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1970-04-13 第63回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十三日(月曜日)     午後一時四十三分開議  出席委員    委員長 受田 新吉君    理事 加藤 六月君 理事 木部 佳昭君    理事 小峯 柳多君 理事 河野 洋平君    理事 丹羽 久章君 理事 後藤 俊男君    理事 田中 昭二君 理事 河村  勝君      稻村左近四郎君   小此木彦三郎君       小沢 一郎君    唐沢俊二郎君       左藤  恵君    渡部 恒三君       久保 三郎君    高田 富之君       長谷部七郎君    横路 孝弘君       宮井 泰良君    土橋 一吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    平川 幸藏君         警察庁交通局長 久保 卓也君     ————————————— 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   佐藤 守良君     渡部 恒三君   斉藤滋与史君     小沢 一郎君   松本 忠助君     宮井 泰良君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     斉藤滋与史君   渡部 恒三君     佐藤 守良君   宮井 泰良君     松本 忠助君     ————————————— 本日の会議に付した案件  交通安全対策基本法案内閣提出第八八号)  交通安全基本法案久保三郎君外四名提出、衆  法第一〇号)      ————◇—————
  2. 受田新吉

    受田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる交通安全対策基本法案及び久保三郎君外四名提出にかかる交通安全基本法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  ほかに質疑の通告もありませんので、両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  3. 受田新吉

    受田委員長 これより内閣提出にかかる交通安全対策基本法案及び久保三郎君外四名提出にかかる交通安全基本法案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。横路孝弘君。
  4. 横路孝弘

    横路委員 私は、日本社会党を代表して、日本社会党提出交通安全基本法案賛成し、政府提出交通安全対策基本法案に反対の討論をいたしたいと思います。  すでに昭和四十四年八月二日、第六十一国会におきまして、わが党の板川委員から詳細にこの両案についての討論がされておりますけれども、さらに日本社会党政府案に反対する立場というものを明確にいたしたいと思います。  昨年の自動車交通事故は、件数が七十一万七千六百二十一件、死者は一万六千二百五十八人、負傷者の数は九十五万一千五百四十二人と、一昨年に比較してそれぞれ一三%、一四%、一五%の増加となっており、ことしもすでに昨年の数字を上回る交通事故全国各地で発生しているのであります。このままの状態が推移いたしますと、増加率を一〇%に抑制し得たとしても、一九七〇年代における交通事故による死者の累計は二十八万七千人、負傷者は実に千七百六十五万人にもなり、国民六人に一人はこの十年間に交通事故犠牲者になるという驚くべき結果が発生するのであります。  こうして今日もまた全国各地で数多くの悲劇が生まれています。働き手を失って路頭に迷っている家族やあるいは交通遺児、またむち打ち症になって闘病生活を送っている何十万という人々、あるいは賠償金が支払うことができずに一家無理心中をしてしまったような加害者、こういうような、事故に出会った本人ばかりではなくて、家族を含めた悲しい事件が毎日毎日の新聞に報道されているのであります。  交通事故は、車と道路運転者という三者の連関関係の中にその原因があるということがいわれています。もちろん自動車事故運転者の不注意によって惹起されます。しかし、不注意ということばは事故に対する煙幕のようなもので、その背後にあるほんとうの原因を隠してしまうということにもなりかねないのであります。一つ事故が起こるためには三十の背景があり、さらにその背後には三百の要素があるということがいわれております。政府の従来の対策は、どちらかというと人間注意力を高めることに訴えて、処罰を強化する、あるいは安全教育、あるいは安全運転思想の普及という精神運動にその重点があり、真の原因を把握してその対策というものが講ぜられていないのが現状じゃないでしょうか。  事故原因の一番大きな要素は、やはり政府人命軽視経済第一主義政策にあることは明白であります。無計画自動車産業育成政策と、経済投資効果のみを考えた道路政策が相まって、交通事故件数増加せしめているのであります。そのことは、日本における交通事故の大きな特徴が、死亡事故中、歩行者自転車乗用者死亡事故が多く、昨年をとりましても全死亡者の四七・四%も占めていることからも明らかであります。いずれの国においても、自動車台数増加自動車相互事故あるいは単独事故構成率増加させているのに、日本の場合そうでないのは、政府幹線道路高速自動車道には膨大な国家資金を投入しながら、他面、歩道整備を怠り、その現状を放置してきたからであります。第二次の交通安全施設等整備事業計画の中で指定された道路中、いまだ歩道設置率が二九%にすぎないことは、このことを明確に物語っておりますし、十兆三千五百億円を投資する道路五カ年計画も、その中で必ずしも歩車道分離の考え方がとられておらず、またバイパスなどの高速車道においてその大部分が二車線となっていること、あるいは道路の防災、安全確保という点から見ても、一般国道でいまだ千三百二十六カ所の危険個所があり、地方公共団体の管理する道路については、数千カ所も危険個所がありながら放置されたままになっている。これらの対策を抜きにして道路整備計画を遂行しようとするのは、まさに道路行政の中に人命尊重のかけらもないといっても言い過ぎではないのであります。  このことは、現在の政府が、口では人間尊重政治を唱えながら、実際には人間不在経済第一主義政治を行なっている事実を雄弁に物語っているといわなければならないのであります。  いまや交通事故対策は、安全施設に対する徹底した投資と、事故対策を強力に統合運営する行政機構確立という二つの点しか考えられないのであります。  今回の交通安全に関する二つ基本法について、私たち社会党案政府案との主たる相違点は、細部は別にいたしまして、このいかにして強力に統合運営する行政機構確立するかという点にあるわけであります。経済成長の中で行政需要が変化し拡大すると同時に、行政相互間の錯綜する分野というものが非常に多くなってきて、各分野行政一元化の問題というのが提起されております。  先日の大阪におけるガス爆発事故においても、各行政庁がそれぞれの面から監督はしながら、なおかつ人命尊重施設の安全という観点から見ると、そこにやはり行政空白状態があり、それが事故一つの重大な要素として指摘されていることは、政府もまた、この問題に関して行政一元化方向で問題を提起していることからも明らかであります。  交通事故対策は、まさにこのような行政の錯綜する最も著しい分野といわなければならないのであります。  交通安全行政が、外務省を除くほとんどすべての省庁にまたがり、各省ばらばら統一性がなく、常になわ張り争いと責任の転嫁が行なわれていることは、国民の一番大きな不満となっているのであります。たとえば道路を建設する際には、あらかじめ建設省と警察庁との連絡が、たとえば高速道路におけるインターチェンジの問題一つをとっても重大であるにもかかわらず、それが行なわれていない現実は、さきの道路五カ年計画の際の両省の争いを見ても明らかであります。  事故による負傷者の救助という点を見ても、消防庁、警察庁、そして厚生省の一本化された行政不在が、たらい回しとなってあらわれ、多くの国民の非難を浴びているところを見てもまた明らかであります。現在、一体この交通事故防止をみずからの機関最高責務と心得ている行政機関がどこにあるでしょうか、全然ないのが実情であります。この際、多元的な行政統一し、その一元化をはかり、強力に統合運営する機構、将来的には交通省の設置という方向での行政機構確立こそ現在最も必要不可欠な問題といわなければなりません。しかるに政府案は、依然として多元的行政を続けようとするものでありまして、国民の要望に全くこたえていないのであります。私は、少なくとも社会党案のように、行政委員会をもって事故防止のための統一的機能確立しなければならないというように考えるわけであります。政府案は、中央総理大臣会長として関係省庁閣僚委員とする中央交通安全対策会議を置き、地方には、都道府県に知事を会長とし関係省庁出先機関の長を委員とする都道府県交通安全対策会議を置き、市町村にはそれに準ずる市町村交通安全対策会議を置くことができると規定してあり、それによって国の施策の統一がはかられるというようにされておりますが、しかし、現在でもすでに中央には交通関係閣僚会議があり、さらに交通対策本部設置されておりますし、地方には都道府県交通対策協議会あるいは市町村交通対策協議会と、従来もこの政府案とメンバー、機能がほとんど同一の会議があり、それによって交通安全の確保が現在までできていないのに、ただ単に基本法に基づく会議にしたからといって、効果があがるということはあり得ないのであります。この点、政府案には従来の政府政策に対する基本的な総括というものが何もなされていないということも、また指摘しなければいけないと思うのであります。  交通事故から人命を守るということは、いま政治に課せられた一番重大な問題だと思います。政府案には、その一番大切なそのための行政機構確立の点で、そのきびしさに取り組む姿勢というのが全くないと言っても言い過ぎではないと思います。政府案が可決され本法が制定されたとしても、その実効は期待できないと思います。本法があっても、ないよりましではないかという意味で本法案賛成するならば、私は政治家としての責務を放棄することになると思うのであります。  私たちは、一日も早く交通事故を絶滅し、国民の生命と身体と財産を守らなければならない。その観点におきまして、私たち政府案に対して反対し、社会党案賛成するものであります。(拍手)
  5. 受田新吉

    受田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、内閣提出にかかる交通安全対策基本法案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  6. 受田新吉

    受田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、おはかりいたします。ただいま内閣提出にかかる交通安全対策基本法案を可決すべきものとした結果、久保三郎君外四名提出にかかる交通安全基本法案については、議決を要しないものと決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  7. 受田新吉

    受田委員長 起立多数。よって、本案議決を要しないものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 受田新吉

    受田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  9. 受田新吉

    受田委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十五分散会