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橋本国務大臣 事務的に答えますと、いわゆる
飛行機の運航、輸送は、まあ運輸省といいますか、直接管轄であり、治安に関してはそこの駐在の
警察署とか、かような答えをして、それでも大体うまくやっておるというような答えになってしまうのですが、それではいけないと思うのです。われわれは非常事態がなければ、それで大体やっていけるのです。たとえば、国内
空港の
お客さんの扱いにしましても、十五分前までに来れば
お客さんを乗っけるということになっています。十五分前に来た
お客さんの小荷物から手荷物まで調べるのは不可能です、そんなことは。そういうことがいわゆる通常業務として、そういうようなハイジャッキングのようなことがないという前提でもって行なわれておる。同時に、いま申したような
飛行場のいわゆる運航等、それに関連する扱い方が、運輸省もしくは
空港、会社。治安といっても、すり、どろぼうの類だと思うのですが、そういうものは
警察。こういう
警備、こういうようなことでは、いわゆる平常の場合においては大体差しつかえがありませんが、そういう問題は、必ずしもこういう場合においては適用しないんじゃないか。もちろん、これは私が責任者の一端を持っておるわけでありますが、ただ私が願うところのものは、やはりソシアルコンセンサスといいますか、
社会的な一般的な常識というものも、
一つ考えなければならぬ。今回の
事件が起きたとき、私のところに何と言ってきたか。ある人は、直ちに出さないことは
運輸大臣は何をしておるんだ、またある人は、もしかしたならばおまえと刺し違えるんだ、こういう相反したものの
考え方が
日本では存在しておる。もちろん国際的にもそうだろうと思う。
だから、先ほど来いろいろお話がありましたが、
機長の権限といいましても、御
承知のように、
機長はその機内において自由なる意思の発言ができない、そういう
状態に置かれておる。そういう場合において、外部の助言も必要であります。しかし、その外部の助言にしても、機内の状況というものは手に取るようにはわからないのであります。私は向こうに着きましてから、いわゆる山村政務次官の勇気ある
行動をきっかけにして百八十度の転換をした。しかし、私の責任は、なおかついわゆる
機長を含めた四名の生命、並びに
犯人についても生命は尊重しなければならぬ。こういうものを安全に北
朝鮮の見知らざる
飛行場に送るためにはどういう
努力をすべきか。私はこれが決定いただきましたが、翌日——夜になりましたからしてこまかい点はできませんので、夜明けと同時に、その
飛行機の整備及びできるだけの
飛行場等の状況の入手、あるいは静養、こういうものを含めて、あの
飛行機が出発するまでには十時間余の時間を要しておるのであります。われわれはもちろん当初から、私が金浦に参りましたときには、初めから、困難なる場合は全員送らざるを得ない。そのためには、自転車に乗っているのではないのであります。
人間が歩道を歩いているのではないのであります。こういう精密な
飛行機を動かすためには、しかも地上の知らざるところへやるためには、やはり数時間なり——私は
空港長等に聞きましていろいろ調べた。この
飛行機の整備は最小限度何時間を要するか、三時間要しますと言う。しかも
よど号は
滑走路からはずれております。これをまず乗っける、そのためには一時間余の時間を要する。給油その他にも一時間半以上はかかる。かつまた
飛行機の気象通報、これはもちろん
日本の大阪と
東京をやるわけじゃありません。何ら
関係のない国の
情報を知るのでありますからして、各方面の広い範囲の、いわゆる外の方面の状況を調べて、そこで最小限度ながらの資料を与えざるを得ない。皆さん新聞でごらんのように、当時は悪天候であった。こういう状況をわれわれはあそこでもって北
朝鮮からとることができませんから、できるだけ他の方面からこれを得て、そうして
飛行の安全を期することが当然の責任であります。そのような
措置をするためには、一時間や三十分じゃできはしません。私が
努力をいたしまして、人を指揮いたしまして、緊急の事態でありますから、私が総括責任としてこれが
措置を行ないましたが、それにいたしましても、午前八時から始まりまして、夕方の四時過ぎでなければ出発してよろしいという条件が整わなかったのであります。でありますから、
板付における状況につきましても、何か三十分か一時間で出発させることができるんだということは、人命を尊重しないやり方であります。
人間が向こうへ行ってどうなってもよろしいというのであるなれば、これは別問題であります。したがって相当の時間を要することは、
飛行機のことを私はよく知りませんけれども、人の
意見に従って行なったのでありますが、そのような慎重を期してこそいわゆる人命尊重ができるのであります。
こういう点を
考えるなれば、われわれはこういう非常事態といいますか、緊急なる
状態に対しては、先ほど御
質問がありましたように、私は、いろいろの点において総合的な責任体制、こういうものをつくる必要がある。法律の改正等が要るかもしれませんが、できるだけ
行政措置においてもそのようにやっていかなければならぬという強い信念を私は持っております。