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1970-03-17 第63回国会 衆議院 運輸委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月十七日(火曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 福井  勇君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 箕輪  登君    理事 村山 達雄君 理事 内藤 良平君    理事 松本 忠助君 理事 和田 春生君       河野 洋平君    佐藤 孝行君       菅波  茂君    砂田 重民君       中馬 辰猪君    中村庸一郎君       西村 英一君    長谷川 峻君       古屋  亨君    増田甲子七君       田中 昭二君    宮井 泰良君       田代 文久君  出席国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君  出席政府委員         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     渡部  信君         厚生省医務局医         事課長     竹内 嘉巳君         運輸省自動車局         参事官     岡田 茂秀君         運輸委員会調査         室長      小西 眞一君     ————————————— 委員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   田代 文久君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   谷口善太郎君     田代文久君     ————————————— 三月十日  船員法の一部を改正する法律案内閣提出第七  一号) 同月十一日  気象業務整備拡充等に関する請願(渡辺武三  君紹介)(第一〇六六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  自動車損害賠償保障法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六七号)      ————◇—————
  2. 福井勇

    福井委員長 これより会議を開きます。  自動身損害賠償保障法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。宇田國榮君。
  3. 宇田國榮

    宇田委員 自動車損害賠償保障法の一部を改正する法律案に対して、本質的には賛成でありますが、二、三、大臣に、これに関連して御高見を承りたいのであります。  今日非常に加速度的に自動車が増加されて、毎年約二割ずつふえつつあるということを承っているのであります。ところが、都心においてはもうすでに飽和状態というよりも、今日は全くどうにもならないようないわゆる交通状態になっておる。たとえば都心において、東京におきましても大阪におきましても名古屋におきましても、そういう主要都市は、ほとんどもういわゆる行き詰まった状態であります。だから、この三年後、五年後の都会の交通状況ということを考えますと、まことに私は戦慄さえ感ずるような思いがいたすのであります。たとえば、私の考え方では、新橋から三越の本店の前まで道路拡張を両側約三メートルずつやるといたしますと、御承知のとおり、非常に土地の値段が高くて、一坪幾らというような東京状態であります。だから事実上、この銀座の辺はもう道路拡張は、いわゆる土地買収費、それから移転費、そういうことで、いかに公共投資がふえましても、なかなか不可能である。一坪何百万円、何千万円というようなところを、銀座の辺を広げるわけにはまいりません。丸の内もそのとおり、ここら辺でもそのとおりであります。でありますから、おそらく一年後、二年後は銀座などは車がふくそうして、歩いたほうが早いというような結果になりはせぬか。そういうことで、東京大阪名古屋、そういう主要都市は事実非常にふくそういたしておる次第でございます。そこで、今後の交通行政ということに対して、大臣も非常に御心配になっておると思います。  私は、はなはだ私見でありますけれども、総理橋本大臣のような大物をここに再び据えられたのも、このいわゆる重大なる難問題を解決するためというような、やはり総理一つの大きな政治感覚からも来ておると思うのでありますが、私は、結局は毎年二割ずつふえていくという状態であるから、一体このまま野放しにしておいていいか。そうすると、道路拡張はできない。結局立体交差か、地下道か、高速道路というようなことによってこれを緩和するか、あるいは車を規制するか、あるいはその車を海外に輸出するか。かって、私は南方方面東南アジア方面に参りましたが、ニッサンの車などがバンコックの辺に出ておりました。ところが、この間、仄聞するところによると、もう日本輸出中古品はごめんだと——私は、大きなはけ口として、南方あるいは東南アジア方面日本の車が輸出されて、そういうことが緩和されるのじゃないかと思ったけれども、これもなかなか容易ではございません。車の輸出も困難だ。それかといって生産をとめるということになると鉄鋼業者が困る。先ほど言うとおり道路拡張もできない。まことにもう今後行き詰まっておる。そこで、これを増車することをある程度制限することは自由経済の本則にもとるものであるし、それかといって、二割ふえていく。これは一体どうしていけばいいのだ。大臣も神さまでない、仏さまでない限り、絶対にでき得られない重大なる問題であります。それですから、まず個人タクシーをふやすとか、あるいは個人乗用車なども、親が持って、子供が持って、娘が持ってというように、レジャー用観光用で乗っておる者もおります。一台で済むところを三台、そういうことで、自由経済だからいいのだけれども、どこかでそれを規制していく方法がない以上は、車がふくそうして事故のもとになるということです。だから、保護政策であるところのこの賠償保障法をいかに強化して——これはまことにりっぱな法案でありますから、根本的に賛成でありますけれども、先ほど言うとおり、この車の緩和策が今後の重大なる問題であります。大臣におかれましても、審議会などでこの問題を練ってもらって、どうしたら車が緩和され、事故を防ぐことになるかという抜本的な対策を立てない以上は——もう銀座も六カ月、一年たたぬうちに歩いたほうが早い、車は毎年二割ずつふえていく、道路拡張はできない、車の規制はできない、輸出は停とんしておる、どうしていったらいいかという抜本的な問題をひとつお考えになって、高速道路立体交差地下道というものを強化するということを建設省などと連携をとられてやる必要もあると思います。事故の起きる原因が那辺にあるかということは、運転手道義観念というものもありますけれども、先ほど言うとおり、この車の緩和対策ということを抜本的に考えてほしいのでありますが、大臣の所感を承りたいのであります。
  4. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 当委員会宇田先生をはじめとして、皆さん運輸行政についてはベテランでありまして、私などはかけ出しでありますから、申し上げるような意見は、これからだんだんと勉強し、かつまた皆さんの御意見に従って十分なる措置考えていきたいと思っております。  ただ、申し上げてよろしいと思いますことは、現在の交通状態をいかに緩和させるかというのには、考え方として二つあると思います。一つ緊急措置であり、もう一つ長期展望に立っての対策である。この二つの面から考えていかなければならぬ。  いまお話にあったように、たとえば道路拡張をするにいたしましても、東京都内の場合は事業費の大体八割五分から九割が補償等にかかる。わずかに一割もしくは二割程度が実際上の工事費である。こういう状態でありますから、おっしゃるように、道路拡張ということはなかなか困難ではあります。したがって、まず緊急措置としては、いかにして都心に入る車を規制するかということにあると思います。これについては、もちろんこれから皆さんの御審議を経て、新たに設置されまする運輸政策審議会等で、いろいろ衆知を集めてもらいたいと思いますが、まずわれわれが考えられますことは、乗用車にいたしましても、あるいはトラックにつきましても、ある程度の都心への乗り入れ規制を行なうということも一つ方法だろうと思います。先進諸国大都市においては、トラック都心に入るのを時間的に規制を行なっておるようであります。われわれが外国に行ってまいりましても、日本のように昼間トラックが走っておる国はわりあい少ない。要するに、道路を二十四時間フルに使うという原則を、ニューヨークにしてもあるいはロスアンゼルスにいたしましても、いりにいたしましても考えておるようであります。その点、日本の場合は道路を二十四時間フルに使うという考え方がまだ十分じゃないと思います。これは社会制度とかいろいろな問題もありしょう。勤務状況問題等がありますから、いろんな意味において急速な転換は困難でありますけれども、やはりこのように道路が狭い場合、不十分な場合は、二十四時間でこれを使うという考え方を徐々にとる必要があろうと思います。それには、先ほど申しましたような自動車都心への乗り入れ規制、そして夜間運行の奨励、もちろんこれは関係方面との問題がありますから、一挙に大幅にはできないにいたしましても、かようなことを考えていかなければならぬ。  また、自動車の製造といいますか、この増加を規制するということは、私は原則としてあまり賛成ではありません。最近日本自動車外国に相当輸出するに至りましたのは、やはり国内の需要があったればこそ、この力が輸出貿易に反映をしておる。これは自動車だけでありません。弱電あるいはその他の工作機械等についても同様であります。  同時にまた、今後十年もしくは二十年の将来を考えますと、日本経済拡大経済発展という前提から考えますれば、われわれの生活はかなり変わったものになってくるのではなかろうか。たとえば東京大阪のような管理都市あるいは産業都市管理産業都市といっていいでしょうが、そのような都市には、原則として、いわゆるオフィスである、事務所である、あるいは身軽な連中である、こういう人が住んで、第二ハウスを将来ある程度離れたところに持つ時代がもう問もなくやってくるのではないだろうか。こうなりますと、各人が自動車を使うことは当然必要になってまいりますので、将来のわれわれの生活革命といいますか、あるいは住居革命、こういう前提から考えると、自動車生産を頭から規制するという考え方は、将来の日本の豊かなる国民生活を実現する上から考えても、必ずしも賛成はできない。  しかしただ、最近の御承知のような公害問題あるいははそうした事故問題等から考えますれば、この使用あるいは交通状態規制ということは、やはり緊急対策として行なわなければならぬ。現在、総理府におきまして交通事故対策本部長のもとにおいて、いわゆる自動車の流れを規制する、たとえば一方交通を大幅にふやす、あるいは大量の輸送機関であるところのバスに対して専用レーン考える、こういうことを行なうことによって、大阪の場合は大体一五%ないし二〇%流通を増加せしめることができた、こういう経験がありますから、それら先に行ないました実績を十分に検討した上で、そのような規制を行なっていきたい。  長期展望の上からいうなれば、何といっても都市の再開発が必要であります。われわれ人類はこれから何万年、何十万年、何百万年生きていくのでありましょうから、大都市の再開発あるいは産業都市地方分散、こういう長期構想に立って、それを十分なる高速道路で結び、あるいは高速交通機関で結んでいくという有機的な全国網のあり方を考えていかなければならない。ことに大都市においては、そのような長期展望に立って都市の再開発を行なう場合に、交通問題を十分に念頭に置いてこれを解決していく必要があろう、こういう意味において、いわゆる緊急対策長期展望に立つ長期対策、この両者をまって将来の秩序ある交通体系を樹立したい、かように考えておるものであります。
  5. 宇田國榮

    宇田委員 ただいま明快にして、しかも抱負のある御所信を承って、まことに安心いたしましたが、つけ加えて申し上げますが、私はかつて観光使節アメリカに参りましたが、アメリカ自動車が全く日常自転車がわりにされております。わが日本もその後車がだんだん増車されまして、いわゆる庶民性を帯びてきた。庶民の中にも愛用され、これがまた政治の潤いということで、まことに喜ぶべき傾向でありますけれども、世界四位の車がもう世界第二位ぐらいになったと思うのであります。でありますが、現在の運転手は、この間も実は徳安委員が深夜乗ろうとして乗車拒否をされた、身をもって体験された事実もありますが、実際、今日運転手連中——というとはなはだ失礼だけれども、運転手も一万四千円かせぎおったのが、一万二千円、一万円あるいは八千円といって稼働力が弱まってきたのも、お客はあるけれども、車が動かないという状態であるのであります。でありますから、営業者もその使用人たる運転手も、これはもう実に困り果てておる。いわゆる動けないという状態なんですね。だから、大臣がおっしゃったように、二、三十万のニュータウンをつくって、東京に集中しているところの人口一千万なんという人たちをだんだん緩和政策をとっていくということが、国土計画の線に沿うて、いわゆる領土狭小にして人口の過剰しているところの日本の大きな政策でございます。でありますから、そういうものと関連して、すみやかに内閣建設省運輸省とひとつ一丸となってこの問題に取り組んで、そして審議会もひとつりっぱな意見政策を打ち立ててもらいたい、これは私の念願であります。と申しますのは、もう事実上、五年後において東京都を車で乗って歩く——たとえばスムーズに行く場合は東京駅まで二十分でここから参りますけれども、一時間かかることもあります。でありますから、どうしてもこの緩和策を抜本的に解決していただくように、ひとつ大臣もこの際一生懸命この問題には取り組んでもらいたい。そうすることによって、事故も少なくなるし、被害者も少ないということになるのであります。  以上をもって私の関連質問を終わる次第であります。ありがとうございました。
  6. 福井勇

  7. 加藤六月

    加藤(六)委員 先ほど宇田先輩から大きな構想の問題についての御質問がございまして、敬服いたしておるわけでございますが、大臣にお伺いいたします。  自動車損害賠償保障法、これは昭和三十年に施行されたと思うのですが、それ以来、わが国交通事情あるいはまた自動車産業あるいはまた被害者、こういうものに果たしてきておる役割りというものをどのように評価されておるでしょうか。この点についてまず承りたい、こう思うわけであります。
  8. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 自賠法は、御承知のように、被害者に対して保護をするというたてまえでつくられた法律であります。その目的は、私はある程度達することができた。ただ最近、御承知のように、人命尊重といいますか、もとより人間の値打ちというものははかり知るべからざるものではありますけれども、しかしながら、一応一定の金額をもって、その危険を一方においては警告的な意味をもって防ぐ、同時に、被害者に対してのいわゆる保護政策をとってまいる、こういう意味において、この自賠法の持っておる責任は重大であると同時に、その効果は、私は相当に評価してよろしいのではないか、かように考えます。
  9. 加藤六月

    加藤(六)委員 そこで今回——今回というよりか、昨年、この審議会でいろいろな問題を答申するようになり、その答申の結果に基づいての料率あるいは金額というものについては、昨年の十一月一日からこれは施行されたわけでございます。それで、今回この改正案というものが出てきたわけでございますが、今回のこの法律改正のねらいというものは、被害者保護するためのねらいであるのか、それともまた保険赤字財政というものを救済するのがねらいであるのか、一体どちらがほんとうのねらいであるのかということについて、ひとつお聞きしてみたいと思うのですが、どう判断したらいいのでしょうか。
  10. 黒住忠行

    黒住政府委員 今回の法律改正につきましては、審議会から答申が出ました事項を尊重いたしまして、考えたわけでございまして、その中では、保険財政赤字につきましてこれを緩和するという考え方、それから、従来やってまいりましたこの制度がもう十数年になりますので、その経過にかんがみまして、制度としてその運用上改善をすべき点等を加味いたしまして、改正案を提出したわけであります。
  11. 加藤六月

    加藤(六)委員 それでは、これは大臣にもう一つ御答弁願いたいのですが、大臣、昨年の十一月一日からの料率アップというものは非常に激しいものがあるのです。たとえば、私はここに資料を持っておりませんが、霊柩車のごときはたしか十倍になったと思うのです。同じ大臣が管轄されておられる公共料金値上げというわけで、タクシーや私鉄の値上げのパーセンテージについて、非常に多くの問題が出てくるわけです。ところが、自賠償という一つ強制保険責任保険は、御存じのように、大部分のものは一ペんに二〇〇%以上上がったのです。この関連ですね。被害者を守るという立場においてはわれわれ納得するわけですが、二倍以上——個々のケースによって全部違いますが、大きいものは十倍、小さいもので二倍という、こういう値上がりがある。これと同じ大臣が管轄されておりますいわゆるタクシーその他の料金値上げ問題で、政府関係のものは思い切って平気で二倍の値上げをやってしゃあしゃあとしておる。しかるに、実際の民間がやっておるこういう問題については、二〇%、三〇%の値上げについてたいへんな議論を呼ぶというところに、私たちは率直に言いまして、国会議員としての矛盾を感じておるわけですが、これについてどのようにお考えでしょうか。
  12. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 一つには、保険制度というものは、御承知のように、一種の独立採算制でありますから、支払い能力が裏づけとしてなければならぬわけであります。したがって、この被害金額が増大するにつれて、それを支払うだけの能力をその保険自体に与えなければならない。たとえば普通の生命保険の場合は、最近の医学の発達等によって、いわゆる死亡率が減少するということになってくれば、したがって、御承知のように、それにスライドして、それはもちろん法律的に改正する必要もありましょうし、改正によって料金を改定いたしますが、これを引き下げる、こういう性格一つは持っておるわけであります。したがって、自賠法料金というものは、いわゆる正規の意味では公共料金と類を同じゅうすべきものではない。ただ、いまのような思い切った引き上げ方についてはいろいろな議論もありましょうけれども、やはり赤字保険を持つということは、結局においては関係者負担増になる、またかえって政府財政を困難にならしめるということにもなりますので、保険制度の本来の性格から考えて、いわゆる支払い得る限度を財源としても考える、これはやむを得ないことと考えております。ただ、これと公共料金引き上げとの間連はないか、こういう御意見でございますが、原則としてはないといってよろしい。ただ、全然影響がないかといえば、もちろんこれは影響なしとは言いませんけれども、しかしながら、やむを得ざる措置である。ただ、タクシー料金の場合のように、一般不特定多数が直ちに直接にこれが影響を受けるのとは性格が違う。こういう意味において、この際、このような赤字財政を救うためには、一方においてもちろん保険料金が上がってくれば当然支払い金額も増加するのでありますから、そのような意味からも、やむを得ざる措置であると御了解願いたいのであります。
  13. 加藤六月

    加藤(六)委員 そこで、これは自動車局長あるいは保険部長に承りたいと思うわけでございますが、審議会答申というのは、相当広範囲にわたって答申が行なわれたと思うのです。ところが、今回の一部改正案の中に盛られておるものと盛られてないものが出てくると思うわけです。われわれは、今回のこの改正について、どうしても五百万に上げなくてはならないということは年来主張してきました。そうして、その五百万という数字ができてきたわけです。ただし、その場合に料率をきめるときには、大きな要求を二つ、三ついたしておきました。それは何であるか。審議会答申とは違った意味におきまして、党の立場で要求いたしておきました。これは、今回の料率改定メリット制を導入するということが一点。その次は、医療の支払い問題について徹底的にやるということが二点。それから三番目は、いわゆる免許証保険というものについて抜本策を出してもらいたいということ。四番目は、農業共済関係について範囲を拡大するということ。こういうものが自民党内における大きな議論であったと私は思うわけです。また、これに関連した答申あるいは法律改正というものが今回出てきておるわけでございますが、答申の中にも、いま私が申し上げました料率を除いた問題としては、治療費支払い適正化という問題あるいはまたメリット、デメリット制度の導入という問題それから免許証保険の問題あるいは滞留資金運用益の問題、こういった問題が実際の今回の改正法案の中に、あるものは入っておる、あるものは入ってないと思うわけです。  そこでまず、自動車局長に承りたいと思うのですが、この酔っぱらい、無免許運転というものは、世界的に見た場合には、こういう自賠償保険の対象になっておる国と、なっていない国との相違をひとつ教えていただきたい、こう思います。
  14. 黒住忠行

    黒住政府委員 酔っぱらい、無免許は、これを保険事故としておりますものと保険免責にしておるものと、諸外国の例には両方ございます。わが国におきましては、御承知のように、従来から保険免責でなくて、保険事故として扱っています。
  15. 加藤六月

    加藤(六)委員 局長、その場合、外国では、自賠責法を施行しておる国において、どことどこが入って、どことどこが入っていませんか、それをちょっと教えてもらいたいと思います。
  16. 黒住忠行

    黒住政府委員 諸外国の場合におきましては、強制保険の国と任意保険の国がありまして、任意保険の場合におきましては免責になっておる例が多いわけであります。いまどの国とどの国があれになっておるかという具体的な資料を持っておりませんが、両方あるというふうに聞いております。
  17. 加藤六月

    加藤(六)委員 私が申し上げたいのは、今回の法改正は、被害者保護するという五百万円の死亡事故、後遺症の限度額を上げるということを中心とするもろもろの政策をやっていくのか、それとも保険財政というものもそれに加味して相当重要なポイントとしていくのかということを一番最初にお尋ねしたのは、実はそこにあるわけです。たとえば「死亡事故の分析」というこの総理府の統計を見ますと、原因別という数字を見ますと、酒酔い死亡事故構成比からいって八・七%、無免許というのが二・九%、しかもその増減率を見ますと、無免許事故というのは九・〇%という伸び率を示してきておる。酔っぱらい運転というのは、この増減率から見ると、さすがに少し減っております。ところが、無免許というのはふえておる。こういう傾向を見るときに、ひとつわれわれとしては大いに反省しなくちゃならないという点が一点と、同じこの国会において道交法改正案というものがいま出されております。参議院において先議されるようになっておると思いますが、この道交法においては、酒気帯び運転酔っぱらい運転というものを非常に激しく規制し、そしてまた体刑を期間を倍にする、あるいはまた免許証停止期間を多くするというように、道交法においては、酔っぱらいあるいは無免許、酒気帯び、こういったいろいろの問題について非常にきびしい姿勢を打ち出してきておる。ところが、この改正法案の中においては、相変わらず酔っぱらいあるいは無免許というものに対する問題について、いろいろな技術的な問題、あるいは被害者の救済に対しては政府保障制度があるからいいじゃないかというもの、あとこれを請求していく過程においていろいろむずかしい困難な問題があるということで、なおざりにされたのではないかという気持ちも私はあるわけですけれども、酔っぱらい、無免許運転というものに対する抜本策というものは今後に残しておると判断していいわけですか。それともこれは当分このままでいくというふうに判断していいわけでしょうか。どちらでしょうか。
  18. 黒住忠行

    黒住政府委員 酔っぱらい、無免許保険免責にするか、あるいは従来のように保険事故とするかということにつきましては、審議会におきましても相当議論がございました。現在の制度では、悪意の場合は保障事業が出動することになっておりまして、この法律はなるべく保険事故として保険に入れたいということで立法されたものでございます。しかし、最近におきまして、酔っぱらいとか無免許というものが相当ふえているということは事実でございます。これを免責にいたしました場合におきましては、被害者保護のためには保障事業で出動しなければならないということに相なるわけでございます。そうすると、現在の保障事業の債権の回収率というものが一割五分前後でございまして、あとは不良債権になっておるというような点がございます。そうすると、全体の保険でまかなうのと同じでありますし、かりにそれら以外の人が金を出すということになりますと、その面において問題があるというふうなことが議論になりまして、問題点があるわけでございます。したがいまして、その不良債権の確保の方法をどうするかというような問題それから保障事業として相当の件数になりますが、それをやるべきであるかどうかというふうな点が議論になりまして、今回においては、それらについては今後さらに検討しようということになりまして、法案には盛っておりません。要するに、いま申し上げましたような問題点をどう解決するかということでございます。  なお、根本的には道交法のようなもので厳格に取り締まっていくということであると思いますけれども、それにプラスいたしまして、保険としてそれらの要素を導入することが、法律的に技術的に可能性があるかどうかというふうな点につきましては、さらに検討をさせていただきたいと思います。
  19. 加藤六月

    加藤(六)委員 これはおおよその数字でございますが、われわれは前三百万円にいたしました。われわれがしたというのは語弊がありますが、今回五百万円に昨年の十一月一日からなっておるわけでありますが、それぞれそのときにおける死亡事故、後遺症のカバー率は七六%ないし七八%ということを承っております。そうすると、その上に上積みされて任意保険というものがあるから、たいていの死亡事故や大きな後遺症という問題は、これによって救済されるというめどでやってきたわけです。三百万のときにもそういう議論を当委員会においてやっております。今回五百万になりました。ところが、五百万というものが、死亡事故の場合、被害者救済には七八%ないし七九%ということで、相当大きなカバーをしてくれるという期待があります。これはここで質問するのもどうかと思うのですが、たとえばこういう数字が示された場合における、今後裁判所における判決とか、あるいはこれは示談の場合でもかまいませんが、カバーしたときは七八%であったということはわかりますが、この五百万という金額が、カバー率のパーセンテージを、ことし、来年、再来年どういうようにごらんになっておられるだろうか、これをひとつ承りたい、こう思います。
  20. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  ただいまの、賠償保険賠償金額の水準が上がった場合に、将来どうなるかということでございますが、いままでの例を見ますと、たとえば従来百五十万円の死亡の場合の水準の場合には、示談額はおおよそ三百六十万程度、それから三百万円の賠償当時には五百三十万程度、こういうふうにおよそ二百万程度上がっております。したがって、これはどういうわけかというと、裁判所が示談あるいは調停というようなことをやる場合において、加害者の支払い能力というものを念頭に置いているんじゃなかろうかと思いますが、あまり賠償能力がないのに多額の調停額をきめてもどうかというようなことで、その辺を考えて、おおよその水準額の二百万程度アップというようなことで、この例から見ますと、今回五百万円になった場合においては、その示談額はさらに二百万程度上乗せ、七百万程度になるんじゃなかろうか、このように考えております。
  21. 加藤六月

    加藤(六)委員 それでは、五百万に上げても、またすぐ七百万か八百万に上げないと、現在、実際上の裁判所の調停、示談というものに追いついていけないということになってくるわけですか。私がお伺いしたのは、五百万というもののカバーがことし一年はたとえば七六%くらいまで進む、来年は全体の金額はまた上がっていくから六〇%くらいになる、再来年はもう五〇%を割って、今回三百万を五百万に上げないといけないような状態になるという、そういう見通し等をもって今回の計算をされているかどうかということをあわせて聞きたいためにお伺いしたわけです。
  22. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  その点につきましては、昨年の審議会の場においてもいろいろ議論されたわけでございます。たとえばこの五百万を一千万にしてはどうかというようなお考えの方もございました。それからまた、この保険性格から見ました場合、これは最低保障だというようなことで、いわゆる最低額を保障すべきなんだ、そのためには、いわゆる契約者の保険料負担というようなことも考えて、最小限にとどめるべきであって、一挙に五百万とかあるいは千万に持っていくべき性質のものじゃなかろうというような御意見があったわけでございます。しかしながら、審議会といたしましては、その辺の御意見を勘案して、最近の情勢に照らして、五百万という額にいたしたわけでございますが、昨年の模様から見ますと、今後示談額が上がるから、それに応じて強制保険賠償水準を引き上げるというようなことについては、今後慎重に検討していかなければならぬ問題ではなかろうかと考えております。
  23. 加藤六月

    加藤(六)委員 そこで、酒酔い、無免許運転から変なほうに話を持っていったわけでございますが、当委員会でたびたび問題になっておりますし、公明党の松本委員からも、この委員会並びに交通安全対策特別委員会等でも質疑自動車局長にあったと思います。また私たちも、いわゆる保険料率をむちゃくちゃに上げて大きな負担をかけてはいけないという立場、あるいはまた事故そのものを減少さすという立場等から、免許証保険というものについて、かねがね強く主張いたしておったわけでございますが、免許証保険というものが今後抜本策として残されておるやにわれわれ聞いておるわけでございます。今日まで免許証保険というものを採用しなかった大きな理由というものをこの席でひとつお教え願いたい、こう思うわけでございます。
  24. 黒住忠行

    黒住政府委員 現在の保険は、車両にアプローチしておるものでございます。それに人の要素を導入することによりまして、いま先生御指摘のように、事故に応じた保険料等をきめるというふうな方法を採用すべきではないか。そしてまた、保険財政全体から見て、いま二千五、六百万人の人が免許証を持っておるわけでございますから、これにかけたらいいということが、免許証の採用の理由だと思います。これにつきまして検討いたします場合におきましては、現在の強制賠償保険は保有者側に強制しておるわけでございまして、賠償能力から見れば、やはり運転手よりそちらのほうにあるということでございますが、現在の保険に対して免許証保険を代位するという方法は問題があるわけでございます。そうなりますというと、現在の保険免許証保険というものを併存するということになると思いますが、併存した場合におきまして、どのような形で併存さすかということ、すなわち、上積みの関係にするか、あるいは全くの同等なものとして併存さすかという問題がございます。  それから、現在任意保険がございます。任意保険との関係をどのようにしていくかということでございまして、これは、現在の責任関係につきましては、保有者の責任は、自賠法第三条によりまして、非常に無過失責任に近いような責任を課しておりますが、運転手責任は、民法第七百九条によりますところの一般の不法行為責任でございます。これらの問題等とも関連がございますので、民事関係のことと、それから保険関係のことと、そしてまた、事故防止にどのように役立つかというふうな面と、そういうふうな面がございますので、これらを総合的に、これは運輸省だけでなくて、関係各省で検討しようということで、すでに検討を始めておるわけでございますが、さらにこれは掘り下げた検討をいたしまして、われわれといたしましては、なるべく早いときに結論を出していきたい、かように考えております。
  25. 加藤六月

    加藤(六)委員 そうしますと、先ほどお伺いしました今回の法改正に載ってない、われわれは抜本策と言っているわけですが、抜本策のうちの酔っぱらいと無免許問題については、御意見をだいぶ承ったと思うわけでございますが、まだあと残っておる小額免責問題とかいろいろな問題があると思いますが、この抜本策というものはいつごろまでにまとめて、いつごろまでに国会へ提出されるという大体の方針を承っておけば、われわれは非常にありがたいのじゃないか、こう思います。
  26. 黒住忠行

    黒住政府委員 問題点の重要な点は、いま御指摘ありましたように、免許証保険の問題、それから医療費の問題、それから加害者負担の問題、その他であると思います。これらにつきましては、至急検討しようということでいま検討しておるわけでございますが、われわれといたしましては、次期の通常国会を目標にいたしまして、適正な結論を出すように仕事を進めていきたいと思っております。
  27. 加藤六月

    加藤(六)委員 法案のアウトラインについてはこの程度にいたしまして、若干法案の内容について質問さしていただきたいと思うわけでございます。  抜本策問題についても、まだ一般質問のときでもじっくりお聞かせ願いたいと思うのですが、適用除外の範囲の縮小ということをおやりになった。私たちもこの趣旨にはもともと賛成であったわけでございます。ただ、ここで一つ承っておきたいのは、陳情等にも出てきたわけでございますが、地方公共団体等の適用除外の縮小で適用を受けるようになるとするときに、いわゆる財源上の措置をしてもらいたいという陳情があったわけでございます。これについて運輸省当局と自治省当局とだいぶ話を進めておられたというように聞いておるのでござますが、これは実際どの程度まで話し合いがついておるのでしょうか。
  28. 黒住忠行

    黒住政府委員 本件は、国の車を適用除外からはずすということと相関連があるわけでございまして、自治省と十分話し合いをいたしまして、地方公共団体の車、これは都道府県と指定市でございますけれども、これも国と同じようにしてよろしいというふうなことで話が十分ついております。  それからなお、適用除外車を新しくはずしまして適用するにつきましては、それらのものが事故が少ないというふうな可能性もあるわけでございまして、メリット制等の導入というようなことで対処していきたいと思います。
  29. 加藤六月

    加藤(六)委員 局長、違うのです。直接保険に入らなくちゃならなくなるのですよ。そうすると、保険金を払わなくちゃならないのですよ、地方公共団体が相当数の車を持っておりますから。それに対する予算措置、財源措置を講じてあるかどうかということなんです。いまおっしゃったことはよくわかっておるわけです。
  30. 岡田茂秀

    ○岡田説明員 お答えいたします。  私たちが自治省から伺うところによると、基準財政需要額にこれを見込み、地方財政計画にこれを見込んでおるように承知いたしております。
  31. 加藤六月

    加藤(六)委員 それで納得いたしました。  これに対してまたもう一つ、適用除外の範囲縮小問題について、今回農業共済関係の方面も大幅に緩和したわけですが、これを扱わしてくれ、地方公共団体あるいは三公社、こういうものについて扱わしてくれという内容の話し合いがあるやに聞いておるわけでございますが、これについてはどのようにされておるでしょうか。
  32. 黒住忠行

    黒住政府委員 これは共済規定の問題でございまして、いわゆる員外利用ということでございます。それで、従来、農協で扱うようになりました場合に、員外利用というものは、組合員の車と農協職員の車というふうになっておりまして、いままで保険会社が扱ったものに対しまして農協が扱うような趣旨でございますので、そういうふうに関係省で話し合うことになったわけでございます。今回さらにそれに加えまして普通の自動車が入ったわけでございますので、普通の自動車を扱うということで今回の措置になっておるわけでございますので、従来のとおりに措置をしておるところでございます。しかし、本件につきましては、今後各省でもって話し合いをして検討をいたしたいというふうになっております。
  33. 加藤六月

    加藤(六)委員 時間がきたようでございますから、私はもうこれでやめさせていただきたいと思いますが、もう一つあるのは、自賠責審議会の構成、運営、こういうものについて要望だけしておきます。答弁は要りません。  自動車がこう国民のものとなり、国民の手となり足となった場合において、自賠償の問題というものが各界各方面に非常に重要なる影響を持ってくるわけでございます。そうしますと、審議会委員の構成というものについては、相当慎重に各界各方面の意見を十分に聞かなくてはならないということが起こってくるのは当然と思います。先般、審議会委員のメンバーを承ったことがございますが、私たちから見て、必ずしも満足すべき各界各方面の代表であるとは思えない面があるわけでございます。今後こういった問題等につきましても十分検討していただきますように——これは大蔵省に要望するのがいいのか、運輸省に要望するのがいいのか、大蔵省だろうと思いますが、ひとつよろしくそういう点を御検討していただくということをお願いしまして、時間がないので私はこれで質問を終わらしていただきます。
  34. 福井勇

    福井委員長 松本忠助君。
  35. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣にお尋ねいたすわけでありますが、昨年の十一月一日から自賠責の赤字解消のために二〇%の保険料大幅引き上げが行なわれました。さらに今回の審議会答申のうちの一部、すなわち、だれもが納得でき、しかも簡単に法改正のできるというものについてのみ提案をされまして、審議に入ったわけでございますが、ちらちら私が耳にいたしますのに、去年十一月に上げているにもかかわらず、また保険値上げをするのじゃなかろうかというような声が聞こえてくるわけでございますが、そのようなお考えをお持ちなのかどうか、まず第一番目に承っておきたいわけでございます。
  36. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 昨年十一月に五百万円に保険金額を引き上げましたので、これが当分の実績を見た上で、慎重に取り扱うべきものと考えております。ただ、御承知のように、国民生活の向上とかそういう関係がありますので、必ずしも将来ともに上げないということじゃありませんが、とにかく今回の実績を見た上で、慎重にこれを取り扱っていきたい、かように考えております。
  37. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それで安心したわけでございますが、御承知のように、保険料の値上げは即物価の上昇につながるというような点からも、慎重を期していただきたいと思うわけでございます。  これは大臣が六日に言われましたドライバー保険の問題に関しまして、読売新聞にこれが載っておりました。これは読売がとった記事でございますので、大臣のおことばそのままどおりであるかということについては私も確認できないのですが、その中で、「昨年十一月保険料を二倍に引き上げた。しかしこれでもなお赤字が出る恐れがあるうえ」、こういうところから、いまのような声が出てきておるのじゃなかろうかと思うのですが、ただいまの大臣のお話を伺いまして、私も、保険料の値上げについては慎重にやる、当分考えられない、こういうお話を承りまして、一応その点の確認ができれば、次に入りたいと思うわけでございます。  そこで、今回の法の一部改正につきましては、審議会答申、これがすべて実施されない点、これはまことに不満でもございます。しかし、たとえ、その一部でもできるものからはやっていこう、こういう態度はまことにけっこうだと私は思うわけでございます。しかし、この自賠法そのものができましてから十四年間たっておるわけでございますし、根本的に改めるべき面が多々あると思います。このことにつきましては、私は、数回にわたりまして質問を通じまして申し述べてまいったわけでございますが、きょうはまた再び前にも触れた問題につきまして、その後政府はどのように取り組んだかを具体的にお尋ねいたしたいわけでございます。  そこで、自動車局長と厚生省の竹内医事課長にお伺いするわけでございますが、自賠保険と健保の問題でございます。現在、被害者が健保による治療を受けようとしても拒否される例が間々ございます。     〔委員長退席、宇田委員長代理着席〕 この際、健保と自賠責の関係を明確にする必要があると思うわけでございます。その明確にするということは、交通事故の際、健康保険で治療してもらえるのだ、こういうことを知らない人が多い。このことは世間一般に大いにPRする必要があると思います。交通事故保険でやってもらえないものだ、このように世間一般は思い込んでおりますが、これは大体推察するところ、お医者さんの側から流されているように思うわけでございます。昨年の七月二十三日の当委員会におきましても、この点を私は指摘をいたしました。そのときに、厚生省保険局の国民健康保険課長の松田さんのそのときのお答えを言いますと、そういう話も一部にあるように聞いております、各都道府県を通じて、被保険者あるいは医療機関に十分な趣旨の徹底をはかります、そのように指導します、指導の強化に努力しますと言われております。そのことは、ここに当日の議事録がございます。この会議録によりましても、はっきりお答えになっていらっしゃる。また、厚生省の保険局医療課長の松浦さんからも、そういう事例があったときには十分指導もする、公的な監査もすると言われております。そういう事例がなかったかどうか。なかったと言われるならば、具体的に私のほうからその事例を示してもいいのでございますけれども、ほんとうにそれらの点について厚生省では調査をしたか、伺っておきたいわけです。  それからさらに、最初申し上げました、交通事故保険がきくのだということを大いにPRすると松浦課長は言われておりますけれども、具体的にどのようにPR策をとられたか。これらの点について運輸省並びに厚生省からお伺いをしておきたいわけでございます。
  38. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  厚生省の医務局の医事課長でございます。御質問の趣旨がもっぱら医療保険の面でございまして、申しわけございませんが、私どものほうは医務局でございますので、問題は保険局の所管事項なんで、特に積極的に具体的にお答えできないのがたいへん申しわけございません。その点につきましては、後刻所管の保険局のほうに連絡をいたしまして、主管局のほうから正確なお答えをしていただくようにいたしたいと思っておりますので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  39. 黒住忠行

    黒住政府委員 健康保険とこの保険との関係でございますが、保障事業につきましてはそういう規定がございます。しかし、現在の自賠の一般の制度におきましては、いわゆる自由診療、慣行保険ということになっております。これと社会保険との関係を明確に規定したらどうかというお考えだと思いますが、自賠保険につきまして、治療費の適正化というふうな問題と相関連がある事態でございますので、今後治療費の適正化ということを考えますときに、これらも総合して検討いたしたい。  それからなお、現在、御指摘のように健康保険でもって自動車事故の診療を受けることは可能でございますし、われわれは、診療を受けた場合におきまして、健康保険に対してこの保険から金を払うというたてまえになっておりますので、われわれといたしましても、厚生省のほうにお願いいたしまして、健康保険を利用していただくということは非常にけっこうだと思っております。
  40. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 竹内医事課長にちょっとお願いしておきますが、明日公明党から田中昭二議員がまたこの自賠責の問題につきまして質問に立つ予定になっておりますので、そのとき、私もその件だけについて関連質問をさせていただきます。そして保険局の方々からお答えをいただきたい、このように思っております。お伝えを願いたいと思います。  それから次でございますが、自動車局長に伺いたいわけでございますが、仮渡し金につきましてお伺いしたいわけです。現在の政府保障事業におきまして、仮渡し金の制度がございません。これを改めるべきである。昨年の七月二十三日の当委員会で私が指摘しました際に、局長は至急検討すると答弁を行なっております。局長のおことばそのままを申し上げますと、「もう一つ、仮渡しの点につきましては、現在の保障事業にはその制度がございませんが、これにつきましては法律改正を要する点でもございますので、至急検討さしていただきたいと思います。」このようなお答えがございました。私は、そのお答えがいつあるかと思って待っておりましたが、今日までございませんので、この席をお借りして、どのようにそれを改正しようとしたのか、また実施しなかったとするならば、どういうわけで実施しなかったのか、これらの点についてお答えを願いたい。
  41. 黒住忠行

    黒住政府委員 保険につきましては、自賠法の十七条に仮渡し金の制度がございます。保障事業の場合にそれがないのはおかしいではないかということでございまして、その点から検討さしていただいたわけでございますが、保障事業につきましては、従来国が関与いたしておりますので、すみやかに金を出すというたてまえに相なっておりますので、仮渡し金の制度をつくらなかったわけでございます。しかし、その後の実績等から見て、この制度を前向きに検討する必要があるというふうにも考えまして、検討さしていただきましたが、今回の改正につきましては、主として保険審議会で御議論がありました点で、実施可能なものをすみやかに実施しようということで、法案を作成さしていただいたような次第でございます。したがいまして、いまの仮渡し金の問題につきましては、引き続き検討させていただきたいと思います。
  42. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 局長、いまのお答えの中で、いわゆる政府の保障事業が非常に支払いがすぐできるというふうなことを言われておりますが、現実の問題としまして、民間会社のいわゆる自賠責で出てくるものよりもずっとおそいということの事実を御存じでございますか。いまの御答弁ですと、非常に早いように言われておりますけれども、現実にはそのように早くないわけです。かえって、保険会社の支払いよりもおそいというのが実情でございます。ですから、私どもは仮渡し金の制度を至急やるべきである、このように申し上げたわけなんです。
  43. 黒住忠行

    黒住政府委員 立法の当時におきましては、被害者を最終的に救済する最後の受け皿が必要であるということで、保障事業の制度を導入したわけでございます。それが第一点と、それから国が関与しておりますので、保険金に相当する補償金全部を早く出すというたてまえでやるようになっていると思います。しかし、御指摘のような例外的な場合もあるわけでございますので、その後の情勢なりを考えまして検討させていただくということでありますので、いま御指摘の点については、全部すみやかに受け取るというふうには申し上げてないわけでございまして、そのような例外的な場合もありますので、今後検討させていただきたいと思います。
  44. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 例外的ではないのですよ。政府のやっているほうがおそいということは事実なんですよ。たまたまおそいのがあるなら私も何とも言わないが、全部がおそいのです。ですから、そういう例外的なことはもう当然中にはあるだろうと思いますが、例外じゃなくて、それが全部だと申し上げても差しつかえないくらいに政府の支払いはおそい。そういう点から、ぜひともこれは至急手をつけ、検討してもらいたいと思うわけでございますが、重ねてその点をお伺いしておきたい。
  45. 黒住忠行

    黒住政府委員 ひき逃げの場合と無保険の場合と若干違いがあるように聞いております。しかし、いま御指摘のような点もありますので、検討をさしていただきたいと思います。
  46. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に、大蔵省の保険部長さんも来ておられますので、お伺いしたいわけでありますが、支払保険金の内訳でございます。現在でも、この支払い保険金のうち、医療費はどれくらいか、あるいは休業補償費はどれくらいか、慰謝料はどれくらいかというふうに明確にされていないわけでございます。それで、支払い保険金の内訳をこの際明確にして、被害者が十分補償を得られるように改正する必要があろうかと思いますが、この点について大蔵省のお考え並びに運輸省のお考えをお聞かせいただきたい。
  47. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  この支払い保険金の内訳でございますが、私どもが調査したところによりますと、四十三年度について見ますと、死亡が全体の二丁三%、傷害が六二・三%、その六二・三%のうちで、治療費が三二・七%、休業補償費が一一・九%、慰謝料が一七。七%、これで合計で六二・三%となっております。最後に後遺症の問題でございますが、これが全体の一六・四%、以上で一〇〇%となっているような状況であります。私どもがこの支払いの内訳を見まして、これにマッチしたような制度改善あるいは支払いのチェックというようなことを極力考えていかなければならぬ、かように考えております。
  48. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまのお話では、治療費が三二・七%でございますか、この治療費が非常に私多いように感じられるのです。いわゆるお医者さんの過剰診療と申しますか、その点から出てくる問題であろうと思うのですが、これを大蔵省ではどのようにお考えになっておるか。お医者さんの過剰診療からここにこういう三二・七%というような数字が出てくるんじゃなかろうかと思うわけです。チェック機関を設けるといって、それも今回もできない、あとに延ばしてしまうというような点から、何でもかんでも請求のあっただけを支払っていく。そうなると、当然ここに治療費がこういう最高の額になってくるわけでございますが、この点どう思いますか。
  49. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃるとおりの問題点があるのではなかろうかと思います。これまでも新聞その他でも報道されておりますが、私どものほうでサンプル調査をいたした結果によりますと、たとえば四十四年の六月から四十四年十月の問までの例でございますが、これは住所、姓名、その医院の所在地というようなものは発表は差し控えさせていただきたいと思いますが、たとえば、男性で十八歳の方が胸部、頭部打撲というような傷害でございますが、この場合、ただの一日の入院日数でございますが、その場合の請求額が三十八万八千七百七十円、そのうちの処置料が全体の五九・八%で二十三万二千三百二十円という例もございます。さらにまた、五十九歳の男性でございますが、入院日数三十二日で、総体の要求額は百十五万四十六円、そのうちの一番大きいのが注射料でございまして、全体の六九・二%で総額が七十九万五千三百十円。その次が二十歳の男性でございますが、入院六日で、要求した金額は四十八万四百四十九円、その中で最も大きいものが注射料でございまして、四九・九%、その金額が二十三万七千四百八十三円であります。さらにまた、十七歳の男性でございますが、この方は入院日数五十六日、総体の要求額が百四十九万三千百二十四円、そのうち最も大きいのはやはり注射料でございまして、全体の八〇・二%で百十九万七千六百九十円であります。  こういうように、私どもは専門家ではございませんからどの程度の治療費を要するのかわかりませんが、新聞等で拝見したところによりますと、先生のおっしゃるような問題点が数多い治療の中にはあるのではなかろうか。この点につきましては、われわれはできる限り早い機会に是正するような方向に持っていきたい、このように考えております。
  50. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣、いまの大蔵省の渡部保険部長のお答えの実例——名前や住所は出ませんけれども、この渡部さんの言われることを実際にお聞きになってどうですか。これはどうしても一日も早くチェック機関をつくらなければいかぬ。そうしないと、野方図に請求があるだけどうしても払わざるを得ない。ここに問題があると思うのです。答申にもチェック機関をつくるということになっておりますけれども、これもとうとうできなかったのでございます。これは極端な話でありますけれども、五十万円までは取れるんだから取ってしまえというようなお医者さんの考えです。こういう点をどうしても強力に早いところチェック機関をつくって適正な支払いをされるようにしないと、これはたいへんなことになる。赤字の根本原因はそこにあると私は思うわけであります。今回の答申の中にもそれが出ておりますのに、残念ながらそれを実現することができませんでした。いろいろその理由もわかっておりますけれども、現実にこのような状態でございますので、何とかしなければならぬ。私のところにも、再々いろいろな人から実例と請求書を持ってくるわけですが、いまのお話しのように、注射料はばく大な金額が載っている。何をやったか、明細がついてこないために、これをどうしてもチェックできない。これは何とかしてはっきりさせる方法を一日も早くとっていただきたいと思うわけでありますが、その点を大臣からひとつお考えを伺っておきたいわけであります。
  51. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 私も専門家でありませんので、適正かどうかの判断に苦しむわけでありますが、問題は、国民健康保険の問題の中の一つでもあろうと考えます。ただ、自賠法という特殊の概念があるものですから、それとのしわ寄せがあるかもしれませんが、全体の問題として、松本さんの質問もあり、重要な問題でありますので、関係大臣にもこれを伝え、検討してもらいたいと思います。
  52. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 けっこうでございます。ぜひともお願いをいたしたいと思うわけであります。  次に自動車局長に伺いますが、この自賠法の精神は被害者救済にあると思うわけでございます。そこで、今回の法の一部改正の中に、休業補償の一日二千円打ち切り、こういうことが出てまいります。このねらいは、自賠責の支出を押えて赤字解消をはかろう、こういうところから出てきているのではなかろうかと私思うわけでございます。  前にも申し上げましたように、自賠法被害者救済が目的でございまして、赤字解消のためにこの処置をとるとしたら、これは問題だと思います。まして補償額の高騰の原因が、休業補償にあるのではなく、いまの渡部保険部長のお話のように、医療費が膨大な額にのぼっている、そこからきているわけです。そして医療費が休業補償の部分にまでも食い込んできてしまっているのではなかろうか、これが事実でございます。いまも申しましたように、医療費のチェック機関を最初に設置すべきである。これは大臣もいまたいへん前向きのお答えをしていただきましたので、けっこうでございますけれども、休業補償に限度を設けるということは、被害者救済の法の精神を根本からくつがえすものではなかろうかと思うものでございます。事故にあった人を救済するということよりも、赤字解消のほうが大切だ、このように考えているのではなかろうかと思うわけでございますが、この推測ははずれていたほうがいいわけでございます。局長の答弁をお願いいたしたい。
  53. 黒住忠行

    黒住政府委員 自賠法の精神が被害者保護であることは、もう御指摘のとおりでございまして、われわれといたしましては、その原則を適正に運用していくという努力をしているわけでございます。それはまた被害者に対する最低の補償であるということでございまして、休業補償の場合におきましては、その人の収入によりまして非常に区区でございますので、最低補償として一般的な見方から見たものを明白にしたほうがいいのではなかろうかと考えたわけでございます。  それからまた、医療費の問題につきましても、なるべく基準的なものでやっていくというふうなことも考えるべきでございまして、この点は、先ほどから御指摘の治療費の適正化という問題でございますが、われわれといたしましては、保険金の支払いにつきまして最低保障という線で、そしてまた、あまり大きなばらつきがないようにしていくというふうなことを考えたいということでございます。  今回の休業補償を一定の限度で押えるということによりまして、保険財政というものに対しては若干の影響はございますけれども、それほど大きなものではございません。最低保障でございますということと、先ほど申し上げました、なるべく画一的なものでしたほうが公平であろうという趣旨から限度額を設けたわけでございまして、被害者保護というものの後退というふうなことを考えているものではございません。
  54. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ちょっと確認いたしますが、この休業補償一日二千円ということは、最低ということですね。そうすると、給料をたくさん取っている人は、当然休業補償も上がってくるわけですね。そう考えていいわけですね。ですから、たとえば極端な例で、一カ月に三十万取っている人がけがをした場合、それは当然三十万円ということを基礎にしての休業補償が出る、こう理解していいわけですね。
  55. 黒住忠行

    黒住政府委員 これは最低額の保障ではなくして、最低を保障しようということでございまして、二千円以上の実収入がある人に対しましては二千円で限度額を設ける。この二千円にするかどうかということはまだ決定いたしておりません。審議会答申におきましては二千円ということでございまして、これはこれから政令できまるわけでございます。実収入が二千円以下の人はそれまでを払うということでございます。それ以上の、たとえば二千円以上の人につきましては、最低保障といたしまして二千円を支払うというわけでございます。
  56. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうすると、局長の言われているのは、最低でなくて、要するに、二千円以下の収入の人は二千円まで保障してあげる、これはたいへんけっこうだと思います。だけれども、上限のほうがきめてないわけですね。しかし、それもいまの御答弁ですと、二千円で打ち切りなんだ。上も二千円、下も二千円ということで、幾ら給料を取っていても二千円、二千円以下の人も二千円は保障してやる、こういうことですね。そうなんでしょう、局長の言うのは。上は全部認めてくれるのですか。
  57. 黒住忠行

    黒住政府委員 上を二千円で押えるということでございまして、それで、その人の収入が二千円以下の人、たとえば千円の人でございますと千円を出すというのでございまして、千円しか収入のない人に二千円を出すというものではございません。二千円以上の人に対しては二千円で押える、それ以下の実収入の人に対しましてはその実額を保障するというのでございます。
  58. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうしますと、さっきの話のように、三十万月給を取っている人があればその人はかりに日割りにすれば一万円の収入があるのに、休業補償は二千円しかしない。そうなったらば、その人の生活の保障、生活の根拠はくずれちゃうのじゃないかと思う。二千円以下の人を二千円にしてくれる、これはけっこうです。いま月給が三十万と仮定した場合、一日一万円とした場合に、その人が二千円で打ち切られてしまうとしたら、この人は要するに八千円どこかから持ってこなければいままでの生活の維持ができないということになります。
  59. 黒住忠行

    黒住政府委員 強制賠償保険といたしましては、最低保障をしようということでございまして、その金額の決定につきましては、いわゆる勤労者の所得水準の現状を勘案してきめるわけでございます。当該被害者の損害額がさらにたくさんあるという場合におきましての賠償責任というものは、依然として残るわけでございまして、かりにその賠償責任につきまして上積みの任意保険に入っている場合は、そっちから出るということでございます。ここで言いますのは、強制賠償責任保険といたしましては最低保障を考えておる。その最低保障の基準というものは、勤労者の所得水準を勘案して、審議会におきましては約二千円を標準としてきめろということになっておりますが、われわれといたしましては、その後の所得水準等を勘案して、これから関係省と相談いたしまして、政令でもってその金額をきめたい、かように考えております。
  60. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 時間の関係もありますから、その問題は後日に譲ります。  次に移ります。大蔵省の保険部長にもう一ぺん聞きますが、大蔵省としては、昨年十一月の保険料の二倍値上げによりまして、四十三年度の契約分の支払いが完了する昭和四十八年度までには一応赤字が解消するものと考えるかどうか、また今回の法の一部改正によりましてどれくらいの赤字解消ができると思うか、その試算をお示し願いたい。     〔宇田委員長代理退席、委員長着席〕
  61. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  昨年の十一月保険料率を改定したわけでございますが、改定しない前のいわゆる四十四年度の赤字は約千三百七十二億円と見込んでおりました。ところが、非常に改定の時期がおくれたということ、さらに当初予定の引き上げ幅までいかなかったというようなことがございまして、改定後におきましても約千三百億円の赤字が出るのじゃなかろうか、このように考えております。
  62. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 もう一点、あとのほうの質問。要するに、今回の法改正によってどれくらいの赤字解消ができると思うか、その試算。
  63. 渡部信

    ○渡部説明員 かりに単年度、四十四年度で見ますと、契約ベースの累積赤字が、これは十一月からですから四カ月の引き上げでございますけれども、当初の二倍にしない前の赤字が三千八十六億、二倍に引き上げたところの赤字が三千十九億でございますから、差額というものはわずかに六十五億であります。この六十五億はわずか四カ月でございますから、年に引き直すとその三倍、約二百億前後が軽減されるということでございます。
  64. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 分科会のほうの質問関係もございますので、最後の問題に入ります。  ドライバー保険の問題でございますが、先ほど加藤委員からもお話がございました、運転者に保険を付するという問題につきましては、四十三年から私提唱しまして、それも最初申し上げたときよりは、内容が逐次変わってきております。四十三年の四月四日には交通安全対策特別委員会、四十四年の二月二十五日に当運輸委員会、さらに五月十五日にはその内容を詳細に文書にして発表もいたしました。さらに七月二十三日に当委員会でも述べてまいりました。先般も運輸委員会におきまして、大臣に、この問題について一応私どもの考えている点も申し上げたい、こう思っておりました。そのことも申し上げておきましたし、このドライバー保険のことについて大臣も非常に御熱心のようでございますので、一ぺん聞いておいていただきたいと思うわけでございます。  私のほうの考え方を申し上げる前に一つ伺いたいことは、三月七日の新聞から受け取る私の感じ方でございますが、自動車の増加率よりも運転者の増加率のほうが高い、こういう観点から、運転者が保険をかけることによって財源が拡大する、それと同時に、運転者の事故防止の意識向上をねらっているというふうにございます。大臣のお考えがそのままその文字にあらわれているかどうかわかりませんが、いま私が申し上げましたことは新聞そのままでございます。これでは保険赤字解消策の一環ではなかろうか。保険赤字を埋めるために、自動車の数よりも運転者の数のほうが多いから負担力があるのだ、それによって財源が拡大されて赤字の解消につながる、このようにお考えだとしたら、私は意味がないと思うのでございます。私が四十三年の四月から申し上げているのは、そうではなくて、時間もございませんから簡単に申し上げますと、現行の自賠責は、死亡事故の場合、最高五百万円に増額されました。しかし、先ほども加藤委員からお話があったように、裁判で争われております事故の補償額は、毎月大体十万円ぐらいずつアップしている。そして一千万円という判決も出ております。また、世界のこの種の保険金額はいずれも高額でございまして、その点では日本は最低ともいえると思うわけでございます。  そこで、私どもの言い分はこういうことでございます。死亡の場合についてのみ補償金を高めろ、これは三百万円の保険金としたい。従来の自賠責にこれを上積みいたしますと、死亡の場合は八百万円になるということです。それ以外は全部現行の自賠責そのままで、私のほうは何ら変更しようとしているものではない。ただ単に死亡事故が五百万円ではほんとうにお気の毒だから、それを八百万円にしろ、その財源としてドライバーの保険考えているわけでございます。したがいまして、それ以外の問題は全部現行自賠責そのままで、何の変更もありません。  その保険料の問題でございますが、車種によりまして、免許証によって一応三千円を平均として考えております。この保険料の収入は運転免許証の所持者に三千円をかけるわけでございますが、先ほど局長の御答弁の中に、二千五百万ないし二千六百万人、このようにお伺いしました。二千六百万人とすれば七百八十億入ってくるわけでございます。死亡事故のほうも年々ふえるでありましょうけれども、ことしかりに一万七千人台になったとしましても、三百万円ということになると、五百十億払わなければならない。そうなればペイするであろう、こう考えるわけです。保険料の支払いは、免許証の切りかえ時三年にまとめてやるか、あるいは毎年やるか、これは研究を要する問題であろうと思います。われわれがいま大いに提唱している問題に、交通安全教育に力を入れなければならぬ。地域社会の方々にもこの交通安全教育を年一回やる。そういう際に徴収するのも一つ方法ではなかろうかと思うわけでございます。年額三千円ということは、一日当たりにいたしますと約八円でございます。自動車のアクセサリーを一個買いましても二千円する時代でございますから、まことにわずかな金額だといえるかもしれませんけれども、現実にこれを出すという段になりますと、なかなかたいへんだろうとは思います。しかし、現在の段階で、職業ドライバーの場合はほとんど事業主が負担するという形になるのではなかろうかと思います。運転者が不足している今日の状態からいうならば、結局は企業がそれを負担することになるだろう。企業の負担増、これは当然考えられるのではなかろうか。規則の上では本人が負担するという形にしても、結局は企業が負担するような形になるだろうと思う。企業側としましても、考えてみると、現在の死亡事故が五百万円ということでは非常に不安でございますので、非常に無理して任意保険をかけているわけです。ところが、それが三千円程度で三百万円増額できるということになれば、企業側も反対をしない。現に私は企業側の方々に御意見を伺ってみました。三千円程度のものならば決して負担できない問題ではない、それによって三百万加わることによって死亡事故が八百万円になるのならば、むしろ任意保険をかけるよりよろしい、こういう意見でございます。さらに自動車の大手メーカーにも、重要な位置にある人に直接会って私伺ってみましたが、自動車メーカーのほうもこの問題を歓迎しております。  そこで、企業負担ばかりともまいりません。いろいろお金を出すのはたいへんな方もあろうと思いますので、国で半額、本人半額、このような拠出制にしたならば一そうよろしいのではなかろうかと思うわけでございます。そうすれば企業側も千五百円の負担でございますから、そのことによって被害者救済が一歩前進する、保障力が増強する、八百万円になるということになれば、ずいぶんと安心だろうと思うわけでございます。  ところが、この制度に関しましては、学識経験者の方々に言わせますと、法律的ないろいろの問題があって、容易に実施できない、こういうふうに言われております。しかし、運転者の何らかの過失によって事故が生ずるのであれば、その責任の一端を被害者に対して運転者が持つ、これは当然のことだろう。こういう面をあわせ考えまして、そしてまた、運転者自身が保険料を支払うということは、一面、保険に入っているという責任感が事故を未然に防ぎ、事故の抑止力になるのではなかろうか。そして保障力が増大し、被害者救済の実が上がるならば、たいへんいいことじゃなかろうか。  そのほか、保険料率の問題につきましては、メリット、デメリット制度も導入して——こまかい点はいろいろございますけれども、きょうは時間の関係上これは省きますが、この私たち考え方、最後の、国で半分、それから本人が半分ということは、いままでの説明書等には言ってございませんで、その点に関してはきょう初めて申し上げたわけでございますが、いままでの私たち考え方は、運輸省にも大蔵省にも、また保険審議会の諸先生方にも郵送いたしまして、御参照願っているわけでございます。ぜひともこの実現をはかりたい、こう考えるわけでございますが、大臣のお考えをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  65. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 私の談話、とりょうによってはいずれにもとれると思いますが、基本的な考え方は、やはりドライバーに道徳的責任を持ってもらうということが前提であります。先ほど自動車局長から話がありましたように、いわゆる職業運転者というものと一般ドライバーというものは、ある程度考え方を変えていいのではないだろうか。職業運転者はそれによって生活の基礎を得ているわけであります。こういうものに過重な負担をかけるということは、職業生活の上にも大きな影響を与える、こういうことも一つありますが、原則として、ドライバー制をつくるということは、交通道徳のいわゆる高揚をはかる一助の方法として積極的にやってはどうだろうか。したがって、ある意味において私は併用保険でよろしいと思う。いわゆる自賠法では五百万円、またこっちのドライバー保険から幾ら出すという考え方じゃなく、結局どういう法律上のつくり方がありましょうとも、将来やはり自賠法考えなければならぬ場合においても、そうなると保険料率の引き上げということになりますから、この両者を並列することによって、実際上の死亡あるいはけが等に関する医療費も出てくる。したがって私は、いま松本さんのように死亡だけに限定しない。全体の保険制度の中にこれを繰り入れて財源としたらよろしい、こういうふうに考えておるわけであります。ただ問題は、いわゆるどういう形で徴収するかということが技術的にはあろうかと思いますが、いま教習といいましょうか、年に一回の講習会の場合というような話もありましたが、私は、ひとつ特殊な法律上の改正を行なって、免許証を取るときにはそのドライバー保険に入っていなければならない、免許証一つの条件にするということでないと徹底しない。そういう意味においては、ある意味において強制保険の形式はとりますが、どうもそこまでいかないと中途はんぱなものになりはしないか。任意保険的なものになりがちであるからして、したがって、法律等を整備して、いわゆる運転免許証をもらうときには、そのドライバー保険がなければ免許証がもらえない、やはりこういう思い切ったはっきりした態度をとったほうがいいのではなかろうか、かように考えております。この問題は、もちろん法律的にあるいは技術的にいろいろ問題がありますので、十分審議会あるいは各方面で御検討願って、しかしながら一刻も早くやるべきだ、私はこういう前提に立ってこの問題を進めていきたい、かように考えております。
  66. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 たいへんどうもありがとうございました。大臣のお考えを伺いまして、私たちも意を強うするわけでございます。お話にもございましたが、私、思いますが、免許証を取ったときに三千円かける、けっこうでございますが、その後やはり三年に一ぺんの書きかえもありますから、三年間一度に保険料を払うということになるとたいへんだから、やはり一年に一回ぐらいの安全教育をやって、その際徴収する、こういう方法考えられるのではないか、こう思っております。いずれにいたしましても、この問題に対して大臣が積極的に取り組んでいただき、どうかひとつ大いにやっていただきたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  67. 福井勇

    福井委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕