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1970-05-08 第63回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月八日(金曜日)     午後二時二十五分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 大久保直彦君       石井  一君    鯨岡 兵輔君       小坂徳三郎君    中山 正暉君       野田 武夫君    福田 篤泰君       村田敬次郎君    山口 敏夫君       豊  永光君    堂森 芳夫君       楢崎弥之助君    松本 七郎君       中川 嘉美君    樋上 新一君       永末 英一君    不破 哲三君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   曽祢  益君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   永末 英一君     曽祢  益君     ————————————— 五月七日  世界連邦建設に関する請願田中六助紹介)  (第七一二四号)  中国渡航制限撤廃に関する請願安宅常彦君  紹介)(第七五四〇号)  日米安保障条約廃棄等に関する請願浦井洋  君紹介)(第七五四二号)  同(小林政子紹介)(第七五四三号)  同(田代文久紹介)(第七五四四号)  同(谷口善太郎紹介)(第七五四五号)  同(津川武一紹介)(第七五四六号)  同(寺前巖紹介)(第七五四七号)  同(土橋一吉紹介)(第七五四八号)  同(林百郎君紹介)(第七五四九号)  同(東中光雄紹介)(第七五五〇号)  同(不破哲三紹介)(第七五五一号)  同(松本善明紹介)(第七五五二号)  同(山原健二郎紹介)(第七五五三号)  同(米原昶紹介)(第七五五四号)  同(青柳盛雄紹介)(第七五五五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑時間は、理事会で協議いたしましたとおり、自由民主党三十分、日本社会党百六十分、公明党六十分、民社党五十分、日本共産党二十分といたします。  なお、関連質疑につきましては、各派の割り当て時間の範囲内におきましてこれを許すことといたしますので、各位の御協力をお願い申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本三十次君。
  3. 坂本三十次

    坂本委員 総理に対しまして、私は日中問題に限りまして御質問を申し上げたいと思います。  この間もある世論調査などを見ておりますと、中国は暗くて冷たくて、そして強い国だ、何だか近くて遠い国だ、だけどもやはりこれは日本の一番近いところにあるんだし、それから、やはり将来仲よくしていけば有無相通ずるところも大きい、だからやっぱりこの中国国交を正常化しなければならないという人が大多数でございました。中国というとすぐ大陸中国だと思い込む人もほとんどだというような世論調査が出ておりました。国連に入れたほうがいいんじゃないかというような人は七五%の数字にものぼっておりました。これはやはり日本人の素朴な考えであって、私は深く傾聴すべきところがあろうかと思うわけでございます。  そこで総理に、日本中国に対する基本姿勢というものをお尋ねいたしたいわけでございますが、七〇年最大の外交の課題といたしまして、向こうが多少何と言おうと、一歩踏み出して、積極的に取り組もうとなされておられるのでございましょうか。あるいはまた、相手のあることであるから、国連のこの大勢を見きわめたり、あるいはまた自由陣営というのは、やはりわが国益にとっては大切な陣営でございましょうが、この自由陣営の動向などに大勢順応をいたしまして、自然と落ちつくべきところに落ちつこうとなされておられるのでございましょうか、積極的にでございましょうか、自然にひとつアプローチしようとお考えになっておられるのでございましょうか、御所見を承りたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる中国問題、これ肝一番むずかしい問題だと思います。ただいまもお話にありましたように、近くて遠い中国大陸、こういう感じ多分にするのであります。と申しますことは、地理的には非常に近いけれども、お互いにどうも実情認識を欠いておる、そういう意味ではたいへん遠い国だ、こういうことが言えるのではないだろうかと思います。  私どもサンフランシスコ条約締結後、いわゆる台湾にいる中華民国、これを中国の正式な代表者だ、こういうことでこれを選んだのでございます。私は当時の選択は間違っていなかったと思います。したがって、その後台湾にいる中華民国大陸に対して施政権を全然持たない、そういう現実を私、無視するものではありませんけれども、この中華民国との間に国際的な権利義務国際条約上の権利義務がある。そうするとそれを忠実に守るのが、これが日本の国際的な役割りだ、かように実は考えております。しかし、ただいま申し上げるように、台湾にある中華民国、この施政権大陸には及んでおらない、大陸にはれっきとした北京政府がある、こういうことであります。そして中国一つなんだ、中国二つなら別ですが、中国一つだ、こういうことを台湾にいる政府北京政府も同じように主張しております。私ども日本としては国際的な権利義務、それを果たしていく上において、この現実をいかに調和していくか、こういうことが問題になろうと思います。私が申し上げるまでもなく、日本戦争を放棄し、武力によって国際問題を解決すべき段階ではない、かように主張しております。私は、中国の国内問題である台湾省北京政府との関係、これまた話し合いで解決されるべき筋のものだ、それを心から願っておる次第であります。したがって、私どものように、一たん中国代表者として中華民国を選んだその国は国際的な義務を果たしていく、権利も主張するが義務を果たしていくという、そういう良識のある態度で臨んでおるわけであります。したがって、大陸との話も進めたいが、ただいまのような点に、いわゆる一つ中国という問題でワクがはまる限り、ただいまのような点を抜け出るわけにはいかない、私どもたいへんむずかしい立場にある。ことに戦後長い期間交通が途絶し、しかもその間に誤解やあるいはまた相互不信、そういうものが高まっておる国、冒頭に言われたように近くて遠い国、これとの間の国交調整をはかるのでありますから、私はそう簡単に、短期間には片づかない、いわゆる一九七〇年代の問題としてこの問題と前向きに取り組みたい、かように思っております。私はあらゆる機会日本あり方、いわゆる戦争を放棄し平和に徹したその日本あり方を主張しておりますし、またそういう意味では仮想敵国も求めておらない、こういう点を十分認識していただいて、そうして中国の国内問題が話し合いで片づくこと、それを心から願っているというのが現在の状況でございます。  そこで、ただいまいろいろの誤解等があるだろうと思いますが、そういう点も中国自身が私どものやり方について誤解不信を持たれることはともかくとして、日本人自身が、日本あり方について十分な認識をいただかないことは、私自身としてまことに残念に思っておる次第でございます。  以上、お答えいたします。
  5. 坂本三十次

    坂本委員 なかなか総理、前向きにやろうという意欲はあるけれども非常にむずかしいというお話がございまして、現実との調和をはかりたい、しかしなかなか、一つワクがある、このワクを突き抜けていきたいんだという前向き姿勢もうかがわれたわけでございまするが、私はあまり時間がございませんので、前へ進みますから、どうぞ簡潔にひとつ御答弁を願います。  まず、最近古井さん松村先生御一行で、古井さんが北京に行かれまして覚書貿易を結んでまいりました。この覚書貿易締結に関して、非常に日中関係に対する世論が、関心が盛り上がっております。  そこでひとつ、ざっくばらんに申しまして、今度松村さん、それから古井さんが主として調印されましたこの覚書貿易共同コミュニケに関しまして、総理の率直な御感想を一言でおっしゃっていただきたいと思うのです。私自身はこれを見て、平均的日本人はびっくりしました。びっくりしたけれども、おこっているやつはあんまりおりませんでしたね。はてなこれは何だろうと首をひねっておるというのが実情でございます。  そこで、やはり古井さんなどもずいぶん御苦労されたというお話でございます、三十日もがんばって。あのとおり、はいそうですかと引き下がったのではございません。何か途中で軍国主義だとか沖繩ペテンだとか言われましてね。古井先生は、そんなことを日本へ持って帰ったら日本人はおへそで茶をわかすぞと言ったら、とたんにおまえは佐藤弁護がひど過ぎる、自己批判せいと言うて責められたなどという一幕もあったとかなかったとか言われるくらいでございまして、なかなかきびしかったらしいのです。まあ、そういう経過を経ましてこのコミュニケが出たわけでございまするけれども、しかしここでやはりお考えいただかなければならぬことは、私どもはそんなペテンだとも思いませんし、軍国主義だということも絶対思いません。だけれども、これから仲よくしていこうというときには、やはり相手の国の立場に立って、相手があんな強いことを言うのはどういう気持ちで言うんだろう。やはり相手腹中に入って考えてみるのも、将来の友好を深める意味で非常に私は大切じゃないか、こういうふうに思うわけでございます。相手立場がわからぬで、こっちの立場だけやっていったのでは平行線になります。やはり信用信頼という相互関係というのが、特に中国というああいう大陸アジアの国にとっては非常に大切なんじゃないでしょうか。松村謙三さんがあんなに信用が得られるというのも、やはりこの信頼理解の問題であると、私は、中国評価をしておるのだと思うわけでございますが、ひとつ総理中国側の言い分、それをけしからぬと言う以上に、腹中に入ってお考えになれば、ああいう誤解の由来するところは何だろう、その背景は何じゃろうと、ひとつお考えをいただきたい。周恩来には同情せぬぞ、こうおっしゃられておったそうでありますが、七億の民に理解を深めるという意味で、何であんな誤解があったろうということをお考え一言でひとつお答えをいただきたい。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか一言ではむずかしいのですが、相手方腹中に入って出口を見失っても困ります。なかなか腹中広いようでございますから、なかなか腹中に入れない。こういうところに問題があるのじゃないだろうか。ただいま言われましたとおり、自問自答しておられるように、あの共同コミュニケ、これは日本人は一体どう受け取ったか。これを本気でおこった人はないと言われる。またそれじゃ積極的に本気で前向きにあの問題と取り組んだと、日本軍国主義化しつつあるとかあるいは沖繩返還ペテンだとか、こんなことをほんとうにまじめに考えておる者がいるだろうか。これは私は、両方ともどうも共同コミュニケについて、日本人はあまりにも評価のしかたが違っておるのじゃないか。いま、坂本君はだから腹中に入って相手方を見ろ、こう言われるのですが、私はただいまのような点を考えると、腹中にそう簡単に入るわけにいかない。出口をよく見つけておいて、それから腹中に入らないととんでもないことになるというのが、一口に申して私の感じでございます。
  7. 坂本三十次

    坂本委員 それでは孫悟空のように一ぺんに腹中に入っちまって出口が見つからぬというのでも、これも困るかと思いまするが、やはり虎穴に入らずんば虎児を得ずということがございますから、そこにはやはり向こう立場に立っても考えてやろうというお気持ちが、あるのだけれどもなかなか言いにくいのが総理大臣のお立場だとも私は思います。しかし私に言わせれば、こまかいことはさておきまして、この日中関係の半世紀にわたる不幸な歴史がありますから、なぐったほうは忘れますけれども、なぐられたほうはやはり覚えておるというようなこともございましょう。やはりこれは昔の悪夢を忘れられない。昔の日本軍国主義というものに対する脅威感からいまだに警戒心というものがあるのだろうということは、やはり思いやったほうが私はいいのではないか、こういうふうにも思うわけでございますが、それではひとつ次の質問に移らせていただきます。  今度の覚え書き会談で、中国はずいぶん腹を立てたような点もございましたが、それには台湾問題に、総理が去年の十一月佐藤ニクソン声明で触れられた台湾のあのくだりでございますね、あれがやはりだいぶ気に触れたと思うわけでございます。しかし私は、そういう北京政府がおこったからどうかという問題ではなしに、やはり国民の中にもそういう一つの疑惑というものがございますのでお尋ねをいたしたいと思うのです。いわゆる台湾の安全は日本の安全であるというくだりでございますね。それからプレス・クラブで言われましたように、台湾の安全は日本の安全である云々、「米国による台湾防衛義務の履行というようなこととなれば、われわれとしては、わが国益上、さきに述べたような認識をふまえて対処して行くべきものと考える」云々というようなおことばがありました。これは私ども考えますには、政府は、台湾問題というのは一つ中国の内政の問題だから、内政問題としては不干渉だとおっしゃいました。しかし、戦争がぶっ始まればはた迷惑するから、これは国際問題なんだ、そんなことのないように、平和的に解決してくれというのはおっしゃるとおりだと思います。そこまではわかりまするけれども、やはり世の中ずいぶんいろいろ心配する向きもございます。台湾問題というのは非常に複雑な問題でありまして、いままではこの種コミュニケについては、特に台湾についてこのように言及をされたことがなかったかのようにも思われまするが、今度特に言及をせられた意味というものはどういうところでございましょうか。突き詰めて考えておる人の中には、台湾地域軍事的固定化、こういう印象を持ったり、あるいはまた、二つ中国をつくるために軍事的に固定化しているのではないかなどというところにまで至りますと、重大な誤解を生ずると私は思うのでありますが、ひとつ総理台湾問題に対する言及の真意をお伺いいたします。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の安全を考える場合に、日本の自衛隊というものは外へ攻めていくようなものではございません。防衛を専守、もっぱら防衛に関するだけのものでございます。しかし、近所で問題が起こりますと、流れだまが飛んで来るというそういう危険は多分にある。そこで私どもも無関心な状態ではあり得ないわけであります。問題は、やはり何と言いましても、中国大陸日本との仲をいまさいておるものはわれわれが選んだ中華民国、これをいつまでも守っておる、そういうところに問題があるのだと思っております。しかし、国際的な義務を果たしておるこの日本の行き方、これが日本が国際的な信用もかち得ているゆえんだ、かように私は確信しております。でありますから、ただいまのような、中国の国内問題だ、かように申しておりますが、それは両者の話し合いで、北京政府中華民国と、これが話ができればこれに越したことはない、私どもそれをじゃまをするような気持ちは毛頭ございません。イデオロギーがいかに違おうとも政情がどういうように変わろうとも、私どもはどの国とも仲よくするというそういうたてまえでございますから、私ども日本あり方としてのこの真の姿をよく相手方認識してもらい、理解してもらい、そうしてわれわれが間違わないようにもやはり協力していただきたい、このことを念願するだけであります。いかにただいまのようにじょうずにお話しになりましても、問題は、私ども中華民国を選んだというそこに問題があるのだ、かように思っております。しかし、そのことは私は間違いであるとは思っておりません。ただいまも国連自身で、安保理事会常任理事国になっておる。そういうように国連自身でも評価されておる、そのことを考えると、日本のいまのあり方というものはやはり正しいのではないか、その点を日本国民皆さんにもぜひ理解をしてもらいたい、かように私は考えております。
  9. 坂本三十次

    坂本委員 ただいまのお話を承っておりますと、日本中華民国との間の条約を忠実に守っていく義務がある、その義務を果たすことによって国際的責任も高まっていくのだという総理お話でございました。それはその点に関する限りは私は正しいと思うのでありますが、しかし、この台湾問題言及くだりにつきましては、事実やはりいろいろと突き詰めて心配をする向きもあるのです。台湾総理がああ言われたから、日本生命線じゃないだろうか、そういうことになれば、いよいよ台湾中国大陸との間に戦争が起こったなら、これはもう日本は、アメリカ台湾との条約関係出撃するときには、本土からのアメリカ出撃に対しては、事前協議をこれはOKを予約しているものではないかという心配もございますが、こういうことはないでしょうね、総理
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 坂本君は若い世代の人だから、まさか昔のような日本生命線ということばをお使いになるとは思いません。もうただいまはよほど日本の行き方変わっております。私どものような年輩の者が生命線日本生命線は韓国だとか台湾だとか、こう言えば、これはいかにも年代層にふさわしい話でもあるかわかりません。しかし、私は坂本君などはさような意味生命線というようなことばをお使いにならないと思っております。私は年はとっておりますが、生まれかわったつもりで、昔のような生命線の観念は払拭しているのです。どうか坂本君も昔のような生命線というようなものはこの際目になさらないように、また、おれたちは若いのだ、もう戦争は放棄したのだ、そのもとにおいて国際紛争のないそういう世の中を築くのだ、これがわれわれの使命だ、こういうようにどうして胸を張って申されないでしょうか。いつまでも過去の亡霊に取りつかれて、あそこが生命線だとか言われると、これはどうも若さがなさそうに思う。私はたいへん残念に思います。
  11. 坂本三十次

    坂本委員 どうも総理は肝心なところを生命線にすりかえられたように思うのですがね。しかしそういうアメリカ出撃に対する事前協議の予約などということはないと了解してよろしゅうございますね。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は日本総理大臣として恥ずかしくない言動、交渉をしたつもりでございます。ただいまのように日本国益に反してまでも事前協議について何らの批判なしにイエスを言うというような、そんな無責任な総理ではございません。私は日本国益に照らして、いままでもたびたび申しておりますように、イエスと言うこともあるけれど、ノーと言うこともあるのだ、そのことをはっきり申しております。どこまでも日本総理としてのその職責を忘れる、そんな佐藤ではございませんから、それはひとつ御安心願い、また国民皆さんも安心していただきたいと思います。
  13. 坂本三十次

    坂本委員 わが党の総裁らしくまことに頼もしいおことばでございました。どうぞひとつそういうふうにお願いをいたします。  これはもう弱りましたな、時間がなくなってきて……。  それでは覚書貿易につきまして、古井先生ども向こうに行ってこづかれ、こっちに行って悪口を言われて、二度とこんなのはいやだと私は言いやせぬかと思うわけですが、今後もこういうふうにして御継続をされますか。それともやはりほかに何かいい手を考えられて、そうして別のパイプで行かれましょうか。ひとつ別の、大使級会談などとおっしゃっておられますけれども大使級会談というのは何だか中途はんぱですね。もう少し上の外相クラスでばしっとやるというようなほうが効果的だとも思うわけです。岸内閣のときには通商代表部を置こうというところまできめられたそうですね、実現はしなかったけれども。そこまでお兄さまに頂けないでお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 岸内閣当時のいい点と悪い点がありますから、それを一緒にしないでよく批判していただきたいと思います。私は先ほど来、台湾にある中華民国、その関係をるる説明をいたしました。しかし同時に、大陸における北京政府を否定するものではないということも申しました。そうしてそことも交渉を持ちたいということを申しました。私は、古井君が出かける前に、古井君と会見もいたしました。具体的に何をどうこうするという話はいたしませんでしたが、古井君もたいへん苦しい交渉を持つだろう、それについて私自身理解を与えている、どうか唯一のパイプだから、それが細くても、やはり続くように努力してほしい、かように申しました。これは事実であります。しかし、私は、その限度があるだろうと思います、続けるにいたしましても。そういう点で、これはいろいろの批判を党内でかもしたこと、これは、これまたやむを得ないのではないだろうか、かように思います。しかし、これ、全部が古井君、けしからぬとか、かように私は申すわけではないので、むしろ古井君の労を多とする面も多分にございますから、これらの点も考えながら、たいへんむずかしいこの日中間の問題、これを一歩でも半歩でも前進さすような方向で、今後とも努力していかなきゃならない。あまりにも過去からの断絶が長く続いていますから、相互誤解不信を招いていると思います。そこで、そういうものを一つ一つ解くような努力を根気強くしなければならない、これが私、ただいまわれわれのいるその場所ではないかと、かように思っております。ただいまのように、このことしの状況から見て、覚書協定はもうやめようかというようなお話がありますが、どうして日本人はそういう最終的な結論を出されるだろうか。私は、もっと努力すべきものは努力する、これが今度生まれ変わった日本の真の姿じゃないだろうか、かように私は思うので、この点を申し上げるわけであります。  で、私は、ずいぶんむずかしいことだろうと思いますが、また、困難があっても、正しく認識していただくように、あらゆる機会にあらゆる努力をしていく。したがって、ただいま言われるように、大使級会談ではなしに、もっと外相会談もやったらどうだ、私はそういうことをやることについて別にやぶさかではございません。しかし、私ども、ただいま、ただ犬の遠ぼえをするような、そういう立場で、あるいは外相会談だとか、あるいは大使級会談だとか、かように申しているだけでは事態は進まないと思いますし、やはり具体的なそういう方向、その方向でチャンスを見つけるという、これが必要なことではないかと思います。私は、また、坂本君や野党の諸君からも、そういうチャンスを見つけていただくことについて、ぜひとも御協力、教えを願いたい、かように思います。
  15. 坂本三十次

    坂本委員 チャンスを見つけて、そうして大使級会談とは言わず、外相レベルの会談までもやりたいのだという意欲はうかがわれたわけでございます。力を尽くして狭き門より入れというのは、まことにけっこうな姿勢だと思います。しかし、チャンスを見つけると申しましても、やはりいろいろな具体的な問題をあげて、そして、と同時に、政府間接触をお初めになられるわけでございますね。そうすれば、直接、承認問題と関係のないような、気象、郵便、航空機乗り入れだとか、それから日中要人の交流であるとか、あるいはまた、技術協力を進める問題だとか、吉田書簡問題はたな上げに——これはちょっといきさつはありますからしても、海外経済協力基金を使う問題だとか、あるいはまた、国連の下部機構のFAO、WHOなどにいれるんだとか、軍縮委員会にまで入れてやりたいんだとか、こういうような問題は検討に値しませんでしょうか、前向きに検討なさいましょうか、一言だけお答えをお願いします。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体、ただいまおあげになったような、気象交換あるいは郵便協定、航空機協定その他種々身近なものから手をつける。どれでもいいから、一つでも開始できるようなもの、そういうものから始める。そういう前向き姿勢である、このことを私はこの機会にはっきり申し上げておきます。
  17. 坂本三十次

    坂本委員 前向きに、できるものから積み上げていくとお話しになられました。このいま海外経済協力基金を使うという問題はいかがでございましょうか。検討に値しましょうか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま現に、ある程度のものはやっておると思います。長期のものについては、ケース・バイ・ケースでこれも考えられると、かように私、考えております。
  19. 坂本三十次

    坂本委員 それでは、最後に、私は、やはり中国はいま核を持っておりまするし、人工衛星も飛ばしております。やはりこの中国というものを国際社会からはねのけておいたのでは、世界で一番平和を願う日本としても、これは何といいまするか、国際政治上の片手落ちになりはせぬか。国際社会に復帰すべきものだと思います。しかし、アルバニア案に対して、重要事項指定方式など出ておりますが、こういう手続的にいまごたごたしております。手続的には、なるほど、三分の二の多数を必要とする重要な問題でございまするけれども、しかし、結果として、中国加盟を阻害をしておるということは、これは事実であります。だから、入れたい、しかし、阻害しておるというような矛盾が私はあると思うのです。やはりこれは将来、インドシナ半島、いま戦火が吹いておりますけれども、やがて情勢が安定に向かったこのチャンスなどをつかまえて、国連加盟に対して、中国を入れてやるような、陰に陽にの努力をなされるおつもりでございましょうか、どうでございましょうか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま中共が、御指摘になりましたように、核兵器の開発はやっておる、さらにまた、運搬技術まで成功した、こういうような状態になってきておる、これを私自身が脅威だと、こう言ったといいますが、私自身が言ったのではなくて、実は、私が東南アジアを旅行した際に、それらの国々で聞いてみますると、中共はたいへんな脅威だと、こう言って、小国がそれぞれみんなおびえておる、そういう状態でございます。私は、そのためにも、中共自身が、あまり閉鎖的な態度をとらないで、そうしてみずからも進んで国際に復帰するというか、加入するという、そういう態度が望ましいのではないだろうかと思います。まあ私ども皆さんの御審議を得たと思いますが、いわゆる核拡散防止条約、これも、いま日本は持ってもおらないけれども、しかし、核開発の技術だけは十分備えておる国である。そういう国が、核拡散防止条約、これに調印をし、そうしてさらに批准に踏み切ろうとしておる。こういう際にも、こんな問題については、一言半句も発言をしておらない。こういうことは、私、たいへん残念なことのように思う。ただ、中国は、いままで発言したのでは、みずからが進んで核兵器は使わないと言っている。第一の打撃者にはならない、かようには言っております。私はそうあってほしいと思います。しかし、私は、もっと積極的にこの核拡散防止条約、こういうものに参加する、そういう用意があってこそ初めて、各国も喜んで迎えるんじゃないだろうか。私は、日本の善意が、いまも指摘されて、日本政府はどうもかたくななんじゃないかとわが党の坂本君からも言われるように、私、いま聞き取ったのでありますが、私は、そうじゃなくて、これはやはり日本側にもあるだろうが、中国側にもやはりアイソレートする、孤立化する、そういう道を歩んでおるものがあるんじゃないか、かように思います。そこらがもっと実情が明らかになれば、これはおのずから解決されるんじゃないだろうか。私は、国際社会に復帰されることが、これは望ましいことだと思います。その前には、いろんな問題がありますよ。もちろん一つ中国としても、台湾との問題をどういうふうに調整するかという、そういう問題もありましょうが、しかし、これが孤立化してはいけない、それをやはりこの国際社会へ迎えるような、そういう姿であってほしい、かように私、思いますので、それが、これからまだ時間のかかる問題であるが、七〇年代の課題だろう、かように私は思います。
  21. 坂本三十次

    坂本委員 時間がありませんから、最後にひとつ私の意見を開陳をいたしまして、終わりといたします。  やはり台湾一つ中国の代表であるということがずっとこれから続いていくなどということはいかにも不自然だという世界の世論が起こってくると思うております。やはりフィクションみたいな感じであります。これじゃ日中はついに打開できないという気持ちでございましょう。北京政府一つ中国を代表すべきものであって、台湾はその一部だというこの原則というものは、口に出すか出すまいかは知らぬが各国胸にたたんでこれからの中国にアプローチしていくものだと私は思うておるのです。そういう意味合いにおいて世界の大勢をやはり一番近い日本が先頭に立って努力をせられる、これは台湾を切れというのではございませんが、やはりそれが大切なのじゃないかと思うのです。  ある人がこの間私に、いや坂本君、何でもかんでもできるものじゃないよ、一内閣一外交というのはこれは鉄則である、吉田さんはアメリカと講和条約を結んだんだ、鳩山さんはソ連とやったんだ、佐藤さんはアメリカときちっと基礎を固めるんだ、そんな欲ばって二兎を追うものは一兎を得ないんだ、だから、きっちり基礎を固めておけばあとはまたあとで開けてくるのだと歴史の弁証法みたいなことを言いましたが、総理はそう達観をしないで、ひとつうんとがんばっていただきたいと思うのですが、決心はいかがでございますか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お話を伺って私もたいへんいろいろ考えさせられるものがあります。その程度にひとつこの際はさしていただきたい、お話を承っておくということでございます。
  23. 坂本三十次

    坂本委員 終わります。
  24. 田中榮一

    田中委員長 戸叶里子君。
  25. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、佐藤総理大臣に久しぶりでいろいろと御質問したいと思います。  坂本議員がたいへんユーモラスになごやかになさいました。私もそのつもりなんですけれども、どうも語気が荒いかもしれませんので、大臣あまりおおこりにならないで答弁していただきたいと思います。  最初にお尋ねいたしますのは、インドシナ情勢がたいへんにきびしくなっておりまして、私ども心配をいたしておりますけれども、このことはアメリカがカンボジアからの要請もなしに米軍を介入させたこととかあるいは北爆をしたこと等によるものではないか、こう私ども考えております。  そこで問題は三つあると思います。その第一は、領土侵犯という国際法違反ではないか、第二は一九五四年のカンボジアの中立を守るという休戦協定に違反をするのではないか、第三はジョンソン大統領が一九六八年にパリ会談を開くということを前提として北爆停止を約束しているにもかかわらず、これを破ったのは国際信義にもとるのではないか、こういうふうな分析を私どもはしておりますが、これに対して佐藤総理の御答弁を伺いたいと思います。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もカンボジアにまで戦火が拡大するということを非常に憂えている、心配している一人でございます。問題は、戦火が拡大しなければたいへんけっこうだ、しかしさような状態になった。そこで一体なぜそういう状態になったか、その原因はやっぱり十分探求してみる必要があると思います。いま言われるように、カンボジアは一九五四年その中立状態、その中立を守る、そういうことで今日までまいりました。しかしながら前のシアヌーク時代にもすでにカンボジアの一部に北ベトナムあるいはベトコンが進入している、それらの者に退去をしばしば要求したけれども、それは実現しておらない、もうすでに中立は侵されていた。ただそれだけなら問題はなかったように思いますが、今度はこのカンボジアの一部に占拠しておる北ベトナムあるいはベトコンが南ベトナムを攻撃する、南ベトナムにいる米兵を攻撃するということが始まる。こういうことになりますと、米国はできるだけ多数の米兵を引き揚げようといましておりましたが、これも一応掃討しまして、そしてこの地域の中立、安全を確保して、しかる上で撤兵せざるを得ない、こういうのがただいま起こった問題のように私は理解しております。したがいまして、この事態はまことに残念なことでございます。私どもは同じような憂いをともにするものでございますが、その起こった原因もよく探求してやらないと、ちょっとこれはいまのアメリカが非常な好戦的だというだけでは済まないように思います。
  27. 戸叶里子

    戸叶委員 いまお話もございましたように、シアヌーク殿下のときにもいわゆるカンボジアの聖域といわれるところには北ベトナムあるいは民族解放戦線がいたと思います。しかしその当時はシアヌーク殿下もこの撤去を要求をいたしてはおりましたけれども、何ら混乱をすることなしに今日まであったと思うのですけれども、シアヌーク殿下が旅行中一応追放されたみたいな形になったわけですが、そうしたあとでロン・ノル政権になりましてから急に虐殺事件やらいろいろ起こってきたのではないか。しかも聖域からこれらの北ベトナムの人たちがカンボジア内に進入したというようなことは私どもは聞いていないわけでございます。アメリカは進入したというようなことをいっているわけでございますけれども、こういうことは日本政府自体がお調べになったのでしょうか、それともアメリカ政府がそういうふうにいっているからそうだろうということなのでしょうか、この点をはっきりさしていただきたい。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお話しのように、カンボジアの中に聖域というものがある。その聖域というのはそこでは戦争をやらないということだ、しかしそこにもうすでに御承知のようにベトコンやあるいは北越、こういうものが入っていた。シアヌーク殿下もこれの退去をしばしば命じた、こういうことであったと思います。私はただそれだけの状態なら先ほども申しますように別に問題はないと思います。しかしながら、これがやはり南ベトナムに進入するとかあるいはそこで戦火が開かれる、あるいは南ベトナムのベトコンに対する補給基地にこの聖域が利用される、こういうことになると、これは問題だと思います。私が申し上げるまでもなくカンボジアはベトナム、ラオスそれを通り越して北越とつながっておるわけであります。したがって、北越につながっているという場所ではない。まあベトコンとは国が通じておりますから、そういう意味ではベトコン自身の根拠地にはなりやすいと思いますが、これはやはりただいま言うような攻撃の対象になるということだと思います。ただ、いま言われている大虐殺事件、この真相は実は私にはよくわかりません。これはいろいろ調べてみる必要があると思っております。いまそのことを要求しておりますが、まだ十分の明確な原因をはっきりつかまえておりません。しかしながら多数の者が現に虐殺されていることだけは事実でございますから、それがどういうような機会にだれによってなされたか、こういうことは十分もっと掘り下げて、そしてわれわれが批判すべき問題だ、かように私は思っております。
  29. 戸叶里子

    戸叶委員 ロン・ノル政権になりましてから、最初にたいへん多くの人たちの虐殺事件があったわけでございまして、私どもはこれを見まして、人道的に見ても許すべからざることだということを考えていたわけでございますが、そして政府に対してもよくその真相を聞いてもらいたいと思って委員会で発言したこともございましたけれども、まだそのままお調べになっていないようでございますが、よく調べておいていただきたい、こういうふうに考えます。  そこで、いまおっしゃったような佐藤総理の理論からまいりますと、きのうの国会で、アメリカの兵隊がカンボジアに送られたのは、これは自衛のためだからしかたがないんだ、こういうような答弁をされておられますけれども、このことはそのようにいまもお考えになっていらっしゃいますか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は現在もさように考えています。
  31. 戸叶里子

    戸叶委員 私はそこで問題だと思いますのは、自衛のためであるということで一体外国の領土まで侵犯をしていいかどうか、こういうことを考えていただかなければならないと思います。たとえば日本に米軍基地がある、その基地から米軍がよその地域に戦闘作戦行動で出ていったとすると、相手の国が日本に対してやはり自衛の立場から日本に来てもこれはしかたがない、こういう理屈も通るんじゃないか。したがって、いまおっしゃったような理論というものはたいへんあぶないんじゃないか、こういうふうに考えます。あるいはもう一つ心配になることは、自衛のためなら自衛隊もまた出てもしかたがないんじゃないかということにまで発展するんじゃないかというふうに非常に心配をいたしますが、この点もお伺いしたいと思います。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の場合は、しばしばその点が尋ねられて、日本の自衛隊自身がみずから第二の侵略として立ち上がる、こういうことを申したと思います。私はやはり今回のベトナムの場合、米兵が南ベトナムにいる、それが攻撃を受ける、こういうことだと思うので、そういう意味ではやはり米兵が自衛のための活動をとる、かように思うのでございます。これが地域が他の場所である、これが問題になるわけですが、ロン・ノル政権そのものがこういうものの撤退を要求し、それを実現する力があれば、こういうことは起こらないと思います。私はまたカンボジアを拠点にして米軍を攻撃するというようなそういう事態は起こらないと思うのですね。しかしながら現実には、そういう事態がいま起こっておるんだ。そうするとやはり攻撃を受けた米兵が自衛のためにそれと戦うということ、これは当然のことではないだろうかと思います。  そこで、日本の場合についてしばしば言われるのは、日本から飛び立つ米兵、そういうものがあれば、今度は日本が攻撃を受ける、こういうことでございますが、しかしこの場合は、日本から飛び立つ米兵というものを事前協議のどういうような状態で日本が許すかということです。これはやはり侵略行為があるからこそ、日本に駐留する米兵の出かけることについても、われわれが国益に照らして判断してきめることであります。そしてそのことが、もっと平たく申せば、第一の侵略行為が現実に行なわれた、こういう事態がある。それに対応するための米兵の出動だ。それに対して今度はあるいは米兵が日本から立ったからその根拠地をたたくんだ、こういうことで、日本が攻撃を受ければ、第二の侵略行為がここに出てくるわけであります。そういう場合に自衛隊がやはり立ち上がる、こういうことであります。それはいま戸叶君の御指摘になるように、たいへん危険な問題であります。だからこそ、事前協議においてわれわれが慎重に行動しなければならない。ただ第一の侵略があったから日本に駐留する米兵は飛び立つ、それにイエスを与える、こういうわけにはいかない、このことは本会議なりその他の委員会でもしばしば申し上げたとおりであります。私ども戦争に巻き込まれることについては多大の迷惑、そういう感じを持っておりますから、そういうことのないように国益に照らしてイエスもあればノーもあるというのはそういう点でございます。私は、事前協議の条項がそういうところで有効に日本国民の利益のために十分効果をあげるように働く、かように期待するものであります。
  33. 戸叶里子

    戸叶委員 事前協議の問題はまたあとから私も質問をしたいと思いますが、いまのお話でございますが、私が伺っておりましたのは、カンボジアにいる米兵が戦ったというのでなくして、アメリカがカンボジアに地上軍を出した、こういうことに対して伺っているわけでございます。それが自衛のためならしかたがないという、こういうふうな解釈というものは少しあぶないのではないか。自衛のためなら海外にまで出ていってもいいのだ、そういう言い方というものは今後において非常に波紋を招くし問題が大きくなる。このことを非常に心配するわけです。  そこで、そういうことを心配しているし、また自衛のためだという名前で他国の領土にまで侵入していいかどうかということに対しての今日の世論というものは非常にきびしいことは御承知のとおりでございます。アメリカにおきましても国会では大統領に対してのたいへんきびしい批判が続いております。学生はあちこちで暴動を起こしている。これは反対をしている。そしてまた死人さえも出てきたというまことに悲しむべき状態です。アジアの諸国におきましてもいろいろに意見が分かれている。こういうふうな情勢を私はもう少しシビアに判断をなさっていただきたい。私自身アメリカが出兵をさせるのだということがきまりましたその晩に、あるアメリカのインテリの御夫婦と御飯を食べていました。その人たちに、どうですか、今度のことは、と聞きましたら、アメリカはナンセンスですよ。しかしそれにも増して私が驚いたのは、なぜ日本佐藤さんがあんなことを支持するのですかと言われた。私は何と言っていいかわからない。そのままの質問を私は総理にお渡しいたしますけれどもアメリカがそういうことをしたことに対して、どういう理由で政府がこれを支持なすったのですか、このことをまず伺いたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府並びに外務省はいわゆる積極的な支持はしておりません。私どもたいへん困ったことだと、冒頭に申しましたような感じでございます。しかしどうもアメリカ自身かくせざるを得なかった、やむを得ない処置であったのだろう、こういう程度の理解はしております。だから、ただいま言われるように積極的な支持、かようにとられることはたいへんな迷惑であります、これははっきり申しまして。しかし私はアメリカ自身戦争を拡大しないように、またアメリカはベトナムから撤兵もするという国民に対する公約もある、フランスのパリでは現に北との停戦協定について話し合いをしている、そういう際に、戦争激化の方向へ踏み切る、これは政治家としての重大な決意だ、かように私は考えます。だからそういう意味で、積極的に支援しているとかあるいは了承したとか、かように言われることはたいへん私も迷惑に思いますが、さようなことはございません。私どもも戦火が拡大しないように心から願っております。また、アメリカ自身もいままで非常に慎重にとってきた、最後の段階になりましてカンボジアに侵入せざるを得ないように踏み切った。しかしながら、同時にその区域は三十五キロ以内にとどめるとかあるいはできるだけ早くこれを収束するとかいろいろ国会等で説明もしております。私はこれらの点についてニクソン大統領も非常に憂慮しながらああいう処置に出ざるを得なかったのだろう、かように思うので、その点をやむを得なかった処置だ、かように私は思うということで申したことはございます。しかしそれが直ちに非常に好戦的な意味のような積極的な支持だ、かように言われることはこれは心外でございますから、どうかその点は誤解のないようにお願いしておきます。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカが出兵に踏み切ったとたんに、日本としてもこれはしかたがない措置であったとお思いになったかもしれませんけれども、ともかく一応支持はされたわけですね、これに対して。そういうことはすべきでないということはおっしゃらなかったはずですよ。そうすれば、結果的に見ればやはり支持をしたのじゃないかというふうに考えるわけです。たとえばアメリカの国会等におきましても大統領の権限というものが強く、大統領の考えでおやりになることができたかもしれませんけれども、やはり国会の中でも外公委員会等でいろいろと議論をされているところでございますし、いまのようなお考えであったとするならば、あまりにも早くこういうふうな支持の意見をお出しになり過ぎたんじゃないか。もっといろいろな世論というものを見ていかなければいけない。そしてまた、この民主的な空気、そういうようなものを聞いたり見たりした上でこの意見を出すべきであって、いち早くこれを理解がありますというようなことをおっしゃるのは一体なぜだろうというふうに私は非常に懸念をいたしたわけです。そして憤りさえ感じたわけです。  そこで、いろいろと考えてみますと、たとえば日米共同声明というものの中を読んでみますと、四項なり七項には、アメリカの行動はすべて支援をし、理解を示し、協力をするという方向を打ち出しているわけです。そういうふうな共同声明で縛られているために、このことが結局政府をして今回のようにいち早くアメリカのやり方を肯定をした態度になったのかしら、こういうふうに私は考えざるを得なかったのでございますが、佐藤総理は、これをどうお考えになりますか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、政府の話が少し早かったとおしかりを受けました。どうも私どももよほど言動を慎まなければならないこと、これは平素から注意いたしておりますが、なかなか新聞社等から聞かれますと、ついそのまま話をすることが多いのです。こういう事柄が、しかし思わない誤解を招くのでありますから、それは一そう、ただいまのおしかりはおしかりとして、十分注意することにいたします。  ただ、私はこの際に、そこまでのお話はございませんが、昨日の国会における本会議で、どうもジャカルタの会議には参加して発言しないほうがいいのじゃないか、こういうようなお話がありましたが、私は戦争放棄をしておる日本あり方として、むしろ日本の好む姿を積極的に発言すべきものじゃないだろうか。私はむしろその辺では積極的な態度が望ましいように実は思っております。ただいまはお尋ねがございませんでしたが、よけいなことまで言ったようでございますけれども、あるいは将来またそこまでいくのじゃないかと思いますので、一応申し上げておきます。
  37. 戸叶里子

    戸叶委員 たいへん御親切に、先の先まで質問を読んでお答えいただくのはけっこうですけれども、やはりそれにつきましては、まだ前にいろいろ聞かなければならないことがあるのですが、せっかく出ましたからその問題を伺いますけれども、ジャカルタでのアジア会議に外務大臣が出席される、このことは本会議におきましてもいろいろと議論されたところでございます。そこで私ども考えますのは、ジャカルタに出ていく人たち、こういう人たちの内容ですね。こういう人たちの国の性質、こういう国がどういう国であるかということもやはり考えていかなければならないと思うのです。やはりアメリカの参戦国あるいはアメリカと非常に共同の歩調をとっているようなそういうような国ばかりでございまして、出てくる結論というのは私は同じじゃないかと思う。結局、アメリカのやることに対して協力をする、こういうふうな形になるんじゃないか。アメリカの武力による和解のしかたというものを理解して、あるいは総理のおっしゃるように消極的ではあるけれども、やむを得ないことではないかというふうな理解を示して、そしてその上に立ってどういうふうにしていくかという結論を出そうするならば、私は、いい結論が出ないんじゃないか、一方に偏した結論しか出てこない、こういうふうに考えるわけですけれども、そういう国の集まりに出ていって日本がたいへんに効果的ないい結論を出し得るというのは一体どういうところにあるわけでございますか。たとえば、総理の昨日の答弁を伺っておりますと、イデオロギーにとらわれずに、各国が何とか和平の道をあの地域に出したいというふうな気持ちで討議をするんだというような内容のことをおっしゃったと思うのです。イデオロギーにとらわれずにとおっしゃいますけれども、すでにロン・ノル政権はアメリカにすっかりいろいろと援助を頼んで、そして一方的になっているところですね。こういうふうなところに出ていって、一体どういう実が結ばれるかということは、私は非常に心配なんですけれども、いま総理はたいへん自信がありそうに、ああいうところへ行けばたいへんいいのだというふうにおっしゃいますので、その辺のとろこを伺わせていただきたい。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どういうことになりますか、あるいは北越やあるいは北朝鮮から、あるいは北京政府からも全然出ないか、あるいはソ連からも出ないで、いわゆる自由主義陣営のものばかりが集まるかどうか、そこらには一つの問題があろうかと思います。しかしながらやはり自由主義陣営のものにいたしましてもそれぞれの立場の相違がございます。ただいま御指摘になりましたように、消極的な立場で発言する場合と積極的な支援の立場で発言するのでは、非常な聞き手に影響を及ぼすものだと思います。私は大体において、ただいま一日も早く東南アジアの紛争、インドシナ半島の紛争、これが停戦され平静に帰することをみんな心から願っておるのではないかと思います。そういうものがやはりアメリカの行動を一時的には是認せざるを得ないような状態でありましても、必ずアメリカ自身も猛省する、反省をする、こういうことにもなるのではないだろうか、かように思います。したがって、私はただ単に、これは賛成してくれたからいままでの行動は正しいのだ、そういう意味でもっと強くやるとか、こういうような結論にすぐなるとは思わない。むしろそういう事柄が反省されること、こういうことが望ましいのではないだろうか。まあ私ども自身が軍隊を持っていて、そうして戦争に参加して、あるいは、どちら側に立つかは別といたしまして、戦争をみずからがやるという、そういう場合だとまたこれは違いますが、私どもはもっぱら防衛立場だけで、戦争は放棄しておる。そういう立場からいわゆる世論を形成するだけの、国際世論を形成するだけの、それに値するような議論を展開することができるのではないだろうか、みずからが兵隊を持っていないだけに、軍隊を持っていないだけに、そこらは自由に発言ができる、私はかように思いますので、こういうことが望ましいのではないだろうか。私はやはりそういう機会をつかまえることが社会党の皆さんとも同じような立場ではないだろうか、かように私は思うのです。どうも江田君の質問にはその意味で私も失望いたしたのですが、どうかそういう意味で正しい国際世論を形成するのだ、こういうことでやはり立ち上がっていただきたい、かように思います。
  39. 戸叶里子

    戸叶委員 正しい国際世論の形成は賛成です。でも、いまのような態度では私はとてもできないと思います。残念ながらできません。なぜならば、今度のようなジャカルタで行なわれるような軍事的な反共的な国だけが集まっての会合でございますから、たとえ日本がそこへ行きまして、消極的ではあるけれどもアメリカに対する理解のほどを示す。そうすれば結局アメリカが猛省をするだろうなどというふうにお考えになるのは、佐藤総理大臣にしては少し私は失望いたします。そういうことで反省するようなアメリカではないと私は思う、これまでの歴史を見ましても。それだけにほんとうに心からそう思っていらっしゃるのだとするならば、私は佐藤総理はそういう方ではないのではないかしらというふうに実は考えるわけなんですけれども、まあそれはなかなか意見が一致しないと思いますけれども、今度の会議というものは私は重要だと思うのです。やはり日本が出ていったということによって非常にいろいろな国の見方が違うと思うんですね。それだけに、もしも出ていかなかったときと出ていったときの効果というものを考えたときに、私は行かないほうの効果のほうが多い。なぜならば、日米安条約によって日本アメリカとしっかり組んでいるのだ、軍事同盟を結んでいるのだ、そういうふうな立場にある日本が、アメリカのやったあの軍事的介入ということにはしばらく反省をさせようじゃないか、そしてベトナムから兵を引くと言っているのだから引いてもらうように、反省をしてもらうには日本は残念ながら今度はああいう会合には出られません。アメリカも少し考えていただきたい。世論のこともごらんなさいというふうな立場をとったほうがアメリカは、ずっと反省をするんじゃないか、私はこういうふうに思います。この点に対しては間違っているでしょうか、ちょっとお考えのほどを伺わしていただきたい。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 戸叶君のその議論も私にもわからないではございません、通じないではございません。しかし私自身から見ますると、こういう問題が起これば、やはり日米両国の関係等から見ましても、むしろ積極的に日本の主張をはっきりさして、そしてま正面から反省を求めるほうが望ましいことではないだろうか。何だかいまのおきゅうをすえるような言い方よりも、どうも出かけていって話しするほうが親切味があるような気がいたしております。この点では事柄が同一でありますだけに、そのやり方の相違だ、かように私は考えますが、その辺は、ただいま外務大臣も聞いておりますから、出かけるに際しまして十分善処するだろうと思います。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 すでにアジアの諸岡においてはいろいろな問題が起きております。アジアだけではなくして、たとえば米ソの間の戦略兵器制限交渉というのに対しても、せっかくいままで会議が持たれていたのに、おそらく今後においてはしばらく影響を及ぼされてやめになるんじゃないか、こういうようなことも言われておりますし、パリの和平会談も北ベトナムが応じなかったというようなことも伝えられているわけでございますし、そしてまた、この戦争の拡大によってアジアにおいてもいろいろな意見が二分をしていく、こういうふうな状態になっているわけで、このことをよく考えてみますと、アジア人はアジア人で戦わせるという、アジア人同士が戦わなくてはならないような状態に追い込まれつつあるのではないか、アジアの中に分裂の軍事的な城壁を築くような結果になるのじゃないか、こういうことを私は考えますがゆえに、ぜひ今回の会議には慎重な態度をもって見守って、出ていかないで、むしろアメリカに対して言いたいことをこちらのほうから、幾らでも外交ルートがあるのですから、こういう理由で行きませんということを堂々と言っていただいたほうが、私どもはすっきりとするわけですし、またかえって効果がある、こういうふうに考えますけれども総理大臣と私との考えはだいぶ違うでしょうか。こういう意見に賛成していただけないでしょうか。たまにはいいかしらと思うのですが、いかがでしょうか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私が軽く申しましたが、ただいま日本の場合も出かけるのが本筋だ。出かけ、そうしてアジアの諸国を説得もし、中にはずいぶん強い考え方の連中もあるようですから、そういうところで日本の主張をやはり聞いてもらう、それが正しい行き方ではないだろうか、かように私は思います。  ただ、いま言われますように、アジアの問題だからアジアだけで片づける、こういうわけにはただいまのところまいらない状況でございます。そういう複雑な国際情勢でもありますし、また米ソ両国間の問題にいたしましても、武器の制限などもこれで停滞するんじゃないのか、こういう御心配もございますが、私も心配せざるを得ない状況であります。しかし一そう問題になりますのは、軍事強国であるアメリカ、ソ連さらに中共、こういうものが軍事的に非常に強力な力を持っておる、そういうものが今後どういうように進んでいくか。私どもは経済強力ではあります。過去の歴史からいえば経済強力同時に軍事強力、強国、こういうような表現はされておりますが、今回は、日本は経済強国ではあるけれども軍事強国ではない、かように思い、またそういうことになってはならないと思って、ただいま手綱を引き締めているのが私自身のつとめである、かように考えておりますが、いわゆる軍事強国のあり方、これが今後どういうように動いていくか、これは私はたいへんな問題だと思います。だからそういう意味から、やはり軍事強国は、それだけにたよられる面もあるがみずからの力をセーブするというか、反省するというか、そういうことをやらなければならない、かように私は思うので、日本などは積極的に意見を開陳する、ただ黙ってない、そっぽを向いてない、そのほうがいいのじゃないだろうか。これはどうも戸叶君とその立場が違う。立場だけじゃなくて、あるいは御婦人と男性の相違ですか。どうもそこらが私は積極的にやってほしいように思います。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 この意見は男女の差別ということじゃなくて大体意見の違いだろうと思うのですけれども、それはそれにいたしまして、それ以上この問題と取り組んでいるわけにはまいりませんが、先ほどアジアの問題はアジアだけで解決しない、これはそのとおりだと思います。しかしただそういう方向に持っていかれているのじゃないか。アジア人がアジア人と戦わされるような形に持っていかれているのじゃないかということを私は非常に懸念をしますのと、もう一つアジアの中に分裂の軍事的な城壁がつくられるのじゃないか、こういうことを非常に心配をしているわけですけれども総理と私とは意見が違いますから、これ以上のことは申し上げません。  そこで次にお伺いいたしたいことは——きょうはほんとうは二時間ぐらいいただけるはずでしたが、たいへんに短くされて、短い時間の中でしなければならないので、ことばを詰めます。  外務省がこの間国際休戦監視委員会にも参加の用意があるというようなことが新聞に出ておりましたけれども、これはそんなことはないかどうかということが一つ。  それから時間の関係がございますのであわせてお伺いいたしますが、総理大臣アメリカのプレスクラブで演説をなさいました中に、戦火のおさまったあとに設けられるべき国際平和維持機構にも求められれば、日本の国情に合致した方法で参加協力すべきものと考える、こういうことを言っていらっしゃるわけです。そこで、先ほどの国際休戦監視委員会というものの性格からいいましても、これは日本がいま出るということはできない、これには求められても出られないものじゃないか。これはやはりジュネーブの会議できめられた国が出ることになっていますから日本がそういうところへは出られない、こういうふうに考えておりますが、しかし国際平和維持機構、こういうところには出てもいいんだというような御意見をお持ちになっていらっしゃるので、それはどういうふうな内容のところを想定しておっしゃっていられるのか、これをまず伺いたいと思います。
  44. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 外務省からの意見というお話でしたから私からお答えいたしますけれども、カンボジアの問題につきましては、これからジャカルタの会議等をはじめといたしまして、できるだけ、いま総理お話のような線で努力を重ねていきたいと思っております。したがってまだ詳細にこうやったらいいということの考え方をまとめているわけではございませんが、たとえば一つ考え方としては、関係国が広くまとまれば一九五四年の協定に基づいた国際監視委員会が機能を復活するというようなことは最も手っ取り早い、最もプラクティカルな行き方である、かように考えていることは事実でございます。さような場合におきましては、インドが議長国であって、カナダ、ポーランドが現にその委員会を組織しているわけですから、これが機能を回復するということは確かに一つのよい考え方ではないかと思っております。しかしそういう方向でない、また別にたとえばもっと範囲を広げるとかあるいは新しい性格の委員会というようなものがつくられるというようなことになりました場合を想定する。仮定の問題でありますけれども、そういう場合に、日本が求められれば、その性格、使命によりますけれども、参加してよい場合もあるのではないかとも考えられます。しかしその場合においては、憲法や法令の範囲内において、日本のなし得る努力には限界がある、かように考えておるわけでございます。
  45. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、総理がプレス・クラブでおっしゃいました国際平和維持機構というものは、やり方によっては憲法の違反になるかもしれない。しかし、憲法というものがあるという考えのもとに協力できる面でする、こういうふうなことをお考えになってこれをお出しになったのですか。だとすると、自衛隊をやらなければならないわけですね。自衛隊をどういうふうな形でおやりになるか、こういうことがいろいろ問題になってくるわけですけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自衛隊の派兵ということは、これは考えられません。自衛隊の派兵ということは考えられません。しかし、ただいまのように、文官が集まって、そうして何かの監視機構で働く、こういうことは日本の憲法でもまた自衛隊法でも可能なことではないかと思っております。したがって、そういう意味の非常に限られた範囲で、私どもはやはり国際協力の場、そういうところで働くべきではないか、こう言うのでございます。ただいまの外務大臣の答弁と同じ考え方でございます。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 ただ、平和維持機構といいますと、武力の衝突にも手出しをしなければならない場合もあるわけです。これは過去の歴史がそれを示しているところでございまして、いわゆる国連で問題になっている平和維持機構、これに対しましては、かつてスエズ、コンゴ、キプロス、それから西イリアン等に出しておりまして、そうして実際に武力を使った例もございます。したがいまして、平和維持機構というふうなことばから受ける印象は、やはり日本の自衛隊は出られないというふうに私は——自衛隊が出ていったらこれは海外派兵ですから、とてもそれはできないというふうに考えますけれども、それでは文官が行っていざというときの衝突などがあったときにどの程度のことができるかということが問題になってくると、またやはり自衛官が背広を着ていけばいいのだなんという議論にならないとも限りませんけれども、この辺のところをはっきりとしておいていただきたいと思います。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまは国連軍としてもまだでき上がっておりません。また各国の紛争処理に介入するとすれば各国の軍隊が動かざるを得ない、こういうこともございます。しかしながら問題はそこまでいかないで、やはり国際会議を開催し、そういう場所で平和のうちに話し合うというそういう機能もあってしかるべきではないか、私どもはそういう機能ならば日本も果たし得るのではないか、かように実は思っておる次第でございまして、私どももただいまのように、紛争処理機関だからいわゆる武力、兵力でなければならぬ、必ずしもそこまで考えなくてもいいのじゃないか、かように実は思っております。これから、日本の場合は特別ですが、私どもは兵隊を持たないで、軍隊を持たないで、いわゆる平和なうちに話し合いでものごとをきめていこう、こういう態度でございますから、ただいまのような機会をしばしばつくるのが本来の筋であります。私は沖繩などが返還されたという一つの実例を申し上げましても、これは兵を動かさないでやはり話し合いも、そういうことも可能なんだ、こういうことに思いをいたしてしかるべきではないか、かように考えます。
  49. 戸叶里子

    戸叶委員 総理大臣のお考えをそのまますなおに受け取れば問題のないようにいくかもしれませんけれども、国際平和維持機構というふうな発言をなさいますと、やはりそこに非常に抵抗を感ずると思います。国際平和維持機構というのは、在来の歴史を見ましても、また平和維持の機構ということを見ましても非常に問題があるわけでございますから、こういう点はこのことばどおりではないというふうに理解してよろしゅうございますね。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和監視委員会と、かように申してもけっこうかと思います。かつて日本の場合でもリットン報告というのがございましたね、満州事変が起きました際に。これは別に国際連盟が兵隊を動かしたわけではない。しかし現地を視察した、こういうようなことで、事態をやはり話し合いのうちに片づけようとした、こういうような試みもございましたから、これから先もそういうことが行なわれてしかるべきではないか、かように思います。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 私は第二の問題といたしまして、日米共同声明に触れてみたいと思います。  昨日総理はわが党の江田書記長の質問に答えられまして、安保条約も共同声明も国会にかける必要ないのだ、選挙で当然国民はこの問題等わかっておるはずなんだし、選挙の結果を見ればどういう政党が支持されたかわかるのだということを、たいへんに意気揚々としてお答えになりました。私もこれを聞いておりましたけれども、そこには一つの抵抗を感じました。なぜならば、あの共同声明というのが発せられましてから、たった一度本会議質問をしただけで、私どももいろいろな問題をかかえていたのですけれども、その質問もできず、疑問点は解明されずに選挙に向かったわけでございまして、この点は少し総理大臣のおっしゃったのは間違いじゃないかというふうに考えるわけでございますので、訂正をしていただきたいのですが、それはそれといたしまして共同声明について私は二、三点お伺いしたい。  第一に伺いたいのは、共同声明によって日米安条約の内容がいろいろ変わってきている、こういうことをいまいわれております。それじゃ変わっているか変わってないかということをいろいろ考えてみますと、やはり変わっている点がある。たとえば、第一に指摘したいのは、日本の平和と極東の平和と安全、こういうことばが安保条約にもところどころにございます。ことに安保条約の四条にもありますし六条にもありますし、その中に示されているのは「日本の安全又は極東における国際の平和及び安全」そして六条では「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」こういうふうなことばが使われております。ところが今度の日米共同声明を見ますと、そういうふうな書き方がされておらない。そこで私も少し疑問に思ったのですけれども、いま順を追うてお伺いいたしますのは、第一に日米共同声明の四項で「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」こういうことをまず第一にいっております。第二に「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素である」さらにインドシナというような地域を述べまして、これも極東の中へ一応入れているわけです。極東の周辺地域かもしれませんけれども、これも入れられている。七項になりますと、沖繩の返還にあたりまして、日本の安全は極東における国際の平和と安全なくしては十分に維持することができないものである、こういうふうに述べまして、一そう沖繩の返還にあたっては日本が果たす極東の安全への責任というものの重大なことをここで述べてきていると思います。いままでのような形でずっと日本が極東に果たす役割りというものは、そしてその責任はたいへんに重大であるということを七項に至って述べてきております。五項を見ますと、日米安条約日本を含む極東の平和と安全の維持のため果たしている役割りを高く評価している、こういうふうに五項では「日本を含む極東の平和と安全の維持」という、こういうことばになっているわけです。つまり日本を含む極東の安全、極東の安全すなわち日本の安全ということで、非常に解釈も広くなってきている。そして積極的なものに安保条約を変更しておるのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この点はどういうふうにお考えになりましょうか。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも戸叶君の御意見が私には理解しかねるのです。御承知のように日米安条約一言一句といえども動かしたことはございません。そのままの条約でございます。したがって共同声明で安保条約自身が修正される、こういうものでないことはもう理屈は申し上げるまでもなく、そのとおりでございます。したがってこの共同声明で日米安条約が変質した、かように言われることに私もたいへん抵抗を感ずるものですから、昨日のようなお話をしたのでございます。ただいま言われましても、私どうもその点がわかりかねる。  ただ、私この際に申し上げたいのは、韓国で問題が起きたりあるいは日本の周辺地区である台湾海峡で問題が起きた、その原因は南からする攻撃であろうが北からする攻撃であろうが、中共からする攻撃であろうが台湾からする攻撃であろうが、いずれにいたしましてもそういう事態が起こるとすれば、これはたいへんなことだと思っております。私は一般的原則的に申しまして、それは他国のことだ、日本としては全然関係のないことだとかように申し上げるのは、やや事柄を無視し過ぎるのじゃないか。軽視じゃない、無視だろう、かように私思っております。したがって私は率直に申しまして、そういう事態が万一起こればこれはたいへんなことだ、かように思うのは私一人ではないように実は思っております。それがただいま、先ほども問題になりましたが、別に生命線だというような考え方で申しておるのではございません。これはとにかく私はたいへんな問題だ、それを率直にそのまま受け取れば、どうしてそういうように考えていただけないだろうか。ただそのことを率直に共同声明はうたっただけであります。さらにそれを掘り下げて、何かそのときに魂胆があるだろう、いよいよ自衛隊を動かす魂胆だろうと、かように考えられるのは思い過ぎでございますから、さようなことはお考えにならないように。私はこういう事態が起こらないように、いわゆる緊張を緩和、そういう方向にこれから日本努力してまいりますという、あるいは米国とともにそういう方向で働きますという、これがあの声明だとおとりを願いたいのであります。
  53. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣、私が伺っているのはそういうことじゃないのです。韓国なり台湾なりに何か問題が起きればたいへんだということはだれだってわかると思うのですよ。それをどうするかということはまた別の問題です。ただ問題は、いままで私どもが安保条約を読んでまいりましたときに、日本の平和と、あるいは日本の安全または極東の安全というふうな言い方をしていたわけなんです。で、この前の一九六七年の佐藤・ジョンソン共同声明の中にも、「日本の安全と極東の平和及び安全の確保のため、」というふうに並列的に書いていたわけですね、「日本の安全と極東の平和」と、そういうふうな並列的に考えていたものが、今度はこの日本を含む極東ということになったでしょう。日本を含む極東というふうに、極東の中の日本ということになって、並列的ではないわけですよね。日本が極東の中の日本に入れられて、一つの責任が非常に大きくなってきている、こういうふうに考えるわけです。大きい中の一つ日本の平和と極東の平和というように、二つに並んでいない。従属的なものじゃないか。日本の平和と極東の平和というような並列的なものじゃなくて、中へ包含されちゃったのですよね。だからやはり解釈は違ってくるでしょう。別に私はいろんなことを想像しているわけじゃないですよ。自衛隊がどうするのこうするの、そんなことひとつも考えていません。ただそのものを読んでみたときに、ずいぶん違うなというふうに思うわけです。たとえばいままで政府、自民党がおっしゃっていたことは、安保条約日本を守ってくれるんですよといって宣伝をしてきているのですよね。ところがそれが変わっているじゃありませんか。日本の平和を含む極東の平和ということになるでしょう。そうすると極東の中へ入ってきちゃっているのであって、日本の平和だけを守るというのじゃないでしょう。極東の一部の中に入れられて日本がその責任を負わされるというのですから、非常に包括的な大きな役割りをしなければならぬ責任を持たなければならぬ、こういうことになるじゃありませんか。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ私はどうも変わりがないように思いますが、並列的にものごとを考えることが正しいのか、あるいはただいまのように日本の安全、同時にそれが極東の安全、そういうものの中に包摂されるのも、これも当然のことのように思います。別なものではない。ただ見方が一つありますのは、これを並列的に考えると日本の活動する範囲は日本の安全がはっきりする。これが包摂されておるように思うと日本がやはりその極東全部について責任を持つようになるか、こういうことでありますが、しかしその点ではもう御承知のように憲法があるし自衛隊法がありますし、私どもはそういうところの責任は軍事的には負わない。これはもうはっきりしておるわけで、だからそこには誤解はないはずでございます。  またこれで、これを根拠にいたしまして、いま自衛隊法を改正するというような意図は毛頭持っておりませんし、また憲法改正の議論も一部にはございますけれども佐藤内閣自身はさようなことは考えておらないことをはっきり申し上げますから、これは誤解のないように願いたい。  それから軍事的に日本の守る範囲、自衛隊が防衛する範囲、これはもう専守防衛だと言っている、そのことばどおり、それより以上には出ていかない、外国には出ていかない、このことを重ねて申し上げまして、ただいまのお答えにしたいと思います。
  55. 戸叶里子

    戸叶委員 日本の軍事協力のしかたというものはこれではっきり変わってきたと私は思うのです。つまり目的が変わってきて、そして日米安条約というのは結局極東安保条約ということと言える。極東安保というように変わってきたじゃないか、こういうふうに考えざるを得ない。日本と極東の平和と安全じゃなくて、日本を含む極東の平和でしょう。だから結局極東の安保ということになってきたのじゃないですか。はっきりと今度の共同声明で、それじゃなぜいままでのように日本の安全と、あるいは日本の安全及び極東の平和というふうな使い分けをなさらないで、日本を含む極東の平和と安全というふうに表現をお変えになったのでしょうか。それを読めばやはり私たちは非常に拡大された、極東安保に拡大されたというように考えざるを得ないのですけれども、この点はどうでございましょうか。たとえばいまの問題につきまして十一月二十一日の共同声明の背景的説明というものをジョンソン国務次官が行なっております。これを読んでみますと、これはジョンソン国務次官が背景的説明として出されたのは、ちょうど愛知外務大臣が記者団なんかにいろいろと説明をされたのと同じだと私は思うのですね。新聞記者がこういろいろな形でいろいろな報道をされちゃ困るから、こういうふうな会談があってこういう内容のものですよと言って説明をされた。これを見ますとこういうふうに書いてあるわけです。御承知のようにこれまで日本は一般に安保条約アメリカの基地はただ日本防衛のためだけのもので、日本としては日本以外のいかなるものの防衛にも関心ないという態度をとってきたのである。その日本が他の地域の防衛に関心を持ち、かかわりを持つということ、それが今度の重要なできごとであると言って、極東の安全と日本の安全の一体化を公式に初めて述べたのがこの共同声明である、こういうふうに説明をされているわけなんです。  だからそれを見ましても私がいま申し上げたような意見が出てくるわけでございまして、すなわち日本が初めて日本防衛のみでなく他の地域の防衛に関心を持ち、かかわりを持つことをあらわしたのがこの共同声明で、公式に日本が、日本の安全すなわち極東の安全、日米安保から極東安保へ変わったというふうなことを、このジョンソンの中から見ても理解できるのじゃないか、こう考えるわけでございますが、このジョンソン次官が言われました説明というものは、それはそんなことはないんだというふうに総理はお考えになりますか。この点を伺いたいと思います。
  56. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まずいまの実体的な問題でございますが、いつも申し上げますように極東という問題についての政府の見解といいますものは、昭和三十五年以来全然変わっておりません。これはたびたび委員会でも申し上げましたから、一々朗読等をすることは差し控えたいと思いますけれども、そういう意味におきまして三十七年の佐藤・ジョンソン会談あるいは先般の佐藤・ニクソン会談、この考え方については何らの変更はございません。  それから、ジョンソン・ブリーフィングというものが御質疑の中に出てまいりましたが、これは私の共同声明発表の直後における説明とは、全然性質の異なるものであると思います。私のはあらかじめ書きました文書によって、内外の記者団に対しまして公式に見解を発表したものでありまして、日本政府といたしましての有権的な解釈でございます。  それから、この声明自身は申すまでもないところでございますが、佐藤総理とニクソン大統領との間で二人のいわゆるトップ会談で行なわれたものでございます。そういう点を申し上げて、御理解をいただきたいと思います。  なお、よけいなことかもしれませんが、その後の情報あるいは新聞等で見ますると、そのジョンソンのいわゆるオフレコの会談で言われておったことの中で地域をさしておる点については自分はこういう表現を使ったことはないということを、さらにその後に声明といいますか言明した事実もあるようでございます。
  57. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、いま外務大臣がおっしゃったことは、ジョンソン次官の言われたのはこれは権威のあるものではない。これは間違っているんだ、こういうふうにおっしゃるわけでございましょうか。
  58. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私の説明は公式な有権的なものである。それから、この声明は両国の首脳間においてできたものである。それ以上は申し上げなくても、事実はおわかりであると思います。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、角度をかえて伺いたいのですが、たとえば大きな相談をして共同声明か何かを両国間に出す。その場合に、日本では日本でその責任者が新聞記者会見をしていろいろ説明をしますね、きょうはこうであった、ああであった。アメリカでもその責任者がいろいろと説明をしますね。そういうものに対して、日本政府はあの記事が全部間違っていますよということをおっしゃいますか。おっしゃらないでしょう。それと同じようにそういうものは権威のないものと解釈しないといけないのでしょうか。こういうことがちょっと疑問になってくるのです。
  60. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 何べんも繰り返すようですが、私のは内外の記者団に対しまして、公式に責任を持つ発表をいたしたものでございます。その他のことについては、私はコメントすべき筋合いのものではないと思います。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣はそういうふうにおっしゃいました。そうすると、ジョンソン次官補が記者団に語った話は公式ではないらしいというふうに総理はお考えになりますか。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも相手の人の言ったことがどうこうというのは、外交ではあまりそう露骨な言い方はしないものです。ただ、こういうような非常にデリケートな問題の場合には、両国の間でコミュニケはつくるが、さらにそれの説明のしかたとしてはこういうように説明を統一しよう、こういうのは普通の考え方、普通のあり方でございます。したがいまして、いままで比較的に双方で別々に話をしても前もって打ち合わせがしてございますから、そう大きな食い違いはないというのがいままでのところであります。大体問題の性質上からいたしまして、そのくらいな誠意というか熱意を持ってやはりコミュニケはつくるべきものだ、かように思っております。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 説明をする場合に、双方の人が話し合って説明をする、これは私もそうでなければ、権威のあるものではないと思うのです。しかし一国の国務次官ともあろうものが、そういう人が新聞記者会見をするときに、それほどコミュニケと違うようなことを言うでしょうか。私はちょっと言わないんじゃないかと思うのですね、そういうことは。ですからこれは疑わしいというようなことはちょっと問題じゃないかと思うのですけれども、いかがでございますか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あまり私もこれは批評したくないのですが、本人が言い過ぎたのかあるいは記者が、聞いた人のほうがあるいはややはき違えて記事をとったのか。とにかく力の入れ方によりましてはずいぶん違ってくると思います。現に私が積極的にアメリカの行動を支持したわけじゃありませんけれども、先ほど冒頭に説明されるように、カンボジアにおける、日本政府はどうしてアメリカ軍を支持したか、こういうような話になりますから、やはり力の入れ方で調子が少しずつ変わってくる。その変わり方が先のほうにまいりますと大きくなる、こういうふうなことも間々ございますので、この点はただいま申し上げるように公式に話し合ったもの、それをただいま外務大臣は責任をもってお話しをしておる、かように御了承いただきたいと思います。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 それほど力の入れ方によって違うような内容ではないように私は思います。しかしこれ以上この問題と取り組んでいますと進みませんから先に延ばしますが、やはり今後ジョンソンが説明された背景的説明というようなものはいろいろなところに出てくると思いますし、また私どももそれも参考にしながらいろいろな知識を持っていかなければならないというような場合もあると思いますので、もう少しジョンソン国務次官が説明された背景的なものも、政府自身もお調べになって、こういうところは違っているんじゃないかとか、ああいうところは違っているんじゃないかとかいうことをはっきりさせておかれたほうがいいんじゃないかというふうに私は考えます。今回のこの問題に関しては、私自身も同じ考えを持ちます。やはり日本の平和を含んだ極東の平和、こういうふうに言い方が変わってきたというふうに考えるわけで、ジョンソン国務次官が言われたのとほんとうに同じじゃないかしら、こういうふうに思うわけでございますけれども、私の条約の読み方が違うと言われればそれまでだと思うのです。いまの政府の言われるのは、そういうふうにおっしゃるならばそれ以上これは議論できないと思いますから、他の形で研究をしていきたい、こういうふうなことでこの問題は一応保留にしておきたいと思います。  そこで、きのうの本会議でも出た問題でございますが、一九七二年には沖繩は核抜き本土並みで返される。しかしもしもそのときにインドシナ情勢が解決していなければいろいろ協議をするんだ、こういうことが書いてあるわけです。そのときに外務大臣が説明されたのは、共同声明が発表されたあと説明されたのは、大体においてそのころまでにはベトナム戦争が継続していることはないでしょう、こういうことを述べられているわけでございますけれども総理は今日の情勢で一九七二年までにベトナム問題が解決している、こういうふうなお見通しでございますか、どうでしょうか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 多分に私の希望かもわかりませんが、なるべく解決してほしいと思っております。したがってそういう方向で物事が進むのではないだろうか。ことに最近アメリカ自身がベトナムからいわゆる撤兵をどんどん開始している。これなどは一つの終わるだろうというほうの論拠にもなる問題のように思っております。これはアメリカ自身がどんどん増兵しているというような事態だと、これはなかなか終わらぬだろう、こうも考えますけれども、兵隊がいまの計画そのものだと半減するような状態になっておりますから、これは終わるんじゃないか。またカンボジア問題が起こりましたけれども、これも非常に地域を限定しておるし、また期間的にもこれはできるだけ早くと、かように申しております。しかも米国の国内の世論等も十分ニクソン大統領は把握しながらこのカンボジア問題と立ち向かっておる、かように私は思いますので、これはどうも希望が多分にあるとは思いますが、私の希望だ、かように申すことは、それは正確かと思いますけれども、とにかく終わってほしい、七二年ごろには、よほど状態が私どものほうの望むようなことになるのじゃないだろうか、かように思っておるような次第であります。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 希望的なことはよくわかりますけれども、今日のようなアメリカのあのやり方を見ていると、私はなかなか解決しないんじゃないかとたいへんに心配をいたします。希望的な観測がうまくいけばいいですが、なかなかいかないんじゃないでしょうか。七二年になってから、やはりあのときの希望はあわのように消えましたというようなことにならないように、私は望んでいます。そこでこの問題は、私は事前協議の問題とからんで質問をしたかったのですが、時間が迫ってまいりましたので、あとほかの問題に移りたいと思うのです。  きのうの江田書記長も、きょうの坂本議員も日米共同声明の四項の台湾の問題をお触れになりました。きのうも私は耳を澄まして聞いておりましたけれども、これに対する御答弁はございませんでした。それからきょうの坂本議員に対しましては、生命線かなにかでずっといっちゃって、お聞きになったことに御答弁がなかったように思いますので、私の質問には生命線じゃなくて答えていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、韓国と台湾の安全は日本の安全とみなすということを約束して、そうして万一外部からの攻撃が台湾に起これば、韓国と同じようにアメリカの行動を支持して、事前協議においては前向きに迅速な態度を決定するということを約束をしたわけです。そうしますと、ここで問題になってくるのは、外部からの攻撃とは中華人民共和国をさしているということが明らかであって、こういうふうなことが中国側から言わせれば、内政干渉じゃないか、こう言われるのもしかたがないんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、この点はどういうふうにお考えになりましょう。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも中国の問題に一切くちばしを出すな、これは内政問題だ、こう言っておしかりを受ければしかたございませんが、私どものように、もう戦争、戦いによってものごとをきめないというこういう考え方からいたしますれば、大陸台湾との問題も話し合いで片づけてほしい、かように私は思います。しかしさように申したからといって、私が内政に干渉している、またそういう意向で申しておるわけじゃありません。私は同一民族、同一国家、そこらでは話し合いで十分できることじゃないだろうか、かように思います。大陸反攻というようなことで武力を使うとか、あるいは台湾省解放だ、こういうことで武力を使うとか、こういうことは私どもから見まして、どうもことばが少し過ぎるんじゃないだろうか。これを批評することも内政干渉だ、かように言われれば、これは私も慎みますけれども、むしろその程度のことは当然言うことじゃないだろうか。どうこうしろということを言っておるわけじゃございません。私は、とにかく話し合いでものごとをおきめなさいというこの程度のことは内政干渉としてどうも顔をこわばらす必要はないことじゃないだろうか、かように思います。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 これは共同声明の中にあるから言うわけでございまして、別に佐藤総理が私に、そんなことを言う必要ないんじゃないかとおっしゃるようなことじゃないと思うのです。共同声明そのものを読んだから私は申し上げる。  そこでさらに、これに対する説明として、そういう事態は予見されないということを言われているわけでございまして、いまの御答弁の中にも、話し合いで解決をしてもらいたいのだ、こういうふうに言っていらっしゃるのですから、それならそれで、なぜこんなことをおっしゃったのでしょう。こういうことをおっしゃれば、やはり中国はいい気持ちがしないということくらいは、政府としてもおわかりになっていらっしゃるのじゃないかと思うのですけれども、わざわざこういうことをお入れになったのは一体どういうわけなのかということの疑問を持つのは、やはり私ばかりではないと思うのです。このことにつきましても、きのうはお返事がいただけませんでしたので、しかもこの問題は、中国を訪問された方々がたいへんに身をもって感じられたいやなことであったということも聞いておりますので、どういうわけでこういうことを入れられたのか、やはりアメリカもこういうことを望んだのか、こういうことを一応伺っておきたいと思います。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共同声明前のジョンソンあるいはその以前からの経過をごらんになると、私は台湾あるいは大陸との関係、表現のしかたにはずいぶんくふうしたように思っております。したがって、一時言われました締め出しの政策をとっておるとか、あるいは包囲作戦をとっておるとか、かように言われたような事柄はとにかくないようにした。しかしながら、問題が起きたら一体どうなるのか。全然日本は関心なしにそんなものはほってある、こういうものではないという、最小限度のわれわれの関心の深さ、それを表明したのがあのコミュニケだ、かように理解していただきたいと思います。私はそういうことを直接でもお話しすれば、おそらくわかっていただけるだろうと思います。この問題の起こるのは、中華民国から大陸反攻するばかりではございませんし、いわゆる大陸からの台湾省解放の問題もありますし、いずれにいたしましてもこれは問題だ、かように思っております。また朝鮮半島でも、韓国と北鮮がただいま戦争状態にある。そういうことを考えると、これも幸いに休戦ラインができ、休戦監視委員会がいるようなものの、いつ火を吹くかわからないという。そういうような状態だと、最も緊迫した状態について国際的に指摘することはこれは当然のことではないだろうか。そのことをむしろ隠してそういうことに触れないことのほうが疑問を持たれ、何か別な密約でもあるように思われる、そういうようなことにもなるのじゃないだろうか、かように私は思います。ただいまのように御批判はございます。批判はございますが、在来の書き方からは私はよほど変わった表現をしたつもりでございます。その表現のしかたが悪い、こういうお話であるようにも聞き取れますけれども、しかし少なくとも昔のような考え方ではなくなってきている、非常に局限した表現になっている。かように御理解をいただきたい。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことは予見されないようなことであるがということも、説明の中にはつけ加えておられるわけでございまして、私どもとすれば、予見しないようなことをなぜ入れなければならなかったのだろうというような疑問を持つわけでございますけれども、これは佐藤総理のいまおっしゃったようなお考えでございましょうし、この問題をもう少し詰めていくには時間がございません。  そこで私は中国問題はあと同僚議員に譲りたいと思いますが、先ほども総理が、大使級以上の政府間の人事の交流というようなことも考えてもいいということをはっきりおっしゃいました、チャンスさえあればいいと。そういうふうなことをお考えになって、たいへんに前向きに取り組まれて私どもも喜んでおりますが、ただそのチャンスをつかむには、これまでのような中国に対する考え方であっては、なかなかチャンスはつかめない。したがって、そういうふうな考え方をまず改めた上でチャンスをつかむようにしていただきたい。そして、中国問題は一九七〇年代の問題としてぜひ解決をしていただきたい、こういうことを要望いたしまして、私、事前協議の問題等について触れようと思いましたが、時間がないので同僚の議員に譲りたいと思います。
  72. 田中榮一

    田中委員長 松本七郎君。
  73. 松本七郎

    松本(七)委員 昨日の本会議の答弁を聞きましても、いよいよ政府日米安条約を自動延長するという従来の方針どおりいかれると考えていいと思います。そこで、十年前にここで岸内閣、当時の藤山外務大臣と私どもいろいろ論議を重ねましたことで、もう一度この自動延長するにあたって、国民のいろいろな心配にこたえる意味からも確認しておきたいことが数点あります。その点をまず確認なりかつ解釈あるいは運用について、新しい事態に対応した運営についての要望、意見等を申し上げながら、総理の御意見をお聞きしたい。  私どもは、もうすでに御存じのように安保廃棄論者です。けれども政府が自動延長という方針をきめておるわけですから、なるべく平行論議を避けて、自動延長になるということを前提にしながら、国民の疑問に思っておる点、今後不安に感じておる点を中心にお伺いしたい。  第一は、旧安保と現在の安保、したがって継続される安保の一つの大きな違いは、日本の内乱鎮圧の条項だと思います。総理も御存じのように、旧安保では日本における内乱鎮圧にも安保条約が発動される。米軍が行動をすることが許されておった。ところがこれが、内乱まで外国軍隊の行動に依存するというのは国辱的だという、いろいろな意見もありましたけれども、これが中心になって、現安保では内乱条項というものが削除されたのは御存じのとおりであります。そこでこの四条にいう、日本国の安全に対する脅威、という文句の解釈いかんでは、条文上は内乱条項というのは削除されておっても、実際の運営にあたっては外国軍が行動を起こす余地が出てくるのじゃないか、また残されているんではないかという疑問は当時からあったわけです。そこでこの点をもう一度ここで確認しておきたいと思うのですが、この条約でいう、安全に対する脅威、ということは外国からの侵略であって、内乱は意味しないのだということを総理の口からここで明確に御答弁できるかどうか。
  74. 井川克一

    ○井川政府委員 仰せのとおり、純粋なる内乱の場合には入らないわけでございます。
  75. 松本七郎

    松本(七)委員 総理に伺いますけれども、私どもがこの点を心配するのは、たとえば米国とフィリピンの相互防衛条約、これには、外部からの武力政策により脅かされたと認められたとき、こういう明文によって脅威の性格というものを明らかにしているわけですね。ところが日米安条約では、外部からの云々ということがないのです。ですから、一般的にただ脅威と、こうなっていますから、これはあるいは内部からの脅威も含めて解釈される。あるいは日本政府は、いま条約局長の御答弁のように外部からだと、こう解釈しておっても、これは日米の安保条約ですから、アメリカ側がもしそういう解釈をしておるということになると非常な問題です。したがってこの自動延長するに際して、アメリカ側の解釈にもそういう疑いはないかどうか、全く一致した解釈のもとに今後運営されるかどうか。この点をまず総理の口からお答え願いたい。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま条約局長からお答えしたように、この問題は非常にはっきりしております。しかしただいま、なおアメリカ側にそういう点を明確にしないと疑問があるんだ、こういうようなお尋ねでございますけれども、私は、いままでも日本側の公式説明をしばしば繰り返しておりますから、そういう点についてアメリカも百も承知、一切その点では混淆あるいは間違いを起こすようなことはございませんとはっきり申し上げておきます。
  77. 松本七郎

    松本(七)委員 それは、この自動延長に際して、この点について間違いないという確認をアメリカ側からとられたのですか。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだ、自動延長についてアメリカ側に何ら申してはおりません。ただ、私どもがニクソン大統領と話し合った際に、とにかく安保条項、安保体制は継続すべきだ、こういう話をしたこと、これはございます。また、安保自身が改正されない限りただいまのような御心配はないということを重ねて申し上げておきます。
  79. 松本七郎

    松本(七)委員 いや、いま私が例を引いたように、米比の条約ではそういう外部からのという明記があるし、日米条約ではないという点から、あるいはアメリカ側が拡張解釈する余地がないとはいえないんですよ。ですからこの際自動延長するに際して、それじゃもう一度アメリカ側にこの点を再確認をしていただけるかどうか。それを伺っておきたい。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自動延長いたします場合に、この点は私問題はないと思いますが、松本君、特に御心配のようですから、そういう点をさらに一応注意しても差しつかえません。これはいずれ、自動延長は何にもしないことでもう自然にそういう事態に突入するのでありますから、別にございませんけれども、いままで疑問にされておる点、まだ疑問が幾ぶんか残っておる点——これは私のほうじゃございませんが、野党の一部にあるからそういう点を明確にしろ、こういうことを申すのは、政府としてこれは当然のことでありますから、そのぐらいのことはいたします。
  81. 松本七郎

    松本(七)委員 それは野党というよりも国民の側で、やはり新しい事態に備えて、自動延長なされるについてはそういうことをもう一度確認したいという非常に強い希望もありますから、そういう国民の要望を背にして、ひとつ再確認をしておいていただきたい。  それからそれと関連して第六条ですね。「日本国の安全に寄与し、」云々、つまり基地貸与の根拠ですね。この日本国の安全という安全の意味ですな。これもやはり四条同様に、外国からの脅威に対する安全というふうにいままでも解釈されてきたと思うのです。これをもう一度、ここで総理の口から確認しておきたい。
  82. 井川克一

    ○井川政府委員 松本先生仰せのとおりでございます。
  83. 松本七郎

    松本(七)委員 なぜこれをここで確認する必要があるかといえば、これも国内でたとえば学園紛争が非常に激化するとかあるいは学生のデモが激化するというようなことに拡張解釈されて、そしてこの脅威から安全を守るというような名目で基地貸与が継続されるというようなことが、これはあるべからざることだと思いますけれども、この安保条約の解釈それから今後の運用についてこのようなことも心配をしておる向きが相当ありますので、ここでもう一度伺っておるわけです。明確な御答弁をお願いしておきたい。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米安全保障条約、これはもう毎度申し上げますように日本の安全を確保する、これがアメリカに課せられた義務である。またそのかわりにわが国としてはこれに施設、区域の貸与をする、使用を許す、そういうのが交換になっております。したがって、ただいまの基地の問題につきましても、その辺は非常にはっきりしている問題でございまして、私はただいま別に問題はない、かように考えております。
  85. 松本七郎

    松本(七)委員 それからその次は、新しい事態といえば何といっても七二年に予定される沖繩施政権返還、こういう新しい事態が今後の安保条約の運営に非常に大きな関係が出てくると思います。そのほかに沖繩の米軍基地が最近非常に強化されておるというような問題、それから最近のインドシナ戦争の拡大の問題等も新しい事態として考慮しなければならない要素ですけれども、この第五条で、いわゆる日本領土内における日米いずれか一方に対する武力攻撃に対して、自国に対する危険とみなして行動を起こすという規定ですね、この規定について、よく軍事同盟論に使われるわけですけれども、米本土が攻撃された場合は日本には全然関係がない、これは十年前の安保論争でもずいぶん明確にされたわけですが、日本の施政下にある領域の中の基地が攻撃された場合には、これは共通の危険に対処するように行動するという明確な規定があるわけです。この行動ということは、日本の国内でいいますともちろん軍事行動であって、この場合は文句なしに自動的に自衛隊が軍事行動を起こすということですね、どうですか。
  86. 井川克一

    ○井川政府委員 ただいまのおことばでございまするけれども、基地に対する攻撃とおっしゃったように私承ったわけでございまするけれども、私ども第五条として考えておりまするのは、そういう場合には結局日本に対する武力攻撃である、基地だけに対する武力攻撃というものはあり得ない、すべてそれは日本に対する武力攻撃である。したがいまして、それから自衛隊法云々となるわけでございます。
  87. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで、今度は新しく沖繩日本施政権下に入ってくるというのが十年前の安保のときとは非常に違うわけですよ。総理も言われるように、沖繩施政権が返れば安保の全面適用だ、こう言われるから、当然それは入ってくるわけです。ところで、われわれの日本をめぐる情勢は、十年前の安保の審議のときより以上に、南北朝鮮の問題も依然として緊迫を続けておる、あるいはプエブロ事件等も出てくる、それからインドシナにおいてはカンボジア戦争も起こってくる。そういう状況で、さっきも総理は、よその火の粉が降ってくるかもしれないのに無関心ではいられないというようなことをちょっと言われたのですけれども日本が、そして佐藤政府は自主防衛ということも一方には打ち出される、こういうことになると、日本の国の直接の責任でないような、アメリカと他国の紛争で日本領土内の基地が攻撃されるということは一応考えられるわけです。そうでしょう。日本には責任はない、しかしアメリカの責任において第三国と紛争が起こる。そのために日本にある基地が攻撃を受けるということはあり得るわけですね。そこを私は、日本国民は非常に心配していると思うのですよ。ですから、だんだん外交も自主的にやる、防衛まで自主防衛をやる、そういう日本アジアにおける責任、自主外交、自主防衛というものが進展すればするほど、第五条でいうように機械的に日本施政権下にある領域に対する攻撃が即軍事行動も起こさなければならないというような、何らそこにアメリカ独自の責任とそれから自主防衛、自主外交を展開する日本独自の責任というものが区別されないでこれを運用することがはたして新しい事態に適当かどうかという問題ですね。それは一切の軍事行動を排除して、非軍事的な行動だけで協力するというふうにはいかないでしょう、安保条約の成立過程からいっても、条文からいっても。しかし少なくとも日本関係のないような紛争の被害を日本みずからが受けなければならぬというような、そういう運営を避ける方法はないものでしょうかね、この自動延長に際して。それぞれの責任において、もう少しそこの協力のしかたに差をつけるというような運営のしかたはできないものでしょうかね。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは外務大臣がお答えしたほうがいいかと思いますが、ただいま言われるように、沖繩の軍事基地を最近、施政権下にある際にだんだん強化されている。一体日本沖繩が返還された際に、どんな軍事基地が残るだろうか、これがいま問題になっておる。私ども返還の準備としていろいろ米軍と折衝するわけでございます。まず一番問題になっているのはいわゆる核基地、もう一つは毒ガスの基地、こういうものがいま撤去されつつある。したがって、返還時に際しましてどういうような基地が残るか。これはアメリカ日本との間でもっと折衝し、そうして十分確認しないとわからないわけであります。しかし私は必要以上のものは残さないだろうと思いますし、また日本が忌避している、ただいまのような非核三原則あるいはまた細菌兵器等は、毒ガスを含んでそういうものは撤去される、かように思っております。そうしてそういうものが撤去された後でも、おそらく内地における基地よりも沖繩の基地のほうが強大だろうと思います。しかし日本に返還された沖繩、そこにある基地、これは米軍が自由使用するわけのものではありません。自由使用は私ども認めておりませんし、その場合に、返還された以上本土と同じようにいわゆる事前協議の対象になる、こういうわけでございますから、ただいまのような御心配の点はなくなるのじゃないか。ただいま施政権アメリカが持っておる。そのもとにおける沖繩の基地と施政権日本に返還した後の沖繩の基地、それはもう本質的に性格も変わればまたその内容もすっかり変わる、かように考えてしかるべきで、そういう際にこそ本土でいま行なわれておる事前協議条項、これがいかに活用されるか。これはたいへん大事なことだと思っております。私はそういう点をいままでもしばしば申し上げておりますように、どこまでも日本国益に照らしてそういうことはわれわれがきめていきますから、どうか御心配のないようにと、かように申しておるのであります。  どうもただいまの問題は、安保があれば戦争に巻き込まれる危険があるとか、あるいは沖繩が返ることによって本土が沖繩化するとか、たいへんものごとをひっくり返したような議論が行なわれておる。この点を私は国民皆さんも、安保があるからこそ戦争はないんだと、十分抑止力が働いておるんだと、こういうことは理解しておると思います。二十五年の間、過去においてこの日本を取り巻く各国の間はずいぶん問題が起きておりましたが、われわれは戦争にさらされるというような危険は一度もなかった。これは安保があるから抑止力が働いておると思います。  また、今度沖繩が返るということは、だからその安保があったからって戦争に巻き込まれる危険のないこと、これは過去の経験からわれわれはすでにそういうことはないということをはっきり認識しておりますし、また今度は沖繩が返ってくれば、ただいまのように事前協議の対象になるので、いまのようにアメリカ施政権を持っておって自由に沖繩を使っておる、その状態は完全に変わるのでありますから、本土並みになると、かように思うので、そこは誤解のないようにお願いします。
  89. 松本七郎

    松本(七)委員 それは誤解じゃないと思うんです。やっぱりこれは日米共同声明にもまた触れてきますけどね。誤解ではなくて、事態の実態をどう認識するかというところからそういう意見は分かれてくると思うんですよ。ですから、ただ誤解だ、誤解だと言わないで、どうして私どもがそういう心配をしておるかという根拠について、やはり真剣に耳を傾け、そして考えていただきたい。だから、それをいまから言います。  いまも自由使用の問題を言われましたが、これは昨年十一月、屋良主席にも同じことを言われたと見えて、屋良主席が当時あなたに会ったあとの記者会見でも四つの条項を言われております。これは間違いないかどうか、ひとつ確認しておきたいと思います。  一つは、一九七二年の沖繩施政権返還は絶対に間違いはない。それから第二番目が、返還時までに核は撤去される。それから第三に、返還後の基地の自由使用はない。それから第四に、したがってB52の直接発進もない。こういう四つのことを屋良主席は発表されておりますが、この点は間違いないですね、現在でも。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在においては間違いございません。
  91. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで、国民心配するのは、このとおりいけばけっこう、しかし核抜きということが完全に実施されなかった場合どうなるだろうか。それからその完全に実施されたという確認は一体とれるものだろうかどうかですね。これはアメリカの国内法その他からいっても、核の存在というものをおそらく明らかにできないでしょう。だからここで日米信頼論が出てくるわけだ。それから一たん撤去して、再度持ち込みはないだろうかという、この心配はやはりどうしてもありますよ。そういうことからもっと、こういうあいまいな表現でなくて、具体的に取りきめてもらいたいという要望が私は強く出てくると思うんです。  そこで、いま総理もこの自由使用ということを言われましたが、自由使用はないと言われる場合の自由使用は、事前協議にもかけないで、かってに使用するというのを総理は自由使用と解しておられるようですが、その点は間違いないですね。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおり間違いございません。
  93. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで今度は核兵器に対するニクソン共同声明の個所にくるわけです。この共同声明ですね、「総理大臣は、核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策について詳細に説明した。これに対し、大統領は、深い理解を示し、日米安条約事前協議制度に関する米国政府立場を害することなく、沖繩の返還を、右の日本政府の政策に背馳しないよう実施する旨を総理大臣に確約した。」こうありますね。ここで「事前協議制度に関する米国政府立場を害することなく、」というのはどういう意味なんです、わざわざこれを入れたのは。
  94. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは安保条約沖繩に本土並みに適用されるということと全く同じことでございます。御承知のように安保条約の第六条によって事前協議の制度ができて、そしてその事前協議にかけるものとしては、しばしば御説明申し上げましたからよく御承知のとおり、核の持ち込みというようなことは事前協議の対象になる。これが沖繩にもそのとおりに適用される。そして日本政府立場というものは、そこで大統領が理解を示して、そしてそれに背馳するようなことのないように返還を実施すると、こういうことになっているわけですから、日本の核に対する国民の感情に基づいたところの日本政府の政策によって、日本政府としては核については持ち込みを許さないという立場によってこれが実施ができる、こういうことになるわけでありますから、本土と何ら変わることない、核についても本土並みの実現がはかれると、こういうことになるわけであります。
  95. 松本七郎

    松本(七)委員 総理大臣、いま外務大臣の説明を聞いて変に思われなかったですか。これは日米共同声明で初めて出てきたことばなんですよ。いままで事前協議制度について日本の本土の基地、いままでの沖繩を除いた日本の国内における事前協議制度について、アメリカ立場を害さないとか、米国政府立場を害することなくというような説明も表現も一度もあったことないんです。だからその本土と同じように沖繩施政権が返れば、今度は事前協議が適用されるというのなら、わざわざこんなことをここへ入れる必要はないと思うのです。そうでしょう。——何でありますか。それじゃアメリカ立場というものと日本立場というものは、事前協議制度について何か違うんですか。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本本土内にある米軍基地、もうこれは米国もよく承知しておりますから、何らの疑問なしに事前協議の対象になっている、かように考えられる。しかし今度いままで自由自在にかってに使っていた、いわば自分の領土みたようなつもりで使っていたその沖繩日本に返還される、そういう際でありますから誤解を受けないように、返還されたあとは、これは本土と同じように事前協議の対象になりますよという、これはあたりまえのことですよ。
  97. 松本七郎

    松本(七)委員 いや、そんなことを聞いているんじゃない。事前協議の対象になるのはあたりまえでしょう。ただし、ここに事前協議制度に関する米国政府立場を害することなくと、わざわざここに入れたのはどういうわけですか、おかしいじゃないですかというんです。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だからいま言うように、いままでは自由自在に使えていたんだ。事前協議の対象になれば必ず自分たちがいろいろ拘束を受けるという、それを承知してもらいたいという、そこで日本側の考え方とアメリカ側の考え方が一致しないものがあります。だから、事前協議があると、皆さん方も事前協議の場合に、これはほとんど自由使用に近いような、ノーのあり得ないような基地じゃないのか、こういうことを言っておられるじゃありませんか。私は、そういうことじゃないのだ、アメリカのその立場理解するが、同時に片一方で日本内地と同じようにやるのだから、これは日本が優先的に国益に反しないような使い方をしてもらうのだ、こういうことでございます。そのことは、やはりいままで自由自在に使っていただけにはっきり明確にしておく必要がある、かように私は思います。
  99. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう解釈はどうして出てくるか。アメリカでもこの表現については、ポジションというものをそんな簡単なものじゃない、これは従来の既得権をもう寸分も侵すことがないのだ、そういう非常に強い意味を持っているのだという意見を述べておりますよ。いままでの権利は侵害されないのだ、アメリカ権利は侵害されないのだぞ、従来から持っておった既得権は少しも侵されないんだという非常に強い意味がある、この立場ということについては。そういう意見も考えてみると、十年前のあの論争のときから問題になりましたように、今度ここで言われているのは、明確に「事前協議制度に関する」と書いてあるでしょう。「制度に関する米国政府立場を害することなく、」これはどんなことかというと、あのときも論争になったように、事前協議というのは協議である。協議は協議すればいいのであって、合意は必ずしも必要としないのだ、したがって拘束力はないのだ、協議してもまとまらない場合にはアメリカが自由にできるのだ、こういう意味では実質的な自由使用なんですよ。だから沖繩が、いま総理も言われるように、自由自在に使ってきた、これからは事前協議というものを通すだけの違いが出てきた。その事前協議制度については、アメリカ立場を害さないというのですから、実質的には協議はする、したがって総理の言う自由使用ではないといっても、アメリカとすれば、この共同声明を忠実に主張すれば、当然協議はするが、整わない場合にはアメリカは自由に使える。これは実質的な自由使用なんですよ。そういうふうな点について、もう少しアメリカ側のそういう意見というものと、日本政府のいまの説明というものに違いがはっきり出ておる以上は、それは何といったってまた持ち込むのではないか、あるいは協議は一応してもやはり使うのではないか、そういう不安があるわけですよ。だから、そういう不安を完全に払拭するような御説明なり、それからアメリカとの折衝を自動延長される、継続される前にもう一度ひとつやって、国民の前に明らかにしてほしい、それを求めたいのです。
  100. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは沖繩についての共同声明の問題よりも、安保条約の問題であると私は思います。そしておことばを返すようですけれども、協議であって協議が整わない場合には実質上自由使用だというような解釈は、安保条約それ自体についてもとっておりません。これは詳しく新安保条約において、御承知のように第六条の交換公文に基づいて事前協議ということが行なわれることになって、そうしてさらにこれを補完する当時の大統領、総理の公文がさらにまたあって、日本の欲せざることについてはこれをやらないという趣旨のことが補完されている。こういうことによりまして、日本としては拒否することが当然に、協議整わざる場合、日本がノーと言う場合には持ち込みができないということになっている。それをまた論議を蒸し返して、そんなことはなかったはずだ、こうおっしゃるとすれば、それはおことばを返すようですが、誤りでございます。そうして安保条約第六条によって重要な装備、配備の変更戦闘作戦行動、こういうものが事前協議の対象になるということがきまっておって、そうしてその重要な装備、配備の変更とは何ぞやということの中に了解事項ができておって、核装備ということがその中に入っておる、これは両国の了解事項である、こういうことになっている、そのままの姿というものが、沖繩返還後においては安保条約、これに関連する一連の取りきめが何らの変更なしに適用される、その姿をこの共同声明の上にも、核の問題については日本国民としてもあるいは日本政府としてはもちろん非常に重大な問題でございますから、特に事理を分けてここに取り上げてあるわけでありまして、これは総理大臣のただいま御説明のとおりでございます。また私から補足すれば以上申し上げたとおりであります。
  101. 松本七郎

    松本(七)委員 これは安保条約一般の問題と言われました。それはそのとおり十年前の論議のときからこの点は議論になったわけですよ。政府はこれが歯どめだという説明を一貫してされてきたわけです。私どもは必ずしも歯どめにならないのだということで議論してきたわけですけれども、それが今日施政権返還という時点において、こういう表現が共同声明に出てきました。だからやはりわれわれが心配したとおり、これは歯どめじゃないのじゃないかという疑いが出てくるわけですよ。だからわざわざ施政権返還のときに、沖繩の基地に限って今後沖繩に対する事前協議に関してこういうものが打ち出されたということは、何か特別な意味がなければわざわざここに打ち出すはずはないじゃないか、これは疑うのがあたりまえだ。ですから、自動延長される前にもう一度ここについてはっきりとアメリカとの統一解釈というものを確立しておいていただきたい。  それからあといろいろ問題を申し上げる予定でしたけれども、あと防衛問題を中心にした質問を楢崎さんがやることになっておりますから、ここらで私は打ち切りたいと思いますが、ただ、一つ総理にお伺いしておきたい。それは例の中国からいろいろ軍国主義云々批判を受けましたね。あなただいぶあれに対する発言その他を聞くと、いたけだかになっておるような感じを受けるのですけれども、それは沖繩の返還がペテンだとか、それから古井さんもずいぶん——古井さんの話をあなた詳しく聞かれたのですか。聞かれない。何か佐藤政権そのものはそれほど悪く言っていない。佐藤さん個人を言っておるそうですよ。正直なところ、それは無理もない点もあると思うのですよ。あなたもそれは岸さんの責任まで弟が負うのは筋違いでしょうけれども。だけれども、それはやはり岸さんは何といっても——向こうはそういうことを言っておるのだから、それは一応耳をかすべきだと思うのです。岸さんとか賀屋さんに対しては相当風当たりが強かったらしいです、話を聞いてみると。賀屋さんはあの戦争にどちらかというと消極的だったということですけれども、岸さんは何といっても満州国をつくり上げて、積極的な侵略の元凶ですからね。私は十年前そのことをここで岸さんとやったのだから。しかしあなた自身も問題があるらしいですよ。たとえばあなた通産大臣のとき南漢宸といろいろ話された。かなり前向きの話をされたのじゃないですか。それが総理になりながら何ら前進していない。ここで向こうさんが使ったことばというのを私は聞いたのを繰り返しませんけれども、相当激しく佐藤個人を攻撃しておる。だから佐藤総理とか佐藤首相という表現にしてくれと言って古井さんはずいぶんがんばったらしいけれども、これだけはがんとして聞かなかった。佐藤榮作と呼び捨てですよ。それは沖繩ペテンだ、佐藤榮作、それから軍国主義、こう言われれば、国民感情にさわる点はあると思います。けれどもやはり何といってももう一度ここであなたに考えてもらいたいのは、吉田総理が当時サンフランシスコ平和条約締結し、あの状況の中で日本を独立に持っていこうというためには、当時やはり日華条約というものも結ばなければならない立場にあったわけでしょう。けれども、その吉田さんもちゃんと限定政権ということにしておるわけですから、あの台湾に限った政権だという立場を貫いておるわけです。これはいわば亡命政権ですよ。そうでしょう。この一方は台湾の亡命政権、片方は大陸を支配して、しかもあなたの言う北京政府というものの国際的な発言力はだんだん強くなる、国力も上がってくる、こういう状態の中で、あなたの言われるように、この日華条約というものを守ることによって国際的な信義は貫くんだ、一方大陸北京政府のある現実は認めるんだ、これともうまくやっていこう、こういうことなんだろうと思うのですけれども、これだととどのつまりどういうことになるか。やはり世界における力関係考えて、いつかは私は、中国大陸を支配している中華人民共和国政府を正統政府として認めるときが早ければ早いほどいいと思うのですけれども、この立場はあなたに要求したって、根本的な立場が違うのですから、これは平行線になるだろうと思うのです。そこで少なくとも自由民主党並びにその政府立場からいっても、いまの立場を貫いておると、私は台湾独立論に行き着くのではないかという気がするのですね。あくまでも国際的信義、日華条約は尊重していくということで、中国大陸政府北京政府とそれから蒋介石政府が平和的に話し合って解決する以外は、日本が自主的にその道を切り開いていく道はもう閉ざされたのにもひとしい。それでは私は日本の過去、再び岸さんのことは言いませんけれども、過去を反省して、そうしてアジアの平和を確保していくということとは、道が遠くなってくると思うのです。ですから、そこまであなた方の政府ではできないにしても、せめてその障害を少しずつ減らしていく、こういう意味で江田さんもきのうも第二次借款問題も取り上げられたと思うのですよ。蒋経国が来て第二次借款を三億ドル要求したとかいろいろいわれておりますが、この借款も何か聞くところによると、今度は民間銀行も使って少し形式を変えるというようなこともちらほら聞かれておるのですが、何らかの、方式は違ってもこの借款には応ぜられる方針なんでしょう。この点、どうでしょうか。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 台湾にある中葉民国と、または北京政府との関係、これは幾ら申しましても松本君と私との間には大きな開きがあるようであります。私はやはり日本としては国際信義は重んずる、やはり信義の国である、そういうことだけは通したい、かように思っております。  ところで、ただいまの蒋経国さんが日本に立ち寄られて、そうして借款問題を提出された、こういう話でございますが、私も蒋経国さんに会いましたけれども、その話は聞いておりません。おそらく外務省にもそういう具体的な話はなかったろうと思います。今回の蒋経国さんの立ち寄りはアメリカからの帰りでありますので、これは非公式な形で立ち寄られた。旧知の間柄だから私もお目にかかった、こういう話でございますが、ただいまのような話には発展しておりません。また万一さような話があれば、これはやはりケース・バイ・ケースで事態を考えていくということ以外にはただいまのところ考え方はございません。これだけは誤解のないように申し上げておきます。
  103. 松本七郎

    松本(七)委員 それから中国側が非常に警戒するというか、これは中国ばかりでなく台湾自身も私は相当警戒の念をこのごろ強めておると思うのですけれども、それは日本の企業の進出ですね。それから資本投下、技術提携、こういうことがしきりになされておるわけです。昨年末で大体民間投資が二百六十四件、五千三百五十万ドルといわれておるわけですが、あるいはまた新日本製鉄だとか住友化学、こういう大手企業が技術提携をやっておる。こういうことに対して、台湾で警戒の色がだんだん出てきて拒絶反応まで出てきておる。向こうの民族資本を圧迫しておるというような状態が出ておるといわれるのですが、こういうふうなことで、中国側立場から見れば、台湾問題については非常に神経過敏なことは御存じのとおりです。それは日本の民間資本がどんどん出る、台湾の民族資本さえ圧迫するような状態にいまなってきておる。こういう事態が——あなたはよく経済大国とかいうことを言われますけれども、そういう日本の経済の動きを背景にして、日本の財界ではいわゆるマラッカ海峡論というようなものも出てくるわけですから、あなたさっき生命線云々を言われたけれども、やはり日本の財界あたりから昔の生命線そのままのマラッカ海峡論が出ておるわけですから、そうして防衛費も増大してくるということになると、やはり経済の進出には必ず軍事が伴うということは、もう歴史の証明する事実である。これはよその国、アジア諸国も、中国ばかりでなく警戒すると思うのですね。ですからそういう状況の中で、台湾に対する資本投下、そういうものを何らかチェックするような御意思はないか、その必要がむしろ出てきたのではないかという気がするのですが、この点の御答弁を願いたい。  それから、もう時間がありませんから、最後にもう一つだけお伺いして質問を打ち切りたいと思いますが、それは、あなたはよく、きのうも本会議で言われた、二十世紀は日本の世紀だ。これはあなた学者のお世辞を真に受けてずいぶん吹聴されるようだけれども。それからいわゆる経済大国、これもよく言われる。さっきも経済大国とは言われなかったけれども、経済強国と言われた。これは一体どのようなあれを考えて、いわゆるビジョンを描いておられるのですか、ちょっと説明してほしいんですね。一般庶民大衆にどういう幸福がもたらされるのだろうか。それは昔ならば経済大国ということが、八紘一宇を目標にしていたわけだから、世界に君臨できるというような大きな目標を描いたでしょう。しかし今日はそんなことはないのだから、この経済大国ということが、内には公害がだんだんひどくなる、高度成長はするけれども公害はひどくなる、物価高になる、交通難は起こるというような、こういう状況をいまの庶民大衆というものはもう当然まず考えるわけですね。その土に今度は対外的には、いま言うように、経済的にはどんどん進出してくるんだというような非難が東南アジア諸国をはじめ各国から起こってくるという、そういう日本の経済大国ビジョンというものが、一体庶民の幸福とどうつながるかという点について、この際少し総理考えを伺わしておいていただきたい。  以上です。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま日本の資本が海川にもどんどん進出している、そうして出先で民族資本を圧迫しておる、こういうような事態すら起こりつつある、こういう松本君の御指摘であります。私は出先でその国の民族資本を圧迫するような事態が起こると、その日本の経済進出、資本進出、技術進出、そういうものは長続きしないと思います。そうしてまたいわゆるエコノミックアニマルというようなありがたくない汚名をいただくようにもなるのではないかと思います。したがいまして、それらの点には、おのずから限度があるだろう。私ども政府自身がとやかくするのでなしに、これは資本自身に対して外国が警戒するようになれば進出するわけにいかなくなってくる、かように思っておるわけであります。  ところで、私、この際に、特にいまのような話があるだけに申し上げたいのは、日本の性格の変わっておることであります。昔の経済強国、これは同時に、軍事強国でもあった、かように思います。したがって、日本が今日のように経済大国になれば、軍事大国になるんじゃないかという、一部でそういう心配をする向きが全然ないとは私も申しません。それは人類の始まってからの歴史から見まして、経済大国即軍事大国だった、これが歴史の示すところでありますから、日本もまたそういうような轍を踏み、そういう方向に行くのじゃないだろうか、そういうような危険感を抱くのは、これは当然だろうと思います。しかし、私どもは、日本がそうならないところに新しい日本あり方があると思っております。また、今日、そういう意味でも、世界をリードができるんじゃないか。われわれは軍事大国にはならないぞと、こういうことで進むべきじゃないかと思います。ごらんなさい、私どもは、もうすでに、非核三原則というような問題を提案いたしております。ししか、隣の中共では、核を開発しております。そうして、最近はまた、人工衛星の打ち上げに成功している。核運搬、そういう方法も開発された、かように考えてもいいのじゃないかと思います。しかし、私は、国民として、かような方向へ行っていることが中国大陸国民のしあわせだと必ずしも考えておりません。私どもは、核を憎む、これは人類の敵だ、かように考えますがゆえに、核開発はいたしません。ただ、平和的利用については、やはり核のエネルギーを利用しようといたしております。また、人工衛星は打ち上げましたが、これは核のいわゆる輸送手段としての人工衛星でないこと、これは御承知のとおりであります。私は、それらの点を十分理解してもらって、いわゆる日本の資本が海外に出ること、あるいは技術的な援助が行なわれること、それは、その国の民族にとりまして、そのまま受け入れられるようなものだという、日本的な、日本の利益をもたらすために、日本資本が出ているとか、日本技術が援助の形で外国へ手を伸ばしているとか、そういうものでないこと、これは過去においてしばしば繰り返されたような、そういうものではないことを、この機会にぜひとも理解してもらいたいと、かように私は心から願うものであります。しかし、なかなかこの点はむずかしいだろうと思います。そう簡単には理解されないかわかりません。私どもは、国民とともに誓った外交のあり方、平和に徹して、いずれの国とも仲よくし、そうしてそれぞれの独立を尊重し、内政には不干渉、こういうような方向で繁栄への道をたどりたい、かように私は思っておる次第でございます。  ただいまは、経済大国になった。経済大国になったが、それは日本国民のしあわせにどうつながっているのか、こういう御指摘がありました。これが、私がこの国会の初めに、一九六〇年代の経済的伸長の結果、やはり七〇年代は内政の年だと、かように申しました、そのゆえんも、ここにあるのでありまして、私どもは、外国との平和交渉、平和的なつき合い、これは進めてまいりますが、同時に、これまで経済が成長したら、国内の国民の生活の安定、充実に一そう努力すべきではないだろうか、これがいわゆる内政の年としての私のビジョンであります。  たいへん限られた時間でございますから、より以上、宣伝だけはやめますが、ただいま宣伝がましいことを申しましたが、私が言いたいことは、経済大国にはなった。これはもう世界第三の生産力を持つ、GNPを持つ国になった。しかし、自由陣営では二番目だ。そういう国にはなったが、軍事的にはわずかな自衛力を持つだけだ。そうして、その足らないところは、日米安条約で補っておる、これが今日の現状であります。  私どもは、一九六〇年代の経済発展の効果を国民に還元するという、そういう方向で努力したい、これがただいまの政府の決意でもあり、また、皆さま方にも呼びかけて、御協力を願っておるような次第でございます。私は、どこまでも平和に徹する。もう外交方針は、それより以上に出なくていいんじゃないか。仮想敵国など持つような考え方はございません。また、したがって、どうも、外国についての批判ども、これは私、遠慮し、なるべく控え目にいたしたいと、かように考えておりますが、しかし、国内の問題については、これは皆さん方からも遠慮のない御批判もいただき、そうして真に国民のしあわせになるような、そういう状態に生活内容を充実する、安定、高度のものに持ち上げたい、かように思っております。  この辺でとめておきます。
  105. 田中榮一

  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの答弁を聞いておりますと、六分かかっておりますね。私は、三十分ぐらいしかありませんから、ひとつ簡潔な御答弁をいただきたいと思います。  現在——今年度の状態でけっこうですが、防衛費、軍事費の絶対額で、日本は世界で第何位ぐらいのところにあると思われますか、中曽根長官にお願いします。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防費の規模におきましては、大体、世界で十四位程度であると思われております。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総合戦力の点においては、どのように判断されておりますか。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 陸上自衛隊におきましては、人員においては、まずこの程度でしばらくストップしておいてよろしいと思いますが、海上並びに航空におきましては、もう少し強化する必要があると思います。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 四次防は、ことしの予算委員会で私の質問に対して、大体、総額五兆四千億ないし六兆二千億、その間と思われておっていいという答弁でございましたが、それでは、四次防の最終段階では、他の国はいままでのような軍事費の増加のパーセンテージは変わらないと仮定して、四次防の最終年度では、大体、第何位ぐらいに進出する見通しでございますか。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 四次防でまだ、幾ら支出するかということがきまっておりませんので、大体何位ぐらいであるということをいまお答えすることは困難でございます。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が試算したところによりますと、もちろん前提があります、ほかの国はそれまでの平均的な伸びをやると仮定をして、四次防六兆円内外とすれば、大体、六位ないし七位ぐらいに進出するはずでありまして、時間がありませんから、ほかの点は申し上げられませんけれども、私は、中国なりあるいは北朝鮮の日本に対する軍国主義復活の批判ですね、これは、昨日の答弁でも、相手国の誤解であるとか、日本実情をよく知らないとかいう御答弁のようでしたが、しかし、もしそうであれば、そういう誤解なりあるいは認識不足をなぜ与えておるのか、この点のやはり一応の反省というものが別の角度から私はなされなくてはいけない。たとえばいまの中曽根長官の答弁にありますとおり、軍事費の絶対額でも、やがて世界で六位ないし七位というようにふくれ上がっていくこういう内容というものは、一つの脅威を与えるメルクマールになるのではなかろうか。一点だけひとつ申し上げておきたいと思うのです。  それで、次に、安保条約の第十条、破棄通告をする場合の決定は、そのときの政府の専権事項でありますか。総理大臣、お願いします。
  113. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 安保条約十条におきまして、一方の通告で破棄することができると書いてございますので、政府条約の規定に基づきましてとり得る措置でございます。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、もし破棄通告をする場合は、そのときの政府の専権事項であるということであれば、国会の承認等は必要でないわけでありますか。
  115. 井川克一

    ○井川政府委員 必要ございません。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうであるならば、事前協議の場合にノーと言う場合は問題がないかもしれないが、イエスと言う場合には、いつも問題にされておるとおり、日本が紛争あるいは戦争に巻き込まれる可能性が出てくる重要な決定ですから、これは政府の専権事項で済まされるかどうか。——総理大臣に聞いているんだ、重要な事項ですから……。
  117. 井川克一

    ○井川政府委員 安保条約及びそれに基づく交換公文に基づきまして政府の専管事項でございます。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、国会の承認は必要ありませんか。
  119. 井川克一

    ○井川政府委員 ございません。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日米共同声明以来あるいはそれ以前、佐藤内閣ができて以来、安保条約の条文は変わらないけれども、内容が、あるいは運用の問題が、解釈が非常に拡大されてきた、変更されてきた。それの一つの例であろうと思うのです。かつて三十五年の、一九六〇年の現行安保の審議のときには、岸総理大臣古井さんの質問に答えて、ノーの場合は問題ないけれどもイエスという場合は重要な決定事項だから国会の承認を求めますという答弁をされております。どうしてそのように変わってきたのですか。
  121. 井川克一

    ○井川政府委員 岸総理がそのようにお答えになったとおっしゃっておりまするけれども、私どもといたしましては、そのようなお答えはあり得ないものと確信いたします。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いいですか、そのとおり読んでみます。これは安保特別委員会の答弁です。  古井委員政府が米国の申し出に応じて、戦闘作戦行動に日本の基地を使用することを認めるという場合は日本戦争状態に入るということを意味し、重大な問題である。かかる場合に政府だけで処理していいかについては疑問がある。国会の承認を得るのが至当ではないか。」  岸総理答弁「日本の基地を使っての作戦行動を認めることは重大なことであるので、その決定については慎重でなければならないということは当然であり、適当な方法によって国会に報告して、その了承を求めるべきである。」  こういう答弁をなされておる。どうしてあり得べからざる答弁なんて言うのですか。佐藤総理のお兄さんに対して……。
  123. 井川克一

    ○井川政府委員 法律上あるいは条約上——条約上または法律上と申し上げたほうが正確でありますが、条約上または法律上その事前協議についてイエスと言うことが国会の承認を求めなければでき得ないと申されたものではないと理解いたします。政治的に重要なことであるから報告云々をなさるというふうに岸総理は申し上げられたに相違ないと確信いたします。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは佐藤総理はどう思われますか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま事務当局の説明を聞き、楢崎君の質問を聞きながら、どちらが代議士かなと実はふしぎに思ったのです。事務当局のほうがよほど政治的な発言をしておる。ただいまの岸総理の発言こそそれこそ政治的な発言だろうと思います。ただいま言われるように、イエスだと言う、それはたいへん重大なことだ。事柄によってはその戦争状態自身にも直ちに影響する、こういう場合もあるだろう。したがって、それは重大な問題だ。だからそういう場合には国会に報告をするという、そういうことを言っているのだと思っております。  この事前協議そのものが国会の承認がなければやれないというようなことでは、私は条約の運用は果たせないと思っております。ただいまのような点で、もしも承認をした。そういうことが国会の皆さんからも、また国民からも重大な批判を受ければ、それは内閣自身が責任をとるべき筋のものだ、かように思っております。でありますから、ただいまの点は、いわゆる承認事項というのではなくて、これは政府の責任においてやるが、その責任は国民が了承するかしないか、そういうことできまるのだ、かように思っております。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、簡単にいえば、法的にはその必要はないと思うけれども、運用については、イエスと言う場合には、岸元総理が答弁されたとおり、佐藤総理も国会に報告をしてその了承を求める、そういうお考えでありますね。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま国会に報告して了承を受ける、かようにまでは申しません。しかし、私どもは、ただいま政府の責任においてこれをイエスを言った。そうして重大な事態が起これば必ず国会も黙ってはいらっしゃらないだろうし、国民も黙っていないだろう。その政治的責任は政府がとるべきだ、かように思っております。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから運用の点で、やはり重大な変革があるとわれわれは見なくちゃならぬのです。岸総理の場合は、明確にまさに言われておるとおり、適当な方法によって国会に報告してその了解を求めるべきであると、求めるべきである……。だから重要な変革だと私は思うのです。  では次に移ります——いや、違っておるじゃないですか。時間がないですから——違っておりますよ。国会に求めるとは言っていませんと総理はおっしゃったのでしょう。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま読み上げられたように、報告をして了解を求める、こう言っておる。報告をするということは、もうすでに決定し、自分で処置した後で初めて報告という問題が起こるんじゃございませんか。だから、その了解を求めて、そうして処置するということとは違うように思います。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそんなことは何も言っていないのです。私の言ったとおりに言ってください。私は了解を求めなくちゃ……。まず国会に報告して了解を求めるべきである。このとおり私は言っておるのです。これでよろしゅうございますかと言ったら、何やかやおっしゃるから、では違うのですか。違わなかったらこの方法でやられるわけですね。そうだならそうだでいいのですよ。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは違います。はっきり申し上げておきます。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、私は違います、さっき変革されたと言っておるのですが、あなたはまた、いや違わないのだとわざわざ出てきて言われるからおかしくなるのです。だから違っておるのです、あなたの運用の考えは。それはいま違っておるとおっしゃったから、それで一応その点だけを明確にしておきます。  それから共同声明の第四項の台湾地域、この台湾地域に金門、馬祖は入りますか。
  133. 井川克一

    ○井川政府委員 入りません。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると金門、馬祖で紛争あるいは戦争状態が起こったとするならば、これは第四項にいう台湾地域には入らないわけですね。
  135. 井川克一

    ○井川政府委員 入らないわけでございます。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは総理に確認をしておきます。  金門、馬祖で紛争なり戦争が起こった場合には、この四項の台湾地域には入らないから、それは日本の安全に直接密接な関係はない、こう理解していいわけですね。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共同声明の言うところの台湾には入らない、さように御了承いただきます。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では金門、馬祖等で紛争が起こっても、それは直接日本の安全とは関係ない、このような認識でよろしゅうございますね。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの共同声明ではそこまでは考えておらない。しかしながら金門、馬祖もただいまの、広い意味においては周辺地区等においてそういう問題が起これば、これはやはりわれわれの重大なる関心事であることに間違いはございません。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では安保条約第六条に言う極東の範囲に金門、馬祖は入るのですか。
  141. 井川克一

    ○井川政府委員 これも入りません。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのはよろしゅうございますね。失礼ですが、局長さんのお答えですが、総理なり大臣からコンファームしてもらわぬと、重要な事項だと思うのです。
  143. 井川克一

    ○井川政府委員 私、間違えました。コミュニケにございますのは、米華条約による地域でございますので、あれは台湾、澎湖島でございます。この極東の範囲は政府統一見解にございますとおり、「韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる」こう書いてございます。私、間違えました。たいへん失礼いたしました。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 間違えましたということはどういうことですか。第六条の極東条項に入るわけですか。
  145. 井川克一

    ○井川政府委員 さようでございます。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それも違うんですね。六〇年のときの政府答弁と違いますよ。六〇年のときの政府答弁はどうなっておりますか。これは中華人民共和国の主張と中華民国の主張とがかみ合っておる、非常にデリケートな地域である。中華人民共和国の領土であれば入らないのです。だから入るなんということは、ではあなたは中華民国の領土であるという認識のもとにそういう返答をなさったんですか。そういう返答をされては困りますよ、重要なこういう問題について。そう一気にかつての答弁を変えられたら困るですよ。われわれは何回も言いますけれども、安保条約の条文は変わらないが、中身が変わっておる、あるいは運用が変わっておる、そのように指摘するのはそういう点なんですよ。
  147. 井川克一

    ○井川政府委員 たいへん失礼いたしました。岸総理大臣は、要するに一々の島が入る入らないということを言うのは適当ではないのであるが、金門、馬祖については、「これは周辺の地域が海域を含んでいる意味におきまして、入っておると解釈すべきものだと思います。」もう一度念を入れての御質問に対しまして、岸総理大臣は、「これはいわゆる日本周辺というものが、海域を含んでおると私ども考えております。従ってあの地域まではいわゆる海域として入るものだと解釈するのが適当だろう、こう思います。」こういうふうにお答えになっております。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 非常にあやふやなんですね、解釈が。そこで出たとこ勝負という気がするのですよ。条約上からきちんと出てこなくて、そのときの政治情勢で判断をするというようなことじゃないでしょうか、いま佐藤内閣の態度というのは。総理ごらんになったとおりなんです。非常にあいまいですね。よろしゅうございますか、それで。進めますよ。間違いございませんか。
  149. 井川克一

    ○井川政府委員 たいへん申しわけございませんでした。間違えましたが、先ほどの米華条約との関係において、入っていないということが念頭にありましたので、岸総理大臣のお答えはただいま読み上げたとおりでございます。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 六〇年の段階では、日本の安全とアジアの安全は必ずしも不可分一体のものとは見ていなかったわけですね。だからこのときのやりとりでは、金門、馬祖のあの戦闘の場合に、これはあのような事態であるならば、日本の平和と安全に直接密接な関係がある事態とは考えない、こうなっておったのですね。ところがいまの御答弁でいけば、直接密接な関係にあるということになるのでしょう、入るということであれば。
  151. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは楢崎さんと何べん応答したか、過去においてもわかりませんけれども、要するに韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれているというところで、いま私もちょっと失念いたしたのですが、金門、馬祖の関係はどういうふうに前に答弁していたであろうか、そこでごたごたしまして失礼いたしました。  そこでもう一つ大事なことは、ただいまのお尋ねの点ですが、この統一解釈は今日も一つも変えておりません。実質は。つまり日米両国が条約に言うとおり共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域はこれこれこれこれでございますといっておるのでありまして、この観念はいささかも変わっておりません。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、私はそういう答弁をお願いしておるのじゃないです。その当時は、日本の安全とアジアの安全は必ずしも一体不可分のものとは考えられていなかったのですね。それを言っておるのです。ところが、今日では、日本の安全とアジアの安全が一体化されておる。それを示すものが共同声明の中の、たとえば七項、「総理大臣は、日本の安全は極東における国際の平和と安全なくしては十分に維持することができないものであり、したがって極東の諸国の安全は日本の重大な関心事であるとの日本政府認識を明らかにした。」こういうふうに、絶対不可分のものになってきたのですね。そして、これを聞きますと、総理は、あたりまえのことじゃないかというふうに逃げられる。ところが、具体的な問題が起こったら、態度が明らかになるのです。それは何かというと、今度のカンボジアに米軍が侵入した際、五月一日でしたか、各国が何も反響を出していない、一番先に、日本政府は、総理と外務大臣がお話をされて、そのカンボジア侵入を支持された。そういうふうに出てくるのですよ、この共同声明の結果が。四項もそうでしょう。「総理大臣は、日本としてはインドシナ地域の安定のため果たしうる役割を探求している旨を述べた。」これが具体的にはどうなるかというと、日本のインドシナ半島に対して果たし得る役割りというのは、ああいう場合には支持するのですと、こう答えが出てくるのですね。具体的な問題が出るとそうなるのですよ。だから、これも、かつての安保条約の解釈が、共同声明によって一段と内容が変革された。われわれが言うのはそこなんです。——首を振られますから、念のためにそのときの岸さんのお考えをここで紹介しておきますが、「極東の地域の中で起こった状態が、すぐに日本の平和と安全に直接影響してくるかどうか疑問がある場合もあるわけであって、」こういう態度であったわけです、六〇年段階では。それがもう疑問の余地がないということになってきた。具体的にはですね。  そこで、時間がありませんから先にいきますけれども、そういうアジアの平和と安全に対する状況認識というものは、日本は独自な判断ができるのですか。米軍の判断に従われるわけですか。どうなんですか。
  153. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、しばしば御説明しておりますように、事前協議の問題に関連してのお尋ねだと思いますが、日本の態度の決定というのは、日本国益を守る立場に立って自主的な判断をしてイエス、ノーをきめる、これが政府の方針でございます。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、事態いかんによっては、アジアの平和と安全の問題について、事態の認識については日米間で判断の食い違いが起こることもあり得る、そういうことですね。
  155. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 事前協議ということでございますから、必ずしも一致をしない場合が当然想定されるわけでございます。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、ことしの予算分科会で、外務大臣は統一見解として、事前協議日本側からも発議権がある、そういう見解を示されました。とするならば、日米の間に判断の相違があり得るということも、いま御答弁のとおりでありますから、もし、この共同声明で示しておる韓国なり台湾地域で問題が起こったとき、米軍がまだ十分だと出動しないでおる、しかし、日本としてはこれは重大問題だと、日本の側から直接出撃してくれという発議も法的にはできることになりますね。そうですか。
  157. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この発議権の問題はまた長くなりますが、本来事前協議というものがあるのは、日本が提供した基地というものは、アメリカ側がこれを自由に使用し得る権利が平常の場合あるわけですね。それを抑止して、そして先方に、これこれの場合は協議をしなければなりませんという義務アメリカに課したわけですから、本来ならば、第六条の事前協議というものの発議権は、義務を負うているもののほうが発議するべきものである。しかし、こちらが、ただいまもお話があったように、ノーと言うような場合をやや比重を置いて考えた場合に、随時協議という第四条もあることでありますから、実際問題として運用上こちらが発議権があると解してしかるべきであろう、こういうことを申したのでありまして、頭から発議権がありと私は断定したわけではございません。これは当時のあなたとの質疑応答で私が申しました見解でございます。そういう意味合いでございますから、考え方としては、ノーと言うようなことに比重を置いて、こちらからの発議権ということが、実際の運営上そういう運営をする場合が想定されるかということを頭に置いて私が御答弁申し上げたわけであります。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 簡単に答えていただきたいのです。事前協議において、日本のほうから米軍に直接出撃を要請するというようなことはできるのかと聞いているのです。
  159. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、私が申しました実質的に発議権がありという運営ができるであろうというのは、いま申しましたように、ノーと言う場合に比重を置いて、そういう場合を想定してお答えをしたわけでございます。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうも私の質問に答えられていないのですね。事前協議において、日本のほうから直接出撃を要請するということはできますか。それを聞いておるのです。
  161. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それですから、前提が事前協議という前提でお尋ねであれば、いまのお答えにしかならないわけです。つまり、事前協議というのは、向こうから本来しかけてくるものであって、向こう義務を持っているのですから、こちらは受け身になるわけです。  そこで、重ねてのお尋ねでございますが、一方第四条の随時協議というようなこともございますと申し上げれば、その間の状況はおわかりかと思います。私としては、積極的にこちらが事前協議向こうにかけろと言い、こちらがイエスを言うからというかっこうで事前協議に発議権を運用するということはまず想定されないのではないだろうか、こういうふうに考えます。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、最後の問題にしぼりたいと思います……
  163. 田中榮一

    田中委員長 楢崎君に申し上げますが、持ち時間がもう過ぎておりますので、次の発言者にお譲り願いたいと思いますが……。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 答弁のほうが時間がかかりましてね、まごまごされて……。
  165. 田中榮一

    田中委員長 だいぶ時間が過ぎておりますので、この際ひとつ次の発言者にお譲りを願いたいと思います。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 きのう御答弁いただけなかった問題があるのですが、米軍は日本本土にCB兵器——B兵器を持っておる、その報告をきょうしていただくようになっておりましたが……。
  167. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 いまの御質問はC兵器と思いますが、致死性のものは持っておりませんということを、昨年七月に向こうから話がありましたが、重ねて確認しております。非致死性のものにつきましては、米軍は発煙剤、照明剤というようなもの並びに催涙ガスを持っておるそうでございます。しかし、先生御質問の、成分なり、どこに置いてあるかということは、いままで公表しておりません。  なお、骸骨のしるしにつきましては、軍の中ではそのようなしるしは使っておらぬそうでございますが、米国の衛生関係でそういうものも使うこともあるそうでございまして、そのしるしがあるからといって、これはいまの致死性のものを示すものではないということでございます。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、これだけにします。いまの点は、広島県呉市の広弾薬庫、ここに明らかにあるのはCS1であります。そしてこれは、いま明確に把握しておる点だけで、四月五日の日に、米船のSSバックアイビクトリー号という船が呉に入港して、そして海面制限をやって荷揚げをした。そしてこれが黄幡の貯蔵庫から川上に運ばれております。そして運んだ関係者の言明によりますと、そのときその人は四十九本ドラムカンを運んでおる。そしてその積み荷の名はCS1になっております。そしてその四十九本のドラムカンのうち四十七本は二センチほどのレッドマークがついておる。残りの二個については四センチ幅のレッドマークにどくろのマークがつけられている。そしてそのレッドマークだけのほうはCS1である、どくろのついたほうは致死性を思わせる非常に危険なという言明が米軍からあっておる。したがって、これは致死性ガスということが十分想定されます。そこでこの事実をもう一度明確に具体的に確かめていただいて、このどくろのマークは明らかに運ばれておりますから、何かということを明らかにされると同時に、広以外の弾薬庫にその種のものが置かれておるか、これをひとつ明確にしかるべき機会にしていただきたい。  そこで、致死性のガスについては、もし持ち込む場合は事前協議の対象にする意思がありやいなや、最後に総理大臣質問して質問をやめたいと思います。
  169. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 致急性のガスについては、先般来申し上げておりますように、現在ございません。したがって、特にあらためて事前協議にこれをかけるというような必要はないと思っております。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 持ち込みのときです。
  171. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 持ち込みにつきましても、かける必要はないと思います。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、自由に入れていいというわけですか。
  173. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そういう意味じゃありません。これは持ち込まざることが前提になっておりますから、あえてこういうことを特に事前協議の対象にする必要は、ただいまのところあるまいと考えております。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あり得べきことじゃないと思いますけれども、必要上、一応持ち込みたい、貯蔵しておきたいという申し入れがもしあったときにはどういう態度をとられますか。
  175. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは当然拒否をいたします。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで終わります。お願いしておった点は、ひとつしかるべき機会に御答弁をいただきたいと思います。
  177. 田中榮一

  178. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 限られた時間でございますけれども、日中問題、カンボジア情勢、沖繩返還問題、国防会議の問題、それから安保の問題、何せ一人なものですから、いろいろお伺いしたいと思いますが、総理並びに関係大臣に質問さしていただきたいと思います。  初めに日中問題から入らしていただきたいと思いますが、佐藤政府ができてから日中の前進はない、このようにちまたでも言われているわけでございますが、このたびの覚書協定におきましても、中国が名ざしで総理批判をしておられる。また自民党の古井議員も、佐藤政府が続く限り日中関係の前進はないという感触の一端を述べておられる。昨日の本会議並びに本委員会の御答弁を伺っておりまして、決してそんなことではないのではないか、むしろ佐藤政府が続く限り日中関係は前進しないということについて、いま総理から冷静に、日本政府としての姿勢を明確にされるべきではないか、総理の名誉の面からもはっきり中国政策を明確にされるべきではないかと思いますが、この点についてお願いしたいと思います。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も日中覚書協定、そのたびに実は批判されております。しかもだんだん年を経るに従って私に対する非難が強くなっている。ことしは昨年より以上に強いものになっている。昨年、それは前年に比べてやや出てきておる。こういうようにだんだん悪い方向をたどっております。このことは私もまことに残念に思っております。しかし私は、両国間の誤解があるなら、また不信があるなら、ぜひともそういうことは積極的にやはり解いていかなければならない、これには相当の努力を要する、かように私は考えております。また皆さん方も大陸にお出かけになる機会がおありのようですが、そういう際には、ありのままをひとつお伝え願って、私どもは平和に徹していることをよく御了承願えるようにしてもらいたいと思います。
  180. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 総理が年を召されるたびに向こうの態度が硬化してくるという御発言ですが、来年もまた一つ年を召されると思うのですけれども、来年もやはり古井松村両氏の線でこの覚書協定をお進めになろうとなさっておられるわけでございますか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はただいま覚書協定をやめる考えはございません。やめないとすれば、ただいまの古井君やあるいは岡崎君等がやはりその衝に当たるだろう、かように期待しております。
  182. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 新聞の報道、解説等でも、来年はさらにきびしくなるのではないか、自民党内にもそういった意見が多々あるようでございますけれども、私は来年そういうきびしくなっていくという状況が先見されるならば、むしろ日本のほうから先手を打って、もう一段新しい段階での交渉に取り組むべきではないか。先ほど総理からも積み上げ方式の基本的な姿勢には変わりはない、また貿易、気象等のことはやってまいりたいという積極的な御発言がございましたのですが、そういったことも、古井議員の感触ですと、それらの問題は枝葉末節であって、基本的な解決にはならないという御発言もなさっておりますけれども、私は何もしないよりも、そういった覚書貿易に重ねて、気象並びにできれば政府間の貿易協定まで持っていければ、これは偉大な前進であると思いますが、重ねてひとつお願いをしたいと思います。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も実はほとほと困っておる状態でございます。何か名案があれば、その方向で進みたい。まだ古井君と十分懇談しておりませんし、また帰ってから、昨日廊下で藤山君の顔を見ただけでございまして、ただやあやあという声をかわしただけでございますが、いずれこれらの方々から事情もよく聴取したい、かように思っております。しかる上で対策も立てていくということでありたいと思っております。
  184. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 気象、郵便協定等は事情が許せば結んでもよい、こういうお考えでございますか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 望むところでございます。
  186. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 昨日の本会議に話が移りますが、わが党の正木議員の中国問題に関する質問の中で、総理は実は重大な発言をなさっておられるわけでございますけれども中国のことを、「国際信義を重んじない国が国際的に重要な地位を占めたり、強力な発言をすることはできない」、このように答弁をされておる。私もこれは速記を見てまいりましたのですが、こういう日本総理大臣の発言はきわめて向こうの感情を刺激すること大であると思うのですけれども、私は、総理はいかなる理由をもって中華人民共和国が国際的信義を重んじてないと、このように判断されるのか、その見解を伺いたいと思います。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は中華人民共和国を名ざして信義を重んじない、かように申したわけではありません。むしろそれは逆でございまして、日本台湾にある中華民国、これを承認しておる、したがって、日本はその信義を重んずる国だ、国際的な権利義務があるんだ、これを忠実にやる、ここに信義を感じているんだ、信義を重んじないようであったら日本が軽べつされる、そういう意味のことを申したのでございます。この速記をごらんになれば、前後を通じてそういうようにとれやしないかと思います。私が申し上げた真意は、その意味で私ども中国大陸にある北京政府とはただ単なる交渉だけで、在来からその一部である台湾省台湾にいる中華民国、これと交渉をとっている。これは信義が日本にあるのだ。これを承認している、これと講和条約を結んだ、そこに権利義務を生じている。そこでわれわれは、信義上、この中華民国を無視できるとかあるいはそれを抹殺するわけにいかないのだ、こういうことを申したのでございます。
  188. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 時間がないのでこの問題は保留にして、先に進みます。  総理は、昨日の本会議の答弁の中で、本年秋の国連総会において中国の代表権問題に関する日本政府の態度は現在なお保留である、このような御発言があったわけでございますけれども、そういう御発言の中には、重要事項指定方式の共同提案国にはならないという含みも配慮されての御答弁かどうか、重ねて伺いたいと思います。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう事柄は、これは従来からとってきた態度に重大なる変更を与えることになるのでございますから、これは慎重な上にも慎重にやらなければならない、こういう意味を含めて答弁をしたつもりであります。
  190. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 きのうの御答弁ときょうの御答弁では、だいぶニュアンスが違うように私は思うのでありますけれども総理のお考えは変わらないのかもしれませんが、現在保留であるということは、いままでと同じであるという態度の変更を私は含むことばだと思うのです。いままでと何ら変わっていないと言えばそれで済むものを、現在なお保留しておるということは、何か条件がそろえばこの共同提案国とならないこともあり得るのだ、このように解釈でき得ると思うのですが、いかがでございますか。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日申したことは、まだきめていないというそういうことで、ただいままたそういうことを申す段階でないということを申したのでございます。
  192. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 続いて、まことに単純な質問で恐縮でございますけれども、私は再確認させていただきたいのですが、総理は将来とも北京政府を承認する考えがないのか、それともある条件が整えば承認してもいいのか。かつての池田総理の時代には、一定の条件がそろえば承認するにやぶさかではない、こういう姿勢をとられたことを記憶いたしておりますけれども佐藤総理もこの辺の線まで御配慮いただいてもいいのじゃないか、このように思うわけです。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん時間を急いでたくさんの問題を提供しておられるから、私簡単に申し上げておきます。  御承知のように、中国一つだ。そうして合流にいる中華民国を私どもは承認している。そういう責任が一つあるわけでございます。それで、大陸のこの北京政府台湾にある中華民国、これが話し合いで問題を解決してくだされば、おのずから一つ中国がそこにきまるわけであります。私どもいままで承認したといういきさつがございますから、それを、いまの都合はよほど変わっているというようなことでみずからが態度を変えるということをしない、こういう状況でございます。ただいま七〇年代にはおそらくそういう事態、話し合いでこういうものが解決するだろう、またそういうことを期待している、かように私は申し上げて差しつかえないかと思っております。
  194. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 先へ進みますが、今度の覚書貿易共同コミュニケの内容におきます日本軍国主義云々でございますけれども、きのうも総理は本会議の答弁で、日本人としてはぴんとこない、——確かに私も日本で生活している生活の中で軍国主義化というのはあまり感知できないわけでございますが、と同じような理由で、中華人民共和国の人たちは、日本のいままでの長い侵略並びに日本日米安保体制下において三次防、四次防とだんだん軍備が拡大されてくる、こういった現実を見たときに、私たちが生活の中で日本軍国主義化がぴんとこないと同じように、向こうの人たちは向こうの生活の中できわめて自然に日本軍国主義化というのがびんときているのじゃないか、私はこのような判断をするわけであります。総理は日中の歴史を全然御存じないということは考えられませんし、そういった歴史的な背景に立って向こうがそういうような発言をすることも十分考え得る、私はこのくらいの幅があってもよさそうに思うのですが、それを誤解であるとか、また内政干渉と言って片づけられるのは、日中の関係に、やはり日本が兄貴的な気分でいなくちゃならない、また対等という意味においても、私は御一考願わなくちゃならない問題だと思うのですけれども、その辺の御見解を伺わせていただきたいと思います。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、北京政府の指導者たち、これは十分国際情勢を判断する聡明な方々、賢明な諸君だと、かように思っております。したがって、日本がどういうような憲法のもとでどういうようなやり方をしているか、これは百も承知ではないだろかと思っております。私自身幾ら閉鎖的だと申しましても、中国の事情については関心を持って、中国の動きについても、注意を払っております。おそらく、隣の国、日本に対して十分の理解を持たないということ、幾ら閉鎖した状態であっても、交通は途絶しておりましても、そういう状態ではないだろうと思うのです。だから、これはもっと正直に申しまして、事態を国際的視野に立って考えれば、隣の国でありますから、こういうものの理解はああいうような発言を生まないで済むのではないだろうか、かように私は思う次第でございます。
  196. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 アメリカの議会でも、そのような議員の発言が日本軍国主義化についてはあったように聞いておりますけれども、私はそういった隣国の日本に対する見方、これを総理日本には平和憲法があるから絶対軍国主義にはならないのだ、そういう観念的な御説明では、国民としては納得できない面も多いのではないか、こういうように思うわけです。このいろいろな貿易の拡大を見ておりましても、軍国主義になると宣言して軍国主義になった国は一つもないのです。全部平和主義を宣揚しながら、そういった道をたどっていった、こういうことを思いますと、ただ誤解だということでなくて、日本の一億の国民がほんとうに安心できるような、具体的にわが国が軍国主義の方向をとらないということを総理みずからの手で国民の前に示されてこそ、全国民が納得できるのではないか、こういうように思うわけですが、いかがですか。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、日本国民は、それでどうも日本軍国主義化している、かように考える人はないのじゃないだろうか。あのコミュニケ、先ほども社会党の方からもお話がありましたが、どうもぴんとこない、国民自身があの問題についてどうもぴんときてないようだ、こういうようなお話であります。また、これを私どもがとやかく批判することも、国民にはぴんときていないようだ、それほどこの問題は現実とかけ離れたコミュニケじゃないか、かように私は思っております。したがって、ただいま国民の中に一部非常に心配する者がある、かようなお話でございますから、これはもういままで機会あるごとにもそういうことは説明されますけれども、また近くは、来年は参議院の改選期でもありますから、そういう点は国民がもっと理解するだろう、私はかように思います。したがって、私自身はいろいろな攻撃を受けましても、別にたいして意に介してはおりません。日本の憲法そのものが、私どもに平和憲法、平和に徹するように、また政治のあり方についてもそういう方向ではっきりしておりますので、このことを私自身がこの際国民にあらためて説明しなければならない、かようには実は思わない、国民はよく理解しておると思っております。
  198. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 それではお伺いしますけれども総理はこのコミュニケに対して内政干渉もはなはだしいものだということを御発言になり、また中国のほうが日本にとって脅威だということを述べておられますけれども、どういう根拠によって中国が脅威だと御認識をなさっておられるわけですか。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は二年前、あるいはもう三年になりますか、東南アジア諸国を歴訪いたしました。そのとき一番問題になったのは、中共の脅威だということであります。私どもが感ずるよりより以上に、国境を接しておる国々はそういう点に非常に敏感であります。私はそういう点を率直に申し上げただけであります。また、最近は、核兵器を開発したり、あるいはさらに核運搬手段にも成功しておる、かようなことを考えると、これがやはり脅威とならないで済む、これが望ましいことではございますが、おそらく軍備を持たない諸国から見ますとたいへん心配の種だろうと、私は率直に申してさように申し上げます。
  200. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいまの総理の御発言は、いわゆる物量的な面のみ配慮されて中国が脅威だと、このようにおっしゃるわけですけれども、では、同じように中国から日本を見た場合、だんだん三次防、四次防、ましてや五次防ということまで考えられているというようなうわさがあるやなしや、そういったことを見ますと、向こう軍国主義化と言うのも、総理中国を脅威だとおっしゃると同じように、筋が通る話ではないか、私はこう思うのですが、いかがですか。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと大久保君のお話が飛躍があるんじゃないだろうか。まさかあなたが、日本の軍国化だと、かように、これから計画しようとする四次防、まだ全貌も明らかにならないうちに、そこまでお考えではないだろうと思います。私は、ただいまの状態で、日本の自衛隊の力そのものは、国土防衛あるいは国民の生命、財産を守るという点から見ましても、現状においてはどうも空と海において不十分ではないか、かように思っております。そういうような心配はないと、かように公明党でお考えになれば、むしろ実情をよくお認めくだすって——私どもは、別に他国に脅威を与えようとかあるいは仮想敵国を持とうとか、こういうような考え方は毛頭ございませんけれども、わが国を守るためには、もう少し近代的なものが要るんじゃないか、こういうことを考えざるを得ないのであります。
  202. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 総理は、平和憲法を口にされると同じように、やはり中国国民性、民族性が日本に対するそういう侵略の可能性を秘めているのかどうかということも、私は重要視していかなければならない問題だと思うのです。ただ、いろいろ核が開発され、人工衛星が上がったからといって、脅威がふえたというような一面的な解釈はでき得ないのではないか、このように思うわけでありますけれども……。  話を先に進めますが、先ほど総理は、大使級会談の構想をるるお述べになりましたが、選挙中にお話しになったこの総理のお考えは、もっと強い声であったというように私は記憶いたしております。その前に一つ、この総理のいまの御発言が単なるリップサービスやゼスチュアでないということを確認する意味で、私はもう少し具体的に伺いたいと思うのです。  かつて外務大臣が、当委員会におきまして、第三国における大使館同士の交流ということをお述べになって、三月十八日の外務委員会においては、「接触の試みをいたしておることは事実でございます。同時に、現在のところはこれといった新しい前進が見られない、」云々と長い御答弁があるわけでございますけれども、私は外務大臣にお伺いしたいのですが、そうした中国側大使と第三国において機会があれば接触することを指示する訓令を外務省として出したのかどうかですね。また、出さないならば、日本の在外大使が単独の意思判断で中国側大使と接触するなどということはあまり期待が持てないのではないか。パーティーでやあやあと言うようなことではないというような戸叶委員からの御質問にも、たしか御答弁になっていると思いますが、その訓令並びに指示が出されたのかどうか、こういった問題について外務大臣の答弁を願いたい。
  203. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この訓令あるいは連絡はしばしば行なっております。
  204. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 それであれば今度の総理大使級会談においても、きのうの本会議の御答弁では、いつどこでもそれに応ずる用意がある、こういう御答弁でございましたし、きょうはまた、「チャンスがあれば」こういう御発言がございましたのですが、ただばく然とチャンスがあるということでは、なかなか具体性はむずかしいだろうと私は思うのですけれども、何かその大使級会談に対するプログラムといいますか、具体的なアプローチのしかたについて、もしお考えがあれば伺わせていただきたいと思います。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 両方の意見が一致するならば、どこででも、いつでもということを政府としてはきめております。このことは、申し込みをしている、かように北京政府でとってしかるべきものだ、かように思っております。しかし私はただいままでのところ、第三国における大使等の処置ではどうも成功しておらない、なかなかむずかしい状態にある、このことを認めざるを得ない。私はやはり先ほども申したように、これは非難する意味で言うわけではありませんが、やはり国際的な問題とすれば、相互に国際的なつき合いをする、復帰する、こういう意味で、やはり話し合うことが望ましいのじゃないかと思っております。いま直ちに承認問題にまで一足飛びのできないことは、これはまことに残念に思いますけれども、しかし、それかといって、大陸を支配しておる北京政府、それがまた外交使臣を各地に派遣しておりますので、これがわが国に対しても、話し合うその用意があるということを十分理解してもらえば、きっと会見、会談の機会が出てくるものじゃないか、かように私は思います。
  206. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 またちょっと軍国主義化の問題に戻らしていただきますが、四月二十四日の衆議院の内閣委員会で中曽根防衛庁長官は、北京や米国で言う軍国主義日本への予防的、警戒的発言だ、大きな経済力、優秀な単一民族、一億の人口を持つ日本を外国が見るとき不安を持つだろう、その意味軍国主義化の潜在力はある、このように述べておられるわけでありますけれども総理は、この長官の発言についてどのような御見解をお持ちになりますか。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 やや違いますが、私はもう先ほど来他の質問者にも答えたように、いわゆる過去におきましては、歴史が示すように、経済大国即軍事大国、そういうような道をたどってきております。したがって、ただいまのような現在の日本が経済大国になりますと、やはり軍事強力、軍事大国になる、そういう危険があるのではないか、かように指摘されることも、もちろんこれは全然無視はできないことだろうと思います。しかし、私どものいま選んでいる道、それは軍事大国にならないのだ、軍事強力にはならないのだ、こういうことを国民とともに約束したはずであります。そうしてその憲法のもとでただいまただ自衛力だけを持っておる、こういう点でございますから、過去の歴史はこうであったから日本もそうなるだろう、かように言われることはたいへんな迷惑だ、かように思います。だからそこらの点で、これからよく説明をし、日本あり方等の実際を説明する必要のあること、これは私も大久保君と同じように必要がある、かように思っております。
  208. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 中曽根長官に伺いますが、答弁を読み返すのをやめますけれども軍国主義化の潜在力ということについてはいろいろな解釈があるように伺っているのですけれども、悪くとれば可能性というふうにも解釈できる、潜在力そのものがですね。その点について明快にしておいていただきたいと思うのです。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あの答弁の前段でも申し上げていますが、軍国主義ではございませんとはっきり申し上げてあるのであります。しかし、もし文民統制というものがくずれたりあるいは軍事が優先して独走するようなことになれば、軍国主義になる危険性はないとはいえない。しかしそれは、もしなればという条件つきで申し上げておるのです。それで海外のそういう反響については、政治をやる者としては深甚の注意を払う必要があると思っておりますので、戒めのことばとして申し上げたのであります。
  210. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 以上で日中問題を終わりますが、総理の本会議並びに本日の当委員会における中国への前向き姿勢が決してリップサービスに終わらないことを心から要望いたしまして、カンボジアに移らしていただきます。  この問題に入ります前に、私ふしぎに思うのですけれども、現ロン・ノル政権によってとられましたカンボジアの政変後数百人にのぼる虐殺事件、あのメコン川に死体の臭気がはんらんをしたというようにも伝えられておりますし、新聞報道によりますと、いまだもって正確な数がつかめない、中には数多くの婦女子が含まれておったように報道されておりますけれども、こういう事件に対して、私ふしぎに思いますのは、政府軍による住民の虐殺事件について、当然日本政府から何らかの見解を表明されてしかるべきであったと私は思うのですけれども、私の見落としではないと思いますが、この件についての政府の見解表明なりは何もない。また新聞記者にあまりくっつかれなかったのかもしれませんが、もしいままでに私が見落としであれば、あらためてお願いいたしたいと思います。
  211. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、報道があると同時に、直ちにカンボジア政府側に、反省といいますか、同時に事実の究明を求めたわけでございます。と申しますのは、御承知のように、カンボジア領内においては、日本がベトナムの利益代表を頼まれている、そういう特殊の立場も持っております。そしてこれは長くなると恐縮でありますけれども、御承知のように、日本といたしましては、ベトナム政府の要請にもこたえ、またみずからの意思をもってカンボジア国内にベトナムの調査団を派遣することにあっせんをいたしまして、カンボジア政府の了解を得ることができまして、この使節団は、現在カンボジア国内で避難民あるいはベトナム人の引き取り、出国その他をもあわせまして、実情調査しておる次第でございます。こういうわけで、政府といたしましては非常に大きな関心を払っておるわけでございます。
  212. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 昨日の本会議におきますわが党の正木議員の質問に対しまして、ロン・ノル政権の合法性についての総理の御答弁は、ロン・ノル政権は、カンボジア憲法のワク内で合法的に成立したものであり、ウ・タント国連事務総長もその事実を認めたから、日本政府もロン・ノル政権のあらためての承認行為の必要はない、こういう御答弁があったわけでありますが、私、ここに大きな問題があると思うのです。ロン・ノル政権成立は、まずシアヌーク殿下の外遊中に、追い出しのような形になって、そしてその後になって、憲法上の手続が追認という形でとられた。しかし、少なくともシアヌーク殿下の追い出しまでは非憲法的な手段ではないのか、こういう疑問が大きくあるわけでございますけれども、この点についての総理の御見解を伺いたいと思います。
  213. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは三月の十八日でしたかのことにさかのぼりますけれども、カンボジア政府から、日本のみならず、従来国交のありました政府に対しまして、憲法上の手続によって、こうこうなりましたという通報を受けたわけでございます。そうして日本もそうでございますが、これを受けて、さような国内手続によって成立したものであるならば、これと従来どおりの国交関係を続けていってよろしいということで、現在さような処置をいたしております。これは国連も御同様でございます。
  214. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 追認のことを伺っておるのではなくて、その追い出しをして政権の座についたロン・ノル政権の、そのつくまでの行為が非憲法的ではないのか、こういう御質問なんですけれども……。
  215. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはしかし、カンボジアの国内の問題と理解してよろしいのではないかと思います。大体大多数の国々もそういう見方をいたしております。
  216. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 これはこれでけっこうですけれども、次いでウ・タント国連事務総長がロン・ノル政権は合法的に成立したと発言したというふうに総理はその事務総長の発言を引いておられますけれども、これは事務総長の個人的な見解の表明であると私は思うのです。もしも国連として合法的云々ということを発言するのであれば、国連総会手続規則第二十八条の委任状委員会で決定された後そういう発言があるのならば、これは確かに国連事務総長という権限のもとにおいての有権的発言であると思いますが、そういった手続をとらずに、単なる一個人の見解である、また有権的見解とは見られないこういった発言を佐藤総理日本の本会議で引いて、ウ・タントさんがそう言ったからこうだというようなことはどうなんでしょうか。
  217. 須之部量三

    ○須之部政府委員 現在の国連における取り扱いでございますが、国連におきますカンボジアの常駐代表が二派に分かれたのは御存じのとおりでございます。結局ウ・タント事務総長が決定いたしまして、四月十七日に、現在のカンボジア政府の代表である常駐代表、これが事務総長に対しまして国連常駐代表としての信任状を提出して、受理されたということでございます。したがいまして、正式に国連の常駐代表として認められた。それで他の常駐代表のグループにも同日付で同代表から自分が新しく信任したという事実を通報してきているわけでございます。
  218. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 その件につきましてあとで詳しい報告書といいますか、事情のあれをいただきたいと思います。  もう一つは、昨日の本会議でカンボジア情勢そのものは非常に流動的であって、事態の推移を見守る必要がある、このように総理がおっしゃっていることは私全く同感なんですけれども、そういう御発言にもかかわらず、そういうお考えがあるにもかかわらず、早々にロン・ノル政権を合法政府として認めたということについては、先ほど同僚委員からも御指摘もありましたけれども、私は外交上の妥当の措置ではなかったのではないか、このような懸念を持つことだけを申し上げておきます。  あと、アメリカのカンボジアに対する直接介入についてジュネーブ協定云々というお話でございますけれどもアメリカがカンボジアの中立回復のための義務、これを何年の何という条約アメリカはカンボジアに負っているのか、この点をお願いしたいと思います。
  219. 須之部量三

    ○須之部政府委員 私別に、アメリカがカンボジアの中立を回復する義務を負っているというふうには考えないわけでございますけれども、元来、従来からアメリカ政府はカンボジアの中立は尊重するということは終始言ってきておりますし、それからあえていまの関係で申し上げまするならば、例の五四年のジュネーブ協定の最終共同宣言でございますが、これはアメリカはテークノートするということを言っておりますし、それも考慮に入れながら従来政策として中立を尊重するということを言ってまいったことだと思います。
  220. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 先ほどの極東問題に入りますけれども、ラオス、カンボジアは極東に入りますか。
  221. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはしばしば申し上げますように、極東地域というものの統一解釈の中では入っておりませんで、おおむねフィリピン以北ということが政府の統一解釈でございます。
  222. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 その周辺という解釈でよろしいわけですね。
  223. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは統一解釈を読み上げませんけれども、統一解釈で出ているとおりと御理解をいただきたいと思います。
  224. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そうしますと、安保第四条の随時協議は極東及びその周辺も含んでその対象としているという解釈でよろしいでしょうか。
  225. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 随時協議は、第四条の規定によって随時協議をすることになっております。そのとおりでございます。
  226. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そうしますと、このたびのアメリカ軍のカンボジア進入という重大な行動を解するにあたっては、これは安保第四条の規定によって日本に随時協議の申し入れがあったのでしょうか。
  227. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはございません。というのは、その随時協議というのはそういったようなところを含んでいるわけではございませんから、そういうことはいたしておりません。
  228. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 先ほどの外務大臣の御答弁では、随時協議の対象に入るというふうに私伺ったのですけれども、それは違いますですか。
  229. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いえ、それは条文のとおり、条文のそのとおりと申し上げたのです。
  230. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そうすれば、これは随時協議の対象地域に入るわけですね。そうすればカンボジアに対する米軍の進入は、安保第四条によって日本に随時協議の申し入れがあってしかるべきであると私は思うのですけれども、いかがでしょう。
  231. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはまた条文の御説明をすると長くなりますからなんですけれども、要するに、これもまた問題を提起するかもしれませんが、日本を含む極東の安全、日米安条約の目的とするところに関連のある事項であれば随時協議の対象になりますけれども、今回の事態はさような事態ではない、かように考えております。
  232. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そうしますと、この第四条の随時協議は——先ほどの随時協議の対象になるという外務大臣の御答弁は、別の意味での御答弁ですか。極東及びその周辺は随時協議の対象になるという御答弁があったわけですね。
  233. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは条文をお読みいただくとよくわかりますし、運用上も、一方の要請がある場合にその議題について随時に協議をすることになることになっております。今回の場合はそういうことはございません。
  234. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 時間がないのであまり詰めませんけれども、それならば日本から抗議されてしかるべきだと私は思うのですね。先ほどの総理並びに外務大臣のアメリカのカンボジア進入に対する日本の態度決定は、アジアの安全にとって非常に重大な問題であるにもかかわらず、閣議にかけられた気配もない。総理と外務大臣とのお話し合い日本の態度を表明をしているわけでありますけれども、随時協議の申し入れを受けるべき筋合いであり、またこちらからもそれを申し出る権利もあり、それに対する申し入れのないことに対する抗議もできる立場にありながら、そういったことに何ら触れようとなさらずに、総理と外務大臣でアメリカのカンボジア進入の支持をさっさときめていくこと自体が私はまことに日本政府の主体性のない対米追従外交の姿勢だと非難されてもやむを得ない点ではないかと思うのです。こうしたアメリカの介入については、国外はむろんのこと、米国国内においても現在世論が高まっておる、こういった問題についてやはり日本政府としてはもっと慎重でなければならないんじゃないか。先ほど外務大臣の御答弁で、当然ラオス、カンボジアは極東及びその周辺という解釈から随時協議の対象になる。またこちらからも申し入れることができるはずであるのにそういったことが全部簡略されて、さっさと日本アメリカ支持側に回る、こういったことについては、今後の問題としても私は大きな一つの戒めにしていただきたい。お願いをいたします。  私は総理大臣にお伺いしたいと思いますが、今度はアジア会議の別な面で、いわゆる南ベトナム解放戦線、それから北ベトナム、ラオス愛国戦線、カンボジア解放戦線、いわゆる左派連合の会議が去る四月二十四日中国において行なわれた。中国並びにソ連もそれを支持をするにやぶさかでないという態度をとっておりますが、この左派連合の会談を総理はどのように評価されますでしょうか。
  235. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どのようにと申しますか、とにかく左派連合、ときどきこういう連中が集まって会合を持つのじゃないでしょうか、同じような主張ですからね。私はことにシアヌーク殿下が亡命をした、そして北京にいる、そういう際でもありますし、やはり同じような主張をする者が一つの会合を持って、それをバックアップする、こういうことはあり得ることだろう、かように思っております。
  236. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そうしますと、今度のアジア会議も同じような主張がそこに行なわれるという見通しが立つと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  237. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民主的な会合がジャカルタで行なわれるのでございまして、その辺では活発な意見の交換がなされるだろうと思います。私は北京とはやや違うのじゃないか、かように思っております。
  238. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そういうのは非常に楽観的なものの見方ではないかと私は思うのですけれども、いわゆる反共国の、反共連合軍の会議で活発な論議が行なわれても、私はその答は一つであると思うのです。決してそこで総理が御期待になっておられるような会議は行なわれないのではないか、私はそのように思うわけでありますけれども、この出席国のメンバーを見ただけでも、当然そういったことは予測されなければならない。私はこの会議日本の外務大臣が出席をされてどういったことになるか、非常に危惧を持つ一人でありますけれども総理の外交方針の中枢でもあります積極的な和平中立という日本立場が、このアジア会議に出ることによってもしそこなわれたとしたら、これは世論のきびしい追及を受けなければならないことになるのではないか。私は総理がこの中国の左派迎合の会議をそういった会議であるというきめつけをなさるように、やはりこのアジア会議もいわばアメリカの仲よしグループ、その国が集まって、そしてマリク外相の招聘によって行なわれる、ここにおいてはやはり日本の中立的な姿勢、そういったアジアの和平を実現する日本の指導的な立場というものがそこに反映することは、あまり期待できないのではないか。そうなると、いままで営々として総理が述べておられて、またうたっておられました日本アジア外交に対する基本的な姿勢をここでみずから曲げることになるのではないか、このような懸念を大多数の国民が持っております。その点について総理の、決してそういうことはない、必ず日本アジア外交の中立姿勢を強く掲げながら、保ちながら、なおかつこのたびのインドシナ戦争の解消に役立つんだ、こういう御見解があれば、述べていただきたいと思うのです。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでASPACその他、私ども自由陣営会議に外務大臣が出かけて、そうしていろいろ述べておること、これはまた他の国が、国情は違っておりましても、日本の言っている事柄に同調を示している。今回もいち早くアメリカに追随した、こういう言われ方をしますが、私どもは自主的にはきめましたけれども、追随したといえば何かアメリカから申し入れがあってそれに従った、こういうことじゃないかと思うのですが、私はカンボジアに入ったこと、これは喜ばしいことだとか大いに歓迎すべきことだとか、かようなことは申したことはございませんし、これはやむを得ない処置だろうということで理解はした、こういうのが新聞に出たとおりであります。これは別にアメリカからの要請にこたえたものでもございません。これは独自の立場で私どもはきめたので、これを追随外交だと言われることは、公明党さんといたしましても私どうもちょっと抗議を申し上げたいような気がするのです。  そこで、ただいまのジャカルタの会議ですが、私はここで行なわれているいろいろなやりとり、議論、さらにまた本会議を通じての議論は外務大臣十分承知しておりますから、そうして日本がカンボジアにまで戦局が拡大しないように、またやむを得ない処置にしても、それが短時日の間に終わるように、そういう消極的な立場でこれに賛意を表しておるのでございますから、その点は十分理解してもらいたい。またそういう処置を必ずとってくれるものだ、かように私は外務大臣に期待をしております。したがいまして、ただいま御心配の点は、遠慮なしにこの機会に十分お話し置きください。そうすれば、私どももまた外務大臣も使いして誤らないというか、国民皆さん方の期待にこたえられる、かように思いますから、もし御心配な点があれば十分お伝え願いたい。私は、どうも黙っていると、とかく日本人はそういう場合には危うきに近寄らず、何をされるかわからないから近寄らない。こういうような引っ込み思案ではいけない。むしろ積極的に日本の姿はこうです、日本の主張はこれです、こういうものをはっきり打ち出してくる。そういうところまで日本の地位も高まって、またアジアの諸国も日本に期待しているのはそういうものだ、かように私は考えておりますので、行くことは了承してもらい、行くについてはこういう注文があるんだ、こういうような点をお話し置き願いたいと思います。
  240. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私どもは外務大臣が出席されること自体に反対でありますので、片や左派連合の会談が持たれ、片やアジア会議で反共連合の会議が持たれる。私はこのアジア会議一つのリアクションとしてアジアを二分する危険性もなきにしもあらず、こういう考えを持つものでございます。そういったところで、日本が本来アジアの和平のリーダーシップをとらなければならない。中立的な旗を高く掲げてきたにもかかわらず、いま明らかにアメリカ側である、反共であるというそういう会議に臨むことよりも、むしろ出席されないで、中立をうたって、長期にわたってのアジアの和平ということにやはり貢献すべきではないか、こういった意見を申し上げておきます。  時間がありませんので沖繩に移りますが、沖繩の七二年返還につきましては、昨日の本会議でも総理は繰り返し御答弁されておりましたので私は伺いませんが、一点、七二年返還となりますと、七一年末かまたは七二年の前半に返還協定、いろいろな国会承認の成文がなされなければならない、そういうタイムテーブルになってくると私は思うわけでございますけれども、七一年中もしくは七二年の前半で、現在のアジア情勢、そういったものはあまり楽観はできない。むしろ見通しは暗いようないま客観情勢を示しているわけでございます。こうした中で私たちが危惧いたしますのは、B52の爆撃発進についての事前の包括的なイエスというようなことが向こうから要求されるんじゃないか。または戦闘部隊の事前協議並びにポラリス原潜の寄港等のイエスも迫られるのではないか、こういう危惧があるわけなんです。先ほどから総理が何べんもおっしゃっておりますので私は重ねて申しませんが、必ず日本がノーということが言えるという立場での沖繩返還がなされるんだということについて、恐縮でありますけれども、あらためて御答弁を願いたいと思います。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん返還された後におきましては事前協議の対象になる、こういう問題でございますが、事前協議、これをすればノーまたはイエスもある、こういうことはいままでたびたび政府が所信を表明したとおりでございますから、これに狂いはございません。共同コミュニケでもはっきりしておりますように、七二年の返還時になおインドシナ半島でベトナム問題が解決しない、こういう場合にはこれはあらためて協議するということになっておりますが、あらためて協議する中身というものは、どういうことを話し合うのか、ただいままだ全然わかっておりません。しかし返還は返還として、そうしてその他の事項について返還のワク内で話し合うということでございますから、返還ができればいわゆるこれらの点も本土と変わりのないような扱い方が可能だ、かように思っているのであります。もちろんインドシナ半島における戦乱がおさまることが何よりも望ましいことですけれども、最近の状態は、なかなかそういうように期待だけでも、希望を込めての期待だけではどうも解決できないのじゃないか、かように思っております。しかし、アメリカ自身がすでに声明しておりますように、相当の撤兵計画を進めておりますから、そういう点ではよほど軽くなるのではないだろうか、かように思って、それを歓迎しておるような次第であります。そういう際のカンボジア問題であるだけに、このカンボジア問題が、あまり深入りしないで、短期間の間におさまることが、これまた心から望むところでありますし、これがおそらくアジアの諸国の一致した意見だろう、かように私は見ております。
  242. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 総理が御答弁になったことは、共同声明の第四項、ベトナム戦争が終結してない場合はあらためて協議を持つ、こういうことは四項にあるわけでございますけれども、十分協議することになっているわけでありますが、いままでの総理の御答弁を聞いておりますと、力強い御答弁を伺っておりますと、何を協議するだろうなという疑問を私持つわけなんですけれども、いまお話の中で、何もきまってないという御答弁でございましたが、もしベトナム戦争が、またインドシナの戦火がおさまってない場合には、やはりそこで協議される問題は基地の問題であり、事前協議の問題ではなかろうか、このように私は推測 いたすわけでございますが、この点いかがですか。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまからとやかく言うこともいかがかと思いますが、できるだけむずかしい問題でないように、かように思っております。したがって、ものによりましては、協議を受けて私どもが賛成しないものもある、かように御了承いただきます。
  244. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 昨日本会議総理は、B52の自由発進はないという御発言をなさいましたけれども、これは返還になれば安保が適用されるわけでありますから、何も公然と御答弁なくても、これはB52の自由発進ということはあり得ないことなんですが、先ほどから同僚委員質問やら、また私たちが一番懸念している問題は、やはり安保の、共同声明における日本立場というものが、第三項には米軍はアジア地域における防衛上の義務を必ず守る決意を表明して、総理もそれにこの決意を多としてこの義務を米国が十分に果たし得る体制にあることが重要である、このようなことを強調されておりますし、第四項ではアメリカのベトナム戦争の遂行に影響を与えないような沖繩の返還に合意をされております。また第六項では、沖繩の返還は日本を含む極東の安全を、そこなってはならないことに合意しておりますし、また七項においては、沖繩の返還は日本を含む極東の諸国の防衛のため米国が負っている国際的義務の遂行の妨げとなってはならないことをここに表明しているわけでございます。私は、こういった日米共同コミュニケの三、四、五、六また七項を見てまいりますと、要するに沖繩返還ということは、いわゆる極東戦略の支障になることがあってはならないのだ、このようにとらざるを得ない。ずいぶんひねくれたとり方をするというふうに見ていらしゃいますけれども、このことばの上から見ますと、こうとらざるを得ない。またそういったことについてわれわれが感じていることについて、総理もこの文章の上では同意をしていらっしゃる。としますと、現在の沖繩が、米韓、米台それから米比、ANZUS、それからアメリカの米タイ条約並びに東南アジアの反共軍事条約等のそういった沖繩自体がキーストーンになっていることは、これは日米両政府がひとしく認めているところじゃないかと思うのです。私はそういった重要な沖繩、そういったANZUS、米韓、米台、米比、その他のキーストーンになっている沖繩が返還されたときに、それがやはり自動的に沖繩を含む日本全体がキーストーンになるのではないか、これが私たちが一番懸念する問題であるわけです。ただ沖繩一島だけの問題ではない。こうしたアメリカが結んでいるいろんな条約また協定の中にあるキーストーンの沖繩が、本土返還になったときに、これがいわゆる沖繩の本上化、本土の沖繩化ですか、というふうに世論が一番懸念をしておるところであると思いますが、これに対して総理の反論があれば明快な反論をお願いいたします。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は本土の沖繩化ということがどうもよくわからなかったのです、いまの御意見でようやくわかりました。ただいま言われるように、今日まで果たしてきた沖繩の軍基地、これは太平洋におけるキーストーンだ、こういわれること、そのとおりであります。しかしながら、それを手放して日本に返すという、これを考えアメリカまた日本、これはもう沖繩がいままで果たしてきた性格と今度変わるんだ、また変えなければならないんだ、こういうことを考えたがゆえに、日本に返すことになったのであります。日本自身沖繩化する必要、これがありましても、日本がそんなに簡単に沖繩化できないことはアメリカも知っております。もしもキーストーンが大事なら、アメリカは手放さないで済むはずなのです。これを日本に返そう、日本に返すと、こう考えたときに、もう沖繩の基地、その役割りはよほど変化を来たすのだ、そのことを承知の上でやってくれたのであります。私だけの功績だと、かようには私は申しませんけれども、これは前大統領のジョンソン大統領とも話し合い、そうして両三年のうちに沖繩返還について話し合おう、こういったそのことから今度沖繩の返還が実現することになったのであります。でありますから、過去において沖繩が果たしていた役割り、これはお説のとおりでありますけれども、今度はそれを変える。そういうように国際情勢は変わってきておる。おそらく兵器の発達等がそういうことを決意させたんだと思っております。また日本国民も協力する、そういう国民であらすためにも、沖繩を祖国に返すことが何よりもだと、かように考えた結果だと思います。したがって、いわゆる本土が沖繩化するのではない、私どもが言うように、沖繩が本土に帰るのであります。そのことはいままで果たしていたキーストーン、その役割りがここらで一段落ついて変わった状況になってくる。今度は事前協議の対象になるということでありますので、日本イエスも、またノーもある。こういう状態になるわけですから、よほどの変化、よほどの決心がなければ、これはできないことであります。それをただ単に本土の沖繩化だとか言っておる方々は、私はたいへん気が楽なものだな、かように思っております。どうか御了承いただきたいと思っております。
  246. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そういう答弁を伺いますと、またいろいろとお伺いしたくなるのですけれども、時間がないのでこれでやめますけれども、いわゆるアメリカの極東戦略がなくなったということではないと思うのです。ですから、日米共同声明にるるうたわれているように、沖繩返還が支障が来たされるようなことがあってはならない。こういった点について国民が、本土が沖繩化するのだという懸念を持っているわけでございますので、その点も十分国民の声を聞いていただいて、これからの沖繩の返還作業にかかっていただきたいことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  247. 田中榮一

  248. 永末英一

    永末委員 昨日の本会議で、わが党の曽祢議員に対して、総理は相当長期にわたって安保条約を堅持したい旨の意向の表明がございました。その理由とするところは、過去二十年間安保条約があったので、わが国は平和であったというようなことが一番大きな理由のようでございました。私はここで時間を五十分いただいておりますから、ゆっくりと一九七〇年代に安保条約は変わるんだ、変わらざるを得ないのだということを、アメリカ側の要因、またわが国を取り巻いている周辺国からの要因、それぞれあやなして、ゆっくりと御意見を伺ってみたいと思います。  さて第一は、昨年の七月にニクソン・アメリカ大統領がグアムへ参りまして、いわゆるグアム・ドクトリンというものを発表いたしました。それ以来アメリカの東アジア政策はきわめて急速に大きく変化してきたと私どもは見ております。総理はどうお考えか。
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 確かにグアム・ドクトリン——グアムの声明以来よほど変わってきたと思っております。しかしその変わり方は、たとえばイギリスのスエズ以東から引き揚げるとか、こういうような行き方とは違っております。いままで約束したことは、これは十分その責任は果たしていく、しかし新しい約束をすることについてはよほど慎重にする。これがグアム・ドクトリンの中心をなすものだと、かように私は理解をしております。
  250. 永末英一

    永末委員 私は、総理ともう少し違った角度からグアム・ドクトリンをとらえているのです。それは約束をしたとは守らるべし。それはすなわち、直接にアジアにおける与国が攻撃を受けた場合には、これは過去を含めてでありますけれどもアメリカはそれを防御する任務を負う。ただし、それぞれの国々における内乱状態が起こるような場合には、いままでははっきりと軍事介入をやってきた。これはもう手控える。それぞれの国が第一次的にはそれに対応すべきである、こういう内容であったと思うのですね。  この二つの理由は、第一の考えは、まさしく一九五〇年代にアメリカがとった東アジア政策のこれはポイントであり、第二の点は、一九六〇年代、すなわち現在までの安保条約が示しているような時代に、アメリカのとってきたポイントですね。その二つとも変えよう、こういうのでありますから、私は変わってきたと思う。あなたはどうお考えか。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも先ほど私申したような気がするのでございます。ただあとの第二段、いままで約束したことはやるという、また第二段も、内乱その他まずまず自助というか、みずからがみずからの国を立て直すというか、守るというか、そういうような方向を第一に考える、こういうことのようでございます。したがって、新しい約束をする場合には、それはたいへん慎重にやる、かように思っております。また、いわゆる過去の約束にいたしましても、まず自助、それをまず第一に考える。だからやはりみずから立ち上がってくれなければ、ただアメリカにたよるだけでは困る、こういうのではないか、かように思っております。
  252. 永末英一

    永末委員 その第一の点でありますが、約束したことは守ると言い続けております。しかしながら、アメリカが軍事力を使って東アジアの紛争に介入するという可能性は、私どもはきわめて少なくなったと見ておる。すなわち、過去二十年においてアメリカが東アジアにとってまいりましたコンテインメントポリシー、封じ込め政策というものに対して、アメリカは非常に強い反省を加える。この政策の是正を企てつつある。これがこのグアム・ドクトリンが示している基本的な一番重要な点だと、われわれは見ておりますが、あなたはどうごらんになるか。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申したような見方をまた別な見方からいえば、ただいまのようなことにもなろうかと思いますけれども、私はアメリカ自身が全面的に後退するとか、手を引くとか、そこまで考えることはちょっと行き過ぎじゃないか、あるいは遠隔操作に変わったんだ、こういうようなことはやや行き過ぎのように思います。まだそこまでは踏み切っていないように思います。ことに私、皆さんアメリカの当局からもお話を聞いておられることだと思いますが昨年の十一月にニクソン大統領と直接話した段階では、先ほど来私が申し上げるようなそういう点でございまして、いわゆる全面的後退だとか、こういうようなところはまずないように思っております。
  254. 永末英一

    永末委員 私は、全面的後退がアメリカの政策に変わってしまったとは申し上げていないのであって、すなわち一九五〇年代の封じ込め政策は軍事力を用いて直接攻撃に対応しなければならない、これがアメリカの決意であったと思うのですね。それがすなわち共産圏の周辺に対して軍事同盟組織をつくり上げた。その一環として日米安保体制もできたわけであります。  一九六〇年代はむしろ、中ソの分裂、その前にキューバ事件を契機としてアメリカとソ連との間には直接の軍事衝突の発生し得る余地がきわめて少なくなった、こういう判断のもとにいわゆる柔軟反応戦略がとられ、そうして特にベトナムにおいて起こった内乱状態に対する介入が行なわれてきた。ところが、アメリカが望むような結果にはベトナムはならなかった。この反省がグアム・ドクトリンになってきた。このように解釈しているのであって、いま全面的後退なんて思いません。したがって、私が申し上げている封じ込め政策に対する反省並びにこれを変えようとする意図というものは、いろいろな角度であらわれておる。こういう認識があなたにおありかどうかということを伺っておるわけです。
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる封じ込め政策、これはニクソン大統領の以前から、ジョンソン大統領の時分からもうすでに封じ込め政策はとらない、こういうことをはっきり申しております。また、その辺のことはグアム・ドクトリンで新しく変わったわけでもない。私は、これはアメリカの世界政策としてわれわれが信頼し得るのも、やはりそういうところにあるように思っております。
  256. 永末英一

    永末委員 佐藤総理も、アメリカがすでに一九七〇年代を迎えるに少し先立って、いわゆる封じ込め政策から離れつつある、こういう御認識を持っておる。そういう御認識を持っておられるなら、日米安保体制というものもまた、基本的にそれをささえているアメリカの柱がゆらぎつつあるのだ、私はこう思うのですね。これはまず前提としておきますから、御答弁要りません。  もう一つの問題をひとつ提起をいたします。中共の核武装の進展度合いというものが一体どういうぐあいになっておるかということを、ひとつ防衛庁長官からお答えいただきましょう。
  257. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 中共はすでに核爆弾を製造する能力を持ち、またMRBMも展開可能といわれております。さらにICBMの開発にも努力しているものと見られ、近くその実験を行なうのではないかといわれておりましたが、先ほどの人工衛星打ち上げの成功も一応中共のICBM開発能力の発展を示しておるものと思われます。最近の米国の見積もりでは、本年中にMRBMの配備が開始され、またICBMの試射も行なわれる可能性があり、一九七五年までにはMRBM八十ないし百基、ICBM十ないし二十五基を持つだろうと観測されております。
  258. 永末英一

    永末委員 この中共の核武装の進展は、いま少し最後のところあいまいでございましたが、一九七〇年代十年間を鳥瞰して、すなわち現在私どもはIRBMないしMRBMの展開をしておると見てもいい状態ではないかと思う。ところがICBMにはまだもう少し時間がある。それはすなわち、ICBMの実験に先んじて人工衛星の実験をやっておる、これで見れるのではないか。問題は、ICBMが実戦配置につき得る時点というものを防衛庁長官はどう見ておられるか、お答え願いたいと思います
  259. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 米国側の情報等総合いたしますと、大体一九七五年以降にICBM十ないし二十五基を持つだろうと見られております。
  260. 永末英一

    永末委員 今度は総理大臣ですが、こういうぐあいに中共の核武装の進展が現実の問題として行なわれてくる。これがアメリカとわが国とに同様に影響を及ぼすか、違った影響を及ぼすか、お答え願いたい。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 同様な影響を及ぼすと思います。
  262. 永末英一

    永末委員 いま防衛庁長官の見積りによれば、アメリカその他を総合判断されたから日本の判断だと思いますが、一九七五年になって初めて十ないし十幾つかのICBMの実戦の配置がある。アメリカは、現在の中国の核運般能力から見て、一九七五年前はこれは一種の聖域でしょうね。だといたしますと一九七五年までの間に一体中共の核兵力の進展はアメリカとわが国とに対して同様だと判断されますか。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 同様だと思います。
  264. 永末英一

    永末委員 佐藤さん、アメリカは一九七五年までは中共からの核攻撃を受けるおそれはない。しかしながら中共の周辺諸国、わが国を含め、韓国も、台湾も、ビルマも、インドも、インドネシアも、すべてこれその射程内に入っておる。全然違った一つの環境に置かれるわけですね。その場合にわが国を取り上げて、わが国はまずわが国のことを考えねばなりませんから、その場合でも同様だと思われますか。
  265. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われるようにその射程範囲は、それはアメリカは直接攻撃は受けない。しかしながら、この核兵器が開発されて、そしてその同盟国の一つが攻撃を受ける、そういうことになればアメリカ自身は安閑としてはおれない。そういう意味で私は、アメリカ自身が直接は受けなくとも同様だ、かように申したのでございまして、その点では同じようにこの事態については心配しておる、かように思っております。
  266. 永末英一

    永末委員 総理大臣の判断、その辺が一番、核を輪とする同盟関係にある諸国が考えねばならぬ重要なポイントなんですね。総理大臣のお考えは承りました。  さて、それはまたあとで問題にいたしますが、アメリカは昨年の十二月、沖繩にございますメースBの撤去を公表をいたしました。さてアメリカは、中国周辺諸国に対して核兵器を一体どこかに置いておると思われますかどうか。防衛庁長官でけっこうです。
  267. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 よく情勢は知りません。
  268. 永末英一

    永末委員 アメリカは他国に配置しておる核兵器につきましては、NATO諸国の分は公表いたしております。NATO諸国以外は公表いたしておりません。メースBにつきましても撤去の公表はいたしましたが、これが核弾頭装着であるかは、アメリカ自体の口からは、沖繩のメースBについては明らかにせられずじまいであったと思うのです。そういうものである。しかしながらわが国の安全を考える場合に、一体わが国周辺にアメリカが核兵器を置いておるかおらないかということは、わが国の安全を考え、わが国の自衛力の保有を考える場合にきわめて重要な問題だと私は思いますが、防衛庁長官は知らぬで済まされますかな。
  269. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 アメリカが公表もしませんし、私が知っていないことは知っていないと申し上げる以外にはないのであります。しかし、アメリカは安全保障条約を結んだ国々に対してはコミットメントは守る、そういっておるのでありまして、そういういかなる情勢に対する対応もしかるべくやると考えておるわけであります。
  270. 永末英一

    永末委員 アメリカは現在ベトナムからのある程度の撤兵計画を発表し、これを撤兵をしつつあります。ベトナムに出ております韓国から行っておる師団も、これは当然韓国に帰るでありましょう。そうしますと、国連軍という名前でいま韓国に配属されているアメリカ軍は当然、いままでのアメリカ考え方によれば本国に帰還していくだろう、こう思われる。そう思いますか、防衛庁長官
  271. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それはまだ推理小説の範囲内でありまして、政治の現実の問題とはなってきておらぬようであります。
  272. 永末英一

    永末委員 政治の現実の問題となっておるわけですね。どの程度引くかどうかということが、韓国におけるアメリカの核政策と相まって問題になるわけです。われわれが心配しておるのは、その韓国における核の問題が、沖繩との関連においてアメリカ側が問題にしておるわけです。したがって、なるほどメースBは撤去したかもしれないけれども、そういう問題をはっきりとらえなければ、佐藤内閣は非核三原則ということを打ち出しておるけれども、きわめて疑問の残る点がある。そこで何もそこまで考えなくても、韓国というものが一体どうなるかということを——それは兵力のいま問題でございますけれども、どう判断しておるかを実は聞きたかった。もう一ぺんお答えいただきたいと思います。
  273. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 韓国の安全につきましては、われわれも重大な関心を持っておる次第であります。したがいまして、ベトナム戦争に参加している韓国の二個師団が、どういう方向に移動しているということも、われわれとしては非常に大きな関心の対象でもあります。しかし、そういうことは深甚の注意をもって見守ってはおりますけれども現実に変化が起きているという事態にはまだ至っておりません。したがいまして、そういう責任ある現象が出てきてから、われわれは的確な判断をなし、適切な処置をわが国自体として行なうべきものと考えております。
  274. 永末英一

    永末委員 保守的政治感覚によれば、現実に出てから判断するで私はいいと思うのです。しかし、われわれが心配をいたすのは、昨年の佐藤・ニクソン共同声明において、韓国には、あるいは朝鮮半島には、非常に多くコミットしておられるのではないかという疑いを持つわけです。したがって、なるほど現実に兵力移動が行なわれた場合に判断すればいい問題のようでありますけれども、私どもは、もしそれが、あの共同声明によってコミットせられておるとするならば、重要な問題でありますので、いまは兵力量の観点から問題を投げかけました。  さて、ここで共同声明に一ぺん返りたいのでありますが、四項で、朝鮮半島に起こる事件と台湾に起こる事件とを並べて述べられておりますけれども、文句は違うわけですね。しかし全然同様だという判断でこれを書かれましたかどうか、伺いたい。
  275. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、先ほど申しましたように、この共同声明に書かれている文言に若干の表現の違い等がございますが、そのありのままの姿でお読み取りいただくことが、最もよろしいかと思います。
  276. 永末英一

    永末委員 日本語というのは、ぼんやりしておりましてね。たとえば韓国の安全のくだりにつきましては、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」と総理大臣は述べたことになっておる。台湾地域のほうは、同じく総理大臣は、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素であると述べた。」と、こうなっておるわけですね。これは日本語にしたら同じことですよ。しかし、これをアメリカ側が了解している文字は違うわけですね。ここは日本の国会でございますから、アメリカ語のことは、どうでもいいようでございますがわがほうが朝鮮半島にコミットしたかしないかということについては、残念ながら、これはアメリカ語のことをちょっと申さざるを得ないので、私はやはり申し上げたいと思う。朝鮮半島の場合「緊要である」というのは、「エセンシャル」ということばが使われておる。エセンシャルというのは、英語の意味からいいますと、そのもの本体に一体不可分、切り離してはならない部分である、そういう意味を持っておる。すなわち、朝鮮半島に起こるべき紛争は、あるいは混乱は、わが国の安全にとってもう動かしがたい、そのまま日本の国の安全につながるのだ、こういうことである。「重要な要素」は、アメリカ語では「モスト・インポータント・ファクター」と、こうなっている。インポータントという語は、重大な結果を生じますよということであって、台湾地域における安全を破壊する現象は、そのまま日本の安全を破壊するものだということには彼らは受け取っていないわけですね、この文句ではですよ。アメリカ人は、そういう解釈をしておると私は思うのであります。この辺、日本政府は、どう解釈してこの文字を使われたか、ひとつお伺いしたいと思います。
  277. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 日本語で声明書を読んでいただくよりほかにないと私は思いますけれども、しいて申しますと、朝鮮半島における緊張の度合い、あるいは可能性、あるいは現状が、国連軍ということで、国連考え方、姿勢から申しましても、非常な重要性を帯びているところである。そして特に日本とも一衣帯水の間にある。こういうような、しいて申しますれば緊張の度合いとか、あるいは国連を含めての監察とか、あるいは三十八度線を隔てて現実の状態が今日のような状態である。しかも日本とまことに近い距離にある。こういうような点からいって、日本の安全からいって、非常に緊要なところである、こういうふうに解せられるかと思います。  それから台湾のほうの関係については、先ほど総理大臣からも話がございましたが、よく話題に取り上げられる総理大臣のプレスクラブにおける演説においては、もしここで変なことが起これば、日本の安全にも非常にたいへんなことになるけれども、そういう事態は予見しないという趣旨が、そのプレスクラブの演説にも出ている。そういうところを、あわせてお読みいただきますと、感じが御理解いただけるのではなかろうか、こういうふうに私は考えております。
  278. 永末英一

    永末委員 私が思いますのに、朝鮮半島の事態に対して、わが国が対処するようにアメリカから望まれるであろうことがあるわけですね。それは朝鮮半島に戦闘状態が発生するならば、わが国並びに沖繩の軍事基地をアメリカが使用しなければこれに対応し得ない、このようにアメリカ考えておると思います。わが国もそう思いますか。
  279. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申したところで尽きているように思いますけれども、やはり現実の事態あるいは可能性の程度というようなことからいい、かつ日本にきわめて近接しているところである、同時に、国連のことも、先ほど申しましたけれども、そういう点から申しまして、わが国として、わが国の安全ということからいって、やはりその辺のところに、しいていえば、考え方の若干の相違があると、こう理解すべきではないでしょうか。
  280. 永末英一

    永末委員 外務大臣は若干の相違があると言われた。私は相違があると思うのです。すなわち朝鮮半島の場合には、まさしくわが国の安全にそのまま関係がある。この対応のしかたに対して、佐藤内閣はコミットされたのだ。台湾地域に対しては、なるほど重要であるかもしれないが、そのものが、わが国の安全に直ちに迫ってくるということではないという判断が、やはりここに生きていると私は思う。したがって台湾に対するコミットのしかたと朝鮮に対するコミットのしかたとは、私は非常に大きな程度の差があると思います。つまり朝鮮半島に対しては、わが国が一体何かを求めるかどうかということを、やはりアメリカ側が求めているのだろうと思う。いままでの安保体制というのは、一方的にアメリカが極東戦略を決定して、そうしてわが国が、言うならば、その極東戦略の中で軍事基地を貸しておっただけだ。しかし、この表現は、朝鮮半島の安全はエセンシャルな日本の安全なんだ、こう言い切ってしまえば、日本側が日本の安全を守るために、朝鮮半島に対して、やはり何らかの要求をしてくるはずではないかとアメリカ側が受け取ってもしかたがない。そういう表現なんです。台湾の場合には、そうではないでしょう。まだ受け身の場合があり得ると思われる。そういう違いを意識されているかどうかお答え願いたい。
  281. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そこの差異の問題の前に、私はこう考えるのです。安保条約というものは、やはり何といいましても、抑止力の効果というものが非常に大きな要素であると私は思います。そして抑止力をきかせていくということは、やはり起こり得る可能性の問題にかかっておりますから、そこで日本自身の安全ということ、それに対する抑止力の効果を十全に働かせていくという立場からいって、日本自身立場からいって、この朝鮮半島の緊張ということに対してはこういうかまえ方でいなければならない。これが安保条約から来る当然のねらいであり、またこれは従来からの考え方に私は違いのない考え方だと思います。
  282. 永末英一

    永末委員 抑止力と言われましたので、先ほど私は韓国における核の問題をひとつ聞いてみたのですが、まだ日本政府の考慮の外にあるらしいので……。問題はこういうことなんですね、われわれが、いま十数年前の朝鮮半島の痛ましい戦争の経験を振り返った場合に、どうしたら一体この地域で戦争をなくすることができるか。この点についてアメリカがやってきたのは、なるほどグアム・ドクトリンがございましたけれども、やはり軍事的なバランスをとらなければだめだ、こういうことである。しかしグアム・ドクトリンが進行していく過程においては、アメリカ軍は韓国から何ほどか撤退していくだろう。その何ほどか撤退していく穴埋めが、そこに核兵器を置いてやっていこうとするのか、それともわが日本国に何らかのものを求めるのか。それが先ほどから議論になっているような、いままで持ってきた安保条約と、一九七〇年代に事前協議事項を踏んまえて安保体制を持っていこうとする場合に、ここがひっかかってくるだろうと私は思う。でなければ、こんな文句を、佐藤さんとニクソン大統領とがどういう問答されたか知りませんけれども、わざわざこの文句が入ってきて、しかも台湾と朝鮮との取り扱いが変わっておるというのは、私はそこに問題があると思う。そういう意味合いで抑止力と言われるなら核のことを聞きたいのだけれども、それはもう知らぬと言われるのだからしかたない。しかし、それは知らなければいかぬことですよね。知ってきますと、やはりわれわれがいままで非核三原則と言っておりましたけれども、非核三原則の上に、一体核戦略の時代に突入しているこの地球上で、日本民族の命をどうやって守っていくんだ。答えざるを得ないのですね、これは。おれは非核三原則だからだれも核を撃ち込んでこないだろうとか、核の脅威がないだろうとか、それは言われないわけである。その意味合いで私はこの朝鮮半島の問題は重要な問題であると思います。  そこで、愛知さん、もう一ぺん確かめておきたいんだが、これは断じて日本並びに沖繩の軍事基地使用をフリーにさしておることはございませんね、いかなる意味においても。
  283. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それにお答えするのには、先ほどもいろいろ問答がございましたけれども、私は総理も言われましたように、それから沖繩返還問題が前国会で論議されたときのことも想起するわけですが、科学兵器の発達というようなことも時代の移り変わりとともに進んでまいるわけです。それからそのほかにもいろいろの要素が考えられますけれどもアメリカとしては、日本世論の上に立った日本政府の要望を入れたということは、沖繩における従来の軍事的な価値あるいは機能というものを減殺しても、なおかつこの要望にこたえたほうがいいという、私は大きな政治的の判断と決断が先方にはあったのではないかと思われるわけです。したがって、そういう観点から立てば、この沖繩の返還問題とまた朝鮮のいまお話しの緊張の問題と相関連させて、日本側がコミットをしたというようなふうにはお考えにならないでいただきたいと考えます。
  284. 永末英一

    永末委員 あのね、愛知さん、そう言われると問題が起こるわけです。勘ぐりたくないのですが、総理大臣が明らかにされたように、沖繩は返還後本土と同じ軍事基地の取り扱いを受ける。すなわち現在の米軍の沖繩基地使用は変化する、これは日本政府の見解。だからこそここの四項目が入ると、こういう勘ぐりが入ってくるわけですね。それで聞いているわけです。  ちょっと問題を変えますが、ここに「国際連合の努力を高く評価し」というのですが、米軍として動くのはいかがか、国際連合軍として動くならよろしい、こういう意味がありますか。
  285. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そこは少しまた先を予想し過ぎるかもしれませんけれども、これも先ほど申しましたように、三十八度線という問題、休戦協定あるいは国連、アンカルク、こういう現実の事態を踏まえて、そうして国連として朝鮮半島の緊張に対して非常な努力と関心を払われているというその事実を認識している、こういうことであって、国連という形であるならば将来どうこう、というようなところまでは意味しておりません。
  286. 永末英一

    永末委員 朝鮮問題もう少し、もう一言詰めておきたいのですが、先ほど中曽根防衛庁長官は退席をされましたが、朝鮮半島に起こるべき問題は、わが国にとってきわめてエセンシャルだという観点に立つならば、たとえば先ほど推理小説みたいだと言われましたが、朝鮮半島から米軍が何ほどか撤退しようとするとき、日本側がそれは困ると——わが国にエセンシャルなんですからね、朝鮮半島の安全は。ぜひいてくれろというようなお申し出をされるおつもりはございますか。
  287. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはなかなかお答えしにくい問題でございます、率直に申しまして。ただ私の想像といいますか、観察では韓国政府並びに国民も非常にこの問題については重大な関心と希望を持っている、さように私は観察いたしております。
  288. 永末英一

    永末委員 これは実は一九七〇年代におけるわがほうの米軍基地の機能と関係がありますので、答弁を求めているのでございまして、推理小説の結果を求めているのではございません。  さて、そういう関連で台湾地域における安全に対して、非常に重要な要素であるとお考えになっておるということは、いまの兵力の問題からいたしますと、第七艦隊のこの西太平洋における常置は、日本政府としては望ましい、こういう観点に立っておると思いますが、どうですか。
  289. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは一口にいえば、台湾海峡で軍事的な紛争が起こらないかなめの役を持っているのではないか、こういうふうに私は考えております。
  290. 永末英一

    永末委員 いま出しました二つの問題は、象徴的な問題でございますが、私の見るところ一九七〇年代の日米間の信頼関係は、わがほうが何を一体アメリカに要求するか。それは裏返せば、わがほうはわがほうの安全のために何をするかということから出発すべき問題である。いままでは一方的にはわがほうには要求はなかった。あっちが全部仕立ててきた。私はその意味合いで先ほど一九五〇年代の安保体制と一九六〇年代の安保体制と、いよいよことしから入っておる、すなわち一年通告で終了する安保体制とには、質的な変化があるということを申し上げたのでございまして、その意味合いでいまの愛知さんの二つの御答弁は、求めるところはなかなかお答えがなかったけれども、そういう腹がまえをしておかなければならぬ問題だ。私はそういう機運がやはりこの四項の二つの事項として出ておると思うのです。まとめとして総理大臣からお答えを願いたい。
  291. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体先ほど来外務大臣からお答えしたとおり、これで御了承いただきたいと思いますが、アメリカ日本との関係、さらに国連国連軍という形、そういう形でも朝鮮半島の平和を維持している、こういうことを考えますと、日本も応分の協力をしなければならぬだろう。ただ日本自身が直ちに事前協議を受けたら必ずイエスと言う、こういうものではございません。私はそういう意味ではニクソン大統領と、直接お話はしましたが、何らお約束はいたしておりません。  また、軍備に関しての、先ほど核の問題、いろいろ根掘り葉掘り聞かれておりますけれども、私どもが主張するものは、われわれの返ってくる沖繩、これについては核は撤去する、こういう状態でございますので、それより以上何にも期待するものはないし、また持ち込みは明らかにこれは事前協議の対象になるのでございます。そういう場合にはわれわれは即座にノーと言う、こういうことを申しておりますので、ただいまのところわが国に関しては核の問題、核兵器の問題はとやかく議論するものは何にもございません。他の場所にどういうような核の装備があるかないか、これはいろいろせんさくをしておかなければならない問題かと思いますが、どうもせんさくすること自身が困難な問題ではないかと思っております。と申しますのは、アメリカ自身にいたしましても、国内で核の装備については、これはもう大統領以外にはそういうことで発言できる人はいないようであります。これはもう厳禁している、そういう状態でございますから、沖繩に核装備があると言われていながらも、いままでどうもなかなか口を割らなかった。最近になってようやくメースBを撤去するというような話が出て、それではあったのか、こういうようなことでございますから、これはないということ、あるということ、これはいずれも言わないところに核兵器の抑止力というものがあるのじゃないだろうか。これはもうないと言えば全然効果はありませんし、あると言ったらどういうものがあるかと言う、その程度のものなら、それは何らおそるべきものではないというような話にもなりましょうし、なかなかむずかしい問題で、やはり知らないところに核兵器の味がある、かように解釈すべきじゃないだろうかと私は思っております。ことに永末君は自分の経験から言われても、どういうような装備をしているか、そういうような事柄はあまり一般に公表しないというのが各——各というのはそれぞれの国ですが、それぞれの国の軍備のあり方としてそうあるべきだろうと私は思います。あまり公表さるべき筋のものではない。ことに核兵器そのものになれば一そうそういうことは厳重だ、かように思っております。  ところで日米安全保障条約、その問題については、これから沖繩が返ってくる、これをまず実現さす前にいろいろ取りきめをしなければなりませんし、また現在あります基地等についても詳細に実情を把握しなければならないと思います。また日本国内の基地の現状についても十分把握する必要があると思います。公明党はいち早くそれらについて調査を進めておりますし、中にはもちろん返還されてしかるべきもの、縮小してしかるべきもの、こういうものもあるようでございますが、ものによってはもっと強化しなければならないようなものもあるのではないだろうか、かようにも考えられます。いずれにいたしましてもこの施設、区域、これはわれわれが提供する義務はありますけれども、その義務の範囲についても十分責任を持った処置をする、こういうことで初めて日米間の友好、親善、相互信頼関係が樹立できるのじゃなかろうか、かように思っております。私は何よりも国際情勢は変動しておりますし、まだ相当長期にわたって安保体制を維持する、かようには申しましても、これからどういうように変わりますか。あれだけ犬猿の仲であり、戦後それが原因で分裂国家ができた米ソ、その両国にいたしましても、共存の関係に立って、最近は武器の制限についても話し合おう、こういうような話し合いにもなっております。それだけ国際情勢は流動しておる。新しく中共そのものが軍事大国としてここに実現しようとしておる。こういうようなことなど考えてまいりますが、私は中共自身にいたしましても、おそらく一国で他国にいきなり脅威を与えるとか戦争をぶっ始めるとか、こういうようなことはまずやらない。核を使うにしても自分のほうから先に使うというようなことはしない。すでにそういうことも声明しておりますから、やはり世界はわれわれの希望するような方向に向かうこともあり得るのじゃないか、申すまでもなく平和への道を進んでいくのじゃないだろうか、かようにも思います。こういう事柄がお互いの装備等につきましてもやはり変化を来たすゆえんだろう、かように思っております。いまの日米間の問題については私はさように考えながら事態の推移を十分見守る、国際情勢の変化を見守る、同時に科学技術の進歩についても同様にこれを見守っていく、これが私の態度でございます。
  292. 永末英一

    永末委員 いま長く佐藤さんからお話を伺いましたが、核はこういう現実の問題があるのです。先ほど申しましたように、朝鮮半島から何ほどかの撤兵が行なわれる場合、これがもし通常兵力だけのものであるならば、あるいは誤算の上に攻撃が行なわれるかもしれない。それを補うのは核である。したがってそこに核が存置せらるべし。その場合にその核は知らさなければよいのではなくて、知らす必要がある。核戦略というのは、知らすか知らさぬかわからぬところによさがあるのではなくて、知らしておらなければ相手方の誤算を招くというところがあるわけですね。これは別に議論はいたしませんが、そういうものである。したがって、その場合にわれわれがもし朝鮮半島をエセンシャルと思うならば、すべてを知ってわがほうの対策を立てる必要がありますよということを申し上げておるのです。これはそれだけのことにして、あと時間がございませんので、何点かただしておきたいと思います。  先ほど、中国の核武装の進展がこれからの安保体制に影響があるということを申し上げました。アメリカ中国の核の脅威を受ける前に、われわれも、またソ連も、また中国の周辺諸国も、物理的には脅威を受けます。これは政治的に受けるかどうかは別として、対応策を考えざるを得ない。それはわが国とアメリカとは違うのである。したがって、そのときにアメリカとソ連との間に一九六〇年代の前半以来起こったことが、一九七〇年代の前半にソ連と中共、そしてまたわが国と中共——わが国はちょっと立場は違いますが、わが国と中共との間にも起こさざるを得ない状態ができ得るのだ、それはアメリカ中国との間の関係とは違うのだという一つの可能性というものが私はあると思う。この可能性があるかないかということをひとつお答え願いたい。
  293. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 可能性ということになると、先ほども夢の話だということですが、可能性が全然ないとはいえないかもわかりません。あれだけ仲のいいと見られた、一枚岩だと見られた中ソが、互いににらみ合うようなそういう時期が来たのでございますから、また、ただいまのように私ども真正面から批判をされておる、こういうような関係だと、これはたいへん危険な状態にさらされる、こういうおそれなしとしない、かように私は思いますが、しかしただいま申し上げるように、おそらくこの問題は一国だけのものあるいは二国間だけの問題では終わらないだろう、かように思いますので、よほどの決意が要るだろうからまずないだろう、かように考えてしかるべきじゃないかと思っております。
  294. 永末英一

    永末委員 防衛の問題は、まずないだろうでは済まされない。最後に残るべきそこのところ、これはやはり国民の命を預かる総理大臣としては心配をしていただいて、これはやはり準備するということが必要だと思うのです。さて、その意味合いで、中国に対する態度も、私は先ほどから何べんも繰り返していますけれども、ストレートにやはり北京政府というものを見詰めつつ進まねばならぬ時期は迫っておる、このようにわが党は考えておりますから、お伝えしておきます。  もう一つ、先ほどからの御答弁で専守防衛ということば佐藤さんお使いになりました。昨年、わが国がこれから進むべき防衛方針は、私のことばでいえば専守防御ということで進む、これがわが国が軍国主義になっていないという印象を与え、そしてまたわが国の防衛のめどをつける上にも重要であるということを申し上げました。佐藤総理は昨年度の段階では、専守防御なんというようなことばはようわからぬが、戦略守勢であることは間違いないと、こう言われた。戦略守勢ということばは、攻勢に移り得るということを反面意味しているのでございまして、改められましたか。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 改めたかどうか、先ほど申したとおりで、もっぱら防衛に専念するということでございます。
  296. 永末英一

    永末委員 内容は、私の申しているように変わったと私は了解しておきます。  最後に、もう一つ申し上げたいのは、日米安条約の現在の条文は、いま残っておりますけれども、これがこの一九七〇年代を通して、日米両国がこの条約によってお互いが平等の地位で処遇されておるんだ、この感覚が失われてくれば、アライアンスというものはくずれます。これはアメリカ側にも、非常に強い反省があるわけである。したがって、たとえば、軍事基地をどんどんなくしていかねばならぬとか、いろいろな反省がアメリカ側にはございます。さて、われわれから要求すべき点について、この施設の提供という面で、どうしても私は直してもらわなくてはならぬ点があるのです、佐藤さん。それは、平和条約発効のときに現在の形がとられましたけれども、それはこういう形になっている。行政協定から地位協定を通じて流れておる思想の中に、軍事基地を貸しているのは、日本政府である。しかし、アメリカ側は、これを使用し、その内容を日本政府に何ら説明いたしません、占領の継続でございますから。説明をされない基地に対して、日本政府は、国民にまた、説明することはできないので、いろいろなトラブルが起きておる。そこで、原則としては、アメリカ政府は、やはり日本政府に説明し得る軍事基地だけに限るべし、これが一つ。第二は、われわれは地主でございますから、この基地の返還に対しては、われわれ政府もまた、アメリカ政府に返還を要求する権利を持つ。権利は、それを充足せられ得る条約上の条文に変えられなくてはならない。現在は、返せと言うけれどもアメリカ側がうんと言わなければ返らない。この不平等性は、占領の継続といわれても、何ともしようがないものである。この二点を、早急にやはり私はアメリカ側と交渉して、そうして、日米両国が、あなたの言われる安保体制でも、やはり平等の立場に立つ、そこまで改定するのが、私ども安保改定の第一着手だと思いますが、この点についてのお考えを最後に承っておきたい。
  297. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総理からも御答弁があるかと思いますが、私は、率直に申しまして、条約及び地位協定にもお触れになりましたけれども、現在のこの地位協定の運用あるいはこれを具体的にやりますのは、安保協議会や合同委員会の仕事でございますが、まあ最近のところ、私は、かなり円滑に、少なくとも運用上はうまくいっているように思います。現に、今朝の閣議でも、全面返還のところもきまったところもございますし、いまお話しになりましたような趣旨で、相当にうまくいきつつあると思いますけれども、なお、将来の問題としては、御意見のあるところを十分胸に入れてまいりたいと思います。
  298. 永末英一

    永末委員 総理、いまお聞き及びのとおりですが、要するに、あなたは安保を堅持したいと思われるとして、少なくとも、日米両国の平等性というものは、やはりちゃんとつくっていかねばならぬ、こういうかっこうで進まれるかどうか、それだけひとつお答え願いたい。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは言われるまでもなく、平等性、その立場で進んでいきたいと思っております。そこで、たいへん時間をとって恐縮ですが、言われましたように、どうも占領軍の占領の延長、さように基地が取り扱われること、ここに問題があるように思います。したがって、今回、六月二十二日が来れば、あらためてこういうような点も双方が再認識をして、もう占領の延長でただ縮小したというだけではないんだ、こういうことをお互いに日米ともにはっきりと把握し、認識し、そうして新しいスタートの上に立つんだ、こういうことでなければならぬ、かように私は思います。  ただいま御指摘になったとおり、たいへん教えられるというか、いいところを御指摘になった。どうも日本の場合は、占領の延長で、ただそれが縮小されただけだ、かような問題に取り扱われておる。沖繩が今度返ってきますけれども施政権が返ってきただけで、またそれがアメリカ施政権下にあった基地が縮小されただけだ、こういうようなことでは、真の日米間の友好関係は実現しない、かように私は思いますので、ただいまのお話は、これからも政府を御叱正を願いたい、かように思います。
  300. 田中榮一

  301. 不破哲三

    不破委員 カンボジア問題及び日米安条約の問題について政府質問したいと思います。  まず最初に、カンボジア問題ですけれども、私は、米国がカンボジアに大軍を投入して進攻したことは、一九六四年のトンキン湾事件と、それに続く北爆の開始に匹敵するインドシナにおける戦争拡大行為として、非常に重大な問題である。これに対してどういう態度をとるかということは、いまベトナム和平を口にしている多くの国の政府が、これに対する態度でその真意がただされる、真意が問われる、それぐらいの大きな比重を持つ問題であるというふうに考えます。そういう観点から、このカンボジアでのアメリカの軍事行動に対する政府評価と態度、これを伺いたいと思います。  佐藤首相は、二月の十九日の参議院の本会議で、わが党の野坂議長が、民族自決の原則を尊重するかという質問をしたのに対しまして、その点は、民族の自決というのは固有の権利である、これは尊重するということをはっきり答弁されました。ところが、今度のカンボジアへの米軍の侵入が、カンボジアの国民あるいは国民を代表するいかなるものの要請もなしに、アメリカ軍が一方的に行なった軍事行動である、軍隊の投入であるということは明白であると思います。これを、民族の自決を尊重するという立場からいって、あるいは他国の独立と主権を尊重するという立場からいって、これは明白な侵害であると考えますけれども、この点について総理がどう考えておられるのか、まずこの基本を伺いたいと思います。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、今回、アメリカが南ベトナム軍と同時にカンボジア地域に、領域に入ったということ、これはトンキン湾事件とは違っていると思う。これは私が申し上げるまでもなく、現在、南ベトナムには米軍が駐留しております。そうしてベトコンと戦っている。そうしてそのベトコンと戦っている、まあ補給基地か根拠地か、そういうものがカンボジアの国内にある。したがって、米軍自身がこのベトコンやあるいは北ベトナム兵からカンボジアの領域から攻撃を受けておる。これは現実の問題であります。これはもうすでにシアヌーク殿下時代にも、シアヌーク殿下自身が、カンボジアの中立は保障されているんだ、そのために、ベトコンや北ベトナム兵が領域内にいることは困る、さっさと帰ってくれ、出てくれ。こういうことをしばしば呼びかけたこと、このことはもう不破君も御承知だと思います。だから、そういうような状態にあって、アメリカ自身がそこから攻撃を受ける、あるいは同盟軍である南ベトナム軍が攻撃を受ける、これをやはり自衛の立場から戦っていく、これは当然じゃないでしょうか。私は、そういうことで、この戦争が、戦火が拡大することはまことに遺憾でございます。戦火が拡大しないことを心から願っておる一人でございますが、とにかく、カンボジアといえば、北ベトナムとの間にラオスやベトナムの国があるわけです。その国を通り越してカンボジア内に北ベトナムの兵隊がいるとかあるいはベトコンがいる、そういう状態からアメリカが攻撃を受ける。これは自衛的な立場からもそれをやはり戦っていくだろう、かように思います。
  303. 不破哲三

    不破委員 アメリカがベトナム戦争の自衛ということを口実にしてカンボジアに軍事行動を拡大するという主張をし、行動したのは、これが初めてではないわけです。すでにこの問題をめぐってカンボジアとアメリカの間には長い間紛争が起こっておりまして、現に一九六五年の五月にカンボジアと米国が断交をした。その大きな理由は、米軍が自衛を口実にしてカンボジアの領域を侵した、これに対するカンボジア側の抗議が理由であります。そうしてそれが去年の七月になって初めて、四年半ぶりにカンボジアとアメリカの間に国交が回復された。その際には、アメリカ自身、カンボジアの領土の保全を厳粛に尊重するという約束をした上で、去年の七月に国交を回復したばかりであります。  しかも、私がここで指摘したいと思いますのは、その間にカンボジアとアメリカの間で、カンボジア側はベトナムの戦争を口実にして、自衛を口実にして米軍がカンボジアを侵すことは絶対認められないということで、追跡権の問題をめぐってアメリカとカンボジアの間に紛争があった。そのさなかに、日本政府自身が、一昨年の、たしか九月でありますけれども、カンボジアに口上書を送って、日本政府自身が、日本政府はカンボジアの現在の国境内における領土保全を尊重し、承認するという口上書をわざわざ送って、そういう、目下紛争事態にあるカンボジアの国境の保全を尊重するという約束をした。そのあとでアメリカが同じような約束をして、カンボジアとの間に昨年国交を回復したばかりである。  ところが、それに対して、今度同じような口実で大挙、カンボジア側の要請も何らなしに軍隊を投入した。これは明らかにアメリカの側の国際信義の違反であり、しかも、同時に、これを支持するということは、日本政府がカンボジア側に約束をした領土の保全ということにも反する。日本政府の側からいっても、国際信義に反する態度であると見ざるを得ないと思いますが、その点をどう考えられておるのでしょうか。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカとカンボジアは、いま言われるような経過のもとに断交したときがございます、国交を途絶したときが。しかし、ただいま私が申し上げたように、ある一定の地域にベトコンや北ベトナム兵が駐留している、駐在している。それがアメリカ側から、これを掃討してくれろ、こういうことを言う。しかし、なかなかカンボジアに掃討するだけの力がない。自分のところはこれに攻撃をしないような処置をとるから、これは一定の聖域として認めてくれろという。そこで紛争のない地域としてのいわゆる聖域というものがあったわけであります。これは私が説明するまでもなく、不破君よく御承知だと思います。これは、お互いにその地域だけは攻めるとかそこから攻撃をするとかいうようなことはすまい、しないでおる、こういうことが一通りあり、また日本ども——まずこの国境紛争、これがベトナムとカンボジアとの間における国境、またタイとカンボジアとの国境、その国境線がなかなかカンボジアの要求どおりにきまらないというので、そこでいわゆる両国間の国交がうまくいかない、こういうような問題もあったわけであります。しかし、それらの問題が一応落ちついた。その機会日本もカンボジアと大使を交換する、こういうような時期になってきたわけであります。  私は、アメリカ自身はまだそこまではいっておらない、ちょうどそういうような際に、今度は政変があった。そうしてシアヌーク殿下がその職を去られた。そういう機会に今回のような行動が行なわれた。こういうことでございますが、その時期的な問題は別として、とにかくこの地域から南ベトナムが攻撃を受けていたことだけ、これはもうはっきりしているのじゃないか、かように思います。だから、そういう意味の自衛的措置、これは認めざるを得ないのじゃないか、かように思っております。
  305. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、日本政府の態度としては、一昨年の九月に、アメリカとカンボジアの間に領土の問題でそういう紛争があったという中で、カンボジアの領土保全を尊重するという約束をカンボジア政府に対してわざわざ口上書を手渡して約束をした。しかし、そのときにも、ほんとうの腹はアメリカが追跡権を行使してカンボジアの領域を侵犯するということは、これは自衛の態度として許される、ほんとうはそう考えていたんだけれども国交の都合からそう約束をしたということになるのでしょうか。それとも一昨年と今日では事態が違っているので、今回の問題は容認をするということになるのでしょうか。
  306. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 事実をちょっと私からも念のために御説明したいと思います。  ただいま総理も言われましたように、政府としてはカンボジアの中立ということの尊重ということについては、何ら変わっておりませんし、これからもカンボジアの中立、独立、領土保全ということについて、この事態のもとにおいてますます努力を新たにしたいと考えておる。これが第一。  それから事実の問題として、一九六九年、つまり昨年になりましてからも、この当時はシアヌークの支配下にあったわけですけれども、たとえば三月二十八日のシアヌークの言として、外国共産分子のカンボジア領への浸透は事実である、しかもますます増加しておる、今後共産主義者が執拗にわれわれを悩ますことを続けるならば、われわれの愛国的な軍隊がこれと戦うであろう、また米軍がこれと戦うためにカンボジア領内に侵入してもそれは正当化される。こういうふうな趣旨の言明をいたしております。それから昨年の五月末にも同様の声明をしておりますし、さらに昨年の十月六日の演説におきましても同様のことが言われておる。これはその後における客観的事実であります。私どもといたしましては、やはりこれからこのカンボジアの中立保全への新たなる努力をするにつきましても、こうした事実は冷静にやはり事実として客観的に見詰めておる必要が絶対にある。そうして、この事実の上に立って、ニクソン大統領の演説並びに国連安保理事会への報告によりますと、このいわゆる聖域の中におるところの北越軍の軍事的活動がますますに活発になって、このままでおると自国軍並びに南越軍が損傷を非常に激甚に受けることになるので自衛措置をとった。国連憲章五十一条、これが根拠になっている。これがアメリカ側の主張でございます。こうした事実の上に立って、これからの措置について、国際的な協力に参加していきたいというのがわれわれの考え方であります。
  307. 不破哲三

    不破委員 いまの外相の答弁は、六八年にカンボジアの領土保全の尊重を約束しながら、現在アメリカの侵犯を容認している、その矛循は何かという質問に対する回答には何らなっていないというように考えざるを得ないのです。  ただ時間もありませんので次に質問いたしますけれども、いまのアメリカ側が主張していること、カンボジアの中にベトナム側の大量の軍隊がいて、それが南ベトナムへ攻撃をしてきているから自衛上やるのだ。いま愛知外相は事実だと言われましたけれども、これは外相のことばにもあったように、アメリカがこういう主張をしているという事実だけが報告をされたわけであります。それで、これに対して全く反対の発言と評価も最近関係者の中から行なわれている。たとえば、先ほども話題に出ましたシアヌーク国家元首は、最近の発言でこういうことを言っております。カンボジア人民の侵略者はアメリカ帝国主議だけである、アメリカとその手先はカンボジア人民の抵抗をベトナムの侵略と呼んで、その撤退を要求しているが、自分の国で戦う人民が一体どこへ撤退すればよいのか、こういうことを言っております。また最近の外電を見ましても、APその他の、決して共産主議的ではないと思われる外電でも、最近カンボジアでは、カンボジアの国民の抵抗が非常に激しくなっているということを、ロン・ノル政権がクーデターでできた以後報道している。そういう場合になりますと、この事態をどう判断するかというのは、単なるアメリカ側の主張をうのみにしただけでは判断のできないことである。現に先ほど私はトンキン湾事件の例を引きましたけれども、あのトンキン湾事件の際にも、佐藤内閣ではありませんでした、池田内閣のときだったですけれども、トンキン湾事件がアメリカの報告どおりの事実であるということを前提にして、これは自衛上やむを得ない措置である、インドシナの事態を安定させるための措置であるということを、外相が国会で何回も答弁されました。ところが、そのときのアメリカの主張そのものが、アメリカの国会の調査によってもきわめてあぶないものであったことが明らかになり、でっち上げであったという証明もたくさんあがっている。そういう中で最近トンキン湾事件の決議が廃棄されるというような、アメリカの国会史上でもまれなことが行なわれたということも御承知のとおりだと思うのです。私は、こういう事態の中でアメリカの主張だけをうのみにされて、佐藤総理は先ほど消極的な立場での賛意であると言われましたけれども、ともかくこれをやむを得ないものとして賛成をする、こういうことは非常に重大な態度をとられたものだと考えざるを得ないのです。  そこで、愛知外相に伺いたいのですけれどもアメリカの同盟国の中で、今度のカンボジアのアメリカの軍事行動に対して、積極的にしろ、消極的にしろ、これに対してやむを得ないものとして支持をする、こういう態度を公式にとった政府が、日本政府以外にどこがあるのかということについて、もし知っておられるところがあれば、お聞きしたいと思います。
  308. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まずその前に、先ほどのお答えを補足したいと思いますが、私は事実と申しました……。
  309. 不破哲三

    不破委員 時間がありませんので質問に限って……。
  310. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それでは、先ほどの点をさらに強調したいということを申し上げておきたいと思います。それから一方的なあれだけを言っているのではなくて、これこれはこういう主張である、これこれはこういう主張であるということを冷静にわきまえていかなければならない。  それから関係国の間でどういう態度をとっているかということは、外電その他でも伝えられておりますが、この事態において、アメリカがとりたる措置は、アメリカ立場に立ってみれば万やむを得ざる措置であったであろうというような、われわれと同様の見解をとっている国は、すでにわかっておりますところでも数カ国あると私は承知いたしておりますが、さらにそういう点についてジャカルタ会議等においては、十分に意見交換をいたしたいと思っております。
  311. 不破哲三

    不破委員 外相は数カ国とことばを濁されましたけれども、数カ国の名前を固有名詞で起こしてみれば、大部分がベトナム参戦国であります。参戦国以外には、外相がよく使われることばで、国際政治上重要な位置を持っている国でこれに支持する態度を表明した国は、現在までない。先日北爆の問題でも、日本政府が一九六七年の日米共同声明で北爆支持を表明したときに、この態度はアメリカの「世論アメリカ」の新聞でさえ、佐藤首相は、大国が米国のベトナム政策を確認することがないとの神話を打ち破った、という皮肉な讃辞を受けたことがあります。今度もまた同じような立場日本が置かれている。これは、先ほど日本の主張が追従ではないんだと言われましたけれども、客観的に見ればたいへんな対米追従であるということを言わざるを得ないと思います。  そこで、この問題を考えますと、私は、今回の事件が二つ意味日本の進路にとってたいへん重要な問題をはらんでいる。一つは、アメリカが民族の自決とか独立とかいいながら、自分の軍事上の必要からはそういう自決や独立を踏みにじってかまわないという立場をとる、侵略的な行動をとる国であるということが立証された。第二に、残念ながら日本政府が、世界の他のアメリカの同盟国のほとんどが、これに対して少なくとも支持をためらっているというときに、まっ先にこれを支持するような、合理化するような態度をとる政府であるということも証明された。そういうことになってみますと、私は、日本アメリカと軍事同盟を結んでいるこの日米安条約が、今後日本の将来にとってたいへん危険な役割りをするものだということを、あらためて確認せざるを得ないと思うのです。総理は、昨年の日米共同声明の中で、朝鮮や台湾で事態が起きた場合には、日本の軍事基地を使用してもかまわない、そういう場合もあり得るという、事実上そういう意味の態度をナショナル・プレス・クラブの演説で表明されて帰ってきました。しかし、その朝鮮や台湾で事態が起きるという場合に、行動するのは、いまカンボジアで侵略的な行動をやっているアメリカであります。そしてまたそれについて判断するのも、いまこれを世界の国に先立って支持をしている日本の自民党政府であるということになると、これはわれわれ自体にとって決してはるかかなたのインドシナ地域の問題と言って済まされない問題である。私は、その意味日本の安全の上からいって、このような日米安条約が六月二十二日で固定期限が切れるというときに、自民党は長期堅持の態度をとられておりますけれども、七〇年代の日本において、こういう態度で日本の進路をきめることは、イデオロギーや党派の立場を越えて、日本国民の安全という立場からいっても、アジアの平和という立場からいっても、たいへん危険な問題である。日本国民の安全のためには安保条約を廃棄することが必要である。これ以後合法的に廃棄する道が開けた時点で、これを廃棄することが安全の立場からいって重要である、そういうことを指摘をして私の質問を終わりたいと思います。
  312. 田中榮一

    田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる十一日午前十時から理事会、十時十五分から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後八時七分散会