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1969-03-24 第61回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月二十四日(月曜日)    午後一時十二分開会     —————————————    委員の異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      佐藤 一郎君     大森 久司君      津島 文治君     西田 信一君      田中寿美子君     亀田 得治君      大矢  正君     竹田 現照君      田渕 哲也君     萩原幽香子君      須藤 五郎君     河田 賢治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塩見 俊二君     理 事                 内田 芳郎君                 江藤  智君                 栗原 祐幸君                 小林  章君                 米田 正文君                 秋山 長造君                 山本伊三郎君                 二宮 文造君                 片山 武夫君     委 員                 大森 久司君                 鬼丸 勝之君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 柴田  栄君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 中津井 真君                 中村喜四郎君                 西田 信一君                 西村 尚治君                 林田悠紀夫君                 柳田桃太郎君                 山崎 竜男君                 吉武 恵市君                 亀田 得治君                 川村 清一君                 竹田 現照君                 中村 波男君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 矢追 秀彦君                 萩原幽香子君                 河田 賢治君                 山高しげり君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  長谷川四郎君        通商産業大臣   大平 正芳君        運 輸 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  坪川 信三君        自 治 大 臣  野田 武夫君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  菅野和太郎君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  保利  茂君    政府委員        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        科学技術庁研究        調整局長     石川 晃夫君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省条約局長  佐藤 正二君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        農林大臣官房長  大和田啓気君        水産庁長官    森本  修君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  長橋  尚君        労働省労働基準        局長       和田 勝美君        労働省職業安定        局長       村上 茂利君        自治省財政局長  細郷 道一君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        外務省国際連合        局外務参事官   小木曽本雄君        通商産業省企業        局参事官     井上  保君    参考人        日本万国博覧会        協会事務総長   鈴木 俊一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○分科会に関する件 ○昭和四十四年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会開会いたします。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  まず参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  本日、三案審査のため、日本万国博覧会協会事務総長鈴木俊一君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 御異議ないものと認め、さよう取り計らいをいたします。     —————————————
  4. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、分科会に関する件についておはかりをいたします。  理事会において分科会に関する件について協議いたしましたので、その要旨について御報告申します。  分科会審査期間は来たる二十七、二十八、二十九日の三日間でございます。分科会の数は四個とし、それぞれの所管事項分科担当委員数等これが各派別割り当ては、お手元に配付いたしております刷り物のとおりでございます。分科担当委員選任は前例により委員長において指名する方法によること、分科担当委員の変更につきましては、その取り扱い委員長に一任することといたしました。また分科会において参考人出席要求を決定したときは、その取り扱い委員長に一任することにいたしました。  以上御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) それでは一般質疑を続行いたします。川村清一君。
  7. 川村清一

    川村清一君 一昨日に引き続きまして、漁業問題について質問いたします。  三月一日から開催されることになっておりました日ソ漁業委員会がことしはいまだに開催されませんが、こう延びておる理由は何ですか。農林大臣からお聞きいたしたいと思います。
  8. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 御承知のことでもございましょうけれども日ソカニ漁業交渉がまだ未解決でございますので、その解決を近いうちにみる予定でございます。それがその交渉段階にあったがゆえに、延々としておるわけでございまして、このカニ交渉が済み次第、日本において開催する予定でございます。
  9. 川村清一

    川村清一君 サケマスニシンカニ日ソ漁業条約に基づく資源だと私は思っておりますが、カニだけを日ソ漁業委員会から切り離して交渉するのは、これはどういうわけですか。
  10. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ソ連カニ大陸だな資源であると、これを主張しております。わがほうはこれにかんがみまして、大陸だな資源と認めることはでき得ないと、こういうような観点に立ってその論旨は統一を見ることができないのでございます。したがって、ソ連は現在大陸だな条約加入して、大陸だなに関する国内法令制定をしております。これらを根拠に、カニ沿岸国主権に服する大陸だな資源である。ソ連沿岸カニソ連国家財産であるとの立場に立っております。また、これに加えて水域によっては資源状態悪化沿岸漁民保護等理由を主としているものでございまして、基本的にはソ連はただいま申し上げたような法的立場に固執して、ソ連主張する大陸だなにおいてわが国カニ漁業を許容するという強い態度をとっておるために、問題の解決に困難をいたしておると、こういう理由でございます。
  11. 川村清一

    川村清一君 いや、私がお聞きしておるのは、カニサケマスニシンとともに日ソ漁業委員会において漁獲高その他を討議することになっておるのに、どうしてことしはカニだけをはずして、日ソ漁業委員会の問題にしないで、これだけ離して先に交渉をやっておるのかと、こういうことをお聞きしておる。
  12. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ソ連大陸だな条約加入をしており、また昨年の二月、最高会議幹部会令制定をいたしまして、カニ大陸だな資源であり、ソ連邦の国家財産であるので、外国と特別の取りきめのない限り、これを漁獲した外国人に対しては罰則を適用する。こういうふうに言っております。ソ連はこの布告により新事態が生じたとしても、カニ漁業の規制問題についてはきびしい態度を打ち出すとともに、カニ漁業の問題は四十三年度例外的に日ソ漁業委員会で審議するが、四十四年以降は同委員会で審議することはできない。政府間で特別の取りきめをしなければならぬと、強くこれに向かって主張をしております。このために昨年の日ソ漁業委員会は非常に難航をいたしまして、日本カニ公海漁業資源とする立場から、ソ連主張に反論をしてまいりましたが、ソ連側から、カニ漁業の問題については日ソ漁業委員会定例会議前に話し合いをしたいと、こういうような旨の申し入れがございまして、わが国としては昨年の日ソ漁業委員会の経緯にかんがみまして、日ソ漁業委員会開会前にカニ漁業取り扱いについて何らかの話し合いをしておかなければならない。したがって、日ソ漁業委員会全体の運営を困難におとしいれるようなことがあること、または前記の幹部会令制定もあり、わが国カニ漁業について何らかの合意がなければ、カニ漁業の安全な操業が確保でき得ないおそれがあると判断をいたしまして、ソ連申し入れもあり、日ソ漁業委員会開会前に交渉を開始した次第でございます。
  13. 川村清一

    川村清一君 まあ日本政府が了解してやったのなら、これはしようがございませんが、それじゃカニ交渉の今日までの経過について、これは新聞でいろいろ承知をしておりますが、この際ひとつ外務大臣農林大臣から詳細御報告を願いたいと思います。
  14. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ソ連大陸だな条約加入をして、昨年の二月、ただいま申し上げたようなわけでございますが、この布告によって新事態が生じたとしても、カニ漁業の規制問題についてはきびしい態度を打ち出すとともに、カニ漁業の問題は四十三年度においては例外的に日ソ漁業委員会で審議すると、先ほども申し上げたとおりでございます。そういうような点につきまして、現在まで交渉延々としておったのでございますけれども、ここ数日来の話し合いがだいぶ進んでまいりましたので、近くこの解決を見ることができるであろうというような段階まで到達をしておるのでございます。
  15. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) カニについての日ソ交渉は、御承知のように、モスコーで約一カ月余りにわたって行なわれておるわけでございますが、一時双方主張対立して、なかなか妥結ができにくいような状況になりましたので、三月の二十三日に、東京におきましても、駐日ソ連大使を、私、招きまして、迅速かつ円滑に交渉が運びますように、ソ連政府に強く申し入れをいたしました。その後の経過を見ますると、当方の藤田代表と先方のイシコフ漁業大臣との間に話し合いが行なわれまして、だんだんに話が煮詰まってきておりまして、ここ一週間くらいのうちに細目についての話し合いがまとまるのではなかろうか。現在のところさように想定いたしておるわけでございます。したがって、先ほどのお尋ねの日ソ漁業委員会のほうも来月早々には開く段取りになれると、かように心組んでおるわけでございます。
  16. 川村清一

    川村清一君 きのう、きょうあたりの新聞を見ますと、佐藤総理コスイギン首相に対して異例の親書を送ったとか、あるいはまたきょうの新聞では、大体近く妥結を見るだろうといった、非常に明るい記事が出ておりますが、一体この問題で、両国のこの問題の焦点は何なのですか。どういうところで一体議論されているのですか。
  17. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま私、三月二十三日と申しましたのは、三月十四日の誤りで、三月十四日にトロヤノフスキー大使を招致いたしまして厳重な申し入れをした。それから、だんだん打開されてきておるように思われます。それから、一部には佐藤総理からコスイギンに対する親書を発信したんだというようなことが出ておりましたが、この事実はございません。大体現在のところ、いま申しましたような経過で、まずまず何とか妥結できる見込みがついてきたように私は見込んでおります。  それから、どういう点が問題かということですが、これはいま農林大臣触れておられましたけれども、要するに、こちらとしましては、タラバガニズワイガニ等については、御承知のような水域におきまして、日本側努力をして開発をし、そうして相当実績をあげておるわけでございます。その実績を尊重してもらいたいということと、それから、これを認めないという原則に立つ最初の対立がありまして、なかなか話が進まなかった。これがだんだん双方話し合いが解けてきて何らかの形で妥結ができそうになってきている。これが現在の見通しでございます。
  18. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ただいま外務大臣が御答弁なすったようでございますが、いずれにいたしましても、川村さんが二日間にわたって日ソ漁業問題に対しまして、あらゆる角度からいろいろ御質問していただいております。北海道漁民にとりましては非常に重大な問題がかかえられておることは、川村さんばかりでなくて、われわれもその責任の一端を負いつつ、何とかこれらの問題の解決にあたりたいということで懸命に努力をしておりますけれどもソ連大陸だな条約加入して、そうして国内法制定しておる。これを根拠沿岸国主権に服する大陸だな資源である。これを唱えております。また、ソ連沿岸カニは、ソ連国家財産であるとか、こういう立場に立っており、加えて、水域によって資源状況悪化沿岸漁民保護等理由にしております。もちろん基本的には、ソ連は上述の法的な立場を固執して、ソ連主張する大陸だなにおいてのわが国カニ漁業を許容するという強い態度をとっているために、問題の解決に困難を示しておる現状ではございますけれども、また、反面、川村さんが御主張のように、これに直接携わるところの北海道のほんとうの小さい漁民が、これがためにいかに苦しい立場に立たされているかという点もあわせ考えて、円満なる解決を遂げたい。こういうことでせっかく努力をただいましておるところでございます。
  19. 川村清一

    川村清一君 御努力に対しては敬意を表しますが、しかし、その結果がどう出るかということがたいへんなことなんであります。もし東西サハリンズワイガニあるいはアブラガニ、三角水域タラバガニハナサキガニ、ケガニ、こういったものが一切規制されるというようなことになりますれば、いま農林大臣のおっしゃったとおりでございますから、これはたいへんでございます。大いにひとつがんばっていただきたい。これは要望申し上げます。  ところで、大陸だなに関する条約の第二条の第四項に、この大陸だな資源とは何であるかということがちゃんとうたわれておるのですが、私はここを何回読んでみても、カニ大陸だな資源であるのかどうだかという判断がつかないのですが、日本政府としては、このカニ大陸だな資源であると、こういうように判断されておるのかどうか、水産庁のだれか専門家おりませんか。この方からお聞かせいただきたいと思います。
  20. 森本修

    政府委員森本修君) 御指摘のように、大陸だな条約におきましては、大陸だな資源に属する生物資源とは、「定着種族に属する生物すなわち、収獲期において海床の表面若しくは下部で静止しているか又は海床若しくは地下に絶えず接触していなければ動くことができない生物」ということになっております。カニ海床に絶えず接触していなければ動くことができない生物であるかどうかということにつきましては、端的に言いまして、科学的な知見をもってしては学説対立がございまして、一致した結論は得られておりません。しかし、わが国米国カニ遊泳試験をしばしばやっておりますが、一日に十一海里、一年間に三百六十海里移動したという事実もございます。このように相当の速力をもって広範に移動するものは遊泳種族たる魚類と同様に、当然、沿岸国主権に服すべき大陸だな資源であるというふうに考えることはきわめて無理だという主張わが国はいたしておるのであります。
  21. 川村清一

    川村清一君 まあ学説においてきちっとした結論が出ておらなければ、私どもはこれを議論してもしようがないわけでありますが、しかし、この大陸だな資源であると称して、アメリカも一方的にこれを制限して締め出す、あるいはソ連も一方的に制限して、日本の漁船を締め出すということは、どうもあまりにアメリカでもソ連でも大国主義ではないかというような気がして、ちょっと私としては納得いきかねるのですが、政府としてはどういう見解をお持ちでしょうか。
  22. 森本修

    政府委員森本修君) いま御説明を申し上げましたような私どもの科学的な見解に基づきまして、カニ大陸だな資源には属さないという主張をもって向こうと交渉をいたしておるということでございます。
  23. 川村清一

  24. 森本修

    政府委員森本修君) アメリカに対しましても同様な主張をもって交渉をいたしまして、現在のアメリカとのタラバガニ協定におきましても、わがほうの主張アメリカ主張とあわせて併記をされておる、わがほうの主張をおりて協定が結ばれているわけではないということでございます。
  25. 川村清一

    川村清一君 海洋法に基づく条約は四つあるわけですね。領海、公海日本も加盟しておる。先日問題にしました資源条約につきましてはまだ加盟していない。第四番目の大陸だな条約についても日本は加盟しておらない。なぜ加盟しておらないか、加盟することによって生ずる利害得失について外務大臣あるいは農林大臣から御説明願いたい。
  26. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず大陸だな条約のほうですが、これはただいまも御意見がございましたところにも関連いたしますが、沿革的に見ますと、一九四五年にいわゆるトルーマン宣言というものがあります。それ以降、水深二百メートルまでの沿岸海底区域海床ですね。それから地下鉱物資源、この点については、これを探査開発するために沿岸国主権的な権利を行使し得るということが、国際的な通説として確立いたしておるわけでございます。これらの点につきましては、最近の国際司法裁判所の判決などによっても明らかにされておる点でございますから、そういう点につきましては大陸だな条約に入っておりませんでも、この種の権利については日本主権的な権利を行使し得るということが確保されております。  それから先ほど御論議のありましたような点につきましては、わがほうの主張というものはいわゆる大陸だな条約について、カニ等大陸だな資源としておるということには反対でございますから、そういう点から見まして大陸だな条約には入らない、つまり大陸だな条約で確保し得るところは権利を持っておるし、こちらとしても主張の合わない点がございますから、これに対しては大陸だな条約に入らないというのが従来からの方針であったわけでございます。  それから海洋植物資源保存条約というお話でありますが、これは正確な名前は、漁業及び公海生物資源保存に関する条約という名称のようでございますが、これは一九五八年の四月に調印されて六六年の三月に効力を発生しておりますが、これに加入しておる国は二十七カ国であって、日本といたしましては、一昨日これも農林大臣の御答弁がありましたようなことで、公海における漁業の自由というものが大幅に侵害されるおそれがございますから、この条約には入らないという方針をとっておる次第でございます。
  27. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ただいま外務大臣からお話ございましたように、わがほうといたしましては、大陸だな条約鉱物資源あるいは海藻類、貝類、こういうような定着種属に属する生物である、こういうような点について彼ら各沿岸国主権的権利を認めておりますけれども米国及びソ連はこれを根拠としてタラバガニ等カニの類をも大陸だな資源として、両国の沖合いにおけるわが国漁業を規制しようとしておる、これに対しましてわがほうはカニ漁業国際的慣行上、沿岸漁業として伝統的に認められてきたものであるという立場から両国主張反対をしてきております。したがって、わが国自身大陸だな条約加入することは、水産業の面からは公海操業に依存するわが国立場と相いれないことにもなりますので、カニ漁業操業継続を確保することもまた困難になるだろうというような関連も考えられます。当面この条約には加入する意向は全くないと主張をしておる次第でございます。
  28. 川村清一

    川村清一君 農林大臣立場からの御意向は私もわかりますが、しかし、大陸だなにおける地下資源鉱物資源開発という点から考えてみれば、これは非常に問題がある、特に海洋開発という立場から大きな問題があると思うのですが、科学技術庁長官の御見解を承りたいと思います。
  29. 木内四郎

    国務大臣木内四郎君) この大陸だな条約に加盟するかどうかということは、ただいま外務大臣あるいは農林大臣からいろいろとお話がありましたように、鉱物資源生物資源等開発にきわめて重大な関係がありまするので、これは科学技術進歩発展、あるいは国際情勢等をにらみ合わせまして慎重に検討すべき問題だと思うのですが、政府方針としては、先ほど外務大臣が申し上げておるとおりでございます。ところで、この機会に一言申し上げておきたいのは、科学技術庁といたしましては、この条約で、先ほどお述べになりました条約の初めのところに大陸だなというものを定義をしまして、水深二百メートルだけでなく、その上部水域水深が二百メートルをこす場合においては、その海底の一区域生物資源開発ができるところまで入れる、こういうような規定が入っておるわけです。これについては論議がいろいろあるようでありますけれども、そこで結局、技術開発の進んでおる国は二百メートル以上のところにもそれを伸ばすことができるというような規定になっておると私は了解するのです。ところで、この国連の海底平和利用のアドホックという委員会が去年の報告書に何といっているかといいますと、一九六八年の六月現在では、いまは開発し得るところの最大掘さく深度というものは約二百メートルだ、しかし、去年のうちにはこの開発しておるところの新装置によってこれは四百メートルになるだろう、開発可能な区域が。あるいは六十九年にはこれが五百メートルになるだろうと、こういうことを報告書に書いております。そういうようなふうに、今日先端的の進歩しておる科学技術を総合して、そうして海洋工法がどんどん発展していくということになるというと、この点は私どもとして重大な関心を持たざるを得ないわけでございまして、よその国が深いところまで開発する能力があるのに、日本能力がないというようなことは科学技術庁としてはたえがたいわけです。今後開発の技術を大いに開発していかなくちゃならぬ、かように考えておるわけでございます。政府方針は先ほど来外務大臣の言われたとおりであります。
  30. 川村清一

    川村清一君 外務大臣のお考えは、結局その条約に加盟しなくても、大陸だな資源というものは日本主権が管理できるのだから入る必要はないのだ、こういうような考え方は、それはもう大陸だなの資源というものは国際慣習法としてきちっとあるのだ、こういうお考えでございますか。
  31. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申し上げましたとおりに、二百メートルまでの定着したといいますか、その資源につきましては、もう一般国際法上の通念としてあらわれておるし、国際司法裁判所の判決にもそれがあらわれておりますから、この権利はわれわれとして当然あるものと、かように考えているようでございます。しかし、同時に、それは現状の御説明でございまして、ただいま科学技術庁長官が触れられたような新たな前向きの問題につきましては、国連のアドホックの委員会に対しましても、わがほうとしても非常に大きな関心を持ち、条約的な立場からも、専門家等を委嘱いたしまして、国連の委員会等におきましては活発な論議に加わっておるわけでございます。
  32. 川村清一

    川村清一君 時間がありませんので議論はいたしませんけれども外務大臣あるいは通産大臣にお尋ねしますが、その大陸だな条約に対する政府見解はわかりました。しかし、日本の管理のもとにある大陸だな資源である鉱物資源ですね、こういうものの開発をどうするかという、それを規制すべき国内法が必要ではございませんか。いまの段階では国内法、何もないじゃございませんか。
  33. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま御承知のように西日本の海域におきまして、三菱系とシェル系が合弁で日本法人をつくりまして、石油と天然ガスの探鉱をやっておるわけでございます。これにつきまして、現行の法制のもとで一向差しつかえないと承知しておるのでございまして、特別の新たな立法が要るというようには私ども見ていないわけでございます。
  34. 川村清一

    川村清一君 それじゃ大陸だな鉱物資源を探査したいと思ったときに、その許可を政府に現行法で申請することができるのか。試掘、それから開発、こういったものの公的な地位というものは一体どうなっておるのか。あるいはその安全性の問題であるとか、また海の中をかき回すのですから、当然海洋汚染が出てきますが、そういう海洋汚染等の問題をどう処理するのかといったような、国内法によってそういうような海洋開発を実際やろうとした場合、それを規制すべき何か法律がございますか。
  35. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 鉱業法によりまして、日本法人でございますならば、鉱業権を申請することができるわけでございます。先ほど申しましたように、一部の海域でそういうことが行なわれておるわけでございますが、各海域についてどんどん申請が出ておることは事実でございます。仰せのように、将来これが非常に盛んになってまいりまして、安全保障とか、あるいは公害防除とかの観点から、いろいろ国内法上の規制を加えなければならなくなるかもしれませんけれども、ただいまの段階では、特にそういうことが問題になるほどの段階でないのでございまして、一応鉱業法上の先願主義による申請は受けつけており、に用意ができたものにつきましては、その探鉱を許しておるという実情でございます。
  36. 川村清一

    川村清一君 非常に消極的な立場でないかと思うのですね。もう陸地の開発は限度にきているわけですから、今度は海洋に、大陸だな二百メートルだけでなく、さっき科学技術庁長官の言ったように、もっと深みのところも開発していくわけですから、ですからもうどんどん積極的にいけるように、国内法律を整備すべきじゃないかと思うわけです。たとえば西独もイタリーも、ノルウェーも、大陸だな条約には加盟しておりませんが、国内法大陸だな法律をきちっと制定して、積極的に海洋開発をやって乗り出しておるのです。通産大臣はお考えになりませんか、そういうことを。
  37. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、そういうことが必要となる段階があろうかと思いますけれども、当面そういう必要を感じていないということが一点でございます。当面必要なことは、海洋探鉱技術の開発こそ必要なのでございまして、先ほど科学技術庁長官から、二百メートルとか、あるいは四百メートル、五百メートルという深層部にわたっての技術開発ということがうたわれておりますけれども、まだ日本のいまの技術の段階では、三十メートル以浅の技術しか持っていない状況でございまして、そういう法制の準備よりも先に、技術の開発にまず重点を置いた施策をわれわれはやっていかなければならぬと考えております。
  38. 川村清一

    川村清一君 そんなのんきなことをやっておる、言っておる間に、アメリカとかソ連だとか、そういう国が日本の近くの海をかき回さないように、ひとつ十分注意してくださいよ。必要になってからなんて言っちゃおそいから、前に先々とこういうことを考えていかなければならないのじゃないかと思って、あえて申し上げるのです。  それじゃ漁業問題は、一応時間がありませんから切りまして、次に石炭問題に移りますが、先般の総括質問で、通産大臣は、なだれ閉山にならないように、防止のために極力行政指導に努力するというような御答弁をなされたのですが、明治鉱業ははっきりきめましたし、九州鉱業、杵島鉱業、それから麻生鉱業が、もう閉山ということに決定したようですが、一体大臣はどのように行政指導をされておるのかということをお尋ねしたい。
  39. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今度の第四次の石炭政策におきましては、御案内のように、再建交付金及び安定補給金の増額及び石炭合理化事業団の無利子融資制度の拡大等を通じまして、いまあなたが御心配になっておられるなだれ的な閉山の防止ということに、歯どめの役割りを果たすべく措置をいたしておるわけでございます。御指摘のように、明治、杵島等は問題になっておりまするが、これはある程度私どもが予想しておったことでございますが、それにいたしましても、こういう山の閉山が企業ぐるみで行なわれるというような場合でも、その中で一部の炭鉱は、なお採炭の継続がやりようによってできるのじゃないかというようなものにつきましては、炭鉱行政の上で配慮いたしまして、そういうことが可能なような条件をつくって差し上げなければならぬというようなわけで、いま御相談をしておる段階でございます。  この委員会で、この前にも申し上げたと思うのでございますけれども、なるほど、ことしは終閉山が多い見込みでございますが、これは四十三年度は、ちょうど新政策期待待ちで、終閉山がほとんどなかったわけでございまして、この措置がとられて、それをベースにして閉山しようというような、待っておったものが一緒に出てまいりましたので、非常に印象的に終閉山が多いように映られたと思うのでございますけれども、私どもの予想しておる三百七、八十万トンという終閉山の大体の見当は、大きな狂いなく済むのではないかと、そう見ておるわけでございます。
  40. 川村清一

    川村清一君 ただいまの御答弁では、明治と、それから杵島は予想しておったというような御答弁ですが、そうしますと、九州、それから麻生はどうですか。
  41. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 一応私どももあるいはそういうことになるのではないかということで、半ば予想はいたしておったことでございます。
  42. 川村清一

    川村清一君 先日問題になりました資料をちょうだいしたのですが、それの調査書の結論を見ますと、明治鉱業の昭和炭鉱、それから本岐炭鉱につきましては、やりようによっては十分採算がとれる炭鉱である、そういう炭鉱に再建される見通しであるという、こういう結論づけがされておるのでありますが、通産省としてはどういう御見解を持たれておりますか。
  43. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは今度の政策の御審議をお願いするにあたりまして、私どものほうで申し上げておりますとおり、今度の政策は、政府のほうで、この山は終閉山する、この山は採炭を続けるということを、政府がきめるのではなくて、それはあくまでも企業側の選択にまかせるということでございます。すなわち、政府のほうで最大限の施策をして差し上げるから、それを受けて、確保が可能であるかどうか、続けるかどうかという判断は企業側にさせようというたてまえになっておりまするから、どの山を閉山に持っていくかというようなことについては、私ども介入するということはしない方針で終始いたしたいと思っております。
  44. 川村清一

    川村清一君 こういうことになりますれば、大臣の言われておる、なだれ閉山を阻止するために極力行政指導をしたい。その行政指導はどういう行政指導をするんですか。企業にまかせるんでは指導も行政もないじゃないですか。
  45. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ほとんどこのままほうっておきますと、手がつけられない状態でございます。したがって政府のほうで今度の新政策を考えて、これを歯どめにいたしまして、これを踏まえた上で、この炭鉱は続ける、この炭鉱は閉山するという選択を企業者にゆだねておるわけでございまして、その大体の見当は、本年度は三百七十万程度の閉山ではなかろうかと見ておるが、先ほど申し上げましたように、その見通しに大きな狂いはなかろう。現にいろいろ終閉山の話が出ておりますけれども、それはあらかじめ私どもがほぼ予想しておったワクを出ていないということを申し上げたわけです。
  46. 川村清一

    川村清一君 ですから大臣、その調査団が行って、そうしてよく調査した結果、この両炭鉱は、やりようによっては十分採算のとれる山に再建される見通しだという結論を出しておる。だけども、企業のほうはこれはつぶすと言っているのです。そこで、通産省は当然行政指導をすべきじゃないか、どういう指導をされておるかということをお尋ねしておる。
  47. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは、先ほども申しましたように、そういう選択は企業側にゆだねているわけでございまして、役所のほうで続けろとか、やめろとかいう指図はしないということは、今度の政策の基調にあるわけでございます。それはまず第一に御了解をいただきたいと思います。しかし、そういう前提で、しかもなお石炭行政の中で親切に配慮しなければならぬのは、当然私どもの任務だと思うのでございます。したがって、企業ぐるみの閉山の場合、特別閉山交付金というものを支給いたしまして、閉山によって大きな社会的な混乱を招来しないように配慮いたしてあるのでございますが、その中で一部の山を、企業が続けるということを決議した場合におきましては、そういう特別閉山交付金制度の根幹をくずさない範囲におきまして、これを助ける道はないものかということは、せっかくいろいろ行政的に考えているわけでございます。
  48. 川村清一

    川村清一君 一体第四次答申案ですがね、この答申には、石炭鉱業の安定対策として、再建というのと撤退と二つの相反する要素があるわけですが、どちらに一体重点が置かれているのですか。
  49. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 申すまでもなく再建でございます。
  50. 川村清一

    川村清一君 それでは、そういう答申を受けて政府が立てられた政策も、当然その答申の趣旨を尊重して、この政策が立てられているのでしょうね。
  51. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さようでございます。すなわち政府が膨大な財政支出をお願いしてやっておりまするゆえんのものも、固有のエネルギーである石炭産業を、何とか再建の軌道に乗せたいということでございます。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 しかしながら、同時に現実の問題として、終閉山もある程度起こり得るであろうということも同時に踏まえて考えているわけでございますが、どちらに重点を置いているかと申しまするならば、先ほど申しましたように、再建に置いて施策をいたしていることは当然だと考えております。
  52. 川村清一

    川村清一君 その新政策は、従来の政策の延長線上に存在しているのにすぎないのではないかと私は思うのですが、抜本的なものは何もない。何か新しい政策が新政策というものの中に盛り込まれておるのか、おるとすればどういう政策なのか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  53. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 従来の政策の延長にすぎないのではないかという御批判がございます。これは私もごもっともだと思うのです。私どもは、私企業体制をベースにいたしまして、再建をはかっていこうとする政策の性格から申しまして、従来の政策とは、そういう基調の上で変わりはないのでございますけれども、ことしは、予算面をごらんになっていただいても御理解いただけますように、再建交付金というものを千億程度考えているということが一つの特徴でございます。安定補給金を大幅に増額した、あるいは保安対策、労働者対策、あるいは産炭地振興対策は従来以上に大幅の充実を見ているわけでございます。したがいまして、従来の基本的な性格において変わらぬわけでございますけれども、この政策をして実効あらしめようという意欲から申しまして、在来の政策よりは数歩進んだ施策であると考えております。
  54. 川村清一

    川村清一君 政府は、このたび提案されております二つの法案、一つは石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、一つは石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正する法律案、この中に盛られております石炭鉱山整理特別交付金の交付の規定、それから石炭鉱業再建整備臨時措置法の中にあるいわゆる再建整備金融の問題これについて、事務当局でいいですからもっと説明してくれませんか、内容を、特徴を。
  55. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 御説明申し上げます。  石炭鉱山整理特別交付金制度につきましては……。
  56. 川村清一

    川村清一君 ちょっと、それ長いですから、ここだけでいいです、合理化のほうは、整理特別交付金制度の問題——三十五条の六、それから再建整備のほうは、九ページですか、第四条の二のずっとあとの第四項、これは担保を解除して再金融して、その金融を国が肩がわりする、国が保証するという項ですね。この二項だけを。
  57. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) お答え申し上げます。  石炭鉱山整理特別交付金制度につきましては、現時点におきましてすでに石炭企業としての行き詰まり状態になっている企業の存在を否定できないわけでございまして、そういった企業が万一破綻いたしました場合に起こるであろう社会的混乱を防止することをねらいといたしまして、そういった破滅的な破綻を来たすことなくせいせいと会社として整理ができる、そうして従業員、あるいは鉱害、金融一般、各種の債権者に及ぼす影響をできるだけ食いとめる、こういうふうなことをねらいとして提案された制度でございます。  そこで、この制度におきまして、まずこの制度の適用を受け得ます要件といたしまして、法律の本文におきまして、本年の四月一日から四十六年三月三十一日までの二年間の間に解散し、そうしてその保有する鉱業権について放棄による消滅の登録を受けた者であるという要件を規定いたしております。ここで二年間という期間を設けた臨時特別の措置といたしましたのは、ただいま御説明申し上げましたように、もうすでに非常に行き詰まり状態になった石炭企業のできるだけせいせいとした整理の必要、こういう実態、こういう緊急的な事態に対処をいたしますための特別制度として考えたわけでございますので、本来できるだけ適用期間が短いことが筋合いかと考えられるわけでございますが、他面、そういった企業におきましても、いろいろ事態打開に対処いたしますための準備期間が必要な場合も想定いたされますし、その間の調整点として二年間の有効期間といたしたわけでございます。  それから、ただいま申し上げました二つの要件のほかに、各号列記の部分におきまして、本年六月一日以後において、鉱業権を譲渡したり、これを譲り受けたりしたことがないこと、すなわち鉱業権について変動がないことという要件を一つ規定いたしております。これは、制度発足後におきまして、その会社の超過債務の状況につきまして人為的な操作が加えられ、それが債権者なり国なりに及ぼす影響を回避するための措置でございます。で、本来この特別交付金制度は、各種の債務につきましてその会社の持っております資産を上回る超過負債分についての国の一定限度の支援、処理についての支援、こういうふうな意味合いの制度でございますので、制度発足後、そういった超過債務関係についての人為的な操作、これを回避する必要があるわけでございまして、ここで六月一日までは経過的にそういった鉱業権の変動を認めることにいたしましたのは、制度発足前においてすでにもう昨年末の答申あるいはまた閣議決定というものを受けて、いろいろ企業の分離について、一部炭鉱の分離については準備をしております企業もございますので、そういった場合には総会招集手続等につきまして約二カ月の準備期間が必要である、こういうふうなことで、実質的には制度発足前から準備されている問題を処理するための経過規定という意味におきまして、六月一日以降につきましてそういった鉱業権についての変動を抑制することといたしたわけでございます。
  58. 川村清一

    川村清一君 一般閉山交付金と、それから特別交付金と、この条件あるいは金額どういうふうに違いがありますか。
  59. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 一般閉山交付金につきましては、昨年末の審議会の答申にもうたわれておりますように、従来閉山トン数トン当たり平均が二千四百円程度であったわけでございます。それを来年度予算におきましては、閉山トン数トン当たり三千三百円程度に——まあこれは全国平均の数字でございます——引き上げることにいたしております。  それから特別閉山交付金は、非常に考え方を異にした制度でございまして、超過債務ごとに着目いたしまして、金融債務の場合にはその七五%、一般債務の場合には取り立て不能額の原則として半分程度、金融債務の場合にも金融機関の取り立て不能額の原則として半分程度、鉱害債務につきましても一定の基準を考えております。各種債務ごとにその超過債務に着目いたしまして、一定割合を国が交付金として交付する、かような考え方に立っておりますので、トン当たり平均額としては非常に算定がまだ事前の段階におきましてはむずかしいわけでございます。大体ただいまの一般閉山交付金の三千三百円に比べますれば相当大きな金額になると思います。
  60. 川村清一

    川村清一君 いや、相当でなくて、大体推定で幾らですか。
  61. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 大体七、八千程度にはなろうかと思います。
  62. 川村清一

    川村清一君 八千になるでしょう。
  63. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 八千円程度は……。
  64. 川村清一

    川村清一君 はっきり。歯切れが悪いなあ。
  65. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) それはまあ結果的に算出されるものでございまして、ちょっと事前の予測はむずかしい問題でございます。まあ八千円程度の相場も立とうかと思っております。
  66. 川村清一

    川村清一君 それですから特別交付金を受けたほうが有利でしょう。
  67. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) どちらの交付金制度を選択するかは、これはまあ当該企業者の選択にゆだねられております。
  68. 川村清一

    川村清一君 あぶない企業は。
  69. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 非常に超過債務の大きい企業につきましては、特別交付金を選択するほうが全体として債務の弁済率がよくなる事態は想定できると思います。
  70. 川村清一

    川村清一君 これは総閉山やらなくちゃ、企業ぐるみやれないとだめですね。
  71. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) そうでございます。
  72. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、特別交付金を受けるためには、その企業は、とにかくことしの四月一日から来年、再来年、四十六年の三月三十一日までに全部つぶれてしまわなければ、まずこれに該当しないということが一点。  もう一つは、ことしの六月一日、——いまは三月ですから、四月、五月、六月ですね、だから五月三十一日までにその企業が分離、それ以後に分離したものはだめ。もし第二、第三、まあ会社を分離してつくるとすれば、六月一日以前に分離しておかなければ、これの法律に該当しない、こういうことですか。
  73. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) さようでございます。
  74. 川村清一

    川村清一君 そういうことですね。はっきり言ってください。
  75. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) さようでございます。
  76. 川村清一

    川村清一君 わかりました。その次。
  77. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして規定されております再建交付金を受けました企業が、特定の場合に事業を閉山の際、石炭の生産事業をやめます場合に、金融機関に対する損失補償の面で特例扱いを許される規定がございます。この点について御説明申し上げます。  再建交付金を受けます企業が、将来石炭の生産事業を廃止いたしました場合には、そこで再建交付金の交付契約、政府との間におきます交付契約は解除されまして、そうして金融機関がその段階で抵当権を実行いたし、回収不能におちいりました損失の二分の一を国が当該金融機関に対して交付をするというのが一般原則でございます。で、それに対しまして特例規定が設けられているわけでございまして、その考え方について御説明申し上げたいと思います。  現在、申すまでもなく石炭企業は、非常に金融債務につきましても超過債務を全体としてかかえているというふうな状況で、そういった状況下におきまして、新しく石炭再建のための金融を受けようといたしましても、担保適格物件が非常に枯渇していると、こういう状況でございます。こういった状況に対処いたしまして、石炭生産金融、特に長期金融につきましては、石炭鉱業合理化事業団の無利子金融を来年度予算において大幅に拡充するための措置を御提案申し上げているわけでございます。同時に一般市中金融につきましても、できるだけそこから石炭再建に必要な資金を調達する努力を企業に慫慂することが望ましいわけでございまして、こういった面の奨励措置といたしまして、再建交付金を受けました石炭企業が、当該取引金融機関と談判をいたしまして、そこで担保の解除を受けて、その解除担保を見合いに、新たに石炭再建に必要な金融を受けました場合に、その企業が昭和四十九年の四月一日以降まで石炭の生産を続け、それ以降石炭生産事業を廃止いたしました場合には、原則的に当該金融機関に対しまして、担保を解除して新たに貸し増ししたことに伴う損を来たさないように、金融機関に対して、先般御説明申し上げました一般原則の二分の一を上回る補償をいたすと、かような制度でございます。そこで、この制度に基づきます担保解除、そしてそれに基づきます新たな金融機関からの借り入れば、昭和四十五年三月三十一日までに実行しなければいけないことに相なっております。こういたしました理由は、現在非常に担保枯渇の状況であり、しかも石炭再建のために企業努力を最大限に発揮しなければいけない、こういった事態においてこそ、金融機関の新たな貸し増し協力を得べき筋合いでございます。本来から申しますれば、再建交付金契約を石炭企業が政府との間に締結いたしますまでに借り入れを実行してもらえれば一番効果があがるところでございます。それもいささか窮屈に過ぎますので、一年間の実行期限を設けた次第でございます。それから、昭和四十九年四月一日以降石炭の生産事業をやめるのでなければ、それまでは石炭生産の事業を継続するのでなければ、このような損失補償措置の特例に均てんし得ないと、かような措置を講ずることにいたしましたゆえんは、この制度の本旨が、石炭の長期的再建に役立つような金融を奨励していくと、市中金融を奨励する、かような意味合いでございますので、少なくとも本新石炭対策の対策期間でございます五年間の間は石炭の生産事業を継続し得るような企業でなければ、この制度の適用対象にしない、かように考えるのが制度の目的に照らして妥当であろうと判断いたしたからでございます。
  78. 川村清一

    川村清一君 担保を解除する、その担保をまた担保にして再融資を受ける、その借りるのは、昭和四十五年の三月三十一日、来年の三月三十一日までに借りてしまわなければならない。しかもその後会社が四十九年の四月一日まで生きていなければ、それがつぶれてしまったのじゃ国はもう補償はしない、こういう仕組みですね。
  79. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) さようでございます。
  80. 川村清一

    川村清一君 大臣、これは新政策ですか。
  81. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まあ、新政策の一環でございます。
  82. 川村清一

    川村清一君 片方は再建のために金融、片方はつぶれるときのいろいろな交付金。これは合理的ですか。これはつぶれることを奨励している政策じゃないですか。
  83. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、一部終閉山のやむなきに至ることも頭に置いて、それに対する対策も周倒でなければならぬと思っておりますが、新政策の重点はあくまでも再建であるというように心得ております。
  84. 川村清一

    川村清一君 再建のための政策と言いますけれども、いいですか、つぶれるほうは四十四年四月一日から四十六年三月三十一日まで、来年、再来年の間に全部つぶれてしまわなければ新しい政策に乗れない。それから、ことしの六月一日までにとにかく分離するものは全部分離してしまわなければ、トン当たり八千円の交付金はもらえない。そうならば、みんな急ぐでしょう。どうですか。
  85. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 制度の上でそういう制約を設ける必要が、実行上あるから設けたわけでございまして、混乱をできるだけ少なくするために、あるいはまた、いろいろそこに不当なことが行なわれないような保障も政府としては考えておかなければいかぬわけでございますので、やむなく置いた歯どめでございまして、それは閉山を奨励するというようなものでは毛頭ないわけであります。
  86. 川村清一

    川村清一君 奨励していないかもしれないけれども、奨励したのと同じじゃないですか。早く条件のいいところでやめたいから急いでやめるでしょう。どうですか。
  87. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもはそのように考えて仕組んだ政策ではないということでございまして、そのようにおとり願わぬように、政策当局の気持ちは御了解いただきたいと思います。
  88. 川村清一

    川村清一君 どうも了解できないです。
  89. 野上元

    ○野上元君 委員長、ちょっと関連。この機会に通産大臣にお聞きしておきたいんですが、石炭がいわゆる熱資源として需要のある期間というものは、政府は一体どう考えておられるか。  それともう一つは、このような状態の中で、政府がもしも熱資源として将来確保しなければならぬとするならば、石炭の現状から見て、これを私企業にゆだねてその熱資源を確保していくというやり方については、もはや今日限度に来ているのではないかというふうに私は見ておるのです。したがって、もしも必要とするならば、これは国営にしてその需要を十分満たし得るような一つの方法を考えるべき時期に到達しておるのではないか、このように私としては見ておるんですが、通産大臣、どういうふうにお考えですか。
  90. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 第一点の問題は、ずっと先の問題は別にいたしまして、昭和四十八年度のこの政策最終目標年度を一応考えますと、原料用炭千百万トン前後、電力用炭も含めまして一般用炭が二千二、三百万トン、無煙煽石等を含めまして、まあ、三千五、六百万トンぐらいの需要はあるであろうというように一応見ておるわけでございます。しかし、これとても競合エネルギーが今後どのような条件で供給されるか、公害の問題その他がどのように進展を見ますか、いろいろなファクターがございますので、一がいに確たることが見通しできないわけでございますけれども、まあ、常識的に考えて、その程度の安定した需要は考えられるというように見ているわけでございまして、それはまた、日本のいまの固有のエネルギーが乏しい国といたしまして非常な貴重な資源であると考えております。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕  それから第二点の問題でございますが、これは石炭政策の根本にかかわる問題でございまして、野上さんおっしゃるように、私企業の限界が来ているのじゃないかということは、私どももそう思います。さればこそ、一次、二次、三次、四次とやってきておるわけでございまして、いろいろ政府が大量の助成をやって、なおうまくいかないわけでございますから、そういう御認識は私どもと共通でございます。しからばこれを、あなた御提案のように、一つの国家が全体の責任を持ったらどうかということでございますが、これは二つの理由から私どもは賛成できないのでございます。  第一は、これはたびたび本会議、また本委員会におきましても御説明申し上げておるとおり、日本の石炭産業の現状というのは非常に複雑でございまして、各企業体の財務状況、経営の状況、賃金水準、企業意識、いろいろの観点から見て、あまりに格差があり過ぎるわけでございます。したがいまして、これを一つにまとめて国が責任を持つという場合には、必ずやこの上のほうに均衡化していく作用を起こすと思うのでございます。  これは第二の反対理由になるのでございますが、とうてい国家財政のたえる限度ではないと考えるわけでございまして、大蔵大臣のほうで非常に寛容で、財源に糸目なくひとつやれというのでありますならば、これはいろいろ考え方はあると思いますけれども、いま考えられる石炭に割愛できる財源が、全体の財源配分の中で、そういう特別会計には原油関税の幾ら%というようなところが限度だということも私ども十分理解できるわけでございまして、そういうワク内におきましての操作を考えますと、たいへん痛しかゆし、帯に短かしたすきに長しという状態で、非常に困るわけでございますけれども、こういった歯切れの悪い政策でございますけれども、そうならざるを得ないのが現実の問題でございまして、問題は、したがって、そういう置かれた状態が非常に複雑であるということ、それから、これに割愛し得る国家の財源というものに一応限度があるというような制約のもとにおきまして、いろいろくふうをこらして何カ月もかかってでっち上げたのがこの新政策であるということでございますので、たいへん歯切れは悪いのでございますけれども、歯切れの悪いのは私のことばでなくて、事態のほうが歯切れが悪いのでございます。ひとつ御了解を賜わりたいと思います。
  91. 川村清一

    川村清一君 大臣、金融面から言いますがね。四十五年三月三十一日−来年の三月三十一日までにはずされた担保について再融資を銀行は貸し付けなければならない。そうして、貸した先のその会社が四十九年四月一日まで生きておらなければならない。つぶれるならばその以後でなければならない。それ以後になって回収される見通しがなければ銀行は貸さないわけですね、金融機関のほうは。借りるほうは、もう少し先のほうが担保価値があるわけですね。担保価値のない来年の四月一日までに借りなければならない。これで一体再建のための政策だと言えますか。
  92. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは新政策の性格の一つとして再建に力点を置いた、重点を置いたと私が申し上げたゆえんでございまして、そういう石炭再建に熱意のある、またそれだけの用意を整える熱意のあるものでなければならぬということは、再建意欲的な政策である証拠であると思うのです。たいへん窮屈なようでございますけれども、そういう制約はちゃんとはめておかないといけないと私は考えます。
  93. 川村清一

    川村清一君 ある制約をはめておくのはそれはもちろん必要ですけれども、非常に借りるほうにも貸すほうにもその企業家に非常に無理なような、また、片方のほうは早くつぶれることを慫慂するようなこの新政策は、まことにごまかし政策である。政策議論をしたいのですが、時間がありませんので、またいずれかの機会にやりますが、全然ごまかし政策であることをはっきり申し上げておきます。  そこで労働大臣にお尋ねしますが、こうして次から次につぶれていって、そして離職して投げ出される労働者に対して七五%しか退職金を払わないなんというこんな非情冷酷な仕打ちはないと思うのですが、どうですか。
  94. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  七五%は、そのとおりでございます。しかし、まあ普通の企業におきましては、それは企業の自分のみずからの責任において全額支払うということは、これは御案内のとおりでございます。しかし、今回の答申によりますと、石炭鉱業の特殊事情、これを非常によく考慮いたしまして、その再建するものに対しては再建交付金というものを出し、これらに新たに退職金及び従業員の未払い賃金、預かり金などの弁済を含める、これは新たに出したものでございますから、非常に政府としては考慮して、新たにこれを入れました。しかも七五%。それから、これは他の債務に先立って優先的に、労務者に出しておる退職金とか従業員の未払いをやれと、こういう指示をいたしております。他の会社の債務に対しては再建交付金から五〇%以内ということにしておりますが、労務者に対しては優先すること。しかも七五%やること。他の一般債務より優先して七五%やると、こういう特別の考慮を払ってこのたび新たにそういう趣旨を盛り込んだところでございます。それで、まあこういうことをやりましても、なるほど七五%、あとの二五%をどうするか、こういう問題が依然残ります。しかしながら、私どもの見るところでは、まあ二五%も会社のほうにおいてもこれを支給するように労働省といたしましても行政指導をいたして万遺漏なきを期していきたい。まあ、これだけがすべての終わりでございませんで、今後ともいろいろ諸般の、万般の政策につきましては通産省と協力し、だんだん改善をいたしていきたい、こういうふうに思っております。
  95. 川村清一

    川村清一君 いままでの離職者は退職金を一〇〇%以上にプラス・アルファをもらっておったのですよ。それを、今日まで一生懸命働いてきて、自分の責任で企業がつぶれるわけでないのですよ。それが七五%。しかも、現在の労働者は、一人当たり出炭量はいままでの三倍、四倍に働いておるのです。これで一体いいのですか。妥当ですか。通産大臣、どう思いますか。少なくとも一〇〇%払うべきですよ。
  96. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、いままでおやめになられた方が一〇〇%の退職金をお受けになられておって、最後まで忠実に山に残られた方々が七五%しか受けられないというようなことは、仰せのとおり、たいへん公正を欠くことと思うので、実際上そうだと思います。ただ、国が保証する限度の問題といたしましては、七五%という賃金債務の保証限度というのはもう破格のこでございまして、それ以上、これを一〇〇%にしろということは、制度の問題としては私はこれはたいへん不可能はことじゃないかと思うのでございます。そこで、実際の問題といたしまして、各企業がこれにプラスをいたしまして、企業努力を加えてまいりまして、現実の問題として一〇〇%の退職手当の支給が可能なような条件をつくっていくということに精一ぱい努力してもらわなければなりませんし、私どもも、石炭行政の問題として閉山企業について弾力的な補完措置がはかれるようにあの手この手いろいろ考えてみなければならんと考えておるのでございまして、制度の問題としては、もうほんとうに考えられる異例の援助であるということは御了解いただきたいと思いますけれども、何とかして財源の二五%を埋める企業努力に対しましてどういう補完的な措置をやってまいるかということは、私どものほうも一生懸命に御相談に乗ってあげなければならんと考えておる次第でございまして、今度の政策の施行の最初の試練が、いま仰せのとおり、退職金問題であろうと存じまして、いま鋭意検討を重ねておる最中でございます。
  97. 川村清一

    川村清一君 その点はぜひ努力していただきたいと思います。  それから産炭地市町村の経済は全く崩壊せんとしております。これに対して通産大臣、自治大臣どういうふうな一体対策を立てようとなさっておるのか、ここで明らかにしていただきたい。
  98. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) 御指摘のように、産炭地域の地方団体の財政が非常に窮乏しております。この実情に照らしまして、自治省といたしましては、地方交付税及び地方債の重点的な配分を考えており、所要の財政措置をやっております。四十三年度におきましては、大体特別交付税におきまして、県分と市町村分を合わせますと大体三十九億円を措置することにいたしておりますが、四十四年度はいまの再建の法律が出てまいりますとさらに財政は悪化するというので、相当これは四十四年度は増さなければならん。地方債におきましても同様でございまして、大体四十三年度は三十五億円くらいの措置をいたしておりますが、四十四年度は一応四十五、六億は用意しなければならん、もっと要るかもしれぬけれども。実情に照らしてできるだけの財政措置をいたしたい、こう考えております。
  99. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今度の石炭予算の中で、八百八十余億円の中で、わずかでございますけれども、十億円財政対策のお金をちょうだいいたしております。これは自治省等々と御相談申し上げまして、わずかでございますけれども、着実に配分してまいりたいと思います。ただ問題は、根本はそういった輸血的なことではなくて、産炭地の全体の経済の振興にかかっておると思うのでございます。最近ようやく産炭地に対して企業が進出する機運が出てまいりました。過密都市の地価が高いとか、あるいは労働力の確保がむずかしいとか、いろいろな条件もございまするし、地元の熱心な誘致運動、それに対する税制その他の助成措置と相まちまして、だんだんと出てくる機運になってまいりましたのでございまして、本格的には、そういった産炭地に出てまいる新しい企業の育成を通じまして、産炭地の市町村の財政をその実態からよくしていくような方向に私どもも施策を進めなければならぬと思っております。せっかくいままで先行投資をいろいろ政府もやってまいったわけでございますから、その果実はこれからわれわれ大いに吸収せなければならぬ時期が来たと考えております。
  100. 川村清一

    川村清一君 運輸大臣に、先日は私鉄、地方鉄道の問題をお聞きしましたが、産炭地の赤字国鉄路線についてのお考えを聞かしていただきたい。
  101. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 産炭地赤字国鉄路線というのは具体的にどういうことか、私鉄の問題については申し上げましたが、国鉄の赤字路線の問題につきましては、何度も申し上げておりますように、その地方の状態というものをよく見て慎重に考慮していきたいと思っております。
  102. 川村清一

    川村清一君 最後に、この第四次答申は、答申では最終的なものであるといっておりますが、佐藤総理は、衆議院の本会議あるいは予算委員会等においても、最終的なものではないということを言われておるわけであります。では、内容的にはどういう点をさしているのか。私は、体制の再編成をさしているのではないかと思うのですが、いわゆる体制に触れていませんから、体制の再編成なくしては最終的なものではないというようなお考えで、佐藤総理は言われているのではないかと思うのですが、通産大臣のお考えを述べていただきたい。
  103. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 総理大臣の御認識は、石炭産業の危機は、第四次の、せっかくの政策をもっていたしましても、完全に克服できるような——、それよりはもっともっと深いのじゃないかというような御認識であろうと思います。とりわけその御答弁は、体制問題に対する御質問に対して答えられたわけでございます。御指摘のように、体制問題に関連しての御答弁であったと思います。仰せのように、石炭政策というのは一口に言うと体制問題だと思うのでございまして、この政策が、完成年度になりまして、なお体制上脆弱な点があると、自立産業としてやっていけないようなものがあるいは残るかもしれませんけれども、そういった懸念を表明されたものと思うのでございます。
  104. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして川村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  105. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、亀田得治君の質疑を行ないます。亀田得治君。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 万博問題にしぼって質問をいたします。  最初に、この万博の準備状況、いろいろうわさされておるわけですが、間に合うのかどうか。そういう点について菅野担当大臣、また関連事業等について、建設、あるいは旅客——入場者の輸送問題、こういう点についてひとつ運輸大臣、それぞれお答えを願います。
  107. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 万博の準備状況全般の概略について、私からお答え申し上げたいと思います。  昭和四十年の九月に日本万国博覧会の大阪開催が決定して以来、政府としては、地元及び協会と協力して鋭意準備を進めてまいりましたが、限られた時間内に日本で初めての行事を行なうため、種種困難な問題に遭遇いたしましたが、関係各位の御努力により、開幕まであと一年の現在、諸般の準備は軌道に乗り、りっぱな博覧会が実現することを確信しておりまするし、私も先般敷地を回りまして、これならばだいじょうぶだという自信を得た次第であります。  なお、具体的な問題について進捗状況を申し上げますと、まず第一に、外国の公式参加の問題でありますが、現在では六十三カ国、一政庁、三国際機関の参加が確定しておりますほか、なお参加が有望な国が十カ国程度あるので、万博の史上においては最大の参加規模となる見込みであります。  会場の建設は、これはもっぱら協会が担当しておるのでありますが、敷地造成工事は昨年八月に完成しまして、目下、道路、配管、建築物等の工事を行なっておるのでありますが、配管工事は本年度中に完成する見込みであります。その他の工事も現在ではおおむね計画どおりに進捗しており、会期までに十分間に合うものと確信いたしております。  内外の展示館の建設状況は、現在、外国関係では二十二カ国、二国際機関、三州、一企業で、合計二十四館が着工済みで、国内関係では、政府館、自治体館、電気通信館のほか、民間二十五館、計二十八館が着工済みであります。  関連事業のことにつきましては、大体各大臣から詳細なお答えがあると思いますが、これはもう四十二年の八月に、総額六千三百七十八億円の関連事業の計画が決定いたしまして、そうして目下関連事業については進行いたしておりまして、全体の計画に対する進捗率は、四十三年十二月までで四四%、本年三月まででは五七%に達する見込みでありまして、大体本年末までには完成するつもりで事業を進捗いたしておるのであります。  今後の施策といたしましては、労務者対策を含め、これらの諸準備の総仕上げに万全を期するほか、会期中の運営、交通、宿泊計画等については、なおこまかい措置を講じてまいりたいと考えておる次第であります。
  108. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 万博の関連公共事業の建設省所管の進捗状況及び完成の見通しについてお答え申し上げます。  建設省所管分は、道路、街路、河川、下水道及び公園の各事業についてでありますが、総事業費は約四千十二億円でありまして、昭和四十二年度には約九百四十四億円の事業を実施しました。昭和四十三年度は約一千百三十三億円の事業費で鋭意実施中でありまして、その進捗率は、昭和四十四年二月末現在で九四%に達するものと見込まれております。昭和四十四年度については、国庫債務負担行為百十三億円を含め、事業費約一千六百十三億円で実施する予定であります。これを達成すれば、総事業費に対する進捗率は九二%になり、地方公共団体の行なう用地先行取得などを含めまして、所期の目的は達成できるものと考えております。事業の実施状況はおおむね順調でありまして、万国博覧会の開催に支障がないよう、関連公共事業の整備に今後とも努力する所存であります。
  109. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 万博の開催に伴いまして、海外からの観光客を含めまして大量の観客の輸送、宿泊等の受け入れの適切を期するため、当省といたしましては、会場を中心とする鉄・軌道、大阪国際空港、港湾施設及び宿泊施設の整備をはかっております。万博の入場者については延べ三千万人と予想されておりますが、特に行楽期の休日等について多数の入場者が殺到することも考えられますので、この輸送については万全を期する所存でございますが、政府の決定いたしております四十二年から四十四年、総事業費に対しまして事業の進捗は順調でございまして、国鉄、大阪市営高速鉄道、私鉄、空港、港湾、観光、それぞれ大体所期の目的を達成されるであろうという見込みでございます。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 石坂万博会長が月の石を展示する、こういうことについて何かアメリカソ連などと折衝されておるようですが、実情を明らかにしてほしいと思います。きょうは石坂さんに来てもらいたいと思ったんですが、鈴木さんでもけっこうですが。
  111. 鈴木俊一

    参考人鈴木俊一君) 石坂会長はちょっとからだの都合で出席できませんので、私かわって参りました。  月の石の問題は、協会のほうから石坂会長名をもちまして、アメリカ大使館並びにアメリカの博覧会政府代表、さらに引き続きましてソ連の大使館及びソ連の博覧会政府代表、それぞれに書面をもちまして、もし博覧会の開催時期までに間に合いましたらば、月の石を出展してもらえばまことに観客の興味をそそってけっこうである、ぜひひとつさようなことができるように御協力を願いたい、こういう書面を出した次第でございます。それに対しまして、それぞれ両国から、できるだけ協力をすると、こういう回答を得ております。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 万博当局は何パーセントぐらい可能性を見込んでおるんですか。
  113. 鈴木俊一

    参考人鈴木俊一君) これは私どもとしましては、さようないろいろ新聞等の情報に基づきまして相当可能性があるということで、先方の政府代表等とも内々話しまして、書面を出してもらいたいと、こういうような実際上の話がございまして、さような手続をとった次第でございます。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 まあ大体おめでたい御説明があったわけですが、これから私は少しこの万博に対する批判面ですね、いろんな批判が出ておる。それらについて率直にひとつお聞きをしていきたいと思います。  三月の十四日の朝の七時二十分でしたか、NHKの街頭の声、これは東京ですが、率直に言って無関心の一語に尽きる、こういう感じを受けた、私も聞いていたんですが、大臣どうです。
  115. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私もあれをテレビで見ておりました。全然万博というものを知らぬと答えた者が一人です。ほかの人は皆大体知っておるが、いつ開かれるかということは知らない。万博というものが日本で開かれるということは、大体国民には徹底しておるんではないか、こう私は感じたわけであります。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 同じことを見て、そういう受け取り方ではこれは甘いですよ。ぱっと質問される、全然われわれに関係ないとぽんと突き離すようなのもあれば、いろいろなんです、これは。そんなあなた自分の都合いいところだけを見てはいけない。これはなるほど期日が切迫すればもっと関心が私は高まると思う。しかしそれだけに政府のやり方が悪ければ反対する人もまたふえてくると思うんです。だから決していまおっしゃったような楽観的な見方だけではいけないと思います。  そこで具体的に、まず私は、アジアの万博ということを言いながら中国を招請しない。これが一番われわれの納得できないところ、そういう声もたくさん出ておるわけです。これはどういうわけでしょう。
  117. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この問題につきましては、アジアで初めての博覧会でありますから、お話しのとおり中国などは当然入ってもらいたいというのがわれわれの考え方でありますが、また御承知のとおり中国という国は歴史の古い、文化、伝統のある国でありますからして、これはアジアの初めての博覧会にやはり出展してもらうことが望ましいことだと思いますが、しかし御承知のとおりこの博覧会は国際博覧会条約に基づく公式の博覧会でありますし、招請は同条約の第五条によりまして、外交ルートを通じて行なうということにされておりますので、政府わが国と国交のある外国政府百三十に対し在外公館を通じて四十一年九月から招請を行なったのであります。しかしながら、現在のところ国交のまだ回復していない中国、北朝鮮等に対しては残念ながら招請の手段がないのでありまして、その点において私個人といたしましては、中国が参加していないことはさびしい気持ちがいたします。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 万博条約の解釈ですが、この国交のない国からは招請してならない、そういう読み方をすべきじゃないと思うのです。正規の国交がなくても、何らかの方法で接触する方法はたくさんあるわけです。それも一つのルートなんですね。現に中国にはほかの面ではあるわけです、間接的なそういうルートが。ともかく万博の精神から言えば、できるだけたくさんの国が集まる、これが何といっても基本的に流れておる精神なんですね。国を飛び越えて企業と直接取引をしたりする、そういうことでは秩序が乱れるからいけない。そこに私は重点があると思う、外交ルートという問題は。未回復国についてくふうをして、そうして参加をしてもらう、これは私は少しも条約の条文並びに精神に反しないと解するのですが、これはどうですか。
  119. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) そういう問題につきましては、外務当局から答えたほうがいいのかと思いますが、私はそういう条約のことについては知りませんからして、ただ私の考え方を申し上げてみたいと思います。いまお話しのとおり、ほかの手段でも講じて招請したらどうか、勧誘したらどうかという御意見、それはまことにごもっともな御意見だと思いますが、しかし、いまの日中の国際間の状況のもとにおいては、おそらく私は、よしや勧誘しても中国は参加しないのじゃないかというように一応私自身は考えておる次第であります。
  120. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっと関連。菅野さんは、これは外務省管轄だと言われますが、あなたは大体万博の責任者になっておるのですから、そういう逃げ方はひきょうだと思うんですね。今度の万博のテーマを見ましても、要するに条約国でないからどうこうじゃなくて、オリンピックの場合もそうだが、やはり全世界の人々が平和を競うことで開かれるものでしょう。だから、国交が回復していないから呼ばないのだ——招請して応ずる、応じないは相手方の問題だと私は思うんですね。主催国である日本の責任者は、やはりそこまで見て初めて万博という——単にあれはいわゆる国際的な商品見本市じゃないんですね。そういう趣旨からの万博に対して、国交は回復していないから、呼ばない。私は中国がどうこう言うわけではないんです。全世界の民族が自分の考え方をあの一堂に集めて、そして世界の平和に寄与しようというのでしょう。だから、いまからでもおそくないから、やはり招請をして、日本の真意を世界の人々に示すべきだと思う。そういう考え方はあなたにあるかないか。あなたはよほどこういう点については理解がある人だと思って私は質問するのだから、外務省ということで逃げずに、あなたはどうかということを聞きたい。
  121. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私の意見は、先ほど申し上げましたとおり、中国が参加していないことは非常にさびしい思いをしておるということ、これはアジアの博覧会でありますからして、あの伝統のある、歴史のあるアジアの中国が参加してもらったほうがほんとうに意義がある、こういう私は考え方ですが、しかしそれは、中国が参加していないことは私自身にとっては非常にさびしい思いがしておるということは先ほど申し上げたとおりであります。
  122. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、今後、これからやるかやらぬか。
  123. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) これからも、いまの日中の状況のもとにおいてはそれはおそらく不可能だと考えております。
  124. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、不可能じゃなくて意思ですよ、できない、じゃなくて。
  125. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) やったところで効果がないものであれば、かえってやらないほうがいいんじゃないかと、こう考えております。
  126. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、ぼくはそこが問題だと思うんですよ。菅野企画庁長官ね、おそらくこれからやってもむだだろう、それはわれわれもそういう危惧をいたしますが、しかし万博の精神からいえば、やはりその手続を一応とって、向こうが応ずるか応じないか、これは別問題である。それだけの私は真意を示すべきでないかということを尋ねたのであって、不可能かどうかということは、相手方のあることですから、一国でも多く参加してほしいのでしょう。あなたのさっきの説明では、あと十カ国とか言って、万博としては記録的な参加だと言われたでしょう。一国でも多く参加さしたいのだったら、これからは万難を排して来ていただけぬかというくらいの招請状を出す意思がないかどうか。意思がなければ意思がないと。
  127. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) そういう問題になってくると、私がなんぼ出してもらいたいと思っても、条約上出せないということになれば、あくまでも外務大臣にお答えしてもらったほうがいいかと思うんです。私自身はいつでも、あしたからでも、中国が参加しようと言えば、参加してもらいたいという気持ちを持っております。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 ここに会議録がありますがね。昭和四十一年六月二十七日、万博が当初問題になったときの商工委員会で、三木さんが通産大臣をしておられて、三木さんが当時は担当だったわけですね。三木さんはこの問題について、第二段階においてその点を検討し、努力する、こう答えておるのですよ。不可能なものなら二段も三段もありはせぬ。そこで私はお聞きしたいのは、これは何も違法という問題じゃないのです。したがって、どういう努力をしたのかと言うのです。ちっとも努力をしない、くふうもしないで、だめだろう、これでは私はいかぬと思うのです。また国会における答弁の約束にも反すると思うのですね。日本政府としてはどんな努力をしたのか、具体的にここで説明してください。
  129. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私は当時の三木通産大臣からは、中国の参加はだめだということの結果だけ聞いております。どういうようなことをされたかということの詳しいことは私知っておりません。聞いておりません。で、そういう点はもちろん外務大臣あたりのほうがお答えになったほうがわかるのじゃないか、こう思う次第であります。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 外務大臣を呼んでもらおう、委員長。これは担当大臣ですから全部知っておらなければならぬわけです。
  131. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 亀田君に申し上げます。亀田君の要求大臣には外務大臣が入っておりませんでしたので、その手続をとっておらぬわけでございますが、亀田君としては外務大臣招致の必要があるといういまの御発言でございましょうか。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 万博は全部の大臣が関係があるのですが、ただ各種委員会等もあるからできるだけしぼろうと思ってしぼったにすぎない。しかし、ただいまの招請の問題は、これは重要なことですからね。担当大臣は当然了承しておることだという気持ちで私は削ってあるわけです。だからいまのような答弁ではちょっとぐあい悪いですよ。大事な問題なんですから。何か外交上の技術的なことでちょっとわからぬということなら、それはまた別な機会に回してもいいのですが。
  133. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 亀田君に申し上げます。ただいま外務大臣がどういう状況か判定はつきませんが、ただいまからこちらに出席するように努力をいたします。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 官房長官にひとつこれは総理のかわりとしてお答え願いますが、この中国問題ですね。アメリカにおいても非常に対立しておる面ばかり強調しますけれどもね、日本政府は。そうじゃないのですよ。アメリカにおいてすら別な意見というのが非常に強く出ておるのですよ。万博が開催される来年にはどうなるかわからぬですよ、それは。だから、そういう意味からも、もう少し大所高所この問題を私は考えてほしいと思う。総括じゃありませんから、ひとつ官房長官、所見を承っておきたい。
  135. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 経済企画庁長官が万博担当大臣をされておりまして、外交関係外務大臣、その他の主管関係においてはそれぞれの主管大臣と御相談をされて取り進めておられ、ただいまのような御発言がありました。それ以上に私からお答えいたすことは御遠慮すべきであろうと思いますが、ただ、お話の点は、あなたの御発言の趣旨は総理大臣にお伝えしておきたいと思います。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ委員長。これはどういう努力をしたのか。これは国会で第二段階としてその問題は検討し、努力すると言っておるのですからね。それを聞かしてもらわなければ次の質問に進めませんよ、重大な問題なんだから。それは中国はだめだと聞いておる。そういうあいさつだけではね。だめだと、そんな断定はできないでしょう、現在の日中関係を一応認めるとしても。外務大臣を呼んでください、そういう点は一切外務大臣にまかしてあると言うんなら。
  137. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) それでは亀田君に申し上げます。ただいまから外務大臣を本委員会出席する手続をとることにいたします。残余の問題につきまして御質問を続行願いたいと思います。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 第二は、原爆展の問題です。私は世界平和を前進させるという立場から、ぜひ世界のただ一つの被爆国である日本の経験、体験というものを完全な形で展示してほしい、こういう希望はずいぶんたくさん出ておるわけですよ。これも当初は政府は検討する、こう国会で答えてきておる。ところが、最近政府から出されてきた政府館の中身、これを見ますると、四号館のほんの一部にちょっぴりそれが出てくる、こういう程度のものなんです。これははなはだ私は中途はんぱであり、ほんとうに平和を願っておる国民の気持ちにこたえたやり方ではないと思うんです。この点についての所見を承りたい。
  139. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御指摘のように、原爆関係の展示は第四号館に置くことになっております。この具体的なデザインにつきましては愛知芸術大学の河野教授に作成を委託してまいりましたが、同氏から二つの巨大な円筒の内部に置かれる二枚の展示用織物で表現する案が出されております。この織物はそれぞれ横が約十八メートル、高さ約九メートルの大きなもので、その一枚では原子力のあやまった使用、すなわち原子爆弾による破壊と悲惨をあらわすことにし、他の一枚は原子力の平和利用、いわゆる明るい未来を暗示するようにもくろんでございます。これによりまして原子力の正しい平和的な利用を願う日本国民の心情が美しく表現されるのではないかと期待いたしております。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 原爆のできるだけなまに近いものを展示する必要があるんです。何といっても現実というものが人間の心に一番訴えるんです。そんな横からいろんな専門家の人が手を加える必要はないんです。そういうものは日本にたくさんあるんですから、なぜそれをそのまま示すようにしないのかと、そこを聞いておるわけなんです。
  141. 井上保

    説明員(井上保君) お答えいたします。  原爆の展示でございますが、原爆展示を万博に展示いたしますのは実は五八年のブラッセル博覧会で日本の最も大きな展示物といたしまして原爆の展示をいたしたわけでございます。これは日本館のすみからすみまで非常に大きな写真を出しまして、その中で原爆の悲惨な状況を展示したわけでございます。そのときの状況をちょっと余分でございますが申し上げますと、ブラッセルの場合には、ヨーロッパの連中がやってまいりまして入る前にそこで黙祷をするというような、三十分も黙祷をしている人がいるというようなことでございまして、そういうようなことで展示をいたしたわけでございます。今回は第二回目の展示でございますが、先生の御指摘のとおり、なまなましい展示はこれをいたしませんで、原爆のあやまった用い方につきましてのおそろしさというものを抽象的にあらわしますと同時に、日本には広島に原爆の展示記念館——平和記念資料館がございましてそこに原爆のいろんなデータが集まっておりますので、そこで原爆の真の姿は見ていただきたいというようなことで展示をいたしたいということでございます。  それから原子力の有効な利用につきましては、四号館のやはり終わりのところでございますけれども、そこで明るい将来への展望という取り上げ方をいたしておりますわけでございます。簡単でございますが。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 問題になりました原爆映画の映写といったようなものは企画の中に入っておるんですか。これはもちろん人物だけは除外したほうがいいと思うんです。あとは私はそのまま写したらいいと思うんです、手を加えないで。世界におけるただ一つのこれは原爆のなまなましい映画なんです。そういう企画は入っておるの。
  143. 井上保

    説明員(井上保君) お答えいたします。  映画の映写は入っておりません。さっき申し上げましたように、原爆の記念館が広島にございますので、そこで原爆の実情を外国の方には十分に見ていただきたいというような感じで収集をいたしております。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 原爆映画というものを取り入れるのは当然だと思うんですが、いまからでもこれはできるでしょう、上映ですから、菅野さんどうですか。鈴木さんでもいいよ、協会がやる……。
  145. 鈴木俊一

    参考人鈴木俊一君) 協会のほうのことは私どもの所管でございます。その点を申し上げますと、博覧会協会といたしましては、やはり立場がインターナショナルの立場でございますからテーマ館を会場につくりますけれども、これはやはり日本的な立場だけでなくやはり国際的な立場で展示をする、こういう考え方でございます。そしてテーマ館の中の未来の空中の場に一応場所を予定しておりまして、その場所は「矛盾の道」というタイトルの、テーマ館の一部でございます。ここは人類の貧困と富裕と申しますか、あるいは戦争と平和と申しますか、そういったような相矛盾する両面をとらえまして、そこからテーマの「進歩と調和」というものを読みとらせよう、こういう考え方で、やはり原爆に関しまして写真あるいはプロジェクターによりまするフィルムによりましてこれを展示すると、こういう計画でございます。協会には、テーマ委員会という茅先生が委員長になっておりますものと、それからテーマ展示のプロデューサーとして岡本太郎さんと、二人、中心になる人物がおいでになりまして、これらの先生方と相談をいたしまして最終的な展示をいたす予定になっておる次第でございます。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 原爆映画はどうなんですか。
  147. 鈴木俊一

    参考人鈴木俊一君) 私どものほうといたしましては、目下のところさような映画を上映する予定はございません。いま申し上げましたような、写真あるいはプロジェクターによる特定のフィルムの映写——映写と申しますか、プロジェクトをするわけでございます。それだけを考えておる次第でございます。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 政府館のほうもそういう考え持ちませんか。どうなんです。
  149. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 亀田先生の御意見として承っておきますが、私どもの心がまえといたしましては、専門家が非常に意匠をこらしてくふうをいたしておりまするので、なるべくそれを尊重して差し上げたいと思っておりますが、本日御論議になりましたことは、協会側にもよく伝えてみたいと思います。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく、協会もいろんな展示なりそういうことについて専門家に委嘱をしたりしていることは私も聞いております。しかし、事、原爆の問題とかこういう問題になれば、ほんとうに総理大臣が真剣に考えて具体的に指示すべき私は問題だと思うんです。だから、ぜひこれは検討をしてほしい。きれいなものばかりを並べるような構想では、自分たちには縁がないという空気が必ず大衆の中から出てくることは、これはもう明確なんです。自分たちが関心を持っていることを取り上げてくれりゃ、ほっといたってこれは関心持ちますよ。ああいう映画というものはもうつくろうと思ったってできないんですから、貴重な存在ですよ。いろんな美術品を集めたり、たくさんいろいろくふうされておりますが、決してそれらにまさるとも劣るものじゃない。ぜひひとつこれは、いま通産大臣お話がありましたが、真剣に検討をしてほしい。  それから次に、やはり展示の問題ですが、公害問題ですね、公害問題。これは日本だけじゃなしに、いまや世界的な問題ですね、御存じのとおり。そうして、もうけるためには人にどんなに迷惑かけても知らぬ顔をしておる、これが公害問題の基礎にある間違った精神なんですよ。こういうところから、いい人間、よい社会なんというものは絶対生まれるものじゃありませんよ。そのために、人間性、自然というものが大きく破壊されている。世界的な問題になっているわけです。なぜこういうことをもっと大きく取り上げないのか。私全部これを調べたところが公害という二字がちょこっとこれも入っております、政府館の中に。これはつけ足しですね。しかし今日の大衆の気持ちからいうならば、こういうものこそ一方ではきれいな進歩する面と同時に取り上げてほしい、みんなで考え合いたい、こういう気持ちでおるわけですね。なぜこれをもっと大きく取り上げようとしないのでしょう。
  151. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まあ仰せのとおり公害問題が最大の社会問題、産業問題の焦点になっていることは仰せのとおりでございます。ただお話を伺っておりますと、もうけるためには人の迷惑を顧みないという精神がびまんしておるかのようなお話でございましたが、そういうことではなくて、日本の産業界としては、従来はなるほど公害というものを一つの産業の与件として受けとめて、自分の経営の許す範囲内において処理するという程度の取り組み方であったことは事実でございますけれども、今日そのようなぞんざいな考え方でおる産業家はいないのでありまして、実際産業の経営に当たりましての大きな一つの柱として、与件ではなくて、これはもう実態問題の最大の問題の一つとして取り組んでおるわけでございますから、その点は誤解のないようにお願いしておきたいと思います。  それで、今度の万国博覧会のこの取り上げ方でございますが、正直に申しましてまだ十分全貌が明らかになっていない、目下検討中でございまして、先ほど鈴木事務局長が仰せになりましたような、「矛盾の道」というタイトルのところで公害問題を取り上げようとしておりますが、内容はまだかたまっていないのでございます。これからの検討問題でございます。それから第二号館で、日本人の生活というのを展示することにいたしておりますが、ここでは日本人の生活水準、内容というものを展示いたしますとともに、そこに伏在するもろもろの矛盾、不調和ということを示しまして、その解決を通じて明るい未来への示唆を示そうといたしております。  それで、公害問題はそういう意味におきまして重要な事項として積極的に取り上げる気がまえでおるわけでございまして、写真、パネル、都市公害、産業公害等、いろいろな問題を展示いたしたいと考えておりますが、まだ全貌が全部かたまった段階ではございません。鋭意検討中でございます。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 この昨年の十二月三日、国連総会で生活環境に関する決議というものが満場一致なされておるのです。厚生大臣に知っているかと言ったら知らなかったようですから、私さっき資料をお渡ししたのですが、こういう大事なことを厚生大臣がお知りにならぬというのも、はなはだもって心外なんですが、これはスウェーデンが提案したものです。この提案理由の概略といいますか、大臣ちょっと御説明願います。
  153. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 先ほど亀田さんから御注意を喚起されまして、私もこれで思い出しました。資料も拝見したのでありますが、昨年の五月にニューヨークで開かれました四十四回の国連の経済社会理事会で、スウェーデンの代表が人間環境に関する国際会議を国連主催で開くことを提案をいたしました。そうして、これが採択をされました。その概要は、無計画、無制限な開発は人間の環境を破壊し、生活の根本を脅かしつつある、このような技術革新の否定的な面をあらゆる角度からとらえ、国連における討議を通じて、この深刻な問題に対する理解を深め、人間環境の破壊を伴うことなく、調和のとれた開発を確保するための方策を検討する要があるというのが提案の趣旨でありまして、まことに当を得た提案だと考えております。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういうわけで、いまや世界は進歩進歩と、前進すると月まで行くと、そういう面よりも、それよりも身近な環境の問題がどうなるのかと大きな関心が集まってきているんです。国連の決議にまでなっている。だから、いままでの万博といったようなものとそういう点で違いが出てこなきゃいかぬと思うわけです。この前の万博は、進歩の面ではここまできた。今度はもっとここまでいくんだ、これじゃ何も質的な進歩というものはないわけですよ。国連でもこういう決議がされておる。だから、そういう際ですから、日本が本格的にこの万博の中で公害の悩みというものを取り上げてごらんなさい。三千万の世界の人が集まってくるというんでしょう。それを見て、これは何とかしなきゃならぬと世界じゅうの人たちが考える、このことが大事なんでしょう。一九七二年にそのための国際会議をやろうという決議なんですね、これは。そういう国際会議を成功させるのは、やはり何といっても世界じゅうの人の認識が深まることです。それを深めるのにはいいチャンスなんですね。私は、これは、こんなたくさんの展示の中の一こまというようなことじゃなしに、公害館ぐらいつくってでも、しっかりとした取り組みをやってほしい。たとえばイタイイタイ病、現実になまのものをわかるようにやりなさいよ。私もイタイイタイ病の方に会いましたし、お話もしました。だれでもその方に会えば、これはほっとけぬという気持ちになりますよ。そんな抽象的なことじゃだめだ、ほんとうの気持ちは湧いてくるもんじゃありませんよ。通産大臣はまあひとつ真剣に考えようという趣旨のことを申されましたが、私はここに特色を持たしてほしいと思う、こういうところに。月の石もいいですよ。しかし、それがきたって、大体こういう石にきまっているんだ、そんなものは。珍しいから見に行く人はあるかしれぬけれども、そうことでは、ほんとうに毎日毎日の新聞をお互いに見て、これじゃいかぬとみんな思っているんでしょう。その問題に真剣に私は取り組んでほしい、真剣に。材料は幾らでもあるわけですから。まあ政府のほうはそうお答えになったが、協会の方どうですか。どんなプランがいままでできておるか知らぬけれども、その中に織り込んでください、織り込んで。
  155. 鈴木俊一

    参考人鈴木俊一君) 先ほど通産大臣から御答弁がございましたように、博覧会協会のテーマ館の「矛盾の道」というカプセルにおきましては、さっき申し上げましたもののほかに、ただいまいろいろ御指摘になりました都市公害、あるいは産業公害といったような公害に関しまして、先ほど申し上げた同じような手段によりましてこれを展示したい、そして、ただいまお話のるるございましたような趣旨に沿うようなテーマの展示をしたい。博覧会協会といたしましては、テーマの趣旨が「進歩と調和」でございまして、先ほどの月の石というのは、まさに進歩の面を取り上げようという一面でございますけれども、この「矛盾の道」というのは、現実に存する進歩に伴いまして生ずるいろいろな公害、あるいは社会的な罪悪、そういうようなものを対比いたしまして、その館から調和のテーマの趣旨を観客に読みとっていただくようにしたい、こういう趣旨で設けているわけでございまして、ただいまお話の趣旨は協会のテーマ館におきまして十分湧現するように、岡本。プロデューサー、あるいはテーマ委員会委員長にも申し上げたいと思う次第でございます。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃさらに問題を進めまして、企業館ですね、たくさんあるわけですが、私はこの図面を見て、あまりにも多過ぎると思う。出しゃばり過ぎている。これは政府館などとの比率ですね、面積比率がどういうふうになっているか、ひとつ数字的に明らかにしてほしい。
  157. 井上保

    説明員(井上保君) お答えいたします。  現在まだ外国で参加してきていない国もございますけれども、そういうものも一応考えてみまして、最初のでき上がりで一応試算をしてみますと、全体の敷地面積が約四十五万平米くらいになるのではなかろうかと思います。そのうちで、外国及び国内の民間館の割合が約三分の一、三四%程度ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 政府館でどうです。政府館とか地方館は。
  159. 井上保

    説明員(井上保君) それ以外のものでございますが、そのうちに、公式参加国、これは日本政府であるとか、あるいは外国政府、国際共同館、国際地方館を入れまして約五八・六%程度、それから、準公式参加といいますか、外国の中都市であるとか国内の地方自治館であるとか、あるいは専売、電電公社等を入れますと七・三%でございます。日本政府館は広さが約三万七千七百九十九平米でございます。それから、地方自治館は九千六百平米でございます。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 日本の企業館は何平米ですか。
  161. 井上保

    説明員(井上保君) 二十八館ございますが、総計いたしまして十四万四千平米でございます。
  162. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、日本だけ対象に考えて、比率はどうなんですか。
  163. 井上保

    説明員(井上保君) ちょっといま計算いたしておりませんが、日本政府館が三万七、八千でございます。それから、自治館その他を入れますと二万二千くらいですから、六万くらいでございますから、約二倍半程度ということでございます。民間館を二十八館合せますと、大体政府館等の二倍半程度であろうという感じでございます。
  164. 亀田得治

    亀田得治君 では、外国館のその比率をやってください。外国政府と企業館の比率。
  165. 井上保

    説明員(井上保君) 外国政府館は十九万七千でございますので、それに外国政府を入れますと約二十万くらいになります。それの一万一千でございますから、民間館が五%、こういうことでございます。外国の州、外国政府館が十九万七千、それから、民間館が一万一千程度でございます。それから、外国の中都市が一万程度ということですから、大体五%程度。二十対一くらいです。
  166. 亀田得治

    亀田得治君 わかりました。いま言われましたように、外国ではほとんどが政府館、圧到的に違うわけですね、民間と。日本だけですよ、政府館とか地方公共団体に少しやって、二倍半というようなでかいものを企業館にやっている。そんなことはおかしいじゃないですか。国がやる以上、だれでもそこへ出てきていろんなことをやろうと思えばやれる権利があるはずです。結論から見ると、それをまるで企業でなければいかぬようなかっこうですよ、与える感じが。こういうことは適当だと思いますか。どうですか。
  167. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 外国政府館と外国の民間事業館との比率が非常に違っておるということは、これは大体外国政府がアピールを出すという原則であります。個人企業が出すというのは特別の場合です。日本で今度開かれる博覧会でありますからして、これは官民ともに協力してやるべきだと私は考えておりますから、政府としてやるべき仕事と、それからまた同時に民間人もこれに協力して日本の産業なりあるいは文化その他のものを示すというようにやってもらいたいと思うのでありますからして、私は、日本館に、日本政府館と日本の民間企業との間に差別があるということ自体は決して不合理ではない、それだけ民間人がこの万博に対して非常に強力に熱意を持っておるというあらわれだと考えております。
  168. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことを言っているから、大企業の展示館だと言われるのですよ。第一、こういう図面を見ても、企業の名前をなぜここへ出さなきゃならぬのですか。企業が何かを展示するなら、展示の中身による名称をつけたらいいんでしょう。何々館という名称をつけたらいいんでしょう。そういうのも一、二あるようです、何々館と固有名詞を出さないで。しかし、全部それが原則にならなきゃいかぬじゃないですか。何も会社の宣伝をする場じゃないんですからね。どうなんです、それは、あり方として。これは通産大臣がいいかもしれない。
  169. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、協会のほうでは、広告基準というものを制定しておりまして、これによって展示館の館名表示の規制を行なうことにいたしております。この広告基準によりますと、展示館の名称、その表示の中で、商業的な印象が非常に強いもの、そういうものを用いてはいけないことになっております。館名表示以外のものにつきましても、たとえば、展示物、施設の解説、出品者名、提供者名の表示、パンフレット等でございますが、広告基準によりまして特定の企業もしくは商品の宣伝を目的としたものは会場内より一切排除されるというように気をつかっておるわけでございます。
  170. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 亀田君に申し上げます。ただいま外務大臣出席をいたしましたので、御参考に申し上げておきます。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっとこっちのやつを済ましてからお聞きしますから。  いまの基準から言いましても、鈴木さん、ちょっと基準からはずれているじゃないですか。ここにみんな企業の名前が出ているでしょう。これは宣伝じゃないですか。
  172. 井上保

    説明員(井上保君) 博覧会の実際の行事の遂行につきましては、実はBIEという万国博覧会国際事務局がございまして、そこでBIEの条約がございます。それからそれに基づきましてモデル規程がございまして、そのモデル規程に従いまして、各国が万博を行ないます場合には一般規則をつくります。さらにその一般規則に基づきまして個々の事項につきましての特別規則をつくるわけであります。広告基準につきましてはまた広告基準という一つの特別規則のようなものをつくりまして、そういう一般規則と特別規則、そういうものを全部BIEの承認を得るわけです。したがいまして、日本が行ないます行事のいろいろな施行の方法につきましては、大体万国の例にのっとっておるということでございます。そういうようなかっこうでございまして、必ずしも館名をあげるのは日本だけであるということはございませんで、それも商業的色彩が極力ないようにしていこうということで強力に指導をするというかっこうになっております。
  173. 亀田得治

    亀田得治君 規則がどういうふうになっておろうと、国民感情から遊離したようなやり方は改めていかなきゃいかぬですよ。こんなあなた政府館の二倍半もあるようなところにみんな企業の名前がこう出てくるわけですよ。こんなことはぜひ検討してください。これはちゃんとそういうふうにやってしまってからだとよけい私は問題になると思う。いまのうちに私は御注意申し上げておくのですよ、ほんとうに。
  174. 鈴木俊一

    参考人鈴木俊一君) いまの企業館の関係について、ちょっと協会の立場を申し上げます。  先ほど井上参事官から御説明がございましたように、これをまとめて申し上げますと、この外国関係の展示館の面積が二十五万平米でございます。国内関係が二十万平米でございます。これは博覧会の一般規則というのがございまして、博覧会の一般規則によりますというと、外国政府等の公式参加関係の敷地は国内地区として割り当てられる敷地とほぼひとしい面積を割り当てられなければならないこと、こういうのが万国博覧会協会の国際事務局で承認されました一般規則の原則でございます。要するに、外国関係と国内関係は面積としてはほぼ相ひとしいものを割り当てるようにするのが原則でございます。その原則から申しますと、いま申し上げましたように、外国関係が二十五万平米でございまして、国内関係日本政府館なりいま御指摘の企業その他を含めまして二十万平米でございます。したがって、この点は国際博覧会の事務局におきましても当然承認されていることでございますし、また、第二回の博覧会の各国政府代表会議におきましても、いま御説明のございました広告基準をそこに付議いたしまして、この基準でよろしいということになっておるのでございます。その基準によりますというと、企業の館名はこれは使ってもよろしい、しかし商業的色彩がけばけばしくなってはいけない、直接商品名を館名等に使うことはこれはいけない、それから。パンフレット等におきましてもあくまでも展示された事項の解説のようなものにとどめるべきであって、商品それ自体の宣伝あるいは企業それ自体の宣伝、こういうようなことはいけないと、こういうことになっておりまして、パンフレットを配るような場合におきましては協会の許可を要すると、こういうことになっております。この点は今後とも十分注意をしてまいりたいと考えております。  それから具体的の企業の館数から申しますと、モントリオールの場合は二十二館でございましたけれども、国内の場合におきましては純粋の企業の館数は二十五館でございます。また、面積から申しますと、モントリオールは十三万平米ちょっとでございました、企業館が。こちらのほうは約十四万平米でございまして、ちょっと違いますけれども、全体としてはほぼ同じような形になっておるわけでございます。  要は、企業的な色彩があまり濃厚に出ませんように十分注意をしてまいる必要があると存じますので、今後とも注意いたすつもりでございます。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば、松下なりあるいは住友グループなどがこう出しております。その中身がいいということであれば、本来は、政府が音頭をとって、その企業の協力を得て政府の責任でやっていけば間違いないんですよ。それを企業にまかし切りなんですよ。そういうところに間違いがある。基準に合うとか合わぬとかじゃない。一般の国民の気持ちに割り切れぬものがあるわけです。この中で、民間の団体といえば、なんでしょう、大阪のキリスト教連合会ですか、これにちょっぴり割り当てておるだけでしょう。もっと開放しなさいよ。もっと開放しなさい。企業ほど金をかけることはできないが、いろいろやりたいということを考えている人はたくさんあるわけです。それを、万博のほうでは、いろんな基準がどうじゃとかなんとか言って、そんなものを初めからもう相手にせぬのですよ。そういう考え方じゃ、それはそっぽを向かれるのはあたりまえなんです。たとえば、労働組合とか、平和団体とか、たくさんあるわけでしょう。そういうのが申し込んできたら、いままでたくさん企業館のほうに行っているのを少しけずって、こちらへ渡してくれるだけの具体的な熱意というものがありますか。抽象論は別だ。
  176. 鈴木俊一

    参考人鈴木俊一君) 実はこの敷地の割り当てでございますが、これはもうすでに昨年の四月でございましたか、その時期をもって申し込みを打ち切りまして、そしてそれぞれ敷地を決定いたしております。そして、さらにそれに基づいてそれぞれが自己の展示館の建築計画を立てまして、現在はほとんどすべての企業館が起工式をも終えておる段階でございまして、したがって、せっかくの御趣旨ではございますけれども、今日の段階では、そういうような手続をとるわけにはまいらぬと考えておるのでございます。ただ民間の団体といたしましては、ただいま御指摘のキリスト教館のほかに、いま一つ、これもキリスト系の団体でございますが、モルモン館というのもございます。それから民芸博物館といいますか、これも一つの民間の団体としてあるわけでございます。国内関係日本政府館を入れて三十二でございますけれども、その中に、団体といたしましてはそのようなものがございますし、あとは御案内のとおり地方自治体館とか、公社等の館がございまして、純粋の企業館というのは三十二のうち、二十五館ということでございます。これはモントリオールの二十二館に比較いたしましてそう大きな数ではないというふうに考えておるわけでございます。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 モントリオールに比較してどうなるか、それは別として、一般の大衆の気持ちを言っているんです。万博というものがそういうかっこうで育っていくことに対する反感があるわけなんです。むしろ、日本あたりにおいて新しいやはり企画を出してもらいたいとぼくら思っているんです。  次に、あと地問題ですね。本来は建設にかかる前にこういうことはさまっていなきゃいかぬわけですよ、あとをどう利用するのかと。これがきまっておれば、それを頭に置いて建設もできるわけでしょう。それがいまだにきまっておらぬわけですよ。これはだれが一体いつきめるんですか。担当大臣、答えてください。
  178. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) あと地の決定につきましては、万博閣僚会議に相談しまして閣議決定していくわけです。そこで、いま今日まできまってないということについておしかりをこうむったのでありますが、実はいろいろ新しいアイデアが次々に出てくるわけです。みんなあちこちから申し込まれるのです。それでありますからして、そこで、いま私はもう各方面からアイデアを出してほしいということにしておりますが、いつかはもう時期を切って申し込みを打ち切って、そこであらためてひとつ検討して万博の閣僚会議にかけたい、こう考えておるのでありまして、今日まで決定していないのはそういう事情でありますから、その点ひとつ御了承をお願いしたいと思います。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 いつごろきめるんですか。何かあなた七月とか、この間大阪へ来て……。
  180. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 総理から早くきめいということを実は督促されておるのでありまして、私も早くきめたい。というのは、いろいろ各方面から、あと地がどうなる、どうなるということを尋ねられますので、そこで、私ももう早くきめてもらって、早くきまったということをお答えしたいのが私の気持ちでありますが、まあいろいろ新しいアイデアがその後出てきます。けさもそういうことをわざわざ言いに来た人もあるのでありまして、そういうことで、できるだけこの際各方面の英知を集めて、あと地をひとつ永久に残るりっぱなものにしたいという考え方でおりますから、それを何月までにきめるという時日については、ここでお約束はできないと思いますが、一日も早くきめたいというのが私の真情であります。
  181. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。あと地の問題ですが、地元としては非常に関心があるんですね。政府の閣僚できめられるというより、むしろ地元としてこれについて非常に問題にしておるんです。したがって、いま菅野関係大臣の言われたことは了承しないこともないんです、趣旨はね。しかし、やはり地元としては、聞くところによるとあの四十五万平米ですか、ある部分はそれを切り売りをして、財源に充てようというような話も私ちょっと聞いたことがある。そういうことになると、これは問題なんです。結局関連事業で各地方団体が分担、負担しておりますから、おのおの思惑があると思う。したがって閣僚会議できめるということについては、法律上そうなっているかしれませんが、きめる前に十分地元の住民の意思を聞くべきだと思うんですね。これなくして簡単に政府の意図だけできめるということについては、たとえその趣旨がよくっても、私としては承認できないんですが、その点どうですか。
  182. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 先ほど申しましたとおり、各方面のアイデアを求めておるということは、地方の住民の意見も求めておるわけです。大阪府、大阪市からも意見が出ております。それですから、各方面のアイデアをこの際出してもらって、その上でひとつ取捨選択をして、そうして閣僚会議にかけたい、こう思っておる次第であります。
  183. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ私もひとつアイデアをここで出しておきますから、これは聞いておいてください。これは私の独断じゃないんで、絶えずいわれることの集約なんです。  あそこを、たとえば森林公園、自然公園、そういったようなものをつくり、そうして教育、文化、体育、どういう方面に活用してほしい。それからもう一つは、いろいろな企業、会社などからの運動等があっても、そういうところには払い下げたり、いろいろなことをすることはまっぴらだと、この二つですね、私たちが聞く意見は。これはどういうふうにお考えですか。
  184. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 最初の御意見は私も全く同感です。それで二番目の意見については、私は全然聞いておりません。民間から払い下げてくれというようなことは、まあ協会のほうその他の方面に来ておるかもしれませんけれども、私の耳には入っておりません。
  185. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことをしちゃいかぬと……。
  186. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私はできれば、あの百万坪全部活用したいというのが私の念願ですが、これは政府の財政上の理由もありますし、いろいろありますからして、私としてはせっかく百万坪開拓してきたんですからして、あのまま百万坪をひとつ全部活用のできる万博記念何とか申しますか、というものをつくりたいというのが私の念願であります。
  187. 亀田得治

    亀田得治君 この敷地は国で全部買い取る予定ですか。
  188. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 敷地はいまのところ大阪府に買い取ってもらっておりますが、知事は、まあ府会では、利息をつけて政府に買ってもらうんだと、買い戻してもらうんだということを言っておるわけです。百万坪全部政府が使うとすれば、政府はもちろんそれだけの敷地代金というものは購入代金に利息をつけたものでやはり買い上げなければならぬということになると思います。そこで問題は、まああと地の利用をどうするかというところに問題があると思うのであります。
  189. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。そこまでくると、ちょっとおかしくなってくるんですね。大阪府が一応あれは責任をもって買い取ったんですね、したがって所有権は大阪府が持っておるんですよ。政府が全部——大阪府が地価をどうするかは別として——買わなければ、大阪府かそのものを政府のような意図に使うということには財源的に問題があるということを聞いておるんですよ、あなたがどう言われても。したがって政府が全部買い取ってやるなら、閣僚会議できめて、その趣旨どおりいくけれども、地方団体の財政力から見て、それはいかないような状態だというので、私は先ほど質問したんですよ。したがって大阪府が持っておる、大阪府は政府の言うとおりやるかというと、やらし得るという。政府は、全部を財政上買い取れなくても、大阪府に対しては、すべてはこういう政府の意図どおりこれを利用するということにやれるかどうか、その点を私は危惧があるから言ったんですが、そのとおりなるんですか。
  190. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私が知事から聞いておるのは、損のいかぬように政府は買い取ってくれということは知事は言うておるのであります。そこで、先ほど申し上げましたとおり、あのあと地を全部政府が使うということに決定すれば、もちろん政府は全部買い上げるわけです。大阪府には迷惑をかけないように買うつもりです。しかしそこで問題は、全部買うか買わないかどうか決定してないのでありますからして、したがって、全部いま買い上げるという返答は私はできない。万博閣僚会議でこういうことにして全部使うんだということに決定すれば、それは大阪府に対して利子をつけて買い上げるということになると、こう思っておる次第であります。
  191. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 菅野さんというのは頭がいいはずだけれども、ぼくの言っているのは、全部買い取るという場合には問題ないのです。だから、買い取れない場合には買い取らなくってもいいんですよ。しかし亀田委員が言われたように、あれを切り売りしていろいろなものをつくってもらいたくないという住民の意思があるのですね。その場合に、大阪府に、買い取れない分は政府の意図どおりやらすかどうかといったら、できないでしょう、地方公共団体のものに残るんだから。その場合に、大阪府はあれを処分するといったときにどうなるかということを聞いておるのです。その場合どうなるか。
  192. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話の趣旨はよくわかりますけれども、しかし問題は、あと地をどうするかということはまだきまってないのですからして、全部もし政府が使うということであれば、もちろん全部買い上げるということになると思いますが、しかしあと地をどうするかということはきまってないから、まず、あと地をどうするかということをきめて、そして全部買うなら買う、あるいは一部は大阪府が使ってやるならやるとかいうことで相談しなきゃならぬことになると、こう考えておる次第であります。
  193. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 しつこく言いますけれども、必ずこれは問題が起こる。当然起こる。相当大きい無理をして大阪府が一応買ったのですね。無理していますよ、政府から金を算段してもらっておりますけれども。ところが、あとの相当広範囲な地域をどうするかということは非常に住民は関心を持っておるのですね。政府は先ほど言われたでしょう。こういう方向でやりたいと言われたが、そういう趣旨であれを利用するというなら、政府は全部買わなくちゃいけなくなるんですよ。しかし、いまの状態であと地を、どれだけの土地をどう評価するか知らぬが、ばく大な金になると思うのですよ、政府が買い取るとなれば。しかも向こうに自然公園をつくるとしても、国が買い取るとなれば全国的な立場から考えなくちゃいかぬという問題が起こりますね。大阪府の千里丘陵だけにそういう大きいものをつくるということについては、他の住民の事情もあるから、そう簡単に国の財政だけでやるということについては問題が出てくると思う。しかも、もうあと半年たったらあすこにすぐ起こるのですから、そういう問題をそのときに考えるのでなくして、もういまからそういう計画を立てておかなければいけない。モントリオールにも私も行きましたけれども、あすこの総裁の話では、もう建てる前からあとどうするんだ、あの島の中は公園にするんだと、もうすでにそういう計画まであるということを私は聞いたわけです。日本の場合、すぐそういうことであとで問題を起こすのですから、いまきまってなければ別として、この開催まで一年間あとありますから、あと地の問題についても私は閣議で決定をして方針を示すべきである、こういうことを私は言っておきますが、その点どうですか。
  194. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) その点も先ほどからたびたびお答えしたとおり、一日も早くあと地をいかに利用するかということはきめたいという私も念願持っておりますし、先ほど申し上げましたとおり、総理からもそういう督促を受けておりますから、したがいまして、早く私はアイデアを各方面から集めて、そうして整理をして、その上で相談してきめたい、こう思っておる次第であります。
  195. 亀田得治

    亀田得治君 まあともかく希望しておきますがね。ばらばらにあと地がなるようなことだけは避けてもらいたい、これだけは絶対。そうしてあと地が市民の皆さんやみんなのために非常に有効に使われるのだというふうなアイデアがちゃんと出ますと、ああこれはなるほどあとはこうなるのだというので、万博そのものに対するまた関心も、いい意味でふえるわけなんですよ。まあそういう意味でさっきから申し上げておるわけで、ひとつこれはできるだけ早く御決定願いたい。  官房長官、何か記者会見でお急ぎのようですから、最後に聞こうと思っていた点を一つだけお聞きしておきますが、来年はちょうどこの安保の一応の期限がくる、そういう時期なんですわね、固定期限が。それで終わるわけじゃありませんが。いわゆる七〇年安保の年、こういうふうにいわれておるわけです。政府はたまたま同じ時期にきたこの万博というものを安保の世論指導のために活用するのじゃなかろうか、こういう疑惑が投げかけられておるわけですね。本来、この点も私は総理にお聞きしたいところですが、ひとつ官房長官の政府全体を代表しての気持ちをここで聞いておきたいと思うのです。
  196. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 政府としては、とにかくアジアで初めて開催される万国博覧会でございますから、とにかくこの行事は日本の国際的な信頼を高める上からいってもぜひ成功さしたいということで一ぱいでございまして、これを他にいまお話しのような政治的な何か意図をもって宣伝の用具にしようというような考えは全くございませんことは御了承いただきたいと思います。
  197. 亀田得治

    亀田得治君 これは一応はみんなそういうふうに質問すればお答えいただくわけですけれどもね。しかし、なかなか問題がせっぱ詰まってきて、いろいろ政争が激しくなると、利用できるものは何でも利用していく、こういうふうなことを心配して出ておるこれは疑問なんです。どういう事態になろうと、これはこれで別というき然たる態度で押し通すというふうな強い態度でいまおっしゃったのかどうか、もう一度これは念を押しておきます。
  198. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 私のほうから申し上げるのはいかがかと思いますけれども、とにかくそういう政治問題は政治問題としましても、野党の大幹部であられる亀田さん方も、これだけはぜひひとつ成功さしていただくように、相協力して万国博覧会は日本の後世のためにもぜひ成功さしたい、そういうことでひとつ努力してまいりたいと思います。
  199. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ外務大臣にお聞きしますが、先ほどのいきさつを多少申し上げないとお答えにくいと思いますが、一つは中国の招請ということが万博の条約に私は反しないと思っているのです。一応万博条約では外交のルートを通じてと、こういう趣旨に書かれておりますが、これはやはり外交ルートを無視して好きかってにいろいろな国内の企業と取引をしたり契約結んだり、そういうことじゃ困る、そういう立場でできておるものであって、本来そういう万博条約ができるときに、今日のようないわゆる分裂国家、こういうものは当時はなかったわけですね、一九二八年ごろは。したがって、こういうことも予想しておらぬわけですよ。だからすなおに、外交ルートを通じてと、これは公式にという意味なんですね。そう理解すべきだと私は思っている。だから、したがって正規の外交ルートでなくとも、たとえば日中間で現在正規というか不正規というか、総理大臣の了承等も得てやはり自民党の人も行っておるのですからね、見ようによっては正規なんですよ、これは。そういう広い意味でこの万博条約の外交ルートというものは理解していいものだと私は解釈するのですね。そう解釈できないというなら、これは初めから問題にならぬわけです。そういう広く解釈できるから三木通産大臣も万博問題の法律が当初問題になったときに、第二段階としてその問題は十分検討する、こういうふうにおっしゃっているわけなんです。まずその点の条約の理解のしかたについて、外務大臣としての考え方を明らかにしてほしい。
  200. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この条約の第五条と記憶いたしますが、外交経路によって招請状を出すということになっております。その解釈の問題でございますが、その解釈について一つの何といいますか、前例——国際的な前例というのはブラッセル、一九五八年でございますか、それからモントリオール、その次にございました。その万国博覧会条約に基づいて他国で行ないました招請のときには、それぞれの国が正式の外交関係を持っている国にだけ招請状を出したいうことが実績にもなっておりますので、その当時、万博の当局その他関係の向きが相談をいたしまして、現在のところ日本としては外交関係を正式に持っている、百三十幾つでございますか、それらの国々に招請状を出しておる、これが現状でございますことは御承知のとおりかと考えております。
  201. 亀田得治

    亀田得治君 いや、その前例並びに日本政府のとった措置はこちらも了承している——了承というか、わかっているわけです。その外交ルートという理解のしかたですね。たとえば、中国に対して適当な方法で招請の活動をやったという場合に、万博条約に反するといえるのかどうか、これを聞いている。大体モントリオールにしても、ブラッセルにしても、日本ほど中国に対して関心がないわけですよ。アジアにおける日本の万博だから中国問題というのが非常な問題になるわけで、真剣にそれほど検討がされていないわけです。中国問題というのは、過去の万博では。しかし、日本の場合には事情が違う。そういうところで初めてほんとうの条約の精神、解釈というのは私は生まれてくると思うんで、前例に私はとらわれてはいかぬと思うんです。
  202. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま御説明いたしましたのは一般論といいますか、条約の解釈などの場合には国際的な前例というものも解釈の上につきましては一つの重要性を帯びるものではないだろうかということを申し上げたわけでございます。  それから、私も、四十二年であったかと思いますが、当時の三木通産大臣——万博担当であったかと思いますが、商工委員会等における応答も私、承知いたしておりますが、そこでその後の政府立場として、あのとき三木大臣が明らかにしているような順序でやってまいった。つまり、正式の招請国に対して招請状を出して、できるだけ多くの国の参加を求めるということを本格的にやってまいりました。これも御承知のように、いま参加を希望の国の数が相当ふえておる。あの当時三木大臣が言われたいわば第二段階と申しまか、ちょうどそういうところにきたのではないか。私といたしましては、これは万博は御承知のように担当大臣もきまっておりますけれども関係閣僚会議というものでいろいろのことが決定されることになっておりますので、私としては、あらためて関係閣僚会議におきましてこの問題の御相談をしたらどうだろう、かように考えておるわけであります。
  203. 亀田得治

    亀田得治君 御相談願うにしましても、初めからそれが条約違反、違法だというのではこれはもう爼上にのらぬわけです。そういうことまで禁止しているというふうに読むべきものではない。一国でも多く集まればそれはけっこうなことです。ただ一般的にすらっと書いておるというにすぎない。条約の解釈の点ですね。それで違法とは私は言えぬと思うんです。まあ違法でないから、それじゃすぐ呼ぶという結論になるかならぬかはこれまた御相談でしょうが、その点はどうですか。違法でないということだけははっきりしてほしい。
  204. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ先ほど申しましたように、これ違法とか違法でないとかいうふうなことではなくて、ただ条約の解釈の場合には、何か問題にするとすれば前例というようなことが大きな要素を占めるであろう、一般論としてそう申し上げたわけでございまして、私は違法とか違反とかいうふうな観点から律しなくてもいいんじゃなかろうか、私、個人的にはそういうふうに考えております。
  205. 亀田得治

    亀田得治君 あまりこれだけやっておるとまた時間がなくなりますが、ともかく、たとえばフランスで万博をやるということになれば当然中国が招請されるわけですね。そうでしょう、外交ルートでいくという正面のルートからいっても。ところが、日本になったらできない。それだけ見たって全く不自然なことでしてね、だからこれはぜひひとつ中身のある討議をしてほしいと思うんです。先ほどから日本と中国の関係、現在非常にきびしいと、こういう状態では実質的になかなか無理なんじゃないかというような意味のことがありましたが、しかし、万博開催は来年ですよ、来年の事情なんというものはなかなか私は予測できないと思うのです。それこそ米中関係、これは相当流動的でしょう。非常に中国と対立する面もあるが、アメリカの内部においても逆な意見も非常に強く出ておるわけでしょう。ところが、来年になって米中関係がちゃんと軌道に乗った、ところが、日本だけが何かのいきさつで万博にもこれは呼んでなかった、こういうことではおかしいんじゃないですか。それはアメリカアメリカ日本日本だと、やけのやんぱちにそういうことをおっしゃるかもしれませんけれども、それはおかしいですよ。だから、もっと大きく考えて、万博ぐらいはもっと幅の広い線で私は考えてもらわぬと大きなやはり失態を演ずる場合がある。これが激化していけば別ですよ。必ずしもそうは言えないんですから。そういう点についての高度なひとつ外務大臣としての政治的な判断、見通し、この際、ちょっとざっくばらんにお聞かせ願いたい。
  206. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申し上げましたところで私の気持ちは御理解いただけるかと思いますけれども、申し上げましたように、これはひとつ万博関係閣僚会議で最終的な態度をきめることにいたしたい、かように考えております。
  207. 亀田得治

    亀田得治君 あと三秒らしいですから、労働大臣に一間だけ聞きます、せっかく来てくだすったんですから。万博労働者ですね、ピーク時にはどのくらいになるか、それから労働基準法というものはきちっと守られておるかどうか、その保障のためにどういうことをしておるか。それから万博労働者の宿舎ですね、建設省でああいう飯場といいますか、宿舎の基準等出しておる、こういうことがちゃんと守られておるかどうか、調べておるかどうか、こういう点について、ひとつ再質問せぬでもいいようにきちんとお答え願います。
  208. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  第一は、ピーク時におきましては、この会場の内と外、両方合わせましておよそ五万人の労務者を必要といたします。それから、その確保についていろいろ尽力いたしておるところでございます。それから、労務者のいわゆる受け入れ施設の整備が一番大事でございますが、それには労務者用の宿舎、これには雇用促進事業団による宿舎の建設をいま急いでやっておりまして、間に合うし、不便がないようにやれると存じております。  それからいま申されましたいろいろ労務の監督等がうまくいっておるか——会場内には、建設工事について特に労働基準監督官を派遣いたしております。現にそうして現場において労働の安全性が確保されておるか、衛生性がどうであるか等々を監督官が現場に出張して現にそれをよく検査もし指導もいたしております。  それから安全、その他衛生の面につきましては、これもその現場に臨時労災診療所——内科、外科を設置して、現にその応急診療に当たっております。  それからその他さいぜんから宿舎のこととかいろいろございましたが、その他厚生施設等につきましても、地元大阪府において補助金等を計上してやっておる。  それから賃金不払いがあるかないかというようなことでございますが、これにつきましても、大阪府に一昨年の十一月に新たに大阪府建設業雇用促進協会、こういう新たなる協会で全部建設業者が打って一丸となって賃金不払い等は協会において補償いたしてございます。  それから元請から下請、全部これが補償いたしておりますから、本年二月末現在における加入会員が約二百八十事業所で、元請が会員になった場合には、その元請に関係のある下請についても賃金不払い等は補償すると、こういうふうにやっておりまして、非常に成績をあげております。全部の関係業者がこれで補償されることになります。  現在までの補償状況を申し上げますと、会員事業主に賃金不払い等の事例がまだ一件も出ておりません。将来もまずその点は安心できるのではないかと、こう思っております。  それから労働災害などにおきましては、さいぜんもちょっと触れましたが、万博臨時駐在事務所というのを置きまして、所長が一名、労働基準監督官が四名、現場で指導体制を強化いたしております。  それから日本万国博覧会協会に対しては、会場全般にわたる安全衛生管理確立連絡調整協議会を設置せよとか、作業工程の調整を促進するよう基準監督官のほうから、万国博覧会協会に対して強く指示をいたしております。  また、建設業労働災害防止協会からもこの現場へ、そういう専門官が自発的に行って災害の防止に当たっておる等、あの手この手、万遺漏なく、それから一番問題になってたびたび質問されますが、労務者の供給につきましても、各都道府県に最近割り当てを指示しまして、普通の労務者ではなくて、特別の大工、左官、鉄筋工、とび職、オペレーター等々の特別の職員につきましては、必ずしも地元で確保できませんので、全国都道府県に連絡して、知事の承認を得ていま割り当てをやって逐次そういう確保につとめ、人員の労働力確保に万遺漏なきを期し、さらにその確保した労働者に対しては、これの福祉厚生、安全等々、労働基準関係等々、万般の手配を怠らずやっておって、まずいまの状況はよろしいが、将来もうまくいく見通しでございます。
  209. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 亀田君の時間がないから私からちょっと足らぬところを申し上げます。  肝心な労務者、出かせぎ労務者の状況——いま言われたが、各県ごとに割り当てておると言われましたが、どういう状態になっておるか。出かせぎ労務者、それからそれらの平均賃金は、どういうぐあいになっているか、それを二つだけ簡単に。
  210. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) それは資料がございませんから、政府委員より答弁させます。
  211. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 全国に割り当てましたものは、大体四千人ぐらい割り当てております。それから賃金は職種によってたいへん差がございますが、一日、千五百円から三千円程度でございます。
  212. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体どの方面から、出かせぎ労務者は東北が多いですか。
  213. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) ここでは全国的に割り当てます。しかし関西のことでございますから、重点はもちろん西のほうでございますが、割り当ては全国的でございます。
  214. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その資料ありますか。
  215. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) ございます。
  216. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 じゃあとで資料を。
  217. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) はい。
  218. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして亀田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  219. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、前川旦君の質疑を行ないます。前川君。
  220. 前川旦

    ○前川旦君 この予算委員会が始まりましてから、沖繩をめぐっての核論争がいろいろ行なわれましたが、政府は非核三原則というものを堅持する、こう言っておられます。ところが、政府がそう言われながらも、この予算委員会論議の中でさえ、核は持ち込むべきだとかあるいは核武装を進めたいがごとき非常に勇ましい意見が聞かれたわけです。そのほかにも、そういう声が出てまいります。で、そのことを聞きますと、政府は、非核三原則と言いながら、与党の中から、そういう意見がいろいろ出ているようでございますので、不安をやはり感ぜざるを得ないわけです。その非核三原則というのは一体、短期的なものではなくて、長期的な展望に立った原則であろうというふうに私ども理解をしておるわけなんですが、このように考えてよろしゅうございますか、外務大臣お願いします。
  221. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 非核三原則というのは、具体的に申しますと、現内閣としてかたく堅持していきたいと、こういうことを申しておるわけでございますが、考え方、姿勢としては、長期的な展望に立ってのかまえ方であると、こう御理解をいただいてけっこうじゃないかと思います。
  222. 前川旦

    ○前川旦君 外務大臣にお尋ねいたしますが、この前の石原委員の質問に対する答弁の中で、核武装だけは絶対にしないでおこうねと、こういうふうにいつも心に言い聞かせておると、こういうような表現を使われました。その表現を聞いておりますと、何か周囲から非常に核武装を迫られておる。内あるいは外からかもしれませんが、それを外務大臣なりが、必死になって食いとめていると、そんな感じを非常に受けるような表現であったように思いますので、一体それはそういうことなのでしょうか。そうであってはちょっと困ると思いますけれども、そうでない——あの表現の真意というのは、どういうことであったのでしょうか。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕
  223. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私の申しましたのは、私が自分に言い聞かしておるのではなくて、国民全体が言い聞かせておられると理解するのが、日本国民の皆さんの、私は気持ちではなかろうか、こういうふうな意味で、客観的に申し上げたつもりでございます。
  224. 前川旦

    ○前川旦君 そこで、非核三原則を打ち立てられました理由といいますか、その成り立つ基礎といいますか、いままでいろいろ政府意見を、答弁なり聞いておりますと、国民感情に立脚しているということばが出てまいります。国民感情を一番先に大事にするというのは、これは当然だろうというふうに思います。そこで、この核に対する国民感情というものは、核アレルギーということばで表現する方もおりますが、しかし、実際に原爆を体験して、自分のはだで知り、目で見たのは日本の国民だけですから、そういう意味ではこの核に対する日本国民の感覚というのは、非常に自然であり、健全であり、これが私はほんとに正しいのではないかというふうに実は思います。その国民の感情を、核に対する無知なるがゆえのアレルギーだというふうな表現を使われる方がいるということは、私としては実は承服しがたい思いがするわけなんです。そこで、そういう国民の核に対する感情というものをどう評価なさいますか。
  225. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先日、私もそういう、核アレルギーということばを使いましたけれども、そのときに私は、素朴な言い方ですけれども、よい意味の核アレルギーという表現を使ったわけでございまして、それはいま前川委員のお考えのとおりの私は共通した考え方でないかと、こういうふうに考えております。つまり、日本国民としては、唯一の原子力の洗礼といいますか、被爆を受けた、それから平和憲法を持ち、また国連憲章その他の理想とするところを一番ぴったり日本国としては体験からにじみ出た、ほんとうにすなおに考えてこの平和精神というものを生かしていかなければならないということから申しまして、先ほども申しましたが、これはまあ現在は佐藤内閣としてとしか言えませんけれども、私の考え方としては長期的な展望に基づいて、そうして核の絶滅、ことに武力的にこれが用いられるというということは、理想として排除していこうという考え方を育て上げていきたいものだと考えております。
  226. 前川旦

    ○前川旦君 それでは次にお尋ねいたしますが、非核三原則の基礎は、第一に国民感情、これはまあそのとおりだと思います。二つ目に、国際的に核兵器の絶滅を訴えていく、そしてそれを実現させていく、こういう使命がやはり私どもにあるんじゃないかというふうに思います。そういう使命を実現していくためには、日本という国がみずからは、核を持つ、開発をする、核武装する能力も、潜在能力もある、核を持ち込む選択権もある。にもかかわらずわれわれは核もつくらないし、持ち込まないと、こういう態度がむしろ私は国際的に日本の国威を高めるゆえんではないかというふうに思います。たとえば、フランスはああいうふうに核開発しましたけれども、それによってフランスの威信が高まったかというと、かえって私は軽べつを招いたと思います。中国は核開発をすることによって、中国のような工業水準の低いところでも核が持てるということになると、核を持つということは、何も国の工業水準が高いということを誇示するための、国家威信を示すためのものではもはやなくなった。むしろそれは逆になったというふうに考えますが、どうお考えになりますか。
  227. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど来申し上げておりますことは、考え方の問題であり、理想の問題であると思いますので、現実的な日本国の安全を守るという大きな現実の使命から考えますと、またいろいろのところが論議されると思いますけれども、やはり日本国民としての最終的なターゲットといいますか、念願というものは、やはりいまもお話がございましたようなところが一番中心でなければならないのではなかろうか。そういう観点から、一方におきまして、核の拡散防止とか核軍縮というようなことについても、日本としてはできる限りの努力をしていくべきではないだろうか、こういうふうに考えております。
  228. 前川旦

    ○前川旦君 私が質問いたしましたのは、みずから核兵器を持つということ、開発して持つということ、そのことが国の威信を高めることにはならない、いまはもう。そう考えてよろしゅうございますかということです。
  229. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ国によりましては、それが威信が高まるゆえんと考えておる国もあるのではないかと思いますけれども日本としてはそういう考え方はとらない、とるべきでない、こういうふうに考えてしかるべきではないだろうかと考えます。
  230. 前川旦

    ○前川旦君 防衛庁長官にお尋ねいたしますが、非核三原則が日本の安全保障、もっと狭く防衛という立場でとらえてみた場合に、これやはり防衛というところでかなり討議をされ、検討されなければいけない問題でなかろうかと思うのです、当然防衛庁としては。そういうふうな討議をいままで内部でずいぶんなさいましたかどうでしょうか。
  231. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) その問題につきまして、ひとつ沖繩の問題は、御承知のとおりまだ返還の態様がきまっておりませんから、これはひとつ別の問題としてお願いしたいのですが、防衛庁におきましても、防衛の立場からまあいろいろと検討をしなくちゃならぬはずでございますが、いま、先ほどから論議がありますように、非核三原則というものは、何といっても日本が世界唯一の被害を受けた国でありますから、国民感情の上からこれを否定しておることは事実であります。また、これが国民の悲願でありますから、歴代の内閣もこの非核三原則というものを、もうその政策としてきておるのであります。ただ、この日本の安全確保に対するいわゆる防衛の立場から考えまする場合に、もちろん経済財政の面もございましょうが、防衛という観点から見ましても、みずから核兵器をつくらず、それから持たず、また持ち込まさずといういわゆる三原則は、 われわれとしては、日米安全保障体制によってアメリカの核抑止力に依存することが、国益に合致する最良の選択である、こういう確信に基づきまして、この非核三原則というものをわれわれはまあ堅持しておる、と、こういう次第であります。
  232. 前川旦

    ○前川旦君 それでは、いまの検討なさっているということですから、なおこまかくもう少し質問していきたいのですが、たとえば日本に攻撃的な核を持ち込ませるとかあるいは日本が持つとか、こういうことが——これは持ち込ませることは憲法上可能です。こういうことが一体日本の、安全にプラスになるのか、マイナスになるのか、そういうことも私御検討なさっただろうと思うのです。  そこで私の意見を申し上げますと、もし日本が持ち込むであろう、持ち込ます場合も、みずから持つ場合も、攻撃的核を——沖繩も含めての私は考えを申し上げたいのですけれどもね、攻撃的核を持てば一体どういう結果になるか。一つは、その対象となった国から、その持っている核ミサイルの幾つかというものは、あらためて日本へ照準を向け直すだろうという危険性があります、一つは。二つ目には、相手となった国との間に緊張と不信がやはり激化していくだろうというふうに思います。三番目に、もし全面的な核戦争が始まった場合には、日本に攻撃的な核基地があれば一〇〇%核攻撃をされるであろうと思います。攻撃的核基地がなかったら、もし全面核戦争が始まっても、あるいは核攻撃はされない、素通りしてしまうという可能性が残るかもしれません。そういうことを考えると、攻撃核を日本の中に持つ、あるいは持ち込ませるということは、非常にこれは危険なことだというふうに、かえって核誘引力になるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  233. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) 沖繩の問題は、先ほど言いますように、まあ政府は白紙の立場でおりまので、これはひとつ別のワクとして話をせぬと、うっかりしたことは申されませんので、これはひとつお願いいたしたいと思います。  それで、日本の国内に攻撃的核を入れると、かえってあぶないんじゃないか、こういうお説ですが、これまた攻撃核は、先ほど来私たちも言うておるように、これは憲法上も、攻撃的核となってくると、簡単に許されるべき問題でないんじゃないか。また、非核三原則からいいましても、攻撃核はこれは持たないという方針で、われわれもそれは持とうとはしておりません。でありますから、いまのお尋ねは、全くこれはもう仮定の中の仮定というようなことでお答えしなくちゃならぬことになります。そこでまあ普通の仮定の問題としてしいてお答えするなれば、日本に攻撃的核があるとかえって攻撃の対象になりゃせぬか、たしかそういう面も私はあるんじゃないかと思います。しかし、私たちは、理論的に言いますれば、核はいわゆる抑止力としての作用をなすものだ、だから日本に核がなかったら、相手が、これは日本が核がないんだから、ひとつ核で攻めることを変えてやろうというような、いわゆる核がなかったら核を持っておる国が遠慮してくれるという保障がはたして得られようか、ここがちょっと疑問だと思いますが、とにかくわれわれはアメリカの核抑止力というものに依存して、そういうことが起こらないように、いわゆる未然に防御する、未然にそういうことが起こらないようにするということに大きな期待をかけておるのでありまして、まあ核があると御心配のようなことがあるかもしれませんが、要はその核の、日本はつくりませんが、持ち込みの場合に——これもないんでございますけれども、しいて言えば、核を管理しておる国のその核の力いかんによって相当相手に影響があるんじゃないか。もしも、弱々しいと言っちゃおかしいが、あまりなまじっかなような核があると、これは相手にやっつけられる可能性が相当強いんじゃないか。しかし、先ほど言いますように、しっかりした戦力核があって、それが抑止力として大きくなっておると、うっかり手をつけると報復力としてやられると、こういう考えも相手の国が持つんじゃなかろうか、こういう感じもするわけであります。しかし、これは全く仮定の上に立っての話ですから、これでどうのというわけじゃございませんが、私の見方としては、そういう見方もあり得るんじゃないか、このように想像されるわけですが、要は核によって戦争を防止する、核戦争を抑止する、ここに私たちは大きな期待を持っておる、これをひとつ御了承を願います。
  234. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連。いまの防衛庁長官の御答弁の初めのほうに、攻撃的な核を持ち込むことは憲法上問題があるけれどもというおことばがあったと思うんです。この辺もう一度重ねてお尋ねしておきますが、それで間違いございませんか。
  235. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) 持ち込むと持つということがごっちゃになったかも知りませんが、私が憲法上非常に問題だということは、日本が核を持つということですね。つくらず、持たずということで、憲法上は許されない、こういうことで、もし持ち込むということを言っておるとすれば、それは私の言いそこないですから、訂正さしていただきます。
  236. 前川旦

    ○前川旦君 いま長官の言われたことは、核の抑止力ということを言われました。核の抑止力というものを、実は私どもは認められないんです。私どもの考え方からいいますと、核の抑止力は認めておりません。かりに万一核に抑止力があると仮定しても、日本の国に攻撃的核を持ち込む、あるいは持ち込ませる、あるいは持つと、こういう場合に、一体抑止力として働き得るだろうか。抑止力として働くための理論、抑止力理論からいうと、相手の攻撃に対して十分な反撃力ですね、耐えがたい打撃を与える能力がこの抑止力の基本になるわけです。そうなると、日本というのは非常に地理の特殊性があります。たとえば日本の周囲の核保有国と比べてみても、人口密度をとれば、アメリカの十三倍高い、中国の四倍、ソ連の二十六倍の人口密度の高さを持っています。それも、狭い国土の中で、太平洋ベルト地帯に集中しています。工業も集中しています。こういう特殊な事情のあるその狭い日本で、かりに一発ぶち込まれたら、非常に大きな損害を受ける。逆に向こうに一発ぶち込んでも、ほとんど損害を受けない場合がある。対等にこれは抑止力として働かないというように私ども思います。そういう非常に特殊な地理性があると思う。ですから、日本に攻撃的核を持ち込ませる、持ち込みを許すという場合に、それが日本に対する抑止力になるということを考えれば、日本という立場から考えてみた場合には、きわめてこの理論は成り立ち得ないと思いますが、いかがでしょうか。
  237. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) これまた仮定の上に立っての話ですから何ですが、私は、単純に考えれば、おっしゃるとおり、日本の人口密度その他からいって、これはもう日本のほうがやられるから困ると、こう思うんでございますが、先ほどもちょっと触れましたように、その背後にある大きな力ですね、いわゆる報復力といいますか、核の報復、背後にある——まあ日本はたいしたことはできないと思いますが、アメリカとかりにしますがね、そうすると相当大きな核力を持っておりますから、その報復がこわいと、したがいましてうっかり核で手を出すことはやらないと、かように私は思うのでございます。
  238. 前川旦

    ○前川旦君 核の問題を考える場合には、核の抑止力理論、その核の抑止力というものが破れたときにどうなるかということを考えなければ抑止力理論また成り立ちません。というのは、実際に使うんだということが前提にならなければ抑止力理論が成り立ちませんね。ですから、抑止力が働くためには、使って効果があるんだということ、そして使う意思があるんだということが前提にどうしてもなるわけです。そういうことを考えますと、私は、日本にもし攻撃的核兵器を持ち込みを許すということになれば、抑止力よりも、むしろそのことによって抑止力が破れて全面戦争に万一なったような場合には、確実に攻撃される危険性のほうが多い、どう考えても多いと言わざるを得ないのですが、これはどうでしょうか。
  239. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) どうも日本にはそういうものを持ち込みもさせないということになっておるので、いまの仮定の上に立っての議論ですから非常に答えにくいんですけれども、しかしやはり核というものは私は抜かざるところに力があると思うんですよ。それがいわゆる抑止力だと思うんです。核をやたらにどんどんやるなんということになってくると、これこそ人類の上に最大の不幸をもたらします。また、それが連鎖反応となって、世界人類の上に一大悲劇が来る。でありますから、こういうものは、なかなか核は、何と言いますか、抜かざる、そこにいわゆる抑止力、押える力、これに私はやっぱり力を入れるべきものじゃないか、かように考えております。
  240. 前川旦

    ○前川旦君 防衛庁長官、間違わないでもらいたいんですがね。使わない、使う意思がなかったら抑止力にならないわけですよね。使う意思があって、使う準備してて、いざとなったら使うぞというから、抑止力になる。理論的にそうなるわけです。ですから、この抑止力理論というのはたいへん矛盾を含んでいるわけなんですけどね。使わないから抑止力があるんだ、使わなくても抑止力があるんだということには実はならないんですね。  まあそれはそれとして、それでは次にお尋ねしますが、たとえば、よくこういう意見が聞かれるんです。防御的核兵器なら、日本は憲法上も許しているし、持ってもいいじゃないか。たとえばABM、これは純粋防御的な核兵器です。ABMを日本へみずから配置しても、持ってもいい、日本のためにアメリカのABMを持たなくてもいいんじゃないか、こういう意見が聞かれます。しかし、ABMというものは、いまアメリカでも問題になっておりますが、どういうふうにして働くかというと、向こうが実際にたまを撃って、それからこっちが迎撃するまでには、どうしても三十分程度の時間が要るのであろうと思います。同時にまた、向こうの撃ったやつを探知するためにずっと手前へレーダを張り出しておかなければいかぬ、当然こうなるわけですね。となると、かりに日本がABMを持ったとしても、近距離からの弾道弾攻撃に対して一体効力はあるのかないのか——ないと思います。私はいまの段階ではないと思います。レーダーを前に張り出すこともできない。したがって、ABMを日本を守るために配置するとか、配置せよとか、持ち込みを許せとか、そういう論議はおよそナンセンスであって、いまの段階では、およそわれわれが予見し得るABMの能力から見てそう私は思いますが、どうでしょうか。
  241. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) さっきのABMの前に、私は核は抜かざるということを言いましたが、これはやはり抜きそうで抜かざるところに妙味があると思いますが、それは私の考え方だけを申しておきます。  そこで、ABMの問題ですが、これは実はその性能については私もあまり詳しくは存じませんし、またその性能がこうだということを言うことは、ほとんど日本人でも性能のことはあまり存じていないと思うのですが、しかし、一応の常識論といいますか、常識論から言いますと、これが日本に置かれるなんということは、私さようなことは思いもしないし——と思うのですが、そういうことは起こらないと思うのですが、かりに日本にこれを置かれるとしましても、地理的条件から申しまして、これはいまのところでは防御力の効果はあまり期待できない、かように思われるわけでございます。
  242. 前川旦

    ○前川旦君 これは期待できないんじゃなくて、はっきりいまの段階では防衛力としては無能力と言ってきめつけても私はいいと思うのです。かりにそれじゃ米国がみずからを守るために日本へABMを配置したとしても、持ち込みを求めてきて、それをかりに許して配置したとしても、これまたアメリカを守る役に立たない。沖繩へ配置しても同じだと思います。なぜかというと、かりに中国がアメリカを攻撃する場合も、ソ連が攻撃する場合も、これは日本は通りません。北極を通るか、アラスカを通るわけです。ですから、これまた全然意味がないものだというふうに私は思いますが、どうですか。
  243. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) 現在のICBMの配置の状況などからいったら、御承知のとおりだと思います。理論的に、その他の配置が、他のところにあってどうだということになってくると、理論的にもいろいろのことが言えますけれども、少なくとも現在の状態ではこれはあまり意味をなさない、かように思っております。
  244. 前川旦

    ○前川旦君 防御用の核兵器のもう一つの典型は、たとえばナイキハーキュリーズです。もし日本がナイキハーキュリーズに核をつける、あるいは核つきのナイキハーキュリーズの持ち込みを認める、こういうことになった場合に、かりに——これはあくまで仮定です、これは防衛の問題は、悪いのですけれども、仮定の問題が多いのです。防衛そのものは私は仮定だと思いますので、お許しをいただきたいのですが、一体その場合に日本の安全にプラスになるだろうかどうなんだろうか、やはりこれも検討してみなければいけない問題でないかというふうに思います。そこで私思いますのに、かりに核つきのハーキュリーズを持ち込みを許したとする、持ったとする、もし攻撃がどっからかあったとします、攻撃があったとする。日本を攻撃してくるその場合に、攻撃してくる飛行機は遠いところからキャッチします、レーダーで。その飛行機が日本を攻撃するかどうか、そこまではわかりませんね。意図はわかりませんね。核を積んでいる、攻撃のために来ているのかどうかまではレーダに映りません、わかりませんね。この飛行機に対して、意図があるのかどうかわからない飛行機に対して——通常爆弾かもしれない、こちらが先に核つきのハーキュリーズを撃つということが一体可能なんでしょうか、どうでしょうか。
  245. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) 先ほど来言いますように、たとえナイキハーキュリーズというようなものといえども、みずから先にこれを手を出すということは控えるべきじゃないか、かように思いますが、しかし、これも仮定ですよ、全然仮定ですが、やはりそういうものがあるときにはうっかり行くとやられるかもしらぬという向こうの気持ちもありましょうから、そこにやはり抑止力としての作用はある、かように思います。
  246. 前川旦

    ○前川旦君 ハーキュリーズが抑止力になるとおっしゃいましたが、もし相手の国がそれじゃ核攻撃をするという意図で核ミサイルを使えば、ハーキュリーズは力持っていますか、防衛力ありますか。
  247. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) そういうようなものに対しては、弾道弾的なものに対してはこれは力がない。さっき飛行機という話でありましたから、飛行機に対しては一つの抑止力があるのじゃないか、こういうことを申した次第であります。
  248. 前川旦

    ○前川旦君 核攻撃をする場合には、だんだん世界の趨勢として弾道弾ミサイルを使用するようになる、航空機を使っての攻撃というのは通常兵器による攻撃が主である、大体こういうふうに分かれてきているというふうに思います。そうなると、核攻撃に対してはナイキハーキュリーズが無力である。通常の航空機に対する、いわば通常攻撃とみなされるものに対しても、持っていてもやはり使えない。もし使えば、日本が先に使ったということになって、これは核攻撃を招くかえって危険性があると思います。そのことを考えれば、持っていても使えない、使ったらたいへんなことになる。これは日本の安全にとってプラスになるのかマイナスになるのか、私はやはりこれはマイナスになると言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。
  249. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) 全く仮定の上に立っての話ですから、私も言いにくいのですが、それは核をこちらが先に使うというようなことはいまの時点であってはならぬ、かように思いますが、しかし、そこにやはり妙味があるので、抜きそうで抜かざるところに妙味があるのであって、それがいわゆる抑止力で、自分の飛行機もうっかりしているとナイキハーキュリーズでやられるかもしれぬというやはり不安があるのじゃないか、そういうところに一つ妙味というものがあるだろうと思いますが、といって、われわれがそれを持とうというのじゃなくて、持たざるという原則に立っておりますから、どうも答弁はしにくいのですけれども、純理論的といいますか——に言いますれば、そういうようなやはり態様もなすのじゃないか、かように思います。
  250. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっと防衛庁長官に注意しておきますが、大体防衛というものは、一体仮定の上で防衛しているのでしょう。戦争起こるということを前提にしてないでしょう。これは攻撃があったときにはどうしようということで防衛があるのでしょう。昔のような戦争と違うでしょう。侵略でないのでしょう。すべて仮定ですよ。日本の防衛の組織全部が仮定ですよ。中国を敵視しているというのじゃないでしょう。だから、仮定のことで、仮定の上だからと言わないで、仮定の上というのは防衛庁長官の意思であるということを受け取っていますから、その点を注意しておいてください。仮定というのは、全部防衛というのは仮定でしょう、そうでしょう。これはどうですか、意見違いますか。戦争するという前提があるわけですか。
  251. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) それは広く言えば、仮定といえば仮定でございますが、現に沖繩問題がそこに控えておりますから、それと結びつけられちゃ答弁のしようがないものですから、それでまあ仮定というような、仮定中の仮定ということでお話している。こういう点はひとつ御理解願いたい。
  252. 前川旦

    ○前川旦君 それでは一つ一つやめます。仮定の問題でうっとうしゅうございますから。  もう一つの考えられる典型的な仮定、これは陸戦用の戦術核兵器というのがあります。もし日本がそれを持つなり、あるいは持ち込みを許すなりした場合に、一体どういう結果になるだろうか。このこともやはり考えてみざるを得ないと思うのです。もし日本の自衛隊がどんどん海外派兵して、外で戦争するというなら、これは話は別なんですよ。そうじゃないんですから、純粋な防衛をやるんだというのであれば、日本の国土が、陸戦の場合は日本の国土が戦場にならざるを得ない。それを想定せざるを得ないわけですね。その日本の国土の上で、日本の自衛隊であろうと、あるいは米軍であろうと、侵入してきたものと、それを防ぐものとが、戦術核兵器をこの国土の上でぽんぽんぼんぼんやり合われたら、一体どういうことになるんだろうか。戦争が終わって、防衛、自衛が終わって、済んだときは国民がゼロになっておったということになったんでは、何のための安全保障である、防衛であるかということになります。したがって、こういうものも日本に持ち込みを許すということは、およそ防衛上の見地から考えられないし、まああり得ることじゃないし、また、どんなに持ち込みということがあっても、これは防衛庁の見地からも、これはあり得ないことだというふうに思いますが、いかがですか。
  253. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) お説のとおりでありまして、日本の国内で、核がいかに小さいものといえども、ぽんぽん放されればたいへんなことになりますから、だからわれわれ自衛隊は、核は持ちもせず、こういうことははっきりしておるわけです。それはお説のとおりです。
  254. 前川旦

    ○前川旦君 それではメースBについてお尋ねしますが、一体メースBは、沖繩を防衛する上の抑止力になっているでしょうか、どうでしょうか。どうお考えになりますか。
  255. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) まあ御承知のとおりメースBはだいぶん古くなっておりますね。しかし、やはり射程距離は二千二百キロもあるし、いかに古くなっておっても、やはり一つの抑止力は持っておる、かように思います。
  256. 前川旦

    ○前川旦君 このメースBの場合にも、さっき言ったと同じような考えが成り立つと思います。たとえばメースBが発射されて、他の国を攻撃に行く、これはアメリカのあれですから、まあ中国なり考えているんでしょうけれども、マッハ以下の、音速以下のよたよた飛んでいきますわ、これね。簡単に戦闘機で撃ち落とせますね。非常に防御が簡単にできる。攻撃能力が非常に劣っているということです。それからさらに、沖繩の基地というものは、すべてこれは地上に露出しています。脆弱な基地です。逆に、一発でも水爆のミサイルがほうり込まれたら壊滅するでしょう。メースBももちろんのこと、基地も。そういうことを考えると、一体この沖繩のメースBは、アメリカは抑止力だと言ってるけれども、抑止力果たしているんだろうか、どうか。およそアメリカの考える抑止力としての位置さえ、これはとどめ得ないような弱体な無意味なものとなってるんではないだろうか、こう思うんですが、いかがでしょう。
  257. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) どうもまだアメリカの核戦略というものを、われわれつまびらかにできないんですけれども、やはりアメリカとしては、大きく、まあ極東方面なれば、例のポラリスというものがありますし、あるいはB52と、こういうものが大きな抑止力の前提となって、その上に立っての沖繩でございますから、メースBは古くなっておると言いながら、背後には大きな核戦略があって、その上に立っておりますので、全然抑止力の効果がないとは言えないんじゃないですか。しかし、その力が昔から比べて、今日は抑止力の力が鈍っておるということは、われわれまあ常識的には言えますけれども、全然ないということまでは断言できない、かように思います。
  258. 前川旦

    ○前川旦君 ですから防衛庁長官としての専門的なお考えから、メースBがかりになくなっても、これはもうアメリカの核抑止力戦略には全然関係がないのだと、ほとんども関係ないのだと、あなたのおっしゃることであれば、少しは関係あるかもしれませんが、ゼロに近いのだというふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  259. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) まだ沖繩が日本に返っておりませんから、アメリカの戦略を日本の防衛庁長官が、これはもう要らないのだとかなんとかということは、これはちょっとこの際差し控えなくちゃならぬと思いますので、ひとつその程度で御了承願いたいと思います。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕
  260. 前川旦

    ○前川旦君 外務大臣にお尋ねいたしますが、今度の国会を通じて、たびたびアメリカの核の抑止力に依存するということをこれは言明をされておりますが、アメリカの核の抑止力というものは、一体具体的にどういうものをさしておられるのか、外務大臣のお考えとして、どういうものをさして核の抑止力と、この場合考えていらっしゃいますか。
  261. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 抑止力の問題については、先ほどもいろいろ御意見を伺ったわけでございますが、要するに理想と離れて、現実の現在の情勢の中においては、やっぱり率直に言って、東西の二大勢力と申しますか、そこでいろいろと米ソもくふうをしておるようでありますが、やはりアメリカを中心とするといいますか、アメリカの核戦略体制というものが非常に優位を占めている。そのことが全体的に戦争の、少なくとも核戦争の発生というふうなことを未然に防止している。これが現状であると、こういう認識に私も立っているわけでございます。具体的にどれとどれとどれがというよりも、総合して、アメリカの核戦略体制というものが抑止力を生んでいると、こういうふうに理解していいのではないかと思います。
  262. 前川旦

    ○前川旦君 ここで言う抑止力というのは、もし日本が核攻撃を受けたら、それは自国に対する攻撃と同じようにみなして、直ちに核攻撃国に対してアメリカは核報復をするのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  263. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ私の考え方としては、そういう事態が起こらないということが抑止力のメリットかと思いますが、いまのようなやはり一つの仮定を置いてのお尋ねで、そういうことが起こるということになれば、そうでございましょうけれども、私は、そういう仮定が起こらないようにするというふうに考えるべきではないかと、私はさように考えております。
  264. 前川旦

    ○前川旦君 それは外務大臣の言われる核の抑止力ということばと、理論と少し違うわけなんです。使わないから核の抑止力になるのではなくて、使わないなら核の抑止力にならないのです、抑止力理論からいくと。攻撃を受けたら必ず反撃して、相手にたえがたい傷を負わせると、それだけの能力もあり、意思もあるから、その反撃力を持っているから、そのことで防げるのだというこが抑止力の理論でしょう。そういうことになると、日本がかりに攻撃された場合、ちゃんとアメリカの核で報復をしてもらえるという、その確認、信頼があって、初めて核攻撃を避けられるというのが、核抑止力の理論ではないでしょうか。私ども核抑止力の理論は賛成していないのですけれども、そうじゃないでしょうか。
  265. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その点は、いま防衛庁長官からもお答えがありましたように、何といいますか、抜かざるところに意味のある刀である、これが私は抑止力理論ではないかと思うので、いまおあげになりましたような事態がもし起こったとすれば、それは抑止力理論から言っておかしいことになるのではないかと思っております。未然に起こらないようにしておくというところに抑止力というものがある。それはかまえ方とすれば、それだけの実力は備えているという自信と客観性をもって判断をすべきものだと思いますが、そういう判断の上にこそ抑止力というものが成り立つのであって、現実の脅威というものが未然に防止される、こういうふうに私は考えていくべきものと思います。
  266. 前川旦

    ○前川旦君 使わないということであれば、攻撃をしても反撃を受けないわけなんですから、これは攻撃する側の足にブレーキをかけるという効果はないというのが核抑止力の理論でしょう。ですから、ガロワ理論のようなものが出てきたわけでしょう。使うという意思があって、必ずこれは核兵器を使ってでも防衛をすると、つまり、反撃をしてやるという約束があって、それに信頼性があって初めて核抑止力理論というものは成り立って核のかさに依存するということが成り立つんじゃないですか。
  267. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、そういうふうに御理解になってもこれはけっこうなんだと思うのです。要するに、しかし、そういうことは現実に起こらないようにするというところにその抑止力の根拠がある。それはどういう根拠であるか、こうこうこういうわけであるということを前川委員お話しになっておりますが、そういう考え方もしかるべき考え方ではないかと思いますが、要するに、何度もくどいようでございますが、未然に起こらないようにするというところにメリットがある。ここが重点だと思います。
  268. 前川旦

    ○前川旦君 外相は、それでは日本の安全を、安保とそれから核の問題については、核についての安全保障はアメリカの核の抑止力に依存をすると、こう言われる。ということは、核の抑止力があるから核攻撃を受けないのだということになろうと思うのですね、先ほどのお話。私は少しこれは疑問を持つわけなんです。なぜかというと、それじゃ一体戦後ですね、この第二次大戦後今日までずいぶんこれは局地戦争がありました。たくさんありました。この局地戦争で一度も核が使われたことがありません。一体これはなぜ使われなかったんだろうか。この核の抑止力によって使うことが防がれたのでしょうか。どうお考えになりますか。
  269. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申しましたように、要するに、核を用いる核戦争というものが未然に防止されてきておる。そこにメリットが発揮されておる。私は、かように解釈しておるわけでございます。
  270. 前川旦

    ○前川旦君 たとえば朝鮮戦争のときも、核を使うべしという意見が非常にアメリカの中では多かった。マッカーサーが解任された理由もそのことです。御存じのとおりです。ディエンビエンフーのときも、あのときも核を使うべきだという意見が非常に強かったけれど使わなかった。台湾海峡のときもそうです。そのいずれも、かりにアメリカが核を使ったとしても核報復を受ける危険はなかったと思うのです。あの時代が時代ですからね。それだけの核配備を社会主義陣が持っておりませんでした。にもかかわらず、核の引き金を引かなかったということは、核の抑止力によって核を使うことが防がれているというのじゃないのです。もっとほかに理由があると考えてしかるべきではないでしょうか。
  271. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは時勢がどんどん変わりつつありますから、その当時の理論構想と現在と違う点があるかもしれませんが、とにかくしかし、核というものが朝鮮戦争その他で使われなかったということは、いま申しましたような背景あるいは理論づけは違うかもしれませんが、世界のために非常にけっこうなことだったと思うのでございます。
  272. 前川旦

    ○前川旦君 理由を聞いておる、理由を。その理由は何だとお考えになりますか。
  273. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 朝鮮戦争で使わなかった理由、これはまあ私が使わないことをきめたわけでも何でもございませんから、その当時の国連軍の態度といいますか、アメリカ軍の態度としては、これを使うことによって人類の破滅になるような悲惨な状態を起こさないために使わなかったであろうと一般に私は理解されていると思います。
  274. 前川旦

    ○前川旦君 私はこのことを実は考えてみたいのです。核攻撃を防ぐために核の抑止力に依存をする、核の抑止力があれば核攻撃を防げるのだ、こういうストレートの論理になっておりますが、そのことに非常に私は疑いを持つのです。なぜかというと、抑止力、核報復力、相手の国の核報復力がないときでも核が使えなかったということ、核の引き金を引けなかったということは、報復がこわかったのではなくて、むしろ国際世論、これを敵に回すことがこわかったということ、国際世論の力、あるいは東西両陣営にまたがる平和世論というか、平和運動の人道主義的な立場の力、あるいはまた、いざ使ったら社会主義陣営の武力全部と全面衝突するかもわからないというそういう計算、そういうものがもう一つある。それは、ぼくはやはり人間の理性も非常に決定的な働きをなしたと思います。そうものがまじり合っていままで核の引き金を引かずに済んできたのではないだろうか。そう考えるのが正しいのじゃないだろうか。報復がこわいからだけが核の引き金を引くのを思いとどませる唯一のしかも一番効果的な道とは考えられませんが、どうでしょう。
  275. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういう見方も私は確かにあると思います。御高説に対しては私は非常に敬意を表するのですけれども、ただ、こういう見方もできるのではないかと思うのです。相手方にいまだ核兵力がなかったか、あるいは乏しかったときですら、一方が核を使わなかった。これの理由根拠は、いま三つほどおあげになりましたが、そういうことであったろうかと私も想像されるわけでございますが、あの当時でさえそうであったのだから、いわんや一方の相手側のほうにも相当の核武装ができてきても、双方ともにやはりこれを使うということは、使わないことにしようというのが双方の考え方じゃなかろうか。そこにさらに、いまおあげになった理由の上にさらに抑止力理論というものが付加され、かつ、これの考え方が非常に強く裏打ちをしているのではないだろうか、私はこういうふうな見方もできるのではないかと思います。
  276. 前川旦

    ○前川旦君 日本の安全を、核攻撃に対する安全を核の抑止力に、アメリカの核の抑止力にたよろうとすれば、私はこういう欠陥があると思うのです。その核の抑止力が確実に働いてもらうためには、常にアメリカのほうへ絶えず寄っていかなければならない。つまり、アメリカにとって絶対に必要な国に日本がなっていかなければならない。ますます寄っていかなければ核の信頼性、核のかさの信頼性、抑止力の信頼性というものを確かめることができないというような矛盾があるのじゃないだろうか。そのことは結局日本の民族性というものと非常に矛盾をしてきて、独立性の放棄になっていくのではないだろうか、そういう危険性があるのではないかと思いますが、どうお考えになりますか。
  277. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そこのところがやはり安保条約の運用の大いに配慮していかなければならないところだと思うのであります。これも、まあ観念的に沖繩というようなことは別にして、従来しばしば申しておりますような、安保条約の体系といいますか、事前協議を含んでおるところのこの一つの体系というものが、そういった日本立場、あるいは日本の国民感情というものを十分わきまえて、そしてこういう合意が成立している、こういうように私考えていただいていいのではないかと思います。
  278. 前川旦

    ○前川旦君 核の抑止力にたよろうとすれば、常にその抑止力というもの、核の戦力というものは、たよろうとする相手の戦力というものは少なかったら困るので、大きいのを期待せざるを得ないというふうに思いますね。すると、ますますこれは核競争を激化するという方向へどうしても行かざるを得ないのじゃないでしょうか。
  279. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 現在の、先ほど申しましたような東西の対立といいますか、そういうところから言えば、非常に望ましいことじゃないでしょうけれども、ある程度、双方のエスカレーションということはあり得ると思います。しかし、同時に、いまも申しましたように、日本の主観的な立場から言って、たとえば、従来、本土につきましては非核三原則というのが厳守されて、そしてそれが、安保条約の運用上から申しましても事前協議の対象になり、そして日本としてはこれに対して、したがってノーであるという態度がとられておりますから、アメリカのほうにばかり片寄るとか、核戦力に云々ということを日本側からエスカレートするということは私はないで済んでおると申しますか、俗なことばでいえば。そして、日本立場日本国民感情の理解の上に安保条約が運用されてきた。まあこれでわれわれの気持ちと、それから抑止力に依存しているということの考え方が両立してメリットを発揮している、こう考えて、私は適当ではないかと思います。
  280. 前川旦

    ○前川旦君 外務大臣にお伺いしますが、核の抑止力だけに日本の安全をすべてゆだねるということについて非常に不安を感じます。私どもは不安を感じます。核の抑上力によらざるもっとほかの道を考えることはできないのでしょうか。
  281. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点は私も御同感でございます。したがいまして、日本の外交政策といたしましても、たとえば核軍縮、あるいはそのほかの、あるいは核実験の停止であるとか、いろいろの面におきまして、今後も日本として、冒頭にきょうも御質問がございましたけれども、よい意味の私からいえば核アレルギー、こういう気持ちを、日本国民らしいその立場の上に立ってそういったようなことの努力を展開するというのが、最も日本らしい、ふさわしい私は国際的努力ではないだろうかと、かように考えておるわけでございます。
  282. 前川旦

    ○前川旦君 それでは、いまおっしゃったことをさらに詰めていくと、たとえば日本は、非核三原則を守っている限り、守る限り、核の持ち込みには常にノーであるということになります。非核三原則を守る限りは、核の持ち込みを求められたら、これは必ずノーですね。常にノーということであれば、日本は非核武装国家ということになりますね、日本という国は。日本列島というものは、非核武装地帯ということになります、地理的に見れば。この非核武装地帯、非核武装国という立場で、たとえば核防条約の調印に際してこの非核武装国、非核保有国、非核武装地帯のこの日本を、核保有国が共同して安全を保障すると、こういうような取りきめをなさるような努力をするおつもりがありますかどうか。
  283. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 非核武装地帯ということは、いろいろの面から一つの何といいますかテーマとして考えられる問題であると思いますけれども、これは御案内のようにラテンアメリカの非核地帯設定についての協定状況などをごらんになりましても、なかなか簡単にはいかないわけでございますね。そして、ことに現在日本のおかれている国際的な地理的環境その他から申しましても、一面そういったようなことも研究の課題としては常に研究をする必要があると思いますけれども、現実の政策の問題といたしましては、なかなかそういうことは実現がむずかしいと、まあ私はそういうふうに判断をいたしておるわけでございます。しかし、たとえば核拡散防止条約経過をごらんになりましても、たとえばあの条約の中に軍縮の義務というようなものが挿入されて、原案が改善されておるというような幾つかの日本としての努力のあらわれは、あの核拡散防止条約の上にもあらわれておるわけでございます。こういう点からごらんいただきましても、今後日本としてなすべき国際的な努力、これについては、先ほど申しましたように十分の研究と国際的な訴え方、あるいは協力を求めていくという努力は積み重ねていきたいものだと、かように考えておるわけでございます。
  284. 前川旦

    ○前川旦君 ラテンアメリカの非核武装地帯と根本的に違うのは、あそこは複数です、国がね。日本の場合は一つだけですね、その点では非常に足並みがそろわないという、ブラジルがどうのこうのというような心配ありません。それと、現に核兵器のあるところの核をのけて、非核武装地帯を設置するというのは非常に困難でしょうけれども、現在ないところをただ確認するということですから、決して、これを実現不可能であると言い切ってしまうのは、私は少し早計じゃないかと思うのです。そのための努力というものをなさってしかるべきであると思いますが、重ねてお尋ねしますが、どうですか。
  285. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまもちょっと触れましたけれども、なるほどラ米条約では、参加国が多数であって、日本の場合は日本だけすればいいじゃないかということも考えられないことではないかと思いますけれども、同時にラ米条約の——一九六七年でございますね、ラ米条約ができましたが。その議定書で、核兵器国はこの地域に対して核兵器を使用しないということを約束することに原案ができたわけでございますね。ところがその前に、たとえばソ連コスイギン提案というものを行なっておりますですね。ですから、コスイギン提案を行なったようなソ連ならば、この種の条約ができた場合に、この議定書に当然ソ連としても署名するのが私は自然の成り行きであろうと思いますけれども、全然その動きはない。まあこういう点から考えましても、現実のこの国際情勢の中におきましては、日本がかりに一方的に非武装地帯宣言をしてみましても、これは核を持てる国、脅威の力を持っている国がこれに対して保障を全部が与えない、こういうことがあまりにも明らかに見通されている状況におきましては、私は、現在のところとしては、そういうことは一つの理想論としては考えられるでありましょうけれども、現実の課題といたしましては、テーブルの上にのせる段階ではなかろうと、こういうふうに考えるわけでございます。
  286. 前川旦

    ○前川旦君 たとえば次善の策として、核の不使用協定というものを、共同または個別に結ぶような努力をしてみるべきではないかというように思います。やってもむだだといって初めから投げることもあるかもしれませんけれども、そうじゃなくて、そういう交渉を始めて、話し合うということの中に、ものごとを解きほぐす一つの契機があるのであって、そのことのほうにこそむしろ私は前進が考えられるのではないだろうか。したがって非核保有国の日本ですから、その安全を何らかの形で、不使用協定でも、第一撃をしないという宣言なり協定でも何んでも、いろいろな形があると思いますが、何らかの努力をするという姿勢が必要ではないかと思いますが、どうでしょう。
  287. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御意見は私も非常によく理解できるのでありますけれども、実際のこの問題に対するアプローチは、私先ほど申しましたように、まだめどがはっきりいたしておりませんけれども、たとえはUNDC——軍縮委員会日本が参加ができて、そうしてそこで、先ほど申しましたように、いかにも日本らしい、また日本の得意とする面も相当私はあるように思いますから、そういう国際的な舞台で、大きく国際的な核軍縮、あるいは実験停止、あるいはその他の問題等を取り上げて、やはり大きく国際全体の問題としての新しい動きを創造するようにいたしませんと、個々の身近なところだけから始まってどことどうやるということでは、私は成功の可能性はおぼつかない、私はその点においては、御意見は違うかもしれませんけれども、発想は同じような発想でありますけれども、アプローチのしかたが私多少前川委員の御意見とは違うのではないだろう、かように考えます。
  288. 前川旦

    ○前川旦君 それはすれ違いですから。  そこで、それじゃいまおっしゃったように国祭的な舞台なり視野でなさる意欲を持っていらっしゃる、具体的には十八カ国の軍縮委員会のことを指していらっしゃると思います。そこで、最近ちらっと新聞にも出ておりますけれども、それに加盟するために、どんな努力をして、どのような折衝があって、どのような見通しが立っているのでしょうか、現在の段階で。
  289. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 十八ヵ国車縮委員会への参加の要請については、御承知のように、共同議長国が米ソ両国がなっておりますので、この両国に対しまして参加の要請を繰り返し努力を続けておるわけでございます。ただ、率直に申しまして、この軍縮委員会の構成が、御案内のように、自由主義国もあれば、非同盟、共産系、まあいろいろバランスなどをとっている関係も従来あるものですから、米ソ両方としても、いろいろの、まあ何といいまするか、考え方等もございますようですが、私としては、日本の純真なこの立場、気持ちというものが、そういうその両大国の取引などにわずらわされないで、何とかこの日本の参加というものが早急に実現するように、この点につきましては私は先ほどもちょっと触れましたが、確たる時期などについて、まだ申し上げることはできないのですけれども、この参加ということにつきましては、だいぶ国際的な日本参加歓迎の窓気が出てきたように思われますので、なお一そうの努力を積み重ねて実現をはかりたいと、かように考えております。
  290. 前川旦

    ○前川旦君 十八カ国軍縮委員会加入をするという意欲を持って努力をなさってきた。軍縮委員会に加盟をするならば、入るからには、確固たる軍縮に対する日本としての基本方針があってしかるべきだ。一つは、全面軍縮に対する基本方針、あるいは、別には、アームズ・コントロールというようなものに対する基本方針、いろいろあっていいと思います。そこで、全面軍縮に対する何らかの基本方針はおありですか。
  291. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これも全く御同感でございまして、私は、ただ単に十八カ国軍縮委員会に一つの席をもらうということで満足すべきじゃないと思うのでありまして、入るからには、先ほど来申しておりますような、いかにも日本らしい、一つの、何といいましょうか、考え方を持って入る。これは非常に必要なことだと思いまして、現在、外務省におきましてもいろいろの案を鋭意検討中でございます。で、御案内のように、過去におきましても、十八カ国軍縮委員会では実にいろいろの提案や勧告が出されております。ほとんど知恵の限りが尽くされているようですが、それがものになっていないわけなんで、まず、その完全軍縮については、こうした従来一応考えられ、日の目を見なかったような各国の提案というようなものを十分整理分析をいたしまして、その中から一つの日本的な考え方というものをまとめてみたいと思っております。  それから先ほどもちょっと申しましたが、全面実験停止については、御承知のような経過で、部分的核停だけしかできておりませんわけですが、すでに一九六六年以来、全面地下実験の禁止については核探知クラブというものができて、これも、自由主義国、非同盟、共産、中立各国が——まあ、たまたまこれは、どちらかというと小さな国が多いわけですけれども、最初から日本はこれに積極的に参加している。で、これに対して最近では大国も数カ国入ってくるようになりましたし、日本としては、地震学というような日本独特の世界的な権威者もおるわけですから、そういう面からのアプローチということについても、これはすでに国際的にも日本努力に対してはかなりな評価があるように思います。こういうものを、国際的な、さらに有権的な委員会等に反映させるというようなことも一つでございましょう。あるいはまた、細菌関係の禁止というようなことについても、日本ではやはり細菌学の大家もおられる。国際的な大家もおられます。まあ、こういう方々に大いに知恵を出していただきまして、いろいろの案というものを検討、準備をいたしておるようなわけでございます。
  292. 前川旦

    ○前川旦君 海底は……。
  293. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 海底につきましても、これも御承知のように、ソ連の提案というものもございますですし、十二海里以遠の海底の軍事施設等の禁止というような提案がございますが、これなどに対しましても積極的にいろいろ検討したいと思っております。ただ、日本は島国で、四面海に囲まれている国でもございますから、たとえば、何と申しましょうか、予知、探知というようなことをも含むところの海底の利用が、それまでも含んで全面的に禁止ということについては、はたしていかがなものであろうかというようなこともございますので、そういう点も含めまして、いろいろと検討をいたしておる、これが実情でございます。
  294. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 委員長ちょっと。外務大臣、参考までにちょっと聞いておきたいのですが、十八カ国軍縮会議に意欲的に日本が参加しようという、その事情はよくわかりました。なおまた、日本国が参加でき得ない事情も若干わかりましたが、その参加する、どういう外交ルートでやられておるかということと、日本以外で、この軍縮会議に参加しようという国があるのか。他にどういう国があるか、お知りであれば、ちょっとお知らせ願いたい。
  295. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 軍縮委員会につきましては、先ほど申しましたように、米ソ両国が議長国ということになっておりますので、折衝といたしましては、それぞれ両国政府を相手方として折衝を続けておりますが、なお、その他の国々に対しても、しかるべき措置は抜かりなくやっておるつもりでございます。  それから先ほど申し上げましたとおりに、この十八カ国の構成のでき方の沿革に徴しましても、どうも必ずしも純粋に日本の意図というものがくみ取られない場合もあり得るということは、相当多くの国が参加を希望いたしておりますから、どれとどれとをとって、どういうコンビネーションにして新規加入を認めようかというようなことも頭に置いてかからなければならないわけでございますが、私といたしましては、先ほど申しましたように、これはあまりに悲観的過ぎるかもしれませんが、日本の純粋な気持ちがすぱっと通って行ってもらうように、主として両大国に対して積極的に話を進めておるわけでございます。
  296. 前川旦

    ○前川旦君 軍縮に対して非常に積極的な御意見を述べられました。それじゃ、予算委員会ですから、予算でちょっと……。  一体、軍縮室ですか、外務省の本年度の予算は幾らでございますか。
  297. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 予算はまことに少ないので、まことに私も残念に思っておりますけれども、軍縮室というものができまして二年余り、これはまあ私の就任以前のことでございますが、及ばずながら、軍縮室の設置ということについては、当時から私は部外からもできるだけの協力をしてまいったつもりでございます。そうして、少なくとも予算はともかくといたしまして、人的には充実した配置をしたつもりであります。  それから、いろいろ専門的な知識も多方面にわたって必要でございますので、先ほどちょっと触れましたけれども、たとえば、地震学の宮村教授であるとか、細菌学の川喜田博士というような方方はじめ、相当の方々に実際上の御協力、御指導をいただいているわけでございます。  予算の数字は、政府委員から申し上げます。
  298. 小木曽本雄

    説明員小木曽本雄君) 数字は、四十四年度の予算が三百十四万円でございます。
  299. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。この軍縮室につきましては、これは経緯があるのです。それは、当参議院におきまして、佐藤尚武さんがこの問題を提唱されまして、私も賛成をいたしました。そこで、さんざんそれをやっておって、数年後に初めて、大臣官房に資料室ができた。それが、次の段階で、現在の軍縮室ですか、調査室になった。ところが、いまのような予算の内容ですね。それで、いまも前川議員からお話がありましたように、十八カ国軍縮委員会にかりに参加ができるにしても、これはもう東西両陣営、日本はどの陣営の立場に立つかというこの前の私の質問に対して、西の陣営だと。自由陣営の側に立っての参加を求めておると。そうなれば、東の陣営からも参加をするし、結局トロイカ方式になるかもしれない。で、これは数がふえるだけですね。だから、日本が参加する以上、いま前川委員の言われたように、積極的な具体案というものがなければ、ただなってみたいというのじゃ、これは問題にならぬと思う。ですから、なる以上は、これは十八カ国が十九カ国になるか二十カ国になるか、あるいはトロイカ方式で二十一カ国になるかわかりませんけれども、世界の参加国を傾聴せしめるだけのものを、対案を持たなければ、一体入ってみて何になるか。それには、いまの軍縮室はあまり貧弱ではないのか。こんな三百十何万のような微々たる予算で、これだけの——私もジュネーブの軍縮委員会を見に行ってきたことがありますが、あれだけの熱心な討議に日本が参加してやる以上、それに値するものがなければならぬと思うのですが、そういう抱負をお持ちになっておるかどうか、伺いたいと思います。
  300. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど私の考え方を申し上げたつもりでございますが、私は、軍縮委員会にただ一つの席を持って入ったというだけでは、それだけでも意味がありましょうけれども、それは私の企図するところではございません。入るからには、いかにも日本らしいと先ほど私申し上げたのですが、日本的な考え方をもって入る、これは非常に大事なことである。御指摘のとおり、予算は、先ほど私も申しましたように、人件費だけで、微々たるものでございますけれども、外務省といたしましては、たとえば国際資料部というものも最近相当充実してまいりました。あるいは、国連局の科学課というようなところも相当なものですが、これは省をあげて、必ずしも軍縮室という機構だけにとらわれないで、全省的な問題として取り上げてまいって——現在まだ、なかなかむずかしい問題ですから、十分御披露するほどのところまではまだ行っておりませんが、全省的な問題として取りかかっていこうと、こういうふうにやっておりますが、なお、予算とかあるいは人員の問題等につきましては、私もいまるる申し述べましたような気持ちでおりますので、今後大いに国会の皆さま方にも御協力をお願いいたしたい、あわせてお願い、御陳情申し上げるような次第でございます。
  301. 前川旦

    ○前川旦君 十八カ国軍縮委員会へ入るのに、基本的な軍縮に対する確固たる考えもまだ十分に固まってない段階であるようですし、予算はわずかに三百十四万八千円、八千七百ドル、ちょっとこれ、持って行ってかっこう悪いですね、何となく。たった八千七百ドルでは。もう少しこれは熱意を持っていただかないと、核抑止力といったようなものにたよらずに、みずからの力で緊張緩和をつくっていって安全保障の道をさがしていこうというのが私は望ましい道だと思いますし、この軍縮の問題は、もっと充実した、大臣だいぶ意欲があるようですから、充実したやり方をとっていただきたい。こういうように思います。  そこで、最後にお尋ねをいたしますが、今度の国会で初めて出てきたことばの中に、非常に気になることばがあります。それは何かと言うと、自由主義陣営の武力が、軍事力が、優位であるから平和が保てているのだという、そういうものの言い方を初めて実は聞いたように思います。いままであったかもしれませんが。この考えをこのまま延ばしていくと、自由主義陣営の力が強いから平和が守れた、常に自由主義陣営は力を充実していなければいけない、社会主義陣営よりか、より大きな軍事力を維持していかなければいけない、絶えず軍事拡張、軍備拡張していくということが平和を維持する、ということになってしまうではありませんか。そのことと軍縮とは一体どう結びつくんでしょうか。その点についてのお考えを聞きたいと思います。
  302. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点は、先ほど来私としてはるる申し述べたつもりでございますが、現実の国際情勢の中において現実に日本の安全を守っていく、これがやはり政治のなまの一番大きな問題じゃないかと思います。そういう点から考えますと、理想からいうと非常におかしなことであるかもしれませんけれども、やはり、力の均衡というか、その理論の上に立った抑止力理論というもの、現実の安全を守っていく上から見れば、これに基礎を置かなければならない、かように考えるわけですが、同時に、先ほども私申しましたように、また、前川委員の御意見も非常に私よくわかるつもりなんですが、やはり日本の民族の永遠の使命というものは、もっとずっと理想的なところにあるんじゃなかろうか、それから具体的に言えば、核というようなものが国際紛争解決の手段に使われるなどということは人類の不幸だと私は思うので、そういう面において絶えず努力を続けていく、そして早く、国連憲章や安保条約や、あるいは日本国憲法の前文にうたわれているような、そういう国際社会というものを創造することに、これがほんとうのわれわれの使命であるということに大きな真剣な努力を続け、かつ、国際的な世論にも訴えていく、こういうふうにしなければならない、かように私は考えております。
  303. 前川旦

    ○前川旦君 いまのお考え、ちょっと違うのです。いま外務大臣は、やはり力の均衡の上に立っているという現実は、これは見なければいかぬというふうにおっしゃいました。しかし、衆議院の江田書記長の質問に答えられた総理の答えは——江田書記長は、恐怖の均衡に立っての平和というのは無意味だというような質問をされた場合に、非常に強く、恐怖の均衡、勢力の均衡じゃありません、自由主義陣営が優位にあるから平和が保たれている、こう、はっきり言われたわけです。そこに問題があると思うのです。均衡しているなら、お互いに軍縮が可能です、話し合いによって。片一方が常に相手よりか優位に立っていなければいけないという発想法からは、軍縮といっても、それはただ単に相手の軍事力を減らして自分に有利にするためだけのテクニックにしか使われない。だから、絶えず自由主義陣営の力が強くなければ平和にならないのだという発想からは、どうしても軍縮という考え方は出てこないと思うのです。その点での結びつき、考えの結びつきを伺っているわけです。
  304. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 端的に申しますと、あまり悲観的にだけ私は見られないと思うのは、たとえば核拡散防止条約というものについて米ソの大体の合意というものが成立し、ソ連はまだ調印、批准しておりませんけれども、こういうことが大きく国際政局の上に浮かび上がってきたということは、私は確かに一つのいい方面への進歩ではなかろうか。これを何とか伸ばしていきたい。核拡散防止条約につきましては、いろいろな観点を考えまして、まだ私としては、いつ調印し、御承認を願う段取りをいつとろうかということは、まだきめておりませんけれども、これは、当初から言っておりますように、その精神なり、こういうふうに国際政局というものが前進してきたということは喜ぶべきことではなかろうかと思います。したがいまして、まあ、力の均衡論とか、どちらが優位で、どちらがどうとかいうこともいろいろに考えられますけれども、やはりそれを越えた一つの胎動が国際的にも出てきておるということは私は喜ぶべきことであり、ぜひそこに結びつけて、日本のまた働く道、生きる道もそこに切り開いていきたい、こういうふうな考え方を持っておるわけでございます。
  305. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして前川君の質問は終了いたしました。  明日は午前十時開会することといたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時五十一分散会