○
宮崎参考人 宮崎でございます。
私、メモで申し上げますので、
用語等に不適当なところがございましたらお許しをいただきたいと思います。
ただいま
谷口さんからお話がございましたので、重複を避けまして申し上げたいと思います。
実は、この
繊維問題というものが、どうしてこういつまでも問題になるのかということでございますが、その理由は
佐藤・
ニクソンの
トップ会談における相互の
理解に食い違いがあるということであります。
アメリカ側は、
包括的な
規制を
日本側の
トップが受諾したのだという
ように初めは
理解しておった
ようでありますが、その後、これははっきり
日本側から訂正をされたやに聞いております。その次には、しかしながら
包括に近い
自主規制をやるのだということの
ように
理解をしておる
ように思うのであります。しかし、これは明らかに、この話が出たのは事実でありましょうが、
総理は
国会で、そういう
ような密約はないのだ、具体的な取りきめはないのだということをはっきり言っておられますので、私
ども国民としては、
総理の発言に信頼いたしまして、やはりそういう
ような問題のない前提のもとに、この問題を考えていくのが適当だと思っております。
それからもう一つは、
アメリカの
ニクソン大統領の
選挙公約ということも一つ問題ございますが、
アメリカの人が表立って最近これを言わなくなりました。そしてやはり非常に
輸入がふえてきておる
——実は初めの間は、洪水の
ようにふえてきておるということを言っておりましたが、最近は、昨年の七月から非常に
鎮静期に入りまして、もうそういうことを言える材料がないものですから、それも言わなくなりましたけれ
ども、しかし、たとえば
マイヤー大使なんか、諸
先生方にたしか
手紙が行ったと思いますけれ
ども、あれを見ましても、南部の
繊維業界の
データというものは、あれが
ほんとうに
輸入による
影響なのかどうか。大体
アメリカはいま非常な
金融引き締めで
インフレ防止に努力しておりますから、非常に
鎮静期に入っておるのです。ですからそういうのが大きな原因じゃないか。
先ほど谷口参考人からもおっしゃいました
ように、バランスシートを見ますと、相当な会社は
日本よりもっと
ほんとうにもうけておるのです。ですから、どこの
企業だって悪いところはあるので、特に
日本の
繊維関係の
中小の
企業には非常に倒産が多いのです。ですから、経営がまずいじゃないかというふうに思われるのでありまして、われわれとしては
納得しがたい点でございます。
そこで、
ほんとうに経済的な問題としてこれを処理するのであれば、われわれはちゃんと国際間に妥当したルールがあるじゃありませんかということで、終始一貫この
主張をしてきておるのでありますが、これは最近
日本からの覚え書きとして
新聞に載った点でありますが、あれを拝見いたしましても、
日本側は譲り過ぎているということを私
どもは感ずるのでありまして、それほどさ
ように非常にリーズナブルな
主張をいたしておられます。それは諸
先生方専門でありますから、くどくどと申しませんが、
アメリカでは
通商拡大法が
国会に出ている。これを改正するまでのつなぎとして、
話し合いで、もしも
インジュリーがあったらわれわれは
自主規制をいたしましょう。これは
話し合いで、合意ですからかまわないのですが、しかし、さればといって、これは
日本だけじゃないのですから、
関係国間も入れてやりましょう、こう言っておるわけです。しかし、それは
輸出国のほうが数が多いから、
輸入国は一カ国だから、多勢に無勢でかなわぬということでありましたならば、
アメリカにある
関税委員会にかけてください、そしてそれを尊重しますよ、こう言っているわけです。しかも、そういう
品目以外のものについては、
関係国間で
会議を開いて、そして一カ月以内にまとまらなければどうか御自由に
規制をしてください、そしてそのかわりその代償は払ってくださいよ、こういう
ような至れり尽くせりの案を出しております。しかも、
輸入比率等の非常に高いものについては直ちに協議の用意があります、
データを出してくださいと言って、最近その十
品目なるものが
新聞等に公表されておりますが、そしてあれは、
アメリカの当該の
品目の消費における
シェアが一〇%以上のものをピックアップして出してあるわけでありまして、あの数字といえ
ども非常にばかになりませんので、かりにあれだけ全部
自主規制の対象になりますと、
日本だけで
化合繊が二割
規制されることになります。毛はあれだけで七三%
規制をされます。
しかも、
先ほど話が出ましたが、この問題は
日本だけではなくて、
韓国、
台湾、
香港、EEC、
豪州、
カナダ、
英国というところに問題が波及いたしますが、
韓国はどのくらいかと申しますと、あの十
品目で、
化合繊だけで八四%カバーされるのです。それから
台湾は五四%、
香港が六三%という
ように、あのたった十
品目というふうに思いますけれ
ども、実は
韓国などでは八四、五%というものは
——毛もまた
比率がありますが、大ざっぱに計算いたしまして、あの
影響は非常なたいへんなことなんです。そして
韓国、
台湾にはわれわれから原料を提供しておるわけでございますし、しかも
韓国は、諸
先生方御存じの
ように、ほとんど
日本の技術と
日本の金で育成した
繊維工業でございまして、
韓国の
輸出の三分の一は
繊維でございます。こういう国に対する
影響を一体
日本がどう考えるのかという問題があるわけであります。
よく
カナダ方式ということを申しますけれ
ども、
カナダに対しましては、実はさっきの
LTA方式でございませんで、
カナダにおる
日本の
大使が
カナダ政府に
手紙を書くという
方式でやっておりますが、これで全体の
繊維の
輸出に対する
規制率は約三一・九%なんです。ところが、
アメリカでも
綿製品を二四・七%
規制しておるのです。ですから、あと七・二%やれば、実はもう
アメリカ自身も
カナダ並みの
規制になるのですよ。ですから、今度かりに十
品目をやりますと、対米に対しましては四割は
規制されたことになります。そういう十
品目をかりにやるとしますと、
カナダ以上の
規制をする案になっているのです。もちろん
インジュリーの問題がありますから、あれを全部やるとは思いませんけれ
ども、そういう
ような案を出しておるのでありますが、
アメリカはやはり依然として
包括規制を
主張しておりまして、けさの
新聞紙等も報じてあります
ように、
日本側の誠意のある対策を
アメリカは拒否したやに聞いております。そういうことでございまして、まことに強引と申しますか、われわれとしては了解に苦しむところであります。
それと、もう一つ申し上げたいのは、たとえば
包括的に
規制をした例というのは、どこの国とも
日本はございません。
繊維産業というのは、
日本はいままで非常に
犠牲になっておりまして、過去においては栄光の
産業であったために、
ガットに加盟するときに、三十五条の援用を撤回するために、常に
繊維が
犠牲になって二国間の
規制をいたしておりますが、しかし、
包括規制をした例はどこの国ともございません。したがって、もしも万一
包括規制に
政府がおりる
ようなことがありましたら、
先ほども話が出ましたが、
韓国、
台湾、
香港に迷惑がかかるだけではなくて、いま現に
英国は、さっき述べました綿のLTAを一九七二年には撤回する、そして
日本が
スコッチウイスキーの
自由化をしてくれるならば
繊維の
日本からの
輸入を
自由化するということを言っております。それからドイツも
ワクを広げてきております。こういう国は非常に
日本の
態度を注目しておりまして、
日本がもしも
アメリカとそういうものをやるならば、われわれとの間にも同じ
ようにやってくれということを言ってきておるわけでございまして、これは
カナダもウエーティングリストに載っております。
カナダもわれわれと
アメリカの
関係を非常に注目いたしておる次第でございまして、
豪州も同様です。ですから、そういう意味におきまして、事は
日米だけに限るのでありませんので、あらゆる
世界に対する
日本の
繊維品の
輸出に
関係をする問題でございます。しかも、われわれは将来、
佐藤・
ニクソン会談においてアジアに対して
日本は責任を分担することになっておりますが、その
国々に大きな迷惑を及ぼす。これを一体
最後にどういうふうに処理するのだろうかという点もあるわけでありまして、現に
韓国の
大使は、そういうことになったら
日本の
シェアを分けてくれということを、はっきりと
記者会見で申しておられます。そういう派生的な問題が出るわけであります。ですから、事は
日米だけの問題ではない。
日米の
友好関係という点については
谷口さんが言われましたから、私は触れませんが、
日米以外の
国々との
関係も同様に考えてもらわなければならないという点でございます。
〔
浦野委員長代理退席、
前田委員長代理着席〕
それなら
繊維産業というのは一体どういうものかということでございますが、諸
先生方御存じのとおり、非常に数の多い、百九十万の
労働者をかかえまして、しかも非常に
流通段階が複雑でございますので、これによって生計を立てておる者が九百万人おります。人口の約一割でございまして、生産は
統計上いろいろ問題があってわかりませんが、四兆四、五千億になるという
ように考えておりますが、実はそういう大きな
産業でございます。しかも
輸出は、昨年の
統計によりますと、
単品としては
トップでございまして、鉄以上に多くなっております。二十三億ドルになっておりまして、鉄が約二十二億ドルですから、
単品としてはやはり
輸出の王座を占めております。そういう
産業でございまして、これからという
産業であります。
よく世間で、
繊維は
斜陽産業だ、そろそろ落ちていく
産業なんだから、
最後のもがきで
アメリカも
日本も
お互いに争いをしているのではないかという
ように言われる方がおりますが、まことにとんでもないことでありまして、
繊維というのはファッションビジネスとしてこれから大きく伸びるという
産業でありますのみならず、合繊工業というのは実は重化学工業でありまして、石油化学の誘導品であります。その原料は、ラクタムにいたしましても、アクリルモノマーにいたしましても、DMTにいたしましても、これは石油化学の製品の売り値として一番高いのです。これを使ってやる合繊は、プラスチックなんかの売り値の五倍ないし十倍の売り値の非常に付加価値の高い
繊維品であります。と同時に、常に衣料と結びつきますが、最近は
繊維産業というのは、実は合繊は工業用に非常に入っている。そういう用途の広い
繊維品でございまして、実はこれからというのが合繊工業の将来であります。そしていま現に
繊維全体の五三%は
化合繊化しておりまして、近い将来三分の二が
化合繊化してくる次第であります。
しかも、こういうものが
アメリカの中の
輸入の
シェアは高いかと申しますと、
日本の一番問題になっているのは
化合繊ですが、
アメリカの
化合繊の消費の中に占める
比率は一%、
繊維全体の中に占める
比率は〇・五、六%という非常に低い率でございます。そういうことですから、
包括的に
インジュリーがあるという議論はどこから見ても出てまいりません。大体
アメリカは商品の中における
シェアが一〇%になると問題にいたしますが、いままでいろいろな商品を見てみますと、鉄が一五%のときに
自主規制に入っております。自動車その他を見ましても一六、二二、三〇、あるいはものによっては五九という
ように高い
輸入シェアを占めたものがたくさんあります。ですからわれわれは、個々の
品目について
被害または
被害を与えるおそれのあるものは、
先ほど申し述べました
ような方法でやりますよと言っておるのでありますが、これに対して
アメリカはどうしても一顧だにしてこないという現状でございます。
しかしながら、私
どもがこの問題につきまして考えておりますのは、とにかく
日本の一つの
貿易の姿勢として、対外
通商の姿勢として、いままで
日本は長いものには巻かれろという
方式で、
アメリカから言われますと唯々諾々として
自主規制をいたしてきたわけであります。もちろん抵抗した場合もありますけれ
ども、しかしその
自主規制というものは、
先ほど谷口参考人からもお話がございました
ように、
ほんとうの意味の
自主規制というのはないのでありまして、法律のクォータでおどかされてやった
自主規制がいまから十四年前の綿であります。また最近の鉄も同様でありますが、これが
政府間交渉になりますと、結局法律の根拠ができまして、
アメリカは憲法の規定で、行政
協定を結びます場合には
国会の授権が要りますから、授権立法ができますし、それから
協定に入らないものと入ったものとの不合理を是正するためにアウトサイダーの
規制命令ができる
ようになりまして、農業法二百四条というのができておりますが、これはさらに最近改正案が出ておりまして、従来の解釈では、複数の国が加盟して、しかも相当量の
輸入国との間に
協定ができた場合には、アウトサイダーに対して
規制命令が出せるということになっておったのを、一カ国でもその量自体が相当量になれば、他に対してアウトサイダー
規制命令をかけ得るという農業法の改正案が
アメリカ国会に上程をされております。ということは、したがって
日本が三割近く
輸出しておりますので、
日本と
協定を結べば、あとはアウトサイダー
規制命令を出せるんだという
ような
仕組みで、一つはそれが理由になって
日本をシングルアウトして、
日本に攻撃を集中してきているという状態でございます。しかしながら、これは
日米だけではなく他の諸国にも非常な
影響がある。と同時に、
日本の対米外交、対米
通商外交のこれからの七〇年代の姿勢をきめる問題である。もう
日本もそろそろGNPでは二番目といいますが、そういうことだけではなくて、言うべきことは言って、あとあと悔いを残さない
ような、ちゃんとしたルールに基づく解決を
アメリカに
主張して、これを通していく。それでこそ、
アメリカも
日本は信頼に値する国になるんだという体制をつくりまして、同時に諸外国が、
日本は
アメリカの言うことは何でも聞くんだという
ように思っている気持ちを払拭させていく時代に、すでに入ったのではないかというふうに考えております。
私
どもは、この問題に取り組みまして非常に長うございまして、
綿製品の問題以来十四年、毛が六年、
化合繊はもうすでに三年、この問題と取り組んでまいっておりますが、
先ほど申しました
沖繩問題とのからみ、それから
ニクソン大統領の
選挙の
公約、あるいは
佐藤・
ニクソンの
トップ会談の
内容に対してとやかくのことがいわれておりますが、私
どもは、やはり
国会で言われた首相の発言を全面的に信頼いたしまして、沖繩とはからますのではないんだという首相の約束をはっきり実現させてもらわないと、これこそ、
アメリカ人が
ニクソンを支持すると同様に、私
どももまた、
日本の一国の
総理の発言に十分敬意を払うのは当然でございますから、あくまでそういう意味で処理をしていただきたいと思っております。しかしながら決してエキサイトはしておりません。
アメリカではATMIの大会が十八日にございましてもうやっておりますが、大きなことはキャンペーンいたします。それからおそらくクォータ法案を出して、またまたおどしをかけてくるでしょう。あるいは本気になって通すと言ってくるかもしれませんが、そういう
ようなことにかかわらず、われわれ
繊維業界はきわめて冷静にこの問題の処理をしていきたい。諸
先生方に
国会の
決議という未曽有な方法をとっていただきましたのが大きなたてになっておりまして、
アメリカというあの民主主義の国では、
国会の
決議がしかも満場一致であったということに対して、これは何とも言えない力強いささえになっております。これからもどうか正念場に差し迫ってまいりましたので、ひとつ諸
先生方の一そうのお助けをいただきまして、筋の通った堂々たる問題の解決をはかりまして、これからの十年後、もう私
どもがいなくなったあと、先輩はよくやってくれた、失敗はしてくれなかったという
ような有終の美をなしたいものだと思っておりますから、どうかよろしくお願いをいたします。ありがとうございました。(拍手)