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1970-07-10 第63回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年七月十日(金曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 古川 丈吉君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 寒川 喜一君       遠藤 三郎君    浜田 幸一君       林  義郎君    佐藤 観樹君       佐野 憲治君    土井たか子君       細谷 治嘉君    古寺  宏君       多田 時子君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局参事官  西川  喬君         科学技術庁計画         局資源課長   武居 忠雄君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生大臣官房国         立公園部長   中村 一成君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 鴛淵  茂君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 神林 三男君         厚生省環境衛生         局公害部長   城戸 謙次君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         厚生省国立衛生         試験所食品添加         物部長     谷村 顕雄君         厚生省国立衛生         試験所毒性部長 池田 良雄君         農林省農地局計         画部長     松平  孝君         水産庁次長   藤村 弘毅君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省公害         保安局長    莊   清君         通商産業省公害         保安局公害部長 柴崎 芳三君         工業技術院標準         部長      久良知章悟君         運輸省鉄道監督         局国鉄道部長 秋富 公正君         郵政省電波監理         局放送部長   太原 幹夫君         建設省道路局国         道第一課長   菊池 三男君         自治大臣官房参         事官      立田 清士君         日本国有鉄道常         務理事     長浜 正雄君         参  考  人         (公害防止事業         団理事)    古澤  實君     ————————————— 委員の異動 七月十日  辞任         補欠選任   佐野 憲治君     細谷 治嘉君   藤田 高敏君     佐藤 観樹君   多田 時子君     古寺  宏君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 観樹君     藤田 高敏君   細谷 治嘉君     佐野 憲治君   古寺  宏君     多田 時子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  産業公害対策に関する件(大気汚染水質汚濁  及び悪臭対策等)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  産業公害対策に関する件について、本日、参考人として公害防止事業団理事古澤貴君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤清二

    加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
  4. 加藤清二

    加藤委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。佐藤観樹君。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ただいま問題になっております四アルキル鉛入りガソリン管理体制について、ちょっとお伺いしたいと思います。  これは所轄としては通産省石油業務課になると思うのですが、いままで精製されていたスーパーガソリンに混入された四アルキル鉛の量というのは、通産省のほうに報告されていたのでしょうか。
  6. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。  報告書に基づいて報告されております。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その報告書というのは義務でしょうか、それとも業者の自主的なものでしょうか。
  8. 本田早苗

    本田説明員 業者のほうから定例的に報告する自主的なものでございます。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、それは年に何回ぐらい行なわれていたものでございましょうか。
  10. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。  年三回程度報告することになっております。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、業者の自主的なものということになりますと、それを受け取っても、報告書を受け取ったあとどのような処理をなされていたのか、その点についてちょっとお伺いしたいのですが……。
  12. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。  処理としては、あとから数字的に検証するわけでございますが、輸入実績総量が出ておりまして、各社消費総量が出てまいりますので、その突き合わせによりまして大体検証できるようになっておるわけでございます。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、私の調べた範囲では、そのようなことでは、一・三に下げる、あるいは一・一に押えるというようなこまかい操作というのはちょっと出てこないんじゃないかということを感じるわけなんです。  ある程度報告書信憑性があるものと見ているわけですか。
  14. 本田早苗

    本田説明員 事実について報告することになっておりますので、報告書数字について、それを事実として受け取っておるわけでございますが、輸入通関総量その他と照らし合わせましてそれを検証いたしておるわけでございます。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと話を変えますが、きょうは工業技術院の方見えていらっしゃいますでしょうか。
  16. 加藤清二

    加藤委員長 いま久良知君を呼んでおります。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでは厚生省にちょっとお伺いしたいのですが、石油アルキル鉛を入れた場合には、毒物劇物法に触れると思うのですが、これは厚生省のほうにはどのように報告されておりますでしょうか。
  18. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 四アルキル鉛そのもの毒物劇物法取り締まり対象になること、これは当然でございますし、事実そのとおりの対象になっております。しかし、ガソリン添加をしたもの、またその結果として排出されるもの、これについては直接毒劇法対象とはしておりません。
  19. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私の調べた範囲では、毒物劇物施行令の第五条で、一リットル当たり一・三ccまでということを、届け出義務はないわけですけれども一応報告することになっているというふうに聞いているわけでございます。  そうなると、いま政務次官からお話しがあったように、私申しましたように、実は、ガソリンの鉛が入っているものに対しても、届け出をしてもそのあと追跡調査をする権利なり義務というのは厚生省にもない。あるいは前にもお話ございましたが、通産省業者からの報告書を受け取るだけである、あるいはそれの輸入通関実績に基づいて実際にある程度量が押えられているかどうかということを調べるだけであるということになりますと、四アルキル鉛ガソリンというのは、どれだけ量が入っているか、どれだけ入っていてはいけないんだということをチェックするところが、どこもないじゃないかというふうに感じるわけです。きょう工業技術院の方がいらっしゃったらちょっとその点をお伺いしたいと思うのですけれども、まだお見えではないのですね。
  20. 加藤清二

    加藤委員長 いま呼んでいますから。
  21. 本田早苗

    本田説明員 その点について、若干私のほうも関連いたしておりますので御説明申し上げます。  自動車用ガソリンにつきましては、現在JISで一リットル当たり〇・八cc以下ということになっておりまして、一一三cc以下というのは航空用の燃料ということでございます。これに対しましてわれわれのほうといたしましては、今回のなにで一・一cc以下パー・ガロンということでプレミアムのものも制限するようにいたしております。従来は灯油の混入その他がございましたので、ガソリン品質を保持するという意味で試買し、これを検査して確認するというようにしておりましたので、今後は四塩化鉛含有量につきましても、試買検査によって確認してまいろうという体制を進めておるわけでございます。予算はすでに試買検査予算がございますので、今後これによって確認する予定でおります。
  22. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、いまの私の話、ちょっと前に戻ってしまいますけれども、いままで報告書が出されていたというけれども、どうもそれは、たとえばそれが信憑性があるものならば、今後もそのままでいいわけでございますね。ところが、今度の場合にはこれから七月一日以降はおたくのほうで調査なさるということになると、いままで業者から自主的に出されておる報告書というのはどうも数字にてまえみそのところがあるのではないかということを思うのですが、その点はどのようにお考えでございますか。
  23. 本田早苗

    本田説明員 従来われわれといたしましては四塩化鉛の効果というものを、オクタン価を上げてアンチノック性をあげるということでまいっております。しかしながら、低鉛化を進めるべきであるということでいろいろ検討いたしておりましたところ、鉛の公害についての問題が出ましたので、急遽これを引き下げるということにいたしたわけでございます。現在なお検討中でございますが、少なくとも五年間無鉛化を進めるということにしておるわけでございます。急遽今回進めることにいたしまして、少なくともプレミアムガソリンについて半減しようということを方針としてきめ、各社もこれを実施するということになりましたので、これにはガソリン器材等の問題もございますので、やはり確認してお互いにその実行を進めていくということが必要だろう、こういう意味合いで、今後試買ガソリン品質検査するという機会を利用しましてその実施を確認し促進してまいろう、こういうことでございます。
  24. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その引き下げる根拠でございますけれども、いままで一・三であったものが今度は一・一になるという根拠は、あくまでもそれは行政指導ですか。
  25. 本田早苗

    本田説明員 そうでございます。行政指導でございます。そのためには従来一〇〇のオクタン価のものを九七までは下げて、加鉛量を減らそう、九二であった通常のガソリンオクタン価を九〇に下げても加鉛量を減らそう、こういうことで指導いたしております。
  26. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それが行政指導ということになりますと、工業技術院で標準化されている品物がございますけれども、その数値というのは全然下げられないわけですか。
  27. 本田早苗

    本田説明員 工業技術院が参っておりませんので、私のほうでかわってお答えいたしたいと思います。  従来〇・八cc以下ということであったわけでございますが、プレミアムガソリンについても今回半減するということになりますと、この限度を引き下げていいということに相なるわけでございますので、その引き下げについて現在基準を定める手続をわれわれとして相談しておるわけでございます。引き下げるつもりでおります。
  28. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもそれはちょっと話が逆なんじゃないかと思うのです。工業技術院というところは、それが安全であるかどうか、技術院設置法にもございますけれども、公共の安全福祉を増進するかどうか、あるいは増進するようなものをつくるために工業技術院があるのであって、そこがまずその数値を下げて、そうしてこれなら安全だというマークをつけるなり何なり、もちろんガソリンにはマークをつけられませんけれども、するのが話の筋であって、つまり通産省石炭局のほうで、どうも世論がうるさい、これではどうも鉛が出過ぎるということでアルキル鉛の量を少なくする、そうしてこれを工業技術院のほうに規格品も少なくせいということではどうも話がちぐはぐなんじゃないか、逆なんじゃないかと思うのですが、工業技術院のほうでは、どうも人体にいろいろと影響が出てくるということをつぶさに調べたので、そこでひとつ通産省のほうでもこれではいけない、行政指導でもっと鉛の量を少なくしろということをするのが話の筋じゃないかと思うのです。ちょっとそこら辺が話が逆じゃないかと思うのですが、その辺はいかがお考えでございましょうか。
  29. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。  四塩化鉛を加えておるということに伴いまして問題があるということに相なりますので、これをできるだけ低鉛化すべきである、これは従来からの方針で研究しておったわけでございます。  低鉛化に伴いましては、自動車エンジンの構造との関係もございますし、したがって、維持すべきオクタン価の問題があるわけでございます。それとの関係で、従来ある自動車が、一応平常の運転もできる、そのオクタン価を維持しつつ低鉛化を進める、こういう問題とからむわけでございますので、それらの総合的な判断を、技術院のほうでもどこまで下げられるものか検討し、相談しつつやっておるわけでございますが、その結果、従来の基準よりもこれを半減した一・一cc・パー・ガロンということでいっていいという結論が相互の間で出たわけでございます。  さような事情に基づきまして、先ほど私はちょっと不明確な答えをいたしましたが、大体八月一日から〇・三cc・パー・リットルというところへ下げる方針をきめておる次第でございます。
  30. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも工業技術院の方がいらっしゃらないとやりにくいのですけれども、これは鉱山石炭局長さんでわかればちょっと教えていただきたいのです。  石油というのはJISマークがついておるというものはどのくらいあるのでしょうか、おわかりでしょうか。
  31. 加藤清二

    加藤委員長 久良知標準部長。——遅刻してはいけませんよ。
  32. 久良知章悟

    久良知説明員 ガソリンJISは、Kの二二〇二番自動車ガソリンというJISできめられておるわけでございまして、これは昭和四十年に改正をされまして、四エチル鉛が一リットル中に〇・八ミリリットル以下というふうにきめられたわけでございますが、JISマークの品目の指定ガソリンとしては受けておるわけでございますが、量は非常に少なくございまして、工場としてはたしか六工場でございます。生産量といたしましても約一割程度にすぎないわけでございます。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっとお伺いしますけれども、石油JIS指定を受けるということと、受けないということと、どういう差がございますか。
  34. 久良知章悟

    久良知説明員 御承知のように、JISというものは強制力を持っていないわけでございます。したがいまして、JISマークの認可を受けましてつけるかどうかということは、メーカーの自由にまかせられておるわけでございます。  JISマークをつけますためには、その工場一定生産設備検査設備、それから品質管理技術というものを持っていなければならないわけでございまして、逆に申しますと、JISマークのついたガソリンについては、品質についてのある一定保証というものがあるわけでございます。したがいまして、ガソリンJISにつきましては、現在、先ほど申し上げましたKの二二〇二の規格によりまして、内容はオクタン価、それから反応性分留性状、それから銅板の腐食、蒸気圧実在ガム、それからガソリンの中の四エチル鉛の量、加鉛されたものの色というふうな事項についてきめてあるわけでございますが、そういう条項がJISに適合しておるという品質上の保証と申しますか、使用者にとってはそういう安心感が得られるということになるわけでございます。
  35. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま彼の言われたように、確かにJISには表向きといいますか、そのまま受け取れば品質上の保証ということがございます。しかし、今度の四アルキル鉛の件だけ取ってみましても、いままでのガソリンの中にJIS規格以上のアルキル鉛が入っているという事実がないかどうか、お伺いしたいと思います。
  36. 久良知章悟

    久良知説明員 先ほど申し上げましたように、これは任意規定でございますので、JISマークをつけたガソリンにつきましては、四エチル鉛JISできめております〇・八ミリリットル・。八一以下であるというふうに断言ができるわけでございますが、JISマーク以外のガソリンにつきましては、これ以上含ませるということは、全くメーカーの自由になるわけでございます。
  37. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま問題にしておりますのは、JISマークのついております石油について話をしているわけですので、ちょっとその点にしぼりますが、具体的に、技術的に四アルキル鉛というのはどういうふうに入れますか。
  38. 久良知章悟

    久良知説明員 私、石油につきましては必ずしも専門家ではないのでございますが、普通これは四エチル鉛を溶かせました液状の臭化物糸の溶液の中に含まれたものをガソリンに加えるということによってつくっていると思います。
  39. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 めんどうですから私のほうから言わしていただきますと、これは結局ガソリンの、最後にバルブを開くなり何なりして量を調節するわけですね。そうしますと、たとえば一回JISを通ったものでも、その時期にちょっとでもバルブを開くなり何なりすれば、幾らでも四エチル鉛は入るのではないか。そうなると、確かにJIS生産工場であるけれども、そのくらいの簡単な操作で四エチル鉛というものがガソリンの中に幾らでも入るということになると、JISを通って品質保証されているといっても、ちょっと問題があるのではないか、そういうふうに感ずるのですがいかがでしょうか。
  40. 久良知章悟

    久良知説明員 そういう問題に対しまして、品質管理技術があるかどうか、それから工場検査の能力を持っているかどうかということが問題になるわけでございます。  それから、特に許可工場につきましては、ある一定時期をおきまして立ち入り検査をいたしまして、具体的に検査を定期的にやっているかどうか、抜き取りをやっているかどうかということを検査するわけでございます。
  41. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 工業技術院立ち入り検査というのは、年にどのくらい行なわれておりますか。
  42. 久良知章悟

    久良知説明員 製油工場そのものにつきましてどのくらいの頻度になっているかということは、的確なデータをいま持ち合わせてないわけでございますが、全体で申しますと、ただいまJIS許可工場と申しますのは約六千工場ほどあるわけでございまして、この工場に対しまして私どものほうの手で、年によって若干の増減はあるわけでございますが、年間約六百から七百工場検査をいたしております。
  43. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうすると六千工場で六百ということになると、十年に一ぺんずつ平均やられるということでございますね。しかも、工業技術院のほうにお聞きしましたら、三年に一ぺんくらい行なわれればいいのだけれども、いろいろ工場が多いのでできない、何か新規に工場施設でも加わればやるけれども、それほどもやっていない。いまおことばにもございましたように、六千工場あって年間六百ということになると、平均十年に一ぺんしかできないということですね。こうなると、はたしてJISというものがそれだけの権威というか、品質保証というものがうたえるのかどうかということが非常に問題になってくるのです。  これは他のものに関しても、ガソリン以外のものに関してもやはり同じことでございますね。たとえば鉛筆なんかでもJISマークがついておりますけれども、こういうものでも同じ検査方法でございますね。
  44. 久良知章悟

    久良知説明員 認可されました工場と、それから年間検査をいたします工場の数からいきますと、ただいま先生のおっしゃったとおりになるわけでございますが、各工場からは毎年定期的に報告をとっております。その報告の中で検査状況それから施設状況等は把握をいたしておるわけでございますが、その報告を検討いたしまして、重点的に問題の伏在の予想される工場をピックアップして検査をするという方針をとっております。  それから昨年から一般の消費財につきましては、従来検査検査の間の間隔がかなり長いということを改めますために、工業品検査所それから繊維製品検査所職員の力を借りまして、これは通産局職員がやります場合には立ち入り検査と申しまして品質管理の細部まで検査をいたすわけでございますが、いまの検査所職員によりまして、でき上がった製品JISに適合しておるかどうかという製品検査を中心とする検査をやっておるわけでございまして、これは現在大体二年に一回くらいの割りで消費財工場については検査をしておるわけでございます。
  45. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうして私がこういうことをしつこく聞くかと申しますと、これだけ四アルキル鉛が問題になってきた。そしてこれを取り扱うのはどこかと申しますと、通産省石油業務課であるが、どれだけアルキル鉛が入っているかということを通産省のほうで調べているかというと、通産省はそれを調べる義務もないというか、あるいは権利もない。そしてそこでは業者が出す自主的な報告書だけになっている。そうしたら石油にはJISマークというものがついているものがあるわけですね。あるわけだけれども、それはどういうことになるの、だろうか。そして厚生省のほうの毒物劇物法でも調べなければいけない義務もないということになると、いままで全く野放しで四アルキル鉛というものが入っていたといわれてもいたし方ないのじゃないか。というのは、通産省のほうも一つデータをお持ちだと思いますけれども、めんどうなので私のほうで申しますが、これはJISマークをとっているものは一つだけでございますけれども、ある社のハイオクガソリンには二・八〇という高い数字の四アルキル鉛が入っているわけですね。これは四十四年、去年の七月でございますけれども、JISのとってあるやつです。とってないものになりますと三…五五なんというひどいのもあるわけです。これは名古屋市立大学の奥谷教授抽出検査方法でやっているわけで、検査方法としましてはイソオクタン原子吸光法によっているわけですけれども、たとえばJISがそのように適確に運用されているならば、少なくも許容量の二倍もこえるような、二・八〇などという四アルキル鉛が入るということは絶対にないはずだと思うのです。こういう疑問を持って調べていくと、はたして工業技術院のほうでは、アルキル鉛が入っているガソリンというものを、どういうように検査していたのかということを疑問に思ってもおかしくないのじゃないかと思うのですが、こういう事実については御存じですか。
  46. 久良知章悟

    久良知説明員 いまのデータにつきましては、ただいま初めてお聞きするわけでございます。
  47. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 全くある意味ではアルキル鉛ガソリンというのは無法地帯に置かれているようなもので、すべて行政指導で行なわれているということになると非常に問題があるのじゃないかと思うのです。  今後の無鉛化対策との関係の中でそのことをお伺いしていきたいと思うのですけれども、七月一日からアルキル鉛の量を下げたわけですが、この検査方法は今後どのようにしていかれるおつもりか、お伺いしたいと思います。
  48. 本田早苗

    本田説明員 従来からガソリン品質保持のために試買検査をいたしておるわけでございますが、この試買検査の際に、従来は四エチル鉛含有量検査しておらなかったわけですけれども、今回以降はこれによりましてその実行を確認してまいる、こういうことで考えておるわけでございます。
  49. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、それは具体的には通産省のどこで調べるわけですか。
  50. 本田早苗

    本田説明員 各通産局試買試料を集めまして、これを分析するという方法で確認することにいたしております。
  51. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その検査というのは、具体的には日数的にどのくらいかかる検査でございますか。
  52. 本田早苗

    本田説明員 試買検査に入りましてからは、大体二週間くらいかかる検査でございます。
  53. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、本日ではまだ必ずしも一…一に下げた石油が出回っているということも確認はできないわけですね。
  54. 本田早苗

    本田説明員 七月以降の加鉛量の低下につきましては、現在は会社計画でございまして、すでに実行に入っておりますが、これはまだ確認いたしておりません。今後は報告によることと、それから試買検査によって確認してまいろうという段階でございます。
  55. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その「報告による」というのですが、いま私も工業技術院のほうに問い合わせましたように、必ずしも報告というのは失礼ながらその数字どおりに出てないのじゃないかということもあるわけで、実際に基準以下に四アルキル鉛が混入されているということを十分確認しなければいけないのじゃないかと思うのです。アルキル鉛を抜きますと、石油業界ばかりではなくて、他の自動車業界にもいろいろ影響があるわけですけれども、石油業界に対しまして今後どのような指導をなされていくつもりか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  56. 本田早苗

    本田説明員 当面スーパーにつきましては加鉛量を半減し、レギュラーについてもできるだけ下げるということにいたしておるわけでございますが、今後は、産業構造審議会の自動車公害委員会で現在無鉛化の計画についての具体的な方策を検討いたしておるわけでございますが、近く結論を得ると思うのでございますが、これによって実行してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  57. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もうすでに新聞なんかで御存じかと思いますけれども、アメリカでは七四年の六月までに無鉛化ガソリンの使用を義務づけるということになっておりますけれども、日本ではこれまではできませんですか。
  58. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  日本の場合には、現在から五年以内のできるだけ早い時期ということで考えておりますが、おそらく四十九年度中には完全無鉛化体制に入れる予定でございます。  アメリカの場合の七四年の無鉛化でございますが、これは日本よりは若干ゆるい無鉛化というぐあいにわれわれは聞いております。
  59. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 加鉛しないで高いガソリンをつくるということは、非常に設備投資も必要だと思うのですが、そのあたりはどのように配慮をなさっておるのでしょうか。
  60. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。従来以上の、改質装置、分解装置の増強が必要になると思いますので、税制、開銀等の活用によりましてこれを促進してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  61. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私もさっきから申しましたように、どうもガソリンを調べてみると、鉛を入れる、これはどこも責任がないようなもので、かってにたくさんの量を入れても、性能的にはしようがないのですけれども、入れたとしてもこれはどこも強制力がないということで、結局、具体的にやっている通産省石炭局のほうで、今後も十分にアルキル鉛の混入量というものをチェックして、そして、いま公害部長からお話ありましたように、四十九年までには無鉛化ガソリン義務づけるという方向にぜひとも持っていっていただきたい問題だと思います。  この問題についてはこれまでにしておきたいと思います。  続きまして、木曽川の環境基準の問題でございます。  木曽川だけが水域類型別の水質環境基準がいまだにきまっていない。全国四十五水域があるうちで、木曽川だけが手間どっているということでございます。  私がこの問題について質問する前に、木曽川は現在残念ながら、除々に、着実に、汚染の度合いが悪くなっているわけです。木曽川と申しますと、とにかく全長二百五十四キロある非常に大きな川でございまして、われわれの東海から見れば、非常に母なる川であるということも頭に入れていただきましてひとつお答えいただきたいわけなんですが、ここからも一、愛知県、とりわけ名古屋市民二百万人の水道の水をとっておりますし、岐阜、さらに三重県もここから水をとりたいといっておるわけでして、そういう点も御留意いただいて、ひとつお答え願いたいと思うわけです。  まず、水質環境基準をきめます所轄官庁でございます経済企画庁の方にお伺いしたいのですけれども、簡単に、いま木曽川水域をどのような環境基準にきめようとなさっているか、お伺いしたいと思います。
  62. 西川喬

    ○西川説明員 お答えいたします。  現在、あの木曽川につきましては、関係県も多うございますし、関係各省も多うございまして、その間で意見調整をはかっておるわけでございますが、現在の考え方といたしましては、木曽川の現在の利用状態、あるいは現在の汚濁の状況等、それから将来のこの地域開発等を勘案いたしまして、現在の企画庁の考え方といたしまして、調整をはかりたいと考えておりますのは、最上流の落合川の合流点から上はAA類型といたしまして、自然環境をきれいな状態のまま保全いたしたい。それから、下流の犬山頭首工までにつきましては、A類型といたしまして、その次の段階。犬山頭首工から下流につきましてはB類型、これは上水道の用水源としても適当と考えられている基準でございますが、このB類型をもちまして海まで確保いたしたい。このような案で現在調整をはかっている段階でございます。
  63. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その下は、経企庁の案ではC類型であるということでございますね。つまり馬飼から下流でございます。
  64. 西川喬

    ○西川説明員 現在の考え方といたしましては、犬山頭首工から河口までB類型を確保いたしたい、このように考えております。
  65. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 経企庁は、一番最初、上流はAAにして、中流も水道の取り入れ口のあるところまでAを守る意向だったというふうに聞いているわけです。それが、岐阜県側の意向で、落合から犬山までAにして、犬山から馬飼をいま言われたようにBにする、そしてその下流をCにするという案を出された、そうして岐阜県もある程度これで了承できるところまでいった。そうしたら今度、おたくさまのほうで、さらにゆるい、落合川から馬飼までの百十キロ、こういう長きにわたって、これをB類型にするという案を出したということを聞いているのですが、これは事実であるでしょうか。そして、そういうものを出されたのはなぜでしょうか。
  66. 西川喬

    ○西川説明員 いろいろ検討の中途段階の案が地元の新聞等に出たようでございますけれども、これらは関係省あるいは関係県等の間で、その検討段階に、おきましていろいろな案が出されているわけでございます。それぞれの意見で出されているわけでございまして、それが地元の新聞等におきましては、あるいは第一次案であるとか第二次案であるとかいうような報道がなされているわけでございますけれども、経済企画庁のほうといたしましては、この調整段階にいろいろな案が出てきましたのは、決して正式な、腹をきめた問題ではございませんで、はっきり申し上げますと、先日、この前のこの産業公害委員会におきまして、赤松先生の御質問に対しまして、現在経済企画庁といたしましては、先ほど申し上げました案とちょっと違います点は、上流、落合川から上流はAA、それから犬山頭首工まではA、犬山頭首工から馬飼の頭首工まではB、馬飼の頭首工から下をCというのをこの席上で申し上げたわけでございます。経済企画庁といたしまして公式に素案と申しますか、考え方を表明したのはそのときが最初でございます。現在、その後の調整、一カ月の過程を経まして、この前の、この席上で表明したものよりは、馬飼頭首工から海までのCがBランクに一ランク上がるところにさらに政府としても努力して何とか達成できるのではないだろうかということで、この前申し上げましたよりも、下のほうをCというところからBに上げる、さらに一段と努力をしようというような案で現在調整をはかっている段階でございます。
  67. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、これは水質環境基準の性格の問題ですけれども、水質環境基準というのはあくまで努力目標、こういうふうにしなければいけないのだというか、いまよりなお一段よくしなければいけないのだという努力目標であるというふうに思うのですが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  68. 西川喬

    ○西川説明員 環境基準と申しますのは、公害対策基本法第九条に基づきまして国が定めます行政目標でございます。それを定めまして、その目標を達成するために政府が総合的な施策を講じましてその達成をはかる行政の努力目標でございます。
  69. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今度は通産省の方にお伺いしたいのですが、通産省も案を出されていると聞いておりますが、その案というものはどういうものでございましょうか。
  70. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  議論の過程におきまして、通産省もいろいろの案を出しましたが、現在、企画庁におきましていろいろ検討いたしました結果ただいま西川参事官が御説明申し上げました案と全く同意見の案をとっております。
  71. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私の耳に入ったところでは、落合川の上流はAAだ、これは問題ない。それから犬山頭首工と落合川の合流点までAである、これは問題ない。これは各省大体一致ですのでこれは問題ない。そうすると、犬山頭首工から馬飼の頭首工まではCである、馬飼の頭首工から河口まではDである。これは真実でないならまたあとで訂正していただいてけっこうでございますけれども、こういうことが新聞に公に出されているということになると、通産省としては環境基準というものをあまりにもお粗末に考え過ぎているのじゃないか。Dということになればこれは渇水期になればEに落ちるわけです。そうするとこれはコイも何にも住めない川になってしまう。こんなことではいま経企庁の方にお伺いしましたけれども、あくまで水質環境基準というのは行政の努力目標であるということになると、Dというものを出されたということは、こんなものはあまりにもお粗末じゃないか。こんなものならばむしろそんな基準なんかつくらないで現状のままのほうがまだいいのではないか。Dなんかにしますと、そこまでよごしてもいいのだという結果になるのじゃないかと思うのです。こういう事実ははたしてなかったのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  72. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいま先生が御指摘したような事実は全くございません。
  73. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 わかりました、全くなかったことと了解いたします。  ただ一つだけ確認しておきたいと思うのですが、四十五年、ことしの四月二十一日に閣議できまっているのが「水質汚濁に係る環境基準について」でございます。もちろん閣議でございますから、通産大臣も御了承なさっているわけでございますけれども、この環境基準指定するにあたっては次の点に留意しなさい。まあア、イ、ウ、エ、オ、五つ書いてあるわけですけれども、その四番目にこういうことが書いてあるわけです。「当該水域の水質が現状よりも少くとも悪化することを許容することとならないように配慮すること。」つまり現状よりも悪くなってはいけないのだということが閣議の決定の中でなされていることを確認しておいていただきたいと思います。  どうもいままで通産省のお話を聞いていると、企業優先ということが目立ってしようがないわけです。官房長官の六月十三日の話では、公害というのは現在企業がつぶれてもしようがないのだ、企業を犠牲にしても公害追放をやるのだということでありますけれども、通産省公害局長さん、この言をどのようにお聞きになるか、どのように受け取っておられるかをお伺いしたいと思います。
  74. 莊清

    ○莊説明員 公害防止の問題は、今後におきまして経済の発展をはかっていく上におきましても、当然にまず追及しなければならない基本的な前提となる重要問題である、通産省としても十分に考えまして今後の施策を講じていくべきである、かように考えております。
  75. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間もないようなんで、次に愛知県、三重県、岐阜県の間の調停をとりました自治省の方にお伺いしたいのですが、自治省案というものはどういうものでございましょうか。
  76. 立田清士

    ○立田説明員 この木曽川につきましては、先ほど御指摘のとおり愛知県、岐阜県、三重県、三県関係しておりまして、私たちのほうとしては、三県の意見を十分企画庁を中心とする国のほうに反映したいということと、その間における意見の調整をできるだけはかりたいということで、いろいろな三県間のお話し合いの調整をしておる段階でございます。その間において、三県のほうに検討していただきたいこととしました案というのは、先ほど経済企画庁がおっしゃいました案と同じでございます。
  77. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 国民の生活環境を守るという立場で厚生省の御意見をお伺いしたいと思います。
  78. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 私どもとしては、木曽川というのは現在残されている河川の中で比較的良好な河川の一つでありますだけに、できるだけよい状態でとどめておきたいということは最初から考えてまいりました。今日までもそういう意味ではできるだけ高い環境基準を設定していただきたいということで関係各省庁に対してはお願いをいたしておりますし、また先ほどから各省庁御答弁がありましたように、いまだ企画庁及び自治省として、地方公共団体と調整をはかっていただいておる段階でありますから、これができるだけ高い環境基準として設定されることを期待いたしております。  ただ、つけ加えて申し上げるならば、現在の汚濁状況、また上水道源として関係各府県あるいは各地方自治団体がお考えになっている状況等考えてみますと、最上流、また上流においてAAあるいはAを設定し、同時に河口までを完全にB類型で押えてくれるなら、それでもやむを得ない。はっきり申し上げて、やむを得ないでありますが、やむを得ないという考え方を持っております。
  79. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま大体の計画では、経企庁の水質審議会では自治省案といわれる犬山の頭首工から馬飼の頭首工までをBで押えていく、そしてそれ以下もBになるというふうにきまりそうだと聞いております。問題は、この犬山の頭首工から馬飼の頭首工までの間に名古屋市民二百万人の水道の取り入れ口がある、さらに馬飼の頭首工にもいま建設予定である、そしてその間に佐屋川用水もあるということになりますと、はたして現在Bということで厚生省としては水道が安全であるとお考えになっているかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  80. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 いま私どもは、上水道の水源としてむろんAであることは最善でありますけれども、Bまでは、そのかわりに浄水施設その他を整備する基準をA類型のものよりは高めることによって、規制をきびしくすることによって飲用水として差しつかえないという考え方をとっております。それだけに、河口までを完全にB類型で押えるということであればこれもやむを得ないというのが、現在の私どもの判断でございます。
  81. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 政務次官からお話しございましたけれども、ところが実際、いま名古屋市の水道局では非常に原水が悪いので金がかかってしようがない、そしてなおかつ、いま人間の飲める水ぎりぎりの線でやっている、これを、犬山から馬飼までを現在Aにしてもらっておかないと、これ以上いい水をつくる、あるいは現状を維持するということは非常にむずかしくなってくる。これはイタイイタイ病を研究していらっしゃいます萩原博士のお話でございますけれども、へたをすれば名古屋市民全部が水道の水を飲んでイタイイタイ病になってしまうという危険があるということも言われているわけでございます。そういう意味におきましても、まだ結論は出ておりませんけれども、何とか犬山から馬飼の頭首工までは、水道を多く取るという点を含んでAを維持してもらいたい。そうしないと、またイタイイタイ病その他のいろいろなことが起こってから対策を立てるということではすでにおそいわけです。御存じのように、水というのは一度悪くなったらもとに戻すということは非常にむずかしいわけですから、何とかいまこういうふうに規制をしておかないと、ますますこれから木曽川から水道をとるということが多くなってきますので、御留意いただいて、経企庁のほうでも何とか犬山から馬飼までもAにする、そしてそれ以下は厚生省が言われたように完全にBで押えるというふうに審議会のほうではかっていただきたいということをお願い申し上げまして、時間もないのでここで質問を終わることにしたいと思います。
  82. 加藤清二

    加藤委員長 次は寒川喜一君。
  83. 寒川喜一

    ○寒川委員 簡潔に通産並びに建設、特に建設は高速度道路公害の問題について質問をいたします。したがって、政府委員におかれましても、短い時間でございますので、簡潔に質問の要旨に御答弁をいただきたいと思います。  まず、通産にお伺いしたいのでございまするが、おそまきながら企業の産業管理体制というものに手をつけられるということを新聞紙上で若干拝見をいたしました。当然にもっと早くこの問題については、たとえば労働基準監督といったような立場で産業公害の、特に企業の中における問題を処理すべき性格のものであったと私は判断をいたします。したがって、現在構想を持っておられる産業公害管理体制について御説明をいただきたいと思います。
  84. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 公害に対する企業の責任につきましていろいろ御批判をいただいておることでございますので、われわれのほうも現在の企業の実態を調べてみたわけでございますが、約二千数百社を調べました結果、公害の管理に対しまして、正式の対策本部とか、あるいは公害の管理課あるいは部というような正式の組織を持ちまして対応しておるものが大体五〇%を切るというような実情もはっきりしてまいりましたので、企業内の体制整備が非常に緊急の問題であるというぐあいに問題を取り上げまして、来年度の新しい政策といたしまして、体制の整備をはかることを考えたわけでございますが、これは一面には企業の公共団体の行ないます公共事業に対する負担問題との関連もございまして、この負担を実際企業のほうで行なう場合に、やはり会社としての体制がなくしては、はっきりした態度も打ち出せないし、具体的な工事の認定その他につきましても問題があるというようなこととも関連いたしまして、その体制整備についての方策を考えておるわけでございますが、具体的には産業構造審議会の公害部会の中に公害防止体制委員会というものをつくりまして、今後若干の日にちをかけまして、各民間有識者の御意見もお伺いいたしまして具体的な内容を固めたいと思っておりますが、いずれにいたしましても法律が必要な対策になると思われますので、できれば来国会を目標にいたしまして法案も作成して御提出し、かつ御審議をお願いいたしたい、かような体制で進んでおるわけでございます。
  85. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、問題になりますのは、やはり各方面の意見を聞くという一つの立場もありましょう。しかしながら、やはり当局自身が積極的な考え方というものをお打ち出しにならないと問題は片づいていかない。なぜこういうことを申し上げるかと申しますると、国の公害に対する姿勢と、地元住民と直結して公害問題で苦慮しておる地方公共団体の考え方の上において、やはり大きな差が出て、本来であれば国がきつくて地方がゆるくて、国に陳情するというのが今日までの行政の姿勢であったろうと私は思うわけでございます。そういった中においてやはり問題になっておりますのは、企業公害を中心にして通産省がむしろ足を引っぱっておるということのために現場が非常な苦慮をしており、かつ通産の出先機関と地方の関係というような問題で感情問題にも発展をしておるような事例を私は承知をいたしております。したがって、昨日ですか、新聞で拝見をしました構想のうちにも出ておりまするけれども、もっとたとえば具体的に、あの中にありました公害管理者制度というものをおつくりになる場合の考え方並びに運用のしかたをお聞かせ願いたい。  なぜ特にこういう突っ込んだことを申し上げるかと申しますると、たとえばボイラーの管理者を置く等々の問題にいたしますならば、局限された業務の範囲内において、特定の一人が十分な監視を行なえば問題が片づくものでございまするけれども、公害というような問題になりますると、いわゆる全社的な立場で、複数以上の管理者といったような者がおらない限り、かっこうをつけてやっておりますという態度でごまかして通るという危険性がございます。むろんただいま御答弁の中にございましたように、将来企業が公害に対する経費負担というものに本格的に取り組んでいかれるというきざしも見えておりまするが、そのことのためにも、私はぜひそういう態度が必要でなかろうかと思いますので、たとえばいま申し上げました公害管理者制度の問題について具体的にお漏らし願えるような構想をお持ちであれば発表を願いたいと思います。
  86. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 詳細な内容につきましてはこれからの小委員会の審議を待つ段階でございますので、あまり詳しい説明は現在の段階では不可能でございますが、一応こういう点をぜひ解明して制度として取り上げたいという柱を申し上げますと、柱は二つございまして、一つは企業内の産業公害管理体制の整備をどういう形で行なうかという柱でございますが、これを三つに分けまして、まず企業内の産業公害管理組織をどういう形でつくり上げたならば一番有効に働くであろうか、これは諸外国の例も参考にいたしまして、相当基本的な調査が必要かと思っております。  それから第二番目は、そういった組織を一応モデルとして設定いたしました場合に、直ちに企業全部にそれを導入するということは不可能でございますので、産業別によく実態を分析いたしまして、かつ期間としてもどの程度の期間が必要かという点も十分検討いたしました上で、導入のスケジュールについてはっきりした計画を立ててみたい、これが第二番目でございます。  それから第三番目は、先生御指摘の産業公害管理者というものをどの程度の質をめどにして養成し、それからどういう仕事をやらせて、会社の中でどういう地位を保たせるかというような問題を基本的に検討してみたいと思っておりますが、必要とあらばやはり公害管理者に相当高い資格を与えるために、国家の認定とかそういった資格を付与することも必要ではないかというような考え方もあるわけでございます。  それから第二番目の柱といたしましては、地区別の産業公害防止体制をいかにして進めるか、企業内ではなくて、企業のグループとして、地区別の防止体制をどう固めるかという問題でございますが、この場合には、まずその地区の企業が一体となって、その地域の公害防止について共同の意思をもって、共同の形をもって対応するというような形の企業間の組織づくりということが非常に重要になってまいりますので、たとえば公害防止組合というようなものを法律ではっきり規定いたしまして、そういった組合が責任をもって地域の公害問題に対処するというような考え方がございます。  それから、さらにその地区別の防止体制の第二番目といたしましては、そういった企業サイドの公害防止の組織ができますと、これと地域社会との連携をどういったぐあいにとったらいいであろうかという、地域社会全体としての組織化の問題がございますが、地方公共団体あるいは住民の代表、そういったものを最も合理的な形でかみ合わせて、具体的に防止の効果があがるような形を考えたいということでございまして、以上の二つの柱を実現するために、どのような法律が必要であり、どのような助成対策が必要であるか、これを検討するというのが、ただいま持っております大まかな方向でございます。
  87. 寒川喜一

    ○寒川委員 お考え方は私も賛成でございますが、ただ基盤になっておる問題が一つ抜けておりはしないかという感じがいたします。と申しますのは、私が関係をし、府から委任をされております社団法人の大阪府職業訓練協会で、管理者の公害教育講座というものを開設を実はしてみたわけでございまするが、初めは法人の性格からどうかという議論がございましたが、受講者が押すな押すなといったような状況であるわけでございます。むろん各界各層の御配慮でスケジュール、カリキュラムの編成などにつきましても非常な御配慮をいただいた点もあろうと思いまするが、そういう面で下級の管理者をも含めて、公害ということについての専門的な教育をするということについて、昨日の新聞では、産業公害に関する大学校の設置というようなこと等もお考えのようでございまするけれども、それも一つの行き方、いま御答弁のございました資格付与に関連をした関係、あるいは専門管理者の質並びに量の確保という面から必要でありましょうけれども、やはりわれわれ専門の立場ということで委員会で関係をさしていただきましても、ほんとうの意味における突っ込んだ公害全般にわたりますところの知識というものにつきましては、残念ながら至って浅薄であろうと自覚をいたしております。そういう意味で、やはりこういう面に通産当局が関係機関と十分連携を持って対処していくという基盤をつくらない限り問題が片づかない。他方労働組合等におきましても、公害に対する専門的な教育を行なうのだというようなスケジュール等の発表を新聞で見るにつけましても、やはりかなり感覚的におくれていらっしゃるということを痛感をいたしまするが、そういったこと等について具体的な御所見があればお漏らしをいただきたいと思います。
  88. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 教育機関の点でございますが、ただいままで通産省でも特に地方公共団体の取り締まり関係者あるいは中小企業の公害の担当者等を集めまして、年間千名ないし千五百名くらいを対象にいたしまして、短期講習ということで、ずっと研修制度を実施してきたわけでございますが、その対象となりました人員はすでに一万名をこえておるような蓄積があるわけでございますが、何ぶん非常に短期間の、一週間、長くて二週間くらいの短期講習でございますので、一応効果をおさめておりますけれども、これからの公害防止体制を確実にするためにはどうも内容が希薄であるというようなことから、もう少し高度のそういった教育あるいは啓蒙のための機関をつくりたいということをかねがね考えておったわけでございますが、先ほど御説明申し上げました、企業の体制整備と同時に、その内容の担当者の整備も必要であるという考え方で、公害大学というようなアイデアが現在あることば事実でございます。ただ何をどういう形でやるか非常にむずかしい問題でございますし、また各省との関係も十分調整しなければならない点もございますので、来年度はその準備態勢に入って、もしその準備態勢がうまくいけば、四十七年度あたりから具体的な組織として発足させたいと考えております。対象は企業の中堅管理者、それから取り締まり担当者の中で中堅以上というようなところに置いた高度のものにいたしたいと考えておる次第でございます。
  89. 寒川喜一

    ○寒川委員 企業の関係においては通産省のイニシアチブということがやはり大きな影響力があるわけでございまして、人命の尊重、環境を守るという立場でひとつ積極的に取り組んでいただきたい。  時間もだんだん迫ってまいりまするけれども、御所見の中にございましたように、次の国会でひとつ具体的に、なるほどというような案の提示を願って、われわれ委員会が審議できますような配慮をぜひとも要望をいたしておきたいと思います。  建設省見えておりますか。——建設省の方がまだお見えでないので、それでは留保してこれで終わりたいと思います。
  90. 加藤清二

    加藤委員長 それでは午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後一時十七分開議
  91. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。寒川喜一君。
  92. 寒川喜一

    ○寒川委員 建設省に高速道路の公害について質問をいたしますが、ちょうど一月前の委員会で、第二阪神から阪神高速に継がれて高速道路が完成をして数カ月になるわけでございますが、道路の構造上の問題についていろいろと問題があり、騒音公害も起こっておるから、現場を見て善処してほしい、こういう要請をしておきましたが、その後いかような措置をおとりになったか、お聞かせをいただきたいと思います。
  93. 菊池三男

    ○菊池説明員 お答えいたします。  一カ月ほど前に御質問がございまして、さっそく調査をいたしました。騒音の測定につきましては、市でもやっておられましたが、同時に、道路管理者でございます地建の事務所でも調査をやった結果がございますので、その両方を取り寄せて数字的な検討をいたしましたところが、大体どちらも騒音の度合いは似たような結果が出ております。  そこで、その騒音に対する対策として何か早急にやらなければいかぬだろう、ただ恒久的な対策といたしましては、少なくとも発生するほうの音を減らしてもらうというようなことはございますが、それはなかなか早急に間に合うものではございませんので、何か構造的にできるものはないかということで検討いたしました結果、一応あそこは下の道路から阪神高速へ上がる坂路がございます。それから同時に、それは阪神高速道路へも入れるけれども、第二阪神国道そのものでもあるという坂路がございます。両方に共用している坂路でございますが、その坂路が、特に車がふかして上がりますので、うるさいということで、その坂路の民地に面したほうへ現在一メートルちょっとのフェンスがございますけれども、その上にプラスチックか何かの擁壁を高くしようかというような考え方を持っております。ただ、擁壁を建てますと、音はそちらのほうへは散りませんけれども、また反面、反響が強くなるというおそれもございます。ちょうど坂路でございますので、本体の高速道路のほうの擁壁がございますので、ちょうどそれと、新しい民地側に擁壁をつくりますと、その間で反響して、またその結果がどうなるかということもちょっと心配はされますけれども、とりあえずとにかくフェンスをつけてまた様子を見ようというような考え方で、現在設計を進めて、早急にやるということになっております。
  94. 寒川喜一

    ○寒川委員 ただいまの御答弁は、報告をお聞きになったと理解していいのか、その点はいかがですか。
  95. 菊池三男

    ○菊池説明員 さっそく報告を聞いております。
  96. 寒川喜一

    ○寒川委員 私の申し上げたいのは、やはり最高の責任者が現地をはっきり見て——大阪市の考え方と地建の考え方というものはかなり違うわけなんです。そういう意味で、やはり早急に措置をしてもらいたい。加えてその後地元の新聞等でも報導されておりますように、あの路線は、八〇%以上はトラックが利用しておる道路になっております。そういう面で、一酸化炭素が降ってくる、あるいは亜硫酸ガスが降ってくるというようなことで、地元自身においても公害防止の対策委員会的なものをつくって、大々的にこの問題を取り上げ、関係方面に抗議をしたいという姿勢を示し始めております。私自身はやはり役所が先手を打って、そういうことの起こらない前に積極的な措置を講じてもらいたいという立場から、一カ月前に要求と申しましょうか、お願いをしておいた。したがって、ただ東京から命令を発しておけばしかるべくやるという判断では、こういった問題は片づかないと私は思うのです。そういう意味で、燎原の火のごとくなって、新聞がさらに大きく取り上げるということになってきてみこしを上げたのでは、譲れるものも譲れないといったような感情問題がこの種の対策の中ではやはり大きなガンになり、問題を複雑にしていくと私は思います。そういうことで、大至急に中央の責任者、省の出先、大阪市当局という三者立ち合いで措置される用意があるかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  97. 菊池三男

    ○菊池説明員 ただいまのお話でございますが、こちらからさっそく出かけてということも当然でございますけれども、その前にやはり地元の方と、それから道路管理者である地建、それから市というところでまず打ち合わせをやって、それでも何か問題がある場合にはこちらからもちろん出てまいりますけれども、いままでも事務所に地元の方に出てきていただいて打ち合わせをしたことはあるようでございます。そういう場がございますので、何かそういうことは考えたいというふうに考えております。
  98. 寒川喜一

    ○寒川委員 ぼくはそういった姿勢が、先般の黒部のカドミウム汚染の問題にしましても、厚生当局は積極的に出ていくが、通産省は名古屋の局にいって、富山の駐在員がのこのこ出かけていって、文書で回答してくれ、私は同種類だと思うのです。したがって、原因それ自体が、やはり道路の計画、設計について御認可された当局が、御承知のような状態の狭い場所に上下のランプをつけ、かつそれが急勾配である、そういう構造を、公害というようなことを全然考慮に入れずして設計をされておると私は思います。むろん土地利用の制約というような問題もございますけれども、かかって私は建設当局の姿勢の問題だと思うのです。いまのお答えでは私は不十分だと思います。したがって、そういう問題についてもう一度、大きくならないうちに、私も経験がございますが、簡単な用務でも本省から出張してきて、かなりの者を集めてやるようなことはしょちゅうおやりになっておられる、そういうようなこと等と比較いたしました場合に、やはりこれは建設省の構造上の問題からきておることであるから、やはりはっきりした姿勢を具体的にとっていただくということがぜひ望ましいと思いますが、再度お答えをいただきたいと思います。
  99. 菊池三男

    ○菊池説明員 ただいまのお話のように、公害の問題は地元の方にとっては切実な問題と思いますので、善処いたすようにいたします。
  100. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、最終的なことで、あなたに質問しても無理かと思いますけれども、いろいろな措置を講じて最終的にやはり被害が残るというような状態が、あの場合には私はあり得ると思うのです。と申しますのは、急勾配のランプをおつけになったという直接の理由も、すぐそれを延長できないように臨港鉄道が入っております。それからまだ、二十メートル行きますと築港の広い大通りに出る、すぐまた弁天町、こういうような形になっておりますために、被害補償というような問題が必ず私は残ってこようかと思います。のみならず、道路利用の車の車種が大型のトラックを中心にいたしておりますために、一酸化炭素あるいは亜硫酸ガス等の被害も非常に大きいということで騒ぎ出しておりますので、運輸当局など、関係方面と十分連絡をとって、現地へお越しの機会に考え方を発表できるような準備をしていただきたいと思いますが、でき得るかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  101. 菊池三男

    ○菊池説明員 ただいまのお話のように、たとえば先ほど申しましたフェンスをあそこに建てましても、そのために音が確実になくなるということは、実は先ほど申しましたように反響ということも考えますと、必ずしもそれで解決するかどうか、私もまだ不安はございます。一番いいのは、たとえば坂路をもう少し傾斜をゆるやかにするとか、そういうようなことがとれれば、ふかす音はずっと減ると思いますけれども、御承知のように、地形的にも非常にむずかしいところでございます。したがって、やはり出た音を、なるべく出さないように、何か消す方法を、遮音板のほかに、あるいは音を乱反射させるというようなことをさらにやるか、いずれにしても恒久的には車が上がる限りは音はなくならないのじゃないかと思います。そうかといいまして、あそこに大型のトラックが上がりますことを規制するということ自身も、一般の道路全体の問題でございますので、あの個所についての特別な事情がない限り、わりあいむずかしいというふうに考えております。
  102. 寒川喜一

    ○寒川委員 産経新聞の方が大きく報道いたしております。そういった人の、関係筋からの意見を聞いてみましても、東京の柳町の比でないというような見方も成り立つんだというようなこと等も言われておるように私は仄聞しております。したがって、この問題を解決されることはもちろんでございまするけれども、従来のような感覚でなしに、道路の設計については、やはり騒音公害というような問題に重点を置いて、設計施工ということについて、十全の配慮をされることを要望いたしまして質問を終わります。
  103. 加藤清二

    加藤委員長 次は、渡辺栄一君。
  104. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 私は、総理府長官に御質問申し上げたいと思います。  佐藤総理は、七十年代は内政の年である、特に公害、物価につきましては、非常な関心を持ち、熱意を持って政府も進めておられますが、特に最近におきまして、通産省公害保安局を設ける、それぞれ各省におきまして積極的な施策を発表になっております。公害対策特別委員会というような衆議院に特別な委員会を設けまして、公害の問題を進んで審議し、これを進めておる国は、私は外国にもおそらくないのではないかと思いますが、当委員会におきましても、そういう意味におきまして、公害の問題には各党ともに真剣に取り組んでいただいておるところでございます。  そこで私はお伺いいたしたいのでありますが、最近の、たしか三日と私は考えておりますが、総理の御発言の中にも、各省ばらばらの公害行政につきまして、ぜひとも総合調整を進めるようにということが言われておるようでございますが、現在のような広範にわたりまして、しかも、相当複雑な公害対策を進めてまいる上におきまして、また特に水質基準等は、それぞれ他省にまたがっておる実情でございますが、そういうような観点からいたしますと、まず公害問題につきまして、政府の行政機構を一元化するということも当面必要ではないかとわれわれ考えておるのであります。本日アメリカにおきましても、環境保護庁を設ける、そうして公害の行政の一本化、強化を進めるというようなことも考えておるようであります。われわれはこれにこだわるわけではございませんが、機構を設けることも一案でございますし、またこれにかわるべき方法によりましても、ぜひとも公害行政の総合調整ということが、私は当面の一つの急務ではないかと思いますので、まずそれにつきまして、山中長官の御見解をひとつ承りたいと思います。
  105. 山中貞則

    ○山中国務大臣 役人に相談をさせますと、すぐ局をつくりたい、あるいは予算が足らないから予算をつけてくれというような話に落ちつくのが大体見えておるわけです。総理もそこらのところはわかっておりますから、閣議の席で各省のそのような行政のあり方を改めて、私の手元ですっきりした政治の姿勢というものを示すようにという指示があったと私は受け取っております。その意味では、現在各省がばらばらにものを言っておりますことについて、全部いいことでありますけれども、やはりそれらを責任者の大臣等を私と、あるいは総理、官房長官等を含めまして、直接関係する閣僚で相談をしながら、現在閣僚会議である公害会議にぶっつけますと、その席で意見が対立して議論がおさまらない、収拾つかぬということでは、これはまさに国民に対して申しわけのないことですから、まず局とか課とか、あるいは予算が足らないとかいう前に、政府は、あるいは政治というものは、国民に対して公害というものにどのような姿勢を示し、どのような行動を起こしたかということをはっきりとさせたい。その意味においては、私のほうは実行官庁ではありませんから、各それぞれの行政官庁の責任者の方々と十分に事前の事務当局の根回しをいたしました上で、総理の判断を仰ぎつつ、政府の姿勢が国民に対して、ただいまアメリカの例をとられましたけれども、国民から政府が公害に真剣に取り組んでおるというまず信頼をかちえなければ、何をやってみても、厚生省通産省や経企庁やあるいは米について農林省や——ときに農林省は被害者であり加害者であるしするわけですけれども、何を言っても国民が信頼しないというんじゃ私、だめだと思うのです。そこで、信頼される姿勢をまずつくる、そのあとからは、やはり機構のあり方その他についても出てくるものもありましょうけれども、一義的に、まず政治の姿勢が日本においては国民から信頼されるところまでいっていない、そして公害という事実が先に走っておる。そこで国民の不満が高まっておる。この事実を私たちは謙虚に着目したいと思っております。
  106. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 ただいま長官の所信を承りまして、非常に力強く思っております。われわれも、屋上屋を架しまして官庁をむやみにつくることに賛成するものではございません。ただいま長官のお話のように、公害に対しましては、いろいろな、何と申しますか、随所に随時の調査等も行なわれまして、それぞれの指導が発表になり、住民の非常な不信と不安、場合によりましては、動揺にすらかられておる現状でございますので、各省とも最近非常に熱心な施策を進めていただいておりますが、さらに効果あらしめる意味におきまして、総合調整的な立場からお進めをいただきたいということを私は希望いたしたわけでございますから、ぜひともひとつ長官の所信に向かってお進めを願いたいと思っております。  なお、ただいまお話のございましたように、特に公害の重要性に対処しまして、総理からは山中長官に対しまして公害の問題については連絡をはかって進めるようにということにただいま承りました。  そこで、特に私お願をいたしたいのでありますが、われわれ自由民主党におきましても、毎週三日間ずつ今日まで延べ十二日間にわたりまして、公害対策特別委員会を開いておるのでございますが、そういう間におきましても、いろいろな意見が出ております。いずれ機会を見まして、そういうことにつきましては申し上げる機会があろうかと存じますが、本日はとりあえず当面の問題としまして、最近はカドミウムによります汚染米の問題等、相当な関心を寄せておるのでありますが、特に鉛、カドミウム、水銀あるいは農薬というようなものにつきまして、非常に国民の間に不信あるいは不安等を与えておるのでございますが、これは非常にむずかしいいろいろな要素を含んでおりまして、簡単にそれが公害的な心配がないということが言い得ない立場の問題もあります。  また、現在は公害がないけれども、すでに従来の経過におきまして、あるいは土壌が汚染され、あるいは水質がおかされておりまして、それがまた米その他の公害となってわれわれの健康を阻害するというような問題も起きておりますので、簡単にだいじょうぶ、こういう無責任なことは言えないと思います。  しかし、私どもとしては、ぜひとも客観的な立場に立って、権威のある資料に基づいて、それは公害である、これは心配ない、これは今後こういう対策によって公害を除去するのであるというような、明確な資料に基づいてそれを国民に公表をし、これによって的確な施策を進めていくことが私は必要であろうと存じております。しかし、現在の情勢の中では、各省ともいろいろ苦労をしていただいておりますが、さらに明年度の予算等において御配慮を願うことは当然でございまするけれども、当面まずわれわれの健康障害、そういうものに対しまして危険性のあるような公害につきましては、すみやかに少なくとも一年以内にはその調査をしてこれを公表し、また公害に対しまする十分な防止とその対策を樹立することが必要であろうと思うのでありますが、そのためには明年度の予算ということにとらわれないで、先ほどお話がありました、幸い山中長官がそういうようなお立場であるとするならば、ぜひともひとつ御熱意と御努力によりまして、必要であれば——必要でなければけっこうでございますが、必要であればひとつ予備費を支出いたしましてでも緊急な措置をとっていただきたい、このことにつきまして特にお願い申し上げたいと思うのであります。  特にカドミウム等の微量重金属等によりまして、いろいろ環境が汚染をされておりまするそういうような問題につきましては、私はぜひともすみやかな措置を講じていただかなければならぬと思うのでありまして、詳しい問題につきましてはそれぞれのお立場で各省御検討願って御措置を願わねばならぬと思いますが、少なくとも当面、非常にむずかしいといわれておりまするカドミウムの環境汚染調査、水銀も同じでございますが、またこれに伴う住民の健康調査等も進めていただいたようでありますけれども、これにはさらに相当な経費を伴うものだろうと私は思います。そういう意味で、ぜひともそれらの問題に対しまする調査あるいはこれらのための分析測定の機器の設置というようなことについて御検討を願いたいと思います。  また、この公害の監視というような問題につきまして、いろいろそれぞれの各省御苦労いただいておりますが、現在各面におきましてそれぞれ随所随意な人たちが公害に対しまして資料を発表しておるのでございますが、そのためには国、地方団体をあげましてこの公害を監視する体制が十分でないのではないか。そういうような問題につきましてはぜひともひとつ長官、御連絡をちょうだいしまして、予備費を支出いたしましてでもそれらの調査、監視をする体制を確立をしていただきたい。特にシアン等のような有害なものにつきましては何とかひとつ早くその監視体制、測定のできるようなことについての格別の御配慮をお願いいたしたいと思います。  また、自動車が非常にふえてまいりまして、そのために排気ガス等に伴いまする健康を阻害する問題等がいろいろ心配されておりまして、通産省においてもすでに七月一日以降四〇%にのぼるところの鉛の低鉛化ということ等が実現をしておりますが、こういう問題について積極的にこれを進めていただくためには、財政的な立場に立って、あるいは開発銀行の融資等が非常に必要になってくるのではなかろうかと私は思うのでございますが、そういうようなことについても、来年度の予算を待って措置するというのではなくて、山中長官の御熱意と実力によりまして、こういう問題をぜひとも早急に解決をいたすように特にお願いいたしたいと思います。  この機会に、できましたら長官の熱意ある御回答をいただきまして、われわれも自信を持って公害対策に取り組んでまいりたいと思います。特に予備費支出等に対しまするお考え方をお示し願えればありがたいと思います。
  107. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまテレビや新聞を見ておりますと、国民は何を食べ、何を飲み、どういう空気を吸ったらいいか心配でしようがないというように日本はなりつつあるのではないかという現象に見えるのですね。そこで古川君以下皆さんが熱心に勉強されて、私のところにも資料を持ってまいりました。各省全部もっともであると私も思うことについて、それぞれ費用を計算して持ってきておりますが、私は疑問に思うのは、まだ一般会計にしても特別会計にしても、国の予算というものは四十五年度予算がすべり出したばかりです。そうするならば公害が最優先である。したがって、予備費を流用してでも、一般会計で八十二億余り、財投で百九十億余りというものをぜひほしいというならば、いますべり出したばかりの四十五年度予算の中で、どこかの省が一つでも、自分たちはこれをことしの重点と思っていたけれども、公害の現状を見るに忍びず、したがって、既定経費の中から党なり大蔵省それぞれに訴えて、自分たちは予算をこちらのほうは執行いたしません。そのかわり公害に振り向けます、人間も公害のほうにさきますという奇特な役所はどうもなかったように私は思うのであります。いま取ってある予算は全部そのまま執行する。ただ、そういうことをおっしゃるならば、これだけ金が要りますよという金額で八十億の一般会計と財投百九十億円が積み重ねられたものにすぎないような気がしてならないわけでございます。でありますから、少なくともこの問題は、公害に対する政府の姿勢を打ち出す以上は、金なくして、あるいは行政の事実なくして取り組むことは不可能でございますから、いずれこの問題にも私は真正面から取り組むつもりでおりますが、目下のところは、一例をあげて差しさわりがあればぐあいが悪いですけれども、たとえば最も端的な事例として、公害対策基本法の中に企業の費用負担区分が明記されておる。これは別に法律で定めるといっておりながらいまだに出していない。したがって、それを通産省が産業構造審議会の中で、幸い小委員長通産省としては思い切って公害防止事業団の原文兵衛君を抜てきしてやらせておるようでありますから、内容も通産省自体でやるのよりかずいぶんよかっただろうと思いますが、こういうものもいまだなされていないし、あるいは公害対策基本法の中の「経済の健全な発展との調和」云々ということばを削るといってみたところで、通産省は沈黙を守っておる。それは賛成の沈黙なのか、反対の沈黙なのか、いずれものを言おうと思っておるのか、そこらのところは、それはどうしても閣僚同士、そして私が中に入ってまとめていかなければならぬ問題がその前の問題としてございます。そこらを私のほうでやりまして、それから必要とする資金、金は、これは当然やらなければならない国の姿勢でございますので、十分に内容は検討させていただきたいと思います。  大気汚染や水汚濁等のふだんの監視、あるいは観測等の問題は、とても国の直接の手足だけではやりにくうございますから届きませんので、やはりそこらは国と、都道府県を中心とする地方自治体というものが相互に理解、協力し合ってお互いの監視体制、測定体制の分野等もこれから策定して明確にしていかなければならぬ。いますべては全部国の責任だといっても、国だけで全部できない問題であれば、当然都道府県の許認可事項等にかかるもの、あるいは日常の居住環境の変化するものをつかまえる、把握するというような仕事は都道府県にお願いするとか、そういうような分類も必要になってくるかと思います。  いずれにしてもこのような各党あげての努力、そして具体的にいま与党としての御姿勢に対しまして、私も真正面から受けとめてまいりたいと思います。
  108. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 非常に熱意のある、真剣な姿勢で取り組むという上長官の御発言をお聞きしまして、われわれ公害に取り組むものといたしましては非常に力強く感じておりますが、事は時間を急ぐと私は思うのであります。なるべくひとつ早く御検討いただきまして、国民の公害に対する不安を除去していただくようにお願いをいたしまして、なおほかの問題につきましては、後ほどあらためて質問させていただくことにして私の質問を終わります。ありがとうございました。
  109. 山中貞則

    ○山中国務大臣 どうも私メモなしで答弁する癖がありまして、先ほど一けた間違えました。八億と十九億の間違いでございます。もちろん渡辺委員のほうが御承知のことでありますから、速記録を含めてつつしんで訂正をいたします。
  110. 加藤清二

    加藤委員長 次は島本虎三君。
  111. 島本虎三

    ○島本委員 総理府長官、ただいまの答弁、ほんとうに実のある答弁である、私はそう思って聞いておりました。ことに政治の姿勢を正すためには敢然とやるという決意、それと国民の信頼をかち得なければならない、初心に向かって進むためには公害優先でやる、そして自分が中へ入ってまとめなければならない立場だ、はっきりこうおっしゃっていただきましたことは、いままでにない一つの決意とともに、前進だと思う。  それについても一つだけ私自身はっきり聞きただしておかなければならない点がある。というのは、これはやはり中へ入ってまとめる、初心に向かって進める、国民の信頼を得る、これらを通してみましても、まずやった業績はこれからのものでありますから、いまこれからやる心がまえのほうがやはり長官、問題になる。たとえば五月十五日の国会終了後の記者会見で総理は、公害対策といっても行政機構を整備するばかりが能じゃないのだから、各省間の統制がとれないとすれば私の責任だ、一たん口火を切った以上やってもらおう、こういう重大な意思の表明があったわけです。そのあとであなたの手元で作成の準備が進められておるということも聞いておるのです。その中で厚生省のほうからも、「経済の健全な発展との調和」はいまやこれを取るべきである、こういうような意思の表明があったということも聞いておるのです。また保利官房長官も、公害対策を行なえないような企業は存在できないと考えるのが現在の常識だ、これはきわめて的確なことばだと私は受け取っておるのです。しかしながら、今度はそのあとで総理が大阪の記者会見において、六月二十九日ですけれども、大事なことは経済成長をそこなうことがなくて公害対策を行なうことだ、こういうようなことを言っておるわけです。そうすると、せっかくいままとめようとするあなたの心のいわばささえが、経済成長をそこなうことがなくて公害対策を行なうことだというと、また逆戻りしてしまうことになるのです。一体これを進めるための基本的なバックボーンはどこにあるのか。これはいまの答弁からして、今後あなたが成案をまとめる立場からしても、国民が期待している重大なバックボーンだと思うのです。この決意をあらためて聞かせてもらいたいと思います。
  112. 山中貞則

    ○山中国務大臣 経済が発展することは、国民の生活の向上につながるものであることは間違いございません。しかし、その経済の発展の過程において、国民の生活の場所あるいは生活の内容というものがむしばまれていくという問題を見のがしてはならないというのが公害対策だろうと私は思うのです。その意味で、総理の発言の場所には終始私もおりますし、私もまたいろいろの検討中の問題等も総理には絶えず連絡をいたしておりますから、総理が質問に答えられた表面のことばだけではいま言ったような誤解の起こる点もあったろうと思いますが、総理はやはりそれに付随して、経済の発展がなければ国民生活の向上はないといったって公害というものは無視できない。今度は逆に、じゃ公害対策をやらせようとする場合には、大企業のほうは何とか規制に応ずる能力がある。ところが今度は小さい町工場というものは、一つ工場だけではかりに一つの河川に汚濁をさせてもたいしたことにならないけれども、一つの水系に零細企業というものがずっとたくさん集まったような場所があると、これは水系のみならず海面まで汚濁してしまう。ところが中小企業、零細な人たちに、おまえたちは直ちに操業を中止してでもその施策をやれといっても、資金や能力、人手の面でなかなかすぐにはいかぬだろう。そういうような点から考えて、産業といっても大企業だけのものではないじゃないか、やはりそこらはこまかい配慮を要するのだという意味の発言もされているわけであります。  私はそういうことを前提として、産業は大企業、中小企業を問わず、まず公害というものに対して一義的に、人に迷惑をかけないでやっていくという責任が当然発生しておると思いますが、それをやるについて既存の零細企業等まで含めて他に迷惑を及ぼさないという国民の要望にどのようにこたえていただけるか、そこらのところが非常に苦心の存するところであります。したがって、通産省サイドの考え方だけでもいけませんし、厚生省側の考え方だけでもいけません。私はまた各大臣の上に立つ大臣でもありません。しかし、調整するにあたって、総理から君の手元でそれらの問題を調整して、政治の姿勢を打ち出していけるようにしろということでありますから、総理の意思にそむく大臣がない限り私のほうで調整は可能であると考えておりますが、趣旨はただいま御心配なさったような方向ではないということを申し上げておきたいと思います。
  113. 島本虎三

    ○島本委員 七月三日の閣議だったと思いますが、各省ばらばらの施策には不満であって、問題ごとに協議をしたい、こういうようなことで、あなたがいまのように、通産省から上がってきた企業負担の問題に対して新しい見地からこの成案を得ようといま努力をされておることを聞いております。私は、その点においては敬意を表します。それと同時に今後取り組む問題について大体の基本的な考えはいまの説明によって納得できます。この具体的な問題として、複雑多岐な問題に対処する能力が、各縦の段階ではそろそろ負えなくなってきているのではないか。それにかてて加えて、官庁には悪い意味のセクト主義がある。こういうような縦割り行政の中から、一つの障害と思われるようなこういうふうなものが出てきてどうにもならなくなった。これを調整しなければならない。調整しなければならないということになりますと、これは単なる力のない官庁ではだめだということに当然なります。私はその意味で、あなたが先ほど力のない官庁であるがということを言ったけれども、力のない官庁ではだめなんです。総理大臣の副総理大臣というか、その下は私だ、したがって、私はそのつもりでがんばるのだということをあなたはおっしゃっておったが、力がないということばで今後表現されては困ると思います。ですからそういうふうなことではなしに、確信と自信を持ってやってもらいたいのです。  たとえば川の汚濁、こういうふうなこと一つ取り上げましても、行政の主体、この清潔の義務、こういうものは法的にも行政的にも不備だ。結局は放置されてしまうのだ。それが現在こういうふうになってしまうのだ。結果は、原因の究明や医療や補償、さらに企業の責任さえも明確にされないままにぼやかされてしまうのだ。こういうふうなことからしてできないものを、まず一つ一つやってもらいたい。各省庁にそれぞれの審議会を持ってそれぞれ動いて、どうにもできなくなってあなたのほうにくる。これではいけないから、せめて公害に関しては各省庁から出した一本の調査団、審議機関、こういう強力なものにして、各セクトやなわ張り根性、こういうふうなものをあなたのところでこの際断ち切ってもらいたいのだ。これがまず第一歩じゃないか、こういうふうに思うのです。私はいろいろなことを心配するあまりちょっとこの問題に対して触れましたが、無礼なことばはおわびしますが、この精神に対してどう思いますか。
  114. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私が力がないと言ったのは、実施官庁としての行政の官庁でないということを言ったのであって、いわゆる実行するに力がないなどということを自分から言うようななまやさしい玉でないことは御承知のとおりであります。ことばが過ぎたかもしれませんが、私はいまあなたの言われましたように、アメリカの全体の政治、外交その他は別にして、いい悪いの議論は別にして、ニクソン大統領はどちらかといえば資本陣営の応援を得ている政党の大統領でありますよね。それが罰金一日一万ドルというようなきびしいことをびしびし打ち出していく。そういう姿勢というものが、少なくとも、思想は異にしましても、現実に工業発展を遂げておる資本主義経済体制の中においてはいやおうなく迫られておる問題である。このことについて、わが国の佐藤内閣も現在の政治をあずかっているわけでありますから、総理大臣の姿勢として打ち出さねばならない義務がある。それについては、わが国の今日までの行政形態はあまりにもばらばらであって、いまあなたの指摘されたところの大部分は私は事実だと思います。そこらのところを私の手元でしぼって、そして総理の姿勢として国民に対して、たとえば三本の柱を示しながら、今後この柱のもとにすべての実施官庁が従ってもらっていく。その柱にはもちろん基本法に対する姿勢もあろう、あるいは企業負担の立法化もあろう。いずれにしてもそれらの問題も含めまして、場合によってはたいへん複雑な無過失責任の問題に関係のある法務省の公害罪、そういうこと等も全部踏まえながら、そしてわが国の政治も少なくとも、アメリカを例にとる必要はないのですけれども、先進工業国家が現在、ある場合においては追い詰められ、ある場合には政治の当然の姿として先手をとってやっておる姿勢というものをわが国もすみやかに打ち立てなければならぬ。また総理がその決意に燃えております。そこで、その権限を私がいまお預かりしているのであって、その意味においては各省大臣は私の調整に当然従っていただくと思います。どうしても従っていただけなければ、やむを得ませんからトラの威を借りることもあろうということであります。これはあなたのトラではなくて、別のトラです。
  115. 島本虎三

    ○島本委員 トラの威を借りてもいいですから、あくまでも抜本的な公害排除のために努力してもらいたいと思いますが、そのために先ほどの話も、これは偶然一致するのですが、公害行政の一元化に向かって今後は行政的な指導やなんかの格づけも進めていかなければならないんじゃないか、こう思うのです。そうでないと、いま思い出してもむざん、残酷なあの水俣病、三十六年にこの問題が国会で取り上げられて、厚生省を中心にして調査を進めてきたことをわれわれもよく知っています。それが通産省へ行き、経済企画庁へ行き、たらい回しになってうやむやになってしまって、そしてそのあとで今度四十二年ですか、これが公害病として認定されたあとまたうやむやになって、なすべき手を各官庁にまかしておいたところが、それぞれのなわ張り争いでこれが実を結ばなかった結果が、今回の悲惨なあの事態になったのです。したがって、これに対しては十分対処していくような具体的な方法も一これは一元化にならなくても、あなたを中心にして一元化の方式を入れて実施しなければならない、こういうような事態にあるということであります。  というのは、この具体的な施策の中で、経済企画庁が中心になっているいわゆる水質の基準の問題、これを実施させる、こういうようなことでも当然水質審議会、こういうようなものの議を経て工場の排水、水質基準の改定、こういうようなものをきめます。今後は監視体制を充実するために閣議にまでかけて各省庁にこれを徹底させる、こういうような佐藤長官からの決意の表明もあったわけです。そうなりますとやはり心配がその中に残ってくるわけです。というのは常時の測定体制と同時に監視体制、またそれを犯した者に対する罰則、こういうようなものに対しては触れないでおくわけにまいらない。当然そうなるじゃありませんか。それに対して政府の意欲、こういうようなものはわかるわけですけれども、当面のこの重大な課題に対して、じゃどういうように持っていくんだという問題が一つ浮かび上がってくるわけです。これは私が言う必要はありませんが、いま水の問題一ついっても、水質保全法の受けざらに当たる実体規制法が十一もあるのです。そしてそれと同等の立場にあるいわば関連法、河川法だとか港則法、こういうようなものが六つか七つあるのです。それらはみな独立しているのです。これらは全部水に関係し、清潔に関係ある法律です。したがって、これを一貫して運用するのでなければならない、ばらばらではならない、当然こういうようなことになってくるわけです。この点閣議できめて各省庁に順守させる、これで万全だということがあったから、それで私どもはまず安心したけれども、さて今後常時監視体制の実施と常時の測定と罰則、こういうような責任体制をどういうふうにつかむか、またいまの話では各省庁にやってしまうと、建設省をはじめ自分らの持っている法律によってある場合にはニュアンスが全部変わってしまうこともあり得るわけじゃありませんか。そうなりますと、この際常時の測定及び罰則を含めた監視体制、こういうようなものの責任体制、こういうようなものを、閣議できめて出すほどですから、はっきりとっておかなければならない、こういうようなことに当然なるじゃありませんか。これを総括する省庁、それはどこに置くのか、当然総理府じゃないかと思いますが、実際水の点では企画庁になっているわけであります。この点今後は強力にやらなければならない問題ですから、この点等に対しては、はっきりした決意もあわせて伺いたい。一本化する前提としても、また一本化しないままでも、一本化的な行政をするためにもここが肝心な問題になると思います。決意のほどを伺いたいと存じます。
  116. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは最終的には政治の姿勢としては公害対策会議にしぼり上げていくということでございます。ですから、それぞれの構成メンバーである公害関係のあります各閣僚、たとえば公害ではなくとも、もとになる下水道建設等を預かる建設大臣等も含めた意味の広範な関係閣僚全体の公害に取り組む姿勢は、私の手元で相談をしながら、しかも意見の食い違いあるいは賛否両論のあるものは、全部事前に調整をして、公害対策会議にかけて、総理の政治に臨む姿勢を打ち出していくということをいま準備しておる最中でございます。
  117. 島本虎三

    ○島本委員 その準備なのであります。せっかく総理府の山中長官の手に渡りましたから、今後早く制定されるように私は希望的観測をいまでも持っております。  ところがこの企業負担の問題一つを見ましても、これは結局公害の発生の原因は企業の無責任さにある、国民はみんなそう思っています。間違いないでしょう。それと同時にいまでさえもまだ有機水銀だとかカドミウム等の重金属の工場廃棄物、こういうものの処理方法、防除装置、これは未開発でしょう。さらにこういうようなことに対して、どうしても金がかかるということから、また値上げをするとか変な動きが出るでしょう。そういうようなことになってまいりますと、当然今後公害という名前で——地方行政においては僻地という名前をつければ僻地対策という名において何でもできる、集中都市では公害対策といえば値上げまでできる、こういうような考えでまた企業を甘やかすようなことがあってはだめだということ、これは長官も十分御存じのとおりだと思いますから、私はくどいことは言いません。ただ総理が言ったように、私はそのことばだけにこだわるわけじゃございませんが、いろいろのいままでの経済の成長、発展、こういうようなものを無視してはならないのだということになりますと、企業が立地条件のいい河口だとか海浜を選んで、そこに立地、経営することによって、いわば悪いことばで言うとたれ流し経営を始める、それが自由だったからいままでこれだけの発展、発達をした。しかし、今後は経営の考え方としても、水の汚染というものを通じて人間の健康、生命、これを奪ってはならない、こういうようなところまではっきり考えた行政をしなければならない。指導をしなければならない。したがって、いままでと同じような考え方では企業そのものは殺人を犯すことになるのだ、こういうようなことをひとつ自分も考えて、いままでのような考えをやめておいてもらたい、こういうように思わざるを得ません。  まず企業の問題、こういうような問題を一つ考えましても、企業の問題が三年間手がつかないために、いま岡山の水島では三百億の計画をもう立てている、そしてそれを実施に移したい。しかしながら、企業負担の法律がまだできない。できないから一体どうすればいいんだ、——陳情ではありませんか。経営者、企業まで陳情ではありませんか。四分の一なら負担してもらえませんか、そうでなければできないんだ、こういうような陳情じゃありませんか。公害そのものをわれわれとしては防除する、排除する。そのために企業負担を早くつくるんだ。ようやく手にかかっても、もうすでにできていなければならない企業負担ができなくて、実施計画に載っている水島地区では、もうすでに計画は立っても、予算は立ってもどうにもできない、こういうようなことでいま四苦八苦しているのが現状です。私どものほうにもすでに陳情は届いております。こういうような状態ではほんとうに困るはずです。それで早期の立法化ができるまでの間は、特別財源措置をも考えてもらいたい、また同時に今度普通交付税の算定基礎に財政需要額に県の公害防止計画事業を織り込むことも、交付税として当然ふやすように認めてもらいたいのだということだとか、それから公害防止計画事業を実施するための起債、こういうようなもののワクを新たに設定してもらいたい、地方自治体自体が、いま企業負担の法律がないためにこういうような苦労をしておるわけです。これは一日もゆるがせにできない問題じゃありませんか。いままで通産省にまかせ、厚生省にまかせ、どうにもできなくなってようやくあなたが手にしたわけですから、早期に結論を得て、現在指定され、計画中のものが計画ができ上がって、このように苦労しておるんだ、この実態の上に目をやって早くこれを成立させてもらいたい、こういうように思うのですが、これはいつごろでき上がるようになりましょうか。
  118. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先般全国ネットを持っております某テレビ局の百五十社の公害に対する企業の意識のアンケートというのを見てみたのですが、たいへん興味がありまして、ここ数年の変化だと思いますが、企業が公害責任というものを回避して逃げ回ることはできなくなった時代が来たという意識がほぼ大多数の企業主に徹底しておるような数字が出ております。反面、公害紛争処理法案であなたも含めていろいろ議論しましたが、案外に公害紛争処理法のほうに持ち込んでくる可能性が高いという数字も出ております。これは逆に言うと、先ほど申しました公害罪等で一方的に裁判に持ち込まれていくことは、企業のほうも現状では逃げ回っているように見えますけれども、やはりいやなんでしょう。企業の信用とかなんとかいう問題もありまして、いわゆるそういう殺人を犯している企業というようなふうに、極端に言えば言えるわけですね。やはり案外そういう紛争処理機関の裁定に自分たちとしては乗りたいのだという希望者が、過半数よりも、三分の二以上ありました。こういうようなことがたいへん参考になりまして、今後運用していく上の基礎にしたいと思いますが、さしあたり基本法に示されている、別に法律をもって定めるとされておりながら、なおかついまだに日の目を見ていないということについては、先般の国会でも私はたいへん遺憾であると存じましたし、通産、厚生省間の意見を聞いてみて、これではまた来年もだめだなという気がいたしましたので、場合によっては私の総理府において企画、立案し、これを国会に提案する用意があるということまで申したのです。ところが、その後通産省においては急速にその作業が進捗しておるようでございます。山中みたいな乱暴者に法律をつくられたらたまったものではない、それくらいなら自分たちのほうで早くつくったほうがましだという気持ちであっても、少なくとも前進を開始したことは間違いないようですから、そこらの内容を通産省厚生省交えまして十分検討しつつ最後の断を下してまとめて、なるべく早い機会にこれを法律の命ずるがごとく、別途に定めることをすみやかに実現したいということは、次の国会に見送るというようなことは言ってないということであります。   〔委員長退席、渡辺(栄)委員長代理着席〕 すみやかにやるということです。(島本委員「次の国会……」と呼ぶ)臨時国会があるかどうかわかりませんが、次の国会は見送ることはいたしませんというようなことにとどめたいということであります。裏の表現でございます。
  119. 島本虎三

    ○島本委員 次の国会に見送るということはないであろう、こういうように横向きの解釈をしておきたいと思います。こういうように思います。  それで、大臣にちょっと重ねて聞いて失礼になるかもしれませんが、これもこの機会ですからはっきりしておいたほうがいいと思うのです。公害の設備をするという名目によって値上げを促進する傾向もこのごろある。これは間違いだ、こんなことは断じて許してはならない。英国あたりでは四十五、六年前にもうすでにこういうような対策について論じられておったようです。いわゆる企業が生み出す外部的不経済、こういうようなことばを使っておるようですが、防止関係の費用は企業が負担すべきであるのだ、これを指摘し、そのとおり実施しておるようであります。私どもはそういうような点からしてやはり公害防止の費用を企業に持たせると物価にはね返るんだ、したがって、この際値上げをするのだ、こういうような考え方こそ経済の自由競争の原則を知らない、また現在のような寡占化体制に移行したためにいろいろと起こっている現象を知らない、表面ばかり見たところの幼稚な考え方である、こういうように思いますので、この際公害対策をすることを理由にしての値上げは今後一切認めないように指導してやってほしい、こういうようなことについてひとつはっきりした決意を伺っておきたい、こういうように思うわけでありますが、この点今度は前向きでひとつお願いいたします。
  120. 山中貞則

    ○山中国務大臣 公害設備というものは確かに企業利潤を生む投資にはならないのが通常です。ですから、先般の国会でも——本来関税というものは取りましたものを原因者別に配分をしていくというような性格のものではありませんが、しかし石炭によって開始されました石油の輸入関税の還付金、その交付時に新たに重油脱硫等が加味されれたということは、社会的な公的な必要性というものについて、政治もなし得る限りのことをしているということであります。その意味において今度は収益を生まない設備をさせられるのであるから、それならばその点は値上げをせざるを得ないという追い込まれた企業もあるいはあるかもしれません。しかし、原則的には企業が存在し、周辺の人にその生産あるいは作業過程において何らかの影響を与えることにおいて公害という名の加害者である場合においては、これは企業の当然のモラルの上からいっても、あるいは立地しておる場所に対する責任の上からいっても、やはり企業自身の負担というものが前提であろうと考えます。それはある企業において重油の関税の交付が行なわれるということでありますならば、場合によってはそれらの公租公課に準ずべきような負担をして、公衆のために値上げをすることなくがんばっていったものについては、税制等において何らかのめんどうが見られるなら見る方法もまた配慮してあげなければならぬと思いますが、原則としては、公害という、あってはならないものを生み出す企業が、それをなくするためのあたりまえの投資をしたことによって、その負担を一般消費者に、製品のコストにかぶせていくということはよくないということについては同感であります。   〔渡辺(栄)委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 島本虎三

    ○島本委員 答弁がはっきりしておりますから時間も短時間で終わってしまいます。したがって、いま私のほうの終わりも近づいてまいりました。それを前提にしてひとつ決意をもう一回聞かしてもらいたい、何回も聞いて申しわけありませんが……。  それは国民に不安を与えないのだ、先ほど言った政治の姿勢、こういうようなことは私はほんとうにそのとおりだ、こういうふうに思って聞いておりました。国民の信頼をかちえなければならないのだ、そのとおりです。もう事実が先行して不満の高まっておるのが現況ですから、それを今度逆にわれわれのほうとしては、国会としても行政機関としても、国民の期待にこたえるようにしなければならない。これが前提です。  先ほどカドミウムの問題にちょっと触れられましたけれども、個々のカドミウムの問題、こういうようなものは論じません。ただ、いろいろいわれておる中で、七日ですか、発表のあった厚生省のカドミウムの濃度の許容基準、これに対していろいろ専門の学者やお医者さんのほうを通じても、この問題に対しての疑義が出されているようなんです。厚生省のほうではだいじょうぶだ、こういうふうに言い切っているようであります。しかしながら、経験をしてきた学者、こういうような人たちは、これは玄米で一PPM未満とか、精白で〇・九PPM未満であるとか、こういうようなことでは、これは少し甘過ぎはせぬか、甘過ぎるというだけではなくて、これはカドミウムの汚染の、いわば現在発生しておるそれと同じような状態を認めることになりはせぬか、この点心配だということを学者並びに経験者は言っているようであります。こういうような点からしても、いままで厚生省、県を含めて何でもない何でもないと思っていたやつがついに事件になって、そして調べてみたら原因がわかった、こういうようなことで、いまそれを再び繰り返してはならない状態だ。また、同じような当時の状態だとすると、この基準をもう少しきびしくして、そして再びこういうようなことの起きないようにしてやるのが、これが政治の今後の姿だ。少なくとも学者がそういうようなものを指摘する場合には、この学者を満足させるだけの——前に十分それを指摘した経験者ですから、それと厚生省がもっともっと話し合って、通産省も話し合って、農林省も話し合って、そしてこういうような問題については再び起こらないように指導してやるべきじゃないだろうか、こう思うのです。いませっかくこの基準が出ても、米の処理の問題は別にして、やはり米の処理の問題よりも人間の健康のほうが、生命のほうが主ですから、この生命を扱うためにこれでいいだろうか、この疑問が各大学の先生やその他学者によって提起されているわけです。私は厚生省から出たこの基準が間違いだということは言いたくないし、考えたくない。しかし、心配が持たれているというこの現実から、今後もう少しきびしくして、こういうようなことを再び起こさせないように指導すべきだ、こういうように思うのです。  いままでおった政務次官がおらなくなりました。しかしながら、ここにやはり大臣がおりますし、いままで答弁したついでですから、総理大臣にかわってこの際ひとつはっきりした見解をお示し願いたいと思う。これはやはり国民が心配している点の一つだ、こういうように思いますから、私ははっきり御答弁を賜わりたいと思います。
  122. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この権威者がいろいろとおられまして、柳町の鉛公害も東京都が調べてみたら案外そうじゃなかった、しかしまた、そんなはずはないというので医療生協の方々がまた調べておるというようなことがありまして、ある意味においては不安動揺というものもあります。そこらのところはたいへんむずかしい問題だと思いますし、厚生省がカドミウムで、蓄積汚染の結果あらわれた米の許容量というものを定めたことの基準については、ましてや私ごときは、学者の間でも基準許容量の限度について意見が分かれるのでありますれば、私自身には当然それの判定の能力はないと思うべきでございますが、しかし、やはり危険というものに対処するのには、これは慎重過ぎて慎重過ぎたという結果は出てこないわけですから、慎重過ぎるほうがよろしい。ことに米の場合については、その地域に住む生産者の人々は出荷というものも、農林省が買い入れをしないというようなことをきめつつあるようであります。そうすると、自分たちのつくった米を食っても危険であるし、それを売ることもできないし、ならばそのあと農民の方々はどうなるかという、二次、三次の波紋も描いていく問題でありますから、これは十分厚生省、農林省等でさらに一そうの協議をされるべきだと私考えておりますが、さしあたりは私自身がこの場でPPMの幾らまでがいいんだ、幾らではいけないんだという判断を申し上げる能力がない。申し上げても、おそらく権威をだれも認めないということを白状せざるを得ません。そういう意味で、問題は、不安動揺をなるべくすみやかに除く措置を講ずるということが第一であろう。そして基準というものは、生命を守る意味からきびし過ぎるにこしたことはないというふうに考えます。
  123. 島本虎三

    ○島本委員 予定の時間になりました。私は時間を守ります。ほかの人の質問にじゃましてはいけませんので、もう少しやりたいところですけれども、この次に譲りまして、では私の質問はこれで終わります。
  124. 加藤清二

    加藤委員長 この際関連の申し出がございますので、これを許します。浜田幸一君。
  125. 浜田幸一

    ○浜田委員 総務長官に勉強のためにひとつ意見を伺わしていただきたいと思いまして御質疑をいたしますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  まず第一に、ただいままでの渡辺委員並びに島本委員に対する御答弁を伺っておりますと、率直に申し上げて、一体現在起こっている公害の責任はどこにあるのかということが明確にされておりません。  そこで私はお伺いをいたしますが、総務長官率直にお答えをいただきたいと思いますが、現在起こっている公害の実態というものの責任は、政府責任において解決すべきものか、それとも企業責任において解決すべきものか、あるいは国民全体の責任において解決すべきものか、その点どの部類に属するものが一番重要であるのか、お答えをいただきたいと思います。
  126. 山中貞則

    ○山中国務大臣 明白に公害を起こしておるものは企業であります。これは企業がなければ公害が起こっていない。ですから、その企業が起こしておる公害について政府がどのような姿勢をとるかということをいま問いかけられておる。それに対して私どもが回答を出すための、いまは検討中である、努力中であるということであります。
  127. 浜田幸一

    ○浜田委員 明確な御答弁をいただきましてありがとうございます。しかし公害基本法の中には、第三条においては事業者の責務、第四条においては国の責務ということが明確でありますが、企業に対する指導態勢の責任は私は政府にあると思います。しからば、当然企業に責任のある問題については、これは国にも責任があると私は考えます。  そこで、率直にお伺いを申し上げますが、企業に責任があるといま御答弁いただいたわけでありますが、今後これらの企業から公害を排出させないようにいたしますために、総務長官は、これから検討をして閣議の中で統一意見を出して、私が総括してやってまいります、こういう御答弁でございましたが、具体的に一点だけお伺いさせていただきますが、企業負担の方法、たとえば税法によってこれを負担させるのか、あるいは損害賠償制度の法律を法制化するのか、そういう点等についてはどのようにお考えであるのか、お答えをいただきたいと思います。
  128. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いま企業の費用負担の問題は、公害を起こさないようにする設備をすることについて一義的に考えております。その次には補償の問題、あるいは設備に対する税制の問題、そういうものを総合的に考えていかなければならぬと思います。私は企業がすべての公害の加害者であるとは言っておりません。企業が起因者であるということは明白である。しかし、初めから公害を出さないための努力をした新しい企業等については、何らその公害の発生がないところを見れば、企業あるところ必ず公害ありという議論は成り立たないわけですから、公害のあるところ企業ありです。公害については企業がそこに立地したことによって起こったのであるから、まず責任は企業にある。その責任を政治的にどのように法治国家として明定していくか、その作業をこれからやっていくということとにお受け取りいただきたいと思います。
  129. 浜田幸一

    ○浜田委員 私は率直に申し上げまして、先ほどのわが党の渡辺委員に対します御答弁の中で、予備費流用等の問題について御説明をいただいたのでありますが、明確に私自身が知ることができませんでしたので再度お伺いいたします。  たとえば、現在起こっております直ちに解決をいたさなければならない問題がたくさんあります。そういう問題の解決にあたって、ただいま総務長官から御答弁をいただきましたような状態では、予算措置に困る問題が各県の中にもたくさん起こってまいると思いますが、そういう場合については総務長官に解決策は別にございますでしょうか。たとえば、閣議で了承を得て直ちに予算執行を行なうとか、予備費で流用ができない場合には別途の方法予算計上をするとか、そういうお考えがありましたらあらためてお答えをいただきたいと思います。
  130. 山中貞則

    ○山中国務大臣 地方の負担の問題はあとから起こってくる問題でありますが、先ほど私がけたを一けた間違えたといって申し上げました八億と十九億の問題については、各省の既定経費が、たとえば大蔵省の運用方針によって景気その他をにらみ合わせながら、最終的には一定の既定経費の削減という現象になって起こることもありますし、あるいは年度途中において事業執行等についてブレーキをかけたり、あるいは歯どめをしたりする現象になってあらわれておりますので、そこらで公害関係の役所においてはそれらの問題を十分各省相談をして、そういうような、たとえば、一律に機械的な既定経費の節減を受けないかわりに、現在の予算の計上の中でさしあたり必要な測定や、あるいは判定のためのいろいろな機材、そういう問題等については予算流用、その他によって弾力的に措置していくというようなことを、目下の段階では考えるときではなかろうかと思います。予備費が千百億あるといっても、それをそうそうやたらと次々と、まだ予算が始まって三カ月日にかかったわけですから、そこらのところをいままでの予算の執行とは全く違った執行のために予備費を出さなければならないというのでは、あまりにも政府の予算編成見通しはずさんであり、その執行はいいかげんなものであるという、国民の非難をも買いかねない。しかし、私は積み上げられた数字、各省の必要とする機材等のそれぞれの項目については、非常な貴重な参考資料として預って検討しております。
  131. 浜田幸一

    ○浜田委員 最後に、私は総務長官にお伺いをいたします。  たとえば、現在の企業の中で、率直に申し上げて公害を発生している企業の中の一部分で、特に民間に対してその害を与えた、国民に対してその害を与えた、しかし、そういう調査の研究の中にあって、特に自分たちの企業の中にある体質を改善することなく、その資料の隠蔽あるいは妨害、そのようなことがありました場合に、総務長官としては、どのような態度でお取り締まりをなさろうとお考えであるか。お答えをいただきたい。
  132. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはすでに自分たちの工場というものが、長い沿革を持って操業しておった。ところが、ずいぶん前にそのような、現在では明らかに企業公害と思われるような、人命その他に影響を与えた現象が発生しておった、ところがそのときにおいては、企業のほうは意識してか、あるいは学問的に立証の困難性があってか、今日の環境下における企業の姿勢とは全く違っておった。ですから、いまつくる企業なり、新しいそのような姿勢のもとに公害の発生源を断ち切るような仕事を付加して、設備を追加するような企業なり等については、意識もすでにだいぶ変わりつつある。そのことは先ほどの百五十社のアンケートの内容を、興味深く見たという点でうかがい知るのであります。しかし、これまでに地方段階において、あるいはまた会社、当事者間のみにおいて争われてきた、あるいはまた争いはあっても、くさい魚を毎日水揚げすることによって全量を買い上げて廃棄しているような、まさにナンセンスなやり方等も、現実には一種の収拾策として存在する場所等がある。そういうことを考えますと、企業のあり方という問題がすでに大きく変遷をしておりますので、しかし、これから企業が公害を起こして、人命その他に重大な影響を与えつつあるといったそういうような現象が起こった場合における企業の態度は、すでに国際的にもあるいは国内的にも大きく意識の変化もあるものと私は見ておりますので、いま過去の現象として逃げ回ってきたような感じのある企業、あるいは訴訟その他に持ち込んでつまらない法廷技術等で引き延ばしておるような感じのある企業等についても、今後起こる問題等についてはそういうことは考えられないと思います。しかし、いままで起こった問題は、メンツの問題なりあるいは企業の経過の問題があっても、ここらで企業側もやはり決着をつけるべきものはきちんとする。それを係争の場でやるのか、あるいは公害紛争処理法の発足したもとにおいて、それを政府の審判にゆだねようとするのか、やはり選択を迫られる時期にきておると私は見ておるわけであります。
  133. 浜田幸一

    ○浜田委員 最後に、私は総務長官に御要望申し上げます。国民が日本国家の制定いたしておりまする公害基本法に対して、一番——故意にこれは不満を持ち出すものもあるかもしれませんけれども、率直に申し上げて公害基本法の第一条第二項の中にございます「経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」この条項が非常に誤解を受けております。ただし基本法の第一条の中では、人命を保護するものに対しては優先をすると明記されておりますにもかかわらず、国民に大きな不安感を与えているのが私は基本法の第一条の二項であろうと思います。これらの点を含めまして、すでに経済の繁栄は国家繁栄の施策であることはもちろんでありますから、でき得ますならば第一条第二項の「経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」というこの段階についても、何らか総務長官に名文をお考えいただきまして、国民がほんとうに政府を信頼して公害問題に対する信頼が寄せられるようなそういう法制化の道をお考えいただくよう特に御要望申し上げる次第でございます。よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
  134. 加藤清二

    加藤委員長 次は多田時子君。
  135. 多田時子

    多田委員 昨日参議院の公害委員会におきまして、通産、経企、そして内田厚生大臣等々からたいへん前向きな御答弁がありました。それによりますと、公害法を抜本改正するということで、公害関係した法律を次の国会で改正し、公害対策に本腰を入れたい、こういうふうに各大臣がお述べになっているように新聞で知りましたが、いまもたびたびお話に出ておりましたように、前回厚生大臣が厚生省として発表された経済の健全な発展と調和の項を削除するという問題でありますけれども、この問題はいまもお話がありましたように国民ひとしく大きな喜びを持ってこの事実を迎えたわけであります。ところがその後、新聞等によりますと、佐藤首相の意向はやはり産業の発展というものを妨げてはならないということで、一たびは喜びましたけれども、再びはやっぱりというふうに嘆いたわけでありますけれども、昨日の各大臣の御答弁を考えますと、抜本的な法改正ということは、もちろん部分的にいろいろございましょうけれども、抜本的というからにはこの第一条の二項が削除されるということこそ、すべての面で抜本的な、そして前向きな公害の行政がなされていくという意味になるのではないか、こういうふうに感ずるわけでございます。この辺、昨日御答弁いただいた各大臣方のお考えをもう一つお伺いしたいと思います。
  136. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまの御指摘の点は、実はきのうの委員会では私は別に答弁しておりませんが、これは率直に申し上げまして、水の問題について二つの観点があります。  一つは健康の問題です。それから一つは環境保全の問題です。  この健康の問題につきましては、すでに現在におきましてもこれはいわゆる産業の成長とかそういうような問題との調和というような観点ではない。もうこれは何ものにもかえがたい問題でございますから、これは全国一律に保健という見地からこれを決定していく、こういうことになっています。  それから環境の保全ということにつきましては、従来は現行法にございますが、やはり産業間の調整、こういうことが非常に問題になってきております。しかし率直に申し上げまして、この法律の解釈は、私は時点によって刻々と変わってきていると思います。それはなぜかといえば、当然のことながら公害の意義についての意識が非常に変革を来たしてきております。十年前あるいは数年前と今日とではずいぶん違うのでございます。したがいまして、条文がどうあろうとも、結局この公害の取り扱いというものは、この条文の有無によって左右されている事実はない、私はこう考えています。今後ともそうした方針でもって臨むべきである、こういうふうに考えております。でありますから、この法律の改正の是非ということにつきましては、形式的には私個人としてはあまりこだわってはおりません。ただ、先ごろからしきりにこの問題が取り上げられております。私としましては、公害審議会あるいは公害対策会議でこれは十分議論をしてきめたらいいことであろうと思います。要はこの条文のいかんにかかわらず、実際問題として公害問題の解決を誤らないような方向でもって具体的な処理をしていく、このことが私は大事ではないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  137. 多田時子

    多田委員 同じく通産大臣にお願いしたいと思います。
  138. 加藤清二

    加藤委員長 通産大臣は順序がきめてありますので……。
  139. 多田時子

    多田委員 では以上です。
  140. 加藤清二

    加藤委員長 次は米原昶君。
  141. 米原昶

    ○米原委員 先ほどの総務長官に対する質問と答弁を聞いておりまして、それからまた同じ問題をいま経企長官に聞かれました。若干ニュアンスが違うように感ずるのです。これは私、やはり先ほど総務長官が言いました公害に対する基本姿勢にかかわる問題だと思うので、経企長官にもう少しこまかくその問題について聞きたいのです。  もともと公害対策と産業経済の発展とを同列に並べてその調和をはかるというような考え方自体が、ちょっとおかしいのじゃないか。本来からいえば、産業や経済は国民の幸福、健康、生活環境の向上のためにこそ発展させられるべきものである。ですから、やはり中心は国民の幸福、健康と生活環境の向上、そのためにこそ産業経済も発展の意義があるのであって、それを何かそれと矛盾対立するもののように産業経済の発展を別にあげるということ自体が企業の利潤追求に重点を置いている、そういうことになるのじゃないか。公害による国民の健康、生活環境の破壊と企業の利潤追求とどちらをとるかといえば、ためらうことなく国民の健康、生活環境の保全を第一とすべきだ、こういうことはもう当然じゃないかと思うのです。そういう意味では、やはり公害基本法の第一条第二項の経済発展との調和、この項目は少なくとも制定当時と比べれば、いまもお話しがあったようにかなり大きな意識の変化もあると思うのですが、制定当時からそもそもここに入れたという考え方自身が私はおかしいと思う。そうじゃないかと思う。当然これは削除しなければ、公害に対する政府の基本姿勢はちっとも変わってない、こう考えざるを得ないのです。この点についてもう少し話してもらいたい。
  142. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 先ほど私が公害の意識が非常に変革化してきているということを申し上げた意味は、あなたが御指摘になったような点です。つまり企業の利潤を擁護するための規定であると少しも読む必要もなければ、そういうふうに私は考えてはいけないと思っています。その両者を、公害と、その企業の利潤というものを、何か対立させてそして考えるというのは、もう根本から考えが間違っておる。そういう意味では私はあなたと意見が一緒なんです。今日において、公害問題について企業の負担の大原則というものが容認されているわけですから、そういう大原則に従って解釈をして少しも差しつかえないことであります。そういう意味で私はこの条文を一本のものとして考えておる、こういう意味においてお答えしたわけであります。
  143. 米原昶

    ○米原委員 この法案の中に、もともとこういう第二項が入れられた経過を考えてみましても、この公害対策基本法制定の際に、原案と違って、経団連のほうから、公害政策の基本原則は生活環境の保全と産業の発展との調和であるという建議が行なわれて、その結果変わったといういきさつがあることはもう知れ渡っています。そういう意味でも企業側の利益を擁護するというためにこの項目を入れているし、またこのために現在起こっているいろいろな問題の解決の場合にも、実際はこの第二項の考え方を企業側が持っていることが大きな障害になっている、こうだと思うんです。そういう意味では、公害対策に対する政府の基本姿勢を改めるためにも、この第二項を削除するということは絶対に必要であると私は考えます。これを改められないようなことじゃ、とうてい公害対策をほんとうに言われるほどやっていけるかどうか疑うわけです。いかがですか。
  144. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 先ほどから申し上げているようなことですから、まあ経緯はともあれ、今日において公害問題を考える者が、いま言われたようなことで考えておる者はないと思います。当然これは企業の責任なんであります。でありますから、この問題については厚生大臣に別に発言があるようであります。まあ私が先ほど申し上げたように、いずれ政府としての統一見解をこれはきめなければならぬと思います。まだ今日それを正式にきめていません。そういう意味では少なくともこの実態が、今日企業の立場に立って公害を論ずるということはもう過ぎ去っておることである、この事実、この基本的な事実というものがまず大事であろう、こういうことを申し上げているので、法文の修正その他は、私は技術的な問題に属するというぐらいに考えております。でありますから、そうした点は今後審議会の意見も聞き、政府として統一見解をまとめていく、こういうことになろうと思います。
  145. 米原昶

    ○米原委員 それでは、法文の解釈でどうでもできるというような意味を言っておられるわけです。じゃ、法文の解釈の問題じゃなくて、同じようにこの基本法のできた際に、四十一年八月の公害審議会の中間報告ですね。これでは企業の無過失損害賠償責任の原則も中間報告じゃ出ていたはずです。それがやはりいろんな財界の方面の圧力によって、法案制定のときには削られているといういきさつも聞いておりますが、当然この二項を削除する考え方からいえば、企業の無過失損害賠償責任の原則も基本法に入れるべきだ、こう考えます。そうでないと、これは法文の解釈でどうにもならぬ問題ですが、そういう点をどう考えられますか、今後この基本法を改正していく場合に。この点をひとつ聞きたいと思う。
  146. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ただいまの問題も実は公害罪等との関係もあり、今後刑事責任処理上も、これはいま法務省で検討しています。原則的にいえば、私の考え方としては、これは原則として無過失責任であろうと思います。ただ問題は、むしろ過失の有無の問題よりも、因果関係の確認が大事であろう、この点については具体的な問題になると非常にむずかしい問題があります。でありますから、この無過失論というものは、私は実は公害問題にとってはいわれておるほど重要ではない、もう個々の刑罰に関するいわゆる過失主義のそういう範疇の議論ではないんじゃないか、もっと大きな社会的責任、こういうような意味での責任論でありますからして、これをいわゆる従来の個人的な責任に属する無過失であるとか有過失であるとか、そういう範疇でもっていま判断をするという時期にもう適してない、こういうふうに私自身は考えています。いずれにしましても、これらもいま全体の制度の問題の一環として、特に公害罪等との関係もありまして、政府の統一見解をまとめよう、こういうところであります。
  147. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、やはり公害そのものに対する基本的な考え方ですね。先ほど総務長官は、公害は企業が起こすものだ、そういう意味では企業に責任があるということをかなり明確に言われました。個人の有過失、無過失の問題じゃなくて、企業に全体として責任がある。これは私的な企業だけでなく、公的なあるいは国有のいろいろな企業とかそういうものも含めてですが、企業に責任がある。公害とは企業による生活環境の破壊であり自然の破壊である。それが一歩進めば公害とは殺人であり殺傷罪だというような性格までいかざるを得ないような性質を持っています。すぐそれが殺人だとか傷害だとかいうことじゃありませんけれども、そういうことまで実際は起こっているわけですね。そういうような点では、個人の無過失とか有過失とかいう点以上に企業に責任があるということですね。こういう点でこの問題を考えなければいけないのじゃないか。そういう意味ではやはり無過失補償制を入れるのが正しいのじゃないか、こう考えるわけですが、その点について一言もう一度説明してください。
  148. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私の申し上げているのは、無過失責任とかなんとかいういままでの個人的な犯罪論の議論ではない、社会的な責任、新しい責任だということであります。そういう意味において企業が責任を持つ、これは当然である。でありますから、たとえばいまあなたがお使いになったように、これは社会的殺人——殺人というような個人犯罪的な用語を使うとどうもそういうふうにどぎつくなるように私は思うのですが、ほんとうに新しい事態に即した新しい用語と概念が必要だと思うくらいであります。そういう意味において、いずれにしても企業の責任ということはもう免れがたい事実であります。具体的に補償がどうであるとかこうであるとかいう問題は、先ほど申し上げました具体的な因果関係論の問題であろうと私は思っています。いずれにしても、企業の責任という点については意見において変わりはない、こういうことです。
  149. 米原昶

    ○米原委員 終わります。
  150. 加藤清二

    加藤委員長 渡辺栄一君。
  151. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 私は、質問者が非常にたくさんございますので、きわめて簡潔に御質問いたしますので、要点のみひとつ御答弁をいただきたいと思います。  まず第一番に、通産大臣にお答えをお願いしたいと思います。  公害の問題につきましては、通産省公害保安局をはじめとしまして、公害に取り組む姿勢を真剣にとっていただいておるように拝見をしております。特に電力、石油、鉄鋼、紙パルプ、メッキ工業、こういうようなそれぞそれの業種別の公害対策についても具体的な検討を加え、またそのためには開発銀行の融資等、それぞれこれに対する対策をお立てをいただいておるようであります。ただ私は、陶磁器等のようないわゆる零細中小企業でなければ実際はなかなか経営ができないような業態に対しまして、特に中小企業、零細企業を中心とする業態に対しましては、一面において公害の万全を期することが必要であると同時に、中小企業に対します国の配慮というものも非常に必要になってくるのではないか、そういうような意味におきまして、私はいろいろと御検討いただいておるということは承っておりますが、特にひとつ通産大臣から承ることができますならば、当面どのような考え方をお持ちになってお進めになっておるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに御指摘のように、中小企業の場合には、公害防止のための費用負担というものが非常に苦しいわけでございます。したがって私ども、公害防止事業団の中小企業向けの公害関係の資金の量の確保でありますとか、あるいは中小企業金融公庫につきましてもいわゆる公害ワクというようなものも持っております。税制等にも幾らかそういう措置がございますし、また商工会議所にこのごろは公害についての技術的な相談を受けるような場を設けておりまして、まだこれだけで十分ではございませんと思いますが、財政金融等を通じまして、大企業と違いますので、できるだけ親切にきめこまかくめんどうを見てまいりたいと考えております。
  153. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 通産大臣からは大筋のお答えがございましたが、最近、公害の関心が深くなってまいっておりますので、特に公害の規制地域から工場が移転をしたい、あるいはまた騒音防止の施設をしたいというような場合に、従来はそれに対する融資の措置はなかったと私は思うのでございます。また国民金融公庫の中にも公害防止施設等を特に融資の対象にしようというふうなことは明確に聞いてまいったことはないのでございますが、こういうような点につきまして、いま大筋のお話がございましたが、ひとつ明確なお答えを願えたらと思います。  それから私は、中小企業に対しましては融資のみでなく、一面においては税制の面においても、また特に公害防止のための施設あるいは技術研究というようなものにつきましては、政府においてもこれに対して財政的な援助措置を講ずるということが非常に必要である、そうでないと、公害対策を積極的に進めていくということが、反面においては中小企業、零細企業を殺してしまうという結果になるのじゃないか。実は、名前は省略をいたしますが、私どもの地方におきましても、いわゆる陶磁器関係の原料をやっておりまする業者が、非常に理想的な公害措置を講じまして、りっぱな公害対策ができ、また白濁水等につきましても十分な措置ができたのですが、一面においてその業者は倒産をしてしまっておるわけでございます。そういうふうに良心的な公害対策を行なっておる業者が立ち行かないということでは、私は、その事業そのものが社会的に必要でないということならこれは別でございますが、零細企業に対しては特に御配慮を願う必要があると思いますので、その辺につきましていろいろ御検討いただいておると思いますが、具体的に結論が出ておりますればお聞かせ願いたいと思います。またその御検討の過程であるならば、現在どのようなお考えでお進めを願っておるか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のような問題を私どもも実は注意をして施策の中に考え始めたところでございまして、ちょうど昭和四十五年、今年度から、中小企業が公害規制地域からただいま御指摘のように工場を移転する場合あるいは騒音を防止するための施設を行なう場合等には、中小企業金融公庫から新たに融資ができるような制度を設けたわけでございます。それからもう一つ、小さな中小企業の場合、小企業でございましょうが、国民金融公庫からも公害防止施設に対して融資ができるような道をこれも今年度から開いたわけでございます。ただ御指摘のように、まだまだ融資のワクが十分でありません。他方で、公害についての意識はだんだん高まってまいります。四十六年度におきましてもさらにこのワクは広げてまいりたいと思っておりますけれども、施策としてはそういうものを今年度からすでに始めております。
  155. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 もう一点お伺いをいたしたいと思います。  先ほど以来御質問もございましたけれども、私は特に通産大臣のお答えを願うのが最も適切であると思いますので御質問申し上げるわけでございますが、わが国におきましては公害基本法を制定いたしまして、特に環境基準等につきましてはこれを閣議においてきめるというようなきわめて筋を通した対策をとっていただいておるわけでありまして、この点私は、おそらく外国の公害関係の諸君もこの問題については関心を持っておるところじゃないかと思うのであります。  その公害基本法に関係いたしております問題につきましては、大気汚染、水質保全あるいは騒音防止、地盤沈下、悪臭の問題をいろいろ御検討いただいておるようでございますが、昨年の救済措置と今年の国会を通りました紛争処理法によりましておおむね体制が整ったと、今日までの関係者の御尽力に対しましてはわれわれ敬意を表しておるのであります。たとえば、今回のカドミウム米に対しまして、カドミウムの汚染を受けました米につきまして、それを取りかえるというような問題が起きておりまして、具体的にその責任は企業が負わなければならないというような問題が起きてきておるわけでございます。私は、現在は公害基本法の二十二条に基づきます企業負担の問題はまだ必ずしも明確になっておらないと思うのであります。すでに産業構造審議会の産業公害部会におきましては、その費用負担の問題に関します中間報告が出されておるようでございます。この問題は当然法の制定を必要といたしますので、早く進めていただくとしても、来たるべき国会に御提出を願って法律を制定するということになると思いますが、この企業の費用負担の問題が明確になっておりませんと、かえっていろいろな紛争を巻き起こしまして関係者も迷惑をすると思いますし、政府の公害に対します姿勢というものもかえって疑われることになると思うのでありまして、私どもとしましては、すみやかにその費用の負担の範囲あるいは負担の方法、こういうようなものにつきまして、もう一つ残されておりますこの問題を明確に法のもとに制定をされる必要があると思うのでございます。担当しておられます通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  156. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公害基本法第二十二条に基づくところの問題でございますが、御指摘のように産業構造審議会の産業公害部会で先般中間的な結論を得たわけでございます。私はこの中間的な結論の筋は妥当なものであろうと考えておるわけでございまして、つまり考え方といたしましては、公害防止関係の公共的な事業について、その企業が環境を悪化しておる、その企業の寄与度と申しますかそういうこと、あるいはその公害防止事業公害防止に有効である程度等々によって企業の負担割合をきめる、負担割合を改定することも一案でございましょうが、また画一的でない場合には、それぞれの行政機関が諮問機関の議を経てきめる、こういう考え方でございまして、基本的にこれは公害対策基本法の二十二条の趣旨を具体化しておるものと考えております。そこで関係の各省たくさんございますので、大体の意思統一を政府全体としてしながら、総理府を中心にできるだけ早く法制化をいたしたい、こう考えております。
  157. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 次は、厚生省に承りたいのでありますが、私どもはカドミウムの公害につきましては、現在ではカドミウムの公害が出ないように措置をしておる、しかし、従来の汚染されました土壌あるいはまたそこでとれます米その他につきましては、非常にむずかしい問題がございます。ひとつこの問題には真剣に取り組み、たとえば、黒部の米の汚染等につきましてもすみやかに結論を出すというような前向きの姿勢を承っておったわけであります。今回これにつきましては、具体的に玄米は一PPM、白米は〇・九PPMというような基準をお示しになりまして、明確な指示をされたものとわれわれは考えておるわけでございまして、これは適切な措置であるとわれわれは考えておりますが、先ほど以来御質問もございましたように、この基準が何か非常に不明確なような印象を与えておる面もあるように思うのであります。できましたならば、この機会にひとつ簡単でよろしいから明確な指示をお示し願いたい。これには関係しておる県がたくさんあるわけでございまして、またそれぞれの関係地域の農民は非常な不安を持っておる、そういうふうに思いますので、ひとつ明確な御回答をお願いできたらと思います。よろしくお願いしたいと思います。
  158. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまのカドミウムに基づきます米の安全度の基準ということで、先般厚生省で発表しました〇・九PPM、玄米の場合には一PPMの基準値につきまして、これではたして安全であるかどうかという世間の疑惑があるということでございますが、私どもとしましては、これをやる前提としまして相当の研究班によります調査研究をいたしてまいったわけでございます。その数値に基づきまして、諸先生の考え方によっていろいろと出てきましたものを計算をいたしましてこの基準を出したわけでございまして、結果につきましては相当の安全度を見ておるわけでございまして、決してこの基準以下であって問題が起こるということはあり得ないと考えているわけでございます。たとえば計算します場合、汚染した地元の食品と、ほかの地域から移入される食品をどうとっているかということもございます。これは地域によりまして非常に事情が違うわけでございますが、この場合にも汚染した地元食品を食べる場合が非常に多いという前提で計算をいたしております。それからまた地元以外のもののカドミウム濃度、これは天然にもあるわけでございますが、これも相当高くとっておりますし、あるいは米がほかの野菜類から比べますと高いわけでございますが、米以外の食品のカドミウム濃度、これも相当高くはじいている。あるいはまた個人で食べる量が違いますが、米を一番たくさん食べる人が平均値の倍以上食べる、こういう前提ではじいておりまして、したがって、結果的には大体最低私どもが計算の前提としております第一次検診から第二次検診に回される尿中カドミウム濃度三十マイクログラム・パー・リットルに比べますと、四分の一ぐらい平均的な安全が見込まれておりまして、結果的には鑑別診断班が要観察地域の判断の基準として示しました九マイクログラム・パー・リットル以下の条件に押えられるということになっておりまして、非常にその辺きびしい基準だと私ども思っておりますし、一九六三年にWHO、FAOで示しております五PPMといういう許容基準が出ておりますが、これに比べますと、五分の一程度である、かような状況になっております。〇・四というのを、よく引き合いに出されるのでございますが、実はこれは全く人為的汚染がないと思われる地域の通常出てきます一番高いところをとって、これ以上汚染があれば、それにつきまして環境の調査を精密にやっていこう、こういう判断の基準でございますから、それと今回のような米の安全の基準というのが全く同じであるということはあり得ないわけでございまして、かりに同じだとすれば、むしろ最初の〇・九というのが、極端に高過ぎる、かようなことになるのでございまして、私どもとしましては、従来何ら数値がなかったので〇・四というのが使われてきておりますが、これは今回〇・九というのができました以上は、それによってすべての行政を進めていく、かように考えているわけでございます。
  159. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 最後にもう一点だけお伺いをいたします。  ただいまの御説明で私どもよくわかりましたが、これは自由ではございますが、いろいろな見解が表明されまして、やはり住民はそれぞれに不安を持つと思いますので、今後ともそういうようなはっきりした資料に基づいた厚生省の見解というようなものは、できる限り徹底させるようにお願いをいたしたいと思います。  時間がございませんので、もう一点だけ簡単に承っておきますが、それは先ほど山中長官から、いろいろな表現のしかたはございますが、必要であれば予備費を出してでも緊急な対策は進めるというような御発言があったものと私は考えておりますが、この機会にやはり大事な問題は、客観的な権威のある資料に基づいて明確なる——これは公害であるが心配がない、これは公害であるけれども、こういう対策を立てるということが、国民に明示されるということが必要でありますが、そのためには、そのような体制を整えることが必要であろう。そこで、私ども国立の公害衛生研究に関しまする機関を整備する必要があるのではないかと思いますが、こういう点につきまして簡単にひとつお考えを承っておきたいと思います。  なお、私先ほど申し上げましたけれども、いろいろな問題が出ておりまして、いま米の問題は解決の方針を示されたのでありますが、たとえばお茶にいたしましても、牛乳にいたしましても、われわれが日常食べておるようなものについても、いろいろな見解が表明されておりますので、私はこの際、やはり公害に関連するような問題、水銀、カドミウム、鉛等のわれわれの健康に直接関係のあるものはもちろんでございますが、そういうような必要なものについては、全国的に一斉に調査をして、そしてその結果を国民に公表して、これに必要な具体的な解決策を指示していただきたい、こういうことをお願いしたわけでございますが、私はこういう点については、何といっても厚生省が、まずその姿勢で臨んでいただかなければならぬと思うのであります。そういう意味におきまして、厚生省は一体いかなる考え方で推し進めになろうとしているか。また、先ほどもお話がございましたが、地方においては公害の測定機器等の整備も十分でないということのために、いろいろな民間の機関が、これに一いい意味において私は解釈をしておりますが、いろいろと御配慮を願っておる。そういうことで、いろいろとまた問題を起こしておると思うのでありますが、そのためには、そのような公害測定機器の整備というような問題も、地方団体の整備ともあわせて考えていく必要があると思うのでありますが、どのようなお考え方であるのか、この際承っておきたいと思います。  時間がございませんので、以上で私の質問を終わらせていただきます。
  160. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答え申し上げます。  ただいまの第一点の国立の公害衛生研究所でございますが、これにつきましては、四十五年度の予算調査費がついておりまして、現在事務的な検討をある程度終わりまして、準備検討委員会を設け、これに付議いたしまして、さらに各方面の専門家の意見を十分聞きながら最終的な考え方を取りまとめていきたい、かように考えているわけでございます。  建設といたしましては、来年度、再来年度二カ年で完了するということでございます。この機関で私どもは将来国民の健康、衛生等の問題に関連する非常に広い領域の研究をいたしたい、汚染影響の研究部門あるいは環境の制御のための研究部門あるいは環境の計測の研究部門等、あらゆる分野を広範に取り入れた研究所をつくっていきたい、かように考えております。これが先ほどいろいろ出ておりましたような因果関係の究明というような面におきましては、非常に大きな力を発揮することになろうと思っているわけでございます。  それからカドミウム、水銀等の調査の問題でございますが、これにつきましては、私どもとしましては、暫定対策要領をそれぞれ示しまして、原則的には都道府県の段階でやっていただく、こういうたてまえをとっているわけでございます。ところが最近、県の段階におきましても、いろいろと力がないとか、あるいはデータを十分公表しなかったとか、いろいろな点で批判を受けているわけでございますし、こういう世間の批判にこたえますためにも、厚生省みずからできる範囲で今後積極的に取り組んでいく必要があろうと思っているわけでございます。  なお、また特にこういうような仕事をやりますために、県におきます計測のいろいろな分析の機器、こういうものの整備が不十分である、あるいはスタッフが不十分であるという点もございますので、こういう点、今後十分予算的な裏づけもしながら整備を進めてまいりたいと思っているわけでございます。
  161. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 終わります。
  162. 加藤清二

    加藤委員長 政府委員への質問は、またどうぞ留保なさってけっこうです。
  163. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 はい。
  164. 加藤清二

  165. 土井たか子

    ○土井委員 きょう私の質問を申し上げたい問題は二つございます。  一つは、六月九日、十日、十一日のかの公害対策委員会におきまして、問題として取り上げました自動車ガソリンのもたらす鉛害、アンチノック剤として現在使用されております例の四アルキル鉛に関する問題でございます。  他の一つは、大気汚染、特にその大気汚染の中でも硫黄酸化物による汚染の問題が、実は緊急を要する問題だと考えておりますので、この二つの問題にしぼってきょうは質問をしたいと考えております。  いずれの問題点につきましても、実は通産大臣から御見解を承りたくて、先ほどからおいでを心待ちにいたしておりました。しかし、残念なことに通産大臣がここに御臨席になる時間が限られているようでございまして、私といたしましては、涙をのんでこのあとのほうの大気汚染の問題は、後の時間に譲りたいというふうに考えております。したがって、一番目の自動車ガソリンの例の四アルキル鉛による鉛害問題にしぼってひとつ質問を申し上げます。  新聞の報ずるところによりますと、あの六月にこの席で問題にいたしましてからあと通産省のほうは、業界に対する指導をお進めになって、七月の一日付でガソリンの低鉛化実施計画をおまとめになりました。その内容が、報ぜられているところによりますと、通産省が予期なさっておった以上に業界のほうは協力的であって、そして当初通産省の予想していらっしゃった四分の一減を上回って約四割減になるはずだということが書いてあるわけでございます。  ところが、業界のほうで現にいろいろな資料を提供なさっている内容を見ますと、石油精製二十三社から提出されているということが書かれているわけでございますが、この石油精製二十三社以外にいま把握なすっていらっしゃらない石油精製会社が他にあるかどうか、その辺からひとつお尋ねを申し上げたいと思います。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 鉱山局長からお答え申し上げることをお許し願いたいと思います。
  167. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。  お話しの精製会社以外が自動車ガソリンを生産しておるということはございません。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、ガロン当たり一・一CC以内で押えよということが通産省側のいまのお考えでいらっしゃるわけでございますね。
  169. 本田早苗

    本田説明員 具体的に申し上げますと、ハイオクタンガソリンについては一・一以下ということで明示いたしましたが、レギュラーについてはできるだけ低くということで一・一以上があり得るかとも思ったわけでございますが、現実の計画では一・一以下に実行計画は報告されております。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 それでは先を急ぎますが、問題の四アルキル鉛を製造する国内生産化初の東洋エチル、この東洋エチルに実は私、先日現地に参りましていろいろと会社の責任者の方から聞いてきたわけでございます。そういたしますと、東洋エチルさんのほうでは、私たちガロン当たり一・〇CCというふうに考えておりますと。しかも、それは通産省のほうでは鉛抜き五カ年以内という計画をお持ちでいらっしゃるわけでございますから、これから四十六年、四十七年、四十八年と年を追っておそらくこの加鉛量というものは下回らなければならないわけでございます。ところが、東洋エチルさんのほうではガロン当たり一・〇CCということを恒常的にお考えになっていて、しかも需要は伸びる一方というお答えでございました。したがって、生産量はふえこそすれ減ることはないというたいへん強気な考えを実は私ども聞いて帰ってきたわけでございます。この点について通産大臣のお考えはどのようでいらっしゃいますか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもは、五年以内に完全無鉛化ということを、産業構造審議会の部会の答申もあり、またさらに小委員会をつくりまして具体的に検討をいたしておりまして、これは達成ができるというふうに専門家考えております。米国などにおきましても同様の研究が進んでおるようでございます。  そこで、いまの会社の見通しと、そういたしますと私どもの考え方が一緒でないわけでございますが、まあガソリンの消費量というものはおそらく年々ふえてはまいりましょう。それはそうでございますが、無鉛化が進んでまいりますと、そのほうからの四エチル鉛に対する需要はどうしても減っていくことになりますから、どうも私どもは、ただいま仰せられましたようなことでありますと、会社の考えていることが間違っておるのではないだろうか、無鉛化ということはとうていできないことだというふうに会社が考えておるといたしますと、これを研究しておられます専門家各位の御所見とは異なったことになるので、私どもはできるものだというふうに聞かされておるわけでございます。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 いまの通産大臣の御答弁を伺っておりますと、これはたいへんなことだと思うのです。実は企業者側からいたしますと、先ほど私が聞いてまいりましたような内容で企業計画をお立てになっておる。その考えが間違っておるということになると、これはやはりそれじゃどうしてくれるんだとおそらく開き直られるだろうと思うのです。通産大臣といたしましては、こういうふうなことに対処するのに、どういうふうな方策をそれならばおとりになるか、あるいはおとりになるお考えがおありになるか、その辺をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 従来四エチル鉛というものがわが国に生産がございませんので輸入をいたしておりましたから、そこで東洋エチルという会社が外資と提携をいたしまして、それを国内で生産しようとした。その段階ではアンチノック剤というものは非常に入り用で不可欠なものだというふうにむしろ考えられておったかと思いますが、しかし、いまやこういうふうに世の中の関心が高くなり、政府が率先して無鉛化へ進んでいくということに明らかになっておるのでありますから、民間企業として、もちろん政府の反対はありましてもそういうことはできるものかといって、見込みで生産をしていかれる分には私どもおとめはいたしませんけれども、私どもの考えが正しければ、そのような企業の経営方針では先々行き詰まるのではないか。まだ生産には入っていないでございましょうけれども、そういう見通しでやっておられますと間違えるのではないだろうか。もちろんそれについて、政府に責任があるとは考えておりません。おりませんが、十分これだけのことは企業の側において知ってやっていただくことが必要だと思います。
  174. 土井たか子

    ○土井委員 私、その企業者から聞いておりまして、一点気にかかった問題は、たとえガロン当たり添加量を下げていってもガソリンそれ自体の需要が伸びる一方なんだから、したがって、四エチル鉛を製造する側としては生産量を引き下げていく必要はない、そういうふうなお考えだったようでございます。そういたしますと、このままでいきますと、たとえガロン当たり添加量というものを下げましても、ガソリンそれ自体の量がこれから多くなっていく、需要が伸びるというようなことでございますから、一般的にそれを見た場合には、やはりガソリンのもたらす鉛害というものは一向に除去されない。全体的に見た場合に除去されないばかりか、せっかく通産省が五年以内に鉛抜きに取り組むのだというふうなことをお考えになったことからすれば、実はそれとは逆行した方向に事が動いていくのではないかというふうな危惧を持ったわけでございます。こういうふうな点についてはいかがでございましょう。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先刻も申し上げましたように、ガソリンの消費量は確かに年々ふえると思いますけれども、いずれにいたしましてもコンテントを先ほど申しましたように半分にするといったようなことから始めて、五年後にはなくしてしまおうということでございますし、その場合問題になるのは、おそらく在来車——新しい車はよろしいといたしまして、在来車がそういう無鉛化ガソリンでどういうふうに処置するか。これは多少エンジンに手直しするというようなことが入り用かと思いますけれども、いずれにしても五年先にはもう無鉛化ということが、ガソリンの側からも車の側からも原則になってまいりますから、しかも、その間漸減していくと考えられますから、たとえ消費量が少しふえましても、全体の鉛の量というものはふえるはずがない。それをそう考えておられますと、企業の経営を間違えるのではないかと思います。
  176. 土井たか子

    ○土井委員 国内市場でそのように相手にされない品物について、先行きたいへん強気で、年々これは増産を見越していらっしゃるわけでございまして、四十八年以降は一万八千トンベースからさらには二万トンを目ざしてわれわれがんばるのだということをおっしゃる。それはどうも国内の状況からすると矛盾していやしませんか。おそらく通産省側といたしましても、こういう実際問題が引き起こってくるということになりますと、いまおとりになっておる政策からすると二律背反みたいな状況になってくるわけでございまして、まことにこれは矛盾した現実ということをお認めにならざるを得ないようなことになると思うので、私はそれはおかしいということをその場で申しましたら、いや実は東南アジア方面での需要が伸びるだろう、したがって、それに対する輸出ということに私ども望みを託しておるというふうな発言がそこであったわけでございます。国内で相手にされない品物を外国に輸出するということに対してどのようにお考えになりますか。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おそらく、わが国の周辺の国でも所得が上がってまいりますと、だんだんモータリゼーションということが起こってまいると思いますから、あるいは会社がそう考えておられるのかもしれません。そこでそれらの国は、モータリゼーションの諸外国は、鉛害といったようなものもわれわれが考えるほどあるいは考えないかもしれません。いわゆる公害意識というものはある段階から後でないと出てまいりませんから、そういたしますと、それらの国の自動車を使用する人たちはやはりハイオクタンの元気のいいガソリンを使いたい、また車もそれでいいのだというふうに考える段階があるのかもしれない。一挙に無鉛化までいらっしゃいといって、何も私どもそれらの国々に、もちろん強制もできませんしおすすめすることも、よその国のことでございますから……。そういう段階というものはあるかもしれない。その場合の輸出を考えておるとすれば、それは考え得ることだと思います。私どもとしましては、もちろんこの企業に何も政府が頼んで生産をしてもらっておるわけではございませんから、二律背反というような問題はございません。  それから、生産いたしますものがわが国においてこのような公害の状態になりますと、明らかに人体に有毒だという程度になってきていると思いますが、武器とか弾薬とかではございませんから、昨日まで、あるいは今日もなおある程度は必要不可欠だというのが、残念ながらいまの現状でございます。したがって、それらのものを今後必要とするそれらの国に輸出をするということであれば、あえて禁止をすることはない。もちろんそれらの国においても、これらのものはいずれにしても有害でございますから、なるべく早くおやめになることがほんとうは望ましいのではないかとは思いますが、これはよその国の事情でございますから、私どもとして、それに必要なものの輸出を禁止をすることが必要であるとは考えておりません。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま通産大臣は、それらの企業に頼んでやってもらっているわけではないからとおっしゃいましたが、頼まれた、頼んだということでなしに、現にやはりそういう東洋エチルという会社に対して認可をなさっているのは通産省でございますから、通産省が歩み出された例の鉛抜き五カ年計画からすれば、鉛それ自身をつくる企業に対して認可をするということは二律背反ではないかということをわれわれ注目しておるわけでございます。したがって、そういう企業が先行き非常に強気で増産を考えていらっしゃる状況についても、これを手放し、野放しでほったらかしていることについてはおそらく許されないのではなかろうか、そういうふうに考えるわけでございまして、先ほど来の御質問を申し上げたわけです。したがって、頼んだの頼まないのという問題ではないわけでございますから、その点ひとつ御了承をお願いいたしたいと思う次第でございます。  それからさらに、いま外国からそれだけの注文があれば、それに対して禁止するすべがないということをおっしゃいましたが、外国からほしいから売ってくれといわれたものに対しては、何もかも無制限に売ることを現に認めていないという管理令がございます。御承知のように輸出貿易管理令でございますが、この輸出貿易管理令の中で、売ってほしいというように言われても、売ることに対して一定の規制をしている。武器とか弾薬であるとか等々の類は、なぜこれに対して規制をすることが必要だというふうに通産大臣はお考えになっていらっしゃるわけでございますか。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 問題の設定のしかたが、ちょっと私の考えておりますのと仰せられておりますのと違うかと思います。つまり四エチル鉛が入っておるガソリンというものは、わが国ばかりでなく、世界の先進国でさえ最近までいわば不可欠のものと考えられておった。しかし、それらの国も、公害という問題が起こってまいりまして、もうそういうものはやめたほうがいいということになってまいったのがわが国その他の幾つかの先進国の現状であります。ところが、世界の国の中にはそのような公害という問題もまだ発生していない、あるいは当分発生しないであろうというような国が当然のことながらあるわけでございますから、それらの国で四エチル鉛の入ったガソリンを使うということは、何もそれらの国の人たちの命を直ちに危うくする、その健康を害するものだとわれわれが判断するわけにはまいりません。それはその国がきめることだと思うのでございます。したがって、もしそうであるとすればこれはもう四エチル鉛はそれらの国にとりましては必要不可欠のものになりますから、注文があればこれは送ってやらなければ自動車が動かないということになるわけでございましょうから、これは貿易管理令でいうところのたとえば武器とか弾薬、これは本来的に人を殺すために用いられるものでございます。あるいは麻薬、これも特定の医学の用途を除きましては、世界的に麻薬を禁止するという条約なり何なりはあるわけでございます。それらのものとこの四エチル鉛とを一緒にするわけにはまいらないというふうに私どもは考えます。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 現に、この輸出貿易管理令の中では、一連の、武器弾薬以外にも管理対象になっておる品物が列記されておるわけでございます。いま通産大臣のおっしゃったとおり、当面は日本のような過密地帯を持たない、あるいは自動車の数がそれほど多くない外国においては、日本のような鉛害がすなわち起こるという状況にはおそらくはないであろうと予想されるわけでございますけれども、少なくともアメリカから追い出され、やがて日本からも追い出されるという運命にあるこの四アルキル鉛の取り扱いについては、やはり追い出す当事国として、心してこれは取り扱わなければならないということは、はっきりしている事実だと思います。そういうことから考えてまいりますと、この際問題を少し広げていくということはどうかと思いますけれども、いま輸出貿易管理令というものを再吟味いたしまして、この中でいわゆる管理対象になっていないものでも、毒物劇物取締法に触れるような物品であるとか、あるいは現に私たちの生活に実害をもたらしておるような公害を予防していかなければならない、公害問題の上で取り扱ってこれを取り締まっていかなければならぬ物品に対して、輸出をすることに一連の管理をしくということが必要になってくるのではないかと私は思うわけでございます。この際ひとつ輸出貿易管理令についての再吟味が必要だというように私は認識しておるわけでございますが、通産大臣におかれてはこの点をどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょうど毒物劇物ということを言われましたので、似たような例であるかと思いますが、あるいは麻薬、これらのものが全くいかなる場合でも有毒、有害であるといたしますと、それ以外に用途がないといたしますと、これらのものを生産することも輸出することも無意味なことになるわけでございますが、そうでございませんから、これらのものが一定のきびしい条件のもとに生産をされ、また輸出をされていくわけでございます。四エチル鉛も、これを必要とする国にとりましては、同様な性格のものであるというふうに考えます。
  182. 土井たか子

    ○土井委員 といたしますと、最後に追い打ちをかけるような、確認を申し上げるかっこうになるかと思いますが、将来にわたってこの輸出貿易管理令の中で、四エチル鉛を管理対象に置くということも考えていらっしゃるわけでございますか。
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 むしろ置くつもりはないということを申し上げておるわけでございます。
  184. 土井たか子

    ○土井委員 一連の公害の実害を引き起こしておりますような物品に対して、外国に、管理の網をくぐって野方図に売り出すということ自身、私はもうすでにあるエコノミックアニマルという非難めいたかの表現が、エコノミックキラーになることを非常におそれるわけでございまして、この点に対しては今後東南アジアに進出するという財界のいろいろな足並みがあるわけでございますから、心して考えておかなければならぬ問題だと私は思うわけで、四アルキル鉛の主なる市場なんかも、聞いてみますと東南アジアであるということをきっぱり言われるわけでございますが、この際したがって四アルキル鉛のもたらす実害のみならず、以後日本の貿易対策であるとか、もっと大きく言いますと、やはり外交政策一般にも響く問題だと思います。これはやはり日本の国策をこれからいかに持っていくかというふうな問題にもひっかかってくることでございますから、通産大臣におかれましてはこの点に、いままでもそれは御留意なすっておるでしょうけれども、気を新たにして取り組んでいただくということをこの際御要望申し上げたいと思います。  時間が来ましたので残念ですが、あとの問題は後の時間に譲りたいと思います。
  185. 加藤清二

    加藤委員長 次は多田時子君。——多田君に申し上げます。先ほど答弁漏れになっておりました質問を先にどうぞ。
  186. 多田時子

    多田委員 通産大臣にお願いいたしたいと思いますが、先ほど来総理府長官並びに経企庁長官等等に同僚議員からもいろいろ質問がございまして、おおむね帰するところは一つのように思いました。先ほども経企庁長官に申し上げたことでございますけれども、昨日の参議院での各大臣の御発言はまことに前向きな、そして公害対策という問題に真剣に取り組んだお姿のように拝しましたものですから、それと、そして公害基本法の第一条二項の「経済の健全な発展との調和」ということを削除をするという問題、抜本的な対策というからにはこの一項を削除するだけの大英断ではじめて抜本的な改正というふうにいわれるのではないか、このように考えましたものですから、各大臣のお考えをお尋ねしたい。同時に、佐藤首相は、この厚生省の発表直後に、産業の健全な発展というそれを阻害してはならない、公害対策に懸命のあまりそれを妨げてはならないというような発言もあった折でございます。先ほど、総理府長官の御答弁を伺っておりますと、そういう文字だけをもって人の心は推しはかれないという御答弁でございました。佐藤首相は決してそのようではない。先ほどの経企庁長官のお話によりますと、その公害基本法第一条二項の一節は何ら公害対策に矛盾するところはない、このようにお二方のそれぞれの意見がございました。いま最後に、通産大臣に対して、その一点についてお伺いしたいと思います。
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど経済企画庁長官がお答えになりましたときには、私も隣でお答えを伺っておりまして、私といたしましても、大体同じ趣旨に考えておるわけでございます。しかし、わざわざお尋ねでございますから、多少理屈になるようですが、この法律について感じておることを申し上げたいと思います。  それは、法律の第一条の第一項において、「もって国民の健康を保護するとともに」云々と、これが第一項の規定でございます。したがって、この考え方は、国民の健康というものは、これは何ものにも優先をする、人の命でございますから、そういうふうに考えられておると思います。そして、次に、生活環境を保全することを目的とするが、その「生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和」云々とこれが二項の規定でございます。そして、命というのは何にも増して大切でございますが、その次に、人間が幸福に暮らす、いわゆる福祉の問題になるわけでございますが、幸福に暮らすためには、いろいろな条件があるであろうと思います。たとえば物、質的に豊かである、所得が高いということは、確かに人間が幸福に暮らし得る一つの条件であることは間違いないと思います。また、生活環境が保全されておる、これも国民が豊かに幸福に暮らすための大切な条件であるというふうに考えます。そこで、先ほど、別の委員の御発言を承っておりますと、この「経済の健全な発展」ということを、企業の利潤追求ということとイコールのようなお考えからのお尋ねがありましたが、私どもは、経済の健全な発展というのは企業の利潤追求だ、それがイコールだというふうには考えておりませんで、これによって国民の所得水準、生活水準が上がる、そのための経済発展であると考えておりますので、これも福祉の大切な内容になっておるというふうに思います。このことが、生活環境の保全としばしば衝突をするという現実は存じております。存じておりますから、所得の向上も大切であるし、生活環境の保全もまた大切なことである、こういうふうにこの法律は考えておるのであろう。人の命とそれとを並べて考えておるわけではない、こういうふうに解釈をいたしております。  したがって、結論としては、先ほど経済企画庁長官が言われたのと同じようなことになりますので、どっちにしてもあまりこだわってこの文字を考えなくてもいいのであろう。こういうことを——しかし、いろいろ中央公害対策審議会等でまとめて議論をしていただくことは、私どもけっこうなことだと思っております。
  188. 多田時子

    多田委員 国民の健全な環境保全という問題に対して、各大臣のきのうの御発言のように積極的な政策をよろしくお願いしたいと思います。  以上です。
  189. 加藤清二

    加藤委員長 次は、土井たか子君。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどに引き続きまして、二番目に私がお尋ねをしたい問題、つまり、大気汚染の原因を尋ねてまいりますと、硫黄酸化物による汚染が著しいということが現に明らかでございます。この硫黄酸化物による大気汚染の特に有名な場所といたしまして、兵庫県に尼崎市という場所がございますが、厚生省のお調べになった結果を見ましても、その汚染度は、川崎市に次いで全国第二位だということになっております。去る二月十二日に閣議決定を見ました硫黄酸化物の環境基準の五項目をいずれも大幅に上回っております。私も現実に尼崎市に参りまして、かの地の事情を見まして、いかにこれ空気がよごれているか、この中で四六時中生活している人たちの生活がどれほど荒らされているかということを、まのあたりに体験してきたわけでございますが、この問題をめぐりまして、現在の大気汚染防止法では、工場立ち入り検査権限は兵庫県知事にございまして、市長は、事業場への立ち入り権限しか認められておりません。このために、各市でそういう方式をとると同じように、尼崎市の場合にも、大気汚染の防止協定を結ぶことによりまして、市長の立ち入り調査が認められるようになったわけでございます。  ところが、この大気汚染防止協定を見てまいりますと、この協定のねらいというのは、平均硫黄分二・六二%の重油を通常時で一・七〇%以下の低硫黄重油に切りかえることによって、これから先三年から五年の短期間に、硫黄酸化物によるところの環境基準の実現をはかっていこうというところに一つの主眼があるわけでございます。そのような意味を持たせて市長の立ち入り調査を認めさしたのが特徴になっているわけでございます。  ところが、低硫黄重油への転換を促進しただけでは、実は、排出総量の増加を押えることはできません。現に、この協定締結工場より出されております改善計画書を見ますと、四十二年を一〇〇といたしまして、ピークは昭和四十四年で一二五となりました。将来昭和四十七年には一〇六というふうに横ばい状況を示すことが明らかにされております。尼崎は既成の過密工業都市でございます。重油の大幅な増加は現在のところ考えられないにいたしましても、どうも問題の発祥の地でございます発電所が現在、あっちこっちで建設が予定されている個所でボイコットを受けまして、重油の使用量は増加しないとは必ずしも言い切れないような現状にあるらしゅうございます。したがって、協定を事実結びまして、幾ら市長が立ち入り調査をいたしましても、現実の問題として、この重油の絶対量を押えていくことができない。したがって、そこから吐き出すところのものを公害基準を下回るところに押えていくということが実行困難であるという現実の問題をかかえているようでございます。  こういうふうな状況に対しまして、どのように抜本的な措置を講じたらいいとお考えになっていらっしゃるか、ひとつそこのあたりからお聞かせをいただきたいと思うのです。
  191. 本田早苗

    本田説明員 御指摘のように、今後の大気汚染防止のためには燃料の低硫黄化が必要であるということで、昨年低硫黄化部会におきましていろいろ検討いたしたわけでございます。昭和四十二年には、いまも御指摘のありました過密地域、あるいはすでに汚染されておる地域、あるいは今後汚染が予想されるので事前に予防を考慮すべき地域等で考えますと、四十二年では三千六百万キロリットルの消費があったわけでございます。これが御指摘のように、四十八年には、このときの推定で九千三百六十万キロリットルということで二・七八倍の需要量の増加になるわけでございます。しかしながら、環境基準を達成するための燃料といたしましては、四十二年が二・四五%であったものを少なくとも一・二五%、あるいは最近の状況でまいりますと、さらにこれを若干低めることが必要であるというふうに答申を受けております。  これに対する対策といたしましてはSO2の全然ない天然ガスの利用あるいは排煙脱硫の活用等がございますが、早急にその実現は、大きく効果を期待するわけにまいりませんので、硫黄の少ない低硫黄原油の輸入の増加と、それから重油脱硫の設備の増強に伴う生産増強、この二点によりましていまの一・二五%、九千三百万キロリットル供給できる体制を確立してまいろうということでございます。  現在の重油脱硫の見込みといたしましては、設備許可にあたりまして重油脱硫装置の併置を条件として行なっておりまして、着々建設が進んでおりまして、当初の予定よりはさらに増強される見込みでございます。  それから、低サル原油の輸入につきましても当時の見込みよりも若干進んだ、低いパーセンテージの平均原油が輸入されておる状況でございまして、現在の状況でまいりますと、中間的には若干問題がございますが、四十八年度には達成の見込みを立てておる次第でございます。
  192. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいまの鉱山局長の説明を若干補足させていただきます。  当地は、御指摘のような、非常な過密地帯でございましてSO2の総量の問題が非常に重要な問題を持っておることは御指摘のとおりでございます。  四十四年度のSO2の総量は尼崎市の主要二十七工場について調べますと約七千ノルマル立米・パー・アワーでございます。四十五年度におきましては、低硫黄化対策その他が進みました結果、これが六千七百五十ノルマル立米・パー・アワーに減っております。  今後これをさらにSO2総量として押えていくというのがわれわれの対策の基本的なねらいでございまして、産業公害総合事前調査というものをやっておりますので、これから設備の能力がある程度増加する場合でも、それはSO2総量としては押える方向で指導していくということをはっきり確立しておるわけでございます。  環境基準達成地域に五年地域と十年地域がございますのは先生御承知のとおりでございますが、これは一応十年地域になっておりますので、四十七年あるいは八年に完全に環境基準を達成するということは、あるいは不可能かもしれませんが、できるだけそれに近い時期に環境基準の達成をはかろうという形で、各工場の指導を全体として十分見きわめながら行なっておるというのが実情でございます。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 問題は原油の硫黄分を押えるということに集中するわけでございますね。  そこで、硫黄分を押える方策にはいろいろあると思うのですが、現にことしの七月から実施しております企業に対して原油の関税を軽減するという例の問題がございます。  ところがこれが当初取りきめられるときに、大蔵省あるいは自治省のほうから、これは本来企業に責任があるべきものであって、こういう対策をするということは少し行き過ぎではないかというふうな意見があったやに聞いておりますが、この点、御承知であるならばお聞かせいただきたいと思うのです。
  194. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。  重油の脱硫というものにつきましては、非常にコストのかかる設備でございまして、これによって低サルの重油を供給するということになりますと、キロリットル当たり千三百円から千七、八百円かかるということでございまして、これだけ高くなるコストを、従来のままの価格で販売していくということにはいろいろ問題が生じますので、できるだけ国としても考慮しよう、その際、原油については一二%の関税がかかっておるわけでございますので、この関税分については免除するという意味で、還付するということによって脱硫重油の負担を国も持つ、生産者も持つ、需要者もある程度持つということで、大気汚染の効果をあげてまいろう、こういう趣旨で本年度から実施したわけでございます。その際、御指摘のような議論もあるにはありましたけれども、数字的に見ますとかなり大幅なコスト上昇の実情でございますので、関税の還付についてある程度考えよう、こういうことに相なったわけでございます。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 例の通産省にございます、エネルギー調査会の答申に従ってこういう関税に対しての軽減政策というものを進められたというふうに考えてよろしゅうございますか。
  196. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。  低硫黄化対策として当面重点になるのが、先ほど申し上げましたような低硫黄原油の輸入の増加と重油の脱硫である。しかし、重油脱硫にはいまのような事情があるということで、関税についての還付の答申を受けております。この線に沿いまして、われわれとしてもこれを実現するようにはかってまいったわけでございます。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃいました大きく分けますと二つの問題、片や重油の脱硫の場合でございますし、片やは本来低硫黄原油を輸入するという問題であります。重油脱硫をした場合についての関税を軽減するほうだけは現に認めるということになっておりますが、片やの、最も根本的な問題というふうに理解してよかろうと思うのは、本来低硫黄の原油を輸入した場合というのが、昭和四十六年までに問題を検討するということにゆだねられているようでございます。この点については、現にどういうふうな見解が関係省部内で動きつつあるか、その間の事情をお聞かせいただくことができればひとつお答えいただきたいと思います。
  198. 本田早苗

    本田説明員 低硫黄原油の輸入に伴いまして、これに対して関税を還付するという問題は、御指摘のとおり四十六年度の問題として検討しようということに相なっておりまして、現在は各省の間でもまだ話し合いになっておりません。原油の品質の硫黄含有量の低減の状況、あるいはこれに伴う輸入価格にどうはね返るかという点は、現在実績等によって整理をしておる段階でございます。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 これはなかなか手ぬるいことだと思うのです。重油脱硫の場合については、御承知のとおりかなり設備投資にお金をかけなければいけない問題、したがって、企業のほうにだけゆだねておくということでは、どうも十分に所期の考え実行することができないからというので、こういう関税軽減措置がとられたやに思うわけでございますが、しかし、抜本的対策としては、そもそも輸入する段階で、低硫黄の原油を輸入するということが何としても必要であるし、と考えまして、大事な問題のように思われてなりません。それについては「四十六年までに」という通産大臣の答弁が、ことし四月十四日の内閣委員会であったことを議事録によっても私は確認いたしております。したがって、四十六年から始まるのではなくて、「四十六年までに問題を検討」しておかなければならない。いま御承知のとおり四十五年でございます。しかも四十五年も半ばをとっくの昔に過ているわけでございますので、あと残り四十六年までにどのようなお考えをお持ちになるのか、せんじ詰めていかなければならない段階にもうきているのだろうと私は思いますのに、まだ一向そのことに対して話し合いが進められていないというただいまの御答弁でございますので、その点についてはまことに手ぬるいという一言に尽きるので、どうにもしようがないような気がするわけでございます。これは抜本策でございますから、どうか早急に政府としてもお考えを地固めしていただく必要があるように私は思います。どこまでまいりましても、要はこれはサルファを低くするということを考えていくのに、あの手この手十分にやっていかないと片手落ちで、こっちはやったけれどもこっちはやらないのじゃ、結果としては同じ状況を繰り返す、悪循環を繰り返すばかりということになるわけでございますから、この点やはりこれから先の電力供給量をふやしていくという点からも考えまして、需要も伸びる一方だという点を前提に置いて考えるならば、より一そう決意を新たにしてお考えいただく問題だろうと私は私うのです。実はそのことについて一つの確とした御答弁があれば、私それに対してまた追い打ちをかけて質問するつもりでおりましたけれども、何らこれに対してまだ話し合いがないという御答弁でございますので、全く雲をつかむような話、のれんに腕押しとはこのことだと存じますけれども、この点についてはこのくらいでおきまして、あと少し法の規制について御見解をお聞かせいただきたいと思います。  先ほどから問題にありましたように、重油の使用量の伸びの不確かさに加えまして、大気汚染防止協定というのがいわゆる紳士協定でありますところから、法的な裏づけを持たないところに実は問題点が残ると思うのです。大気汚染防止法というこの法律の内容で、先ごろ自治大臣から各地方自治体に公害防止について、公害除去について権限を強化せしめて、そして地域ごとに具体的に住民と直結した運動でもってこれに対処することが望ましいというふうな御発言があったわけでございますが、いまこの大気汚染防止法の内容を見た場合、市長が立ち入り調査権を持たないということは、何としても——その市内に起こっている問題は、直ちに市長がその都市に対しての監視監督権というものを持ってこそ取り締まりも強化できるし、防止策も具体的に立てることができると私は思うのです。いまこれは尼崎の状況だけでなしに、川崎の状況だけでなしに、全国津々浦々で過密都市に起こってきております大気汚染の問題を考えた場合、この大気汚染防止法それ自身に対しての改正を、厚生大臣からのああいう御発言にもありますような意味を込めてお考えにならないかどうか、その辺を承りたいと思います。
  200. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの問題でございますが、二つあろうかと思います。一つは緊急時における措置の権限をいまの都道府県知事でなしに、市長にも持たすかという問題が一つあろうかと思いますが、この点に関しましては私どもとしましては、汚染が非常に広域化している、これは決して望ましい状態ではありませんが、非常に広域化している時代でございますので、できるだけ広域の単位で緊急時の措置がとれるように都道府県知事にとどめておくということが適当かと思うわけでございます。  もう一つ、電気事業法あるいはガス事業法の適用の施設について、これが大気汚染防止法の体系から一部はずれている、特に具体的な行政的な許可だとか、認可だとか、検査だとか、立ち入りだとか、こういう権限につきまして特にはずれている、この問題でございますが、これは大気汚染防止法ができましたときのいろいろのいきさつからかようなかっこうになっているわけでございまして、今後またその点で不合理な点があれば通産省のほうとも相談しながら検討をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 ずばり一言で言うと、改正の必要ありとお考えになっていらっしゃるか、必要なしとお考えになっていらっしゃるか、いかがでございますか。
  202. 城戸謙次

    ○城戸説明員 これは私どもの考えをずばりとおっしゃられれば、私どもとしてはできるだけ広範な権限を持ちながら統一的にやるのが適当かと思いますが、これは電気事業法、ガス事業法の立場から申しますといろいろな御意見もあるわけでございまして、その結果が現在のような法律の体系になっておるわけであります。  大気汚染防止法につきましては、相当広範囲に今後の改正点を検討いたしておるような状況でございますので、その一環としまして通産省のほうと相談していきたいと思っております。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 なかなか煮え切らない御答弁でございますので、どうもどういうふうにお考えになっていらっしゃるかというところがもう一つはっきりいたしませんが、少なくともこれは手直しが必要であるような背景を持たせた御発言であるやに私は承っておきたいと思うのです。どうかぜひともこれは市長としてなすべきときになせるような内容に、権限の内容がはっきり法の裏打ちを持って実行できるような方向で、ひとつ大気汚染防止法なんかの手直しをお考えいただきたいと思います。  そして、しかもいまおっしゃいましたけれども、実は尼崎の事情を見た場合にも、大気汚染の原因を見てまいりますと、一番汚染原因になっているのは重油使用企業でございまして、その詳細な内容は火力発電所の排気ガスによるところの汚染なんでございます。したがって、先ほどおっしゃった電気事業法にひっかかる部分、電気事業法に従って考えてまいりますと、発電所の電力供給原則というものが、幾ら協定を結びましても協定の効果を抹殺してしまうような場合がないとはいえない。実は需要があればそれに対する供給をしなければならない。電気事業法から考えてもそのとおりだというわけでございまして、それを押えるのに公害問題として考えていった場合、公害対策基本法の例の一条二項の問題にやはりぶつかってくるわけでございます。したがって、経済の健全な発展と調和を保つというふうな観点から考えまして、これは健全な発展といえるかどうかというところにも疑義はございますけれども、いつも企業の側面から企業本位あるいは企業優先という姿勢に置きかえられて、この条文は、実は私はこれは悪解釈だと考えているわけでございますし、本来の条文の趣旨からすれば、これは運用面でずいぶん法の本来の趣旨を骨抜きにしていっている。実は運用面においてのたいへんな後退があるし、この法の立法趣旨から考えてみると、それに矛盾したような姿勢があるということをまずいわなければならないのですが、そういうふうな状況を生む根拠として実はこの一条二項があるわけでございますから、この公害対策基本法の一条二項に対する抜本的な改正ということもひとつ当面こういう電気事業法、先ほどおっしゃったような問題にひっかけて、また考えられなければならなくなってくるわけでございます。  したがって、この際あらためてひとつお尋ねを再度いたしておきたいのは、この公害対策基本法それ自身に対して、一体改正の必要があるようにお考えになっていらっしゃるかどうか、この点はいかがでございますか。
  204. 城戸謙次

    ○城戸説明員 いまちょっと申し落としましたが、緊急時の措置につきましては、電気事業法の施設あるいはガス事業法の施設につきましても都道府県知事が行なうことができるわけでございまして、それに必要な範囲におきます立ち入り検査は都道府県知事はできる、こういうことが前回の改正で新しく入っているわけでございます。  それからいまお尋ねの基本法の考え方でございますが、私どもとしましては公害対策基本法で「経済の健全な発展との調和」という条項は、現在のように非常に誤解を招いているじゃないか、したがって、そういうことがないように削除するのがしかるべきじゃなかろうかということを、省内の公害対策連絡会議で決定をいたしているわけでございます。と同時に、私どもとしましては、この「経済の健全な発展」の条項がかかっておりますのは「生活環境」のほうでございまして、「国民の健康」というほうにはかかっていないわけでございます。私どもとしましては、できるだけこの健康という問題を中心に押している現在の考え方のもとにおきまして、健康の概念というものにつきましてもできるだけ広範に取り入れて、今後各種の環境基準の設定その他に臨みたい、こういうように考えているわけでございます。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁については了解をいたしましたが、要は、地方公共団体がこういうふうな協定を結ばなくても済むように、国において排出規制の強化を可能にする低硫黄化対策というものと抜本的に取り組んで進めることが私は必要になってきていると思うのです。それは経済面から考えてそうでございますし、社会面から考えてそうだし、政治面から考えてそうでございまして、特にここで問題にしていかなければならないのは、立法的側面だということを重視しながら私は質問をしているわけでございますから、こういうふうな現在の法律の上での規制ということに勢い論点が集中するわけでございますけれども、こういうふうな排出規制について市長に権限を委譲するなど、一連の施策がやはり抜本的な対策としては法の改正面で問われてきているんじゃなかろうかというふうなことを私は思うわけでございます。  ところが、現にいまの法のままにおきましても、実は法律と条例との関係というのが、常にこういうふうな問題をめぐって出てくるわけでございます。御承知のとおりに、東京都の条例では問題になりまして、法律と条例との関係というのはずいぶん論議の対象になりましたが、法律が特に規制基準を定めていない事項については、条例が自由にこれを定め得ると考えてよいかどうかという問題が実はあるわけでございます。と申しますのは、現に使用重油についての規格制限は法律ではまだ試みられておりません。したがって、こういう使用重油についての規格制限を条例で認めていくということが認められてよいかどうかということが目下の問題としてやはり考えられなければならない一つのあり方だと私は思うわけです。この点について、条例で取りきめということをどういうふうにお考えになっていますか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  206. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいまの燃料規制を直接条例でできないかという問題でございますが、燃料から排出されるSO2の規制につきましては、法律で定められた一定方法に基づきまして、その基準を基礎にいたしまして各般の規制体制というものができ上がっておるわけでございまして、したがって、われわれの解釈といたしましては、一応SO2規制については法律できめられた一定方法があるということで、その一定方法の中で地方公共団体でかりに条例上措置することがあればそれはできるし、またそういう一定方法が及ばない地域につきましては、条例でその方法に準じてやるということにつきましては全然疑義がないというぐあいに考えておるわけでございます。それに燃料規制を追加する場合には、法律できめられた現在の方法とは全く別個の体系を導入するということになってまいりますので、ここにやはり法律と条例の関係に疑義が生ずるということで、現在われわれはそれは法律に違反するのではないかという見解をとっておるわけですが、ただ現実の問題といたしまして、特に過密都市その他におきますSO2規制について、燃料規制がこの際ぜひ必要だという現実の事態が起こっておることは、否定すべからざる事実でございます。東京、大阪その他、特に冬場につきましては燃料規制まで行ないまして、この公害問題を除去する必要があるのではないかというので、ただいま先生御指摘の基本的な各種の法律の改正というような問題点の一環といたしまして、最も適当なところにそういう条項を挿入する必要があるのではないかという観点で各省間の議論をし、かつ意思の統一をはかっておるというところでございます。
  207. 土井たか子

    ○土井委員 抜本的にはいまおっしゃったとおりでございましょうが、法律でその規格制限について具体化する、そういう具体的な条文を定めるというところがやはり抜本的には取り組まれなければならない問題だと思いますが、目下このことに対して取りきめのない、この使用重油についての規格制限に対して法律の取りきめがないその問題について、条例で取りきめていくということについてはどのようにお考えかということを申し上げているわけです。
  208. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 かりにある公共団体が条例でその点をきめた場合に、はたしてこれに強制力を持たせることがどうかという点については、われわれは疑問を持たざるを得ないわけでございます。ただ現実の問題といたしましては、東京都は主要工場と協定を結びまして、特に冬場の緊急時につきましては協定を結びまして、直ちに低硫黄に切りかえる措置をとっておりまして、これは各社ともその協定に完全に従いまして去年の冬場はそのために非常に効果があらわれてきたわけでございまして、こういった地方公共団体と各会社との紳士的な協定に基づいてそういったことが順調に行なわれるという点は、これは何ら疑義のない最も有効な公害対策の一つでございますので、われわれはむしろ現在の段階では、そういう方向でよく公共団体と相談して、確実に守るようにというような指導は、実は企業に対しては強くやっておるわけでございます。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 その点なんでございますよ、先ほどから繰り返して言っているのは。協定というのはあくまで紳士協定でございまして、幾ら協定の中でこれだけに年間押えていくのだ、次の年次はこういうふうにする、次の年次はこういうふうにするという取りきめをいたしましても、そのとおりいっていない現実があるからこそこういうことが問題になってくるわけなんでございます。現に尼崎の場合には、関西電力と称する会社に三つ炉があることは御存じのとおりでありますが、第一と第二の炉につきましてはだんだん減産していくということが取りきめの内容になっていたわけでございます。にもかかわらず、現実はこれは増産の一途でございまして、協定に違反しているのではないかということをいえば、返ってくるのは、電気事業法に従ってという問題であり、かの公害対策基本法第一条二項に従ってという問題でございまして、したがって、何らこれに対しては、再度返して打つ手がないわけでございます。したがって、先ほどからおっしゃっているように、これは協定に万事をゆだねてしまいまして、企業と自治体との取りきめで、万事この辺はお互い同士の約束ごとでやっていった。それに対して、そういうふうにまかなっていったということでいいじゃないかということでは済まされないような現実面が起こってきているわけでございます。したがって、先ほど来法律と条例との関係ということを、特に法律で欠缺している問題あるいは取り扱いに対して不十分な問題、それについては条例化していったほうがいいのじゃないかということをお尋ねしているわけなんでございます。いかがでありますか。
  210. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 関西電力のただいまの御指摘の問題点、われわれも聞いておりまして、確かに最初の約束どおりの設備の休廃止が行なわれなかったという事実があることは確かでございます。ただ、それを直ちに法律と条例の関係に還元しなければならないかどうかという点につきまして、われわれはまた別の考え方もあるのではないかというぐあいに考えておるわけでございますが、結論はSO2総量の問題、その地域の汚染をいかに軽減するかという、その対策の問題でございまして、環境基準にきめられた一定の目標に従いまして具体的な排出基準を漸次締めていく。現に尼崎地区につきましては、ことしの二月に関しましても相当大幅に締めたわけでございます。そういった一般的な国で定められた基準に従いまして、その地区に存在する工場がSO2の総量を減らしていくような態勢になれば、おのずから問題はそこで解決するのではないか。かりにそれでもまだ局地汚染その他の問題が出てくるとすれば、それはそれでまたわれわれが持っております産業公害総合事前調査というような手法を通じまして、個々の設備に対しての個々の指導というものは、大いに強力にやれるような形をとっておるわけでございまして、これを直ちにかりに条例で定め、あるいは何か強制力を持った規則で、国でやっております一般の基準とは全然離れた形で何らかの措置を講ずるといたしますと、全体の企業の活動状況といいますか、企業サイドも計画性を持って設備を考え、あるいは使用重油のS分を考え、そのトータルとしてきめられた環境基準範囲内で経済活動をやろうという計画を示されておるわけでございまして、その中に全然別個の原則で別個のファクターが入ってくるということは、国全体としてみますと具体的な行政が非常にやりにくくなり、非常に混乱が生ずるおそれもあるというようなデメリットもあるとわれわれは考えておりますので、何と申しますか、現在の基準も、地域別に約八地域に分けたわりあいきめのこまかい基準の中で、具体的な行政指導ができるような態勢をとっておりますので、その中で十分効果は確保されるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 どうも私の質問の要旨を御理解いただけなかったのかどうか、私の質問に対する御答弁をちょうだいできなかったように私はいま感じているわけなんでございますが、やはりこういう問題に対しましては、抜本的に法律にそごがあってはならないことは周知のことでございます。したがって、法律の上でも整備をするということ、これはやはり手がけなければいけませんが、しかし、現に現実どうにものっぴきならないような状況が起こってしまっているような場所におきましては、早急に何とかこれに対する手だてを講じなければなりません。法律が制定される日を待っていてはどうにもならないという現実をひっさげているところは、実はやきもきしているわけでございまして、何とかこれに対して打つ手はないかと苦慮しているありさまでございます。それを私は考えて、条例でこういう問題に対する規制というあり方は、考えられてよいと思うけれどもいかがでございましょうというふうな質問を先ほどから申し上げているわけでございます。こういうことをやられた日にはどうもしめしがつかないとか、やりにくくなる、企業サイドでものを考えればそのとおりだと思うのです。しかし実際問題、大事なのは、やはり住んでおります住民の暮らしであり、命そのものでございますから、そういう観点から考えてまいりますと、営業活動を束縛するとか、財産権を制限するということにどうも目を奪われてしまって、そして肝心かなめのところに対して規制の手がゆるんでしまうということであっては私は断じてならないと思うわけでございますから、この点に対しての御見解をひとつ承りたい。そういう気持ちで私は質問を続けたつもりなんでございます。  繰り返しになるようなことでございましたらもう御答弁をいただかなくてけっこうでございますが、そういうふうな趣旨できょうは質問をしたかったわけでございます。これで、いまの問題についての基本的な私なりの疑問を終わらしていただきたいと思います。  なお、続きまして次の機会にもこの関連質問を続々展開したいと思いますから、何とぞよろしくお願いします。
  212. 加藤清二

    加藤委員長 柴崎君、答弁ありますか。——答弁なくてもいいのですか。
  213. 土井たか子

    ○土井委員 同じ繰り返しでございましたらもうけっこうでございます。
  214. 立田清士

    ○立田説明員 先ほど来通産省のほうでお答えになっていましたのでちょっと答弁の機会がございませんでしたのですが、私たちはこの公害問題は地方行政の中における一つの重要な問題だというふうに考えております。したがいまして、先ほど御指摘のとおり指定地域につきましては、尼崎がたしか指定地域でございますが、その中において、特定施設につきましては国のきまっている基準でいくということに現在なっております。そのこと自体のその地域性ということは、現在の法律、条例の関係では実はございませんので、条例自体は法律、法令に違反しない限りにおいては国の基準によらざるを得ない、こういうことになっております。しかし、特定施設以外の指定地域におけるものについては条例でできることになっております。したがいまして、先ほど通産省公害部長がお答えになりましたように、現在、全然別な観点からの方式を導入しない限りは、特定施設をめぐる問題については解決はむずかしいという状況があろうかと思います。それで、先ほど来お話がございましたとおり公害防止協定という、地方団体あるいは地域における一つの知恵としてこういう方式が生まれておるわけでございますので、現在そういう方式が非常に積極的に活用されているという方向にあろうかと思います。  なお、私たちは一つの基本的な問題といたしまして、公害自身については、実際の地域の実情に即していろいろ考えなければならないというように基本的に考えておるわけでございますが、そういう観点からいきますと、もしそういう国の基準自体においてなお今後考えるべき点があれば、今後いろいろそういう点の検討をする必要があるんじゃないか。さらに国の基準と実際に適用される地域のいろいろな実情との関係で、その地域において、国の基準に対して、いろいろな観点からその地域の実情を加味したような要素を今後考えていく必要があるのではないかというふうなことを、今後の検討問題として、いわゆる地方行政の観点からは、そういう考えで現在、検討をいろいろしていきたい、そういうふうに思っております。
  215. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁を伺っておりますと、かえって指定地域になったことのために、あらまし設けられております基準に従ってのみ条例というものは考えられるべきで、特に法に定めなき問題について条例化していくことには一定の限界があるやに私は理解するわけでございますが、そのように考えてようございますか。
  216. 立田清士

    ○立田説明員 指定地域の中におきますいわゆる特定施設につきましては、国の定めておる基準ということになると思いますが、指定地域の中でも特定施設以外のものがございますし、それから今度は国の定めておる基準以外のいろいろな知恵といいますか、そういう方法はあろうかと思います。そういう意味で、指定地域になったがために云々といういまのお話でございますけれども、そのために特にどうこうということはなかろうかというふうに思います。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 特に指定地域にきめられるということは、これは公害多発地帯という認識があるわけでございますから、そういう指定意味をなすわけでございます。したがって、いまの御発言を承っておりますと、よほど国のほうはしっかりしないといけないという結論しか出てこないわけでございます。やはり国のほうの取り組みいかんによりまして、その指定地域における規制のあり方、特に条例化していく具体的内容というものはきまってくるということに尽きるわけでございますから、国のほうが指定地域についてはことさら力を入れて考えなければいけないということになってくるはずでございます。となれば、先ほどのあの自治大臣の発言をこの際強力に推しまして、国のほうがこれはよほどがんばらなければいけないのですから強力に推しまして、この際指定されている特定施設の内容につきましても条例の上で、法律が欠缺している場合、あるいは法律で現に定めているところが不十分であると実際問題に即応して考えた場合に認識されるような状況については、条例の中で取り上げていっていい、条例の中で規制していっていいというふうな考えも片や出てくると私は思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  218. 立田清士

    ○立田説明員 きわめて基本的なむずかしい問題をいまおっしゃったわけでございますが、この点については実はいろいろ論議があるわけでございます。私たち実際に地方行政において公害と取り組む場合には、いろいろ積極的に考えたいという気持ちはございますけれども、いまこの点についてはいろいろ議論がございますので、やはりそういたしますと、国の特定施設自身については国の基準どおりということに現在一般的になっております。そうだとするならば、こういうふうな基準について、基準自体の今後の検討の問題としてどうするかという問題と、それからそういう国の基準と、実際の地方団体で行なう規制の基準というものの間において、そこの地域の地域性というものをどう加味していくかということ、その両方の面で今後考える必要があるんじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  219. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  220. 加藤清二

    加藤委員長 次は細谷治嘉君。
  221. 細谷治嘉

    細谷委員 最近新聞紙等のスペースは、毎日のように公害問題で相当埋められておるわけでありますが、全般的に感じますことは、公害問題に対する政府の姿勢というのが積極的でない、あるいは場合によってはデータ等も隠すのではないか、こういうような感じがいたすわけです。そこで私は、そういう立場からして二、三の点について質問をしてみたいと思うのです。  この委員会でも私は質問をいたしたのでありますが、悪臭の問題も産業公害一つとして基本法の中で取り上げられておるわけでありますけれども、この方面の取り組み方がほとんど皆無といってもよろしいのではないか。なるほど、悪臭についての環境基準をきめるのは、技術的にはなかなかむずかしいのでありますけれども、私がいろいろなものを見る限りにおいては、そろそろ技術的にも、この悪臭についての基準をつくる段階に来ているのではないか、こういうふうに思うのです。この点についてひとつ厚生省のほうからお答えをいただきたいと思う。
  222. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、悪臭は公害の中でも一番取り組みがむずかしいということは事実でございます。また、これまでの研究成果等を見ましても、ほかの部門に比べますとややおくれをとってきたことも事実でございまして、現在何とかおくれを取り戻そうということで、鋭意やっているわけでございます。先生御承知のように、厚生省としましては、一つは日本環境衛生センターに対しましていろいろの研究を委託費でやってもらっておりますし、それからもう一つ、昨年の十一月に悪臭公害に関する研究会というのを発足させまして、これまでの厚生省だけでなしに、各方面の研究成果を取り入れまして、これによって今後の環境基準あるいは排出基準、そういうような尺度あるいはその前提になります測定の方法、こういうものの研究を進めていこうということでスタートしたわけでございます。初年度は年度途中からでございましたので必ずしも十分な成果をまだ得られませんでしたが、今後は特にこのメンバー等につきましてもさらに若干追加いたしまして、充実した成果を早くもたらすように努力してまいりたいと思っているわけでございます。  さしあたりこの四十五年度におきましては、いろいろございます悪臭の中で、アミン系、それから脂肪酸系、こういうものによります悪臭についての測定方法、それから基準、こういうもののための尺度を早く見つけ出すような努力をいたしたいと思っておりますし、現在私どもの考えでは、暫定的なものになるかもしれませんが、年度内には基準値が得られるようにいけるのじゃなかろうか、こう思っているわけでございます。
  223. 細谷治嘉

    細谷委員 官庁関係公害専門資料というものを出されておりますね。
  224. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いまおっしゃった資料をある団体が出しておることは事実でございます。官庁の資料を複製をして出しておるものでございます。
  225. 細谷治嘉

    細谷委員 官公庁公害専門資料というものはおそらく毎月出ておると思うのです。たとえば労働省の労働衛生研究所とか、あるいは国立の衛生院とか、そういうところでもこういう問題を取り扱っておるわけですね。なるほど悪臭の問題は、いま普通鉛とかカドミウムという場合には、PPMという単位で問題が扱われておりますけれども、悪臭になりますと対象物質というのはそれよりも千分の一程度のオーダーになってくるわけでありますから、事実上測定というのは、新しい技術が開発されないとなかなかむずかしいものではないかと思うのです。PPMにかわって、悪臭の場合にはPPBという単位で問題が扱われるわけでありますけれども、私は一日も早く、いま部長はアミン類あるいはカルボン酸、こういうものについて、あるいは暫定になるかもしらぬけれども年内にやりたい、こういうことであります。あるいは硫黄を含んだメルカプタン系統のものも悪臭の対象になっているわけでありますから、やはりつくるのならば、おおむねこの三つの系統でありますから、そういうものについて早急にこれを規制していただかなければならぬ、こう思うのです。前にも私は申し上げたわけでありますけれども、悪臭を発生する工場が、法律では違反とされて押えられても、三万円の罰金しかこないんだから、それ以上もうけてやるのだから、何ぼ罰金を食ってもかまわないんだ。こういうようなことで、厚生省工場のストップ命令を出しても一向聞かない。そしてフルの作業をやっている、こういう状況なんでございます。でありますから、やはり環境基準を一日も早くつくりあげていただいて、へい獣処理ばかりじゃなくて、そういう面からの取り締まりを早急に進めていただきたい、こう思うのでありますが、重ねてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  226. 城戸謙次

    ○城戸説明員 いまお話ございましたように、悪臭の物質としましては、パルプ工場等からのメルカプタンなどの有機硫黄化合物、あるいは石油精製工場からの炭化水素、メルカプタン等、あるいはまた動物の飼育、加工に伴いますアミン、揮発性脂肪酸等、大体こういうような種類に分かれるわけでありまして、日本環境衛生センターでの研究も、当初四十、四十一、四十二年、この三年間に主として活性硫黄につきまして研究を行ない、四十三年度からは、三カ年計画で石油化学コンビナート、クラフトパルプ工場、こういうものの悪臭を研究いたしております。私どもとしましては、もちろん一挙に取り上げていきたいわけでございますが、現在まである程度そういう技術的な成果も出ております。一番最後に申し上げましたアミン脂肪酸、こういうものにつきましての基準値をまずやっていきたい。それからほかのものを次々と取り上げていきたい、こう考えておるわけでございます。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕  御承知のように、悪臭はちょうど基本法ができますころも非常におくれておりました関係で、環境基準という明確なものをつくるようなたてまえになっておりませんが、私どもとしましては各地でいろいろな問題が起こっている。しかも、技術的にも非常に問題がございまして、いまおっしゃるような非常に薄い濃度で問題を起こすということでございますので、何とかこの測定方法あるいはその基準値あるいはこれの防除技術というものにつきましての確立をはかって、国民の生活環境が一そう改善されますように努力したい、こう思っているわけでございまして、実は前に御質問を受けました段階では、私どもの中でも必ずしも前向きでいけるかどうか疑問を持つ者もあったわけでございますが、現在ではこの二十日に第一回の会合を開きまして、基準値をつくり上げ、その防除的なものに取り組んでいけるような方向づけでまずやっていこう、こういう段階になっておりますことを御報告申し上げたいと思います。
  227. 細谷治嘉

    細谷委員 それはその程度にいたしまして、最近二、三のショッキングなことも新聞等に出ておりますから、その辺をひとつお聞きしたいと思うのです。  先ほど土井委員から法律と条令との問題で質問がありましたけれども、けさの毎日新聞を拝見いたしますと、静岡のお茶の問題が出ておるわけですね。それはどういうことかといいますと、お茶を、二番茶、三番茶と色がよくないものですから、タール系の色素でこれを染める。そうして色をよくして高く売ろう。ですからお茶を入れますと、お茶の色じゃなくて色素の色が出る。しかも、その色素というのは食用として許されておる色素ばかりでなく、食用としては許されてない色素まで使っておる、こういうことが具体的に指摘されておる。ところが静岡県の製茶条例というのは、お茶には添加物を入れてはならない、こういう条例で規制しているわけでありますけれども、国の法律のほうは、食品にこういう色素なら入れてよろしい、こういうことになっているから、静岡県の条例が法律に違反しているのだ、こういうことを業者は言っているといってあります。  もう一つの点はどういうことかといいますと、間違った、許可されていない色素まで使っておる、そういうものについての監視が届かない、こういう二つの問題がきょうの新聞記事を見てもあげられるのではないか、こう思うのであります。  そういうことでいろいろと問題が混乱しているのでありますが、衛生試験所の方、いらっしゃいますか。これは衛生学会誌の去年の四月号に載った記事でありますけれども、「食品中のニトロソアミンについて」ということで、おたくの慶田という人でしょう。その人が「総説」を書いているわけですが、その「総説」の中でちょっとお聞きしておきたい点があります。この「総説」の前文のほうに、最近問題になりましたたばこの害、発ガン性というのはベンツピレンではなくて、ニトロソアミンだということが定説なんだ、こう論文に書いてあります。これは肯定なさいますか。
  228. 谷村顕雄

    ○谷村説明員 私は、食品中のニトロソアミンにつきましては実験をやっておりますけれども、たばこについてはやっておりませんので、何とも申し上げられないと思います。  それから、私の個人的な意見でございますが、発ガンということはまだ原因ははっきりわかっておりません。ですから、はたしてそのたばこのニトロソアミンが肺ガンの原因であるということは、まだはっきりとは申し上げられないのじゃないかと思います。
  229. 細谷治嘉

    細谷委員 これも私は聞きたいのが趣旨ではありませんけれども、こう書いてあります。「たばこの煙の中にもニトロソアミンが存在することについてはすでにクレーラが報告している。すなわち、千二百本の試料より得た濃縮物をアセトン抽出して薄層およびガスクロマトグラフィを行なって数種類の脂肪族および芳香族ニトロソアミンを検出しており、従来からのべンツピレン説にかわってニトロソアミンがたばこの発がん性の張本人と見なされるようになった。」こういうふうにこの人は結論づけているわけですね。最近のたばこの害というのがショッキングな記事として出ておりますから、詳しく御存じであればちょっとお聞きしたいと思っております。  そこで、お聞きしたいのでありますけれども、これは厚生省にまずお聞きいたします。食品添加物として硝酸塩及び亜硝酸塩というのが許可されておりますが、これについて最近取り締まりの指示、こういうものをなさいましたか。
  230. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 お答え申し上げます。  最近タラコの発色剤についての新聞等の報道がございましたので、それに関連いたしまして通牒を出しております。また亜硝酸ソーダにつきましては、タラコにつきましては使ってはいけないことに従来なっているわけでございますが、それと同じような効果を持つものでカリウムのほうでございますが、これは必要ないということで除外をいたしております。
  231. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの添加物としてタラコには発色剤として硝酸塩を使ってはならぬということになっているのですね。現実は使っておるでしょう。
  232. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 亜硝酸塩は使ってはならないことになっております。硝酸塩は使ってよろしいことになっております。
  233. 細谷治嘉

    細谷委員 せんだってある新聞に、こう書いてあるんですね。タラコが年々需要が伸び、四十二年度に二万五千トンも生産されているが、昨年ごろから添加物の害が問題化し、まっかに着色したタラコは好まれなくなった、かわりに業者は発色剤を競って使用し始め、硝酸カリより効果のよい亜硝酸ソーダの不正大量使用も半ば常識化している、こういう新聞記事があるわけですね。あなたは、いま亜硝酸はいかぬと言うけれども、新聞は半ば公然化していると書いてあるのですよ。これをお認めになるかどうか。それからカリはいかぬけれども、硝酸ソーダは認めていると言うけれども、硝酸ソーダというのは、添加された場合に亜硝酸になるというのは常識ですよ。その辺はどうなんですか。
  234. 神林三男

    ○神林説明員 お答え申し上げます。  タラコには一応亜硝酸ソーダは認めておりませんものですから、もちろんそういうものを使ったものは、違法の措置といたしまして取り締まりを厳重にやっております。  それから硝酸と亜硝酸ソーダの関係でございますが、亜硝酸のほうは化学的合成品でございますから、一応六条の指定をいたしまして、使っていいものは現在ハム・ソーセージあるいはスジコというふうに品物が限定されております。それから硝酸につきましては、先生むしろ私より専門家でございますが、天然物でございますから、これは一応はいまそういう使用基準とか、そういうものはございません。  それで先生のおっしゃるとおり、硝酸を使ったものは、最終的には亜硝酸になるわけでございますけれども、一応天然物でございますから、六条指定というようなものはやってございません。しかしタラコの場合は、亜硝酸塩になった場合は、もちろん一応残存量というものがございますから、これは違法になってくると思います。
  235. 細谷治嘉

    細谷委員 衛生試験所のほうにお尋ねいたしますが、いま硝酸塩はいいのだ、亜硝酸塩はいかぬのだ、しかし新聞等では、現実に亜硝酸塩が簡単に使われている。実際はマーケットには「硝素」という形で硝酸塩と亜硝酸塩と食塩とをまぜて、これは微量でなければ許可されておりませんけれども、そういうものを売っていて、そういうものをまぜてやっているわけですね。ですから、スジコでもタラコでも、ちょうど肉色になって食欲をそそるようになっているけれども、あにはからんや、そういう硝酸塩というのがアミンと化合してニトロソアミンができる。このニトロソアミンが猛烈な発ガン性を持っている。こういうことでいま問題が起こっているわけですね。どうなんですか。これでいいと思うのですが、いまの答弁で技術的に。
  236. 谷村顕雄

    ○谷村説明員 結局ニトロソアミンの心配というのは、魚肉ハム・ソーセージあるいは食肉ハム・ソーセージあるいはタラコ、そういうものだと思います。タラコの場合には、いま課長さんからお話がありましたように、これは違反食品であります。使ってはいけないということになっておりますが、実際問題としてよく新聞には亜硝酸塩を使うのが半ば常識的というような記事もございます。  そこで、私のほうで食肉ハム、食肉ソーセージ、あるいは魚肉ハム、魚肉ソーセージ、スジコ、タラコ、そういうものにつきまして、ジメチルニトロソアミンの分析を、数十検体について実験をやっております。それによりますと、数十検体の食品は、どこからもジメチルニトロソアミンは検出されておりません。ただ、硝酸塩を使った場合に、バクテリアで還元されて亜硝酸塩になり、それが食品中のアミンと反応すれば、当然これはニトロソアミンができる可能性はございます。ですから、もし安全性を考えれば、亜硝酸塩の直接の使用というのは考えものだと思います。むしろ間接的にワンステップ置いた硝酸塩の使用のほうが安全性は高いと思います。
  237. 細谷治嘉

    細谷委員 硝酸塩のほうが安全性が高い、それはそういうことでしょう。しかし、メカニズムとしては、硝酸塩が肉中のバクテリアで還元されて亜硝酸塩になり、亜硝酸塩から発生機のNOができる、そういうものが肉の色素と化合して、ちょうどいい、おいしそうな肉色になるわけでしょう。そうなってまいりますと、順調に期待どおりいけばいいけれども、メカニズムのちょっと一角がくずれますと、これは間違いなくニトロソアミンというようなものができてくるわけですね。これは現に一九五七年にノルウェーでニシンの飼料を使ってミンクとかヤギとか牛が大量に死んだという実例、これはあなたのほうでもこの論文にあげているわけです。そうなってまいりますと、何か化学屋さんのことばだけでは、ごまかせますけれども、毎日毎日国民がタラコも食えない危険にさらされている、こういうことになるのじゃないですか。
  238. 谷村顕雄

    ○谷村説明員 魚肉類は、確かにアミンが、第二級アミン、第三級アミンがございます。したがって、こういうものに亜硝酸塩を使うということは、ジメチルニトロソアミン系統のものをつくる可能性がございます。したがって、非常に危険でございます。ただ、そこで硝酸塩は亜硝酸塩に還元されるのだから、メカニズムは同じではないかとおっしゃいましたけれども、その点は少し事情が違うのではないかと思います。と申しますのは、やはり亜硝酸塩のイオンの濃度が問題でございまして、硝酸塩からできる亜硝酸塩の量は、バクテリアで確かに還元してつくりますけれども、亜硝酸塩をじかに加えた場合よりもはるかに少ない。したがって、硝酸塩を使えば、確かに可能性としては、ジメチルニトロソアミンができる可能性はございますけれども、亜硝酸塩を使うよりは、その生成率というものははるかに少ないと思います。
  239. 細谷治嘉

    細谷委員 私が申し上げているのを誤解しないように……。硝酸塩というものが肉中のバクテリアによって還元されて亜硝酸塩になり、亜硝酸塩になったものが、肉中の有機酸によってフリーの亜硝酸になる。そういう亜硝酸というものからNOが発生機の形で、ナッセントの形で出てくる。それが肉中の色素と化合する。そしてニトロソ化された色素ができる。それが非常にきれいな色を呈している、こういうことなんですね。そういう循環がうまいサイクルで運んでいけばいいけれども、肉の貯蔵なり、あるいはタラコの貯蔵等が悪くて、そのサイクルがくずれますと、これはやはり間違いなくニトロソアミンができてくる。でありますから非常な危険性がある、こういうことなんですよ。どうなんですか。私はそういうことを申し上げているわけですよ。
  240. 谷村顕雄

    ○谷村説明員 私の現在まで読みました文献では、硝酸塩を使いましたタラコの場合に、腐敗寸前の非常に鮮度が悪くなった場合に初めて亜硝酸塩が出てきておる、イオンが出てきておるということを記憶しておりますので、確かにメカニズムとしては硝酸塩が亜硝酸塩になるということは確実でございますけれども、そう大量に亜硝酸塩がどんどんできてくるという心配はないのではないかと思います。
  241. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、時間がありませんから今度は厚生省の責任者に伺います。  一つは、取り締まる、取り締まると書いているんだけれども、一番能率のいいのは亜硝酸を入れれば一番いいわけですね。これは色はよくなる、おいしそうになる。しかし、これは違法ですよ。間違いです。こういう違法な状態が野放しで能率よくやられている、こういう事実がある。  それからもう一つは、硝酸塩でもやはり危険なんです。どうしても危険なんですよ。しかもこれは、何PPMというのが問題なんですから、食品添加物としてのこの種の発色剤というのはおやめになったらどうかと私は思うのです。何も赤く染まっておらなければいかぬとか、肉色でなくてはいかぬとかということではなくて、おいしくさえあればいいわけです。何か消費者の人たちは、目をふさいで食べてみたら、発色剤も入れておらぬ、着色もしていないタラコが一番おいしかった、こう言っているのです。そういうふうに食品添加物の硝酸塩というのはあぶないのですから、おやめになる御意思があるかどうか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  242. 神林三男

    ○神林説明員 お答え申し上げます。  タラコにつきましては、先生のおっしゃられるとおり、亜硝酸はもちろんのことでございますが、硝酸についても禁止すべく検討しておる最中でございます。
  243. 細谷治嘉

    細谷委員 タラコはもう使ってはいかぬことになっているんだ。肉でもあぶないんですよ。いま許可されているそういうものでも、たとえば畜肉、魚肉のハム・ソーセージ、イクラ、スジコ、こういうものは危険性があるわけです。こういう点についても、この種の添加物はあぶない、危険性があるわけです。食品は危険性のあるものは使ってはいかぬという原則なんですから、おやめになる意思がないか、こう聞いているわけです。
  244. 神林三男

    ○神林説明員 お答え申します。  タラコ以外、たとえば食肉製品あるいはスジコ等につきましては検査法そのものは、ニトロソアミンについては検査法が現在いろいろ問題がございまして、私たち、その検討をいま急いでいるわけでございますが、これはいま言った食肉あるいは食肉製品あるいはスジコ等につきましては、私たちがいままでやりましたデータでは、一応いままでの試験法ではアミン類の生成というものは認められておらないわけでございます。  それから亜硝酸そのもののいま使用基準といたしまして許可されている量は、毒性という点では問題はございません。そういうことで、もちろん検討はいたす所存でございます。特に食肉製品につきましては、これは世界的な食品でございますから、そういったようなことで世界の情勢というようなものを踏んまえて検討してみたい、そういうふうに考えております。
  245. 細谷治嘉

    細谷委員 私が質問すると、いや肉製品の中にはニトロソアミンなんて検出された例がない。あなたのほうの実験はそうですが、衛生試験所にお尋ねしますが、この報告にも書いてあるのですよ。絶対にニトロソアミンが肉製品からは検出されなかったと書いてないですよ。この論文を見てもちゃんと検出されているのですよ。どうなんですか。あなたのいまの報告では、いや、いままでの自分たちの実験では検出されなかったというけれども、これは検出されているのですよ。
  246. 谷村顕雄

    ○谷村説明員 ニトロソアミンが食肉製品あるいは魚肉製品から検出されたという文献は、私まだ見たことございません。ただ、その原料になる第二級アミン、第三級アミンは、一部の魚介類について検出されております。
  247. 細谷治嘉

    細谷委員 検出されておらぬというのですけれども、この論文読みますとK・メーラーという人の研究にあるのですよ。私はこの研究報告そのものを見ておりませんけれども、それにこの紹介があるのです。ですから、ここであなたのように断定しちゃうと全部がそう思っちゃうのですよ。しかし現実にはK・メーラー・O・L・マイヤーホーファーという人が「Z・レーベンスム・ウンターズーフ・ウント・フォルシュ」とかなんとかいう一九六八年の雑誌に論文を書いているのです、この論文は私は見ておりませんけれども。ですから、そこまであなたがおっしゃっていると問題は発展しないですよ。あなたは研究者なんですから……。
  248. 谷村顕雄

    ○谷村説明員 たいへんそのジメチルニトロソアミンの分析というものはむずかしくて、そこには書いてございますけれども、それ以外の文献は、すべて食肉製品あるいは魚肉の製品についてジメチルニトロソアミンは検出されなかったという文献がございます。したがって、あるというのは、そのいまお読みになりました一報だけでございます。  それから私が追試いたしましたところ、五十品目程度でございますので、すべてとは申し上げられませんけれども、いずれも出ておりませんので、私は自分のやりました仕事のほうを信用したいと思います。
  249. 細谷治嘉

    細谷委員 少なくとも、やはりショッキングな重要な問題ですし、ニトロソアミンそれ自体は、人間に対しては非常に毒性の強いものでありますだけに、ひとつ食品衛生の面においても違反など起こらないように、それから万一の危険を人間に及ぼさないように十分の措置を要請しておきたいと思います。  その次に、関連して硫酸銅、これは私も詳しく読んでおりませんけれども、硫酸銅も猛毒なんですね。これも食品添加物としては制限されておりますけれども、再検討をしたほうがよろしいんではないか。たとえば菜っぱ等がいたんでくると硫酸銅で色をつける、こういうやり方、これはもう消費者はたまったもんじゃありません。そして色づきますと銅が安定するのですから、いわゆる葉緑素よりも銅葉緑素のほうが安定しているのですから、これはやはり問題があります。硫酸銅というのも猛毒なんですからひとつ再検討をしていただくべきではないか、こう思うのです。  その程度にいたしまして、もう一つ。亜硫酸ガスというのをけさから、ずっとやっております。最近アメリカのニューヨーク大学の科学者なり生化学者が、実は亜硫酸ガスというのは肺をおかすとか、そういうものが胃腸をおかすとかいう問題ばかりではなくて、非常に重要な生理学的な問題を持っているのだ、こういうことが報告されております。たとえばたん白合成のRNA、DNA、こういうのが人間の二つの柱だといわれているんですね。リボ核酸、それからデオキシリボ核酸、きのうあたりの新聞では神戸大学の人が第三の核酸というものを発見したという記事が出ております。  ところが、亜硫酸イオンというものがそういう二つの核酸の平衡を破る、そのために遺伝子が突然変異を起こす、こういう報告があります。これはもちろん人体外で確認されたことでありますけれども、人体で起こらないとも限らない、こう思うのであります。  そういたしますと、漂白剤に亜硫酸を使っておりますね、亜硫酸塩を。空気をよごされた、亜硫酸を吸うわ、食べものとして入ってくる亜硫酸塩によってそういう二つの重要な核酸、遺伝子にまで突然変異を起こすというようなことになりますと、踏んだりけったりじゃないかと私は思うのですよ。この辺について衛生試験所のほうで御存じならばひとつお聞きしたい。いかがですか。
  250. 谷村顕雄

    ○谷村説明員 その文献は私も拝見いたしました。それから東大の早津助教授が、ビールスの突然変異誘発分子として亜硫酸イオンがあるということも、まだ速報的なんでございますけれども、発表しております。したがって、突然変異あるいは発ガンというような可能性は、今後の研究の進め方によってあるいは明らかになるかもしれません。
  251. 細谷治嘉

    細谷委員 これは生体内で確認されたことではありませんけれども、ごく最近学者等が試験管内においてそういうものを確認されております。  そこで、厚生省にお尋ねしたい。FAOとかWHOの専門委員会では、亜硫酸塩というのは一たん腐敗したものを漂白剤でカモフラージュするのに使う可能性が一つあるじゃないか。第二番目はこれによってビタミンBが破壊されてしまう、したがって、その補給源である肉、穀物、乳製品及び納豆については使用すべきではないという勧告をしているわけですね。  ところが、日本では依然として今日この種の亜硫酸塩というものを甘納豆とか、煮豆とか、あるいは水あめとか、糖蜜とか、カンピョウとか、いろいろなものに使っておりますね。これはいま亜硫酸塩そのものの直接の害じゃなくて、新しい学問上の問題として遺伝子の突然変異という問題が投げかけられておる。しかもFAOなりWHOは、こういうものはたん白給源に対しては使用すべきでないということを勧告しておるのですから、この辺の漂白剤としての亜硫酸塩についてはもっと厳重な規制をすべきじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  252. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 ただいまFAO、WHOのお話が出ましたが、WHOのほうで一応ADIを——ADIは先生御存じのように、一日許容摂取量でございます。これはまだ最終段階ではございませんが、一応ゼロから三〇というような数字を出しておるようでございます。したがいまして、これは使用を全部廃止するという方向ではないように私どもは承知しているわけでございますが、先生御心配のようないろいろな問題は、食品衛生調査会の先生方によく御検討をお願いいたしまして、その結論に従いまして私ども適切な処置をとりたい、そのように考えております。
  253. 細谷治嘉

    細谷委員 問題がかなり深刻な問題点でありまして、亜硫酸ガスでごまかしてもいかぬし、しかもいろいろな問題点が提起されておる、少なくとも植物たん白、動物たん白の給源である肉なり豆類、そういうものについてはやめるべきである、こういう勧告が出ておるわけですから、そういう原則に沿ってこれを全部やめてしまえと私は言っておるわけではありません。厳重に規制すべきだ、こう思いますから、ひとつ検討をして早急に具体化していただきたい、こういうふうに思います。  その次に、この間の新聞にも出ておりましたが、東京都の「かしこい消費者」に「白すぎる紙ナプキンにご用心、螢光増白剤のテスト」、こういう記事が出ております。これによりますと、大体使用してはいかぬような、食堂のナプキンとかマスクに、まっ白く見せるために螢光染料を使っておる。螢光染料でありますから、洗ったって落ちない。繊維にぴったりくっついておりますから、洗ったって落ちはしません。そういうものがくっついております。ところが、これは発ガン性ということであります。ナプキンでありますから、いつも口にされる、マスクにはめるガーゼにもそういう発ガン性のものがついておるということになりますと、たいへんであります。  ところで科学技術庁の資源調査所で五月十八日に「衣料処理剤に関する基礎調査資料」というものが出されております。これは新聞で衣料公害という形でかなり大きなスペースで紹介されたものなんでありますけれども、その中にもこの螢光増白染料の毒性問題、この資料によりますと、発ガン性は否定されております。しかし、いろいろな毒性の問題が例をあげて書かれておるわけでありますが、これはどっちがほんとうなんですか。一体発ガン性があるのかないのか、こちらのほうでは大体ないと書いてあるのだが、科学技術庁、−科学技術庁きょうは来ていらっしゃると思いますが……。
  254. 武居忠雄

    ○武居説明員 ただいま先生から御指摘いただきましたこの基礎資料でありますが、御指摘のように五月に発表されまして、この時点ではわが国といたしましては、発ガン性の問題につきましては資料がございませんので、これはスイスのローザンヌのガン予防センターの資料、一九六〇年のものでございますが、それを紹介してございます。これはその中の主要な螢光増白剤につきましてのデータでございまして、この結論では一応発ガン性はないというようなことになっております。
  255. 細谷治嘉

    細谷委員 これは研究者の報告ではありませんが、「かしこい消費者」というのを、あるいはせんだっての新聞記事を読みますと、やはり発ガンのおそれがあると書いてあるのですね。この一九六〇年の研究報告が一番新しいわけですが、この資料では。その後の研究報告は私は存じませんけれども、螢光染料というものの化学構造がスチルベン系統のものなんでありますから、どうもやはり発ガン性を持つ可能性は十分あると予測されるわけですね。これでは否定されておりますけれども、予測されるわけです。この辺について衛生試験所等は御研究になっていらっしゃいますか。
  256. 池田良雄

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  ただいまの螢光染料の発ガン性につきましては、先生のおっしゃるとおりスチルベンに似ておるという化学構造から、その発ガン性は十分考慮しなくてはならぬだろう、私もそのように思っております。しかしながら、この線につきましての、そういう十分信頼すべき、あるいは広範囲な研究は、私まだあまり文献として読んでおりません。それからこのほうの研究につきましては、私どもでは従来もっとたくさんほかに用事がございますので、まだ手をつける段階に至っておりません。
  257. 細谷治嘉

    細谷委員 この辺もひとつ国民を安心させなければなりませんから、ショッキングなことばかりじゃいかぬのであって、ショッキングなことを鎮静するにはやはりきちっとしたアルバイトで証明する以外にないと思うのです。  そこで厚生省にお尋ねしたいのですが、いま「衣料処理剤に関する基礎調査資料」の螢光染料に関する結びとして、「食品衛生法や薬事法で規制されないフキン、紙皿、紙コップなどの増白には衛生上の問題が残されるし、皮膚障害を単純にアレルギー体質として片ずけることも、この機会に十分反省されねばなるまい。」もちろん、新聞がいっているように、法律に盲点があるわけなんですね。その盲点を埋めなきゃならぬ、それからやはりもっと規制を明確にしなければならぬ、こういう問題があると思うのです。そしてこの中でも指摘しております。この報告は五月十八日に出たのでありますが、厚生省はこの報告をどう扱っているのか、お尋ねしておきます。
  258. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 食品衛生関係についてお答え申し上げます。  食品御生法におきまして、器具及び容器包装につきましては、螢光染料が入ってはならないことになっております。ただ、いまのお話のナプキンでございますが、紙ナプキンの場合には従来一般的な使い方からいいますと、テーブルクロスと同じようなことで、面接食品に接しないということで器具の扱いをやってなかったわけでございまして、そこでこちらに相談に見える業界の方には、好ましくないので使わないようにという指導をいたしておったわけでございますが、非常に普及をいたしまして、サンドイッチを包んだり、あるいはナイフ、フォークを包んだりというような、直接食品に接する場合も考えられますので、今後は一応法解釈上、器具に取り入れて検討したいというような方向でやっていきたいと思っております。
  259. 細谷治嘉

    細谷委員 繰り返しますけれども、螢光染料というのは、スチルベン系とか、あるいは膀胱ガンの原因として最近問題になっておりますベンチジンとか、そういうものが骨格なんですから、私はいろいろと危険性があるのではないかと思っております。しかし、いま実験データを持っておりませんけれども、問題は法律の盲点がある、これは早く埋めなければならぬ、同時に、やはりこういう問題についての規制というものも十分に配慮していかなければならぬのではないか、こういうことを強く申し上げておきたいと思うのです。  そこで、時間がありませんから最後に、この委員会で、五月ごろだったと私は思うのでありますけれども、先ほども申し上げました、現在食用品として許可されておる色素、あるいは食用品にはいかぬけれども、化粧品であるならいいとか、大体三種類に大別されております。最近厚生省はその食用色素を一つ削ろう、それから第二種のものを五つ削ろう、第三種のものを十削ろう、合計十六削ろうと考えて、そして、削るということじゃなくて、業者に何とか規制してくれや、こういうことを申し入れましたね。時間がありませんから、一体十六品目をどういう根拠で選んだのか、これについて業者は協力的なのかどうか、私が言っているように、協力するどころか、やはりエコノミックアニマルで、もうけることならば許されている以外の色素まで使ったという例が最近出ているわけですけれども、その経過をひとつお尋ねしておきたいと思います。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  260. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 ただいまの問題につきましては、薬務局所管でございまして、私のほうでちょっと所管いたしておりませんので、いまの御趣旨のほどをよく業務局のほうにお伝えいたしたいと思います。
  261. 細谷治嘉

    細谷委員 担当じゃないそうでありますから、私は、この前の質問で「合成色素着色料の毒性について」という四十五年五月の、厚生省の担当のプリントをいただいております。このプリントの中に、いま厚生省が自主規制を求めたものがあります。しかし、全体を読んでみますと、どうも理屈上納得できません。ですから、十六種がどういう根拠で選ばれたのか、そういう資料をひとつこの委員会に出していただきたい。これを要望いたして私の質問をきょうは終わっておきます。
  262. 加藤清二

    加藤委員長 ただいま細谷委員から御要望の資料、提出できますか。
  263. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 先ほどお答え申し上げましたように、きょう担当者が参っておりませんので、薬務局のほうに十分お伝えしまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  264. 加藤清二

    加藤委員長 それはいつごろまでにできますか。
  265. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 ちょっと問い合わせてみないとわかりません。
  266. 加藤清二

    加藤委員長 それじゃ問い合わせた結果を至急、きょうというわけにはいかないでしょうから、あすあさってぐらいまでの間に返事だけを下さい。
  267. 細谷治嘉

    細谷委員 ついでといっては語弊がありますけれども、私がこの前のこの委員会で要望していただいた資料というのは、厚生省の判定の基準になっておるものはFDAの資料を中心にいたしまして、大体一九六二年ぐらいの、エジプト時代とは申しませんけれども、たいへん問題になっている。一九六二年からもう十年近くたっているわけですね。ですから、この研究というのはやはり完全に十年たっているわけですよ。それよりも新しい資料がないというのですね。ですから、こういうものの選択というのは、アメリカがオーケーならばオーケー、アメリカがバツにしたらバツ、こういう追随主義ではないかと私は思うのです。ですから、一九六〇年までの資料をいただいたのでありますけれども、もっと近代的な資料もあわせて出していただきたいということをお願いして質問を終わります。
  268. 加藤清二

    加藤委員長 次は多田時子君。
  269. 多田時子

    多田委員 私はきょう一番最初に、前回この委員会で、塩釜の水産加工団地の問題につきまして、公害防止事業団の原理事長に御出席を願っていろいろと承ったわけでございますが、その最終的な結論をここに二点ばかりお願いしたいと思います。  きょう理事長おいでにならないようでございますが、その一つは、先日の原理事長の答弁の中に、基本構想検討委員会があって、それが塩釜水産加工団地の問題解決のために鋭意努力中であるというお話がございました。そしてそのことが、今月じゅうには結論を出したい、こういうわけで、六月三十日という一応の期限を持ったわけでございますけれども、その結果あるいは経過、そして現時点における現状というものの御説明を、まず最初の一点としてお願いしたいと思います。
  270. 古澤實

    古澤参考人 原理事長、ちょっとよそで講演をいたしておりますので、私からかわって……。  塩釜の加工団地の排水処理設備の改善案につきましては、先生御指摘のように、現在公害防止事業団に理員長の諮問機関として委員会をつくっておりますので、そこで改善案をお願いしております。理員長が説明申し上げましたように、六月の末でわれわれその改善案を期待しておったわけであります。それで六月の二十六日に委員会を開きまして、われわれ答申を期待したわけでございますが、なおこれに関連しまして、各委員の方から再度いろいろなこまかい問題点が出まして、現在書面でもって各委員の間で意見調整をされておる段階でございます。その点につきまして、はなはだおくれて申しわけございませんのですが、近くその答申が出ると思います。  ただ、先生御指摘のように、大筋につきましては大体変わらないのではなかろうか、このように考えられます。  その大筋を申し上げますと、水の汚染が非常に大きい原因からいろいろ調べまして、まず作業条件、ことにはらわたを取り、頭を取る段階のガラ処理と申しておりますが、この段階では非常に悪い水が出るわけであります。その段階におきまして、できるだけ悪い水を出さないようにということで、作業条件の改善をはかるということで、これは作業の合理化にもつながることでございますので、これを徹底的に行なうということがまず第一点として示されております。それを行ないましてから、あとで水が出るわけでございますが、それにつきまして固形分をできるだけ取っていこう、それからノリとかカキとか、そういうふうな浅海漁業者の関連への影響が特にあると見られております油分につきまして、これは沈水分離器というもので油分を極力取ろうということでございます。  さらに、濃度がいろいろ高いことも考えられますし、ラグーン池を昨年来つくったその効果もわれわれ期待できますけれども、現在のラグーン池とは別の新しい設計をしたラグーン池を通して、さらにそれをもとにエマージェンシーその他の場合においては薬品を凝集剤として使って処理していく、こういうような案が出ておりまして、その線で答申をわれわれ期待しておりますし、また事実上それに関連しましてレイアウトを作成中でございます。  特にその点について御注意がありましたのは、何ぶんにも濃度が高いということと、水の質が非常に変わりやすいというふうなことなので、作業の状態その他で非常に悪くなった場合に、処理設備がそれに対応するような、われわれエマージェンシーと言っておりますが、そういうような意味の配慮をレイアウトの上でしてほしいということと、それから、何ぶんにもこれは零細業者がこれを使うわけでございますから、それの維持管理というものをできるだけやさしい方法で、やりやすい方法でしてほしい、こういうような条件がつけられておりますが、大体以上のようなとおりの線できまるのではなかろうか、このように考えられます。
  271. 多田時子

    多田委員 御説明でございますが、いまのお話の中にもありましたけれども、現在処理されずに問題になっております固形分というものをどうするかという問題が一点いまのお話の中で疑問が残ります。  もう一つ沈水分離器ということでございますが、これも現在ある施設であろうか、あるいは新しい機械ということになるのだろうかということが一つ。  もう一つは新しいラグーン池ということでございますが、このラグーン池も先回承りましたが、なかなか手数と、また金額のかかることでございます。もし金額がかかるということであれば、一体これはどこが負担なさるものか、その三点についてお願いしたいと思います。
  272. 古澤實

    古澤参考人 先生の御指摘のとおり固形分、これがBODの濃度を高めるということがいわれております。これは作業の段階で金網とかその他をつけてまずできるだけそれを回収するということをはかってみたらどうかということと、そのほかに新しい設備として、ロータリースクリーンということばを使っておりますが、球形といいますか、円筒のスクリーンで、そこに水を通して固形分を極力取る、こういうふうに考えております。  それから沈水分離器でございますが、これはいろいろ技術的にも問題が多うございますが、新しくこれをレイアウトしてあれする。  それからラグーン池の問題につきましては、前回は、ただこういうふうな大きなラグーン池というのはおそらく日本でも初めての経験でございまして、その経験にかんがみまして、といいますのは、前回の場合は、水の流れとか、それから下なりあるいは上に上がりました汚物を処理することが容易でなかった、こういうふうなこともございます。これについて先に入った水が先に出るようにするということ。それから汚物をできるだけ回収しやすいような操作、流れを段階を経て変える、こういうふうないろいろなことを現在現地でもっていろいろ検討中でございます。  以上でございます。
  273. 多田時子

    多田委員 いまの御説明ですが、これは基本構想検討委員会の結論でございましょうか。
  274. 古澤實

    古澤参考人 先生御指摘のとおり検討委員会の結論でございます。もちろんその大筋の結論でございますから、ただそれをさらに再度こまかくということになりますと、技術屋の判断でさらにそれを細分化するということになろうかと思います。
  275. 多田時子

    多田委員 そうしますと、前回原理事長のおっしゃったいわゆる六月一ぱいということの、現在は経過の御説明になると思いますが、そうしますと、九月操業開始のための委員会としての検討がなされ、結論が出るのは大体いつごろでございましょうか。
  276. 古澤實

    古澤参考人 ただいまの私が申し上げました点は大体荒筋でございますが、これはこの委員会を主宰していただいている東北大学の工学部の松本先生と、それから各委員の御了解で、ただいまのような形で直ちに実行するように、ただ正式な答申その他、ことに先ほど申し上げましたようなレイアウト上のいろいろな配慮、そういう文書的な問題がまだございますので、そういう文書の手直しとかその他の問題をいまやっていただいておる段階で、すでにそういう、ただいま申し上げた荒筋でやってよろしいということで、検討の段階に入っておるわけでございます。
  277. 多田時子

    多田委員 さらに疑問が残りますのは、先ほどおっしゃいました固形物を残すということなんですが、その固形物を取ったあと、それをさらにどう処理するかという問題が一つ残ります。  それからラグーンの問題にしても、油水分離器の問題にしましても、やはりこれは前のがだめだったから新しいのをまたつくってというふうでは、いままでの過去の実績からしてどうも信用があまり置けないというふうに思うわけでございます。  もう一つは、いまの基本構想検討委員会の結論はという質問を先ほどしましたのに、ちょっと御答弁をもう一つお願いしたいと思います。結論が出るのは大体いつごろかということです。
  278. 古澤實

    古澤参考人 第一点の、固形物を取ったあと処理の問題ですが、これは団地の中に、頭とかはらわたその他を原料にしてフィッシュミール、これは飼料の原料でございますが、そういうようなものの機械がございますが、それの原料として十分に回収できる、こういうことで考えております。ただ、油分その他については非常に問題もございますので、これは実は委員の方の東北工業試験所の委員、専門の方がございますので、これは油を回収する特殊の装置をそこでいろいろ考案していただきます。それをもとにして油を回収しようじゃないか。  それから先ほどのラグーンその他がだめであったからとこういう点は、先生の御指摘のとおりで、われわれとしましても何ぶんにも初めての経験で、こういうふうな濃度の高い、しかも千トン近い大量の水を初めて処理する、こういうものでございますので、こういうふうな経験その他をもとにしまして、学識経験者の御意見その他をいれまして改善をはかる、こういうことで考えておるわけで、これは御指摘のとおりで、今後もこういうことのないようにいろいろ進めていきたい、このように考えます。  それから結論につきましては、これは委員の先生方のいろいろな御都合がありますので、私から責任もって申し上げられませんが、いろいろお願いしまして、今月の半ばにでも成案が得られますようにお願いをしておるわけでございます。
  279. 多田時子

    多田委員 では今月の半ばごろということで一応承っておきます。  もう一点なんですが、これはこの前のこの席で何回か念を押して伺ったことでございましたけれども、これは金額の点なんですが、実はこの前に伺ったラグーンの製作費用、住友機械がつくりましたラグーンの製作費用について、五千万と申しましたところが、いやそうではない、千五百万だということで、何回か念を押して伺いましたところが、最終的に千五百万ということで私のほうが訂正をいたしました。  ところが、その後はっきりとわかりました金額は、二千二百万から三百万だというふうに、これで金額は三転したわけでございます。私これを最初聞きましたときには、もう何て不親切な答弁だろうかとこういうふうに思ったわけでございますけれども、その三転しました理由、またその内訳等を、詳細御説明していただきたいと思います。
  280. 古澤實

    古澤参考人 われわれの答弁が先生の誤解を招いたことにつきまして、はなはだ申しわけないと思っておりますが、ラグーンをつくりました直接の費用は、先生御指摘のように千五百七十二万円でございます。それで二千二百万とか二千三百万というふうな数字が出たのですが、これはラグーンの費用のほかにその他の施設の手直しとか、ことにこれは冷却塔を新しく設置するというような問題がございます。これが約四百五十万円と、それから人件費関係で二百万円、こういうことで二千二百万円、こういう数字になっております。
  281. 多田時子

    多田委員 塩釜の問題は、刻々と操業の時期も近づいております。この前詳しくいろいろと伺いましたので、その目的に向かって努力を重ね、皆さんが安心して操業できるような状態に一日も早く持っていっていただきたいことをお願いいたしまして、塩釜の問題、以上でございます。  次に、経企庁のほうにお伺いしたいと思いますが、京浜運河の問題でございます。これは調査内容を見ますと、洞海湾のそれとほぼ同じ条件のもとに置かれております。洞海湾も、また京浜運河も、ともに一巡をしてまいりましたけれども、また洞海湾の汚染ぶりは、一昨日NHKのテレビでしたか、詳細に放送されておりました。全く条件を同じうする京浜運河でございます。ちょうど洞海湾は、周辺千近くの工場が一斉にあの洞海湾に排水を流しっぱなしにしている。まことにそれはぴったり同じで、京浜運河も、あそこの大小さまざまな工場のすべて排水溝となっているわけでございます。  それで最近発表されましたデータによりますと、こまかいデータ、たくさんございますけれども、特に毒物劇物に指定されておりますシアンではむしろ洞海湾よりもひどく汚染されていて、基準の約百倍も、二一五・四PPMもあるという、そういうことが判明したわけでございます。これは昨年県が調査をした結果だそうでございますけれども、やはりこの問題が発表されたのもつい最近でございますし、各所に見られるように、やはり県がこの問題を公表しなかった。一年間これが公表されなかったということが一点言えると思いますし、またこの一年間に各工場から放流される排水によって、京浜運河はますます汚染されているというふうに考えられるわけですけれども、この間経企庁として、いわゆる環境基準あるいは水域指定、そういった点でどのような調査あるいは手が打たれてきたかという問題について、御答弁をいただきたいと思います。
  282. 西川喬

    ○西川説明員 お答え申し上げます。  京浜運河につきましては、これは神奈川県がずっと県条例で規制をいたしておりまして、実は自分のところで十分やれるからと当初申しておりました。そのような観点から、現在も県条例で有毒物質の規制は行なっているわけでございますが、企画庁のほうといたしましては、指定水域の保全法に基づきます指定水域に入れる調査水域の予定は持っておりませんでした。しかし、県条例でやっておりましたのが、非常に状況が悪いということがはっきりしてまいりましたものですから、県のほうとただいま相談いたしまして、早急に国の指定水域にすべきではないだろうかということで現在協議をいたしている階段でございます。
  283. 多田時子

    多田委員 埋め立てられました京浜運河の堤防の外側のところに、一キロぐらいですかのところに、ノリ業者がノリを養殖しております。これが約百軒余りございますようですが、こうして日ごとに汚染されていきます水の状態を考え合わせまして、このノリの業者がたいへん不安を持っております。これが現実には被害がどうこうということで、まだ未発表でございますけれども、当然今後はそういう問題が出てくると思います。また現在は、ノリは養殖中止中で、この九月ごろからまた始まるわけでございますが、そういった点の調査結果等をお持ちでしたら教えていただきたいと思います。
  284. 西川喬

    ○西川説明員 まことに申しわけありませんが、ただいま申し上げましたように、県のほうが自分のところでまかしてくれというような従来のいきさつがございまして、現在企画庁のほうにおきましては資料データとしては持っておりません。今後県と十分相談いたしまして、今後の対策を進めたい、このように考えております。
  285. 多田時子

    多田委員 先ほど調査水域にするべくいま検討中であるということでございましたけれども、こうした直接にいわゆる関係産業もあることでございますから、当然環境保全の上からも、あるいは関係産業の相互協和という観点からも、当然指定水域として指定するべきである、こういうふうに考えますが、いまの御答弁にもありましたが、調査水域とし、また指定水域とするというお考えが確かにあるかどうか、その点について……。
  286. 西川喬

    ○西川説明員 経済企画庁といたしましては、当然指定水域にするべきである、このように考えているわけでございます。ただ、神奈川県の場合につきましては、県が県条例でやらせてほしいという意向が従来非常に強うございました。国が規制するよりももっときつくやれるのだからという状況がございまして、いままで延び延びに延びてきてしまったわけですが、国としては当然地元の同意があれば、これは当然指定水域といたしたい、このように考えております。
  287. 多田時子

    多田委員 これは当然、県ももちろんでございますが、前回伺いましたときに、たしかやはりそのような御答弁であったと思いますが、やはり洞海湾と同じく、どうしても問題が持ち上がってからその後、あと追い行政といいますか、そういうような形になっていく点がいずれも批判されるその焦点になっているように思いますので、これはさっそく調査水域とし、また指定水域として、直接経企庁としてそういう点もきちっと見ていくということがしかるべき行政指導ではなかろうかと思うわけでございます。  続いて通産省にひとつお尋ねしたいわけでございますが、通産省工場の監督省庁として、この京浜運河周辺、それこそ埋め立て地の半分ぐらいが大きな工場で、大小工場がさまざまございますけれども、この京浜運河周辺の工場の実態について明細に御説明をいただきたいと思います。
  288. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 御説明申し上げます。  御指摘の地帯はいわゆる京浜工業地帯の中心でございまして、日本でも最も古くから工業の発達した地帯であることは御承知のとおりでございます。現在全体の企業数は約百五十といわれております。おもな業種といたしましては、石油精製、石油化学、鉄鋼、ガラス等でございます。石油精製の中で主要な工場名を申し上げますと、東亜燃料、三菱石油、東亜石油等六工場でございます。石油化学につきましては日本石油化学、東燃石油化学等十六工場がございます。鉄鋼は日本鋼管その他若干の工場もございます。ガラスは旭硝子、日本硝子、東洋硝子でございまして、以上のような業種が集積いたしまして重工業地帯を形成しておるというのが実態でございます。
  289. 多田時子

    多田委員 工場の実態についてはわかりましたが、その中でいわゆる排水処理施設といいますか、いまやかましくそういう問題が論ぜられております施設、その百五十の工場の中でどれだけそうした公害に対する配慮がなされているか、排水処理施設を持ったいわゆる完備した工場がどのくらいあるかを御説明いただきたいと思います。
  290. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 当水域が、ただいま企画庁から説明のありましたような形ですべて条例でもってやられておりましたので、排水関係の特別な調査という観点で調査結果をまとめたデータはございません。もちろん通産省は、これらの工場に対しましては一般的な行政権限を持っておりますし、各種のデータはあるわけでございますが、ただいまそれをまとめたものはございませんので、御要求がございますれば、その御要求に応じましてデータを整理いたしたいと考えております。
  291. 多田時子

    多田委員 ではこの問題は、いまのお話のようにそのデータをいただくことにして終わりたいと思いますが、いずれにしましても、県が自分のところでやるからということでいままで放置していたということは、先ほどもお話がありましたように、やはり全く監督不行き届きだ、こういうふうにいわざるを得ないのでございまして、またさらに近い将来、現在の堤防のところから大規模な埋め立て工事が始まるようにも聞いております。その埋め立てをされますと、またそこに工場が結集されて、そうしてそのまわりはまたそこから新たな公害が発生するというふうにも考えられますけれども、その近辺にはノリの業者もいることでございますし、その辺の今後の見通しといいますか、お考えについて御説明いただきたいと思います。
  292. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 現在埋め立てにつきましては神奈川県、それから川崎市、横浜市、この三者が共同で計画を持っておりまして、したがって、企業の誘致その他につきましても、この三者が協議して決定するという体制をとっておるようでございます。またこれは、埋め立ての計画があるという程度でございまして、われわれのほうも日本鋼管がその地区に進出しようという希望を持っておるということ以外、個々の会社がどの程度の希望を持っておるか、これはまだ全然報告もございませんし、具体的には承知していないわけでございますが、もちろんこの地区にさらに相当大規模の埋め立て地ができるということは、ただ単に水の問題だけではなくて、大気の問題につきましても相当の影響があるというような観点から、特に大気につきましては産業公害総合事前調査対象地域といたしまして、従来から詳細な調査実行しておるところでございまして、非常に人家も近い地域でございますので、ここもやはり五年——たしか十年地域になっておったと思うのでございますが、できるだけ早い時期に環境基準を守らせるような行政指導は目下懸命にやっておる最中でございます。
  293. 多田時子

    多田委員 確かに神奈川は昔から、むしろ公害の一番最初の発生地点ではないかと思われるほど、大気汚染から、騒音から、水質汚濁から、富山県ではありませんが、まるで公害の宝庫ともいわれるような現状でございますので、これはやはり県のみではなくて、国家として大きく見守り、また行政指導をしていくことが必要であろうかと思われます。  先を急ぎますのでもう一点、これは厚生省にお尋ねしたいわけでございますが、いま細谷議員からも悪臭問題についてお話がございました。私もこの悪臭問題についてひとつお尋ねしたいわけでございますが、昨年の公害白書の統計を見ましても、悪臭に関する苦情の受付処理件数は、騒音、大気汚染とほとんど肩を並べるほどの状況である。その結果によりますと、総数二万七千六百件のうち騒音が一万、大気汚染が五千六百、そして悪臭が五千と、全くその数はいまの騒音あるいは大気汚染とほぼ同等くらいに肩を並べているわけでございます。先ほどもお話がありましたように、実際には悪臭に関する規制は全くなされておりませんし、研究とか施策等も一番おくれているということは、これはもうだれでも承知をしていることでございますけれども、その点現状について一言最初にお願いしたいと思います。
  294. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答え申し上げます。  悪臭につきましては、先ほどの細谷委員の御質問にお答えいたしましたように、各種の悪臭がございますが、いずれも測定の方法が非常にむずかしいとか、あるいはこれの防除の技術がむずかしいとかいうようなことでございまして、現在までは十分なる対策はとられていなかったわけでございます。特にまたこの悪臭は、必ずしも悪臭単独で問題になるわけではございませんで、大気汚染あるいは水質汚濁と複合して出てくるわけでございますので、私どもとしましては大気汚染対策あるいは水質汚濁の防止の対策あるいは清掃法、へい獣処理場の関係法、その他関連法規の運用を通じて、できるだけ悪臭問題に対処できるようにというのが従来の限界であったわけでございます。しかし、私どもとしましては、そういう方法ですと、いずれにしましても完全な問題の解決になりませんので、何とか基準をきめられるような段階に持っていきたいということで、昨年の十一月に悪臭公害に関する研究会を発足いたしまして、これまでの各方面の研究成果を集めまして、その目的に向かって努力をいたしておるわけでございます。さらに本年度はこれを拡充強化いたしまして、年度内に何とかこの各種の悪臭の中で、特に動物の飼育、加工等に伴って出ますアミンあるいは揮発性脂肪酸、こういうものについての基準値と測定方法、これを確立してまいりたいと思っておるわけでございます。
  295. 多田時子

    多田委員 いまの説明の中に、四十四年十一月に悪臭対策研究会、こうございましたが、それ以前に、昭和四十年から日本環境衛生センター、そしてまた四十三年十月にはにおいの公害追放三カ年計画、こういうふうに確かにその問題の前向きな姿勢ということが考えられるわけでございますけれども、ここに御承知のように、前橋の荒口町のへい獣処理化製工場がいろいろな事件を巻き起こしております。さきに塩釜でもへい獣処理場の悪臭問題で住民がたいへん苦しんでおりましたのを私もまのあたりに見ているものですから、この前橋市の荒口町にあるへい獣処理化製工場は、もっと大きな被害をまわりに及ぼしているであろうと私は考えるわけでございます。その周辺三キロないし五キロにわたる周囲の人々が、いろいろな被害を受けている、こういうふうに伺っておりますけれども、その辺の状態について御説明をいただければお願いしたいと思います。
  296. 神林三男

    ○神林説明員 お答え申し上げます。  前橋の件は、一般の化製場、すなわち家畜の骨あるいは魚の内臓あるいは鶏の羽毛を処理するいわゆる化製場と法律的に称しておりますが、そういう化製場と同じ性質のものでございます。不幸なことに、この工場では六月の六日に一名死亡者が出まして、それで特にこの問題がまた非常にクローズアップされているわけでございますが、厚生省といたしましても、この工場に対しましては現地調査等を行ないまして、今後どういうふうにするかというようなことを目下検討しておる最中でございます。
  297. 多田時子

    多田委員 いま一名死亡のお話がございました。それが最大最高の事件でございましたようですが、さらにそのなくなった方がかまの中で倒れたときに、それを助けようと思って入った方も何か意識不明であるとか聞いております。それがまた重ねて問題になっているように現地の新聞で見たわけでございますけれども、さらに現地の新聞の報ずるところによりますと、そういうくさいところでは一生過ごすことはできない、お嫁の来手もないというふうに担当官に訴えた人があるそうでございますし、また近くの、そこから一キロばかり東へ行きましたところの在籍八百名の荒口中学でもたいへん被害が甚大で、授業中に風向きが変わってそのにおいが入ってきますと、給食中の子供たちでもとたんに嘔吐を催す、そういうふうで、授業中なのににおいが入ってきたらもう大騒ぎだというふうで、いろいろなところにその被害がわたっているようでございます。  いまのお話にありましたように、鋭意その問題の解決のために努力していらっしゃることはわかるわけでございますが、こうして日々その問題が重なり、また泣いている方々もたくさんいるわけで、その答申あるいは研究の結果を待ってそれに着手するということでは、どうも歯がゆいように思われます。さっそくこうすべきであるという何らかの手が打たれないものだろうか、このように考えられますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  298. 神林三男

    ○神林説明員 当該の前橋の化製場につきましては、現地調査の結果、一応至急国といたしましてもこれに対して技術的な援助を与えまして、現在ある工場で問題になる個所は、まずオートクレーブを使っておるところと、それから乾燥しているところが悪臭の発生源であるという調査結果を得ましたので、これに対してどういうふうに改良するかということで、至急いま回答をつくりつつあります。さらに一つには、これは非常に金のかかる問題でございますから、その金融措置をどうするかということに対しましては、現在県当局に対しまして、私たちのほうもその措置を至急いたすようにということで県に指導しておる最中でございます。  それからなお、化製場関係の一般的な問題につきましては、先ほど公害部長が先生にお答えになったように、これはまずものさしをつくりまして、基準をつくるとか、あるいは私たちのほうの化製場全体の悪臭というものに対する一つの測定方法を、至急専門家を交えまして検討していきたい。さらに悪臭防止の技術的の開発も至急やっていきたい、そういうふうに考えております。
  299. 多田時子

    多田委員 いまのお話でございますが、もう一つ具体的なその工場に対する援助の方法等はないものか。いま助成金の問題が出ましたが、その問題に対しましても県に指導するということではなくして、もっと国としてこうするというお考えはあるものかないものか、その二点についてもう一度お願いしたいと思います。
  300. 神林三男

    ○神林説明員 化製場につきましては、いまのところ私たちは予算的な措置はできませんものですから、一応技術的にまずどういうふうにするかということで、先ほどお答え申し上げましたとおり、技術的の援助を少なくともこの際いたしまして、さらに金融措置等については県当局で現在いろいろ考慮中でございますものですから、至急それを決定していただきまして、施設を改善するようにひとつやっていただきたいというふうにしておるわけでございます。
  301. 多田時子

    多田委員 いまの話でございますけれども、国として助成するわけにはいかないという問題ですが、これは水産加工業と同じくへい獣処理工場というのは全くの零細企業で、自分の力でそういう問題の処理をするということは全く不可能に近い。こういう観点から、県は当然のことでありますが、もう一歩そこを、そういうわけにはいかないと、こう冷い言い方ではなくて、こういうふうなことが考えられるということはないものでございましょうか。
  302. 神林三男

    ○神林説明員 化製工場の悪臭そのものに対して国が融資措置をとるというようなことは、現在制度上ございませんけれども、汚水処理につきましては、事業団のほうから貸し付けの対象になっておりまして、これが、もしそこに排出される汚水が指定河川に関連があるということならば、その点ではあるいは検討を今後していきたいと考えております。
  303. 多田時子

    多田委員 現在お米の減反等で、農家はたいへん転換期に来ていると思われます。そういうところから、むしろ畜産関係が大いに奨励されて、いわゆるへい獣処理工場の現在のような問題は、これからふえればこそ減ることは全然ない、こう考えられるわけでございますけれども、全国的にこういう工場がどのくらいあるものか、内容を化製工場、それからへい獣取り扱い工場、これに両面あるようでございますが、その辺について具体的に御説明をいただきたい。
  304. 神林三男

    ○神林説明員 へい獣処理関係につきましては、へい獣取り扱い場というのは、これはまた家畜のいわゆる焼き場あるいは墓場というようなものを含めての数でございますが、一応その前に解体場といって、死んだ家畜を足なら足、首なら首とばらばらにする施設が全国で二百十五、それから埋却場、いわゆる家畜のお墓でございますが、これが五千四百九十九、それから焼却場でございますが、焼き場が七十六。それからこの次申し上げますのは、現在問題になっておりますいわゆる化製場というのでございますが、化製場は、昭和四十四年で千八百八十九軒、それから法律的には化製場とは別にいたしまして、化製場に準用をする施設といたしまして、先ほど申し上げました魚のあらを用いまして肥料をつくる、飼料をつくるという、私たちのほうでは魚鳥骨の化製場ということばを使っておりますが、あるいは鶏の羽毛を処理するのもこの中に入りますが、そういうものの製造施設がやはり四十四年で二千二百二十一ございます。
  305. 多田時子

    多田委員 この問題の最後でございますが、へい獣処理場等に関する法律、この法律は昭和二十三年に制定されまして以来、たびたび法改正がなされているわけでございますが、このへい獣処理場等に関する法律、この一項にはその目的というものがはっきりここにうたわれておりません。公害基本法にしましても、あらゆる法律にはまず第一項目として、それは環境の保全のためにとか、あるいは産業の発展のためにとか、いろいろ目的がうたわれているわけでございますが、このへい獣処理場等に関する法律に限って、この目的というものがないわけですが、この辺はどういうふうにお考えでございましょうか。
  306. 神林三男

    ○神林説明員 この法律は、実際にでき上がったのは終戦後でございます。戦前この法律の前身をなすものとして警察命令が出ておったわけでございます。それを新憲法のときに法律に直したわけでございますが、当時、私たち、一応戦前からこの法律の目的としておったところは、要するに環境衛生の向上という問題と、もう一つは当時の背景といたしましては、いろいろ家畜の内臓あるいは骨を扱うといったようなことで、人間と家畜の間に共通の伝染病がございますから、それを防止するということになっておったわけでございますが、公害対策基本法ができまして悪臭がこの対象になってきたわけでございますが、一応公害対策基本法のほうの親法を受けておりますから、当然対策基本法ができてからは、公害という観点で私たちはこれを処理していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  307. 多田時子

    多田委員 いまのお説でございますけれども、ではこれが生活環境の保全を目的とするという、いわゆる公害基本法の精神をもってすればそういうことになるわけでございますが、そういうふうに法改正をしていく、そういう御決意といいますか、お考えがございますか、どうでしょうか。
  308. 神林三男

    ○神林説明員 この法律で現在一番問題になっておりますのは、都道府県知事がこういうものの許可を与えるときのいわゆる構造設備の基準というのがございます。これは政令でございますが、この中で、従来の規定というのは、非常に、時代的に見れば立ちおくれた規定でございまして、たとえば化製場の場合は「換気扇を備えた排気装置その他臭気を適当な高さで屋外に放散することができる設備が設けられていること。」ということがございますが、これはこの法律ができた当時、十分なるそうした悪臭防止施設というようなものがなくて、煙突が一つあればいいというようなことでできておりましたし、またわれわれも、先ほどから細谷先生あるいは多田先生に説明しておるとおり、これが非常に技術開発の立ちおくれを来たしておりまして、そこで今後至急技術開発をいたしまして、その政令の手入れというようなことは私たちもやっていきたいというふうに考えております。
  309. 多田時子

    多田委員 いまの私の質問にちょっとお答えいただけないように思いますが、その立ちおくれている各種の法律そのものを改正するというお考えがあるかどうかという点はいかがでございましょうか。
  310. 神林三男

    ○神林説明員 お答え申します。  法律におきましては、現在でも非常に抽象的なことばでございますが、「臭気の処理を十分にすること。」というようなことが、第五条だと思いますけれども、入っております。これにつきまして、私たちは先ほども言ったように、測定方法をつくるとか、構造設備というか、悪臭防止の装置というようなものを開発いたしまして、それで手当てをしていけば、必ずしも現在の法律を直さなくても対処できるのじゃないかというふうに考えております。
  311. 多田時子

    多田委員 そういたしますと、先ほど話がありましたけれども、このへい獣処理場等に関する法律そのものの目的といいますか、価値といいますか、その辺についてはどうお考えでございましょうか。
  312. 神林三男

    ○神林説明員 これにつきましては、なお私たちも検討してまいりたいというふうに考えております。
  313. 多田時子

    多田委員 それではこの法改正の問題については、また次回に残しておきたいと思います。  最後に一つだけ……。秋田の立又鉱山でいま問題が起きておりますけれども、その排水にまたカドミウムが含まれているということで新聞等にも報道されております。またその附近一帯の住民がたいへん被害を受けているというようなことがたびたび報ぜられておるようでございますが、その問題について関係省庁はどのようにお考えか。最後に一言だけお願いしたいと思います。
  314. 西川喬

    ○西川説明員 ただいま先生のお話になりました鉱山につきましては、鉱山保安法によりまして、すでに通産省のほうも指導いたしておりますけれども、水質基準といたしましても、現在米代川の調査を今年度実施いたしております。今年度の基準調査の結果によりまして、来年度には指定水域にいたしたい。このように考えております。
  315. 多田時子

    多田委員 経企庁でございますね。経企庁の御答弁をいただきましたが、通産省厚生省等は関係ございませんでしょうか。
  316. 莊清

    ○莊説明員 通産省では、現在微量重金属関係の鉱山につきまして、問題が非常に多うございますので、今後全国的な一斉調査をしたいという方針でおります。当鉱山につきましても、水域指定の前提にもなりますので、この調査に入れまして、今後十分調査をし、一そう監督を強化してまいりたい。かように考えております。
  317. 多田時子

    多田委員 調査の時期等いろいろ伺いたいと思いますが、時間でもございますので、以上で質問を打ち切りたいと思います。
  318. 加藤清二

    加藤委員長 米原昶君。
  319. 米原昶

    ○米原委員 きょうは騒音の問題について質問する予定なんですけれども、その前に新任の通産省の荘公害保安局長が見えておりますので、ちょっと確かめておきたいことがあるのです。それは、昨日の参議院の公害委員会で出た例の、この前の本委員会でも問題になりました富山県黒部市の三日市製錬所に鉱山保安法を適用するということについて、社会党の杉原議員ですかの質問に対して、大臣が省令でこれを適用するようにしたいと考えているという話ですね。この問題は、私が六月の本委員会で、やはりあのとき質問しまして、鉱山保安法の改正はもちろんけっこうだけれども、緊急の問題で省令でも適用できるのじゃないかという質問をして、当時はその点検討するという答弁で、はっきりしたのを得られなかったわけですが、きのうはっきりした答弁が出たわけです。実は、昨夜富山県から、地元黒部から私のところに電話がかかってきた。非常にこれを喜んでいるのです。富山県の夕刊全部これを報道したらしい。  そこで、あらためてちょっと伺いたいのです。もちろんこれを適用するにあたっては、法制局との話し合いももうちょっと進めなければならぬ。そして省令として出すためにはいろいろ準備が必要だそうです。しかし、すぐに明日できるということじゃないようですが、地元の昨日の夕刊、これも電話で聞いたので、私まだ夕刊は見ているわけじゃないが、八月一日から実施するというようなことが出ているそうです。私のお聞きしたいのは、もちろん法制局との話し合いもありますから、必ずできるということはいまの段階では言えないのでしょうけれども、その話し合いが大体うまくいった場合には、八月の一日というそういう情報があるそうですが、一体これはいつごろ実施できる予定でおられるか、これが一つ。  それからもう一つは鉱山保安法を適用の場合に、やはり黒部市の三日市製錬所だけでなく同様の条件の工場がたしか五つか六つあったようですが、こういうのも同じやり方で適用されることになるのかどうか。そのあたりをちょっと簡単に答弁をしていただきたいのです。
  320. 莊清

    ○莊説明員 富山県の三日市製錬所につきましては、昨日参議院の公害特別委員会におきまして通産大臣が御答弁申し上げましたとおり、現在法制局と最後の詰めが残っておるだけでございまして、通産省自体といたしましては、お話しのように省令によりまして指定をいたしまして、鉱山保安法の適用対象とする方針を固めております。ただ、いま先生のお話にもございましたけれども、八月一日というふうに地元のほうでお受け取りになって非常に期待をしていただいておるというお話でございますけれども、実はきのう通産大臣は法制局と詰めて、どういう方針をとるか、省令で指定をするかどうかの最終決定を、一両日中にケリをつけるという趣旨の答弁を実はしたわけでございます。われわれとしては法制局の了解もとりまして、省令指定の線が最終的に固まることを強く希望いたしておりますけれども、その場合に、直ちに指定いたしますと、施業案の認可、それから施設検査等々すべて鉱山保安法あるいは鉱業法の規定が一度にかかってまいるわけでございます。そういうことで現在ああいう事件のあとで操短はいたしてはおりますけれども、古い山で操業をいたしておりますので、その間無用のトラブルが起こらないようにという配慮は行政上やむを得ませんので、所用の期間はアローアンスとして置かしていただきまして、摩擦なく正しい検査等を十分に行なうだけの期間を置きまして、おそらく八月のおそくとも中旬ごろまでには何としても進めたいと思いますが、そういうスケジュールで事務的には考えております。  それから第二番目の御質問でございますけれども、三日市と似たような独立製錬所をどうするかという御質問でございますけれども、似たような条件のが幾つかございます。現在も鉱山保安法の適用対象にしておりません。ただ、詳細に検討いたしました結果、それらの三日市以外のものはいわゆる同一鉱業権者の鉱山から鉱石を持ってきてないという特殊事情がございます。そうなりますと鉱業法の規定の上で鉱物の採掘及びこれに付属する製錬所、この付属するというのは、鉱業法の解釈上、山で鉱石を出しましてそれを持ってきて製錬する、ほかのところから持ってくることは差しつかえないけれどもという解釈が固まっておるようでございますので、そういう意味で現在の鉱山保安法は鉱業法のそういう規定を受けまして、土俵を一にいたしておる関係上、直ちに省令で指定して三日市と同じ扱いをするということは、現行法のもとでは全く不可能である、こういうふうに考えております。ただそういう製錬所に  つきましては、前国会でも御答弁申し上げておりますとおり、鉱山保安法の改正という線で進むのがよろしいか、それとも大気汚染防止法とか水質汚濁防止法というふうな、いわゆる一般の公害防止法の体系に含めましてやっていくのがよろしいか、今後慎重に検討したいと思っております。  と申しますのは、たとえばアルミの製錬とか、その他鉄鋼業とか、形式的に伸ばしてまいりますと、いろんな範囲もございますので、それらの問題全部ひっくるめまして、前向きにとにかく検討さしていただきたい、こういう考えでございます。
  321. 米原昶

    ○米原委員 ほかの工場の場合は、いま言われたような法律上、法制上の問題が確かにあるとも思いますから、これはやむを得ないでしょう。しかし、おそらく鉱山保安法の適用を地元が歓迎しているというのは、いろいろな面で通産省が強力な監督ができる、いままでの経過から見ても全然監督がなかったという点に非常な落ち度があったと思うので、それができるように鉱業法及び鉱山保安法の一定の改正をやるのか、それだったらいいんじゃないかと私は考えます。そういうふうに地元が歓迎していますから、地元の期待に沿うようにひとつ御努力をお願いしたいと思います。  次に、私お尋ねをしたいのは、騒音の問題です。騒音の公害については、たとえばことしの二月に自治大臣の官房企画室で出しました「地方公共団体の公害対策に関する調」、これを見ましても、いろんな陳情、苦情、これの出ている件数で騒音が  一番多いですね。騒音が全体の四〇%を占めておる。この統計で見ますと、一万三百十四件、全体が二万八千七百七十件ですからね。四〇%も騒音に対するいろんな苦情があるということなんですね。確かに騒音公害というのは発生源もわりあい簡単にわかりますし、しかも一日じゅう騒音に悩まされたんじゃたまったものじゃないですから、当然これが一番多いんだろうと思うのです。ところが、この騒音に対して、たとえば騒音規制法を見ますと、第一条の「目的」では、工場及び事業場における事業活動、それから建設工事に伴って発生する騒音というものを規制することになっておりますね。いま問題になっておる、先日お調べになった交通騒音、これに対しては道路の場合、自動車騒音の場合は、道路運送車両の保安基準があるとか、いまつくられておる基準というようなもので押えていくんでしょう。あるいは航空機の騒音については、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律その他の関係法があるのですが、ところが鉄道による騒音、これはどういうふうに規制していくのか、一体これには適用する法律があるのかということなんですがね。これをまず最初に聞いておきたいのです。
  322. 城戸謙次

    ○城戸説明員 騒音対策全般の考え方でございますが、御指摘のように、騒音規制法では、現在工場騒音と建設騒音、この二つだけを取り締まりの対象としているわけでございます。これは従来条例で取り上げておりました工場騒音を中心にしたものと、それまで技術的な面もありまして必ずしも取り上げておられませんでした建設騒音を取り上げて、いずれにいたしましても全国的に問題であり、しかもある程度規制の方法も画一化し得るものを、公害対策基本法ができましたあとで立法化したものでございます。その当時からすでに交通騒音についても問題になっておったわけでございますが、何と申しましても交通騒音はやはり相当技術的にもむずかしい、あるいは公共性の問題もあるというようなことで、若干そのあとの検討にゆだねられたわけでございます。  私どもとしましては、まず何と言いましても環境基準を早くつくる。そうしませんと、規制をやります場合もめどが立たぬわけでございまして、そういう意味で、そのあとずっと環境基準の検討をいたしてまいりまして、先般、昨年の七月に騒音にかかる環境基準の第一次報告が出まして、ことしの六月三十日に第二次報告が出たわけでございます。第一次報告は一般的な騒音の基準でございますが、第二次報告では特に道路交通騒音について取り上げておるわけでございます。  私どもとしましては、この専門委員会の二つの報告をもとに、現在生活環境審議会の中の小委員会で、総合的な交通騒音対策の問題を含めまして環境基準を正式に閣議で決定できるようにやっているわけでございます。  ただ、いま御指摘がありましたような特殊の衝撃的あるいは間欠的な騒音につきましては、その身体等への影響等につきましても必ずしも十分わかっていない点、あるいはまたほかのこれまで検討してきた騒音とは質が違っている点もございますので、このあとに、引き続きまして特殊音につきましても環境基準をつくっていく、それに基づきます各種の規制が行なわれるように進めていく、こういう手順にいたしているわけでございます。
  323. 米原昶

    ○米原委員 それではやはり具体的には鉄道の騒音については規制するものはまだ何もできていないということになると思うのですが、実際には鉄道の場合は非常に原因もはっきりしているし、その周辺に住んでいる人が前から悩まされているわけですね。もう御存じだと思いますが、東京でも新幹線がずっと品川から横浜のほうに抜けていますね。その下を品川−鶴見を結ぶ貨物線の品鶴線がずっと通っていて、二段になって、そこにまた東京急行の田園都市線、あれがきているのです。これはたいへんなところだということを前から聞いておりまして、品川区役所のほうでも、いままですでに建設部の公害課でも何回か調査をやっている。その結論も出ているようです。私たちも先月の二十七日に、都の公害研究所と品川区役所の協力を得まして調査に行ったんです。これはたいへんな騒音ですね。いまお話しになった六月三十日に出ました第二次案ですか、生活環境審議会の報告で出ている自動車騒音の規制案、これと比較しましても、お話にならないような状態だということがわかりました。ここに一応その調査報告の簡単なものを、品川区役所の公害課と協力してつくってもらったんです。簡単に言いますと、この沿線の十メートル、二十メートル以内にある住宅の中に入って初めに調査したんですが、屋内で貨物車が通ると九十ホンあるいはそれ以上、これが朝から晩まで、新幹線がまたその間を通るのですからね。三分おきに通っているんですよ。九十ホンで、三分おきにそういう音を出されたのではたまったものじゃないと思うのです。そしてこの踏切のそばに、品川区立の大間窪小学校というのがあるのですが、これは線路に沿ってある。ここは八十七ホンというのが出ました。そのほかのところも、ずっとその沿線に沿って住民が不平を訴えている地域に行って調べたのですが、生活環境審議会で出された六月三十日の道路沿い地域の騒音に対する環境基準と比べると、どの地域もはるかにオーバーしている、こういう状態です。貨車と新幹線合わせて一日に五百五十本通っておるわけです。だから、たいへんなところであって、たくさん通るときには一時間に二十本以上の車が通っておる。三分おきです。そういうのが十七時間も続く。夜中の二時でも十七本通過しております、この表を見ますと。これじゃもう頭が変になってしまうのじゃないか、つくづくそう思いました。  そういう点で実はこの大間窪小学校というのも、この問題をどうするかというので、小学校のPTAからも品川区役所に陳情書が出ております。これを見ますと、生徒が全然授業ができないほどひどいのです。列車が通るたびに先生の声が聞えないから、授業を中座してしまうというのです。じっくり考える能力がなくなって、そこの小学校に通っておる子供は、少し変になっておるというような状態。  もう一つあとでお伺いしますが、この近所全部テレビ障害も一起こっておる。これは郵政省の方にあとでお聞きしたい。騒音と電波障害、このためにたいへん悩まされておるのです。  こういう点について、規制する法律がないといったところで、実際はいま調査されておる道路沿いの騒音の基準よりはるかにひどいわけですし、人間の住めるところじゃないという状態です。どういうふうにされるつもりか。  実はもう一つそこに問題があるのです。というのは、いま通っておる貨物線が四十七年からという予定だ。若干これは国鉄の方にお聞きしたいのですが、ここはいまは貨物線が通っておる。これが変わって、貨物は別の方途、武蔵野線ですか、それから海岸沿いに大井の埠頭のほうに回すやつができる。そうすると、ここを旅客車が通るというのです。四十八年から通る。いま貨物線で悩まされておるわけですが、おそらく通勤の、ことに小田原とか神奈川県のかなり遠いところから通っておる通勤の問題、これはもちろん重要な問題です。それを確保するために旅客車を通されるという案らしいのですけれども、これをやられてしまうと、これ以上ひどくなったら一体どうなるのだという声が起こっておるわけです。これに対して一体いまのままの案でいかれるのかどうか。現状でも何らかの対策を講じないとまずいのじゃないか。いままだ基準もできていない状態だといま聞きましたけれども、これは基準をつくれば必ずひっかかるところだと思うのです。そういう点ではいまから手を打っていかなければいけない問題だと思うのです。こういう点についてどういうふうな措置を考えておられるか、運輸省の鉄道部長と国鉄の理事の方に来ていただいておるのでお聞きしたいと思うのです。
  324. 長浜正雄

    ○長浜説明員 いまの品鶴線のお話でございますが、確かにその上を新幹線が通っておりまして、昭和三十九年の十月以来運転しておるわけでございます。地元の皆さん方からいろいろお話がございまして、私たちのほうでもいろいろ調査いたしました。やはり騒音がどれくらいのホンになっておるかということを調査しております。数字につきましては、いま先生おっしゃいましたけれども、私のほうでは、場所あるいは距離なんか違っておったのかもしれませんが、もう少し小さいようではございますけれども、いずれにしましても、八十ホン前後の数字のようでございます。  品鶴貨物線は、実は昭和四年に建設されまして、それ以来、ずっと運行されております。最初からやはり貨物列車ばかり運転されておりまして、いまと同様でございます。三十九年にこの上に新幹線ができたわけでございますが、新幹線の音につきましては、これは一般のところと違いましてここは二百キロの速度で走りませんで、百キロくらいの速度で走っております。また新幹線につきましてはレールの太さが太いとか、あるいは道床の厚みが厚いとか、あるいは継ぎ目がないというようなこと、あるいは電車のシャシーが違うというようなことで、騒音の程度が在来線よりも若干低いようでございます。そういうことでございますけれども、いまのところ、鉄道が発生いたします音は、レールの継ぎ目あるいはレールから発生する振動による音、並びに車両のエンジン部分から発生する音、この二つであろうと思います。これにつきましては、私どもとしても全国的な問題でございますので、国鉄で持っております技術研究所で、先年来この音の少なくなるような車両あるいは音の少なくなるような軌道構造ということで、鋭意いろいろな勉強をしておるのでございますが、鉄道というのは鉄のレールの上に車輪が走るということでございますので、基本的に音を防止するのはなかなかむずかしい、こういう状況でございます。しかし、できるだけ音を少なくしなければならないということで、いま申しましたように、道床の厚さを厚くする、あるいはレールの太さ、たとえば三十七キロレールとかあるいは五十キロレールとか、こういうふうにいろいろなレールの太さがございますが、なるべく太くする。それから、まくら木を木まくら木からコンクリートまくら木に変えるというような手だて、そういう手だてをいろいろやっております。また車両につきましても、なるべく音の発生源を少なくするというような努力を重ねておるわけでございますが、御指摘のように現状においてはまだ音が残っておるわけでありまして、これは基本的に、物理的にいまの状態ではやむを得ないので、できるだけこれを軽減するような努力は今後とも続けていきたいと思います。  それからもう一つ、先生お話しの、旅客列車がこれを通るならばどうだろうかということでございますが、一応私たちの計画といたしましては、昭和四十七年度を目標として、いまの湘南電車並びに横須賀線の電車、これが大船から東京まで同じ線を走っておりますので、通勤の緩和のためにはどうしてもこれを分離しなければならないということで、大船から東京まで別線をつくりましてこれに横須賀線を移す、あるいは一部貨物をそちらに移して、在来の貨物線に旅客を通す、こういうくふうをいたしております。これに千億ばかりの相当膨大な金をかける段取りで進めておるわけでございますけれども、そうなりました暁は、この品鶴貨物線は旅客専用線になる、こういうことになります。当分の間は貨物列車もわりあいに残りますが、将来は非常に減ってまいります。現在東京に入ります貨物列車は全部通っておりますけれども、これは、先生さいぜんおっしゃいました武蔵野線あるいは京浜の海岸線のほうに回りますので、これがほとんどといいますか、非常に貨物列車が少なくなる。そして通勤電車が大部分になる。こういうかっこうになろうと思います。  通勤となった場合の音の問題でございますが、これは貨物よりも音が大きくなるという心配は、私たちはいまのところ持っておりません。逆に、貨物列車だと長うございますが、ただ貨物列車は本数が少のうございます。通勤になりますと本数がふえる。しかしまた車体の構造が違いますので、その点は、私はいまより悪くなるというふうには心配はしておりません。
  325. 秋富公正

    秋富説明員 お答えいたします。  ただいま長浜常務理事から御説明申し上げましたように、国鉄といたしましても鋭意検討しているわけでございますが、運輸省といたしましても、この交通の騒音ということにつきましては十分に意を尽くしまして、国鉄のほうにもいろいろと指導監督しているわけでございますが、何ぶん交通機関の発生する騒音と申しますのは、やや普通の騒音と異質のものでございまして、なお技術的にいろいろと研究いたしましてその防止につとめるという点もございますので、研究と実際の防止策と両方並行して進めているという現状でございます。
  326. 米原昶

    ○米原委員 いま言われました道床の厚さとか、レールを長くするとか、まくら木を改善するとか、そして貨物でなくて旅、客車が通るというようなことは、若干騒音を軽減することはわかりますよ。そこに調査に行ったときにも、いろいろ話してみたのですが、それはそうだろうと思うのです。しかし、あの騒音の状態では、ちょっとくらいの軽減では解決つかない状態じゃないか。  もう一つは、ちょっと言っておきますと、地域の住民の人がこういうことになるのです。ここは一つも駅がつかない予定だそうですね、全然。つまりあちらのほうからやってきた汽車が、鶴見からあそこに曲がって、ノンストップで品川に行くことによって非常に早くなるということが一つのねらいだと思うのです。  ところが、地域の人に言わせると、騒音は一どっちにしろ車の数は多くなる、そして自分たちは全然恩恵には浴しないわけです。この沿線にたとえば乗降できる駅を大田区に一つと品川に一つでもつくると、実はあの地域から東京駅にまっすぐ行けるような線がないので非常に便利だということを言っているのですけれども、それもつくらない。ノンストップですっと行っちゃう。騒音はいまより激しくなる。もう絶対反対だという空気なんです。  一つだけ聞きますが、そこは踏切がいまかなりありますね。当然これは旅客車がひんぱんになりますと、そのたびごとにストップがかかっているのですが、自動車が始終通っているのですが、どうしても立体交差にしなくちゃいかぬ。しかし、上のほうを新幹線が走っていますから、立体交差にもできないわけですね。どっちかというと、私はむしろ線路を深く、半分地下に入るといいますか、谷間のようにして、そこを通すようにするとかなり防げるのじゃないか。騒音を防げるし、交通の点からいっても便利じゃないか。もちろん地下鉄にできるなら非常にけっこうです。東京から品川までは地下鉄になるそうですね。それならば一番問題が残っている品川のあの地域まで地下鉄にするか、いま言ったようなふうにするというのが一つの解決案じゃないか、これはしろうとが見ても大体そう思うし、地域の人もそのことを望んでいるようです。こういう考えはないかどうかということです。
  327. 長浜正雄

    ○長浜説明員 ただいまお話しの立体化する、高架か、あるいは地下にするかというお話でございますが、この地点ではいま私たちはそういう計画を持っておりません。ただ、東京都が都市計画としてこれを立体交差するというような都市計画事業としての発想が出てまいりますと、御相談に応じることになると思いますけれども、物理的にこれを立体化することは、ただいま先生がおっしゃいましたけれども、非常にむずかしゅうございます。絶対できないとか絶対できるという絶対ということばは使いませんけれども、まあそれに近いような非常にむずかしい物理的制約がございます。
  328. 米原昶

    ○米原委員 委員長、もう一つ電波問題について。  電波障害のほうも全部調査をいたしました。これは線路のそばの家で、これは新幹線です。騒音のほうは品鶴線のほうが多いのですが、これは新幹線が通ると全然テレビが見えなくなるという状況を、家の中に入ってテレビを見せてもらいました。これはそのあたりの家かなり調べてみましたが、ほとんどの家がそうです。NHKのほうで調査に行って、これはアンテナが低いためだというような、外に出てないためだというようなことだったそうですが、外に出ている家にもたくさん行ってみたのです。おそらくアンテナをあの新幹線の高さよりもっと高く上げたら見れるかもしれない。そんな状態でして、これは地域の人がNHKにもずいぶん陳情に行ったらしいけれども、NHKのほうは全然これを取り上げてないらしい。これはたいへんな問題じゃないかと思うので、電波法の精神からいったって、公共の福祉のためにあまねく日本全国において受信できるように放送を行なうことを目的とする、こうなっているわけですからね。自然の谷間なんかであるところについては、放送局はある程度金を出してやっているのですが、都会でこういうところがいまかなりできていますね。こういうものに対しても電波障害を解決する措置を、これは技術的にやり方を考えればできるのじゃないかと私は思うのです。当然やるべきだ、こう思います。この点について、電波監理局のほうはどう考えておられるか、聞きたいと思います。
  329. 太原幹夫

    ○太原説明員 お答えいたします。  一般にテレビの受信障害の解消の問題につきましては、郵政省、運輸省、建設省、NHK、民放、そういう団体を含めまして電波障害防止協議会というものをつくっておりまして、この団体を中心にいたしまして個々の問題にあたりましてその対策を進め、解決するようにいたしております。  新幹線の問題につきましては、新幹線が三十九年にできました際に、新幹線のいろいろな個所におきましていま先生の言われましたような問題が起こった個所がございまして、この点につきましては、放送事業者、国鉄関係者の協力によりまして、高性能のアンテナにするなり、いま言われましたようにアンテナを高くするなり、あるいはそれだけではだめで、それからだいぶ離れたところに共同アンテナを持っていくとかそういう措置を講じて解決してまいったわけでございますが、いま御指摘になりました地区につきましても、どのような方法をとればこの問題が解決できるか、これはNHKも承知しておりますし、関係の団体も承知いたしておりますので、先ほど申しました電波障害防止協議会を中心にいたしまして、この問題の解決に鋭意努力いたしたいと思っております。
  330. 米原昶

    ○米原委員 最後に一つ。その問題を最後に聞きますが、いま言われた構造ですね。NHKとか民放とか電電公社とかこういったところが集まって、たとえば東京ケーブルビジョンというものを、新宿地域でビルがたくさん建って電波障害が起こっている、そこでそういうものをつくってやっておられますが、しかし、これは加入者が千五百円払う、そして毎月維持費として五百円払う、こういうやり方ですね。一体これは正しいかということなんです。これはさっきの公害基本法の問題とも関連するのですが、企業の利益が第一になってはいないか。これは被害者ですよ。このビルの谷底にいてテレビが見えなくなっている人は被害者であって、何かこれを、受益者負担の原則ではなくて、被害者負担の原則みたいになっているのです。こういうやり方はおかしいと思うのです。これは全部NHKが出すべきです。放送法の精神からいったって、当然あまねく同じ条件でテレビを見る権利が国民にあると思うのです。そうしますと、被害を受けているところが金を払って見えるようにしてもらわなくちゃならぬ、おかしいと思うのです。こういう金は、その被害を与えている国鉄なりそれぞれのところで出させて、テレビを見るほうの人は出さないということにならないと、先ほども聞きましたけれども、公害基本法の問題ですね、企業との調和というこの問題ですよ。こういうふうに企業第一主義になっているからこの問題が解決できない。そこに住民の不満があるわけです。いま言われた構造、そういう人が集まって協議されるのはけっこうですけれども、それが結局被害者負担にならないようなやり方でこの問題を解決してもらいたい、こういう要望を述べまして、私の質問を終わります。
  331. 太原幹夫

    ○太原説明員 お答えいたします。  ただいまの問題は二点ございますが、第一点の品川といいますか新幹線の問題につきましては、関係団体が中心になりまして被害者と申しますか、加入者、受信者のほうは、それほどの負担をかけない形においてNHKが中心になって、先ほど申しました工事その他を進めるという形で解決をするようにいたしております。  この問題と、先ほど冒頭に言われました東京ケーブルビジョンがやっておりますいわゆる高層建築物による難視聴の問題につきましては別の考え方で処理する考え方でおります。
  332. 米原昶

    ○米原委員 質問を終わります。
  333. 加藤清二

    加藤委員長 古寺宏君。
  334. 古寺宏

    古寺委員 最初に経企庁にお伺いをいたしますが、昭和四十二年、四十三年度の二年間にわたりまして八戸市の新井田川の水質調査を行なったわけでございますが、いつごろ水質基準をおきめになる予定であるか、お伺いしたいと思います。
  335. 西川喬

    ○西川説明員 お答えいたします。  新井田川につきましてはすでに先生御承知のように部会を設置いたしまして、現地におきまして一回、それから東京におきまして一回すでに部会を開催いたしておりまして、その部会におきまして鋭意審議中でございます。できるだけ早い機会に水質の基準を設定いたしたいと考えておりますが、御承知のように八戸の新井田川水域でございますが、ここは汚濁の負荷量の大部分が水産加工場の排水になっております。これは非常に中小企業でございまして、この水質基準設定後、これを守るということの担保の問題がございます。そのような問題がございまして、下水道の整備あるいは共同処理施設の設置等の問題、それらの問題を十分配慮して基準を設定しなければならないというような達成の期間の問題等も勘案してやらなければいけないものでございますから、現在そういう点を含めまして鋭意検討中でございます。企画庁といたしましてはできるだけ早い機会に全体のコンセンサスを得まして指定水域に持ってまいりたい、このように考えております。
  336. 古寺宏

    古寺委員 具体的には、こういう水産加工業者に対しての水質基準決定後の対策を、どのようにお考えになっておりますか。
  337. 西川喬

    ○西川説明員 これは一応基準が設定されましても、暫定期間というものをこの場合には置かなければならないのでありますが、二段階の基準なんかになりまして、その期間一方におきましては下水道の整備、そこに残ります企業については下水道に入れていただく。それからさらに共同処理施設の設置、現在市のほうにおきましては共同処理施設というものを考えておるようでございます。それらの計画の具体性、またこの共同処理施設につきましてはその資金の手当て、そのような問題がございます。この下水道の整備の計画期間あるいは共同処理施設の計画の具体性、資金の裏づけ、それらのことを勘案いたしましてこの基準の設定を進めてまいりたい、このように考えております。
  338. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、そういう具体的な資金の裏づけ、あるいは下水道処理場の問題、あるいは加工団地等の問題が解決できないうちは水質の基準をきめない、こういうわけでございますか。   〔委員長退席、渡辺(栄)委員長代理着席〕
  339. 西川喬

    ○西川説明員 そういうことではございませんで、水質基準を設定いたしまして、最終的には環境基準のほうの関連でございますが、環境基準を、何年に目標まで持っていくか、その問題とからんでくるわけございます。そういたしますと、環境基準を大体何年先の目標に、五年先にするか、三年先にするか、目標年次を設定いたしまして、それに対しましての具体的な施策というものがある程度確立して見通しが立ちませんと、環境基準を設定し、それに伴います排水基準をきめるという作業ができませんもんで、完全に確立するということじゃなしに、おおよその達成の可能性というものを取りまとめて指定に持ち込みたい、このように考えておるわけでございます。
  340. 古寺宏

    古寺委員 次に、通産省にお尋ねいたしますが、青森県の上北鉱山の排水の問題でございます。  この上北鉱山の排水によって坪川流域の天間林村の坪という部落を中心にいたしまして約千八百ヘクタール、さらにまた青森市に流れておりますところの駒込川、この川の下流で約八百ヘクタールが公害によって減収を来たしております。しかも天間林村の場合には、現在天間ダムができまして、その後の状況からしても年間約三千二百万円の被害を受けております。  この上北鉱山のいままでの歴史を振り返ってみますならば、約三十年という長い間、この地方の住民は泣き泣き今日まで苦しい中を一生懸命に働いてきたわけでございます。また青森市におきましても十五年間そういう公害があるということに気づかなかったわけでございますが、これらの公害源であるところの上北鉱山に対して、一体通産省はどのような監督をし、あるいは改善の指示をしてこられたのか、その点について承りたいと思います。
  341. 莊清

    ○莊説明員 上北鉱山につきましては、仙台の鉱山保安監督部のほうで、最近の例で申しますと、昭和四十四年以降現在までの間に九回ほど監督検査を実施して排水の問題につきまして改善をはかってまいりました。ただ最近五月の保安監督部が検査した結果によりますと、お話のございました天間ダムのすぐ下流の地点でございますけれども、PHの値が四・五程度ということで、農業用水として望ましい環境基準に比べますとかなり酸度が多いということを確認いたしております。従来、現在稼働、稼行しております坑口とか洗鉱場中心の改善に少し片寄っておったのではないかという反省をいたしまして、古い坑口とか、古い堆積場がございますので、そういうところから出てくる水につきましても、それらも含めまして鉱山全体といたしまして廃水をひとつ集中処理し、シックナーたなどをふやすべきであるという指示を最近いたしまして、会社からごく近日中に、具体的な改善計画が提出される運びになっております。それを十分検討いたしまして、それの実施につきまして引き続き指導、監督をしてまいりたい。大体こういう方針でおる次第でございます。
  342. 古寺宏

    古寺委員 過去九回にもわたる指導監督がなされても一向に改善されておらない。またただいまお話がございました天間ダムの場合においても、実際に水深十五メートルくらいの水を取水いたしましてPHを測定いたしますと、二から三というような実情でございます。この天間林ダムの水をまともに受ける水田が約八百ヘクタールあるわけでございまして、私も先日視察に行ってまいりましたが、現実にその水田がもはやかれているような実情でございます。   〔渡辺(栄)委員長代理退席、委員長着席〕 こういうような今日までの公害のいわゆる根源は上北鉱山でございますので、この上北鉱山に対する監督をすべき立場にある通産省の十分な監督がなされないために、このような公害が今日まで放置されてまいった、そういうふうに考えるわけでございますが、今後この上北鉱山の公害に対して、公害をなくするような措置を確信をもっておやりになれるかどうか、その点について承りたいと思います。
  343. 莊清

    ○莊説明員 従来に引き続きまして監督指導を行なうだけでなく、先ほど申し上げましたように、鉱山全体をひっくるめまして、前向きの具体的な新しい改善計画を現在出させておるところでございまして、これを基礎に今後改善工事をやらせたい、こういう考えでおります。  問題は、農業取水点におけるPHの問題でございますから、いま御指摘のございました天間ダムの底のほうのPHの値は、実は従来保安監督部のほうでも検査をしてなかったのではないかと私思いますので、そういう点につきましてもさっそく指示をいたしまして、そういう検査を含めまして、前向きで進めたいと考えております。
  344. 古寺宏

    古寺委員 そこで、農林省にお伺いしたいのでございますが、上北郡の天間林村の水稲の被害について、農林省はどのようにお考えになっておるか、承りたいと思います。
  345. 松平孝

    ○松平説明員 お答え申し上げます。  上北鉱山の関係の駒込川並びに坪川につきましては、四十四年度から農地局の企画によりまして一般調査というのを県に指導して、現在実施中でございます。昨年度分の調査の結果を報告受けておりますところによりますれば、駒込川関係におきましては減収が二、三%程度、坪川関係におきましては、まだ被害の様相を詳しく調べておりませんけれども、顕著な被害の出ておる面積およそ百九十ヘクタール、減収量に見積もって四百五十トン程度ではないかという報告を現在受けております。四十五年度も引き続きましてこの調査を実施してまいる予定になっております。
  346. 古寺宏

    古寺委員 いままでの一般調査によりまして、当然駒込川の取水地点であるところの原別上堰頭首工というのがございます。この地点においては大体PHが四から三前後であると思います。さらにまた、先ほどお話ししましたように、天間林ダムにおきましてはPHが二ないし三である、こういう事実からいって、農林省はこのくらいの減収で当然である、そういうようにお考えになっておられるかどうか承りたいと思います。
  347. 松平孝

    ○松平説明員 上北鉱山から排出される用水汚濁の原因とおぼしきものは銅並びに酸性水と思われるわけでございます。これだけが減収の原因になっているか、さらにはその年の気象条件がからみ合っているかという点が若干ございますので、ただいま御指摘のように、このPHでこの程度の減収というのはどういう関係にあるかというのは、もう一、二年調査さしていただきましてから御返事を申し上げるほうがよろしいかと思います。
  348. 古寺宏

    古寺委員 農林省では、弘前大学の農学部でこれらの問題に対するところの調査をいままでやってきたわけでございますが、その内容について御存じでございますか。
  349. 松平孝

    ○松平説明員 ただいまの一般調査をしたという中でこのような木ワク試験を同時に実施いたしておりますが、これもいま申し上げましたように、調査が去年、ことしという段階でございますので、もう少し年を重ねませんと関係についての分析はちょっとしかねるかと思います。
  350. 古寺宏

    古寺委員 いまのような状態で調査を進めていくならば、この地域住民というものはいつまでたっても補償は受けられないわけでございます。三十年も泣いてきた農民が、今後もまた泣き続けていかなければならない、そういういわゆる行政の姿勢というものは私は改めなければならないと思います。先ほどからいろいろ委員会でも企業優先か人間優先かという問題が出ましたが、この坪川流域におきましては、飲料水の中からもカドミウムが検出されております。さらにまたカドミウムによると思われるような、イタイイタイ病とはいわれませんが、そういうような病気の発生も考えられるわけでございます。そういう非常に恵まれない立場にいる人たちに対して、こういうような行政の姿勢であってはならない、こう私は思うわけでございますが、先ほどお話しいたしました弘前大学の試験の結果も出ておりますので、それらを十二分に検討の上今後の対策を立てていただきたい、こう思うわけでございますが、この天馬林村の米のカドミあるいは銅等の問題についても今後試験をする必要があるんではないか、こう思うわけですが、どうでございましょうか。
  351. 松平孝

    ○松平説明員 本年度から農地局といたしまして企画した中に、新しい調査として分布調査をやることにいたしました。金属鉱山等から排出されることにより、用水の汚染の可能性のある農地及び農業用水の汚染状況と、それから玄米中に含まれるカドミウムの量を分析するという内容の調査でございまして、四十五年度では二十三地区で調査を実施いたしておりますが、上北鉱山関係につきましては、四十六年度にこの分布調査をやる予定にいたしております。
  352. 古寺宏

    古寺委員 次に、十和田湖の問題に移りますが、東京水産大学の森田助教授の調査によりますと、十和田湖は公害によって非常に汚染をされておる、こういうふうに先月発表があったわけであります。しかも、このまま放置するならば、十和田湖は死の湖に化すであろう、こういうふうにまで極言されておりますが、この点について通産省はどのようにお考えになっておるか承りたいと思います。
  353. 莊清

    ○莊説明員 十和田湖の周辺では重金属関係の鉱山で鉛山鉱山というのがありますが、この鉱山は戦後開発されました鉱山で比較的若い山でございますし、現在までの保安監督部の検査では、この鉱山からの排水は銅、亜鉛、カドミウムとも基準をかなり下回るよい成績をあげておるわけでございます。  それで、御指摘のありました森田先生の御調査でございますが、二の地帯には実は古い、現在やってない鉱山の坑口が相当残っておるようでございます。直ちに仙台の鉱山保安監督部が監督官を派遣いたしまして、これらの付近にございます旧坑口のところから出ている水を取りまして、現在それを分析しておるところでございます。この結果を見ますれば、原因がどこにあるか、旧坑口にあるのか、あるいはそれとも別の問題にあるのかという点が、だんだんわかってこようかと思いますので、現在分析を急いでおるところでございます。
  354. 古寺宏

    古寺委員 森田助教授の発表によりますと、現在の鉱石の採掘量から見て、年間亜鉛が四十トン、銅が四トン、鉛〇・二トンが湖に流れ蓄積される危険がある、こういうふうに発表をしていらっしゃるわけでございます。きょう不幸なことに、この鉛山鉱業所の所長さんが自殺をされたというニュースを私は先ほど新聞で見ました。このあなたのほうの発表と森田助教授の発表とはあまりにも食い違っているのではないか、こう思うわけですが、その点についてはどうでしょうか。
  355. 莊清

    ○莊説明員 鉛山鉱山の所長が自殺をされたという点については、私まだ詳細存じておりませんですが、保安監督部ではこの鉛山鉱山自体につきまして、昨年の十月以降今日までの間にも五回現地に行きまして監督、検査を実施し、排水の状況を調べております。鉱山の排水口におきます排水の水質も、先ほど申し上げましたとおりかなり基準を下回った線になっております。したがいまして、所長のおなくなりになった件と特に関係はあり得ないのではないかとしか現時点では申し上げられません。
  356. 古寺宏

    古寺委員 ただいま休山中の十和田鉱山に対して、仙台の保安部のほうから行って分析調査をしていらっしゃる、こういうお話でございましたが、東北地方だけを見ましても、休廃止されている鉱山に対する十分な保安監督というものは行なわれていない、私はそう思います。さらにまた上北鉱山のケースを見ても、この鉛山のケースを見ても、十分な監督体制というものは現在ないのじゃないか。先日もいろいろ聞いたところによりますと、監督官の数が足りない、こういうことも聞きました。少なくとも現在の倍は要るのではないか、こういうふうに言われております。先ほどの御答弁によりますと、今後金属鉱山をはじめとして全鉱山の一斉検査を行なう、そういうような御答弁もございましたが、いまの監督官の数で十二分にそういう検査を実施できますか、またいまの予算でそういう検査が十二分にできますか、承りたいと思います。
  357. 莊清

    ○莊説明員 休廃止鉱山の監督につきましては、現在全国で休止鉱山が大体二百数十、それから廃止鉱山は数がはっきりいたしませんが五百以上あるものと見られております。これらの休廃止鉱山につきましても、休廃止をします際に坑口の閉鎖とか、あるいは堆積場の処理とか、あるいは管理人を置きまして休廃止したあともそういう処理施設を監視させるというふうな義務を休廃止の前に保安法に基づいて鉱業権者に命ずるというふうな措置を講じております。  なお、監督部が行ないます実際の現地検査でございますが、休廃止鉱山につきましては御指摘のございましたとおり、監督官の定員も年々ふえておりませんし、予算もあまり潤沢でございませんので、年百鉱山くらいしか実際は回れておらないというのがいままでの実情でございます。私といたしましても、重金属問題は国民の健康保護という点からいいましてゆゆしき問題であると思っておりますので、第一線の監督官の強化はもちろんのこと、検査器具の整備等につきましても今後できるだけ努力をして整備につとめたい、かように考えております。
  358. 古寺宏

    古寺委員 今度は経企庁にお伺いをいたしますけれども、坪川の水質の基準の決定はいつごろになりますか。
  359. 西川喬

    ○西川説明員 坪川につきましては四十四年度基準設定調査を終わりまして、現在解析中の段階でございます。この解析が済み次第、早急に部会を設置いたしまして、本年度中には指定水域にいたしたい、このように考えております。
  360. 古寺宏

    古寺委員 その際、坪川の場合には一番問題になるのは銅でございますけれども、渡良瀬川の例もありますが、銅についての水質基準をきめられるお考えをお持ちでございましょうか。
  361. 西川喬

    ○西川説明員 坪川の場合には、現在の被害状況から見まして、渡良瀬と同様、銅というものを規制項目として考えなければならないだろうと、このように考えております。
  362. 古寺宏

    古寺委員 先ほどからもお話がありました十和田湖の水質の問題については、経企庁は今後水質基準をきめられるというようなお考えをお持ちでございましょうか。
  363. 西川喬

    ○西川説明員 十和田湖につきましては、現在まだ調査水域になっておりません。その状況を見てまいりますと、県のほうが独自で調査いたしました結果によりますと、BODが一般の湖沼に比しましてやや高く、ああいう奥地の湖沼としましてはやや高くなってきておりまして、富栄養化のきざしが見えつつあるというような問題がございます。ただ、汚濁源といたしましては、先ほどから問題になっております鉛山鉱山、これの坑内排水、これは洗鉱廃水は、鉛山は米代川のほうでやっておりますから、いわゆる洗鉱廃水の汚染は出てきておりませんが、坑内排水というもの、それと、あとは周辺の旅館街の汚水でございます。そのような旅館街の汚水につきましては、国立公園といたしまして、これの規制措置、自然公園法のほうでも検討していただかなければいけないわけでございますが、それらの問題があるわけでございます。現在汚濁を始めているというおそれが多分にありますものですから、ただいま青森県、秋田県と協議をいたしまして、どのような段取りで今後調査を進めていくかということについて協議をいたしておる段階でございます。
  364. 古寺宏

    古寺委員 通産省にお伺いしますけれども、坪川の水質基準が決定した後において、その基準を守れるだけの監督ができるという自信がございますでしょうか。
  365. 莊清

    ○莊説明員 上北鉱山につきましては、先ほどからお答えいたしておりますとおり、特にPHの問題を念頭に置きまして監督につとめ、また設備の整備の指導につとめておるところでございます。水質基準が正式にきまりました場合には、これを必ず守るように全力をあげて努力をいたす、当然のことでございます。
  366. 古寺宏

    古寺委員 水産庁にお伺いいたしますが、十和田湖のヒメマスが非常に減少いたしまして、再びまぼろしの魚になるんではないか、そのように懸念されておるわけでございますが、このヒメマスの件につきましては水産庁はどのようにお考えになっているか承りたいと思います。
  367. 藤村弘毅

    ○藤村説明員 ヒメマスにつきましては、昭和四十三年から漁獲が減っておるのでございますが、現実には昭和四十年ごろから親魚の魚体が非常に小さくなっておりまして、関係業者が心配しておりましたところでございます。  そこで、四十二年から両県のふ化場協議会が資源研究会というのをつくりまして、資源問題に取り組んでおりますが、特にいまのところ親魚が小さくなったというような原因がつかめないでおります。  そこで、水産庁といたしましては、昭和四十三年に支笏湖から発眼卵を五十万粒移しております。それから四十四年には支笏湖の卵が不漁でございましたので、淡水研の日光支場から十万粒の発眼卵を移植しております。それでも、昨年が特に親魚の数が少のうございましたので、本年度から両県に対しまして、親魚養成につきまして、魚苗も含めて共同の指定試験として助成をいたして、三カ年間で研究をさしてまいりたいというふうに考えております。
  368. 古寺宏

    古寺委員 現在、十和田の増殖漁業協同組合に対しては年間二百五十万尾の稚魚を放流しなさい、こういうような義務づけがなされているようでございますけれども、こういう実情であってはヒメマスはだんだん少なくなると思うのですが、そこで、この組合の方々のほうからは、ヒメマスがもしも思うようにいかない場合には何か魚種をかえたほうがいいのじゃないか、そうしていただきたい、そういうような要望もあるようでございますけれども、水産庁ではそういう点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  369. 藤村弘毅

    ○藤村説明員 二百五十万尾の放流の義務化と申しますか、そういうことを義務づけておるわけではございませんが、増殖について当然行なうべきことを怠った場合には漁業権を取り消すことがあるという規定がございまして、漁業法の百二十八条によりまして増殖計画を提出することになっております。その増殖計画によりますと、最近の数カ年は二百五十万尾を放流するという計画を立てておりますので、私どもとしては、これで現在のところは精一ぱいな計画ではないかというふうに考えております。  ただ、それにつきまして最近の実績はきわめて低い数字しか出ておりませんが、親魚がとれないのでやむなくそうなっておるのでございまして、組合としては十分な努力はしているものと考えておりまして、増殖を怠っているとは考えておりません。ですから、その点につきましては組合が実際の親魚数に見合うだけの放流尾数の計画を持ってくれば、それで十分努力しているものと認められれば、その数がもっと低いものになっても私ども異論はございません。  それからヒメマスにつきまして、これをもっとふやそうという努力は、私ども、先ほど申し上げましたように努力いたしたいと思いますが、地元の組合が、そのほかの魚種につきまして何か適当なものがあればやりたいというようなことがございますれば、私どもも淡水区研究所あるいは両県の試験場とも十分相談いたしまして、そういう魚種の増殖につとめたいというふうに考えております。
  370. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、問題になりますのは、二百五十万尾といういわゆる増殖計画の根拠でございますが、どういう科学的な根拠に基づいて二百五十万尾というこの義務づけがなされたのか、その辺についてひとつ説明していただきたいと思います。
  371. 藤村弘毅

    ○藤村説明員 二百五十万尾と申しますのは国のほうで義務づけているものでございませんで、地元の増殖組合のほうで二百五十万尾の放流をするという計画を立てて持ってまいりまして、私どものほうはそれで十分なものというふうに考えております。  地元の計画でまいりますと、昭和三十五年から三十八年までは約四百万尾、三十九年から減りまして百万尾前後となりまして、四十三年には四十六万尾、四十四年には六十一万尾ときわめて低い数字になっておりますが、目標といたましては二百五十万尾というものを地元で立てているものと考えております。
  372. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、その二百五十万尾というものができ得ない場合には、これは五十万尾あるいは十万尾に減らしてもいいわけでございますね。
  373. 藤村弘毅

    ○藤村説明員 十分な努力をいたしまして、それができない場合にはやむを得ないというふうに考えております。
  374. 古寺宏

    古寺委員 組合だけでは、十分に努力をいたしましても思うようにいかないと思いますが、水産庁としては今後この少ないいわゆる親魚、非常に魚体も少さくなって、しかも千くらい入っておった卵が最近では三百から四百くらいになっている、こういう実情に合わない対策、いわゆる援助のしかたですね、そういう点についてお考えでございますか。
  375. 藤村弘毅

    ○藤村説明員 先ほども申し上げましたように、親魚がなぜ小さくなったか、いまのところ原因がつかめておりません。ただ、同じものがずっと長くなったので小さくなったのではないかというような想像も立てまして、支笏湖あるいは日光の支場の違った卵を交配したらあるいはいいのではないかというような考え方もございまして、私どものほうでとれます卵について、できるだけの応援をしていきたいというふうに考えております。
  376. 古寺宏

    古寺委員 次に、厚生省にお尋ねをいたしますが、国立公園を管理をいたしております厚生省といたしまして、十和田湖に公害が起きて非常に最近自然の景観が破壊されておる。あるいは東北電力の発電用の取水量のために非常に透明度も悪くなってきている。この十和田湖の管理をする実際の責任者は秋田県と青森県の県知事であるというようなお話でございますけれども、厚生省としてはこの点についてはどうお考えでございますか。
  377. 中村一成

    ○中村説明員 厚生省といたしまして、いま御指摘になりましたこの十和田湖の最近におきますところの、特に透明度が非常に悪くなってきたということにつきましては、私どもまことに申しわけないと考えておりまして、二十六メートルくらいの透明度があったのでございますけれども、最近は十七・一八メートルというふうに低下いたしております。このまま放置いたしますと、十和田国立公園の最も重要な部分でありますところの湖の美しさが失われてきますので、これはきわめて致命的なことでありますから、私どもといたしましては、その原因を関係方面によりまして追及していただくことをお願いいたしまして、その原因をつかみましたらその排除をしていただきたい、こういうことで連絡をいたしておりますが、ただいまもお話しになりましたように、一つはやはり旅館とか住宅から流れ出ますところの屎尿とか汚水というものも一つの原因ではあるまいかということで、これは青森の県力をかりて調査をしてもらったのでございますけれども、相当に大腸菌の数が多うございまして、これはほとんど水泳もできないという程度によごれておるということがわかっております。その他、先ほどからお話のございました問題につきまして、秋田県のほうでも調査をいたしておるようでございますので、そういう点も参考にいたしまして、仙台の鉱山保安監督部のほうへも連絡をいたしておるところでございます。  なお、東北電力の水位の問題でございますが、これも調べておりますが、実際は、そのほうは水位はいまのところは二十センチから三十センチくらいのところでとまっておるようでございます。したがいまして、私どもとしましては、水質保全法の指定水域の指定をしてもらいまして、根本的に十和田湖をきれいにすることにつきましてわれわれとしても努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  378. 古寺宏

    古寺委員 そこで、これは経済企画庁のほうにお尋ねすればいいのでしょうが、指定水域にしてもらいたい、こう言っておりますので、これはよろしくお願いしますが、東北電力の問題は水位だけではなしに、三月、四月の融雪期になりますと、取水口から雪解け水を逆流させるわけでございます。したがって、沢水が、どろ水が全部十和田湖の中に入ってくる。そのためにモが枯れたり透明度が悪くなっている、こういうふうに地元では言っているわけでございます。その十和田湖からの東北電力の取水を許可したのが厚生省であるそうでございますが、間違いないでしょうか。
  379. 中村一成

    ○中村説明員 自然公園の中におきますところの湖沼等の水位を指導いたしますにつきましては、自然公園法によりまして許可が必要になっておりますので、ほかの法律の関係は詳しく存じませんが、私どものほうの許可もいたしておる。過去におきまして二回ほど許可をいたしております。
  380. 古寺宏

    古寺委員 もしその許可をしたことによってこの十和田湖の景観が破壊され、透明度が悪くなり、あるいはまたヒメマスが壊滅するというような事態になった場合には、厚生省は一体どういう責任をとるお考えでございますか。管理の立場にある省がそういうようなことをかってに許可をしてよろしいものかどうか、その点について承りたいと思います。
  381. 中村一成

    ○中村説明員 私どものほうの不明によりまして許可をしたために害を与えておるということでございますと、これはまことに申しわけないわけでありまして、私どもも責任はもちろんあるわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたとおり、東北電力に対しまして、昭和四十一年十一月と四十三年十一月の二回、水位の変更の許可を行なっておりますが、実際の問題といたしましては、その後五月、六月、七月、八月、九月、十月の月におきまして、変化を見ますと、二十センチから三十センチくらいのところでとまっておりますので、いまのところこの水位の変更が影響があったとは私どもは思っていないのでございますが、しかし、私どもとしましても十分調査をしてみたいと考えております。
  382. 古寺宏

    古寺委員 時間になりましたが、その逆流の問題については、厚生省は一体どういうふうに事実を把握しておりますか。雪解け水を逆流させるという問題については、どういう話し合いによって許可をいたしておりますか。
  383. 中村一成

    ○中村説明員 お尋ねの点につきましては、私のほうでただいま資料を持っておりませんので、さっそく現地の管理事務所と連絡をとりまして、調査をいたしましてお答えをいたしたいと思います。
  384. 古寺宏

    古寺委員 では、時間でございますので、以上で終わります。
  385. 加藤清二

    加藤委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十九分散会