○森下(元)
委員 いまの御
説明で国鉄のお
考えはよくわかりましたけれ
ども、私はその前に、国鉄の
経営はいわゆる企業主義でいくべきであるか、公共事業であるかどうか、そういう基本的な問題に立ち返って
考えなければいけない重大な転機に来ておるのじゃなかろうか、このように思っております。先ほど
質問いたしました港湾、これは公共事業でございまして、五カ年
計画でも約一兆三千億円ですか、これでも足りなくて新しい五カ年
計画が出されようとしておりますね。それから道路の五カ年
計画にいたしましても、いわゆる十兆三千五百億ですか、こういう声が聞かれております。それと同じく、先ほど申し上げましたような自動車賠償
保険においても大きな赤字が出て、いつの間にかどこかからそれを埋めておる。お米の問題もそうでございますけれ
ども、やはり赤字になったからすべていけないんだというお
考えではなしに、国鉄
経営というものはどれだけ公共性があるんだ、また将来この国鉄の使命というものは、変わりつつある交通体系、輸送体系を
考えた場合に、現在は斜陽化しつつあっても、十年後にはまた盛り返すかもわからない。経済成長論でいろいろいわれておりますのは、
昭和六十年には国民総生産が二百兆円になるのじゃなかろうか、それに従ってこれに見合う貨物量は、現在では十二億トンとか十五億トンとかいわれておりますけれ
ども、百億トンくらいの量になる、だから、長距離輸送につきましては、港湾等を整備して、船による輸送をする、中距離は鉄道による輸送でなければいけない、近距離は自動車でやる、おのずから鉄道の使命がまた再認識される時代が来つつあるのじゃなかろうか。それと、国鉄の赤字はローカル線をやめたらいいんだ、また新線
建設をやめたらいいんだという簡単なものではいけないと私は思うのですね。ただ赤字黒字の問題を論ずるのでございましたら、一兆円以上の累積赤字が出ておるし、また非常に苦悩しております食管問題、米の問題
一つにしても、内閣が二回や三回かわってもいいくらいの大問題であろうと私は思う。だから、少し国鉄さんの
考え方が大蔵省の主計的な
考え方になってしまって、ただ小さくすればいいんだ、これでは困ると私は思うのです。
だから、そういう
意味で十分検討なさって、大いに公共性も加味していただいて、やはり地域住民は、鉄道に対する期待と申しますか、国がやってくれるんだ、ただ簡単に線路をはぐって自動車の道路にしたらいいじゃないかという
考えは少し軽率なんじゃなかろうかと私は思います。現実に、われわれは自動車の中では本も読めないし、急ブレーキ等のかかるような場合にはひやひやする場合が非常に高速道路でもございます。それに引きかえ、軌道、いわゆるレールを走る鉄道
関係の交通機関は非常に安心して乗り得るということも実は単純な理論でございますけれ
ども、やはり地域住民は新線
建設、また早く開業してもらいたいということに非常に関心を持っておるし、要望しておるわけでございます。
それと赤字線ですね。いわゆる赤字のほとんどが何かローカル線の赤字によって占められておるのだという
印象を与えでおりますけれ
ども、内容を検討してみますと、ほんのわずかにすぎないと思うのです。ほんとうの赤字は、都市周辺の通勤路線において出ておるような数字も見えます。それと、
営業係数によってすべて
計算しておりますけれ
ども、
営業係数の内容を検討しても、たとえば横須賀線久里浜から汽車に乗りまして切符を買った場合、横須賀線に落ちる
収入というものは、いわゆる純益というものは久里浜から大船までの金しか落ちない、
あとは東海道線に、
東京までの運賃のほとんどが落ちる。こういうところの数字的な魔術があるのじゃなかろうか。やはり大きな川というものは枝葉があって大きな川になるのであって、ローカル線によって幹線も潤っておるのだということの認識も実はしなければいけないんじゃないだろうか、このように思っております。まだまだ経済成長はしなくてはいけない時代でもございますし、ただ赤字だからこれを縮小するのだという消極的な態度ではなしに、まだまだ輸送も増大するであろうし、また国鉄に対する国民の信頼度も非常に強うございますので、ひとつ前向きに御検討願いたい。
最後に政務次官に、国鉄、いわゆる軌道による輸送についての運輸省の
考え方をひとつお聞かせ願いたいと思います。