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1970-03-18 第63回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月十八日(水曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 戸叶 里子君    理事 大久保直彦君 理事 曽祢  益君       石井  一君    小坂徳三郎君       中山 正暉君    野田 武夫君       村田敬次郎君    山口 敏夫君       豊  永光君    加藤 清二君       堂森 芳夫君    松本 七郎君       山本 幸一君    中川 嘉美君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 黎一君         外務大臣官房領         事移住部長   遠藤 又男君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     江崎 真澄君   多田 時子君     近江巳記夫君 同月十八日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     山口 敏夫君   近江巳記夫君     樋上 新一君     ————————————— 三月十八日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国オーストラリア連  邦との間の協定締結について承認を求めるの  件(条約第一号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国イタリア共和国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第二号)(参  議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国とグレート・ブリテ  ン及び北部アイルランド連合王国との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第三号)  (参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国とインドとの間の協定を修正補足す  る議定書締結について承認を求めるの件(条  約第四号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  旅券法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 きょう外務大臣に、主として中国に対する問題の基本的な問題をお伺いしたい。  この前の日曜日に、NHKの放送討論会賀屋さんだとか、藤山さんたちが出て中国問題を討論されておった。内容を聞かれましたか。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 聞いております。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 聞いておられる。あのときに田川さんも指摘しておったのですが、賀屋さんが非常に重要な答弁をしているわけです。私もあれをずっと聞いておりましたが、藤山さんが一貫して主張されておるように、やはり日本政府中国に対する基本的姿勢、今後政府ほんとう日中関係を打開するという意思があるならば、問題は基本的姿勢になってくるだろうと思います。それで、これは時間もありませんから、政府が今後どういう具体策をもって中国関係を好転させるかということにまで触れることができるかどうかわかりませんけれども、まず第一にあのときの賀屋さんの発言、そしてまたこれを重大発言だとして指摘された田川さんの発言、それをめぐる問題を伺っておきたいのです。これは日中関係戦争状態といいますか、法的な戦争状態処理というものは、もう中華民国政府相手にしてこれを終わったんだという、そういう発言賀屋さんによってなされているわけです。これはいままでの歴代政府外務大臣あるいはアジア局長答弁からしても非常に問題になると思うので、この点現外務大臣のあなたの考え方をここに明確にしていただきたい。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは日華基本条約の問題が中心になると思いますけれども、日華基本条約締結の当時のことについて、いろいろお話しを申し上げましてもこれはよろしいかと思いますけれども、条約において示されておるところは、要するに、中国を代表する中華民国政府というものが、日本国との間に基本条約を結んだわけでございますから、条約といたしましては、たとえば戦争状態が終わったこととかあるいは平和状態が回復したとかいうようなことについては、この条約によって終結をしたものと解せられるのが当時の解釈であり、またそれが条約としてはそういう解釈が正しいのではないかと思いますが、同時に、しかし、たとえば通商問題でありますとか、土地に付属して直接の関係があるような問題については、これは統治権が現に及んでいるところに限定して考えなければならない問題でございますから、そういう点につきましては、実際の条約の効果の及ぶところというものはおのずから限定される、こういうのが当時からの解釈であり、そしてその中国代表権という問題がその後も今日に至りますまで、たとえば国連を中心にして考えれば、多くの国々が中国代表権というものは中華民国政府が代表している、こういう立場をとっているというのが現実の姿であろうと思いますが、同時に現実にしばしば問題になりますように、中国大陸においては中華人民共和国政府というものがあるという、その姿は現実の姿である、これがなかなか微妙なところであって、日本政府といたしましては——二つ中国というようなことには、双方とも、北京側においてもあるいは台北側においても容喙を許さない、一つ中国であるという立場をとっておりますから、これに対してわれわれとしてとかく論評をすべきものではない、かように考えておるわけでございます。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 あのときに、山田さんもたしか指摘したと思うのですが、確かに当時政権選択という立場からは、政府中華民国政府選択して条約を結んだわけですね。だけれども、いまも通商その他の問題で外務大臣が触れられたように、実際に支配しておる、現実支配の及んでいる範囲ということになると、これは当時のサンフランシスコ条約及び日華条約当時から、吉田さん時代から一貫して、台湾澎湖島に限定されておるというこの現実の上に立って、そして条約論をさらに展開している、こういうことだと思う。この現実の事実というものはやはり外務大臣の認識も変わりないと理解していいですか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この間のテレビの討論ということは別にいたしまして、政府の見解というものは、先ほど私が申しましたような解釈というのですか、理解で一貫をして続いておる、かように存じております。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 条約論の場合も、いままでの歴代アジア局長その他の答弁をずっと振り返ってみると、はっきり中華民国政府台湾及び澎湖島に限った限定政権という答弁をしているのです。その点は変わりないのですね。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、限定政権ということばを使ってはいないかと思いますけれども、現実事態、それからこの条約立場というものとには、現実の、何と申しますか、状態から見れば、なかなか割り切れないところがあるということは私が申し上げるまでもございませんけれども、条約としてのたてまえからいえば、中国を代表している中華民国政府との間に基本条約が結ばれて、その角度から見れば国を代表して戦争状態終結というようなことを結ばれた、その点については、これは全中国を代表して結ばれたものである、こう私は理解すべきものだと思います。その点は従来からの政府考え方と今日もその限りにおいては変わるところはない。しかし基本条約締結の当時におきましても、いま申しましたような、たとえば通商その他の点については、現実支配が及んでいる地域にしかこの効力は及ばないものであるということになっておりますから、そういう意味からいえば、それは限定されたものであるということが言えると思います。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 法理的にはそれを正統政府だと解釈しながら、現実には大陸には支配が及んでないわけですから、その現実の事実を認められるのならば、法理論だけではなしに、いま中国日本との関係を打開しようというのは、これは実際の政治の面でその現実の条件の上に立脚しなければ、法理論だけ振りかざしていたのでは打開できないわけなんで、そこに問題があるわけでしょう。藤山さんの言う基本的姿勢が大事だというのも、そこのところをついているわけです。法理論一点ばりで言うのなら、日華条約を結んだときと何ら変わりはない。しかし当時から政府の説明しているように、それは日本政府中華民国政府選択したのですから、その中華民国政府がただ法理的に唯一の主権者であるばかりでなしに、現実大陸支配を及ぼすことを期待する、そういう期待をすることは、それは政府の自由でしょう、そういう答弁をいままでもやってきました。だけれども、その現実の動きというものは、政府期待するようには動いていないのだから、むしろ国際的な発言力その他では、政府期待したと反対の方向に、だんだん中華人民共和国政府の力というものが国際的には増大してきているわけなんです。  そこで、自民党政府としてもあるいは自民党自体としても、いろいろな人を派遣して、貿易面から打開していこう、さらにそれでは足りない、もっと日中の関係を全面的に改善していこうというような発言が総理からもなされるという事態になってきたわけです。こうなると、やはりその現実事態というものにもつと目を向けて、そうして現実支配が及んでないし、だんだんその支配する力というものが弱まってきておるという、この現実を考えるならば、やはり中華民国政府は実態的には限定政権であるということはいえると思うのです。それを、限定政権ということばさえ回避しようという、そういう態度に終始しておったのでは、これは幾ら松村さんを迎えるためにわざわざ飛行機を出そうが、そういう小手先の細工をどんなにしても、私はこれはごまかしにすぎないと思うのです。ただあたかも政府が前向きに日中関係を改善しよう、前進させようとしておるのだというポーズを国民の前に示したにすぎない、これは一種の欺瞞です。  ですから、この現実に立脚した、もっと政府のはっきりした姿勢というものを私は要求せざるを得ないし、それがまた自民党藤山さんなんかの代表した人の発言になって、ああいう公の席であそこまで——普通に、常識的に考えれば、あれほど大事な問題で基本的な意見が分かれておるものが、よくもうまく一つの政党にまとまっているものだと思うほど、これは大きな違いがあるのですから、政府ほんとう日中関係を打開しようという方針があるのならば、ああいう公の席で自民党内で意見の食い違いのあった点について、もう少し前進的な解釈を、また態度政府もとるべきだと思うのですが、いかがですか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、別にそう荒立てておっしゃるほどのことではないと思うのです。私が御説明いたしましたのは、日華基本条約というものの説明と、それから現実に国際的にある現実の姿というものとの間にはいろいろの点でちぐはぐな点もあるということは認めているわけです。そうして現在また将来の展望に立ってこの事態をどういうふうにしていったらいいか、しかし同時に、日本としては日華基本条約によって中華民国政府との間に友好関係を現に持っておるわけでもございますし、それから先ほども言いましたように、両方がともに一つ中国ということについて固執し、かつ二つ中国ということについては、これはもう第三国の云々すべきことではないという態度が堅持されているわけですから、その間に伍して今後どういうふうにやっていったらいいかということについて、政府としても着実に、そしてこれはいろいろの意見があるわけでございますから、それらの意見の中に立って、政府としてとるべき方途はどこにあるかということについて、着実に漸進的に、いろいろの流動的な流れの中にあって、かついろいろの意見のある中にさおさして、日本としてとるべき態度というものをどうしていったらいいかということについていろいろと考えているということは御承知のとおりの状況であると考えます。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 それは外交技術面からいうといろいろ苦労されておるでしょう。しかしいままでの政府が説明したように、それならば今日の時点に立ってもなお台湾澎湖島現実支配しておる中華民国政府というものが大陸にまでその支配権が及ぶということを依然として日本政府期待されるんですか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうことを申しておるわけではございません。現実事態に即し、かつ将来を展望して、いかにあるべきかということについて探究をするという態度をお互いにとっているのが日本立場ではないだろうかと考えます。そして政府といたしましては、一般論ではございますけれども、イデオロギーが違う、あるいは体制が違うところとも友好親善関係を結んでいきたいというのが基本的な姿勢でございますから、それと現実事態あるいは過去からのいろいろの経過というようなことも考慮の中に入れて、そこに着実な行き方を漸進的に考えていくというのが、日本外交としてのとるべき態度ではないかと私は考えております。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 二つ中国論は両政権が否定している、それはわかるのです。それだから政府はその選択をした。いままでずっと中華民国政府が全中国支配するということを期待しますという態度だった。現実にはそれが期待はずれになっているわけです。ですから吉田内閣当時から、日華条約を結んだ当時から限定されているのだ、台湾澎湖島にその支配は限定されているのだという事実は認めてきたわけですからね。ところが政府の国会における答弁などを聞いていると、特にあなたが昨年の三月十三日ですか、参議院予算委員会でなされた答弁でも、はっきり中国全土支配する政権と認める、こういう発言をされておるんですね。正確なあれは、中国全体の主権者としての中華民国政府、こういうことばをたしか使われたんですね。そうなるとそのときは法理的に述べられたんでしょう。しかし一つ中国論政府が賛同する以上は、その現実支配状況に応じていつかは選択を変えるか、あるいは過去において条約締結の当時選択した政権を依然変えないとするならば、二つ中国論でいくか、あるいはその選んだ政権が全中国支配することを期待するか、いずれかでなければ私は解決は永久にできないと思うのですよ。その点をあいまいにしながら小手先で日中の関係を何とかよくしようとしてもなかなか打開できないというその点から、今日の時点においては、当初の、中華民国政府台湾澎湖島に限るんだという、そういう一貫した答弁を貫くか、あるいは現実に立脚して政府基本姿勢というものを変えるか、いずれかでなければ政府が言う日中の国交回復あるいは日中関係の改善というものは、口先だけのことになるではないか。この点をもう少し明確にしていただきたいということを聞いているわけです。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 選択ということになりますと、平たいことばで言えば、一つ中国二つ中国というところにぶつかってくるわけでございますね。私はもう少し基本的なことを申せば、こういうふうな状態にあることは、第三国あるいは隣国としても非常に好ましいことではございませんから、二つ中国ということは、中国主張いずれから見ても一つ中国でなければならぬということは、中国側からそういうふうなことがいわれておるわけですから、私は率直な希望を言えば、これはひとつ両者で平和的な話し合い一つにまとまるようなかっこうで中国側処理ができれば一群望ましい、またそれを期待すべきではないかと思います。  同時に、お尋ねからはずれるかもしれませんが、この二つ武力抗争をする、そうしてそれがまた隣にも影響してくるというような事態は、予見はされないけれども、万々一でもそういう状態になることは日本としては全く欲せざるところである、こういう態度が基本的にとるべき態度ではないだろうか、かように考えております。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、その両政府の間の話し合いを希望されるだけなんですか、あるいは具体的に自民党のどなたかが向こうへ行かれるというようなときに、そういう問題についても少し具体的に前進するように話そう、そういう方針があるのですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういう方針はございません。と申しますのは、これはやはり平たく言えば中国内政上の問題であって、たとえば五原則というような北京側主張しておられることから言いましても、逆にこちら側から内政干渉というようなことになるのは望ましくないことである、こういう基本的な考え方から言えばそういう方針はとるべきではない、かように考えております。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 内政上の問題なら、なぜ二つ政権があるのに日華条約当時片方だけを選択したのですか、矛盾しているじゃないですか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから日華基本条約ができた当時、そうして条約中心にして考えれば私の考え方は先ほど申し上げたとおりでありますけれども、国際的な情勢というのは、申すまでもありませんが、この問題に限らず流動的であり、同時にまた現実を踏まえて将来の展望に立っていかにすべきかということを私は常に考えていくべきではないか、かように存じております。  同時に、この中国二つ政権という問題については、私は中国側が考えておりますように内政上の問題ではないか、これはどうか両者において話し合いで平和的に解決をされることが望ましいということを、これは隣国である日本のみなら、ず、ほかの国でもそういうふうに考えているのではないかと思います。これに対して先ほど申しましたように、いかなる選択をするかということは、私はその問題に直接触れることになって、先方に対しましてもこれは干渉じみた態度になりますから、これは控えるべきじゃないか、かように存じておるわけであります。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ当時は選択した、しかし、すべて国際的に流動的だから今日の事態になってきた、そしてこれは内政上の問題だ、それならば、過去に選択したということが期待どおりいかなかったわけですから、この際もう一ぺん内政問題に戻すために、それじゃ一たん承認した政府を取り消す、そうして内政上の問題として両者話し合いでいずれか決着を待つ、そういう態度に出られませんか、また出るのが筋じゃないですかね。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申しましたように、現実の問題とし、あるいはいままでのいろいろの点からいって、旧華基本条約というものが結ばれており、そうしてその結んだ相手国政府との間に親善友好関係を維持するということは、これは現状において守っていかなければならないことであると思います。一たんかような条約によって、そして誠実に信義に基づいてこういう条約の履行をしていくということは、これは現実の課題として非常に大事なことであると思います。しかし同時に、将来の展望からいって、どういうふうに考えていくかということは、私は常に流動する世の中において、日本としていろいろと考えかつ検討しておくということは必要なことではないかと思います。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 これ以上は水かけ論になりますからここで打ち切っておきたいと思いますが、いまのような態度ならば、現実がいかに進展しようが過去のこの条約に固執しておる、こういうことでは、小手先でどういう対策を講じようが、私は日中関係というものはあなたの手では前進しないと思います。もっと藤山さんその他自民党の中の意見にも傾聴されて、重大な反省を加えていただくことを要求して、私の質問を終わります。
  24. 田中榮一

  25. 青木正久

    青木委員 全国民悲願であります沖繩の問題が片づきまして、次は北方領土ということになっているわけであります。私はこの北方領土の返還のことにつきまして若干お伺いしたいと思います。時間がありませんので、端的に御質問したいと思います。  まず、この問題は一昨年の三木外務大臣コスイギン首相との間で中間的なもので解決するというので、一歩前進したような感を受けたのでありますけれども、その後日本側からの接触によりますと、ソ連政府はあくまでも解決済みだという態度を繰り返しているわけであります。そこでこの北方領土問題につきまして、一体交渉はどうなっているのか、また今後どういうめどで交渉を続けていかれるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ソ連との関係につきましては、現在の状況においては正常なといいますか、必ずしも悪くないと申しますか、そういう関係日ソ間があると私は認識いたしておるわけであります。  それから今後において日ソ間においてはもっと友好の度合いが増し、親善関係が大いに増進されることが相互のために望ましい、そのために領土問題を解決をして、平和条約締結ということをすみやかにやりたいというのが日本政府としての立場でございますから、私は姿勢として対決の姿勢というよりも、日ソ関係をよりょくする、その中でこの領土問題というものを、平和的な話し合いでさらにより大きな日ソ関係を前進させ画期的によくする、そのためにもこのことがどうしても日本側から見れば全日本国民悲願の上に立った要望であると理解しておりますから、その点からいっても、ソ連側がここで過去におけるいろいろの主張発言はともかくとして、この際より高い次元の上に立って前向きに本件の解決に当たる姿勢に入ってくることを期待し、そういう考え方の上に立ってこれからも最大の努力を払いたい、かように考えておるわけでございます。昨年九月以来もそういう方向努力を新たにしているつもりでございます。
  27. 青木正久

    青木委員 姿勢につきましてはわかりましたけれども、何といっても交渉ごとでございまして、交渉の再開のきっかけが何かなければ、なかなか具体的な話し合いに入れないと思うわけでありまして、聞くところによりますと、この秋グロムイコ外相日本に来て、日ソ定期協議に出られるというお話でありますけれども、そういう席でこの問題を本格的にお取り上げになるつもりであるのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 グロムイコ外相の来日は懸案になっておりまして、ことしの春、つまりいまごろ来ることを私は期待をしていまでもおったわけですけれども、ソ連としては万博の関係もあって、ポドゴルヌイ議長といいますか、元首の立場におるわけですが、この人が来日することになりました。いろいろの問題についての話し合いもあろうかと思います。それからグロムイコ外相の日程はまだきまりませんけれども、これは早い機会に来て、領土問題に限りませんで、やはり先ほど申し上げましたように、日ソ間においては正常な関係にあり、かつそのほかにも双方から解決したい問題の懸案も持っておりますから、やはり一年に一回は定期協議外相間の話し合いで持つことが最も望ましい、かように考えているわけでございます。
  29. 青木正久

    青木委員 グロムイコ外相が来れば、当然領土問題を取り上げるというふうに考えるわけでありますけれども、いま大臣のおっしゃったように、日ソ間は文化、経済、スポーツなどの交流がたいへん盛んであります。こういうことを考えますと、いま日本ソ連との間に平和条約ができていないというのが、ちょっとへんぱなような感じがするわけであります。日ソ共同宣言で一応戦争状態終結いたしましたけれども、あれからもう十年以上たっているわけでありまして、あのときの、一九五六年の九月の松本・グロムイコ書簡によりましても、領土問題を含め、平和条約を結ぶための交渉は、日本ソ連との間で正常な外交関係が再開された後も続けられる、こういうことがきめられているわけであります。しかしその実際の交渉らしい交渉はないわけであります。そこでその北方領土問題の話し合いの場をつくる意味におきまして、この際日本のほうから平和条約、これを締結するような交渉、これを提案するお考えはないかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 昨年九月に私がソ連に参りましたときにも、平和条約締結は領土問題が片づけば即座に締結する用意があるということで、そういう意味におきましては平和条約締結の促進を申し入れているわけでございます。  それから今後におきましても、ただいま御指摘がありました松本・グロムイコ会談というものは、政府としては、もちろん生きているのであって、この線に沿うて会談を続けていくべきである。ところが先ほども御指摘がありましたように、先方はなかなかそういう線に乗ってこない、これが遺憾ながら現状でございますが、この点については忍耐強くひとつ道を切り開いていきたいと思っております。
  31. 青木正久

    青木委員 そうしますと、その、平和条約交渉を始めるということは国後、択捉放棄につながる、こう解釈してよろしいわけですか。つまり領土問題は、国後、択捉の返還がきまるまでは日本側から平和条約交渉を提案しないということですか。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはよく御承知のように長い経過があるわけでございまして、わがほうとしては、いま申しましたように、平和条約締結は非常に希望しているところなんですけれども、それには北方領土解決ということが前提である。これはいわば一つの問題として、これなくしては平和条約締結ということはないというのが共同宣言発出の当時からのわがほうの厳守されている態度でございますから、これを守り抜いてこの解決に当たる、つまり平和条約締結に至りたい、これが今日もなお強い政府立場でございます。
  33. 青木正久

    青木委員 この北方領土の問題は長いいきさつがございまして、簡単には解決できないことはよくわかりますが、その発端となったのはサンフランシスコ、平和条約の中で、千島列島というものの定義がきわめてあいまいだった点、これがひとつ数えられているわけであります。そこで、最近自民党国民運動本部でも取り上げましたけれども、この際、千島列島というものの定義をはっきりするために、サンフランシスコ平和条約に来た四十八カ国、この参加国を集めて再協議したらいいんじゃないかという意見も出ておるわけです。幸いことしは万博の年でもありますので、集めやすいと思うのですけれども、こういうことをするお考えはないのか、お伺いしたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国後、択捉の返還がこれほど大きな国民的な願望になっておりますから、その解決の手段方法として、いまおあげになりましたような積極的な御意見や御提案があることも非常に私はありがたいことだと思います。同時に、しかしサンフランシスコ条約については政府の見解といいますか、堅守してきた態度というものは、サンフランシスコ条約ソ連は入っておりませんし、また放棄したものに国後、択捉が入っていないということは、しばしば政府が繰り返しておりますように、一貫して堅持している態度でもございます。また同時に、サンフランシスコ条約締結に際して最も有力にあっせんし協力し、そうしてその成果が結ばれたわけですけれども、それはやはり何といってもアメリカが中心であったわけですが、アメリカはもちろんその他の国においても、すでに公式にも日本サンフランシスコ条約において放棄したところの千島には、国後、択捉は入っていないんだという解釈を明らかにいたしておりますので、そういうふうないろいろの方法論も私はけっこうだと思いますけれども、私の率直な見解からすれば、ソ連相手にしてそうして忍耐強くこの主張を続けるということと、それからやはり日ソ両国をめぐる流動した国際情勢の中で必ずやソ連がわがほうの主張に耳をかす時期が来るに違いないという期待を込めまして、やはり日ソ間の交渉話し合いというものを煮詰めていく、積み上げていくということがやはり最も迂遠なようで近道でもあるし、またオーソドックスないき方ではないだろうかと思います。私は率直に申しまして、こういうふうに考えております。
  35. 青木正久

    青木委員 そのほかに国連持ち込みの話もありますけれども、いまの大臣のお話を伺いますと、そういう方法ではない方法ということと存じます。  そこでもう一度お伺いしたいのですけれども、交渉のやり方ですけれども、いま申し上げました四十八カ国の会議とか、そういう周囲のほうから情勢をつくっていくという方式ではなくて、日ソ両国間で、さしで詰めていく、それには時間はかかるけれども、そのほうが問題の解決の早道である、あまり騒ぐとかえってソ連が硬化して返還がおくれる、こういう御解釈でよろしいでしょうか。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はいろいろの方法論等が出てきますことはよく理解もできますし、けっこうなことだというふうに先ほど申したとおり考えておりますけれども、やはり政府立場といたしましては、ソ連相手にオーソドックスのいき方でいき、そうしてソ連をめぐるいろいろの国際情勢のこれから流動した中において必ず私はいい芽が出てくるのではないかと考えるわけでございまして、同時に、あるいは問題として事務的なことになりますけれども、参加していないところの条約について、そこに参加していた多くの国がソ連態度について云々するというような方式は、あるいはソ連側としてどういう反響、反応があるだろうかということも、やはり政府立場においては細心の注意を要するところではなかろうかというようなことも考えながら、当面のところはオーソドックスのいき方に徹していくことが政府としては最善の道ではないか、かように存じておるわけでございます。
  37. 青木正久

    青木委員 まあ、言うなればクワイエット・ディプロマシーということだと思いますけれども、ソ連日本の間だけで話し合いを進める場合、理詰めでソ連を納得させるということはなかなか向こうもうんと言わない。いままでの経緯からいってそうだと思います。それはそれといたしまして、理詰めの説得がむずかしいとしますと、政治的な解決しかないわけであります。そこで大臣もいま申されましたとおり、時がたてば必ず解決の芽が出てくるということでございますけれども、現在の中ソの関係、こういうのを見ておりますと、ソ連の対日接近ということも今後十分考えられるわけでありまして、そういうことを考えますと、政治的——何といいますか、言い方はむずかしいのですけれども、政治的な解決の自信はあると大臣はお見通しになっておるかどうかお伺いいたします。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 自信と申されますと、私も大いに自信を持っておりますとまでいまのところ率直に申し上げられませんけれども、これは自信の問題よりもやはり必ず達成せずんばやまずということで、そして理詰めに申しましても、よく私いろいろの機会に申しますけれども、国民的な合意を自信を持って盛り上げるについても、一八五五年の日魯通好条約というようなものが一番端的明瞭ではないかと思います。いかにソ連側が理屈を申しましても、その後の各種の宣言、条約その他から申しまして、この一八五五年の日魯通好条約でもってきめられた領土というものの中には、明らかに択捉、国後というものは固有の日本の領土であるということが認められておるわけでございますから、その後の、ヤルタ宣言はどうだとかポツダム宣言はどうだとかよくいわれますけれども、日本がいかなる意味においても争いあるいは奪取したというような言いがかりを絶対につけられない、その歴然たる根拠が明確になっておりますから、そこを根拠に置いて、そして理詰めでも十二分にわが方の主張というものがソ連に対して主張し得るわけでございますから、この考え方に徹していくことが望ましいし、また当然そこから自信というものが出てくるわけでございます。国民的にもどうか自信を持っていただいて突き進んでいくという意味においては大いに自信があると申し上げることが適当かと思います。
  39. 青木正久

    青木委員 佐藤総理が去年の十二月十一日ですか、総選挙にあたりまして北方領土問題を取り上げました。いわゆる潜在主権方式というのを言われたそうでありますけれども、これは歯舞、色丹は平和条約締結されれば、返ってくる。そこで国後、択捉のほうは潜在主権をまずソ連に認めさせておいて、やがて、時を待ってからその本格的な返還——沖繩みたいな形式でございますが、こういうことを言われたそうでございますけれども、この方式についてどうお考えになりますか。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは佐藤総理の言われたことばですけれども、沖繩の場合にいわれる潜在主権ということとは、これは違っておるわけでございまして、沖繩の場合は潜在主権は初めから認められていたことでございます。佐藤総理の言われた常識的なことばは、とにかくソ連にこの国後、択捉問題が——私が今度また別なことばを使いますと問題かもしれませんけれども、日本に対して借りがあるんだぞということをまず意識させることが非常に必要な、まずそれがとば口だという意味において、これは本来日本に主権があるものだ、そしてそれに対してソ連としてはいわば借りがあるんだぞということを思い込ませることが何としても大切なことだという意味を込めて、常識的なことばで潜在主権ということばを使われたものと理解をしておるわけでございます。  私も、あの発言の直後に総理とも話し合いましたときに、まさにそういう意味で、潜在主権ということばは与えた印象が多少違ったようにとられるかもしれないけれども、まさにそういう意味で言ったのだというような趣旨を言っておられましたが、そのとおりだと私は理解しております。
  41. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。      〔速記中止〕
  42. 田中榮一

    田中委員長 速記を始めて。青木正久君。
  43. 青木正久

    青木委員 先ほどちょっと触れたのですけれども、アメリカはかつて一九五〇年ですか、ソ連を含む極東委員会の構成国、これと対日講和について討議をしたのですけれども、そのときの構想をトルーマン大統領が七原則、これにまとめて公表したわけです。その中の第三項目に「日本台湾、澎湖諸島、南樺太、千島列島に関する五大国の将来の決定を受諾する。条約の効力発生後一年以内に決定がない場合には国連総会が決定する」こういうものがあるわけであります。つまりアメリカは初めの構想として、平和条約発効後一年以内に五大国による決定が下されない場合には領土問題は国連総会の決定に従う、こういう考えを持っていたようでございます。この例にもあるように、国連に対してこの問題を提起して何とか国連の場で解決するという方法についてどうお考えでございますか。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はこれを否定するわけではないのでございますけれども、先ほど申しましたように、たとえばサンフランシスコ平和条約に関連して、ちょうど日ソ交渉が一九五六年ですか、ありました当時におきましても、アメリカ政府としては、この北方領土の問題について公式の見解を明らかにして、われわれの現在持っている主張を支持しているわけでございます。そういう関係もございますから、関係国はまずこの見解にみんな賛成していると見てよろしいのじゃないかと私は思います。ですから、そういう点を根拠にもいたしまして、またいまおあげになりましたような経過から申しましても、国連で問題にするということも、私は確かに一つの方法だと思うのですが、同時にごとばだけではございません、私どもとしても鋭意、いわばオーソドックスなやり方で一生懸命やっておりますから、もうしばらくこのやり方でやりまして、また先方の態度その他から見まして、有効通切なきめ手というふうなことが他に考えられます場合に、これを援用していくということも適当でないか、かように考えております。
  45. 青木正久

    青木委員 ソ連がこの問題は解決済みだとしている理由は、ヤルタ協定、ポツダム宣言、いろいろありますけれども、そのほかに何かそういう根拠になるものがないか、つまり、この前の日ソ共同宣言の際の交渉が長々と行なわれたわけでありますけれども、その際日本側から、公式文書でないにしても、非公式にしても、あるいは秘密文書であるにしても、何か国後、択捉を放棄したような言質を向こうに与えたような、そういういきさつは全くございませんでしょうか。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は、当時いろいろ伝えられたような情報といいますか、観測などもあったようでございますから、私も就任以来まずこの点については念を入れて、詳細に私としての心証をつかみたいと思いまして検討いたしましたが、幸いにしてそういう事実は全然ございませんことを、私としても心証としてもはっきりいたしました。  それからなお国連の問題は、あるいは多少言い過ぎることになるかと思いますけれども、従来、この種の問題は、取り上げましても、それならひとつ関係当事国間で迅速に結論を出すようにしてほしいというような勧告を採択するというようなことでけりをつけられるおそれもないではないわけでございまして、これは多少言い過ぎるかもしれませんけれども、そういうこともございますので、むしろ先ほどから言っておりますように、いろいろ国際的な情勢も全般的に流動的であると思いますので、国際的な世論の支持を全般的に受けていくということがこの際一番望ましいことで、その中で正道といいますか、真正面の交渉を展開するというのが、いまのところ私は最善の道ではないかと思っておりますことを重ねて申し上げる次第でございます。
  47. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  48. 田中榮一

    田中委員長 速記を始めて。青木正久君。
  49. 青木正久

    青木委員 それではこの問題につきましてなお若干質問を継続したいと思います。  国後、択捉等の現状それから開発の状況について、わかる限度でお知らせいただきたいと思います。
  50. 有田圭輔

    ○有田政府委員 ただいまの御質問は、ソ連における開発の現状ということだと存じますが、これは実は情報がきわめて少ないものでございますから、十分明らかになっておりません。ただ国後、択捉につきましては、現在では少数の国境警備隊がこの地点に駐在しておりますし、産業開発の面では、主として漁業基地と、それからあまり大規模でない漁業の加工工場というものがあります。それから飛行場につきましては、これはやはり日本領時代の飛行場そのままを継続し、若干拡大したかっこうでつくっております。それから先般たしかアメリカの飛行機があそこに不時着して、その場合にかなり大きな施設があそこにあるという程度にわかっております。
  51. 青木正久

    青木委員 歯舞、色丹は平和条約が結ばれれば返ってくるわけでありますけれども、歯舞、色丹の現状と、国後、択捉の現状は、ソ連の力の入れ方に違いがあるように見受けられますが、いかがですか、つまり歯舞、色丹はどうせ返すのだからあまり力を入れない、開発もしない、しかし国後、択捉は本格的に開発計画をして、返すつもりはないという徴候が見えているかどうか、わかりますか。
  52. 有田圭輔

    ○有田政府委員 その点につきましてはどうもそういう、特に徴候はあるようにも私ども考えません。むしろ、ソ連で出しております「今日のソ連邦」というような写真入りの雑誌は日本でも広く頒布されておりますが、これは色丹島におけるソ連の漁業の、たしか工場でありますか、いかにそこで行なわれているかというようなことを写真入りで宣伝しておりまして、特に歯舞、色丹、国後、択捉で区別しているという徴候は、現在のところ認められないわけでございます。
  53. 青木正久

    青木委員 飛行場ですけれども、飛行場はどの程度の飛行機が発着されるような、どのくらいの規模の飛行場ができているわけですか。
  54. 有田圭輔

    ○有田政府委員 ちょっとその点私知識不足で、どの程度ということでありますと、滑走路の長さその他については承知しておりません。ただ、先ほども申し上げたように、従来の飛行場をそれほど拡張はしていなというようなことを聞いております。ただ、先般のアメリカの飛行機の不時着によって、ジェット機もその飛行場には発着できるということが間接的にわれわれに判明したという程度でございます。この点につきまして、もし特に御関心がおありであれば、後ほどまたその点につきまして特に調査しまして、資料等ございますればお渡しするようにいたしたいと思います。
  55. 青木正久

    青木委員 ひとつお願いいたします。  それから、もし国後、択捉、歯舞、色丹も含めましてこれが返ってきた場合に、日本にとってどの程度の重要性があるか、そういう研究をなさっておりますか。つまり、あの辺は漁獲量からいいましても三大漁場の一つでありますし、たいへんあれだと思うのです。さらに漁業安全の問題もありますし、いろいろなことがあると思うのですけれども、返ってきた、返還が実現した後にどういう利点が日本にあるのか、それをわかったら教えていただきたい。
  56. 有田圭輔

    ○有田政府委員 これはただいま先生から御指摘がありましたように、従来からあそこは三大漁場の一つといわれているくらいに、漁場としては重要でございます。地図でごらんになればおわかりのように、北海道にきわめて近接しております、したがいまして、漁船のみならず一般船舶の航行上もあの点が返ってくることは非常に便利になるということもございますし、漁業の面では北海道の方々あるいは東北の方々でも、漁期になりますとあそこにイカとかその他で出漁しておりますし、これが返ってまいりますれば、自然に安全操業の問題も片づきまして、零細漁民の方々にとっては非常にプラスになる。また戦前からも、先ほども申し上げましたように三大漁場の一つで水揚げ量も非常に多かったわけであります。今日の時点におきましては、日本の国全体からの重要性は少なくなつてはおりましても、依然として北海道あるいは東北の漁民の方々にとっての重要性というものは非常に大きいし、またやり方によってさらに一そう発展させられる方途というものもいろいろあるかと思います。したがいまして、経済的価値はかなり大きい。また経済的価値のみならず、海難救助あるいは一般の沿岸機船の航行上その他においてプラスするところは非常に多い、このように考えております。
  57. 青木正久

    青木委員 領土問題につきましては、ソ連は千島だけではなくて、ほかの国とも同じような種類の問題が残っているといわれておりますけれども、そのほかの状況はどういうふうになっていますか。
  58. 有田圭輔

    ○有田政府委員 われわれの理解しておりますところでは、この日本の国後、択捉の領土問題というものは、ほかに類例のないものでございます。ソ連はほかとも領土問題はいろいろ持っておりますが、かなりの、大部分のものについてはすでに条約締結して一応の解決を見ておる問題が多い。  それから第二点は、日本の場合には、先ほども大臣から申し上げましたように、われわれの要求しておる国後、択捉については、一度も外国の領土支配のもとになかったという点できわめて特異のものでありまして、その点では他のソ連の領土問題とわれわれの領土問題とは比較にならないということが、一つわれわれとして御説明申し上げたい点であります。  それから、ただいまのほかとの関係の領土問題でありますが、一つは、御承知のように中ソ間において国境問題が起きております。それからそのほかには、第二次大戦中それから大戦後にソ連に対して割譲した領土に対して、東欧諸国の中でも潜在的な不満を持っているというケースはございますし、それからまた話が少し逆になりましたが、ドイツとの間にはやはりまだ最終的に国境線の問題が残っているということがございます。  第二次大戦に際して東欧諸国からソ連が獲得した領土としては、第一番目にドイツ、これは一九四五年のポツダム協定によって東プロシャの北半分を終局的にはソ連に引き渡す原則的な合意が行なわれまして、ソ連は一九四六年の四月にこれをロシア共和国に編入しております。またメーメルもソ連領といたしました。それからポーランドにつきましては、ポーランドの東部を得ております。またチェコスロバキアにつきましては、これはザ・カルパト・ウクライナを獲得しております。またルーマニアにつきましても、これも一部、これは北ベッサラビア及び北ブコビナの割譲を要求して、ルーマニアはこれに屈服して、それをソ連に割譲しております。それからフィンランドに  ついてもございますし、御承知のように沿バルト三国については、これはソ連の構成共和国の中に併合しております。それから外蒙につきましても、従来外蒙の一部とされておりましたトヴァ等はこれを得ております。このようにソ連は非常に多くの領土を得ておりますが、これはいずれも条約上一応の解決は見たかっこうになっておりますわけでございます。
  59. 青木正久

    青木委員 先ほど大臣に御質問したわけですけれども、この北方領土問題は外務省だけじゃなくて、財界の方も交えまして話をするし、またあらゆるルートでソ連側に働きかけをしているわけでありますけれども、事務段階でもやはり向こうの事務レベルの人と交渉がいろいろあると思うのです。われわれがモスクワへ参りましても、向こうのクズネツォフ次官あたりに会いましても、何というか感触は非常にいいような感じもするわけですけれども、事務段階同士で接触した結果、その感触は返還についてどういうものでございましょうか。
  60. 有田圭輔

    ○有田政府委員 これは御承知のように、ソ連は指示が徹底しておりまして、どこのボタンを押しても同じ返事がはね返ってくるという場合が非常に多いわけであります。しかしながら、最近は大臣も御説明申し上げましたように、日ソ関係は非常に友好的になってきております。したがいまして、話し合いの場も従来のように二国間の懸案のみならず、国際情勢意見を交換するというように非常に幅の広いものになっております。そうした意見交換の場を通じては、いろいろ従来は先方も意見を言わなかったようなことまで意見を申し述べる、これは非常に歓迎すべき事態だと思います。しかし端的に申し上げまして、領土問題ということになりますと、これは上層部の返事と同じ返事でありまして、そこに何ら違うものは認められないわけであります。しかし、先ほど大臣が申し上げましたように、このような幅の広い話し合いを通じまして、また環境の変化によって、領土問題の解決ということがソ連側から見て非常にプラスになるという判断を促進するということがわれわれの責務だと思いますし、またそれは十分可能性があり、われわれとしてもこの方向に向かって一そうの努力をする、それが迂遠のようであって最短距離の解決方法ではないか、このように考えております。
  61. 青木正久

    青木委員 大臣もちょっと言われましたけれども、グロムイコ外相は大体いつごろ来る見通しなんですか、定期協議はいつ開かれますか。
  62. 有田圭輔

    ○有田政府委員 グロムイコ大臣はもう何度か日本に言ってきているような状態でありまして、端的に申し上げればオーバーデューであります。したがいまして、この定期協議に来るということは原則的に合意されておりますので、あとは向こうがいつ来たいと言うかということを待っている段階であります。ただ、ポドゴルヌィ氏がこの四月に参りますので、それ以前についてはもうすでに可能性はなくなっておる。その以後のすみやかな時点にわれわれとしては先方が来るということを期待しておる次第でありまして、いまだ例月というようなことは先方からの連絡はございません。
  63. 青木正久

    青木委員 いずれ来るということだと思いますけれども、それに対しまして、やはり事務段階で領土問題を討議するための資料その他準備はされておりますか。
  64. 有田圭輔

    ○有田政府委員 これはもう過去ずっとにわたって準備しておりますので、いつ来られてもけっこうだと考えております。
  65. 青木正久

    青木委員 時間がきたので、私はやめます。
  66. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  67. 田中榮一

    田中委員長 速記を始めて。  戸叶里子君。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどの松本委員中国問題に対する日本の基本的な考え方についての質疑を伺っておりましたが、私もやはりこの点でもう少しはっきり伺いたいと思うわけでございます。と申しますのは、やはり政府・与党の中にもたいへん熱心にこの中国問題と取り組んでおられる方々と、そしてまた何も中国問題に対して根本的な問題に触れないで、中国との間の関係を何とかしていこうと模索していらっしゃる方との間の考え方が違うわけでございます。そこで、国民の側から見ましても何か非常に不信の感を抱くわけでございまして、幾ら佐藤総理が予算委員会などで北京政府と何らかの方法で十分窓口を開いて話し合う機会がないかどうか模索をしている、そういうことを述べられても、私は少しも前進しないんじゃないかということをたいへん心配するものでございます。  そこで、もう一度外務大臣のお考えを伺っておきたいのは、たとえばこの中華民国の施政の及ぶ範囲というのはやはり台湾澎湖島なり何なりというように、日華平和条約二条にしるされている限定された地域である、交換公文でも今後入るすべての区域というふうに書いてあるわけで、この二つことばから見ましても、現時点におきましての日華平和条約でかぶるところというのは、一つの、台湾澎湖島というふうに考えられているところではないか、こういうふうにどう読んでも読めるわけでございまして、中国本土まで平和条約が及んでいないと見るのが妥当ではないかと私は考えますが、この点をもう一度外務大臣に伺いたい。条約上から見てもそういうふうにしか読めないように思うわけでございますが、この点はどういうふうに読んだらいいか教えていただきたい。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 条約並びにこれに関する交換公文はそのとおりでございまして、今日も願望とか将来の展望は別にして、その条約はそのままそのとおり読めるんではないかと思います。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 条約はそのとおり読めるということは、先ほど松本さんが言いましたように、今日の中国本土までは及んでいないんだというふうに解釈してもよろしいわけでございますか。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その条約からとすると、かたくななことになるかと思いますけれども、要するに、国を代表する政府と結んだというカテゴリーのものは、国全体を代表しているわけですから、先ほど申しましたように、戦争状態終結というふうなものはその中に入る、それが条約解釈だと思いますが、同時に交換公文とあわせて読みましても、現に施政の範囲の及んでいない地域が中国大陸である、これもまた事実そのとおりで、条約もそのとおり書いてあるんじゃないか。したがって、先ほども一つの例としてあげましたが、通商というようなことは現実支配されていない地域のことなんでございますから、それは範囲外になる、これが条約のありようの姿であり、また現実もその点については変わっておりません。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 ですから、それじゃ平和条約が結ばれている地域は限定された地域であって、中国本土にはかぶらない。戦争状態もいま言われた平和条約の結ばれている地域だけであって、中国本土には及んでおらない、戦争状態もまだ解決しておらないというふうに解釈はできないわけでございますか。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま条約をテーブルの上にのせているわけですから、そういうことにはならないわけでございますね。中国を代表してという立場政府と国を代表して結んだものであるから、戦争状態というようなものについては、条約としては終結した、こう解するものであり、当時の説明もその後の政府の説明もそうでございます。ですから、その点においては、いまこう読む、こう解釈できませんねとおっしゃったそのとおりだと、こういうふうにお答えする以外にはないわけでございます。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 ですから、中国本土とはまだ戦争状態は終了していない、こういうふうに解釈してもよろしいわけでございましょう。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは条約としてはそうではないということを申し上げておるわけです。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 じゃ現実問題としてはどうなんですか。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、そこは今度は条約問題と離れて、現実事態としてはそこに何か割り切れないものがあるということは、これは現実の問題としては認めるといいますか、現実状態はそうだということは言えると思いますけれども、条約のたてまえというものは中国を代表した政府として結んだものであるから、国を代表する政府との間において戦争状態終結した、条約としてはそういう立場に立って結ばれたものである、こういうことになるわけでございます。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、結局は条約としては中国本土に及ばない、限定された地域との条約である。そして私どもから言うならば、条約がそうである限り中国本土に及ばないんだというふうに理解をするわけでございますが、そこいら辺に政府が割り切れないいろいろな問題がある、こういうふうにおっしゃっていられるわけです。  声てこで、先ほどからの松本委員とのお話を聞いておりますと、今後においていろいろな情勢も変わってくるだろうし、そうした情勢を見ながらいかなければならぬというようなこともおっしゃっているわけでございますので、念のために伺っておきたいことは、いまのような条約から離れた政治的な政府考え方、こういうものは今後においては情勢の変化によって変わっていくこともあり得る、こういうふうに考えてもよろしゅうございますか。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは一般論といたしましては、情勢が変わっていく場合に、それに対処する方途を考えなければならない、私はそういう考え方でしかるべきだと思いますが、政府といたしまして申し上げることは、この日華基本条約というものが正当な手続を経て結ばれておるし、そして現に存在しておれば、これを誠実に守るということの義務は日本国政府としてある、現状においてはそうであるということをあわせて申し上げなければならないと思います。  同時に、これはとりようによっては、二つ中国というようなことについては、先ほどもるる申し上げましたように、これは本来また筋としても、向こうが内政の問題といわれておるがごとく、私どももそう考えるのであって、これは両方が平和的な話し合いによってこの非常にむずかしい問題を解決されることがほんとうに望ましいことである。特に戦争というような武力によって解決をするということがあることは全く欲しないことである。まさかそういうことにはなるまいし、予見はできないことではありますけれども、そういうふうな考え方であるということは同時に申し添えなければならないところであると思います。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 やはり政府の今日の政治的なといいますか、政府中国大陸に対する姿勢というものが、中国との関係を前進させない、非常に妨げになっているんじゃないか。そこで、やはり何といっても中国にいろいろな形で自民党の方々がいらしても苦労をされておられる、こういうふうなことを考え、いま外務大臣がお話しになりましたようなことをも勘案して、そしてやはり中国問題を研究していらっしゃる与党の方々ともよく話し合いをされて、そして中国問題の前進ということをお考えになっていただきたい。幾ら佐藤総理が何とか窓口を北京政府と開きたいとか、あるいは何とか中国本土とも手を握っていきたいとかいろいろおっしゃってみましても、政府の今日のようなかたくなな姿勢で、そうして何とかしょうというような気持ちでは、そういうことでは前進しないと思うのです。このことは、先ほども松本委員が指摘されたことでありますけれども、やはり、ことしこそ中国問題は解決をしなければならない重要な外交問題の一つであるということをたびたび政府自身も言っていらっしゃるのですから、この問題を、もっと率直に中国問題を研究していらっしゃる方々、中国問題の通の方々、そういう方々とお話し合いをして、そうして前進をしていただきたい。私たちは、テレビ討論などを見ておりましても、中国に対する基本姿勢の問題等、こういうふうな方も自民党の中にいられるなと思いますと、今度は賀屋さんのような方が出てこられて、全然違うようなことを言われるというようなことは、国民自身もたいへんに戸惑ってしまうと思う。また中国交渉に出て行かれている方々もたいへんに困っておしまいになると思うのです。ですから、こういう点を早急に、率直に耳を傾けて聞かれて、そうして中国問題の前進をされるならされるような方法をことしは考えていただきたい。ただ中国と何とか話したいとか、北京政府との窓口を開きたいとか、そういうふうな、何というのですか小手先だけのことばでなくて、基本的な問題とぜひ取り組んでいただきたい、こう私は考えますが、この点についてどういうふうにお考えになりますか。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御忠言はありがたくちょうだいいたしておきますし、それからそういうことを言うべきではないでしょうが、私も私としての一家言は持っております。十二分にと申し上げてもよろしいと思いますが、真剣に取り組んでおりますが、私も及ばずながらただいまの立場立場でございます。そして、いまもおあげになりますように、いろいろな見方が、いろいろの意見がある。それほどむずかしい問題であると思いますから、政府の責任者といたしまして、これ以上コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。同時に、政府は一九七〇年、ことしこそとは申しておりません。一九七〇年代はほんとうに、これはこの中国問題を中心にしてたいへんな問題であるし、息長く堅実な歩みをして、そして日本立場を守り、また国際的な期待にもこたえなければならないという立場をとっております。ことしじゅうにどうこうということは、政府としては考えておりません。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 一九七〇年代というふうに答えていらっしゃることも私も知っております。しかし、ことしは一九七〇年の初めの年です。これまでの政府態度を見ておりましても、中国問題に対しての国会の答弁というものは、何ら前進を見ておらない。過去十年間ほとんど同じような答弁をされていると私は思います。そこでもうしびれを切らして、この辺で何とか決意をしていただきたいということを、私たちは心から願うわけでございますが、いま外務大臣もたいへんに力強く、私も私なりに考えていらっしゃるということで、たいへん期待をいたしますけれども、もしもお考えになっていらっしゃるのでしたら、その一端でもいいですから、ひとつこの際お述べを願いたいと思います。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、これほど重大な、しかもいろいろの意見があるわけでございますね。これは必ずしも表面に出ていないけれども、非常に懸念している。また相反した見方、意見がございますから、これを政府立場からし、また国際情勢の変転等も十分見つめていきながら、日本としてのとるべき道ということを、いま探求しているというのがほんとうのところだと私は思うのでございまして、先ほど申しましたように、これ以上討論を申し上げるよりも、もう少しお互いにいろいろの議論を戦わしていかれる中から、私どもとしてもとるべき道というものをだんだんに積み上げていくべきではないかと思います。  ただ、要は日本だけが一人芝居をして一人相撲をとっているというのでは、私はほんとうの国益を守るゆえんではないと思います。  向こうさんの、といっても一方だけではございませんわけですから、こういう複雑な状態の中においては、むしろ私は逆に政府としてはあまりはでな発言をしないことが御期待にこたえることではないかと思います。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 発言をしないとかするとかの問題でなくして、やはり中国に対してはこういう対策を持っているというような、基本的な姿勢というものが私はなさ過ぎるのじゃないか。今日まで国会でいろいろ話し合いといいますか、私たちは質疑応答の形で中国問題は多くの方々が取り上げてきたと思います。しかし何ら前進した答弁がない。そこに私は日中問題の解決の道が今日までないと思う。このままの形でいけば、私は一九七〇年代もそのまま進んでいってしまうのじゃないかということをたいへん心配するわけです。ですから、もう具体的に何らかの形をほんとうに真剣に話し合っておきめになっていただきたいということを私はお願いしたいと思います。  そこで、この佐藤総理の予算委員会での発言を読みました中で、気にかかることが一つあるわけですが、「中華民国を中国代表権を持つ政府として相手にし、そこで国際条約を結んだ。だから、やはり国際的な権利義務が生じておることは、これも当然です。でありますから、私ども、この機会になりまして、この中国代表権を云々するというそういう段階じゃないと思う。」こういうふうに言われたわけです。これを読んでおりますと、佐藤総理の発言を見ておりますと、たとえばこの今度の国連での重要事項指定方式の提案国になるとか、賛成国になるとか、反対国になるとかというようなことよりも、むしろ代表権など考えるべきではないと、そういうような、中国代表権に対してあまり気の向かないような返事をしていられるのじゃないか、こういうふうに考え     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 ますけれども、政府としては、この中国代表権を持つということに対して、賛成なのですか、反対なのですか、この点をはっきりさせておいていただきたいと思います。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これがまた、先ほど来申しておりますように、まことに微妙な問題で、言いようによりましては、先ほど松本さんにもお答えしましたが、選択ということは、二つ中国のうちの一つを選ぶということになりますが、それにまた直接関係してくる問題でございますから、私はお答えにならないとおしかりをいただくことを前提にして申し上げますけれども、政府といたしましては、代表権問題について国連で取り上げられます場合に、これを重要事項として取り扱うべきものであるということは、現在も明確にいたしておるわけでございます。ただ、その提案国になるかならないかというような手続的な問題については、まだ将来半年も先のことでもございますから、この点については私は慎重に考えていきたいと思いますけれども、これは国連運営方式にもかかわりますし、それからそれぞれの国がやはり内容についてもいろいろな考え方を持つべき問題だろうと思います。こういう大きな国際的な問題を単純多数決できめるべき問題ではないと私は思うのです。この点は、私は年来さように思っております。今後も、おそらくことしの総会におきましても、この問題は論議されるでございましょう。重要事項として取り扱うべきであるという主張は、私は曲げないつもりでございます。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの御答弁は、おのずから結論が出たようで、重要事項として考えていくべきだということは、中国代表権というものに対して、いまの段階ではまだ賛成ではないというふうにしかとれないわけでございますので、これはそれ以上進まないことにいたしますが、それでは、松村さんと藤山さんが近く訪中されようとしておりますけれども、政府としてもこの二人の訪中については、いろいろお考えになるところもあろうと思います。そしてまた大いに期待を持てるような形で送り出してあげることが必要ではないかと私は思うわけでございますけれども、この辺に対して、何らかの提案なり何なりを持って行っていただくようにされたらどうか。たとえば、私が具体的に申し上げますと、総理大臣が選挙で、大使クラスの会談でもしたらいいというようなこともおっしゃっていらっしゃるわけです。そこで大使クラスの会談といっても、ただパーティーでやあやあと言うだけが会談じゃなくして、もっと実のあるような会談をするためにも、二人の大ものが訪中されるときでもございますから、大使クラスの会談について具体的に何か提案を依頼されてはどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大使級会談ということについては、この国会が始まりましてから私からも明らかにいたしておりますように、第三国において、中共側と日本双方が同じ場所に公館を持っているところもあるわけでございますから、前々から申し上げておりますように、抑留邦人の問題というふうな懸案もございますししますから、何とか話し合いができるのではないだろうかということで、こちらとしては誠意を尽くして門をたたいている、接触の試みをいたしておることは事実でございます。同時に、現在のところはこれといった新しい前進が見られない、現状がそういう現状であるということも御報告をしておるわけでございます。そういう意味合いの接触を持ちたい、こういうことでアクションも起こしているということを申し上げているわけでございます。しかし、いまのところ進展は見ておりません。これが事実でございます。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、二人の大ものが中国を訪問されることではございますので、やはり外務大臣としても大いに期待をされてもいいのじゃないか、何か政府の望んでいる一歩手がかりになるような中国との結びつきを考えていくべきじゃないかというようなお考えを実現するときのいいチャンスではないかと思いますので、お二人に何らかの形で前進されるような方法を御依頼になるかどうか、この点も伺っておきたいと思います。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも、かたくなになるかと思いますけれども、これはもちろん政府の代表という形ではございませんわけですから、その辺のハンドリングというものはやはり心していかなければなりません。これは行かれる方々の御迷惑になってもいけないし、また行動範囲というようなものにかりにも制約があってもいけません。ああいう立場でいらっしゃる方は、それなりの立場におきまして日本の国益や、あるいは私どもが前々から申しておりますように、体制の異なるところとの間でもなし得る限りの友好関係というものを設定したい、こういう気持ちは底に持っているわけでございますし、それから先ほど来いろいろ御批判はいただいておりますけれども、私といたしましても、同じ党内の党人であり、私にとっては先輩でもあり、そういう方々でございますから、これはまた隔意なく私たちの考え方も話ができる間柄にございますから、そういう点をできるだけ活用していきたいと思っております。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 今度いらっしゃるお二人のために日本が飛行機を出すということはたいへんいいことであって、しかもほんとうならばいらっしゃるのも飛行機を出してあげるように早くから考えておけばよかったと思うのですが、迎えに行かれることで飛行機をお出しになる。しかし二国間の問題というのは、やはり双務的なものが要求されてくると思うのです。その場合に、中国からの何らかの形での飛行機の乗り入れというふうな話も出てくると思いますけれども、こういうことに対して当然日本政府としてもいいというふうなお考えをお持ちになっていらしゃると思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず前段の問題でございますが、松村さんのような非常に御高齢で、かつ病体であられる方について、人道的な立場から考えましても臨時に何らかの措置をして差し上げたいというのは私たちの気持ちでございます。しかし、これはまだ確定してすっかりアレンジメントができたわけではございませんから、それができた後においてどういうふうなことになりますか、その後の、たとえばレシプロカルにどういう要求があるかどうかというようなことについては、そのときに適宜善処するというふうにしかいまのところは考えておりません。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 最近、アメリカでさえも中国への旅行の制限を緩和するというようなことを発表しているわけでございまして、日本のいまの政府としては、アメリカが言うことはなるべく一緒に従っていこう、従ってというか、アメリカの行くような方向を行こうというような態度をとっていらっしゃる、政府にとりましても、アメリカがそういうふうな制限緩和さえしているときなんだから、もっと日本は積極的にならなければならないというのが世間一般の声だと私は思うのです。ですからそういう点をも考えられまして、せっかくのこの二人の大もののいらっしゃるいいときでございますから、日中関係の前進するためのいろいろな問題等をよくお話し合いになって、先方に、今日の政府の、中国との何らかの形で窓口を開いていきたい、そういう意思の伝わるような具体的なものを何か持っていっていただくようにしていただきたいと思いますが、この点を念のためにもう一度伺っておきたいと思います。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 行かれます前に、こうだああだと言って具体的なものを並べ立ててみるようなやり方は、私はとりたくないと思っております。しかし、さっき申しましたように、行かれる方々と私どもとの間には、十分の意思の疎通がございますことを、まずお心にとめていただきたいと思います。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 中国問題についてもう少し積極的ないろいろな考え方を出していただきたいということを望みながら、次、一点だけ伺いたいと思うのですが、これから問題になってくることとしては、安保条約の検討期を控えまして、安保条約の問題の中で基地のあり方とかあるいは管理権をどうするかということ、あるいは五条の武力攻撃に対する措置とか、あるいは六条に基づいて事前協議及びそれらについての地位協定、こういった問題があろうと思います。  そこで、そういう問題は今後この委員会でいろいろ私は取り上げていきたい、こう考えるわけでございますが、きょうその第一歩としてお伺いしておきたいことは、第一に、五条でいっているところの「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」こういうふうにあるわけでございますけれども、この武力攻撃を受けたときには戦闘行為に当然入る、その戦闘行為に入るときには、それは地域的なものなのですか、それとも日本全体のものとして考えるのですか。たとえば厚木なら厚木に武力攻撃があったときには、厚木及びその周辺を戦闘行為が行なわれていると考えるのですか、それとも日本全体が戦闘行為の中にあるというふうに考えるのでしょうか、この点のことを伺いたいと思います。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどのお尋ねの中で、中国との関係についてちょっと申し上げますが、アメリカ云々というお話がございましたが、御承知のようにすでに先般政府といたしましても、日本国民の、未承認国、特にこの中ではやはり中国というのが大きなあれと考えられるわけでございますが、そう考えているわけですけれども、手続の簡素化その他につきましても、非常に具体的な手続の上におきましても、考慮し検討しておるあるいは実施に移らんとしておることは御承知のとおりのことだと思います。また、日本人以外の、たとえば広州交易会の出席問題にいたしましても、これは日本としてもやはり一つの転換であると思いますので、御承知のような措置をとったわけでございます。これも、全部にしないのはけしからぬとかいろいろな御意見もございますけれども、やはり一つの試みといたしまして、新しい試みとして取り扱っておることは御承知のとおりでございます。この辺のところにつきましては、旅券法の改正を引き続き御審議を願っておりますから、そういう際にもいろいろとまた御審議をお願いしたい、こちら側からも御説明申し上げたいと思っておりますことを一言つけ加えて申し上げるわけでございます。  それから、安保条約の第五条は、条約解釈あるいはその他の問題でございましたが、私からだけお答えするのも不十分かと思いますが、ただこれも、従来もう何べんも論議がありましたように、第五条というのは、日本国が攻撃にさらされた場合、これを条文の一つ一つのこの協力の度合いがどうなるかこうなるか、この仮定的なあれをずっと言われますと、ゼミナール的にはおもしろい議論かもしれませんけれども、第五条というのは、日本本土が侵されるそのときの自衛権の発動なんですね。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、そもそも日本国に、こんなことは万々一にも予想されないことだとは思いますけれども、そういうことが現実に起こったときに、これは厚木に敵が来たから厚木の防衛だけでいいのか、あるいは北海道はほっておいてもいいのか、そういうふうに取り上げ得るような問題であるかどうか。そういうケースは予想したくもないことでございますけれども、極端にいえば、国が焦土になるかならないか、そういう場合もあり得るのじゃないかと思いますから、その場合厚木だけで守るのか、横田は参加しないような取りきめが別にできるのかと、ちょっとそれには私の頭ではお答えができません。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 私が質問をしましたのは、部分的な何かゼミナール的な問題として取り上げたわけではございません。というのは、これら安保条約で問題になってくるのは、やはり五条の問題であり、事前協議の問題であり、そしてそれらに付随した地位協定との関連の問題があるわけです。現実に地位協定というものは結ばれているわけです。しかも、その地位協定の中には、私は勉強していきますといろいろな問題がある。しかもここにおいて起きそうな問題がたくさんあるわけです。そこで、やはりはっきりした解釈を持っていないと困るということを考えるので伺っているのでございまして、別にことばを取り上げてどうこうするのじゃないということをはっきりさしておいていただきたい。  そこで、なぜそういう問題を出したかといいますと、そういう問題が起きることは困ることだ、全く私もそうだと思います。しかし、現実に、昨年は、EC121の偵察機が行ってそして帰ってこなかった。もし帰ってきて報復攻撃を受けたらどうしようという非常な心配を持ったのです。こういうような危機にさらされる場面も出てくるわけでありますから、私は、こういういろいろな具体的な問題を考慮しておく必要があるのじゃないかと思って、地位協定との関連でこの質問をするわけですから、そのお気持ちで聞いていただきたい。しかも地位協定というものの中には問題があるにもかかわらず、十年前の安保条約の審議の際にはほとんど審議されずにそのままにされてしまった。こういうところから見ますと、やはりこの問題は今後国会できちんと解釈をしておかなければいけないのじゃないか、こう考えますので、少しずつ取り上げてみたいと思っていまの問題を聞いたわけです。  そこで、外務大臣の御答弁を伺っておりましても、そういうふうなことがあった場合には、そこで戦闘状態が行なわれていて、ほかの地域はかまわないでおくというわけにはいかない、私もそのとおりだと思います。  そこで、もう一点だけ伺いまして、次のときにもう少し詳しく伺いたいと思いますが、当然この戦闘行為というのと六条にいう戦闘作戦行動というのとは同じには考えられないというふうに解釈すべきでしょうか、それとも戦闘作戦行動も戦闘行為も同じに解釈できるのでしょうか。その内容について伺いたいと思います。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、いまもお断わりいたしましたように、条約解釈あるいは条約論としてのお答えは、私としては不十分かもしれませんけれども、戦闘作戦行動のほうは、安保条約の目的に応じて——前提は飛ばしますけれども、在日米軍が、提供された施設、区域を利用して、そこから戦闘作戦行動を発進せんとする場合であって、これには、事前協議にかかりまして、日本政府としては、イエスと言うこともありましょうが、ノーと言うことももちろんある。その問題と、第五条の問題とは、そこのところだけ比較しましても、違うのでしょうねとお問いでございましたから申しますが、違いますとお答えをいたしたいと思います。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 そのあとの問題を質問していきますと、私の時間でとても足りませんから、この次にさせていただきまして、きょうは、その点だけはっきりさせていただいて、私の質疑をこれで打ち切りたいと思います。
  99. 田中榮一

  100. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 きょうは、外務大臣に、核防条約について御質問させていただきたいと思います。  この核拡散防止条約につきましては、いままで国会にもたびたび論議がございましたのですが、いわゆる核爆発の平和利用の問題、また核保有国の核軍縮義務の問題、さらには非核保有国に対する査察の件、関連しましてユーラトムとIAEAとの問題、その他、条約の二十五年の期間の問題等、多々問題があるわけでございますが、私は、本日は、この条約の条文について二、三お尋ねをさせていただきたいと思います。  若干前後順序不同になるかと思いますが、前文の中で、一点、「核兵器の拡散が核戦争の危険を著しく増大させるものであることを信じ、」云々とございますが、確かに読みますとなるほどこのとおりであると思うのですが、私は、この文は、ここに記載されるまでには少なくとも二つ選択があったはずだ、たとえば米、英、仏、ソ、中の現核保有国に対して、核を凍結してしまうという選択、さらには逆に核を拡散させて多くの国が核を保有しバランスをとってこの核戦争の危険の増大を防ぐという、二つ選択があるように思うわけでありますが、ここにおいてはその前者がとられておるわけでありますけれども、それならば、現核保有国の米、英、仏、ソ、中に対する核兵器の軍縮並びに使用禁止、使用規制というものが行なわれなければ実際上の本来の趣旨とは異なった方向に進んでしまうのではないか。私は、日本がこの核防条約に参加する以上、こうした現在の核保有国に対する使用規制の問題、また使用禁止の問題、こういったことが、共同なり個々なり別にしましても、何か宣言されるようなところまで日本として踏み込んだ上で、この核防条約に参加すべきではなかったのか、こういったことを思うわけでありますが、現状をかんがみますと、核保有国のいわばかなり長期にわたる優位性をうたわれたのみで日本が参加しなければならない現実にあるように思うわけでありますが、この点について、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともだと思いますが、確かに核兵器を凍結というか絶滅するということができれば、これに越したことはない。ところが、そういう線の選択はこの条約では行なわれなかったと言われれば、そのとおりだと言わざるを得ないかと思います。  そこで、第二の選択は、拡散を防止するということで、まあ私どもの考え方としては、拡散が自由に行なわれてどこの国も核兵器を持つということは、やはり非常に危険なことではないか。だから第二の選択としては、拡散が防止されて、いま以上に広がらない。同時に、したがって、これは第二の選択といいますか、あるだけに、第一の選択に対して近づき得るような状態をつくり出すことがこれからの努力ではないかと思います。この条約が——これも何べんも私申しておりまして、くどいようでありますが、条約の草案時代から日本としてはそういう点に着目をして、ずいぶんいろいろと繰り返して主張してきました。そこで、核軍縮の義務が初めはなかったのが取り上げられるようになり、これが前文にならばよかろうという時代があったが、それでもいかぬということで本文の中に取り入れられたということも、日本中心にした一つ努力のあらわれじゃなかったかと思うくらいでございますから、そういう点については、現在、米ソがSALTの話し合いに入っておるということを一方に重視しながら、こういう目的に達し得るような環境やあるいは措置が進み得るような努力を、核拡散防止条約だけの問題だけではなくて、軍縮委員会あるいは国連その他のいろいろの場があると思いますが、そういう場を活用してその目標に近づけるようにするというのが、私どもがこの核拡散防止条約の署名にあたりましてとるべき態度である。そのことは署名に際しての内外に対する政府声明においても取り上げているつもりでございます。
  102. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いまお話ございましたように、拡散を防止することが大事であるわけでありますけれども、と同時に、現核保有国の態度というものがこの条約については何ら触れられていない、何らそこに規制がないということについては、非常に不平等であると感ずるわけなんですが、この点につきましては、また追って触れてまいりたいと思います。  第一条に移りたいと思います。第一条の冒頭に、「核兵器その他の核爆発装置又はその管理」云々とございますが、この「その他の核爆発装置」というのは一体何をさしておるのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国連局長から御答弁いたします。
  104. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 まず第一に、この条約は核兵器の不拡散条約ということでございますので、この第一条におきましても、核兵器というのをまず第一にうたったわけでございます。  その次に、現在の技術発展段階におきましては、必ずしも兵器でなくても、この核爆発装置というもの、これをも不拡散の対象にしようではないかということでございますので、その第二番目の、核兵器に限らず、その核の爆発装置、これをも含めた。これがその兵器以外の核爆発装置、これがこの条項の意味でございます。
  105. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 さらに端的に言いますと、その核の爆発装置というのは平和利用のためのものである、このように解釈してよろしいわけですね。
  106. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 これは先ほども申し上げましたように、現在の技術発展段階におきましては、核の平和利用のための爆発、それから軍事利用のための爆発というものがまだ明確に区別できない段階でございますので、したがいまして、先生がおっしゃいましたように、それでは平和的利用のための核爆発であるかという御質問に対しましては、平和利用の、平和的目的のものも含む核爆発装置、こういうようにお答え申し上げたいと存じます。
  107. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いま平和利用の目的のためのものをも含むというふうに御答弁があったわけでありますけれども、そうしますと、この第一条によりますと、わが国はこの条約がある限り平和利用のためにも核爆発をすることができない、爆発装置を保有することはできない、このように解釈せざるを得ないわけでありますけれども、そうしますと、日本は今後平和利用のためにも核爆発装置は持てない、こういう解釈でよろしゅうございますか。
  108. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 たびたび申し上げますように、現在の技術発展段階におきましてはなるほどそうでございます。しかしながら将来技術が非常な進歩で進んでまいりましたときに、明確に、爆発装置といえどもこれは平和利用だと明らかにわかるような段階になります場合には、また話は別になってまいりますけれども、現在では平和利用のものも含めて考えざるを得ない状況でございます。
  109. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そうしますと、この核防条約日本は調印をし、またさらに今後批准をするとすれば、日本においては平和利用のためにも核は持てない。一昨日のテレビでありましたか、佐藤総理は、もうすでにエネルギーの重点が石炭から石油、さらには核になっていくということは総理自身も言明されているわけでありますけれども、そうした時代の趨勢といいますか、また政府としても当然そういった科学技術の発展等のことはいろいろ考えておると思うのですが、にもかかわらず、こういった条約に非常に不用意にといいますか、不用意ということはちょっと当たらないと思いますが、十分な検討もなく調印してしまったということは、今後の日本の進路というものがかなり限定されてしまっているのではないか、こういったことを感ずるわけでありますけれども、その点は同じような御答弁であると思いますので、次にまいります。  この第一条を拝見いたしますと、非核三原則のうちの二原則はかなり満たされておる。しかし核の管理権ということがかなり強烈に出ているわけでございますけれども、核を他国の領土内に置くということは禁止はしてない、この第一条においては。他国の領土内に置けるという解釈をせざるを得ないと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  110. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 先生のおっしゃいましたとおりでございます。これは確かにわれわれの立場から申しますならば、その点もこの条約の対象として禁止したほうがいいという御議論もあろうかと思いますが、この条約はもともと現在の国際情勢というものを、現状を踏まえての条約でございます。したがいまして核の管理権、すなわち管理権を核保有国が持っている限り、非核保有国にそれが持ち込まれるということは、これらをも禁止するということになりますと、NATOの根本からこれがくつがえることになりますので、先ほど申しましたように、現在の国際情勢を踏まえての条約でございますので、NATOの存在というものも認めた上での、その現状の上に立っての条約でございます。これはわれわれの、あるいは先生のお立場からいたしますとあるいは不完全と申されるかもしれませんけれども、その点は踏み切ってこの条約ができた、こういうことでございます。
  111. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 NATOのことを踏んまえ、また現在の国際情勢の現状を踏んまえた上で、この領土内に置くことは禁止できないということならば、沖繩が返還された後も沖繩に核が持ち込めるということになるわけですね、現在の国際情勢を踏んまえた上で。
  112. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 規定上はそういうことでございますが、これはもちろん政策問題になりますので、私から御答弁の限りではございませんけれども、日本の場合には全く考えておらぬ、こういうことでございます。
  113. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 考えておらぬというのはどういう意味なのかよく私にはわからないのですけれども、外務大臣に伺いたいのですが、いま局長からいろいろお話がございましたけれども、返還後の沖繩にもこの条約がある限りは核は持ち込める、こういったことを日本がみずから宣言しているように受け取れるわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはそういうふうにおとりになるのは少しオーバーかと思いますけれども、日米安保条約というものがアメリカとの間にございまして、非核三原則を守るということになっておりますから、これはもう沖繩問題は問題ないと思うのであります。ただ、核拡散防止条約条約の規定あるいはその解釈からすれば、核兵器を持っている、管理権を持っている者は、これをどこに置くかということの制限はない、こういうことで、それ自体が問題といえば問題でございますけれども、日本としてはこちらの主体的な立場がきわめてはっきりいたしておりますし、まさか管理権を持っているほかの国が日本へ核を持ち込んでくるということなども考えられませんし、またそういう国がかりにあったとしても、日本の非核三原則ということで、日本の主体的な立場でこれを拒絶するということは当然だ、こういうふうに考えてしかるべきじゃないかと思います。
  115. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 オーバーな言い方になりますが、持ち込まれてもそれを禁止する条約はないというふうに解釈しているわけでございます。いま大臣の御発言にもありましたように、日本には非核三原則がある。持ち込まずという大きな原則がある。私もそれに大きな期待を寄せるわけでございますが、そうしますと、この非核三原則とこの核拡散防止条約とどちらが優先するのか、その辺の御見解いかがでございましょう。
  116. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは日本といたしましては核兵器の問題でございますから、何といいましてもこれは安全保障の問題であります。安全保障の問題については日米安保条約が優先する。その優先する安保条約において核の持ち込みを許さぬという立場をはっきりしているつもりでございます。
  117. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 日米安保条約が優先するということは非核三原則ですね。日米安保条約の問題になりますと、わが国に非核三原則というものがあるから核は持ち込めないということになってくると思うのですけれども、その非核三原則、これは政府答弁ではあくまで政策であるというようなお答えがあると思うのですけれども、その非核三原則と、このたび調印をして今後近い将来批准をされようとされておりますこの核防条約の優位性ですね、どちらが優位に立つのか、この点はいかがでしょう。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは条約論ですから条約局長からお答えしたほうがいいかと思いますが、およそ条約というものは正規の手続をもって結ばれて完全に−この場合でいえば加盟国になるということによって、条約に批准を経て入ったという場合には条約はどっちも有効なんでありますから、これは政策的に優位性の問題が出てくれば、日本の主体的の立場できめるよりほかにないと私は思います。  それからなお、念のためですけれども、この核防条約の管理権を持っている者がどこに置くかということを禁止していないというだけであって、その管理権を持っている人がどこの国に置くかということを禁止していないから、希望することはあるかもしれませんが、それを許すか許さぬかということは、当然管理権を持っている国がいかに希望しようとも、持っていこうとする国の主権においてこれはきまることであって、管理権があるからといってどこの国もみな持ち込まれるかというふうに、すくそこまで考えるのは——私はそういう意味をも込めて、先ほど、ちょっと失礼なことばですけれども、オーバではなかろうかと申し上げたのです。
  119. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 主権である日本政府の判断によるんだという御答弁だと思うのですが、その場合の根拠といいますか、日本姿勢を決定する基準となるのは非核三原則になるわけでございますか。
  120. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは日本だけの問題じゃないと私、思うのですね。核兵器を持っていない国はたくさんあるわけでございますね。それらのどこの国でも、管理権を持っているアメリカなりソ連が持ち込みをはかった場合に、これを認めるか認めないかということは、やはりその国の主権によってきめるべきものであって、日本の場合においてももちろんそうでございます。日本の主権下において、日本立場において。これは共同声明にもはっきり出したつもりですが、核というものに対して特殊な感情を持っている日本国民の意向を踏んまえた日本の核政策というものに対して、アメリカにも深い理解を示させたわけですから、そうしてそれによって沖繩返還を実行するということが約束されたということから見ても明らかなように、そもそも主権においてどうきめるかということの根拠はどうかとおっしゃられても、かりにこういうふうな取りきめがないとしたって、そのときの国民考え方日本の場合におきましてはそれぞれの手続を経て国の意思というものがきまるわけでございますから、その意思によって決定されるべきものであると思います。
  121. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 もう少し詰めたいのですけれども、あまり時間がありませんので次に移ります。  第三条の四項で、過日の当委員会におきまして曽祢委員の質問に対して大臣の御答弁があったわけでございますが、この査察協定を二年以内に結ぶと大臣は御答弁になっておられ、私もこの記録をまた確認をいたしました。そういう発言がなされているわけでございますが、これは条約上の解釈からいきますと、大臣の御答弁は間違いである。二年以内に日本がその締結をする必要はさらさらないわけでございます。私は、この条約がその効力を生じた三月五日までに批准書を寄託した国においては、確かに百八十日以内に寄託するということは、この協定は二年以内に結ばなくてはならないということはよくわかるわけでありますけれども、しかし日本は三月五日以前にその批准書は寄託されてない。大臣もおっしゃっておるように、いわゆるあとのケースの国に該当するわけでございます。この場合は、日本は、批准をするたとえ一日でも前日にこの批准書を寄託すればいいわけでありまして、何ら二年以内に批准しなければいけないという制約はないと思うのですが、この点についていかがでございますか。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 すでに締約国になっている保障措置の協定は、おそくとも現在から二カ年内に効力を発生する。それらが、わが国が将来結ぶ協定に大きく影響するという先例になることが考えられますので、その点を中心に、条文を追うて御説明したわけではなくて、その点からいたしまして、実際上わが国としてのこれからの交渉はこれと並行して進めざるを得ないであろうというような意味を込めて、二年以内になるか、そうです、というお答えになったわけでございます。  で、これは正確に申しますと、いまお話しになったとおりだと思いますが、第三条の第四項でございますと、締約国であるが核兵器を持っていない国は、条約発効のときから百八十日以内に保障措置協定締結のための交渉をIAEAとの間で開始しなければならない。それから今度は現実の問題ですが、この条約は三月五日に効力を発生いたしておりますから、すでに条約の批准書を寄託して締約国となっている国と、それから八月三十一日までに締約国となる国は八月三十一日までに交渉を開始することになるわけであります。八月三十一日と申しますのは、効力を発生した三月五日から百八十日目であるところの八月三十一日までということに、この締約国となる国はということになって、それは八月三十一日までに交渉を開始することになるわけでございます。  また、同様に、条約の規定によりますと、保障措置協定交渉開始の後一年六カ月以内に発効しなければならないこととなっておりますから、かりにそれらの国による保障措置協定交渉が本年の八月三十一日に開始されるとするならば、その後一年半以内、すなわち七二年の二月の二十九日までにその協定が発効することになるわけでございます。  それからその次に、今度は、本年の九月一日以降に批准書を寄託する国——この中におそらく、概念的に言えば日本は入るだろうと思いますけれども——については、この条約の規定によりますと、批准書寄託の日までに協定交渉を開始して、その開始の日から一年六カ月以内に協定が効力を発生するもの、こういうふうになると思います。しかしわが国としては保障措置協定の内容を重視するという立場をとっておりますから、その内容を批准に際して考慮する方針にしておりますことは御承知のとおりでございますから、実際問題としては批准までに協定の内容について実質的に見通しを持ち得る程度に交渉を進めていかなければならないのではなかろうか、こういうふうに現在考えておる次第でございます。
  123. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいまの御答弁を伺っておりまして、それだけのことをいろいろ踏んまえられた上で二年以内という御発言がありましたことは、すでに大臣はこの三月五日から百八十日以内に査察協定交渉を開始をしたい、こういう御意思があっての上での御答弁かと、このように判断をしてよろしいわけでございますか。
  124. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 われわれの希望としては、そういう希望も持っておりますけれども、実際問題といたしまして、規定上、締約国になったものがそういうふうなことができるというようになっております。そしてもうすでに、締約国になってしかも核保有国でないものは四十カ国にのぼりますので、したがいましてIAEAの側といたしましても、まず締約国になったほうが先決であろうというようなことで、われわれのようにまだ締約国になっていないものは、あるいはそれほどの時間的余裕はIAEAのほうにないかもしれません。しかし一方IAEAといたしましては、そういった四十カ国との交渉を始めるにあたりましては、IAEAとしてどんなような保障措置協定の内容にしたらよいかということをまず検討している段階でございますので、その段階におきましてはわが国も同じような立場におきまして、わが国の希望する事項その他を強力に申し入れたい、こう考えております。
  125. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 前回の記録を見ますと、曽祢委員の質問のタイムテーブルのところにつきまして、二年以内に査察協定交渉が完了して批准をするのかということについての大臣の御答弁であったように私は記憶をしておるわけでございますけれども、そうしますと、前回の二年以内という御発言大臣の間違いであった、こういうことでございますか。
  126. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 先ほども大臣がおっしゃいましたように、私もあの席におったのでございますけれども、曽祢先生の御質問に対しまして大臣が二年以内というようなことを申されましたのは、実は私のブリーフがあるいは十分でなかったのかも存じませんけれども、要するに私が大臣にブリーフ申しましたときに、実際の問題といたしまして、先ほど大臣がおっしゃいましたように、日本としては、すでに締約国になった国がまず二年以内にやらなければならぬ。そういうのと並行して日本もやるんだと、この実際上の問題を私は非常に強調して大臣にブリーフ申し上げましたので、その実際上の問題を非常に強調された結果になったのだと思いますけれども、条文の読み方といたしましては、いま先生御指摘のとおり締約国になった国と、それから日本のようにまだ締約国になっていない国との間には、条約のこの条文の読み方としては相違がございます。
  127. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 こだわるようで恐縮でございますけれども、曽祢委員の質問は、「むしろ加入じゃなしに批准書寄託という形になると思うんですけれども、大体二年以内にやればいいんですか。」こういう御発言だったと思います。大臣の御答弁は「そのとおりでございます。批准をして正式に加盟するわけですから、最終的には二年以内ということになります。」批准して寄託するということが二年以内に行なわれるということは、ここではっきりしておかなければならないのではなかろうか。むしろこの二年以内という大臣の御発言が生きているならば、わが国は二年以内にこの批准をして正式に加盟をすることになってしまうのではないか、こういうことを考えるわけでございます。  あまりはっきりいたしませんが、時間もありませんのでもう一点だけ伺いたいのですが、査察協定がこの四項の前のほうにございますが、「個個に又は他の国と共同して国際原子力機関と協定締結するものとする。」この「個個」ということばがございますが、これは個々に内容が違ってもいいという意味での「個個」なのか、それとも内容は全く同じであるけれどもその締結のしかたが、いわゆるケースとして個々なのか、この点はいかがでございましょう。
  128. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 まず最初に「個個に又は他の国と共同して」とここに書いてございます「個個に」の解釈でございますけれども、これはわが国もその中に入るわけでございますけれども、あとのほうから御説明申し上げますと、「他の国と共同して」といいますのは、先生御承知のようにユーラトムが念頭にあるわけでございます。したがいまして、ユーラトムの場合はこれらの国々が共同してIAEAと協定をつくることができる。それからこの「個個に」というほうは、日本とかスイスとかカナダとかそれぞれが個々にIAEAと協議をして協定をつくることができる。しかしそれが、いま先生の御質問の、全く同文のものでなければならないかというようなことではないのでございまして、それは個別的な国と協定に入る。したがいまして、もちろんそれぞれの国の状況によりまして、全然同文ということは言えないのではないかと思います。
  129. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 時間もありませんのでこの問題についてはまた後ほど伺いますが、私日本語の解釈が間違っていると困りますので、くどいけれどももう一度伺うわけですが、この拡散防止条約をわが国が三月五日から数えて二年以内に批准をして加入をしなければならないということではないわけでございますね。その点だけ確認をしていただいて……。
  130. 愛知揆一

    愛知国務大臣 おっしゃるとおりです。そういう意味におとりになったのだとすれば……。
  131. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そういうふうにここに書いてあるのです。
  132. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いや、ですからそれを正確に先ほどお答えをしたつもりでございます。
  133. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ここに書いてある日本語は、「批准をして正式に加盟するわけですから、最終的には二年以内ということになります。」と、こういう記録があるわけです。これは、このことばはそうであるけれども意味は違う、こういうことでございますか。
  134. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは、ですから先ほど間違いであるということにおっしゃいましたが、私は間違ったつもりはないのですけれども、先ほど申し上げましたことが正確でございますから、その分は訂正をいたします。
  135. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 以上で質問を終わらせていただきます。
  136. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  137. 曾禰益

    ○曽祢委員 まず日米繊維自主規制問題について伺います。  私はこの交渉を見ておりますと、どうも初めから日本とアメリカの間の態度あるいは思惑が非常に食い違っているような気がいたします。まずアメリカは非常に政治的に取り上げた。ニクソン大統領の選挙公約という非常に政治的な観点から取り上げる。ところが日本ではあくまでビジネスライク、ある意味では合理的に条約的にガットの精神を尊重しながら——そういうところに日米のかま見の基本的相違があった。しかもそれをさらにこんがらからせたのは、何といってもはっきり言って十一月の総理の渡米の際のこの問題のとらえ方の結果が、アメリカに対してはやはり総理大臣としてすみやかに善処するという、そういう感じを明確に与えた。ところが現実には、日本側としては御承知のように国会、衆議院の決議もありまして、実害のないものに対しては包括的な規制なんか絶対受け入れられない。かりに個別的な問題が起こったならば、元来ならほんとうはガットの場で取り上げるべき問題だ。少なくとも包括的規制なんということはとんでもない。むしろいままでの綿に関する協定のいきさつ等から見ても、これはとんでもないことになる、あくまでも理路整然といくのでなければならない、こういう態度で、国内は非常にきちんとした態度です。そこの食い違いが今日までみぞが埋められないままにきている。しかし、この問題は、この段階において放置しておくのは両国のために適当でない。したがって、政府としてはどういうふうにこの問題を収拾しようとお考えになっているのか。たとえば、昨日から伝えられているように、従来の政府態度は変えない、だがしかし、現実には十ばかりの毛及び合成繊維の製品を限って、これらについて実害ありやいなやを客観的な機関で検討し、たとえば、それはアメリカの関税委員会というものは従来の実績から見てもかなり信用がおけるような感じがするのであります。そういうもので検討して、それが実害ありということの判定になった場合には、これらの問題については日本側も必ずしもガットの場というようなことを要求しないで、しかし、範囲が及ぶところがあるでしょうから、結局すべての関係国が合意しなければなりませんが、日米間で話をまず詰めて、ある種の自主規制を考えてもいいというお考えがあるのか、また、そういったようなことについて、必ずしも繊維問題だけでなくて、現にケンドール氏なんか来ておる。これは有名な自由貿易論者だということになっておるわけです。この貿易問題、資本及び輸入の自由化あるいは残存輸入制限を早く撤廃すること、さらにまた、関税以外の障壁、いろいろありますね。確かにあると思います。アメリカにもASPの問題があるし、日本にも輸入担保金の問題等があります。そういったような関税以外の障壁についても日本は自由化の方向に進むという、言うならば繊維製品の問題だけに限らず、自由化という線に沿ってもう少し広い視野に立った解決——アメリカも、これはほんとうは自由化に反することなんですから、そういうことをやることによって両方がけんかしっぱなしで、それでこれは、実際はわかりませんけれども、アメリカの議会が制限立法をするというようなことはなるべく避けたほうがいい、こうお考えなのか、その点について外務大臣の所信を伺いたい。
  138. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろ過去の経過についての御所見がございましたが、それについて一々御説明する煩を省きたいと思いますけれども、問題がいわば政治的に解決されるにしましても、日本といたしましては筋目の通ったワクの中で、納得のできるような結論でなければ承知ができないという態度は一貫しております。今日でもそういう態度の中で解決をいたしたいと思っております。  そこで、御承知のように綿協定の経緯などもございますから、慎重の上にも慎重に筋目を立てていかなければならない。この日本側態度に対しまして、先方としては非常にもどかしさを感じているに違いないとは思いますので、いろいろの情報や意見もアメリカ側からもずいぶん出ておりますけれども、私は、基本線はどうしても通したいと考えております。  そこで、基本線というのはいわゆるコンプリヘンシブな包括的規制ということは筋が通らないということが一つでございます。したがって、制限的な特定の品目について、限定的な機関等において相談をしようというのならば、やはり被害のある、あるいは重大な被害のおそれが現に目に見えておるというようなものが権威のある組織において立証される、あるいはこれが日本側としても了解ができるという基礎のものがあるならば、それについては話に乗ってこの話し合いを継続してもいいじゃないかという態度でございます。  やはり大問題でございますから、いまいろいろの報道がございますけれども、この際申し上げておきたいと思いますのは、あるいは十品目だとか、あるいは何品目だということについて合意ができたというふうな報道もないではないのでございますけれども、やはり私がいま申しました筋を立てて、その結果が何品目かについてさらに必要とする説明の資料を取るとか、こういうところが解明されるならば、わがほうとしてもいわばティクアップしてもよかろうということで話がまとまるならばけっこうだ。それをできるならば早急にアメリカ側の理解、協力も求めたい、こういう態度でおるわけでございます。  それから何と申しましてももう一つの筋目というのは、本来ガット精神で処理されなければならないわけですし、それから、かりに日本からの対米輸出においても被害、あるいは被害のおそれが甚大であるということが出てまいりましても、その中にはおそらく他の国の占めておるシェアも相当多いに違いないと思います関係もありますから、もう終局的には多国間、関係国間できちっとした相談にならなければならない、これも筋目の一つであると思います。同様に、しかし日米間のいろいろの関係から申しましても、ある程度の双方の了解が腹にはっきり入るということは望ましいことだと思いますから、終局的にはガットということで、あるいは関係国との間での取りきめという形にしたい、こういう基本線でございます。  したがいまして、政府としては、ワシントンを主たる舞台にして話し合いは行なわれておりますけれども、いま申しましたような基本線で第一線の、ネゴシェ一ターと申しましょうか、交渉話し合いに当たっておる者には、そういう態度で、先方の態度意見をこちらに近寄せるようにできるだけするようにということを指図しておるわけでございますけれども、今日ただいまの時点におきまして、今後いかように進展していくか、まだ確たる見通しはつけ切れておりません。同時に、ただいまもお話がありましたが、大きな立場からいって、制限立法というようなものが出てくることは双方のために決して好ましいことではないと思います。  それからもう一つは、繊維というものは特にアメリカ側から見れば特殊な問題でございます。これに限定して、そのワクの中で処理すべきものであって、かりそめにも制限立法などというものが、こういう機会に感情のおもむくあまり、日本のほかの対米輸出に及ぶなどというようなことになるのはとんでもないことでございますから、そういうことにもならないようにこの上とも注意をしていかなければならない。  それからもう一つは、これは取引とかなんとかという問題では決してございません。しかし、これは共同声明でもわがほうの態度は明らかにしておりますように、また、当時すでに政府として決定した方針でもございますが、いまお話しの残存輸入、資本自由化、それから非関税障壁、こういったようなものについてわがほうがアメリカから要請されるというのではなくて、私は自分自身としても持論でございますけれども、日本が将来着実に日本経済の成長率を維持し、かつ日本の通貨制度も健全にしていくためにはやはり相当思い切って進めていかなければならないと考えておりますので、共同声明当時に考えましたことよりももう少し私は範囲を広く、また時間的にもこれを繰り上げることが望ましいと思っておりますが、これは私だけの力ではどうにもなりませんので、関係各省にも訴えまして、できるならばそういう方向に向けていきたい、こういうふうに考えております。  大体ただいま御質疑のありましたいろいろの項目は一応カバーしたように思いますけれども、私の現在の心境並びに政府立場は大体さように御理解いただいてよろしいかと思います。
  139. 曾禰益

    ○曽祢委員 一番ポイントの一つと見ている総理大臣のワシントンにおける交渉の際の応接ぶりに、ある意味で問題をこんがらかせた原因がある、私はこう踏んでいるのです。これはあなたはそれをなかなか認められないと思いますので、これは私の見解として平行線でけっこうです、実はこれが事態をこんがらかせた最大の原因だと思います。  そこで、いまの段階で、こういう問題を変な意味で突っついてますます複雑にしたいという気持ちでないわけです。そこで、私は十項目等について新聞の報道を聞きながら、むしろ政府の基本的態度をただしたわけです。それは私はこういうことになると思うのです。  第一には、やはりこの問題をすみやかに両国の合意によって解決する。特に制限立法みたいなものは絶対につくらせない。それから他のものには及ぼさない。この点は、繊維問題は繊維問題に限るということ。そしてこの問題の解決については基本的に国会の決議に従った筋目の通った解決をする。そのことは、言いかえれば、いかなる場合においても包括的な制限は絶対受けない。それから被害があるかないかについてやはりこれは検討しなければならないし、やはり信頼のできる機関における検討を今後ともやらなければならない。そういう場合に、話し合いの結果、限定された品目等について被害の立証がある場合には、これはやはり考慮して交渉するにやぶさかでない。それ以外は問題にならない。つまり包括的規制とかそれから被害の立証なしにただ見込みだけということは絶対受け入れられない。第三には、そういった機関で、われわれも信頼のできる機関——そういう場合に国際的機関に一々持ち出すわけにはいかぬでしょうから、アメリカの関税委員会なら関税委員会——しかし、その結果をわれわれが了承した場合に交渉の対象になり得る。第二の原則は、そういう日米間の交渉を続けてすみやかに合意に達するように努力をする。しかし最終的にはやはりガットの精神をくんでと申しますか、ほんとうならばガットの場でやるのだけれども、少なくとも関係対米輸出国、これらを含めた国際的な約束ということで、もしやるならば日本だけでやるということは筋が立たない。この点も筋を立てる。大体そういうような基本的な方向で、これ以上の食い違いがないように、原則を守りながら、交渉は続けていく、こういうようなお考えかどうか。そしてその場合に、決して貿易あるいは為替、資本の自由化の問題を取引するわけじゃないけれども、大きなコンテクストの中においてはやはり貿易そのものはいろいろな不自然な制限をやらないということが日本とアメリカの基本的精神なんです。そういう意味で、お互いに自由を制限するようなことは撤廃していこうといま外務大臣が言われた。日本としては、資本自由化やあるいは貿易の自由化についてわれわれのベースにおいて独自の判断で進めるものは進める。その中には資本、貿易の自由化の問題のほかに、いわゆるガットの残存輸入制限の撤廃に近い緩和とかあるいは関税外の差別の問題についても考える、大体そういうことでいま折衝をしようということなのかどうか。もしそういう方向ならば、どの品目がどうだというふうなことを一々私はこれ以上お尋ねいたしませんが、もう一ぺん確認を願いたいと思います。
  140. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど私がお答えいたしましたところもいまお話しになったところと線は同じような線ではないかと思います。過去の経緯についてはさっき申しましたように、私もとやかく申しません。しかし総理大臣をはじめこの繊維の問題についていわゆるコンプリヘンシブということについては日本はおかしいではないか、またそういうことは日本としてはどうしても承知ができないということは終始一貫しておることを御理解をいただきたいと思います。これはかねての国会の御決議の線に沿うておりますし、それから私自身といたしましても、そもそも昨年の五月スタンズ長官が来ましたときに論戦を開始したわけですが、終始その点は守ってきておるつもりです。同時にそういう基本線の中で、被害というものが権威ある組織によって日本側も理解のできるような資料、説明が出てくるものならば、そういった限定された品目について話し合いの用意がある。これはないというのもあまりにかたくなではないかと思います。そして基本的な日米の理解が進んだならば、最終的にはこれはやはりガット精神に基づいた話し合いの決着をつけるということが望ましいのではないかと思っております。  それからもう一つは、これとは別でありますが、いわゆる各種の自由化につきましては先ほど私の意見を申し上げましたけれども、これは私のかねての持論でもございますから、さらに政府部内に大いに説得工作をいたしたい。どうか各方面の御協力をいただきたい、こういうふうに考えております。
  141. 曾禰益

    ○曽祢委員 たいへん短い時間ですけれども非常に重要な問題なので、中国問題にちょっと触れてみたいと思います。  これは両委員からお話もあったのですけれども、私は、日本が結んでいる条約を誠実に守るのは、政府だけでなくて国民としても義務だと思うのです。実は国民政府との条約はアメリカの政府吉田さんが押しつけられたような経緯もあることは知っておりますけれども、経緯いかんにかかわらずそれを無視するあるいは破るという態度はよくない。同時にそれだけにとらわれておって、条約においても大陸関係戦争状態終結したかしないかは別として、大陸との事態については実はこれは効力がないということになっているわけです。言いかえるならば、国民政府との条約関係を維持しながらも大陸の問題に対しては弾力的というか、むしろフリーハンドであってもいい。ただし国民政府を頭から否認するというようなことは、これは条約の精神からいってもできないでしょうが、かなり広いフリーハンドがあってしかるべきじゃないか。問題は、そういう意味で国民政府との関係は両方が話し合って一本になる、何とか統一するとか国共合作ができて円満に解決するとか、そうでなければクーデターが起こってひっくり返るとか、もっとひどいときになると、強いほうが実力解放をする、そういう事態がかりに起こって、われわれとしては実際上条約を結んだ対象が消えたような場合は別ですけれども、わが国みずから国民政府との条約を破棄し、あるいはこれを破棄すると同様なことをやるべきではない。私はそういうように思う。ただし、そのことは、何でもかんでも国民政府の言うような一つ中国ということにだけとらわれて、すでに条約ができてから約二十年、台湾国民政府が行ってからは二十一年、もはや実力解放は台湾もできないし、もし北京側がこれを考えるとするならば、これは国際的平和を撹乱する結果になるわけで、これも実際上できない。それで、この大陸支配する七億何千万という実権を持った政府ができている。これはまさに七〇年代における全世界の一つの大きな問題、わが国にとっては、これは日本の安全のためにも非常に重大だ。われわれは大陸の北京政府というものをいつまでもほうっておくのではなくて、これを国際的な社会のほうに、むしろ、ことばは悪いかもしれないが、引っぱり出す、引き入れる、そういう方法をとるべきだ、こう私は考える。それに、一々国民政府からああでもないこうでもないと言うことを、われわれが受け入れるべき筋合いではないんじゃないか。そこで、日本と北京との関係について、直接やる方法もあるけれども、直接やる方法でいく限りは、これは北京のほうとしては、もうすでにフランスに対する態度以上に明らかになっているように、国民政府との条約を破棄してこい、こういうことに究極的にはなるわけですね。究極的じゃない、むしろ初めからそうです。これではわれわれとしては近づきたくとも困難、したがって、北京との関係においては、やはり前向きであるけれども、国交条約というような形にならない範囲において、たとえば郵便あるいは気象協定というような業務協定をやる、あるいは航空乗り入れみたいな一種の航空協定もいいんじゃないか。それからむろん貿易問題については、いままでみたいにケース・バイ・ケースといいながら、実際上は輸銀を使うことに対して絶対に反対、これは日本の気持ちじゃなくて、国民政府の意向に沿いながらやってきた。そういうことはやめて、貿易はどんどんやる。むしろ貿易代表部、通商代表部くらいはお互いに認め合うというくらいなところまでいくのがいいんではないか。そういったようなダイレクトな日中関係を進める。もう一方においては、やはり国連という場を通じて、かりに国連の総会において、北京政府中国の代表者と認めよう。ただし台湾についてはこれは議席を預かる。将来は台湾の身の振り方については、中国人同士でかりに話がつかなければ、最終的には台湾の住民の自由意思を尊重するほかないんではないか。かりにそういうような議決があった場合には、日本としては反対する理由がないのであります。そこまで政府が勇断をふるって、ただ国連の総会の場でアルバニアの出すような北京の代表権を認めろ、そうして同時に国民政府代表権を巻き上げろ、こういうような動議にはわれわれは賛成できないことはわかるけれども、重要事項指定方式というような手続論で、国連総会における中国問題の実質的、真剣な討議を妨げるようなうしろ向きの態度をとっているのは私は間違いだ。むしろ、かつての大平代表のことばをもってするならば、国連において大多数の国から祝福されるような形で北京政府が迎えられるならば、日本としてもこれに賛成だ。また言いかえれば、国民政府にもがまんしてもらわなければならぬ。国連という場を通じて、国連の場にあらわれたコンセンサスによって、やはり台湾を納得させるというか、北京政府に重点を置いた政策の転換をそういう場を通じてやるというようなことを考えるべき時期にきているのではないか。以上二点。北京政府に対する直接の交渉態度として、もっとできるのではないか、積み上げ方式でいいから。第二には、やはり国連における日本の積極的外交によって、国連あるいはその他のFAO、WHOでもけっこうですが、そういうような国際機関、あるいはその他の軍縮機関でもけっこうですから、そういうところに国連に北京政府を迎えるということについて日本ももう踏み切って、その方向に行くのが正しいのではないか、かように考えますが、大臣のお考えを承りたい。
  142. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど戸叶委員の御質問にもお答えいたしましたように、いまこの段階で具体的な問題について所見を申し上げることは、私としてはできませんことを御了解いただきたいと思います。同時に、北京との直接の接触ということについてどう考えるか、方法があるじゃないか。これは先ほど申し上げたことを繰り返すだけでありますが、たまたま文化大革命も終息をし、中共の外交機関の充実もだんだんとはかられているようでもあり、日本も共通のところに相当の数の公館を第三国に持っている。抑留者の問題もある。何とかひとつまず第三国における大使級会談と申しましょうか、政府機関同士の対話を持ちたいということで、これは誠実にアクションを起こしておることはかねがね申し上げたとおりでありますが、いまのところリアクションがまだ何もございませんのは残念でございますが、われわれの考えておりますところはこういうところにもあらわれているということは、御理解をいただけるかと思います。  それから国連の問題は、確かに代表権の扱いをどういうふうにするか、そしてアルバニア提案というようなものが一方に存在しているというような状況において、どういうふうに扱っていくかということはなかなか問題でありますし、同時にある人が申しましたように、これは終局的には手続問題じゃないか。むしろサブスタンスが大事なのであって、問題の内容がきめられないのに方式や手続だけを最初に論ずるのは順序が逆ではないかということを言われた方もありますが、私もある意味でそれも同感でございます。  それからもう一つは、これも新聞などに取り上げられておりますけれども、核防条約にフランスも入っておりませんが、フランスの態度はわかるにしても、中共が入っていない。これに対して私どもとして政府声明としても、こういうところへこそまず入ってもらいたいということを明らかにしておりますところにも、われわれの考え方はにじみ出ていると御理解をいただいてもいいのではないかと思うのであります。具体的にイエスかノーか、あるいはAからB、Cとこういうふうに考えているというところはここで申し上げることをはばかりますけれども、真剣に考えて、七〇年代といわれるような相当息の長い問題として、いまともするとあちらかこちらかと言われるようなところに対しては、先ほど申しましたように、自民党の党内でも真剣であるだけにいろいろの意見があるくらいでございますから、政府としては同時にきわめて慎重にならざるを得ない、こういう立場を御了解いただきたいと思います。
  143. 曾禰益

    ○曽祢委員 残念ですけれども時間もありませんし、また政府立場からなかなかストレートにお話しできない点もあろうと思いますので、きょうはこれでやめておきますが、ぜひこれは理事会でおはかり願いたいのは、松村長老あるいは古井君なんかの帰られた機会くらいに、外務委員会でそういうフリーディスカッションみたいなことをやったらいいと思うのです。政府に聞くばかりでなく、われわれ自身が政府の施策に対してわれわれ国会の立場からわれわれも研究し、場合によってはこの施策を示していく、国民にも示していく、こういう委員会の運営についても、あとで理事会でおはかり願いたい。  以上のことを希望申し上げまして、きょうの質問を終わらせていただきたいと思います。
  144. 田中榮一

    田中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時休憩      ————◇—————     午後四時七分開議
  145. 田中榮一

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  旅券法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。松本七郎君。
  146. 松本七郎

    松本(七)委員 旅券法の改正は、すでに提案理由の説明にもありましたように、最近、非常に国際旅行者がふえ、そしてまた事務も非常に繁雑になっておるので改正しようというその趣旨は、前進的なものを含んでいますし、われわれも賛成なんです。すでに前回提出されたときも、そういう趣旨から一応の質問をして、そして大臣の前向きの答弁を土台にして参議院に送ったという経過もあるわけですから、私どもも、なるべく旅行者の便宜をはかろうというその趣旨は了解するものであります。しかしよく検討してみると、こういう旅券法ができてから長年改正せずにきました今日、せっかく改正する以上はもう少し根本的な点にまで触れて改正することはできないものだろうか。前回も問題になりましたが、その一番大きい点は依然としてこの日本の旅券発行のかまえというか精神というかたてまえといいますか、それが許可制になっているわけですね。いわゆる外出許可の証文みたいな本質を持ったものになっていい。憲法の規定をここに引用するまでもなく、本来国民が海外に行くのは自由でなければならぬ。これは基本的な人権ですから、身分証明的な性格を持ったのが本来旅券法に規定し、また憲法で規定した精神であるはずだ。その国の政府がその人の身分を証明し、そうしてすべての保護を渡航先の関係政府に要請するという、こういうことでなければならないと思うのですが、それが依然ここでは許可制ということがたてまえになっておる。したがって当然未承認国とか国連非加盟国というものが差別扱いにされてくるという結果もまたここに出てくると思うのです。そういったせっかくのいい機会ですから、根本的にもっと改めることができなかったものだろうか。外務大臣からまず御答弁を願います。
  147. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段にお述べいただきました点については、いろいろな理解を持って旅券法改正案を見ていただいてたいへんありがたく思うわけでございますが、そこで後段のお述べになりました点が問題の点であることは、私も承知いたしております。同時に、前国会で申し上げましたように、旅券というものがどういうものであるかということにも関連するわけでございますけれども、これは本来自由な身分証明書みたいなものであるということが理想であるということは、私も、御同感でございます。ただ、同時に旅券というものが、日本国民が外国に旅行する、そうして日本国政府立場からいえば、この旅券を持って外国に参ります渡航先の外国におきましても、所持人に対して旅券を持っている者に対する保護あるいは便宜というものを依頼する文書であるという性格を持っておりますので、そういう関係から、諸外国の例等も参酌してみましても、どうしてもやはり承認国と未承認国というところに一つの線があるように思われるわけでございます。  そこで、前段にお述べになりましたように、現在海外旅行希望者は、もうほんとうに激増している状況でございますから、この方面に対してはマルチプルで五年間という旅券に踏み切りまして、同時に、後段の分につきましても、外交政策の基本や転換に相応じまして、運用上いろいろと考えてまいりたい、こういうふうに、いま基本的には考えておるわけでございます。ただ未承認国も、相当、複数あるわけでございますから、それぞれの状況等に応じまして、その取り扱いが若干違うということも、またやむを得ない点ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  148. 松本七郎

    松本(七)委員 本来あるべき姿ということには、私の意見と同意見のようでございますけれども、しかし、なお未承認図と承認国の差があってもやむを得ないという、ここに意見の相違があるわけです。それは意見の相違ですから、ここで論争してもしようがないですが、私どもはせっかくこういう改正をするんならば、やはり本来のあるべき姿に一挙に持っていっておかないと、一たんこういう改正ができますと、この差別待遇というものが法文上固定化してしまうことになるわけですから、いままでの単なる運用でやってきたのと違って、今度は旅券法という法体系で、きちんと差別待遇というものが固定化するわけですから、それだけ一面、私は非常に危険が増大すると思うのです。  それから、大臣自身も本来あるべき姿に運用の面で少しでも近づいていこうという、そういう気持ちだと、いまの御答弁は理解していいと思うのですが、それならば社会主義諸国、未承認国、国連非加盟国に対する差別を、運用の面でどうして少なくしていくことになるのか、この点を少し御説明願いたいと思います。
  149. 愛知揆一

    愛知国務大臣 未承認国に対する日本人の渡航の問題につきましては、まず第一に未承認の共産圏の国に行く希望者の取り扱いについては、従来よく御承知のように、渡航趣意書というものを提出してもらっているわけでございます。その部数も現在は十五部というような相当多くの部数ですから、希望者にもたいへんこれは迷惑なことだと思いますから、まずこれを半減するくらいのところから始めてみたい。要するに手続の簡素化ということをまず考えたい。同時に渡航趣意書の提出というものが、旅券の申請よりも時間的あるいは期間的にだいぶ前もって提出を求めて現在おるわけでございますけれども、これを旅券の申請と同時に受け付けることにしてはどうだろうかということを考えております。  それからさらに提出されたあとの手続、これの発給の時間も、現在調べてみますと、大体三週間あるいはそれ以上かかっておりますから、これもできるだけその期間を縮めて渡航手続を簡便化する。これがまず第一にとるべき措置ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  150. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう手続上の問題より以上に——手続を簡素化するということはもちろん必要です。けれども、それ以上にやはり相手国が受け入れる条件というものも、かなり許可するにあたっては、政府は考慮するわけでしょう。そういう点でいままでと違って渡航しやすくなる運用のしかたというものはどういうものが考えられるのか。
  151. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、先ほどもちょっと申しましたように、たとえば未承認共産圏の国ということに限定してみましても、その中には相当の数の国があるわけでございます。一がいに一律にどうということは私言えないと思うのですけれども、先方の国が日本人の入国を許可をして、そうして手続をとってきたというような場合には、できるだけこれを尊重していくということも手続の問題と関連した考え方である、そういう方向で考えてみたいと思っておるわけであります。手続の問題は、手続の問題ではございますけれども、いま具体的に申しましたような手続の簡易化ということは、すごくやはり旅券発給に対する姿勢について関連するところがあるわけでございますから、そういう気持ちで今後処理をしてみたい、こう思っておるわけであります。
  152. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、簡素化された趣意書を出して、そうして相手国が受け入れるという意思が確認されれば、原則としては渡航を認めると、こう理解していいのですか。
  153. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいま申しましたように、原則的に、一律に原則はこうだということにはなりかねると思いますけれども、気持ちとしてはできるだけそういう気持ちでまいりたい、かように思っております。
  154. 松本七郎

    松本(七)委員 そこのところが非常に大事な点だと思うのですね。ことばの上では差別を運用の面でできるだけなくしていこう、こう言いながら、それじゃそれが認められることが原則かというと、いやそうではないということになると、やはりいままでと同じように、あとで罰則規定の問題も、これは関連してくるわけですけれども、へたをすると、これは今までより以上に実際問題としては制限される。政府がいかにこれを運用の面で改善するという気持ちがあっても、実際にはいままでより以上に制限される結果になりかねない。そういうことから、いやしくもこういう改正をする以上は、差別を運用の面でなくすと言われる以上、縮めていくと言われる以上は、原則として認めるというたてまえに立っていただかないと、私どもは安心できないと思うのですがね。もう一度そこのところを……。
  155. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それを原則として認めるのだということになれば、やはり旅券法の法条からいいましても、それなら差別しなくていいじゃないか、全部どこの国に対してもフリーにしたらいいじゃないかということに発展していくわけですが、そこまで踏み切っているわけではございませんことを、この旅券法改正の基本的な政府考え方というものがそこにあるということは御理解をいただきたいと思います。
  156. 松本七郎

    松本(七)委員 そんなことはないと思うのですね。それはそこまで踏み切らなくとも、できるだけその差別をなくそうという姿勢が本物ならば、それは全部をさっき言うように身分証明書といった本質に帰るというなら、それはそうでしょう、全然差別がなくなるということになるのですから。そうではなくて、やっぱり未承認国については何らかの差別を設けるのだ。そのための一つの手続上の問題が趣意書という形で出てくるわけですから、それを全面的に否定するというのじゃないのでしょう。ただ趣意書を出し、そして検討する以上は、場合によっては認めない場合があるという、そのこと自体が差別じゃないですか。だから原則としては、相手国が受け入れ、そして差しつかえないという場合にはこれを認めるのだという原則がはっきり打ち出されて、初めて一歩前進したということが言えると思うのです。そこを否定されるのだったらこれはおかしいです。どうですか。
  157. 愛知揆一

    愛知国務大臣 結局ある点については御意見が違うと思いますので、これはやむを得ないところだと思うのですが、気持ちにおきましては、先ほど申し上げた手続の簡素化だけじゃないかとおっしゃるけれども、これもやはり姿勢の問題と関連しなければそういう踏み切り方はできないわけでございますから、全部が全部御趣旨のようにいっておらないにしても、一歩二歩の前進、前向きの態度、こういうふうに御理解いただければ幸いだと思います。  それから同時に、くどく申し上げておりますように、未承認あるいはその中の共産圏の国でも、その国々の状況あるいはそれと日本との関係ということから申しましても、若干の、やはりこれはケース・バイ・ケースで考えていかなければならないことは、日本政府立場として、これは外交の問題もございましょうし、たとえば国内の各治安当局その他の意見というものも総合的に判断しなければならない、これは残しておくことが国益にとって必要である、こういう観点に立っておりますことも政府態度として御理解をいただきたいと思います。
  158. 松本七郎

    松本(七)委員 私どもからすれば、基本的には憲法で保障された基本的人権を守るという立場から、この機会に渡航は自由というところまで踏み切ってもらいたいのですけれども、そこまではとてもできない、政府のいまの答弁からも、いまそこまでいくことは望めないでしょう。  そこで、それならばせめて原則的には認めるんだ、そして例外的に、どうしてもやむを得ない場合にはこれを制限するというところで、ひとつ今回はおさめてもらいたいというのが、私どもの第二段の要望になるわけですけれども、いまの答弁ではそこまでもいかないわけです。そうしますと、あなたの言われるように、未承認国でもいろいろ事情が違うのだから一律にはいかないということを含めて、少なくとも従来よりも渡航については制限をゆるめるのだ、拡大していくのだ、そういう運用をするのだということはここで保障されると理解していいですか。
  159. 愛知揆一

    愛知国務大臣 扱う姿勢や気持ちとしては、そういう気持ちを持って扱っていきたい、こう思っております。  顧みてほかのことを言うようでございますけれども、たとえば広州交易会に華僑の方々が行かれるという問題を扱いました場合も、これは従来と、政府考え方といいますか、扱い方は変えたわけでございます。ただ三十数名全部なぜやらなかったか、ここまでくればというお話もずいぶんございましたけれども、これは当委員会でも前に御議論がありまして、私ども政府立場を明らかにいたしたつもりでございますが、これなども希望された方の相当多数の方を承認することにしたというようなことにも——これは直接旅券法の問題とは、また関連がないかもしれませんけれども、こういう気持ちでいるということは御理解いただけると思います。
  160. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは次に、そういう気持ちで運用された場合に、はたしてその気持ちが生きていくかどうか、せっかく改正したけれども、そうしてそういう気持ちを持っておられても、実際の運用面でそれが生かされる保障があるか。むしろ私どもが心配するのは、気持ちはあってもこれが殺される心配が増大しているのじゃないかという点があります。  それは一つは国名の問題ですね。いままでもベトナム、中華人民共和国は国名を書いて、朝鮮民主主義人民共和国及びドイツ民主共和国は国名を書かない、地名を書く、こういうことからいろいろな障害が起こっているわけです。これはよくある例なんですが、ドイツの場合も、どうしてもドイツ民主共和国という正式の国名を使わなければ、向こうとしては感じを悪くするのはあたりまえのことです。だから政府が、これこれしかじかの用務を帯びて東独に旅行する、これはよかろうという気持ちがありましても、正式のドイツ民主共和国ということばを使わないために、向こうがそれを使いさえすればビザを発行するのに、それがビザを取れないというような事例がいままでたくさんあるわけです。そういう点について今後改善される、つまり向こうが好む国名を使うというところまで運用面で踏み切っていただけますか。
  161. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は国や地域によって、先ほど原則を申し上げましたけれども、場合によりあるいはものによっては私は検討してもよろしいかと現在考えております。
  162. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは、どうして同じ未承認国でそういう点まで差別しなければならぬのですか。
  163. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは一番最初に申し上げましたように、たとえば未承認国あるいは共産圏の国と申しましても、これは単数ではございませんから、やはりその国の状況あるいは隣接地域との関係、あるいは日本との関係、これはいろいろと慎重に考慮しなければならない条件があると思います。
  164. 松本七郎

    松本(七)委員 それを具体的に言ってください。どうしてドイツ民主共和国と朝鮮民主主義人民共和国の国名を出せないのか。
  165. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは現在国名を、どの点でどういうふうに直すかというところまではまだここで申し上げる段階に至っておりません。
  166. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうことになると、これは依然として、これらの国に対する渡航はいままでと同じように、あるいは今度は罰則規定とからんでいままでより以上にきびしくなるということになると思うのですが、どうでしょうか。
  167. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そこは、ぐるぐるめぐりになるのですけれども、いままでよりきつくするためにこの法律を改正するという意図ではございません。
  168. 松本七郎

    松本(七)委員 それならばどうしてこの罰則規定、三万円以下の罰金というような規定を設けたのですか。いわゆる横すべり……。
  169. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも前国会でもずいぶん御論議のあったことですけれども、やはり法律で定められておって、たとえばその法律で禁止せられることについて、それを犯したような場合にはこれに対して罰則があるのが、これがむしろ本則でございますから、そういう点で、しかし事柄の性質上できるだけ軽微な罰則、三万円という罰金刑ということにいたしたわけでございます。
  170. 松本七郎

    松本(七)委員 それと、未承認国の旅券はやはりシングル・ジャー二ー・オンリーという規定になるのですか。
  171. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在の考え方はそうでございますけれども、これらの点についても、将来の問題としては考える余地のある問題であると思います。
  172. 松本七郎

    松本(七)委員 これは、罰則をそれほど厳格に守っていこうという政府のいまの考え方と、そしてシングル・ジャー二ー・オンリーをいつ改善するかということと関係してくると思うのですね。これは非常に不便が訴えられているわけです。たとえば朝鮮民主主義人民共和国に中国を経由して行く、いろいろなそういう用務を帯びて行く人は、両方に用務を帯びて行く人が多いわけです。そうして、平壌で用をしている間にまた北京に行かなければならぬということもある。また北京を経由して平壌に行って、北京経由で帰りたいというときにこれができない。これは、パリを経由してモスクワに入った、再びモスクワからパリに行ってもう一度行きたいというようなときに、それはパリならば日本の公館があるわけですから、それを通じて再び取ることもできるでしょう。北京や平壌にはこれらの日本の施設がない、そうするともう二度と北京には行かれない、そういう実際上の不便というものは非常に多いわけです。そうして、一方ではいわゆる法を犯したというたてまえで、罰則は強化するということになると、せっかく社会主義諸国に対する差別も運用の面で改善しようという気持ちはわかりますけれども、実際の面からは少しもそれが改善される措置にならないということになると思うのです。ですからやはりすみやかにシングル・ジャーニー・オンリーはこれはなくすということを基本方針としてここに約束していただかないと、私どもとしてはこれはなかなか問題が大きくなると思うのですがどうでしょうか。
  173. 愛知揆一

    愛知国務大臣 未承認国へのシングル旅券をやめるということはいま考えておりません。先ほど申し上げましたように、将来の問題としては検討に値する問題かもしれませんが、現在はやめることは考えておりません。それから、これは前国会のときにもこういう問題についての審議というものは旅券法の問題ではございますけれども、政府としてもずいぶん機微に属するようなところもございますので、ある程度私ここで公に申すことはできませんけれども、一曲においてかりに三万円であっても罰金がかかるとか、あるいはたとえば商用でありますとか、あるいはスポーツ関係でありますとか、そういうことのための旅行について不当な不便を与えたり、その他のことのないように、これはケース・バイ。ケースで未承認国の場合には許可をするわけでございますけれども、そういう点については十分配慮してまいりたい、こういうふうな考え方を基本には一部持っております。要するに横流れをしてまで行かなければならないような、しかもだれが見ても非常に重要な用件を持っておる、あるいは商機を失するというような事情等については、審査の場合にもよくわかるわけでございますし、それから個別的に過去の実績その他を見て、どういう方がどういう場合に非常な不便をされていたか、それから過去の場合、こういう場合であったならば今度の法律によって罰則を受けるようなことになる、それはお気の毒なことである、いろいろそういう事情は私も十分承知しているつもりでございまして、その辺のところは、そう言うとしかられますけれども、政府の行政権の運用の中においてひとつ配慮を加えてまいりたい、かように考えております。
  174. 松本七郎

    松本(七)委員 これは社会主義諸国のそれぞれの事情も違うし、それから政府も微妙な立場にあってなかなか言いにくい点もあると思うのですけれども、そういうところは大臣の、前回のいろいろな経過にもありましたように、できるだけ制限強化にならないように運営面で改善しようというその気持ちはわかるのですが、それだけに私は全幅の信頼を置いても、愛知外務大臣がいつまでも外務大臣をしているわけじゃないので、大臣がかわったときにはこの法解釈を別な解釈をする大臣が出てくるかもしれない。それは愛知さんが言ったことでおれは知らぬ、こういうことになると、せっかく全般的によくなろうとするものが、また大きく後退するという危険があるわけですから、私どもはもう少しはっきりした保証がとりたい、こういう気持ちで言っているわけなんです。  それと関連することですけれども、今度の旅券法にしろ、あるいはやがて出てくるでありましょう出入国管理法にしろ、外務大臣や法務大臣の許可権というか、そういう権限にまかせられておるというような傾向が最近非常に多いですね。そういうことになると、なおさらこれは私どもが心配する気持ちも大臣としてもわかっていただけると思う。そういう点をもう少しわれわれが安心しておまかせできるような方向に、ひとつ打ち出していただけないでしょうか。
  175. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは全く私もごもっともな御意見だと思います。何と申したらよろしいのでしょうか、同時に私個人の意見ではなくて、少なくとも現在の政府として、先ほども一例を申し上げましたけれども、この種の問題に対する配慮については、だいぶ考えておりますので、そういう点をおくみ取りいただきたいものだと考えております。
  176. 松本七郎

    松本(七)委員 それからその同じ社会主義諸国の差別の中でも、われわれ非常に関心が多いのは朝鮮ですね。朝鮮民主主義人民共和国に対する扱いというものは、これは極端な差別ですね。ドイツも似たようなものですけども、特に朝鮮の場合は、日本と朝鮮の間の貿易も最近は非常に拡大されておるし、隣国ですし、いろいろな意味で関係が深いと思うのですよ。そういう中でもう少し朝鮮民主主義人民共和国に対する差別というものをうんとなくしていただく方向にぜひ運用していただきたいと思いますが、この点も御答弁をお願いいたしておきたいと思います。
  177. 愛知揆一

    愛知国務大臣 あまり的確に御答弁できませんのは残念でございますけれども、ただ最初から申しておりますように、その国といいますか、政府をめぐる国際環境あるいは隣接国との関係、それと日本国との関係というようなことが非常に微妙な状況にある。率直に言えば、いわゆる分裂国家と申しますとあるいはことばが練れないかもしれませんけれども、日本の周辺にそういう事態が現在あるということが、また現実事態でございますから、その辺に政府の非常な苦心の存するところのあることも、また御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  178. 松本七郎

    松本(七)委員 それと関連して、新聞の報ずるところでは、出入国管理法は今度は提出しないというようなことがいわれておりますが、これはやがては出されるおつもりですか。
  179. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいわば私の担当の範囲外でございますけれども、出入国管理法につきましては、政府としても慎重に考えたい。考えたいというのは、御審議を願う時期がいつがいいかというようなことについては慎重に検討すべき問題である、かように考えております。
  180. 松本七郎

    松本(七)委員 それは時期について慎重に考えたいということであって、出す方針は変わらないですね。
  181. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはすでに前国会でも提案をいたしておりますような関係もございますもので、たとえば担当の法務省等におきましては非常にその案に熱心な意見を持っておることも御承知のとおりと思いますけれども、諸般の状況をさらに慎重に検討いたしまして、御審議を願う時期等についてはさらに慎重に考えたいということに大体なっておると、私は理解いたしております。
  182. 松本七郎

    松本(七)委員 これはつまり日本から外国に行く旅券法と、それから外国人が入ることの規制を中心とした出入国管理法というものは、非常に旅券法の運用の面でいろいろな関係が出てくると私は思うのです。  したがって私は委員長にも要望したいと思うのですが、出入国管理法というものは提出されておらないのですから、最終的な案についての論議は提出されなければできないでしょうけれども、もうすでに政府は出す方針でいままでも準備してきたのですから、それらについての関連した質問というものも当然これはなさなければならない。そのことを委員長にお願いしておきたい。   それから私自身は、これと直接関係はありませんけれども、国際旅行という面からいま運輸省の観光部で準備しております旅行業法案というものについて少しこの際政府考え方をただしておきたいと思いますので、いずれ機会を見て運輸大臣に来ていただいて御答弁をお願いしたいと思います。  きょうはあとの時間もあるようですから、この程度で終わります。
  183. 田中榮一

    田中委員長 中山正暉君。
  184. 中山正暉

    ○中山(正)委員 それでは旅券法の改正に関しまして質問をさせていただきたいと思います。新参かけ出しでございまして、的を射た質問ができるかどうか憂えておりますが、どうぞひとつよろしくお願いいたします。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理若席〕  まずお伺いをいたしたいのは、いまも旅券法の質問の中に、共産圏の問題がいろいろと含まれておりまして、私は前の速記録を読んでみましたら、国益ということに関していろいろと山下政府委員がお答えになっておられます。国益にはいろいろあって、経済的な国益もあり、そして外交上の国益もあるということでございますが、私は大きな意味で政治的な国益というのがあっていいのじゃないか、共産圏と自由主義圏、未承認国とそうでないわが国と、こうして政治的には世界観が違う国が依然として存在をしておるわけでございますから、そこにはどうしても自由主義と共産主義というもので、こちらは相手国を尊重しようと思っておりますが、向こうではいずれは自由主義国をすべて解放しようという考えに立っておられる方がおられるということでございますので、どうしても民主主義を守るという立場から、私どもは心がまえというものを持っておかなければならない。そこで、議会制の民主主義を守るという立場から、一体わが国益というものはどこにあるのかということをお伺いしておきたいと思います。
  185. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはり、いま御引用にもなりましたが、国益というものはいろいろの観点から考えなければならないもの、そういう性格のものであると思います。その中には、わが国としては民主主義、自由主義を守り抜いていきたい、私はさように考えておる。これも一つの国益であることは仰せのとおりだと思います。ただ、同時に、外交政策姿勢としては、政府としてもたびたび明らかにしておりますように、体制の異なる国ともよくおつき合いをしていくというのが国際親善、平和への戦いの一つではないか、かような考え方からやはり考えていかなければならないし、そういう角度からもこの旅券法その他の行政も心して運営していきたい、かように考えております。ただ同時に、前国会のときにもしばしばこの点が御論議になった点ですけれども、わが国の国益、それから公安ということばを使われておりますが、公安を著しくかつ直接に害するおそれがあるということはひとつ考えていかなければならない一つのけじめであって、この点はいま松本委員は当然よくお考えのことなんだと思いますけれども、お話に出ませんでしたけれども、この点はやはり政府として旅券法の上にもはっきりさせておきたい。これが私のいわゆるその国その国の国情あるいは隣接の国際情勢、あるいは直接に日本の国内公安に著しく関係のあると思われるようなものについては、これは留保しておかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  186. 中山正暉

    ○中山(正)委員 そこで、旅券を出さない場合、国益、公安に違反、そういう条項に触れるという判断は、法務大臣と協議してなさるということでございますが、そこの線はどういう線で引かれるのか。この間東京都議会の質問の中で、国家公安委員長もあとでそれを当然のことだとおっしゃっていますのですが、共産党の警戒は当然、共産党の暴力革命はあり得るということで、東京都議会でも問題になったことでありますが、そういう判断の基準といいますか、その基準の線をひとつ教えていただけたらと思います。
  187. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまず身近なところから申しますと、守るべき国の秩序ということからいえば、たとえば刑法でいえば内乱罪というものもあり、外患罪もあり、あるいは角度は違いますが、麻薬取締法とかあるいは銃砲刀剣類所持取締法というような規定があって、保護されているいわゆる公益というものもございますけれども、先ほども申しましたように、わが国の、場合によっては基本的な政策、その基本的な政策の中には外交政策も文教政策もございましょうが、それも場合によりましては含まれていると解してしかるべきではないかと思うのです。これを一言にして言えば、わが国の憲法としては秩序を維持するということ、あるいは政治秩序を維持するということが大事な点として考えておる点ではなかろうかと思うわけでありまして、そういう点を十分考慮はしなければならない。そこで、何と何が著しく国家、公安を直接に害するおそれがあるかということは、いま申しましたようないろいろの点を総合勘案して、法務大臣と必ず協議をして、この規定を援用するということになっておりますのも、ある意味においてひとしく行政権の中ではございますが、一人の所管大臣の判断だけではいけないということで、ここにも一つの運用上の担保を置いておる。乱用されるようなことがあってはならないというところに、この条文等の作成についても十分注意をいたし、また現行の法律をいろいろ考えてみましても、この条項についてはやはりこれは維持すべきである、こういう結論に達したわけでございます。
  188. 中山正暉

    ○中山(正)委員 先ほどの御答弁の中にもありましたが、向こうから入国許可が来れば、原則としてとはいかないまでも十分配慮するというようなお話がございました。私どもの立場からいいますれば、そういう際にも原則としてとらないとおっしゃるので幾ぶん安心ではございますが、向こうから許可が来た場合にも、いろいろと文教上の政策というようなお話もなさいましたが、私の聞いたある話では、高等学校の先生が中共へ行って、そして赤軍の歩いているのを見て胸のふるえる思いがした、武者ぶるいをしたということを帰ってきて作文を書いた人がおられるということ。私は実はここに毛沢東語録を持ってきておるのですが、その中に、「帝国主義国家といえども、われわれはその国の人民とは団結しなければならず、さらにそれら国家と平和共存をかちとり、ある程度の貿易もおこない、それらによって起りうる戦争を制止しなければならない。しかしわれわれは彼らに対しては、あらゆる実際的でない考え方を、決して抱いてはならない。」こう書いてあります。それからまた、この「戦争と平和」という条章には、先ほどの朝からの、中共に関するお考えとはまるっきり違った、大臣のお答えの中にもわれわれが一人芝居になってはいけないというお話が入っておりました。私も同感だと思いますことは、向こうではそんな甘いこと思っていない。「革命の中心任務と最高の形態は、武装による政権の奪取であり、戦争による問題の解決である。このマルクス・レーニン主義的な革命の原則は、普遍的な妥当性をもち、中国であろうが外国であろうが、みな一様に妥当する。」 「共産党員の一人一人がみな、「銃口から政権がうまれ出てくる」という真理を理解しているべきである。」「階級社会にあっては、革命と革命戦争はまぬがれがたい。これなくしては、社会の飛躍的な発展は不可能であり、反動的な支配階級をひっくり返えして、人民が政権を獲得することが不可能である。」「政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である、」「歴史上の戦争は二つに分類される。その一つは正義の戦争であり、もう一つは不正義の戦争である。あらゆる進歩的な戦争はすべて正義の戦争であり、進歩を阻害する戦争はすべて不正義の戦争である。われわれ共産党員は進歩を阻害するあらゆる不正義の戦争に反対するが、進歩的な正義の戦争には反対しない。われわれ共産党員は、後者の正義の戦争には、反対しないばかりか、積極的にそれに参加する。」最近ベトナムからラオスに戦線が広がっていったのも、私は戦線を拡大していろいろと共産主義者の目的を達しようとする意図がはっきりあらわれているような気がするのですが、「戦争によって戦争に反対し、正義の戦争によって不正義の戦争に反対することである。」  この毛沢東語録を読んでいますと、これまたふしぎに、いま中国に行っていらっしゃる松村謙三先生の推薦のことばが入っている。これは中身を読んで推薦をなさったのかどうか、私は実はいささか気になっておりますが、こういうことから考えますと、中共へ行くということ、自民党の中にも——われわれは自由民主主義でございますから、いろんな考えの方がおありになって、朝の社会党の質問の中に、自民党の中はわかりにくいということがありましたが、それが当然で、それでこそ自由主義の党だと私は思っております。     〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕  またほかの面には、「米帝国主義はすでに九年来、わが領土台湾を占領しており、最近はまた武装部隊を派遣してレバノンを侵略した。」——九年というのは、この毛沢東語録に書かれたのが一九五八年になっております。「米国は世界の多くの国に数百の軍事基地を建設している。中国の領土台湾、レバノンその他外国にあるすべての米軍事基地は、いずれも米帝国主義の首にかけられたナワである。それはほかならぬ米国人自身がこのナワをつくり、それを自分で自分の首にかけ、そのナワの一端を中国人民、アラブ諸国人民および全世界の平和を愛し侵略に反対する人民に掘らせているのである。米侵略者がこれらの地域に留まることが長ければ長いほど、その首にかけたナワはますます引き締められてゆくであろう。」こういうふうに書いてあります。ところが、この間の朝、私も外交調査会に出て、いま中国へ行っておられる方々の話を聞いておりましたら、台湾海峡の危険が日本の安全に対して非常な影響があるという話を、向こうへ行ってどういうふうに了解を求めればいいかということが非常に心配であるというような話まで実は出ておったことを記憶いたしております。  私どもから、この法案を通すための外務大臣のお立場を苦しくするようなことではいけないと思いますが、私ども自由主義を守るという立場からいたしましたら、この旅券法の運用に関しまして、議会主義の立場からぜひひとつそういうことが侵されることのないように、われわれの国に対しまして危険の及ぶような情報活動その他最近、昨年の大学問題に関しましても中共関係から資金が来ておるとかいろいろなうわさを聞きます。東大の門の前に毛沢東の写真が掲げられるというようなこともあったりいたしております。そういうことを思いますときに、私どもはここでひとつ政府に、この旅券法の運用に関しまして、自由主義政権としての基調を守るということもこの際お約束を願いたい、またわれわれからもお願いをしたいと思います。  またついでにお伺いをいたしておきますことは、在日朝鮮人の北朝鮮への自由往来の問題でございます。最近、東京にまで上京いたしてきておるようでございまして、その陳情が非常に激しいようでございますが、これに対する政府態度は、この旅券法が通りました後どういうふうに運用されるのでございましょうか、その点をお答え願いたいと思います。
  189. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、中共の体制について毛沢東語録をお引きになっていろいろお話を承りましたけれども、向こうはたとえば平和五原則というようなことを掲げておられるわけですし、日本はもちろん内政不干渉という大原則を掲げているわけでございます。そういう点から申しましても、今朝来、当委員会におきましての中国問題につきまして、内政不干渉という原則からいって二つ中国ということを言うべきではない、願わくはこれは御自分たちの手でもって平和的に解決してもらうことを望んでいるというのがわれわれの態度であるということを申したのも、そこにあるわけでございますが、向こうのほうも他国の内政には干渉しないという大原則を明らかにされている限りにおいては、私は率直にいって、中国人には中国人の考え方というものがあるわけであって、御自分で最善と考える行き方をし、あるいは最善と思われる主義によって国づくりをされるということは、中国人の自由であって、われわれがとやかく言うべきことではない。しかしそういった哲学が違い、国づくりの基本方針が違ってはいても、体制は異にしても、できるだけ友好親善の関係になっていくように望むというのがやはり基本的な考え方で、しかるべきではないだろうかと考えます。  それから交流の問題については、いまお話がありましたような点は現実にずいぶん心配の問題でありますけれども、私は一番基本的には、日本人の気持ちがしつかりしておるならば、そしてまた双方の事情をいろいろの人が見られるということが役に立つことではないだろうか、そこで日本人の主体的な気持ちがはっきりさえしておれば、たとえば向こうさんの内政上の主義に軽々しく乗って、米帝反対とかあるいは日中共同の敵だとかなんとかいう考え方は出てこないはずではないだろうかと考えるわけでございます。もう少しお互いに自信を持って対処していきたいものだと考えます。しかし同時に、現実事態としては御心配のようなこともございますし、それから政府としても、先ほど松本さんにお答えいたしましたように、松本さんの御意見に遺憾ながら反対の点もあることは御承知のとおりで、旅券法の問題にしてみれば、やはり承認国との間にはほんとうに自由濶達に往来をすることはけっこうだと思いますけれども、未承認共産圏の国との間のことなどについてはこれを留保しておいて、そして国際情勢の動きやあるいはそのほかの考えるべきいろいろの条件を十分考えて、個別審査でシングル旅券を出すことが、やはりこの際としては穏健な、着実な行き方ではないか、こういうように考えているわけでございます。したがいまして、基本的には旅券というものは、よく人権宣言が引かれるのですけれども、人権宣言的にいうような身分証明書とはちょっと性格が違う、要するに自国民に対して旅行先の国において保護もしてもらいたい、便宜も供与してもらいたい、そういう性格を持っているものが旅券であると思いますから、野放しに自由放任というわけにはいかないけれども、将来の理想としては、日本人はどこの国にも自由に往来ができるようにするのが理想である。この理想からいえば私は松本さんと意見を同じゅうするわけです。現実事態においてとるべき措置は、ただいまお述べになりましたような御心配や御意見が相当多く国内にもあるということを踏まえ、かつ先ほど申しましたような国益の立場で、やはり未承認共産圏に対する旅券の扱いというものはしばらく一線を画しておかなければいけないというところに、現実のなかなか微妙な、また警戒しなければならない事情があるという考え方でございますことを御理解いただきたいと思います。  それからもう一つ、第二の朝鮮人といいますか、韓国の方々の問題でありますが、たとえば北朝鮮の墓参りに行きたいという希望の方が相当あるわけでございます。政府としては人道的な立場に立って純粋な墓参、高齢者でありますとか、北朝鮮に墓所があることが確認され、そしてきわめて穏健な思想の持ち主であるということがわかります場合、数を限定してその往来を認めていこうということは、私は適切な措置ではないかと考えます。  それから北鮮帰還の問題については、これもしばしば予算委員会で問題になっておるわけですが、政府といたしましては、現在希望され、かつ協定がエクスパイアしてから後に申請が残りました一万数千人の方については赤十字にお願いをして、話し合いがずいぶん進んできているわけで、この点については、もちろん異議はございません。ただ同時にその後どうするかということは、もう将来の問題ですから、こういう点もひとつ日赤、それから向こうの赤十字との間のお話し合いの成り行きを見ているわけですが、当面政府として関心を重くしておりますのは、一万数千人の方方で、すでに話がいいところまできているように思うのですが、そのほうを処理といいますか、結末をつけることが、まず当面の第一義ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  190. 中山正暉

    ○中山(正)委員 余談になりますが、私、実は大阪市会におりましたときに、北朝鮮自由往来の決議案が共産党のほうから出てまいったことがあります。私は、ちょうどそのとき日韓条約を国会で批准の最中でございましたので、この日韓条約決議案というのを抱き合わせろと提案をしましたわけでございます。そうしましたら、その北朝鮮自由往来がいつの間にか引っ込んでしまったという事態が大阪市会であったわけです。ですから、そういう点から考えますと、北朝鮮自由往来というのを韓国がいやがる。そしてまた近いところで、非常に安い旅費で行ける、そういうことから、いろいろなスパイ活動等に利用されるのではないかという心配を私は持っております。  中共七億の民、この「毛沢東語録」の松村さんの「すいせんのことば」の中にも、毛沢東という人は、西郷隆盛にも匹敬する人だと書いておられますが、まあ発展途上の国家では、自分の国内をまとめていく上に、常に外へ向けて勢いをそらしておかないと、国内がもっていけないのではないかという気持ちがいたしますので、その点は西郷さんに似ているというような気もいたします。しし、マルクス・レーニンの考えを世界制覇の夢を決して捨てない。豚に羽がはえて飛ぶまでは、マルクス・レーニンの考えは変わらないというようなことでございますので、私は自由を愛する一人の人間といたしまして、台湾は国土は小さいとは思いますが、国土の広さでなしに、私は自由主義を尊重する国として手を結んでいかなければならない。自由中国立場、また終戦後に非常にわれわれに温情をかけてくれたことを、われわれは決して忘れるものではございません。日本中国を攻めたということで責任が問われるならば、いまから八百年前、文永十一年に一ぺんは四万数千の軍勢が攻めてきておりますし、——話がえらい昔にさかのぼった話になりますが、弘安四年には十四万の軍勢で攻めてきて、わが国は最初に侵略をされているわけです。ですから、そのことを考えますと、別にわれわれが先に侵略をしたというようなことは、長い歴史の上では、そんなことではないのだ。これからは大臣もおっしゃいましたように、私どもはお互いに相手国の政情を考慮して、お互いに国家の中で好きなことをやっていただく。他へそれで累を及ぼさないようにしていただきたいというのは、私も同感でございまして、いずれは共産圏、自由圏を問わず自由に、ヨーロッパで三カ月以内ならビザが要らない、そして自動車のうしろに各国の頭文字をつけた車が走っているのを見ますと、まことにうらやましい気がいたしますわけでございますが、そういう状態が世界に訪れることを私も期待をいたしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  私どもは旅券法の内容に関しては、その点を私自身としては憂うるだけでございまして、大いにひとつ事務を——旅券がおりるのに非常に長い期間をかけられるということが、今度は短縮をされるということでございます。自主防衛論、非常に盛んなときではございますが、思想的に防衛をするのは、私は外務省の役割り、変な言い方かもわかりませんが、そういう意味で思想的な侵略を防ぐといいますか、ほんとうの自由主義というものは、反対を一部にかかえている——最近公明党と共産党との争いが言論弾圧の問題で非常に激しいようでございますが、共産党の作家連中もだいぶ英国へ亡命しているような方々がおられるのですから、共産党が公明党を攻撃するのは、まことにふしぎな感じがいたすわけでございます。スターリンの娘が亡命した——日本吉田茂元総理のお嬢さんの麻生和子さんが、まだアメリカへ逃げ出したというような話は聞かないのでございまして、私はそういう政情を持った国家との接触ということ、その橋渡しになる旅券法というものの運用に対して、ひとつ慎重なお取り扱いを再びお願いをして、時間の関係もございますし、大臣の御都合もおありだそうでございますので、簡単に質問を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  191. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろ御高見を承りまして、ありがとうございました。その中で、ほんとうの自主防衛は外務省の仕事ではないかというようなおことばがありましたが、これはまことに恐縮でございますけれども、やはり国際情勢というものも、できるだけありのままに皆さんに承知していただいて、その中から日本立場というもの、行く道というものを、できるだけ日本的な性格につくり上げるような、そういったムードができることが望ましい。そしてそういう体制が常にとられておれば、多少の共産圏との往来があっても、日本が共産圏の国から革命の、あるいは戦略というものが輸入されてまいりましても、それは自然に消化され、吸収してしまって、日本の全体に何の影響もない、こういう姿になることが、私は望ましい姿ではないかと思いますが、旅券法の運用につきましては、きょうはたまたま両面からの御心配や御期待を承りまして、非常に参考になりました。政府としては、慎重にそれらの御意見をよく胸に体して事に当たってまいりたいと考えております。
  192. 田中榮一

    田中委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会