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細見政府委員 最初の、
韓国との
租税条約の、ほかの
租税条約と違っておる点につきまして、私実際に
交渉の衝に当たりましたので、這般の
事情について私から御
説明申し上げておきたいと思います。
韓国の
租税条約が
OECDモデルと違っております表現を使っておりますのは、御
承知のように総括主義と申しますか、俗にエンタイアと申しておる
方式で
条約を
締結いたしております。御
承知のように国際的に発生いたしまする二重
課税を
防止する方法といたしましては、いずれにしましてもその国に源泉のあるあるいはその国の
支店なり事業所なり
企業活動に帰属する
所得をその国で
課税し、一方の国はその部分について
税額控除なりあるいは
課税所得から除くというようなことをやることによって二重
課税を排除するわけであります。
そこで、その二重
課税を排除する方法に二つのプリンシプルというようなものと申しますか、伝統がございまして、アメリカ型の考え方と申しますのは、特定の恒久的施設がございましたときには、それに帰属する
所得と申しますか、それに
関係する
所得は全部総括して、その恒久的施設のある国において
課税権を認めるという考え方をとる。これを総括主義と申すわけです。
一方、帰属主義、アトリビュータブルと申しますか、帰属主義によりますと、その恒久的施設なりあるいは事業所なりの事業活動にいわゆる帰属する
所得を、その恒久的施設のある国が
課税するというプリンシプルをとるわけでありますが、先ほど申しました総括主義ということになりますと、何もかもその総括主義で
課税できるわけじゃなくて、総括主義をとりましても、その相手国におきまして、恒久的施設のある国におきまして
課税できますものは、その国に源泉のある
所得に限られるわけであります。したがいまして、源泉
規定というものが入ってくるわけであります。そのいわゆる
エンタイア方式で源泉
規定を入れた型が
一つ。それからアトリビュータブルと称します帰属主義によりますと、その帰属する
所得と申しますものが特別な形の帰属
所得であってはならないわけで、御
承知のようにこれに独立
企業原則という名前をつけまして、つまりその相手国におきます
企業が全く独自な
企業、一個の独立した
企業として考えたときに、その
企業に帰属するであろう
所得を帰属させるという形になりますので、したがいまして、アトリビュータブルという
方式をとりますときには、一方では独立
企業原則というのを入れまして補完をしておるわけです。今回とりましたものは、いま申し上げました総括主義と源泉
規定を入れて、それぞれの国に源泉のある
所得というものを、どういうふうに源泉を分け合うかということを明らかにしてきめるというやり方であります。
後進国と申しますか、
日本もそうであったのでありますが、
最初の段階は何か
租税帰属主義といいますか、あるいは独立
企業の
原則というようなことを申しますと、取り漏らしの
所得が出るのではないか。何か総括主義といっておりますと、すべての
所得がかぶさって取れるという感じがいたしまして、日米
条約は御
承知のように総括主義になっておるわけであります。それから
日本の国内法も総括主義の国内法を
規定いたしておるわけであります。そういうわけでありまして、
韓国は
日本の国内法のたてまえをよく知っておりまして、
日本の国が総括主義で
租税条約を結んだからといって何ら問題がないのだから、総括主義というたてまえで
条約を結んでほしいということになったわけであります。
そこで総括主義になりますと、いまの、どちらの国に源泉のある
所得かということを非常に明確にきめなければならないということで、
議定書とかあるいは交換公文とかによりまして、その
所得について厳密にどちらに源泉があるかあるいはまたその源泉をどういう割合で分け合うかということにしたわけでありますが、
韓国との間におきましては、一般的に申し上げまして、経費によって分け合おう、およそ
企業活動が利潤を生みますときには、必ずそこに経費といいますか、コストといいますか、事業活動といいますか、そういうものがあって、それの反射として
利益が出てくるわけでありますので、
韓国との間には経費主義、経費の額によって
所得を分け合おうということにいたしておりますので、
課税の
原則といたしまして、私どもとしては
相互に合理的な公平な源泉の分け方になっておる。したがって総括主義によりましても事業活動に関する限りは何ら問題がないわけであります。そこで投資活動が行なわれる、つまり
現地の恒久的施設と
関係のない事業、投資活動がかりにあったといたしましたときに、それをどうするかというのが、総括主義そのままでありますと、そういう本社が直接行なっておるような投資活動も、その恒久的施設に帰属さして
課税させるということになるのでありますが、日韓におきましては、そこに実質的関連のある投資ということを
条約に入れておりますので、これも本社が
関係なしに投資いたしておるようなものについては
韓国では
課税権が生じない。その恒久的施設、
支店が自分の資金を出していろいろな投資活動を行なっておる、それは合算される、そういうことにいたしております。
最後に残ります帰属主義と総括主義との違いということになりますと、これはいろいろその他の
所得が何らかの形でウインドフォール的に出てきた場合に、それは総括主義でありますと相手国の
課税になり、帰属主義でありますと事業活動に合理的に帰属いたしておりませんので
課税権がないというようなことが違いとして出てくるわけでありますが、総括主義、帰属主義ということだけでいたしますとかなりの差になりますが、そこに一方において源泉主義の源泉の
規定が入り、一方に独立
企業の
原則が入ることによりまして、いずれも
課税所得を
相互に二国間で分け合うということに関しては、それなりに一貫した考え方になっておるわけでありまして、日米の
方式をとるかあるいはOECDの
方式をとるかという違いでございます。そういうわけで特にどちらに有利、どちらに不利ということではない。ただその場合総括主義という名前が非常に魅力ある名前だという感じはいままで
韓国側で持っておられたようであります。