要なかぎを握っておると思うのでありますけれども、われわれの勘というか、いろいろな人の意見などを聞いてみますと、どうも八〇%というものよりはもっと上回るのではないかという感じがしてならないのです。非常に低い見方をするということになれば、現在滞貨になっている七十八万件というのがございますね。これをさらに再調査する。審査請求制度じゃありませんけれども願い下げにしてもいいんじゃないか、もう出願を取り消したらどうかというふうなことを言えば、相当これは整理がつく可能性は出てくるのじゃないかと思うのです。そういう面からの滞貨の処理ということはお考えになりませんか。
  103. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろん、産業界の協力を得る意味で、先生おっしゃったような方策も考えられます。ただ、いまの制度でやりましても、出願をして、独占権はとらないけれども、少なくとも他人を排除するということをある程度はっきりしないと、産業界も協力できない面がございます。したがいまして、今度の制度でございますと、請求はしない、出願だけ残しておく、他人が来た場合には排除をするということになっておりますので、もちろん現在でもやり得ると思いますが、産業界には新法制定を機会に、大幅な協力をお願いしておる次第でございます。もちろん業界によっていろいろ事情は異なると思いますが、当然われわれは、そういった積極的な協力を求めていきたいと思っております。
  104. 石川次夫

    ○石川委員 審査請求制度でもたくさん申し上げたいことがあるのですが、これはこの前の国会でも質問をだいぶ言い尽くされておるようでありますから、あまり多くを申し上げません。  審査請求制度と盗用の問題にからみまして、紛争処理機関をつくられるような御答弁があったと思うのです。これは発明協会のほうと協力をしてこれを法定するというふうな答弁をされたように記憶をしておるわけでありますが、この紛争処理機関は一体どういうふうになっておりますか。
  105. 荒玉義人

    荒玉政府委員 結論を先に申し上げますと、法定はせず、ことしの四月から、発明協会の中の機関として同じ仕事をやっていくつもりでございます。  なぜ法定しなかったかと申しますと、法律上の機関にいたしますと、公開中は権利がはっきりしないわけでございます。特許になるかならないか未確定な状況でございます。そういった状況でいろいろ紛争を法律的に解決するということになりましても、実効があがらない、制度として成り立ちにくいという面がございます。ただ問題は、早く特許になるかならないかということをきめるほうが先ではないか、そういった意味で一部修正いたしまして、優先審査の制度を導入したわけでございます。むしろ法律的にはそちらのほうを早く解決するということが先だ。したがって、国のそういった制度と、事実上の発明協会のあっせん行為というものを含めて、先般議論があった趣旨を生かしていきたいと考えた次第でございます。
  106. 石川次夫

    ○石川委員 この前の特許法の改正のときに、そういうことも非常に問題になって、荒玉長官は、紛争処理機関を法定するということを言われたのですが、先ほど申し上げたように、まだ公告をされてない、権利になっておらない特許というものを模倣する、盗み取りをするということは違法ではないのだというようなことが前提でありますから、そういう意味から言いましても、これを法定されないわけですね。法定されないものを法定するのだと言い切ったのは、結局は、法務省からいろいろな異議が出て、法定はでき得なかったという実態だろうと思います。そういうふうに、今度また改正をさらに手直しをしてみましても、まだいろいろな問題がたくさん残っているというふうにわれわれは理解をするのです。そういう点で、この特許法改正にわれわれは非常にちゅうちょせざるを得ないわけですけれども、たとえば緊急審査を特許庁内でやるというような案も出たのが、それが優先審査ということに装いを変えて法定化をしたということに理解されるわけですけれども、今度の法案それ自体にもたくさんな問題がまだまだ残っておる、こう思わざるを得ない。  それから最後に、補正の制限を今度の法案からは抜いたわけですね。補正の制限というのは、前から非常に問題が多かったわけです。たとえば二段になったものを今度は三段にする。そうすると、この補正の制限というものは非常に複雑で理解に苦しむし、判定に悩むし、これはとてもこんなことをやったって審査員自体がよくわからないという話があったのです。  この補正の制限ということは、非常に問題があるのではないかという点は、ずいぶんやかましく繰り返し質問が出たわけでありますけれども、端的に言えば、言を左右にしてこれを押し切るという態勢であったわけです。しかしながら、結論的に言うと、この補正の制限というものはできない、結局運用不可能であるということが特許庁内の結論であった。そういうことで、われわれが心配したとおりの結論が出てこれを削除されたということになっておるようであります。もしこのような法律がこの前の国会で成立していたとすれば、たいへんな混乱を起こしたのではないか。できないことをあえてできるということの見通しの上に立って押し切ろうとしたわけでありますし、結論的には運用不可能だという結論が出たわけでありますから、この責任はきわめて重大だと思うのです。この前、法律が通っておったら、一体どういうことになったかという感じがしてなりません。そういう点で、この法案をこの前の国会に提出したという――これは廃案になったからといえばそれまでの話でありますけれども、その辺の見通しがつかないままに出されたということに対する長官の責任は大きいと思うのです。この点はどうお考えになっておりますか。
  107. 荒玉義人

    荒玉政府委員 補正の制限の中身につきましては、当初から簡単に判断できるというものではございません。趣旨はこの前申し上げましたように、公開された書類を中心に公衆はサーチをするわけでございますので、完全に変わるようなものになるということを防止するための制度でございます。確かに運用上から考えますと、現行法は二段がまえのほうが楽であるということは事実でございます。ただ、やってやれないことはもちろんございませんですが、その後当委員会議論を参酌いたしまして、利用者の側ともいろいろ接触いたしまして、そういった補正の制限という形と、あるいは分類等を整備することと、どちらをとるかいろいろ議論した結果、分類を拡充するという方向で考えまして原案を修正したわけでございます。  したがいまして、その点につきましては、やはり当委員会の指摘なりその後の検討の結果、われわれといたしましては、虚心に原案を変えて提出した次第でございます。
  108. 石川次夫

    ○石川委員 長官としては、そういうふうな答弁をする以外にないと思うのですが、私の判断では、とうていこれはできない、非常な混乱を招くという見通しで結局はこれは取りやめにした、削除をしたということになったと思うし、実際これをやれば非常な混乱が起こったのではないかと私は思っておるのです。  しかしながら、今度この補正の制限を削除したということによって、また新しい問題が出るわけです。これは荒玉長官に言うまでもないのですが、公開公報の権利情報としての価値を保障するための補正制限の措置が今度は削除されたということになると、出願された範囲から――今度は補正制限がとれたわけですから、実際に今度は、権利範囲の基礎となっておる特許請求範囲の記載が補正によって全然食い違っちゃうということは予想されるわけです。出したものと、公告された権利として確定されたものと全然食い違う。補正の制限をやっておりませんから。この食い違いは一体どうされるつもりでございますか。
  109. 荒玉義人

    荒玉政府委員 公開公報が権利情報として百点万点をとるというためには、当初の明細書は一切補正は認めぬということも考えられます。先般提出した原案も、ある程度変わるということを前提にいたしていますが、そういう意味では、特許公報は当然権利情報としての価値を持たすわけでございますが、百点にするか、あるいは、いろいろな発明者の利益と調整しながら、百点ではないけれども次善の策をとっていくかということが、制度の立て方の方針をきめる場合の重要な事項かと思います。したがいまして、先般のも百点ではございませんが、今回は法律の面では先般よりも価値は劣る、これは事実でございます。ただ、そうかといってやはり権利情報としての価値はあるわけでございます。  そういった、先般の原案と比べて価値が減るというのをどういう形で回復していくか。われわれといたしましては、まず請求範囲を中心にして分類をつくることは当然でございますが、請求範囲に記載されてない事項につきましても、必要に応じまして、有用な技術情報だというふうに判断した場合には、分類を掲げることによりまして、できるだけ価値の減少を防いでまいりたいと考えております。
  110. 石川次夫

    ○石川委員 私も特許の事務をやっているわけじゃないので、どうもあまり具体的なことがぴんとこないのですけれども、まあ常識的に判断をして、補正制限を解除をしたということになりますと、公開されたものと違った情報が権利になってくるということは予想されるわけですね。そうすると、分類を確立をして、公開された請求範囲のものも分類をきちっとしてこの弊害を防ぐんだ、こうおっしゃておりますけれども、ちょっとこれ、整理がつくんでしょうかね。私はちょっと整理がつかないと思うのです。したがって、この公開というのは、この公開された請求範囲というものがたいへん参考になるということがあるのですけれども、これは補正の制限を撤去するということによって変わってくる。変わってくるということになれば、公開された利益というのは、そこでだいぶ削減をされてしまうということの問題点が一つ。  それから、いま言ったように、請求範囲外のものを分類をして整理をするというのですけれども、実際の問題としてそういう整理がつくのかどうかということになると、私はしろうと考えで、なかなかそこまでの整理はつかないのではないか、こういう感じがしてならないわけなんですが、その点はどうお考えになりますか。
  111. 荒玉義人

    荒玉政府委員 修正前でございますと、まず当初の請求範囲がございまして、それを減らしたり、あるいはふやしたり――少し常識的なことはで恐縮ですが、それはよろしいけれども、全く変わるのはいけませんよというのが当初の案でございます。今度は、変わるのも差しつかえない、つまり現行法の四十一条と同じだというのが修正案でございます。したがいまして、先ほど申しましたように、一番いい方法は請求範囲を一切動かさぬ。これは徹底した案でございます。ただ、そうしますと発明者は、発明の当初にはわからなかった事項が出てきまして、そういう新しい状態で絶えず請求範囲を振り返るというのがそのやることでございますので、その後いろいろ改良あるいは開発を加えていく途中において、もとの請求範囲というものがはたして正しかったかどうかということを保護するために、ある程度請求範囲の補正を認めているわけでございます。そういった意味では、先ほど言いましたように、当初の原案も百点ではなかったことも事実でございます。今度も、したがって当初の原案よりはやや価値は下がるということを申し上げたのは、そういった意味でございます。したがって、それはあくまで見る人の利益と発明者の利益をどこで調整するかという点でございますので、先ほどから申し上げましたように、むしろ請求範囲をある程度、現行法どおり補正を認めるということに変えまして、そのかわりそれを補う意味で、将来請求されるであろうと思われる事項が詳細なる説明にある場合、それに必要な分類を付していく、こういうことでございます。  もちろん、それが可能かどうか、それは、分類をする人の素質と、あるいは人数その他によってやれるかやれないかという問題になるかと思いますが、われわれといたしましては、分類というものはこれからますます大事になる事項でございます。そういった点を、専門官の養成なりあるいは人員を拡充することによりまして、サーチする人がこうむる不便を除去してまいりたい、かような趣旨でございます。
  112. 石川次夫

    ○石川委員 どうも説明を聞いてもよくわかりません。常識的に判断をして、補正の制限を撤廃したということによって、公開の長所がそれだけそこなわれるということは事実だろうと思うのです。それからまた、分類をいかにやっても、公開された請求範囲外のものについても分類をするというふうなことのようでありますけれども、これはなかなかそう簡単に整理はつかないだろう、こうわれわれは判断せざるを得ないということで、まあ、いま御答弁をいただきましたけれども、これはちょっと平行線のような気がするのですが、補正の制限の問題はこの前も非常に問題になりまして、どうしたってこれは、複雑多岐にまたがって実際に運用できないということを今度は直したわけでありますけれども、直せば直しただけこういう新たな問題点が生じてきたわけだ。  そういうことで、補正の制限の問題もさることながら、非常にあいまいな問題がこの前の場合たくさんあったわけでありますけれども、それと同時に、資料をあと一つ要求をいたしたいのでありますが、この前、非常にあいまいだったということにはなっておりますが、効果試算というものが何回も出ました。どうもそれが納得のできない点で論争の種になったと思うのでございますけれども、今度、この優先審査並びに補正の制限の削除ということによって、効果試算というものがまた若干変わってきている面があるのではなかろうかと思う面がある。これをぜひひとつお出しを願いたいと思うのです。これなくしてはほんとうの判断の基準がないと同じことになりますから、それを一つ要求したいと思います。  その次に、新たな問題として出ましたのは、この優先審査の問題であります。これは、この前の紛争処理機関あるいは緊急審査というような問題にかえまして優先審査ということになってきたわけでありまして、優先審査請求というものによって、これは模倣されていた、これは実施をされていたということを疎明をすることになるわけです。そして模倣の差しとめ請求を行なって模倣を排除するということになるわけでありますけれども、この場合、直ちに優先審査の結論が出なければこれは意味をなさないわけです。そういう意味の優先審査だろうと思うのでありますけれども、優先審査が行なわれた場合に、どれくらいの期間で審査をするというお見込みですか。
  113. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれの目標といたしましては、三カ月ないし六カ月の範囲内で一応の結論を出していきたい。もちろん一応の結論でございますので、いろいろな意見を聴取するのに時間がかかるとか、あるいは出願人自身がたとえば証拠を出すのに非常に時間がかかるという、これは別といたしまして、われわれの目標といたしましては、先ほど言いましたような、三カ月ないし六カ月の間で原則として処理してまいりたいと考えております。
  114. 石川次夫

    ○石川委員 第四十八条の六だと思うんですけれども、「特許出願に係る発明を実施していると認める場合において必要があるときは、審査官にその特許出願を他の特許出願に優先して審査させることができる。」この条項だと思いますけれども、「発明を実施していると認める場合において必要があるときは、」というのは、だいぶ回りくどいですね。なかなか優先審査ということにはならないんじゃないかという感じがするんです。この「必要があるときは、」ということを認める人は一体だれなのか。それから、「審査させることができる。」ということになりますと、審査させなくてもいいんだという考え方が反面出てくるわけです。非常にこれはあいまいな条文になっておるんではないかと思うんです。「必要があるときは、」「審査させることができる。」こういう文句になっておるんだ。これはきちっと、義務といいますか、権利として保証されているような文言ではなさそうに思うんです。「必要があるときは、」ということを認定するのは一体だれなのか。「させることができる。」ということは、させないこともできるということを意味するのか。その辺の基準をひとつ教えてもらいたいのです。
  115. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず法律上は、特許庁長官の権限で優先審査をするかどうかを決定いたすということでございますが、実際上は、審査部長なり、あるいは担当審査長なり、あるいは必要に応じましては当該技術を担当いたします審査官を、学識経験者として参加させて決定いたしたいと思っております。で、全体の構成は、優先審査をするかどうかは、特許庁長官の自由裁量行為というふうに考えて法案をつくっております。  どういう場合が、逆にいえば必要でない場合か、そのほうがはっきりするかと思いますが、一応われわれ考えておりましたのは、相手方とすでに実施契約等をしておって円満に解決しておる場合。第二、故意に請求範囲を広くいたしまして、従来からあるようなものが含まれているようにしていることが明らかな場合。あるいは、実施者、第三者のほうからも申し出ができるわけでございますが、その際、こういった出願は特許すべきでないという明らかな公知事実が出されている、したがって将来特許になる可能性がない場合には、必要ないということでやらないつもりでございます。その他必要な場合はいろいろございますが、先ほど申しましたような、心要でない場合の明らかな例を申し上げた次第でございます。
  116. 石川次夫

    ○石川委員 この優先審査というのは、ばくはしろうとなりに考えてみていろいろ問題がありそうな気がするんです。これは、最高責任者、最終的な法的な責任者は特許庁長官であり、判断の責任も長官が持つことになるんですけれども、他人が実施していることということが、明らかになって、これは優先審査の必要を認めない、必要ないということになった場合、出願は他人の模倣であるとなった場合、ただ黙って見ているだけで、どうにも手の下しようがないというのが実際なんですね。ということは、審査しないということになった場合に、行政不服の申し立てができないのでしょう。できますか。
  117. 荒玉義人

    荒玉政府委員 優先審査をするかどうかは、特許庁長官の自由裁量行為でございますので、不服申し立てばできないと考えております。
  118. 石川次夫

    ○石川委員 これはちょっと問題ですね。どういう自由裁量をするのかということはだれにもわからないのですよ。優先審査をしようと思っても、特許庁長官が必要ない、こう判定されれば、行政不服申し立ても何もできない、泣き寝入りという状態だ。優先審査というものは、はたしてほんとうにこれが生かされるのかどうかということで、関係者が非常な不安を持つことは明らかだと思うのです。  そこで、ひとつ要求をしたいのでありますけれども、その必要であるかどうかということを判断するには、何らかの基準があると思うのです。何も基準がなくて、自分の勘でやるんだということでは、事技術に関するものであるだけに、これは非常に無責任なことになると思うのです。したがって、必要があるという場合、必要がないという場合、いまちょっと簡単に申されましたけれども、その程度のことではとても納得性がないので、その基準というものを、一応資料提出を願いたいと思うのです。それがなければ、優先審査というものの有効性というものがわれわれには納得できません。その資料を出してもらいたいのです。  そこで、優先審査というものがなれ合いで行なわれるという可能性はございませんか。これは、どうしても自分の特許を早く公告をさせて権利にしたいという場合には、なれ合いの方法は幾らも考えられますね。このことについてはどうお考えになっておりますか。
  119. 荒玉義人

    荒玉政府委員 なれ合いが全然ないというふうにはわれわれ考えておりません。といいますのは、一応一般の場合、権利者がこういったものをだれかつくっておるという、現物を持ってくる場合もあるでしょう。あるいは現物と同時に、どこかの証明を付してわれわれのところに申し出てくる場合が普通だろうと思うのです。その場合に、極端にいえば、つくってないものをつくったかのごとく申し出、われわれがミスをして判断をする場合もないとは私、申し上げません。  そういったものをどういうふうにわれわれ排除していくか。手続面を複雑にして排除するのでは、緊急審査の趣旨から見て妥当でない。したがって、一応いま私たち考えておりますのは、運用の細部はどうせ施行後世の中に公表するつもりでございますが、一度そういう事実が判明いたしました場合には、その人の申し出があっても将来しばらく採用しないということ等によりまして、そういったなれ合いで申請があるという事実を防止していきたい、現在のところさように考えております。
  120. 石川次夫

    ○石川委員 このなれ合いの場合、いろいろなことが考えられる。まきかと思うようなことでも、一応は考えておかにゃいかぬと思うのです。これはお役所で考えているほど民間はまぬるくはありませんよ。何としても早く特許を取りたいということになれば、必ずなれ合いで優先審査に持ち込むことは目に見えています。その場合、いろいろな方法があるのです。たとえば親会社と子会社の関係だって、法的に別につながっているわけじゃない。子会社につくらせて、あそこでやっているということで優先審査、ということだって法的に拒否できないのですね。それから、外国からの特許申請というものが日本の国に持ち込まれた場合に、どこかほかの国からそれを輸入させるとか、その国の中でまたつくらせるとかということをわざとさせておいて、それで、早く特許にしなければ困るということでもって、これはまた優先審査に持ち込むということだってあり得る。いろんな場合が考えられるのです。  そういうふうなことに対応して判定をするということになると、非常に私は複雑になると思うのですけれども、なれ合いであるかないかということの判断の基準というものも、一応はっきりしておかなければならぬと思うのです。それも含めてひとつ、優先審査というものに持ち込むための基準となるもの、この資料を出してもらわなければ、非常に不安です。このなれ合い審査は、あなたにそう言っちゃなんですが、私どもが民間にいた経験からしますと、それほど間延びしておりませんよ。何らの方法で優先審査に持ち込みます。これは相次いで、相当のパーセントにのぼるんではなかろうか、こう思われますので、その点に対処するための基準というものも確立をしておかないと、とんでもないこの面からの混乱が起こってくるということもお考えを願いたいと思うのです。  それから、また資料の要求をしてたいへん恐縮なんだけれども、この前は膨大な資料をもらったが、今度はさっぱり資料がないので、お願いをしなければもらえぬかっこうになっておるわけです。先ほど要求したかどうか、ちょっと私うかつで忘れましたが、昭和四十五年の増員ですね。長官は百三十名とおっしゃったんですが、その増員計画はどうなっておりますか。
  121. 荒玉義人

    荒玉政府委員 百三十名と申しましたのは、先般の参議院における特許法審議の際に、川上委員の、幾らおまえはほしいかという御質問に対しまして、百三十名程度ぜひほしい、確保したいという私の答弁からだと思います。  四十五年度の増員は、七十五名の増員を見ました。
  122. 石川次夫

    ○石川委員 私はよくわかりませんし、これはまた資料を出してもらわないと困るので、資料を出していただきたいと思うのです。これからの希望としても、どのくらいの増員がぜひ必要だというようなことを含めて、ひとつぜひほしいと思うのです。この資料がないと――いかにさか立ちしてみても、現在の人数だけでは絶対にこれは処理できるとは思われない。どうしても増強しなければならない。実は、通産大臣にこのことを強く要望したかったわけでありますけれども、私の聞いた範囲では、実際の審査官の増員はゼロだ、こういうふうに伺っております。これはいろいろあるでしょうが、定員貸しの分が改正になって、事務系のほうはふえたけれども、実質的にはこれもふえていないというようなことも聞いておりますし、その点よくわかりませんので、定員とかなんとかということでなくて、実際の人数として、過去はどうなっておるか、これからどうするかという資料を出していただきたい。実際にはこれだけ仕事がどんどんふえているのにかかわらず、きわめて手薄だ。最初通産大臣にも申し上げたように、特許庁に対する考え方というものは非常に関心が薄い、そのことが今日の結果を招いたと思うのです。その端的なあらわれは、ぼくは人間だと思うのですよ。特許庁の増員をどのくらい認めるかということに帰着すると思うので、その資料をひとつお出しを願いたいと思います。  実は、まだ質問することがあるのですが、時間がたいへんたってしまったので、あと二点質問いたします。  先ほどもちょっと触れたんですけれども、この事前審査というものをぜひ考えてもらいたいということなんです。これをやらないで早期公開だけをやるということは、たいへんな混乱を招き、また、いろんな点で実効というものが期待できないというのがわれわれの判断なんです。これは、清瀬さんなんかも言っておったことによるわけでありますけれども、七〇%から八〇%の出願というのは弁理士の代理によって行なっておりますので、特許庁の審査をこのように肩がわりをさせ、そうして、添付の資料があるにかかわらず、この出願は特許性があるというふうな申請をさせるということによって、弁理士の鑑定書を差し出せば審査を省略して公告をするということも考えていいんではないか。ただし、これをいきなりやるということについては相当の混乱が起こると思うので、先行技術の調査というものは新規性の調査機関を利用させるけれども、まず異議の申し立ての少ない産業分野のものから実施をする。まず最初に実用新案等に適用して様子を見て、それから、実用新案でこれが成功すれば、漸次他の分野に拡大をしていくというような方向を考えるべきではないかと私は思うのです。これなしに早期公開だけを実施するということは、滞貨の処理にはたいして効果はないんじゃないか。それにまた、いろいろな混乱、複雑な影響も出てくるということを考えますと、まずやるべきことは新規性調査機関の確立ではないだろうかということを私は痛感するわけであります。その点はどうお考えになりますか。
  123. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれ特許情報センターと呼んでおりますもの、いま先生のおっしゃった新規性調査機関とほぼ同じでございますが、これをぜひつくらなければならないということは、全く同意見でございます。  ただ問題は、いつやるかという問題でございます。いまわれわれが考えておりますのは、まだはっきりしたシステムが確立しておりません。御承知のように、われわれがねらっておるものを含めて、おおむね三つくらいの検索方法があるだろうと思います。一つは、分類から検索する。これはきわめて基本的な分類法でございますが、分類でやりますと、関連文献がたくさん出てくるという難点がございます。それを少なくするためには、機械検索というのがございます。現在、合金等をはじめといたしまして八部門について実施しておりますが、これはきわめて精巧なものですが、そのシステムが非常にむずかしくて、早急に開発が困難であるという難点がございます。ちょうどそのまん中の検索方法、まず分類を中心としまして、その分類も、日本の分類だけでなくて、アメリカ分類あるいは国際分類等を参酌いたしまして一つの検索方法をやっていく。ところがまだかなり目が荒い。その目の荒さを、先ほど言いました機械検索程度、そこまでいきませんが、キーワードを使いましてもっと狭めていくということをねらっております。ただ問題は、そのシステムがまだ確立しておりませんので、われわれといたしましては、四十五年度は二千二百万円の調査費をいただいておりますので、それでテストをやりたい、かように思っています。したがいまして、そのテストができて、民間が役に立つということであるならば、できるだけ早期に発足してまいりたいというのがわれわれの計画でございます。ただ、ものが新しいシステムでございます。これはもちろんほかの国ではないわけでございますが、われわれの努力でこれから開発し、テストをしていくわけでございますので、まだ時間がかかるという問題がございます。したがって、そういった機関はできるだけ早くつくりたい、こう思っています。  ただ、法律改正との関係でございますが、確かにオランダ、ドイツでは、そういった機関が法律の中に組まれております。私も先般御答弁申し上げたかと思いますが、望ましいことだと思いますが、それがなければ請求制度が成立しないというものではないと私は考えております。といいますのは、出願時にはわからなかった事項につきまして、出願後いろいろ研究開発を進め、あるいは営業上の見地等から発明が価値ありやなしやというのを判断して、価値がないと思えば審査請求しない、価値あると思うもののみが審査請求するわけでございます。したがいまして、そういう意味では、本来出願人の側が自主的に判断するというのが審査請求制度一つ考え方基礎にあるかと私は思います。そういう意味では、繰り返すようですが、あることは望ましいとは思いますが、必須条件というふうには考えておりません。先ほどから申し上げますように、できるだけ早く発足させたいという考え方は、全く先生と同じ意見でございます。
  124. 石川次夫

    ○石川委員 時間がだいぶ迫っておりますので、あまり突っ込んだ議論ができないのは非常に残念ですけれども、特許情報サービスセンターというものをつくることについて、調査費がことし二千二百万円ついたということは私も承知しておりますが、二千二百万円で一体何ができるのだということなんです。これは最初は、十五億円くらい民間から金を集めて、こういうものをつくるという構想から出発しておるというふうに私は聞き及んでおるわけであります。それが調査費がわずか二千二百万円だ。まあしかし、こういう情報サービスセンターなんかなくても何とかやれるのだという御答弁のようでありますけれども、私は今度の特許法改正の必須条件だと思っているのです。これなしに早期公開なんかやるべきではない、こう私は考えておるわけです。民間から十五億円寄付を集めるというふうなことであったようでありますけれども、民間から寄付を仰いでというようなことは、私は政府としての姿勢が非常におかしいと思うのです。これはやはり政府自体がこういう機関をつくるという性格のものではないのか。先ほどから何回も言うように、どうも特許庁というものに対します政府の姿勢、あるいは通産省の姿勢かもしれませんけれども、何か片すみで適当にやらせておけばいいのだという考え方以上には出ておらない。日本の技術の進歩が将来の日本の死命を制するのだ、その中核になっているのが特許だ。ドイツほどの認識はなくても、これを何とか強化するのだということになれば、民間から寄付があればやってあげますよということではないと思うのです。これはやはり政府が積極的に予算を出して情報サービスセンターをつくる、これは事前審査の機関に代行させるのだというようなことなしに、特許法の改正をしたところでとても解決にはならない、私はこう思っておりますので、その点は強く要望したいと思います。  これは、特許庁長官に言っても無理な話なんだろうと思うので、政務次官、ひとつ大臣のかわりに御答弁願います。あなたも科学技術に相当関心を持っておられるのだから。
  125. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いまの石川先生の御説、日本では特許あるいは科学技術の問題について、認識が非常に薄いことは残念でございます。今後特許制度を改革いたして、もっと日本の技術促進をしなければいけないことはお説のとおりであります。先生の御説のとおり、予算が二千二百万円という非常に調査費としては少ない。私もそのように感じておりますけれども、今後とも前向きで努力する覚悟でございます。
  126. 石川次夫

    ○石川委員 まあ、いまのは大臣の答弁と同じ重みを持っているというふうに了解をいたします。  それで、二千二百万円の調査費なんかでは、とてもこれはものの数ではない。しかも民間の寄付を仰いで、それで何とかできればやろうという性格のものではない。これは政府自体が積極的に取り組むべき性質のものであることは常識だろうと思うのです。しかも、この調査機関というものがあって、先行技術の調査、それから事前審査というものがないと、この法案をこのまま実施しようとしても、非常に混乱するだけであるということは、私が何回も申し上げたとおりで、これはぜひ実現させるように決意してもらいたいということを、強くお願いしておきます。  時間がありませんからあと一問だけにしておきますが、私のほうで考えている対案は、どうしても早くPCTに加入をしてもらいたいということです。このPCTは国際的な特許機関でありますけれども、各国の特許庁が現在行なっております重複審査を避けるためにPCTというものはできておるわけです。したがって、現在の審査負担の中で、大体外国の特許というもので三〇%から四〇%の負担を背負っていると思うのです。外国の特許に要する負担というものは相当なものがございます。それがどんどん毎年、日本の場合には特にふえる傾向にある。したがって、このPCTが効力を発生しますと、この流入出願というものはPCT出願になっていくということで、この負担が相当軽くなるわけであります。したがって、このPCTに早く参加をいたしまして、PCTの出願は、出願人の所属国で新規性調査というものを受けて、さらに特許庁の判断を受けてくるということになりますから、流入出願は、大まかに言って国内の審査が不要になるということで、現在の滞貨の処理は非常に考えやすくなるのではないか。  実は、特許庁はただ単に特許の受付をして、審査をするということだけが特許庁の任務とは考えられないのです。特許庁自体が、日本の科学技術振興のための先導的役割りを果たすという任務があるはずです。それが現在では、滞貨の処理だけに追われておるというだけで、特許庁本来の使命達成にはほど遠いという実情なので、何とか負担を軽くして、そういう指導的な役割りを果たせるというところまでいかなければ、特許庁の存在の意義がないわけです。そういう点からいうと、PCTに加入して、国内の審査を、流入技術についてはあまり負担がかからないという状態に引き上げることが、ぜひ必要なのではなかろうか、こう考えるわけです。  そういうことについて、一体どういうお考えを持っておられるか。PCTへの参加については、その前提条件がいろいろあるわけでありますけれども、そういう点で、外国から日本に入ってくる技術について、日本語訳が非常におくれるという欠陥があります。二十二カ月、二年近くかかってしまうというような結果になって、現在早期公開による利点よりもまずい点が、若干逆に出てくるようではありますけれども、しかしながら、大局的に見てやはりPCTに入るということがぜひ必要なのではなかろうか、こう思うので、その点はどうお考えになっておりますか。
  127. 荒玉義人

    荒玉政府委員 結論は、先生おっしゃったように、前向きでPCTに対していきたいと思います。具体的に言いますと、近く外交官会議がございますが、もちろん署名はいたしたいと思っております。同時に、サーチ機関にもなるべき準備を進めております。ただ、批准の時期につきましては、私まだはっきりした見通しを持っておりませんが、体制整備次第、できるだけ早い機会に批准してまいりたい、かように考えております。
  128. 石川次夫

    ○石川委員 これで終わります。各国で外国に出す場合に、そのPCTの関係でミニマム・ドキュメンテーションというのですか、それをやってしまうということで、たいへん手数が省けるというような利点をぜひ最高度に利用しなければいけない。それと、先ほど言った事前審査の機関というものをぜひ確立するという前提条件がなければ、特許の処理ということは不可能です。それと、あと一つは、先ほど申し上げたような人員増強です。これはどうしてもやらなければどうにもならぬ。こういうような問題を片づけながらやっていかなければならぬと思うし、今度の法案はそれなしにやったところに、非常に致命的な欠陥があると考えておるわけなんです。しかしながら、PCTに向けての体制をどうやってつくるかということについては、私はまだきわめて不十分だと思っております。範囲の資料整備をしたり、それから整備計画も何もないというのが現状ではないかと思うのです。いまは処理に追われてしまって、それどころではないという実情ではないかと想像するのですけれども、何とか早くPCTに加入をするという体制をつくるように、ぜひお願いをしたいと思うのです。  もう時間がございませんから、きょうはこの程度にしておきます。どうもありがとうございました。      ――――◇―――――
  129. 八田貞義

    八田委員長 参考人出席要求の件についておはかりいたします。  公益事業に関する件、すなわち、去る八日の大阪ガス爆発事故の問題について、関係者に参考人として出席を求め、意見を聴取することとし、参考人の人選及び出席の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  130. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  131. 中村重光

    ○中村(重)委員 議事進行。けさの理事会でも私は申し上げましたし、また先般の委員会でも議事進行でもって、もっと与党の出席を多くしてもらわなければ審議には応じられないということを申し上げたと思うのです。私ども野党の出席も十分ではないし、また、採決でもないのであえて目をつむっているわけです。それにしても与党の出席はあまりにも悪い。伝えられるところによると、特許法案は二十八日に議了する姿勢であるといわれている。十分出席をし、この野党の真剣な質問に対して耳を傾けていく、そのような態度であるとすれば、あえて私どもはそれを阻止しようとは考えていないのです。しかし、この真剣な野党の質問に対して、政府は、ただいま石川委員から指摘がございましたように、前回の国会では多くの資料が出されたが、今回はほとんど資料らしい資料が出ない。前回出したからという考え方であるかもしれません。しかし総選挙後で、新しい議員が、また新しい委員が当委員会には出ているはずであります。それならば、審議に必要な資料は提出されることが当然であろうと私は思う。  委員長としては、このような与党の出席に対して、あえて審議を続けていこうとされるのか、もっと出席を多くされるという考え方があるのかどうか、その点に対して、委員長のこれから委員会を運営をされることについての責任あるお答えを伺っておきたいと思います。
  132. 八田貞義

    八田委員長 中村委員のただいまの御意見は、まことに委員長といたしまして同意見であります。各委員の出席が、特に与党委員の方々の出席が悪いということは、委員長として十分に考えを持って対処いたしてまいりたいと思います。何とぞ御了承をお願いいたします。  本会議散会後委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午後一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後四時八分開議
  133. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松尾信人君。
  134. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 この法案の審議ということで、いろいろ特許行政を勉強したわけでありますけれども、これは非常にたいへんだな、どうとかしてこの特許法の目的であるりっぱな特許行政にしていかなくちゃいけない、これを非常に強く感じました。それで、いろいろ特許行政の基本からしっかりしていきたい。少しでもそういう面にお役に立つように、ここで審議を尽くして、改むべきものは改め、とるべきものはとって、お互いに基本をまずよくしていかなければだめだということを痛感いたしました。そのような立場から、いまからいろいろ質疑を重ねていきたいと思います。また、先ほど質疑がありましたが、できるだけ重複は避けまして、その中から私の感じたことを、重複しておる部分につきましては掘り下げてお尋ねしていきたい、このように思う次第であります。  それで、まず端的にお聞きいたしますけれども、最近五年間くらいの審査官の増員の要求とその補充の状況はどうか、まずその点からお尋ねいたします。
  135. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四十一年度につきましては、特実の審査官の増員の要求が九十名、査定七十名。それから四十二年度、九十名の要求に対しまして七十名。四十三年度、九十名の要求に対しまして六十二名。四十四年度、七十名に対しまして三十一名。四十五年度、増員要求七十名に対してゼロ。このゼロといいますのは、実際は新規採用もできるわけでございますが、先般の国会で問題になりましたような、定員のほうが実員よりオーバーしていて、実員は事務系に使っております。そういった面で定員が百名以上オーバーしておりますので、したがって、定員はゼロといいましても、実質は人間をふやしております。定員法上はゼロ、こういう意味でございます。
  136. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 定員で押えられるということはわかりますけれども、未処理案件が非常に多い。それは現場官庁でありまして、現場官庁というものは、そのように出てくる民間からの申告件数に対応して増員というものを考えていかなければ、絶対これは行政需要に応ずることができない。現場官庁というものは、毎年毎年のいろいろの申告件数の増加に見合った定員の増加というものがなされなければ、とても行政需要を満足にすることはできません。でありますから、これは総ワクがきまっておりますけれども、その総ワクの中から現場官庁をどうしていくかという問題を、特にこのように未処理案件の多い特許行政につきましては基本的に考え直していかなければならない問題であろう。この点について、今後ともにこの定員という問題につきまして、政務次官にしっかりがんばってもらわないといかない。どうでしょうか。
  137. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いま先生のおっしゃるように、現業のところの人員を確保するということは、非常に重要なことだと思います。今後ともその点については鋭意努力するつもりでございます。
  138. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 これは実績として努力があらわれてこなければいかぬと思うのですよ。これはほんとうにたいへんなことではあります。七十万幾らもたまっておるということは、根本的には審査官の量の不足だということが痛感されるわけでありますから、この点は、総定員の中からどのようにしてこの特許庁に対しまして増員していくかを真剣にお考えになりまして、四十五年度におきましてもほんとうにふやしていただきたい、これを強くお願い申しておきます。  なお、審査官の問題でございますけれども、なかなか補充が思うようにつかないというのは、審査官の仕事の性格上非常に専門にわたっておることで、いろいろあると思いますけれども、一年に特許庁でどのくらい採用可能か、どのくらい力を入れれば、特許庁の審査官、審査官補として採用することができるか、そのようなところの見込みはどうでしょうか。
  139. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御参考までに、最近の採用状況からまず申し上げたいと思います。  四十二年度九十五名。四十三年度七十一名。四十四年度七十四名。四十五年度、これは現在まで五十六名、さらに今後追加採用いたしたいと思います。四十五年度が最近に比べて少ないのは、御承知のように、現在は特許庁の増員は認めていただいておりますが、三年間五%カットするという情勢下でございまして、四十五年度の定員がどうなるか、まだ不明なときから採用を開始するわけでございます。そういった意味で、確かにもう少し採用できたわけですが、そういった周囲の状況から、われわれといたしまして、やむを得ず五十六名にとどめておるわけです。これを見まして、われわれといたしましては、審査官の新規採用といいますのは、四十二年度九十五名でございますが、大体九十名前後くらいが一つのやり得る数字ではないか、かように考えております。
  140. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 これは、定員のワクとかなんとかは考えないで、どんどんどうしてもとらなくちゃいけないんだというような意見の一致のもとに、とれるだけとってみようというその数をお尋ねしておるわけでありますけれども、やはり九十名、百名というようなところが限度というのが現状でしょうか。
  141. 荒玉義人

    荒玉政府委員 とにかく一つの壁があるというふうに考え理由は、第一は、御承知のように、審査官になる人は上級甲の人事院試験を受けてまいるわけです。御承知のように、毎年毎年この数は減っております。一方、民間の需要は御承知のように年々拡大しております。そういう客観情勢が第一。第二、もちろん、われわれのところでも百名以上の応募者が参ります。したがって、どんなに能力が低下してもとるというなら別でございますが、やはりおのずから質の確保という面がございます。一番問題は第三の、応募される方々の専門分野と、われわれが考えております専門分野は相当かけ離れております。極端に言いますと、技術分野で大ざっぱに言いますと、機械関係というものが大体一番不足しております。これまた一番世の中の需要の強いところでございます。したがって、専門を無視してやればまた一つの手かと思いますが、われわれの出願の状況と必要な専門技術というものを考えてきますと、やはり必ずしも合いません。大体、以上の理由によりましてどうしても――もちろん努力はしなければいかぬと思いますが、やはり先ほど申しましたような一つの壁があるというふうなことは事実でございます。
  142. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 その壁は、一つは給与の面であり、一つはこちらの需要する人がなかなかぴたっと来てくれない、こういう壁だと解するわけでありますけれども、だからそのような壁をなくしませんと、審査官というものの量は今後ともに確保できないわけであります。そういういまの壁をなくしていく努力ですね。まず給与面におきましては、審査官補でしょうか、そのほうは四%の特別の給与を出している、審査官も八%の給与を余分に出しているというようなことになっておるようでありますけれども、そういうことで、はたして一つの民間給与との格差の壁が破れるものであるかどうか。この特許庁における審査官というものは非常に高度なものでありまして、公務員の給与のワクで考えるようなものじゃないんじゃないか。だから、民間の給与もうんと高いんだし、公務員給与のような頭でおるから、一つの壁がいつまでも残っておるんだ。これを思い切って変えていかなくては相ならないと、こう思うわけであります。  もう一つの壁は、こちらの希望する職種、そういう面における手合いがなかなかとれないという問題、これは今後ともに続くんじゃないかと思いますけれども、ではそのような壁をどのようにしたら破っていけるか。大学卒業生に対するいろいろの打つ手、また特許庁自体が付属機関として――いまも一つの法案か通りました。農業者大学というものをひとつ国家の付属機関として設けていくという法案が、いま本会議でなされたばかりでありますけれども、そのような非常に不足している審査官を、当然政府の付属機関として養成し、そして育成して、この足らない壁を打ち破る以外に、この特許行政の根本的な改善というものは、いつまでもなされないのじゃないか。その点についてどういうお考えがあるか、おっしゃってください。
  143. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ただいま先生の御提案は、特殊な養成機関をまずつくって、いまの問題を解決したらどうかという御提案かと思いますが、実は特許庁に採用する審査官は、あらゆる分野の技術が必要でございます。たとえば特殊な分野だけの養成機関――おそらく御審議になったと思いますが、ソフトウエア関係だけの技術を養成するというのですと、ある程度の可能性が出てまいりますが、あらゆる技術を教えるということですと、ちょっとなかなかそう急に養成機関という形が現実化されないような感じがいたします。  われわれが考えられますのは、先ほど言いましたような調整額をさらに一そう拡充していくというのが、とりあえずやり得る一つの道だと思いまして、これは毎年繰り返して執拗に要求してまいっているわけでございます。あるいは、入ってきた人の技術研修をして質を向上するということは、当然われわれは考えていかなければならぬと思っておりますが、先ほど申し上げましたように、養成機関をつくるということが実際上どうか。私もそれは必要だとは思いますが、先ほど申し上げましたような、あらゆる技術を教えるというのがはたして可能かどうかということにつきましては、いささか疑問がございます。
  144. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そこで、いまの未処理案件の中でいかなる部門が一番多いかですね。それは、あらゆる分野というものを教えていくのが理想的でありますけれども、現在、未処理案件の一番多い部門の養成機関は、やはりいまからお考えになって、そういうものを早く処理してあげるという基本的な政府態度というものは、絶対とらなければいけないと思う。給与面の考え方もひとり……。  もう一点は、その技術者というものは、どうしても年間年間の応募者が少ないのですから、それを適切に、こちらが必要とする者がとれるような体制をとっていきませんと、これはいつまでも同じ問題を繰り返していくのではないか。基本的な問題は基本的に解決して、力一ぱい解決していかなくちゃいけない、こう思うのです。それで、総合的な教育はできないでありましょうけれども、まず四十五年度は何をやっていこう、その次には、どういう審査官が必要だから、これをこうしていこうというような、全部順番を立てました計画をつくっていく、そういう機関をつくっていかなければいけないと私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  145. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず、御質問の部門別の未処理案件につきましては、とりあえず、資料がございませんので、必ずしも合うかどうかわかりませんが、部門別に大体の出願傾向を見ますと、これも大ざっぱで恐縮ですが、化学関係が約三〇%残っております。その次多いのが機械の一部、これが約二割、それから弱電関係が一六%、大体ここらあたりが大きな出願の分野でございます。  これでは御質問の答えになりませんので、たとえば、その中でも化学の高分子がどうとかいうことになるだろうと思います。結局、特殊な技術といいましても、やはりそれは、高分子といえば化学のことから教えていくということになるかと思いまして、いまおっしゃった特殊の原子力だとかいうのは、私は、そういうことが当てはまるのはそう多くないというふうに考えております。ですから、先ほど言いましたように、この滞貨は、もっとこまかい、化学のうちの何と何と何だということになると、結局、先ほどから繰り返すようですが、教える場合には化学一般から教えていくということになりますと、そう特殊だというのがなかなか構想になってまいらないような感じがいたします。
  146. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 この特許行政をほんとうに迅速にするための基本的な要点は審査官である。その審査官の確保という問題が一番大切だ。それをいまのような状態では、多くを望むことはできない。ならば、いかにするか、この問題であります。これはひとつ真剣にお考えになりまして、そして基本的に、この特許行政というものが国民の期待にこたえ、そうして早く特許情報というものを社会に提供していく、これが確立されませんといけない。そういう面において、もう少し長官は積極的にひとつ取り組んでいただきたい。これは次官にも強くお願いしておきます。  次は、非常勤職員でございますけれども、やはりいろいろ審査官が足りませんものですから、そのような職員が相当いらっしゃるわけであります。こういう部門の今後の開拓、非常勤職員の採用、その待遇の改善、質の向上、これもあわせて、この審査官の手足となって働くお方でありますから、そういう点においても十分な配慮をなされていかなくちゃできませんし、審査官に対すると同じような配慮でこの増員というものをなされていくべきだ、こう思いますが、いかがでしょう。
  147. 荒玉義人

    荒玉政府委員 会社で、主として研究その他技術関係の職員の方が退職いたしまして、現在特許庁につとめております。いわば非常勤職員としてでございますが、四十五年四月一日現在で定員が、特許審査調査員七十名、資料分類調査員五十八名、合わせて百二十八名ございます。これは技術関係の方にできるだけ働いていただきたい。特に退職後のいろいろなそういう希望を持った方もございますので、われわれそういう制度でやっております。  ただ、これをどこまで拡充していくかという点につきましては、はなはだ恐縮でございますが、やはり無限にこれを拡大して使うという形にはなかなかならないと思います。といいますのは、この人たちは深い専門知識はもちろん持っております。が、われわれの場合ですと、深いといいましても、むしろ広い技術常識を持った人のほうがむしろ役に立つ分野が非常に多うございます。そういう意味で、ある特殊の分野にはきわめて優秀な方でございますが、そういったむしろ汎用的な使い方が特許庁に多い場合に、どこまでこれがいけるかという問題が一つと、それからもう一つは、御承知のように、問題のある技術というのは日進月歩でございます。おそらく学校で習った知識が通用しない技術分野もございます。そういった意味で、古い技術の場合にはわりに使える場合がございますが、日新月歩の技術の場合ですと、それだけ教育していくということもなかなかむずかしい面がございます。そういった意味で、これを大幅に拡大するという点につきましては問題があるかと思いますが、われわれといたしましてもできるだけこういった方々を使っていきたいと考えております。
  148. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 このようなことを繰り返し繰り返し申しておりますのは、この未処理案件の早期処理で、早期公開制度というものを画期的に今度とろうとされておるわけでありますが、どうもそこにはいろいろな問題が多い。やはり特許行政というものは基本的に解決していくべきものである。早期公開というものが、はたして特許行政というものを基本的に解決していくたった一つの策であるかといえば、そうでもない。あくまでもやはり審査官に立ち戻ってまいりまして、審査官がやはり審査をして、早く答えを出して出願人の要望にこたえていく、また日本の経済、社会にこたえていく、これが、いかなる制度がとられましょうとも基本的に大切でありますから、繰り返し繰り返し申しておるわけであります。  現実に、今度は事務処理の面に立ち戻ってまいりますると、現在のこの七十万とか幾らとかいうようなものを処理していかなくちゃならないという、そこだけに頭をしぼりますと、早期公開だとか何とかというような解決方法を求められていくのでありますけれども、これは私は好ましくないと思う。本来の特許行政として、やはり着実に審査というものが行なわれて、その答えが早く出ていくようになすべきである。この基本的な態度について政府が明確にしていくことが必要だ。この点から繰り返し繰り返し申しておるわけであります。でありますから、次は現実の未処理案件の処理をどうするかという重大なことになってまいりますものですから、どうしてもいま政府としては早期公開制度をやっていこう――これにしましても、非常に疑問が一ぱいであります。政府としましては、早期公開制度のメリットというものをいろいろ考えていらっしゃいますけれども、その期待されておる効果以上にいろいろの問題が必ず起こる。先ほどもちょっとありましたけれども膨大な公開公報が出てくるじゃないか、その管理は一体どうするんだ、それにもたくさんの人手が取られていくであろう、公開準備作業にはばく大な手数を要するであろう、そのような事務量をどのようにしてやっていくのか、職員は、そちらのほうに事務職員を取られて、肝心かなめの仕事が相当できなくなっていくんじゃないか、それで審査という重大な仕事というものがその分だけ明らかにおくれていくであろう、このようなことが考えられます。聞いてもいいわけですけれども、聞いても答えが出るのはさまっておるですね。  では、早期公開でどのくらいの件数が出てくるか、その件数、どのくらいの手数がかかるか、どのくらいの期間がかかってそれが整備できるか、いつ発表ができるか、またその費用というものはどのくらい要るか。たった一つの例でありますけれども、以上の点をお聞きしてみましょう。どのくらいの手数と、どのくらいの期間と、どのくらい費用がかかるか、それでどのくらい職員がそちらのほうに手を取られて、どのくらい審査がおくれるかという問題です。
  149. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず、いま先生がおっしゃったのは、すべてちょっと間に合いませんが、とりあえずある資料に基づきましてお答え申し上げます。  まず、公開準備にどれだけの手数がかかるかという問題でございます。審査官は、いまの計画でございますと一カ月に一・五日とります。一カ月のうち一・五日だけ。過去の滞貨は十八カ月で公開になるわけでございますので、十八カ月、一カ月一・五日ずつのロードがかかる、こういう計画でおります。  その次に、公開公報の金は幾らか。滞貨分はちょっと写してきておりませんが、大体毎年この程度要るだろうという意味でお答えいたしますが、四十五年度、これは来年、四十六年の一月一日から公開いたしますが、特許、実用新案と合わせて公開公報で一億八千万かかります。それから四十六年度が十七億かかります。それから四十七年度十一億、四十八年度九億五千万、四十九年度十億。ですから、大体年度ベースで約十億と見ていただければおおむねいいかと思います。それから、四十五年度は公開公報以外にその他の事務経費がありまして、先ほど一億八千万と申し上げましたが、その他の費用プラスいたしまして四億五千万でございます。  御質問にとりあえずお答えいたします。
  150. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 非常に膨大な数の公開公報になりますね。これだけの手数、これだけの費用というものが新たに付加されていくわけでございますから、早期公開制度というものははたして期待どおりにいくかどうか、やはり基本的な問題の解決というものに主眼を置いて、これは万やむを得ざる措置としてのものというくらいに理解しないと、これは根本原則でなさるということはどうかという感じが一ぱいであります。  また、先ほど質問もありましたけれども、今度は発明者の権利という点から、先ほどドイツ連邦政府の特許裁判所の判決の問題が出ました。これは今後ともに正確にその内容というものを国民に伝えていかなければ、何だ、こちらが勝ったじゃないかという、そのようなものが流れていきますと、この制度がとられたわ、何だ、こちらから訴えていけば勝つんだというようなことになっていきますと、どんどんこの紛争というものが日本で取り入れられまして、収拾がつかなくなっていくんじゃないか、こう思います。それで、先ほど同僚議員から要望がありましたとおりに、この判決というもの、それからそれが憲法裁判所でどうなっていくかというような点につきましても、解説の加わったそういうものを御提出なさったほうがいいのじゃないか。そして積極的にこれは国民に知らせていくべきじゃなかろうか。そして、かりにドイツの特殊事情によって起こったものであって、日本ではそういうものの適用がなされないというようなことになりますれば、なおなお積極的に知らせていかないといけない、こう思うのです。この点は十分なる御配慮をお願いいたします。  それから、早期公開というものは、当然世間のお方が、この発明というものを使用していくんだ、使用するのが当然だという考えになっていくわけであります。そこには、先ほども言われましたとおりに、模倣とか盗用の機会が非常に増加する。これは、長官もそのおそれが十分あるというお答えでありました。憲法二十九条でありますけれども、この三項には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」公共のために使うんだというのがいままでの御答弁であります。それで個人の財産権というものは侵害しないんだということでありますけれども、これが早期公開で技術が公開される、それは当然みんながそれを使っていくんだ、あたりまえなんだという考えに変わってきたならば、いままで発表しないで、そしてその出願者の権利を守ってきたのが、この発表することによって、世間に早く知らせて利用させていく立場になるわけであります。そこに、今度は出願者の権利というものをどのくらい政府が守っていかなければいけないか、その限界が二十九条の三項にあるんじゃないか。正当な補償のもとにこれを公共のために用いることができるのでありまして、正当な補償というものがなされなければ、これはあくまでもやはり個人の財産権の侵害に連なっていくんじゃないか。  そこで政府の御答弁は、やれ請求権だとか優先審査の制度ということでありますけれども、この請求権にいたしましても、出願公告がなされなければその権利の行使ができない。そのようにして時期的にも出願者の権利というものは守られていかないし、それでこの二十九条の三項とこの出願公告までの権利のあいまいさ、その問いろいろの模倣、盗用が起こってくる。現実に社会問題が起こってくる。そこの政府の配慮というものをどういうものにしていかなくちゃいけないのか。私権尊重のためにはもう少し積極的なものがなされなければ、これはやはり憲法に抵触していくおそれがあるんじゃないか。ドイツの裁判の内容はよくわかりませんけれども、このような面において続々と裁判がなされていったら、これは受け付けないわけにもいかないし、審査請求――その審査ということがまた新たな問題として加重されていくんじゃないか、こう思うのですが、 いかがでしよう。
  151. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず、憲法問題からお答えいたします。  憲法第二十九条の三項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」われわれは三項だとは考えておりません。三項は、国が公共の目的のために使った場合には正当な補償を払いなさい、いわば収用関係でございます。われわれは、あくまで特許法関係のものは第二十九条の二項の、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」第二項からくるものだと思っております。特許法といいますのは、目的にもございますように、発明の保護と利用。利用面は、これは対第三者との問題でございますが、権利を保護すると同時に、それをめぐった公共といいますか、第三者との関係を絶えず調整するというのが、御承知のように特許法でございます。それは権利者と第三者とのバランスを、公共の福祉に適合するように法律で定めるという趣旨から、現在の改正法は説明されるべきだと思います。したがって、補償金というものが、われわれの考え方でございますと、一応権利者と第三者のバランスをとった上の制度だというふうに考えておるわけでございます。  御承知のように、現行法でございますと、出願公告する前は何らの権利もございません。今度は早期に公開いたしますので、その代償として補償金請求権を与える。ただ、これは補償金請求権だけあって、金を払えば簡単に使えるというものではございません。御承知のように、出願公告になれば、あなたはやめてくださいと権利者から絶えず言われる問題であります。そう簡単に補償金だけ払って使って済むわけではございません。したがって、第三者は金さえ払えば使えるといいましても、大部分はやはり、今後出願公告をしてからどうなるかという面で、そう軽々しく権利者の権利を黙って使う形にはならない。先般の委員会で、まあ非常にライフサイクルの短い、商品をかってに使って、短時間でもう行くえをくらます、これは私はあるかと思いますが、通常の場合は、やはり先ほど言いましたように、出願公告になれば特許権としての対抗を受ける、すなわち事業をやめなきゃいかぬということですから、そう簡単に、金さえ払えば使えるという形にはならないだろう。もちろん、そういうことが全然ないとは私は申しませんが、そういった意味で、あくまで憲法二十九条の二項に基づいて制度考えてございます。
  152. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いずれにしても、いままでその発表がされないから守られておるわけであります。それが、今度早期公開になりますから、実際に使用されていくわけであります。それがうまくいけばいいけれども、なかなかうまくいかないと思われるから、補償金請求権というようなもので考えられておるわけでありますけれども、はたしてこの出願者の権利というものを守るにそれだけでいいかどうか。もう少しなさるべき余地がここにあるのじゃないか。これは一生懸命考えられたと思うのでありますけれども、私もいまいい案がありません。で、早期公開というものによってこの出願者の権利が侵害されていくわけです。それを十分どうとかしていけないかという問題、これをもう少し考えてみてください。はたして補償金請求というものと優先審査というもの以外にないのかどうか。これではやはり、憲法上からいうても、出願者の財産権等の保全というものには少し遠いのじゃないか、このような感じが一ぱいでありあります。これは強い要望であります。  次は、この優先審査の問題でございますけれども、先ほどは三カ月または六カ月で一応の結論を出したい、このようなことでありました。これは早目に答えを出していただきたいと思います。この手続の問題でございますけれども、優先審査の手続はどのようになるのでございますか。
  153. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許庁に対しまして、これは具体的になると思いますが、第三者が、自分の出願したものと同じものをつくっておりますよ、こういった証明、あるいは現物を持ってくることもあるでしょう。そういう事実を特許庁に申し出ていただく。こまかいことでございまして、もちろん無料でございますが、そういう事実を申し出ていただくというのが手続でございます。
  154. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 当事者の申し出を待つ、侵害事実の証明、長官の認定、このようになっておるわけでありますが、この長官の認定につきましては、先ほど、具体的な基準というものを設けてがっちりやっていきなさい、このようなことでありましたが、これはしっかりお願いいたします。  で、長官が、これはもう優先審査の必要はないと、このように重大な認定をされるわけでございますから、そうしますと、これは出願しても、出願の価値がないのだというような、一応内容の審査に入るのか、書類だけでそのような審査を下されるのか、これもいろいろ問題だと思います。かりに書面審査だけで、これは優先審査の必要はないとされるならば、その決定というものについては、出願者は相当不服があるのじゃないか。そのようになりますと、これはやはり行政不服審査法というものがそこに――かりに向こうから訴えられた場合に、これは全然国家としては取り上げないという、そういうような長官のお答えでありましたけれども、そういうようになっていくのかどうか。これは問題だと思うのです。その点いかがでしょうか。
  155. 荒玉義人

    荒玉政府委員 法律の立て方として、あるいは正式な権利を認めて、それに対して正式な処分をいたしまして、それに対して不服を申し立てるという制度考えられないわけはないと思います。ただ、私ども考えましたのは、やはり優先審査ということは全体を急ぐわけでありますから、したがって、できるだけ手続は簡略にして、早く着手いたしまして、早く結論を出したい、こういうふうな方針で法律を立てております。したがって、もちろん御不満の場合もあるかと思いますが、そういった正式に決定するわけではございませんですが、優先審査をするかどうかを早い時期にきめて勝負をしていくという構成が、最も緊急審査の性質に合うのではないかという見地から立法いたしたいというので、長官の自由裁量によりまして、優先審査をするかどうかをきめるという制度にしたわけでございます。
  156. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 その、されたわけはよくわかりますが、やはりそこに、書面審査等で判定を下されますといろいろ不服が多かろう。そういう人々が納得するかどうか、これはなかなか問題がある。そうすると、そのようなたくさんの問題があるような査定というものが取り上げられていくようになっていったら、これはいよいよたいへんじゃないか。そこに強い配慮というものを――なるほどこういうわけで自分は優先審査をしてもらうことができなかったのだなという、相手の納得ですね。こういうものを、きちっとしていかれるようになさらないといけないと思います。  それから、審査請求でありますけれども、この早期出願ということのために、次から次とこのようないろいろの問題が出てくるわけであります。出願があった、審査をしていくというのが、一貫したいままでのたてまえでございますね。これを今度は、出願があっても審査はしないのだというたてまえに、根本が変わっていくわけです。そうして、審査というものは、請求があった者のみに対して行なうのだということで、いままでの特許行政上の出願、それに伴う審査というたてまえが、根こそぎ変わっていく問題でございます。そして、どのくらい審査請求が減るかといえば、出願件数の二割だとか、そのような先ほどのお答えでありました。はたして二割という期待どおり減るかどうかという問題も疑問であります。かりに期待どおり二割減っても、八割の人々は新たな審査請求というものをしなくちゃいけない。それは出願と同時にするのか、またはこの出願後審査請求をする者もあると思うのでありますけれども、いずれにしても、政府の期待どおりいっても、八割の人々は新たな審査請求という、そのような手続を当然しなくちゃだめだ。このように、政府のほうもいろいろな余分な手が込むし、出願者自体もまた、新たな審査請求、優先審査、そのようなものも出てくる、こういうことでありますけれども、新たな手数が政府にも出願者にも出てくるということについて、私は、このとられようとする制度というものは、特許行政というものの基本を解決するものじゃない。やはり社会に新たな混乱と問題を提起していく要素が強い。でありますから、やるならやるにしても、あくまでも審査というものをやり遂げて、その審査というものが早くできるようになって、そして特許制度自体の本来の目的というものができていくような基本的な態度を一貫して進めていきませんと、この法案が通ったから、一切この法案にまかせておいて基本的なことがなおざりになっていくならば、なお混乱が生じて、特許行政というものは、二年、三年たったあとますますどうしようもないものに現実はなっていくんじゃないか。このようなことを非常に心配するわけであります。審査請求、これも当然早期公開に伴ってやられるという措置になっていくわけであります。このような問題が一方に起こる。この点はお答えにならぬでもけっこうでありますが、この早期公開に伴う優先審査にしても、審査請求にしても、新たな社会問題を起こしていくんだ、これは特許行政の改革の基本ではないということを認識していただきたいと思うのであります。  さらに、この料金の問題でございますけれども、新たに、特許におきましては八千円、実用新案におきましては四千五百円。いままでは出願には審査というたてまえがありますけれども、それがくずれまして、審査しないのだ、だから審査を願う者は特別に金を出しなさい、このように大きく変わってくること自体にも、早期公開制度によるこのような結果というものが国民に現実に出てくる。そしていままでの四倍も五倍もの出願料みたいなものに結局姿が変わってくる、こういう問題まで起こってこなければできないということであります。それだけ特許庁としては予算がないのか。これは財政的な希望じゃなくて、あくまでも出願件数なり審査請求の件数というものを減らしていこうというほうに役立っていくわけでありまして、財政的に日本が困っておるから料金を取ろうというならば別に考え方があるに違いない、こう思う次第でありますが、どうでしょう。
  157. 荒玉義人

    荒玉政府委員 新たに審査請求料を徴収いたしますのは、財政上の理由ではございません。請求制度といいますのは、出願があって請求したもののみ審査するわけでございますが、まず二つの点からきておるかと思います。  一つは、発明の価値は出願時にはわからないわけです。先願主義ですから発明者は早く出願いたします。それと、発明自身はいわば早期の技術でございます。その後いろいろ研究開発を進めていくわけでございます。出願を一〇〇といたしますと、特許になりますのは約四割でございます。権利になるのは四〇、そのうら実際上の働きをいたしますのは、通常一割ないし五%だといわれております。そうしますと、一割ですと、四〇の一割ですから四でございます。五%は二でございます。つまり出願を一〇〇といたしますと、実際的な価値を持つ発明は百分の四ないし二、これが発明の持つ一つの経済的な特色でございます。何も日本だけでございません。したがって、あらゆるものを審査する必要があるかどうかというところがらまずきておるわけでございます。これは、初めから出願できる価値があるものなら、みんなやってくるでしょう。そういった発明の特色から、ある程度審査をしなくても済むものがある、あり得るという前提からまずきております。  もう一つは、確かに出願人からいえば、いまのほうが楽であることは当然でございます。出しておれば全部審査してくれる。ただ逆に出願人からいえば、それぞれの権利に対する価値評価というものは全部違っておるはずでございます。ですから極端にいえば、いいのも悪いのも全部審査しておるから、はね返って自分の不利益になるわけでございます。経済的に考えますと、出願人はおそらく、これは早くしてくれというのが実際の企業の必要性だろうと思います。したがって、請求制度といいますのは、確かに一時的には出願人の不利みたいな面もございますが、振り返ってみれば、結局それが審査するものが少なくなって、やはり自分も早くなるというので御協力ください、こういう意味でございます。  そこで、御協力いただくのには――これはわれわれ精神的に協力していただけばそれでいいのですが、やはり協力していただくのには、何らかの担保をして、そうしてできるだけ協力していただけるような一種の気持ちを持っていただくというのが請求料の意味だと思います。もちろん、請求料のみで請求をチェックするとは考えていませんが、平たくいえば私はそういう制度だろうと思います。したがいまして、これはきわめて低過ぎるならば、心理的な抵抗にはならないわけでございます。協力していただけなくなるというおそれがございます。したがいまして、そういった意味で私たち請求料を考えておりまして、決して財政上の事情ではございません。
  158. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 まあ御説明はわかるわけでありますけれども、やはり件数が非常に多い。毎年毎年二十万も幾らもなされるわけであります。その中には、審査の拒絶になるものが相当ある、そういうもののチェックができれば非常にこれはいいことであります。先ほどもお話しのとおりに、この早期公開という制度を先がけてとったオランダ等が、民間の情報機関というものを活用しておる。そこで出願の相談も受ければ、審査請求の相談も受ける。これは特許庁の仕事の分野を非常に大きく調整してくれて、そのような無意味なと言うと失礼でありますけれども、いま長官の言われたような、審査拒絶になる、そういうものが減っていく。でありますから、日本においても、みずから審査官をたくさんとっていく措置をやっていくと同じように、この民間の機関というものを積極的に育成し強化していかなくてはならぬ、こう思うのです。  先ほど説明がございましたけれども、それはまだまだ具体的になっておりません特許情報センターに、今度は予算を二千二百万円使うのだ、調査をする、開発テストをするというようなお答えでありますけれども、それは気分はわかります。やがてそういうものを育成し強化して、そしてIIBにかわるような、日本に、特許庁のその前に、特許の出願または審査の相談役、そういうものをうんとつくっていく。これは当然一日も早くつくっていかなければできない問題であります。でありますから、これは、出願人が自主的に解決すべき問題だというようなことと違いまして、出願者はうんとふえてもかまわない、そういうものの事前チェックというものがなされていきさえずればいいんじゃないか。いままで、五年も十年も前になさるべきことをいま取り上げて、そうしていま調査費がつくような状態であるから、特許行政自体がこのようにおくれてきておるのだというような感じを強く持つものであります。でありますから、この民間の特許情報機関、そういうものをひとつ早く育成し強化して、一日も早くそれが活動していくようにしていくのだという決意を承りたいと思うのです。
  159. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一日も早く設立するように努力すべきであり、したいと思います。
  160. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そういうことでこの特許行政の基本問題を解決していこうと思うのですね。この法案の審議を通じまして、早期公開、優先審査、審査請求、そこには請求権、そういうものが新たに提起されていく問題。それでいいとするんじゃなくて、あくまでも特許行政の根本というものをよくしていこう、そうして明るい、または前途に希望のある職場をつくっていただきたい。つくっていくべきである。出願されたものが四年も五年も審査されないということは、国民の期待を裏切っているわけであります。それだけ早く情報というものを社会に提供していくという特許法本来の目的からも逸脱しておるわけだ。いままで一生懸命になされてきましたけれども、結果的には、そういうものが累積され、累積されて現状のようになっているわけでありますから、あくまでも根本的な問題の解明、解決というものを、この法案審議を通じて、特許庁のあなたも十分おわかりになり、政務次官もわかり、大臣もわかり、そして総力をあげてこの特許行政というものをりっぱにしていかなくては相ならぬ、これを強く要望いたします。  なお、コンピューターの問題でございますけれども、いま何台でどうしているということはわかっております。しかし、それではなおなおほんとうに基本的な問題の解決に役に立たない。特許庁には全部のコンピューターを集め、そうしてあらゆる人知を集め、ソフトウエア部門を集めて、一日も早くこの未処理案件というものをどんどん処理していくという政府の強い姿勢、また長官の強い姿勢、そういうものがかみ合わされまして、特許行政のおくれというものを一日も早く取り返し、りっぱな、明るい、楽しい特許庁の職場環境というものを、今後はぜひともつくっていきたい、これを私は最後に希望として強く訴える次第です。一言長官の決意といいますか、そういうものを承って私の質問を終わりたいと思います。
  161. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先般の国会におきましても、法律改正だけで問題が解決するということは全然申しておりませんし、むしろ、先ほど先生の御指摘のいわば環境整備、これと並行しなければ問題が解決できない、当然でございます。私もそう思っております。両々相まちまして、いまの困難な事態を克服するという方針でわれわれおります。これは従来からもそうだし、あるいは今後もますます大事かと思います。
  162. 八田貞義

    八田委員長 塚本三郎君。
  163. 塚本三郎

    ○塚本委員 この新しい改正案がもし通って実施されるといたしましても、実はそれを運用する特許庁の中には内部態勢がない、こういうような決定的な意見があることは長官は御存じだと思います。一体この法律施行された場合、どういう態勢でこれを運用するのか、そのことを述べていただきたいと思います。
  164. 荒玉義人

    荒玉政府委員 内部態勢がないとはわれわれ考えてございません。ただ法律改正自身反対意見を表明しておる諸君がおることは事実でございます。成立した以上は、これは国の命令でございます。われわれはそれを誠実に実施する自信を持ってございますので、内部態勢がないというふうにはわれわれは考えてもございません。もしそれが事実ならばたいへんなことでございます。
  165. 塚本三郎

    ○塚本委員 たいへんなことを私たちが連日のように聞かされているから、私たちは心配しているわけでございます。法律を推進しておるのは長官をはじめとするほんの二、三の上層部の人たちだけで、あとはこぞって反対なんだ、やれもしないことを長官が一生懸命やっておるから困ったものだ、というようなことを連日われわれは聞かされております。一体こういう役所がいまだ日本に存在することが、私にとってはきわめて不愉快であります。いずれが正しいかは私は判断しかねておるのが今日の実情でございます。これは長官の統率力と人格と識見にもかかわることだと思いまするので、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  166. 荒玉義人

    荒玉政府委員 おっしゃることは私の責任でございます。私の見解は先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、私はあらゆる責任を負って円滑な施行をやるように努力してまいりたいと思っております。
  167. 塚本三郎

    ○塚本委員 今日このままの状態で特許制度がいいとは、反対の諸君も思ってはいないようでございます。何とかしなければいけない。だから私のところに来る情報や、あるいはまた陳情等をお聞きしまするとき、それではもっといい案はないのか。現在においていわゆる万全の策だとは私たちは思っていない。しかし、この案以外にもっとプラスな方法はないのか。それならわれわれは率直にこの案にはこだわらないつもりなんだ。――もともと私どもは、そういう技術的なことについては残念ながらしろうとでございます。だからそういう説得力もございませんかわりに、いわゆる公平な判断を下し得る一面を持っておると思います。だから、それならばこの案よりももっとプラスな案を出したらどうなのか、こういうお尋ねを私のほうから申しておることであります。しかし文章などで見ますと、プラス十あるならば、われわれは十一、十二というさらに大きなものを求めようとはしておりません、しかしこれはマイナス百が残るだけだから、いい対案があるとするならば、それはやめろということが対案なんだ、こういうような印刷物まで私どもの手元に来ております。  昨年、当委員会におきまして、長官もたいへん御苦労をなさって、そして当委員会では通過を見たこの案でございます。この一年間の経過の中で、そのような、少なくとも内部の諸君に対する意見くらいはいわゆる調整をし、消化をしておってくれなければ困ると私は思っております。それが今日の心境でございます。だから、あるとするならばマイナスがあるだけなんだ、こういうようないわゆる極端な意見等がいまも残っておりはしないかと私は心配いたしております。それは、もちろん昨年のことでございますから、いまはそこまでではないという自信がおありならば御答弁いただきたいと思います。
  168. 荒玉義人

    荒玉政府委員 異なる見解を有する諸君が存在するのは事実でございます。先般の国会の御審議を、われわれはそれぞれの所属長を通じまして、もちろんいろいろな意見も聞いております。そして、先ほど塚本先生のおっしゃったような、これにかわる対案があるならば、私といたしましても改めることにやぶさかではございません。したがって、これはいろいろ制度考えられます。特に今度の制度の場合は、たとえば審査が早くなるかどうかは、先ほど石川先生の御質問にありました、いわば将来の審査処理がどうなっていくか。具体的に言いますと、請求率が幾らになるかということにかかっておるわけです。これはゼロといえば、先ほど先生がおっしゃったことになるでしょう。たとえば先ほどの話で一応の請求率を申し上げましたが、これは見方を変えて考えますと、半分になるということも考えられる。  といいますのは、外国の出願というのは、われわれといたしましては、むずかしいですから非常にロードがかかるわけです。こまかい話で恐縮ですが、実用新案を一といたしますと、国内特許は二倍の労力、外国特許は八倍の労力と換算いたしますと、外国特許の数は二割六、七分ですが、加重平均いたしますと、おおむね半分になるわけです。オランダは六年間の請求率で外国出願は四割。かりに五割といたしましても、五割のウエートが五割かければ、それだけで二五%ダウンということも考えられる。したがって、請求率のダウンをゼロに見るか、あるいは私たち調査し、あるいは外国のほうを勘案して幾らと見るか、これはゼロから、極端にいえば五十の見解に分かれるかもしれません。したがって、われわれは歩まなければいけないことは事実でございます。歩まなければ、一年一年問題は深くなるだけでございます。だから、そういう問題は、確かに請求率は、私もそういう意味では、ここで答弁しておることが実際やれるかどうか。これにはいろいろな運用の条件もあります。たとえば請求があって、早くやれば請求率は下がるでしょう。おそくなれば、請求率をとるために上がるでしょう。そういったいろいろな複雑な要素がございます。したがって、反対の諸君が、請求率は一〇〇に近いというふうに見るか、あるいは先ほど私たちが申しましたように見るか、これは将来のことなるがゆえに、相当見解は分かれることかと思います。われわれは、したがってとにかく歩む必要がある。だから歩んでおる。よりよき歩む方法があれば、いつでも私は訂正いたすつもりであります。
  169. 塚本三郎

    ○塚本委員 早期公開をいたしますと、公開するだけで相当にこれはいわゆる量でございますから、これはどういうところの人たちがこれに携わるのか。現在の審査の実務家たちが携われば、これは特許自身がいわゆるたいへんな停滞をするであろうと思っておりますが、一体どういう人たちが早期公開あるいは分類することに携わるのか。具体的にどうでしょうか。
  170. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど松尾先生への答弁で申し上げたわけですが、主として公開準備作業は庁内全部が取りかかるわけでございます。いまおそらく審査官のほうが問題だと思うのでございますが、ロードといたしましては、十八カ月で公開するわけですから、毎月毎月準備のために一・五日のロードが加算されるというふうに計画しております。
  171. 塚本三郎

    ○塚本委員 それは、現在の審査官がやるのですか。
  172. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろん、たとえば公開準備は、具体的に言いますと分類をつけたりするわけでございます。したがって、現在、分類をつける場合に、担当の審査官が一番当該分野に詳しいわけでございます。当該担当の審査官が、先ほど言いました準備作業をするということでございます。
  173. 塚本三郎

    ○塚本委員 そんなことをするんだったら、現在の審査官がそれだけの余力があるならば、現在の制度のまま審査を早く進めたほうが合理的じゃないか。いわゆる早期公開に対する心配というようなのはなくて済むのじゃないでしょうか。そういうような余力があるとするならば、あるいは無理をする余地があるとするならば、あえてこのような新制度にしなくても、もう少し手当や給与等でいわゆる十分な補償をするという体制にしたほうがいいというような判断は出てきませんか。
  174. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど申しました公開準備といいますのは、分類づけ等というのは、審査官がやるのは現在係属中のもののみでございます。それから、新願のものは、もちろん分類して分類はつけていく。いま先生のおっしゃったように、それだけの余力といいましても、月のうちに全部やるわけじゃございません。現在七十六万の滞貨、未処理案件がございますが、いまの公開作業のために月に一・五日でございますから、全体のあれから言いましたら、あくまで月に一・五日分の労力は十八カ月かかれるということでございます。余力があるなら、ほかをやったらいいという問題ではないと思います。
  175. 塚本三郎

    ○塚本委員 私はあくまでもしろうとですから、そういうふうに数字で言われると、これはそうかなと思うのか、あるいはごまかしているんだなというふうに思うのか、判断がつきかねるから、長官の言われることを、そうでございますかとお聞きするよりしかたがないと思うのですが、しかし、一・五日くらいずつでいわゆる十八カ月ですか、それくらいな間でこの七十何万件の公開の分類がはたしてできるのでしょうか。私はそんな簡単なものじゃないというような気がするのですけれども、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  176. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いま申し上げましたように、審査官の仕事は、自分が持っておるものについて読んで分類をつけて、そしてデータシートに所要の事項を記載する、それだけでございます。それで、先ほどいろいろ計画した結果、月のうら一・五日でそれができるということでございます。
  177. 塚本三郎

    ○塚本委員 私、実務家じゃないから、そこまで重ねて長官がおっしゃればさらにお尋ねするつもりはございませんから、先に進んでまいります。  公開公報をいわゆる管理するということは、たとえば自分たちのそういうものが他に盗まれるということを警戒していく立場から見て、重要なことだと思うのです。ところが、大きな会社はそういうふうに警戒し、そしてどこかで使われておりはしないかということのためにいわゆる人員を配置することはできると思うのです。しかし、小さな中小企業者あるいは個人の発明家等は、どこかでそれが盗用されておる場合、盗まれておっても、それを知るすべがきわめて薄いというふうに判断すべきだと思うのです。だから結局守られるのは大きなものであって、実は小さなものは盗まれっぱなし。いわゆる補償の方法等はあったとしても、実際には盗まれたということさえもわからないという形におちいる心配がある。いかがでしょうか、その点は。
  178. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大企業の場合ですと、担当者はもちろん多うございます。ただ、担当者が多いということと同時に、やっておる分野も多うございます。で、特に発明でもって成り立っておる中小企業の場合ですと、もちろん分野はきわめて限定された分野でございます。したがって、そういった場合ですから、大企業が絶対的に有利だとは私は思いません。といいますのは、先ほど言いましたように、それぞれ人員と分野というのはございます。大きければ大きいだけ分野は広い。ただ全般的に、訴訟等をすればどっちが勝つか。これは特許権の場合も同じで、そういう意味で一般的には大企業が有利だというのは、いまの特許訴訟でもそういう面は私はあるかと思いますが、したがって、圧倒的に大企業は有利だとか、中小企業は不利だとか、そういう問題ではないんじゃないか。ただ、先ほど言いましたように、程度の差こそあれ中小企業より大企業が有利な面ももちろんございます。
  179. 塚本三郎

    ○塚本委員 訴訟のことを私は申し上げておるのではない。盗まれてそれが使われておるということを知る、そういう能力というものが小さいものはきわめて薄い。もちろん大企業は専門の分野が多いから、だからそれは盗まれる範囲も多いから同じだというのじゃないと思うのです。一人や二人でやっておるところは、それだけにかかり切りですが、百人が特許関係やそういうような開発に当たっておるような企業においては、その百人が実は相互的に警戒の目を光らしておることができるから、分野は百倍になっても、その警戒の範囲というものは百分の一になってくるはずなんだ。だから結局、大きいところは自分の分野でなくとも、よその分野でも、盗まれたことを察知する確率はきわめて大きい。ましてやこういう形になると、企業においてはいわゆる監視員たるべき人を専属で雇うことも可能であり、すでに大きな企業においてはそういう準備をしておるといううわさまで飛んでおります。こういうことを考えてみると、裁判のことはあとでお聞きいたしますが、小さいものは、いわゆる盗まれたということを察知する能力さえもきわめて限定される、このことを心配いたしております。そういう心配はないのでしょうか。
  180. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一般的に、もちろんそういう心配は私もございます。ですから現行法の場合、特許権がなったあともそういう懸念がないというわけではない。それと大体同じ事情が公開の場合にも行ない得る可能性があるというふうには考えられます。
  181. 塚本三郎

    ○塚本委員 だけれども、それは同じ権利じゃございませんから……。片一方におきましては、きちっと特許ができたものに対しては犯罪者としての盗用に対する心理が働くでしょうし、いわゆる特許がおりるまでの状態においては、しばし失敬といういわば軽い気持ちでやられる心配というもの、これは、日本の国の法慣習にならった国民生活上からくる一つの欠点だろうと私は思っております。道徳的にすべてが縛られておるというのではなくて、法律に触れなければというような国民生活、なかんずく経済界におきましては、いわゆる競争の激しい中だから、それを特許のおりたものと同一にして、そういうことは同じことなんだというふうには当たらないという気が私はいたします。ちょっと長官の御答弁は大ざっぱな御答弁のように思いますけれども、時間がございませんから先に進んでみたいと思います。  もし、これで公開されてそれが盗まれた場合に、補償を請求するのに、具体的にいわゆる個人の立場で――大企業の場合はいろいろ準備をしておるでしょう。中小企業者や個人の発明家たちが盗用された場合、具体的にどういう方法をとったら容易に権利を守ることができるか、これを御説明いただきたい。
  182. 荒玉義人

    荒玉政府委員 法律の手続といたしましては、模倣しておる人に対して、実はそれは私のこれこれの権利で抵触するからと警告を発していく、あるいは補償金を請求していく。もちろん請求といいましても、正式の裁判の請求は出願公告後でございますが、警告を発していくというのが普通の姿でございます。で、先ほど紛争処理機関の問題で申し上げましたように、事実上の争いを解決する手段といたしまして、この四月から発明協会でそういった機関がございます。それで、ひとつお互いにそこであっせんしてもらおうじゃないかというようなことで、相手方が承諾すれば、そういったところを利用いたしまして、そして具体的な争いを解決していく。前者はいわばオーソドックスな解決後者は事実上解決する一つの有効な方法だと思います。
  183. 塚本三郎

    ○塚本委員 これも大きな意見が分かれておりますので、私ども第三者的な見方からすると判断に困るのです。発明協会というけれども、発明協会みたいなものは、発明家の立場を守ってくれる団体ではないというふうな断定的な言い方で、反対の陳情が押し寄せてきておりますこと、これも長官も御存じだと思います。だから、そんなところでつくられてみたところが、いわゆる発明家を守ってくれるものじゃないと、最初から認めないという人たちが、相当大きな声として私たちの周辺に渦巻いております。この点は長官はどうお考えでしょうか。
  184. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それぞれの立場でそれぞれの意見はあるかと思います。私たちは、発明協会は発明者の立場を保護する機関だというふうに見ておりますし、発明を保護しないというふうにはどう見ても考えられません。
  185. 塚本三郎

    ○塚本委員 それではお尋ねいたしますが、その発明をしようとしておる人たちや実際の発明家たちは、全部発明協会の中で何らかの機関に携わっておると信じてようございますか。
  186. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ちょっと塚本先生の御質問、趣旨がよくわかりませんが、何らかの機関といいますと、役員とか云々ということかと思いますが、発明者が役員になっておる場合もございますし、あるいは会社の技術担当、その他担当の経営者が役員になっておる場合、それぞれあると思いますが、発明者がすべて何らかの機関という意味でなくて、それぞれの発明者の中、あるいはそれぞれの人が役員になっておるわけです。もちろん発明者もございます。
  187. 塚本三郎

    ○塚本委員 私のお聞きしたがったのは、いままでいわゆる発明の研究をなさっておいでになる方たち、発明家たち、こういう人たちはすべて発明協会という組織に包含されておると判断してようございますか。
  188. 荒玉義人

    荒玉政府委員 発明協会のメンバーになるかどうかは、もちろん本人の自由でございます。したがって全国の発明者がすべて発明協会の会員ではございません。ですから、発明者で発明協会の会員でない者もございます。
  189. 塚本三郎

    ○塚本委員 それは、発明協会のメンバーになっておらない発明者等は、一体何割くらいあるというふうに踏んでみえますか。
  190. 荒玉義人

    荒玉政府委員 発明者であって協会の会員でない数字が何割か、私、いまのところ存じません。
  191. 塚本三郎

    ○塚本委員 私が危惧することはこのことですね。発明協会は、それは大きな会社等は入っておるけれども、実際に発明の実務家等はほとんど入ってないのだ、いわゆる登録されたものやそういうもの等のパンフレットを売る機関なんだというふうに私たちに説明されると、そんなものかなと、私は実は思ってしまうわけでございます。ところが、いや、そうじゃない、きちっとそれは入っておりますよと言われると、私はいままで多くの法律案の審議に携わってまいりましたけれども、この特許ほど不愉快な気持ちを持つことはないんです。一つの事実に対して、実は全く百八十度違ったような意見が入ってくる。いや、それもそうだけどというふうな形で、ある程度相手方の意見を認めつつ、こういう欠点がありますと言ってくるのが、賛否両論のいままでの姿でございます。しかしながら、この法律に関する限りは、いわゆるプラスはなくてマイナスが百だというふうな意見等が出てきてみると、全く私たちは、すぐ調べてみればわかるようですけれども、こういう技術的なものはいわゆるわかり得ない。だから、たとえば長官のいままでの経験から、いわゆる特許の申請を出されておる人たちの中で、発明協会に入っておらない、メンバーになっておらない人は何割くらいか、発明協会に何割くらい入っておるか、おおよそその点はつかんではみえないんですか、どうでしょうか。
  192. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いまの数字は、私いまのところつかんでおりません。おそらく言っておる人は、本部のことを言っておるような感じがいたすんです。御承知のように、発明協会は各地に支部がございます。そうしてもちろん、活発な県もございますし、そうでない県もございますのですが、だから本部のことがおそらく中心のような感じがいたします。実際発明家であり事業家というものは、私の知った支部でもかなりございます。ただ、何割かといいますと、ちょっといまのところ資料がございません。
  193. 塚本三郎

    ○塚本委員 発明協会がいわゆる紛争のいろいろなことについては調停等をやってくれるという。しかし、そんな人たちは二割か三割であって、あとの八割が不満を起こしておる、反対しておる、あるいは信用してない、こんなところに金をつぎ込んで、こんなところに調停させても、くその役にも立たない。だが、これが七割、八割という大勢であって、異端者といわれる二、三割の諸君がこれを非難しておるだけだというならば、民主主義の世界においてこれもいたし方ないかもしれない。私たちはその意味で、一体発明協会に、地方、中央を問わず、いわゆる何割くらいが加盟しておってくれるのか、このことをおおよそつかんでおらなければいけないと思うのです。判断の下しようが私どもはないと思うのです。だから、おおよそでいいから、どれくらいの割合で発明協会のいわゆるメンバーとなっておるか、このことを述べていただかぬことには、私ども、発明協会がしてくれるといっても、大きいやつのわずかだけが集まっておるだけでは、全く信用するわけにいかないと思いますが、どうでしょう。
  194. 荒玉義人

    荒玉政府委員 発明協会がやるという場合に、発明協会のやり方は、たとえば技術的に斯界の権威者、これは何もメンバー、発明協会の会員を指名するわけでもございません。技術的に、あるいは経理面、つまりいろいろ計算しなければいけません。あるいは法律面に卓越した人を常時登録いたしまして、その事件に最も適した人をそのつど指名する、こういうことでございます。したがって、発明協会の理事会でそういうものを決定するわけではもちろんございません。したがって、そういうほんとの専門家で、そのつど独立して判断してもらうということでやるように、われわれは指導しておるわけでございます。ただ、先ほど言いましたように、会員数、中で発明者が何割か、これはいまのところ資料がございません。後日調査いたしまして御報告いたしたいと思います。
  195. 塚本三郎

    ○塚本委員 昨年の私の質問にも、長官は、発明協会を母体としていわゆる紛争を解決させるような、そういう処置を講じます、というような御答弁が速記録に載っております。だから、いわゆる発明協会そのものがやるんじゃないことは、重ねて長官も御説明したことは、私は承知いたしております。だが、いわゆる発明家たちにとって、その発明協会というものが信用されておる――その何割ということがわからなければ、過半数を占めておるかどうかということはわかりませんか。
  196. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いまの資料ではわかりません。
  197. 塚本三郎

    ○塚本委員 しかし、そういう過半数を占めておるかどうかもわからないような団体を信用して、相当の金をつぎ込んでと、こういうふうな昨年の御答弁でございます。この金はどこからつぎ込むのでしょうか。
  198. 荒玉義人

    荒玉政府委員 あくまで協会の自主的な費用でございます。国は全然関係しておりません。
  199. 塚本三郎

    ○塚本委員 いわゆる盗まれるかもしれない。そしてまた、そのときの補償請求をしよう。裁判になるならば相当の時日がかかる、費用がかかる、しかし幸いなことに、そこまでもっていかなくても、発明協会が母体となって、いわゆる有識者等を委嘱することによって、相当な金をつぎ込んで紛争処理の任に当たらせる機関ができます。その金はと聞けば、発明協会そのものが出します――それじゃ、信用しない諸君にとっては、向こうへ持っていかれてしまって――初めから発明協会の過半数を占めておるという現状の中にそういうことがなされるならば、私は圧倒的な信憑性を持つと思いますが、それさえもつかんでみえないところで、そうして発明協会自身が金を出すということになると――発明協会の会長は、実は相当の大々会社の社長さんが会長なんだ、こういうような形になってまいりますと、論理からいっても、これに反対をなさる人たちの危険という叫びというものが、私たちは同情できるような気がいたすのですが、どうでしょう。長官、すなおにそういうことを、反対しておる諸君に、そうかといって納得させるような、確たる説明をなさる必要があると私は思います。どうでしょう。
  200. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろんそういう意見の方々は、私具体的に承知いたしております。私も、そういう方々と二、三回会合いたしまして、そういう意見の気持ちを十分承知しております。したがって、もちろんそういうものでないということは申し上げてはございませんですが、いろいろな点でその人たち意見は聞いておりますが、初めから発明協会というものに対する――どうも私も正直に申しまして、よく理由はわからないのですが、大きな疑問を持っておられる方も承知しております。ただ、先ほど言いましたように、その原因がどこにあるのか、実は私も突き詰めてこれだというものはございません。たびたび話は聞いております。
  201. 塚本三郎

    ○塚本委員 しかし発明協会の中にメンバーの過半数が入っておるならば、この制度はいいという形で押してきているし、そしてまた、審議会からの答申もこうだというような形だから、君たちはこの段階ではその意見に多数決で従うべきだ、しかしその心配な点はこういうふうにして補ってあげるんだというふうな、やはり反対の諸君に対する――納得できなくても、第三者が見て通るような大義名分というものがあるはずだと私は思います。しかし、発明協会というものがそんな権威のないものであるとするならば、そういうものを母体とした仲裁の機関あるいはあっせんの機関等があっても、危惧する人たちにとっては、それは安らぎにはならぬというふうな心配が、いまなお私自身に消すことができないということです。  時間もおそくなりましたからこれ以上私は論じたくございません。大臣がお見えになりませんから、私は質問をこれで終わりたいと思いますが、私のこの危惧に対して一言だけ長官からその所信を述べていただきたいと思います。
  202. 荒玉義人

    荒玉政府委員 発明協会の中で別な動きがあるということは長年ございまして、いろいろその原因はあると思いますが、私、本部にもいつも申し上げておるわけですが、できるだけ一本化した形がとり得るかどうか、これは私も絶えず申し上げております。いまのような状態が一日も早く解消して、発明協会が一本化して同じ行動ができるようにさらに努力してまいりたいと思っております。
  203. 塚本三郎

    ○塚本委員 あとの質問はまた大臣がお見えになる後日に譲りまして、あと関連質問があるそうですから……。
  204. 中村重光

    ○中村(重)委員 ちょっと長官に尋ねるのだが、いま発明協会に特許庁が何か委託してやらしておることがありますか。
  205. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許庁の業務を委託してもらっておるものは、いまのところございません。
  206. 中村重光

    ○中村(重)委員 特許庁の業務でなくて、特許庁が出願しているものを一般に頒布することがある。それを何か民間団体に委託してやらしているのがあるでしょう。それは何です。
  207. 荒玉義人

    荒玉政府委員 おそらく中村先生のおっしゃいますのは、公報を発明協会に払い下げまして、そうして発明協会は国から買って民間に売る。委託ではございませんで、直接業務でございます。おそらくそういうことではないかと思います。
  208. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは年間どのくらいの金額になるのですか。
  209. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四十四年度で特許庁の払い下げ価格合計で二億八千九百万、あと端数は省略いたします。
  210. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから、いま塚本君が指摘したように、発明協会を母体とした紛争処理をやらせようということだった。そこでいま、公報の払い下げをやって、これを印刷をして、その利益によって発明協会というのは相当な運営をしている。その他の収入もあるだろうけれども。そこを特許庁は、発明協会はこういうことでもうかっているんだから、国の金はつぎ込まなくたって、発明協会の自主的な経費をもってこれをやらせよう――そこに問題が出てくるんじゃありませんか。国の金をつぎ込まないで発明協会にそういうことをやらせよう――実際問題として、それで価値のある、権威のある紛争処理ができるとお考えですか。そんな不見識なことでよろしいんですか。
  211. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど簡単にお答えしましたが、もちろん金自身は発明協会の金でございますが、われわれは、発明協会全体を通じまして、発明者の利益になるようにいろいろ業務面で指導しておるわけでございます。したがって、その指導の一環として、先ほど申しましたような機関をつくって発明者の利益を守るようにというように、もちろんわれわれ指導しておる次第でございます。
  212. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから、早期公開、それから審査請求、これによっていろいろな業務がふえてくる。そのことをまた発明協会にやらせるということになるんですよ。そうすると、発明協会の利益というものはさらに拡大する。そこをちゃんと当て込んで、発明協会に紛争処理をやらせよう、そういったことか――この紛争処理というのはほんとうに重要な柱ですよ。新しい制度による大きな柱です。そういったみみっちいというのか、何か私はみみっちいということばは適当ではないと思うんだが、まあ国の金をつぎ込まないからいいじゃないか、これは私はきわめて危険だと思うんだ。だから、新しいこういう制度をつくる場合は、それなりに国が十分指示、指導ができる、監督ができる、そういう体制でないといかない。だから、国の金をつぎ込まないからよろしいんだ、発明協会がこれは自主的にやるんだ――そんな無責任なことで重要な任務を遂行していく、運営をしていくことができるということをお考えになること自体、私はどうかしていると思うのだ。きょうは私は質問しませんが、ともかく一年間、あなたはわれわれの指摘に対していろいろ勉強されたと私は思っている。反対をしている人のいろいろな意見だってお聞きになったと思うのだ。それに対してさらに説得力のある明快な答弁を私は期待しておった。ところが、同僚諸君の質疑を聞いていると、少しの進歩もなければ発展もない。説得力を持ってない。そういうことでは、どうしてこの法律案に対して、われわれが前回よりも理解が深くなってきたということで賛成をしていくというような、そういう気持ちが生まれてきましょうか。不勉強というのか、無責任というのか、私は非常に残念なんですよ。だからこれから、与党の諸君が考えているように、二十八日までに議了してこれを上げ得るのかどうか。それは、あなたの説得力のあるところの説明であるとか答弁であるとか、なるほどこれでわかった、しかしこういったような点で多少これは直さなければならぬところがある、あるいは附帯決議等をつけて処理していいのだというように、私どもが納得できるのであるならば、私はあえて――七十八万件なんていう滞貨があるのだから、これは政府の責ではあるけれども、現実の問題として発明者の権利、国民の権利が押えられているのだから、これは何とかしなければならぬということは、政府、特許庁だけではなくて、私ども会議員としてもそれを考えているのですよ。だがしかし残念ながら、あなたの説明なり答弁なりという中では、これではどうにもならないというような気持ちがしてならないのです。だからして、まだこれから二十七日あるいは二十八日と、私どももさらに勉強して質問をしてまいりたいと思います。だから、あなたのほうでもひとつもっと勉強をされて、十分説得力のある、納得のできるような説明なり答弁をしていただきたいと思うのです。新しいこれにもまさったようなことがあるならば改めることにやぶさかではない、こうあなたはおっしゃるわけなんですよ。だがしかし、あなたは自信を持って御提案になっておられるであろう、私はそのように考える。ことばとしてはそうおっしゃったのだけれども、いろんな私ども意見を聞いて、進んであなたのほうでこれを撤回をして、あらためて出そうなんていうようなことをお考えになっておられるのではないであろうと私は思う。しかし、あなたのそれが信念であるならば、正しいと思うならば、それでよろしいと私は思うのです。私どもは私どもなりに判断をして、反対をするのか、修正をするのか、いずれにいたしましても、私ども態度を決定をしてまいりたい、こう思うわけですが、だからして、あなたあるいは大臣が、私どもが納得いくような説明をすることができるように、十分な資料なりまた答弁を用意をしていただきたいということを要請をいたしておきます。
  213. 八田貞義

    八田委員長 川端君。
  214. 川端文夫

    ○川端委員 私がちょっとお願いしておこうということは、中村委員からお話があったからよろしいようなものでありますが、二十七、八日のこの審議にあたっての資料が、先ほどからの答弁では、ことばのやりとりだけでは納得できないと考えたから、発言をお願いしたわけです。いま話になっております発明協会の構成の内容なり、あるいは事業内容なりの詳しい資料が出せるかどうか。一気にものを言えば、あしたは土曜だし、あさっては日曜で恐縮だけれども、二十七日の朝まで出せるのかどうか、お尋ねしてみたいと思うのです。
  215. 荒玉義人

    荒玉政府委員 できるだけそろえて間に合わせるつもりでございます。
  216. 川端文夫

    ○川端委員 以上で終わります。
  217. 八田貞義

    八田委員長 次回は、来たる二十七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時四分散会