○小林章君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
昭和四十四年度
一般会計予算外二件に対し、賛成の討論を行なうものであります。
わが国の
経済は、
国民各位の卓越した能力と勤勉、そして、わが党の
経済政策を背景とする
政府の
政策運営のよろしきを得まして、
昭和四十年度の不況を克服し、その後三年にわたり、一貫して拡大の歩みを続けてまいりましたが、さらに四十四年度の
経済も順調な拡大
基調は続くものと予想されております。
国民総生産の規模も、いまや自由
世界で第二位の五十七兆八千六百億円が見込まれるようになりましたほか、
国際収支におきましても、
外貨準備高は初めて三十億ドルを突破することになりました。このような繁栄は、わが国が、かつて経験したことのない長期にわたるものであり、あらためてわが
日本民族に対する自信を強め、かつまた、わが党
政府の適切なる
政策によるものとして御同慶にたえないところであります。同時に、
国際経済社会におけるわが国の地位と信用とそして責任が、一段と重きをなしてくることを感ぜずにはおられません。しかしながら、海外の通貨、
経済情勢は、
アメリカ、ヨーロッパ等を通じ、必ずしも楽観を許さないものがあります。また、わが
国内におきましても、消費者
物価上昇の動きは、依然として根強いものがありますし、一部には景気のかげりがささやかれ、今後の
経済の安定
発展に対する不安もないわけではありません。均衡のとれた
経済の安定と
発展は、わが国の政治に課せられた最大の使命であると考えます。
政府と
国民が一体となり、一段と固い決意をもって臨むならば、過去の実績の示すとおり、わが党内閣は、十分その使命を果たし、国家と
国民の繁栄と幸福を向上するであろうことは確信して疑いません。
このような使命をになったわが党内閣が編成した四十四年度予算は、前年度予算に引き続き、これらの諸課題にこたえて施策の前進をはかるため、
財政体質の改善をはかり、また、
物価の安定に特段の配慮を加えるほか、重点施策に財源を適正に配分しており、私はこの予算の内容を是とするものでありまして、以下その内容につき、若干の所感を申し述べてみたいと存じます。
第一は、
財政の規模についてであります。
昭和四十四年度の一般会計の総額は、六兆七千三百九十五億円でありまして、対前年比、一五・八%の増加となっております。これを、名目
経済成長の伸び率、一四・四%と比較して四十四年度の
財政は、現在の景気に対し刺激的であるという意見が一部にありますが、
財政の景気に及ぼす影響という点では、
政府の財貨サービス購入の伸び率によって見ることが妥当であり、その伸び率は一二・三%で、名目
経済成長率より低く、この面から四十四年度の予算が景気に対して刺激的であるという批判は当たりません。むしろ景気に対して警戒的に配慮していると思うのであります。その他あとで述べますように、大幅な公債減額を織り込むなど、四十四年度予算は警戒中立型の予算で、まことに時宜を得た規模のものであると考えます。
第二は、公債
政策についてであります。四十年度末に公債
政策を導入し、四十一年度から本格的な建設公債を発行したわが国
財政は、それまでの収支均衡の
財政運営から、国債を抱いた
財政運営に質的転換をしたことは御
承知のとおりであります。当初、世間の一部には、いまのわが国で一たび国債が発行されると、とどまるところを知らず増発され、
財政インフレは必至であると、不安に満ちた評価もあったようであります。しかしながら、私が申し上げるまでもなく、インフレが起きないどころか、四十、四十一年度の国債発行によりまして、デフレ不況は克服されたばかりでなく、その後、長期の
経済成長が続いております。この一事をもってしても、わが党並びに
政府の公債
政策が正鵠を得たものであったことがよく理解できるのであります。ところで、
経済が好況で、税収等の経常収入が順調のときには、公債発行を抑制して他日に備える必要があります。現に景気の好調とともに、その発行額は毎年度減額されてまいっております。四十四年度予算におきましても、前年度に比し、一千五百億円減額して、四千九百億円となっております。これによりまして、一般会計歳入中における公債依存度は、前年度の一〇・九%から七・二%と、かなり引き下げられておりまして、
政府の
財政に対する節度が十分うかがえるのであります。今後とも、公債
政策の健全にして弾力的な運営を期待するものであります。
第三は、税負担の軽減をはかったことであります。今回の税制改正におきましては、広く
国民各層の意見をいれ、中小所得者の負担軽減を主眼とし、所得税では平年度一千八百二十五億円にのぼる大幅な減税を行なっております。課税最低限の引き上げ及び給与所得控除の適用範囲の拡大を行なうほか、過去十数年来見直されなかった税率構造に手を加え、その緩和をはかったことであります。これによりまして、夫婦子三人の給与所得者の課税最低限は、十万円引き上げられて九十三万五千円となりましたほか、中堅所得層以下の税金が久しぶりに軽減されております。このような大幅の所得減税は、他の自営業者等と比べ、不利な立場にあるといわれるサラリーマン諸君の声に対する政治の配慮として、まことに時宜を得たものと思うのであります。
そのほか、租税特別措置の整備合理化、土地対策の推進、納税者の権利救済制度の改善等、いずれも広く
国民の意向を実現するものと言えましょう。
第四は、
物価の安定について格段の配慮を加えております。すなわち、米麦及び塩の価格を据え置く方針をとるとともに、公共料金の引き上げは、国鉄運賃を除き、極力抑制することとしております。特に、塩の消費者価格のごときは、三十七年以降値下げまでして、そのまま今日に及んでいるのであります。米価につきましては、
財政負担を増額して、生産者及び消費者価格を据え置く方針をとることとしており、これは四十四年度における
物価の安定に大きく寄与するものと思われます。また、
物価安定を考慮に入れた四十四年度の適度な
財政規模と公債発行額の縮減につきましては、さきに申し述べたとおりでありまして、当面の
経済情勢に照らし、まことに適切な措置であります。
そのほか、消費者
物価上昇要因を解消するため、予算、
財政投融資を通じて低生産性部門の近代化をはじめ、流通対策、競争条件の整備などの各般の施策が拡充せられていることも妥当なものと考えるものであります。
次に、国鉄運賃の値上げにつきましては、国鉄の収支が、もし運賃改正を行なわないならば、四十四年度において償却後で大幅な赤字となり、放置すれば四十五年度にはさらに悪化する
状況にあることを考えれば、やむを得ないものと考えます。国鉄
財政再建のためには、国鉄自身の合理化努力を前提に、
政府としても新たに国鉄
財政再建債四百八億円の貸し付けと、その利子の全額を補給することとしており、運賃改定とともに、いわば三位一体の措置がとられたものと考えます。
なお、自由主義
経済のもとでは、
政府の
物価抑制にはおのずから限界のあることは申すまでもないところでありまして、
政府は率先、みずから努力するとともに、
物価安定につき、広く
国民各層の理解と協力を求めるよう常に意を尽くすべきであると考えます。
第五は、総合予算主義の堅持についてであります。四十三年度は、
政府買い入れ米の予想外の異常増加によりまして、予算補正を余儀なくされましたが、総合予算主義を採用した成果は、わが国
財政の健全化のため、相当大きな功績を示したものとして評価するものと考えます。新予算においても、引き続き総合予算主義のたてまえを堅持するとともに、さらにくふうを加え、公務員給与費、食糧管理特別会計への繰り入れ等の補正要因の大きなものを、あらかじめ該当項目に措置しておりますことは、現下の情勢にかんがみ、
財政の体質改善に資するものとして当を得たものと思うのであります。今後とも、総合予算主義のもとに、
財政運営の適切を期すべきものと確信いたします。
第六は、重点施策に対する財源の配分であります。
経済の
発展と調和のとれた
国民福祉の向上をはかるため、
社会保障の充実、
社会資本の整備をはじめとして、
農林漁業、中小企業の近代化、
貿易の振興及び
経済協力の推進、文教及び科学技術の振興並びに地方
財政の健全化等、限りある財源が適正かつ効率的に配分されておりまして、
政府の措置を妥当とするものであります。特に、新規
政策として、とり上げられました総合農政の推進についてでありますが、古米の累増等に対処して、農政の綜合的是正をはかり、食糧需要の動向に即応した農産物の安定的供給を確保するため、米管理の改善を行なうほか、農業の生産性の向上と選択的拡大及び農家経営の向上をはかるために各般の施策を総合的に推進せんとして、予算額、融資ワク等を飛躍的に増額いたしておりますことは、今後の農政の
発展向上に大きな期待が寄せられるのであります。
以上要するに、
昭和四十四年度予算は、みずからの
財政体質を改善しつつ、同時に、
経済の持続的
成長、
物価の安定、そして
経済の国際化に応ずる体制の確立を達成せんとするものであります。
最後に、内外の情勢はきわめて流動的でありますので、
政府においては常に事態の推移を十分把握して、予算の執行にあたっては
財政金融
政策の適時適切な運営がはかられますよう格段の配慮を願いたいのであります。
以上をもって私の賛成討論を終ります。(拍手)