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久保政府委員
交通警察の来
年度における
対策といたしましては、詳細かつ具体的には、またこの委員会で御質問に応じまして申し上げる
機会が多かろうと思いますので、本日は、
基本的な姿勢あるいは
考え方といったようなものについて申し上げてみたいと思います。
まず、
交通警察の長期的な目標をどこに置くかということでありますが、御
承知のように、昨年の
交通事故による
死亡者が、一昨年に比べまして一四%
伸びております。本年に入りましても、もう一〇%の
伸びであります。こういった一〇%をこえる
交通事故の
死亡者の
伸びということは非常に異常なことでありまして、私どもは何とかこれを五%以内に押えたいということを
考えております。
もう一点は、
歩行者の
事故及び自転車の
事故が非常に多いのでありまして、
歩行者及び
自転車事故による
死亡者の
割合が、総体の中で、過去数年常に四七、八%、つまり、全体の半分近くを占めておるわけであります。これを何とか大幅に削減をしたい。
それを
考えました根拠は、
アメリカの実例でもって、一九三六、七年ごろから一九五七、八年ごろまでの間、約二十年間に
歩行者事故が実数で半減いたしております。
アメリカで二十年かかったことでありますが、私どもは何とか目標としては十年間でこれを半減する
努力をしてみたいと
考えるわけであります。荒唐無稽な
数字かと思いましたが、資料によりますると、昨年の春に、
アメリカの
運輸省は審議会に、一九八〇年を目標にして、
歩行者事故を半減するためにはどうすればよろしいかという諮問をしたという記事がありました。その後の結果は存じておりませんけれども、やはり
アメリカでも、私はいま一九五六、七年ごろまでに半減をしたと申しましたが、その後累増をいたしております。そういった背景をもちまして、再び半減のための諮問をしたのであろうと
考えますが、
アメリカでも、一九八〇年までの
歩行者事故の半減ということは相当の
事業であるという評価がされております。私どもも、何とかそういう目標を立てて
推進してまいりたいと
考えるわけであります。しかしながら、当然これは
交通警察だけでやれることではありませんで、
政府、
地方公共団体あるいは
国民全体がこぞってそういう
努力をしなければなるまいと
考えます。
そこで、
交通対策の
基本は、やはり
歩行者なり
運転者なりの
交通のモラルの高揚、あるいは、
国民のそういった
交通道徳の高揚が
基本であろうと
考えまするけれども、それはそれなりの
努力を私どももいたしまするが、やはり国及び
地方公共団体は相当多額の投資をしなければならないというふうに
考えるわけであります。そこそこの金をつぎ込んで相当画期的な成果を得ようということは、やはり絵にかいたもちのようなものであります。
アメリカのニューヨークの
交通局長でバーンズという人がおりました。二、三年前に死にましたが、
日本にも来たようであります。この人は
交通対策の名手で、いろんな市の
交通局長に転々とスカウトされて回って、結局、ニューヨークに参ったようであります。ニューヨークに参りましたときにも、この人はスカウトされるときに条件をつけるわけであります。その
一つは権限の集中であります。その人の意図がすぐに訓令の形となってあらわれるという、そういった権限の集中、もう
一つは、必要な
予算をもらうということ、これを条件につけておったそうでありまして、ニューヨーク市に参った年の翌年には、
交通関係の
予算を八倍にしたというふうに座談会で述べておるのを読んだことがありますが、そういったふうに、権限の問題は、わが国の場合、いろいろむずかしい問題がありますけれども、少なくとも
予算というものを大幅にふやしてまいらねばならないということを
考えるわけであります。
そこで私どもも、
昭和五十年を一応の目標にいたしまして、ただいまあげました
事故の増勢を押えていくということ、それから
歩行者事故を大幅に削減するということ、そういうような方向で長期
計画を立案してまいりたいというふうに
考えるわけでありますが、その一環として四十五
年度は進んでまいるわけであります。
そこで、四十五
年度に限って申し上げると、
一つには、現在進行しておりまする
交通安全施設整備計画の第二
年度を
実施するわけであります。これは約百億ぐらいでありますが、私どもはいまの安全
計画を十分と
考えておるわけではありませんで、むしろ非常に不備である、現在進行中ではありまするけれども、非常に不備である、そこで、この
昭和五十年までの長期
計画の中では大幅に改定をしてまいりたいというふうに
考えるわけであります。私どもにはわりと貧乏根性的な面がありまして、与えられた
予算で仕事をやるというきらいがないでもない。もう少し画期的な
予算をとって、安全
施設を大幅にふやしていくという
決意が
政府も
地方公共団体もなければなるまいというふうに
考えるわけで、この改定
計画、拡大
計画について現在検討しているところであります。
それから、もう一点御認識をいただきたいのは、現在
交通情報センターとして逐次
整備されているものがあります。いまの段階では、たとえば来
年度予算の中にも府県で三つの
交通情報センターというのが入っておりますが、従来の観念は、信号機に
交通量を測定する機械を備えつけまして、それを県本部のセンターに集めて
交通量を測定する、そこで渋滞度をそれぞれ周知させて、間接的に
交通量をコントロールするということで、文字どおり
情報センターでありましたが、当然、電子計算機を使って、相当額の金額を要するものではありまするけれども、それではやはり不十分であります。ここで観念を変えまして、
交通管制センターということにする。つまり、
交通量を測定して電子計算機に集めるわけですが、電子計算機からさらにフィードバックして信号機の秒時、つまり、赤、青といったような秒時の期間を変えるということ、それによってその路線、さらに進んでは面における
交通量をコントロールしていくといった方法を講ずべきである。これを
交通管制組織と申しておりますが、従来、先ほど申し上げたバーンズなども言うように、信号機信号機ということを言うわけであります。当然
歩行者の安全のために信号機を多く
設置すべきでありまするし、また、車が秩序正しく動くためにも信号機があるべきであります。そこで、安全のためには信号機をたくさん
設置すべきであるわけですけれども、反面、信号機ができますると車がとまる、渋滞ができる。渋滞ということは、急に車がとまれば追突
事故なりむち打ち症なりがふえてくるといったようなことになるわけなんで、渋滞と安全にもそれぞれマイナス・プラスがあるということで、信号機の画期的な
増加ということにはけっこう問題があったわけであります。そこで、これをいま申し上げた電子計算機に結びつけることによって、信号機をたくさん設けても、なおかつ
交通の円滑が期し得る、しかも渋滞がなければそれだけむち打ち症も減ってくるということになるので、私はやはり
都市交通におきましては、
交通の安全と円滑の双方を期するために、
交通管制という観念で進んでまいらねばならないというふうに
考えるわけであります。
今日でも部分的に、たとえば警視庁あるいは熊本県あたりで
交通管制組織ができておりまするが、こういったものをもっと拡大すると同時に、多くの
都市でこれを採用していくという方向に進んでまいらねばならない。
都市交通の渋滞ということが問題になっておりますけれども、
都市内における道路の拡幅、改良ということはそう容易なことではございません。しかし、数億はかかるであろうこの
交通管制組織にいたしましても、道路をつくるということを
考えれば、かえって安上がりになるということでありまして、今後の
都市交通については、安全と円滑を
考えても、
交通管制という手以外にないのではなかろうかということを私は感じますし、また御認識をいただきたいというふうに思うわけであります。四十五
年度におきましても、その一部が採用されております。
それから表通りにおける
交通規制及び
裏通りにおける
交通規制につきましては、昨年来申し上げていることでありまして、また別に申し上げる
機会があろうかと
考えます。
それから安全
運動につきましては、
総理府が
中心になっておやりになるわけでありますが、私ども特に強調いたしたいのは、オーナードライバーに対する働きかけであります。一般の
安全運転管理者、これは
警察の専管でありますが、これについては相当
程度やれるわけでありまするけれども、たとえば自分が通勤なり娯楽用なりに持っている
人たち、あるいは一台か二台しか持っていない商店、そういったようなものの把握が非常に従来困難であるわけでありまして、こういったようなものの把握をそれぞれの勤務地、勤務先などを通じまして、どういうふうに把握していくかということが昨年来の問題でありまして、ことしもそういう問題に取っ組んでまいりたいというふうに
考えるわけであります。
それから、
交通警察につきましても、やはり科学化ということが重要でありまして、問題は、何百万という毎年の更新者、あるいは全部で申せば二千数百万にのぼる免許所持者、こういった大量の人をどういうふうにして技能を上げあるいはモラルを上げていくかという、そういう問題が重要でありまして、そういう、マス化に応ずる
交通警察の科学化ということを
研究してまいらねばならぬということを
考えるわけであります。もちろん
基本的に
交通事故の分析なり
統計のとり方なりについての検討も重要でありまして、これも昨年来のものを来
年度は進めてまいりたいと
考えております。
最後に、
道路交通法の改正はまた別にお願いをするようになっておりまするが、全面的にはまだ及んでおりませんので、引き続いて四十五
年度において全面的な改正のできるような準備をしてまいりたい、かように
考えるわけであります。
一応
基本的な
考え方を申し上げまして御
参考に供しました。