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1970-04-28 第63回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十八日(火曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 小山 省二君    理事 佐々木義武君 理事 増岡 博之君    理事 粟山 ひで君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君      小此木彦三郎君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    斉藤滋与史君       中島源太郎君    別川悠紀夫君       松山千惠子君    箕輪  登君       山下 徳夫君    渡部 恒三君       渡辺  肇君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       渡部 通子君    西田 八郎君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         労 働 大 臣 野原 正勝君  出席政府委員         厚生省保険局長 梅本 純正君         社会保険庁医療         保険部長    高木  玄君         水産庁次長   藤村 弘毅君         運輸省船員局長 高林 康一君         労働政務次官  大野  明君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  關  言行君         労働省労政局労         働法規課長   大塚 達一君         労働省労働基準         局監督課長   大坪健一郎君         労働省労働基準         局安全衛生部長 東村金之助君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 四月二十七日  山村僻地医療保健対策強化に関する請願(中  島茂喜紹介)(第三九五一号)  同(坊秀男紹介)(第三九五二号)  同外一件(松浦周太郎紹介)(第三九五三  号)  同(三木武夫紹介)(第三九五四号)  同(大橋武夫紹介)(第四〇八二号)  同(福永一臣紹介)(第四〇八三号)  同(藤枝泉介紹介)(第四〇八四号)  同(森下元晴君紹介)(第四〇八五号)  療術の開業制度復活に関する請願有田喜一君  紹介)(第三九五五号)  同外七件(粟山ひで紹介)(第三九五六号)  同(和田一郎紹介)(第三九五七号)  同(池田正之輔君紹介)(第四〇八一号)  日雇労働者健康保険改悪反対等に関する請願  (浦井洋紹介)(第三九五八号)  同(卜部政巳紹介)(第三九五九号)  同外二件(河野密紹介)(第三九六〇号)  同(田中武夫紹介)(第三九六一号)  同(千葉七郎紹介)(第三九六二号)  同(中嶋英夫紹介)(第三九六三号)  同(松浦利尚君紹介)(第三九六四号)  同外十三件(三木喜夫紹介)(第三九六五  号)  同(内海清紹介)(第四〇九六号)  同(卜部政巳紹介)(第四〇九七号)  同外七十二件(下平正一紹介)(第四〇九八  号)  同外一件(田中武夫紹介)(第四〇九九号)  同(原茂紹介)(第四一〇〇号)  同(広瀬秀吉紹介)(第四一〇一号)  同(松浦利尚君紹介)(第四一〇二号)  同(松平忠久紹介)(第四一〇三号)  同外九件(三木喜夫紹介)(第四一〇四号)  同外三百三十一件(山本幸一紹介)(第四一  〇五号)  同(山本弥之助紹介)(第四一〇六号)  同(吉田賢一紹介)(第四一〇七号)  労働者災害補償保険法改正に関する請願浦井  洋君紹介)(第三九六六号)  同外二件(河野密紹介)(第三九六七号)  同(千葉七郎紹介)(第三九六八号)  同(中嶋英夫紹介)(第三九六九号)  同外三件(成田知巳紹介)(第三九七〇号)  同(原茂紹介)(第四一〇八号)  同(広瀬秀吉紹介)(第四一〇九号)  同(松平忠久紹介)(第四一一〇号)  全国全産業一律最低賃金制法制化に関する請  願(木原実紹介)(第三九七一号)  同(木原実紹介)(第四〇八七号)  保母の処遇改善に関する請願河野密紹介)  (第三九七二号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願外三  件(佐々木義武紹介)(第三九七三号)  同外二件(梶山静六紹介)(第四〇八六号)  原爆被害者援護に関する請願田中武夫君紹  介)(第三九七四号)  同(田中武夫紹介)(第四〇八九号)  心臓病児者医療等に関する請願寺前巖君紹  介)(第三九七五号)  同(中村梅吉紹介)(第四〇九〇号)  同(福田繁芳紹介)(第四〇九一号)  同(松本七郎紹介)(第四〇九二号)  看護婦不足対策等に関する請願山本政弘君紹  介)(第三九七六号)  同(山本政弘紹介)(第四一一一号)  優生保護法の一部改正に関する請願外六件(足  立篤郎紹介)(第三九七七号)  同(三木武夫紹介)(第三九七八号)  同外百九十一件(村上勇紹介)(第三九七九  号)  同外二十件(足立篤郎紹介)(第四〇七九  号)  戦争犯罪裁判関係者見舞金支給に関する請願  (池田正之輔君紹介)(第四〇八〇号)  原爆被害者援護法制定等に関する請願黒田寿  男君紹介)(第四〇八八号)  ソ連長期抑留者補償に関する請願外五件(藤  本孝雄君紹介)(第四〇九三号)  同外三件(森下元晴君紹介)(第四〇九四号)  同外六件(八木徹雄紹介)(第四〇九五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第六一号)  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第四六号)  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (小林進君外六名提出衆法第二二号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  内閣提出船員保険法の一部を改正する法律案労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案及び小林進君外六名提出労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。古寺宏君。
  3. 古寺宏

    古寺委員 本日の新聞によりますと、三十六病院が一時間から半日のストを行なう、こういうふうに新聞に報道されておりますが、このストによって、いろいろ患者さんの病状の問題あるいは生命の問題等心配されるわけでございますが、これに対しての厚生大臣並びに労働大臣の所見を承りたいと思います。
  4. 野原正勝

    野原国務大臣 労働省所管では、関東労災病院が、全部でたしか八カ所と思いますが、四時間のストをやるということは、まことにどうも遺憾に思いますけれども、まだ詳しい状況が報告されておりません。こういった遺憾な事態が起こっておるということでございます。
  5. 内田常雄

    内田国務大臣 正しい労働運動を抑圧するつもりはございませんけれども、事が人の生命を預かる機関医療関係者でございますので、その辺の情勢をも十分考えまして、できる限り患者に迷惑のかからないような方法で私ども関係者協力を求めて処理しなければならないと考えております。
  6. 古寺宏

    古寺委員 それでは本題に移りますけれども労災保険を受給されている方々死傷者の数は、この十年間でもって二倍の百七十万人に達し、労働者の約七〇%がどの産業においても神経及び肉体の疲労が増加していることを訴えております。これはいかに今日の作業環境が悪化しているかということを示しているわけでございまして、疾病によるところの休業者も一日に約六十万人に達しておるという実情でございます。  わが国の七〇年代の重要な課題としては、労働力不足の解決の問題がありますが、今日わが国におきましては、五百万人の労働者不足をしている、そのようにいわれております。したがいまして、今後の労働行政におきましては、労働者労働災害あるいは職業病に対する治療、リハビリテーションが非常に重要になってまいるわけでございまして、今回の保険給付改善も重要でありますけれども、それにもまして災害を起こさないように、安全で快適な職場づくりが必要であると考えられますが、これについて大臣はどのような施策考えておられるか、承りたいと思います。
  7. 野原正勝

    野原国務大臣 申すまでもなく、安全で快適の職場災害は、起こるよりも起こる前にいかにして災害を未然に防ぐかという問題が最も緊要でございます。同時にまた、起きてしまった以上は、その人たちが一日も早く職場に復帰できるようにあらゆる対策を講ずる。リハビリテーションももとより必要でございます。そうしたことで、災害の様子によりましては、災害を受けられた方々のあらためての職業訓練も必要でございましょう。あるいはまた、生活環境改善することも必要でございましょう。いろいろな点で十分な対策を講ずる必要があるということを考えておるわけでございます。その方向で今後も強力に進めてまいりたいと考えております。
  8. 古寺宏

    古寺委員 そこで承っておきたいのでございますが、危険防止違反指摘をされた労働省監督事業場は、大体全事業場の何%ぐらいになっているか。聞くところによれば、この十年間ほとんどその数は減っておらない、むしろ増加している、そういうふうにいわれておるわけでございますが、大体何%ぐらいがそういうふうに指摘をされているのでございましょうか。
  9. 和田勝美

    和田政府委員 四十四年度におきます、定期監督と申しまして、私どものほうから出向いて行って監督をしました事業場における全体の違反状態は、七四%ぐらいの違反率でございますが、安全衛生に関して申し上げますと、安全基準違反をしておったものが四七・七%、衛生基準違反をしておりましたものが四・六%でございますが、安全関係違反が相当目立っておるということが申し上げられると思います。
  10. 古寺宏

    古寺委員 労働省危険防止については非常に努力を重ねていられるということに対しては敬意を表しますけれども、一向に違反が減っておらない。災害防止のためには、そのための科学的な研究が必要であると思います。現在労働省でも安全研究所あるいは衛生研究所でそのような研究が行なわれておると聞きますけれども、その実態はあまりにも貧弱である、そういうふうに承っております。そこで、そのスタッフあるいは研究費はどうなっているか、また労働災害予防職業病発生防止対策開発研究を発展させるための措置をどのように考えておられるか、承りたいと思います。
  11. 和田勝美

    和田政府委員 労働省におきましては、現在安全衛生関係研究所といたしましては、産業安全研究所労働衛生研究所の二つの研究所がございます。そこではそれぞれ産業安全に関しますこと、労働衛生、特に職業病予防について重点を置いて労働衛生研究所では行なっておりますが、この予算は、産業安全研究所が四十五年度予算におきましては一億五千三百三十三万一千円、スタッフは五十八人でございます。労働衛生研究所は一億五千六百四十六万、スタッフは六十人、こういうことでございます。  なお、最近におきまして、労働衛生問題が、先生が御指摘になりましたように、労働力の質が変化をしていくことにつれて、あるいは新技術導入、新工法の導入ということに関連しまして、新しい職業病がいろいろ出てきておるというような状態もございますし、それから労働者の方の職場復帰をできるだけ早く完全な姿で行ないたいというような要望も非常に旺盛でございます。そういうことにかんがみまして、四十五年度予算におきましては、産業安全に関する総合的な研究機関を設置することを目的といたします調査費を計上さしていただきまして、その調査の結果、全体の構想がまとまりました場合には、労働衛生研究所を発展的に吸収いたしまして、きわめて大規模産業衛生総合研究所とでもいうような機構を設けてまいりたい、かように考えております。
  12. 古寺宏

    古寺委員 その大規模産業衛生研究所は、ことしは三百万円の調査費が計上されておりますけれども、大体いつごろまでに建設をするめどでございましょう。
  13. 和田勝美

    和田政府委員 調査委員会を近く発足することにいたしておりますので、その調査委員会において、いろいろとやるべき事項、構成、その他研究所におきます万般のことについて御討議をいただく予定になっております。それが順調にまいりますれば、私どもとしては、四十六年度を初年度とする計画を立てていきたい。ただ、何年間でやるかということにつきましては、予算上の問題がいろいろあろうと思いますが、労働省といたしましては、四十六年度を初年度としてできるだけ短い期間に完成をさせるような姿勢でいきたい、かように考えております。
  14. 古寺宏

    古寺委員 最近における技術革新あるいは職場環境変化等によりまして、新しい職業病がたくさん発生をいたしております。その発生予防のための指導監督措置が非常に不十分であると考えますが、これを補って、労災保険制度においても、これらの労働災害あるいは職業病予防のために、現在欠けているところの疫学的手法導入して行なう研究成果の普及などの実効ある措置をとるとともに、その認定を確実にするために、ただいまお話がありました総合研究所建設と並行しながら、医学的あるいは工学的、心理学的な研究を行なう研究体制をつくるべきであるというふうに考えるわけでございますが、労働大臣のお考えはいかがでございましょう。
  15. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のとおり、今後の労働災害対策としましては、ひとり医学のみにとどまらず、工学方面あるいは心理学方面協力を得まして、総合的な産業医学といったような観点から今後の問題を進めてまいりたい。現在の川崎の労働衛生研究所であるとか、あるいは清瀬にあります産業安全研究所におきましても、やはりそういう考え方のもとに、医学の方あるいは工学の人、ある程度スタッフにおるわけでございますが、それではもとより十分ではございません。したがって、それらのものは新しい構想による産業医学総合研究機関の中で今後の対策を十分に検討してまいりたい、こういう考えでございます。
  16. 古寺宏

    古寺委員 私がいま申し上げたのは、そういう研究所のほかに、一般の学者あるいは他の民間のそういう機関、そういうものを合わせての研究体制のことについてお願い申し上げたのですが、その点についてはどうでございましょうか。
  17. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のような点で、できるだけ広範に人材を集め、その人たちに御委嘱申し上げて、今後の対策に万全を期したいという方針でございます。
  18. 古寺宏

    古寺委員 災害防止するための対策は、労働省としてはいろいろおやりになっていると思いますが、特に労働基準監督官は、非常に数が少ない上に、他の仕事に従事して、本来の業務に専念できない、そういう兼務の方も相当いらっしゃる、そういうことを聞いておりますが、その対策についてはどのようになっているか、お尋ねしたいと思います。
  19. 和田勝美

    和田政府委員 事業場の数あるいは適用労働者の数が相当な勢いでふえておりながら、監督官伸び率がそれに均衡がとれていないという点は、御指摘のとおりでございます。しかし、そういうことで労働災害防止がおろそかになるようなことではなりませんので、私どもとしては、災害防止ということに一番の重点を置いているわけでございます。おかげさまで、民間協力も得まして、最近は災害発生状況減少傾向にある状態ではございますけれども、なお相当数が多いということは、まことに遺憾なことでございますので、私どもとしては、さらにより一そう重点安全衛生というところに注いで、災害防止努力してまいりたいと思いまして、四十三年から第三次の労働災害防止基本計画をつくり、それぞれ年次計画を立てていまやっておるところでございます。  また、先生がいま御指摘のように、監督官がほかの仕事をやるために、監督官としての機能が発揮しにくいということでございますが、そういう面も確かにございますので、できるだけ事務を機械化いたしまして、署内事務をできるだけ事務官のほうに集中をして、監督官監督官として本来の業務に尽瘁できるように、そして、その監督官が働きやすいような機動力をつくる、こういうようなことで、監督官が有効に動くような情勢をつくってまいりたい。予算的にもそういうような措置をすでに講じております。  そのほか、四十五年度におきましては七十五人の監督官増員が見込まれまして、もちろん十分ではございませんが、今後におきまして監督官増員ということについてもさらに努力をいたしまして、災害予防についてできるだけの努力をしていきたい、かように思っております。
  20. 古寺宏

    古寺委員 労働省としての増員要求の数は四百二十一名である、そういうふうに承っております。それに対して今年度は、先日審議されました家内労働法も新たにできまして、それらのことを考えますならば、とうていこの七十五名では十分な監督行政というものはできないのじゃないか。非常に心配なわけなんでございますが、その増員要求に対して、七十五名でもって十二分な監督行政を行なっていける自信がおありなのかどうか、この点について承っておきたいと思います。
  21. 和田勝美

    和田政府委員 確かに、先生が御指摘になりましたように、労働省人員要求をいたしました数は相当の数でございます。一応の年次計画をつくりまして、そのうちの第一年度というようなかっこうで要求をしましたが、政府部内の、要するに定員増を極力押えるという全体のワクの中での作業ということになりまして、結果的には七十五人に落ちついたわけでございます。私どもとしては決してこれで満足をしているものではございません。それは、先ほど申し上げましたような事情がありますので、ぜひ監督官増員は、何としてでも今後さらにふやしていく努力をいたしてまいりたい、かように思っております。
  22. 古寺宏

    古寺委員 ただいまの局長の御答弁にございましたが、労働大臣はこの点についてはどのようにお考えでございましょうか。
  23. 野原正勝

    野原国務大臣 日本経済の今後の成長発展をささえるものは一にかかって労働問題である。したがって、労働の質あるいは量ともに飛躍的な増大が今後考えられておりますが、そういうことを考えてみますると、労働行政対策に遺憾なきを期したい。現在の労働基準局監督官の数は、その点から見まするとまことに心さびしい感じがいたします。したがって、いかにして必要にして十分なる人員を確保するかという問題は今後の課題の最も重大な点であろう、こういう点で、私ども家内労働法の問題であるとか、あるいは労働災害補償法改正の問題であるとか、あるいは労働災害の最近多発の情勢であるとか、いろいろな点を考えてみますると、今後ひとつ思い切ってそれらの対策を立てていきたいというふうに考えておりますが、まあ一気にというような飛躍的な拡大はなかなか容易でないと思います。しかし、少なくともこの際、計画を立てまして、思い切って従来の増員の程度をはるかに上回るようなことにしなければ、どうていそれは十分ではない、こういうふうに考えております。今後はこの点で大いにその政策に取り組んでいきたいと思いますので、皆さま方の特段の御協力をお願いする次第でございます。
  24. 古寺宏

    古寺委員 昭和四十四年の十一月に白ろう病に対するいろいろな措置が決定されております。ところが、これはほとんどが国有林に従事している方々であって、民有林林業従事者に対する白ろう病認定というものは非常に数が少ないわけでございます。チェーンソーにいたしましても国有林では五千台使っている。ところが、民有林においては七万五千台も使用いたしているわけでございますが、こういう業務上の認定が非常におくれております。こういう点についても、これは私はやはり監督官が少ない、そういうことが非常に影響しているんじゃないか、こう思いますが、この内容はどういうふうになっているのでございましょうか。
  25. 和田勝美

    和田政府委員 国有林に比較しまして民有林におきます日ろう病発生は確かに少のうございます。これは実は作業形態が相当国有林民有林と違うところにもございまして、雇用形態は、確かに雇用をしておりますけれども、まあ一種の請負的な雇用形態というようなものもございまして、一つのグループでいろいろと仕事をされる。したがいまして、チェーンソーを使う時間が、国有林の場合のように専業的にやられずに、いろいろなことを取りまぜてやられますから、そういう意味でチェーンソー使用時間が意外に少ないということなども民有林における白ろう病発生度合いと申しますか、そういうものが低い理由の一つではないか。しかしそれだけではもちろんございませんで、監督官不足のために監督が不十分になっているという点も確かに否定できない面があろうかと思います。こういう点につきまして、実はことしの二月二十八日に、従来からの御論議あるいは外国の文献、そういうものを集めまして研究委員会を持っておりましたが、その結果に基づいて予防体制作業時間、健康診断、そういうようなものを内容とします指導方針を各都道府県の基準局長あてに指示をいたしますとともに、林業労働災害防止協会に対しましても協力方を求めまして、今後有効な予防のための行政指導をしていく。  それからもう一つは、何といいましても実態を明らかにすることが重要でございますので、四十五年度におきましては、林業労働者白ろう病実態をつかむための実態調査予算上計上いたしまして、この実態をよく見きわめました上で有効な措置を講ずるようにしていきたい。したがいまして、そういうような実態調査その他によりまして、これからの職業病としての認定のために必要な措置、こういうような行政措置もさらに進めるように努力をしてまいりたいと考えております。
  26. 古寺宏

    古寺委員 この民有林白ろう病は、これから非常に数がふえるのではないか、そういうふうに心配されます。と同時に、いままでお話があったように、監督官の数が非常に少ないということが日本労働行政にとっては非常に大きな課題でございます。この点につきまして、行管庁はどういうわけでこの増員要求に対して七十五名にしたかという点につきまして、行管庁考え方を承っておきたい。
  27. 關言行

    關説明員 御指摘のように、適用事業場の数がふえておりますわりには監督官の数はそうふえておりませんけれども、これはひとり監督官だけの問題ではございませんで、一般関係の公務員というものはそんなに事業場がふえたからといってふえているわけではございません。監督官の問題では、労働災害防止のため、そういう面で非常に重要な役割りを果たしております点は私どもも理解をいたしておるのでございまして、結果的に四十五年度の七十五人の増ということは、いろいろ御不満もあろうかと思いますけれども労働省ともいろいろ御相談の上、きついかもしれぬけれどもこの辺でやりましょうということで、この増員だけに限らず、基準局長答弁にもありましたように、機動力の増強であるとか、あるいは配置の合理化であるとか、あるいは監督効率化であるとか、そういうような施策とあわせて、特に労働災害防止重点を置いて施策を進められるよう期待しておる次第であります。
  28. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、この間いろいろ労働者職業病になったりあるいは労働災害の危険にさらされておるわけであります。そういう点については、要望に添えないけれどもやむを得ない、そういうようなお考えなんですか。それとも、来年度からは要求どおり増員するというお考えでございますか、お尋ねします。
  29. 關言行

    關説明員 労働省といろいろ御相談をいたしましたところでは、不十分ながらもこれで何とかやれるというふうに考えております。  なお、将来のことについては、要求が出てまいりませんとわかりませんけれども、われわれといたしましても、将来ともこの増員については努力をいたしたい、かように考えております。
  30. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、労働省のほうでは非常に足りない、こうおっしゃっておりますし、行管庁のほうは、これでやれると思っている。非常に食い違っているわけでございますけれども、実際に労働省当局としては、いろいろな現在の労働行政実態からしてこれだけの要求をしていると私は思うのですね。その労働省とのいわゆる話し合いといいますか、そういうものが非常に足りないように思いますので、今後この点につきましては、十二分に検討の上で、増員要求を満たして、労働災害防止するようにお願いしておきたいと思います。  次に、最近におきましては、技術革新に伴いまして、各種の有毒物が工場内で使用されておりますけれども、これらの実態をどういうふうに把握をしているか、また、このような有毒物によって発生する災害予防についてはどのような施策を講じておられるか、承りたいと思います。
  31. 和田勝美

    和田政府委員 御指摘のように、技術革新に伴いまして、いわゆる新しい有害物質が相当な勢いで生産現場に出ておることは事実でございます。そのために、従来と違った用途に使用されるようなものが出てくる。あるいはカドミウムとか五酸化バナジウム、それからメチルアミン類、こういうようなものがその例でございます。また、全く新しい物質が開発をされてくる。例を申し上げますれば、アクリル化合物というようなものがそういうものでございますが、こういうように種類、性質が非常に複雑多岐にわたりまして、今後の技術革新は、ますますそういう科学物質についての種類の増大が考えられるわけでございます。これに対しましては、何といいましても新しい物質の実体をきわめるということが何よりも重要なことでございますので、労働衛生研究所で、毒物の問題についてこれから積極的に取り上げていこう、あるいは学者の方にお願いをいたしまして、委託研究でもってこの内容を明らかにする、そういうことをいたしまして、それらを分類整理をいたしまして、実は各監督署に手引き書のようなものをすでに配布をいたしております。こういう物質はこういう毒性があり、こういう予防方策が必要である、こういうような監督署指導の方向をすでに打ち出しておりますが、そういうようなものを、ハンドブック等を基本といたしまして、監督官としては各工場、事業場に対する監督指導を進め、あるいは労働衛生モニターというようなことで関係者からの報告を得るというようなこと、あるいは傷病報告を受けておりますが、それらを分析いたしまして、共通の問題については、全国的にその内容を広げていく、こういうようなことでやってまいりたいと思います。  こういうようにしまして、私どもとしては、日常の監督指導を行なうとともに、本省におきましては、中毒予防のための基準をつくって、それから関係の労使に対して、先ほども申し上げましたが、毒性の周知をはかっていく、それから関係事業場に対して、そういう有害物を扱っておる場合における実質的な作業管理規程をつくらせる、こういうようなことで、今後これらの新しい物質に対する防護措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  32. 古寺宏

    古寺委員 大阪の高速印刷というのがございますね。ここでは、いろいろな有害物が使用されているにもかかわらず、全くその表示がなされていない。しかも成分の不明ないろいろな溶剤が使われておる。最近は、ほとんど姿を消したはずのベンゼン、これが排気装置もないところで毎日一本づつ使われたり、あるいは狭い部屋の中で、排気装置のないところにトロールがふたのないままに使用されておる。そういうような報告を聞いておりますし、さらにまた、これと関連いたしまして、いろいろな企業において、有機溶剤の中毒予防規則というのがございますが、これがほとんど守られておらない、そういうことも承っております。こういう点につきましては、労働省としてはどういう対策を一体考えておられるのか、承りたいと思います。
  33. 和田勝美

    和田政府委員 大阪の高速印刷の件につきましては、実は私ども、いまここで承知しておりませんので、内容については、調査をして報告を申し上げたいと思いますが、有機溶剤一般につきましては、有機溶剤中毒予防規則を設けております。この規則は、確かにまだまだ新しいほうに属しておりますので、一般に対する周知という点で欠けるところがあるかと存じますが、私どもとしては、有機溶剤を扱っておる事業場については、特別の衛生監督指導をする指定もいたしまして、その徹底をはかっていくという基本的な方針をとりまして、そういうようなところには監督の濃度本高めていく、あるいは衛生関係のものの行政指導も強めていく、こういう方針をとっているところでございます。今後さらにそういう線に沿いまして努力をしていきますとともに、関係の労使の方に、その毒性に対する理解を十分に深めてもらうことが何よりも重大だろうと思いますので、そういう点につきましては、ぜひ関係労使を指導してまいりたい、かように考えております。
  34. 古寺宏

    古寺委員 先日もお話し申し上げましたけれども、桑名のビニールサンダルの中毒の問題ですが、安全なはずのゴムのりが、いろいろな中毒症状を起こしている。この三月に行なわれた環境の測定によりますと、許容量とされている一〇〇PPMをはるかにこえる四〇〇から一〇〇〇PPMのノルマルヘキサンが各作業場で検出された、こういうふうに言われているわけでございます。   〔委員長退席、小山(省)委員長代理着席〕 現地においては、聞くところによりますと、名大かどこかにお願いをして、五月の末までにその結論を出すということも承っておりますけれども、これに対して労働省は一体どういう対策考えておられるか。と同時に、これは桑名だけではなしに、東京においても、あるいは静岡、大阪においても、現実にこういうようなことが起きているわけです。そういう問題に対して、労働省は、事件が起こらないうちは放置しておくのかどうか、その対策をお聞きしたいわけです。
  35. 和田勝美

    和田政府委員 桑名の具体的な事件につきましては、安全衛生部長のほうからお答え申し上げることといたしまして、一般的な考え方でございますが、いま御指摘のありましたのは、実は相当部分が家内労働ではないか、かように考えております。特にビニールののりづけは家内労働でございますが、そういう点につきましては、実は先般委員会で御可決をいただきました家内労働法案でもって今度はそういう規制ができるようになりました。特に家内労働で世上の関心を引くに至ったヘップサンダル、これの有機溶剤でございますが、そういう点で、私どもは、家内労働に対する規制の問題は、ぜひ力を入れていきたい。先生指摘の、事故が起きてあとからやるのか、こういうのを決して姿勢にしているわけではございませんで、できるだけ早く防止をしたい。しかし、先ほどもお答えしましたように、なかなかわかりにくい物質がありますので、とかく後手に回るのも、実情としてある程度やむを得ない点があるのは御了解をいただきたいと思いますが、私どもとしては、常に積極的に有機溶剤の中毒問題の防止努力していきたい、かように考えております。
  36. 東村金之助

    ○東村説明員 ただいま御指摘の桑名の件でございますが、詳細は、まだこれから調査しないと申し上げられませんが、ただいまお話のございましたように、ベンゼンゴムのりではございませんで、ノルマルヘキサンということでございますが、ベンゼンゴムのりというのは、御承知のように非常に毒性がございますが、いまのノルマルヘキサンにいろいろ問題が出ているという御指摘でありますが、私どももそういうことはあり得ると思います。そこで、それらの問題を規制いたします有機溶剤中毒予防規則、これを現在どう改正したらいいか検討中でございますので、そういうものをもってさらに善処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  37. 古寺宏

    古寺委員 多くの企業は、研究者に対する研究に対して、これを拒否したり、あるいは職業病と診断する医師や研究者にかかることを禁じたり、あるいは国に対しても、傷病の範囲を縮小するように圧力をかけている、そういう話を聞きましたけれども、そういう事実はあるのでしょうか。
  38. 和田勝美

    和田政府委員 研究所でございましても、私ども職業病の問題について消極的な扱いをする気持ちは全くございません。当然有効な予防措置を講じてもらわなければならない。特に安全衛生規則とか有機溶剤中毒規則とかいろいろ規則がございますから、それに従ってぜひやっていただかなければならぬと思います。ただ研究所という性格からしまして、常に新しいものを開発されるということもございますのか、意外な手抜かりもあるかと存じます。しかし、その扱っていらっしゃる研究員の方は、そういうことに非常にお詳しい方でございますので、ぜひ私どもの基本的な考え方研究所にもよくお伝えをしまして、いやしくも隠蔽するということのないような指導をさせていただきたいと思います。
  39. 古寺宏

    古寺委員 災害をこうむった労働者に対しましては、医療とともにリハビリテーションを行なうことが、その後の労働者の社会復帰にとってきわめて重要なことであると考えますけれども労災保険においてはこれらの措置が十二分に講ぜられているのでございましょうか。
  40. 和田勝美

    和田政府委員 先生指摘のように、被害を受けられました労働者の方ができるだけ早く社会復帰をされる、そうしてその持っておられる機能を十分に発揮できるような状態をつくり上げるためには、リハビリテーションというのが非常に重要な意義を持っておる、かように私どもも十分認識をいたしております。そのために、労災保険としましては、その一環といたしまして、労災病院を中心にして医学的、職能的なリハビリテーションの実施ということに重点を置いておりまして、各労災病院はほとんどこれらに必要な施設を持っておると申し上げていいと思います。さらに、必要に応じましては、義肢あるいは車いすというような補装具を無料で支給をいたします。特に脊損患者の方は下半身が麻痺状態になっているというような状態でございまして、この社会復帰のためにはいろいろな措置が必要でございます。先ほども申しましたような車いすの問題、あるいは退院をされましていよいよ社会復帰をされますときには、家の構造を変えなければいけないというような問題が出てきますが、そういう場合における社会復帰資金の貸し付け、あるいは自動車につきましても特殊な構造を必要としますが、そういうような自動車購入の際の資金の貸し付け、こういうようなこともいたしておりますし、またリハビリテーション作業所を全国に六カ所現在労働福祉事業団が経営いたしておりますが、ここでは脊損患者方々が治療、健康管理を受けながら各作業についての指導を受けて、それで一本立ちになられて健全な社会復帰をしていただくようなことをいたしておるということが現在の状態でございます。今後におきましては、これらに対する開発もいろいろ進んできておるように思われますので、それらの成果を受け入れながら、ぜひ労災保険の保険施設としてリハビリテーションについては重点を置いて考えていきたい、かように考えておるわけであります。
  41. 古寺宏

    古寺委員 いま局長からお話がございましたが、大臣のお考えはどうでございましょうか。
  42. 野原正勝

    野原国務大臣 積極的にリハビリテーションを行ないまして、一日もすみやかに社会復帰ができますように対策を講じてまいる所存でございます。
  43. 古寺宏

    古寺委員 昨日もだいぶ論議されたのでございますが、平均賃金は災害発生前三カ月の賃金で算定をしますけれども、その算定の中にはもちろんボーナスは含まれておらない。そのほかに私病でもって十日なりあるいは一週間休んだ、そういうふうに休業があってもそのまま計算されるために非常に低くなるわけでございます。こういう矛盾は労働者にとってはまことに不利であるので、労働者にとって有利な、生活の実態に合わせた適正な算定方法に変えるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点について労働大臣はどういうふうにお考えになっておるか、承りたいと思います。
  44. 野原正勝

    野原国務大臣 労働賃金の問題につきましては、最近の情勢考えますと、労働者に有利なような姿で考えることが妥当である。それで、わが国のボーナスというものは日本の非常に特異な形態であるということをいわれておりますが、ボーナスというのはある程度生活給であり、賃金の一部であるというふうな理解が最近いわれておるわけであります。ボーナスの算入という問題——その全部の算入は困難であるとしても、ボーナスによって支給されるものもある程度加えてまいる必要があるのではないかということを考えております。この問題につきましては、ただいま労働基準法研究会その他で御検討いただいておるわけでございまして、近いうちに結論が出ると思います。私どもはその結論を待ちまして、今後の労災法の問題、補償の問題等にも、できるだけ働く人たちのためにこれが正しく評価され、実態に合うような姿で支給ができることを望ましいと考えております。そういうことで、現在のところ調査の段階でございますので、その結論を待ちまして今後の対策を講じてまいりたいと思います。
  45. 古寺宏

    古寺委員 ボーナスはぜひただいま大臣の御答弁のように含んでいただきたいということを御要望申し上げるとともに、ただいま私が質問申し上げましたのは、私傷病によって三カ月の間に十日なりあるいは一週間休みますと、その分低くなるわけでございます。その点についてこの算定方法を変えなければ、たまたま病気で休んだ三カ月でもって計算されますと、非常に平均賃金が低くなるわけでございます。そういう点について外国の例を見ましても、年間を通して調整するとかいろいろな措置考えられておるようでございますけれども、そういう点に対するいわゆる愛情のあるあたたかい配慮というものが今後の労働行政については必要ではないか、そう考えるわけなんです。その点に対する御答弁がございませんので、お願いしたいと思います。
  46. 和田勝美

    和田政府委員 全体的な問題は、大臣かちお答え申し上げましたような方向で平均賃金の問題を考えておりますが、いま御指摘の具体的な問題でありますが、業務上の問題につきましては、すでにその点を考慮して法律で規定がなされております。それに対しまして、いわゆる私病と称せられる場合の問題につきましては、確かに法律的にはそういう規定がございませんので、いまは一応その休んだときのものを平均的に割っておりますが、十二条の末項に、算定しにくいときには労働大臣のほうで一定の基準を示すことができるというふうな規定もございますので、今後はいまのようなお話の問題を十分ひとつ研究をさせていただきまして、あまりにも低くなるということではたいへんでございますので、十分研究をさせていただきたい、かように考えております。
  47. 古寺宏

    古寺委員 ただいま局長からの御答弁にもありましたように、大臣の権限によってその基準をつくることができるそうでございますが、労働大臣はこの基準をつくって、そしてこういう点の矛盾を改めるお考えがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  48. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘の問題は、前向きに検討してまいる所存でございます。
  49. 古寺宏

    古寺委員 これは昨日もいろいろお話がございましたけれどもわが国の低賃金を考えますと、ILOの百二十一号条約の水準に達したといっても、その実態は非常に低くなっているわけでございます。そこで、その分を補充する意味において給付率をもっと引き上げるべきではないか、そういうふうに考えるわけでございますが、今後この給付率について改善するお考えはないかどうか、お伺いしたいと思います。
  50. 和田勝美

    和田政府委員 給付率につきましては、今回の法律案で障害年金、遺族年金というのは給付率の引き上げをお願いをしておるわけでございます。ただ、今回の改正で休業補償率の引き上げについてはお願いをしておりません。これは実はILOの百二十一号条約で六割ということになっておりますのが、現行法の規定も六割という同じ水準でございますので、お願いをしておらないわけでございます。ただいま先生が御指摘の、しかし日本は低賃金であるので、諸外国から比べれば低いから、したがって休業補償の給付率も上げるべきではないかという御趣旨のように拝聴いたしました。これはその国々の賃金事情というものがございまして、その国々の賃金事情及び生活状態ということで賃金がある程度きまってまいるわけでございますので、にわかにほかの国と比較して安いということばかりも言えないのではないか。特に、最近におきましては、賃金の上昇率は世界の相当産業の進んだ国の中では日本が最高の上昇率を示しておりまして、近い将来にはヨーロッパを追い越すようなことも考えられておるというようなことを勘案いたしますと、休業補償の率の引き上げの問題については、一応それ自体は国際水準に達しておりますこともあり、賃金の上昇率が非常に高くて、近い将来には、いわゆる先進国といわれるところの賃金を上回ることも考えられる。あるいは休業補償につきましては、国内のほとんど全部の制度が六〇%というようなことでございますので、さしあたりはそういうことによって現在の給付率のままでやってまいりたい、かように考えております。
  51. 古寺宏

    古寺委員 外国の賃金とたとえば製造業なんかで比較をしてみますと、アメリカを一〇〇とした場合には、日本は非常に低い、最近ではイタリアよりも低くなっている、そういうようにいわれておるわけでございますけれども、その賃金の比較は一体どうなっておりますか。
  52. 和田勝美

    和田政府委員 一九六八年の製造業について申し上げますと、日本を一〇〇といたしますとアメリカが四四七・三、イギリスが一八四・〇、西ドイツが一七八・〇、イタリアが一〇五・八でございまして、資料の出所はILOの労働統計報告でございます。なお、日本の賃金につきましては労働省の毎勤によって算定をしております。
  53. 古寺宏

    古寺委員 七百七十円の最低の方ですね、こういう方の計算をしてみたわけです。すると四百日分を奥さんと子供さんが二人いらっしゃるといただきまして、その後一年間にどのくらいいただけるかというと、十一万二千円しかいただけないわけです。これでは子供二人かかえている奥さんは生活していけないんじゃないか。最初に四百日分いただいたお金は、三年間なら三年間に使い果たしてしまうでしょう。その後一年間に十一万二千円の年金では生活していけないんじゃないか、こういうように考えるわけですが、そういう点はどうでございましょうか。
  54. 和田勝美

    和田政府委員 実は休業補償の最低を七百七十円ということに今度改定をいたしますのは、最近におきます最低賃金の動向がおおむね七百五十円程度が中位数というようなことでございますので、それを勘案をして七百七十円に上げるわけでございますが、これは実はこの労災償補がどこまでも賃金との関係でいろいろの組み立てができておりますので、七百七十円という問題も、賃金の動向とのかね合いでできたものでございまして、そういう点では制度的にやむを得ない面もあることは御了承いただきたいと思います。  ただ、それで生活できるかどうかという問題は、確かに子供さんが二人と奥さんということではなかなかたいへんでございましょうが、七百七十円だけの賃金でもおそらくそれ以外の問題があるだろう。もしそういうことになりますれば生活保護の適用対象におそらくなられる家庭でございます。それらとのかね合い等を考えながら、私どもも今後この最低の底上げの問題については努力をしてまいりたい、かように考えております。
  55. 古寺宏

    古寺委員 したがいまして、今回ILOの水準まで給付率を引き上げた、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、この給付率でいきますと、ただいま御答弁があったように、結局は生活保護に転落をしなければならないようなそういう今回の改正案だと私は思うわけでございます。したがいまして、一生懸命に労働をやってこられた方が、不幸にしてこういうふうな事故になった場合に、それに報いるものが生活保護への転落であってはならないと私は思うわけでございます。今後ひとつこういう面については、十二分に検討の上に立たれて、給付率を改善するなり、あるいは何らかの方法によって生活を保障するようにしていただきたいと思います。  時間がございませんので先へ進みますけれども、今回新たに自宅療養者に、長期傷病者に対して介護料として一万円を支給することになりました。しかし、一万円ではとうてい私は十分な介護料とはいえないんじゃないか、これは当然実費をもって払っていくようにしたほうがいいんではないか、そういうふうに考えるわけでございますけれども労働大臣は、この一万円の介護料についてはどのようにお考えになりますか。
  56. 和田勝美

    和田政府委員 一万円を考えました根拠について私からちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  自宅におきます長期傷病者につきまして今度新たに介護料を月一万円を限度として差し上げるということにいたしました。これは入院中の長期傷病者については病院の側でいろいろめんどうを見ますので、それとのかね合いで、自宅療養の方には家族の方が何くれとなく看護に当たられる、いわゆる介護をなさるということもございまして、その介護料をぜひ設けたいというように考えておったわけでございます。この点は労災保険審議会の建議の中にも、おおむねそういう一万円程度のことをお考えのような感じの答申がございましたので、これを国にあります介護料のいろいろの制度を見てみますと、原子爆弾による被爆者の場合とか、あるいは一酸化炭素中毒患者に対する介護料とか、公害による健康被害の救済特別措置による金とか、あるいは生活保護による在宅患者の加算の問題だとか、現在わが国でいろいろ実施されております公的なものを勘案いたしまして、大体そのうちの一番高いところにちょっと上積みしたようなところで一万円を計算した、こういうことでございまして、今後これらの全体のいろいろの同種類のものとの兼ね合いもありますし、介護の実態に対する調査等もいたしまして、必要に応じて引き上げをするということも将来の問題として考えさせていただきたいと思います。
  57. 古寺宏

    古寺委員 他の制度の兼ね合いから、他の制度が九千円であるから労災は一万円にした、こういうお話だと思うのでありますけれども、そういう制度との兼ね合いではなくして、やはり実際に長期療養をなさる傷病者の方々の立場に立たれてお考えになっていただかないと、私は困ると思う。いままでだんなさまがかりにそういう病人で入院をしておった。それが退院をしてくる。以前は奥さんがどこかへ働きに行っておったのが、介護のために今度は働くことができない。そうしますと、今度は一万円の介護料でもって生活をしなければならない。そういうような結果になるわけでございます。この点につきましては、今後もひとつ十二分に検討していただいて、これらの長期療養者の方々の立場に立った介護料というものを考えていただきたいと思います。  次には、最近は外傷性の脊損患者が非常にふえております。この脊損患者の中で、三十五年以前の打ち切り者に対する入院療養援護金というのが一万円支給をされております。これは、その後の脊損患者方々は年金を受けている方もいらっしゃるわけでございます。一万円ということは非常に少ないのじゃないか。これはもう少し引き上げてあげるべきではないか。しかも数もわずかに三十二名しかいらっしゃらないそうでございますので、これらの方々に対しましては何とかしてひとつもう少し引き上げてめんどうを見ていただきたい、そう思うわけですが、大臣はこの点についてはどうお考えでございましょうか。
  58. 和田勝美

    和田政府委員 事務的な説明を申し上げまして、あとから大臣の御答弁を賜わることにいたします。  昭和三十年にけい肺等特別保護法ができましたときに、年金になるのかあるいは打ち切り補償を受けられるかということで、打ち切り補償を選ばれた方につきましては、結局法律的にだけ申し上げますと、打ち切り補償を差し上げたのでありますから、薄情な言い方でございますが、労災保険とは一応縁が切れたわけでございます。しかしそうばかりも言っておれませんので、現実にはいわゆる保険給付というかっこうでなくて、労災保険の保険施設というかっこうをとりまして、三十二人の方かと思いますけれども、療養を続けていただいております。そして入院して療養していただいている金は一切、そのまま保険施設ということでごめんどうを見ておるわけであります。しかしその後の状況を見てみますと、入院費だけではどうも足りない。脊損の方でございますので、何かと手間がかかるといいますと何でしょうが、そういう問題もあれば小づかいの問題もあるというようなことで、昨年の労災保険審議会でも何らかの措置を講じたらどうかというような御指摘もございましたので、それで今度新たに、小づかいその他雑費に充てていただくという趣旨で一万円の支給をするような措置を講じたわけでございます。これももちろん保険施設でございまして、本来の労災保険の給付それ自体ではない、こういうことでございますので、これらにつきましても、特に本来の保険給付をされている方と同一視することはなかなか問題があるように思いますが、一万円ということにいたしましたのは、先ほどの介護料等もございますので、そういう趣旨で、手厚くしようという意味で設けたものでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  59. 野原正勝

    野原国務大臣 実は私、詳しくなかったものですから答弁をしなかったわけでありますが、先ほどの介護料の問題といい、ただいまの脊損患者の方たちに対する措置といい、労働省対策として、かなり行き届いた対策を講じたというふうな印象を受けておるわけでございます。いままでそういうことがなぜできなかったかということよりも、今度こういう道を開いてやろうということについては、この労災法の改正という問題を契機にそこまで行き届いた対策を講じたということについては、よくやったものだというふうに私は考えております。それが十分であるかどうかということについては、これはどうも御指摘のとおり必ずしも十分じゃないと思うのでありますが、いままでやらなかったものをせめてこれだけやってやろうというのでありますから、そこらのところに一つ道が開けた、今後はそういう問題は、国の経済の状況あるいはいろいろな問題と関連して、一万円やればそれでもうすべていいんだというのでなく、情勢によってだんだんと改善していくということが必要であろうと思います。そういう面でこれからも十分注意してまいりたいと考えております。
  60. 古寺宏

    古寺委員 まあ三十二名の方でございますから、一カ月一万円ずつアップいたしましても三十二万円あればいいわけでございます。二万円アップした場合には六十四万円でいいわけでございます。ぜひひとつ労働大臣に、こういう三十二名の方々のためではありますけれども、何とかひとつ大臣の任期中に、思い出に残るように、この三十二名の方々の問題を改善するように御要望を申し上げておきたいと思います。  時間がないので先へ急ぎますが、脳卒中や心臓疾患で業務上になっている件数は一体どのくらいございますでしょうか。
  61. 和田勝美

    和田政府委員 四十三年におきまして、その他業務に起因する疾病全体で千二百六十一件でございますが、この中に脳卒中あるいは心臓疾患、そういったような方で労災で業務上として扱ったものが含まれておりますが、実は統計がとれておりませんが、その点はお許しをいただきたいと思います。
  62. 古寺宏

    古寺委員 作業中に倒れても業務上と認定される例はほとんどない、そういうふうに承っているのでございますが、仕事をしている場合は当然業務上と認定すべきではないか、こういうふうに考えるわけなんです。そういう点に対する認定の基準があまりにも片寄っているんじゃないか、そういうふうに考えるわけでございますが、こういう点については労働省では検討したことがございますでしょうか。また今後はこういう点について、もっと現実に即したいわゆる認定の基準というものをつくるべきではないか、こういうふうに思うわけでございますが、どうでございましょう。
  63. 和田勝美

    和田政府委員 脳卒中につきましては、実は業務との関連が非常にむずかしい問題がございます。業務といいますよりはまあ私病として扱うほうが普通であろうと思いますが、特にそれは既往症とかあるいはその方の体質とか、そういうような問題が混在をして脳卒中が出るようでございますので、なかなか業務上として扱うことがむずかしい問題がございますので、普通私病として扱うのが多く、ただ仕事が、きわめて精神的な緊張を要するような仕事をあるときに臨時的に非常にやらされておったとか、あるいは非常に繁忙な業務の中で、普通の状態よりもさらに繁忙の状態の中で働かされておったので非常にからだの疲労が加わって、そのために普通ならば脳卒中にならないところが脳卒中が出たというようなことが具体的に認定されます場合には、私どものほうで脳卒中の場合でも業務上ということにいたしております。その認定が非常にきびしいのではないかというような御判断でございますが、それは脳卒中が普通医学的に見ますると業務との関連が非常に少ない、こういうことがいわれておりますのでいまのような扱いになっておるわけでございます。しかし行政経験もだんだんと積んでまいりまして、いろいろのケース、ケースが積み上がってまいります。それらのことを十分私どもとして研究いたしまして、もし認定について必要な改善を加えるということがそれらのケースの積み上げによって必要になってまいります場合には、十分検討をさせていただきたい、かように考えております。
  64. 古寺宏

    古寺委員 きょうは時間がないのであまり申し上げませんけれども、最近のいろいろな職場状況を見ますと非常に過重労働——あるいは社会福祉施設なんかにいたしましても、赤ん坊を一日に何回もだっこしなければいけないとか、あるいは身体障害者の子供さんをいろいろめんどう見なければならない。ところが定員が足りないために、過重労働になっている。そして心臓の疾患あるいは脳溢血で倒れるというような方々もいらっしゃるわけです。いろいろなケースがございますけれども、今後ますますこういう問題は増加の傾向にございますので、認定の基準につきましては今後ひとつ検討をして、当然業務上とみなされるようなそういう疾患については、これは業務上とみなすようにお願いをしておきたいと思います。  時間がございませんので、船員保険のほうに移らしていただきます。  船保の今度のあれを見ますと、葬祭料の引き上げが行なわれていないようでございますが、この点はどういうふうになっているのでございましょうか。
  65. 梅本純正

    ○梅本政府委員 労災保険におきます葬祭料が、三万五千円に給付基礎日額の三十日分を加えた額でございまして、今回労災のほうで三万五千円を六万円に改めようという改正でございます。船員保険の葬祭料につきましては現在立て方が違っておりまして、標準報酬月額の二月分に相当する額を支払う、こういうふうになっておるわけでございます。この点は、いわゆる労災保険法のもとになっております基準法と同じような感じの、船員保険法のもとになっております船員法におきまして職務上の死亡にかかる葬祭料の額が、標準報酬月額の二月分相当というふうにされておりますので、それを受けましてこういう立て方になったわけでございます。したがいまして、この問題につきまして先ほど申しましたように立て方が違っておりますので、この辺、しかもその職務上外を問わないで二月分ということになっておりますので、健康保険との関連もございますし、まあそういう立て方の問題も含めまして今後検討をしていくというふうになっておりまして、社会保険審議会の答申におきましても、今後引き続きこの問題について検討すべきである、こういうことになっております。この立て方の問題も含めまして今後検討してまいりたいと思っております。
  66. 古寺宏

    古寺委員 今後十二分に検討して、ILO条約の中にもあるわけでございますので、ぜひこれは引き上げていただきたい。標準報酬月額一万二千円の方は、二カ月分ですと二万四千円でございます。二万四千円ではとても現在葬祭料としては、これは合わないわけでございます。十二分に検討していただきたいと思うわけでございます。  次に、青森県の八戸市のイカ釣り子の問題でございますが、八戸市のイカ釣り子の船員保険の加入率が非常に低かった、こういうことを以前聞いたことがございますが、現状はどういうふうになっているのでございましょうか。
  67. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 八戸地区のイカの釣り子の問題につきましては、昭和二十八年から比較的雇用関係が明確でございます船長とか機関長あるいは通信長、漁労長といったような運航要員につきまして船員保険を適用してまいったのでございますが、昭和四十三年七月以降は、いわゆるイカの釣り子につきまして海運局におきまして雇い入れ公認が行なわれた者は全面的に適用する、こういうふうに措置いたしております。したがいまして、船員保険の被保険者となるべき船員法の船員は全部適用になっている、こういう状況でございます。  現状を申しますと、八戸地区におきますイカの釣り子につきましては、このイカ釣りの最盛期が十月、十一月でございますが、この時期におきましてはイカの釣り子約六千四百人について船員保険の適用をいたしております。
  68. 古寺宏

    古寺委員 このイカ釣り子の船員保険につきましては、強制的に全面適用したために非常に保険料が滞っておる。聞くところによりますと、約一億五千万円くらいの保険料が滞納になっている、そういうことを聞いているわけでございますが、それはどういうわけでございますか。
  69. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ただいま先生の申された数字でございますが、昭和四十三年の決算で参りますと、八戸地区のこの関係の保険料の滞納額が四千三百五十八万円でございます。毎年四千万円程度あるいは五千万円程度の滞納額ができますが、これはイカ釣り関係の船舶所有者が零細な船舶所有者が多いためにこういった問題が起きてくる、かように考えております。
  70. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、今後ますますこの滞納がふえるということになるわけでございますが、こういう零細な八戸地区のイカ釣り漁業に対して、水産庁は一体どういうような対策を講じておられるのか、承りたいと思います。
  71. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 現在のイカ釣りはただいま厚生省のほうから御説明ありましたように零細でございまして、雇用関係もいままではあまり明確ではなくて、釣り子の移動がある程度激しく行なわれておったこともございます。そういう点がございましたので、私どもといたしましては四十二年からイカ釣り省力化研究会というものを設けまして、その会議で、イカ釣りを近代的な器具で漁労をする、いままでのように一人一人がイカを釣り上げるというのではなくて、機械によって釣り上げる省力化をいたしまして、企業としてのイカ釣り漁業に持っていくように指導いたしております。現在この省力化研究会の研究がほぼまとまりまして、これからそれの機械化を推進するように業界に働きかけてまいる所存でございます。
  72. 古寺宏

    古寺委員 水産庁としては、このイカ釣り船の省力化の研究会をつくって、そしてそのモデル船をつくる、このモデル船につきましては八千万円もかかる、こういうふうなことを聞きました。そういうモデル船ができましても、八戸の零細な業者ではこういう船の建造はとうていおぼつかないわけでございます。さらにまた、中小漁業振興特別措置法というものによる融資制度がございますけれども、この内容を検討してみましたところが、この中にはイカ釣り漁業は含まれておらない。また、いろいろな融資制度を見ましても、船員保険資金による融資状況を見ても、八戸の場合は非常に保険料の滞納等があって思うように融資が受けられない、いろいろな面において恵まれない、そういう立場におるわけでございますが、こういう点について、今後中小漁業振興特別措置法に基づくいわゆる融資対象の中にイカ釣り漁業を含むお考えがないのかどうか伺いたい。
  73. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 中小漁業振興特別措置法によります指定漁業には、ただいまイカ釣りはなっておりませんが、その理由といたしましては、イカ釣りは現在、先生指摘のように、非常に小型なものから比較的大きい、百トン前後のものまでございまして、日本全国で約三万以上になっておりまして、イカの漁期だけイカをやりまして、あとは兼業ということで、兼業が多くなっております。兼業形態も非常にいろいろの形態がございます。それから先ほど申し上げましたように、雇用制度につきましても、正式な雇用関係というのが比較的明確ではなかったということがございまして、これに対しまして中小漁業振興法によります振興計画というのが全国一律に立ちかねまして、現在のところ四十五年度は見送っております。  それで今後このイカ釣り漁業の振興につきまして、中小漁業振興特別措置法でやるのか、現存やっております漁業近代化資金によります融資によってこれを振興いたしますか、その点今年度十分検討いたしまして進めてまいりたいと思います。中小振興について、これをやらないというわけではございません。本年度もう一年十分検討いたしたいと思っております。
  74. 古寺宏

    古寺委員 これは各省にわたっての非常に複雑な問題でございますけれども雇用関係が非常に前近代的な雇用形態である、こういうふうになっているわけなんですが、これに対して海運局のほうでは、労務官がたった一人しかいらっしゃらないわけです。そこで、八千人以上にものぼるイカ釣り子の労務の指導が行き届いているのかどうか、非常に疑問なんでございますが、運輸省のほうではどういうふうにおやりになっているのでしょう。
  75. 高林康一

    ○高林政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、八戸海運支局におきます船員労務官は現在定員一名でございます。そういう点で八戸地区におきますところのイカ釣り漁業の船員労務監査については、必ずしも十分でないという点が多いかと思います。そういう点につきましては、まず第一に八戸地区におきまして関係労働組合、あるいはまた使用者あるいはまた各官庁関係、こういうような方々を中心にいたしまして、八戸のイカ釣り漁業近代化協議会というのを結成いたしまして、そこによって全般的にいろいろな方法を考える、そしてその経営の近代化を進めていくということをお願いしております。と同時に、必要な場合におきましては、東北海運局、八戸支局は東北海運局になりますが、東北海運局におりますところの労務官を八戸地区に一定期間、たとえば秋口がイカ釣りの最盛期でございますが、そういうような時期に労務官を八戸地区にある程度集中いたしまして、その専任の労務官一名をさらに補助させるというような措置をとっている次第でございます。ただ、御指摘のとおり、全般的に船員労務官が非常に不十分でございます。こういう点、毎年逐次増員努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  76. 古寺宏

    古寺委員 この労務官一人であっては、十分に思うような掌握ができないと思うわけです。これは今後、先ほどの基準監督官と同じように当然増員しなければ、これらの問題は解決しないと思いますし、また、二十トン未満の漁船に対しても、労働省は労務監査を一回もやっていない、こういう状態であっては、これはイカ釣り子のこの変則な雇用形態というものは解決がつかないと思いますので、今後この点につきましては、前近代的なイカ釣りの形態を近代的なものに体質改善ができるように、いわゆる行政指導あるいは行政措置というものをとっていただきたい、こう思うわけです。  そこで、水産庁のほうでは漁業近代化資金の貸し付けその他を考えておられる、こういうお話がございましたけれども、漁業近代化資金というのは、その漁業協同組合に貯金がなければ借りられないわけです。そうしますと、八戸市の場合は、非常に零細な業者が多いために、ほとんど貸し付けの条件に満たないわけです。そういう面から考えまして、さらにまた、百トン以上の大型の機械船が最近どんどんふえている。したがいまして、こういう過当競争を防ぐ意味において、イカ釣り漁船についてのいわゆる許可制と申しますか、大臣の認可制と申しますか、そういうものによって今後規制を考えなければこれらの問題が解決つかないのではないか、こう思うわけでございますが、こういう許可制については水産庁はどうお考えになっておりますか。
  77. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 現在の漁業法でまいりますと、資源の保護と漁業調整上から許可制というものをとっておりますが、イカにつきましては、特にスルメイカにつきましては、一年生のものでございまして、現在のところこれに特定の保護を加えなければならないというふうには考えられておりません。特に漁業調整上の問題につきまして、狭隘なところにたくさんの漁船が操業いたしております北海道の羅臼地方につきましては、知事の許可制をとっております。そのほかにつきましては、特に小型船同士の問題につきまして、農林大臣あるいは知事がこれを許可制にして隻数制限をするという必要は現在のところは考えておりません。しかし、百トン以上の大型船が小型船のところに入ってきて操業いたします限り、この漁業の操業実態がシーアンカーというものを使いまして相当広い操業面積を一隻がとりますので、小型船の操業の圧迫になりますし、危険も伴いますので、百トン以上の漁船につきましては、昨年の七月に農林省令を出しまして農林大臣の承認制といたしますとともに、小型船の操業区域につきましては、百トン以上の漁船の操業禁止区域というものを定めております。特に八戸につきましては、現在は許可制はとっておりませんけれども、青森県の海区漁業調整委員会委員会指示によりまして、海区委員会の承認制というものをとりまして、海区委員会によります自主的な操業調整を行なって操業をさせておる次第でございます。
  78. 古寺宏

    古寺委員 いま百トン以上の船については規制をしているというお話がございましたけれども、その百トン以上の船が百マイル以内のところに入ってきて操業をしているわけであります。そういうことを現実にそれではだれが、一体監視をし、チェックをするか。これはできないわけです。あるいはまた、ただいまイカの資源は減ってない、こうおっしゃいますけれども昭和二十四年以来の漁獲の趨勢を見ますと、確かにそれは量においてはある一定のものを確保しております。しかしながら、釣り子一人当たりの漁獲量というものは年々減っているわけでございます。まあサンマなんかもそうでございますが、そういう面からいきましても、これは当然大臣の許可制あるいは認可制にして規制をしていかなければ、もう零細な八戸のイカ釣り漁業者は、倒産をしなければならないというものが続出するような傾向にあるわけであります。こういう点につきましては、今後水産庁においても十分にこの実態を把握をされて、そしてイカ釣り子の立場に立ってこの問題の解決をはかっていただきたいし、あるいは中小漁業振興法に基づく融資にいたしましても、その融資を受けているのは中小漁業者ではなくて、もうほとんどが大企業です。こういうイカ釣り漁業に対しては全然融資の対象になっておらない。あるいは、昨日もお聞きしましたところが、利子補給あるいは機械の貸与を県でやっておる、こういうお話でございますけれども、これもスズメの涙ぐらいのそういう措置しかとられていないわけでございます。そういうことではいつまでたっても、このイカ釣り漁業の振興というものはできない。したがって、それが保険料の滞納という問題にはね返ってくる。さらにまた労務官が少ないために雇用形態が改まらない、こういうようないろいろな問題があるわけでございます。また社会保険事務所におきましても、全面適用をする以前の定員でもってこれだけの多くの加入者を扱っておる。したがって、いろいろな事務的な面においても支障を来たしております。また労働省においても、先ほど申しましたように、労務監査が十分に行なわれておらない。これらのことを考え合わせまして、今後これは単に労働省あるいは厚生省だけの問題ではございませんので、各省庁間の連絡を密にいたしまして、イカ釣り漁業の振興をはかるとともに、このイカ釣り子の雇用形態の問題あるいは船員保険料の滞納の問題、あるいはまた待遇の改善の問題、これらの問題について前向きの姿勢で今後ひとつ検討をしていただきたいと思うわけでございますが、これに対して最後に厚生大臣並びに労働大臣の御決意のほどを承って、私の質問をきょうは終わらしていただきたいと思います。
  79. 内田常雄

    内田国務大臣 御意見は十分承っておりましたので、これが充実につきまして努力をいたしたいと考えます。
  80. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘の点は十分認めまして、今後の行政に反映してまいりたいと考えます。
  81. 小山省二

    ○小山(省)委員長代理 田畑金光君。
  82. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、初めに、これは労働大臣にひとつ考え方を承りたいと思うのですが、昭和四十年の労災保険改正のときに衆参両院において附帯決議として、通勤途上の災害業務災害としてすみやかに処理するようにという決議がなされておるのでございますが、いまだこれが日の目を見ていないわけです。どういう御方針なのか。まず労働大臣から承ってみたいと思います。
  83. 野原正勝

    野原国務大臣 通勤の途上の災害につきましては、英米のように専用交通機関の利用等のみを業務上とする国もございますし、また通勤途上の全過程を業務上の災害として扱っておる西ドイツ、フランスなどの国もございます。このように通勤途上の災害の取り扱いは国情によってみんな違っておるわけでございます。これは労働保険におきましても、昭和四十年の労災保険改正以来、同改正法の附帯決議の御趣旨に基づきまして、労災保険審議会として鋭意検討を続けてまいったのでございますが、自賠保険との関係とか、あるいは費用負担の問題などで労働基準法の改正など、労災保険制度の基本的な性格にも触れる困難な問題がありますので、まだ結論を得ていないわけであります。しかしながらこの問題は、最近における交通災害の激増などの実情にかんがみまして、本年二月に労災保険審議会及び中央労働基準審議会からの委員のほかに、各界からこの問題についての専門家も加えまして、通勤途上災害調査会を設けまして検討を続けておるところであります。  なお、この調査会の結論のめどにつきましては、現在調査会の委員各位は諸外国の法制あるいはわが国の実情などの検討を経て、共通の問題意識に立った上で結論を出すべきであるという御方針と承っておりますが、政府といたしましては、早急に結論が出るようにとの各委員からの強い要望もありますので、可及的すみやかに調査会の御意向が示されるであろうことを期待しておるわけでございます。
  84. 田畑金光

    ○田畑委員 可及的すみやかにというのは、いつごろをめどにしておられるのですか。
  85. 和田勝美

    和田政府委員 大臣から御答弁申し上げましたとおりでございますが、実はこの調査会が発足いたします場合に、いま大臣から申し上げましたように、各界からできるだけ早く結論を出してほしいという御意見もあれば、労災審議会の一部委員からできるだけ早く結論を出していただきたいという要望がございますということを調査会の開会の席で申し上げまして、御討議の参考にしていただきたい、こう申し上げたわけであります。調査会におかれましては、そういう要望のあること、それから労働省がそういう気持ちを持っておるということは十分理解できたけれども、何としても非常に問題の多いところであるから、もう少し一般討議を重ねた上でめどをつけたい、それまで少し待ってくれるようにということでございますので、私どもの意のあるところはすでにお伝えしてございますし、調査会としてもそういうことで一応総括討論をやった上で結論をいつごろまでにつけたいということのようでございますので、いましばらくお待ちをいただきたいと思います。
  86. 田畑金光

    ○田畑委員 私のお尋ねしておることは、労働省で労災審議会あるいは通勤途上災害調査会に諮問なり報告なりを求めたということはわかりますが、労働大臣としては、この長い懸案の問題についてはいつごろまでにこの調査会から共通した意見を求めて立法化の措置を講ずる御意思なのか。何事も調査会まかせということでは答弁にならぬと思うのです。ましてや今回の調査会というのは、三月十二日に初顔合わせ、四月三日に、いま局長お話しのように一般的な討議をやったということで、言うならば、この国会に労災法一部改正案を出す国会対策としてこのような調査会を設けたにすぎない、そう言われてもしかたがないと思うのです。いつをめどに答申あるいは勧告を求めて、報告を求めて立法化されるのか、そこをはっきり願いたいと思うのです。
  87. 野原正勝

    野原国務大臣 せっかくのお尋ねでございますが、はっきりといつというふうな明示がまだできない段階でございます。できるだけすみやかにと申し上げたわけでございますが、委員会等が慎重にこの問題と取り組んで御努力を願っておるという段階でございますから、できるだけすみやかにと申し上げましたけれども、期間のほどははっきり申し上げられませんが、できるだけ年内ぐらいにはひとつ結論を承りたいと考えておる段階でございます。
  88. 田畑金光

    ○田畑委員 年内に結論を得てということなれば、次の通常国会あたりには、労災保険法のまた一部改正を、特に通勤途上の災害については業務上の災害とみなすというような改正を出すということに受け取ってよろしいですね。私はこの際、何事も調査会だ、審議会まかせだという態度が間違っていると思うのです。労働省としては、あるいは労働大臣としては、この長年の懸案についてはどういう方針で臨むか、これを業務上の災害として立法化するという前提で調査会なり審議会に相談しておるのかどうか、あるいははかっておるのかどうか、そこをはっきりしてもらいたいと思うのです。
  89. 和田勝美

    和田政府委員 この通勤途上災害につきましては、先ほど大臣からお答えしましたように、諸外国においても非常に区々な扱いになっておる、あるいはILO百二十一号条約におきましても、何となく歯切れの悪い規定のしかたがしてございます。これは、通勤途上災害というものが非常にいろいろの議論を持っておる問題である、こういうことを如実に表明しておるものだと思います。労災保険審議会におきまして、四十年の労災保険法の改正の附帯決議の問題としていろいろ御議論がありました際にも、非常に違った意見が出ました、それほど議論が多いことでもあり、実務的に見ていろいろ、自賠法の問題だとか費用弁償の問題だとか、いわゆる第三者行為による災害の問題だとか、何かにつけて整理をし議論をしなければならないことが多い、こういうことが労災保険審議会の審議を通じて、私ども事務当局の者もいろいろ意見を申し上げましたし、委員の皆さんも活発な御意見の御開陳がございましたが、いかにも問題が多いということになりましたので、労災保険審議会におきましては、昨年の八月の建議の際に、問題がきわめて専門的であり複雑であるので、ぜひ専門家による調査会を設けて審議をしてもらいたい、こういうことでございまして、そういう段階が今日でございますので、労働省がこの方向でということを言い切りますのには、いままでの審議の過程から見て少し時期が早い、こう考えておりますので、調査会にはひとつ早目に御結論をお願い申し上げたいということでお願いをしておるところでございます。
  90. 田畑金光

    ○田畑委員 そうすると、局長の答えは、大臣が年内をめどに調査会の報告を待つということは否定されるわけですか。あなたは大臣答弁を否定するということが、局長の立場において許されるのかどうか。大臣は、年内をめどにということをはっきりと答えたでしょう。あなたはそれをまた否定するということは、どういうことですか。そんな不見識なことは、大臣の発言を無視するような発言は、許されることですか。取り消しなさい、それは。
  91. 和田勝美

    和田政府委員 私は別に、大臣が年内にということを申されたことを否定したわけではございませんで、労働省はその調査会に自分の意向を示したかという御質問でございましたので、こういう事情がございますので、労働省はこの方向でお願いをしますということは申し上げておりませんということを御答弁申し上げたわけでございまして、時期的には、大臣が年内をめどにしてという御発言がございましたので、この点は調査会にも十分伝えまして、調査会としての御努力をお願いしたい、かように考えております。
  92. 田畑金光

    ○田畑委員 局長大臣の先ほどの答弁の中でも、西独やフランスでは法律で通勤途上の災害業務上であるとすでに規定し、実施しておる、こういう御答弁がありましたね。さらにスウェーデンであるとかオーストリア、チェコなどでも、雇用契約の趣旨に基づく行動が原因となって発生した災害はすべて業務上の災害であるという法律解釈のもとで、同じような取り扱いをしておる、このように承知しておりますが、諸外国において、すでにこのような事実が先行しておるのに、わが国がなぜこの問題について、いまお答えのように非常に複雑な議論にからまれておるのか。これらのヨーロッパのいわば先進国というか、まあ大体日本と似たような社会経済の状況の国々においてもすでに実施に踏み切っておるのですから、この点についてはやはりこのような先進国の例にならって、日本としても善処すべきである、私はこう考えるのだが、この点どうですか。
  93. 和田勝美

    和田政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、通勤途上に対してはいろいろの議論がございます。外国におきまして、先生が御指摘のようなスウェーデンあたりも、通勤途上災害業務上にしておる。これは実はその国の制度の姿が相当影響しておりますこととその国の交通事情、そういうものが影響している。たとえていいますと、フランスは自賠償のような制度がございません。そういうことからいいまして、他に救済する手段、方法というものがある場合とない場合、交通事情のあり方、そういうようなことによって非常に違うわけであります。先ほども大臣が申し上げましたように、西ドイツ、フランスあるいは、いま先生指摘のスウェーデンはございますが、アメリカとかイギリスにはそういうものがない。一般的には通勤途上災害業務上にはしていない、こういう国もあるわけでございます。ILOの条約でも、先ほど申しましたが、何となく歯切れの悪い規定であるというようなことから考えまして、しからばわが国状況ではそれらの国々との関係でどうなるのか。私どものほうの、ここにおります桑原君がドイツに参りまして、西ドイツで通勤途上災害業務上にしておるが、どういう事情とどういう理論構成かということを聞きましても、どうもはっきりしないというようなことでありますので、それらの国のそういう事情を勘案しながら、日本の今日の状態ではどうなのかという判断をするために調査会で専門家の方々にお願いをしておる、こういうことでございまして、いろいろの制度のあり方、交通事情、住宅事情、そういうものを十分勘案しながらやらなければならない。  それからもう一つは、先生よく御存じのとおりに、使用者の支配、管理という問題がどうしても——使用者の無過失賠償責任を追及する場面の問題、使用者の意思の全然通らないようなところに使用者の責任に持っていっていいのかどうか、こういう問題が制度論としてもあるだろうと私は思います。そういう議論が事実非常に深刻に労災保険審議会等ではなされております。そういうようなことがございますので、直ちに業務上にしていいのかどうかといういわゆる純粋理論問題のあることもあわせ御報告をしておきたい、かように思います。
  94. 田畑金光

    ○田畑委員 局長の御意見を聞いておると、ILO百二十一号条約で歯切れが悪いというのだが、歯切れが悪くないじゃないですか。どこが歯切れが悪いのです。
  95. 和田勝美

    和田政府委員 ILOの百二十一号条約の第七条には、「加盟各国は、「労働災害」の定義を規定し、」という表示の下にカッコして「通勤途上の災害労働災害とみなす条件を含む。」要するに労働災害とは言い切ってないわけです。「労働災害とみなす条件を含む。」と、こう書いております。しかも、二項にいきまして、「通勤途上の災害が」云々という規定がございます。そして最後に、むろんこれこれ、これこれの事情がある場合には「通勤途上の災害は、「労働災害」の定義に含めることを必要としない。」こういうように書いてございます。何となく歯切れが悪いということを申し上げたのは、こういうことをさしておるわけであります。
  96. 田畑金光

    ○田畑委員 ちっとも歯切れが悪くないですね。どうするかという政策意図の方向さえはっきりすれば、このILO百二十一号条約の第七条もちっとも歯切れが悪いことない。第一項の労働災害の定義の中に、「通勤途上の災害労働災害とみなす条件を含む。」これでいいじゃないですか。労働災害とみなすのだから。また第二項には「通勤途上の災害業務災害補償制度以外の諸社会保障制度の対象となり、かつ、これらの諸社会保障制度が通勤途上の災害について支給する給付の合計額がこの条約に基づいて要求される給付と少なくとも等しい場合には、通勤途上の災害は、「労働災害」の定義に含めることを必要としない。」社会保障制度ということをここにはっきりと明示しておりますね。社会保障制度で通勤途上について給付の措置がなされておるのかどうか。この点はどうですか。
  97. 和田勝美

    和田政府委員 これは先ほど申しましたが、わが国は自賠法がございます。自賠法は、これは社会保障制度ではございませんが、社会保険的な性格のものを持っておる。あるいは厚生年金におきましても、障害年金あるいは遺族年金がある。そういうようなものがILOの二項の中にはからんでくる問題でございます。それらのことも今度の場合、調査会で大いに御議論になることになっております。それからもう一つは、一項のほうは、先生いまお読み上げになりましたように、いわゆる「労働災害ではなくて「労働災害とみなす」という規定、しかし日本の場合はみなすのでいいのか、業務上として言い切ってしまうのか、これらのところも問題のあるところだと思います。そういうようなことがございますので、先ほど申しましたように、調査会で専門家の方々に御議論をいただいて、そして私どもとしてはその結果、専門家の方々の御意見を尊重して措置をしたい、かように考えておるわけでございます。
  98. 田畑金光

    ○田畑委員 局長の答えの中に自動車損害賠償云々ということがよく出ておりますが、この自動車損害賠償保障法というのは、ここの百二十一号条約第七条の社会保障制度と同一に論ずるということは、私は暴論じゃないかと思うのです。自動車損害賠償というのは道路運送法百二十五条の二にある「自動車事故による損害賠償を保障する制度の確立」であるわけです。   〔小山(省)委員代理退席、委員長着席〕 特に最近の自動車事故の発生状況にかんがみて、自動車による人身事故の場合の賠償責任を明確にするために、自動車損害賠償保障法というのができておるわけです。そしてこの法の運用というものは、言うまでもなく自動車側に故意過失がないということと、被害者または第三者に故意過失があったことを自動車側で証明ができない限りは、自動車側に賠償責任を負わせる、いわば無過失責任主義の方向にこれは大幅に近づいたという立法であって、この労災保険法の無過失責任主義の上に立つ業務災害の問題とこの法律を一緒くたに考えるということは暴論だと思うのです。これは先ほどあなたのお話を聞いてみますと、フランスの例をとられましたが、言ってみるならば西独のほうじゃどうかということです。西独にはこの自動車損害賠償保障法というようなものはないのですか。
  99. 和田勝美

    和田政府委員 西ドイツにも自動車損害賠償の制度がございます。それで実際に私どものほうの管理課長が参りまして、この間における調整、要するに、業務災害にしておりますので、業務災害と自動車損害賠償との調整はどうするのかというような実際の行政運用のやり方等も調査しまして、向こうもたいへん苦労しておる。確かに同じ事故に基づく補償制度でございますので、苦労しておるようでございます。  なお、ただいま私は自動車損害賠償保障法が社会保障制度というような意味で申し上げたわけではございませんで、そういうものも通勤途上災害一つの制度として日本にもある。厚生年金のほうは明らかに社会保障制度である。そういうものもある。それからいろいろな御意見もございますので、このILOの問題等は私ども実はILO事務当局にいろいろのことを聞かなければいけない問題もあると思いますが、そういうようなことをかね合わせながら調査会における調査研究を進めていただいて、しかもできるだけ早く結論をお出しいただいて、その措置に従って私どもとしてもこの問題に対処していきたい、かように考えておるわけでございます。
  100. 田畑金光

    ○田畑委員 それでは私は資料を要求しますが、西独並びにフランスに自動車損害賠償保障法がないということだが……(和田政府委員「西ドイツには自動車損害賠償保障法はあります。フランスにはないのです。」と呼ぶ)だから私は、フランスには自動車損害賠償保障法はないが、西ドイツにはどうですかとお聞きした。これに対して西ドイツにはないというお答えであった。(和田政府委員「いや、あると申し上げたのです」と呼ぶ)あるのでしょう。あるということだから、ならば、西ドイツの自動車の交通事情と日本の交通事情というのは、私も一昨年行ってみましたが、似たり寄ったりの条件なんですよ。ことに通勤は、労働者にとっては労働契約上の債務を提供する前提条件でしょう。そしてまた使用者の側から見れば、企業の業務遂行にとっては不可欠な行為であるはずですね。したがって通勤途上の災害というものを、これは労働者の個人的な問題として処理するといういまの姿というものは、理論的にも実態的にも今日の社会経済の実情に即さぬと私は考えるわけなんです。この点についていま局長からいろいろお話がございましたが、都市交通における今日のあのすさまじいラッシュの状況を見たとき、やはり会社、企業、事業場に出勤するためには、出勤時間がきまっておる、そのきまった時間に間に合わすためには、もろもろの交通機関を利用しなければならぬ。したがって通勤途上ということは、明らかにこれは労働契約の広い意味においての一部分を形成すると解釈するのが現在の社会経済の実情に即しておる、こうみなすべきだと私は思うのです。だからして私は、先ほどあげられた欧米諸国の実情も、就業する場所及びそれと住居との間で起こったすべての災害、これをやはり業務上の災害とみなして、西独、フランスその他の国々においては、これは法律の中に業務上の災害として処理されておるものだ、こう思うのです。したがって私は、この点については、労働省もその頭で前向きに、委員会に対しても、調査会に対しても、その審議の方向に協力を求めることが当然労働大臣のとるべき立場ではないかと思うのです。実際、今日の業務上の災害とみなされる場合は何かと言えば、会社専用の通勤バスを利用する場合とか、あるいは労働者に往復途中特別の用務を与えた場合に起きた災害であるとか、あるいは休日に特別出勤を認めた、その場合にはやはり業務上の災害と見ておるのでしょう。まことに紙一重というか、その境界線というのがはっきりしない、このように見るべきだと思うのです。だからこの際——大臣は年内に答申を求めてこの問題を処理したい、こういうお話がございましたが、(「諮問もしてないじゃないか」と呼ぶ者あり)調査会の報告が出れば、すみやかに通勤途上の災害については業務上の災害ということで——いまやじも飛びましたが、労災保険審議会あるいは社会保障制度審議会に諮問する手続をとるべきだと思うし、またそれでなければ——新大臣の手でやったというりっぱな業績はこれあたりが第一号になるんじゃないか、こう思うのです。ひとつその意気でもっておやりを願いたいと思うのですが、どうでしょうか。
  101. 野原正勝

    野原国務大臣 先ほど申し上げましたように、通勤途上の災害の問題は、非常に重大な問題でもございますし、それぞれの機関にお願いしまして御答申をいただくように期待をしておりますが、そういうものが出ますと、今後あらためて各審議会にはかりまして、できるだけ災害対策につきまして万全の措置をとって前向きに進めていきたいと考えております。
  102. 田畑金光

    ○田畑委員 万全の措置をとって前向きに——これはもう大臣答弁の用語でございまして、これほどえたいの知れぬ答えはないのですよ。私の質問は、切実な現実の問題をお尋ねしておるわけですから、大臣のそういうありきたりの答弁では私は納得できませんね。だからもう一度、年内には調査会の報告を求め審議会に諮問する、こういうぐらいの決意はここではっきり示していただきたいと思います。それぐらいは大臣、答えなければ、何のために私が質問しお答えを願っているか意味ないですよ。先ほど来そこに並んでいらっしゃる局長と部長さんは、私の意見はもっともだといってうなづいていらっしゃる。あとは大臣がお答えすればそこで話は前へ進みますが、ひとつはっきりと所信を伺っておきます。
  103. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のとおり、今後の対策につきましては、前向きに進んでまいりたいと考えております。
  104. 和田勝美

    和田政府委員 大臣の前向きに考えるというお答えのとおりでございますが、調査会の結論が出まして、その結論を国会における田畑先生の御論議、昨日もこの問題はたいへん御論議をいただきましたが、その御論議を十分にしんしゃくしまして、調査会の結論とあわせて労働省としては十分しんしゃくいたしまして、大臣が言われましたように前向きに対処していきたいと思います。
  105. 田畑金光

    ○田畑委員 前向きにというまことに都合のいい答弁用語ができちゃって迷惑しごくです。あなた方の前向きというのは、どこに向かおうとするのかわからぬ。  局長、ILOが一九四四年の所得保障勧告六十七号というものを採択しておりますが、この付則第十六項一号で業務上の災害に触れておると思いますが、この点ひとつ御説明をいただきたい、こう思うのです。
  106. 和田勝美

    和田政府委員 いま資料を調査しておりますのでちょっとお待ちください。——先生の御指摘は、ILOの所得保障に関する勧告だろうと思います。六十七号の勧告でございまして、その勧告の「業務傷害」という十六項の中の(1)に「業務に基因する傷害は、労務場所への往復において起る災害を包含しなければならない。」こういう勧告の内容がございます。
  107. 田畑金光

    ○田畑委員 でありまするから、そのような勧告のあることもやはり念頭に置かれて、私はこの問題については、前向きというそのような答えではなく、真剣に取り組んで、今日人口が都市に集中する、そして交通機関がこのように混雑をきわめておる状況考えてみるなら、これは雇用労働者にとっては通勤途上をどう見るかということは深刻な問題だと私は思うのです。あなた方だってそうでしょう。局長さんだって、あるいは部課長さんだってやはり深刻な交通ラッシュの中で通勤なさっておるのでしょう。大臣くらいでしょう、自動車でゆうゆうと歩かれるのは。だから、同じことなんだから、ひとつこの問題については、真剣に考えて、前向きじゃなく、ほんとうにすみやかに調査会の報告を求めて政府としては成案を得るように御努力を願いたい。このことをもう一度大臣から念のために御所見を承っておきます。
  108. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘の点は十分尊重して、前向きに——とにかくこの問題につきましては、私は一つ考えを持っておりますけれども、これをただいま申し上げる段階でございませんが、とにかく責任をもって前向きにつとめてまいりたいというふうに考えております。
  109. 田畑金光

    ○田畑委員 前向きにではなく、責任をもってというところに私はアクセントを置きますから、ひとつ善処を強く要望します。局長、ひとつよろしく御努力をお願いします。  それから、昨年末の臨時国会で労災保険の全面適用のため労災保険法の改正法が成立し、おそくとも昭和四十七年四月一日までに施行されることになったわけでございますが、労災保険の全面適用が行なわれるということになってきますと、労働基準法の災害補償に関する規定は、これは事実上死文化してしまうわけですが、目下労働基準法についてはこれまた調査会か研究会ができているようでございますが、労働基準法と労災保険法との今後の相互関係というものは、これはどういうことになっていくのか、お答えをいただけますか。
  110. 和田勝美

    和田政府委員 先生指摘のように、昨年末労災保険法の全面適用に関する法律が成立をいたしました。全面適用に至りますまでにはまだ時間的な問題がございますが、全面適用になりますと、民間の事業につきましては、労働基準法と労災保険法の適用が同じ状態になるということでございまして、基準法の災害補償の規定と労災保険災害補償に関する保険給付の規定とは同じような問題をはらむから、どちらかを整理すべきではないか、こういうような問題が当然に出てまいります。ただ、いまも申しましたように、民間についてはそうでございますが、三公社五現業とかいうように労災保険から適用を除外されておる分野もまだあるわけでございまして、要するに国家公務員とか三公社五現業とか労災保険の適用外になっておりますものと基準法の問題、それから労災保険は使用者の無過失賠償責任であるということに対する論理は労働基準法のほうに出ておるわけであります。労災保険はそれを受けて保険として保護するという立場でございますので、この両法におけるものの考え方の整理、こういうこともやらなければならない段階になってくると思います。  そういう点をあわせまして、ただいま先生から御指摘をいただきました労働基準法研究会においては十分ひとつ検討していただこう、両法の間をどうするか。ただ私どもは、使用者の無過失賠償責任という制度、これは定着をしておる制度でございますので、その考え方を否定をすることのないような方向で事務的には考えていくのが妥当であろう、かように考えます。
  111. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、いまお話にありましたように、また、先ほど私が申し上げましたように、労働基準法研究会というものが昨年の九月から発足しておりますね。当然、労働基準法の施行後二十年以上を経過しておる。この間に技術革新産業構造の高度化、近代化が進み、労働の態様も大きく変わり複雑多様化しておるわけです。災害補償の問題についても、あるいは労働時間、安全衛生その他の問題についても、もう二十余年経過した社会経済情勢の一変によって、当然労働基準法の内容についても手を加えなければならぬ、こう思うのですが、これはいつごろをめどに基準法研究会というものは結論を出して、これまたさっきみたいな話になりますけれども、当然新たな情勢に即して基準法の改正ということもやらなくちゃならぬと思うのですが、いつごろをめどに考えていらっしゃるのですか。
  112. 和田勝美

    和田政府委員 労働基準法研究会につきましては、先生方にお願いをしまして、現在の社会事情、産業事情、それから労働者状態というものを客観的専門的に把握していただいて、どういう事実が現在存在するかということを的確につかんだ上で、現行の基準法が、そういう事情の中で基準法が予定をしておりますような労働者労働条件の改善向上に資することができるかどうか、こういう点を御検討をわずらわしたいということでお願いをしてございます。以上のようなことでおわかりいただけますように、事実をはっきりとつかまえたいということでございますので、事実調査というものが相当入念に行なわれると私ども考えております。事実調査を入念に行ないますと、どうしても時間が非常にかかる問題であります。私どもは、研究会が発足しますときに、研究会側のほうから時間的な制約をつけるつもりかというようなお話がございましたが、それは失礼にわたるからつけませんが、一つの目安としては二、三年ぐらいのところでいかがなものでしょうかという軽い意思表示を申し上げました。これは事務的に申し上げたのです。そういういきさつがございます。そういうようなことを研究会として勘案をされまして、ただ全部一緒に出さなければならないものなのか、ある特定の問題については急ぐならば早く結論を出してもいいのではないのか、全体の構造を考えながら、ある特定な問題は急いでもいいじゃないかというような御議論がございまして、研究会としてはそういうように弾力的な運用をやっていこう、こういうような状態で、いま研究会をお進めいただいておる、かような状態でございます。
  113. 田畑金光

    ○田畑委員 先ほど申し上げたように、二年後にはすべての事業所に労災保険の適用ということになるわけですね。そこで労災保険業務の概要と申しますか、現在の適用事業所、適用労働者の数、それから財政の状況、どうなっておるのか。さらに、今度全面適用となれば、新しくどれだけの事業所の数、適用労働者の数が加わってくるのか。当然今後予定される適用事業というのは零細あるいは中小企業が——というよりも、むしろ零細企業といったほうがいいと思いますが、多くなると思うのでございます。そうなってきた場合、労災保険の財政状況というものに対してどのような影響があるのか、このあたりひとつ御説明願いたい。
  114. 和田勝美

    和田政府委員 適用事業場は四十三年度におきましては、百七万九千事業場でございます。全面適用になりますと、実は正確な数字がなかなかわかりにくうございますが、おおむね百万ぐらいふえるんじゃないか、かように私ども考えております。しかし、労働者数のほうは、そのわりにはふえないので、大体現在は、四十三年度二千四百万でありますのが、二百七十万ぐらい増加になるだろう、かように考えております。
  115. 田畑金光

    ○田畑委員 財政の状況もついでに言ってください。
  116. 和田勝美

    和田政府委員 財政問題は、現在はおかげさまで非常に良好な状態でございますが、先生、ただいま御指摘のように、零細事業場はとかく災害が多いところが多うございますので、相当慎重な運営をしていかなければ、財政事情に深刻な様相の出ることも十分に予測される、かように考えております。
  117. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの局長のお答えの中で、労災保険の財政状況は良好であるというお話でございますが、良好なんですか。
  118. 和田勝美

    和田政府委員 現在の労災保険につきましては、理論的な意味におきます支払い備金というようなものを満額考えますと赤字になっておる。しかし、毎年度、毎年度の収支問題から言いますと、収支率はいいほうで、支払い備金のほうは、あまり深刻に考えませんければ、いいほうでございます。しかし、理論的な支払い備金を満額計上するというようなことになりますれば、四百八十億ぐらいの不足と、こういう状態になるわけでございます。
  119. 田畑金光

    ○田畑委員 この場合、財政状況内容を判断する場合には、あなたのお話しのように、毎年の純粋の保険料と保険給付の差額だけで幾ら残るかという、その残る額が多いか少ないかによって判断すべきなのか。あるいは、あなたのいまお答えの中に、将来にわたる備金の額が幾らにのぼるかということを想定してそれを控除した場合には、たとえば昭和四十三年度を見ますと、決算額と控除額というもののプラス、マイナスを見れば、お話しのように、四百八十億の不足額、マイナス、こういうことになっているわけですね。今後、たとえばいまの法律改正も、遺族補償年金であるとか、あるいは傷病補償給付であるとか、あるいは障害補償年金について給付の額を引き上げる、この年金給付というものをだんだんよくしていこうという内容、そうしますと、短期の療養給付じゃなくて、長期の給付というものがふえてくるということを想定した場合、この決算額と控除額を見て、差し引きマイナス四百八十億になっておるが、にもかかわらず、あなたのお話しのように、その年度、年度の純粋の収入と支出の差額が相当余裕があるので、財政はいいんだ、こういうようにみなすのが正しいかどうか、そのあたりはどうなんですか。
  120. 和田勝美

    和田政府委員 実は、年金制度を四十年度に導入をいたしました。それまでは、全部一時金支給というようなことでございましたので、年金ということになりますと、現在の労災保険財政で考えているような支払い備金制度だけでいいのかどうか、基本的な問題があるわけでございます。年金の占めるウェートが非常に高くなってまいりますれば、当然、その積み立て金をもってその運用益というようなものをも考えながら保険収支を考えていかなければならぬ。しかし、現在の労災保険は、そういう積み立て金運用益というような思想を入れておりません。そういうことからいたしまして、実は私どもは、事務的には、労災保険制度がいつごろから年金が、平常年度と申しますか、平年度と申しますか、そういう状態になって、それに応ずるのには、保険財政の収入のあり方をどういうように考えるかという根本的な問題にいまちょうど私ども直面をしておりまして、年金のふえる状況等を、過去四年間の実績ができましたが、もう少しそれを見ながら、保険財政の組み立て方についても抜本的に変えなければならないのではないかという気持ちでいま見ておるわけでございます。そういう意味から言いまして、現行の財政制度というものは、年金というものを念頭に置かないことを前提にしている。いま先生の御指摘のように、年金額は相当な額にのぼっておることが十分予想されますので、財政経理の立て方を根本的に変えていきたい、かように考えております。その変わっていく姿を確定をいたしまして、支出と収入のバランスのとれるような財政事情に持っていきたい、こう考えておる次第でございます。
  121. 田畑金光

    ○田畑委員 これは比較になるかどうか知りませんが、失業保険の財政状況を見ますと、四十四年度の積み立て金というのが、年度の収支を差し引いて、純粋に積み立てになるのが約三千億にのぼりますね。また、これは性格は違いますけれども、厚生年金保険などを見ますと、これははるかに——制度が始まったのが戦前のことですから、四兆三千百五十八億。国民年金を見ても七千百十二億。こういう積み立て金をそれぞれ持っておるわけですね。そういうようなことを考えたときに、これは私は、労災保険の財政状況というものが、これからだんだん長期の給付というものが比率がふえてくると、このあり方等についても当然検討しなくちゃならぬ。ですから、労災保険審議会の建議を見ても、特に「全面適用の時期までに、保険財政のあり方を明確にする」ことが必要である、こう明示しておりますね。私は、それともう一つ、これと関連することは、国庫の負担あるいは補助金の問題についても、いままでのような考え方でいいのかどうか、この点ですね。これもまた、この労災保険審議会の建議の中には「労災保険事業に要する費用のうち、全面適用に伴う零細企業の加入により増大する費用の一部について、国庫負担の導入を図ること。」この国庫負担の導入の問題ですね。いまの国庫負担については、まあ私も調べておりますが、どの程度負担しているのか。いまの国庫負担導入の思想というものはどのような思想によってできておるのか。同時にまた私は、今後はこの国庫負担導入についても、思想的にもいままでのとおりでいいのかどうか、こういうことも私は反省する必要がありはせぬかと思いますが、この点どうでしょうか。
  122. 和田勝美

    和田政府委員 先生指摘のように、労災保険審議会からの建議の中にも、いまお読み上げになりましたような趣旨の指摘がございます。先ほど御答弁申し上げましたように、ちょうど年金制度が漸次成長しつつある段階でございますし、長期的に見ますると、根本的にものの考え方を変えなければならない。一方におきまして、これも先生指摘のように全面適用の問題があるわけでございますので、基本的な問題として十分労災保険の健全な運営のための財政制度の確立をやってまいりたい、かように考えております。  国庫負担の問題でございますが、実は労災保険はすでに御承知おきをいただきますように、使用者の無過失賠償責任を担保する保険制度としてできておりますので、要するに社会保障制度ではないわけでございますから、国が金を出すということが非常にむずかしい問題がございます。社会保障制度でありますれば、国庫から金が出ますのは当然のことかと存じますが、労災保険のその制度上の問題が一つございます。しかし、この労災保険審議会の最後のところに書いておりますのは、非常に零細な企業も入ってくるということになれば、それは一つの中小企業対策というような観点、あるいは相当濃厚に社会保障そのものではないかもしれないが、社会保障的なニュアンスの加味されてくる面が多いんじゃないかというような意味合いも込められて、この労災保険審議会の建議の末項にはこういう国庫補助の増大ということが書かれたと思います。審議会が指摘されるような面も、今後の問題として十分考えていかなければならないというように思います。  しからば、いまの国庫補助は一体どうなっているか。これは実はけい肺及び外傷性せき髄障害の法律ができましたときに初めて出てきた問題でありまして、実は思想的には必ずしも割り切られた姿で国の金が出たというのではございませんで、といいますのは、当時は打ち切り補償ということで、長期傷病という考え方がございませんでしたが、あの法律に基づいて初めてそういう長期的な問題が出てまいりました。そのときに、金が出るようになりました。それは使用者負担を越える面もあるのではないかというような配慮から出てきたものでございまして、今日におきましても必ずしも明確な考え方で国庫補助が出ているとは言い切れない。ただ、現実にはこういうような趨勢で出ております。昭和四十年が十三億九千二百万円でございました。昭和四十三年が十五億五千万円、昭和四十五年、本年度予算で十七億、こういう趨勢でございます。
  123. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、この労災保険法というのが、いま局長の御答弁のように、事業主の無過失損害賠償責任主義の上に立つ制度であるということはよくわかるわけです。したがって、全額事業主の負担によってまかなうということも、これは思想的にも当然のことだし、沿革から見てもこれはわかるわけです。ただ、いまお話の中にありました、今後零細企業を吸引していくということになれば、これはやっぱり社会政策的な面というものが相当出てくるわけですね。そういうことを考えてみますならば、国庫負担の導入ということの余地が当然私はあろうと思うのです。さらにまた、今日のもろもろの産業公害の発生、あるいは新たな職業病の多発、疾病構造の変化というものが、一つは高度経済成長、言うなれば、政府の産業経済政策からよってくる社会経済上の大きな変動というものが、やはり今日の疾病構造の変化職業病発生というものにもつながっておるということを考えてみますならば、私はこういうような点から見ても、無過失賠償責任主義の上に立つ労災保険制度についても国庫負担というものを考える思想というものが入り込んできてもいいじゃないか、こう思うんですね。そういう点から見ますならば、いまお話しのように、昭和四十五年は国庫補助十七億ということでとどまっておりますが、今後労災保険制度を零細企業に対しても全面適用をするという制度の拡大に応じて、国庫導入ということはもっと積極的に検討すべき性格のものだ、こう考えますが、この点大臣の所見を承っておきたいと思うのです。
  124. 野原正勝

    野原国務大臣 労災保険に対する国庫の補助、これはこの労災事業がだんだんと零細な企業にまで全面的に適用されるという段階になりますと、これは当然国庫の補助が必要である。したがって今後は、関係方面の御連絡をいただきまして、ひとつ十分御理解を願い、国庫の補助が十分に利用できますように最善の努力を払いたいと考えております。
  125. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの点はお答えが具体的で、私の聞きたいことをずばりお答えになりましたから、ひとつそのような方向で御努力を願いたいと思います。  それから、質問は多岐にわたりますけれども、あまり広げることはやめて、あともう一点だけお尋ねしておきますが、今度ILO百二十一号条約にならって国際的な水準等も顧慮しながら年金の給付を引き上げた、こういうことになっておりますが、たとえば障害補償年金の三級を一六・五%引き上げて賃金年額の六〇%にしたとか、あるいは遺族補償年金については標準受給者三人の場合に給付基礎年額の五〇%に引き上げた、これは非常にけっこうだと思うのですが、一体この平均賃金の日額ですね。労働省で統計をとっておられますが、平均賃金の日額、まあ大胆に言いますけれども、基礎日額はどの程度になっておるわけですか。そうして、これによって計算した場合に、たとえば遺族補償年金というものは、標準受給者の場合に年額どの程度になるのか、あるいは障害補償年金が三級の場合にどの程度になるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  126. 和田勝美

    和田政府委員 数字のとり方は非常にいろいろと問題がございますが、一つの仮定の上に立って計算をいたしましたので申し上げてみますと、年齢を一応三十八歳にとります。これは四十三年度の労災保険の遺族補償にかかる死亡労働者の方の平均年齢が三十八歳でございますので——まあこれをとることがいいかどうかは、先ほどお答えしましたように問題がございますが、そういうことで、平均賃金につきましては、同じく四十三年度の遺族補償給付にかかる死亡労働者の方の実績の平均値千五百五十五円に賃金上昇率として一三%を乗じた額を一応考えました。これによって計算をいたしますと、平均年齢は三十八歳で、そのときの平均賃金が千九百八十六円、そうして標準受給者と通常いっておりますのは奥さんが一人に子供さんお二人というのが標準受給者でございます。その受給者のそういう条件で計算をしてみますると、年金の額は約三十六万円ということになります。それから、これは扶養家族の問題ではございませんが、同じような方で障害等級の第三級を計算してみますと、障害補償年金の額は約四十三万円、こういうことでございます。
  127. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの局長答弁によれば、三十八歳の人について見た場合に、遺族補償の年金が年三十六万円、さらに障害年金については三級の人が四十三万円——三級といえば労働能力を完全に失った人でしょう。これで国際的な水準に引き上げたというのは私は残念で、今日の経済の動きや物価の動きなど見れば、なお低過ぎやせぬかという感じを強くするわけです。しかし、せっかく今度法律改正をして、一歩でも二歩でも前進させたという意味においては、それは私は評価してもよろしいと思うが、今度のこの法改正によれば、前払い一時金制度というものをさらにまた来年の一月三十一日から五年間延長するということになりましょう。この前払い一時金というのは、昭和四十一年からですから今日まで過去四年ですかやってきておりますが、これをどの程度の人がたが希望なさっておるのか。前払い一時金というのは、一体五年分なのか十年分なのか、どの程度一括して前払いを受けていなさるのですか、統計的に見られて。
  128. 和田勝美

    和田政府委員 遺族補償の前払い一時金を受けていらっしゃる方は、率にしますと四八%ぐらいであります。平均的に申しますと、大体四百日で、二年半分ぐらいになります。いままでの実績で申し上げますと大体平均七、八十万円であります。
  129. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣、いまお聞きのとおりですよ。遺族補償年金を見ますと、前払い金を受けられて、それが二年半分で八十万円ということです。そういう金額にしかならぬわけです。  さて、そこで、先ほど局長は自動車損害賠償補償法の例を引かれましたが、今度この法律改正がなされたわけですね。そうしてまた、昨年の自動車損害賠償責任保険審議会の昭和四十四年十月七日付の答申によって、昨年の十一月一日から自動車事故による死亡については三百万の給付が五百万に引き上げられたというわけですね。かりに今度の引き上げ措置によって遺族年金が三十六万円になったとした場合、これが規則によってどうなっておるかは別にして、十年間前払い金を受けたとしても三百六十万でしょう。自動車損害賠償の場合は、とにかく強制保険として昨年の十一月一日以降三百万を五百万に引き上げられたわけですね。また、自動車事故の場合は、加害者の所得いかんによってはもっともっと民事上の損害賠償を取るわけです。こういう点から見た場合、しかも業務上の災害によってなくなった人でしょう、その遺族の方々に対する給付の問題は、なるほど今度一歩前進はしたが、今後ともこれは常に検討されて前向きに処理することが必要ではないか。もちろん、他の公的年金制度との関係もありましょう。また、この業務上の災害についてはスライド制度のあることもよく承知はしておりますが、しかし、この年三十六万という問題について、大臣としてはどのようにお考えになっておられるか、これを私はちょっとお尋ねしたい。
  130. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のとおり、どうも十分ではないと存じます。しかし、従来から比べれば、今回の改正案は一歩、二歩前進の案であるというふうにもいえると思うのです。この制度は無過失賠償責任という形ででき上がっている性格のものでありまして、他の保険のほうと見合いまして、漸次これは日本経済の発展に即応して修正されるような段階にたろうと思います。しかし、このたびの改正案は、従来から見ますると非常に改善された案であるという点で、一応皆さま方の御了承を得たいと考えておるわけでございます。
  131. 田畑金光

    ○田畑委員 私も今度の改正案が一歩前進であるということは認めているわけでございますが、よく考えてみると、なお、業務上の災害によって残された遺族の方や、あるいは完全に労働能力を失った人がたの年金としては低過ぎる。したがって、この問題については常に処理されることを私は強く要望しておきたいと思います。  同時に、前払い一時金制度については、かりに二年なら二年、三年なら三年前払いを受けますと、それに相当する毎月の給付をその受けた額に満つるまで差しとめるわけですね。その場合に利息は徴収するのですか。利息相当額を差っ引くわけですか、どうですか。
  132. 和田勝美

    和田政府委員 前払い制度の性格上、前払いしましてそれが満額になるまで年金支給を控えるという立場になります。そして五分計算、まあ一般の金利よりはずいぶん低いのですが、一応五分を取っておる。ただ、この制度につきましては、経過的にこういうことになっておるわけでございますが、私どもとしては、労働者の方が死亡されたときに相当の額が必要であるというわが国一つの社会慣習がある、しかしながら、扶養されている遺族の方の保障という点からいえば、年金制度が最も当を得ておるという考え方で、その調整をどうとるかということがあるわけでございます。かりに年金制度一本になりました場合におきましては、何らかの意味において死亡時における一応の一時金を担保するような担保制度あるいは融資制度というようなものを将来は真剣に検討しなければならない。ちょうど今度五年間のまた期間延長をいたしますので、この間にそういう担保的なもの、融資的なものについて、他の制度とのかね合い等を考慮しながら、ぜひ五年間の間には結論を得るような努力をしたい、かように考えておる次第でございます。
  133. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、次の質問者もありますからこれで質問を終わりたいと思うのですが、ただ私の申し上げたいことは、局長並びに大臣によくお聞き取りを願いたいのですが、いまお話しのように、前払い一時金が支給されたときは、遺族補償年金の各月分の額の合計額が前払い一時金の額に達するまでの間、遺族補償年金の支給が停止されることになっておるわけです。問題は、その際年利五分の単利で割り引いた額を、要すれば金利をかけてまあ差っ引く、こういうことになるわけでしょうな。これは、年利五分といっても、まあ金利としては低いかもしれぬが、しかしいまの物価の上昇というのが年五、六%、あるいはそれをこえておる状況など考えたならば、全体の額も少ないその前払い金の中から、年利五分相当の額を金利として見るというようなことなどは、まあこのあたりは考える余地があるやに思うのですがね。どうなんですか大臣、私はやはりこれぐらいは——業務災害に基づいた遺族の方々ですね、今度、その他遺族の子弟の人方について教育の費用を支給するとか、いろいろのいい面もありますが、この金利などはこの際やめたらどうかと思いますが、おやめなさったらどうですか。まずそれを約束してください。私は質問を終わりますから、それを約束してください。
  134. 野原正勝

    野原国務大臣 まあ、いろいろな資金には無利子制度というのがございます。いまの業務災害で死亡された場合など、年金を繰り上げて払う場合に金利までもらうというのはどうも少し酷なような気がいたします。これは何とか将来ひとつ、関係方面の理解を得まして、できるだけ早く金利を免除するような方向で努力してみたいと考えております。
  135. 田畑金光

    ○田畑委員 まあ、私は質問はこれで終わりますが、大臣から二、三の具体的な、これこそ文字どおり前向きのいい答弁を聞き出し得ましたが、ひとつここの場所だけの答弁に終わらぬで、私が真剣に質問をし、真剣にこの問題の解決を、政府並びに大臣に願ってやってきた質問でありますから、お答えはぜひひとつ今後の具体的な施策に反映されるように御努力を切に期待して、質問を終わります。
  136. 倉成正

  137. 寺前巖

    寺前委員 本会議の時間がありますので、残念ですが発言の時間がありませんので、要点的にひとつ質問を基本的問題できょうはしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  社会党の法案の提案の中にもありますけれども労働災害の死亡者数は一九五九年までは年間五千人台であったものが、六〇年代になってくると六千人台にまでふえてきている。労働者災害補償保険の受給者数をとってみても、一九五九年に約七十八万人あったものか、今日では一もちろん六五年から給付の範囲が、一千円未満の療養費でも労災保険で給付されるようになったとはいえ、百六十万を突破するところの数になってきている。明らかに労働災害はほとんどの産業分野において広だってきている。こういう実情の上において、労働大臣ないしは局長さんのほうから、一体労働省としては労働災害というのが労働者の不注意によるところの災害、そういう面が多くあるのか、あるいは対象になるところの新たな段階におけるところの問題として災害が非常にふえているというのか、労働者実態上の災害の姿をどういうふうにつかんでおられるのか、まずお聞きしたいと思います。
  138. 和田勝美

    和田政府委員 労働災害発生原因につきましては、私どものほうでもいろいろ調査をいたしております。それによりますと、施設の不備のために出てくるもの、それからいま先生お話しになりました、労働者側のほうが行動中に多少不注意があって出てくるもの、それから両方とも特段の何はないが災害が思いもかけない状態で出てくるもの、いろいろございます。しかし、その一つ一つについての原因探求ということは、もちろん丹念に私どもやってまいり、その原因結果を分析し、それを一般的に及ぼしていきたいと思いますが、私どもの理想としておりますのは、人間の不注意によって災害が出るというような状態のないものをぜひつくっていきたい。私どもそれを本質安全ということばでいっておりますが、これは機械設備等におきますものを決して人間がけがをしないような状態の装置をつくっていく、そういうものを研究開発していくという姿勢で災害の減少ということにぜひ精力を使っていきたい。私のほうの安全研究所におきましても、衛生研究所におきましても、そういうのをモットーとしてやっておるわけでございます。しかしこれは、言うはやすくなかなかむずかしい問題でございますので、それまでの問題としましては、国による監督指導を強化する、あるいは使用者側の経営責任から当然出てくる安全意識の高揚をはかる、あるいは労働者方々がみずからの不注意によってそういう不幸な状態にならないようにお気をつけを願う、こういうような啓蒙措置を講じながら、今後労働災害防止について努力をしていきたいと思いまして、どこに責任があるというような責任論を特にこの際あげつらって申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  139. 寺前巖

    寺前委員 おたくのほうは基準法の施行規則に基づいて報告を求めておられるはずです。なければこれはうそだと思います、ちゃんと規則がありますから。それに基づいた結果についてどういうような判断をしておられるかを聞きたいので、その数字を示してもらいたいと思うのです。
  140. 東村金之助

    ○東村説明員 ただいま御指摘ございましたように、労働災害が現場で発生いたしますと、監督署等から本省へ報告がございます。その報告に従ってわれわれは行政を展開するわけでございますが、いま局長からお話しございましたように、災害が起こった場合に、それがどういう原因で起こったかということを考えまするに、機械の欠陥とか機械が不安全な状態にあった、あるいは労働者が不安全な行為をしたというようなことが合成されまして、その合成された結果一つ災害が起こる、こういうふうに認識しております。したがいまして、たとえば労働者が墜落災害を起こしたという場合でも、それは労働者本人の不注意で起こったのか、機械関係あるいは設備関係の不備によって起こったのか、いろいろ問題があるところです。したがいまして、ただいま申し上げましたように、どこにどういう責任があるかは一応おくといたしまして、労働者が若干の不注意をしても実際には災害発生しないというような本質的な安全体制をつくっていきたい、これを行政の目標にしておる次第でございます。
  141. 寺前巖

    寺前委員 私が先ほどから要求しているのは、数字を示してもらいたいということを言っているのです。   〔委員長退席、栗山委員長代理着席〕
  142. 東村金之助

    ○東村説明員 まず全体の疾病に基づく人あるいはけがに基づく人をまぜて申し上げますと、昭和三十六年に四十八万一千件という災害を受けた方がおりました。それが年々減少をしてまいりまして、昭和四十三年には三十八万六千人という数字に減少したわけでございます。なお、業務上の疾病にかかった人は、休業——これは一日以上でございますが、二万八千三百五十八人。これは四十三年の数字でございます。
  143. 寺前巖

    寺前委員 いや、個人の責任と分けて……。
  144. 和田勝美

    和田政府委員 実は原因別にどこに欠点があるかということは、先ほど安全衛生部長からお答えいたしましたように、複合されておる場合が相当ございますので、原因別にはなかなか出にくい点があるということは御了解いただきたいと思います。  それでどんなものがあるかと申しますと、原因別はよくわかりませんが、その点はいま申し上げましたことで御了解いただきたいと思います。だが、しからばどういう状態発生をしておるかと申しますと、動力運転災害というような、あるいは作業行動災害とか特殊危険災害、それから雑災害、こういうようなことで分けまして一応の統計は出ておるわけでございます。
  145. 寺前巖

    寺前委員 要するにはっきり整理はついていないということですね。それははっきりしました。しかし問題は、主要な原因はどこにあるのかということを明確にしておかなかったら、あとの対策上に重大な欠陥を及ぼす。それで、これは大臣に聞きたいと思うのですよ。労働災害は一向に減っていない、新しい職業病がふえている、というのは無視することのできない事実だと思います。そういう立場に立って、大臣は、この労働災害発生の原因はどこにあるというふうに見て労災問題に対処をしようとしておられるのか、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  146. 野原正勝

    野原国務大臣 労働事情がだんだん変わってまいりますと、したがって職業病等もふえるわけでございますが、その原因等はさまざまあると思います。したがって、的確にそれを把握するということは困難でございます。そのよってきたる原因等は、おそらく機械が非常に高度化しておるとか、あるいはまた、さまざまな資材を使う、その資材の面にも原因があると思います。同時に、中には非常に単純な作業等を繰り返しておるということで、ついどうもその間に注意力が散漫になってしまって起こる場合もあろうかと思います。あるいは、最近では非常に単純な繰り返し作業というものが一種の職業病を起こす原因ともなっておると思います。さまざまな原因があるので、その点はそれぞれ専門の方々によって原因の究明をし、その対策を講ずるという点で、これからおそらくだんだんときめこまかな対策を講ずる必要があるだろうというふうに考えております。
  147. 寺前巖

    寺前委員 私は、なぜ先ほど統計を示せということを言ったかといいますと、統計のとり方をどの角度からとるかということは非常に重要なんですよ。これは、いまの施行規則に基づくところの報告によるならば、結局使用人のほうが報告をするわけですよ。労働者のほうからの直接の報告じゃないんですね。使用人の報告が出るわけです。そうすると、使用人の報告というのは、労働者の立場とは立場が違う角度から見るというところの欠陥が出るから、そこから——私もこの間監督署へ行ってちょっと調べてみたんですよ。そうしたら、どういうことが出るかというたら、個人の責任に帰するがごとき報告がもう非常に多いんですよ、その会社のほうから出てくるものは。ぼくはそれは当然だろうと思うのです。会社としては、私のところはこういうふうにうまいことやっていますけれども、本人が前の晩にどうやったとか、そんなことになるのだと思う。問題は、こういう報告を基礎に労働災害対策を組んでおったらこれはたいへんだ、これじゃ解決にはならない。だから、報告のとり方のあり方を改善する必要があるということを、私はひとつ大臣に申し上げておく必要があるということが一つです。  時間がありませんから私は要領よう言うておきますけれども、それからもう一つは、大臣、さまざまな原因があるということだけでは、やっぱりきっちりとした対策は組めないと思うのですよ。そこで私は思うのですけれども、まず第一にこの原因を明らかにしていく場合には、最近のいわゆる合理化ということですね、これの進行という問題が、非常に大きな労働条件上の問題が原因になっておる。たとえば、この前、私は予算分科会のときにもちょっと話をしましたが、いわゆる四組三交代制の場合、いま鉄鋼産業がずっと出てくる、あるいは化学でもその他の分野でも再検討が始まっている。この分野一つとってみても、いままでは勤務時間、たとえば昼休みの問題一つにしたって、四十五分与えられておったものが、昼休み二十五分でもって御飯を食べてしまえというような、そういうようなやり方が出てくる。あるいはいままで会社の門の入り口で出勤時間をきめておったものがハンドル交代に変わってくる、労働密度が非常に濃くなってくる、こういうようなことからくるところの合理化による労働条件の変化災害になっていくのじゃないか。私は、この問題はやはり検討されるべき問題だろうと思う。  それからさらに、新しい近代化に伴うところの資材というお話をなさいましたけれども、新しい職業病発生しているという問題は、新しいいろいろなものを使い出してくるということから追い詰められてくる原因があるわけですね。そういう問題。  それから、私が特にここで強調したい、見のがすことのできないと思うのは、政府自身にも問題があるのではないであろうか。たとえば事前に十分に監督をしていくことができるならば、こういうのを使うのはよくないよということを、あるいは事前にこういうものを使ってはなりませんという規則を明確にしていくならば、あとから、しまった、あんなことはなくてもよかったのに、という問題が出てくると思うのですよ。だから、そういう意味では、政府自身がきちんと、はっきりと、早い段階に、こういうものは使ってはならないとか、きびしい態度でやらなければならない。たとえば、先ほど局長が染色ガンの問題でちょっとお答えになっておりましたけれども労働者と使用者と両方がよく御注意くださいというようなお話をしておられましたけれども、両方の注意ということだけではだめなんじゃないだろうか。押えるべきものはぽんと押えるということと、それから労働者や資本家みずからがやはり注意しなければならない問題の面については、産業別に具体的に詳しい指摘がなければこれはだめだろうというような、政府自身の指導上あるいは責任上の問題というのが労働災害上の問題になってきておる。  それからもう一つは、今日の社会生活上の問題、これは公害その他が地域的にも発生してきている状況の中で、社会生活上やはりよくないという問題ですね。こういうような問題が、全体として、それこそ大臣が言われたように、さまざまな条件が重なって災害になっていくと思うのです。したがって、押える問題点はぴしっと押えられた上で、それに基づくところの対策を組まれる。まず安全対策を先にやらないと、結果を追うところの補償問題だけ言っておってもだめなんじゃないだろうかということで、私はここで要求しておきますよ。ともかく報告の求め方のあり方を変える必要があるという問題と対策について、基本点をしっかり立て直してもらう必要があるということを、まずここで申し入れておきたいと思うのです。  次に、第二番目の問題ですが、労災の基本的な考え方の問題です。労働災害に対する基本的な考え方、これは大臣どうなんでしょうかね。自分の子供なりあるいは妻が、夫が働きに行っている場合に、どの妻であろうと、どの子供であろうと、どの親であろうと、働きに行っている人がほんとうに安全にうちへ帰ってくれよというのが共通した願いじゃないでしょうか。私たち子供が生まれるときでもそうですよ。五体満足で生まれてくれよというのが、親の共通した願いだろうと思うのです。そして、その子供が育っていって、働きに行き出した。ほんとうに安全に無事に帰ってくれよというのが私は共通した願いだと思うのです。人の命というのはもう金に換算することのできない非常に大切なものだと思うのです。だから、この安全性が失われた場合におけるところの家族の悲劇というのはたいへんなものがある。したがって、これを完全に補っていくというところに、近代的な社会の責務があるんじゃないか。労働災害補償の基本を私はここに置かなければならぬのだと思うのですが、大臣、お考えどうでしょう。
  148. 野原正勝

    野原国務大臣 全く同感でございます。
  149. 寺前巖

    寺前委員 それでは、私はその立場からお聞きをしたいと思うのですが、職場における災害発生した場合に、一番問題になってくるのは、この保険を受けようというときに認定問題というのにすぐに直面するわけですね。そこで、その認定をする場合ですが、健康であった人が、つとめに行っておって、そこでぐあいが悪くなってきたということからまずはものは出発しなければいけないと思うのです。そうしますと、労働者が、私はこういう事情によって災害を受けた、お医者さんに行ったらこういう診断を受けた、それを基本にして労働災害認定というのは始めるべきではないか。これが、その判断は不届きだという場合には、使用者側でそれは不届きだという証拠を逆に立証する。資本家側がそれに対してやるというふうにして、労働災害補償の基本のきめ方はやるべきではないかと思うのですが、大臣、それはどうでしょう。
  150. 和田勝美

    和田政府委員 基本的には、業務上であるかどうかという問題に対しては、現在の法制上は、その災害を受けられた方の立証責任というのが民法その他全部通じての一応の形でございます。そういう意味においては、労働者のほうからこういうことで業務上の災害であるといわれるのをたてまえとしておりますが、しかしそれでは、法律的にはそうでありましても、労働者側のほうはなかなかたいへんでございます。それから実際上の運用といたしましても、監督署のほうでいろいろ手を尽くして、結果的に労働者側のほうから立証されたと同じような状況をつくり出す努力監督署はやっておる。そうして、運用上は、運用の成果が実質的にはいま先生のおっしゃいましたようなことにつながっていく、こういうことになろうと思います。
  151. 寺前巖

    寺前委員 ところが、実際上は、本人があの手この手を通じて立証しようとしなかったら、なかなか業務上の認定にならないのじゃないですか。たとえばお医者さんの問題にしても、ここの病院のお医者さんにかかってみたら、お医者さんがこう言った、ああ私はからだがこういうふうにぐあいが悪かったのだから、このお医者さんの言われたことによってこれはそのとおりだといってぽんと認定を下しているということになっていないのじゃないですか。この病院に行ってみなさい、あの病院に行ってみなさいということで、医師の選定の自由というのもないのじゃないでしょうか。私は、やはり立証の基本というのは、本人が言って、それで医者の選択の自由もあって、そして、これで業務のために私は被害を受けましたという申告があると、これに対して業務外だということを、逆に使用者側があの手この手で言われるのだったら別だけれども、やはり本人が言っていることが一番基本なんだから、本人が求めた医者の言うことに基づいて認定を下していくというのを基本的考え方にすべきではないですか。
  152. 和田勝美

    和田政府委員 基本論としては、私は先生の言われるとおりでけっこうだと思います。普通の場合は大体そういうことで処理されております。ただ特定な具体的な問題で争われることが相当にあるわけでありますが、大部分の場合はいま先生が御質問になりましたような姿勢で処理をしております。
  153. 寺前巖

    寺前委員 ところが、大部分のむずかしくなっている問題というのは全部この話でしょう。業務外かどうかという認定問題がいろいろ問題になるのはみんなその問題じゃないですか。本人の意見と自分がかかったお医者さんの意見によって認めるということに、事実上は認定にはならぬでしょう。
  154. 和田勝美

    和田政府委員 争いがあるのは、全体から申しますとほんのわずかなことでございます。全体としては非常にすなおに認定が行なわれますが、争いになるにはそれだけの理由があって争いになる。だから、それが争われるのはやむを得ないことだと思います。
  155. 寺前巖

    寺前委員 だから、争いになるというのが最近の新しい職業病関係でいろいろ出てきていますね。そういう点から見るならば、現実の、たとえばむち打ちの問題にしても、あるいは腱鞘炎の問題にしても、非常に時間がかかって、それで最近になって、いや腱鞘炎というものを少し考えてみましょうとか、すっと変化をしてきている。考えてみたら、過去に受けた人は全然それは認定されないということで終わっておる。泣き寝入りになった人がたくさんおるわけでしょう。こういう最近の職業病関係を見てみたときに、この流れの中に基本的に流れているものは何かというと、本人が苦痛を訴えている、ある医者が見てそれはそうだと言った、これを基本にしてすなおに認定をするという態度がないというところに争いの一番の問題がある。だから、基本的に、そういうふうに本人が明らかにし、本人が選んだところの医者によって判断された場合には、無条件に受け入れるという態度をとるべきではないか。
  156. 和田勝美

    和田政府委員 いま例としておあげになりましたむち打ち症とか、頸肩腕症候群とか、こういうような問題は、職業性との関連が非常にむずかしい問題だと一般にいわれておる問題でございます。それと、これはまた実は外見がなかなかむずかしいことでございまして、神経的なものがずいぶん作用するというようなことからいたしまして、確かに最近そういう紛議が非常に多い問題であることは先生指摘のとおりであります。これは業務性と発病との相関関係がなかなか的確につかみにくいというのが、医学的にもあるように聞いております。それで私どものほうでは、むち打ち症につきましても、頸肩腕症候群につきましても、専門家の方にお願いしまして、認定基準——こういうとき、こういう状態であれば業務上の問題として認定していくという認定基準をいま鋭意作成する努力をいたしております。要するに、先生が先ほど御指摘になりましたように、新しい職業病職場の事情の変化に伴って新しく出てきた、従来とかくそれが見過ごされておったりあまり取り上げられなかったけれども、このごろは出てきた、こういう問題につきましては、確かに初期の経過的な問題としては御指摘のような問題が出てくるだろう。その点については、行政措置としてはできるだけ早く認定基準を設けまして無用の紛議の生じないようにしたい、かように考えております。
  157. 寺前巖

    寺前委員 いま最近の問題としてずっと問題となってきているのは、むち打ち症だとか腰痛症、胃腸病、神経、精神病関係、それから騒音の中で仕事する難聴の問題とか、頸肩腕のいまの問題とか、白ろう病の問題とか、鉛の中毒症の問題とか、そういうような一連のもの、労働条件の変化に伴って現実に明らかにこれが問題になっておることは事実でしょう。そうすると、おたくのほうでは通達その他で出しておられるけれども、基準法に基づく施行規則の中で明確になっていずに、三十八のその他によるところの疾病ということにしていますね。   〔栗山委員長代理退席、委員長着席〕 明らかに今日明確になってきているこれらのものを、すみやかにこれを認定病とするわけにはなぜいかないのか。
  158. 和田勝美

    和田政府委員 先生指摘のように、労働基準法施行規則の三十五条に、一から三十七までは相当具体的に書いてございます。最後の三十八に包括的なものがありまして、追加認定的な行為ができるようになっております。いまお話しの、たとえば白ろう病等につきましては、局所振動障害として職業病認定のできる基準を設けましてやっておる。また、むち打ち症につきましても、認定基準をつくるべく検討をやっておるということでございまして、それぞれの事情に応じて認定基準等をつくることとしておりますが、次から次と新しい問題が出てくることも御指摘のとおりでございまして、それは専門家の御意見を伺いながら、私どもは、おくれずに認定基準を設けつつ職業病認定をするような作業をやってまいりたい、そのように考えております。
  159. 寺前巖

    寺前委員 その三十八のその他へ全部新しい病気を入れてしまっているんだ、あとは基準で、こうなっているのが現実なんでしょう。これは実際上はあの基準でやっているというやり方の場合には、もう私は言うまでもないことだけれども、明確にばっと載っている場合の手続のしかたとこの場合とはうんと現実的に手続が違うておるわけですよ。現実に、だれの目にも、こういう病気が新しい職業病として発生しているし、おたくのほうでは通達でやられている以上の問題は、さっさと法律の中に入れるべきじゃないか。何でそういう入れるという手続をやられないのか。そういうことを私は要求しなければならないと思っているのですが、再度そのことについて聞きたいと思います。
  160. 和田勝美

    和田政府委員 先生も御存じのように、基準法の施行規則の三十五条に一号から三十八号までずっと書いてあります。いままで問題になりましたようなものも、たとえばキーパンチャーの問題なんかは、十三号に該当するという場合もありますし、三十八号で追加をするというような問題もある。これらにつきましても整理がはっきりつきますれば、私どもはこの施行規則を変えることに決してやぶさかではございません。はっきりしている、そして一号から三十七号までではやり切れないというような場合に、追加をすることについては決してやぶさかではございません。しかし、いまのところ、追加が特にないものについては、行政の通達でもって、これは三十八号該当というようなことでこの包括規制の中でやっておりますが、事情が進んでまいりまして、三十七号以外にふやさなければならぬということであれば、御指摘のように追加するようなことを考えていきたいと考えます。
  161. 寺前巖

    寺前委員 時間がないのでそれ以上はもう言いませんけれども、こういうものはすみやかに処理をしていくという態度をとらなかったら、本人を含めて家族の側が嘆かなければならないので、こういうようなのは大臣のほうですみやかに処理されたいというふうに思うわけです。  それから、補償に関する問題についてたくさんの人から言われました。死亡補償の場合にはせめて自賠法の程度のことは考えなければならぬじゃないかということはだれでも思うことだし、また、現在の労災の補償についても、基礎計算のやり方の問題といい、その他の問題について、これじゃ五体満足、安全に帰ってくれよという家族の期待にこたえられるところのものではないということについて私も要求しなければならないと思うし、あるいは通勤途上の問題などを含んでいると思いますが、私は補償に関する問題として二つ聞きたいと思うのです。  一つは、社外工、組夫に対する安全保持と労災補償の元請責任制度を確立する必要があるのじゃないだろうか。いま実際に会社へ行ってみると、下請で一人親方の下請なんというものも存在しておって、全部本人の責任になってしまうという事態がたくさんあるのですよ。普通の雇用関係でいったら、基準法上もこういう人の使い方をしておったらいかぬじゃないかと言ったら、いや、あれはおれの労働者と違います、下請ですわ、こう言うておる。こういう使い方がかなり出てきておる。そういう点から考えても、元請責任制度というのは確立する必要があるのじゃないだろうか。それが一つと、もう一つは、海外に出ていくという問題は、最近の全体の日本の動向から見るならば今後考えなければならない問題である。海外へ出ていった場合の災害についてはどのように取り扱うべきかという問題についてお聞きをしたいと思う。
  162. 和田勝美

    和田政府委員 社外工問題は、確かにいろいろ問題があることは先生指摘のとおりであります。これに対しまして基準法では八十七条に「命令で定める事業が数次の請負によって行なわれる場合においては、災害補償については、その元請負人を使用者とみなす。」こういう規定がございまして、施行省令でこの範囲をきめております。いろいろのものがございますが、現在のところは建設業についてこの規定が適用されておりまして、労災におきましても、建設業については元請が事業主として保険料を納める、こういうようなことになっておるわけでございます。そういう意味からいたしまして、元請の責任はそういう限定された範囲内においては達成されておるわけでありますが、しかし社外工とか下請工はいま言っておりますようなもの以外にもいろいろとあるわけであります。それが請負という形であるかどうかについてなかなか解釈上問題がございますので、現在はその範囲を限定しておりますが、これからそういう問題につきましては十分実情を検討いたしまして、この八十七条の条文に該当するものについては、災害補償についてはこの運用によって処理をしていきたい、かように考えております。  それから、安全問題につきましては、労働災害団体に関する法律がございまして、全体としての元請的な立場にある会社の問題が整理できるようになっておりますので、これを活用して、今後安全問題についてはいわゆる元請の責任という問題について明らかにしていくようにいたしたい。  それから、海外の問題でございますが、一般的に申し上げますれば、労災保険法は、労働者災害補償制度がどの国も大体ございますが、主として属地主義になっておりまして、その国に勤務すればその国の災害補償制度によって処理をされるというような問題がございますが、国際的な往来が非常に激しくなりますと、向こうでけがをして日本に帰ってくる、あるいは日本でけがをして向こうへ行って療養を受けるというような問題が出てまいっております。そういう点を考慮しまして、まだはっきりとした折衝ということまで申し上げられる段階でございませんので、国の名前は控えさせていただきますが、ある国とはそういう場合における労災補償の相互取りきめというようなものも考えたらどうかということで、ほんとうの予備的な事務折衝でございますが、そういうこともいまある国と始めておるわけでございまして、これらの経過を見ながら、今後はひとつ十分研究をさしていただきたい、かように考えております。
  163. 寺前巖

    寺前委員 最後の問題提起でありますが、私は、労働災害の問題でこういう場合にはどういうふうにおやりになるのだろうと思うので、これは大臣よく聞いてほしいと思うのです。というのは、この間の四月十五日に大阪で合化労連が染色工場の職業ガンを一掃しようということで、ベンジジンガン対策会議というのをお開きになっているわけです。そこに集まられた方々の中から各団体の報告がなされているわけですが、これまで少なくとも七人が職業性膀胱ガンで死亡し、二十人以上が治療を受け、今後発病するおそれがある人は九百人以上に及ぶであろうという問題が出されているわけです。そして、この職業ガンの問題の場合には、長期にわたって潜伏するというおそろしい性質を持っているし、同時に、そこの労働者は、仕事をやめて、行く先がいろいろかわっていく、歴史の変化が起こりますから、そういう病気が発生してきたときに、一体こういう人たちをどのように労災では補償することになるのか、それとも今後どういうふうに考えようとしておるのか、そこのところを聞きたいと思うのです。
  164. 和田勝美

    和田政府委員 先生指摘の染色ガンの問題は、ベンジジン、それからベータ・ナフチルアミン等の問題であろうと思いますが、この点につきましては、昭和三十年ごろにこの問題が出ましたので、基準局としては直ちに措置をとりまして、この扱い方等につきまして、従来の乾性のものを湿性に改めるとか、それから被曝されないような状態に置くというようなことで行政努力をしました結果、ずいぶん効果があがりまして、最近ではほとんど押えられておるという状態だと思いますが、いま御指摘がありましたそれより以前に、そのベンジジンやベータ・ナフチルアミン等に被曝をされて、露出をされておった方が病気になられました。この点は、御指摘のように、いままでの経験でございますと、十五年くらい潜伏期間がありまして膀胱ガンになるというような問題でございます。転職をしていかれましても、その方がそういう工場にかつて働いておられることが明らかになりましたら、それは私ども業務上として認定をいたしまして、労災保険で治療をするという姿勢でございます。そのとおり過去にもやっておりますし、今後ともそういうことでやってまいりたいと考えております。
  165. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、十七年とか二十年後に明らかになったときに、その当時の賃金水準でやるのか、それとも二十年後の賃金水準の変化を計算に入れた補償をやるのかどうなのか。
  166. 和田勝美

    和田政府委員 これは、先ほどもお答えいたしましたが、発病時においてその時点から三カ月ということでございますから、その人が現在どこか働いていらっしゃるとすれば、そのときの賃金が休業補償の基礎になりますから、直前の状態で押えるわけでございます。古い過去にはさかのぼりません。そういうことでございます。昔働いていたところでなくて、いま働いて得ていらっしゃる賃金の三カ月でやる、その発病後休業補償をする、そこがスライドで動きますれば動かしてやる、こういうことであります。
  167. 寺前巖

    寺前委員 もう時間がありませんのでやめますけれども、それ以後の不幸な事態が今日を生んでいるということを計算に入れて、この合化労連の大会ではこういうふうに言っているのですね。  発病者、死者への補償はたとえ発病時点、死亡時点が過去であっても、それを発見した時点での労働者の賃金水準で算定するようにやってもらいたいという、この立場は保証できるというふうに解釈してよろしいですね。
  168. 和田勝美

    和田政府委員 いまお話しの過去であってもというのがよくわかりませんので、どういう事情でそういう申し合わせをしておりまするか、ちょっと調査をさせていただいた上で処理をしたいと思います。
  169. 寺前巖

    寺前委員 それではもう時間がございませんが、いずれにしても、労働大臣、五体満足、家族が、無事に帰ってくれよという立場に立った補償制度にこれを改善さしてもらう必要があるということを申し添えて終わります。      ————◇—————
  170. 倉成正

    倉成委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
  171. 島本虎三

    ○島本委員 国鉄を除いて二公社五現業の当局は、きのうの二十七日に、政府了承に基づいてそれら労働組合に対して有額回答を出したということを報ぜられている。このことは自主解決を目ざして組合も自主交渉を続けるということになって目下期待をかけられている、こういう事態にあるわけですが、春闘も考え方によっては静かなる変化というものがあるのじゃないか、こういうふうに期待されているのです。だが、労働省の立場はそこでまことに微妙であるが、いまや一つの重要な状態を示しているわけです。ちょうどそのときなんですけれども、私としては慨嘆にたえない事態がいま惹起しておる。このことを大臣にはっきり申し上げ、その善処を求めなければなりません。  それは、読売新聞社系のスポーツ紙である報知新聞、これは去年から年末一時金や賃上げ、それから労働組合の自由、こういうようなものをめぐっていま争議が続いているわけです。会社側は、解決の過程で、いわゆるガードマンと称する右翼暴力団体系の経営にかかっておる特別防衛保障株式会社、そのもとに三十名の人員新聞社内に常駐させて、そして新聞労連の役員を引きずり出したり、組合員を監視、威嚇したり、また挑発したりという事件がいまや惹起しているのです。このガードマンと称する暴力団は、報知新聞社内に現在おって、そして組合員が身の危険を感じているというふうな現状なんです。これはもう争議対策を越えて、すでにこれは人道問題です。労働省は、こういうようなことに対しては、春闘以上に関心を持たなければならないのじゃないかと思うのですが、この問題を労働省では知っておられますか。
  172. 大塚達一

    ○大塚説明員 報知印刷の事件につきまして、私ども先生のおっしゃったような趣旨のことを聞き及んでおりますが、私どもの存ずるところによりますと、当会社におきましては、昨年春の賃上げ問題、それから夏の一時金問題をめぐりまして長期にわたる紛争が発生いたし、その紛争は昨年の八月に一応の解決を見たのでございますが、その後、年末一時金問題などをめぐりまして再び紛争が起こりまして、今日までこの問題はなお未解決に残っておる。そうして、しかもその間におきまして、昨年の十一月には組合の分裂が起こっておりますし、また組合側は、使用者側の各種の行為を不当労働行為ということで都労委あるいは裁判所に提訴をいたしております。また最近では、四月の十五日に会社側が外来者の社内への立ち入りを禁止いたしまして、警備を部外の会社に依頼したというようなことが労使間で問題になって、その対象がいま先生のおっしゃった特別防衛保障会社というような対象であるというようなことを存じております。
  173. 島本虎三

    ○島本委員 少なくとも争議中に、会社がガードマン、いわゆる暴力団と思われるようなこういう人たちスト対策で雇い入れて、会社が直接に指揮使用するということは、これは労働組合法の第七条の不当労働行為に当然該当する。それと同時に、そういうふうなことをする行為そのものは職安法の四十四条、いわゆる禁止する労働者供給行為に該当する違法行為である、こういうふうなことになるわけですが、職安局長、こういうようなことに対しては、両局長おりますが、それぞれ十分認識し、こういうような問題に対して対処しておりますか。
  174. 住榮作

    ○住政府委員 御指摘の特別防衛保障株式会社の件でございますけれども、実は先週の月曜、関係労組の方が私どものところにお見えになりまして、いろんな争議の経過なり、あるいはその実態先生指摘の職安法四十四条違反の疑いがあるのじゃないかというような申し出がございまして、私どものほうでは、さっそく都と管轄安定所でございます飯田橋職安に対しまして実情の調査を行なわせたのでございます。その結果、まず第一点といたしまして、契約の目的は盗難、火災の予防防止とかあるいは保安管理業務というような目的で、報知印刷と警備会社の間で約束がなされておるのでございますけれども、さらにしさいにそこに立ち至ってみますと、契約内容がきわめて不明確な点が多いということ。それから、職業安定法四十四条の規定に基づきます職業安定法施行規則四条の労働者を指揮監督するというような点におきまして、警備作業の実施方法は、普通の場合警備会社の企画、責任において行なわれ、かつまた警備を担当する者の指揮監督は警備会社が全責任を持って行なう、こういうのが通常でございますが、その指揮監督実態についてはっきりしない点があるということが調査の結果わかりまして、私どものほうでは四十四条違反の疑いがあるのではないか、こういうような感じを持ったわけでございます。そしてさらに、この四十四条及び施行規則四条の関係の判定というものが、さらに詳細な調査の結果でなければ認定等の結論が出せませんので、実はきのう、きょうにかけまして、さらに詳細な実情調査を報知印刷及び特別防衛保障株式会社に対して行なっておるのでございます。その結果四十四条に該当するという事態になりますれば、是正指導その他必要な措置をとってまいりたい、こういうように考えております。
  175. 島本虎三

    ○島本委員 当然これは新聞作業務の代替労働ではないという事実、それから請負そのものだとしても、仕事の完成の目標にはこれは全然関係がないという事実、こういうようなことからして、われわれとしては当然これは違法行為といわざるを得ない。それと同時に、それだけじゃない。やっているそのことは、この写真を見てがく然としておるのです。これじゃまさに戦闘行為じゃありませんか。鉄かぶとかぶったらこれは軍隊ですよ。こういうガードマン、これが労働対策に引き入れられている。こんなことをなぜ認めるのです。よくこれを見てください。この写真です。これは委員長においてもよく見ておいていただきたいと思うのです。  それで、この特別防衛保障会社なるものも、事実は岡本という報知印刷社長がこれに当たっておる、こういうようなことになっておりますが、実はその人自身が報知新聞の労担重役であるということです。こういうような人が直接指揮して、組合事務所に入ろうとする役員の人を実力をもって阻止したり、組合の掲示板に張られているいろんな指令をはがしたり、また組合員の写真をとったり、出てくる者に対して会社側がはっきりとその者を阻止している。責任を言うと、その最高指揮者は岡本何がしであるということを言明しておる状態なんです。それならば、これは完全にもう不当労働行為以外の何ものでもないといわざるを得ないじゃありませんか。これからあらためて調査する、そういうような問題じゃないと思うのです。これは職安法にも違反するし、労働組合法にも違反するし、あえて拡大すると基準法にも当然違反してくる問題だ、こういわざるを得ないのです。  こうまではっきりしている問題、これはいまに始まったことじゃありません。特に春闘がこういうようになっている状態のもとにおいて、これは早く解決しなければならない問題です。こういうようなものをそのままにしておいて、どこに労働組合関係一つの指導機関としての労働省の意義がありましょうか、こういわざるを得ないわけなんです。  大臣、こういうような状態です。ひとつあなた自身も、この解決のために、これは法違反があります。写真に出ているような事実です。それと、もう一つこの次にありますが、これだけで済まない重要な問題がありますから、本腰を入れてこれに対処しなければなりません。大臣、ひとつここで対処するということばだけはっきりしておいてもらわないと困るのですが、いま聞いた範囲においても重大です。大臣のこれに対する決意をひとつ聞いておきたいと思うのです。
  176. 野原正勝

    野原国務大臣 お話を承って驚いておるわけでございます。ただいま写真も拝見しました。事のいかんを問わず、労使間が理解と協力によって話し合いを進めていく、どうしてもできない場合には、そうした裁定をお願いする機関もあるわけでございますから、そのほうにお願いすればよろしいわけで、どうもここまでエキサイトしてやっていることについては非常に遺憾でございまして、真相を至急調査をしまして解決の方向に御協力をいたしたいと考えておるわけであります。私どもは常に、いかなる場合におきましても、労使が直接行動に出たり、暴力をふるったりというようなことは許されないと思います。その点で、今回の事件は、いかようなことになっておるか十分承知しませんけれども、今後ひとつ十分検討して対策を講じたいと考えております。
  177. 島本虎三

    ○島本委員 検討して対策を講ずる、それと同時に、組合のほうからも労働省当局に対して、この事件を行政上の措置をとってくれという申し入れがあった、こう伝えられておるのですけれども、このような訴えはございましたか。あったとしたら、それに対してどういうような措置をとったか。
  178. 住榮作

    ○住政府委員 先ほども申し上げましたように、先週の月曜、関係組合の方々が私どものほうにおいでになりまして、特に職業安定局関係では四十四条違反の疑いがあるから調査するように、こういう申し出があったと聞いております。それに基づきまして、先ほど申し上げました実情調査その他の措置をとってまいっておる次第でございます。
  179. 島本虎三

    ○島本委員 そういうのんびりしたことであってはちょっと困るのじゃないかと思うのです。順次これは申し上げていきます。この特別防衛保障会社、これはどんな会社であるかということも調べましたか。
  180. 住榮作

    ○住政府委員 今回、先ほどの調査に基づきまして、この特別防衛保障会社の、たとえば会社の設立の時期とか事業内容とか社の人的機構とか、そういった関係については調査をいたしております。
  181. 島本虎三

    ○島本委員 それならおわかりのとおりなんです。代表取締役飯島勇、この人は五・一五事件の三上卓グループ、これは拓禅会ですか、こういうようなことを名のる右翼団体に属しておる人で、逮捕経歴四回、そして四十三年の十一月に日大芸術学部の紛争の際にも凶器準備集合罪で検挙されて現在保釈中なんです。これまで調べてあるのです。それだけじゃないのです。去年の二月二十四日号の週刊サンケイで、これは暴力スト破り常習だ、こういうように報ぜられておるのです。ここに写しがあります。この中に「ゲバ棒で殴られ人事不省に」こういうことから始めて、「飯島勇。人呼んで「スト破り将軍」。あっちの会社、こっちの大学と、部隊をひきいてスト破りをし、常勝をつづけてきた将軍は、日大芸術学部に殴り込んではじめて惨敗を喫した。昨年秋のこと。それが原因だったのか、彼はここで覆面をかなぐり捨て、スト破りの株式会社をつくることを決意した。」以下、週刊サンケイにこの状態が載っておるのです。こういうことなんです。おそらくこういうような事実からして、特別防衛保障株式会社、こういうようなものが労働組合のストを暴力的に破るためにつくられたということは事実ではありませんか。こういうことからして、これから調査するとかということは、すでにおそきに失するのではないか。こういうようなことでも私どもは少しおそいと思っておるわけなんですけれども、いまのような事実ははっきり調査してありますか。
  182. 住榮作

    ○住政府委員 特別防衛保障会社の社長は、先生いま申し述べられました凶器準備集合罪で逮捕され、保釈中であるということは承知たしております。
  183. 島本虎三

    ○島本委員 どうもこれは、そういうことでなお私どもは慨嘆にたえないと思いますことは、調査に行った東京都労働局の職員が、身の危険を感じて十分調査できないで帰ってきておるという話もきいておるのです。こういうようなことはあってもいいものではございません。こういうようなことを聞いておりませんか。
  184. 大塚達一

    ○大塚説明員 東京都の労働局の関係すべてが労政局の関係ではございませんが、私ども関係する労政局の中の労使関係に関する部門について東京都に照会いたしましたところ、東京都自体の職員についてはそういうことはなかった。それから、関係労政事務所であるいはそういうことがあったかということで都から調べてもらいましたが、労政関係の職員ではないようでございます。
  185. 島本虎三

    ○島本委員 労政関係の職員でなくても、労働局の職員が、依頼され、また職業上の必要によって調査に行っています。そして身の危険を感じて十分調査もできないで立ち戻ったということも聞いておるのです。十分調査しておいてもらいたい。  なぜかならば、四十五年、本年の四月二十五日土曜日の読売新聞の朝刊に、「〃黒い手〃をひろげる暴力団」の特集記事が載っております。資金かせぎのために合法の仮名を装って私設職安を設立している事実を明らかにしているのです。こういうようなことか堂々と——これはつい最近じゃありませんか。四十五年四月二十五日土曜日の読売新聞ですよ。一面全部の特集版ですよ。これに出ているのです。私設職安、これもちゃんとやっている。こういうような事態が天下に明らかにされているのです。この中で、私もこれを読んで今後の参考にしなければならない。労働省だけでも、いまのようなことからしてこれはと考えたのは、取り締まりの連携にルーズさがあるということです。そのことは、こういう場合に警察と連携を緊密にして調査を完全にしたらいいじゃありませんか。そして職安法違反の事実、そのほかにいろいろあるならば、税金の問題では大蔵省と連携をとったらいいじゃありませんか。そのほかのいろいろな関係各省庁があるはずですから、運輸省との連絡においてやれる場合もあるじゃありませんか。各省庁連絡をとって、そしてこれを摘発するなり告発するなり、行政上の処置は当然とるべき問題である、こういうように思うのです。ここに書いてあるような、こういうようなこと自身、これはもういろいろ社会問題を惹起していることなんですが、その中に職安法違反、もぐり、こういうような労働行政の基本問題に関する重要な問題の指摘があるということなんです。これは、身の危険を感じて調査できないで立ち戻っておった、こういうような事実があるとするならば、この際はっきりと、関係方面の助けを借りるなり、そういうような連携の上にこれをやるべきだ、こういうように思うのです。この点についても、ひとつ大臣考えを明らかにしておいてもらいたいと思います。  こういうような真新しい新聞ですから、念のために見おいてください。   〔島本委員、新聞を示す〕
  186. 野原正勝

    野原国務大臣 こういうような事実があるとすれば、これは容易ならざる問題であります。さっそく調査をしまして、厳正な態度で臨むということでこういった問題に対処してまいりたいと考えております。
  187. 島本虎三

    ○島本委員 そうして、これは直ちに労働省の問題になりますけれども、労組法違反の問題がこの中にあるのに対して、何回も指摘されても手をつけておらないという事実なんです。これは労働省監督の問題じゃないかと思います。暴力団のガードマン、これを直接雇ったのが同社の労務担当重役の岡本何がしである。そして、岡本何がしがそのガードマンを指揮して新聞労連の役員を社外に引きずり出したり、組合の掲示板、ここに張られている指令、こういうようなものをはぎ取らしたり、また尾行したり、便所まで尾行する。そうして、当然考えられませんけれども、私物のロッカーまで開いて、中に組合関係のニュースはじめ文書があるかどうか、こういうようなものを調べさせて持ち出させている。そうして新聞労連の役員の写真または支援の組合員の写真、こういうようなものを平気でとったりしている。こういうような状態が続いている。これじゃ、まさに不当労働行為、あえて言うと組合法七条、あえて言うと、これは基準法というと五条でしょうか、少し拡大解釈ですが、しかしながら、こういうような点においても十分これは検討しなければならないのじゃないか、こういうように思われるわけなんです。おそらくこれに対して労働省のほうでは知らないということはないと思うのですが、いかがですか。
  188. 大塚達一

    ○大塚説明員 ただまの先生のおっしゃったような事実、具体的にこまかい点まで調べておりませんので、それがはたしてそのまま不当労働行為になるやいなやという判断をここで申し上げるのは、私どもの立場といたしましては、そういう不当労働行為判断のためは、労働委員会なりあるいは裁判所なりというものがございますので、ここでその具体的な事例について申し上げるのはいかがかと存じますが、抽象的に申し上げますならば、そういうガードマンみたいな組織を会社が警備のために雇うこと自体、あるいはそれに何ものかを委託するということは、労使それぞれ自己の業務の委託ということは自由でございます。ただ、その雇われたものが不当労働行為をするということは、これはもちろん許されない。また不当労働行為かどうかということは、主としてその当該ガードマンが使用者の委託を受けて、労働組合あるいは労働組合員あるいは労働組合の役員なるがゆえに一般の者よりも差別した不利益な取り扱いをする、あるいはそういう行為を通じて労働組合の分裂を策し、あるいは支配、介入をするというような行為がありますれば、これは不当労働行為になるということは言うまでもない。また、私物の検査あるいは暴力で連れ出すというようなことは、労働組合法をまつまでもなく、通常の行為、通常の粗暴犯としてそれは禁止されるところであろうかと存じます。
  189. 島本虎三

    ○島本委員 もちろん、そういうようなすべての事態、こういうようなものを正式に確認すると、一つ一つそのままにほっておかれないような事態なんです。これはもう組合法、各関係違反に始まって、人道問題にまで及んでいるという事態なんです。したがってこれは、そのままにしておくと、おそらく組合関係違反が人道問題に始まり、それがこれから社会問題にまでなろうとするおそれがあるから、ここで緊急に取り上げざるを得なかったわけです。  それで、大臣もこの際にはっきりとこれに決意してもらわなければならない。こういうようなことは、先ほど申し上げたとおりなんです。これは、法違反はいま言ったとおりなんです。そのほかにもまだあるんです、大臣。それは、三十四年に「主婦と生活」の争議があったと思うのですが、それにも関係しているんです。それと同時に、相模交通タクシー争議、これにも関係しているんです、同じような状態で。それと、委員長が何者かに殺されたという事件があってそのまま——当時は問題になりましたが、東京の三光自動車の争議、これにも関与しているんです。四十二年の暮れの東京発動機争議、これには関東軍ということを名のって、これにもやはり暴力参加をしているんです。そして、いまちょっと申し上げましたが、週刊サンケイの記者に対して、警備を事業内容とする株式会社をつくりたい、そして労働組合のストを破るのは当然警備業務であると思う、こういうようなことを公然と言い放っているんです。それをこれから調査するというような問題じゃなく、初めから委託してこういうようなものができたんです。ですから、そういうようなものに対しては必ず不当労働行為があるというような前提でこれは進めなければならぬはずなんですが、これが指摘されるまでそのままになっているというような点、暴力を伴うから単独ではできないという点、これは大臣がここで決意しなければなりませんし、各関係省庁とともにこの問題の解決に当たらなければならないゆえんもそこにあるわけです。そういうような状態ですから、当然直接に——去年の四月十五日にこれが設立されておりますから、それ以後の状態がいま申し上げたような状態になっているわけなんです。この事実経過から見ても、この特別防衛保障会社は、労働組合のストライキを暴力的に弾圧するためにつくられたものであり、会社側の一つの委託によってこれが運営されているという事実もはっきりしているわけです。こういうようなことを調査してありますか。
  190. 大塚達一

    ○大塚説明員 いま先生のおっしゃったようなことを週刊サンケイの記事として出ておることを私ども見はいたしましたが、そういうことについて詳しく当該団体を調査するというようなことは、いまのところいたしておりません。
  191. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、こういうように新聞にもあるとおりに、もうすでに仮面をかなぐり捨てて、実際いま私が発表しましたような、こういう意図を持ってつくられている会社、こういうようなものは、いかにていさいをつくろっても、やっていることは全部が暴力行為を背景にした不当労働行為につながる組織介入であり、スト破りであり、あらゆる関係違反、こういうようなものを犯すという前提でこれが進められているということです。これは考えなければいけません。したがって、今後私は、この問題について、じゃ、はたしてどういうような点にいままで手抜かりがあったか、この点を申し上げなければなりません。具体的な問題で、労働省自身が、各機関を通じてあげられているその事案を前にして完全にサボタージュと同じようなことをしているんです。これは許されません。一つ一つあげなければなりません。  本会議の予鈴が鳴って、あと二分間では意を尽くせませんから、あらためて本会議が終わってからこの問題に入りたいと思います。あと時間はよけいかけませんが、大臣、本会議終了後またもう一回この席へおいで願いたい、こういうように思います。切れ目のいいところでやめておきます。
  192. 倉成正

    倉成委員長 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。    午後二時二十七分休憩      ————◇—————    午後四時十一分開議
  193. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。島本虎三君。
  194. 島本虎三

    ○島本委員 休憩前に引き続きまして、読売新聞社系のスポーツ紙である報知新聞で、昨年から年末一時金や賃上げ並びに組合活動をめぐっての争議が続いており、それに特別防衛保障会社という名のストライキ対策と思われるような暴力団まがいのこういうようなものを介入、常駐させておるという事態に対して、いろいろ解明を行なってまいりた次第であります。引き続きまして、次の諸点について、この際労働省考え並びにとっている方法について具体的にお知らせ願いたいと思います。  それは、この岡本社長といわれる方は、昨年以来組合側から東京都地方労働委員会に五件提訴されている、こういうふうに伺っております。そして二度、不当労働行為と疑われる行為はすべきでないというような勧告を受けているものである、こういうふうに承っております。また、組合の掲示板にいろいろ張ってある物件をはぎ取ったりした事件、組合活動家を指名してロックアウトしたような事件、こういうようなものを合わせて、東京地方裁判所からこれまた二度も敗訴の決定をされておるということを承っているのであります。しかし、そういうようなものは守る必要はないと豪語して、いまだそれを守っておらず、争議を長期化させることをねらっておるのではないか、こう思われる節が多々ある、こういうふうに見受けられるのでありますけれども、こういう事実を労働省では知っておられますかどうか。知っておられるならば、それに対してどういうように対処されましたか、この際お知らせ願いたいと思います。
  195. 大塚達一

    ○大塚説明員 いま島本先生のおっしゃいましたような、東京都地労委あるいは東京地方裁判所におきまして、不当労働行為に関する提訴あるいは仮処分申請を行ない、東京都地労委から勧告が二度出ております。また、東京地裁から仮処分が二度出ておりますが、掲示板の仮処分につきましては、すでに異議申し立てをしておると聞いております。それから、指名ロックアウトの件についての仮処分は、四月十三日でございますか出ておりますので、まだこれについて特段の異議申し立て等の措置はとったということを聞いておりませんが、いずれあるいはとるかもしれません。  いずれにいたしましても、そういう裁判ないしは不当労働行為等で問題が取り扱われております際に、その結論について、法で許された範囲内でこれを争うということはもちろん許されているわけでございますが、そういう争いをしないでおいて、いたずらに命令を無視する、あるいは仮処分に従わないというようなことがございますれば、これはやはり法治国家のたてまえからして、これに従うべきものだというふうに私どもは存ずるわけでございます。  ただ、先ほども御質問にお答えいたしましたが、私どもも、この問題はすでに労働委員会に数度申し立てが行なわれており、現に労働委員会で、この不当労働行為につきましての審査等も相当数を重ねておると聞いております。したがいまして、不当労働行為の問題等につきましては、いずれ地労委等でこれに対する判断が示されることと思います。また、基本の問題でございます賃金紛争等につきましても、問題の解決が当事者間で困難であるということならば、労働委員会等での解決がはかられるであろうということを期待しておるわけでございますが、そのような形で、現在のところ、不当労働行為、先生のおっしゃるようなケースにつきまして直接私どもが介入するということはいかがかというような現状にあるわけでございます。そこで、いまのような実況をある程度把握し、また、労働組合等からもそういう実態をお伺いしているというような状況でございます。
  196. 島本虎三

    ○島本委員 双方が紛争中であり、いまだ解決案の示されないような事態ならいざ知らず、仮処分の問題であっても、こういうふうにして東京都地方労働委員会からの勧告が、一度にとどまらず二度出されておる。それにも従わない。あえて控訴もしない。抗告もしない。こういうようなことは、完全に、これは守る必要なしと豪語して争議の長期化をねらっておる、もうこういうふうに言われてもやむを得ないような状態じゃないのか。これに対して、黙って手をこまねいている必要はなかろうと思うのです。最近の労働行政中で、私が一番残念に思うのは、法がはっきりこれをきめておる、たとえば基準法によって、これは罰則までつけて、そのことをやってはだめだということをいわれておる。しかし、最近の物価の値上げその他によって、それらの罰則あたりはほんの微々たる金銭にすぎないような状態になった現在、罰則を覚悟で違反を平気で犯す、こういうような傾向さえ出ておるということはゆゆしい事態だと思うのです。まして、いまのような事態、出ても、守らなくてもどうでもいいじゃないか。まさに人畜に被害はないというような考えで、こういうような問題に対しては、平気で争議の長期化をねらうような行動に出てしまう。こういうようなことは、悪いことばで言うと、労働省はなめられておるというふうにいわざるを得ないと思う。単独ではなしに警察権を使う、あるいは大蔵省でもいい、その他の各省庁ともに、違反事項は一省にとどまらないはずですから、双方ともに同じようなレベルでやるのでなければ、社会問題化したようなこういう問題は解決にならないんじゃないか、こういうふうなことを私どもおそれるわけであります。こういうふうなことから、今後この解決のために大臣に特段の決意を願いたい、また措置も願いたい、こういうふうに思うわけなんです。この点はよろしく要請しておきたいと思うのでございますが、大臣、よろしゅうございますか。
  197. 野原正勝

    野原国務大臣 先ほど来お話しの報知印刷の問題につきましては、実態を調べまして、至急に対策を講じ、厳正な措置をとる必要があろうと思います。したがって、関係方面と連絡いたしまして、できるだけ早く適切な措置をとりたいと考えております。
  198. 島本虎三

    ○島本委員 そうして、私ども、この数々の事案を調べている間に、公傷中の婦人労働者を電話一本で解雇するという非人道的な、また明日な労働基準法違反と思われるようなことを平気でしておったということがわかったわけであります。これは病気になっている婦人ですけれども、まさにそういうような事実は労働基準法第十九条、解雇制限の条項にもう完全に当てはまるような行為じゃないか、こういうふうに思われるのです。これはもう組合から労働基準監督署や労働省に提訴している、こういうようなことを聞いておりますけれども、どういう措置をとっておられますか。肝心なときに局長おらぬじゃないですか。
  199. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 いま先生お話しの件につきましては、四月の十八日に労働組合が労働省に見えまして、事件全体について説明をされた際に言及がございました。そこで、基準法のたてまえで、そういう個別事案につきましては監督署に申告をしていただくということになっておりますので、それはそういう事実を具して直ちに監督署に御申告いただきたいということを申し上げたわけであります。四月二十五日に御本人が中央監督署においでになりまして、その事件についていろいろと申し述べられました。その際、特に問題になりましたのは、基準法十九条の解雇制限は、御承知のように業務上傷害が原因である場合の解雇の制限でございますけれども、その業務上傷害あるいは業務上疾病の供述の内容が、御本人自身多少はっきりしない点があるので、私自身で帰ってもう一ぺん文書でちゃんと申し立てると、こういうことを言われて帰られたそうでございますので、そのような書類が出てまいれば、直ちに内容について精査いたす準備をいたしております。現在そういう段階でございます。
  200. 島本虎三

    ○島本委員 精査するということばですから、精査してこれに対するはっきりした処置をしてもらいたい。私ども調査したそれによると、この婦人は職場でけがをしておる。病気というのですか、負傷しているのです。こういうような状態ですから、私どもとしては、もっと親切に聞いてやって、そういうような状態は、基準法は労働者を保護するための法律ですから、事実がそれに近いものであるならば、保護することにやぶさかであってはならないはずなんです。そういうような立場でこの問題を解決しておいてもらいたい、このことを強く要請しておきたいと思います。  大臣、こういうようないわば職安法に違反するような事件があったわけであります。これは、先ほどから申しておりますように、いろいろと社会問題化しているような事態である。あるいは広範な労働関係法にすべて触れるような、またこれを無視するような行為であるということが明らかになったわけであります。こういうようなことですから、不当労働行為、これの勧告を無視する、裁判所のいろいろな処分に対してもそれを無視するとか、基準法に対しても違反するとか、こういうようなことでありまして、こういう問題に対しましては、労働省全体がこの問題の処置を誤る場合には、今後禍根を残すおそれがあるのではないか、こう思われます。労働省当局はこれに対しては強力な措置をとるべきである。そして、その対策等についても、今後手を抜かないで一つ一つ具体的にこれをきめていってほしい。このことを強く要望しておきたいと思うのです。そして、これの解決を誤った場合には、こういうような問題は類が類を呼んでとんでもないところに発展するおそれがあるということは、強く大臣にこれを警告しておかなければならない種類のものであります。今後これの解決に対しましての決意をひとつ伺って、次に進みたいと思います。
  201. 野原正勝

    野原国務大臣 それはできるだけ早く対策を講ずるつもりでございます。
  202. 島本虎三

    ○島本委員 それで、もうこの問題に関しては、すべて調査並びに今後の措置であります。これも、安定局長も来ておりますから、私は強くこの問題の措置要望しておきたい。そして、調査中であるならば、早く結論を出すように、これは強く要望しておきたい、こういうふうに思います。  この問題についての私の質疑は一応これで終わるわけでありますけれども、せっかく大臣、初めに私がここで言ったそのことばの中で、二公社五現業に対しまして、昨日政府の了承に基づいたいわば有額回答を出した、このことは、私は今後の自主解決のためにいいことだ、こういうふうなことを前提にして、いまのような問題についてもこれを思い切って解決に踏み切ってもらいたい、それが春闘に見られる静かなる変化ともいうべきものと合致するのではないか、こういうふうに先ほど申し上げたわけです。いまの問題は結論を早く出してもらうことにして、今後春闘の問題について、大臣に、この機会ですから一つ二つだけ伺って終わりにさしてもらいたいと思うのです。  きのうの有額回答が出たということは、前年度のそれを基礎にして出されたのであって、これはもういままでよりも進歩である、このことは皆さんの努力の結果であるということで、私は高く評価するのにやぶさかではないのであります。私は、幸いにしてこういうような問題を自主解決の一つのチャンスにしておいてもらいたいし、そして、今後も自主交渉を続けることによって、いわば一つの当事者能力、こういうふうなものを存分に発揮させてやってほしいのだ、このことを強く要望しておるわけなんです。それが静かなる春闘に対する変化の前提になるのではなかろうか、こう思われるわけなんですけれども、きょう現在で一千組以上の民間の企業のアップ率は、金にして八千七百八円、そして一七・五%のアップ率である、昨年より平均して二千円以上が上積みになっておる、こういうようなことだそうでございます。私は、こういうようなことからして、有額回答をせっかく出して、去年並みに出されたというこの努力は高く評価する。同時に、民間がそれほどいったというこの事実を前にして、もう当事者能力を持って交渉しようとするものには、やはりそれに応じてやって、そしてここに新しい一つの慣行を生み出すようなこの努力は大事にするように指導してやってもらいたい、こういうふうに思うのです。去年並みに出された、これは私はほんとうに進歩だと思うのです。このあとは、全部それで打ち切ってしまって、あとは知らぬから、やりなさいでは、せっかくここで花をつくってそれを開かさないで終わってしまうおそれがある。せっかくここまできたのでありますから、あと一歩これに対する努力はひとつ今後も展開しておいてもらいたい、こういうふうに思うのですが、大臣、この際、大事ですからひとつあたたかい決意を聞かしておいてもらいたいと思うのです。
  203. 野原正勝

    野原国務大臣 三公社五現業は、前々から労使とも私のところへ参りまして、何とかして春の賃上げ問題は、ひとつできるだけ平和裏に話し合いでやれるようにしたいという話であったわけでございますが、何せ御承知のように当事者能力が従来は必ずしも十分認められていないという段階。それで御返事をしようと思っても、なかなかどうもそれがやりづらいということがございました。そこで先日、閣議のあとで、官房長官や大蔵大臣、企画庁長官などとも話し合いまして、この際やはり各責任者において責任のある回答を出すべきではないかということで、実は当事者能力を認めてやろうということにいたしました。その結果が、きのう実は朝から当事者能力として示し得る最大限の限度までの回答があったようでございます。そういうことで、この際、きわめて友好的に話し合いを進めていって、平和的に解決ができれば何よりだと思っておりますが、なかなかそうもいかない事情もあるようでございます。したがって、その際においては、やはり公労委の関係に話が移るというか、そこであっせんをいただくというような段階があろうと思います。おそらく当事者能力としまして、きのう出しましたのは、あれが限界だということでございます。どうも当事者の立場としては、なかなかこれ以上どうにもならぬということでございます。しかし、一応前年と同じだけ、非常に困難ではあってもその回答をしたということは一歩前進だと思います。そういう面で、これからの問題は、労使双方ともおそらく公労委のほうに持ち込むと予想いたしますが、そういう点でだんだん公労委のほうで両者の間をあっせんをし、最後の裁定を下すという段階になると思います。まだどういうふうになりますか、はっきりした見通しは立っておりませんが、厳正なる公労委のあっせんの結果が出ますれば、それを尊重して、すべてが、労使ともそれで御納得いただける。政府もそれを尊重して対策を講ずるということになっておるわけでございます。そういう段階でございまして、あくまでも労使双方の理解と協力によって、平和裏に友好裏に話し合いが進むということを期待しておるわけでございます。そういう段階でございます。
  204. 島本虎三

    ○島本委員 その平和裏に友好なる解決ということが一番いいところなんです。したがって、平和裏に友好裏にこれを解決するにはどうか。せかっく、いままで認めていなかった当事者能力というものを、ことばだけで内容のなかったものを、ことしようやく実質的に認めた。それが去年並みであった。そういうようなことであるならば、これはやはり自主解決、自主交渉によって解決するというのが一つの前提なんです。それを前提として認めたということになりますから、私は高く評価する。きょうの朝日新聞の論説を見ますと、大臣のとったいままでの結果は、まさに春闘に見られる静かな変化ではないか、こういうようなことさえいっているわけです。そうあるためには、やはりこれだけで今後おしまいなんだということではなくて、もう少し広げて、自主交渉でやれる範囲の見通しはできるわけです。なぜかならば、去年だけのやつを出してそれをことしの回答にしたら、本年も民間その他でどれほど上をったか、その幅が見えるはずです。調停、仲裁にかけたとしても、それに近いある程度のものは、いままでの前例によって期待できるわけでありますから、そうなりますと、その際は自主的な交渉並びにその当事者能力を認めてやって、その中で解決を来たす、こういうようなことがほんとうのいい慣行にもなるだろうし、大臣は、労働省としての立場が重要であると私どもが主張してきたゆえんのものはそこにあるということを十分考えていただきたいと思うわけであります。せかっくここまで来たのですから、もう一歩、それをかたくなに調停だ、仲裁だ、あとは向こうへ行ってやりなさいというのではなくて、せかっく出してきた案ならば、もう少し進めるように努力なさったならば、百尺竿頭一歩を進めるということになるのではないか。この努力をやってやらなければだめなんじゃないか。いまあなたが笑っておるようなにこやかな顔を労使のほうに向けてやってほしい、こういうように思うわけなんです。そこなんですよ。もうちょっとなんですよ。そこをどういうふうにお考えでしょうか。
  205. 野原正勝

    野原国務大臣 労使双方が自主的に話し合いをこれからもすると思いますが、きのう示しました回答は、あれが限界だというようなことを言っておったわけであります。したがって、どういうことになりますか、お互いに話し合いをしていっていただいて、最終的には、どうもなかなか話し合わぬということになりますと、公労委のほうにお願いするということになると思います。私どもがまだ出る幕ではない。最終的には双方の話を聞く場合もあろうと思いますが、いまの段階は、まだ労使双方でとことんまで話し合いを進めていっていただくという慣行をつくり、それを尊重していきたい。しかし、話し合いがつかない場合においては、やはり一つ機関である公労委のほうにお願いする以外にないということを考えておりますが、私は双方とも友好裏に話し合いを進めるということに対してあくまでも期待しておるわけでございます。
  206. 島本虎三

    ○島本委員 そこなんです。双方とも話し合いを進めていくように期待する、それでいいと思います。そういうように大いに指導してほしい。それで話がつかない場合にはというのですが、片や労働組合側では進めたいという意向がある以上、それはやはり進めさせるようにもう一段と努力してやってほしい、これなんです。決して無理じゃないと思うのです。そのような努力をするような決意をこの際持ってほしいのですね。あえてこれは攻撃するわけじゃありませんが、いま大事なときですから、かたくからを閉ざさないで——両方ともがんとしているならだめです。進んでもう少し話し合いませんかというように話し合わせるように、大臣として、いまの場合、これは交渉を進めさせるのがいいと私は思います。もうだめなんだ、もうあっせんに持っていきなさい、調停をやりなさい、仲裁をしなさい、こういうようなことでは形だけつくることになる。話し合いをやりたいという片一方からの申し出がある以上、やはりそれに応じさせるように、とことんまで話し合いをしたいと言っているのですから、片方からそういう申し出がありますから、もう少し努力してやってほしいと思います。決して私は無理じゃないと思うのです。両方ともだめだと言っているのじゃないのです。片方はやりましょうと言っているのですから、やわらかいじゃありませんか。そのやわらかい姿勢にはやわらかく応じてやる、こういうような態度でひとつ指導してほしい、こういうように思うのです。——うんうんというやつをことばに出してくださいよ。
  207. 野原正勝

    野原国務大臣 当事者能力を一応認めて、当事者からああした責任ある回答を出した、その段階まで私は実は思い切って話し合いを進めていったわけであります。したがって、そのあとのことにつきましては、当事者がどう考えるか、組合側と話し合いを進めていく以外にない。最終的には、どうにも話がつかないという段階の際においては、やはり交渉の機関である公労委の調停、あっせんをお願いするという段階になるわけでございます。ただし、その間にこっちは注目しております。話ができるだけ煮詰まるように慎重に注目しておるということでございまして、必ずやわれわれの期待を裏切らないようないい案が出るであろうと期待しておるわけでございます。
  208. 島本虎三

    ○島本委員 これで終わるわけですが、いい案が出ると期待しているというのは、あなたが胸を開いて、さあやりなさいと言わないと出てきませんから。そこなんですよ。せかっく出して、いわば雪解けだ、一つの静かなる進歩だ、こう思われるので、労働大臣として指導してやってほしいのです。かたくなにならないように、せっかく出してやって喜ばれるならば、もう一歩出して先のほうを見てやって、二千円ならばせめて千円くらい上げてやって——去年並みに出してやって情勢を展望する、こういうような考えでしょう。それはちびって出してやっているということですよ。そういう考えではなしに、今後もまだあるんですから、もっともっと閣内に話を及ぼすように、いい案を出してやるように、そして組合もこれをのむ意思があるようですから、そのチャンスじゃありませんか。それならば、せかっく民間のほうの出された差額が二千円だとするならば、もうすでに結論が見えたようなものじゃないか。大臣、そういうような点を十分胸に秘めて、この措置を誤らないように十分よく指導をしてやってほしいと思うのです。もう一回答弁してください。
  209. 野原正勝

    野原国務大臣 非常に微妙な段階でございますから、これ以上申し上げることは、何かと影響が大きい。とにかく双方とも納得のいくようないい結論が生まれることを期待しておるわけでございます。あくまでもそのことを期待し、かつ、今後の努力も時によってはいたしたいと考えております。
  210. 島本虎三

    ○島本委員 終わります。
  211. 倉成正

    倉成委員長 次回は、来たる五月六日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十一分散会