○
大野参考人 御説明申し上げます。
ただいま
大野兤という御紹介をいただきましたが、私は沙羅双樹というペンネームで
相場師の
小説や
株式小説を書いている
作家でございます。時間の制限がございますので、たとえば
投機家の
被害の
状況、これは
亀鷹参考人から、また
業界の
内部事情につきましては、各
理事長がお見えのようですから、その
理事長さん方から御説明があることと思いますので、私はもう少し次元の高いところで、御
参考までに申し上げたいと思います。
このたびの
紛議につきましては、いろいろ
内容が複雑になっておりますし、
新聞で
皆さんも御
承知のことと思いますが、三つばかりございます。
まず第一に、
過当勧誘の問題、これは普通の
勧誘ならば許されたことで、一定の
資格を持った
外務員が
勧誘して歩くことはよろしいのです。これは適法なんでございますけれども、この適法の中で、
ノルマに追われたりした一部の
外務員が
過当勧誘をしたという事実が伝えられております。
その
過当勧誘の第一番の問題は、
元本を保証すると言ったということ。それからもう
一つは、絶対にもうかると言ったということ。これは
株式市場でも同じでございますが、
元本を保証するとか、絶対にもうかるとかいう
ことばを使ってはならないという
規定がございます。そういう
ことばを使ったということは
新聞やなんかで報道されておりますし、事実、使ったようでございます。昔、
昭和三十六、七年ごろ
投資信託がたいへん問題になりまして、
元本を保証するようなことを言って募集いたしまして、これは大蔵省かりお目玉を食って、それ以後、
投資信託は、
元本を保証しないということをはっきりうたったのでございます。今度の場合も、
元本の保証をするということを真に受けて
投機家が――私はあえて
投機家と申します。
商品市場は
投資という
ことばは妥当ではないんで、これは
投機でございます。スペキュレーション、思惑という
ことばがございますが、純粋の
投資というのは、たとえば
銀行の
定期預金、それから公社債、それは
元本は保証されておりますし、また、それによって生ずるいささかな、少ない額ですけれども
利子が保証されている。これが純粋の
投資でございます。しかし、
商品市場並びに
株式市場の
信用取引の場合においては、これは
投資という
ことばは使わないほうがいいと私は思います。やはり
投機でございまして、特に
商品市場は、配当もなければ
利子もない。つまり、
相場の上下の変動を利用して、その値幅をとるということが
商品市場の
原則でございます。また、これは
投機の
原則でございます。それを知らないで、あるいは知ってか、
しろうとの
投機家が参加して、そしてたいへんな
損害を受けた。何億とかいう
新聞の報道がございますけれども、これは、
元本を保証すると言ってはならないという
規定を破ったこと、また無知な
投機家がそれに乗ったこと、これがトラブルの
一つの
ケースでございます。
それから、絶対もうかるということは、これはもうかることもあるが損をすることもあるという
勧誘の方法ならよろしいのですが、絶対にもうかる、もうけてやると言った
外務員があるそうでございます。これは西洋にも有名な
格言がございます。馬に水を飲ませるために岸べまで連れて行くことはできる、しかし水を飲むのは
馬自身であるという有名な
格言がございます。ですから、
外務員がどんなことを言ったかしれませんが、
水ぎわまで連れて行って、しかし、水を飲むのは
馬自身、つまり
投機家自身で、
銀行から
お金を下げてきて、そしてそれを
証拠金に入れて、それで
売買を委託したということですから、これは、ただいまの
投機家が水を飲む
意思がなければ、どんなに
水ぎわまで持っていっても、それは飲まないはずです。また、そういうことを言われて飲むようなことでは、
投機に手を出す
資格はない。少しきびしいようですが、そのように考えます。ただし、だからといって
過当勧誘がいいというのではございません。その点、誤解のないようにお願いいたします。
それから第二に、
外務員の言いなりになって損をしたという例がたくさんございます。これは
アドバイスの
乱用だと私は考えているのですけれども、
しろうとの
投機家が
自分の
意思で
最初はやったとしても、しまいに
相場がわからなくなってしまう、これは私どもよくございます。そのときにたよるのは
外務員なので、それで
外務員に
相談をする。そうすると
外務員は、売りなさい、買いなさいと指導する。これは
アドバイスの
乱用でございます。
投機家自身にやらせなくてはいけないのです。
外務員は
資料だけは提出をする。これは事実ですから、一切の
資料、数字、そういうものを提出して、そうして軽々しい
アドバイスはしないというのが正しいのでございますけれども、やはり
投機家に聞かれると、売りなさい、買いなさいということで、また
投機家は、売ったり買ったり、また売ったりということになります。これはやはりどちらがいいとも裁決はしかねる。
それからもう
一つは、ころがしというのがございます。これは
投機家か玉を建てて――玉と申しますのは委託したこと。玉でございます。この玉を建てっぱなしでおりますと
手数料にならないので、それで
投機家に対して、売りなさい、買いなさいと言って、つまり
手数料をかせぐために玉をころがさせる。前に申し上げた
アドバイスの
乱用と同じで、どんどん売ったり買ったり、また売ったりさせる。そうしますと
手数料ばかりどんどんかさんでしまう。結局、これでもうかればよろしいのですけれども、そうしたら
手数料なんか問題じゃないのです。もう
投機でございますから、もうかるときはたいへんにもうかるのです。ところが一たび損が立ちますと、この
手数料というのが非常に負担になる。
外務員は
手数料をかせぐために、どんどんころがさせるという悪循環みたいになりまして、結局、
損勘定をしてみたならば、
損害の額よりも
手数料の額のほうが多かったという例もございます。
それからもう
一つは、
売買一任勘定というのがございまして、これは禁止されているのですけれども、
しろうと投機家は
外務員に、これでもうけてくださいと言って
お金を渡す。これは、以前には
株式市場にもございましたし、現在も多少あると思うのですが、これはやはり
紛議のもとになるので禁止されているにもかかわらず、
お客から金を預かって、そうして
自分で
相場をしてやる。これは禁止されております。これがうまくもうかればよろしいのですけれども、
お客の
お金でどんどんもうかるのだったならば、何も
外務員などはしていないで
自分でどんどんもうけます。
外務員で
ノルマを課せられて一生懸命やっているよりも、それほどはっきり絶対もうかるならば、
自分でやります。これは
投機家もおそらく知っているはずですが、それなら
外務員なんかしていないで
自分がやるはずです。これも、わかり切ったことを一任したという
ケース。
時間がございませんので大体大きな面だけ取り上げましたのですが、
投機家というのは、私を含めまして、もうかったときはにこにこしている。
一たび損が立ちますと腹が立つ。私も損が立てば腹が立ちます。それは
自分の
意思でやったのだから、腹は立つけれどもしかたがない。ところが今度の
紛議は、ずっと申し上げたことで
損害が多く立ったので、それで一斉にその
紛議が表面に出てきたということでございます。
それで、これが三月二十七日のこの
委員会で
社会党の
横山議員がおっしゃっているのですけれども、
商品取引業界が
暴力団の
資金源になっているという御
発言をなさいました。これは三月二十八日の日経
新聞でございます。それで、この御
発言によりますと、
暴力団が介入している、そうしてこの
暴力団の名前まであげておられます。これはおそらく、ここまでおっしゃるには、しっかりした
調査と、それから根拠をお持ちだと思います。私は、これが事実であるとするとたいへんな問題だと思います。明朗であるべき
商品業界がこのような
紛議を起こして、今度はそれに乗じて
暴力団が介入して、そして今度は
仲買い店が
被害者になるという
ケースだと思います。そうしますと、
投機家が
被害をこうむる。今度は
仲買い店が
被害をこうむる。ますますこれがエスカレートしていってど
ろ沼に入ってしまう。私はもうすでに
商品業界はど
ろ沼へ入っていると思います。
このままほうっておいたらどうにもしかたがないんで、私の案といたしまして、これは前向きの案なんでございますが、強力な
機関を設ける。たとえば
映画の
映倫というのがございまして、ここは悪い
映画をチェックして、それで禁止したり、あるいはマークしたりしておりますが、
映倫よりもっと強い
機関を設けまして、そうして強力なメンバーで、
監督官庁の係官、それから
法律家、
学識経験者その他の人に入ってもらって、そうして強力な
裁定機関をつくるということ、これが現在一番必要な問題だと思います。現在も
紛議調停委員会というのがございますけれども、これは利用されておりません。ほとんど
開店休業みたいなようでございます。それはなぜかと申しますと、
投機家が
不信感を持っているのです。この
紛議調停委員会へ持ち込んでも、これは
仲買い店の
御用機関であるから
信用ができないという
不信感を持っていて、だからたとえば直接役所へ行って訴える。そうしてお上の御手数をかける。それからあるいは
不正防止委員会をつくって、そして自衛的に立ち上がるというようなことになったので、その前に強力な
機関をつくりまして、そうして、もういつでもそこへ時を移さず、たとえばきょうの前場の売り買いが間違っていたという場合には、すぐにそこへかけ込んでいく。この強力な
機関は直ちに機動的に動き出してその
実態を
調査する。あるいは
仲買い店が
暴力団の介入を受けたならば、これもその
機関に直接持ち出してくる。そうして
法律家も含めて
常識で──
法律というのは
最低の
常識でございますから、もっと高い
常識で解決する。それでだめだったら裁判所なりへ行って、
最低の
常識の判断にまかすというものが必要だと思います。
時間がございませんので、あとはまた一問一答があるようでございますから。以上でございます。(拍手)