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1970-09-10 第63回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月十日(木曜日)     正午開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 山田 久就君    理事 戸叶 里子君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       石井  一君    野田 武夫君       福田 篤泰君    豊  永光君       堂森 芳夫君    松本 七郎君       樋上 新一君    正木 良明君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  委員外出席者         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 井川 克一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月二十一日  辞任         補欠選任   加藤 清二君     中谷 鉄也君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     加藤 清二君 八月二十日  辞任         補欠選任   加藤 清二君     松平 忠久君 同日  辞任         補欠選任   松平 忠久君     加藤 清二君 九月十日  辞任         補欠選任   中川 嘉美君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     中川 嘉美君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田久就君
  3. 山田久就

    山田(久)委員 本日は、最近公表されました米国上院外交委員会、いわゆるサイミントン分科委員会聴聞議事録に関しまして、その取り上げ方その他等にも関連いたしまして、いろいろな憶測等が出ておりますけれども、あの証言背景性格、そういうものを見てみますると、誤解の点が非常に多いということがはっきりしているんじゃないかというふうに考えられまするけれども、いろんな誤った憶測が行なわれている点は非常に遺憾だと思います。政府におかれてもすでにこれを解明するためのいろいろな努力をやっておられるようでございまするけれども、事の重要性にかんがみまして、本委員会を通じて国民にあらためて正しい理解を持ってもらうという必要があると考えられまするので、あらためて二、三の点について政府所見外務大臣にお伺いいたしたいと思うのでございます。  まず第一の問題でございまするけれども、それは共同声明台湾沖繩の問題に言及しておるということに関連いたしまして、今回の証言で、何か日米安保条約の問題について、日米間に異なる解釈が存在しているんじゃないかというようなことをいっておる、あるいはまた実質的に安保条約というものが変質、拡大されたのじゃないかというようなことがいわれています。あるいはまたこれは沖繩代償でそういうことになったのじゃないかというような意見も行なわれておるようでございます。私、改定安保条約自分で担当いたしました経緯等にかんがみまして、全くこれは誤解である、こう思う。全般といたしまして、安保条約というものは武力攻撃がなければ発動しない。これは極東の平和と安全に関する米国の行動についても同じことで、そのワク内に限るという意味では私は一つも違っていないというふうに見ておるのでございまするけれども、この点についてあらためて外務大臣所見をお伺いいたしたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、サイミントン委員会議事録が公表された機会に、あらためて、お尋ねのような問題につきまして、政府としての見解を申し上げる機会ができたことをわれわれとしてはむしろ歓迎しているようなわけでございます。  そこで、いまの御質問お答えでございますけれども沖繩返還という問題を中心にして、昨年十一月日米首脳会談が行なわれました。その両国合意されたことは共同声明に明確であり、またそれ以外の取りきめというようなものは一切ございませんことは御承知のとおりでございます。この共同声明安保条約がそのまま変更なしに沖繩に適用されるということが一つの大きな眼目になっているくらいでございますから、安保条約そのもの性格が変わったとかあるいは変質したとか、あるいは沖繩返還代償に何か変わった約束をさせられたのではないかというようなことは全然ございませんで、十年前の改定されました安保条約文言そのとおり、またその当時からの政府見解というものそのとおり、これが沖繩返還にいわゆる本土並みで適用される。その中で沖繩返還が実現されるわけでございますから、変質とかあるいは代償とかいうものは全然ございません。
  5. 山田久就

    山田(久)委員 そういうふうに解するのが正しいように私も考えております。いろいろジョンソン国務次官発言があるようでございまするけれども、事実、事柄は、これは国連軍という関係ではありまするけれども、しかし、吉田・アチソン交換公文の中ではすでにその実態というものが明らかにされているとも言えるわけなんで、私は、この点については国民もよく納得するように、今後ともひとつ政府の御努力を切望してやまない次第でございます。  次の問題でございまするけれども沖繩返還の時期、これは七二年内に返還を予定されるということでございまするけれども、そのときまだベトナムの戦争が終わっておらない、共同声明の願望に反してそういうことであったようなとき、いわゆる協議の結果七二年というこれが延びるということがあるんじゃないか、そういうような延びるかもしれないというようなことを証言が示唆しているように思われるが、この点はどうであるか。こういう点についていろいろな憶測が出ていることは御承知のとおりでございます。私どもの見るところによりますると、七二年返還共同声明の中にはこれを目標といたしまして、とにかく具体的な協定締結、その協議を開始するんだ、しかも目標達成のために促進するようにやるんだということがあります。協定締結するということになれば、むろんこれは国会の議を経なければならぬというような問題もいろいろ伴ってまいりまするから、これは純理論的にいえば、まだ国会の議決を経ないうちにやるんだと、こういうことをいえば、日本の場合でも何だというような議論が起こってくる余地は、理論上はあるかということになると思う。しかしながら、実際の問題がそのようにいくかどうかは、今日までに、その後協議が具体的にどのような進捗状況を示しているかということが、つまり大統領決意がその線に沿い、また両首脳部決意がその線に沿って行われているかどうかということを示していくむしろあかしであるということになるんじゃないかと思う。その意味においてこの協議進捗状況がその後どのようなことになっているか。この点についてひとつ政府のほうからお話を承りたい、こう思うので、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 共同声明の第六項の中に、御承知のように、日米政府は、立法府の必要な支持を得て具体的な取りきめが締結されることを条件に一九七二年中に沖繩の復帰を達成するよう、この協議を促進すべきことに合意した。とありますとおりでございまして、日本政府といたしましては、返還協定ができますれば当然国会の御承認を必要といたします。それから、アメリカ側のほうはどういうふうにいたしますか、これはアメリカのほうの考え方によるわけでございますが、そういう点を頭に入れて立法府の必要な支持を得て云々ということが書かれてあるわけでございます。同時に、いまお話しのとおり、その後どういう進捗状況かということでございますが、返還協定あるいはそれに関連して細部にわたる協議というようなことは、私の見ておりますところは順調に話が運んでおりますので、一九七二年のなるべくすみやかな時期に双方の必要な手続が完了いたしまして返還が実現するということを達成すべく、鋭意両国政府間におきまして精力的な努力が続けられておる次第でございます。  なお、国会の協力を得て、沖繩の県民の国政参加ということも具体的に、近い時期に選挙が行なわれるということになりましたことなども返還についてはどんどん具体的な、進行しているということを明白に裏づけているものではないだろうか、かように考えておる次第でございます。
  7. 山田久就

    山田(久)委員 ジョンソン国務次官は、ここにいう協議というのは、むろんいわゆる安保条約による協議とは違う協議だということを言っておるが、それに関連して、そのためにその時期に新しい協定を必要とするんじゃないか、そういうことが関連しているんじゃないかというようなそういう議論も行なわれているようでございます。いまのお話伺いますると、きわめて順調に行なわれているということでございますから、問題はないのかとも思いますけれども、念のために特別な、いわゆる共同声明の中における取りきめという以外、取りきめの協議に入ると一般的にいっておるそれ以外に特別なものがいま予想されるというような状況はないんじゃないか、こう思っておりまするが、念のためその点ひとつ所見を承っておきたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 このジョンソン証言といいますか、質疑応答の中でも、ただいま読み上げました共同声明の第六項の、立法府支持を得て云々のところの説明のくだりが、この問題についての中身であったように承知いたしておるわけでございまして、その他おくれる可能性というようなことは全然考えておりませんし、またこの証言は一月に御承知のように行なわれたわけでございまして、その後の返還準備話し合いというようなものがその後どんどん進捗しているということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  9. 山田久就

    山田(久)委員 次に聴聞会証言に関連いたしまして、返還の、いわゆる核に関する問題でございまするが、返還時の点は問題ないとして、つまり返還後の核の持ち込み、こういう点について多少微妙な発言が行なわれているが、これは重大な核問題についての意見の食い違いがそこにあるのじゃないか、こういうような議論が出ているようでございます。この点についてひとつ大臣所見を承りたいのでございまするけれども、私の承知しておる限りにおきましてはいわゆる大原則である本土並みということになりますると、いわゆる核の持ち込みというものは事前協議対象になるということでございまして、少なくともこの核については日本政府の方針というものに反したことをやらないという米国の、これは安保条約のときからのわれわれに対するアシュアランスというものからいって、その後においても懸念や疑惑、そういうことの余地はないものというふうに考えておりまするけれども、いろいろ国民の非常に重要な関心を持っておる点でもございまするので、この点あらためてひとつ政府の御見解をただしたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話しのとおりこのジョンソン証言応答を見ましても、核に限らず事前協議の問題については一九六〇年一月十九日の岸・アイク共同声明を特に強調しておるということは御承知のとおりでございまして、これは事前協議にかかる事項について米国政府日本政府の意思に反して行動する意図のないというのがこのときの共同声明内容でございますけれども、それを踏まえて事前協議についての説明をいたしておるように私読んでおるわけでございます。  その次に、核兵器の問題については、これは二つの角度からお答えを申し上げたほうがいいと思いますが、安保条約の核についての双方合意の点でこれは事前協議対象になるし、これはもうはっきりした事実でございます。そしてそれに対して日本政府といたしましては国民の核に対する国民的な考え方に立脚した日本政府の核に対する意図というものが、かねがねアメリカ側にははっきり反映しておるところでございます。これを沖繩返還にあたりまして特に沖繩本土並み核抜き返還されなければならないという日本政府意図がここに反映をいたしまして、御承知のような共同声明の第八項の文言になっておるわけでございます。これを法理的にいえば条約上、交換公文上、核の持ち込みが禁止されている、あるいはできないことになっているということではございませんことも御承知のとおりですが、事前協議対象に明確にかかる。沖繩の場合についても同様である。そしてそれに対して持ち込みを許さないという核に対する日本政府態度というものに、アメリカ大統領としても十分の理解をしておるという趣旨が盛り込まれておるわけでございますから、これがいわゆる核抜き趣旨でございます。なおこれもまた具体的事実の問題でありますが、この共同声明が発表されましてからすぐ――その直後と言ってもよろしいと思いますが、その時期に沖繩メースB核兵器が撤去されたということも公の事実でございますことも御承知のとおりでございます。
  11. 山田久就

    山田(久)委員 次に、条約期限の問題でございますが、このたび安保条約自動継続が行なわれることになったのでございますけれども、この自動継続に特にあらためて期限を付すというようなことはなく、条約の規定によりまして、そのまま自動継続したという措置が行なわれたことは御承知のとおりであります。にもかかわらず、これに関して、無期限自動継続されたという――ことばじりといってはあれですけれども、それに関連して、安保条約の第十条の変更意味するような発言ではないかというような批判も行なわれているようであります。特にとりたてて言うほどのことではないと思いますけれども、全くそういう趣旨のものではないとは思いますけれども、念のために政府見解をちょっとお尋ねいたしておきたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 共同声明の第五項に「安保条約を堅持するとの両国政府意図を明らかにした。」こういうふうに書かれてあるわけでありますが、この意味は、両国政府とも現状においては安保条約の第十条に定める条約廃棄権を行使する意図がないということ、条約を引き続き存続せしめる意向であるということについて合意された、こういうわけでございまして、サイミントン委員会における米政府側態度というものもこの見解と全く同じである、かように存じております。この点はまた、さらに補足いたしますと、六月の二十二日に十年の固定期間を終えた際に、日本政府は引き続きこの条約を堅持することを明らかにした声明を出しておりますし、それからたまたま滞米中でありました私に、ロジャース国務長官も同趣旨アメリカ政府態度を明らかにして、文書によってその態度を明らかにしたことも御承知のとおりと思います。
  13. 山田久就

    山田(久)委員 このたびの沖繩についての両首脳合意というのは、平時において領土変更を実際に実現するという、歴史的にも画期的なことでありますから――むろんこれにはいろいろな重要な問題が関連しているのは当然だと思う。したがって、この返還の時期、方式というようなことについては、それぞれの利害関係――利害という立場から、おそらくアメリカの中においてもいろいろな議論があったというふうに私は存じておる次第でありまして、このことはこういう問題の重要性から見まして、立場をかえて見れば、そう楽な外交的な取引じゃないということはわかることではないかと思うのです。ことに北方領土の問題などと対比してみれば、そういう点も了解されるんじゃないか。にもかかわらず七二年返還ということに踏み切ったという大統領政治的決定ということについては、われわれとしてもこれに対して敬意を払うべきではないか、こう思います。とにかく一〇〇%、どこからも文句のっけようがないというようなものでなければやらないんだ、こういうことなのか、それともやはり大統領政治的決定を信頼して七二年返還というこの大事業が実現する道を選ぶかという政治的な選択の問題なんだ、こういう点を国民によく理解してもらうことがその大本において非常に大事なことだと考える次第であります。その点におきまして今後その大筋の点においての理解、これを国民が十分得て、今後の円満な返還の実現ということに障害を来たさないよう今後とも政府一段努力を望んでやまない次第でございます。念のためこの点についての決意、そういうものの考え方についての政府の御所見決意をあわせて承っておきたい、こう思う次第であります。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御質問のようにアメリカの中にいろいろの議論があることはその当時からよくわかります。またいろいろの角度から、たとえば沖繩返還を欲せざる問題であると考えておるアメリカの人もあることは想像にかたくないところでございますが、これをただいまお話しのようにニクソン大統領の決断によって返還を決定し、かつ日本国民の悲願であります一九七二年中に、そうして核抜き本土並みということでこの返還決意し、日本側合意したということについては、その背景あるいはその意味するところを十分に日本側としてもわきまえていかなければなるまいと考えております。
  15. 山田久就

    山田(久)委員 円満な協定締結目標としての協議が、関係者一段の御尽力によりまして所期の結果が得られますように一段と今後の努力を切望して私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  16. 田中榮一

  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はいま同僚の自民党議員から御質問がございましたジョンソン証言についての質問をしたいと思いますが、それに先立ちまして伺いたいことは、先ごろから問題になっております尖閣列島の問題であります。あの尖閣列島日本領土である。沖繩に付属するものであるということを政府も考えていらっしゃるようでございますが、これに対してどういう態度を持っていられるかを念のためにまず伺いたいと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 尖閣列島につきましては、この尖閣諸島領有権問題と東シナ海大陸だな問題と二つあるわけでございますが、政府といたしましては、これは本来全く異なる性質の問題であると考えております。すなわち尖閣諸島領有権問題につきましては、いかなる政府とも交渉とか何とかを持つべき筋合いのものではない、領土権としては、これは明確に領土権日本側が持っている、こういう立場をとっておる次第でございます。これは沖繩問題にも関連いたしますけれども、現在米国政府沖繩施政権を持っておりますが、その施政権の根拠となっておりまする布告、布令等におきましても尖閣諸島は明確に施政権範囲内にある。こういうことから見ましても一点の疑う余地もない。日本国領有権のあるものである。したがって、この領有権問題についてどこの国とも交渉するというべき筋合いのものではない、こういうように考えております。  それから東シナ海大陸だな問題につきましては、七月十八日に国民政府に対しまして公式に、国民政府によるいかなる一方的な権利の主張国際法上わが国との間の大陸だなの境界を確定するものとして有効なものではないという旨を申し入れております。さらに九月三日、国民政府に対しまして、この大陸だな問題について話し合いが必要ならば話し合いをしてもよいということは申し入れてございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもが知る範囲内の日本の歴史について尖閣島をたどってみましても、日本領有であることははっきりしているわけで、いま大臣も自信をもって、この領有権日本にある、こういうことをおっしゃっておられるので、それでまあ私も安心をいたしました。  そこで、いまの大陸だなの問題でございますが、聞くところによりますと、もうすでに大陸だなにある鉱区に中国国民政府開発することを許して、そしてガルフ石油会社というのがその開発に手をつけているというようなことも聞いておりますけれども、この点につきましてもはっきりと日本では交渉をされましたかどうでしょうか、この点も伺っておきたい。それができ上がってからのトラブルというものはたいへんにうるさくなると思いますので、いまのうちにはっきりさせておくべき必要があると思いますが、この点をお伺いしたいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、九月三日にこの大陸だな問題については何か話し合うということが適当ならばこちらもそれに応ずる用意はあるということを申し入れましたのに対しまして、原則的に話し合いをしてみたいという趣旨国民政府側態度でございまするので、準備を整えまして、必要ならば話し合いに入ってもよいと考えております。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは話し合いに入った場合には、いま私が申し上げましたような形で、中国が許しているような石油資源開発、こういうようなことは禁じるようにというような態度日本はお臨みになるのかどうか。この点の話し合い内容はどういうふうな態度でお臨みになるのかをまず伺いたいと思います。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず伝えられるような事実関係について、いままでの経過等がもしあるならば、それらの事実を究明することを徹底していたしたいと考えております。  それからいまのお尋ねに対しましては、ただいまのところ具体的な話し合いというものはまだ始めてもおりません。ですからこまかい点についてまだ申し上げるだけの準備はございませんけれども、十分に日本としての国益の上に立ちまして、日本国益が十分守られるように努力をいたしたいと考えております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけ伺いますが、聞くところによりますと、台湾政府の旗をあそこに立てたというようなことは聞いているわけでございますけれども、しかも無人島なら無主物領有ということの立場から旗を立てているのか、それともまた何か自分たち領土であるというような考え方から旗を立てているのかということで、私どもも了解に苦しむわけでございますが、先ほどの大臣の御答弁では、これは明らかに日本のものであるということでございますから、その点は中国が旗を立てているのは領土権主張ではなくて、ただ軽い気持ちで立てているのだろうというぐらいに日本政府も判断をしていらっしゃるのではないかと思いますけれども、それほどシビアに考えなくてもいいかどうか、この国旗を立てるということに対してどういうふうに私ども受け取っていいかということを伺いたいと思います。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、尖閣島の領有権の問題と大陸だなの問題は異質の問題であると考え、かつ尖閣島の領有権は何ら疑いの余地もない日本側のものであるというたてまえに立っております。したがいまして、実は台湾新聞の報ずるところによりますと、九月二日に台湾のある新聞記者尖閣諸島の魚釣島に国民政府国旗を立てたということが伝えられました。政府といたしましては直ちにその事実関係の究明を急いでおりますし、国民政府に対しましては非友好的な措置であることを指摘いたしまして、もし事実ならば至急善処するように申し入れをいたしました。なお一方、先ほども申し上げましたような事情もございますので、米国側に対しましても、しかるべき措置をとるように要望をいたしました。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは次にジョンソン証言についての質問をしたいと思いますが、この間の参議院の外務委員会での質問新聞で読んだり、またいま自民党議員からの質問を伺っておりますと、ジョンソン証言というものは日本考え方とほとんど変わりがないというような、結論的に一言に言えばそういうふうな表明をされたように私は受け取りました。そこで私自身、この証言を一々よく原文を読んでみなければわからないことでございますけれども、しかしあらわれてきた問題点というものは、私ども共同声明をここで質問いたしましたときと同じような問題がはっきりとジョンソン証言の中に出てきたように思います。  そこで私はお伺いしたいと思いますが、今回のこのジョンソン証言というものは、アメリカ政府解釈が述べられたものではないか、日本日本政府解釈というものを国会でお述べになった。それと同じようにジョンソン証言というのはアメリカ政府考え方理解のしかたというものを委員会ではっきり述べたのだ、こういうふうに理解していいかどうかをまず伺いたいと思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず一番の前提に、両国首脳合意したものは日米共同声明だけでございまして、これ以外に何らのものはございません。ただ、この共同声明についての日本としての解釈、これはこの共同声明発出の直後に外務大臣説明という表題でワシントンにおいて内外に対して私から明らかにいたしておりますことも御承知のとおりでございまして、この私の説明につきましては、いかなる意味におきましても質問とか照会とかいわんや抗議とかいうようなものは全然いまに至るまで受け取っておりません。そのこともあわせて申し上げておきたいと思います。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 愛知外務大臣がいま答弁されたことは、日本外務大臣が答弁されたことです。しかしそのことは何もアメリカのほうからは抗議をもらっておらない、こういうことでございます。  そこで私がいまお伺いしたいのは、今回のジョンソン証言の中で、どうもふに落ちない点があります。たとえば事前協議の問題、核の持ち込みの問題、台湾、韓国への日本態度、こういうようなものがどうも私どもにははっきりしない。そこで念のためにもう一度伺いたいことは、共同声明一つしかない。ほかに何もない。これもよくわかっております。しかしその解釈なりあるいはまた理解のしかたなり、内容のとり方なりというものが違うということはあり得ると思うのです。そこでそういうふうな立場に立ってアメリカでのジョンソン証言となったと思いますけれども日本国会での答弁が愛知さんの正式答弁であるように、ジョンソン次官の証言というものはアメリカ考え方である、こういうふうに私ども理解して間違いないですね。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直に申しますと、日本政府といたしましては形式その他も十分整えまして、公式の説明も発表いたしておるわけでございますし、それからアメリカの場合におきましては、外交委員会の秘密小委員会におきまして国務次官が担当の次官として、あるいは証言しあるいは質疑に答えておられる。事実そのとおりと申し上げるわけでございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで私どもが知る範囲内では、いま申し上げましたような核の持ち込みとか事前協議とかそういうふうなものに非常に疑問の点があるわけです。  そこで私二、三点ここで触れますけれども、私ども理解に苦しむ点、それは、日本政府としても、全然だいじょうぶなんだ、日本の考えで押していけばいいのだ、アメリカと考えが違っても、それは日本日本政府としての考え方で押していってもいいのだ、そういう自信でもって進んでいらっしゃるのか。それとも私どもがいろいろ不審に思う点、そういう点をもう一度アメリカとの間に指摘された面を話し合う、そして調整をとる、こういうふうな御努力をしていただけるかどうか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど山田委員の御質疑にもお答えいたしたところでございますけれども、私は総括的に見まして、日本政府の考えておりますことと違っておるところはない、かように読んでおるわけでございますから、たとえば愛知説明する場合とジョンソン君が説明する場合と、人の話法その他にも若干の違いがあることはこれはいなめないところだと思いますけれども考え方や基本的なこの共同声明解釈、これからの運用というようなことについての狂いは私はないと確信をいたしておるわけでございますが、なお非常に大切な問題でございますし、全国民的な、非常に懸念されている問題でございますから、この機会に細部にわたりましていかような観点からもお尋ねをいただきまして、また政府としての見解もできるだけ詳細に御説明申し上げたいと思います。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はこまかい点、いろいろな点についての質問をするにはたくさんの時間もいただきたいし、またジョンソン証言というものの英文、それをじっくり読んでみて、そして指摘していかなければ、問題点というものはあまり指摘できないと思います。だからそういう機会はぜひつくっていただきたい。これをまず最初に要求をしておきますけれども、それでは二、三点だけに限りまして、問題点をちょっと伺ってみたい。  たとえば先ほど七二年の返還は間違いがない、それまでにはいま日本アメリカとの間でいろいろな交渉が続けられている。これは私どもも知っているところです。そして七二年までには、返還のためにはやはり何といっても七一年の早い機会に――七一年一ぱいにはその交渉というものがまとまらなければならないと思います。そこでその中には、日米合意協定とか、返還される範囲だとか、日本側の請求権益の放棄とか、アメリカの資産だとか、通貨だとか、それから米軍施設、区域の使用範囲、いろいろな問題があると思います。そういうものが一体七一年の末までに交渉がまとまるとお考えになるかどうか。そして、まとめなければならないというお気持ちで日本政府はおやりになると思いますけれども、そういうものを必ずおまとめになれるかどうか。まずこの点を伺いたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 けさも実は一部の新聞に、一九七二年の七月一日に返還が実行されるであろうという観測記事が出ておりましたが、七月一日というようなことが合意されているわけではございません。  ただ御承知のように、返還協定づくり、それからこれに関連するいろいろの問題がございますが、これらにつきましてはかねてから政府といたしましても、非常に広範囲な問題がたくさんございますから、各省庁の協力を得て、内政的な面に関連することは総理府が中心になりまして、沖繩・北方対策庁が座元になって、関係省庁の非常な協力を得まして、先ほど申し上げましたように逐次相当のスピードで進んでおります。  それから事外交に関すること、日米政府間の話し合いを必要とする問題これは手分けをいたしまして作業をいたしておりますが、毎月一回、駐日大使と私との間でその間の作業の進捗状況双方からレビューし合って、問題のある点があればさらに双方で検討をし、あるいはおくれているという面があればこれを双方においてさらに督促をするということで、先ほど申し上げましたように最終的に立法府支持、当方でいえば国会の御承認を得て協定が発効して、実現が七二年のできるだけ早い機会にできるようにということを共通の目標にいたしまして、実は最近の米大使と私の間の定期協議におきましても、サイミントン委員会議事録に関連していろいろと話題がまたあらためて出てきたようでもあるので、ほんとうにすみやかに共同声明のとおりに返還協定をつくりましょうやということは、先方からも非常に意欲的な発言がございまして、私もこれを多としているわけでございますが、そういう調子でございますから、必ず政府といたしましてはでかし上げて、それで国会で十分御審議を願った上で早期に返還が実現するように誓って努力をいたしたいと思っております。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 解釈が違ったままで共同声明によって協定を結ぶということには、私は賛成できない。ですから、解釈をまずはっきりさせていただきたいということが一つと、私がいまそういう質問をいたしました理由は、ちょっとジョンソン証言をばらっと読んだんですけれども、その中に七一年までに――ネゴシエーションズということばを使っておりますが、ネゴシエーションズは完成するとは期待することができないというようなことをいわれているわけです。そこで私はそのことがちょっと気にかかりました。ネゴシエーションズというのだからいろいろな問題がある。そういうものを七一年までに一体全部話し合うことができるかどうか。それは期待できないのだということを言われているものですから、それでは七一年にそういうことがまとまらなければ七二年の返還というものはなかなかむずかしいんじゃないか、こういうことを協定の進捗状態にからんで、ジョンソン発言ともにらみ合わせて気になったのでお伺いしたわけでございます。日本愛知外務大臣は絶対に七一年のうちには協定をある程度まとめて、それで七二年の早きに返すということでございますから、そういうことを信ずるよりしかたがないと思います。  そこで一つの問題として核の持ち込みのことでございますけれどもジョンソン発言では、なるほど返還時の一九七二年には核は行使しない、しかし、例外的なケースで、アメリカが必要と考えたときには日本協議する権利を非常に注意深く留保していることに留意されたい、こういうふうな答弁をされております。七二年にはないけれども、そのあとで、エクセプショナル・シチュエーションという字を使っておりましたけれども、特別な状態が起これば日本協議する権利を非常に注意深く留保しているのだ、こういうことを言っておりましたけれどもアメリカが必要と認めれば協議する権利がある、これは当然だと思います。先ほど大臣も、事前協議はするのだ、こういうことを言いましたけれども、そこで、その中から問題になっていることは、核持ち込みの権利の保有ということと、そして日本政府が拒否されないであろうという、その二点を強調をしている。こういう二点に対して、日本はそれを無視してかかってもいいかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 核の問題につきましては、やはり共同声明の第八項において両者が合意をいたしておりますが、これは安保条約そのもの解釈を念のためあらためてそこに確認しているといってもよろしいのではないかと私は思います。  つまり、安保条約の第六条によるところの重要な装備の変更というものの最大の問題は核の持ち込みの問題でございますが、これが事前協議対象になる核を持ち込むことを禁止することに同意をしているわけではございません。  したがって、アメリカとしては、アメリカから事前協議をするということは、これは留保しているということばをお使いになりましたが、そう言っても差しつかえないと思いますが、事前協議対象になる。しかし、それに対して日本側が、前々から申し上げておりますように、国民的な核に対する考え方の基礎の上に立っての日本政府の核についての政策というものに十分に理解を示したということが、またここに念のために掲げられている。  さらに、全体にかぶって、一九六〇年一月十九日の、従来からの岸・アイク共同声明日本のせざることはやらないという趣旨共同声明が、このジョンソン質疑応答その他にも全体にかぶっているのだということも御注目をお願いしたいと思うのでありまして、核については、沖繩についても、本土についても、安保条約における約束並びに日本アメリカとの合意共同声明の上でさらに明らかになっている。この点は、政府の従来から御説明しているところと、そして、基本的に、米側のサイミントン委員会の中における質疑応答を見ましても、この点に狂いはない、かように私は確信をいたしております。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、この中にいわれている例外的なケースというものを日本はお認めにならないかどうかということ、それから、必ずしも日本はノーと言わないだろう、こういうふうな言い方をされておりますけれども、その二つの点は全然無視していらっしゃるかどうか、この点を伺いたい。簡単におっしゃってください。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはり重要なことですから少しことばが多過ぎるかもしれませんけれども、要するに、何べんも申しますようですが、裏からいえば、核持ち込みを禁止するということに米政府としては合意をしているわけではございませんですね。これは、安保条約上から申しましても、そしてこの運用ということになりますれば、日本政府といたしましては、核の持ち込みは許すまじという国民的願望に立ってさように処置をいたしますということが日本政府態度でございます。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで核の持ち込みに、日本が禁止をしていないから、アメリカジョンソン証言では、こういうふうな例外的なケースというようなものを出したり、日本はノーと言わないだろうということをいっているのだと思うのです。その裏づけだと思うのです。ですから、このことは、日本政府がいかに私たちに、核の持ち込みはあり得ないのだと言ってみても、私たちは非常に疑問に思わざるを得ない。ことに共同声明の中で、日本の政策に背馳しないように、しかもアメリカ政府立場をそこなわないように、こういうふうな相矛盾したことばを使っております。そこで私が心配するのは、いまのような力関係で、一体アメリカ政府立場をそこなわないようなことが、日本の政策に背馳しないということと一致するかどうか、ここら辺が問題だと思いますが、この点はどちらを優先されるのか、私はまず伺いたいと思います。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは事前協議――協議のことでございますから、両方が対等で協議の結果というものはつくり上げなければなりませんが、同時に、一方がノーと言えば、そのことは実現できないわけでございます。したがって、日本として、政府としての態度というものが、主体的に確実に守られている限りにおきましては、御心配のようなことはございません。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣は、一方がノーと言えば持ち込めないとおっしゃったのですけれども、そうすると、共同声明の中にあるアメリカ政府立場をそこなうようなことがあっても日本はかまわないのだ、こういうふうに了解してもいいわけでしょうか。この点がまず一点。  それから、そういうことをもう少し具体的に突き詰めていってみますと、核の持ち込みについて最終的決定権はどちらにあるかということだと思うのです。そうすると、日本はいつでもノー、ノー、ノーと言っているから問題はないのだ、こういうふうに言われますけれどもジョンソン証言の中では、両国政府の間で決定する問題になっているのだと言いたい、こういうことを言っているわけです。たとえば、アメリカの上院で、最終的決定権はどちらにありますか、こういうふうに言った場合に、両方で話し合って、両方できめる問題になるのだ、こういうふうな、非常に疑わしいといいますか、非常に疑問に満ちた表現をしていますね。ですから、その辺が非常に心配になりますが、この点をどう理解していいか、お伺いしたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、いま申し上げましたことで尽きているように思いますけれども事前協議というものの法理的、条約論的な性格と、それから運用上の政治的な問題と、いろいろの観点から考えなければなりませんけれども、先ほど申しましたように、日本側として核についてはノーであるという態度は、しばしばの機会に、これでもというくらいに、はっきりしている。そして政府が、その上に立って、ノーと申しますと言っているわけですから、これは非常に明確で、協議であるからには、ノーであればそのことは実現できない。それは協議ですから、日米協議がまとまるようにして問題を処理したいというのは、一般論、法理論的な解釈であると思います。日本の姿勢というもの、日本立場主張というものが厳とし、政府がしばしば申し上げておりますような態度であれば、これは御心配がございません。これはもう何べんも繰り返すようですけれども条約上、法理論的にいえば、核の持ち込みは禁止する、そしてそれに合意しているというふうになっていればまた別でございますけれども、法理論的にいえば事前協議にかかっているというところから、いろいろの角度から御心配もあろう、これはごもっともだと思いますけれども、いま申しましたような内容でございますから、御心配は全然ないと私あえて断言申し上げます。  なお、やはり議事録でございますから、本件についても、非常に巷間で、またいろいろのところに、こういう問題が出ておりますから、私もなおしさいに点検してみたいと思いますが、いままでずっとこう読んでみましたところでは、基本的には先ほど申しましたように狂いはございません。これはもう十分に双方政府間でも、あれだけ苦心して話し合ってまいりましたことですから、基本的に狂いのあるようなことがあろうはずもないと思いますけれども、私はさように存じております。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど外務大臣が核の持ち込み禁止ということには合意をしていないのだとおっしゃいましたね。そこで、日本の政策としては、持たず、つくらず、持ち込ませず、これが三つの政策ですね。それを最近総理大臣が四原則というものを立てられて、核の抑止力というものをこれに加えられました。私もそのことをこの委員会でいろいろ聞いていたわけです。そうしますと、日本国民は核の三原則というふうなことを政策として考えていたところが、核の抑止力ということが一つ加わった。そうすると、アメリカとの交渉ではこの四原則というものがアメリカのほうの頭に入って、核の抑止力というものも日本は認めた上での交渉をしているのじゃないか、こういうふうな点に疑問を持つわけですけれども、この点はいかがでございましょう。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはり安保条約のよって立っているフィロソフィーとでも申しましょうか、その中の大きな一つの要点は抑止力ということであるということはおっしゃるとおりだと思います。要するに、戦争とか脅威とかいうことが起こらないように未然に抑止するという観点に立ちまして安保条約というものが結ばれておる、かように私は理解いたしておるわけでございます。しかし同時に、アメリカが核戦力を具体的に非常に強く持っているからといって、それが沖繩あるいは日本本土に核武装をアメリカが持ち込むということとそれとは関係のないことだと私は思います。それを結びつけてお考えになる、あるいはそういう考え方を少しでも持って政府が何か言ったというふうにおとりになれば、それは誤解だ、かように存じます。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 時間がなくて核の問題しか質問できませんでした。私はまだ事前協議なり自由発進なり安保条約性格の問題等をいろいろ伺いたいのですが、時間の制限を受けましたのでこれでやめます。この次いろいろな問題を質問するために十分な時間をとっていただきたい。ことにアメリカの上院等ではこの問題でもう何日も続けてやっているのですから、日本国会でもそれくらいの気持ちになってやっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  44. 田中榮一

    田中委員長 堂森芳夫君。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がございませんので二、三の点について外務大臣お尋ねしたいと思います。  さっき戸叶さんの質問中、いろいろの点に答えられまして外務大臣は、先般発表されましたアメリカ上院の小委員会におけるジョンソン国務次官の答弁の内容については、日本政府考え方と一緒である、変わらぬ、こういう御答弁であります。私はことばじりをとらえるわけではありませんが、ほんとうに変わらぬのでありましょうか。もう一ぺん御答弁を願いまして、その点について質問を展開したいと思います。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府のしばしば申しておりまする見解と、それからサイミントン委員会にあらわれました米国政府見解というものは基本的に狂いはない、私はかように存じております。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 従来から政府は、総理大臣外務大臣もこういう説明をしてこられました。日米共同声明以後も日米安全保障条約性格は変わっておりません、運用のあり方も変わっておりません、そして沖繩核抜きで返ってまいります、そして沖繩は従来あった安保条約のワク内で本土と同様になるのです、こういう御答弁であったと思うのであります。国民もそう信じておると思うのであります。全部とは申しませんが、大部分はそう信じてきたと思うのであります。しかし今度のジョンソン答弁の発表を見ておりますと、私は非常に違うと思うのであります。たとえば、沖繩返還は七二年に必ずしも実現するとは限らぬ、これはことしの一月時点の証言でありますから、私はもうすでに半年以上たった今日の時点でこれを云々する気はありません。しかしこれはあくまで目標であって、またそれまでに返還協定が実際にでき上がるかどうかもわからぬ、こう言っておるのであります。これは一つ非常に違う点であります。いまも御答弁で、きょうの朝刊でも有力新聞は見込み記事を書いておるように、必ずそれはできるのだ、こういう御答弁でありました。まあこの点はさておきまして、たとえば沖繩アメリカがなぜ自分施政権下に置いてきたかという理由を考えますと、アジアにおける戦略的なかなめとして沖繩を使用する、こういう目的があったからであります。しかし今回これを日本に返すということになれば、沖繩における従来のそうした軍事的な権益を従来どおり続けて維持するか、あるいはこれがなくなったかわりに何か代償としてアメリカ政府日本においてそうした軍事的な権益を確保していく、こうアメリカとしては考え、実行していくのが私はアメリカとしての立場であろうと思うのであります。そうしてジョンソン証言はこう言っておるのであります。そういう意味沖繩日本に返すときには特別な合意の取りきめがなされるであろう、これは私が想像しまするのに、事前協議対象としてこれは最も問題となってくる。ベトナムへのB52の発進の問題があると思うのです。また先刻戸叶さんがおっしゃいました核の持ち込みの問題がありましょう。まあ核は別にしまして、B52の問題についてジョンソンは重大な証言をしておるのであります。またジョンソンは、日本は従来と違って、台湾やあるいは朝鮮半島に対して非常に積極的にアメリカに協力的な態度をとるようになったことは大きな変化であるとか、あるいは自衛力の増強であるとか、あるいは事前協議に対する態度はノーの方向に強く向かってきたとか、いろいろなことをあげておるのでありますが、これでも安保条約に対する運用のしかた、あるいは安保条約性格は変わらぬというふうにお考えになるのでありましょうか。あるいはまた、ジョンソンのそういう証言日本政府考え方と同じだ、こういうふうに私は言えぬ面がたくさんあると思うのでありますが、外務大臣いかがでありましょうか。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 順を追うてお答えいたしたいと思いますが、まず七二年返還という点につきましては、この共同声明に明らかでありますように、先ほど申し上げましたように立法府支持を得て云々ということを条件としてということでございますから、裏から言って、もしそれができなかった場合はということになりますと、その点を念を入れて説明するとジョンソン証言のようになると思いますけれども、しかしこの点は先ほど来申し上げておりますように、事実がどんどん発展しております。それから、いまここに議事録を持っておりませんけれども、私自身も、一九七二年返還ということは、率直に言わしていただければ即時返還であります。それだけに日本政府といたしましても、ねじりはち巻きでこの広範な返還作業に取り組まなければならない。そう思うと七二年返還ということは、その仕事の態様、規模を考えただけでも全くたいへんなことでありますということを国会でも御答弁申し上げた記憶がございます。ことしの一月ごろにジョンソン君がいまのようなことを証言いたしましたことの気持ちは私はよく理解できるように思いますが、きわめて最近の状況におきましては、同君が、アメリカ政府としては七二年返還についてほんとうに着々軌道を走っているんだという趣旨のことをあらためて申しておりますことによっても、われわれの気持ちが合致しているということはおわかりいただけると思います。  それからその次の協議の問題でございますが、ベトナム情勢につきまして、これも国民的な非常に御関心のある問題であるのでありますけれども返還それ自体は安保条約並びに関連取りきめが変更なしに、ウィズアウト・モデフィケーションと英語ではなっておりますけれども、何らの変更なしに沖繩返還交換公文を含めて行なわれるような、これが大きな眼目であり、本土並みがここに象徴されておるわけでございますから、この考え方は、ジョンソンの答弁その他をずっとしさいに点検いたしまして、私は一貫して貫かれている、かように存じます。つまり返還ということ自体については共同声明の第六項ないし第八項、七二年、本土並み核抜き、この線で三原則のもとにいくのである。  それから、そのときにベトナムの情勢がどういうふうになっているかもわからないということは、戦争の当事者としてのアメリカ政府として、参戦国にあらざる第三国の日本との間に情勢の分析の点におきましても、あるいは内外に公表される共同声明の上においても、戦争の終期ということをはっきりと明定することはできない、これも理解できることだと思いますが、その際には必要があれば何らかの協議を求めたいという趣旨が第四項の末段に書かれてあるわけでございます。そうして今回のサイミントン委員会質疑応答等を点検してみましても、ここにいわゆる協議というものは事前協議ではない、こういうことが明確に出ております。このことは私の説明におきまして、ここにいわゆる協議事前協議ではないということとまたこれ一致しているわけでございます。その協議はいかなるものであるかということにつきましては、態様等について、これはそのときの情勢によっての問題でありますが、要するに三原則の範囲内で沖繩返還はできるんだ。この三原則の範囲内におけるところの必要あらば協議というふうに私は理解をいたしておるわけでございまして、ことばの使いようあるいは表現のしようによっていろいろ御懸念を抱かれる向きもあるようでございますけれども考え方の基本において狂いはないということは先ほどから申し上げているとおりでございます。
  49. 堂森芳夫

    堂森委員 せっかくの外務大臣の御答弁でありますが、国民の間に従来政府のしてこられました説明、答弁等に大きな疑惑を持っておることを否定し得ない内容を今度のジョンソン答弁は持っておる、こう思うのであります。アメリカ政府の意向がジョンソン次官によって答弁されたのであります。そこで、外務大臣は必ず七二年には沖繩返還されるのだ、こういう強い確信を持たれたような御答弁であります。そうしますと、返還協定というものは大体来年のいつごろには、これはむずかしい問題でありましょうが、できるという見通しをお持ちでございましょうか。大臣でございますから、見通しなしにはおやりにならぬと思うのであります。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は率直に申しますと、返還協定の案文それ自体はもうフレームも大体できる段階になっております。しかしこれも従来から国会でも御答弁申し上げておりますように、返還協定の文章だけでは十分国会の御審議をいただくには不適当だと思います。したがいまして、協定の案文だけではなくて、たとえば先ほど戸叶委員からも御指摘がございましたが、諸般の具体的な、ことに沖繩県民の方々に復帰ショックを与えないような措置が必要であると思いますので、そういう点についても十分日本側自体でやるべきことはやり、また必要な点は米側とも十分打ち合わせて、そして十分御上審議をいただけるような状況にして御審議をいただきたいと考えております。その時期は、いま私がここで明確に申し上げることはちょっとはばかりますけれども、なるべくすみやかに、断じて一九七二年の返還ということに狂いがこないように、それまでの間に十分国会で御審議をいただける余地を残して協定をつくりたい、かように考えております。
  51. 堂森芳夫

    堂森委員 返還協定の全文ができる時期はいつかということを外務大臣がここで答弁されることは、相手もあることで影響も大きいでしょうから、それはこれ以上問いませんが、私のお尋ねしたいところは、もし来年、春でも夏でもようございましょう、でき上がったといたしますね。ところが再来年の七二年、東京新聞の四月一日だとしましょう。そうすると、どうしても来年末の通常国会には提案されなければならぬでありましょう。間に合いません。そのときになってもまだベトナム戦争は済んでいないという事態も想像できないことではないわけであります。ところがジョンソンは、そういうときには特別な合意取りきめをやるのだということを証言しておるわけでございましょう。ところがあなたは、日本政府共同声明と何にも変わらぬのだ、その範囲以外には何も取りきめがない。したがって、従来の御答弁は何らの他の取りきめはしないのだという御答弁で一貫しておられるのでありますが、そういう事態があったときでも、何かそういう取りきめをなさるという考え方はないのでございますか、これも承っておきたいと思います。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは共同声明がはっきり両国首脳合意されておりますし、そうしてその第六項にきわめて明白に変更なしにと、先ほど申しましたようにウィズアウト・モデフィケーションということでかんぬきがきちっとはまっておりますから、特別の取りきめというものは政府としては何ら考えておりません。
  53. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんので、質問の途中でありますが、もうあと一点で終わりたいと存じます。  わずか二十分間でありますから、質問も十分できませんが、外務大臣あるいは政府がいかに強弁をされましょうとも、ジョンソン証言というものはさっきから繰り返しますように、日米共同声明というものは沖繩返還及び日米安全保障条約運用について従来政府がいってこられたこととは違うのじゃないか、非常に危険な方向に行っておるのじゃないかという疑問を持っておる人が私は非常に多いと思うのであります。これはもう否定し得ないと思う。愛知外務大臣ジョンソンの言っておることも日本政府の言っておることもあんまりは変わらぬのだ、こういう答弁をしておられますが、私はそうでないと思うのであります。いろんな点について、またこの共同声明の八項の核の持ち込み、さっき戸叶議員がおっしゃいました問題についてもいろいろ質問をしたい点もあったのであります。いろいろと問題はたくさんあると思うのでありますが、次の機会に譲りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  54. 田中榮一

  55. 正木良明

    正木委員 三野党が臨時国会まで要求しているこのジョンソン証言の重要な問題を非常に短い時間で――私に与えられた時間かたった二十五分でありまして、これは非常にけしからぬことであろうと思いますが、いずれにいたしましても、きょうの場合理事会の決定でありますのでそれに従いますが、したがって、ぜい言を避けて単刀直入に大臣お尋ねをいたしますので、お答えをいただきたいと思います。  いままで三人のそれぞれの質問者がそれぞれにお聞きをいたしましたが、私もまず同じことをお聞きいたします。  私は、サイミントン委員会におけるところのジョンソン国務次官証言というものは、従来日本政府説明をいたしてきました佐藤・ニクソン共同声明解釈と大幅に違うように思っております。先日の参議院の委員会におきましては、外務大臣は、あの佐藤・ニクソン共同声明の際にその解釈説明というものを外務大臣としてしておる。そのことについてアメリカから何ら質疑も抗議もそれに類するコメントもなかったので、これは有権的な解釈であるというふうに思っておるのだという御答弁がございました。それははたして有権的であるかどうかということは、いま時間がありませんので論議はできませんが、これと同じ立場アメリカにもいえると思うのですね。したがいまして、アメリカジョンソン証言に対して、しかも削除部分が相当ある、公表されたものだけでも非常に問題のジョンソン証言に対して、これは日本政府と同じ解釈であり、あなたが参議院でおっしゃったように、これに対して質疑も抗議も何らのコメントも加えなかったときに、これがアメリカのほうはアメリカのほうで有権的な解釈というふうになるということは、当然の論理の帰結でありますが、ましてや削除部分が相当部分にわたってあるということ、いわゆる公表しなかった部分がたくさんあるということ、このように考えてまいりますと、この問題については克明に突き合わせをし、克明に検討をして、そうして日本政府解釈と相違のある点についてはアメリカに対してそれをただし、完全な合意というものがなされなければならないと思いますが、この点について、しかも将来にわたってどのようであるかということについてお答えをいただきたい。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府といたしましては、本件についてはもとよりのことでございますが、全く公開の席で逐一御説明を申し上げておるわけでございますので、私といたしましても、政府見解につきましては確信を持って御説明申し上げている次第でございます。  それからこのサイミントン委員会における質疑応答等は、先ほどから申しておりますように、共同声明にきめられた両国合意の線については私は何も狂いがないと思います。ただこの共同声明は、たとえば国際情勢の分析だとかなんとかということについても相当長いものが書かれております。これをどういうふうに評価するかというようなことについては、また見る人によってその違いもあろうかと思いますが、合意せらたものが、ここに書かれたもの以外に何ものもないということは何より私は大切なことである、かように存じております。
  57. 正木良明

    正木委員 私はこのことで時間をあまりとりたくないのですが、明らかに解釈の違う面がたくさんあります。それを一々これからお尋ねするわけでありますが、核の問題はいまの戸叶先生の御質問で大体明瞭になりました。いかなる解釈があろうとも、核の持ち込みということは絶対許さぬというそういう外務大臣の答弁を信頼いたしておきます。  さてB52の問題でございますが、あなたはこの間の参議院の外務委員会では、沖繩返還後ベトナム戦争がこのまま継続していたとして、沖繩からB52が発進するのについて事前協議を受けた場合、オール・ノーというふうに御答弁をなさっておりますが、それは間違いございませんか。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは沖繩返還というものが本土並みで達成されなければならない、この基本線から私の意見を申し上げた次第でございます。  それからなおつけ加えて申し上げれば、現在施政権下にない沖繩におきましても、B52が発進されるということは好ましからざることであるとして、政府といたしましてはしばしば米国政府側の関心、反省を求めていることは御承知のとおりでございます。こういう態度で貫いていくのが日本政府態度であるべきである、かように存じております。
  59. 正木良明

    正木委員 そこで、沖繩返還されて、安保条約沖繩にかぶってB52の発進について事前協議対象になる。この事前協議対象になるのは、重大なる装備の変更という事項に該当するのか、それとも戦闘作戦行動ということに核当しての事前協議対象になるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  60. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは戦闘作戦行動で律すべきものと思います。
  61. 正木良明

    正木委員 そこで、これが非常に問題になってくるのでありますが、ジョンソン証言によりますと、沖繩返還が実施をされる予定の時点で、アメリカ沖繩から行ないたいと望むことがあれば、アメリカ沖繩から望むことを実行する能力を禁じないよう、双方の間で協定または取りきめを作成するという意味である。ということをジョンソン証言をしておりますが、これに対して何らのこのような取りきめをしないというのが、愛知外務大臣のただいままでの答弁であります。そこで、これは非常に極端な考え方かもわかりませんが、従来日本政府がとってきた事前協議に対する態度から察しますと、あなたが、ベトナム戦争が沖繩返還後も続いておって、沖繩からB52が発進をするにあたって事前協議対象とならないようにいわゆる取りきめをしないと言っているんだから、事前協議対象にならないような措置を講じようという考え方があるのではないか。すなわち、従来いわれておる飛び石戦闘作戦命令といわれるものでありまして、日本領土、領海、領空を過ぎ去ったあと、いわゆる公海上に出て、そこで戦闘作戦行動が発せられたときは事前協議対象にならぬということがいわれておりますが、そのようなかっこうで特別な取りきめをせずに、しかも戦闘作戦行動ということで事前協議対象にする。しからば、いわゆる事前協議はあり得ないのでありますから、ノーと言う必要もない、そういうことが予想されるのでありますが、この点についてはどうですか。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点も前々から申し上げておるところでございますけれども事前協議の予約のようなものを返還に先だってやるような取りきめというようなことは考えておりませんということはしばしば申し上げたとおりでございます。  それからベトナム戦争との関連は、そのときの時点においていろいろの資料なりアメリカ側からあるいはいろいろの願望みたいなものも出てくるかもしれませんけれども、これはいろいろ論じても仮定のことになりますから、この協議内容というものについてはどうなるか、実はこれはあまり予想しておりません。しかし大事なことは、沖繩返還安保条約関連取りきめに何らの変更なしに適用されるのである。これが一番大事なことであって、そしてこれについては日米間においてはっきり両首脳合意して、共同声明にも掲げておるところでございますから、この点については何ら私は心配を持っておりません。
  63. 正木良明

    正木委員 そうなると話がもう一つ戻りますが、ジョンソン証言いたしておりますように、どうしてもアメリカ沖繩返還後において沖繩の基地からベトナムに対してB52の発進をしたいというために特別な取りきめをしたいということを証言いたしておるわけでありますが、そのことについて外務大臣はそういう特別な取りきめは一切しない、むしろ直接戦闘作戦行動が行なわれる場合にはB52の発進に対してノーと言うと同時に、またB52を沖繩基地から撤去するということについて、この三点にわたってあなたのお考えになつていることをおっしゃっていただきたいと思います。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩返還になりましたら、その時点から完全に安保条約並びに関連取りきめが変更なしに適用されることになりますから、仮定の問題でありますけれども、B52が発進したいというようなことがあれば、これはしたいということが事前協議の中に入ってくることは仮定の問題としてあり得ると思います。しかしこれは事前協議の問題について、先ほども議論があった点でありますが、これは協議なんであって、そしてノーと言えばこれは実現ができない。そして考え方として、従来から施政権下にない沖繩からの発進についても好ましからずとして米政府にもしばしば抗議を申し入れているくらいのことでありますから、日本政府のとるべき態度というものについては十分御理解をいただけること、かように私は考えております。  なお、先ほどの御質問にもお答えいたしましたが、このサイミントン委員会等の質疑応答の中でも、そこの協議ということは事前協議意味していないのだということも同時に明らかにされておることは、舌足らずかもしれませんけれども、基本的に私の考え方と違うところはないように私は沈み取っております。
  65. 正木良明

    正木委員 そこでこのようなB52だとかエンタープライズというような原子力航空母艦だとかいわゆる核兵器を搭載することが可能な運搬兵器について、核が搭載されているかいないかにかかわらずこれを核兵器として扱う、いわゆる重大な装備の変更というふうに考えるという考え方はいまだにございませんか。
  66. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと御質疑を捕捉しかねたかもしれませんけれども、およそ核兵器を搭載しているような艦船等が寄港するという場合におきましても、これは事前協議対象になる、こういうふうになっております。
  67. 正木良明

    正木委員 そういう可能性というものは、日本に点検の、査察の権限のない場合、これは核兵器が搭載されるということが予想されるということ、そういう能力があるということでもうすでに判断をしなければならぬと思うのですが、現在までの政府の答弁によると、ポラリス型潜水艦のみに限定されておるようですが、その範囲を広げてB52やエンプラそういうものにまで広げる考え方はないかということであります。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは沖繩返還に関しては、関係交換公文等に及ぶまで変更なしに適用されるということで合意いたしておりますから、その基本の問題について改変するというようなことは現在何ら考えておりません。したがいまして、ただいまの御設問に対しましても、いまお答えいたしましたように核の問題については、核武器を搭載しているものについては、艦船の入港の場合においてもアメリカとしては事前協議日本に対してかけてこなければならない、こういうことになっておるわけでございます。
  69. 正木良明

    正木委員 それでは話を進めますが、ジョンソン証言の中で、戦闘作戦の途中、帰途に、米海軍の艦艇が在日基地を訪れることについては、事前協議対象とならぬということを証言いたしております。同時にまた戦闘作戦の途中に在日基地に米軍機あるいは米艦艇が逃げてきたような場合、当然追撃機の追撃なんということは考えられますが、こういう場合、日本の領海に他国機が侵犯してくるという場合には、いわゆる在日米軍基地に対する攻撃ということがあり得るわけでありますが、こういう場合を想定してでも、この戦闘作戦の途中アメリカの海軍の艦船や航空機に対して事前協議対象としない、こういう点の政府見解というのをもう一度明らかにしておいていただきたいと思います。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはサイミントン委員会でもかなり詳細にわたって質疑応答がかわされているようでございます。そしてやはり結論的に申しますと、日本政府が累次表明しております見解と狂いはないと私は読んでおりますが、要するに戦闘作戦行動については、日本の基地から戦闘作戦行動という命令をもらって出撃するというときが事前協議対象になる。これが従来からの政府考え方であり、アメリカの了解であり、そしてこれはそのまま沖繩に適用されるものである、かように考えております。  それから御質問範囲外になるかと思いますが、偵察あるいはそれに対する救助とかなんとかいうようなことは、事前協議対象にならないのだということは、これはわが国の国会における総理大臣の答弁を引用して答えているくらいでございまして、この種の事前協議に対する解釈については、両方完全に一致していることはここからも明らかであると思います。
  71. 正木良明

    正木委員 そうすると先ほどのB52の問題にも関連してくるわけでありますが、かりに沖繩の基地を発進したB52が、グアム島ならグアム島に寄って爆弾を積んでベトナムへ向かう。それは直ちに戦闘作戦行動になりますが、そうしてベトナムを爆撃して沖繩へ帰ってくるということは事前協議対象にならぬということが考えられるわけであります。そういうことは仮定の問題でありますが、特別な取りきめもしない、事前協議対象にもしないということで、沖繩基地からB52の発進が可能な場合を想定すると、そういう場合が考えられるわけですが、そういう場合について大臣はお考えをめぐらされたことがありますか。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 繰り返すようでありますが、在日米軍基地、これは返還後の沖繩も同様でありますが、在日米軍基地から戦闘作戦行動の命令をもって発進するという場合は、完全に事前協議対象である。それから戦闘機あるいはその他の機種でありましても、一たん移動して別に発進するという場合は事前協議対象にはならないというのが従事からの考え方でございます。
  73. 正木良明

    正木委員 次に、やはりこの冒頭証言の中で、プエブロ号事件またEC121偵察機事件等を実例としてあげて、米政府日本政府と非公式な話し合いを行ない、その結果、アメリカが公海上で困難に遭遇している米艦艇ないし飛行機の救援あるいは護衛に、日本にいる米艦艇ないし航空機を使用する必要があると感じた場合は、日本事前協議を必要としないものと考える、このように確信しているとジョンソンが述べております。ここでアメリカ政府日本政府は非公式な話し合いを行なって、その結論というものを出した、こういうふうに証言しているわけでありますが、この非公式な話し合いなんというのはいつ行なわれたのか、どのような、米側代表と日本側代表によって行なわれたか、その話された内容というものはどういうものか、こうした重要な問題が非公式にせよ行なわれたということは国民として知るべき権利があると私は思うのでありますが、その点をお願いしたいと思います。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御記憶に新たなところだと思いますけれども、EC121の件が起こりましたときには、米国側に対しまして米国大使を招致いたしまして、日本側としてはこれに重大なる関心を持っておる、このEC121が公海上の行動であった、公海上に所在していたということを米側としては保証をすると、そのときに申しましたが、それが事実であるとしても、それに対する報復とかなんとかということで事態が拡大することは日本政府として全く好ましからざることであるということの趣旨を米大使、当時は代理大使でございましたが、私自身で接触をして十分な申し入れや意見の開陳をいたしたこともございます。こういうことを――当時ションソンはすでに国務次官になっていたあとであったかと思います。そういうことを想起したのではないかと思います。そういうことをも含めて、日米間で接触のあるということは私は当然のことだと思います。そうして、そういうことを背景にいたしまして、四十四年四月二十四日と記憶いたしておりますが、衆議院本会議におきまして、各党の緊急質問に対しまして、佐藤総理から詳細な御答弁を申し上げたことは私もはっきり記憶しておるところであり、またその一部がサイミントン委員会質疑応答の中にも出ておるように私読んでおりましたが、ただいまの点はそういう事情でございます。
  75. 正木良明

    正木委員 いや、むしろ重大なのは、これは一例としてあげられたわけであって、救援活動を行なう場合には、これは私は救援といったっていろいろの種類があると思うのでありますが、たいていの場合軍事的な衝突によって友軍機が困難な状態におちいっているのを救うという場合には、これは武装しないで飛び立っていくというようなことはあり得ないと思うのですが、そういうものも救援活動であるという場合には事前協議対象とならないんだ、そのように日本側は了解しておると私は確信しておるとジョンソンが言っておるところに重大な問題かあるのであって、この点についての政府側の見解はどうであるかということをお聞きしたいわけであります。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはジョンソン君が確信していると申したのはそのとおりであると思うのです。なぜならば、ただいまの件は、当時本会議におきまして佐藤総理大臣からきわめて明確にお答えをいたしております。つまり救助というようなことについては事前協議対象になりません。これは、事前協議対象にならないということは従来からの政府の答弁あるいは交換公文等からいって切らかなところでありますということをお答えいたしておりますから、そうしてそれを引用しておりますから、この点は、御意見はともかくといたしまして、これは前々からの事前協議についての日米双方の了解というものがそのときに明らかにされているわけで、事前協議対象範囲等についてはそのときまた明らかにされているわけでございますから、ジョンソン君が確信を持って答えるというのばそういうところにもあるのはなかろうかと思います。
  77. 正木良明

    正木委員 要するに、救助であるのか戦闘作戦行動であるのかというのは、きわめて見解の分かれるところであろうと思うのです。救難と称して戦闘作戦行動と同様の行動が起こるということもあり得るわけであり、こういうものが実際は戦争巻き込まれの非常に重要なきっかけになると私ども心配するわけであります。そこで非常に重要な問題は、事前協議というものがアメリカ側からしかできないような見解が従来述べられてきたのでありますが、今回のジョンソン証言によりますと、事前協議を求めるのはどちらかの政府が行なえるのだ、いわば日米双方から事前協議を行なうことができる、いわゆる事前協議の提議権というものは日本にもあるのだということを証言いたしておりますが、この点についての御見解を承りたいと思うわけであります。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点も前々から政府見解は明らかにいたしておるわけでございまして、法理論から申しますれば、事前協議というものが、日本側が提供いたしました在日米軍基地の使用ということについて、これの使用を許された側の米軍が義務として、事前協議をしなければならないという義務を負っておるわけでございます。したがって、義務を負っておるものが発議をして、提供しておるほうがそれに対してイエス、ノーを言うというのが、これが条約論であり法理論でございます。しかしながら同時に安保条約においては、随時協議ということもはっきりきめられておりますから、随時協議等のチャネルを通しまして、実際上日本側アメリカ側に対して協議をするということもできるのだ、これが日本政府としての解釈でございます。これを、そう言うと言い過ぎになるかもしれませんけれども、こまかい法理論的な日本流の頭だけでなく、常識的にジョンソン君がお答えをすれば日本側にも発議権があるのだと答えられたのだと思いますが、それはそれなりに私は正しい、かように存じております。
  79. 正木良明

    正木委員 私は事前協議の提案権というものが日本ではなかなか執行しにくいという状態はよくわかるのです。これが事前協議に該当するかどうかというのは米軍しかわからないわけでありますから執行しにくいという状況はよくわかるのでありますが、しかし日本側には提案権はないのだ、随時協議の提案権はあったとしても事前協議の提案権はないのだというふうに捨ててしまうという考え方も、これまた私はとるべきものではないというふうに考えておるわけでありまして、事前協議の提案権は日本側にもあるのだ。それが察知できたときにはなぜ提案しないのか、事前協議をしてこないのだということを、日本側から言うだけの権利を留保しておくということは十分外交上必要な問題であろう、このように思うわけでありますが、再度御答弁をいただきたいと思います。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 法理論的にいえば先ほど申し上げたとおりですけれども、政治的実質論的にいえば日本側に提案権がある。そうしてそれは先方も認めておることはただいまの証言で明らかなとおりでございますから、私はそれで十分であると思っております。
  81. 正木良明

    正木委員 そこで、話が飛び飛びになって申しわけないのですが、先ほどの、ジョンソン次官が証言をしておるのでありますが、「沖繩核兵器を置く権利を持つ意義は、戦略核兵器より戦術核兵器に関連したものである。全地域でのアメリカの態勢をみて阻止力について反撃時間を最小限にするための配備や取り決めを新しく作ることもありうる。」と、こういう証言をして、なおかつこのことに関連しての先ほどの核兵器の問題になってくるわけであります。そこで、御存じのように、この証言は一月に証言されたものでありまして、先ほどの御答弁によると、しばしば、月に一回は駐日米大使と話し合いを持たれて、この沖繩返還に関する取りきめというものについての事務を進行なさっておるというふうに言われておりましたが、このジョンソン証言から察するところ、こういう考え方が強くアメリカ側にある。したがって、その後半年以上たつわけでありまして、非常に多くの機会にこの問題が話し合われていたのではないかという、ふうに私は思うのでありますが、そういう点について、このジョンソン証言内容の問題については、アメリカ側から提案がされたり、また協議対象となったということはありましたか。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず、返還協定の問題については、共同声明によって作業をやっておるのですから、核抜き本土並みでどんどん作業しております。共同声明に反するような、あるいはこれに抵触するようなことは、在日米大使と私との間の話し合いの権限以外でもありますし、そんなことは議論したことは全然ございません。もう核抜き本土並みで着々と返還準備を進めておるわけでございます。  それから、サイミントンの秘密委員会――秘密委員会でございますから、それはどういうことが質疑応答になっているであろうかというようなことは、おぼろげながらは承知しておりましたけれども、やはりこの議事録が公開されて、そして届きましたのがつい最近でございますから、これをお配りいたしておるかと思いますけれども、私も御一緒に詳細にこれを読んで、なおどういう点が御心配の種になろうかということを、私も十分に検討しておるわけでございますが、私は、先ほど来お答えいたしておりますように、まあひずみというか、狂いはない、かように存じております。
  83. 正木良明

    正木委員 まだまだお尋ねしたいことがありますか、時間が参りましたのでこれで終わりますか、要するに一九七二年の返還時において、ベトナム戦争が継続しているときには再協議するという条項が佐藤・ニクソン共同声明の中に入れられた、これは非常に重要な問題であって、大臣がおっしゃるように、また総理がおっしゃるように、一九七二年返還ということはもう既定の事実であるというふうに律してしまうと、わざわざどうしてその共同声明の中に再協議という条項を入れたのかということが、私たちにとっては非常に不可解なものになってくるわけであります。そういう意味において、再協議をするというところに非常に大きな問題点が含まれておる、そういう点から考えてまいりますと、今度のションソン証言には、なるほど一九七二年の沖繩返還時においては再協議しなければならない多くの問題が含まれておるということが、われわれとしてもうなずけるわけであります。そういう意味において、佐藤・ニクソン共同声明に対する解釈というものが、政府とわれわれとの間に相違があるのも当然のことでありまして、こういう点について、なお今後時間をかけて十分に究明をしていかなければならぬ、国民的な課題であるからなおのことそれをやらなければならぬ、このように私は考えておる次第であります。  ではこれをもって終わります。
  84. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  85. 曾禰益

    ○曽祢委員 今度のアメリカ上院の外交委員会委員会の記録をきのう午後、だいぶおそくなってからもらったので、一夜づけでもなるべく勉強して、日本の共同通信が報道した重要な点については一応見たつもりであります。  私がこの問題を重視する理由は、むろんこの共同声明そのものの解釈について、基本的に両国に食い違いがあったらたいへんですけれども、やはりアメリカ国務省としては、タカ派の議員さんにも、沖繩返還が大体日本の言っているような条件でできるということについては、ほかの条件は決して損じゃないという、タカ派を満足させるような説明をなるべくするという点もありましょう。逆に、わが外務大臣、総理大臣をはじめとして、どちらかといえばハト派の野党側に了解してもらうために、相当ハト派的と見られる説明をしておるということも、これは悪意ではなくて、そういうことはあり得ると思うのです。そういう説明ぶりがあまりにも食い違ったのでは、両国の意思の食い違いとして今後非常に危険な問題を残す、これを心配するがゆえに根掘り葉掘り検討してみた結果、どうもやはり若干の点について心配な点がある。いま同僚委員があげられた沖繩の七二年返還がおくれる場合も、これは理論的にあり得る。それからもともと両国の意思が、B52を、向こうは沖繩返還があっても使いたいだろうし、こっちは絶対に困る、いまでも困るのだけれども返還後はとんでもない。核兵器の再持ち込みは、向こうは協議する権利を留保しているけれども、こっちは協議されてもお断りだときまっておる。そういう意味で意思の違いというものは、お互いに認め合ったらあると思う。しかし、私が一番心配するのは、それよりも、以下申し上げる基本的な問題、つまり、たとえば共同声明及び首相のナショナルプレスクラブの演説は、どうも安保条約そのものの、これは変質かどうかについて問題はありますが、少なくとも重要な点における解釈について、従来と非常に違った解釈をしているというこの点ですね。これは、私はジョンソン次官の次の発言で明らかだと思うのです。これは私の訳ですから非常にフリーな訳ですけれども意味はおわかりだろう。まず「今日まで日本政府国民一般は、日本アメリカとの安全保障の協定は、日本自身の安全に関してのみ意味があるという態度をとる傾向があった。だが、今度の共同声明日本側は初めて日本の安全保障が韓国及び台湾の安全並びにこの地域の他の地区でアメリカが負っている義務と切り離せないこと、したがって在日基地の問題を日本自身だけの安全の見地でなく、地域全体の安全保障の関連で見ることになった。」いままでは全然われ関せずえんだったけれども、今度の共同声明で初めて日本の安全が韓国、台湾その他の地域におけるアメリカの義務と切り離せないこと、在日基地の意味というものが非常に違ったということをジョンソン次官ははっきり証言しているのです。同様にこれは同僚委員も指摘されましたが、「沖繩返還日本の安全保障の利害の拡大とは一種の取引である。」これはサイミントン議員のぎゅうぎゅう責めにあって、しぶしぶであるけれども、そういう取引だということを認めているわけですね。  第三に、「日本側が朝鮮、台湾に関して、沖繩のみならず、在日基地の使用を認めることは今回初めてだ。今日まで日本側は、在日基地は日本防衛のためにのみ使用され、他のいかなる目的に使用することもできないし、同意しないという、法律的ではないが、政治的立場をとってきた。」私はそのとおりだろうと思うのですね、日本政府は。  第四に、「理論的には、沖繩に関する限り、米国の行動は返還で縮少されるかもしれないが、同じく論理的には、在日基地についてわれわれの行動は拡大する。」こういう説明をしておるので、これは単に米国側説明である限りは、それはいいでしょうけれども日本政府の従来のとってきた解釈あるいは政治的態度ということが今度はもうすっかり変わったんだ、こういう趣旨でるる述べておるわけですね。私は、これは非常に重要な点だと思う。私自身はむしろ、一部の国民の、要するに今度の返還の約束は沖繩本土並みではなくて、本土の沖繩並みだとか、安保条約は質的にアジア安保に変わったんだという解釈は、私は必ずしもとらないのです。それは法律的には確かに外務大臣が言われるように、安保条約の第六条に極東のためにも駐留権を認めているのですから。ただし、その事前協議というものも非常に厳格に日本の基地は解釈している。そのときには沖繩という、いつでもかってに使える基地があったから、結局日本の基地から飛び立つということをいままで顕在化しなかった。しかし沖繩が一たび本国に入ってしまったときに、やはりどうもいままでみたいな基地の、極東への飛び出し基地としての問題、いままで潜在化しておった問題が今度クローズアップされたと私は考える。しかし少なくともこれだけ重大な従来の解釈の、政治的解釈の変革があったということをジョンソン次官は、これは自分の、言うならばタカ派説得の材料として決して悪い取引ではないという意味からであろうが、日本の政治的立場についてそういう解釈をしているのに、いや、そんなことはないのだ、全然いままでと同じだということは、私はすなおには受け取れない。ですから、それはそれでやはりきちんと、あとで申し上げるように、そのことは事前協議の際のイエスということに相当私は慎重でなきゃならないということに通ずるわけですけれども、少なくとも安保の質的変化でないとか、従来と全然変わらないというようなことだけでは、私は済まない問題提起があると思うのです。これについてまず外務大臣のお考えを伺いたい。
  86. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一が、安保条約性格や性質が変わったのではないか、また変わってきたとジョンソン次官が言っているという点で、四点ほどおあげになったわけでありますけれども、これは曽祢委員にわざわざ申し上げるまでもございませんけれども、そもそも安保条約自身が、この前文にもはっきりいたしておりますように「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」ということが前文の中に考え方の基本として書いてありますし、それから第六条の「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」云々云々、この点に触れた問題であると思いますから、政府といたしましては、安保条約一九六〇年の改定の際にこの点について考え、かつ表明いたしましたことと何ら本質的に変わっているところはない。というのは、昭和三十五年五月安保特別委員会における当時の岸総理大臣もこの点に触れまして、ちょうど今度の共同声明の情勢分析のくだりと同じような考え方がすでにそのときから明らかに表明されておるわけでございます。極東における国際的平和と安全ということと日本の平和と安全ということは全体として関連させて考えなければならない。極東の平和と安全が確保されないというと日本の平和と安全は確保できない。こう、ここから出発した考え方でございますから、私はこの点について本質が変わったというようなことは断じて考えておりません。また、これを裏づけるものとして、あとの御質疑にございましたが、結局それは事前協議に対するイエス、ノーの問題にも関連するというお尋ねでございましたが、やはり三十五年の安保特別委員会における当時の、やはり総理大臣の答弁にも、イエスと承諾することもあり、ノーと拒否することもある。同じく当時の藤山外相の答弁にも、日本の基地を使う場合には事前協議対象になる、したがって、事前協議であるからはイエスも言えるし、ノーも言える。さらに四十三年の三木、当時の外務大臣の答弁にも、国益擁護の立場に立って政府が同意したりあるいは拒否したりするわけである。まあ二、三取り上げてみますとこういうわけでございまして、これらは安保条約の本質、性格、その運営について、従来から一貫して日本政府が考えておりましたことと変わるところはない、政府としてはさように考えております。それ以上ジョンソン次官の答弁あるいは証言をコメントすることは差し控えますけれども、いま曽祢委員のお述べになりましたそのときの環境その他をも、あるいはジョンソン氏自身の気持ちといいましょうか、あるいは観測の見方の相違とかいう点があろうかと思いますけれども、私どもとしてはいま二、三申し上げたところで立証できるように、何にも変わっておりません。したがいまして、沖繩に対して返還と同時に安保条約並びに関連取りきめが変更なしに適用されるということでありますから、沖繩本土並みでございまして、それ以上とやかく言う必要はない、かように存じております。
  87. 曾禰益

    ○曽祢委員 どうも私自身、これはジョンソン氏も言っているのですけれども、法律的には駐留を許し、それが極東の平和のための駐留を許しているのですから、それからいっても日本だけの駐留でないことはもうわかり切っているんですけれども、実際上は事前協議、つまりこの場合は戦闘作戦行動に使う、これは実際問題として沖繩があったからそういうケースが起こらなかった。しかし日本側としては政治的には断わるのだということが主であったことは事実ですね。理論的の可能性からいえばイエスを言うこともあるが。ですからここは私は率直に、むしろジョンソンが言っているのは政治論としては正しかった、ただそれは、だから安保条約国会の審議をしないで質的にかってに変えたのはけしからぬと、私はそういう意見を言っているのじゃなく、しかしそういうものでやはり、ことに朝鮮の地域に対するわれわれの関心ということをある程度アメリカ話し合いしなければ、ほんとうに沖繩返還核抜き本土並み、早期ということは相当困難であったろうということは想像できることなので、やはりそういう一つの政治的取引だということは私は疑い得ないのじゃないかと思うんです。これは幾らやっても平行線ですけれども、私は、ジョンソンのそこに言っていることがもっともな点があるので、政府はその点について明確に国民に、なぜそういう解釈を変えてきたかということをはっきり言う責任があると思います。  それから第二は、したがって在日基地の意義も、やはりジョンソン証言ではこういうことばで言っております。「日本及び沖繩の米軍施設についての米政府立場は、日本沖繩の直接防衛というよりも、他の地域に対する約束を守る能力にかかわりがある。」さらにこれは非常に重大な証言があります。これは一一六七ページにありますが「われわれは日本の通常兵器による防衛に直接関係するいかなる地上または空軍の兵力も持っていない。」それでしかもこれのサブタイトルにちゃんと「US・メインティンズ・ノー・フォーセズ・フォア・デフェンス・オブ・ジャパン」アメリカ日本の防衛のために何らの軍隊を、部隊を置いていない。メインティンズ・ノー・フォーセズ。これは、私はやはりはっきりこれからの安保というものの性格がどういうものであるかということを、正確に国民にわかってもらう必要がある。従来、政府は、それこそ安保条約は文字どおりで、アメリカ軍の駐留は日本の防衛及び極東の平和と安全のためといういわゆる法律論だけで来られた。しかし、アメリカ証言しているのですよ。ジョンソンも、マギー司令官も、現在日本にあるアメリカ軍というものは、日本の直接防衛ではない、これははっきりと他の地域に対するつまりコミットメントのためにと変わっているということを言っているんですよ。これは、われわれはそういう意味安保条約アメリカ軍のこれからの駐留というものはいかなる意味であるか。これは沖繩のいわゆる政治的取引であったかどうかは別として、通常の、沖繩以外の他の本土の基地にある米軍の性質というものは変わっているのだということは、これはやはり正確にその点は国民に知らせなければいかぬと思うのです。この点はいかようにお考えでしょうか。簡単に御所見を伺いたい。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 簡単に申し上げるにしては、非常に重大なことでございますが、簡単にお答えいたしますと、私はやはりこれは安保条約の問題としては、第五条と第六条の問題になると思います。そして、一言つけ加えれば、狭い意味の第五条系統の日本列島のセキュリティーということからいえば、これはまさに日本の自衛隊が本来の任務としてこれに当たるべきである、かように考えます。その意味においてば、安保条約の米軍のアクティビティということは、ますます補完的になるものである。これはこちらもそういう認識でしかるべきであると思いますが、しかし、先ほど申しましたように、日本の安全と平和ということは、周辺の極東地域の安全と平和なくしては維持できないというのが政府の認識でございますから、この第六条の系統の考え方から申しますれば、アメリカ軍のプレゼンスあるいはアクティビティあるいはコミットメントというものが重要な要素である。こういう認識を私も持っておるつもりでございます。
  89. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは、何とおっしゃっても、在日米軍の性格は変わってきている。沖繩が本土に帰ってくるときに、沖繩におる軍隊はますますそういう性格になるでしょうけれども、現在の在日米軍はすでに日本防衛のあれじゃないのですよ。それは第七艦隊というものは、確かに支えです。しかし、在日の空陸のあれは、全部日本防衛ではないということをはっきり言っているんですから、これはやはりそういうような見解アメリカ側は言っているんだから間違いないと思うのです。私はその点は、日本の防衛と極東の防衛とのかかわりというものは認めます。しかし、米軍がある意味というものが変わっているということは、はっきり認めるのが私はほんとうじゃないかと思います。  議論になりますから次に進みますけれども、そこで、第三の問題と申しますのは、一番やはりこの安保条約の問題は、朝鮮、台湾との防衛にどう日本がかかわっていくかということに、最大の焦点が移っていると思うのです。そこで申し上げたいのは、この点です。次官は「今日まで日本のどの内閣も南朝鮮の防衛に日本の安全保障が関連しているということと、米軍が南鮮の防衛のために、日本の基地を使用することを許容するということをはっきり認める態度をとらなかった。」いいですか、日本のどの内閣も南鮮の防衛に日本の安全保障が関連しているということ、それから、米軍が南鮮の防衛のために、日本基地を使用すること々認めよう、このことをはっきり認める態度をとらなかった。しかし今度の共同コミュニケによってあるいはそれをふえん説明する総理のナショナル・プレス・クラブの説明によって、今度は「事前協議においては、頭からの肯定ではないけれども、なし得る限りイエスを言うということにひとしいところだということを共同声明は言っている。」いままでは全然ノーだ。今度はほとんどイエスと言わんばかりの点まで来ている。こういったことを言っているわけなんで、私はこれは、いままでのどの内閣もはっきりイエスを言わなかった。そのとおりだと思う。今度は総理大臣は、これはむしろ国内的にもはっきりナショナル・プレス・クラブでもまた本院における質疑応答のときも、相当はっきりと、韓国に対する武力攻撃があったならば、それはすみやかに云々というふうに言っておられるのであります。これはもうそのとおりだと思います。この点は何か御説明ございますか。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの御質問については、私先回りしてお答えしたような気がいたしますが、日本政府といたしましては先ほど当時の岸総理それから当時の外務大臣の答弁を引きましたように、日本としては周辺の安全ということと関連して日本の安全を考えなければならない。したがって事前協議の運用にあたってイエスもあるしノーもあるということを、私の前任者も次々に答えているわけでございまして、その点のところはちょっと事実の誤認が私はあるのではないかと思います。歴代の内閣云々ということ等については事実の見方が多少違っていた点もあるのではないかと私は思います。
  91. 曾禰益

    ○曽祢委員 そこで問題の中心は、何といっても核心はこれだと思うのですね。台湾と朝鮮。そこで私は朝鮮についても、武力攻撃があった場合に云々。これは一応引用ですが、確かに武力攻撃、一九五〇年型の本格的な武力攻撃があれば、これは国連の問題にもなりますし、世界世論が――そういうことはちょっとあまり考えられないのですけれども、現在の国際情勢から見て北鮮側がそういう意思でまた単独にそれを遂行するということはちょっと考えられませんが、もしそういう場合には日本の世論もやはり武力によって侵略戦争をやるというようなことに対してやはり防衛側に回るということにおおむね賛成すると思うのですね。しかし問題はそう簡単にすかっとした五〇年型の武力侵略が来たからやるのではなくて、いろいろゲリラがあるとか、さみだれ的に治安が乱れる、いろいろなことと、もう一つはやはりEC121型偵察機の問題とかあるいはプエブロ号みたいな何というか一種の国境紛争的な偶発的な、それがかりにアメリカの言うとおり北鮮側のヒット・アンド・ランで、公海、公空に出てきてそれをたたいてさっと引っ込んだ。それを行動がけしからぬと言う。けしからぬかどうかば別として、そういうことで直ちに報復するということから武力衝突が起こる。そういうのも全部武力攻撃だというふうに政府は考えておられるんじゃないと思うのですけれどもアメリカ側の期待があまりに今度ははっきりと、もうイエスと言うのも寸前のところまで来ているんだ。そこから先は何と言われても議員さんに、日本政府は必ずしもイエスと予約しているとはこれは当然言わないんですが、それと同然なくらいに、韓国に対する武力攻撃、あるいは台湾海峡において中共側が軍事的に――そういう能力がいまあるとも思わないし、海空軍をもって台湾に攻撃を加えるなんていうことはあり得ないと思うけれども、あった場合を想定すると、アメリカが防戦に立てば何でも無条件にそれを直ちにイエスと言うんだ。そういうあやしい危険なことも出ているんですよ。たとえばサイミントン議員が「国連の決定まで待っていればおくれる」――これは朝鮮の場合ですよ――「まず行動してから相談してよいか」。それに対してさすがに次官は「まず相談が必要だ。」ただし相談して、事前協議は必要だということは認めているけれども、その事前協議に対する総理大臣のかまえは、武力攻撃だったらいつでもイエスと言わんばかりでは、私は国民としてそこに危険を感ずる。武力攻撃にしてもいろいろな形があり得る。いわゆる陸上戦闘を中心とする本格的な戦争という場合と国境紛争的な場合とはよほど違って、慎重なレスポンスをやらないと、とんでもない。私はそこに問題の中心があると思う。その点についての基本的な態度が、従来ともあまり明確じゃないですよ。国連の決定があればいいというようなことで、国連の決定がない場合には、一体どの程度で日本がイエスを言うか、ノーを言うか。あなたはケース・バイ・ケースと言うけれども、理論的というか、基本的には軽々しくイエスと言うべきではないという基本の考えを貫いていただきたい。時間がないそうですから残念でたまらないのだけれども、ぼくは非常にいいことをやっているつもりなんだ、日本国民のために。だから関連してお尋ねします。これは同僚正木委員も触れられたところですが、ケース・バイ・ケースについてひとつお答え願いたい。つまり今度の事前協議、朝鮮、台湾等の事前協議のところでやはり相当心配な点があります。戦闘作戦行動で、こういう場合には事前協議ではないかというようなことについて一々このケースをあげていますから、これは必ずしもいままでの解釈どおりではないと私は思うのです。艦艇が戦闘作戦に向かう途中または帰途に日本基地を訪れる場合には事前協議の要なし。艦艇である場合には戦闘作戦行動に直接出ていってもかまわない。そうして血にまみれたエンタープライズが日本に帰ってくることをあたりまえだというセンスは、少し日本人の常識に反するのじゃないか。従来政府としては、日本を出航してから作戦命令をあとで受け取るのだというような、艦艇の場合には、飛行機のように待ったなしじゃありませんからと言いのがれをしておったのですけれども、艦艇が戦闘作戦に向かう途中に、または帰途に日本の基地を訪れる場合には、戦闘作戦行動に行く場合にも、戦闘作戦から帰る場合にも、艦艇の場合にはいつでも事前協議が必要ないという解釈は、私はどうも納得できない。  第二は、米軍機が日本から、または日本を経由して外国の基地に移り、そこから戦闘行為に携わる場合、これは事前協議の要なし。これは残念ながらいままでそういうことを言って、とにかく沖繩とか韓国に寄った場合には、そこであれが続かなくなるから戦闘作戦行動じゃないという解釈、これは非常に心配であるけれども、これは従来のあれと変わらないかもしれませんが、その点も確認してほしい。航空機の場合には、日本を経由してとにかく外国の基地に一たん移ってからの戦闘作戦行動ならちっともかまわないという解釈、これははっきりしていますよ。これでいいんですか。  それから第三は、公海上で困難に遭遇している艦艇または航空機に対する救援または護衛のための出動、これも事前協議の要なし。これは正木委員も指摘されたが、向こうさんも六九年の四月二十四日の本院本会議における総理の答弁を引用しているのですけれども、しかし総理のほうは、権利は別として、あまりエスコートなんかついてくれるなというほうが強かったと思う。事前協議の必要がないからと言っているうちに、救援に行ったものが実際に戦争への口火を切ってしまうということもあり得るので、そう簡単に護衛ならいいのだということを言うのは私は危険じゃないかと思う。そういう点で、いままでの解釈でいいかどうか。  以上の点と、根本にいま申し上げた朝鮮の事態に対してそう簡単に、武力攻撃をした場合にはすぐにオーケーだと言わんばかりのことは、もっと私はしぼって、はっきりした侵略の認定というようなことなしに、すぐイエスを言うということはいけない。いつでもノーだという態度も私は正しくないと思う。やはり侵略という問題に対して、国連が防御というような場合があり得るのですから、いつも必ずノーだと言うことは私はないと思う。しかし朝鮮の事態だけは、何でも武力攻撃があればイエスと言う態度は非常に危険だと思うので、この点についてお答えを願いたいのです。  あとB52だとかあるいは沖繩のあれが延びる場合、あるいは核兵器持ち込み等がありますけれども、これはいろいろもっと引用すると政府の痛いような言い方をしているところもございますが、しかしそれはもう時間の関係で私はできませんから、いまの朝鮮に対する武力攻撃というものをどういうふうにわれわれは限定していくべきか。それからいま申し上げたような事前協議対象になる場合、ならない非常に微妙な艦船及び航空機の出動について、向こう側の解釈がぴったり合うかどうか、その点に対するお答えを願いたいと思います。
  92. 愛知揆一

    愛知国務大臣 具体的な御質問ですから、なるべく簡黎に申し上げたいと思いますが、艦艇の寄港という観念で律せられる問題は事前協議対象にならない、これは従来からの了解でございまして、これを沖繩返還に関連して申しますれば、変更なしに適用するということになっておりますから……。
  93. 曾禰益

    ○曽祢委員 ちょっと待ってください。寄港ですけれども、普通の寄港と違うのですよ、ここで問題にしているのは。戦闘作戦行動に向かう場合、帰る場合。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 戦闘作戦行動で出撃をする場合におきましては、事前協議対象になりますことは明らかでございます。
  95. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは向こうが間違えていますね。これは重大ですね。そう書いてありますよ。よく読んでください、あとで。
  96. 愛知揆一

    愛知国務大臣 よく読んでおりますつもりです。  それから一たん他の地域に飛行機その他が移駐いたしまして、そこから発動する場合は事前協議対象にならない。それから公海上の護衛という点、これも事前協議対象になりません。これも従来のとおりでございますが、先ほど私もことばが足りませんでしたけれどもEC121の場合には、アメリカ側と直ちに接触をいたしまして、そうだからといってこれが拡大したり紛争が大規模になる端緒になるようなことにならないようにということの申し入れをいたしましたことも、当時国会を通じて明らかにしているところでございます。  それから朝鮮半島の緊張の問題でございますが、これは従来から御趣旨においては同じだと思いますが、政府見解としては、北側から組織的、計画的な侵略とみなされるような攻撃が加えられた場合、かつ国連の関係もございますから、これは国連軍としてどういう態度をとるかということに関連いたしておりますが、いずれにいたしましても、これは休戦協定に違反し、かつ組織的、計画的な侵略という場合に、これに対処することが日本国益上いかに関連があるかということによって、日本のイエス、ノーをきめるべきものである、これが政府見解でございます。そして同時に、この点もまことにごもっともだと思いますが、そういう事態は起こらないことを期待しておることも、もちろんでございます。
  97. 曾禰益

    ○曽祢委員 時間がありませんので終わります。
  98. 田中榮一

    田中委員長 松本善明君。
  99. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に手ぎわよく聞くつもりでありますので、簡潔にお答え願いたいと思います。  昨年の暮れに日米共同声明が発表されましたときに、私たちの党ではすぐに幹部会の声明を出しまして、これは沖繩返還をてこに日本全土を朝鮮、ベトナムへの侵略基地に仕上げる新しい取りきめだという趣旨声明を出したわけであります。ところが今度の、サイミントン委員会でのジョンソン国務次官などの証言が発表されてみますと、当時伝えられましたジョンソン国務次官背景説明、これが公のものになっておる。政府のほうからいただきました資料によりますれば、一一五九ページあたりでありますが、日米共同声明内容説明するには背景説明を使うのが最良の方法であるという趣旨の表現がございます。そしてジョンソン氏自身がこの背景説明を使いながら証言をしておる。という意味で、これはますます私たちの指摘が非常に正しかったということを確信するわけであります。ところが、外務大臣のこの委員会での答弁をお聞きいたしましても、基本的にこれは狂いはない、日本政府の考えと違いはないということをお聞きしますと、私たちの指摘がますます正しかったというふうに思うわけでありますけれども、幾つかの問題点について、これでいいのかということをあらためて確かめておきたいと思います。  第一は核でありますが、核については核持ち込みの権利の問題と、それから政策の問題、いわゆる法理上の問題と政策上の問題ということで外務大臣は御説明になりましたが、権利の問題についてはもうすでに大体大臣のお話でわかっておるつもりですけれども、もう一度念のためにお聞きしておきます。  これは再々言われたように、核持ち込みの禁止にはなっていないということでございますね。そうすると、ジョンソン次官がサイミントン委員会で、共同声明第八項は、特別の事態に対しアメリカがもし必要と認めるなら日本協議するというアメリカの権利をきわめて慎重に留保しており、しかもこのことが核兵器に適用されることは明白であります、こう言っておる。そういう意味での核持ち込みの権利が慎重に留保されている。こういう点については異論がないのかどうか。政策上の問題についてはあとからお聞きしますので、核持ち込みの権利という問題についてだけ、これでいいのかどうかという点だけまずお聞きしたいと思います。
  100. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは先ほどもお答えいたしましたように、核持ち込みということについては、この条約上は、アメリカ側事前協議を申し入れをすることができるということになっていることはいまさら申し上げるまでもないことでございます。事前協議を申し入れることができることにはなっております。
  101. 松本善明

    松本(善)委員 それから核政策の問題であります。外務大臣は、この委員会でもそうでありますが、日本政府の核に対する政策については非常に深い理解を示しているから、日米間において安保条約下で核持ち込みというのはあり得ないという趣旨のことを再々言われておるわけであります。しかし、ジョンソン次官はこういうふうに言っております。この点について万一緊急事態が発生して、この問題をアメリカが考慮することになる場合、アメリカが事態を深刻に受け取り、他方日本アメリカと同じ深刻とは見ないという想定に必ずしも立ちません、アメリカが深刻に見た場合には日本も深刻に見るだろう、こういう想定を持っている、ということを言い、さらにまた、第八項にいう協議日本の答えがいかなる場合においても常にノーであることを前提としているわけではありません。こうはっきり言っておるわけです。これは日本が核持ち込みについて必ずしもノーばかりは言わない、こういうふうに期待をしているということでありますけれども、このジョンソン次官の理解は間違っているというふうに言うことができるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  102. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは両国首脳合意いたしました第八項で私は明瞭であると思います。要するに、米国大統領としましては、日本国民の願望に立った日本政府の核に対する政策を十分よく承知しておるということが両国合意の中にはっきり出ておることによって、われわれとしては核抜きということが十分貰徹できている、かように考えております。
  103. 松本善明

    松本(善)委員 私はこの共同声明八項についても知っておるつもりでありますし、いままでの政府説明についても知って議論をしておるつもりであります。このジョンソン次官の証言が、日本は必ずしもノーでない、ノーであるということを前提にしているわけではないということをはっきり言っておるわけです。しかも外務大臣は、基本的な点についての食い違いはない、狂いはない、こう言っておられるならば、これはジョンソン次官の言っておることを根本の考え方としては認めておる。もっと突っ込んで言いますならば、この問題についての論議の中で木村副長官は、核をまくらに討ち死にするわけにはいかない、いざというときにはそういうこともあり得るという議論があったことは、外務大臣御存じのとおりだと思う。この趣旨ジョンソン次官は向こうで証言しているわけです。これが間違いであるならば、当然に抗議をして、日本の核政策はそういうものではないということを言うべきであります。そういうことを言わないということは、ジョンソン次官のこの趣旨の、日本は必ずしもノーではないということを認めたということになると思う。この点についてジョンソン次官の発言はいいのかどうか、これについて特にコメントする必要はないのかどうか、この点についてだけ伺いたいと思います。
  104. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点については前国会の予算委員会でも総理みずからが明快に答えられているとおりでありまして、両国首脳合意をして、そして共同声明をつくって、第八項に明確でございますから、この点についてはそれ以上申し上げることはございません。従来からの政府態度というものでこれほど明確なことはない、私はかようにお答えいたしたいと思います。
  105. 松本善明

    松本(善)委員 予算委員会の論議はみんな知っておりますから、総理が言ったことは知っておりますよ。しかし新たに外務大臣自身が、この全文はいま見ているところだということでしょう。その中で、公のものとしてジョンソン氏の背景説明が明らかになっているわけですよ。そしてその中では、核持ち込みについては日本はノーではない、必ずしもノーではないと言っているわけです。その時点について新たな説明がなされなければならないはずであります。いままでのことでもう済んでおるというならば、新たに何で外務委員会を開く必要がありましょうか。この点についてコメントする気はないのか、抗議する気はないのかという点だけお聞きしたいと思います。
  106. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもお答えしましたとおり、大事なことは、法理論的にいって、核持ち込みということについては事前協議対象にしなければならないのだということを米側がはっきり公開していることである。このことによって、私は十分基本的な考え方に狂いはないと申し上げているわけでございます。
  107. 松本善明

    松本(善)委員 だから私は、いわゆる法理論上の問題と核政策の問題と分けてはっきりお聞きしているわけです。外務大臣は答えに窮されてまたもとの、いわゆる核持ち込みの権利という、このこと自身たいへんな問題ですけれども、そこに戻られたように思うわけです。私の聞いておりますのは、ではあらためて聞きますが、ジョンソン次官のこういうような期待はむなしい期待なのか。むなしいことを、虚言を弄しておるのか、こういうふうに言っていいのかどうか、お聞きしたいと思います。
  108. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本国としては、米側と対等の交渉をやって首脳同士の合意ができておるわけであります。同時にこちらは、いわば青天井のもとでこれほどオープンに、内外に対して質疑応答が繰り返されているわけです。日本の責任者の言うことを私は日本人として理解していただきたいと思います。
  109. 松本善明

    松本(善)委員 結局外務大臣は私の質問に正面からはお答えにならなかった。私はこれは、ジョンソン次官の言った、日本は必ずしもノーではないという態度を確認したというふうにしか考えられないと思います。時間がありませんので、先に進みたいと思います。  この外務省の資料の一一八三ページあたりでありますが、韓国防衛に関してジョンソン氏は「この共同声明日本側が言おうとしていることは、明確な表現ではないけれども、われわれが日本側と韓国防衛について協議をしたならば、彼らの答えはイエスであろうということにまでほとんど確実に近づいている。」これは新聞でも報道されておる部分でありますけれども、大体そういう趣旨であります。確実にイエスという方向に近づいている。これはいわゆる総理大臣のナショナル・プレス・クラブでの演説では、「前向きにかつすみやかに」ということで、国会でも盛んに論議された部分でありますけれども、これについてジョンソン氏は、イエスであろうということまでほとんど確実に近づいているということを言っているわけです。これについて愛知外務大臣は、これもそのとおりだというふうにお考えになりますかどうか。この点を伺いたいと思います。
  110. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま曽祢委員の御質問にもお答えしたとおりであって、朝鮮半島におけるどんな事態が予想されるか、またそういう事態は予想したくもありませんが、その事態がどんな態様で攻撃や恐怖がくるかということ、そしてそれと日本の安全とがどういうふうな観点で見とられるかということで日本態度は決定さるべきものであります。日本としての態度はそういう態度であるということが何よりも大切なことであって、それ以上コメントする必要は私はないと思います。
  111. 松本善明

    松本(善)委員 大臣、短い時間でありますので簡潔に国民に事態を明らかにするという点でお答えいただきたいと思うのです。サイミントン氏の全部イエスというふうに見ていいかというような趣旨に対してジョンソン氏は、そう言っちゃいけないということで一応否定しながら、しかし彼らの答えはイエスだろうということにまでほとんど確実に近づいているというふうに言っているわけです。いま外務大臣は全部イエスというわけじゃないんだということを言われた。そのことは聞いているわけではないわけなんで、ほとんど確実にイエスだという方向にジョンソン氏は言っているわけです。これはこれでいいんですね。これについては特にコメントや抗議をする必要はない、こういうふうに言っていいのかという点を伺っておるわけであります。この点についてお答えをいただきたいと思います。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは万々一起こるかもしれない事態によって、それこそケース・バイ・ケースに日本としては態度を決定すべきことであって、それ以上だれがどういうふうな願望を込めての意見を表明しているかどうかということは、これはもう日本国益という至高の目的によって日本として判断すべき問題であると思います。
  113. 松本善明

    松本(善)委員 どうもやはり大臣お答えを伺いましても、真正面からお答えにならない。これは私どもが言いましたように、今度の日米共同声明というのは安保条約を非常に危険なものに変質をさしていくということがきょうのわずかな質問の中でも明らかになったというふうに私はいわざるを得ないと思います。ほんとうならばもっともっと論議をしなければならないはずでありますけれども愛知外務大臣の時間の問題もありましょうし、私ども承服するわけではありませんけれども、あらためて詳細にこの問題を論議をする義務を外務委員会国民に対して負っておるということを申しまして、外務大臣に対する質問はこれで終わって、残りを若干アメリカ局長条約局長に伺いたいと思います。  条約局長でもアメリカ局長でもけっこうなんですが、このジョンソン演説の中で引用されているその佐藤首相のナショナル・プレス・クラブでの演説についての解釈の問題、これはどういうふうに外務省は解釈をしておるのかという点であります。ちょっと読んでみますと、いまの部分に関係するわけですが、「特に韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従つて、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」この「前向きに」という部分はかつてわが党の不破議員もこの英文ではポジティブリーだという点を指摘をして外務大臣と論議をしたのでありますが、この訳ですね、ポジティブリーという訳を含めてこの訳をつけたのはどこがつけたんですか。
  114. 東郷文彦

    ○東郷説明員 総理大臣の演説でございますから、もとより日本語で作成いたしましてそれをわれわれ事務当局が最もその日本語の意味に即した英語ということで考えてつくったものであります。
  115. 松本善明

    松本(善)委員 すると日本側でつくったということですか。
  116. 東郷文彦

    ○東郷説明員 そのとおりであります。
  117. 松本善明

    松本(善)委員 これは肯定的にとか積極的にとかこういう普通は意味ですね。そうすると、すなおにポジティブリーというふうに訳された場合には、これは米軍の施設、区域使用に対してイエスという方向にという意味にとるのは当然だと、こう思うのですけれども、これは英文の読み方として私は当然だと思いますけれども、その点についてはどうお考えになりますか。
  118. 東郷文彦

    ○東郷説明員 これはどうも前向きにという日本語がどういう英語にしたら一番いいかという問題かと思いますけれども、いま先生がおっしゃったように肯定的にという意味であるとすれば、これはポジティブリー――いま英語の話になりますけれども、ポジティブという字よりもアファーマティブとかいろいろな字があると思うのでありますが、われわれの中におきましていろいろ考えた結果この英語が最も前向きにというのに近いということで、ああいう字にいたしたわけでございます。
  119. 松本善明

    松本(善)委員 これはネガティブリー、否定的にとか消極的にとかいうのに対することばでしょう。そうするとやっぱり肯定的に、積極的に、そういうふうな意味アメリカがとったとしても、これはあなたのほうの考え方は間違いだというふうにはいえませんね。どうでしょう。
  120. 東郷文彦

    ○東郷説明員 われわれとしては、ポジティブリーという英語を通じまして前向きにという意味に向こうが、これを読んだ人がとることを当然期待するわけでございます。
  121. 松本善明

    松本(善)委員 それはあなた外交文書でしょう。それはもしもっと微妙な表現にしなければならないのならば文章そのものを変えなければいかぬ。ポジティブリーというふうに訳した以上はそれが通常受け取られるであろうということを想定し、覚悟をし、そして訳していなければならないはずですよ。この訳については外務大臣をはじめ政府首脳が当然に了承をしてつくったものでしょう。そうではありませんか。
  122. 東郷文彦

    ○東郷説明員 外務大臣も総理もむろん御承知でございまして、ポジティブリー、この日本語のほうの前向きにという字も御説明申し上げるまでもなく非常に微妙な字でございまして、これをアファーマティブというふうな字にすれば非常な誤解が生まれる、最もいいのがポジティブということで、われわれ事務当局からそういう字を御進言申し上げたわけでございます。
  123. 松本善明

    松本(善)委員 多少意地の悪い質問かもしれませんが、このポジティブリーにノーということはありますか。
  124. 東郷文彦

    ○東郷説明員 それはポジティブリーという字のその使う場合によってでございますが、いまの話とは別でありますが、(松本(善)委員「ここの部分で」と呼ぶ)ここの部分では――私の申し上げようとしたのは、別の場合に非常に力を込めてノーと言ったという場合にポジティブリー・ノーという表現があり得るかもしれませんが、この場合にはポジティブリー・ノーということは意味をなさぬと思います。
  125. 松本善明

    松本(善)委員 そういう子供だましのようなことを言っちゃいかぬですよ。このところはこういう文脈になっているわけでしょう。「このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに」でしょう。このような認識というのは前のところの「韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。」と、こういう認識に立ってこの「前向きに」ということになっておる。この「前向きに」、ここのところがポジティブリーになっているのです。このポジティブリーにノーということがあるのかというのですよ。
  126. 東郷文彦

    ○東郷説明員 私はいまちょっと聞き間違いましてポジティブリー・ノーという副詞にお使いになったと思ったので先ほど申し上げたようなわけでございますが、ここでポジティブだということはすなわちすべてノーだという意味にはそれはとりょうがないと思います。
  127. 松本善明

    松本(善)委員 ノーというわけにはいかない……
  128. 東郷文彦

    ○東郷説明員 全部ノーだというふうにとり得る余地はないと思います。
  129. 松本善明

    松本(善)委員 私のもうちょっとお聞きしたいのは、この点について予算委員会では総理大臣が、前向きにノーと言うこともあるんだ、前向きにイエスもあるんだ、こういう答弁をしていられるわけです。この背景説明を全部ずっと見てみますと、これはまことに人を食った、英文と対照して考えると全くナンセンスな答弁なんです。だからあなたにあらためてポジティブリーにノーと言う、そういうことはこの文章の中であるのだろうか、ということを聞いているのです。もう一回お聞きしておきたいと思います、英文の解釈上、そういうことはあるのか。
  130. 東郷文彦

    ○東郷説明員 いまどうもことばの問題ばかりになりましたけれども、ポジティブリーノーということでしたら、先ほど申し上げたように、えらい力を込めてノーと言うことになるかもしれませんが、総理の御答弁でポジティブリーイエス、ポリティブリーノーというようなことは私ちょっと覚えておりませんけれども、ともかくすべてノーだという意味は出てこないと思います。
  131. 松本善明

    松本(善)委員 総理の発言を否定をするということになるから、東郷局長としてはなかなかすっきりした答弁はできないと思いますけれども、この論議を聞けば、多少英語のわかる人はとんでもないことを言っているということは一目瞭然だと思うのです。  だから、私はこの程度にしておきますが、もう一つ伺っておきたいのは、七二年返還がずれ込むかどうかということに関係をして、沖繩返還交渉内容がどうなるのか。この返還交渉について日本が全部アメリカの要求をのめば、これは七二年返還だ。のまなければどうする。こういうことに使われることもある。そういう意味返還交渉の中身は非常に大事なんですよ。いま返還交渉対象になっている問題点というものを列挙してくれませんか。
  132. 東郷文彦

    ○東郷説明員 将来できるであろう返還協定の中身になるような事項は、これはきわめて大ざっぱに申し上げれば、小笠原返還協定に盛られた事項、奄美返還協定に盛られた事項、これらの事項になると考えます。ただその中身の量、場合によっては質もあるかもしれない。もっぱら量が非常に違うので、これを同列に論ずることはできませんが、項目としては大体同じようなことになるかと思います。ところが沖繩返還の場合には、ただそういったような協定のみならず、返還に伴いあるいは返還後、いろいろな、たとえばいわゆる沖繩県づくりとか経済政策をどうしていくかとか、つまりそこで経過措置も要るでありましょうし、そういうことが全部並行していかなければなりません。ですから、現在われわれ並びに総理府その他関係省と一緒にやっておりますことは、単に返還協定の軸をつくるというのみならず、非常に内政各般にわたって複雑、多量なことを準備しておるわけでございます。
  133. 松本善明

    松本(善)委員 これは協定の中に入るかどうかは別問題として、いま協定をつくるについて交渉している問題点ですよ。さっきの外務大臣の話では、日本政府は毎月一回駐日大使とやっているわけでしょう。そこでは一体何を話しているのか。どういう項目を話しているのかということを知りたいのですよ。どういう項目をやっておりますかということです。
  134. 東郷文彦

    ○東郷説明員 たとえば請求権の問題あるいは地位協定適用上生ずべき問題、それから沖繩返還になりますれば、また沖繩県民に関しては日本のほうのいろいろ措置もございますが、沖繩に残るアメリカ人その他第三国人、こういう人たちの扱いをどうするか、こういうことも当然問題になるわけでございます。いまの請求権というような問題にしましても、たとえば講和前の補償漏れとかあるいは軍用地の復元補償、こういうことも一口で申せば簡単でございますけれども、その実態は、これは総理府はじめいろいろ整理してわがほうの立場をつくっておるわけでございますが、正確な資料としてなかなかそろえにくい面もございます。したがって、全体の交渉というのは小笠原その他の場合のように簡単に進んでおらぬというのが現状でございます。しかし、事の大きさにしましては、日米間でも、私から見ても、あるいは大臣も申されますように、順調に進んでおる、こういうことでございます。
  135. 松本善明

    松本(善)委員 順調に進んでおるということじゃなくて、項目を列挙してほしいのですよ。いま話していただいたのは、大項目としては請求権問題、地位協定、それから沖繩に残る外国人の問題ということですね。ほかに何がありますか。
  136. 東郷文彦

    ○東郷説明員 例としまして、民事裁判、刑事裁判、現在まで米民政府裁判所あるいは沖繩裁判所でやっておりますものをどう扱うか。ただその例でもおわかりになりますように、これはむしろアメリカとの交渉ごとという面と同時に、現在まである琉球政府を含めてのアメリカ側のやった裁判をどうするかというような、これは日本側のいろいろな問題がありますので、これについてどうするかというのが、返還交渉というよりも沖繩返還に伴う日本政府準備なりなんなりということになるわけでございます。よく御承知の資産の引き継ぎという問題もございますが、これは日米の事務当局においてどういうものがあるか、どれが日本にとって引き継ぐべき価値があるのか、有償であるとすればいかなる評価をすべきか、そのような技術的作業を進めておる段階でございます。通貨をどうするかという問題も当然ございます。地位協定の適用ということは、先ほど申し上げましたけれども、その中におきましては、共同声明にも書いてございますように、安保条約の目的に従って必要な施設、区域を提供する。しからばどういう施設、区域を提供するか。あるいは労務の関係におきまして、これは返還後、当然われわれも少なくとも間接雇用ということで考えておりますが、それを円滑に実現していくような、これも日米双方でいろいろ準備が要ると思います。当面いままでいろいろ事務的にも話しております問題のおもなところは、そういうことがあります。
  137. 松本善明

    松本(善)委員 全部詳しくやるわけではありませんが、ちょっとその態度をお聞きしておきたいのですが、請求権問題については、講和発効以前の問題は全部放棄をするという態度に出ておりますが、講和発効後、サンフランシスコ条約発効後の問題についてはアメリカに請求する、こういうことでやっているのですか。その態度はどうなっているか。
  138. 東郷文彦

    ○東郷説明員 これは山中長官もかつて沖特でおっしゃっておられたかと思いますが、前の問題としても、現実に沖繩には講和前の見舞い金をもらっていないという問題があるわけでございます。これは請求権であるかどうかという問題は別としまして、この問題を返還までにどうしたらいいかという問題は存在しております。  それから一般的に返還のときまでに取るべきものは取る、補償させるものは全部補償させるということで、きれいにして返還の日を迎えなければならぬわけでございますが、先ほど申しますように、ではきれいにすべきものは何かということで、こちらのほうにもまだこれこれという資料が完全に整理されているとまでは申しきれませんので、その辺の作業が、私の口から申すのもいかがと思いますが、たいへん手がかかるわけでございます。
  139. 松本善明

    松本(善)委員 そうしますと、この請求権問題については、どのものが解決済みになっているかどうかという判断によって非常に変わってくるわけですが、その解決済みになっているものはどれで、どれだけ請求するのかということについての基本的な資料はまだできてないという状態だ、こういうふうに伺っていいのですか。
  140. 東郷文彦

    ○東郷説明員 今日の段階ではさように御了承願いたいと思います。
  141. 松本善明

    松本(善)委員 それからもう一つ。地位協定について論じているというのは、地位協定を変えなくて済むか、そのままでいいのか、それとも変えなければならぬのかという問題について論議をしている、こういう意味ですか。
  142. 東郷文彦

    ○東郷説明員 これは共同声明にもございますように、安保条約関連取りきめそのまま適用する。地位協定はむろん関連取りきめの中の一つでございますので、地位協定はそのまま適用するということでございます。
  143. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、これが交渉内容になっているというのはどういう意味なんですか。そのまま適用するということであるならば、交渉内容になっているということにはならぬと思うのだけれども……。
  144. 東郷文彦

    ○東郷説明員 先ほども申し上げたと思いますが、沖繩返還でわれわれのやっております作業は、対米交渉ごとだけでないわけでございまして、日本の中でいろいろ措置することもあるし、また両方で準備していくということもあるわけでございます。例を労務問題にいたしますれば、地位協定をそのまま適用する。いわゆる本土並みということで、まあそれまでの問題もございますけれども返還の日からは少なくとも当然に間接雇用でなければならぬという点では基本的に何ら問題ないわけでございます。これは返還協定交渉ということよりは、返還のときに支障なく実現していくためにいろいろ相談し、あるいは、交渉というのはちょっと大げさでございますけれども、うまくできるように準備を進めていかなければならぬ、そういうことがあるわけでございます。
  145. 松本善明

    松本(善)委員 もっと聞きたい点もありますが、このくらいにしておきます。  それからもう一つ、資産引き継ぎの問題です。これは私どもは無償で引き継ぐべきだというふうに考えているわけですが、ガリオアについて、これを返す必要はないのだという考えは政府の考えですか、それともそうでないか。
  146. 東郷文彦

    ○東郷説明員 これは前にも外務大臣あるいは大蔵大臣もおっしゃっておると思いますけれども、ガリオアそのものとして債務性を認めて返還するということは考えておりません。しかし、申すまでもなくそのお金がいろいろな形で沖繩の中で今日まで資産になってあるものもあるかと思います。それらの扱いについては、先刻申しましたように現に財務当局で検討中でございます。
  147. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ。すると引き継ぐ場合に、買い取るという基本は変わらないわけですね。
  148. 東郷文彦

    ○東郷説明員 有償で引き継ぐことが妥当であると認めるものについてはさような取り計らいになると思いますが、その点も現に財務当局間で検討中でございます。私も全部ただというふうには考えておりません。
  149. 松本善明

    松本(善)委員 最後に一つジョンソン次官の証言の中でこういう部分があるのです。あなたでわかれば答えてもらいたい。「日本政府は国際平和維持軍のなかで、ある役割を果たすことを考慮する用意があることを表明している。」という部分があります。これは何をさしているのでしょうか、どういうことがあったのでしょうか。
  150. 東郷文彦

    ○東郷説明員 これは私には向こうが具体的に何を考えて言っておるかわかりません。
  151. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  152. 田中榮一

    田中委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後三時六分散会