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1970-04-10 第63回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十日(金曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 永田 亮一君 理事 山田 久就君    理事 戸叶 里子君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       石井  一君    中山 正暉君       福田 篤泰君    山口 敏夫君       豊  永光君    堂森 芳夫君       山本 幸一君    中川 嘉美君       林  百郎君    池田正之輔君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 井川 克一君         水産庁次長   藤村 弘毅君  委員外出席者         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         水産庁生産部海         洋第一課長   角道 謙一君         通商産業大臣官         房審議官    室谷 文司君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   石井  一君     菅野和太郎君   木村武千代君     椎名悦三郎君   鯨岡 兵輔君     原健 三郎君 同日  辞任         補欠選任   菅野和太郎君     石井  一君   椎名悦三郎君     木村武千代君   原 健三郎君     鯨岡 兵輔君 同月十日  辞任         補欠選任   林  百郎君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  民事訴訟手続に関する条約締結について承認  を求めるの件(条約第一九号)  民事又は商事に関する裁判上及び裁判外文書  の外国における送達及び告知に関する条約の締  結について承認を求めるの件(条約第二〇号)  外国公文書認証を不要とする条約締結につ  いて承認を求めるの件(条約第二一号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  民事訴訟手続に関する条約締結について承認を求めるの件、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外文書外国における送達及び告知に関する条約締結について承認を求めるの件、及び外国公文書認証を不要とする条約締結について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたします。
  3. 田中榮一

    田中委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。愛知外務大臣
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま議題となりました民事訴訟手続に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  民事または商事に関し、外国人または外国に住所、居所を有する者が一方の訴訟当事者である場合には、裁判上の文書送達証拠調べ手続及び外国人訴訟当事者地位問題等につき、種々裁判手続上の障害が生じます。この条約は、このような障害を除去するためにヘーグ国際私法会議で採択された条約案もとに、一九五四年三月一日にヘーグで作成されました。  この条約は、各締約国裁判上の文書送達及び証拠調べ等司法共助について相互協力することを定め、また、外国人訴訟当事者地位に関する規定を設け、ある種の事項については内国民待遇規定する等、訴訟の円滑な運営と訴訟当事者利益をはかるものでありまして、現在二十一カ国がこの条約締約国となっております。  わが国は、この条約締約国との間では訴訟件数も多く、現在幾多の不便がありますので、この条約締約国となることにより、これらの点が改善されることが期待されます。  次に、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外文書外国における送達及び告知に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  外国における裁判上の文書等送達及び告知手続は、一九五四年の民事訴訟手続に関する条約により円滑化されましたが、近時の訴訟迅速化の要求にこたえるため、さらに改善が望まれています。  この条約は、その目的のためにヘーグ国際私法会議で採択された条約案もとに、一九六五年十一月十五日にヘーグで作成され、現在九カ国が締約国となっております。  この条約は、一九五四年の民事訴訟手続に関する条約の第一条から第七条までの裁判上の文書等の送付に関する規定にかわるものでありまして、国家間の裁判上の文書等転達の方法及び経路の改善を定めるとともに、外国にいる訴訟当事者文書送達を受けなかった場合にこうむる不利益の救済を規定する等、訴訟迅速化訴訟当事者利益の保護をはかるものであります。  わが国は、この条約締約国となることにより、これらの利益を受けることが期待されます。  最後に、外国公文書認証を不要とする条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  現在多くの国で、外国公文書が提出される場合には、その文書作成国に駐在する自国の外交官または領事官による認証を受けることが法律上または慣行上要求されており、そのため外国公文書提出者は、複雑で煩瑣な手続を行なうことを要しております。この条約は、文書作成国の当局が証明文を付することによって、このような認証制度不便を除去することを目的として、ヘーグ国際私法会議で採択された条約案もとに、一九六一年十月五日に作成され、現在十一カ国が締約国となっております。  わが国は、現在外国公文書認証を要求しておりませんが、わが国公文書外国に提出する場合に認証が必要とされることが多いので、この条約締約国となることにより、他の締約国に提出するわが国公文書については認証が免除されることとなり、従来の認証制度不便が除かれることが期待されます。  以上、三件につきまして御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 田中榮一

    田中委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  三件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 田中榮一

    田中委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  7. 石井一

    石井(一)委員 私は本日限られた時間に、北方領土返還並びにその安全操業の問題に関して、外務大臣お尋ねをいたしたいと思います。  北方領土の問題は、私たちほんとうにかねてよりその返還を念願しておるわけでございます。最近その交渉が多少むずかしい段階に入っておるというふうに私たちは解釈をいたしておるわけでございますが、基本的な問題として、先日川島総裁ソ連を訪問いたしましたときに、マズロフ副首相といろいろ会談をいたしましたとき、領土問題の態度は従来と変わらない、特に注目すべき発言がありましたのは、領土を云々することは第三国利益になるだけで、日ソ親善友好の増進に役に立たない、このような発言をされたわけでございます。一体第三国とはいかなる国を意味するのか、外務大臣はどのようにお考えになっておるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 このソ連側領土問題に対する態度というものは、遺憾ながら現在までのところ従来と変わっていないように見受けられるわけであります。  そこで、川島総裁第三国云々というようなことを申しましたのも、その第三国がどこをさしているのかというようなことについては、そういう話を受けた川島さん御自身にもよくわからないくらいでございますから、私もその点について、憶測をまじえてこれに対して意見を申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、要するに、ソ連態度は、領土問題は第二次大戦解決済みである、これは日本に対する関係だけではなくて、第二次大戦後国庫問題は、他の国境問題についてもこれは終結したものであるという考え方に立っているわけでございますから、これはコスイギン総理とかグロムイコ外相とかが私に対して話をいたしましたときの言い方や態度などとあわせて解釈してみますと、いまどこかで領土問題が再燃するということになり、かつ、これをソ連側として取り上げなければならないという立場にかりに立つとすれば、これはそこだけでとどまらないというような意味も含まれているのではないか、私はこういうふうに解せざるを得ないかと思います。そのソ連態度は、私は日本の要求しておる北方領土問題については全然当てはまらない、別個のカテゴリーの問題として取り上げるべきであると考えますけれどもソ連側としてはそういうことを含めた意見に固まっているということが、今回もそういう表現で出てきたのではなかろうかと考えられる一面もあるように思われます。要するに第三国がどこであるかということについては、私としてはここでコメントすることは適当でない、かように存じております。
  9. 石井一

    石井(一)委員 私はこの問題を突っ込む意思はございませんけれども、この第三国がたとえば中国であるあるいはアメリカであるというふうなことによって、ソ連領土問題に対する、特に北方領土に対する一つの新しい最近の考え方というものがその裏にある意味で解釈できる節であるのじゃないか、このように考えるわけでございますけれども、それはさておきまして、いずれにいたしましても、いま外務大臣がおっしゃいましたように、日本側は固有の領土論というものを主張いたしておりますし、ソ連側はすでに領土論解決した、このような形を主張しておるわけでございます。何か両者が平行して共通点がないというふうに考えるわけでございまして、この上はもう法理論の展開というよりも、政治的な高度の次元の折衝というふうなものがタイムリーに行なわれなければならない、このように考えておるわけでございますが、領土問題に関して何か新しい材料といいますか論争の拠点といいますか、政府がこれから前向きにこれを解決するというのに、これまでの経過以外に最近の友好的になりつつある両国関係において何か新しい材料があるのかどうか、この点をちょっとお伺いしてみたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話しのとおり、法理論ということだけでもなかなか解決はむずかしいかもしれません。しかしあらゆる意味においての根拠は十二分に私ども政府としては持っておる、こういう基礎の上に立ってやはりき然として臨んでいかなければならないと思っております。  同時に政府としては、これは私も一昨日ノビコフ総理はじめ今度来日されたソ連側の諸君とも自由に隔意なく意見を交換しておるわけでありますけれども、最近は積極的、消極的両面日ソ関係というものはかなりいい方向にいっているのではないかと私は思います。たとえば積極面でいえば、いろいろの面における経済協力に対する先方希望、あるいはそれに対して向こうがたとえば地下資源の問題、天然ガスあるいは強粘結炭あるいは鉄鉱石というような問題についても、いままではおそらくはどこの外国人にも認めていなかったと思いますけれども、そういう資源調査等について日本専門家調査の地点を開放するというようなことを言うておりますし、またそういうことも進んできている。あるいは万博に示しているあれだけの熱意であるとか、あるいは万博開会に先んじて日ソ定期航路シベリア上空に開設されている、こういう面はいい積極的な面だと思います。それから消極的な面でもこれについてもいろいろの判断や分析が必要だと思いますけれども、ともかく土佐沖能登沖で演習をすることをきめて、そして水路通報というようなものも出しておって、既成事実になっていたかのような状態でありましたのを、政府からの抗議の申し入れあるいはこれに対する日本国民の心情というようなものも説明十分耳をかして、わりあいすみやかにこれを中止したというようなことも、消極面ではございますけれどもやはりかなり日ソ間の理解というものが進んできているように思われるわけであります。  そこで政府といたしましては、領土問題については対決対決ということではなくて、親善友好関係をさらに盛り上げて、ラストタッチをして平和条約を結ぶということが双方のためにもまことにけっこうなことじゃないか。平和条約を妨げているものはただ一つソ連側からいえばのどにひっかかった小さな骨みたいなもので、これを飲み込んでくれればもう平和条約は直ちにできるわけでございますから、友好親善ムードというものをほんとうによりよきものに固める、そういう点からソ連側の特段の配慮と協力を求めたいということで、先ほど申しましたような法理的、沿革的、理論的な根拠をしっかり踏まえながら、こういう点にそういう角度努力を推し進めてまいりたい、こういうように思っております。  なお、今回ノビコフ一行が来日するに際しまして、多少時間がかかりましたけれども、昨年九月に安全操業提案をしあるいは抑留漁夫全員釈放を求め、抑留漁夫の相当の部分はそのときの話で釈放してくれました。最後に残った三十二人の全員釈放は十七日でしたかにいよいよ行なわれることになりました。こういう点も懸案がだんだんに片づきつつあります。これはいよいよそういうムードの上に立って、一そうの希望を持って私どもとしてはこの問題の解決に邁進したい、こう考えております。
  11. 石井一

    石井(一)委員 私、北方領土返還に関していろいろと申し上げたいこともございますし、与党の若手として新しい提案もあるわけでございますが、きょうは時間の関係もございますので、ただいま大臣が申されました安全操業の問題について、もう少しこれはカレントな問題でございますのでちょっとお伺いしてみたいと思います。北方領土の基本的な問題については次の機会に譲りたい、かように考えるわけでございます。  大臣のたいへんな御努力で、現在この交渉も最終の詰めになっておるということでございますが、昨年九月ソ連を訪問されたときに、安全操業に対する具体的な提案日本案を出された。その内容について新聞も論じておりますが、まだ明確になっていない面もある。ひとつ簡潔にどういう提案をされたのかということをまずお伺いしたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 安全操業問題の中にもいろいろ経過があるわけですけれども、昨年九月の段階におきましては国後、択捉を含めまして、その沿岸三海里以遠、十二海里以内に安全水域を設定してほしいというのが一番原則的なこちら側からの要請、提案でございます。そうして水域がきまりましたならば、その中における日本側操業については、もし先方が非常に希望するならば、多少の程度において、たとえばわがほうで自主的に規制をするというようなことは細部の話し合いに入れば考える用意はある、こういうふうな考え方を提示しているわけでございます。そうして一昨日の段階では、安全操業の問題について具体的なお話し合いに入りましょう、ソ連側としてはイシコフ漁業大臣をしてこれを統轄させて交渉に当たらせます、そこまでの態度が明らかにされたわけでございます。これはイシコフ氏から佐藤総理大臣にも確約しましたし、私もそれを確約しました。いよいよこれからその中身に入ってまいるわけであります。
  13. 石井一

    石井(一)委員 いま自主規制というおことばがございましたが、一体政府自主規制とはどういうことを考えておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはこれからの話し合いによりまして、まず第一に水域をどういうふうに設定するかということと相対的な問題だと思います。政府としてはできるだけ水域が広いほうが望ましいし、また広いところを向こう承認すれば無制限に幾らでも日本のほうが漁獲するということではまた向こうも多少困る点があるかもしれませんから、これは専門的な話し合いに、これからまつわけですけれども、常識的にいえば、たとえば漁労のやり方、網の種類とかあるいは船舶の数だとかいうようなことをもし向こう希望するならば、ある程度の話し合いに乗ってもよろしいということは表明してあるわけでございます。
  15. 石井一

    石井(一)委員 非常に相対的な問題で今後の交渉ということがほんとうの山になるのだと思いますが、もう一点私が気にかかりますことばは、この対価を提示するということをやはり外務大臣はお考えになっておるようでございますけれども操業に対する対価とは一体具体的にどういうことを考えておられるかお伺いしたいと思います。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 対価ということは私は申しておりませんのと、それからよくそういう場合に問題にされますのは入漁料という問題だと思います。入漁料ということは私は考えておりません。入漁料というようなかっこうになることは、領土問題を持っておるわがほうといたしましても、これはなかなかたてまえ論としても取り上げにくい問題ではないかと思っております。ただこれも安全操業を認めることになる水域の広さ等とも相対的に関連いたしますけれども、かなり広い水域でかなり自由にこちらが操業できるということになりますと、その間、悪い例ですけれども、遭難とかあるいはそのほか向こう官辺筋等にも世話になることもあり得るかと思うのですけれども、そういうお世話になるような場合において、これに相当な何か協力を示すことは私はまた自然に考えられることであるかもしれないと思いますけれども、そういう範囲内のことならばある意味においては対価と言えるかもしれませんけれども、こういう角度ならばこれもこれからの話し合い次第でございますけれども、長い問題でございますから、こちらとしてもかなり幅のある、しかし急いで妥結をして、そうして沿岸漁民の方々を長年にわたる苦労から解放させてあげたい、こういう気持ちでおりますので、これからの話し合いについては、相互理解の上に立って柔軟的な態度に出てしかるべきではないかと思います。実はノビコフ氏からそういう回答がありましたので、農林大臣お願いして、向こう側イシコフ漁業大臣であります。それから、前からの経緯もございますから、この具体的な折衝については、主として水産庁を中心にした農林省でこの具体的な話し合いを少し詰めていただく、倉石農林大臣にもそういうことでお願いをいたしまして、来週早々第一回の接触が始まることが可能ではないかといま期待しておるところでございます。
  17. 石井一

    石井(一)委員 おそらく十三日ごろに行なわれますいまの会談でそういう問題がすべて詰められると思うのでございますけれども、やはり問題が非常に懸案事項でございますし、時間もかかるということも考えられるわけでございますが、外務大臣は、イシコフ漁業相抑留して、何とかこの問題に終止符を打ちたい、こういう決意で臨まれておるのかどうか。抑留ということばはたいへんきつうございますけれども、使用されておることばでございますが、この点お伺いしたいと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 せっかくここまで話が進んでまいりましたから、私は全くこれはじょうだんでございますけれどもイシコフさん、あなたは日本政府抑留しますから、日程を延ばしてぜひひとつ話を詰めてくださいと言いましたら、一行から離れてとにかく私は残ります。できるだけ倉石さんあるいはそれにかわる専門の方と十分話し合いをしてまいります、そういうところまではいっております。
  19. 石井一

    石井(一)委員 北海の漁民は一日も早く妥結に向かうことを念願しておりますし、非常に切実な問題であろうと思います。それだけではなしに日本国民の願望でございますけれども、大体政府はめどとしていつごろまでにこの安全操業ができるようにしようというお考えなのか、これは非常に大きな問題だと思いますので、お聞きしたいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは率直に申しますれば、もう早いほどいい、ようやくここまでこぎつけましたから、なるべくすみやかに結着をつけたいと考えております。
  21. 石井一

    石井(一)委員 私、北方海域における安全操業の問題が解決することによって、外務大臣のおっしゃるオーソドックスな行き方で一歩一歩懸案解決する、そういう形で北方領土解決というところまで、ある程度時間はかかるかもしれませんけれども両国関係は前進していくんだ、こういうように考えております。これから直前にきておりますソ連漁業大臣との交渉、これは非常に大きな意味があると思います。従来以上に積極的に取り組んでいただきたい、かように考えるわけでございます。  なお最後に、時間もあと数分のようでございますが、最初の問題に返らせていただきまして、政治交渉ということになりますと、非常に大きな問題になってくるのはやはり日米安保体制、それから日本自衛隊の漸増というこの政策、そうしてまた日本は中立を一応とらない、こういう従来の日本外交路線を踏襲していかなければならぬと思うのでありますが、非公式な情報その他ではソ連側北方領土に対して政治的、経済的な関心よりもいわゆる安全保障上の危惧を感じておるということが述べられておるわけでございます。これは一つの仮説でございますけれども、もし安全操業の問題が解決し、日ソ間がだんだんと友好方向に進んでいった場合、かりにソ連側から次のような提案がなされた場合、外務大臣はどのようにお考えになられるか。すなわち現在までの日本外交路線は変える必要はない、ただし今後返ってくる、問題になっておる島々に、たとえば米軍の基地をつくるとか、そういうことは一切避けてもらいたいというふうなこと、かりに日本自衛隊が駐留するとしましても、最小限度にこれをとどめるというふうな、いわゆるソ連側としては譲歩でき得る安全保障上の問題というものを排除した案において、そういう条件で領土を返してもいい、かりにこのような提案がなされた場合、外交方針の基本は害しておらないわけでございますけれども、そういう譲歩をなさる御意図があるのかどうか。これは仮定でございますけれども、私、今後問題になると思います。お伺いしてみたいと思います。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 領土返還になれば、その領土に対する主権日本側に完全に帰属するわけですから、その地域に対してどういう態度をとるかということについては、私は主権国である日本国判断によって決し得るものであると、かように考える次第でございまして、いまの非常に示唆のある御意見につきましては、私どもも十分考えていきたい。そういうところまでこぎつけて、まず返還になることに全力をあげていきたいと考えております。
  23. 石井一

    石井(一)委員 それでは、従来の日ソ交渉では、公式のルートのみならず、非公式のルートもいろいろ通して交渉がなされておったようでございまして、最初交渉の時点では、たとえばドムニッキーというような人が、正体のわからない人であったけれども一つの糸口を見出した、こういうふうなことがあるわけでございます。賢明な外務大臣でございますから、いろいろな交渉は積極的に進めておられると思います。沖繩解決した今日、北方の問題はわれわれがどうしても解決しなければいけない問題だ。現在副首相なり、漁業相が来ておられる機会に、問題を混同することによって安全操業の問題にひびが入っても困りますけれども、なお一そうの積極的な姿勢をお示しくださるようお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 田中榮一

  25. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣に、対米繊維輸出規制の問題について、お尋ねをしたいと思います。  三月六日の本委員会で、吉野公使が帰りまして、吉野公使を招致した理由等についてのいろいろ説明がありました。それから五日に帰任するときに、政府の当時の態度等についても口頭をもって訓令を与えておる。そして、六日には電報をもって大使館のほうに訓令を送って、アメリカ政府のほうに当時の政府態度であるということについての通告——通告といいますか、申し入れといいますか、返答といいますか、そういうものとして文書をもって政府側に返答をしろと、こういうことをただいまおそらく電信で打ったところではないかと思うというような意味の答弁がありました。その後、中旬には向こうからケンドールという人が来て、外務大臣はお会いになったどうか知りませんが、通産大臣とは二、三回にわたって会っております。あるいは総理にも会っていった、こういうふうな報道もございます。そうしてこの三月六日の委員会で私が質問しましたときには、外務大臣は三つの柱をあげておられました。一つは包括規制には応ずることができない、一つは被害があるならばこちらは品目別の規制について考慮するのにやぶさかでない、ただしこれはあくまで多国間の協議の場でやっていくのである、こういうような三つの柱はあくまで守るのだという意味での回答を与えておる、こう言っておられる。その後ケンドールという人が来て、政府態度が大きく変わって、三月中にも何か日米間のそういう話し合いが急転直下解決方向にいくのではないかというような事柄が、新聞等に毎日のように報道されておりました。今月に入るとまたそうでもないのでありますが、しかし吉野公使が今月に入ってからも記者会見をして、最終的な訓令を政府に仰いで、もう詰めの段階に入るのだ、こういうようなことも言っておるとか、これはもちろん新聞の報道でありますが、あるいは下田大使がサーモンド上院議員と院内で会って、早期解決をやるのだというような意思表示をしておるとか——早期解決をするということが絶対悪いのだ、こういう意味じゃないのですよ。よい方向に行って早く解決するならばこれはいいことでありますが、そういうようなことでいろいろなことが報道されておるのでありますが、しからば外務大臣が訓令を発せられた三月六日以降、アメリカ政府からどういうふうな返答が来ておるのか、文書をもって来ておるのか、あるいは口頭をもって駐米大使に何らかの返答が来ておるのか、この点に関する事情をまず答弁を願いたい、こう思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 経過を詳細に御説明いたしますとたいへん時間がかかりますから、なるべく簡潔に申し上げたいと思いますが、現在の段階においては、三月上旬、エードメモワールで日本考え方を、私は集大成とよく言っておりますけれども、わかりやすく、諸般の考え方についてこれ以上は書けないと思うくらい、通産省との間で練りに練って、先ほどお触れになりました三カ条というようなことを中心にした政府の見解を表明いたしたわけであります。これに対しまして、米側から書面等による意思表示は受け取っておりません。したがって、日本政府としてもその以後訓令は出しておりません。そして現在、ことばは悪いかもしれませんが、対峙中でございます。しかし、日米関係をよき状態に置きたいということは、これはわれわれの考え方でございますから、下田大使や吉野公使は、先方の状況を判断をするための接触は持っておりますし、大使館としては国務省当局ともいろいろの問題で常に接触はございますから、そういう間で何かの話が相互に、たとえばおまえのほうはその後どうだとかいうような程度の話は出ておると思います。しかし、これはいま申しましたように、向こうからも公式の文書等は出ておりませんし、こちらも全然出しておりません。そういう状況でただいま苦慮していると申し上げると私の気持ちがおわかりいただけるかと思いますが、対峙状態で、ただいまのところ進展の状況はございません。
  27. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、在米大使館のほうからは最後の詰めの時期がきておるので、最終的な何か政府の訓令を仰ぐ、こういうような連絡はきていないのでございますか。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たとえば先ほどもお話がございましたが、サーモンド上院議員は下田大使に会見を求めて、そして院内で会いまして、その状況などは詳しくこちらにも報告がきております。大いに論戦をしてもの別れになっております。そして別れるときに、あとで手紙を見てくれといってその手紙を渡されたようですが、見てみますと、こちらからいえば非常に意見が食い違っております。こういうような意見もあるので、もっとアメリカ側に納得をさせないといけない、同時に米側国会の中にもいろいろな動きがあるから何か心得べきことがあればさらに言ってきてほしいということは、現地で接触している者の立場としては、そういうふうに本省待ちといいますか、こちらに何かいい知恵を出してもらえないかということで、すがってくるのは、これは自然の形だと思います。そういう意味においての連絡は受けておりますが、訓令等を請訓してきているということはございません。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣は、私が先月の六日、一月前に質問しました当時は、三原則といいますか、三本の柱といいますか、アメリカ政府のほうに、覚え書きといいますか、返答といいますか、そういうもので、こちら側の日本政府態度説明しておる、こういうことであります。その後、これももちろん私はこの委員会であなたに確かめたわけではないのですが、いろんな新聞報道等を詳細に読んでみまして、ある時期には、たとえば三月中旬にケンドールという人が来ていろんなことを言っておる。これを基礎にしてといいますか、たたき台にしてといいますか、これを勘案し、従来の態度とは違った三つの柱なんかを厳重に守るという態度ではなくして、業界の賛成は当然得られないような方法でも業界に何とかしてのませるような態度であなたは解決していこうというような態度に変わっておったのじゃないか、こういうことを新聞の報道等で私は感じておったのでございますが、どうでございますか。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そもそもケンドール案というものはアメリカ政府が全然関与しておりません。それから日本政府としては、これは当時通産大臣からお答えしたと思いますけれども、通産大臣が見まして一日よく検討をして、こういうことでは日本政府としても同意はできないという返事を直接宮澤君からケンドール氏にしたことも天下に明白になっております。こういうわけでございますから、私がケンドール案でどうしようなどという大それたことを考えたこともなければ、言うたこともありません。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 それではあなたそういう御答弁をなさるならば、私はもっと聞きたいのですが、私は何もケンドール案をあなたがのんでどうこう、こういうことを言っておるのじゃないのです。ああいうふうなケンドールというような人が来て、いろいろ接触を政府もされた、あるいは業界もされた。たとえばケンドールという人が繊維産業の人たちと会ったときに、そういう接触もしておるわけです。先般商工委員会で参考人として業界の人、あるいは繊維産業の労働組合の人たちも呼んで意見を聴取しており、私もそこに出て聞いておりましたが、たとえばケンドールという人が会いに来ている話をしておりましたが、一年間の包括規制というような話もありました。じゃ一年間でそういうものが終わるという保証はどこにあるかと聞いたら、私が保証しますと言ったので、あなたどうしてそんなことが可能かと言って笑い話のようなことになったのでございますというような意味の証言もしておられました。とにかくあなたに私はケンドール案を基礎にしてという意味じゃなしに、従来とは変わった態度政府はこの繊維の交渉をまとめていこうという態度になったのではありませんか、こういうことをお聞きしたのでありまして、ケンドール案にとらわれてという意味ではないわけです。その点はいかがでありますか。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、こちらがエードメモワールを出して以来、政府としては何ら訓令とか覚え書きとかいうものを出しておりません。ということは、このエードメモワールのワクの中での解決ならばともかくとして、これをはみ出るようなやり方については、私といたしましてはただいま考えておりません。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 今後もそうした従来の態度をずっと保ち続けて対米交渉をしていこう、こういう御意向でございますか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはしばしぱあらゆる機会に私も表明いたしておりますけれども、この覚え書きのワク内で解決をするということが私の願望でございます。
  35. 堂森芳夫

    堂森委員 願望ですから、変わることもあるのですか。いかがでございますか。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはしかし先ほどから申しておりますように、そもそもこういう種類の問題は、ガットの精神の中で行なわれなければ筋目の通った問題の取り扱い方ではないわけでございますね。これは一番大事なところだと私は思うのです。それから三原則ということばをお使いになっている。私も自分ではそのつもりでおりますけれども、多数の関係国のあることでもございますから、日本の経済外交の立場からいっても、そういう姿勢をとってこれを全うしていくところに最大の努力をするのが私のつとめである、かように考えております。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 この繊維の問題は、前にも申ましたように、あるいは私が申さなくても大臣は御承知のとおりでありますが、ある意味ではわが国における国民の対米感情の一つの大きな分かれ目に行く問題になる可能性が大いにあると思うのです。たとえばこの繊維の対米交渉という問題は、マスコミのいろいろな宣伝といいますかそういう結果で、もう国民には広く大きな印象を与えておる問題であります。単なる経済問題だけでは私はないと思うのであります。ということは、何かアメリカ側がわが国を押えつけて、そして無理なことを、道理にかなわないことをわが国に要求してきている、こういう印象を国民は広く持っておると私は思うのであります。たとえばよくないですが、たとえば戦争前の、かつてずっと昔のことでありますが、軍縮会議等においてああいう比率でわが国が軍縮をやるようになってきた。あれは大国によってわが国が押えつけられた。その結果がやはり大東亜戦争に発展していくようなことになっていったというようなことも、私は国民感情としてあり得る、こう思うのであります。今度のこの繊維交渉というものは、政府説明しておるように、また業界は自主規制するよりは輸入制限立法をしてもらったほうがいいんだ、そんなにやれるものならやってみろ、こういう態度でおると思うのでありまして、繊維業界はかつて綿の規制の際にたいへんなひどい目にあった。そしてこれはアメリカ人も言っておる。おまえのほうがあんまり簡単におり過ぎたので、今度も簡単におりてくれるだろう、こういうような見通しだというのです。今度はそう簡単におりぬだろうというようなことを言うようなアメリカの人たちもたくさんおる、こういうようなことも聞いておるのでありまして、政府はやはりあくまでもそうした道理にかなわないことはいけないんだ、これは従うわけにいかない、こういう態度でやってもらうように強く私は要望したいと思うのでありますが、大臣いかがでございましょう。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私といたしましても堂森さんよく御承知のように、今度この問題がアメリカから持ち出されてからもうちょうどまる一年になります。昨年の五月初めにスタンズ商務長官が来て、最初に私外務省に迎えまして、そこで相当の激論をやりました。それ以来私の本件についての意見というものは変わっておりません。同時にこれは直接にはいわば私の守備範囲ではございません。しかし現在各地の機業界それから一口に繊維と申しましても、銘柄はたくさんございますし二次製品はございますし、そして企業の格差もたくさんございますし、中小企業の方々のことを考えれば、いつまでもこういうことがもたもたしていずれかに決着がつかないということはさぞ御迷惑だろうと思うのです。そういうことも考慮に入れていかなければならない。こういう点でいろいろ焦慮いたしておりますけれども、しかしやはり筋目の立つ解決でなければ、今後の日本としての立場ということも、長い目で国益を考えていかなければならない。もうお話しのとおりなんでありまして、ことに前の綿協定のあと、日本としては非常に不幸な目にあいました。こういう最近におけるはだに触れた実感をもって体験をしているわけですから、その辺のところはもう十二分に頭に入れまして、そして向こうさんの希望していることも方法論としては自主規制なんですから、これは業界の方々の納得なくしては実行ができないわけでございます。この点を入れれば三原則じゃなくてむしろ五原則くらいになるわけです。こういう点は十分踏まえまして、ことに前国会とはいいながら国会の本会議の決議もございます関係もございまして、政府としては十分そこのところは腹に据えて、各方面によくいくようにこの上とも努力を続けていきたい。昨日内閣委員会でも非常にこまかい御質疑があって、私は最後に申しましたが、ひとつ御期待にこたえて私どもとしても大いにがんばりますということを申し上げたのでございますが、その気持ちをおくみ取りいただきたいと思います。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間がありませんが、さっきのことばじりをとらえるわけじゃないのですが、外務大臣、業界もこんなことでいつまでも解決しないのでは困る、もうどうでもいい、早く解決すればいい、こうあなたが言ったというのじゃないですよ。しかしそれじゃやはりたいへんなことでありますから、こちらのほうにおきましても、長期戦でもあくまでも筋を通した態度でいってもらうということを重ねて要望いたしまして、時間がありませんから終わります。
  40. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  41. 田中榮一

    田中委員長 速記を始めて。  戸叶里子君。
  42. 戸叶里子

    戸叶委員 この委員会で、まだ先ごろのハイジャックの問題が取り上げられておりませんので、二、三質問をしたいと思います。  私でさえも、あの事件が解決したときにはほっとした気持ちでたいへん感激をしましたので、その中にとじ込められた人たちの気持ちというものはよくわかるわけですけれども、そのうちからたいへんに教えられたことは、もちろん第一に、もうこういうことは起こってはいけないということですし、第二は途中でいろいろ何かわからないことがあるわけでございますが、こういう点はやはり今後はっきりさせておかなければいけないということ、それから第三点は、国交未回復国が関係してきますと、特にそれが分裂国家であるというときには、たいへんいろいろな問題があるということが一つ。いま一つは、人道主義的な立場でいろいろな問題が解決されたとしても、それだけでは済まされないいろいろな問題があるのではないか、こういう問題等を強く感じさせられたわけでございます。そういう点等を念頭に入れながら外務大臣に質問をさせていただきたいと思います。  第一は、中曽根防衛庁長官も御説明になりましたし、また機長も言われたことですけれども日本の防空識別圏までは日本自衛隊が何とかついていったけれども、それから先は、誘導した軍用機はどこの飛行機であったかわからなかったと述べているわけでございます。そこでたいへんに近寄ってきたということは証明はされておりますけれども、その標識が見えなかったというのは政府はどういうふうに解釈していらっしゃるか、この点をまずお伺いしておきたいと思います。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がわからないのですが、標識というのは何でございますか。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 標識といいますか、飛行機に対してはっきりどこの国のであるかとかあるいはどういう型のであるかということが全然わからなかったということでございますけれども、そういう点を政府はどういうふうに解釈していらっしゃるか。たとえば国際民間航空条約の中にも飛行機に記号を掲げるということになっておりますし、また国際条約の中で、日本としては調印だけでまだ批准をしていないヘーグ条約でも、はっきり軍用航空機はその国籍及び軍事的性質を示す外部的標識を用いるべきだということが書いてあるわけですけれども、その飛行機がどういうふうで、どういうふうな飛行機に誘導されたかということがわかっていない、こういう点に対して政府はいままでお調べになったかどうか、この点をはっきり伺いたいと思います。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そうすると、その飛行機というのは「よど号」じゃない飛行機ですか。——これは私は御答弁できません。
  46. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣のいまの段階ではそうおっしゃるかもしれませんけれども、しかし機長自身も何かずっと誘導していった。防空識別圏の外はほかの飛行機で誘導されたということを言っているわけですけれども、そういうふうなことは何もお聞きになっていらっしゃらないわけですか。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうもこれは私の守備範囲以外のように思うのですけれども、私どもは、お答えにならないかもしれませんが、とにかく「よど号」がこういう事件に遭遇したということは、警察等の情報で当日の午前八時過ぎくらいには承知いたしましたが、これは最初は北鮮に行くものだと想定をして、直ちに、当日は経済閣僚会議、閣議が続きましたけれども、外務省においても考え得るあらゆる場合を想定しておいてどういう手順をしたらいいのかということを早急に研究しておいてくれということだけは指令をいたしたわけですが、そうこうしているうちに板付に着いたわけですね。それから、私は一人の国民としてもそうでありますし、おそらく外務省の諸君もみなそうだったと思いますけれども、板付に着いたということでこれは日本領土内で解決することを望んだわけです。そうすればこれはわれわれの仕事ではないというと無責任のようでありますけれども、仕事の系統からいえばそういうことであろうということはまず第一に御了解いただけると思います。ところが今度はそうこうしているうちにどうもこれは平壌向けに行くことになりそうだと判断したことは、あるいは間違いであったか間違いでないかは別といたしまして、外務省もあげて情報の収集につとめましたけれども、平壌向けに行くということがきまったというか、飛び立つよりも前にこれは平壌に行きそうだ。そうした場合においてはどうやったらいいかということで、その手段方法を考えておりましたらば飛び立ったわけですね。そこでソ連政府、赤十字等を通して、要するに朝鮮半島を北上していったわけですから、途中で撃ち落とされたり何かしたら困りますから、韓国政府には撃ち落とさないように、ソ連政府に対しては平壌に着く場合においては北鮮政府によろしく頼むということ、こういう手配をしたわけです。あるいはしつつあったわけです。そうしたら、金浦に着きましたからまたこれは省内引っくり返るような騒ぎをいたしました。これはその事情等はその場におりました者から場合によれば証言をお聞きいただきたいと思います。要するに、私どもとしては与えられた条件のもとにおいて最善を尽くしたのでありまして、何しろ飛行機は千キロですか、ものすごいスピードで飛ぶものではあるし、そしてどこへ行く気かもわからない。あの状態においては平壌に行くということをわれわれは想定したわけです。それがまた金浦に着いたわけです。その間の事情は私にはわかりません。与えられた条件下において何とかして人命を救助したい。こういう人道的な立場に立って、ほかの考慮なくして、与えられたそれらの条件のもとにおいて、われわれとしては最善を尽くしたつもりでございますから、その飛行機がどういうふうに飛んだか、機長等はどういう判断であったか、これは私にお聞きになってもそれは私無理だと思うのです。私は答えられません。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 はっきりしない点がいろいろあるわけでございまして、やはり国民としてはミステリーとして知らないままに通されても困る問題があるわけです。この問題は外務大臣にお伺いしてもいまわからないと思いますが、そこで、いまのお話を伺っておりますと、平壌へ行くものとばかり思っていたらば金浦に着いていたので、外務省としてはたいへん驚かれたということでございますが、外務省としてはっきりわかったのはどの段階でおわかりになったか。まだ金浦へ飛んでいく段階でおわかりになったのか、もう着いてしまってから急いでわかったのかということをまずお伺いしておきたいと思います。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは金浦に着いたというのでびっくりぎょうてんしたわけです。それは想定の間違いだったかどうか、そこの御批判は幾らでも伺いますけれども、全然関与していないんですから、金浦に着いてしばらくしてから、というよりはテレビでわかったわけですね。あなたと同じ立場です、その日は。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで私たちがたいへんふしぎに思うのは、偽装歓迎ということが行なわれたわけですね。その偽装歓迎をするにはある程度の準備がなければならないと思うわけです。そこでどこかから何かの形でそこへ知らせられていかなければならない。そういうふうなことを考えてみますと、これまでの証言を考え合わせると、長野運航部長ですか、その方がアメリカへ頼んでアメリカから韓国へ頼んだ。その間には防衛庁がタッチしていた、こういうふうなことがさきごろの本会議の質問等においてもわかったわけでございますけれども、今回のこういう事件を見ますと、いゆわる自衛隊アメリカと韓国との周で問題をそちらの方向へ持っていったのであって、外務省はつんぼさじきに置かれていた。こういうふうな外交のあり方で一体いいのかということを私どもはたいへん心配するわけです七そういうふうなことがもしわかっていたならば、金浦に着いて偽装歓迎をする前に当然日本政府に知らせるべきではないか。日本政府が知らないでいて、その間に韓国とアメリカとそして一企業の航空部長ですか運輸部長ですか、こういう方たちの間でそういう問題が処理されていくということは、今後においてもいろんな問題を残すのではないか。そういうふうな措置がとられるならば、当然日本政府に知らせるべきであると思うのですが、この点についてはどのようにお考えになりますか。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 つんぼさじきであったかどうか、それは御批判にまかせますけれども、先ほども申しましたように全く——だって異常なる状態において、機長は脅迫をされていたんでしょうし、それからものすごいスピードで飛ぶものに対して、外務省が、あなた、それに指令をするとか相談をするとか、そういう手間ひまも何にも問題にならないんじゃないでしょうか。ですから私は、与えられた条件のもとにおいて人命を助けるということのために、外務省としてなし得ることの最善を尽くしたわけでありまして、この飛行機に対して、かりに外務省に意見があったとしたって指令する余地ないでしょう。機長に対してどうやって電波を送るのですかあるいは機長がその電波を聞いてどういう判断をするのか。結局あの緊急の事態においては、機長の判断、良識にまつよりほかしようがないのではないでしょうか。そして機長の置かれた立場において、機長としては最善の措置をとられたものと思います。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 私の伺っていることはそういうことではなくして、いわゆる一航空部長がアメリカなりそれからまた韓国なりに連絡をして解決しようとしている問題を日本政府が知らないというのは、あまりにも無責任過ぎるのではないか。もしもそういうような依頼があったら、アメリカならアメリカから直接日本に、こういうことがあったんだから金浦に着けるぐらいの報告があってもいいのではないかというぐあいに考えるわけですが、こういう点はいかがでございますか。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはすでに起こった事実でございますから、その事実の以前においてどういうことをしたのかしなかったのかといえば、私がお答えしたとおりでございます、私の立場並びに外務省の立場としては。だって、第一、板付から飛び立ったということもびっくりしたんですから、それはたいへんだ。それは平壌へ行くのだぞということで、平壌に着いての安全着陸その他の手配をして、それは中断したわけです、また金浦に着いたから。それは事実関係はそのとおり、ただそれだけのことなんです。ですから将来こういう経験をあれしてどういうふうにやっていったらいいかということについては、いままだ申し上げるのは早いですけれども、大いに考えて研究していかなければならないと思います。しかもいまあんまり複雑な問題ですししますから、ここで申し上げるところまで研究がいっておりませんけれども、しかし今後どうすればいいかということは大いに考えなければならないと思います。これまでの事件について私を追及されたって、私はほんとうに申し上げることはありません。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 私は外務大臣を追及するとかなんとかいう問題じゃないと思うのです。みんなが苦労して幸いにしてこういうふうになったのですからいいのですけれども、こういう問題を十分に分析をして、そして今後においてこういうことが起こっては困るのですけれども、もしもこういうふうなことが問題になったときには、こういう点を注意しなければならないという対策を立てておかなければならないと思うのです、実際問題として起きたのですから。そして今回はたいへんしあわせなことに、だれ一人も傷つくことなしに解決されたのですから喜ばしいことではありますけれども、ただ国民の中に残っている問題としては、日本政府はあまり知らないのだけれども、一企業の部長が電話をしてアメリカが動いて、そして韓国との間で話がついて偽装歓迎をしてというようなことしかないものですから、みんなたいへんふしぎに思うわけなんです。こういうことは、爆発が起きなかったからたいへんよかったことなんですけれども、今後においてそういう問題を土台にして、どういうふうにしたらいいかという問題の処理を考えておいていただきたい。こういうことを含めまして私は質問しているわけですから、大臣が、いままでのことを追及されても困りますとおこっておしまいになったらお話はできないじゃないですか、質問はできないじゃないですか。こういうことをもし御存じなければ、外務省は手ぬかりでしたけれども、何も知りませんでした、知らされませんでしたということだけしかお答えにならなければいいと思うのです。  そこで、分裂国家としての、外交のない国との関係が非常に複雑であるということを見せられた一つの事件として、私はほんとうに悲しい事件を一つその中で感じたことは、あれほど勇気を持って人質になって、運輸政務次官が、自分が行くというふうに言われて、そうして平壌へ行ったときに、新聞でもテレビでも見ましたけれども、運輸政務次官は一代議士個人として行くのだ、政府の役人として行かれると困るというようなことが新聞に載っておりましたけれども、そういうふうな事実があったのでしょうか、なかったのでしょうか。この点をやはりはっきりただしておかなければならないと思うのですが、それは、韓国にそんなにまで気がねをしなければならないような政府の立場であったかどうか、この点をただしておきたいと思います。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はひとつよけいなことを申してまたしかられるかもしれませんけれども日本の中で、どういうふうにして、こういうふうに終結がついたかということについて聞きただしたいこともたくさんおありでしょう。それは私もわからぬではございません。しかしこういう異常な無法者、北鮮政府にもいやがられるようなこういう人間の行動によって起こった事件であって、しかもこれを人道的な立場に立って、それぞれの政府なり機関なりが、無辜の人たちを助けよう、飛行機も助けてあげようと思って、ほんとうに善意で協力してくれて、かろうじてこの幸いな結果ができたのだと思います。ですから、日本人の気持ちからいって、もっともっとただしたいということもあるでしょう。しかしこうした、イデオロギーを越え、あるいは政策を越えて協力をしてこういういい結果になった、このことに対して、外国の方々がとった措置について、おまえはいいことをやったとか、いや、いいことをやってくれたけれども、こういう変なことをしたではないかというようなことを、公の国会におきましてあまり細部にわたって追及をされるというようなこの取り上げ方は、私は外交を担当している者といたしまして、そこについてはどうかひとつ良識を御発揮願いたいということを、よけいなことではありますけれども、私としては明らかにしておきたいと思います。  それから、山村君が政務次官であったか、その資格はどうかというようなことについて、日本政府としては何もそういうことを言ったことはないと私は承知しておりますけれども、これも緊急なところで、現場におけるいろいろのことがあったかもしれません。あるいは御本人が、こういうことであれば迷惑をかけるという意見であったかもしれませんが、私はそういうことはわかりません。しかし、要するに山村君自身とすれば、百人の身がわりであるのだということをあらゆる意味において、形の上にも明らかにしておきたいということで、一念こってその考え方に集中していたということは、まぎれもない事実であると考えます。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣のおっしゃることは私はよくわかります。というのは、善意を持っていろいろな国でいろいろやってくれたということに対しては、ほんとう日本国民として感謝をし、またそれだけにああいう犠牲がなくて済んだと思うのです。しかしそのわからない問題をそのままにしておくということは、やはり私たちとしても気の済まないことですから、はっきりさせてもらいたいという気持ちで聞いておるわけですけれども外務大臣はその該当者でなかったし、外務省としては全然わからなかったというようなことで、お答えになれないことは、これはしかたがないと思います。  それから山村さんの問題も、私どもはたいへんりっぱな行為をされただけに、あまりにも冷たい仕打ちに対して憤りを感じたものですから、やはりただしておかなければならない、こういう意味で伺ったわけでございますけれども、そういう点はやはり誤解のないように、初めからおこらないで答弁していただきたいというふうに私はお願いします。  何か参議院のほうへいらっしゃるようですから、あとの問題につきましては、あとでこちらへおいでになりましてからもう一回伺いたいと思います。      ————◇—————
  57. 田中榮一

    田中委員長 連合審査会の申し入れに関する件についておはかりいたします。  運輸委員会調査中の日航機乗っ取りに関する問題について、運輸委員会に対しまして連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 田中榮一

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、連合審査会開催の日時等に関しましては、運輸委員長と協議の上追って公報をもってお知らせすることにいたします。  この際、暫時休憩いたします。    午前十一時三十六分休憩      ————◇—————    午後零時五十三分開議
  59. 田中榮一

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。大久保直彦君。
  60. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 外務大臣お尋ね申し上げますが、このたびの日航のハイジャック事件の勃発によりまして、このたびハイジャック防止についての対策として、政府も特別立法を考え、厳重にこれを規制しようとしているわけでございますが、私も人道上の立場から、かかる凶悪犯罪に対しては、きびしく取り締まることについて、賛意を表明するものでありますけれども、ただ刑罰を重視するあまり人権無視にならないように、ともどもに御注意していただきたい。このことを要望いたしておきたいと思います。  私はきょうは、ハイジャックに関連いたしまして、最近国際的な政治犯罪としての外交使節に対する政治テロ事件がひんぱんに起きているわけでございますが、最近そういった傾向が、まことに残念でございますけれども、私たちもいままで予期しなかったハイジャック事件が日本に起きたということにかんがみまして、この政治テロの問題についても無関心ではいられない事態ではないかと思うわけでございます。幸いわが国には、まだこういう事件はないわけでございますが、わが国の大口総領事がサンパウロにおきまして、こういう人質事件等も起きておりますし、この種の犯罪は私たちの身近な問題として取り組まなければならない。すみやかに防除措置を講じなければならないと思うわけでございますが、この点につきまして大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともでございまして、実はお尋ねの以外にも及ぶかもしれませんけれども政府といたしましては、大口総領事事件が起こりましたときに、これはなかなかたいへんなことである。幸いにあの事件もたいへんな御心配をいただきましたが、四日間で無事に帰ってくることができました。やれやれとほんとうに率直なところ、そういう感じがいたしましたが、直ちに本件につきましては、まず在外の日本外交使節の身柄の安全ということについて配慮いたしたわけでございます。同時に在京あるいは在日の外国外交使節については、かねがね十分の警戒はしておるつもりではございますけれども、最近の政情等あるいは国際情勢から見まして、特にその中でも警戒を要すると思われるようなところには、特に従来にも増して配慮するよう、それぞれの警察当局にもお願いをしておるわけであります。ところが、やはり昨日なども大事には至りませんでしたけれどもノビコフ氏の一行が京都に入りましたときに、ビラを散布された。その他の心配も起こりますので、なお一そう、これは起こったら取り返しがつきませんから、十分の措置をとるように、こういう点につきましては、少し過剰になり過ぎるくらいのことをいたしませんと、ほんとう目的は達せられないのではないかとも思います。しかし、それぞれの国なり、あるいはそれぞれの国の外交官考え方等もございますので、その辺のところは十分連携を緊密にいたしまして、十分の配慮をしてまいりたいと考えております。
  62. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいま御答弁の中にございましたが、この問題については、「外交関係に関するウィーン条約」というのは、わが国も加盟いたしておりますが、この条約の中では、外交使節の身体の不可侵並びに外交官の不可侵ということがうたわれておるのでありますけれども、身体の保護というのは保障されていない、そういった問題は規定されていないように、私記憶いたしておりますが、ただいま大臣のお話の中でも、たとえばもっと具体的に外交使節に対する犯罪の防止のために、より強力な具体的措置がなされなければならないのではないか、私もそのように考えるわけでありますけれども政府はこの外交使節の身体の保護という問題について、特別立法をしてでもこの問題に厳重に対処していく、こういう姿勢をとられるべきではないかと思うのですが、特別立法に対する大臣のお考えはいかがでございますか。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はこれも率直に申しまして、外国外交官の保護について特別の立法というところまでは、いままだ考えて、用意しているわけではございません。しかし、先ほども申し上げましたが、そしてまたいまお尋ねにもございましたが、「外交関係に関するウィーン条約」によって、外交使節団の交換、外交官の身体保護のために接受国はすべて適当な措置をとる、こういう特別の責務を、接受国としては負っているわけでございますから、日本はこの条約にもちろん参加しております。もちろん、こういうような特別の責務を持っておるわけでございます。そこで、外務省として現にやっておりますことは、まず警察当局といろいろな面において常時密接な連絡をとることが何よりも大事でございますが、具体的には警察当局によって大使館、事務所及び公邸の警察官による巡らをいたしております。それからパトロールカーによって重点警らも行なっております。それから外交官自身の身辺警護につきましても、必要に応じまして適切な措置をとっております。それから大使の地方旅行の際には、事前に警察庁に必ず連絡をとりまして、警護の措置をとってもらっております。それからさらに、具体的には外国使節の公館、事務所等の所在の、たとえば東京都内で申しますと、警察の担当の区域が相当各所に分散しておりますが、各警察署との連絡、これを緊密にし、特に留意するようにしてもらっておるわけであります。先ほども触れましたように、その中でもいろいろな関係から、特に情勢に応じて警護を厚くしなければならぬ場合が現にあるわけでございます。そういうときに、その当該大使館あるいは大使等との間においては、外務省といたしましても特に配慮いたしまして、警察当局に万全の措置をとってもらっておりますので、現状においてはまずだいじょうぶ、変なことは起きないと思っておりますけれども、いま御質疑もございましたが、今後さらにこれで足りなさそうに思われる場合においては、これらの条約あるいは現実の措置でカバーできそうもないような面を想定されますような場合には、何か適切な措置をさらに加えなければならないかと思っております。
  64. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいま御答弁の中にございましたウィーン条約の中の接受国が適当な処置をとるという問題がございましたけれども、確かにその身辺警護、護衛その他の問題についてはより一そうの手は打たれることは、これは可能であると思うのですけれども、ただ問題は、もうこんなことを申すまでもなく、外交使節に対する犯罪というのは、ただその犯罪のみにとどまりませず、国と国との関係、国交関係にまでいろいろ支障を来たし、また問題が発展するということは明瞭な事実でございますけれども、私は必要以上にそういったものに対する恐怖感といいますか、不信感を抱く必要はないと思うのですけれども、ただ身辺警護だけではなくて、わが国の現状としてはそういった外交使節に対する犯罪の規制も現行刑法でそれを取り締まる以外にはない、こうなっておるわけでございますが、戦前の刑法には外交使節に対する別項が定められておったように聞き及んでおりますが、現行ではこれがはずされておるわけでございますけれども、むしろ私はこの際六カ月にわたる万博の開催中でもありますし、海外高官の往来も非常に激しい時期で、こんなことが起きてはまことに困るわけなんですが、万が一の不慮の事件に対して、もっと政府側から強い姿勢での特別措置また立法等考えてしかるべきではないか、重ねてお伺いするわけでございます。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 条約と法律の関係につきましては、条約局長から説明いたさせます。
  66. 井川克一

    ○井川政府委員 お答えにならないとは思いますけれども、御指摘のとおり旧刑法第九十一条に特別規定があったわけでございまして、新刑法にはこれが落とされております。ただ御存じのとおり現在刑法全面的改正のために審議会が設けられて審議されておりまして、私どもの知っております限り、この問題は、元首及び外交使節に対する特別の刑罰の問題は、全面改正のうちの一つの問題として現在審議されておりまして、またすべて全面的改正についてもそうでございまするけれども、まだ結論が出ていないと聞いております。
  67. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いまの問題は、法務省の方にちょっと御見解を伺っておきたいと思うのですけれども
  68. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 御指摘のように、外国の元首あるいは外交使節に対しますところの保護というものは、国際慣習法上も、あるいは先ほど御指摘のありましたウィーン条約等からも、これは十分保護しなければならぬものであるというふうに、警察あるいは検察当局としては考えておるわけであります。  問題は、立法の点でございますけれども、先生から御指摘がありましたように、改正前の刑法におきましては、外国の元首あるいは外交使節がわが国に滞在します場合に、これに対して暴行とか、あるいは侮辱を加えた場合に、一般の暴行、侮辱よりは重く罰する、そういう処罰規定があったわけでございます。ところが刑法改正の際に、これは天皇危害罪がなくなりましたのと、それとの均衡というような角度から実は削除になりまして、現在に至っておるという状況でございます。  御指摘の点は二つの角度から見る必要があろうというふうに思うのでありますが、その一つは、非常に重い犯罪、つまりこの間起こりましたような、大使を殺害するといったような事件というようなものを考えてみました場合には、これはわが刑法におきますところの殺人罪、これは死刑、無期を含む処罰規定があるわけでございまして、つまりは、そういった非常に重要な地位にある人に対する殺害の場合も含んで規定しておるというふうに考えていいかと思います。不法に監禁したような場合についてもそうでございますし、あるいは国外に移送する目的で略取したり、誘拐したりするという場合につきましても同じように重い刑をもって規定をしておりまして、そういう重要な人たちに対する……。
  69. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 すみませんが、時間が二、三分しかないものですから。
  70. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 それでは、問題は、軽微なものにつきましては、加重規定を設けるかどうかということにつきましては、先ほど外務省から御指摘がありましたように、現在刑法全面改正の委員会においてひとつ検討がなされておるということでございます。
  71. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいま公安課長の答弁の中に、国際慣行という問題がございましたのですが、外務大臣にお伺いしたいのですけれども、ハイジャックの場合は、その犯人が指定する地域に飛んでも人命救出を最大事優先する、こういう国際慣行であるというように私承知いたしておりますけれども、この外交使節の人質の場合ですね、どういうふうに対処するかという国際慣行はあるのかないのか、その点はいかがでございますか。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは条約上の根拠において外交使節がハイジャックなどにあった場合にどう対処するかということについては、これは何も根拠となるような条約等はないように承知いたしております。
  73. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 時間がございませんので、結論だけ、最後の問題だけお伺いしたいと思いますが、新聞報道によりますと、西ドイツのこのたびの駐グアテマラ大使の一件につきまして、外交官保護のための規則の規定を検討するための国際会議を開きたいと、こういうふうに提唱されているようでございますけれども、この点、政府に正式な申し入れがあったのか、またそれに対する、もしあった場合、そういう発案に対しまして、外務大臣のお考えだけ伺って終わりたいと思います。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 情報として聞いているだけでございまして、公式のまだ連絡はございません。もしありました場合には、安全を保護するということには、もちろん趣旨において異議はございませんが、そういう方向で協議に応ずる用意はございます。しかしまだこちら自身としてどういうふうに対処していいか、それこれ自主的にといっては、この場合当たらないかもしれませんけれども日本としてどういうふうにしたらいいかということについて、いま少しまずみずから検討させていただきたいと思っております。  それからなおよけいなことでありますけれども、今回のハイジャックの事件について、いろいろ幸運に恵まれたと思いますけれども、幸いにして外国人の乗客はきわめて少なかったこと、あるいは外交使節等は乗っていなかったこと等は、これは偶然なんでありますけれども、私どもとしては非常に幸運であったというように考えておりますので、将来の対策としてはそういうこともあわせまして十分あらゆる想定のもと考えなければなるまいと思っております。
  75. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 くどいようでございますけれども、こういう西ドイツの提案に対しては、日本政府としては応ずる気持ちはある、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ございます。
  77. 田中榮一

    田中委員長 戸叶里子君。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 水産庁に一、二問伺いたいと思いますが、ソ連とのカニ交渉が何か仮調印をしたということを聞いておりますけれども、新聞等によりますと、何か来年は一〇%くらい規制を受けて、漁獲量で前よりも少なくなっておるということを聞いておるのですけれども、その辺のいきさつ、どうしてそういうようになったかということについて、参考までに聞かしていただきたい。
  79. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 今年度の交渉におきましてソ連わが国と対立いたしました点の大きな点は二点でございます。一点は法的立場でございまして、一点は資源の評価の点でございます。法的立場と申しますのは、わが国は、カニは公海漁業資源であって、わが国の漁船並びに漁業者が北太平洋の公海におけるカニをとる権限があるという立場でございます。ソ連側としましては、カニは大陸だな資源であって、排他的管轄権を持っておる。そこにおけるカニについて保護、管理並びに開発はソ連の権利であるという主張で対立いたしております。  もう一点につきましては、カニの資源が非常に減っているというソ連の主張でございまして、わが国の主張といたしましては、あるところにつきましてはカニの資源は現状でおおむね再生産に支障はない。ある区域につきましては、むしろこれからさらに開発していくべき資源であるという点で対立いたしております。二月七日からこの会議をやっておりましたが、両方の見解が対立したままで過ごしてきまして、四月八日の出漁日の迫った四月七日になりまして、双方の妥協で協定が仮調印になったわけでございますが、その場合に、法的立場は昨年どおり両方の立場をたな上げするという点でございますが、資源問題につきましては、一部ソ連の言い分をのんで、漁獲量が少なくなっております。全体といたしますと昨年より約一〇%少ない点で妥結いたしております。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 これまでにカニをとっておりました協定というものがきめられたのは四十二年ですか、それは一体期限か何かあったのでしょうか、それがどういうふうになったかということを伺いたいのです。
  81. 角道謙一

    角道説明員 いまの御質問の点は、日ソ関係のカニのことだと思いますが、カニの関係は、従来日ソ漁業委員会におきまして三十三年以来ずっと漁区、船団数等は取りきめております。昨年から日ソ漁業条約からはずしまして政府間協定にする、そういうことでございます。  それからもう一点、四十一年の取りきめといたしまして、四十二年日ソ委員会等の西カムチャツカのタラバガニにつきまして、船団数、カニの漁区の数、漁獲量、そういうものを取りきめました協定と申しますか、長期の取りきめと俗に申しておりますけれども、そういうものが一部ございます。その効力問題につきまして、やはり昨年カニの協定を結ぶときに問題になったわけでございますが、ソ連側は、長期取りきめなるものは、現在は政府間協定を結ぶ以上、それは有効ではないという立場をとっております。私のほうとしては、日ソ漁業委員会当時もそういう取りきめは両者間の合意である、したがって当然政府間の合意としてあるのだというような主張をしております。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 一方では有効である、有効でないという立場で、今回のいろいろな取りきめがされてきたと思うのですけれども、それはお互いに違っているのですから、何か調整をとらなければならないのではないかと思うのですけれども、違った立場で今度の調印ということになったのか、それはタラバガニだけの問題ですか、この点を伺います。
  83. 角道謙一

    角道説明員 長期取りきめと申しますのは、両カムチャツカのタラバガニ漁業の問題でございます。現在やっております政府間のカニ協定では、これ以外に西カムチャッカのイバラガニであるとか、オリュートル湾のズワイガニとかあるいは樺太、北海道の周辺のカニ等、そういうものを全部包含しております。いま御指摘の西カムチャツカの長期取りきめにつきましては、昭和四十二年に一応そういうものが成立した。そこでその取りきめにおきましては、四十四年以降も昨年と同じ四船団、漁獲量でいいますと二十一万六千箱、漁区の割り合い、ソ連の船団の数八船団、日本側の船団の数四、そういう割り合いでやるという取りきめになっておりまして、昨年協定を締結します際にソ連側が、これはすでに先ほど申し上げましたように効力がないということを申しまして、私のほうは当然有効であるという主張をしていたわけですが、結局効力問題については全然昨年は合意ができませんで、ただ結果としてソ連側が長期取りきめ当時の内容のものを西カムチャツカのタラバガニについては認めた、そういうもので合意は成立したと思います。今年は最初から船団の数であるとか漁区の割り合い、漁場等につきまして非常にきびしい規制をした。ソ連側としては、当然昨年と同じように長期取りきめは効力がないという立場をとりました。私のほうとしては、従来の合意の内容が六九年以降も続くということで、ソ連側にその撤回を求めたわけでございます。結果的には船団の数あるいは漁場の配分の比率、これは長期取りきめでいく、漁獲量につきましては先ほど次長から説明がありましたが、一部譲歩いたしまして十八万三千箱というかっこうのものになっております。資源状況についてはソ連側とわがほうといろいろ主張が対立しております。ソ連側も昨年は六船団しか出ておりませんで、漁獲量もソ連側は四十三万二千箱というものが三十七万箱程度というように、漁獲量もソ連側は減った。そういうような事情もありまして、不満ではありますけれども、十八万三千箱というもので今回最終的に合意をしたという経過でございます。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、四十二年の協定というのはソ連側は無効だ、こっち側は有効であるというような立場で議論をされてきて、調整をとって内容において妥協した。したがって、まだ日本としてはこれは生きているのだという考えでおるわけですね。それをまず念のために伺いたい。そしてことし調印をした分、つまり一〇%漁獲量が減らされたというもの、これはことし限りのものですか、将来また交渉をし直してどうにでもなるものでしょうか、この点を伺っておきたい。
  85. 角道謙一

    角道説明員 ただいま御質問の第一点につきましては、私ども内容においては一部譲歩いたしましたけれども資源状況もソ連側の主張もありますし、ソ連側の主張もそういう事情であったということから、わがほうも最終的に、漁期も迫っております関係で一応取りまとめたわけであります。しかし船団数あるいは漁区の割合等は、長期取りきめどおりでございますし、私ども長期取りきめと申しましてもやはり当然資源状況に左右されるべきものでございますから、これについては今年のものについてはそういうものだと一応理解をしまして、来年以降も当然その内容の実現というものを強く求めたい。  ただ、第二点の御質問にも関連しますけれども、現在の協定は一年間の暫定協定であります。したがいまして、今年のカニの資源状況等を見まして、私どもとしては今年の漁獲量程度であれば、資源状況もおそらくそう悪くはならないと思いますが、今年の資源漁獲状況を見まして、その上でさらに来年度の交渉においては資源状況に著減がない限りにおいては、従来どおりの長期取りきめの内容を求める、そういうことになるかと思います。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点で終わりますけれども、来年はこの規制をゆるめられるという自信がおありでしょうか、どうでしょうか、今回の交渉を通して。といいますのは、かん詰めの中でカニかんというのはわりあいに高いのですけれども、それでも日本人は好んで食べますが、今度また規制されたからますます高くなるというと、物価のほうにまた影響してくるものですから、私たちも関心を持っているわけでございますけれども、この点だけ伺いまして、私の質問を終わります。
  87. 角道謙一

    角道説明員 ただいまの御質問の点は、私どもとしてはまだいまの段階ではどうと申し上げられませんが、むろんカニの取りきめなるものは資源状態を前提にして行なうと思います。私どものほうとしては今年の交渉経過は非常に難航したわけでございますが、来年におきましても今年の漁獲状況というものを前提に調査しました上で、むろん私どものほうとしては資源状況は悪くならないと思いますし、その上に立ちまして、カニ類についての従来の実績というもの確保するように努力してまいりたい。また特にズワイガニ等はまだソ連側においても必ずしも十分商業的開発をしてないので、こういうものについては積極的に開発を進めていくべきである、そういう態度で明年度の交渉に臨みたい、こう考えております。
  88. 田中榮一

    田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる十七日午前十時より理事会、十時十五分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時三十三分散会      ————◇—————