○相良参考人 相良でございます。足を悪くしておりますので、すわって話させていただきます。
わが国に
スモン病が発生してから十余年を経過しております。私も実は三年前に発病して、現在ごらんのとおりのからだで、社会復帰しておりますが、いまでも足のしびれ、痛みに悩まされております。それに、いつ再燃するかわからない不安があります。
現在までの
スモン病の
対策は、万全とはいえない状態にあります。日本にだけ見られるといわれるこの
スモン病は、ある日突然、下痢に始まって、腹痛があり、やがて両足の指先からしびれ、その結果、歩行障害、視力障害、やがて失明する人もあります。それはまた、人にはわからない知覚神経障害の苦痛にたえなければならない。だから主観的な病気といわれるゆえんでもあります。
スモン病にかかる人は多くの場合一家の支柱であります。現在治療法もまだはっきりしておらず、長い病気でもあるところから、治療費の自己負担が多く、経済的破綻を来たしているのが現状であります。
しかし、何といってもこの
スモン病にはいま
一つの重大な問題があります。すなわち、それは自殺であり、社会疎外であります。ことしになってからもすでに京都、東京、山形、島根、大阪で五件の自殺者が出ていると聞いております。病気になったら、少なくとも快方に向かうという希望が出てくるのが望ましいと思いますが、自分の手で自己の命を断たなければならないというのがこの
スモン病の特徴であります。人命の尊重は絶対であると思います。この絶対性が確保できないのは一体何がそうさせているのでしょうか。それは終局的にはスモンの
対策の抜本的
配慮がなされていないからであります。また社会疎外もそうであります。
スモン病患者とその家族は社会から疎外されております。村八分という、現代社会では考えられないことが事実として存在しているのであります。さらに
スモン病患者は治療機関からも疎外されておる事実があります。
その実例を一、二紹介しますと、東京から長野の佐久総合病院のほうへ治療を受けに行っている人があります。ある公立病院及び医科大学病院で余儀なく退院させられた例もあります。ここでは明らかに基本的人権が侵害されております。この問題も、
スモン病の研究中に、不用意な、しかもあまり科学的根拠のないセンセーショナルな発表等が平気で行なわれているからであると思います。これらの発表は、発表する研究者も、これを取り扱う報道機関も自粛されるべきであります。
私
どもスモン患者は、一般人と同じく社会に接触しております。また、
国民の一人としての機能も果たしているつもりでございます。それなのに、なぜ自殺者を出したり社会疎外の羽目を負わされたりしなければならないのでしょうか。このことは、法のもとの平等原則にも違反するものといわなければなりません。
スモン病患者とその家族の叫びは悲痛であります。
スモン病の原因の早期解決はもちろんでありますが、さらに治療費の自己負担が多過ぎる。センセーショナルな発表はやめてほしい。患者が安心して診療を受けられる病院を紹介してほしい等々、どの声をとっても社会問題として把握されなければならないものばかりであります。
簡単に申し述べましたが、私は次の点についてぜひ御検討をいただき、できるだけ早く実施に移してもらいたいと思います。そうして、もう自殺者を出さないよう、また、人権の侵害がないようにしていただきたいと思います。
まず、その第一は、国会において超党派としての懇談会のような形をぜひ設置してもらいたい。国会の場でも、あらゆる方面からの御検討を加えていただきたいということです。
第二に、現在
厚生省で組織されております
スモン調査研究
協議会で病理、疫学、病因、臨床の四つの研究班がありますが、この四つの研究班だけではあまりにも生物学的なアプローチに偏しておると思われます。
スモン病の自殺、社会疎外等に対しては、どうしても、いま
一つ社会学的アプローチの必要が痛感されます。そこで、保健社会研究班というような社会問題に対処するものが必要になります。そうでなければ、
スモン病の
対策は万全とはいえないといわざるを得ません。たとえば、疲学班の中に専門学者を入れたとしても、その意義は失われると思います。別個の研究班の設置が必要であり、ぜひこのことは実現させてほしいと思います。
第三に、
スモン病の治療費は一カ月二十万程席といわれております。かりに
国民健康保険の三割負担としても、六万円という高額な自己負担となります。また、これに付添看護料等が加われば、さらに自己負担は増加し、差額ベッドはさらにまた自己負担を倍増させております。現に私も、一日五千円という差額ベッドで治療を受けたことがあります。以上のことから、
スモン病の軽減
措置を一考していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
第四として、専門医療機関の設置についてでありますが、たとえば、神経疾患すべての患者が恩恵を受けられる医療センターのようなものの設置が考えられますが、このことは、社会復帰という重要な役割りも果たすと考えられますので、この専門医療機関の設置についてもぜひ実現させてもらいたいと思います。
第五に、
スモン病患者の抜本的な救済というものは、法制化によってこれを実現されるのみしかないんじゃないかと思われます。この件もぜひ御検討くださるようお願いいたします。
以上、
スモン病についての、私
ども患者の会の代表として意見を言わせていただきました。御清聴まことにありがとうございました。
終わります。(拍手)