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1970-04-10 第63回国会 衆議院 商工委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十日(金曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長代理理事 浦野 幸男君    理事 鴨田 宗一君 理事 橋口  隆君    理事 前田 正男君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 塚本 三郎君       石井  一君    稲村 利幸君       宇野 宗佑君    遠藤 三郎君       大久保武雄君    神田  博君       北澤 直吉君    小峯 柳多君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    進藤 一馬君       山田 久就君    松平 忠久君       松尾 信人君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         通商産業省企業         局長      両角 良彦君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     渡部  信君         水産庁漁政部長 平松甲子雄君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 鮫島 泰佑君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   近江巳記夫君     新井 彬之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長大阪ガス爆発事故について派遣議員団長として調査に参加しておるため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  通商産業基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質問の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは輸出映画の問題を中心質問をするわけですが、その前に各省からおいでになっていただいておりますので、離島振興の問題について若干お尋ねをしてみたいと思います。  第一に、離島に対してフェリボートが就航をする場合、自動車損害賠償保険料本土同率に適用されるというのが四十四年の大蔵省告示第九十九号で出されているわけですが、この考え方についてお聞かせ願いたいと思います。
  4. 渡部信

    渡部説明員 お答え申し上げます。  先生承知のことと思いますが、現在の制度のもとにおきましては、離島におけるいわゆる自動車強制保険保険料率というものは、自動車保険料率算定会が計算をして、これを大蔵大臣に提出し、大蔵大臣認可を受けた上で実施するということになっております。ただ、大蔵大臣認可をする際には、自動車損害賠償責任保険審議会というものがございまして、それに前もってはからなければならぬという仕組みになっておるわけでございます。したがって、先ほど御質問離島の問題についてでありますと、離島というものをどのように定義するかということでございますが、これも大蔵大臣が先ほど申し上げました審議会にはかってきめておりますが、現在の離島というのは、橋、トンネルまたはフェリボートによる本土との交通が不可能なところを離島とするというように考えられておるわけでございます。したがって、そういうところにつきましては本土とは違った保険料率を適用するけれども、そういう施設があって本土との交通が可能なところにつきましては本土並みの料率を適用する、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 いまの可能か不可能かという問題になってくるとなかなかむずかしいのですね。具体的な例で申し上げたほうがわかりやすいと思いますが、私は長崎県ですが、壱岐対馬というところがございますね。壱岐対馬に参りますには、長崎から佐賀に行って、福岡に行って、それから長崎県の大きい離島である壱岐対馬に行く。壱岐の場合にはもう一つのコースがあるわけでして、佐賀県の呼子町から壱岐に直接行くというコースがあるわけですが、それの最短距離にいたしましても一時間二十分くらいかかる。たしか四十九キロではなかったかと思うのですが、壱岐対馬の博多−厳原間というのは一日に一回なんです。そうすると、佐賀を経由してまいりますのに、フェリボートが就航するにいたしましても、一日一回か二回ということになりますね。そうなってまいりますと、アンケートをとってもわかるのですが、壱岐島民そのものフェリボートを利用しないのですよ。利用する人はたまたま本土から離島に行く人だけですね。フェリボートが一日一回か二回就航するのに対して、その離島島民は利用しないのにもかかわらず、保険料本土同率になるということはどう考えても不合理だと思うのですよ。いま私が例としてあげた壱岐扱いなどについても、いろいろと陳情もあったやに伺っておりますので、検討しているのだろうと思うのですが、こういう例はいかがでしょう。
  6. 渡部信

    渡部説明員 お答え申し上げます。  現在の制度は先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、ただいま先生からお話のありました壱岐の問題、こういうところは、過去において、フェリボートあるいは橋梁がかけられたために本土並み扱いとなったというところはたくさんございます。けれどもその場合と壱岐の場合とは、おのずからいろいろな条件が異なるのではなかろうかという問題が多分にあるわけでございます。すでに地元のほうからもわれわれのほうに対していろいろな説明もございました。したがって、その辺のところにつきましては、従来のような考え方一点ばりで進めることについても問題があるのではなかろうか。何か従来の考え方について検討を加える余地があればこの際考えなければならぬ。しかしながら、その際におきましても、従来本土並みにしたものとのつり合いその他の問題がありますので、その辺のところをどうするかということについて、いま慎重に内部において検討中でございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 考え方はわかりました。一番最後に言われた、他との均衡とかいうことをとらなければならぬということになりましては、現実を無視することになろうと思います。形式にこだわることなく、実態を十分つかんで、その実情に沿うような扱いを前向きでしてもらわなければならない。島民所得水準も非常に低いわけですね。したがって、生産はマイナス運賃、消費はプラス運賃ということになって、たいへんな物価高の生活苦の中にあえいでいる。そういう場合に、形式によって、全く利用しない島民に対して負担を二倍三倍と高めていくということは、私は問題があると思います。ですから、前段あなたがお話しになったような線に沿って取り扱いをしてもらいたいということを要望いたしておきます。  時間の関係がありますから、それでは次にお尋ねしますが、同じ離島振興から。  離島空港がないということは、離島にもよりましょうけれども——これも具体的な例で申し上げますが、人口七万を擁する長崎県の対馬空港がない。しかもこの空港は、地元民並びに当該県の疑問をむしろ押えた形で、運輸省航空局指導性でもって水陸両用の飛行機が飛ばされた。ところが、これが一回か二回飛んで、あとはだめになった。自来そのままになっているということなんですが、陸上空港を早く整理してもらいたいという強い要請がされておったわけですが、四十五年度の予算の中で、経済企画庁官崎局長の積極的な取り組みと、それから航空局関係者協力によって、実施計画予算が八百万円計上されていると思うのでありますが、これからの具体的な進め方について、経済企画庁並び運輸省航空局考え方をお示し願いたいと思います。
  8. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 御指摘のとおり、多年の懸案でございました対馬空港につきましては、四十五年度の予算におきまして八百万円の実施設計調査費が計上されることになりました。この予算は、いわゆる計画調査とは異なりまして、着工を前提とする調査でございまして、この八百万円でどの程度調査をやるかということを航空局のほうとも御相談してこれからきめる段階でございますが、この調査内容によりまして、空港工事計画内容を固めまして、そして着工に持っていきたい、こういうふうに考えております。実施設計が一年で済むか、あるいはもう少し時間をかけなければならないかということは、現地にぶつかってみないとわからない点もございますので、いまのところ確たるスケジュールを申し上げる段階にございませんが、大体こういった実施設計調査は一年ないし二年でやるというのが通常の場合のやり方でございますので、そういった心組みでこれから取り組んでまいりたいと思っております。全体の工事費につきましてもかなり大きな計画が県のほうから出ておりますが、こういった内容等につきましても、これから十分詰めまして、できるだけ経済的なものとしてやっていきたいと考えております。そういった形でこれから取り組んでいくつもりでございます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 それで航空局お尋ねをしますが、八百万円の実施設計調査費というのは、単なる調査費なのか、あるいは一部工事費が含まれているのか、その点いかがですか。
  10. 鮫島泰佑

    鮫島説明員 お答えいたします。  今年度の八百万円の予算につきましては、実はまだ大蔵省との実施計画の協議が済んでおらないわけでございますが、県と私どものほうで打ち合わせしております範囲で申し上げますと、これは全額設計委託費という形に使おうとしているわけでございます。なお、この国の予算のほかに、県のほうでさらに、いままで不十分でございました地質調査あるいは地形測量などを別途あわせて行なっていただくという予定をしております。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 この調査後において詳細計画というのが立てられるであろうと思うわけですが、現時点においての全体計画というものはあると私は思うのですが、その点はどうなっていますか。
  12. 鮫島泰佑

    鮫島説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、これから調査の不十分な点を補い、かつ設計に入るわけでありますが、大体の現在までの見当といたしましては、全体で二十数億円というような金額になるのではないかとわれわれは考えております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵省と折衝中ですからあまりはっきりしたことは言えないということで、いまのようなお答えになったと思うのですが、これは非常に長い間の懸案事項でして、八百万円の調査費はついたけれども、ほんとうに工事にかかってくれるのだろうか、不安があるわけですよ。しかもその不安は憤りに満ちたものがあるわけですよ。ですから、いままであなたのほうでは、五ヵ年計画に入れますということをはっきり言ってきたが、どうも態度があいまいであった。少なくとも私の知る限りにおいては、四十五年度のこの調査費をつけるということについても、あなたのほうでは積極的な姿勢をお示しにならなかったということが伝えられて、非常に島民は憤りを感じておった。ところが、幸いにしてこの調査費というものが計上されていまほっとしているのですが、申し上げたように、一まつの不安もある。そこで、この全体計画というのは何ヵ年でやるのか。そしていつごろまでに整備が完了するのか。当然あなたのほうは、これはずい分長い間の問題ですから、御計画はあると思うから、お答えを願っておきたいと思う。
  14. 鮫島泰佑

    鮫島説明員 お答えいたします。  先生がおっしゃっていただきましたように、いつまでにこれをやるということは、現在の段階で公式に申し上げるわけにはいかない情勢でございますが、いずれにいたしましても、特別の皆さま方の御努力によりまして、着手ということで——いわゆる調査費ではございませんで、事業着手するということで、今年度から開始するということが認められましたことは、非常に私ども喜んでおりまして、その精神に従いまして、一刻も早くこれができ上がるように努力をしていきたいと思っております。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 端的に言って、私自身ももう今度はだまされないという感じですよ。この問題についておそらく私は七、八回質問をしてきている。そのたびごとに、まあ遠からず実施されるであろうという期待を持たせるような答弁であった。ところがあなたのほうは、委員会に出てきての答弁は前向きなんだけれども、実際おやりになることはうしろ向きなんだ。したがって、いつまでにこれを完了いたしますということを言明できなければ、いつまでには完了しなければならない、こういう形で努力をしたいというあらかじめのめどは、この際ひとつ考え方としてお示し願っておきたいと思う。
  16. 鮫島泰佑

    鮫島説明員 お答えいたします。  まことに申しわけありませんけれども、公式に何年までということは申し上げる立場にございません。しかしながら、四十五年度の予算におきまして事業着手ということが認められたといいますことは、いままでいろいろお答えいたしておりました時点とは、すっかり様相が変わっているわけでございます。そういうものに基づきまして、当然私どもとしましては、いままでと違いまして、一刻も早くこれをつくり上げるということに踏み切ったということだけは申し上げられると思います。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 あなたにそれ以上の答弁はなかなかしてもらえない。あらためて私は局長に来てもらってただしていきたいと思います。  宮崎さんにこの機会にちょっとお尋ねいたしておきますが、御承知のとおり離島はたいへんな水不足で、特に渇水時に至っては、災害救助法を発動してもらってやらなければならぬという実情にある離島が非常に多いわけです。淡水化についてはもう実施段階に入っているのかどうか、見通しについてお聞かせを願いたいと思う。
  18. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 海水淡水化の問題は、御承知のとおりなかなか技術的に大きな問題でございます。私ども離島の水の問題と取り組んでおりまして、非常に水源の面で困りますので、こういった技術が何とか早く実用化されるようにということを希望いたしておるわけでございますが、現在のところ、通産省の工業技術院におきましてこの研究開発を進めております。四十四年度が二億円、四十五年度は六億五千七百万円という程度予算がついておるようでございまして、これから五十年度ぐらいまでに五十億ぐらいかけてこの開発を完了したいというようなお考えのようでございます。  一方、原子力利用による淡水化の問題というようなことが、科学技術庁の系統である程度研究が進められておりますし、そのほか厚生省のほうなどでも検討が行なわれておるようでございますが、いずれにいたしましても、現在実用化されておりますのは、御承知長崎県の池島炭鉱の低品位炭を利用した蒸留方式によるものが実用化されておりますが、これは非常に特殊の条件のものでありまして、一般的にこの方式が適用できるということにはならないようでございます。結局これから後の技術開発がどの程度進むかということによってくるわけでございますが、私ども全国総合開発計画をつくりました段階では、少なくとも今後十年ぐらいのうちに、そういったものについてかなり積極的に取り組まなければなるまいということを姿勢としては出しております。この問題はアメリカでだいぶ積極的にやっておりまして、幾つか実際に行なっておるプラントもあるようでございますが、そういったほうの進みぐあいなどもいろいろと取り入れて研究が行なわれておりますので、そのうちには何とかこの問題についてのめどが立つのではないかと期待をいたしております。  なお、経済的な問題もございます。現在の段階では、こういった形で蒸留式等でやりますと非常にコストが高くなるという面がございますので、そういった面もあわせて解決をしていかなければならないと思っております。先ほど申しましたように、工業技術院のほうの予算ども四十五年度にはかなり大幅な増額が行なわれておりまして、積極的に取り組むということが明らかになっておりますが、今後とも、私どものほうなども水資源開発の仕事を担当いたしておりますので、ひとつ関係のほうともよく御相談をいたしまして、このプロジェクトが進むようにわれわれとしても協力をいたしてまいりたいと考えております。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 申し上げたように、いわゆる渇水時に水がなくてどうにもならなくなって、災害救助法を発動するというようなことはよくよくのことなんですよね。そういった具体的な問題にぶつかってよくおわかりになっていらっしゃるのだと思うのですが、それらに対しての当面の何か対策といったようなものはお考えになっていらっしゃらないですか。
  20. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 御承知のとおり、離島水源対策の問題としては、簡易水道事業離島振興事業としてこれを取り上げておりまして、かなり積極的にこの予算増額して対処しておるわけでございます。現在のところ普及率はまだ六三%という程度で、全国の七七%に対して劣っておりますけれども、ひとつこの面で積極的に取り組んでいくということで進めてまいりたいと思います。この場合も非常に水源が問題でございまして、本土からの送水というようなことも一部行なわなければならないというような事態も出ておりますが、そういった面も含めまして、できるだけひとつ見つけられる水源開発してやっていくということでまず対処していくことが大事である、こういうふうに考えております。離島をかかえておる各県等におきましても、こういった水の確保の問題について、それぞれいろいろの段階を分けて計画などを行なっておるようでございまして、私どもも、そういった県のお考え等に従って、今後とも積極的にひとつ離島振興事業として取り上げてまいりたいと思っております。四十五年度は四億二千八百万円くらいの予算が計上されておりますが、これも前年度に比べますと、三割程度のかなり大きな増額でございます。さらに今後ともこの面で努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 努力をしておられることはよくわかったわけですが、お話がございました簡易水道改良工事ですね、これで間に合うところもあるわけですけれども、間に合わない、いわゆる住民が非常に多い大きい離島、これはどうにもならない。さて本土からの送水、これは本土渇水期ですから、本土自体が困っているということでは、なかなか水を分けてやることはできないという深刻な社会問題ということになっていますね。それで、換水化をして真水にするというような対策等も、それぞれ検討していらっしゃると思うのですが、これとてもいわゆる助成金の問題、コストの問題ということでぶつかってこようかと思うのですが、それらの点についての、何かこれを積極的に当面具体化していくというようなことについての検討はお進めになっていらっしゃいませんか。
  22. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、いま工業技術院等において研究開発が……(中村(重)委員換水化、地下を水を通してそれを真水に変える……」と呼ぶ)こういった本土からの送水なり、あるいはそういうパイプを通してやっておるというのは、現実にも行なわれておりますが、いままでの制度簡易水道事業として実施いたしておりますために、いわゆる水道施設としての対策が取り上げられておらないという形で推移してまいりましたが、四十二年度から、公益水道補助とかあるいは水源対策補助というような制度が、予算補助制度として取り上げられるようになってきておりますので、そういった具体的な計画が出てまいりましたならば、ひとつ私のほうもこれに対する措置を考えてみたいと思っております。いままでのところ、簡易水道事業としての申請が全部でございましたので、これに対して予算をつけていくということをやっておりますけれども、そういった具体的な計画が出てまいりましたならば、ひとつ検討してみたいと考えます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 ひとつさらに積極的に取り組みをお願いをいたしておきたいと思います。  水産庁お見えでございますからお尋ねをいたしますが、御承知のとおり離島というのは、農業と漁業、あるいは林業というのがそこの産業ということになるわけですが、私の長崎県の離島ということになってまいりますと、むしろ水産業中心ということになってくるのです。その水産業が脅かされているのは密漁船の問題なんです。私はここへ新聞記事も持ってきているのですが、この密漁船で、全く離島漁民というのは、これでは何とかしてもらえないだろうか、国も県も何をしているのだというような悲痛な声をあげているのですがね。それぞれの努力はしていらっしゃるのだと思うのですが、なかなか思うにまかせないというのが実情であろうと思うのですが、この密漁船に対する監視体制というものはどのようになっているのでしょうか。
  24. 平松甲子雄

    平松説明員 先生指摘のとおり、離島における産業として水産業が非常な重要なウエートを占めておるというようなことでございますが、そういうふうな産業を保護するという意味からも、あるいは資源の保護という点からも、漁業秩序維持、確立という点からも、密漁船取り締まりというものは非常に重要な問題であるという認識を私どもは持っておるわけでございますが、そういう密漁取り締まりというものに対しまして、現在私どもが持っております監視体制といたしましては、水産庁の本庁で官船を三隻、用船を二隻配置いたしまして取り締まり指導に当たりますとともに、福岡漁業調整事務所ほか六事務所官船用船十三隻をそのほかに配置いたしまして、取り締まり指導を実施しておるところでございます。また、特に密漁船が多数発生するような特定海域につきましては、その海域漁業秩序維持、回復ということを重点目標といたしまして、水産庁中心となりまして、水産庁取り締まり船及び航空機並びに関係各県の取り締まり船等と合同いたしまして、取り締まりを実施するということをやっておるわけでございます。このほか、漁業関係法令違反につきましては、海上保安庁の巡視船及び各都道府県の取り締まり船等によって取り締まりを実施しておるというのが現状でございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 お答えのとおりのことだと思うのですが、ところが相変わらず密漁船というのは絶えないというよりも、むしろふえている。私は九州海域のことでないとよくわからないのですが、特に九州海域でも、長崎県の漁民というものが、いかに密漁船によって苦しめられているかという実態を、大体私はつかんでいるわけです。たとえば対馬ですけれども韓国漁船というものが日本の専管水域にわがもの顔に入ってきていますね。最近はこちらの船が向こうの専管水域に入ることがないということで、あまり新聞紙上で大きく取り上げられるということになってないのです。ところが韓国漁船というのは、もう問題にはなっていない。こちらが遠慮してか問題にしないから、あまり新聞等に取り上げられていないのですが、実際にはわがもの顔にやっている。それから沖合いの底引きというのが、これは船名を隠蔽をいたしまして、これもわがもの顔なんですよ。そこでこの九州海域にはどの程度監視船を配置していらっしゃるのでしょうか。
  26. 平松甲子雄

    平松説明員 お答えいたします。  九州海域配置船といたしましては、水産庁の船が十八隻ございますけれども、その中で、福岡調整事務所に配置いたしております船舶が六隻あるわけでございます。そのほか九州各県の監視船といたしまして、福岡県が五隻、佐賀県が二隻、長崎県が四隻、熊本県が三隻、大分県が二隻、宮崎県が一隻、鹿児島県が二隻というふうに配置されておるという実情でございます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 その水産庁の自前の船と、それから用船、これはどうなっていますか。
  28. 平松甲子雄

    平松説明員 福岡調整事務所に配置しております六隻は、全部用船でございます。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 用船と言いますけれども、その用船漁船上がり船ですよ。船足が非常に弱いわけです。ところが漁船というのは、ほとんど新船なんです。足の速い新船に漁船上がり船では、もう使いものにならぬ。のろのろした足の弱い船で密漁船取り締まりというのが可能でしょうか。張りつけておってもどうにもならぬというのが実態でしょう。それはおわかりでしょう。
  30. 平松甲子雄

    平松説明員 先ほどの答弁をちょっと修正させていただきたいと思いますが、用船六隻のほかに、全国を行動海域とはいたしますけれども福岡を根拠地といたします官船が一隻ございます。  御指摘のように、用船につきましては、最近の漁船が非常に高性能化しておるという点で、必ずしも十分な成績をあげ得ないという面もあろうかと思いますが、鋭意努力をして、一隻でだめな点については連携動作によるというふうな形で効果をあげていくというふうな形で努力をしてまいっておる実情でございます。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、私の申し上げている質問に対する答えにならないんですよ。私は現実問題を言っているんです。密漁船を取り締まるのだから、取り締まる体制がないとだめですね。ところが漁船は足が速いんだ。取り締まり船はその漁船上がり船で、もうのろのろして足がものすごく弱いですから、そうすると、張り込んでいるでしょう、逃げ足の早いどろぼうは、のろのろして行っても取っつかまえることはできぬじゃありませんか。だから、そういう実態をどう改善をするのかと言うんですよ。それからあなたは、各県に何隻何隻というお話があったんですが、たとえば長崎県の海王丸なんというのは二十年ですよ。もう使いものになりません。おそらく国の補助はこれはないわけですからね。ですから、各県ともに新船、優秀船にかえたいと思っていましょうけれども、金がないからどうすることもできないんですよ。これでは、密漁船取り締まり監視体制を強化していくと言うけれども、実際は、これはまあ絵にかいたモチで、どうにもならないでいるというのが実態なんですから、この改善策いかんというのが私の質問中心ですから、それに答弁になるようなひとつ答弁を願っておきたいと思います。
  32. 平松甲子雄

    平松説明員 確かに監視船につきましては御指摘のような面もあろうかと思いますが、監視船によるだけでなしに、ヘリコプターを用いまして空からの監視をあわせてやるということ、あるいは海上保安庁の船に頼みまして、海上保安庁の船と一緒にやるというような形でやっておりますし、今後水産庁の船につきましても性能の向上をはかるということで強化してまいりたいというふうに考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 そのヘリをどの程度飛ばして監視をするのかわかりませんが、ところが実際は、ヘリであれは密漁船だなと、こう考えても、これをつかまえることができるのかどうか、なかなかむずかしいでしょう。そこで白鴎丸のような優秀船を建造するという具体的な計画はありませんか。何年度に何隻建造する、そうしてたとえば九州海域にはいつまでに新船を何隻配置するといった具体的計画というものがあって私はしかるべしと思いますが、それはありませんか。
  34. 平松甲子雄

    平松説明員 ただいまのところ、具体的な計画としては持ち合わせておりませんけれども、必要に応じまして増強していく必要がございますならば、更新の際に強化してまいるというふうな形で考えてまいりたいというふうに考えております。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 真剣に密漁船取り締まりをやろうというお考え方がございますか。いまのお答えの中からは、どうも私は感じ取ることができないのです。私の質問に対して——これはおそらく各県から、また各業者の団体等から、いろいろな苦情だとか陳情だとかいうことを受けていらっしゃると思うのですね。私が指摘いたしました、ともかくこのチャーター船というのは漁船上がり船であるというその事実は、あなたも否定なさらぬだろうと思うし、漁船というものはほとんど新船なんだ。古くなったら、いま言うあなたのほうの取り締まり船という形で、それを借り上げをしてもらうというような、いろいろなことをやっているんですが、絶えず新船を建造して、ちょうど乗用車を乗りかえるように——そんな短時日じゃありませんけれども、そういうことをやっているんですよ。実際は監視船はいるけれどもどうにもならぬということが、繰り返して申し上げたように実態ですから、このままではいかないのです。だから私は、白鴎丸のような優秀船のいわゆる新船建造の計画がないということは、これは無責任だと思うのですね。あなたのほうがそういう御計画をお立てにならないのですか。あるいは大蔵省がどうしてもそれをのまないのでしょうか。この後どのような具体的計画をお立てになろうというようにお考えになっていらっしゃいましょうか。その点いかがですか。
  36. 平松甲子雄

    平松説明員 先ほどもお答えいたしましたように、密漁取り締まり体制を強化してまいるということは絶対必要であるという考え方に立っておりまして、ただ、財政上その他とのかね合いで、現在存在するものを最高限に生かして効果をあげていくということ。それから、更新期にくる、あるいはどうしても船が足りないという場合には、そのときどきの事情に応じて新船を建造してまいるというような形で、その新船の建造につきましては性能を向上さしてまいるというふうな努力をしていくわけでございますが、必ずしも、先生指摘のように十分でなかった面もあろうかと思いますので、今後とも努力を重ねてまいりたいと思っております。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 ことばじりはとらえません。十分でなかった面もあろうかということは、正直に申し上げれば、ことばじりをとらえたいですよ。しかし、それはとらえません。まあ、あなたのほうも、これじゃいかぬ、何とかしなければならぬというようなことで、相当あせっていらっしゃるだろうと私は思うのです。それが思うようにいかない。何といったって、あなたのほうが必要な金をどんどん調達できるんだったら、それは思うようにいきましょうけれども、それが実態であろうと思います。しかし、本腰をはめてひとつやってもらいたい。あなたがお答えになりましたような、漁業というものが、いかに、漁民の生活を向上させる上からも、また国民のたん白資源を確保するという面からも重要であるかということについては、あなた自身も御認識になっていらっしゃるわけですから、ひとつこの際最大限の努力をしていただくように要望しておきたいと思います。  それでは、問題の輸出映画のことについてお尋ねをしてまいりたいと思います。  両角局長お尋ねしますが、この輸出映画の問題については、内閣委員会とか、参議院の予算委員会であるとか、国会も重要視して取り上げているわけです。あるいは、新聞であるとか雑誌であるとかというものも、大きく取り上げているようでございますが、あなたのほうも、日本映画の輸出振興ということで設立している輸出振興協会のあり方、政策の実態等々、いろいろと御検討になったと思うのでございますが、輸出振興協会、それから輸出適格映画選定会議というものがあるわけですが、これの性格というものはどういうことなんですか。それから構成はどうなっているのか、お聞かせ願いたいと思う。
  38. 両角良彦

    ○両角政府委員 お答えを申し上げます。  映画産業は、端的に申しまして斜陽化の傾向をたどっております。その映画産業が、わが国の国情なり文化を海外に紹介いたす重要な役割りをになっておりまする点を考えまして、映画産業の健全な発達、再建をはかっていくという趣旨で日本映画輸出振興協会というものが設けられた次第でございまして、この協会は、去る四十一年に、大映、日活、松竹、東宝、東映の五社が協力をいたしましてつくりました社団法人ということに相なっております。この振興協会は、ただいま申しました映画の輸出を推進をいたす母体といたしまして、優秀な輸出適格映画の審査ということを、その協会に設けました審査委員会において行なっております。この審査委員会の議を経ました適格映画を通産省に推薦をしてまいる、そして通産省がさらにこの推薦内容検討いたしまして、適格と認めるものにつきまして興長銀に融資のあっせんをいたす、こういう仕組みに相なっております。また融資自体も、興長銀から一たんこの日本映画輸出振興協会に対して行なわれまして、これから各社に再融資を行なう、こういう役割りをになっておる団体でございます。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 この適格映画選定会議ですね。この審査委員が見て——これは当然会議を開くのですから、その会議で決定をしていくのだろうと思うのですが、これはいわゆる法人格になっていましょうか。
  40. 両角良彦

    ○両角政府委員 通商産業大臣の諮問に応ずる事実上の組織であるというふうに考えております。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 協会のほうは社団法人というお話であったわけですね。ところが、この協会、それから単に通産大臣の諮問機関である選定会議、これが事実上は財政投融資から——各映画会社に対してそれぞれの機関を通してという形にはなりますけれども、これは事実上この両機関の決定というものがなされた場合、そのままという形で融資がされているというのが実態ではなかろうかと私は思うのです。それほどの権限をこれが持つ法的根拠というものがあるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  42. 両角良彦

    ○両角政府委員 通商産業大臣といたしましては、通商産業省設置法に基づきまして、輸出の振興をはかること並びに商一般の改善発達をはかることといった法的な役割りをになっておる次第でございまして、その役割りを的確に、適正に推進をいたしまする事実上の相談の相手といたしまして、このような輸出適格映画審査委員会というものを設けまして意見を伺っておる、こういう次第でございます。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、通産省の、通産大臣の持つ役割りということ、よくわかったわけですから、それだけの役割りがあるならば、それだけの権能と責任があるならば、それに沿うような融資体制というものが確立されていなければならぬと思いますから、以下ずっと質問をしてみたいと思います。  日本映画輸出振興協会に対する政府の出資額というものはどの程度になっていましょうか。
  44. 両角良彦

    ○両角政府委員 協会自体に対しまする出資は政府はいたしておりませんが、ただ、興長銀の行ないまする融資の裏づけといたしまして、資金運用部資金によりまして興長銀債というものの引き受けを昭和四十一年度から四十四年度まで総計五十億行なっておりまして、四十五年度におきましては、さらに二十億円を現在お願いをいたしておる最中でございます。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 五十億と四十五年度の二十億で七十億になるわけですが、そうではないのじゃないですか。四十一年、四十二年、四十三年、各二十億、四十四年が十億、四十五年度が二十億で、九十億になるのじゃありませんか。
  46. 両角良彦

    ○両角政府委員 計算上一年を飛ばしまして、恐縮でございました。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、あなたがおっしゃるように——あなたが形式お話しになる、お答えになる、これはまあ政府委員としては当然なことでしょう。私らはそうした形式の問題よりも実態を申し上げているわけでして、これは事実上この協会に、いま言う九十億という政府の運用部資金というものを、財政投融資という形で貸し付けておるということだけは、実際問題としてはそのとおりであろうと私は思うわけです。そして、この輸出振興協会が各映画会社に対して融資をしておろうと思うのですが、その内訳はどうなっておりましょうか。それから現在の残高はどうなっておるのか。
  48. 両角良彦

    ○両角政府委員 昭和四十一年度から四十四年の二月までの合計で申しますと、大映に対しまして融資総額は二十九億九千三百万円でございます。日活に対しまして十八億五千万円。松竹に対しまして十四億六千五百万円。これら三社を合わせまして六十三億円ということに相なっております。  これら三社からは、それぞれ所定の計画に基づきまして返済が行なわれておりまして、現在におきまする、二月末におきまするこれら各社の借り入れ残の総計は二十一億一千七百万円ということになっております。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、融資の対象になっているのは大映、日活、松竹、それから東宝、東映と、こういう五社になっているようでございますが、いまのお答えですと、大映と日活と松竹。そうすると、東宝と東映というのには融資がなされていないわけでありますが、これは申し込みがなかったわけですか。
  50. 両角良彦

    ○両角政府委員 東宝並びに東映からは融資の申請が出ておらなかった次第でございます。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 五社以外の他の会社並びに独立プロに対しては融資がなされていないようでございますが、それはどういうことで融資をしていないのでしょうか。
  52. 両角良彦

    ○両角政府委員 映画輸出振興協会が、先ほど御説明申しましたように、そもそも五社の輸出適格映画の推進をはかろうという趣旨で設立されました経緯もございまして、当初は独立プロからもそのような融資の要請というものが出ておらなかった経緯も一つございます。  もう一つは、輸出適格映画に興長銀から融資を行なうにあたりまして、やはり当該相手方の映画企業が十分な資産、設備を持っておること、並びに常時映画製作活動に従事をいたしておるというようなこと、さらには、りっぱな映画をつくる能力をその製作スタッフにおいて備えておるというようなことが要件として求められてくるわけでございまして、かような見地から、これに該当するものを融資の適格対象として今日まで取り扱ってきた次第でございます。  しかしながら、御指摘のように、昨今、独立プロと言われまするもの、たとえば三船プロダクションあるいは石原プロダクションといったようなものは、ただいま申しましたような適格性を備える十分な力をつけてきておりますので、かような企業も今後とも融資の対象企業として取り上げていく道が開けてまいったと考えております。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 独立プロからはそういう融資の申し込みがなされなかったということを第一におあげになったのです。私の調査によりますと、独立プロからの融資申請というものは絶えずなされてきている。これは正式な申請ではなくて、何とかひとつわれわれも会員に加えてもらいたい、融資の道を開いてもらいたい、五社にだけ独占してはもらいたくないというようなことで強い要請があっておるはずであります。少なくとも通産省に対しましても、そのような要請というものは絶えず行なわれてきたのではないかと私は思う。具体的には、三船プロダクションの「黒部の太陽」という製作作品に対しましても、融資の申請がなされた。しかしながらこれが拒否されたという経過があるはずであります。そういう事実はないのかどうかという点と、それから独立プロに対しましても、「赤道を駈ける男」であるとか、「神々の深き欲望」というんですか、それから「富士山頂」であるとか、それぞれの融資をなされていますが、これは独立プロにそのままストレートで融資されているのではない。ほとんど日活が申請をして、日活を通して融資がされているというようなことでございますが、これはどういうことで独立プロに対して直接融資をなされなかったのか。これは、いまいろいろあなたおあげになりましたが、少なくとも優秀な作品の輸出振興、また日本映画産業の健全な発展をはかるという見地から、第一義に考えていただかなければならないと私は思うわけです。してみますと、最近といいましょうか、最近といっても相当遠いころからと申しましょうか、ずい分前から相当健全な経営というものをこの独立プロも続けてきたのではないか、そのように考えるわけでございます。それがどうして今日まで放置されてきたのか。どうしてこれが直接融資をされないで、日活その他のメーカーを通じて融資されてきたのか。あなた方はそれを適当とお考えになったのかどうか、いかがですか。
  54. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいま御指摘をいただきましたように、独立プロというものが、この協会を通じましての輸出振興のための融資を受けたいという希望は、設立の当初はともかく、漸次強まってまいってきた。またそういう要請がなされたということは、ただいま御指摘のとおりと存じております。さような意味から私どもも、独立プロ自体が、融資を受ける十分な担保力を持って、十分な返済力を持つに至る実力を備えた段階においては、積極的にこれを取り上げていくことが正しい方向であるというふうに考えております。さような趣旨から、すでに石原プロにつきましては、この輸出振興協会の会員となることが内定をされておりまして、今後は正式に融資の対象企業として取り扱ってまいることができるようになると思っております。その他の独立プロも、その実力に応じまして、積極的にかような融資の道を開いてまいるように、私ども考えていきたいと存じております。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 返済力がない、あるいは実力がない、あるいは信用できない、そういう判断というものはあなたはどういうことでなさったんですか。
  56. 両角良彦

    ○両角政府委員 独立プロダクションにもいろいろな種類がございまして、御承知のように、その企業の存在すらわからないような、そういうプロダクションもあります。また、一つの作品だけを製作いたしまして、すぐ解散をしてしまうようなものもございます。さようなものは、必ずしもわが国の映画の輸出の振興に将来積極的に役立つというわけにもまいらないかと存じますので、独立プロダクションの中で十分な実態と資格を備えたものを、われわれは積極的に助長育成をしてまいりたい、かような見地から、協会の融資対象というものもおのずからしぼられてこざるを得なかった、こういう事情になっておるわけでございます。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 御指摘のように、一本つくってすぐ解散するプロダクションもなかったとは私は申しません。しかし、たまたまあなたがおあげになりました石原プロであるとか、三船プロであるとか、その他あるわけです。健全な運営をしている。しかも相当長い期間にわたって独立プロとして存在をしているわけです。そういうものが今日まで申請が相当なされてきた。それをあなたが、返済力がないとか実力がないとか信用できないというようなことは、いまの御答弁の中からは、私はなるほどなということで感じ取ることはできません。もう少し具体的にひとつお答えを願いたいと思います。
  58. 両角良彦

    ○両角政府委員 私のことばが足りなかったかと存じまするが、独立プロの中で、たとえば三船プロあるいは石原プロが実力がないとか返済力がないとかいう趣旨ではございませんで、こういった優秀なプロダクション、三船プロあるいは石原プロといったように十分な実力を持っておる独立プロダクションに対しては、積極的に融資の道を開いてまいりたいというのが私どもの趣旨でございます。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 それは当然なことなんです、これからは。ところが、いま問題になっているのは、いままでの扱いそのこと自体に問題が起こっているわけです。これからではなくて、なぜいままでとかくの批判が、たとえばこれは、大映であるとか、日活であるとか、松竹であるとか、その他大会社の融資機関であり、あるいは赤字救済の機関であるというような批判を受けている。独立プロは、わがほうにも直接融資をしてもらいたいという要請が、絶えずなされてきた。それになぜに耳をおおうてこられたかと私は言うのです。それが問題なんです。ですから、いま返済力がないとか実力がないとか信用できないとかいうようなことばだけでもって、将来はそういうものにもやっていくのだということでは、私の質問に対する御答弁にはならぬ。あなたは反省しておられるのかどうか。これは両角企業局長に申し上げるのは、まだ企業局長におなりになってからそう長くないのだから、これは少し手きびし過ぎると私は思うのだけれども、しかし企業局長だからこれはいかんともいたし方がない。前任者の取り扱いに対してもその責任を負わなければならぬと私は思うから、あえてあなたに指摘をいたしているわけです。  それと、あなたは先ほど、通産大臣の一つの権限というもの、その点を強調なさったわけですが、いままでこの協会で審査をし、さらに選定会議に諮問をしてこられた。その間、いわゆる諾否権というものは通産大臣が持っているのだから、いままで通産省として一件だに拒否された事実があるのかどうか。
  60. 両角良彦

    ○両角政府委員 今日までの映画輸出振興協会の運営におきまして、独立プロダクションというものを、他の五社と何らか不利な差別待遇をいたしたというような経緯がかりにあったといたしましたら、それは私どもは十分是正をいたすべきものと考えております。さような建設的な見地から、今後独立プロダクションの優秀なものに対しまして積極的に融資の道を開くという点は、私ども考えておる次第でございます。  なお、各社から申請がございまして拒否した例があるかという御質問でございまするが、映画輸出振興協会の委員会におきまして拒否をいたしました実例は、過去六件ございます。日活が二件、松竹が三件、大映一件、いずれも輸出不適格ということで拒否をいたしております。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 四十八本に対して融資をしておられる。そして六件に対しては融資不適格ということで拒否しておられる。これは四十八本の外であると私は思うのでありますが、それはいまお答えのとおり輸出不適格だ。ところが、独立プロというものの製作した映画は、輸出が不適格であるという形において拒否されてきたのではない。おっしゃるように、実力がない、信用力がないということで拒否されてきたと私は思うわけです。それ自体私は問題にしているわけですが、また、それでは日活、大映あるいは松竹というものがほんとうに信用力があるのか、ほんとうの担保力を持っているのかということにつきましては、あとで具体的な問題としてお尋ねをしてまいります。  次に、この推薦基準及び融資条件というものはどうなっているのか。これは適格、不適格を信用力の面からきめる、あるいは輸出適格性があるのかないかということをきめる要件というものは、ここにあろうかと思うのでありますが、その点どうなっておりますか。
  62. 両角良彦

    ○両角政府委員 輸出適格性というものは、第一は海外における市場性が十分見込まれるかどうか、またわが国の国情、文化を海外に紹介するにふさわしい内容のものであるかどうかというようなこと、並びにその製作費が適正な限度であるかどうかというようなことを一つの選定の基準といたしております。融資にあたりまして興長銀から各企業に対しまする融資条件というものは、金利七・八%、原則として三年間に返済をいたすということ。また、これに対応しまして興長銀は、十分なる担保を各社から徴しておる次第でございます。
  63. 中村重光

    中村(重)委員 担保力というものは幾ら以上ということになっておりますか。
  64. 両角良彦

    ○両角政府委員 担保物件の評価にもかかわることでございまするが、少なくとも厳正な担保物件の評価基準によりまして評価をいたしましても、当該融資額を下回らないという程度の担保は徴しておるわけでございます。
  65. 中村重光

    中村(重)委員 そうではなくて、担保力がたとえば五千万円なら五千万円以上という基準を設けていらっしゃるのじゃありませんか。いまあなたのお答えのとおりであるとするならば、独立プロが映画を製作した、しかもその製作した映画は、要件としておあげになった市場性もある、日本の文化を紹介する内容を持っている、いわゆる輸出適格であるということには、私はかなうものであったというように考える。ところが、いまの担保力という問題によってひっかかってくるのだろうと思うのですが、そこで担保力が、いまあなたがお答えになったように、その映画の製作費が幾らだ、融資申し込みが幾らだ、それに対してはそれを裏づけるところの担保が幾らというようなことは、いまあとでお尋ねをいたしますが、いままで融資をしておりますような大きい金額、いわゆる一億とか二億とかいうような一本当たりの製作に対する融資は、それほど大きい金額であれば別といたしまして、私の調査しておる限り、独立プロがこの程度融資をしてもらいたいという金額は非常に低いのでございますから、製作費、それに対する融資の申し込み、それに対する担保力ということからいきますならば、独立プロに当然前から融資されてよかった。それをできなかったということは、担保力が五千万円なら五千万円以上なければいけない、そういう線をお引きになったところにあるのではないかと私は思うのですが、そういうことになっておりませんか。
  66. 両角良彦

    ○両角政府委員 画一的な担保力の線を引いておきまして、その線にはずれたからといって融資をいたさなかったということではございませんので、むしろ担保につきましては個別の判断にゆだねておりまして、一律の基準といたしましては、当該融資を受ける企業が資本金が三千万円以上であるというようなことは一つの基準としておりまするけれども、担保力が五千万円以上ということは、基準としては採用してこなかったというふうに存じております。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 私の調査しておるところでは、担保力が五千万円以上という線をお引きになっておる。それにひっかかって、なかなかいわゆる信用力がない。もちろんこれは、できるだけ五社以外のものに融資をしないようにしようというのがこの振興協会の実はねらいなんだから、実績がないだの、あるいは輸出に適格性を持つ映画を製作しないだの、いろいろと理屈をつけてシャットアウトをしてきたわけですね。ところが、やはり一つのガンとなっておったものはこの担保力であったというように、私は調査しておるわけです。しかし、あなたのほうでそういうことはしていないということになってまいりますと、それは水掛け論になってまいりますから、それはまた必要があればあとでただしてまいりたいと思いますが、お答えになりました、製作に要する費用が適正であるというように具体的に判断されると申しましょうか、算定基準というものはどういうことになっておりますか。
  68. 両角良彦

    ○両角政府委員 映画の製作費といいますのは、たいへん内訳の確定がむずかしい費目を含んでおりまするので、一概にどの金額が適正な製作費であるかということを確定をいたすことは困難でございますけれども、おおむね当該企業につきまして、企画の費用、あるいは俳優、スタッフの費用、あるいはロケの費用、あるいはフィルムその他の物的製作費用、並びにこれらに伴いまする間接費というようなものを、それぞれ具体的に費目ごとに検討いたしまして、全体の製作費は妥当な額であるかどうかということを判定をいたしておる次第でございます。
  69. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、あなたのほうからいただいておる資料で、あとでこれが適正であったのかどうかということについてお尋ねをしてまいることにいたしますが、この協会の会員になるためには、どのような条件が必要であり、また入会金として幾ら納入しなければならないことになっておるのか。
  70. 両角良彦

    ○両角政府委員 協会に参加しまする形式的な要件ということは、特別に明確なものを設けておるわけではございませんが、先ほど申し上げましたとおり、映画の製作に常時従事をいたしておって、また製作を継続的に遂行するに足る資産を持っておって、かつその陣容において優秀な映画をつくる能力を有しておるというような、抽象的な要件というものを一応考えておるにすぎません。  さらに、映画協会に対しまする入会金といたしましては、五百万円ということに相なっておる次第でございます。
  71. 中村重光

    中村(重)委員 この入会金の五百万円というのは、あなたは適当だとお考えになりますか。
  72. 両角良彦

    ○両角政府委員 当該振興協会は、興長銀から一応の相手方として融資を受けまして、それを各企業に再融資をいたす役割りを持っております。一つの考え方としては、各社の連帯的な債務保証的な役割りとして期待をされておるわけでございます。さような意味からいたしまして、当該振興協会が、全く抽象的な団体だけではなくて、十分実体を備えた団体であるということが好ましい、かような見地から一応入会金五百万円ということになったといういきさつがございますが、その額が適切かいなかという点については、なお私ども検討いたしたいと存じます。
  73. 中村重光

    中村(重)委員 私は通産省は全く無責任だと思うのですよ。端的に申し上げれば、あなたのほうはただお墨つきを出すだけでしょう。実際は、その振興協会をパスしてきた、そして今度通産省にそれが回ってきたわけですから、それを選定会議に諮問をする。それでオーケーだ。そしてそれにお墨つきを渡して、今度はそのお墨つきを持って、長信銀であるとかあるいは興銀に行って融資を受けている。先ほどおあげになった六件なんというのは、よほどその製作の中身というのが公開できないような内容であるのかどうか。事実、融資をしたのが公開できないのがあるのだから。あるいは、私が事前にお尋ねをいたしましたところ、まぼろしの映画といわれる——あとで私は映画の題名も申し上げてもよろしいわけですけれども、実際融資をしたが、それは公開できなかった。公開できないのですから、もちろん輸出はできてない。そういう事実はないかということを、事前に連絡をしてお尋ねをしたところ否定されて、たまたまそういうものもあったけれども、それは繰り上げ償還をさせてしまったというようなお話が実はあった。そういう特別のもの以外は、これはフリーパスで通っているのですよ。そして会員の資格の問題並びにいまの会費の問題等々、これはかってに協会がこれをきめておる。それをあなたのほうは、何も文句なしにそれを黙認をしてきたというのが実態でしょう。ところが、運用部資金から支出される金でありましても、これは国民の負担なんです。そういうものがきわめてずさんな形において融資されておる。そのことが大きな社会的な批判となってきた。先ほど私はあげましたように、大会社に対するところの融資機関である、あるいは赤字会社の救済機関だ、そのことはあなたのほうの耳に入ってきたと思う。その非難にこたえるだけの十分な対策をしておられなかったということは間違いのない事実だ。先ほど、東宝であるとか東映には融資をされていないということでした。これは斜陽とはいいながら黒字会社なんだ。七分五厘ですから非常に金利は安い。これが、非常に経営が苦しいといわれる日活あるいは大映あるいは松竹に、集中的に融資されてきている。そういったようなことに対してでも、問題を感じ取られなかったということは、私はあえて職務怠慢であると申し上げるわけだ。  それで、あなたは先ほど、その製作に要する費用が適正であるかどうかということについては、いろいろ具体的な事実をおあげになったわけですが、いまあなたのほうの資料から私は見てみますと、たとえば「荒い海」においては四億二千六百万円、ともかく三億以上。とにかく一億以下の製作費というものはない。これの八〇%の融資でございますから、この融資はほとんど一億以上。一億を下回っているのは十一本にすぎない。しかもそれは九千万円台であるということなんです。このような製作費がほんとうにかかるのかどうかということを、具体的にこれに取り組んでいろいろなデータを集めて、あなたのほうはこれを検討なさったことがあるのだろうか。もしあるとするならば私どもが具体的な問題としてこれを質問をするために、調査をしているだけでもたくさんの事実をつかんでいるのだから、あなたのほうとしては、もっと具体的な事実を御存じになっていらっしゃるはずだと私は思う。だから、私がいまいろいろと指摘をいたしましたことについて、この際的確にお答えを願いたい。
  74. 両角良彦

    ○両角政府委員 映画の製作費がどのくらいの額が適正な製作費であるかということの判定は、当該映画の企画の中身、あるいはその映画が海外ロケをやるかやらないか、あるいは多数の人員を動員する必要があるような内容であるかどうか、あるいは相当大がかりな物的設備をセットしなければならないような中身であるか、いろいろ映画のテーマによりまして異なってまいるわけであります。  その場合、私どもとしましては、過去の実例あるいは当該企業の計画の中身につきましていろいろ検討を加える次第でございますけれども、かりにロケ費用というもの一つをとりましても、ロケに参りましたときに雨であったとか、あるいは当該地域が海外のために政治的情勢でロケができなかったとか、いろいろ不測の事態が起こる。それに応じてさらに費用が増加してまいるというような、いろいろ変動的な要素が多数ございますので、なかなか明確な一線を引くということは困難かと存じます。しかしながら、おおむね常識的に、当該企画に対応する製作費というものはこの程度が妥当であろうという判断は、適格映画審査委員会においておつけ願いまして、それを、しろうとでありまするわれわれとしては、尊重をいたしまして御推薦を申し上げるというふうな経緯になってきておる次第でございます。
  75. 中村重光

    中村(重)委員 普通の製作費が大体どの程度かかるというように、あなたは、情報と申しましょうか、いろいろと御調査なさったと思うのですが、あなたの耳には入ってきておりますか。
  76. 両角良彦

    ○両角政府委員 わが国のいわゆる邦画といわれるものにつきましては、その製作費は通常四千万ないし五千万程度のものが一般的であろうかと存じまするが、アメリカ等におきましては、この十倍、それ以上の製作費というものが普通になっておりまして、その辺はいろいろ差があろうかと思います。
  77. 中村重光

    中村(重)委員 製作費は、いま四千万とおっしゃいましたね。そうすると、この製作費が、たとえば大映の「小さい逃亡者」二億五千七百三十九万、それから「鉄砲物語」二億五千四百万、「荒い海」が申し上げたように四億二千六百万、それから——これは一つ一つあげてもしようがないです。時間がありません。いずれにいたしましても二億近いですね。一億五千万円を割っているのは、ほんのわずかにすぎないのです。これの八割融資だから、先ほど申し上げたように一億円以上だ。「荒い海」に至っては三億四千万円の融資がなされているのです。しかもこれはお答えを願いますが、まだ未返済。なるほどあと一年あるようでございますが未返済、こういうことに実はなっている。四千万円普通かかるというのに、そのような調査をしていらっしゃるのに、なぜにこのような大きい製作費が算定され、そしてそれに対する融資がなされておることに対して、あなたはこれにチェックなさらなかったのか。
  78. 両角良彦

    ○両角政府委員 製作費が二億円、三億円というものは、確かにわが国の一般的な平均製作費から見ますと、大きな金額であろうかと思います。しかしながら、輸出映画という企画をされまするものは、やはり一般の邦画に対しましては、それぞれ大作といわれるような内容を備えておるわけでございまして、そのような意味から、おのずから経費、製作費も高くなってまいることかと存じます。しかしながら、御指摘の「荒い海」の製作費それ自体が、はたしてそれだけの製作費が必要であったかどうかということは、また別個の問題かと存じまするが、少なくとも適格審査委員会においては、その経費の中身を正当と認めまして、これに融資の手続をとった次第でございます。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 両角さん、答弁にならないでしょう。あなたも内心じくじたるものがあるのじゃありませんか。そうお答えになるならば、いままでの輸出の収入は幾らか、そしてこの振興協会を通して輸出した映画収入は幾らかという質問をしなければなりません。それに対するお答えをまずそれでは聞いてみましょう。
  80. 両角良彦

    ○両角政府委員 お答えを申し上げます。  振興協会を通しまして融資を受けました作品の輸出実績は、昭和四十一年度から四十四年二月末までで百二十一万ドルということになっております。その間、映画全体の輸出は千七百五十万ドルでございますので、一割以下というパーセンテージを占めておるわけであります。
  81. 中村重光

    中村(重)委員 お答えのとおりですね。そうすると、普通映画製作費は四千万円程度しかかからない。だがしかし、輸出をする映画だから一億円以上、二億円、三億円以上あるいは四億円になるようなことも、これは当然であろうという意味のことをお答えになったのです。だがしかし、輸出実績を見ると、実際においてこの振興協会を通して輸出をした収入というのは一割にすぎない。それでは説得力はないではありませんか。どうお答えになりますか。
  82. 両角良彦

    ○両角政府委員 御指摘のとおり、輸出実績は私は必ずしもりっぱな実績であるとは申せないと存じます。したがいまして、かような輸出実績では、この制度自体の意味というものも批判を受ける可能性はあろうと存じますので、私どもとしましては、今後は輸出実績をまさにあげ得るような実態の運営を行なおうという心算で現在努力いたしておる次第でございます。
  83. 中村重光

    中村(重)委員 答弁を、輸出実績を引き上げることに努力をするというように、すりかえをなさった。それも聞きたいからいいです。ところが、私がいま指摘をしておる中心的な問題は、あなたは普通映画製作費は四千万円程度だ。にもかかわらず、一億円以上あるいは四億数千万円という製作費がかかる、唯々諾々としてこれに対して融資をしてこられた、そのことが私は問題であると思う。しかもそのことが、今日の大きな批判というものを巻き起こした問題点であるということです。だから、あなたのほうの融資にあたって、いわゆる製作費というものが適正であるかどうかという算定をいろいろとおあげになった。たまたまあなたは変動的な要素もあるとおっしゃった。それはあるでしょう。外国ロケなんというのは、あなたのほうはついていって見るわけにもなかなかまいりますまいから、そういうことはある。私はそのような例外的なことを指摘しているのではないのです。実際はあなたのほうは手も足も出なかった。どうすることもできないということです。あるいは、しようとする努力もなさらなかったか、そのいずれかということになろうと思う。優秀な映画とおっしゃるけれども、それならば私は聞くが、映画「少年」というのが全国を風靡しました。自分の子供を車にぶつからして、そこで慰謝料を取り上げたという大きな社会問題、人道問題になった。それをもとにいたしまして映画「少年」というものが製作された。たいへんな人気だった。その映画製作費はどの程度かかったとお考えになっていらっしゃいますか。
  84. 両角良彦

    ○両角政府委員 「少年」と題しまする映画につきましては、まことに申しわけない次第でございますが、私自身はよく承知いたしておりませんので、明確に御答弁できませんが、おそらく製作費としては三千万円前後ということではなかろうかということでございます。
  85. 中村重光

    中村(重)委員 まことに的確です。それほどあなたが的確にお調べになるのだったら、なぜに——この「少年」が融資対象になっておれば別ですよ。独立プロですから、これほど優秀な映画がてんで問題にされていないのですよ。ところが、肝心かなめの融資をしている映画の製作費に対しては、全くあなたのほうはこれを顧みなかったのです。だからこのようなずさんな、このようなでたらめな融資がまかり通ってきたということです。これは何ぼあなたを追及してもしようがございません。ともかくこれをどうするかということがまず一点であります。  それから、ここで特にお答えを聞いておかなければなりませんが、独立プロに対して、先ほど申し上げました融資が大メーカーを通じて融資をされてきている。それがほんとうに正確になされておるのかどうか。石原プロダクションが日活を通じて申請をいたしましたこの融資は幾らであったのか、それが石原プロには幾ら渡されておるのか、これも御調査になったと思いますから、お答えを願っておきたいと思います。
  86. 両角良彦

    ○両角政府委員 輸出映画の振興のための金融措置をこれからどうするかという点につきましては、当面種々御指摘を賜わりました点を十分承りまして、運営の改善ということで、一つは融資の対象企業というものを、これら五社に限定することなく、適格なる企業には独立プロであろうとも積極的にこれを取り上げてまいるということが第一点でございます。  第二に、ただいまいろいろ御指摘を受けましたように、融資作品の製作費というものにつきましては、さらに専門家を動員をいたしまして、何らか客観的、公正な製作費の判定ができるような、そういう仕組みを適格審査委員会の中に設けてまいりたいと考えております。  さらに、独立プロに対しまして直接融資は行なっておりませんが、日活等の名義のもとに行ないました融資作品につきましては、先ほど御指摘の三つの作品は、それぞれ現実に融資を行ないまして、それが当該独立プロの経費に回っておるということは事実でございます。
  87. 中村重光

    中村(重)委員 石原プロの「富士山頂」は日活を通じて融資されていますが、これについてはお答えがなかったわけです。これは申請した金額は二億八十三万九千円で、あなたのほうから出た数字と私の調査したのとぴったりしています。ところが石原プロに渡されたのは八千万円といわれております。これは事実とお考えになりますか。御調査になったことはありませんか。「富士山頂」に対する日活に対する融資は二億八十三万九千円、石原プロに渡されたのは八千万円といわれているわけです。御調査になったことはありませんか。
  88. 両角良彦

    ○両角政府委員 お答えいたします。  「富士山頂」と題しまする映画につきましては、日活と石原プロのいわば共同製作でございまして、その経費はそれぞれ半分を負担をいたすというような内約になっておったやに伺っております。したがって一億六千万という融資が「富士山頂」という映画に行なわれましたが、その融資は半々で、日活と石原プロがこれを受け取ったということになっております。
  89. 中村重光

    中村(重)委員 私の調査したところと違いますが、あなたがお答えになっただけでも半々ということになってくると、当然融資を一億石原プロに渡さなければならぬ、こういうことになるのではないかと思う。それが八千万渡された。その程度ですと、まあ担保物件の問題等々いろいろ出てくるのかもしれませんから、私はそのことについてはあえてそれ以上追及いたしません。ただ私の調査していることと違うということだけは申し上げておきます。  いずれにいたしましても、映画界にまでそうした親企業、下請企業というようなものがある。あるいは金を借りるための名義借りというものがまかり通っておる。そうして、しかもその名義を貸すために、テラ銭かせぎじゃありますまいが、ともかく二億借りてやったならば半分も渡さないということが、国民の税金のもとにこういうことがなされているという事実は、あなたは十分お考えおきをなされなければならぬと私は思う。     〔浦野委員長代理退席、橋口委員長代理着席〕  さらに、この製作費の計算、これが非常にずさんだ。この計算は一本一本でありますが、実際貸すときは、どんぶり勘定で融資がされているといわれておるんですよ。そのことが耳に入ってないのかどうか。そうでないとおっしゃるならば、私は次にまた、映画「天狗党」の内容についてあなたに事実を確めたいと思います。——「天狗党」の問題はあとで尋ねますから、いま言う、一本一本でなくどんぶり勘定で融資をされているという事実はないとおっしゃいますか。
  90. 両角良彦

    ○両角政府委員 融資額の算定にあたりましては、その製作費の内容につきましては、やはり十分審査をいたしまして確定をいたしたものを融資推薦をいたしておる次第でございまして、御指摘のような形態で安易にルーズな融資を行なっておるということではないと考えております。
  91. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど若干前向きの御答弁があったんだけれども、またあくまで事実を事実なりとして固守しようというお考え、お役人ですから私はやむを得ないと思います。いまあなたがお答えのとおりであるならば、このようなでたらめな融資がなされてはならぬと思います。  映画「天狗党」は昨年十月に融資をされている。ところが、現場予算は六千万円ということがいわれた。融資の決定額は一億六千四百万円。あなたが、監督費が幾らであるとか、あるいは俳優のなにが幾らであるとか、いろいろなことをもとにしてやっているのだとおっしゃるならば、この製作する現場で一切の費用六千万円とはじいたのに対して、一億六千四百万円融資をされたということについては、あなたはどのように解釈をなさいますか。
  92. 両角良彦

    ○両角政府委員 映画の製作費は、御承知のように直接費と間接費とございまして、ただいま御指摘いただきました数字は、おそらくは直接費のみの数字ではなかろうかと存じますが、私ども承知をしておりまする製作費は総額で一億六千四百二十三万円、これに対しまして融資が一億三千万円ということで、今日まで約三千万円の返済を受けておりまして、残額一億百六十万円というものが「天狗党」についての勘定に相なっておるわけでございます。
  93. 中村重光

    中村(重)委員 まあ現場の費用が六千万円、その程度だと思う。だがしかし、直接費と間接費とあるんだから、一億六千四百二十三万円ですか——何ぼ間接費とは申しながら、映画製作に対して融資をするんですよ。その直接費が六千万円あれば足るものを、二倍以上の一億六千四百万円融資をしたということは、何ぼ間接費に——これは経営上必要であるかもしれないけれども、それが当然だとあなたはお考えになるんでしょうか。そのような観念でもって先ほど胸を張ってお答えになったわけですが、通産大臣の権限というものは確信をもってやっておるということになりましょうか。
  94. 両角良彦

    ○両角政府委員 映画製作費におきまする間接費は、大体直接費の約四分の一程度でございまして、その程度の間接費は、平均しまして各映画の製作費として計算をいたすべきものと考えております。  で、御指摘の題名の映画につきましても、さような見地から審査委員会において十分検討を尽くしていただいたものと私どもは了解をいたしておりまして、さような意味でのいわば安易な融資あっせんが行なわれたとは、必ずしも言いがたいと存じます。
  95. 中村重光

    中村(重)委員 さすが頭脳明晰の両角企業局長も、きょうはどうも答弁があっち行ったりこっち行ったりしているような気がしてならない。質問もそうかもしれませんがね。そう固守なさらなくたっていいじゃありませんか。まあ、あなたは先ほど、普通四千万円しかかからないのに一億、二億、三億、四億とかかっておる、この事実をお認めになったし、しかも、輸出振興の名のもとになされる融資がわずかに一%だという事実も、お認めになったんですよ。それから現場の費用六千万円が一億六千四百万円融資されているという事実もお認めになったんですよ。なおかつ、そういうことでいまのような御答弁を固守されるということは、私は相当無理をしておられると思う。そういうことをなさるべきではない。やはり内容をもっとしさいに検討して、改めなければならぬ点も多々あるであろう。改めていくというような誠意のある答弁はあなたにはできないのですか。あなたほどの頭脳明晰の局長が。私はそのような謙虚な態度があってしかるべしと思うんですよ。いかがですか。
  96. 両角良彦

    ○両角政府委員 映画輸出振興のための融資制度を、今後前向きに改善をいたすべき点は、われわれとしても積極的に改善をしてまいりたいということは、先ほど申し述べたとおりでございまして、特に独立プロの取り扱いの問題あるいは融資額の査定の問題等につきましては、十分御意見を承りまして改善を加えるつもりでございます。
  97. 中村重光

    中村(重)委員 同僚委員質問の時間もあるようでございますから、結論に入ってまいりたいと思いますが、先ほど独立プロに対しての担保力の問題等々から出てまいりましたのは、いわゆる輸出実績の問題からいたしましても、担保力からいたしましても、いろいろな面で、会員になっている五社というものは適格性を持ってきておるんだ、また担保力は十分だということになってまいりますが、それでは、とっておりました担保というものは、それほど価値のある担保というものをとっておるのでしょうか。その点いかがですか。
  98. 両角良彦

    ○両角政府委員 映画振興融資を行なうに当たりまして、興長銀は当該相手方企業から十分な担保を徴する、それは金融機関としても当然のことでございますが、そういうたてまえでこれら各映画会社からは、映画館の土地、建物でありますとか、撮影所の土地、建物でございますとか、あるいは本社ピルの土地、建物でありますとか、そういった十分な担保力のある物件を徴しております。一例を申しますと、大映につきまして映画振興資金の融資の残高は現在約十億円程度ございますが、興長銀の厳密な担保価格査定の結果としての担保物件の評価は十八億円ということに相なっておりまして、この一例をもっていたしましても、この映画振興金融につきまして、十分な担保を徴しておるということを御了解願えると存じます。
  99. 中村重光

    中村(重)委員 私もこの点は一つ一つの担保を調査したのではございません。あなたの答弁を信頼する以外にはないのですけれども、私の聞いております場合では、同じ抵当物件が十数番の抵当権を設定しておったというふうに伝えられているのですよ。ところで、同じ抵当物件でありましても、借りた返した、また借りた、また返したということになりますから、同一の抵当権というのがずっと連続して設定されていることは事実あるわけです。根抵当として設定をされているのですか、いかがでしょうか。
  100. 両角良彦

    ○両角政府委員 その事例はおそらく日活本社ビルのケースかと存じますが、十数番目の抵当権まで設定をいたしておるといたしましても、当該資産価値が七十億前後ございまして、しかも担保の対象となっておりまする債務は十三億程度のものでございまするので、抵当権の数が多いということが、必ずしも担保価値を減殺をしておるということには相ならないと存じます。いずれにしても根抵当という形にはなっておりません。
  101. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうから出されている資料で、日活は全部、土地、建物、土地、建物、こういうことになっております。すべての融資に対して同じようなことなんで、実は内容がわかりかねるのです。しかし、融資残高が、お答えになりましたように、全部で二十一億であるとするならば、これは抵当権の問題としては、さほど問題点にはならないのではなかろうかという感じがいたします。ただ私は、あなたのほうから出された資料がほんとうに信憑性があるのかどうか、疑わしいことが多々ございます。しかし、いやしくも公式に要求をいたしました資料でございますので、権威を持ってお出しになったわけでございますから、私はあえてこれを疑うことはいたしません。ですけれども、非常に問題点がある、とかく黒い霧に包まれたということは、いろいろあなたがお答えになりましても、今日常識みたいになっておるのですよ。  そこで、映画の場合、輸出振興だけではなくて、やはり優秀な映画を、そして映画産業の健全な発展をということになってまいりますから、いままでのような映画でいいのかどうか。いわゆるやくざもの、エログロ映画、そういうようなことが、いかに今日の好ましくない世相をつくりあげてきているのか。あなたもこれではいけないというようにお感じになっていらっしゃることがあるだろう。だからして、これからの融資にあたりましては、ともかく優秀な映画をつくることに重点を置かれる必要があるだろう。もちろん輸出振興というようなことは、企業局の所管事項としては無視できないということは、私はよくわかります。わかりますけれども、先ほどからお話がございましたように、いわゆる日本の文化を紹介をするということを一つの柱としてあなたは強調なさったわけですから、その点からいたしましても、いまの製作されておる映画というものを融資対象にするということがもしあるとするならば、私は問題点であろうと思います。ですから、これからこの点に対してどのように改善をしていこうとお考えになっていらっしゃるのか。  それからまた、この輸出振興協会の会員名簿を資料でもって提出をしていただいているわけですけれども、ともかく映画会社五社が全部振興協会の会員になっておるという事実です。なるほどほかの会員もいろいろおります。おりますけれども、私はまともに出席をしていないのではないかという感じがいたします。しかも、協会の連中がずらりと名前を並べてその会議に出席をしておりますと、いわゆる映画会社の関係者のそうした要求に対しまして、これを拒否することができないで、そのまままかり通っていくのではなかろうかと思います。そこで、この協会の会員並びに役員の構成にいたしましても、ここで考えなければならない点があるのではなかろうかというような感じがいたします。全部が全部でございませんが、この適格映画の選定会議というものが中心で、私がいま指摘したようなことになっておるようでございますから——協会のほうは、いろいろな層の多くの人たちが出ております。しかしこれは、相関連をしてやっているということから、やはり映画会社、利害関係者のそうした意向というものが大きく反映されてきているところに、このような不明朗な事態というものが起こってきていると思います。先ほどお答えがございましたけれども、あらためて私がいま指摘をいたしましたような点等についてお答えを願っておきたいと思います。
  102. 両角良彦

    ○両角政府委員 一つは、輸出適格映画の選定にあたりまして、御指摘のような、風俗上、あるいはわが国の文化の紹介にあまり役立たない、むしろ逆効果を招くような、そういう内容のものは厳に選別すべきであるという御趣旨につきましては、全く御指摘のとおりでございまして、輸出映画適格審査委員会も、さような見地に立ちまして、過去において、この種のもの約六件を審査、不合格といたしたわけでございますが、なお一そうさような見地から、今後の審査というものを厳正に行なってまいるようにいたすべきと考えております。また、協会の組織もしくは運営につきましても、御指摘を賜わりました点につきましては、私どもも前向きに改善をいたすべき余地が多々あろうかと存じますので、今後積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
  103. 中村重光

    中村(重)委員 それではこれで終わりますが、最後に、先ほど触れました「荒い海」に対するところの製作費と、それから融資、これは滞納が非常に大きいようでございますから、この滞納の処理をどうするのか。金額も資料ではわかっておりますけれども、この際、製作費と融資額、それから償還。いわゆる融資契約月日と融資額というものを明確にしていただき、そしてこれの滞納処理をどういう態度でなさるか、この点をひとつ明確にしていただいて、それで私の質問を終わりたいと思います。
  104. 両角良彦

    ○両角政府委員 お答えいたします。  映画「荒い海」につきましては、製作費四億二千六百六万円ということで申請がなされまして、これにつきまして三億四千万円の融資を四十三年の九月に決定をいたしました。今日まで返済が一億四千万円行なわれておりまして、融資残高は二億円になっております。この映画につきましては、いわゆる償還のおくれとか焦げつきとかいう懸念は、全くないものと考えております。
  105. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 次回は、来たる十五日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十一分散会