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国務大臣(愛知揆一君) そういう長期的な問題、あるいは核武装というような問題についてのいろいろな
考え方ということについては、ある意味で私も憂いを共にし、また御同感の点も多々あるように存ずるわけでございます。
そこで、まず具体的ないまのお尋ねですが、なるほど、アメリカのたとえば今度のABMの問題についての発表などを見ますと、中共ということも指摘してございます。ただいま御指摘のとおりでございます。それは、たとえば十年先にどういうふうにこれがエスカレートしていくであろうかということについての認識や、情勢分析は、アメリカはアメリカなりの分析をしているのでございましょう。とにかく、そういうスピードで行くとするならば、ABMのいわゆる抑止力と申しますか――というものをより強化しておかなければならないと
考える要素の
一つには入っていることは、発表によっても私は明らかだと思うのですが、結局、それらを総合いたしまして、対立する陣営と言うとまたことばが激しくなるのかもしれませんけれ
ども、現に対立している陣営に対しまして、アメリカ自身としては、自分のところの抑止力、またこのごろいわれておる第二撃能力というようなことも含めて、抑止力を先行きいつでも対立する陣営よりも優位に置いておかなければならない、
考えられるあらゆる想定に対して優位でなければならないということを
考えて、アメリカとしては政策をとっているのだと私は思います。現実には、私
どももそれを認めなければならない。ただ、しかし、そういう状態が十年続き、二十年続き、もう永久にエスカレーションの対立同士でもって、その
均衡の中に平和が保たれているという姿は、決して望ましいものではない。したがって、私
ども日本としては、まだそこまでの実力があると自分で見るのは早計かもしれませんけれ
ども、たとえば拡散条約にいたしましても、あの企図しているような核軍縮というようなことがほんとうに大国間で持てる国同士が結ばれるように、あるいは日本もさしあたり軍縮
委員会に参加をする、あるいは、これも時間がかかりなかなか困難な道でありましょうが、国連に対しては日本が安保常任理事国に登場するというようなことも、いろいろの
方法から
考えていくことが、私は日本の行くべき道ではなかろうかと思います。ただその理想だけを追って、またそういうことが実現しないうちに安易に
考えることは、国の安全という国家存立の目的から申しまして、私
どもは不適当だと思っております。こういう点は、御異論のあるところかと思いますけれ
ども、私の
考え方はそういう考に方に立脚しているということを申し添えておきたいと思います。