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根本国務大臣 非常に大きな問題でございまして、私が
答弁するにはいささか大き過ぎるかもしれませんが、私自身が
考えておることを申し上げます。
実は本日の閣議の際においても問題になりましたのは、春闘相場が従前にない非常な賃金アップでございました。
昭和四十一年が一一%の平均の賃上げをしたということで非常に大きな問題でしたが、きょうの労働
大臣、経済企画庁長官、それに大蔵
大臣等のいろいろの発言を勘案してみますと、平均すれば
民間企業が一七・九%ぐらいになるのではないか、こういわれております。そうしますと、もうはるかに生産性の向上を上回っております。これが定着してしまいますと、実に一番おそれておるのは
中小企業、これに非常に大きなはね返りが来る。このままで行きますれば、いろいろの日本の
企業が今日まで成長はしておるけれども、経理
内容と申しますか、利潤率がこのような賃金アップのために相当食われてしまうじゃないかという心配がございます。しかも、これがほとんど一億サラリーマン化といわれるような現状で、こういうふうな賃上げが出てきますれば、必然的にこれが有効購買力として物価を押し上げる機能が出てくる、明年になりますれば、今度は名
企業とも採算割れになるではないかという心配をしておるわけでございます。
本日の閣議のあとに引き続いて実は経済閣僚懇談会もございました。そのときに、現在の時点における経済の見通しの問題が出てきましたが、その状況下においても、現在欧米諸国において生産性を上回る賃上げ、これに基づくところの非常な景気の後退が出てきたことは御
承知のとおりでございます。現在もアメリカは、この約二カ月ばかりは生産性そのものがあれほど上がっているはずなのにかかわらず、景気の後退を来たしている。こういうような状況で、インフレ下にありながら景気の後退を来たしておるところに重大な関心を持たれてきておる状況でございます。こういうようなことを
考えますれば、単なる賃金の上昇だけにこだわっておりますというと、
企業自身が、将来において相当の大きな打撃を受けるじゃないかということが心配されるというふうに見られておるのでございます。
こういう状況下において、いま御
指摘になりました
建設業がどうなるかということでございまするが、これは先ほども御
指摘がございましたように、全体としては日本の経済の
一つの変動期にありまするので、相当の
工事量が伸びると見られております。まず第一に、当
委員会でいろいろ御
審議を願い、また今後もいろいろ御協力と御助言を得たいと思っておりますところの道路特別会計も大幅に伸びています。それから鉄道も、新幹線網をつくらなければならないという情勢にあります。こういう状況を踏まえて、今度は治水、利水に相当思い切って社会資本の投資もしなければこの社会の激変にこたえられない。それに都市の改造、こういうふうな公的な部面におけるところの建設
事業に対する投資も大幅にふえていかなければならない。それに住宅産業でも、相当のこれが整備をはかっていかなければならない。都市生活における上水道、下水道も飛躍的にやらなければならない。これと民間の高層化ということもどんどん進んでいっているということで、そのために、実は
建設業の将来においては相当程度の発注が予測されますけれども、今度はそれを受けて立つ
業界のほうではどうかというと、まず一番問題になっておるのは建設労務者の不足です。どうしてもこれは機械化しなければならぬ。機械化とそれからいわゆる工業化を進めなければ、こうしたいろいろの要望
事項が消化できないであろう、こういうふうに
考えられておるのでございます。
そういう観点から、実は現在御
審議いただいておる
建設業法の一部改正なるものも、そうした状態を踏まえて、やはりこれは
責任体制を確立すると同時に、
内容も充実した
建設業が誕生しなければこうしたことが、実は消化し切れないだろう、いまのままで、しかも一面においては建設
事業そのものも
資本自由化が出てきますと、やはりコストの安くつく、しかもわりあいにスピーディーに、しかも
責任体制のとれておる海外からの
建設業の進出をまざまざと——将来における日本の大きな
建設業界の建設需要がじゅうりんされるのではないか、こういう不安感もあるのでございます。そういうような意味におきまして、実は現在の経済は高賃金でこうなっておるということは、これが即、実は建設労務に一番響いていきます。御
承知のように、現在大工、左官等の
方々の賃金は、普通のサラリーマンをはるかにこえてしまっておる。ところが、それにもかかわらず実はなり手が少ない。これがどうも現在の若い
人たちの
一般的な心情でございます。そういう観点からして、どうしても建設
事業そのものの近代化、合理化をはかる必要がある、こういうふうに
考えておるわけでございます。