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速水説明員 ただいま
委員長から御指名にあずかりました
速水でございますが、
わが国の
海洋開発に関する
問題点につきまして私の
考えを申し述べたいと存じます。
海洋開発につきましては、
世界的の
進展状況にかんがみまして、かねてから
海洋科学技術審議会が設置されておりまして、二回にわたって
答申が出されておったのでございますが、それはたいへん問題の全貌を
検討した
答申でございまして、その中において何を
わが国としてはさしあたって重点的に取り上げるべきかという具体的な
段階になったと
考えるのでございますが、一昨年の十月に
総理大臣から
審議会に対して
海洋開発のための
科学技術に関する
開発計画について
諮問がございました。それにつきまして
審議会としては
慎重審議の結果、昨年七月四日この第三
号諮問に対する
答申をいたしましたことは御
承知のとおりでありまして、その
答申の
内容につきましては、この席におきまして昨年私からも御
説明いたした次第でございます。
この
答申をいたしますにつきまして、
慎重審議をいたしました過程においていろいろな
問題点が出てまいりました。
海洋の
科学技術に関する
開発計画というものを
立てるためには、
わが国における
海洋開発がいかにあるべきかという
イメージがなければ、
科学技術に関する
開発計画も
立てにくいのは当然でございます。したがって、
わが国の
海洋開発として特に力を注ぐべき
分野はどういう面であるか、そういうことは当然考慮せざるを得なかったのでございますけれ
ども、この
審議会はその取り扱う
分野が
海洋の
科学技術に関する重要問題に限られておるものでございますから、全体の
考えを
背景にいたしまして、この
答申では
科学技術に関する
開発計画のみについて述べておるのでございます。そういう
意味において、この
答申は
海洋開発そのものについての
イメージが必ずしも表に出ておるわけではございませんけれ
ども、いかなる
海洋開発をするにしても、これだけは
わが国としてはぜひ
開発しなければならないという
科学技術に関する
開発計画を取り上げたのでございまして、それを
五つの
プロジェクト、
四つの
研究項目に分けましてその
内容を
検討したのがこの
答申であることは御
承知のとおりでございます。
この
五つは、繰り返して申し上げますと、第一は
日本周辺大陸だな
海底の地形、
地質その他
海底の
総合的調査研究、第二は
海洋環境の
調査研究とその
海洋情報の管理、第三はいわゆる
栽培漁業技術の
確立、それを主として
実験栽培漁場によって
技術の
確立をはかるということでございます。第四は大深度遠隔操作
海底掘
さく装置等に関する
研究、第五が
海洋開発に必要な先行的並びに
共通的技術の
開発というものでございます。
四つの
研究項目といたしましては海水の
有効利用、また
海底の
金属鉱物資源の
調査研究、未
利用たん白資源の
利用開発、また未
利用、未
開発の
生物資源の
開発、こういったものでございまして、
政府におかれましては、この
答申を尊重されまして具体的な
計画を
——大体この
答申は五年ぐらいの将来にわたる
計画をつくったものでございますが、十年ぐらいあるいはもっと将来を見通しながら五年ぐらいの間になすべき問題として取り上げたものでございますが、
政府におかれましてはそれに応じてこの五カ年ほどの間の
実行計画をお
立てになり、またその第二年度として本年度の
予算要求をされたのでございます。
幸いにして
皆さま方の御努力、御理解によりまして、この
予算もほとんど全面的に認められたように聞いておりますが、これによってようやく
科学技術の
開発につきましては一応レールが敷かれたように思うのでありまして、なお細目についてまた実際にやってみた経験に基づいて反省をいたしまして、第二次、第三次の
実行計画を
立てなければならないと思うのでございますが、そういう面について
審議会はこれからもできるだけ
意見を申し述べたい、このように
考えておるのでございます。
なおこの
科学技術に関する
開発計画を推進するためにはいろいろな方策を必要とするのでございまして、そういうことも
答申にはうたっておるのでございますが、たとえばこれは国が
中心となってやるべき
計画を述べておるものでございますけれ
ども、それを実効のある、効果のあるものにするためには、
民間、学界、
産業界等、広く各層の全面的な
協力が必要である、そういう
体制をつくることが必要である、またこのような
事業を行なうためには多数の
科学技術者が必要でございますので、そのような
人材の
確保について考慮しなければならない。
さらにまた
日本周辺を流れる水は遠くアメリカの岸を洗ったその水が
日本へやってくる、こういうことから見ても、
海洋の
研究は
日本だけで行なえるものではございません。そういう
意味におきまして、今日
世界的に、
国際協力によって人類の
共有財産として
海洋を共同して
開発しようじゃないかという空気がきわめて強くなっているときにおきまして、
わが国の
海洋開発を進める上におきましても、さらにまた将来、広く
海洋開発を行なう上においても
国際協力が非常に大事である、この
国際協力については積極的に
日本が参加すべきであるというようなことを書いておるのでございます。
政府におかれまして、第一次
実行計画においては
五つの
プロジェクト並びに
四つの
研究項目につきまして具体的な
計画をお
立てになって、その
予算も今年度ついたわけでございますけれ
ども、
民間と
政府との間の
協力関係、あるいは
人材の
養成確保、あるいは
国際協力のあり方、そういうものについてはなお一そう
検討を加えて、それが具体化されることを私
どもは希望しておるのでございまして、おそらく逐次そういうことも現実化してくることであろうと期待いたしております。
また、この
海洋開発を必要とする
一つの原動力といいますか要因として、
沿岸の海の
空間の
利用ということがございますが、
空間の
利用ばかりでなしに、
沿岸の
海洋が次第に
汚染されてきておる、あるいは広く大きく見れば、
世界の海が次第に
汚染される傾向にある。これは人間の活動によってこういう現象が起きてきておる。ところが、海は決して無限にそういうものを吸収するものではございませんので、このような
海洋の
汚染をわれわれみずからの手によって処理しなければならないという
考えが急速に高まってきておるのでございます。また
海洋の
利用におきましては、
水産であるとかあるいは工場の立地であるとか、そういった
海洋の
利用、
開発の各面が必ずしも互いに
矛盾撞着なしに行なえるものではございませんので、このような
矛盾を取り除き、またわれわれに美しい
環境をいつまでも保存して、将来われわれの子孫によき
生活環境を提供するということはきわめて重要な問題でございます。でありますけれ
ども、このような問題は
科学技術のみの問題ではございませんので、これについてはさらに広範な
立場から総合的に
研究することが望ましいという
意見を具して
答申をしたのでございますが、この面につきましては、今日なお十分なる
体制に立ち至っておるとは
考えておりません。
しかしながらこの問題は、たとえば、
海洋汚染にいたしましても、これをいかにして防止するかという問題は、
海洋の実態がどのようなものであるか、そこに
汚染物質を流した場合にそれがどれだけ希釈することができるか、そういった
海洋自身の持っておる性質、能力、というものを十分調べなければ十分解決することはできません。どうしても陸上のいろいろな
物質が海に流れてくる、これはやむを得ないことでございます。したがって、それをわれわれにとって害のない
環境が十分保全されるような形において
海洋が浄化してくれることが望ましいわけでございますが、それには
海洋がこういうことについてどれだけの力を持っておるかということを理解しなければならないのでございます。そういうことを理解するために、今日まだ
沿岸海象の
観測はきわめて不備でございますので、
沿岸海象の
観測を強化いたしまして、十分これを把握する必要があるということは、
科学技術に関する
開発計画の一部分として述べておるのでございます。
さらにまた、
経済規模の拡大に伴いまして、いずれの国におきましても陸地の海岸に近い部分が非常に
開発されてきたために、さらに
沿岸の
海洋の中に伸びようとする、またそれに伴って
汚染が起きる、そういうことを解決して
経済の順調なる
発展を期するためには、
海洋に対する各国の主権の及ぶ範囲、いわゆる
領海の概念が次第に変わりつつあるように思うのでございまして、こういうものを十分処理するためには
領海を拡大せざるを得ないということから、
領海を拡大するという
方向に向かって
世界の世論が動いておるように思うのでございます。
本国会におきましても、
外務大臣が
わが国は
領海三海里に必ずしも固執するものではないという御見解をお述べになっておりますが、将来おそらく
領海の三海里ということも変わってくるであろうと思いますが、そういうときになりましたならば、そしてまたこの
科学技術に関する
開発計画につきまして、たとえば海の
基本図あるいは
海底の
地質構造図、そういった
日本周辺の
海洋の状態がはっきりとわかるようになってまいりましたならば、この拡大された国土をどのように
開発していくか、そういう問題が必ず将来は起きてくるであろうと思うのでございます。その場合にこそ、ただいま
科学技術に関する
開発計画に従って
研究をなされたものが生かされまして、新しいほんとうの
海洋開発事業がスタートできることになるのではないかと思います。そのようなことを行なうためにはいろいろな法制上の
措置も必要になるであろうと思いますが、それまでには何よりもまずこのような基礎的なものを整備いたしまして、いわゆる
日本が長い伝統を持って築き上げたものをさらに
発展させまして、こういう
海洋開発に必要な
科学技術に関する
下部構造をしっかりとさすことが肝要ではなかろうかと思うのでございます。そのある
段階に立ちましたならば、その上に立って初めて
日本周辺の
海洋をどのような
構想の
もとに
開発するか、そういうことに関する
具体的計画が
立てられなければならないし、またそういうときが来ることを私
どもは切に希望いたしておるのでございます。
時間もございませんので、
海洋開発に関する
考え方、その中において
海洋科学技術審議会が
答申を行ないました
立場、またその
立場の
背景をなす
問題点等について、若干御
説明を申し上げました。