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1970-04-03 第63回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月三日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 始関 伊平君 理事 古川 丈吉君    理事 山本 幸雄君 理事 渡辺 栄一君    理事 島本 虎三君       伊東 正義君    久保田円次君       林  義郎君    松本 十郎君       土井たか子君    多田 時子君       西田 八郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   青鹿 明司君         経済企画政務次         官       山口シヅエ君         経済企画庁国民         生活局長    矢野 智雄君         経済企画庁国民         生活局参事官  西川  喬君         科学技術庁計画         局長      鈴木 春夫君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生省環境衛生         局公害部長   城戸 謙次君         通商産業大臣官         房長      高橋 淑郎君         通商産業省企業         局立地公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君  委員外出席者         議    員  角屋堅次郎君         行政管理庁行政         監察局監察官  笹倉 三郎君         経済企画庁国民         生活局国民生活         課長      岩田 幸基君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       緒方 雅彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害紛争処理法案内閣提出第一八号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外五名提出、  衆法第五号)  公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第二〇号)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害紛争処理法案角屋堅次郎君外五名提出公害紛争処理法案、及び内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  質疑申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
  3. 島本虎三

    島本委員 きょうは、紛争処理関係と、公害のいわば全体的な通産省の関係について、これをひとつ中心にお聞きしたい、こういうふうに思うわけであります。  残念ながら、ほんとうの準備は、きょうは水であったわけでございますが、水の点は、大臣が忙しくて見えませんので、それは次回に譲ることにいたしまして、まず、そのために本年の三月二日、ルーズな管理を正せということで、危険汚染都市河川について、行政管理庁では勧告建設省その他に行なったようでございます。その内容について、まずつまびらかにしておいていただきたいと思います。それから入らしてもらいます。
  4. 笹倉三郎

    笹倉説明員 昨年七月から、行政管理庁におきましては、都市河川に関する行政監察を実施いたしまして、去る三月二日建設省勧告いたしましたのでございますが、勧告中心問題といたしましては、主として都市における普通河川が、最近溢水とかはんらんを繰り返して、被害が非常に大きくなっておりますので、これらの普通河川管理を強化する、これが第一点でございます。  次に、汚濁が非常に進行しております河川につきましては、都市下水道への転換を積極的にはかるべきであるということと、それから河川法二十九条によります政令を早期に制定いたしまして、河川の清潔を保持するために河川管理者としてとるべき措置の基準を定めること、それから下水道が完備いたしますまでの間は、最も効果のある汚泥のしゅんせつということなどの河川浄化事業を積極的に行なうべきであるということ等について指摘いたしておりますが、なお第二十九条の政令につきましては、昭和四十一年の十月二十四日に河川管理に関する行政監察結果、勧告いたしましたところでございますが、いまだこの政令が未制定でございますので、重ねて今回勧告いたした次第でございます。  以上です。
  5. 島本虎三

    島本委員 その場合には川ですか、下水ですか、下水道でしょうか。どの辺までの一つの大きさのいわば流水でございましょうか。その辺の範囲をちょっとお知らせ願いたいと思います。その問題というのは、いわば公共用水域という概念にはまる川なのか、はまらない川なのか、こういうことによって今後の参考になるのでありますから、そこを少し詳しく御説明願いたいと思います。
  6. 笹倉三郎

    笹倉説明員 今回の都市河川監察は、都市を流れる普通河川を主として対象として監察いたしましたので、公共用水域として大きな範囲に属するものは最初から除外して調査をいたしております。それで普通河川を主として調査いたしたわけでございます。
  7. 島本虎三

    島本委員 わかりました。  その結果について、勧告その他申し入れをなされたようであります。それを添えて、ひとつ急いで文書として、資料として提出してもらいたいと思います。よろしゅうございますか。
  8. 笹倉三郎

    笹倉説明員 はい、わかりました。
  9. 島本虎三

    島本委員 資料の要求をいたしまして、それであなたのほうはよろしゅうございます。  まず、紛争処理法案について総理府長官にお伺いいたしたいと思います。  最近の公害実態は、すでに御承知のとおりなんでございます。今回ここに公害紛争処理法案が出ておりますけれども、これは前回御存じのような状態で、与野党一致して修正されたのが原案になっておるわけです。その修正そのものは、いわば与党側としては譲歩をされ、われわれとしてはまだまだ不満足である、しかしながら、やはりこれは一致できるというような点で修正されたのが原案でございます。そういうようになりましたときに生まれてきたのが、裁定というのが生まれてきたわけです。この趣旨をこれから生かさなければならない、こういうようなことについて与野党十分話し合って、附帯決議にも前回は載せたのであります。参議院のほうでも委員皆さんはこの趣旨についておおむね了解されておったように私、承っておったのでありますが、今回の場合には、そういうような附帯決議としてつけられたものでありますから、当然この原案に入っておりません。今後の問題になるわけです。せっかくここに生かされた裁定ということですから、何らかの形でこれを生かすような努力をしてもらわなければならないし、公害実態からして何らかの方法でこの努力を実らしてもらいたい、こういうように思っているわけです。  公害のいろいろな実態は、あとからも申し上げますが、まさにこれはそのまま正視することができないような悲惨な状態にあるのでありまして、その紛争解決する手段として準司法的な機関、それでなくても、八条であっても三条であっても、実態によってこれは可能だということになっておりますから、この裁定を生かすべく今後最大限の努力をすべきであるし、また長官にこれは生かしてもらいたい、これは心から要請を込めての答弁を求めるわけです。ですけれども、この際御所感をお聞かせ願いたいと思います。
  10. 山中貞則

    山中国務大臣 私の性格でございますから、予算でも、すでに昨年八月に提出してあります予算も全部ばらばらに組みかえて、要らないものは要らない、追加するものは追加するという作業を就任早々からやったのでありますが、提出法案につきましても、全部私の考え方で洗い直しました。もともと公害というものは思想党派を越えた人類の挑戦すべき課題であり、日本においてもまさに国民の挑戦すべき課題として受けとめなければならぬものですから、その結果として皆さん修正が行なわれた、これはそのとおり受け取るべきだ。これが一応原案に出ているわけですが、そこで、まだあと質問がありますからその点は答弁から省きますが、この紛争処理の中から一応除外されている行政機構の問題、あとで御指摘があるでしょう、の問題や、さらにいまの附帯決議として、国会のほうで、しかもこれも全会一致で、ぜひともこれを裁定できる機関にまですべきであるという御趣旨についても、十分検討してみました。ただ、私がそこまで原案に取り込めなかった理由は、前国会原案には反対であり、修正部分には賛成であるという、内容の違いはありましても、一院通過しているという事態を実は私としてはある意味で重視したわけです。一つの院を通過して参議院において廃案になったわけですから、そうすると、二院制のいずれが上であるという議論は別にしまして、やはり一院通過したというものは、ある意味において国民の意思を代表する機関における一つの結論としてそこに結果が生まれた。そこで、その結果の生まれたものを、附帯決議であるからといっても原案に取り入れることまではどうだろうか、ただし、私の任期があと幾らかわかりませんが、少なくともいまのような御趣旨は、今日の公害実態から見て、しかも各省各庁等において、それぞれ発生原因その他において、これは民間の問題が主でありますけれども、その分析やら判断やら、したがって、それに対する処理のしかたがまちまちであるという事情から考えると、いずれそういうことを考えなければならないだろう、しかし今国会に出すにあたっては、十分わかるけれども一院の議決の済んだ法案であるということで、私としては最終的な決断をこのような原案で出すことにいたしたわけであります。今後十分にその点は検討すべき課題であることは、私も確認いたしたいと思います。
  11. 島本虎三

    島本委員 私ども自身も、それに携わってまいりました。そこでいま長官がちょっと発言されましたけれども修正部分賛成原案反対という態度をとらざるを得なかった。一院通過した問題であった、こういうふうにおっしゃいました、そのとおりであります。ただその場合には、社会党も、たぶん公明党もそうだったと思いますが、対案というものを準備して出しておるのであります。修正与野党一致ですからするのでありますが、これはやはりそれ以上のものだとして原案が出ておりますたてまえから、この対案をとらない以上、下げない以上、当然それに反対通過というような態度をとらざるを得ないのは、これはやはり議会の持つ一つのやり方でございます。私どもはそういうような点で通過はさしたものの反対して通過する、この方法をとったわけであります。委員会においては修正部分満場一致賛成である、原案の場合にいまのような態度であって、本会議においては委員長報告が主でありますから反対で通る、こういうようなことになったわけであります。  今回の場合は特に事態進展がございます。その後、国際会議等いろいろ東京で持たれた事実もございます。そういうような事態等からして、一事不再議と申しますのも何でございますけれども、前国会でそうであっても、その事態進展に合わして今回は新たな観点からこれを考える、こういうようなことになっておりまして、私どももこの点に対してはかってないような考えで今回臨んでおるわけであります。そうして角屋堅次郎氏から提案理由説明もあり、それにも質疑をし、いいものは取り上げてまいりたい、こういうようにして、その場合にはあまり固執しないで、満場一致で通すべきものは通そうじゃないか、この努力をしようじゃないかということをやってきておるわけであります。  そういうような事態からして、いまのように、せっかくこの事態から生まれた裁定というこの制度、この裁定という制度の持つ一つ重要性、こういうようなことからいたしまして、これはやはり十分にこの裁定の形を生かすべきである。これは私どもは常に主張し、いまでも長官にこういうようなことを要請してやまない次第なんであります。これは当然附帯決議のついておる問題でございますから、これを今後何らかの形で生かすようにしたい、これが私の切なる希望なのでありまして、今後この努力は傾倒してまいりたいと思います。この進展の中で、長官も十分お聞き願いました。よろしく、こういうような行政上の配慮を特に私からお願いしておきたい、こういうように思うわけなんです。同じようなことになりますけれども、この裁定ということについて、ひとつ十分なる考えを持って臨んでもらいたいということを重ねて私はお伺いしておきたい、こういうように思うわけであります。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 まるい卵も切りようで四角でありまして、私たち魚屋君を代表とする対案というものよりこちらがすぐれているというような気持ちも持っておりません。また、その対案に対して、趣旨なり内容について反対であるから、自分たちはこれが一番いいんだと思って出しておるというふうに、そういうふうにお取りにならないで、先ほど私が言ったように、この問題は、思想党派を越えて私たちが取り組まなければならない使命のもとに置かれた課題であるということでございますから、私としては最終判断をいたした経緯を、先ほど申し上げましたようなことでいたしましたけれども、今後、おそらくこれから続発する、さらに多種多様な形態を伴いながら、人命対公害実態の問題が発生していくでありましょうけれども、それらの問題に膠着することなく、政府の対応すべき姿勢なり法律を必要とするものについては、その根拠を明らかにしていくという努力は、これは絶えず続けていかなければならぬと思いますが、さしあたり今回の特別国会提案いたすにつきましては、種々の判断をいたしました結果、この法案通過をさしていただきたいという気持ちでありまして、すぐれているとも、対案に対して絶対のめないものである、反対であるというふうにも思っていない一わけです。
  13. 島本虎三

    島本委員 その必要性を私は次に申し上げなければならないわけでありますけれども裁定を受ける手続、これは角屋議員提案しておる社会党案でありますけれども、その中におきまして、被害者申請さえあれば、裁定以下すべての制度適用を受けることができるという、こういうような案がいわば社会党案のようであります。しかし、政府案によりますと、仲裁を受ける手続、これは当事者双方の、仲裁に付する旨の合意を結局は必要とするものである。したがって、たとえば一方が拒否するとその制度適用を受けられない、こういうようなことに相なるだろうかと思います。そうすると、双方合意条件になる、結果的にそうなってしまいます。被害者申請によってこの制度適用が可能だ。それともう一つ双方合意条件だ。こういうような考えがはたしていずれが現行に適するか、この問題についてもやはり十分考えなければならないと思うのであります。これは、私は少なくとも現在の状態からして、被害者申請によってこの制度適用を受けれる、こういうようにするのが現状に即した行き方だし、こうするのでなければ少なくとも的確にこれに対処することに対しては少しほど遠くなるのではないか、こういうように思うわけであります。この点は長官、いかがですか。
  14. 山中貞則

    山中国務大臣 そういうことも言えます。また逆に、だからといって全部その合意に達してこの制度のもとに訴えなければならないのである。ほかの行為をシャットアウトするわけではありませんので、これは当然司法手続のもとに従って当然の権利を主張する道はこれはもう基本的にあるわけでありますから、ただ問題は、このような一言に公害と言いますけれども、千差万別の態様であり、起因者が一体だれであるかを突きとめることにおいても相当困難なものであるし、突きとめられたと思われてもなおかつ科学的立証が困難であったり、あるいは不特定多数の人が、しかも起因者あるいは加害者といっていいかと思いますが、そういうものが一体だれであるかを突きとめることもなかなか困難なケースもあると思うのです。ですから、そういう合意に達したものについて、この制度でもってめんどうを見て差し上げる義務を国が負う。この制度でもってその道を開くということでありまして、例にとることは間違いかもしれませんが、交通事故等において、これは当然の被害者が当然の加害者に向かって、一般司法権のもとにさばきをつけるわけでありますけれども、その実態を追跡調査いたしますと、やっぱり結果は和解みたいな形にいつの間にかなってしまう件数が圧倒的に多いという実情等を見ますと、話をつけられるものならば、やはり被害者人たちが納得できる線が前提になるわけでありますから、その道を新しく開くことも決して無意義なことではないというふうに私は思うわけでありまして、だからいずれが一番理想かということについてはいろいろと考え方はあると思いますが、その点については、この道も決してそのような制度としてむだなものではないというふうにも思うのです。
  15. 島本虎三

    島本委員 したがって、今度は通産大臣にもお聞きしてまいらなければならないわけでありますけれども、いまのような長官考え方、これは前の原案提案とほぼ似ているわけであります。しかし、もう最近は——私は三月十三日の朝日の切り抜きを持っているのでありますけれども、これには私もちょっと驚いているのであります。この国際シンポジウムにおいて、討議を通じて日本側外国参加者の間でみぞができて、最後まで埋まらなかった問題が一つあったという報道があるのであります。それは何かというと、公害に対する反対闘争への関心と評価だった、こういうように載っておるわけであります。そしてそれに付随して書いてある文字が、孤立したまま、加害企業と苦しい戦いを続けなければならない。そしてみずからの生命や生活を守らなければならないのが日本公害被害者である住民たちである。外国学者は、それは犯罪ではないか、こういうように指摘した公害についてさえも、いまもって裁判に移されているものがそのままであり解決を見ていないのが現状である、こういうようなことが報ぜられているわけであります。  それと同時に、これはもう長官御存じだと思いまするけれども、三月の十二日に公害担当裁判官会議東京の最高裁の大会議室で行なわれたようであります。その際に、この問題に対していわばはっきりした言及をしております。それは高度経済の成長と科学技術の進歩のもたらしたひずみ、これをめぐる損害賠償請求、こういう訴訟、これこそまさに文明裁判だというべきである。そしてこの中で、被害者が多数で、訴訟の資力がない人が多い。イタイイタイ病の場合は訴訟救助決定に対してさえ、被告である会社抗告を行なっている、こういうようなことが報ぜられているわけであります。  そうすると、これは双方合意の上でやる——あのイタイイタイ病のような世界的な関心のもとにある、そしてまたこれは大規模な裁判問題にまでなっておる、これに対しても、みじめな被害者に対して、被告会社がかえって国のほうの訴訟救助決定に対して抗告を行なっている。こういうような状態現実であります。そうだとすると、やはり双方合意の上に立って、何か機関に救済を求めるというようなことをきめておいても、これはあり得ないのじゃないか。そういうようなことを望むべくして現実の問題とはほど遠いのじゃなかろうか、こういうようにはっきり思うわけであります。  そしてその際に、裁判官のある人は、この因果関係立証は現在むずかしいけれども公害裁判では、原因と結果の科学的な実験による証左がなくとも、環境と結果が結びつけられれば立証できたとすべきである、まあ推論できればよろしい、こういうようなことによって現実を埋めることか必要じゃないか、こういうように主張しておった人もあったという報道であります。  大臣、こういうような状態だとすると、これが現実であるとすると、いま大臣がおっしゃいましたように、双方合意条件とするということになったら、いつの日にかこれが救済できるかということになってしまうおそれがある。私は原案においてそれが心配なんです。ですからこれはやはり被害者申し出被害者申請、こういうようなことにしておけばこれが通るわけでありますからこれはいいのじゃなかろうか、こういうように思うのです。いま現実の問題を申し述べました、これに対していかがですか。
  16. 山中貞則

    山中国務大臣 日本国際公害シンポジウムが開かれたということは、ある意味においては皮肉にもなったわけですね。万博のはでな国際的な催しに比べて、じみな会議ではありましたけれども日本東京都を中心とする公害実情を諸外国専門家専門学者たちが見て、いろいろの感想をもらしたということは、ある意味において私たちは、政治立場において少し恥ずかしい気持ちを率直に持ちました。一方、ニクソン大統領が、自分内政への課題として最大のものは公害への挑戦である、公害である。事実そのあとアメリカでとやかくいわれておりますような、政治を動かすと思われるような大企業についても、びしびしと大統領の命令によって措置がとられておる。こういうことを見ますと、私たち内閣総理大臣である佐藤総理大臣も、内心ひそかに期するところがあるようでありました。やはり日本内政の年というからには、ことしの一応の施政方針演説感触は別でありますが、決意としては、日本もこのような環境に立ちおくれてはならぬ、むしろ日本がこういうことの先頭に立たなければならぬ、そういうような気持ちは持っておられるようでありますから、いずれそのような感触日本政治の面にもはっきりと出てきて、政治の背骨がはっきりと示される日が近いと私は確信いたしておりますが、いまのような具体的な裁判実例等は、まさに御指摘のような点で、被害者立場になってみれば、これは日々たいへんな苦しい地獄の責め苦を味わいながら、その裁判の結審を待ち続けているでありましょうし、ときによってはそのままで自分たちはどうなるのだということの日を知らずになくなっていく人もあるでしょう。それはたいへん私たちとしても良心のうずく問題であります。  しかし、法律の名のもとにおいて裁く場合においては、これは立法、司法行政、三権分立のたてまえからいって、私たち裁判のあり方について批判することは差し控えたいと思いますけれども、やはりそのような道を選ぶ、選ばざるを得ないこともあり得るし、また現実に、自分たち相互の間において和解ができそうだ、しかも自分たちの、被害者立場に立ってその調停が行なわれそうだということの見通しが立って、そして双方合意の上でそのような処理をおまかせするという機関があることも、私は現実的には非常に問題の解決を早めるケースも、特異なケースを除けば相当件数が出てくるものと期待しているわけです。しかし、これはどっちが絶対に正しい、どっちがそれは正しくないのだという種類の議論でないことは、冒頭から申し上げたとおりでありまして、ともにひとつこの実態に対して、われわれが政治家立場から自覚して前進しなければならぬ、これはもう重大な問題であることにおいて変わりはありません。
  17. 島本虎三

    島本委員 いま私の手元へ、通産大臣のほうが少し早く行くからそっちに質問を集中せよという紙がきたんですが、やはり二人並べておかないと、そういうような点で、こっちのほうの一つのペースをくずされてしまうのでちょっと残念であります。しかしながら、やはりそれにしてもぜひやらなければなりませんので、これで長官終わったんじゃありませんから、この次またすぐ続けさしてもらいます。  それではまず通産側に、そういうような状態でありますから一つはっきり伺っておきたいことがあるわけであります。それはいまと同じような状態で、外人の学者日本に来てびっくりされた事例のうちの一つだと、こういうようにあげられておるのに四日市の問題がございました。私も公害対策特別委員会に、あるいは皆さん御存じかと思いますが長いのでありまして、現地にも行ってきたのであります。この四日市に参りまして、植民地型の開発の典型じゃないか、こういうようなことを言っておったようであります。そして西ドイツのある研究家が、最もふしぎに思ったことは中部電力で実験中の排煙脱硫装置がすべて国費によってまかなわれて、企業の負担にならずに、その上税金で開発された装置のパテントは三菱重工にあるということであった、この理解は、日本が現在高度に成長した秘密を理解したことになるのじゃないかと思う、こういうようにあるわけであります。はたしてこういうようなことがあるのかないのか、事実なのか、これはまことにわれわれも関心を払わざるを得ないのでございますが、この点はいかがでありますか。
  18. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 推測いたしますと、このことは、おそらく排煙脱硫の技術は、工業技術院が大型プロジェクトとして昭和四十四年度まで時間をかけまして開発いたしたものでございます。そこで、これには確かに国費が投ぜられた、そのとおりでございます。それからなおおそらく電力会社が排煙脱硫装置を現実にいたしますときには、たとえば開発銀行といったようなものの融資があるかと思いますので、これはもちろん融資でございますから返さなければならぬわけでございますけれども政府機関からそういう融資があるということについての指摘ではないかと思うのでありますが、ちょっと政府委員から補足いたします。
  19. 緒方雅彦

    ○緒方説明員 ただいまの島本先生の御質問の前段の点につきましてお答え申し上げます。  先ほど大臣答弁されましたように大型プロジェクト制度によりまして、この排煙脱硫技術の研究開発を行なったわけでございます。このもととなります特許、これは確かに御指摘のとおり三菱重工の基本特許がございます。ただこれはあくまでも基本的な特許でございまして、大型プロジェクト制度によりまして行ないました結果得られました特許あるいは技術的知識、これは全部研究委託契約によりまして国のものになっております。その点は研究開発の芽と申しますか、それは確かに三菱重工のアイデアといったようなものをもとに研究開発をいたした点は間違いございませんが、それをさらに大きくして、実際に使えるような技術に育てるその間に生まれました一切の技術的な成果、具体的には特許権とかノーハウといったようなものでございます、これは全部国に帰属するということになっております。
  20. 島本虎三

    島本委員 そうすると、その額並びに実施はいつからこれをやっておったのでございましょうか。
  21. 緒方雅彦

    ○緒方説明員 これは、大型プロジェクト制度が始まりましたのが昭和四十一年の七月からでございます。それから始まりまして、いままでに国費を、国の研究開発費という意味でございますが、約六億五千万これに投入いたしております。終了いたしましたのが昨年の三月、四十四年の三月でございます。
  22. 島本虎三

    島本委員 この額は総計四十億であるというような報道もあるのでございますが、七億とはだいぶ違いがあるようですが、四十億という数字はございませんか。
  23. 緒方雅彦

    ○緒方説明員 四十億という数字は、私承知いたしておりませんが、排煙脱硫の技術はただいま島本先生が例に引かれました活性酸化マンガン法ともう一つ活性炭法、二つございまして、これが約七億でございまして、両方合わせて十三億、そのほかに重油から直接脱硫する技術、重油直接脱硫技術というふうに申しておりますが、これが約十一億でございます。合わせまして国の研究開発費といたしましては二十五億円、これはまだ全部かけたわけではございませんで、重油の脱硫のほうが四十六年まで続く予定でございますので、その予定金額を加えました数字といたしまして約二十五億円を予定いたしているわけでございます。四十億という数字は私もちょっと承知いたしておらないわけでございます。
  24. 島本虎三

    島本委員 それで、大臣にお伺いしますけれども、この公害防止ということで石油関税の一部、これを石油業界に還付するいわば政府の方針が今回はきまったようでございまして、それは異色措置である、こういうようにいって、あるいはいろいろ話題を投げかけたようでございました。まあこの問題は当然私ども考えてみなければならない問題であります。と申しますのは、確かに業界に対しまして、これは公害発生のこういうような状態を現出しないための措置は当然してやるべきだ、これはもう大臣も同じ考えだと思います。しかしながら、この問題をやる場合には、当然中部電力でやったり、または三菱重工業との共同でこれを研究を行なったものである。そして国が全額出資したものである。こういうようなことに相なりますと、じゃそのほかに、なお日本開発銀行の融資、法人税の特別償却の据え置き、それから固定資産税の軽減、こういうふうな金融、税制上の優遇措置がこのほかに講ぜられているわけであります。そして実質的な補助が、いまのような関税還付の形でまたこれが与えられる、こういうようなことになるのであります。そうなりますと、あらゆる点で公害という名前がつけば、企業が大きくても小さくても全部そっちのほうにはこのような優遇措置が講ぜられるものである。一たんそれによって被害を受けられた住民は一体どうなっているか。これをまず考えなければならないんじゃないかと思うわけであります。まあ大臣も、いま私がこういろいろ言ってみましたけれども、この措置と同時に、いわば被害者の救済措置、こっちのほうに、業者と同等にこれは配慮してやるべきが正しいのじゃないかというように思っているのです。幸いにして厚生政務次官も見えておりますから、業者のほうにこのように手厚くしているのですから、今度、被害者のほうには、まさに休業補償でも、生活保証でも、こういうような人には十分やってしかるべきだ、なぜこれをやらないのだ、これは片手落ちだ、ここをこう指摘されるんじゃないか、私はこういうように思うわけです。せっかくこういうような機会でありますので、ひとつ今後は、業者に対して、事業に対して、このような優遇をしているというこの事実、それとあわせて、こういうような問題に対しましては、その被害者のほうにも回して、十分手厚い保護を加えるべきなんだ、こういうような考え方に私はおるわけであります。ひとつ大臣並びに橋本厚生政務次官から、御所感のほどをお聞かせ願いたいのであります。
  25. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は、確かに両面があるわけでございます。それで、公害というものがだんだん国民の間に考え方として定着をしつつございますけれども、まだ比較的新しいものの考え方でございますために、従来企業が十分にそれに対して準備をしていなかったことも事実であります。時とともに企業側の責任が重くなり、また判断の基準がきびしくなることは、私は当然だと思っておりますけれども、何ぶんにも年月が浅うございます。そこで企業の側に、公害の発生を防ぐような責任を持たせることにこれからなっていくわけでございますけれども、突然のことでありますから、いままでそういうことを企業側としては必ずしも予定していなかったということが事実でありますので、ある程度国が企業のそういう対策を助けてやる。納税者のお金を使っているわけでございますから間違いがあってはいけませんが、しかし、これは全体の利益になることでございますから、私はある程度助けてやるということは間違ってはいないと思うのでございます。  他方で、被害者についてもおっしゃるような問題がございまして、昨年でございますか法律が成立いたしまして、ともかく犯人が見つかるまでは被害者に対して何も手が差し伸べられないということはやはり適当でないので、犯人いかんにかかわらず、とりあえずの救済はしなければならないという考えを実際に移したわけでございます。
  26. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 いま通産大臣からお答えがありました点の重複を避けて申し上げたいと思います。  いま、島本委員もよく御承知のとおり、昨年健康被害に関する被害者救済制度が、立法化がなされたわけでありまして、原因が明らかであれ、明らかでないにせよ、公害による健康被害を受けられた方々に対しましては、国としての救済措置はすでに現に講じているわけであります。この内容がこれで十分であるかどうかはおのずから別の議論だと思いますが、制度として今日原因究明を待つことなしに、被害者の救済自体に対してはすでに国が手を差し伸べているわけであります。先生よく御承知のとおりに、こういう公害被害、これが、必ずしも健康被害との因果関係立証することはきわめて困難なケースが多々あります。その場合に、特定の企業に責任を求めるまでには調査等に相当の時間がかかるわけでありまして、その間われわれは被害を受けられた方々をほっておくつもりは決してありません。その間に、国としてもできるだけの措置をとることは当然でありますし、従来までもまたとってまいったつもりであります。  むしろ、今後なお御検討を願わなければならない点は、原因の究明までの間に要する時間をいかにして縮めていくか、そしてその公害を起こした発生源がいずれであるか確定していくまでの措置を、できるだけ短い時間にとっていくことが必要な方法でありましょう。厚生省自体としても種々な方法をいま講じつつあります。ただ多種多様の公害事件、そのあらゆる問題について、厚生省自体がすべてその調査の責任を負うだけのゆとりも、実は現状ではございません。大きな社会問題等を引き起こしたものについては、たとえば水俣における有機水銀中毒、その他幾つかの問題に対して、国として調査班をつくり、調査をしてまいったのも、また現実に調査しつつあるのもございます。先生御承知のとおりであります。むしろ今後の一つ方法として、国立の公害衛生研究機関、基礎的な公害発生の原因について、またそれによって発生し得る健康被害等について、十分な研究を行ない得る研究機関を設置して、それによって再度同じような原因により健康被害を起こすような事態がないようにしていくと同時に、今後の紛争処理についても、また資料一般を提供するような形をつくってまいりたい、そのように考えます。
  27. 島本虎三

    島本委員 重ねてこの点では大臣、こういうような事実に対してどういうふうに御処理なさいましょうか。これはやはりいま申しますように、中部電力とそれからもう一つこれは三菱重工です。これに対する措置はいま私が言ったとおりでありますけれども、もしそれを認めるとすると、今後電力以外の鉄綱や、セメントや、中小企業、こういうふうなものに対してもやらないということにはならないはずであります。鉄綱やセメント、また中小企業、こういうふうなものの対策も十分講じてやらないと、その方面に対して逆に片手落ちになってしまうおそれがありはせぬだろうか。  それと同時に、石油関税に余裕があるために業界のほうにそれを還付するという考えではなくて、逆に、被害者のほうにこれを積み立ててやる、また還付してやる、こういうふうな考え方に立って処置されるのが、公害対策の実態を通じて正しいのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけなんであります。やはりこの点は重大な問題でありますから、私は重ねて大臣に今後の見通しについてお伺いいたしておきたい、こういうふうに思うわけです。  時間の関係がございまして、橋本政務次官にも、この機会にひとつあなたを通して大臣を激励してやってもらいたいことが一つあります。それは去年の六月二十五日に医療救済法の成立のときに、斎藤厚生大臣が今後生活保障、休業補償は前向きに取り入れよという質問に対して、本法案実施の状況を見て、十分検討し、改正に努力いたします、こう言っておるのであります。これはもう政務次官御存じのとおりです。そうすると、片や企業のほうにはまさに金融、税制上の優遇措置が講ぜられるほかに、還付金もこれに対してまた来る。片や当局がすでに言明している被害者に対する救済、これは生活保障や休業補償はまだやってない。やりますというのに、これは削られてしまっている。あまりにも差があり過ぎる。これは厚生省はもう少しがんばらなければだめなんじゃないか、こういうふうに思うわけです。これはもう大型プロジェクトをやる際に、厚生大臣が宮澤通産大臣と一緒にこの問題はやるべきであるというふうにして大いに激励をしたということを聞いておるのであります。しかし宮澤大臣も、こういうように国会に対して言明までしておるのが前厚生大臣ですから、こういうような余裕のある場合にはもっと被害者の救済に対して力を入れてやるのが恩返しですよ。私は片手落ちであると思います。今後私が言った鉄鋼やセメント並びに中小企業、こういうふうな方面に対してはどうするんだということをあわせてひとつお答え願いたいと思うのであります。
  28. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 重脱に対しまして、関税一キロリットル当たり三百円を軽減いたしますというのは、それによって特定の企業が金銭上の利益を受けるということではないわけでございます。そのような脱硫設備を精製業者がいたしますと、大体キロリットル当たり一千四、五百円かかるわけでございますが、そのうちの一部を関税還付軽減の形で見ようというのでございますが、これは精製業者のためと申しますよりは、実はそういう燃料を使いますあらゆる企業、その企業が排煙によって公害を起こすわけでありますから、それらにかわってエネルギーのもとのところでそういう公害を起こす原因を消しておこう、こういう考え方でございますから、精製業者そのものが公害を起こしておるわけではない、これは申すまでもなく御存じのことでございます。そうではなくて、各所で使われますエネルギーでありますから、そのもとのところで公害が起こらないような処置をしておこう、こういうことでございます。したがって、私どもとしては、むろん救済者のための処置も必要でございますけれども公害を起こさないような努力をするということが、その以前にもう一つ大事なことであろうと思いますので、そういう施策として考えております。  なお、公害問題全体について、これは確かにおっしゃいますように、厚生大臣の仕事であると考え考え方は私は十分でないと思います。私ども産業に直接関係あります者が発言をすることが、非常に有効な場合もございますわけですから、むしろ私としては企業公害という問題が起こりましたときには、考え方としては大体公害の側に立って旗を振っておったほうが、行政の姿勢としては私はちょうどその程度でいいところにいくというのが現状ではないかというようなつもりで、関係各省と協力しながらやってまいっておるつもりでございます。
  29. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 いま御激励を受けました点については、本日直ちに厚生大臣にそのまま伝えます。  ただこの機会に逆に島本先生にもお願いをいたしたいわけでありますが、先生がただいま引用になりました前厚生大臣の発言は、当時当委員会理事の一人として私も確かに承りました。ただ一点、当時何回も私どももお願いをし、政府側からも当委員会に対しお願いをしておった記憶がございますが、いわゆる被害者救済制度紛争処理、そうして同時にその問題発生の原因を究明する一つの手段である水質保全、この三つの案件というものはどれも切り離して進行することはできない、これはどうか一緒に成立をさせていただきたいというお願いを政府として国会に繰り返ししておったはずであります。現在その中で私どもの省の所管にあたります被害者救済制度だけが先行いたしまして、そうして生活保障あるいは休業補償といったもの、この紛争処理制度の運用の中におきまして紛争解決がはかられ、その中における話し合いによってある程度きまっていく性格のものでもあります。現状においては特に公害被害を、ただ単に健康の被害を受けられたばかりではなく、それによって収入面も途絶する、あるいは家庭も非常に苦しくなるというような御家庭に対しては、私ども生活保護あるいは世帯更生資金等を活用して処置をいたしておるわけであります。その意味からも、いま御指摘の点を早期に解決いたします上からまいりましても、ただいま総理府より本院に提出されておる紛争処理法案あるいは経済企画庁より本院に提出されておる水質保全法、この内容のいかんを問わず、早期に成立をはかられるように御協力を願い、被害者救済制度とあわせて十分な運用ができる体制をおつくり願いたいと、この機会にお願いを申し上げたいと思います。
  30. 島本虎三

    島本委員 なかなか若いに似合わず切り返すことがりっぱであります。私はもうそのために一生懸命審議しておるのでありまして、私が激励したのは二つあって、われわれはあくまで生活保障と休業補償の点を激励したわけであります。企業のほうをやったから被害者のほうも負けないでやりなさい、宮澤さんも協力しなさい。はい、と言えばいいじゃありませんか。早く通してくれと言うに至ってはなかなかりっぱであります。しかしながら、これは決して通さないというあれじゃございませんが、これはできるだけいいものにして通すのが国民のためにもいいのだから、行政措置としては片手落ちにならないのが望ましいのであります。いま私が申し上げました点は、あくまでも企業優位の上に立ったやり方だというようなことで伺ったわけなんでありまして、この点は一そう奮励努力してもらわなければなりません。これを見て簡単に感ずるのは、公害対策は企業優先の意味ではさか立ちしているんじゃないか。脱硫装置というようなものに対しては、企業に原油輸入関税一キロ当たり三百円低減する。しかしながら、被害を受け困っている生活保障関係や、休業補償関係というような点が、解決されておらない。そうなりますと、これはだれが見ても被害者に冷たく、加害者企業には手厚い保護がある、こういうようなことが当然思われるわけであります。こういう点を解決しなければならないのが私どもの任務であり、今後法律を実のあるものにして通さなければならないのが国民に対する一つの責務である、私どもはこういうように思ってやっておるわけであります。心を入れかえて大いにがんばらないとだめだと思いますが、この際激励を込めてきつくしかっておきたいと思います。  ついでに大臣、これはどういうことになりますか。今後はこの利用について、国が全額出して研究したパテントの料金を、どういうふうに扱うのでございましょうか。
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 専門家から御説明をさせていただきたいと思います。
  32. 緒方雅彦

    ○緒方説明員 ただいまの御質問の点でございますが、これは、国が脱硫技術につきまして研究開発をするという意図は、広く使っていただくということにあるわけでございますので、国が取得いたしました特許あるいはノーハウといったようなものは、当然広く使っていただくという考えでございます。ただし、その特許料につきましては、原則としては特許法のたてまえからはいただくということになっておりますが、その料率等につきましては、普通の技術と若干違いまして、公害対策技術でございますので、現在さらに検討をいたしておる段階でございます。
  33. 島本虎三

    島本委員 この問題だけは、私はほんとうにもっと時間をかけて検討したほうがいい問題だ、こういうふうに思います。しかし、大体様子がわかりましたが、今後あくまでも企業のみに手厚く、被害者に冷たいということがないように私は心から望んでおきます。そして宮澤さんも、厚生大臣もだいぶ応援したということをちょっと新聞で見ましたが、今度はあなたが厚生省を応援してあげて、こういうような被害者が手厚い保護を受けられるように、法律案が通ったあとはそれを期してがんばってやってほしい、これを強く要請しておきたいと思います。異議ありますか。
  34. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど総務長官思想党派を越えてと言われましたが、同様な考え方で閣内一致して協力してやっていきたいと思います。
  35. 島本虎三

    島本委員 先ほどから申し上げておりますように、汚染の発生源を厳重に規制する、これが必要だということは、大臣おっしゃるとおりです。それと同時に第二には、土地の利用で環境保全を十分に考えた地域計画を立てて、汚染源と住宅を切り離してやるような行政措置も必要であるということ、それと被害者救済、こういうような意味で申し上げました。  それで、これはやはり大臣だと思いますけれども、かつて厚生省が、公害対策基本法ができ、その関連法で未制定になっている公害防止事業の企業負担をきめるための立法措置が残っておりましたが、通産、自治両省の意見が合わないままに延び延びになっている、こういうような問題が一つありました。これは、公害対策基本法第二十二条の「費用負担」、この項によりますと、事業者は、その事業活動による公害を防止するために国または地方公共団体が行なう事業の費用の全部または一部を負担するが、その負担の対象となる費用の範囲、費用を負担させる事業者の範囲、負担額の算出方法、こういうようなものについては別途法律を定めて行なう、こういうことになっています。この基本法が制定されて現在までの間に足かけ四年にもなりますけれども、この基本法に基づくところの関係立法、大気汚染防止法はじめ、騒音防止法その他出てまいっております。しかしながら、企業負担をきめる法律、これだけはいまだに制定されておらないと聞いております。したがって、今後は一つの抜け穴になるのかどうか。当然そうなると思いますけれども法律がないので地方自治体というようなところでは、当然公害防止のための市街地開発、これはグリーンベルト等の緩衝地帯の設置、それから上下水道の整備、都市廃棄物の処理施設、監視体制の整備、こういうような公害防止施設をつくる際に、関係企業にどれだけ費用負担をかけるかということは、自治体の末端で知事なり市町村長なりが折衝し、その結果によって実施するようになっておるのであります。これは早い機会に通産、厚生、自治省等で話し合われて実施すべきではないか、こういうように思うのですが、これはどうなっているかちょっと伺っておきたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまの、法律ができていないではないかというのはそのとおりでございますけれども、これは長いこと各省間で検討をいたしているようでございます。厚生省では公害防止費用負担研究会というのを設けられまして、学識研究者をわずらわして検討しておられるようでありますし、関係各省庁もその席へ出まして意見を述べておられる。私の聞いております点では、幾つかの問題があるわけでございます。  一つは基本的な法理念の問題というのでございますか、島本委員からは、迷惑をかけた者が費用の全部または一部を負担するのは当然ではないかというお話がありまして、私どもも、常識的にはそういうふうに考えるべきものだと思いますけれども、その場合、無過失責任とか、過失責任というめんどうな問題が、従来の法理念でいえばあるわけでございます。因果関係とかいう問題もあると思います。その辺で何十年かの法体系なり法理念の中に、新しいものが入ってこようとしておりますから、その点についての議論がかなりあるようであります。それが一点。  もう一点は、技術的にどういう場合に何割程度の負担かということは、御想像もいただけますように、技術的にもかなりむずかしい問題だという点があるのではないかと思います。しかし、基本的には関係各省ともかなり協調といいますか、一つの方向に向かって作業が進み始めたように聞いておりますので、それがある段階に達しましたら、これは当然企業側に対しても十分な説得もしなければならないことになりますが、それを待ちまして、ひとつ予定されます法律案にいたしたいと考えております。
  37. 島本虎三

    島本委員 予定されている法律案というのは、できるときはそういうように予定されてある法律案ですが、早くやったほうがいいのじゃないかというふうに聞いているのです。予定されたといってもいつごろ予定されているのか、あまり慎重過ぎて−決してあげ足はとりませんから、いますぐやるとか、二、三日待ってくれとか、こういうようにはっきり言っておいてもらいたい。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 予定と申し上げましたのは、予想という意味で、公害基本法に書いてございます出さるべき法律案の作成という意味でございます。確かにかなり長い時間がかかっております。しかし、その間に世の中にしても、だいぶ変わってまいりましたので、できるだけ急ぎまして各省間の合意を取りまとめ、また企業側に対しても説得をして、企業にもよくわかった形で法律案提出したい。時期につきまして、ただいま申し上げられませんことは遺憾でございますけれども、できるだけ急ぎたいと思えます。
  39. 島本虎三

    島本委員 どうも惜しいですね。足かけ四年ですから、法をもって定めると基本法できめてあるのですから、これは、やはりそうきめないと、下部、末端で、同じ事業をやるために、市町村長が企業と直接交渉によってこれをやるような結果になると、今度はいざ法律を出す場合にはまちまちになるのです。あるいは二分の一、五分の四、三分の二、三分の一と——。五分の一になるのも、あるかもしれません。そういうのが、そのまま野放しになったら、あとからの収拾が困るのです。これは、もうあえて私は悪いことを言うと、怠慢です。なおあとになって困ることですから、これは急いでやらないとだめです。そういうような意味のことを、ことばはやわらかいのですが、だいぶ激励を込めて言うているのです。可及的すみやかにやります、せめてこれくらい言ってもらいたいのですが……。
  40. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はこれは、島本委員も御記憶でいらっしゃると思いますが、公害基本法をつくりますときのいきさつがございまして、当然公害基本法というものを考えていきますと、企業側の責任というものに触れてくる。そうするとその場合に、それならばその責任が、どういうふうに費用の負担につながるかという問題が当然出てまいりまして、これは当時の状況から見まして、いかに議論しても、なかなかまとまり得なかった、その程度の認識であったかと思います。そこでこれを切り離して、法律に将来することにして、とにかく公害基本法をまとめようではないかということから、そういうふうな切り離しを行ないました。そういういきさつもございましたために、なかなかこの問題が熟してこないこともあって、いままで時間がかかっておりました。このごろでは、だいぶ認識も変わってまいりましたので、できるだけすみやかに、仰せられますように政府部内の意思を統一したいと思っております。
  41. 島本虎三

    島本委員 それで、同じ通産省関係で、これはいわば成長政策の落とし子といいますか、しわ寄せといいますか、いろいろ言われておりますけれども、ことに重化学工業、都市化現象、こういうような中で、この産業廃棄物の問題の解決は、今後やはり大きい問題の一つになっていくわけです。この問題に対しては、ウ・タント国連事務総長も全世界に檄を飛ばしておるような、こういうような状態もあるのであります。まあ日本では、一日あるいは百万トンともいわれ、それ以上ともいわれておりますこの産業廃棄物、これは家庭のごみやその他の廃棄物の約二、三十倍も出ておるのだ、こういうようなことになっておるわけであります。そうなりますと、こういうようなものに対する措置もはっきり考えておかないと、まさにこれは都市公害、こういうようなものの一つの構成分子になってしまうのじゃないか。都市公害は、あながち大気ばかりじゃない。その辺にもくるのじゃないか。これは産業政策としても忘れてはならないものです。手を抜いてはならないものである、こういうふうに考えるものであります。この点では、厚生省も清掃法の改正、こういうようなこととあわせて考えているようでありますが、しかし、やはりもともと産業廃棄物は、これは通産省が先に手を打たなければならないはずのものじゃなかろうか、こういうように思いますが、この点いかがでしょうか。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはまことにごもっともな御指摘でありまして、私どもも、そういう問題意識を持っております。ことにその中で、高分子化合物の扱い方、プラスチックなどでありますが、これが技術的にも処理方法がわかっていないわけでございます。そこで、それらの廃棄物の処理を技術的にどうするかということを新たに工業技術院で研究を始めました。それから産業構造審議会でも廃棄物についての部会を設けまして、その方面からの検討をいたしております。それから実態を知る必要も実はございますので、ただいま御審議を願っております四十五年度の予算の中で、実態調査についての金も計上をいたしておるようなわけです。これは非常にたいへんな問題で、おそらく将来廃棄物処理産業というものが育っていかなければならないのだと思いますけれども、そのための基本的な技術、処理方法等を、いま申し上げましたような機関を通じて研究をしておるところでございます。
  43. 島本虎三

    島本委員 これは、もう少し聞きたいのですが、次回に譲りましょう。  次に、これは大臣にも前に一回お伺いして、十分納得をしないままに終わっている問題であります。これは厚生省と通産省の意見の不一致によるところの問題でありますが、去年でしょうか、厚生政務次官御存じだと思いますけれども、工場の新増築の設備、こういうようなものは、すべて知事の許可制として、基準に合っていて、許可を得なければ工場をつくらせないようにする、こういうような改正案が考えられて、通産省と合意を得たのか得ないのか、これはどうなっているかわかりませんが、通産省のほうでは、公害防止は、まず工場の立地条件の改善が先決だ、そのためには工業立地適正化法で工場の立地規制をはかるのが先決だ、こういうようなことで、あるいは意見の不一致を見たのかもしれませんが、その後、この知事の持つ改善命令並びに届け出制、事前にチェックするというこういうような一つの総合性を含めて運用するはずのものが、いつの間にか、この工業立地適正化法ですか、これが見送りになったまま日の目を見ないようであります。これは、やらなくてもいいような状態になったのでしょうか。また何かこれに対して理由があるのでしょうか。この点大臣——先ほど申しましたように、土地の利用で、これは環境保全を十分考えて地域計画を立てることが必要だ、こういうような点から、この問題は、やはりはっきりしておいたほうがいい問題であります。これは、もう紛争処理法案並びに水質法案や、そのほかの被害者救済法案、こういうようなものをやる前に行なわれなければならないはずの問題だ、こう思いますので、一応どうなったのか聞いておきたい、こういうふうに思うわけです。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 しばらく前に都市計画法の全面改正をいたしまして、いわゆる新都市計画法ができ上がったわけでございますけれども、その段階で、いまの工業立地の適正化に関する法案という考え方がございまして、これは従来から通産省にあったわけでございますけれども、新都市計画法との関係でこれが成立するといいというふうに私も当時考えておりました。ところが、もう御承知のように、新都市計画法そのものが、各省の権限が非常に交錯しておりまして、たいへんにむずかしい法律でございました。そこへ、またこの問題がありましたものですから、よけい事が混雑になってしまいまして、結局政府としては、提案することを見合わせたのでございます。私、いま考えますと、それは、ほんとうはあったほうがよろしいのだと思いますけれども、新都市計画法でいきましても、市街地地域、調整地域というような区分けができますので、どうしてもこれがなければ、もう何とも進まないのだということのほどでもない、あったほうが望ましいとは、いまでも私は思っておりますけれども、そのような経緯で見合わせたのでございます。
  45. 島本虎三

    島本委員 それでは大急ぎで……。これは何か最近聞くところによると、通産省では、こういうふうに公害問題が重大な問題に、いまや世界的になっているその最中に、機構改革を考えておられる、こういうようなことを聞いておるのでありますが、ある人は、通産省では現在の立地公害部より格下げするのではないか、こういうようなことさえいうのでありますが、私は真意は存じません。しかし、この立地公害部のこの機構の改革、こういうようなものが考えられているとすれば、これは強化するためですか、現状維持ですか、そうしなければならないような理由がほかにあるのですか、このいずれでしょうか。これを、ちょっとはっきりさせておかなければ今後のためによろしゅうございませんので、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本来立地ということと公害ということが一緒の行政になっておったということは、私はやや変則的だったのだろう、沿革的なものだろうと思います。  ところで、通産省には鉱山保安局がございまして、このほうは昔から、鉱山ではございますけれども、保安とか、規制とかいうことを、たくさんの専門家を置いてやっておりました。御承知のように、鉱山の規制というのも、非常に公害関係が多うございますから、そこで、従来立地公害部でやっておりました一般公害についての知識や経験と、鉱山保安局が持っております従来の集積した知識や経験とを結んだほうがよかろうということで、公害に関する部分を立地公害部から鉱山保安局に移しまして、そうして公害保安局ということに改組をいたします。
  47. 島本虎三

    島本委員 権限は。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで今度は、公害保安局が一般の公害問題と鉱山保安の問題両方を扱うようになるわけでございます。
  49. 島本虎三

    島本委員 現在より権限が強化されますか、現行どおりですか。
  50. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 法律上、特に権限が強化されるということはございませんけれども、権限と申せば、いろいろの立ち入り検査権等は従来から鉱山保安局にはございますし、公益事業局にもございますから、権限の問題としてはあまり問題はないので、むしろ両方の知識、経験合わせたほうが行政を強力に行なえるだろう、こういう考えで改組をいたします。
  51. 島本虎三

    島本委員 大臣、ほんとうに退席しなければならないのですか。私は大事な問題があるので、もう二、三分いいでしょう。だめですか。
  52. 加藤清二

    加藤委員長 五分前までおまけをいただきました。
  53. 島本虎三

    島本委員 ほんとうは三十分でやめろという紙きれがここに来ているのですが……。  それで大臣、これはどうですか。私ひとつここで、質問ということではなしに提案して、これに対して実施を願えるかどうかという問題があるのです。  というのは、最近は情報産業ということで、コンピューターを利用していろいろ全国的に、これは産業そのものも構造から変わろうとするような状態になってきております。そうして、きのうあたりちょっと私聞いたところによりますと、また読んだところによりますと、今度、公害ではなくて災害、山くずれでも大水でも、こういうような災害が出ないように、コンピューターを利用して、網の目のようにずっと何かやっていくことによってある程度防止できるものである、こういうようなことで、いまこれを実施するのに鋭意研究中であり、これが実施に移されるものである、こういうことを承りました。  災害が防止できるならば、公害はもう発生したものをすぐやればいいのですから、これはもうすでにコンピューターで、ばい煙でも、まさに水質汚濁でも、悪臭でも、テレビでも——においを出すようなテレビも今度開発されるようでありますから、今度はコンピューターによってコントロールする。公害をなくするようなこういうような開発をあなたが率先して、現在の情報産業の中で一歩先に出てこれをやる必要がいまやあるのじゃないか、こういうように私は望んでやまないのです。  というのは、去年の六月ですけれども、ウ・タント事務総長は、世界の人口増、それから都市化、技術の発達に伴う人間の環境悪化を指摘して、これを克服するために全世界一致せよという警告を出したわけです。それによって、いまおっしゃいましたように、ニクソン大統領は、ことしの二月に、環境汚染に関する教書、四十八億ドルのこういうような歳出権限を求めて教書を出しているわけであります。ウィルソン英国首相は、公害防止に関してはほかの国をリードしておりますよと言って誇っておるようであります。ソ連においては、新しい衛生法をつくって、いまや計画的にこれに対処するようであります。しかし日本は、自由主義の国二番目の生産力を誇っていながら、健康被害を守るのに重点を置かないで、ほかの国ではもう自然環境保全が重視されているのに、まだまだこの問題は立ちおくれておる。そこにちょうどコンピューターを入れた情報産業が出てきましたから、これを今度使って、世界に類のないような公害を排除する、また防除する、こういうような機構を研究され、そうして世界に誇るようなものにして、まさに無公害宣言でもなさったら一番いいと思うのであります。今後そういうふうにしてやれば、日本の、自由主義国二位を占める生産力も、民生の安定と生活の福祉に寄与している、こういうようなことがはっきり言えるのではないか。経済だけ栄えて、人間の福祉が下がってしまう、社会保障が下がってしまう、これではほんとうに上がったといえないのでないか。そこにこつ然とあらわれたのがコンピューターでありますから、今後これを使ってあなたは世界に冠たるようなこういう行き方を考えてもらいたいと思いますが、この提案に対していかがお思いですか、決意をお聞きしておきたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは将来としましては、コンピューターというものは各分野で仕事をするわけでございますから、もっと高度なことが考えられると思いますが、現在言われておりますことは、比較的初歩的といいますか、幼稚といいますか、つまりその日の天気、あるいは風向き等によって、特定の地域にどのくらいの燃料、どういう程度の燃料をたかしたらいいか、それ以上のものはいけないという指示が非常に急速にできるかどうかということになりますと、やはりコンピューターで多少突っ込みが必要だということが議論されておるように聞いております。それから広域的にそれが少し広がりますと、広域においてそういう制御ができるかということもコンピューターの力を借りなければならないと思いますが、他方で産業公害総合事前調査というのを私どもの役所でもやっておりまして、これなども一コンピューターにだいぶたよって研究をやっております。
  55. 島本虎三

    島本委員 まだまだありますが、時間の関係上これで終わっておきますが、終わったのではありませんから、これだけは重ねて……。  総理府長官、どうも御苦労さんでした。長い時間お待たせしました。今度は紛争処理法案の問題にまた入らしてもらいたい、こういうふうに思うわけでありますけれども、これは三条機関、八条機関という、いわばこの紛争処理機関の性格の問題で、八条機関の、現行どおりにこれを実施することにおいて妙味を発揮できる、大体こういうような意味長官の発言がございました。私どもはこの問題等については別な見解を持っておるわけでありますが、公害紛争処理機関、これはあくまでも準司法的な性格を持った独立の行政委員会的なものがいいのだ、そうして単に調停、仲裁を行なうばかりでなく、何らかの形でこれは裁定権、審判権いずれでも、こういうような権限を持ったもので実効をはかるほうがいいのである、こういうように思っておるわけであります。もとよりこういうような委員会の組織や機構、こういうようなものについてはこの独立性及び構成については十分配慮しなければもちろんなりません。その裁定に対しましても、制度司法裁判所の最終的な判断を受けるようにしなければならないんだ、これが私ども考えでございまして、いわば角屋堅次郎氏が出されたこの案には、そのとおりになっておるのであります。  それと同時に、この公害問題の、いままで申し上げてまいりましたような特殊な性格上から考えて、司法裁判所的な判断の前に、専門的な知識や経験を持った人で構成する独立した委員会、こういうようなもので弾力的な判断をするようにして行なうほうが、現状に適していいのだ、こういうように私ども思っているわけであります。私どもだけが思ってこれをやることは往々にして間違いがあって困りますので、私はしろうとではございまするけれども、日弁連、弁護士会のほうへ行ってこれを聞いたことがあるのであります。その際に、やはり以前は準司法的なこの強力な行政権には、いわば日弁連、日本弁護士会では反対であった。しかし、最近のような公害被害実態の前には、やはりおそらくは言い過ぎかもしれないけれども、ほかの三条機関、国家行政組織法の三条によるところの機関は廃止しても、公害被害者紛争処理、これには三条機関が必要なんだというようなのが最近の日弁連の回答でございました。  私どもはそういうような点から、いま長官に心からお願いを申し上げたいのですが、やはりこの八条機関、三条機関、いろいろいままでもちろん論議もございました。しかし、そういうような実態を前にしては、やはり三条機関が正しいのであって、三条機関的な運営でなければ現在のよう一な複雑な多様化した公害状態に対処することは、まさに画竜点睛を欠くような結果にしかならないのじゃないか、このことをおそれるわけであります。私のいろいろ調べ上げたデータによってこれは申し上げたわけでありますけれども、この点については大臣いかがでございますか。
  56. 山中貞則

    山中国務大臣 必要なものは行政機構もふやさなければならぬと思いますが、現在のおおよその流れは、与野党を通じ、もしくは一般の学識経験者なり、民間の大勢は、政府の複雑な行政機構の簡素化ということを大体はその底流としておると思います。その際に、三条機関にこれを移し、三条機関でこれをやるべきだという御意見も私はうなずけないことはございませんが、三条機関でなければならないのだという必然性については、少しくそこに結論をずばり持っていくには私としてはもう少し検討を要すると思います。また、非常な有識者の方々のお集まりである中央公害対策審議会の皆さま方の答申におきましても、これを裁決の機能、そういうものを含めてもう少し先の検討課題として、すぐに裁定までやれということも答申としては議論はありましたけれども、ひとまずこれでいくべきであろうということになっております。したがって、三条機関でなければこの運営は不可能であるというふうに私は思っておりませんし、先ほど冒頭に申しました三条機関をふやせということについては基本的に私は賛成でありませんし、三条機関の中で整理さるべきものは整理したいと考えております。これは行政管理庁の問題でもありますが、しかし、いまのあなたの御意見は、そうは言っていない、三条機関をやめてでも一いままでのものをこれは全部やめるわけにもいかぬのですが、かりにやめても、気持ちとしてはこの公害紛争処理は三条機関でいくべきが至当であるという日弁連の——日弁連としての回答かどうかは私も聞き漏らしましたが、そういう専門家筋の御意向等も最近は変わってきております、——このことは私もいまだ聞いておらなかった、初耳に属することでありますから、問題は司法権というものが一方にあって、そして行政の中で三条機関というものはそのような権能を付与されていくということについて、司法関係の日弁連とはいえ、その一角に位する人々の間からは、現状をだんだん認識するに従ってそのような意向が出てきつつあることは、私は初耳でありますけれども、しかと拝聴させていただきたいと思いますが、さしあたりは三条機関でなくともやっていけるのだと私は思っておるわけであります。
  57. 島本虎三

    島本委員 これははっきりした見解であります。いろいろいままであるいは非公式に、あるいは公式な見解、あるいは文書による見解、またはこれに対する答申というのもございますが、意見書というものもございます。それぞれ聞いております。そして、それによって……(山中国務大臣「公のですか」と呼ぶ)公のです。紛争処理法案に対する公の意見ということになって出されているのです。ですから長官、これは私個人の意見だけではないのでございます。  それで、いまあえて私が言うのはどうかと思いますけれども、その後の情勢の中で一つ変わってまいりましたのは、前にも申しましたように、以前はこういうような強力な行政機関司法実態に対してゆがめるものであるから反対だという態度であったのです。しかし、最近の公害の情勢や、相次ぐこの緊迫した情勢の前に、これに対処するのは他の三条機関を廃止してもこの公害紛争処理は三条機関のほうが望ましい、こういうようなことがはっきり言われるに至りました。そして前回の参考人としての意見の開陳の際にも、その意思の表明もあったのであります。そういうようなことを取り入れましても、いま私が申し上げましたようにこの問題についてはもう少し考えおき願いたかったし、今後においてもこれは十分に御考慮賜わりたいものだ、こういうように思うわけなのです。いま私は非公式なものによって言っているのではございませんで、その点はまあひとつ十分御考慮願いたい、こういうように思うわけであります。  それともう一つは、いまの処理法案の中で基地公害の扱いについて、やはりこれに対しましては別途の扱いにし、適用対象から除外されておるわけであります、基地公害は。こういうようなことに対しては大臣も十分御研究のことだと思うのであります。しかし、これには防衛施設にかかる公害を除外して別に法律で定めるといたしておるのであります。五十条に「別に法律で定める」とありますけれども、これは定まっているともまだ聞いておりません。そうなると国民の基本的人権を擁護するためには除外規定は設けるべきじゃないじゃないかという基本的な考え方は、当然これは筋が通るのであります。これに対して大臣いかがでございましょうか。
  58. 山中貞則

    山中国務大臣 前国会までは、確かに除外して別途法律で定めるということはおかしいのではないか、いや何とかします、という答弁に終始したと思うのです。しかし、今度の国会に防衛庁設置法の一部改正で、防衛庁は防衛庁自体としてそのような公害に対処する審査会を、しかも純然たる第三者の人々によって構成される機関を設置するための法律提案をいたしておるのであります。したがって、この委員会にかかりますか、内閣委員会でありますか、その際に質疑等を行なって明らかにしてほしいと思うのでありますが、これは私のほうが排除の起因着たるべき立場で、防衛庁のほうがこの法律の中に入れてやらぬぞという立場をとったのではないわけでございまして、防衛庁の国家公務員の立場も特別職であり、また防衛庁の施設そのものが、たとえば旅客機を深夜は発着させないということをきめるにしても、防衛庁の場合には深夜緊急事態が発生したときに、その一般の法の規制に従ってスクランブル等はできないんだということにもなかなかいきませんし、特殊なものがあることは事実だと思う。ですから、これは私の友だちである中曽根防衛庁長官のほうがむしろ答弁すべき立場にあると思いますが、この法律としてはそのような特殊性を認め、なおかつ今国会において、防衛庁が防衛庁自体の法律においてはっきりとしたものを提案をいたしますので、今回はその点、前のときのように防戦一方で逃げ回るということではないので、はっきりと防衛施設庁のほうでそのような処理をいたします。しかも第三者のそのような機関をつくりますということを言っておりますから、法律提案をしておりますので、それらのところは今回は法律としては補完はきれいになされたものである、私はさように思うわけです。
  59. 島本虎三

    島本委員 そうすると、この五十条にある「別に法律で定める」というのは、これは関係立法じゃなく防衛庁がその責任においてつくるという意味なんだ、こういうことになるのですか。私は少なくともここにあるのは紛争処理法案、まあ政府提案政府案と、いろいろございまするけれども、これは別に定めるということになれば、この問題についてやはりはっきりときめて——きめてというよりも負担区分をして、そうしてもうはっきりとこれによってやる、どこにも違反することはなく、またこれによって被害者に対して十分、この紛争処理法案によってやる以上に十分な措置ができるものである、こういうようなものをつくってあるものかと思ったんですけれども、そういうような意味なんでございますか、第五十条の「別に定める」というのは。ただ防衛庁が別なそれをつくってやるから、それがこの紛争処理にあるところの「別に法律で定める」という意味なんだ、こういうことなんでしょうか。私はどうも理解がその辺不十分なようでありますから。
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 前の大臣はどういう答弁をしたのか知りませんが、防衛庁で法律をつくるからこの法律関係なしにできるんだということではありませんで、やはり政府一つのものでありますから、したがって、政府の中で防衛庁がこの法律で定める防衛施設に関するそういう紛争処理に関する審査会をつくるのだということであれば、政府として提案をいたしましたこの法律を補完する立法措置がなされるものと、そういうふうに私は解釈したいと思うのです。もともと総理府といたしましては、公害行政の具体的な行政官庁ではないわけであります。しかしながら先ほどの通産、厚生のやりとり等を聞いておりましても、企業負担等の問題等でもなかなか煮え切らないようでありますが、国会等でない裏の省同士の議論では、もっと煮え切った意見の対立等もあるいは私は想像できるわけでありまして、そういう意味では私のほうはお預かりをして、政府全体の姿をここに出そうとしておるわけでありますから、その意味行政官庁でありません私どもの役所というものが預かって出しまする法律と、その中の補完の特別な条件を備えている防衛庁というものの施設に関する公害、こういうものについては、やはり防衛庁が独自の立場を持って特殊な環境のもとで、なおかつ意識としては、趣旨としてはこの法律に従った内容のものを提案するということが別途の法律だと思うので、その意味において政府は一体でありますから、今国会に防衛庁が提出しておりまする法律をもってその条項の別途に定めるという法律に該当するものである、こういうふうに御解釈願えれば幸いだと思います。
  61. 島本虎三

    島本委員 やはりこれは国民の健康の保護と生活環境保全に奉仕する、これがいわば紛争処理のこの法案一つ制度、こういうようなことになるわけでありまして、公害による被害者に対してひとしくその利用の機会を与えられるべきものであって、防衛施設による公害被害者についてのみこれを差別するという、こういうような合理的な理由、こういうようなのは、どうも私どもは発見できないからこの中でやったほうがいいんじゃないかということをずっとやっていったわけです。  ただ、いままでの防衛庁の答弁は、これはもう手厚い措置をしているから心配ないのだ、こういうようなことで、いままで資料その他によっていろいろ答弁してまいっておるわけです。ただこの理念としても、差別してこれはやるような理由があるのかと、これがやはり問題になるわけなんであります。いまの答弁ではこれがどっちへどうなっているのか、私不敏にして十分理解できないのでありますけれども、これは長官、おわかりでしょうか。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 おそらく防衛庁は、いままで防衛施設周辺整備促進法あるいはそれに伴う予算とかいろいろのことを実際上やっておりますからというようなことで言ってきたんだろうと想像をいたしますが、そのようなこともいままでやっておりまするし、ことに防衛に対する考え与野党これは意見が違うにいたしましても、国防という特殊な立場における施設ないしそれに伴って起こす行動というものは、周辺基地住民に理解と協力というものを得られなければ国防の真の目的は達せられないわけでありますから、その意味で周辺基地住民に対する施設その他の特別の措置がもう相当長期にわたってとられてもおります。立法の根拠もありますが、そういうことで説明してきただろうと思うのです。しかし、この公害紛争処理法案にいう防衛施設については別途定めるという法律については、いまだ国会法律を出していなかったわけですから、これはおそらくいままでの国会質疑応答では、質問者の立場からは決してそれでよろしいという答えは私出なかったと想像します。しかし、今回はそのようなことを、事実を踏まえて、そして防衛庁において独自の紛争処理法案に準ずる内容のもの、準ずるというのはおかしいですが、同内容のもので法律提案をされておるという事実がありますので、これによってこの法律の補完措置法律として行なわれたものであって、その意味政府一体として補完法律提出をいたしておりますからということを申し上げているわけであります。
  63. 島本虎三

    島本委員 これはもう少し大臣に対してはっきり聞いておかなければならないのは、前からのいきさつであります。そしていろいろ答弁もございまして、この点はっきりしないままに終わっている、あるいはもう時期の問題や、その周囲の状況からして、理解しないままにこれは前回はここを通った、こういうような実態であります。これは全部理解して通ったのではなかったのでございます。その中で、この問題に対しては、いま言ったような防衛施設の特殊性であるとか、またいろいろな機密の保護の必要であるとか、こういうようなことを往々にしていわれておったわけでありますけれども、しかし、それならば他の企業に対してもそれがあるわけであります。どうもこれは、いまいろいろ言われましても、依然として現状におきましても、これは軍隊という用語はまだ使っておらない段階の中で、ただそこだけ一これは米軍は違います。日本の場合は、自衛隊だけは他の機関、他の団体、こういうものと特に違う神域であるということで、これには一切手を触れるな、そして当然これはもう紛争処理被害を受けたからそれに対してはっきりこれはできるのだ、紛争解決を求められるのだ、こういうような基本線でやるのですけれども、いままでのいわゆる基地周辺法並びに特損法、こういうようなものによると、行政的に、恩恵的に与えられるわけであります。恩恵的なものであります。それが、紛争処理によってやるのではなくて、あくまでもやった行為は正しいのである、したがって、そういうようなことを認める前提においての被害の補償と申しますか、こういうようなことが行なわれておったのであります。そうすると、あくまでも軍隊でもない、それからそういうような産業関係においても、他にも重要なる一つの位置づけを持つ企業だってあるはずであります。そっちのほうに対しては、やはりこの公害紛争処理、必要によっては秘密を漏らさないような、こういうことで立ち入りをするようなこともあるでしょう。それと同じようにして自衛隊の中をやっても差しつかえないし、しかるべきような状態にあるはずなのに、なぜ神域として自衛隊のほうだけは恩恵的にやってやる、やる行為に対して何も文句を言うことはできないのだ。これはやはり何といっても長官疑問として残るはずであります。私はその理をただしているのであります。ですからこれはまだ釈然としないままで前回通ったのだ、この事態だけは長官、認識しておいてください。私はこの前からこれに携わっておりますから十分このいきさつは知っておるはずであります。したがって、そういうようなところで、やはり依然として恩恵的に施すものであり、紛争処理のために原因を取り除くというところまでいっておらない、和解というところまでいっておらない、依然として騒音やいろいろな被害を与えながらも、これによって待ってくれ、がまんしてくれというような、いわば恩恵的な措置であります。やはり今回の法律もそれで満足せよと、こういうようなものであるのかどうか。内容は私知りませんけれども、それはやはり理が通らないんじゃないか、こういうように思う。ただし、これは米軍の場合には地位関係の条約がございますから、協定がございますから、これはもうここで言える何ものでもございません。しかしながら、やはりこういうようなことに対してはっきりしておかないとどっかが間違っちまう。私どもは常にこれを心配しておりまして、まあ御存じでしたらこの際お聞かせ願いたいと思います。
  64. 山中貞則

    山中国務大臣 恩恵的といえばそういうふうにとられる人もおるでしょうし、あるいは償いということもあるでしょう。基地所在市町村交付金、あるいはことしから米軍基地に対する交付金等もあらためて、おそきに失しましたが、交付されるようになりましたけれども、やはり私は防衛庁というものを聖域だとは思っておりません。内閣委員会で天下り問題の議論がありましたときに、防衛庁の人事教育局長は、大臣不在でありましたけれども、やはり防衛庁は独自のものとして部内チェックだけで十分であるという答弁をいたしました。しかし私は、私と大臣同士で話をすることだから、事務当局の発言は控えなさいということで、中曽根君と直接折衝をいたしました。やはり国民の側から見て納得するものでないとだめだよ、部内のチェックを幾ら厳正にやっておるといっても、国民がなるほどなと思うものでなければだめなんだからということで、ようやく合意に達しまして、防衛庁も、その他の機構といたしまして総理府の人事局、もしくは人事院の事務局、その他等も集めまして、防衛庁の天下りについては客観的な基準も等しくし、第三者の意見が反映するようなことに前進を見まして、法律的なことが要るかどうか知りませんが、防衛庁としてその方向をはっきりきめたようであります。私はそういう気持ちをもともと持っておりますから、防衛庁というものを大切であると考える半面、防衛庁というものは周辺地区の住民はもとより、国民全体の理解と協力なくして決してその基地の存在も機能も最大限の発揮は困難であります。そのようなことから、この公害紛争処理法案に対しましても、防衛庁としては、先国会では間に合わなかったかもしれませんが、今国会ではその準備をし提案をいたしておりますから、必要ならば、きょうは防衛庁来ていないそうでありますが、防衛庁長官なりの出席を求め、はたしてその法律内容は、この法律の補完措置、立法として適切かつ厳正、十分なものであるかどうかについてお詰めを願いたいと思います。私の知る範囲においては、大体補完でき得るものだと承知いたしておりますが、責任省からの答弁がぜひ必要であろうかと存じます。
  65. 島本虎三

    島本委員 長官は、いまそうおっしゃいましたが、これはきのうのうちに要求を出してあるのです。ところが、上から下まで参議院予算委員会に呼ばれておるし、予算参議院であろうとも、これは普通の法案よりも先議すべきものだと考えるから、きょうは出られませんと断わりがきた。だから一人ぐらい出られるのじゃないか、こういうふうに言ったけれども、一人も出られません。まさに向こうは何か強力なものだと考えているのじゃないか、こういうふうに思うのです。ちゃんと呼び出してやっても来ないということは、私を侮辱しておる、とんでもない。そういうようなことですから……。  それで、どうですか、被害者理由もなく不利益を強要されるようなもの、明らかに法のもとに平等の原則、これは別に法律をつくって内閣で審議するものであっても、この基本線ははっきりしておいたほうがいいものである。私、まだそれを存じませんので、これはいずれ長官のおっしゃるとおりここに来てもらって、その内容考え方等明らかにしなければならない、こう思っておるわけであります。  それで、時間のたつのが惜しいのでありますが、大臣、この十一条の精神でありますけれども、独立した事務局、これを中央委員会に置くような構想でしょうか。それともばく然として、事件ごとにだれかを連れてきてこれに当たらせる、こういうような制度でございましょうか。これは私ども考えでは、この複雑な、多様化している状態の中では、いつもそれに対処できるような一つの独立した常勤の機構、常勤によるところのこういうような人々を配置しておくべきだ、こういうふうに思うのでありますけれども、この紛争処理法案内容、この機構はそこまでいっておるでしょうか。いままでの状態では私は十分理解しておりませんので、これは確めておきたいと思います。
  66. 山中貞則

    山中国務大臣 結論から申しますと、事務局設置ということを掲げておりません。役人というものは、大体国家公務員は、普通一般の国民よりか優秀な者が選ばれて国家公務員たるべき地位を得ておると私はかねがね思っておりますが、その優秀な諸君、ことに今回の場合は、各省からもいろいろと参加を願って常時やるわけでありますから、事務局機構というものがなければいけないのかどうかについては、これまた見解の分れるところでありましょうけれども、あったほうがいいということも正しいでしょうし、あるいは事務局までつくらなくとも、有能な役人を有効に使うということであるならば、その目的を達し得るということも言えるのではないかと思うのです。現在のところは、先ほど結論を申しましたように、事務局を設置するという前提では考えておりません。
  67. 島本虎三

    島本委員 先ほどから私いろいろ申し上げましたが、各国、たとえばアメリカや、イギリスや、ソ連でも、また国連あたりでも、公害に対して熱心に取り組んでおる状態だということを申し上げました。公害対策基本法ができて、関連立法として紛争処理法案がいまかかっておるわけであります。これに対しても、中央では公害対策会議の議長は総理大臣である、総理大臣のもとにやるのであるから、いかなる機構よりもこれは十分なんだ、こういうのが当初の考えであり、答弁であったわけです。  ところが、そういう優秀なはずのものが、いまのような状態に比較してみると、いわば生産力が上がっても公害に対する対策は依然としておくれているという指摘をどうして受けなければならないか。これが強かったならばすぐ対策ができるはずであります。ですけれども、事務局もない、どういう状態でこれに当たるのだと言っても、事件が発生したときに必要に応じて動くのだということであります。常に監視をして、そういうようなことも指導して、あるいは摘出までしてそれに当たらなければならないはずのものが、申告があったり、そのものが当然起こってからこれに当たるのだ、こういう考えですから後手後手に回るような体制なんです。強いはずのものが、今度は一番弱いような運営のしかたにされるわけであります。私は、その実態を賢明なる大臣に十分御認識賜わりたい、こう思っていま言っているのです。したがって、事務局をつくらないほうがなお強くいけるのだという考え方は、いままで主張されてまいりまして、十分聞いてきた考え方です。しかし依然として、自由主義国では世界第二位の生産力や経済を誇っておっても、公害対策では一番おくれている、後進国並みだ、こう言われるに至りましては、こういうような機構があってもそれを十分動かすことができないような、いわばあまりにも大きいマンモス組織であって、それを動かすような実体が小さ過ぎた、こういうことになったらすぐ動くような機構にしておくことが大臣、大事でございませんか。そのためには、やはり独立した事務局を中央のどこかに置く、これによっていつでも動けるような体制にしておくことが私は大事だというふうに思うわけです。こういうふうな点を初めから申し上げておりますけれども、ひとつこの点についてもはっきりした御答弁を賜わりたいと思います。
  68. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、事務局をつくれとおっしゃるから、事務局は置きませんと言ったので、中央公害審査室という、まあ事務局という名前でないからいかぬとおっしゃるならばあれですけれども、そういうものを置きまして、きちんとした機構をつくって、そして定員もとりましてやっておるわけでして、事務局でなければいかぬ、審査室ではいかぬということにもなかなかならぬのじゃないかと思うのです。こういうものは、やはり常時どういう運用をしていくか、出てきたケースを次々審査していくということですから、機能が十分生かされれば、その名称はそうこだわる必要はないのじゃないかと思うのですが、一応私の手元へ機構の図がございますから差し上げておきます。局とするか、室とするかで、たいした違いはないでしょう。
  69. 島本虎三

    島本委員 これは法律上、独立した室であるのだ、こういうことでしょうね。
  70. 山中貞則

    山中国務大臣 そうです。
  71. 島本虎三

    島本委員 それでは、室であっても局であってもいいです。  もう一つ、大事なことを聞いておきたいと思います。これは大臣、どうですか、和解の仲介や調停に記録をつくって、当事者が民事訴訟において訴訟資料としてこれを使うことにしたならば実際は一番いいのじゃないか、こういうふうにさえいわれるわけであり、われわれも考えておるわけであります。しかしながら、政府案におきましては依然としてこの手続は調停、仲裁、こういうふうなものの内容は非公開ということになっております。そうなりますと、公害現象は専門的な知識が必要でありまして、委員だとかまたは公害調査員という者によって探知した資料をできるだけ活用する道を残しておくほうが、あるいは裁判になっても、確実な基礎資料ですから望ましいのではないか。非公開だから全然発表しないでしまっておくんだ、訴訟を起こす場合はあらためてまた別につくってやらなければならないんだ、こうなったら宝の持ちぐされになるのではなかろうか。ほんとうに解決するなら、こういう資料が必要なら、ここで公開の原則は認めるのだ、こういうことまで当然考えられてしかるべきだ、こういうふうに思うのであります。これは公害対策で実際的に直面する事態だと思いますが、いかがですか。
  72. 山中貞則

    山中国務大臣 これは最初の、裁判の判決みたいな権利をこれが持つか持たぬかという議論から、結局分かれてくるわけであります。当事者双方が、この処理機関にまかせましょうということが前提になるわけですから、そういうときに、別段なだれ込んできて会議を妨害するというようなことも考えられないわけで、公開、非公開の問題よりも、実際上行なわれるケースというものを考えた場合に、これを公開にしなくちゃならぬものではなくて、公開と同じように両者が承知しましょう、ただし双方の主張は、こういうことですからしかるべき仲裁を願いたい、こういうことなんですから、あまり必要性がないと思うのです。あなたのほうの立場からいえば、これは審判権を持つべきである、判決権を持つべきであるという考えが前提にありますから、当然そういう御意見が出るのでありましょうが、私どものほうとしてはまだまだ足らないとおっしゃる制度を今回お願いしているわけで、その意味では両者がおまかせをするということになっているわけですから、そう特別にそこのところはこだわる必要もないと私は判断しているわけです。
  73. 島本虎三

    島本委員 いろいろ進んでまいりまして、大臣考え方もだいぶわかってまいりました。必ずしも私の考えと一致しない点が意外に多いので、驚いているわけです。しかしながら、その言わんとするところはわからないわけではございません。しかし、いまのその考えで行なうと、やはり前任者と同じような状態に結局はなってしまうのではなかろうか、あなたの独自性、あなた自身の創意があまりあらわれない結果になってしまうのではなかろうか、こういうふうに思うわけです。
  74. 山中貞則

    山中国務大臣 その点は認めます。それは私が最初の答弁で申しましたように、一院通過しておるという過去の事実を踏まえてやったものですから。これはもともと提案をしただけで、議論があまりにも多く対立をして、対案が続出をしてどうにもならなかったのですということであるならば、私自身の考えを十分盛り込んだものを提出できたと思うのです。しかし、冒頭申し上げましたように、一院通過の既定事実を踏まえて出しましたので、いまおっしゃったように、前任者の域を脱していない点が多いということは、本法案に関する限り私は率直に認めます。
  75. 島本虎三

    島本委員 一事不再議でございまして、前にもしこれが廃案になりましたら、出すものはすべて新たであります。新たでありますから、以前のそういうようなつながりや関係、これは一応もう忘れてもいいのじゃなかろうか。通過した事実があっても、廃案という事実もあるのであります。そうなりますと、もう一回前に戻って考えるということは、一事不再議の原則からしてもあまりにもかた過ぎるというか、りちぎ過ぎるのじゃないか、新たな見地からこれは出されてしかるべきものだ、こういうふうに私は思っているわけです。  いろいろ討議してまいった次第でありますけれども、特に仲裁の場合には、政府案によるこれをやってしまうと、どういうのが出ても司法裁判に移行できないということになってしまう。この点は社会党案のほうでは、たとえ裁定というものが出ても、これはどうしてものめませんと言ったら、三審、四審であろうとも、これはもうすぐそのまま司法裁判に移してもいいとなっておるのです。やはり裁判の原則、国民の権利、こういうようなところから見るならば、社会党案のほうが筋が通るのではなかろうかというように思うのでありますけれども、依然としてこの出されたものは仲裁に関しては裁判移行は不可能だ、こういうようなことになっておるのであります。これはいかがなものですかね。
  76. 山中貞則

    山中国務大臣 まず第一の問題というほどでもありませんが、考え方の問題で、廃案になったのだからというのでありますけれども、たとえば衆議院の委員会提案をしたばかりで廃案になった場合、あるいは議論を十分尽くしたけれども委員会で可決するに至らず廃案になった場合、いろいろ議論があったが委員会通過して、本会議でも通過する予定であったけれども、他の法案等のあおりを食って一院通過しなかった場合、いろいろあると思うのですが、今回の場合は、参議院において突発事件によって、大学紛争のあおりで廃案になったのです。衆議院一院としては通過をしたことは既定の事実でありますから、そのような意味で、私は決して怯懦な性格ではありません、やるべきことについては真実を踏まえて大胆率直に行動する政治家でありますし、私も国会に長いこと籍を置いておりますから、そういう考え方でこの問題は一応処理せざるを得ないだろうという判断をしたということを先ほど率直に認めた次第です。  それから和解、調停という問題では、それが思うように進まなかった場合にはさらに一般の司法権のほうに移せ、これも一つの御意見かと思いますが、問題は、そういう場合においては裁判に持ち込まなくとも、おまかせしますから、ひとつ厳正公平、われわれの主張をよく組み込んで決定をしてくださいということでおまかせをしていただくことが前提になっておりますので、したがって、それが済んだらあとまた裁判に持ち込むのだということにはどうしても考え方の上では取り入れられない構想としてわれわれは出しておるわけでありますから、ここのところは意見の対立がどうしても出てくることになると私も思います。
  77. 島本虎三

    島本委員 それで、残念ですけれども考え方が違ったのはわかりました。しかし、私が言った考え方も、私は自分で違っていると思いません。やはり一事不再議というようなことで新たに出発した。しかし、大臣の話はそうじゃないという考えです。ただ、これを実行することになりました場合には、これが十分成果をあげるように——いままでわれわれがここで声をからしながらこの内容、また危惧するところ、こういうような点を言ってまいりました。しかし、実行するような場合には、こういうような点を十分考えて万遺憾なきを期するようにしなければだめだというように思います。なお、私どももこの問題に対してはいわゆるライフワークとして取り組んでまいりたい、こう思っておる次第ですから、今後ともよろしくひとつ先頭に立って、こういうような問題の解決に当たってもらいたい、このことを強力に要請いたしまして、私の質問は残念ながら終わります。御苦労さまでした。
  78. 山中貞則

    山中国務大臣 最後に申し上げておきますが、先ほどの宮澤君並びに厚生政務次官企業負担等の問題につきましても、足かけ四年のたなざらしになっておるということを聞きました。やはりこれも、いずれ私のところが乗り出さなければ片づかないなという感じを先ほど持ったわけです。そういたしますと、これからやはり日本公害に対する姿勢というものを出すためには、いずれいまおっしゃったような問題点を含めながら、総合的に企業負担の問題等も取り入れつつ、新しい形の立法というものが必要になってくるような気がします。そのためには、私もこれから勇敢に勉強し、努力をして、なるべく早く自由世界第二位の経済大国にふさわしい、そこに住む人間が経済繁栄の陰で苦しんでおることのないような実態をつくり上げる努力をすることをお約束いたします。
  79. 島本虎三

    島本委員 終わります。
  80. 加藤清二

    加藤委員長 次に、多田時子君。
  81. 多田時子

    ○多田委員 初めて公害問題に触れるわけでございますが、長官がおいでくださるというので、最初の一問か二問かぜひお願いしたいと思います。  一番最初に、先ほどもお話が出ておりましたけれども、この公害基本法の一番最初の、第一条の「目的」でございますが、「国民の健康を保護するとともに、生活環境保全することを目的とする。」ということが第一条のトップにございます。国民の健康と環境保全ということを優先するというふうに明確にうたってあるわけであります。いまほんとうに一億総被害者、こう言われるくらいに公害問題は重大な問題でございますし、またそれだけに国民関心もたいへん深まってきております。当然また、その根本である企業の社会的責任というのは大きいわけでありますが、いわゆる公害防止のための投資ということをあまり積極的に企業はやりたがらない。その投資は直接生産性につながらないということもございますし、あまり積極的ではないというきらいがある、こういうふうに考えられるわけです。  そこで、当然国家としてもその問題に責任を持って云々するということでこうした法案ができ、いろいろ論議し尽くされているわけでありますが、その各企業の投資率というものは一体どのくらいになっているものか、また、自分企業の利益金のどのくらいをそれに割り当てているものか、また外国等の例をあげて比べてみたらどういうふうであるという状態をひとつお伺いしたいと思います。
  82. 加藤清二

    加藤委員長 それは通産省ですが……。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  83. 加藤清二

    加藤委員長 速記を始めて。
  84. 多田時子

    ○多田委員 この法案の中で、「管轄」の一のところなんですが、「現に人の健康又は生活環境公害に係る著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、又は及ぶおそれのある場合における当該公害に係る紛争であって政令で定めるもの」・、こういうふうにあるわけなんですが、「当該被害が相当多数の者に及び、又は及ぶおそれのある場合における」というふうになっておりますけれども公害問題というのはもちろん四大公害のような場合もございますし、また一人でも公害という問題ならばこれは重大問題である。生命に関するような問題もございますし、そうした問題は、このいわゆる紛争処理法案それ自体には適用されないものかどうか、これが一つでございます。それから次の二に、「前号に掲げるもののほか、二以上の都道府県にわたる広域的な見地から解決する必要がある公害に係る紛争であって政令で定めるもの」、一つは人数的なこと、二番目はいわゆる地域的なことに広がっていくわけですけれども、両方とも同じような意味で、小部分あるいは少人数、そういった場合のことはこの法案によって解決するというふうにはならないかどうかということ、この問題についてお伺いしたいと思います。
  85. 山中貞則

    山中国務大臣 それは個人はだめだというような意味でもありませんし、一人、二人の場合はだめだという意味でもありませんので、そういう産業公害の中で一、二名とかあるいは限られた作業場所というのは、大体労働災害のような関係の中で処理されていくケースが多いと思うのです。だから、企業が周辺の不特定多数の住民という人々に明らかに被害を及ぼしておる、いわゆる営利事業たる者が周辺の人々に迷惑をかけておるのだ、それは営利事業であっても公害であるのだという考えから出ているわけでありまして、最初に申されました「目的」の、国民の健康云々も、憲法に保障された国民の権利をいまや部分的に奪われつつある人が出るのだ、出るおそれがある、出つつある、そのところをこの法律をもって対処するのだということを言っているわけです。ですから、そのような意味において、決して人数が少なければめんどう見ないぞという意味は全くありません。  それと今度は、二以上の府県にまたがるのは、これは地方の都道府県においてやる分野も相当ありますし、都道府県の分野では、県がまたがりますと、なかなかお互いに遠慮し合ったり、敬遠し合ったり、牽制し合ったりするものでありますから、もちろん河川等に関しては、その流域は数府県にまたがりましょうし、そういう場合においては当然関係府県というものが県境を越えて相談しなければならないぞということをそこに言っているわけです。
  86. 多田時子

    ○多田委員 そうしますと、いまの御答弁でよくわかりましたが、こうした小さな問題のいわゆる苦情の窓口といいますか、そういったことはどういうところで処理されていくことになっておりましょうか。
  87. 青鹿明司

    青鹿政府委員 苦情処理の点でございますが、法律の第四十九条に苦情処理の項目を設けまして、まず第一項では、地方公共団体は、関係行政機関と協力して苦情の適切な処理をしなければならないということを書いておるわけでございます。具体的には都道府県、それから政令で定めます市は、苦情処理相談員を必置するというふうになっております。それから、それ以外の市及び市町村には、苦情相談員を置くことができるということでございまして、苦情相談員を窓口にいたしまして、公共団体全体があげて苦情の解決に当たるというような趣旨でございます。
  88. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 先ほどの公害投資の件についてお答えいたします。  先生が御指摘されました公害投資に対して企業が非常に消極的であり、その態度に問題があるのではないかという第一点でございますが、この点、従来しばしばその消極性を非難されておることは事実でございますが、最近の傾向といたしましては、公害に要する設備、これは当然企業がその内部コストとして持つべきであるという主張も一方において非常に強くなっておりまして、経済学者の間でも、この問題は相当重要な問題として議論されておる段階でございますが、現実企業態度といたしましても、最近目に見えて積極化してまいりまして、物を生産する場合にはまず公害の問題を考えて、それを十分コストの中に入れた上での製品価格というものを考えないことには、企業としては成り立たないというような考え方が、漸次浸透してまいっておるように私は観察しております。またそういう形で指導しておるわけでございます。  それから、投資の比率の点でございますが、去年通産省で行ないました公害関係の投資につきましては、四十年から四十四年までを一応これは二千五百社について調査いたしたわけでございますが、四十年ないし四十一年当時は、その企業の総設備投資に対する公害関係の投資比率は一%ないし二%くらいでございましたが、その後漸次比率は上がりまして、四十四年度の投資見込みといたしましては、五%を若干上回る数字になっております。諸外国の例でございますが、ただいま手元にアメリカの例しかないわけでございますが、アメリカにおきましても公害設備投資は約五%ということでございまして、この調査が終わりましたときにわれわれが感じたことは、最近やっと設備投資の比率もアメリカ並みになってきたという感じを抱いたわけでございます。将来もそういった形でできるだけ有効な公害防止のための設備投資を着実に行なわせるということで、公害原因の削除をはかりたいというぐあいに考えております。
  89. 多田時子

    ○多田委員 長官いらっしゃいませんけれども、先ほどの法案の問題は、総理府の方おいでになりますようで、もう一つだけお願いしたいと思います。  それは先ほども質疑の中に出てまいりましたが、ちょっと私納得しかねる点があります。それはいまの要綱の第七の「管轄」の四に、「仲裁については、当事者は、双方合意によって」ということがございまして、先ほどもこの問題が出ておりました。しかし、もう一歩明快な御回答をいただきたいと思います。ということは、いわゆる被害者申請あるいは申告あるいは苦情等によって、これが取り上げられるものかどうか、双方合意でなければならないのか、その辺のことでございます。
  90. 青鹿明司

    青鹿政府委員 仲裁の仕組みでございますが、御承知のとおり、公害紛争も民事上の争いでございまして、原則として憲法も保障しております司法手続によって解決するということが通常の形であろうかと思います。この仲裁というのは現在でも民事訴訟法にもございますし、建築紛争等についても同じ制度がございますが、これは同じ当事者の合意によって裁判に付する権利を放棄するということでございまして、非常に重要な問題でございます。仲裁判断が下りましたならば、訴訟手続に移行するのが非常に制限されるということになるわけでございまして、実質的に訴訟に移行する権利を放棄するわけでございますから、その前提として当事者の同意は必要であるということになっておるわけでございます。
  91. 多田時子

    ○多田委員 問題は次に移りまして、法案関係することでございますが、アメリカには紛争処理機関というものがございまして、いわゆるEDFというんですか、環境保全基金、民間にそういう団体がありまして、当然公害の問題には、問題が起きてくる、解決まで相当時間がかかるということ、それからまたお金がかかるということ、そういうことで公害自分で認めて被害を受けても、わざわざ出かけていって自分で経費をかけて訴訟を起こしたり、あるいは被害を申し述べたりということはたいへんなわけです。そういうことから、被害者にかわって公害と戦うというような意味で、これができているようでございます。民衆もそれをたいへん信頼し、また利用しているようでございますけれども日本の場合はいわゆる裁判という形で行なわれる。そうすれば当然時間と金がかかるわけで、そうした問題に対する司法的な救済といいますか、そうした問題がどのように行なわれているかをまずお伺いしたいと思います。これは法務省ですか、あるいは総理府ですか、厚生省ですか、いずれでしょうか。
  92. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 非常に多方面にわたりますので、現状を私のほうからお答え申し上げます。  公害が発生し、そして被害者が出た、この原因者が明らかであろうとなかろうと、被害者の救済制度というものは今日わが国にはございます。健康被害に関するものについては、すでに昨年の臨時国会で成立を見ました被害者救済制度というものによって、健康被害に対しての救助は行なっております。  また、先ほど島本委員の御質問にもお答えしたところでありますが、いわゆる生活保障あるいは休業補償に当たるような性格のものは、今日の時点では、むしろ紛争処理制度の運用によって、その話し合いの中から生まれてくる性格のものであるということから、法律として今日明定をしたものはございません。厚生省における生活保護あるいは世帯更正資金等を活用して、必要な場合には救済措置を講じておるわけであります。  また、現在、日本公害紛争処理制度が成立を見ておりません現状では、いわゆる民事訴訟法上の手続によって、訴訟という形でしか解決をされないということは御承知のとおりでありまして、そのためにも私どもは、この紛争処理制度が早く成立をいたすことを望んでおるわけでございます。その場合に、先般も一つ例がございましたが、原告側が訴訟費用にたえ得ない場合の救助措置というものは、現在民事訴訟法の中にも明定されておりまして、その適用を受けて訴訟に関する経費の免除を受けているというケースがございます。
  93. 多田時子

    ○多田委員 いまのお話にございましたが、いわゆる裁判費用等を免除をする、そういうシステムになっているのでしょうか。
  94. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 これは完全に所管違いのことでございまして、正確な事実を知りませんが、たしか民事訴訟法の規定によりまして、原告側から訴訟費用の免除の申請が出た場合、ただしこれは勝訴の見込みある場合ということが前提であったと思います。要するに、原告側の主張に正しいというある程度の認識を裁判所が持った時点から、その訴訟費用を免除する、こういう規定があるはずであります。
  95. 多田時子

    ○多田委員 この紛争処理法案、これ自体はいま問題になっております有名な四大公害にも適用されるものかどうかということ、そのままこの紛争処理法案をもって解決に乗り出していくという性質のものかどうか。
  96. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 これはむしろこの法案の中にも明記されておりますように、両者の合意によって申し出られて紛争処理に当たるわけでありますが、はたしてその関係者の方々が、この紛争処理制度が成立を見ました時点において、そこに問題を移すことを合意されるかどうか、これは私どもわかりません。  しかし、一つの例を申し上げますと、たとえば現在水俣市における有機水銀中毒の患者の件、これは話し合いによって補償問題を解決したいと考えられる方々と、あくまでも裁判によってこの問題を解決したいと考えられる方々、完全に、患者の会自体の中で御意見が二つに分かれております。そして訴訟によって問題の解決をはかろうと考えておられる方々は、熊本の地裁に訴訟手続をとられ、現に裁判が進行中でございますし、話し合いによって解決をしたいということを望まれました方々に対しましては、現在まだこの制度が成立をしておりませんので、便宜的な処置ではありますけれども、昨年、厚生省におきまして、完全な第三者の有識者、三名の方々に依頼をいたしまして、いわゆる仲裁委員会というものにお願いをいたしまして、公正な話し合いの上に立って補償の金額をきめていただくようにお願いをし、現にその作業が進行しておる最中であります。
  97. 多田時子

    ○多田委員 次に、運輸省関係になると思いますけれども、大気汚染の問題がいま盛んに論じられておりますし、人体に及ぼす影響が重大なので、関心も深いわけでありますが、特にハイオクタンにするために、一酸化炭素、亜硫酸ガス、炭化水素あるいは窒素酸化物、そういったものももちろんですが、特に猛毒だといわれております四エチル鉛、そういったものなどの規制とか、あるいは環境基準の計画だとか、そういうことがどのようになされているか、あるいは今後なされていかれるのか、運輸省の方にお伺いするようになると思いますが、その辺についてお願いいたします。  またこれが、こうした猛毒性のものを使わないで済むというような方法はないものかどうか、その辺もあわせてお願いしたいと思います。
  98. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 これは厚生省の所管する部分と、また自動車の排出ガス規制そのものについては他省の所管になりますので、環境基準という、私どもの所管する範囲内においてお答え申し上げたいと思います。  現在問題になっておりますのは、炭化水素あるいは窒素酸化物、鉛の酸化物、硫黄の酸化物、一酸化炭素、種々のものがあります。その中で、鉛の酸化物につきましては、すでに専門委員会が浮遊粉じんの一環として環境基準を設定すべく現に行動しつつあります。また、実はこまかい、自動車の排出ガスそのものについての規制については、後ほど関係省からお答えがあると存じますので、はぶかせていただきます。  炭化水素につきましては、いわゆる光学的なスモッグ、視界を妨げるようないわゆるスモッグでありますが、スモッグの一つ原因誘出ではないかということも考えられております。  窒素酸化物あるいはオキシダント等の物質の総合的な考慮のもとに、現在環境基準を設定していこうとして準備を進めておる最中であります。  ただ、このオキシダントというもの自体が、実は原因物質としてまだ現在の科学水準においては明定ができません。この検討も願っておるさなかであります。それで必ずしも、環境基準の設定が、こうした原因物質の追求等に時間をとられてすみやかに行なえない可能性もあるわけでございます。それについて、環境基準ができるできないにかかわらず、自動車の排出ガス自体についての規制を関係省庁にお願いをしております。ただ、これが原因が明らかになり次第環境基準を設定することはもちろん当然でありまして、その準備もまたいま進めておるさなかであります。  ただ窒素酸化物の場合は、必ずしも自動車ばかりではございません、工場排出物の中にも相当量あるわけであります。これは一酸化炭素等と違いまして、完全燃焼すれば発生しないという性格ではございません。いわゆる何かのものが高温によって燃焼されれば必ず付帯的に発生をする、こういう性格のものでありますだけに、現在の科学技術の水準においては、完全な工場等におきましても、完全な除去はきわめて困難であります。これで確実にできるという決定的な技術は、いまだ開発されておりません。むしろ今後、それこそ一九七〇年代の後半には、非常に大きな問題になる可能性のある、将来における一つの大切な問題点であります。環境と同時にその影響、それと同時に防止技術、この三つの観点から、引き続いて研究を行なってまいりたいと考えております。  また硫黄酸化物は、実は自動車の排出ガスの中には、ディーゼル車を除いてはほとんどございません。いわゆるプロパン車あるいはガソリン燃焼によってエンジンを作動しておる車は、実は硫黄酸化物というものを発生してないわけでありまして、ディーゼル車のみ自動車の中では排出の可能性を含んでおる。むしろ硫黄酸化物に関する限りは、完全にこれは工場から排出されるものがその原因の大半であります。すでに硫黄の酸化物に対する環境基準は設定されております。これは自動車の排出ガスとか、工場排出ガスということにかかわりなく、この環境基準にその状態を合わせるように現在対策を進めておるさなかであります。  また鉛の酸化物の汚染度につきましてはプロパン車が多い。すなわち、ガソリンのほかに、四エチル鉛の添加されてない燃料によって走っておるタクシー等が非常に多いわが国の現状としては、アメリカの各地における都市の状況等から比べると、ほとんどまだ影響は出ておらないといってもいいくらいのまだ低い濃度であります。しかし、これも完全に大きな課題一つでありまして、現在注意深く監視を続けながら研究にも手をつけておる次第でございます。将来これもやはり環境基準等の設置に踏み切らなければならない問題点の一つだと考えております。  他のこまかい細部にわたります自動車そのものについての問題点は、関係省庁からお答え願うようにいたします。
  99. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 通産省のサイドでは、自動車の生産という観点から自動車公害防除に大いに努力しておるわけでございますが、ただいま先生御指摘の鉛を含んだ燃料の点でございます。四エチル鉛を、ガソリンの中に入れてオクタン価を高めるという形で使用されておるわけでございます。そのために、一般の自動車に対する嗜好でございますが、やはり非常にオクタン価の高いガソリンで快的な走行状態を楽しみたいという一般的な嗜好に応じた業界側の対応策ということで出ておるわけでございますが、四エチル鉛が猛毒であるということは、もう一点疑いのない点でございますので、これにかわる何らかの物質でオクタン価を上げる方法はないかというのが世界的な問題でございまして、日本においてはもちろんのこと、世界各国で数百種にわたるいろいろな物質を調べまして、そういった効果を無害のもので達成しようという研究は、大いに行なわれておるわけでございますが、現在に至るまで、経済的にも、あるいは機能的にも、それにかわるべきものは発見されていないというのがその実態でございます。さらにこの問題は人の健康にかかわる非常に大きな問題でございますので、業界においても最大限の努力をいたして研究しております。通産省も工業技術院等で研究しておる最中であります。  それからただいま厚生政務次官が御説明申し上げましたように、いろいろ有害物質があるわけでございます。結論的に申しますと、現在のエンジン構造を基本的に改良しないことには、こういった有害物質を一挙に防除することはできないのではないかというような考え方もございます。あるいは一部の改良で相当程度防除できるのではないかという考え方もございます。現在、通産省の産業構造審議会の中に設けております自動車公害の小委員会におきまして、たとえば燃料電池の開発とか、そういったことを中心にいたしまして、基本的に有害物質を排出しないニンジンを開発する方向にも相当な重点を置きまして、各専門家を集めましていろいろ検討中でございますが、一挙に解決できるような単純な問題ではございませんものですから、基礎的には工業技術院におきましていろいろの具体的な研究も手がけておる最中でございます。そういった衆知を集めまして、自動車の排出物の無害化に関するエンジン構造というテーマを、これも最大限の努力をもって推進していきたいというのが現在の段階でございます。
  100. 多田時子

    ○多田委員 時間をかけて研究することも大事ですけれども、これは人体に影響のある重大な問題ですから、やはり迅速ということも大事なことではないかと思います。どんなにいい研究もやはりおくれをとってはならないので、この辺はほんとうに私ども立場としても一日も早くそうした研究がみごとに効を奏した結果を大いに期待したいと思います。  次に、いまもアメリカの話が出ましたけれども、アメリカと日本とでは、いろいろな点で条件がだいぶ違います。日本のように狭いところで、都市などはもうそれこそ密集している。アメリカあたりはそれこそ大陸でございますし、同じいわゆる排気ガスにしても何にしても、受ける被害というのは格段の相違があって、むしろ日本の場合のほうが危険度は高いというふうに言われると思います。そういう意味からいわゆる産業界等がそういう問題に対して真剣に考える、防止対策を一生懸命やろうと、こういうふうな姿勢になるべく——産業界に対する政府の姿勢といいますか、行政指導といいますか、そういう点について今後どういうふうに指導なさっていくか、その点について伺いたいと思います。
  101. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 先ほどの答弁の中で触れました、産業構造審議会の中に設けられました自動車公害防止の小委員会、これは民間のメーカーはもちろんのこと、燃料の精製業者、学識経験者、現在関係いたします各方面の権威者を集めまして、公害問題の深刻性とそれに対する対策、またその対策樹立の緊急性ということをテーマにいたしまして、現在鋭意努力しておるわけでございます。この場を通じまして業界に対する圧力といいますか、指導といいますか、そういった点は相当程度浸透するようにわれわれは期待しております。  さらに、自動車関係では業界の中に業界団体がございまして、通称全自連といっておりますが、この業界団体の中にも、公害問題を特別に取り上げますグループができております。常に通産省はこのグループと連絡をとりながら、問題の重要性を強調しつつ、問題の解決の方向を促進させたいというぐあいに考えまして指導しておるところでございます。
  102. 多田時子

    ○多田委員 次の問題なんですが、公害防止につとめなければならないということはこれは積極的であろうと、消極的であろうと皆さんが納得もし、また考えていることだと思うのですけれども、そういう公害防止のあらゆる施設あるいは早期に必要な費用という問題は、どうやってきめることが一番妥当なのか、あるいはまただれがどの程度支払うべきなのか、こういう問題も、公害問題はたいへん複雑でございますから、考えてみますとこの原因をつくり出していくのは一体だれなんだろうか、こんなふうにも考えられるわけでございますが、その辺に対しての見解を伺いたいと思います。
  103. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 もともと、それこそ産業の発展がなければ公害というものは起こらなかったわけでございます。そういう意味では、現在すでに施行されておる被害者救済制度におきましても——企業にはこれは無作為の公害というものがあるわけでございます。半分の費用は、実は産業界に拠出させておるわけでございます。国もむろん出しております。被害者救済制度の中に必要な資金の半分は、すでに産業界自体が出しております。  いま御指摘になりました問題点そのものは、いわゆる基本法二十二条の点に基づいて行なうべき、いわゆる公害防止計画の中の費用負担についてのお話であろうと解釈いたします。  これはいま厚生省としても、学識経験者七名からなる公害防止費用の研究会というものを設け、一体どういうものを、どういう量を、どうした方々にお持ち願えれば最も妥当であるか、検討願っておるさなかであります。現段階のいままでの状況を申し上げますと、昨年の十二月に発足いたしましてから現在まで五回開催いたし、公害防止計画の意義、盛り込まるべき事業、またその効果、現行の費用負担制度等の概要について、関係の都道府県あるいは関係の市町村の担当者から意見を聴取し、検討も行なっておるところであります。できるだけ早い機会にこの結論が得られることを、私どもとしても期待をしておるところであります。その一応の成果をもとにしまして、関係方面と協議をし、所要の措置をいたすつもりであります。  なお、現在ちょうど七人の委員会が四日市、大阪、水島等、すでに大きな公害問題の起こっております地域の現地を視察し、あわせて関係者の意見を聴取している最中であります。
  104. 多田時子

    ○多田委員 次の問題に移りますけれども、いまの固型廃棄物という問題、先ほども話が出ておりましたけれども、それがたいへん問題になっております。家庭のごみも、産業から排出するごみも、ごみ処理の問題が先ほど話に出ておりましたけれども、いわゆる耐久消費材、私どもの家庭でも使っております電気製品などもその一つだと思いますが、ああいう電気製品なども、ある一定の時期を越しますと不要になってくるというようなことで、古い冷蔵庫などがあき地にほうり出されておりまして、長いことそこを子供がいい遊び場にしまして、中でお子さんがなくなった例も何回かございます。そういう問題、また御近所なんかからも、大型ごみの処理をしてもらいたいという苦情もよく聞いているところでございますけれども、こうしたものの処理がいわゆる民間の企業で行なわれていくものなのか、あるいは国営で行なっていくものなのか、あるいは地方自治体という立場でやっていくものなのか。アメリカなどにはこうしたサービス機関などというものがあるようでございますけれども、そういう点についての今後の行政について伺いたいと思います。
  105. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 都市の廃棄物であれ、あるいは産業廃棄物であれ、ごみという観点からいえばこれは同じものであります。現在私どもは、清掃法の規定に基づいて市町村の責任においてこれを実施する、あるいはその市町村長の命令によって、これは産業廃棄物であれ、都市廃棄物であれ、特に多量である、特殊なものであるというようなケースで、現行の市町村の清掃法に基づく受け入れ体制ではごみ処理の不能のようなものについては、その経営者等が市町村長の命令によって処分をいたすようにしているわけであります。ただ御指摘のとおり、最近非常に経済の成長が進むにつれまして、そういう意味では廃棄物の種類、内容、またその量等にも非常に多様化、増加の傾向も見受けます。処理施設の能力が、現状不十分な点が多々あることは、私どもとしてもよく存じておるわけであります。処分地の確保が非常に困難であるというようなケースも多々あります。あるいは処理施設をその市町村としては設置したいにもかかわらず、用地の提供が行なわれないために施設を設置することができないようなケースも、実は現実の問題としては多々出ておるわけであります。そういう場合十分な処理が行なわれないで、放棄されがちな傾向もまたあるわけであります。もうこれは都市廃棄物であれ、産業廃棄物であれ、その意味では同じことでありまして、私どもは現在清掃法の規定に基づいてその運用で措置をしていくことをたてまえとし、また法律自体は十分その運用にたえ得るようにつくられております。処理施設の能力の点またその処理技術の開発の点に、問題が必ずしも解決をしたとは申せない現状であります。こうした点についてはなお私どもとして十分な努力をしなければならぬ点がございます。これは現在の清掃法のたてまえに基づいて、公共団体としての責任において処理をしてまいるつもりであります。  なお、この機会につけ加えて申し上げますと、いわゆる都市廃棄物、大型化した、いま例としてあげられました電気洗たく機でありますとか、最近ではがたがたに使い古した自動車を道ばたに捨てていく方さえある世の中になりまして、きわめて処理のしにくいものがあることは御承知のとおりであります。また、産業廃棄物等については、相当特殊な処理を必要とするものもあるように思います。こうしたものについてどういうふうに処理していくか、どのような体制をとっていくかについては、現在すでに生活環境審議会に諮問をいたしておりまして、できる限り早い機会に答申を願いたいという要請もしばしば繰り返しております。審議会としても非常に真剣な検討を加えていただいているさなかでございまして、この答申がどのような方向を明示するにせよ、私どもはその目ざす方向に従って、十分な処理体制の拡充に全力をあげてまいるつもりであります。
  106. 島本虎三

    島本委員 関連して。ただいまなかなか私どもが聞いて聞けないようないい御答弁があったわけであります。それにいたしましても、経済企画庁の副長官がいまそこにいらっしゃいますけれども、やはり女性という立場でいまの問題は共通の処理をしなければならない問題ではないか、こういうように思っているわけです。いわゆるこの際に一言なかるべからずというのがやはり次官の立場じゃないかと思います。  ことに、それとあわせて、いまこの公害紛争の中で一番哀れをとどめているのは、四大紛争の中のまずイタイイタイ病、あれはほとんどかかるのは女性であります。男性がかかった例は三名だけであります。これはカルシウム分の不足した男性だけでありましたから、ほとんど全部が女性である。あのイタイイタイ病のためにいまでも悩んでおりますけれども、このための紛争処理ということは、事かかって重要なんです。女性としてもこの問題は放置できない。いまも申されましたように費用はだいぶよけいかかっておりますけれども、全部で六億八千万ほどの損害賠償です。三井神岡鉱山では、半期の純利潤が七億であります。それを見ます場合には、やはりどうにもできないような女性の立場に立って、この裁判の促進というのはほんとうに大事な問題じゃないか、こういうように思うわけです。廃棄物は廃棄物として処理する。この重大な問題を同じ女性の立場に立って——裁判の促進というようなことは、これはもうあなたが先頭に立ってやらざるを得ないような状態ではないかと思います。ことに、この純利潤をあげている三井神岡鉱山の問題からしても、これはやってもつぶれるような状態ではございません。早くこの問題の解決を私ども望んでやまないわけであります。これにつきましてあなたの決意をひとっここに御披瀝願いたいということで、私自身ちょっと発言させてもらったわけであります。
  107. 山口シヅエ

    ○山口(シ)政府委員 ただいまの先生の御熱心な御意向、そのとおりだと存じます。特に女性の肉体をむしばむということは、出産するという理由がやはりカルシウム分を非常に不足させる。そこで、最も弱い立場の女性の肉体をむしばむ率が多いということも、先生の御意向のとおりでございます。そこで、ただいま裁判の促進中でございまして、このことについて私ははっきりしたお答えは申し上げられませんが、先生の御意向どおりに私の立場なりに努力をしなければならないと同時に、させていただきたいというお答えをもって答弁にさせていただきたいと存じております。
  108. 島本虎三

    島本委員 もう一点だけ。事まことに簡単です。それは川や海の汚濁、こういうものと一緒に、今後は騒音、振動、悪臭、こういうもので悩むのもやはり家庭内その他で女性が多うございます。ですから、この解決のためにも、環境基準は早くつくらなければならない。技術的にもこれはまだまだおくれています。そばにいる橋本政務次官と手を携えて早くこの環境基準をつくる。悪臭はむずかしい、振動はむずかしい、騒音にいたってはまだできない、こういうようなことがいわれているのです。やらないからできないのです。これはやはりあなたも女性的な立場考えて、ぜひやらせるようにしてほしい、この努力をこいねがってやみません。
  109. 山口シヅエ

    ○山口(シ)政府委員 それでは先生の御質問にお答えいたします。  水に関するものは、今月中に閣議で決定するそうでございます。それから、その他公害問題に対する御意見、やはり私も同感でございまして、実は最もその中でむずかしい問題は悪臭の問題だろうと思います。実は私の地元でも、その問題が十何年前からの問題としていまだ解決がつかない。においの問題というのが公害の中では非常にむずかしい問題であるということも、私は体験いたしております。しかし、やはりその問題も御意向どおり、言うならば先生の御意思に沿うように努力をいたしたいと考えております。
  110. 島本虎三

    島本委員 切望いたします。
  111. 山口シヅエ

    ○山口(シ)政府委員 貴重な御意見ありがとうございました。
  112. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 ちょっと私から……。非常に美しい企画庁政務次官と手を携えるということは非常にうれしいことでございます。(笑声)ただ、ただいま島本委員が企画庁政務次官に御要請になりました点で、におい、また振動、これらのものについては、公害基本法の中におきましても実は環境基準の設定の対象とされておりませんので、その点のみ申し添えさせていただきます。
  113. 多田時子

    ○多田委員 先ほどの問題に移りまして、いまのごみ処理の問題は、これからますます重大問題として私たちの身辺に迫ってくる問題だと思いますが、アメリカの例ばかりでたいへんあれなんですけれども、フュージョン・トーチという方式がいま検討されておりまして、全部原子力を使ってごみを元素にまで還元してしまうというような、これはまだ討論の最中の段階でございますけれども、むしろ日本のような場合こそ、こうした未来に対する一つのごみ処理の問題に対しても、計画とか討議とかがなされていってしかるべきではないかと思いますが、これは科学技術庁の方がお見えくださっていると思いますので、今後そうした問題が考えられるかどうか。あくまでも海中投棄あるいは地中埋設みたいな形でごみ処理をしていくものかどうか、あるいはまたこうした科学的ないき方をもってごみ処理をしていくということが考えられるかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  114. 鈴木春夫

    ○鈴木(春)政府委員 原子力でごみの処理をするというそういった研究につきましては、寡聞にしてまだ十分聞いておりませんが、こういった基礎的な研究ももちろん必要だと思います。現在わが国でその関係の研究が行なわれているかどうかということは、まだ存じておりません。科学技術庁でこのごみの廃棄物関係につきましては、科学技術庁に付置されております資源調査会というのがございまして、そこでこの廃棄物の処理、これについてはいろいろ検討をした報告も出ております。四十四年に、廃棄物の回収事業、処理体系に関する調査ということで、こういった廃棄物を処理する場合に利用面も考える、資源利用も考える、そういった考え方を入れて、この廃棄物を今後どういうふうに処理していったらいいかというような考え方をここで御答弁したことがございます。なおこれの実際的な具体的な内容については、まだ検討を進めている段階でございます。  なお、資源の利用という観点で、最近出てきております廃棄物の中で、高分子プラスチック、こういったものが今後たいへん問題になるというような関係もございますので、廃棄物、主として生活糸のごみ、こういったものを燃しておるわけでございますが、それに産業系のごみ、こういったものも含めて固定化する、固定化したものを埋め立てに使うとか、あるいは道路の路盤に使う、そういうことで経済的に使える道がないかというような調査もさせております。その他いま申し上げました高分子系のごみ、こういったものが炉の中で燃え尽きるときにいろいろなガスが出たり高熱が出たりして、非常に炉がいたむわけでございます。そういった関係のものも調査しております。  なお、廃棄物を処理する場合には、いままでのように行き当たりばったりではいかぬ。非常に大量のごみが出てくる。これを処理するにはどうしても体系的に処理していかなければならぬ。それにはごみの出方、実態、そういったものをまずつかんで、それをどういうふうに体系化していかなければならぬか。その中にそれを処理するのにどういう技術的な問題があるかということも調査しております。この場合は主として大阪の場合を例にとりまして、大学その他でそういった検討もして、結論が出ますれば各関係のところへお願いをしてその具体化をはかる、あるいは科学技術庁でできることは進めていく、こういうようなことで、実際面に即してこの廃棄物の問題はいろいろ検討さしていただきたいと思います。
  115. 多田時子

    ○多田委員 最後の問題ですけれども、いまの問題と同じように、発電所の問題が最近問題になっております。結局、発電所がそばにできれば、その地元の住民は当然大気汚染とか、あるいは水質汚濁というような問題で反対する。私たちが住んでいてもそうするだろうと思うわけでございますけれども、そういう国民公害に対する意識も高まっておりますし、そうした点で当然反対の声が起こる。そうなった場合、いわゆる住民の感情を納得させていくということも大事ではないかと思います。発電所はどうしたってつくらなければならない問題ですけれども自分の近くにつくってもらっては困るというのが偽らない気持ちだと思います。そういう状態の中で、国民の感情、住民の感情を納得させていくという問題で、過去においてそうしたいい事例がありましたら、その例も取り上げていただいて、どう解決されたか、そうした問題で伺いたいと思います。
  116. 橋本徳男

    橋本(龍)政府委員 これは、私どもと通産省と、それこそ手を相携えて努力をしておる問題でありまして、火力発電所ばかりではなくて、あるいは製鉄産業、あるいは石油精製工場でありますとか、製紙工場でありますとか、新増設の場合、往往にして付近の居住者の方々と同様のトラブルを起こすケースが、今日までございます。しかし、これは悪いほうの例を申し上げますと、東京電力が富士市の周辺に発電所を設けようといたしましたら、非常な騒ぎになって、結局計画がどういうふうになったかわからなくなったケースがあります。これも発電所そのものに対する不安というよりも、既存の企業公害防止措置に不熱心で、その地域としては許容し得る限界ぎりぎりまでの公害、あるいはそれを越えるような公害がすでに発生をして、そこに新たな公害発生の要因になり得るものが来るということに不安を持たれたということ、あるいは新設、増設される企業公害の防除に対しての姿勢が、十分とは言いにくい状態であったと記憶しております。往々にしてそのようなケースが今日までも多く出てきたわけであります。現在では、すでにこうした大規模な公害発生の要因となり得る企業の新設に際しましては、通産省厚生省両省で、地元の協力を得ながら、事前の科学的な調査研究というものを非常に十分に行なっております。そうしてこれらの実験、調査、研究の結果というものを、その地域住民の方々に、でき得る限り納得をいただける程度にまで御説明を繰り返し申し上げて、地方公共団体そのものについて、またその地域の住民の方々についても御了解を得られるように、その努力を積み重ねておる次第であります。  たとえば、いま御指摘になりました火力発電所というものを一つ例にとってみますと、将来計画、すなわち第一期の建設ばかりではなくて、将来の増設の範囲までその考慮の対象に入れながら、必要と見られる可能な限り最大限の公害防止対策というものを、最初から措置させておく。それと同時に、それを地方公共団体に対してデータとして提供し、そのデータを駆使して十分な御説明を申し上げ、同意を得るようにつとめている次第であります。この結果に対しても、住民の正しい御理解がいただけるように鋭意努力をいたしておる次第であります。  いまそういうケースでうまくいった例があればというお話でございますが、一つ具体例を申し上げさせていただきますと、茨城県の鹿島地区におきまして、大規模な工業地帯が建設されておるわけであります。茨城県自体、工場用地の買い入れにあたって、地域住民が安定をした生活が続けられるようにということで、各種の施策を県自体としても講ぜられると同時に、企業に対して工場用地を売り渡す場合、公害を発生させないということを条件づけておるわけであります。そのために各種の科学的な調査を各企業としても事前に十分行なわれておるようであります。また通産省、厚生省ともに事前の科学的調査を十分に実施して、その結果に基づいてむしろ工場の立地場所、施設の規模、こういったものについて、いま十分な公害防止措置をとらせておりますし、また大気汚染防止法による予防的な地域の指定も実施しております。そのためそうしたことを一般の住民の方々に御説明をし、御了解を得るように努力いたしました結果、今日では非常に円満に開発が進められております。
  117. 多田時子

    ○多田委員 時間がありませんので、最後に、きょう経済企画庁の岩田国民生活課長さんですか、おいでをいただいておりますけれども、岩田さんがお書きくださって、「GNP時代は終わった」という、いわゆる国際シンポジウムの中を通しての御感想だと思いますが、一文を載せていらっしゃいますが、最後のところで、「七〇年代を迎えて、GNPが経済政策の目標であった時代は終わりをつげ、新しい価値に基づいた福祉指標が経済政策の目標となる時代が幕をひらこうとしているという事実である。」私どもたいへん同感でございます。この問題に対してここまでお書きくだすったのですから、その趣旨、あるいは御真意というようなものについて、お述べいただければと思いますので、お願いいたします。
  118. 岩田幸基

    ○岩田説明員 お答えいたします。  いま御指摘いただきました国民生活福祉指標と申しますのは、実は十年くらい前に、国連のユネスコとかWHOの共同作業でつくられたものであります。その後最近では、OECDの環境問題の特別委員会でもそういう指標をつくろうということになりまして、日本では国民生活研究所であるとか、われわれ経済企画庁でも試算をしたものがございます。そういうように技術的にはかなり進んでいるわけでございますが、公害シンポジウムでも指摘をされましたように、GNPが国民の福祉水準をずばりあらわすかどうかということになりますと、公害というような、自然資源あるいは社会資本減耗の問題がございますし、特にこれからは国民生活の中でも余暇時間が増大するというような時代で、精神的な豊かさを求めるような動きがございます。そういった意味で、これからの経済政策の中で、GNPだけではなくて、福祉水準をあらわすような目標指数、あるいは目標の考え方というものをつくっていかなければならないのではないかという趣旨でございまして、決してGNPというものが、全面的に経済政策の目標にならないというわけではございません。
  119. 多田時子

    ○多田委員 いまのお話なんですが、確かにいわゆる経済目標とはならないということではなくして、そうした一つの大きな方向に向かってGNP自体が検討されなければならない時代に移り変わった、こういうふうに私考えたいわけですが、その辺、いかがでございましょうか。
  120. 岩田幸基

    ○岩田説明員 個人的にはそうだと思っております。
  121. 多田時子

    ○多田委員 そうした問題について、最後に一言、山口政務次官にお聞きしたいと思います。
  122. 山口シヅエ

    ○山口(シ)政府委員 実は、御質問が私のほうにくるんじゃないかと思って、さっきからしんぼう強く待っていたのですけれども、ようやく……。その間社会党島本先生がたいへん御親切にかばってくださって、ほんとうにありがとうございました。  私も先生の仰せのとおりだと思います。しかし、このGNPの基本的な性格というものは、御承知のようにやはり経済活動の規模をあらわすものでございますから、これを国民生活水準を把握するための指標として問題にすることはできたいと私は考えております。しかし、過去においては、非常に貧しかったり不便の多い国においては、これがその国の国民生活の水準を一応あらわすような時代もあったと思いますけれども、これからはやはり先生の仰せのような考え方で、私たちも前向きに考えていかなければならないと考えておりますけれども、何せこの公害の問題に基づくところの社会的な費用というものを計算することが、非常にむずかしいのではないかと思います。そこでこれから大いに、先ほども関係政府委員からの答弁にもございましたように、世界的にもこれらの問題が検討の途上にございますけれども、多くの内外の学者専門家の研究が、一そう進んで成果をあげましたときに、実際の統計作成が行なわれて、これが十分に利用できるようなものであるならば、先生の理想とするものが答えとして出てくるのではないかと考えております。御意向の上では私も個人的に同感でございます。
  123. 多田時子

    ○多田委員 残念でございますけれども、もう一つだけ……。  そのGNPの価値といいますか、そうしたものは、いまはやはり累積的に国民総生産高は第二位だというふうになっておりますが、公害問題がこう激しく問われてまいりますと、そうした公害問題など、あるいはそういういろいろ差し引かなければならないものが国民総生産高の中にあるのではないか。それを一方で割愛したものが真の値打ちのあるGNPになるのではないか、こんなふうに考えられますけれども、その点政務次官いかがでございましょうか。
  124. 山口シヅエ

    ○山口(シ)政府委員 そのとおりだろうと私は存じます。理論の上では先生のおっしゃるとおりだとは存じますけれども、現在減価償却の上で、火災だとか、そういう自然災害の場合には、消耗は国民総生産から差し引いておりますけれども、その中でも一部公害に基づく損失も加わっているかもしれませんが、これははっきりとしたものではございません。そして人命だとか、健康等の人的な損害に対しましては、交通事故だとか、あるいは例を申し上げてみれば鉱山病だとか、こういうものは、計算がつくものもございますけれども、総体的になかなかその量を推計することは困難じゃないかと私は考えます。そこで、やはり計算でき得るような基本的なものが研究されなければ、理論的にはそうですけれども、実際的には実行することは困難であろう、こう考えております。
  125. 多田時子

    ○多田委員 質問を終わりますけれども、確かにGNP自体が国民の福祉というものとマッチする、なるほどと、あらゆる点から納得のできる国民総生産高第二位になるようにあらゆる点で指向していかなければならないし、そうした社会の実現のために大いに研究も重ね、また施策も施していただきたいというふうに考えます。  以上で質問を終わります。
  126. 加藤清二

    加藤委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十五分散会