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1970-03-27 第63回国会 衆議院 運輸委員会 第12号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月二十七日(金曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 福井  勇君    理事 加藤 六月君 理事 村山 達雄君    理事 内藤 良平君 理事 松本 忠助君    理事 和田 春生君       佐藤 孝行君    菅波  茂君       砂田 重民君    西村 英一君       金丸 徳重君    木原  実君       斉藤 正男君    田中 昭二君       宮井 泰良君    田代 文久君       關谷 勝利君  出席国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君  出席政府委員         水産庁次長   藤村 弘毅君         運輸政務次官  山村新治郎君         運輸省船員局長 高林 康一君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君  委員外出席者         社会保険庁医療         保険部船員保険         課長      山崎  卓君         水産庁漁政部企         画課長     石田  徳君         日本国有鉄道常         務理事     長浜 正雄君         運輸委員会調査         室長      小西 眞一君     ————————————— 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   楯 兼次郎君     木原  実君 同日  辞任         補欠選任   木原  実君     楯 兼次郎君 同日  理事松本忠助君同日理事辞任につき、その補欠  として宮井泰良君が理事に当選した。     ————————————— 三月二十六日  海上交通法制定等に関する請願外一件(西村榮  一君紹介)(第一八一二号)  同外一件(和田春生紹介)(第一八六〇号)  気象業務整備拡充等に関する請願鬼木勝利  君紹介)(第一九四七号)  同外五十四件(渡部一郎紹介)(第一九四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  船員法の一部を改正する法律案内閣提出第七  一号)  海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出  第九七号)  陸運に関する件(過疎地域バス事業に関する  問題)  日本国有鉄道の経営に関する件(輸送力の増強  に関する問題)      ————◇—————
  2. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 これより会議を開きます。  船員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  3. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 今回の船員法改正案は、聞くところによりますと、審議会に諮問し、その答申を得て、改正案骨子というのをおつくりになったというようになっておりますので、まず、この答申について、若干承っておきたいと思います。  この答申の前文を読みますと、「十一回にわたり慎重審議を重ねた結果、下記のとおり結論に達したので答申する。」そして「小委員会委員は、別紙名簿のとおりである。」こういうように出ておるわけでございます。この記の一、二、三、四というのが答申に出ておるわけでございます。そしてこの答申に従って改正案をおつくりになっておるようでございます。政府からいただいておりますこの質料によってわれわれもいろいろ見てみたわけでございますが、いわゆる二十トン未満五トン以上の漁船員が、この法律改正によっていろいろの面で恩恵を受けるようになる。船員保険厚生年金保険国民年金との比較あるいはまた現在の船員法労働基準法との比較、こういうものをずっと一つずつ比較対照していってみましたときに、相当現在の漁船関係従事者恩恵を受けるようになるということで、骨子において賛成なわけでございます。賛成なわけでございますが、この答申の中にちょっとはっきりしておきたい点がございますので、まず、その点について御質問いたしたいと思いますが、この答申の記の二の終わりのほうに、「また、地先漁業以外の漁業であっても、第四次漁業センサスの結果をみてこれに準ずる漁業があれば同様に適用除外とすることとする。」ということがあるわけでございますが、この第四次漁業センサスの結果というのはいつごろ出るか、これをまず承りたいと思うのです。
  4. 藤村政府委員(藤村弘毅)

    藤村政府委員 概要はすでに昨年の十一月に出しておりますが、正式なものは本年秋になると思います。
  5. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 そうしますと、正式なものが出たときにおいて、この法律国会を通過して、もちろんトン数によって逐次やっていくし、いろいろな方法があるようですが、この適用をさすようにして、センサスの結果を見たらあるいは適用をはずす、それを除外するというケースが出る場合が考えられますか、考えられませんか。
  6. 藤村政府委員(藤村弘毅)

    藤村政府委員 ここで考えておりますのは、同じ程度漁船で、ほとんど同じ範囲の漁場を持っておりましても、ある県では共同漁業権になっているもの、ある県では共同漁業権になっていないものもあるかと思いますので、センサスの結果、そういうものがございましたら入れるという考えでございます。
  7. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 入れるという考えと、出さなくてはならないというのと、両方あるのじゃないですか。
  8. 藤村政府委員(藤村弘毅)

    藤村政府委員 除外するという考えでございます。
  9. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 いまこの法律で除外するようになっておるのは、漁業を定置して営む漁業、それから漁業法第六条第四項の区画漁業、また同条第五項の共同漁業、こういうものは除くわけですね。そうしますと、これは水産庁の方、私要求してなかったのですが、たまたまおいでになっているので、ありがたいので、もう少し尋ねてみます。  瀬戸内海においては、もう詳しいと思うのですけれども、この地先漁業だけでなく、地先漁業の行なわれている同じ海域で、地先漁業以外の五トン以上の漁船があるのです。この法律がこのまま通り、政令がいま考えられているような線で進んでいくと、この法律適用を受ける五トン以上の船が出てくるようになると思うのです。そこで、これらの操業海域というのは地先漁業と全く同じなのだから、まあセンサスの結果やいろいろなことを判断して、除外するか適用させるようにするかという問題で、同じ海域で仕事をしておる漁師がおるわけですね。漁船員、これが同じ海域で、ある者は五トン未満ということあるいはほかの理由で入らない、ある者は入れるということが当然考えられる。それから、ある者はセンサスの結果、実施しておって、またはずすということで、そういう混乱が出てくる。こういうこと等があるわけで、私たち考えた場合、いままでの法律の場合は、二十トン未満のものは入れないということだったから、比較的こういう問題が瀬戸内海ではそう問題にならなかったと思うのです。今度は五トンまでこれを持っていきますと、そういう問題が起こってくるのじゃないかと思うのです。  そこで、私は、まあ政令できめられることでございますから、いまとやかく申し上げませんけれども、政令をきめる段階において、水産庁運輸省が十分相談してもらいたい。まあそういった意味を含めて、私たちの調べたトン数でいきますと、政府からいただいておるこの資料の一ページにあるわけですが、「漁船隻数等の現状」というところで、海水動力漁船数十五トンから二十トンが三千百六十八隻、適用見込み数二千二百隻、被用者数一万六千四百人、十トンから十五トンが四千百六十四隻、このうち適用見込み数二千九百隻、被用者数一万四千六百名、こういうようになっておる。五トンから十トンが八千四百六十四隻、適用見込み隻数約六千二百、被用者数約一万九千二百人という数字がある。この数字漁船統計表昭和四十三年十二月三十一日現在のものである。適用見込み数水産庁調査昭和四十三年九月末現在のものである。被用者数は二十二万九千人、これはトータルでなるわけですが、これは農林省漁業センサス昭和四十三年十一月一日現在のものであるというように、この数字をいただいておるわけです。しからば、そのうち、瀬戸内海のいわゆる動力漁船隻数は何ぼになるかということになると、十トンないし二十トンが六百十三隻、五トンないし十トンが千百六十九隻という数字が出ておるわけです。これのさらに詳しい適用見込み隻数から始まって、被用者人数がどうなっているかということの資料が、いま私の手元にないわけでありますが、こういう問題、瀬戸内海のいわゆる動力漁船隻数というものとこのトン数というものを見てきますと、全体の数字からいうと非常に小さいわけです。隻数でいうと一割五分ぐらいになるわけですが、これがいま申し上げましたような入りまじった関係になっているということで、一番最初に私が申し上げましたように、法律精神からいったら、この法律は非常にいいと思うのです。ところが、実際の実施をするということになってきますと、瀬戸内海域漁業というものが混乱を生ずるような、あるいは労働力の変な移動というものが、この法律を施行することによって生ずるような形が出てきはせぬだろうかということ等も懸念せられますので、答弁は要りませんが、この席で要望をいたしておきます。政令をきめるときに、水産庁農林省運輸省とひとつ十分検討していただくということ、よろしくその点をお願いいたします。  それから、同じくこの答申で、四に、これを施行する場合に、「船員保険の適切な運営及び国庫補助の増額並びに指定市町村の拡大に努めるほか、漁業協同組合等関係団体協力を求め、事務の円滑な遂行を図られたい。」と、こう書いてあるわけでございますが、この「漁業協同組合等関係団体協力を求め、」というのは、どういうことをこの審議会答申は意味しておるというように運輸省のほうはお考えになっておるわけでしょうか。
  10. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 漁業協同組合協力を求めますケースとして、一つは、雇い入れ契約を公認いたしますそういうような事務のいろいろな手続につきまして、実質上漁業協同組合がいろいろそこで船舶所有者あるいは船長にかわりまして協力をするということ、これが一つあるかと思います。それからもう一つは、船員保険の面でございまして、船員保険徴収事務その他につきまして、漁業協同組合船員保険法の九条にいいますところの指定団体というふうにいたしまして、漁業協同組合協力を求める、こういう二つのものが大きな要素になるかと思っております。
  11. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 わかりました。  この小委員名簿というのがあり、公益委員労働者委員使用者委員のほか、臨時委員というのを四名入れられておりますが、そこで、この審議会答申というものは、満場一致といいますか、おそらく相当な議論——十一回も会合を開かれ、いろいろなことをやられたと思うのですが、これは満場一致できまったのでしょうか。それとも少しこの出席者の中に抵抗を感じたり、実施方法とかテクニックとか、いろいろな問題について議論等は出ておったでしょうか、出ておらなかったでしょうか。
  12. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 結論満場一致でございます。ただ、十一回の会合を開きました過程におきまして、たとえば答申の四あるいは三というような点につきまして、やはり一挙に適用すべきであるという意見、それからそれはなかなか問題があるというようなことで、過程におきまして、特に保険料問題等に関連いたしましていろいろの議論がございました。それで結局、結論といたしまして、段階的に逐次これをやっていくということでもって調整をはかっていくということの結論を得まして、その結論については、この答申内容については満場一致になった次第でございます。
  13. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 私は前に要求していなかったのですが、いまこれを見ると、保険庁の方が来られることになっているので、ついでに伺っておきたいのですが、保険庁の方、来られておりますか。
  14. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 まだ来ておりません。
  15. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 それならいいです。保険庁の方がおられるなら少し尋ねてみたいと思ったのですけれども、それではこの政府提案改正案に対する質疑はこの程度にいたしたいと思うわけでございます。  次に、私、最近問題になっております船長の退船義務の問題について、二、三伺っておきたいと思います。  先般来の一連海難事故により、船長がその船舶運命をともにするということで、社会的にも、また船長協会海員組合あるいは船主協会、いろいろな間に、この法律の十二条の問題について議論が分かれておるようでございます。読んでみますと、「船長は、船舶に急迫した危険があるときは、人命船舶及び積荷救助に必要な手段を尽し、且つ旅客海員その他船内にある者を去らせた後でなければ、自己の指揮する船舶を去ってはならない。」こういう条項があって、これが非常に問題になって、船長が船と運命をともにするのであるということ等で、この十二条を少し考えてみたらどうだろうかということは、先般の大臣所信演説に対する私の質問のときにも、大臣から御答弁があったわけでございますが、私、この席をかりてちょっとお伺いしてみたいと思いますのは、この第十二条の人命船舶積み荷、この三つ並列に置いておるということについて、どうも十分なる納得がしがたいような気持ちがあるわけです。といいますのは、急迫した危険があるときに、人命船舶積み荷とを船長は一体同じように扱うのか扱わないのか。しかも、これには厳重な罰則がありまして、百二十三条で、「十二条の規定に違反したときは、五年以下の懲役に処する。」こうあるのです。実際急迫した危険があるときに、人命という問題については船長は十分に考えるだろうと思うのですが、現実にいろいろ起こっておるケースを見ると、人命は大部分助かった、あるいは全滅した、いろいろケースがありますが、船舶とか積み荷というものに対しては、ほとんど沈没という形になってしまっておるわけで、この法律にいうところの救助というのは行なわれていないわけです。そうすると、十二条を受けてやった百二十三条の「五年以下の懲役に処する。」という構成要件はどういうふうに考えたらいいのかということをまず一番に承りたいと思います。
  16. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 十二条及び百二十三条の関連におきまして、十二条の構成要件は、ただいま先生御指摘になりましたように、「人命船舶及び積荷救助」ということと、「且つ」最後に去るということ、この二つのものが「且つ」で結ばれておるわけです。ただ、この「且つ」であらわれておりますように、やはりその場合に一番大事なものは人命であるということは、全体的にはうかがえるわけでございますけれども、構成要件として形式的には、やはり人命船舶積み荷というものが同じような並列過程現行法はあるというふうに考えております。
  17. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 そうしますと、実際船が沈没した、人命は大部分助かった、しかし、船舶積み荷は沈んでしまった、その場合に、船長が必要な書類とか、あるいはまた退船する場合にいろいろな方法高級船員と相談をし、いろいろなことをやり、それから船舶積み荷救助するために最大限の努力、尽くせるだけの手段はかりに尽くしたとしましても、現実には船は沈み、その船に積んであった荷物は船と運命をともにするわけですね。船長は助かった、船員——船員というよりか、人命も全部助かったという場合には、この百二十三条の適用というのは行なわれるのでしょうか、行なわれないのでしょうか。
  18. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 そういうような判例的なものは、この十二条につきましてはほとんどございませんので、その点の判例としてはよく確立されたものはございませんけれども、われわれの解釈といたしましては、それは必要な手段を尽くす態様によると思います。急迫した危難がありました場合に、必要な手段を尽くすその尽くし方は、やはり当然条理上人命というものが第一位であり、そしてその人命救助のための必要な手段を尽くした場合においては、そしてその場合に船舶あるいは積み荷が沈んだといったような場合、やはり急迫危険の態様によりましては、それは人命のみが救われたというようなことでもって百二十三条は適用はないものと、普通は私ども考えております。ただし、急迫した危険の態様によって、船舶も救い得るというような危険態様によってはかかり得ることはありますが、非常な危険の場合においては、やはり人命という救助行為必要手段に包含されておれば、船舶及び積み荷の問題は発生しない場合のほうが多いというふうに考えております。
  19. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 そうしますと、人命船舶積み荷、どうも構成要件としては、この三つに対し救助しなくてはならない。それから最後になって、いまの十二条で、「船内にある者を去らせた後でなければ、自己の指揮する船舶を去ってはならない。」ということばと、どうも私矛盾するような気持ちを持つわけなんです。しかも、人命だけは救助して、船舶積み荷は沈めさしたということについての判例はあまりないようだというお話から承りますと、裏からいいますと、この船舶積み荷ということばは要らぬのではないかというくらいな、極端な暴論になるかもわかりませんが、気持ちさえするわけです。この法律が初めての法律として生まれたのは、昭和二十二年のようでございますけれども、明治時代からある一連法律というものをかぶってきて、百年間か数十年間か及ぶ間に、いま局長に承りますと、そういう判例というものはほとんど聞いてないということばになりますと、ちょっとおかしいような気がするのですが、まあそれはさておきまして、具体的にこの十二条の適用を受けたような判例というものがあるでしょうか、ないでしょうか。
  20. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 現在の十二条に該当するものは、当時の船員法の第十九条でございましたが、明治三十五年に一件あるだけでございます。
  21. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 その事故ケース判決内容というのはここでわかるでしょうか。
  22. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 事故ケースは、お客さんをたしか十数名乗せておる船でございました。それが急迫危険がございまして、それでその場合に、船長及び海員はボートでのがれたのでございますが、お客さんをそのまま放置しておったというようなケースでございます。そこで、これはどうしても確かにおかしな——普通この場合でいきますと、必要な手段というものを尽くしたとは見られないと考えられますが、被告側は、つまり船長及び海員側のほうは、どうしてもほかに方法がなかったというような主張でございましたけれども、判決におきましては、現に船長以下海員が逃げておるではないか、当然必要なほかの救助方法があったのではないか、そういうことでこれは有罪であるというようなことで、結果といたしまして、被告の上告を却下したというのが、この明治三十五年のケースでございます。
  23. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 そうしますと、この十二条での判例というのは、わが国海運国としてはなばなしい活躍、発展を遂げ出した期間において一件しかない。しかし、いまのように乗客を残したまま船員船長がのがれておるということは、乗客は死んでしまったというわけですね。
  24. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 いま残っております判例集では、その乗客の生死がちょっとはっきりしておりませんのでございます。非常に事実関係について不分明な点がまだ残っておる資料ではございますので、その点はっきりしてございません。
  25. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 そうしますと、船長がその船舶運命を共にするというケースが非常に多くなってきておる。これはここ一、二年特に叫ばれ出したようでございますけれども、調べてみますと、これはある面では、どう言いますか、日本では海軍にその歴史がたくさんある。これはもちろん戦争をするものでございますから、若干精神が違うにいたしましても、最近はわが国のいわゆる大型なカーゴ、タンカーその他に伴う事故ケースの場合でも、船長船舶運命を共にするという問題が出てきておるわけですが、これの一つ歴史的あるいはまた社会的背景というものは、いつごろどうやって生まれたのか。これは第十二条があるから、いわゆる船長の最後退船義務というようなことばでいわれてきておるのじゃないかと思うのですが、どういう歴史的あるいは社会的あるいは経済的背景があって——一番最初に私が承りましたら、船長は、現行法の第十二条の解釈によっても、必ずしも船と運命をともにする必要はないわけだと受け取れるわけですけれども、現実には船と運命をともにする船長が非常にふえてきておるというのは、どういう経過というか、背景があって、そういう風潮というか、考え方というものが生まれてきたのでしょうか。
  26. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 こういう風潮の原因というものは、いろいろ多様でございますし、明確にこの点ということは言い切れないと思いますけれども、大体戦前におきますところのものの考え方といたしましては、むしろ船員教育というふうな面におきまして、船長というものは、ことに明治時代におきましてのものの考え方は、船長はいわば最高権力者であった。しかも、船主をも代表する、また船員をも代表する最高権力者であり、当然、船の遭難の場合においては、最後までとにかく義務を尽くせ。極端な論理からいいますと、一ぺん船から下船いたしましても、まれに残っておるというような可能性のある場合、さらにまたさがせ。あるいはまた船内においてガスが充満しておるということが明らかであっても、まだ人が残っておるというようなことがある場合において、やはり最後までこれを守るというような、一つのいわばシーマンシップと称すべきものが、いろいろ教育過程において生まれてきておったかと思います。こういうようなものの考え方は、やはり海運というものが第二海軍的な存在であるということが戦前に非常に強かったこと、そういういわば第二海軍的なものの考え方、またそれに応ずるところの船員教育というもの、それからまた法文が、明治の初めからやはり最後退船というものを規定しておったというようなこと、そういうようなものがいろいろからまり合いまして、心理的にあるいは社会通念的にそういうものが形成されてきたのではないかというふうに考えております。
  27. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 そうしますと、どうでしょうか、日本の場合はそういう経過である。諸外国において船長の最後退船義務に関する立法例というのはどの程度あって、どのようになっておるのでしょうか。
  28. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 私どもの調べました範囲では、船舶に急迫した危険が生じた場合には、船長最後に退船することを定めた立法例としましては、イタリア、フランス、ベルギー、ギリシャというような法律においてこういうような例があります。ただ、最近イギリスの船員法がまだ改正案国会に提出されておりますけれども、その改正条文を見ますと、その中にはこの種の規定はないように見受けられます。
  29. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 それからわが国国内法を見ますと、船員法の十二条とよく関連しておる法律としまして、航空法の七十五条というのがあります。これを読んでみますと、「機長は、航空機の航行中、その航空機に急迫した危難が生じた場合には、旅客救助及び地上又は水上の人又は物件に対する危難の防止に必要な手段を尽し、且つ、旅客その他の航空機内にある者を去らせた後でなければ、自己の指揮する航空機を去ってはならない。」というのがございますですね。そうしますと、私たち、この第七十五条を読みますと、船員法の十二条とほとんど同じように思うわけでございます。これは考えてみますと、この航空法昭和二十七年ということになっておりますから、船員法のほうが二十二年ということになりますと、船員法一つ参考例としたのではないかという気持ち等もするわけです。当時の事情詳しくわかりませんが、この航空法をつくるときに、七十五条というものを船員法の十二条と比較対照されたような議論というものが、当時運輸省内にあったかどうかということについて、もし御記憶があるならば承りたい、こう思うわけでございます。
  30. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 残念ながら、その点ははっきりした記録等はないようでございます。若干の方に聞いてみましたけれども、おそらく船員法規定を踏襲したのではないかと思われるけれどもという程度のことでございまして、はっきりした記録その他は存在いたしていないようでございます。
  31. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 先般、私が大臣に質問したときに、この十二条の改正問題というのを議論いたしたわけでございますが、そうしますと、運輸省内においては、船員法の十二条を改正したあと、将来航空法に何か手をつける場合には、この七十五条そのものをも少し検討するというか、いじるというような考え方はありますでしょうか、どうでしょう。政務次官、ひとつお願いいたしたいと思います。
  32. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 お答えいたします。航空機、飛行機と船舶では、急迫した危険の生ずるという事態がいろいろ異なっておるということもございますけれども、しかし、先生言われましたが、この十二条と七十五条と同じようだという点もございますので、航空法改正の機会がありましたならば、この七十五条を改正することを検討していきたい、そのようなぐあいに考えております。
  33. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 あまり時間もありませんので、この船員法第十二条の改正につきましていま少しわれわれ検討いたしまして、船長の最後退船義務に関するこの問題というものをいま少し突っ込んでいきたいと思います。その際におけるいろいろな問題等ございまして、与野党間でも調整していき、でき得べくんば各党一致という形でいきたいという気持ちを持っておるわけでございます。  政務次官がおいででございますので、承っておきたいと思いますが、この現行の十二条、これはたとえばの話でございます。いわゆるいまの十二条というものは、船員局長が先ほど御説明になったように、船長も立ちのくことはできるんだ。しかし、法律がいろいろな心理的影響を及ぼし、あるいはまた先ほど背景というものを聞きましたが、小は船員教育の問題から始まって、いろいろな問題等で、船長が船と運命をともにするというケースがふえてきておるという話があったわけでございますが、これには百二十三条において五年の刑に処するという問題があるので、私たちもいま検討しておる過程におきまして、この構成要件というものについて、一つの非常に大きな苦しみというか、壁にぶつかっておるわけでございます。しかし、何はともあれ、今日の時節、非常に貴重なる人的資源といったら語弊があるかもわかりませんが、長年の経験と技術を持つ優秀な船長というものが退船できる場合にもかかわらず、その船舶運命をともにするという考え方を少し直してもらわなくちゃならないという立場等から、しかしさりとて、オーナーである船主、あるいはまたそれに一般のお客さんとして荷物を託す方々、この船舶積荷という問題、こういう問題等全般を考えて、いろいろ苦慮しておるわけでございます。  端的に申しまして、私ども回りくどいことを言うたのですが、いまの法律の中で、たとえば十二条の「必要な手段を尽し、且つ旅客海員その他船内にある者を去らせた後でなければ、自己の指揮する船舶を去ってはならない。」という文句、これはいま申し上げましたように、精神的にあるいはまた慣習的にいろいろな問題を起こすので、削ってしまいたい。そして人命船舶積み荷というものに対する救助と、それからあらゆる必要なる手段を尽くしてやるというようなことで、「去ってはならない。」というような文句等を削ったらどうだろうか、こう思っておるわけでございますが、政務次官のお考えはどうでしょうか。
  34. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 お答えいたします。  最近いわゆる大型船の連続海難事故、これで船長がそれぞれ船と運命をともにしておる。この船長に心理的な圧迫というようなものをかけるのは、この十二条があるからではないかということでございます。現在のいわゆる自己中心の社会におきまして、自分の責任感ということで最後まで船を去らない、これらのほんとうに崇高な行動というものに対しては、頭の下がる思いがするものでございます。そして、先生いま御指摘のようないわゆる人的資源というものにしても、これはもうたいへんなことじゃないか、そのとおりであると思います。そしてこの十二条の趣旨というものは、船長に対して船と運命をともにしろということを言っておるわけではないのでございますが、しかし、去らせたあとでなければ去ってはならないというような形、これはやはり誤解を招くおそれがあるということを私は考えるわけでございます。そしてこれは先ほど先生がおっしゃいましたように、与野党の先生方の一体の御指導、御協力をいただきまして、そしてこの際、船員法第十二条についてのいわゆる誤解を招きやすい部分、これらをひとつ改正していきたい、そのようなぐあいに考えております。
  35. 加藤(六)委員(加藤六月)

    加藤(六)委員 政務次官のいまのおことばをいただきましたので、われわれも目下鋭意この十二条の問題については検討中でございます。  以上申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 次に宮井泰良君。
  37. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 それでは先ほどに引き続きまして、船員法の改正に対しまして、若干質疑を行ないたいと思います。  まず最初に、船員法適用を受ける船員は、労働契約としての雇い入れ契約の成立、終了、更新等の際に行政官庁による公認を必要とします。その際に、海運局の支所あるいは出張所が事務手続をしますが、それに加えまして市町村を指定して代行業務をさせる、このように伺っております。その点、繁雑な事務の代行で支障は来たさないか、またなお、その際の手数料の点について検討が加えられているかどうか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  38. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 現在、船員法によりますところの雇い入れ契約の公認につきましては、指定市町村という制度がございまして、現在百九十カ所の指定市町村がございます。それにつきましては、その場合におきまして、船員手帳の交付あるいはまた公認というような手数料、そういうようなことにつきましては、現在地方公共団体手数料令によりまして、そのための所要の手数料といたしまして、手帳の交付については百五十円、それからその他の手数料については大体二十円というようなことが定められているわけでございます。これにつきまして、そういうようなことによりまして、指定市町村が雇い入れ公認等の事務を行ないます所要の財源を確保するというのが現在までの方針でございます。  ただ、最近におきますところのいろんな物価状況その他から見まして、この手数料令の定めるところの金額についてなお検討する必要があるかもしれませんので、それらの点につきましては、関係省庁とも連絡をとりながら検討をし、そして指定市町村事務の円滑な遂行をはかるように努力してまいりたいと考えております。
  39. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 次に、この公認手続が繁雑で、船主が出向きまして一人一人について公認を受ける場合、たとえば私の聞いておる範囲では、二十人の乗り組み員であるとしますと、一般の能力で三十分間の時間を要する、このようにいわれておりますが、その点事務手続に心配はないかどうかということが第一点。  それから次に、また小型漁船の場合におきましては、読み書きの不得手な船長あるいは船主も中にはあると聞いております。このため手続を怠ることも考えられますが、その点どのような御見解であり、またその体制は整っているかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  40. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 今回の船員法適用によりまして、必要となります船員法上の事務手続のうちで、最も大きな部分を占めるのは雇い入れ契約の公認でございます。この公認につきましては、乗り組み状態が継続していると考えられる限り、乗下船のつど公認を申請する必要はございません。したがって、特にこのことによって大きくわずらわしさが増すというようなことは、一回はございますけれども、総体的には少ないのではないかと思っております。  また、船員法上の事務手続につきましては、特に高度の読み書き能力を要求しているものではございませんけれども、従来も漁業協同組合等といろいろ連絡をとっております。その連絡協調を密にいたしまして、漁業協同組合等に加入している船主船員教育をお願いするとともに、その船員法上の事務手続を当該漁業協同組合等によりまして事実上代行してもらうというような措置をとってまいりたいと考えております。
  41. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 先ほど少しばかり局長の御説明がございましたが、この手続の際に、漁業協同組合が代行してはどうか、こういう意見もあります。その件についてはどういう御見解か。  また、協同組合におきましては平均七、八人の職員しかいないケースがある。しかも専門的な知識を要請されますので、増員の必要性も考えられますけれども、人件費がかさむ、人件費の増額の点で困難であると思います。その点の御見解をお答え願いたいと思います。
  42. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 今回の船員法適用範囲の拡大に伴いまして、必要な船員法上の事務手続を漁業協同組合に代行していただくわけでございますが、代行されるような船員法上の事務手続自体は比較的簡単なものであり、量的にも大きなものではないということを聞いております。そして通常の漁業協同組合の人員のほかに新しい人間を雇い入れてこれに当たらなければならないということはないというようなぐあいに私ども聞いておりますが、こまかいところは局長からお答えさせます。
  43. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 政務次官の御答弁のとおりでございますが、現在におきましても、漁業協同組合にいろいろこういう面についてお願いしております。すでに御存じのとおり、現在二十トン以上の漁船につきましては船員法適用があるわけであります。それら二十トン以上の船員法適用についても、事実上漁業協同組合にいろいろ代行をお願いしておるというようなことがございますので、新たに加わりましても、従来の事務に若干加わる。それと同時に、雇い入れになる方も比較的従来からなれておいでになる方が多いと思います。ただ、地域によりましては、確かに先生の御指摘になるような問題があるかと思います。こういう点、実際の施行につきまして、私ども水産庁あるいは全漁連等ともいろいろそういう事務打ち合わせを続けていきまして、円滑な施行に努力してまいりたいと考えております。
  44. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 次に、現在までは慣行的に船主船員に食料を支給しておりました。今回の船員法適用によりまして、その点が義務づけられるということによりまして、特にこれは小型のサケ・マス漁船が典型的な例となると思いますが、船主の負担が非常に重くなると憂慮されておるわけでございますが、その点をお伺いしたいと思います。
  45. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 お答えいたします。  今度の改正に伴いまして、いわゆる適用漁船全部に船員法上の食料の支給義務が課せられるわけでございます。この食料支給義務と申しましても、いままでの慣行といたしましても、二十トン未満の船につきましても食料を支給しておったという実態がありますので、法的義務を課せられたということで、船主の負担が大きくなるものではないというぐあいに考えております。
  46. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 次に、保険面についてお伺いいたしますが、現行法におきましては、労災保険のみの場合、その負担率は千分の三十四となっておりますが、今回の船員法適用になりますと総合保険となりまして、船主の負担は約三倍の千分の百四十四となりまして、その経営状況を悪化させるのではないか、このように思うわけでございますが、その点どういう御見解かお尋ねしたいと思います。
  47. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 船員法適用がございます場合に、船員保険法によりまして、当然船員法上の船員船員保険法上の被保険者になるわけでございます。確かにいま先生御指摘のように、現在、船員法適用の二十トン未満の者につきましては労災保険だけが強制されておりまして、健保あるいは厚生年金というようなものについては強制されておりません。したがって、労災保険のみに加入しておると仮定いたしますと、千分の三十四という労災保険に対しまして、船員保険が千分の百四十四——多少こまかい計数はいろいろ違いはありますが、そういうふうに増大するわけでございます。ただ、おそらく実際問題といたしまして、健康保険にも加入していないというようなことは比較的少ないというふうにも考えられますので、通常の場合におきましては、労災保険のほかに健康保険、厚生年金というものに加入しておろかと思います。そういたしますと、その保険料率は千分の百でございます。そして、それに対して船員保険は労災面においてかなり厚いものでございますから、千分の百四十四になるというその上がり方は逆に少なくなるというようにも考えられるわけです。ただ、先生御指摘のとおり、この問題につきましては、二十トン未満漁船船員及びその経営者というものの経営実態を見ますと、非常に零細企業が多うございます。やはり保険の面から見まして、かなり経営というものに対する圧迫という可能性があるわけでございます。この点について、本問題について船員中央労働委員会で審議いたしましたときも、先ほど加藤先生の御質問にもお答えしたときに若干触れましたが、船員保険の負担という問題が実は一番問題だったわけでございます。そこで、そういうような負担というものを一挙にかぶせることは非常に問題がある。しかしながら他面、やはりこれらの非適用船員が社会保障の面におきましていわば一種の谷間になっておるというようなことも実態でございます。そこで、やはり社会保障の観点、あるいはまた漁船におきましては最近労働力が不足しておりますけれども、労働力確保というような観点からも、多少の負担増大はありましても、方向としてはやはり適用していくべきではないか。しかし、一挙にこれを適用いたしますといろいろ摩擦が多うございますので、まず相当の年数をかけて、そして事前に相当のPRをして準備をしていただく、そしてまた漁協等ともいろいろ連絡をとるというふうにして、実施までに相当期間も置き、さらにまた実施過程に入りましても、段階的にこれを適用していく、そして他方、いろいろ漁業民に関するところの振興策がそれぞれ講ぜられておりますけれども、そういうようなものと相まって、こういうような社会保障充実という観点から段階的に適用していこうということで、その辺の調和をはかっておるものでございます。ただ、御指摘のように、負担がふえるということは確かに事実でございます。
  48. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 ただいまの点に関連しまして、ちょっと補足質問させていただきますが、ある地域によりましては、慣行で船主船員の分も全面的に負担する、こういうことを少し聞いたわけでありますが、そういうところがあるか、あるいはあるとしますと、またそれ以上に負担が非常に重くなってくる、このように思うわけですが、その点いかがでございましょうか。
  49. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 そういう慣行があるかどうかについては、実は私よくつまびらかにしておりませんが、もしそういう船主において労働者の負担分を負担するというようなところがございますれば、それはある意味では、こういうような適用がございましても、特に大きい負担増というようなものは結果しないのではないかと思っておりますが、実例についてはよくつまびらかにしておりません。
  50. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 次に、船員法適用に伴いまして、将来船舶安全法が二十トン未満の小型漁船にも適用され、船体検査の義務を生じ、特に出漁期、一番忙しいときに集中的な検査が行なわれますと、非常に支障が起きる、漁船の方々が困るということも前々から聞いております。さらに船主の経済的な負担がそれによって重くなると一部の関係筋からも憂慮されておりますが、この点どうお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  51. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 お答えいたします。  今回のこの船員法の改正、これは船舶安全法を二十トン未満漁船適用するかいなかという問題とは形式的にはつながっておらないものと思います。しかし、この点は、過去この運輸委員会におきましても附帯決議がなされている問題でもございますので、運輸省といたしまして、各界の代表を網羅いたしました運輸技術懇談会、これらを通じて検討を現在進めておるという状況でございます。また出漁期の問題等につきましては、局長のほうからお答えいたします。
  52. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 安全法を適用するかどうかという問題については、先ほど政務次官のお答えのとおり、現在検討しておりまして、結論は得ておる問題ではございません。ただ、仮定といたしまして、かりに適用いたしました場合に、出漁期等の調整についてはどうするかという問題でございます。これは現在二十トン以上の漁船につきましては安全法が適用になっておるわけでございますが、それらの例から見ますと、安全法の検査は、二年おきに中間検査、それから四年が定期検査というふうになっております。したがって、検査日というものがあらかじめ前広にわかっておるわけでございます。そこで、実際の姿といたしましては、出漁期も前もって大体きまっておるわけでございます。そういうようなことで、出漁前に検査を済ませて出ていって、出漁期との調整をはかっておるというのがいままでの二十トン以上の状況でございます。ただ、この場合においても、またやむを得ない場合は、船舶安全法上は五カ月間その検査期限を延ばすということができるようになっております。したがって、そういうようなことでもあらかじめ調整がとれませんときは、五カ月間延期をいたしましてやっていくというようなことで、また調整をはかっておるというのがいままでの実例でございます。
  53. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 さらにお伺いしますが、おおむね二十トン未満の小型漁船におきましては、船主船長というケースが多いわけでございます。その場合、船員法適用によりまして労災保険を除外される、このように伺っておりますが、このような差別があっていいのかどうか。この点と、またこれに対して船主の労災の特別加入制度は船員保険法で考慮するのが妥当である、このように思いますが、その点をお答え願いたいと思います。
  54. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 御指摘ございましたように、船員保険法適用があります場合には、船員保険は、当然労災部門あるいは年金部門その他各種部門も包含いたしました総合保険でございますから、労災保険それ自身の部門は船員保険において十分に、あるいは実態的にはそれ以上にカバーしておるということになるかと思います。ただ、御指摘のございましたように、現在労災保険におきましては、零細事業のために、ことにいわゆる船主船長あるいは一人親方と申しておりますが、そういうような事業主につきましては特別加入制度というものを認め、これを労働者と同様に考えておるというような特別加入制度がございますが、船員保険にはその制度がございません。これは確かに大きい問題でございまして、船員保険自身においては、やはり原則として労使折半というようなものの考え方、これは社会保険全体を通ずるものの考え方でございましょうが、船主に対して、制度として労働者並みにするというような意味の特別加入をすることは、なじまない傾向はございます。しかしながら、御指摘ございましたように、現在労災保険の適用を受けている者について今度は船員保険適用を受けることになると、その船主船長については適用が、特別加入の道が認められないということは非常に問題がございます。そこで、現在、この点につきましては、船員保険及び労災保険をそれぞれ所管いたしますところの厚生省、それから労働省等、関係方面とも協議しておりまして、そしてこれについては、こういうような制度の変更に伴って不合理が発生しないように善処していく具体的な方法をいま検討している次第でございます。
  55. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 次に、先ほどもお話が出ましたPRの件でありますが、特にサケ・マス漁業関係筋では、法の適用には不安があり、そういった面のPRを望んでおるわけでございます。この不安を解消し、支障を来たさないためにも、今後、もう具体的に進められていると思いますが、どういう方向でやっていかれるか、そういう点をお伺いします。
  56. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 お答えいたします。  今回新たにこの船員法適用対象となる漁業経営者及び船員というものは、その大部分が零細企業に属しておりまして、船員の労働条件や労務管理面について問題視されてきたものでありますので、特に今回の改正につきましてのPRは万全を期していくというようなつもりでございます。そして初年度といたしまして、これは昭和四十五年度予算でございますが、旅費及び事務費といたしまして八十万七千円ついております。十分ではないと思いますが、しかし、今後これを大幅にふやしていくつもりでございます。
  57. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 次に、そう問題となることではございませんが、確認の意味も含めましてお伺いをいたします。  船員法適用範囲の拡大は、先ほどからお話が出ておりますように、段階的に分けて行なう方針である、こう伺っておりますが、そしていまもお話がございましたように、実施時期は昭和四十六年一月一日から、最終的には四十九年あるいは五十年と伺っておりますが、第一次はいいといたしまして、第二次、第三次につきましては、トン数で一律に区分するというようなことは支障を来たすおそれがあるのではないか。もちろんそのつど内容を検討されましていかれると思いますが、そういった点をこの際明らかにしていただきたい、このように思います。
  58. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 段階適用実施していきます場合に、トン数をある程度やはり基本と考えておりますのは、一般的に船型の大きいものほど比較的遠距離に航行いたします。それで、海上滞留日数も比較的長期にわたるという一般的な傾向というものは高いものでございますから、適用、非適用を判断するにあたりまして、明確さといったような法律技術的な面からも考えて、トン数というものを一応の基準にしておるわけでございます。しかし、具体的にこの適用範囲政令によって逐次拡大していきます場合においては、トン数のみで区分して、その他の事情を全然考慮しないで範囲を決定するということは、確かにまたあまりにも一律的。画一的になるきらいがあるかと思います。そういうような点で、トン数を基本としながら、さらに漁船が従事する漁業の種類等をいろいろ加味いたしまして、水産庁関係方面と協議してその範囲を決定してまいりたいと考えておる次第でございます。
  59. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 それでは最後に一問だけお尋ねいたしまして、私の質疑を終わりたいと思います。  先ほども出ておりましたようで、一部重複すると思いますが、船員中央労働委員会答申によりますと、地先漁業以外の漁業であっても、第四次漁業センサスがこの秋にまとまると聞いておりますが、この結果を見て、これに準ずる漁業があれば適用除外することとする、このようにございますが、これに準ずる漁業というのはどういったものをさすか、そういう点をお答え願いたいと思います。
  60. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 お答えいたします。  この地先漁業というのは、いわゆる定置漁業、また区画漁業共同漁業、これらと同じようなものというようなことでございますが、これはいつも陸岸に近接した海面でのみ操業する、いわゆる海上労働の特殊性が希薄と認められる漁船、そういうことでございます。
  61. 宮井委員(宮井泰良)

    宮井委員 以上で終わります。
  62. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 斉藤正男君。
  63. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 冒頭資料をお願いしたいのですけれども、先ほど加藤委員の質問もあったわけでございますけれども、本法十二条に伴う明治三十五年ですか、ただ一つ判例がある。しかも、それも詳細はわからないというようなお話でございましたけれども、御承知のような状態で、各党一致してこの問題に対処しようというときでございますので、最大限の努力をいただいて、なるべく早い機会にこの一件しかない判例の実態についてお調べをいただいて、戦前資料でございますので、どの程度のものができるかどうか、私も疑問を持っておりますけれども、少なくも十二条と取り組もうとするわれわれといたしましては、必要な資料でございますので、御検討をいただきたいと思いますが、委員長、当局からその点についての答弁をいただきたいと思います。
  64. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 できるだけ調査いたしまして、資料として提出いたしたいと思います。
  65. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 質問に入りますけれども、船員法は、昭和二十二年九月一日、第九十二回帝国議会で、旧船員法の全文改正が行なわれたということでございます。続いて第一次の改正として昭和三十七年五月十二日、第四十回国会においても改正が行なわれておるわけでありますが、この改正の内容を見ますと、三点ほどあるようであります。特に船員法適用範囲の拡張であり、一定の範囲の小型漁船についても船員法適用対象としたということで、昭和三十七年の第一次改正におきまして小型漁船も含めるという改正をやっておるわけでございますが、この昭和三十七年当時の改正が、小型漁船という意味からどういう内容のものであったのか、そして今回また五トン以上二十トン未満ということで小型漁船なるものが適用されるわけでありますけれども、三十七年当時の改正はどういうものであったのか、そしてまた今日、小型漁船適用範囲を拡大するという意図を法の改正という形であらわすわけでありますけれども、それらの関連について伺いたい。
  66. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 昭和三十七年におきまして船員法を改正いたしました場合に、それまでの船員法昭和二十二年法でありますが、その船員法におきましては、総トン数三十トン未満漁船適用の除外になっておりました。しかしながら、この三十トン未満漁船のうちで、原則といたしまして、二十トン以上の漁船につきましては、操船等から見ましても、航行の実態から見ましても、労働実態から見ましても、大体同様であるというような考え方で、この三十トン未満適用除外にしておりましたのを、原則といたしまして、二十トン未満適用除外というふうに範囲を拡大したと申しますか、除外した面からいいますと縮小したということになったわけであります。  今回の改正は、三十七年以後相当の日数がたっております。そしてその間におきますところの二十トン未満の小型漁船の航行の実態や、あるいはまた就労の実態、こういうようなものは、ほぼ二十トン以上の漁船のものと、ことに就労体系においては非常に同じような形態をとっておるものが多くなっておる。これは船舶技術改良あるいはまた沿岸漁業におけるところの資源その他の関係があって、やはり逐次遠距離出漁が多くなっておるというようなことで、過去七、八年における航行の変化あるいはまた就労の変化、こういうようなものから見まして、二十トン以上のものと、原則的に地先漁業を除きましては大きな差異がないから、むしろ海上労働の特殊性を持っておるという観点で、陸上の労働基準法適用より、海上労働の特殊性を加味しましたところの船員法適用にしたほうがいいのではないかというようなことで、今回の改正をお願いしておるわけでございます。その間におきまして、過去ずっとそういうような雇用実態、航行の、実態等の変化に着目しながら、逐次改正が行なわれてきたというのが経緯でございます。
  67. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 そうしますと、社会情勢なりあるいは漁業の経営あるいは漁船の実態といったようなものの変化に伴い、時代の趨勢に従って適用範囲を拡大していくということであって、これは業界はもちろん船員その他関係者があげて歓迎し、要望するものであるのかどうなのか。なるほど諮問に答えて答申が出ておりまして、これには先ほどお話がありましたように、具体的な内容については意見があったけれども、大綱としては満場一致答申を得たということでありますけれども、現場の実態は、こういう声が船主なりあるいは船長なり船員なりの圧倒的な要望であり、意見であるのかという点については、どのように把握をされておりましょうか。
  68. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、結論といたしましては、満場一致結論でございます。ただ、その審議過程においても、特に保険料負担の問題等に関連いたしまして、船主側からいろいろ御意見があったわけでございます。そういうような点については、当時の船主方の代表者とも十分連絡をいたしまして、無理のない適用のやり方をやっていきたいということで、このような答申満場一致でいただいた。  ただ、この適用につきましては、確かに隻数が非常に多い、あるいはまた経営者の数も個人経営をおもにいたしますから非常に数が多い。したがって、意見聴取の際において、いろいろな点で十分この趣旨が徹底しないといううらみは若干あったかと思います。ただ、私どもの把握しております点におきましては、どうしてもこういう社会保障の充実あるいはまた労働条件の改善ということがぜひ必要であろうという方向については、私どもは、所有者あるいはまた労働者も含めて完全に一致した方向だと思います。適用のやり方あるいは事務の繁雑さ、それらの点については、いままで御指摘を受けましたような点について、なお実施までに私どもそういう観点から、法律が成立いたしましても半年あるいは十カ月程度の期間を置いて、十分PRをしてまいりたい。それによってそれぞれの所有者、労働者の協力を得て円滑にやってまいりたいと考えておるものでございます。
  69. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 本法の改正により、適用範囲を拡大することによってメリットがあるわけでございます。なるほど船員法の保護を受ける、船員保険法適用を受ける等々、恩恵も非常に少なくないというように思います。しかし、反面、またマイナス面も当然あるわけでございます。利点だけを強調するのあまり、マイナス面の検討もこの際は十分しなければならぬ。先ほど同僚委員からもいろいろなお尋ねがございました。これらに対して現実に即した対処をしていくという御答弁でございました。大まかにはこれを了承するわけでありますけれども、本法改正による利点を個条書きにするならば何と何であるのか、反面また、マイナス面はどういうことがあるのかという点で、要点をひとつお聞かせいただきたいと思うわけです。
  70. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 まず第一に、メリットでございます。この面については、第一には発航前検査、船員法の第二章、第三章の規定でございますが、発航前に船長がその船舶の堪航性を検査するというような発航前検査、それから船長船内紀律をいろいろ取り締まっていく、そしてその際に航行の安全をいろいろはかっていくというような面で、航行の安全という面においては、これだけでは十全ではございませんけれども、相当なプラス面が出てまいると考えます。第二に、漁業につきましては、船内作業の形態が非常に特殊でございます。そういうような特殊形態に着目いたしました船員労働安全衛生規則というものの適用を受けることによって、船内作業の安全確保をはかるということが第二の点だと思います。また労働保護の面では、雇い入れ契約の公認の際に、契約内容の適法性を公認という行為を通じてチェックするということで、不当な労働条件をしいられることのないようにしていきたい。それから送還義務や行くえ不明手当の支給義務のようなものは、陸上と違って船員法には規定がございますので、それらの面においてもいろいろ適切な保護がはかられる。また食料の支給を受けられる。また保険面においては、海上の特異性に着目した適切な給付を受けられることになります。たとえば典型的には行くえ不明手当というような、陸上にはないもの、あるいはまた職務上の障害等については、療養に必要な給付が厚いということ、そういうようなメリットがあります。  しかし一方、デメリットとしましては、雇い入れ契約がまた反面——それそれのメリットが逆に裏返しになってデメリットになる可能性はありますが、雇い入れ契約の公認というようなことは相当繁雑ではないかという問題、あるいはまた船員保険が陸上保険に比べまして幾ぶん手厚いものをやっておるという反面、保険料負担が、普通の陸上の場合の千分の百というのが千分の百四十程度になるという保険料負担の増大の問題が、船主側において特にデメリットとして感ずる点ではないかと考えております。
  71. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 数点にわたって本法改正の利点について伺いましたが、また反面、裏を返せば、その利点はマイナス面にもつながるということで、法の運用に非常に大きな課題が課せられてくるように思うわけでございます。先ほど質問がありまして、これらの点につきましても、特に対象とするものが零細企業である、あるいは船長であり、船主であり、乗っ子であるという場合も数多いということから答弁がありました。  私が調べた範囲内で申し上げますと、これは漁船船員の数でありますけれども、五トン以上のもので申し上げますと、船舶の所有者は、現行法適用でいきますれば二千八百五十九人、ところが、法の改正によって追加されるのが七千六百人もふえて、一万四百五十九人になる。船舶隻数からいきますと、現行法適用隻数は八千六百三十五隻であるのに、一万一千三百隻もふえて一万九千九百三十五隻になる。船員につきましては、十三万三千百七十八人に対し、五万二百人ふえて十八万三千三百七十八人に増加していく。  これは漁船の例だけでございますけれども、こういう状態になってまいりますと、船舶所有者で三・六倍、船舶の数で二・三倍、船員の数で一・四倍ということで、非常な増加になるわけであります。明年一月一日から法が実施せられ、三ヵ年計画で段階的に、画一的でなく全面適用に持っていきたいという配慮は了承いたすものの、船舶所有者の数において三・六倍にもふえるし、船舶の数で二・三倍にもなるというこの事態は、受け入れ側の対処の心がまえ、物心両面の準備もさることながら、本省の仕事はそれほど増大するとは思いませんけれども、出先の仕事はたいへんな量になりはしないかというように心配をするわけでありますけれども、局長、そういう点についての配慮なりあるいは考え方はどのようにとっておられるのでありましょうか。
  72. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 御指摘のとおり、本省におきましてはともかく、出先、特に地方海運局の支局、出張所等の事務は非常に大きくふえることになると思います。それらの点につきましては、私どもといたしまして、現在の行政機構では、一方必要な漁業者の方は必ずしも支局、出張所の所在地には多くない。こういうようなこともございますので、やはり指定市町村というものを極力活用してまいりたいということで、現在百九十ぐらいの市町村が指定されておりますけれども、これを大幅にふやして、そしてそれによってやってまいりたいというふうには考えております。しかしながら、実際問題といたしまして、相当この事務量がふえる。しかも対象が非常に散在し、かつつかまえにくい、とらえにくいというようなことがございますので、それらの点については、やはり市町村と連絡をいろいろとりながらこれを進めていくということでやってまいりたいと思いますが、なお体制について必ずしも十分でない点は、私らも考えておりますので、今後いろいろの機会にこれを充実、あるいは毎年度の予算折衝等を通じて努力をしてまいりたいと考えております。
  73. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 そこで、ちょっと数字的におわかりならば教えていただきたいと思うわけでありますけれども、これらの事務を扱う支局は全国に一体どの程度あって、どれだけの人が働いておられるのか。出張所は全国に何カ所あって、これに働く人たちは現在何人あるのか、まず伺いたいと思います。
  74. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 本局、支局、出張所等の事務所といたしましては、百三十九カ所現在ございます。それから本局は、あるいは支局でもそうでございますが、船員法以外の事務を扱ってもおりますが、船員法関係事務を取り扱っておる者のみを申し上げますと、定員的には二百四十八名ございます。
  75. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 出張所はいかがでございますか。
  76. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 いまの百三十九カ所という中には、出張所六十カ所を包含し、また定員二百四十八名と申し上げました中には、出張所定員七十六名の船員法事務の者を含めてございます。
  77. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 いま伺って明らかなように、定員削減なり不補充というような国の最高方針に従っていくと、本局あるいは支局、出張所を増設するとか人員をふやすとかいうことは非常に困難であって、勢い、御答弁にもありましたように、指定市町村に仕事をお願いするしかないというような結果になると思うのです。そこで、次官、これは仕事は非常にけっこうですし、法の改正もけっこうだと思うのです。しかし、その事務量の増加が地方自治体の負担になるということは、先ほどお話を承りますと、手帳の交付で手数料百五十円、雇い入れ等の手数料で一件二十円というお話でございましたけれども、それらの手数料、事務費の大小はともかくとして、仕事の増加分を一切市町村にお願いをして、運輸省海運局は関知しない、少し虫のよ過ぎる運営になりはしないかというように思うわけでありますけれども、いかがお考えでしょうか。
  78. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、確かにこれは市町村、そして組合等に事務をみなお願いしてしまうというように、極端に言われてもしかたのないことじゃないか。事実本年度、いわゆる事務というよりも、船員労務官、これにつきまして振りかえの五名をやっと認められたというようなところでございます。そしてあと、先生おっしゃいました手数料が安いじゃないかというような問題等もございますので、この手数料の問題等は、聞きましたら、何か四十一年にきまったようなことでございますので、その後の諸物価、また人件費等の値上がり、これらを勘案いたしまして、自治省、大蔵省とも相談いたしまして上げていく。またそのほか。運輸省の出先機関につきましての人員増というものも、今後一生懸命やってまいりたい、そういうぐあいに考えております。
  79. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 先ほどもちょっと触れましたように、船舶所有者の数において三・六倍にふえ、船舶隻数において二・三倍になる。これはたいへんな増加になるわけなんです。たとえこれが三年間の年次計画に従ってやるにしても、役所の出先はふやさない、あげて市町村にお願いをする、こういう形は、私は、たとえば基準財政需要額の中にこういうものが見込まれ、交付税なりあるいは特別交付税で見れるというシステムなら、また別な考え方がありますけれども、一件幾らというような件数あるいは手数料で事務を運ぶということになりますと、出願側は漁協なりその他の団体を通じて手間が省けるといたしましても、窓口は市役所や役場の窓口ということで、これ以外にやるところがないということになりますれば、やはり一考すべき問題ではなかろうかというように思うわけです。したがって、先ほど百九十かの町村に事務を委託してという話がありましたけれども、今度の法改正によってその地方自治体の該当市町村というものはふえるだろうというように思うのです。したがって、いままではそういう窓口がなかった市町村が、今回の法改正によって新たに窓口をつくらなければならぬというような事態も当然生まれてくると思うのでありますけれども、そうした実態につきましてはどのように調査をされ、把握をされておるのでありましょうか。
  80. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 現在百九十カ所の指定市町村がございますけれども、いま御指摘になりましたように、適用対象が数として非常に多くなるので、おそらく相当程度の市町村を新たに指定せざるを得ないのではないかと考えております。考え方はいま二つございまして、そこにおきますところの船舶の登録隻数が十隻以上あるようなところについて考えるといたしますと百程度、それから一隻でもありますればそこを指定するというようなことにいたしますと、二百六十ばかりを新たに追加をお願いしなければならないのではないかとも思います。さしあたり、これは最終的な姿でございますけれども、第一段階の適用にあたりましては、自治省を通じまして各市町村にそれぞれ御連絡をして、そしてこういう事務の委任を受けるかどうか、そういうような点についてそれぞれ各市町村に御連絡をしてやっていく。そしてその際に、おそらくいろいろ各市町村で——すでに私ども伺っておりますのは、先ほど御指摘のありました手数料令の手数料というものについて、いますぐではないとしても、いろいろ今後検討してほしいというような要望も若干聞いております。そういうような要望をも勘案して、そして実情に即するような指定のしかたを進めていきたいと考えております。
  81. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 このことは、法改正によって適用範囲を拡大するということでその恩恵を受ける船員、その反面、いま申しましたように、適用される漁船が一隻であっても、その市町村は窓口をつくらなければならないのかどうかというようなことを考えますと、非常に複雑なやっかいな問題にもなってくるというように考えるわけでございまして、一省一局削減なり定員の不拡大なりということに縛られてはいると思いますけれども、本省もその気になって臨まないと、いたずらに地方自治体の仕事がふえ、しかもそれをふやさないということになりますれば、今度適用を受ける船員の皆さんが事務の上だけでもう不便を来たすということになって、いろいろ問題がある。要するに、本法の改正は両刃の剣であって、いい面もあるが、反面また非常に繁雑な事務手続その他が——しかも、先ほどちょっと触れましたように、きわめて零細であって、船主船長、乗っ子というようなものを一人で兼ねていて、そうした法律事務にも精通をしない方々が、小型漁船に限っていうならばかなり多いということを考えますと、役所の受け入れ体制につきましても、私はこのままでいいとは思っておりません。この点、ひとつぜひ検討をいただきたいというように思うわけですが、もう一度局長のお考え方を伺いたい。
  82. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 確かに、いろいろ受け入れ側と申しますか、そういう面においての物心両面におけるわずらわしさというものが生ずるというふうには考えます。これらの点についてはいろいろ事前に十分PRいたしまして、いろいろ啓蒙指導をやっていくというふうにも考えますし、さらにまた、私どもの現在行なっておりますところの船員法事務で、またいろいろ簡素化を要する点も多いかと思います。そういうような行政事務は極力——たとえば私どもは船員健保というようなものの事務をなるべく簡単にしたい。それによってある程度の余力が生じ得ると考えますので、そういうような行政事務の簡素化をはかって充実をしていきますと同時に、反面、先ほどの御指摘のありましたようないろいろな市町村の受け入れ体制の充実、あるいはまた私どもの予算定員の充実というものに一そうの努力を重ねていきたいと思っております。
  83. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 ぜひそのように配慮をいただきたいというふうに思うわけであります。  次に、適用拡大による追加分につきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、隻数において一万一千三百隻ふえ、船員において五万二百人ふえるということでございますが、この保険料の国庫負担額は、この増加に伴ってどうなっていくのか、その点を伺いたい。
  84. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 船員保険の国庫負担といたしましては、各種年金等の長期給付に要する保険給付費のうちで、船員法に定められた災害補償に相当する部分を除いた部分及び失業給付金については、原則として四分の一という国庫負担が行なわれております。それは来年度予算案におきましても同様な国庫負担の計上をやっておるわけであります。また、船員保険事務執行に要しますところの費用につきましては、予算の範囲内において国庫が負担するほか、疾病の給付部門については、療養補償に相当するものを除いた給付費については一部を国庫が補助をするということになっておりまして、その補助額は四十四年度におきましては六億円ということになっております
  85. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 そうすると、定率二五%については、大体年次計画に従って来年度の予算においてもこれが見積もられている、定額補助については六億円という限定額で打ち切っている、こういうことですか。
  86. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 そのとおりでございます。
  87. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 定率につきましては、対象人員がふえれば率をかければよろしいのですから、計画と同時に予算は出てくると思うのでありますけれども、固定している定額につきまして六億円というのは、最近の推移からいって十分なものであるのかどうなのか。またここ二、三年の動向はどういうようになっていたのか。二、三年というよりも、去年とことしと来年というような見方からいきますと、六億円はどうなっておりましょうか。
  88. 山崎説明員(山崎卓)

    ○山崎説明員 六億円のことについてのお尋ねでございますけれども、実はこれは医療保険の例の赤字の問題との関連でございまして、昨年四十四年度、それから四十五年度も六億円を計上させていただいておりますけれども、これは主として陸上の健康保険あるいは日雇い健康保険その他の臨時特例との関係から参っておりますので、おのずから財政上の推移に応じてその年度年度できまってまいる、かように考えております。
  89. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 そうすると、四十四年度においても六億、それから四十五年度も六億、四十三年はどうなっていますか。——それではまたあとでお答えください。  時間がありませんので、重複を避けて、最後に、改正案とは直接関係がないのですけれども、船員法の特殊性からいきまして、三十五条の問題をちょっと触れさせていただきたいと思うわけです。  船員法の三十五条によりますと、「相殺の制限」ということで、「船舶所有者は、船員に対する債権と給料の支払の債務とを相殺してはならない。但し、相殺の額が給料の額の三分の一を超えないとき及び船員の犯罪行為に因る損害賠償の請求権を以てするときは、この限りでない。」ということになっておりまして、労働基準法におきましては、「前借金相殺の禁止」ということで、その十七条で「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」というように規定をいたしております。船員法にしろ何にしろ、事賃金という問題に関しましては、やはり基準法がもとになって出ていると私は思うのでありますが、船員法に限ってのみ、「但し、」云々ということで、二つの条件が許されているということがどうも理解できない。この点は、一体どうして船員法に限ってこの相殺の制限は緩和をされているのか、伺いたい。
  90. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 御指摘がございますように、船員法三十五条におきましては、労働基準法十七条と違いまして、ある程度相殺というものが認められておるわけでございます。これは基本的な考え方といたしましては、相殺を制限いたしますところの基準法十七条と船員法三十五条は、同じ基本的な考え方ではございます。ただ、三分の一を限度といたしまして相殺ということを船員法規定しておりますのは、船員は雇い入れられると同時に、相当長期の航海に出ます。それで、そういうことが多いために、準備費用あるいは留守家族の生活費というようなことで、相当多額の出費を要しますので、前借をする必要が陸上の場合よりも相当多い。しかも、それが長期にわたる航海であるというような海上労働の特異性に基づく点から発生しておりますので、基準法十七条のように全面的に相殺を禁止するということは、逆に融資の道を閉ざすような結果にもなるというような考え方で、三分の一を限度といたしまして相殺禁止を解除しておるという考え方でございます。  それからまた、犯罪行為による損害賠償の請求権をもってするときは相殺してもいいというようなことになっておりますが、こういうような犯罪行為に基づきます損害賠償請求権の問題については、一々刑事問題にするよりは、示談で解決したほうが望ましいケースのほうが多いのではないかということで、この犯罪行為等の損害賠償の請求権をもってするときは相殺をしてもいいというふうに規定しておるわけでございます。
  91. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 基準法で相殺の禁止が明らかにされているのにかかわらず、船員法に限ってのみ三分の一については認める、あるいは船員の犯罪行為による損害賠償の請求権をもってするときは別だということなんですが、いま局長がお答えになったような、刑事事件や民法上の争いにするよりも、示談で片づけたほうがいいというのは、何も船乗りに限ったことではない、一般社会においてもそういう原則はあると思うのであります。したがって、「但し、相殺の額が給料の額の三分の一を超えないとき」、これは先ほど言った船員の特殊性からいって、理解できないでもありません。私は船乗りの経験もありませんので、実態はよくつかんでおりませんから、追及をするだけの迫力も知識もありませんけれども、それにしても、近代企業のあり方あるいは近代賃金のあり方、あるいは支払いなり受け取りのあり方等々からいきますと、なるほど長期の航海に出るから前借をしておきたいという気持ちもわかりますけれども、しかし、月々きまったものをきまったルールで留守宅へお届けするというようなことは、これは不可能ではないであろうと思うわけなんです。私は、むしろ、手配師というようなものがあったかどうか知りませんけれども、それらが一括して乗り組み員を集め、前渡金のようなものを渡し、場合によってはピンはねをするというようなケースを防ぐためにも、この項が必要ではなかったのかというようにも思うわけでありまして、三分の一につきましては了とするものでありますけれども、犯罪行為による損害賠償の請求権につきましては、これは船員は犯罪を犯しやすい職種だとか、あるいは船員というのはどうもそういう傾向が強いのじゃないかというような、船員に対する何といいますか、別の人間観から出ているような発想はなかったのかどうなのか。民法五百五条から五百十二条にわたりましてやはりこれらの規定がありますけれども、特にその民法五百九条におきましては、不法行為による債権の相殺も禁止をしているわけなんです。不法行為であっても、民法上はこれは認められないということをいっている基本的な法の考え方からいきましても、どうも後段については理解しにくいのでありますが、一体こういう三十五条があって、特に後段のような法適用の事件が頻発しているのかどうなのか、私は、こんなことはないであろうというふうに思っておりますけれども、いかがでありましょう。
  92. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 御指摘のございますように、民法の相殺の規定とも関係もございます。ただ、この民法の相殺禁止の規定は、債務者の側からする問題でございまして、ちょっと逆の場合かと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういう相殺禁止の問題はいろいろあるわけです。事例があるかということでございますけれども、これは私どものいままで知り得た範囲では、事例はないようでございます。そういうような点で、前段につきましては、海上労働の特殊性という観点から、立法論としてはいろいろ考え方はあると思いますけれども、やはりある程度相殺禁止というものをゆるめたほうがいいのではないかというふうにも考えられます。しかし、後段は、確かに陸上と海上との相違がそう大きいというような性質の問題ではなく、かつ事例もあまりないものでございます。いろいろなお陸上の場合あるいは実際の姿というようなものをさらに検討を続けてまいりたいと思っております。
  93. 斉藤(正)委員(斉藤正男)

    ○斉藤(正)委員 午前中の質問に答えて、この十二条の問題も、違反の件数は一件しかなくて、明治三十五年の判例一つしかないという話がございましたし、それから三十五条につきましても、この後段の事件はあまり聞いていなくて、聞いてみると、ないと言うのですね。全然ない。ということになれば、何か船員をばかにしたような、船員は犯罪を犯しやすいのだというような印象を与えるようなこの条文というのは、民法にもやはり禁止をされているのですから、一考を要するというように思うわけでございますので、今回どうこうというわけではありませんけれども、御検討をいただきたいというように考えているわけであります。  重複を避けましたので、以上で私の質問を終わります。      ————◇—————
  94. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 この際、海上運送法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。橋本運輸大臣。     —————————————
  95. 橋本国務大臣(橋本登美三郎)

    ○橋本国務大臣 ただいま、議題となりました海上運送法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  わが国旅客船による国内輸送は、離島住民の足としては申すまでもなく、一般の交通機関として、また、国民の観光の手段としても重要な役割りを果たしており、使用される船舶も年々近代化され、船型の大型化、高速化がはかられる等発展の一途をたどっております。  このような輸送の実態の変化に伴ないまして自動車航送船を含めた旅客船による輸送の安全の確保に関する事業者の責任はますます重大なものとなってきております。しかるに、現行法では、旅客輸送の安全を確保するための事業者の体制については明確な規定がありませんので、事故防止対策に万全を期するため、旅客輸送の安全の確保について事業者の責任体制に関する規定を設けるとともに、旅客の安全を害するおそれのある行為を禁止する等の措置を講ずる必要がございます。  以上の趣旨によりこの法律案を提出する次第でございます。  次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。  改正の第一点は、旅客定期航路事業等の免許基準の改正でございます。旅客定期航路事業者が事業を開始するにあたり、旅客の輸送の安全を確保させるため、新たに運航管理の体制、輸送施設の管理運営の方法等事業の計画が適切であるかどうか、また、港湾以外の海上における船舶交通の安全に支障を生ずるおそれがないかどうかを判断することとし、これらを免許基準に追加するものでございます。  改正の第二点は、旅客定期航路事業者等に対し、運航管理規程の作成を義務づけることでございます。運航管理規程には、運航管理者の選任等運航管理の組織並びに実施の基準及びその手続その他輸送の安全を確保するため事業者及び従業員が順守すべき事項を、各航路の実情に応じ具体的に定めさせることとし、輸送の安全の確保に関する事業者の体制づくりをさせる所存でございます。なお、運輸大臣は、運航管理規程の変更または運航管理者の解任を命ずることができることとしております。  改正の第三点は、輸送の安全の確保に関し、運輸大臣は、旅客輸送の安全を阻害している事実があると認めるときは、事業者に対し、輸送施設の改善、事業計画の変更等必要な措置をとるべきことを命ずることができることとするものでございます。  改正の第四点は、操舵設備をみだりに操作する等旅客の安全を害するおそれのある行為を禁止することでございます。  以上がこの法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  96. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。      ————◇—————
  97. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 引き続き船員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑を許します。和田春生君。
  98. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 すでに船員法の改正につきましてはかなり多数の委員が質問をしておられますし、できるだけ重複は避けたいと思いますが、余儀ない事情で中座をいたしておりましたために、ある程度重複する点がありましたら、その点はお許しを願いたいと思います。  今回の船員法の改正は、かねてから海員団体、また船主側におきましても、船員の労働条件の確保と船員規律の維持というような点から、船員法適用範囲を小型船舶についても拡張すべしという意見がございまして、関係者が十分審議をした結果の答申に基づく改正案でございますから、歓迎すべき改正提案でありまして、私ども改正案の限りにおいて賛成でございます。しかし、この改正案のもとになりました船員法適用範囲改正の小委員会、これは船中労委の中に設けられたわけでございますが、非常に長い時間をかけて論議をされております。その論議の議事録もつぶさに読みましたけれども、実施、運用の面についての懸念、そういう問題がいろいろな面で問題視されているわけでございます。船員法適用されるということはたいへんけっこうなことではございますが、同時に、これは船員法の見地からいけば雇い入れの契約に対する公認事務、あるいは船員保険の被保険者としての加入事務等の事務的な手続が、実際の実施、運用の面ではまっ先にひっかかってくる問題だと思います。この点がうまくいきませんと、せっかく船員法適用範囲を拡張いたしましても、仏つくって魂入れずというしり抜けになってしまってどうにもならないわけであります。  そこで、まず最初にお伺いいたしたいのは、この船員法適用になります船舶の数、船主並びに船員数等につきまして、総数について運輸省考えておる段階的適用の拡張に伴う概数は出ておるわけでございますが、具体的な点について二、三御質問をいたしたいと思います。  今回の船員法改正案が通りまして、運輸省の計画の第一次の適用範囲において、そのような事務との関係で最も問題になる港湾ないしは船舶の登録港というところはどこどこで、そういうところについては何隻か、また船主は何人くらい、適用船員が何人くらいあるかという点についてお伺いをいたしたいと思います。総数については十分わかっておりますので、当局側から見て一番問題になろうと思われる点をピックアップしてお答えを願いたいと思います。
  99. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 全体といたしまして、やはり登録隻数の多い地区が問題でございます。登録隻数が多い地区といたしましては、やはり北海道地区、それから東北地区、これらのものが非常に多いわけでございます。したがって、第一段階の適用におきまして問題になりますのは、やはり、北海道地区あるいは東北地区というところが、適用の段階におきまして、しかもかなり広範な港にまたがっておりますので、それらの点に実施上いろいろ充実をしていかなければならない問題が出てまいるかと思っております。
  100. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 北海道、東北が問題であるという御説明でございますが、確かに北海道が適用等においても非常に多いわけですけれども、これは水産庁にお伺いしたいと思いますが、今回船員法の改正が行なわれまして、具体的に適用されるというふうになった場合に、運輸省の段階的適用範囲の拡張に応じまして、北海道においてそれぞれの船舶の登録されている港につきまして、船主船舶数、船員数、これらの数が現状においておわかりならばお伺いをしたいと思います。
  101. 藤村政府委員(藤村弘毅)

    藤村政府委員 現状におきまして、港別の隻数漁業別の隻数というのは調査完了いたしておりません。
  102. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 現状において詳細判明していないということですが、実際法律が動き出しますと、適用されることになるわけでございます。この審議の過程では、水産庁からも漁船の実情の立場に立っていろいろと発言をされておるわけでございますけれども、まことに手抜かりだと思うのですが、そういう資料がお手元にないという意味なのか、そういうことについては現状がどうなっているか全然調べていないというのか、その点を確かめたいと思います。
  103. 藤村政府委員(藤村弘毅)

    藤村政府委員 ただいまそういう資料を持ってきておりませんが、根拠地別には、帰りますればございます。
  104. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 その点は、それではお帰りになりますとわかるわけで、資料はあるわけでございますね。
  105. 藤村政府委員(藤村弘毅)

    藤村政府委員 調べまして御報告いたします。
  106. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 調べましてではなくて、わかっているのですか、わかっていないのですか。これから調べるのですか。
  107. 藤村政府委員(藤村弘毅)

    藤村政府委員 わかっております。
  108. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 それでは、その点いまわからないと言いますから、私の手元には四十三年当時のだいぶ古い資料がございますけれども、いま改正をしようとされているわけですから、最近の資料等につきまして追って提出をしていただきたい。そのことを御希望を申し上げておきます。  続いて質問でございますが、いま最近の資料というのは手元に用意がないそうでございまして、まことに残念でございますけれども、古い資料に基づいてでもけっこうですが、全国的になりますとたいへん問題になりますので、特に問題になりそうな北海道について御質問いたしますけれども、北海道において船員法適用されると、そこにかなりの隻数ないしは船員がおる。そして現在管海官庁がない。そのために、新たに管海官庁を設けるか、あるいは指定市町村を設けて事務をとらせなければならない。現状においてはそういう事務の窓口がない。そういう港は幾つくらいございますか。
  109. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 北海道について申し上げますと、現在、登録隻数一隻以上ありますところを考えていきますと、北海道だけでも漁港といたしましては百八十二漁港がございます。したがって、すでに市町村を指定しております。そういうようなことを考えますと、市町村といたしましてかりに十隻以上の登録があるところのものを考えますと、大体三十カ所くらいの市町村が——市町村といいますか、港と申しますか、そこが事務を行なっていかざるを得ないというふうに考えております。
  110. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 そういうところにおいて指定市町村を指定いたしまして、船員法に関する事務を行なわせるということにつきまして、各市町村との折衝ないしは準備について運輸省ではめどが立っておるわけでございますか。
  111. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 まず答申がありまして、その後事務を進めてまいります段階におきまして、原則的な方向といたしましては、自治省と協議いたしまして、原則的な方向については、自治省との間に了承を得ておるわけでございます。具体的な市町村につきましては、当面十隻以上漁船が登録されているような港の所在するところの市町村について、たとえば北海道では約三十くらいになると思いますけれども、そういうようなところについては、各海運局を通じてそれぞれ御意見を伺っておる段階でございます。
  112. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 私のこの資料は、もう一つ古い四十一年の資料でございますが、たとえば四十一年によりますと、北海道で一隻から四隻まで登録をしている漁港の数が五十九ございます。それから五隻から九隻の間が三十五あることになっております。十隻以上はいま指定市町村のことをお考えになっているようですけれども、十隻未満でもこれでいきますと、四十一年の資料でございますが、合計して約九十四港というものが指定市町村が置かれない。そういう場合に、ただでさえこういう人たちになじんでいない、めんどうくさい手続をやるというときに、わざわざよその港へ出かけていかなければいけない、あるいは海運関係の出先機関に行かなければいけないという形になりますと、それだけでまいってしまうといいますか、船員法適用されることは承知しておっても投げやりになり、大きな穴があくというような危険性があるわけでございます。当面一挙にできませんけれども、そういうようなところに対しまして、今後運輸省としてはどういう方策をお持ちであるか。また、そういうことに対しての予算的な裏づけその他について十分なお見通しを持っているかどうか、お伺いしたいと思います。
  113. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 相当各漁船の登録状況がばらばらで、かなり遠い地域に存在しておりますので、船主あるいは船員の立場から見まして、そのためにわざわざ非常に繁雑になるというようなことのないように、原則的にはやはり市町村等にお願いをしてやっていきたいと思っております。当面の事務といたしましては、第一次的には大体十隻以上登録をしておるところの港の市町村にはこれを原則的にお願いしたい、こういうように思っております。それから十隻未満一隻以上というような港も、これは北海道については私どもの数字では全部で百八十程度あるかと思います。これは非指定のものも入れてでございます。そういうようなものについてやはり便宜の面からいきますと、その市町村にお願いしたほうがいろいろな面で便宜かと思います。そういうような点で、原則的には十隻以上の市町村をお願いしたいと思っておりますけれども、また漁業協同組合等のいろいろな御意見を伺って、そしてまた当該市町村の御意見も伺って、極力指定市町村というものを広げてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  114. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 この点につきまして、水産庁のほうでもいま資料をお持ちになってきてないわけでありますから、現状がなかなかはっきりしないわけでありますけれども、これは非常にたいへんな問題だと思うのです。政府のほうとしても、船員法の改正に踏み切って、この船員法適用範囲を拡大しようと提案をされた以上、これはもっと積極的に努力をされまして、具体的なそういう事務の面でそごを来たしてせっかくの船員法改正の趣旨がしり抜けにならないように格段の御努力と、またそれに必要とする予算の裏づけというものをぜひ推進していただきたい、こういうように考えるわけですが、運輸大臣がいま席をはずされましたので、政務次官からその点につきまして責任ある御答弁をお願いしたいと思います。
  115. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 ただいま先生のおっしゃられました、この予算定員で事務処理を円滑に行なっていけるかというようなことでございますが、今度のこの船員法適用範囲の拡大、これに伴う予算といたしましては、昭和四十五年度におきまして二百五十四万六千円というものが計上されております。この内容は、船員手帳の作成、新規適用船員及び船舶所有者等に対する周知指導のためのパンフレットの作成、PR宣伝費でございますが、説明会の開催、これらに要する費用としての金額でございます。  また、定員につきましては、事務職員のほうにつきましては、残念ながら、現在の一省一局削減、定員厳守というような状況のもとでは増員が認められるに至りませんでした。しかし、この点につきましても、できるだけ船員法事務を簡素化して、その処理の能率化をはかることによって、既定の定員の活用をはかっていく所存でございます。そしてまた、この法令の指導監督に当たる船員労務官につきましては、四十五年度で一応五名の振りかえ増員が認められました。  そしてまた、先生おっしゃいました円滑な事務処理という点でございますが、これはただいま申しました予算措置に加えまして、指定市町村の拡大、漁業協同組合等の関係団体の協力をいただきながらやっていきたい、そしてこの法の運営に万全を期していきたい、このようなぐあいに考えておりますが、指定市町村、また漁業協同組合等の関係団体につきましては、局長から内容を詳しく御説明申し上げます。
  116. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 ただいま御答弁にございました二百五十四万何がしという数字を聞きまして、これはゼロが一つ二つ足りないのではないかという感じがしたのでありますけれども、第一段階として考えている十トンから二十トンまでの漁船の登録港の全体を見ますと、約九百港くらいあるわけですから、この九百の港で割るという単純計算にはいきませんが、一港当たり平均二千七百円くらいになりまして、周知徹底をはかるなどというのは、たいへんおぼつかないことになるのではないか。今度は国会にこれを提出したばかりで、まだ準備が整っていないということをあえてほじくり出して追及するつもりはございませんけれども、だんだんやっていきますと、どんどんふえていくわけですから、少なくともこういう点については、政府の提案である以上、また船員法適用範囲の拡張に踏み切った以上、積極的な予算の裏づけ等をぜひ考えていただきたい。その点についてひとつしかと御答弁を願いたいと思います。
  117. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 先生御心配いただくのはごもっともでございます。しかし、これはとりあえず来年の一月からということで、そして五年程度の間に全部をやるということでございますので、昭和四十六年度、昭和四十七年度にあたりましては、この予算を大幅にふやすよう一生懸命努力してまいるつもりでございます。
  118. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 それでは次に、ただいま政務次官からお話がありました船員労務官のことについてお伺いしたいと思います。この船員法は、御承知のように、船員の規制とともに海の労働基準法でございまして、基準監督行政というものが非常に重要になってまいります。船員法適用を受けたけれども、労働基準の面が野放しになったのでは意味もないわけでありますが、たとえば北海道におきまして、現在船員労務官は何人おりますか。
  119. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 船員労務官は、現在全国で八十七名でございますが、北海道が何名であるかちょっと記憶しておりませんけれども、それから見まして、大体十名前後ではないかと推定しております。
  120. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 たいした数ではないですね。全国でも八十何名ですけれども、北海道でこれだけたくさんの船が適用になるわけであります。船の場合は、小なりといえども一つ一つが事業所になるわけです。それに対していまの労務官の陣容で基準監督行政に一生懸命努力されても、私どもとてもおぼつかないと思うのですけれども、今年度については大体何とか間に合ってやっていけると思われるのか、あるいはそれではそこまでは全然手が回らなくて、もうお手あげ状態であるのか、その点率直にお答え願いたいと思います。
  121. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 現在八十七名、さらに来年度におきまして振りかえ増員五名というような陣容で、しかも現在の船員全体が約二十八万名でございます。それからまた、今回新たに加わりますと、事業場が非常にふえます。しかもそれらが非常に小さな企業で、各地に散在しておるというようなことから見まして、現在の陣容におきましても、二十八万名のものについてはなかなか困難がございます。  そこで、実際問題といたしまして、大きな事業場のものは労働協約等によりまして、かなりの水準を維持しておるというふうにも考えられますので、そういうような労働協約が比較的不十分であるようなところに重点を置いて船員労務官事務を行なっておるわけであります。  今後適用対象が増加いたします場合に、これらの人員では処理としてやはり相当むずかしい点が多いのではないかと一応予想しております。そういうような点につきましては、先ほど政務次官もおっしゃいましたように、いろいろ増加について積極的に努力いたしますと同時に、既存事務の合理化というようなこともやはりいろいろ考えて、そして極力人が生み出せるように努力してまいりたいというふうに思っております。
  122. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 いままでの二十八万名といいますけれども、従来の船員法適用範囲は、もちろん漁船あるいは沿岸の小型船というものもございますけれども、大体主要な港に集中しておりますし、大型船でございますから、労務官が積極的に見なくても労働協約ではっきりしておりますし、船主側もそういう点については気をつけているという面があると思うのです。今度の適用範囲は港が非常にたくさん分散をしている。そうして小さな船舶が事業場として散在をしている。しかも、今日の高度成長社会の中で非常に取り残されているという面があるわけです。ですから、監督というだけではなくて、現代社会に適応するように積極的に指導をしてやるということも必要だと思うのです。それで初めて現代の社会が全般的に均衡がとれて発展していくように思います。そういう点は、単に船員手帳がどうとか、宣伝のパンフレットがどうとかいうことではなくして、やはり人員の面でも積極的に増加をしないとうまくいかぬと思うのです。行政簡素化をして人を減らすということは、原則として賛成でございますが、こういうおくれた部門に対しては格段の努力を払っていただきたいと思うのです。こういう点について、大臣にかわって政務次官、ひとつこの場所で大いにやるということを約束しておいてください。
  123. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 ただいま先生おっしゃられましたように、いわゆる行政簡素化ということで定員の厳守、これはけっこうだということで、私どももその線ではやってまいるつもりでございますが、しかし、どうしても必要なものに対してはやはり増員というものはしなければならないのじゃないか。今回の五名の増員というものを認めましたのも、おそらくこれは大蔵省といたしましても、船員法の重要性を認識した上に立ってのことであろうと思います。そしてまた、今後もわれわれはこの実情に応じまして、増員というほうに全力をあげてやってまいるつもりでございます。
  124. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 次に、船員法適用拡大されますと、すでにいままでも幾つか質問がございましたが、船員保険が関連をしてくるわけでございます。この点について、船員法適用範囲を拡大するに際して、社会保険庁昭和四十四年の一月二十日付で、「船員法適用拡大に伴う船員保険に関する問題点」という文書を提出をいたしております。これは適用範囲が拡大されるとどういう問題点があるかということを書いてあるわけでございまして、一々その詳細に入ることは避けたいと思いますけれども、その第一点において、「定員の大幅な増員が必要となる」、こういうふうに社会保険庁はいっておるわけでございます。この船員法適用により、船員保険法適用船員がふえるわけでございますけれども、この定員の大幅な増員についてどういう措置をとられたか、お伺いをしたいと思います。
  125. 山崎説明員(山崎卓)

    ○山崎説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいますとおり、新しく適用が拡大されてまいりますものにつきましては、従来のものと比べまして、非常に小規模な事業所でございますし、数も相当数に上っております。したがいまして、これは全体としてまいる場合には、やはりどうしても定員の増加がほしいということが率直な希望であったわけでございますけれども、結論から申し上げますと、四十五年度予算では実現をいたしませんでした。これに対します私どもの事務体制といたしましては、先生御案内と思いますけれども、現在船員保険法第九条第一項に基づきまして、船主団体、指定団体というのがございます。これは実はいまのところ数が非常に少のうございますけれども、現在漁業関係では九十三だけ指定してございます。しかし、漁業関係水産庁のほうにお問い合わせいたしますと、全国で三千三百ほどもあるというふうに伺っております。この全部がこの指定になっていただけるかどうかは別問題といたしましても、この制度を活用いたしまして、積極的に指定をする。この指定によりまして、船主さんからの事務の代理関係をその漁協にしていただく。私どももその漁協を通じまして船主さんとの非常に活発な交流を行なってまいりたい、かように考えております。こういうような努力を行ないまして、さらにその他の事務合理化もはかった上、なおかつ必要なものにつきましては、私どもも財政当局とよく協議してまいりたい、かように考えております。
  126. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 四十五年度予算では定員の増大は実現しなかったわけでございますから、そうなると、何にもやらなかったということになるわけですね。ところが、社会保険庁は、「保険者における問題点」——この場合の保険者というのは、社会保険庁のことをいっておる。あなたのところ自身が、定員の大幅な増員が必要となるということを言い切って、問題点として出しているわけなんですね。その結果、増員もできなかったという形になると、論理的には事務についてはたいへん問題が起きるというふうにわれわれは考えざるを得ないのです。そういう点について、いまの指定漁業団体の問題はあとでお伺いいたしますけれども、社会保険庁自体として部内的に定員がふえなかったが、それを処理するための何らかの特段の処置を講じておられるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  127. 山崎説明員(山崎卓)

    ○山崎説明員 社会保険庁自体といたしましては、先ほど申しましたとおりの事務組合の活用ということを非常に主眼点に考えておりまして、そのための予算その他につきましても努力をいたしたわけでございます。予算といたしましては、この関係でPR費用あるいは積極化に伴います準備費用約二百十九万九千円ほどを新たに計上いたしているところでございます。
  128. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 審議のときにはたいへんだと言っておって、二百十九万というのも、これまた現在の何兆円という予算の中でたいへんみみっちい金額だと思うのですけれども、もちろん、これは明年の一月から適用ということはいえると思うのです。しかし、皆さん御承知のように、私の率直な感じからいきますと、船員法における事務よりも、船員保険法事務のほうが、より重要な問題になってくると思うのです。これはやはり給付とか金の関係が伴います。片方は公認事務だけで——だけということはございませんが、さしあたってはそういうことなんです。そういうわけで、この体制では、せっかく船員法適用されましても、この船員法適用と同時に船員保険法適用されて、関係船員の労働保護になるといいますけれども、その点全くしり抜けになってしまう危険があると思うのです。できなかったということですから、これ以上追及しても困らせるばかりでございますけれども、こういう提案をされた以上、積極的にその辺の御努力をお願いをしたいと考えるわけであります。  同時に、そういう社会保険庁の欠陥を——欠陥と言うと言い過ぎでありますが、手の足らないところを補うために、事務組合等を利用して保険事務を行なわせる。そういう場合に、これは水産庁のほうにお伺いをいたしたいと思いますけれども、新しく適用される範囲について、そういう事務を指定してまかせることにしても差しつかえないと考えられる漁業関係の団体はどれくらいあると考えておられますか。といいますのは、あることはあっても、その団体自体が自分のところの事務でさえもうまくできないというのもあるわけですから、しっかりしていて、まかせても何とかやってくれるだろうと認められるのは、大体どのくらいございますか。
  129. 石田説明員(石田徳)

    ○石田説明員 先ほど厚生省のほうから組合の数を申し上げましたが、実はあの中には内水面も入っていたかと思います。沿海の組合だけで約二千三百ございます。その中には今度の適用対象の漁船が一隻もないという組合もあろうかと思います。そこまで調べておりませんが、その数よりもはるかに少なくなると思います。現在その二千三百の組合の中で職員を一人も持っていないとか、あるいは一人とか二人とか、それから事業を全然やってない、眠っているものもかなりございます。そういう組合を引きますと、組合の数はずっと減ると思います。事業を全然やってない組合もかなりありますので、事務能力ゼロといっていいところもかなりあろうかと思います。もちろん、そういうところにつきましては、五トン以上の船がなかろうかと思いますけれども、的確に幾らとは調べておりません。よく調べませんと、この事務にすべての組合がたえ得るということはいえないのではないかと思います。これは全漁業連等と協力いたしまして、もう少し調べ、それから適用になりますまでには体制を整えていきたいと考えております。
  130. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 この点についてははっきりした御答弁得られませんが、早々の間で無理だと思いますけれども、船員法適用された、船員保険法適用にもならない、あるいは陸上の保険からもはずれてしまった。そのために宙ぶらりんになって、関係船員船員法適用範囲に含まれたために、非常な不利になるということや混乱が起きないように、社会保険庁も積極的な措置をとっていただくと同時に、水産庁と十分連絡をいたしまして、事務を委託してもいいような組合をはっきりさせる、また、その点に対して積極的な指導の面をお互いに協力してやっていただくように、特に希望いたしておきたいと思います。  次に、やはり船員保険との関係でございまして、船員法適用されるのは、法律に基づいて使用せられている船員に限られているわけでございますから、いわゆる船主船長という場合には、今回の改正によりますと、船員保険における労災の対象からはずれることになる。従来は、こういう船主船長、一人船頭のような場合に、労災保険法の関係では、事務組合を利用いたしまして労災の適用が行なわれているわけであります。私もそういう関係の世話をいたしまして、中小零細企業の事業主等の労災の適用について努力しているわけでありますが、これが従来の形から変わって、船員保険法適用されるという形になると、船主船長あるいは一人船頭等につきましては、労災の対象からはずされる。しかもこの面についてはかなり海難も多い、災害も多いということで、どういう方法で救済されようとしているのか、具体的に検討されている内容をお伺いいたしたいと思います。
  131. 山崎説明員(山崎卓)

    ○山崎説明員 先生御指摘のとおり、陸上の労災につきましては特別加入制度がございますが、私どものほうにおきましてはその制度はございません。これはやはり私どものほうが、御承知のとおり、健康保険とか厚生年金とか、そうした労使折半部分を持っております総合保険であるとともに、被用者保険にも通じておるんだ、かように理解いたしております。しかしながら、今度の改正によりまして、いままで陸上の労災保険のほうに加入しておいでになった方が保険からはずれてしまうということは、御指摘のとおり確かに問題でございますので、私ども関係方面とよく協議の上、前向きな姿勢で善処してまいりたい、かように考えております。
  132. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 あまりこの席上で具体的なことを議論いたしましても時間の関係もありますから、省略いたしますが、前向きという抽象的な表現ではなく、具体的に穴があかないように適切な措置をお考え願いたいと思います。  なお、この船員保険船員法適用について大きな問題になりますことの一つは、大型船舶や従来の在来船と考えられているものの場合にはそれほど問題ではございませんけれども、こういう零細な漁船、またその経営者、経営者自身が船に乗っている、いろんな点を考えますと、船員法関係事務は管海官庁の窓口に行く、船員保険法の窓口事務はまた違うところに行かなければならないという形になりますと、ただでさえ事務能力がないところが、そういうことに忙殺されてしまってお手あげになるという危険性がございます。これは船主船員の双方からそういう点に対する不安を私ども訴えとして聞いているわけでございます。従来から一貫した船員保険という総合保険の立場、これは船員法の裏づけとして、引き離せない密接な関係にあるものでございますが、そういう点について事務がスムーズにいく、また適用者に対するサービスの上で、船員法船員保険法事務の窓口を一本化すべしという意見は、かなり前から存在しておったわけであります。正直にいいまして、運輸省と厚生省のなわ張りといいますか、ことばは悪いですが、そういう行政官庁の管轄範囲の問題や業務の内容等の関係で実現しておりませんけれども、この際、こういうふうに船員法適用範囲が大きくなったというときに、船員法における事務船員保険法における事務、その末端の窓口を一本化するというお考えはあるかないか、お伺いしたいと思います。これはどなたに御答弁を願いますか、政府のほうで御相談の上、ひとつ御答弁願います。
  133. 高林政府委員(高林康一)

    高林政府委員 御指摘ございましたように、船員法、特に雇い入れ公認というような事務は、指定市町村を含めていわゆる管海官庁が行なう、また船員保険事務は社会保険事務所や都道府県の船員保険担当部局で行なう、こういうことで窓口が分かれておるわけであります。ただ、失業給付につきましては、現在船員職業安定所において窓口をある程度統一するというやり方をとっておるわけであります。御指摘の点、確かに、窓口の一元化ということは、行政サービスの観点から見まして、いろいろ考えていかなければならない問題があるのではないかと思います。ただ、この点については、さらに厚生省とももっといろいろ話し合って、いわゆるなわ張りという意識でなしに、それぞれの行政体系の問題がまた別途あるかと思いますけれども、行政サービスの向上のためにどのような方法をとったらいいか、さらに詰めて厚生省あるいはその他と相談協議をしてまいりたいと考えております。
  134. 和田(春)委員(和田春生)

    和田(春)委員 この点につきまして、失業の認定という関係もありますが、従来、たとえば船員保険法による失業保険の給付事務を、運輸省のほうの窓口である船員職業安定所において扱っているというような例もあるわけでございます。特にこれだけの大ぜいの者が、しかも零細事業所が適用されますと、事務量が相当ふえる。運輸省運輸省で定員をふやす、社会保険庁は社会保険庁で定員をふやす、こういうことになりますと、これは行政における二重というか、むだな面も出てくると思う。それを合わせて一本にすれば、一つの窓口の一人の増員で十分処理できるという場合等もあると思うのです。そういう点で、行政の能率化とサービスをよくするという意味で、この際、こういう末端における船員法船員保険事務の取り扱いについて、統合、窓口の一本化ということについて、いまここで直ちにお答えはできないと思いますが、ひとつ積極的に検討をしてもらいたい、このことを最後に特に強く希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  135. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 この際、午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。午後一時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  136. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  陸運及び日本国有鉄道の経営に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。木原実君。
  137. 木原委員(木原実)

    木原委員 少し具体的なことを一、二お伺いしたいと思います。  初めに、政務次官、それから国鉄の長浜常務理事もおいででございますので、お伺いをいたしますけれども、千葉県の房総東線というのが御案内のようにございまして、御承知のように、房総半島を一周する形で、西のほうの西線と東のほうの東線とがあるわけでございます。いままでの御努力で、西線のほうにつきましては、館山まで複線電化、千倉まで完成をする、こういうような状況に立ち至っておるわけでありますけれども、外回りのほうの東線につきましては、現在の計画ですと、四十七年度蘇我から永田まで複線延長をする、こういう計画が示されておるわけでありますけれども、御案内のように、この途中に大網というのがございまして、ここではおそらく全国でただ一つだろうと思うのですが、例のスイッチバックのようなものが残っておりまして、たいへん立ちおくれておるわけなんです。本来、あの辺の茂原というようなところは、地理的には千葉県の中心になるところでございまして、その上、御承知のように、開発がたいへん進んでおりまして、人口の増加あるいは大きな工場の稼働、そういうものが相重なりまして、地域的な発展もあるわけでございますけれども、この東線の複線電化について、どういうふうにいまの時点で御計画をお持ちなのか、ひとつお示しを願いたい。
  138. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 お答えいたします。  この房総東線というのは、通勤客とレクリエーション客の増大、特に夏のレクリェーション客の増大は想像を絶するものがあるわけであります。これらの増加に伴いまして、輸送需要の大幅な増加、そして特にいま先生おっしゃいました蘇我——永田間は二十一・五キロあるわけでございますが、これは線路状態が非常に悪い。また大網駅のスイッチバックは、地元のいわゆる駅の周辺の利害ということがいつも大きな問題になっておりますが、どうやら解決の見通しができるようでございます。また線路の改良を含めての複線化ということでいろいろ計画を行なっておりますが、しかし、永田以遠の増線につきましては、今後地元の皆さんの意見を十分伺いながらやっていきたいと思います。  そして特に、これは地元と申しますより、千葉県側として熱心でございまして、利用債引き受け等でも幾らでも受けるからひとつやってくれということで、運輸省のほうへも来ておるようでございますので、これはやはり強力に前向きの姿勢で検討する、そのような線で進めていきたいと思います。  なお、こまかい問題につきましては、局長のほうから御説明させます。
  139. 木原委員(木原実)

    木原委員 よく御存じのように、この線につきましては、一つには房総半島を横断する路線というものが、きちっとしたものがない。政務次官もおっしゃいましたように、茂原を中心としましてたいへん人口増加、地域の開発が行なわれている。ところが、現状は、西線のほうの千葉から木更津、それからこちらのほうで千葉から茂原、この間の距離がほぼひとしいわけですけれども、鉄道の時間的な関係からいきますと、たいへんな違いがある。そんな状況がございまして、西線のほうがたいへん複線電化が進んでおるのはたいへんけっこうなんですけれども、地元の関係者にとりましては非常に片手落ちだし、いま政務次官は、夏のレクリエーション客とおっしゃいましたけれども、通勤客も相当ふえておりますし、何よりも、あの辺の将来の地域開発、それからまた現状から見ましても、少なくとも茂原——一宮まで複線電化をすみやかに延ばすべきではないか、こういう意向をわれわれは持っているわけであります。また、地元の関係市町村もたいへん熱を入れておりまして、政務次官は、幾らでも、こうおっしゃいましたけれども、幾らでもというのはおのずから限度があるわけでして、地元のことでもあるから、利用債等についてもできるだけ国鉄のほうに協力しよう、この熱意があることは、これは間違いないわけなんです。しかし、そのことよりも何よりも、地元の関係からいきますと、永田までストップをされるということになると、これはスイッチバックはなくなりまして、たいへん便利にはなるのですけれども、これは何か国鉄に裏切られたという感じを持つわけです。したがいまして、私どもとすれば、永田までということならば、ひとつ思い切って一宮あたりまで複線電化を急いでもらいたい、こういう意向ですが、国鉄御当局としてはどういうお考え方ですか。
  140. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 その前に一言。ただいま申し上げました、利用債を幾らでもと申しましたが、これはことばのあやでございまして、それほど地元が熱心であるということを申し上げておるわけです。  それで、いま先生おっしゃいました大網駅のスイッチバック、これの紛争というものが解決したというのも、あくまでもこれは大網−一宮間の複線化ということができるからという前提に立って、地元が自分の利益というものをある程度がまんしながら、この解決というものができた、そういうぐあいに思いますので、あくまでも前向きの姿勢で強力に推進していきたい、そういうぐあいに考えております。  いま国鉄当局から……。
  141. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 ただいま政務次官から詳しく御説明がございましたので、もう私からつけ加えるまでもないと思うのでございますが、国鉄といたしましての御答弁を申し上げたいと思いますのは、先生おっしゃいますように、房総東線あるいは西線とも旅客の伸びが非常に多うございまして、また需要が非常に多い。また潜在需要も多いので、われわれとしても力を入れなければならないと思っておったところ、地元の県市町村はじめ皆さんに非常に御熱意をお示しいただきまして、おかげさまで西線のほうは千倉まで電化が終わりまして、一部線増も終わりました。残りますのは東線でございます。やはり房総東西線は循環輸送という面で活用するのがいろいろな面で有効じゃないかということをわれわれも考えております。幸い、県知事さんはじめ、地元の市町村長、皆さん方に非常に御協力いただきまして、利用債も、いまお話しのように百億以上の利用債を全額お持ちいただくというようなことのお申し出もございました。さっそく四十五年度からでも、いま政務次官がおっしゃいましたように着工していきたい、こういうふうに考えておる次第であります。  ただ、そこで電化については、これは部分的に電化をいたしましても役に立ちませんので、全線同時に完成をするようにしたいと思っております。  線増のほうでございますが、線増は、政務次官が言われましたように、特に土気から永田までの付近にかけまして非常に線路が悪うございます。また、大網は、先生御指摘のようにスイッチバックになっております。この部分を改良しませんと、これが一番のネックでございますので、これをまず解消したい。そうしますことによって、とりあえず数十本の列車の増発ができるのじゃないかということで、一番のネックをまず解決するということを考えております。また、地元の御協力も得まして、大網のスイッチバックも地元の損得いろいろあるようでございますが、それを押し切って皆さん御協力いただくようでございますので、これの短絡もできる見通しでございます。この点、私からもお礼を申し上げる次第でございます。  それに引き続きまして、先生御指摘の一宮までの線増につきましても、この付近が将来の通勤輸送区間になるということ、あるいはまた、経済上茂原を中心として輸送需要が非常に多いといったことから、用地の値上がり等も考えられますので、われわれといたしましては、できるだけ早い機会に用地買収だけでも済ましておいて、いつでも工事に着工できるようにしておきたい、こういうふうに計画を進めておる段階でございますが、来年度は、一ぺんにどこからでもというわけにまいりませんので、線路容量も詰まっております土気−大網間あるいは永田間というところから着工することになろうかと思いますが、われわれとしては、そういう先の見通しを立てた上で着工していきたい、こういうふうに考えております。
  142. 木原委員(木原実)

    木原委員 そうしますと、具体的にお話を詰めるようですけれども、永田まで引き続いて、線増のほうは永田から一宮あたりまで引っぱっていく、こういうことですか。計画としては二段階になるわけですか。
  143. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 工事にはおのずから順序がございまして、手の問題その他がございますので、なかなか一ぺんに同時にというふうにかかれませんので、一番線路容量の詰まっております土気−大網間を解消しますと、十数本の列車増発ができます。けれども、やはり蘇我から永田までは通勤の範囲でございますし、線路状態が非常に悪うございますので、これを急いで、並行して線増を進めていきたい。それに引き続きまして、そのあと一宮のほうへ手を伸ばしていく、こういうふうにしたい、こういうふうに考えております。
  144. 木原委員(木原実)

    木原委員 もう一つ、そのことですが、そうしますと、永田まで完成する予定は大体四十七年度ということですか。四十七年度のあと引き続いて一宮まで、こういうことでございましょうか。
  145. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 電化までに土気−大網あるいはその手前のトンネルなども直さなければなりませんので、電化までには直しますけれども、なるべく早く工程に乗せて、先生のおっしゃいますような工程で進めていきたい、こういうように考えております。  それから、なおつけ加えますが、到達時分が西線に比べて東線がおそいというお話でございますが、これは今度電化されますことと、同時にCTCあるいは自動信号というようなことで、西線と同じような設備にいたしますので、到達時分も相当上がるようになろう、こういうふうに考えております。
  146. 木原委員(木原実)

    木原委員 それではいずれにしましても、この問題につきましては、地元もたいへんいま気勢があがっているところでございますし、待ち望んでおるところでございます。したがいまして、その辺の地元の事情のことについては政務次官もよく知っているわけですが、願わくばひとつ、永田まででたとえば一期工事終わりというようなことにしないで、ぜひ少なくとも一宮あたりまで同じベースの上で工事を進めてもらいたい、こういう希望があるのですが、いかがでしょうか。大体継続してやりまして、一宮あたりまでの線増の工事がかりに完成するという年次はどの辺を目途にしておいたらよろしいでしょうか。
  147. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 御承知のように、国鉄の全般の状況から、非常に予算の額が苦しいものでございますので、全国的の視野に立って投資の順序をきめていかなければなりません。ですけれども、さいぜん申し上げますように、房総線の東西線については、相当需要の伸びも大きいというふうに想定しておりますので、なるべく早い機会に完成するようにしたいと思いますけれども、いまそれでは三年後あるいは五年後ということは、ちょっとまだその予算全体のワクその他が今後の計画に乗りませんので、きょうはまだはっきりした御答弁は申し上げられませんけれども、そういう全体のワクの中で考えますが、房総東西線については、相当重要な区間として私たち考えているということでお許しいただきたいと思います。
  148. 木原委員(木原実)

    木原委員 それでは、あまりまた詳しくやりまして先へ延びるようなことになるとまた困りますから、これはひとつ常務理事、地元のことをよく御勘案をいただきまして、これはもうほんとうに地元民が一致して要望しておるところでございますので、お願いをいたしたいと思います。  あわせまして総武線のことを少し伺いたいのですが、総武線のことで一つ御考慮をわずらわしたいことは、いま建設が進んでおりまして、付近の過密地帯を今度は通りますから、いろいろと補償問題が出ておりまして、いままでいろいろと自治体等でも協力を願いまして、補償問題もいろんな面で進んでいるわけですが、一つ残っております問題は、部分的ですけれども、高架になるために、真下になる住宅は日陰になってしまうというのがかなりな部分があるわけなんです。やかましく言いますと、日照権という問題になりまして、日照権ということになると、これは法律的な根拠として必ずしも明らかでありませんので、なかなか解決のめどもつきがたいのですが、そういう面についての何か補償というか御考慮をわずらわせるような、そういう部分はないでしょうか。
  149. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 先生いまおっしゃいましたいわゆる最近の高層ビル建築、これらによりまして、日照権というのが社会問題化してくる。しかし、鉄道の高架というものは、いわゆる踏切を除く、また道路交通の渋滞の緩和、そのためやむを得ない措置でありまして、大体地元と地方の公共団体とこまかい打ち合わせをした上でこれを行なっておるのが現実でございまして、いままでそういうような、いわゆる鉄道の高架化による日照権問題というのは起きてきておりませんでした。しかし、先生おっしゃいましたのは、どの辺でどうということを私ども存じないわけですが、そういうような問題がありましたら、地元住民の立場を十分考慮して設計等をやっていくようなぐあいに、配慮を十分するように国鉄のほうに指導をしていく、運輸省のほうではそういうふうなつもりでおります。
  150. 木原委員(木原実)

    木原委員 これは山村さん、具体的には別の機会にまたいろいろ申し上げたいと思うのですが、いままで平面を走ったやつが高架になりまして、現実に過密地帯の中を走るのです。たくさんじゃないですけれども、現実に出るわけです。私どもとしては、これは国鉄だけでも日照権という問題については根拠がないわけですから、それで地元の自治体、県と市、それに国鉄にも一枚加わってもらって、それから被害の及ぶ一日日陰になってしまうというような関係者の人たちのいわば三者協議会か四者協議会みたいなもので、自治体が中心になって、線路上にたとえば家を上げる、こういうような措置だとか、どういう結論が出るか別にしまして、そういういろいろな協議をして、何か円満な解決の道を見出そう、こういうことで、いま自治体方面にも働きかけまして、そうでもして何か道を見出そうという話が、実は下のほうで進んでいるわけです。そういうことが解決の唯一の道かどうかは別にしまして、現実に日陰になることは事実なものですから、何かその辺で御考慮をわずらわしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  151. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 さいぜん政務次官のお答えになりましたように、国鉄の場合には、公共事業としての仕事をやっておりますので、いままでも日照権の問題につきましては、はっきり日照権ということに対しての補償その他の措置はしておりません。ですけれども、現にそうして日が当たらなくなるということは現実の姿でございます。  しかし、そういうことで、必ずしも国鉄のみならず、やはりほかのたとえば道路事業だとかそういう公共事業も、すべてそういう立場をとっておりますので、われわれとしては、一応この立場をとらざるを得ないというふうに考えておる次第でございますけれども、これはやはりそういう政府とかその他との関連もございますし、地元の地方公共団体のほうでもいろいろとお考えいただけるというようなことでございましたならば、われわれのほうとしても御相談に乗るというようなことは考えられるわけでございます。そういう全般的な公共事業としての性格上の問題もございますので、その辺から御検討いただかないと、これはなかなかむずかしい問題じゃないかと思うのでございますけれども、できるだけわれわれも検討を続けたい、こういうふうに考えております。
  152. 木原委員(木原実)

    木原委員 この日照権の問題につきましては、別の角度で、国会の中でも建設委員会その他で論議が行なわれているような問題もありますし、国鉄の立場はよくわかりますけれども、しかし、現実にそういう被害が出ておることと、それから日照権というような問題が他の分野でやはり法律上の根拠を明らかにすべきじゃないかという議論もあるような状態になってきておりますので、そういうことをひとつ考慮に入れられて、これもまた前向きに検討していただきたいと思います。  それから最後ですが、話が少し違いますけれども、例の成田空港に関連をする新幹線の問題です。  先般、別のところで、これは関係局長さん以下がお見えでなかったわけですけれども、四十六年、来年春か秋かは別にしまして、空港はオープンになる。そうしますと、都心との連絡の問題が非常に大きな問題になりまして、その中の一つの案として、成田新幹線をつくるんだ、こういう考え方が示されておるわけなんですが、これはほんとうにやれるのですか。
  153. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 先生おっしゃいましたのは、いわゆる今度の国会にいまのところ提出予定になっております全国新幹線鉄道整備法案、これを今国会に提出する予定でございます。そしてこれによりますと、一応いまのところ、いわゆる常磐新幹線、この常磐新幹線より分岐して成田市駅付近に至る新幹線ということが書かれておるわけでございますが、しかし、これにつきましては、本年度調査費というものが五億一千万円ついておるわけですが、これによって調査いたしまして、そして、もちろんこれは先生おっしゃいましたように、この空港との関係もございますので、その必要性に応じてこれにかかっていくということを考えております。
  154. 木原委員(木原実)

    木原委員 それはいままで私もそういう話を聞いたのですけれども、現実の問題としまして、四十六年から空港がオープンする。おそらく最盛期は一、二年先になるとしましても、いまのところは、道路のほうも、東関東の高速道路のほうも少しストップした状態、湾岸道路のほうも、これは建設省のほうにしましても、これから買収にかかるという段階。そうしますと、まず四十七年か八年ころまでは、太平洋を三時間半で来て、成田からここへ来るのに三時間かかる、こういう姿なんです。ですから、国鉄当局に考えていただきたいことは、いまでも総武線に一つかかってきますね。それから京成電鉄が空港乗り入れをやるというのですが、これも何かもたついているようです。しかし、いずれにしましても、一つは、総武線なり現在の路線に負担がある程度かかるということです。しかし、それにしても、まず時間的な距離を縮めるためには、何らかの方法を講じなくちゃならない。その一つが新幹線だ、こう言っているのですが、私どもが聞いたところでは、二十八分間の距離の中で、そして別の機会に運輸大臣は、いやそれは鹿島のほうまで延長していくのだ、こういうお話もありましたし、いろいろ聞くわけですけれども、おそらくこれは投資効果や、それから、いろんな必要性があっても実際にやれるのかやれないのか、これが空港をつくる以上に大きな問題ではないか、こういうふうに考えているのです。が、見通しはどうでしょうか。
  155. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 先生いまおっしゃいました一番初めの京成の問題でございます。京成の問題は、一応私ども聞いておりますところでは、これは空港の供用開始、この予定にはちゃんと間に合わせることができる、とりあえず上野から新空港までの三十五往復、そのほか、いわゆる新橋を通る地下鉄でございますが、これが十往復、そしてそのほかに、急行便として十五往復、さきに申しました三十五往復と十往復というのは、空港までの空港専用の列車でございます。それが十分できるということを聞いておりますので、この京成についてもたついておるというのは、ちょっと間違いじゃないか、かようなぐあいに考えます。  それからまた、総武線でございますが、総武線の場合は、現在東京−津田沼間に複々線、これとなってまいりますが、これが昭和四十六年の十月というような期間でございますが、現在の総武線電車の成田までの延長運転、これらもやっていきたい。そしてまた、新空港の建設と関連しながら、国鉄線の佐倉−成田間のいわゆる線増、また成田駅から新空港までの新線建設、これらを検討しておる段階でございます。  そして同時に、いわゆる新幹線のほうの話でございますが、新幹線の場合は、この別表にも出ておりますが、いわゆる常磐新幹線としまして、東京都から水戸市を経て仙台市に至る路線及びこれより分岐して成田市付近に至る路線ということが書いてあるわけですが、鹿島のほうを通ってというのは、ちょっと私どもこの時点では考えられないような状況でございます。とりあえず、先ほど申しましたように、調査費の段階で十分な調査をいたしまして、そしてできるだけ空港の乗降客、空港へ行くお客さん、これを見合わせた上で、早くその状態に応じてこれにかかっていく、そういうようなぐあいにしたいと思います。
  156. 木原委員(木原実)

    木原委員 しかし、いずれにしたって二、三年では間に合わないということですね。最小限度昭和五十年、どうですか。
  157. 町田政府委員(町田直)

    ○町田政府委員 ただいま政務次官からお答えいたしましたように、新幹線につきましては、実はまだ今後の問題でございます。ただし、法案が成立いたしまして、なお財源措置等がしっかりいたしますと、順序はいろいろございましょうけれども、かかれるということになるわけでございます。その際に、具体的に調査いたしませんと、何年くらいかかるかということはわかりませんが、非常に大ざっぱな考え方として、三年くらいは見なければならないということでございますから、おっしゃるように、順調にまいりまして四十九年か五十年くらい、新幹線についてはそういうことに考えております。  交通問題でございますが、道路がどうなるかということが非常に大きな問題でございますけれども、鉄道につきましては、いまのところ、先ほど政務次官からお答えいたしました京成がとりあえず発足できるということでございます。そのあとは新幹線で間に合わせるということを一応考えておりますが、もう一つ、これも政務次官から申し上げましたが、検討中の事項として、総武線の成田から空港に入れるということも一つの検討事項ではあるということ、これは六、七キロでございますから、もしやるといたしますれば、そんなに時間はかからないでできるというふうに考えております。
  158. 木原委員(木原実)

    木原委員 これは監督局長、あなたに申し上げてもしようがないことですけれども、あそこに空港を設定するときに、初めから私どもは、場所の設定を間違っているのじゃないのか、東京から大体一時間距離が至上命令だこういうことで、ずいぶんこの両三年来議論のあったところなんです。そのときに、歴代の運輸大臣、それから建設省もそうですけれども、これは間違いございません、一時間の距離でまず乗降客を都心に運ぶ措置は十分に講じます、湾岸道路しかり、それから高速道路しかり、新幹線もその一環でやります、こういうことでやっておるわけです。しかし、これはもうあとオープンまで一年ですね。公団の総裁は胸を張って、何が何でも来年の四月には一番機を飛ばします。こう言っているわけです。それは大いにけっこうなんですけれども、ところが、いざオープンをしたわ、これはとにかく運びようがないと思うのです。京成の話も出ましたけれども、京成でもなおやはりいろいろな問題をかかえておるというように私どもは聞いておりますし、そうなりますと、これはどうも空と陸のほうと何かばらばらではないか。ましてや、とばっちりがいった国鉄当局は、おそらく財政措置その他を含めて、これは新幹線もけっこうなんですけれどもこれはたいへんだと思うのです。何かその辺に——われわれは何も違約を責めるわけじゃありませんけれども、何か真剣に考えませんと、私どもが指摘をしてそのとおりになったからざまを見やがれというわけにはまいりません。実際に国際空港があそこにできまして、都心まで非常にもたつくということでは、将来にわたっていろいろな問題を残すと思うのです。その中の一つがやはり新幹線の問題だと思うのですが、これははっきり腹を聞かしていただきたいと思うのです。道路のほうは道路のほうで、これはまた多少おくれるようですけれども、これはやるというのですが、実際にあそこまで新幹線を敷く。運輸大臣の先般の御答弁ですと、いやそれは成田だけの問題じゃないのだ、鹿島のほうがあれだけ開発をされているから、どうしてもあそこには新幹線を何らかの形で引き入れるのだ、大臣もあそこは選挙区なものですから、多少そういう気持ちもおありかと思うのですが、それは別として、そういう計画だけは示されるのですけれども、しかし、現実はなかなかそれがつながらない。これではやはり空港の問題の一翼としましても、われわれもたいへん問題が残るのではないかというふうに考えているのです。計画はあるけれども、あるいはまた両三年にということですけれども、実際に新幹線方式というのがとれるのかとれないのか、その辺はどうですか。
  159. 町田政府委員(町田直)

    ○町田政府委員 最初大臣が鹿島のほうをとおっしゃいましたことでございますけれども、これは実はまだいまでもはっきりしておりませんが、いずれにしましても、成田空港への新幹線は、いわゆる常磐新幹線の一部というか、分岐というか、そういう形でやりましょうという考え方に大体いまのところなっている。したがいまして、その常磐新幹線が鹿島のほうを将来通るか、あるいはいまの常磐線のそばを通るかということでございますので、その点はまだはっきり具体的な経路についてはわかっておりません。いずれにしましても、常磐新幹線の一部として成田空港への新幹線をつくっていこうじゃないかという考え方に大体なっているということでございます。  それから、おっしゃいましたように、確かに、空港と都心との問題というのは、非常に大きな問題だと思っております。本来というか、大体空港と都心というのは道路だという考え方がいままでは非常に強かったというか、いわば常識的で、しかし、必ずしも最近はそうではない。これは世界的にも鉄道を敷くというのが多くなってきております。そこで、私どもとしても、必ずしも道路でなくて、鉄道も同時につくるということでやるべきじゃないかということで、いろいろ検討いたしておる最中でございまして、たまたまその中で京成電鉄が一番先に申請をいたしてまいった。したがって、いろいろ検討いたしましたところが、十分いけるんじゃないかということで認可をいたしたということでございます。  そこで、そうすると、それでは新幹線は一体できるのかできないのかというお話でございますけれども、ただいまの段階ではまことに申しにくいのは、調査費がついて、政府としては調査をしてかかるという態勢になっていることは間違いございませんけれども、いまだ法案そのものが固まっておりませんし、そういう段階でございますので、この段階で確かにできますというふうに申し上げるのはなかなかむずかしいのじゃないか。しかし、意気込みといたしましては、やはりおっしゃったように、国の玄関から東京へ来るのに鉄道を使うとしたら、新幹線のような非常に近代的な有効な鉄道でいくべきじゃないか、そういうことでやるようなつもりで考えていきたいということでございます。
  160. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 ただいま先生から、空港はできたけれどもということで御質問いただいたわけでございますが、事実これは太平洋を三時間半で飛んできて、都心へそれこそこれが三時間半だの四時間で入ってくるということになっては、これは空港自体が何にもなりません。そこで、私の場合ですと、先生の立場よりももっと切実でございますのは、私は空港賛成と一人で叫んでやってきた人間でございます。特にこの空港ができて、そしてこの空港への鉄道、道路という交通網が整備されてなくて、使いものにならない空港になってしまったというようなことになった場合には、たいへんだと思っております。しかし、先ほど先生のおっしゃいました一時間ということでございますが、大体のところ、京成上野駅から新空港まで一時間で来る、そしてまた新幹線等ということになりますと、三十分以内ということでございますので、これは、私は幸い運輸政務次官という役職にあるわけでございますから、先生の御心配になる以上に心配しておる人間でございますので、できるだけこの調査というものを綿密にいたしまして、早い機会にこの新幹線というものをつくっていきたい、そういうぐあいに考えております。
  161. 木原委員(木原実)

    木原委員 時間がありませんので、これで終わりますけれども、新幹線の問題につきましては、いずれにしましてもさしあたって間に合いそうにありませんし、監督局長、たいへん切実な御答弁でございましたが、私は、もしやるというのならば、国鉄当局の採算なり資金繰りなりを伺うつもりでおりましたが、これはやめます。政務次官はだいぶん張り切っておられますけれども、その意気込みでおやりになるのはけっこうでありますけれども、ひとつきちんとやっていただきたいと思います。  冒頭申し上げました東線のことにつきましては、繰り返すようでございますけれども、これこそまことに切実な地元の要求でもございますし、できるだけの協力もしようということでございますので、ひとつタイミングの狂わないように工事を進めていただきたいと御要望を申し上げまして、終わりたいと思います。
  162. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 内藤良平君。
  163. 内藤委員(内藤良平)

    ○内藤委員 与党の加藤理事が時間時間と言いますし、また同僚の皆さんもごしんぼうしていますから、簡単にやります。  問題は過疎のバスの問題ですけれども、例の運輸白書、これは読み上げるのはやめますが、その中の過疎問題の中で、こういうぐあいに書いていますね。利用者が少ないバスの路線は自家用車の共同使用等の代替の必要が出てくるんじゃないか、これは過疎地帯のバスの問題点の最後のところに書いてございます。「基本方策は、各地域の実情に沿って地元住民と密接な連絡を保ちつつ、検討することになろう。」こういうぐあいになっておりますね。  ところで、もう過疎の乗り合い自動車の問題は、住民の足の最後の拠点ですね。国鉄は赤字路線云々が出ておりますし、残されたものは乗り合いの自動車よりない。これが営業的にはちょうちょうと申し上げなくてもおわかりのとおり。さて、これからどうするか。四十五年度の予算では一億五千万円程度いろいろ補助金なんかで出しておるようですけれども、しかし、そのような程度でとてもこれは間に合わぬでしょう。いろいろ総合的な交通対策も必要なんですけれども、当面する住民の足をどうして守るかということになりますと、簡単明瞭に、やはり国が乗り出して、国と県なり市町村と事業者と住民、この四者の方々で何か具体的なものを抜本的につくらなくちゃならない。いま予算的な措置はやっていますけれども、法律が必要じゃないか。ひとつ、ほかは省略しまして、その点どうですか。
  164. 黒住政府委員(黒住忠行)

    ○黒住政府委員 いま先生が御指摘のように、過疎地域におきますバス事業というものは、唯一の公共交通機関あるいは最後の公共輸送機関と申し上げてもいいかと思うわけでございまして、これを維持するというのは、非常に重要な問題でございます。それで、運輸省といたしましては、四十一年度から車両購入費補助という制度をやってきましたが、四十四年度からは路線の維持費補助という制度も設けてきたわけでございます。さらに来年度におきましては、廃止したあと地方公共団体等が行なう場合に、廃止路線の代替バス車両購入費補助というものを新設して、補助制度を充実してまいったわけでございます。そしてまた来年度からは、いま設置法で御審議をいただいておりますけれども、地方陸上交通審議会というものを設けまして、そこには利用者の意見を代表いたしますところの地方公共団体、それから経営者あるいは労働組合というふうな人たちに入ってもらいまして、総合的にその地域、地域の対策を検討していただくというふうに相なっておるわけでございます。われわれといたしましては、現在具体的に問題が起きておりまして、個々の路線のみならず、会社ぐるみの問題が起きておる深刻な地域がございます。その問題につきましては、路線の再編成、たとえば一つの路線に二営業以上のものが競争しておるというふうな場合におきます路線の再編成であるとか、県によりましては会社の数が多過ぎるというところもございます。それらにつきましては、会社の統合、合併、それから今回具体的にありましたように、他の有力会社から援助に出ていくというふうなことで指導をいたしておるわけでございます。それで路線ごとの経費を補助していく。そしてまた路線の再編成をしていくというふうなこと。それから新しく地方公共団体が行なう場合における代替に対する補助、さらに乗用車型のバスを動かすというふうな方法、これは大臣が前に御答弁になりました。そういう方法がございますが、そういうことで極力指導あるいは努力してまいりまして、それでもなおかつ何ともならないというふうな地域が将来心配されるわけでございまして、それにつきましては、最終的にはどのような路線を維持するかというふうなことをきめなければならぬかと思うわけでございます。その場合におきましては、関係の役所のみならず、地方公共団体、利用者の人たちと十分話をいたしましてそれをきめる。そして、そのきめました全体として会社が立ち行かないというふうなことになりますと、その会社に対する補助制度というものを考えなければならぬ。現在の補助制度というのは、いわば路線ごとの補助でございまして、先ほど申し上げました方策でもって進めていくわけでございますけれども、なおかつそのあとにおきましては、いま申し上げましたようなこと等につきまして検討しなければならぬじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  165. 内藤委員(内藤良平)

    ○内藤委員 当局の御努力、いろいろの御苦心はわかります。ただ、どんどんこのとおり物価は上がる、また過疎の状態になる、なかなか事業的に成り立たない、こういうかっこうになるわけです。そこで、バスができないということになりましたら、もう明治百年だけれども、明治初年くらいに返ってしまうような状態になる。歩け歩けというぐあいになってしまう。だから、これは深刻な問題です。しかも全国全部に関係がある。具体的なところを一々出しておってもしようがないでしょうが、私は、いままで運輸省で手直しのようなかっこうでやっていましたけれども、とてもそれでは間に合わないと思う。ここで抜本的な方策を出して、りっぱな法律でもつくって、住民の皆さんが安心できるような状態を早くつくらなければならぬじゃないか。それは国だけじゃなく、地方公共団体なりあるいは事業者なり住民なり、いろいろこの関係者があるわけでありますけれども、やはりこれはもう緊急を要する問題だと思うわけです。そういう作業を起こすべきじゃないか、こういうことなんですが、大臣にかわって次官からひとついかがでしょう。建設的な御答弁を……。
  166. 山村政府委員(山村新治郎)

    ○山村政府委員 ただいま先生おっしゃいました、国、地方公共団体、事業者、それと利用者、これらを含めて会合を持って、そこで十分意見を聞きながら、立法的なものを含めてそのことを考えるべきじゃないかというようなことを申されましたが、運輸省といたしましても、立法を含めてのいわゆる補助制度、こういうようなものを十分今後前向きの姿勢で検討させてまいります。
  167. 内藤委員(内藤良平)

    ○内藤委員 もう終わりますが、ひとつそういうことで、この秋の臨時国会くらいまでには少し片りんでも出るように、大いに馬力をかけてやっていただきたいことを要望をいたします。  それから、ちょっと局長、岩手中央バスの現況と対策、簡単でいいです。それから高知県交通、これも過疎バスの代表的な問題として、現状と対策、三分くらいの答弁でいいですから、ひとつ……。
  168. 黒住政府委員(黒住忠行)

    ○黒住政府委員 岩手中央バスにつきましては、株式の七〇%を三月の末までに国際興業に名儀変更をいたしまして、四月十日に株を引き渡すことになっております。四月十六日に臨時株主総会を開催いたしまして、定款変更、すなわち、役員の定数の変更等を行なう予定になっております。国際興業におきましては、融資その他を行ないまして、給与の遅配等は解決しております。  それから次に、高知県交通でございますが、先般株主総会等がございまして、三月一ぱいを目途に会社の自主再建の具体案について、労使間におきまして検討して煮詰めている段階でございます。二十八路線休止、廃止等の件につきましては、いろいろ労使の話し合いが進んでおるようでございますが、条件その他につきましていろいろ話を詰めている段階でございます。要するに、この会社につきましては、まず自主的に再建策をつくるべきであるという株主の要望に応じまして、現在会社側、そして労使の関係におきまして煮詰めておるのが現在の段階でございます。
  169. 内藤委員(内藤良平)

    ○内藤委員 質問を保留いたしまして、きょうはこれで終わります。どうもありがとうございました。      ————◇—————
  170. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 この際、理事辞任の件についておはかりいたします。  理事松本忠助君から理事辞任いたしたい旨の申し出がありますので、これを許可するに御異議ありませんか。
  171. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  つきましては、その補欠選任をいたさなければなりませんが、これは先例によりまして委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  172. 福井委員長(福井勇)

    福井委員長 御異議なしと認めます。それでは宮井泰良君を理事に指名いたします。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十五分散会