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1970-04-08 第63回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月八日(水曜日)    午後一時十八分開議  出席委員    委員長 北側 義一君    理事 木野 晴夫君 理事 菅波  茂君    理事 前田 正男君 理事 井上 普方君    理事 近江巳記夫君       稻村 利幸君    中村 弘海君       橋口  隆君    松永  光君       綿貫 民輔君    石川 次夫君       三木 喜夫君    吉田 之久君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      西田 信一君  出席政府委員         科学技術政務次         官       藤本 孝雄君         科学技術庁長官         官房長     矢島 嗣郎君         科学技術庁計画         局長      鈴木 春夫君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君  委員外出席者         宇宙開発委員会         委員      山縣 昌夫君         文部省大学学術         局審議官    渋谷 敬三君         参  考  人         (宇宙開発事業         団理事長)   島  秀雄君     ————————————— 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   森  喜朗君     中村 弘海君   寺前  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     森  喜朗君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  宇宙開発委員会設置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二四号)  科学技術振興対策に関する件(南極地域におけ  る科学調査に関する問題)      ————◇—————
  2. 北側義一

    北側委員長 これより会議を開きます。  宇宙開発委員会設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本案審査のため、本日、宇宙開発事業団理事長島秀雄君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  3. 北側義一

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
  4. 北側義一

    北側委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田之久君。
  5. 吉田之久

    吉田(之)委員 宇宙開発について若干の質問をいたしたいと思います。  まず、質問の初めとして、たいへんばくたる質問で恐縮でございますが、宇宙開発委員会昭和四十三年八月に発足してからようやく一年半を経過いたしました。この一年半の経過の中で、宇宙開発委員会が今日までどのような活動をしてきたか、また、その成果長官としてどのように評価しておられるかという問題につきまして、まずお伺いいたしたい。
  6. 西田信一

    西田国務大臣 御案内のとおり、四十三年の八月に発足をいたしましてから今日に及んでおりますが、毎週一回の定例会議を開いております。また、必要に応じまして、臨時会議を開いておりまするし、また、そのほか、打ち合わせ会あるいは懇談会、これ等をひんぱんに行なっております。わが国宇宙開発に関する重要事項につきまして、このような各種の会議を通しまして、鋭意審議を進めておるわけでございます。  参考に申し上げますが、三月の十七日までのことを調べてみますと、本委員会が五十一回、打ち合わせ会が五十六回に及んでおります。この間におきまする委員会活動の特に重要な事項といたしましては、宇宙開発計画の策定を行ないました。また、宇宙開発関係予算の見積もり、あるいはまた技術部会を設けまして東大及び宇宙開発事業団のロケット打ち上げ実験の結果の評価、検討あるいはまた日米技術協力等国際問題等につきまして慎重かつ熱心な討議を行なっておりましてかなりの実績をおさめておるというふうに考えております。
  7. 吉田之久

    吉田(之)委員 お伺いいたしますと、委員会も相当精力的に意欲的に開会していただいているようでございます。それなり成果をあげていただいていることだろうと信じているわけでございます。そういう経過の中で、今度法律改正で従来非常勤であった委員が二人常勤化しようとなさっておられるわけでございますが、それはいままでの一年半の経過等かえりみてどういう接続展開になっていくのか。また、今回特に二名を常勤化しようと考えられたその根拠ですね、多いほうがいいことはだれでもわかりますけれども、とりあえず二名となさった一つ理由、それから今後とも二名の常勤化でずっと押していこうとなさっておるのか、相なるべくはだんだん常勤化はふやしていこうと考えておられるのか、その辺のいきさつなどについて御説明を願いたい。
  8. 西田信一

    西田国務大臣 御案内のとおり、この委員会はただ諮問に応じて調査し、あるいは審議をするというだけにとどまりませんので、みずから企画をし、あるいは審議し、またかつ決定をする、こういう能動的な機能を持っておるわけでございます。したがいまして、委員非常勤体制では十分じゃない、こういう判断からいたしまして常勤体制をとりたい、かように考えたわけでございます。特に、最近この宇宙開発本格化に伴いまして非常に仕事の分量もふえてまいっております。こういう点からいたしましてぜひ常勤化をはかりたい、かような考えでございます。  そこで、この二名にした理由につきましては、現在委員長を除きまして四名の委員がおられるわけでありますが、現在の状況からいたしまして二名の方にまず常勤をお願いいたしまするならば、大体現在の要請にこたえ得る、かように判断をいたしたわけでございます。  将来これで十分かということについてもお触れがございましたが、だんだんにこの仕事がふえてまいりまして四名では不足であるというようなことになりますれば、定員委員数増加ということも考えられますし、またそれに伴って常勤委員増加というようなことも今後の情勢に見合ってひとつ考えてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 吉田之久

    吉田(之)委員 お話しのとおり委員長は別として他の委員がいままで四名、この四名の委員方々がそれぞれ学識豊かな方々としてお互いに協調しながらこの委員会企画決定等推進してくださった。ところが、その四名の中で二人だけがことしから常勤ということになりますと、やはり同じ四名の中で二名の常勤と二名の非常勤、りっぱにできた人たちばかりでございますからそういうことはよけいな心配かもしれませんけれども、何か気分的に少しお互いの中に行き違いが生じたりそういうものの心配があるのではないか。いまの長官の御説明ですと、必要に応じてさらに委員をふやし、また常勤をふやしていこうということでございますならば、それはそれなりにわかるのでございますけれども、ただ委員を四名固定しておいて、その中の二名が常勤であり二名が非常勤である。せっかくいままで同じ気持ちでやってきた中に、何かお互いの歩調のそごを生じたりはしないだろうかというしろうとなりの心配をするわけなんでございますが、その点いかがでございますか。
  10. 西田信一

    西田国務大臣 御心配はよく理解できるのでございますが、現在原子力委員会も六名の定員に対しまして一部非常勤常勤という体制をとっておるわけでございます。委員方々は、それぞれ立場なり事情が異なっておりまして、なかなか御多忙の方もおられます。またそれぞれ事情が違っておりますが、従来の原子力委員会等の体験から考えましても、その間にさしたる支障というようなことはないようで非常に円滑に行なわれておりますので、この場合におきましてもその懸念はなかろう、かように考えております。  また常勤化ということにつきまして、実はかねがねこの国会でも、それを早くそういう体制をつくるようにという御趣旨もございまして、これを進めたわけでございますが、御承知のとおり、行政簡素化という国の一つのなにがございまして、今度もすらすらとまいったというわけにはまいりません。かなり難航いたしましたが、どうしても最小限度二名の常勤は必要であるということで私も最終的に閣議で発言するというようなことで、その実現を見たわけでございまして、そこら辺の事情も御賢察願いたいと思います。
  11. 吉田之久

    吉田(之)委員 よく事情はわかるつもりでおります。ただよけいなことかもしれませんが、この常勤選任の際に、できるだけ個別的な人事をスムーズにしていただかなければなりませんし、同時に各委員専門的分野バランスもとられながら、よりよき充実をはかっていただきたいと思う次第でございます。  いま、たまたま長官行政簡素化問題に触れながらその中で非常に努力をなさっていることを承りました。しかし私は、行政簡素化もとより全般的には必要なことだと思いますけれども、これほど科学技術振興が国家的な運命を左右する重大な課題として展開されようとしてきているときには、やはり必要な部門はますます強化充実していかなければ、その要請にこたえることができないのではないかというような考え方がいたすのでございます。その点さらに今後長官の決断と勇気ある推進をお願い申し上げたいと思う次第でございます。  つきましては、委員会充実もたいへん大事なことでございますけれども、同時に、当然こうした諸問題を実現していくためには、また推進していくためには科学技術庁における宇宙開発担当部門それ自体を強化していかなければ仕事にならないのではないかという感じがしてならないのでございます。もっと具体的に申しますと、やはり宇宙開発担当の局というものを新設しなければこの重大なプロジェクトにこたえることができないのではないか。現在は研究調整局でございますか、それが公害も海洋開発宇宙開発も全部一手に引き受けなければならないということは、どのように考えましても私は無理な相談だと思います。こういう点について長官は今後どのようにあなたみずからの部門強化をはかろうとなさっておるのかということについてお伺いいたします。
  12. 西田信一

    西田国務大臣 まず、常勤化に伴う円滑な運営につきましては十分御趣旨に沿うてまいりたいということをお答え申し上げておきます。  次に、委員会強化は、一応常勤ということにおいてはかられましたわけでございまするが、私どもは、ただいま御指摘のとおり行政機構の上におきましてもこの強化をはかるという考え方でございまして、このことの必要性につきましては十分認識しておるつもりでございます。御承知のとおり原子力開発宇宙開発海洋開発が三大プロジェクトといわれておりまするが、これらを担当してまいりますには現在の機構は必ずしもこれにふさわしくないということはわれわれも御趣旨のとおりに考えております。そこで、四十五年度におきまして宇宙開発局設置を要求いたしたわけでございまして、われわれもあとう限り努力をいたしたつもりでございますが、ここ数年来の行政簡素化のたてまえから局の増設ということは極力抑制する、極端に申しますと、これを認めないというような政府のたてまえもございまして、今回は残念ながらこれが実現を見なかったわけでございます。しかしながら、その必要性はいよいよ加わってまいりますので、来年度におきましては、この行政簡素化趣旨は十分尊重しながらも、このような国家的要請の強いものに対しましては、これをぜひ拡充するという立場からしかるべき機構設置はぜひとも実現したい、かような強い気持ちでおる次第でございまして、明年度はぜひそういう考え方実現をはかりたいと考えております。どうかその意味におきまして、なおまたお力添えのほどをひとつお願い申しておきたいと思う次第でございます。
  13. 吉田之久

    吉田(之)委員 社会の急速な変貌に従って、行政そのものも対応、変化していかなければならない、そういう中で行政簡素化というものが問われているわけなんです。したがって、要らない省庁の部門というものは大いに減らすべきであるけれども、今後ますます必要な科学技術庁なんかに行政簡素化なんというものはおよそ今日の趨勢の中では全く適用されるべき問題ではないのだというぐらいのやはりき然たる態度長官みずからがより強く持っていただきたいことだと考えている次第でございます。  次に、この宇宙開発の進め方についてでありますけれども、この間の東大人工衛星の打ち上げ、大きな成果をおさめられました。まことにけっこうでございましたけれども、このようにして今後実際の実施分野で、東大研究が進んでいく、一方において宇宙開発事業団発足後半年、今後ますますその仕事が軌道に乗っていかなければならないはずでございます。長官としては、この二頭立ての馬を今後どのように整理をし、バランスをとってやっていこうとするのか、あるいはやはり近き将来においてこれらの推進をになうべき二つの機関というものは、諸外国の例なんかとも比べて当然何らかの形で一元化されなければならないのではないか。この一元化するのは決して容易なことではないと思うのです。その辺のバランスのとり方、調整のしかた、推進のしかたはたいへんむずかしい問題になってくるようでございます。その辺についての長官の所見を伺っておきます。
  14. 西田信一

    西田国務大臣 ただいま御質問のような御意見がかねてからいろいろといわれておりますことは私もよく承知をいたしておるところでございます。宇宙開発体制一元化、こういうことにつきましていろいろな御意見がございますようでありますが、御案内のように、宇宙開発委員会は四十三年の五月に設けられまして、この委員会のかさのもとに東大宇宙航空研究所、それからまた宇宙開発事業団、これが、それぞれの機関が統一的な計画に沿って開発を行なうというたてまえをとっておるわけでございます。そういう意味におきましては、計画面におきますところの一元化体制は十分確保されておる、かように考えておるのでございます。ことに、またただいまお話がございましたように、四十五年度から委員の一部が常勤化されることになりますので、さらにこの企画調整という体制強化してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  そこで具体的な開発実施につきましては、引き続いて昭和四十四年から開発の中核的な実施機関として生まれたのがこの事業団でございます。そこで、従来宇宙開発推進本部が行なっておりました人工衛星の打ち上げ用ロケット開発、これらを一切引き継ぎました。また郵政省がやっておりました電離層観測衛星開発もこれを引き継いでこういう事業団発足を見たわけでありますが、今後開発段階に至りました人工衛星、それから打ち上げ用ロケット開発、またその後の追跡、これらは事業団がやってまいるわけでございますが、そういう意味におきましては、各省にまたがるものはだんだんと一元化方向に向かって大きく進んでいくだろう、かように考えております。  なお、ただいま御指摘東大宇宙開発研究所の問題でありますが、これはいまMロケットについて盛んに開発を進めておる段階でございます。これをここでかりに事業団一元化する、実際に引き継ぐというようなことにいたしますれば、せっかく進んでおりますこの開発を場合によってはかえっておくらせるというような懸念もございまするし、また一応の考え方といたしましては、そのMロケット信頼性が得られる段階まで研究所が行なうということにつきましては、大体ものの考え方に食い違いはございませんから、したがいまして、従来のような開発委員会の一元的な調整のもとにおきまして進めてまいりたいと思いますが、科学衛星開発につきましては、これが大学におきまして行なうことになっておりまするので、また打ち上げ後の科学衛星に対しますところのいろいろな研究等につきましてはこれは大学側にまかせますが、その時点になりますれば一応は事業的にも一元化の時期が来るであろうというふうに考えておるわけでございまして、現状におきましては、ただいま申し上げましたような方向で進んでまいりたいと考えておるわけでございます。
  15. 吉田之久

    吉田(之)委員 現状における大体の長官考え方、その各機関扱い方というのは理解できるような気がいたします。しかし、いずれいろいろとこれから画期的に進んでまいります段階の中で、さらに再検討はやはりされなければならないと思います。いずれまたそういう論議はその時点でさせていただきたいと思うのです。  そこでひとつ、具体的な問題なのですが、この間の四月四日の日本経済新聞です。「『Qロケット計画』に狂い」というような見出しでいろいろと書かれております。ちょっと読み上げてみますと、「わが国初実用衛星として電離層観測衛星を四十七年度中に打ち上げる予定の「Qロケット計画」は、システム設計作業などのたち遅れにより四十八年度以降大幅に遅延する恐れが出てきた。QロケットのつまずきはそのあとNロケット計画にも悪影響を与え宇宙開発計画全体を狂わせかねないので、宇宙開発事業団島秀雄理事長)は三月末に米国技術調査団を派遣してシステム設計関係情報を入手するなど作業を急ぐ一方、今夏をメドにQロケット計画全体を再検討する方針である。」こういうふうに書かれているわけであります。この間の事情につきまして、それぞれ関係者各位から御説明をお願いいたしたいと思います。
  16. 島秀雄

    島参考人 宇宙開発事業団のできますまでのロケット衛星その他の計画というのは、やはり必ずしもはかばかしくいっておらなかったのだろうと思うのです。そういうことで、それをうまく生かすために宇宙開発事業団をおつくりになったのだろうと私は思うのでございますが、事実、私どもそれを引き継ぎましてずっと拝見いたしますと、たとえば、Qロケットを中心とします開発なんかにつきましても、あれは、どこの国でもよろしいのでございましょうけれども米国技術を取り入れるということを前提にいろいろ計画をしておったようなのであります。ところが、政府間の協定なんかはもっと早くできるつもりでおりましたのが、いろいろなことがありましてだんだんおくれがちになっておりまして、それにしたがって、いろいろな設計基本設計のデータが入ってくるはずのがおくれておりまして、せっかく契約しておりましてもそれができないものですから、なかなか上がってこないという状態にあったらしいのでございます。幸いにいまの政府間協定が去年の七月の末にできまして、もう仕組みはできたのでございますが、それまでのおくれというものが、それからあと一生懸命キャッチアップしなければいけないという状態なのでございます。  それで、私ども引き継ぎましてそれを一生懸命やっているのでございますが、何ぶん前におくれましたのが——私ども始まりましてから半年くらいのことでございまして、しかもその中に、私どもとしては、年じゅうのうちの夏、冬の二回の打ち上げという仕事のときに一時そこに集中しなくてはいけないというようなことがございまして、人がそこにとられるとか、あるいは事業団でございますから、国会予算関係を提出することで忙しいとか、年度末とか、そういう種類のことが一ぱいございまして、なかなか思うにまかせて仕事が進んでおりません。だからまだすっきりするところまでいくというように至っていないのはまことに申しわけないことでございます。しかし、政府間協定その他がちゃんとできましたので、それに従ってできるものは鋭意進めております。したがいまして、概念設計のようなものは督励いたしまして先年度に上げてしまいました。ほうっておけばもっとおくれたかもしれないのを上げてしまいましたし、それでいま詳細設計に今年度はかかっております。ほんとうを申しますと、それすらももっと早く上がっていなければいけなかったのですが、それは今年度からかかっておりまして、もうそれは今年中に上げてしまうめどが大体ついております。そのめどがついておりますことを上げるために、いま関係の人間をアメリカに出していろいろ交渉さしております。だから、いまのところ非常にえらい勢いで追いついておるところなのでございますが、さてそれなら、ほんとうにどのくらいおくれるかということになりますと、追いつくのを一生懸命やりますから、うまくいくだろうといま思っておる最中のところでございます。いまのところこの夏ごろまでをめどにいたしまして、どういうふうに追いつけるかという、上げてしまう予定をきっちり立てようといま作業を進めておる段階でございます。いま、私どもきちんといつということを申し上げられないのは非常に残念でございますが、そういうふうにやって進めております。
  17. 吉田之久

    吉田(之)委員 追いつくということですが、とても落ちつきません。よくわかりましたが、当初の計画は四十七年度でございました。当初の四十七年度の目標でいくと、四十五年ころには基本設計から細部の設計までは全部できてなくてはならぬでしょうね。その辺もう少し当初の計画はこうだ、現状からいくとこのくらいのおくれが出る、物理的におくれているのはこの辺、いわゆる追いつく努力も、努力のしかたによっては大体当初の目標どおり追いつけるのか、あるいはこの新聞で書かれておるように二、三年もおくれる心配も出てくるのか、ずいぶん重大な問題だと思いますね。
  18. 島秀雄

    島参考人 ほんとうにいまのお話のように重大なことだものでございますから、事業団をつくって目的に合わせようとお考えになったのだろうと思って、私どもその負託にこたえるべく一生懸命やっておるのでございますが、ほんとうに申しわけないことでございますが、おくれておりましたのが当初の計画のようにぴったりいくかどうかということをいま私申し上げるだけになっておらないのです。鋭意督励しているというのがほんとうのことで、何と申しますか、申しわけないことでございますが、私のほんとう態度でございます。
  19. 吉田之久

    吉田(之)委員 長官にお聞きしますけれども、こういう米国技術を取り入れる政府間協定政府責任において計画どおりになされなければならないところ、現にたいへんなおくれを生じた。そのことが非常な支障を生じて、お聞きのような状態が出てきておる。こういうことになってまいりますと、これは宇宙開発といえどもまことに先行きが心配される状態でございます。政府責任と申せば大げさでございますけれども長官はこういう外国とのいろいろな交渉あるいは協定等に対して、今後こういうおくれが一切生じないように努力されなければ、実施部隊である事業団のほうもたまったものじゃないと思うのです。いかがですか。
  20. 石川晃夫

    石川政府委員 ただいま御質問ございましたそのおくれた事情を少し御説明申し上げたいと思います。  これにつきましては四十三年にこの話が、技術導入の問題が出まして、それからあと承知ジョンソンメモの問題でわれわれもいろいろの検討をしたわけでございます。これにつきましていろいろ向こう側アメリカ側からの意見と申しますか、その条件というものがあったわけでありますが、わが国としては必ずしもその条件全部を受け入れるわけにいかないということで、それに対していろいろ外交交渉があったわけでございます。それに非常に時間をとりまして、そして昨年の七月にようやくその間の交渉がまとまって、アメリカからの技術導入が円滑に進むということになったわけでございます。したがいまして、その間におきまして、おおむね半年程度むだといえばむだな期間だったかもわかりませんが、われわれとしてはその辺の交渉を有利に展開するために努力したわけでございます。その分が宇宙開発に影響をもたらしたということは私たちも率直に認めざるを得ないと思っております。
  21. 西田信一

    西田国務大臣 ただいま遅延をいたしました日米間の関係につきましてお答えをいたしましたが、過去のことはそういった事情があったにせよ、ただいま島理事長が申されましたように、アメリカにも人を派遣し、極力そのおくれを取り戻すようにという努力をいたしております。先般アメリカからNASAの長官ペイン氏が参りました際にも日米間の協力につきましてお互いに隔意ない意見を交換したわけでございますが、そこで事業団にひとつ馬力をかけていただきまして、少しでもそのおくれを取り戻すように努力を願っておるわけでございます。  そこで、いま設計その他の計画を取り進めておりまして、この一、二カ月、六月ごろにはある程度見通しもだんだんついてくるであろうというふうに実は考えておるわけでございますが、これらの情勢を見きわめまして、今後予算の面、あるいは人員の面、その他につきましても、必要な最小限度のものは確保するということに全力を尽くしまして、できる限りこのおくれを回復するようにというような気持ちでおるわけでございます。私もこまかい技術的なことはわかりませんけれども、いま理事長のお答えによりましても明確には仰せになりませんけれども、しかしそう数年おくれるというような事態には立ち至るまい、そんなことはない、またさしてはならないと思っておるわけでございまして、できるだけそのおくれを回復するように、私の立場においてなし得るものを全力をあげたいと思っておる次第であります。
  22. 吉田之久

    吉田(之)委員 そこで山縣先生にお聞きしたいのですけれども宇宙開発委員会として次々と計画を立て、そしてその実現のためにせっかくの御努力をしていただいているわけであります。しかし、こういう予測せざるトラブルと申しますか、おくれというものが出てきております。また今後も出ないとは限らないと思うのです。国際的な技術の交換が必要です。あるいは国家対国家の外交交渉に待たなければならない点が出てまいります。こういうことによる目標到達の若干のおくれというものは、当初の計画の中に入れておかなければならないものかどうか、そういうものを一切除去して、想定される理想的な状態において、このプロジェクトはいつごろに完成するものであるときめるのが、今後のこういう宇宙開発計画立案の場合の一番大事な手法なのか、それとも、やはりほぼ想定される若干のそういう余裕というものを当初から見ておいてやらなければならないものなのかという問題が一つ。それから、いずれにいたしましても、こういうQロケットあるいはNロケットなど、次々と一つのプログラムを打ち立ててしまった以上は、やはりこういうおくれが生ずるということは国の科学技術そのものの権威にもかかわりますし、また国際的威信にも将来だんだんかかわってくる問題だと思います。いま起こっているこういうQロケットのおくれを委員会としてはどのようにお考えになっておるか、また今後こういうものをどういうふうに想定して目標を樹立していこうとなさっておるのか、お聞きしたいと思います。
  23. 山縣昌夫

    ○山縣説明員 お答えいたします。  私どもは、計画を立てます場合に、端的に申しますと、あるアローアンスと申しますか余裕をとっておるかどうかという御質問だと思います。何ぶんにも、特に宇宙開発計画というものは日本といたしましては完全に未知の分野でございますので、いろいろ計画をやっております場合に疑問の点が出てまいります。私どもそれに対しましてどう取り組むかと申しますと、あるものは私ども計画より早くいくものも今後あると思います。あるものは、いまいろいろお話がございましたように、国際協定、二国間協定のおくれというようなことによりまして計画よりおくれることも当然予想されます。私ども態度といたしましては、その中庸をねらいまして計画を立てております。しかし何ぶんにもいま申し上げましたように全然新しい分野でございますので、たとえば道路五カ年計画であるとか港湾五カ年計画であるとかいうことと違いますので、したがいまして、この宇宙開発計画というのは御承知のように毎年見直しをやっていこう、いわゆるころがし計画とでも申しますか、そういう計画でいこうということをきめまして、昨年十月一日にきめました宇宙開発計画はいわば昭和四十四年度版の宇宙開発計画で、当然四十五年度になりまして、それを見直すという必要が出てまいりまして、すでに委員会といたしましては計画部会をつくりましてこの問題に取り組みまして、いまの目標といたしましては六月末には四十四年度宇宙開発計画の見直し、さらに必要ならば一年先までの計画を立てる、こういうことをやっております。御指摘のとおりに、この宇宙開発は少なくともわが国におきまして非常に新しい問題として取り組んでおりますので、いろいろ今後計画どおりいかない、早くなるものもあるいはあるのじゃないかと思いますけれども、そういうことが予想されますので、いまのような態度で私どもは今後も進んでいきたい、こう思っております。
  24. 吉田之久

    吉田(之)委員 おっしゃるとおり、計画の修正あるいは見直しは非常に大事なことでありまして、それが毎年やられるということのようでございます。私は予想以上に早く進んだものができてくればそれは非常に好ましいことでありますが、おくれた部門をどうしていくか、この見直しのときに私は当然予算も見直しをされなければ話にならないと思うのです。やはりできるだけおくれを取り戻すためには、まず何よりも十分な予算を用意しなければならない。まあこの宇宙開発の問題では金さえ積めば何でもできるということではないと思います。しかし、金を積んでもらわなければ何ごともできないということだけは確かな事実でございます。しかも、今度の昭和四十五年度予算額なんかは要求額の約五〇%しかつけられておらない。こういう予算は予想よりもうんと減らされる、いま申されましたような外的な条件からのおくれが生じてくる、こういうことになってくると、来年度以降、予算の面でも相当思い切った獲得がなされない限りこのおくれというものは、追いつくどころかますますそのおくれが目立ってくる、外国に対しても全くていさいのつかないことになる、また国民に対しても失望この上ないものを招く結果になるというふうなことになればこれは大問題でございます。その点、山縣先生のほうと長官のほうで、特にこういうおくれが各所に目立ち始めている中で、なおかつ四十五年度予算が皆さま方の要求から見て格段に低いものしか獲得されなかった、この問題を今後どのように埋め合わせていこうとなさるか、その辺の所信を承っておきたいと思います。
  25. 山縣昌夫

    ○山縣説明員 ただいまの予算の問題、現実の問題といたしましては私ども一番頭の痛い問題でございます。そこで、いま申し上げましたように、開発計画を毎年見直すということ、この四月初めの委員会計画部会並びに技術部会でこの見直しをやるということをきめまして、その場合にいまのお金の問題をどう考えるかということは、まさに一番大きな問題でございます。ただいまお話がございましたように、昭和四十五年度予算は要求額の半分程度だったと思いますが、これも十分事業団において御検討願いたいと思うのでございます。私どもの受けました感じといたしましては、概算要求の約半分になっておりますが、いわゆるキーポイントと申しますか、基礎的に十分固めなければならぬという予算は相当ついております。したがいまして、さしあたりこの六月までにきめます計画の見直しの方針でございますが、私自身といたしましては、四十六年度予算を十分いただけるという前提で見直しをしたいと思っております。したがいまして、長官その他の皆さま、さらに国会方面にも十分御理解を得まして、四十六年度事業団なら事業団が必要とする予算を出していただけるという前提で見直しをする。そういたしますと、いま島さんからいろいろお話がございましたけれども、そう大幅なおくれというものは四十五年度計画では出てこないだろうと思っております。しかし、これは専門家に計画部会並びに技術部会で十分御検討願いまして、最終的にきめたい、こう思っております。いずれにいたしましても、四十六年度予算を十分にいただけるという前提で見直しをする、こう私は考えております。
  26. 西田信一

    西田国務大臣 いま先生からお話がございましたように、ことしの予算は、要求に比べましては、確かに残念ながらかなり低いものでございました。しがし、それを内容的に見ますと、基本的な試験設備等につきましては、重要なポイントポイントは漏れているところがなくて大体ついているということでございます。したがいまして、事業団にも御苦労でございますけれどもお願いをいたしまして、このついた予算をおくれと結びつかないように効率的に使用していただくようなくふうなりそういうことを練っていただきまして、そうして明年度はただいま山縣委員から申されましたように、重点的に当初の計画と結びついたような予算を確保するために私は全力をあげたい、こう思っておりまして、いま計画部会でも鋭意これらの点について御検討願っているわけでございます。
  27. 吉田之久

    吉田(之)委員 委員会のほうの見直しが希望的見直しに終わらないように、これは長官責任は非常に大きいと思います。  次に、このQロケット計画のおくれを取り戻すために、事業団のほうでは技術者を派遣して、TRWあるいはノースアメリカン・ロックウエル、マクダネル・ダグラス、これらの会社にいろいろ情報収集に出かけられた。三月だと聞いておりますが、すでに出かけたのかあるいはもう帰ってこられたのか、あるいはあがりつつある成果はどうなのかという点をお聞きします。
  28. 島秀雄

    島参考人 出かけまして、目下鋭意向こうで交渉をしております最中でございます。もうこの月の末までには戻ってまいります。
  29. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、事業団内にメーカーとそれから東大関係者、事業団の三者による技術委員会を設けたというような話を聞くわけなんでございますが、それは事実であるか。事実であるならば、どういう効果があがることを期待されているのか。
  30. 島秀雄

    島参考人 ただいまメーカー、東大関係者、事業団というお話でございましたけれども、そういうふうにむしろ限定しないで、日本における専門の方々ということでそういう委員会をつくろうとやっております。でございますから、東大はもとよりでございますが、各方面の名だたる先生方、名だけではなくて、ほんとうのそちらのほうの専門家をほとんど網羅したようなものができるものとして考えております。さしあたってはメーカーの人といっても、これはメーカーの人というよりもむしろその方面の権威ある技術者ということでおいでいただこうと思っておりますが、いまのところほぼ人選をしておりますのは、まず各大学研究所のほうの専門の方のほうから進めておりまして、まだ製造方面に関係しておられる技術者のほうまで名前をあげるに至っておりません。しかし、だんだんそういうことにこだわらずに、とにかく日本の中でりっぱな人というふうにして選ぼうと思っておりますので、そういうほうの人も入ってくるとは思いますが、いまのところまだその程度であります。
  31. 吉田之久

    吉田(之)委員 予定している技術委員会委員の数などはどのくらいですか。
  32. 島秀雄

    島参考人 大体の数は四十五名ないし五十名程度でございます。人の名前は、いろいろな先生の名前が多うございます。たとえば宇宙技術研究所の計測部長の樋口先生、東大の工学部の林毅先生、これは航空宇宙学会の今度の会長になられた方、そのほか河田さん……。私も多少こっちのほうなもんでつい……。
  33. 吉田之久

    吉田(之)委員 その程度でけっこうです。  いろいろ急速な頭脳の結集に意欲ある努力をしておられることはわかりました。  いま一つは、実用衛星の管制センターなどですね、そういういろんな施設、機関を問題の筑波研究学園都市に置こうという計画があるやに聞いております。この筑波学園都市の推進が非常におくれておりまして、一方でたいへんいま問題になっておりまして、議員立法でもつくって推進しなければという情勢でございますけれども、この筑波研究学園都市に宇宙開発部門で相当積極的にその場を借り、またその場所に乗り出していこうとなさっているのかどうか、どなたからでも……。
  34. 西田信一

    西田国務大臣 事業団がその業務を実施しますために、ロケットの打ち上げのような他に非常に影響を及ぼすものは、御承知のとおり種子島あるいは角田というところでやっておりますが、それ以外のいろいろな試験を行なうための管制センターと申しますか、むしろ試験センターと言ったほうがよろしいかと思いますが、そういったものをぜひ研究学園都市の中にひとつ設けたいというのが、事業団の御希望でございます。それはまたたいへん適当だと実は考えておりまして、いま関係方面と折衝いたしておるわけでございますが、大体所要面積は六十ヘクタール、坪数で申しますと、十八万坪くらいになるそうで、かなり広いのでございますが、これはもうすでにこういう研究センター的なところで使いまする機械の購入その他の予算はついておるわけでございますから、なるべく早くその場所をきめまして、そうしてその予算の執行に当たりたい、こういう考え方でございます。ただ、例の予定された三十六機関の中には、これは含まれておりませんものでございますから、したがいまして、新たな機関としてそこに入ってまいりますので、そのための折衝がいま進んでおりまして、大体この可能性がかなり強いというふうに聞いておりますが、そう遠からず五、六月ごろには、おそらくその結論を得るであろう、こういう見通しでございまして、なるべく早くきめたいものと考えております。
  35. 吉田之久

    吉田(之)委員 最後にたいへん気の早い質問で恐縮でございますけれども、しかし喜ばしいことの用意は幾ら早くしておいてもよいと思います。と申しますのは、米国のロケットメーカー、アトランティック・リサーチ・コーポレーションから国産ロケットを売る用意があるかという意向打診が日産自動車にあったというふうに聞いております。今後こういう問題がおいおい出てこなければならないと思います。出てくることをわれわれも期待する一人なのでありますが、こういう問題について、長官はただいまのところ、そんな考え方に対して少しお考えになっているところがあるのかどうか。
  36. 西田信一

    西田国務大臣 宇宙開発、もちろんわが国は平和利用ということで宇宙開発をやっておるわけでございます。そういう意味におきまして、国際協力ということはたいへん大事だと考えております。よそからの技術を導入するということも必要でございますし、またわが国開発したものが、よその国に活用されるということは、その意味においては望ましいことだと思います。ただ、東大関係しましたロケットがどういう申し入れがあるのかという具体的なことは、私は承知してしておらないわけでございますが、しかしながらわれわれが宇宙開発をやっておりますのは、平和目的ということをまず基本にしてやっておるわけでございますから、そういう意味におきまして、わが国のロケット開発外国からこれを購入するというような段階にまできているということは、たいへんお話のとおりうれしいことだと思います。そういう意味におきまして、まだいまお話のありましたことにつきましては、具体的なことは承知いたしておりませんが、考え方としては、私はたいへんけっこうなことだと思います。実際のあれにつきましては、ケース・バイ・ケースで、これは輸出ということになりますと、通産省とも関係してまいるでございましょうし、私どもとしては、考え方としてはたいへんけっこうなことだと思っております。
  37. 吉田之久

    吉田(之)委員 宇宙開発の各般にわたる一そうの充実と飛躍を特に期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  38. 北側義一

    北側委員長 次に三木喜夫君。
  39. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 この間質問をいたしましたので、私のほうはおも立ったものはございませんのですが、しかし、この間の質問の中で多少納得のいかぬ点がありましたので、きょうは補足質問というようなかっこうでお伺いをしたいと思います。  その一つは、宇宙開発基本法についてでありますが、これは鍋島長官、それから木内長官、そして西田長官と三代にわたって依然として同じ状態、科学はまさに日進月歩でございますけれどもわが国宇宙開発についてうっかりしておられぬ立場にあるのではないかと思うのです。国際的にも、あるいは国内の技術開発の状況を見ましても、幸い東大のラムダL4S5号が人工衛星で飛びましたが、これをめぐりましても、科学技術対策特別委員会として、いろいろまだ検討したり、お伺いしなければならぬと思うのです。こういう問題は今後そのほうの委員の方も充実されるでしょうし、それから事業団もちゃんとできたのですから、大いに検討をしていただいて、また具体的にお話をしたいと思っております。したがって、政府としては、基本法に対してどういう取り組みをするのか、この覚悟さえきちんと聞ければ、質問は一分で済むわけですから、ひとつお伺いをしたいと思います。
  40. 西田信一

    西田国務大臣 わが国宇宙開発も三木先生のおことばにございましたように、まず東大が成功し、事業団もただいまいろいろ御質疑がございましたように、若干のおくれはあるとは言いながら、鋭意全力をあげてやっております。そうして海外からも東大のロケットを購入したいというような朗報も入ったというようなことでございますが、しかしながらまだまだ今後に残された問題が非常に多うございます。そういう意味におきまして、宇宙開発を積極的に取り進めるための基本法制定というようなことにつきまして、かねがね御熱心な御意見があり、また国会におきましても、いろいろそれに対する論議がかわされ、質疑応答がかわされたということもよく承知しておるのであります。佐藤総理も、この委員会に出られまして所見を述べておられます。鍋島前々長官、また前の木内長官も次のようなことを申しておられるようでございます。すなわち、自主、平和、公開の原則は、基本法がなくとも、これは厳然と守られなければならない。しかし、基本法の制定によっては、いろいろこれらの問題について検討すべき諸問題があるので、科学技術庁においては、これについて鋭意検討を進めております。また国会でも超党派的に意見の交換がなされておりますので、私どもも積極的に御協力し、なるべくすみやかに各党間の意見がまとまり、宇宙基本法が制定されることを期待しておる、こういう趣旨の御答弁があったように承知をいたしておるわけであります。また前国会におきましても、宇宙開発に関する基本問題小委員会というものが設置されまして、種々皆さま方が御検討を行なわれたということも承知をいたしております。  したがいまして、私もこのような従来の方針に沿いまして、これから取り組んでいく所存でございますが、もちろん科学技術庁におきましても、鋭意ひとつ精力的な検討を進めることにいたします。また国会等においていろいろ御検討が行なわれる場合に必要がございますれば、資料の提出その他につきまして、できるだけ御要望に沿うてまいりたいというふうに考えておりますが、このようにいたしまして、なるべくすみやかにその意見がまとまり、そうして成案が得られますように期待をし、努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  41. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いま非常に頼もしいというか、抽象的というか、これからやろうという姿勢を示されたというか、そういうことで満足した答弁ではございませんが、しかし鋭意やっておる、検討しておるということに私たちも期待をいたしまして、その事実を、委員の方も見えておりますし、それから事業団の方も見えておりますから、「鋭意」のところをひとつ聞かしていただきたい。「鋭意」というところが一番大事なことなんで、それでできましたら山縣さんのほうから原案なんか提示されて、そしてそれを検討していただくというようなほうも努力していただきたいと思います。そういう点を山縣委員からお答えいただきたいと思います。
  42. 山縣昌夫

    ○山縣説明員 委員会委員長西田長官でございますので、いま長官からお話がございましたとおりでございますが、御承知のように、昨年でございますか、この基本法につきましては、先生ともいろいろ御懇談を申し上げ、またこの席でも申し上げたことがあると思います。この基本法を何らかの形でいつかは制定をしなければならぬという基本的な考え方は、やはり政府をはじめ皆さんがすでにおっしゃっておることでございます。さて、それを現実に取り組んでみますと、技術的にいろいろ問題がございまして、私ども委員会におきましても、昨年来ときどき話題になっておりますが、昨年いろいろここの席でも申し上げましたその後の情勢、一方において「おおすみ」が上がったというようなこともございますけれども、国際的の要請その他によって、いろいろ、たとえば定義をきめるとかいうような段階にまで至っておりませんので、概括的に申し上げますと、国際的の関係、これが昨年よりは一つも進歩しておらないというのが現状だと思います。  いま三木先生のお話で、委員会は何をしておるかという御質問——御叱責かもしれませんけれども、いま申し上げましたように、昨年来ときどき話題にはいたしておりますけれども、いま申し上げた原案をつくる、あるいはこういう方針で科学技術庁において要綱なり何なりをまとめていただきたいという段階までは、私どもの話は進んでおりませんことを申し上げます。
  43. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いままでのできない理由一つに、宇宙の定義ができない、こういうのがございました。しかしいまできぬものが——宇宙というものの範囲も非常に拡大されるでしょうし、高度にすればまた低くなるかもしれないし、そういう非常に何といいますか、流動しておるような状況の中で、それが定義ができぬからというこの理由は、私は理由にならぬと思うのです。というのは、すでにそれなら宇宙開発委員会とか、宇宙開発事業団とか、「宇宙」をつけなくてもいいのですよ。ロケット打ち上げ屋という名前にしてもいいし、それからロケットないし人工衛星研究委員会、こういうことにすればいいのですが、都合のいいところは宇宙開発委員会という名前をつけ、あるいは宇宙開発事業団という名前をつけ、そういう定義がわからぬものを不見識にもその名前の上につけるということは冒涜もはなはだしいと思う。そういうことを理由にされながら、なぜそんな名前をつけたか、基本的にかまえの上に私は問題があると思う。だから、そうでなくて、ここにこういう理由がありますということをやはり明確にしてもらうことのほうが私はよほど親切だと思うのです。これは、山縣さんが去年宇宙の定義ができぬと言われたことを金科玉条のように、科学技術庁としてはそれを基本法をつくらぬ理由にしておられますけれども、それは理由にならぬと私は思う。一応どこかに宇宙の定義の基本をきちんと踏まえて、もし違ってきたらそれは直す。言うならば、この前も言いましたように、飛行場というものをつくる、あるいは飛行機というものをつくる、それが飛ぶところの原則をきめないのと一緒で、かじなしに飛んでおるのにひとしいと私は思いまして、そういうことを申し上げるのです。  もう一つ理由は、この前の質問を申し上げたときと同じ考えですが、とにかく科学技術庁調整局というのは、いろいろなものを雑多に背負い込んでおられます。だから、委員会ができ、事業団ができて、そこで明確に基本法をつくられたら、それをもってひとつ立ちのいて、宇宙開発局という局をつくる私は大きな足がかりになると思う。そうでなかったら、調整局はものすごく忙しいと思うのですね。こういうぐあいですから、ひとつそういう努力をやっていただきたい。鋭意そうして努力します、こういう話ですから、けっこうです。  したがいまして、私らのほうも、これは山縣さん——委員長西田長官でありますけれども委員会の実質的な実権を握り、権威である山縣さんにぜひ言っておきたいと思うのですが、もしこの委員会で超党派で基本法がつくられますなら、それは一番けっこうですけれども、もしそうでなければ、私たちのほうからその原案を提示したいと思います。それについて差しさわりのあるところは検討していただきたいと思いますが、これはよろしゅうございますか、山縣先生にお伺いしておきたいと思います。それを一つ、先に聞いておきたい。
  44. 山縣昌夫

    ○山縣説明員 三木先生のほうから案と申しますか、要綱と申しますか、そういうものをおつくりくださいまして、これを委員会と申しますか、あるいは私個人かもしれませんけれども……。(三木(喜)委員「いや、委員会です、私のほうも社会党ですから。」と呼ぶ)十分検討さしていただきまして、私ども意見を申し上げることになると思います。
  45. 石川次夫

    石川委員 ちょっと関連で申し上げます。  実はこの前も社会党といたしましては、大体基本法が出ない前に開発委員会事業団ができるというのはおかしいということで、前々から準備はしておるのです。しかしやってみると、いろいろな問題があるということがわかったわけです。それで実は最近のものは問題点は全部削除しまして、もう憲章的な、法三章をもってとうとしとする、あまり議論のない——もっとも宇宙の定義は書かないと問題になりませんから、これは書きます。そういう点で、非常に簡潔なものをつくろうと思って、もう法制局の作業が終わる段階になっております。ですから、これはわれわれとしては、社会党の色を全部盛り込むなんということは全然ございません。憲章的なものでいいのじゃないか、こういう点でつくってありますので、ほかの党の方々もおそらく御賛同願えると思います。社会党の色を出したとかなんとかいう、私のほうは出すつもりはございませんし、そういう意見もございませんが、そういう意味で、ほかの党の方々にも、それから開発委員会の方にも、それができましたときにお見せしたい。というのは、このままでは、いつまでたってもできないと思うのです。宇宙とは何ぞやというのは二十何通りか定義がある。これにこだわっておったらできっこないのです。だからともかくその辺のところは、変わった点以外は、確立をした点は変えればいいのですから、そういう点で割り切っていただいて、この前提なしに開発委員会事業団があるということは三木委員から言われたように、私はどう考えてもおかしいと思うので、これはぜひ早く基本法をつくる。あえてつけ加えるならば、この科学技術基本法というのはだいぶ前から問題になっております。これも何とかめどを立てなければならぬだろうと考えておるのですが、しかし、われわれのほうは、宇宙開発基本法というものはその前に何とか形をつけたいという気持ちを持っていることをつけ加えて御意見を伺いたいと思います。
  46. 西田信一

    西田国務大臣 宇宙開発推進いたしますための基本となる法律の制定について、たいへん御熱心に御検討をいただいておるということは、われわれとしても非常にありがたいことでございます。もちろん、われわれが拱手傍観しておるという態度ではございませんけれども、なかなかむずかしい問題があることも確かにただいまお話にありましたとおり事実でございまして、そのためにこのように時間がかかっておるのだと存じます。いろいろ問題点のあることは私がここであえて申さなくても、諸先生十分御承知でございます。これらの問題点の解明、解決に私ども全力をあげたいと思っておるわけでございますが、このように国会方面におきまして非常な御協力があるということはわれわれとしても非常に力強いことでございまして、それを十分参考にさせていただきましてわれわれ自身も努力をしたいということを申し上げておきます。
  47. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そこで、これはこの委員会にひとつおはかりしたいことですが、これは委員長のほうで取り計らってもらいたいと思うのです。いまもお話がありましたように、この委員会に小委員会を設けております。それが有名無実になってしまったということならば、これは今度は委員側の取り組みの熱意ということになると思うのです。当局のほうにこういう要請をしておきながら、われわれのほうでそれを看過するわけにもいかぬと思いますので、これは委員長においてお取り計らいいただきたいし、理事会において御相談をいただきたいと思うのですが、小委員会設置をぜひこの際にやっていただきたい。一方、宇宙開発委員会では、そうした問題点を検討しながら作業にかかっていただく、それが相呼応してできるというような方法が日本の国の科学技術振興の上で望ましいのではないか。特に、きょうは大先輩の佐々木さんはおられませんけれども、前からの大先輩としてわれわれいろいろ御指導なり御鞭撻をいただいておりました前田先生もおられるのですから、与野党一致の姿をこの委員会では私はくずしたくない。これは前田先生や岡先生や佐々木先生や福井先生もおられて、われわれは受け継いだもので、各委員会が非常にむずかしい対立というものがあると思いますけれども、これだけは持ち続けたいと私たちは念願しておるわけであります。あえてじょうずを言ったりあるいはへ理屈を言ったりしようとは思わないわけです。そういうつもりですから、小委員会を持っていただくようにお取り計らいをお願いしたいと思います。  それから、これは公明党の近江君から、特に宇宙開発に関する基本計画というものが提示されておりますから、これについて関連で皆さんにぜひ聞いておきたいと思う、こういうことですから、近江君のお話を聞いていただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  48. 北側義一

    北側委員長 ただいまの三木さんの御要望については理事会で検討いたします。  近江巳記夫君。
  49. 近江巳記夫

    ○近江委員 この前の私の質疑のときに、要するにこの宇宙開発の基本的なことについて、政府案がいつやるかということについて、早急にやりたい、こういうような御答弁があったわけです。ところが政府のほうからは、この間一般新聞紙上を通じて発表があったわけですが、四十五年の三月二十六日に決定してこの間の新聞に出たわけです。そうすると私がこの間質問したのは二日の日でしょう。あのときまだできてないとおっしゃった。これはどういうことですか。できているものをできていないという答弁をされた。そういうことについては国会のこの審議にそういう事実を伏せておいていいかという問題です。これのいきさつについてちょっとお聞きしたい。納得できない。
  50. 石川晃夫

    石川政府委員 この基本計画につきましては宇宙開発委員会におきまして決議をしていただきまして、総理大臣のほうに決議を出していただくことになっておるわけでございますが、その手続は相当前に済んだわけでございます。ただ、あとその手続の問題といたしまして、大蔵省との協議が、これは事業団法の中ですべく規定されておるわけでございますが、それをしていた最中でございます。この日にちが確かに四月二日の国会の席上におきまして、大臣のほうにまだ十分御説明してなかったので、大臣は近く決定されるであろうというふうな御返事をされたわけでございますが、事実いつの日付になって決定されるかということが実は不確定でございましたので、その点まことに申しわけなかったわけでございますが、日にちがさかのぼったということになったわけでございます。
  51. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、それではその過程ということをいま提出して、大蔵省なら大蔵省でいろいろ回って、大体こういう現況になっております、そういうことでなぜ補足説明しないのですか。そんなのは言いわけではないのですか。
  52. 石川晃夫

    石川政府委員 あのとき大臣のほうから関係方面に手続中ということを説明されましたので、私たちそれで御説明したというふうに解釈していたわけであります。
  53. 近江巳記夫

    ○近江委員 その辺のところが、あの時点ではまだ全然考えてないような、そういうような印象を私も受けましたし、しかも、これが三月二十六日に決定になっておりますし、その間やはりもっと政府間の、その辺のところ緊密な連携をとってもらいたいと思うのです。その辺、結局あなた方自身にとってもあまり確信がなかったのではないかと思うのです。あの時点から早急にいろいろ折衝して、実はこのように決定しておったというようなことで発表されたのではないかと思うのです。国会の答弁ですから、これから答弁についてももっとはっきりとした、こうなっておるということを親切に言ってもらわぬと困るのですよ。それについて大臣にちょっと……。
  54. 西田信一

    西田国務大臣 ごもっともなおしかりでございますが、実は私は、あのときこういうふうにお答えをしたつもりでございます。この計画につきましては内閣総理大臣のほうに具申をいたしまして、提出をいたしまして、いまそれぞれ関係方面と手続を進めておるところでございます、遠からずこれが決定を見るはずでございます、そういう趣旨のことをお答えいたしたのでございます。しかし、それが三月二十六日であるから、そのときにはもうすでにきまっておったものを、四月に入ってそういう誤った答弁をしたのではないかというふうな御疑問が生じておることだと思いますが、事実その当時はわれわれのほうには決定の通知を受けておりませんで、若干この二十六日という日がどういう手続であったか、私そこら辺つまびらかでございませんけれども、事実そのときには科学技術庁のほうにこの決定の通知は受けておりませんでしたので、したがいまして手続中である、近くという意味のことを申し上げたので、何にもその当時手続も進めておらないでいいかげんのことを答弁したのではございません。ただ、この日付が、三月二十六日に、あるいは何か手続の関係上若干さかのぼるという、そういったような形であったのではないかと存じますが、このことが真相でございますので、ひとつ御了承を賜わりたいと思います。
  55. 近江巳記夫

    ○近江委員 私も、皆さんはもう採決のあれで、時間をとりたくありませんけれども、要するに、総理大臣は一番の責任の方でしょう。その総理が三月二十六日にはっきりとこれは出しているわけですよ。そうでしょう。それを四月二日の時点でまだそういうような状態だと……。あのときだってそんなはっきりと言うておりませんよ。いま議事録がありませんから、一言一句言えませんけれども。しかも、ほんとうに出しているのだったら、大体の骨子はこういうことですと——これはどこ見たって別に何も秘密のことはありませんよ。大体考え方はこういうことで出しています、そのぐらいの親切な答弁をしたっていいと思うのですよ。それをもう簡単に、こうこうこういうことだと、そういう態度がよくない。どうですか。
  56. 石川晃夫

    石川政府委員 ただいまおしかりを受けまして、まことに申しわけなかったと存ずる次第でございます。ただ、私たちといたしまして、その正式の文書というものを待っていたわけでございまして、そのためにことばが足りなくて、また説明が不十分であったという点についてはおわび申し上げたいと思っております。事実、正式文書によっての回答が四月三日に来たわけでございます。それまでには実質的に協議が進んでいたものでございますから、大臣にはその旨を御説明いたしまして、実質的には三月一ぱいぐらいには何とかなるのではないかというふうに大臣には御説明申し上げたわけでございます。それを大臣から国会の席上御説明があったわけでございますが、そのようなことで、文書がおくれてまいりましたために、このような日にちのほうが先になったということで、その点をおわび申し上げます。
  57. 近江巳記夫

    ○近江委員 これ以上この問題はけっこうですけれども、ひとつ、こういう点、こまかい点に至るまで、それからまた親切にやってもらいたい、この点を要望しまして、終わりたいと思います。
  58. 北側義一

    北側委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  59. 北側義一

    北側委員長 次に、本案を討論に付するのでありますが、別に通告もありませんので、直ちに採決いたします。  宇宙開発委員会設置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
  60. 北側義一

    北側委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  61. 北側義一

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————      ————◇—————
  62. 北側義一

    北側委員長 引き続き、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  南極地域における科学調査に関する問題について質疑の申し出がありますので、これを許します。三木喜夫君。
  63. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 当委員会におきまして、かつて南極観測がとだえたときに、これを続行しなければならないという強い決議をやりまして、それを推進してまいりました。そういう経緯がございます。したがいまして、今回南極観測におきまして観測船「ふじ」が不測の事態で厚い氷の中に閉じ込められ、そうして帰れなくなったということを新聞紙上で知りまして、われわれといたしましても、科学技術振興の上で、あるいは学問の振興の上で非常に支障を来たしたということについて重い気持ちになったわけでございます。いつこの「ふじ」が群氷の厚い氷の壁を抜け切れるかということに関心を持っておりまして、ソ連の観測船オビ号やアメリカの観測船等の救援を待っておるという非常に暗いニュースに接したわけでありますが、しかし幸い自力で離脱できまして、五月九日ですか、日本に帰還することができるという朗報を得まして非常にうれしく思ったわけであります。  ここに問題が残るのは、われわれもこの委員会において観測船の「ふじ」を建設するということについて強く建言をいたしました。文教委員会においてもそのことに与野党一致して協力いたして、観測船がここにできた。その観測船というのはオビ号とまではいかないでしょうけれども、かなり最新鋭の観測船で、しかもそういうことにあっても自力で砕氷できるというようにわれわれ聞いておったわけであります。しかしながら、現実はそうでなかったということになりますと、これは自然状況がそのように「ふじ」を閉じ込めた大きな原因であることはもちろんでありますけれども、しかしこの観測船をつくった造船会社あるいはそれに対するところの監督をしておった文部省あるいはそれを運航しておった防衛庁、どこに原因があるのか、そういうことを国民の一人としても知らなければならないと思うわけであります。  そこで、文部省に南極観測本部がありますから、観測本部では逐一その間の事情を御存じだと思いますので、きょうはそれをお伺いして、以下私の質問をしていきたいと思います。どなたかひとつ説明を願いたいと思います。
  64. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 大学学術局の審議官渋谷でございます。実はきょう御質問が三時ごろだというふうに聞いておったのでありますが、前の質問が早く終わったそうでありまして……。きょうちょうど楠越冬隊が飛行機で帰ってくるということもございまして、急遽飛んでまいったのでございますが、政府委員室の女の子の手違いで、向こうの分館のほうへいま行ってしまいまして、たいへんおくれまして恐縮いたしております。  最初に事故の経過を御説明申し上げます。  「ふじ」は御承知のように、第十一次観測隊の観測隊員を乗せまして、それに必要な設営その他食糧等の物資を乗せまして参ったわけでありますが、それの観測隊員、物資の輸送の任務を終わりまして、二月の十七日に昭和基地の近くにとまっておったわけでありますが、そこを離れまして、十九日の夜から外洋へ出るための前進を始めたわけでございます。定着氷を抜けまして、流氷の集まっております群氷の中に入りまして、そこをチャージングをしながら前進しておったわけでございますが、二月の二十五日、日本時間にいたしますと十七時五十分、ちょうど六時間の時差がございますが、東京のほうがおそい時刻になっております。「ふじ」の艦長からの入電によりますと、そういう群氷の中で比較的氷の薄い方角に向かって砕氷航行中であったわけでありますが、チャージングといいまして、非常に氷が厚い場合は、一ぺん前進いたしまして、それから艦を左右前後に振りながら後退いたしまして、また前進をして砕氷をいたすわけであります。そのチャージング実施中、一たんうしろへ戻って前進をする、切りかえましたときに衝撃がございまして、右回転が急上昇をしたということで、直ちに運転を停止いたしまして、それで再び前進をかけたところ、無負荷回転の状態となった。つまり反応がないというか、スクリューの反応のない状態となったということであります。そこでその後機関長などが後部甲板からゴンドラをおろしまして水中めがねで中をのぞいたわけでありますが、その結果、推進器、スクリューが両方についておりますが、右のほうの推進器についております四枚の羽根全部が根元から切断されたように折れてなくなっておるということが判明いたしました。左の推進器は故障を起こしておらない、異常がないということであったのであります。それから、いわゆるシャフト、軸その他は異常はなかったようでございます。  そこで、当時の氷の状態でございますが、その定着氷のところ、「ふじ」がそこへリセットされましたところから、約十五キロ沖までが非常な密群氷でございまして、その辺に東西に走る水路が開けておりました。そこからさらに先のほうは、かなり同じく群氷でございますが、少しゆるやかである。その「ふじ」から十五キロのところが、氷の、要するに流氷が重なっておるわけでございますが、厚さ三メートルから八メートルという氷の丘の氷という、氷丘氷といっておりますが、で、固められました非常にハンモック状になりました、いわゆる最密群氷という状態であったわけでありますが、氷量が十分の十と——氷量に十分の十とか十分の八とかいうのがいわれますが、十分の八という場合は十分の二、二の分は水があったり、間隙がある、十分の十というのはみっしり詰まっておるという状態でございます。そこで、普通であれば「ふじ」の能力をもってすれば、両方のスクリューが完全であれば、そういう非常な密群氷でも、大体砕氷できるという判断であったわけでありますが、片っぽうがとにかくスクリューが全部羽根が折れたということになりまして、片肺ではとても最密群氷は砕氷困難であるという状態になったわけであります。  そこで、そこの原因でございますが、これは原因につきましては水中めがねでのぞいた程度でございますから、なお、ケープタウンに先般入りまして、今度は潜水いたしまして、さらに調べたようでございますが、いずれにいたしましてもこれは「ふじ」が帰りましてから南極推進本部といたしましては、調査委員会を設けまして、あらゆる角度から事故の原因について調査をいたしたい、こう思っておるわけでございます。現在のところははっきりわからないわけでございます。これは乗っておりました第十一次夏隊の川口副隊長の個人的な推測では、そういう氷の状態でございましたので、そういうチャージング実施中におそらく大きな氷塊が下にもぐりまして、それが浮き上がって羽根を折ったのではないかということを言っておりますが、いずれにいたしましても、「ふじ」が帰りまして破損の状態その他よく調べまして、それからいろいろな角度から検討をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。その後、本部といたしましては専門家の御意見を聞きますと、氷状がゆるんで自力でも脱出できる可能性はあるということでございましたが、最悪の場合に備えまして、いろいろな対策を本部連絡会を三回やりましていたしたわけであります。新聞等でも御承知のとおりに、米ソに救援を依頼いたしまして、ソ連砕氷船オビ号あるいはアメリカの砕氷艦エディスト号等がそれぞれ現地にかけつけてくださり、あるいはエディスト号はかけつけるべくすでに出発いたしたというようなことであったわけでありますが、だんだん外回りが解けつつございましたが、幸い東南東の風も吹きまして、氷状がにわかに好転いたしまして、自力で脱出できるということになった次第でございます。
  65. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 かなり長い間南氷洋に閉じ込められた「ふじ」、新聞なんかの見出しを見ますと、“白いサバクの囚人”と、こう書いてあるわけです。先般「よど号」がああいう赤軍派の連中によって閉じ込められた。これは非常に問題になって、乗員の不安を思うとき、日本じゅうがそれについて激昂したわけであります。この「ふじ」号の場合は遠い南氷洋のことではございますけれども、しかし、これについてああした表立った、皆さんの激昂したような騒ぎはなかったものの、これも私はたいへんな問題だったと思います。幸い自力で脱出できましたから、何よりよかったですけれども、何日間も何日間も前途の見通しなしに、こういう南氷洋で閉じ込められるということは、これはたいへんなことだったと思うのですが、それにつけても私たちはさきの「宗谷」が自力砕氷する力も弱いというので最優秀の砕氷船「ふじ」をつくったはずであります。それがこんなていたらくになって、文部省としてはこれを一体どのようにとらえておるのでございますか。私は、率直に言うと、科学日本の名において非常に恥ずかしい思いがするわけです。前にも「宗谷」が米ソに救援をたびたび依頼するというようなことで、これでは恥ずかしいじゃないかということでつくったはずなんです。それがこんなていたらくになったら一体どうなんです。この問題をどういうようにとらえておられるのですか。ただ帰ってきて調査した上でという、そういうとらえ方だけですか。それではこうした僻遠の地に観測に行く人に対する観測本部としてのあまりにも思いやりのない考え方じゃないかと私は思いますので、どういうぐあいにとらえておられるかをお聞かせいただきたいと思います。
  66. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 「ふじ」の設計につきましては、御承知のように、当時本部に設計委員会を設けまして、砕氷、輸送、それから艦上における観測という三つの目的に合う砕氷船ということで、その道のいろいろな専門家で十分御検討いただきましてつくられたわけでございますが、遺憾ながら今回のようなことが起きてしまったわけでございますが、いずれにいたしましても、これが設計上の問題があるいはその他事故の原因につきましてやはりあらゆる角度から本部に調査委員会をつくりまして検討をいたしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  ただ、南極の自然というのが非常にきびしいということは十分承知の上でつくられたわけでございますが、外国の船も、先般もアメリカのグレーシャー号というのが船腹に穴をあけましたり、外国の船も、アメリカなどでもときどき事故を起こしておるわけであります。アルゼンチンの船なども先般やはりリセットされまして、いろいろ事故があるわけでございます。そういったこともいろいろ調査いたしまして、「ふじ」の今回の事故の原因等については十分それを検討いたしていきませんと、一体何が原因であったのかということがまず大事だと思っておるわけであります。  いまのところそういうぐあいに考えております。
  67. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 南氷洋に何日間閉じ込められたのですか。その間の文部省としての対策はどういう対策をとられたわけですか。
  68. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 それでは先ほど少しはしょりましたので申し上げますが、二月二十五日にそういう状態になったわけであります。そこで脱出できましたのが三月十九日でございますが、まず最初に、そういう状態になりました二十五日、電報が夜十一時ごろ入ってまいりまして、翌日の二十六日に南極本部緊急連絡会を開催いたしまして、「ふじ」の艦長からの要請はございませんでしたが、氷の状態がそのときの状態のままであるならば、片肺をなくした「ふじ」では自力脱出はおそらく困難であるという判断のもとに、米国及びソ連政府に外務省を通じまして救援を依頼いたしました。  その前に、あの地域に船がいる状態をあらかじめ大体調べてあったわけでありますが、ソ連のオビ号がソ連のマラジョージナや基地に向かいつつあるという情報がございました。それからもう一つアメリカ側はグレーシャー号がかなり近くに、それから砕氷力の非常に強いエディスト号というのがアメリカの基地近くにおるということがわかっておったわけでありますが、それの救援要請をいたしました。  それで、オビ号はそういうわけで、マラジョージナや基地に参りまして十日間の作業をいたしまして、それから昭和基地の沖を通りまして、西のほうにございます向こうの基地に行くという予定になっておったわけでありますが、マラジョージナや基地での作業あと回しにいたしてかけつけてくれたわけでございます。それが三月六日でございましたが、かけつけてまいりまして、そのときの氷の状態は「ふじ」の閉じ込められましたところから十五キロ沖にさっきの水路があり、その先三十八キロは、同じ密群氷でもややゆるい群氷の状態でございます。そこをオビは割って入りまして、水路のすぐ近くまで、結局「ふじ」から二十一キロのところまで来たわけでございますが、そのところで、「ふじ」から飛ばしましたヘリコプターに、楠隊長、「ふじ」の艦長、オビの船長が乗りまして氷状の偵察をいたしました。その結果、水路までは容易であるが、東西に開けておる水路から「ふじ」に近づくことはこの氷状では非常に困難であるということで、そういうオビの船長の判断になりました。ただその際、オビの船長その他楠隊長等の意見では、水路から沖合いの密群氷はさらにどんどん解けてくるであろう。そういたしますと、湾になっておりますのでうねりを生じまして、「ふじ」の近くの最密群氷も逐次解けるであろうという見通しを持たれたようでございますが、そういうことでオビはマラジョージナや基地に帰りまして、最初の予定作業にかかったわけであります。その去るときも、氷状が好転すればいつでも救援にかけつけるということでございました。  一方私どもの調査では、エディスト号のほうも当初の救援要請に対しまして、ウェリントン基地へ向かいまして、救援活動の準備に入っていただいておりましたが、そのウェリントンで補給をしてかけつけるという準備をすでに開始してくれておったわけでありますが、エディスト号が当時南極海におります船では一番砕氷力が強いのではなかろうかというような専門家の御意見もあり、すべてこのようなものは最悪の事態に備える必要がございますので、万一砕氷が不可能で「ふじ」が脱出できないというような場合は、将来そういうような場合は「ふじ」が越冬しなければならぬということも考えられるわけであります。そういう場合は「ふじ」が越冬いたしますと、将来自力で脱出できるために必要な乗り組み員だけを残しましてその他の観測隊員なり乗り組み員はほかの船に移乗をして救出をはかる必要があるわけでありますが、オビ号は、そういう救出の場合に収容能力があまりございません、エディスト号は相当あるというようなことを、それぞれエディスト号の艦長なりオビの艦長、両国の政府から聞いておりましたので、エディスト号による砕氷なり万一の場合の人員救出ということも考えまして、米国側に救援出動を依頼をいたしたわけであります。その後この氷状はいろいろ好転する傾向もございましたわけでございますが、それに応じましてアメリカのエディスト号は出発をしてくれました。その間「ふじ」の艦内の状況は、比較的動揺はなく落ちついておったということを聞いておるわけでございますが、本部といたしましては、脱出できない場合の最悪のことも考えまして、そういうことで「ふじ」が越冬をしたというような場合は、食料その他はどうであるかとか、いろいろな点も十分検討いたしておったわけでございますが、そういう場合も食料その他は昭和基地と合わせますとまずだいじょうぶ、燃料のほうもだいじょうぶであるという見通しも持っておったわけであります。そういうような最悪の場合を常に考えまして、いろいろな措置をとっておったわけでございます。
  69. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 私は「よど号」と比較して考えるのですが、要するに「よど号」にすれば、その前面には、同じ閉じ込められたのですが、犯人がある。こちらのほうはきびしい大自然がある。温度が氷点下十七度ぐらいに下がっておるようですし、なお暖房の設備についても節約、入浴についても節約、こういうように耐乏生活が待ちかまえておる、こういう中で暮らされた隊員あるいは乗員は、これは合計二百二十三人ですね、非常に心細い思いをされたのであろうと思います。そうすれば、当然この船の構造とかあるいは事故のぐあいとかいうものが問題になってき、それはひいて、私らの考え方では、観測船をつくるときに最優秀だということでつくったことが一体どこに問題があったかということに思い及ぼさなければいかぬのじゃないかと思う。文部省としても、そういう観点でとらえておられるだろうと思いますが、新聞記事によりますと、エディスト号は基準排水量三千五百トンで、「ふじ」より一回り小さいが、砕氷力が「ふじ」をしのいでおる、こういうことなんです。これに助けを求めなければならぬということは、私はこれはもう恥ずかしいことだと思うのです。そういう点は文部省のほうでどう思われますか。そして、これはどうせ委員会をつくって調査されるはずなんですが、こういうことに対して、これはたいへんに問題だとお考えになっておりますか。ひとつその辺をお聞きしておきたいと思います。
  70. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 確かにおっしゃるとおりだと思います。いずれにいたしましても、そういうことに備えて設計をし、つくられたわけでございますが、南極の自然というものが非常に予測をこえてきびしいということもございまして、南極条約の趣旨に基づきまして、南極条約協議会というのを隔年に開催いたしておりますが、その協議会におきましても、南極のきびしい自然におきます相互の救援につきまして勧告をいたしておるわけでございます。それぞれの国が、そういうきびしい自然に備えて、砕氷船の能力その他をやっており、日本もそういうことでつくったわけでございますが、なおかつこういう事故が起きたということにつきましては、今後調査委員会で十分検討をいたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  71. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 念のために申し上げたいと思うのですが、これをつくったところの造船会社があると思うのです。責任の会社があると思うのです。これに対しては、もし設計のミスだとかいうことになれば、それに対してどういう措置をとられるのか。さらにまた、運転について、その運転のしかたが悪いということになって、そこにミスがあるとするならば、それに対してどういう措置をとられるのか。「よど号」は犯人が意識的にああいうことをやったわけですが、このことも取り扱いのいかんによっては人命に非常に関係が深い問題ですから、私は処罰なさいということを言っておるわけではないのです、責任を感じてもらいたいということを申し上げておるのです。文部省もこれについては責任を感じてもらわなければいかぬと思いますし、さらに防衛庁もこれは責任を感じてもらわなければいかぬと思う。なお、これを製造したところの会社も責任を感じてもらわなければいかぬですが、それについての態度をどういうぐあいにお考えになっておられますか。
  72. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 結局この事故の原因の調査ということになるわけでございますが、設計上の問題、操縦上の問題、あるいは製作上の問題、あるいはいろいろな角度からの問題はあろうかと思いますが、当然これが南極というきわめて、しかもそのときの氷の状態その他から、いわゆる不可抗力であったのか、あるいはさっきのような観点でミスがあったのかという問題になるかと思いますが、それの調査の結果によりまして、それぞれ責任という問題が当然起きてくる、こういうふうに思っております。
  73. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いまのお話を聞いておりまして、浮氷物が浮き上がってきたときに、スクリューの羽を全部落としてしまったらしいという、こういう想像のお話がありました。こうなりますと、そういうときにスクリューを回すということの非常識さもありますし、そうなれば、どんな堅牢なスクリューでも羽は飛ばされてしまうことは当然だろうと思うのです。そういうようなことを考えあわせて、運転に対するところの問題があったのじゃないかしらんと私は想像するわけです。それは想像であって、どこまでも実物に即し、そのときの事情に即して考えなくてはならぬですけれども、ただ一つ残ることは、ほんの最近つくった最新鋭の「ふじ号」がそういうことになったということについて、私は非常に遺憾の意を持たざるを得ないわけです。それがずっと以前につくったものだとかいうならいざ知らず、「宗谷」が絶えずこういう状況にあるからこそ「ふじ」号をつくったんでしょう。それも万全を期してつくったはずなのにこういう状況になったということは、よっぽど責任をはっきりしてもらわぬといかぬと思うのです。それについての覚悟いかんを聞いておるわけなんです。ただ調査します、調査しますだけではいかぬ。責任を明確にしてもらわぬといかぬ。それはどうですか。
  74. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 今回の事故はまことに遺憾だと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほどの事故の原因は、観測隊の一人の人の個人的な全くの推察でございまして、スクリューの破損の状態も、一ぺんは水中めがねで見、一ぺんはケープタウンで潜水して見た程度でございますから、実際に帰ってまいりまして、これをドックに揚げまして、破損の個所をよく調べましたり、その他当時の氷の状態、あらゆる角度からやはり専門家によって検討していただきませんと、事故の原因というものは明確にならないわけでございます。まず今回の事故そのものはきわめて遺憾であった、こう思うわけでございますが、そういう事故がまた起きないためにも、いろいろな、またそういう事故についての責任といったような問題につきましても、とにかく本部に調査委員会を設けまして、この事故の原因を究明し調査をするということがまず先決である、こう思っておるわけでございます。
  75. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 その上で責任を明確にされますか。それを聞いておるのです。
  76. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 これが設計上の問題であったのか、製作上の問題であったのか、操縦上の問題であったのか、あるいはいろいろな条件から不可抗力と言わざるを得ないということであったのか。また、それぞれの問題につきましては、設計はこれは本部が設計委員会をつくりましてやった問題でございますし、それから製造上の問題でございますと、これは契約によりまして会社につくってもらった問題でございますし、操縦の問題でございますと、これは「ふじ」は防衛庁の問題になってまいります。それぞれの立場に応じての責任という問題が考えられてくると思うわけでございます。
  77. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 責任考えられるのですが、それを明確にしますかということです。責任を明確にしますか。責任をとってもらうように……。
  78. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 つまり事故の原因ですね、それによりましてですね。
  79. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 よりまして責任を明確にとらせますか。
  80. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 事故の原因いかんによっては責任の態様がいろいろまた違うと思いますが、それぞれのしかるべきことは当然だと思うわけでございます。
  81. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 私もそういう観点に立って明確にしなければ、これは帰ってきたら、いろいろな方面からいろいろな手が回ってくると思うのです。そしてその原因というものを明確にせぬということなら、これはわが国の造船界にとっても不幸だと思いますし、観測の仕事にとっても不幸だと思うわけであります。また科学技術振興という上についても、こういう不明確な態度でやっていくということが私は非常に残念なといいますか、遺憾に思いますので、こういう態度こそ排除してもらいたいと思いますので、責任を明確にしてくれということを言ったわけです。不可抗力だったということで逃げることは非常に可能でありますし、一番無難であります。しかしながら、それほど不幸なことはないと思いますからこういうことを言っておるわけなんです。その点どうです。
  82. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 これは「ふじ」の事故が起きましてからの救援につきまして、緊急本部連絡会を三回開いたわけでございますが、特に三回目の緊急連絡会におきまして、本部事務局側から発言をいたしまして、「ふじ」が帰りましてから、いろいろさっき申し上げましたように破損の現状をよく調べる必要がございますので、本部にしかるべき専門家による調査委員会を設けて事故の原因について調査する必要があると考えるということで、本部連絡会の御承認を得ております。明後日南極本部総会がございますので、その連絡会の御承認を得た事項につきましてさらに報告をいたしまして、総会としてもそういう調査委員会を設けて今後事故の原因について調査していくということをはっきりきめていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  83. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それはけっこうなんです。原因を調査することはしてもらわなければなりません。しかしながら、申し上げておるのは、その原因が明確になって責任が明確になったときには、その責任をとらすかということです。
  84. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 それは事故の原因によっていろいろの態様が違ってまいりますので、それぞれに応じてしかるべき責任というものは当然起きてくる問題だ、こう思っておるわけでございます。
  85. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それは当面の責任は私は文部省にあると思うので、それをあいまいにすると文部省それ自体が責任を感じてないということになると思うのです。だから、そういう立場で原因を明確にし、そしてその責任をとるようにしてもらいたいと思うのです。  本委員会で南極観測を継続すべしということをやり、文教委員会でこの「ふじ」の建造を決議して、そうしてその結果、これは防衛庁がこれについての航行等の責任を持って行き、今日この事態が起こってきた。そういたしますと、これは南極観測の上には今後非常に危惧の念が出てくると思うのです。隊員の上にも出てきますと、日本の国にも、せっかくつくった最新鋭の「ふじ」がこういう状況になるということなら考え直さなければならぬというような事態も起こってきて、南極観測という学術研究に私は大きな暗影を投げかけると思うのです。それが一つと、科学技術庁といたしまして、すでに原子力船をいま発注しておるわけです。こういう立場に立ちまして、今後私はこの問題については、十分科学技術庁としても関心を持って御監督をいただきたい。ただ原子力船の事業団にこれをまかしておるだけではこういう問題が起こりかねないと思うのです。南極まで行って造船日本の名をあげてくれるのなら私たちはありがたいと思うのですけれども、造船日本の汚辱を観測船によってここに出したということは、私は惜しいと思うのです。汚辱と言うと悪いかもしれませんが、要するにあまり自慢にならぬことですから、恥ずかしいことだと私は思っておるわけです。それできょうは文部省にわざわざ来ていただき、大臣もわざわざおっていただいて、今後こういう機器の製造というものは、宇宙開発によらず、海洋開発にまた起こってくると私は思うのです。観測船もまたつくらなければならぬだろうと思います。そのときには、文部省の責任でなくて、むしろ科学技術庁責任でつくらなければならぬのじゃないかと思うのです。そういうことを考え合わせまして、ひとつ大臣としても、今後に対処するお考えを聞かせていただきたいと思うのです。
  86. 西田信一

    西田国務大臣 皆さまの御熱意によって三十七年に本委員会で決議が行なわれ、それが動機となりまして、観測船「ふじ」が建造され、そうして南極の調査が行なわれておったわけでありますが、今回不幸な事態になりまして、このことにつきましては、私も文部大臣も、防衛庁長官もたいへん心配をされまして、閣議におきましても数回にわたって経過の報告があり、また米ソに対しまして救援の手段を依頼するというようなことがございましたけれども、幸いにいたしまして、自力で脱出できたということは、たいへんわれわれとしても喜ばしいことでございました。しかしながら、ただ喜ばしいということでなくて、こういう事態に立ち至ったことに対する原因の究明等はとても大事なことであると思います。科学技術立場からもこの原因を明らかにいたしまして、今後再びこういう問題が起きないようにということに対しましては、われわれとしても十分対処していかなければならぬと考えております。したがいまして、あらゆる角度から専門家の徹底的な調査を期待したい、さように思うわけでございます。その調査の結果によりましては、また新たな考えを持たなければならないかもしれません。この御決議の際におきましても、将来原子力船の利用というようなことにも触れておられるわけでございます。科学技術庁といたしましても、また推進本部にわれわれのほうも参画しておるという立場から申しましても、また科学技術庁本来の立場から申しましても、これを徹底的に原因を突きとめまして、そうして将来に対する万遺憾ない対策を立てていきたい、こういう決意でございます。
  87. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 文部省に最後にお聞きしたいのですが、片一方のスクリューがこういうように痛みましたならば、かなり速度がおそくなって日本に帰ってきていると思うのですが、そういう点についてはどのくらいの速度で、そしてその間におけるところの物資その他に支障がないのかということ、なおこういう問題は一つの海難としてとらえて、海難審判にも付する意図はあるのかないのか、これをお聞きしたいと思う。造船に関係が非常に深いのですから、一つの海難とこれをとらえるかどうか、これをひとつお聞きしておきたいと思う。
  88. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 「ふじ」の最高ノットは十六・五ノット、これは最高でございますが、ふだんは十三ノットで動いております。片肺をなくしましたので、ケープタウンからいま東京に向かいつつございますが、十二ノットくらいは出せるようでございますが、無理をいたしませんで、いま十ノットで動いております。  それから後段の問題でございますが、これはとにかく南極観測事業は御承知のように関係各省、学識経験者に入っていただきました、文部大臣が本部長をしております南極観測推進統合本部というところで統合推進をいたしておりますので、この設計等もそこで本部に委員会をつくってやったこともございますので、南極観測推進統合本部にそういう調査委員会を設けまして、いろいろ事故の原因等を究明いたしていきたい。いまのところ、そういうふうに考えております。
  89. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 海難審判にかけるかどうかということです。
  90. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 いまのところは考えておりません。
  91. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 これで終わります。
  92. 北側義一

  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど三木委員のほうからいろいろと事故等の問題について質問があったわけでございますが、私も最近の「ぼりばあ丸」をはじめとした、ああした海難事故等の問題から考えましても、今回の「ふじ」の問題等を含めて非常に重要な問題があるのではないかと思うのです。特に国際的にもこれは問題が別でありますが、「よど号」の事件でも、韓国、北朝鮮等にも迷惑をかけておりますし、今回の「ふじ」の脱出についても、アメリカ、ソ連に援助を求めなければならない。非常にそうした不名誉なことも続いているわけです。こういう点でこれから南極観測も続けていく。これは学問的にも大きな意義があるわけでありますし、そういう点から考えて、やはり万全の措置をしていかなければならない。そういう立場から私は、どうしても一回は質問をしておかなければならないと思っておりました。幸いきょうはこういう機会がございますので、二、三質問をしておきたいと思います。  そこで先ほどからも質問があったわけですが、まず今回の「ふじ」の事故原因ですけれども一つ設計上のミス、あるいは運航上の誤り、あるいはきわめてまれに起こるきびしい状況下における不可避的なアクシデント、この三つのうち、いずれかという問題なんです。この辺はどのようにお考えですか。
  94. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 スクリューの折れた状況その他が先ほども申し上げましたように、一回は水中めがねでのぞき、一回はケープタウンで機関長などがもぐりまして見たという程度でございますので、これはやはり「ふじ」が東京に帰ってまいりまして、ドックに入れまして、まず破損の状況を十分調べる必要があるかと思います。それから当時の氷の状態がさっき申し上げたような状態であったわけでございますが、それからそのときの運転の状況というものが、さっき艦長からの報告で、チャージング中の前進後退をやっている、また後退から前に行くというとき、そういうときの速度の状況なり、つまりいろいろな角度から専門家によって検討をいたしていただきませんと、単なる推測ではまずい、こういうことで先ほど申し上げましたように、南極観測推進統合本部に調査委員会を設けまして、事故原因の調査、究明に当たっていただきたいと考えておる次第でございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 前回の「宗谷」の場合もシャフトに傷を受けたことがあったわけですけれども、当然スクリューにもそういうような損傷を受けるような何らかのいろいろ外部的な要因とか内部的な問題とかいろいろあろうかと思いますけれども、そういう前回に「宗谷」が傷を受けたという例があるわけです。そういう教訓を今回の「ふじ」号による調査にあたって、どういう形でその教訓を生かしたか、この辺についてお聞きしたいと思うのです。
  96. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 「ふじ」そのものは「宗谷」の経験とか諸外国の砕氷船とか、そういったものを十分参考にして設計をされたわけでございますが、今回の事故はシャフト、軸のほうはいままでのところ異常はない。羽が四枚折れた、こういうことなんでございますが、その羽そのものも非常に性能の高い材質の物を使っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、それが折れてしまったということですから、力学的その他あらゆる角度から究明をしていただかないと、なかなか原因がわからない。いま私どもの推察では、ちょっとまずいわけでございますので、そういうことで、あらゆる専門的角度から調査検討をいただいて、今後のあれに資していきたい、こう考えておる次第でございます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 われわれが心配するのは「宗谷」に引き続いて「ふじ」が今回のこういう損傷を受けた、こういうことで、来年行く際にも、また同じような事故を起こすのではないか、そういう心配がやはりあるわけです。そこで、これから厳密にこの調査委員会のもとにおいて調査をする、こうおっしゃたわけですが、私が先ほど申し上げた設計上のミスがあるのではないか、あるいは運航上の問題があるのではないか、外部的なアクシデント、どれかわかりませんし、ミックスされておるかもわかりませんけれども、その結果いろいろな原因が出ると思うのです。大別すれば、そういう三つの原因のどれかになると思うのです。あるいは重なった形で出てくるかもわかりません。それについては、どのようにお考えになっておるわけですか。もしも調査の結果——大体考えられることはどれかにあてはまるのですから、そういう場合には、たとえば、設計上のミスであれば設計を変更してやるとか、いろいろな答えがあると思うのです。その辺のことは、具体的にどのようにお考えですか、仮定の問題になるかもわかりませんけれども……。
  98. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 調査の結果を見ませんと、いまから申し上げかねると思いますけれども、第十二次観測隊の出発予定は十二月二十五日ごろになっておるのでございますが、その間かなり時間もございますので、その間にいろいろな手を打っていかなければならぬ、こう考えておるわけでございます。  それからもう一つの問題は、御承知のように、あれは南極に着き、南極を引き揚げる期間が、自然の条件から限られておるわけでございます。大体真夏に入る時期に着きまして、それからそろそろ秋口に向かう時期に引き揚げてくる、こういうことでございますが、設計上とか、いろいろ「ふじ」そのものの問題とあわせまして、なるべく引き揚げる時期をもう少し早くする。越冬隊の成立には、どうしても一定の時間がかかるわけでございますが、観測隊なり設営物資その他の物資の輸送をなるべく早く終えていただきまして、秋口に一ぺん外洋に向かうのを、もっと早いうちに外洋のほうにとにかく出まして、それでしばらく遊よくなり、船の上での観測なりを夏隊が帰ってくるまでしてもらっておって、それで越冬隊が成立したら、ヘリコプターで残っている人は船に運んで帰ってくる、そういったように、「ふじ」が昭和基地の近くを離れる時期をもう少し早めまして、氷の状態がまだ比較的いい時期に離れるというようなことを、いろいろな角度からの対策も講じていきたい、こう考えておるわけでございます。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは状況等を判断されて、運航の問題もミックスして、そういうお考えでいらっしゃると思うのですが、設計上に残念ながらもしもミスがあった場合は、当然設計を変更してやられるのですか、この点一点お聞きしたいと思います。
  100. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 かりに設計上のミスであるということになれば、当然おっしゃるとおりだと思います。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 前は南極観測のことについても、かなり報告等もひんぱんに行なわれたように思うのですが、最近は、何かなれと申しますか、その辺のところが案外に周知徹底ができていないのじゃないかとわれわれ思うわけです。今後南極観測の方向現状について——現状といえば、いろいろな項目になってきて膨大なものになりますけれども、そこのところは簡単にして、現状と今後の方向というものをひとつお答え願いたいと思います。
  102. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 南極の観測の結果、その他の資料は、ずいぶん出ているわけでございますが、それは省略いたしまして、南極観測事業の将来計画といいますか、そういう問題につきましては、最近では昭和四十年度に学術会議の南極観測特別委員会というものが案をつくりまして、それに基づきまして、南極本部総会において決定いたしております。それは昭和四十二年に若干の修正がされているわけでございますが、それに基づきまして、現在毎年の観測計画を、同じく南特委で案を練っていただきまして、南極本部総会で決定いたしまして、各隊の観測計画をきめているわけでございます。  なお、その四十年の将来計画は、もうすでに五年もたちますので、現在第十二次隊以降のおおむね五カ年にわたる長期的な将来計画というものが関係者の間で検討されております。これが近く成案ができる見込みになっているわけでございますが、大体従来の将来計画その他の動向から申し上げまして、今後の問題につきましての重点の置き方でございますが、その前に、この観測には定常観測と研究観測がございまして、定常観測は気象庁とか国土地理院とかそういう関係各省、それから科学博物館が定常的、業務的に行なう観測と、それから大学などが行ないます高度の学術研究という研究観測と両方あるわけでございますが、今後の大体の重点の置きどころといたしましては、村山隊によります極点調査旅行の成功を契機といたしまして、大陸の内陸部の調査につきましては、特に大陸氷と地殻構造の究明ということ、それから子午線に沿います地軸の調査、それから先般の、いま帰ってまいりつつあります第十一次夏隊が、ロケットの試射を二機いたしまして、これが非常にうまくいったわけでございますが、第十二次隊は予算上七機のロケットを持っていって、越冬隊で上げることになっております。昭和基地は、非常にオーロラ、極光に恵まれている地域でございまして、そのロケットをオーロラの中に打ち上げまして、いろいろな角度の学術観測をいたすことになっております。  それから四十五年度予算アメリカなどの人工衛星の受信装置などの予算を計上されましたので、そういった人工衛星の受信装置によりますいろいろな現象の把握、国際的協力とか、まだまだ研究者の間では未知の南極大陸の解明につきまして、いろいろやりたいことがあるようでございますが、大体そんなような感触の方向でさらに将来計画が練られることになっております。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 おそらく学術的なことでありますから、それがどのように利用されて、また評価されていくかという問題等になれば、相当、こまかい点になろうと思いますので、この点はよろしゅうございますが、そういう点の評価の問題とか、その辺のことがちょっとわれわれとしては、第三者から見ても、納得できるようなPRもあまりされてないように思うんです。  それから、観測資料が非常に分散化の傾向にある。今度、国立科学博物館の中に付属機関として極地研究センターが設置される。これでまとまるんじゃないか、このように思っておりますけれども、そうしますと、この以前にも、極地観測の資料が相当あると思うんですけれども、そういうものはいままでどこに置かれていたんですか。
  104. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 それは、科学博物館に極地部というものがございまして、そこでもうかなり集めておったわけでございますが、やはりどうしても、中心となるところがございませんと、観測に行かれた方々が自分のところへ持ち帰りまして、それはそれでけっこうなんですが、終わったら、そういうセンターに集中するとかそういったような点で、とかくやはり欠ける点があったことは事実でございます。それから、それぞれの研究者は、観測したことについては、非常に学問的な成果なり何なりを発表され、その資料もいろいろ膨大な資料ができておるわけでございますが、国民の皆さんにわかりやすくというか、どういう成果があがったとか、そういう点につきましては、とかく研究者は、学問的なあれはやりますが、そういう点が不足であったことは、確かに事実だと思いますが、いまの極地センターなどが今後できてまいりますと、そういう点もかなり体制が整ってくるんではないかと思うわけであります。現在の科学博物館の極地部は、十四人でございまして、そのうち五人が、現に第十一次観測隊、それから、いま帰りつつあります第十次観測隊の隊長なり副隊長なり、観測隊員として五人が行っておるというようなわけでございまして、毎年その中から何人かが参ります。そういう状況で、そういう方面のPRその他が不足であったことは事実だと思いますが、逐次、極地センターなどが整備されてまいりますと、そういう点も逐次、改善されると思っておる次第でございます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後、この南極観測については積極的に推進なさると思っておりますし、発展していくであろう、このように思っております。そうなってきますと、昭和基地も非常に永続的、恒久的なものになってくるんじゃないか。その辺の将来の考え方、これは今後、五年計画でやっていくとおっしゃっておりますから、発展的なものと考えておりますが、それと並行して、わが国の気象状況に非常に大きな影響がある北極方面、これの観測を今後、どういう方向に進めていかれるのか。南極観測とともにこの辺の考え方というものをお聞きしたいと思います。
  106. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 北極のほうは、かなり学術的その他の点から各国で研究がなされてまいりまして、南極のほうはほとんど未知の世界であったわけであります。そういう面で、南極のほうに各国が力を入れてやってきたわけでありますが、北極のほうにつきましては、いまのところ、北海道大学に低温科学研究所というのがございますが、そこが大体中心になりまして、国際的な協力その他の研究をやっておるわけでございますが、南極のほうはいずれにいたしましても、あらゆる面で未知であるというところで、南極に重点を置いておるわけでございまして、いまのところ、北極につきまして、南極のような大がかりな観測なり観測隊を派遣をするということは考えておらないわけでありますが、主として北海道大学低温科学研究所などを中心といたしまして、そちらのほうの研究をしていただいておるというのが現状でございます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 その現状は、それはわかるのですけれども、今後、学術的にも、北極は外国等においても調査されておる、しかし、全然そういう研究をしていく価値がないのか。そんな大学研究機関だけにまかして——何もそれは北海道大学がだめだとか、そんなことを言う意味じゃないんですけれども、非常に南極観測に比べれば、あまりにも規模といいますか、そういうものが小さいのじゃないか。その点、どういうように今後北極観測というものをとらえていくのか。その辺を、現状だけじゃなくして、どう考えているかという前向きの方向をお聞きしておるわけなんです。
  108. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 北極に関しましては、かなりの面が解明されておるようでございまして、ただ、専門的なことは私も詳しくは存じませんが、北極に関しては、各国の研究によりまして、かなりもう解明されるなり進んでおる。そこで、南極は、いずれにしても、全くの未知の世界であったということで、各国とも南極に力を入れてきた、現在のところ、その程度に理解しておるわけでございます。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 われわれはしろうとですから、そう言われればそれまでのことですけれども、いずれにしても、そうした気象状況等の重大な影響があるわけでありますし、北極観測ということも一つの問題点として、今後、ひとつ鋭意課題としてどうやっていくかということをよく検討していただきたいと思うのです。この点は検討していただけますか。
  110. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 いまのせっかくのお話でございますので、十分勉強さしていただきたいと思います。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間もありませんので、あと一問で終わりますが、大臣にもおそくまで残っていただいたわけでありますが、要するに、この南極観測等についても、文部省が中心になってやっておる。当然、それぞれの任務分担というものがあるわけでありますが、やはり科学技術庁が何となしに、これは文部省だからというような何か傍観的な、そういうような感覚としてわれわれがとらえるわけなんです。その点、南極観測、そうした問題について、科学技術庁として、今後、どういう形で推進をしていけるか、どういう決意であるかということを、局長と大臣からお聞きして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  112. 鈴木春夫

    ○鈴木(春)政府委員 この南極観測の問題は、主として学術の研究が中心に行なわれていると思います。それに関連しまして、その他のいろいろな科学技術、そういった面にも影響するところが多いと思います。それで、現在のところは、文部省が中心になって、各関係省庁が総合本部の場においていろいろ協力してやっているわけでございます。その中におきまして、科学技術庁としましても、この南極観測から得ましたいろいろな研究成果、そうしたものを各方面にいろいろ利用していくというような立場でわれわれも考えていかなければなりませんし、この観測研究につきましても、できるだけひとつわれわれで協力できる点は協力していきたい、かように存じております。
  113. 西田信一

    西田国務大臣 南極観測は学術的な観測研究が主目的でございますから、文部省が担当しておるのは、これは適当かと考えておりますが、しかしながら、未知の世界に対する観測でございまするし、またその観測の結果というものが科学技術立場から見まして非常に有効に活用されるという面も考えられまするし、そういう面でわれわれも統合に参画をしておるわけでございまするけれども科学技術に関する面がかなりたくさんございますから、そういう面では決してわれわれも傍観しておるという態度ではございませんが、今回のこのような事故にかんがみましても、さらにもう少し積極的な姿勢でひとつ参画し、取り組んでまいりたい、かように考えます。
  114. 近江巳記夫

    ○近江委員 これで終わりますが、要するに今度観測船が帰ってきた場合、本委員会にそういう関係者に一ぺん来ていただいて、実際の現地における状況なり、そうした辺のことについて質疑をさしてもらいたいと思うのです。これについて文部省としてはどのように今後配慮していただけるか、そのことをお聞きして終わりたいと思います。
  115. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 御要請があれば、そういう御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのときはよろしくお願いいたします。これで終わります。
  117. 北側義一

    北側委員長 次回は明九日木曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十二分散会