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1970-04-01 第63回国会 衆議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月一日(水曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 橋口  隆君 理事 前田 正男君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 塚本 三郎君       稲村 利幸君    宇野 宗佑君       小川 平二君    神田  博君       北澤 直吉君    小峯 柳多君       左藤  恵君    坂本三十次君       進藤 一馬君    田中 六助君       藤尾 正行君    増岡 博之君       山田 久就君    石川 次夫君       中井徳次郎君    中谷 鉄也君       松平 忠久君    横山 利秋君       近江巳記夫君    多田 時子君       松尾 信人君    川端 文夫君       米原  昶君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部外務参         事官      林  祐一君         大蔵大臣官房審         議官      下條進一郎君         大蔵省国際金融         局投資第三課長 天野 可人君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 阿部  茂君         日本輸出入銀行         副総裁     藤澤徳三郎君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第四五号)      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出があります。順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 まず政府にお伺いしますが、輸出保険対象にならない条件というものはどういうものでありますか。
  4. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  一般的にいって、輸出保険対象にならない条件というものはございません。
  5. 横山利秋

    横山委員 そうすると、保険をつけてくれと言われてもお断わりをする場合は、どういう場合ですか。
  6. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  たとえば、その他の法令によりまして、輸出承認がまだ行なわれていないものとか、輸出に合法的な適格性を持っていないもの一般を対象といたしております。
  7. 横山利秋

    横山委員 それは、合法的な適格性を持っていない、つまり手続でミスがある、粗漏がある、間違いがあるということだと理解をいたしますが、それでは、国によって、輸出をしているけれどもまだ保険がかけられない国は、いままで存在しましたか。
  8. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  ございません。
  9. 横山利秋

    横山委員 承れば、インドネシアにおきましては、一時保険対象にしない時期があったということを聞いていますが、それはどういうことなんです。
  10. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  これはインドネシアだけでなしに、アラブ連合ガーナ等、非常にその国の経済情勢が不安定でございまして、たとえばその国の中央銀行等につきましても、必ずしも一般的な信用を置き得ないような事態がございます。現在におきましては、これらの国につきまして、外貨送金遅延の問題がありますので、インドネシア等の国につきましては、保険上の取り扱いは免責ということにいたしまして、事故がたとえ起こってもこれは支払わないということでありまして、保険引き受けはしないということではないわけであります。
  11. 横山利秋

    横山委員 輸出はできる、保険引き受けをしないわけではない、しかし保険は事実上かけられない、こういうわけですか。こういうことですね。
  12. 後藤正記

    後藤政府委員 その国の中央銀行保証では保険引き受けないことにいたしております。たとえばインドネシア向け輸出でございましても、例としてアメリカの銀行がこれを保証したということならば、これは引き受けております。
  13. 横山利秋

    横山委員 お話を承れば、国交が回復しているとかいないとかに関係なく、未承認国であっても保険対象になる。それは法律上はどういう根拠、という言い方はおかしいのですが、それはどういう感覚でそういうことになっておるのでありますか。
  14. 後藤正記

    後藤政府委員 国交の回復していない国、つまりわが国と正常な外交関係に入ってない国に対しても、現在日本の国の立場からは、経済的な問題、その国との輸出入については、これは前向きに進めていく、こういう姿勢をとっておることは、先生承知のとおりであります。したがいまして、保険といたしましても、契約内容としてこれを他と区別せずに引き受ける。まあ引き受けない場合もございますが、その他の条件によりまして。そういう姿勢をとっております。
  15. 横山利秋

    横山委員 この保険民間保険でなく国が行なう保険である。国は、承認をするといなとにかかわらず、いかなる国といえども輸出奨励をしておる。いかなる国、特に未承認国といえども相手が、国交回復していない、しかもそれがかりに政策上立場が違う国であっても、輸出については日本国家として奨励するところである。その奨励をした貿易というものが順調にいくように、また、不慮の負担を受けないようにするために保険を国がかける、こういうわけでございますね。
  16. 後藤正記

    後藤政府委員 おおむね先生のお説のとおりであります。
  17. 横山利秋

    横山委員 そこで、きょうは輸銀の副総裁においでを願ったのでありますが、いまの質疑応答をお聞きになっておられて、どうお感じでございますか。まあ私の言わんとするところはよくおわかりだと思うのでありますけれども貿易を促進する、それには承認しておろうがおるまいが関係ない、だから国家として保険をかける。ところが一方、輸銀立場からいうと、貿易奨励するまでは何ら異存はない。けれども輸銀の金を使うのは困る。これは一体どういうふうに理解したらいいんでありましょうか。片一方では保険をかけてやるというのでありますが、輸銀の金を使わせるのは困るというのは、どういう理論になっておるわけですか。
  18. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 お答えいたします。  輸出入銀行は、御承知のとおり政府機関でございますから、政府方針に従って融資判断をいたしております。具体的には、個々ケースに応じまして、金融機関としての自主的な判断を加えるわけでございますが、ただいまお尋ねのような、未承認国であるからとか、ないからとかいうことは、・区別をいたしません。保険がついておるということを、むしろ、私どものただいま申した金融判断一つの重要な要素として、考慮に入れて処理をいたしております。
  19. 横山利秋

    横山委員 お話によれば、承認国であろうとなかろうと、輸銀取り扱いには区別はしない、これが第一、しかし政府機関であるから政府指示かあるからそれによる、これが第二、そういうわけでございますね。政府機関であることは保険だって同じであります。そうですね。保険のほうは、いま局長のお答えのように、きわめて素朴にどこでもやっています。やらないところは一国もございません。これは政府機関ですよ。そうですね。あなたのほうだけが政府の御指示によりということ、なぜそれを言わなければならぬのかということを疑問に感ずるのです。それは、輸出入銀行の定款なりあるいは法律を見ますと、未承認国であろうとなかろうと何ら区別はない、そういう法律体系になっていますね。その点はどうですか。
  20. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 融資をするにあたりましては、未承認国であろうとなかろうと、何ら区別はいたしておりません。
  21. 横山利秋

    横山委員 何ら区別はしておりませんというのは実情でありますか。それとも法律体系でありますか。
  22. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 法律上も区別をいたしておりませんし、実情におきましても区別をいたしておりません。
  23. 横山利秋

    横山委員 それは副総裁、どういうおつもりでそれをおっしゃるのだか、私は判断に苦しむわけでありますが、先年来、予算委員会や本委員会、あらゆるところで議論をしておることは、輸銀の金をもっと中国貿易に使わせろ、そして朝鮮貿易にも使わせろ、こう言っておるのにかかわらず、なかなかあなたのほうはうんと言わない。実情はそういう実情なんですが、それをあなたはえらいさっぱりとして、何ら区別実情はしておりませんというのは、どういう意味でおっしゃっておられるのでありますか。
  24. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 未承認国であろうとなかろうと区別をしておりませんと申し上げましたのは、当該融資案件が私ども輸出入銀行窓口に出てきた段階におきましては、何ら区別をしていないという実情を申し上げたわけでございまして、それ以前の段階で、つまり輸出入銀行窓口に来る以前のことは私どもの関知するところでございませんので、融資対象となりました段階におきましては、先ほど申し上げましたような金融判断、これは借り入れ人信用度であるとか、あるいは担保の状況その他諸般の事情を考慮いたしまして、金融判断を加えた上で処理するわけでございますが、その場合に、先ほどお話に出ました政府保険がついておるということは、金融判断の上で一つの重要な要素になるということを申し上げた次第でございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 要するに、あなたのえらい官僚的な答弁だと私は思うのですが、おれのところへ来る以前のことはおれは知らぬ、おれのところへ来てからはそういう判断はしない。大体おれのところへ来ぬのだから、おれの所管に関する限りは何ら区別しておらぬ。(「明確」と呼ぶ者あり)私の解釈は明確であるけれども、あまりに失礼な話じゃありませんか、それは。実情論をやっているのですから、あなたも、おれの机の上へ出てからはおれは区別したことはないが、しかしおれの机の上へ一ぺんも乗ったことがない、だから区別していない、それはちいと官僚的な答弁だと思いませんか。政府側にも聞きたいのですけれども、いわゆる実情論というのは、そんな論じゃないのですよ。あなたの言っているのは全く形式論にすぎない。副総裁として、輸出入銀行の金が未承認国に使われていないという問題点は一体どこにあるか。時間の節約もございますから、もう一ぺんひとつ親切な問題点の提起をしてもらわなければ困るじゃありませんか。
  26. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 私どもやはり銀行でございますから、銀行窓口に来ました案件処理するのが日常の仕事でございまして、それ以前の成り立ち、これは実際借り入れ申し込みがありましたときにいろいろと聞くわけでございますが、申し込みがない段階におきましては、何ともいたし方のない次第でございまして、ただいまの私の答弁はあるいは御納得がいかないかもしれませんけれども銀行といたしましては、やはり窓口へ来て初めてそれが融資対象になるかならないかということを判断するわけでございます。  それから、未承認国に対して輸銀は金を出さないというおことばがございましたけれども、そういうことはございません。未承認国といえども融資をしております。そのことだけは申し上げさせていただきたいと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 もう一度言いますが、みんなが笑ったものだから、あなた銀行家立場で節度を守ったつもりかもしれませんけれども、わざわざ副総裁に出てきてもらって私の聞きたいのは、形式的にはあなたの言うとおりかもしれぬ。しかしながら、輸出の増進という立場において輸銀の金が、いまあなたは使ってないということはない、使ってはいると言うけれども、実際承認国と違ったいろいろな差別がある。現実にある。あるからこそ国会でもずいぶん議論をしておる。吉田書簡の問題も出てくるということなんですよ。ですから私が遠回しに聞いておって、あなたも遠回しだから、中身に入らずにおいておるけれども、私が聞きたいのは、輸銀の金が未承認国といえどももっとオーソドックスに使えるようにすべきではないか。そういうことを輸銀立場としてどうお考えになるか。もっとざっくばらんにひとつ意見を聞かしてもらいたい、こういう意味で言っているわけです。あなたの机の上にあるかないかの問題以前の問題です。
  28. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 未承認国に対する融資案件でございましても、輸銀融資をする例があることはただいま申し上、げましたが、その場合には、やはり輸出入銀行というものは政府機関でございますので、政府の大きな方針に従って判断をする。個々ケース処理にあたりましては信用度その他の金融判断がございますけれども、その場合に大きな政府方針にはやはり従うべきものと考えております。そういう意味で、輸銀窓口に出てまいります前の段階でいろいろなことがありますことは、私どもとしてはそれは輸銀金融融資対象として取り上げる以前のことでございますので、そのあと段階でこそ私ども銀行としての役割りがある、それ以前のことは私どもとしては何とも申す段階ではないと考えております。
  29. 横山利秋

    横山委員 私はそういうことを申し上げる立場にございませんというか、言う気がないというか、そういうことらしいですから、これ以上あなたにこの問題に触れるのは避けますけれども、それなら外務省はその問題についてどうお考えでございますか。
  30. 沢木正男

    沢木政府委員 ただいまの質問に対しましては、私の所管事項外でございますので、担当局長一からお答え申し上げたいと思います。
  31. 横山利秋

    横山委員 それではもう少し輸銀の副総裁にお伺いしますが、未承認国といえども輸銀の金が若干出ておるというケースは、どういうルート、どういう方法によって行なわれているか、またその金利実質どのくらいになっているか伺います。
  32. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 未承認国に対する輸銀融資は、かっては中共もございましたし、またルーマニアあるいはユーゴスラビア等ございまして、ただいまお尋ね金利輸出の場合にとっております四分ないし七分という範囲内で、その品目その他の条件に応じてケースバイケースできめておりす。
  33. 横山利秋

    横山委員 市中銀行を通さないで輸銀が直接に出しておりますか。
  34. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 市中銀行との協調融資で貸しております。
  35. 横山利秋

    横山委員 期間はどのくらいのものでありますか。
  36. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 期間案件ごとに違うわけでございますが、延べ払いで長いものは五年ないし八年でございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 未承認国で四分ないし七分、期間は長いもので五年ないし七年、そういうわけですね。平均どのくらいの延べ払いと理解すればよろしいのでしょうか。七年というのは、私の聞いております分では、少し長い、特例に値するような気がいたしますが、平均は一体どのくらいの延べ払いでありますか。
  38. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 いままでの実績につきまして正確な平均を出しておりませんので、もしお求めでございましたら、後刻調べまして御報告させていただきますが、ただいま未承認国だけの数字は、正確に平均としては出しておりません。
  39. 横山利秋

    横山委員 わかりました。私の承知しておる限りにおいては、五年及び八年の長期というものはあまり承知しておらないのです。中国の場合におきましてももっと短いのではないかと思うのです。しかし、それはあとでお調べを願って、未承認国に対する金利延べ払い実情を資料として本委員会提出をしていただきたいと思うのであります。  これらに比べますと、たとえば朝鮮民主主義人民共和国、北でありますが、北の場合においては輸銀の金が全然実際問題としては使えない。したがって、市銀から借りてメーカーに前渡しをいたしますと、大体一〇%というのが普通のようであります。そういたしますと、驚くべし、金利について輸銀の金が使えるか使えないかについて非常な差がある。単に金利の差があるばかりでなくて、延べ払い条件につきましても差がある。いま朝鮮に入っております西欧契約を見ますと、去年でありますが、フランスが八年ないし十年、西独が六年ないし七年、オランダが七年ないし八年、このくらいの延べ払いである。そしてどんどん西欧の国が北へ入りまして商談を成立さしていく。日本は、地理的にもあるいはアジア的にも非常に条件が整って、商談を成立させようとすればどんどんと……(発言する者あり)委員長、もう少し静かにしてくれ。
  40. 八田貞義

    八田委員長 静粛に願います。
  41. 横山利秋

    横山委員 ありがとうございました。  そんなことですから、とてもこれでは話にならぬ状況なんであります。したがいまして、北に対する輸銀の金を、何とかこの際、いままでの行きがかり行きがかりとして、使わせるようにしたらどうであろうかということが痛感されるのであります。  政務次官、いま来たばかりで、あなた来たのがおそいのでけしからぬ。私の一番いい話を聞かぬでおいて結論だけ、それはいけませんよ。政府方針としていけませんよと言うだけでは、あなた、政務次官になった意味がないし、いままでおくれてきた責任があるのですから。  いままで私が副総裁や皆さんとお話をしたことは、輸銀の金を未承認国に使わせないということは、国民にとって、国民経済にとってたいへんマイナスであるという意味お話をしておったわけでありますが、この輸銀の金を未承認国といえども何ら差別をしていないと副総裁は言うのです。それならば政府もその立場をとって、輸銀に対してもっと、その額面どおりでなくて、実質もそのとおりだという保証を与えてもらいたい。どうですか。
  42. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 通産省といたしましても、未承認国あるいは共産圏に対しても、自由主義国と同様に取り扱っていきたいという考えでございます。
  43. 横山利秋

    横山委員 政務次官も、何ら変わりありませんと言う。副総裁も、何ら変わりありませんと言う。変わりがありませんのに、どうしてこんなばかなことを私、質問せんならぬのですか。未承認国承認国といえども輸銀の金を使わせるのに何ら差別待遇はしない、こうおっしゃるわけですか。
  44. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 さようでございます。
  45. 中井徳次郎

    中井委員 ちょっと関連。いま横山君の話を私、承っておって、特に横山君は去年みずから社会党の代表で北鮮に行かれた経験を持っておられる。それを基本にしてのお尋ねであると思って伺っておりましたところが、輸銀の副総裁のお返事の中に、ルーマニアだとかチェコスロバキアだとか、ずっと前に承認をして、大使も交換して平常になっているところのことを例にあげて、未承認国の時代に貸しましたというような、そんな古くさい話をわれわれはこの委員会でやっておるわけじゃないのです。現在、北京政府との間に輸銀の扱っておる件数はどれぐらいで金額はどれぐらいか、あるいは北朝鮮との間にそれがあるのかないのか、あれば何件ぐらいで金額はどれぐらいで、貸し付けの年数はどれくらいでどうだということぐらいは説明してもらわねばどうにもならぬ。私はかたわらで伺っておりまして、そんなことをちょっと感じましたので、その点だけお尋ねいたします。
  46. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 先ほど私が申し上げました中に、ルーマニア等の名前をあげましたが、これは私が未承認国共産圏と混同いたしましたので、訂正させていただきます。  それから、北朝鮮の問題についてお話がございましたが、北朝鮮に対しましては何ら実績がございません。
  47. 中井徳次郎

    中井委員 それじゃもう一点。これでやめようと思いましたが、共産圏と未承認国をごっちゃにしておるようなことではかなわぬ。正確に言えば、ソ連とはわれわれはまだ国交を回復しておりません。しかし、大使は交換しておるし、平和宣言はいたしておるし、ですからそういう情勢の中にあって、しかもソ連から見れば、一共産圏に対する貿易は全体の貿易の七割から七割五分、それ以外は自由主義国貿易をしておる。その中で最大のものはイギリスで、二番目は日本である。おそらくことしあたりは日本が一番になっておるのではないかと私は思います。五億ドルを突破しておるというような金額になっております。これは厳格に言えば未承認国ですが、皆さまもやっておられると思います。そういう意味で、いま北鮮とはやっておらぬというお返事がありました。私はやれというほうですけれども、きょうはあなた副総裁ですから、そこまでは言いません。それは政府責任でしょうけれども。  北京政府とはどうですか。件数金額等、現状でわかっておるはずでしょう。せめてそれだけでも聞かせてください。
  48. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 中共に対しましては、LT貿易以外には、かって出ましたビニロンプラントでございますか。それから、開行以来の私ども融資承諾額としては百四十億ほどございますが、昨年末現在では七億弱の貸し付け残高でございます。
  49. 中井徳次郎

    中井委員 大体わかりましたが、正確にはちっともわかりません。百四十億というのは、そのプラントは倉敷紡績のものだったろうと思います。それ以外、現在は七億程度、非常に減っております。これは統計をあとでひとつ正確なものをこの委員会に出してください。それだけお願いをいたしておきます。どうも失礼しました。
  50. 横山利秋

    横山委員 いまの話を詰めますが、政務次官は、輸銀の金は承認国、未承認国融資については差別待遇はしない、こういうことを言われたと了承してよろしゅうございますね。——わかりました。そのことは一体どういう意味でおっしゃっておられるのですか。政府のいままでの方針が変更されたという意味でおっしゃるのでありますか。保険じゃないですよ。輸銀の金ですよ。あなたに質問している。
  51. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 輸銀の問題については、輸出保険のように、未承認国あるいは共産圏に平等にやられておるのとは違いまして、ケースバイケースで行なっております。また相手国のいろいろな問題があります。差別はいたしておりませんけれども、いろいろな問題で、通産省管轄でもございませんし、これは大蔵省管轄になるわけでございます。
  52. 横山利秋

    横山委員 これはどうも、だからおくれてくると、こういうことになるんだな。さっきあなたは河と言ったね。さっきは一切差別しておりませんと言うのであ然とした。それが、いまちょっと確かめたら、保険輸銀と間違ったか知らぬが、まるきり百八十度変わった答弁をしてもらっては、一体何を信用して私、質問したらいいかわからぬじゃありませんか。しかも最後は、私の所管じゃない、そんな二とは知らぬ、それでは委員長、私の質問は続けられぬ。責任者を出してもらわなければだめだ。最初は、一切区別しないと言っておいて、その次は、いやケースバイケースで、その次には、私の所管じゃないから知らぬ。そんなことでは私は何を言ったらいいかわからぬ。答弁にならぬ。(「新任のめい答弁」と呼ぶ者あり)迷う答弁だ。二転、三転もはなはだしいじゃないか。
  53. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 いま誤解があるようですけれども輸銀の場合については差別をしないと申し上げましたことは、私は原則論でそういうことを申し上げたのであって、輸出保険については通産省がチェックいたしまして、それは全部、承認国、未承認国共産圏については、全然差別をいたしておりません。しかし、われわれ通産省といたしましては、その相手——今度は輸銀自身の問題になります。金融その他の問題でチェックするわけでございますから、原則論としては差別いたしていないわけでございます。
  54. 横山利秋

    横山委員 食いつくようで悪いけれども、私の所管じゃない、通産省所管じゃない。なるほどこれは大蔵省所管かもしれぬ。けれども輸銀の性格は一体そも何だ。貿易振興じゃないか。貿易振興は一体どこが担当する。通産省じゃありませんか。だから、大蔵省所管といえども、本来の趣旨からいくと、貿易振興しなければならない一番大事なお役所は通産省である。通産省の意思が重点であって、それに基づいて大蔵省があって当然なことだと私は思う。だから、輸銀の金を使わせるべきだと通産省考えるならば、通産大臣はもちろん、政務次官通産省の役人も全部そろって、もうそんないいかげん古い話はやめろ、この際輸銀の金を使わせるべきだと、なぜそれが言えぬ。私の所管じゃないなんて寝とぼけたことを言ってもらっちゃ困りますよ。
  55. 後藤正記

    後藤政府委員 私からお答えいたします。  貿易促進、輸出増進の立場をとり、それを促進することは通産省の仕事である、まさに先生の御見解のとおりであると思います。したがいまして、一般にこの輸出、特に延べ払い等の大型案件等を促進いたします場合におきまして、輸出貿易管理令に基づいて、輸出承認を要するものにつき、この承認をし、それに審査の上輸出保険に付保する、その段階までが通産省の仕事でございますが、申すまでもなく、輸出入銀行等の融資、あるいはまたそれと関連いたします市中協調融資との関係、これにつきましても、通産省は至大の関心を持ってこれを促進する立場にあることは、御指摘のとおりでございます。その点につきましては、これは大蔵省所管であり、輸出入銀行の仕事ではございますが、常時緊密なる連絡をとって、通産省としての意向をよく連絡をいたしておる、かような立場にございます。
  56. 横山利秋

    横山委員 余談になりますが、まあ同僚諸君も聞いてもらいたいと思うのですが、きのう日航機の乗っ取り事件があって、私はちょうど運輸委員会へ行っておった。そうしたらみんなが、与党も野党も、こもごも大臣並びに政務次官質問をした。その質問の焦点が、最悪の場合は北へ行くこともあるだろう、あるだろうからその点十分に連絡をとれ、とる方法があるのかと言うたら、政務次官は、いま直ちに考えられることは、朝鮮赤十字社あるいは国際赤十字社を通るルート、それからもう一つは、困難ではあるけれども直接北の政府へも考えられないこともない、方法はなかなかむずかしいがやってみる、こういうことでありました。私はそのときに痛感したことは、日本政府が、万やむを得ず北へ着陸する場合においてはよろしく頼むと言えば、北の朝鮮民主主義人民共和国は決してこれを拒否しないであろうと、私は痛感したわけであります。  先ほど中井委員から話があったように、私は、おととしでありますが、北の国をずっと回ってまいりました。一番痛感したことは、日本の本土に六十万人の朝鮮人諸君がいるということを、北の政府及び北の公民は、腹の中でほんとうによく知り、よくそれを配慮しておるということなのであります。同時に、いわゆる赤軍派が、イデオロギー・上、行動上からいっても、北の政府の受け入れることではないという二つの理由からいって、私は、最も敏速に北との連絡を政府がとるべきだ。そうして一刻も早く生命、財産——生命というものが大事であるならば、赤軍派の主張をいれて——主張をいれてというのは残念なようではあるけれども、生命を尊重するためには、一刻も早くその方法をとったほうが安全であると私は思ったのであります。これは余談ではありますが。そうしたら韓国内に着陸をした。そのために、たいへんなまた新しい問題が発生して、いまに至るまで解決しない。何か国境へ行ったら砲火を浴びたというのであるが、それがほんとうであるか、うそであるか、それはわからないし、それから、北からやったか、南からやったか、それもわからないし、連絡がとれてやったのか、とれずにやったのか、それもわからない。これは今後に期さなければなりませんけれども、もし万一北のほうへ着陸せざるを得ない場合ということを想定してみますと、いまのようなこういう不測の事態を考えますと、いまのように、政府朝鮮民主主義人民共和国に対してことさら不必要に差別待遇をしておることは、何かのときにやはり問題が生ずるということを私は思うのであります。  いまこういう事態で、私がこの朝鮮問題をとらえてやっておりますと、私の質問しているのは何か適当な時期ではないという気がしてなりませんけれども、しかし、まあこの法律案がもう上がる時期的になっておりますので、やむを得ず質問をしておるのでありますから、その点はお含みを願いたいと思うのであります。  長期的に見てもう通産省としても——いまずいぶん朝鮮からの引き合いがある。私の手元にいまあります、朝鮮がこれまで日本に買い付けの意向を示したプラント類、ないしは朝鮮側が対外買い付けを進めているプラント類、おもなものだけあげましても、火力発電設備、水力発電設備、原油加工工場、合成樹脂工場、洗剤工場、ナイロン工場、アクリル繊維工場、合成ゴム工場、アルミニウム工場、船舶、ディーゼルエンジン工場、自動車工場、製紙工場、テレビ放送設備、引き抜き鋼管設備、計測器工場、製靴工場、各種工作機械工場、これらのプラント類の多くは日本に買い付けの意向を示したのでありますが、また、技術的にも十分輸出可能な状態でありながら、日本では実現できぬために西欧諸国に買い付けが転換されたり、そのままになっておる。日本で実現できぬ理由には、いま言いましたように、関係者の往来も不十分であるし、あるいはまた輸銀の金が使えないために、金利及び延べ払いで引き合わぬということにもなっておるわけであります。私は今日まで国会で、これは何も野党ばかりでなくて、与党の諸君も、腹の中ではもういいじゃないかというお気持ちもあるようでありますが、輸出増強ということが国家的な重要な政策であるならば、この際、もうこの機会に輸銀の金を使わせることに政府も腹をきめたらどうか。こういうことは、さっきも余談ながら言ったのですが、通産大臣や外務大臣や大蔵大臣を呼ばなければ話が進まぬことではあろう。あろうけれども、まず、それらに意見具申をされる責任のお役人、あるいは政務次官、あるいは担当者等が、やはりその気持ちにならなくてはいかぬと思うのであります。  ですから私は、いま通産省を代表して小宮山政務次官にお伺いするというよりも、小宮山政務次官、政治家としてあなた自身としても、この機会にもう未承認国輸銀使用については再検討するということが、あらゆる意味において国益になるということについて、あなたももうひとつ腹をきめられて、関係者の役所側の皆さんも腹をきめられて、百尺竿頭一歩を進めるというお気持ちになったらどうであろうか、こう私は思うのであります。同僚諸君の顔を見ていますと、にこっと笑って、いいことを横山君が言うてくれたという顔をしておりますから、まさに商工委員会の総意を代表して私は申し上げていると思うのであります。いかがでございますか。
  57. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 横山先生お話、私自身としては非常にもっともだと思います。今後日本も自由諸国だけでなくて共産圏にも大いに経済的な交流を進めていかなければならない。百尺竿頭一歩を進めよではなくて、そういうことを積極的にやるように、大臣その他にも具申するつもりでございます。
  58. 横山利秋

    横山委員 初め悪く終わりよしと言いますか、これはあなたの歴史的な発言だと承知をいたしまして、政治家として、いまおっしゃったことが、単に口頭禅に終わらずに、あなたの在任中に輸銀の金が未承認国に使われるということが実現できれば、あなたは将来洋々たる道が開かれると私は思うのであります。副総裁も御出席でありますから、どうぞ政務次官のおっしゃったことをよくお考えくださって、先ほどあなたも、初め悪い答弁でありましたから、いまいい答弁をしてほしいのでありますが、日分の机の上にないんだから差別待遇は一切してないというようなおかしな答弁は、これはほんとうに初め悪い答弁であります。いまからいただける答弁は、政務次官同様、私も一生懸命に努力をいたしますという御答弁がいただけるものと思いますが、いかがでございますか。
  59. 藤澤徳三郎

    藤澤説明員 将来、小宮山政務次官から御答弁になりましたような方向で政府方針がきまり、私どもも安んじてそれに沿っていけますようになることを期待しております。
  60. 横山利秋

    横山委員 これも終わりよしというところですな。  委員長にお願いをしたいのですが、これで本日御出席になりました政府関係員はことごとく私の説に同調されました。つきましては、法案が上がります際は大臣が御出席になると思うのでありますが、ひとつ政務次官から大臣によくお話をしてくださいまして、最終的に大臣から本件について御答弁いただくようにお手配願いたいと思います。  次の質問は、外務省からおいでになりましたので、時間の関係で簡潔に申し上げますが、私であってすらも、北へ入りますにはナホトカ経由で、そしてソビエトから北へ入ります。帰りもやはりソビエト経由であります。朝鮮との日朝貿易状況は近年非常に驚くべき発展をしておりますにかかわりませず、常に商談が、ソビエトを経由して入り、ソビエトを経由して帰ってくる。そのために、少なくとも往復十日間はむだに使用しておるわけであります。  先年、予算委員会で私が三木外務大臣にこう言ったのであります。もし朝鮮からそのまま船に乗って直接日本へ帰ってきたときにはどうするんだと言いましたら、日本人だもの、受け入れるのは当然であります、国外追放するわけにはまいりません。それはあたりまえの話であります。あたりまえの話であるけれども、しかし、直接帰ってきた者は旅券法違反として引っぱられて、そしてこの次からは商売に朝鮮に行くことができぬというようなことがあっては困る、こう言いましたら、それもまた十分配慮をいたします、こういうわけであります。  そこで私は、うそかほんとうか調べてみようというわけで、日朝貿易会の幹部をして朝鮮から直接帰国をするように処置をいたしました。すると、外務省はもちろん、法務省からも係官が船着き場へ出迎えまして、もうもったいないほど親切にやってくれて、たいへん喜んだわけであります。喜んだそこまでは、さっきの話と違いまして初めよかった。その次に、その本人がまた商売で行くということになったら、外務省は、旅券課は、何を考えたのか知らぬが、一札出せ。旅券はもちろんソビエトでありますから、朝鮮へ行かないと一札出せ。そんな一札は出せないと言ったら、よそへ行かないと口頭でも言え。それも出せないと言ったら、直接朝鮮から日本へ帰ってこないという一札を出せ。それも出せないと言ったら、問わず語りに課長の前で私は直接帰ってきませんと一言言え、文書でなくてもおれの目の前で一言おまえが言ったということにせい、こういうわけであります。そんなことは、国会での横山代議士と三木外務大臣との約束と話が違うと言ったのでありますけれども、どうしても出さぬ。それでもう商売上やむを得ずに、ひとり言みたいに課長の目の前で、私は今度はソビエト経由で帰ってこようと思うと、こう言ったというのであります。言ったら、それならいいと言って旅券をくれたというのであります。全くあきれはてたことでありまして、あたかも私がバッジをはずしておった瞬間なのであります。残念ながら、過般私が名古屋市長に立候補し衆議院選挙までどさ回りしておった状況らしかったので、ほんとうに私はばかにされた。国会議員でなければ外務省はなめるのか、けしからぬと私は痛感をいたしたわけであります。いま幸いにも有権者諸君の御支援を得てバッジをつけておりますからこれからいじめます。しばらくいじめますが、なぜそういうばかなことをしてくれたのかという理由を聞きたいのであります。
  61. 林祐一

    ○林説明員 ただいま先生の御指摘の点につきましては、旅券法の八条の規定がございまして、かりに申請の際にソ連に行くと称して旅券を取ってまいりまして、その後事情の変更ないしはその他の事情によりまして、ソ連から北鮮に行きたい、平壌に行きたいという申し出があれば、その際には、旅券法の八条の規定に基づきまして、渡航先の追加という申請を取っていただくわけでございます。しかるに、その八条の規定は「渡航先の追加を申請しなければならない。」こういうふうになっているのでございますけれども、しかるに、その八条の申請をしないで、かりにモスクワから平壌に行ったという場合は、いわゆるわれわれ旅券法上では横すべりというふうに言っておりますが、そういう場合におきましては八条違反でございます。したがいまして、政府としてはこれに対する直接の罰則はございませんが、法的には違反であることは事実でございます。そこで、その違反の事実に対してもしはっきりし得れば、また八条違反という問題とは別に、旅券法の二十三条の規定に基づきます、初めから平壌に行くという意図を持ってしかもモスクワへ行ったということであれば、そこから横すべりしたという事実に対して、いわゆる虚偽申請ということで問題になってくる点でございます。  そこで、現在、日朝間では、先生御指摘のように、すでに多くの人がこのような状態で横すべりして行っているやに聞いております。またそれらの者は、過半数以上が経済関係の人であるというふうにも聞いております。したがいまして、その純粋なる経済行為という点から申しましては、ただいま通産省ないし輸銀の方々からお話がありましたように、まあ問題はないかもしれませんが、しかし、人の来往という、先生の御承認を得まして、昭和二十六年の十二月一日から施行しております旅券法というたてまえから申しますとやはり問題があるという点で、御指摘のような事態が発生したわけでございます。片や入管令の六十一条というのがございまして、この六十一条では、日本人の帰国に際しましては必ず有効な旅券を持っていなければならない。しかしそれには罰則はございません。したがいまして、旅券を紛失したり、あるいは外地から引き揚げてきた場合には旅券はございません。そういう場合におきましては、六十一条で有効な旅券を持っていなければならないけれども、それにかわる方法としての措置もとっておりますので、したがいまして、入国については特に罰則という問題が起こってきません。これは法務大臣の所管でございますので、直接外務省所管ではございませんが、御参考までに申し上げたわけでございます。したがいまして、法務省としては、昨年でございましたか、国会で、いま先生御指摘の事態が発生したときに、入管令六十一条のたてまえからいって、法務省入管としましては、特に問題にしなかったことでございます。しかし、外務省の旅券法というたてまえから申しますと、いま申しましたように、八条違反ないし二十三条にかかる問題が発生している、こういうことで、行政措置としまして、先生御指摘のような点があったかと思います。
  62. 横山利秋

    横山委員 私の質問に答えていない気がするのですが、法律のあっちこっちを説明なさるよりも、同僚議員が聞いておっておわかりになるように、外務大臣が、いいから直接帰ってくれと言ったのですよ。そして直接帰さしたのですよ。それに意趣晴らしをするとは何事か。その次に行きたいと言ったら、朝鮮へ行くならいかぬとか、あるいは直接帰ってこなければ旅券は出さぬ、そういう意趣晴らしをするということは何事かということについての答弁がない。
  63. 林祐一

    ○林説明員 御指摘のように、八条違反という法律上の問題、それから二十三条の罰則にかかわる問題、こういうことで直接罰則にかけるということではなくて、行政措置上、前にそういう懸念がある方につきましては御注意を申し上げたということでございます。
  64. 横山利秋

    横山委員 御注意を申しますと言ったって、外務大臣がいいと言ったからやらせたのですよ。それなら、そのときに御注意を申し上げることをどうしてしなかったのですか。国会で了承をして、それではこれは直接帰しますよという話になって帰させた人間に、あとで御注意を申し上げます。御注意なんて、ていさいのいいことだけれども、どうかつをしたのですよ。だから直接帰らなかったのですよ。それなら、初めにいわゆる御注意を申し上げるなり、それは認めませんとなぜ言わぬのか。外務大臣がいいと言ったから、私やらせたのじゃないですか。あなた、そのときの実情を御存じないのですか。
  65. 林祐一

    ○林説明員 横山先生御指摘の点につきまして、法務大臣として問題ないというふうに発言があったことは聞いておりますけれども、外務大臣が問題ないというようにお答えしたと私は記憶しておりません。
  66. 横山利秋

    横山委員 そうじゃないですよ。こんなことに時間をとるのはもったいないぐらいだけれども、私が予算委員会で三木外務大臣に対して、帰りにわざわざソビエトを回って帰ってこなくても、せめて最初の旅券はしかたがないにしても、結局は北へ行ってみなソビエト回りで帰ってくる。日本人が日本へ帰ってくるのだから、北から直接に船があるのだから帰らせたらどうだと言ったら、善処しますということであったから、それで、外務省の旅券課と話し合いの上で、直接帰しますよ、ええ、わかりました、法務省にも連絡してください、はい連絡しましょうということで、円満に話が済んで直接帰させた。そうしたら、外務省も法務省も船着き場まで迎えてくれて、たいへん恐縮しましたという報告があった。そこまではよかったのですよ。あとがいけない。この次に行こうとしたら、一札書け、おれの目の前で問わず語りに話をしろということになって、結局は直接に帰ってこれなかった、こういうわけです。しかし、国会における議事録においては、外務大臣が、直接帰すことについて善処すると言ったことばが残っているだけであって、あとは何もそのままなのですよ。ですから私はそれをたてにとって、北から直接日本へ帰せ、こう言っているわけです。  いま旅券法の改正という問題がやかましくあるけれども、現行法においても、日本人がどこの国からでも直接帰ってきても、日本人じゃないか、帰せと言っている。あなたは、横すべりしてはいけないと言うけれども、おそらくこの中におる同僚諸君で、外国へ行った人間で、横すべりの経験のない人間は少なかろうと思う。横すべりだって、自分一人で行くのではないのですよ。ちゃんとそこの大使館なり領事館なりと話をして行くのですよ。みな手伝ってくれるのですよ。そういう公然たる事実を、単に文書の上でいいとか悪いとか言ったって始まらないじゃありませんか。官僚的なことを言わないで、もう少し現実に合わせたらどうですか。どうなのですか。
  67. 林祐一

    ○林説明員 現行の旅券法のいま申しました八条、二十三条等の規定がございますので、今回旅券法の一部改正という案を国会に提出して御審議を仰いでおります。今後、はっきり北鮮に行けるような措置が講じられるとすれば、いま言ったような問題はないんではないかと考えられますが、そういう点について、外務省としましては善処する考えでございます。
  68. 横山利秋

    横山委員 時間がございません。通産政務次官にもう一言、二言聞いておきたいと思う。これも外務省の問題だとおっしゃるかもしらぬが、さきめ問題に関連してひとつあなたのほうの意向を聞きたい。  一つは、北から万博を見に来たいと、こう言っていますね。これは、アジアにおいて最も盛大に行なわれております万博について、アジア諸国家が関心を持つことは当然であります。だから、万博を見に来たいということであるならば、多少の条件はあっても、万博を主催する通産省としても、好意を持って善処をしたらどうかということが一つであります。  それからもう一つは、先ほどたくさん申しましたが、引き合いがたくさんあるわけです。私は、いま北との往来をまるきり自由にせよというわけではない。しかし、これほど商談が成立していく、ないしは成立させようとする過程で、日本の機械なり、日本の注文したべらぼうもない高い品物を買うについては、日本へ来て一ぺんその引き取りの検査をしたいとか、工場をひとつ見してもらいたいとかいうことが商談上あり得ることは、これは当然のことであります。かつてアクリルプラントでありましたか、閣議で一ぺんそのことについて了承をしたことがあります。ところが韓国の反対にあって一夜にして閣議の決定がくずれたことがございます。まことに閣議というものはだらしのないものだと、国内外において笑われた時期がございます。あれからもうすでに数年をたっておるのでありますから、この際、純貿易上、純商談の上で、引き合いの機械あるいは引き取りに要する場合の検査、その問題についてはひとつ入国を認めたらどうだ。単にイデオロギーや韓国のことばかり考えないで、この際、貿易振興という意味において窓口一つ二つ開いたらどうかという点を、あなたの御意見を伺いたいのです。
  69. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 北鮮の方が万国博覧会をごらんになりたい、そういうことでしたら、われわれとしても大いに歓迎でございます。  それから、引き合いのそ他についても年次的に漸増をしております。で、その引き合いのために工場見学その他については、われわれとしても拒否する理由は何もございません。大いにそういうことをしていただきたい。拒否する理由はないことは事実でございます。
  70. 横山利秋

    横山委員 大政務次官あとで、外務省の参事官返事を聞くのは失礼に当たるから——政務次官に失礼ですよ。あなたに失礼じゃないのですよ。政務次官に失礼に当たると思いますから、あなたの言うことは聞きません。けれども政務次官が素朴にああいうことを言われたということだけは、ひとつ外務省としても十分腹に入れておいていただきたい。よろしゅうございますね。  じゃ私の質問を終わります。
  71. 八田貞義

    八田委員長 松尾信人君。
  72. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 昨日ちょうど海外投資に対する資金の手当てのことで中断がありました。それで私が申しておりまするのは、輸出入銀行もある、事業団もある、また協力基金もある、石油公団もある、そのようないろいろな面が、おのおの海外事業というものに関連しまして、それぞれ資金手当てがあるわけでありますから、当然、事業面とその裏づけの資金というものは、それぞれにあってしかるべきでありますけれども、現在、事業団におきましても、相当もう資金繰りの余裕がない。担保の余力もない。それから、すべてのものを総合調整いたしまして、日本の大きな国策、海外資源の確保という点からいきますれば、やはりこの海外投資に対する資金の手当てというものは、大きな見地からこの一元化というような問題——何かそういうもので、相互の資金繰り資金面、そういうものを考えて、そうして大きく資源の確保に前進すべきじゃないか、このような意見であります。これは、ここで簡単に答えられるものではありませんから、また将来のお互いの討論にいたしまして、きょうは次にまいりたいと思います。  技術協力の点でございます。これは四十三年の技術協力が、金額で千三百七十万ドル、いろいろ内容はありますけれども、そのうちの一つといたしましては、発展途上国からの研究生、留学生の受け入れが千七百六十名となっております。この研究生であるとか留学生というものは、日本でどのような勉強をしておるのか。その研究費だとか滞在費はどのようになっておるのか。また、所定の研修を終わりまして帰ったあとのそういう人々の実態というものは、どのようになっておるかということでございます。
  73. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えをいたします。  年々、わが国の経済協力、これは資本協力、技術協力あわせてでございますが、それの増進するに伴いまして、技術協力の一環でございます海外の発展途上国からの研修生の受け入れの数も累増いたしてまいっておるということは、先生御指摘のとおりでございます。  そこで、この研修生の渡航費、それから研究費、滞在費等につきましては、これは研修生に二色ございまして、政府ベースで受け入れておる者、これは全額政府が負担をいたしております。それから、民間で受け入れておる者につきましては、これは海外技術者研修協会という団体がございますし、そのほかに、また別のルートによって特別に個々の話し合いによって入ってくる者もございます。これにつきましては、政府としてこの四分の三を補助しておるということになっております。それから国際機関、たとえばアジア生産性本部等々を通ずる者につきましては、これは渡航費だけをその当該の国際機関が負担して、滞在費とか研修の実施費等は日本政府で負担をいたしておる、かような実情でございます。  そこで、この研修生の研修をいたしております内容はいかがかと、こういう御質問でございましたが、これはきわめて多岐にわたっておりまして(松尾(信)委員「簡単でけっこうです」と呼ぶ)農業関係、鉱工業関係、ほとんど一人一人が違った研修の目的を持って勉強をいたしておりますので、一々列挙できませんでございますが、その点は御了承願いたいと思います。  それで、あとその研修を終わって帰った人たち、それぞれ自国、母国におきまして、研修の成果を十分に発揮して、それがひいてはわが国と発展途上国とのつながりのきずなになってくるということは、最も望ましい状態であると存じます。かような役割りを果たしておってくれるというように私ども期待し、また、そうであろうと想像いたしておるわけでございますが、実情を一々個別的には私ども把握いたしておりませんが、先般聞きましたところでは、実は海外技術者研修協会の理事長がたまたま発展途上国へ参られる機会があった。そのときに、こちらで研修を受けた人たちが集まって、そして歓迎をして、自分たちはかようなポストについてこういう仕事をやっておるということを報告してくれたので、非常にうれしかったという報告を受けた記憶がございます。毎年累計いたしまして千七百六十名入ってきておりますので、それぞれのポストに応じて経験を生かして活躍しておってくれるもの、かように期待いたしております。
  74. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そこはわかりました。それで、いまお話しのとおりに、そういう人々が自分の国に帰りまして、そして指導的な立場になるし、また日本といたしましても、特に海外資源の確保という面からいきまして、そういう人々、第一回卒業生、第二回卒業生というふうに、それぞれ学校には卒業生の名簿がありますし、おのおのが同窓会を開いておる。地域、地域でも、これが五年、十年となりますれば、相当の人々が日本で研修をいたしまして、現地の指導者に育っていっている。でありますから、そういう人とのつながりをほんとうに深くいたしまして、日本と、日本のあらゆるものを理解させる、また現地のことを深くわれわれも認識する。そして資源の確保。また、日本というものがほんとうにたよりになるのだというような友好関係も、深く結ばれていくのじゃないか。  でありますから、こういうような卒業生を大事にして、向こうで歓迎会を持ったということも喜ばしいことでありますけれども、年に一回、二回とか、三年に一回というように日本に呼んで、そしてまた新たに友好関係を樹立する、また深く経済提携を結んでいく、万博等へも招待してあげるという点は、海外資源の確保のために、また大きな国民外交の一環としましても大切ではないか。これは要望であります。ひとつ今後、特にこの点につきましては、せっかくの制度もありますから、卒業した人々を日本と現地の国のためにしっかり掌握されまして、お互いの国益になるように御努力願いたい、このように希望する次第であります。  次に、法令の関係でございますけれども、今度は対象投資が拡大されまして、経営支配企業に対する長期貸し付け金、経営支配企業の発行する社債も受け入れの対象にする。この経営支配企業とは一体どのようなものでございますか、お知らせ願います。簡単でけっこうです。     〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕
  75. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  画一的には、たとえばその持ち分が幾らになっておるかというような標準できめるのは、これは非常にむずかしいかと存じます。持ち株比率も一つの重要な要素ではございますが、そのほかに役員構成でありますとか、取締役会の運営でございますとか、あるいは経営参加の度合い、内容。一例をあげますれば、技術援助はどうなっておるか、製品の販売計画はどうなっておるか、それから原材料の長期供給計画はどうなっておるか、かような点を十分に総合判断をいたしまして決定していきたい、かように考えております。
  76. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 次は、合弁企業のパートナーの点でございますけれども、それに対する出資金の貸し付けも付保対象とする。この合弁企業のパートナーというのは、現在もうすでにできておる合弁企業のパートナー、いまから金を貸し付けて合弁企業をつくっていこうとするパートナー、両方あるのかどうかというのが一つであります。そして、その将来できるという合弁企業につきまして、こちらから長期資金を貸すということによってどのような効果をねらっていらっしゃるのか。また、そのようなパートナーは心配ないのかどうか。金を貸さなくては合弁企業ができないということに何か心配があるのじゃないか。そういう点について御説明願いたいと思います。
  77. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  最初の御質問につきましては、これは両方でございます。  それから、発展途上国におきましては、国内の資本が非常に貧弱でございますので、どうしても現実に合弁企業をつくります際に、国内資金の枯渇ということで、その合弁企業に対する出資をするための貸し付け金ということがやはり出てまいります。確かに、こうした発展途上にある国々でございますので、はたしてだいじょうぶかどうか、先生御指摘のような心配もございますが、この点は十分によく見きわめまして、ある程度のリスクは覚悟しつつ、やはり前向きに善処をいたしてまいる必要があるかと存じます。
  78. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 次は、海外直接事業も今回保険対象になったわけでありますが、この海外直接事業というものは一体どういうものか。簡単でけっこうです。
  79. 後藤正記

    後藤政府委員 端的に申し上げますと、これは具体例をあげたほうがいいかと存じますが、たとえばアラビア石油の例のように、現地において法人格を持った法人を設立する云々ということでなしに、日本の会社がこちら側におって、そして現地まで手を伸ばして仕事をする、こういうのが海外直接事業と私ども了解いたしております。最近におきましては、もう一つ日本瓦斯化学が、アラスカにおきまして事業を、やはりこの形態、アラビア石油と同じような形態でもう開始いたしておるはずでございます。
  80. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 以上、合弁企業またはそのパートナー、直接事業、このようにいろいろとありますけれども、要はその経営参加をしておるかどうかがポイントじゃないか。経営参加をするということがこの海外投資保険対象である、経営参加のない分はこの保険対象とはならない、また日本の海外投資でもない、このように理解していいわけですね、いかがでしょう。
  81. 後藤正記

    後藤政府委員 仰せのとおりでございます。
  82. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そこで非常に問題になってまいりますのが融資買鉱の点でございます。海外資源の確保の見地からいけば、いまおっしゃった経営参加の形態で資源を確保している分と、融資買鉱で日本が海外から資源を確保している分とがあるわけでありますが、どちらかといえば、融資買鉱による資源の確保が、日本といたしましては多い。そういう点からいえば、非常に大切な日本の資源確保に融資買鉱が役立っておるわけであります。その融資買鉱の面におきましては、なかなか資金力も弱いし、担保力ももうほとんど底をついたというような実態。業者も金が詰まっておれば、事業団としても金がないというようなことでありまして、非常に資金的な問題でも苦しんでおるわけでありますけれども、さらに、これが保険対象になっておらないということでありまして、せめて保険にかけてくだされば、少しは金繰りも楽になってくるし、また安心だろうという問題であります。合弁企業のパートナー、いまから設立する合弁企業に対しても、一歩踏み進んで、それに対する長期資金の貸し付けもあるわけでありますから——その合弁企業というものは、近い将来でありましょうけれども、将来設立される、それに対しても保険対象として見ていくんだということでありまするので、融資買鉱の分も、将来経営参加になっていく分もあるのではないか。まだないにいたしましても、それで事故が起こって非常に日本の投資が大きな損害を受けたというようなこともあったのかどうか。かりに堅実であるとしますれば、そのような融資買鉱につきましても、やはり前進的な態度でひとつこの保険対象に取り上げていただきまして、そして業界に一つの安定感といいますか、また他方、資金面の確保にも寄与していけるようなことを考えていただきたい。  これが最後の私の質問でありまするし、また、そのような面でどのように政府が今後考えていかれるか、これを前向きの姿勢でお答え願いたい。私はこのようにいま希望しておるわけであります。
  83. 後藤正記

    後藤政府委員 先ほどお答えいたしましたように、今般の海外投資保険の拡充には、資本参加を伴うものというのをこの対象といたしておりまして、お説のとおり、現在、融資買鉱が、日本の資源確保上たいへん重要な役割りを、従来までのところは果たしてきたことは事実でございますが、これを対象といたしておりません。  そこで、これに対しますものとしましては、たとえば金属鉱物探鉱促進事業団とかあるいは石油開発公団等の債務保証制度、担保にかわるものとしての債務保証制度等の活用もございますし、この融資買鉱と申しましてもいろいろな形態があるわけであります。したがいまして、それらをよく検討いたしまして、今後とも、それがあるいはまた合弁企業に進むような話の進展のしかたもございましょうし、さらに融資買鉱自体につきましても、今後これがその重要度の増すに従いまして、海外投資保険対象になっていくかどうかという点は、お説のとおり、前向きに検討いたしたいとお答え申し上げます。
  84. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 以上で私の質問を終わります。
  85. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 近江巳記夫君。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 この昨年度、政府が出されました経済白書、これによりますと、わが国の経済協力に占める海外投資の比重が非常に小さい旨を説明してあるわけでありますが、わが国の海外投資の現状及び経済協力に占める割合が、諸外国の海外投資との状況の比較において簡単に御説明願いたいと思います。
  87. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えをいたします。  このところ一貫いたしまして、わが国の海外投資は増加傾向にございまして、一九六九年三月末までの海外投資の許可累計額は十九億ドル余りになっております。  その実情を簡単に申し上げますと、地域別に見ますると、北米が一番多くて、以下、中南米、東南アジアの順になっておりますが、発展途上国向けの投資がうち十一億ドルで、全体の六〇%を占めておるということであります。それから業種別に見ますると、鉱業と製造業がそれぞれ全体の三〇%程度、商業が一五%で、前二者の鉱業、製造業はおおむね発展途上国向けが主となっております。商業が先進国向けのものが多い、かような状況にございます。それから、形態別に見ますると、証券取得と債権取得がそれぞれ四二%、海外直接事業が二八%、こういう比率になっております。  御指摘のとおり、海外投資というのはまだ歴史が非常に浅うございまして、OECDの資料、若干古うございますが、これによりますと、海外投資の各国の残高を比較いたしてみまするに、これは一九六六年末でございまして、アメリカが五百四十六億ドル、イギリスが百六十億ドル、フランスが四十億ドル、西ドイツが二十五億ドル、日本がそのときの数字では十億ドル。新しいその後のデーターによりますと、先ほど申し上げましたように、日本は一九六九年末で十九億ドル、アメリカは六八年末と記憶いたしておりますが、六百五十億ドルという数字になっておりまして、国民総生産のうちに占める比率も、日本が各国に比較いたしまして一番低い、かような現状に相なっております。
  88. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に新しいデータをいま発表されたわけですが、アメリカなどから比べますると九分の一ないし十分の一。なぜ日本の投資がこのように低いか、その辺のところを簡潔にお答え願いたいと思います。
  89. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  これは要するに国力の差と申しますか、経済的な蓄積の差と申しますか、たとえば、先ほど申し上げましたように、六六年末の数字で見ましても、イギリスが最近経済の成長率が低いとかいわれましても、やはり六六年末で百六十億ドルも海外投資の残を持っておる、日本はわずかに十九億ドル、こういう数字でございまして、ここのところ急激に日本の経済的な力も進んでまいりました。国際収支は好調を続け、外貨の保有高も伸びてきております。これからの問題である、かように考えます。アメリカが六百五十億ドルという数字の海外投資の残高を持っておるというのは、一に、従来までたどってきた経済力の内外の蓄積と申しますものが、ここに端的にあらわれている、かように承知いたしております。
  90. 近江巳記夫

    ○近江委員 斜陽帝国といわれるイギリスでも、これだけの投資をやっておるわけです。  その他の問題がありますので次に進みたいと思っておりますが、今回の輸出保険法の改正によりまして、この海外投資保険制度が一そう整備充実されると思いますけれども、その場合わが国の海外投資は大体どの程度促進されるかということなんです。どの程度お考えですか。
  91. 後藤正記

    後藤政府委員 海外投資の促進策といたしましては、法制面、あるいは行政的な措置、あるいは金融、税制、いろいろな措置があるわけでございまして、海外投資保険の強化拡充というのも、それらの諸施策のうちの一部分を占めるわけでございます。したがいまして、ただいまどの程度に伸びるかという御質問でございますが、これを現時点におきまして、将来何十億ドルまで何年後に伸びるかという予測を立てることはちょっとむずかしい状態でございますが、しかしながら、近年の、短期間ではございますが、趨勢を見ますれば、非常に急激に伸びております。日本経済自体か、こうした海外投資を、海外資源の確保の見地、その他労働力の確保の見地等々から考えまして、これを必要といたしておるというのが実情であると存じますので、諸制度の整備と相まって相当急激に伸びていく、従来よりももっと急カーブに伸びるということだけは、私ども考えられると存じます。
  92. 近江巳記夫

    ○近江委員 諸施策の一環であるということはよくわかります。しかし、その施策の中にあってこの改正というものがどれくらいの影響を与えていいか、大体のことでも予測をしていただくことが大事なことじゃないかと思うんです。全般的に政策が相まって向上することはわかっておりますけれども、これはかなり思い切ってなさっておるわけです。ですから、その辺のところを、われわれもしろうとでありますし、大体これがこういう影響を与えていく、これはひとつ今後の課題として、ある程度レポートでもまとまったら、私のほりへ提出してください。これ以上言いませんかり。次に、経済協力の促進は、国際収支が非常に黒子基調になってきておりますが、先進国でわが国も大きく前進しておるわけですが、わが国にとって、そうした経済協力というものは非常に積極的に取り上げていかなければならない政策であると思っておりますが、輸出保険法の改正による海外投資の対策のみで終わるものではない。これは、いまいろいろな施策の一環であると言われたわけでありますが、今回の海外投資対策を含めて、これからの経済協力政策をどのように考えているか、具体的に明示してもらいたいと思います。ビジョンですね。これを通産と外務にお願いしたいと思います。
  93. 沢木正男

    沢木政府委員 日本に対する海外からの経済協力の期待ということは、先進国の側におきましても、後進国の側におきましても、非常に強いものがございます。そのためにすでに、ピアソン報告あるいはOECDのDACで、日本に対する年次審査の段階におきます各国の意見というようなものが出ておりますし、それから国連で、「第二次国連開発の十年」ということで、大きな決議がいまなされようとしておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、わが国の後進国援助と申しますか、経済技術協力を格段に拡大したいというのがわれわれの考えておるところでございまして、それがために、目下、経済企画庁で中期経済計画の改定作業をやっておられますし、そういうふうな段階を通じまして、来年度以降の予算においてそれを実際に具体化すべく、目下関係各省庁間で協議中であるというのが実態でございます。  御承知のように、国連の貿易開発会議では、国民総生産の一%まで援助量をふやすということを強く決議されておりまして、日本自身もそれに賛成いたしております。それからピアソン報告では、政府開発援助をふやせといわれておりますし、それからDACの審査では、技術協力を活期的にふやすようにというふうなこともいわれております。そういう点を踏まえて、現在、対外経済協力審議会で一九七〇年代に臨む日本の経済協力全般のあり方について審議が行なわれております。そういう過程を通じて、今後の経済協力に関する政府方針というものが漸次具体化されていくということにつきまして、ただいまそういう点を鋭意関係各省間で検討中であるという段階でございます。
  94. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産のほうで、それ以外で何か具体的にお考えになっていますか。
  95. 後藤正記

    後藤政府委員 通産省といたしましても、経済協力政策というものは、これは通産省自体が所管いたしております国内の産業の振興発展の問題、さらにまた、外向けの海外の輸出振興の問題ときわめて密接なる関連を持っておりますので、従来も関係各省と十分に連絡をとりまして、経済協力のうち、資本協力面、あるいは技術協力面その他を通じて、鋭意施策を続けてまいったところでございます。今後もその方向をますます強化をいたしたい。特に今般御審議を願っております海外投資保険の拡充の問題、さらにその必要の基礎となります海外投資の問題につきましては、外務省大蔵省とも十分に連絡をとりましてこれを進めてまいりたい、かように考えております。
  96. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに、DACの勧告といい、あるいはピアソン報告といい、これは従来いわれてきたことでありますし、要するに、今後考えていきますというようなこと、こんなことは何百回聞いたかわからないわけです。ですから、現時点においてそれを達成するためにどういう努力をやるか。具体的にはこう考えております、それが出なければ、これは同じことばかりですよ。その点、いろいろな問題はありますけれども、要するにGNPの一%——現在〇・七五くらいですか。あるいはこのピアソン報告。これら等についてどういう努力を現在しているか。その経過、その辺のところをもう少しお聞きしたいと思うのです。
  97. 沢木正男

    沢木政府委員 お答え申し上げます。  結局、海外に対する経済協力をふやすということは、ひっきょうするに予算の問題でございます。予算は国会の予算審議権というものもございまして、日本ではなかなか多年度的な計画が立てにくいということもございますので、資金協力をふやすにつきましては、経済協力基金、あるいは輸出入銀行の出資金、あるいは借入金をふやしていただく。それから、条件の緩和ということも一方において強くいわれておりまして、その問題につきましては、今後経済協力基金の資金量をふやすことによって条件緩和をやっていくというのが大体の方向でございます。  それから技術協力は、先般後藤局長からも言われましたように、関係各省に多少とも予算がついておりますのと、それから、外務省自身の予算でやっております政府ベースの技術協力予算というものがございまして、これをやはり予算上ふやしていただかなければ、実際は技術協力を拡大できない。技術協力の拡大につきましては、それ以外の法制的にも整備を要する問題が多々ございます。  しからば、具体的にどれほど資金量としてふやせるかというのは、結局財政当局との交渉を通じて予算がどれだけとれるかということでございまして、ごく大ざっぱなエスティメーションというものは、経済協力、中期経済計画の審議をする過程におきまして、どういうふうにしたいという希望はわれわれも出しておりますけれども政府のまとまった考えとして、これだけ出せるという結論は、予算の審議を通じて国会に承認を求めるという段階で明らかにされることであると思います。
  98. 後藤正記

    後藤政府委員 補足してさらに通産省立場からも申し上げます。  経済協力予算、ただいま外務省沢木局長から一般論としてのお答えがございましたが、まさに経済協力の促進という問題は、端的に一言で申すならば、予算の推移によってあらわれてくるということができると思います。  そこで、現在通産省の四十五年度の経済協力関係の予算の、特におもだったものを申し上げることが、先生の御質問に対するお答えになるかと存じますが、たとえば発展途上国からの一次産品の輸入促進事業費といたしましては、四十四年度に比べまして三億二千万円増の八億二千万円。あるいはアジア経済研究所の事業運営は九億一千三百万円。それから目ぼしいものを拾いますと、海外開発計画調査委託費が、昨年に比べまして二千万円増の一億三千八百万円。それから海外技術者受入研修事業費、これが四十五年度六億五千八百万円。それからアジア生産性向上事業委託費、これが一億一千三百万円等々で、そのほか資源開発協力基礎調査事業といたしまして、これは新規項目でございますが、四十五年度に一億七千六百万円。これは特におも立ったもののみをピックアップして申し上げたわけでございますが、四十四年度の通産省関係海外経済協力関係予算の総額二十五億八千三百万円に比較いたしまして、現在御審議中の四十五年度の経済協力予算は三十一億六千六百万円。前年度に比べまして、五億八千三百万円、比率にいたしまして二二・六%の増、かような予算の内容と相なっております。これによりまして、具体的に経済協力の推進を、通産省立場といたしましても進めていきたい、かように考えております。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまいろいろ御説明があったわけですが、それではこのDACの勧告あるいはピアソンの報告、それにどれだけその施策を盛っていけば近づくのかということになっていくと、こんなもの微々たるものですよ。経済大国といわれる日本の現状として、いまるる御説明があったことは、あまりにも遅々としておると私は思います。したがって、その辺のところを、今後もっと積極的にあらゆる施策を展開されて経済協力の実を上げていただきたい、私はこのように思います。  ちょっと内容に入りたいと思っておりますが、いろいろな経済協力については問題点があるわけですが、先ほどのそうした財政的な面においてもいろいろな考えは皆さん持っていらっしゃるのだけれども、財政のところがネックになっておる。これは大蔵省に相当努力もしてもらわなければなりませんし、政府の皆さんにも相当やはりこの辺の認識を高めてもらわなければならない、このように思っております。  一つお聞きしたいのですが、経済援助は、相手国の開発計画に対応した長期計画というものを策定して推進すべきものであると考えておりますけれども、たとえば西ドイツなど一部の先進国については、こういうような動きがある、このように聞いておりますが、先ほども外務省の方ですか、なかなか長期ビジョンというものは立てにくい、こういうお話の中にそうした問題も含んでおるのじゃないか、こういうふうに思っておりますが、この辺わが国の場合、単年度で策定しておりますけれども、中にはたとえば韓国等の例を見ても、長期にはなっておりますけれども、非常に例外であります。ほとんどが単年度策定、こういうことであれば、なかなか相手国の喜ぶような援助というものはむずかしいのじゃないか、この辺のところはどのようにお考えになっておりますか。
  100. 沢木正男

    沢木政府委員 相手国に援助を与えます場合に、それができるだけ長期のビジョンに基づき、かつ長期の計画に基づいて与えるということは、相手国の受け入れ側におきましても長期の開発計画を立て得るという意味において確かによいことではありますけれども、御承知のように、日本の予算が単年度主義になっておりますので、国会の承認を得ました条約あるいは協定に基づく援助は多年度でコミットいたしますけれども、それ以外のものにつきましては、予算の範囲内ででき得る限り計画性を持って向こう側に対してコミットするという方式を現在とっております。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですからその辺の考え方ですね。やはり先ほどおっしゃった長期ビジョンに弱い。ビジョンという中にはいろいろ問題があるわけですけれども、その辺のところをもう少し今後積極的に問題点として取り上げていっていただきたい、この点を特に要望しておきます。  それから、先ほどからも輸銀の問題がたくさん出ておりましたが、この輸銀の問題について量的、質的な拡大を急速にはからなければならない。その活用についてもいろいろな問題があるわけでありますが、この辺は具体的に、この輸銀をこのように内容を高めていくというお考えありますか。
  102. 下條進一郎

    ○下條説明員 ただいま先生お尋ねがございました、海外経済協力に対しまして輸銀の主演する役割りの大なることは、確かにわれわれも十分承知いたしております。したがいまして、今度の四十五年度の予算につきましても、予算自体、あるいは財政投融資のほうからでも、その規模の拡大に努力いたしまして、出資額にいたしましても、また借り入れ金のワクにいたしましても、あるいはそれから出てまいりますところの貸し付け規模のワクにいたしましても、相当増額いたしておるわけでございます。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは増額はしておるでしょうけれども。これは幾ら言っても同じことだと思いますし、特に私は飛躍的な質的、量的なアップを要望しておきます。政務次官もこの点はよろしく。  それから、経済協力の一元化ということについて、どのようにお考えになっておるかということなんです。御承知のように経済協力には、資本投資、あるいは技術協力、あるいは貿易を通ずる協力とか、いろいろな問題があるのですが、資本投資にも政府あるいは民間ペースによるもの、あるいは技術協力には指導、訓練、開発、各貿易協力には信用供与と、いろいろになっているわけです。しかし、政府ペース、民間ペースそれぞれ共通して言えることは、政府の許認可事項というのが非常に多いということなんです。大蔵、外務、通産、農林、厚生と、関係各省が、行政所管が非常に多数にまたがっておる。その間の意見の調整に、また輸銀あるいは協力基金、そらした審査が入ってくる。物理的にも、なぜこんなにぐるぐる回らなければならないかという問題もたくさんあるわけです。     〔武藤委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点が、経済協力の効果実現に支障を生じておるのじゃないかという声は相当強いわけです。そこで、この経済協力を積極的に進めるために、その効果の多大を期待するための一元化をはかる必要があるんじゃないか。それはいろいろ問題点はあろうかと思いますが、たとえばイギリスには海外開発省。アメリカにはAIDですか。西ドイツには経済協力省があるわけです。この辺の一元化という問題について、どういうようなお考えを持っておられるか、その辺をお聞きしたいと思います。
  104. 新田庚一

    ○新田政府委員 ただいまの御質問、非常にもっともでございますけれども、非常にむずかしい問題でございまして、経済協力行政そのものが国際的に比較的新しい問題でございます。しかも非常に多面性を持っておりまして、この問題を、独立した職務権限を集中して行政をやるということが、現実問題として非常に困難でございます。日本におきましても、それぞれの各省の職務権限に即して、たとえば外交的見地からは外務省、予算あるいは国際金融、為替管理という面からは大蔵省貿易振興という面からは通産省、技術協力という面からは農林省、あるいは厚生省というふうに、それぞれの職務分担に応じて総合的に経済協力を進めるというふうな体制をとっております。したがいまして、そういう運用の面におきましては、借款の量、条件の問題、あるいは延べ払い条件の問題、あるいは海外投資の問題、それぞれ事務的な連絡協議の場を持っておりまして、さらに、基本的な問題につきましては、昨年から閣僚協議会を設けまして、意見統一をばかりつつ推進するという体制をとっております。  御指摘の外国の例も、あまり詳しくはないのでございますが、たとえば一九六一年に西独に経済協力省ができましたけれども、その後の経過を見ますと、そこでかなりの権限を集中するという目的であったようでございますけれども、経済省、あるいは大蔵省外務省という、それぞれの一元化というものがやはりなかなか困難で、能率的に進みません。で、経済協力省設置自体について最近疑問を持っておる向きもあるやに聞いておりますが、非常にむずかしい問題でございます。ただ、そういった事柄でございますので、運用の面についていろいろ問題点もあろうかと思います一が、私どもとしても、経済企画庁の調整機能を活用しまして、できるだけ円滑に経済行政ができるように努力したいと思います。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに運用面においては、関係各省がみな所管が違うわけですし、わかるわけです。ですけれども、この窓口を一本化して、あと要するに政府部内で持ち回りをやる、そういうようなことはできないのですか。要するにたらい回しになっているわけですよ。その辺話し合ったことがありますか。
  106. 新田庚一

    ○新田政府委員 実際の海外投資の許認可の問題、あるいは延べ払い条件の許認可の問題、そういったものは、それぞれの業種の所管官庁が窓口になって、それを政府内部で取りまとめるという運用をとっているわけでございまして、ただ、その窓口だけの説明ではどうも不十分だというふうな感じで、関係省に同じことを何べんも言って回るというふうな悪い慣行はなきにしもあらずでございますので、そういった点がないように、運用面で相当の改善を要するのじゃないかと思います。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、これは今後の問題でありますし、この辺のところ、効率的な運用のしかたをよくひとつ関係各省やっていただいて、できるだけ効率的にやっていただきたいと思うのです。こういう声が非常に強いということを、また私からも強く要望しておきます。  それから次に、海外投資に関して、今回の輸出保険法の改正による助成策の前に、海外投資に対する為替管理法の規制を大幅に緩和することが必要じゃないか、このように思うのですが、政府はどのように考えておりますか。
  108. 下條進一郎

    ○下條説明員 海外投資を促進するという立場から申しますと、先生お話にございましたように、いろいろな制限をできるだけ緩和してまいるということがやはり促進策として非常に役立つわけでございます。したがいまして、昨年の十月一日に、海外投資の自由化の第一歩といたしまして、いろいろとその自由化の具体的な措置を講じたわけでございます。  この措置の内容はすでに御承知かと思いますが、二十万ドル未満の海外投資、これにつきましては自動許可という体制にいたしましたので、それぞれの申請の方は、一々関係各省とかあるいは日銀とかいうところでのチェックは必要ございません。日銀のほうに書類をお出しになりますと、そのまま許可がおりるという形になっておりますが、二十万ドルをこえまして三十万ドルまでのものにつきましては、これは日銀のほうで一応大蔵大臣からの委任を受けて事務処理をいたすことになっておりますが、これとても、三週間以内にそれぞれ事業官庁のほうに書類を回しまして、そこでそれぞれの立場における専門的な検討を経て、問題がなければこれは日銀限りで許可できるようになっております。したがいまして、そういうような形で第一歩を踏み出したわけでございますが、今後とも、さらに内外の自由化の要請が強い時代でございますので、関係各省寄り寄り相談いたしまして、できるものから順次自由化のワクを広げてまいりたいというふうに検討を続けている次第でございます。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点は、いまおっしゃったとおり、よく考慮していただきたいと思います。  次に、企業の海外投資が促進された場合、業種によっては、国内の中小企業へのはね返り、この影響というものは非常に大きいと思うのです。たとえば、海外進出企業の製品が日本国内に逆輸出されるとか、あるいは輸出市場で日本からの輸出品と競合するとかして、わが国の中小企業を圧迫するようなことが考えられるわけです。かりにそのようなおそれがある場合、いろいろだ対策を立てておられると思いますが、どういう調整策といいますか、対処策を持っておられるか、この辺のところを通産省にお聞きしたいと思っております。
  110. 後藤正記

    後藤政府委員 わが国企業の海外への進出の許可に際しまして、先ほど大蔵省のほうからお答えをいたしましたように、漸次為替管理の規制を緩和化しつつ海外投資の促進をはかっていくという方向は今後ともさらに進んでいく、かように考えます。その際におきまして、発展途上国、特に日本に近い東南アジア諸国、相互にテークオフをしてきている段階にある国、具体的には韓国あるいは香港、マレーシア、シンガポール等々の国へ、特に日本の軽工業関係、繊維、雑貨関係の企業が進出いたしまして、そのうちの安価な労働力を利用して、そして低コストで製品をつくって、それが日本へ逆に輸入をされ、あるいは第三国での日本輸出と競合するという事態は、まさに、先生御指摘のとおりに、そういう可能性があるわけであります。したがいまして、こういった国々へのただいま申し上げました業種の企業進出に当たりましては、当該企業に対しまして、日本へその地で生産したものを逆輸入する意思があるかということをよく確かめた上でチェックをいたしていきたい、かように考えております。第三国市場での競合と申しますと、これは非常に範囲が広いわけでもございますので、どちらかというと、日本へ逆上陸してまいる場合に、直接に日本の既存の中小企業、特に軽工業関係に被害を与える度合いは少ないかと存じますので、その辺のところは、程度の差を設けてそういう点を確認いたしていきたい、かように考えております。  しかし、基本的には、そういった低賃金の国、それからまた、経済的に漸次発展をいたしていきたいというように、その道を歩んでおります発展途上国が、軽工業分野から漸次産業の発展を遂げてまいるということは、やはりこれは自然の経済の趨勢でございますので、基本的なわが国の産業の対策としては、中小企業施策の一環として現実に行なっております構造改善の促進、つまり、でき得る限り労働集約型の産業というものを技術的な向上によって省力化をしていくというような体質改善によって、高い労働賃金を払うならばそれに見合ったような付加価値の高い製品をつくるという方向に、長期的には指導いたしてまいるということが、国内施策としては必要でありますし、現にその方向で中小企業庁を中心といたしまして指導をいたしておるわけであります。したがいまして、対内、対外の両施策を通じて、なだらかにこの影響を受ける、急激なショックを受けないようなぐあいに施策をいたしてまいるということが、産業政策上、さらに海外進出の施策上、これはやはり必要であると存じます。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままでいわれてきた中小企業のそうした対策を何点かピックアップされていまお述べになったわけでありますが、これは非常に今後の問題として大きな問題になってくると私は思うのです。したがって、この辺のところを今後どうしていくか、これは一つの大きな課題だと私は思うのです。この辺を特に今後よく検討していただく、これは強く要望しておきます。  それから、経済協力白書、これによりますと、海外投資について、必要によって二国間投資保証協定の締結を含めた投資環境の整備をはかり、これを促進していく、こうしたところがあるわけですが、この二国間投資保証協定と海外投資保険との関係性はどうなっているかということが一点です。それからまた、投資保証協定締結の現況と今後の協定締結について政府はどのようにお考えになっているか、この点をお聞きしたいと思っております。
  112. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  今後のわが国の海外投資を積極的に推進いたします上におきまして、海外投資の法的保護の実体規定、それから紛争が発生したときにおける権利等の国による代位承継、紛争処理手続等々につきましてあらかじめ投資受け入れ国と合意をしておくことは、政治的危険、特に収用危険の発生を軽減することが期待できるということ、及び補償等の回収を容易にする上で、必要なことであり意義があることであると考えます。  そういうわけで、二国間投資保証協定というものも、これはすでに行なっておる国——アメリカもございますし、これはまた必要でございますが、一方から考えまするに、国家間の合意のある国のみに海外投資保険制度の対象国を限定いたしますことは、これまた非常に問題があるところでありまして、極端に対象国が制限されます結果、この保険制度そのものが円滑に機能しなくなってくるという心配もございます。そこで実際にやっておる国——アメリカはこれは八十カ国前後を対象としてやっておるようでありますが、努力に対しましてその効果というものはさほどでもないというように私ども承知いたしておりますので、従来とも輸出保険制度におきましては対象国を限定することを避けまして、そのかわりに、保険引き受けにあたりまして、受け入れ国におきまする法的保護環境について十分審査を行なう方式を続けたほうが望ましいというように私ども考えております。この二国間の投資保証協定のみに限らず、相手方との関係におきまして、二国間の友好通商航海条約の締結でございますとか、それから多国間の海外投資の法的保護に関する取りきめへの参加等々、この海外投資環境の整備ということは、投資保険の強化拡充と並行いたしまして重要な問題でございますので、その一環として、御指摘の二国間保証協定につきましては、現時点においてはさように考えておりますけれども、今後とも十分に研究を続けてまいりたい、かように考えております。
  113. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、いまから休憩に入るそうですから、食事をとってあとで続行したいと思っております。いまの問題については、これも非常に大きな問題だと思うのです。この辺のところはひとつよく検討をしていただきたい、これを強く要望しておきます。
  114. 八田貞義

    八田委員長 午後二時から再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  115. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。輸出保険法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 午前に引き続いて質問したいと思います。  海外投資保険の内容について、二、三点質問したいと思っております。一つは、損害てん補事由というのが非常危険に限られているようでありますけれども輸出代金保険では、破産の六カ月以上の債務の履行遅滞のような場合でも、信用危険というものが含まれているわけです。その点、信用危険を担保にしないというのはどういうわけか、この点お聞きしたいと思います。
  117. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  輸出代金保険におきましては、相手方が第三者でありまして、したがって、非常危険と信用危険と両方をカバーいたしておりますが、海外投資保険におきましては非常危険のみであることは、御指摘のとおりでございます。海外投資の本質はわが国の企業が出資をして経営に参加する。したがって、日本側も参加する経営の不振であるとか、失敗であるとか、そういった信用危険をも投資保険でカバーいたすことになりますと、こちら側もやはりそこに加わっておるわけでありますので、自分でやったことに対する失敗を保険でめんどう見てもらう、こういう撞着が出てまいりますので、この場合非常危険のみに限定をいたしておるわけでありまして、これは保険事故と申しまするのは、偶発性でございますとか、あるいは支配不可能性というものを前提にするのが、やはり保険理論の原則と相なっておりますために、そういった、自分もそこの中へひとつ入り込んでおるということに対する危険まではカバーできない、かようなたてまえになっております。諸外国の例を見ましても、ドイツ、ノルウェー等、アメリカでもそうでございますが、やはりこれは非常危険のみに限定をいたしておる、かように相なっております。
  118. 近江巳記夫

    ○近江委員 結局、原因というものがいろいろ想定されるわけですよ。単純なものだったら、あなたの理論でいいわけですけれども、その辺、非常にふくそうしてくるわけでしょう、外国の場合は。ですから、その辺のところを全然今後考えなくていいのか。その辺のところを全然余地はないのですか。その辺のところ、今後の問題点としてお聞きしたいと思うのです。
  119. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  海外投資保険に関しましては、今後いろいろ研究はいたしてみますが、ちょっと現段階で思いつきますところでは、私は信用危険まではカバーすることは困難ではないか、かように判断いたしております。なお研究いたしてみます。
  120. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはよく今後の問題として、答弁どおり検討お願いしたいと思います。  それから、付保対象に長期貸し付け金が加えられたということは非常に進歩であると、この点はわれわれ思っておりますが、いわゆる現地法人等のひもつき法人に限定することなく、もう少し幅広く長期貸し付け金の債権全般に広げるべきじゃないか、このように思うのですが、その点どうお考えになっていますか。
  121. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えをいたします。  この長期貸し付け金、あるいはまた社債の形式によりまする投資を、今般新たに海外投資保険対象といたしました理由といたしましては、これはすでに投資をした企業あるいは投資をしようとしている企業というものが、操業を開始したあとにおきましても、採算ベースに乗るまではかなり運転資金が必要とされるのが通例でございまして、したがって、この投資の対象になります国はおおむね発展途上国のものでありますので、したがって、資本蓄積が非常に乏しく、それから金融市場もなかなか整備されていない、こういう国々におきましては必要な資金を現地調達することがむずかしいということで、少なくともその一部をやはり日本の国から送金してまかなうということが、そのもとになります当該プロジェクトを成功させ、円滑に稼動させるということのために不可欠でございます。  ところが、発展途上国におきましては、先生承知のとおりに、これはいろいろなナショナリズムあるいはその国の国策等々いろいろな関係ございまして、外資の出資制限を行なっておるという国がございますので、出資という形でなしに、長期貸し付け金の形をとって、実質的には出資と同じような効果を持たせるということで、長期貸し付け金とか社債を海外投資保険対象に加えたわけでございます。したがいまして、申すならば、長期貸し付け金の形をとりましても、これは本来、その国に資本参加を株式取得その他の形式においてとるということの一つの変形と申しますか、便宜的な措置のような形になっておりますので、したがいまして、無制限に日本が経営参加的な性格を持っていないものに対するところまで広げるというところまではちょっと困難である、かように考えております。
  122. 近江巳記夫

    ○近江委員 これもひとつ今後の課題として、この辺もよく検討していただきたいと思うのです。  それから、海外の投資保険が充実されたわけですが、輸出保険の基金ですね、これは大体六十億と思っておりますが、これを増額しなかったのはなぜか。現在の資金運営でカバーができるなら、その根拠というものをお聞かせ願いたいと思うのです。
  123. 後藤正記

    後藤政府委員 御承知のとおり、昭和二十五年に輸出保険法が開設されまして以来今日に至りますまで、この資本金として一般会計から繰り入れられました金額は、現在六十億円でございまして、これを含めまして、四十四年度末、すなわちこの三月末におきまする輸出保険特別会計の支払い準備額は百九十億円、かように見込んでおります。これに対しまして、海外投資保険関係の四十五年の事業収支、これを見てみますと、保険料収入が二億三千万円、支払い保険金が約千九百万円。ただし、この海外投資保険というのは、従来まで一度も事故がございませんでしたので、これを傾向的に過去の数字から類推するということは、非常に海外投資保険自体としてはむずかしいということで、事故率は一応輸出代金保険の事故の二分の一ということで計算をいたしてみますると、約千九百万円、こういうことに相なります。そのほかの輸出保険につきましては、おおむね四十五年度におきまして、保険料収入と回収金とを個別に当たって、これを累計いたしてみますると、支払い保険金額を相当上回る。約二十億円程度かと試算いたしておりますが、上回る、こう見ております。輸出保険金全般を通じまして、特に今般の海外投資保険制度の拡充のために必要となってくる財源につきましても、全般的な立場からいって、現在の特別会計の支払い準備でまかなえるものと考えております。したがいまして、本年度におきましては、制度改正に伴う資本金の増額を行なわなかった次第でございます。  計算はさようでございますが、先日来お答えをいたしておりますように、現在の日本保険金支払い準備率というものは、他国に比較いたしまして、相当やはり低うございます。したがいまして、今後この海外投資保険をはじめといたしまして、資金確保の必要、その他海外投資が大幅に行なわれるようになってまいりますと、従来にはございませんでしたが、事故等もやはり起こってまいるという事態が予測されますので、準備率と、それから大規模化に伴って事故が起こってくる可能性等を考えまして、これは将来増額の必要が出てくるかと存じますが、目下検討中でございまして、とりあえず四十五年度といたしましては、まずこれでいけるということで今般増額をお願いしなかった次第でございます。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま、あなたがおっしゃったその辺の心配性というものは、やはりあるわけです。答弁がなかったのですからいいと思いますが、その辺のところ、まずやはりそういう問題が出てくると思うのです。ですから、これは早急に検討していただいて、増額の点を重要問題と考えていただきたいと思います。これは要望しておきます。  それから、このてん補率も九〇%に高めておられるわけでありますが、このてん補事由も拡大することとあわせて、この保険料率は現在より高くなるのかどうか。改めるとすれば、見通しを大体どの程度考えておるか。これは非常に大きい問題だと思うのです。この点どうですか。
  125. 後藤正記

    後藤政府委員 今般の改正によりましては、この海外投資保険保険料率は、百円につき五十五銭、すなわち〇・五五%というように改正を考えておるわけでございます。と申しますのは、海外投資元本保険、海外投資利益保険を含めまして、これの保険料率は〇・四七九%ということになっておりますので、若干でございますが、この保険料率の引き上げという形になっております。  これは輸出保険法の第一条に明記されておりますように、やはり輸出保険というものは、独立採算制度というものが根本になっておりますので、したがいまして、支払う保険金、それから準備率、事故率等々を考慮いたしまして、その会計の中でまかなっていかなければいかぬということになっておりますので、その他の試算からいって、今般若干の制度の拡充強化に伴いまして、この保険料率を本年少し引き上げるという形にいたしたわけでございますが、これはまだ諸外国の制度に比べまして、てん補率は今度各国並み——まあアメリカの一〇〇%には及びませんが、ほかの国の九〇%というのに肩を並べるようなところまで参ったわけでございますが、この保険料率は、まだ、そのほかの諸国に比べまして、このたびの案でも非常に低いというように申し上げられると存じます。  ちなみに申しますと、各国の投資保険保険料率は、ドイツが〇・八%、それからノルウェーが〇・七%、スウェーデンが〇・七%、アメリカが——これはものによってアメリカのは積み増し型になっております。たとえば、ドル交換性の問題について何%、没収、収用の場合に何%、戦争、革命が起こった場合に何%という原因別の積み上げ形式になっておりまして、これを全部わが国のに対応するように集計をいたしますと、これが〇・八七五%、いずれにいたしましても、〇・七から〇・八の間というのが保険料率になっておりますので、わが国といたしましても、この輸出保険の独立採算性、こういう立場から言いまして、この料率をお願いしたい、かように考えておるわけでございますが、なお、ほかの国と比べるとまだ低いということは申し上げられると存じます。
  126. 近江巳記夫

    ○近江委員 えらい低い低いということを何回もおっしゃったわけですが、これからますますまだ上げたいというような希望、そういうようなことが感じられるわけですが、これは低いと見るわけでありますし、要するに海外経済のこれについては、前回きにピアソンあるいはDACのああしたところの目標までいきたいと、冒頭に強くおっしゃっておるわけです。そういういろいろな根本の考え方がそうなんですから、この辺の点、上げるということは好ましくない。日本は何も外国の悪いところをまねすることはないのですから、その点で、あくまでもこういう引き上げとか、そういう問題については、現在日本の置かれた立場ということを理解をされて、そういうことはもう極力避けていただきたい。政務次官から……。
  127. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 近江先生のおっしゃるとおりに努力するつもりでございます。
  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、今回の改正によって海外投資保険の活用がはかられる場合、会社別あるいは組合別の包括制度というものを導入する予定があるかどうか、これを念のために伺っておきたいと思います。
  129. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたしまけ。  現在輸出保険のうち八種類ございます中で、普通輸出保険輸出代金保険、この二つに関しましては、御指摘のように包括保険ということで、この保険に加入することを現在輸出組合別に義務づけておるという形になっております。しかし、その包括保険というものは、いま申し上げたように、付保することを義務づけるものでございまして、したがって取引先によって危険の発生率に大きい差がない、あるいはまた取引の形態に大きい差がないということが一般的に前提になってくると存じます。したがいまして、海外投資の場合におきましては、これは発展途上国向け——これは将来主流になっていくとは存じますが、発展途上国向けと、それから先進国向けでは、これは政治危険等の発生率は非常に異なってくると思いますし、それから海外投資の形態が各種各様の形が現在予測されますので、この点につきまして、現在実施いたしております二種類のように、先生仰せのように、あるいは会社別あるいは組合別の包括保険制度というものを導入することは、現段階では非常にむずかしい事態である、かように考えております。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 これも一つの今後の問題点として検討していただきたい。  それから輸出保険は、今回の改正対象となった海外投資保険ばかりでなく、わが国の対外取引を安定して促進する重要な役割りを果たしておるわけですが、これは御承知のとおりです。輸出振興及び経済協力の促進上、輸出保険の機動的といいますか、弾力的なこういう運営というものが非常に必要になってくるのじゃないか。  そこで、輸出保険の運営の基本的な考え方についてお聞きしたいと思うのですが、これは局長さんと政務次官に。非常に大きな問題と思いますが……。
  131. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 お答えいたします。  現在、輸出保険法には八種類の保険があります。プラントの長期延べ払い輸出銀行手形買い取り等に対する企業の負担等、対外的取引に伴う危険をカバーしてその発達に寄与していることは、御承知のとおりであります。このうち現行の投資保険は、制度的に立ちおくれている面もございますので、今回改正を企画いたしまして、改正ができました暁には、大幅に利用されて民間の海外投資の発展に大いに役立つものと考えております。  また輸出保険法は、特別会計、先ほど局長から述べましたように、独立採算制を原則といたしておりますこと。輸出保険法の運営にあたっては、この独立採算制のたてまえをはずれて、初めから当然赤字となることを予想しながら運営することは困難でございますので、単年度においては必ず収支が均衡することを要するというように狭く解釈すべきでなく、より長期的に見ることが必要であると考えます。  三番目には、保険制度は、金融制度と並んで輸出振興策あるいは海外投資促進策の重要な一環でございますので、その運営にあたっては、何よりもこのような本質的な政策理念を、基本とすべきことはいうまでもありませんが、長期的な視野に立って弾力的な運営をしていこうということで努力をするつもりでございます。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこのところ、もう少し具体的にお聞きしたがったのですが、政務次官あとなんですけれども局長さんのほうから、その辺もう少し具体的にありましたら、答弁願いたいと思います。
  133. 後藤正記

    後藤政府委員 ただいま政務次官からお答えいたしました点に尽きておると存じますが、この運用面からさらに私どもの心がまえとして考えますならば、積極的にやはり前向きの姿勢で今後引き受けるべきものは引き受けていくということが必要であると存じます。この点だけつけ加えさしていただきます。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから今回の改正は、非常に海外資源のこうした開発ということが重点になっているわけです。そこで、もう少し海外資源の具体的なことについてお聞きしていきたいと思いますが、とりわけ、海外における資源開発の問題というものは、急速に取り上げられつつあるわけであります。石油あるいは鉛、亜鉛、鉄鉱石、原料炭、非常に驚異的なそういう伸びを示しておるわけですが、今後の需要が、経済社会の要請に応じて、量的にも質的にも十分充足されるかどうかということは、非常に重要な問題であると思うのです。いままでのところ、ずっと見ておりますと、特に三十年代の後半から、高度成長による需要の増大による自給率の低下、海外依存度の上昇という傾向が非常に顕著になってきているわけです。私もずっと調べてみたのですが、すでに四十三年度における海外依存度というものは銅で七三・四%、鉛五六・五%、亜鉛五三・八%、石油九九・五%鉄鉱石八四・七%、原料炭七二・九%。私がパーセントを間違ったらおっしゃってください。私の資料ではこうなっております。  こういうことで、今後ますます需要が増大してくる。そうすると、海外の依存度というものが一そう上昇してくることになるわけです。その意味において、最近政府のほうでも、昨年でしたか、新経済計画の重点検討項目として資源問題というものが取り上げられて、暮れに経済審議会の資源研究委員会から「国際化時代の資源問題」と副題を出した報告書が出されたわけです。それはそういう認識のあらわれである。その点いよいよ積極的に取り組まれるんだなと私たちも思っております。  そこで、資源問題についてどういう認識を持っておられるか。個別、具体的なことについてはまたあとでお聞きしたいと思っておりますが、総体的に資源開発、特に海外資源の開発の現状をどのように評価しておられるか、この点を局長さんと政務次官にお聞きしたいと思うのです。
  135. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 海外資源の、特に非鉄金属については、非常にショートのことは皆さん方御承知のとおりでございますけれども、わが国経済の急速な成長と大型化に伴いまして、先ほど近江先生がおっしゃいましたように、銅とか石油とか鉄鋼、非鉄金属など、基礎の資源の需要が急増しているのは、先ほどパーセンテージが示されているとおりでございます。これらに対して、わが国は国内資源が乏しいこともございますので、これら主要資源の海外依存度は大幅に高まることは事実でございます。一方において世界の資源市場は、総じて資源不足と国際大資本の独占支配体制下にあるため、従来わが国がとってきた単純輸入方式では、わが国産業が必要とする資源を大量に安く輸入することは非常に困難であろうと考えます。  このような資源事情において、一九七〇年代のわが国の経済が健全な発展をするためには、資源の面から制約されるおそれを生じさせているため、今後単純輸入方式をやめて、わが国企業がみずからの手によって海外資源を開発する、いわゆる自主開発方式に重点を移していく必要があると考えております。このため政府としても、石油開発公団あるいは金属鉱物探鉱促進事業団を通じまして、探鉱開発資金の供給等によって海外資源の自主開発の推進に努力してきたところでございますが、ようやく最近に至りまして、銅におきましてはコンゴの鉱山、石油におきましてはアブダビの石油、大規模プロジェクトが着々軌道に乗っておりまして、将来の自主的開発路線の推進の素地が整ったように感じます。しかし、今後とも海外探鉱については、政府といたしましても鋭意努力する必要がございます。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 基本的には今後自主開発というものを進めていく。それは私は、これからの資源供給という点から考えてその考えは正しいんじゃないか、そういう方向でいいんじゃないかと思うのですが、そうしますと、資源開発政策ですね。特に海外資源開発に今後重点を置くとおっしゃったわけですが、そのためには、当然目標設定ということを早急に行なって国の施策というものを展開していかなければいけないのではないか。その辺のところは何かかすみがかかっているように思うのです。その点どうなっているか、局長からお聞きしたいと思います。
  137. 後藤正記

    後藤政府委員 私からお答え申し上げます。  わが国の非常に急速なこの数年来の経済発展に伴いまして、特に今後とも将来長きにわたって健全な経済発展を遂げますためには、特に先生御指摘の資源の確保の問題が、非常に重要な役割り日本の経済自身にとって果たしてくるということは、全く御指摘のとおりであると存じます。  将来の見通しの問題でございますが、これにつきましては、先のことでございますし、なかなか見通しは立てにくいという点もございますが、たとえて申しますと、経済審議会の資源研究委員会の見通しによりますと、昭和五十年度におきまする資源の需要量が、銅では四十三年度の一・九倍、アルミニウムは二・七倍、ニッケルは二倍、原料炭が二倍、石油が二倍、木材が一・四倍こういうように、いろいろなファクターからこう試算がされておるわけでありまして、いずれにいたしましても、将来資源確保は非常にたいへんな問題だということは事実であります。国内資源は、大陸だなにおきまする、たとえば石油資源の探査の問題、将来への期待とか、あるいは近年東北地方に見出されました黒鉱に代表されまするように、銅、鉛、亜鉛等将来性の非常に大きなものがございますが、何と申しましても、日本の経済の発展が非常に大型かつ急速でございますし、それに引きかえまして、わが国の国土の狭隘と、それからその相対的な意味における資源の埋蔵量というものは限局されておる、かように考えざるを得ないと思います。そうしますと、現在日本の経済の国際化ということがいわれておりますが、どうしても、これはやはり世界的な視野のもとに、日本の経済の発展というものはその規模で考えざるを得ない。したがって、原料の資源の確保の問題につきましても、これはやはり国境を越えた世界的な視野でこの確保という方策を立てていかなければならない問題であると存じます。  そこで、経済協力の問題、この問題は発展途上一国に対する施策でもございますし、国際的な日本に対する期待の問題、日本の国際的な経済地位の向上の問題でもございますが、日本自体の問題といたしましても、これは考えなければならない問題であると存じます。そこで、この経済協力を資源確保的な見地からながめますと、でき得ることならば自主開発方式、海外投資を行なって、そしてみずからの手によってその地の産業を興し、そしてまた一方において、その原料を日本へ持ってくるという方式が一番望ましい形でございますが、これが行なわれない場合には、従来行なってまいりました融資買鉱方式とか、いろいろな各種各様のやり方があると存じます。その際、特に経済協力的な見地に立ちまするならば、これはどうしても、日本自体の本意、こちらサイドだけの考慮のしかたでは、現地の発展途上国のナショナリズムと申しますか、その地の感情とうまく即応いたさない、こういう事態も出てまいりますので、諸般のそういう国際的な情勢、それから発展途上国の自主性、それから国民性、世論というものに適応しつつ、日本の長期にわたる海外資源の確保の問題を考慮いたしてまいることが必要である、かように考えております。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 審議会の目標がある、このようにおっしゃったわけですが、確かに石油なんかは、かなりきめこまかな、そういう目標あるいは対策等もあるわけですね。ところが個別になってきますと、やはりその点がまだ弱いと思うのです。局長、率直な感想はどうですか。
  139. 後藤正記

    後藤政府委員 御指摘のとおり、石油は従来とも、世界のセブンメィジャーといわれております非常に大きな国際資本の原料制約下にございまして、ほとんど一〇〇%近い九十数%というものを海外からの輸入に仰いでおりまして、これに対する日本サイドとしての確保のしかたが非常に貧弱といいますか、弱いという点は、つとに各方面から自覚されてきたところでありまして、したがいまして、これが近年に至りまして、中近東のたとえばアブダビ、中東石油等の例、あるいはアラビア石油というような例に見られるように出てまいっておるわけであります。現在、コンゴにおきまして、先ほど政務次官からお答えいたしましたように、銅資源の開発もやっておりますが、その他の非鉄金属あるいはボーキサイト、それからさらにまた、それ以外の今後の拡大発展に伴います鉄鉱石とか製鉄用の原料炭、こういう問題につきまして、率直に申しまして、今後もっと計画性を持ち、長期見通しに立ってこの資源問題と取り組んでいくことが非常に必要であると、私自身も痛感いたしております。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ率直に認められたわけでありますし、いま答弁されたとおり力を入れていたたきたいと思うのです。それから、政務次官は先ほど、たとえば石油等は軌道に乗っているとおっしゃったのです。確かに軌道に乗っているのもあるのですよ。けれども、石油を見ていきますと、特に海外の開発状況ですが、私も調査いたしましたら、アラビア石油株式会社、北スマトラ石油開発協力株式会社、ジャペックス・オーストラリア、ジャペックス・カナダ、インドネシア石油資源株式会社、サバ石油開発株式会社、アラスカ石油開発株式会社、九州石油開発株式会社、アブダビ石油開発株式会社、中東石油株式会社、カタール石油株式会社、アラスカのノーススロープ石油等になっております。ところが、開発の生産段階に達しているのはアラビア石油株式会社と北スマトラ石油開発協力株式会社、二社であるわけですね。ほかはまだ探鉱調査の段階を出ていない、こういうような状況です。もちろん、これから探鉱調査をしていけば施行する、そういうことを含めてのお話だと思いますけれども、軌道に乗っておるということはちょっとオーバーじゃないかと思うのです。このうち石油開発公団の出資を受けているのは、石油開発公団の現地法人のほか、サバ石油開発株式会社、インドネシア石油資源株式会社、アブダビ石油開発株式会社、中東石油株式会社、北スマトラ開発協力株式会社、わずかな出資を受けておりましたが、この石油の開発公団の出資を受けているもの、受けていないもの含めて、概括的に資本構成を見てみますと、電力、鉄鋼、あるいは石油精製、ガス、商社、銀行保険などの共同出資の形になっているわけです。  そこで、まず第一番に、このように海外石油資源開発に積極的に進出をしておるその態度は、私としても十分理解もしておりますし、さらに、これからの資源の供給という点から見れば力を入れなければならない。しかし、この進出のしかたがはたしてこれでいいかという問題です。一つは、軌道に乗っていないというその辺のところについてどう思われますか、局長政務次官、簡潔にお答え願いたいと思います。
  141. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 お答えいたします。いま私が軌道に乗っておると申し上げましたけれども、これは海外探鉱においては、これからの探鉱区分その他を見ますと、いままでアラビア石油以外ほとんどやっていなかったものが、アブダビその他相当のものが出てまいりました。まだまだ探鉱その他をしなければならないことはございますけれども、これは世界市場その他の問題で、外国資本が相当押えている面もございます。しかし、日本が小さな資本で進出していく面においては、今後とも努力しなければいけないのでございますけれども、そういう競争の中で日本が海外探鉱をやっておるということについては、ある意味では軌道に乗り始めたというような感がいたしますし、先行きを見ましても、いま交渉を進めておるところを見ますと、今後軌道に乗るのではないかと考えております。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間が限られておりますので進みますが、私がはたしてこういう進出のしかたでいいかと申し上げたのは、石油探鉱開発というのは非常にリスキーな事業である。これは関係者も国民の皆さんも十分理解されているわけですが、不成功に終わるということも計算してかかっていかなければならぬ。非常に危険が伴うものです。ところが、現在の海外石油資源の開発体制を見てみますと、一社が一地区を対象とする形態になっておる。また、その出資者というものも、一ないし二、多くても四くらいの探鉱事業に関係しておるにすぎないわけです。したがって、不成功を他の成功によってカバーすることができない形になっている。そうしますと、こういう形態でこの民間資金を石油のこういう探鉱事業に継続的に振り向けるということは期待できるかどうか、非常に困難じゃないか。また対象地区によっても、ほとんど近接して資本系統も異なる石油資源開発が行なわれているわけです。こうした事情をお考えになって、政府として効率的なこの開発体制というものを推進していくために、今後どういう考えでいくか、この点を局長からお聞きしたいと思うのです。
  143. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 いま一社ないし二、三社くらいで危険度を負担するということで、非常に問題があるように仰せられましたけれども、その点も確かにございます。たとえばウラン鉱などは、今度一社だけではなくて十社以上の共同資本形態をもちまして探鉱しようではないか。これなどは非常に新しい方式だと思っておりますし、リスクの分散という意味でも非常によろしいのではないか。今後こういう方式がとれればと思っております。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、海外石油の資源開発における石油公団の果たす役割りというものは非常に大きいわけですが、はたしてその機能が十分発揮できておるかどうかということですね。その原因は何かというと、一つは資金量が小さいということです。なるほどやっておられることはやっておられるけれども、われわれとしてはそこまで評価してないわけです。第二は、業務内容が非常に狭隘じゃないかということなんです。こういう海外資源の開発という点から考えると、資金需要に民間資金の充当をはかるためには、まず公団の投融資資金というものを飛躍的に増大させなければならぬのじゃないか、このように思うのですが、政務次官、どのようにお考えですか。
  145. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 確かに御説のとおりでございます。海外探鉱をする場合に大量の資金その他が要ることも事実でございます。年次的に申しますと、四十二年度四十億円でございましたが、来年度予算には百三十五億円を計上しております。そういうことで漸次増加いたしておるのは事実でございますけれども、積極的な海外探鉱政策を打ち出すにはもっと資金が要ると私も考えております。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、本日からですか、石油公団から新SKが分離をするわけですが、この会社が従来の経験、技術、そうした内容からして、海外石油資源開発に十分に活躍できるように、そういう活用ということを考えていかなければならぬのじゃないか。その点どういう配慮をなさっておるか、局長からお聞きしたいと思うのです。
  147. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  本来、私の守備範囲と申しますよりも、これは鉱山石炭局長がお答えいたすべきかと思いますが、私の知っております範囲内でお答えを申し上げます。  石油資源開発株式会社以来行なってきております、国内における物理探鉱、あるいはさく井工事の請負、あるいは海外の三事業、たとえばインドネシアの石油資源開発、ジャペックス・カナダ、ジャペックス・オーストラリア等に対する追加投資を行なうこととしております。さらにまた、新会社の資本金を、現在において、公団から九十四億円、民間から四十九億円、合計百四十三億円を予定いたしておりまして、これを元として、ただいま申し上げました三種目を中心とした営業を行なうことによりまして、民間企業としての自立安定をはかり得る、かような見通しに立っております。政府といたしましては、国内石油鉱業というものを維持して新会社の自立安定をはかります見地から、従来に引き続きまして、探鉱補助あるいは基礎調査等々の面で配慮してまいりたい、かように考えております。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 その活用を今後十分はかるように、十分な配慮をしていただきたい、これを強く要望しておきます。  それから、海外における石油資源開発を見てみますと、非常に短い期間、十年内ぐらいだと思いますが、急速に進出しているわけです。ここで非常に大きな問題点一つ出てきた。それはなぜかというと、技術陣の分散化という傾向が非常に強くなってきている。これは層を厚くしないとたいへんなことになるわけです。その点、非常にじみな問題でありますけれども、今後積極的な対策を講じなければならぬのじゃないかと思うのです。この点、具体的にどういうふうにお考えになっておりますか。
  149. 後藤正記

    後藤政府委員 資源開発、特に海外におきます資源開発を効率的に推進いたしますためには、技術陣の強化ということが必要であるということは、まことに御指摘のとおりだと存じます。現在、これは大学教育の拡充等も考えられますが、当面の問題といたしましては、国際的な感覚を持ち、同時にまた優秀な交渉能力とか不屈な精神力を持っておる人材を必要といたしますので、資源開発企業に在籍しております技術者職員を対象といたしまして、現在通産省の指導のものに、資源開発大学校というようなものを設立いたしたい、かように準備中でございます。これは、できますことならば四十五年度初頭につくって、今後の海外資源開発のための技術者対策の中心としていきたい、かように考えて検討いたしておる次第でございます。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 実際のところ、石油は世界的に供給過剰ぎみになっておりますが、先ほど私申し上げたように、銅とか鉛、亜鉛の鉱物資源の供給確保というものは非常に心配なわけです。特に昭和五十年度を見てみますと、需要量が大体百四十万トンぐらいに達すると見込まれているわけですけれども、そのうち八十万トンは、現状のままでいくならば、手当ての見通しがつかない。先ほどあなたは率直に、確かにその辺はぼやけておる、これから早急に目標を設定してやりたいとお答えになったので、その辺はそれでいいのですけれども、そういう点で非常に心配なわけです。いままで融資買鉱が中心になって行なわれておったわけですが、これから自主開発をしていこう、これも非常にけっこうだと思います。  そこで、金属鉱物資源開発について、この問題点として、この事業団の融資というのは先進国を対象としている。この対象とするプロジェクトに限っているわけですが、発展途上国を対象とするプロジェクトについては海外経済協力基金から融資していることになっているわけです。そういう点で、いままでの状態を見てみますと、海外経済協力基金の融資が先行しておる。そこで、交通整理したんじゃないか。このように思っておりますが、事業団というのは、専門的な機関のそういう的確な判断をかなり持っているんじゃないかと思うのです。そういう点で、一元的に運営していくほうが効率的ではないか、このように思うのですが、その点どうお考えになっていますか。
  151. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えをいたします。  海外の経済協力、これは、資源開発問題をも含めまして経済協力基金の出資、融資対象といたしていくことは、従来ともやってまいりましたところでございますし、これは特に、今後とも資源開発の重要性にかんがみてそうしたほうに進めてまいりたい、かように考えておりますが、特に先進国向けにつきましては、金属鉱物探鉱促進事業団が行なっております。これは発展途上国におきまして、基礎的な調査が不足しておる、あるいは自然条件がきわめてきびしいというような問題等もございますし、それから特に融資条件とか融資の適否等の面で、経済協力的な見地をも含めて、この両方両々相まっていくということが非常に必要であるということが考えられるのでありますが、先進国向けにつきましては、これは資源確保という観点から考えさえすればそれで足りるのでございますので、これは金属鉱物探鉱促進事業団が当たる、かように仕事を分けたわけでございます。  そこで、金属鉱物探鉱促進事業団に出資機能を与えるかどうかという問題も出てまいりますが、これは石油資源開発におきましては、新しい会社をつくって推進するというのが一般的な傾向になっておりますために、資本市場で資金調達がむずかしいということに対しまして、非鉄金属関係の鉱物資源の開発は、既存の鉱山会社が自分で出ていって自分で当たるというために、資本市場での資金調達がわりあい容易であるということがございまして、その辺を比較考慮いたしまして事業団に出資機能を与えなかったという現状でございます。現在もその事情は変わっていない、かように承知いたしております。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんので、あと簡潔にしたいと思いますが、原料炭も非常に不足をしておる。民間では、昨年の暮れに、製鉄、石炭両業界によって海外原料炭開発株式会社が設立されていますが、この辺のところ政府としてどういうバックアップをしていくか、この点が一点。  それから、国内資源が案外忘れられているのじゃないか。これについての強力な今後の開発体制。  それからもう一点は、昭和四十五年度の税制改正によって石油開発投資損失準備金制度が創設されて、海外資源開発促進のために輸出保険制度の改善がいろいろと考えられているわけですが、要するに新鉱床探鉱費の特別控除制度について、そのあり方を検討するために、とりあえず適用期限を一年間延長するという話が出ているわけです。これは非常にまずいんじゃないかと思う。この点どう考えているか。  以上、三点お聞きしたいと思います。ひとつ、あまり長くならないで、いま申し上げた三点について簡潔にお願いします。
  153. 後藤正記

    後藤政府委員 石炭部長が参っておりますので、原料炭関係はそちらのほうから……。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 では簡単にお願いします。十分答えてくれたら一問で終わります。
  155. 阿部茂

    ○阿部説明員 お答えいたします。  ただいまの近江先生の、海外原料炭開発株式会社に対して政府はどういう姿勢でおるかという御質問でございますが、御指摘のとおり、昨年暮れ、鉄鋼業界から一億円、石炭業界から一億五千万円、計二億五千万円の共同出資の会社を設立いたしました。御指摘のとおり、原料炭の極度の逼迫状況から見まして非常に有意義なことだと思いまして、かつ国内の石炭業界の技術を海外にひとつ大いに活用したいということ、鉄鋼界の資金力ともこれをうまくタイアップさせたい、こういうねらいから応援することに態度をきめまして、今般の四十五年度の予算要求におきまして、一般会計から千五百万円余の、少額ではございますが、とりあえず補助金を出して海外の原料炭探鉱のほうの促進をはかりたい、かような姿勢でおる次第でございます。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 さっきの控除制度のあれは。簡単にお願いしますよ。
  157. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  資源確保の海外投資損失準備金制度というものが税制上の特別措置として適用されておりますが、特に石油資源の確保のためには、探鉱投資に関しまして、税調の審議を経まして、石油資源開発投資損失準備金制度を四十五年度から創設する予定でございます。それから探鉱準備金等減耗控除制度は、これは世界の主要工業国におきましても類似の制度がございまして、わが国でも四十一年度から施行されておりますが、これは日本の鉱物資源の開発に大きな効果をあげておる、かように存じます。それから海外資源の開発は、特にわが国の資源確保上非常に重要な問題と考えておりますので、従来とも、先ほど申し上げましたように、海外投資損失準備金制度が適用されておりますが、しかしこの制度では、日本法人の直接投資によって行なわれております中東での石油開発事業や、日本海での海洋石油資源の開発等は、対象となり得ないという欠点がございますので、四十五年度からは石油開発投資損失準備金制度を設けた次第でございます。これで、国の内外を問わず石油資源の探鉱のための投資はすべてカバーされますので、今後の石油資源開発の促進に大きく貢献する、かように考えております。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がないから、特に国内のこともいま申し上げたのですけれども、これについては十分力を入れて、要するにあくまでも母体でございますから、その点を強く要望しておきます。あとこまかい点はまたこの次聞きますから。  それからあと一点だけお聞きしておきたいことは、輸出金利の引き上げがいま非常に問題になっておるわけですが、これは通産省としてどう思っておるのですか、簡潔に。
  159. 後藤正記

    後藤政府委員 これは私の直接の守備範囲でございます。この輸出金利問題というのは、最近国際金利が高いという状況と、それから最近国際収支が非常によくて、そうして外貨準備というものがだんだん手厚くなってきておるという問題から、現在、日本銀行の制度金融一つとして考えられております特に短期の輸出金利に関しまして、これを引き上げるという動きが出てきておるようであります。これは、一部新聞等にもこういう問題が出てまいっておりますが、率直に申し上げまして、ここのところ、長年にわたって輸出マインドというものを養成してまいりましたことへの響き、あるいはまた輸出金利の上がり方というものが現在どこへ一番負担になってかかっていくか、この点を考えますと、輸出する大商社もさることながら、中小企業の輸出、特に輸出商社、そういったところへの影響がやはり一番多いようであります。したがいまして、全般の金利政策の面として、特に現在賃金等の高騰その他からいって、非常に中小企業、特に軽工業品を扱っておるところへきびしくしわが寄せられるという問題は、一国の輸出政策上からも、これは非常に好ましくないし、国内的な面からいっても好ましくない、私は貿易振興局長としてさように考えております。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃこれで終わりますが、要するに好ましくないということははっきりしておるわけでありますが、これは特に中小企業に与える影響は大きいわけです。この点は重大問題として関係各省、真剣に検討していただきたい、この点を強く要望しまして、私の質問を終わります。
  161. 八田貞義

    八田委員長 塚本三郎君。
  162. 塚本三郎

    ○塚本委員 政務次官お尋ねしますが、日本の経済が輸出貿易にその根本を置いておりますことは、申し上げるまでもないと思っております。しかし、近年特に急激な輸出の増大と並行いたしまして、その資源の確保が大きなウエートを占めてまいったことは申し上げるまでもないと思っております。そういう観点から考えてみまして、今後現在と同じようなベースで輸出が拡大をされるものという前提に立ちますとき、それを裏づけるべき資源はだいじょうぶなのか。逆に資源確保がいわゆるネックとなって輸出の伸びが鈍化する心配はないか。ひとつ大まかな立場に立って御答弁をいただきたいと思います。
  163. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 いまの御質問でございますが、資源確保の問題についてはいろいろな問題点がございますけれども、これから自主開発方式ではなかなか間に合わない点もございます。で、単純輸入方式のような形で入れざるを得ない面もございます。そういうことで万全を期して、資源が間に合うように、原料が間に合うように確保していきたいと考えております。
  164. 塚本三郎

    ○塚本委員 急激に輸出が伸びてきておりますね。私、どの資源ということを個々に聞くわけじゃございませんけれども、いまの状態でいきましたときにはいろいろ限界がある。われわれ政治家の判断でけっこうですけれども、ほぼ何年先ぐらいに資源の問題が相当のネックになるか、大まかな見通しだけちょっと聞かしていただけませんか。
  165. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 的確な資料がございませんので、後日この点についてはお答えしたいと思っております。
  166. 塚本三郎

    ○塚本委員 局長、どうですか。
  167. 後藤正記

    後藤政府委員 先ほど来近江先生の御質問についてもお答えいたしましたように、現在経済審議会でつくっております小委員会でも、この数年先の見通しをつくっておりますが、これに対して、現在急速にその開発体制、確保体制を整えるべく研究、努力いたし、漸次その方向にいっておりますが、何年たったら十分に安心できるか、こういう点につきましては、現時点におきましてはこれは非常にむずかしい問題で、将来、問題性の意識と問題点というのは、これは十分に考えつつ体制即応は必要であると存じますが、現時点におきまして、ちょっと、何年先にこれが安心できるかというところまでは、お答えいたしかねるというのが現状でございます。
  168. 塚本三郎

    ○塚本委員 日本の経済の立場考えてみますると、買ってくれる人はお得意さまなんだ、買うほうはお客さまなんだ、だから買ってやるのだ、こういうような意識というものが日本の経済界だけではなくて、政界にも実は充満しておると思うのです。  昨年、実は私、南米へ参りましたとき、大使あるいは総領事の人たちが口をそろえて言っておりましたことは、貿易収支が常に南米は対日本との関係は赤字でございますね。買うほうばかりが大きくて買ってもらうことがきわめて少ないのだということで、われわれ議員に対して、大使もあるいは総領事も、たいへん恐縮しながら説明をしておったことを記憶しております。ということは、日本の政界、経済界においても、買ってくれる人がお得意さまであって、よけいに売りつけられれば、実は外交の出先としての大使や総領事は相当にいい顔ができる、けれども買うほうばかり大きくて、買ってもらうことが少ないのだということで恐縮しておる。それを見ていきましたとき、団長なかなか機転のきく人なのか、大所高所から見える立場の人だったのでしょう、いや、資源を供給してくれる人も日本経済にとってはきわめて大切なお客さまでございます、こう言って相手を持ち上げて大いに気分をよくして帰ったことを記憶いたしております。これは単なるおせじ外交じゃないと思うのです。日本のいわゆる南米に対する態度というものは、もはや買ってやるのだというのでなく、資源を供給していただき得る余地と希望と、そうして日本輸出産業をささえる最も大きな地域なんだ。実は経済界だけでなく、やはり政界自身もそういう態勢で進まなければいけないのではないか。そういう態勢ができないと第二のアメリカのような形になってしまうのではないか。アメリカが南米に対しましてたいへんな投資をし、あるいはまた繰り返し繰り返し長い伝統を続けてたいへんな経済的な援助をしておりながら、なおかつアメリカ合衆国は南米から徐々に追い出されようとしておるということ。経済ベースでは完全にアメリカにたよらなければならないはずの南米の諸国、民族が反米的な感情になっておるという姿の中には、ただ単なる経済力だけではなくて、いわゆる買ってやるのだ、こういう態勢が未開発国といいますか、発展途上国の国民をして反米的な感情をつくっておるのではないか、こういうふうに、一様に判断してわれわれ視察議員団は帰ったようなことをいま思い出しておるわけでございます。  いまここで、資源確保のために法改正を提案せられますること、きわめてけっこうだと思います。しかし、その、基本姿勢なるものは、やはりいい品物を安く原材料として供給してくれるのだ、これもまた日本にとっては大切なお得意さまなんだ、こういう態勢をわれわれ自身がまず持つべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょう。
  169. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 確かにお説のとおりでございます。私もつい最近コロンビアの経済開発大臣と工業大臣の二人にお会いいたしまして、いろいろなお話をいたしました。そのときに、感情的には非常に反米的でございます。日本の経済発展を見まして、ぜひ日本に協力をしていただきたい、それからその協力によってコロンビア自身が経済的に確立したいのだという考え方も述べておりました。日本としては、そういう買ってやるのだという主義ではなくて、開発を通して相手の発展途上国を援助して、りっぱな経済体制をつくるという気持ちで協力していかなければいけないというように感じております。
  170. 塚本三郎

    ○塚本委員 資源確保ということですが、この政府の出された資料等を読んでみますると、一にも二にも、今度の法改正の最も重要な点として資源確保をうたっております。しかし、これはたとえば鉄鉱石というもの、あるいは原油というもの、いわゆる第一次の資源確保ということにとどまるということなのか。あるいはさらに、鉄鉱石を半加工といいまするか、ある程度現地において産業を振興させるためには、鉄鉱石はそのことは可能であるかどうか。私は技術者でございませんからわかりませんけれども、東南アジア等におきましては、たとえばフィリピンにおいては、原木を持ってくることに対してはもはやストップしたい。ある程度単板なり何らかの形に半加工する。そのことがいわゆる現地における経済開発なので、あるものを持っていかれるだけでは開発じゃないぞ、こういう気運が東南アジアには出ておると聞いております。それならば同じように、鉄鉱石といういわゆる全く第一次の資源だけをとってくるということが経済協力になり得るであろうか。国土をちぎって持っていってしまうんだというような考え方に相手方に受け取られる心配があると思うし、そういう意味では、何らかの形でいわゆる原始的な原料の確保ということから、さらにある程度現地において加工を加えるということが、運賃の軽減にもなるし、そういう意味から、力を注ぐとするならば、そういうところまで考慮に入れてしかるべきだと、私はしろうとなりに判断いたしております。そういう配慮をなされておるかどうか、どうでしょうか。
  171. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおりに、最近、発展途上国がみずからの経済的な自立ということを考えまするためには、ただ単にその国に賦存いたしております原料資源をそのまま持ってくるということにつきましては、自国の立場からいって非常に反対の感じと申しますか、そういう世論が出てきておることは、御指摘のとおりであると思います。これは、発展途上国のみならず一般に——先般実はカナダの担当次官が参りまして、私、会いましたときに、最近、日本はカナダについて、資源の賦存地域、原料の供給地域であるという観点からの企業進出が非常に出てきておるようだ、しかし、当国といえども原料だけを持っていかれるというのでは、自分の国の経済発展にこれはプラスにならぬ、その点は十分に考えてもらいたい、こういうことを私に会ったときに申しておりました。さらにまたアメリカにおきましても、現在アラスカ州におきまして、先年ただいま御指摘のフィリピンと同じように、木材を原木のままでなしに、ある程度まで加工したものでなければ輸出してはいけない、こういう州法が現実に存しております。したがいまして、これは経済協力全般の問題として十分考慮いたさなければならないところでございますが、その対象国の経済発展に、向こうにも資する、相互に共栄する、ともに利益になるという立場でなければ、今後の経済協力というものが進まないのは、御指摘のとおりであると存じます。  したがいまして、たとえば鉄鉱石の場合、私も技術的にこまかいことは存じませんが、鉄鉱石そのものでなくて、ある程度の加工段階を経て、銑鉄の形にして持ってくるとか、あるいは原料炭にしても、日本で最も必要といたしておりますコークスの段階までこれを加工して持ってくるとか、あるいはボーキサイトにいたしますならば、これをアルミナにし、さらにまたこれは現地において電力というものが活用できますならば、さらにアルミニウムのインゴットにまでして持ってくるとかいうような、やはり現地の産業というものを興して、そこに雇用機会を増進して、そうして日本へ持ってくるという事態へ進まなければならない。したがって、原料だけを持ってくるという考え方というものは、今後長きにわたって日本の経済協力を推進する立場、あるいはまた特に東南アジアを中心といたしまする日本の近隣諸国と日本との経済的関係を円滑ならしめるゆえんではない。したがって先生仰せのような方向に進むべきものであると私は考えております。
  172. 塚本三郎

    ○塚本委員 政府は十分おわかりいただいているという御答弁でございますが、ならば、これを実際に進めていくために、もちろんこれも処方せんの一つとして改定せられたものと私は受け取って、決して過小に評価をしようとは思っておりません。しかしもっと大事なことは、いわゆる産業人が自発的にその国にあるであろう資源のために投資をさせるということに対する危険負担を補助してやるという段階では、いま局長が述べられたような趣旨がほんの一部分としては満たされてきますけれども、これからの資源確保という立場からまいりまするならば、理想としては、いま局長が述べられたように、現地においてある程度の加工、手を加えて産業に寄与してあげるというふうな施策が必要ですけれども、しかし、これもよく掘り下げてみると、たとえば石炭をコークスにするということも、そのコークスにする過程において出てくるガスその他が向こうでは役に立たない。日本においては、ガスそのものが、いわゆる製鉄会社の海岸で行なうことによって、そのまま大都会の燃料に消費するとか、あるいはそのお隣に化学繊維との合弁の二次的な産業に利用されるとかいうような、幾つかのものが整っておらなければ、それは企業としてペイすることができないはずなんですね。だから政府がどれだけ、そういうふうに考慮せよ考慮せよといろいろ指導してみても、現地では経済ベースに合わないというのが実情だろうと思うのです。だからそうなると、やはりもっと政府が積極的にいわゆる主導性を持った指導をしておかないと、こういう問題はお題目だけに終わってしまうということに判断されるわけです。具体的に、こういう産業部門においては何らかこういう手を打っておりますというようなことが、いますでに行なわれておるような例はあるのでしょうか。
  173. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  具体的な例といたしましては、ボーキサイトの確保というのが非常に重要になっておりますが、従来は国内でアルミナに精製するということをやっておりました。現在では豪州と現地でアルミナまで加工してアルミナで持ってくるという形を進めておるわけでございます。  なお、今後の問題としては、インドネシア等でニッケル鉱石をそのままで持ってこずに、向こうで中途まで加工して持ってくるというようなことも、現在の計画としては進めておる次第でございます。
  174. 塚本三郎

    ○塚本委員 もう一つ同じようなことで、そうした場合に日本の国内で行なう経済ベースとの関係はどうでしょうか。かえってそのことによっていまのところ効率が上がっておるのか、あるいはがまんしてもそうすべきだからしておるのか、経済ベースでどうでしょうか。
  175. 本田早苗

    ○本田政府委員 アルミ鉱業におけるアルミナの製造につきましては、それで合理的に動いておるというふうに聞いております。
  176. 塚本三郎

    ○塚本委員 そういたしますると、そういうボーキサイトやアルミナの問題をふえんしていきますると、鉱山の鉱物資源については、これから対処する方法によっては、そういう方法を採用することは十分可能だという幾つかの産業があるというふうに判断していいものでしょうか。
  177. 本田早苗

    ○本田政府委員 先ほど貿易振興局長からもお答えがありましたが、鉱物につきましては、そういう可能性が多いし、それから鉱業権の付与にあたりまして、そういう希望も強いようでございますので、そういう傾向が出てまいると考えてけっこうだと存じます。
  178. 塚本三郎

    ○塚本委員 この海外投資ということで、資源の確保ということだけが問題じゃないと思うのです。これから問題になってまいりますのは、労働力の問題も最も大きな問題の一つとして考えてみなければならないというふうに思うわけでございます。そういう点からいたしましても、やはりこの投資という問題は、ただ単に資源確保から始まって、労働力の確保、そしてその国で生産すれば、それが即いわゆる市場の確保ということにまでふえんしていき得べきコースをたどっていくというのが常識だろうと思っております。そうであるとするなら、やはり先ほど局長が述べられたような方向に、政府として強力に指導することが必要なりというふうに判断いたします。ただ単に経済ベースで、商社やあるいはまた会社まかせということではなくして、政府みずからがいわゆるリードしてやっていくということでなければ、なかなかむずかしいと思いますが、いかがでしょう。
  179. 後藤正記

    後藤政府委員 仰せのとおりであると存じます。政府の強力なる指導と民間の自発的な発意というものが両々相まっていかなければ、所期の目的は達成できない、かように判断いたします。
  180. 塚本三郎

    ○塚本委員 政府が指導したり援助したりするというと、何ができるかということでございますね。調査や、あるいはまた外交のことについてはできまするけれども、私は、政府が積極的にそれができ得るとするならば、まずは何といっても資金的な問題が決定的な問題だと思うわけです。  先ほどの近江委員との質問の中でやりとりされておりましたけれども、いわゆる保険にかけることが担保力としての力としては無理だというような話が出てきております。しかし、いずれの場合におきましても、いわゆる全部お金を持っていって、そうして向こうで開発をするのに対して、担保力として外国にあるものをとるわけにいかないでございましょう。せめてそれが九割までてん補されておるとするならば、これをどうして担保として見ることができないのかということに、私は一番大きなネックがあるんじゃなかろうかというふうに思うのです。大蔵省どうでしょう。
  181. 後藤正記

    後藤政府委員 私からお答えさしていただきます。  現在、輸銀プラント延べ払い資金の融通を行ないます際には、輸出保険の一種でございます輸出代金保険の付保ということを条件にいたしております。同時にまた輸銀は、この保険証券を担保といたしまして融資を行なっております。したがいまして、この輸出保険の担保創設効果というのは非常に大きいわけでございますが、従来の海外投資保険につきましては、元本保険、利益保険ともにこの担保価値が認められていなかったというのが実情でございます。したがいまして、融資に際してのプラスということにはならなかったわけでございます。ただいま御審議をお願いいたしております今般の法改正によりまして、投資保険の内容が強化拡充されますので、この担保価値は従来に比して非常に大きくなってくると考えます。したがいまして、通産省といたしましては、輸銀その他の金融機関が相当程度担保力を認めるよう、現在強く希望いたしておりまして、事務当局といたしまして、この点についての連絡をいたしておる次第でございます。
  182. 塚本三郎

    ○塚本委員 大蔵省、来てないのですか。
  183. 後藤正記

    後藤政府委員 いま大蔵省はほかのほうへちょっと出席して席をはずしたようでございますが、現在、大蔵省とはこういう点につきまして、私ども事務折衝をいたしております。これは実際的に行ないますのは輸出入銀行であり、また他の市中銀行でございますので、大蔵省のほうとも十分に連絡いたしまして、その方向に沿って輸銀はじめ金融機関を指導してもらうように、強く要望いたしておる次第でございます。
  184. 塚本三郎

    ○塚本委員 保険というものは、やはり担保力を補うというところに最も大きな意義があると私は判断いたしております。現に投資をして企業として動いておるのに、そして不時の場合においてのいわゆる九〇%の保険までつけておいて担保力が全くゼロにひとしいような扱いを受けておるというようなことでは、私はこの問題の解決にはならないと思うのです。だから、これは、先ほどの近江委員のあれでは、なるほどプラント輸出は売ってしまうやつですから、それは金のかわりでございますから、これは当然のことですね。だから、これとは違うことは私も承知しております。だから、普通経済常識からまいりまするならば、もちろん政変だけじゃない、企業について、もうかる、もうからないという問題もありますから、そのまま輸銀の金を担保として使うことができるかどうかということには大きな疑問があると思うのです。だけれども、私どもしろうとが考えた常識から見まするならば、九〇%のてん補率があるならば、その九〇%の半分の四〇%か四五%くらいまでは担保価値を認めろ、そういうような形にでもしなければ、どんどんと海外に対する投資はできないと思うのです。それでなければ、いま国内においてさえも担保が十分じゃないというような大企業というものの立場から考えてみると、これだけ設備投資に忙しい、いわゆる金融機関との折衝に頭を悩ましておる企業、そして、ほしくもないのにかかわらず、融資してもらうために銀行屋の古手ばかりを押しつけられておる企業、この企業にさらに海外投資をせよと言ってみても、それはしかたがないからしてやろう、だけれども担保はどうでございましょうかと言われてみますると、それは、これだけの投資の問題は、全く別の金として出さなければ投資することができないというような立場に立たされておったのでは、なかなか強力な海外投資への道は開けないというふうに思うわけでございます。だから、そんなことならめんどうだから、買えるうち買ってやれば少しくらい高くてもいいじゃないか、将来のことはまた将来で何とかなるさ、政府が何とかしてくれるさというようなことになってしまうと思うのです。だから、長期的見通しに立って投資をさせ、また開発をしていくということになりまするならば、やはり政府が指導的に指導していくためには、金融について実は担保価値をこの保険に対して認めろということをここでうんとがんばっていくということでないと、この道は大きく開くことはできないというふうに判断いたしておりますが、いかがでしょう。
  185. 後藤正記

    後藤政府委員 お説のとおりであると存じますす。私ども通産省といたしまして、大蔵省当局あるいは輸銀に対する折衝は、先ほどお答えいたしたとおりでございますが、さらにつけ加えさしていただきますならば、昨年の保険審議会におきまして輸出入銀行の藤澤副総裁は、ただいま先生御指摘のような問題がやはり委員から問題として提起されました際に、将来でき得る限りこれを見る方向で至急検討を開始する、かような発言をされておりますので、その点御了承を願いたいと存じます。  なおまた、企業に海外投資をするようにという全般的な指導の問題でございますが、投資というのはあくまで民間ベースの問題でございまして、自分でやる気のないのを、幾らこれをやれやれと役所サイドで申しましても、これはなかなかできない問題だ。したがいまして、出ようとする意欲のある積極性を持った企業というものに、金融面、税制面あるいは保険面その他の点でどこまでこれに加勢をしていくか、両々相まって海外投資というものはできていくもの、私はさように考えております。したがいまして、ただいまの先生の御趣旨まことに仰せのとおりと存じますので、将来その方向に沿って行政の姿勢も、従来とも海外投資促進の方向に向かってプッシュするとともに、民間のそういう発意が出てまいりました場合に、実際の現実的ないろいろな隘路、困難のために二葉のうちにこれをつみ取ることがないようにというような点に十分な配慮をいたしてまいりたい、かように考えております。
  186. 塚本三郎

    ○塚本委員 保険の利用率がきわめて低いということも説明されております。なぜ低いのかということなんかも、もはや御説明がございましたとおりだと思っております。だけれども、この保険をかけることによって投資が相当の担保価値を認められるということになりまするならば、少し無理をすればこれは開発の手が広がっていくのだ。いま企業というものは全部外へ向けてもはや国際的になっておるという形だから、非常に意欲はあると思うのです。だがしかし、いまフル運転をすることによって経済が好況である。だから、いささかたりともいま行なっておる国内企業を傷をつけてはいけない。傷という言い方は変ですけれども、削減して海外投資へいくということ。将来はそうしていかなければならぬということはわかっておっても、こちらの負担において投資をするという形でなければ、いまのところはやり得ない状態ですね。ところが、投資したものそのものが即相当の担保力を持つならば、若干の影響力だけでいわゆる海外への手を出すことができるのですね。その点で、この保険をせっかく当局がお出しになって、そうしてアメリカ及びヨーロッパと互角に対処し得るような態勢をとりながら、これが活用されるかどうかということの根本は、やはり担保力を輸銀当局なり大蔵省との折衝においてどの程度認められるのかということが、この保険制度が有効に活用されるかどうかの決定打ではないかというふうに私は思うわけでございます。私はそういう保険制度のことはくろうとではございません。全くしろうとですけれども、九〇%のてん補率を認められるのならば、その九〇%の半分の四〇%ないし四五%までは担保として価値を認めろというようなところまで通産当局がんばってほしい。そうするならば、二割程度しか利用されていないこの保険が八〇%から九〇%の利用率になり、そしていま外を向いております優良企業が、こぞって、やはり五年先、十年先の発展を見越したとき、資源確保に手をつくことのないような措置をとっていくべきだ。そういう政府の意図というものを、完ぺきとまではいかないけれども、十分に実現してもらうことができるというふうに判断をいたすわけであります。したがって、一重ねて、その所信と、これからの対処の方法を述べていただきたいと思います。
  187. 後藤正記

    後藤政府委員 全く仰せのとおりであると存じます。従来とも努力いたしてまいりましたが、さらに将来に向かいまして先生の御趣旨どおりの努力を続けていきたい、かように考えております。
  188. 塚本三郎

    ○塚本委員 昨年の秋、私ブラジルでブラジルの当局者から、もちろん個人的な意見でございましたけれども、なぜ日本はもっと出かけてくれないのかということを、たいへん強く希望しておったことをいま思い出しておるわけです。たいへんな資源がある。そして日本人も向こうにおいてはたいへん信用されておる。アメリカはずいぶん投資をしておりますけれども、きらわれておる。だから、資源の足りない日本がいまをのがしたならば、もうチャンスがなくなってしまうのではないかということを、日本を惜しむのあまりに、ブラジルの当局者が私ども議員団に語っておったことを、私は記憶いたしております。鉄などは、何でも含有量が七〇%ですか、そういうたいへんに良質の鉄鉱石が産出をされる。しかも今日わかっておる世界の埋蔵量の三二%をわがブラジルが埋蔵しておるのだなんということを宣伝しておりました。現にあちらへおいでになった方は御記憶があると思いますけれども、土地自身が砂鉄のごとき色をしておるという、たいへんな魅力のある資源地帯である。私たち議員団はそういう感じを持って帰ってきたことを覚えております。各国の中においても、日本国出てこいと、好意的に日本の進出を受け入れ態勢を持っておってくれる国がある程度あるのではないかと思うわけです。そういうところにいまこそ手を打っていかないと、膨大な消費量、おそらく私たちの想像もつかないようないま鉱工業の発展をしておりますわが国の産業の立場からいたしますならば、やがてはこの資源というものはたいへんなことになる。労働力の問題でも、こんなに急激に日本が枯渇してくるということは、おそらく想像しなかったと思うのです。あれよあれよといううちにこんな形になってしまいました。おそらく世界資源でも同じようなことがいわれてくると思うのです。そういう意味からいたしますならば、いまのうちに徹底した、行き過ぎたと思うほどの手を打っておかないといけないと思うわけです。  日本に対して投資をしたらどうだといって誘いかけのある発展途上国が相当あると思いますが、おもな国はどんなところか。担当局長のところで目立ったところがありましたら、説明していただきたいと思います。
  189. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  いまさしあたって話のありますのはインドネシア、中近東諸国でございます。御指摘のブラジル等については、資源賦存についておっしゃるような点があるのでございますが、まだ経済ベース、特にフレートの関係等でなお研究いたしておるという状況でございます。
  190. 塚本三郎

    ○塚本委員 向こうから言ってくれるのは、日本立場から見ますとたいへんありがたいというふうに私は思うのです。おそらく数年たったあとにおいては、特にナショナリズムの風が吹いておりますところにおきましては、投資をしようとしても、経済侵略といわれるような機運が出てきてしまったならば、いかに日本が善意をもってしても、なかなか入ることはできないという形になってくることを心配するのです。  私ども青年のときに、アメリカ、イギリス、ドイツ等の資本がわずかでも日本に入ってまいりましたとき、右翼的な思想の諸君が、海外に対する排外的な思想を巻き起こした一時期があったことを、私どもは記憶いたしております。発展途上国、新興国のそういう機運が強くなってまいりますと、こちらがいかに善意であり、好意であっても受け入れられ得ないような政治情勢をも加味してしまうのではなかろうかというふうに思うわけです。  相当前のことですけれども、アメリカ合衆国においてさえもそういう機運がある。私ども貿易関係でアメリカ合衆国の議員団と話し合ったときに、こんなことを彼らが言ったことをいまでも私どもは記憶いたしております。なるほど日本はたくさん資源を買ってくれます。だからアメリカも日本のものを買うんだ。しかし、考えていただきたいことは、日本が買ってくれるものは一次産品ばかりじゃないか。いわばアメリカの国土を削って持っていくだけにすぎないんだ。アメリカの製品は買ってくれておるわけじゃないんだから、アメリカはそんなにありがたくないんだぞ。それに反して、アメリカが買わされておるものは全部完成品ばかりじゃないか。金額の上では日本のほうがよけいに買ってはおるけれども、しかしその中身が問題なんだというようなことを、アメリカの議員から盛んに説明を受けたことを記憶いたしております。だから、いま現地において、開発をしてくれというような希望や、そういう機運のあるうちに手を出さなければ、ときがたつにつれましてたいへんむずかしくなってくるというふうに、私は心配をいたしております。そういう点でも、この際は積極的に投資ができ得るような施策を講ずべきだと思うわけでございます。  大蔵省、見えたようでございますから、重ねて大蔵省のほうから御質問申し上げますが、質問の要点は、この保険の制度が拡充されまして、そして海外投資を盛んならしめて資源確保等に万全を期したいという通産当局の希望で、この法律の改正が提案されております。しかし、この保険制度かいわゆる十二分に活用せられて、海外投資が十分に行なわれて、そうして資源確保に対するその政治的使命を経済的に全うさせようとするならば、何といっても一番大切な問題は、保険をかけたその対象に対していわゆる担保力をある程度認めよということが、この法改正の成否をきめるかぎだと思っておるわけです。したがって、担保力として従来はほとんど認められておらなかったように聞いておりますので、十二分というわけにはまいらぬでしょう。しかし、相当の担保力をこれに認めるということの約束がとれないものかということについてのお尋ねでございます。
  191. 天野可人

    ○天野説明員 お答えいたします。  私は、輸銀融資自体を所管している課の課長でございませんので、ちょっとその点適当でないかと存じますが、私どもが聞いておりますところでは、現在でも投資保険に付せられたものは、輸銀として一応担保にはとっておるようでございます。ただ輸出代金保険の場合に比較いたしますと、非常危険のカバーというところだけでございますので、その点で担保力の差はあるかと思います。しかし、非常危険のカバーでございましても、今回の改正によりますと、担保率が引き上げられますとかいろいろ改正になりますので、その点で担保力が強くなるものと私どもは期待しております。それで、これは輸出入銀行自体も前向きに検討すると思いますし、私ども輸銀と相談して処置いたしたいというふうに考えます。
  192. 塚本三郎

    ○塚本委員 大蔵省、これは私どもしろうとが申し上げるまでもないと思いますけれども、これだけ経済が過熱的に発展をしておる状態ですから、外へ投資をさせようとすることはなかなかむずかしい状態にある。しかしながら、将来の見通しを立てて見るならば、やがてはやはり資源というものが枯渇するであろう。こんなにおそろしいテンポで量が拡大していく状態から見るならば、当然そういう心配が起こってくる。だから、いまのうちに投資をし、開発をしておきたいということは、識者がすべて考え得るところだと思うのです。  だが、しかしその場合、国内における産業に影響力を与えるようにこの資金力を向こうへ持っていくなり、あるいは現在のこのものを一〇〇%担保に置いて、いわゆる相当先でなければこちらへ実ってこない、こういうものに投資させるということはきわめてむずかしい。これは申し上げるまでもないと思っております。だから、この際政府の力で、この投資に対しては実は担保力を大幅に認めろ。もちろんプラント輸出等の場合は、これで売ってしまってやがて金が入ってくる、一〇〇%入ってくるんですから、これは同率には見られないことはわかっておりますけれども大蔵省が言うように、担保力を認めておるというのは申しわけ程度の認め方で、それこそ一般の市中の担保でいうならば、五番目、六番目の、あってもなくてもいい程度の認め方しかしておらぬのではないか。それではやはり精神的な安堵感だけにすぎないということですね。しかも海外投資はそんなになまやさしい金額ではないと思うのです。だからこれは相当にいわゆる担保力として認める。私が先ほど通産省に希望として申し上げたことは、いわゆる九〇%の担保率を認められておるならば、その半分の四〇%か四五%くらいは担保力として認めるところまで踏み切ってくれなければ、この法律を改正した意義というものはないんだ。そして、この法律の改正の目的であります、海外投資を通じて資源の確保という実をあげることができないというふうに思いますので、そういう経済ベースよりも、資源確保という政治的ベースによってこういうことを行なっていただくことが、日本の産業にとって最も大切なことなんで、そういう向きで鋭意検討していただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  193. 天野可人

    ○天野説明員 お答えいたします。  資源開発の必要が現在非常に高まっておりますし、現在のみならず将来もそうであろうということは、御説のとおりだと思います。それで、ただいまの担保力の点についても、先生のおっしゃる趣旨は非常によくわかります。それで一つ一つの点は——輸出入銀行一つ金融機関としてやっておりますので、担保力の問題についても、輸銀自身金融判断というものを抜きにしてはできないことだと思います。そういうことでございますので、私どもといたしましても、よく御趣旨を体しまして輸銀と相談することにいたしたいと存じます。
  194. 塚本三郎

    ○塚本委員 だからこそ輸銀を呼ばずに大蔵省を呼んだのでございます。経済ベースではそのことは無理なこともわかっておるから、政治的判断でやってもらいたい、このことを大蔵当局に強く希望申し上げておきます。大蔵省はけっこうです。  最後に、私、四時までに時間も制限されておりまするし、ほかに用件もございますので、もう一つで打ち切りたいと思います。  この法律が通りますることによって、実は海外投資がいまのベースから比べて急激に伸びていく、これだけ補てんされれば伸びていくことはわかりまするが、こういう点がこうなるんだという具体的な自信のほどを、局長のほうから説明していただけたらありがたいと思うのです。
  195. 後藤正記

    後藤政府委員 お答え申し上げます。  従来におきましても、わが国の海外投資は、海外資源確保、あるいは輸出市場の開拓あるいはその確保という要請にこたえまして、非常に急激にこう伸びてまいりまして、今後ともこの増勢はやはり続いていくものと私ども考えております。そのうち、この海外投資促進策は、これは幾つかの角度から進められておるわけでございまして、海外投資保険の今般の拡充というのもそのうちの一つでございますので、この海外投資保険制度を拡充することによって、将来、海外投資がどれだけふえていくかということを現時点において量的に申し上げるというのは、非常にむずかしいかと存じますが、この投資保険というものを拡充することによりまして、発展途上国におきまする収用、あるいは外貨事情の悪化等に伴う為替制限等の政治的な危険が相当カバーされる。したがって、進出企業といたしましては、その負担が相当程度軽減をされますために、海外投資促進効果というものは相当著しいものがあると考えます。したがいまして、量的にはちょっとこの点において申し上げることは困難ではございますが、今般の改正によりまして、海外投資の従来からの伸び方がさらに進んでいくということはお答えできると存じます。
  196. 塚本三郎

    ○塚本委員 最後に政務次官に。  資源というのは物質だけじゃないと思います。労働力も資源のうちに入ると思いますけれども、海外投資の持つもう一つの大きなメリットは、やはり何といっても国内における労働力の不足というもの。これは、ある地域において、資源の補てんとともに、労働力もまたそこにおいて補てんすることができ、さらにそのことによって、開発途上国におけるところの産業開発のために資することができる、技術も提供することができる、こういう意味において、ただ物をこちらに持ってくるというだけではなくして、現地における労働力の確保ということも、きわめて大きな問題になっておると思うのです。そういう意味でも、鋭意力を注いでやっていかれるべきだと思いますが、いかがでしょうか。その所信だけ承って私の質問を終わりたいと思います。
  197. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 いま塚本先生のおっしゃったとおり、海外の資源開発だけではなくて、その地域における労働力も活用して、今後その国にも利益を与えるような形の海外投資をやっていかなければ、今後日本の海外投資というものも伸びていかないだろうということは事実でございます。先生のおっしゃるとおりだと私も思います。
  198. 塚本三郎

    ○塚本委員 終わります。
  199. 八田貞義

    八田委員長 米原昶君。
  200. 米原昶

    ○米原委員 初めに、この法案の提案された理由として、通産省貿易振興局の資料や経済白書を見ますと、わが国の企業の一そうの発展のために、それから国際協調の一環として、発展途上国の健全な発展のために、また発展途上国の自助努力を支援するためにというようなことが強調されまして、日本の海外投資による経済協力が求められているといわれているわけでありますが、その海外投資による経済協力の現状について、最近、問題になっている点について幾つか聞きたい点があるのです。  つまり、最近いろいろな新聞紙上や雑誌でもいわれておりますが、特に東南アジア方面の発展途上国で、イエロー・ヤンキーとかエコノミック・アニマルとかいわれ、新聞でもその実情がいろいろ報導されている。それで、その問題について、いまいわれているようなそういう報道から幾つかの問題点をあげますと、たとえば一つは、人種的差別というか、民族的差別というか、そういうことがこの投資の中で起こっているというので非常に反感を持たれている。  たとえば、先日もこの委員会で、通産大臣に直接お聞きしたわけではないんですが、沖繩の問題のときにもちょっと触れたんですけれども、韓国で、いわゆるフリーゾーンの内部で韓国の労働法を適用除外されたやり方で韓国の労働者を雇用しようとしたために、非常な反対運動が起こった。これは日本の新聞にも報道されているわけですね。こういうような問題が非常に反日的な空気をつくり出しておるんじゃないかと思うのです。あるいは賃金について見ますと、日本の一時間当たりの平均賃金を一〇〇とすると、韓国では一七、台湾では二五、南ベトナムでは三〇、フィリピンでは四〇というような数字を、経済雑誌も報道しています。実際にその国の労働者を雇用する場合に、その国の水準と同じか、ある場合にはそれよりも確かに二、三〇%高いという場合もあるようですが、しかし実際は日本人との問には非常な差別があるわけです。ある場合には日本人を管理者として使うというような形が非常に行なわれているようであります。これは当然なことだと考えられているかもしれないけれども、内地のほうからいうと、これは非常な人種的な差別をされているんだ、こういうふうに受け取っていると思うのです。あるいは、先ほどもお話がありましたラテンアメリカ、ラテン系の国では、これはイタリアあたりでもそうですが、昼休みを四時間休む習慣がありますね。イタリア、フランス、それからラテンアメリカの諸国。ところがペルーで、日本の資本が進出して、この四時間の昼休みの時間を三十分にしたというようなことがたいへん問題になっているようであります。あるいは韓国にトヨタが進出して新進自動車会社ができた。この場合に、韓国の自動車保護法というのがあったそうですが、これによって合弁会社をつくって市場の独占権を握った。現在この法律はもう解除されているようですけれども、実際には韓国市場の八〇%をこの新進自動車が握っている。しかもそこの販売価格は、日本ではコロナ一台が六十万円のものを大体百二十万円ぐらいで売られている。非常な独占的な利潤をむさぼっているということが、これは経済雑誌にも出ています。そのほか、技術援助などによる技術料とか、中古機械を売ってもうけるとか、合弁会社といっても、実質は長期貸し付け金による全面的な経済支配となっているとか、というような問題が報道されております。  こういうような問題に対して、こういうやり方が、この法案の説明で述べられているような、発展途上国の自助努力を支援するということになるかどうか。この点について通産省はどういう見解を持っておられるかということを聞きたいわけです。
  201. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えをいたします。  アジア諸国の一部におきまして、最近、新聞等で報道されておりますように、日本人の言動に対しまする批判が散見いたしておりますことは、事実のようであります。しかし、一般的にアジア諸国の対日感情というものは決して悪くはなくて、むしろアジアの先進国としてのわが国に対する期待が時とともに高まってきておる。その期待が高いところへ、一部の日本人の言動が必ずしも当を得ていない、感心しないということに対するのがその批判である、かように考えております。もちろんこれは政府といたしましてもかねてから、日本というのは、アジアにおける一員としての自覚に立って、アジア諸国の経済開発に貢献するということを重視しながら友好関係を増進してまいるという長期的な外交政策、産業政策を基本とすることは、申すまでもないところでございますので、特に経済協力の関係につきましても、たとえば企業が進出いたします場合に、その国の国情に応じ、その国にいたずらな反日感情を起こさせないように、雇用の面はもちろん、現地政府方針に従い、現地住民と無用な摩擦を起こさないように企業活動を行なっていくということが必要である。常時、政府としてもそういう方向で指導をいたしてまいっておるわけであります。企業としましても、いたずらに現地の政府方針等に反したり、あるいは現地の住民との間に摩擦を起こした場合には、十分な企業活動は行なえないわけでありますので、その点は、一部にきわめて当を失する者があるとしましても、全体といたしましては、特に先生御指摘の点は、企業サイドにおいても十分努力をいたしつつやっておるもの、かように信じております。
  202. 米原昶

    ○米原委員 ただいまの問題はなかなかデリケートな問題で、ただ一般的に、その国をほんとうの意味で援助するんだ、協力するんだということばだけじゃだめな問題なんですね。実際にさっきも具体的に言いましたが、賃金なんかも大きな差があるというようなことは、当然反感を持たれるわけなんですね。こういう問題については、むしろ、低賃金だから、日本のほうは労働力不足のときであり、これに乗じて進出してもうけたらいいんじゃないかというようなことになっているんじゃないかと思いますが、この問題は根本的に考えないと、将来大きな問題になってくると思います。  私は、いま言われたような説明だけじゃ、どうも納得できないんです。というのは、東南アジア諸国の政府というものが必ずしも安定した政府じゃないですね。保険法を出される趣旨にも書かれておるように、暴動とか革命とか、非常に不安定な要素を多分にはらんでいるわけです。ただそこの政府方針にということだけでは、実際は、現地の人たちの感じ方とはずいぶん違う場合があるんでして、実質的にそういう差別的なやり方をやるんじゃなくて、ほんとうの経済協力をやるんだということになっていかないと、今後問題はむしろ深刻になっていくんじゃないか。これは、さきの日米共同声明が発表されたときの東南アジア諸国の反響を見ましても、むしろいわゆる社会主義に反対する反共産主義的な諸国ですか、そういうところの新聞の論調を見ましても、必ずしも好意を持って見ていないというのが非常に多いですね。そして、日本が経済的侵略をやろうとしているのだということを、公然と書き立てているというような面が出ておりますが、そういう点で、ただいま、ただ一般的にそういう指導をされていると言われても、実際にはこれは相当な搾取をやっているのだというふうに、現地の人たちから見られているのではないかと思うのですが、その点についてもう一度聞きたい。
  203. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えを申し上げます。  先生いま御指摘になりました賃金格差の問題、御指摘のとおりに、たとえば日本の水準を一〇〇といたしますと、韓国はその二〇%から二二、三%、さらに台湾、それからシンガポール、インドネシア、香港、いずれも一番高いところで五〇%くらい、かように賃金格差が開いております。この賃金の問題というのは、その国の経済の情勢、経済の発展の度合い、それからまた生活環境、生活水準というものと密接な関連を持ってくるわけでありまして、たとえば現地においていたずらに日本と同じ賃金水準に現地人を扱うということは、先方の賃金水準一般を引き上げるという面で、これまたむずかしい問題であると考えます。  一部に、日本人従業者と現地の雇用者との間に格差があることは事実であります。また、格差をつけざるを得ないのが現状であるかと存じますが、これは同じように日本の企業の場合でも、たとえは現在日本へ進出してきております日本とアメリカとの合弁会社の内部におきましても、これは、アメリカ人の技術者の場合には、アメリカの賃金水準による俸給を受け、と同時に、それと同一の技量、力量を持っている日本人技術者との間にも格差が開いておる。そうした場合に、これが人権差別による差別であるかどうか。もちろん、差別をつけられておるというか、格差があるほう、劣位、低位にあるほうとしては、これは快い感情ではございませんが、これまたある意味ではやむを得ない点かと存じます。たとえば、日本におきましてその合弁企業が、アメリカ人の給与水準と全都同じ給与水準で俸給を支払った場合には、この企業は、労務の問題、コストの問題から日本の経済社会内においては成り立たないと思うわけであります。その点はお互いに十分理解を持ってやっていかざるを得ない。  たとえば、現地へ日本が進出しておる場合に、現地の給与水準に匹敵する、あるいは若干それを上回る給料を払う、それが日本人の従業員と格差かついておるということは、現地の労働力を搾取しておるということには必ずしもならぬと私は考えます。しかしながら、それによりまして、従業者相互間、あるいはまた企業と一般の空気というものとの間に摩擦が生じてくる、無用なフリクションを生ずるということは、企業の立場といたしましても、進出していく日本の国としても、受け入れる先方の国としても、これは決して望ましい方向ではございませんので、その点は、現地の事情に即応しつつ、でき得る限り双方がお互いに理解を持って事を処していく以外に方法はないものと存じております。
  204. 米原昶

    ○米原委員 この問題はだいぶ考え方が違うようですから詳しく言いません。詳しくは言いませんか、もちろん賃金の格差が、その国の経済の発展状況その他によって現実に存在しているのは事実だし、そのことを否定して言っているわけではないのです。しかし、経済状況の一定の国では、やはり同一の労働に対しては同一賃金だということがむしろ経済法則だと思うのですよ。それが破られていることに対する不満が、民族的な差別、あるいは人種的な差別、こう取るのも当然だということになると思うのですが、その点を考慮しないとこの問題は解決つかないのじゃないか。ことに、さっきも言いました韓国の馬山のフリーゾーンで、向こうの労働法をも無視するようなやり方をやろうとしたというようなことは、絶対に許されないことにしないといけないのじゃないか、こういうことなんです。  それでその問題はおきまして、第二の問題ですが、海外投資を考える場合に、輸銀の使用の問題あるいは海外経済協力基金の問題について若干聞きたいと思うのですが、輸銀の資金が海外投資のために使われているのは、件数金額で一体どのくらいになっているか。これは輸銀資金全体から見ると何%くらいになっているか。その中で返済の期限が来ても未返済になっているものはどのくらいあるか。そうしたものの回収のためにどのような努力をしておられるか。こういう点を聞きたいのです。個々のこまかいなにじゃなくて、全体として聞いておきます。
  205. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  昭和四十四年三月末現在におきまして、貸し付け残高は、これは投資関係でございますが、輸銀が八百四十七億円、基金の投資金額が百八十億円ということに相なっております。この輸銀と基金の投資金融が全体の海外投資資金調達に占める割り合いは、ちょっと資料は古うございますが、四十二年度で二七・七%、四十三年度で一二・二%、こういうことになっております。そこで、これを年度別に見てまいりますと、残高はさようでございますが、海外投資の金額は全般で四十年度五百六十五億円、そのうち輸銀が八十九億円、うち基金が六十億円。したがって、輸銀と基金とを合わせたものの全部の海外投資に対する比率は二六・四%。四十一年度におきまして、全海外投資の額が八百十七億円、輸銀がそのうち百六十二億円、基金が二十三億円、輸銀、基金合わせて両方の比率は二二・六%。四十二年度におきまして、海外投資総額八百三十五億円、うち輸銀百八十一億円、基金五十億円、輸銀と基金を合わせましてその全体のパーセンテージは二七・七%。四十三年度におきまして、海外投資総額千九百八十七億円、うち輸銀が二百七億円、基金が三十六億円、輸銀基金を合わせたものが一二・二%、かように相なっております。四十三年度末残高は、最初に申し上げましたように、輸銀が八百四十七億円、基金が百八十億円。なお、その年の四十三年度末残高の海外投資総額は六千百六十億円でございます。なお、そのうち、未払い、あるいはまたそれの督促、そのための措置、個々ケースにつきましては、ただいま手元に資料を持っておりませんので、この点はまた輸銀等に照会をいたしまして御報告申し上げたい、かように考えております。
  206. 米原昶

    ○米原委員 私が一番聞きたかった点がちょっと聞けないわけですが、返済期限が来ても未返済になっているもの、そういうものがどのくらいかということは非常に重要なんで、大体のごとわかりませんか。あとでこれは資料をぜひもらいたいと思います。
  207. 後藤正記

    後藤政府委員 詳細輸銀に問い合わせまして、後ほど御連絡を申し上げたいと存じます。
  208. 米原昶

    ○米原委員 じゃ輸銀のほうでなくて、海外経済協力基金のほうですが、期限が来て回収できないものがどのくらいあるか。その件数金額。それから、とうてい回収不能だと認められるものはぎのくらいあるか。あるいは、いままでの状況では、それに近いものがどのくらいあるか。そういう場合に返済計画を立てさせられていると思いますが、それの実行はどうなっているか。あるいは、いま返済できないという状態のもとで逆に追加融資をしているというようなことも聞いておりますが、こういうものの回収をどこまでチェックするのか。そうしてチェックした結果、基金法の第二十一条を満たさないと判断された場合にはそれを取り消されるのかどうか、その責任はどうするかという点を聞きたいと思います。
  209. 新田庚一

    ○新田政府委員 経済協力基金の問題についてお答えをいたします。  現在、これは二月末現在でございますが、あらかじめきめられました回収期間を過ぎております案件件数が九件でございます。その残高が六十九億五千五百万円、約七十億、その時点におきます貸し付け残高が千四十二億でございますので、比率としまして六・八%の比率になっております。御承知のように、この期限の延長の理由はいろいろございまして、たとえば事業はうまくいっているのですが、その国の外貨事情が悪くて送金ができないというふうなもの。それから、事業自体が不振におちいりまして、やり方を変えて現在継続しているというふうなもの、いろいろございます。協力基金の性格から申しまして、市中銀行金融にももちろん、それから輸銀金融にも乗りにくい部分があって、しかも経済協力上有意義なものを案件として取り上げるという基金の性格でございますので、非常にリスクの大きい案件がおのずから対象になる性格を持っているわけでございます。基金当局としまして、一件一件、そういうことで回収遅滞あるいは回収不能にならないように、最大限、審査に努力しているわけでございますが、やはりいろいろな低開発国の政治、経済上の不安定というふうな問題から、そういった問題が起こる可能性があるわけでございますが、極力そういうことのないように努力しているわけでございます。現在のところ、そういったことで履行不能になったというふうな案件はございませんので、履行遅滞にはなっているけれども、その回収という問題については鋭意努力しているという状況でございます。
  210. 米原昶

    ○米原委員 それでは、もしも、回収不能になる可能性のものも若干あるわけですから、そういうことが起こった場合には、その責任はどういうふうになるかということなんです。
  211. 新田庚一

    ○新田政府委員 回収不能になるという案件は、現在のところございません。いろいろ努力いたしますれば回収ができるというふうな見通しに立っております。
  212. 米原昶

    ○米原委員 私これは聞いた話なんですが、北カリマンタンの森林開発会社、ここで一千万ドルほどこげつきになっているというような話を聞いておりますが、こういう事実はありますか。
  213. 新田庚一

    ○新田政府委員 詳細は存じませんが、東カリマンタン株式会社の当初の見通しどおりの木材の伐採が非常にむずかしくなりまして、最近その事業計画を変更しまして、新しく別の会社形態をもって、さらにまた、陣容その他をかえましてもう一度再建をするというふうになっております。
  214. 後藤正記

    後藤政府委員 ただいまの企画庁からのお答えに若干補足して申し上げます。  ただいま新田局長からお答えいたしましたように、カリマンタンの森林開発協力株式会社、これは昭和三十八年に設立されたものでございますが、現在五地区において五十万ヘクタールの開発を進めておるわけでございますが、達成率が計画のようにはかばかしくまいりませんで、最近に至ってもまだ計画の半分弱というように、不振状態であるというように聞いております。これは先方インドネシアの事業主体——これはインドネシアの森林公社でございますが、これの経営能力の問題もございますし、それから事業資金がなかなかうまく調達できない、それからその使用状況が効率がよくない、それからまたインフレが進行しておってそれが響いておる、また開発技術等の面についても未熟なものがある、作業の能率もあまりよくない、それから搬出輸送面の整備等々、いろいろな状況が重なりまして、この計画に対する達成率が半分以下というような状態だと聞いております。現行の五十万ヘクタール、五地区の事業をさらに拡大することは必ずしも賢明ではないという考え方から、この現在設立されておりますカリマンタン森林開発協力株式会社というものを、全面的にもっと日本からてこ入れをして、全般的な合弁組織に切りかえていくということを初めといたしましてこの問題を処理し、もっと能率のいい、所期の目的に合致したような会社の運営と実績のほうにしていきたい、かように現在鋭意計画中であると聞いております。この点を補足して私から申し上げます。
  215. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、そういう不良企業ですね。こういうものが出た場合に、いま言われた、別の会社をつくるというようなやり方で、さらにそこに返済を肩がわりして融資するというようなことがどんどん行なわれている、こう理解していいですか。こういうようなケースが実はどのくらいあって、どういう状態になっておるかということを資料を出していただけば、一番明確になると思うのですが……。
  216. 後藤正記

    後藤政府委員 海外におきまする資源開発の問題で、おおむね他は順調にまいっておるように承知いたしております。このカリマンタンの場合は、いうなれば例外的ケースで、いろいろな予期せざる条件が重なって現状に至ったものかと考えますが、そのほかにおいてかような事態は私ども承知しておりません。
  217. 米原昶

    ○米原委員 それでは、これに関連してですが、先般も問題になっておるフィリピンでリベートの問題が起こりましたね。そして大統領選挙のとき非常に大騒ぎになった。朝日新聞の昨年の九月二十七日の記事を見ますと、外務省でもこの存在を知っておるというふうに出ておりましたが、政府として、そういうような問題を調査し、またそういう問題に対してどういうふうに規制する考えでおられるかということを聞きたいと思います。
  218. 後藤正記

    後藤政府委員 外務省からお答えすべき筋合いかと存じますが、私から。  実は私、その昨年の九月の新聞記事の詳細を現在記憶しておりませんので、詳しいことは申し上げられませんが、一般的にいって、そういった当方から進出いたしております企業に関する望ましくない状況が起こりました際は、これは出先在外公館を通じてその状況外務省に入ってまいります。同時にまた、これが関係諸官庁へ連絡されてまいりますので、これに対する真相の究明はもちろんながら、でき得る限りのそういう措置はとってまいりたい、かように考えております。  リベート問題等々御質問でございますが、私その詳細を承知いたしておりませんので、この際お答えできない状態でございます。
  219. 米原昶

    ○米原委員 外務省の方いないから、外務省がいないとわからないとすれば、この問題はあとにしましょう。  今度の改正案は、経済界の要望もあって、付保対象を広げて、この保険の利用を増加させるようにしたいということですが、この説明書にもちょっとありましたが、インドネシアアラブ連合で起こったような事態、ああいう事故で保険事故が非常に多くなって、輸出保険のワクをこえた資金が必要になったときはどうするのか。このインドネシアの場合は補正予算を組んだという前例がありますが、そういうことになるのかどうかということを聞きたいと思います。
  220. 後藤正記

    後藤政府委員 従来までの輸出保険の例にかんがみますると、支払い準備金が相当底をつきそうになった例が一回ございましたが、これはきわめて希有な例でございまして、いままでのところ、そういうもののワクを飛び出して急拠何らかの緊急措置を講じなければならないというような事態になった例はございません。輸出保険法第一条の四に明記してございますように、輸出保険特別会計は独立採算制を持っておりまして、それ自体として運営をいたしていくというたてまえになっておりますので、保険引き受け等の事態におきましても、十分その点を考慮しつつ、昭和二十五年度の本法制定以来その運営に努力いたしてまいったところでございますが、今日までのところ、輸出保険法の趣旨は現状まで貫いてきている、かように承知いたしております。
  221. 米原昶

    ○米原委員 しかし、ただいまの問題は、今後これが非常に拡大されていくわけですから、そして現在の発展途上国の状態からしましても、インドネシアアラブ連合で起こったようなことが起こる可能性がないとは言えないわけです。ですから原則として、輸出保険のワクを越えた資金が必要になった場合はどうする考えでいるのか。法律にはそういうことはしないようにするのだと書いてありますよ。しかし現実に、一回だけれども起こっているわけですね。
  222. 後藤正記

    後藤政府委員 過去の歴史を見まするに、先ほどお答えいたしましたとおり、非常に巨額の事故が一時に起こりました事態がございますが、ワクをはみ出してこの輸出保険特別会計が動かせなくなったという事態はございません。もともと保険というものは大数の法則によってこれは成り立っておるものでございまして、たとえば生命保険にいたしましても、火災保険にいたしましても、その保険にかかっておる者が全部一ぺんに死んじまったとか、全部一ぺんに火災になって焼けちまったというときには、これは、いかなる資本金なり何なりを準備いたしておっても、そういう不測の事態には、そのときになって緊急の手当てをする最善の方法をとる以外にはないものでございます。したがいまして、先生御指摘のように、そういう可能性があるということでございまして、可能性はもちろんございますが、これは保険理論の根本から申しまして、蓋然性と申しますか、大数の法則によって、過去からの経験というものをあわせ考えつつ運営いたしていくより、現状においてはこれはいたしかたないものであると考えます。しかしながら、さような可能性があり得るという点は、これは可能性がないとは申せませんので、そういった、一挙にして輸出保険会計というものが現状のままで運営できないような、非常な希有の事態が生じましたときには、これはそのときに最善の方法を尽くして善処いたす以外に方法はないかと存じます。     〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕
  223. 米原昶

    ○米原委員 私は、そういう点をあまり軽く見るといけないのじゃないかと思って、いままでのいろいろな貸し付けの中で、返済不能のような事態かどの程度あるかということを具体的に知りたくて聞いたわけなんです。政治的に見ましても、開発途上国は相当流動状態にあります。ですからいろいろなことが起きないとは言えないと思うのです。そこで経済審議会の国際資本移動研究委員会の「資本自由化と海外企業進出」というこの報告書を見ますと、相手国にも投資について保証させる二国間投資保証協定を検討すべきだというようなことが述べられておりますが、そういうことを午後やられるつもりかどうかということを聞きたいと思います。
  224. 後藤正記

    後藤政府委員 二国間投資保証協定というものは、現在におきまして、アメリカ、それからドイツもこれを半分と申しますか、部分的に採用しておることは事実でございます。しかし、その後新しくこの輸出保険制度を設けました北欧の各国々寺は、これを採用いたしておりません。それで、従来から日本輸出保険考え方といたしましては、これは二国間の投資保証協定というものを結ばずに、相手国の制限等はなしに今日まで運営してまいったわけであります。この理由といたしましては、アメリカ等の例を見ましても、アメリカはたしか八十前後の国と投資保証協定を結んでおるようでありますが、これはたいへんな努力を払っているにもかかわらず、労多くして効果は必ずしもそれに見合わないという状態のようであります。したがいまして、そういった実例から申しましても、また投資の対象国、輸出保険を付保する対象国というものを限定いたしますことも、これまたそうでない国の反発を買うという点もございますし、そういう点を考えまして、今後ともわび国の輸出保険制度は、二国間の保証協定というものは、今後研究は続けますが、この際新たに取り入れることはせずに、従来のままで運営いたしてまいりたい、かように考えております。
  225. 米原昶

    ○米原委員 私も、二国間投資保証協定というもりが、実際にあまり効果ないんじゃないかと思います。実際問題として、支払いができなくなった場合に、国際司法裁判所に持っていったところで、ないものはないので、これは解決つかない。ですから、これにあまり期待をかけるようなことが経済審議会の報告書に出ているものですから、聞いたわけです。  しかしそうだとすると、いろいろな保険事故が起こった場合に、結局は国の財政から出すよりほかなくなるわけですね。そこに一番問題があるので、きょうはそういう点をただしたわけなんです。ほんとうに膨大な金を今後出そうというわけですからね。実際には結局国民の金ですから、これを大きな穴をあけさせるようなことになってはたいへんだ。しかもその進出が、最初に申しましたように、必ずしも発展途上国からは歓迎されてない面が最近はかなり出ていて、海外でも不評を買っているといわれておりますが、そういうものを保証するために、しかも結果として穴をあけるようなことをやってはならないと思うのです。そういう点について最後に見解を聞きたいと思います。
  226. 後藤正記

    後藤政府委員 お答えいたします。  過去におきまする輸出保険の事故率は〇・四五四%、きわめて低率にとどまっております。しかしながら、先生、御指摘のように、将来、海外投資というものが今後とも促進をされまして、そしてそのために非常に膨大な保険金支払いを要する事態が起こってくるのではないかという御質問でございますが、現在におきまして、一般会計からこの輸出保険特別会計の基金として出されておりますのは、現状におきまして六十億円でございます。これをもとといたしまして、現在、支払い準備金は、昨日の年度末で百九十億円を持っております。現在の付保総額は、責任残高が大体六兆ということになっております。支払い準備率は、必ずしも各国のに比較いたしまするに高くはない。非常に低いという問題はございます。したがいまして、今後の海外投資保険を含めました輸出保険のこの拡充という方向につきましては、仰せのとおり、これは一般会計から資金を出すならば、これは国民全般からの税をもってまかなわれるわけでありますので、十分その点は、先ほどお答えいたしました、輸出保険法の基をなしております輸出保険の独立採算の原則という根本方針に背馳いたさないように運営をいたしてまいりたい、かように考えております。
  227. 米原昶

    ○米原委員 それでは、これで終わります。      ————◇—————
  228. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  通商に関する件、すなわち繊維製品の対米輸出問題について、明後三日、参考人から意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明後四月三日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十三分散会