○内藤
委員 この
法案につきまして、わが党社会党の同僚の
先生たちも、斉藤、井野両
先生がいろいろの角度から
質問をされておりますけれども、私はまた違った立場で少しくお尋ねしたいと思います。
今度の
法案が出てまいりまする原因である
乗車拒否という問題ですね、この問題の発生といいますか、ここまでさかのぼってみたいと思うわけです。
それを
乗客の側から見ますと、非常にくだいた話でありますけれども、お聞き願いたいと思うのです。第一には、空車の表示がある車が来ますね。合い図をしても応答がなく通過してしまう。これも
乗客にとっては
乗車拒否というぐあいにとるでしよう。これはぼくの考えだけですから当たらないかもしれないが、ぼくの体験した例も入っているわけであります。それから次に考えられるのは、
乗客、
利用者が合い図をして応答があって、そして車が
利用者の前に停車をした。そこで
利用者との交渉の中で、行き先によって拒否される場合もある。たとえば車庫帰りだとか、あるいはいま食事に向かう途中だからということで、だめだということになる、こういう状態ですね。それから今度は扉があいて乗車してから、九段に行きたいと言った場合に、私は車庫入れでいま反対側に行くのだから、あるいは食事で帰る途中だからそっちに行きません、おりてください、こういうこともあるでしよう。これは非常に
乗客の側から見るとひどい例になってくる。この事例がら、今度はそこで
乗客が一たん乗ってしまいますと、これは派生的なことになりますけれども、チップとかあるいは特別な支払いをせざるを得ないような状態に
乗客が追い込まれる。これは
乗車拒否というよりもひどい状態になる。あるいはまたもう一つ考えられるのは、車がとまってお客さんと交渉の段階で、特別の料金を要求される。どっちが言い出すかわからぬけれども、暗黙のうちに何かうんとはずむから行ってくれという式に言わざるを得ないような状態になるんじゃないか。こんなようなことが
乗車拒否あるいは
乗車拒否にからんでのお客さん側の非常な不満の状態じゃないかと私は思うわけです。まだまだ他の例があると思います。
そこで、
利用者の側から見ますと、空車の表示のある場合は、
利用者の合い図ですね、これはまたあいまいで不確実な場合があるかもしれません。両手に荷物を持っておって、おいおいと呼んでも、この騒音で聞こえない場合もあります。
利用者は一生懸命に車を求めておるわけたが、見のがされてしまう場合もあるでしよう。それらを含めて、空車の場合は、
乗客の合い図によって停車して、そして乗車させて、行く先の指示によって目的地に迅速に安全に到着すること、これが
利用者の要求でしよう。この場合に、行き先か不明確な
乗客もおりますね。地理、地番の知識をそのために
運転手が働かして、あるいは交番所にわざわざ尋ねて歩くぐらいのことまでやったり、たばこ屋に聞いたりして、
乗客にかわっていろいろ聞きただしながら、目的地に到着させる場合等もあるわけです。しかし、
乗客の側から見れば、それは当然なような状態になるんじゃないかと思うわけです。だから、これは
タクシーの
利用者の側から見れば、完全なサービスを要求しておるのが普通の状態じゃないかと思うのです。ある場合には過剰なサービスを要求しておるような場合もあるんじゃないか。これは無意識かもしれませんけれども……。しかも料金はできるだけ安くということでしようね。
乗客の側からの
乗車拒否にからんての
利用者の立場を考えた場合です。
そこで一方、経営者というのはおりますけれども、しかし、第一線に出て
利用者と接触しますのは
運転者でありますから、
運転者の側から見ますと、第一に、拒否という現象が出てくるのは、お客に明確な乗車の意思表示がない場合がある。いま申し上げたように、両手に荷物を持っておって、何か叫んでおるけれども、聞こえない。はたして車をとめて乗るという意思があるのかないのか、はっきりしない形でやってしまう場合もあるでしよう。それから次に考えられることは、合い図によって停車はしたけれども、乗車しない場合もある。せっかくとまったけれども、何かあいまいな態度で乗らない場合もある。車が貧弱だとか新車じゃなかったということもあるかもしれません。そこらはわからないけれども、そういう場合もある。それから、いまの
利用者の場合でもお話しましたが、今度
運転者の側ですけれども、車庫帰り、あるいは腹が減っておる、空腹時に
運転者の目的地と反対の方向に目的地を指示される場合もあるわけです。
乗車拒否という現象の場合、
運転者としてはとてもそれじゃ行けないという場合もある。それから、乗車してから客が非常に傲慢だ、あるいは強圧命令的だ、
運転者の人権を無視するような場合もあるでしよう。一寸の虫にも五分の魂ということで、同じ人間ですから、うん、このやろうということで、
乗車拒否になる場合もあるかもしれない、一たん乗せてからもですね。また次に考えられることは、酔っぱらいの
乗客ですね。もうこれは乗車前でも乗車後でも、無理無体といいますか、乱暴を働くような状態もあるでしようね。だから
乗車拒否せねばならぬ。またひどい例は、どうも人相ふうていが強盗でもやられそうな感じなので、予感がして
乗車拒否をはる場合もあるんじゃないか。こういうことで、いろいろな
乗車拒否の場合が、
利用者側、それからまた
運転者側というぐあいに考えられるわけです。
ところで、
利用者側が過剰なサービスといいますか、ある
意味ではわがままな立場であることは、これはやむを得ない。完全なサービスを要求するくらいのが普通だと思います。
運転者側の場合から見ますと、体力、気力の続く限り、できるだけいわゆる水揚げを多くして収入を多くしたいという気持ちが第一にある。だから、むだな動きはできるだけ避けたいという気持ちは当然でしょう、こういう意思に対して、今度この
法案で二つの地域の指定になる東京、大阪の大都会では、今日の状態では非常に大きな障害があります。一つは、交通の渋滞がひどい。また思うように走行ができない。それにまた、事故防止の見地も加わってくる。そこで神経質にならざるを得ないでしょう、また大都会の場合は、対人
関係、人間
関係が非常にドライで、先ほど来言っていますように、
運転者は完全サービスを強要される、何かロボットのように扱われる、こういうような状態であろうと思います。さらにまた、労働条件が、工場労働者等に比較して悪い。長時間の勤務がほとんどである。それから勤務の
関係その他で、娯楽、休養あるいはまた文化的
施設等に接する機会も少ないし、それから考えられることは、
事業者、管理者側の————やはり
事業でございますから、利益を追求するといいますか、利益第一、もうけ第一主義が、
運転者、労働者の肩にのしかかっておる。これは刺激的な歩合給等でわかるわけではね。それからまた言えることは、
運転者であるけれども、雇用労働者だ。雇用された労働者であるにもかかわらず、一般の
利用者から見ると、いわゆる全
責任を負わされるかっこうになっている。はなわち、
事業者とか管理者は、一般的企業と比較すると、企業
責任者としての
負担を
運転者、労働者に過大に背負わせているような結果になっておりはしないか。これはこのサービス業としての特性があるからでしよう。生産工場の場合は、生産物が媒介になって、そして直接の生産者、労働者の人間的なものは前面に出てまいりません。これは
利用者にはタッチされません。しかし、サービス業である
タクシー事業につきましては、そういう媒介がありませんから、
運転者と
利用者、なまの直接の人間
関係というものが、サービスという形あるいは料金という形で出てくるわけでありますね。私は、こんなぐあいに、
乗車拒否といわれるところの実情なり、あるいはまたそれが出てくるところの直接間接の原因というものを考えてみたわけであります。だから、やはり製造
事業と違って、
タクシー事業はサービス本位の
事業でありますから、今日のこの大都会、東京、大阪等の世相から判断しまして、非常にむずかしい
事業じゃなかろうか、私はこう思うわけであります。しかも地方の中都市と比較して、都市の過密化ということ、このひどい状態、非常に影響される面が多いということが常にあるんじゃないか。
そこで、こういう問題点を
タクシー事業のみで全面的に解消することは、なかなかできないことでもあるわけです。これは私からいま短い時間の中でいろいろ申し上げるまでもなく、皆さまおわかりだと思います。だけれども、それを探求しなくちゃならぬ。これが非常に大切だと思うわけであります。どこへポイントを置いていくか。私は、第一に、やはりこの
タクシー企業の特性から、第一線の
運転者、労働者、それから車、これが結局この
事業の場合中心でございましょう。第一線の
運転者、車が中心であるというこの
事業の特性というものの認識が、やはり私は第一に必要ではないかと思うわけであります。そして第二には、これを通じて
利用者に良質のサービスを提供することがこの
事業の特性であるという認識がやはり大切ではなかろうか。こう考えてまいりますと、この第一、第二と私が申し上げました
事業の
性格上から、中心的なものは何であるか。
運転者と車、それから生み出される良質のサービス、これがこの企業の
性格である、中心でなければならぬじゃないか、私はこういうぐあいに思うわけであります。
これが今日の企
業者の考え方、認識のしかたあるいは企業方針の立て方にどういうぐあいに受けとめられているか。私が申し上げたような考え方で企業の方針なりが立てられておるかどうか。これは非常に重要なことだけれども、はたしてそれが重要視されて、この
タクシー事業の中にはっきりそれが打ち立てられておるのかどうか。これは免許
事業でございます。やはり企業の特性というもの、免許される段階でこれをはっきり認識された中で、今日の運輸行政といいますか、
自動車局の施策が行なわれておるかどうか、まず、この一点を、ちょうど大臣おられますけれども、大臣並びに局長からひとつ御答弁願いたいと思います。