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1970-03-31 第63回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月三十一日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 小山 省二君    理事 佐々木義武君 理事 増岡 博之君    理事 粟山 ひで君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       有馬 元治君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    斉藤滋与史君       中島源太郎君    別川悠紀夫君       松山千惠子君    山下 徳夫君       渡部 恒三君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    長谷部七郎君       華山 親義君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       渡部 通子君    寒川 喜一君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         防衛施設庁労務         部長      長坂  強君         労働政務次官  大野  明君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君  委員外出席者         総理府特別地域         連絡局総務課長 岸  良明君         農林省農政局普         及部調査官   剣持 浩裕君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     中西 正雄君         労働省職業安定         局審議官    小鴨 光男君         建設省河川局治         水課長     岡崎 忠郎君         参  考  人         (大阪土木部         長)      牧野 文雄君         参  考  人         (株式会社熊谷         組副社長)   加納 倹二君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     島村 一郎君   箕輪  登君     池田 清志君   渡辺  肇君     河本 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   池田 清志君     箕輪  登君   河本 敏夫君     渡辺  肇君   島村 一郎君    小此木彦三郎君 同月三十日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     森田重次郎君 同日  辞任         補欠選任   森田重次郎君    小此木彦三郎君 同月三十一日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     佐々木更三君   藤田 高敏君     長谷部七郎君   山本 政弘君     華山 親義君 同日  辞任         補欠選任   長谷部七郎君     藤田 高敏君   華山 親義君     山本 政弘君     ————————————— 三月十九日  保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案  (内閣提出第九二号) 同月二十四日  衛生検査技師法の一部を改正する法律案内閣  提出第九五号)  勤労青少年福祉法案内閣提出第九八号)(  予) 同月二十七日  出産手当法案大橋和孝君外一名提出参法第  一号)(予)  労働基準法の一部を改正する法律案藤原道子  君外一名提出参法第二号)(予) 同月二十五日  療術開業制度復活に関する請願神田博君紹  介)(第一七四八号)  優生保護法の一部改正に関する請願外八十八件  (赤澤正道紹介)(第一七五〇号)  同外二百八十六件(左藤恵紹介)(第一七五  一号)  同外百九十五件(椎名悦三郎紹介)(第一七  五二号)  同外六件(塩川正十郎紹介)(第一七五三  号)  同外三百四十六件(澁谷直藏紹介)(第一七  五四号)  同外四件(渡海元三郎紹介)(第一七五五  号)  同外七十八件(古川丈吉紹介)(第一七五六  号)  同外八十六件(粟山ひで紹介)(第一七五七  号) 同月二十六日  日雇労働者健康保険改悪反対等に関する請願  (川俣健二郎紹介)(第一七八五号)  同(武部文紹介)(第一七八六号)  同(成田知巳紹介)(第一七八七号)  同(原茂紹介)(第一七八八号)  同(藤田高敏紹介)(第一七八九号)  同(堀昌雄紹介)(第一七九〇号)  同(小林政子紹介)(第一八五一号)  同(中澤茂一紹介)(第一八五二号)  同(藤田高敏紹介)(第一八五三号)  同(不破哲三紹介)(第一八五四号)  同外一件(松平忠久紹介)(第一八五五号)  同(米原昶紹介)(第一八五六号)  同(寺前巖紹介)(第一八七六号)  同(松本善明紹介)(第一八七七号)  同(北山愛郎紹介)(第一九〇九号)  同(中嶋英夫紹介)(第一九一〇号)  同外二件(門司亮紹介)(第一九四〇号)  労働者災害補償保険法改正に関する請願川俣  健二郎紹介)(第一七九一号)  同(武部文紹介)(第一七九二号)  同(成田知巳紹介)(第一七九三号)  同(原茂紹介)(第一七九四号)  同(細谷治嘉紹介)(第一七九五号)  同(中澤茂一紹介)(第一八四七号)  同(林百郎君紹介)(第一八四八号)  同(藤田高敏紹介)(第一八四九号)  同(松平忠久紹介)(第一八五〇号)  同(寺前巖紹介)(第一八七八号)  同(松本善明紹介)(第一八七九号)  同(北山愛郎紹介)(第一九〇五号)  同(小坂善太郎紹介)(第一九〇六号)  同(櫻内義雄紹介)(第一九〇七号)  同(中嶋英夫紹介)(第一九〇八号)  同外一件(門司亮紹介)(第一九四一号)  集団給食施設栄養士必置等に関する請願(小  坂善太郎紹介)(第一七九六号)  同(大野市郎紹介)(第一九一一号)  心臓病児者医療等に関する請願曽祢益君紹  介)(第一七九七号)  同(西田八郎紹介)(第一七九八号)  同(青柳盛雄紹介)(第一八三九号)  同(河野密紹介)(第一八四〇号)  同(中嶋英夫紹介)(第一九一三号)  同外一件(濱野清吾紹介)(第一九一四号)  同(天野公義紹介)(第一九四二号)  精神薄弱者手帳交付に関する請願北山愛郎君  紹介)(第一七九九号)  関東労災病院病棟閉鎖反対等に関する請願外  一件(山本政弘紹介)(第一八〇〇号)  同(寺前巖紹介)(第一八四二号)  同(田畑金光紹介)(第一八四三号)  優生保護法の一部改正に関する請願外十三件(  上村千一郎紹介)(第一八〇一号)  同外六十一件(大野市郎紹介)(第一八〇二  号)  同外七十件(木野晴夫紹介)(第一八〇三  号)  同(塩川正十郎紹介)(第一八〇四号)  同外百十二件(田中龍夫紹介)(第一八〇五  号)  同外百七十六件(千葉三郎紹介)(第一八〇  六号)  同外九十八件(西村英一紹介)(第一八〇七  号)  同外九十六件(松田竹千代紹介)(第一八〇  八号)  同外二百五十九件(森喜朗紹介)(第一八〇  九号)  同外八十七件(山下元利紹介)(第一八一〇  号)  同外百二十件(中山正暉紹介)(第一八五七  号)  同外十九件(野呂恭一紹介)(第一八五八  号)  同外二百三十六件(原田憲紹介)(第一八五  九号)  同外三百二十九件(中垣國男紹介)(第一八  八〇号)  同外四件(山口シヅエ紹介)(第一九一五  号)  同外八十一件(天野公義紹介)(第一九四三  号)  同外六百八十六件(岸信介紹介)(第一九四  四号)  同外百三十件(斉藤滋与史君紹介)(第一九四  五号)  同外四百六十九件(永山忠則紹介)(第一九  四六号)  民生委員関係費増額に関する請願外二十五件  (小坂善太郎紹介)(第一八四一号)  労働災害以外によるせき髄損傷障害者の援護に  関する請願外一件(田畑金光紹介)(第一八  四四号)  同(大橋敏雄紹介)(第一九三六号)  同(近江巳記夫紹介)(第一九三七号)  同外一件(田畑金光紹介)(第一九三八号)  労働者災害補償保険法の一部改正に関する請願  外一件(田畑金光紹介)(第一八四五号)  同(中村重光紹介)(第一八四六号)  同外一件(田畑金光紹介)(第一九三九号)  療術開業制度復活に関する請願中山正暉君  紹介)(第一九一二号) 同月三十日  労働者災害補償保険法改正に関する請願外四件  (大出俊紹介)(第一九九八号)  同(角屋堅次郎紹介)(第一九九九号)  同外三件(久保田円次紹介)(第二〇〇〇  号)  同(黒田寿男紹介)(第二〇〇一号)  同外三件(福田繁芳紹介)(第二〇四一号)  同(下平正一紹介)(第二一六二号)  日雇労働者健康保険改悪反対等に関する請願  外五件(大出俊紹介)(第二〇〇二号)  同外一件(角屋堅次郎紹介)(第二〇〇三  号)  同(藤田高敏紹介)(第二〇〇四号)  同(麻生良方紹介)(第二一六三号)  同(下平正一紹介)(第二一六四号)  同(曽祢益紹介)(第二一六五号)  心臓病児者医療等に関する請願(小金義照君  紹介)(第二〇〇八号)  同(小林政子紹介)(第二〇〇九号)  同(野田卯一紹介)(第二〇一〇号)  同(有島重武君紹介)(第二〇三六号)  同(多田時子紹介)(第二〇三七号)  同(中島茂喜紹介)(第二〇三八号)  同(山口シヅエ紹介)(第二〇三九号)  同(麻生良方紹介)(第二一七一号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第二一七二号)  同(小峯柳多君紹介)(第二一七三号)  同(永山忠則紹介)(第二一七四号)  同(古井喜實紹介)(第二一七五号)  同(三原朝雄紹介)(第二一七六号)  同(山村新治郎君紹介)(第二一七七号)  療術開業制度復活に関する請願外一件(始関  伊平君紹介)(第二〇一一号)  同(大原亨紹介)(第二一六六号)  同(永山忠則紹介)(第二一六七号)  同(保利茂紹介)(第二一六八号)  同(門司亮紹介)(第二一六九号)  優生保護法の一部改正に関する請願外一件(岡  崎英城紹介)(第二〇一二号)  同外百五十八件(竹下登紹介)(第二〇一三  号)  同外三十一件(森山欽司紹介)(第二〇一四  号)  同外十八件(八木徹雄紹介)(第二〇一五  号)  同外二百八十四件(大野市郎紹介)(第二〇  四二号)  同外五十件(木村武雄紹介)(第二〇四三  号)  同外百十一件(砂田重民紹介)(第二〇四四  号)  同外千二百三十二件(藤本孝雄紹介)(第二  〇四五号)  同外十三件(有馬元治紹介)(第二一七八  号)  同外一件(左藤恵紹介)(第二一七九号)  同外三十九件(田中龍夫紹介)(第二一八〇  号)  同外三十一件(野原正勝紹介)(第二一八一  号)  同外五十二件(長谷川四郎紹介)(第二一八  二号)  同(三原朝雄紹介)(第二一八三号)  同外十件(森下國雄紹介)(第二一八四号)  同外百十九件(渡辺栄一紹介)(第二一八五  号)  関東労災病院病棟閉鎖反対等に関する請願  (古寺宏紹介)(第二〇四〇号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願唐沢  俊二郎紹介)(第二一六一号)  民生委員関係費増額に関する請願伊藤宗一  郎君紹介)(第二一七〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。  大阪高潮対策事業における労働災害について、本日大阪土木部長牧野文雄君及び株式会社熊谷組社長加納倹二君にそれぞれ参考人として御出席願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉成正

    倉成委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  4. 倉成正

    倉成委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
  5. 小林進

    小林(進)委員 本日は出かせぎの問題について政府の御所信をお伺いいたしますとともに、その出かせぎに関連をいたしまして具体的に大きな災害が起こっております、その災害がどうして起こり、その問題について政府並びに関係者がどういう処置を講ぜられたか等の問題について御質問をいたしたいと思うのであります。  まず第一番目に、総括の問題といたしまして出かせぎでございますが、出かせぎということばは、申し上げるまでもなく、わが日本においては、江戸時代からすでに存在をしておったのでございまするが、今日と申し上げるよりは、この十年以来特に出かせぎ問題が大きく取上りげられておる理由が一体どこにあるのか、私はまず政府当局に近年における出かせぎの特徴について承りたいと思うのであります。
  6. 住榮作

    住政府委員 出かせぎの労働者状態でございますが、いろいろの数字がございまして、大体失業保険の季節的な受給者といたしましては、四十三年度の数字で申し上げますと、五十八万九千人でございます。それから、農林省農家就業動向調査等によりますと約二十一万、かなりの数字開きがございますが、私どもとしては、出かせぎ労働者というのはやはり六十万人程度でなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、そういった出かせぎ労働者就労先でございますが、建設業食料品製造業に大体四分の三程度就労しております。残りは、製造業その他になっておりますが、最近の状況を見ますと、製造業就労するものの数がふえてまいっておるのが一つの傾向として指摘できるかと思います。  それから、出かせぎ労働者就労地域の問題でございますが、大部分京浜地区とか中京地区阪神地区、そういう地域で六、七割のものが就労をしておる、こういう状況かと思います。  それから、最近は世帯主方々の出かせぎがふえております。と同時に、年齢的に申し上げますと、たとえば三十五歳以上の方々の割合がふえてきておる。いろいろ特徴がございますが、ごく大まかに申し上げましてそういうのが特徴点としてあげられるのではなかろうかと考えております。
  7. 小林進

    小林(進)委員 大体、職安局長は、自分の知っていることをみんな一気にしゃべられたという形でございますが、私は何もそれを全部お聞きしようというのではない。出かせぎの特徴は何かということ、徳川時代から続いておりました出かせぎがそのままの形態で来ているのかどうか、近来その形が変わってきているのではないか、その特徴は一体どこにあるのか、ということを私はお聞きしたのでございまして、あえて言えば、あなたの御答弁の中に、出かせぎが世帯主になっておる、あるいは年齢的に中高年に変わってきたこと等は、私の質問一端に触れられているものと解釈している。  私は、ひとつ皆さんにお教えをする意味において、出かせぎの特徴をここで申し上げてみたいと思うのでありまするが、まず第一に、出かせぎが大量化したということ。かつての出かせぎというものは、山村とか僻地における次男、三男主体であった。それもわずかでありました。ほんの貧農層あるいは低所得階層から出てくるという程度にすぎなかったが、それがいまでは平場地帯、大農村地帯を含めて、ほとんど全農村地域から出かせぎというものが多量に、いま言われました三つの工業地帯に進出をするようになってきた。それが第一の特徴でございましょう。  第二の問題といたしましては、いま言われたように、昔は次三男主体でありましたけれども、いまは世帯主中心で出るようになった。それから、その世帯主に次ぐあと継ぎ、長男というか、そういう農業あと継ぎをする、家庭、農業中心たる者が出かせぎに出るようになったというのが第二の特徴でございましょう。  それから、第三の問題といたしましては、出かせぎの期間が非常に長くなったということ。昔は大体酒づくりだとか酒屋奉公とかいうものを中心にして二、三カ月、長くても四カ月程度であったものが、現在はもはや六カ月、それ以上の長期の出かせぎが普通になってきた。特に、こういう出かせぎの地位を守らなければならぬ労働省が、失業保険問題等に関連してこれを締めつけていかれるものでありますから、そういう悪政のもとにも関連してだんだん出かせぎの期間が長くなった、これが第三の特徴でありましょう。  それから、第四の特徴といたしましては、出かせぎの仕事が日本高度成長化工業化につれて、かつて考えられない非常に危険な作業の中に働く、こういう現場作業がたいへん多くなったということが第四の特徴になりましょう。  第五番目といたしましては、これは古い時代と比較対照しての特徴ではないけれども、今日における他の労働者に比較して、出かせぎの特徴とせられることは、大部分が未組織ということ。そうして、低賃金で無権利状態である。自分たち権利を主張するような立場にもない無権利状態の中で労働を余儀なくされておるというのが出かせぎの特徴ですよ。まあ使用者の側にしましたら、宿舎の問題だとか、やれ手当の問題だとか、衛生保全の問題だとか、加給金の問題など、いろいろ言わないままに働いておるのですから、これほど使いやすい労働者などというものはあるものではない。  こういう特徴があらわれておるのでございますが、これに対して、この出かせぎの人員、これは、安定局長労働省の統計では五十八万有余、大体六十万程度とおっしゃっておるし、農林省関係では二十一万人、これは同じ国の行政を担当するものでありながら、省の中でこれほど大きな開きがある人員のとらえ方などというものは、出かせぎをおいてほかにないと私は思う。言いかえれば、いかに日本行政が出かせぎに対して冷淡であるか、無責任であるかという一端を、この数字のとらえ方においても明らかにしておると思うのでありますが、まずそれに至る前に、私は出かせぎというものの定義をひとつお聞きをしたいと思う。大野政務次官にひとつ出かせぎの定義をお尋ねいたしたいと思います。
  8. 大野明

    大野政府委員 定義と申しますと、いわゆるある一定期間自分の現在住んでおるところを離れて就労するということになるだろう、私はこういうふうに考えておりまするが、いずれにいたしましても、労働省としても、この出かせぎの定義というものに対して、私どもは今日までそういう考え方でまいりましたけれども小林先生とあるいは見解は違うかもしれませんけれども、私はそういうふうに考えております。
  9. 小林進

    小林(進)委員 実は、新進気鋭の副大臣だがら、あなたに恥をかかせようなどということはやめにいたします。しかし、実際にいって、いま政府当局の間に出かせぎの定義がまだ固定化していたいことだけは事実なんです。これは、私は政府の責任を糾弾したい一端でございまして、いまの大野次官説明をそのまま繰り返せば、ある一定期間、現在住んでおるところを離れて就労する、こんなのが出かせぎの定義などと言ったら、これは船に乗っているいわゆる船員は出かせぎか。あるいは外国官庁、公館につとめておる外国勤務人たちは出かせぎか。それは出かせぎという広義の解釈も成り立つ。そこで労働省農林省各省によってみんな定義の使い方が違ってくる。まずこれを一定しなさい。こういうことが、出かせぎ問題がさらに冷淡視されている根本の問題なんです。  この出かせぎの定義の問題は、ここで議論したら、限られた時間で際限がありませんから、これは各省において討議の上、最終的決定書面で私に回答していただく。委員長、これはあなたにひとつ要求いたします。出かせぎの定義書面によって私に回答していただく、委員長、これはよろしゅうございますか。
  10. 倉成正

    倉成委員長 処置します。
  11. 小林進

    小林(進)委員 委員長確約ですから、それでは、その次に話を進めることにいたしまして、まず定義もできていないという、こういう冷淡な行政が一九七〇年のわが日本にあるのですから、冷酷無情といわなければならぬ。  その次に、その人数でありますけれども人数——農林省お見えになりましたか。——そこで、労働省にお尋ねするのでありますけれども、六十万あるいは正確に五十八万とおっしゃるが、この出かせぎの数字をどういう形で掌握されたのか、その経路といいますか、数字の出どころを承っておきたいと思うのであります。
  12. 住榮作

    住政府委員 農林省数字は、御承知のように、農家就業動向調査というのを毎年やっておりますが、これは、先ほど政務次官から御説明ございましたように、一定期間住宅を離れて他に働きに出ている者、その一定期間を一カ月以上六カ月未満、こういうようにとっておるわけでございます。  それから、先ほど季節的受給者労働省で申し上げておりますのは、失業保険で九十日の失業保険受給資格がある者、これをとりまして申し上げたのが先ほどの数字でございます。要するに、六カ月から九カ月未満就労によって失業保険を受けに来る者の数が約五十九万、こういうようなことで、それぞれ調査定義によって数字が違ってくるということが一つ。  それから、農林省調査農家でございます。農家以外の漁業とかその他の方々の出かせぎは、農林省調査では含まれていない、こういうように考えるわけであります。
  13. 小林進

    小林(進)委員 私は、農林省の出かせぎの数字の中には農家が含まれていないというその点において、労働省農林省数字に差があることだけは、筋論として認めましょう、これぐらいの違いは。  その前に一つお伺いいたしたいことは、しからば一体、この出かせぎというもの、これを取り扱う主管官庁はどこですか。出かせぎというものを主として扱う、日本政府における主たる行政官庁はどこでございますか。——きまってないのだろう、おそらく。
  14. 住榮作

    住政府委員 私からお答えして適当かどうかわかりませんが、私ども職業安定局といたしまして出かせぎ労働者対策をいろいろ講じておるわけでございますが、それは、まず出かせぎ労働者職業紹介、こういう観点から出かせぎ労働者対策をやっておるわけでございます。出かせぎ労働者が、正しい就労経路を通じて正しく再就職ができるという観点から、安定所は、出かせぎ労働者のそういう目的のために市町村なり農協等とも連絡をとりまして、まず、正しく就職していただくというような観点から、この行政に取り組んでおります。  それから、そういった方々が工場、事業所に入られた場合の問題につきましては、労働基準局の所管になるかと考えておるわけでございます。
  15. 小林進

    小林(進)委員 私は、あとでまた数字の問題もいま少し詳しく承りたいと思っているのでありまするが、少なくとも、百万ないし百数十万に達する者が、一定期間、住居を離れて他に職業を求めて働いているということは、これは私は、日本行政の中でも相当ウエートを置くべき重大問題だと思っている。それを労働省の一局の職安にまかせておくだけであって、省としてこれに真剣に取り組むような形ができ上がっていないなどということは、それ自体が時勢の動きにマッチしない、日本行政がいかに貧弱であるかということの何よりの証拠であるといわなければなりません。省として取り組んでいることはないじゃありませんか、それでは。労働省の中の一局がこれを担当しているだけであって、省全般として取り組みができていない。労働省でいうならば、職安だけの問題ではないです。いま、工場に入れば基準局だとおっしゃったが、もしこれに真剣に取り組むならば、そこには労政もあるいは職業訓練もやはり省をあげて、全部がこれに取り組んでいかなければならない必要度がある。そういうことも何もでき上がっていない。ましてや、低米価政策や減反、減産で農民を痛めつけ、利用するだけ利用している農林省が、こういう重大な問題に対して、私の質問に際してここにもあらわれてこないなんというのは言語道断だ。そういうようなふまじめなことだから、至るところにこういう出かせぎの事故が起こったり、不祥事件が起きたり、痛ましい病気が起きたり、目をおおうような惨たんたる事実が累積をしているという結果になる。いけませんよ、そんなことは。だから、出かせぎの側から見れば、一体どこの行政でわれわれのめんどうを見てくれるのか、出かせぎに関する限りは、農林省労働省も、少しも責任ある体制を整えていないじゃないか、こういう悲憤慷慨の声が出てくるのも私は無理からぬことだと考えざるを得ないのであります。まず、いわゆる主管庁というものをこの際明確にしてもらわなくちゃいかぬ。副大臣、いいですか。これはあなたの仕事です。大いに次官会議等で発言をしてやってください。  次に、お伺いしますのは人数の問題、人数の掌握のしかたです。何でも完全なる行政を行なわんとするならば、まずその数字を確かめなくちゃならぬと思いますが、私はいま一回職安局長にお伺いします。あなたは、そういう形で六十万の数字をつかまえたと言うけれども、一体その数字が出かせぎとして完全無欠なものであるという自信をお持ちになりますか。いかがでございますか。
  16. 住榮作

    住政府委員 完全無欠なものとは考えておりません。いろいろ実態の正確な把握ということについては疑問点も持っております。そういう意味でさらに完全な把握を目ざして、来年度におきましては、出かせぎ労働者調査をひとつ徹底的にやってみたい、こういうような考えで予算にも計上してお願いしておりますので、予算化いたしますればそういう調査をやってみたいと思っております。
  17. 小林進

    小林(進)委員 スズメの涙ほどの予算が組んでございますわね。四億円でございますか、出かせぎ対策は。われわれに言わせれば、スズメの涙にもならぬような金で、この膨大な出かせぎの実態などというものをつかめるとは私は考えておりません。われわれの調査によりますると、出かせぎの大体の職場は、これは先ほども局長が、建設業だとか、あるいは食品だとか、最近は製造業のほうにもだんだん増加の傾向にあるとおっしゃったが、それらの職種の中でも、その職場を求めると、大体臨時工という名前、あるいは日雇いという名義で働いていて、しかもその規模はといえば、百人未満の企業が大半です。だから、実際に実情を調査してみれば、安全・衛生管理なんというものは、非常に劣悪な場所で大方の者が働いているということが一つ。  いま一つは、その出かせぎに行く経路が、職安を通じて行けば、いまあなたがおっしゃったように、その数字を掌握することができるだろうし、あるいはまた、失業保険をもらえば、失業保険を通じて数字をつかむこともできるが、職安を通じない縁故出かせぎ、あるいは自分が自由に職を求めて職業につくというような者は、一体どうしてこれをおつかみになりますか。つかむ方法ありますか。職安を通じないで縁故で行った、あるいは個人でみずから独立して職業を求めたというようなものをつかむことができますか。
  18. 住榮作

    住政府委員 御指摘のとおり、縁故なり広告募集等による就労の実態は、正確に把握できておりません。
  19. 小林進

    小林(進)委員 その数字は、あなたは推定どのくらいいるとお考えになりますか。
  20. 住榮作

    住政府委員 私どもの判断で、安定所を通じて就労する者の割合は約四割程度かと考えております。
  21. 小林進

    小林(進)委員 あなたのつかまれた六十万の四割というと、出かせぎは百万になりますよ。——百万にならぬかな。私どもは、両方合わして百万という勘定をしておりますけれども、その数字は別といたしまして、しかし四割という数字をつかめないままで放任をしておく。しかも縁故やその他で行かれる出かせぎは、むしろ職安を通じて行かれる方々よりも劣悪な状態にある。むしろ気の毒な状態にある。つかんでもらわなければならぬのは、われわれの側から見れば、むしろこちらのほうなんですよ。それをつかむことに対して一体どういう努力を講じられましたか、お伺いいたしたいと思います。放任のままならそれでよろしいのです。つかみ得ないからそのままにしておいたとおっしゃるなら、それはそれでけっこうです。
  22. 住榮作

    住政府委員 御指摘のように、私どもとしては、できるだけ安定所を経由して就労していただく、そういうことを徹底さしていくために、安定所も巡回相談その他いろいろのことをやっておるのでございますが、必ずしも手が十分及ばないということで、市町村とか農協等の団体とも十分連絡をとるような体制を現在進めておりまして、そういうような連携体制のもとに、できるだけそういう別のルートでの就労を少なくしていこう、こういうことで行政努力を続けておるわけでございます。
  23. 小林進

    小林(進)委員 いま局長がおっしゃったが、農協とか自治体の末端の町村等と連絡をとりながら実態の数字をつかもうとしているというこのお答えは、私は一つの進歩だと思います。これは間違いありませんか。もう一回念を押しておきますが、これはおやりになっておりますか、いま一回ひとつ……。
  24. 住榮作

    住政府委員 そういうようにやっておると思いますし、私どももそういう指導を続けてきておるわけでございます。
  25. 小林進

    小林(進)委員 若干自信のない答弁に変わりましたけれども、私は実はそれを言いたい。ああやって、一方には自衛隊などといって兵隊を募集するときには、いやだいやだと言う者までも兵隊にしようということで、末端の市町村までいくとみんな自衛隊募集でございますなんというようなポスターまで掲げて、そして市町村長を通じて自治体に募集の協力をせしめている。やはり私は、若干の募集費用は、町村というような末端まで全部届いているのだと解釈をいたしておりますが、ともかく兵隊の募集には、かくのごとく末端の行政機関まで全部動員して協力するような体制を整えているわが日本が、この出かせぎという、人間の生命や健康やすべてもろもろに通ずる重大問題について、こういう末端の地方行政機関までもきちっと動員をしながら、その数字をつかむという体制が一体なぜ整えられないのかということを私はお聞きしたい。私どもにとっては、自衛隊なんかの募集のために町村長まで使ってもらうことははなはだ迷惑だけれども、こういう出かせぎという重大な問題のために末端の機関を動員する、確かな数字をつかむために協力を依頼するというならば、その費用を国費でお出しになうても、私どもは喜んで御賛成をいたします。なぜそれをおやりにならないかというこのことをお尋ねしている。金が惜しいですか。いま一回この問題について御答弁をいただきたいと思うのであります。
  26. 住榮作

    住政府委員 先ほども申し上げましたように、必ずしも十分な体制が整っているというように申し上げられないかと思うのでございますが、そういう体制のすみやかな確立について一生懸命にやってまいりたいというふうに考えております。
  27. 小林進

    小林(進)委員 ひとついまの職安局長のお約束が、一日も早く実現することを私は期待いたしまして、次の質問に移ります。  現在農村の人口はなだれを打って減ってきております。農村における就業人口は、昭和三十五年には一千五百四十一万人が農業就労をいたしておりましたが、これは全就労人口の三七%、それが昭和四十二年には九百三十六万、全就業人口の一九%に減ってしまった。高度成長下における農村を痛めつけた転落の詩集であります。これは悲しむべき数字であります。それが、いま減産だの、減反だの、米をつくってもらっちゃ迷惑だ、米をつくる百姓は亡国の民だと言わんばかりの残酷非道の総合農政が行なわれることによって、この十年の間にはなおかつ五百万の農民が農村を追われるだろうと私は推定をするし、また政府農業政策もそのとおりだ。九百三十六万人でも多過ぎるのだから、これを少なくても——三十五年の農業基本法のときには六割農政といわれた。六割の農民を首切る。いまの総合農政は八割首切り農政だ。二割の農民にとどめよう、大体二百万戸、夫婦で働いて四百万、おそらくいまの残酷な自民党農政の十年後のビジョンは、二百万戸、四百万の農業就業者を農村に残して、あとは全部低賃金労働者で都会へ追い出そう、煙り出そうという政策だ。そこで一体、これから十年間に送り出されるこの五百万の現在の農業就業者、これをどこでどう受け入れるかという問題、私はこれが今日における国の行政の中で一番重大問題だと思うのでありまするが、大野政務次官、いいですか、三十五年のときには三七%も農業就業人口があった。それが四十二年に、わずか七年の間に一九%に転落した。この十年の間には、これがまた五百万人、農村から必然的に追い出される。これを一体どの省が受け入れるのです。この問題これは労働省をおいてほかにないでしょう。だから、政府のほうで農民首切り政策が進められるならば、一方には、これにちゃんと並行してこれを受け入れる総合的な労働対策というものを進めなくちゃいかぬ。労働省はこれに対して一体どういう長期の展望に立つ計画をお持ちになっているのかどうか、私はそれをお聞きしたい。
  28. 大野明

    大野政府委員 ただいま小林先生が御指摘の、昭和三十五年あるいは四十二年の農業就業人口、あるいはそれの全国的なパーセンテージと、また将来の展望に立って昭和五十五年度にはこうなるじゃないか、それに対して労働省はいかに考えておるかという御質問でございまするが、御承知のように、このたびの労働大臣野原先生は非常に農林通であります。大臣就任以来、農村方々のために非常に心を砕いておりまして、先生から言わせればあるいはおそまきかとも存じまするけれども、しかしながら、今日前向きの姿勢で——野原大臣就任後でありまするので、まだ長期展望、ビジョン等について確固たるものはつかんでおりません。また、その数字等、もちろんいま鋭意努力をし、検討しておるところでありまするが、農村労働対策室等を設けまして、近い将来先生方にわが省の気持ちの一端をお示しすることができると思いますので、もう少しの時間を賜わりたいと思います。
  29. 小林進

    小林(進)委員 これは、大野政務次官おっしゃったことに、実は私もある程度同感なんでございまして、言っちゃ悪いけれども、野原さんには労働行政においては期待することが一つもない。あの人はしろうとですから何もわからぬと言っても失言ではない。けれども、いまあなたがおっしゃったように、あの人は、確かに自民党の中における農政の大家なんだ。そうして、わが日本の長期の農林の総合政策等を自民党の中で立案されて、いまの百五十万トン減産、三十五万ヘクタールの休耕等の問題も、野原さんの原案から出ていると私は承っている。だから、あの人は、農林のエキスパートとして、また農民を愛する人だ、その立場において、こういう形になれば多くの農民が農村から追い出されるぞ、それをどう始末するかということも、農林通として野原さんは当然考えられていると私は思っておるし、またその点においては、歴代労働大臣の中でも一番真剣にこの問題に取り組み得る立場である。だから、その意味において、しろうとの野原さんであるけれども農村の出かせぎ問題、あるいは農村を首切られて出てくる農民のあと保護といいますか、アフターケアといいますか、そういう面においては、私は野原さんに非常に期待をいたしております。だから、きょう労働大臣がおられれば、この問題について徹底的に、胸をはたいて彼の所論を引き出すつもりでありましたけれども、あなたがいみじくも言われましたから、ひとつこの点は、大臣にもよくお話しをいただきまして、そして、そのうちには、そういう農村から追い出される農民の受け入れ態勢の立案計画をお示ししたいというお話でありました。これは私は非常に期待しておりますから——四十五年度の予算はもう終末に近づいておりますから、四十五年度の予算に組めということまでは申し上げませんけれども、少なくとも四十六年度の予算の中には、これが脚光を浴びて、りっぱに日の目を見るような施策を進めていただきたいということを、かたく私は御注文申し上げておきます。これはあなたが労働政務次官として就任している間の最も歴史的な事業ですから、大いにがんばってやってください。  そこで私は、その問題に関連をいたしまして申し上げますけれども、こういう出かせぎの問題や農村の縮小総合政策に対応するためには、労働省の機構それ自体もうんと改良せられ、これに相対応するような規模あるいは内容にまで高めていかなくちゃいかぬ。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、一人の農業従事者が農村から出かせぎに出てくる。最初は職安の窓口に行く、まずそこをきちっと法律的にきめてください。先ほど職安局長の言われた、きちっと職安の窓口を通さなければならないという強制的な法律をつくるのも、私は一つの案だと思う。まず正確に人数をつかみ、職業を与え、与えたら基準局に行って、その就労している場所が労働基準監督の立場から見て安全であるかどうか、また、職場に行って未熟練の農業従事者が働くに適しているかどうか、短期的に一週間や二週間の訓練をし、教育をしていけば、安全でもあるし、賃金も上がるということであれば、そこに今度は職業訓練局の問題が出てくる。訓練局通達でくる、そこには労政局も入ってくる。そういうように職安から、基準局から、職業訓練から、労政から、こういうふうに有機的に全部が動いて、この農村の犠牲者が完全に働き得るように、しかも五カ月ぐらい働いて帰るときには、そこにはちゃんと失業保険がついて回るという有機的な政策がついて回らなければならない。そういう体制が一つも出てない。職安職安で、求人の申し込みがあったところで、それが一体どんな衛生管理や基準行政が行なわれたかどうかもわからないで、求人があるからあなた行きなさいといってぽんと投げ込んでそれで終わりだ。労働基準局に至っては言語道断ですよ。そうして、働いている労働者は、一体どんな形で働いているかということをひとつも確かめようとする意欲もないじゃないですか。意欲がありますか。基準局長、舞台は回ってあなたのところに行ったんだ。ありますか。
  30. 和田勝美

    ○和田政府委員 小林先生からのおしかりでございますが、私どもといたしましては、監督官の全能力をあげて安全衛生、低賃金労働者の保護に全力を傾けております。その意味において、出かせぎ労働者の多いのは建設業でございます。全体産業としては一割二分の監督率でございますが、建設業につきましては三割をこえる監督を実施しておるということで、問題のあるところには私どももできるだけ力を結集してやっていきたいと考えております。
  31. 小林進

    小林(進)委員 ことばの上では何とでも言えるのです。けれどもあとでまた尻無川の問題にも入っていきますが、あなた方が建設業という危険な作業労働者の職場を守るという熱意を持っておやりになったとすれば、私は尻無川の惨事は起こらなかったという見解に立っている。そこに至る前に、この前も予算委員会で申し上げたように、日本事業所というものは二百七十万カ所ある。その中で、労働基準監督官というものは二千七百人しかいない。一労働監督官が千カ所の事業所を分担しておって、一体満足な監督ができますか。満足な監督ができると言えばあなたの言うことにうそがある。そこで、労働基準監督官が年間を通じて一体何カ所監督検査ができるのか、平均を承りたい。
  32. 和田勝美

    ○和田政府委員 全体といたしましては、事業場は先生御指摘のように約二百六十万でございます。それに対しまして監督を実施いたしております率は、定期監督及び申告監督全体を含めますと一一%強程度、現在のところそのくらいの監督を実施いたしております。したがいまして、監督実施率が数学的には非常に少ないということはお説のとおりでございます。しかし、最近におきましては、監督を実施いたしますのに、私どもも二十年以上の経験を持っておりますので、おおむね管内の事情は各監督署は十分に承知をいたしております。そういうことからいたしまして、問題のあるところに対する監督をやっていくということでこういうような率になっておりますから——もちろんそれで十分ではございません。四十五年度におきましては、わずかではございますが、監督官は七十五人の増員をさせていただきたい、こういうことで予算等が通りますれば、少しでもとにかく監督をふやして、率を高めていく、かように考えております。
  33. 小林進

    小林(進)委員 問題は、いまの基準局長の答弁の中にもあらわれておりますが、大体二百六十万、私は二百七十万だったと思うが、二百六十万と二百七十万、たいして差がない。その中でたった一一%だ。一割強の監督しかできない。あなたが言うとおり二百六十万を認めたところで、二百四十有余万カ所はそのまま監督もやれない、目も届かない状態に放任せられておる。そんな状態で、監督ができるなどということをあなたは大きく言われる。しかも、いわゆる監督官は、二十年も監督行政をやっているから管内の事情はよく知っている。これがよくないのですよ。管内の事情をよく知っているから、一一%くらいのいわゆる監督検査で十分だと言わんばかりのあなたの答弁だ。これは実にけしからぬ答弁である。問題になっている個所だけを調べていけばそれでいいんだ、そういったことをおっしゃるならば、私のほうでお尋ねいたしますけれども、一体あなたは、この二百六十万事業所の中で、労働基準法に基づく、いわゆる法令規則を全部の事業所で正しくやっているとお考えでございますか、いかがでございますか。基準法違反はございませんか。
  34. 和田勝美

    ○和田政府委員 全体といたしましては、もちろん基準法違反が全くないということは考えられないようなのが、実は監督いたしました結果出ております。もちろん、監督を実施いたしました事業所について見ますと、違反率が七割をこえております。ただしこれは、先ほどもお答え申し上げましたように、問題のあるところに向かって、私どもができるだけの監督をしむけますので、そういう状態でございます。そういう点は非常に残念なことでございますが、事実としては七割をこえる違反率があるということは事実でございます。  ただ、前提といたしまして、今日では基準法を守らないような事業所というのは非常に問題がある。そういうところには人も行かないというような気風が一般的になってきておりますので、全体としては全事業所をとってみれば、基準法の違反というのは、ある時期と比べれば、飛躍的によくなってきている、かように推定をいたしますが、事実問題としては、先ほども言いましたように、監督を実施いたしますれば、そういうような状態であるということでございます。
  35. 小林進

    小林(進)委員 私は、残念ながら基準局長の答弁には満足するわけにいきません。調査をした結果は、悪いところだけ見たのだが、平均七割の違反事実があがった、こういう答弁ですが、しかもこれは、あなた方の監督行政の中では、抜き打ち的にやられるときもあるけれども、事前に予告して公然とやられる監督もあるわけだ。それもひっくるめて平均七割、むしろいいほうですよ。われわれは二百六十万事業所を平均して七割五分の労働基準監督行政の違反があると思っている。これはけんかをすればどちらの数字が正しいか、私はけんかをしても自信がある。お役人なんか来ている間はへいこらして、ていさいよく言うけれども、すぐまたもとの段階に戻って労働者を搾取しているというのが現在の事業所の偽らざる実態です。そういう甘い答弁は、政府の与党の方々はお喜びでございましょう。この基準局長、話がよくわかる。経済成長のために労働者を搾取して、基準行政を曲げてでも働かせることを考えているから、ひとつ次の次官にもしてやろうと考えるかもしれませんが、われわれは労働者の立場というものから考えて、そういう答弁は断じて了承するわけにいかないのであります。しかも、せっかくわれわれのつくり上げた、あの建築業の宿舎云々という規則に基づいて、あなた方が大阪で検査されたああいう単純な宿舎だけでも、八割何ぼ違反をしているというのが皆さん方の数字にもあげられているではないか。調べれば調べるほど違反事実の数はふえても、パーセンテージの数は減っていることはないのだ。こういう明らかなる事実の中でも、なおかつ、そういう答弁を繰り返されているようなことは、私は絶対承服できない。労働基準行政に関する限りは、労働省ができてから何年になりますか、労働省創設以来二十一年か二十二年か、その中で労働基準監督官というものは一体どれだけふえましたか、ちょっと過去にさかのぼって数字を示していただきたい。  ちなみに申しますけれども労働省ができたときには、まだ日本事業所なんというものは、現在の六分の一もなかったと思う。働いている労働者は、まだ六百万か七百万という時代ではなかったかと思う。そういう時代労働基準監督行政というものができているのだ。今日三千万の働く労働者でふくれ上がっているときに、労働者の生命と健康と衛生を守ってくれる唯一のよりどころである労働基準監督行政が、この膨大なる労働者の増加に比例して一体どれだけふえていったか、数字的に示してもらいたい。
  36. 和田勝美

    ○和田政府委員 御説のとおり、日本の経済成長との関連から見ますと、実はたいへんなアンバランスになっております。二十三年度の数字がございますのでそれを申し上げますと、当時の適用労働者は約一千万をちょっと切れると思います。このときの監督官が二千四百八十一名、現在適用労働者は三千百二十万、倍率にいたしまして三・二倍の増加でございますが、監督官は四十五年には二千七百五十三名ということで八%ちょっとふえている、こういうことでございまして、適用労働者数と監督官の数字は、確かにきわめてアンバランスであるということは事実でございます。しかし日本は、国のそれぞれの産業の実態、社会の実態というものが、その間にはいろいろ変化をしてきておるわけでございます。二十三年ごろのわが国の状況を考えますと、いまでは基準法は守らるべきものだという意識が非常に高まってきております。そういう意味で、監督官の数がアンバランスな状態ではありますが、社会全体の動きの中から見ますと、私ども決して十分とは、もちろん言える数字ではございませんし、これからもできるだけ努力をいたしますが、この比率どおりにアンバランスであるということは、にわかに断定しがたいように思っております。
  37. 小林進

    小林(進)委員 ともかく、労働者が三倍に大きく増大したというこの数字はちょうだいをいたしましょう。それに対して、労働基準監督官がわずかに二十三年から今日まで二百余人しかふえておらない。二千四百八十名から二千七百余名にしかふえていない、こういうお粗末な状態であるというこの数字だけは認めましょう。  だが、社会の情勢は変わったんだから、何も監督官はふやさなくたって労働基準行政がうまくいっているかのようなあなたの答弁に対しては、私は断じて承服することは相ならぬ。なぜかならば、一体労働基準行政違反の事実が、現在も、あなたも言うとおり、調べてみれば、七割以上の違反があったというじゃないか、われわれのせっかくつくった建築業の宿舎に関する衛生安全規則に関する報告を見たら、八割以上も違反をしているというじゃないか、こういう違反行為や、基準法にさからうような違反が減っているから、労働基準監督官は要らないというなら、私は了承いたしましょう。また、もっと大事なことは、この職場に働いている労働者災害です。災害率は減っていますか。あるいは八日間休業以上の労働災害に痛めつけられている人々、四十万近くの数字というものは依然として横ばいじゃありませんか。年間を通じて六千人あるいは七千人、企業のもうけんかなにあおられて、とうとい労働者が、冗談じゃない、それだけの人間が毎年死んでいっているじゃないか。そういう数字がなくなったから労働基準監督官は減らしてもいいというなら私はのみましょう。人の命一つでも、人の命は地球よりも重いのですぞ。それが一年間で六千人も七千人も死んでいるというその数字は一体減っていますか。その中で労働基準監督の監督官をそんなにふやさぬでいい、減ってもいいというような、まさに暴言にひとしいといわなければならない。私は断じて了承することはできません。もしあなたが、私の言うことが気に入らぬのなら、この問題は留保しておきまして、いま一回労働大臣に、労働大臣がわからぬければ総理大臣佐藤何がし様に対決して、この問題を明らかにしていかなければならない。こんなにまで労働行政の冷酷な扱いのために、かくごのごとく被害者があらわれているという実情だけは、総理に私に訴えても問題の解明を基本的に考えてもらわなければいけない。独占資本家は、こういう労働基準法が正確に行なわれたり、労働基準監督官がふえたりしては、企業の成長にじゃまになるから、向こうの側からいわせれば、労働基準監督官をふやすことははなはだ迷惑でしょう。ですから、あなたの言うように、ことしは七十五人ふやしましたなんと言っている、そういう労働省のいわゆる管理者や高官は、企業者側はまことにこれは好ましいことだろうけれども、われわれは、労働者が毎年六千から七千なり殺されているというこの事実に照らして、断じていままでのこういうささやかな基準行政というものを認めるわけにはいきません。大幅に本質的にこの問題は取り組んでいただかなければならないと思います。  そこで私は、結論的に一つ申し上げますが、昨年の四月の、まだこれは原さんが労働大臣でおられたときに、やはりこういう出かせぎの問題が論ぜられた。そのときに、この出かせぎの問題は、今日過渡的、暫定的に終わるのじゃない、先ほども言うように、これから先将来さらに自民党の農業政策が続く限り、これは将来に向かってまだまだ大きく増大していく問題でありまするから、この際、いまの労働省がおやりになっている出かせぎ労働者の宿舎をちょっと手直しするとか、あるいは不払い賃金の問題を何とか下請の不払いを元請も責任を持つようにするとか、ささやかな手直し——その手直しもちっともうまくいってない。いってないが、そういう手直し程度のごまかしで問題が解決する問題ではないという、こういう切実な要求に対して、昨年の四月前後の社会労働委員会の中で、当時の原労働大臣は、出かせぎのための特別立法を考慮いたします、こういうことを確約せられておる。私はこのことばに非常に期待している。先ほどから申し上げますように、住居から離れて出るところから帰って失業保険をもらうところまで、立体的、総合的にそれを保護し守り抜くというためには、どうしても出かせぎのための特別の立法というものが必要であると私も感ずる。原さんは、いみじくも昨年の四月に、これを考慮すると言われていたが、その後、この大臣の答弁を受けて行政当局がどういうふうに作業を進めておいでになったか、これを承っておきたいと思うのであります。
  38. 住榮作

    住政府委員 先ほど申し上げておりますように、一つ就労経路を正しい路線を通っていくように、こういうことで現在下部なりを指導しておるわけでございます。そのためのいろいろな、たとえば出かせぎ前に講習会等を開きまして、就労の心がまえとか、それから法律知識の付与、さらに来年度は、安全に関する講習会を開くということで、三日間程度の講習も予定いたしておるわけでございます。と同時に、出かせぎ労働者が、できるだけ正常な雇用を、期間労働ではなくて、御希望があれば通常雇用につく、こういうことを奨励するために、事業主等に対しましては、通年雇用の融資制度の拡充とか、あるいは通年雇用奨励金の支給拡充というような方策を考えて、明年度はそういった対策をとろうといたしておるわけでございます。
  39. 小林進

    小林(進)委員 局長としてはその程度の答弁しかおできにならないと思いますが、政務次官、いま申し上げましたように、去年の四月に、前の労働大臣の原さんは、そういう出かせぎ対策を一貫して守るために特別の法律をつくることを考慮する、こういうお約束をされているのであります。その作業がどう進んでいるのか。もう一年たっているのでありまするから、相当作業は進んでいるものと私は判断してお尋ねしたのでありまするが、どの程度に進んでいるのか、ひとつ御答弁いただきまするとともに、大臣と相談をしていただいて、できていなければ、早急にそういう作業に入っていただきたい。いかがでございますか。
  40. 大野明

    大野政府委員 ただいまの御質問に対して、原大臣の当時のことでありますので、私も当時のことについてはつまびらかにいたしておりませんが先ほど申しましたように、農村労働対策というのは、全省各局にわたって総合的、抜本的な対策を練るということで鋭意作業を進めておる次第でございます。その中に、原前大臣の意向も含めまして現在検討いたしておるということなので、いますぐにその作業状態その他について御答弁申し上げることにはまいりませんが、きょうは大臣が参議院の予算に行っておりますので、また明日でも大臣とよく相談して、一日も早く御期待に沿えるような方法に持っていきたいと考えておる次第であります。
  41. 小林進

    小林(進)委員 特にひとつ野原・大野の大臣・副大臣のコンビにおいて、こういう重大な問題について画期的な実績をあげていただきますることを心からお願い、御要望申し上げます。  農林省の役人も来たようでありますので、ちょっと数字だけ聞いておきましょう。  いまの総合農政を続けてこれから十年間、われわれのことばでもって言えば、農村の首切りが行なわれているけれども、十年後に立って農村の人口の状態、就業農家の戸数と人口はどの程度と予想せられるのか、それだけ伺っておきます。
  42. 剣持浩裕

    ○剣持説明員 十年後と申しますと昭和五十五年の数字で申し上げます。農家戸数の見通しといたしましては、昭和五十五年に四百五十万戸程度というふうに見通されております。それから、農業就業人口でございますが、これは昭和五十二年の見通しがございます。農業生産の長期見通しというところで、五十二年の農業就業人口五百九十四万人というふうに見通されております。
  43. 小林進

    小林(進)委員 五十二年で五百九十四万人とおっしゃれば、それから三年過ぎた五十五年には、私が言う大体四百万というのもまあ遠からざる数字で、五百万前後の農民が低賃金労働者になって都会へ投げ出され、年々追い出されてくるという数字の見通しは大体間違いないわけです。  そこで私は、いままでにおける出かせぎ対策というものが、いかにいまの自民党政府の中で冷酷むざんに行なわれているかということを明らかにしながら、それを直していただくことを御要望してきたわけでありますが、この出かせぎ対策の無為無策の中で生じてきた具体的な惨状が、昨年、四十四年の四月一日に起こった東京荒川放水路における第二新四ツ木橋建設現場における悲惨な事件であり、それから半年もたたないうちに起きた例の大阪の尻無川の大水門工事における大惨事であるというふうに解釈をせざるを得ないのであります。  昭和四十四年十一月二十五日、尻無川の大水門工事において、一瞬にして十一名のとうとい労働者の生命が奪われていった。私は、こういう悲惨な問題は、本来ならば、もう直ちに国会の本会議に緊急質問として上程せられ、国会からは現場の調査に国会の代表が飛んでいく、これが通例でありますけれども、まことに遺族にはお気の毒でございましたが、衆議院総解散の直前でありましたものですから、この議会はその手続を踏むといとまがなかった、こういうことで今日に至っておるのでございますが、私どもは、こういうことを質問する前に、まずなくなられた御霊に対して心からなる弔意を表するとともに、いまも泣きぬれている御遺族のお気持ちというものを胸の中に引き起こして、私自身が気持ちを痛めつけられ、もう二度とこういうことを引き起こしてはならないという、こういう気持ちで、私は心の中で誓いながらこれから御質問を申し上げるのであります。何も特定の作業に従事した関係者を責めようなどというけちな気持ちで質問をするのじゃない。こんなことを再び繰り返すようなことがあってはならぬという、こういう気持ちで申し上げるのでありますから、ひとつ真剣にお答えをいただきたいと思うのであります。  まず第一に、これは荒川放水路の問題でありますが、労働省と建設省の調査団によって原因調査が進められていることになっているが、もう一年たっている。一体結論が出たのかどうか。これは尻無川じゃない、荒川のほうですが、一年たっておるのだから、結論は出ていなくちゃならぬはずでございますが、いかがでございますか。(「出てない」と呼ぶ者あり)出てないとは言えぬだろう。
  44. 和田勝美

    ○和田政府委員 現在私ども調査団から伺っているところでは、五月には結論が出せるのではないか、こういうように伺っております。
  45. 小林進

    小林(進)委員 実際被害を受けて死んでいる人の御遺族たちにとっては、その原因が那辺にあるのかということは一日千秋の思いですぞ。こういうことの結論をお出しにならぬところには、悪意の推定をやってはいけないというけれども、われわれはどうも勘ぐってものを考えざるを得ない。じんぜん日がたつのを待って、そのうちには不可抗力だなどといって、また軽くこれをごまかされていくのじゃないかという気持ちもするのであります。  五月とおっしゃるのでありますから、ひとつ五月の結論を待つことにいたしまして、次の問題の尻無川の問題でございます。一体、尻無川の工事の関係者はだれでありますか、まず関係者からひとつ承っておきたい。
  46. 和田勝美

    ○和田政府委員 尻無川におきます水門工事につきましては、大阪府が発注をされまして、工事を請負ったのが熊谷組でございます。なお、問題になりましたケーソン工事を現実に当時担当しておったのは若林工務店でございます。
  47. 小林進

    小林(進)委員 建設省からも補助金をお出しになっているのでございますから、その意味においては、建設省も若干この工事には関係をしているものと私は判断するが、いかがでございましょうか。
  48. 岡崎忠郎

    ○岡崎説明員 建設省は、ただいまの水門工事につきましては、大阪高潮対策事業ということで、河川局治水課の所管になっております。
  49. 小林進

    小林(進)委員 これは建設省の河川局の治水課でございましょう。だから建設省も関係しているのでございましょう。関係しているかいないか、私は聞いているのです。
  50. 岡崎忠郎

    ○岡崎説明員 関係いたしております。
  51. 小林進

    小林(進)委員 尻無川の工事の関係者は、建設省、大阪府、それからその工事の請負人である熊谷組と熊谷組の下請人である若林組、こういうことになるわけでございますけれども、この四つの関係者によって進められた尻無川の工事に対しまして、大阪労働基準局は何回工事の監督検査をおやりになりましたか。
  52. 和田勝美

    ○和田政府委員 この工事につきましては、四十三年十一月二十六日に一回、四十四年六月二十五日に一回、以上二回監督をいたしております。
  53. 小林進

    小林(進)委員 ちょっと聞こえませんでしたからもう一回私はお尋ねしますが、四十三年十一月一回、それから四十四年六月一回、こうおっしゃいましたか。
  54. 和田勝美

    ○和田政府委員 はい。
  55. 小林進

    小林(進)委員 この直接大惨事の事故に関係するケーソンの工事は四十四年の九月から始められて今日に至っておるわけであります。そして九月から始められて十一月の二十五日に大事故を起こしているわけでありますが、しかもケーソン工事に入らない前の予備工事といたしまして、態谷組は四十四年の六月から四十五年の二月の末、若林工務店の工期は四十四年八月から四十五年一月末ということになっております。一番問題のあるそういう大切な期日の中では、一回も監督においでにならない。私はそんな古い話を聞いているんじゃない。この工事が着手準備に入ってから、一体何回労働基準局が検査をおやりになったかということをお尋ねをいたしておるのであります。
  56. 和田勝美

    ○和田政府委員 たいへん失礼でございますけれども、いま聞き漏らしましたので、おそれ入りますが、もう一度お願いいたします。
  57. 小林進

    小林(進)委員 この惨事を起こした一番重大な工事、ケーソン工事が準備をせられ、着手をせられたその重大なる時期に、一体何回労働基準局は監督に行かれたか。そんな古い話じゃない。工事の準備にも入らないような古い話を私は聞いているんじゃない。その重大な時期に一体何回監督、検査に行かれたかということをお聞きしておるわけであります。
  58. 和田勝美

    ○和田政府委員 ただいま先生がお述べになっておりましたように、これを請け負ったのは相当前からでございますけれども、そのうちで、ケーソンそれ自体は、着工いたしましたのは、先生の御指摘になったように、四十四年九月でございます。先ほど申しましたように、四十四年六月にやっておりまして、九月以降につきましては、残念ながら監督をしていないという報告を受けております。
  59. 小林進

    小林(進)委員 あなた方は何か指令をお出しになりましたか。事業所は多いから重点的に、どういう事業所どういう事業所に重点を指向して監督をせよという指令をお出しになったはずでありますが、それは何業種でありますか、お尋ねをいたしたい。
  60. 和田勝美

    ○和田政府委員 私どもは、安全につきましては特別安全事業所というのを指定をいたしまして、それは本省としてはワクを示して、現地の各局がそれぞれ管内の実情に合わせて、そのワクの中で事業所を指定をして監督を実施しておる、こういうことでありまして、建設業につきましても、問題のあるところについては特別指定をやって監督をする、かように考えております。
  61. 小林進

    小林(進)委員 大阪労働基準局管内におきましては、このケーソンの工事は、それではあなたの言われる特別安全事業所の中に含まれていなかったわけでございますね。
  62. 和田勝美

    ○和田政府委員 この尻無川の水門工事を具体的に特別の事業所として指定をしておるかどうかについては、現在つまびらかにいたしておりませんので、調べて御報告を申し上げます。
  63. 小林進

    小林(進)委員 これは重大な問題でございまして、ともかく荒川といい、工事方法は違っておりましても、水の中に穴を掘って作業する最も危険な事業であることはわかり切っておる。しかもこの尻無川の工事は、世界でも一番大きな水門工事ともいわれておる。いままで日本にはないような、世界で一番大きな工事である。しかもその作業は、水の底を掘って脚をつくるという大工事なんです。その工事が、大阪労働基準局内における特別安全の事業所に指定されたかどうか、本省自体がまだキャッチしてない、出先の基準局に聞いてみなければわからぬなどということは、私はこれは重大問題だと思う。たいへんな問題だと思う。これだけ労働者の命というものが粗末に扱われているかと思うと、私は身ぶるいを感ぜざるを得ない。たいへんなことであります。こういう形式的な指令一本を飛ばしただけで、その指令が正しく実施せられたかどうかという追究が一つも行なわれていないという行政のあり方、私はいまのお話を承ると、こういう大きな事故を起こしたのは、大阪基準局だけではない、労働省本省自身も私は責任を持ってもらわなければならぬという感じをいま持たざるを得ないわけです。さっそく調査の上御報告をいただくといたしまして、次に移ります。  一体こういうおそるべき事故の原因はどこから出てきたのか、原因は何かということを承りたいと思うのであります。
  64. 和田勝美

    ○和田政府委員 先ほどのことに関連をしてちょっとお答えをさせていただきたいと思いますが、ケーソン工事につきましては、建設業全体の中では私どもとしては力を入れて監督をしておる工法の一つでございますので、調査の上でないと正確には申し上げられませんが、この事業所についてもそういう措置を講じておるのではないか、かように考えております。これは調査の結果を御報告申し上げたいと思います。  この尻無川のケーソン工事につきましては、ただいま先生の御指摘のように、非常にケーソンの工事としては大きな工事でございまして、いろいろ問題があってああいう結果が出たと存じます。現在私どもで科学調査団による原因究明をやっておりますが、現在の段階でわかっていることについて申し上げてみたい、かように思います。  それは、ケーソンロックの離脱による気圧の急激な低下による土砂の湧出が原因であった、かように考えております。現在の段階ではそういうことであります。といいますのは、ケーソンロックのところにあります接合部分のボルト等を調べてみますと、非常に鋭い力で切られたようなものが発見されますので、そういうようなところから、何らかの衝動によってケーソンロックのところが切れた、こういうような考え方で、現在調査団においてもいろいろと検討をされておる、そのように承知をいたしております。
  65. 小林進

    小林(進)委員 専門的なことになりますと私わかりませんが、いまのあなたのお話は、あれですか、地盤がやわらかいために急激に沈下を来たして、そのために事故を起こした、こうおっしゃるのでありますか。
  66. 和田勝美

    ○和田政府委員 そうではございませんで、大体ケーソン工法という工法は、そういうやわらかいところの土を漸次掘り下げていく作業でございまして、そのために、気圧を、この場合はケーソンの中の気圧は約三気圧でございますが、当時は二・何気圧、大体三気圧とお考えいただいてけっこうでございます。その気圧の力によってやわらかいどろが上へ上がってくるのを防ぎつつやっておりまして、その部分ではなくて、ケーソンの上に、人が通ったり物を揚げたりするシャフトと申しますか、ロックがございます。そこの部分の接合部分にあるボルト等に問題があったのではないか、それがゆれまして、ゆれると空気が入りますから、中にある気圧が急激に低下をする、低下をすると、気圧の力によって押えられておった土砂がわき上がる、こういう状態になりますので、ケーソン自身の沈下というよりは、現在の時点では、上のほうのロック部分の離脱、破損でございますね、そのほうが原因としては、いまの時点では大きいのじゃないか、かように考えております。
  67. 小林進

    小林(進)委員 そこで、その問題はまたあとでお伺いします。専門家がたくさんいますから、専門家の関連質問でお願いすることにいたしまして、労働省もお見えになっておる、建設省もお見えになっておる、大阪府もお見えになっておるが、一体この事件を不可抗力に基づく自然発生の事件であるとお考えになっているか、あるいは業務上の過失であるとお考えになっているか、それぞれお一人ずつお答えをいただきたいと思います。
  68. 和田勝美

    ○和田政府委員 この事件は私どもは現在の段階では、不可抗力であったとは言いにくいと思います。その詳細なことにつきましては科学調査団の結果にまちたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、ボルトが飛んでおるとか——ボルトの材質検査等をいまやっておるところでございますが、そういうようなことからいいまして、現在不可抗力説をとる段階ではないように考えております。なお、安全衛生規則違反が三点ほどございます。その点は検察庁に送検済みでございます。
  69. 岡崎忠郎

    ○岡崎説明員 建設省として申し上げます。  ただいま大阪府におきまして尻無川事故調査委員会をつくっておりまして、昨年の末にその中間報告が出ております。この中間報告の段階では、ボルトの強度あるいは締めつけ等についていろいろ問題がある、こういうものの管理に関して十分配慮が必要ではなかったかということが述べられておりますけれども、これに加わる外力、あるいは地盤の状況、その他そういう原因を誘発しました力関係については、さらに詳細な検討が必要でございまして、現在調査検討しております。そういう段階でございますので、ただいまお話しのように不可抗力あるいはそういう人為的な原因ということについては、まだ確定しておりません。
  70. 牧野文雄

    牧野参考人 お答えいたします。  事故の原因につきましては、ただいまも労働省、建設省からの答弁がありましたように、ケーソンの掘さくに使用されましたシャフトとロックの連結部が破損いたしましてこの事故が起きたものであるというふうに一応考えられておりますが、いかなる原因でここが破損したかということについては、最終的な結論がまだ出ておりません。したがいまして現在の時点では、不可抗力であるとかあるいは業務上の問題等につきましては、まだはっきりしておりません。そういう問題につきましては、労働基準局なりあるいは警察のほうで現在調査されておるように承っておる次第でございます。  以上でございます。
  71. 小林進

    小林(進)委員 それぞれの御答弁の中で、やはり労働基準局長の御答弁が私は一番的を射ておると思う。ボルトが勇断をした、あるいはボルトの材質に欠陥があったのではないか、そういう問題等がある。これは明らかに不可抗力の問題ではなくて、それはもうボルトも安ものを使っておる、それだからそういう事故が起きたということで、これは過失事件であるといわなければならないし、またボルトの締めつけが十分でなかった云々ということになれば、やはり安全衛生規則に違反する行為があったと見なければならない。そういう意味において、私はやはりこの問題は自然発生とか不可抗力などという問題で処理できる事件ではない、かように考えております。しかし科学調査団が科学的、専門的に調査中であるとおっしゃるから、何もしろうとがそれに介入いたしまして、それ以上深入りしようとは私は考えておりませんが、どうも建設省や大阪府などの御答弁の中には、土質の関係だのあるいは地盤の関係だのというような話に籍口いたしまして、問題を引き延ばしていくというような考え方——どうもそういうにおいなきにしもあらずでありますけれども、どうか問題は特に明確に、はっきりした結論を出すように、今後一そうの御努力をお願いいたしたい。  そこで、次にお尋ねをいたしたいことは、その科学調査団の結論も出ない、まだ結論的には自然発生か業務上の過失によるのかもわからないそういうさ中に、昭和四十四年一月十七日、作業停止命令を解除して再びその事業を行なうように命令をお出しになった。これは一体どういうことなのか。聞くところによりますと、工期に間に合わせるためにそういう原因不明のままに工事の再開を許したのであるというふうなことを承っておるのでありますが、これは一体どういうことなのか。聞くところによりますと、工期に間に合わせるために仕事を急げということを建設省から圧力を加えられた。それを受けて大阪府が請負人に強制をした。請負人はまた請負人の立場で、死んだのはやむを得ない、早くこの工事をやらなければ労働者が逃げてしまう、もうけ仕事もだんだんもうけが少なくなってくる、一日も早くやらにゃならないという、三者ともに、被害を受けて死んだそういう人たちやその家族のことも考えないで、もっぱらもうけ重点、工事重点、事業重点でこの仕事を再開したんだろうというふうにも承っておる。そこら辺にも実に冷酷むざんな、いわゆる資本主義の冷酷さというものをちらりちらり見たような感じがいたすのでありますが、再開を許可した真相は那辺にあるやを、明確にひとつお聞きいたしたいと思うのであります。
  72. 岡崎忠郎

    ○岡崎説明員 先ほど申し上げましたように、事故後直ちに調査委員会が設けられまして、この中間報告が十二月の二十六日に出ております。建設省といたしましては事故後直ちに工事の一時中止を指示してございますが、この中間報告によりますと、先ほど申し上げましたように、ボルトの品質の問題あるいは締めつけの問題等に問題があるように思われる、そういう問題に対するいろいろな配慮なり管理が行なわれておればこういう事故が防げたんではないかということで、ただそこに加わる外力につきましては、いろいろまだ不明な点が多いし、どうしてこういう結果になったかということは、ただいま申し上げましたように検討中でございます。ただ、この中間報告におきまして、必要な措置をとれば工事を再開してもよろしいという内容がございまして、これに基づきましてボルトの品質並びにボルトの締めつけあるいはロック、シャフトの艤装といいますか、建て込みでございますが、こういう処置を十分にいたしまして、事故が今後絶対に起こらないという配慮のもとに工事の再開をいたしたわけでございます。
  73. 牧野文雄

    牧野参考人 ただいま建設省から答弁がありましたように大阪府における事故対策協議会、これは京都大学、大阪大学、神戸大学の先生並びに関係行政庁で成り立っておるわけでございますが、これの十二月二十六日の中間報告の中に、今後の対策といたしまして、先ほど答弁がありましたようなボルトの必要な強度あるいは締めつけの適正化、ロック、シャフトあるいはその他のシャフトに対する安全管理等の問題が解決すれば再開に支障はないという中間報告が出ておるわけでございます。したがいまして、これらの中間報告に基づきまして、施工業者のほうで、一応ロックあるいはシャフトの改良、あるいは艤装の改良、もちろんボルトの取りかえも全部行なったわけでございます。そういうことで、この中間報告を受けて新しい方法で再開をいたしまして、現在全部所定の沈下を終わりまして、工事が終了いたしておる次第でございます。
  74. 加納倹二

    加納参考人 この原因につきましては、私どもといたしましてもいろいろ研究したのでございますけれども、十分はっきりしたことはまだ、現時点においては私ども真因がつかめておりませんで、先ほど建設省並びに大阪府の御関係の方のお答えがございましたように、目下調査中でございまして、その結果が判明しまして、私どもはそれに対する対策をして今後の施工はしなければならない、こういうふうに思っておるのですが、いまの再開にあたりましては、切れたそのボルトを非常に強力なものにする。もう一つは、事故が起こりましたその直後におきまして、どうしても一刻も早く犠牲になられた十一名の人を救い出さなければいかぬというので、どうしてこれを施工するかということにつきまして、そこで即刻考えまして、しかしながらこれは一刻も猶予ができないというので、まずボルトを非常に強力なものにしまして、そしてそれの救い出しにがかったのでございますけれども、残念ながら十一名のとうとい犠牲を出したことにつきまして、私どもはいま心から冥福を祈るとともに、御遺族の方に対しましては心から深くお見舞いしておる次第でございます。  そういうことで、救い出しの場合にそういうふうにしてやって、そこで救い出しもできた、そういうことから考えまして、ボルトの非常に強力なものを使うということがまず第一じゃないか、こういうふうに思いまして、そのボルトを非常な強力なものにするに従いまして、そのボルトといろいろ関連しましたシャフトのフランジとかその他もそれと同じような強度にいくような補強をしまして、そして再開にかからせていただいた次第でございます。
  75. 小林進

    小林(進)委員 私は、いま御三人の答弁の中でひとつ明確にしておきたい点は、中間報告が十二月二十六日に出て、その中で、中間の処置をとれば工事を再開してやってもよいという、こういうことであったから、それに基づいて再開に移ったと言われるのでありますが、この中間報告を出されたそのメンバーと、現在科学調査団と称して調査をやってまだ結論が出ないというそのメンバーと、一体同一なのか、メンバーが違っておるのか、それを具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  76. 和田勝美

    ○和田政府委員 私どものほうの調査団は四人お願いをしておりますが、そのうち一人の方が両方に、大阪府の調査団のほうにも入っております。ボルト関係は、いま伺いますと同じ方のようでございます。
  77. 小林進

    小林(進)委員 いま一回大阪府に、中間報告を出したその調査なんとか対策委員会のメンバーをお聞かせいただきたいと思います。
  78. 牧野文雄

    牧野参考人 京都大学の小西一郎教授、石原藤次郎教授、大阪大学の伊藤冨雄教授、京都大学の長尾義三教授、岩垣雄一教授、同じく京都大学の後藤尚男教授、神戸大学の西村昭教授、京都大学の白石成人助教授でございます。白石助教授が、労働基準局調査団と兼務されております。  以上でございます。
  79. 小林進

    小林(進)委員 お話によりまして、大阪府の委嘱に基づいて中間報告をお出しになったという学者、専門家のお名前は、ただいま承りました。これはもちろん間違いないでございましょう。学者でございますから、私どもしろうとが云々と批判する余地はございません。こういう専門家の先生方が客観的、公平な専門知識の立場に立って、工事を再開したらよろしいとおっしゃるならば、私はそれ以上この問題に対しては申し上げるわけにはいきませんが、ただここで労働基準局長にお尋ねをいたしたいことは、今月、三月九日、ここにいられる長谷部代議士を頂点とする一行の調査団が、大阪の基準局へ参りまして、基準局長と会われたときに、科学調査団の結論が出るまでは少なくとも自主的に工事を停止すべきではないかという申し入れをされたときに、大阪基準局次長は、十分肝に銘じて善処いたしますということを答えている。これは間違いがあったら、答えたか答えないか、長谷部さんもいられるのだから、これをひとつ……。  同時に、このことばを受けて、同じ三月九日の午後、大阪基準局は、その約束に基づいて熊谷組の代表を基準局に呼んで、これは口頭です、文書ではないが口頭で、自主的に工事を中止しないかという勧告をされた。そのときに熊谷組は、工期が間に合わぬのでといってその勧告を拒否せられたということがあるやに聞いているが、事実かどうか、この問題をひとつ具体的にお答えをいただきたいと思うのであります。
  80. 和田勝美

    ○和田政府委員 実は私ども労働基準法に基づきまして工事の停止を、大阪府や建設省などとも御相談をした結果でございましょうが、停止を十一月二十八日に命じております。そしてその後、再開を許可いたしましたのが、事故を起こしたもの以外——二つの水門がございますが、それについては一月十七日、事故を起こしたものにつきましては二月五日に、工事の再開を許可をしております。そして、それぞれのものができ上がりましたのが、早いのが三月五日、おそいのが三月二十二日に工事ができ上がりました。おそいものと申しますのは、事故が起きたケーソンでございますが、そういうことから考えますと、三月九日の時点とちょっとズレがございますので、ここで判断する限りでは、どういう言い方を大阪の基準局の次長が長谷部先生に申し上げたかは存じませんが、工事再開の問題に関する限り、ちょっとふに落ちないように思います。
  81. 加納倹二

    加納参考人 この件につきましては、私のほうの大阪支店長がこれの責任者でございますので、私が関係の者から聞いておる範囲内でございますと、圧搾空気の高い圧力が潜函の中に送り込まれておりますので、その工事を中止いたしますと、そのためにまたいろいろな事故が起こるということが非常に心配されますので、そういうことで、この工事を中止するのは非常にむずかしいことでございましょうというようなお答えを私のほうはしたはずでございます。それにつきまして、工期が云々ということは言っていないはずでございます。私はそういうふうに聞いております。
  82. 小林進

    小林(進)委員 若干のニュアンスの違いもありましょうけれども、やはり調査団の結論も出ないままに工事を再開されたということは、なくなられた方や遺族の立場、あるいはまた、こういう問題を二度と起こさないように厳格に禍根を断っていこうという一般労働者の願いというものを土足で蹴った、はなはだどうも軽率なやり方、むしろこれに悪意があるならば私は暴挙であると言わなければならぬのであります。特に遺族にとりましては、一日千秋の思いで調査団の結論を待っている。これが万一にも天災ということならば、そこで不運とあきらめもつこうが、これが人災であり業務上の過失であるということになれば、当然過失致死に基づく民法上の損害賠償の訴訟手続もしなければならない。あくまでも、このやるせない気持ちが心の中で落ちつくまで、この問題は追及していくまだ幾多の方法が残されておる。そういう訴訟の問題、賠償の問題、遺族の願望等すべてを未解決のままにしておきながら、ただもうけんかなの一点で工事を進めていくということは、私はどうしても了承できないところでありまして、こういうことは私は行政のあり方に厳重に警告をひとつ申し上げなければならぬのであります。  こういう災害を起こさないために、特に行政庁の労働省に私はお願いする。建設省にもお願いする。  一つは、まずこの原因を徹底的に究明する。これがまず第一です。  それから、こういうようなことが人災であるということならば、その責任者全部、建設省も含め労働省も含めて、過酷と思われるくらいの責任をしょってもらわなければなりません。  それから第三番目には、遺族に対して完全な賠償を行なっていただく。金銭をもってあがなえない悲しみでありますけれども、その悲しみをあがなうものはものしかないのでありますから、物質の面において完全に賠償してもらう。こういうことが完了せぬまでは工事を休止するという処置が私は絶対であると言うのでありますけれども、これはもうだめだと言う。いかにも残念千万であります。  最後に私はお尋ねをして関連の質問に入っていただきたいと思うのでありますが、遺族の補償は一体どうなっているのかというこの問題であります。  具体的にお伺いをいたします。熊谷組は遺族に対して何をおやりになったか。若林組は一体遺族に対して何をおやりになったか。大阪府は遺族に対して一体何をおやりになったか。建設省は遺族に対して一体何をおやりになったか。労働省はこの事故に対して、監督行政のあり方に対してどういう処置をおとりになったのかどうか。以上順次、私が申し上げた順序に従ってお答えをいただきたいと思うのであります。
  83. 加納倹二

    加納参考人 まず熊谷組といたしましては、私のほうの会社の内規に従いまして、最高額の三百万円を見舞いとして支出いたしました。それから若林工務店といたしましては、それに百五十万円出しました。そのほか香典その他葬祭料としまして一人二十三万六千円を支出しております。それからそのほか御遺族の宿泊とか往復の汽車賃その他雑費につきまして、三十四万円ずつお一人ずつに平均支出いたしております。  以上が現状でございます。
  84. 牧野文雄

    牧野参考人 大阪府といたしましては、葬儀にあたりまして、知事名で御香料をお供えいたしたわけでございます。  なお、施工いたしました熊谷組に対しまして、十分な配慮をされるように申し入れをいたしておる次第でございます。
  85. 岡崎忠郎

    ○岡崎説明員 大阪府の所管の事業でございますので、建設省直接では特にしておりませんが、工事の安全なり、それから遺族なりの給付につきましては、十分に配慮をするように指示してございます。
  86. 和田勝美

    ○和田政府委員 あの事故が発生いたしますとすぐ、大阪基準局に災害対策本部を設置をいたしまして、救助活動に対する支援等の措置をまず講じ、引き続いて、先ほどから申し上げております労働科学調査団を編成をいたして、現在調査活動を行なっております。  さらに尻無川の水門工事の全面停止を十一月の二十八日に指令を発しまして、関係のものについて全部の点検をいたしまして、原因、結果についてのいろいろの検討をいたしておりますが、先ほど建設省、大阪府から話のありましたようなこと等を勘案いたしまして、二月五日にケーソン工事の再開を許可した。なお、これは事故を起こしたケーソンでありまして、事故を起こさないものにつきましては一月の十七日でございます。  それから基準法に基づく送検の問題は、先ほどちょっとお答えをいたしましたが、安全規則関係で三点すでに確認をされておりますので、それについては送検をいたしております。それ以外のものにつきましては、基準局としてはケーソン工事全体に対する一斉監督を大阪府下について行ない、またケーソン工事を行なっております業者全般に対して、今度の事故にかんがみまして警告を発しております。  それから、今後本省のやりますことといたしましては、今後の事故原因が大体明らかになりつつありますが、これらにかんがみましてケーソン工事に関する法令上の措置が必要ではないか、こういう見地から、法令的な問題に対する検討を行なってまいりたい。  以上が監督関係でございますが、労災補償といたしましては、三月四日までに葬祭料は年間百六十六万円をお支払いをいたしております。
  87. 小林進

    小林(進)委員 一人について……。
  88. 和田勝美

    ○和田政府委員 いえ、十一人の方全部でございます。  それから遺族補償給付については前払い一時金制度がございますが、それを希望されますのが十一人のうち五人ございましたので、五人の方に対しましては七百六十九万円を三月九日までにお支払いをいたしました。
  89. 小林進

    小林(進)委員 五人で七百六十九万ですね。
  90. 和田勝美

    ○和田政府委員 はい。それから年金を希望されます六人の方に対しましては、支払い期日が五月が第一回になりますので、五月以降年金をお支払いをする、こういうことに相なっております。
  91. 小林進

    小林(進)委員 同僚議員諸君の関連質問がありますので、私はこれで一応質問を終わりますが、それについても、大阪府の御香料というのは一体幾らですか。内容を何もお示しにならないけれども、それでも一人に対して三百万円も入っておりましたか、お聞きをしておきたいと思います。
  92. 牧野文雄

    牧野参考人 大阪府といたしましては、こういうケースにおきまして最も適正であるという額をお包みしたように聞いております。
  93. 小林進

    小林(進)委員 気に入らぬね。ぼくは金額を聞いているんだよ、君。適正だの何だのと、そんな話を聞いているんじゃないんだ。幾ら包みましたかと聞いているんだよ。
  94. 牧野文雄

    牧野参考人 私、聞いておりませんので、わかりません。
  95. 小林進

    小林(進)委員 あなた、そう言ってくれれば、私は何も大きな声を出さなくてもいいんです。さっそく帰ったら、早急にひとつ幾ら包まれたか、お聞かせを願いたいと思います。私ども方々で聞いておりますけれども、こういうものは非常に微妙な問題です。あと始末に対して、大阪府のほうが少し冷淡であるという話もきいている。遺族の合同葬儀のときに、副知事が参列をした、参列してくれたのはけっこうだけれどもあとで、こういうような行事には副知事なんか出たことはないんだ、今度だけはまげて参列をしてやったんだというふうな、そういう捨てぜりふに似たようなことばも残しているやのことを聞いて、私どもは非常に硬化をいたしております。それが間違いであればまことにけっこうでございますが、御香料も含めて、そういう問題は早急にお知らせいただきたいと思います。
  96. 倉成正

  97. 川俣健二郎

    川俣委員 ただいまるるわが小林議員の質疑に対して、労働省その他当局側の考え方をわれわれ聞いてまいりました。私はこのあとも、せっかく大阪府のほうからおいでを願った参考人もおられることでございますので、同僚の議員の具体的な質問をしていただく前に、私は一言この委員会に、正式な社労委員会でございますので、委員長を通じて提案を申し上げたいと思うのでございます。質問ではございません。  出かせぎの労働問題は、私は単なる労働条件の意見交換、質疑応答ではなくて、もう人道上の問題になっているだろうと思います。当局は、担当官が少ない、監督官が少ない、どうにもならない、問題が起きたらそこを調べにいく。これでは——問題が起きないようにするのが、私は労働行政だと思う。そうでしょう、皆さん。私は先般の予算委員会の分科会、正しくは三月十二日の質問に対して、大臣の御所見、このような質疑応答がなされたということを御披露申し上げながら、提案申し上げるわけでございます。きょうは次官もおられることだし、当局側の局長さん方もおられることでございますから。それは、こういう初歩の段階の質問から始まりました。今日求人難だろうか、求職難なんだろうか。人を探し求める時代だろうか、仕事を探し求める時代だろうか。こういう非常に初歩であり素朴であるが、むずかしいような質問をした。人手がなくて企業がつぶれる。人手集めで、上野あたりは人狩りということで大騒ぎだ。片や毎日のように合理化、首切り反対闘争の旗の波がなびいておる。これを労働大臣はいかが目に映るか、どのような対策をとられるか。こういうことから始まった。さらに年々ふえる出かせぎ労務者というのは、いまの政府の施策にとって、特に建設、労働施策にとって役に立っておりますかという質問に対して、これは次官も聞いてもらいたいのですが、労働大臣いわく、出かせぎ労務者はたいへん役に立っております。その中でこういうことをおっしゃった。腕っぷしは強いが仕事には習熟していない、技能的、職能的という求め方よりも、出かせぎ労務者というものに対しては体力を買われるということで役に立っておりますと、こうおっしゃった。そのことばの底に流れているものが問題だと思う。私はそこで、大臣、一度でも出かせぎ現場というものを見て歩いたことがございますか。野原大臣は農林畑の方でございますから、そう質問した。そこで私の提案が始まるわけでございます。腕っぷしが強くて、技能的習熟的なものよりもむしろ体力を買われるんだ、こうおっしゃっておる政府高官方の考え方の底にこの事故の問題が起きるんだと思うのです。これは保安的に十分に監督あるいは点検をしなければいけないという考え方だと、私は思うのです。いま監督官があなたの職場を見にまいりますよという予告は、これはほんとうは違反なはずなんだ。法律のたてまえからいうと、予告して監督にいくというのは違反なはずだ。抜き打ちが当然なんだ。ところが、いま世に行なわれている監督のしかたというのは、それは課長同士のなれ合いかもしれませんが、いま何々監督官が参りますから、こういう予告で見にいく、そういう状態なんです。だから、問題が起きてから見にいくというさっきの局長の考え方にも、そういう考え方が流れておると思うのです。  私は鉱山会社におりました関係上、こういった出かせぎのような問題なんか全然ありません。出かせぎ日雇い労務者はものも言わない、盆暮れの手当も要らない、宿舎のそばにトイレがあろうが、文句も言わない。ただ黙々と日雇い賃金で、日給賃金で働く。この労働力だけが役に立っている、非常に重宝がられておるということなんだろう、私はこう思うのです。そこで私は、保安教育も必要だろうし、職能教育も必要だろう。さっき小林議員と向こうの答弁者との間に、ボルト云々の問題がありました。ああいった問題は、十分職能訓練、保安訓練を受けなければ防げるものじゃないのだ、ああいう事故は。やっぱり、このボルトはこれに対して弱いのだということを作業員みずからがわかるようにならなければだめだと私は思うのです。そういったような考え方で、私はこれは社会党の議員が野党だから追及するとかという問題ではなくて、党派を越えてというか自民党も一緒になって、社会党が中心になって、そしてこの社会労働委員会が出かせぎの現場を総点検をしようということを提案したいのです。そうでもなければ、毎年のようにふえていく出かせぎ労務者に対して監督官が全然ふえていないのですから、追いつけないのです。問題でもない数でございますから、委員長、その辺を委員長を通して次官に提案申し上げたいのですが、私の提案いかが処理されるか、考え方を伺いたいと思います。これだけが私の発言であります。
  98. 倉成正

    倉成委員長 ただいまの川俣君の御提案については、理事会でよく御相談したいと思います。
  99. 川俣健二郎

    川俣委員 次官の考え方もちょっと一言……。
  100. 大野明

    大野政府委員 ただいまの先生の御提案に対しましては、委員長から理事会で相談するというようなことでございますが、政府側といたしましても、もちろんそういうようなことについては前向きの姿勢で考えたいと思います。  私が建設委員会にいました当時、昭和四十三年八月十六日に飛騨川のバスの転落がありまして、これは治水関係でございますけれども、そういうようなことで全国に六万カ所もあるところをやろうという気概も示しておりますので、私どももそういうような気持ちでやっていきたいと考えております。いずれにいたしましても、これは委員会の提案でありますから、私どもはそれ以上申し上げることはできないと思います。
  101. 川俣健二郎

    川俣委員 ありがとうございました。終わります。
  102. 倉成正

  103. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいままで私どもの先輩である小林委員並びに同僚委員から、出かせぎの問題についていろいろ御質問があったわけであります。私は、この問題に関連いたしまして二、三お尋ねをいたしたい、こう思うわけであります。  御承知のとおり、世界最大級の大阪市の尻無川大水門工事は、大阪市民を高潮から守るということできわめて重要な工事であることは言うまでもございませんが、四十四年十一月二十五日、一瞬にして十一名のとうとい生命を奪うという大惨事が起きたわけであります。大きく世間に衝撃を与えたことは御承知のとおりであります。ところが、これほどの大災害が、ときあたかも解散、総選挙という政治日程のために、国権の最高機関である国会の場で取り上げる機会がなかった、こういうことで自乗四カ月経過をいたしておるわけであります。  私は、まず最初に、この事故原因についてお尋ねをいたしたいと思うわけであります。先般大阪労働基準局に参りまして、局次長並びにその他の関係係官といろいろ協議をしたわけでありますが、その中で、実はこういう文書を労働基準局からちょうだいをしてきておるわけであります。それによりますると、災害発生の状況でありますが、「当日十九時三十分頃、突然、ケーソンの片側が約一・二メートル傾斜沈下した。」ここが大事です。「又ケーソン上部のロックの接合部のボルトがとび、ロックはシャフトの横に落下した。」こういうぐあいにいっておるわけですね。ただいまの小林委員質問に対しまして、事故原因はボルトの材質が悪かった、あるいはボルトの締めつけが不均衡であった、これが事故の原因であるかのように説明をされておられるわけでありますが、との文書によりますと、地層の異常変化でケーソンが傾き沈下した、そのためにボルトが折れた、こういうぐあいに大阪労働基準局では世間に発表しておるわけであります。しかも去る三月二十七日に労働省からちょうだいした資料によりますと、ここにも「地層の異常変化でケーソンが傾き沈下し、その衝撃によってロックとシャフトの接合部にねじりがかかり」こういっているわけであります。ですから、この事故の最大の原因は、労働省の発表、大阪労働基準局の発表等から推察をいたしますと、地層の異常変化が今日の大惨事を起こした大きな原因になっておるやに私は見ているわけであります。  しかも昭和四十四年十一月二十八日に大阪土木部の高潮課が発表いたしました「尻無川大水門工事事故調査報告」が出ております。これも社会的に明らかにされたものであります。これによりますと、事故発生前はケーソンの刃口の位置は地下二四メートル二〇であったが、事故発生後のケーソンの刃口の位置をはかってみたところが、二六メートルあった、こういっているわけであります。したがって、大阪府が調査した中でも、約一・八メートルのケーソンの沈下がある。それから、労働基準局が発表したところによりますと、一・二メートルの地盤沈下によってケーソンが傾いて、その関係でいわゆる接合部が勇断した、こういうことなんです。これは重大な問題であります。ですから私は、この点をまず最初にただしておきたいと思います。
  104. 和田勝美

    ○和田政府委員 事故発生当時、大阪の基準局がすぐ現場に行きましていろいろのことを聞きました際に、一つの考え方として、先生のいま言われたようなケーソンの異常沈下によるシャフトの折損というようなことも考えられたわけであります。それは、いろいろな場合を想定いたしますと、ああいうものでありますから、ケーソンが異常沈下したような場合も考えられる。そういうことも過去に三例ほどございます。そういう事故のあったことも考えられますので、そういうこともあり得る。そうなりますと、設計の問題、いろいろな問題も出てくるであろう。しかし、その後の調査を漸次やってまいりますと、異常沈下が先にあったと想定できるかどうか、非常に問題になっておりまして、現在ではむしろ異常沈下とあわせて倒れたのか、異常沈下には関係なくて、ロックとシャフトのつなぎのところから折れたことによって、先ほど御説明したようなことで気圧が急激に下がったために下が折損をしてくる。ケーソンが一・八メートルあるいは一・二メートル下がってくる、これはああいう状態になってくれば当然ケーソンは下がってくるわけであります。だからどちらが先であるかということを断定的に申し上げることは、現在の段階ではむずかしいと思いますが、しかし、現在進められております調査の動向では、むしろ地盤沈下が先にあったということを考えるよりは、何らかの理由で上にあったロックとシャフトのところの折損のほうが有理なような状態が現在想定されますので、先ほど小林先生の御質問にはそうお答えをいたしました。しかし、いま長谷部先生がおっしゃいましたように、事故当時そういうことを大阪の基準局が申し上げたことはそのとおりであります。それから、労働省のほうでそう言ったじゃないか、それはこういうことが想定できるという条件の一つとして申し上げた、こういうことでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  105. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いま局長は、そういうことでお話をされていますが、私ちょうだいしましたのは三月二十七日ですよ。この日の午後にちょうだいをしたわけです。これはおそらくメモだと言って逃げられるのでしょうが、それによりますと、やはりここにも地層の異常変化でケーソンが傾き沈下した、こういっているわけです。ですから、事故発生当時じゃなくて、現時点で、地層の異常変化によってケーソンが傾いて沈下した、こういうことをいっている。そうすると、これはうそですか。
  106. 和田勝美

    ○和田政府委員 いまここにおります安全課長からお渡しした文書であるとすれば、三つの条件の中の一つとして考えていただきたいということでございます。三つ条件をおあげしていると思いますが、その中の一つにこういうことも考えられるということのようでございます。
  107. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それは御指摘のとおりイ、ロ、ハ、に分かれていますから、三つの条件の一つです。三つの条件の一つになっていることは事実です。しかし、私考えますに、第一項に書いておる問題、いわゆる地層の異常変化でケーソンが傾き沈下し、その衝激によってロックとシャフトの接合部にねじれが生じた。これが最大の原因であると思うのです。もちろん、ボルトの材質あるいはボルトの締めつけの欠陥、こういうものもあるには違いありません。が、しかし、一番の大きなねじれを生じた原因は、地盤の沈下だということを皆さんはいっているわけです。ですから、私はこれは事故原因としては見のがすことのできない大きな問題でありまするから、ひとつ念を押して承りたいと思うのです。
  108. 和田勝美

    ○和田政府委員 私どもは、いま先生のおあげになりました、地盤沈下によってロックのところが下に落っこっちゃったということを、断定的に否定も背定も申し上げられる段階では現在ございません。その点は、まあ私学調査団がおやりいただいておるところでございますが、先ほどから申し上げておりますように、現在、だからそのロックがシャフトの横へ倒れたという事実は具体的にあるわけです。それが一体何によってそうなったか、地盤沈下からくるものなのか、ほかの原因によってそれが行なわれたものなのか、それらのことについて断定的に申し上げられないというのが事実であります。だから、先ほどもお答えしておりますように、地盤沈下が先行したということをいま直ちに否定は申し上げられない。しかし、いまのところは、材質問題等について相当の問題があるということを申し上げておるのでございまして、断定的にここではっきりと、地盤沈下が原因でありますということを申し上げてはおらないわけでございます。
  109. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 まあ断定はできない、こう言っていますけれども、しかしこれは、もし地層の異常変化が予想されるということであれば、いつまたこういう大惨事が起こるかわからないわけです。したがいまして、そういった根本的な調査を、科学調査団の結論を得ないままに、私どもは、工事を再開させるということは、きわめて危険なことではないかということを指摘しておるわけであります。断定もしない、否定もしない、こう言っていますが、これは非常に大きな問題点だと私は思うのです。現にあなたはそう言いますけれども、この尻無川の事故が発生いたしまして以来、水門工事から約三百五十メートル離れました大和メッキという工場がございますが、その古い井戸から地下水が噴出をした、こういう事実があるではありませんか。それを大阪府では熊谷組に依頼をして原因を調査をした。ボーリングをやってみた。ところが、大阪府としては、これは尻無川の水門工事と同じ地層であって、そのケーソン工事の圧力によって地下水が湧出をしておるのだ、こういうことではっきりその原因を認めておられるわけですね。そこで、その地層をいろいろお聞きをいたしてまいりますと、その二四・二メートルの地層はいわゆる暗灰色の砂礫土である。地下水やあるいは空気の通っておる非常に沈下のしやすい地層であるということがわかっておるわけです。したがって、いろいろあなた方は、科学的に調査をしているとは言うものの、三百五十メートル離れた同じ地点で、すでにボーリングの結果、そういう非常に傾きやすい、沈下しやすい地層であったということが明らかになってきておるわけです。ですから私は、あなた方の調査はきわめて不十分だ、こういうことを指摘せざるを得ないのです。私はここに一番の大きな原因があるやに感ぜられるわけでありますが、この点いかがでしょう。
  110. 牧野文雄

    牧野参考人 ただいま地質の問題について御質問がございましたが、私たちは、このような大きな水門の下部構造を施工いたす場合には、十分に地質の調査をするわけでございます。したがいまして、マイナス二四メートル付近から粘土層から砂層になる、砂礫層になるということは事前からわかっておったわけでございます。しかもこの砂層は、透水性はございますけれども、地下構造物の地質としては非常に良好な地質でございまして、急激な沈下が起きるような地質とは逆でございます。したがいまして、われわれといたしましては、この事故のあとで、事故の犠牲になられた方の救出の際にも、ある程度の掘さくの土が出ておるわけでございますが、その土等から考えまして、地盤が急激に悪くなってケーソンが沈下したものではないであろうというふうな結論に、われわれ自身は達しました。したがいまして、どこに事故の原因があるかという問題は、シャフトとロックのところの破損による急激な気圧の漏洩によって沈下をしたものであろうというふうに推論いたしておるわけであります。ただいまおっしゃられましたごとく、約三百五十メートル離れたところから水が吹き出したということでございますが、これは昭和の初期に、その地点に製氷会社がございまして、井戸があったわけでございますが、何ぶん非常に古いことでございまして、現在のメッキ工場は、それ以来約三人くらいの地主が変わっておりまして、私たちがこの工事をやる場合に、かなり労力をあげて古い井戸の調査をした場合に発見できなかったわけでございます。したがいまして、この砂質の透水性のところへ圧をかけた場合に、その井戸から水が吹き出したというわけでございます。ケーソンの沈下、特に透水層を沈下する場合に、周辺の古井戸等から水の出ることは往々にしてあるわけでございまして、これらについては、この大和メッキにつきましては早急に処置をいたした、かような次第でございます。  以上でございます。
  111. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 事故の原因については、これは大きく議論の分かれるところであろうと思います。いずれ科学調査団がこの結論を明らかにしてくれるでありましょうし、また一方においては、捜査当局がこれを明らかにしてくれるであろうと私は思いますが、いずれにいたしましても、いま考えられることは、大阪府自体が地質の基礎調査をもっと十分に実施をしており、そうして科学的な調査に基づいて設計を組んでおれば、私はこの事故は未然に防ぐことができたのではないか、こういうぐあいに考えるわけであります。したがって、これは明らかに人災でございます。  そこで私、大阪府の方にお尋ねいたしたいことは、あれだけの世界最大級の大水門工事をやるにあたって、あなた方は何本のボーリングをされたか、この際承りたい。
  112. 牧野文雄

    牧野参考人 いまちょっと手元に資料がございませんで、しばらくそちらのほうで調べますけれども、ちょっとお待ちいただきたいと思います。
  113. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 この基礎調査、いまはっきりしない、こういうお話でございます。私はまことに不見識だと思います。事故原因のかなめになっておる地層の異常変化、それが国会で大きく問題になるということは、土木技術者である大阪府の土木部長さんであれば、おそらく常識としてこれは感づく問題であろうかと思うわけです。参考人としておいでをいただくにあたって、そういった基礎調査がどれだけ行なわれたかもわからないで御出席をされるということは、私はまことに遺憾だと思う。われわれの調査した範囲では、この水門工事の基礎調査には七本のボーリングしか行なわれていない。あれだけの大工事で、しかも軟弱な地盤であるということは、長年の経験から指摘をされておりながら、わずか七本のボーリングしかやっておらない。しかも中央ケーソンの部分についてはボーリングが全然なかったというような話も承っているわけであります。ですから、これは明らかに大阪府自体の基礎調査、設計のミスによるものではなかろうか、こういうぐあいにいまのところ推定をするわけでありますが、これに対しまして土木部長の御見解を承りたいと思います。
  114. 牧野文雄

    牧野参考人 たいへん失礼いたしました。この尻無川の水門につきまして行ないましたボーリングの数は十本でございます。なお、中央ケーソン付近では三本行なっておりまして、そのボーワングの結果、私たちが承知いたしております地質と、現在もう工事が竣工しておりますが、掘さくされた地質とはほとんど変わりがなくボーリングのとおり掘さくされているわけであります。  以上でございます。
  115. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いまのような経過が事実だとすると、これは尊重したいと思います。  次に承りたいことは、いわゆる中央ケーソンを入れていく場合に、土質が非常に軟弱なために、施工者である熊谷組あるいはその下請である若林組が、安全について絶えず議論をしておった、こういうぐあいに承っておるわけであります。安全の面や地盤が軟弱なために技術的にも非常に心配される、こういうことで技術者の方々は絶えず議論をしておって、いわゆる大阪府の工区長の指揮下に入ってこのケーソンの沈下をさせておった、こういうぐあいに聞いておるわけです。施工者がそれだけ心配をし、技術的にも、安全の面でも心配をする。技術的にも疑問がある、こういう問題を絶えず心配しておった。しかも大阪の施工の現場の工区長の指揮下に絶えず指導をいただいてやっておった、こういうことになっておるようでありますが、この点はいかがですか、熊谷組にお尋ねをしたい、こう思うわけであります。
  116. 加納倹二

    加納参考人 私のほうとしましては、どんな作業におきましても、人命の尊重ということを第一条件といたしましてすべての事業を遂行しておる次第でございまして、おのおの現場におきまして、安全につきましては日夜十分打ち合わせ、そうして心配をする。この心配をするということが、安全を確保するということに結んでまいりまして、あらゆる場合に、どういうところに欠陥があるか、どこに事故が起こりやすいかということを心配しながら進めておる次第でございます。  そういうようなことで、この尻無川におきましては、ニューマティックケーソンでもございますし、この施工法は、従来私どもが施工しておりますし、また日本の請負業者がすべてやっているようなそういう施工法で、請負業者としては、普通の施工法でこれを施工しておったのでございまして、そういう地質その他に対する心配と申しましても、それは施工ができるとかできないとかいうようなことではなくて、これをいかにして安全に施工するかということを心配しながら施工しておったのが事実でございます。しかしながら、それにもかかわらずこういう事故を起こしたことは、私どもとしては非常に残念に思っている次第であります。
  117. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に、労働省にお尋ねいたします。基準局長が急がれるようでございますので、労働省のほうから入ります。  私どもは、こういった潜函工事——これは昨年の四月には荒川の新四ツ木橋でもこういう事故が起こっているわけです。当該事故発生の潜函工事については、私はいまだに工事の再開を許可しておらない、こう承っておりますが、その点はいかがでしょう。
  118. 和田勝美

    ○和田政府委員 新四ツ木橋の工法はケーソン工法ではございませんで、リングビーム工法で、どちらかといえば非常に新しい工法ということでございまして、あの事故が起きましたときに、建設省のほうで全国的にリングビーム工法で行なっているのを全部一時停止いたしまして、安全を確認してから工事の施工を許した、あるいは施工の方法を変更してケーソン工法にしたということでございます。ケーソン工法につきましては、これは実はいま態谷組のほうからお話しございましたが、日本の土建業界にはもう明治時代から入ってきておりまして、ケーソン工事については、どちらかというと非常に安全度が高い、おそらくこういう気持ちで業界では扱っておりますし、私ども安全を担当しております者から見ましても、ケーソン工法は、大体いままでは事故も非常に少ない、皆無とは申しませんが、非常に事故の少ない工法だ、かようにいままでは考えております。
  119. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に、私はこれからの問題もあわせまして、考えをただしておきたいと思うことは、労働省では尻無川の事故が発生した直後に、原因究明のために科学調査団を設置しまして、根本的な原因の究明に入っておるということについては、よくわかっておるわけでありますが、そこで、この科学調査団の最終結論が出ないうちに、いわゆる労働省の判断によって中間報告といいますか、中間的な判断によってこの種の事業を再開させる、停止命令を解除する、こういったことは、私は社会的にも与える影響がきわめて大きいと思うのです。いわんや、まだ労災補償については十分完了しておらない。遺族に対する補償の問題はまだ完全に済んでおらない。科学調査団の最終結論も出ておらない。こういう形で、こういった社会的に大きな衝撃を与えた事故を、簡単に中間報告によって再開させるということは、私は道義的にも許されない問題ではなかろうか、こういうぐあいに考えるわけであります。幸い再開した中央ケーソンが完成をした、こういうお話を承ってほっとしているわけでありますけれども、今後こういった事故を未然に防止していただかなければならないことは言うまでもありませんけれども、不幸にしてこれに類するような事故が発生をしたというような場合には、やはり行政官としては十分慎重なる態度をとるべきではないか、こういうぐあいに考えておるものでありまするけれども、この点、今後のためにも、ひとつ労働省の見解をただしておきたい、こう思うわけであります。
  120. 和田勝美

    ○和田政府委員 ただいま御指摘をいただきましたように、こういう大事故が発生いたしましたあとの処置のしかたにつきましては、先生御指摘のとおり、十分なる体制と万全の自信を持って初めていろいろの措置を行なうべきでございます。そういう意味からいたしますと、尻無川につきましては、十一月二十八日に工事停止を命じまして、科学調査団の御検討もいただいて、先ほど建設省や大阪府のほうから御報告がありましたが、大阪府のほうで編成された調査団の中間報告も出ましたし、私どものほうも、調査団に一応安全の問題について確認をいたしまして、先ほど申し上げましたように、抗張力のあるボルトに取りかえるとか、シャフトの動揺を防ぐための機械を設けるとか、あるいはバケットを小さくして衝撃をシャフトに与えないようにするとか、その他万般の措置を講じさせた上で、これならばいけるだろう、こういう結論に達して初めて工事の再開を許可する。しかも関係者にはそれぞれ異論のないような状態のもとで行なわれた、かように私ども報告を受けております。もちろん、地盤沈下という問題が前提としてはっきりいたしておりますれば、土質検査というようなことを当然やらなければいけないと思いますが、先ほど大阪府の土木部長から話がありましたような事実もございますし、それらを考え合わせまして、今度の場合は、安全にできるというような当時における結論に達しまして、一月の十七日に工事再開を許した、こういうことでございますが、この具体的な尻無川の問題でなく全般的な問題といたしましても、先生の御指摘のとおりの気持ちで行政姿勢を正してやってまいりたい、かように考えております。
  121. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいまの局長の答弁で了解はできますけれども、あれだけの大惨事を起こして、社会的衝撃を与え、迷惑をかけておきながら、いつの間にやら、国民が知らない間に、お役所だけの判断で事業がどんどん再開されていっておる。そのあと始末、根本的な事故原因の究明については、何ら国民の前に明らかにしないままにやるというようなこと、その実態について私は今後御留意をいただきたい、こう思うわけであります。  なお、引き続きまして補償の問題についてお尋ねいたしますが、尻無川に関係いたしました十一人の補償については全部お済みかどうか、その点まず承りたいと思うのです。
  122. 和田勝美

    ○和田政府委員 基準法及び労災保険法に基づきます措置につきましては、先ほど小林先生にお答え申し上げましたように、年金支給の方を除いては全部終わりました。実は年金は五月が一回の支給になりますので、五月から年金支給を始めます方が六人おられます。あとは法律的措置に基づきますものは全部終わりました。
  123. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私の調査に間違いなければ、私どものほうの把握では、現在二名の労災補償はまだ済んでおらない、こういうぐあいに承っておりますが、その点いかがですか。
  124. 和田勝美

    ○和田政府委員 労災保険法に基づきましての補償は、六人の方の年金支給を除いては全部終わっていると思いますが、いま先生の御指摘のは、労災保険法以外の問題としてのいろいろのものが、まだ当事者の間でいろいろお話し合いが進んでいるように伺っておりますので、そちらのほうではないかと存じますが、これは関係者の方にお尋ねいただきたいと思います。
  125. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 これはあなた方のほうの調査が不十分じゃないかと私は思います。よく調査をしていただきたいと思うことは、この中に韓国籍の方が二名おられるわけであります。この韓国の国籍の二名の補償問題も含めて解決になっているのかどうか、再度お尋ねをいたしたいと思います。
  126. 和田勝美

    ○和田政府委員 ここになくなった十一人の方のお名前と、それぞれの措置を書いたものをいま見ておりますが、これによりますと、先ほど小林先生にお答えいたしましたように、年金の支給を望まれる六人の方に対する措置はまだできておりませんが、それ以外は全部葬祭料、前払い金そういうものは手続としてできておるようにこの資料では考えております。
  127. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 あなたのごらんになっておる資料は私もちょうだいをしておりますが、それは紙の上では解決したようになっているかもしれません。しかし実際問題として、故石川一郎君の御遺族の補償、それから故明村相吉君の御遺族の補償についてはまだ済んでおらない。こういう調査になっておりますが、はっきり答弁願いたい。
  128. 和田勝美

    ○和田政府委員 いまの石川さんと明村さんは前払い一時金を希望しておられまして、石川さんには百三十八万三千二百円、明村さんには百二十五万五千円、三月九日にはお払いをしておる。これは日が三月九日かどうかは別でありますが、三月九日までにはお払いをしておる。葬祭料につきましても、石川さん十三万八千七百四十円、明村さん十二万九千百四十円、これは三月四日までにお支払いができておる、こういう資料でございますが、なお確認をさしていただきたい。
  129. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 これはあなた方はきわめて不勉強だと私は思うのです。確かに労災法から計算をして補償額を出していった場合には、そこにお手元にある資料どおりの金額になるでしょう。ところが、この石川さん、明村さんはいずれも国籍は韓国なんです。したがって、御承知のとおり韓国籍の方々については、いままでの例から見ますると、いわゆる戸籍上の確認とかあるいは請求の手続は、そう簡単にいかぬのですよ。したがってあなたが、できたできたと言っているけれども、これはできるはずはないのです。もしできたとするならば、どういう方法でやったのか、お示し願いたい。
  130. 和田勝美

    ○和田政府委員 いま申し上げましたように、金額も一応確定しておりますし、国籍のほうの関係は、遺族のあれがなかなかむずかしいことも事実でございます。この報告では、先ほど申しましたように、前払い一時金については三月九日、葬祭料については三月四日までに払ったとしてございますが、しかし現地の基準局について調査をいたしてお答えを申し上げます。
  131. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 現地の基準局で調査することもけっこうですよ。もし払ったとすれば、これは内地におられる方に払ったと思うのです。もし将来、正規の受給権者が請求をしてくる。こういった事態になった場合はたいへん混乱するのじゃないですか。そこら辺は明確にされておられるのかどうか。あるいは、承るところによると、もし将来正規の正当の受給権者が発生した場合は、熊谷組に一切の責任をなすりつけるという、熊谷組の責任において解決つけなさいという条件を大阪労働基準局では言っておる、こういうことなんです。
  132. 和田勝美

    ○和田政府委員 私ども、お支払いをしました限りにおきましては、いろいろのデータの上に立って判断をして、これが正当な受給者であろうという判断で支払いをいたしております。ただ、もちろん、間々実はあとでこちら側が優先順位になる、こういう方がある場合についての請求権は、別にそれで消滅するわけではございません。なお、いま熊谷組が責任を持てと大阪の基準局が言ったような御発言でございましたが、そういうことは万なかろうと思いますけれども、なお調査をして申し上げたいと思います。先生からの御発言でございますので、調べてみませんとわかりませんが、普通私ども、そういうことを他人さまに押しつけることもございませんので、一応は御否定申し上げておきますが、調査はさしていただきます。
  133. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に、熊谷組にちょっとお尋ねをいたします。  この工事を請け負われまして大災害を起こしたわけでありまして、たいへんお気の毒に存じているわけでありますけれども、はっきりお尋ねしておきたいことは、施工者として、今度の事故の原因についてはどういうぐあいに御判断されておられるのか、まずその点を承りたい。  それから第二点は、補償の問題でございますが、あれだけの大事故ですから、補償額も大きくなることは当然だと思います。しかし、私どもの経験では、熊谷組が会社の内規に基づいて三百万、若林工務店が百五十万という見舞金を出されたということは、建設業界におけるこの種の事故の補償金としては、見舞金としては、私は最高であったというぐあいに判断をしております。したがいまして、その点につきましては敬意を表するにやぶさかでございません。しかし、若林、熊谷合わせて四百五十万という見舞金、これは自動車事故や、あるいはその他の人身事故に比べました場合、必ずしも十分なものではない、私はこういうぐあいに考えるものでございます。  そこで、私承りたいのは、これだけの社会的な衝撃を与えた事故でありまするから、熊谷組として何らかの措置を今後お考えになっておられるのかどうか。まずこの点を承りたいのです。  さらに、今回の四百五十万で一切が片づいたとお考えになっておられるのか。今後とも遺族の問題についてもっとお考えの余地があるのかどうか。どういう御見解でおられるのか。この点ひとつ承りたい。
  134. 加納倹二

    加納参考人 いまの第一の問題でございますが、原因につきましては、先ほどもお答えしましたように、私どもとしましては、従来の施工法で施工しておったのでございます。それがあのような惨事を起こしたということにつきましては、この原因を熊谷組自体としてもいろいろ研究もし、調査もし、いろいろな点でやっておりますけれども、現在はっきりしたものは出てこないのでございますが、ちょうど現在御当局のほうでいろいろ調査班の方々がお調べをいただいておりますので、その結果に基づきまして私どもはこの原因をはっきりしていきたい。  それから、次の問題、将来はこのニューマティックケーソンの工法におきましては、私どもはその原因その他を勘案いたしまして、絶対に間違いのない施工をやっていくという信念でございます。  それから、第二の問題の遺族に対する見舞金、これにつきましては、私どもはいち早く社内で、こういう作業で犠牲になられた方々は、原因のいかんにかかわらず、まことにお気の毒である、こういうことにつきまして、いまさっきも申し上げましたような見舞金を差し上げたわけでございます。しかしながら、先生のいまの御質問もございましたように、これにつきましては、あるいは子弟の方とか、またはその遺族の方々のいろいろな面のお世話、こういうことはもちろんでございますが、なおそのほかに、この金額に対しましては、社内でもう一度十分打ち合わせまして、そしてまた、下請とのいろんな関係もございますので、そういう点も十分打ち合わせたい、こういうふうに思っておりますので、ここでどうするということを私、いま急には申し上げられませんが、そういうことでひとつお打ち合わせをさしていただくということで私のお答えとしたい、こう思います。
  135. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それに関連して承っておきたいのは、この補償金の問題をめぐりまして、昨年の十二月十七日ごろ、熊本県の御遺族に対して、実印を貸していただきたい、こういうことで係官が出向しておるわけです。そうして、その印鑑を約三カ月近く熊谷さんのほうで保管をされておられる。その間に、三百万と百五十万、合わせて四百五十万で示談にしてくれないかということで、その印鑑が示談書に盗用されておるという事実があるわけでありますが、この点はどういうぐあいにお考えになっておられるのか、承りたい。
  136. 加納倹二

    加納参考人 この印鑑の問題につきましては、印鑑を預かっておったということは私どもも報告を受けております。その預かっておったのは、若林工務店が何か御当局に対するいろいろな手続とかその他があって預かっておった。しかしながら、それはお返しをした、そういうことで、いまおっしゃったような、印鑑を盗用したというようなことは、私どもは存じておりません。
  137. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 熊谷組の人間と称する者が、熊本県出身の遺族の実家に十二月十七日におじゃまをしているわけであります。そうして、労災補償の手続上必要であるので実印を貸していただきたい、こういうことで印鑑を持ち帰られた。幾ら待ってもその印鑑が届かない。たまたま私ども大阪におきまして西日本の出かせぎ者大会を開くというその前後、三月の二十五、六日ごろ、この印鑑が返送されておるわけであります。ですから約二カ月半、この印鑑がおたくの会社の中に置かれておるわけであります。そうして、百五十万と三百万でひとつこの問題は示談にしてくれないか、こういう形で処理をしたやに承っておるわけでありますが、この点、印鑑をどのように使われたのか、それをお知らせいただきたい。もし示談書に捺印をしておらないとすれば、どういうために二カ月半、約三カ月近く実印が熊谷組に保管されなければならなかったのか、この点を承りたい。
  138. 加納倹二

    加納参考人 ただいま私、その事情が詳細にわかりませんので、さっそくその詳細を調査いたしまして御報告申し上げたいと思います。
  139. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 これはいずれもう一回機会をつくりましておいでをいただきましてお尋ねをしたい、こう思っておりますので、きょうは時間もございませんから、この辺で終わりますけれども、最後に私、政務次官にお尋ねをいたしたいことは、この種の労働災害は、昨年の四月の荒川の新四ツ木橋事件といい、今回の尻無川事件といい、非常に大きな事故だと私は思うのです。したがって、こういった建設技術工法にかかわる問題であるだけに、やはり労働省だけでこの問題の判断というものは、事故原因を究明するにも非常にむずかしい問題ではなかろうか。したがって、この際、できれば国会の中に、社会労働委員会の中でもけっこうですが、調査委員会なるものを設けて、根本的な原因の究明をやるべきではないか、こういうぐあいにも考えております。と同時に、政府におきましても、これは建設省、労働省と一緒になって、早くこの事故の原因究明ができるように対策を急ぐべきではないか、こういうぐあいに考えるわけでありますが、御見解を承りたいと思うわけです。
  140. 大野明

    大野政府委員 ただいま先生の御指摘の点につきましては、事故発生直後からすでに調査団等をつくっていま究明のさ中であり、先ほども申し上げましたように、この五月にはその調査の結果が出るわけであります。まあ、おそいといえばおそいわけでありますが、いやが上にも慎重を期するためには、多少の時間は必要かと思います。  なお、調査委員会設置の問題、これは私どもが申し上げるべきではございませんので省略いたしますが、政府部内においてということはさっき申し上げたようなことであると同時に、私も建設委員会にずっと所属いたしておりましたので、四ツ木橋のときのことも十二分に理解いたしておりますが、この点についてもいろいろな角度からの検討が必要である。四ツ木の場合には、いわゆる工法も違うんでありますけれども、このときには潮流の関係等が非常に大きく作用したということもあり、そういう点、いろいろな角度から原因を究明してやっていく。しかしながら、その点前向きの姿勢で可及的すみやかに、今後災害が起こらないことがわれわれの最大の目的でありますが、もし不幸にして起こっても、もっともっとそういうような各省間の関連というものを強めてやっていきたいと考えております。
  141. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 終わります。
  142. 倉成正

  143. 華山親義

    華山委員 ちょっと伺いますが、去年の四月一日に、いま問題になっておる新四ツ木橋の問題があったわけであります。その当時、いまと同様に本会議でも委員会でも問題になった。そうして、そのときに、あの工法によるものは中止を命じたということでございました。いま五月とおっしゃいましたが、その結論の出るまではあの工法によらないものであるというふうに了解しておったわけであります。ところが、私が決算委員会で聞いたところでは、多少の補強をしてあの工法によってやっている、こういうふうなことでありましたので、たいへん私は不満に思っておったのでありますが、先ほどの局長の答弁では、あの工法はやっておらないというふうな答弁に私には聞こえた。どっちがほんとうなのか、言っていただきたい。
  144. 中西正雄

    ○中西説明員 リングビーム工法につきましては、建設省と労働省双方で委員会を設けて、相互に連絡をとりながら調査を進めているわけでございますが、建設省側の委員会からは中間報告が出ているようでございます。  リングビーム工法のその後の施工の状況でございますが、御指摘のとおり、あの事故がございまして全国的に全部工事をとめまして、それから安全を確認して、問題のないものについては再開したところもございますが、ほとんどは工法を変更しております。リングビーム工法を改めて、従来の二重締め切りの方法をとる、あるいはケーソン工法によるという、要するに工法を変更したものが大部分でございまして、私はっきり数は覚えておりませんけれども、一部、全く安全だ、もう工事がほとんど終わっているというようなものにつきましては、その後その工法で工事を完成したということを聞いております。
  145. 華山親義

    華山委員 しかし、あの事故を起こした新四ツ木橋のあそこの場所は、あの工法で継続したのでしょう。
  146. 中西正雄

    ○中西説明員 その後、新四ツ木橋の問題の工事につきましては、十分な補強をやりまして工事を再開したということでございます。
  147. 華山親義

    華山委員 ですから、先ほどの局長のおっしゃったことは間違いなんです。だから私は、あれを聞いておりまして、それは間違いだと言っておる。大体、あの工事は全国的にまた再開しておるのでしょう。それを非常に不満だと私は思っていた。先ほどはもう全部ほかの工法に変えたような御答弁だったから、関連質問をいたしたわけであります。大体、労働省はよく認識していてもらわなければだめですよ。
  148. 倉成正

    倉成委員長 牧野加納参考人には御多用中御出席いただき、ありがとうございました。  質疑を続けます。古寺宏君。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  149. 古寺宏

    古寺委員 防衛庁はおいでになっておりますか。最初に、海外の米軍基地の縮小あるいは撤廃ということにつきましては、アメリカの政策でございますが、わが国におけるところの米軍基地の縮小、撤廃計画はどういうふうになっているか。また、今後における米軍基地の取り扱いに対する基本的な考えはどういうふうになっているか、承りたいと思います。
  150. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 御承知のように、三月になりまして米陸軍長官が上院で証言をいたしておりますが、その内容は、要するに日本にあるアメリカ陸軍の補給所、こういったものは段階的に廃止をして沖繩のほうに集中するという言明をいたしてわります。また翌日、米国防長官は、海外基地の縮小整理ということを言っております。しかしながら、こういったアメリカの方針に基づく具体的な在日米軍基地の縮小というのがどういうことになるのかという個々の内容につきましては、まだ通報に接していない。しかしながら、今後そういった方向で日本にある米軍の基地は縮小されるであろうということはいえるかと思います。  また、この基地の縮小整理の問題についての日本政府の方針といたしましては、地位協定にもございますように、不要になったものあるいは遊休のものにつきましては、当然これは返還を求める。それからまた、米軍にとって必要ではあるけれども、周辺の都市計画その他との競合関係から見て、他に移転することが好ましいというようなものにつきましては、米側とも協議の上で所要の予算を計上して他に移転をさせる。あるいは、今後の基地のあり方としまして、米軍の基地はできるだけ自衛隊の管理に移すというようなことにつきましても、現在具体的に検討しておる、こういうようなことでございまして、われわれとしては、今後基地というものはあくまでも、合理的な配置のもとに使用すべきであるという前提のもとに、いろいろな面から検討いたしておる、こういうことであります。
  151. 古寺宏

    古寺委員 青森県の三沢基地は、そうした他の基地の縮小計画とはうらはらに、三月十七日の新聞によりますと、ベトナムから偵察機の一個中隊が三沢に移ってまいっております。これは逆に拡大の方向をたどっておる、そういうふうに私どもは考えるわけでございますが、これはどういう理由によるものか、また、今後さらに三沢の基地が増強されるようなそういう事情が何かあるのか、御説明を承りたい。
  152. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 お話しのとおり、三月十七日以降三沢の飛行場に米軍機が十八機ばかり配属されたということでございます。これはおそらくベトナム戦争の縮小に伴う配置がえであろうかと思います。この三沢飛行場の使用の状況につきましては、これまでにも部隊の移転等によりまして使用頻度が変更をするという例が間々あったわけでございますが、いまの御指摘のように、最近使用頻度が高くなっておるということは、これは事実だと思います。しかしながら、といいまして、この飛行場を拡張するというような計画は、いまのところわれわれ全然聞いておりません。飛行場の規模としましては現在のままである、このように承知をいたしております。
  153. 古寺宏

    古寺委員 次に、水戸の射爆場の問題でございますが、この移転先が、当初は新島に移転する、こういう話がございましたけれども地域住民の反対のために、その計画を変更して、青森県の三沢基地の天ケ森にこれを移転するというような報道がなされております。この点につきましてはどういうふうになっているのか。また、日米合同会議にこの問題について何か懸案になったことがあるのか、そういう点について承りたいと思います。
  154. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 水戸射爆場の移転問題につきましては、当初新島に移転をするということでいろいろ検討いたしたわけでございますが、民間航空路との関係その他の理由によりまして、これが非常に困難であるというようなことから、昨年の九月九日の閣議におきまして、三、四年内にこの水戸の射爆場の移転を実現をする、その際、移転地としましては、新島に固執しないという旨の閣議決定がなされたわけでございます。こういった現在までの動きがあるわけですが、この閣議決定をする以前におきまして、いろいろ移転候補地を検討した際に、三沢の対地射爆場が一応検討の対象になったということは事実でございまして、このことは昨年の二月の衆議院予算委員会において有田前防衛庁長官がお答えしております。しかしながら、その後米側ともいろいろ折衝しました結果、この三沢の射爆場は横田の飛行場からあまりにも距離が遠い、その他いろいろ米側の示しております条件と照らし合わせますと、三沢の射爆場は水戸の代替地としては不適当である、こういう結論になっておりますので、水戸の射爆場を三沢に移すという可能性はないものと、われわれ判断いたしております。
  155. 古寺宏

    古寺委員 この天ケ森の対地射爆場の使用問題につきましては、三沢市との間にこの三沢基地内の空軍司令部所管の対地射爆場として使用する、こういう同意のもとにこれを使用しておったわけでございますけれども、現在におきましては、松島あるいは八戸海上自衛隊あるいは北海道の千歳、こういうところの自衛隊機もこれを使用しておるわけでございますが、その問題につきましては三沢市とどういう話し合いになっておるか、承りたいと思います。
  156. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 三沢の対地射爆場は、地位協定に基づいて米軍に提供しているわけでございますが、この射爆場を自衛隊も使用するということにつきましては、ここ数年前から事実上米軍の管理権のもとに米軍の承認を得て使っておったわけでございます。しかしながら、これがかなり長期になる、それから使用の度合いもかなり高いというようなことから、地位協定の二条四項(a)に基づきまして、合同委員会で正式に合意をして使用を認めるべきである、こういう問題が出てきまして、私どもとしましては、青森県庁関係の市町村長、そういった方々の御意見も伺いまして、関係者の了承を得た上で、これを地位協定の二条四項(a)に基づく使用に切りかえまして、現在は地位協定の条項に基づいて自衛隊も使用しておるということでございます。  なお、お話の三沢にある部隊以外には使わせないという問題は、三沢市議会においてそういう議論があったということは私ども承知しておりますけれども、これは、われわれがそれより以前に御同意を得たあと起こった問題でありまして、それについては、その後特段のお話もないというようなことから、正式にも現在は合同委員会の協議で使用しておるということでございます。
  157. 古寺宏

    古寺委員 この天ケ森の対地射爆場につきましては、昭和四十年までの間のわが国の対地射爆場周辺での事故の約四八%、二十七件のいろんな事故が起きているわけでございます。さらにまた、いろいろな漁業補償、農業補償についても十分な補償が得られないために、この天ケ森の対地射爆場は、一日も早く移転をしてもらいたい、こういうのが地域住民の願いでございますが、今後この対地射爆場につきまして移転するお考えを持っているかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  158. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 先ほどもお話がございましたように、最近この三沢の飛行場の使用度が高まっておるというようなこと、それから、現在わが国にある基地の中できわめて重要なものであるというような点からいたしまして、この三沢飛行場を他に移転させるということは、実際問題としてたいへんにむずかしいと思います。したがいまして、いま三沢の射爆場を他に移転するということについては検討がされていないという現状でございます。
  159. 古寺宏

    古寺委員 今後検討するお考えはございますか。
  160. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 この移転の問題というようなことは、これはもちろん日本側だけでできる問題でもございませんし、また、移転するとなれば、どこか他の移転先を見つけなければならない、こういうようなことで、たいへんにこれは実際問題としてむずかしい問題でございますので、私はここで、移転先について検討します、ということを申し上げかねる事情にございますので、この辺は御了承を得たいと思います。
  161. 古寺宏

    古寺委員 そこで、地元の農業、漁業の補償が、地元住民の申請に対して非常に低いわけでございます。当初は申請に対して大体五〇%ぐらいございましたけれども、最近においては一九%ないし二〇%というような非常に低い補償しか行なわれていないわけでございますが、この農業、漁業の補償のいわゆる算定のしかた、どういう根拠に基づいてこういう地域住民の申請をはるかに下回る補償がなされているのか、その事情についての御説明を願いたいと思います。
  162. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 この三沢の対地射爆場の関係で現在なされておる農業、漁業関係の補償としましては、農業のほうでは林野雑産物の補償というのがございます。これは射爆場があるためにその場内に自然に発生するところのワラビとかゼンマイとか、こういった山菜類の採取が阻害されるということに対する補償でございます。それから、農耕阻害補償と申しまして、これは射爆場に飛行機が進入する、それから射撃訓練を終わるとまた旋回して入ってくるというような頻繁な航空機の進入によりまして、この進入表面下の農地で農耕している方々が、どうしても飛行機の爆音その他によって農耕が阻害されるということに対する補償でございます。  それからまた、漁業補償、これは対地射爆場に隣接する水面、これは扇型でございますが、一定の水域におきましては危険であるというようなことから、漁船の操業が制限をされております。したがいまして、ここで漁業を営んでいたならば得られるであろうという収益、これを計算をして補償をいたしております。  そこで、こういったいろいろの補償につきまして、一体どういうふうにやっておるのかということでございますが、私どものほうに一定の算定の基準がございまして、それによってやっておるわけでございますが、これは当然適正な補償という前提のもとにやっております。しかしながら、申請をされる方は、全然角度の違った見方で申請をされるというようなことから、そこに大きな差が出ておるわけでございます。われわれとしましては、本来ならば申請そのものについてやはり行政指導をして、あまり実態とかけ離れた申請はしないようにしていただかなくてはならないというような問題もございますけれども、申請される方としては、何か自分の申請額が減ると、それだけ補償額が減るというような感じになられまして、なかなかそういうわけにはいかないというような実情でございます。  試みに、どうしてそういうふうに申請と補償が違ってくるかというようなことを簡単に申し上げますと、たとえば林雑補償につきましては、立ち入り許可日にはある程度その林野雑産物が採取できるわけでございますが、どうも申請の内容を見ますと、立ち入り許可日でも採取しないというような前提で計算をされておるというようなこと、それから進入表面下の農耕阻害の問題につきましては、私どものほうとしては、飛行機が非常に低く飛ぶところ、それから少しづつ高くなるわけですが、その飛行機の飛行コースの航程によって、その阻害率というものを地域別に認定をしておるわけです。一番阻害率の低いところは二〇%、一番高いところで八〇%に、段階的に区切っておるわけですが、申請される方はと見ますと、全部一〇〇%というパーセントで申請をされておるというような実態でございます。  それから、漁業補償の場合も、一定の漁獲をあげるためには当然経費が要るわけでございますが、その経費の見方につきましても、たいへんにこのパーセントが違う。これはまあ一律に申し上げかねるわけですが、一般的に申しまして、経費率の見方がかなり違うというようなことから差が出ておるわけでございます。  しかしながら、この補償の問題につきましても、従来からもいろいろ要望等がございます。われわれとしては、いまやっておる方式が唯一絶対であるというふうには考えておりません。実態にそぐわない面があれば是正をして、実態に近い補償をしたい、このように考えておりますので、地元のほうからいろんな具体的な例についてお申し出があれば十分検討していきたい、このように考えております。
  163. 古寺宏

    古寺委員 たとえば、金額をあげて申し上げますが、農業の補償については昭和四十四年度には九件、申請額が三千百五十二万四千円に対して、認定が四百九十三万七千円です。あるいは漁業にいたしましても、昭和四十三年には十三件、一億三十六万に対して一千八百六十八万一千円、こういうふうに各年度別に見ましても、非常に申請額と認定額が開いておるわけでございます。ただいまのお話によりますというと、林野雑産物にしましても、立ち入り禁止以外の日には当然そこへ入って採取ができるじゃないか、こういうようなお話がございました。しかしながら、現実の問題として、日雇いあるいはその他の生活をしなければ現地の住民は生活ができないわけでございます。そういうような事情を十分に勘案をしないで、ただ机上でそろばんをはじいて、そして補償をするということは、零細農民、漁民をどこまでも犠牲にし、この人たちがついにはこの対地射爆場に自分の命を埋めなきゃならないという結果にもなりかねないわけでございます。ですから、こういういわゆる補償の問題については、先ほど実態に即した適正な申請というお話がございました。私から申し上げたいのは、実態に即した適正な補償というものが、はたして思いやりのある実態調査によって今日までなされてきたかどうか、この点は、私は非常に疑問があると思いますので、今後この点については、十二分に現地の方々の立場を御理解くだすって補償してあげていただきたいと思います。  さらに、この三沢と同じような立場にある全国の基地の農業、漁業の補償の内容について、そのデータを後ほど私のところに提出をしていただきたいと思います。  次に、また質問に移りますが、三沢基地は七〇年代には当然返還を進めるべきだと思いますけれども、返還の見通しについてはどうか。さらにこの基地は、本土の在日米軍飛行場の三六%という広大な面積を保有いたしております。これがこの三沢市の発展、あるいは今後考えられる小川原湖、陸奥湾の工業地帯の開発にも非常に影響があるわけでございますが、この広大な面積を有しておるところの三沢基地を今後縮小するお考えがあるかどうか、承りたいと思います。
  164. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 先ほどもちょっと触れてお答えしたわけでございますが、この三沢飛行場は、米空軍の飛行場としましてたいへんに重要な地位を占めておるということでございます。御承知のように、いま日本にある米空軍の基地としましては、この三沢飛行場、横田飛行場、それから板付の飛行場、この三つでございまして、どうも最近の使用の状況等から見ましても、三沢というのは、米軍にとって戦略的に非常に価値の高い飛行場になっておるのではないかと推察をされるわけでございます。したがいまして、遠い将来はともかくとしまして、近い将来において、この飛行場が無条件で返還になるという見通しはきわめてむずかしいのではなかろうか、このように推察をされます。  また、小川原湖周辺の開発計画とこの射爆場の関係でございますが、こういう地元の非常に規模の大きな開発計画と、この射爆場の競合の問題でございます。これは、私どもとしましても、十分地元の開発計画には協力をいたさねばならないというふうには考えておりますが、しかしながら、といってこの射爆場を返還をするということにはまいりませんので、この間よく話し合いをしまして調整をしていく、それにはもちろんこの開発計画に対する何らかの形の協力ということもあり得ると思いますが、そういったことで調整をはかっていきたいと考えておる次第でございます。
  165. 古寺宏

    古寺委員 最近はドル防衛政策によりまして、米軍の本土からの引き揚げに伴って、各基地で駐留軍関係離職者が大量に発生をいたしておりますが、その現況と今後の見通しについて承りたいと思います。特に駐留軍関係の離職者は、勤続年数も長く、また年齢も高い、そういうことを聞いておりますが、その内容についてもあわせて御説明を願いたいと思います。
  166. 長坂強

    ○長坂政府委員 過去二、三年はわりかた米軍の人員整理というものも少のうございまして、昭和四十二年度では三百十七名、四十三年度では三百三名というくらいの数でございまして、お話のように昨年の末に至りまして、米国のドル防衛政策に伴う国防費の削減、海外基地の縮小というような影響を受けまして、昨年の末までに二千四百九十六名が解雇されました。それから本年に入りまして、六月の末までに五千百八十一名解雇するように米軍のほうから要求が出ております。これを陸海空の三軍別に見ますと、本年に入りましてからの分といたしまして、陸軍では千七百七十名、それから海軍では千九十七名、空軍では二千三百十四名というような数になっておるわけでございます。それで、このうちやはり六月末が一番多うございまして、陸軍では約千四百人が六月末に解雇、それから空軍では約二千二百名が六月末に解雇というようなぐあいになっております。それで、いわゆる先任権逆順と申しまして、先に駐留軍に入っている人のほうがあとから整理をされる、若い人、就職した年数の短い人が先に解雇になるというような順序になっております。現在在職者の平均年齢は四十四歳よりちょっと出ております。勤続年数は十四年というようなことでございまして、これは全般の数についてはちょっといま資料が手元にございませんけれども、最近の横須賀の基地の整理についてみますと、横須賀では二回、四百七十三人の人員整理要求と三百九十九人の人員整理要求を合わせまして八百七十人ほどの整理要求が出ておるわけですが、第一回の四百七十三名のときには、平均年齢は三十六歳であったそうであります。ところが、二回目の三百九十九人につきましては、それが上がりまして、四十六歳に平均年齢としまして上がっておるというような状況でございます。  何かお答え漏れがあったかもしれませんが、一応……。
  167. 古寺宏

    古寺委員 職種はどういうふうになっているのでございましょうか。
  168. 長坂強

    ○長坂政府委員 職種としましては、やはり各種ございまして、現在約四万六千人ほどございますけれども、このうちの一番多い職種が技能工系統の職種でございまして、電気工とか溶接工とか機械工とか、そういう職種が非常に多いわけでございます。したがって、整理になる者もそのような技能を持った者が多いわけでございますが、一部やはり事務職などもございまして、そういう状況になっております。
  169. 古寺宏

    古寺委員 いまお話を承りますと、非常に中高年齢者あるいは職種も特殊なものが多いようでございますけれども、その再就職の状況はどういうふうになっておりましょうか。
  170. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 ただいま施設庁のほうからもお答えございましたけれども、たとえば昨年の暮れにおきますところの離職者千七百九十二名でございますが、平均年齢といたしましては四十三歳、このうち五十歳以上というのは約三割以上を占めております。したがいまして、特に中高年関係についての再就職という点に重点を置きまして、出張相談所の開設あるいは就職促進指導官のきめのこまかい指導というようなことによりまして、中高年の就職に努力してきたわけでございますが、昨年、千七百九十二名のうち、現在までに約八百名の就職を見ている状況でございます。
  171. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、就職率は大体五〇%ぐらいでございますか。
  172. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 さようでございます。
  173. 古寺宏

    古寺委員 昨年の十一月二十日の中央駐留軍関係離職者等対策協議会において決定しましたところの駐留軍関係離職者対策によりますと、各種の施策と並んで、政府は駐留軍関係離職者の採用につとめるとともに、関係機関等に対してもこれが採用を要請する、こうなっておりますけれども、現状はどういうふうになっているか。また、昭和三十九年六月にも同様の決定がありまして、各省庁別に採用計画を作成した、そういうふうになっておりますが、昨年度の実績あるいは今後の考え方、この点について承りたいと思います。
  174. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 大量発生にかんがみまして、中央離職者対策協議会において、政府関係の採用についてもいろいろ協議したわけでございますが、事実、第一回昭和三十九年の六月に、中央並びに地方公共団体に対しまして、離職者の採用計画ということを実施した経緯がございます。今回の問題につきましても私どものほうから中央離職対策協議会に対しまして、これらの採用について早急に計画を立てていただきたいということで申し入れております。目下、今回の大量解雇に伴いますところの新しい採用についての採用計画を検討中でございます。
  175. 古寺宏

    古寺委員 大体採用計画はどのくらいを見込んでおられるのでしょうか。
  176. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 現在、ただいま申し上げましたように、採用計画について検討中でございますが、従来からの経験並びに実績によりますと、達成率といたしましては大体六二%程度でございます。
  177. 古寺宏

    古寺委員 労働省におかれましては、この離職者の再就職の促進をはかるためにどういうような施策を講じておられるか、労働省にお尋ねをしたいと思います。
  178. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 先ほども申しましたように、特別の臨時の職業相談所の創設、あるいは出張職業相談というようなことで求職相談を実施しておるわけでございますが、そのほかに、離職に伴いますところの再就職までの生活の安定ということもございますので、失業保険受給者には当然それを支給するわけでございますが、そのほかに就職促進手当というものを支給いたしまして、職業指導あるいは職業紹介の実施、それから特別の職業訓練というものを実施いたしております。それから、居所を移転して就職するという方につきましては、移転資金とかあるいは再就職奨励金というものを支給してございます。それから、みずから営業を営もうとする、自営業を開始する離職者に対しましては、自営支度金というものを支給いたしまして、さらに開業資金の借り入れに伴うところの債務保証というものもやっておるわけでございます。それから、事業主に対しましても、そういう駐留軍離職者を採用する事業主に対しましては、雇用奨励金、それから社宅あるいは寄宿舎というようなものに対して、労働者住宅を確保する意味の住宅確保奨励金というものを支給いたしまして、就職しやすいような措置を講じておるわけでございます。
  179. 古寺宏

    古寺委員 こういうような中高年齢者であって、しかも特殊な職種を持っておられる関係上、離職者に対しましては、離職する前にきめのこまかい職業訓練あるいは講習会等を当然行なうべきだと思いますが、離職者に対しては何カ月前から希望者にそういう講習会あるいは職業訓練を行なうということが妥当であるのか、この点についての政府の考えを承りたいと思います。
  180. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 直接労働省ではございませんけれども、中高年等の再就職というものを容易にいたしますために、特に米軍との相談の上で基地内の職業訓練というものを一部実施しておるわけでございます。何カ月前からやるのが適当か、あるいは実績がどうかという点でございますけれども労働省といたしましては、離職者というものに対する職業訓練という制度になってございますので、特にこの点については、先ほども申し上げましたような特別の、離職者本人の適性あるいは能力というものを十分勘案いたしまして、職業訓練を実施いたしたい、そういうふうに考えております。
  181. 古寺宏

    古寺委員 駐留軍関係離職者等臨時措置法の第十条の三項によりますと、防衛施設庁長官は、「離職した場合にすみやかに他の職業に就くことができるようにするため、講習会の開催等職業に必要な知識技能を授けるための特別の措置を講ずる」こういうふうになってございますけれども、こういう点についてはどのようなことが現在行なわれているのか、承りたいと思います。
  182. 長坂強

    ○長坂政府委員 先ほど労働省のほうからお答えがございましたように、いつ人員整理がくるかわからないというような意識、一面からいいますとそういうような立場にある従業員でございますので、常時この職業訓練というものを実施しておるわけでございまして、たとえていいますと、昨年の四月から十一月までの間に、普通自動車運転の研修と申しますか、職業訓練を実施した者六百七人、それから特殊自動車運転四百十三名、英文タイプ百十五人、英会話二百十五人、ラジオ、テレビの修理四十人、自動車の整備五十二人、ブロック建築二十人、経理事務四十人、商業英語四十人、調理五十人、その他九十五人、合計千六百八十七人に対して職業訓練を実施しております。これは例年二千万円から三千万円の間の金額を使いましてやっておりますが、それ相応の効果があるものというふうに信じております。
  183. 古寺宏

    古寺委員 それでは、いまのお話しくださいましたその資料の中で、一体その講習を受けた人のうちの何人が離職者になっているのか教えていただきたいと思います。
  184. 長坂強

    ○長坂政府委員 ちょっといまその関係の資料は手元にございませんので、あと調査の上またお届けいたしたいと思います。
  185. 古寺宏

    古寺委員 私がお聞きしたいのは、離職者のためのそういう講習会あるいは職業訓練というもののための特別の措置が現実に行なわれているのか、また、今後それを行なおうとしているのか、その点をはっきりしていただきたいわけでございます。
  186. 長坂強

    ○長坂政府委員 ただいま、先ほど申し上げましたような基地内におきまして平素から例年約二千人程度の者に対して実施しております。それが、繰り返していきますと、より多くの人に行き渡っていくであろうということで、平素から準備をいたしておりますと、こういう意味でございます。
  187. 古寺宏

    古寺委員 その意味は十分わかるわけでございますけれども、いま当面、この講習会も訓練も受けない離職者というのは相当いるわけでございます。しかもそれが中高年齢者に多い。そういう関係で私はお尋ねをしているわけでございますけれども、青森県の三沢基地においては、どのような講習会あるいは職業訓練が行なわれているのか、また、年にどのくらいで、対象人員はどのくらいになっているか、承りたいと思います。
  188. 長坂強

    ○長坂政府委員 たいへん恐縮でございますが、手元には総体の数字しかございませんので、三沢基地関係だけを取り出したものはまた調べましてお届けいたしたいと思います。
  189. 古寺宏

    古寺委員 それでは後ほどその資料をいただくことにいたしまして、離職前にきめのこまかい対策を講ずるためには、現在の解雇予告期間、現在は九十日である、しかもそれが非常に短い、こういうふうにいわれているわけでございますが、この離職前に一応の講習会あるいは訓練をいたしまして、そうして再就職を促進するためには少なくとも六カ月ぐらいがほしい、こういうふうに要望されているわけでございますが、この点につきましてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  190. 長坂強

    ○長坂政府委員 現在、御承知のように、労務基本契約と申します米軍との労務の提供に関する契約がございまして、その中で、この労務基本契約上の従業員につきましては、解雇発効日の少なくとも四十五日前に米軍のほうは人員整理要求をよこす、それから本人に対する労務管理事務所からの解雇通知は、少なくとも解雇発効日の三十日前に行なわれねばならないという定めになってございます。それから、歳入歳出外諸機関と申します、下士官クラブであるとか、食堂だとか、あるいはPX等のそういう諸機関に関係のあります従業員の提供の諸機関労務協約と申しますか、その中では、人員整理要求の米軍からの各労務管理事務所に対する発出は、解雇日の四十日以上前でなければならない。それから、やはり、本人に対する労管からの解雇通知は三十日以上前でなければならないということで、これは一般の労働基準法の系列と同じ立て方になっておるわけでございますが、これは、先生御指摘のように、その期間がなるべく長くなければならない、といいますのは、これは就職先を見つけたりするような準備のために必要であるというふうに私どもも実は感じております。ただ、その職業訓練のためにということは、これはもっとその人員整理要求が発出する前の状況としまして平素やっておくということでいきたいと思っておりますが、この就職先などを見つけるためのいわゆる四十五日、四十日というものは幾ぶん少なきに失するであろうということで、昨年の——少し長くなりますけれども、昨年の十月から米軍との間にこれを延ばすように交渉を続けてまいっております。それで十月のときには十一月、十二月の整理分が出てまいりましたので、それを一カ月ほど延ばせという交渉もやりましたのですが、これは私どもばかりでは力が至りませんので、施設庁長官とか次官とか、あるいは有田大臣にも出ていただきまして、米軍のマッギー司令官のほうとも交渉をしていただいたわけでありますが、向こうのほうが予算の関係でどうしてもそれは延ばすわけにはいかないということでございまして、そこでさらに、契約上その期間をさらに延ばすように私どもの線でまた交渉してまいっておりますけれども、ことしの一月二十日になりまして、米軍の参謀長と防衛庁の事務次官との間で会談が持たれまして、そこで、例外もあるけれども、極力九十日以上の期間は置くことにしようじゃないかということで話がまとまりまして、現在その契約の改定は、米軍側としては予算削減のさなかにおいてそういうことをやるわけにもいかないので、運用上できるだけ九十日以上の期間を置くようにしよう、しかしまあ例外もございますと、こういうことであったのです。いまそれによってやっておりますが、だいぶ米軍のほうも昨年よりは事態は改善になってまいりまして、大体七割五分ぐらいの人間は、九十日以上を置いて人員整理要求が出てくるというような状況でございます。それで、今後におきましては、特に今年の七月以降の状況というようなものを見まして、今後大量に出てくるようなことも危惧されますので、これを契約上に明定するように目下米軍と交渉中でございます。で、いわゆる米会計年度の七月以降につきましては、極力これを守ってもらいたいといいますか、そういう趣旨で契約も改定してもらいたいという交渉をいま現にやっております。
  191. 古寺宏

    古寺委員 また前に逆戻りになりましたけれども、もう一つ。  基地の従業員で現在までに職業訓練あるいは講習会を受けた人が全体でどのくらいいるのか、あるいは今後その全部の要員の訓練、講習会を終えるとすれば、一体何年ぐらいを要するのか、それもあわせてあとで資料を出していただきたいと思います。  いまの問題でございますが、三沢基地の場合はほとんど四十五日になっておるわけです。今度の四月に解雇になる人も四十五日になっているわけでございますが、なぜこの三沢基地だけがこういう協定から除外されて、運用上においてもそういう九十日という解雇期間を置けないのか。四十五日を少なくとも九十日あるいはさらには六カ月まで期間を延ばすことができないのか。なぜこういうふうに三沢だけが除外されているのか、その点について承りたいと思います。
  192. 長坂強

    ○長坂政府委員 先生御指摘の三沢の、四十五日だけしか期間がないというのは、いわゆる諸機関の一月十四日要求の十二名と存じますが、なおこのほかに、労務基本契約関係の従業員の三十五名、これは六月の二十日に解雇予定でございますけれども、これは九十二日ございます。それから四月二十日の分は六十二日ございます。  それで、御指摘の、四十五日しかないというのは、将来クラブの関係の七人、それから下士官クラブの関係の五人であると存じますが、これはいわゆる歳入歳出の金によらないところのクラブでございまして、お客が——お客というのは軍人軍属もお客でございますが、そのお客がなかなかこの機関に来ないということから、しばらく前から経営不振になっておりまして、その運営上の赤字を解消していかなければならないというような事情から、人員を縮小せざるを得なかったということだというように、現地の労務管理事務所長から報告を受けております。そういうことで、諸機関は四十日前にというのが契約上のたてまえであるけれども、昨年来からの私どもの米軍司令部に対する交渉とか、あるいは青森県から現地部隊に対する交渉等を行なっておりまして、そういうような趣旨もいれて、わずかではあるけれども、四十五日にしたというのが、実情でございまして、そういう運営上の赤字からきておるので、この際何ともならないのであるというように米軍側も釈明しておるところでございます。  不十分かと思いますが、実情はそのようでございます。
  193. 古寺宏

    古寺委員 先ほど申し上げましたように、三月にベトナムから偵察機の一個中隊が移ってまいったわけでございます。そうなれば当然その軍要員も大幅に増加すると同時に、これに伴って要員のいわゆる需要というものもふえてくると思うわけです。そういうときに人員整理を行なうということは、何かわれわれとしては非常に理解ができないのでございますが、今後三沢基地については、この偵察機の移動に伴ってこういう解雇の問題に変化が起こるのかどうか、そういう点について承りたい。
  194. 長坂強

    ○長坂政府委員 古寺先生御指摘のように、そういう部隊のいわば増強がある、その反面従業員の整理があるというのは何か矛盾しているではないか、こういった御趣旨の御指摘だと存じますが、今回、昨年の暮れから行なわれています人員整理は、主としまして先ほどからお話に出ておりますような国防費の削減ということでこの従業員関係の予算が縮小されておるわけでございまして、立川の基地のようなところは、四十四年の十一月に三百九十四人、それから四十五年の六月に千百一人整理になる予定でございますし、それから横須賀では、先ほど申し上げましたように、八百七十人ほど整理になっております。それで比較的この三沢基地の整理というものは、ほかの飛行場関係に比べますと、いわばけたが違うと申しますか、十一月末の整理では二十七名、それから本年に入りましてからは十二名というふうに、ほかの基地に比べますとかなり小幅と申しますか、そういう数になっているというふうに私どもは見ております。それで、さらに二月の要求に出ました十二名は、そういった諸機関関係の従業員であって、そういう食堂、クラブ等の経営不振に基づくものであるということでございますので、その点はほかの地区に比べるといわば小幅になっているこのように御了解いただきたいと思います。
  195. 古寺宏

    古寺委員 今年度の三沢関係の要求というのは、全体でもって何名なんでございますか。
  196. 長坂強

    ○長坂政府委員 現在、六月までに三十五名、それから諸機関関係で四月二十日の分が十八名、それから二月末に整理されました者が十二名でございまして、もうぼつぼつ四月に入りますので、米軍のほうとしましては、一応米空軍全体の計画として現段階で六月までの分は示したというつもりのようでございます。それで、七月以降のことにつきまして、いわゆる米会計年度でいきますと新年度になるわけですが、その新会計年度の七月以降の分についても、私どもとしては早く計画を立ててこちらに知らせてもらいたいというふうに要望しておりますが、米軍側のほうとしましては、いまのところハワイのほうとも打ち合わせ中であるのでありましょう、まだいまのところ具体的には七月以降の計画がわかっていないということで今日までに至っております。
  197. 古寺宏

    古寺委員 昨年末の離職者に対しましては、大量解雇である、また年末である、また予告期間が非常に短い、こういう理由でもって特別給付金の増額を行なったわけでございますけれども、三沢の状況を見ますと、年末という時点は違いますけれども、内容はほとんど同じになっているわけでございます。今後この年末に行なわれた特別措置というものを当然講じていくべきである、そういうふうに考えるわけでございますが、この基地の状況を考えて、こういう点について今後考慮するお考えを持っているかどうか承りたいと思います。
  198. 長坂強

    ○長坂政府委員 昨年の暮れは、まさに年末であったということと、きわめて短期間であったということ、それから三千名というようなたいへん大きな数字であったということから、年末限りの特別な措置ということで、政令の特例を設けまして措置をしたわけでございまして、それと全く同趣旨のものをというわけにはなかなかまいらぬのではないかというふうに私どもは考えております。なかなかむずかしいのではないかと存じております。
  199. 古寺宏

    古寺委員 三沢の状況からいきますと、解雇の予告期間においても、あるいは大量という点についても、これは変わりがないわけでございます。だから当然、年末でなくてもこういう特別の措置を講じてあげなければならない、そういうふうに考えるわけでございますけれども、それでは、昨年の年末の解雇者と現在の三沢の解雇者の場合はどう違うのか、その点について御説明していただきたいと思います。
  200. 長坂強

    ○長坂政府委員 先生御指摘のように、三沢だけを見ますとたいして相違はないじゃないかということだと思いますが、ほかの地域、あるいは空軍全体で見ましても、先ほど申し上げましたように、約二千三百人の整理のうち、九十日以上ある者が二千二百十八人にのぼっておるということから、全体から見ますと、事態は相当改善されているのじゃないかと見られるのです。先生が御指摘のように、三沢のところだけをとって御指摘いただきますと、私どもとしては実は答弁に困るわけでございます。  ただ、年末の措置は、全体としまして、年の瀬を控えていることでもあり、それから、短期にその整理が行なわれることでもあり、かつ三千名にのぼる者が出てきたというようなことであったので、特別の措置を講じたわけですが、年末と全く同様の措置と言われてもなかなか困難ではないか、このように思っております。
  201. 古寺宏

    古寺委員 その年末の問題は、われわれの地方へ行きますと旧正月というのもございます。あるいは官庁では年度末というのもございます。内容が同じであって時期が違うためにそういうふうに差別をするということは、どうも私は納得がいかない。ですから、今後この問題についてはひとつ慎重にお取り計らいを願いたいと思います。  次に、やはり同じく沖繩軍労働者の予告期間が非常に短い、こういうふうに聞いております。本土並みにするように外交ルートを通じて米国に申し入れをしたというふうに聞いておりますけれども、その経過はどういうふうになっているか、承りたいと思います。
  202. 岸良明

    ○岸説明員 先生御承知のとおり、本年の一月九日に外務省を通じて退職金の増額と解雇予告期間の延長、この二点を中心といたしまして申し入れをいたしたわけでございます。その後たしか三月五日ごろでございますけれども、そういう申し入れもありまして、国務省及び国防省の担当官が沖繩に派遣をされまして、この問題をいま検討中でございます。私ども高等弁務官の発言等から考えまして、解雇予告期間の延長については米側でも相当前向きに取り組むであろうというように予測をいたしております。しかしながら、やはり予算を伴いますことでございますし、その点は今後の折衝を通じてなるべく早期に具体化をするような努力をしてまいりたい、かように考えております。
  203. 古寺宏

    古寺委員 時間がございませんので、これで終わりますけれども、沖繩の労働者の直接雇用から間接雇用への切りかえについて、やはり米国と折衝を続けてまいっているわけでございますが、その状況と見通しについて承りたいと思います。
  204. 岸良明

    ○岸説明員 その点につきまして、過日開かれました日米協議委員会の席上におきまして、山中総務長官が米側のマイヤー大使に対して、この問題を検討してもらいたいというふうに発言をいたしたわけであります。その後外交ルートを通じまして、私ども事務方で鋭意いろいろと話し合いを続けております。過日新聞等で御承知のとおりに、沖繩で問題になっております退職金のいわゆる本土並み、そういう観点から今回特別な措置を講じたわけでありますけれども、その前提といたしましては、やはり日米両国の事務当局でこの問題について前向きに検討するという形が前進をいたしましたので、政府といたしましては、沖繩の実情にかんがみまして、退職金の本土との格差を埋めるという意味において特別措置を講じたわけであります。今後なるべく早い機会に、事務当局でお互いにジョイントスタディと申しますか、共同研究も進めまして、間接雇用制度へ向けての事務の一環として措置ができるような努力をしてまいりたい、かように思っております。
  205. 古寺宏

    古寺委員 時間ですから終わります。
  206. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十五分散会