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1970-04-24 第63回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十四日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 永田 亮一君 理事 山田 久就君    理事 戸叶 里子君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       阿部 文男君    石井  一君       大平 正芳君    小坂徳三郎君       中山 正暉君    藤波 孝生君       村田敬次郎君    山口 敏夫君       豊  永光君    加藤 清二君       堂森 芳夫君    山本 幸一君       中川 嘉美君    樋上 新一君       不破 哲三君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         水産庁次長   藤村 弘毅君  委員外出席者         外務省経済局外         務参事官    鈴木 文彦君         外務省条約局外         務参事官    山崎 敏夫君         水産庁生産部海         洋第一課長   角道 謙一君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   鯨岡 兵輔君     阿部 文男君 同日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     鯨岡 兵輔君     ————————————— 本日の会議に付した案件  航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第二二号)  北西大西洋漁業に関する国際条約及び関係諸  議定書締結について承認を求めるの件(条約  第一六号)  全米熱帯まぐろ類委員会設置に関するアメリ  カ合衆国コスタ・リカ共和国との間の条約へ  の加入について承認を求めるの件(条約第一七  号)  南東大西洋生物資源保存に関する条約の締  結について承認を求めるの件(条約第一八号)      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。     —————————————     —————————————
  3. 田中榮一

    田中委員長 政府から提案理由説明を聴取いたします。愛知外務大臣
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま議題となりました航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、国際民間航空機関の主催のもとに一九六三年八月二十日から九月十四日までの間東京で開催された航空法に関する国際会議において作成されたものであります。  この条約は、航空機内の犯罪を抑制し、機内秩序及び規律を維持することによって国際航空の安全を確保することを目的としており、そのおもな内容は次のとおりであります。  第一には、航空機内で行なわれた犯罪等について当該航空機登録国裁判権を設定すること。  第二には、機長航空機内で犯罪その他安全危害等行為を行なった者に対し拘束を含む妥当な措置をとり、さらに必要な場合にはその犯人等を降機させまたは着陸国の当局に引き渡す権限機長に対し与えるとともに、着陸国は、機長がこの権限に基づき犯人等を降機させるのを容認し、引き渡される者を受け取りその犯罪について予備調査を行なう等の義務を負うこと。  第三には、航空機不法奪取の場合には、締約国はその航空機の管理を適法な機長に回復させるために協力するとともに、着陸国はその乗客、乗組員がすみやかに旅行を継続し得るようにし、かつ、航空機及びその貨物を返還することの三つであります。  この条約は、航空機内の犯罪等行為の防止を国際協力によって解決していく上できわめて有意義なものであり、また航空機不法奪取につきましても、それを国際協力によって防止する第一歩として意義があると認められます。よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  なお、政府といたしましては、もっと早い機会に御承認を求めるべきでありましたが、今日まで延引いたしましたことを深く遺憾に存じます。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 田中榮一

    田中委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本件に対する質疑は後刻に譲ります。      ————◇—————
  6. 田中榮一

    田中委員長 次に、北西大西洋漁業に関する国際条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件、全米熱帯まぐろ類委員会設置に関するアメリカ合衆国コスタ・リカ共和国との間の条約への加入について承認を求めるの件、及び南東大西洋生物資源保存に関する条約締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題として審査を進めます。  この際、条約局山崎外務参事官から発言を求められておりますので、これを許します。山崎外務参事官
  7. 山崎敏夫

    山崎説明員 ただいま議題となりました漁業条約関係三件の御審議をいただくに先立ちまして、御報告して御了承を得たい点が一つございます。  北西大西洋漁業に関する国際条約及び関係議定書についてでございますが、御案内のとおり関係議定書全部五つ一括して本条約とともに御審議を願っておるわけでございますが、これらの議定書につきましては、当方で作成いたしました説明書の第二ページ及び第三ページにその内容を簡単に説明してございますが、そのうち「北西大西洋漁業に関する国際条約取締措置に関する議定書」及び「北西大西洋漁業に関する国際条約委員会が採択した提案効力発生に関する議定書」の二つにつきましては、この条約寄託国政府でございますアメリカ合衆国政府から、この四月二十一日に、これらは昨年十二月十九日付をもって効力を生じた旨の通報を受けましたので、ここに御報告申し上げたいと思います。この結果、まだ発効いたしておりません議定書は、昨年の十月一日に作成されました北西大西洋漁業に関する国際条約の部会の構成国及び規制措置に関する議定書だけでございます。したがいまして参考資料として改正部分のみを抜粋したものをお配りしてございますが、その資料の三ページ以下の第八条5、7及び8については発効済みとなります。また説明書についてもしたがって若干の訂正を要することとなりますので、ただいま訂正表をお手元にお配り申し上げましたから、それで御了承をお願い申し上げます。  なお念のために申し上げますが、この御審議していただいて御承認をいただくために提出しております条約及び議定書、それ自体のテキストには何ら変更はございませんから、この点を念のために申し上げておきます。  以上でございます。
  8. 田中榮一

    田中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  9. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま議題になっております三条約につきまして、二、三質問をしたいと思います。  最初に、南東大西洋生物資源保存に関する条約北西大西洋漁業に関する国際条約を比べますと、前者の二条と後者の一条二項が、「領海」、「領水」になっております。これはたいしたことではないと思いますけれども、またその国によって領水ということばで英語で交渉をするので、それをそのまま日本語に訳したかのようにも考えられますけれども、私どもが普通のしろうとの観念からいいますと、領水というと、少し幅が広いといいますか、何か範囲が広いような感じを受けますけれども、この点はそういうことはないでしょうか。大体同じでございましょうか、この点をお伺いしたいと思います。
  10. 山崎敏夫

    山崎説明員 外国語で作成されます場合に、テリトリアルウォーターあるいはテリトリアルシーということばを使いますので、一方は領水と訳し、一方は領海と訳すのが例となっておりますが、この条約対象としては特にこだわることはないと思います。ただ領水という場合には、通常内水を含むというふうに了解しております。それからこの条約の問題といたしましては、内水は問題になることはないと思いますので、実際上は差異はないと存じます。
  11. 戸叶里子

    戸叶委員 私も大体そういうことかと思ったのですけれども、ちょっとはっきりしなかったものですからお伺いしておいたわけです。  そこで南東大西洋のほうの第二条に、「国際法に基づいて漁業管轄権が及ぶ範囲に関する締約国権利、」云々とあるわけですが、「国際法に基づいて漁業管轄権」ということばが使ってありますけれども、何か国際法漁業管轄権というものが認められているのでしょうか、この点を説明していただきたい。
  12. 山崎敏夫

    山崎説明員 御承知のとおり、漁業管轄権国際法上一般的に認められているということはございません。ただ漁業専管水域といいますか、漁業水域、そういう概念が各国の間でいろいろと主張されておることは事実でございますが、われわれの立場といたしましては、そういうものを認めるのは国際法に基づいてのみ認められるというふうな立場をとっておるわけでございます。
  13. 戸叶里子

    戸叶委員 「国際法に基づいて」といまおっしゃったこと、ちょっと内容がわからなかったのですが、国際法上に漁業管轄権というのは認められていない、こういうふうにおっしゃったのですね。たとえば、海洋法でも漁業管轄権というものがないように思うのですけれども、こういう点はどういうふうに解釈したらいいわけですか。国際法上は漁業管轄権というものはないというふうにはっきりおっしゃったわけじゃないのですか。そうすると、それとの関係をどういうふうに解釈したらいいかと考えるのです。
  14. 井川克一

    井川政府委員 戸叶先生仰せのとおりだと思います。わが国立場といたしましては、公海上に一方的、排他的なる漁業管轄権を及ぼす漁業水域を認める権利国際法上確立されていないというのが私ども見解でございます。  ただこの条約におきましては、当事国がもろもろの見解を持ち、また権利と称して主張し、あるいは言っておりますが、やはり各締約国そのもの自体に対する立場も違いますので、それらをひっくるめて、それが権利であるか見解であるか、あるいは主張であるかというところをまとめまして、「影響を与えるものとみなしてはならない。」というふうにしてみんなを取りまとめたものというふうに理解いたしております。
  15. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、これはいろいろな国際法に基づいてという意味なんですか、そういう意味にはとらないですか。といいますのは、こっちの条約と、それから北西大西洋漁業条約の場合にはこのことばが入っておりませんね。それでどういうふうに違うかという疑問を持ったわけなんです。
  16. 山崎敏夫

    山崎説明員 北西大西洋規定書き方は、仰せのとおり国際法ということばは入っておりません。これはむしろ漁業管轄権だけに限定して申し上げますと、それに関する締約国主張に不利な影響を与える、またはその主張を害するものとみなしてはならない、かなり漁業管轄権主張する国の立場を中心に書かれたような感じがいたすわけでございます。しかしながら、これに関しましても、その国が漁業管轄権主張すること自体をこの条約によって否定するものではないというだけでございまして、もちろん、そういう漁業管轄権主張する国に対して、わが国国際法上妥当と思わない限りは、それを尊重する義務はまた反面ないわけでございます。その意味におきまして、この第二項と、それから南東大西洋に関する条約との間では内容的には相違はないと思います。  いずれにしましても、いろいろな国が領海あるいは漁業管轄権に関していろいろな主張をしておるわけでありますけれども、それをこの条約によって認めたり、あるいは否認したりするものではない。つまり、そういうことに関する問題は、簡単に言えばお互いにそれはたな上げであるという趣旨だと思います。ただ内容書き方といたしましては、この新しくつくられた条約のほうがわがほうにとってはよりよい規定であろうと思います。
  17. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、これは「国際法に基づいて」ということばが入っても入らなくてもそれほど影響はない、こういうふうに理解をし、さらに古くつくられたのと新しくつくられたので内容が変わってきた、こういうふうに考えていいわけですね。このことばを使ってもそれほどこの条約内容を拘束するものではない、こういうふうに理解してよろしいわけでございますね。
  18. 井川克一

    井川政府委員 戸叶先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、いわゆる漁業専管権というものを主張しておる国も、自分たちはそれは国際法に基づいて言っているのだと申しておりますので、そこは完全にあなた方は国際法権利はないのだと申しますると、またこういう条約が成り立ちませんので、そういうものを一括いたしまして、しかしこれはそういうものに影響を及ぼすものではないというふうにまとめてあります。したがいまして、どちらのほうを書きましても、何もわが国といたしまして立場を害するおそれは全くございません。
  19. 戸叶里子

    戸叶委員 いまのような読み方をしていきますと、むしろこういうことばがあったほうがいいですね。そういうふうにとれませんか。そのほうが何か安心感があるというか、そういうことばはおかしいですけれども、何かあったほうがよさそうな気がしますが、いままでおっしゃったようなことで了承しておきます。  南ア連邦についていいますと、領海が六海里で、漁業水域が十二海里のはずでございますけれども、これらの水域を除く公海上における条約対象水域というのは大体どのくらいになっているでしょうか。
  20. 山崎敏夫

    山崎説明員 ちょっと御趣旨を十分理解していないかと思いますが、条約水域はこの条約の第一条に書かれてあるとおりでございまして、お手元に配付いたしました地図にもあがっておるとおりでございます。ただ南アは、仰せのとおり広い領海及び漁業水域主張をいたしておりますけれども、われわれとしてはそれは認めていない、そういう意味において、われわれから見れば領海三海里外が条約水域となるというふうに考えております。
  21. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、日本は向こうでいろいろ主張していてもそれは認めておらない、こういうふうに解釈していいわけですね。——はい、わかりました。  それではこの条約の第一条の第二項に再検討条項というものがありますね。この再検討条項を設けた理由はどういうわけでしょうか。たとえば将来再検討されるというような見通しがあるわけでございましょうか。この条項を入れた理由説明していただきたいと思います。
  22. 山崎敏夫

    山崎説明員 これはちょっと特異な規定でございます。科学的な、また技術的な見地からすれば、南東大西洋といいます場合には、東経三十度付近を東の限界とするほうが適当であるというふうに考えられたわけでございますが、それより束の隣接水域資源を保護するために、この水域を含んだいわゆるインド洋水域資源保存機構がまだできておりませんので、それができるまでの司は、暫定的に「東経四十度の子午線による棄側の境界線」を条約水域に入れるということになったわけでございまして、インド洋水域について同様な条約ができれば、その場合には再検討しよう、あるいはそちらのほうに移そうということも考えられるのではないかと思います。
  23. 戸叶里子

    戸叶委員 その見通しはどうですか。再検討しそうでございますか。必要とするでしょうか、しないでしょうか、いかがでしょうか。
  24. 藤村弘毅

    藤村政府委員 ただいまのところ、インド洋資源保存機構というのは、こういう機構条約を結ぼうという機運までにはなっておりません。
  25. 戸叶里子

    戸叶委員 この両条約とも締約国から委員を出すことになっておりますけれども委員顔ぶれはどういうふうな方々でございましょうか。  それからついでですから、事務的なことを伺いますけれども事務局ができているとすると、その事務局のスタッフに、日本水産王国ですから入れる必要があるんじゃないかというふうに考えますけれども、そういうことはお考えになっていらっしゃるかどうか。そういうことと、それからさらにもう一つ同じ関係のことですから申し上げますが、締約国が負担する予算というものがあるわけですけれども日本がどのくらいを負担するか。こういう三つの点について説明していただきたいと思います。
  26. 藤村弘毅

    藤村政府委員 南東大西洋漁業問題について精通している方で、国際漁業条約について高い識見を持っている方をお願いしたいというふうに考えております。  それから事務局には、南東大西洋につきましては、現在のところ日本人を出す考えはございません。
  27. 戸叶里子

    戸叶委員 もちろんそれは漁業識見の高い人を置かなくちゃ困ると思うのですけれども、大体もう顔ぶれはおわかりになっていらっしゃるのですか。
  28. 藤村弘毅

    藤村政府委員 現在まだ候補者というのはきまっておりません。
  29. 戸叶里子

    戸叶委員 次の条約と関連がありますから、人の問題が出ましたから伺いますけれども、その前に予算の問題、まだ説明していただいていませんね、それが済んでからにしましょう。
  30. 藤村弘毅

    藤村政府委員 南東大西洋のほうは、現在の分け方で試算してみますと、一万六千ドル程度になるんではないだろうかというふうに考えております。北西大西洋につきましては、七千五百ドルぐらいではないか、現在の試算ではそういうようになっております。
  31. 戸叶里子

    戸叶委員 これは一年ですか。
  32. 藤村弘毅

    藤村政府委員 一年でございます。
  33. 戸叶里子

    戸叶委員 いま御答弁で、事務局では日本の人を置かないつもりですというのは、置けないのですか。置けるけれども置かないという意味ですか。というのは、やはり日本水産というものが非常に発達しておりますので、むしろ事務局なんかに入れてやっていったほうがうまく、将来性があっていいのじゃないかというような気もいたしますけれども、やはり条約関係とかあるいは話し合いの関係等で、そういうところはどこの国がやるというふうにきめられているのかとも考えられますが、その点をはっきりさしておいていただきたいと思います。
  34. 藤村弘毅

    藤村政府委員 南東大西洋につきましては、現在日本の漁船が二十隻前後出漁しておりまして、漁獲高も特にここで多いというわけではございません。よその国に比べますと、比較的ウエートも少ないのでございますので、いまのところ特にここに事務局員を送り込むということは考えておりませんが、将来ここに非常にウエートが大きくなれば、そういうことも考えられると思います。条約日本が出せないということではございません。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 この南東大西洋条約のほうの十八条を見ますと、「四の批准書受諾書又は承認書が寄託された日の後三十日目の日に効力を生ずる。」と書いてあるわけですけれども、これはすでに発効していると思いますが、その点はいかがですか。署名国はどことどこが署名しているか。この二つの点を説明していただきたいと思います。
  36. 山崎敏夫

    山崎説明員 この条約はまだ発効しておりません。これは昨年の十月にローマで会議が開催されまして、十七カ国が参加したのでございますが、署名いたしましたのは六カ国、具体的に申しますと、キューバ、西ドイツ、イタリア、ポルトガル南ア及び日本でございます。まだどこの国も批准しておりません。
  37. 戸叶里子

    戸叶委員 大体の見通しとして、いつごろ発効いたしますか。日本が今度これを批准するわけですね。そうすると、日本は一番先ですか、批准は。
  38. 山崎敏夫

    山崎説明員 たぶん日本最初になると思いますが、早ければことしじゅうにも発効するのではないかといわれております。
  39. 戸叶里子

    戸叶委員 日本がいい条約には、進んで批准するのはけっこうですけれども、ほかの国の見通しとして、別におくれる見通しというのはないわけですね。——そうすると、年内には大体発効するであろうという見通しは、外務省ではお立てになって、この条約批准されようとしておるわけですか。
  40. 山崎敏夫

    山崎説明員 実際の漁獲の状況からいたしますと、南アが最も多いのでありますが、それらの国は——これは南アとかポルトガルは、もちろん合衆国でございまして、非常に関心を持っておりますし、その条約の成果にも満足しておりますから、われわれとしては、そういう国は当然入るであろう。それからソ連あたりも相当な漁獲をあげておりますから、沿岸国は十分本年度内に批准するのではないかと思っております。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどの御説明では、日本漁獲が一番少ない——一番少ないとおっしゃいましたか。比較的少ないとおっしゃいましたか。——比較的少ないですか……。そうすると、いまの六カ国で、多い順にちょっと述べてくださいませんか。
  42. 藤村弘毅

    藤村政府委員 南アフリカ——これは一九六七年の統計でございますが、南アフリカ、アンゴラ、ソ連、スペインというような順でございます。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 さっき述べられました六カ国署名した中で、日本は、漁獲は何番目ぐらいですか。
  44. 曾禰益

    曽祢委員 議事進行について。こういったような各条約適用区域における日本漁獲実績、そのぐらいのものは、要求しなくたって当然出しておくべきだと思う。この条約地域の略図もきょうになって出しておりますね。これはもう出したのだからいいけれども、そんなことは、水産庁のほうで、当然審議のときに、日本実績はどのくらいだ、第何位だなんというぐらいなことは、ここでいま戸叶委員の御質問に関連して、そこで相談するなんて、これは全くなっていないと思うのですね。水産庁、たるんでおると思う。続けてすぐに戸叶先生のあれに答えるのは当然だけれども、各地域一覧表を早く出しなさい。その審議をやっておるうちに出しなさい。これを要求いたします。
  45. 田中榮一

    田中委員長 曽祢委員の御注意を委員長からも十分注意いたします。
  46. 曾禰益

    曽祢委員 よろしくお願いいたします。
  47. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  48. 田中榮一

    田中委員長 速記を始めてください。
  49. 藤村弘毅

    藤村政府委員 ただいま御指摘を受けましたように、三条約水域漁獲量につきまして、至急資料をつくりまして、御提出したいと思います。  ただいまの御質問の点は、南アフリカポルトガルに続きまして三番目でございまして、一九六七年に十一万八千トンでございます。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 いま曽祢委員からも御発言があったので、私この前の委員会のときにも、条約関係のある最低の資料は出していただきたいとお願いしたのですけれども、相変わらず出していただけないので、曽祢委員からたいへんいいお話があったと思いますが、ぜひ、審議を促進させる意味必要最小限資料を出していただきたいと思います。  そこで、北西大西洋漁業に関する条約のこの附属書がありまして、その中にいろいろ、第一小区域、第二小区域というふうに分けてあるわけです。これは私どもたいへんむずかしくて、日本は一体どこに入るのかなというふうな疑問を抱くわけでございますので、大体日本はどの区域に入るかを教えていただきたいと思います。
  51. 藤村弘毅

    藤村政府委員 大体日本が操業いたしておりますのは三、四、五でございます。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、漁獲量やらそういうこまかい数字の問題を伺おうと思いましたが、それらはあとにすることにいたしまして、お魚は日本の国民にとってたいへん関係の深い食料でもございますし、一番たくさんとれるお魚の種類も大体教えていただきたい。何かイワシがとれるというようなことも聞いているのですが、そうでしょうか。その点を念のために伺いまして、次の条約に入ろうと思います。
  53. 藤村弘毅

    藤村政府委員 南東大西洋につきましてはいま資料を提出いたしますが、一番多いのはイワシでございまして、一九六七年に約百四十万トンでございます。次にメルルーサ、カタクチイワシという順になっております。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 次に全米熱帯まぐろ類のほうの条約の中に入りたいと思いますが、この条約説明書をちょっと読んでいまして私奇異に感じたことが一つあるのです。それはこの説明書最初に「千九百四十八年、コスタ・リカは、距岸二百海里の「保存水域」を設置する旨の宣言を行ない、これにより、その漁船特にまぐろ漁船が広大な操業水域を失なうこととなった米国との間に漁業紛争が生じた。」というふうに、読んでいますと、「広大な操業水域を失なうこととなった米国との間」というのですから、アメリカはもう失ったということを認めたような書き方になっているのですけれども、別に認めていないわけでございましょうね。そういうふうに読めませんか。おや、認めたのかしらというふうに、私、これを読んでいますとそういう感じがしたのですけれども、これはどういうふうに解釈したらいいわけでしょうか。
  55. 山崎敏夫

    山崎説明員 これは別に、アメリカはもちろんこの距岸二百海里の保存水域を認めなかったわけでございます。そういうわけで、それを黙って見過ごせば失うこととなるので、アメリカとしては直ちにコスタリカと話し合いを始めて、こういう形は二国間条約でございますけれども、その後他国にも開放して、多数国間条約をつくって漁業秩序の維持をはかったわけでございます。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうに、認めるはずはないので、そういうふうなことから紛争が起きないようにという、こういう二国間条約ができたことはわかるのですけれども、この日本語ですと、何か認めたことになったように解釈できる。むしろこれは、水域を失うことになるおそれがあるので、というふうな解釈のほうがいいのじゃないかと思いますが、それは間違っているでしょうか。
  57. 山崎敏夫

    山崎説明員 そのとおりでございます。失うおそれがあった米国という意味でございます。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 まだ二、三点あるのですけれども、事務的な問題ですからあと回しにいたします。というのは、外務大臣が席をお立ちになるようでございまして、ほかの議員も外務大臣に質問があるといけませんから、私あとに事務的な質問をさせていただきます。  そこで、ただ一つ領海問題というものを聞いておきたいと思うのですが、ことしの二月にアメリカの国務省が、国際的合意を条件にして領海を十二海里に広げる意向があるというふうにいわれたということが伝えられておりますし、そしてまたカナダの政府も、自国の領海を三海里から十二海里に拡張する計画であるというようなことを海洋諸国にも通告したというように聞いておりますけれども、そういう点は日本外務省でもおわかりになっていらっしゃるわけでございましょうか。外務省というより水産庁のほうかもしれませんが、外務省にも関係のあることですから伺いたいと思います。
  59. 井川克一

    井川政府委員 御指摘のとおり、アメリカは二月二十五日付国務省声明をいたしまして、「適正な領海の幅に関する広汎な意見の不一致は、国際社会が再び領海の幅を定めるための試みを行なうことを急務としている。米国は、十二海里の限度を最も広く受け入れられているものとして支持するが、右は、国際的に広く受諾され、かつ、国際海峡及びその上空における通行の自由を規定する条約が取極られることを条件とするものである。」それから沿岸国漁業資源に触れまして、いずれにいたしましても、「この目的が達成されるまでの間、米国は、三海里を超える領海を認める義務はないとの立場を引き続き堅持する。」こういうふうに立場を明らかにいたしております。したがいまして、簡単に申し上げますならば、国際合意が十二海里できまるということを条件にして、十二海里を受け入れる用意がある、それまでの間は、あるいはそこに合意ができなければ、従来の領海の三海里というものを堅持するという立場でございます。  カナダにつきましては、最近国会に二つの法案を提出いたしました。第一が領海に関するものでありまして、いままでのを変えまして、領海の幅をいままでの漁業水域、専管水域と同じように全部十二海里というふうにいたしました。つまり漁業水域の幅と領海の幅を一致させまして、領海の幅を十二海里まで伸ばすという法案でございます。その中には直線基線の問題もございますし、さらにその上に公海上十二海里をこえたところも一定の漁業管轄権を及ぼすというふうな規定もございます。ただいまカナダの国会で審議中でございます。その上に、北極海における、いわゆるポルーションの問題、これもまた別の法案で出しております。これは漁業とは直接の関係はございません。これは北極海における石油タンカーによるポルーションの問題でございますが、目下国会で審議中でございます。わが国といたしましては、このようなことをとても認めるという立場にはございません。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 いまアメリカが国際合意ということを考えていると、あちこちに対して、そういうことはどうだろうというふうな打診もしてくるんじゃないかと思いますし、それからまた第三次海洋会議がことしでも開かれるなんという話もあるわけでございまして、そういうことから考えますと、日本も三海里説ということがそのままで押し通せるものか、それともこれを変える必要があるか、こういうふうなことが追られてくるんじゃないかと思いますが、政府の方針としては、外務大臣、やはり三海里でそのまま主張していくというふうなお立場でございますか。それとも近い将来に変えなければならないのじゃないかというようなお考えでございましょうか。この点を念のために伺っておきたいと思います。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま条約局長から説明がありましたが、最近の二月のアメリカ国務省の考え方というものが、期せずして日本政府考え方と同じ考え方と申してよろしいのではないかと思います。つまり領海を幾らにするかということについては、国際的に理想からいえば、万国が画一した制度であるということが一番望ましい。少なくとも大多数の国が画一的な制度をつくり、合意をして、これを順守するということがなければ——それぞれの国がばらばらの主張をしておる、現状はまことに遺憾ながらそういう状態であって、考え方が乱れておりますから、そういう意味で、御承知のように一九六〇年の海洋会議のときに日本政府が示した態度というものが、いま申しましたアメリカの最近の考え方と期せずして同じではないかと思っております。すなわち、たとえば十二海里ということで大多数の国が合意するということであればそれでけっこうでございましょうし、あるいはその十二海里のきめ方について、六海里は領海である、六海里は専管水域であるというようなきめ方でもけっこうでございましょうが、要は大多数の国がそれを守ってくれる。なお、一九六〇年のときの会議の経過も御承知のとおりでございますが、一時まとまりかけたのに、さらに会議の途中、あるいは総会になりましてから、その領域外十二海里以外についても沿岸国の特殊の権利を認めよというような意見が出ましたためにまとまらなかった経緯もございますから、そういう点も十分考え合わせまして、要するにいつまでも三海里説というものを固執するものではない、こういう考え方でございます。
  62. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  63. 田中榮一

    田中委員長 速記を始め。
  64. 井川克一

    井川政府委員 私、先ほどアメリカの国務省の見解を読み上げましたときに、一言触れて読み上げませんで、あるいは大臣の御答弁に誤解があるといけませんので、読み上げなかったところを読み上げますと、十二海里にする、そのときに同時に、「米国は、沿岸国の沿岸漁業資源に関する利益を考慮していくであろう。」ということばが入っているわけでございます。この点はいま外務大臣が、一九六〇年の会議のときというふうにおっしゃいましたように、「沿岸国」、この点までアメリカとほとんど同じであるという意味ではないわけでございます。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣がさっき全く期せずして同じようだとおっしゃったのを、その点だけが違うというふうに訂正されたわけですね。
  66. 井川克一

    井川政府委員 いいえ、大臣も最後に一九六〇年の際に、沿岸国の提議があったので日本は賛成できなかったとおっしゃったわけでございまして、その点、私が引用をいたしませんものでございましたので、あるいは行き違いになるといけませんので……。私あえて外務大臣の御答弁を別段訂正したわけではございませんで、その前の引用部分をつけ加えたわけでございます。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 このいわゆるマグロ条約のほうと前の条約との関係を見ますと、委員を前の条約は三人以下、マグロ条約のほうは四人以下というふうになっていたと思うのですけれども、別に人数にこだわったわけじゃなくて、こっちのほうは四人ぐらいがいい、こっちは三人ぐらいがいいということでおきめになったのですか。それならそれでもいいのですけれども、前のほうが三人で、こっちが四人というふうになっておりますので、どうして一人差がついたのか、ちょっと疑問を抱いたわけです。別にどうということがなければそれでいいです。
  68. 山崎敏夫

    山崎説明員 特別の理由はないと思いますが、全米熱帯まぐろ類委員会設置は、最初アメリカとコスタリカとだけでやりまして、お互いに四人ずつぐらい、人数が多くてもいいと考えたのであろうと思います。しかし、その後のできております条約は非常に多数の国も加入しておりますので、あまり多くては会議の運営も困難になるというところから、三名に限定したのであろうと思います。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 前にこの委員会領海及び接続水域に関する条約というのを、四十二年のときだったと思うのですけれども審議をいたしました。そのときの接続水域というのはたしか十二海里だと思うのですけれども領海及び接続水域に関する条約に入っている国が、もしもその十二海里以上の海里を自分のほうで指定している場合には、その領海及び接続水域に関しては条約違反になるおそれがないかどうか、こういう点がちょっと気になる。たとえば、私が知っている範囲で、ドミニカはたしか領海及び接続水域条約に入っていると思います。ドミニカはそれを批准していて、自分の国の領海に接続する十五海里の海上の区域において関税とか衛生管理の措置をとっていると思いますけれども、そういうふうな点から見ますと、条約違反といいますか、領海及び接続水域に関する条約とは相いれないものがあるのじゃないかと考えますが、この点はいかがでしょうか。
  70. 井川克一

    井川政府委員 御存じのとおり、領海及び接続水域条約第二十四条に、接続水域の概念及び基線から十二海里を越えて拡張することはできないと明白に書いてございまして、接続水域と申しますのは、二十四条一項にあります通関、財政、出入国管理、衛生上の規則違反を防止するための特別の水域でございまして、これは漁業水域関係が全くないわけでございます。  ただいま戸叶委員は、ドミニカにおきましてこういう関税上のために十五海里を主張しているとおっしゃいましたが、私ども手元にありまする書類では、ドミニカは領海三海里で、漁業水域十五海里を主張している、そういうふうになっております。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 領海及び接続水域に関する条約というのは、関税とか衛生管理とか、きまっているわけですね。だから漁業から見れば関係ないというふうに理解していいわけですね。
  72. 井川克一

    井川政府委員 戸叶先生仰せのとおりでございます。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 大体私の質問はこれで終わります。
  74. 田中榮一

    田中委員長 樋上新一君。
  75. 樋上新一

    ○樋上委員 南東大西洋生物資源保存に関する条約の件につきましてお伺いいたしたいと思いますが、特に八条に関するところに関連してお伺いいたしますが、この水産物の中で世界的に需要の多い国際商品の一つであるマグロ類などについては、外貨獲得などにつながる貴重な資源として、沿岸の諸国は領海の拡張、漁業専管水域設置などにより、資源保存とあわせて他国船の締め出し政策をとるなど漁業環境はきびしいものがあるのでございますが、枯渇に瀕していると科学的に立証された魚種について、無制限に過当な漁獲操業が行なわれることは排除さるべきであると思うのですが、マグロ類等の魚種については科学的に枯渇していることが立証されているのかどうか。この点についてお伺いいたしたいのです。
  76. 藤村弘毅

    藤村政府委員 マグロ類につきまして科学的に資源が枯渇しているあるいは枯渇しつつあるという立証は、現在のところございません。ただ、しかしながら、これを無制限にとっていいということは考えられませんので、これに対する帆制というものを考えてやっていかなければならぬというふうに考えております。
  77. 樋上新一

    ○樋上委員 最近アメリカでは二千トン級の新鋭マグロ船を十隻も新造して、大西洋、アフリカ沖に出漁して、漁獲量の増大化をはかっております。一方、わが国といたしましては、マグロ類等の漁獲量の制限等によってマグロ類かん詰めの生産に影響が出ていることが通商白書にも指摘しているところでありますけれども、この沿岸国は他国船の締め出し政策をとり、他方で漁獲量の増大化をはかるというようなことは、科学的に漁業資源保存主張する立場からすれば矛盾するのではないだろうか。この点はいかがでございましょう。
  78. 藤村弘毅

    藤村政府委員 アメリカが大型のまき網船をつくりまして東部太平洋でマグロの漁獲をしておりますが、これはただいま御審議いただいております全米熱帯まぐろ類委員会のほうで総漁獲量がきまっておりまして、大型の漁船でとれば早くこの漁期が終わるというだけでございまして、資源全体にかかる圧力は変わらないというふうに考えております。ただもう一点の、沿岸国漁業専管水域等を設けて自国の沿岸漁民だけを保護しているという点につきましては、科学的な根拠があるなしにかかわらず、わが国にとりましては二重の不利益になっておりますが、沿岸国資源保存という点からいいますと、矛盾ということにはならないんじゃないかというふうに考えております。
  79. 樋上新一

    ○樋上委員 条約水域におけるところの総漁獲量は二百六十万トンでしょうか。
  80. 藤村弘毅

    藤村政府委員 全米熱帯まぐろ類委員会につきましては、一九六七年にカツオ・マグロ類が二十二万トンでございます。二百六十万トンと申しますのは南東大西洋漁獲量になっております。
  81. 樋上新一

    ○樋上委員 主要国の漁獲量は六カ国になっておるのですけれども、これはそちらに資料ございますか。
  82. 藤村弘毅

    藤村政府委員 南東大西洋におきまして六カ国でございまして、現在資料をつくりましてこの委員会審議中に提出いたすように準備いたしております。
  83. 樋上新一

    ○樋上委員 こちらで調べました資料があるんです。南アが九十万トン、南川アフリカが七十四万トン、アンゴラで二十九万トン、ソ連で二十五万トン、スペインが二十三万トン、日本は十五万トン、こうなっているのです。  先ほどお話が出ました主要無種別の漁獲量が、イワシ類が百四十万トン、メルルーサが四十二万トン、アジが二十六万トン、サバが十七万トン、こういうぐあいになっておると思いますけれども、間違いないですか。
  84. 藤村弘毅

    藤村政府委員 ほぼそのような数字でございますが、一九六七年の日本漁獲はほぼ十二万トンでございます。十五万トンでなく十二万トンであります。
  85. 樋上新一

    ○樋上委員 わが国のマグロの漁獲量はそちらにありますか。
  86. 藤村弘毅

    藤村政府委員 約四十万トンでございます。
  87. 樋上新一

    ○樋上委員 それは何年ですか。
  88. 藤村弘毅

    藤村政府委員 この二、三年はほぼ四十万トンの横ばい程度でございます。
  89. 樋上新一

    ○樋上委員 これは四十万トンといいますと、メルルーサ、タイ、アジ類、マグロ、軟体動物、こういう順序になっておるのですね。
  90. 藤村弘毅

    藤村政府委員 いま先生の御指摘のものは南東大西洋の場合でございますが、私申し上げましたのは、日本全体のマグロの漁獲を申し上げたので、ちょっと質問を間違えまして恐縮でございます。  南東大西洋のほうでは、マグロ類をほとんど漁獲いたしておりません。
  91. 樋上新一

    ○樋上委員 私がいま南東大西洋質問をしておりますのは、マグロが枯渇しておるという点について今度の条約関係があるから話をしておるのでありますが、それではやめましょう。  漁業の規制は、関係諸国の自由意思による同意を基礎とするのでなく、科学的根拠に拘束力ある客観的な基準を根拠とすることが国際的要請であることは、南東大西洋生物資源保存条約の第八条で規定することになっておりますね。科学的調査の結果に基づいて総漁獲量の規制勧告を行なわなければならないことになっていることからでも、これは明らかなことです。したがって、第三国としては沿岸国の特別な利害関係に基づくいわゆる公海漁業保存規制措置を一応尊重するにしても、公海自由の原則からいって操業そのものまでを排除するということについては納得しないものがあると思うのですが、政府はどのように考えておられるのか、この点をお伺いしたい。
  92. 藤村弘毅

    藤村政府委員 資源保存のための規制をいたしますために、科学的根拠に基づかなければならないということは、論をまたないところでございますが、この条約のように多数国間の条約でございますと、関係国の間に見解の相違が生ずる可能性もございます。そういう場合いろいろ論議が出ると思いますが、特にこういう多数国間でございますと、一つの特定国の恣意的な主張が排除されるという点が特に利点になるのではないか、そういうことによりまして多数国間の客観的で妥当な結論に到達することが可能ではないかというふうに考えております。
  93. 樋上新一

    ○樋上委員 この条約につきまして、いわゆる専管水域ですね。この点について先ほど大臣おっしゃっておりましたが、三海里説、それともう日本も十二海里説というところになってこなければならぬのじゃないか、そういう時代に入ったのじゃないか、こう思うのでございますが、以前にも予算委員会でわが同僚の中野議員が御質問申し上げましたが、いよいよ十二海里説をやっていく時代ではなかろうかと思うのですが、この点どうでしょうか。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたとおりで、これはできるだけ多数の国が画一的なきめ方をして、かつそれを誠実に順守するということがどうしても必要でございますから、ちょうど最近アメリカの国務省の見解というものが明らかにされておりますが、あれは大体わが方が年来考えておりましたことと、くしくも一致した考え方でございます。したがって、たとえば近く国際法会議というようなものがありますような場合には、日本としては三海里説に固執しないで、むしろ大多数の国が早く十二海里なら十二海里で合意をして、そして全部がその領海を守る、こういうかっこうになるように日本もひとつ積極的に意思表示をし、かつ各国を合意に導くような努力をすべきである、かように現在考えておる次第でございます。
  95. 樋上新一

    ○樋上委員 本年末におけるところの国際海洋会議にはぜひとも日本としては賛成し、そしてこの十二海里説をやっていただきたい、私は重ねて大臣に要望する次第でございます。  調べてみますと三十一カ国も十二海里説である、三海里説では二十二カ国ですか、こういうぐあいにずっと調査してまいりますと、どうしても十二海里説のほうに踏み切らなければならない時代に来たのではないかと思う次第でございます。重ねて要求しておきます。
  96. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのように考えておる次第でございまして、これも先ほど触れましたように、一九六〇年の会議のときにもわが方の態度はそうであったわけでございますけれども、せっかく十二海里というのでまとまりかけたのに、さらに十二海里以遠の水域においても沿岸国は特殊の権利を持つべきであるという主張が急に強くなって、その点で日本は棄権せざるを得なかった、こういう経緯もございますから、なるべく大多数の国が十二海里説をとるならば、それ以上に留保をつけないで、その限りにおいて無条件で全体が賛成をし、かつそれを順守するという方向になるようにしなければならない。ちょうど国務省が申しておりますように、それができなければ、やはり大多数の、国際法規として三海里説が守られている以上は、それにとらわれざるを得ないわけでございますから、そういうことでないように、大多数の国が十二海里説をとるようにしむけていくように前向きに努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  97. 樋上新一

    ○樋上委員 重ねて大臣にお伺いいたしますが、昭和四十二年五月に、わが国は交換公文の形で、日本の伝統的漁場以外におけるアメリカの漁業専管水域で、日本漁船が漁業に従事しないことを確保するための必要な処置をとることを内容としたアメリカの地先沖合における漁業についての取りきめを結んでおります。これはその後昭和四十三年の十二月に修正延長しておるのですが、その有効期限が本年の十二月末日となっておるのです。この取りきめの再審議が予想されるわけですが、政府は将来ともこの日本実績漁業の継続を確保するとともに、現在の漁業規制を緩和せしめる方針で交渉を進めるのでしょうか、この点についてお伺いしたいのです。
  98. 藤村弘毅

    藤村政府委員 この協定の規定によりますと、有効期限が切れるまでに日米双方の政府の代表が会合いたしまして、将来の取りきめについて決定することになっております。本年末に予定されています政府間交渉におきましては、当然のことでございますが、従来の操業の実績の確保ということに努力する所存でございます。しかし最近におきます沿岸国主張等あるいは米国の沿岸漁業者の操業状況から判断いたしまして、現在の協定よりも特に有利にこれを結ぶということはなかなか困難ではなかろうかという見通しを持っております。
  99. 樋上新一

    ○樋上委員 この有効期限が本年の十二月末になって切れる、この再審議が行なわれるときに、どうしていままでよりももっと緩和する交渉ができないのか、もっと具体的にどういうところに——私は日本の方針がもっともっと緩和していくような方針でなければならないと思うのです。これは日本の伝統的漁場ですね、それに対して何もかもアメリカのほうに圧迫されておるということで、それがただ単に再審議して延長されるのでなしに、より有利にいくべき政府——大臣に先ほどから伺っておるのですが、この点について日本政府は緩和をせしめる方針で交渉を進めるべきだと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  100. 藤村弘毅

    藤村政府委員 最初からこの協定は、わが国といたしましては、伝統的な漁場において、伝統的な操業を確保するという方針で、最初の協定のときに、従来やっておりました実績をほぼ確保いたしておりますので、新しくこれからやっていくというものはなかなか困難ではなかろうかという考えでございまして、伝統的にやっておりました実績はほぼ確保しておるものと考えております。
  101. 樋上新一

    ○樋上委員 その交渉の時期はいつごろを予定されているのですか。
  102. 藤村弘毅

    藤村政府委員 本年の十一月を予定いたしております。
  103. 樋上新一

    ○樋上委員 さらに日本とニュージーランドとの漁業協定によれば、わが国はニュージーランド領海の基線から六海里と十二海里との間の水域において、指定された漁場と一定の漁船規模で、底はえなわ漁業に従事することが認められているんです。しかしこの協定は本年十二月末に効力を失うことになっているため、それ以後日本漁船はその水域から排除されることになっているのですが、政府はこれに対してどのように対処しようとされておりますか。
  104. 藤村弘毅

    藤村政府委員 日本とニュージーランドの協定につきましては、この協定が始まりましたときに、これが伝統的な漁場であるかないかというところが非常に問題になりましたが、わが国といたしましては、その時点で操業いたしておりました底はえなわにつきまして、実績を確保いたすことに努力いたしまして、そのかわり五年後にはこれがなくなるということを前提にいたしまして、それまでの実績を確保するというように協定の趣旨をいたしましたので、本年十二月末で切れましたときに、さらに引き続きこの実績を確保するということは困難であるというふうに考えております。
  105. 樋上新一

    ○樋上委員 一九六〇年における世界の総漁獲量は四千万トン。百万トンをこえる漁業国はわずかに六カ国にすぎなかったのですが、四十三年における世界の総漁獲量は六千四百万トンも増加し、年間百万トンをこえる漁業国は十五カ国にも達しました。六〇年当事の二・五倍になっているのですが、特にアジア、アフリカ等の新興諸国の漁獲量の増大化が著しく、しかも国際商品として需要が見込めるマグロ類等のいわゆる高級魚の漁獲に集中する傾向が強いのです。それに伴い、沿岸諸国は海洋資源確保ということで、漁業専管水域の設定、あるいは総漁獲量規制措置等によって、公海漁業に対する環境はきびしさの一途をたどっておるのですが、わが国はこれに対処するため、新漁場の開発あるいは現在未利用未開発の深海魚類の利用等を考える必要があるのではないかと思うのですが、この点いかがでございましょう。
  106. 藤村弘毅

    藤村政府委員 ただいま御指摘のとおり、私どもも新漁場あるいは未利用資源の開発ということは非常に重要なことと考えております。水産庁といたしましては、四十三年から新漁場開発の補助金あるいは用船の形式で、新しくいままで利用しておりませんでした漁場につきまして、マグロトロールあるいはまき網の新漁場の調査をいたしております。また、未利用資源につきましても、未利用たん白を利用するということで研究を進めております。  さらに、沿岸の漁場の潜在生産力の再開発といいますか、沿岸漁場を改造いたしまして、資源の培養ということを考えまして、培養型漁業というものを現在進めているところでございます。
  107. 樋上新一

    ○樋上委員 いま私が申し上げました新漁場開発可能な海域として、政府はどこを考えていらっしゃるのか。
  108. 藤村弘毅

    藤村政府委員 現在考えておりますのは、マグロ類につきましては、高緯度漁場、すなわち北緯、南緯、四十度、五十度の漁場が可能ではないか、南北の高緯度漁場がまだ十分に開発されていないというふうに考えております。それから、トロールにつきましても、大西洋の、現在一部条約区域になっておりますところにつきましても、現在開発されています魚類のほかの、イカあるいはシズ等、利用されていない魚種の開発、あるいは豪州付近のトロール漁業というものを考えております。まき網につきましては、インド洋あるいは太平洋の中央部分につきまして可能性があるのではないか、あるいは太平洋の赤道付近におきましても、カツオ漁業等につきまして、まき網の漁場が開発されるのではないか。特に最近サンマが不漁を続けておりますので、サンマにつきましては本年から太平洋の中部、東部につきまして、開発、調査をいたしたいというふうに考えております。
  109. 樋上新一

    ○樋上委員 こういう枯渇した魚類の問題につきまして、参考として将来発展させるべき新漁場について、最後に一言私は調査の結果を申し上げたいと思うのですが、南氷洋でとれるものに、魚の一種でアミというものがあるのです。これは四、五センチのエビのような魚である。これが非常によくとれる。これを確保すればよいと思うのです。また、さらに南米のペルーにアンチョベッタという魚がいる。これは俗にカタクチイワシといっておって、ダシジャコ類に相当するものである、こういうぐあいにいわれております。さらにチリ沖合いとニュージーランド沖合いで底びき漁業ができる。これは今後わが国が開拓していくところの漁場ではないか、こういうぐあいに思うのですが、こういったところを検討されて、将来新漁場開拓の点に力を入れていただきたいと、要望いたしておく次第でございます。  最後に大臣、もう一言。くどいようでございますけれども、もし日本領海漁業専管水域を含め、十二海里の海洋政策に踏み切るとなると、従来の主張では相手国を納得せしめ得なくなると思うのですが、この点はどうでしょうか。
  110. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御質問趣旨を必ずしも明確に理解できたかどうか私わかりませんけれども、率直に申しますと、従来から日本としても、水産国の尤なるものでありますだけに、いろいろな関係国との間に従来バイラテラルな協定を結んでおります関係上、それらの、当時に主張しておりました姿勢とは必ずしも同じ根拠や理屈に立ってないこともあろうかもしれませんけれども、しかしそれは先ほども申しましたように、最近、全世界を通じて領海何海里説というものをめぐりましていろいろな主張があって、秩序が乱れておる。この現状を整理をして、新しい、前向きに全世界が協力するという態勢がとられるならば、これは新しい時代に対する新しい態度の表明であり、またそういう考え方でございますから、私は前向きに、先ほど申しましたような態度をとりますことは一向差しつかえないことではないか、かように考えております。
  111. 樋上新一

    ○樋上委員 以上で終わります。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどちょっと残しましたが、確かめておきたいことが一つあるので、曽祢委員のお許しを得て質問をしたいと思います。  全米熱帯まぐろのほうの条約で、一条の三項の中ごろからあとで、「各締約国が支払う共同経費の割合は、この条約対象となっている漁業の総漁獲量のうち当該締約国が利用した漁獲の数量が占める割合に応じたものとする。」こういうふうにあるのですけれども、これはどういうふうな意味のことをいったのですか。ちょっとはっきりつかめないのですけれども、この点をはっきりさせていただきたい。
  113. 藤村弘毅

    藤村政府委員 現在はキハダとカツオ漁獲量のうちで、それぞれの締約国が利用した割合ということになっておりまして、利用したと申しますのは、たとえば日本がマグロを、キハダをとりまして、これを冷凍してアメリカに輸出いたしますと、それを利用したのは、アメリカが利用したというふうに考えております。ただ、かん詰めにした場合には、かん詰めがつくられた国が利用したというふうに考えて、その割合で分担することになっております。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、もし日本が行ってとってかん詰めにしたときには、それは日本漁獲とするわけですね。そうじゃなくて、かん詰めにしないでよそへ売ってしまえば日本漁獲とみなさない、こういうふうに解釈するわけですか。
  115. 藤村弘毅

    藤村政府委員 日本漁獲とみなさないのではなくて、日本が利用したとみなさない。ただ、日本が食べてしまえばもちろん日本漁獲でございますけれども、かん詰め以外、冷凍にいたしまして輸出した場合には、日本が利用したというのではなくて、輸入国が利用したというふうに計算されております。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、総計から見ると、加工してしまったほうが損しますね。そういう結果にならないですか。冷凍で向こうへやってしまったほうが、日本にとっては何か有利に見えますけれども、そうじゃないでしょうか。
  117. 藤村弘毅

    藤村政府委員 分担金の部面につきましては、お説のとおりでございます。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 たいへん何かけちくさいみたいですけれども、結局そういうふうな形をとったほうが純粋な商売上からいったら、日本にとっては有利になるわけですね。かん詰めなんかに加工しないで向こうへまっすぐ冷凍にしてやってしまって、それで向こうが——そうすると分担金が、日本のほうが加工しない場合には、日本のほうがずっと安くなるということになるわけですか。
  119. 藤村弘毅

    藤村政府委員 分担金の面につきましては、先生御指摘のとおりでございますけれども、輸入国のほうで、それぞれの関税等によりまして、必ずしも全体としてそれのほうが有利というわけにはまいらないのではないかというふうに考えております。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 全体としては有利にならないかもしれませんけれども、問題はその利用のしかたですね。そういうことですね。わかりました。  それからたいへんに申しわけないのですが、全米マグロのほうで一つ残したのですが、五条の発効の条件ですね。この発効の条件というのはだいぶほかの条約と変わっているように思うのです。何か自分のほうから加入効力を発する日を明記した加入書を出さなければならないことになっていますね。自分のほうから効力を発生する日はこうこうであるという加入書をださなければならないというのが発効の条件のようでございますけれども、ほかの条約とこの発効の条件が違うように思うのですが、この点はどう解釈したらいいのでしょうか。
  121. 山崎敏夫

    山崎説明員 仰せのとおり、これはちょっと普通のとは変わっております。これに書いてありますように、加入につきすべての締約国の同意を得なければなりませんので、この点に関しましては、すでにわが国締約国五カ国に対しましてすべて照会して同意を得ております。その同意を得ました上で、ここで御審議を願いまして、加入につき御承認を得ました上で、その日を明記して加入書をアメリカに出すという順序になります。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことを聞いているのじゃないのですよ。この条約は、自分のほうからその加入効力を発生する日を明記した加入書を出さなければならないのでしょう。そういうことは、自分のほうがいついつ効力が出る、こういうふうに明記しなければならないことになっているんじゃないんですか。
  123. 山崎敏夫

    山崎説明員 加入の日をはっきりいたします意味は、それに伴って国内措置をいろいろとる必要もありますので、その日をはっきりさせておくことが便利であるという意味でこういうふうになっておるわけでございます。これは非常に異例な規定でございます。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 私曽祢さんの時間をいただいていますからやめますけれども、私が伺っていたのは、これを読んだとおりなんですね、いま説明されたように。加入効力を生ずる日を明記した加入書を寄託するわけですから、こういう条約というのはあまりないでしょう。なぜほかの条約と違ってこういうふうな手続をされたか。何か特に意味があるのでしょうか、その点が伺いたかったわけです。
  125. 山崎敏夫

    山崎説明員 先生仰せのとおり、ちょっとあまりほかに例のない規定でございますが、先ほども申し上げましたように、たとえば取り締まりをやります場合に、四月一日からやるとかそういうことを国内法でもそういうふうにきめまして、それとあわせて加入効力が生ずる日をこちらも書いて出すという意味で、そのほうが日本側がいつからやるかということもわかって非常に便利であるという意味だろうと思いますが、何ぶんにもこれは二十年前に向こうのほうでつくりましたので、  こういうかっこうになっておるわけでございます。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの説明じゃ何か割り切れませんけれども、もう少しあとで考えてみます。
  127. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  128. 曾禰益

    曽祢委員 わが国漁業が非常に能率がいいという関係で必ずしも沿岸諸国等から歓迎されないところがありますが、合理的な基礎において資源保存等のために協力する、既存の国際条約なりあるいは新たにFAO、国連食糧農業機関等のあっせんによる条約に加盟することも私は一がい  に反対というわけじゃむろんないわけです。ただ、あまり安易に規制条約に入ることはいかがかという感じもしないでもない。たとえば今度の三つ地域につきましても、それぞれ歴史的条件もわが国漁業の現在における発展の状況も、これからのことは私どもしろうとうではなかなかわかりませんが、ずいぶん違うのじゃないか。いろいろ条約提案理由説明になると、型のごとく結局は「わが国といたしましても、今般この条約加入することによりまして、漁業における国際協調に貢献することのみならず、将来におけるわが国漁業の安定した発展をはかることができると考える」全部これで結ばれているわけなんで、まさにそうかもしれないが、たとえば南東大西洋の場合には、たしか近年わが国がぐんぐん押していったところだし、沿岸国がいわば新興国とでもいうべきところだし、またトロール漁業の急速な発展によって確かに同漁業生物資源に及ぼす影響が懸念されるということは事実だろうというような関係から、わが国も積極的に入る意味があるように思うけれども、たとえばあと二つ北西大西洋の漁場のごときは、これは何といっても北ヨーロッパ諸国あるいはアメリカ、カナダ等の北大西洋沿岸諸国とでも申しますか、伝統的な漁業国の漁場であって、はたして日本がそこに今後どれだけの見通しがあるのかないのか。ここに言っておられるように、従来は小規模であった、だから加盟しておらなかった、今後は相当数の漁船の出漁が予想される云々、それで結局国際協調で入るのだ。それから全米熱帯まぐろ類のあれにつきましても、まだ実際上は非常に限られた出漁の程度であったわけですね。したがって従来この条約に加盟しておらなかったのですけれども、「今後は、この水域でのわが国漁船による規制対象魚種の本格的漁獲活動が予想されます」私が漁船労協や全日本海員組合等から聞いたところによると、アメリカのマグロ漁業には日本式の漁業じゃかなわないんだということも聞いております。一がいに私はいけないと言うのじゃないが、あまりに通り一ぺんで、国際協調だから何でも既存の条約に入るんだ。具体的な必要と今後の発展に対する見通し上あるいはこれに入らなければ日本が非常に規制されるからやむを得ず——これは日本の各方面においてそういうことがありますね。北太平洋においても日米加漁業三国条約もあるし、ソ連との間のやっかいな、魚種を限ってのいろいろの漁業協定、これはせざるを得ない。またその他の地域においても、先ほど例が出たニュージーランドやメキシコ、方々にそういう例がある。今度の条約について何だか緊切性が足りないような——その中で南東大西洋の西アフリカの南と西沿岸のところだけは確かに必要だな、また入ったほうが利益だというふうに考えますが、これはどうなんですか。具体的には農林省だと思いますけれども、外務大臣、必要がないと言ってはあれですけれども、入ったらほんとうに得なんだというのがあるのでしょうか、ちょっとその点を御説明願いたい。
  129. 愛知揆一

    愛知国務大臣 専門的な立場からの意見は水産庁側から述べていただくことにしまして、この種の条約に加盟することのメリットとデメリットということで、私たいへんごもっともな御意見だと思います。私ども考え方としては、たとえば北西大西洋とか熱帯まぐろの問題などにつきましては、一言にしていえば、いまも御引用になりましたように、従来は活動が活発でなかった。これからやっていくについてはいろいろの規制措置などについても進んで条約に加盟して国益を守っていくほうがメリットとしていいのではないか。それから、もうすっかり固められていて入ろうと思ったってたいした漁獲もできないじゃないかという御意見も一応ごもっともと思いますけれども、その辺のところは専門的な立場に立ってみないとわかりませんが、たとえば魚の種類などについて、いままで彼らが関心を持ってやっていた魚の種類以外に、たとえばイカというようなものが一つあげられるかと思いますが、日本としては大いにとりたいものが残されているはずではないだろうか。そういうところへ積極的に進出したいという点を考えると、デメリットよりもメリットのほうが大きい、こういう角度に立ちまして、外務省としてもこの加盟に踏み切った次第でございます。
  130. 藤村弘毅

    藤村政府委員 ただいまの大臣の御答弁のとおりでございますが、北西大西洋につきまして申し上げますと、現在欧州、アメリカ、カナダがとっておりますのはタラ類がおもでございますが、日本が、だんだん漁場が狭くなりまして、行かなければならない漁場としましてこういう漁場を考えておりますのは、タラ類よりむしろヤリイカとかシズ、日本でいいますエボダイの類で高級魚でございますが、こういうものをまだ利用いたしておりませんので、昭和三十七年以降試験操業をいたして相当な漁場が見つかっておりますので、こういうところに積極的に行きたいと考えております。  熱帯まぐろ条約につきましては、現在もわが国といたしましては、条約には加盟いたしておりませんが、規制措置につきましては、加盟していると同じように規制を守っております。この規制につきましても、将来どういう規制が行なわれるかということは予測がつきませんが、日本は昭和四十三年からまき網漁業に出漁いたしております。このまき網漁業につきましても、アメリカのようにアフリカと熱帯マグロの漁場とを表裏の関係で操業しなければならないようになるのが必然だろうと考えております。その場合につきましても、進んでわが国資源問題についてわが国見解を述べると同時に、規制につきましても、わが国の不利にならないような、資源保存に十分役立つような規制に対する発言を確保しておく必要があるというふうに考えて、これに早期に加入いたしたいというふうに考えております。
  131. 曾禰益

    曽祢委員 いま外務大臣が言われたように、結局プラスマイナス、メリットデメリットの計算から見て、必要だ、得だということで加入されると思うのですが、たとえば南東大西洋条約について、説明書の中で「わが国主張を取り入れた条約を作成することができた。」とある。これは条約審議の過程において、どの点でわが国の意見を反映せしめたのか、これを御説明願いたい。
  132. 山崎敏夫

    山崎説明員 非常にこまかい点を含めて、わがほうでは積極的にこの点はいろいろ発言いたしたわけでございますが、特に第八条にございますように勧告をやるにあたりましても、科学的調査の結果に基づいて、この条約の目的に関連する勧告を行なうことができるというふうに書いてございますが、やはりこういう規制はすべて科学的調査の結果に基づくべきであるということをわがほうは非常に強く主張し、ほかのいろいろなファクターを入れて、ことに沿岸国あたりがあまり強い発言をされないように、科学的調査を中心にやっていくということを強く主張したということが言えると思います。  それから小委員会制度を設けて、あまり関係のない国がいろいろとくちばしを入れないように、関係の深い国だけが集まって、まず小委員会でいろいろと規制措置について論じていくということでございます。  さらに第八条の三項でございますが、2(g)つまり総漁獲量の規制をやります場合には、関係締約国が集まって総漁獲量の配分をやる、国別割り当てに類する取りきめができてくる可能性があるわけでございます。その際すべての関係国、すべての関係国には締約国でないのも含んでおるわけでございまして、そういうのも入れて従来の実績その他も勘案して公平な割り当てができるようにしていくというふうな、非常に実際的な提案もいたしておるわけでございます。
  133. 曾禰益

    曽祢委員 そういう点が苦心の結果入ったということだったと思うのですが、科学的調査によらざる規制なんということはどだいナンセンスで、その点が入ったのは全くあたりまえのことだと思うのです。その他いろいろな仕組みにおいて、ほんとうに将来国別割り当てみたいな勧告が出たときに——この南東大西洋条約だけでもいいのですけれども、そういう場合に、勧告の効果といいますか、勧告についても関係国何カ国かが賛成しなければ勧告の効力が発生しないというような規定もあるようです。その点どういうふうに日本の利益を守るために勧告の強制力等についてどういうふうに考えておられますか。いきなり脱退というわけにもいかぬでしょう。その辺のことはどう考えておりますか。
  134. 角道謙一

    角道説明員 国別割り当ての規定は、加盟国、特にフランス、スペインその他の一部の国につきましてはこの水域の、特に底魚でありますけれども、こういうものの魚獲が最近非常にふえてきております。ことに沿岸国からもこういう国別割り当てをやったらどうかという意見が強かったわけであります。ただ問題は、この条約の採択に際しまして、非常な大出漁国でありますソ連もこれに参加しておりません。委員会そのものが、こういう資源保存条約につきましてはやはり出漁している国全部が参加をする、そこでそういう取りきめをすることが望ましいわけです。ソ連が出ていないことは一つの例でございますけれども、非加盟国がどうしても残ってまいります。そこで、この委員会自体はやはり国別の割り当てはできない。そこで、総漁獲量をきめておきまして、非加盟国を含めた全体が協議をする、そういうものを前提にして、初めてその委員会が加盟国に対してさらに取りきめをする仕組みになっております。むしろ私どもがこの条約採択でいろいろ主張しましたのは、こういう委員会で国別割り当てをするということは、委員会の組織、特に非加盟国との関係で非常に問題があるという点で、一部の反対国に対しまして、こういう国別割り当ては委員会組織上非常に困難であるという主張を非常に強くしまして、こういう形の国別割り当て方式というような意味で、わが国はこの割り当て方式に対しては非常に強く主張した経緯がございます。
  135. 曾禰益

    曽祢委員 この点は了承したいと思います。  そこでもう一つ、今度の地域的な関係条約ですね。これは魚種に関連もありますけれども、それと大西洋マグロ条約、これは全大西洋ということかと思うのですけれども、マグロ関係に限った条約だったと思うのですけれども、こういうものが重なり合っていることはないでしょうか。この条約の体系及び漁業のほうから、その点は一体どういうふうに考えたらいいか、これをひとつ御説明願いたい。
  136. 角道謙一

    角道説明員 この問題は確かに先生御指摘の問題がございまして、このほかに鯨の問題がございます。大西洋一、グロ条約あるいは国際捕鯨条約はこの水域と完全にダブるということで、この条約国の適用関係を非常に問題にしたわけであります。そこで当初の原案では鯨あるいはマグロにつきましても、この条約国の適用関係があまり明確でなかった、そこで私どもとしましては、別個にマグロのような回遊魚、あるいは鯨のように非常に広い水域を回遊するものでは、こういう特定の水域だけの保存措置は必ずしも有効でない、したがって、むしろこういう回遊魚につきましては、そういう種類別に保存措置等がとられている限りは、それによるべきではないかという主張をいたしまして、委員会としてはそういう捕鯨委員会あるいは大西洋まぐろ類保存国際委員会というようなものがある限りは、そこと協定をして、その協定によりまして、マグロあるいは鯨につきましては、そちらの委員会でまず保存措置を優先させる、その間はこれをはずす。同時に分担金につきましては、この委員会ではそれを取り扱わないということから、マグロ及び鯨は分担金の算定基礎からはずすというような調整をしたわけでございます。
  137. 曾禰益

    曽祢委員 それはわかりましたが、それはどこに出ているのですか、条約上、書類上。
  138. 角道謙一

    角道説明員 三条と十一条です。
  139. 曾禰益

    曽祢委員 それは南東関係だけですね、具体的に……。
  140. 角道謙一

    角道説明員 三条を読みますと、「この条約は、条約区域におけるすべての魚類その他の生物資源について適用する。ただし、委員会が第十一条1の規定に従って締結する取決め又は協定により除外される生物資源については、この限りでない。」ということを書いてあります。そこで十一条で、「関連する目的を有する他の国際機関、」これとの取りきめによって、「それらの機関の業務に関して、有効な協力及び協調を確保し、また重複を避ける。」この中に、いま申し上げました大西洋マグロ条約、それから国際捕鯨条約が入るわけでございます。
  141. 曾禰益

    曽祢委員 わかりました。そうすると、その関係は、南東大西洋については明らかになりました。  それからもう一つ、これは一般的な問題ですけれども、実はこういう漁業に関する国際条約をつくっていく、これはむろん政府間の正式の条約ですね。ところがいろいろな関係で、たとえばぼくの知っているだけでも、モーリタニアと日本トロール協会との間の民間協定という形で漁業に関する取りきめがある、さらにまたインドネシアと全漁連との間の民間協定という形で漁業に関する協定がある。これらはいずれもあとで触れたいと思う漁業専管水域とか、あるいは例の領海等に関する基線の引き方の問題とか——そういったようないろいろの国、特に新興国との関係領海漁業専管水域との関係がなかなかややっこしいので、やむを得ずそういう民間協定をやっているの、だと思うのですけれども、その点は外務省から、そういったような民間協定というものをどういうふうに位置づけるのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  142. 井川克一

    井川政府委員 私もモーリタニアの件、インドネシアの件を聞いておりますけれども、たいへんむずかしい御質問でございまして、どうお答えしていいのか、ちょっとわからないわけでございますけれども、まず第一に、政府としてはこれはほんとうにタッチしておりません。民間と、向こうのほうは、モーリタニアの場合には、私が知って、おる限り、向こうの水産庁的なものとの取りきめでございます。したがいまして、仰せのとおりに、モーリタニアの場合は、漁業専管水域は十二海里なんでございますけれども、そのほかに特に問題になりますのは、大きな直線基線なんであります。私どもといたしましては、あるいは世界的に見ても、この大きな直線基線というものが国際法上認められるべきものではないということは、世界各国の考えるところだと思っております。したがいまして、政府間で接触いたしますということも、きわめて困難な問題が非常に多いというわけでございまして、外務省といたしましては、決して民間取りきめを奨励いたすというふうなこともないわけでございますけれども、また一方、民間がそういうふうな取りきめをするということについて承認をするというふうなこともないわけでございます。ただ何と申しますか、外務省といたしましてはこれに関知しない、したがって、わが国国際法上の立場というものとは全く関係がないということで、モーリタニアとの取りきめが民間で結ばれたようでございます。非常に長く、数回にわたる交渉を経まして、最近発効したという山でございます。  お答えになりませんけれども、申しわけございません。
  143. 曾禰益

    曽祢委員 それなら水産庁……。
  144. 角道謙一

    角道説明員 水産庁といたしましても、この問題、非常に苦慮しておりまして、当初からインドネシア、モーリタニアとの関係についても、いろいろ政府間の話を進めるような努力はしておるわけでございます。ただ先ほど条約局長からも御指摘がございましたインドネシアの場合には、保存水域または群島理論といいますか、非常に広い水域につきまして、これを領水としておる、またモーリタニアにつきましても、国際法上認められないような九十何マイルも広い直線基線をとっておる、この問題を根っこにしまして、政府間で話をやっておりますと、非常に長期の間にらみ合いになって話が進まない。依然として私ども政府間でやりたい希望を持っておりまして、そういうアプローチも再三したわけでございますけれども、やはり根っこに国際法上認められない非常に不当な問題があるということがありますと、なかなか現実的な解決がつきません。しかも業者、業界のほうも従来からその区域には出ております。またその水域の確保というのは、その近辺の水域を含めて、やはり双方の国民的な権益ということから、何とか現実的な解決をしたいという話があったようでございます。たまたまインドネシアの場合には、たとえば合弁等によりますれば、将来その水域は広げてもいいという、民間漁業に対しても非常に寛大な立場もとっております。そういうこともありまして、国の立場に傷をつけないということであるなら、やはりこういう民間交渉方式も現実的な解決をはかる——基本的な立場は別にいたしまして、これはできるかどうか、暫定的なものだということで、少しでも現実的な解決をはかる、しかもその国の領海あるいはその他の立場についても何ら侵すこともないということであれば、これもやむを得ないという判断で、私どもはいまの領海の交渉に当たっておるという経緯になっております。
  145. 曾禰益

    曽祢委員 私は何もこの事態で、外務省なり農林省を非難しているのではない。ただ、外務省は、たてまえ上認められないけれども、民間のほうは、これはやっていかなきゃ死んでしまうのですから、したがってやむを得ず民間協定という形で、しかし政府の、領海なりあるいは専管区域に対する考えなり、あるいは専管区域として認めてやってもいいけれども、せめて日本側の従来の実績を認めろという主張に対する反対の実例をつくりたくないというその犠牲から、政府間協定でなくて、民間協定でやらなくてはならないという事態が起こっていると思いますね。そのほか中国北京政府との民間協定は、これはむしろもっと別の政治的な理由から民間協定をやらなければならない。  そこで、先ほど来同僚の樋上委員の提起された問題に私は触れてみたいのです。外務大臣のお話を聞いていますると、感じとしては三海里説は、これは原則であるけれども、事漁業に関連して十二海里領海で話がついていくのなら、それで大体前向きでやってもいいというふうに、いわゆる前向きなお答えだったと思うのです。私はそれを一がいに否定しません。現に全日本海員組合その他のいわゆる同盟の労働組合諸君も、これからの日本の行き方としては、むしろ世界的に領海をもうシックス・アンド・シックスでもいいから、とにかくいまの三海里にこだわらないで、国際条約によって場合によっては十二海里までやってもいいじゃないか、むしろそれが望ましい、それでこそ漁業の安定操業等ができるんだし、日本の国益を必ずしも損じないのではないか、こういう主張があることも知っています。ただ、その場合に、申し上げるまでもないことであるけれども、やはり日本漁業はむしろ押しぎみなんであって、確かに新興国なり中南米の国から見れば何とかしてシャットアウトしたい。そういう場合に、確かにこの十二海里説が圧倒的に多数にならないうちに、三海里説の国が少ないから、十二海里説の国が多いからというような理由で、うかつに日本が乗っていくことは、私は決してプラスじゃないと思う。のみならず、言うまでもないことであるけれども、かりに十二海里をお互いに認め合っても、各国のいわゆる専管漁業水域と認められる地域に従来実績のある場合には、この実績を尊重しなければならない。このぐらいのことは日本として当然にこれを要求し、かつ貫徹する、そういったような条件つきでこそはじめて、十二海里で多数がそういうふうになった場合には、三海里説からそこに延びてもいいという、そういうやっぱりきっちりした条件がなければいかぬと思うのですね。そうでなくてやっていけば、やはり政府は三海里説だと言っておるのだけれども、民間協定で実際十二海里以上認めるというようなことでは、そういうような例をだんだんつくることになるので決してよくないと思う。この意味で、外務大臣の御見解をもう一ぺん承りたいわけです。
  146. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その辺のところは心得ておるつもりでございます。要するに、国際的に大多数の国が十二海里説というようなことになり、そしてそれがまとまるということであればけっこうなことである。たまたまアメリカ国務省が明らかにした見解もそういう趣旨が十分くみ取れ、私ども考え方とそういう点では一致しておる。それができなければ三海里ということが現に国際的に約束されておるものであるから、これを守っていかざるを得ないということに、くぎがさされておる。私はかように理解しております。  それからもう一つは、かりに六六ということになった場合でも、沿岸国がさらにその上に特殊の権益を留保するということがあっては困るということは、逆に言えば、既存のわがほうの国益に害があるようなことがあってはいけないということも当然含めた意味で御了解をいただきたいと思います。
  147. 曾禰益

    曽祢委員 外務大臣が心得ておられないなんてそんな失礼なことを言っておるのじゃなくて、ただ先ほどの質疑応答から見ると、やはり私が心配しておるように、十二海里以上に向こうが権利主張するのは、これはとんでもないということになるわけですね。十二海里を認められる場合でも、私の知っておる限り、国際海洋法会議のときに日本側が主張したように、やはり実績を認めろ、専管区域内における実績国の実績を認めろ、このくらいのことはきちんとむろん言っていくことを含めて外務大臣は先ほど答弁されたものと了解したい。これは新聞等を通ずる誤解を避けたい意味で申し上げたので、その点は十分に御理解の上にもう一ぺん御答弁をお願いしたいと思います。
  148. 愛知揆一

    愛知国務大臣 同時に、一九六〇年の国際法会議において示しておりましたわがほうの態度というものは、それが今日におきましてもわがほうの態度として適正ではないだろうか、こういうふうに考えております。したがいまして、ただいま御注意のありましたことは、十分に心得て対処してまいりたいと思います。
  149. 曾禰益

    曽祢委員 最後にこれは外務省と、また農林大臣に伺いたいぐらいですけれども、こういったような、先ほど同僚戸叶委員からの御質問であったと思いますが、どんな人がこういうような国際機関の委員日本人としてなるかということにも関連するかと思うのですが、たとえば日米加漁業協定ですか、あそこのアメリカ及びカナダの代表、これにはいわゆる労使の労ですね、つまり漁業関係する船員あるいは漁業労働者の代表が入っておるそうです。そういう点は存外非常に重要であるし、必ずしも三名がILOのように、政府、労、使というふうにそうきちっと三角形につくれとまでは、私は言いませんけれども、やはりどういうふうに規制をされるかということについて、一番利害関係を持っておる者は船員さんであり、また漁業労働者なんですね。簡単に言えば、全日本海員組合あるいは漁船労協に加わる船員組合の諸君である。こういう諸君をいきなり国際機関に入れるのに、必ずしもそれだけの準備があるかどうかは別として、こういう会議なんかには、やはりそういう労働組合の意見をも代表させたようなデレゲーション——代表団を構成するお考えがあるのかどうか、これをひとつ外務大臣に伺いたいと思います。
  150. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お考えになっております御趣旨はよく了解できますから、ひとつこれは関係官庁、つまり、具体的には農林大臣とよく協議をいたしたいと思います。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどの全米熱帯まぐろ類委員会のときの発効の条件の問題でございますが、私しばらく考えてみますということで切ったものですから、速記がそのまま残っていてもどうかと思いますので、いま考えた結果、こういうふうなことも考えられるのではないかと思いますが、それが間違っているかどうかということだけを質問しておきたいと思うのです。たとえば、自分のほうから、加入効力を生ずる日を明記した加入書を出すというのは、都合のいい日を自分のほうで書くわけですね。そういうふうな場合に、たとえばこういうことが想定されないか。四月から新しい年度になる場合には、二月にもし入るとするならば、その二月の日付を加入の日付とするよりも、翌年度にわたっての加入の日付にしたほうがいいから、自分のほうで都合のいい日を書いたほうがいい、年度の切りかえだから、こっちのほうがいいという、こういうことまで考慮してこういうふうな文書になったのではないかということを考えたのですが、この点は間違っていないでしょうか。と申しますのは、こういうふうな発効条件というものがあるのがちょっと珍しい条約なものですから、どこかに何かあるのじゃないかというような気がするのですけれども、この点だけをはっきりさせていただいて、私の質問を終わります。
  152. 角道謙一

    角道説明員 一般の条約の発効要件の場合、大体批准書の寄託が発効になると思います。この批准書の寄託の日も、実は加盟国のほうで適当に定めまして寄託するわけでございます。そういう意味では、この条約規定の上に加入日を定めて出すという場合と加盟国の立場からはあまり変わりはない。ただ現在の締約国から見ますと、どこの国がいつ入ってくるということはあらかじめわかるという意味では、多少メリットがあるというような感じがいたしますけれども、実態としてはあまり差はない。  それからもう一つの問題としますと、たとえば分担金の計算、これは年度が七月という場合、五月に入ればいいか、あるいは七月に入ればいいか。この条約の場合には、たとえばキハダマグロの規制は一月一日からでございます。したがって、規制の対象を受ける場合、あるいは委員会が四月から始まる、しかも条約のその場合には、いつから入るという意思を明らかにして、あとオブザーバーという形でその会議に出る。そういうことで、条約の運営あるいは規制の実施状況等も事前によくわかる。しかも実際にメンバーとして活動するのは、自分の希望する日という意味がはっきりしますから、たとえば締約国あるいは加盟国両方の立場からも便利であるというような規定かと思いますが、ただこの規定は、先生御指摘のように非常に珍しい規定だというふうに考えております。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 いまのでわかりました。
  154. 田中榮一

  155. 村田敬次郎

    ○村田委員 御質問申し上げます。  ただいま議題となっております漁業条約三件につきまして、一括質問をいたしたいと思います。  先ほど来数値も出ておりましたが、一九六八年の統計によって、世界の漁獲量が六千四百万トンである。そのうち日本の占めておりますシェアが約一三%強ということでございまして、八百七十万トンという相当な数値になっておるわけでございます。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 しかもその漁獲の方法あるいは船団の組織その他等から見まして、世界第二位である日本が、実質的には世界第一位のいわば水産国であるといったような点から見ますると、こういった条約を結びます際に、日本自身の漁業における国益を守っていくという立場と、それから先ほど来議論になっております国際法上の一般的なルール、そういうものに従っていくという二つの面、この二つを重視していかなければならないと思うわけでございますが、この漁業条約三件のうちで、いわゆる北西大西洋漁業条約及び熱帯まぐろ条約というのは、成立後すでに二十年を経過している条約でございまして、特に北西大西洋漁業条約によって設立された北西大西洋漁業委員会、これはたいへん歴史もあり、かつ権威のある委員会だということも承っておるわけであります。しかも先ほど配付せられたデータによりますれば、ある程度の操業実績わが国は持っておる。そういった前提に立ちます場合に、いままで二十年この条約に入らなかったということは、条約に入ることによって日本漁業に規制が加わりまして、そしてむしろさっき議論になったデメリットの面が非常に出てくるんじゃないか。そういった評価があっていままで加入をしなかったのではないかというふうに考えるのでございますが、このデメリットの面、つまりマイナスの点、規制の強化されるといったような点について、どういうふうにお考えになっておるか、これが第一点であります。  第二点は、一般的に条約加入をいたします場合に、条約によりましては、申請をすれば自動的に加入が認められるものもございましょうし、また現加入国の同意が必要とされる条約もあるわけでございます。わが国漁業の場合は、いわば攻める立場であって、かつてはとかく漁業技術がきわめてすぐれているということから、漁業資源を乱獲するといったような国際的な評価もあったようでありますが、わが国がこれらの条約加入することに対する関係国の警戒心と申しますか、態度と申しますか、そういったことについて感触をお伺いしたいと思います。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕
  156. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 第一の点でございますが、北西大西洋漁業条約及び熱帯まぐろ条約につきまして、特に前者の条約が二十年前にできたにもかかわらず、最近入る理由、あるいはむしろデメリットがあるのじゃないかという点でございますけれども、この北西大西洋条約には現在まで日本は入っておりませんでしたけれども、同条約対象水域における漁業資源保存につきましては、条約自体のきめる保存措置を自主的に尊重しまして、関係漁船にも周知せしめ、わが国としては大体それと似たような保存措置をとっておったわけでございます。その意味におきまして、必ずしも全然条約と無関係に自由な行動をとっておったということにはなっておりません。熱帯まぐろ条約についても大体同様なことが言えると思います。  今回この条約日本加入しようという理由でございますけれども、御指摘のように従来これらの水域におけるわが国漁獲高あるいは漁業活動というのは、それほど大きなものではございませんでした。最近新漁場の開拓ということから、これらの水域でのわが国の漁船の操業も今後規模が拡大されるのではなかろうかということも考えまして、また条約の中に入っておりませんと、これらの水域に対する漁業保存措置について、わが国立場なり意見なりを無視して、いわば一方的にわが国に不利な漁業規制措置がとられるおそれもなしとしないという観点から、わが国としましては、むしろそれに入りまして、漁業資源保存について科学的根拠に基づくわが国の意見も十分表明するということを通じまして、わが国の国益も擁護し、同時に漁業活動における国際協調に沿った行動をとるという点から、この漁業条約に入ることに踏み切ったわけでございます。  それから第二の点でございますが、御指摘のように、条約によって加入受諾書といいますか通知書といいますか、そういう手続をすることによって自動的に条約に入る方式と、それから現在加盟国になっている国の同意を条件に入る方式とございます。たとえば北西大西洋条約につきましては、条約加入したい国が通知書を送付することによって、これはアメリカが寄託政府でございますから、アメリカ政府に通知書を送ることによって加入が認められるわけでございますが、この条約の加盟国になるであろうと予想される、つまり条約交渉の会議に参加する国からは、日本加入を歓迎するという意向が表明されております。  それから熱帯まぐろ条約につきましては、現在の加盟国の同意を要件とするという、やや強い規定になっておりまするが、これは先ほど山崎参事官が御説明の中で述べましたように、これらの国にわが国が正式に照会しました結果、現在加盟国五カ国とも日本の加盟を歓迎するという通報に接しております。
  157. 村田敬次郎

    ○村田委員 時間の関係で次の質問に進みます。  北西大西洋漁業に関する国際条約の一条の二項の、先ほど戸叶委員の御指摘になりました「この条約のいかなる規定も、領水範囲又は沿岸国漁業管轄権に関する締約政府主張に不利な影響を与えるものとみなしてはならない。」という概括的な規定になっておりまして、そして先ほど来御議論がありましたように、いわゆる領水権、領海権あるいは漁業管轄権については三海里がいいのかあるいは十二海里がいいのかということについて非常にいろいろな御意見が、いままでも予算委員会その他を通じて出ておるようであります。最近聞きました情報によれば、海水汚濁防止のためのコントロール水域といたしまして、アメリカ合衆国でも十二海里が妥当であると認めており、また北極の海水汚濁防止のための条約について、やはりカナダが同様の意見を持っておる。また別の観点から申しますれば、いわゆる大陸だなの利用といった面から、資源保護という面におきましても、むしろ三海里説というのが少数意見になりつつある、十二海里説というのが多数意見になりつつあるのではないかということも考えられるわけであります。また昨年でございましたか、いわゆる伊豆沖にソ連の漁船が出没をいたしまして、そのために沿岸漁民に非常に大きな脅威を及ぼしたといったようなこともあって、むしろ日本の三海里という領海も広げるべきじゃないかという意見が漁民の間からも出ておったように記憶をいたすのでございますが、こういった公害防止の観点、それから日本の国益を守るという観点、さらに大陸だな資源を保護する、いろいろな観点に立って、むしろ三海里説より十二海里説のほうが前向きであり、そういった方向に進むべきではないかという考えもいたすわけでございますが、これについての大臣の御所見を承りたい。
  158. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろの問題についての御質問でございますが、まず一つは領海に対する考え方は、先ほどから申しておりますように、大体一九六〇年の領海についての国際法関係会議で表明いたしました日本の態度というものを現在において再確認いたすことが最も妥当な見解ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。要するに全世界というか、なるべく大多数の国々が一つの基準に対して合意をしてそれを順守する、あるいは先ほど曽祢委員から御注意がございましたが、そのワクの中でも日本の国益というものを十分守っていかなければならない、こういう趣旨に立って、今後国際会議に臨む態度にいたしたい。それができなければ、やはり三海里というものは現在のところ国際的に確立された国際法規である、こういう立場に立っていくべきではないかと考えております。  それからその次に、御指摘のように、たとえばカナダの、先ほどもちょっと山崎参事官からも御説明をいたしたと思いますけれども、国内立法で——公海自由の原則にまっこうから抵触すると私は思うのでありますけれども公海の中に及んで公害防止とかいうような立場に立ったカナダとしての考え方が現在カナダの国会でも審議され、あるいは立法されんとしつつあるのでございますけれども、これに対しては政府としては全然反対でございまして、場合によればしかるべき方法によって、そういったようなカナダの態度に対して警告あるいは適当な措置を講ずる必要もあるのではないかと考えるくらいでございます。  それからその次は大陸だなの問題ですが、大陸だなについては、たとえばある種の魚族については大陸だな資源であるという立場に立って、たとえばソ連のごときはわがほうと非常に違った姿勢や意見を固執しているわけでございますが、われわれはそういったソ連のような考え方には同意するわけにまいりません。あくまで公海漁業として取り扱っていかなければならない、そういう観点から大陸棚に関する条約には日本としては入ることは考えていない、こういうわけでございます。  海洋関係については今後も時代の変遷に応じて各国各様のいろいろな考え方や主張をいたすでありましょうけれども政府としては日本の国益に立って、そして妥当な線で、大多数の国々がまとまった合意された線で問題の処理ができるようにということを貫いてまいるべきである。同時に具体的に起こります、たとえばいま日ソ漁業交渉についても現在進行中の問題もございますが、こういう具体的な問題についても、その基本の姿勢を筋目を立ててはっきり主張してまいることにいたしたい。  全体を通じて以上申し上げましたような考え方でまいりたいと考えております。
  159. 村田敬次郎

    ○村田委員 最近の報道によりますと、ブラジルが二百海里まで領海を拡張したいということを伝えられておるわけでございますが、各国が領海を拡張しようとしたり、いわゆる漁業専管水域を設けようというのは、漁業技術のおくれておる国にとっては漁業先進国による漁獲を制限して自国の漁業の育成をはかりたい、こういうふうに希望をいたしますがゆえに、そのような行ないに出るものと考えられるわけでございます。わが国といたしましては漁業先進国としての立場から単に漁をとるということだけでなしに、後進国の利益も考えてやる必要があるのではないか。したがってたとえば漁業に関しての援助やあるいは技術協力などを行なう必要がある、そういった前向きの措置をとるべきではないかと思うのでございますが、こうした点についての政府の所見をお伺いしたいと思います。
  160. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはむしろ農林省側からお答えいただいたほうがいい問題かとも思いますけれども、先ほども村田さんの御説にもありましたように、従来はどちらかといえば、水産業については日本は積極的に押せ押せというほうであっただけに、広く遠く、南米諸国などもある種のおそれを抱いておるという点は私は否定はできない点ではないかと思います。そういう角度に立って見れば、やはり水産業、漁業等についてもしかるべき国際協力といいますか、あるいは国際的な援助、協力というものが必要なことであって、やはり争いということでなくて協調の上に立って双方が魚族資源を確保していく、また双方が適宜にそれぞれの仕事が伸びていくように協調してやっていく、そういう姿勢がどうしても必要だと思いますので、漁業関係につきまして現在までもいろいろ実行もされておるし、また計画もされておる点もございますけれども国際協力ということについては今後一そう積極的に考えていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  161. 村田敬次郎

    ○村田委員 時間が参りましたので、希望だけ申し上げて、これで打ち切りたいと思いますが、大臣の御所見の表明によりまして、私たいへん力強く感じた次第でございます。御承知のように世界連邦日本国会委員会といったような委員会も設けられておりまして、いわば世界連邦としての協力体制を安全保障の意味からも進めるべきであるということがいわれておる時代に、いわば二百海里といったような領海説をとろうとしておる国が五カ国もあるといったような現況は、これはまことに国際法秩序の紊乱でございまして、いわば世界的な立場から漁業の問題を調整し国益を調整していかなければならないと思うわけでございます。したがいまして、こういった条約加盟、今回の場合は北西大西洋条約その他でございますが、今後そういった条約審議にあたって、国益とそしてインターナショナルな、いわゆる国際的な利益を調整するという面に立って、ひとつ御努力をいただくことを心からお願いを申し上げます。  簡単でございますが、質問を終わります。
  162. 田中榮一

    田中委員長 以上三件に対する質疑はこれで終了いたしました。     —————————————
  163. 田中榮一

    田中委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  北西大西洋漁業に関する国際条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件、全米熱帯まぐろ類委員会設置に関するアメリカ合衆国コスタ・リカ共和国との間の条約への加入について承認を求めるの件及び南東大西洋生物資源保存に関する条約締結について承認を求めるの件、右三件をいずれも承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 田中榮一

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、三件はいずれも承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました三件に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 田中榮一

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  166. 田中榮一

    田中委員長 次に、航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山口敏夫君。
  167. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 先ほど大臣からの提案理由説明の中にも、最後に、特に政府としての立場で、もっと早い機会に承認を求めるべきでありましたが、きょうまでおくれたことをたいへん遺憾に存じます。こういうふうな提案理由説明があったわけでありますけれども、すでに一九六三年の八月に国際会議において作成されて、特にこれは東京条約といわれるくらいこの問題が東京において討議されたわけでありますけれども、今度の乗っ取りショックであわてて出てきたのかどうかあれですが、ここら辺の非常におくれた理由をまず最初にお伺いしたいと思うのです。
  168. 竹内黎一

    ○竹内政府委員 先ほど大臣も提案理由に述べましたとおり、本件の国会承認を求めるのが今日までおくれましたのはまことに遺憾に思っております。  おくれた理由としては、関係国内法の整備という関係もあるわけでございますが、この条約が昨年十二月には発効も見ましたし、また御案内のように今回の日航機の事件を契機といたしまして、ハイジャックに対する国民の関心も非常に高まり、また本条約もハイジャックの防止にかなり役立つものがある、このような判断で、一日も早く当事国となるのがよろしかろうということで、今回急いで御承認を求めた次第です。
  169. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 元来航空機内で行なわれた犯罪に関しては、国際的な統一された見解といいますか、規則もなかったわけでありますし、特にいずれの国の裁判権も及ばないということで、非常に悪質な犯罪でありながら犯罪者が処罰を免れるというような非常に不合理な結果がいままで絶えずあったわけでありますけれども、こういった条約を通じてハイジャックの問題がどの程度解決されていくかということは、多少の疑問も出るわけでございますけれども、しかしいずれにしましても、ジャンボ時代というわけでありませんが、東京−モスクワ−パリ路線の開設等も含めて非常に日本とヨーロッパも近くなるし、また世界全体が航空機を通じて文化の交流やあるいは民族、人類の交流というものが盛んに行なわれてまいりますと、当然航空機を利用した政治的な犯罪あるいは精神異常者的な面における犯罪等が、爆破事件等が非常に多発すると思うのでありますけれども、いままでどの程度の実情といいますか、航空機に関する犯罪の実態というのをちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  170. 山崎敏夫

    山崎説明員 民間航空機の乗っ取り、爆破等の不法妨害事件が非常に起きるようになりましたのは一昨年以来でございまして、一昨年は世界じゅうで三十四件、昨年は実に七十二件起こっておるわけでございます。ことしに入りましても、三月末までにすでに「よど」号事件を含めまして十一件起こっておるわけでございます。不法妨害事件の大部分は乗っ取りでございますけれども、それ以外に、地上にある航空機を襲撃したり、あるいは時限爆弾をしかけて飛行中の航空機を爆破する事件も一昨年以来九件起こっておるわけでございます。乗っ取り事件の多くは、アメリカ、中南米、中近東でございますが、最近は右の地域以外でも起こっていることは御承知のとおりでございます。
  171. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 今度の条約は、特に航空機内での一般犯罪の防止といいますか、裁判における管轄権の問題が、事後処理的なものを対象にしたような印象を受けるわけです。特に乗っ取りそのものに対しては効果が薄いのではないか。と同時に私は、この法案の最大の問題点は、乗っ取られた飛行機が着陸する相手国が、加盟していない場合には効力がないというふうな判断ができるわけですけれども、そうなると、もちろんその条約のないよりはあったほうがいいという消極的な面だけではなくて、たとえば今度の北朝鮮等における赤軍派の乗っ取り事件や何かを見ますと、この条約が適用されない。そうしますと、大体乗っ取り等の事件は政治的な問題あるいは政治活動家が引き起こす事例が多いわけでありますけれども、そうすると非常に不備な点があるのではないか。特にいま参事官がおっしゃったように、キューバとアメリカが非常に多いということでありますけれども、この両国は国交というものがなくとも、乗っ取りに関して一応暗黙の了解といいますか、両国におけるきめられた約束ごとではないにしろ、一応パイプ的なものが通じ合っている面もわれわれは感じるわけであります。そういう点からして、たとえば日本の場合においては、共産圏諸国との、こういった事件のときにはどういう形で、この条約の適用外の問題ですけれども、対処するかという点も含めて当局の考えをお聞きしたいと思うのです。
  172. 井川克一

    井川政府委員 確かにこの条約自身が国連加盟国及びICAO加盟国に限っておりまして、北鮮その他の国は入れないことになっております。したがいまして、直ちにこの条約からそういう国との間の効果は出てくるものではございません。また、新しくことしの十二月にヘーグで会議が開催されまする、いわゆるハイジャッキング防止条約も東京条約と同じようにICAOが中心になってやっておりますので、普通の考えでこの東京条約を補足するという条約のたてまえ上、その考えでまいりますならば、やはり加盟国というものは従来と同じようになるということが普通の考えだろうと思います。しかしながら、ただいま御指摘のありましたとおり、やはりこういう条約は分裂国家も含めてすべての国が加入し得ることが望ましいとも考えられますので、わが国といたしましては、本件に関して各国とも十分そういう方向で協議していきたいと考えております。  なお私どもの知っておりまする限り、アメリカとキューバとの間には特別な取りきめがないようでございます。またキューバは、アメリカの飛行機ばかりでなくよその飛行機でもどんどん一方的に、人道的と申しまするか、見地から解放しているようでございます。
  173. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 いろいろ条約関係を見てみますと、第一条の四項に「この条約は、軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。」という項があるわけですけれども、たとえば、これは非常に飛躍した考えだと思うのですが、よど号事件のとき、乗っ取り機からレーダーサイトで受信をして航空自衛隊が基地から発進をした。空中哨戒というのですか、空中哨戒に当たって、それで目的地への飛行を哨戒するという態勢をとったというような形で、とにかく乗っ取り機と並行して自衛隊機が飛んでいく。こういう場合に、たとえば牽制をしながら条約国か、あるいは条約締結していない国なら別ですけれども条約国の場合においても、この乗っ取り機と一緒に入っていって、それがたまたま領空侵犯というような形に結果としてはなってしまう。こういうときは、この条約は適用されないわけですか。たとえば、航空自衛隊なら航空自衛隊というものが——まあ結局軍隊等については適用しないということになっておるわけですけれども、この犯罪に伴う一つの過程において起こり得る事例なんですけれども、そういう場合においても、これは東京条約は適用されない、こういうことですか。
  174. 山崎敏夫

    山崎説明員 ただいま先生が御指摘になりましたように、一条四項にはそういう軍隊の飛行機は全く適用されないことになっておりますので、御質問のような例でございましても、ハイジャックに関連して行ったという理由で何らかのこの条約の効果を期待するということはできないわけでございます。したがいまして、かりに領空侵犯になるようなことはやはり認められない。入るためには相手国の許可を受けなければならないと思います。
  175. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 特にこの条約の中では、機長権限の強化ということが一つの柱になっておるわけでありますし、これは当然、いままでは船長や何かが犯罪者を拘束してたとえば次の寄港地であっちの警察に引き渡すとか、そういう権限を持っておるのに対して、航空機機長においてはいままでそういった拘束することはできなかったわけですけれども、そういう点、機長権限強化等に対しても明確に打ち出されておるのはたいへんけっこうだと思うのですが、しかし、こういう条約国が機長等の責任者といいますか、航空機の管理者に対して特別にお互いが研修し合うというか、たとえば事故防止に対して対処する場合における一つの機長行為に対する態度あるいは決断、行動というものに対するレクチュアというか、お互いの条約国同士の交流、研修というようなものも、やはり当然含まれているわけですね。
  176. 山崎敏夫

    山崎説明員 交流その他のことは別にこれには書いてございませんが、この条約が国会の御承認を得、さらに航空法の改正もこれに伴って行なわれるわけでございますから、当然航空当局においてもその航空会社に対して十分それを徹底し、またいわゆるマニュアルといいますか、そういう指導書をつくって十分この趣旨を徹底させることになるものと思います。
  177. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 先ほど政務次官の話で、いろいろ関係法令等の整備ということも言われておったわけでありますけれども着陸国としての協力義務規定されておるわけですけれども、結局わが国としてはそれに見合う国内体制というものは、いま法務委員会のほうでやっておる航空機の強取等の処罰に関する法案とは関連して進めておるわけですか。
  178. 井川克一

    井川政府委員 すでに提出いたされました法律案は三本ございまして、ただいま山崎参事官が申されました航空法関係機長権限に関する航空法の改正の分、それからこの条約十三条に基づきまして、外国機の機長日本の官憲に犯人その他の者を引き渡す、それを引き取ってどうするかというところは警察庁が所管する、条約第十三条の規定の実施に関する法律案、こういうのがこの二つ条約を施行するための法律案でございまして、そのほかに御存じのとおりもう一本、これは法務省所管のいわゆる乗っ取り防止法案というものが提出されておるわけでございます。
  179. 田中榮一

    田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる二十七日午後零時四十五分から理事会、午後一時から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時八分散会