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1970-11-12 第63回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月十二日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君       久保田円次君    丹羽 久章君       浜田 幸一君    林  義郎君       松本 十郎君    久保 三郎君       佐藤 観樹君    中谷 鉄也君       古寺  宏君    西田 八郎君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         行政管理庁行政         管理局審議官  石原 壽夫君         経済企画庁審議         官       西川  喬君         科学技術庁原子         力局次長    大坂 保男君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       山本 宣正君         農林省農政局長 中野 和仁君         食糧庁次長   内村 良英君         水産庁長官   大和田啓気君         水産庁漁政部水         産課長     三善 正雄君         通商産業省公害         保安局長    荘   清君         通商産業省公害         保安局公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君         建設省都市局下         水道課長    久保  赳君         建設省河川局治         水課長     岡崎 忠郎君         日本国有鉄道施         設局保線課長  村山  煕君         日本電信電話公         社データ通信本         部副本部長   神谷 輝男君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十二日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     丹羽 久章君   佐野 憲治君     久保 三郎君   藤田 高敏君     中谷 鉄也君   多田 時子君     古寺  宏君 同日  辞任         補欠選任   久保 三郎君     佐藤 観樹君 同日  辞任         補欠選任   丹羽 久章君     伊藤宗一郎君   佐藤 観樹君     佐野 憲治君   中谷 鉄也君     藤田 高敏君   古寺  宏君     多田 時子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  産業公害対策に関する件(産業公害対策の基本  施策、大気汚染及び水質汚濁対策等)      ――――◇―――――
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  去る十月七日の委員会における藤田委員質疑関連し、私の行ないました委員派遣の際の調査に関する発言は、私自身の誤解に基づく点があり、事実にそぐわない点がありましたので、これを取り消すとともに、委員長としておわび申し上げます。      ――――◇―――――
  3. 加藤清二

    加藤委員長 産業公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。丹羽久章君。
  4. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 委員長の許しを得ましたので、総理府厚生省の所管に対して私は少しお尋ねをいたしたいと思います。  最近、公害問題は、ますます複雑多岐にわたる様相を呈してまいりまして、今日最も大きな社会問題となっておることは御承知のとおりだと思います。  大都市及びその周辺地域においては、臨海工業地帯の造成に伴いまして、製鉄、電力、石油化学工業等工業建設が盛んに進められております。工業生産量は飛躍的に増大することが予想されております。しかし、その反面、人口の集中、産業の急速な伸展は、大気汚染をはじめとする各種産業公害を引き起こしております。市民の健康や生活環境にさまざまな影響が与えられております。その結果が私どもは深く憂慮されるところでございます。  政府におかれましては、公害規制に関する法体系を着々整備をしていらっしゃるようでありまするが、今度臨時国会においても公害関係法案が提出せられ、現行法体系において諸権限市長に十分付与されていないということがあるのでございますが、規制基準及び財政措置が不十分であると同時に、さらに公害防除技術開発がおくれておるのであります。有効な適切な指導対策を推進することが現在におきましては非常に困難であるということを痛感するものでありまするが、ここに市民の不安を解消させて、健康で住みよい生活環境を保全するために、当面する次の諸点について私はお尋ねをいたしたいと思いますので、山中長官お答えをいただきたいとお願いをするわけであります。  一つは、権限委譲についてであります。  私は名古屋市の出身の国会議員でありまするが、きょうの質問におきましては、指定都市という六大都市を代表してこの点をお尋ねするものでありまするから、そのようにお考えをいただきましてお答えいただきたいと思います。  現行公害関係規制法としては、大気汚染防止法工場排水等規制に関する法律騒音規制法などがありますが、これらの法規のうちで、大気汚染防止法については、ばい煙発生の大手である工場については、その規制権限知事でとまっておるわけであります。知事どまりであります。政令市においては事業場に関する事項のみでありまして、このため、特に大気汚染のはなはだしい工業地域についても、市は規制指導はもちろん、発生源工場の燃料の使用状況ばい煙排出量等についても把握ができません。こういう状態でありますと同時に、また自動車排出ガスについては、法の二十条によって測定義務が課せられております。測定結果に基づく意見具申義務がつけられておりましても、権限はありません。工場排水等規制に関する法律についていえば、これもすべて知事までの権限になっておる状況であります。このため、市内を通過するところの河川、港の海域に排出される汚廃水の規制及び現況は、全然把握できない。一方苦情の面から申しますると、ほとんどが市へ文句が寄せられておりまして、権限がないからといってこれを拒むことはできません。また権限庁を紹介しても、それは県庁であるといってみても、市民はやはり納得しないのが実情であります。こういうような実情行政指導からいって、この現実の姿をどうお考えいただくかということであります。  私は地元のことを申し上げて恐縮でありますが、名古屋市をはじめとしまして、ほかの大都市においても、公害関係法規整備されております以前より公害の実務に対しては強く携わっておるわけであります。行政能力ははなはだ――こういうようなことを申し上げて恐縮でありますが、都道府県に比べても、指定都市においては十分備えていると考えられるわけでありますし、国においては、次期国会において、各種規制法を改正されるように聞いておりまするが、これを機会に権限庁を一元化されるとともに、指定都市に全面的に権限を委譲していただきたいということを私は心からお願いいたしますが、長官はどうお考えになっておりますか。
  5. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、基本的な姿勢は、私がたびたび申し上げておりますように、市民の、あるいは国民一人一人の生活環境、生命というような身近な問題に関する事柄でありますので、できるだけ身近に事柄を掌握できて、常時自分たち行政範囲内でとらえておるはずである知事市町村長というものに重点を移していきたい。そのためにはできるだけ多くの権限、あるいはその他のそれに伴う法的な根拠も地方に移していきたいというのが念願であります。工業排水等については、全部すべての業種が都道府県に委譲されたことは政令ですでに御承知のとおりでございますが、さらに現在の大気汚染防止法の中で委譲されておりまする市、さらにそれ以外の市についても相当大きな市についてはお話のように相談の窓口は全部市に来るというのが通常でありましょうし、しかもまた市民に対して身近な援助なり助言をしてやりたいし、お世話もしてやりたいということが当然でありましょうから、それらの問題は、政令の問題で御意向方向に沿うような検討を加えてまいるつもりであります。  さらに、今回は水質汚濁防止法で一本に統合されます工場排水水質汚濁関係の問題、これもまた政令においていまのような大気汚染防止法に関するような考え方でなるべく身近な問題としてとらえていくことは可能であるような方向にもっていきたいと思いますが、問題は御指摘にもありましたように、やはり職員能力あるいは検定、測定等の分析、そういうような行政上のレベルの問題もございますので、現在は厚生省が比較的時間をかけた地方職員公害関係者研修等をいたしておりますし、他の関係省庁においてもごくわずかな期間の研修みたいなものはしておりますが、やはり国全体で地方公務員権限委譲に伴う関係職員の質の向上、あるいは研修、あるいは新しい測定、あるいは規制等教養等を積ませるために、国で地方公務員公害関係研修センターみたいなものを持つ必要があるのではないか。センターというと建物に聞こえますが、そういうような研修をやるような立場を国が一本化して持てるようにしたいということで、いまのところそれは検討中でございます。これは現在の対策本部機構付属機関として持つわけにはなかなかまいりませんので、これらの対策本部機構を今後どうするかという問題と関連をいたしまして、現在内定いたしております公害データバンク、こういうようなもの等をさらに発展させた場合に、そこに付属地方公務員研修施設が持てるかどうか、それらの問題について十分の検討をしていきたいと思います。いわゆる質並びに実際の権限ともに伴うものでなければいけないと思って、そのような配慮をいたしておるところでありますが、ただ市町村のワクを越えた、相当広範囲環境基準上乗せ等の問題については、やはり原則として都道府県知事というものが当たられることが至当であるというふうに考えておる次第でございます。
  6. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 少し問題をこまかく申し上げまして、規制の強化について少しお尋ねいたしたいと思います。  現行規制法のうち大気汚染防止法においては、この規制基準地域的に一律に規制されております。このため、発生源が多数かつ大規模になった場合には、集中した地域、あるいは発生源が住居に隣接した地域においては、規制基準範囲でもこの影響を受けていることになるわけであります。したがって、法で定める規制基準最低基準として、さらに各地域特殊性あるいは気象条件等に応じて規制基準が強化できるならば望ましいと思うが、この点どうでありましょうか。  さらにまた大気汚染防止法においては、第二条の第五項において特定有害物質を規定しております。政令第二条において、アンモニア、弗化水素、あるいは硫化水素、塩素、その他二十八種の物質を人の健康に著しく有害な物質として定めております。しかしながら、これらの特定有害物質については、法の第十八条において事故時の措置について定めているのみで、これらの環境基準のみならず、施設の届け出だとか、排出等規制はすべてなされていない現状にあります。したがって、早急にこれらの特定有害物質についての環境基準を設定するとともに、平常時においても監視あるいは立ち入り検査ができる権限が私ども指定都市に与えられるならば、公害防止対策ももっと前進すると思いますが、この点、長官、どうお考えになっておるでしょうか。
  7. 山中貞則

    山中国務大臣 これからの考え方は、人の健康に関するものは原則として全国一律のきびしい基準を定めるということは、すでにお話し申し上げておるとおりであります。その他の規制についても、なるべくこれを全国一律に、すなわち指定地域水域等を廃止するということで全国にかぶるように法体系を定めたいと思っていま準備中でありますが、そのような場合に、やはり地域においては、ただいまお話にありましたような、どうしてもその地域特殊事情というもので国の一律の基準以上のきびしい基準を設けることを必要とする場合がございますので、それらの点はそれぞれの都道府県知事上乗せ基準を設定することを認める方向で進んでおるわけでございます。  さらに、特定有害物質の緊急時の権限のみならず、常時規制、観測、測定等が行なえるようにという御希望も、私どももそのとおりであると考えまして、立ち入り検査を含む諸権限について常時行なえるようにしたいと考えております。
  8. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと丹羽さんに申し上げますが、環境基準の問題は経企庁の答弁は要りませんか。
  9. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 時間の関係がありますし、順を追ってまたこまかくお尋ねいたします。
  10. 加藤清二

    加藤委員長 それでは、丹羽久章君。
  11. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 第三点は、これはいろいろの問題があろうと思うが、財政措置について少しお尋ねいたしたいと思います。  大気汚染防止法の第六条においては、ばい煙に関し、「大気汚染状況を常時監視しなければならない。」とあります。また二十条においては、自動車排出ガスによる大気の著しい汚染について、「自動車排出ガス濃度測定を行なう」とされております。  この測定に要する経費は非常に多額にのぼることであります。たとえば、ばい煙等については硫黄酸化物のみならず、浮遊粉じん測定しなければなりません。また風向、風速なども測定しなければなりません。自動車排出ガス測定も同様であります。こうした機械類は、いずれも高価な機械であることは御承知のとおりでございます。これは測定する機械のことであります。また技術進歩による機械進歩も最近著しいわけであります。したがって、これらの整備にあたって公害防除技術開発はもう当然不可欠な条件でありまするが、補助率引き上げ補助対象になる機械の増加についてどのような方策をお持ちになっておるのか、この点をひとつ対策本部長としてお考えをいただきたいと思います。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 それらの点につきましてはこれまでも配慮をしてまいったところであり、先般の閣議においても緊急調整費科学技術研究費等の配分を支出することによりまして、それぞれの地方測定器具その他についての購入補助等もいたしたところでありますが、根本的な補助率引き上げとかそういう問題については、今回の予想される臨時国会に提案をするための検討をしておったわけでありますけれども、現在でも自治省等は、それらの法律を提出してほしいと言っておりますが、やはり全般的にこれは差し迫っております身近な四十六年度予算編成の問題と関連をいたしてまいりますので、緊急な法の整備の中で、財政措置の問題に関してはこれを臨時国会で提案することを見送りまして、臨時国会の私どもの感触並びに国会議員諸君の御意向等を承りながら、予算編成の際において公害に対する国の予算のあり方という問題を、必要があるならば法律等も念頭に置きながらつくり上げていきたいというふうに考えておるところでありますが、方向は御趣旨の方向に沿うものとお考え願ってけっこうであります。
  13. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 一応お尋ねいたしましたが、もう少し時間がありますのでさらにお尋ねいたしたいと思います。  指定都市、すなわち六大都市に対して権限委譲をしてもらいたいということを、市長あるいは議会それぞれが陳情したのであります。そのときに、こういうことを申し上げて恐縮でありますが、一応耳にしたことを率直に申し上げますと、自治省では指定都市に対してはいままでの苦労もあり、またよく公害問題と取り組んできてくれておるから、自治省としてはこれは渡してもいいじゃないかという考えが、大臣のお考えではありませんけれども、一部の作業を進められる方々にはあるようであります。さらに厚生省はどう言っていらっしゃるかというと、厚生省は非常に重要な役割りを果たすわけでありますが、県があえて絶対に反対をしないということならば、それはそれで渡してもいいじゃないかという考えをしておられるようであります。さらに経済企画庁もそのようなお考えのようであります。また、通産省のほうもいろいろの関係でこの公害問題は大きな関心を持っていただかなければならぬ官庁でありますが、ここもそのような考えであります。  そういう点からいきますと、長官のお持ちになっております総理府だけは絶体にこれは県に与えて運用すべきだというような意見が強いということでありますが、いま長官お話を聞きましてよくわかった。大都市にもそういうことは考えていかなければならぬだろう、あまりこまかくすることはどうかと思うけれども、やはり大都市に対する考え方というものは、そういう方向へ持っていくように私も考えているというように私は聞き取ったのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  14. 山中貞則

    山中国務大臣 方向はまさにそのとおりでありまして、対策本部として違った意見を言っているつもりはありませんし、対策本部もわずかでありますけれども、精鋭で日夜作業しておりまして、そういう個々にかってな意見を言うはずはないと思うのでありますが、原則としては都道府県知事ということになりますが、事柄によってはもっと身近な問題として、特定市あるいは市町村ということを考えておるわけであります。考え方の発想は、身近な問題として住民の立場に立って考えられる人たち、そして常時自分たち行政範囲でものごとが的確に掌握できておる人たちという意味で、丹羽君の言われる特定市並びにそれに準ずるような市というものを検討していこうということで、これは法律ではありませんで、政令等の段階において十分検討するということでございます。
  15. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 もう一点長官に申し上げておきたいと思いますが、児童福祉に関する事務費十六項目というのが昭和三十一年の九月一日から、それまでは県が全部権限を持っておったのでありますが、これを六大都市に委譲したのです。その後今日まで十数年間の歩みをたどってみますと、非常に経過よく、どこにもトラブル、問題なく非常にうまく進んでおるのです。その中には建築問題なんかは県がやっておりましたのが、苦情が常に名古屋市にくるということで、その都市都市にくるということで、六大市がお願いしまして、そして三十一年にそういうような権限委譲が行なわれた。そういう点から考えますと、先ほども申しておりますように、今度も立ち入りもできない事業所だけである。たとえば事業所だけということになって、工場は市に権限が与えられていないとなりますと、事業所とは何ぞや。それは製品をつくっておるところである。そして工場とは何ぞや。それはいろいろなものを集めて製品に成り立たせようという過程にあるところである。過程にあるところの立ち入りはできなくて、そして事業所だけは認められるというようなことでは、文句がきた場合においての市の立場というものは全く耐えられない立場にある。これが中心問題になりまして、たいへん無理なことを言うわけではありませんから、この問題等について、政令指定都市に限っては県と同等の権限を与えていただきますように、各省との折衝、各省との話し合いをひとつ長官の責任においてお始めいただきたいと心から願ってやまないわけでありますが、さらに長官お答えをいただくなら、しあわせだと思うわけであります。
  16. 山中貞則

    山中国務大臣 事柄によりますから、県と同等という表現を使われるとちょっと困るわけですけれども事柄によってはそういうことにもなりましょうし、あるいはやはり原則は県にあって、それが一部特定市に委譲されるというようなものもありましょうし、いろいろなケースがございますから、一律に県と同等というわけにはまいりませんが、そのようなつもりでまいります。
  17. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 県と同等という問題について、事柄によってはとおっしゃいますが、このたび出されますところの公害関係の十二法案、それは少なくとも県へ委譲せられる権限、その十二のうち県に委譲せられるものについての御判断は、指定都市に限って同じように与えていただきたいということでありますが、どうでしょう。
  18. 山中貞則

    山中国務大臣 だから、十二法案もまだきまっておりませんし、場合によってはあと三つ、悪臭を含む十五法案になると思っておりますが、それらの全部が県知事と同等に市長さんに与えられるということがどうであろうか。そこらのところは、そういうものもあり、そうしなくても済む問題もありということで、方向は身近な問題として市長さんが常時掌握して行動ができるというふうにしてやりたいということを申しておるわけでありますから、ことばにとらわれて議論する必要はないことだと思うのです。
  19. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 六大都市人口は、御承知のとおりに、東京は別でありますが、大阪、名古屋、神戸、横浜、北九州等々、人口別にまいりましても全部百万以上の都市なんです。そういう点から、行なっていく行政というものは――失礼なことを申し上げるようでありますが、県ではこれ以下の県もたくさんあるわけであります。そこでいろいろの公害問題の中心になっていくのはやはりその都市であろう、その工場地帯であろうということになりますことは、対策本部長としての長官はもうすでによく御存じだろうと思っております。いま、ことばにとらわれないでとおっしゃいますから、ことばにとらわれようとは思っておりませんが、どうか指定都市人たちの願っておるその願いを、各省十分御連絡いただいて、そのような運用をしていただきますことを心からお願いいたしまして、時間がありませんので、これで質問を終わらしていただきます。
  20. 加藤清二

    加藤委員長 次は、小山省二君。
  21. 小山省二

    小山(省)委員 公害防止国民的課題として非常な注視を浴びておるとき、たまたま都下の三多摩一大汚染地帯が発見されたということが、三多摩の都民にかなり大きな衝撃を与えておるわけであります。  私はこの問題について少し時間をかりて詳細に関係者意見を徴したいのでありますが、定められた時間がございますので、私は特に山中長官に伺いたいと思います。  実は、昨日長官が参議院で田中委員質問答弁された答弁事項について本日の新聞に「汚染米に水をさす」山中長官答弁ということで大きく出ておるわけであります。今日三多摩地区の各所にカドミウムの非常に高濃度汚染地帯が出、その量はたいへん驚くべきものであります。全国一といわれた安中地区をはるかに上回り、八九PPMというおそらく想像できないような高濃度カドミウムが検出されておる。したがって、農民がこういう問題に非常に知識を持っておりません関係から、関係市町村に強く要請をして、その善後処置についていろいろ市町村東京都と協議をいたしたわけであります。その中で各種対策を都が示したわけでありますが、汚染米については全量都が買い上げるということをいち早く知事は言明した。私どもも実はその新聞を見まして、詳細に内容がわかりませんが、これはたいへん食管法に抵触するんじゃないか、ことにいま農家が買い上げてもらいたいというのは保有米であります。保有米については、たしかそうした汚染米についてもいろいろ制限があるやに聞いております。また汚染度についても一PPM以上の汚染米は買い上げない。そういう問題を別として、全量都が買い上げるということをいち早く言明した。私は知事の気持ちがわからないわけではありませんが、少なくとも法治国である以上は、やはり法律範囲内において、あるいは特別な便宜方をはからう場合には、関係当局と事前に十分打ち合わせをして、そしてその処置をとらるべきが至当ではなかろうかと考えておるわけでありますが、そういう問題につきまして、誤解があってはなりませんので、私も参議院の昨日の長官答弁を直接聞いたわけではございませんので、もう一度この機会に長官のお考えのほどをひとつお示しいただきたいと思います。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私が答弁してよかったのかどうかが疑問なんですが、ほんとうは農林大臣答弁すべきことなんでしょう。ただ、公害に関するカドミウム汚染米の問題でありますから、私のほうからも答弁したというふうに受け取られてけっこうであると思いますが、水をさすとかなんとかということではなくて、それはそう思った人があったわけでありましょうし、私の言っておることは、純粋に食管法という法律がある、その食管法という法律で買い入れる相手は国のみであるし、売り渡すのは全量であると規定されておる。その中で、政令でもって昨年から出発しました自主流通米というものに対する規定を省いてはやはり依然として全量残りは国が買い、農民は国に売るというたてまえの法律になっておりますから、それ以外の人が買うという場合においては、それぞれ政令において定めがございます。その定めた場合にはいずれも当てはまらないのが今回の東京都のとらんとする伝えられる処置でありますから、それ以外の処置をとって国にかわってだれかが買おうとする場合、しかも、公的に買おうとする場合には、当然政令の要請する所管大臣たる農林大臣の認可、許可を受けなければならないという形になるわけです。東京都のほうは、いまその許可を得るための作業中、折衝中であるということが新聞等に載っておりますので、その許可が得られれば何もこれは食管法違反でないわけです。しかし、許可を得る前にかってに都が買い入れをし、かってに処分をするということをやろうとしたら、それは食管法違反であるということを申し上げたわけです。しかしながら、厚生省も一PPM以下の米については、主食として常時食糧として差しつかえないといっておるわけです。しかし、厚生省自身が観察地帯等の指定をします場合の調査をいたします一つの基準として、カドミウム含有率〇・四PPM以上ということを一ぺん言いましたので、これがいわゆる汚染米として食べてはいけない、国民の食糧になり得ないものさしであるかのごとき混同があることはたいへん残念なことでありますけれども、事実上、そのような混同が一時国民にありましたために、農林省は一PPM以下のものでは全量買うけれども、それはしかしそのような心配が一方あったので、配給には回さない。幸い国民の食糧たる米が一応現状においては幸か不幸か余っておりますから、そのような操作も可能になるわけですけれども、いずれにしても配給には回しませんから御心配なくということを食糧庁、農林省というものはきめているわけです。そのような場合に、〇・四PPMというものは、食べてはいけないという基準とは何にも関係がないわけです。それらの基準、〇・四PPMという基準をとって、それ以上のものを、一PPMとの間の数量は全部都が買うからという措置並びに買ったあとのどうするかの措置等については、これは無償であろうと有償であろうと、やはり都の財政措置能力範囲内とは別の問題として法律上の許可を得なければならない。許可を得ないで強行すれば違反であるということを言ったにすぎないわけでありまして、これは法律に書いてあるとおりのことでございます。
  23. 小山省二

    小山(省)委員 その中で都の上田消費経済部長談として、都の措置は厳密にいえば食管法に触れることは承知している。しかし食管法では、特別な事情があるときは都知事が米を買い上げることができるというたてまえになっているので、都では今度のカドミウム事件は特別な事情にあたると考え、食糧庁と折衝中だ、こう言う。そうした全量買い上げるということを言明する前に、事前に食糧庁と十分打ち合わせをして、その結果買い上げるという言明になったのか、あるいはわれわれの知る範囲においては、実際問題として食管法に触れることになったので、買い上げると言ったが、その後検討をしておるのだという問題で、農民のほうでは、いやしくも知事が買い上げると言った以上全量買い上げろということを関係市町村に迫っておる。われわれにも関係市町村から、一体この汚染米はどういうふうな取り扱いを受けるのですかということが、しばしば問い合わせがあるわけです。食糧庁の態度をひとつ明確にしていただきたい。
  24. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  ただいまの件につきまして、食糧庁に対しまして東京都から、汚染米を買い上げたいが食管法上の問題はどうであろうかという照会はございました。しかしながら、まだ正式にそのような許可を得たいという許可の申請書は出ておりません。しかし事前に、こういうことをしたいが食糧庁の見解はどうであるかという照会はございました。
  25. 小山省二

    小山(省)委員 先ほど長官の御答弁の中にも触れられたように、国の態度が明確を欠いておるのです。たとえば一PPM以下であれば別に人体に影響はない、こういう汚染米に対する基本的な考えを明らかにして、一方においてまた〇・四PPM以上は買い上げる。一体どこが人体に影響のある限界であるのかというようなもう少し科学的な検討というものがなされて、そうしてその基本的態度が明確であれば、私はこういう誤解なり問題は起こらないと思うのでありますが、これだけ汚染米がもう長い期間いろいろ問題になっておるのです。私は少なくとも食糧庁でもう少し基本的な態度をはっきりして、そうして国の考え方をやはり一般に明示する必要があるというふうに考えておるのですが、その点いかがですか。
  26. 内村良英

    ○内村説明員 カドミウム汚染米につきましては、御承知のとおり厚生省におきまして、八月に専門家八人の方々からなる委員会をつくられまして、いろいろ御検討の結果、一・〇未満は安全であるという結論を出されたわけでございます。しかしながらその前に、要観察地域であるかどうかを調べるためのめどとして〇・四PPMという数字が出ていた関係上、一部の新聞報道等の関係もあって消費地に若干の不安があったわけでございます。したがいまして、そういった消費者の感情等も考慮いたしまして、食品衛生法上ははっきり一・〇PPM未満は――これは玄米でございますが、安全であるということがしてあるわけでございますけれども、現在、先ほど山中大臣からも御答弁がありましたように、米が余っておりますので、さしあたりそういったものは配給には回さないという方針をきめたわけでございます。
  27. 小山省二

    小山(省)委員 かりに都が米を買い上げたとする場合、その汚染米をどう処分するかということは私は問題だろうと思う。したがって、都から照会があった場合、これらの汚染米について食糧庁ではどういうふうな取り扱いをするかということは、あらかじめ方針がきまっていなければならぬと思うのです。したがって、食糧庁はこうした汚染米をどういうふうな方法で処分するか、その点について食糧庁の考えを聞いておきたい。
  28. 内村良英

    ○内村説明員 汚染米につきましては、東京都の前にたとえば富山県あるいは群馬県安中等の場合があるわけでございます。それらの場合につきましては、政府といたしましては、そういった汚染されている米を人間あるいは動物の口には入れたくないということから、たとえば保有米につきましては食糧事務所あるいは県があっせんいたしまして、これをのり用だとか、あるいはアルコール用等に売るように指導しております。現に、富山県の汚染米につきましては、最近島田化学と申します新潟の写真原料をつくっておる工場にライススターチの原料として売却いたしたケースがございます。ということで、人間及び動物の口に入らない用途で処理したい、こういうふうに考えております。
  29. 小山省二

    小山(省)委員 そうしますと、今回三多摩に起こった汚染米については、保有米であっても国においてはこれを買い上げる、こういう方針でありますかどうか、この点……。
  30. 内村良英

    ○内村説明員 政府は、保有米を買い上げることは考えておりません。
  31. 小山省二

    小山(省)委員 そうしますと、東京都はこれを買い上げるということをもう知事市町村を通して農民側に言明した、食糧庁のほうでは、保有米だからこれを買い上げる意思がないということになると、東京都の買い上げを要請する、こういう要求に対してオーケーをするのか、またオーケーをした場合に、その処分にわたって、食糧庁としてはどういうふうな考え方でこれを監視するというか、そういう点について考え方を明らかにしてもらいたい。
  32. 内村良英

    ○内村説明員 食糧庁といたしましては、保有米については買い上げない。しかし、農家がそういうものを食べたくない、自分のからだにはすでにカドミウムが蓄積されている、さらに、厚生省の見解ではあぶなくないかもしれないけれども、継続的にそういうものを食べたくないというような農家に対しましては、配給をしておるわけでございます。通常は、保有米を持っている農家には配給いたしませんが、そういったカドミウム汚染地域であって、農家が食べたくないという場合には、政府は配給措置をとっております。東京都につきましても、すでに配給措置をとるように申してございます。  そこで、東京都が〇・四PPM以上の保有米を買い上げるということにつきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、まだ東京都から正式の申請が出ておりません。したがいまして、正式の申請が出た段階で、それをどう処分するのか、そういう点も十分東京都の意見を聞きまして食糧庁としての見解を示したいと思っております。  そこで、東京都からはどうであろうかということで、これは食管法上の許可が要りますよということははっきり東京都に申してございますし、東京都も承知しております。したがいまして、東京都としては現在それを研究しているのだろうと思っております。私どもは申請書が出ましてから、関係方面がございますので、厚生省あるいは内閣とも相談して扱いをきめたいと思っております。
  33. 小山省二

    小山(省)委員 こういう問題はひとり三多摩に限らず将来起こり得る問題だろうというふうに私は考えておりますので、十分ひとつあらかじめそういう問題に対処できるような対策というものを食糧庁のほうで早急に確立をしてほしいと思います。  一PPM以下の汚染米については、おそらく私は害はないものと思うのであります。それは国において相当調査をした結果において発表されたことである。しかし、農民側のほうから見ると、かなりそこには不安が残っておるわけです。したがって、その一PPM以下の含有量であっても、その不安があるとすれば、食糧としてこれを使用するということは農民側としてはちゅうちょすると思う。したがって、幸いに米が非常に余っておるという時期でもありますので、その処分については、地方庁のほうのそうしたいろいろな無理をした処分方法も待たずして、国において適当にこれを処理できるような、そういう体制を一日も早くつくってもらって、地方との間にそういう問題で意見の相違が起こらないように、円滑に処理できるようにひとつ当局でも御考慮を願いたいというふうにこの際要求をしておきたいと思います。  実は私は、最近におきます三多摩各地のカドミウム汚染の実態について、想像もできないような問題にぶつかっておるわけです。いまお話ししましたとおり、三多摩の昭島地区は、ちょうど三多摩の穀倉地帯、この中で八九・九PPMというような全国最高のカドミウム濃度の土壌が発見されたというようなことは、これは異例であります。のみならず、都民の生活に欠かすことのできない水源である羽村の多摩川の中からも相当量のカドミウム汚染土が発見されたのです。幸いに水道用水についてはいまのところそういう徴候は見られませんが、すでに多摩川の中で現に八王子においても相当そういうものが浅川において発見されておる。至るところ三多摩の各地の中でそうした強い汚染土が発見をされたということは、私はその原因について当局はできるだけ早く専門家を派遣して、その実態、汚染源について究明してほしいというふうに思った。同時に、こういう問題がそれぞれ地方の自治体の中で発見をされた、こういうことを考えると、これから改正されるであろう各種法案に対しても、やはり地方自治体の公害に対する自主性というものを十分国においても確認をして――今日のような状況下において国が各地のそうした実態を究明するということは、とうてい至難のわざであります。できるだけ国の権限地方に委譲して、そして地方と一体となってこうした汚染源の早期発見につとめるように、私は長官にもぜひ御考慮をいただきたいと思うのであります。  それで私は、この問題に限らず国の公害に対する基本的姿勢というものは、必ずしも長官が言明するような状態になっておらぬと思うのであります。たとえば先日チクロ入りのかん詰めが千葉県ではまだ大量に販売をされておる、こういうことであります。また十月の十五日の新聞では、有毒食器が一カ月放置されている。厚生省は民間の検査結果にきわめて冷淡である。有毒な鉛が大量に溶け出す陶磁器食器が盛んに出回っておるについて、どうもこういう検査がなかなか敏捷に運ばない。その他各種の実態は、連日新聞紙上においても報道されておる状況であります。これは、公害に取り組む政府の基本的な姿勢というものは、まだ十分でないのではないか、そういう不安を国民が持たずにはいられないような、そういう実例が連日あることを考えて、長官は就任以来、たいへん公害問題に御熱心で、われわれも長官の御努力には深く敬意を表しておるわけでありますが、実態はいま申しますとおり、必ずしも十分でない、そういう実例はたいへんたくさんあるようであります。これは法案整備も必要でありますが、少なくとも私は、公害に取り組む政府の姿勢がやはり根本の問題だろうと思います。そういう問題について、十分ひとつ下部機構にも政府の意のあるところを徹底するように、再度関係方面に注意をしてほしいと思うのでありますが、長官のお考えをひとつお聞かせいただきたい。
  34. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま例をあげられました範囲については、厚生省の食品行政、都の保健所等の組織に連なる問題でありまして、これについては、やはりチクロの販売猶予期間の経過と同時に、保健所等の職員の諸君が苦労されて、それぞれの食品小売り店を回ってそれらの事実を摘発し、ないように努力をしておられるようであります。しかしながら、その中にはやはり、なおこっそりたなのうしろに並べてあったとか、いろいろなことがあるやに私も新聞等で承知いたしておりますが、これらのものは法で定めても、実施する段階における運用、あるいは国民の、場合によっては関係者の協力というようなものまで求めていかなければ完ぺきを期し得られない。これは単に企業対住民の関係のみでなくて、いまのような広範な国民生活全体の問題としてとらえた場合の非常に重要な点であると考えます。直接に公害対策本部が、そこまでの指揮権を与えられておるとは思いませんが、しかし、食品公害というものは、人の健康に関する、物質からとらえていけば、これは明らかに当然政府の姿勢として示すべき範囲の中に厳然としてあることでございますから、ただいまのような御注意を受けることのないように努力していきたいと考えます。
  35. 小山省二

    小山(省)委員 このような事態の汚染源といいますか、まだ明確に調査をしたわけでありませんからわかりませんが、多摩川沿いにはカドミウムを使っておりますメッキ使用工場が十一あるわけでありますが、先般調査をいたしました某電気工場からは三七八PPMの汚染土が発見された。さらにもう一カ所からは二七一PPMの汚染土が発見された。大体工場の排水基準というのは〇・一PPMとなっておるわけであります。そういう高濃度汚染源と見られる工場多摩川沿岸に今日なお十一カ所も操業しておる。これがいま問題になった汚染源であると私は断言できませんが、そういうものに対する取り締まりが十分でないといいますか、そういう防止施設が完全でないといいますか、そういう問題が私はかなり住民の不安の種になっておると思います。  ところが、一方こうした業界のほうは、なかなかそういう完ぺきな防止施設をつくることは困難だ、したがって、業界のほうではこうした事業をやめよう、こういうことで東京都の鍍金工業協同組合では、組合の決議をもって近くこのメッキの操業を停止しよう、こういう問題で、かなり業界では不安におののいておるわけであります。近く各種法案も政府のほうでは提出される、その中では無過失責任というものも追及されるような状況から、われわれはこれ以上営業を続けるということはできない、現状のようなまだ防止の科学的な研究が開発されない今日、われわれにこれを完全なものにしろということを要求されても、現実の問題としてできない、そういうところから、実は千六百名ほどの東京都の鍍金工業組合は、組合の決議で近く全面的に操業をやめる決議をいたしておる。あるいは他の方法に転換をする。いずれにしても、カドミウムを使用するところのメッキは操業をやめるということになる。そうなりますと、一部の企業では、どうしてもカドミウム使用のメッキでなければ困る企業があるということを聞いておるわけです。そういういろいろな問題で、主としてこうした工場は中小企業でありますから、中小企業関係の中では、やはり人命にはかえがたいので、結局は企業をやめなければならぬのじゃないかというところで、たいへんな不安におののいておる。もうこのために組合の総会も数回開かれ、そういう決定になっておるわけであります。近くこれが下部組織に十分徹底いたしますると、私はそういう事態はもうそう遠くなく起こるのではないかというふうに感じておるわけであります。こういう問題につきまして、国においてはどのような処置をなさろうとするのか。人命第一主義だというたてまえから、企業はどうなってもやむを得ないのだという考え方のもとに置かれるのではなかろうか。また、理論からいけばあるいはそうなるかもわかりません。しかし、われわれも生活する以上、やはり企業というものが全然なくてわれわれの生活というものは成り立たない。そういう意味から考えると、こういう問題について、私はもう少し産業という立場もあわせ考えながら各種法案の作成に当たらなければならないというような感じもいたすわけであります。せっかくの機会ですから、簡単でけっこうですが、長官のお考えをひとつ……。
  36. 山中貞則

    山中国務大臣 公害対策基本法の二十四条第二項で、中小企業には特に配慮しなければならないということをわざわざうたってありますのも、それらの問題点を十分念頭に置いてやれということを意味しておるものと思います。したがって、ただいまのような問題について、メッキ工場等が廃業される――工場排水法の権限は全部知事に委譲してありますから、きびしい地域の自治体の指示どおりにやろうとすれば、自分たちの資本金とか年間収益を上回る投資をしなければ操業が続行できない、それならばやめてしまおうという意見も確かに出ると思います。しかしながら、やはり社会の中の地域の公共性、自分たちの企業というものの置かれた、総理の言をかりるならばよき隣人としての関係が保っていければこれは一番いいことでありますから、可能であるならば、その処理施設等については、共同処理施設を持ち得るような配置状況でメッキ工場等が一カ所にありますとたいへん処理しやすいのでございますが、そういうことでもない。共同処理施設をつくっていくような、直接めんどうを見てあげるような、そういう配置でもないということでありますと、たいへんむずかしい問題だと思います。しかし、次の臨時国会には間に合わすことはできませんが、通常国会において、一連の公害に対する問題として、ことに中小企業重点に金融、税制についての特例というものを提案したいと考えておりますので、臨時国会においては、とりあえず政府の基本的な姿勢を示す基本法から始まって、とりあえず改正し、もしくは新しく法律をつくらなければならない事態に対処する法律のみにとどめまして、それらの問題が発生するであろう事態に対処する財政、金融の問題、国が負担すべき特別な補助、負担あるいは地方公共団体の対応する費用等についての特例、これらの問題は、通常国会予算編成と同時に重点事項として取り上げて次の通常国会に提案してまいるつもりでありますが、私も、ただいま御指摘のありましたような問題は、直接公害担当の大臣ではありましても、そのような行政機構主管の大臣ではありませんし、したがって、私自身がいまここでメッキ工場にどうするということを御答弁できないのははなはだ残念でありますけれども関係閣僚協等を通じて所管大臣のほうで政府の姿勢としてやるべきことはやらせるが、また一方において無用の犠牲をしないだけの努力はしなければならない義務があると考えておる次第でございます。
  37. 小山省二

    小山(省)委員 昨日の読売新聞にメッキ業者の問題が大きく取り上げられておる。「都内千四十社の業者近く宣言、」防止設備ができるということで転廃の宣言をする。都内のメッキ工場千四十社で組織している東京都鍍金工業組合では、ごく一部まだ反対している人もあるそうでありますが、説得に乗り出して、近く了解が得られ、全組合員はカドミウムメッキをやめる。全国業者に波及かと書いてあります。そしてこれは通産省の調べでありますが、全国のメッキ工場の八〇%は二十人以下の零細企業である。こういう零細企業が東京だけでも千四十社。これらの業者はいずれも、完全な設備は今日の科学技術をもってしては不可能である。したがって、これはやめざるを得ない。したがって航空機、通信機産業は大打撃を受けるのではないか、こういう記事が出ておる。私も中小企業に関係を持つ一人として、業界の苦衷というものがよくわかるような感じがいたすわけであります。しかし、事人命にはかえられませんので、おそらくかなり強い各種法案が近く開かれる臨時国会に提案されるようでありますが、こういう問題は大きな一つの社会問題として、今後もいろいろ政府でもお考えを願わなければならぬ問題だろうと思います。きょうは通産当局もいませんので――じゃ通産省のほうからひとつ御答弁を願います。
  38. 荘清

    ○荘説明員 メッキの問題につきましては、もう先生いさい御存じのとおりでございますけれども、御指摘のございましたカドミウムのメッキと申しますのは、全国で二千以上あるといわれているメッキ業者の中でごく一部、数%の業者が兼業としてやっておる。主としてメッキといいますのは銅とか、ニッケル、クロムでございまして、それに加えた形でカドミウムのメッキをあわせてやっておる企業が少数あるわけでございます。都内におきましてもまた同様であると存じます。主たる用途でカドミウムメッキでないとどうしても困るという分野は、たとえば航空機関係の計器の部品とか、あるいは通信機の部品、それから船舶等塩けの関係で問題になります特殊な部分の部品のメッキ等は、現在の技術ではどうしてもほかのメッキではかえられないということがいわれておるようでございますが、いま御指摘のございましたような取り締まりの強化を考えまして、企業の採算の上から、どう考えてもこの際に完全な処理施設を前向きにすると見通しが立たない、その部分の採算が非常に苦しくなるという企業が多数あることは私どもも聞いております。  ただ、いま都内の鍍金工業組合あたりでいろいろ連日検討がなされておるようでございますけれども、全部カドミのメッキをボイコット的にやめてしまうとか、全部ができないということで検討がなされておるのではなくて、ある部分についてはアセンブルをやります親企業のほうで十分な施設をやりながら、内製をしてもらうということもやむを得ないという面もあるようでございます。他方、下請的にカドミのメッキを兼業でやっておるメッキ屋さん自体のほうでも、いたずらに間口を広げまして、小さなノットのものを少しずつやるという形だけですと、公害防除施設との見合いもなかなかこれで採算がとりにくいという現実の問題もございますので、業者間でも話し合いをしまして、施設も現在すでにできておるとか、あるいは発注量も多くて、そういう施設もある程度しやすいというふうなところに今後だんだんまとめていく。こういうふうに親企業、下請企業一体になりまして、必要なメッキ、カドミウムでなければならない部分は確保しながら全体としては合理化した形でやっていきたい。こういう基本的な方向でいま検討をされておるようでございますし、通産省もそういう方向で実は指導をしていきたい。  なお、そういう方向に即しての金融上の助成措置等につきましては、いま大臣からお話しのありましたとおり、私ども事務的にも最大限の努力をいたしたい、かように考えております。
  39. 小山省二

    小山(省)委員 役所の指導でそう心配するほどの問題でもないという程度であれば私もけっこうだと思いますが、こうした技術開発ということはたいへん大事なことでありますから、そういう面で業界のほうも何とか操業ができるような技術開発について、一そうの御指導をお願いしたいと思います。  それから東京都では、汚染された田畑を本人が希望するならば全部買い上げるということですが、確かに最近におきます東京都の財政面はかなり好転をしておりますから、そういう資金面に事欠くようなことはないとは思いますが、やはりこういう問題については国においても――東京都は財源が許されるからけっこうですが、貧弱な府県では汚染された田畑を買い上げるということはそう簡単な問題ではないと思います。そういうことを考えると、国において基本的にそういう場合にその財源をどのような形で心配してやるとか、あるいは買い上げる方法については国もある程度負担をしてやるとか、そういう基本的な方針というものが何か国において欠けておる。そういう問題は地方の責任だ、地方都道府県がやる仕事だ、とはいっておりませんが、いわぬばかりの態度であっては私は問題だろうと思うのであります。したがって、今日東京都がそういう問題を打ち出したのを機会に、そうした汚染された地域を今後どういうふうな形で活用していくかというような考え方について国ではどう考えておるか、その点を私はお聞かせを願いたいと思います。
  40. 山中貞則

    山中国務大臣 提出を予定いたしております土壌汚染防止法、この中で、農用地について新しい法律を提示したいと考えます。さらに、それらの工事を行なう場合においては、必要な場合は企業の費用負担法という別途出します法律の中でも、それらの負担についての応分の企業負担について定めるつもりでおりますので、土地を買い上げると申しますか、買い上げる前に、農用地について汚染されたものをもとへ戻すための土地改良その他の工事について特別の配慮をするということでまず取り組んでいきたいと考えます。
  41. 小山省二

    小山(省)委員 最近、企業負担ということがたいへん問題になっておりますが、その企業負担という前提には企業の責任というものが明確でなければならぬと思うのですね。いまのように、一体どの企業が汚染したのかというような原因が明確でないときに、その状態が明確になるまで処置ができないということでは私はいろいろ問題が起こると思うのです。そういう場合には国においてか、あるいは地方都道府県においてか、何か対策を講じてもらいたいというのが土地所有者の考え方ではなかろうかと私は思うのであります。そういう点については国ではどのような態度でお臨みになるか。
  42. 山中貞則

    山中国務大臣 土壌汚染防止法の中でそれらの考え方は明らかにするつもりでありまして、農用地についてすでに汚染されているものについてどのようにするか、そして汚染防止をどのようにするかについての法律をいま準備中でございますので、これらの新しい典型公害の中に、土壌汚染を第二条で加えると同時に、それに対する対策法というものを提案して、いま御質問になりましたような趣旨にこたえる道をいま研究中でございます。
  43. 小山省二

    小山(省)委員 これは本日の各新聞社の都下版に一斉に出ております。多摩地区を要観察地域厚生省は近く指定をする、こういう見出しでありますが、この三多摩地域を要観察地域に指定する、そういう考えがあるのかどうか、またそういう準備を進めておるのか、また観察地域に指定された場合におけるところの国の処置、そういうものについて厚生省公害部長ひとつ……。
  44. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 お答えします。  都下の要観察地域指定の件につきましては、都のほうから正式な要請はまだありませんけれども、データ等が整い、手続がなされれば、条件にあっておれば当然指定することになるであろうというふうに考えております。ただ、範囲が非常に広うございますので、線引きについてあるいは多少時間がかかるのではないかというように考えております。もし要観察地域指定になりますと、本年度は特に公害の緊急対策費として所要の予算を計上しておりますので、そこで行なわれるいろいろな汚染度の調査あるいは住民の健康診断、そういったことは国費で一応見るということになるわけでございます。
  45. 小山省二

    小山(省)委員 公害は必ずしもカドミウムに限定されたわけではありませんで、私ども地域は、川砂利を取ることが禁止されて以来、たいへん山砂利の公害に悩まされておるわけであります。無謀なダンプと戦っているのがいまの三多摩住民の実態であります。この公害については苦情の持って行きどころがない。やはり山間でありますから、ほとんど道路は舗装されておらない、住宅は出入りをすることができませんので、全部表を戸締めをいたしております。実際どろで埋まるような状態であります。そして騒音で夜間ほとんど寝られない、こういう状態で、二重、三重の公害で実は悩んでおる。どこへ行きましてもその実態をつかむ――どういう業者だといっても、もうほとんど車がまっ黒でありますから、すぐ飛び出してもナンバーも確認できない。しかも、そのはねた石かけらや何かでガラスは全部破壊されるというようなことで、その苦情をだれも取り上げてもらえるところはないということで、私もしばしば要請をされて実態調査に行って、ほんとうにこれは困ったことだという感じだけで、その被害をどこに請求していいか。そこで山もとの砂利を採取しておるところへ行きますと、輸送のほうは砂利会社とは全然関係ない。また輸送会社へ行くと、下請で、私がやっておるわけじゃない、名前だけでございますというようなことで、しかも、その下請がときどきかわってしまうというようなことで、実にいま三多摩の各山岳地帯ではこの問題で住民が非常に苦しんでおる。しかし、その適当な対策がないまま今日に至っておるというのが実態であります。  ほかの公害ですと、大気汚染にしても、あるいはいま言うカドミウム、そういう問題ですと新聞に大きく取り上げられますが、この山砂利公害につきましてはときおり地方紙がそれを伝える程度でありまして、全国的な問題として今日これが取り上げられておらぬ実態ではありますが、これはひとり三多摩地域だけではありません。各所に参りまして同様な苦情をわれわれは常に住民から受けておる。やはりこういう問題は政府でも何らかひとつ手を打って、そういう住民の被害を解消するような方法を講じていただきたいというふうに考えておるわけであります。  幸い長官おいででございますから御所見をひとつ承りたいと思います。
  46. 山中貞則

    山中国務大臣 通産省のほうより、採石、砂利等の法律規制の問題についての答弁があると思うのでございますが、問題は、その採石を許可した後のその運搬手段等について、付近の関係なき住民が非常な迷惑を受けておるというお話であります。これにつきましてはいま道交法の中に、交通関係の角度からのみの議論が、今日では公害という問題からも取り組むべきであるという議論になってまいりましたので、現在検討中の段階でありますが、道交法の中に、排気ガスはもちろんのこと、振動、騒音、そういうもの等の地域住民に及ぼす影響を、公安委員会権限で、自動車の通行禁止もしくは一定時間の通行を制限するとかいうようなことについて立法できるかどうか、法制局との間にいま議論をしておるところでありますが、そのような問題が、もし私どもの願う方向で、道交法の改正として国会に提案することができますれば、その基本的な砂利採取法の許可のあり方の問題は別にいたしましても、それの及ぼす周辺地域住民への影響というものについて、主としてダンプ等の被害等については何らかの措置がとり得るものと考えておるわけでございます。
  47. 本田早苗

    ○本田説明員 採石につきましては採石法、砂利につきましては砂利採取法がございまして、採取に伴う公害、災害につきましてはこれを防止するための改善命令あるいは事業停止命令等の措置がございます。われわれといたしましては、今後公害の防止をするという観点から、採取の事業の開始の以前に、採取に関連する公害の防止は、十分予防できるような措置を講ずるために、通産局長が府県知事または市町村長の御意見を伺った上で認可をするという形で処理いたしておるというふうに考えております。
  48. 小山省二

    小山(省)委員 予期しない三多摩にこのようなカドミウム汚染地帯があったという、私はこれ以外にも調査をすれば相当こうした問題になる地域があるのではないかというような不安を持っておるわけであります。そこで、ぜひひとつそうしたカドミウム発生源といわれるような、そういう施設のあるような地域については、この際、徹底的な総点検をして、そうして住民の不安を解消するというような方針を確立してそれぞれ都道府県にひとつ関係大臣からよくその趣旨が徹底するような指導をして嬉しいというふうに思うのであります。われわれもまさか自分の住んでいる地元でこのような強い汚染地帯があったということを不敏にして知らなかった。しかし、実際その汚染米を食べておった農民の驚きを考えると、やはりそこにも政治の及ばなかったそういう面のあったことをわれわれは反省するわけであります。おそまきであっても、私はこれからでもそういう地帯が後日発見がおくれて問題が起こらないように、この際政府でも多少の予算は要するか存じませんが、ひとつ徹底した調査を行なうよう強く長官に要望しまして質問を終わりたいと思います。
  49. 加藤清二

    加藤委員長 午後零時四十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時一分休憩      ――――◇―――――    午後零時五十三分開議
  50. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 国会が二十四日に開かれることになりまして、法案がすでに準備されている、またすでにでき上がっておりますが、審議するための基本的なかまえ、この二、三点をこの際聞かしてもらいたい。そのあとで具体的な問題に触れさしてもらいたいと思います。大体これが今回の一つのやり方です。  まず第一番に伺っておきたいのは、法律ができてもこれが単なる世論対策であってはいけない。実効をあげるためにはきびしくこれに臨まなければならない。したがって、政府の姿勢もいままでと同じであってはならないし、重大な決意をもってこれに当たらなければならないのは当然だと思うのですよ。私はそれを今回の国会に期待したいと思う。そのためには、いろいろ法律はできておるようでありますが、基本法の中の経済調和事項を削られたというのはまことにいいことだ、こういわざるを得ませんが、同時に、国民生活優先の基本的なかまえ、このかまえがどうなっているのか。生活優先、それから環境保全、こういうようなものを先に出して、削るものは削ってしまったら、それはいける。ただ、削るのは削っても、残すものを残しておいた場合には、これが単なる世論対策ではないかと思われるようなことであってはならないと思うのです。この点について基本法改正の、いわば経済調和事項を削って、これに対して生活優先、環境保全をまっ先に打ち出さなければならない、常にこれを言ってまいりました。これに対する長官のはっきりした態度をお聞かせ願いたいと思います。
  52. 山中貞則

    山中国務大臣 これは一番大きな問題でございまして、公害に臨む政治の姿勢を明記するのが基本法の第一条でいう目的であるはずでありますから、それに対する政治の姿勢はどのような姿勢であるかということがすべての法律の根底を流れる考え方につながっていくわけですので、私もその点は十分な検討を加えたところであります。もちろん第一条第二項の調和条項の削除は、これはもう担当大臣になりましたときに言明をいたしたとおり、法律作成の段階でちゅうちょすることなく削除をいたしておりますし、したがって、基本法としては、第九条も、さらにその他の基本法の第一条を受けた調和条項も全部一律に今回は落とすということにしております。しかしながら、落としただけで問題が、姿勢が解決したのではない。ただ、無用の疑惑を晴らすことに若干役立つだけであることも私否定できないと思います。新しく昭和四十二年につくって、三年目には基本姿勢が議論されてぐらつくような基本法であってはならない。そのためには基本法のあるべき考え方、そして相当長い時限に立って考え方の通用するものでなければならないし、それを受けて第二条の典型公害やその他の施策についても、姿勢が具体的にあらわれてくるのでなければならないと考えました。やはり日本では一番基本となるのは、いわゆる不磨の大典という言い方をしております憲法、軽々にいじることを国民の名において許すことのできない立場に置かれた憲法というものに条章の根拠を置くべきではなかろうかと考えまして、健康にして文化的なということを挿入するいわゆる公害憲章的な表現にいま法律の第一条を変えようとしておるところでございます。ただ、憲法には健康にして文化的な最低のと書いてありますので、私たちはいまどこを最低といっていいかわかりませんが、生活保護、社会保障制度の問題、その他の問題等は、これは別途の問題として私たちが提起された問題に対処しなければなりませんけれども公害の問題で最低という表現を使うということはいかがであろうかと考えまして、憲法の条章によったことばを使いますが、健康にして文化的な国民生活を守るための法律なんだということをはっきり打ち出すことによって世の御批判にたえ、また相当長い時限の議論にたえ得るものにしたいと考えております。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、それは生活優先、環境保全、これは当然先に出した考えの上に立ってこれを立法した、こういうように考えてもいいか。まず簡単ですが、これが一つ。  もう一つ、すでに御存じのように四十二年八月三日、いわゆる基本法ができ上がった。その最後の総理が出席したその答弁の中に、無過失賠償責任を基本法に準拠した個々の立法化の際には考えてもよろしい、こういうような総理の答弁があったわけであります。しかし、いままでどの法律案を見てもこれがない。自動車の問題でも鉱山の問題でもそれがあっても、公害に関してはこれが出てこない。これはやはり当時それまで言って、いまこれをどうなんだというのも少し私どもとしてはのんびりし過ぎるけれども、いかにやってもこの厚い壁を破れなかった。それで長官に心から期待したいのです。今回、この改正に際して、無過失賠償責任を何らかこれをうたうように努力してもらいたい。入れてもらいたい。ことに当時の状況は私も知っておりますが、立法の当初は、四十二年段階では、これは当初なかった経済調和条項、これが突然入ってきたのです。それが削られた。まずいいでしょう。りっぱです。ところが、当初構想の中にあった無過失賠償責任、これが今度ないのです。今度も――ないべきものがあったからそれをとった。けっこうです。あるべきものが出ていないというならそれを出してやる。これも立法の精神として当然そこまで考えていいのじゃないかと思うのです。この二つをお聞かせ願いたい。
  54. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、第一点の健康優先かということはそのとおりであります。何ものにもかえがたい人の人命、健康、そういうものを最重点に置いた基本法の姿勢をとるということであります。  第二点の無過失賠償の問題でありますが、これは法務省に、純法理論の上からそのようなことが成り立ち得るのか、得るならば刑法の特別法としての公害罪とともに、無過失賠償というものを民法の特別法として考えてもらいたいというお願いをしていたわけであります。法務省においては現在検討中でありますが、何らかの研究期間を、少し期間を置いていただいて、臨時国会に間に合わすことはどうしてもできませんでしたが、通常国会をめどぐらいにやらしてほしいということでありますから、まあ一方において挙証責任の転換も含めた無過失責任というものがまず民法の特別法として提出されるであろうという見通しを一方に持っておるわけであります。  なお、普通の取り締まり法規といいますか、公害基本法に基づく各種行政法規の中で、無過失責任というものが織り込めるものがあるか、あるいは織り込み得るものがあるならば織り込もうではないかという作業もいまいたしておりますが、現時点で、どの法律では無過失責任がうたい込める、あるいはこの法律はこういう理由で不可能でございますという仕分けにまで到達しておりませんけれども、そのような方向は、法務省の民法独自の立場も、特別法を待つばかりでなく、普通の私たちのいま議論しようとしております行政各種取り締まり法規の中で、入り得るものがあれば入れていきたい。全部をひっくるめて、公害関係するものは全部無過失責任を追及するというふうには書けないというのが実際上の実態ではなかろうかと思います。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 政府の公害対策の中で、具体化の現段階において、やはり何か後退した、こういうようなことをいわれることは、同じ公害対策委員会の中にいるわれわれとしても、やはりたえられない思いがします。それで、そうでないためには、まず姿勢を正してこれに当たる。先ほど言ったとおりであります。  私、この際も、はっきり自分の経験に徴してお伺いしておきたいことは、これは負担法も出るようであります。その中でいわゆる費用負担法です。これはいわば防止事業の範囲だとか、事業者の範囲だとか、企業負担の範囲だとか、手続、こういうようなものの決定もいろいろきめられるようでありまするけれども、その中で負担の割合が四分の一から全額まである。そうなりますと、労働基準法の場合にもあるんですが、これは最低であるから、それ以上のものはやってもいいんだという場合には、なかなかその上が出てこない。したがって、もう負担割りは四分の一から全額までときめちまおうとはっきり算定基準を出してやらない以上、これもやはり労働基準法のほうでは、いつでも守られるのは最低の線であり、またこれは四分の一の線であるということになったら困るじゃないか。これをおそれているのです。この点に対してどうでしょう。
  56. 山中貞則

    山中国務大臣 全部をひっくるめて企業の費用負担は四分の一から一〇〇%ということを言っているのではありませんで、御承知のように各種のカテゴリーに分けた中で、企業としては直接公害発生さしているわけではない、しかし、その企業が立地することによって、その準備をしておく必要があるというような場合において、やはりグリーンベルト等が一応想定される典型的な姿でありますけれども、これらの問題について通産、厚生等において、それぞれ審議会あるいは厚生大臣の諮問機関等における中間報告答申等がありました。それらのものをよく勘案しながら、建設省等で行なっておりまするグリーンベルト等の場合における負担のあり方が慣行として二五%というものがグリーンベルトにおいては定着しております。したがって、二五%というものは、グリーンベルト等の企業としては負担の最も軽い分野が最低二五%であるということを言っておるのでありまして、それぞれそれ以上の負担についてはさらに細分化をいたしますし、その大前提としては企業自体が当然行なわなければならないもの、すなわち公害防止施設その他は全額企業の負担であり、そしてまた過去において企業の責任において発生した公害の防除等についての仕事も、これもまた全額企業の負担であるということを大前提に置いておるわけでありますから、最も軽いものが二五であるということにおいて、すべてのものが今後二五のほうに引き寄せられるということではないというふうにお受け取り願います。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 次に、この問題は長官にぜひとも考え方とその真意を聞かしてもらいたいと思うことがあります。やはりこれは単なる世論操作のためでもないんだ、これからあらためて政府としては重大な決意をもってこれに臨むんだ、そして諸施策に当たるんだ、基本法でできないものは、入れるものは入れる、その他の関連立法において取り入れられるものは全部入れていくという精神において、一貫して強力な行政体制を実施していきたい。それをつかさどるためには、やはりかつて一日内閣で大臣も言っておったと思いますけれども、政治資金をもらってものが言えなくなるのではないかという高校の生徒の発言があったように私は新聞で伺いました。どうもこの点がいつでもこびりついているのです。やはりこれは姿勢を正して、企業に対してもき然として今後行政指導に当たらなければならない。またその姿勢としても、はっきりした姿勢をもっていつでも当たっているんだ。これだけは国民の前に同時に示さなければならないと思うのであります。  それで、いままでいろいろ報道機関のあれによると、やはり四十四年度で、水俣の問題とか、あるいは有機水銀だとか、カドミウム中毒だとか、こういうようなことによって被害者がいま係争中の事件があります。まだそれもそのまま、百年裁判のように結論は出ないのであります。しかしながら、それを見ますと四十四年度で昭電が八百六十二万円の政治献金をしているのだ。それから大昭和製紙でさえも二百五十万円の献金をしているのだ。それから無配を続けておるいまの水俣チッソでさえも、これは二十万円の政治献金をしているんだ。こういうようなことのために、高校の生徒でも、現在の公害の情勢から見て、やはりものが言えなくなるのではないかというおそれは、こういうようなことから出るのじゃないかと思うのです。したがって、今後新たに基本法からしてその関連立法全部改正して出るその政府の態度としては、今後は重大なるこれに対する決意をもって当たってもらいたいことは、公害に係争中の会社並びに事故を起こしておるような、こういうような会社からは党として献金は受けないという態度でこれに臨むべきではなかろうか。これが一番きれいなすっきりした姿で今後公害行政指導に当たれるんじゃないか、こういうように思っているのですが、この点に対してやはり期待できるのは大臣ですから、大臣の決意を聞かしてもらいたい。
  58. 山中貞則

    山中国務大臣 これは自民党としての問題でありまして、私から自民党をいまどういうふうに変えると言うことのできないことも御承知のとおりでありますが、しかし「李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず」というならば、それらの心がけは当然持っていいかと存じます。しかし、一方において、それらの事実が背景にあるから政府の公害対策が足を引っぱられ、もしくは純粋に役人の諸君がそれぞれの省の立場において、あるべしと望んだものが後退しておるという事実は、全く私担当大臣に関する限りはございませんし、私自身がそれによってみずからにマイナスの面がかりに起こるとしても、それはいさぎよく受けるべきものであろうと思います。第一、企業が政治献金をなぜするのかと言われたときに、おもしろい表現をした企業がありました。それは私たちのいわゆる自由主義経済のもとで、ある意味の保険金をかけているようなものだ、したがって、直接の反対給付というものを、献金したら今度幾ら給付があるだろうというふうには考えていないということを言った相当な財界の首脳部がおりました。一つのおもしろい発言だと思うのですが、いずれにせよ、そのような前提に考えておるにしても、企業自体が存立することによってそういうことが言えると思うのです。  しかし、前にも申し上げておりますように、今日企業というものは総理のことばをかりるならばよき隣人でなければ地域社会に存立することを許されないということを言いました。またあるいは私自身は、反社会的企業あるいはその他の係争の過程において殺人企業的なイメージを受けること、このこと自体が企業の新しい立地を断念させ、あるいはまた企業自体の存立を――求人等において応募者が集まってこないというようなこと等の現実に当面をしておりますから、保険金をかけるどころではない、自分自身の会社の存亡というものがもうこの公害対策にはかかってきつつある。すなわち社会に受け入れられない企業というものは、時の権力者とルートが通じておる、あるいは権力者に道を持っているからといって、それが地域住民なり国民を無視して生存することが許されない状態になっていることは、もう企業の側も十分な自覚を持っておるものと私は思います。ことに私が担当大臣になりまして、相当きびしい法案を次々と準備を進めておりますが、それについて、たとえば公害罪というものをかりに法務省にお願いをして作業はしてもらうにいたしましても、最終的に私のほうが責任を持つ公害担当大臣立場で、財界が反対の意思を表明をし、だから公害罪というものをやめようという気持ちになったことは全くただの一秒もございません。でありますから、私たちは、すべての国民自分たちのこととしていかなければならない、その中でひとり企業のみが、自分たち自身は国民とは遊離しても別な新しい道があるんだという考えは許されないという気持ちでおりますから、いささかの後退もいたしておりませんし、私の決心も鈍っておりません。また党のほうからも、いまそろそろ法案の大綱等について、与党でございますから共同責任の立場で内相談をしておりますが、行き過ぎであるから引っ込めとか、あるいはここの点は反対であるからもっとやさしくしろとかいうような意見も、特別な党のまとまった意見として出ておりませんし、政府の内部からも、おまえのやり方は行き過ぎである、わが党としては認めるわけにいかないというような意見等は一ぺんも聞いておりません。したがって、今後も私は後退する意思はございませんし、後退ということばが穏やかでないならば、あるべき真の政治の求められた姿に向かって熱心に、かつまた一歩も引かない決意を持って答えを出していくということをお答えしなければならないと考えます。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 わかりました。しかし、献金はやはり依然として受けるということですか。
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私、自民党の献金の詳細についてよく知りませんが、私自身が受けておるわけではございませんし、したがって、私がいま担当大臣として遂行しようとする法律の作業に何らの影響を及ぼすものでないということで断ち切っておるわけでございますから、あとの党の運営は、いずれ私幹事長にでもなりましたら、あらためて言うことがあるかもしれませんが、いまはまだその段階に至っておりませんので、将来あるべき保守党の未来の像としては、島本先生のおことばは身に刻み込んで覚えておきたいと思います。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 しかし、これはやはり私としてはもう身に十分刻んでおきたいと思います。しかし、これは責任者でないと言う以上、私は実力者としてそれをお願いしたい。やはりあなたはできる人だ、こう思いますから。李下に冠を云々と申されましたが、子供と申しましても、一日内閣で聞かれた純心な気持ちから発したこういうようなものはやはり国民のどこかにあるのですから、こういうようなことに対しても疑念ははっきり解いて、き然たる姿でやるのだ、私のほうはき然たる姿だ、――それはわかりました。しかしながら、こういうような疑念をもって見られる、こういうようなことであったならば、やはり思わざるところにまた思わざるような事態が考えられるわけでありまして、この点はやはり受けない態度で進むほうがきれいでさっぱりして、国民に対する姿だ、こう思っております。これ以上は無理でしょうから、早く幹事長になって、この点はっきり受けないと言明してもらいたい、このことを要請しておきたいと思います。(「いや総裁だ」と呼ぶ者あり)総裁でなおけっこうであります。  次に、いまいろいろ申されましたが、公害行政の一元化。これはなかなか皆さんから強い要望のあった問題であったこと、御承知のとおり。それからこれも公害省または環境保全省、いろいろなことをいわれておりますけれども、これをつくる。また、つくってもよろしい時期ではないか、こういうふうに思われるわけであります。いま自分がやりながら自分が言うのはちょっとおかしい、こう思うかもしれません。それはお隣のほうに言ってもらってけっこうでありますけれども、しかし、強力なる公害行政を実施するためには、この際やはりもう予算措置とあわせて、そして具体的な問題と取り組む必要があると思うのです。先ほどいろいろ資料の要求なんかでもおわかりのとおりでありますけれども、私の手元によって調べたところによると、公害の国家予算として一千億円余、これも行政の工業技術院の研究調査費である。それから地方自治体の交付金が二千億円余、これのほとんどが財政投融資によるものであって、これは下水道の充当にあたるようなものであるようであります。そうすると、完全にこれを実施していくためには予算措置というものをまずやる責任、これも大臣が持たなければならない。各省にわたっている。各省にわたっているから各省大臣の責任で、これは私じゃないんだ、こういうお考えは毛頭ないだろうと思うのです。しかし、その点がいま言ったような数字をこうやって見ますと――これは防衛庁のほうを見ましても、四次防でも五兆数千億。一年間に五千億も六千億も年間経常費を組む。これに比べたら、まことにいまこの重大なさ中に少な過ぎる。これに当たるためにはやはり専管省を早くつくって、そして人と機構を合わせてこれに当たるべきじゃないか。今度が一つのチャンスじゃないか、私こう思っております。これをずらしたならば、またいつの日かなる、こう思いますが、今度は内閣こぞってこの問題に当たってもらいたいのであります。これは見通しも明るいのじゃないかと思うのです。いまやって、決してこれは行き過ぎだという人は一人もいないだろうと思うのです。この問題について予算措置の面とあわせてひとつ決意を承っておきたいのであります。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 来年度の公害関係予算要求額は、各省で出しましたものが財投を含めて三千五百六十八億に達するわけでございまして、昨年度予算の二倍以上になるわけでありますが、私の手元で、言われるまでもなく公害担当大臣でございますから各省のそれぞれの局長クラス、官房長全部集まってもらいまして、各省から出しておる要求の内容についてしさいな検討を加え、あるものは不足すると思い、あるものはまた便乗であると思い、ある場合においては明白にダブっておるものもございました。これらのものを把握いたしましたので、閣議において総理以下の関係閣僚の了承を得まして、公害対策予算については各省の提出したものは一応八月三十一日で大蔵省に届いてはいるけれども、それに対して国の来年度の予算の額にしても、そのまた実態についても、公害対策本部として、来年度の公害についてはこのような大要でもって政府の姿勢が予算上明らかにされたものであるということが明確に把握できるように、そのためには最終に予算が詰まってからその集計だけを私が集めるのではなくして、各省から提出された予算について私の公害対策本部においてこれをとりまとめて、予算の査定に対する対策本部の感触をまず送るということについていわゆるものを申し上げる。そして予算編成作業の過程においても、大蔵大臣と私との間において四十六年度予算においてあるべき公害予算がいかなるものであるべきかについての話し合いも持つ。したがって、両者妥結したものが四十六年度の公害予算の姿になる。大体以上のような内容についての関係閣僚の了解を閣議でとりましたので、私のところで先々週すでに第一回の公害関係予算を査定するにあたっての公害対策本部としての意見、注意すべき事項について送りました。さらに第二回目に、いま作業いたしておりますが、どのようなものに重点を置き、あるいは場合によってはどのようなものはつける必要はないということも、各省に対してはたいへん気の毒なことになりますけれども、そこまで立ち入ったはっきりした姿勢を示す予算編成での取り組み方をしたいと考えていま作業いたしておるわけでございます。  省や庁の設置については、これはやはり対策本部長であると同時に総理大臣である総理の考え方というものを相当聞いてやらなければなりません。私ども関係閣僚でまとめました公害データバンク程度のものだけでいいかどうかについて、総理自身も一定のある意味の考え方を持っておられます。もっと何か考える必要はないかということで、ただいま具体的にお話がありました環境汚染防止省なり、あるいは庁なりというようなものの構想等も含めながら、どのようなものが実現すべきものであるか、どのようなものが最低必要な機構であるかというようなものについては、いま総理、官房長官、私の間において検討中でございます。直ちに省庁をつくるとか、あるいは専任の大臣を置くとかいうようなことまでまだ話が進んでおりませんが、少なくとも検討はいたしておりますが、現在の対策本部でさしあたりは十分に機能することが可能であると考えまして、それらの長期的な見通しは政治の責任者である総理大臣の最後の判断にゆだねることとして、私は全力をあげて、現在の機構能力の中ででき得る限りの努力をしていきたいと思います。しかし、世界各国の環境汚染問題に対する取り組み方というものを考えますときに、日本が現在のままの行政のあり方であっていいのかどうか、これは私たちももっと真剣に研究してみる必要があるというふうに考えるわけでございます。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 今回の場合、特に期待しておりました悪臭の防止法について、これはどうなっているのだろうか。これはやはりいろいろな点で問題をはらんでおる法律でありますが、いまだにこの帰趨が私はわからないのです。これはどうなっておりましょうか。ひとつ御説明を賜わりたいと思います。
  64. 山中貞則

    山中国務大臣 この悪臭というのは、典型六公害の中にすでに四十二年に基本法第二条で入っていながら、いまだに法律規制法ができていないという、まことに怠慢といえば怠慢、できないなら初めから入れなければいいという感じが私したわけです。そこで典型六公害の中に入っている以上、必ず取り締まり法がなければいかんということで、督励に督励を重ねておりますが、率直に言って、事務当局は非常にむずかしいと言っております。かりにやらしていただくにしても、相当検討さしてもらわなければ法律らしきものがつくれない、いわゆる基準をつくるのがむずかしいと言っているわけです。しかし、私はこの席でいつか、鼻が何度曲がったら何PPMというわけにもいきますまいと言ったわけですが、においの種類や、あるいは風向き、気温や、体質や、いろんなものによって違いますし、いまのところ私としては、臨時国会に間に合わせるということを言明いたしまして、いま昼夜を分かたず作業を進めておりますが、この法律だけは普通の法律と違った形にせざるを得ないだろう。たとえばそういうような悪臭を発するようなところはほぼわかるわけですから、モニターみたいな人を住民の中から委嘱することと、それによって、悪臭というものが地域住民の居住環境、生活に著しい影響を及ぼしつつある旨の報告があった場合に、どのような機械を持っていってはかったらそれが悪臭についてのみ反応するのか、香水には反応しないで悪いにおいだけに反応する機械があるのかどうか、そこらもたいへんむずかしいんですけれども、しかし、法律はつくらなきゃならないという――かつて、議会では男を女にする以外は何でもできるといわれたことがありましたが、いまは医学の進歩によって、それすら可能になったわけでありますから、法律ができないことはあり得ないということでいま督励いたしておりまして、私としては臨時国会に間に合わせるべく作業いたしております。ただし、提案は、開会になりましてからいろいろの行事がございまして、そして党大会その他等を考えますと、おそらく十二月に入ってから提案をさしていただいても、一、二の法律についてはよろしいのではないかと思いますので、実質審議には間に合う。しかし、開会の召集日に悪臭まで含めた十五本全部耳をそろえて出せるかというと、少し悪臭がおくれるかもしれない。しかし、必ず臨時国会に出すつもりで努力をいたしております。申し上げるだけにいまのところとどめておきませんと、なかなか作業の内容がむずかしいものですから、まとまりましたらいつでも答弁いたすつもりでございます。
  65. 加藤清二

    加藤委員長 この際、島本虎三君に申し上げますが、佐藤経企庁長官があと三十分くらいしかおれない予定のようでございます。したがって、佐藤経企庁長官質問がございましたら、その間にどうぞおやりいただきます。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 悪臭については、なかなかこれはむずかしいようなことになっておるようであります。この際長官にはっきりこの点をただしておきたいと思うのです。有機化合物の分子構造をコンピューターで確実にかつ手早く分析するという方法を発明された、そう聞いております。これは従来の方法から隔世の感があるのです。これがコンピューター利用だ。そして炭素、酸素、水素、この三元素のほかに、硫黄や燐、こういうようなのを入れたのまで的確に二、三秒で分子の構造の分析ができる、こういうようなことがいわれております。これは宮城の教育大学の佐々木という教授が行なった。ずっと以前、三、四カ月ほど前に私は新聞で見ておる。そうなりますと、ここではっきりと言うことのできるのは、コンピューター利用によって監視、測定を的確にかつ早く、これが可能になってきた。そうなりますと、かなりの有機化合物はこれを解読するので、完全に早くわかる。そのためには、コンピューター有機化合物自動構造解析システム、こういうようなものの開発に成功しておりますから、赤外線や紫外線、磁気共鳴、質量、この四種のスペクトル、この分析測定を小型コンピューターに直結させ、さらに大型コンピューターに連結させて、その有機化合物の分子構造と分子式をすばやくきめてしまう、こういうようなものだそうであります。そうなりますと、今後はこのシステムを利用すると、魚の悪臭と有機物による公害の源をすばやくさがし出すことが可能だ、こういうように報ぜられているのであります。そこまでいくと、東京湾の汚濁でも、排水口にでもこういうようなものをつけておき、また音はちゃんとホンではかれます。そのほか空中でいわゆる亜硫酸ガスでも、こういうようなものを分析させ、それをあるいは環境汚染省でもいい、公害省でもいい、この下にはっきりした研究機関を置いて、そのもとで日本国じゅうのすべての公害現象を強力にキャッチするのでなければならない。いま電電公社のほうでもこういうような点でコンピューター導入のデータ通信、これもすでに一部実施しておるわけです。これを全国に広めることによって、公害省とその研究機関によって、全国の水、空気、音、悪臭、これまでも可能だということがもうすでに立証されておるような段階だ、こういうように思うのです。  水の点の監視あたりでもこれはまことに困難な状態です。たとえば自治体のほうで河川の監視から、今度は指定水域を除くと沿岸の水辺まで全部、運輸省の保安庁から自治体の河川管理までこれを強力に行なわなければならないし、行なわせなければならないのであります。しかし、汚染を追っかけて歩いているのでは必ず目こぼしがある。すなわち出そうなところへそれを置いて分析させ、そして定時にそれを監視させている、こういうようなことを一つの専管省でもってはっきりやらせることによってこれは可能じゃないかと思うのです。  電電公社もせっかく来ておるようでありますが、こういうような点を研究しておられるかどうか。おったとするならばこれをすぐ役立たせることができるかどうか、この辺の見解をまず承っておきたい。その結果によって大臣に決意を聞かしてもらいたいと思います。
  67. 山中貞則

    山中国務大臣 行政機構の問題は、データバンク程度でいいかどうかということばの次に出てくるのは、公害に関するものは各行政機関付属のものを全部統合した国立総合公害研究所みたいなものというようなものを考えているわけなのです。ただ研究機関なり、分析、解析等がそこで行なわれるセンターがかりにできたとしても、行政の各規制法というものは、また各省ばらばらでやっているというのでは、そこにまた問題が起こりはしないだろうか。だから、そこまでいくならば、今度逆にアメリカのように、すべての役人、機構予算全部をひっくるめて、最終的には六千五百名、十四億ドルというようなことになったのでありますが、そういうような機構にするかどうか。それらを庁と呼ぶか省と呼ぶか、専任の大臣を置くかというようなこと等についての判断を総理、官房長官とともにいま相談中であるということを申したわけであります。  なお、悪臭の問題についてのただいまのお話は、単に悪臭のみではないのでしょうけれども、悪臭については発生源というものをさがすのにむずかしいわけじゃない。これはもう人間の嗅覚ですぐつかまるわけですけれども、しかし、つかまえたときにどういう程度のにおいならばどういうものとして基準を設けて、それを越えたものとしてどのような規制をする、どこまでのにおいだったらがまんができるから、それは規制基準以下のものとして認めるとか、そういう基準づくりというものがむずかしいということを申し上げたわけでございます。その意味だけで、ちょっとつけ加えて申し上げておきます。
  68. 神谷輝男

    ○神谷説明員 お答え申し上げます。  先ほどお話がございましたように、各地にいろいろな測定器を置きまして、その場所からデータをとって、それを集めてコンピューターで解析するというやり方は、現在できるわけでございます。ただ、先ほども大臣からお話がございましたように、あるガスを分析いたしまして、その中にどういう成分があるかというようなことを見つけ出すのはかなりわかるようになったのでございますが、これが悪臭とどういう関係にあるか、そのこと自体が一番大きな要素であるか、あるいは小さな要素であるかというような関係が、かなり今後もむずかしい問題じゃないかと思います。私どももデータ通信をやらさしていただいておりますので、いまお話がありましたようなことにつきましては十分御協力申し上げたいと思っておりますし、また協力さしていただくことを非常にしあわせに思っておるわけでございますが、具体的にどういうぐあいにやっていいかということにつきましては、なお、御関係のところにいろいろお話を伺わなければならない点がございますので、別途御関係の方からいろいろお話を伺いまして御協力申し上げたい、こういうふうに思っております。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 それはそれでよろしゅうございます。  次に、私自身も予算措置とからんでぜひ聞いておきたいことがございます。  それは油の問題でありますけれども、いま低サルファの油を入手するということを懸命にやっておるが、この開発のために努力してもらわなければなりません。懸命にやっておることはわかります。なお努力を継続して、低サルファの油をたくことはまずいいとです。ところが、現状においてはやはりやむを得ず中近東から硫黄分の多い油を買ってくる。そうなりますと、それを直接、または間接脱硫装置にかけて使わなければならなくなる。直脱のほうは成功のめどはついているけれども、まだはっきりしたデータは出ておらない。たよるのは間脱である。そうなりますと、原油を間脱にかけてガソリンやナフサや灯油いわゆる軽油ができ上がるけれども、そこからでき上がる重油をまた間脱にかけると、そこで六対四の割合で〇・三から〇・五サルファくらいのきれいな油ができ上がる。この油に対してもう一つ四くらいの割合の、これは三・八サルファくらい、こういうようなものになります。これがすなわち御存じのようにアスファルトになってしまう。このアスファルトになっているというような現状からして、現在はっきりアスファルトはアスファルト、いい油はいい油としてたくことによって空はだいぶきれいになる。しかしながら、このような状態がなぜそのまま行なわれないのか。これは私どもとしてまことに残念なんです。まず第一番に、そういうようにして間接脱硫方式によって出る現在のアスファルトの需要、これが限られているんだ。しかしながら、もう潤滑油工場、こういうところなどから製造されるものは市場に向けられておるけれども、間脱のほうから生産されるアスファルトについては、全量これまた再び重油に入れて使うか、または何かの方法によってそれを放棄しておる。こういうような状態ではまことに残念きわまりないわけであります。それで環境基準達成のために四十八年までにはこれは過密地帯に向けて平均一・五%に下げることが必要だ、こう言われております。しかし、現有それをやるためには装置二十六万バーレルの生産のアスファルト五百万トンが出る。二百六十万トンほど出る、それに現に五百万トンほどまだ出る。四十八年には一千万トンになる。こういうようなデータが出るわけであります。そして欧州全体では七〇%舗装されている。英国では一〇〇%だ、アメリカは八〇%だ、こう言われておる。日本でも一級国道、二級国道、そういうものではまず高い舗装率を示しておりますが、市町村道、林道、農道、この方面になるとほとんどまだ舗装されていないような状態で、合計で五・三%くらいしか舗装されていない現状であります。そうすると、間接脱硫にすることによってアスファルトがよけいできる。それをきれいなものにまぜてたくよりも、アスファルトをアスファルトとして本来の用途に供して、これを林道なり農道なり市町村道なり――五・三%くらいの舗装なんて何ですか、これは。これを一〇〇%にまで上げるようにして、余っているものは全部使わせるような予算措置を講ずることがきれいな空を確保するための重大なきめ手になるんじゃないか、こういうように思うのです。これをやらせなければならない重大なときだ、こう思っておりますが、予算措置の中にこれは十分考えてやるべきだと思いますが、大臣の決意を伺いたいのであります。
  70. 山中貞則

    山中国務大臣 重油脱硫の過程において生ずる余剰アスファルト、これは御承知のように、現状では産業廃棄物みたいな形になりつつあることは、たいへん遺憾千万なことであります。業界においては中近東の石油地帯の砂漠に一定の深さに全部アスファルトを敷いてあげて、それで水が地下に浸透することを防いで、砂漠の緑化に貢献しようというような計画まで本気で議論されておるわけであります。反面において国内の道路舗装等の状況は、御指摘のとおりであります。私も、これは個人の立場でもありましたし、党の農政調査会の立場でもありましたが、昨年正式に党としては重油脱硫の過程において発生する余剰アスファルトをもって、まず農道を可及的すみやかに全面舗装すべし、全量を活用せよ、でないと、いまの発生する余剰アスファルトは、公共事業も含めたすべての民間需要までの総需要の二倍に達しておる旨を指摘してございます。予算編成過程においてその問題が総選挙等をはさみましたために、正式な議題として取り入れられなかったのが今年度予算でありますが、来年度予算でまだそのような角度からの予算編成の取り組みを大蔵省がしておるということは聞いておりませんけれども、これはやはり一挙両得、という言い方が悪ければ、自然に出る無用のものを有用に使うという意味の廃棄物の再生利用であって、しかも、末端の農山漁村等からひどく要望されておりますのにこたえられない現状に応ずるための最も大切な方法でありますから、これは島本委員の御提言ばかりでなくて、国全体として考えるべき重大な問題であると思います。その意味では私も予算編成編成権を持っております大蔵大臣に対し、ただいまのような考え方をすみやかに検討されるように申し伝え、その検討をまた一緒にしていきたいと考えます。
  71. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと待ってください。この問題は一石三鳥の重要な問題でございますから、担当局長の本田鉱山石炭局長
  72. 本田早苗

    ○本田説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、今後の燃料の低硫黄化のためには、直接脱硫と間接脱硫を併用してまいらざるを得ないという現状でございまして、間接脱硫におきましては、御指摘のように、重油の中の軽い部分で脱硫しまして、重い部分であるアスファルトのほうは脱硫しないでおります。軽いほうの脱硫したものについては〇・三ないし〇・五の硫黄含有率まで下げられるというような状況は、いまの御指摘のとおりでありますが、別途御指摘のありましたように、アスファルトの需給の状況は、現在接触分解装置から出るものと、それから潤滑油の精製過程で出るものとあります。本年度でまいりますと大体三百五十万トン程度でありますが、これが道路舗装その他の工業用途に使われる用途と大体マッチしておりまして、間接脱硫から出るアスファルトについてはなお余剰になる。したがいまして、現在のところは間接脱硫で脱硫した油と、このアスファルト分をまぜて一定の含有率にして供給するという形をとっているわけでございまして、脱硫効果をあげるためにはこのアスファルトの需要が新しい用途として、また従来の用途が拡大されるということによって脱硫効果があがると存じます。  御指摘のように道路の問題につきましては、ただいま総務長官から御配慮をいただけるように相なっておりますが、昨年度から関係各省でもこの方面について御考慮をいただいておりますが、さらに拡大していただきたいと思います。  そのほかに新規需要といたしまして、防潮堤であるとか、あるいは鉄道路床であるとか、あるいは最近は化学原料としてこれを活用するという技術開発をいま進めつつあります。このような用途が開けますと、アスファルトの新しい用途として脱硫効果をさらに進められると思いますし、また近隣諸国の道路開発につきまして、開銀あるいはアジア開銀あるいは援助等によりまして促進される場合には、これは輸出に向けられるということもございますが、これらの点についても促進してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 これは特に両大臣そこにそろいましたから、この問題は公害対策の中でも、一石三鳥ということばが出ましたが、まさにそのとおりだと思います。今年度からでももうすでにこれに着手してもらいたいし、全面的にこれを取り上げてもらいたい。大蔵省は呼んでおりませんけれども大臣のほうからこの問題はひとつ強力な発言を閣内にもされて、そしてこの早い実践のために成果をあげてもらいたい、このことを、答弁は要りませんが、佐藤大臣に要請しておきたいと思います。いまお聞きのとおりですから、一人より二人のほうが強うございますから、ひとつこの点、強力にお願いしておきます。  時間はもうたってまいりまして申しわけないと思います。これは先ほど小山委員からも若干の御指摘がございましたが、最近の食品公害、この食品公害は意外なところから事故として発生している点が報ぜられておるのであります。残念であります。先ほど申されましたように、かん入りのジュースのすずの中毒、かんのすずのメッキがジュースの酸におかされて溶けたままこれを売り出した。三〇〇PPMから五〇〇PPMで完全な中毒症状を起こすもの、こういうような問題でありますけれども、そういうふうになってしまった。一五〇PPMが許容量であっても、子供は一六〇PPMでも病気になったり、気分が悪くなったりするのだ。こういうものが売り出されておった。食品衛生法上これはまことに残念なわけであります。このほかに、なお牛乳の点なんかに至っても、抗生物質によるところの汚染牛乳の対策、こういうようなものが叫ばれ出しておるわけであります。こういうようなさなかに、やはり厚生省としても農林省としてもこの食品衛生法関係の問題については強力なる姿勢をとってもらいたい。業者擁護、こういうような態度は一てきしてほしい、このことを申し上げておきたいと思うのです。カネミ中毒の問題に対しても、これは民事訴訟になっておることは御承知のとおりなんであります。そして前回私どもも指摘してございましたけれども、食品添加物に指定されておらないMEKを使っている疑いがあるのじゃないか、こういうようなことで調査をお願いしておったのであります。調査ができたようでありますので、その報告を求めたいと思います。
  74. 浦田純一

    ○浦田説明員 前回、十月九日の衆議院で島本先生からお尋ねのありました米ぬか油工場の一部におけるメチルエチルケトン使用の疑いがある、この御指摘がございました。その後とった措置について御報告申し上げたいと思います。  私どもといたしましては、十月十二日付をもちまして関係都道府県に米ぬか油工場への立ち入り検査を行ない、現場及び帳簿の検査を実施いたしました。御指摘のような違反の有無があるかどうかを確認するように依頼通知いたしました。それから同時に、直ちに農林省のほうにも御連絡申し上げましてJAS工場についての別途検査をお願いしたところでございます。  その結果、全国四十八の工場を調べましたところ、いずれもメチルエチルケトンを米ぬか油の製造に使用しているという事実は発見いたしておりません。ただ二つの工場におきまして、それらしい疑いを持った事実はございます。  その一つは、メチルエチルケトンが現にその工場で購入されておるという事実でございます。この事実につきまして、さらに米ぬか油製造についてどのような関係があるかということについて厳重に調べましたところ、米ぬか油を使用する工程の途中で副産物として製造されるろうの製造に使われておるという事実が判明いたしました。なお、米ぬか油のほうに使用されているかいなかということにつきまして、検体を収去いたしまして、ただいま厳重にその辺の分析を実施中でございます。  それからもう一つの工場では、米ぬか油を製造する工程におきまするその一つの施設がメチルエチルケトン及びノルマルヘキサン両方に使われるような構造設備を持っている工場が発見されております。ここにつきましては、帳簿その他現場を厳重に調査いたしました結果、メチルエチルケトンの購入事実はないということで、米ぬか油の製造に関する限りは使用されていないということを確認いたしております。なお、この工場につきましても、製品については厳重にただいま検査を実施中でございます。  以上でございます。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 現在の食品衛生法違反並びにそれに類する事故が起きてはならない。このためにそういうようなことを聞いたとたんに質問したのでありますけれども、しかし、残念ながら――残念ではありません、いいことにそういう事実はないということであります。しかし、それを聞く前に、この点をどういうようにして調べたのかひとつ伺いたいのです。どんな調べ方をしたかということなのであります。立ち入り検査をしたか、電話でお調べになったのか、抜き打ちで検査をしたのか、これなのです。ただ、もうありませんでしたというデータは私の手元へ来てございます。しかし、調べ方によってどのようにもなるのです。これは一体どういう調べ方をしましたか。
  76. 浦田純一

    ○浦田説明員 いずれも抜き打ちで、現場に立ち入り検査をいたしまして、帳簿及びその工程の疑われる場所について精細に実地に検査をいたしております。
  77. 島本虎三

    ○島本委員 二日に農林省で米ぬか油の関係者が集まっておった。それで油脂課長から、業界の集まりの中で、情報が入っておるぞ、使っているならやめなさい、こういうような注意があった。九日に国会の社労委員会で私が質問した。十日、十一日は連休であります。そして十四、十五に保健所が動いた。もうすでに十二日間もその間があるのであります。その間に工作が進んでおった、そして当面を糊塗した、こういうふうなことでなければいいのですよ。そういうようなことであってはならないのです。したがって、こういうふうなことに対してどういうような検査の方法をとったのか。抜き打ちだということはわかった。しかし、電話だけでやった検査がございましたね。ありませんよ、そうですが、これでやめたのもありましたね。これはあまりにも軽率じゃありませんか。この問題は、調べたというならば、抜き打ち検査をしたというならば、全部抜き打ちでしょう、そうでなければならないのです。  なお、この問題では少し時間をかしてもらいたいと思うのでありますけれども、時間がないようで残念ですが、急ぎます。  ただ、皆さんのほうでは、これはなかったものだ、こういうふうに言われます。私の手元に某プラントメーカーの出したMEKを使うことを前提とした説明書があるのです。これは、八社にこういう設備をやってあるのです。そして、この目次の中には、一から十項目にわたってこの取り扱いの説明が書いてあるのです。そのうちの第三に「MEKについて」、こういう項目があるのです。「MEKについて(溶剤脱蝋使用溶剤)」になっているのです。MEKをつくる業者さえもつい先般私のところに参りまして、この問題はどうなるのですか、これはもう毒性は弱いもので、残留もほとんどないようなものです、いままでこういうようなのは使っても何でもないのです、こういうふうに言っておるのです。いま聞いたら、全然使っていないと言う。やっている人が毒性がないので使っているんだと言う。ほんとうにどっちが間違いですか。人間を人体実験にするのですか。こういうふうなことをしてはいけません。  それと同時に、この中で第四の「溶解性能について 実用的にはMEKの脱水できないから、水飽和MEKを用いることにする。蝋油成分についてそれぞれ溶解性能を調査したものを示す。」それから「各成分は、前記固脂分、粗蝋分、及び回収液体油のかわりにウインター油を用いた。且つウインター油中の固脂分含量を〇%とした。」こういうふうにあります。そのほかにまだある。十分この明細を指示してあるのです。はたしてこれで一体やっていないということを責任を持って言えるのかどうかです。「原油蝋油ではモノグリ、水夾の影響で溶剤脱蝋製品の精製を困難にする。又充分な晶析阻害されるため、蝋、固脂分の分別効率悪く、脱蝋はその中の脂肪酸まで処理することの無駄を生ず。溶剤脱蝋に当っては、特にデガミングを前処理として行なう心要あり。ガム質はなおその成分不明であるが、これを乾燥するとその過程にて、粘稠性飴状、次に糖様粉状、コゲ出すの形態を生む。灰化すると白色のCa、Siを含む灰分を多量に残す。ガム質はMEKに対し、蝋と同一溶解能を示し、且つその比重近いため精製中の分別不可能となるから、比重差大なる蝋油、原油の間に分別しておくべきである。」そのほかずっとこれが書いてあります。  こういうようにしてすでに八社に配られている。そうして重要なる人が来て、この問題に対しては、毒性がない、だからやっているんだということさえ言っている。しかし、これは食品添加物として許可されない重大な添加物になっておる。そうなりますと、これに対して科学的な措置は十分とらなければならないし、少なくとも疑わしいものを許可してはならない。これは許可していないと言うから私は安心した。しかし、こういうようなものが出ておったり、そうして来た人から、毒性がないからやっているんだと言うことを聞いては、やはりカネミの例、また先ほど言ったようにいろいろ溶けて出るような、サイダー類のこういうような例もある。厳重をきわめてもこれはよろしい。ほんとうに科学的データを早く出すべきだ。それとあわせて、疑わしいものは徹底的に調べたらどうですか。調べないでただ置くからおかしくなる。私は、こういうような点で、当局があまりにもこの問題に対しては、無責任きわまるほど慎重なんじゃないか。これはもう慎重であっていいことです。しかし、はっきり毒性が解明されない以上だめなんだということをはっきり出して、そしてもうそれ以上どのような方法によってもつくることは認めない、こういうような方法で厳重に監視すべきである。やっておりましょうか。こういうようなものは何のために出るのでしょうか。これをやったならば、工程においてだいぶ手が抜ける、手が抜けるから安くできる、安くできるからもうかる、もうけるためにはやむを得ない、これを使ってしまう。こういうことでやるのであります。そうなるとやはりこの点の指導と科学的分折、これはもっと強力にやらなければならないはずなんです。これはもう時間だからといってやめるわけにはいかないのですけれども、残念であります。これは指導書が出ておるということ、これによってもっと真剣にこの問題と取り組んでもらいたい。そして疑わしきは許可せず、現在の機構の中ではっきり科学的に明確に分析するまで人体実験を一切してはならない。このことだけは強力に申し上げておきたいと思う。答弁を求めます。
  78. 浦田純一

    ○浦田説明員 食品全般のいわゆる食品公害ということでのかん詰め果汁、ジュースの件あるいはカネミオイルの点で御指摘がございましたが、それぞれ食品衛生法に照らして厳重な措置をとったところであります。  また、いま御指摘のメチルエチルケトンでございます。これは先ほどいろいろと資料でお話がございましたが、先生御案内かと思いますが、すでに外国では食用油の精製過程で使われているものでございます。毒性の点から申しますと、それらの国では法規上使用が許されているということを指摘しておきたいと思います。  さてわが国の例でございますが、昭和四十四年にこのメチルエチルケトンを添加物として指定してほしいという申請が某社から出ております。それに対する私どもの取り扱い並びにその態度について御説明したいと思います。  御承知のように、食品添加物というものは、人間の健康、衛生というものを守る上から、私どもとしては非常に厳重に慎重に考えているところでございます。したがいまして、たとえ外国でそのような使用例があるものにつきましても、わが国のほうで十分に検討を加えて、食品衛生上何ら心配がないという確認を得た上で指定するというふうに実施しておるところでございます。  この申請の件につきましては、特に急性毒性という問題よりも、慢性毒性という点について問題があるいはあるとすればあるかもしれないということで、いろいろとその辺についての追加資料をお願いしており、またこちらといたしましても国立衛生試験所その他で検査をいたしておるという段階でございます。いずれこれらの点について十分確信が得られました場合には、これは食品衛生法上何ら問題がございませんので、指定することもあり得るのでございます。  ただ、ただいま指定を許可されていないものをだまって使用しているということがかりにあるとすれば、形式的にそれは食品衛生法上の違反でございますから、私どもとしては厳重な措置をとらざるを得ないということであります。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 時間が過ぎましたけれども、一言だけ許可していただきたい。  これで全部終わったということにはなりません。なお、最近の情勢からして、MEKの問題が問題になってから、急にヘキサンの売り上げがふえてきております。MEKの現在の相場がもう立たなくなってきております。そういうような結果で知らないうちに実証されているということであります。こういうような点から、私も今後厳重なる調査をしてみたいと思います。皆さんのほうでもこれに対して、これで終わったのではありませんから、疑わしきは許可せず、人体実験はやめる、このような基本線に立って、今後とも調査を継続されるように心からお願い申し上げて、私の質問を終わります。
  80. 加藤清二

    加藤委員長 次は、岡本富夫君
  81. 岡本富夫

    ○岡本委員 けさからも論議されましたが、私はカドミウム米の問題について最初に長官に聞きたいのです。  このカドミウム汚染米につきましては、東京都内に限らず、兵庫県でも播磨のカドミウム米、あるいはまた九州の大分、それから福島県、こういうようにあちらこちらに出ておりますけれども、このたび美濃部知事の、〇・四から一PPMまでの汚染米を全部都で買い上げる、そういう発表に対して、山中長官は、きのう参議院で、それは食管法違反である、こういうようにお答えになっておりますけれども、先ほど聞いておりますと、都と、それから農林省の間で、特別の事情があると認めるときは許可をするというのに近い発言があったと思うのですが、現在までにこうした特別の事情があって、食管法違反でも認めた場合があるのかどうか、これをひとつお聞きしたい。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  82. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  現在までのところ、カドミウム汚染米について都道府県が買い上げた例はございません。
  83. 岡本富夫

    ○岡本委員 それ以外のことで……。
  84. 内村良英

    ○内村説明員 それ以外では、特別な許可は、こまかいことではございます。たとえば見本を配るために県庁が見本として買って、デパートに来た人にそれを食べさせておみやげに一袋持たせる、そういう場合の例外を認めてくれというケースはございますけれどもカドミウムについてはございません。
  85. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま検討中ということであろうと思いますけれども、美濃部知事の処置について、特別の事情としてそれを認めるか、許可するかしないか、この点についてひとつお聞きしたい。
  86. 内村良英

    ○内村説明員 その点につきましては、午前中御答弁申し上げましたように、東京都のほうから、そういうことにしたいがどうかという照会がございました。それについて食糧庁からは、これは食管法上の許可が要りますということを申し上げてあります。  そこで、東京都からおそらくこういう計画でやる、特に買った米はこういうふうに処分するんだというようなことをきめて申請が出てくるかと思います。そこで、申請が出てまいりましたら、関係方面とも御相談して処置をきめたい、こういうふうに考えております。したがいまして、具体的な計画がまだわかっておりませんから、ちょっとここではっきり許可するとかしないとかいうことを申し上げることはできません。
  87. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、かりに東京都のを許可した場合に、他府県、すなわち先ほど申しましたように福島あるいは大分、兵庫、こうしたところのカドミウム米も同じように許可する考えなのかどうか、これについて伺いたい。
  88. 内村良英

    ○内村説明員 その点につきましては、当該県から類似の申請がございましたら、そのつど、その具体的な計画を見て措置をきめたい、こう思っております。
  89. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、もし食管法で、農林省のほうで許可ができない、こういうことになった場合、きのう山中長官は、これは食管法違反である、こういうように、新聞にも出ておりますけれども、参議院で答えられたわけでありますが、許可がなかった場合、これについては長官どういうようにお考えになるか。すなわち告訴するのか、食管法違反ですからね。その点についてのお考え方をひとつお聞かせ願いたい。
  90. 山中貞則

    山中国務大臣 農林大臣答弁が一番ふさわしいと思うのですが、私は、公害立場からのみ申し上げておればそれでいいと思うのですけれども、しかし、昨日も農林大臣がおられませんでしたので、私が一応それに触れたということであります。したがって、具体的にはただいま内村君が言いますような経過をたどった措置でなければ判断できないところでありますが、国のほうにおいては健康上有害であるかもしれないから買い入れません。したがって、会社が補償するなり何なり、そういう交渉に持ち込みなさいというのは、一PPM以上について、厚生省も農林省もこれは一致して示しておるわけでありまして、〇・四PPMというのは、たまたまその前に、要観察地域であるかどうかについて調査をする一定の基準として、調べるための出発点という意味で〇・四が発表になったというだけのことでありますから、一PPM以下は主食として毎日食べてもだいじょうぶであるという結論がある以上、それを都道府県知事が、いや、自分は〇・四から〇・九九まで買うのだということは、これはどのようなことなのか私にはよくわかりませんが、しかし、買う買わぬ、いずれにしても国において責任を持って措置しなければならぬことであり、食管法は国と農民の間においてのみもっぱら定められているものでありますから、その中間において、国でない都道府県知事がそれを行なうという行為そのものが議論になることでありましょう。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、告訴するとかしないとかいう問題ではないのでしょうが、私としては、私の解釈の範囲内で言うならば、食管法で農林大臣の許可を要することを承知の上で、許可をとらないで実施に移された場合には、食管法に違反した場合の罰則を当然受けるべきだと思っております。
  91. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、だいぶシビアな問題でありますが、これは食糧庁にお聞きします。実際において〇・四から一PPMの間、一PPM以上の米、こういうような立て分けは非常にむずかしいのじゃなかろうか、同じたんぼの中でとれる米を、こちらのほうが非常に土壌が汚染されている、こっちは汚染されていない、大体汚水が流れた場合は水口が多い、そういうことを考えた場合に、一粒一粒、これは一である、これは〇・四であるというような立て分けがほんとうにできるのかどうか、この点非常に疑問を感ずるのですが、この点についてお聞きしたい。
  92. 内村良英

    ○内村説明員 ただいまの点は非常にむずかしい点でございます。そこで食糧庁といたしましては、要観察地域につきまして、知事さんに米が一PPM以上汚染していると思われる地域について線引きをしてほしいということをお願いいたしまして、富山県、群馬県等については、現に線引きができているわけでございます。それから一・〇から〇・四というところにつきましては、要観察地域でとれた米はそれのおそれがあるということで、食糧庁といたしましては、要観察地域で一・〇PPM以下の米について買い入れたものにつきましては、現在別に保管しておりまして、配給には回さないということを言っておりますので、そのような取り扱いをしておるわけでございます。
  93. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこでよくわかりました。そうなりますと、農家で一番困るのは保有米であります。この保有米は一PPM以下ですから食べてだいじょうぶですよ。一粒一粒検査していくことはないが、大体大まかな線を引きまして――ぼくも線を見たのですが、ここの田んぼを、こことここと、こうやって、ここからこうやっている。そうすると、こちらも土壌汚染している、ここを線を引いている。農家の人はそれを食べるわけです。常食するわけですね。その点非常に不安です。ところが、それは知事にまかしてあるのだ、それでは食糧庁としてはぼくはあまりにも無慈悲だと思う。だからもう一つはっきりした、〇・四以上――これについても疑問がありますけれども、これは厚生省の問題ですからやめておきますけれども、その点についてもっと明確な指示を地方公共団体に、要するに知事に出すべきではないか、こういうように思うのですが、その点についていかがですか。
  94. 内村良英

    ○内村説明員 カドミウム汚染米の問題は、単に食糧管理の問題だけではなしに、食品衛生の問題その他の問題がからんでいるわけでございます。したがいまして、食糧庁といたしましては、厚生省とも相談いたしまして、現地の事情を一番よく知っている知事さんに線引きはおまかせしてあるわけでございます。  それからただいま先生から御指摘がございましたように、保有米が問題になるわけでございます。そこで、保有米につきましては、農家がもう食べたくない、自分の米は一・〇以下の地域に入っていて安全だろうけれども、食べたくないというような農家に対しましては、それの消費を強制するのはとても問題がございますので、われわれはそれに対して、農家の希望に応じて配給措置をとっております。
  95. 岡本富夫

    ○岡本委員 問題点をずらしてもらったら困る。それはこの保有米の中で食べたくないとか食べたいとか、これを除いて、実際にその米が一PPM以上であるか。確かにはかったら一・二、一・六というのがあった、そしてその中には〇・二とか、あるいは〇・四とか六とかありますが、それを一つ一つ選別ができないのです。そういうできないことを知事が事情を知っているのだから、これはちょっとまずいのじゃないかと私は思うのです。その点について、やはりこの保有米についてあなたのほうで明確なここでひとつ――この保有米以外のものは買い上げる、そして聞きますと、のりとか、食品に使わないものに使う。保有米についてこれは農家の方、要するに白米で〇・九だ、それ以下ですよ、こういう根拠がありますか。この点についてぜひお聞きしたい。
  96. 内村良英

    ○内村説明員 その点につきましては、知事さんとしては相当なサンプルをとりまして、安全係数を見て線を引いているのじゃないかというふうに考えております。
  97. 岡本富夫

    ○岡本委員 安全係数を見てそうして線を引いているのじゃないかというようなことではだめだと私は思うのです。  この間私は福島県を全部見ました。大体何兵衛さんのやつをずっととりました。そうするとかかっているのです。それもほんのわずかです。それ以外のやつをはかるとこれは違うのです。多いのです。それでは農家の人は納得するわけがないのです。ですから私、いまここですぐに答弁ということはたいへんだと思いますが、もう一ぺん再検討する必要がある。だからそうした明確な方針を知事に示してあげなければ、これはあまりにも無責任過ぎる。そうして知事が、しかたがないからそれだけ買ってどこかに売ると食管法違反ではないか、これではめちゃくちゃというよりしかたがないと私は思う。これは東京都でも同じです。こちらでそういう問題が起こっている。だから再検討する用意があるかどうか、これをお聞きしたい。
  98. 内村良英

    ○内村説明員 厚生省ともよく相談して再検討いたしたいと思います。
  99. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、科学技術庁来ておりますね。川崎市の公害追放市民協議会松尾正吉会長が、東京湾京浜運河でヘドロから放射能を検出しております。最高一四・六マイクロマイクロキュリー、それからこれは自然値の〇・一から一〇マイクロマイクロキュリーですか、こういう結果が出ております。  それから千葉大学の川崎逸郎助教授が、やはり東京湾の千葉沖のヘドロから非常に高いところの放射能の量を、これは最高三〇マイクロレントゲン、これは光線で医学的な検査だそうでありますが、最低九マイクロレントゲン、こういうような結果が出ております。これについての状態を調べると、産業用あるいは医療用のアイソトープとか、こういうものを使用された工場、あるいは病院から汚染されたのではないかというような疑いがあり、みな市民が不安に思っておる、こういうことでありますけれども、この間敦賀のほうでもそういう問題が出ましたが、原子力の放射能公害というものは特にわが国にとっては敏感に感じなければならないわけでありますが、これについてどういうような検討をし、また考えを持っておるのか、科学技術庁からお聞きしたい。
  100. 大坂保男

    ○大坂説明員 ただいま先生御指摘のように、先般の新聞等で、千葉大学の川崎先生が、市原市から木更津にかけましての沖合いで採取いたしましたヘドロから、かなりの放射能が出ているという報道がございましたけれども、私のほうでもこの問題を注視いたしまして、川崎先生の研究室に参りまして、そのヘドロをお借りいたしまして、当方において調査、分析いたしました結果、その結果としましてカリウム、このカリウムは天然放射能でございますけれども、カリウム、それからストロンチウム、それからセシウム、セリウム等が検出いたされました。このストロンチウム、セシウム、セリウムにつきましては、これは天然放射能でなくて人工の放射能でございますけれども、おそらくこれは核爆発その他いろいろの関係でフォールアウトというのがございますけれども、こういうものによるものかと思います。そういう関係で検出いたしました結果は、その数値としましては、大体他の地域とほとんど同程度の水準であるということがわかったわけでございます。他の地域と申しますのは、御承知のように核爆発等に備えまして放射能対策本部というのがございますけれども、科学技術庁としましては、二十幾つかの地方庁の試験所等に対しまして常時フォールアウトの調査を依頼しております。その数値等を集めておりますのと比較いたしますと、大体他の地域と同様であるという結果が得られたわけでございます。  なお、ただいま先生御指摘のアイソトープ関係考えられます亜鉛とかコバルト等につきましては、はなはだ微量であって、ほとんど検出できないという状況でございました。したがいまして、この結果を千葉大学の川崎先生に持ってまいりまして、私ども調査の結果はこれこれしかじかというお話を申し上げましたところ、それは分析の方法の違いがあったのかもしれないというふうなことでございまして、新聞で書かれたほど心配するような事態ではなかったということがわかったわけでございます。  それからまた先生御質問のございました川崎のヘドロにつきましては、同じく川崎の衛生試験所に同一の資料について調査したいということで参ったわけでございますけれども、資料が非常に少なくてなかなか分析にかからないということで、あるいは新聞に出ておるので御承知かと思いますけれども、今月の六日に海上保安庁の巡視艇を借りまして、大体同一の地点十カ所からヘドロを採取いたしまして、現在日本分析化学研究所において分析中でございます。その分析はかなり精密にやる関係から約一月を要しますので、十二月早々にはその結果が明確に出てくるのじゃないかと期待しております。簡単でございますけれども……。
  101. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間の関係であれですが、山中長官に。  おそらく、この公害対策基本法の中には原子力公害というのは抜かれておるから私の担当ではありませんとはお答えにならないと思いますけれども、そこで、こうしたものがあちらこちらに発見されているということでありますから、特に放射能についてはわれわれは敏感でありますので、火力発電もあれですから、いよいよ原子力発電もつくらなければならないということでありますので、国土の放射能汚染を十分に監視すると同時に、やはり総点検が一ぺん必要ではないか、こういうように思われるのですが、その点についてお答えをお願いしたいと思います。
  102. 山中貞則

    山中国務大臣 私は担当ではありませんとは申し上げるつもりはありません。公害基本法から排除されておるというだけのことでありまして、原子力公害というものは、われわれが平和利用の分野に限って新しい未来を開拓する場合の非常に大きな分野であると同時に、まだ私たち人類が未知数のものを持って、リスクをある程度持ちながら進む分野でありますから、これは重大な問題でありますので、決して所管外というようなつもりではおりませんし、さらにすでにアメリカ等において問題にされております、主として原子力発電による火力発電の際の熱排水の問題等についても、やがていずれ日本も、九電力がそれぞれ原子力発電の具体的な着手時期に入っておりますので、熱排水の問題等は当然新しい、先どりして準備しておくケースとして、場合によっては典型公害の土壌汚染の次に加えることにまで踏み切ろうかというような議論もいましておるところでありますから、そのようなことも踏まえて、原子力公害は余の所管にあらざるところなりという顔をするつもりはありません。
  103. 岡本富夫

    ○岡本委員 まことに心強いように聞こえますが、先にそう言いましたから、私の担当ではないということでないのでありますから、強力にこの総点検をやりながらびしっとやっていただきたい。  次に、私ども野党三党、それから与党の政審会長さんとの話し合いの中でも特に申し上げたわけでありますが、この公害に対しては常時監視が必要である。この常時監視を手を抜くと、結局ほんとうの公害対策ができない。それで、厚生省におけるところの公害の常時監視に対するところの構想をお聞かせ願いたい。
  104. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 お答えいたします。  私ども大気汚染につきまして、年次計画をもちまして監視測定体制の整備をはかってきておるところでございますけれども、まず、国設の大気汚染測定網、これは現在のところ、全国で大体二十カ所程度、これは四十八年度までに整備いたしたい。現在、本年度で大体十三カ所完成する予定でございますけれども、それと並行いたしまして当然地方の監視測定網の整備をはかってまいらなければいかぬわけでございまして、これは大体考え方としましては、指定地域につきましておおむね五平方キロに一カ所程度の測定ステーションを整備していきたいという考えであります。まだ全体の六割程度しか整備されておりませんけれども、今後法律改正等によりまして、指定地域等の考え方もなくなるとすれば、強力に整備していかなければならぬというふうに考えております。
  105. 岡本富夫

    ○岡本委員 指定地域がはずされる、大気汚染あいはまた水質二法の規制の対象の指定地域がはずされるわけでありますが、それに対するところのさらに強力なるところの構想はどういうことでしょうか、厚生省のお考えは。
  106. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 指定地域がなくなりましても直ちに全国一斉にということもむずかしくて、やはり順序としましては、汚染度の著しい地域が重点になろうかと思いますけれども、少なくとも測定点を持たないような地方なり大都市が全然ないように早急に整備してまいりたい。  それから、いままでは大気汚染が主でございますけれども、今後当然水の問題、あるいは騒音、あるいは自動車排出ガス、そういった問題につきましても、関係省庁とも連絡をとって整備してまいりたいというように考えております。
  107. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、構想として公害パトロールというような構想を聞いておるわけでありますが、その点はいかがですか。
  108. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 公害パトロールにつきましては、従来も監視測定機器の一環としてパトロールカーの整備を行なっておりますが、今後これにつきましても、できるだけ予算を増額いたしまして強力に整備してまいりたいというふうに考えております。
  109. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、行政管理庁来ておりますね。聞くところによりますと、公害対策本部ができて強力に本部のほうでいろいろとやっておるというように伺っておりますけれども、何と申しましても一番関係の省である厚生省公害部が、ぼくらも行ってよく見るのですが、現在定員三十三名で、他の部署からの応援によって四十八名に増員しておりますけれども、非常に重労働である。たいがい二時か三時ごろ帰ってみたり、病気がたくさん出ておる。こういうことでは、厚生省公害部が公害にかかっておる。これではほんとうの公害行政ができない。それについて行管はどういう考えを持っておるか、お聞かせ願いたい。
  110. 石原壽夫

    ○石原説明員 お答えします。  私どもが定員の配分を考えます場合には、その時点における行政需要の動向あるいは行政需要の動向を基盤とします業務量の変動、これらを勘案をいたしまして従来も実施をしておるわけでございますが、ただいま御指摘の公害問題は、何といたしましても重要な政策課題でもございますので、細部の定員の配分につきましては、今後厚生省当局と十分な打ち合わせをいたしまして、効率的に公害行政の業務が遂行できるように慎重な検討を続けたいと思います。  なお、ただ一つお断わりしたいのですが、現在政府は、総定員法のもとにおける定員管理を実施しております関係上、定員配分をめぐる諸条件というのは非常にきびしゅうございます。政府部内として申し上げれば、全く乏しきを分かつということでございまして、その意味合いから一〇〇%の手が打ち得るかどうかという点につきましては、率直に申し上げまして疑問なしとしないわけでございますが、精一ぱいの努力はいたしたいと思います。
  111. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣に聞くのをあとにしまして失礼しましたが、ひとつ大臣、この問題についてどうですか。それを一点と、それからもう一点は、先ほど申しましたように水質あるいは大気指定地域というものがなくなってきた、これをなくするという今度の構想でありますが、同じように被害者、公害病になっておる人たち指定地域もきまっておるわけですが、この問題もやはり広げなければならぬのじゃないか。たとえばこれは四日市の問題ですが、四日市ぜんそくで学童に初めての死者が出て、認定患者の死者が計四十一人になっております。  ここの状態を見ますと、公害病と認定された患者が、公害の激しいところにある医療機関にいる。ですから、そういうような状態でもありますから、それもやはりもう少し公害のないところに病院があるほうが望ましい、こういうこともございます。  話はこの三点になりますが、この点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  112. 山中貞則

    山中国務大臣 最初の機構あるいは定員、その仕事の内容の問題等については、いろいろと問題があります。でありますから、私断定的なことを申し上げないでいままで過ごしてきたわけですけれども、いま研究しておる問題の一つに、研究機関の統合ということと、研究機関だけではだめで、やはり行政というものの機構も統合したアメリカのごときものにする必要があるのかないのかということがあると先ほど来申しておるわけであります。そうなりますと、厚生省公害部というものも、特殊な食品公害等を入れるかどうかの分野の議論等もありますけれども、やはり行政機構法律も人間も全部くっつけて、予算もくっつけて新しい機構ができる、そういうことになれば多分に各省お互いが全部一緒になって作業すれば補い得る点を、独自に各省がばらばらにやっておるきらいもございますので、そういうマイナスの面をお互いが補完し合えるのではないかという希望を持っておるわけです。ただ、これは行政機構の抜本的な再編成になります。アメリカの経過を見ましても各省長官、日本でいう大臣の相当な抵抗があったようであります。しかし、それを押し切ってやって、そのことがプラスになるならば、日本も場合によっては考えなければならないというケースの問題であろうと思います。  総定員法のワク内の行管の立場ももっともでありますが、行管自体も出先の機関、事務所あたりが必要かどうか等の検討をなされておられることだろうと思います。したがって、ただいたずらに新設は反対であるとか、あるいは機構いじりは認めぬぞとかいう硬直した行管の姿勢もどうかと思います。行管もあるべき態様、国民の要望する方向に応じて機動的に機能する行政管理庁であってほしいと、要らざることでありますが思っておるわけでございます。  公害病患者の認定もしくはその地域の拡大と申しますか、相当基準をゆるめてあげるべきである、あるいはその治療の病院なり診療所が、その公害地区にあることはどうだという問題は、基本的な問題でありますけれども、一応いまの段階では厚生省プロパーの行政であると思いますので、厚生省答弁に譲らしていただきたいと思います。
  113. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間がありませんから厚生省のほうからその答弁をいただくと同時に、公害病の認定の指定地域、これをもっとふやさなければならぬと私はたびたび言うてきましたが、その中で尼崎地域があります。この尼崎地域はどうするか、いつごろから実施するか、この二点について厚生省からお聞きしたい。それで終わりたいと思います。
  114. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 指定地域をふやしていく問題につきましては、一応大気汚染なり、あるいは呼吸器系疾患の有症率、そういった一応の基準と申しますか、従来の前例もございますので、そういう条件に該当すれば私どもとしては当然認めていきたいというふうに考えております。  それから四日市の認定患者が入院しておる病院が市内にあるという問題、これは実は現在の救済制度の医療機関は本法に基づく指定医療機関制度をとっておりませんで、保険医療機関であればどこでも患者は任意に医療機関を選択できるというたてまえになっておりますので、結果的に市の中心部の医療機関に入院するというようなことは、現在の制度では一挙にこれを解決することはむずかしいのではないか。その選択ということでひとつお願いしたいというのが私ども考えであります。  それから最後に、具体的なお話のありました尼崎地区の認定の問題につきましては、前々から問題とされておりまして、私どものほうで所要の調査をお願いしておったのでございますけれども、このほどデータが全部出そろいました。その結果を見ますと、尼崎の大体南部から東部にかけての地域でございますが、これはすでに指定になっておる大阪の西淀川ですか、これとほぼ同様の状態にあると一応認められますので、私どもとしては指定という方向で所要の手続を進めたい。ただ手続的には政令の改正を要しますので、でき得れば一応十二月実施を目途に所要の準備を進めたいというふうに考えております。
  115. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、その尼崎市内の地域につきましては、私も再三言ったのですが、南のほうの工場から北に移った人、南で病気になって北に移った人、こういう人が続々いま出ているわけです。ですから、全地域にしなければならぬのじゃないか、こういう話をしておいたわけですが、いまの状態では他の地域とのつり合いがあるからというような話があったわけです。これは順次広げていくしかないと思いますけれども、大体その地域は現在尼崎市独自の指定をした地域と同じであるか、それよりも少し多いのか、その点について最後にお聞きしたい。また十二月何日ぐらいから始めるのか。この点をひとつ。
  116. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 市が独自にやっております地域と同じでございます。  それから実施の時期でございますけれども、心づもりとしては十二月一日から適用できるようにしたいというふうに考えております。
  117. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。
  118. 加藤清二

    加藤委員長 次は、松本十郎君。
  119. 松本十郎

    ○松本(十)委員 けさほどから具体的な問題について熱心な審議がかわされ、またここ数カ月の当委員会においても個別問題についていろいろ貴重な質疑応答があったわけでありますが、私は少し視点を変えまして、やや抽象的になるかもしれませんが、基本的な問題と申しましょうか、そういうことについて質疑をいたし、また要望もしたいと思います。  その皮切り、糸口といたしまして山中長官にお伺いいたしますが、公害対策実施本部が設立されましてからすでに四カ月経たわけでありますが、この四カ月におもにどういうことをなさいましたか。また、公害関係の閣僚会議でどういう成果があがったと考えておられますか。その辺のことについてお伺いいたします。
  120. 山中貞則

    山中国務大臣 はや四カ月かと思ったのですが、まだ三カ月半くらいで、私にとりましてはたいへん多忙な毎日でございましたが、要約しますと、そのつど発表されました関係閣僚協議会というものをひんぱんに開きまして、初めのころは大体一週間に二回、あるいは二週間に少なくとも一回開催をいたしまして、今度の臨時国会提案にこぎつけるためのあらゆる各省間の合意を得るのに努力をいたしました。その前提としては、今日の公害問題というものをすでに一政府、一党の問題だけでとらえるばかりでなくて、やはり世界的な視野、あるいは日本という国が工業国であって、東洋の中の異常な工業発展を遂げた領土狭小なる国であるという特徴等もよく踏まえながら、日本が公害の問題を克服することにおいて諸外国に劣らないスピード、あるいは諸外国もまだ公害について、どの国においても完全にこれがきめ手であるというようなものをつくっていない、私たちの英知をもってすれば、今日の繁栄を急速にもたらした英知の裏に、その繁栄の裏において発生し、そして人類が必要としないものを処理するための英知を発揮することに、世界よりか高い知能を持っておるかもしれないし、科学技術においても日本はそのレベルを備えていると私は信じまして、その道に向かって進んできたつもりでありますが、当面は次の国会に提出予定の十五法案をまとめるために懸命の努力に終始してきたということであります。  したがって、その他の問題としては個別ケースの問題になりますが、田子の浦の長年にわたり堆積されたパルプ工場のSSの沈でんしたことによって起こった港湾機能の麻痺現象、またそれが波及する駿河湾内漁業者に対するいろいろな影響等について、知事さん並びに市で行なおうとされる施策について、でき得る限りの、業界の負担が前提でありますけれども、国が行なうべき財源措置について全力をふるってまいったわけでありますが、遺憾ながらやはり二転三転と、非難されてもやむを得ない事情のもとに、二、三日来やっと河川を所管する建設省等の了承も得つつあります。富士川の河川敷に付近住民の最終的な同意を得べく努力をしておられる、こういう段階にまいりました。これが一つのケースであります。  また、財源上いま大蔵省と詰めておりますが、次に北九州洞海湾の典型的な入り海、これがすでに緊急事態として、人の健康、生命に影響を与え、もしくは港則法で問題とするような航行に影響を与えておるところまではきておりませんが、しかし、ある意味において日本の国営八幡製鉄から始まった北九州の一角における、日本では一番、今日でいうならば掘り込み港湾でございますか、内陸港みたいになっております、いわゆる海流の還流しない地域における汚染の問題、これも一つのケースでございますので、これを次の緊急ケースとして取り上げるべくいま財源を詰めつつございます。これの調査を皮切りにいたしまして、北九州市並びに福岡県が計画しております、三カ所にヘドロを囲いの中に入れまして、そしてやがて覆土してそこを緑地帯あるいは公園等にするという構想は、あり得べき最も望ましい構想の一つと考えまして推進を急いでおるところでございますが、閣僚協できまった事柄を全部報告せよと言われれば、あらためて読み上げてもよろしゅうございます。
  121. 松本十郎

    ○松本(十)委員 個別問題に対して精神的にいろいろ応急的な善後措置を講ぜられてきたこと、あるいはまた法制の不備等を整備するために各省の間の利害錯綜した中を法案作成の段階までこぎつけられたこと、この御努力に対しては労を多とし、また敬意を表したいと思うわけでございます。また、日本の公害関係会議、こういったことも国際的な視野と申しましょうか、観点から日本の公害問題というものを取り上げていかれる姿勢、これはりっぱだと思うのでありますが、私をして言わしむれば、何か一つ大事なことが忘れられているのじゃなかろうか、こういう感じがしてならないわけであります。  と申しますことは、ここ十年余りの間、日本の経済の発展ということに主力を注ぎ過ぎました結果、政府も事公害に関しては、極言すれば無為に過ごしてきた。ましてや企業の側には公害マインドというものがほとんどなかった。そういうことから続々と公害問題がラッシュしてきたわけであります。そういう中で急いで取りつくろうといいますか、善後措置を講ぜざるを得なかった情勢というものはわかるのでありますが、しかし、数カ月たってみまして、やや一段落をしつつあるのではないか。最近また多摩地域カドミウム問題等が出ておりますが、しかし、夏のあの激しい毎日毎日の新聞報道に見られるラッシュから見れば、ようやく時間的な余裕も出たのではないか、こういう段階で、やはり個々的にどのようにして国民の大多数に安心感を与らたらいいだろうか。新聞その他の報道によりましても、サイレントマジョリティーと申しますか、大多数の国民というものは、われわれの住んでいる郷里はもっといいものであってほしいのだ、われわれの国土というものが、そんなにひどいものにならないことを期待しているのだ、こういう気持ちが充満しておると思うのでありますが、そういった方に対して、そう心配しなくてもいいんですよ、必ず皆さんの期待に沿うような国土なり、郷土なり、自然環境というものをつくるために、時間はかかるが政府は前向きにやっておるのだ、こういうスタンスというものを早く打ち出していただいたらどうだろうか、こういう感じがするのですが、長官の御意見を伺いたい。
  122. 山中貞則

    山中国務大臣 私たちの経済発展というものは、結果的に発展をしてきたわけで、これが国家的な視野のもとに雄大な計画のもとにレイアウトされたものでなかったことは、これは率直に認め反省しなければなりません。したがって、つい最近までは昭和六十年には太平洋ベルトラインに全国の七割に近い人口が集中するであろうという予測というものが、何らそれに付帯する条件なしで、あるいは政策なしで発表されているという事態は、つい最近まであったわけですけれども、しかしながら、アメリカのニクソン大統領の議会に対する勧告等の内容にも、広大な荒蕪地を擁し、国内において原爆実験等を行なっても、最近はその影響等もいろいろ議論されておりますが、なおその余地を内陸に持っておるような広いアメリカ、そのアメリカの大陸的なそういう荒蕪地まで含めたところまで入れて、公害問題は土地の問題から取り組むべきであることを勧告しております。私はその勧告を見て、やはりわれわれ日本はもっと早く、日本全体の経済発展なり、あるいは発展の裏において、今日公害といわれている現象を続出させる前に、日本こそ国土全体の問題から経済構想というものと取り組むべきであったのだという気がしてならないのであります。  日本の国土の約六割というものはほとんど人が住んでない山岳地帯でありますし、残りのわずかな土地に最高の密度をもって、しかも原材料のほとんどない国が輸入したものを加工するという、勤勉と頭脳と技術によってそれを達成した繁栄国家であるということを考えますときに、自動車の台数ひとつ考えてみても、まだアメリカの普及率に何人に一台足りないとかなんとかいう議論は、この際現実に日本の国内を走るものは、自動車の密度というものから考えると、われわれは別な見方でいかなければならないのだ、交通対策は走る凶器という自動車から、さらに排気ガスを発生する移動発生源としてとらえなければならないのだというような、いろいろな問題が違った角度からとらえられてこなければならない時期に来ておると思います。  その意味では松本君の指摘されるように、私たち全体含めてやはり責任があり、われわれはもっと早くそういうことをとらえるべきであった。しかも、これはまたやっておそきに失することはないわけでありますから、なるべく早く、現在都市計画法なり、あるいはまた低開発地域工業開発促進法とか、あるいは新産都市法とかいうものを、ただいたずらに雇用条件を喚起し、あるいは企業がいんしんをきわめれば直ちに繁栄、幸福がもたらされるという概念のもとにやってまいりました国策そのものを再検討しなければならない。その大前提においてあなたの言われる、人間が自分たちの住む環境を自分たちの最も望ましいところであると考えて住めるような地域にするという、国土の全体的な広い視野のレイアウトというものを前提に踏まえた公害対策というものがやがて研究されていかなければならないだろうと思いますし、今後新全総といわれているようなものも、沖繩復帰等も近く行なわれるわけで、いずれ改定しなければなりませんが、そのような全国総合開発計画等についても国土ということばが中に入っている、その国土を開発計画ではどのように経済的な計画の上に立てているかどうか、これが前提として議論する日をわれわれはすみやかにつくらなければならぬと考えておる次第でございます。
  123. 松本十郎

    ○松本(十)委員 そういう意味におきまして、何か学識経験者と申しましょうか、あるいは専門知識者といいますか、もの言わぬ大多数の国民を代弁されるような人を集めて懇談会とかあるいは審議会、現に公害対策審議会というのがあるようでありますが、その構成なり運営については、必ずしもわれわれの期待している方向に行っているとはいえないのじゃないかという感じがするのですが、そういう場を通じましていわゆるサイレントマジョリティーに対して、政府は前向きにやることはやっているので待っていてください、しかも、具体的な公害対策については法律、制度を講じます、国が、あるいは地方団体が、あるいは企業が費用はどのように負担しますかとか、万一不幸にして公害が出た場合にはそれをどのように監視しながら行政措置を講ずるか、あるいはまた被害者が出た場合には救済措置をどう講ずるか、そういった公害対策の体系というものを早く打ち出して、それのタイムテーブルと申しましょうか、三年、五年それ以上かかるものもございましょう、その他の点が関連してくると思いますので。そういったものを含めて何とか最近はやりのシステム工学という動きを大きな角度からどんどん打ち出していって、そしてやはり政府はやることはやってくれている、これならばわれわれも局部的には騒がしい問題が起こってもそう心配しなくていいのだ、こういう安心感を与えられるのではないかと思うのですが、そういう審議会の運営のしかた、あるいは新しくそういう懇話会をつくるとか、さらにまた公害モニターのようなものをつくるとか、こういったことについてどうかと思うのですが、御感触を伺っておきたいと思います。
  124. 山中貞則

    山中国務大臣 中央公害対策審議会の構成等についても、今日までは一応総理府に審議会が置いてありますが、その庶務は厚生省が行なうというふうになっておりますし、そこらの点から大体取り組み方そのものが政府全体の姿勢として少しおかしなところが幾つかあったわけです。したがって、次の国会に提案をいたします際には、公害基本法あるいは企業の費用負担法、そういうものは総理府、すなわち公害対策本部の置いてあります現在の機構としては総理府という役所しかございませんし、担当大臣の省というものが所管するのであることを明確にしなければならないと思うわけでございますが、まずそういうような基本的な姿勢を明確にした後、あるべき審議会の姿あるいはまた先般発足いたしました中央公害審査委員会、そういうようなものの構成等もたいへんいい構成ができておりますが、今後専門委員等を随時委嘱する場合等についての個々のケースについてのあるべき配慮、あるいはこれから国会に提出を急いでおります法律の中で、地方において企業の費用負担区分等を定める際に、そのどのケースに当てはめるか等の具体的な決定をいたします場合においては、委員会もしくは審査会みたいなものをつくろうと思っております。  それらの際に、十分松本君の言われるようないわゆる被害者の立場に立たされるような立場人たちも、ものを言う機会を与えられるような、あるいはまた逆にいうと、特定の、だれもが想像するような知事さんをはじめとする限られた人たちだけの委員会にいたしますと、その地域における企業の力関係によっては、地方権限を委譲したばかりに、かえって地域住民から見れば国でやってもらったほうが、まだるっこしかったけれども、まだそのほうがよかったという現象なしとしないおそれがありますので、そこらを十分考えた上で、それらの人選も、あるいはまた今後のあるべき姿も求めていきたいと思うわけでございます。
  125. 松本十郎

    ○松本(十)委員 私事にわたりますが、私アメリカにいましたのは、ちょうどケネディがさっそうと登場した時代でありましたが、われわれの川をポリューションから防ぎましょう、海をきれいにしましょう、こういうことを予算教書の中で言ったわけであります。いまから約十年近く前ですが、その当時、アメリカというのは余裕のある国だなと思いながら読んだわけであります。  しかし、そのアメリカも、ついに今日のような公害の事態に立ち至りまして、ことしの年頭教書でニクソンはすでに自然環境の保全について言及し、二月十日には特別教書を送り、さらにまた八月十日にも教書を出して、何としても自然環境を保護する、人間尊重のために何としてもやらなければならないというような訴えをしたようでありますが、その最後のことばが、もうすでに長官はお知りと思いますが、われわれの環境問題はきわめて深刻であって、窮地に差し迫っているが、恐怖やヒステリーにおちいるべきではない。問題はきわめて複雑であり、その解決は理性的、組織的なアプローチの努力と忍耐を要しましょう。国をあげてこれと取り組むことが必要である、こういっているわけであります。  このことばの中には、わが日本にとっても一応注目をして範とするまではいきませんが、参考にしていいのではないかという感じがあるわけでありまして、公害即企業即資本主義、総資本、政府、これが公害の加害者であり、国民は被害者である。したがって、現在の体制が悪いのだ、こういう反体制運動の一環として公害問題が取り上げられておることは、われわれ、特に国民のもの言わぬ大多数というものは激しい抵抗を内心持っているだろうと思います。そういう意味でやはり公害問題というものを政府が広く国民的基盤の上に立って大多数の国民の視点の上に立って、早く手を握って解決していこうという姿勢を示されることが、特に大事ではないかと思うのでありまして、それについても要望申し上げるとともに、長官の御意向を伺いたいと思います。
  126. 山中貞則

    山中国務大臣 幸いわが日本においては、公害問題に関する論争は、党派、思想、主義を越えて議論されておりますし、おおむねみんな求めんとするところはほぼ同じでありますし、その過程において極端な意見の食い違いがないことを、私はたいへん喜んでおるわけでございます。したがって、これからはいわゆる国民という名の立場市民、あるいは企業内労働者の方々の御協力というようなものまでも一緒になって、みんなで自分たちの職場、あるいは住む地域の環境というものを保全していこうということが、国内的には呼びかけると呼びかけないとにかかわらず、やはりみんなで力を合わせていかなければならない問題であると考えるわけでございます。これらの問題は、やはり労働組合側としてもいま真剣に、新しく公害問題に対処する労働組合の姿勢というようなものについても議論がされておるようでありますから、私もたいへんけっこうであると思いますし、また、それらの意見の交換も率直に近く労働界の代表の皆さんとも、政府の代表として公的な立場でお会いすることにしております。  それらのことも、みんなで力を合わしていって公害政治、政策というものが、はじめて国民自分たちのことでもあるのだ。なるほど便利な生活をわれわれは享受したい、そして快適な生活を享受したい。しかし、反面において便利さ、快適さを求めるあまり、乗り捨てられてもう引き取り手のない自動車、あるいは電気冷蔵庫、テレビ、洗濯機、あるいはポリエチレン類、こういうものが結果的にはどういうふうに自分たち自身に振り戻ってくるのか。あるいは国民生活の質の豊かさを追及するために、当然発展していくレジャー、そういうようなもので大量な人口の移動が定期的に、シーズン的に行なわれた場合の、その消費地、行楽地等における一町村のみでは処理し切れないほどの巨大なるごみを、一体残していくのはだれであるのかという問題。あるいは都市の空気の汚染を問題にするならば、自分の握っているハンドル、そのハンドルのために動いている自動車の吐き出しているガス、自分の車そのものは何ら世間に対して迷惑をかけていないのか。あらゆる問題から考えて、国民全部が松本君が言われるみんなで取り組むという意識を根底に持ちながら、しかし、あくまでも責任は現在の政権を担当している私たちがまずやることである。アメリカは大統領がはでに議会に勧告すれば、それが全世界に報道されます。しかし、その結果アメリカの議会においてそれが成立するのかしないのか、するとしてもいつのことになるのか、それはまだはっきりしない。しかし、日本の場合は私たちは国民の前に、国会においては野党の皆さんに対しても、自分たちが政権を持っている以上、自分たちが自分に問いかけて自分で答えを出し、そして自分で結論を出して議会の批判を受け、あるいは国民の信を問うという形を日本ではとらざるを得ないわけでありますから、顧みて他を言うつもりはありませんが、日本の政治形態から考えて、まずそのような意識を全部根底に持ってもらう。そのためには政府が国民に対して、公害のない新しい社会、質の高い成長という、経済というものを求めるための、いかなる良心的なあるいは誠実な努力をしているか。結局はそれが国民のためになるのだということを理解してもらう努力を、政府自体がすべき国であると考えておるわけでございます。
  127. 松本十郎

    ○松本(十)委員 長官のおことばを聞いて力強く感じたわけですが、ただ先ほども岡本委員から質問がありましたように、そういう理想を追うと申しますか、ねらいを実現する上において、はたして現在のような臨時の公害対策本部で十分なのかどうか、二十数名のわずかなスタッフ、しかも各省との関係で必ずしも思い切ったことを言ったり、したりしにくかろうと思われるスタッフだけをそろえて、これほど大事な問題にはたして対処し切れるものでしょうか、こういう疑問が出るのですが、いかがでしょうか。
  128. 山中貞則

    山中国務大臣 これは見る人によっていろいろの角度から異論があろうと思いますが、私がわずか三十五名の人間ではとてもやっていけませんと言えば、泣き言になるわけであります。私としてはいま与えられた各省のより抜きの人材でございますから、そのより抜きの人材の諸君を掌握をして、そして各省と連絡を緊密にいたしながら、最大限の能力を発揮していくという以外にないわけであります。しかしながら、これを恒久的に考えて、公害問題は太平洋を越えた問題であるとして、私たちは日米会議も持ちましたし、あるいはOECDの会議にも日本の参加を要求され、あるいは予定される七二年の国連の環境保全の会議にも、おそらく日本は枢要な、あるいは指導的な発言なり行動を行ない得る国であるというようなことを念頭に置いて考えまするならば、いまの機構で永続的にいっていいかどうか。議会の皆さんの御了承すなわち国民の御了承を賜わり得る範囲であるならば、やはり機構としても日本はこのような機構でやっているということが国際的にもぴしっと――数が多いからほめてくれるわけではありますまいが、ちゃんと明示できるような姿のものが必要なのではあるまいか。日米会議をやりながらアメリカのラッセル・トレイン委員長が盛んにいばるのは、当時は七千五百名と言っておりましたが、最終的には六千五百名の、局になっておるようですけれども、こういうものを十二月二日につくるつもりであるというようなことを言っておりましたけれども、私のほうは現在の機構については何名でというようなことは、ちょっと言うのにはあまりにも少ない数でございますので、自分たちは総理を本部長として、総理大臣の指揮のもとに直接やっておる行動隊である。したがって、それは政府全体の公害関係行政機関がその手足となって動くということにおいて、その補完を十分に達しておると思うという苦しい説明もしておきましたけれども、要するに私たちが世界的にも考えていかなければならない問題として考えるならば、また別の見解を私は持っておりますし、総理、官房長官との間で検討はいたしておりますが、さしあたりの臨時国会までにどうするかについては、これは内閣法の改正にもなるわけでありますから、やはり現在の機構でもって臨時国会は皆さんの御審判を仰ぐということにしたいと考えております。
  129. 松本十郎

    ○松本(十)委員 七二年のストックホルムの国連の会議というものも、時間があるようで近いと思います。また最近の国民生活白書を読みましても、公害の新態様として、都市化の進展、また産業活動の巨大化に伴って各種汚染因子の量的な拡大がある。あるいはまた公害現象が広域化してきた。さらにまた公害現象が複雑化した。こういうことをいっておりますし、また先ほどちょっと話も出ました産業廃棄物につきましても、陸続としてあとも続く、こういうことでありまして、やはりこれから豊かな人間らしい生活ができるような社会的、物的な生活環境をつくり上げるのだという場合に、そのビジョンというか理想像というものを早く打ち出していただいて、それを実現するためには、やはり機構というものをもう少ししっかりしたものにして、相互に十分な整合性を持った形で組織化して仕事を進めていく、こういうことについては格段の御配慮を願いたい、こういう希望を申し上げて、山中長官に対する質問は終わりたいと思います。  なお、宮澤通産大臣がお見えになりましたので、ちょっと一言だけ伺いたいと思います。  まず、公害について、経済成長と環境保存はエントベーダーオーダーだ、二者択一だ、こういう議論が出ておるようであります。日本ではかなりびまんしておる。アメリカの中でもそういう考え方があるわけでありますが、ヨーロッパなり、あるいはOECDあたりでは、いまや必ずしもそうではないのだ、経済の発展ということにこれまで目をおおわれ過ぎて公害問題の意識が低かったが、やはり両立できるものだ。経済の発展というものが技術進歩も促して、結局は公害の防止、除去に役立つのだ、こういう考え方もあるのですが、通産大臣としてどちらのほうの御意見をとられますか。そしてそれを前提として、これから産業公害の元締めはやはり通産省だと思うのでございまして、どういうイデーと申しますか、理想をお持ちかお伺いしたい。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 経済そのものはわれわれの生活の目的ではございません、手段でございますから、ただいま松本委員の言われましたことの意味は、結局われわれが物質的に生活水準を上げていくということを経済ということばで言われた、こういうふうに考えるわけでございます。そういたしますと、われわれの物質的な生活の内容が向上するということは、それ自身が幸福ではございませんけれども、幸福を増進するための一つの大切な要素であることには間違いないと思いますので、それを抹殺してしまっていいということにはならないと思うのであります。  そこで結局、エントベーダーオーダーかどうかと言われますそのお尋ねお答えとしましては、ともに幸福を増進するために必要な要素でございますから、それらの要素をどうやって調和させるかということに尽きるであろうと思っております。もしこれがエントベーダーオーダーで片づくのでありましたら、問題はむしろ非常に簡単でございます。そうでないので、この間の調和をつくっていくということがむずかしい。しかし、そのむずかしい仕事もわれわれの知恵を結集するならばできるのではないか、またできなければならないという問題意識を持っておるわけでございます。
  131. 松本十郎

    ○松本(十)委員 政府として、何か明るい見通しを早く出していただいて、先ほどから何回も申しましたように、国民のすべてが不安感を一掃する方向でさらに御努力を願いたいと要望いたしまして、私の質問を終わります。
  132. 加藤清二

    加藤委員長 次は、久保三郎君。
  133. 久保三郎

    久保委員 私は、通産大臣に主としてお伺いしたいのでありますが、最近建設資材である骨材の需要が多くなって、その関係について先般の予算委員会の分科会で若干お伺いをしたのでありますが、骨材の中でいわゆる砕石による公害がかなり多くなってまいりました。ついては採石法の改正をすべきではないか。特に同じ通産省の所管である砂利採取法は、二年前に御案内のとおり公害防止の観点から全面改正になりました。  ところが、同じような骨材、しかも山という限定された地域でも、砂利取るのと砕石取るのでは、公害防止について格段の相違がある、そういうことであります。特に最近の骨材の傾向としては、河川の砂利は枯渇してまいりました。そこで、おかあるいは山の砂利にたいへん手が伸びてきて、そのための公害が今日でもたくさん起きております。四十年ごろから格段に発展してきておる。  そこで、先ほど申し上げたように、砂利採取法が改正になったのでありますが、その後この骨材の傾向を見ておりますのに、大体おか砂利というか、そういうものには限度が出てきた。そこで山砂利、それにも限度があるというので、いま私が申し上げたように山を掘って岩石を砕いて骨材にする、いわゆる砕石の需要というのが飛躍的に多くなってきた。でありますから、これは通産省の調べでありますが、これらによる災害を見ましても――これは古い資料であります、四十年から四十二年、大体砂利採取法の改正のときの資料であって、最近の資料を持っておりませんが、砕石による公害というのはこの三年間に二百九件ある。現在ではもっとたくさんあると思うのです。これは倍くらいになっていると思う。砂利の公害というのはどのくらいかというと六十八件ですね。これに対して大体三倍程度砕石のほうの公害というのが出てきた。しかも、冒頭申し上げたように、採石法そのものは公害防止法律では実はないのですね。これは鉱業法に見合った採石権の創設というか、物権たる採石権の創設を中心とした法律でありまして、途中で公害が出てきたので多少公害防止の改正の条項を入れてきたという法律であります。  そこで私は、てっぺんから申し上げたいのは、言うならばこの採石法は、できるならば二つに分割する。いま直ちに採石権の設定を否定するようなことではこれはたいへんな混乱もあるだろうし、問題があると思う。だから、いわゆる採石権の設定を中心にした採石法というのは、これは別個にしておいて、砕石によるところの砕石法ですね、これは砂利採取法に見合って公害防止の観点から砕石法をつくってみたらどうか、こういうふうに一つは考えているのであります。  それからもう一つ、もしもそれが不可能であるならば、さしあたり少なくとも砂利採取法と見合った採石法に改正をひとつ考えてほしい、こういうことであります。でありますから、実際はあまりこれは答弁が要らないのであります。やっていただきたいということです。  問題でありますからその幾つかについて、御承知かと思うのでありますが申し上げてみます。もちろん通産事務当局の答弁では、砂利採取法に見合ったような公害防止措置要綱をきめてあるから、それで間に合うような答弁をするんだと思いますが、これはできない相談だと私は思っておる。私はなぜそういうことを言うかというと、現場を見ているのです。現場を見ているし、現に私の地元で幾つかあります。もっとも採石場というのは茨城県だけで三百以上あるのです。その中にはもちろん、たとえばあの辺に特別に出る花こう岩、こういうものの採石場が多いと思うのです。しかし、これは災害はかなり少ない。ところが、いわゆる硬質砂岩である水成岩であるとか変成岩、そういうような硬質の砂岩を砕いてやる山、砕石の災害というのが一番ひどいのですね。その現場というのは、言うなら採石法によって着手する場合には届け出すればいいのです。届け出は通産局に届けるのです。市町村、県、関係ありません。通産局です。届け出をしますと、いまは公害防止の観点から措置要綱において公害防止の方法書を出せということになっている。これは業者が地元の関係市町村長意見書をつけて出すということになっておる。ところが、そういうものができていても、まだ許可にならないのに実際は山を掘って公害をまき散らしているのです。これを押えるすべがないというのが実態であります。  そこで、まず一つ一つ幾つか申し上げますが、先ほども申し上げたように、この採石法の目的は採石権の創設、そういうものが中心である。砂利採取法は、御承知のように砂利採取に伴う災害を防止するというのが実体であります。そういう違いがあるのですから、現状には採石法はもう合わないのですね。  それから規制の対象でありますが、これもかなり手ぬるいのであります。この砂利採取法では、直接災害がなくとも社会通念上大体因果関係があるとすれば、いわゆるおそれあるとすれば、これは規制の対象になる。ところが、採石法では、これはなかなか段取りが要りまして、そういう規制の対象には少しもない。いわゆる実際に公害発生の事実があって、しかも必要と認めたらばこれは規制の対象になる。公害発生のおそれじゃなくて、公害の事実があって、しかも、これを措置しなければならぬという必要があって初めてこの規制の対象になる。だから、法律を解釈していけば、あまりひっかかるものがないのですね。そういうのがある。  それからもう一つは、規制の対象に、砂利採取法では砂利の洗浄が入ります。ところが採石の洗浄は、この中には、対象には入っていません。その他の法律によりますが、その他の法律によりますれば規制水域がきめられます。ある限定されたもの、そういうものも比較してみてたいへん問題があると思うのです。  それにもう一つ大きな問題は、先ほども申し上げたように何といっても砂利採取法では登録なんです。登録する場合には、御承知のように採取計画の認可が必要なんです。採取計画の中には、業務主任という国家試験に合格した者の認定が必要なんですね。形としては非常にきびしくなっている。ところが、採石法では御承知のように先ほど申し上げたように届け出をすればいい。いまは措置要綱によって公害防止の方法書を出せということをするだけであります。問題は、着手してからでは公害を未然に防ぐというのはたいへん困難な事情にあります。これは砂利にしても砕石にしても同じだと思うのです。だから、始まる前にこれは万全を期さなければ、残念ながらうまくいかないのです。しかも、いま砂利採取法による規制というか、公害防止というのは、ほめた話をだいぶしましたが、そのほめた話の砂利採取法でさえ、大きな穴をあけたままで、法律による埋め戻しの命令をしても、埋め戻しもしないままにいま大きな問題になっている地域もたくさんあります。法律できめてさえだめなんであります。きめてないのでありますから、これはもう何にも規制がないと同じです。そういうことをまず第一に考えていく必要があろう。  それからもう一つは、地方自治体との関係であります。東京通産局というのがわれわれのほうの管内を監督する管庁であります。この中の採石法の係というのは、鉱山部の鉱政課の採石係という役人がたしか五人以下くらいでしょう。これが一都九県くらいの管内を全部見て回れるだろうかという問題、これは非常に問題だと思う。しかも、先ほど言ったように届け出だ、それで法律上は着手してよろしい、そういうことになりますと、残念ながら公害を真剣に防止するという対策には、法律の形の上からいってもこれは全然ざる法と言っていいと思うのです。こういう幾つかの点を考えますれば、これらの点を網羅した改正案というのが今回開かれるところの特別国会に出されてしかるべきだと私は思うのであります。これは全然強く触れなかったから、あるいは政府当局においても気がつかなかったかもしれませんけれども、先ほど申し上げたように、すでに予算国会の中で私は少しく触れておいたつもりであります。しかも砕石は、言うならば対象は山、自然ですから。しかもてまえどものほうには、もうすでに十年間やられて山がなくなったのがあります。山でなくなってしまった。とんがった山が、全然向こうが見えるようになった。しかも、骨材は要ります。骨材をどうして確保するかという問題と、破壊されれば再び帰ってこない自然と歴史はどうするのかという問題がここにもあると思うのです。これはこの前通産大臣にもお話し申し上げて御同感をいただいた点だと思います。だから骨材の確保について一つの基準を設けて――新全総の中に自然を守るという一項目もあるようであります。あれは具体的にこういうものと関連して早急に方法を立てる必要があると思うのですね。  いま申し上げたように、いずれにしてもさしあたり私が強調しておきたいのは、通産大臣の所管の中に二つの法律がある。ふしぎじゃないでしょうか。片方は砂利です、片方は砕石です。使い道は同じです。ところが、公害に対する見方というものは全く雲泥の差がある。だから、これを補強するのに通産省は省議においてきめた公害防止措置要綱なるものでやっているようでありますが、これはいささか便宜主義なやり方であります。やはり必要とあれば法律できちんとしなければならぬだろうと思う。しかも、見落していけないのは、採石権の創設でありますから、当然のごとく、この法律は採石をやろうとする者に対しては、土地収用法の特例まで認める法律であります。ぼくらは何か矛盾を感じます。そういうものも整理してこの際改正をやっていく考えはあるのかどうか。あまり予算は要りません、役所の競合もあまりありません。ただ、あるとすれば、地方自治体と政府との関係が若干あるかもしれません。あとは通産省所管内での法律の改正ができ得ると思うのですが、いかがでしょうか。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も詳細な点には実は暗いのでございますけれども、先般も現実に、長野県でございましたか、文化財との関係で採石の問題が出てまいりまして、工事の中止を命じたことがございます。この採石法が、昭和三十八年ですか、改正されましたときに、公害防止の規定というものを入れ、またそれにのっとりましてお話しのような要綱で現在まで行政をやっておる。現実に改正されました採石法には「公害防止の方法を定め、その認可を受けるべき旨を命ずることができる。」ということになっております。事務当局は、大体現在のこの法律及び措置要綱をもって、まず大きな支障なく行政をやっていけるというふうに考えておるようでございます。ただ、公害というものの考え方あるいは自然環境の保全というものについての問題意識が、数年前とただいまとでは実際に格段に違ってきておるわけでありまして、いまの基準から考えて、当時の改正法律が十分であったかどうかということはいろいろ御議論がおそらくあるであろうと思います。したがって、私どもとしまして現在の措置要綱でいいのか、あるいはそれを改める必要があるのか、さらにはそれを越えて法律まで考えなければならないのか、その辺のことはよく検討をさしていただきたいと思います。
  135. 久保三郎

    久保委員 突然、法律のことで、大臣にも恐縮だったと思うのですが、事務当局から答弁してもらいましょう。  大体措置要綱で事が足りているというならば、その証明をしてほしい。
  136. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  採石公害措置要綱を設けましたのは、御指摘の砂利採取法が四十三年に成立いたしまして、その際、委員会において決議で、「岩石を破砕する等により骨材を生産する場合の災害防止について、採石法にも抜本的な検討を加える等速やかに適切なる施策を講ずること。」ということがございまして、この決議に基づきまして、砂利採取法と採石法との間の規制についての食い違い点について、これをできるだけ埋めてまいろうということにいたしたのでございます。一つは先ほど御指摘のとおり、事業着手について、事前届け出の規定だけであって、届け出さえすれば採石に着手できるのに対して、砂利採取法では、事業者が登録し、登録には欠格条件がありますから、欠格条件のない状態で登録した上、さらに採取計画の認可が必要だ、こういうことでございましたので、公害発生するおそれのある場合には三十二条の二ですでに、公害防止方法の認可を受けるべき命令が出せるという規定が三十八年からございますので、事業着手前にも画一的にこれを出して、公害防止方法の認可命令を併用して砂利採取方法と同じ効果をあげるということにいたしたわけでございます。  それから砂利採取法では、採取計画の変更命令というのがございますが、これにつきましては、やはり公害発生の事実があって、他の方法の選択を認められない場合には、公害防止措置命令ができるという規定がございますので、これに基づいて採石法においても同様の措置命令をする。  それから事業停止を含む緊急措置命令ができるというのが砂利採取法にございますが、やはり採石法につきましても、公害の事実があって措置命令だけでは不十分な場合は事業停止命令ができるということになっておりますので、これをもって併用していく、こういうふうに考えております。  それから先ほど御指摘の汚水の問題でございますが、汚水につきましては、水質保全法の適用を受けるということにいたしておりますので、御指摘のように、指定水域以外の場合には法律規制がないということになっておりますが、採石公害措置要綱によりまして、同様に汚水についても採石公害規制をできるように指導してまいりたい、こういうことにいたしておるわけでございます。  それから御指摘のように、採石法の、採石して、砕石にして骨材にするという用途が、川砂利、山砂利の減少によりまして重要な骨材材料になっておるというところから、採石については最近は逐次大規模化しておりまして、石灰石と同じようなベンチカッター方式あるいはグローリーホール方式の大型化された採掘方式をとる、あるいは抗内掘りも出てまいるということでございますので、これはやはり現行の鉱業の採掘技術が適用されつつあるということでございますので、鉱業の規制とテンポを合わした規制が必要だというふうに考えております点は御指摘のとおりでございます。  かようなことで、砂利採取法との関係の間隙は、大体三十八年の法律の改正によりましてある程度埋まっておりますのを、先般の決議に基づきましてさらにこれを埋める措置を講じておりますので、砂利採取法の規制と同様の効果をあげ得るというふうに考えておる次第でございます。
  137. 久保三郎

    久保委員 措置要綱と法律が同様の効果をあげることができるというのは、これは法律的に見てそういうふうなことになりますか。措置要綱できめてやらねばならぬもので、片方の砂利採取法には法律事項になっておる。だからそれを法律できめちゃ悪いということがどこかありますか。法律できめなくても措置要綱で十分だという論拠は何ですか。これは指導要綱でしょう。これは全く何かになった場合に、はっきりいって規制できますか。いかがでしょう。
  138. 本田早苗

    ○本田説明員 私の申し上げましたのは、事業開始の際における規制といたしましては三十二条の二の公害防止方法の認可命令というのが事業開始の前後を通じて行なえるという規定になっておりますから、これを運用すれば同様の効果をあげ得る。それから採取計画の変更命令あるいは事業停止命令等は三十八年の改正ですでにございますということでございます。  それから汚水の点につきましては御指摘のような点がございますが、現在のところは採石公害として指定水域以外でもやるということでまいっておりますが、むしろ水質関係法律整備されまして指定水域の規制をはずれますと、これは同様に規制し得ることになろうと思いますし、私としては、先ほど申し上げましたのは、砂利採取法で公害防止の効果をあげるという点を考えまして、現在の法律の運用並びにそれを補完して措置要綱によって指導することにいたしておりますから、公害防止の効果は同様にあげ得るというふうに考えておりますということを申し上げました。
  139. 久保三郎

    久保委員 あなたの答弁、はっきりわからないのです。ちょっと力がないよ、答弁に。力がないのは自信がないんだろうと私は思う、失礼だけれども。  だから措置要綱でやらなければならぬものがあって、やはり法律事項にならなければならぬものがたくさんあるでしょう。公害防止の方法書を出せなんていうのはきちんと法律で書くべき筋合いのものですよ。そうでしょう。  それからもう一つは、措置要綱といっても法律があるといっていますが、さっきぼくが言ったように、法律で、三十三条ですか、これはそこにいる役人の人が書いたものだから間違いないだろう。三十三条に、三十二条の二の第一項、いわゆる公益に抵触した場合ですね、その場合にこういうふうに書いてあるのですね。そういう場合には、その「要件に該当する事実があると認める場合において、特に必要があるときは、採石業者に対し、その防止のため必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。」これは要件が二つある。事実があって、特に必要があると認めたときはと、こう書いてある。こんななまぬるい、間の抜けたようなことで公害防止がいまの採石業者に対してできるかどうか。私は現場にいるのです。しかも砂利採取法は、おそれがあってもこれはやるのです。おそれがあっても、そう書いてある。この法律を改正しないで、措置要綱でできますなんて、そんなのおかしいじゃないですか。措置要綱でやるのなら、これは当然法律にしなさいよ。そうだろうと私は思うのです。  それからもう一つ申し上げますが、さっき通産局の陣容を申し上げました。ぼくの県だけでも三百以上の採石場があるのですよ。そういうものは、鉱山部の鉱政課の採石係五人かそこらだろうと思うのですが、それで大体できますか。これはできないのじゃないですか。しかも知事からの、何か災害がありそうだという事実があったときは、通産局長に申し出ればいい。通産局長がそれを調べて、これは措置しなければならぬなというときには措置するが、措置しなくてもいいと通産局長が思えば、知事措置してほしいと思ってもやらなくてもいいなんて書いてあるのですね。そういうことでほんとうにこの災害防止をやるというかまえの法律だろうかという疑問を持つのはあたりまえでしょう。通産大臣に、もう時間もありませんし、なんですが、これはあなたもこまかいことだしごらんになっていないと思うのですが、私は公平に見て、実態は別として、法律的に見てもおかしいんだから、これはこの際砂利採取法と同じくらいに、少なくとも同じには改正をしてもらったらどうか。しかも、なかなかこれは取り締まりも何かむずかしいだろう。砂利採取法そのものも、法律であっても、先ほど申し上げたように、いろいろなところで大きな問題ができているさなかでありますから、せめて法律的にもしばっていくのが正しいと思う。措置要綱でやっていくべきではないと私は思うのですね。もう一ぺんお答えいただきます。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かりに御指摘のように、公害の防止上欠くるところがあるといたしますと、それが行政の姿勢に基づくものであるのか、あるいはそうではなくて、行政法律上そういう権限を与えられていないためであるのか、そこを現実に徴して考えなければならないと思います。したがって、そのいずれであるのか。行政上やりたいが、法律上その権限がないというのであれば、これは法律を改正することにならざるを得ませんが、そうでないのであれば、行政の姿勢を改めればいいということになろうかと思います。  申しわけないことでありますが、いま私にこまかいことが十分にのみ込めておりませんので、そのあたりを検討させていただきたいと思います。
  141. 久保三郎

    久保委員 これは大臣にはとくと御検討いただきたいと思うのであります。  ただ、申し上げておきたいのは、行政上の姿勢の問題であるのか、法律がだめなのでできないのかということでありますが、これは実際は両方だろうと思うのですよ。しかも、私のほうの現場に基づくある一つの例を見ますと、いま東京通産局の手にかかって許可というか、認可する――まだしていないようでありますが、すでに山をくずして沢水をとめたり、水をよごしているわけなんですね。こういうものを再三にわたって通産局には陳情しているのでありますが、これは一向きき自がない。すでに公害が出てるのですよ。石を掘って砕石はまだつくってはいないのですが、その前提でやっていることが――これは一向きき目がない。こういうのが、言うならば法律と姿勢の二つだろうと私は思う。だからそういう意味で、これは少なくとも砂利採取法を改正した趣旨にのっとれば、当然冒頭申し上げたように採石法の改正はしかるべきだろうと私は思うのであります。何も関係ないと思うのですね。これは通産局で措置要綱でやっていますからだいじょうぶです、だから法律改正は要らないという理屈は、実態に照らし合わせてこれは使いますから、措置要綱ではもちろんできない問題であります。業者にすれば、届け出はした、だから掘ってるんだということだと私は思っているのです。  御検討いただくということでありますし、時間でありますからこれ以上申し上げませんが、ただ委員長並びに各党の委員にお願いするのでありますが、時間もなくてたくさん中身を申し上げるわけにはいきませんでしたが、冒頭申し上げたように、採石法そのものは公害のためにできている法律ではないのであります。もともとが採石権の創設並びに業界の健全な発展、こういう目的からできたものであります。途中、三十八年ですか、その辺になって公害ができたので多少の手直しをしたということ。そこでその当時はいわゆるおか砂利、山砂利の問題が大きな問題になってきていたときに、砂利採取法というのを大改正、抜本的な改正をしたわけです。まだそのときには砕け石のほうはそれほど問題ではなかった。しかし、多少問題があるので、これは手直し、措置要綱を出してきたということだと私は思うのです。だから、時代は砂利から砕石に変わってきている時代であります。災害も非常に多角的になる、しかもこれは局地的にたくさんできています。通産局に届け出がない公害というものは、たくさんあるわけであります。もう少し法律もきちんとして、行政の姿勢もきちんとして体系を整えておやりになる必要があると思うので、委員会としてもぜひ御検討をいただきたい、かように申し上げて終わる次第であります。
  142. 加藤清二

    加藤委員長 久保君に申し上げます。  本件は、先ほど与党理事でいらっしゃる小山省二さんからも同様趣旨の採石公害の案件が提出されました。したがいまして、重要な問題だと存じまするし、与野党一致した意見でございますので、理事会にはかりまして善処したいと存じます。
  143. 久保三郎

    久保委員 お願いします。
  144. 加藤清二

    加藤委員長 次は、中谷鉄也君。
  145. 中谷鉄也

    中谷委員 きょうは私は電気事業法の四条と八条、それから電源開発促進法の十一条、この条文の解釈を通産省にお尋ねすることにいたします。  広域行政ということばがありますけれども対策基本法の中に規定されている公害が相当な範囲に及ぶということになっておりますけれども、広域公害ということばもあるのではないかと思われるような具体的な事例に基づくところの質問であります。  すなわち、最初に事実関係を申し上げますと、大阪府と和歌山県の県境の和歌山県寄りのところ、そこに多奈川第二発電所建設の計画が関西電力によってある、出力が四十六万三千キロワット、既設の分を含めると二百十万キロワットになる、和歌山県のほうの海南市において関西電力が計画をし、すでに着手をしております火力発電所が完成すると、同じく二百十万キロワット、そういうことになってまいりますと、和歌山の六十万の人口が、ほぼ地理的にいいますと、三分の一がこの多奈川火力発電所の大気汚染影響を受ける、こういう事実関係であります。  そこをお尋ねをいたしますが、促進法の十一条によりますと、「審議会は、その所掌事務を処理するため必要があるときは、関係都道府県知事の出席を求め、その意見をきかなければならない。」とあります。この「関係都道府県知事」ということの中には、設置される場所は大阪府ではあるけれども、増設を申請して、届け出をして、許可を求めておるのは大阪府であるけれども関係都道府県の中には当然和歌山県が入る、広域公害ということばがあるのかどうかは別として当然関係があるものと私は考えますが、公益事業局長の御答弁を最初に伺いたい。
  146. 長橋尚

    ○長橋説明員 お答え申し上げます。  御指摘の電源開発促進法の規定につきましては、「審議会は、その所掌事務を処理するため必要があるときは、関係都道府県知事の出席を求め、その意見をきかなければならない。」ということになっておりまして、当該電源開発によりまして非常に影響を受ける、その施設が設置されます県に隣接するような県がございます場合には、当然関係都道府県知事という中に入ると解釈いたしております。
  147. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで電気事業法の関係です。四条は新設の規定、八条は増設の許可に関する規定、そこで従来からの運用の民主的なあり方を規定するものとして、届け出書類の中には、設置される府県の同意書がつけられておったことは言うまでもありません。  ところが、この具体的な事例のように、設置される地方公共団体よりも、その隣接の地方公共団体、A県よりもB県、大阪府よりも和歌山県、そのほうが公害の被害を気象条件、地理的条件その他においてより多く、さらに人口関係においても受ける。こういうふうな場合には、運用上当然四条の許可届け出書類の中には、和歌山県の同意書も必要である。これはもう民生的な運用、公害防止の観点から当然のことだと私は考えまするけれども、この点についての御見解を承りたい。
  148. 長橋尚

    ○長橋説明員 電気事業法に基づきます発電所の新設等の許可に際しまして、地元との関係が十分調整されていることを確認するための書類といたしまして、施設を設置されます当該都道府県知事の同意書というものを取っている場合もございますし、あるいはまたケース・バイ・ケースで、公害協定の写しなどで同意書に代替しているという事例もございます。  ところで、御指摘のケースにつきまして、隣接県である和歌山県についても、このような同意書ないしそれに相当するものの添付を、当該申請電気事業者に対して要求すべきではないかという御指摘でございます。従来までのところでは、設置されます当該都道府県知事との間の同意書ないし類似のものを取っております。今回の多奈川第二発電所のケースにつきましては、和歌山市まで当該設置個所から十二キロ、あるいは亜硫酸ガスの最大着地濃度地点が十六キロ、和歌山県内にまたがっているというふうな状況でございます。非常に従来にない異例なケースになるわけでございますので、地元の同意関係を確認いたしますための手続につきましては、ひとつ新しいケースとして御趣旨に沿うように検討いたしたいと考えるわけでございます。
  149. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないのです。御検討いただきたいというふうなことを要望しているのでもなければ、私は――質問はそうじゃないのです。あたりまえでしょうと聞いたのです。被害を受けるのは、和歌山県と言うといかにも私の地元のことを言うようになるから、A県、設置される場所はB県。その場合に公害防止という観点からいえば、人口、気象条件、地理的条件からいって、より被害を受けるところの同意書を許可届け出書類につけるのはあたりまえでしょう。別にどこの同意書をつけてこいとは書いてない。運用上そういうのをつけてくるのはあたりまえでしょう。検討もなにもなくて、つけてきなさい。きょうはあとで大臣に私はお聞ききしようと思いましたけれども、たいへん電力需給の問題について私は憂慮する。しかし、地元の納得のない電力需給というものでは問題が解決しないのです。そういうことであれば和歌山県の同意をとる、あるいは局長お話は、和歌山県との間の公害防止協定でも結んでこい、――同意書じゃなくして、公害防止協定では二年も三年もかかりますよ。それでもいいという意味なんですか。あるいは同意書はあたりまえだということを――私は、検討というふうなことでは納得がいかない。いかがでしょうか。
  150. 長橋尚

    ○長橋説明員 お答え申し上げます。  公害防止協定を結ぶべきである、かようなお答えを申し上げたわけではございませんで、地元との関係が十分に調整されたということを確認いたす必要は、御指摘のケースについては和歌山県に関しましてもあろうかと存じております。私が申しました手続につきましては、ひとつ御趣旨に沿うような形で、どういう手続がいいか検討させていただきたい、かような意味でございます。
  151. 中谷鉄也

    中谷委員 公害保安局長さんにちょっと、通告なしの質問ですけれども、もうあたりまえのことですからお聞きをしておきます。  基本法の二十二条でございます。ひとつすなおに二十二条の解釈を通産省のお立場からお答えをいただきたいと思いますけれども、「事業活動による」という場合に、「国又は地方公共団体が実施する事業」、これはたとえばA県にある企業の事業活動が当然B県に影響を及ぼしている場合は、B県という地方公共団体が実施する事業というふうな場合も当然二十二条の適用を受けるということは、法律の解釈としてはあたりまえのことでございますね。
  152. 荘清

    ○荘説明員 お答えいたします。  いま条文をよく拝見いたしましたが、私はお説のとおりであろうと考えております。
  153. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、事業局長さんに今度お尋ねしたいのですけれども、和歌山県というか、設置の届け出のある隣接県の納得、同意を得ることは当然だろうと言われる。それがなければとにかく非常に問題が起こるでしょうと言われた。手続の問題だと言われますけれども、手続といったってむろん法律の解釈の問題じゃございませんね。本来、運用上の問題なんですから。だといたしますると、それはあくまでも企業の誠意、企業の努力、企業が地元の納得を得てきたというところのあかし、こういうことだと思うのです。同意が必要だと局長はおっしゃった。納得の象徴的なあらわれは私は同意書だと思うのです。それは納得の担保ですね。だから同意書というものが手続的にどうというようなことは、私は問題にならぬと思うのです。納得があったということのあかしが同意書なんだから、そういうものが公害防止の観点から、手続上の問題ということは私はないと思う。事務的な問題というのは支障がないと思うのです。そういうところにネックはないと思うのです。一歩進んで、これは当然趣旨に沿うということを言われた。だからとにかくもう九分九厘まで同意書が要るのですよということを答弁していただけると思うのですけれども、何か初めてのケースのようだからということでちょっとその点についての御答弁が出ないのだけれども、要するに同意書が要る。同意書をとるのが妥当だ、つけてくるのがあたりまえなんだ、それが適当だと思う、そういう趣旨の御答弁だというふうにお伺いしてよろしいのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  154. 長橋尚

    ○長橋説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように、単に隣接県であるというふうな地理的な関係だけではなしに、亜硫酸ガスに関しまして最大着地濃度地点、そういうものが和歌山市の周辺に及んでいるというふうな、そういう非常に密接な関係があるという実態に即しまして、御趣旨に沿うような、地元との話し合いがついているということを確認するための手続をとるべきであろう、かように考えておるわけでございます。
  155. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、そういうふうな話し合いがつくかつかないかは別として、まず同意が前提になるだろうということを申し上げた。同意がなければもう問題にならないと言っておるのです。  そこで、あらためて局長お尋ねをいたしますけれども、その隣接県である、まあ本件の場合、具体的な場合で和歌山県では、地元はもう騒ぎに騒いでいる。二百十万キロワットの海南火力発電所がとにかくすでに稼働、さらに着工されている。そうして多奈川がすでに増設届けが出てきている。許可を求めようとしておる。ところが、多奈川の場合については、十一条に基づいて知事意見を聴取されても、同意するとかしないとかいう前提として一体何ができるかということがわれわれ全くわからない。一体その計画の全体については、本件の場合、和歌山県はどこから、だれからどんな手続によって計画の内容を知ることができるのか。大臣は常に公害問題について、理性的、科学的に公害問題は対処してもらいたい、こう言っておられるけれども、内容もわからずに、ただとにかくたいへんなものができる、そして和歌山県というものは除外されたままで、火力発電所が大阪府との関係においてかりに万が一にでも増設許可になったということになれば、これは問題にも何もならないと思う。一体隣接県はどのような手続とだれから計画の内容を知ることができるのか。この点については、これは全く最近、広域公害というふうな問題で、私は法が予想しなかった問題だと思うけれどもお答えいただきたい。
  156. 長橋尚

    ○長橋説明員 第一次的には発電所を設置いたします関西電力株式会社が、御指摘のケースにつきましては、設置されます大阪府当局、そしてまた影響が非常に及びます和歌山県当局に対しまして、建設計画を提出いたしまして説明をする筋合いであると考えております。
  157. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に、大臣に私のほうから次のようなことを申し上げておきます。  大阪府に対して当該許可を届け出た電力会社、関西電力は、十月の十二日にすでに正式にその計画の詳細な内容を大阪府に対して届け出しているわけです。もちろん、これは建築基準法であるとか、あるいは公有水面埋め立て等に関連をするものがあって、届け出をするのが当然だと思う。  ところが、和歌山県、隣接県の場合には、全然そういうふうな公式の届け出がない。ただ、たいへんなものがすぐ隣にできる、そうしてとにかく百万人目のうち六十万がそれの影響を受けるということで大騒ぎをしている、こういうかっこうなのです。きょうも通産局長会議で、大臣は電力需給の問題に触れられて、特に今後のこれらの問題については地元の納得が必要だということを強く局長に訓辞されたというように私は聞いております。  そこで、先ほど特に大臣に御出席をいただいたわけですけれども、同意が要るのか要らないのかとか、あるいは意見の聴取を求める必要があるのかないのかというような法律の解釈の問題でありましたので、局長の御答弁をいただいたわけでありますけれども大臣に私特にお尋ねをいたしたい、また大臣の御所見を承りたいのは、要するに広域行政というものがあるけれども公害もまた広域公害というか、非常に予想しないような広域化している。そういうような状態の中で、私は電気事業法なり、あるいはまた促進法なりの解釈において、関係する隣接地方公共団体の同意というふうなものがなければ許可さるべきものではない。また、当然そのような発電所の設置などというようなものは、地元住民の手ひどい反抗にあってとうてい成功しないだろう、こういうふうに私は思うわけです。この点についてひとつ御所見を承っておきたいと思います。
  158. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一般論として、御指摘のとおりであると思います。具体的には、現在の御指摘のケースの場合に、和歌山県に至大な影響があるということを公益事業局長が認めておるわけでございますから、当然当該県に対しても説明をし、またその同意を担保するような方法を確認して初めて許可を受けるべきものだ、そう考えております。
  159. 中谷鉄也

    中谷委員 局長のほうに私のほうから申し上げておきますけれども、いまのところその隣接県は計画の内容について全く関知しない、公式に関知しない。したがって、その問題について何らの意見を述べる――とにかくたいへんなものが来そうだ、来るのかもしれないということはいえても、これについては全く理性的に判断する、そういう事実をわれわれは持ち合わせがない、こういうふうな状態であって、これはきわめて好ましくない状態だということだけはひとつ申し上げておきたいと思います。この点については善処していただきたい。これはあたりまえのことで、御答弁は要らないが、していただきたいと思います。  そこで次には、この前経済企画庁長官に、やはり都市河川汚染問題についてお尋ねを商工委員会でいたしました質問が残っておりますので、これについて簡単に一、二問だけ建設省と通産省にお尋ねをしておきたいと思います。  要するに、都市河川汚染問題というのはたいへんな全国的な問題になっている。ところが、全国の中で三つ、一番どうにもこうにもならない、ため池といわれている川がある。その一つに和歌川という川がある。その和歌川という川の沿岸には百二十社以上の化学皮革の工場がある。この工場は、どの工場公害防止事業団の融資を受けていない。  そこで、その点について保安局長お答えをいただきたいと思うのでありまするけれども、団地化の計画がある。そういうふうな団地化の計画がある場合に、団地移転をするのだから、現にある工場については、公害防止事業団として融資をすれば、団地化したときにまた融資をしなければいかぬ。そこで、そういうふうな融資は設備の面からいえば二重投資になるし、融資の面からいっても二重融資というようなかっこうになるから遠慮するようにというふうに地元は受け取っている。公害防止事業団は、まさかそういうふうなことは考えていないと思いますけれども、はたしてそういうふうなことなのかどうか。公害防止事業団のあり方として、局長答弁をひとついただきたい、これが一点であります。  質問をまとめてやります。  次に、経済企画庁審議官においでいただいておりますが、審議官お尋ねをいたします。  要するに、水質基準についておきめになった。とにかく住民の立場から見て一番好ましくないといいますか、満足できない基準というのはEのハ。要するに、五年をこえなければだめだ。五年をこえて、しかも可及的すみやかに達する基準はEだ、こういうふうな状態、これは一体どういうことなんでしょうかという質問なんです。要するに、かつて和歌川という川にはコイやフナがおった。Eじゃコイやフナもとにかく将来泳ぐことがあり得ない。要するに、Eという状態で満足しろということなのか、これが経済企画庁に対する私の質問であります。  次に、建設省に対する私のお尋ねでありますが、一体ヘドロのしゅんせつというものについて、二十二万平米ともいわれ、三十二万平米ともいわれている。見当がつかない。そして、これのしゅんせつその他の事業費については八億円といわれているけれども、これは一体どれだけかかるか、これもはっきりしていない。これは一体建設省としてはどんな計画をもって、いつまでにどのようにして少なくともEのハに達するようにされるのか。  これらについて、時間もないようですし、きょうは主として広域公害というふうな問題についてお尋ねをしたので、ひとつそれぞれのお尋ねをいたしました三省の方々から御答弁をいただきたい。
  160. 荘清

    ○荘説明員 事業団の融資の点でお答えいたしますが、事業団の責任者のほうに確かめましたところ、公害防止事業団としましては、実は団地計画というものについて聞いておらない、こういうことでございます。聞いておらないとして、もしそういうものがほんとうにあるとすれば、先生御心配のような点についてどう考えるかという点でございますけれども、事業団といたしましては緊急なものについては融資をすべきであると考えておる、こういう方針でございます。通産省といたしましても、そういう方針で事業団を指導する所存でございます。
  161. 西川喬

    ○西川説明員 お答え申し上げます。  環境基準におきましてE類型と申しますのは、いわゆる生活環境上少なくとも最低ここまではしなければいけないということで、E類型というものを最低の条件としてきめているわけでございます。現在和歌川の状況は、先生もよく御存じのとおりでございまして、行政目標値として私どもといたしましてもいろいろ諸般の施策等を総合的に勘案してみたわけでございますけれども、現在のところ、このE類型を五年で達成するのはほとんど不可能に近いということで、やむを得ず五年をこえる区分にしたわけでございます。  このEのハというのは環境基準の類型当てはめとしては一番悪いグループでございますけれども、先般決定いたしましたグループといたしますと、百八十六水域のうち約六分の一の三十一水域がやむを得ず現時点としてはEのハに決定した部分でございます。これに対しましては水質審議会におきましても非常に問題となりまして、行政目標値である環境基準は政府の責任として達成しなければいけないという点から考えて、現在時点においてこのような基準を決定するのはやむを得ないと思うけれども、政府においてはなお今後努力を続けて、できる限りこの達成期間を短縮するように努力しなさい、さらに達成されたときには上位類型へ改善できるかどうかということを十分検討しなさいというような付帯事項もついております。それに従いまして、私どもといたしましても一応現時点においてはこのように決定いたしておりますけれども、さらに今後努力をいたしまして、できる限り早くこの最低の条件であるE類型まで持っていく、またE類型が達成されたときには、その時点においてさらに上位への改善の措置が可能であるかどうかということについて十分検討をいたしたい、このように考えております。
  162. 岡崎忠郎

    ○岡崎説明員 ただいま先生のおっしゃいました三十万立米あるいは二十万立米という土砂量につきましては、三十万立米というのは全体のことでございまして、海草橋から仮堰までの間は約二十万立米といわれております。これにつきまして、昨年から仕事を始めておるわけでございますけれども、捨て場を河口付近に予定いたしておりましたが、現在のところそれが不可能なことになっておりますので、捨て場の問題が今後の問題としては考えなければならぬ問題だろうと思います。さしあたり仮置き場として河岸に矢板を置きまして、そこへためるようにしておりますので、それで緊急な分をあと二年ぐらいで、四十七年ぐらいまでにやれないかという検討をいまいたしております。先生おっしゃるようによく検討いたしたいと思います。
  163. 久保赳

    久保説明員 建設省の分の補足をさせていただきます。和歌川の環境基準がきまりまして、それの対策はいろいろあろうかと思いますが、ただいま治水課長から答弁もございましたように、まず昔からたまっているものの処理、それから抜本的にはやはり下水道の整備、これをすることによって浄化した上で和歌川へ放流する、こういうことになろうかと思いますが、現状としては和歌山市自体の全体の下水道計画がまだできておりません。それと総合的な下水道整備計画を早く樹立するように現在和歌山市を督促をしているところでございます。したがいまして、それの計画を、来たるべき第三次の下水道整備計画の中に入れまして、先生御指摘のように現状から若干でも、あるいはもう少し促進をしたい、こう考えております。
  164. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  165. 加藤清二

    加藤委員長 次は、佐藤観樹君。
  166. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 皆さますでに御承知のように、きょうの新聞によりますと、名古屋港というのは、東京湾や大阪湾よりもさらに汚染されて、一番きたない湾じゃないかといわれているわけです。愛知県は交通事故が一番多いところで、さらに名古屋港まで汚水で非常によごれているということで、わが愛知県出身者としては非常に恥に感じているわけですけれども、きょうは名古屋汚染の問題で、いろいろございますけれども、熱公害の問題一点にしぼって御質問したいと思います。  私は先月赤潮の問題に触れまして、名古屋港から発する水の温度が高いので、それが赤潮を発生させやすい原因の一つになっているのではないかということを申し上げたわけです。アメリカの生物学者のゴードンは、熱ほど自然環境を一変させる第一条件はないというふうに警告を発しておりますけれども、これはわれわれもよくわかることで、生物が熱にどれだけ弱いかということは皆さまよくおわかりだと思うのです。問題をしぼって、きょうはおもに通産省の方と経済企画庁の方にお伺いしたいと思うのですけれども、まずあそこに排水を一番多く出している中部電力及び新日鉄が、一体一白にどれくらいの量を排水し、しかもその排水を出したときに温度差がどのくらいあるものか、通産省の方にまずお伺いをしたいと思います。
  167. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 最初に知多火力でございますが、知多火力の一日の排水量は四百八十六万トン、それから温度差でございますが、大体排水口で温度差は五度ないし八度ということになっております。新日鉄は一日の排水量が百五十四万トン、温度差はやはり五度ないし八度という状況でございます。
  168. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 問題がいろいろあるので整理しますけれども、いま公害部長さんのほうからお話がありましたように、これを合計するとたいへんな数字なんです。これを一秒間に直しますと、ほぼ百トン近い水が毎秒出されているということでございます。そういうわけで百トンということになりますと、木曽川の今渡ダムでは平常時百トンの水が通過しているわけでありますから、中部電力の知多火力発電所及び新日鉄で出している水というのは、毎日毎日木曽川ほどの量で、しかもいまお話があったように五度から八度違う熱い水が流れているということであるわけです。  そしてここに中日新聞が鳥羽商船高専の落合教官の協力を得て赤外線で温度差をとったものがあるのです。ひとつ見ていただきたいわけですけれども、この斜めになっているところが臨海工業地帯です。ここに中電の新名古屋火力、それからここに新日鉄、ここに中電の知多火力発電所があるわけです。ちょっと遠くでごらんになりにくいと思いますけれども、等温線がこの近くほど高くて、この近くは大体三十度、一方庄内川の下流は二十七度です。大体これで三度違っております。これはことしの七月二十二日の調査です。夏ですとこのくらいで済みますけれども、冬のことしの一月の二十九日になりますともっとひどいわけです。いま申しましたように中電の新名古屋がここ、新日鉄がここ、中電の知多火力がここにあるわけですけれども、一番高いところで新日鉄の付近が十九度となっておりますが、このとき庄内川の下流というのは八度なわけです。すでに十一度の温度差の層ができているわけです。  私はこれが非常に問題なんじゃないかと思うので、実はきょう予告してはありませんでしたけれども、水産庁の方にお伺いしたいのですが、このような温度の差が魚類に与える影響というのはいかがなものであろうか。すでに尾鷲湾などハマチの養殖に非常に被害を来たしているということも聞いております。魚というのは御存じのように冷血動物で、〇・二度の差までからだで判断できるといわれている敏感な動物でございますので、この辺に非常に水温に層ができているということ、いや、できているというよりもつくっているということは、魚族保護の観点からいくと非常にいけないことじゃないかと思うのですが、水産庁の御見解はいかがでございましょうか。
  169. 大和田啓気

    ○大和田説明員 私ども漁業と工場の建設といいますか、原子力発電あるいは火力発電等々の問題が起こりましたときに、研究者が現地の調査をいたすわけでございますが、いま御指摘のように瞬間といいますか、非常に狭い時点において温度差があります場合は、これは当然魚族に悪い影響がある場合が多いわけでございますけれども、私ども調査によりますと、相当な排水があるように見えましても、相当広範な海面でございますから、一キロあるいは二キロ、三キロというところで相当水温が調和といいますか、うめられて、それほど広い範囲にわたって漁業に悪影響があるということはまずないというのが普通でございます。  それから蛇足を申し上げますと、温度が高いことが必ずしも魚類にマイナスの要因ばかりではございませんで、たとえばイギリス等におきましては発電による水温の向上を養殖に使うということが相当検討されておりまして、私どもの水産学界におきましてもこの問題を取り上げておるのが実情でございます。
  170. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは蛇足になるかもしれませんが、実は魚のほうに影響ができる前に名古屋港の魚はみんな死んじゃったわけですね。ですから、正直言って温度差による影響というものは、実態はわからないと言ったほうが私は正確なんじゃないかと思います。ただ、何と申しましても魚には温度の耐性というものがあって、上限何度下限何度くらいならばその魚は生息できるけれども、それ以上高くなったり低くなったりすると魚は住めなくなるということで、現在名古屋港にはほとんど魚がいないというのが実態ではなかろうかと私は思うのです。いま大和田水産庁長官からあったように、私もあとで質問いたしますけれども、逆にこれを使って水産保護をやるという点もあることは私も承知しているわけですけれども、何といってもこれだけ、五度から八度というものが、普通の水温よりも高いものが流れている、そして近くに新日鉄なり、その他数々の鉄鋼をつくる工場があるとなると、その粉じんが核となって霧が発生しやすい、温度が高いために霧が発生しやすくなって、船の航行にもいずれ困るような事態にはなるのではないかという観点も私はあると思うのです。  それで、通産省の方にお伺いしたいのですけれども、いまこの東海地方ではこの臨海工業地帯でほぼ二〇%というものが工業用水を海から取っているわけです。はたしてこのまま、現状でもこういうふうに温度差ができ、いろいろ問題が起こってくると考えられるわけですけれども、今後工業用水を海からこのまま取らしておいていいものだろうか。さらにGNPが広がり、先ほどありましたように電力が必要になる、高炉が増設される、それによって同じように水を取り、五度から八度くらい違う水をまた再び戻すということになると、ますます名古屋港の水というものは熱くなってきて、また赤潮の原因になるのではないかと思われる節も十分ある。こういうような観点に立つならば、工業用水というものを――臨海工業地帯工場をつくり、そしていまのような装置で五度から八度違うというような水をそのまま流さしておいていいものだろうか、そういう観点についてどのようにお考えかをお聞きしたいと思います。
  171. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 工業用水に二種類ございまして、たとえば発電所で使っておりますのは完全にボイラーの冷却用の水でございまして、一般に真水を使うものは、そういう意味の冷却用水ではなくて、プロセスにおける水は真水を使う場合が多いわけでございます。ただいま先生御指摘の工業用水は、鉄の場合には主として高炉の冷却、電力の場合には発電炉の冷却になるわけでございますが、これを真水にかえるということになりますと、もともと非常に水の不足が目立っております名古屋地区の水需要に対しまして非常に大きな影響があるということと同時に、かりにこれを真水にかえましたとしても、いまの技術ではやはり冷却用水はあたたまって放出されるということになりますと、水の温度を下げるということには役に立たないわけでございます。さらに真水にかえた場合に工業用水道の温度は一般に海水の温度よりも夏場は高くなる可能性があります。それがさらに高くなって放出されるということになりますと、熱の面からは全然効果がないというような問題もございまして、ただいま海水を工業用水道にかえるという点につきましてはわれわれといたしましても検討はしておらない問題であります。
  172. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 海水を真水にかえるということもまた必要だと思うのですけれども、それと同時に、いまの火力なりあるいは鉄鋼なりの場合に、もう少し冷却水を、温度の差を少なくするやり方で海に戻すということを考えねばいけないのじゃないか。やかんの水を海に戻すのとちょっと違うわけですね。先ほど言ったように一日に木曽川の平常時とほぼ同じくらいの量の五度から八度くらい違うものがまた海に戻されているということになりますと、ますます名古屋港というのは熱くなり、熱公害ということが今後起こってくるのじゃないか。名古屋市が蒸し暑いのはこれも一つの原因じゃないかともいわれているわけですけれども、そういう観点から、新たなる装置を電力なり鉄鋼なりにつけさせる必要があるのではないか。さらに現状もそうですけれども、これから電力なり鉄鋼なりの工場がふえていくということになるとますます熱い水というものが湾に流される。このままでは一体どこまで名古屋港というものが熱公害汚染されるかわからない。その歯どめを何らか考えなければいけないのじゃないかと私は思うのです。その点いかがでございましょうか。
  173. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 御指摘の点につきましては、通産省といたしましてもいろいろ検討しておるわけでございますが、まず電力につきましては水量が非常に多いために、ため池をつくったり、あるいは冷却の装置をつくったりということはちょっと無理な点がございます。したがって、第一番目の方法としては、深層取水という方法をとりまして、結局なるべく深いところで冷たい水を取れば、それを放流する場合には五度ないし八度の温度差があってもその水自身はわりあい冷たくなるという原理でございますが、この深層取水の方法をできるだけの範囲内で特に伊勢湾については導入すべきであるというようなことで、中部電力もこの点を検討しておるわけでございます。  さらに、名古屋湾の場合には、非常に特殊な事情で防潮堤がございますので、その防潮堤の影響をどういうぐあいに考えて、さらに防潮堤から外に出た場合、どういう流れを考えた場合に一番影響が少ないかということで、沿岸沿いに導流堤その他をつくりまして、一番影響の少ない方向に流れを誘導する方法はどうだろうかということで、これは非常に精密な実験その他も要するものでございますので、現在愛知県並びに三重県と相談いたしまして、大型の模型実験もつくりまして、そういう点を基本的に解明したいということで努力しておるところでございます。  製鉄のほうは若干事情が違いまして、何と申しましても水量が電力に比べて少ないわけでございますので、これはリサイクリングを強化いたしまして、温排水の排水量そのものを減少させるというような方法とか、あるいは総合的な排水路をつくりまして流下距離をなるべく長くいたしまして、その間において温度を下げさせる。いろいろなそういった点の検討を進めておりまして、できるだけ早い時期にその実現もはかっていきたい、かように考えております。
  174. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その深層取水方式が一体どこまできくのかわからないのですけれども、正直言って工場はさらにさらにふえていくと思うのです。その点からもなるべく温度差の少ない水を海に戻さなければならないということが私は原理だと思うのです。この公害問題を考える場合に、一体この熱公害に対してどこが責任をもって当たってくれるのかということになると、非常にあいまいなのじゃないかと思うのです。御存じのように、工場排水法には何度以下のものを出してはいけないとか、何度以上のものを海に戻してはいけない、あるいは川に出してはいけないという規定は全然ないわけです。それから水質保全法にも水域指定が――名古屋港はことし一ぱいで指定されるということでございますが、水質保全法にも熱公害に関するものは全然ない。この辺でまず熱という新たな観点からものを考えるということを入れていかなければいけないのじゃないか。これは経済企画庁になるか通産省になるかわからないのですが、工場排水法の中に熱、つまり何度から何度までのものを流してはいけない、あるいは通常の取り入れた水から何度差くらいのものをもとに戻さなければいけないというようなことを入れなければいけないのじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  175. 西川喬

    ○西川説明員 先生おっしゃいましたように、水温につきましては、従来の体系におきましては規制の方法というものがいまちょっと考えられないような状況でございます。ただやはり問題になりつつあるというようなこともございます。先ほど水産庁長官もおっしゃいましたように、魚類に対する影響というものが正確にはつかみ切れていない。ノリなんかに対しては完全に影響があるということははっきりいたしておりますが、それ以外になると、魚の種類が変わってくるとかいろいろな問題がございます。また規制するにいたしましても、絶対的な温度で規制するのか温度差でやるのか、いろいろな問題がございますが、そのような問題がございまして、いまだ水質の一般的な汚濁と同じような取り扱いをしていいかどうか結論は出ておらないわけでございますけれども、新しい水質汚濁防止法案におきましては、このようなものもいわゆる水の状態として規制し得る道は開いていこうというふうな考え方を持っております。将来におきましては、必要に応じて水温というものに関しても何らかの規制ができるような道は開いていきたい、このように考えております。   〔委員長退席、小山(省)委員長代理着席〕
  176. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま西川審議官も述べられましたけれども、確かに本来熱公害というものに対してまだ十分考え方がなかったと思うのです。これは何も一つの新聞社を宣伝するわけじゃないけれども、一生懸命地元の中日新聞が、三年もかかっていろいろ調べてやった。私、熱公害の実態調査について一つ聞きたいのですが、民間の新聞社が細々とやっているだけで、わが国の政府としてはほとんどやっていないというのが実態ではなかろうかと思うのです。そこで、まず第一に要求したいことは、熱公害に対しての実態調査をする必要があるのじゃないか。いま西川さんも申されましたように、熱い水が出ていくと、それが一体どういう形で地形なりあるいは防潮堤などによって拡散していくのか、これも全然わかっていないわけです。それから魚の回遊に対して、先ほど水産庁の長官は、それほど影響はないのじゃないかというふうに言われたと私はとったのですけれども、あまり熱いものを流せば冷たい魚は来なくなるし、そういう魚の回遊の障害になる温度の障壁というものは一体どんなものであるかということもわかってないし、熱くなると、下にはえている植物が異常に増殖して、航行の障害になるのじゃないか、船に影響があるのじゃないかと思うのです。それから船舶や構築物に付着する汚損生物、あるいは穴をあけるせん孔生物などがふえるのじゃないかということもあるだろうし、それから赤潮の原因にもなるのではないか。それから先ほどノリをあげられましたけれども、温度が下がるほど良質なものができるノリなどに具体的にどういう影響があるだろうか。それから熱交換器なんかにせん孔生物が付着する、あるいはクラゲなんかの影響、こういうものを防ぐために、使用水中に塩素などを混入した場合にはどういうふうになるだろうか。こんなことを簡単にあげただけでもさまざまな熱公害に対しても何ら学界のほうも確固たる考えがないし、政府自体としても熱公害に対して実態調査をやってないということがあると思うのですけれども、これは所轄官庁としては経済企画庁が責任をもってやっていただけるのか、それをお聞きしたいと思うのです。
  177. 西川喬

    ○西川説明員 公共用水域の水質の保全に関しましては企画庁が所管官庁となっておりますが、従来そういうような被害調査というような問題、あるいは温水がどのような回遊をするかというような問題、このような問題につきましては、それぞれの所管のほうでやっていただくのが至当ではないだろうか。ですから、たとえば人の健康関係の問題でございますと厚生省にお願いしている。魚に温水が影響するような問題ということになりますと、やはり専門家でございます水産庁のほうで調査していただくのが至当ではないだろうか。それからまた温水がどのように動いていくだろうかというような問題につきましては、これは温水を出す産業のほうの所管の通産省で現在汚濁物質等につきましては水理模型実験等を使ってやっておるようなケースもございますので、そのような中にも温水の問題を取り入れてやってもらうのが至当ではないだろうか。そういうような結果を踏まえて企画庁としては必要があれば水温に対する規制考えたいというふうな方向に持っていくべきではないだろうか、このように考えております。
  178. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまのお答えでは、所轄官庁としてたとえば熱汚染を中心にこの熱公害というものを実態調査するという場合に――確かに目的自体は、各省各所管で目的があって、いま西川審議官が言われたようなことだと思うのですけれども、熱公害というものの実態を調査して、これがどういうふうに影響があるか。先ほど通産省のほうから述べられましたように、通産省は通産省の立場でいろいろな対策を立てなければいけないと思うのですが、総合的にそういうような実態調査をするということになると、いまのようなやり方ではたしてできるかどうかということを私は非常に疑問に思うのです。それで、水に関することですので、ひとつ経済企画庁が中心となって、たとえばモデルケースとして私が持ってきた名古屋港の熱公害による汚染の問題というものを実態調査をしてもらえないだろうかということを要望したいのですが、いかがでございましょうか。
  179. 西川喬

    ○西川説明員 先ほど申し上げましたようなことで、どこが実施するかという問題は別といたしまして、総合的な観点で推進しなければいけない問題につきましては、これは公害対策本部のほうの問題になろうかとも思いますが、水質のほうの責任を持っております所管官庁といたしまして、対策本部とも相談して、何らかの今後の進め方というものについて検討いたしたいと存じております。   〔小山(省)委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つ経済企画庁にお願いしたいのですけれども、この熱公害に対して、アメリカのある州では、そういう規制法案ができあるいは裁判ざたにもなっているということを私は聞いているわけです。残念ながら日本にはその資料がないので、アメリカから、熱公害に対してどのような規制をしているのか、その法案というか、どのように具体的にやっておるかを資料として取り寄せていただきたいということを委員長、資料要求として出したいわけなんですが、いかがでございましょうか。
  181. 加藤清二

    加藤委員長 ただいま本件に関するアメリカの参考資料の要求がありましたが、それは取り寄せて御提出願えますか。
  182. 西川喬

    ○西川説明員 アメリカの水に対します規制の問題でございますが、これは日本のケースと違いまして各州いろいろなやり方でばらばらになっております。最近だんだん変わりつつあるようでございますが、一般的に多いのは、いわゆる日本で申しますと環境基準と申しますか、これだけをきめておりまして、排水基準のほうはきめてないというケースが多いわけでございます。環境基準に違反した、守られてないというようなケースが起こりますと、それを出したであろうと思われるようなところへ直接告発なり改善を命ずるというようなことで、どうも因果関係的な点につきましてはっきり法律的なあれがない。それで、慣習的に直ちに罰則にいくというような方向が多いようなんでございます。先生のおっしゃいました水温に対する問題もたぶん、いわゆる日本におきますような排水基準というような水質基準がきまっておらないでおっても、温度が高まって被害を生じたからというような形でやったんではないだろうかと思われるわけでございますけれども、そのようなケースになりますと、はたしてどこの州であったかというのはなかなかわからなくなるのではないかと思いますが、できる限り照会いたしまして、もしわかれば資料として御提出いたしたいと思いますが、いま申し上げましたような事情で、必ず熱をはっきり法律の中に取り入れて規制しているというケースではないのではないだろうか、このように推測されますので、調査をしてからにしていただきたいと思います。
  183. 加藤清二

    加藤委員長 それでは、ただいま佐藤観樹君の申し出によるところの資料要求、これもあわせて理事会にはかりまして、相なるべくは佐藤委員の御期待に沿うよう処置したいと存じます。
  184. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま西川さんのほうからお話ありましたように、アメリカでは慣習的に罰則になっているんじゃないかということでございますけれども、おそらく、いままで公害行政を見ている限り、そういうものでは日本では規制できないと私は思うのです。やはりこれは確固たる工場排水法の中で、たとえば取り入れた水の温度差が何度以下でなければいけないというような罰則規定を設けてまでも工場排水法の中で処理しないと、はっきりこれが原因でこうなったんだというふうに言えない限り、日本のいままでの公害行政からではできないと私は思うので、今後考慮していただく場合には、工場排水法の観点からひとつこの問題を考えていただきたいということを要望しておきたいと思います。  もう一つ、最後に水産庁にお伺いしたいのですけれども、私は先月の十月七日に赤潮の問題で非常に地元が困っている、それでぜひとも水産庁が中心となって、赤潮の原因を調べるために可及的すみやかに各県、愛知県、三重県を誘って、実態調査及びその原因の究明のために動いてもらえないかということを要望いたしましたら、私の受け取った範囲ではそのようにいたしますというふうに受け取ったんですが、その場合、私の落ち度であったかもしれませんが、可及的すみやかにというのは一体どのくらいの長さかきめておりませんけれども、やはりこういう緊急を要する問題で一カ月も――私の聞いた範囲では、この一カ月間水産庁が船を出し、伊勢湾、三河湾に調べに来たということはないのですが、その後、私の質問以降水産庁はどのように動いていただいたかを最後に質問しておきたいと思います。
  185. 大和田啓気

    ○大和田説明員 実は、先日の御質問を待たず、十月の八日に水産庁の南西海区研究所と、それから東海区の研究所とが主体になりまして、九州大学あるいは下関の水産大学それから瀬戸内海及び三重、愛知の水産試験場と共同の協議をやりまして、今年における赤潮の発生は私どもとしても相当注目すべきものでございますから、一定の計画に従ってすでに調査を開始したわけでございます。現在までの時点は、御指摘のように県の水産試験場の人がもっぱら伊勢、三河で赤潮の研究をやっておりますけれども、これは私どもの全体としての設計に基づいた調査でございまして、県の水試がやっておりますことにつけ加えて、ごく最近私どもの水産庁の技術者、それから東海区の水産試験場の技術者とが船に乗りまして、自分たちでも調査をやるという計画を持っているわけでございます。これは近々に実現をいたします。
  186. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私もかなり地元の方といろいろ話をしたはずでございますけれども、とにかく、たとえば赤潮の問題なんかは非常にすみやかに動いて原因を究明しないといけない問題でございますので、なお一そう拍車をかけましてやっていただくことを御要望いたしまして、質問を終わりにいたします。
  187. 加藤清二

    加藤委員長 古寺宏君。
  188. 古寺宏

    古寺委員 最初に、大臣がお帰りになりますので、大臣にお伺いをいたしたいと思います。  青森県の八戸市というところがございますが、ここは大気汚染防止の指定地域になっておりますが、最近小中野ぜんそくという病気が発生しておりまして、SO3硫黄酸化物濃度が十ないし十六ミリグラム・パー百平方センチメートル・パー・デー、そういうような実情でございますが、厚生省は八戸市に対して、公害病認定の指定地域に指定していく意向が現在おありかどうか、最初に承りたいと思います。
  189. 内田常雄

    ○内田国務大臣 お尋ね公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法に基づきまして、地域指定の政令厚生省が中心となり、また当該地域都道府県知事意見をも聞いて指定をすることになっておりますが、御承知のように、現在指定地域はたしか水質汚染に伴う疾病に関して三地域大気汚染に関する疾病に関して三地域、合わせて六地域でございまして、八戸市は漏れております。八戸市における公害対策につきましても、もちろん厚生省では承知をいたしておりまして、その汚染状況あるいは被害者の状況などにつきまして、当該県の担当の方面から報告を求めておりますが、現在の時点におきましては、その地域における大気汚染状況、あるいはこれに基づくと考えられる疾病者の存する範囲が、この法律の予定をしておるような地域に比べますとかなり低い段階にあるようでございますので、これまでのところでは指定の準備はいたしておりません。
  190. 古寺宏

    古寺委員 この小中野地区の医師会の住民健診によりますと、気管支ぜんそくと思われる人が大体一八%ぐらい出ておりますので、これは当然指定の条件に当てはまっていると思いますので、今後御検討していただきたいと思います。  次に、公害病に認定をされましても、現在の救済制度でありますと、生活の保障がなされないわけでございます。結局は現行法のワク内でいきますというと、生活保護世帯に転落せざるを得ない。これでは公害病の人をほんとうに救済した形にはならぬと思いますが、今後この生活保障の問題について厚生大臣はどういうふうにお考えになっておられるか承りたいと思います。
  191. 内田常雄

    ○内田国務大臣 問題の法律によりましてカバーをいたしております損失についての特別措置範囲は、古寺先生よく御承知のとおり医療費、医療手当、介護手当、三つだけでございまして、生活保障はこの中に取り入れておりません。これは要するに、その被害に基づく損失補償等の措置が他の民事法、あるいは御承知の今度から動き出すことになります公害紛争処理法等によりましてセツルするまでの間の応急の損失のつなぎ、こういう意味でこの特別措置法ができておりますので、そこでそういう結果になっておると思います。私はそういう場合はすべて訴訟によるべきだとは考えませんで、これは訴訟によりましても、私どももその訴訟は非常に長引く、ことに無過失損失補償制度が確立していない今日におきましては、因果関係がはっきりいたしておりましても過失挙証があげられない限り、なかなかその訴訟がセツルしませんので、それに持っていくことにこれらの気の毒な方々を追い込むつもりは毛頭ございませんが、幸い今度の紛争処理法によりまして、中央処理委員会も発足をいたしましたので、そこで仲裁なり和解なり調停なりという方法によりまして生活保障の問題も迅速に解決されることになることを期待し、またなるだろう、そういうふうな形をぜひ進めてまいりたいと考えております。
  192. 古寺宏

    古寺委員 なるように大臣に特にお願いをしておきたいと思います。  それで時間がございませんので、通産大臣お尋ねをするわけですが、現在青森県のむつ小川原の大規模工業開発が進められておりますが、これに対する公害対策と申しますか、通産省としての公害に対する対策はどういうふうになっているのか、お尋ねしたいと思います。
  193. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 むつ小川原の計画は、まだどう申しますか、地元で土地の手当て等々についての方法をいろいろ考えておられたり、経済企画庁なり私どももときどき御連絡をしながらやっておりますが、まずどのような企業が立地するかというようなこと、あるいはどこに立地をするかというようなことも一つもきまっておりませんので、したがって、具体的にどのような公害対策があるということを申し上げることができません。ただ一般にいわれておりますことは、あのむつ小川原地区の内湾、太平洋側でない内側でございますけれども、ここに企業を立地させることは、内湾をよごすのではないだろうかという問題がございまして、その辺は少し測定をしてみなければならないなというようなことを、せんだっても土地の、知事さんと話をいたしたところでございます。いままだその程度でございます。
  194. 古寺宏

    古寺委員 いままでの政府のいろいろな長期計画というのは経済優先でございましたが、今後は当然人命尊重、住民生活優先の計画でなければならないのですが、いままでのいろいろなそういう計画につきまして、通産省としては公害対策について再検討を始めておられますか。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これからのいわゆる大規模工業地帯の設定につきましては、ただいま申し上げましたように、もう地元でも非常にそういう意識がございまして、私ども当然そういう線で考えておりますが、従来すでに立地をいたしたものにつきましては、今回公害基本法の全面的改正をはじめといたしまして、関係法案の改正を次の国会に御提案を申し上げるつもりでおるわけでございます。
  196. 古寺宏

    古寺委員 今後各企業の公害防除と申しますか、この費用が相当なものになると思いますが、その防除費用が生産コストにはね返ってきた場合に、物価上昇という心配が非常にあるわけでございますが、今後の公害防除費と物価対策関係について、通産大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、承りたいと思います。
  197. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公害防止ということになりますと、国の財政も、また企業の投資も、消費者の支出も、何がしかそれによって影響を受けるということは、おそらく当然避けられないと思いますし、経済成長率にも影響があろうと思います。しかし、私はそれはあっても、生活内容がよくなることでありますから一向に差しつかえないことだと考えておりますが、まずこれが消費者になるべく負担にならないようにという考え方からいたしますと、それはまず国としてどれだけの援助なり助成ができるか、企業の合理化努力によってどれだけそれが吸収できるか、そういうことをやってまいらなければならないと思います。消費者に一切しわを寄せるなということは、私は無理であると思います。
  198. 古寺宏

    古寺委員 それでは経企庁にお伺いをいたしますが、青森県の八戸市の新井田川水域の水質基準の設定が非常におくれております。この水質基準の設定について、今後の見通しを承りたいと思います。
  199. 西川喬

    ○西川説明員 新井田川水域につきましては、先生御承知のように、今年の初めから水質基準の設定につきまして審議を続けてきておりますのですが、現在のところ、あそこにあります汚濁源の大部分は中小、零細企業の水産加工業でございます。この水産加工業の規制値というものにつきまして、どのようなあれをとったらいいかということで、現在その最終的なところに到達しないということで、いま関係各省と鋭意折衝中の段階でございます。できますれば年度内にはどうしても決定いたしたい、このように考えております。
  200. 古寺宏

    古寺委員 水質基準が設定されますというと、新井田川沿岸の水産加工場は処理施設をつくらなければならない、こういうことになるわけでございますが、この対策について水産庁はどういうふうにお考えになっているか承りたいと思います。
  201. 大和田啓気

    ○大和田説明員 新井田川流域に排水をいたします水産加工工場は、大体八十ございます。最近スケトウダラの入荷が相当進んでおりますので、それを材料にしたすり身の工場が主体でございます。それで、私どもこの排水によって相当川がよごれて問題になっておることを承知をいたしておりますので、国といたしまして一つの方法として、八戸を含めて相当大きな水揚げ地、また水産加工が相当盛んなところにつきまして、流通加工センターの建設という事業を計画をいたしておりまして、八戸につきましては四十四年と四十五年度について調査をして、四十六年度から事業化に移れるように、現在予算の要求をいたしておるわけでございます。これによりまして、魚体の共同処理施設が含まれるわけでございます。しかし、それだけでは問題は解決いたしませんので、一つは、現在市中にございます魚かすの製造工場が、浜市川という相当市街から離れたところに移転計画がございますし、また、魚かすの工場ばかりではございませんで、水産加工場につきましても、共同のいわば水産加工団地をつくるという意見が企業の中からも相当わいてきておりますので、私ども、金融その他できるだけのめんどうを見て、多少は時間がかかるかもわかりませんけれども、根本的な解決に当たるつもりで現在検討をいたしておるわけでございます。
  202. 古寺宏

    古寺委員 こういうようないろいろな工場による汚染に対して、漁場の調査と申しますか、水質の調査、こういうことは水産庁といたしましてやっておるわけでございますか。
  203. 大和田啓気

    ○大和田説明員 沿岸漁業、それから内水面漁業等が、相当公害影響を受けておりますので、ここ数年、いろいろな形で調査をやっておりますけれども、ことしの八月に私ども全国に通達を出しまして、漁場の一斉点検といいますか、総点検といいますか、問題のありそうな内水面、それから沿岸の漁場を含めまして、大体二百二十ほどの地点について現在県に委託費を出して調査中でございます。もう少し時間をかけますと、全国の漁場公害の大体の実態がわかるというふうに私ども期待をいたしておるわけでございます。
  204. 古寺宏

    古寺委員 昭和四十二年と昭和四十三年にも海洋の調査が行なわれたようでございますが、これについてはどういうふうになっておりますか。
  205. 大和田啓気

    ○大和田説明員 詳しく申し上げますと、私ども、ここ二、三年、予算措置を講じてやっておりますことは、沿岸及び内水につきまして、公害の進みぐあいを自動的に観測できる装置を県に助成するということが一つでございます。  それから、もう一つは、相当危険だと思われる漁場を、県に委託をして徹底的に調査をいたしまして、そして県と相談をして、どういうふうにその漁場の改善、造成に当たるかということをやっておるわけでございます。  そして事業といたしましては、一つの公共事業といたしまして、今年度から、浅海漁場開発事業という形で、宮城県の松島湾――これは塩釜の問題があるところでございますが、松島湾、それから、静岡県の浜名湖につきまして、数千ヘクタールの相当広い海面につきまして、水産土木技術を使って、みおといいますか、老廃物で相当よごれた内海と外の海の水との交流をよくして、漁場の若返りをはかるという事業をやっておるわけでございまして、これは相当大がかりというようなことで、地点も相当限られるわけでございますけれども、小規模のそういう事業につきましては、第二次の構造改善事業という形で、今年から調査をし、来年から事業で実施いたしますもので、いま申し上げましたような漁場の改良をする。片方では、これは関係各省との協力が必要でございますけれども、水質の汚濁を防止することを進めてもらう、片方では、漁場改良をやるという形で、この問題に取り組んでいくつもりでございます。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  206. 古寺宏

    古寺委員 私が実際にぶつかった問題といたしましては、福島県の小名浜がございます。ここの調査昭和四十三年かになされております。その当時の調査で、シアンが一六PPMも出ておるわけです。そういう事実を知っていながら、水産庁が発表しないために、あそこの漁場というのはもう全くいま絶望の状態になっておるわけですね。ですから、せっかくそういう調査をいたしましても、適切な措置がなされなければ、これは調査をした価値が何もないわけでございます。そういうことがいま実際に八戸市でも起ころうとしているわけです。昨日の新聞によりますというと、経済企画庁は水質審議会に新井田川部会を設置し、水質環境基準に伴うランクづけ作業に取りかかった。水産庁の水産課は「「サケがとれる川にするのと、水産加工場を育てていくのと、どちらが大切か、最近の八戸市は水産加工場でもっている。水産加工場を苦しめるランクづけは必要ない。」と全面的に反対。話は一向に進んでいない。今年中に設定する予定だった新井田川の水質基準も「加工団地や廃水処理施設を県の予算でつくらない限りは応じられない。」と業者べったりの主張を続けているため、一月に開いた第二回新井田川部会以来、同部会は開店休業。「地元の要望があったので、新井田川を浄化するため作業に入ったのだが、こう反対されたのでは法的に無理押しすることはできない。水産庁の考えだけで地元住民の声が生かせないのは残念だ」、経済企画庁は頭をかかえている。」こういうふうに報道されております。  いま八戸市の新井田川の実情を申し上げますというと、ヘドロ、悪臭でこれはたいへんなものでございます。このまま放置するならば、当然私は、第二の田子の浦あるいは洞海湾のようになりかねない、こういうふうに思うわけでございますが、このことについて、水産庁の長官は知っていらっしゃるかどうか、まずお尋ねします。
  207. 大和田啓気

    ○大和田説明員 現在、新井田川の水質につきまして、先ほど西川審議官からお話がありましたような段階で話が進んでおるということも、承知をいたしておりますし、それから、八戸市で水産加工業が相当なウエートを持っておるということも、承知をいたしておりますけれども、水産庁といたしまして、いわば水産加工業者の目前の利益といいますか、それを守ることにきゅうきゅうとして、水質の汚濁の問題に対して正面からそれを改善することを妨げているという事情は、私は承知いたしておりません。これは新聞でどういうふうな報道があるかわかりませんけれども、私ども、別に経済企画庁とこの問題についてけんかをいたしておるわけではございません。協力して、できるだけ早く環境基準あるいは水質基準をきめてもらうように努力をいたしておるわけでございまして、水産庁と申しますのは、別に水産加工庁ではございませんで、まさに水産庁でございますから、それほど個々の事業の利益だけを優先的に考えているということはございません。
  208. 古寺宏

    古寺委員 この新聞に、さらに水産課の勝間弘治課長補佐の談話が載っております。これは「水産加工業者が新井田川の水質基準に反対しないのはおかしい。水質基準を守るためには公共下水道を建設しなければならないが、建設費は八戸市の年間予算に匹敵する。業者は水質基準ができると水産加工団地や公共下水道、廃水処理施設の費用を全額県が負担してくれるものと思っているのではないか。八戸市の加工業者は設備投資し過ぎるくらいしているところでもあり、これ以上公害処理施設にたえ切れないはずだ。」こういう談話が載っております。それで、水産庁の水産課は、どちらかというと、いままで非常に企業サイドに立ったそういう主張をしていらっしゃる。各省庁間のいろいろな連絡等があるそうでございますが、そういうところにおいても水産課は調査に反対する、こういうことを私は承っているわけでございますが、そういう事実を長官は知っていらっしゃいますか。
  209. 大和田啓気

    ○大和田説明員 水産加工を扱う私ども行政官としては、何せ中小企業でございますから、水質基準に対応するために相当な大きな費用がかかって、負担がなかなか困難だという事実はございます。その点を強調することは私はやむを得ないことであろうと思います。しかし、だからといって水産加工業者の立場に立って、およそ水質基準というものの設定、環境基準の設定に反対し、あるいは水をよごしてもいいという立場に水産庁の役人が立つということは、万ないというふうに私は思います。これはそうはっきり申し上げていいわけでございます。
  210. 古寺宏

    古寺委員 そこで、はっきりお伺いしたいことは、水産加工業者が――これは大事でございますよ。水質基準をきめた場合に、その水質基準に合うような処理施設をつくる、対応策を考えてあげるのが私は水産庁の役目だと思う、立場だと思う。また一方では水産加工業者が非常に困るので、沿岸漁民がそのことで全滅してもよろしい、こういう受け取り方を私はしているわけでございますが、現実の問題としていろいろ被害が発生をいたしております。先ほど申し上げましたように小名浜の例を見ても、あるいは気仙沼、塩釜、秋田港、いろんなところを視察してまいりましても、どの地域においても、漁民は、水産庁の公害行政というのは非常におくれておる、こういうことを異口同音に申しております。こういう面からいって、いわゆる加工業者の側を主体にして今後公害対策を進めるのか、それとも沿岸漁民あるいは内水面漁業をやっている方々を守る立場で水産庁は今後の対策を進めていかれるのか。その点についてきょうははっきりお伺いしたいと思います。
  211. 大和田啓気

    ○大和田説明員 私ども立場といたしましては、当然漁業を公害から守るという、それが基本的な立場でございます。漁業を公害から守るための一つの企業といたしまして水産加工業があるわけでございまして、これを水産庁が所管をしておりますから、あんまり無理なといいますか、やって不可能なことをしいることはなかなか困難だということは、水産加工業が中小企業であることから御了解いただきたいと思います。しかし、中小企業だからといってテンポの問題がある、あるいは国がどういう形でこれに応援するかという問題があるわけでございますけれども、中小企業だからといって水をよごしてもいいということにはならないわけで、その辺のけじめは私ども水産課の連中も承知しておりますし、もし誤解を与えるようなことがあるようでございますれば、私は十分注意をいたしたいと思います。
  212. 古寺宏

    古寺委員 長官はよく御存じでないようでございますので、水産課長がおいでになっていると思いますが、水産課長は八戸市の水質基準設定の問題についてどういうお考えを持っていらっしゃるか、承りたいと思います。
  213. 三善正雄

    ○三善説明員 ただいま長官お答えいたしましたとおり、われわれといたしましても、中小企業の弱いところ、弱いところは弱いところといたしまして、やはりよごしたものは自分できれいにするのが常識でございますので、その線に沿いまして指導しているところでございます。
  214. 古寺宏

    古寺委員 私がお聞きしたいのは、その水質基準の設定について水産課長は反対しておられるのかどうか。
  215. 三善正雄

    ○三善説明員 反対はしておりません。経済企画庁と協議の上、なるべく早くこれを設定するように心がけておる次第でございます。
  216. 古寺宏

    古寺委員 それでは時間がないので、最後に一問質問しますけれども、松島湾、塩釜湾、御承知でございますね。これは非常にノリとか沿岸漁業が被害を受けております。あるいは宮古湾はカドミウムによってカキが汚染されております。小名浜もそうでございます。あるいは八戸、あるいは秋田港はパルプの廃液とか、いろいろな公害汚染されております。今後こういう農薬や洗剤を含んだ廃液によって、ますます海洋が汚染されてくるわけでございますが、現在までの調査の実態を見ますと、各県の水産課のほうに委託をしていろいろ調査をやっておるようでございますが、こういうような取り組み方では、私は、漁場の保護と申しますか、あるいは沿岸漁業の振興ということはでき得ないことだと思う。今後こういう公害に対して水産庁は、漁場保護、沿岸漁業振興の立場からどういう対策を進めるお考えであるか、その点を承りたい。
  217. 大和田啓気

    ○大和田説明員 先ほど申し上げましたように、近く全漁場の総点検の結果もまとまりますので、それに基づきまして、これは水産庁だけでできないことが相当たくさんあるわけでございますから、特に汚染源を断つということが何といっても最初の仕事であろうと思いますので、その点につきましては、十分関係各省の御協力を仰がなければならないわけでございますが、それと並行いたしまして、漁場の改良あるいは開発等につきましては、相当大規模の国の投資をして沿岸漁業の振興に当たるつもりでございます。
  218. 古寺宏

    古寺委員 この八戸市の場合には、県のほうでも水質基準を県条例できめておりまして、これは県のほうでは大体BOD七〇PPM、ただし当分の間は一二〇PPM、そうして罰則規定まで設けてあるわけでございますが、現在この加工場から出ている廃液は三〇〇〇PPMでございます。こういうことは、今後県知事にこういう公害行政措置権限委譲した場合に同じようなケースが発生するのじゃないかということが非常に心配なのでございますが、きょうは公害対策本部長がお帰りでございますので、対策本部のほうからこういう点についてどういう見解をお持ちになっておるか承っておきたいと思います。
  219. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私どもといたしましては、権限地方委譲につきましては、さきにきまりました閣僚会議の線に沿いまして、極力都道府県知事、あるいは場合によりましては政令市長等に権限を委譲してまいりたい、こう考えておるわけでございます。この権限委譲にはいろいろな段階がございますが、特に規制基準関係、それから取り締まり権限関係、この点はできるだけ委譲いたしまして、住民の身近なところで取り締まりなり基準の設定ができるようにしていく、こういうことを考えておるわけでございます。もちろんそのため国が全面的にやる場合と比べていろいろ利害得失あろうかと思いますが、それが今後公害行政を軌道に乗っけていく一つの一番大きな原動力になろう、こう確信しておるわけでございます。
  220. 古寺宏

    古寺委員 時間がないので、最後に一問お願いしたいのですが、今度土壌汚染の防止法ができるようでございますが、これに対するいわゆる基準の設定あるいは調査対策というもの、どういうような基本的な考えで現在検討されているか、農林省から承りたいと思います。
  221. 中野和仁

    ○中野説明員 今回公害基本法の中に、典型公害といたしまして土壌汚染というのを入れるという方向で、ただいま政府のほうで検討されておるわけでございます。それに基づきまして、土壌の、特に農薬についての土壌の汚染についての実施法といいましょうか、それをつくるということは目下検討をいたしております。まだ政府部内で成案を得ておりませんので、的確なことは申せないわけでございますけれども、いまお尋ねのその土壌汚染の防止法を考える場合の基準といたしましては、カドミウムあるいは銅、亜鉛その他の重金属類が一般にございますが、これが一般に農地の中に自然に入っております。それのほかに工場、金属鉱山等での排水、あるいは大気汚染ということになってまいりますが、それとの関係、それからもう一つは、そういう土壌に入りました重金属が農作物中に吸われまして、そこに含有いたしまして人の健康を害するに至る、あるいは農作物の被害を発生させるという問題がありますので、その点の関係をずっと科学的に詰めました上で基準を設定すべきではないかというふうに考えております。  そういう基準がもしできますれば、現在すでにその基準をオーバーしているような汚染地域もございますが、これに対する対策が必要だというふうに次になってまいるわけでございます。これにつきましては、地域の実態によりまして、非常に対策が区々だと思っております。場所によりましては、単にそこの土壌を石灰とまぜまして改良するだけでいい場合もございましょうし、あるいはそこの土を排土いたしまして客土する必要があるんだろう。また土地改良といたしまして、もはや汚染された水の流れてくる水源を転換をいたしまして、新しい水路をつくる、あるいは沈でん池を設ける、そういうような対策が必要ではないかというふうに考えておりまして、現在成案を得るべく努力をしておるところでございます。
  222. 古寺宏

    古寺委員 では、時間ですから終わります。
  223. 島本虎三

    ○島本委員長代理 西田八郎君。
  224. 西田八郎

    ○西田委員 十月七日の委員会質問をしたんですけれども、どうも内田厚生大臣並びに山中総務長官のうまい答弁で、何かすっきりしない間に終わっておるわけですが、あらためて聞きたいんですけれども、水質、大気、その他の環境基準をきめられるについて、その基準を決定をするときの基礎的な要件というのを何に置いておられるのか、ひとつそれをまず第一番にお答え願いたいと思います。
  225. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 お答えいたします。ただいままでに環境基準硫黄酸化物、一酸化炭素、それから水と三つつくられておりまして、前の二つは人の健康にかかわるもの、それから水につきましては、人の健康と生活環境と、それぞれ区別してつくっております。前の二つは私どもが所管しております生活環境審議会の答申がいわばたたき台になって、それを関係各省で折衝の後閣議決定に持ち込んでおる関係上、特に硫黄酸化物、最初の環境基準でありますので、これについて申し上げますと、基本的には人の健康にかかわる環境基準でございますから、健康にもちろん影響を及ぼさないというのが基本でございまして、答申にも書いてございますように、「環境基準は人の健康の保護を第一義的な要請とし」云々ということになっております。それで、具体的には一定の閾濃度という考え方を取り入れまして、閾濃度というのは、これまでの疫学的調査研究によってその濃度以下では住民の健康に影響を及ぼしていると推定される事実が証明されない最大汚染水準についての尺度、それを基礎にいたしまして、これはこの審議会の専門委員会で具体的な数字を検討するわけですけれども、その数字を大部分そのまま尺度といたしまして環境基準の具体的数値をきめるわけでございます。
  226. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると人の健康を害さない範囲ということになる閾濃度ということになると、局限された地域ということになりますね。――におけるいわゆる濃度というふうに解釈していいわけですか。そうすると、それが広がっていけば広がっていくその地域地域でまたあらためて指定するなり、あるいは測定するなりという方法でやられるのですか。
  227. 山本宣正

    山本説明員 私からお答えいたします。  閾ということばは、地域ということではございませんで、生理的な反応の限界の閾という意味のことばでございます。したがいまして、もう少し具体的に申し上げますと、生理的な刺激を与えまして、その範囲内では反応が起こらないというその限界を、閾ということばを使っております。
  228. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、そういう閾という考え方で、そのことを、基準を決定していくとするならば、その決定する基準というのがそう再々変更されるべきものであってはならないわけですね。最初に決定すればその決定はそのままで未来永劫といえば若干問題があるかもわからないけれども、少なくとも人間にそれに対する抵抗力なり、あるいは耐性というものが次第にできてくるということによって、多少の限界というものは伸縮されると思うのです。とするなら、たとえば水質基準をきめる場合に、その四十二年ですかにきめられた基準から、さらに四十五年にあらためて基準がきめられ直しておる。ことし四月に新しい水質基準ができましたね。一体そういう水質基準が変わっていくというのはどういうことなんですか。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  229. 西川喬

    ○西川説明員 先ほど環境基準の設定につきまして厚生省のほうから答弁がございましたが、水質に関しましては経済企画庁のほうで所管いたしておりますので、その分を補足させていただきたいと思います。  水質基準につきましては、現在の健康項目に関する分と生活環境項目に関する分、両方を決定いたしております。  健康項目に関します分につきましては、これはそれぞれの物質のいわゆる人体に与える影響の許容限度と申しますか、急性毒性、慢性毒性に応じましてそれぞれ安全度を考えまして、それでそれぞれの物質につきまして濃度をきめております。これは人の健康にかかわります分でございますから、全国一律ということで環境基準を決定いたしております。  生活環境のほうにかかわります分につきましては、これは水域のそれぞれの利用目的というのがございます。この利用目的を阻害しないというような観点から、水域そのものは利用目的は非常に多種多様でございます。でございますからそれぞれの水域にどのような環境基準を当てはめたら、きめたらいいかという問題でございまして、一応基本線といたしましてはそれぞれの利用目的にちなみましての目的別の要望水質というものがあるわけでございます。農業用水といたしましてはこのような水質、工業用水としてはこのような水質、水道の原水といたしましてはこのような水質というようなそれぞれの水質の要望があるわけでございます。そのようなものを基本といたしまして、これを最大公約数的に類型化いたしまして、それぞれの水域の利用目的というものを考えながら当てはめていこうというようなことで、基本方針といたしまして、たとえば河川につきましては六類型、湖沼につきましては四類型、海域につきましては三類型というもので一般的な行政の指標をあらわします数値についての類型ごとにそれぞれの数値をきめたわけでございます。それで個々の水域につきましては、そこの当該水域の現在の利用目的並びに将来の利用目的等も勘案いたしまして、どの類型に当てはめたらいいかということで個々の水域を決定していくというような形をとっておるわけでございます。  第二の先ほど先生の御質問になりました基準値が変わるのかどうかという問題でありますが、水質の問題につきましては、人の健康その他に関しますことにつきましては、基本的な条件と申しますか、現在疫学的見地からはっきりしているというようなことから決定しているわけでございますけれども、さらに知見が進みまして、そのような知識がまた進みまして、いろいろな点が明らかになってきました場合には、その数字も変わり得ることはあり得る、それから項目的にも追加されることはあり得る、このように考えておるわけでございます。  それで、さらに第三点のあれとして御質問がございました、基準値が変わったのではないかということでございますが、環境基準につきましては、この四十五年の四月、五月にかけまして閣議決定をいたしまして、さらに九月に当てはめ行為をいたしまして、これ一度きりでございます。従来きめておりましたのは各工場事業場等から出てきております排水の水質でございまして、流水なりあるいは海水の環境基準というものは従来決定いたしておりませんでした。いままで水質保全法できめてきておりましたのは排水の基準でございます。そういうことでございまして、環境基準そのものはまだ変更したことはございません。
  230. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、流水等の基準がきまったこと自体非常におそいといわざるを得ぬので、これは全く政府に対してふんまんやる方ないという気持ちになるわけでございますけれども、この利用目的別にきめていくことになると、多目的に使われるものは一体どうなるんだということになるわけですれ。いまのお話を聞いておると、目的別にいろいろ総合勘案してきめるのだ、こういうことになるわけですか。私の場合に再三琵琶湖のことを言うわけでございますけれども、琵琶湖なんかは農業用水にも使われれば、農業排水も入ってくる、工業用水にも使われれば、工業排水も入ってくる、上水道用水にも使われれば、今度その水道の家庭排水も流れ込んでくるわけでございます。この場合の水質というものは、どういう基準をとって、どうきめていくのか、しかも、それが宇治川を経て淀川へいって、そして大阪の工業用水となり、上水道用水にもなるわけです。一体この水質を何に当てるのか、私はよほどきれいにしておいても、たとえば一つの利根川なら利根川の例をとってみても、一番上流と下流とではランクが違いますね。AからBというふうに分かれておると思うんです。そういうふうに分かれていくと、一番最後の大阪で使う場合の基準になるのか、それとも琵琶湖を放水するときの基準になるのか、非常にむずかしい問題になってくると思いますが、その辺はどういうふうに……。
  231. 西川喬

    ○西川説明員 利用目的別と申しましたのは、それらの数値を勘案いたしまして、類型値をきめたわけでございます。それで、その類型に対しましては、利用目的の適応性というのをきめてございます。たとえばそのAランクということになりますと、水道の二級と申しますか、いわゆる中処理程度の浄水処理をするような水道の原水としてはよろしい。それから、水産一級としてもよろしい、それから水浴にもだいじょうぶ、そういうことがAランクではだいじょうぶです。それで、それ以外の目的には、それから下のBランク、Cランク、Dランク、Eランクの目的には、もちろんAランクでございますから十分適応いたします。そういたしますと、現在のこの水域をどこに当てはめるかというようなこと、その場合に、水道二級の取水口がありましたら、当然Aランクにしなければいけないということになるわけでございます。しかし、その水道二級の取水口もない、水産一級にも該当しないで、水産二級でもいいんだ、あるいはその下のものでもいいんだということになりましても現在の水質がAであれば、当然今後よごさない、その水質を維持しようということでA類型に当てはめるということが、すなわちA類型にいたしましてもそれから下の目的には全部適応するのだということでございますから、現状がその利用目的にかなっているような水域につきましては、当然現状水質を維持するように考える。それから現状が利用目的にかなっていないような水域につきましては、その利用目的にかなうまで上げよう、そういうことで、いわゆる生活環境項目にかかわりましては達成期間というものが出てくるわけでございます。  ですから、具体的に先生が例にあげました淀川等につきましては、一番の最下流までではございませんけれども、長柄のところに上水道の取水口がございます。そういたしますと、上水道といたしましては高級浄水をいたしましてもBランクということになっておりますから、長柄のせきまでは絶対にB類型を確保しなければいけない。それから下になりますと、すでに利用目的がなくなりますから、目的としては環境の保全だけである、環境保全ではEランクまで、最低のランクは環境保全だけの目的に適する、工業用水の三級というのもございますが、そういうことになっておるわけでございます。少なくとも長柄のところまではBを確保しなければいけないということになりまして、長柄まではBだ。そういたしますならば、長柄をBとして確保するためには、その途中の淀川につきましての中流、上流というようなところは、一方におきましては汚濁源も入っている。さらに自然の浄化作用もあるわけでございます。それらのことを勘案しながら、さらにその途中におきまして利用目的がありましたらそれに合致させなければいけませんが、大体一般的なあれといたしましては、一番最下流が一番類型値としてはランクが低くなるでしょうし、中流、上流といくに従ってランクが高くなる、たまたま中途の一部に相当大きな汚濁源等がありまして、利用目的上支障がなければ、一部のところがランクがちょっと下がって、またその下流にいきまして自然浄化でよくなりましたら、あるいは支川が合流して流量がふえてくればランクが上がるというようなことで、途中でランクが逆転しているようなこともございますけれども、一般的には一番下流から中流、上流にいくに従って大体類型値は上がってきている、そういう環境を確保するように今後保全行政を行なっていく、こういうことになっています。
  232. 西田八郎

    ○西田委員 そこで、保全行政ということが出たわけですけれども、現在各河川で、四十九の水域についての指定がなされておりますね。その指定水域についてのいわゆる水質は、定められておる基準が守られておるかどうか、これはどうなんですか。
  233. 西川喬

    ○西川説明員 いま先生がおっしゃいましたのは、排水基準環境基準か、どちらかちょっとはっきりいたさないのでございますけれども環境基準はつい九月に当てはめをやったわけでございます。それまでも水質基準をきめますときには、いわゆる流水の目標水質というのは考えておりました。それを考えておりましたが、正式にオーソライズされたのはこの九月、閣議決定を見たところでございます。ですから、現在この環境基準そのものは完全には守られておりません。そのためにこの環境基準を維持達成するための達成期間というものが必要になっているわけです。当初指定水域にいたしましたときには、想定目標値を考えまして排水基準のほうをきめておるわけです。ですから、排水基準が守られておれば、当然環境基準は守られているのではないか、こういうことになるわけでございますが、実態上はその後の都市化等の影響がございまして、それぞれの企業におきましては排水基準を穿っておる、しかしながら、環境基準は必ずしも達成されていない、維持されていないというような水域が多くなっております。それらの水域につきましては、現在見直し調査環境基準達成のために排水規制を強化しなければいけないというような水域につきましての見直し調査もやっております。それから、これが個々の企業の問題よりも、排水規制になじみません一般家庭の汚水がどんどんふえていったために、環境基準が守られないというようなところにつきましては、下水道の整備を促進してこの環境基準を達成するようにしなければならぬ、このようなことでございまして、排水規制の強化あるいは下水道の整備等の諸般の施策を講じまして、今後この環境基準を維持するように努力してまいろう、こういうことになっているわけでございます。
  234. 西田八郎

    ○西田委員 いま聞いておると、水政というか、水資源保護の行政というものがいままで全くなかったのと一緒なんですね。ただ排水基準がきめられておって守られておるだろうということなんです。それが守られていなければもう一回見直し調査をしなければならぬというようなことから、あっちこっちの海がよごれたり、あるいは問題を起こしたりしておるわけです。工場排水その他について、指定水域及び水質基準の設定というものがもうすでにきめられておるわけなんですね。だから、それを守っておればこういう問題は起こらなかった。それが守られてないからだんだんよごれてくる。一体それに対してどういう処置がとられてきたのか。何か九月に環境基準をきめて、それで健康項目を全国一律にやって、そして利用目的別に水域をきめてその基準をつくってそれを守らしていくのだ。これはいまからやるわけですね。いままでにそれ以上によごれているものが現在問題になってきておるわけであります。そこで、先日の委員会でも質問した、家庭用排水というものが非常によごしてきている。それは下水道で処理しよう。下水道は何年かかるんだといったら、これから五カ年計画だ。それは息の長い話になるわけです。その間どんどん水がよごれる一方で、これに対して抜本的にどういうふうに処置をしようとされるのか。これはほんとうにむずかしい問題だと思うのです。五年間、下水道といっても、全部の下水にはならないと思うのです。いま政府が考えておられることは、おそらく率にすれば五〇%から六〇%まで引き上げる程度のことしかできないのではないか。そうすれば、そのあとの部分は十年先ということになるわけです。今日都会でもいなかでも使うものは同じように、洗剤なりというものは使うわけです。そうしたものは一体どうするのだという問題も出てくるわけです。それらについて一体どういうふうにされるのか。これはもしも何なら厚生省なり、あるいは経済企画庁なりで、家庭用の水を浄化するような簡単なものをつくって、緊急にそれででも、せめて家庭用排水でもきれいにしようとか何とか、そういう対策を立てなければできないのじゃないですか。
  235. 西川喬

    ○西川説明員 先生排水基準が守られてないとおっしゃいましたのですが、排水基準は守られているわけでございます。環境基準はほかの要件が入りまして、もちろん工場もふえてきた。そうしますと、もちろん工場は排水基準を守っているわけでございますけれども、汚水の総量がふえてくる。それから一般家庭の都市化によりまして人口が集中してきまして、一般家庭の汚水量もふえてくる。そのようなことから、環境基準が予定どおりのものにいっていなかったということでございまして、指定水域につきまして、水域を指定して基準を設定したあと排水の基準が守られてないということではないわけでございます。やはり都市化の進展というものが問題でございます。ですから一般的に申しますと、指定水域になりましたところは汚濁の進行はようやく食いとめているというのが従来の状況で、もちろん隅田川のように、もうすでに汚濁の増加というものが考えられないようなところは、下水道の整備によりましてだんだんよくなりつつあります。少しずつ好転しつつあります。ほかのところは、やっと食いとめているというような状況なんです。  そこで、問題となっておりますのは、現在の指定水域制度では、よごれが問題になったというところを追っかけ追っかけで指定して基準をきめているというような状況で、現行法ではそういう状況でございましたので、いま検討中の新しい法律におきましては、あとを追っかけるのではなしに、どうしても公共用水域に汚水を流すものは、少なくともこれだけの基準にして流さなければいけないというシビルミニマム的な基準全国一律にかけてしまいます。ですから、いままでのような、指定水域でなければたれ流しでいいんだというようなことは絶対なくすということで、まずそれをスタートといたしまして、それでそのような一律基準をもってしては環境の維持ができないと認められるところについては、上乗せ基準地方都道府県知事がつくるということで、水域を限って、よりきびしい基準規制をするというような方向で、いままでの後手後手となったような規制を改善したいというふうに考えておるわけでございます。
  236. 西田八郎

    ○西田委員 これはどえらい自信をもって、排水基準は絶対守られているという御答弁だったのですが、排水基準が守られておったらこんな問題は起こってこないし、逆にそういう排水基準を設けていて、それが守られているにもかかわらず、河川あるいは流入する海がよごれてくるということは、そうするとこれは政府の責任ですか。それは最初からの勘定違いですか。どういうことなんですか。
  237. 西川喬

    ○西川説明員 先ほど申し上げましたように、排水基準が設定されているのが、過去を振り返ってみますと、なかなか追いつかなかったということ、あるいは公害意識の定着の問題がございますが、田子の浦等についても問題になったわけでございますけれども、やはり経済企画庁といたしましては加害産業と被害産業、加害者側と被害者側の調整を行なって排水規制を行なうという調整機関として経済企画庁が所管しておるわけでございますけれども公害意識の定着がなかった時代には、加害側と被害側の食い違いが多くてなかなか話がつかないというようなケースが多かったわけでございます。そのために排水基準ができなかったということ、これが先ほど申し上げましたようにあと追い行政になったというようなことで、まことにその点は所管しておりました経済企画庁としては遺憾であったと申さざるを得ないと思います。  それで現在はそれに非常に努力をいたしまして、ここ一、二年の間に水域数が倍以上になっております。現在五十七水域でございますが、これが一年前まではたしか三十数水域しかなかったというような状況でございまして、非常に努力はいたしておるのでございますけれども、実際の処理能力等から見まして、一ぺんにそう指定水域をふやすことはできないというような問題もございまして、新法をつくりまして、全国一律のシビルミニマムとしての基準をかけて規制を行なえるようにしよう、このように新しい方向考えておる次第でございます。
  238. 西田八郎

    ○西田委員 最後におっしゃったように、それは水域を指定するとか、あるいは指定水域ではこれを守らせるというようなことでは、もうこの問題は解決しないと思うのです。ですから、やはり全国統一的な基準をきめて、これ以上はもうよごしたらいけないのだ、それをよごすような企業は、もう操業も停止しろというくらいの姿勢で臨まなければできないと思います。これは先日の山中長官答弁の中にも、そういう姿勢でいきたいということでありましたし、いずれ公害臨時国会も開かれるわけでありますから、そのときにぜひ政府その他の姿勢というものを見せていただきたいと思いますけれども、厳重にやっていただかなければならない問題ではないかというふうに思います。  そこで、国鉄関係の方はお見えになっておりますか。――もう時間がないので簡単に聞きますけれども、国鉄は新幹線を走らせて非常に調子がいいようなんですけれども、全体的には赤字だということで困っておられますが、新幹線はにこにこだということですが、そのために非常に害をこうむっておる人がたくさんおるわけです。たとえば振動のためにたなから茶わんが落ちて割れた。そしてぴゅうっと走る騒音のために寝られない。子供が非常に神経質になる。また学校の勉強のじゃまになるという問題があります。そしてパンタグラフのショートのために、テレビなんかが全く見られない。これは答弁の中に、防止器をつければいいとおっしゃるかもしれませんけれども、しかし防止器をつけるためには金が要るわけであります。普通ならきれいに見えるテレビが、全く用をなさないようになってきたというような問題も出てきておるわけであります。これはやはり一つの公害ではなかろうかと私は思うのです。国鉄にとっては幸いだろうと思いますが、公害対策基本法の中には、騒音も振動も入っているわけですけれども、乗りものの騒音、振動というのは騒音規制法で除外されておるように私は思うのです。もし規制されていたら、そういうことを認めておることが悪いので、そういう被害の出ている部分については、これはいま私がここで申し上げるだけではなしに、いままで相当問題が起こっていると思うのです。そういう対策をどうしてこられたか。将来どうする方針であるのか聞かせていただきたい。
  239. 村山煕

    ○村山説明員 ただいま先生の御指摘のとおり、騒音規制法の中には、鉄道という交通機関はいまのところは対象に入っておりません。しかしながら、国鉄といたしましては、規制法の中に入っていないからほっといていいんだということでは決してありません。三十九年のオリンピックの年に新幹線を初めて開業いたしましたのですが、新幹線をつくります当初からできるだけそういうことも考慮に入れて実は設計をしてまいってきております。たとえば例を申し上げますと、レールにいたしましても、普通の在来線でございますと二十五メートルおきに継ぎ目がございまして、そういうところでがたんがたんという音が非常に大きいわけでございます。しかしながら、新幹線では全部溶接をいたしまして、長いレールにしておきます。あるいはそのレールの下にコンクリートのまくら木がございますけれども、そのレールとまくら木の間にはゴムのパッドを入れまして、それをバネで押えるというようなこともいたしております。できるだけそういう騒音が少ないようにという配慮は実はしてまいったわけでございます。それから、なおかつそれでも音が出ますので、線路の両側に壁をできるだけつくりまして、その出ました音が拡散しないようにというような努力を極力してきてまいっております。しかしながら、御指摘のように、開業以来やはり沿線各所で、そういう騒音の問題でありますとか、振動の問題でありますとか、いろいろと苦情が出ておることもわれわれよく承知しております。したがいまして、建設のときにそういうことでつくったからそれでいいんだということでありませんで、ただいまも技術研究所その他総力をあげまして、そういう騒音をいかにして減らすかというようなことについて研究も続けてきております。それから開業後も、いま先生の御指摘のございましたような、学校でありますとか、あるいは病院でありますとか、そういうすぐ近くを新幹線が通っておりますようなところには、高さ二メートル程度の壁を設けまして、それでできるだけ音を小さくするというような努力を、現在の技術でできる範囲のことを極力やってまいっておるわけでございます。  それからなお、岡山までの新幹線あるいは博多までの山陽新幹線と伸びてまいりますけれども、これは東海道をつくりましたときの反省点といいますか、あるいは日進月歩いたします技術進歩ということもございますが、従来使っておりました鉄げたが非常に音が大きいわけでございます。そういう鉄げたを、山陽新幹線におきましては鉄を使わないで、全部コンクリートのけたにするというようなことをいたしまして、そういう点も極力音が出ませんように配慮しております。そういうことで、音につきましてはできる限りの努力をしておるつもりでございます。  それからテレビの障害の問題でございます。これも実は三十九年の開業当初にテレビの障害があるということで、NHKのほうとも十分御相談申し上げまして、NHKのほうでいろいろと開業当初に対策をとっていただいております。なおかつ、開業後にテレビの障害でいろいろ問題も出ておりますので、そういう点につきましてもNHKといろいろ相談をして、何とかうまい解決方法をということで努力をいたしておるところでございます。
  240. 西田八郎

    ○西田委員 それは東海道新幹線ができた当時といまとは全然頻度が違うわけです。「ひかり号」が十二両編成から十六両編成に変わっておるわけですね。ですから騒音、振動その他当初計画されたときと相当変わってきていると思うのです。そのためにまた被害もふえてきている。ですから、そういう点について今後十分研究をされるということですけれども、現在起こっている問題に十分対処するようにお願いをしておきたいと思います。  なお、騒音あるいは振動の規制について、今後改正さるべき公害基本法の中に含めるかどうか。現在入っていますけれども、鉄道その他の騒音、振動等、自動車の騒音もあるようですけれども、そういうものも含んで規制をする意思があるかないか、これを最後に聞いて終わりにしたいと思います。
  241. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 先生御承知のように、現在の騒音規制法は、工場騒音と建設騒音ということで、内容が必ずしも十分でございませんので、いろいろ問題はございますけれども、今回の改正法においては、少なくとも自動車につきましてはぜひ織り込みたいという方向関係各省といま協議いたしているところでございます。
  242. 西田八郎

    ○西田委員 自動車だけですか、鉄道のほうは。
  243. 曾根田郁夫

    ○曾根田説明員 実は、騒音につきましては、環境基準――近々生活環境審議会の答申が得られる運びになろうかと思いますけれども、その環境基準の答申案の中でも時間的制約もございまして、とりあえず自動車等は、交通騒音という形で取り入れるにとどまっておりまして、御指摘の新幹線等の騒音につきましては、なお引き続き検討するという情勢でございます。そのようなことでございますので、法律改正も将来はもちろん問題でございますが、今回の改正は交通騒音という程度にとどまるのではないかと思います。
  244. 西田八郎

    ○西田委員 それでは、そういう弱腰でなしにもっと強い姿勢で、とにかく国民生活環境を自然に返すといいますか、そういう考え方で対処していただきたいということを要望いたして終わります。
  245. 加藤清二

    加藤委員長 次は、寺前巖君。
  246. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣がだれもおらぬのでやりにくくてしようがないのですが、いよいよ臨時国会も云云されてきておるわけですが、公害基本法がすでに制定されていながら、外国の代表が来ると、公害というのはひどいものだということを見せつけられたと言われたり、あるいはいまさらのごとく公害を論じなければならない。明らかにこれは企業自身が法的にも保障を受けて私たちの住んでいる社会を破壊した、これは重大な政治的な責任もあるというふうに私は思います。そういう意味で、私たちがいま国民に対する責任をとらなければならないという問題についていうならば、ここで私どもが良好な環境の中で、健康で安全、快適な生活を営むことは、国民の基本的権利である。こういうことをしっかり政府機関が腹に据え、そして将来にわたって人間の生存条件を破壊から守る、それは後の世代に対するところの義務である、こういう強い決意のもとにいま臨時国会公害問題で対処するという姿勢をもって準備をしておられるのかどうか、ちょっと聞きたいと思うのです。
  247. 城戸謙次

    ○城戸説明員 今度の臨時国会に際しましては、私どもとしましては公害対策基本法の改正をはじめとしまして、できるだけの改正法律あるいは新規の立法を含めまして提案をいたし御審議をいただきたいと思っているわけでございまして、今後公害問題がすみやかに解決しますよう、あらゆる面におきましての十分なる研究の成果を、このそれぞれの立法に含めて提案いたしたいと思っているわけでございます。
  248. 寺前巖

    ○寺前委員 私の言っていることに答弁してくれなければ困るよ。一度公害基本法というのをつくったのが、いままた問題になる、しかもその公害基本法の中で、いわゆる経済調和条項というのが重大な問題だ。一番基本問題が国民的に追及されてきている。だから、そのところを十分に深く反省するという立場に立つならば、再び同じようなあやまちをおかしてはならないという立場に立って、良好な環境の中で健康で安全、快適な生活を営むということが国民の基本的権利だということを、しっかり踏んまえるのか踏んまえないのか。それから、人間の生存条件を破壊から守ることが後の世代に対する義務である、そういう立場をとろうというのか。そんなことはどうでもいい、ともかく当面問題になっているところだけを処理するというのか。その基本的な――いま臨時国会が予定されている。これにどう対処していこうとしておられるのか、そこを聞きたいというのです。
  249. 城戸謙次

    ○城戸説明員 この点は朝から、大臣からも御答弁申し上げておりますように、基本法を改正し関係法律を御提案します以上、特に基本法につきましては、今後数年たったらまた変えなければいかぬ、こういう事態になりませんよう、いま先生御指摘の点を十分踏まえて提案をいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  250. 寺前巖

    ○寺前委員 だから、踏まえられた法案の内容についてはまた次回にするとして、それでは、そういう立場を尊重するというのだったら、こういうのをどういうふうに考えているのか。何といっても大事なことは、発生源そのものを押える、それからもしも発生源が不備な状況のもとにおいて悪いことをした場合には、罪を与える、きびしい態度をとれ、操業停止をしろという意見は、各方面から出たわけですけれども、私はきょうは違う面から一、二聞いてみたいと思うわけです。  十一月に入って、東京都が公害防止月間で、この間うちから自動車の排気ガスの一斉点検をやっているようです。そこで、警視庁がその一斉点検をやっている中で、一酸化炭素の濃度基準を五・五%以上の車に警告をするというやり方をとった。これは運輸省の省令に基づくところのものだ。都のほうは公害防止条例を持っている。それによると、五%だ。そこで問題になってくるのは、都のほうが先に公害防止条例で五%という基準を持っていながら、運輸省が後ほど新たな基準をつくる。その場合に、自動車の一斉点検をやる権限を持っている警視庁が、その地域知事の持っている権限、それによるところの条例を尊重せずに、国の基準でやる、こういうことが起こっているわけです。この問題について一体どう考えるのだろうか。それぞれの地域にはそれぞれの自治体の長がおる。そういう自治体の長が、ほんとうに今日国民生活環境を守るために一生懸命仕事をしている。その仕事にこたえるように、法律的にも、あるいは行政執行面においても仕事をしなければならぬと思うのだけれども、私は法律を論議する前に、現在東京都で起こっているこういうばらばらの規制の場合に、公害対策本部としては、その場合に知事国民に対して責任を持っているこのやり方を尊重させるために警察も仕事をしてくれというのか、いや、もう知事のほうのやつはよろしい、国の基準のほうでやれというのか、どっちの立場をとるのがいいというふうに考えておるのですか。
  251. 城戸謙次

    ○城戸説明員 法律と条例の関係につきましては先般来いろいろと問題は提起されておりまして、私ども今回の法律改正をします場合にも、法律と条例との関係につきまして今後問題を生じないように整理してまいりたいというぐあいに考えておるわけでございます。したがって、大気汚染防止法にしろその他の法律にいたしましても、それぞれ法律と条例との関係を明示いたしまして、法律規制すべきものは法律で、それから条例で規制すべきものは条例で、その区分けをはっきりしてまいる、そしてそのような問題が起こらないようにする、こういう観点でやっておるわけでございます。
  252. 寺前巖

    ○寺前委員 現在起こっているこの東京都のばらばらの問題に対しては、具体的におたくはどういうふうにやったらいいと思っているのですか。
  253. 城戸謙次

    ○城戸説明員 このいまの交通一酸化炭素の取り締まりの関係につきましては、道路運送車両法によります規制基準の問題と、道路交通法によります取り締まりの問題と、それからさらにいまの御指摘のような条例の問題が加わっているのだと思いますが、いま手元に条文等を持っておりませんので正確なことはお答えできませんが、考え方としましては、道路運送車両法自身で使用過程車につきましての排出の規制もいたしまして、それを基礎にしまして警察庁としましては道路交通法によるむしろ取り締まりをする、こういう態度をとっておられると聞いておるわけでございます。
  254. 寺前巖

    ○寺前委員 聞いておるというのじゃぐあい悪いのだが、ぼくがいま言っている問題というのは、要するにもっと地方自治体の長に大幅の権限を持たして、その地域の環境保全のための積極的役割りをさせるべきだという立場はとらないというふうにいまの発言から聞こえるわけですよ。それではほんとの意味の防止からいうならばだめなんじゃないだろうか。ほんとうに、たとえば警察庁の仕事というのは独自の仕事になってしまうから、地方に条例があったってそれに基づいて警察庁が仕事をしない。こういう不合理が起こらぬようにするためには、外国の場合なんかでは自治警になっているからいいようなものの、やはり日本もかつては自治警があったわけですけれども、大体交通の指揮権などは知事のほうに含めてしまって地域の環境を整備させていく、知事権限をもう少しその点で強めていくというふうにして、自主的に、いま交通の問題で言っているわけですけれども知事権限をもっと強めるということを考えるべきではないかと思うのですが、その辺はどう思っているのです。
  255. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの御指摘の問題の中の、自動車の排出規制そのものをどうするかという問題につきましては、これは都道府県の県境を越えました問題でございますから、国自身が規制基準をきめていくという考え方をとっておりまして、これを条例等に委任していくという考えはとっておりません。  なおまた、道路交通取り締まり全体の問題に関しましては、この公害防止のために交通規制というのが非常に重要であるという考え方に立ちまして、現在道路交通法の改正を考えているわけでございます。ただ、その交通規制につきましては、いずれにしましても公害だけのための規制ということでなしに、一元的に交通規制が行なわれるという必要がございますので、都道府県知事が公安委員会各種の要請をするという権限を入れるという考え方が現在中心になっております。ただ、まだ現在条文等の整理の段階でございますから最終的なことは申し上げかねますが、方向としましてはそういう方向検討はされております。
  256. 寺前巖

    ○寺前委員 要請するという状況では知事の発言権というのは依然として強くならないということだと思いますが、それじゃちょっと他の面から知事の問題について聞きたいのです。  この間ちょっと東京都の四十五年度の公害の直接の予算というのはどのくらいあるのだという話を聞いてみたら、二十六億九千万円ほどある。その中で国から一体どういう援助をしてもらっているのかという話を聞いたら、一酸化炭素の測定器具とかシアン化物測定器具などの予算として一千三百万円余りを補助金としていただいております、そういう話を聞いたのです。  そうすると二十六億九千万円のもう圧倒的と言っていい部分が東京都自身でやっている。国のこの種の問題に対する助成というのは、ほとんどないということがこの中からわかるわけです。ほんとうに公害対策地方自治体がやれるようにするということを考える場合には、さきの個々の水質のお話じゃないけれども、ほんとうに測定装置を全国的にも設置していかなければならないし、あるいはそれに対する人の配置もやっていかなかったら、実際上防除するということはできないという問題になると思うのですが、その辺の測定装置とか人件費などについて、来年度公害対策を積極的にやるという立場考えるときに、地方自治体にその種の補助というか、そういうものの積極的な対策というのはどういうふうにされているわけですか。
  257. 城戸謙次

    ○城戸説明員 来年度の予算につきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、公害対策費といたしまして千六十九億円、関連費として百三億円、それから財政投融資二千三百九十六億円の要求が出ております。私どもとしましては、この中の有効なものをできるだけ応援してまいりたいと思っているわけでございます。十分なる予算の上に立って公害行政が進められるように念願いたしておるわけでございます。ただ、この中で地方公共団体にいく分がどれだけあるかということは、私、現在手元に数字を持っておりませんので、ちょっとお答えできないわけでございます。
  258. 寺前巖

    ○寺前委員 さきの水質の話が出たので気がついたのだけれども、要するに測定装置というのは相当な費用もかかる、人も配置しなければいかぬ、そういうものを積極的に打ち出していく予算を準備しているのかどうか。その点もう一度聞かしてください。
  259. 城戸謙次

    ○城戸説明員 この測定装置等につきましての補助は、関係各省からそれぞれ出ております。たとえば水質の常時測定につきましては、建設省、自治省厚生省、経企庁等から出ておりますし、その他各種測定装置あるいは分析装置についての予算要求も、相当本年度に比べれば大幅な予算要求が出ております。ただ、数字は現在持ち合わせておりません。
  260. 寺前巖

    ○寺前委員 何度も言うけれども、要するにそういう装置をやっていくために人を配置し、器具を持っておらなかったら、どんなことを言っておっても、それはざるになってしまう。その点で地方自治体にちゃんと人件費も、あるいは測定装置もやれるような体制を保証しようという予算対策本部として考えているのかどうか、このことですよ。
  261. 城戸謙次

    ○城戸説明員 この人件費の問題は、原則といたしまして地方公共団体の公害行政というのは、交付税でもまかなえるたてまえがとられておりますし、本年度も現に四十四年度に比べて二名の交付税におきます単位費用の積算基準に盛り込まれている人員の増があるわけでございまして、そういう形で行なわれております。ただ、非常に具体的なものとしましては、たとえば国鉄の大気汚染の検査測定の運営を委託するということで、その中に人件費的なものが含まれるとか、その他のものがいろいろあろうかと思いますが、これは原則論としては、そういうたてまえに立っておろうかと思うわけでございます。
  262. 寺前巖

    ○寺前委員 どうももう一つはっきりしないと思いますが、次の機会に譲りましょう。  もう一つ、ちょっと聞いておきたいと思うのですが、公害防止に関するところの費用の負担の問題、これも私は、一つは、ほんとうに公害に対する責任を負うかどうかという上できわめて重要な姿勢の問題になると思うのですが、たとえば田子の浦の例の場合に、岳南排水路というのを県がつくってやったが、そこへ流し込んできて、そしてヘドロをどんどんためてきた、こういうためてきたヘドロの原因者というのは、きわめて明確になっている。こういう原因者がきわめて明確な場合に、それでも四分の三とか何分の一とか、全額持たさぬで一定部分だけを持たすという考え方公害防止に関する費用の負担を考えるのかどうか。あるいは会社があって、その周辺にグリーンベルトをつくらす必要がある。そこでグリーンベルトをつくる。そして、それがその会社の大きな事業のために、きわめて明確な原因をもってのベルトだ、それでもその会社には何分の一か出さすという見解をとるのか。あるいは会社が非常に有害なガスを出したり、いろいろなことが起こっている。そしてその地域に住めなくなってきている。どうしても住宅の移転を必要とする段階が起こる。だから、四日市などでも市当局と個人との間にいろいろ折衝が始まるということが起こっているけれども、その場合の原因というのもきわめて明確で、一定の会社のやった結果が移転をしなければならない原因を生んでいる、こういう非常に明確になっている原因であるにもかかわらず、新聞紙上で報道されているところの費用負担の問題を見ると、何分の一ということになっているようだけれども、それはおかしいのじゃないだろうか。それは報道の間違いであって、そういう場合には、明確に全額会社に持たすというのかどうか、ちょっと聞きたいと思います
  263. 城戸謙次

    ○城戸説明員 いまの公害対策基本法二十二条に基づきます法律の制定につきましては、現在関係各省と折衝を続けながら・主要な点につきましては、内閣法制局のほうで基本的な法律案の審議をいただいているわけでございますので、ここで私、具体的なことを申し上げるわけにまいりませんが、基本的な考え方といたしましては、基本法にあります費用負担の対象となります費用の範囲をきめる、これには、まずどういうものが公害防止事業かということをはっきりさせまして、その中でどういう費用が負担の対象になるかということ、それからまた、その中で事業者に負担させるのはどういう割合か、こういう点がいろいろあるわけでございます。こういうような意味におきましての負担の対象となる費用の範囲、それからどういう事業者に負担させるかという事業者の範囲、今度は各事業者に負担をさせる具体的な金額の範囲、こういうようなこと、あるいはまた手続的な面、こういうものを含めてやっているわけでございます。  それで、その場合、もちろん原因がはっきりしている場合につきましては、これは企業が負担すべきだという原則論に全く変わりはないわけでございますが、ただ、それが、あわせてほかの効果を持っている場合もあるわけでございますので、そういう場合を勘案いたしまして、その最終的な負担の対象がきまる、かようになるわけでございます。新聞に伝えられているのは、率等につきまして、その率の割合自身、またその率の意味する位置づけ、そのようなものにつきましては、必ずしも正確には伝えられていないと思うわけでございまして、今後私ども十分詰めまして、完全な形におきまして御審議をいただくように法律案として提出したい、こう考えているわけでございます。
  264. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっといまの発言で気になったのは、ほかの効果をもたらすというお話があったけれども、たとえば田子の浦のヘドロのあの処理はどうなんです。この場合は全額出すのですか。
  265. 城戸謙次

    ○城戸説明員 田子の浦の現在のしゅんせつ問題に関しましては、対策本部では、当初県から御相談を受けました場合、その金額七億円につきまして全額企業負担という線で話をいたしているわけでございます。
  266. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは他の効果というのは、具体例でいうと、どういう場合をいうのですか。
  267. 城戸謙次

    ○城戸説明員 先ほどグリーンベルトの例が出ましたが、グリーンベルトの中でも非常にいろいろなものがございまして、全く工場地帯と住宅地帯の遮断としてだけの意味がある、公害防止という目的がほとんどである場合もございましょう。あるいはまた、それ自身がかりに非常に大きな市民のレクリエーション的な意味合いの施設を兼ねてつくられるという場合もあるわけでございまして、その極端な場合を申し上げますと非常に幅があるわけでございまして、やはりそれらに応じまして考えていかなければならぬということでございます。もちろんその場合、たとえばその中に体育館をつくるとか、プールをつくるとかいうことがありますれば、その部分ははずれるということになろうかと思うわけでございます。
  268. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、原因者が負担をするという態度をとるということは原則的に確立したい、あと相談していくというのは、これは相談ということになると、いろいろ問題がまた残されていって、結局ざるになっていく可能性があると思うので、審議会方式をとるということは問題があると思うので、私は、その立場をとるならば、たとえばこういう例の場合を聞いてみたいと思うのです。  下水道の場合、下水道のある一定部分の水が工場からざあっと出てくる。いろいろな企業もありますし、家庭用も両方入ってくる下水道の場合に、どの会社からはどれだけの水が、どういう濃度をもって入ってくるかということは明確に簡単に計算できると思うのです。いろいろな事業体がその下水道にあっても、その場合に下水道を建設するときに、そういう事業体の分については、建設計画の中のそれだけの分についてはその事業体に持たす、残りの家庭下水に関係するもの、この場合については国が一定の補助率で全面的にそれに加わっていく、こういうふうになっていった場合には、企業の間において分担を、その残りをどうするかということを審議会にかけるというやり方はあると思うのです。いずれにしても企業が責任を負うべきものについては全面的に企業で持つのだ、その残りの家庭のものについては――家庭、その他の公共物もありますから、それについては一定の補助率でやっていく、こういうように負担区分を明確にさせていくというやり方でも考えるのですか、ちょっとその辺聞きたいと思うのです。
  269. 城戸謙次

    ○城戸説明員 企業の原因に属する部分についてはシビアに企業責任でやってもらう、このたてまえは全く変わらぬわけでございますが、ただ技術的にいろいろむずかしい問題がございます。  それから先生御指摘のような利用施設になりますと、またいろいろ使用料等の関係もございまして、そこらの問題は現在法案について鋭意内部調整を進め、また法律的な審査を進めておる段階でございますから、いまここで御答弁するわけにまいらぬわけでございます。
  270. 寺前巖

    ○寺前委員 答弁できぬというてしまうと話にならぬわけだけれども、この費用負担の問題については、もしもあとあと問題を残すというやり方でやるとするならば、これは従来と変わらぬことになってしまう。そういう意味においては法律で明確に原因者負担を制度的にもきちっと確立をするようにする必要があると私は思います。もう時間もあれですので、質問はこれで終わりたいと思います。
  271. 加藤清二

    加藤委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会