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1970-07-10 第63回国会 衆議院 社会労働委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年七月十日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長代理 理事 伊東 正義君    理事 小山 省二君 理事 佐々木義武君    理事 増岡 博之君 理事 粟山 ひで君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       梶山 静六君    小金 義照君       斉藤滋与史君    別川悠紀夫君       松山千惠子君    向山 一人君       山下 徳夫君    小林  進君       後藤 俊男君    島本 虎三君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    渡部 通子君       寒川 喜一君    西田 八郎君       寺前  巖君 出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         労 働 大 臣 野原 正勝君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則委員外出席者         内閣官房長官 木村 俊夫君         人事院総裁   佐藤 達夫君         警察庁刑事局捜         査第一課長   田村 宣明君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         大蔵省主計局次         長       佐藤 吉男君         国税庁長官官房         参事官     久世 宗一君         厚生大臣官房審         議官      松下 廉蔵君         厚生大臣官房国         立公園部長   中村 一成君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省医務局国         立療養所課長  野津  聖君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         郵政省郵務局集         配課長     野上  昇君         郵政省簡易保険         局次長     東城真佐男君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         参  考  人         (海外技術協力         事業団理事長) 田付 景一君         参  考  人         (海外技術協力         事業団専務理         事)      寺岡 卓夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 伊東正義

    伊東委員長代理 これより会議を開きます。  委員長海外旅行のため、指定によりまして私が委員長の職務を行ないます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊委員 労政局長にお伺いいたしますが、今年の春闘における賃金引き上げ状態は大体集計ができたと思うのでありまするが、昨年に比較をいたしましていかほどの賃金引き上げ状態であるかをまずひとつお聞きをいたしたいと思います。
  4. 松永正男

    松永説明員 ただいまの田邊先生のお尋ねでございますが、労働省春季賃上げ集計を行なっておりますが、毎年大手百五十社程度について集計を行なっております。昨年は賃上げ額におきまして六千七百六十八円、それから率におきまして一五・八%というのが大手五十二社の集計でございます。これは基準内賃金アップとそれから定期昇給とを加えたものでございます。それから本年、四十五年の春季賃上げの結果は、百四十九社、これは石炭会社が閉山をいたしましたり、いろいろの関係がございましたので数が三社ほど減っておりますが、百四十九社の平均におきまして、アップ額におきまして八千九百八十三円、アップ率におきまして一八・三%というのが、大手の百四十九社の春におきます賃上げの結果でございます。
  5. 田邊誠

    田邊委員 いまお話のありましたとおり、昨年もかなりの高額の賃金引き上げでありましたが、今年はまたさらにそれを上回った賃金引き上げ状態であります。これにはいろいろと条件があったろうと思うわけでございまするけれども、その中身はここでは発言をすることを差し控えておきまするが、いろいろな要件が重なりまして今年異常な賃金引き上げ状態になってきておるわけであります。  そこで人事院総裁がお見えでございまするが、例年人事院勧告がいよいよ間近く出されるんじゃないかと私ども予測をいたしておるのでございまするが、まず最初に、私は一昨年来の人事院勧告やり方に対していろいろと政府内外でもって意見があるということを承知いたしております。たとえば予算編成時期に勧告をすべきであるとか、いろいろな意見があったろうかと思うのでありますが、そういう意見も踏まえながら、ことしはやはり昨年までの例にならって大体時期も、あるいはまた勧告やり方についても作業を進めてこられたんじゃないかと思うのですが、いまの大体の作業状態、それから勧告いたしますについての人事院態度、これに対して簡単に総裁からお話しいただきたいと思います。
  6. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 勧告につきましての作業はほとんど例年どおり方式でやっておりますし、その進行状況例年どおりとお考えいただいてけっこうでございます。したがいまして、その時期としては、昨年が八月十五日でありましたが、大体まあ八月半ばごろというふうにわれわれもめどを立てて目下作業をいたしておる次第であります。  なお先ほど、予算その他の編成等との関係でというお話、これは確かに思い起こしますとかつてありましたことであります。これは完全実施をするためには予算のときにでも勧告してもらわなければ予算が組めないというようなお話があって、いろいろ四月勧告とかなんとかいうことがあったのですが、そんなことはあるまいと私どもは申し上げてきたのですが、はたして今回は当初予算にちゃんと組んでくださいまして、完全に実施していただくということでございますから、わがほうの方式は従来どおり方式で完全に実施していただける、こういう気持ちでおるわけであります。
  7. 田邊誠

    田邊委員 したがって八月の上中旬を目ざして作業を進めておられるわけですが、そうしますと、人事院としては大体アウトラインはもう終わって、総理府統計局のほうに計数整理を依頼するという現段階じゃないかと思うのであります。そういたしまするならば、いま総裁がおっしゃったように、勧告中身についてもやはり例年のとおり、民間との賃金格差を埋めるということを主要な柱にしながら、公務員の現状における賃金は一体どうあるべきかということを踏まえて準備をされておるんじゃないかと私は思うのであります。そういたしまするならば、いま労政局長からお話のありましたとおり、昨年は民間一五・八%、今年はいままでの集計によって一八・三%のいわゆる賃金引き上げがなされておるのでありますから、公務員給与についても昨年は一〇・二%でありますけれども、当然これに比較をいたしまして、民間賃金が上がったという事実、賃金引き上げ率は非常に大幅であるという事実、この上に立ってこの勧告中身も私は相当の高額のものであろうと予測をし、またそうでなければならないと思っておるのでありますけれども、あなたのいまの腹づもりからいって、一体勧告中身というものはその率においてどの辺になろうと腹づもりをされておるのか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  8. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 すでに御承知のところから申し上げて恐縮でありますけれども、先ほど申しましたように調査段階は一応終わりました。と申しますのは、公務員側の四月にもらった給与集計とそれから七千事業所に当たっての民間の側の従業員給与調査と並行してやっておるわけであります。公務員側のほうはわりあいに手順はかかりませんから、もうそろそろ結論が出てきかかっておりますけれども民間側のほうは何ぶんたいへんな大規模でかつ精密な調査でありますために、いま統計局集計をしてもらっておる、そのアウトラインも実はまだ出ておらないということでございます。今月の末あたりにはおそらくこれが出るだろう。そうしましたときに公務員側の四月分と民間側の四月分とを突き合わせて、そこに格差を発見したら、この格差はぜひ埋めていただきたいという作業になるわけであります。しかし、いまおことばにありましたが、ことしはいわゆる一般民間企業賃上げ状況は非常にはなやかな——はなやかなという表現はちょっと適切を欠きますけれども、顕著なものがあるということから、私ども民間趨勢を精密にとらえようという立場でやっておりますから、民間側趨勢がこっちにまた反映しないはずはない。ただし、公務員側上がり向こう上がりとを突き合わせますためにパーセンテージを言えとおっしゃっても、これはむずかしい。しかしながら大体の傾向として大幅であろう、かつ高額であろうというようなことはもうすでに申し上げてきておる、この予測に間違いはあるまいというふうに考えております。
  9. 田邊誠

    田邊委員 大体昨年までの例年趨勢を、私ども単純計算ですけれども、いたしますと、昨年の一〇・二%に比較をいたしますならば、今年は私は少なくとも一三%近い引き上げにならざるを得ないのではないか、こういうふうに予測をいたしておるのであります。したがって、いま総裁の言われた中身が、いますぐは説明はできないかもしれませんけれども、昨年の民間賃金引き上げ率と今年の賃金引き上げ率、これのいわば単純な比較をいたしましても、かなり賃上げ率であります。昨年に比較をして、私は約一二%以上のいわばアップ率ではないかと思うのですが、そういった点から見て、私の大体の予測がまあ当たらずとも遠くないのではないか、こういうふうに思っておるのであります。これまで実は総裁にきょう答弁を迫ることは私はまだ時期ではないと思うのでありますから、またこの次の委員会でさらにひとつあなたの御発言を求めたいと思うのであります。  しかし、ここで私がお願いしておきたいのは人事院がいままで民間企業賃金状態というものを調査をしておるのでありますけれども、私はこの中身がほんとうに正鵠を射たものかどうかということに対して、やはりそのときそのときの事象の移り変わりもありますし、企業状態というのがありますし、ましてや民間との比較の際において、やはりその規模の問題それから職種のいわば中身、特に公務員職種重要性というもの、これとの比較、これが一体精密になされておるかどうか。加えて私は年齢構成についても、やはりまだまだ一考を要する点があるのではないかと思っておるのであります。さらに私は昨年までにいろいろ問題にしてまいりました積み残しの問題とか、それから現在の生計費の問題、ましてや異常な物価値上げが続いておるという実態というもの、特に私は、総裁、さっき申し上げた職種重要度の問題、それから年齢構成の問題とあわせて物価のいわゆる上昇問題について特に注目をしなければならぬのは、政府はいままで、消費者物価の値上がりはあったけれども卸売り物価が上がっていないからインフレじゃないじゃないか、実はこういう説明をいたしたのであります。ところが、昨年から今年にかけて最も特徴的なことは、卸売り物価が異常な値上げを示していることであります。昨年の一月に比べて今年の一月に四・五%の卸売り物価値上げがあった中で、鉄は一七・八%も値上げをしているという、こういう状態があります。これは私は、生活に押しかかるおもしからいいまするならば、非常に大きな問題があるのではないかと思います。これは非常に長期にわたるところのおもしになっていくんじゃないかと思うのであります。そういった点を今年やはり十分考慮してかからなければ正鵠なものにならぬのじゃないか、こういうふうに思っておるのでありますけれども、これに対する御見解をひとつ承りたいと思います。
  10. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 おことばの中の二、三についてお答えを申し上げたいと思いますが、官民比較の精密さということについては、私どもはひそかに、これはもう世界第一の精密さである、この点においては第一の先進国であるという気負いを持ってやっております。いまお話しの、たとえば会社規模、これも階層別にちゃんとあれしまして、かつまた職種もきちっと分けまして、そうして、たとえば看護婦さんと向こう看護婦さんとどうだ、公務員のほうがちょっとこれは上回っておるなというところまでやっておるのですが、これは世界に誇るべきものとして御了承願いたい。  それから物価の問題は、これは生活問題そのものですから、これはわれわれとしても重点を置いて見ざるを得ない。これをインフレという名前で呼ぼうと呼ばれまいと、これは高いことは事実なんですから、そういうことは名前にはこだわりませんけれども物価というものそのもの自体にはわれわれは関心を持っている。ところが、この物価問題は、たとえば春闘といわれるような賃上げの折衝の中で、大体生計費あるいは物価関係上がりということを従業員の方は訴えて、そうして団交に臨まれる。その結果は手打ちになって賃金引き上げがきまるというようなことでございまするから、民間賃金を調べますれば、物価要素は当然そこに織り込まれているはずだ、こういうことでございますから、したがって、まず、先ほど申しましたように、民間そのもの賃金をつかまえて比べれば、物価の面はそこに織り込まれておる。従来も物価の点をいろいろ気にしてまいりましたけれども、大体物価の面はそういうふうにして消化されておるだろうというふうに考えてこれはよかろう、こういうふうに思っておる次第でございます。
  11. 田邊誠

    田邊委員 そういう民間賃金引き上げの中に、当然物価の上昇に対するものが労働者要求として出てきていることは事実ですが、しかしなかなか、最近はやはり企業本位やり方がはやっておりまするから、そういった点で必ずこの物価値上げに即応して民間賃金が全的に上がっているという認識をすることもまた、これはいかがかと思うのでありまするけれども、その点も十分私は配慮しながら検討されることが必要である、こういうふうに思うのであります。いま総裁から、人事院勧告かなり高額なものにならざるを得ないだろう、まあこういう話がございまして、私もそのように承知いたしております。  そこで、いわば勧告はいろいろな要素を含んで毎年なされておりまするから、その年その年によって特徴的なものがあるわけでございます。私は昨年の報告なり勧告を見さしていただきましたけれども、たとえば初任給の問題なり世帯構成時におけるところの給与の問題なり、あるいは高年齢層給与のあり方なりございまして、手当についても住宅手当通勤手当やその他いろんな問題があるわけでございまするが、今年の勧告のいわば重点というものは一体どこに置かれてやろうとされているのか。これは大体の方針でございまするからおわかりだろうと思うのでありまするが、特に俸給表の面において一体どういうところを重点に置かれてこれから勧告をなされるおつもりですか、お聞かせいただきたいと思います。
  12. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 もちろん、これからの問題でございますから、目下勉強中だと申し上げればそれっきりでありますけれども、それにも及ばず、もうすでにいまから、常識的にいってわかっているところはあるはずだということであろうと思うのです。  これはやはり昨年も苦労いたしましたけれども、まず第一に初任給の問題、これはすでに各企業の様子を見ますと、なかなか相当なところまでいっておるということを私ども把握しておるわけであります。これはもちろんわれわれはわれわれとして別に初任給初任給調査はとっておりますけれども、それをまつまでもなく、相当な上がりは予想される。これは申すまでもなくここ数年来、公務員志願者というものは年々減ってきておるわけです。そういう点から申しましても、あるいは生計生活その他の問題から申しましても、まず重点を置いて考えなければならぬということであります。  それからもう一つは、昨年も、ちょうどいま御指摘になりましたように、初任給ばかりでなしに、世帯を形成した当時、その前後の人、あるいは二人世帯、三人世帯辺のところの生計維持がどうかという点をやはり重点を置いて考えました。これを一口にいうと、中だるみというものがあるのではないか、中堅層のところが落ちていやしないかというような批評があるわけです。これはおそらく民間でも無理して初任給を上げておるのでしょうから、おそらく民間調査の結果も中だるみになって出るだろうと思います。これは常識的にそうだと思いますけれども、われわれはまたわれわれとしてその辺のところは独自の考慮をしなければいかぬのじゃないかという気がまえをいま持っておる、その辺のところでございます。
  13. 田邊誠

    田邊委員 労政局長民間の今年の賃金引き上げ特徴の中で、やはりいま言った初任給の問題もあろうと思います。それから中小企業と大企業との比較の問題の中で、特に中小企業初任給の問題でいろいろと苦慮してきておるのではないかと思うのですが、それを一体どういうふうにつかんでおられるか。  それからもう一つ、昨年、これはわれわれとして異論のあるところですけれども、高年齢層賃金について公務員民間より多いのではないか、こういう意見人事院にもあったのでありますけれども、私は民間でもこの点は相当いろいろな面では考慮されてきておるのではないかと思うのですが、この点は一体どうするのですか。  それからもう一つは、あと総裁にお聞きをするのですけれども、諸手当の問題ですね。これについても通勤の問題とか住宅の問題、特に住宅の問題、それから家族手当の問題についてはかなりいろいろと意見が出てきておると思うのですが、これらについて一体どういうふうな面が特徴的にこの春闘でとらえられておるか、おわかりだったらひとつお聞かせいただきたい。
  14. 松永正男

    松永説明員 先ほど申し上げたのは概数でございますが、内容の特徴的な点と申しますと、いまおっしゃいましたような初任給圧力、これは新卒の労働力の供給がより少なくなってきているという面から、これが確かにあらわれてきております。  それから同時に、やはり先ほど総裁も御指摘になりましたように、初任給上がりますと、給与体系全体としてのバランスというようなことが問題になりますので、組合によりましては二十五歳賃金あるいは二十九歳賃金というようなポイント賃金を指定いたしまして、初任給と同時にポイント賃金というような要求を出しておるところもございます。これは人不足というような面になってまいりますと、そういう傾向はだんだん強くなっていくのではなかろうかというふうに考えます。  それから大企業中小企業との比較でございますが、私ども中小企業集計はまだ全部できておりませんが、大体の傾向といたしましては、関東七県の中小企業調査を見ますと、アップ額におきましては大企業よりやや下回っておる。大企業は大体八千九百円台でございますが、中小企業は大体八千四百円台、おそらく全国集計になりますと、それよりちょっと下回るのではないかというふうに思われます。  それからもう一つ給与決定の配慮と申しますか、におきまして、大企業では大体アップ額アップ幅というものが非常に問題でございます。中小企業におきましては初任給というものに非常に関心が大きい。これは経営者のほうの賃金交渉あるいは賃金決定の際の態度としても、それがあらわれております。  それからもう一つ特徴といたしましては、先ほど御指摘になりました住宅手当については、ちょっと私詳細な資料を持っておりませんが、景気が非常によいことを反映いたしまして、ベースアップの額よりは特別給与、盆暮れの賞与、手当、そういうもののアップの勢いが非常に大きいということが、昨年、ことしあたり賃金状況として顕著に見えるのではないかというふうに思います。あと詳細資料ございませんので……。
  15. 田邊誠

    田邊委員 いま、時間がちょっときょうはございませんから、こまかい点はこの次にまた譲りまするが、人事院総裁、いまお聞きのような春闘状態でございまするから、当然私は俸給表についてもいろいろと苦慮されておる点があると思うのでございます。  実はきょうお聞きをする予定でございましたけれども、これはやめますが、総裁の非常に関心を持っていらっしゃる大学卒業採用状況についても、私はこれはひとつ注目すべきことではないかと思うのですけれども、これはあらためて資料を出していただいて、きょうは答弁はよろしゅうございます。そういうことも考慮されながらいろいろとやっていただきたいのですが、いまお話がありましたとおり、諸手当についてもかなり私は考慮すべき点があるんじゃないかと思うのです。扶養手当については、妻について昨年勧告がされましたが、当然私は引き続いて子供について、児童手当の問題が世上にのぼっておる時代でありまするから、当然これに対しても何らかの手直しが必要ではないか。  それから通勤手当は私はこの際、いわゆる運賃引き上げになったら自動的に引き上げるという、こういう立場をとられたほうがいいじゃないのですか。そういう点はどうかという点と、それから住宅手当は昨年たしか民間が四六%くらいまで支給というような線が出ているのですけれども、五〇%以上になったらこれも考えなければいかぬ、こうなっておったのですが、ことしの趨勢はもうそこへ行っていると思うのです。したがってこの住宅手当については、一体どういうようにお考えになろうとしているのか。  それからもう一つは、期末勤勉手当といいましょうか、昨年上げましたけれども、なおかつそれが引き上げになる傾向だというお答えなんですが、これに対する御考慮はあるのかないのかということを、諸手当についてもお聞かせいただきたいと思います。
  16. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 これは常識的な問題でありますけれども、やはり給与引き上げ本俸中心であるべきだということは鉄則だろうと思いますから、あくまでもわれわれとしては、本俸中心に考えながら、いまお述べになりましたような諸手当を研究するということになると思います。  扶養手当は昨年、これは配偶者の分、これはいまお話にあったとおりの手当てをいたしまして、それと、昨年の調べによりますというと、子供の分が民間で全然動いておらないわけです。大体数年据え置きになっておるということで、われわれ手をつけませんでした。したがって、その趨勢は今日も変わっておらないだろうと思いますから、そう血眼になって扶養手当を考えているということではございません。  それから通勤も、昨年、例の国鉄の大幅値上げがありまして、これは処置をした。私鉄も全部一緒に均てんしておるようなことになっておりまして、そのほうからくる、運賃のほうからくる問題はことしはあるまい。ただし、それ以外にいろいろな御要望が通勤手当についてはあるのですよ。それはまたわれわれとしても研究したいという気持ちでおります。  それから住宅手当は、これは多年の宿題で、われわれも非常に大きな関心を持って、さればこそ毎年毎年、これは例のないことでありますけれども住宅手当だけはしつこいくらいに毎年民間調査を重ねてまいりまして、そしてそれがだんだん上がってきておるということも事実でございます。したがいまして、それが上がってまいりますと、われわれとしてもほうっておけないという気持ちで、最近だいぶわがほうの研究もエスカレートしてまいりまして、いろいろなやり方の問題までも数年来検討を続けております。重大な関心を持って今後もその推移を見ていくということでやっております。
  17. 田邊誠

    田邊委員 もう一つだけ。いわゆる職種、職能別の賃金給与の面で、特に技術者の問題、これはいまやもういわゆる国民的な問題になってきているわけでありますが、医師不足なり、看護婦不足、それからまた准看護婦のいわば三等級に対する渡りの問題、それからいろいろな科学者の、いわば人を集めることの非常に困難な事態というもの、これらも私は当然時代のこの現状に照らしてみて即応した措置がとられるべきである、こういうふうに思っているわけでありますけれども、この面についてひとつ今年はぜひ画期的なあなた方の考え方を明らかにしてもらいたい、こういうふうに要望しているわけでございまするが、いかがでございますか。
  18. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 大体おっしゃるとおりでございまして、私どもも過去においてもそういうかまえでおりますけれども、ことしも同様に、いまお述べになりましたような諸点は重点研究項目として重大なる関心を持って臨みたいという気持ちでおります。
  19. 田邊誠

    田邊委員 中身についての質問はいろいろありまするけれども、ぜひまたその時期におきまして、あるいは勧告後におきましてもお聞きをいたしてみたいと思いまするから、お約束の十一時半までに終わらすという予定でございますので、概括的に終わりたいと思いますけれども、それで総裁、私は例年、毎年のように実はあなたを相手にしていろいろと質疑応答をしているのですが、勧告の時期について、勧告実施の時期については、あなたは五月一日だということを実は固執されてきているのですけれども、私は理論的にいいまして、民間賃金が大かた四月に上がっているという現実、これは私は無視できないと思うのであります。したがって、四月現在における民間賃金のあり方というものを検討される人事院立場でいえば、私は五月一日、すなわち五月の給与から引き上げをするという、こういうやり方は、必ずしもこれは一〇〇%正しいとは言いがたいと思っているのです。どちらかといえば、私は四月からその引き上げ勧告されるというほうが、全体的な趨勢からいえば私は合致するのじゃないか、こういうふうに思っているのでありますけれども、この点に対しては、あなたのほうでイージーゴーイングに、毎年五月一日だからことしも五月だという、そういうやり方でなくて、当然私は慎重な検討がなされてしかるべきじゃないかと思うのでありまするけれども、この点はいかがでございますか。毎年実はお聞きしていることでございますから、私は私の信念もありまするし、これに対して総裁が十分な検討をされる必要があるのじゃないかと思っておるのでありますけれども、いかがでありますか。
  20. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 いま固執されているというおことばがございましたが、確かに固執しておりまして、もう実施期日をうたうようになってからすでに五月一日でずっと来ているというようなことも、これは沿革的だということで、それきりだということになるかもしれませんけれども、それはそれでまた当時いろいろな御議論があったということは、これは国会の速記録までひっくり返してみたのでありますけれども、これは御議論のあった末に五月一日ということになったのですから、これはにわかに間違っておるというわけにもいかぬということで、大いに伝統を尊重しておったのですけれども、しかしいろいろ近ごろ御指摘のような、毎年いろいろここでお話は承っておりますが、なるほど一理はあるわいというところまで、私の気持ちは、ふだん着で言えば動いてきております。なお、そのことを虚心たんかいに検討を進めたいと思っております。
  21. 田邊誠

    田邊委員 それから一言だけ。  寒冷地給は一体どうなっておりますか。
  22. 佐藤達夫

    佐藤(達)説明員 これは、寒冷地手当は御承知のように寒冷地におる人たちの寒冷対策のために、いわゆる寒冷増高費をまかなおうという趣旨でできておる。これが根本でございまするからして、寒冷増高費というものが、たとえば物価の値上がり等によってどの程度影響を受けておるかということについては、私どもも常に関心を持っております。しかしながら今日の段階においては、まだ大きな変動はないものというふうな認識でおりますけれども、これもいよいよまた八月まぎわになれば石炭の値段も調べなければなりませんし、そういう調査もやります。その結果によってまた判断をしたいと思っております。
  23. 田邊誠

    田邊委員 そこで大蔵省、いよいよ勧告が間近に出されるという状態ですが、それに即応して当然私は政府としてはこれは完全実施をしなければならない立場であろうと思うのですが、今年の一般会計におけるところのこの賃金引き上げに対する、いわば備えての予算上の措置は一体どんなぐあいになっておりまするか、またどういうふうにやろうとされておるのか、この点に対して大蔵省の見解を承りたいと思います。
  24. 佐藤吉男

    佐藤(吉)説明員 お答え申し上げます。  本年度の予算編成に際しまして、この給与の扱いにつきましては特に慎重を期したわけでございます。具体的に申し上げますと、五%相当額、これは勧告の行なわれる最低の幅でございますが、この相当額六百四十四億円というものを予算に計上しております。それから、そのほかに、これで勧告の幅で不足いたしました場合を考慮いたしまして、予備費を昨年の九百億円から二百億円増額いたしまして、千百億円を計上したわけでございます。
  25. 田邊誠

    田邊委員 その予備費は、もちろんこれでもって全部充てるわけではないでございましょうから、そういった点から見て、あなた方のほうの試算からいいまするならば、予備費をどのぐらい使うかは、そのときの状態によりましょうけれども、大体——今度のいま予想される、ですよ。私は、さっきから質問しておって、大体総裁も相当な高額になるということの御答弁があったわけでございまするから、少なくとも昨年の一〇・二%を上回ることは事実でありますね。そういう事態に即応して、このいまの予算構成でもってまかない得るというあなたのほうはお考えでございますか。そもそも私は、昨年の一〇・二%を考えたときに、五%の予算を計上するということは、きわめて不見識だと思うのです。これは時代に即応してない考え方ではないかと思うのでありますが、そういった点から見て、予備費を含めて、いまの予想される事態に対してこれはまかない得る、即応できる、こういうふうに大蔵省としてはお考えでございますか。
  26. 佐藤吉男

    佐藤(吉)説明員 先ほどからの質疑を拝聴いたしておりまして、今年度の勧告の幅はたいへん大きいんじゃないだろうか、こういうふうに私どもも承知しておるわけでございます。これをどういうふうにまかなうかということになりますと、方針といたしましては、完全実施をするという政府の御方針でございますので、私どもは、その方針に従いまして処理したいと思っております。ただ、事務的に申し上げますと、御指摘のようになかなか容易にはできない状況でございます。
  27. 田邊誠

    田邊委員 したがって一時期、福田大蔵大臣も言われておりましたが、総合予算主義などという形式に——これは実は本末転倒なんでありますからね、この総合予算主義というのは。そういった点から見て、今年はやはりそういう形式にとらわれることなく、当然措置すべきものは措置する、こういう立場を大蔵省としてもぜひ貫いてもらいたいと思っておるのであります。  あわせて、私は、国家公務員給与について当然大蔵省が措置すべき点は、政府の方針に沿うべきであるというふうに思いまするけれども、それとあわせて、やはり地方公務員の財源についても、政府かなりのやはりめんどうを見てもらわなければならぬのじゃないかというふうに思うのでありますが、地方公務員の財源確保と、それからいつも置き忘れがちな地方の公営企業に働く労働者賃金、これも一般職と同様に措置すべきであると私どもは考えておるわけでありまするが、これに対して、ひとつ大蔵省側から見て、これは自治省が当然責任をとらなければならぬのでありまするけれども、あなたのほうでも、これに対するところのお考えがおありでございましょうか。
  28. 佐藤吉男

    佐藤(吉)説明員 地方公務員給与財源につきましては、従来から自治省が責任を持ちまして、不足分につきましては大蔵省ともかけ合っております。過去におきまして、非常にむずかしい問題であった年もございます。これはなかなか重大な問題であるということは、私どももよく承知しております。自治省からの御意見も承りまして、十分に手を打ちたいと思っております。
  29. 田邊誠

    田邊委員 いろいろとお聞きをしたい点がございまするけれども、ぜひ私は、人事院正鵠な判断のもとに勧告をされると同時に、また、それに即応したいろいろな手立てを政府も講ずべきであろうと思うのであります。  そこで、労働大臣、ぜひお聞きしたいのですが、いま総務長官がお見えですからお聞きをいたしまするけれども、労働政策の面からいい、労働行政の面からいって、今年の勧告について、私は、政府は大いなる決断が必要だろうと思うのであります。総務長官、お見えですから、ひとつぜひ給与担当といたしまして、すでに昨日いろいろと御意見は発表されておるようでありますけれども、やはり国会の委員会の場所でもって、長い間の懸案でありまして、七〇年にはいろいろな意味で完全実施をするということを政府は、一昨年、昨年あたり言ってきたのでありまするけれども、私は、そのいろいろな七十年代というような問題とこれをからめてやることについては、もちろん異論がありまするけれども、当然の責任において政府は、勧告中身がいずれでありましても、これに対しては、今年こそはこれは完全実施をするということを言明すべき時期に来た、こういうふうに思っておりますし、すでにそういった意思表示があるのじゃないかと思いますけれども、これはぜひこの際、総務長官と労働大臣からそれぞれ、政府立場でこれに対して、完全実施をすべきものであるということに対する見解を明確にお述べいただきたい、このようにお願いいたす次第であります。
  30. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはもうすでにたびたび意思の表明は公的に政府としてはいたしておりますし、昨日も、ストと申しますか、そういう官公労の諸君の要求を掲げた日の前日、私直接代表者全員の諸君とお会いしまして、政府の変わらない、勧告があったら完全に実施をする、また、昨年みたいに核抜きの実施等のちびたことはやらぬ——これは核ということばは別にして、きちんと、ちゃちなことはしないで勧告どおりやりますということを申しました。それは当然、勧告総裁は五月と言っておられますから、五月以降ということになるわけでしょう。  また、財源問題等につきましても、今後災害その他でどれぐらい金が要るものかわかりませんけれども、予備費については、昨年より二百億ふやして一応組んでございますが、かりにそれが足る足らぬの議論によって公務員給与完全実施という問題には影響させない。それは実施する姿勢を示したのであって、これは七〇年とかなんとかという、決意というものではありませんで、いままでやらなければならないとして勧告されたものを政府がやらなかった、ある意味においては申しわけないことでありますが、これからはそのとおりやりますという、あたりまえの姿になったわけですから、別段肩ひじ張ってものを言う必要もないことで、そのとおりにやるということで、必要である財源があるならば、それはもし不足するものは、公務員給与人事院勧告完全実施をやったあと、何が不足するか、そういうことの議論になるべきであって、足らないために給与勧告中身をちびるということはあり得ないということは、この際はっきり申し上げておきたいと考えます。
  31. 田邊誠

    田邊委員 総務長官から、当然のことをいままでやらなかったことに対する責任はともかくとして、当然ことしは勧告完全実施するという、こういうたてまえを政府が貫かれたことに対しては、私は心から敬意を表したいと思うのでありまして、いろいろ困難な事態がありましょうが、ぜひいまの御発言をもととして、完全実施のための方策を十分講ぜられるように、心からお願いするわけであります。  それではきょうは、中身の問題についていろいろとまた御意見があることでありますけれども勧告が早期にまた正鵠なものが出され、政府がこれが完全実施のために最善の努力をされることを心からお願いいたしまして、質問を終わります。
  32. 伊東正義

    伊東委員長代理 この際申し上げます。  本日は、海外技術協力事業団理事長田付景一君及び専務理事寺岡卓夫君の両君に参考人として御出席をいただいております。  質疑を続けます。後藤俊男君。
  33. 後藤俊男

    ○後藤委員 一番最初に、この前、先月の十日の日でございます、海外技術協力事業団の紛争の問題で、この社会労働委員会で小林委員のほうから種々質問があったわけでございます。この社会労働委員会が終わったのが大体二十時だと思います。その後一時間たちましてロックアウトをやられた。これを私あとから聞きまして、擬制適用の報復措置だとかあるいは——最近えらい報復措置がはやるのだなというような感じを受けたわけでございますが、あのとき寺岡さんでございますか、約一時間にわたって協力事業団の紛争の問題について質問が行なわれて、最終的には、おっしゃるようにひとつ団体交渉を始めますという返答であったと私考えておるわけでございます。その舌の根もかわかぬ一時間後にロックアウト、これは一体どういう事情だろうか。あまりにもここの委員会で鋭く追及されたから、何くそという気持ちで報復措置をやられたのじゃないかという強い感じを私としては受けたわけでございます。なぜ一体ああいうふうなロックアウトを一時間後に行なわれたか、その点、時間が十分ございませんから簡単でけっこうですが、冒頭に御説明いただきたいと思います。
  34. 田付景一

    ○田付参考人 お答えいたします。  あの当時寺岡君が社労委員会に出席いたしまして、種々御説明申し上げましたが、その当時われわれといたしましてはまだロックアウトするというはっきりした気持ちはなかったのでありまして、その意味で寺岡君は、出てまいりましたときにはロックアウトをやるということを知らないでおったということでございます。私たちがロックアウトを向こうで決定いたしましたのが、大体六時か六時半ごろという時期でございます。ちょうど寺岡君はこちらに四時に参りまして七時ころに帰ってきたと思いますが、そういう意味で実は寺岡君は知らないままに過ごしたということでございます。  私たち向こうにおりました者が今度のロックアウトを決定いたしたわけでございますが、われわれといたしましては、ロックアウトをやることについては非常にちゅうちょしておったのでございます。しかし実際上ストライキをやられましてわれわれが本部にはいれないというような状況から仕事ができないという事態になりまして、このまま放置いたしておきますと、外国からやってまいります研修員に対する支払いとか、あるいは海外におります専門家に対する支払いの時期が切迫してまいりまして、どうしても六月の中ごろには支払わなければならないというような事態になってまいりましたので、これ以上待っておりますとわれわれの仕事自身がつかえてしまうというようなこともありまして、やむを得ずロックアウトをしくというような結果になったわけでございまして、あの当時委員会が開かれておって、そのために復讐的にやったとかそういうような気持ちは毛頭ございません。
  35. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、それ以来今日に至るまで約一カ月間ロックアウトをやっておられるわけです。そこで働いておる職員の人は手当ももらえなければ賃金ももらえない、こういう今日の情勢なんですね、これはもう私が言うまでもなく十分御承知のことと思いますけれども。このロックアウトの合法性、違法性につきましてはここで論争する時間の余裕がございませんけれども、先ほど理事長がおっしゃいましたように、ロックアウトをやった、しかしながら団体交渉は再開されておらない。なぜ一体団体交渉が再開されないのか、その点をお尋ねしたいわけなんです。
  36. 田付景一

    ○田付参考人 お答えをいたします。  いままでまだロックアウトが続いておるということは、われわれにとっても非常に不本意なことでございます。ただいま団交が開かれていないというお話でございますが、団交につきましては、広い意味で労働組合との交渉というものはただいまもやっておるわけでございます。つまり狭い意味の団交ということはやっておりませんけれども、常に組合側との交渉を続けておるのでございます。と申しますのは、組合の要求が夏季一時金手当ということと、そのほかに天下り人事並びに出向人事というようなもので、特に個別人事というところまでに入っておりまして、個別人事ということになりますと、特に労働条件の重大なる変更ということにならない、こう考えておりますので、われわれとしてはこういう議題について団交を聞くということについては承諾をすることはできないわけでございます。そういう意味もありまして、むしろ事務折衝でお互いに意見を交換しながら、ほんとうのわれわれの腹を打ち割った話をしていきたい、こう考えておるわけでございます。その意味からも、われわれとしてはただいまもいろいろな交渉を続けておるわけでございまして、決して広い意味の団交というものを拒絶しておるわけではございません。
  37. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われた広い意味の団交、狭い意味の団交ということは、おおよそ想像はつかぬことはないが、法的にいうと、それはどういうことですか。
  38. 田付景一

    ○田付参考人 つまり組合と使用者間の、いわゆる代表が集まった交渉が広い意味の交渉、こう言っておるわけであります。
  39. 後藤俊男

    ○後藤委員 狭い意味は。
  40. 田付景一

    ○田付参考人 狭い意味は、片方が委員長が出まして、私どもとしては専務理事その他、いわゆる労務担当代表が出て話をする。むろん広い意味においても労務担当の理事が出て話はしております。
  41. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、結局正式に団体交渉が行なわれておらない、そういうことだと思うのです。その団体交渉を行なうためには、あなたのほうから十項目の確認書が出ているわけなんですね、これを確認しない以上は団体交渉はやりませんと。そこで組合のほうといたしましては、これに対して十分検討した結果、第七項目でございますか、人事の問題、これがいま中心になっておるわけなんです。この人事の問題について団体交渉の対象にしたのでは団体交渉を開けない、ずっとこのままロックアウトを続けていきますよと。管理者等には手当賃金も渡しておるけれども、一般組合員には手当賃金も渡しておらぬ。少なくともこの人事の問題を団体交渉からはずしなさい、この点があなた方のほうのねらいの中心にになっておるような気がするわけなんです。ところが、一般的に政労協関係百幾つの組合を考えてみますと、百幾つの組合全部がやはり人事の問題が中心になっておるわけなんです。ずっと長い期間、この人事の問題が論争の中心になっておると私も聞いております。今度あなたのほうがやられましたロックアウトについて、人事の問題は団体交渉からはずす、どうしても今度はこれをとってしまう、それを組合が了承しない限りは正式の団体交渉は開かないし、手当の交渉もやらないという態度であると私は聞いておるわけなんです。事人事の問題を考えますと、これはいまも申し上げましたように、百幾つの組合の中でいろいろと問題にされておる点なんです。なぜ一体組合のほうでも人事の問題をこれほど問題にしておるか。これはもう私が説明しなくても、あなたのほうで十分おわかりだと私は思うわけです。これは一、二数字は違うかもわかりませんけれども海外技術協力事業団における課長以上の約三十五名でございますか、これらの人を検討いたしますと、役員のうち七名が天下り人事である、それから部長級では、八名おいでになりますけれども、一名だけがはえ抜きであって、あとの七名がこれまた天下り人事になっておる。それから課長級では、二十三名おいでになりますが、約半数が天下りになっておる。いわば事業団ではえ抜きでつとめておられる皆さんは、どこかで権力を握った植民地につとめておるような形なんです。七名の役員も天下り人事なら、部長さんも天下り人事、課長さんも半分天下り人事。八つの省から人事が行なわれてきておる。しかも、聞くところによりますと、そういう人は出向という形で来るのでしょう。来たときに二〇%の昇給を行なう、二年なり三年なりおったときには、その最後には海外旅行をさせてもとの古巣へ帰す、こういうふうな人事が今日行なわれてきておるわけなんです。その人事をあくまでもあなた方のほうとしてはかかえていこう、そういう方向で進めていこうとされておるものですから、そのことに対して組合のほうからとやかく言われたのではいかぬというので、団体交渉から人事の問題ははずしなさい。これをあなた方のほうは今度は一挙に乗り切っていこう。これを組合が了承しない以上は団体交渉できませんよ、手当ももらえませんぜ、賃金カットですよ、そういう追い込むような姿勢が今日あなたのほうでとられておる姿勢ではないかと私は思うわけです。  そこで、外務省の沢木さんにちょっとお尋ねいたしたいのですが、この事業団における人事の問題は、先ほども言いましたように、役員七名が天下りになっておる、部長さんが全部天下りだ、課長さんが半分以上天下りだ。そこで、はえ抜きの人は何か植民地の国民扱いをされておる。こういう人事のあり方がはたして一体事業団のためになるのかどうか。また、こういうふうな人事を行なわなければ仕事ができないのかどうか。これはいかにも天下りの見本的だと思うのです。これくらい天下り人事の問題が多く取り上げられておる今日、たとえば政労協関係の技術協力事業団のみを具体的に申し上げましても、いま言ったような人事の扱いになっておるわけなんです。沢木さん、いかがですか。
  42. 沢木正男

    ○沢木説明員 事業団はできましてまだ八年でございまして、部内から登用すると申しましても、いろいろまだ力量あるいは対外関係において技量が十分でないと認められる者もあるわけでございます。まして、海外技術協力事業団の仕事は関係各省のいろいろな協力も得る必要がございますので、現在それらの仕事に当該省におきまして習熟された方を迎えて、その省との連絡も密にしながら事業の遂行をはかるということをやっておるわけでございまして、各省から出られました管理職以上の方々が必ずしも二、三年で帰る方ばかりじゃございませんで、事業団でずっと最後までおやりになる方もあるわけでございます。ただ、確かに部内からの人材登用ということは、職員の士気を鼓舞する上におきましても、事業を遂行する上におきましてもきわめて重要なことであるとわれわれ考えております。したがいまして、私が承知いたしております限り、本年度の初めのほうにおきまして会長からも、将来は登用できる人物はできるだけ部内から登用するという基本方針を明示したはずでございまして、今後十分職務を執行するに足る人材が育ってまいりました場合には、それらを登用する方針は事業団としては確立しておるというふうに考えております。
  43. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いまあなたが言われたのは、こういう人事をやらないと海外技術協力事業団の仕事がやっていけない、一口に言ってそういうことですね。
  44. 沢木正男

    ○沢木説明員 やっていける、やっていけないという非常にきっぱりしたものの言い方で言われますと必ずしもはっきりいたしませんけれども、やはりそういうことが事業遂行にきわめて円滑なる能率を提供しておるというふうに考えております。
  45. 後藤俊男

    ○後藤委員 それはあなたいまそう言われますけれども、われわれが調べてみますと、そのことによって各省のなわ張り根性が出てきておる、かえって内部でいろいろな問題を起こしておるというようなことも聞いておるわけなんです。ですから何回も私は申し上げますけれども、役員全部が天下りだ。部長も全部天下りだ。課長も半分天下りだ。しかもできて八年にしかならぬから仕事が十分やれぬから、こうやらぬとうまく円満にいかぬと思うのでこういう人事をやっておる、こういうあなたの言い方ですけれども、役員の中にはやはり官僚の退職者もあると思うのです。ですからそこで働いておるはえ抜きの労働組合としては、問題にするのがあたりまえの話なんです。そこでたとえば一生懸命働いておる課長級がおる、部長級がおる、役員がおる、そんなものは全部外からぽっぽぽっぽ来て天下りをやられてしまう。そこのはえ抜きの人は、せいぜい今日の程度で課長さんの半分だけがはえ抜きになってきておる。それ以外は全部天下り人事で、これは問題になっておる天下り人事のいい見本だと思うのです。幸いきょうは木村官房副長官も来ていただいておりますが、この人事の問題についていかがでしょうか。
  46. 木村俊夫

    ○木村説明員 国会でたびたび天下りの問題についていろいろ御議論を拝聴しておりますが、特殊法人はいろいろ具体的に性格が違っております。特にある特殊法人についてどうかということになれば、一般的に私どもは——その法人の歴史的沿革またその成り立ちと申しますか性格等からいたしまして、ある場合には過渡的に、天下りというと語弊がございますが、関係官庁との延長的な性格の法人が多いものですからそれはやむを得ない。ただ一般的に申しまして、できるだけある時期を過ぎた時期におきましては、部内から登用するようにという一般的基準は各省に伝えてございます。  したがいまして、今回の海外技術協力事業団、これはその性格からいえば非常に国際性もございましょうし、また技術協力という事業の性格からいいましても、八年間たった今日においてもまだそういうような必要が残っておると存じますが、漸次各省のなわ張り的な弊害は除去いたします。また部内からの登用を多くはかっていくように政府としてはそういう指導をしていきたい、こう考えております。
  47. 後藤俊男

    ○後藤委員 あまり時間がありませんから話を進めますが、理事長に私お尋ねするわけですが、いま申し上げましたように、課長以上がほとんど天下り人事でやっておる。これは順次その姿勢を変えなければいかぬ、当然変えるべきだと私は思うわけなんです。そのことが労働組合との関係におきましてやはり一つの問題点になっておるわけなんです。これはここだけじゃございません。政労協関係各事業団でそのことが問題になっておるわけなんです。でありますのに、あなたのところとしては、人事の問題はもう団体交渉から一切はずしなさい、はずさぬことには団体交渉をやりませんよ、手当がもらえませんよ、こういう強引な態度で進んでおられるのが今日の情勢なんです。であるとするのなら、ここで一ぺんあなたのほうも考えてもらって、ロックアウトは直ちに解く、そうして人事の問題については別問題にしておく。これはあなたの組合だけじゃないのです。政労協百幾つの組合に関係があるんです。ですから人事の問題については別問題にしておいて、直ちにひとつ団体交渉に入る。これはあなた考えてみなさい、管理者だけは手当ももらえば賃金ももらえる、組合の人は手当ももらえなければ賃金ももらえぬ、ロックアウトだ、いわばあなたのほうはやりたいほうだいじゃないですか。そうして人事の面はどうだ、人事の面もいわばやりたいほうだいです。各省から行けば二〇%引き上げるわ、引き揚げるときは海外旅行をさせるわ、そんなやり方をしておって、そこにおられるはえ抜きの職員は、はたして気持ちよく仕事をしようという意欲が出ますか。これは副長官の言われるように、ある程度の事情は私はあると思うんです。ある程度の事情はあるにしたって、課長が半分以上天下り、部長全部が天下り、役員全部が天下り、これは私はあまりにもひどいと思うのです。だから組合のほうが問題にしておるわけです。問題になっておるなら、問題点で私はいいと思うのです。その人事の問題についてはちょっと横へのけておいて、直ちに団体交渉をやってもらう、ロックアウトを解いてもらう、そうして手当の問題その他の問題で団交を行なう。人事の問題はあなたのところだけでなしに、百幾つの政労協関係が全部問題にしておる。ですからそういう方向で直ちにひとつやってもらいたい、ごく常識的な考え方ですけれども、私としてはこう思うのですが、理事長、いかがですか。
  48. 田付景一

    ○田付参考人 ただいまお話がございましたように、役員並びに管理職が半分以上も天下りだ、あるいは出向だというようなことでございますけれども、その点は必ずしも私たちの考え方とは非常に一致しておりません。しかしいずれにいたしましても、われわれとしましては、人事の問題につきまして、個別人事ということになりますと、これは先ほども申し上げましたように、われわれとして経営権の問題としてやっていきたい、こう考えておりますが、しかしいまも先生からお話がありましたように、一般的な人事ということになりますと、これは労働条件とも関連してくる面が多々ある、こう思いますので、そういう面ではわれわれとしても組合と話し合いをするということにやぶさかではございません。したがいまして、今後そういう意味で組合との話し合いは続けていきたい、こう考えております。
  49. 後藤俊男

    ○後藤委員 どうもあなたの話を聞くとはっきりせぬわけだけれども、組合と話し合いを続けていきます——あなたのほうで十項目の申し入れを組合にやっておるんでしょう。これを組合が了承しない限りにおいてはもう団体交渉はやりません、あなたのほうはこういう態勢ですよ。その十項目の第七番目に、人事の問題が入っておるわけなんです。ですから私の言うのは、人事の問題はあなたのほうも言いたいこともあろうし、組合のほうも言いたいことはあるということは私はわかっておるわけなんです。わかってはおるけれども、ここで一挙に人事の問題も含めて全部解決せぬことには、ロックアウトも解かないし、手当も払わぬ、賃金も払わぬ、こういうやり方でなしに、人事の問題は百幾つの事業団に全部影響のある問題ですから、その問題は別途の問題としておいて、そうして団体交渉を始めたらいかがですか、人事の問題は別途時間をかけて十分組合と相談をしていく、そういうような方法をおとりになって団交をお始めになったらいかがですか、ロックアウトを解いたらいかがですか、これを私は言うておるわけなんです。それを、あなたの話を聞いておると、どうもあいまいにごまかしたような、わけのわからぬような説明だからはっきりしないわけです。もう少し明確にひとつお答えいただきたいと思うわけです。
  50. 田付景一

    ○田付参考人 ただいまお話にございましたように、ロックアウトと団交問題とは別問題だと思っております。ロックアウトは、お話しのようにわれわれとしてはできるだけ早く解除したいと思っておりますので、ロックアウトされましてからすぐ、十五日からすでに七項目を出しまして、組合のほうにおいて七項目のうちの最後の二項目、これはわれわれが正当に業務ができるように、これを妨害しないようにというような二項目を出しておりますが、これについて組合のほうからはっきりした返答がいまもってございません。そこで七月二日にも書類でもって、その点組合の意向をはっきりしてもらいたいということを要求いたしましたが、これに対していまもって返答はございませんでした。しかし、昨日その点でわれわれといたしましては、そういう意味の、つまり三つの点で組合に対しまして向こう状況を聞いた点がございます。それは要するに、われわれ管理職が、あるいは役員が十分に仕事をすることに対して妨害をしないこと、あるいはその出入に対しましてじゃまをしないことといったようなことを確認してもらうならば、われわれとしてもロックアウトの解除について十分考慮したい、こういうことを申し入れております。  それから団体交渉については、お話しのとおりわれわれとしても団体交渉をなるべく早くやりたいと思っております。それがためには、この六月二日ないし四日の間におきます団体交渉におけるような非常に異常な状況で、一種のつるし上げに近いような状況の交渉をされるのでは、われわれとしても正常な話し合いができませんので、その意味からもひとつ十分にわれわれが心おきなく話ができるような雰囲気にしていただきたい、そういうことを組合に申し述べておるわけでございまして、これが組合において同意してもらえさえすれば、われわれとしてはいつでも団交に入るつもりでおります。
  51. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま説明がありましたけれども、どうもすっきりしないので私もはっきりしないわけですが、先ほどから重ねて言っておりますところの天下り人事の問題、これはもう早急に今後の問題として検討していただく必要がありますし、さらにこのロックアウトの問題にいたしましても、私は非常に違法性が強いと思うのです。まあその問題をここでとやかくは言いませんけれども。ですから一刻も早くロックアウトを解いて話し合い——狭い話し合いとか広い団体交渉とか、そういうことを言わずに、正式団体交渉を開いていただいて——いまだに組合員には夏季手当は渡っておらぬのでしょう、賃金もカットした状態なのです。管理者だけは全部もらっておるのです。こういう異常な状態を一刻も早く解決する方向へ理事長としても責任を持ってひとつやっていただきたい、これだけはぜひひとつこの委員会ではっきりあなたも確認をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  52. 田付景一

    ○田付参考人 先生のおっしゃるとおり、私たちもできるだけ早くこの問題を解決して、そうして職員とともに仕事をしたい、こう思っております。
  53. 後藤俊男

    ○後藤委員 最初に、木村官房副長官にお尋ねするのですが、これは政労協関係賃金です。去年の六月でございますか、長官が総評の岩井事務局長と会われて、政労協の賃金闘争が春闘でこれだけ長引いたんでは問題があるから、来年あたりからはひとつ自主的団体交渉によって早く解決する方向で努力をしよう、それはそのとおりだ、わかった、こういう会談における約束もあったと思うのです。それからさらにその翌日の社会労働委員会におきましても同じようなことがこの席上でも問題になりまして、それじゃ自主団交でひとつ早急に解決する方向で努力しよう。しかも、当時の労働大臣もかたくそのことを言明しておられるわけなんです。それで五月の社会労働委員会、六月の社会労働委員会、七月はきょうでございますけれども、三回にわたってこの政労協の春闘問題を重ねて取り上げておるわけなんです。現在の情勢は木村副長官としても十分御承知かと思いますけれども、相変わらずゼロ回答なんです。去年、おととしと全然変わらないわけなんです。それなら去年ああいう約束をされまして、一体どうなっておるんだろうか。この社会労働委員会におきましても労働大臣がはっきりこれは言明しておられるわけなんです。公務員と違いまして、これは労働法適用の組合です。内部的組織の面とか、いろいろな関係の面というのはやはり政府につながりがあるということは、私は十分知っておるわけなんです。けれどもこれらの百幾つの政労協関係の組合、春闘の中でことしの三月、四月ごろから今日に至っても全然ゼロ回答だ。まあ私の見たところによりますと、やがて人事院勧告が出るだろう、その人事院勧告が出ましたら、その人事院勧告に右へならえでやればいいわい、それまではぬらりくらりというて引き延ばそうか、これは失礼な言い方かもわかりませんけれども、そういうことがうかがわれてしょうがないと思うのです。ですからこの政労協関係賃金闘争につきましても、去年のお約束に従って、この際副長官にしっかりひとつ話が前進するようにがんばってもらいたいと思うわけなんです。いかがでしょう。
  54. 木村俊夫

    ○木村説明員 基本的には昨年と全然考え方は変わっておりません。ただ御承知のとおり、この政労協所属の特殊法人は交付金とか補助金とか、政府資金に依存する度合いが非常に強い団体でございますから、どうしても主管大臣、大蔵大臣の承認が必要だ。主管大臣、大蔵大臣が承認するためにはやはり公務員給与その他、一般の国民経済的な見地からこれをきめるのも必要だと思います。そういうことから、昨年まではたいへんこの賃金紛争が長引いてまずいこともございましたが、昨年、もう御承知とは思いますが、その点につきましてはやや改善のあとがあった次第であります。たとえば人事院勧告公務員給与閣議決定後、従来は、これは決していいとは申しませんが、四十日間ぐらいかかったのが、昨年は六日目には問題について答えを出しております。また自主性という面につきましては、たしか初任給について相当な幅を持たせてやったということ、この二つが昨年における改善のあとではないかと思います。したがいましてこの特殊法人の性格が変わらない以上、いま申し上げましたいろいろな制約はこれは免れ得ませんけれども、やはり自主性を尊重してこれを解決すべきだという基本的な考え方から、幸いにして、当然なことですが、今年度は公務員給与人事院勧告が出次第、政府としても公務員給与完全実施については早く早く閣議決定をいたす方針でありますので、その時期的な面につきましても、またその幅につきましてももう少し前進させるように大蔵省と話し合いを重ねたい、こう考えております。
  55. 後藤俊男

    ○後藤委員 時間が参りましたので、ぜひひとつ去年なりいままでの経過、いきさつがいろいろあるわけでございますから、しかもその間に何回となくストライキ等でから打ちのような形になるわけなんです。この事情は一々説明いたしませんけれども、一刻も早くひとつ政労協関係賃金問題を解決する方向で副長官も全力を尽くしていただきたい、こう思います。労働大臣あるいは労政局長といままでいろいろと御心配願ったと思いますけれども、ぜひひとついまの問題につきましては、まだ情勢がほとんど前進しておりませんから——この委員会で同じ問題三回目なんです。ぜひひとつ早急に解決する方向でやっていただくようにお願いしたいと思います。  終わります。
  56. 小林進

    ○小林(進)委員 関連。海外技術協力事業団にひとつ申し上げますが、一カ月前の六月十日に参考人に来ていただいて、この問題の御意見を承りました。外務省からも来ていただきました。きょうは田付理事長お見えになっておりますが、そのときに、こういう争議のために関係外国に非常に迷惑をかけている、その迷惑をかけている出先公館におわびを兼ねたあいさつに行かなければならぬから、理事長は国会に参考人としてお呼び出しを受けているけれども出席することができない、こういう回答でございました。間違いありませんな。だからあなたの考え方には、その争議のために外国に迷惑をかけている——国民に迷惑をかけている、国会に迷惑をかけているということよりも、外国の公館に迷惑をかけているから、そちらのほうが優先だから、理事長としてはまずそちらのほうへおわびに行かなければならぬ、あいさつに行かなければならぬ、こういうふうに事の軽重に差別をおつけになりましたね。これは間違いありませんな。国民に迷惑をかけていることよりも、国会に迷惑をかけていることよりも、外国の公館にあいさつに行くのが、よりあなた方の事業団としては優先的に重要であるということ、間違いありませんな。しかし、私どもはこの問題が一つふに落ちません。  それから第二点といたしましては、そのときにあなた、寺岡専務理事が来ておりましたな。そのときに、いろいろの委員会の行事が重なって、あなた方の問題に質問を開始いたしましたのがおそらく七時過ぎだったろうと私は思う。終わりましたのが八時過ぎだったと思う。その質問のときに、あなたはこういう約束をされたはずだ。それは、この争議の解決については最善の努力をいたします、そう言われませんでしたか。これはもし言われないというならば、いま一回速記録を調べてあなたの答弁をここで再確認することにいたしましょう。努力をいたしますと約束して帰った。帰って、あなた方がロックアウトしたのは何時でした。一時間後ですか、一時間前ですか。国会の質問に、その解決のために努力するといって約束をして帰った。一時間もたたないうちにあなた方はロックアウトした。しかるがゆえに、このロックアウトはあなたが国会に対する約束を行動で示されたものとわれわれは解せざるを得ない。それは国会のわれわれに対する回答だと私は見ている。団体交渉の場所で取りまとめの話をしているんじゃないんだ。国会の中で、速記者をつけて、国民の代表としてあなたに質問した。あなたはその国民代表としての一応の形を整えたこの場所で、問題の処理のために、解決のために努力をいたしますと言って帰った。一時間もたたないうちにロックアウトというような行動をもって、国会に答弁に来た。われわれの答弁に来た。間違いないですよ。行動をもって示したじゃないか。私は国会に多くの証人やあるいは政府の行政官等に答弁を求めたし、問題の解決に対して努力を求めたけれども、こういう答弁とこういう行動をもって回答を得たことは、私は初めてであります。ひとつ労働大臣、あなたも聞いてください。私はこの行動を通して、国会に対する挑戦であると解釈をした。大臣、私はそう解釈をしました。この事業団のやり方は、国会に対する挑戦であると私は解釈をいたしました。挑戦を受けたからには、われわれは国民の名において受けて立たなければいけません。残念ながら、国会は報復の場所ではないけれども、目には目でしょう。歯には歯をもって、やむを得ずこたえざるを得ない。私は覚悟いたしました。  その意味において、きょうは時間がありませんから、関連の質問でありますから、この問題は必ず具体的な方法をもちまして、私はあなたの回答に対して国会として、その回答にまた回答を差し上げますよ。具体的方法で、さしあたり、この社会労働委員会が開かれる限りは、最後まで私はあなた方の問題をここで取り上げます。田付さんに言っておきますけれども、そのためにあなたはまた外国の使臣にあいさつのために用事があったら、国会に来なくたってよろしい。そうして、あなたのそういうロックアウトの行動をもっての回答には、われわれは回答をもっておこたえいたします。  労働大臣、通常国会も開かれましょう。これは外務省から来ておりますから、外務省も呼びます。ほかの問題は全部犠牲にしまして、まずこの問題のために戦いますよ、私は。これだけを申し上げておきます。こういう不当な封建的な、国会に対してこれほど挑戦する者がある以上は、われわれは受けて立たなければならないのはやむを得ないことですから、どうかその点はひとつ大臣も肝に入れてお覚悟を願いたいと思います。同時に、監督官庁は外務省ですから、外務政務次官にも言っておきましたけれども、あらためて外務大臣にも言っておきます。もし問題が起きたら閣議でやってください、閣議で問題を取り上げぬなら、総理のところまで行きます。あくまでこの問題はやることだけは言明して、私の関連を終わります。
  57. 伊東正義

    伊東委員長代理 両参考人には御多用中御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  それでは質疑を続けます。島本虎三君。
  58. 島本虎三

    ○島本委員 大臣もこの問題はよく聞いておいてもらわなければならない問題ですが、労働大臣の場合は特に請求をしておりませんでした。  私は今回は国税庁とそれから全国税の労働組合との問題について、基本的な問題で伺っておきたい、こういうふうに思うわけであります。その労使の関係でありますから、前からずいぶん問題になった問題です。昭和三十七年十二月にはこれは参議院で亀田議員が社労で質問されておりますし、また衆議院でも横山利秋議員がやはりこの問題を指摘しておるのであります。その後国税庁では、現在の労使関係について、あるいは通達を出したといい、あるいはその後態度が全面的に変わったといわれておるのでありまするけれども、基本的な考え方に対してはどうなのかというような点、まず伺っておきたいと思います。  きょうは国税庁長官要求してありましたが、国税庁長官は来ておりますか。——委員長、国税庁長官要求してあるのですが、来ておらないのですが、来ている人は国税庁を代表してここで答弁できる人ですか、どうですか。これだけ伺っておいて進めますが、そうでないと、この場だけをのがれればいい程度の軽く見られるような社労委員会であってはだめなんだ。これは委員長のほうから確かめておいてください。
  59. 伊東正義

    伊東委員長代理 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  60. 伊東正義

    伊東委員長代理 速記を始めて。  島本君にお答えいたします。久世参事官が見えておりますが、おっしゃるとおり、責任をもって答弁いたします。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 それでは、質問に対する答弁を願います。
  62. 久世宗一

    ○久世説明員 国税庁と職員組合との基本的な関係と申しますか、国税庁の職員組合に対する基本的な考え方はどうかというお尋ねでございますが、国税庁といたしましては、国税庁の職員が置かれております職場環境と勤務条件等にかんがみまして、絶えず職場環境の明朗化とか勤務条件の改善にできるだけ努力をしております。また職員団体とも機会のあるごとに会いまして、よくその要求を聞いてまいっております。その意味で私といたしましても、職員団体の活動が健全なものであることを心から願っておるわけでございます。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 健全である組合に対して、では、こういうようなことがあっていいか悪いかというような点の若干の事例がある。たとえば信書の秘密は憲法によっても郵便法によっても、これは保障されておるところです。発信人が全国税の組合員であるということからしてか、これが無断で開封されておったという事実があります。郵政省のほうから来ておりますか——こういうような場合にはどういうようなことになるのですか。これは法によって認められておりますか。
  64. 野上昇

    ○野上説明員 ただいまの御質問でありますが、郵便法の第九条によりますと「郵政省の取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない。」とございます。これはもちろん憲法を受けてそういう郵便法で通信の秘密について示しておるわけでありますが、さらにまた「郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない」と、こういうことになっておりまして、郵便法の第九条では取り扱い中の信書について一般的にだれでもこれを侵すことはできないという点と、郵政省の職員について規定しておるわけであります。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると取り扱い中の範囲は当然、本人の手に入るまでが取り扱い中です。どなたが取り扱っていても、これは取り扱い中である。それが、かってに開封していいという瞬間がありますか。
  66. 野上昇

    ○野上説明員 その取り扱い中というのは、郵政省が引き受けまして、その名あて人に送達するまでをいうわけでございまして、名あて人に配達した後においてはもう取り扱い中のものでない、そういうことになるわけでございまして、したがってその後の信書の秘密の問題については、これは郵便法に規定する以外の一般の問題になろうかと存じます。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 当然これは取り扱い中で、憲法においても郵便法によってもこれを厳禁し、罰則さえあるのです。これが本人の手に入る前にかってに開封され内容を点検されたとすると、これは重大なことだと思うのですが、こういうような事態は健全なる組合員に対して行なうべきものではないと思う。これに対して、本人に当然これは陳謝すべきなんですけれども、こういうようなことにして事件を終わらしておりますかどうか。落着したものであればいいのでありますけれども、この経過はどうなっておりますか。
  68. 久世宗一

    ○久世説明員 いまお尋ねの信書の秘密でございますが、実は具体的に私どものほうでそういった信書の秘密を侵したという事件を聞いておりませんので、お尋ねの件がよくわからないわけでございますが、もう一度と申しますか、具体的に言っていただければお答えしたいと思います。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 具体的な名前をあげてやると差しさわりがあっては困りますから、具体的な例を言わないで、抽象的にこれを言っていてもわかるはずでありませんか。だから前もって調べさしてあるはずなんです。名前をあげよというのは、正当なる組合員に対しての一つの挑戦行動であります。——ほんとうにわからないのですか、わからぬなら言わざるを得ないのですが、なるべく言いたくないのです。  そうして、これに対して当然陳謝して終わっていれば、それでいいのであります。陳謝もしないでそのままあたりまえだという顔をしておる場合には、これは敵対行為につながるものであるから、正常なる扱いをしていないじゃないか。こういうようなところに一つの断絶が生じ、そういうようなところからまた思わしくないほうに走るのじゃないか。これはどうなんだというのが一つの質問なんです。  名前を一人一人あげていったら——私はきょうは時間が三十分しかない。だからもう少しあなた、誠意をもって言ってもらわないと困る。もう一回長官を呼ばざるを得ないじゃないですか。そういうような場合には、現場の管理者、これらを含めて陳謝しておくというようなのがあたりまえの行為じゃありませんか。それをやっていないのですよ。それは許されない。送達中であるならばというが、これは広く解すると本人の手に入るまでなんです。代行行為をしているのです。いわば委託管理者みたいになっているのです。それをあけてしまう。これは拡大解釈したらとんでもないことになる。こんなことは望ましくない。これはやはり陳謝して何でもないことにしておくのが、当然国税庁の態度じゃありませんか。
  70. 久世宗一

    ○久世説明員 そういったような信書の秘密を侵したという事実があったということを、実は私ども聞いておりませんので、いまそういうようなお答えを申し上げたわけでございますが、もしあるといたしますれば、御指摘のように非常に重大な問題でございますので、よくまた事実を調べまして、もしほんとうにそういうように信書の秘密を侵したという事実があれば、御指摘のように陳謝するのが当然かと思います。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 それなら陳謝し、そういうような関係の正常化をはかるようにしておくべきです。なお、その名前あとからお知らせいたします。  次に、豊島の問題です。この豊島事件というものは御存じですか。
  72. 久世宗一

    ○久世説明員 概要を聞いております。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 この場合には、管理者側は暴力を使って排除したりするほかに、口ぎたなくののしる、そして私文書に対してまでこれを引き上げさせて強奪してコピーをする、こういうような行為があるのですが、これはやはり行き過ぎじゃないかと思うのです。こういうような行動はやはり上部からの指示によって行なうことですか。
  74. 久世宗一

    ○久世説明員 豊島税務署の事件と申しますのは、六月十六日の午後四時ごろ——勤務時間中でございますが、ある職員が自席を離れましてよその課で何やら書いておりましたので、管理者が自分の席に戻るように、また、何をしておるのかということを尋ねたわけでございます。そのときに本人が、組合の仕事をしているということを申し述べましたので、勤務時間中の組合活動は禁止されておるので、直ちに自席に帰って仕事をするようにということを命じたわけでございますが、本人がそれに応じませんので、その際管理者と本人との間に言い争いがあったようでございます。  それから文書云々の件でございますが、勤務時間中の組合活動は違法行為でございますので、管理者といたしましては、その事実を確認するために、本人が書いておりました文書の提示を求めたわけでございますが、これを拒否したようでございますので、管理者がその文書を取り上げまして、事実確認のために複写をしたということでございます。その内容は組合の要求書の下書きのようなものだったということでございますし、また用紙も官の用紙を用いているというようなこともあったようでございます。私どもといたしましては、勤務時間中の組合活動というものにつきましては、これを厳重に取り締まっておりますので、こういった行動を管理者がしたというふうに聞いております。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 その辺も少し実態と違って、考え方の断絶があるのです。大体ああいうような事務になりますと、御存じのように何か慣例があるそうじゃありませんか。いわゆる通用語で言うと、レクリエーションのためのやみレクということで、これはもうはっきり言うと予定納税通知発送事務、こういうようなことで、自分の仕事が全部終わった場合には、若干の時間ぐらいは慣行として認められておったことだそうじゃありませんか。みな帰ってしまうのです。それで、いろいろな世論調査といいますか、何か調査したものについての整理を行なっておった。それについてそういうようなものはだめだということで、何かこういうようなトラブルがあったと聞いておるのです。こういうようなことはやはり、そうすると、現場の管理者として当然指示を受けてやったことだ、こういうように解釈してもいい問題ですが、これは上部の指示によってやったんだ、こういうようなことがいまでも平気で行なわれておるのですか。  その後、また、豊島地区労ですか、労協が何かそれに対して面会を求めて行ったならば、集団でやるのはだめだとこれを断わったという。何人行ったか。たった一人行ったんじゃありませんか。たった一人でも豊島地区労であればこれはもう集団である、こういうようなことで面会もしておらないという。やはりこういうようなことは少しおかしいじゃないか。こういうことに対しては私は、やはり上部の指導というものがあるということになるとたいへんだと思うのですが、こういうようなことがないようにすべきじゃないか。管理者をどういうように指導しておるのですか。
  76. 久世宗一

    ○久世説明員 ただいま御指摘の件につきましては、私どもは明らかに勤務時間中の組合活動と見ております。したがいまして、税務署の係長あるいは課長等の管理者が本人に注意をするということは当然だと思っております。  なお、この本人が書いておりました文書そのものにつきましては、まだ私どものほうにこまかい報告が参っておりませんが、あとでいま御指摘の地区労の方ですか、面会を求めたのに会わないということにつきましても、まだこまかくこちらのほうに来ておりませんので、ちょっとお答えいたしかねるわけでございます。
  77. 島本虎三

    ○島本委員 内部のこういうようなことは話し合いによって解決するように指導したほうがいいと思うのですが、これを口ぎたなくののしったり、そうして文書に対しても引き上げる、肩でこづいたり、こういうようなことはやはりすべきじゃありません。こういうことに対してはやはり話し合いで解決するように指導すべきではないか。そうしますか。
  78. 久世宗一

    ○久世説明員 こういった種類の問題につきまして、話し合いで解決とおっしゃいますその意味がどうもあれでございますが、御指摘のように、何かそこで……
  79. 島本虎三

    ○島本委員 これほどはっきり言ってもわからぬのですか。そういうようにして片方は、レクリエーションの時間だというてもう帰ってしまっておるからその場所でその時間にいろいろなデータを出して調べていたという。あなたは勤務時間だという。それならば、勤務時間中ですよということを話し合いによってわからせろということを言っておるのです。なぜこれくらいできないのですか。それをもうののしったり、取り上げたり、肩でこづいたり、こういうことを激発するから挑発行為だと言っているのです。わからぬのですか。
  80. 久世宗一

    ○久世説明員 いまおっしゃいました点につきましては、当初から係長と課長が、勤務時間中ですから組合の仕事をしないで自席に帰るように再三本人に注意をしております。その際、本人がそれに応ぜずに、いろいろことばじり等でかなり言い争いをしたようでございますが、当局としましては、この本人が管理者の忠告に従いまして直ちに自席に帰って仕事を始めれば、いまおっしゃいますように特別こういったいざこざがなかったかと思います。全般的な問題といたしまして、もちろんおっしゃいますように、こういった問題でいざこざを起こしたり、あるいはまた相互の処理に円滑を欠くというようなことは、当然われわれとしても望むところではございませんので、できるだけ円滑にいきたいというように考えております。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 この次第について一部始終、文書によってひとつ資料の報告を求めます。委員長、これはよろしゅうございますね。
  82. 伊東正義

    伊東委員長代理 それじゃそういうふうに取り計らってください。
  83. 久世宗一

    ○久世説明員 はい、承知いたしました。
  84. 島本虎三

    ○島本委員 これから税務大学の問題について伺いたいと思うのですが、あの税務大学はどういうような種類の大学校になっておりますか。
  85. 久世宗一

    ○久世説明員 国税庁の付属機関でございます。
  86. 島本虎三

    ○島本委員 その学校の中では組合のことなんかもいろいろ教えておりますか。
  87. 久世宗一

    ○久世説明員 研修生が税大を卒業いたしまして新しく職場に入る場合に戸惑うことがないように、職業人として身につけておくべき諸点につきまして指導をしております。その中に、たとえば職員としての心がまえ、それから職場における人間関係等の教育も行なっております。  なお、当然のことでございますが、国家公務員法を十分理解して職場に出ることが必要でございますので、その国家公務員法の内容をなします服務規律あるいは職員団体等の問題につきましての教育も、職務遂行上必要な技術的な教育という見地から、当然受けるべきものであろうと存じましてやっております。
  88. 島本虎三

    ○島本委員 全国税、それから国税会議、こういうような問題にも触れて、全国税は過激な組合である、それから国税会議は穏健な組合である、こういうような論評を加えて組合選択についての暗示を与えておる。こういうようなことは以前、全逓対郵政当局の関係でやはりこれと類似の行動があって、これはこの場所から強く指摘をしておいたことなんです。   〔伊東委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕 税務大学にもこれがあるということを聞いて私もがく然としたのですが、こういうようなことは労働省としても全般的に指導しておらぬのですか。以前全逓にもありました。今度見たら、税務大学にもあるのです。こういうようにして組合分裂、それから弱い組合のほうを指向する。また、こういうようなことに対しては、常識を与えるのだということでやっておるのです。これはどういうようなことが常識であるのかということに対しては——案外こういうような行き過ぎが多いのじゃないか、こういうように思うのですが、これは労働省はどうなんですか。
  89. 松永正男

    松永説明員 全逓の場合は公労法、それから労組法適用、それから国税、税務署の場合は国家公務員法の適用でありまして法体系が違っております。したがって私どもの所管でない。所管でないというとたいへん役人的で恐縮なんでございますが、適用はそういうことでございます。  それから労働運動あるいは職員団体の活動というものについてのたとえば不当労働行為制度というものにつきましても、労組法と国家公務員法と趣旨は同じでありますけれども、規定のしかたが違ってきております。  そこで、具体的にどういうものが——たとえば国家公務員法は不利益取り扱いというようなものをあれしておりますが、組合法のほうはそのほかにもいろいろな規定がございます。そこで具体的にはいろいろその法体系が違うことによって適用が違ってまいりますが、職員団体の行動にしましても労働組合の行動にいたしましても、基本的にはこれは労働者あるいは職員の基本的な権利であるというところに基づいておるわけでございます。したがいまして精神は同じである、こういうことが言えると思います。  それから、ただいま御指摘のような問題につきまして、やはりいま国税庁から御答弁がございましたように、職員としての一般常識を備える、これは必要なことだと思いますが、その際に労組法なり、あるいは国家公務員法の精神を体しまして、具体的個々の団体等につきまして教育をする場合には、客観的な資料、客観的な表現、そういうものが必要であろうかというふうに一般的に私どもは考えております。
  90. 島本虎三

    ○島本委員 その一般常識を備える必要があるためと言いますが、その中でこれは大内兵衛先生の「財政学大綱」、それから大学受験の本、そういうようなものも読んではならないと規定をしておるそうでありますが、大内兵衛先生の「財政学大綱」、一体こういうようなものは一般常識を備えるために阻害になるのですか。こういうような事実に対して労働省、これはどうなんですか。常識と言いながら常識外ではありませんか。
  91. 松永正男

    松永説明員 私ども不勉強でその財政学を勉強しておりませんので、先生の……(「習ったはずじゃないか」と呼ぶ者あり)習ったはずでありますけれども、具体的にどのような内容であるかわかりませんが、それとまた労働問題必ずしも——ではございませんので、そこら辺は国税庁のほうから御答弁願ったほうが適当かと思います。
  92. 久世宗一

    ○久世説明員 図書につきまして、税務大学におります研修生が一般教養のために自分で読みたいという図書について制限をしている——制限をする考えもございませんし、また制限をしておるということもございません。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 大内兵衛先生の「財政学大綱」やその他大学受験、こういうようなものが必要な本だと思って読むのを禁止するということは間違いですね。断じて間違いですね。これははっきり間違いだと言っておいてださい。
  94. 久世宗一

    ○久世説明員 そういう制限はしておりませんし、またそういうことを禁止と申しますか、そういうことを制限したとすれば間違いでございます。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 現にありますから、これは十分調べておいていただきたい。  それから職員が外泊する場合にはまだしも、九時半の時間におくれたりすると厳罰に処されるようになっておるらしいですね。反省室に入れられて隔離されて、そしてその中で自己批判をさせる、こういうような状態だというのですが、こういうような事実はあるのですか。
  96. 久世宗一

    ○久世説明員 税務大学校は御存じのように全寮制度をとっておりまして集団生活をしておりますので、集団生活の秩序を乱さないようにという部内の取りきめがございまして、それによりますと、いま御指摘のように外出時間、あるいはまた外泊のときの事前承認というようなことも規定されております。毎々そういった制限といいますか、規律に触れておる職員につきましては、本人の反省を求めるという見地から、謹慎と申しまして、教育官が一人対一人でいろいろ本人と話し合ったり、あるいはまた一人で反省をするというようなことをやっております。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 独房へ入れて反省の機会を与えるようなこういうやり方は、いま、はやりません。ほんとうにやるならば、よく皆さんと話をしながら、納得させることじゃありませんか。まして所用でおくれてきたくらいでそれくらいするのは、少し行き過ぎじゃありませんか。こういうようなことがいわゆる労使間に一つの断絶を生んでくるのです。団交の問題なんかでも何か差をつけてやっているようですが、そういうことはございませんか、全国税とその他の組合とで。
  98. 久世宗一

    ○久世説明員 両組合に対しまして団体交渉で差別をつけておるということはないと思います。また絶対そういうことをしないようにというふうに指導しております。  ただ、具体的にないかという御質問でございますが、実は今年の二月に東京国税局におきまして、全国税の東京地連が団体交渉を申し込んでまいりました。その際、予備折衝の段階におきまして、組合側から提示されました問題が、前回行ないました十二月の団体交渉ですべて解決と申しますか、協議された問題でございましたので、またあらためてそれをその時期に取り上げて団体交渉をするという緊急性を認めませんでしたので、その際団体交渉を一度行なわなかったということがございます。なおそのときも、局長交渉は行なわないが、必要に応じて国税局の総務課長が窓口となって、組合の要望なり申し入れをお聞きするというふうに申しております。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 一年間に何回くらいやっていますか。
  100. 久世宗一

    ○久世説明員 国税局単位でございますので、全国一定はしておりませんが、四回ないし六回くらいでございます。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 一回何時間くらいですか。
  102. 久世宗一

    ○久世説明員 大体一時間くらい——まあ一時間か一時間半くらいかと思います。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 一年は何カ月です。十二カ月ですよ。何日ですか。三百六十五日ですよ。そのうちたった五回、それも一時間ずつだから全部で五時間じゃありませんか。こんな団体交渉はどこにありますか。労働省、あなたも親類だから少し指導してやらぬとだめですよ。そのために労政局長に来てもらったのです。これはひどいです。それも双方の組合に対等にやるということを、はっきり国税庁長官も言っている。それが対等じゃなしに、いろいろな問題に対しても差をつけてある。こういうような状態では少しおさびしい。さびしいどころか、全然なっておらぬ。もう時間が来てしまってほんとうに悪いのですけれども、まことに重要な問題になる。委員長も聞いておられるとおりです。まともにやっています、民主的にやっているといったって、三百六十五日のうちたった五時間、これが一つの組合としての団体交渉の時間だ、これで民主的だといえますかね。こういうことはいけません。十分これは考えておいてもらいたい。  それから要求だけの問題じゃなしに、団交には差をつけない、第二組合が少数のときには第二組合にも手厚く会って交渉しているから、今後そういうことはしないということを、吉國長官ですか、前にはっきり言っているようですが、いま聞いてみたらそうでもないようです。団体交渉というふうなものはどういうものであるか、労政局長もいることですから、よく相談して——三百六十五日のうち、せめて五十日くらいやっているというならわかる。五日、それも一時間ずつだから五時間、これで民主的に運営しているということはとうてい考えられない。これは労政局長もよく指導してやってください。  それから税務大学校を出た者、出ない者いろいろあるのですけれども、第一組合、第二組合によって差をつけているような事実はありませんか。
  104. 久世宗一

    ○久世説明員 所属組合を異にすることによって差をつけているということはございません。
  105. 島本虎三

    ○島本委員 税務大学校第二十期卒業生のうちで差別が明確なものが指摘されるようですが、卒業生は全部で六十六名、現在五等級四十九名、六等級に残されている者十七名、六等級に残されている者のうち全国税組合員が十五名、全国税組合員でこの五等級の中に行っている者は一人もおりません。こういうような状態になっているようですが、悪い人だけ全国税に行っているなんというのはちょっとわからぬのだ。これはどういうことでしょうかね。はっきりこれについてはデータに出ているようですけれども、これは間違いないデータであります。これは差別待遇じゃありませんか。
  106. 久世宗一

    ○久世説明員 職員の昇格昇給につきましては、勤務成績を基本にいたしまして適正に行なっております。その際、御指摘のような、所属する組合を異にすることによって差別をするというようなことは一切いたしておりません。ただ二十期生と申しますと、現在職場に出ております一番新しいのが二十九期でございまして、卒業しましてから十年近くたっておるわけでございます。毎回の昇格におきまして税務大学校を出た人を全く同じように昇格さすというようなことは、一番初め申し上げましたような勤務成績等を考慮するという趣旨からしましてもやっておりませんので、差ができることはやむを得ないと考えております。
  107. 島本虎三

    ○島本委員 いま言うのは普通の答弁だけでしょう。内容においてなぜこう、これだけの違いがはっきり出てくるのですか。これによると、六十六名のうち五等級四十九名、六等級に残された者は十七名、このうちの十五名がもうすでに全国税の組合員だ、こういうようになっている。成績のいい悪いはだれが認定するのですか。いろいろやはり、こっちの組合に行ったほうがいいとか、あっちの組合のほうが悪いとか、こういうような指導をしているから、そっちに行った者は成績がいい、こう思って先に昇進させてしまう。こういうようなことがあってはいけませんよ。やるならもう少し適確に、あらゆる点から見ても指摘されないようにやるべきです。  この点はもう少し残りますから、この二十期生の成績はどういう評価でこれをやったのか、これを全六十六名について資料として持ってきてもらいたい。その資料によって次期にまたやることをここに残して、私の質問を終わります。
  108. 久世宗一

    ○久世説明員 いまの御指摘資料でございますが、実は二十期生は四百九十何名おりまして、残っております者も——(田邊委員あとで打ち合わせて資料として出しなさい。」と呼ぶ)それでは、その点検討させていただきます。
  109. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 西田八郎君。
  110. 西田八郎

    ○西田委員 ちょっと委員長にお伺いするのですが、労働大臣見えますか。——それでは労働大臣が見えるまで、局長ないしはその関係の方々にお伺いしたいのですが、まず最初に、労災保険のことについてお伺いいたしておきます。  というのは、労災保険法の一部改正のときに私から質問をいたしまして、通勤途上の災害についてどうするかということをお尋ねいたして、これから考慮するということでございました。なお最近全電通の労働組合ですか、ここから公社側に対して、通勤時間一時間以上に限って労働時間と認めろという要求を起こすことになっております。今日の交通事故その他を考えましたときに、この通勤途上の災害というものがきわめて数もふえておりますし、こうした実情の中で一体どのようにその処置をされつつあるのか。あるいはまた、それに対して調べられておるのか。そういう点、件数等詳しいものがあったらお聞かせいただきたいのと、それに対する対処をどうするかということについてお伺いをしたいわけであります。
  111. 和田勝美

    ○和田説明員 通勤途上災害につきましては、ただいま御指摘のありましたように、前国会で労災保険法の一部改正を御審議いただきましたときにもお答えをいたしましたとおりでございますが、その際申し上げましたように、労災審議会からの御意見は、専門家の会議を設けて早急に検討に入れということでございましたので、二月にその専門家の方をお願いをいたしまして、三月から審議をお願いをしておりまして、いまのところ毎月一回ずつ専門家会議をお開きいただいております。したがいまして、すでに五回にわたって専門家会議を開催されております。専門家会議のほうでは非常に具体的な事案の問題、あるいは他のいろいろの自動車等の問題あるいは民法上の問題、それから通勤上の問題というようなこと、あるいは外国の法制についても検討する必要があるというような御意見で、非常に熱心な御審議をいただいております。実は一昨日も七月の分が行なわれ、会議のほうではそういうことで非常に熱心にやっていただいておりますので、私どもとしましてはしばらくこの専門家会議の内容を見ていきたい。実はここには労災保険審議会と労働基準審議会の各側委員がそれぞれ二名ずつお入りいただいておりますので、組合側の意向もそういった点では十分反映をされておる、また組合のほうの方々もその席でいろいろと問題がある点も御認識をいただいておる、こういうふうに考えております。私どもとしてはしばらくその審議の模様を拝見しながら、結論が出れば、労災保険審議会と基準審議会に御報告をして、結論に従って事を処置したい、こう考えております。
  112. 西田八郎

    ○西田委員 たいへん御苦労さんですけれども、どんどん進めていただきたいと思うのです。  そこで、省側からその専門家会議にはだれか参与というか、何かの形で参画をしておられるのですか。
  113. 和田勝美

    ○和田説明員 労働省としましては専門家会議には担当官、私以下出まして、必要な資料説明あるいは資料の整理、そういうこと、それから行政上の問題点というようなことについては御説明を申し上げております。
  114. 西田八郎

    ○西田委員 特に要望をしておくわけですけれども、出張ということが依命行為であるなら、かりに通るコースが通勤と同じコースであっても、その途上に起きた災害はこれは労災保険である。そしてその出勤ということも、実は私は依命行為だと思うのです。出勤しなければ欠勤で、場合によれば給料も差し引かれるというようなことから、ぼくは出勤と出張は同時にやはり依命行為だというふうに考えるわけです。そうすれば、通勤途上である限り業務上にならずに、そして出張であれば業務上になるという、これは大きな矛盾だと思うのです。特に労働者はみずからひとつ事故を起こしてやろうと自分から飛び込んでからだをけがする人はだれもおらないわけであります。これは無過失といいますか、不可抗力によって起こってくる事故でございますから、そういう点については十分配慮さるべきだと考えますので、そういう点で、局長が出ておられるなら、それらの点はひとつ強く要望していただきたいとお願いをするわけであります。  次に、同じく労災関係にわたるわけでありますが、この法の改正によりまして、死亡した人の一時金が四百日分から千日分に引き上げられた、そうして給料も最低七百七十円に押えられたということなのですが、それで死んで七十七万円でありますね。法律が施行されるまでだいぶ期間があるわけですけれども、この間に死んだ人は非常に低い三十万八千円ですか、そういう補償で甘んじなければならない。もちろん遺族があればそれに対する遺族年金がついて回るわけでありますけれども、しかし、若年労働者の場合は、そうした扶養する者がいないという場合、これは道路ばたで交通事故を起こして死んでも自賠法の引き上げによって五百万円補償がされる時期に、また公害によってなくなった人たちの補償が四百万、五百万という多額の金額である時期に、日本の生産のすべてをになっておる労働者の工場の中における業務上の災害が、わずか七十万か八十万で補償されていいものかどうか、それではたして遺族の人に対して申しわけが立つのかどうか、こういう点等から考えますと、私はこれはやはり特別な措置を考えなければならないのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、それについて何らかの——もうぼつぼつ予算の時期でもありますし、そうしてまた新しい通常国会に向けての法案の修正等も考えられる時期でもありますから、そういう点の配慮があるのかどうか、ひとつお伺いしたい。
  115. 和田勝美

    ○和田説明員 ただいまの遺族補償の問題でございますが、実は具体的な例も出てまいりまして、未成年者の方でございまして、いわゆる遺族年金を受けられるような御両親もいらっしゃらない、もちろんお子さんもいない、そういう具体的な例があの法律が改正された以後に発生をいたしました。見ますると、年少者のことでございますので、非常に賃金も安いので、下ささえの分でやっと七百七十円になるというような例がございました。ただ法律的にだけ冷たく申し上げますれば、新しい法律が施行されませんと千日分を支給するという法的根拠がございませんので、七百七十円の改正分だけになるわけでございます。しかし、いま御指摘もありましたように、他の場合にいろいろ高い補償が行なわれているじゃないかというような例もあるわけでございます。そういう場合におきましては、どういう事情で死亡事故が起きたかというようなことにつきましては、私どものほうで調査をいたしまして、できれば、法的な措置は現行法では無理でございますので、事業主側との懇談といいますか、そういうものを基準局としてやって対処したい、こういうように考えております。この点につきましては、こういう御質疑もあることでございます。大体先生が予定していらっしゃるのはたぶん島根県のほうだろうと思いますから、そちらのほうとよく打ち合わせして、事業主側の善処を求めるということで対処さしていただきたいと考えております。
  116. 西田八郎

    ○西田委員 これは予測されて発言されたら困るのですけれども、実はこれは西脇で起きました織物の女子の従業員の問題でございます。わずか十九歳ですか、なくなられまして、遺族がもらって帰った金が三十万八千円、いまのような懇談会で経営者と話をした上で出させるということではありますが、えてして中小企業にこういう事故が多いわけでございます。その場合中小企業に負担能力がないということになれば、これは泣き寝入りしかしかたがないということになるわけであります。したがって、こうした事故はそうそう起きるものではないと思うのです。そうだとするなら、やはり特別に措置を講ずべきではないか。死亡の場合に一時金で払っていけば一千万円近くの一時金を払っていかなければならないわけであります。それを一時金でケリをつける、解決するわけでありますから、そうだとするならそれ相応のやはり代償を払うべきではないか。命のことでありますから、何千万円積もうとそれは取り返しのつかないものでありますけれども、しかし、こういう制度がある限り片手落ちにならないようにするのが至当ではないかと思うわけであります。そういう点について、ただ単に労使の間で懇談をするとか、あるいはできるだけあっせんをするというようなことではなしに、私はやはりこういう点について法改正をして特別の措置を講ずべきだと思うのですが、その点についていかがですか。
  117. 和田勝美

    ○和田説明員 予測的なことを申し上げた点はおわびを申し上げます。いまのようなことで法律の改正問題でございますが、実はこの点は国会で御審議をいただきます前に、政府部内としてはそういう事例が起きることが十分予想されましたので、いろいろ意見の調整をしたり、あるいはほかの法令のいままでの例というようなことをやりました結果、新しい法律ができる以前の遡及問題については非常にシビアな態度でございまして、やはり国会で御審議を願って、それから以後の問題にすべきではないかというようなことで政府部内としては意思統一をいたしておりますので、いま直ちにそういう改正法をここで提出申し上げるということを申し上げるのは非常にむずかしい状況にございます。そういう法律を新たに特別法的に改めることは非常にむずかしい状況にあることは、一応御認識をいただきたいと思います。実際問題としては、中小企業の方にはそれほど多額な負担能力があるとも私ども思えない場合が多うございますから、具体的な問題について、西脇のほうというお話でございますが、事例を伺わしていただいて検討さしていただきたいと思います。
  118. 西田八郎

    ○西田委員 私は済んだものをもとへ戻してそれに対して補償しろという無理難題を申し上げているわけではないのです。これはいずれの場合でも法の施行された日以前と以後という問題が出てくるわけです。したがって、大かた予想されるものについては経過措置というような方法がとられていくわけでありますけれども、しかしこうした金額等の改正については、その日以前にやったものは不幸であったとあきらめるよりしかたがないと思うのです。しかしこれは一つの事例でありまして、今後そういうことをお考えになっているかどうか。それは何も特別法をつくれというわけではなしに、現在の労災保険法を改正することによって十分でき得ることではないかと思うのです。政府のほうでは、さきの国会で労災保険法の一部改正するときには、国際慣習といいますか、ILOの勧告に従う基準まで、いやそれ以上上がっているんだという御説明もあって、私どもも賛成申し上げたわけでありますが、やはりこういう盲点が出てくるわけです。しかもそれが一たん起こってくると非常に大きな問題に発展をしていくというようなことがあります。したがって、そうしたことがすでに起こってきておるとするなら、それに対する対処の方法を考えるべきではないか、それが私は行政の一面ではなかろうかと思うのですが、いかがですか。
  119. 和田勝美

    ○和田説明員 実はこの一時金の問題につきましてはいろいろ問題がございまして、法律的に申しましても、先生すでに御承知のように、経過措置のまた延長というようなかっこうで、本来的にいえば一時金は廃止して年金の充実に充てるべきじゃないかというのが制度の基本的な姿勢なのでございます。そういう点もございまして、一時金をある時期にさかのぼって法的に措置するということは非常にむずかしい。その点は先生の御質問でも御認識をいただいておるようにうかがえます。法律的に措置をしないとなりますと行政上の問題が出てまいりまして、なかなかむずかしい問題でございますが、せっかくの御質問でございますので、事務的にできるものがあるのかどうか、ひとつ検討はさしていただきたいと思います。
  120. 西田八郎

    ○西田委員 ひとつ十分検討していただきたいと思います。  次に、さきの国会のやはり労災保険法の一部改正の質問のときに御質問申し上げました綿糸じん肺について、その後労働省の綿糸じん肺の調査団ができておりますが、そのことから新しい結果がわかってきておるのかどうか、何かそれについての処置をされつつあるのかどうか、お伺いしたいわけです。
  121. 和田勝美

    ○和田説明員 先般の国会におきまして私ども調査団をお願いしておるということを申し上げましたが、先生三人にお願いをしてやっております。いま聞きますと、報告書はまだ提出をされてないようでございます。私どもとしてはもう最終段階に来ていると思いますし、そのうちの一人の先生はすでに学会で研究発表をなさっている向きもありますので、三人の方の御意見がまとまって間もなく報告書をいただけると思いますが、いただけましたら、その内容に従いまして私どもとしては善処していきたい、かように考えております。
  122. 西田八郎

    ○西田委員 次に、勤労婦人のことについて多少お伺いをしたいと思うのですが、最近産業の発展拡大ということによりまして、ミセスパワーといわれる婦人の労働力というものが、パートタイマーなりあるいは日雇いという形において相当ふえてきております。また、そういう関係から共かせぎというものも相当数にのぼってきておるわけでございますが、今度家内労働法ができたことによりましていろいろと、一面労働者を救いながら、一面また矛盾が出てきておって、主婦の労働者が一たん職場に入りながらまた引き下ぎる、家庭に閉じこもるという事例が出てきておるわけであります。最近の傾向から見まして、労働力不足の状況等から判断をいたしまして、これはかなり重要な問題だと思うわけでありますけれども、この勤労婦人に対して特別に何か福祉対策というようなことを労働省のほうでお考えになっているのかどうか、まずそれからお聞かせをいただきたいと思います。
  123. 高橋展子

    ○高橋説明員 仰せのとおり、近年非常に婦人労働者がふえておりますし、なかんずく家庭を持つ婦人が職場に出る傾向が多くなっております。また、今後も労働力不足の進行の中でこれらの婦人に対する期待というものは増大するものと考えるのでございます。そのような情勢の中で私どもといたしましては、婦人が職場においてその能力を有効に発揮して国の経済発展にも参与し、またみずからも社会参加を通じて生きがいのある生活ができますように、諸般の条件整備ということにつとめてまいりたいと考えておりますが、特に今後当面の施策といたしましては、婦人が家庭を持ちながら働くことを容易にするための施設等の整備、あるいはまた婦人がその職業の能力を高めるための教育訓練、条件の整備、あるいは婦人が生涯を通じて職業にその能力を生かしていくというような生活設計を可能にするような諸般の整備あるいは相談指導、このような体制に力を用いてまいりたいと思っております。
  124. 西田八郎

    ○西田委員 諸般の整備ということでいろいろ考えてはおられるようですけれども、なかなかうまく進んでないようです。一つは、パートタイマーの失業保険の取り扱い等につきまして前回も質問をいたしましたし、また私ども自身としても、私が繊維産業の出身であるということで、婦人の労働者をたくさんかかえておる立場から——パートタイムも近年非常にふえております。そういう関係から失業保険の適用についてお願いもしてまいりましたし、また健康保険等の取り扱いについても御無理願いたいということはずっと労働省にお願いをしてきたわけでございます。前国会でもこの点について質問をしたわけでありますけれども、それについてまだ十分に——まあ失業保険のほうはどうにかかっこうだけはついてきたようでありますけれども、そうした社会保険が適用されないというハンディが婦人の足を、主婦の足を職場から遠ざける一つの原因にもなるのじゃないかと思います。したがって、そういう点について今後どういうふうして処理していかれようかということが一つ。  時間がありませんからかためて御質問をしますので、かためて御答弁をいただきたいと思うのですが、もう一つは、やはり乳幼児の託児の問題があると思います。現在は児童福祉法に基づいての保有所と学校、これは文部省の管轄だと思うのですが、幼稚園がある。それ以外に託児ということが非常に問題になっているわけでありまして、農村地帯に行きますと、農繁期だけ託児をする。しかし、農閑期は働きに行かなければならない、そのための託児所がないということで非常に悩んでおられる。こういうものもはたして企業だけにまかしておいていいものか。現在は企業で託児所をつくられることを非常に奨励しているようでありますけれども、私はそれだけで済まされる問題ではないと思う。したがって、そういう勤労婦人のいわゆる子供を預ける場所について、これは単に預ければいいということでなしに、やはり子供がそこで生々発展するためのいろいろな基準というものも必要になろうかと思うのですが、そういうことについて一体どういう対策が立てられておるのか。また、そうしたことについてかりにやっておられるとすればどの程度成果があがっておるのか、この点についてお伺いをしたい。  もう一点は、中高年婦人の職業訓練という問題ですね。これは内職補導所というような形で各県に設けられ、あるいは市等でやっておるわけでありますけれども、この内職補導というような形ではきわめて消極的な職業進出ではなかろうかと思うのです。内職は内職にすぎないのであって、生産工場に婦人の労働力というものをフルに有効活用するためには、一定の職業的な知識とその訓練が必要ではなかろうかと私は思う。そういうものについて特別にそうした初歩の職業訓練をするような施設はほとんど見当たらないと思うのですけれども、そういう点について今後どういうふうにしていかれるのか。  これは私が見聞してまいりましたアメリカの例でありますけれども、高等学校あるいは中学校の一隅に訓練所が設けられておって、一定の時間開放されておって、そこへ行ってだれでも職業訓練が受けられる。そしてその認定を受ければその資格が与えられるというような制度がとられておりました。これはノースカロライナで見た施設でありますけれども、そういうことが日本にもだんだん必要になってきているのじゃないかというふうに考えるわけですが、そうした職業訓練についてどう考えておられるか、この三点についてひとつ……。
  125. 住榮作

    ○住説明員 失業保険のパートタイマーに対する適用についてのお尋ねでございますけれども、御承知のようにパートタイマーは、かつては、非常に雇用期間が短い、就業時間も短い、しかも家庭婦人が多かったために、やめられたあとは家庭に入られるというようなことで、失業保険料がかけ捨てになるというようないろいろの観点から適用対象になっていなかったのでございますが、最近、労働力の不足状況も反映いたしまして、雇用期間も長くなる、就業時間も長くなる、しかもパートタイマーの労働条件については就業規則で明確になる、常用労働者とほとんど変わらないという実態が非常に多くなってまいってきております。そういう意味で私ども、パートタイマーについても常用労働者とほとんど変わらないという実態にかんがみまして、失業保険を適用することにいたしておるわけでございますが、今後もそういう。パートタイマーの就労の実態を考慮いたしまして、失業保険の適用を受けられるように適宜措置してまいりたいと考えておるわけでございます。
  126. 高橋展子

    ○高橋説明員 失業保険につきましては、ただいま職安局長から御説明のとおりでございます。   〔増岡委員長代理退席、粟山委員長代理着席〕  そのほか、社会保険と健康保険とはこれは厚生省の御所管でございますが、パートタイマー全般の問題につきましては、私どもといたしまして、このパートタイム雇用制度というものを近代的なきちっと整備されたところの雇用制度として確立してまいるようにということで従来からいろいろと検討をいたしてまいっておりますが、特に最近はこの趣旨を労使双方に指導していく、そのような態度で啓発活動を実施いたしております。で、基準監督機関、職業安定機関等と協力いたしまして、第一線の各地で労使への指導をいたしているところでございます。  それから託児の問題でございますが、これも地域で公立の保育所を設置いたしますのはこれは厚生省の御所管でございまして、私どもといたしましても大いにそれを推進していただくようにかねてお願いしている、そのような立場でございますが、労働省といたしましても、この託児につきましては非常に重要なことと考えますので、事業所が託児所を設ける、これも地域等によりまして非常に有効な措置でございますので、これを促進するための措置を従来からとってまいっております。今後もそれを一そう強めたいと思っております。  中高年婦人の職業訓練につきましては、これもやはり中高年婦人の特質にかんがみまして、短期の特殊な職種についての講習等を実施してまいっております。もちろん公共職業訓練所におきまして中高年婦人もいわゆる訓練法に基づくところの訓練を受けることはできるわけでございますが、特に私どもといたしましては、短期の職業講習を行ないまして、中高年婦人になじみやすいところの講習をいたしております。このようなプロジェクトを今後はさらに拡大してまいりたい、このように考えております。
  127. 西田八郎

    ○西田委員 託児のことについては、児童福祉法の保育所は厚生省関係だ、こうおっしゃる。私はそれはわかっておって質問しておる。中小企業あるいは地場産業というものはどこにもあると思うのです。最近はそれがいわゆる構造改善というような形で共同で作業をするとか、大量生産の方向へ少しでも事業内容を改善してやっていこうではないかという努力がなされておるわけで、したがって、従来は内職程度の家内労働で済んだものが、最近はある作業場へ通わなければならぬというような状態が生まれてきておるわけであります。それをただ単に厚生省の児童福祉法による保育所というだけでは、問題があるのではなかろうか。したがって子供さんを特別に預かるような、そういう勤労婦人のための託児所というようなものが建てられてももういいんではないだろうか。それを単に企業だけにまかしておくということであれば、企業は、それは確かに設備能力あるいは管理能力があればいいけれども、しかしそういう管理能力のない中小企業の集まった共同体といったようなものなら、そういうところまではとてもじゃないがその経営面からも出費することができないというような点について、これはもう労働省として大いに雇用促進の意味からもあるいは労働力確保の意味からも奨励すべきであろうし、またそういう点について積極的に施設をつくっていくべきではないかというふうに思うわけですけれども……。
  128. 高橋展子

    ○高橋説明員 仰せのとおりに私どもも考えまして、それで従来から企業がそういう託児施設を設けるときには融資という措置で御援助をしてまいったわけでございますが、今後はただいま仰せの事業主が共同で託児所を設けるというような場合、あるいは特定の企業等につきましては、その必要に応じまして融資にとどまらず助成というふうなことにつきましても道をつけてまいりたいと、ただいま検討中でございます。
  129. 西田八郎

    ○西田委員 時間があと一分しかないのですが、大臣がお見えになっていますのでお伺いするわけでございますけれども、ぼつぼつお盆も近づいてまいりまして、各事業所の人がそれぞれ自分たちの故郷へ帰る、いわゆる帰省の時期が来たわけでございます。前国会でぜひとも大臣にこの点はひとつ御協力をいただき、御努力をいただきたいということをお願い申し上げました国鉄運賃の割引のことです。これについてその後どのようにお考えをいただいたか。ことしはその年二回というようなことではなしに、何回かふやしていただいたのかどうか。学生諸君は、大学に行っておる人ですが、アルバイトもしてはいますけれども、普通家庭あるいは中流以上の家庭が多いわけです。そういう人が万博へ行くためにも鉄道運賃が割引をされておるのに、ほんとうに勤労青少年が帰省するときにも制限がせられる。しかも往復切符を買わされるというような実情があるわけなんですけれども、そういう点について大臣、どうなっているのか、ことしは通していただけるのか、ひとつお答えをいただきたいのですが……。
  130. 野原正勝

    ○野原国務大臣 勤労青少年の運賃割引の問題でございますが、現在盆暮れの帰省にあたって割り引いていただくということ、同時に、万博についての特別の割引をやるということが実現を見たわけでございますが、これは将来できるだけ多く勤労青少年に対しましては割引制度を拡大していきたい、そのように今後努力していくつもりであります。
  131. 西田八郎

    ○西田委員 大臣いつも努力、決心、善処ということで済まされるのですけれども、これでは私ども質問した者としても、またこの質問を期待しておられる人にしても、もう一つ何かこうすっきりせぬものがあるのじゃないか。したがって、これはもうぜひ学生並みの努力をしていただきたい。重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。  次にもう一件、大臣にお願いをしておきました、十八歳以下の人が入場してはならないいわゆる風俗営業といいますか、そうしたところで十八歳以下の人が働いている、これはそこへ入ってはいけないところでなぜ働かすんだということでお伺いをしたわけですけれども、その後特別に制限かなされたようにも聞いていないわけですが、それらについて一体どのようになっておりますか、お伺いいたしたいわけです。
  132. 高橋展子

    ○高橋説明員 私からお答えさせていただきます。  未成年である者に入場を禁止しておりますところのいわゆる遊興的な場所がございまして、そこに働くことは禁止しないのはいかがか、このようなお尋ねであったかと思います。このことにつきましては確かに、たとえばパチンコ店というようなところで若い者が働くということは、望ましいとは言いがたいと思います。しかし現在の基準法の法制上は、御存じのことでございますが、年少者の就業を禁止いたしますのは特殊の遊興的接客業といいまして、バーであるとかキャバレーであるとか、そういったところで接客をするということについての制限でございまして、パチンコというようなところでは、これは必ずしも接客をしているという状態でもございませんし、行政解釈としては、現在はパチンコ、マージャン屋等のたぐいは就業制限のワクからはずしているところでございます。ただ、確かにあまり望ましいことではなく、むしろ非常に望ましくないことであると思いますので、それにつきましては勤労青少年がそのような場所に就職をしないように、もっといい、健全な職場への就職ということを積極的に促進する、あるいは就職後も余暇の善用を指導する、健全に勤労青少年ホーム等で大いに若さを発散させる、そちらの積極的な面の指導でもって、当面は勤労青少年がそういうような暗いほうに流れていくのをむしろ防止していく、こういう態度で臨んでいくというつもりでございまして、まだ直ちに法令につきましての検討をいたすという態勢でもございません。
  133. 西田八郎

    ○西田委員 それは婦人少年局長から法令を検討する態勢でもないと言われると、はなはだがっくりするのですけれども、これは接客ということは、確かにそれは客に接していなければ——それはからだで接するのか、手で接するのか、口で接するのかということになるので、そういう場所は十八歳以下の人を入れてはいけないのでしょう。遊ばしてはいけないところなのでしょう。そういうところで働いていて、その目の前で見ているわけです。そんなことがはたして勤労青少年福祉法に基づく勤労青少年の福祉、健全な育成ということになるかどうか、これはきわめて問題だと思うのです。したがってこれはそんな消極的な態度でなしに、もっと積極的な姿勢で禁止をしてもらいたい。これはただ労働力不足という問題だけでなしに、やはり青少年の教育の問題あるいは青年の健全な育成という面からいっても重要な問題だと思うのです。やはりバーやキャバレーなんといいますと、これは何といいましたって特に家庭のうっぷんなり職場のうっぷんなりはらしに行くところですから、それはもうたいへんなことばも出るところでありますし、またそういう姿態も演ぜられるところでありますから、それをその場で見せつけて目で見ておるのに、それはかまわぬのだ、客に接しさえしなければかまわぬのだという考え方は私はどうかと思われるわけであります。したがってこの点は十分ひとつ力を入れて、指導といいますか、これは行政でできると思うのです。政府答弁のときには法律の規定があってなかなかできませんと言いながら、その法律にないことを行政でやっておられるわけですから、そういう点からいけば、いいと思われる、世間から支持されるものはもっとどんどんおやりになっていいんじゃないかと思うのですが、その点もう一回聞かせていただきたい。
  134. 和田勝美

    ○和田説明員 基準法それ自体の問題もございますので、私からもちょっと申し上げておきたいと思います。  実は基準法の態度は、これはもう先生よく御存じでございましょうが、カフェー、バーとかそういう客と直接的に接するような場面、直接的に酒席のようなところで、労働者に、遊びにくる人が具体的なものがいろいろできるようなそういうところは全面的に禁止をするという態度でございまして、まあパチンコ店とかあるいは成人向け映画の場合、映画館の従業員とか、直接的に見たりなんかしないような場合においては、現在は禁止状態になっておりません。しかし世の中の進歩発展でものの考え方が変わるわけでございますから、この点は実は労働基準法研究会でも女子、年少者の就業制限問題についてはこれから御議論が進んでくることと存じております。そういう際に先生の御質問の趣旨等も御報告をして御検討をわずらわしたい、かように考えております。
  135. 西田八郎

    ○西田委員 もう一点だけ、ひとつ時間を許していただきまして……。  先日、おそらく労働省案ということではなしに、あるいはそうした立案の過程でマスコミに情報が入って流されたものかどうか知りませんが、非生産性部門に働く労働者のいわゆる就労規制といいますか、そういうものをしていこうということで、実は百貨店のエレベーターガールであるとかあるいはホテルのドアマンであるとか、だいぶあげられておりました。そういうものがテレビにも放映をされましたし、またテレビではさっそくモーニングショーでそうした関係の人たちを集められて意見を聞いておられたように思うわけです。いまの問題と関連をいたしまして、これは重要な問題になってこようかと私は思うのです。いずれが、この人の仕事が社会に必要でないかどうかということの判定は、これはきわめてむずかしい問題でありますし、本人自身がそれでけっこう使命感を持って働いているということになれば、それをおまえの仕事は必要ないのだというようなことを言うことにもはばかるだろうけれども、しかし国の経済なりあるいは国民生活全体から考えた場合に、やはりそれは一つの基準をつくっていかなければならぬ問題だと思うのです。したがって私はあれを出されたときに、なかなかいいことを言う、何回か質問をしたり意見を申し述べておる私として、労働省なかなかやりおるということで若干賛辞を呈しておったのですが、その後どうなったのですか。立ち消えのようになっておるわけですけれども、これは一体どのように考えておられるのか、検討をしておられるかどうか、過程であるのか、お聞かせいただきたい。
  136. 住榮作

    ○住説明員 先生御指摘の問題につきまして、まあ私ども今後の労働力の需給の状況を考えまして労働力政策をどのように考えていくかということについて、内部でいろいろ検討をいたしておるわけでございます。そういう意味で、一つ労働者が自分の持てる適性、能力というものをどのように生かすのがいいのかというような観点、それからその場合でも産業側の需要というものを、それはどのように考えていったらいいのか、こういう労働側の、働く者の立場の意思、それから需要側の意思、こういうものを考えながら、労働力の非常に今後不足する実態に対処して有効な政策を展開していかなければならない、こういうような観点からいろいろ検討しておるわけでございますが、たまたまそういう検討の一部の内容が漏れまして、いろいろ波紋を巻き起こしたことをまことに申しわけないと思っておるのでございますが、いま申し上げましたような基本的な立場で今後の雇用政策の考え方を検討いたしておる最中でございますので、これについてはいろいろのお考え方があると思いますので、各方面の意見も十分聞きまして、私どもといたしましては、慎重に対処していきたいというように考えておる次第でございます。
  137. 西田八郎

    ○西田委員 終わります。
  138. 粟山ひで

    ○粟山委員長代理 寺前君。
  139. 寺前巖

    ○寺前委員 きょうは、私は、政府関係機関の現場の労働条件の問題について、京都の簡易保険局へこの間行ってきましたので、この労働条件の問題について郵政当局とそれから労働省の見解についてまず第一点、お伺いしたい。  第二点は、先般の委員会で染色ガンの問題について質問したけれども、これについてのその後の処置について聞きたいと思うのです。  第三番目に、時間が許されるならば、失対の問題についてお伺いしてみたいというふうに思っております。  第一点の、京都の地方簡易保険局、ここは、郵政省のせん孔機導入では、全国の最初を切って、すでに四十二年から行なわれているようですね。ところが、ここで、取り扱い件数一千万件のうち六百四十万件が機械化されて、残りは年間に旧契約百八十万件を機械化して、今後二年間に全部機械化する目標ということをこの間行って聞いたわけですが、ここで仕事をしている人九十一名、その人たちの実態を聞いてみたら、障害を訴えている人が、当局の人の説明でも四十七名、そのうち業務不能といわれている人が十二名、業務は可能だといっている人が三十五名という数字を言っておられる。さらに個別に聞いてみたら、もう少し人間が多くて、六割からの人が障害を訴えて、いろいろ治療してもらっているという実態が出ているんですが、これはそのとおり受け取っていいんですか、郵政の人。
  140. 東城真佐男

    ○東城説明員 そのとおりでございます。
  141. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、このように障害の訴えをやっている事実は、一体、原因は何ですか。
  142. 東城真佐男

    ○東城説明員 ただいまのところ、はっきりとした実態はつかめておりません。
  143. 寺前巖

    ○寺前委員 これははっきりした事実がきまらないというのは——しかし起こっているのは、全部腱鞘炎関係の障害を訴えているのでしょう。
  144. 東城真佐男

    ○東城説明員 大体、そのとおりでございます。
  145. 寺前巖

    ○寺前委員 そうでしょう。そうすると、腱鞘炎関係の実態が出てきているということは、それは仕事から出ているということじゃないんですか。仕事以外から出る可能性が何かありますか、特別な条件。
  146. 東城真佐男

    ○東城説明員 それは仕事から出てきております。
  147. 寺前巖

    ○寺前委員 そうですね。そうすると、仕事から出ているということになると、これはえらいこっちゃというので、対策はどういう対策をとっておられますか。
  148. 東城真佐男

    ○東城説明員 医師の指示でパンチャー作業を見合わせるようにと言われている十二名は、職務変換をいたしまして、事務のほうに回しております。その他の三十五名につきましては、軽い者、多少の程度はありますが、それぞれ医者の治療を受けて、その通院に要する時間だけ事務量を減らす、こういう形で対処しております。それで、それによりますと、やはり新規採用がなかなかできないものですから、どうしても仕事がたまりますので、一部たまった分を外部へ委託に出すという方法でいま対処しております。
  149. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、仕事の環境から事態が発生している、何らかの処置をしなければならないので、委託を下にするとか、その他仕事の上での若干のあれをしなければならない。   〔栗山委員長代理退席、田邊委員長代理着席〕 そうすると、仕事中に発生している問題だから、したがって、当然、これは治療に対する責任は郵政が持たんならぬですね。これはもう当然なことですね。そういうふうに考えていいですね。
  150. 東城真佐男

    ○東城説明員 これは公務災害というふうに認定されますと、全面的に省のほうで責任を持つということになります。現在の段階においては、まだそういうふうになっておりません。私傷病扱いということになっております。
  151. 寺前巖

    ○寺前委員 しかし、先ほどの話では、腱鞘炎関係が出ている。それは仕事から出る以外に考えられない。しかも大部分に出てきている。こうなってきた場合に、これは認定問題は別としても、私は、当然責任をもって当局が解決をしなければならない問題だというふうに思うのですが、その点間違いないでしょうな。そんなのは個人の責任じゃというわけにいかぬでしょう。どうです。
  152. 東城真佐男

    ○東城説明員 これがパンチャーに多く出ておるということは実態でございますが、これが完全に仕事によって、はっきりした起因で出たものであるか、その因果関係について目下検討中、こういうことでございます。
  153. 寺前巖

    ○寺前委員 これは何度も同じことを言っとったって始まらぬけれども、あなた、腱鞘炎関係の病気が出ている、大部分が発生している。それ以外に、これは個人条件や言ったって、大部分が出るという場合に、個人条件とは言えない。そうしたら、あなた、どこから考えても、仕事の面から出てきたというふうに見えなかったら、当局の責任は済まぬじゃないですか。何回も同じことを言うんだけれども、技術的にあと整理をそういう公傷ということでするかしないかの問題はあと残しておきますよというけれども、仕事の面から出ている以上は、責任を持ちます、だから、仕事中でも治療をいたします、あたりまえのことです。だから、それで休んだからといって、これは勤務上の、たとえば給与上差しつかえないようにするとか何らか、当然そのぐらいのことは考えておられるだろうと思うのだが、そうじゃないのですか。
  154. 東城真佐男

    ○東城説明員 給与上の点は考慮しております。それで、本人の上申をまって認定をしていくという体制で目下進めております。
  155. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、次に聞きたいのですけれども、それじゃ、あなたのほうで、そういう申請に基づいて公務災害にするかどうかという問題が次に出てきますね。そうでしょう。ところが、あすこでちょっと私もびっくりしたのですが、あなたのところの公務災害の認定の手順というやつを見ると、こう書いてあるんだけれども、これは間違いないですね。四十一年七月七日付ですけれども、「せんこう機作業従事職員の健康管理について」というやつで、保管一一三九です。「キーパンチャーが病気と感じたら管理医に診察してもらう。」「管理医は精密検査の必要を認めたときは指定医にみせる。」「指定医が専門的な判断の下に所見を出す。」そうしてずっといって、上申をやっているというふうになっているけれども、これは間違いないですね。
  156. 東城真佐男

    ○東城説明員 それは間違いございません。
  157. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、これはどうなんですか。たとえば定期の健康診断の場合でも、本人がほかの医者で見てもらって診断書を出してもいいんですね。基準局長、そうなっているでしょう。それから労災のほうは、本人が選ぶところの医師の診断書を出していくというやり方をやっているんだけれども、あなたのほうはそういうことは許さぬのですか。
  158. 東城真佐男

    ○東城説明員 一般の定期健康診断は、どの医者でもいいというわけじゃなしに、やはり指定する医者の健康診断を受けるというたてまえになっております。前段の部分でございます。   〔寺前委員「それでは基準法との関係はどう   なりますか。」と呼ぶ〕
  159. 田邊誠

    田邊委員長代理 委員長の指名を受けてからやってください。
  160. 寺前巖

    ○寺前委員 基準法に定期診断についての項があるんだよ。それはどう解釈するか。簡易保険局はちゃんと基準局に登録しなければならない作業場ですよ。三六協定も全部登録しなければならぬところです。あれによると定期診断の場合、本人の選ぶところの医者で出してもかまわぬことになっておるけれども、その問題をあなたはどう解釈するんだ。
  161. 東城真佐男

    ○東城説明員 部内の通達によってそのように取り定めております。
  162. 寺前巖

    ○寺前委員 じゃ部内の事情で、基準法によるところの、全体の労働者に施行しているものを簡易保険局は適用しなくてもよろしい、郵政はそんなものは無視してよろしいという態度をとるというのか。
  163. 東城真佐男

    ○東城説明員 決してそういう趣旨ではございませんが、ただ平素、パンチャーにつきましても一般の職員につきましても、いろいろ病気のときに見てもらっておる専門の医者というものがこの扱いになれておるわけでございますから、そういう意味から、パンチャーにつきましても、こういう病気の場合になるべくそういう指定医に見てもらって診断書をもらう、こういうたてまえになっております。
  164. 寺前巖

    ○寺前委員 私、何回も聞くんだけれども労働省というのは労働者全体のあり方について方向を出しているんだよ。何で本人の選んだ医者の診断書を否定するんだ。労働省はそんなことを言っていない。あなたのほうだけそんなことを言うのかね。これは重大問題ですよ。定期の健康診断にしても、それからこの認定の問題を出すときでも、本人が選んだところの医者のを出したら、何でそれが審査の対象にならないのですか。一般の開業医、一般の病院はそんなことを判断する能力を持っていないという判断をあなたは下すのですか。これは重大問題ですよ。
  165. 東城真佐男

    ○東城説明員 決してそういうものを否定するわけではございません。ただ、なるべくそういうふうにというふうに指導をしております。一般の医者が出したものを、決していけないと絶対的に否定しておるわけではございません。
  166. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ否定していないんですね。
  167. 東城真佐男

    ○東城説明員 はい。
  168. 寺前巖

    ○寺前委員 そこでその次に、あなたのところの保険局の業務の関係で、いろいろそういう障害が出てきたから下請へ今度回してきているという問題を、この間、向こうでも報告を私は受けました。それじゃ下請に出すときに——下請といったって、同じ敷地の中に建物があるんだ。そこで仕事をしているんですよ。あなたのところに昔つとめておった人がそこに行っておるのだよ。行ってみたら、そこの責任者なんかをやっておりましたよ。ところが、そこの労働条件というのが、こちらの簡易保険局の労働条件と一緒。話を聞いておったら、いままではもっときつかったということを聞いておるんですよ。政府機関が出すところの仕事が、非常に悪い労働条件あるいは自分のところでも事故が発生しているような労働条件のところにこれを出していいんだろうか。道義的にも私はおかしいと思うけれども、あなたはそういう問題についてどう思いますか。
  169. 東城真佐男

    ○東城説明員 これは部外の会社に委託しておるわけでございますから、その部外の会社の労働条件によってやっていただくというよりほかにしかたがないと思います。
  170. 寺前巖

    ○寺前委員 しかたがないといって、どんな極端なことがあろうと政府機関が——私は政府機関だから言うんだよ、政府機関が仕事を出す場合に、自分のところよりひどいところに、自分のところさえ救われたら、よそに出したらあとは野となれ山となれ、そんなものは商業ベースで知ったことじゃないという、そんな考え方だったら、私は政府機関のあり方としては責任があると思うのです。労働大臣、これはたまったもんじゃないですよ。郵政大臣、私はまさかそんなことは考えておらないと思うのだけれども、これは下請のほうにおいてもそういう労働条件はやめてもらわぬことには、あなたのほうには出せませんよくらいなことを言ってもいいのじゃないかと思うけれども、どうです。
  171. 東城真佐男

    ○東城説明員 私の知っている範囲では、そういう下請の会社について、そのようなひどい労働条件でやっているというふうには聞いておりません。
  172. 寺前巖

    ○寺前委員 もうあまり聞きませんけれども、そこで話をもとに戻して労働省にお聞きしたい。  ここで問題になってきているのは、ここで行なわれている作業条件というのが、あなたのほうから出されたところの、三十九年ですかのキーパンチャーの条件によると、一日三百分以内、四万タッチとか何か書いてあったのです。正直ぼくは、ここで出された基準というのは、これはおたくのほうはこれが最低基準だというふうにして出されたわけじゃないと思うけれども、実際はこれがこれだったらいいんだということの基準になっていると思うのだ。ところが、この基準が行なわれた結果がこのような事態を発生しているというならば、これは労働省についてもまことに遺憾なことだと思うのだ。こういう通達については改善する必要があるんじゃないか。
  173. 和田勝美

    ○和田説明員 御指摘のように、三十九年九月二十二日に基準局長名で各都道府県の基準局長に「キーパンチャーの作業管理について」という通知をいたしまして、その中で、キーパンチャーの作業管理について、一日三百分以内とする、あるいは連続は六十分をこえないようにする、作業作業の間に十分ないし十五分の休憩時間を設けるようにする、それから一人当たりの平均タッチ数は四万鍵をこえないようにする、こういうような趣旨の通知を出しております。これは労働基準審議会のほうに諮問を申し上げて、労働基準審議会のほうからそれに対する答申が出てまいりましたのを受けて通知をしたわけでございます。  いま先生の御指摘は、その基準の中で行なわれたのにそういうような腱鞘炎が出ておるという御指摘でございますが、そういう例が多くなってくるようでございますれば私どもとしてはこの基準についてさらに検討をしなければならないと思いますが、そり際に考えますことは、実はこのごろ体力の問題につきまして相当変化があるようでございます。そういう体力とのかね合いの問題あるいは特殊の体質の方の問題、こういうようなものもございますので、全国的な事例等につきまして研究をして、この基準がもし今日の時世には合わないというようなことになるようでございますれば、決してこの基準を変えるにやぶさかではございません。
  174. 寺前巖

    ○寺前委員 やぶさかでないという段階ではないんだよ。現に政府機関の中で、先頭切ってあなたのところの基準によってやったんだよ。そうしたら、大部分のものがこういう事態を発生している。こういう事態を見たときに、しかもほかでも一ぱい出ておるんだよ。だからこれは、通達の持っている役割りは大きいから、すみやかに改善すると言って私はしかるべしだと思うんだよ。再度聞きたいと思うんです。
  175. 和田勝美

    ○和田説明員 私どものほうで承知しているところでは、この基準以内であって出ている例というものについては、それほど多くないように考えます。   〔田邊委員長代理退席、伊東委員長代理着席〕 いま先生がお話しのように、そういうこともある。なお、少数例は出ているようでございます。あるということでございますので、ひとつ実情を私どもに研究させていただきたいと思います。
  176. 寺前巖

    ○寺前委員 郵政が特別にからだの悪い人ばっかり入れているわけではあるまいから、そういうことを言っておったらだめだと思います。やはりざっくばらんに、改善すべき点はさっさと改善してもらうというふうにやるべきです。これはひとつ大臣、よろしく頼みます。  それから第二番目に、この前問題になったベンジジンやベータナフチルアミンその他の誘導体の取り扱い上の問題です、発ガン性の問題。あのときのベンジジンその他の問題については、これは許容量ゼロといわれている物質ですよ。許されない性格のものだから外国では使わないということを行なっているのですけれども、日本の実態では、依然としてこれがやられているんじゃないの。その点、実態はどうなっているのですか。中止して製造はしていないのですか。どういう実態になっています。
  177. 和田勝美

    ○和田説明員 ベンジジンとかベータナフチルアミンにつきましては、昭和三十二年ころにいろいろ問題がございまして、私どものほうで作業場の状況等を見てみますと、確かに作業管理がよくないということでございましたので、要するにこのベンジジンとかベータナフチルアミンが労働者に被曝されない状態をつくる、あるいは粉末が散布されないような状態をつくるということを非常に厳格にやりましたので、実はこれの製造工場が非常に減ってまいりまして、ずいぶん集約をされました。たしかいま四社くらいしかないと思います。その四社につきましては、いま申しましたように、労働者には被曝されない、曝露されていないという状態作業が行なわれております。実は三十二年以前の方については膀胱ガンが出ております。しかし、三十二年以降の方にはそういう事例が発生をしていないほど、この製造工場のほうは、私どもから見ていま承知している限りでは有効な作業管理がなされている、かように考えております。
  178. 寺前巖

    ○寺前委員 発ガン性のやつは、これは出てくる時期が長いんだから。十七年とか二十年とか、もっとひどいのは三十年からなるのだから、三十二年以降とかどうとかいったってわからぬ。それよりも、これは許容量ゼロなんだから、だからこれは労働条件の側からだけではなくて、たとえば排水していく、あるいは染料になっちゃうのだから、それが流れている諸関係を考えてみた場合に、これは当然製造とかあるいは販売、使用、これは全面的に禁止すべき性格のものだと思うんだよ。これは、あなたは労働省の側から見ても、そういうふうにやるべき性格のものだということを言うべきだと思うのだけれども、そういうふうに取り扱わなかったらだめだ。そういうふうに思いませんか。それでないと、たとえば今度はこれをかついで配達するという人が出てきた場合、これは製造過程でなくして持っていく過程上の問題でしょう。どういうことになるかわからぬわけですよ。これはいろいろな問題が含まれてくると思うのだ。荷受け関係の人の間では、これはこういう危険物だということがわからぬままに持ち運んだりしているんだから、そういう意味においても、これは製造それから使用、販売の禁止というのをやらないことにはだめな性格のものだ。どう思います。
  179. 和田勝美

    ○和田説明員 ベンジジンやベータナフチルアミンが、御指摘のように、それ自体としてはたいへんな有害物である、毒物であるということは仰せのとおりでございます。かつてそれが労働者に曝露しておったために膀胱ガンが発生する、こういう事例も確かにございます。ただ、毒物でありましてもこれを絶対的に製造禁止をするかどうかということにつきましては、いろいろ問題があると思うのです。毒物だから一切製造してはいけないということでなくて、労働者がその製造過程においてどうしても被曝をされざるを得ない、どうしても労働者が被曝をされるということによってそれが起こるという状態がない限りは、労働者が完全に遮断されている限りは、その製造はそれなりに有効な製品をつくっているわけでございます、いわゆる染料でございますから。そういう意味でベンジジンとかベータナフチルアミンというのは中間製品でございまして、それから染料をつくる。その工程を一つの工場でやっておりまして、出てきた結果で外に運搬されるものは染料ということで、これが完全に反応をしております限りは、いままでの医学的な常識でいえば安全である、こういわれております。そういう意味からいいまして、ベンジジンやベータナフチルアミンそのものの毒性を否定いたしませんが、そういう作業管理が進められましたことによって、その後の状態がほとんど発生をしていないということから見て有効な管理がなされておるので、そのベータナフチルアミン、ベンジジン等の製造禁止をするまでに至らなくてもいいではないか、かように考えております。
  180. 寺前巖

    ○寺前委員 これは、しかしあなた医学的に完全に証明されているようなことを言ったけれども、たとえば京都で京都大学に入院した人がおる。染色剤になってしまってから、その染色剤を友禅に使うて、そうして発生しているという事例を京都大学の先生が言っているじゃないですか。こういう事実から見て、あなた医学的にそう簡単に言ったらいかぬですよ。これは、その後の事態までも、私は責任を持たなければならぬ性格のものだと思うのです。だから、これはもっと研究してもらう必要があるように思います。  それから今度は、一たんこういう作業をやってきたのだから、こんなもの、三カ月とか半年とかこういう仕事に携わっておった人に特殊健康診断をやるというようなことを言っておったらだめだと思う。一日でも曝露したところに参加した者は、ぼくは健康診断しなかったらたいへんな事態になると思うのですよ。だからそういう意味において、この分野で仕事をした人たちに対しては、追跡調査を徹底的にやる必要があるだろう。まず現在会社の中におる人、それからその会社から出ていった人たちの問題、さらにこの分野には、機械の修理に入った人とかいろいろな形の人がおる。そういう人は全面的に、積極的に特殊健康診断を受けてください、それについては、政府のほうで費用については責任を持ちましょうというくらいのことをやる。将来にわたって出てきたときにはたいへんな責任問題になるから、いまのうちに特殊健康診断について、直接の作業者だけでなくして、製造、使用、包装、運搬、分析、研究、機械直し、その他曝露の危険にさらされた人を全面的に、たとえば炭鉱離職者のような手帳ではないけれども、その分野で仕事をした人に対する手帳を出してでも、私は系統的に特殊健康診断をやっていくという体制をとられるべきだと思うのですが、どうですか。
  181. 和田勝美

    ○和田説明員 実はことしの四月三十日付をもちまして、従来から出しておりましたベンジジン等に関します通牒の補足をいたしまして、その中で、先生が御指摘のように、特殊健康診断を現在従事している者については行なうということのほかに、関係団体に対しまして、こういうことで退職をした外の人に対しては追跡の健康診断をするように業界を指導することにいたしました。そういうことによりまして、先生の言われます追跡の健康診断が特殊健康診断と同じ中にあって行なわれている、かように考えております。
  182. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ、政府の責任において健康診断をやるわけですね。そういうように解釈していいのですね。
  183. 和田勝美

    ○和田説明員 現在の私ども態度は、この業界は非常に限定されておりますので、関係団体のほうにそういう要請をしておるということでございます。
  184. 寺前巖

    ○寺前委員 要請しているのだったら、その仕事から離れていった曝露された人というのは放置されたままになるじゃないか、政府が、この分野で働いた人は非常に危険だと思う、だからぜひ受けてください、私どもが全面的に責任を持ちましょうという態度をとらなかったらだめじゃないか。
  185. 和田勝美

    ○和田説明員 これは第一次的には使用者が使った人でございます。したがいまして、その関係団体といいますのは、個々の使用者に伝達できるような意味における関係団体に対して追跡健康診断をやってくれということを要請したわけであります。その結果につきましては、四月三十日のことでございますのでまだ正確な結果は聞いておりませんが、その結果を調査した上でその事態に対処するような措置も考えたい、かように考えております。
  186. 寺前巖

    ○寺前委員 時間がないのでまた次回にやりますけれども、もっとこまかくこの対処問題は研究してもらう必要があると思う。  さらに、ぼくは一言だけそれとの関連でちょっとお聞きしたいのだけれども、いま労働省の監督官でお医者が、この間ある先生に聞いたら、本省のほうでもちょっとしかおらぬし、全国的に見ても十一人かなんからしい。大阪の監督官に一人お医者さんがおるらしいが、あと鹿児島まで西におらぬという話です。こんなことで、はたしてこの問題に対処していく体制にあるんだろうか。一体どういうふうにやるつもりなのか、その辺をちょっと聞かしてもらいたい。
  187. 和田勝美

    ○和田説明員 医師の資格を持っておる職員が非常に少ないというのは、先生のお説のとおりであります。そういう点がございますので、私どもとしては、労働行政を進める上におきましては民間の方あるいは各大学の方、そういう方の御協力を得るような体制に漸次手を打っているという実情でございます。  それから来年度以降につきましては、産業医学に関する全体的な研究機関を設置いたしまして、そういうところでわれわれが必要とする今後の労働衛生の問題点を、いろいろ検討するようなものをぜひつくっていかなければならぬ。これからは労働者の健康問題が非常に重大な問題になると思いますので、行政部内の職員の確保ということももちろん努力をいたさなければなりませんが、それだけではなくて、民間あるいは各大学等の御協力を得たそういう国立の研究所を大々的につくり上げるということで、労働衛生に必要な人材の育成ということも考えていきたい、かように考えております。
  188. 寺前巖

    ○寺前委員 いまの問題については全面的なことで言われたけれども、内部の体制が悪いということを私は指摘したのだ。内部体制をすみやかに改善するように検討してもらう必要があるということ。  それから最後に一つだけ聞きたいのですが、職業病認定専門家会議というのをもう発足されるのですか。発足されるとするならば、それはどういう人たちによって構成しようとしているのか。そこが非常に大きな役割りを果たされるということになったら、その専門家会議の構成メンバーというのは労働者にとって非常に重大な問題なんだから、いつから発足されるのか、その構成についてはどういうふうな構成を考えておられるのか、聞かしてほしい。
  189. 和田勝美

    ○和田説明員 四十五年度予算でいま先生が御指摘になりました専門家の方を委嘱するに必要な経費が計上されました。現在の私どもの考えといたしましては、職業病に関する認定基準は本省で専門家会議によってきめたい、かように考えております。その認定基準の適用の具体的な事項につきまして、大体七つのブロックを考えております。全国を七つに分けまして、そのブロックごとに専門の医師をお願いして構成したい。その専門の医師でございますが、要するに公正妥当な立場でその認定を適用する判断をしていただくような方にお願いしたい、かように考えております。
  190. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、さっきの簡易保険局の指定医問題と関連するんだけれども、実際には、たとえば簡易保険局であれだけ残っていながら、簡易保険局の関係の医師団あるいは逓信医師団のほうで積極的に公務災害としてやれという意見が出ぬものだから、大部分の人たちが被害を受けている。その人たちがほかの医者へ行って、そこで治療を受けながら訴えているという事態が起こってきているところから考えてみても、実際に現場の労働者、労働組合に支持される、その人たちと一緒にやってきた医師、そういう人たちを専門家会議に入れてもらうように、そういう処置をとってもらいたいと私は思うのですが、その点を最後にして終わりたいと思います。
  191. 和田勝美

    ○和田説明員 先生の御要望もございます、また労働組合の諸君からもいろいろの意見が出ております。それらの意見を十分参酌さしていただきますが、何といいましても一方に片寄りますと非常に問題になるわけでして、公正妥当な人選をしたい、かように考えております。
  192. 寺前巖

    ○寺前委員 終わります。      ————◇—————
  193. 伊東正義

    伊東委員長代理 次に、厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  194. 田邊誠

    田邊委員 厚生大臣、いま厚生行政の中には非常に重大な問題が山積をしておりますが、その中でも特に産業公害、企業公害といわれる公害の問題はいまや全国民的な問題であります。われわれ国会も、この公害問題は早急に抜本的な対策を講じなければならぬと考えて、真剣に取り組んでいることはすでに御承知のとおりであります。大臣もここ数日の間、各委員会等においてこの問題について真摯な討論があったことは御承知のとおりでありますが、公害対策基本法ができまして、これに基づく諸般の対策が逐次講ぜられておると思うのでありますけれども、決してまだ十分でないと思うのです。私どもとしては、この公害対策基本法にのっとった各種の公害対策に対して逐次これが整備充実をはからなければならない、このように思っておるわけでありますけれども、国の施策としてはこれに対してどういうような考え方でどういう対策を逐次講じようとしておるのか、これに対するところの、いわば歴年にわたるところの計画あるいは数年にわたるところの計画、こういったものを立てて、たとえば五カ年計画の上に立ってそれに対する基礎をつくる、あるいは次の何カ年計画でもってさらに部門別の充実をはかる、こういうことに対してあなたの、ここのところ真剣に取り組んでいらっしゃる成果を踏まえながら一体どういうようなお考えがあるか、この際あらためてひとつ端的にお答えをいただきたいと思うのです。
  195. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害の問題は、御指摘のとおり、私ども国民生活にとりまして非常に重要な問題でございますが、非常にありがたいことに、厚生大臣の私としていろいろ、私ども国の施策に不備はありますが、しかし御発言田邊先生をはじめ国民の皆さま、さらには最近の現象といたしましては公害発生源でございますところの企業担当の方々も、公害の防除なくしてはもはや国民生活の幸福というものはあり得ない、また産業、経済の発展というものは公害防除を先行して考えるべきだというような考え方に変わってまいりましたことは、私といたしまして非常にありがたく思っております。しかし、ありがたいだけでは前進いたしませんので、そういう国民の間の公害に対する関心の高まりを踏まえまして、政府といたしまして、ことに私ども人の健康あるいは環境の浄化をあずかる厚生省といたしましては、これまでの国の公害対策をこの機会にさらに根本的に見直しますと同時に、私といたしましては公害の考え方を、すでに発生している公害を除去することはもちろんでありますが、それのみならず、よごされていない清浄な空気、水、地域、そういうところを公害から守っていくというふうに法律の体系なども考えていくべきだ、こういうことを私は一つの基本理念といたしております。と申しますことは、これまでの公害に関する法制上のたてまえが、公害でよごされた地域の公害防除ということを主眼としておる、あるいはいままさに産業の集積等が計画されておって、放置すれば公害が集中的に発生するおそれがあるというような地域を対象といたしまして公害対策をやるような仕組みになっておるように私には思われてなりませんが、しかし、それだけでは足りない。いま申しましたように、全く公害の憂いがないと考えられておりましたようなそういう地域、水域、そういうところをいまあるがままにいまのうちに守っていきたい、こういう意味でございます。  もう一つは、公害の問題は、これは国民的、国家的関心事でありまして、中央におきまして環境基準その他の規制の基準などをつくることが必要であります。と同時に、この問題の性質上、地域の住民の健康や環境を守るという地域に即応した課題でもございますので、公害に関する中央の政策と地方の対応策というものを一貫させるような、そういう態勢を法律の上におきましてもあるいは財政や経済の面におきましてもつくる必要がある、こういうふうに考えまして、そういう見地からも諸般の制度を見直したいと存じます。  なおまた、公害に関する長期計画につきましては、田邊先生がよく御承知のように、公害防止基本法に、必要な地域につきましては公害防止の基本政策を内閣から地方と打ち合わせの上お示しをし、その基本方針に基づいた公害防止計画というものを立ててまいる仕組みがございまして、これにのっとるものとしてすでに、たとえば千葉市原の地域、四日市の地域、岡山の水島などの地域を公害防止計画策定のその第一次的な地域として指定をいたし、また基本方針も示してあります。近くこれらにつきましても具体的な防止計画が決定になるはずでございますが、なお引き続きまして東京とか大阪とか川崎とか兵庫とかいうような地域、さらにはまた九州、あるいはこれから一つのコンビナートとして発展が約束されておりますところの茨城県の鹿島というような地域をも公害防止計画の年次計画の対象にのせておりますので、そういう、申しましたようなことを縦にも横にもこの機会に進めてまいり、またこれの裏づけとなる財政上の措置をも検討してまいる所存でございます。  さらにこの機会に、単にこれは大気汚染とか水質保全とかいうことばかりでなしに、最近問題になっておりますのは騒音の問題がございます。また、たいへん田邊先生の地域には御迷惑をかけております悪臭公害などの問題もございまして、こういう問題につきましては、たいへん私どもの法制上のたてまえやまた政策のおくれておる面が、正直に申しまして私はあると考えますので、そういう問題にも踏み込んでまいりたいと考えます。
  196. 田邊誠

    田邊委員 またあらためて公害全般の問題はお聞きをしたいと思いますので、きょうは時間がございませんから、大臣ひとつ端的にお答えをいただいて、具体的な問題というか、もう一言お聞きをいたします。  私は、ですから、いまやるべきこといろいろあると思います。非常に多岐にわたっておりますからたいへんだと思います。しかし、やれることはまずやる、これが一つありますね。それからもう一つは、私は、いままでの既成の法律で公害の基本法から見て時代にそぐわぬ、こういう法律が随所に出てきていると思うのです。したがって、これらについては洗いざらいひとつまた検討し直す、こういうことが必要ではないかと思うのですが、ひとつこの二つの問題、できるものからやる、それからやはり法律の改正について検討する、これはどうです。
  197. 内田常雄

    ○内田国務大臣 二つの問題のうち、あとのほうの問題につきましては、私が長々いま申し述べたとおりでございまして、ぜひそういう検討をいたしたいと思います。  最初の問題につきましてもお説のとおりでありまして、法制の改正を待つまでもなく、いまの体制のもとでやれるものは直ちに手をつけたいと思います。
  198. 田邊誠

    田邊委員 そこで、いまいろいろな公害がある中で、大臣が言われました悪臭公害の問題を私はきょうは取り上げてみたいのであります。  去る六月六日に、群馬県前橋市の荒口というところで、斃獣処理の処理場がございまするけれども、この従業員作業中に悪性のガス中毒によりまして倒れました。その後不幸なことに、二人倒れましたけれどもそのうちの一人はなくなられる、こういう事故が起こったのであります。  警察庁にお伺いしたいのでありまするが、このガス中毒の原因は何でありましょうか。どういうガス、どういういわば原因でこの事故が起き、一人の人が死亡されたとあなた方のほうでは取り調べ上判断されておりますか。それから、いま事件の処理をされておると思うのでありますけれども、一体どういうふうな事件の処理のしかたをされておりましょうか。それから、この事故になりました有毒ガスは、あの工場では常時発生をしておるというようにお考えでございますか。  なお、参考のために、ついせんだっても地元でもっていろいろとお話を聞きますると、昨年の六月二十二日、二十三日にあの付近を飛んでおりました野鳥がたくさん死んだというのでありますけれども、これは有毒ガスの発生と関係をしておるのではないかというように地元では実は言っておるのでありますけれども、そういったことに対しては、一体どういうふうに取り調べられておりましょうか。  さらに、このガス中毒によって不幸にも人命を落としました有毒ガスと思われるものが、いわば人畜に被害を及ぼすというように警察当局は見ておられるのかどうか、この点に対してひとつお答えをいただきたいと思います。
  199. 田村宣明

    ○田村説明員 ただいまお尋ねの事故でございますが、これは御指摘のように六月六日、前橋市の山一産業化成工場において発生をいたしたものでございます。  事故が発生いたしましたいきさつでございますが、これは斃獣の骨などを蒸しますかまがございますのですが、このかまを新しくつくりまして——大きなかまでございますが、直径一メートル八十に高さが三・五メートルというわけでございます。この中で百七十度ほどの高温で蒸すという作業をいたしておるのでございますが、このかまを新しくつくりまして、五月三十日に試験だけを行なったわけでございます。かまは二基ございまして、そのうちの一基につきましては、当日そのふたをあけて中のものを取り出したわけでございます。これをあけるクレーン装置が当時未完成でございましたので、クレーン車を頼んでこのふたをあけた。それでもう一基のほうにつきましては翌日作業をする予定であったのでありますが、このクレーン車のほうの都合で作業を断わられましたので、約一週間放置をいたしておいたわけでございます。それで六月の六日にクレーンの装置が完成いたしまして、朝から四人の従業員の方が作業をやったわけでございますが、かまの底に落ちておるものを拾うために、一通り作業が終わりましてから従業員の一人の方、これは年をとったほうの方でございますが、この方が底に入りましたところが、充満しておりました腐乱性のメタンガスと思われるガスの中毒によりまして昏倒をいたしました。そこで、そばで見ておりました若いほうの作業員の方がこれを救出しようと……(田邊委員「それは逆だ、助けたほうが年寄りだ。——まあいい」と呼ぶ)助けに入った方が若い方というふうに……。その方も昏倒をいたしたわけです。そこで、近所で建設工事をしておりました人が酸素溶接の酸素をかまの中に送って救い出した。それで日赤病院に運び込んだのでございますが、一人の方は二週間ぐらいの入院で一応退院をされておりますが、もう一人の方は不幸にして十日に死亡された、こういう状況でございます。  それで運び込まれましたときの状況は、急性のガス中毒による酸素の欠乏症というので意識不明になったというふうに医師のほうで診断をされておるわけでございます。それで、なくなられた方の死因でございますが、これは現在死亡診断書によりますと脊髄損傷ということになっておりまして、ガス中毒によってかまの中で昏倒をした。この倒れました際に強打をしたということではないかというふうに現在一応考えられて、そういう診断書がございます。  群馬警察におきましては、この事故発生とともに関係者が現場にかけつけまして、現場の実況見分をやりました。関係者からいろいろと事情を聴取いたしました。  なお、この遺体につきましては、群馬大学において病理解剖をいたしましたので、鑑定をただいま依頼いたしております。まだ鑑定結果が警察側には到着をいたしておりませんのでございますが、いままでその結果に基づきましてさらに捜査を進めて最終的な警察捜査の結論を出したい、こういうことでただいま捜査をやっておりますが、全部はまだ完結をいたしておらないという状況でございます。したがいまして、死因その他につきましては、現在のところ一応ただいま申し上げたようなことはわかっておりますけれども、確定的なものは鑑定書が参りまして、それに基づいてさらに必要な捜査をやって結論を出す、こういう段取りになろうかと存じます。したがいまして、事件はまだ警察の捜査の段階でございます。  私ども、この事故が業務上の過失傷害致死あるいは過失傷害という観点から、どういうところにその責任があるのか、そういう観点で捜査をいたしておりますので、ただいま御質問にございました人畜に被害を及ぼすかいなかという問題、あるいは昨年野鳥が落ちたというような問題、あるいは常時発生をいたしておるかどうかというような点につきましては、直接捜査の対象といたしておらないように聞いておりますので、まことに申しわけございませんが、ちょっと御答弁を申し上げる資料を私ただいま持っておらないわけでございますが、過失傷害致死あるいは過失傷害という観点からの捜査は、現在こういうようなことで行なわれております。
  200. 田邊誠

    田邊委員 またいろいろと捜査を厳格にされまして、いま私が申し上げたような観点についても、さらにいろいろと調査をされるように特に要望しておきたいと思います。また状態をひとつお知らせください。よろしゅうございますね。  それで、これは労働基準局のほうにお伺いいたしまするけれども、いま私が警察庁に質問いたしましたような状態から見て、この事故を起こしました作業員がどういう状態であったかということが、入院をいたしました日赤の医師の話というものが県の公衆衛生課に届いておりまして、厚生省を通じて私のところへ資料が届けられました話では、血圧低下、筋力減退、手足の麻痺、反射機能減退などの症状が見られて、有機腐敗ガスによる中毒と診断された。——警察庁も聞いておいてください。そういう診断書が出ております。そういう状態でありますから、これはやはり基準法の適用からいいまして、衛生管理の上からいっても私は重大な問題だろうと思うのです。特にこの有機ガスについて、常時これが多少にかかわらず発生をしているとするならば、これはその場に働いておる労働者にとっては非常に危険な状態であるわけでございまするから、この点は一体どういうふうにあなたのほうはこの工場について状態を調べられて、どのような見解をお示しであるか。先ほど私言いましたように、有毒ガスというものが常時発生をしているとするならば、これはまた一つの大きな問題であろうと思うわけですけれども、これらの問題に対してまでいろいろと現地において調査をされておったかどうか、その点ひとつお伺いしたいと思うのです。
  201. 和田勝美

    ○和田説明員 御承知の六月六日に発生しました群馬県前橋市の山一産業の一名死亡事故、一名入院というのは、その状態は、ただいま警察のほうから答弁がありましたようなことであるように私ども調査でもなっておるわけです。要するにかまの中へ入りましたところが、その中にあるガスのために酸欠状態になりまして倒れた、倒れて脊髄と頭を打ってなくなったというのが死亡された人の状態であります。それから死亡されなかった方につきましても、先生がいま御指摘になりましたような状況が出て入院をした、こういうことのようでございます。群馬の労働基準局と前橋の監督署の係官の者が参りましてその実情を確かめました。  実は本件に関しましては、五月の八日に「フェザーミール等飼肥料製造工程における災害の防止について」という通牒を私のほうから各都道府県の基準局長に出しました。それは千葉の管内とか、あるいは山梨の管内で飼肥料を製造しておる工程で災害が発生をいたしまして、それを調べますと安全衛生規則の百七十二条にありますようなことも十分考えなければいけないということで、これを全国に、大体六十カ所くらい工場があるようでありますため、各工場について業務指導をするようにという指示をいたしたわけでございます。その指示の内容は、こういう蒸煮をするような場所に対しては、全体として必ず隔離された状態で行なわれること、それから当該場所は全体的に換気装置をつけるようにすること、それから作業場所については局所排気装置をつける、あるいは作業員については、有毒ガスの発生するおそれが多いので保護具をつけるようにする、こういうような指導通牒を出しまして、現在六十カ所について指導をしておりますが、不幸にしてその過程においてこのような事故が発生したわけであります。事業場に対しましては、いま申しましたような通牒の趣旨をこの工場においてもぜひやるようにという監督をいたしております。
  202. 田邊誠

    田邊委員 したがって、これはやはり安全衛生基準に違反していると私は思うのであります。法の四十二条なり四十三条、あるいは規則の衛生基準の面からいって明らかにこれに違反をする状態にあるのではないかと思うのでありまするから、ただ単にそれに対して適切な指導をするというような形でなくて、やはり法に照らしてこれに対しては厳格な意味における措置をすべきじゃないか、こういうように思いまするけれども、いかがです。
  203. 和田勝美

    ○和田説明員 ただいま群馬の基準局と前橋の監督署で調査をしております。警察のほうの調査も現在捜査段階のようでございますので、十分それらの状態を見まして、状況によれば安全衛生規則違反という処置もやらざるを得ない事態が出てくるかと存じます。
  204. 田邊誠

    田邊委員 いま警察庁と労働省にお聞きをしましたような事故が起こりました。この斃獣処理場は、私がいま申し上げたような事故が発生したことも非常に重大でありまするし、これがきっかけとなりまして地方の住民に与えた影響も非常に大きいのでありますが、それとともに、この斃獣工場から発するところの悪臭というものは何としても耐えられない、こういうことがいわれておるのであります。これは大気汚染——私のほうの県にカドミウム公害がありまするけれども、人体に及ぼす影響からいって非常に重大でありますが、しかしまた、有毒ガスが発生をしているかどうかというのもいまだ明確でないようでありますけれども、これらの問題も含めて、この耐えられない悪臭、これに対して一体どういうような措置を講じようとしておるのか、私は政府のこの問題に対するところの対策をやはり明確にしてもらわなければならぬのじゃないかと思うのであります。  さて、そこでへい獣処理場等に関する法律が二十三年にできまして以来六回の改正をしておりまするけれども、この法律の持っておる意味というものが厳格に実施をされておらないのじゃないか、こういうように私は思っておるのであります。先ほど大臣からもお答えをいただきましたが、法律の改正はあるいはできるものからやる、そしてまた、企業も最近公害防除についての関心が出てきたというような話がありますけれども、やはり法律の面においての不備がこの悪臭公害をまき散らす大きな原因になっておると思うのでありまして、このへい獣処理場等に関する法律の第五条のいわば各項目、その中には「臭気の処理を十分にすること。」という項目がありまするけれども、しかし、これは全くいま有名無実になっておるのじゃないかと思うのです。このへい獣処理場等に関する法律施行令の第一条の二項によって、「法第四条の規定により、化製場の構造設備の基準を次のように定める。」となっておりますけれども、その中で、この臭気については「換気扇を備えた排気装置その他臭気を適当な高さで屋外に放散することができる設備が設けられていること。」こういうふうになっておるのですけれども、この施行令がまさに公害対策基本法の第二条によるところの「悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずる」という事項に当てはまるといたしますれば、この施行令は法律の精神に全く相反している、全く矛盾している。屋外にこれをまき散らせばいいといっているのですけれども、そんな行政措置はないと私は思うのです。この公害対策基本法の精神に基づいて見たときに、この施行令はまさに相反するものである、こういうように私は考えておるのでありますけれども、厚生省当局は一体どうお考えですか。
  205. 浦田純一

    ○浦田説明員 今般前橋の公害において起こりました斃獣取り扱い場における事件、また、それに関連いたしまして地元の住民の方々からかねてから陳情の出ておりました悪臭に対するいろいろの苦情、これに関しましての田邊先生の御指摘でございますが、私どももかねて斃獣処理場に関しまするその法律のうちで、特に臭気対策につきまして、遺憾ながら技術上の問題もございまして、過去におきましては臭突を設ける等の措置以外には、技術的にはっきりとした施設基準はそのほかなかったわけでございます。今回事の重要性にかんがみまして、私どものほうから担当の課長、また私自身も現地に参りましていろいろと状況も調べさせていただいたわけでございますし、また、地元の皆さま方からのいろいろな苦情も陳情もお聞きしたわけでございます。したがいまして、今回のこの問題は、先生御指摘のように、遺憾ながらこのへい獣処理場等に関する法律、あるいはこれに基づきます政令の中に定められております基準というものについて、非常に立ちおくれがあったということは認めざるを得ないわけであります。  しからば、いまはこれをどのように考えておるか、あるいは将来どのように持っていくかということでございますが、今回の悪臭の原因を考えてみますと、たまたま起こりました不幸な事件、それによりましてこの会社作業が停止しておった。そのために原料が工場内に搬入されることなく、その外にいわば放置されておった、野ざらしの状態になっておったという悪条件が重なっておったということがそこにありますけれども、しかしながら、この工場において行なわれております製造工程、たとえば一番初めに行なわれておりますオートクレーブの中におきまする煮沸、これが一つの臭気の原因になっておる。また、一番最後に行なわれております乾燥工程、これがもう一つの大きな臭気の原因になっておるという事実を私も目で見、話もその場でいろいろと聞いてきたわけでございます。したがって、いまの状況は、完全に操業が行なわれました場合に多少変わってくると思いますけれども、この政令が、あるいは法律が制定されました後、私ども、悪臭除去という問題につきましては何とか対策を講じなければならぬということで、研究費その他も支出いたしましていろいろと検討してまいりました結果、ようやく悪臭に対してある程度化学的に対処できる、それから今回の処理場につきましても、それを具体的に応用できるというめどを持つに至ったのでございます。したがいまして、今回は、厚生省といたしましてはそういった立場からひとつ積極的に技術的な指導を講じてまいりたい。また、ただ単に指導を講ずるだけでは不十分でございますので、それに伴ういろいろな財政的措置、これは具体的に申しますと融資という形になるかと思いますが、できるだけ長期低利の融資といったようなことで、その技術的な援助を裏づけるような措置を講じてまいりたいということで、当日県にも参りましてその点いろいろと御相談もし、それからこちらからも御指導を申し上げてきたような次第でございます。
  206. 田邊誠

    田邊委員 時間がありませんから端的にお伺いをいたします。  いま局長からお話があったように、現地を見られて、あの日の状態というものは必ずしも常時の状態ではないと思っておるのでありますけれども、もっとひどい悪臭があの付近の住民を悩ませておるということであります。有毒ガスの問題については、私はもっと検討してもらいたいと思っておるわけでございますけれども、たとえば嫁に来手がないというような話もあって、あるいはまた牧草地の牛が草を食わない、ハエが多発をする、そういうこともありまするし、全く子供が試験勉強に精神を集中することができない。そこから幾らも離れておらない学校の授業に大きな支障ができておるという問題、もう付近の住民は食欲がなくなる、吐きけがある、あげる、こういったことで、いわば一つの食べものを見ただけで食欲が出ない。実は有形無形のいろいろな被害を受けておるわけでありまして、あの周辺の耕作地は転用したくても転用することができない、こういうような状態であります。それらに対する補償を一体どうしてくれるかということもございます。これらの問題に対して、やはり国が一つの方針を立てられて、その方針の上に立って適切な措置というものが具体的に講じられなければ、住民のそういった怨嗟の声を解決することはできない、私はこういうふうに思っておるわけでありまして、この施行令は、私は早急に変えてもらわなければならぬと思うのであります。臭気を発散すればいいなんということは、いまのこの公害対策基本法から見て許されるべきことではないと思っておるのであります。これをぜひひとつお願いしたいというふうに思います。  そこで、いま、においに対するところの規制をする基準がないというようなお話がありまするけれども、私は方法によってはあると思うのであります。いろいろと皆さんのほうで考えられてくれば、私は臭気に対して規制をすることもできるのじゃないかと思うのです。東京都は、悪臭公害に対する規制のために基準をつくろうじゃないか、こういっていることをあなたのほうは御存じですか。これも私は科学的に見た場合、決してこれが絶対のことではない、これによってまた逆にいろいろな問題も起こってくるというふうには思いますけれども、やはり不特定多数の人に嫌悪感、不快感を与えるようなにおいに対してどういう基準を設けるかということに対して、二百五十八社を対象として、いわばにおいをかがせて、ある程度の臭気度、何倍の空気に触れたらにおいがしなくなるかという数値を求めよう、こういうことをいっているわけであります。これは人間が鼻でかぐわけですから、いわば非科学的であり、逆の面が出てくる、こういうおそれもありますけれども、しかし、いずれにいたしましても悪臭に対して何らかの基準を設け、何らかの規制をしようという熱意と努力の点では買うべき点があると思うのであります。そういった点に対して、やはり国も悪臭に対してある程度基準——これは何も基準を設けてそれに対して罰則を加えようという形だけでなくて、いわばその悪臭を放つものに対してどういうような手だてを講じてこれを除去するかという、いわば前進的な面においてこのことを考えますならば、これらの東京がやっているような形でもって、ある程度以上のものについて、政府がこれに対するところの対策を講ずる基準づくりに邁進することも私は決して不可能ではないというふうに思っておりますけれども、こういった基準について、あなたのほうでも早急に検討される御用意がありますか。
  207. 浦田純一

    ○浦田説明員 すでに東京都でもそういったような基準を設定しようという動きがありますし、また、アメリカでもある程度すでに実施しているところもございます。したがって、技術的にある程度は可能な問題でございますので、早急に専門家の意見も聞いて、基準の作成作業を始めたいと思っております。
  208. 田邊誠

    田邊委員 そこで、たとえば屎尿処理場にあるような浄化槽あるいは脱臭装置というようなものも、ある程度強制的につくらせるということも必要ではないかと思うのです。ですから、そういう行政指導もできますね。
  209. 浦田純一

    ○浦田説明員 直ちに基準をつくるということは、時間もかかりますけれども、しかし、早急につくってまいりたいと思います。しかしながら、それまでの間、指導によって十分趣旨の徹底をはかるようにしたいと思います。
  210. 田邊誠

    田邊委員 それから前橋の工場もそうですけれども、やはりその土地に埋めたりするようなことを便法としてとっておるのです。  それから工場から出てくるところの排水、これらがいわば措置を誤れば付近の住民の生活に大きな影響を与える、あるいは養蚕地区でございますから、荒砥川でもってじゃかごを洗ったりする、そういう農民の生活に非常に大きな影響を与える、こういう状態でありますけれども、この排水施設については、私は地元の県や市にまかせるだけでなくて、国が何らかこれに対する援助の手を差し伸べるべきではないかと思いますけれども、そういうお考えはございますか。
  211. 浦田純一

    ○浦田説明員 排水基準の問題につきましては、目下生活環境審議会の分科会のほうで技術的検討を進めておる段階でございます。したがって、できるだけ早くその答申をいただいて技術的な面で生きた基準を設けたい。  それから、それに対しまして国としてどのようなめんどうを見るかということでございますが、その設備の金額の問題にもよると思いますけれども、ただいまのところでは公害防止事業団で、もしも組合などでやったような場合にはこれに対して長期低利の融資をする、あるいは割賦でもって施設をつくって与えるといったようなことは可能でございます。
  212. 田邊誠

    田邊委員 したがって、組合ももちろんその対象でありますけれども、そのワクを広げるなりあるいはまたいろいろの便法をとるなりして、現に前橋においても、そういう排水の問題について当然国が何らかの助成措置を講じていかなければ問題の解決にならぬ、こういうように私は思うわけでございますから、ぜひひとつこれに対して一段の努力をしてもらいたいというふうに思うわけであります。しかし、住民からは、基本的にはあの地区に斃獣処理場があるということは何としてもたまらない、生活環境からいってもどうしてもこれはひとつどこかに移転してもらえないか、こういういわば要望が強いのであります。移転ができるかどうかということは、私企業でありますからいろいろ問題もございましょうけれども、この種の斃獣処理場の仕事は、本来的には地方自治体がある程度責任分野を受け持たなければならぬ、こういうことが私は多いのではないかと思うのであります。組合立等もありますけれども、いずれにいたしましてもそういった面に対して、県や市がこれに対する措置を講ずべき段階に来ている。群馬県は畜産県として畜産を奨励しているのですけれども、一番最後の終末処理ができておらないという形でございますから、こういったひとつ移転をしてもらいたいという住民の要望、それから地方の自治体が当然企業体等をつくってやるべきじゃないか、こういう世論、これに対してやはり新しい観点に立った方針を出すべきじゃないかというように思いますけれども、いかがですか。
  213. 浦田純一

    ○浦田説明員 ただいま、このような化製工場はいわば民間の営利の企業でやっておる。したがいまして、そこに持ち込まれますいろいろな羽毛類あるいは獣骨類は、原料として、つまり有価物として買い取っておるという事情もございまして、直ちにこれを全部公営でやるというような問題はいろいろ検討させていただくべき点があるかと思いますけれども、しかし、環境汚染あるいは公害といったような観点から考えまして、これらの防除施設も非常に設備に多額の投資がかかる。これらからそれらの企業が十分な防除設備もできないといったような事実があるといたしますれば、これらに対しては、先ほど申しましたような特別な長期低利の融資あるいはその他の助成措置も考えていく必要があるかと思います。  今回の件につきましては、なお市あるいは県当局とも十分連絡をとりまして、こちら側からも趣旨を徹底させるように指導してまいりたいと思います。
  214. 田邊誠

    田邊委員 いろいろとございますけれども、時間が過ぎましたから。  それではまたあらためてお伺いすることにいたしまして、当面前橋市に起こりました不幸な事故によって世論をわかしておりますところのこの処理工場の、いわば移転の問題なりあるいは悪臭の防除の問題にいたしましても、あるいはまた、これらを通ずる今後悪臭をなくす公害防止の全般的な政府の方針にいたしましても、ぜひひとつ遅滞なく有効に処置ができるように当面やっていただくことを心からお願いすると同時に、またあらためてその措置の状態をお聞かせいただきたいというように考えておるわけであります。  またあらためて質問をいたすことにして、きょうは終わります。
  215. 伊東正義

    伊東委員長代理 後藤俊男君。
  216. 後藤俊男

    ○後藤委員 内田厚生大臣に、時間がございませんので、この前の国会から続きまして擬制適用廃止の問題です。この間には、全国的な全建総連関係の県知事に対する陳情なりそれぞれ激しい行動が行なわれたことは、私が言うまでもなく十分御承知のことだろうと思います。  さらに、社会労働委員会におきましても、先月の十日でございますか、各党からこの擬制適用廃止につきましていろいろな意見が出ました。また大臣からも、そのときには、ぜひひとつ国保のほうへというような意見が出たわけでございます。これは五月二十二日の朝日新聞です。この時分には擬制適用廃止の問題でかなり反対闘争が全国的に盛り上がった時期だと思いますけれども、そのとき厚生省としましては——これはもちろん厚生大臣の意向等も入っておると思います。さらに加えて、社会党の書記長あたりが、やはり厚生大臣に面会を申し込んでいろいろと申し入れをいたしておるわけでございますけれども、その内容として現在きまっておるのは、政府の助成金でございますか、二五%ですね。これをさらにひとつ幾らかプラスアルファをして三五%ぐらいの助成のところへ持っていきたい、そういうふうにすることによりまして、いわゆる日雇健康保険の負担をなるべく減らず方向に持っていきたいというようなことが新聞で堂々と発表されておるわけなんです。  それから社会党の党代表の申し入れにつきましては、これまた内田厚生大臣としては、大工なり左官については国民保険に入れて、これに対して政府からの補助を出すことにして、実質的には負担のかからないようにしたいということをはっきりお答えになっておるわけなんです。  それからその次には、先月の社会労働委員会の議事録を私も一応ずっと読んでみたわけでございますけれども、いろいろなことが言われたり、いろいろなことが答えられたりしておるわけです。その中でも厚生大臣としては、私はもともと貧之人の出身でございまして、弱い者の味方をするつもりでございます、そういう気持ちで今後も厚生大臣をやっていきますとはっきり言われておるわけなんです。これは御承知のとおりだと思うのです。  それからその他いろいろ論議がございましたけれども、ああいう情勢の中で特別国保に移るということは非常にむずかしい情勢であったということは、大臣としてもおわかりだと思います。現在のところ全建総連関係としましては、厚生省のほうへ特別国保の申請を行なっております。その間、全建総連の皆さんとしては、昼となく夜となくたいへん苦労をされたわけです。苦労された原因というのは、擬制適用が廃止になった、その辺から出発をいたしておるわけでございますけれども、ただ私は、もう過ぎ去ったことをいまここでどうこう大臣に言ってみても論議にならぬと思いますが、先ほど言いましたように、五月二十二日の朝日新聞の記事といい、社会党の申し入れといい、あるいは先月の社会労働委員会における厚生大臣のお答えといい、この特別国保の問題につきましては、いままであるきめられた規則の上に乗るだけではなしに、ああいう非常に人情の深い大臣だから、何らかひとつ厚生大臣として考えておられるのではないだろうか。いわばあなたのおっしゃるように、特別国保に移るというようなことになった場合には、おれはおれなりに貧之人の代表として、働く者を苦しめるようなことはやらぬぞとおっしゃる以上は何かお考えになっておるだろう、そういうふうにわれわれも察知をしておるわけなんです。  さらに、いますぐできぬということなら、今後一体どういう方向で大臣として考えていかれるのだろうか。いわば長い間紛争を起こしておりました擬制適用廃止の問題、特別国保への移管の問題、大体のところ大筋めどがついてきた今日、最後にひとついままでの経過を振り返っていただいて、いま申し上げました問題に対する厚生大臣の姿勢と申しましょうか、今度の考え方といおうか現在の心境といおうか、その辺のところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  217. 内田常雄

    ○内田国務大臣 擬制適用廃止のことにつきましては、後藤先生をはじめ皆さま方に非常に御迷惑、御懸念をおかけいたして、恐縮をいたしておるわけであります。しかし、このことにつきましては、さきの当委員会におきまして各委員の方々と御論議もいたしたことでございますので繰り返しませんが、ただいま後藤さんからお尋ねの国庫助成の問題でございますが、これは私も、いま後藤さんがお引きになられました文言に沿って現在でも考えております。幸いなことに、いままでの日雇健保における国庫負担の国の助成というものは、これははっきり申しますと給付費に対する国の助成でございまして、保険の給付、つまり本人は十割、家族は五割、保険が負担するわけでありますが、その際それを対象として国が助成をいたしておるわけであります。今度のは、後藤さんがいまお使いになったおことばでいくと、これは特別健保ではなしに健保組合でございますが、その場合におきましては補助の対象をすりかえまして、給付費に対する国庫負担ではなしに、個人負担の分まで含めました総医療費とする。今度は組合になりますから、組合それぞれの御計画によりましてその給付率は高くも低くも——法定最低限はございますが、それ以上きめられるわけでございまして、どうおきめになるかにかかわらず総医療費を対象として助成をするということと、それからそういう一律の行き方だけでは、できます各組合によりまして、いままでの擬制適用を受けておりましたときの負担から非常に大きな開きが出てしまうようなものにつきましては、実情に応じましてさらに特別のかさ上げといいますかつまみ金といいますか、ことばは悪うございますが、つまみ金というんじゃなしにかさ上げ式な補助を出すように大蔵省と打ち合わせといいますか、私が大蔵大臣に話をいたしておりますので、その線で措置をいたすことにいたしております。  ただこれは、いままでの日雇健保の場合でございますと、御本人の被保険者の日額給料が何千円でありましても二十六円より高い保険料はございませんでした。先般の改正案が通りますと、それが六十円とか九十円とか、あるいは委員会における修正案によりますと、場合によりましてそれより高いものも出てくる。こういうようなことになっておったこと、御承知のとおりでございますので、前の二十六円当時と比べて負担が著しく高くないということは計算上も出ないわけでございますので、したがって、ここで数字は申しませんけれども、新しい国保組合に移られる方の負担を合理的と考えられる負担の範囲に、特例といいますかそれで済むような、そういうことを頭に置きまして具体的に措置する、こういうつもりでお打ち合わせをいたしております。
  218. 後藤俊男

    ○後藤委員 ちょっとわからぬところがあるから少しお尋ねしますが、総医療費に対して二割五分というのは、現在これはさまっておるわけなんですね。それから政府管掌の健康保険は三割五分でございますけれども、これは対象が違う。三割五分かける数字が違うわけなんです。それはそれでいいと思うのです。それからいま言われたところのプラスアルファといいましょうか、これは一億円というのがあるわけなんですね。これはいままでも特別国保というのは百五十幾つありますから、その関係です。いまあなたが言われましたのは、大蔵大臣と別途話をいたしておりますというのはそれ以外の問題だ、私こう聞いておったのですが、それ以外の問題として大蔵大臣と厚生大臣が折衝されまして、こういうふうなかっこうで非常に無理なところでこうなってきたんだからこうしてくれ、よしわかったというような方向へ話を進めようとしておられるのかどうか、その辺のところがもうちょっとはっきりわからぬもので……。
  219. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いま後藤さんの御指摘の一億円が、それをこえてもかまわないというつもりでやっております。これは一律にどの認可された組合にも渡すというわけではなしに、その組合の実際の保険料等のきめ方、給付の状況等にかんがみまして、一律かさ上げではなしにその事態に応じてめんどうを見る、こういうことにいたしております。それはもうはっきり申しますと、私と大蔵大臣でこまかい打ち合わせはしておりません。一方、とにかくここでいままでやってきた擬制適用というものをやめにして——これは赤字になりますと借り入れ金に仰いでおったわけです。これを将来の改正で、私の考えでは料金を高くして埋めるということはできませんので、いずれ国がしょい込む要素をどんどんふやしていくわけでありますから、それを今回の打ち切りによってその分をふえないようにしてしまうわけだから、つまりやや長い目で見れば国がそれだけ財政的にしょい込みが少なくなるんだから、その戻しを厚生大臣によこせ、あなたわかるだろうと言ったら、よくわかった、こまかい具体的なことはひとつ事務的に折衝さしてくれ、こういうことでございます。私があまりだめを詰めたりいたしますとせっかくのことをぶちこわしにすると思いまして、それ以上はだめを詰めておりません。
  220. 後藤俊男

    ○後藤委員 それじゃいまの問題は、いろいろとこれから具体的な問題が出てくるだろうと思いますけれども、そのときには、いま言われたような方向でぜひひとつやっていただきたいと思います。  それからあと一つ、二つ、これは簡単な問題でありますけれども……。
  221. 内田常雄

    ○内田国務大臣 なおちょっと局長に補足させておきます。万一間違うといけませんから……。
  222. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 基本的には、いま大臣が申されましたように、大蔵大臣との間で、今度の擬適廃止によって日雇健保のほうの一般会計繰り入れも浮くことであるし、切りかえに伴うショック緩和という意味もあって、助成措置を講じろということを要請しまして、基本的には大蔵大臣も了承されておるというふうに伺っております。具体的な方法とか金額につきましては、これからどういうような組合ができ、どのような経理状況になっていくのかを見ませんと、精算補助でございますからできませんので、いまお話に出た臨時調整補助金一億円を増額していくかあるいはほかの方法でいくか、そういったことは今後の少し様子を見て折衝することになりますが、いずれにせよ本年度はある程度はかぶらざるを得ないと思いますし、切りかえに伴うこういう特別の措置でありますから、きまっている助成措置のほかに何らかの助成を必ずするつもりでおります。
  223. 後藤俊男

    ○後藤委員 いまの問題については、ぜひひとつ配慮をしていただくようにお願いしておきたいと思います。  その次は、先ほど言いましたように二十二県か二十四県が一括して全国組織で出発する、さらに単独で出発する県もあるわけなんです。そうしますと、七月三十一日以降は前の擬制適用が切れるのです。七月三十一日までに全部仕事が終わってしまえばこれは心配ないと思いますけれども、それが万一終わらずに八月に入ってしまったとする場合には、その間における空白というのができるような気がするわけですが、それについてはどういうふうにお考えになっておるか、お尋ねいたします。
  224. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 七月三十一日で切れるというお話は、切れる人もありますけれども、また切りかえ措置で八月一ぱいくらいまで従来の日雇健保による給付が受けられる者もあるわけでございますけれども、八月一ぱいくらいになれば、大体のところは切りかえなければならぬということになるわけでありますが、これにつきましては、もう五月末をもちまして従来の擬適の措置が廃止になったことによりまして、法律上は当然国民健康保険、市町村経営の国民健康保険に入っておるわけでありまして、これはすでにそういういろいろな連絡手続等もやっているわけであります。したがいまして、国保組合への加入がおくれている、できないということのために医療給付が受けられないということはないわけでありますけれども、しかし、切りかえを円滑にするために、できるだけ特別国保組合への加入をいま促進しているわけでございます。したがって、いろいろな国保組合の結成の動きがいまございますけれども、これを申請のあったものについては審査をして、一応組合経営の見通しがついたものにつきましては、やはり早急に認可いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  225. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、もう時間がございませんから簡単に言いますが、いま言われましたように、申請の出ているものについてはひとつ早くやっていく。先ほど言われたとおり、八月一日から切れるものもあるわけなんですね。だから、そういうものに対しては迷惑をかけないようになるべく早くやっていきたいと思う。ただし、どうしてもできない場合には、ある程度空白になるわけですね。そういう場合には、具体的問題として厚生省として相談できるのかどうかということなんです。ここであなたのほうでもはっきりどうだこうだと言い切ることは非常にむずかしいかもわかりませんけれども、そういうふうな場面があった場合には具体的には相談できるかどうか、私の言っておるのはこの点なんです。  それから、あわせてもう一つの問題といたしまして全国組織の問題には医師会との関係、これが非常にむずかしいような話も私、聞いておるわけなんです。たとえば東京都で出した診療書ですか、これで北海道で見てもらう、九州で見てもらうということになるのではないかと思うのですが、そういうふうな医療機関との関係につきましては、厚生省としてはその間に入って円満にいくように今後強く指導していただく、これはお願いのような形になるわけですが、この二つに対しましてお答えいただきたいと思います。
  226. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 第一の空白の問題は、いまお答えしましたとおり、国保組合に入らないものにつきましては当然市町村経営の組合に入っておるわけでありますから、医療の空白ということは生じないわけでございますけれども、しかし、従来の給付実績を確保するというような意味において国保組合への加入を希望するものにつきましては、なるべくその切りかえ期間内に組合に加入できるように、間に合うように措置したいというふうに考えております。万一八月一ぱいくらいまでに国保組合に入れないというようなものにつきまして、切りかえの措置を延長するとかいうようなことは考えておりません。  それから第二の全国組織等のものにつきまして医療機関との協力関係でございますが、当初から全国組織というものは例外的なものでありまして、国保組合は原則的には地域組合中心のものでございますので、全国組織についての医師会の協力関係については、まだ今後どれだけ全国組織ができるかわかりませんので最終的な了解は取りつけてございませんが、これにつきましては、もちろん厚生省が中に入りまして医師会の了解を取りつけ、運営に支障のないようにいたしたいと思っております。
  227. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われました第一、第二の問題ですね。第一のほうの問題に少々問題は残っておるわけでございますけれども、ここでいま大臣もちょっと立たれましたもので、いますぐどうこうということには話がつかぬと思います。その問題につきましてはあとへ残しまして、先ほどから言っておりますように、いろいろ騒ぎました問題もこういう方向で解決の糸口がついたものですから、大臣もいろいろ言われましたし、あなたもおっしゃいましたような方向で、ひとつ今後の特別国保の問題につきましても、あなたのほうとしてもせいぜいよりよい方法でやっていただきますようにお願いをいたしたいと思います。  では終わります。
  228. 伊東正義

    伊東委員長代理 島本虎三君。
  229. 島本虎三

    ○島本委員 もう種痘による副作用の被害の問題は衆参両院でだいぶ詰めてありますから、一つ一つの問題についてはここで私あえて質問したい、こういうような意図ではないのであります。  それで村中局長にちょっとお伺いしますが、四十三年の当社会労働委員会で、種痘によるところの副作用の問題で重大な被害を受けておる大橋段という子供の例を取り上げて、その対策について十分講ずるように、こういうふうに言っておいたことは御存じだと思います。もちろん費用の問題を含めて、大連株その他の株の問題についても同様に十分言っておいたのです。ところが、四十三年にこれを言って、そのとおり実施しておって今回のこのような重大な事態になったのかどうか。言われながらも厚生省では、われわれが言うことはさほどのことでもないというように軽く見たままで、このような一つの不祥事態を惹起さしたんじゃないか、こういうように思うのです。あのころ、四十三年ですから、いまから三年前にでも完全な手を打つ機会があったはずです。注意も喚起したはずです。しかし、どういうようなことか、こういうようなことになったことはまことに私は残念でたまらないのであります。それにしても、いろいろとワクチンの問題が問題になっているようでありますけれども、痘苗にリスター株を使っている。これについて当時から十分検討してみるということでしたが、それに対して方法等においても何ら具体的に変わった方法もとらず、従来のとおりにやってきてこういうような状態になった。これに対して、四十三年以降厚生省は一体どういうようなことでやってきたのですか。私は、犠牲者を見るたびごとに憤激の情に耐えかねているのです。これは完全に厚生省の怠慢じゃないかと思っているのです、いまに始まったことじゃないから。それとも私ごとき者の質問は軽く受け流しておった結果であるのか、これはまた重要だと思うのです。ひとつ御答弁を賜わりたいと思います。
  230. 村中俊明

    ○村中説明員 四十三年の四月でございますか、小樽市の方から訴訟がありまして、その点について、たしか昨年の春の国会のおりだったと記憶しておりますが、山本委員から御質問があったのでありますが、このときにお答え申し上げましたことは、実は四十三年の五月に伝染病予防対策全般について、大臣が、諮問機関である伝染病予防調査会に諮問をして目下検討している、その過程の中で御指摘のような不測の事故によって起きたそういう対象について、何らかの救済的な方途を講ずるんだという御趣旨のことも含めて論議をされております、たしかこういうお答えを申し上げたと記憶いたしております。その後、御承知のとおり調査会の検討が進んでまいりまして、六月の十五日に調査会長から中間答申が出まして、十五日に大臣に手渡されました。この中には、私が昨年の春国会でお答え申し上げましたような、今後ワクチンの事故が起きた場合に、国家賠償法あるいは民法というふうな従来の法律によってケースが処理されるということは別として、簡易な方法で何らかの救済的な方法を講ずる、そういう立法措置なりあるいは制度化を検討する必要があるという趣旨の答申が出ております。この目的といたしますところは、従来の過失責任主義をとる範囲内では、やはり因果関係が明らかになって、しかも過失の所在が出てこなければ、御承知のとおり賠償法なりあるいは民法の対象にならないわけです。ところが、残念ながら予防接種の過程の中ではいろいろな医学的に未開の部分があって、たとえば特異体質の問題であるとか、あるいはワクチンという異種たん白を人体に接種した場合の特異反応というふうな医学的に非常に不明な点があって、そういう起きた事故がワクチンとの関係について必ずしもはっきりした医学的な結論が出ない場合がある。しかもこれが明らかに予防措置と関係がないというふうな場合以外については、幅広く、これは無過失事故という形で検討して取り上げる必要があるだろうというのが、今回の中間答申の背景にあったものだと考えております。  そういう意味では、これが裁判その他の方法によって、過失問題なりあるいは因果関係を相当こまかく詰めて数年かかるというふうな結論を待つことについては、接種を受けた事故者の方の不利益のみならず、予防接種全般の問題にも影響するわけでございまして、これを簡易な方法で救済するというのが私どもの受け取った答申でございます。今後そういう形で考えてまいりたいと思うわけでございます。
  231. 島本虎三

    ○島本委員 それでまた具体的な問題として、当時言ったことを全部証明するに足るような事態が起きてきたわけです。それは北海道の江別に起こった。東芝化学の種痘ワクチンを接種したあと、種痘後遺症で死んだ生後十カ月の幼児だった。北海道大学で解剖した結果、死因は種痘後脳炎ということで、この幼児は異常体質でもない、こう断定されているわけです。そうなりますと、やはりこれはワクチンの開発に対して厚生省が怠ったということになってしまうのではないか。前から、この点は検討事項として十分申し上げておったということだけは、私は忘れられないのです。ですけれども、こういうようにもうすでに実際に解剖までして、そしてそれは種痘による、本人は異常体質ではない、こういうようなことで医学的にも立証できるのだ、これはもうすでに重大な段階だと思います。したがって、大臣も、今後のこういうような事故に対しては考えもあることだと思うのですが、ひとつ明らかになっておること、この明らかになっておる事態、これもまた他にも当然適用される問題でもありますが、こういうようなことのないことが一番望ましいし、あってはならないことです。事態が証明されるようなことになって厚生省としても今後の対策と、いままで起こったことに対するその後のはっきりした措置がきまっておったら、この際御発表願いたいと思います。
  232. 村中俊明

    ○村中説明員 ワクチンの性格の問題についてでございますが、これも御承知のとおり、現在日本で使われておりますのは、池田株が主体で、一部大連株、従来日本で開発された痘苗の株であろうと思います。これをWHOが力価の判定の基準に使っておりますリスター株と毒性の云々ということがいろいろ議論されております。これは昨年厚生省が研究費を計上いたしましてやった成果、結果が最近出ておりますが、簡単に申し上げますと、種痘を行なった部位の局所反応が——日本の池田株とそれからリスター株、もう一つWHOのエクアドル株、こういう三つの株の比較実験の局所反応では、リスター株、エクアドル株は日本の池田株よりも反応が若干弱い。それから全身的な反応でございますが、これはたとえば発熱がある、あるいは発疹ができる、こういう全身的な反応を見ますと、むしろ池田株よりもリスター株、エクアドル株について若干強い反応があるというふうな数字が五千数百名、数が少ないのでございますが、この統計では研究班としては報告がなされております。ただ、この結論の中に例数が少なくて、これがリスター株、池田株との比較成績に耐えるかどうか、その点については疑問がある、今後もっと例数をふやして比較検討しなければ、正確なことは言えないわけであります。  もう一点、局所反応が少ないということで、リスター株についても今後実験を進めていく必要があるという趣旨の意見がありました。これがつい最近出ております昨年の研究をやった内容でございますが、実はこれと前後いたしまして、昨年やはり若干の調査費を計上いたしまして、日本の学者にヨーロッパ地方、アメリカ地区の種痘の状況の視察をしてもらいました。御承知のとおり、イギリスでは現在リスター株を使っておる。アメリカでは、アメリカ自身が開発した特別な株を使っております。フランスも、同様、自身が開発した株を使っておる。西ドイツにつきましては、州によって区々のようですけれども、ある州ではリスター株、ある州では別な株というようなことで、大体株についてのヒストリーの明らかな、自信の持てる株を使って、それぞれの国では現在種痘を実施しておるというふうな実態でございまして、視察をした専門家の結論としては、このようなことで、もしも今後日本が株の問題について検討する場合には、十分なフィールド実験をあわせながら検討をする必要がある、こういう結論が出て、七カ国の学者の意見をまとめてみると、それぞれの国が自信を持って開発したそういう株を使っているということに学者自身が一つの確信を持っているというふうな印象を受けたというような報告を受けております。ただ、何はともあれ、いま少しでも副反応の少ないもの、そういうようなものの開発ということは今後急を要する問題だと考えております。この点については、島本委員の御意見そのとおりだと私自身も感ずるわけであります。
  233. 島本虎三

    ○島本委員 それで、以前からこういうような問題に対してはいろいろ検討されておったと思いますけれども、いろいろ聞くところによりますと、厚生省そのものは必ずしも芳しくない、いろいろな批判を聞くわけであります。いわば学界も注目しておった矢追抗原については目もくれないでおったとか、厚生省は国民の健康を守るためにあるはずなのに、メーカー擁護に終始したのは遺憾であるとかいうようなことも聞くわけであります。公害対策特別委員会で業者側に立っているのではないかと言ったら、厚生大臣、おこってすわらなかったこともありましたけれども、水俣病に対するあの補償措置の問題にも見られましたように、こういうような点でももっともっと考えないとだめだと私は思うのです。  それと、もっと例をほかに求めると、やはり一九六三年の調査で、副作用による脳炎の発生状態の原因というのが、もうすでにデーターとして出ているようじゃありませんか。一歳未満児の接種例としては、米国では四十三万六千名に一人、一歳以上四歳未満の人には四百二十四万名中一人、これはアメリカの小児学会の公式な見解だという。しかし、現在の日本の例は五万三千名に対して一人だ、このデータに間違いないとすると、あくまでもこれは怠慢ですよ。見に行ったとするならば、これ以後の数字を見ているのですから、おそらくもっといい数字が出ているはずだと思いますが、これは一体どういうことなんでしょう。また、この当時から、こういうような株について、ワクチンについては十分考えなければならない状態にあったのではないか、こう考えられるのです。  まして、私の友人にもこういうような人がいますから、その人のうちに行ってみるとまさに残酷だ、こう言わざるを得ないような状態です。療養費についても自己負担になったままですから、いま裁判に出して大臣も訴えられているのですけれども、これも西ドイツあたりでは全額国庫負担になっているというのですが、いまの病人に対しての療養費は、一体どういうふうに大臣、考えておりますか。
  234. 内田常雄

    ○内田国務大臣 だんだんお話を承っておりましたが、いろいろワクチン——これはいまのお互いの問題でございますが、ワクチンについて日本の池田、大連株がはなはだ劣っておるとか、あるいはリスター株が非常にそれよりもすぐれておるとか、あるいは東大の伝染病研究所で開発された矢追抗原というものを用いなかったことについての批判とかいうものがございますが、私は専門家ではございませんが、今度専門家に厚生省にお集まり願って、いろいろ検討のやり直しをしていただいた過程において私どもが承ったところによりますと、こういう事件が公にされましたことにも関連いたしまして、多少の誤解もあるようでございます。しかし、私は昔のことにとらわれることなしに、ワクチンの開発そのものから、力価においても劣らず、それからまた副反応、ことに乳児に対する副反応などが極力ないようなそういう新しいワクチンの開発というようなものも思いを新たにしてやろうじゃないか、予算も思い切ってひとつ使ってやろうじゃないかというようなことを決意をいたしまして、そういうこともお答えをしたり発表もいたしておりますし、またいまお尋ねがございました種痘による副反応患者、あるいはその患者どころではなしに、その副反応が固定してしまって、身体の障害を来たしているようなお子さん、さらに不幸な方、なくなってしまったようなお子さんが、やはり何百万人に一人といえどもあるのでございますから、そういう方々に対する処置がこれまでは講ぜられておらなかったことは、これはいまの時代になるとそれでは済まされないから、これはもう大蔵省に向かっても強力に要求をして、そしてそういう補償ということばは私は使いませんが、特別措置というようなことをやるつもりであるということも実は発表いたしております。その一環といたしまして、副反応等によって障害を生じて医療にかかられているお子さまに対しましては、それは保険でカバーされない部分の医療費というものを公費で見るという制度も取り入れよう、こういうことも柱の一つといたしまして、御承知のとおり目下大蔵省と具体的な数字固めをいたしておる、こういうわけでございますので、これまでのことはこれまでのことといたしまして、いま申すとおり医療費等の措置もいたすつもりでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  235. 島本虎三

    ○島本委員 あわせてこの医療開発に対する熱意は、最近はぐっと上がってきたことは私はいいと思います。これは何ら責める理由はないのです。ただ予算面で開発する、するといっても年間予算いままで九十万ほどでしたね、もっとありましたか、それほどですね、いやもっとあればなおいいですが……。私のほうが間違いであるほうを望むのですが、それで小児麻痺のああいうような医療の開発について当時猛烈な突き上げがあって、流行があって、あれは相当、額が上がったようですが、現在、四十三年のころにやっていながら同じ九十万円ほどの年間予算で医療開発につとめるんだといっても、熱意のほどは、これで私は満点をつけるわけに、大臣どうしてもいかない。これはまことに遺憾なんです。それと同時にこの方面も十分配意しないといけない、こういうように私は思っております。  それと、完全なワクチンの開発はできないまで可、ベターなものはできますから、そして最近聞くところによると、これはほんとうかうそかわかりませんけれども、主治医制を考えているとか、または今度任意接種に切りかえたらどうだとか、こういうようなことを巷間耳にするわけです。しかし、何としてもこれは中近東あたりにもまだまだこういうような病気もはやっている現状ですから、これは高度な政治的な判断も当然必要になるでしょう。安全なワクチンを開発して強制接種するのが、やはり妥当な線じゃないのか、こういうように思っているわけです。これは他の医者にまかせてしまうとか、主治医制にして責任はそっちに持ってもらうとか、金はかかっても責任は免れる、こういうようなことじゃ私としてはこれはりっぱな策じゃない、こういうように思うのです。これはやはり強制接種にし、安全なワクチンの開発に努力する、そして方法についてもっと研究する、こういうような態度をくずすべきじゃない、こういうふうに思います。この点はどうですか。
  236. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が答えさせていただきすすが、これは島本委員のおっしゃるとおりであると思います。私は外から厚生省に入った者でありますから、厚生省をかばうつもりは毛頭ない、全くございませんで、これから厚生省をよくしようということの熱意に燃えております。  先ほど年間九十万円のワクチンの研究費というのは少ない、こういうお話でございましたが、九十万円ぽっきりでやっていたということではございませんので、やはり何カ年計画かでワクチンの研究をやっていたことは事実でありますが、私が印象的に受けますところは、これまでの研究費というものは、そのワクチンによる危険のない接種方法についての研究と、もう一つは各種のワクチン、これは矢追抗原株とか、アメリカの何とかいう株とか、あるいはWHOが力価の判断のために使っておりますところのリスター株、各種のそういう株も副反応の比較研究というような面にこれは実績もおさめておるわけでありますが、そういう面だけに研究費を注いでおったので、私が今度というか、私というよりも厚生省の諸君がここで思いを新たにして夢のワクチンをつくろうという、ワクチンを開発しようということ、これは何百万円かかろうとも、何千万円かかろうとも、そういう取り組み方でなかったような私は印象を受けます。しかし、今回はいま島本さんが言われましたように、年の途中でありますけれども、科学技術庁から特別調査研究の調整費みたいなものをとりあえずでも千五百万円ほどもらいまして、いま、ただいまを起点として三年計画、三年計画でなしに私は一年計画がいいと思うのでありますが、しかしそれは専門家、学者の皆さん方の御意見を聞きましても、新しい株を開発するといっても、いままである株をやはり基礎として力価なりあるいは副反応の発生についてのよりよいベターなものをつくるということになると、少なくとも三年はかかるということでございますので、そういう意味から線香花火のようなことでなしに、少なくとも三年の目標、あるいはそれが三年とか、あるいは十年になっても、この夢のワクチンの開発のために毎年相当な予算の計上をして、そうして不安を持たれないワクチンというものを開発していく。その一方、これも私は島本先生のお説と賛成でございますが、いろいろな方の御意見を伺ってみましても、この痘瘡に対する予防接種を任意接種にするというわけにはいかない。ただいまの状況においては厚生省といたしましてはもう義務接種の責任を免れるわけにいかない。どうしても、これは義務接種という制度はいまの段階においては、これはやらないことには国際的の痘瘡の存在の状況からいきましても適当な方法がない。もし痘瘡が日本に入ってくることが情報によってキャッチされましたそのときに予防接種をやりましても、どろなわ式予防接種というものは、かえって副作用を非常に大きくするということでありまして、そういう方法はとれないということは、専門家のおおむね一致する見解のようでございます。ただ、いまのように乳幼児期に三回に分けてやっている接種のうちで、第一回の乳児期の接種の時期が、いまの満二カ月ないし十二カ月の間がいいかどうか、副反応の特別に少ないワクチンの開発されない限り、あるいはされるまでの間は、その年齢をもう少し引き上げたらどうかという意見も一方にございまして、その研究を厚生省でお願いをいたしておる十二人でございましたか、専門家の方々にやっていただいておりますので、これも七、八、九月のいまの接種をやらない休暇期間が明けるまでの間には、何とかひとつその回答も出していただいて、そうしておおむねの意見がそのほうに向かわれるならば、やはり乳児接種というものを避けて、満一歳を過ぎてからの接種ということに踏み切るというようなことまでも、私はそういう方向でやってほしいということでお願いをいたしておるということも御理解をいただきとうございます。
  237. 島本虎三

    ○島本委員 もうそろそろ時間にもなりましたけれども、やはり可能性としあわせを享受する権利、こうなりますと、子供であってもこれはもう貴重なものであり、とうといものであります。そういうようなものをやはりこういうような事故によって、また不注意によって、またそういうような状態によって、これはもう一生取り返しのつかないような状態にしてしまうということは耐えられません。人生の全部を障害に悩んで、治療費に追われるような、その家族の身になってみたら、これはとても耐えられるものじゃないと思います。だからこの対策も十分考えてやってほしいと思います。  それと同時に、厚生省の一つの性格というものがあります。その性格というものは、たとえば火災で娘さんを殺してしまった、それの弔慰金が出た、その娘の収入に依存して生活していた病弱な両親の生活保護をばっさり打ち切ってしまった、こういうようなこともあるということは、大臣も知っておられるとおりでありますが、こういうような場合にはもっともっとあたたかく見て、こういうような人に悲しみのダブルプレーをさせないようにしてやるのがやはり私は今後の一つやり方だと思います。よく見てやってほしいと思います。  それと、これは最後ですけれども、大臣はやはり未必の故意による殺人だということで訴えられている。まことに遺憾です。これは刑事事件として訴えられているかと思ったら、民事事件としての損害賠償の訴えを受けているわけです。園田前厚生大臣、内田現大臣並びにそこにいま手を出した局長、この三人がそういうような立場にあるわけでありまして、これに対しては今後どういうようにするつもりなのか。受けて立つのか、またはそれに対する十分な補償をして示談で終わらせるようにするのか。これは今後一つの課題になりますので聞いておきたい、こういうふうに思うわけですが、これはひとつお考えをお聞かせください。
  238. 内田常雄

    ○内田国務大臣 島本さんのお立ちになっている北海道の被害者の方から告訴を受けているということでございまして、私は、まことに島本先生の顔を見るのもつらいぐらいでございます。しかしこれは裁判に係属していることでもございますので、その過程において私どもも考えを述べて対処してまいるつもりであります。しかし民事などの問題につきましては、一方において、御承知のように私どもも今度は副反応を持っておられる、あるいは死亡した方々に対する特別の救済措置というようなものも行政的に明らかにいたすことになりますので、そういう面との接触の過程において解決する面もあるものと考えております。
  239. 島本虎三

    ○島本委員 じゃこれで終わりますが、最後に要請しておきます。予防接種法による医療措置、こういうような再点検をもう一回してみてほしい。それから接種年齢、これはいま御意見の開陳がありましたが、これも十分点検の上、再考してもらいたい。この二つをお願い申し上げて、今後再び告発されないように、そしてそういうようなことは、単に個人の問題じゃなく、日本の国が告発されておるのですから、これは国民に対しては重大なる不信行為です。こういうようなことが再び起こらないように、そしてあるものに対しては早くこれを解決できるようにこれを心からお願いすると同時に、今後の善処、この行政に対して、予防接種の副作用に対しましても絶滅を期するために十分配意をしてもらいたい、このことを心から念じまして私の質問を終わります。
  240. 伊東正義

    伊東委員長代理 大橋敏雄君。
  241. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、精神病の問題についてお尋ねするわけでございますが、時間が非常に制限されておりますので、答弁のほうはひとつ簡潔に、的確にお願いしたいと思います。  精神病院に関しましては、よく撲殺だとか、あるいは虐待、最近は焼死事件などが起こりまして、最近非常に精神病院の問題が目立ってきているように感じます。しかしそういう中にもとにかくごく一部の事件がさも全体的に行なわれているような印象を与えられて、その関係者がさらに不安を抱くというようなことも起こっているようでございます。またその反面、先般火災事故が起こりました、集団脱走をはかった入院患者六名の放火が原因である、こういわれておるあの栃木県の佐野市の精神病院の問題も、原因はそのように報道されておりますが、その責任の所在というものは、あるいは国ではないか、あるいは病院なのか、そうして放火したその者であるか、これは別の問題として判断されなければならないことであろうと私は思っております。  そこで、いずれにいたしましても、精神病院の問題は、人道的、人命尊重的な立場から、ここで根本的にその対策を急がなければならないという実情に迫られていると思うわけでございます。厚生省として今後の対策として、二度とあのような悲惨な事故を起こさないという、そういう立場に立った総点検と申しますか、そういうことを具体的に考えられているかどうか。もし考えられているとするならば、その内容を説明していただきたいと思います。
  242. 村中俊明

    ○村中説明員 非常に残念な今回の事故でございまして、従来とも精神病院における火災の防止については、非常に詰めた具体的な指導を各県にしてまいっております。つい六月の十日にも、場合によっては抜き打ち検査を含めたようなそういう病院の監査について、事故防止あるいは火災防止という観点から指導しているわけでありますが、今回の事故につきましても、重ねてもっとこまかい点につきまして実は指導をしたわけでございまして、これはただ私どもが精神病院を運営していく立場からの問題というだけでなくて、建築基準法あるいは消防関係、さらには医療法というふうな関連の法律機関と十分話し合いをしながら具体的な総点検を近く実施することを消防庁とも話がつきまして、今月の下旬からブロック別の会議を精神病院の責任者と持ちまして、具体的な方向、スケジュールをきめてまいりたい、こんなふうに考えております。特に今回の悲惨な事故で問題になりました閉鎖病棟のあり方の問題、さらには相当老朽化した木造家屋といったようなことが重なりまして、悲劇が起きたのだと考えておりまして、こういう老朽化した木造家屋の改築の問題、あるいは閉鎖病棟の事故の場合の予防の措置といった面についても、この機会にぜひブロックで話し合いをしてもらいたい、こう思っております。
  243. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの答弁では、全国の精神病院を総点検をする、今月の下旬から具体的に動き出すというお話であったと思いますが、全国的に千三百三十一カ所ですか、精神病院があるということを聞いているわけでございますが、総点検をなさるについて、全国の病院をどのような立場で具体的に調査なさるのか。それには、たとえば調査票などで調査する項目をきちっときめて、それを厚生省などに報告させるという立場をとられるのか。それとも調査内容は、その地域、地域に適当にまかせておやりになるのか、その点はどういうことですか。
  244. 村中俊明

    ○村中説明員 こまかい話は避けたいと存じますが、いま消防庁と相談いたしまして、御指摘のようなカードをつくっておりまして、そのカードができ上がりましたら各県にやりまして、このカードを同じものを二つ用意いたしまして、一つは施設、一つは県、それから写しをこちらに送ってもらうというふうな形で、少なくとも年に一回以上、できれば二回というふうな点検の結果を記入して、特に問題のある点につきましてはこちらに報告を受けるというふうな、実は相当こまかい話し合いを消防庁といたしておるわけでございます。
  245. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その第一回の報告といいますか、成果の締め切りといいますか、そのめどは大体いつごろに置かれようとしておるのですか。
  246. 村中俊明

    ○村中説明員 大体八月くらいまでに打ち合わせが終わると思いますが、早いところについては九月にはおそらく第一回のそういう報告と申しますか、問題点が出た場合にはこちらにわかるような状態になる、こう考えております。
  247. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、総点検の結果、当然施設の不備あるいは不足改善、いろいろと問題点が浮きぼりにされると思うわけでございますが、いずれにしましても経費がかかることだろうと思うわけです。そういう実態が明らかになったとしてみても、それを直すお金がないということになれば、それこそ空論でございますが、それに対して厚生省としてはあるいは大蔵省等とも折衝なさって何らかの具体的な融資方法等を考えられているのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  248. 松尾正雄

    ○松尾説明員 御指摘のような不備の問題がありました場合には、いままでも実は医療金融公庫で精神病院に対しましては優先的にその改良に対しては認めております。  なお、その際消防施設、消火施設、こういうものも新しくスプリンクラー、そういったものも融資の対象にいたしまして防火設備の完備あるいは耐火建築というものに全力をあげて融資をいたすように用意したいと存じます。
  249. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私がいままで聞いている範囲では、施設の約八〇%が民間である。あとの残りが国あるいは公立の立場で経営されているのだということでございますが、いまの医療金融公庫の融資、これはおそらく民間のほうの融資であろうと思います。優先的に融資をするというお話でございますけれども、それでは最高限度額といいますか、幾らぐらいまで、あるいは必要な額は全額融資するのか、また、いままでのように融資の条件といいますか、内容といいますか、たとえば利子などは従来どおりでなされるのか、それとも特段の配慮をなさろうとしておるのか、その点はどうですか。
  250. 松尾正雄

    ○松尾説明員 限度額につきましては、ことし医療金融公庫の限度額、四十ベッド以上のもの、従来は五千万円だったものを八千万円に上げております。それが一応の限度でございます。しかしながら、たとえば精神衛生法に基づきまして措置患者を入れるための指定病院にその病院がなっておりますような場合、これは八千万円という限度をこえまして必要に応じた融資ができるというふうにいたしておりますので、今後もそういうものをひとつ十分活用いたしまして措置いたしたいと思います。  なお、特別にいま全体の実態が十分でございませんけれども、利率の問題等は、その病床の地域その他によっていろいろときめられておりますけれども、この点は実態を十分把握した上で重点的にやるかどうか、私どもは再検討したいと考えております。
  251. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣にお尋ねいたしますが、いままでの答弁では、大体総点検をやる、そうして具体的には今月半ばから動き出して、早いのは九月ごろにはその実態が浮かび上がってくる、施設の不備とか、あるいは改善等が出てくるはずだが、それに対しては、民間施設に対しては医療金融公庫から優先的に融資をしていく、そうして最高限度額も現在きめられているものよりももっと大幅に考えていくという答弁であったわけでございますが、それに対する大臣の所感と、あるいは所信といいますか、とともに、利子の問題で、東京都でいま融資しておる内容を聞いてみますと四分だそうでございますね。もちろんここは五年の短期だそうでございますが、このように現在金融公庫から借り出されておる利子は六分五厘です。そういう点、この際配慮すべきではないか。少なくとも一分くらいは切り下げて援助すべきではないか、私はこう思うわけでございます。というのは、その一部の悪徳経営者を除けば、精神病院等を経営していらっしゃる皆さんの精神というものはまことに崇高なものであろう、慈善事業的な気持ちで専心なさっておるのではないか、私はこう信ずるわけでございます。したがいまして、このような事件が起こってきた今日をとらえまして、何とかこういう融資の面についての利子、そういう点も配慮すべきではないか、こう思いますので、あわせてお答え願いたいと思います。
  252. 内田常雄

    ○内田国務大臣 精神病院の施設の改善につきまして大橋委員からたいへん御熱心なおことばがございまして、私どもも激励をいただいた気持ちがいたします。  実は、先日医療金融公庫の十周年というものがございまして、たまたま私がそこへ参りましたところが印刷した資料をもらいました。その中にきわめてわかりやすいグラフが一つ載っておりましたが、それは医療金融公庫が病院に対して融資をしたのを、精神病院とそれからその他の一般病院に分けまして、そしてどのくらい医療金融公庫から融資を受けた病院数の割合があるかということを見やすく示したものでございますが、見ますと、精神病院につきましては病院数の八〇%余りだったと思いますが、それがこれまで十年間に医療金融公庫の融資を受けております。これに反しまして一般の病院のほうは四、五〇%くらいの数が医療金融公庫から融資を受けたというような表であったと思いまして、それを見まして、ちょうどこれは先般の両毛病院の火災のあとでありましたが、医療金融公庫というものも精神病院についてはよくやっているといいますか、あるいは精神病院のほうで医療金融公庫というものを御活用になっている割合が一般病院よりもはるかに広いことがわかりました。しかし、そのいきさつは、何も両毛病院のことに処しての印刷ではございませんでした。全く十年間の歩みの一般統計でございます。  ということは、最近、大橋先生御承知のように、精神病院は病床数が毎年非常なふえ方でございます。たしか毎年一万二、三千床ずつふえていると記憶いたしておりますが、現在でも二十三、四万床くらいにすでになっていると思いますので、新しいそういう施設につきましては、非常に大きな部分が医療金融公庫から施設資金を借りて、木造でない、おそらく不燃性のものをつくっておるわけでございます。ところがそのぐらい病床数がふえるわけでございますので、旧施設をどんどんつぶしてしまうというような状態になっていないで、旧施設がそのまま残っておることをも反面物語るものであると考えますので、これから先につきまして、私どもはやはりできる限り医療金融公庫の資金を民間の精神病院の施設の改善に結びつけてまいりたいと思うのでございます。  さて、そこで利率の問題でございますが、これも大橋先生御承知のように、一般の中小企業その他の事業に対するこの種の国の金融公庫の融資利率は年八分二厘くらいがベースでございます。特別の設備の近代化というようなものに対してようやく七分台の低金利を設けているというのが実際でございまして、中小企業等からは利率を低くすることを非常に強く要望されておりますが、しかし、ただいま御指摘のように医療金融公庫の一般利率がたしか六分五厘でございまして、全体といたしましてもこれは非常に安い利率であることは間違いございません。そこでそれをさらに一分下げることについて御熱心な御要望でございまして、その御要望といいますか、あるいは御激励は私もよく銘記をいたしますが、一般的にこれを一分下げるということは非常にむずかしいことではないかと思います。しかし、ある種の施設については私はさらに安い金利であってしかるべきだということについては大橋先生と同感の点がございますので、これは今後の問題としまして私どももその努力をいたしてまいりたいと思います。
  253. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣の答弁の中に、医療金融公庫の貸し出しの内容を聞いたところ、一般病院よりも精神病院のほうに約八〇%ほどが融資されているというお話、あるいはその利息についても中小企業等に比べるときわめて安いというお話がありました。それはそうでしょう。数字が示しているところですから間違いないと思いますが、私がいま言わんとするのは、これは精神病院のみならず、民間の福祉施設を私調べてみたのですが、これは戦後の転用建物、粗材急造の建物が多くて、その改造、改築が必要に迫られていながらやはり財政的事情から意のごとくならず、火災その他の災害におののきながらその業務に携わっているというのが実態でございます。そこで私は先ほども言いましたように、精神病院というのは営利目的に経営されているわけではないのだから、むしろ国が全面的に引き受けてやるべき事業ではないか。それを民間的にやっている皆さまに対してやはり何らかの姿で大幅な、いわゆる特段な配慮が必要ではないのか、このように私は要望しているわけですから、今後の対策の場合にそういう気持ちをくみながら当たっていただきたいということであります。それから建築構造それ自体も、いまも申し上げましたように木造建築がほとんどでございますが、こういうのは精神病院の特殊性から見ましても、災害防止の立場から見ましても憂慮すべきことでありますので、構造、防災対策あるいは対象者の処遇方式といった三つ、つまり三者の密接な関連性に立って合理的な構造あるいは設備が必要であろうかと思います。  時間がございませんので大ざっぱに聞いていくわけでございますが、精神病院に関する厚生省の実態調査といいますか、これはいつ行なわれたのでしょうか。そしてそのときにつかまれている精神病床数あるいは施設あるいは次回の調査はいつなのか、そういうことを答えていただきたいと思います。
  254. 村中俊明

    ○村中説明員 昭和三十八年に全国的な実態調査をいたしまして、その結果精神病、精神障害者の一応の推計をいたしました。これは多少古くなっておりまして、よくいわれております患者の総数が、推定では百二十四万人、この中で精神病が五十七万、精神薄弱が四十万、その他二十七万、こういうふうな数字が推計として出ております。現在まだ、今後いつやるかという計画は立てておりませんが、そのうちに検討いたしたい、こう存じます。
  255. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その調査の中で、推計でけっこうでございますが、いわゆる精神患者、潜在精神患者が社会にどのくらい生活しているか、そうして、ほんとうはもう直ちに入院させなければならぬような方がどの程度なのか、数字的につかまれていれば報告してもらいたいと思います。
  256. 村中俊明

    ○村中説明員 数字がこまかくて恐縮でございますが、百二十四万の中で、先ほども申し上げましたが、精神病が五十七万、この中で精神病院に入院を必要とする者が二十一万人、それから精神薄弱者が四十万人、この中で精神病院に入院することを必要とするのが三万人、こういう推計が出ております。特に精薄四十万のうちで三万が精神病院に入院する必要がありますが、在宅のまま医療または指導を要する者、これが三十二万人精神薄弱者についてはいる、それから二万人が精神病院以外の施設に収容する必要がある、こういうふうな内訳に、精薄についてはなっております。
  257. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの説明では、精神患者は二十一万人、早く入院させなければならぬ者がいるということですね。これは私はたいへんなことであろうと思います。三十八年の調査でしかりであります。今日どれほどふえているであろうかということを思うと、ほんとうに憂慮せざるを得ません。そこでこうした要入院の精神患者に対するいわゆる病床の増設計画といいますか、これは厚生省としては具体的になされているでしょうか、どうですか。
  258. 村中俊明

    ○村中説明員 四十四年の十二月だったと思いますが、従来人口万対二十三の比率で精神病床を各県に普及しようという考え方でございましたが、御承知のとおり非常に患者の収容が対象がふえてまいりまして、四十四年の十二月にはこの基準を二十五に引き上げまして、現在万対二十五を目標に施設の整備をやっております。現在のところ、全国で二十七の県が万対二十五以下でございます。その他の県は二十五あるいは二十五を若干上回っている、こういう実情でございます。
  259. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかくいまの数字を聞いていると、おそろしいような感じがしてまいります。これはほんとうに一日も早くそうした人々を十分に収容できる施設を、この際計画とともに実現していただきたいことを強く要望しておきます。  次にお尋ねしたいことは、精神衛生法による強制措置の入院がございますね。この法律は決してその患者の人権を考えたものではないと多くのお医者さんも言っているそうでございますが、措置入院で入ってきた患者というものは、たいていの場合、まず外出や開放を禁じて囲っておる、治療というものは第二義的である、こういうふうにいわれているわけでございますが、実はこの前の火災事故がありました佐野市の精神病院でも、これは警察から回されたいわゆる強制措置入院患者から起こった原因ですね。この問題でございますけれども、実はそこの院長さんが、こういうふうに言っています。秋山洋一院長が言っていることですけれども、「アル中やシンナー中毒の人を金もうけのために入院させ、逃げないようにしているのではないかということをよくいわれる。私もアル中やシンナー中毒は、元来、精神病院に入れるべき人ではないと思っている。しかし、強制措置で警察から回されてくるのだ。病院しか収容する施設がないのが現状だ。私の意思で入院させたのではない。」こういうふうに言っているわけですが、もともとこの精神病院の院長さんは、アル中やシンナー患者は本来精神病院に入ってくる立場の人ではないんだ、しかし、警察から直接強制的に送り込まれてくるので、預からざるを得ないんだ。こういうことで実際は事件が起こってしまっているわけでございますが、この問題について、私はある程度の法改正が必要ではないか、こういうふうに考えているわけでございます。その点についてはどう思われますか。
  260. 村中俊明

    ○村中説明員 精神障害者の中で、自傷他害のおそれのある患者については、ただいま御指摘の措置入院という形で医療と保護を病院の中で加えているということでございまして、この中には、ただいま御指摘になりましたけれども、院長がどういう感覚でお答えになったかわかりませんが、私どもといたしましては、麻薬中毒、シンナーも含まれるわけでございますけれども、あるいはアルコール中毒、こういったものでさらに自傷他害のおそれがあるというふうな者は、当然措置患者として精神病院の中に収容されることになると思います。ただ、問題は、このような患者は非常に医療の上で特別な手当てと申しますか、対策が必要だ。たとえば、性格的に異常を来たしている、あるいは、中毒が消えてしまうと普通の人と全く変わりがないというふうなことで、看護の上にも他の一般精神病患者との間に差があるわけでございます。そういう特殊性を考えまして、こういう患者を集めて特別な施設をつくって、そこへ収容、治療するのが適当じゃないか、そういう趣旨で言われたのじゃないかという感じがいたしますが、私どもといたしましても、特殊病棟を設けまして、こういう特別な手当てを必要とする障害者の医療、保護、こういったものは従来も細々ながらやっておりますけれども、今後も拡充という点については力を入れていく必要がある、こう考えています。
  261. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間がございませんので、簡単に、要点だけ答えていただければけっこうですが、強制入院措置をされても、病院側は一銭も収入はないんだそうですね。政府とかあるいは県、都とかから措置費なんというものは入らないんだということを聞いたんですが、そうなんですか。
  262. 村中俊明

    ○村中説明員 これは全額公費で負担をいたしております。
  263. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それじゃ、たとえば警察から強制入院措置される。それに対しては、その人に対する経費は一切国が見るということですか。
  264. 村中俊明

    ○村中説明員 国と県です。
  265. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 国と県で全額見るわけですね。これは、私の聞き間違いなのかもしれませんけれども、強制入院措置をされても、一銭も措置費はこないんです。強制入院措置をとった人に対して、国または都道府県で措置費だけでも援助してほしいという、実際に事務をとっている人の声だったんですが、いまのようなはっきりした答弁を聞けば安心いたしましたけれども、もう一回、私は別な機会にこの問題をただしてみたいと思っております。  いずれにいたしましても、こうした民間病院に入院している——この前、実は三多摩関係の精神病院を視察に行ってきたわけでございますが、その中でも、多摩病院の話を聞いたんですけれども、入院患者の一日の経費は、入院費といいますか、それが、いまの医療制度からいきますと千百五十円だそうです。入院料が五十五点、基準看護料が十四点、給食が四十一点、寝具が五点で百十五点、いわゆる千百五十円が一日の収入の限度になっておるようでございます。国民宿舎にしても、一泊二食つきで現在千二百円から千三百円というわけですね。ところが精神病院では、今回、改正で入院管理料が七点つきますから千二百二十円にはなりますけれども、これは三食つきだ。治療、相談、二十四時間看護、そうして一日に千二百円では、経営はとても成り立ちません。よく世間で不正入院、いわゆる水増し入院等がなされていることがうわさされたりなんかしておりますけれども、こういう計算の上からいきますと、どうしてもそういうふうなことをやらざるを得ない実態があるのです。こういうことも知っていてほしいということを痛切に言っておりました。これは患者からもっとよけいお金を出せといっても無理だろうと思いますし、千百五十円ではほんとうに無理な、安い金額でございますので、患者からではなくて、いま言った国とか県とかが、もっと経営がスムーズにいけるだけの援助はすべきじゃないか、こう私は思うのですけれども、これは大臣でなければ答えられないことだと思いますから、ひとつ大臣、答えていただきたいと思います。
  266. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大橋先生のお話、よく承りました。しかし、また、世の中にはいろいろのことを言う人もありまして、医療費、社会保険診療報酬が高過ぎるのだ、だから健康保険が赤字になるとかいうようなことで、厚生省は両方から責められて、まん中であんこになっているというのが実情でございますが、私はせっかく厚生省に参りましたので、両方の状況をよく承って合理的解決をはかって、そして、入院なさる方が病院において正当な待遇を受け、また診療所も十分成り立つような処置を講じなければならないと思います。
  267. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 両方から責められるとおっしゃいますけれども、確かに医療費の値上げなどはとても考えられるものではありませんが、精神病院は、よその一般病院みたいに、差額ベットの徴収などということはとても考えられないわけですね。そういう点も十分配慮して、精神病院の特殊な状態を配慮した上で、何らかの援助、保護をやるべきであるということを私はいま要望しているわけですから、それを考えられて今後の対策に臨んでいただきたい。  時間がございませんので、最後に一言。社会復帰のための中間的な施設といいますか、先ほどもちょっとお答えになりましたけれども、これはもっと具体的に、もう本気になってやるべきではないか。今度の火災事故を起こした少年たちも、もっと相談を受け、あるいは心情を聞いてもらったならば、こんな事故まで起こさなくて済んだのではないかということが、その少年の書いている日記の内容からうかがわれたわけであります。  その日記の一部を読んでみますと、ほんとうに涙が出てきそうなところがありますよ。これは転載されたものでありますが、原文のままです。  「四月十日 曇り 俺も遠回りをしたな。横道にはずれてしまった。生き方を一つ間違えば、とんでもない所に行ってしまう。後悔先に立たず、だれかそんな事を言っていた。確かにそうだな。今さら後悔もないが出来ることなら俺も汗を流して働きたい。四月十一日 雨 小田原少年院に一年も行って来て、限りないこの世界で真面目に生き様と決心したにもかかわらず、退院後十日目に精神病院にシンナーで入院してしまった。血と汗を流し、一心不乱に修業して来た一年間も無残にたった十日しか社会で生活出来なかったこの自分が情けない。どうして俺は意志が弱いのだろう。ケンカをするときばかりクソ度胸と根性があるのに、シンナーには負けてしまう。この俺はいったいどうしたら良いのだろう。四月十三日 晴れ午前に父さんが面会に来てくれました。面会中、感情が高まり、父さんの涙を見てしまった。しみじみ申し分けないと思った。これ程までに僕のことを心配してくれている父さん。本当にありがとう。四月十七日 晴れ時々曇り 一日も早く退院したい。それが今の僕の心境で、毎日が悲しく、辛い日々を送っている。四月十八日 雨 今日も暮れていく。いつになったら退院出来るだろう。錠のかかった家の中で暮らす一日の長さ。普通の人には考えることはできないだろう。四月二十一日 いつまでこの生活が続くのか。僕は毎日毎日精いっぱい努力している。いつになったら認めてもらえるか?」  こういうふうに続いているわけでございますが、私は思うのです。たとえば精神病院で火災が起こった、錠をかけていたために今度十七名の人がなくなっておりますけれども、実際錠をかけないことがいいのか、もしかけないで社会に脱出して事故を起こせばまた病院長の責任になる。かけるがいいか、かけないがいいか非常にむずかしい問題であろう。病院長もこれを退院させて社会に解放したいと思っていても、もし事故を起こしたならばと思うときにはちゅうちょするであろう。そういうときに中間的な施設、社会復帰の場所があるならば、もっと大きな立場で保護ができていくのではないか、事故が起こらないで済むのではないか、こう思うわけであります。したがいまして中間的な施設、いわゆる作業医療センターといいますか、こういうものをもっともっと真剣に考えられ、そして大幅に増設されることを要望するわけでございます。最後に一言所信を聞いて終わりたいと思います。
  268. 村中俊明

    ○村中説明員 御承知のとおり、現在精神障害者の収容施設としては病院オンリー、軽快すると退院して自宅から通院、そういうしかけになっております。御指摘のように、その間にたとえば作業療法あるいは夜は施設に入って昼間は職親のところで働くというふうな、いわゆる社会復帰のための回復者のセンターというふうな構想を四十五年度でテストケースとして一カ所予算化されております。現在これの運営の方法を早急に詰めております。これを運営してみて、もしもうまくいくというふうな判断ができれば、今後の問題としてこういう施設をふやしていきたい。とにかく一カ所で現在テストケースという方向でいま着手をしておるわけでございます。
  269. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 きょうは時間が制限されておりますので、またの機会に譲りたいと思います。終わります。
  270. 伊東正義

    伊東委員長代理 渡部通子君。
  271. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私は種痘の問題について伺いたいと思っております。  この問題が起きましてから、大臣をはじめとしていろいろ前向きに検討していただいておりますし、またいろいろな参議院等での御答弁もございますので、伺いたいことはたくさんございますが、時間も限られておりますので、省きながら何点かお伺いしたいと思います。  最初法律の問題でございますが、伝染病予防調査会がやはり伝染病予防法及び予防接種法の改正を促しておりますし、また参議院の社労でも大臣は再検討すべき時期であるというようなお答えをなすったように聞きました。この法の再検討ということを、この次の六十四国会で必ずなさる御決意であるかどうか、最初に伺いたいと思います。
  272. 内田常雄

    ○内田国務大臣 お尋ねのとおり、伝染病予防調査会の先般出されました中間報告の中には、伝染病予防法のみならず、予防接種法の改正につきましても示唆されております。どういう点をどういうふうに改正したらよいかという具体的な案につきましては、引き続き御検討中でございまして、遠からずと申しましてももちろんことし中でございますが、御答申をいただけることになっておりますので、それをいただきました上で、できる限り早い機会にその方向で改正案等を国会で御検討いただきたい、こう考えております。
  273. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 予防法のほうが明治三十年以来そのままであったということは、まことに事なかれ主義できたというか、どう言われてもいたし方のないような怠慢さを感ずるわけでありますが、それはそれとして、予防接種法のほうでございますけれども、これは過去八回にわたって改正がされてきた。しかし私は、大事なポイントの改正が見のがされていたのではないか、こう思うわけで、これは第十条の一項の接種の第一次の年齢の問題でございます。これは先ほど大臣の御答弁の中にございましたので、重ねて伺うことはいたしませんけれども、生後二カ月の接種ということはたいへんに問題がある。現在学者の中でも八カ月以降あるいは十三カ月から十二カ月くらいが適当ではないかというような意見がたいへん多くなってきておりますし、あるいはわが国の接種の死亡事故というようなものが、六カ月前後に集中をしている。また、先ほど島本委員の発言の中にもございましたけれども、アメリカの事故の例を見てみましても、一歳未満では四十三万人に一人、一歳から四歳になりますと四百二十四万人に一人というような発生率、こういうことをあわせ考えてみますと、やはりこの十条の一項は再検討して当然改正をされるべき問題だと思います。その点は大臣の御答弁がありましたからけっこうでございますけれども、重ねて私の希望としてお願い申し上げます。  それからもう一点、厚生省がこの間出された通達の中で、一つは乱刺法という表現を多圧法と変えられました。あるいは回数を、十回から十五回というのを五回減らされたようでございます。これは私もたいへん急いでどろなわ式におやりになったという感じを免れませんでした。この多圧法という表現は、学会のほうでは古くから使われていたことばのようでございまして、乱刺法というのは非常に間違った受け取り方をされる。現に、いなかなどに行って集団接種の場所なんかになりますと、乱刺法、多圧法などということはあまり知らないような看護婦さんまでが手伝ってしまう。そうすると、乱刺などということはやたらに刺す、こういうことばの表現からも非常に危険なニュアンスを流していたのではないか、そういった点が、私は種痘に対する行政の非常に怠慢といいますか、手おくれといいますか、神経が行き届いていない、それを感じざるを得ないわけです。   〔伊東委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕 学会では早くからこういった問題になっていたようなことが、こういう事故が起こってからでなければ行政の上に反映をされてこない、こういういまの厚生省自身の体質に私はたいへんな一連の問題を感ずるわけでございます。ある消息通の話によりますと、乱刺法というのはマルティルプレッシャーという英語の誤訳でそうなってしまったというような説明も伺いましたのですが、その辺の事情をひとつお聞かせいただきたい。
  274. 村中俊明

    ○村中説明員 現在の実施規則では乱刺法ということばで表現されておりまして、実はこれは弁解とお聞き取りいただいてもやむを得ないのでございますが、規則の改正をやっている最中でございます。今回の接種時期生後六カ月の問題につきまして、ほとんど並行の状態で実は改正をいたしております。実際には、御指摘のように多圧法という形で各都道府県あるいは医師会あたりと話をしながら接種の方法を指導してまいったわけでございます。ただ、これは役人くさい表現になりますけれども、そういう明文化されたもの、改正の手続が要るわけでございまして、その手続に若干手間どったというのが実態であったろうと存じます。これはおくれた点は遺憾と存じますが、実際には多圧という形の指導はずっとしてまいっておるわけでございます。
  275. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 次に副反応対策の問題でございますけれども、ワクチンの開発も大事な問題でございますけれども、完全無欠ということは期待できないことでございますし、また事前の問診、検診等をどれほどやっても、いろいろなことで事故が全くないというわけにはいかない、こういう予防接種行政の現状から見ますと、副反応に対する対策ということは一番大事になってくる、こう私は思うわけでございます。まずマルボランでございますが、御承知のように種痘合併症にきく薬でございますけれども、厚生省は六月十九日にこのマルボランをかなり民間のある製薬会社を通じて緊急に輸入をされた、そうしてそれを予防接種のリサーチセンターの種痘研究班に渡して治療用に使う、そういう話を聞いておりますが、こうなりますと、これも非常に場当たり式でございまして、いままでそれじゃマルボラン等に対する常時の準備がなかったのか、非常に無責任な行き方を感ぜざるを得ません。あるいは現在のマルボランというものは、四十四年度に種痘研究班がバロン社から輸入をして、在庫が底をついておる。東京都においてすらわずか十五、六人分しかなかった。こういう事情を聞くにつけても、非常にこういう対策がおくれていたのではないか。この辺に急に事故が起こってからマルボラン対策をやっている、こういう行政を感ずるわけでございますが、どういう事情でございましたか。
  276. 村中俊明

    ○村中説明員 ただいま御指摘のように、マルボランの開発されましたのはここ数年の問題でありまして、私どもといたしましても、実は昨年四十四年度で研究費の中でこれを購入して、実際にそういう強い副反応のあったケースについては専門家が治療の相談を受けながら研究という体制の中で措置をしていった、これが少なくなってまいりまして、あらためて研究班としては購入手続を実はとっていたわけでございます。これも引き続いて研究班の事業としてやろうという考え方でそういうことを進めていたわけでございます。実態は現在の段階では医薬品というふうな範疇に入りませんで、研究のための薬品という形で研究班が貯蔵している、それに対して国が研究費という方法で手当てをしているということであります。
  277. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 VIGの開発は日本の現状としてはどうなっているのでございましょうか。やはりアメリカそれから英国、フランスあたりの報告をずっと読んでみますと、副反応に対しても国として無償で直ちにVIGが供給をされる、これで非常に安心をして接種ができるというようなのが先進諸国の実情のように感じますが、日本ではこのVIGの開発というのは現状はどうなっておりましょうか。
  278. 村中俊明

    ○村中説明員 VIGにつきましては、御承知のようにこれは種痘を行ないまして六週間以内の人から血をとりまして、その血液からつくったガンマグロブリンでございます。わが国におきましてもこれはつくれるわけでございますが、問題は種痘後六週間の方から血を確保するということに一つのネックがあるわけでございます。外国等におきましては軍隊がございますので、軍隊が外国に出かけるというようなときには一斉に種痘をする場合があるようでございますが、そういう場合にその軍隊から採血をしてそしてVIGをつくる、こういうことができるわけでございますが、日本では御承知のようにそういう自衛隊の海外派遣というようなことがございませんので、一斉に予防注射を、種痘をやるというようなケースもございません。したがいまして、港湾関係に働いておられる方とかあるいは海外に渡航される方、そういう方から献血をしていただいて、そしてこのVIGのための血液を確保するということになると思うのでございます。そういう点にネックがあるわけでございますが、しかしやはりこういう事態になりまして、VIGとかあるいはその他のマルボラン等の種痘の副反応に対する治療薬というのはぜひ必要なわけでございますので、いろいろなそういう隘路がございますけれども、私どもといたしましては、日赤とさらに今後密接に協力いたしまして、そういうVIGのための必要な血液の確保ということにつとめてまいりたいと思っております。
  279. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私もただいまの御答弁のとおり、やはり種痘問題の一番のネックはそこにあるんじゃないかと考えるわけです。確かに日赤も動き出して、港湾労働者の間あるいは渡航者の間から血をもらおうという動きがあるということも新聞で拝見をいたしました。いまの御答弁でもそれしか道はないということでございますが、具体的にその問題はすでに着手をされておりましょうか。あるいは進められてある程度のめどなり見通しなり確保の見通しは立っておりますのでしょうか。
  280. 加藤威二

    ○加藤説明員 現実にVIGのためのそういった種痘後の方の血液が現在五リットルぐらい確保してございますが、五リットルではいかにも少ないわけでございまして、今後そういうものをふやしていくということですでに着手はしているという段階でございます。
  281. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 港湾労働者の中にもいろいろな話し合いをつけたりして献血の動き等が出てきていると受け取ってよろしゅうございますか。
  282. 加藤威二

    ○加藤説明員 まだ組織的に港湾労働者の団体とか、そういう組織とちゃんと話をつけて今後恒常的にやっていくというところまではまいっておりませんが、そういう方向で努力いたしたいと思います。
  283. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私、そこのところがほんとうにネックだと思いまして、その血を集めるということについては、国民としても大いに協力しなければなりませんけれども政府としても大いにVIGの血の確保にあたっては力を注いでいただきたい。それが種痘の副反応を避けていくために、現在皆さんに安心してもらうための対策の一番大きな問題だと思うわけです。そういう意味で、大臣のそれに対する御所見等もお伺いしたいと思います。
  284. 内田常雄

    ○内田国務大臣 もちろんやらなければならないことだと考えます。日本に軍隊がないので大量に集められないことは御説明申し上げたとおりでありますが、それにかわる港湾労務者等その他の道をも考えまして、この処置を前向きに進めてまいりたいと思います。
  285. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。  ワクチンの開発のことでございますけれども、先ほど島本委員のお話の中にだいぶ出てまいりましたので省略をいたしますが、今度千五百万円の予算をとって弱毒ワクチンの開発研究をなさるという、たいへんありがたいことで、先ほど大臣三年というめどをお話しでございましたが、それで、どういう方向というのはおかしいですが、どういうワクチンを開発される予定であるのか、その内容を伺わしてもらいたいと思います。
  286. 内田常雄

    ○内田国務大臣 あとから専門家に補足をさせますが、従来のワクチンの研究というのは、ワクチンの研究そのものよりも、ワクチンの接種方法の研究あるいは各種のワクチンについての副反応の発生状態比較研究というようなところにあったようでございます。したがってあの研究費なども少なかったわけでございますが、先ほども申しましたように、今度はそうじゃなしに、もう一つ根本的に新しいワクチンをつくることをしよう。そして痘苗に関する日本の専門家をよりすぐって集まっていただいて研究班をつくろうということにいたします。三年というのは、それらの、いま厚生省で御相談を申し上げておるその研究班の前のこういうことについての着想をいろいろ御指導いただいている諸先生の御意向を総合いたしましても、一年や二年でできるものではないということでございますので、少なくとも三年くらいはかかる、こういうお話でございます。また、どういう株を種にしてやるかというようなことにつきましては、それはおおむねさっきも申し上げましたように、リスター株ももちろんあらためて私は検討するほうがいいと思いますし、いままで力価が少ないということのために捨てられておったというか、他のほうの用途に曲げられておったような矢追抗原というような株につきましても、問題は第一期の乳幼児の種痘の際の副反応を避ける弱毒ワクチンということに私はあると思いますので、力価の問題も大切でございましょうが、やはり弱毒性ということにつきまして、もう一ぺん私は矢追抗原のようなワクチンについてもこれを取り上げる等の方法も交えまして、新しいワクチンの開発、こういうことでございます。  わかりやすく私が理解いたしておりますことをお話し申し上げましたが、専門的なことはここに医学博士がおりますからひとつ……。
  287. 加藤威二

    ○加藤説明員 大臣が申し上げました方向なのですが、痘苗につきまして、わが国で使っております痘苗は決して効力その他において外国のものに劣らないのでございますが、御承知のように副反応が出ているということで、その副反応の出ないような痘苗を開発しようということでございます。従来のものは、牛の皮膚を用いて痘苗をつくっておったわけでございますが、今後研究しようというのは、鶏卵を使いまして、そしてそれに培養をいたしまして、そして継代培養、代と代をつなぐ培養をいたしまして、そして安定性、免疫性のあるワクチンを開発しようというのが研究の主体でございます。これもまた大臣からお話がありましたように、弱毒性の株を開発しよう、弱毒性であってしかも安定性のある株、これをねらって研究をいたそうということでございます。
  288. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 ちょっとそこで一つ伺いたいのですが、日本には十二年前から弱毒株として細々と研究されてきた多ケ谷博士の株があると聞いております。V1S株、それが厚生省が研究費を出さないために一時中断をされて今日に至った、そういう話を聞いたのでございますが、その事情をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  289. 加藤威二

    ○加藤説明員 確かに十二年前から多ケ谷博士が国立予防衛生研究所におきまして、新ワクチンの開発研究を行なっておられたわけでございますが、V1Sというのがそれでございます。これは大連株の一種を、これも鶏卵を用いて弱毒化したものでございますが、力価の点とそれから安定性ということで、研究は継続されておったということも私どもは聞いておるのでございますが、そういう点でまだ問題があって、野外接種の試験等の実施に至らなかったということを聞いておるわけでございます。  今年度からは、先ほど申し上げましたように、痘瘡の新ワクチンの開発に関する特別研究費も出るわけでございますが、このV1SあるいはアメリカでできておりますCV1、それからオランダのCV2、それからまた日本の矢追抗原、こういうようなものをもう一回再検討いたしまして、弱毒株の開発をしようということでございます。
  290. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 現在のことはわかりましたけれども、矢追抗原にしても多ケ谷博士の株にいたしましても、研究が途中で中断されて、研究費の助成も受けられなかった。その辺に私はやはり問題を指摘したいと思うわけです。そういう研究が継続して、国の援助で行なわれていたならば、ここであらためて急速出直したように、予算をたくさんつけて全部一列にやり出すというようなことをしなくても済んだんではないか。そういった点で、最初にも申し上げましたけれども、学者の研究というものがもう少し何らかの意味で親切に行政の上に反映し続けていくような、そういうお考えの姿勢であってほしいし、担当は厚生省でございますので、これからの問題としてよろしくお願いをしたいと思います。  もう一つ、予診の問題について伺います。先ほどもちょっと問題として出ておりましたけれども、厚生省のほうも通達として今度予診のことも第一にうたっているようでございますが、やはりどれほど予診を完全にいたしましても、乳幼児の体調の変化なんというものは非常に流動的でございますから、なかなか全然事故がないというわけにいかないという実情でございます。そういう意味合いから、かかりつけの医師にこれから種痘をお願いするというような方向、これが考えられるかどうか、そういう御意思があるかどうかという点。それからもう一点は、やはり接種の実情を聞いておりますと、非常にお医者さんが重労働のようでございます。一時間に大体八十人から百人をやっているということで、これなら予診も何もないということでございます。で、日当はというと、大体三千百五十円、ある人に言わせると牛馬のごとくやらされるんだそうでございます。ほんとうにへんぴなほうに参りますと、医者の手も足りなくて、それも看護婦さんが手伝ってやっているというようなところもございます。こういったところに行政指導が行なわれてこなかったのかどうか、あるいは医師の日当を上げるとか、こうなりますと医療行政の根本にかかわる問題ともなりますけれども、もう少し公衆衛生の医療行政に対して優遇措置をとるべきだと私は考えます。その点についても御意見を伺わしていただきたいと思います。
  291. 村中俊明

    ○村中説明員 接種する医師は赤ちゃんの健康状態をよく知っているかかりつけの医師という点につきましては、私も同感であります。従来も県あるいは市町村によっては、地域医師会と相談をしながら、そういう方法を実施しておりまして、今回の事故を契機にいたしましてそういう指導をいたして、できるだけ赤ちゃんの健康状態をよく知っているかかりつけの医師で定期の接種を受けられるように、そういう話し合いを県のほうでするという指導をいたしました。それから取り扱い、接種する人員と医師の待遇の問題でございますが、これも非常に気の長いこととおしかりをいただくかもしれませんが、実際には徐々に改善はしてまいっておりますが、なかなか希望に沿うようなところまでいっていない。しかしこれは今後も待遇という面で改善をはかっていきたい、こう考えておる次第でございます。
  292. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 たいへん時間がございませんそうで、問題をはしょりますが、補償の問題についてちょっと伺っておきたいと思います。  大臣もたいへん前向きな御答弁をいただいておりますが、いわゆる予防接種の事故者に対してはすべて補償する、あるいは疑わしきも含めて、その疑いによっていろいろな後遺症が起こったという場合も含めて補償がいただける、あるいはまた時間的にはなるべく制限を置かない、こうして被害者の救済に当たるという御態度と確認させていただいてよろしゅうございますか。
  293. 内田常雄

    ○内田国務大臣 おおむねそのとおりでございます。おことばの中に補償というおことばがございましたが、補償とか賠償とかいうことになりますと、いまの法律体系では故意、過失ということにすぐ結びつけられて考えられがちでございますので、私はことさらそういうことばを避けまして、故意、過失がなくてもまず因果関係が種痘に存する限りは特別の措置を講じていく、その因果関係もいろいろ併合症等の問題もございますので、でき得る限り種痘に基づく部分といいますか、基因があると判断されます限りは、なるべくその特別措置の対象になるような、そういう行き方でまいりたいということで私は働きかけております。
  294. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 その御答弁を聞いてたいへん安心したのですが、ただし現実にはそこがたいへんむずかしい問題でございまして、この間も予防接種の事故にあわれた方々のお集まりに行って、いろんな意見を伺ってみました。そうしますと、やはり医師の診断書がもらえないということが皆さんの泣きごとでございまして、種痘のためと疑われるけれどもそうは診断書には書いてくれない、そういう苦情が非常にありまして、私はここが大きなネックになっているんではないかと思います。やはりお役所のお仕事でございますから、ちゃんとした証明書がなければ救済処置もいただけないことで、私は診断書の問題というのが大きなネックだなということを、皆さんの意見の中からしみじみ感じてきたようなわけでございます。  そういう意味で、どうしてもわからなかったら、そういうときはここの病院へいらっしゃいというような、厚生省で指定医院をつくるとか、あるいは種痘ではないという否定的な因果関係が立証されない限りは補償するとか、その辺のはっきりした態度がほしいし、その診断に関する機関の問題あるいはそれを徹底する機関の問題をどういうふうにお考えであるか、そこを伺いたいと思います。
  295. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ネックよりも何よりも、いままではそういう特別措置、救済などの仕組みが全くございませんでした。いろいろの困難もありますので、おそらくなかなか実現に至らなかったと思いますが、私はそういう困難を飛び越えて、とにかく特別措置、救済を始めよう、こういうつもりでおります。  やります場合に、渡部さんのおっしゃるとおりの困難も出てまいると思いますが、私の気持ちは、狭く狭くと解釈するのではなしに、渡部さんのおっしゃったような御苦労をも吸収できるような何らかの審査機構をつくっていって、せっかくつくった制度が御納得のいけるようにしたいと考えておりますが、こまかいところまでは詰めておりませんので、もう少々時間をかしていただきとうございます。
  296. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 一時三百万円とか百五十万円とかいう補償額が新聞に報道されておりましたけれども、金額については大体どのくらいがお考えいただけているものかどうか、あるいは高齢の被害者に対して、死亡した場合あるいは遺族年金、埋葬費、子供等に対する教育扶助等といった問題、あるいは後遺症の方々に対する障害年金、教育扶助、職業あっせん、こういった点に対する大臣のお考えをもあわせて伺えればと思います。
  297. 内田常雄

    ○内田国務大臣 とにかく万全の、百点をいただけるような特別措置ももちろん大切でございますが、私はなるべく事を単純化いたしまして、種痘のために副反応を生じて医療の対象になっておるようなお子さんに対しましては、保険における自己負担の部分をまず公費負担でカバーをするということ。それからそういう副反応の症状が固まってしまって心身障害を来たしているようなお子さんに対しましては、医療ももちろん必要でございましょうが、そういう気の毒な状態に対しましてお見舞いをするようなことが第二番目。その第二番目に関連いたしましては、そういう障害を起こされたお子さんを、もし御本人や御家族が希望されますならば、そういう方々に対応する国の福祉施設等に優先的に収容をして差し上げるというようなこと。それから第三番目には、不幸にして種痘後の副反応——その辺の専門のことははわかりませんが、種痘のための副反応によって死亡をせられたようなお気の毒な方々に対しましては、これもまた特別措置の対象にするということを、法律や予算制度を待っていますと来年度以降になってしまいますので、いま申しましたようなわかりやすい筋で、行政的にもうことしのうちにぜひ出発させたい。またあとのおっしゃられるような課題が残されるといたしますならば、これを法律、制度の上にのせることも検討いたしまして、そういう際にだんだん詰めてまいりたい、こういうことで考えております。とにかくこの際十日でも二十日でも早く私が申しましたような行政上の措置をまず出発させたい、こういう気持ちでおります。
  298. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 時間がありませんのでこれで終わりにいたしますが、いまの大臣の御答弁で、法律よりも何よりも、とにかく行政措置においてでも早くやるという、私はこれを何よりも最後にお願いをしたかったのでございまして、いま大臣そうおっしゃってくださいましたけれども、この前新聞紙上で見たのですが、厚生省側が第一次接種の幼児期の接種の時期をおくらせる方針だという話のときに、厚生省のある係官ですら、予防接種法を改正せぬ限り時期を変更することはできないなどということを新聞紙上で言っておりまして、これがやはり私は国民が一番お役所アレルギーを起こすゆえんだと思うわけでございます。大臣の最後の御答弁が私が一番聞きたかった点でございまして、法改正もいろんな研究もけっこうでございますけれども、いまこれだけ人心が不安になっている、秋にはすでにまた予防接種の時期がやってくる、こういうときにあたって、緊急、臨機応変の処置で、一時的な救済措置なりあるいは法的見通し、そういった点で行政をなるべく早くして人々を安心させていただきたい、これを最後にお願いをいたしまして、時間でございますので、私、以上で終わらせていただきます。
  299. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 古寺宏君。
  300. 古寺宏

    ○古寺委員 最初に、山形県の長井市で最近発生しておりますところの流行性肝炎について、厚生省はその実態を把握しているかどうか、またこの流行性肝炎に対する治療法あるいは病源等もまだ確立されておりませんが、そういう点に対する今後の研究の体制と申しますか、研究班をつくって今後やっていくというようなお考えをお持ちになっているかどうか、またこの長井市では肝炎の発生している地区が歌丸というところでございまして、これを通称歌丸肝炎と申しておりますが、この地域では水道がないために非常に飲料水が悪くてこういう病気が発生しているのではないか、そういうふうにいわれているわけでございます。そこで、長井市では非常に財政が苦しいのでありますが、今年度水道の計画も持っているようでございますが、こういう特殊な地域に対しましては何かしらの国の助成によって、保健衛生の立場から水道の施設が早期にできるように考えてあげるべきではないか、こう思うわけですが、以上の点について承りたいと思います。
  301. 村中俊明

    ○村中説明員 従来、流行性肝炎と称するものは、しょっちゅうではございませんけれども、ときどき国内の各地で起こっておりまして、たとえば最近の例では猿島肝炎あるいは日永肝炎というふうな地域の名前をとっております。ただいま御指摘の山形県の歌丸肝炎につきましては、四十三年の十月にこの話が県から私どものほうに持ち込まれまして、翌年の春、調査要項をつくりまして実は発足させて現在に至っております。ただいままでの報告をまとめてみますと、長井市では三万四千名の人口に対して六十四人の患者発生、これはレセプトによる調査でございますが、疑いも入れまして、豊田地区では約四千名の人口に対して二十二人の患者、疑いが発生しておる、こういう数字になっておりまして、その他型どおりの検査を健康診断の要領で実施をいたしたわけでございます。数字を申し上げますと、二百三十三人の豊田地区の健康診断を行ないまして、二十四人について四十四年の春、異常者が出ました。それからこれは対象地区として全然離れたところで、添川地区が二百六名の検査をしてこれは五人の異常者が出ました。比較しますと豊田地区では対象地区に比べて相当高い率であることがわかったわけでございます。こういうことで一応私どもに集められたデータから推測いたしますと、歌丸肝炎は流行性肝炎ではないかという判断をいたしております。  なおこれらの予防措置は、ただいま御指摘がございましたが、食品あるいは飲み水と牛乳、これが何らかの相当力の強いウイルスによって汚染されて、それが口から入って肝炎を起こすのじゃないかというふうな一応の疫学的な推定がされておりますが、残念ながらまだ、各国とも研究をしておりますけれども、いかなるウイルスであるかというふうな断定については、御承知のとおり出ていないという実態でございます。  なお、これらの水道の問題については……。
  302. 浦田純一

    ○浦田説明員 御指摘の長井市歌丸地区の水道の問題でございますが、該地区の水道の未普及地域につきましては、長井市上水道の区域拡張ということによって水道の布設を進めるということで、たしかこの六月だと思いますけれども、市当局においてもこの計画をすでにおきめになったというふうに聞いております。したがいまして、近く認可の申請がなされる予定ではないかというふうに考えておりますので、市当局にもこちらのほうから積極的に連絡をとりまして、今後この事業の推進をはかるように、起債による財政措置なども十分に配慮して、できるだけ早く水道の布設が普及するようにこちらとしても考えてまいりたいと思っております。
  303. 古寺宏

    ○古寺委員 いま局長の御答弁になかったのですか、流行性肝炎の研究というものが非常におくれているわけでございます。この長井市の場合もわずかに予算が二十万円でございまして、これではとても研究が十分にできないような体制でございますので、国が何かしらの研究の体制をつくりまして、予算を盛ってあげて研究を進めるべきではないか、こう思うわけでございます。  さらにまた、水道に関しましても、普通の場合と違いまして、こういう保健衛生の立場から水道を普及しなければならない、そういう苦しい市の実情でございますので、それに対して何かしら簡易水道あるいは小規模水道並みの助成というものを考えてあげることはできないか、この点についてお伺いしているわけでございます。
  304. 村中俊明

    ○村中説明員 答弁漏れがございまして失礼いたしました。  山形県の場合につきましては、厚生省で持っております予防費の予算の中から研究費を計上して、わずかでございますが出しました。四十四年におきましては医療研究助成金、これは約百万円でございますが、これを計上いたしまして、全国切な研究班の組織をつくっております。これで今後体制を整えて研究を進めてまいりたい。  なお、山形県の歌丸肝炎につきましては、東北大学が技術的なバックアップをいたしまして、県、市が予算を計上し、国からの予算と合わせて調査をしておる、こういう実態のようでございます。
  305. 浦田純一

    ○浦田説明員 水道の工事について、単に起債だけでなくて、補助金その他の助成措置が講ぜられないかという御質問でございますが、ただいまの制度といたしましては、御案内のとおり、簡易水道の事業につきましては補助金があるわけでございます。しかしながら一般の上水道につきましては、特別な場合は除きまして、普通の事業については起債でもって事業を進めていただくということになっております。ただいまのところまだ市当局のほうから詳細の御相談がございません。したがいまして、どのような計画でやっておられるか詳細存じませんが、いずれにいたしましても水道というのは公衆衛生の基本的な施策でございますので、私どものほうとしましてもその段階で十分市当局とも御相談の上で検討をいたしてまいりたいと思います。
  306. 古寺宏

    ○古寺委員 この研究費につきましては非常に少ないので、大臣に今後この増額をお願いするとともに、水道の助成につきましても十二分にひとつ御配慮をお願い申し上げておきたいと思います。  それから、先ほどもお話が出ましたが、予防接種の副反応あるいは事故による被害者に対するところの救済あるいは補償の問題でありますが、予防接種のリサーチセンターで出しておりますところの予防接種制度に関する文献集の中には、種痘のみならず、日本脳炎あるいは他の予防接種による事故、あるいはそういうような副反応の事例がたくさん載っておるわけであります。これについては厚生省もすでに御存じのはずでございますが、先ほどの大臣の御答弁は、種痘のみならず、予防接種全般にわたってのいわゆる救済の制度あるいは補償というものをお考えになっておるのかどうか、その点について承りたいと思います。
  307. 内田常雄

    ○内田国務大臣 今回、当面問題になりましたのは種痘ワクチンについてでございますが、しかし、私はこの機会に、少なくとも義務制の予防接種につきましては、種痘のみに限定せず問題を解決してまいりたい、かように考えております。
  308. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうふうにぜひしていただきたいわけでございます。私どもが実際に予防接種をやる場合にも、何らの補償がない場合には安心して予防接種ができない。そういういわゆる医療従事者の立場もございます。何とかしてこの補償制度につきましては、フランスあるいは西ドイツ等でもやっておるやにも聞きますが、わが国においても補償制度については十分に考えていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  さらに、これは相当古い文献でございますが、東北大学の法医学の教授である赤石先生がかつて「予防接種の実際的有効率と法的強制についての私見」という、こういう論文を出しております。この論文の内容を見ますと、腸パラの予防接種をやった地域と全然やらない地域の集団発生による有効率についての比較をなさっておりますが、この文献から見る限りにおいては、予防接種の効果が全然なかったというふうに載っておるように思うわけでございますが、こういう点については厚生省はどのように考えておられるか。  さらにまた、現在の日本脳炎のワクチンは二十年ぐらい前の非常に古い株を使っておるように思います。インフルエンザのワクチンにいたしましてもいろいろと問題があるようでございますが、きかない予防接種を義務的に強制するということは、これは私は国民をモルモット扱いにしておるように思うわけでございます。こういう点についてなぜ今日まで検討し、あるいは法改正を行なわなかったのか、その点について明らかにしていただきたいし、さらにまた、そういう全然無効な予防接種をいままで義務的に受けてきた国民に対して厚生省はどのようにお考えになっておられるか、大臣のお考えもあわせて承りたいと思います。
  309. 村中俊明

    ○村中説明員 ただいま御指摘になりました腸パラの予防接種についてでございますが、腸チフス、パラチフスにつきましては戦後ずいぶん多発をした時期がございました。手元の資料を見ましても、昭和三十五、六年ぐらいまでは年間千オーダーの患者が出ているわけでございます。そういうことで、私ども一応戦後の体制を続けて接種を実施してまいりましたが、次第に生活環境が改善されてくる、あるいは水道の普及あるいは屎尿処理の整備、国民の衛生的な関心の向上というふうなことが相まちまして、実は本年の五月から腸パラの義務接種をはずしまして、任意の予防接種に法律改正をいたしましたことは御承知のとおりでございます。  なお、日本脳炎のワクチンにつきましても、これはたしか昭和四十年だと思いますが、相当大きな改良が行なわれまして、現在ここ二年ほど急激に患者が減ってまいりました。私は、これはあげて日本脳炎のワクチンのせいだとは申し上げませんけれども、これらに対するワクチンの開発なりあるいは衛生思想の普及というものは非常に患者の抑制にあずかって功があった。今後、ただいまのように患者の発生ぐあいが腸チフス、パラチフスのような運命をたどるとすれば、ある時点では御指摘のようなことも考える必要があろうかと存じますが、いまの時点ではまだ時期が早いと考えております。  なお、インフルエンザにつきましては、昨年の香港かぜでいろいろ指摘がありましたけれども、一たび発生しますとまたたく間に世界じゅうに広まってしまう。しかも罹患する患者の中からやはり千オーダーという発生で死亡を見ております。私は、流行をなるべく早く予測して、その流行の株をつかまえて、株をもとにしたインフルエンザのワクチンをつくって、これによってある程度の予防効果をあげていくことは、現在の時点ではやはり必要ではないかと考えております。  なお、法律改正の問題に触れられましたけれども、これらの問題を総論的に検討いたしまして、伝染病予防法及び予防接種法の改正ということが先ほど来お話が出ております伝染病予防調査会に対する私どもの諮問でございまして、今後これらの結論が出る過程でただいまの御指摘の点も加えながら考えてまいりたい、こう存ずる次第でございます。
  310. 古寺宏

    ○古寺委員 いろいろな種痘の副反応を防止する意味におきまして、日赤病院等におきましても矢追抗原を使っておられるようでございますが、今後、弱毒ワクチンが開発されるまでの間、その予防的な手段として矢追抗原を使用するなり、あるいはまた先ほどお話がございましたように、最も副反応が起きる乳児の年齢の問題でございますが、アメリカ等のように一歳から二歳までに第一期の種痘をやるようにしてはどうか、そのように考えるわけでございます。法改正をまつ間に秋の種痘もございますので、厚生省としては当然いろいろ検討されていると思いますが、この点につきましてはどのようにお考えになっておられるのでしょうか。
  311. 内田常雄

    ○内田国務大臣 古寺先生おおむね御承知と思いますが、この件につきましてはその道の専門家の方々十二人ほどに先般の対応策のあとも残っていただきまして、引き続いて研究をしていただいております。私といたしましては、秋の種痘の再開期までにその結論が得られまして、一歳を過ぎてからやったほうがいいという御意見が多い場合には、法律をすぐ直せませんので、むしろ補充種痘——第一期の法定期間内に種痘か完了しなかった方については補充種痘の励行というような形の行政措置によりまして、法律を変えたと同じような措置を講ずるようにやっていただくようにさせるつもりでおります。なお、矢追抗原その他のワクチンも捨ててしまわないで、この際もう一ぺん弱毒ワクチンとして検討の対象にのせますことはむろんでございまして、これは先ほど来申しております研究班の方々に研究していただきます。
  312. 村中俊明

    ○村中説明員 矢追抗原についての御質問でございますが、一つは、力価が低い、しかもその安定性がない。これが力価が一定に保たれていることを要求されるワクチンとしての一つの致命的な問題じゃないかということが原因で、従来これが痘苗として認められていなかったというふうに承知いたしております。なお、その後製造方法の改善によりまして、凍結乾燥によることによってある程度の力価の安定をみているようでございますが、これは今後、たとえば副反応をやわらげるということの前処置としてこのようなワクチンの接種も一応考えられるのではないかという意味において、今後これの検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  313. 古寺宏

    ○古寺委員 現在WHOにおきましては痘瘡の撲滅対策計画を立てまして、そういう計画によって、わが国からも厚生省からいろいろ技官を派遣しているようでございます。天然痘を撲滅することによってこれらの問題も解消されると思うわけでございますが、今後残されているところのインドあるいはパキスタン、インドネシア、こういう国々に対する天然痘対策につきまして、WHOと提携しながらもっと強力な予防接種の推進と申しますか、予防対策と申しますか、こういうものを進めていくべきであると考えますが、そういう点については厚生省はどのように考えておられるでしょうか。
  314. 村中俊明

    ○村中説明員 私も御指摘の趣旨はまことに賛成でございます。現実の例でございますが、ネパールに対しては日本から痘苗を提供いたしまして、あの地域の痘瘡の撲滅対策に協力いたしております。WHOが唱道いたしまして、各国に物資及び技術の提供方の要請がございまして、私どものほうからも東南アジア地区については幾人かの専門技術者を派遣しております。この点につきましては、ひいては国内の天然痘の防遏ということともからんでまいりますので、そういうことに対しては今後とも極力協力していきたい、こう考えております。
  315. 古寺宏

    ○古寺委員 やはりWHOの依頼によりまして、アメリカやあるいはチェコ等におきまして、いわゆる免疫度の分布状態あるいは伝染病の予測を立てるための血清銀行というものを現在つくっているようでございますが、わが国においても今後こういうものを当然つくらなければならない、そういうふうに考えるわけでございます。先日の答申を拝見いたしましたが、その中にもそういうことが書かれているようでございますが、こういう点については厚生省では現在どのように考えておられるか。
  316. 村中俊明

    ○村中説明員 伝染病の発生後の措置というよりも、事前に流行を予測するという方向に私どもの考え方が変わってまいりまして、ここ数年来伝染病の流行予測ということを対策の一つの柱に立てて実施しております。御指摘の血清銀行はまさにその地域の伝染病の流行予測を事前に把握する非常に大事な方法だと思いますので、昭和四十五年には約二百万円の調査費を計上いたしまして、現在基本的な血清銀行の性格、運営の方法及び血液の収集方法というふうなことを、懇談会をつくりまして検討をいたしております。これの成案ができ次第、軌道に乗ぜるような努力を進めてまいりたい、こう思っております。
  317. 古寺宏

    ○古寺委員 アメリカの場合には、血清銀行、さらに規模を広げた伝染病センターというようなものを持っておりまして、実際に研究者がいろいろな伝染病に対する手を打てるような、そういうシステムになっているということを聞いておりますが、こういう点についてもやはり検討すべきではないかと思うのですが、そういう点についてはどうでしょうか。
  318. 村中俊明

    ○村中説明員 先ほど御指摘のございました伝染病予防調査会の中間答申の中にもございますように、血清銀行を中心にした伝染病の情報収集というふうなことは今後伝染病防疫対策の大きな柱にすべきであるという指摘もございまして、私どもこれの組織化という中で、ただいま御提案になりました点も込めて検討するような努力をしてまいりたい、こう思っております。
  319. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは時間ですから以上で終わります。
  320. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 西田八郎君。
  321. 西田八郎

    ○西田委員 大臣の時間がないようでありますから最初に大臣にお伺いするわけですが、先ほどからもいろいろと御質問の出ております種痘その他の各種の予防接種についてでありますが、先ほどたしか大臣は、渡部議員の発言に対して、法律のたてまえ上補償ということはできない、こういう御答弁だったと思うのですが、それは間違いありませんか。
  322. 内田常雄

    ○内田国務大臣 できないということではなしに、補償とか賠償とかいうことばを使いますと、いままでの法律理念の上から、故意、過失に結びつけられるおそれがありますので、私は政治家といたしまして、そういうことはこの際適当ではないので、先ほど申し上げましたような考え方で、そのことばを避けて進んでおる、こういうことでございます。
  323. 西田八郎

    ○西田委員 予防接種法によりますと、国民は予防接種を受けなければならない義務を課せられておるわけでございます。しかもこの法律の第二十六条ですか、以下罰則がありまして、その義務を履行しなかった者、いわゆる予防接種を受けなかった者は法律で罰せられることになっておるわけです。そして、その法律によって行なわれた予防接種によって起こってきた、それに基因するいろいろな疾病なり身体障害ということについては、当然国民としては国に賠償ないしは補償を請求することができるのではないかと思うのです。したがって私は、補償といわれても別に法のたてまえ上はかまわぬのじゃないかというふうに考えるわけなんですが、どうなんですか、その点。
  324. 内田常雄

    ○内田国務大臣 お尋ねのとおり、義務接種によりまして本人の生命、身体がおかされた場合には、国家賠償法等によって賠償の請求ができるものと私は考えます。しかし、その場合、賠償決定になるためには、因果関係はもちろんのこと、その上に故意、過失というもので結ばれていないと補償を受けられません。同じようなことを私が今度やるとしますと、ぐるぐる回りになりますので、国家賠償法の制度を飛び越えて、現実の、西田さんが言われるような事態に合うような制度としてやりたいと思いますので、いまの国家賠償制度を否定するということではなしに、それはそれとしておきながら、行政のたてまえというよりもむしろ政治のたてまえとして、私がかようなことを考えたり申し上げているわけでございます。
  325. 西田八郎

    ○西田委員 行政のたてまえとして、いわゆるアフターケアですね、いろいろの問題が起こってきたあとの事後対策ということでありまして、そうだとすれば、そういうふうにして賠償法等によってその請求をしてこない人たち、あるいはかりに請求を起こされるというようなことが予測されるとするならば、私はこの際、いまは種痘ということでかなりな問題が起こっておるわけですが、兵庫県では三種混合にもそうした問題があろうということで、県の条例で、それらのアフターケアに対する対策の万全を期するということで補償をすることがきめられておるわけです。ですから、そういう点等から考えまして、当然そうしたことが予測され、しかもこういうことが事実としてあらわれてきておるとするならば、すみやかにやはり法改正すべきではないか。そうして、国民が義務として課せられたことに対して起こってきた問題については、当然その権利としてそれが補償されることが、私は国民の権利義務という関係から申し上げても当然ではなかろうかと思うのですが、そういう意味で、改正というようなことは考えておらないのかどうか。
  326. 内田常雄

    ○内田国務大臣 お答えを繰り返すことになりますが、義務として課せられたことによって生命、身体あるいは財産に損害を受けました場合には補償の要求ができますが、それはいまの法律の既成観念がございまして、民事上の損害賠償におきましても行政行為による損害賠償におきましても、故意、過失主義というものが根強くあるのではないかと思います。これは公害などの補償といいますか救済につきましても、私は同じように先般来考えて、無過失責任的な処置を講ずべきだというようなことをあっちこっちで旗を上げておることは御承知のとおりでございますが、それと同じような趣旨で、故意、過失ということでなくても、種痘を原因とする生命、身体の侵犯に対しましては、補償といいますか、特別措置が受けられるような法律制度をつくりたいと思います。つくりたいのですが、法律制度ということになりますとこれは時期が来年になりますので、そういう法律制度をつくることを想定しつつ、この際としては、種痘が秋に再開されるまでの間に、法律はないが、行政上あるいは予算の移用、流用等の含みをもって、厚生大臣と大蔵大臣の打ち合わせによりまして、行政上の特別措置を講じたい、こう一歩も百歩も踏み込んだようなことを考えておるので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  327. 西田八郎

    ○西田委員 今回の問題に対して、大臣が行政措置上当然できる範囲のことをして、すみやかに対処されたことに対しては敬意を表するわけです。しかし、それだけでは済まされないわけで、いまおっしゃったようなむずかしい手続をしなくても、因果関係さえ明らかになればそれは当然そのアフターケアとして補償していくのだというようなことで、法改正というような点で、あるいは別途の法的措置というようなことを考えるということでありますか。そういうことですね。   〔増岡委員長代理退席、伊東委員長代理着席〕
  328. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私どもは、今回考えておる行政措置を裏づけ、あるいはそれをさらに完全なものにするような法制措置を考えてまいりたいと思います。
  329. 西田八郎

    ○西田委員 ぜひそうしていただきたいと思うものであります。  次に、最近公害問題で、水の汚濁であるとか大気の汚染であるとか、いろいろな問題が出てきておるわけですけれども、特に最近家庭排水によるところの河川、湖沼の汚染というものがかなりきびしくなってきておるということがいわれておるわけです。先日も京大の琵琶湖の臨湖実験所の根来博士が中間報告をされたところによると、洗剤の河川、湖沼汚濁は非常にひどいものがあるのだ。このままほうっておくとたいへんなことになるのだという論文が一部発表されておるわけでありますけれども、そういった洗剤等についての規制というようなことは厚生省として今日までどうとってこられたのか。あるいはまた、そうした洗剤の中に含まれておるいろいろな微量物質が溶解されずして湖沼、河川に流入しておる、そういう現状等について把握しておられるかどうか、この二点についてひとつ……
  330. 浦田純一

    ○浦田説明員 中性洗剤の保健衛生上の問題としていろいろございますが、その中の一つといたしまして、西田先生御指摘の汚水の中に入り込んだ中性洗剤が、あとたとえば飲料水として使う場合、あるいはまたさらには最終的には下水道の終末処理場の機能を阻害するという問題につきましては、私どもも十分に承知いたしております。これらの実態につきましてはすでに、昭和三十七年でございましたか、科学技術庁のほうからも特に汚水が終末処理場に及ぼす影響という点の調査を、幾つかの市の下水道当局とも連絡をとりまして実施しているところでございます。問題は、確かに御指摘のように、その後どんどん都市化も進みますし、一方、これは私どもの所管ではございませんが、下水道の普及が必ずしも当初の計画どおりに進捗していない、あるいは終末処理場の建設もしかりというようなこともございまして、問題がちっとも改善されていないということがございます。  これに対してどのような処置をとってきたかということでありますが、一方そのような実態調査ということを行なってまいりましたとともに、実はこの中性洗剤のうちでも問題になりますのはいわゆるハードのほうでございまして、これをソフトのほうに切りかえるということで、御案内かと思いますけれども、すでに欧米諸国では場合によっては法律によって、硬性のほうの中性洗剤の使用を下水の処理場の能力という点から禁止しておるということもございまして、それらの点について検討を進めておるところでございます。また通産省のほうにも私どものほうから、ひとつ早急に中性洗剤をソフト化のほうに切りかえるように業界の御指導を願いたいということを申し入れているところでございます。  以上がいままでの経過でございます。
  331. 西田八郎

    ○西田委員 その、通産省のほうへ切りかえるように要請はしておるということなんですが、いつ質問をいたしましても、公害問題でも、これは厚生省管轄でないとか、あるいはこれは建設省の管轄だということで、非常にばらばらの面が多いわけなんです。しかし、やはりこうしたことが、水道用水にも使えないというような警告が発せられるというような事態に至ったときには、早急にそうした問題は処理すべきではなかろうかと思うのです。もしソフトの洗剤がそうした心配がない、むしろハードにそうした問題があるとするならば、それはすぐ製造の中止をするか、あるいはそれの代替品を考えるべきではないかというふうに考えるわけです。  いずれにしましても、科学の分野でありますから、この文明の所産というものはとうてい予測されないものが出てくるわけであります。しかし、予測されないものが出てくるからということで放任をしておけば、それが結局は人間の生命をむしばむことになるわけでありますから、少しでも危険性というものが発見されたら直ちにそれは研究に着手し、さらに、法律のほうでは、裁判のほうでは疑わしきは罰せずということになるわけですけれども、これは疑わしきものは直ちに罰する、罰するというと語弊がありますけれども、処置すべきではないかと思うのであります。そうしてこのような人体に影響の大きいものは直ちに生産中止をさせるなり、あるいはもっとほかの化学的な方法を考えるなりすべきではないかと思うのですが、そういう点について厚生省の処置が少し私は手ぬるいように思うのですけれども……。
  332. 浦田純一

    ○浦田説明員 御指摘のように、すでに問題が起こりまして久しゅうございますが、その後思ったほどの対策が講じられていないということでありますが、なお、いま申し上げました、たとえば中性洗剤のソフト化への努力、あるいはもっと根本的にございます都市計画におけるいろいろな下水道の施設、あるいは私どものほうで申し上げますれば水道の原水をどうする、そういった問題等も考えまして、関係官庁とも十分に連絡をとって、御指摘の点については努力してまいりたいと思っております。
  333. 西田八郎

    ○西田委員 洗剤と関連をして、農薬の残留がまだあるということで、先日兵庫県でございましたが、食用ガエルをたくさん養殖しておりますところで、アメリカから食用ガエルの輸入を断わられて大ショックを受けているという問題があるわけであります。また、BHCが牛乳の中に残留をする、そのことが非常に危険だということで、先日国会中のこの委員会でも質問をしたわけでありますけれども、何かもうだいじょうぶ、だいじょうぶといわれながら次から次に起こってくるわけなんですけれども、これは一体どうなんですか。ほんとうにそうしたものについては安心していていいのですか。
  334. 浦田純一

    ○浦田説明員 たしか報道関係のほうにもいろいろ報道されましたように、農薬の食品に対する残留の問題はいろいろと国民の皆さま方に不安を与えたということでございますが、それに対して現実どうか、実際にあぶないのかどうか、どういうふうに考えておるのかという御質問だと思いますが、私どもが残留農薬に対しましてどのような考えでやっておるかと申しますと、まずその基準の考え方でございますが、これは二点あると思います。  一つは、これはめったに起こることではございませんけれども、事故によった場合などの急性中毒。それからもう一点は、長い間——非常に一時的にとる量は少なくても、毎日とる量は少なくても、長い間に体内に蓄積する、あるいはそれが作用いたしまして知らず知らずのうちに健康を障害されるという慢性の毒でございます。この慢性の毒にいたしましても、実は二通りに分けて考えるべきではなかろうかと思います。これはとっておられる御本人の健康の障害の問題でございます。もう一つは、これは子孫に及ぼす影響、つまり遺伝の問題でございます。  こういった点から私どもはいろいろと基準の設定について考えておるわけでございますが、まずそのよりどころとなりますのは、これはWHOあるいはFAOで食品の規格委員会という、これは各国のエキスパートの方々が集まった委員会でございますが、そこの考え方に大きく準拠しているわけでございます。  そこではまず、毎日食べて一生食べ続けてもだいじょうぶという量を一つきめております。この考え方は、毎日とり続けまして何らかの健康障害が起こる前の段階、つまり起こらないという最大の量をきめまして、それの百分の一ないしは二百分の一という非常にきびしいところでもって、毎日とる量はこれまではいいという基準量をきめておるわけでございます。私どもがいろいろな残留農薬の慢性中毒について考えておりまする場合はその後者のほうでございまして、したがいまして、たとえば基準量が〇・一PPMあるいは〇・二PPMといったようないろいろな数字がございますが、それを一日か二日〇・一一PPMになったとか、多少上回るといったようなことがございましても——それが一生の間続くといったような状態でありますればこれは大いに心配しなくてはなりませんけれども、まあ一時的な場合であると実はさほど心配する量ではない。それから百分の一、二百分の一と申しますのはかなりきびしゅうございますが、これらにつきましては、先ほど申しました子孫への遺伝、あるいは、添加物なりあるいは残留農薬はただ単に一種類ではございませんので、場合によっては十種類も二十種類もとっておるということでございまして、それらもあわせて考えた量でございます。したがいまして、個々の例につきましては、場合によってはそういった基準量を大幅に上回るというデータもないわけではございませんけれども、いまの段階で十分の措置を講じてまいれば不安はないのではないかと考えております。
  335. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、いま定められておるいろいろの基準というものは、厚生省としては、とにかく人体に影響はないものだ、そうした考え方に基づいて設定をしておるというわけですね。自信を持って御答弁なさったわけですけれども、それではどうしてこういう問題が起こってきたのかということになるわけであります。  そうすると、答弁予測するわけではありませんけれども、それは調査がおそかったとか、あるいはそういうところに気がつかなかったということになるのかもしれませんけれども、それでは許されないと私は思う。厚生大臣に対して、いろいろな問題があって、厚生業務というものは国民の生命と暮らしを守っている基本になる行政であるから、このような態勢でいいのかということをお伺いしたときにも、それは十分万全を期するし、十分だ、こうおっしゃったわけですから、そういう言いのがれはできないと思うのですけれども、厚生省が定められておる基準でさえいろいろな問題が起こってくる、あるいはそれが守られないというのはどこに原因があるわけですか。
  336. 浦田純一

    ○浦田説明員 先ほどの私の御説明で多少ことばの足りなかった点がございますので、その点もあわせ補足しながらお答えしたいと思います。  必ずしもすべての残留農薬、すべてのものにつきまして基準があるというわけでないので、それらにつきましては、たとえ国際的な基準がないものにつきましても、わが国で早急に基準をきめてまいりたいということで、いま検討を進めているものもございます。  それから、なぜそういうことが起こったのか。まことにごもっともでございまして、ことに牛乳中のBHCあるいは食品として売られておるいろいろな農作物につきましての残留農薬の濃度が基準を上回っておるといった事態が現に起こっておるじゃないか、まことに御指摘のとおりでございます。したがいまして、これらにつきましては、実は先ほど基準を上回る、下回るというようなことを申しましたけれども、何と申しましても、健康のほうから申せばこれはゼロのほうがよろしいということはきまっておるわけでございまして、ただ一応プラス、マイナス、いろいろなバランスを考えた上で、農薬はいままで使ってきたことでもございますが、しかしながらすでにこのような事実が明らかとなった以上は、私どもとしては農林省あるいは関係のほうに強く要請いたしまして、あるものについてはすでに使用の禁止、実用の禁止ということもやっておるわけでございます。
  337. 西田八郎

    ○西田委員 これはとにかく重要な問題でありますし、そしてまた、資本主義といいますか、若干そういうことばで表現するならば、第一にもうけなければいかぬわけですよ。企業は利潤を追求しなければいかぬ。それで、いかぬといわれたらそれにちょっと変わるもので、毒性があるかないかというところまで自分のところで検査するのでなしに、どんどん宣伝を入れて売る。これがいかぬといわれればそれを使うというような悪循環を繰り返すということになるのではないかと思うのです。  したがって、私はこういう点は、食品衛生あるいは家庭環境その他について十分なる監視体制といいますか、調査研究、研究体制というものと監視体制というものをしっかりしていかないと、これはまた一つのものが消えれば新しいものが出てくるというようなことになろうと思うのです。しかしまた、それらのことは事前に予測されることではなかろうか。したがって、そういう点については十分に注意をされ、万全を期せられて、これなら安心だというようなところまで行政措置をしていただきたいし、場合によっては、法律の必要なものはやはり立法措置をすべきではないかというふうに考えるので、一段と努力をお願いしておきたいと思います。
  338. 浦田純一

    ○浦田説明員 まことに先生の御指摘のとおりでございまして、私どもただいま、農作物に関する残留農薬の現状につきましては、すでに昭和三十九年にはスタートしておりますが、ここ二、三年のうちに、四十八種類の食品、主要な二十八種類の農薬について、いわゆる総点検という形で残留農薬の実態について調査してみたいと思っております。それから今後新しく開発されるもの、これから新しく使っていこうというものについては、先生の御指摘のように事前に、場合によっては使用を初めから、あるいは生産の段階で初めから、そういったものについては御遠慮願うというふうにしたいと考えております。そうしてできるだけ早く国民の皆さま方に御安心いただけるような食品であるようになってほしい、これについてわれわれも十分努力してまいりたいと思っております。
  339. 西田八郎

    ○西田委員 次に保育所の問題についてお聞きしたいと思います。  先ほど労働関係で勤労婦人の託児の問題をお伺いしたわけですけれども、児童福祉法等によかまして、それら保護者の労働その他で監護のしにくいものについては保育しなければならぬということになっておるわけでありますが、しかし現状、保育所というものが非常に足りなくなってきておるわけであるから、各市町村で全国的に問題になっておるのではなかろうかと思うわけです。それは生活の態様の変化あるいは向上等によりまして、一家総出で働かなければならないというような事情等もあって、主婦が主婦業として家庭におることのできないような事情というものが、経済の成長発展と伴って出てきておると思うのです。しかしそれで子供が犠牲にされてはたいへんだと思うのですが、保育所については市町村に何か義務があるように法律ではなされておるわけですけれども、私はこうした問題は国の問題ではなかろうか。国もそういう点から多少の補助をしておられるわけでありますが、これについて今後もっと積極的な政策といいますか、対策を打ち出すという考え方はないかどうか、これをお伺いしたいわけであります。
  340. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 保育所の問題につきましてはいま御指摘になられましたとおりでございまして、私どもとしましては、現在の社会経済の情勢の変化に伴いまして、子供さんを保育所に入れたい、また入れざるを得ないというような、そういう家庭がふえてきていることは否定できないわけでございます。したがいまして、従来から年次計画的に保育所の増設というものをやってきているわけであります。今日の時点におきましても、三十七、八万人ぐらいの方がまだ、いわゆる保育所に本来は入りたいのだけれども入れないというような児童が全国的にいるわけでございますので、私どもとしましては今後、そういうような要保育児童の今後の趨勢等も十分勘案しながら、保育所の増設につきましては積極的にやってまいりたい。従来からもそういうわけで計画的にやっておりますが、まだまだ不十分な点がたくさんございますので、いま省内におきまして、今後の社会経済情勢に対応した新しい保育所の増設について基本的な整備計画というものを検討しつつございますので、いずれこれは明年度予算要求等にも関連をしてまいりますので、早急にそのような考え方をまとめてまいりたい。こういうことによって積極的に保育所の増設の要望に対処してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  341. 西田八郎

    ○西田委員 これはもう早急にやっていただきたいが、やはり各市町村で保育所建設について問題になってくるのは資金面が一番問題だと思うのです。これが資金が回収されるというようなものなら別ですけれども、やはりそれは資産として市町村に残るものの、それほどの効果があがらないし、そしてまた保育していくための費用というものが月々重なっていくわけであります。そういう点から考えて、保育というのは非常に問題になってきておるし、そこへ保育所の保母さんも足らぬということもあるわけです。したがって、財政的な面あるいは人手不足というようなことが非常に大きな問題になってきておると思うのですけれども、そういう点についてひとつ十分なる対処といいますか、補助等についてもかなりな増額を考えていただきたいというふうに思うわけでありますが、これはひとつ希望でありますけれども、そういうことが考えていただけるかどうか。
  342. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 保育所の問題点としましては、保育所の数が足らないということが第一点でありますが、第二点としましてはいま申されましたように、保育所の中で働いていただいている保母さん等の職員の方の待遇の改善をはかっていくということ。それからまた、保育所自身の運営と申しますか、あるいは管理と申しますか、そういう面の予算なり経費が非常に貧弱であるというような点が指摘されております。そういう施設整備なり、あるいは職員の待遇改善なり、あるいはまた運営費の充実、そういう点につきまして総合的に私どもは考えていく必要がある、かように思っております。先ほど申し上げましたように、そういう観点からこういう問題については、今後やはり相当私どもは前向きに積極的に取り組んでいく必要がある、かように思っているわけでございます。
  343. 西田八郎

    ○西田委員 ぜひ頼みます。  次に、最後になるわけですけれども、最近奈良県明日香の遺跡保存をめぐって、わざわざ首相まで出かけられていろいろ問題をかもし出しておるわけですが、遺跡もさることながら、自然の破壊というものが非常に激しいわけであります。私の選挙区であります滋賀県も、琵琶湖をかかえて国定公園にはなっておるわけですけれども、国定公園であっても、ほとんど官有地というものは少なくて、私有地というものがあるために、ある程度の許可その他の規制事項があっても、これは黙認というか、簡単に許可される。そういう意味で自然が破壊されつつある。また最近、奥日光等の自然が破壊されるからということで、自然を守ろうというような運動が非常に盛んになってきております。やはり都市におけるところの生活が、産業構造の変化あるいは文明、文化の発達というようなことによって、だんだん人間性というものを阻害される。そういう都市形成になってくればなってくるほど、人間がどこかで、やはり自然の中で人間を取り戻したい、こういう願望が強くなってくる。そういうときに、自然がどんどんとつぶされる。しかも国定公園の場合ですと、知事が認可するわけですね。その認可する知事が事業主となって、そうしてその自然の破壊をやる。たとえば周遊道路をつけたり、あるいは有料道路をつけたりというようなことはどうかと思われるわけでありますけれども、これらのいわゆる許可基準についてどのようにしておられるのか、この点についてひとつお伺いしたい。
  344. 中村一成

    ○中村説明員 先生御承知のとおり、国立公園につきましては厚生大臣、それから国定公園につきましては都道府県知事が、いまおっしゃいました許可の権限を持っているわけでございますが、厚生省といたしましては国立公園につきましての許可基準というものをつくりまして、これを全国に流しまして、そして国定公園の場合におきましてもその国立公園の基準というものによってやっていただくような行政指導はいたしているわけでございます。  ただしかし、御指摘いただきましたとおり、最近におきまして、国立公園あるいは国定公園におきまして非常にいろいろな意味における被害が出てまいっておりまして、その対策につきまして私どもとしてもほんとうに遺憾に思っておる次第でございます。  そこで、いままで被害を受けたものはこれを復元をし、それから、これから先につきましては被害をこれ以上ふやさないように、おっしゃいますとおり許可の基準等につきましてはさらに徹底を期したいと考えておりますが、その方法の一つといたしまして、先ほど御指摘がございましたような土地の買い上げというようなことにつきまして、私ども国立公園についてございますけれども、国定公園につきましてもそういう助成の道をやりたいと思って、明年度の予算にはぜひそういう計画で臨みたいといま準備しているところでございます。
  345. 西田八郎

    ○西田委員 ただいま、先に御答弁の中に出てきたわけでありますけれども、やはり自然を守るということがこれから大切なことであります。二十一世紀、科学万能時代から人間を解放しようというためには、自然というものを大切に残していかなければならぬし、特に歴史の深いものについては大事にとっていかなければならぬと思うのです。そういう意味で、国立公園については国の補助があるけれども、国定公園についてはなかった。ことしは多少の補助を考えたいということですけれども、ぜひそれは実現をすると同時に、いろいろな工作物、あるいは伐採、あるいは土石の採取、あるいは埋め立て、その他いろいろな規制項目があるわけでありますけれども、それらの規制項目は少しきびしいくらいにひとつ厳守をしていただきたいと思うのであります。もちろん住宅不足その他によって宅地造成もしなければならぬでしょうけれども、何もそれまで破壊しなくても私は方法があるのではないかというふうに考えるわけで、これは建設省の関係ではあろうかと思いますけれども、やはり厚生省の立場から、自然を保護する、こういう立場からそういう点も十分ひとつ政府部内で議論をし、そして調整といいますか、協議をして、そして自然保護のために一そうの努力をしていただきたいということをお願いを申し上げまして、関係者を督励をいたしまして私の質問を終わります。
  346. 伊東正義

    伊東委員長代理 寺前巖君。
  347. 寺前巖

    ○寺前委員 これからひとつ委員会には大臣は最後まで参加してもらうように委員長にお取り計らいをお願いしたいと思いますが、私は、もうきょうは大臣もおらぬことですから、問題をしぼった点だけにしていきたいと思います。  まず、被爆二世の問題についてちょっと聞きたいと思います。  私は、本来言うならば、現在行なわれているところの医療法並びに特別措置法の問題点についてもお尋ねをしたいと思っていたのですが、世界初の原爆が投下された日本で、四分の一世紀たった今日、当然考えなければならない被爆者の子供、孫の問題はどうなっているかということは、国際的にも検討されている問題だと思うのです。最近、日米合同の原爆被災調査機関といわれるあのABCC、ここで百十一のいわゆる被爆二世の白血病の確認をやっております。そこできょうは、一体日本の政府は、いまの不十分ではあるけれども行なわれている医療法なりあるいは特別措置法、こういう問題について、この被爆二世を対象にする気があるのかないのか。被爆二世と社会でいわれているようなことはないというふうに見られるのか、私はこの点について聞きたいと思います。
  348. 村中俊明

    ○村中説明員 ただいま御指摘になりました原爆被爆者医療法及び特別措置法につきましては、被爆を受けた、及び当時胎内にあった者というのが対象の前提になっておりまして、御指摘の二世の問題については今後の問題ということで、当面、法の対象にはなってない、こう考えます。
  349. 寺前巖

    ○寺前委員 今後の対象といっても現にABCCで百十一人の確認をやっておる。そのほかのところでも幾つかの事例が出ている。こういう事例が出ておるのに、世界初の被爆国の日本の処置として、これは当然取り上げて、いまの不十分ではあるけれどもあの医療法や特別措置法の適用をする必要があるという立場で検討しておらぬのかどうか、私はそのことを聞きたい。当然これは原爆が投下されたときから、どうなるだろうかというのはもう国際的にも注目されているんだから、これは日本政府だけがとらなければならない重大な責任だと思うのです。その点について再度聞きたいと思います。
  350. 村中俊明

    ○村中説明員 ABCC、それから予防衛生研究所、ここでは昭和二十一年から出生した子供の寿命の調査をいたしております。それは被爆その他の影響によって、他の被爆を受けない子供と、健康に一体どういう関係があるかという調査を、約五万三千名ほどを対象にいたしまして現在もやっておるわけでございます。この中で、被爆二世という対象が被爆者の子供ということで、どういう健康上の関係があるかということは徐々に解明がされてくるものと考えております。  もう一点は、被爆というものと非常に関係の深い白血病について、両親の被爆あるいは片親が被爆しておる、そういった方々の子供が白血病とどういう関係があるか。この点の調査も現在やっておるわけでございまして、これは一九四六年から六八年までの間に、たぶんただいま御指摘になった数字も研究計画の中の資料だと存じますが、百十一名を含めまして三百七十二名の白血病の子供について、これが被爆の両親あるいは片親とどういう関係があるかということの調査計画を現在立てております。聞くところによりますと、大体来年の秋くらいにはこの辺の因果関係がある程度つかめるのじゃないかというふうなことに話を聞いております。現在までの研究では、白血病が被爆と遺伝的な関係はないというふうな研究成績が出ておりますが、これはただいま申し上げましたような四六年から六八年までのこのデータをもとにした今後の調査に待つところが大きい、こう考えております。現時点では、私どもの承知しておる範囲内におきましては、被爆そのものが二世に影響するということがはっきり認めがたいというふうに判断しております。
  351. 寺前巖

    ○寺前委員 私は非常に重大だと思います。被爆者の子供たち、それぞれの地域で私たちも知っておりますけれども、接触してみますと、明らかにいろいろ疑問点が出ていると思うのです。関係している医者も全部そう言っていますよ。だから、そういうものが因果関係がないというふうに簡単に結論づけられているとするならば、私はこれは世界の医学人に対しても、また原爆のおそろしさに対する問題に対しても、日本政府は冒涜しているんじゃないかというふうな感じを強く受けます。私はむしろ、世界で第一の被爆国になったこの日本において、それこそ因果関係があろうとなかろうと、長期にわたって責任をもって、被爆者と同じような扱いをもって研究をしながら、一方で治療もやっていくという責任をとるべきだと私は思うのですがね。単に研究だけで、人をモルモット扱いに見られておった日にはたまらぬと思うのです。広島の市民が、ABCCの内容を公開せよ、ABCCを撤去せよというたのは、モルモット扱いにされておるところからじゃないんですか。単なる研究の材料であってはおこると思いますよ。被爆者には、自分の子供がどうなるか、自分が被爆者であったということを隠さないことには自分の子供の結婚問題もさしさわりがあるという問題が出ているのですよ。たいへんな事態なんですよ。しかもそれが世界でただ一つの被爆国じゃないですか。この日本において被爆二世の問題について因果関係は軽々しく云々さるべきじゃないと私は思うのですね。私はこの問題についてはもっと深刻だと思いますね。  少なくとも政府は、このようにABCC自身が白血球が減っている事例を出されただけでも重大だというふうな態度から出発しなければいけないと私は思うのです。むしろこの子供や孫に対して、本人あるいは親あるいは保護者が申請して、この医療法や特別措置法が受けられるような措置を積極的にやることを通じて、勇気をもってこの人々の実態もさらに明らかになっていくだろうし、世界に対するただ一つの被爆国の責務を果たすことができるであろうと思うのです。いまのあなたの発言というのは、もう因果関係がないという立場に立っておられるとするならばちょっと重大だと思います。態度を改めていただく必要があると思いますよ。ちょっとの事例があっただけでも重大だ。あなたが言われた数字だけでも重大だと私は思います。反省してもらいたいと思うのですが、その点どうですか。
  352. 村中俊明

    ○村中説明員 ただいま申し上げましたのは、いままで私が承知をいたした研究の中では因果関係が成り立ちがたいということでございまして、先ほど申し上げました一九四六年から六八年まで、この事例をもとにした研究計画の結論が出た暁には、それによって新しい考え方が出る。成果によって判断する必要があるかもしれません。いまの時点では因果関係がつけがたいというふうに理解しております。
  353. 寺前巖

    ○寺前委員 私は再度要望しておきます。ほんとに世界で最初の被爆国であり、これはもう今後こういうことがないようにすべての人が願っているし、そこにおける結果、問題について、そこにおける政府がどういう処置をとったかというのは、歴史上重大な責務を負わされていると私は思うのです。そういうとき、しかも四分の一世紀が来ているときだから、現実にこの被爆二世の問題、孫の問題まで問題にならなければならない時期が来ているのだから、そういう時期において、ともかく疑わしき事実が一ぱいあがった以上は、まず疑わしき事実を積極的に取り上げるという立場を日本政府がとってもらうように再検討していただきたいというふうに再度要望しておきます。  それから、きょうは大臣がおらぬので簡単に済ましていきますが、次に、さっきから質問が出ておった種痘の問題です。種痘の問題について実態はどうなんですか。強制的に種痘をはじめとするいろいろな予防接種がありますよね。ああいう予防接種をやった結果について、副作用が出るというのはもう事実なんです。そういう副作用の結果というのはおたくのほうで全部わかっているのですか。たとえば今度の種痘の問題、この前のときやった種痘はこれこれの副作用が起こった。今度の副作用の結果はこういう結果が起こっているという数字はわかりますか。わかっておったならば比較して、前のときはこうこうだ、今度はこうだという、発熱とかそういう現象が起こるでしょう、その状況をちょっと数字を知らせてください。
  354. 村中俊明

    ○村中説明員 種痘後の副反応につきましては、死亡したケースについては死亡診断書を中心にして、毎年人口動態統計で集計されているのは御承知のとおりでございます。ただいま御指摘の、たとえば熱が出た、あるいは硬結が出た、あるいは発しんが出た、こういう通常予防接種によって付随的に起きてくる系統の反応につきましては、現在残念ながらお答え申し上げるようなデータが出ておりません。ただ、昨年一部実施をいたしました八万数千名の調査によりまして、これも一部報道されましたが、発熱が対象の二六%というような数字が出ております。あるいは昭和三十九年には、これも三、四万ぐらいの対象について調査をいたしましたが、このときは発熱が〇・九%というような数字が出ておりますが、御指摘のような年間三百万人をこえるような対象について、どの程度の一般的なあるいは局所的な副反応が出たかというふうなデータは手持ちがございません。
  355. 寺前巖

    ○寺前委員 強制的にああいう接種をやっている以上は、その副反応というものを正確に握っていくという態度をとらなければいかぬじゃないかと私は思う。ことしは前やったときよりも副作用が大きく出ているということは明らかな事実だと思うのです。そこからいろいろの、死亡事故も含めて副作用が出たところから不安が出たと思うのです。  そこで私は、先ほどからいろいろな質問が出ましたから同じようなことはもう言いませんけれども、問題はこの秋に再びまた接種の時期が来ているわけですね。ところが、府県知事が、市町村長でも、私は責任持てませんということを言いだしてきていますよ。府県知事や市町村長が責任を持てませんという実態が生まれている。秋にはその時期が来る、これは法律的に。同時に親も心配ですよ。そういう状況の中で受けさせるわけにいかない。さて、こういう時期にあるにもかかわらず、秋にやります、強引にやりますという一片の法的処置に基づいてだけやるのか。それとも、こういうふうにこの点は改善をいたしましたから御安心くださいという内容をもっておやりになるのか。この点はっきりしなかったら不安で、ちょっと親のほうはたまりませんが、そこはどんなことになっています。
  356. 村中俊明

    ○村中説明員 御承知のとおり、現在国際的に置かれている日本の立場から判断いたしまして、東南アジアその他相当交通のひんぱんな地区に、現に年間数万人の天然痘の患者が出ておるという実態の中で、しかもほとんど大多数の各国が種痘を義務接種というふうな処置をしている実態の中で、社会不安というふうな前提だけでこれを中止をするということは行政的にはできない。  問題は、その不安がどこにあるのか。不安の中身の検討がまず第一に必要である。一点は、先ほどから議論が出ております現在の接種しているワクチンが、日本のワクチンがいいのか悪いのかという問題。第二点は接種の方法、それから時期、年齢とございますが、含めまして、そこに改善の余地がないのかという問題。第三点は、不幸にして、各国にも、数字の差はございますがきわめて重篤な副反応が出る例があるわけでございます。こういうのが出た場合にはどういう措置をするのかという点に不安の問題があるんじゃないかというふうに考えるわけでございます。  第一点の種痘のワクチンの問題でございますが、これは先ほど来御説明申し上げておりますように、WHOが力価の判定基準としてあげておりますリスター株に比べまして、必ずしも危険度が高いという学者の定説はないわけでございます。ただ、たとえば発赤ができるとかあるいは硬結ができるとか、そういう局所的な反応については若干リスター株に比しては強い。しかし、発熱とか発しんとかそういう全身的な症状の発現は、むしろ逆に若干日本のワクチンのほうが少ないというふうな数字も出ておりまして、これは例数が少のうございますからはたして学問的にたえるかどうかということは問題があろうかと思いますが、一応そういう数字が出ております。この調査をした学者のまとめの意見としては、少なくても局所反応が若干低いというものがあるとすれば、それに対して大いに研究をしていく必要があるのではなかろうか、こういうコメントもついていることは御承知のとおりであります。そういう意味から申し上げまして、現在の池田株、大連株による種痘のワクチンが今後も変えられないのだ、これでいいのだというふうには私自身も理解しておりませんが、改善の余地は私はある。大臣も申し上げましたように、できるだけ力価の安定した、しかも副反応の少しでも少ない、そういうワクチンの改良というのは今後本腰を入れてやっていく必要がある。これは私自身もそう考えているわけでございます。  第二点の接種の方法でありますが、十年前に比べましてワクチンの保存方法が非常に改善されてまいりました。端的な例を申し上げますと、かつて保管しました冷蔵庫の温度は夏場になると十度あるいは十度をこえる。最近の冷蔵庫の温度は五度前後にほとんど調整されている。そういったところから、接種するときに使われる力価の安定性というのが昔に比べると非常に安定度が高くなってきている。そういう状態の中で十年前と同じような接種の方法がいいのかどうかという方法の改善の問題が出てくるわけでございます。これは先ほど来御説明申し上げましたように乱刺法あるいは多圧法、さらにそこに植えつける種痘の痘苗の問題、こういった問題の検討ということが出てまいります。  さらに、方法と関連いたしまして、従来法律できめております二カ月から十二カ月という接種の時期が一体妥当なのかどうか、こういう問題が次に出てまいろうかと思います。この点につきましては、七カ国ほど視察をした学者の意見をまとめてみますと、必ずしも各国とも見解が一致しているとはいえないようでございますが、ただ、二カ月というふうなところに線を引いているところはあまりないようでございます。正直申し上げまして、大体早くて六カ月、おそいのは一年ないし一年半から二年ないし三年、そういうふうな年齢の区切り方を初回の接種には置いているわけであります。この理由といたしましては、母体の免疫がおなかにいる間に赤ちゃんに入ってくる。生後の生まれた赤ちゃんはそういう母体の免疫をすでに持っている。持っているときにワクチンを接種をすると、その持っている抗体の影響によって反応が少なく出るというふうな判断から、できるだけ早く接種するほうが反応が少なくて済むという意見一つあります。それからこれについては反対の意見もまたあるわけであります。最近の学者の研究によりますと、母体からもらう免疫の反応、免疫の力というのはそれほど強いものではないのではないかという点が一点と、大体生後一年ぐらいで脳の細胞の構造がほぼ完成に近づく、その以前に不測の事故があった場合には、たとえば六カ月で事故を受けると六カ月の時点で脳細胞の発達が停滞してしまう心配がある。そういうところから少なくとも一年ないし一年以降にそのような接種は下げたほうがよろしい、こういうふうな病理学者の見解もあるようでございまして、その点を総合いたしますとなお問題点として、どの辺に時期をきめたらよいかという学者の意見は今後いろいろ聞いていかなければならないと存じますが、一応の私どもの判断としては、せめて六カ月あるいは八カ月、その辺からでもよろしいのではないかという、これは行政上の判断でございますが、この点につき、年齢の問題につきましては今後学者の意見を、秋の接種までには十分伺って一応の線を出したい、こう考えております。  それから、不幸にして事故が起きた場合、応急的に、先ほど来話が出ましたような、VIGによる予防あるいはマルボランという特殊薬品による治療、こういった体制はぜひ確立したい、そういうふうに考えております。  それから、発病して医療にかかる、その医療費に対する救済の方途、あるいは後遺症を残した場合のそれに対する手だて、さらになくなった場合に対する措置、こういった一連の救済的な措置は、制度化には問題は残しますけれども、一応、応急の措置としては、できることならば秋の接種までには間に合うような体制、応急の措置をとってまいりたい、こんなふうに考えております。
  357. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、秋の接種までに、いまの話であったら、医学的な見解からワクチンはすぐ改良というのは間に合わない。そうでしょう、これは時間がかかりますよね。間に合わないんだから、結局いまのワクチンのやり方をやらざるを得ないけれども、年齢の問題とかその他のやり方の問題については検討を要するから、これは医学的な見解の統一をさせたい。もし意見が割れてまとまらぬということだったらやめてしまうということになっちゃうね、その点は。それから、万一今度と同じようなことになってくればたいへんだから治療薬の準備をしなければならない。治療薬の準備ができない場合には国民は安心できないんだから、秋までに間に合わなかったら秋にはやれないことになっちゃう。それから一病気にかかった場合には——あれは結果の報告の問題と私は関連すると思うのだけれども、要するに新しい何らかの症状が生まれた場合には安心してお医者さんにぱあっと見てもらえるという体制も保障しなかったら、強制接種としてはまずいのじゃないかという意見だったと思う。これはもうきちっとした体制をつくる。それから、先ほどのお話にはなかったけれども、予診の問題はおそらく大きな問題だと思うのですね。それで、何かの新聞に出ておったのだけれども、従来、予診に対しては何か程度の悪い通達が出ておったようだね。だから、あれは間違いでしたということを明らかにして、予診を責任もって、こういう範囲でお医者さんは配置をしてやりますということもその条件の一つになってきますわな。そういう一連の事後処置まで含めて、全体の体制が秋までに準備できなかった場合には、一時中止してでも体制を整えます、こういうふうにやらなかったら府県知事は承認をしてもらえぬだろうというつもりでいま進めておられるんでしょうな。どうでしょう。
  358. 村中俊明

    ○村中説明員 そういう体制を秋までにぜひとりたいと、こういう決心をいたしております。
  359. 寺前巖

    ○寺前委員 私はそういうふうに解釈しますよ。だから、万一責任ある体制までできない場合には、強引に、いや予防接種法でこうなってますのやということで、行政措置だけで一方的に執行するということは、今日、国民の不安の前には責任をとれないというふうに判断してよろしいな。
  360. 村中俊明

    ○村中説明員 先ほど来申し上げましたように、現在の日本の東南アジアに占める位置から考えますと、現在の義務接種という体制をくずすことは私はできないと思います。そういう前提で秋までには体制を整えたい。したがいまして、秋の接種はしたい、こういうことでございます。
  361. 寺前巖

    ○寺前委員 いやいや、私も予防接種というのはやはり積極的意義があると思っていますよ。何も否定していない。国際的に見てもそうだということはいいと思うのだ。問題は、府県知事やらがこういうことを言っている。不安を言っているんだから、現にはっきりと。こういう状況の中で、責任をとる体制ができなかった場合には、秋という時期にやることはもうできぬことになるだろう。だから、秋までに責任をもって実施しますけれども、万一そういうことになった場合には、やはり不安のままでやるわけにはいきませんというのは、これは当然のことだと思うのですよ。国民はそんなことで受けませんよ、何ぼ強制接種と言われたって。罰則を適用してどうのこうのというわけにいかぬでしょう。私はきわめて常識的に聞いておるのですよ。それ以上のことを聞いていない。だから、秋までに責任のある、だれが見たってそのとおりだという体制、私が幾つかの言うた面ですね、そういうものを責任をもってやれるような一つのきちっとした方向を出すのですな。そういうふうに解釈してよろしいな。
  362. 村中俊明

    ○村中説明員 そういう体制をとる決心でございます。
  363. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃもうこれは時間があれですから一言にしておきます。  先ほど委員会の始まる前に、ハンセン氏病の方方がお見えになりました。おそろしい病気という偏見のもとに、長年月の間強制的に社会から隔離されておられた人の問題です。——これはどなたですか。おたくのほうじゃないんだな。
  364. 村中俊明

    ○村中説明員 若干関係があります。
  365. 寺前巖

    ○寺前委員 それで、医療、生活、人権上の差別された生活を余儀なくされてきて、今日ではほとんどもう新しい病気で入ってくる人が少なくなりましたよね。ところが戦前の人たちはもう強制的に収容されて、あすこの中だけで通用するところの貨幣をつくったり、そういうことで、それでなおったとして社会に出ても、社会の人たちからやはり差別されるような状況にあるし、長年月入っておられたら、生活の成り立ちという面からもいまさらという態勢の問題もありますよね。そういう問題から見ても、どうしても死ぬまでは気持ちよく生活を送っていくという保障を、今日の段階では私たちは責任をもってやらなければならぬという段階にきていると思うのです。  そういう立場から、昨年九月十日にこの社会労働委員会で、この人々に対する取り扱いの問題がやはり論議されております。そのときに斎藤国務大臣がこう言っているのですね。私はちょっと読んでみますよ。「拠出制の障害年金と、それから障害福祉年金との差異、同じ条件であるにもかかわらず、そこに非常な違いがある。」——これは現もそうですね。三分の一くらいのあれですね、福祉年金のほうは。——「この点は、療養所の中におる人は一そう目立つわけですが、そうではないところにおきましても、この差異をそのまま認めておくのはどうかという御議論が、かねがねからあるわけでございます。今度はこの問題をぜひ解決をいたしたい。そうしてそういう非常な不公平と感じられるようなことのないように制度を改めたい。いまこれは鋭意検討中でありまして、成案を得て来国会にひとつ提案をいたしたい、」ということを斎藤国務大臣が言っているわけですね。  結局、たとえからだがなおって外に行ったとしても全うした社会生活ができない。あの容貌といい、いろいろなからだの姿から見ても、不幸な状態に置かれているんだから、せめてあの中でだけは和気あいあいとお互いがなれるようにするためにも、この差別だけは、少なくとも療養所の中だけは早く撤廃してもらいたいという気持ちは非常に強いものがありますよ。それに対して斎藤国務大臣が国会で、次の国会までにやってくれる、ということで期待しておったわけでしょう。ところが次の国会には出てこない。結局、わしらはいつまでも差別された牢獄みたいな状況だ、という気持ちにさしておるわけでしょう。せめて死ぬまでは……という気持ちがずいぶん強く私はあると思うのです。何で、次の国会には成案を得てやりたいと言われたものをやらなかったのか。やらなかった理由をはっきりしてもらわなかったら、これは療養所の中におる人はだまったものじゃないと思うのですよ。私たちも責任があると思います、国会で明確に出された問題なんだから。私は、ハンセン氏病の問題については聞きたいことはいろいろありますけれども、約束をされて、せめての期待であったこの問題についてどうされるおつもりだったのか。
  366. 松下廉蔵

    ○松下説明員 ただいまお話がありましたように、らい療養所の中に入っておられます方の中で拠出制の障害年金を受けておられる重度障害の方と、それから同じような障害を持っておられながら無拠出の障害福祉年金を受けておられる方がおられますことはただいまの御質問のとおりでございます。これはすでに御承知のとおり、国民年金法が施行になりました段階におきまして、一つはその前にすでに障害を受けておられた方、それからもう一つは年齢が高かったためにどうしても拠出制の年金の対象になることができなかった方、そういう、全国民を対象に法律を初めて適用いたします際に、拠出という原則がありますために積み立て期間の要件等につきましてどうしても制限を加えるという必要がありまして、やむを得ずそういう事態が起こっておるわけでございますが、事らい療養所の中に限って考えました場合には、ただいま先生の御指摘のとおり同じような状態生活をしておる、同じような障害を受けておる、にもかかわらず受ける年金の額が違うというような実態がありますことは、これはらいというような特殊な疾病で、ほとんど一生を療養所の中で過ごしてこられた方の処遇といたしましてはたいへんに適当でない事態であるということは、私ども関係者といたしましては前々から承知しておったところでございます。そのために昨四十四年度から予算を計上いたしまして、そういった、らいのもろもろの問題を検討していただきます意味で、らいの調査会というものを学識経験者にお願いいたしまして発足いたしております。去年の九月にいま御指摘のように斎藤大臣がお答え申し上げました時点におきましては、すでに調査会が発足いたしておりまして、大臣としては次国会までにはその結論が得られるというお見通しを持ってお答え申し上げられたと存じますが、残念ながら年金制度全体の問題という点では非常に問題が複雑でございまして、その後の検討の方向といたしましては、法の改正を適当とするか、あるいは実際に法の運用によって解決していくのが適当であるか、あるいは別途、当時の御質問にもございますように、患者慰安金等の所内の処遇の問題として解決するのが適当であるか、いろいろなことが検討されておりまして、当初予定いたしましたより審議が延びておりましたために現在に至っております。  ただ、早急に解決すべき問題であるということはよく承知いたしておりますので、これもお聞き及びと思いますが、所内の処遇といたしましては、いろいろな手当等を療養所のほうで支出いたしまして、今年度、四十五年度の当初におきましては大体七千円余りの額を、拠出年金を受けておられる方も福祉年金を受けておられる方も、いろいろな操作によりましてほとんど違わない額の支給が受けられるというところまで達しておったわけでございます。ただ反面、国民年金法の改正が成立いたしまして施行になりましたために、拠出年金の額が引き上げられまして、もう一度格差が生じておるという事態が起こっております。そのために先生方のところへもやはりそういうことがお耳に入っておると思います。私どももそういう考え方で進めてきた施策でございますので、さらに調査会にも御努力をいただきまして、もう間もなく調査会の御結論をいただくという段階になっておりまして、そういった御結論をいただきました際には、それを受けましてできるだけ早い機会にこういった事態をなくするように鋭意努力いたしたい、そういうふうに考えておりますので、いましばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  367. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、必ず責任をもってこの大臣の答弁どおり行なうように検討するということと解釈してよろしいですね——。  それではもう一点だけついでに聞いておきますと、幾つもあるのですが、内部に入っておる不自由者看護切りかえのあれですね。三分の一ほどの人がいまだに患者さん同士で看病をしておるという体制が起こっておる。三千人余り。こういうような事態というものはよくないと思うのですが、これはいつまでに解決するつもりですか、そのことだけ聞いて終わりたいと思うのです。
  368. 野津聖

    ○野津説明員 不自由者看護の切りかえにつきましては、昭和三十五年以来約十年間にわたったわけでございますけれども、一応本年度までに七百五名を増員いたしまして現在に至っております。さらにこの施設の実態というふうなもの、あるいは患者さんのほうが次第に老齢化してくる、あるいは不自由化してくるというふうな実態に応じまして、不自由者看護につきましてはできるだけ早く切りかえていきたい、こういうふうな見通しを持っております。現在のところでは一応二年程度をめどにしまして、またその後の実態に応じた形において増員を考えていきたいと考えております。
  369. 寺前巖

    ○寺前委員 老齢化してなくなっていくのを待っておる、こういう意味ですか。そうではないだろうな。その二年間をめどにしてどれだけ解決するのですか。要するにこういうやり方というのはいつまでに解決したいと、はっきり言うべきだと思うのだよ。
  370. 野津聖

    ○野津説明員 いま私、老齢化してまいると申しましたのは、老齢化しまして次第に付き添いの手をわずらわすことが必要になってくる患者がふえてまいりますという意味で申し上げたわけでありまして、流動してまいりますそういうような事態に対応した形でいきますので、できるだけ早くというふうに考えておるわけでございますけれども、常に事態の変化というふうなものがございますので、そういうふうなふえてまいります不自由者の方々の実態に応じた形で増員をしていきたい、こういうことでございます。
  371. 寺前巖

    ○寺前委員 私はもう時間があれですから言いませんけれども、老齢化していかれたらますます最後は人生の終わりに近づくのだから、最後を喜んでしてもらわなければいけないと思うのです。そういう責務があると思うのです。実際この問題に対しては、強制的に連れていってほうり込んだかっこうがあるのだから、したがってそれをやったら急いで措置すべきだと思う。早く、いつまでに解決するという方針を立ててもらいたいということを要望いたしまして終わります。
  372. 伊東正義

    伊東委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十八分散会