○宮澤国務大臣
情報処理振興事業協会等に関する
法律案につきまして、その提案
理由及び趣旨を御説明申し上げます。
今日のように高度に多様化し、また急速なテンポで発展している
経済社会におきましては、あらゆる活動は、複雑な外部環境の変化を予測し、その変化に機敏に即応していかなければならないことは、申し上げるまでもございません。
このため、
企業や行政
機関などのあらゆる組織体は、日々に発生する大量の情報を迅速に処理し、その成果に基づき的確な判断を行なっていくことが
要請されております。
電子計算機による情報処理は、このような
要請から生まれたものでありますが、この発展のためには、ハードウエアすなわち電子計算機の
機械そのもののほか、これを利用するための技術、すなわちソフトウエアの進歩が不可欠であります。
従来、
政府といたしましては、電子工業振興臨時
措置法の
運用などによりまして、ハードウェアの技術開発などのための施策を講じ、その技術水準も国際的なものに近づきつつあります。反面、ソフトウエアについては十分な
措置が講ぜられていたとは申せず、特にこの分野において進んでいる米国との格差がますます拡大しているのが現状でございます。
また、情報処理サービス業及びソフトウエア業は、情報処理技術の向上などになうものとして、その健全な発展が望まれておりますが、わが国においては、いまだ歴史も浅く発展初期の段階にあるといえます。
このような現状にかんがみ、わが国における情報処理を振興するためには、電子計算機、すなわちハードウエアの技術の振興のみならず、それに即応したソフトウエアの開発及び利用を促進すること、情報処理サービス業等の育成をはかっていくことが特に緊急を要する
政策課題となっておりますので、これについて必要な
措置を講ずるため、本
法案を提案することとした次第であります。
次に、この
法律案の要旨について、御説明申し上げます。
第一は、電子計算機利用高度化計画等についての規定であります。
まず、情報処理の振興をはかるため、性能のすぐれた電子計算機の設置及び先進的かつ広く利用されるプログラムの開発についての目標を設定する電子計算機利用高度化計画を定めることといたしております。そして
政府は、この計画の
対象となった電子計算機の設置及びプログラムの開発の促進に必要な
資金の確保などにつとめることといたしております。
また、プログラムの円滑な流通をはかるため、プログラム調査簿を作成し、これを
一般の閲覧に供することといたしております。
さらに、情報処理技術者の技術の向上に資するため、情報処理技術者試験を行なうこととしています。
第二は、情報処理振興事業協会に関する規定であります。
まず、協会の設立につきましては、情報処理について専門的な知識を有する者十五人以上が発起人となって、
通商産業大臣に設立の認可申請を行なうこととしております。この認可の申請が行なわれますと、
通商産業大臣は、その事業の運営が健全に行なわれ、情報処理の振興に寄与することが確実であると認められるときは、一つを限り、設立を認可することとしております。
協会の資本金は、
政府及び民間の出資によって構成されることとなっており、
政府は四十五年度
予算においては、二億円の出資を予定しております。
協会の業務でございますが、これは、大別して二つございます。第一は、先進的かつ汎用的なプログラムの開発を委託し、その成果を対価を得て第三者に使用させることであります。第二の業務内容は、情報処理サービス業者等が業務の高度化に必要な
資金を借り入れる場合及び
一般事業者がプログラムの開発に必要な
資金を借り入れる場合に、債務
保証を行なうことであります。
協会の業務のうち、債務
保証業務に関しましては、資本金と、民間からの出損金によって構成される
信用基金を設けることとしております。
なお、協会の適正な運営を確保するため、
通商産業大臣がその監督を行なうこととしております。
以上、この
法律案の
提出の
理由及びその概要を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上、御賛同をくださいますようお願い申し上げます。
次に、
特許法等の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案の
理由及び要旨を御説明申し上げます。
最近における技術革新を背景として、特許及び実用新案の出願は激増し、しかもその内容は一段と高度化、複雑化しつつあります。この結果、特許庁における増員、機構の拡充、
予算の増加など、種々の審査促進対策の実施にもかかわらず、審査は大幅におくれ、特許庁には未処理案件が累積し、特許、実用新案の処理に要する期間は平均約五年に達する
状況になっております。
このように事態を打開するため、
政府といたしましては、昭和四十一年十一月、工業所有権審議会に対し、工業所有権制度の
改正についての諮問を行ない、約二年にわたる審議を経て昭和四十三年十一月答申を得たのであります。この答申に基づいて作成いたしました
法律案を昨年の第六十一回
通常国会に
提出いたしましたが、成立を見るに至りませんでした。
このときの
法律案の骨子は次のとおりでございます。
第一は、出願の早期公開制度を採用したことでございます。現在出願された発明、考案は審査の後その内容を公表しているのでありますが、これを、審査の段階のいかんにかかわらず、一定の期間後にすべての出願の内容を公表することといたしました。公開された発明等の出願人に対しては補償金請求権を認め、その保護をはかっております。
第二は、審査請求制度を採用したことであります。出願の中には、独占権は要らないが他人が権利を取得して自己の事業の実施が妨げられることをおそれて出願しているものや、出願後その技術が陳腐化し、もはや独占権を取得する必要性のなくなっているものが含まれております。そのような出願は、同じ内容の他人の出願が権利にならないという
保証があれば、必ずしも審査を必要としないのであります。そこで、特許につきましては出願から七年、実用新案につきましては四年の審査請求期間を設け、その間に審査請求があったものだけ審査をすることといたしました。そういたしますと、何割かの出願は審査をする必要がなくなり、その分の審査能力を他の出願の審査に振り向けることによって、審査の質を維持しつつ処理の促進をはかることができるのであります。
第三は、審査前置制度を採用したことであります。この制度は一定の要件に該当する審判請求については、これを審査官に再審査させるというものであります。この制度の採用により拒絶査定不服審判の処理は大幅に促進されることとなります。
このほか、現行法制定以後における社会
経済情勢の変化にかんがみ、手数料、登録料等の
改正を行ないますとともに、先願の範囲の拡大、出願公告後における仮保護の権利の強化などにつき、現行法の諸規定を整備、改善することとしております。
今回
提出いたしました
法律案は、骨子においてはただいま御説明いたしました前回の
法律案と同じでございますが、前回の御審議の過程を通じて御意見のありました、早期公開制度の採用に伴う出願人の権利の保護の面で、公開された出願についての優先審査制度を採用し、及び補正の内容制限を廃止するという二点について手直しを行なったものであります。
次に、この修正点の内容について御説明申し上げます。
第一は、優先審査制度を採用したことであります。出願が早期公開されますと、一応の権利を取得する出願公告までの間に、その出願に盛られた発明が、第三者によって実施され、その結果問題となる場合も想定されるわけであります。前
通常国会に
提出いたしました
法律案では、この点について補償金請求権を認めるということで出願人の保護をはかっているわけでありますが、さらにこの問題を早期に、かつ根本的に解決するため、そのような問題が生じている出願を他の出願に優先して審査することとしたのであります。
第二は、出願公開後の補正の制限を緩和したことであります。すなわち、前回の案では出願した発明の内容の訂正については、公開後は時期的にも内容的にも制限を付していたのでありますが、出願人の利益を擁護するため、このうちの内容面での制限を廃止したのであります。
なお、本
法律案は、昭和四十六年一月一日から施行いたしたい所存でございます。
以上が本
法律案の主要点であります。
なお、諸外国におきましても、審査期間の短縮に腐心しており、たとえばオランダ及びドイツにおいては、すでに本
法律案と同趣旨の制度を実施して、着々とその効果を発揮しております。何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。