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1969-03-20 第61回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月二十日(木曜日)    午前十時十分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十日     辞任         補欠選任      小山邦太郎君     大森 久司君      塩出 啓典君     三木 忠雄君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         塩見 俊二君     理 事                 内田 芳郎君                 江藤  智君                 栗原 祐幸君                 小林  章君                 米田 正文君                 秋山 長造君                 山本伊三郎君                 二宮 文造君                 片山 武夫君     委 員                 大森 久司君                 鬼丸 勝之君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 郡  祐一君                 佐藤  隆君                 柴田  栄君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 中村喜四郎君                 西村 尚治君                 林田悠紀夫君                 増原 恵吉君                 柳田桃太郎君                 川村 清一君                 中村 波男君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 松永 忠二君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 鈴木 一弘君                 原田  立君                 三木 忠雄君                 河田 賢治君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  西郷吉之助君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  長谷川四郎君        通商産業大臣   大平 正芳君        運 輸 大 臣  原田  憲君        建 設 大 臣  坪川 信三君        自 治 大 臣  野田 武夫君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  菅野和太郎君    政府委員        内閣法制局第二        部長       田中 康民君        総理府特別地域        連絡局参事官   加藤 泰守君        警察庁刑事局長  内海  倫君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛施設庁長官  山上 信重君        防衛施設庁施設        部長       鶴崎  敏君        防衛施設庁労務        部長       長坂  強君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省入国管理        局長       中川  進君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省条約局長  佐藤 正二君        外務省国際連合        局長       重光  晶君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省主計局次        長        相沢 英之君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        文部省体育局長  木田  宏君        文化庁長官    今 日出海君        文化庁次長    安達 健二君        厚生省環境衛生        局長       金光 克己君        厚生省環境衛生        局公害部長    武藤琦一郎君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        厚生省援護局長  実本 博次君        農林大臣官房長  大和田啓気君        農林省農林経済        局長       亀長 友義君        食糧庁長官    檜垣徳太郎君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  長橋  尚君        通商産業省公益        事業局長     本田 早苗君        運輸大臣官房長  鈴木 珊吉君        運輸省船舶局長  佐藤美津雄君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省航空局長  手塚 良成君        自治省財政局長  細郷 道一君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   矢口 洪一君        最高裁判所事務        総局刑事局長   佐藤 千速君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        農林省畜産局参        事官       平松甲子雄君        運輸省大臣官房        審議官      井上  弘君        自治省大臣官房        参事官      岡田 純夫君    参考人        日本道路公団理        事        片平 信貴君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十四年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  本日、三案審議のため、日本道路公団理事片平信貴君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいをいたします。     ―――――――――――――
  4. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 昨日に引き続き、一般質疑を行ないます。原田立君。
  5. 原田立

    原田立君 一番最初に、自治大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、今回、国の援助を受けずに、史上最高の八百五十億円減税をしたと自治省は自画自賛しているわけでありますが、その減税内容説明してもらいたい。
  6. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 減税は数目にわたっておりますから、政府委員から御説明したいと思います。
  7. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 今回の減税のおもなものを申し上げますというと、給与所得控除、それから基礎控除、その他いわゆる三控除をそれぞれ一万円ずつ上げまして、合計で七百十四億三千二百万円の住民税減税をいたしました。その他電気ガス税でございますとか、事業税完全給与制、そういったようなことを通じまして、総体で八百六十九億六千五百万円の減税ということになっております。
  8. 原田立

    原田立君 高級料亭等で約二十億、国鉄納付金で約二十五億、これだけのことが減税になっていると思いますが、その説明がいまなかった。この点は入っているのでしょうか。
  9. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 入っております。
  10. 原田立

    原田立君 その分を住民税のほうの減税分のほうに回すことはできなかったのかどうか。
  11. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 住民税減税は必ずしも満足なものではありませんが、やはり各種の減税の必要を認めておるのでございますから、それに対して料飲税減税を認めておるのでございまするが、しかし、何と申しましても八百七十億近い減税のうち住民税は七百十四億減税をいたしておりまして、やはり最重点的に取り扱っておることは間違いございません。
  12. 原田立

    原田立君 自治省のほうでは、住民税課税最低限度額引き上げを今後継続してやる考えがあるのか、それとも、ここでまたとめおいてしまう考えなのか、その点はいかがですか。
  13. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私といたしましては、今度の減税の取り扱いにつきましても、やはり住民税を最重点に取り上げる。また、これでは、いまお答えいたしましたとおり、満足しておるわけではございませんから、当然今後も住民税最低限引き上げ、またその他の方法によって住民税減税をはかりたい、こういう考えでおります。
  14. 原田立

    原田立君 そうすると、今後も住民税減税はあり得るというお話で、それは一つの朗報であると、こう思うのでありますが、ただ絵にかいたもちでは何にもなりませんので、具体的な案等は検討なさっておりますか。
  15. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 四十三年度におきましても、御承知のとおり最低限について十万円近く引き上げております。四十四年度も同様に近い措置をとっております。私としては、やはり四十五年度も大体、最低その線はしなくちゃならぬ。しかし、できれば、余裕があればまたさらに考えますが、最低線としてやはり四十三年、四十四年にとった措置をやりたい、こう考えております。
  16. 原田立

    原田立君 そんなぼちぼち小切って出すのではなしに、たいへん徴税のほうが成績がいいと、こう聞いておりますが、一気に住民税課税最低限度額を百万円まで持っていくような、そういう構想はございませんか。
  17. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 率直に申しますと、できれば所得税等均衡のとれた減税をやったほうがいいということは、これはいろいろ御意見もあります。私自身もできればそういうことにいたしたいという考えがありますが、しかし、御承知のとおり、やはり地方財政現状から見まして、それがすぐ、いつできるかということまでは踏み切ってお答えはできませんが、しかし、最低限は、四十三年、四十四年度にとったところまでは、これは当然考えなくちゃならぬ、できればもっと、少し減税額を上げたいと、こう考えております。
  18. 原田立

    原田立君 所得税のほうを納めなくても地方税は納めなくてはならないということは、すでに御承知のとおりでありますが、このことについてたいへん国民の不満が多い。したがって、所得税住民税課税最低限度引き上げは、私は天の声だろうと思う。民の声だと思うのです。それに対してもっときちんとした態度で、少なくともこの数年の見通し等、仰せいただきたいと思います。
  19. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私いまお答えいたしましたとおり、四十五年度におきましても、最低この四十三年、四十四年にとった措置、この程度以上のやはり課税最低限引き上げたい。そこで、何年計画所得税まで追いつくか、かりに目標百万円といたしまして、しかし、これは急速に、なかなか最低限を百万円までするというところまで何年計画でできますか、これはやはり地方財政内容考えますと同時に、当然私はやはり住民税はできるだけ短い期間で、これは所得税と同じことまでなるかならぬか知りませんが、近いものまで持っていきたい、こういう希望を持っております。
  20. 原田立

    原田立君 次に、電気ガス税問題でお伺いするのですが、今回ガスが千円、電気が五百円の免税点引き上げをやっておられますが、この処置によってどのぐらいの家庭がその恩恵に浴することができるか、数的に御説明願いたいと思います。
  21. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 政府委員から申します。
  22. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) お答え申し上げます。  今回上げますことによりまして、電気につきましては、八十七万世帯、三・三%が、現在よりふえまして三百四十一万世帯、一三%が免税になります。  次に、ガスにつきましては、七十八万世帯、八・九%がふえまして四百八十七万世帯五五・五%が免税対象になる、かように考えております。
  23. 原田立

    原田立君 電気ガス生活必需品であり、このような生活必需品課税する政治姿勢大衆課税であり悪税であると、こう私たち理解しているのでありますが、自治大臣もこの税金はあまりよくないと言っているし、あるいはまた総理大臣もよくないと、こう言っているのですから、これは廃止方向に少なくとも持っていくべきではないか。地方財政の穴があくからというようなことをしばしば言われるけれども、それはそれで別に考えて、これは廃止方向に向かわなければいけないのじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  24. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま原田さんの御指摘で、私も電気ガス税というものは、これはなるべくひとつ税をなくするほうがいいと思っておりますが、地方財政上のことを申すのはどうかというお話ですが、一応やはりそういう地方財政内容とからむということは、これは間違いありません。しかも、相当これは大きな財源になっております。しかし、いまお話しのとおり、この電気ガス税につきましては、これはできるだけひとつ免税方向に持っていきたい。そこで、次の段階では免税点はもちろん、この税率についても考えていく、そして漸次御意見のように地方財政と見合わして、こういう税というものはできるだけ軽くしたい、こう考えております。
  25. 原田立

    原田立君 今後のことになると、できるだけとか、よくわからないがというようなことでたいへん話がぼやけてしまうのですが、こんなことを言うのはどうかと思うのですが、かつて地方事務官制度の問題についても、当分の間が二十数年かかった、現在でもまだ解決していない、こういうことがあって、先の話になるとあいまいな話では信用がしがたいのですよ。もう少しはっきりしてもらいたいと思うのです。
  26. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) まあそういうこともあったかもしれませんが、私はこの電気ガス税につきましては十分認識いたしております。四十五年度の予算編成税制改正にあたりましては、私は、自分ではこの問題を、これは一ぺんに廃止はできません。これははっきり申し上げておきます。しかし、相当な減税に踏み切っていきたい、こう考えております。
  27. 原田立

    原田立君 電気ガス税の税のほうの計算方法、これを教えてもらいたい。
  28. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) お答え申し上げます。  計算方法は、四十四年度の総使用量、これを把握いたしまして、それに一定税率でございますので七%をかけまして、それから今回の電気ガス税免税点引き上げ電気約三億、それからガス五億、それから紙に対しますところの引き上げ二億、こういったようなものを控除いたしました結果、ただいまの額を計上いたしたわけでございます。
  29. 原田立

    原田立君 免税点基礎控除でないから、超過使用したときには超過した分だけ払うのではなしに、全体にかかると聞いておりますけれども、その点はいかがですか。
  30. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 全体でございます。
  31. 原田立

    原田立君 そこのところに計算の非常におかしな点があると気がついておりませんか、事務当局は。
  32. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 申し上げますが、御承知のとおり、今回電気につきましては免税点を五百円にいたしましたので、五百円以下の人でありますというと頭からかからない。たとえば六百円でございましても、電気でございますとかかるといったような問題がございます。もちろんガスにつきましては千円までの人はかからないし、千円をこえれば直ちにかかる、これは先生御承知のとおりでございます。以上でございます。
  33. 原田立

    原田立君 だから、それがおかしくないかと聞いているのですよ。今度ガスは千円になった、じゃかりに千百円の者に対しては幾らの課税になるのですか。千百円に対してですか、それとも百円に対してですか、どうですか。
  34. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) おっしゃいますとおり、免税点制度でございますので、千百円の人でございましたら、千百円に七%をかけるのであります。
  35. 原田立

    原田立君 大臣、いまの答弁どおりなんだけれども、これは免税点引き上げということは、いってみれば減税のようになるけれども、これは見せかけじゃないですか。所信、いかがですか。
  36. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 税制上、免税点が千円で、千百円の場合七%の税率が千百円の全体に適用になる。これは徴税の技術的な結果でそうならざるを得ないのでございます。実際私も聞いておりますと、原田さんの指摘したような点も感じられますが、これも一つ徴税方法として理由があってのことでございます。
  37. 原田立

    原田立君 野田大臣官僚出身ではないのだから、こういう説明を聞いておかしいと正直思われているのだろうと思うのですよ。たとえば九百円までならば税はかからないけれども、千百円になったら千百円全部にかかる。おかしいと思うでしょう、これは。これは改める必要はありませんか。
  38. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は税については全然しろうとでございますから、かれこれ理論的に原田さんにいろいろ申し上げる知識を持ちませんが、大体の構想を聞いてみますると、免税点が従前の場合に――いまそれが千百円にかかる。基礎控除するがいいかどうかというと、免税点のいわゆる千円以下を引くと、免税にするということが零細な何といいますか、実際に金持ちと零細な方々とその不均衡ができてくるから、やはりそのほうが技術的にいいのだ、そうしてなるべく零細な方々といいますか、あまり使用しない方々に均てんしていった伝うがいいと、こういう説明であります。そこで、それを基礎控除にしますと、うんと金を持っていてどんどん使う人とそういうものと均てんしているかというと、それはかえって不均衡になる、こういう考え方のようであります。
  39. 原田立

    原田立君 それはおかしい、私納得しがたい。時間がありませんから次に進みたいと思いますが、通産大臣がお見えですからあれですが、最近の電気ガス需要はたいへん伸びている、そのことは新聞報道等承知しておりますが、どのくらいの伸び等になっておりますか。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事実関係でございますので政府委員から説明させます。
  41. 本田早苗

    政府委員本田早苗君) お答えいたします。  大体年率一〇%強、一〇%をオーバーする年率伸びになっております。
  42. 原田立

    原田立君 年率一〇%伸びがあったそうだが、自治大臣、そうしますと、今回二百円及び百円の免税点引き上げをしたけれども、はたしてそれによって恩恵を受ける人、それは先ほどちょっと数的な説明があったけれども、前と比較してどのくらい違うんですか。
  43. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 今度の減税案で見ますと十億近い減税になっております。これはいま年年相当需要がふえておるのでございます。それとどう均衡してまいりますか、私、計算しておりませんが、今度の減税では大体十億近い減税になっております。
  44. 原田立

    原田立君 金額ではなしに、対象世帯のことをお聞きしているんです。
  45. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 先ほど電気につきましては二二%になったと申し上げましたが、これは昨年度では二%でございまして、二百七十一万世帯であった、こういうことでございます。それからガスにつきましては、先ほど五五・五%オーバーになったと申し上げましたが、昨年は五五%でございまして、四百四十一万世帯対象であった、かようであります。
  46. 原田立

    原田立君 それで変わってどうなのかというそこまで言わなくては、今回の免税点が上がって。
  47. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 変わっておるという点でございますけれども、あるいは受け取り方が違っているかどうか、先ほど申し上げましたように、その結果、電気につきましては三・三%免税対象がふえました。ガスにつきましても〇・五%でございますけれども免税対象はふえるということであります。
  48. 原田立

    原田立君 いまも説明がありました電気のほうは三・三%対象者がふえておる、ガスの場合は〇・五%しかふえていない、こういうことだけれども、これじゃ自治大臣見せかけじゃないですか。
  49. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 今度の電気ガス税減税見せかけということではございませんが、大体、電気ガス税に対しては減税しなければならぬという基本的な姿勢を打ち出したのでございます。当然これは先ほどお答えいたしましたとおり、本質的に検討すべきことだ、そうしてできるだけの減税をすべきことだ、こう考えております。
  50. 原田立

    原田立君 去る十一日に佐藤総理は、電気料金生産性も上がっておるので、値下げの必要があるから検討すると、当委員会で言っておるわけですが、その後検討なされましたか。通産大臣
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御案内のように、過去ずっと電気料金は据え置きの状況になっておるのでございます。この原因は、人件費等値上がりがございましたけれども燃料費が低減してまいったり、革新的な発電設備の技術の導入等によりましてカバーできてまいりましたのでございます。ところが最近私どもが検討してみますと、確かに火力自体発電コストは下がっておりますけれども水力発電コストは上がっております。他社からの買電コストも上がっております。それに加えまして、最近顕著な現象といたしまして送配電コスト値上がりが見られるのでございまして、総体としての電力の供給コスト上がりぎみに見られるのでございます。しかしながら、私どもは物価安定の見地から、これを上げるというようなことはとうてい考えられないことでございますので、どういうことがございましても現状はぜひ維持せなきゃならないと考えておるのでございまして、いま引き下げの余地があるかと問われるならば、直ちにそういう結論を肯定的に出すまでの用意はないことをたいへん遺憾といたします。
  52. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 原田君、ちょっと申し上げます。ただいま岡田参事官答弁の中に数字の訂正を要する点があるそうでございますので、ここで補足を許します。
  53. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) お答え申し上げますが、先ほど申し上げました増減の状況でございますが、これは単純に差し引きますとそういうふうになっておるのでございますけれども、その後消費者がふえております。電気消費量もふえておりますし、ガス消費量もふえておりますので、実質的な増差と言いますか、申し上げますと、電気につきましては八十七万世帯、三・三%、免税対象がふえておる。それからガスにつきましては七十八万世帯、八・九%対象がふえている、こうなっておりますので、訂正させていただきます。
  54. 原田立

    原田立君 経企庁のほうにお伺いしたいんですが、電気料は下げられるものの中に入っているのかどうか、その点はいかがですか。
  55. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 電気料金のことにつきましては、一応頭に浮かんでくる問題でありますが、ただいま通産大臣お答えになったとおりで、通産省の調査によっても現在下げることは困難じゃないか、こう考えております。
  56. 原田立

    原田立君 そうすると、総理電気料金生産性も上がっておるので値下げの必要があるから検討すると言ったのは、その点はどう受け取ったらいいんですか。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先日の本委員会におけるやりとりの中で、総理の御答弁の趣旨は私はこのように拝聴いたしたわけでございます。電気料金のようなコストを下げる余地の考えられるものについては、そういうものもあるのではないかという示唆であったと思うのでございます。これは確かに総理おっしゃったように、原油のコストが下がってきたり、先ほど申しましたように発電設備の熱効率を上げる施設も技術も進んできておるわけでございますから、そのようにとられることも当然考えられると受け取ったわけでございます。ただ私がそのときに補足して御説明申し上げましたように、その他のコスト、すなわち水力のコスト買電コスト、送配電のコスト、そういった面についてはじりじり強含みでございまするので、いま直ちに全体の電力料金の引き下げということに踏み切るまでの用意はないということを補足して御説明申し上げたのでございまして、総理のお考えの中には、そういう原料コストあるいは技術の向上、そういった面について御関心があられてそういう御発言になったのではないかと、そのように思います。
  58. 原田立

    原田立君 経企庁長官どうですか、いまの総理のことば。
  59. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 先ほど私が申し上げましたとおり、一応頭には浮かんでくる問題だとは思います。が、しかし、総理もそういう意味で発言されたことじゃないかと思うのでありまして、通産大臣からお答えがあったとおり、いろいろの事情で、現時点においては値下げすることは困難じゃないかと、こう私も考えておるわけでございます。
  60. 原田立

    原田立君 九電力の平均の減価償却は、現在どのくらいになっているのですか。
  61. 本田早苗

    政府委員本田早苗君) お答えいたします。  最近の償却の実績では、定率償却で九八%強になっております。
  62. 原田立

    原田立君 火力発電用重油価格が下がっているというふうに聞いておりますけれども、その点はどうですか。
  63. 本田早苗

    政府委員本田早苗君) お答えいたします。  先ほど大臣からお答え申し上げましたように、燃料費の低下、それから熱効率の上昇等の関係から、昭和三十三年ころは、火力発電の発電端原価で三円九十六銭ということでございましたが、最近は平均いたしまして二円四十三銭くらいになっております。  ここでちょっとつけ加えて申し上げますと、当時三円九十六銭であった火力は、全体の発電量の二五%強であったわけでございますが、最近は火力が六四%に達しております。
  64. 原田立

    原田立君 生産性が向上している等、それらの条件を加えると、経理的内容はきわめてよいはずなんです、中身は。だから当然値下げを行なう時期ではないか、こう私は思うのですよ、どうですか。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま局長から御説明申し上げましたように、この現行料金をきめる場合には、暫定的に定額償却で計算をいたしたわけでございますが、御指摘のように、経理内容が充実してまいりまして、定率法の上限に近づいてまいりまして、九六%まで定額償却ができるようになりましたことは、電力会社の財務内容が好転充実してまいりました証左であると思います。  そこで、それでは引き下げに応じられるかと、いまの暗点においてという限定したお話でございまするが、電力料金は、私どもは安定的な供給ということが使命であろうと思うのでございます。願わくは安定した供給が確保されて、産業や生活の基礎の条件に狂いがないように配慮してまいらなければならぬと思っておるのでございますが、先ほど申しましたように、この火力発電の比重がふえるということは、発電コストから申しまして、水力のほうがずっと低かったのでございますが、低いものの比重が落ちて高いものの比重がふえてきたということ、それから買電コストも、先ほど私が申しましたように上がってきておりますし、最近のように、過密地帯で地中に電線を埋設していくというような工事は、非常に工事費がかさんでまいっておりますので、先ほど申しました送配電のコストが顕著な値上がりを見せておるのでございますから、私ども考えでは、こういうコスト高の原因を技術の革新と経営の合理化で吸収いたしまして、安定供給の線はどうしても確保しなければならぬというのが、当面の私どもの非常に力点を置いた関心事でございます。したがって、いま直ちに仰せのように値下げに踏み切るべき時期かということにつきましては、遺憾ながら肯定的なお答えを申し上げる段階でないことを遺憾といたします。
  66. 原田立

    原田立君 いろいろ説明があったけれども、先ほども申し上げたように、去る十一日の佐藤総理の発言は、電気料金値下げの必要があるから検討すると、こう当委員会で発言しているわけなんです。国民に対する公約ですよ、これは。いま通産大臣は、生産性も上がっているのに、あるいは減価償却も九八%にもなっているにもかかわらず、それを下げようとしない。検討しようとしないのは、あまりにも国民軽視の態度ではないか。私は強く非難したい気持ちで一ぱいなんです。いかがですか。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それを終始検討しておるのが私どもの仕事でございまして、検討していないわけでは決してないのでございますが、その検討の過程を通じましての考えとして申し上げたのが、先ほど私の答弁でございますので、御了解をいただきたいと思います。
  68. 原田立

    原田立君 競輪、競馬、オートレース、競艇等の公営ギャンブルについての基本的な態度、それらを各関係大臣よりお話しいただきたいと思います。
  69. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 競馬につきましては、社会的に好ましくないというような御批判があることもよく知っております。しかし、競馬は、第一に馬事の振興とあわせまして畜産の振興をやり、さらに国民の健全な娯楽を提供する。第三には財政上の寄与。この目的によって運営をされておりますし、したがって、農林省といたしましても、競馬が大衆娯楽として健全に発達するようにつとめておりますし、三十六年の公営競技調査会の答申に沿いまして、公正確保、秩序維持、環境整備等について、従来にも増しまして一そうの指導監督を行なっておるつもりでございます。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どものほうの管轄は競輪とオートレースでございます。これは、御承知のように昭和三十六年の公営競技調査会の出しました結論に沿って、いままで以上の拡大はしない、それから健全な大衆娯楽の方向に持っていくのだ、こういうような基本の方針に従いまして現在の施設が置かれております以上は、その公正な管理をやることが第一の任務だと思っております。第二は、私どもに法律上ゆだねられた益金の一部を、あるいは機械工業の振興に、体育、医療等の振興に適正に有効に充当してまいる、そういう仕事で適正を期したいと考えております。そして、開催の回数でございますとか、事業所の施設の数でございますとかというのは、この調査会の御答申の趣旨に沿いまして、その後ふえておりませんのみならず、若干減っておりますことも、統計が示しておるとおりでございます。今後これを大きくしていくというというようなことは毛頭考えておりません。
  71. 原田憲

    国務大臣原田憲君) モーターボート競走は、発足以来、船舶、船舶用機関、船舶用品の改良、輸出の振興あるいは海難防止、海事普及あるいは観光、体育、その他の公益の増進、地方財政の健全化のために一応の役割りを果たしてきております。この競走の条件については、三十六年の公営競技調査会の答申の線にのっとって進められております。しかしながら問題点も指摘されております。十分これらの点には留意をいたしまして、健全化をはかるように努力をしてまいりたいと存じます。
  72. 原田立

    原田立君 佐藤総理は、公営ギャンブルを再検討すべきであると、こういうふうに言っておりますけれども、具体的にどのような検討になっておられますか。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 公営競技調査会の答申の線に沿って、ただいままで政府が監督の責任に当たってきたということは、先ほど申し上げたとおりでございます。それで、この公営競技を改廃するという問題は、私ども考えでは、地方の住民の御意思によることでございまして、政府は進んでこれを継続するとか、あるいは拡張するとか、そういうような考えが毛頭ないことは御承知のとおりでございます。  政府がいま、それでは現状をどのように改善してまいるかについて、新しい仕組みをつくって検討しているかというと、いまの段階におきましては、各設置地域における住民の方々考え方の動向というようなものをよく注視いたしておるわけでございまして、現に置かれておる設備の管理、運営の適正化、益金の配分の適正化ということに、善良な管理者の注意をもちまして当たっておるというのがありのままの姿であろうと思っておりまして、それをどのようにしてまいるかは、根本におきまして、地方住民のお考えいかんにかかっておるものと承知いたします。
  74. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ただいま通産大臣からも言われましたが、三十六年の答申に基づきまして、少なくともその線に沿って私たちは監督もし、そうして十分に競馬の意義をあらしめなければならぬ。またさらに、周囲の環境衛生等についても十分に検討を加え、そうしてその実施に当たっておるようなわけでございますので、いまここでやめろとか、どっちかとか、右か左かと申されましても、ただいまお答えをすぐ申し上げるわけにはまいらないと思います。  いま、競馬につきましても、今日アジア全体ばかりでなく、各国、十五カ国が集まって、競馬の振興策はどうやるべきだというような会議も日本で開かれている現実でございます。そういう点も御理解を賜わりたいと思います。
  75. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 先ほど最後に申し上げましたが、指摘されておるいろいろな問題点、これはあらためて健全化をしなければならない、こういうふうに考えております。
  76. 原田立

    原田立君 私は、冒頭に申し上げたように、佐藤総理自身が、公営ギャンブルを再検討すべきであると、こう言っているのですよ。だから、それに対して、実施の省の各省の態度はどうかと聞いているわけなんです。あまりにも発言の内容が食い違っている。この点は非常に納得のいかない点です。  それで、次に農林大臣にお伺いしたいのですが、競馬をやめる時期はいつなんですか。
  77. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) やめる時期は考えておりません。
  78. 原田立

    原田立君 たしか去年、二年延長云々の問題があったんですけれども、その点はどうですか。
  79. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) その点につきましては、政府委員から答弁をいたさせます。
  80. 平松甲子雄

    説明員平松甲子雄君) ただいま原田委員からお話しの二年でやめるという競馬につきましては、地方競馬は、従来災害を受けた市町村等で主催しておったわけでございますけれども、災害を受けた市町村がそのままずっと続けていくということもまずかろうということで、先般の法律改正で、そういう市町村に対して競馬の開催をやめてもらうということで、そのやめた市町村に対する財源補てんの意味で、財源補てんのための競馬を二年間続けるということであったわけであります。
  81. 原田立

    原田立君 どうもよく説明が納得いかないけれども、先に進みましょう。  自治大臣にお伺いするのですが、公営ギャンブルの売り上げ金で財政を潤すという考え方は、ばくちのテラ銭で家を建てたり服を買ったりということであって、おのずと不健全であることは明瞭だと思うのです。そういうことがなくても地方財政が潤うようにしなければならぬというふうに基本的には思うのですが、たぶん御賛成だろうと思うのですが、御所信はいかがですか。
  82. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 公営競技の収益で、今日までいろいろな地方自治体の道路とか教育機関とか、社会福祉その他、大きな財源としてそれを活用しておった事実に照らしまして、今日もこの公営競技の収益は、相当の地方自治体の財源になっていることは、御指摘のとおりであります。しかしこれが今後どうなるか。私は、ギャンブルの収益でまかなってずっといくということは、これは私は必ずしも穏当な地方財政の確立でないということはわかります。しかし、これはいま主管大臣が皆さんお答えいたしておりますとおり、いろいろの理由によって行なわれておりますし、また、それがなくなるのはいつごろかという測定もできない段階でございます。しかしいまお示しのように、これが永遠に地方財政の大きなウエートを占めるということは、これは私はやはり考えなくちゃならない。現にやはり、何かそういうことにたよらないで地方財政を確立していくということは、私は非常に好ましいことだと思っております。
  83. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連。公営ギャンブルの話が出ておりますので、これは自治大臣と大蔵大臣に伺いたいんですが、宝くじについては、これはギャンブルじゃないというような考え方がおありのようなんですけれども、実際問題を見てみますと、競輪、競馬等については七五%がいわゆる賞金ですが、ところが宝くじの場合は、四十三年十二月の全国自治宝くじを見ると、当選賞金の総額四三%が国民に戻ることになる。ところが、賞金を取りに来ないで無効になったのが四十二年だけで四億三千万、総額の一割五分である。そうすると、四三%から一割五分の一五%引くと二八%しか国民に戻らないことになる。この点で、ギャンブルより以上に、一つのいわゆる富くじとしての性格かもしれませんけれども、賭博性が強いような感じがある。こういう点については、どういう考えをお持ちですか。こんなもので一々財政をまかなうという考え方が、不健全そのものということを示しているわけです。いかがですか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) このギャンブルというか、富くじもそうでしょうが、国民には、射幸心というか、そういう性向があるわけです。これを放置しておくと、これが非常に曲がった方向に流れる傾向がある。そこで、これを公営とか国営とかいうような形で、正しい方向にできるだけリードしよう、こういう形がただいま問題になっておるギャンブル公営問題、そういうことかと思うのであります。決して、ギャンブルを積極的にやつて、そこで収益を得ようという目的じゃないん一であります。社会風潮の上から、ギャンブルを適正にリードしよう、その反射的な効果といたしまして、国なり地方団体においてそれだけの収入がある、こういうふうに考えておりますので、基本的に考え方がどうも食い違っておるように思うのであります。まあ富くじにつきましては、自治体の収入する部分が多いわけでございますが、まあこれも長年やってみて、大体あの程度でバランスがとれているんじゃないかというところになっておりますが、なお、それが適正であるかどうかということは、御指摘もありますので、考えてみることにいたしたいと思います。
  85. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま大蔵大臣から御説明をいたしましたのと重複いたしますが、実情は宝くじを取りに来ない人が多いじゃないか――いま実情を聞いておりますと、相当いまお示しのような数字が出ておきておることは間違いないと思います。ただこれは、できるだけ取りに来るようにPRしておるようでございます。それから、多額の何か、大きく当たった人なんか、なるべく評判にするとあぶないからというので、三カ月も半年も据え置いておくということで、これはしかし、弁解するわけじゃございませんが、いま実情を申し上げているわけです。そこで、公営ギャンブルがいいか悪いかということにつきまして、私はもちろん好ましいものだと、これは非常に奨励するものだとは考えておりません。しかし、実情は、いま大蔵大臣が申しましたとおり、一面ギャンブルでございますから、これを奨励してどんどんやれということでなくて、しかし一面、社会的な――財政上のことはもちろんですが、社会的にもやっぱり一つの大衆のレジャーの一端になっているという、いろんなこともありますし、しかし、結論といたしまして、私は決して好ましいことではない、こう考えております。
  86. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 答弁が……。私が言ったのは、時効になって取りに来ないのが四億三千万円も四十二年度はある、四十三年度は五億円程度あるだろう、還元した賞金総額の一割五分も賞金を取りに来ないんじゃないか、こういうことを申し上げたので、それを入れれば、還元されるのが、競輪、競馬は七五%を戻しているのに、宝くじの場合は四三%じゃないか、そうすると、それからさらに、いま申し上げたように、取りに来ない分は減るわけですから、まるきり競輪、競馬よりも国民のほうからしぼり取るという感じが強くするわけです。そんな少ない還元であったんでは、いまのギャンブルよりもひどいじゃないか。しかも、そういうものにたよる財政というものはおかしいじゃないか、この二つなんです、質問は。何だか取り違えて、取りに来ないのは二、三カ月待っているんだろうと――待っている話をしているんじゃないんですから、よく質問をどうぞ聞いていてください。
  87. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) よく御趣旨わかりました。それはひとつ調整いたします。そういうことが相当あると思っております。
  88. 原田立

    原田立君 自治大臣、先ほどもちょっと言ったように、公営ギャンブルの売り上げで市町村財政を潤すというような状態は好ましくないと先ほど仰せになりましたけれども、それでは、そういうものがなくても、そういう関係市町村を健全に発展せしめていけるような方法、方策はお考えですか。
  89. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、先ほどお答えしましたとおり、一挙にこれがなくなるということは、大きな地方財政の財源になっていることは御承知のとおりでございますが、しかし、これをますます奨励して収益をあげようなんという考え方は持っておりません。同時に、できれば、やはりそういう財源によって永久に地方財源としてまかなっていくということは好ましくない。そこで、やはり漸次これは今後地方財政が、いつも申しますとおり、決していま潤沢ではない、しかしやや好転しつつあることも事実でございますから、これらと見合わせまして、またこれは私だけの考え方で地方公営競技を廃止とか存続とか言うこともできないことでございます。これはやはり政治全体で考えなければいけなことかと思っております。ことに、主管大臣の御説明もありましたとおり、おのおのやはり相当の目的があって、相当の効果もあげているということは、これはやはり認識しなければならぬことだと思います。私自身は、いまの財政上、地方財政からいたしますと、これに永久に依存するということは、これは非常に考えなくちゃならぬことだと思います。しかし、これを漸次どうしていくかという計画考えて持っていかなくちゃならぬ、そういう考え方でおります。いまはっきりこの地方財政の中でギャンブル収益の占めている財源をどうしてこれを解消していくかという、まだ具体的な検討まで入っておりません。
  90. 原田立

    原田立君 次に、カネミ・ライス・オイル油症患者の問題についてお伺いしたいのでありますが、全体的な掌握、あるいは現在の病状、あるいは治療の受診状況、これらを御説明願いたいと思います。
  91. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) いろいろ数字的にわたりますので、政府委員から説明いたさせます。
  92. 金光克己

    政府委員(金光克己君) お答えいたします。  患者数は、現在確認された者が七百八名でございます。それ以外に若干疑い患者がございますが、今後さらに検査を徹底していく予定になっております。原因につきましては、御承知のように、塩化ジフェニールが油の製造過程において混入した、かように考えているわけでございます、なお、その汚染経路につきましては、御承知のように、脱臭の製造工程におきまして、六号タンクにピンホールがあったということが一つの事実として認められておりますが、まあこの問題につきましては、なお検討を要するという点がございまして、本日も午後から、福岡県の現地からも九大の関係の専門家の先生等も出席いたしまして、対策本部の会議を開くことにいたしております。そういうことによりまして、そういった原因につきましてもさらにはっきりさせ、また汚染経路等につきましてもはっきりさしていきたいと思います。  患者の治療につきましては、これにつきましてはいろいろと研究費等も助成いたしまして従来実施いたしてまいっておりますが、必ずしもはかばかしくまだ治癒しないという状況でございます。まあこういった点につきましても、今後大いに研究してまいりたい、かように考えております。
  93. 原田立

    原田立君 病状。
  94. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 病状についてお答えください。
  95. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 医療の状況につきましては、ただいま申し上げましたように、現地におきまして油症研究班というものを、大学あるいは……。
  96. 原田立

    原田立君 そうじゃなくてさ、病状はよくなっているのか、悪くなっているのか。
  97. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 病状につきましては、先ほど申し上げましたように、必ずしも好転はしていないということでございまして、治療は非常にむずかしい状態にあるということでございます。まあ軽症患者につきましてはかなりよくなっている者もありますが、重症愚者につきましてはなかなか好転してまいらない、こういう実情でございます。
  98. 原田立

    原田立君 最近新しい症状を訴える者が多いと聞いておりますけれども、その点はどうですか。
  99. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 一部患者の間におきましては、いろいろと症状を訴えて、まあ当初皮膚におきます挫創というものが中心でございましたが、いろいろの、しびれ感とか、そういった症状を訴えてきておるということでございます。また、内臓的にもいろいろと問題があるんじゃないかという心配もされておりますが、専門家の意見によりますと、現在内臓等におきましては特別な障害は認められないと、かような状態でございます。
  100. 原田立

    原田立君 総合治療班を編成して治療に当たっているそうですが、その後何か発見できましたか。
  101. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 治療につきましては、これも先ほど申し上げましたように、福岡県の地元におきまして、九州大学並びに福岡県、北九州市の関係者も参画いたしまして油症研究班をつくりまして、治療に関する研究を進めてまいっておるわけでございまして、特別な、これが非常に効果的なという療法につきましては、現在までのところ発見されていないということでございますが、これも先ほど申し上げましたように、本日午後から本部におきまして研究会議を開きまして、今後の問題の解決を進展させてまいりたいと、かように考えております。
  102. 原田立

    原田立君 今度のこの油症を受けて、もうこれで一生お嫁にも行けないだろうと、こう言って嘆いている娘さんもおります。どうかひとつ、七百八名も多数の人にわたっている問題ですから、せっかく努力して、早く治療方法の発見等、誠意をもってやっていただきたいと思いますが、どうですか。
  103. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) おっしゃいますとおり、まことに大きく言えば人道上の問題とも考えられるものでございます。したがいまして、治療法の発見等につきましては、全力をあげたいと、かように思っております。
  104. 原田立

    原田立君 大臣、あの患者の要望をお聞きだろうと思いますが、その点はどうですか。
  105. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 患者さんの代表の方にも両三回私もお目にかかりました。御要望は、やはり一日も早くなおるような治療方法を発見するようにつとめてもらいたいということが第一点。まず一番大事な問題。同時にまた、治療費自身については保険その他の方法で見てもらっているけれども、しかしそれに関係した諸掛かりがかかる――交通費、あるいは弁当代、あるいは会社を休むとか、いろいろな事柄に応じた他の関係費用が要る、何とかできないだろうか。もちろんこれはカネミの会社からの賠償金でもらうべきものだと思うが、これについて何らか助力をしてもらいたいという御要望でございます。で、会社側は当初一人当たり二万円程度の見舞金を出して、そうしてそういった諸掛かりに充ててもらっていたということでありますが、それももうだいぶ時日がたったので尽きてまいったというのが今日の現状でございますので、したがって、会社も誠意をもって対処したいと言っくおるわけでありますから、さらに二万円なり五万円なり、とにかく当分の間の賠償の内払いという気持ちで、あるいは会社としてはまだ賠償金という形は困ると言うかもしれませんが、見舞金等の形でもいいが、出すようなことが考慮できないか。実は、一昨日ここの社会労働委員会で、会社の関係者、それから治療に当たっておられた医者、また患者同盟の方々参考人にお呼びになって、私も終始伺っておりました。医者の話によりますると、まあいままで厚生省でも聞いておりましたが、ある一定の経過をずっとたどってしまえば、それでその油症の状態が固定をする、あるいはいいほうに向かっていくというものではなかろうかと、まだその一定の経過を歩む段階にあるように見えるというのが、最初から一番中心になってやられていたお医者さんの御意見でありました。ほかにも他に御意見もありましょう。そういう点から考えますると、あるいは他の重金属によるああいった障害の医療にずっと長く残っていくのか、あるいはそうではなくてある一定の何が来ればよくなっていくのか、それまでの間には悪いような経過もたどるというようにも受け取れるので、まだ一年余りのことでございますから、したがって最終的な損害賠償ということもまだちょっと時期としては早過ぎるのかもしれませんが、その一部の前払いと言っちゃ悪いかもしれませんが、当座の事柄ということで話ができないかということを、現地の福岡県知事にもお願いをいたしまして、会社と患者の間のあっせんをひとつやってくれないか、かりにも、必ずしも応じないということでもないでありましょうしいたしますから、そういったような事柄についてあっせんをやってもらいたいということをお願いしておるのがこっちの現状であります。
  106. 原田立

    原田立君 この補償問題でやはり一番問題になっているのですが、患者の要望も、カネミを相手にしたのではらちがあかないので、国で一時立てかえてくれないかというようなことを言っていると聞いておりますが、その点はいかがですか。
  107. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 国で立てかえてくれということは、はっきりは私は聞いておりません。あるいはそういう要望を――立てかえてやろうと言えば喜ぶかもしれませんが、これは無理だと思って持ち出さないのか、私直接国で立てかえてくれということは聞いておりませんが、しかし、いま言った、こういう状況だから、困った者に対しては何とかしてくれという訴えは聞いております。
  108. 原田立

    原田立君 その何とかしてほしいという訴えは聞いているということですが、それを受けて厚生省としてはお考えがあるのでしょうかどうか。
  109. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) それを受けまして、会社の賠償の内払いというか、見舞いというか――という形で、何とかある程度の愚者の満足のできるような誠意の示し方はないかということを患者側と会社側との間で話し合わして妥当な解決を見つけてくれないかと知事に依頼をして、知事もやってみましょうという段階でございます。
  110. 原田立

    原田立君 いまも、話し合いをするそういう機関がないと困るので知事に委嘱したということでありますが、実際私は福岡県や北九州市の担当官に聞いてみました。まだ何とも指示がないんだと、どうやって動いていいんだかわからないんだというようなことを言っておりましたけれども、その点はどうですか。
  111. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 実は私きのうお昼に知事にまた電話をいたしまして、そして会社のいわゆる油症、油の症状ですね、油症対策本部というのを会社がつくっているようだが、まあ、そこの責任者と話し合っていまのような方向でさらに会社が誠意を示すように、あなたは現地の知事だからひとつ骨折ってくれと申しまして、知事は、自分は責任持って解決策を見出すという自信はいまのところないけれども、しかし会社に慫慂し、また会社側との間も取り持つということはいたしましょうということで、また、先ほど申しました一昨日の社会労働委員会に出てきた会社の責任者も、ある程度そういうことはやることが適当であろうという気持ちで帰ったと私は思っております。
  112. 原田立

    原田立君 福岡、田川、北九州でそれぞれ被害患者の会ができております。そうして福岡のほうはこれを法廷闘争に持ち込もうということで提訴したということも聞いております。いずれにしても、早期に解決することを私は望む一人でありますけれども大臣としてもこの問題を早期に解決するように何らかの努力をしてもらいたいと、こう実は思うんですが、ただ知事に指示をしたというのではなしに、国として大きな問題でありますから、取り上げるお考えはないんですか。
  113. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 国としてと申しましても、やはり問題は会社と被害者側との民事問題というのが法律上の扱いでございますので、したがって、私並びに厚生省が、東京におる者が中心になってやってやるか、あるいは地元でやってもらうかということで、実際問題としては、やはり地元のわれわれの出先、しかしわれわれの直接の出先というのはございませんから、われわれの仕事をいつもやってもらっている知事なりあるいは県の衛生部長なり、それらの人たちが中心になってやってもらうように私のほうからさらにいろいろとお願いをし、注意をし、場合によれば指揮をするというような形でいくのが一番いいんじゃないか。全部交渉の場を東京で持つということもなかなか困難であろうと考えております。いずれにいたしましても、愚者の方々状況も私ども非常にお気の毒だと思っております。会社は力のある限り誠意を示すのは当然だと、こう思っておりますから、その考え方に立ちまして最善を尽くしてまいりたいと、かように思っております。
  114. 原田立

    原田立君 法制局来ておいでだと思いますが、去る三十年に問題になった森永ドライミルク事件、その後どういうふうに進展していますか。
  115. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) お尋ねの森永ドライミルクの件は、民事の訴訟事件でもございましたので、私から御説明申し上げます。  森永ドライミルクの事件は、昭和三十一年に岡山地方裁判所に、件数といたしましては二件提訴されたわけでございます。患者の数は、合わせますとちょうど七十名が損害賠償等の訴えを提起された。ただ、この事件は厚生省のほうで非常に御努力をいただきまして、厚生省のあっせんで五人の方が委員に選ばれまして、その委員の方が意見書を調査の上おつくりいただいたわけでございます。で、森永のほうの側は当初から、その意見書の結果が出ました場合にはそれに従うということを確約いたしておりました。被害者の側、いわゆる原告の側でございますが、これはそういうお約束はございませんでしたが、十分尊重したいという御意向であったようでございます。その意見書は昭和三十年十二月十五日にでき上がりまして、その意見書の線に従いまして双方で御折衝いただいたようでございますが、大体意見書どおりの案をのむということで、森永ドライミルクのほうで非常に誠意を示されたようでございまして、訴訟といたしましては、その結果、昭和三十一年十二月二十二日事件の取り下げということで円満解決したように承知いたしております。
  116. 原田立

    原田立君 まだ最高裁でとまっている事件が一つあったはずですね、それを。
  117. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者佐藤千速君) ただいま民事局長から民事のほうの事件としてお答え申し上げたわけでございますが、関係者の刑事責任を追及する問題といたしまして、徳島地方裁判所に三十年の九月二十日に起訴がございました。これは事件は業務上過失致死傷の事件と食品衛生法違反の事件でございます。で、徳島の地方裁判所におきましては、八年ばかりかかりまして全部無罪の言い渡しをしたわけでございます。八年かかりましたのはなぜかと、こう申しますと、事柄が非常に技術的な問題であり、しかもデリケートであるというために、証人、鑑定人等多数の取り調べをいたしております。鑑定人は十余名にのぼりまして、鑑定の結果を出すのに七年かかった。その他に証人等を多数調べているわけで、二百五十名ぐらい調べております。しかしながら、そのように時間がかかりまして全員無罪の判決があったわけでございますが、これに対しまして、被告四人のうち二名に対しまして検察官の控訴がございました。これに対しまして四十一年の三月に第二審であります高松高等裁判所におきまして、原判決を破棄して差し戻すという裁判がございまして、その破棄差し戻しの裁判に対しまして、被告のほうから上告がございまして、去る四十四年二月にこの上告の判決を棄却するという裁判があったわけでございます。したがいまして、事件はさらに徳島の地方裁判所に戻りまして、刑事責任の有無についてさらに審理をするというような段階に相なった次第でございます。いま申し上げましたのは、刑事責任を追及するほうの刑事事件の状況でございます。
  118. 原田立

    原田立君 森永の例を出したのは、たいへん長期になっておるということの実例として申し上げたわけなんですが、厚生大臣、あまり長期になれば患者が非常に気の毒です。早期に解決するよう、また、補償問題も早く解決するようにせっかく御努力願いたいと思うんですが、いかがですか。
  119. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 十分努力をいたす所存でございます。
  120. 原田立

    原田立君 前例のない油症患者と聞いておりますが、この治療開発のために予算はどれだけ配分しておられるんですか。伝え聞くところによると、約五百万ぐらいだそうでありますが、少ないと思わないか、あるいは増額すべきではないか、かように思いますが、どうですか。
  121. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) とりあえずその程度で着手をいたしておりますが、また足りなくなれば科学技術庁の研究調整費のほうもお願いをいたしておりまするし、場合によりましては――大蔵大臣とそこまでは話しておりませんが――予備費でも出してもらってという段階になるかもしれませんが、まあまあその程度で私は本年の研究は十分であろうと、かように考えております。
  122. 原田立

    原田立君 実際に患者にお会いになって状況はおわかりだろうと思いますが、たいへん気の毒な状態になっていることは御承知のとおりです。何度も申し上げるようでありますが、この患者の人たちが、働き手が倒れてしまい、生活が苦しくなる者もありますし、あるいはまた、生活保護世帯などに入るような者も、現在は聞いておりませんけれども、そういうのもあるんではないかと心配してるわけです。そういう人たちに対して従来どおりの法だけによって解決しようというのではなしに、何か特別にお考えがあるかどうか。
  123. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) まあ、今後の状況によりまして、必要なことを、考えるべきことが起こってまいれば考えてまいりたい、かように考えます。先ほども申しましたように、まだこの油症というものが、これで固まったのか、ある一定の経路をとってよくなっていくのか、というまあ段階だという医者の説明もあるわけで、私はまあ、一定の経過をたどってそこまでは来るけれども、あとはこういうように快方になってくるという道をたどってくれれば、患者のためにも一番ありがたいと、そう思っている段階でございます。しかし、今後の経過もわかりませんから、その経過の発展に応じまして適当な手段方法を講じてまいりたいと、かように考えます。
  124. 原田立

    原田立君 同じような問題になりますが、水俣病患者の補償問題でお伺いしたいんですが、水俣病患者のその後の補償問題が難航していると聞いております。きのうも当委員会で田中委員よりいろいろとございましたけれども、その状況、簡単に御報告願いたい。
  125. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 水俣の問題、昨日詳しく申し上げましたが、ちょっとその前にさかのぼりまして、簡単にいままでの経過を申し上げますと、昭和三十四年の十二月に患者側と会社側との合意によって契約書ができまして、この契約によって昨年の九月までずっと会社から給付が行なわれていたわけでございます。そこで、この契約の中には、この原因が会社側の原因であってもこの内容は変更しないものだということがうたわれておるのだと、またおったのだと、会社側が主張をするわけでありますが、患者側のほうは、それはどうもはっきりしない。いずれにいたしましても、昨年の九月に厚生省が、その原因に工場側にあるということをはっきり表明をいたしましたので決定をいたしましたので、そこで、いままでの契約を御破算にして、原因を与えた者としての補償を要求をするというように変わってまいって、それまで続いておった、支給をしておった給付がもうそこで御破算になって、新しく請求をし直すという段階になった。そこで会社側と患者側、何回も話し合っても話にならない。こういう状況のもとに私は厚生省の仕事を受け持つことに相なりました。それから後に、私のほうから、この前の両者の契約は、知事が中に入ってそしてやってくれた契約であるし、いままでずっと知事が地方住民としてめんどうを見ていたのだから、ひとつ今度も中に入って患者側と会社側とのあっせんをはかってくれないかと再三願ったのでありますが、とても両者の言い分が離れ過ぎておって、歩み寄りの道が見えない、とうていそんなところに私は入ってみても成果得られるとは思えないと言うておりました。その間に患者側がまた上京してまいり、また会社側のほうからも、厚生省で補償の基準を示してもらいたいという話がありました。で、補償の基準ということになりますと、これは民事賠償の基準をきめるようなわけでありますが、これは非常にむずかしいわけでありますので、国として、そういう行政機関が補償の基準をきめるという、損害賠償の基準をきめるということもなかなかむずかしいし、というておるうちに、患者側の人は、何とかひとつ中へ入って仲裁をしてもらえないか、いろいろ話がありましたので、まあ、私は、それじゃあ、公害紛争処理委員会ができるまで待てないと言われるし、その状況も全くそのように思いましたから、それじゃあ第三者機関を考えてみようかと言うて、いまその段階にあるわけであります。そこで、そのうちに、患者側の代表の方は、大体その第三者機関でやってもらう結論にみな従うと思うけれども、みんなそういうふうに説得させる自信がありますからそれでやってくれということであったわけでありますが、そういう機関にまあ一任するというような形は危険であるからというので、内部がいままとまっていないというように聞いておるのが今日の現状でございます。
  126. 原田立

    原田立君 私も患者の人たちをお見舞いしてまいったのでありますが、たいへん気の毒な方がございます。自主交渉ではだめなので、第三者機関の設置を要望しておる、これがだめならばあとは政府の、裁判所に対する訴訟というふうなことを基本的に考えているようでありますが、この第三者機関の設置を要望していたのが、いまだこれもできていないということでありますが、そのいきさつはいかがですか。
  127. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 先ほど申し上げましたように、患者側の方々の中で、その第三者機関にそれじゃあまかせようじゃないかということがまだまとまりません。したがいまして、それがまとまるなら私のほうで仲裁に立つ人々を数名お願いをしてやりましょうと、こう言っておったところが、そこがまだまとまらぬものですから、まとまるのをお待ちをしておるというのが今日の現状でございます。
  128. 原田立

    原田立君 そのまとまらない原因が、いまもお話しのあった確約書の提出がそうであります。その文書等も、委員会が出してくださる結論には異議なく従うことを確約しますということのようでありますが、これはどういうふうな意図でこういう確約書が必要なんですか。
  129. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私は、代表のほうになられる数名か十数名の方も、やはり自分たちが代表でやって、そしてやっているうち足元を見たら、みんなそんなものはいやだと言って訴訟のほうに行ってしまったというのでは困るという実情もおありのようであります。同時にわれわれのほうでも、第三者の方を頼んでやってるうちに、途中から裁判のほうがいいぞと言われて、そっちへみんな行ってしまうというようなことでも困る。少なくともわれわれ、これこれのものが――もう初めからいやだという人は、のかれていいと思いますけれども、これこれのものはひとつこの第三者機関でやってもらおうじゃないか、その結論にはですよ、まあ確約書、と言いますと非常に固いようでありますけれども、とにかくその結論を尊重しようじゃないかということぐらいは確約してくれないと、やらしてみるけれども、気に入らなかったらあとでもはねるぞと。中には、そんなところでやるなと、おれたちは裁判やってやるから、裁判のほうをやったほうがいいと言うて、そっちへ行こうか言うてる人もある現状ですから、そこが固まりませんと、これは法律上の問題でなくって、ひとつお互いに善意と善意でやろうじゃないかと言うてるところでありますから、そこの固まるのをいま待っているというのが今日の状況であります。確約書というのもそういうような意味でありまして、そこの第三者で出る、いろいろやってもらったその最後の結論は、われわれ尊重しようということを確約しようということぐらいはやってもらわぬと、最初代表者の言われた、われわれみんな説得してそういうところへ持っていくから、ぜひやってくれということと違ってまいりまするし、またやるものにしましても、お互いに信頼を置きながらやっていくというのには、それだけのことが必要であろうかと、かように患者側の代表の方々とも話し合って、こういうことでひとつ意思統一をしてもらおうかということにしたわけでございます。
  130. 原田立

    原田立君 そうすると、厚生大臣、全体がまとまらずとも、じゃあ一部のものでも、あるグループの人たちが、第三者機関の設置でもけっこうです、やってください、お願いしますと、こういうふうな場合であればやると、そういうふうに受け取ってよろしいんですね。
  131. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 実は私はそこまでは考えていなかったんです、全部まとまるということを代表の方が言っておられたから。しかし、大部分がまとまって、そして二、三の方は従わないと言うんなら、それでもいいんじゃないだろうか。ただ、二、三の人だけがこっち頼みますと、大部分はいやですというような分かれ方だと非常に困る。その実態を見てきめたいと思っております。
  132. 原田立

    原田立君 その点で非常に心配されているのは、これが法的規制力が非常に発生するんじゃないかというようなことで心配されている向きがあるのですが、これの解釈をどなたか。
  133. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 紛争処理委員会の法律にあるように、これに不服のものは、さらに上の機関にあれができるとか、民事訴訟ができるとかいうことをはっきりすりゃはっきりするんでしょう。しかしながら、これは事実上の仲裁をやろうじゃないかというわけでありますから、それで、これは聞かぬでもいいんですよと、いやなら裁判をやったらよろしいんですよということまで言うて、そこまで言うてやらなきゃならぬ問題だと私は思わないんですよ、実際は。こっちからやらそうとしているんじゃないんですから。おっしゃるように、できるだけいたしますから、ひとつ仲裁機関をつくって、そして仲裁をしてくれんかというお話ですから。だから、少なくともそれを尊重しましょうという程度ぐらいのなにをして、実際上は裁判はやらないんだという、これは暗黙の了解ぐらいでもいいですよ。しかし、それは実際法律問題として、そんなこと言ったって法律の拘束力はないんですから、実際は裁判をやる権利というものはあるわけです。決してそれを放棄させる意味ではありません。ありませんが、こういう問題のときに、裁判はかってにやれるのだ、いいほうをやったらいいというので、両方やらせるというようなやり方で私は第三者に頼むということは、非常に、何というか、礼を失すると思うものですから、まあこれなら大体皆さんの御意向に従うという基盤ができているからひとつ始めてくれんかというように、と思っているわけで、したがって、文章にあいまいな点があれば、第三者の最後の結論をわれわれは尊重をすることを確約いたしますということでもいいですよ。かまいません。何も民事権を放棄さして、そして無理やりにやらそうなんて考えていないですから、代表者の方々と直接お目にかかってお話をすれば、スムーズに事柄が運ぶのではないかと私は思っております。その後、代表者の方とはまだお目にかかっておりません。
  134. 原田立

    原田立君 そうしますと、現地のほうの案として、当事者双方からよく事情を聞き、また双方の意見を調整しながら、論議を尽くした上で一日も早くあっせんしてくださるようお願いいたしますと、こういうふうに互助会が修正したそうでありますが、それでは厚生省は第三者機関をつくらないのかどうか、もしつくらないとすれば、理由は何か。
  135. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいまの、ちょっと聞き取りにくかったのですが、私のほうは、向こうがまとまってくれば、前に約束したとおり約束はほごにしたくない、かように思っております。しかし、あまりむずかしければ、こちらはそんなら裁判をおやりになったらどうですかと言うかもしれませんけれども、一ぺん代表者の方々意見をよく聞いてみないと、どういう御意見でみんなおられるのか、私のほうは無理にそんなことをやろうとは決して思っておりませんから。
  136. 原田立

    原田立君 厚生大臣、そんなふうに冷たく突っぱねるような言い方をしないで、これは公害第一号なんですから、もう少しあったかい気持ちでやっていただきたいと思うのです。というのは、やはり人はそれぞれいろいろ考えがありますから、中には裁判でやろうと言う人もあるでしょうし、あるいはこの問題早く解決してくれという気持ちのある人もあるでしょうし、ただ、出た結果において非常に不満なところは、こういうことをやってもけっこうですよと、そのくらいは言うても差しつかえないんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  137. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私は、おそらく患者同盟の方々の中にもいろんな御意見のある方があるだろうと思います。それをまとめていくのに、代表の方々がいろいろ御苦労しておられるだろうと思います。どういう言い方をすれば一番よくまとまるのか、これはいろいろ個人個人のなにもありましょうから、それに私はおまかせしたほうがいいと思う。私は、代表の方が見えたときにも、それはそうは言うけれども、最後になってどこまでもこれにしばってしまわなければならぬという、そんなものじゃないけれども、しかし、道義的にみんなまかそうじゃないかというところまでひとついくでしょうなと言ったら、そうしますというような話で、そこはあいまいなところも残るかもしれませんが、どうせ事実上の話し合いの問題ですからいいじゃないだろうか、私は別に冷たいなにを言っているわけではありません。ここで言います事柄が、あるいは代表者の方々がいろいろ奔走しておられることについて支障になっても困ります。だから基本的な立場だけを申し上げて、そして代表者の方々、その他どちらの方々でもけっこうです。幾らでも私はお話を伺って、そして皆さんがこれがいい、やりたいとおっしゃることについては、最善のお力をかしてあげるというか、努力をいたすということをいたしたいと思っているわけであります。
  138. 原田立

    原田立君 先ほどよく聞こえなかったという仰せなんですが、当事者双方からよく事情を聞き、また双方の意見を調整しながら、論議を尽くした上で一日も早くあっせんしてくださるようお願いいたしますと、これは互助会のほうの原案なんだそうですが、これでは第三者機関をつくって解決に努力をしてあげようということにはならないのですか。
  139. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私は、当事者の方とまだそれで話をいたしておりません。一ぺんとくとそれらの経過も、当事者の御意向も伺って、私の先ほど申しますような趣旨でまとまるという心証が得られればいたしますし、そこはひとつおまかせをいただきたいと思います。
  140. 原田立

    原田立君 次に、身体障害者対策について申し上げるのですが、子供、おとなまでを含む障害者福祉基本法を立法化するお考えはないかどうか。あるいはまた身体障害者扶養保険制度を国で出すようにしたらばどうか。その際には、任意加入制度で、これは任意加入制度でありますが、低所得者層には保険料が高くてなかなかなじめないようでありますけれども、そういう点に対しても考慮して、出すようなお考えはないかどうか。
  141. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 心身障害者の扶養保険制度の問題は、御承知のように、府県または市等でそれぞれ保険会社と団体契約を結んで、そして身体障害者の両親がなくなった場合に、身体障害者のために保険金を交付しようというので、各地方公共団体がいまやっておられるわけでありますが、これによりますと、その地域に限定をされますので、やはり地域は全国的な規模にならないとその保険がうまく活用されないというので、国が中に入りまして、ただいま法案を御審議願っておりますが、特殊の財団法人にそのことをやらせるというのが、今度の法案の内容でございます。そこで、低所得者に対しましては、現実の問題といたしましては、いまやっております地方公共団体がそれぞれ、大体低所得者には公共団体がかわって掛け金をかけるというようなやり方をやっているようであります。したがいまして、現在は、いま公共団体のやっておりますその扶養者保険を全国的にうまくやれるアレンジをするということを主にしてまいりたい。かように考えておりまして、その結果を見ながら、さらに改善するところがあれば改善をしてまいりたい、さしあたってはそういうような考えで出発をいたしたいと思っておるわけでございます。
  142. 原田立

    原田立君 重症者の保護家庭での年額所得が二十八万円をこえない場合に限定されて、月額千九百円の特別児童扶養手当が支給されているわけですが、非常に金額が少なくて、物価高騰の社会情勢においては非常に足りない予算措置なので、重症者の社会保障といえないような形なんですね。もう少し増額する、手厚くしてあげる、そういうお考えはないですか。
  143. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいまの段階では、先ほど申しましたように、さしあたって公共団体でやっているものを全国的にうまくいくようにという仕組みをつくろうということで、実質は公共団体のやってるものをそのまま引き継いでいくということを大体原則にいたしております。これが実施をみました上で、いろいろと他の社会保障制度ともにらみ合わせて、必要があればまた改善を加えていきたい、かように思っております。現在のもので、それでもう全く十分だとは考えておりません。
  144. 原田立

    原田立君 十分でないのは当然なんですよ、少な過ぎるんですから。少な過ぎるという点を私は指摘しているわけです。所得制限を撤廃したり、あるいは金額を大幅に引き上げるような、そういうお考えはないですか。
  145. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいまのは児童の特別扶養手当の問題でございますか、保険の問題でなしに。いまお尋ねの点は。
  146. 原田立

    原田立君 児童扶養手当。
  147. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 扶養手当は、本年はさらに二百円か増額する法律をいま御審議を願っております。これは非常に低いとおっしゃると思います。まあこれは毎年ちびりちびり上げているわけでありますが、まあ本年はこれでまいりまして、これで十分とは考えておりません。いろいろまた問題もあると思っておりますが、いま児童手当制度の点も考えておりますが、これらとあわせまして今後さらに検討をしてまいりたいと思っております。
  148. 原田立

    原田立君 ちょっと観点が別になりますが、四十四年度予算においては、ホームヘルパーの予算は少しは入っているように聞いておりましたけれども、その点はいかがですか。
  149. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) ホームヘルパーの問題につきまして、老人なりあるいは身体障害者に対しまするホームヘルパーは四十四年度も行なうわけでございますが、心身障害児に対しまするホームヘルパーにつきましては、今後の問題となりました。
  150. 原田立

    原田立君 そうするとゼロ査定ということですね。
  151. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) そのとおりでございます。と申しますのは、老人なりあるいは身体障害者につきましても、ホームヘルパーをつける場合には、そういった方々を介助する方がいらっしゃらない場合に限るわけでございます。したがいまして、心身障害児につきましては、その子供を扶養するものが大部分の場合あるというふうな意味も込めまして、それが研究の課題ということになりまして、四十五年以降に持ち越されたということでございます。
  152. 原田立

    原田立君 大臣、この問題もそうあんまり冷たいことをいわないで、これをつけてやるべきだとぼくは思うのですよ、実際問題、生活が非常に苦しくて、そういう子供をかかえていながらなおかつ働かなければいけない、子供がいるために働けない。ホームヘルパーがあれば働くことも多少できると、しかし今回それはゼロ査定である、こういうことはよくないと思うのですが、何らかの処置が講じられませんか。
  153. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私もぜひそうありたいと思っておるのであります。まあことしは、あちらこちらとたくさん問題があったものでありますから、そこのところは、事務当局のところでそれじゃことしはがまんしようということになったのでございますが、まあ何とかいたしまして、他から捻出できれば考えまするし、また来年度はひとつ大蔵大臣にかけ合って、ぜひ実現をするようにいたしたいと思っております。
  154. 原田立

    原田立君 次に、保存の問題でありますが、福岡県筑紫郡太宰府町の遺跡、都府楼遺跡及び水城の堤防等の買い上げ状況はどうなっておりますか、文部大臣
  155. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 御案内のとおりに、大宰府遺跡というのは、日本の文化史におきましても非常に価値のあるところでございまして、まあ九州耶馬台国説だとか、あるいは大和耶馬台国説とかいうようなことがあるわけで、非常に大事なところでございますが、大宰府は、平城宮址、多賀城史跡と並ぶわが国の歴史上重要な遺跡でございますし、この史跡を保存するために、昭和三十九年度から太宰府町に国庫補助を交付して買い上げを実施してまいりました。史跡の重要性、緊急性にかんがみまして、補助金額は年々増加をし、四十三年は総額六千万円、補助額は四千八百万円の買い上げ費を計上しております。昭和三十九年度が国庫補助金八百万円、四十年度が千六百万円、四十一年度は千六百万円、四十二年度が三千二百万円、昭和四十三年度が四千八百万円ということでございます。
  156. 原田立

    原田立君 ここの遺跡は四十一年十一月に史跡の指定の内定をしたそうですけれども、その点いかがですか、文化庁のほうから。
  157. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 太宰府の指定は大正十年に都府楼あとを指定したわけでございます。その後特別史跡に指定し、さらにそれらの地域以外の都府楼あと以外のところの地域と、それから都府楼あとの追加の指定ということが問題になりまして、昭和四十一年に太宰府の都府楼あとの追加と、それから学校院あと、観世音寺あと、子院あと、こういうところを含めまして指定をする文化財保護委員会の決定がなされたわけでございますが、しかしながら、指定はこれを告示することによって行なうということになっておりまして、現在は指定の告示をいたしておりません。したがいまして、いま申し上げました地域については、まだ指定はしていないわけでございまして、この指定につきましては、住民の方々、地元の市町村の方々と十分お話し合いをして、その上で指定の告示をしたい、こういうことで、現在関係の太宰府町とそれから地元の方々お話し合いをしておる、こういうような現在の段階でございます。
  158. 原田立

    原田立君 そういう内定で地元の人たちはたいへん苦慮している現状です。内定を取り消してくれと、こういうふうな意見も非常に強い。その点はどうですか。
  159. 安達健二

    政府委員(安達健二君) この指定をする意味は、この地域がただいま大臣からもお話ございましたように、わが国の歴史上きわめて重要な地域であるということでございまして、そのために指定をするわけでございますが、何よりもまず一つは、住民の方々がそういう史跡の価値について十分具体的に認識をしていただくことが第一であるということから、発掘をいたしまして、このように重要な遺物があり、遺跡があるということを現実に見ていただくというようなことをいたしておるわけでございまして、そういうようなことを通じまして、地元の方々の認識もたいへん高まってまいったということが第一点でございます。それからまた、地元の町におきましてもこのための委員会を設けられまして、この指定を促進するというようなことで御努力されておるわけでございます。  それからもう一つは、地域が広くなってまいるわけでございます。したがいまして、すべての地域について原状変更を禁止するというようなことにも問題があろうということで、A地区、B地区、C地区の三段階に分けまして、A地区は原則として原状変更を認めない最も貴重なものである。それからC地区は、原則的には特に支障のない建物等であるならば、これは原状変更を認めよう。B地区についてはさらにその状況等も発掘したり、その他によって考えていく。こういうような三段に分けまして、それぞれの価値というものとの関連を合わせながら十分その保護をはかりつつ、また住民の方々の御意向にも沿うようにしようということが第二点でございます。  それから第三点といたしましては、買い上げを促進していきたい。こういうことで、先ほど大臣からお答えのございましたように、われわれといたしましても今後も買い上げの促進に努力したい。こういうような方法によりまして地元の方々の了解を得、そしてこの史跡の保存に遺憾なきを期したい、かように考えておるところでございます。
  160. 原田立

    原田立君 文部大臣、この特別史跡になった少なくともその地域だけでも、ちゃんと国で早く買い上げる、全部早く買い上げる、そういうお考え構想はないですか。
  161. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) ただいま文化庁の次長から申し上げましたように、やはりこの遺跡の価値につきまして十分やはり検討をいたしました上、A地区、B地区、C地区それぞれの分野があるわけでございますから、まずわれわれといたしましては、一番重要なA地区というところから始めなければいけないのではないかというふうに考えております。
  162. 原田立

    原田立君 ですから、そのA地区の買い上げの早さですね、それはどう考えているんですか。
  163. 安達健二

    政府委員(安達健二君) ただいま大臣からお話がございましたように、まず緊急にやるべきものは特別史跡の分でございます。同時にその他のB地区、C地区――C地区はもうほとんど問題ございませんが、B地区等につきましても原状変更の申請等があって、どうしてもここに家を建てたいとかいうようなことがございました場合には、またこれを買い上げをするというようなことも必要になってくるわけでございます。先ほど大臣から御指摘ございましたように、すでに毎年非常な増額をいたしておるということが一つと、それから一般に史跡の買い上げにつきましては、地方公共団体が買い上げる場合に国は五割の補助をいたしておるわけでございますが、太宰府地区には特にその必要性にかんがみ、また地元の負担能力を勘案いたしまして、八割の補助をいたしまして、一割は県、あとの一割は県と現地の町が負担をすると、こういうような特別の配慮をしながら進めて、毎年この額をふやしていきたい、こういうめどでございます。
  164. 原田立

    原田立君 一括購入はできないんですか。
  165. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 住民の方々でも、これをやはり土地としてといいますか、現に農業をしておられる場合は、買い上げてもらわないでそのままつくっていたいと、こういう御希望もあるわけでございまして、文化財保護の立場からいいますると、耕作をしておられる場合におきましては、重大なる改変がない限りは別に差しつかえないわけでございます。したがいまして、一括買い上げるということでなしに、住民の方々の要望やら、その土地の性格、そういうことを総合的に勘案して漸次買い上げをしていくほうがより妥当であろう、こういうことに考えておりますので、いわゆる一括全部一ぺんに買い上げなければならない、そういう性格のものではないと考えておるところでございます。
  166. 原田立

    原田立君 その地域を売るわけにもいかないし、原状変更もするわけにもいかないし、結局中にはそれを売りたいという人もあるのです。だからお聞きしているのです。
  167. 安達健二

    政府委員(安達健二君) ただいまお示しなさいましたように、そういう売りたいという希望等をまず優先的に考えながら、そしてまたその地域の重要性等を勘案しながら買い上げていくということでございます。   〔委員長退席、理事江藤知君着席〕
  168. 原田立

    原田立君 文部大臣にお伺いするのですが、地元の了解がない限り史跡の告示はしないというふうに前文部大臣答弁しているわけですが、坂田文部大臣のお考えはいかがですか。
  169. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) やはりこういうような史跡につきましては、地元の御協力あるいは理解ということが非常に大事だと思いますので、前文部大臣のお考えを踏襲いたしたいと考えておるわけでございます。
  170. 原田立

    原田立君 一月十七日の朝日新聞に、四十三年は三百万円まで基礎控除すると、こういうふうに報道されておると聞いておりますが、そういう点は大蔵大臣、こういう史跡などを売った場合の代金についてそういう控除をもっと引き上げるとか、そういうふうなお考えはおありなんですか、どうなんですか。
  171. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおりでございます。つまり史跡保存法で指定されました史跡、それに当たる土地を地方公共団体が買い上げることは、いま文化庁のほうからお話があったとおりでございますが、その際には買い上げ代金、つまり売り払い代金の三百万円を控除をすると、こういうことになるわけであります。かりに四百万円で売ったという際には、三百万円までが控除されて、残りの百万円、これは四十四、四十五、四十六、三一カ年間は一〇%の課税、またその次は一五%の課税と、こういうことになるわけでございます。いま租税特別措置法で改正案をお願いしておる、かような段階でございます。
  172. 原田立

    原田立君 地元民は基礎控除の増額並びに税率の軽減を強く要望しておりますけれども、これは考慮に入れるわけにはまいりませんか。
  173. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま申し上げましたような、非常に手厚い特例で、この買い上げを順調にしたい、かように考えております。
  174. 原田立

    原田立君 公共用地は千二百万円までは基礎控除になると聞いております。そうすると、この場合も公共用地的な土地の売買でありますから、当然そこいら辺も利用されていいんじゃないですか。
  175. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 公共用地と申しますか、収用権の発動によりまするところの買い上げ、収用権が発動されることを予想して売り払う場合、この場合には従来から千二百万円の特別控除がございます。今回の税制改正で予定しておりますのは、従来全く控除のなかった、たとえば古都保存法による買い入れの申し出等に基づいて、政府が買い入れる場合に新しく三百万円の控除をつくった。文化財保護法の規定には買い取りの申し出の規定がございませんが、実際上予算を支出して買い上げをしておりますので、これは法律の根拠はございませんけれども、同様の扱いとして二百万円の控除を適用することにしたわけでございます。収用権の発動による分と、これらの法律の規定による申し出によって買い上げる場合とは、従来からもはっきり差がついております。新しく三百万円の特別控除を認めるということがかなり大きな恩典である。また、ただいま大臣が申しましたように、譲渡所得の税率につきましては、今後六年間分離比例税率で、長期譲渡の、長期間にわたって保有した土地を譲渡した場合には、非常な軽減税率ができるようになりますので、負担は従来に比べれば非常に軽くなると考える次第でございます。
  176. 原田立

    原田立君 文部大臣、地元の行為に甘えて文化財保護行政というのは非常に手ぬるいと、新聞等でも非常に批判が多いんですが、もう少し基本的にお考え方はないんですか。
  177. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、これはかなり画期的な改正なんですから、つまり文部大臣からお話がありましたように、これは強制収用というか、そういうことは避けまして、それで話し合いで地元の了解、理解を得てやると、こういうわけなんです。理解を得て土地の買い上げをする、こういう際においては、まあ三百万円までは税がかからぬ。それをこえる額については軽減税率、この三カ年は一〇%だ、こういうことです。いままでほとんどこういう方面が顧みられなかった。それに比べますると今度は非常に思い切った軽減措置だと、かように考えております。
  178. 原田立

    原田立君 文部大臣いかがですか。先ほどの質問は、地元民の好意に甘えるような文化財保護行政ではない、国としてもっと資金を入れて、国家的行事として保護すべきじゃないか。こういうことです。
  179. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 文化財遺跡が大切であるということはもう申すまでもないことでございますけれども、やはりそれにいたしましても、地元住民の理解というものを深めるということも同様に私は大切だと思っているわけでありまして、やはりこれだけはどうしても残ささなければならない地区と、そうでない地区とやはり考えていく、そうして地元の人の意向も無視しない形で文化行政を進めていくということのほうが私は行き方としていいのではないかというふうに思っております。
  180. 原田立

    原田立君 文部大臣、そんなことを言っているから、今度の下関の綾羅木の郷台地遺跡のブルドーザー事件が起きているのですよ。これは二度とあっては相ならない。この点に対してももっと強い財政的措置というものが必要なんじゃないか、ぜひやるべきじゃないか、こうぼくは思うのですよ。
  181. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) そういう予算面等につきましては、やはり御指摘のとおりでございまして、私は文化遺跡等を守るために毎年努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  182. 原田立

    原田立君 精神論では困るのですよ。三月十一日の朝日新聞には、文部省としても今後遺跡保護について十分指導、助言するとともに、予算措置一をあわせ考えていく予定である、それからまた文化庁では、この指定によって下関――失礼しました、これは綾羅木の問題ですが、下関市は同地区を国で買い上げるように申請をしてくれば直ちに応ずる方針である、こういうことを新聞報道されているのです。いかがですか。
  183. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 地元の地方公共団体からそういうような土地を買い上げ、買収して恒久的な保存をはかる際に補助金を交付してその国有化を、というような場合におきましては、私たちといたしましてもまともにこれを受けまして、そうして検討いたしてまいりたい、かように考えております。
  184. 原田立

    原田立君 四十四年度はこの文化財保護行政についての予算措置はいかがですか。
  185. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 史跡等の土地の買い上げでございますが、これが昭和四十三年度は三億六千万円でございましたものを、四十四年度予算として御審議いただいておるものについては一億八千万増の五億六千万円ということになっておるわけでございます。特に土地の買い上げ費につきましては、特別の努力を傾けておるところでございます。
  186. 原田立

    原田立君 あなた、五億六千万くらいなもので特別な、格段の努力だなんて、そんなことを言わないほうがいいと思うのですよ。少な過ぎるのじゃないですか。文化庁で予算要求したもともとの原案は幾らだったのですか。
  187. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 約十億でございます。
  188. 原田立

    原田立君 だから、多いか少ないか。
  189. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 私どもといたしましては、第一次の五年計画ということで、その初年度として十億という要求を大蔵省にお願いをいたした次第でございます。われわれとしてはその土地の買い上げが、史跡保護の最も中心的なものといたしまして、今後大いに努力すべきものであるということで、もちろん、現在の五億六千万円が非常に満足であるということではないのでございますが、われわれとしてはさらに努力を傾けてまいりたい、かようなことでございます。
  190. 原田立

    原田立君 大蔵大臣、文化財保護行政のための国の買い上げ費用がいま五億六千万ということですが、これはもっと増加せしめることが基本的には大切じゃないかと思うのですが、どうですか。
  191. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 文化財の保護ということはたいへん大事なことだと思います。国政いろいろな行政需要がありますのでバランス、そういうものを、均衡考えなければいけませんが、なお、今後とも文部当局とも十分相談してまいりたい、かように考えております。
  192. 原田立

    原田立君 どこの遺跡も――文部大臣、文化庁もお聞き願いたいのだが、現状のようなやり方ですれば、今度の下関の郷台地事件のようなことが一触即発で起きそうなところばっかりなんですよね。だからこれに対しては文化財保護行政の面からいってもっと手厚いものにすべきであるとぼくは思うんですよ。そういう面についてそういう強い御意思があるのかどうか、その点を表明していただきたい。
  193. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私といたしましてもその意欲を十分に持っておるわけでございまして、どういうようなところにどういうものがあるかというような全国的な遺跡の調査等も考え合わせまして、ほかの省庁とも連絡をいたしまして、下関のようなああいう事態が起こらないようにいたしたい、かように考えておる次第であります。同時にまた予算等につきましてもいまでは十分ではございませんので、さらにさらに増額を要求いたしまして、この文化財の遺跡を守りたいと、かように考えておる次第であります。
  194. 原田立

    原田立君 時間がなくなったので次の問題に進みますが、九州縦貫道中、福岡県筑紫野町における路線の変更に関してお伺いしたいのでありますが、この路線決定について現在関係地域住民のトラブル等があるようなところはどことどこですか。
  195. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) ただいま御指摘になりました路線のところは、筑紫野町と二日市の間と私は聞いておる次第であります。
  196. 原田立

    原田立君 ほかにないですか。ほかにトラブルはないですかと言うんです。
  197. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) トラブルといたしましてはいろいろ聞いておりますのでありますが、御承知のとおり高速道路の路線決定という問題は、産業、経済、人口その他、経済効果、技術効果等も十分考えまして、そしてまた地元民との理解と協力と納得を得るということを前提にいたしまして、路線の決定、線形、勾配その他を十分配慮いたしまして推進いたしておるような次第であります。ことに大切ないわゆるつぶれ地を多く求めましたり、あるいはまた構造の大きなものを破壊してやるというようなことはなるべく避けまして、そして、地元住民の納得のいく理解と話し合いのもとにおいて、路線決定をいたしてまいるということが建設省の基本方針でございます。
  198. 原田立

    原田立君 筑紫野町のことについてお伺いするんですが、路線原案のA案と現地要望のC案、それから道路公団が示されているB及びD案、こういう四種類あるそうですが、この点は御認識になっておりますか。
  199. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 十分認識もしており、その問題点も私は承知いたしておりますが、これらのもし何でございましたら、道路公団の理事が参っておりますから御報告させたいと思いますから御了承願いたいと思います。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕
  200. 片平信貴

    参考人片平信貴君) ただいまのお話にございました原案、それからA、B、C、D四本ございます案でございますけれども、原案は筑紫野町の多少山に近いところですけれども平地を通っております。それからもう一つ、われわれ比較をいたしました線がございます。これは山手に追い込んでくれという地元の要望がございまして比較いたしました。それが一本ございます。それからもう一つ、地元のほうからさらに山に追い込めないかというお話がございまして、で、一番山に追い込んでみたらどうかという路線を検討いたしました。それから、なおわれわれの原案というものと、それから私たちが比較いたしました山手の案と、その中間に一本とってみようかということでとりまして、ちょうど四本ございましたが、最終的にはわれわれの原案と、それからわれわれがとった比較線、やや山手に寄った線とその二本をわりにこまかく比較しております。以上でございます。
  201. 原田立

    原田立君 文部大臣、ちょっとお伺いするのですが、埋蔵文化財を約十四万件を地図に載せて全国に手配してあるというようなことを聞いておりますが、それは関係各省とも了解ついてやっておるのですか。
  202. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 昭和三十五年度から都道府県に補助金を交付いたしまして遺跡の分布調査を行ない、約十四万カ所の埋蔵文化財包蔵地を確認をいたしましたが、その結果をもとにいたしまして昭和三十九年度から昭和四十二年度に全国の遺跡地図を作成刊行しております。
  203. 原田立

    原田立君 建設省のほうはこの点よく了解なさっておるのですか。
  204. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) お答えします。  御承知のような古都保存法の適用指定地区あるいは貴重な遺跡があるということの存在がわかっている地区等につきましては、建設省といたしましては十分これらの点を留意しながら、また工事中においてその問題が出てきた場合等をもかんがみまして、これらについては場合によっては最も必要な大事な問題であるというようなことから考えますと、高度な立場から残さなければならぬというようなことを考えますときに、実施中にも調査をいたしますとともに、また破壊もいたさないように最善の配意をいたしますとともに、場合によってはその工事の変更もいたさなければならぬと、こういうふうなことを私といたしましては、建設省といたしましては基本方針に打ち立てまして、民族の先達の士が残しましたこれらの遺跡については、無秩序なことは絶対にせないようわれわれとしては十分配慮をいたして工事を進めておるような次第であります。
  205. 原田立

    原田立君 この筑紫野町の路線の原案では十三カ所ひっかかっておりますよ、古墳が。それで、現地の要望している線は、C案というのは一カ所もかかっておらないですよ。こういう比較対照があるのだが、これについて再考するお考えはないですか。
  206. 片平信貴

    参考人片平信貴君) いまの文化財の問題につきましては、公団といたしましても建設省の御趣旨に従いまして県の教育委員会にわれわれの路線が大体この辺を通るという場合に、その資料等を提出いたしましてどの程度の文化財があるかということをお示し願っております。それで、その文化財の中にぜひそこを避けなくちゃならない文化財というものと、それからその区域を通ってもいいけれども、保存しなくちゃならないという文化財と、それから調査をしなければいけないという文化財と三種類ございます。それで、ただいま御指摘の原案の中に相当の文化財があるというお話でございますが、これは大体発掘調査をいたしましてその資料をとればよろしいという文化財と承知しております。で、なおその中に一つ武蔵寺あとという非常に重要な文化財がここにはございまして、先ほど四つの案で、中間案ということを申しましたけれども、この中間案では武蔵寺あとをまともに通るということで、これは一応やめてしまった案でございます。それから、原案そのものも武蔵寺あとは通っておりません。それからなお原案比較案の山手を通っている案でございますが、これは武蔵寺あとをかすめております。それから一番山奥に入った案がございます。これは武蔵寺あとはかすめておりませんがその地区についてはなおまだ文化財の調査というところまでいっておらないというのは、そこまで山に入りますと高速道路としての性格がもうたいへんこわされてしまうという意味で、一番山手の案というのはむしろ高速道路として問題があるということでございます。
  207. 原田立

    原田立君 工事費について、その積算の基礎を明らかにしてもらいたい。A、B、C、D案。
  208. 片平信貴

    参考人片平信貴君) 積算、あまりこまかく申し上げますとあれでございますが、大体原案と申しますのが約二十億程度でございます。これは工費が十五億で、用地費が五億ぐらいのものでございます。それからわれわれが比較いたしました短いトンネルを入れなくちゃいけないという案でございますが、これが約二十九億ぐらいの金になります。これは総事業費でございます。それからさらに山に入りました線になりますと、四十億ぐらいの金になる予定でございます。もちろんそのほかに、先生から四案というお話で、中間案をとってお話ございましたが、この中間案につきましては、武蔵寺あとをまともに通過するという意味で、こまかい積算はやっておりません。それで、なおこの比較の一案、二案、二十九億と三十九億何千万、約四十億と申し上げましたが、その内容は、工事の金で申しますと、比較の一案、山手のやや二日市に近いところが約二十五億ぐらい。それから用地費が約四億三千万ばかり。それから一番山に入ったものが、工費が三十七億ぐらいで、用地費が三億七千万ぐらいのものになっております。ただし、この段階で比較いたします場合に、工事費につきましては、やや詳しい、たとえば土量であるとか、あるいは橋の長さとか、そういうことで積算できますけれども、用地費につきましてはまだ立ち入り調査もできておらない段階で、たとえば土地の格差であるとか、そういうものをこまかく調べる段階に入っておりません。したがって、ここで計算いたしました用地費は、昭和四十一年にわれわれ施工命令を受けまして、実施計画というものを提出をしております。その際に、全般的に市街地では宅地がどのくらいであろうかというような売買実例等を調べましてそれで積算をした。したがって、四十一年の単価で一応あげてございます。
  209. 原田立

    原田立君 いろいろと説明があったけれども、そのいわゆるD案というのが四十億という話なんだが、これはトンネルをつけるからそれぐらいかかるのだろうとこう思うのだが、四十四年一月八日、第一経済大学教授の黒田博士は、「現地調査の結果、D線についてはトンネルの必要はないと思われる。基本的にはカット方式で施工はできるであろうと考えられる。」、こういうふうに学者が言っているのだが、こういう学者の意見等は参酌したのかどうか。
  210. 片平信貴

    参考人片平信貴君) いま御指摘の学者の御意見ということでございますが、これは実はつい最近になりまして公団としましては十分点検をいたしまして、どうしてもトンネルが要るという結論だったのでございますが、どうも公団だけがやった場合には、わりに客観的な資料にならないのじゃないかという御意見もございまして、実はいま日本の土木関係の、あるいは特に道路関係の大学の先生お二人と、それから経済関係の大学の先生お一人をお願いをいたしまして、もう少し客観的に批判していただきたいということで調査をお願いしてございます。その結果がまだ出ておりませんけれども、われわれとしてはやはりトンネルが要るのだろうと、要ることは確信しております。
  211. 原田立

    原田立君 そんなふうに自分のほうの意見を確信して、それをがっちりとかまえて他の意見は聞かないというような姿勢はまことによくないと思うんですよ。もっとこういう、事実地元の人たちが反対しているという例があるのですから、もう少しそこのところは謙虚な態度であるべきじゃないかと思う。大臣、こういうふうな紛争があったような場合、地元の町民の意思を尊重する、あるいは町議会なんかの意見、あるいは県議会なんかの意見等は必ず参照してそうしてやると、こういうふうにすべきだと思うが、どうですか。
  212. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) お答えいたします。  先ほども私が基本的な態度を申し上げました次第でございますが、再び繰り返すことは避けたいと思いますけれども、納得と理解と話し合いの上において、やはりこの問題については取り組まなければならぬ。ただし、いろいろの角度のいろいろの問題点が出てまいりました場合においては、やはりその地域におけるところの責任者である市長、あるいは町長、あるいは議長というような理事者並びに議会側の責任者の立場からの意見をそんたくいたしまして、また、その中にはやはり地元民の皆さんのお気持ちも十分踏まえましてきめるということが私は正しい民主主義の行政、政治のあり方だと、こう考えますので、それらの点を私は十分配慮いたして今後も推し進めてまいりたいと、こう考えております。
  213. 原田立

    原田立君 道路公団どうですか。
  214. 片平信貴

    参考人片平信貴君) ただいま三先生に調査を御依頼してございます。その結果によってまたいろいろ判断もし、かたがた地元の方に十分御説明をして、御納得を願うという姿勢は公団としては常にとっておるつもりでございます。したがって、御納得のいかないままに強行する、推し進めるというような考えは持っておりません。大臣のおっしゃるように、十分地元と話し合いをして御説明をし、あるいは地元の御意見も十分取り入れながらやっていきたいと考えております。
  215. 原田立

    原田立君 時間がないので次に進みますが、福岡の板付米軍基地の返還問題は、その後どうなっていますか。
  216. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 板付の問題は、移転の問題であろうかと思いますが、これにつきましては昨年来板付飛行場の代替候補地の検討をいたしておるのでございまするが、まだ現在までのところ、具体的にどこといってきまったものはない状態でございます。明年度の予算におきましては、この板付の移転に要する調査費を計上いたしまして、これが実現に努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  217. 原田立

    原田立君 予備基地になったそうですが、また、するそうだが、その見通しはどうですか。
  218. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 大体本年の六月末までには米軍の現在おりまするところの偵察部隊が移動するということを契機に、以後は大体昨年の一月以前の状態、いわゆる予備基地の状態に戻るというふうに考えております。
  219. 原田立

    原田立君 またすぐ第一線基地にあるいはなるかもわかりませんね。
  220. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 現在の状態ではそういったような状態に、その後、ことしの半ば以降ぐらいになるということでございますが、将来また情勢の変化がございますれば、それに応じてまた変わることもあり得るというように考えております。
  221. 原田立

    原田立君 福岡市の中心街からわずか三・五キロのようなところにこういう基地があるのがほんとうはおかしいのだ。地元民のこれを早期返還してくれということは非常に強い要望です。この要望を受けて、基地の返還を早期に行なうべきだ、あるいはまた代替地があればかわるということであったけれども、その後代替地の問題はどうなっているか、その点はいかがですか。
  222. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 先ほどお答え申し上げましたように、移転の候補地について鋭意検討中でございまするが、現在までのところまだ具体的な場所の決定を見るに至っておりません。今後できるだけすみやかに候補地を見つけるようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  223. 原田立

    原田立君 もう一つ、芦屋の米軍射爆場が自衛隊に移管になるとのことですが、その点どうか。あるいは従業員も自衛隊のほうの雇員として移すような考えはないのか、その点はいかがですか。
  224. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 芦屋の射爆難場につきましては、御承知のように昨年の十二月の日米安保協議会におきまして、これを日本側に返還して、そして米側は随時これを使用する、共同使用の形にするということが話し合われております。これに基づきまして、現在日米合同委員会のもとにあります施設委員会、ここに施設調整部会というのをつくりまして鋭意この実現について検討いたしておるところでございます。したがいましてこの検討が完了いたしますれば、さような手続ができるのではないかと考えておる次第でございます。  なお、この施設が日本側に返還になりました場合には、これは米側との共同使用ということもこれあり、かつまた現在自衛隊がここにおきまして射爆撃場として共同使用いたしております。したがいまして今後の処理といたしましては、自衛隊の射爆撃場として、そして米軍にも随時使用させるという姿にいたしたいとわれわれは考えておる次第でございます。  また、ここにおりまする従業員をどういうふうにするかということにつきましては、約十名の従業員があると承っておりますが、これはもし返還ということになれば、米軍といたしましては、原則としてこれは板付のほうに移転させたいというふうな考えを持っているやに伺っております。ただ、従業員の方のいろいろの都合もございます。この移動を希望しない向きもあるかと思いますが、そういう方には、自衛隊等を含めまして適当な離職の対策、これを講ずるのは当然ではないかというふうに考えておる次第でございます。なおまた、やめるというような場合におきましては、明年度におきまして、かような場合の措置としての特別給付金というのを、従来に比し相当大幅に増額いたして支給できるような仕組みにいたしたいと考えておる次第であります。
  225. 原田立

    原田立君 ちょっと委員長通産大臣及び運輸大臣に実は石炭問題、国鉄運賃問題をお聞きする予定だったんですが、時間の関係で割愛しました。御了承願いたいと思います。
  226. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして原田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  227. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、中村波男君の質疑を行ないます。  中村委員に申し上げます。外務大臣はただいま大臣室からこちらに歩いておる途中でございますので、御着席を願います。中村君。
  228. 中村波男

    中村波男君 先日の本委員会におきまして、韓国への米の貸与について、食管法第七条第一項を適用して、政令をもちまして貸与することは手続上に疑義があるという意味の質問をいたしたのでありますが、時間切れになりまして質問を残しておりましたので、本日若干政府の見解をただしたいと思っているわけであります。  政府におきましては、去る三月の十日に政令を公布いたしまして米の貸与契約を結ばれたようでありますが、したがって、その政令の内容と契約の条件についてそれぞれ御説明を承りたいと存じます。
  229. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 詳細に食糧庁長官より御説明申し上げます。
  230. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 韓国への米の貸し付けに先立ちまして、御指摘のように、去る三月十日、食糧管理法施行令の一部を改正する政令を施行いたしまして法規上の整備を行なったわけでございます。食糧管理法施行令の一部を改正する政令は、現在の政令第二条の七の次に一条を加えまして第二条の八とし、「食糧管理法第七条第一項の規定による米穀の貸付けは、米穀の需給事情等を勘案して必要がある場合に、外国の政府その他これに準ずるものとして農林大臣が指定する者に対して行なう。  前項の貸付けの条件その他貸付けに関し必要な事項は、農林大臣が定める。」という旨の一条を起こしましたことと、さらに、外国政府その他への貸し付けを行ないます場合に、政府の委託を受けて米の輸出代行をする場合に、原則的に米の輸出については農林大臣の許可を受ける必要があるのでございますが、その除外例として政令第十四条の二の条文の整理を多少いたしました上、第二号を三号に切り下げまして、現行の二号の規定と第一号との規定の間に新しく第二号を起こして、「政府の委託を受けてその貸付けに係る米穀を輸出し、又は輸入するとき。」ということで、この場合には食管法上の輸出入の許可を要しないという規定の整備をいたしたのでございます。この政令の施行を見ました上で韓国に対する国内産米の貸し付けを行なったのでございますが、三月十一日の閣議で、「国内産米の大韓民国政府に対する貸付けについて」という基本方針の決定を願いまして、それに基づいて契約を行なったのでございますが、基本方針は、要約して申し上げますと、  貸し付ける米穀及び数量。  政府は、国内産水稲うるち玄米三十三万三千トンを大韓民国政府に対し貸し付け、これと等質、等量の韓国産水稲うるち玄米の返還を受けるものとする。  貸し付け及び返還の時期。  大韓民国政府に対し貸し付ける米穀の引き渡しは、一九六九年、つまり本年三月から本年八月までの間に行なうものとし、大韓民国政府からの米穀の返還は、一九八〇年、十年後から一九九九年までの間において各年均等、毎年一万六千六百五十トンとするものとする。  次に、わが国における米穀の需給事情の著しい変化等により韓国産米の返還の時期を繰り上げる必要が生じたときは、大韓民国政府と協議して返還の時期を変更することができるものとする。  受け渡しの条件は、貸し付けにかかわる米穀の受け渡しは、政府の指定するわが国の港における本船積み込み渡し、いわゆるFOBストウドとし、返還にかかわる米穀の受け渡しは、政府の指定するわが国の港における本船乗り渡し、いわゆるCIFとするものとする。  四番、次に、貸し付け手数料として、  政府は、大韓民国政府から、国内産米の貸し付け手数料として、大韓民国政府に対し国内産米を引き渡すのに必要な経費相当額三百万米ドル及び大韓民国政府からの返還を受けるのに必要な経費相当額の支払いを受けるものとする。  次に、契約の締結については、本件米穀の貸し付けは、食糧管理法第七条第一項に基づき、貸し付けに関する契約を締結して行なうものとする。  最後に、政府は、この契約が円滑に行なわれるために必要な措置をとるものとする。  こういう基本方針を決定願いまして、それに基づいて契約を行ない、現在貸し付けのための船積みを実施中でございます。
  231. 中村波男

    中村波男君 私は、韓国への米の貸与というのは、純然たる余剰米の処分というよりも、経済援助的な理由からこういう協定が結ばれて貸与することになったと思うのでありますが、この点について外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  232. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この問題は、二カ年間にわたる韓国の米の不作、いわゆる干ばつに対しまして、昨年、私ども就任前でございますが、ソウルにおきまして日韓の閣僚会議が行なわれましたときに、その窮状を訴えられ、それに対して日本側といたしましては、何とかこれに対して措置をしたいということから話が始まったものでありまして、私の見解といたしましては、経済援助とか協力ということよりも、むしろ異常な干ばつ状態に基づいて米の需給がアンバランスになって韓国の人たちが非常に困っているというところに対する、何と申しましょうか、援護の措置というふうな性格のものではないかと思います。そこで、いろいろ検討いたしまして、御案内のような米の貸借ということになりましたわけで、私は、ですから、韓国側としてももちろん非常に喜ばれまして、この結果においては満足すべきものと思っております。いわゆる経済援助、経済協力というものとは多少性格が違うように私は考えるわけでございます。
  233. 中村波男

    中村波男君 性格の問題についてはあとでもう少しお尋ねをいたすことにいたしまして、私は、米の海外援助をするといたしますならば、その方法としては、贈与と貸与と長期低利の延べ払いの三つがあるのじゃないかと思うわけでございます。そこで、贈与は食管法第七条第一項で可能なのかどうか、まずこれを確認しておきたいと思います。
  234. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 食管法第七条第一項では、「政府ハ政令ノ定ムル所二依リ主要食糧ノ貸付又ハ交付ヲ為スコトヲ得」で、純法律論的に申せば、政令の規定を整備し、あるいは政令の規定に従って交付をするということが許されるのでございまして、この交付の中には無償交付を法律的には含んでおるという解釈でございます。ただし、この貸し付けなり、あるいは交付にいたしましても、食管法一条の目的の範囲内でなければならない。したがって、この交付のし得る範囲がどの程度であるかということは、法律的によほど詰めなければならない問題であるというふうに思っております。
  235. 中村波男

    中村波男君 次は、長期延べ払いによる売り渡しでありますが、これは食管法のワクの中では可能か不可能か。
  236. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 食管法六条の規定で、輸出のための売り渡しという規定がございますから、したがって、売り渡し方式による外国への輸出、したがって、その場合にいかなる代金の支払い条件を持つかということは、食管法とは別に考えざるを得ないのだろうと思うのです。私どもの解釈では、食管法自身で延べ払いの権限を与えられていない、したがって、一般の国の債権の回収に関する原則に従わざるを得ない。食管法自身からは延べ払いの根拠を見出すことはできないというふうに考えております。
  237. 中村波男

    中村波男君 次に、外務大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、国会で承認を要します条約の範囲につきましてはいろいろ学説があるわけでありますが、政府の見解として統一されたものがあると思いますので、お示しをいただきたいと思います。
  238. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 条約その他の取り扱いについての問題でございますから、政府委員からこまかく御答弁申し上げたいと思います。
  239. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) お答え申し上げます。  元来、条約局長からお答えすべきことだと思いますが、たまたまいまおりませんので、かわってお答え申し上げますが、大体、立法事項ないし財政事項に関係する条約は国会の御承認を得なければならないというのが一般的な基本原則でございます。
  240. 中村波男

    中村波男君 基本的な御説明でありますが、昭和三十九年三月十八日の衆議院の外務委員会の速記録によりまして、要約いたしますと、法律事項を含む条約、これは条約の締結、施行により新たな立法を要するもの。二番目としては、予算または法律で認められている以上に国の財政負担をもたらすような条項を含む条約。三番目は、いま申し上げました一と二に該当しなくても、政治的な重要性があると認めるもの。こういう大きく分けまして三つが政府の統一見解として衆議院の外務委員会で述べられておるわけでありますが、このとおりであるというふうに確認してよろしいですか。
  241. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) そのとおりでございます。第三のグループの中には、たとえば文化協定等で、厳密に言いますと第二のグループに入らない条約であっても、特に重要なものは国会の御承認を得るという例があるわけでございます。
  242. 中村波男

    中村波男君 今度は法制局の御見解を承りたいのでありますが、さきに私が指摘いたしましたように、米による海外援助には、贈与と貸与と長期低利延べ払いによる売り渡しの三種類及びこれらの組み合わせが考えられると思うのでありますが、韓国に対し、十カ年据え置き、二十カ年等量返済方式をとったということは、国内価格と国際価格との差があまりにも大き過ぎますために、国会の承認を避けまして、財政法九条のただし書きの、法律に基づくほかを援用し、食管法第七条の「政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ貸付又ハ交付ヲ為スコトヲ得」を拡大解釈いたしまして便宜主義的な措置をとったことは行政権の乱用であり、国会軽視であるというふうに私は考えておるのであります。かかる政府の態度とは別に、法制局の使命からいいましても、これを認めたということは、私としては遺憾であり、汚点を残したのではないかというふうに思うのでありますが、これを是とした理由についていま少し具体的に御説明を承りたい、こう思うわけであります。
  243. 田中康民

    政府委員(田中康民君) 今度の食管法施行令の改正は、その食管法施行令の中にも書いてございますように、施行令の改正で今度入りました条項に入っておりますように、食糧事情及び食糧の需給事情、「米穀の需給事情等を勘案して」必要のあるときにできるのだというようにわざわざ入れてあるわけでございますが、これは明らかに、食管法七条を発動する以上は、当然に食管法第一条という目的に適合しなければならないためにこれを入れたわけでございます。食管法七条は、政令で定めるところにより貸し付けることができると書いてありまして、それ以外に何らの制約がない。で、詰まるところは第一条の基準だけによることになるのでございますから、韓国に貸し付けようと外国に貸し付けようと国外に貸し付けようと、わが国の食糧事情を中心に考えまして、そういうことが第一条の目的に照らして不当であるという場合には、当然そういう貸し付けができぬように食管法上いたした、こういうことでございます。  なお、輸出、輸入につきまして食管法はちゃんと十一条で規定しておりまして、外国に出す場合について食管法は何らの規定を持たないということはございませんので、念のためその点も申し添えておきます。
  244. 中村波男

    中村波男君 法理論的に議論をしておりますと相当時間もかかりますし、すでに政府は政令を公布したあとでありますから、公布したから見のがすということではありませんけれども、私は実体論としていま少し質問をば申し上げたいというふうに思うわけであります。実体的な立場で申し上げますならば、いわゆる条約の範囲について、さきに三項目を述べたのでありますが、もちろん今度の取り扱いというのは一と二には該当しないかもしれませんけれども、政治的な重要性があると認められるものとして、国会承認事項としての立論が私はできるというように考えておるのであります。  具体的な議論を申し上げます前に、三十三万三千トンの評価額は幾らであるかということをまずお尋ねいたします。
  245. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 三十三万三千トンの評価額ということに相なりますと、近接します会計年度末の評価額、特別会計における評価額に数量を乗じたものが適当かと思いますが、昭和四十三会計年度末の評価見込み額は、トン当たり十二万五千八百四十七円ということでございますので、これに三十三万三千トンをかけますと、四百十九億七百万円ということに相なります。
  246. 中村波男

    中村波男君 いま食糧庁長官から御説明があったように、対韓貸し付けは、金額にいたしますと四百十九億七百万円、このような巨額な貸し付けについては、当然私は国会で審議すべき性格のものであるというふうに思うのでありますが、その点についていかがですか。
  247. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほどアジア局長からも御答弁いたしましたように、条約として国会の御承認をいただくというほどのものではない。これは米の、何といいますか、貸し付け、現物での貸し借りの問題でもございますし、それから、法令の範囲内でもございますから、その必要はなかろうということが政府部内の統一した見解でございましたので、国会に御承認を願うような条約の形の必要はないと、こういう見解に立っておるわけでございます。同時に、食糧庁長官と韓国側の当事者との間の契約ということができたわけでございますけれども、念のため、韓国大使館からの書簡、それから、私からの書簡ということで、いわば書簡の交換という手続だけはとっておきました。
  248. 野上元

    ○野上元君 ちょっと関連質問させていただきたいのですが、私は、どうしても食管法で外国に米を貸し付けるというのはちょっと無理があるような気がしてしようがないのですがね。その点でお聞きしたいのですが、いま韓国とのお話が出ておりますが、将来日本が韓国以外の国に貸し付けるというようなことが現在考えられておるかどうか、あるいは、また、可能性があるかどうか、この点について、これはどの大臣から御所見をいただくかどうかは別として、一応お聞きしておきたいと思います。  それから、いま中村君から質問がありましたように、四百十数億円にのぼる実際の貸し付けになるわけですが、しかし、これは特に低開発国に対する、あるいは、また、開発途上にある国々に貸し付けるということが大体将来も考えられると思うのですが、ややもすると、貸し付けた国に革命が起きたり、あるいは外国の資産を凍結したり、あるいは外国との負債をカットオフしたりといううなことがしばしば行なわれる可能性もあるわけでありますが、これらの点を考えると、食管法の第一条から見て私はどうしても無理が出てくるような気がします。したがって、あらゆるリスクを考えながらこれを国民の前に明らかにして、しかも、なおかつ、これだけのものを貸し付けるのだということの国民の承諾を得るという方法が正しい方法ではないかというふうに考えるのですが、その点ひとつもう一度お答えいただきたいと思います。
  249. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど来申し上げておりますように、今回の場合は、韓国の飢饉といいますか、干ばつの関係で非常に需給がアンバランスであると、それからこちら側の事情等は、これは農林大臣からお答えいただくほうがよろしいかと思いますが、将来どういうことが考えられるかということでございますが、同じような状況の場合におきましてもこの方式を適用して私は差しつかえないのではなかろうかと思いますけれども、これはそれこそ仮定の事実でございますから、いま直ちにどういうふうに考えるかというお尋ねに対しましては、一応そういうふうにお答えするのが適当かと考えるわけでございます。
  250. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 他の国からそのような貸し付けの方法の要求があるかというお話でございますが、他の国というのはほかには別にございませんけれども、沖縄から米の供与をしていただきたいということが最近になって入ってまいりまして、沖縄のほうでは、国内の産米の導入をはかって、その見返り代金を第一次産業開発資金に充てたい、こういうような公式文書をもって要請を受けております。これにつきましては、さっそく農林省といたしましては、総理府のほうへも同じものが参っておりますので、総理府のほうへもお話し合いを申しましたし、大蔵省のほうともお話し合いを申し上げまして、各省で相互にこの問題についていろいろとどういうふうにしたならば一日も早くこの要求に応じられるかということをただいま検討中であります。ただし、窓口は総理府になるもんですから、私たちのほうは総理府を中心にしてその問題は考えていくことにしております。
  251. 中村波男

    中村波男君 外務大臣、韓国へ米を出しますについて、その売り上げ金を韓国がどう使うかというようなことはもちろん条件にはなっておらぬと思いますが、韓国としては、この売り上げ代金を有効に活用することは明らかだと思いますが、そういう点を何か具体的にお聞きになっておる点があるならば、明らかにしていただきたいと思うわけです。
  252. 鶴見清彦

    政府委員(鶴見清彦君) お答え申し上げます。  はっきりした交換公文の中にそういうものはうたってございませんけれども、韓国側との話し合いの中では、韓国側はこの貸し付けました米を払い下げまして、それによりまして出てまいりますウォン貨、約百六十億ウォンというふうに考えておりますが、それを先方の農業開発に使うということを考えているようでございます。
  253. 中村波男

    中村波男君 外務大臣は、これは海外援助、経済協力というものとは別なものだと、食糧危機で、まあ人道的な立場を強調されておるのでありますが、そういう貸与いたします背景の中にあることは私もわかりまするけれども、これは実質的には無利子の長期貸し付けでありまして、いま御説明がありましたように、この売り上げ代金を農業開発に使うというのでありますが、この条件からいいまして、きわめて有利な経済援助の一つ方法であろうというふうに思うわけです。実質的な海外援助であります以上、食管法第一条の目的に何ら規定をされていない事項でありますから、したがって、海外援助という目的であるといたしますならば、当然立法すべきである。誤解があるといけませんが、私たちは何も韓国に米を貸与することに反対をいたしておるのではないのでありますので、その点はひとつ理解をしていただいた上で、手続上の問題としてお考えをお聞きしておきたい、こう思うわけであります。
  254. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この問題は、先ほども触れましたように、現実の客観的な事情がまあいわば飢饉ということにあるわけでございまして、それに対して、隣国といたしまして、いまも仰せがございましたが、人道的の立場から貸し付けをしてやりたい。それから米というものの等質のもので等量のもので返済を受けるわけでございますから、これは、いま仰せになりましたように、広く解釈すれば援助ということにも解釈ができないでもありませんけれども、問題は、こちらはお米を貸し、向こうは等質等量のものを返してくれるということでございますから、こういう特殊の事情で、かつ日本の米穀事情から言いましてもこれはなし得る措置であると。それから食管法の解釈は、先ほど来法制局からも御説明がありましたような見解でございまするので、それによりまして処理をいたす。そして、まあ念のためでございますが、書簡の交換といいますか、そういうことでけじめをつけておいた、これが政府の態度でございます。
  255. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連して。ただいまの政府側の御答弁にしても、法制局のほうの法律解釈にしても、いま中村君が言い、野上君が質問されたように、どうもこれをいまの食管法でやるということは相当の無理があるのじゃないか。まあかりに百歩譲って、違法だとか不当だとかとはあえて言わぬまでも、こういうやり方が最善の方法だとお思いになりますか。どうですか。これは外務大臣と法制局の両方からお答え願いたい。この食管法の政令をいじくってやるこういうやり方が最善の方法だとお考えになるかどうか。
  256. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これが、先ほど来申しておりますような客観的な事情に基づくものでございますし、また、米であるということ、まあこれは私のそれこそ守備範囲ではないかもしれませんけれども、米の価格その他というようなことをいろいろむずかしく考えますと問題がございますが、できるだけ緊急に、人道的な立場からもまあ常識的に言ってお助けをしてあげたいという気持ちで出たものでございますから、これが最善の方法であるかどうかというようなことにつきましては、与えられたいろいろの条件下におきまして、あるいは米というような特殊なものでありますようなことを踏んまえて考えてみますと、これがなし得るよい方法であったというふうに私ども考えておるわけでございます。
  257. 田中康民

    政府委員(田中康民君) ただいま外務大臣から御答弁申し上げましたように、私もこれが最善というふうには考えておりませんで、確かにいろいろの方法があると思います。しかしながら、今日わが国のお米はすべて食糧管理法によって管理されております。そこで、そういう事態を踏まえまして考えます場合には、食糧管理法の運用によって食糧管理法の問題としてこれは処理せざるを得ないのではないか、このように考えたわけでございます。
  258. 中村波男

    中村波男君 現実問題としまして、政府の財産が減りまして債権に変わったということは、海外援助に変わったということなんでありまして、実際には、十年据え置き二十年等量返済ということは、三十年後に初めて返済が終わるということでありまして、これらを考えますと、出世払い的な、贈与も同然ではないかというふうに思うわけです。そういうことから考えましても、実質的には輸出と同じでありまして、これは何と言われましても政府の詭弁ではないかというふうに思うわけであります。これは、幾ら論議をいたしておりましても、合法的である、合法的でない、こういうことで平行線をたどると思いますので、今後もこういう事例が出ないということは政府も言明ができないでありましょうし、また、古米処理という観点からとらえましても、最も有効適切な海外援助の方法として余剰米を使うということについては考えなければならない当面する問題ではないかというふうに思いますので、本日あえて質問をいたしたわけでありますが、そこで、韓国に貸与いたしましたいわゆる負担というものは、利子だけでありますが、この利子がどれくらいになるか、参考までにお聞かせをいただきたい、こう思うわけです。
  259. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 御案内のように、食糧管理特別会計は、国内米の買い上げをいたします資金は、食糧証券の発行によって調達をいたしておるわけであります。したがいまして、三十三万三千トンの米についても、同じように糧券の発行をいたしております。したがって、これの金利の支払いを要するわけでございますが、三十三万三千トンの米を十年間据え置きで貸し付け、十年後から二十年間均等償還を現物償還をしてもらうという総積数に糧券の金利日歩一銭五厘五毛というものを乗じて試算をいたしますと、約四百八十六億円ということに相なります。
  260. 中村波男

    中村波男君 長官、それは四百八十六億円は一けた間違っておりませんか。四百八十六億ですか。
  261. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) けたは間違っておりません。
  262. 中村波男

    中村波男君 いま長官から計算の結果を御報告いただいたわけでありますが、私がなぜ問題にするかといいますと、言うなれば海外援助費が国内米の赤字として処理されるということであります。すなわち、国内米勘定の赤字とどんぶり勘定となりまして、いわゆる特別会計としての勘定を区分するという意味がなくなってしまうのではないか、こういうふうに考えるのであります。したがって、私は、金額の多い少ないということでこれを判断すべきではなくて、全く目的の違うものを同一の会計で経理するということが経理上問題がある、こういうふうに考えておるのでありますので、農林省と大蔵省、各大臣からその点について御見解を明らかにしていただきたいと、こう思うわけです。
  263. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 食糧管理の運営の一環として行なっておりまするから、今回の処置は適当だと考える次第であります。
  264. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いろいろこれは議論のあるところかと思います。思いまするし、私は、法律の問題としても、食管法ができたとき、こういう事態を予想したとは思いません。しかしながら、現在その法律がある。その法律をすなおに見てみると、このケースに適用し得る、こういうふうに解釈をいたしておるわけであります。まあ事実上非常にたくさんの米が残っておる、この処理をどうするかと、こういう問題から考えると、これは一つの意義のある措置である、かように思います。
  265. 中村波男

    中村波男君 いまの場合は、韓国へ三十三万三千トン貸しました金利だけがどんぶり勘定になるわけでありますが、新聞等によれば、農林省としては余剰米を海外輸出という観点から開発するためにいろいろ努力をしておるというようなことも伝えられておるわけでありますが、そういう考え方が政府の中にもあるやに聞いておるのでありまして、したがって、そういう負担というのが国内米勘定の中で処理をされるということは、会計上のたてまえからいいましてもこれは間違いであり、また、そのことが食管制度をくずす大きな理由として赤字というものがのしかかってきておることは現実でございますので、そういう立場からいいましても、これはやはり会計を分離するという、こういう措置を当然とられるべきだと思いますが、今後こういう取り扱いが増大いたしましても食管会計の中で処理をしていくという考え方でありますか、大蔵大臣、いかがですか。
  266. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 当面は、ただいま申し上げたように、こういう法律構成で考えられる、かように考えておるのでありますが、はたしてこれがだんだんとかさんでいくという際に、こういう措置でいいかどうか、これは今後の問題として慎重に検討していきたい、かようにいたしたいと思います。
  267. 中村波男

    中村波男君 外務大臣がお忙しいようでありますから、この機会にもう一問外務大臣にお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、日韓条約の批准をめぐりまして相当論議をされた中に竹島問題があったわけであります。当時、政府は、竹島は日本の固有の領土である、しかし解決のできなかったことは遺憾であるけれども、条約を結んだあとに平和的な友好的なムードの中でこれを解決していくということをたびたび述べてまいったのでありますが、われわれの知る範囲では竹島問題を外交ルートにのせて交渉されたということは一度も聞いたことがございません。その後の経過はどうなっておりますか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  268. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 日韓国交正常化の際の竹島問題についての論議の経過は大体ただいま仰せになりましたとおりでございまして、竹島ということが明らかに明示されなくとも、これを含みまして両国がさらに引き続いて残った懸案の処理について話し合おうということは合意が取りつけられてあることは御承知のとおりであります。私といたしましても、常にこれは念頭にある大きな懸案の一つでございます。しかし、あのときの経過からいたしましても、両国がきわめて友好的な雰囲気の中で話し合いを煮詰めていこうというような背景でもございましたので、率直に申しまして、現在はまだ時が十分に熟しているとも言えない点もあろうかと思います。十分私としては配慮いたしておるつもりでございます。なお、御承知のとおりでございますが、政府といたしましては、竹島は本来日本に帰属すべきものであるという主張を持っておりますから、それに基づき、さらにその後の話し合いということも懸案になっておるのでありますから、ときおり海上保安庁等にお願いいたしまして竹島の周辺に巡視艇を出してもらいまして、そして竹島の状況等については常にこちらが関心のありますことを、何と申しましょうか、態度の上にも表明をいたしておる、こういう状況でございます。
  269. 中村波男

    中村波男君 日韓正常化ができて何年たつか御存じでないはずはないわけでありますが、まだ友好的な雰囲気が十分でないから全く交渉しないという御答弁でありますけれども、これは言いのがれと言わざるを得ません。したがって、日韓条約当時、いわゆる反対を押える一つの口実に使ったと言われてもしかたがないのではないかと思うわけでありますが、しからば、見通しとしてこれを正式に交渉される日程というのは見通しがあるのかないのか、さらにお尋ねをしておきたいと思います。
  270. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまも率直に申しましたように、私も常にこの問題は念頭にございます。私として好機と判断されますときにこの問題の処理をつけるように、できるだけの努力を積極的にいたしたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  271. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連。これは、好機であるかどうかということは主観的な判断にもよることですから、一がいには私は言えぬと思いますが、ただ、常識的に考えて、あの竹島問題のいきさつからいいますと、結局、何にもしない。こちらからも口にも出さないでそのままずるずる今日まで来ておる。しかも一方では、いま議論になっているように、食管法というものをあれこれいろいろと法律論でつじつまを合わして、三十三万トンの緊急援助をやる、実質的な援助ですよ。緊急援助をやるというようなことまでやっておるのですから、もうこういう機会は――私はいままでも機会はあったと思うのです。閣僚会議その他いろんな機会はあったと思うが、いまの三十三万トンの緊急援助なんかというようなことは、これは絶好の機会じゃないかという気もするのです。にもかかわらず、まだ適当な時期でないというようなことで、ほっておくと、結局、これは常識的に言う時効にかかってしまうのじゃないですか。そして、千島の問題と同じことで、向こうの地図の上に韓国領として記録されてしまって、それがそのままずっと既成事実となっている。しかも、現に向こうの警備隊かなんか常時占領しておる。そして、あの周辺は韓国側の専管水域の線の中に入ってしまっている。こちらから全然出漁できぬというような状態が、何年間か、もうずっと固まってきているわけですね。だから、説明はいろいろつきますけれども、実際問題としては、いまの中村君のおっしゃるとおり、もうこのまま固まってしまうということで政府のほうもあきらめておられるのじゃないかというような気もするのですが、これはどうでしょう。
  272. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまありのまま率直な私の考え方を申し上げたとおりでございまして、時間的なお約束ということはできません段階であると思いますけれども、常にこれを念頭におきまして積極的に好機をとらえて交渉をさらに進めるということにいたしたい、かように考えておるわけでございます。いまこういうふうな米を貸し付けるというような恩恵を与えるようなときに絶好の機会ではないか、これもまあ一つの見方、秋山委員の御意見も傾聴しておきますが、ひとつ、いま申しましたような考え方でやりますから、その私ども姿勢について御理解と御協力を与えていただきたいと思います。
  273. 中村波男

    中村波男君 次は、総理府に御質問をいたしますが、先ほども農林大臣から、沖縄から内地米の要求があった、これは総理府の所管だから総理府で検討をしておる旨の御答弁があったわけでありますが、総理府として、沖縄への内地米の供与につきまして、どのように検討をし、どういう見通しが今日立っておるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  274. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  先ほど農林大臣から御答弁がありましたように、琉球政府からの要請がございましたので、総理府として前向きに取り組みたい、そういうことで取り組んでおるわけでありますが、いろいろ、どんな方法がいいのかというような問題につきまして、問題もございますので、関係省と慎重に検討中でございます。
  275. 中村波男

    中村波男君 いま参事官は、前向きで検討しておるとおっしゃいますが、私がいろいろ係の方たちに聞きますと、これは農林省で検討しておって、総理府では全く手をつけておらない、こういう答弁があったわけでありますが、いまの答弁は言いのがれ的な答弁で、ほんとうに真剣にやっておりますか。具体的にどういうふうに検討しておりますか。
  276. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  この沖縄に対するいろんな関係は、総理府がもちろん主管としてやっておるわけでございますので、決して、総理府の仕事でないと、そういうようなことは、われわれとして考えていないわけでございます。むしろ、琉球政府の要請ができるだけ実現するように努力しておるわけでございますので、農林省あるいは大蔵省と十分検討して努力したい、こういうふうに考えております。
  277. 中村波男

    中村波男君 私どもが言いたいのは、韓国への米の貸与ということについては、われわれから言わしめれば、政令という、全く便宜的な方法をもって解決をいたしましたけれども、沖縄については全くその熱意がないように思うわけです。そこで、大蔵大臣に特に要望をし、質問をいたしたいと思うのでありますが、沖縄へ米を供与する場合に、これは食管法の中の贈与でやるにいたしましても、いわゆる予算措置が必要だというふうに私は思うわけです。それでなければ、沖縄援助関係の予算として計上をして出されるのが適当だというふうに思うわけです。そういう点からも、やはり予算に大いに関係のある問題でありますから、また、沖縄は日本でありますから、早急に各省間で調整をされて、要望に早くこたえるような措置をとっていただきたい。まあ、副総理大臣格の福田さんに特に御所見を聞いてきたいと思うわけです。
  278. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 沖縄のほうにつきましては、これはまだ話に接したというばかりなんでありまして、まだ関係各省間の意見の調整という段階になっておらないんです。しかし、米の過剰状態であるという条件、また、韓国に対しても三十三万トンの貸与をするということ、そういうものを考えますると、沖縄の申し入れにつきましては前向きで善処をしなけりゃならぬと、さように考えています。至急に関係各省との間に話をしてみたいと、かように考えます。
  279. 中村波男

    中村波男君 次に御質問をいたしますのは、いわゆる国内米管理勘定についてでありますが、特別会計の予算を見ますと、国内米の管理勘定におきまして一般会計からの繰り入れが二千八百七十一億、いわゆる赤字補てんがなされておるわけでありますが、この二千八百七十一億の積算基礎と申しますか、内訳を明らかにしていただきたいと思います。
  280. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 四十四年度予算において、本年と同様、古米については、主食として売却するものについて一月一日以降の歩どまり一%相当分の値下げ、トン当たり千三百三十四円を織り込んでおりますし、その対象数量は四百八十万トン、四十三年産米――四十四年の十二月末までの在庫でありますが、値下げによる損失額は六十四億円であります。参考に――と書いてあるから読みますけれども、四十三年度の値下げ対象数量が二百四十万トン、値下げによる損失見込み額は三十二億円。以上でございます。
  281. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 大臣答弁に補足いたしまして私から御説明申し上げますが、食糧管理勘定の中の国内米管理勘定の損益の発生の積算を全部出せということに相なりますと、これは非常な大作業でございまして、前提といたしまして、すでに御説明申し上げましたように、国内米管理勘定で四十四会計年度中に買い入れする数量は七百五十万トンというふうに見込み、売り渡し予定数量は六百十三万トンというものを見込む、なお、四十四年産米の政府買い入れ価格は前年度産米の価格百五十キログラム当たり二万六百七十二円、売り渡し価格については現行消費者価格を据え置くという前提で組んでおるのであります。なお、米穀販売業者の販売手数料でございますとか、あるいは農業倉庫の保管料でございますとか、これらのものについて若干の変動がございますが、これは省略をいたしまして、以上のような前提を置いた予算の編成、その収支の差が結局食管特別会計における調整勘定の欠損ということに相なるわけでございますが、大きな分け方として、売買の損益に基づく差損が千三百六十八億円、食糧管理運営のための諸経費が千五百三億、合計いたしまして二千八百七十一億ということでございます。
  282. 中村波男

    中村波男君 政府は、ことしの一月から古米の値下げをいたしましたが、いわゆる歩どまりを一%下げるということで、金額にいたしますと千三百三十四円だと思いますが、これの損失分は、いま御説明のありました二千八百億の中に加わっておるのか、おらないのでありますか。
  283. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 四十四年一月以降の四十二年産米の歩どまり一%相当額の値引きというものによる損失の増大額は三十二億ということでございますが、これは、この見込み損失額を加えまして、補正予算による調整勘定への繰り入れで、けりをつけておるのでございます。四十四会計年度におきましては、四十三年産米について同じく四十五年一月から以降一%の値引きをするという計算で、この場合は六十四億円の損失の増ということに相なりますが、これは、ただいま申し上げました総欠損額の中に含まれておるのでございます。
  284. 中村波男

    中村波男君 先般の当委員会で、檜垣食糧庁長官は、四十二年産古米については七月から徳用米として売るという意味の御答弁があったと思うのでありますが、そういう方針が固まっておりますか。
  285. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私の答弁は、そういうはっきりした答弁を申し上げたつもりはないのでございますが、六月、二度のつゆが来ます前の段階では特別の措置をいま考えておりませんけれども、二度のつゆを越します七月以降については、四十二年産米の扱い方については何らかの配慮を加える必要があると考えますということを申し上げたつもりでございます。
  286. 中村波男

    中村波男君 四十二年産米のいわゆる来たる六月三十日現在の保有見込みはどのくらいでありますか。
  287. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 六月末の四十二年産米の保有量の見込みにつきましては、この席で、あと四、五、六の配給をどうするかという問題もなお残っておりますので、はっきり申し上げられないのでございますが、三月末――今月末における四十二年産米の在庫は、おおむね百七十万トンないし百八十万トン程度ではなかろうかというふうに見ておりますので、あと二カ月の配給量でどれだけ減るかということでございます。現段階で幾ら残るはずだというふうにちょっと申しかねるのでございます。
  288. 中村波男

    中村波男君 三月一カ月の四十二年産米の売り渡し量、三月がわからなければ二月でいいわけでありますが、参考までにお聞かせ願いたい。
  289. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 二月の売り渡し量は、正確な数字ちょっと手元にございませんが、二十二、三万と御理解願ってけっこうだと思います。
  290. 中村波男

    中村波男君 そうしますと、少なくとも七月に繰り越す四十二年産米は百五十万トン以上に達するのではないか、へたすると百六十万トンぐらい繰り越すことになるのじゃないか、こう思うわけでありますが、どうですか。
  291. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私どもの見込みは、百五十万トンまでにはならないだろうと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、現段階で、どのくらいになるはずですということを申し上げる計算をいたしておりませんが、百五十万トンまではならないだろうということは申し上げられるかと思います。
  292. 中村波男

    中村波男君 これは私の試算でありますが、百二十万トン――ぐっと下手に見たわけでありますが、七月に百二十万トンいわゆる古米が繰り越されまして、これを徳用米として処分ができたといたしましても、三百二十四億という赤字が明らかに出るわけです。いまの質疑の中で、百五十万トン以上残ることが大体明らかになったのでありますから、四百億近い赤字が出るということになるわけでありますが、それも、徳用米として処分ができた場合でありまして、これを飼料等に処分をしなければならないというようなことになれば、さらに大きな損失を四十四年度特別会計の中に含んでおるということでありますが、その点について、いかがですか。
  293. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 四十二年産米について、七月以降徳用米に格落ちをして販売をするという考え方は現在持っておりません。持っておりませんが、いずれにいたしましても、七月に二度のつゆを越すということになれば、現在の歩どまり一%低下ということを配慮した姿では、これは消費者はなかなか納得をして受配をするというわけにはまいるまいということで、何らかのことを考える必要があるだろうということを申し上げたのでございますけれども、徳用米で処理をするという考え方がきまっておる、あるいはそういうことを考えているということではございません。
  294. 中村波男

    中村波男君 長官ね、徳用米で処分する方針はないとおっしゃいますがね。この一月から四十二年産米の売れ行きががた減りに、いわゆるあなたたちのお立てになった需給計画より見込みが下がっておって、七月でいわゆる入梅を二度越した米が徳用米で売れればまだ上々であって、そういう措置をとらなければ、在庫がますますふえて、あとに送られまして、損失はさらに大きくなるというこの現実をお認めになりませんか。
  295. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 四十二年産米につきまして、できる限り消費者の納得ずくで消費を増大していくことが、これが食管特別会計の赤字の増大を防止するのに重要なことであるということについては、中村委員の御指摘のとおりでございます。ただ、何ぶんにも、これだけ大量の玄米を二度のつゆ越しをするように保管をしたという過去の経験もございませんので、七月以降どういうふうにするかということは、私どもとしては、今後の需給の動向を見ながら考えてまいりたい。特に、いずれにいたしましても、四十三年産米も来米穀年度へ相当持ち越すことに相なりますので、この問題につきましては総合的に考えていく必要があるだろうというふうに思っておるのでございます。
  296. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 中村君の質疑の途中でございますが、都合により、午後三時三十分再開することとし、これにて休憩をいたします。    午後一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後四時五十四分開会
  297. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き中村君の質疑を行ないます。中村君。
  298. 中村波男

    中村波男君 時間が残り少なくなりましたので、端的に質問を申し上げたいと思いますが、来たる七月現在における四十二年度産の古米は、どう私は少な目に見ても百四十万トンないし百五十万トン残ると思うのでありますが、それを認めますか。
  299. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 先刻も申し上げましたとおり、七月月初めにおける四十二年産米の在庫量を正確にこの段階で推定をすることは困難なんでございますけれども、私は百五十万トンに達することはなかろうと思いますけれども、百四十万トンになることはないと断言するほど自信があるわけでもございません。したがいまして、場合によりましては百四十万トン前後になるということもあり得ると思います。
  300. 中村波男

    中村波男君 農林大臣、お聞きのとおりですね、百四十万トン七月に古米を繰り越すわけでありますが、これをどう処分するかということが赤字の増大に大きな影響のあることでありますから、いまから考えなければならぬ重大な問題だと思いますが、この処分についてどういう計画とどういうやり方をお持ちでありますか。
  301. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) せっかくのお尋ねでございますけれども、まだこの処分についてどうするかという方針は固めておらないのでございます。持っておりません。
  302. 中村波男

    中村波男君 大蔵大臣お聞きのように、私は百四十万トンではとどまらないと思っておりますが、かりに百四十万トンといたしまして一-四等の平均が一トン十二万四千九百四十七円でありますから、かりにこれを徳用米で売ったといたしましても、徳用米が九万六千七百十三円ですから、したがってトン当たり二万六千九百円程度損をするという計算をいたしましても、四百億前後の赤字が増大するわけなんですけれども、これは重大な問題だと思うのでありますが、こういう点について事情御存じでありますか。
  303. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農林当局からつゆを越す米が百万トンをこえるであろうという見通しにつきましては伺っております。そういう際に、一体二度つゆを越した米をどうするか、こういう問題ですが、それほど多量の米を二度つゆを越したという事態は初めてなものですから、農林当局としてもいまのこの時点でどういうふうにこれをするのかということについては、たいへん判断に苦しんでおるところかと思いますが、一つ方向は、暮れにこの正月ですか、搗精度を高めた、歩どまりを九〇に持っていった。それをさらに一%搗精を高めるというようなことをするというようなことで、これを価格は現行価格を維持するというようなことでもするとどうなるか、こう計算してみるというと、これが十七、八億円くらいなところになるのだというような計算も出ておりますが、とにかくどういたしますか、非常な難問題でありまして、いま農林当局も頭を痛めている、こういう段階かと思います。
  304. 中村波男

    中村波男君 さらに来年の一月に繰り越すところの四十三年産米ですね。これも私は四百七、八十万トンになるのじゃないかと思うのですよ。そうしますと、ことしのように一割搗精度を高くするということで値引きをいたしましても、それだけでも六十四億というさらに赤字の増大の要素があるわけです。したがって、いろいろな要素をさらに加えますと、これは五百億程度の赤字がさらに増大するのではないか、こう思うわけです。したがって、もう時間がありませんから、こまかい議論は次の機会に譲りますけれども、これは大蔵大臣としても、必ずこれは補正予算を組まなければならぬという事態を覚悟しておられると思いますが、補正予算を組まなければならぬと思うわけです。それから農林大臣、全くこの問題についてはまだ計画もないが考えもないなどというような無責任な態度というのは、私は納得いかないわけです。したがって、いま一割搗精度を上げるということで古米を処理しておられますが、これをさらに二割上げるとか、余剰米の対策として具体的な検討をして、損失を最小限に食いとめるということが重大な段階じゃないかと思うのです。また、予算審議という立場から見て、少なくとも四百億以上の赤字が見通される中で、いまの予算を通すということについては、重大な疑点が残るわけです。そういう点についてさらに御見解を承りたいと思うわけです。
  305. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 全くお説のとおりでございまして、いかにしてこの分の消費の拡大をはかるかというような点については、いろいろな施策をどうやろうかというような点については考え、いろいろな省内の話し合いをしまして、そして、何とか幾ぶんでも食いとめるように、なるべく少なく持っていきたいという意味で考えておりますけれども、まだこの実現の方法は、どうするかという点については、まだ申し上げられる段階ではございませんけれども、いろいろな点について考えておるということだけは――消費の拡大をどうして持っていくか、どうして、いかに食いとめるかという点についての協議はしておる、ということだけははっきり申し上げられると思うわけ  でございます。
  306. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連。  いまの食糧庁長官と大蔵大臣の御答弁なんですが、食糧庁長官のさっきの御答弁では、つゆを越す米が大体百四十万トンないし百五十万トン、この間ぐらいだというお話があったのですが、大蔵大臣のほうはつゆを越す米が百万トン程度というお話を聞いておると、こういうお話なんですがね。これは大ざっぱないずれにしても数字ですから、こういうふうに違ったのでしょうけれども、それにしてももうちょっと――大蔵大臣の聞いておられる話と食糧庁長官の話とあまり違い過ぎるので、四十万トン違いますと、百億円ぐらい違ってくるのじゃないですか。ちょっといまの中村君の御質問にもあったように、こういう問題の扱いとしては、はっきりした見込みは立たぬにしても、ちょっと大ざっぱ過ぎるような感じを受けるのですがね。
  307. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私が申し上げましたのは、少なくとも百万トンはこえそうだという報告を一カ月前に受けておるわけなんです。その後食糧庁でどういう数字になりましたか、それはまだ承っておらないので、その数量については、食糧庁長官のほうが確かな見通しを持っておるわけでございます。それにおより願いたいと思います。  それから、いま赤字がどうも何百億になりそうだというようなお話、見通しがありましたが、そうは考えておりませんで、これは古米があるということを勘定に入れまして、この食管の予算を編成してあります。しかし一部見通しの狂いというものが出てくるかもしらぬ。それにいたしましても、何百億というようなことは考えておりません。それに先ほど申し上げましたが、古々米について搗精度をまた一%上げるというようなことになりますと、十七、八億円の損失になるわけですが、食管会計も米ばかりではありません、いろんな要素のある幅の広い会計でありますので、その全体の中でそれがどういうふうに吸収されますか、吸収されませんか、それらを見ないと、その補正予算を必要とするかしないか、そういう結論は出てこない。補正予算という事態にならないように何とか善処していきたい、かような考えを持っております。
  308. 中村波男

    中村波男君 大蔵大臣、私が承知しておるのは、古米については一割分の千三百幾らだけは評価が落としてありますけれども、それ以上に安く売るということになればね、これはもう予算上に評価がしてありませんから、それだけ赤字になるわけですよ。間違いないでしょう。
  309. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一つ考え方として、食糧庁で、搗精度を――一割じゃないのです、一%です。一%また強化しようかと、それで消費者価格は現状を維持するようにしようかという考え方があるのです。その考え方をとりますと、赤字になる額が十七、八億とかそんな程度の額であるということを申し上げておるわけであります。
  310. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 四十二年産米について、いまの予算の積算で考えておりますのは、御指摘のように一%の歩どまり低下分の値引きというものを織り込んでございますので、厳密に申せばそれ以下の値引きを行なえば、これは少なくとも積算上の数字に従えば欠損の増ということに相なるわけでございます。なお、いま大蔵大臣お話しになりました現在の歩どまり一%減というのをさらに二%減に、つまりあと一%歩どまりを下げるというようなことで対処ができるかどうかというような問題も、いま少しく需給の推移あるいは米の管理の現状と実情等を判断をいたしまして、最終的にきめたいということで、一つの案として大蔵省と協議の話題にいたしていることは事実でございます。
  311. 中村波男

    中村波男君 大蔵大臣、私が三百億、四百億の赤字が出るのじゃないかということは、具体的に一トン徳用米で売ったとすれば二万六千九百円の損になりますから、それを百四十万トンかければ三百七十六億赤字がふえますよと、それはお認めいただかなければならぬと思うのですが、どうですか。これはもちろん仮定の問題ですよ。全然値下げをせずに売る自信があれば問題ありません。
  312. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは先ほど申し上げましたように、一つの案として搗精度を強化して値下げはしないでずっとやっていこうかということも、検討されておるわけなんです。そういう方法によりますと十七、八億の赤字になる、こういうことでありまするが、そういうことでいけますかいけませんか、とにかく初めての経験でありますから、いま軽々にこれをどうしますと言って申し上げるというわけにもいかぬ、こういうことです。何とかして食管会計は赤字は生ぜず、また消費者にも不愉快な感じも与えないということにいたしたいというので、いま頭をひねっている、食糧庁が苦心しているというのが現状かと思います。
  313. 中村波男

    中村波男君 まあ、政府の立場から言えばそれを認めるということは、口が割れても言えない立場にあることはわかりますから、これ以上追及いたしません。  最後に、加工原料乳の生産補給金すなわち二度払い金の限度数量百七万一千トンを相当オーバーいたしまして、不足払い金の不足が生じておるというので、いま酪農団体、酪農家が全額払ってもらうようにというので、強く政府に要請をいたしておるわけでありますが、この間の事情と現状を御報告願いたいと思います。
  314. 平松甲子雄

    説明員平松甲子雄君) ただいまお尋ねの不足払いの数量の超過という問題は、御承知のように、加工原料乳に対して不足払いをするという暫定法でございますが、その暫定法に基づきまして不足払いの対象とする数量を百七万一千トンというふうに定めておるわけでございますが、現在までのところ、私どもで情報を集めておりますと、かなりの県で府県別に割り当てられております数量を超過するという府県が出てまいるかというふうに考えておるわけでございますが、不足払いの限度数量というものが法律にきめられております精神から申しますと、現在のところ、かなりの府県で超過する、限度数量だけでは不足するという県が出てくるわけでございますけれでも、私どもといたしましては、府県間の数量の調整をいたすということで、最大限の努力をいたしてまいるということで処理してまいりたいというふうに考えております。
  315. 中村波男

    中村波男君 農林大臣、これは畜産振興審議会の議を経なければ限度数量は直りませんから、したがって大臣が行政的にどうにもならぬことはわかりますが、政府は米穀の需給事情の緩和を背景に総合農政を打ち出して、畜産の、特に酪農の拡大を中核としておられる現在において、少なくとも不足払いを全額ぐらい支払うというような、金にすれば五億程度だと思うのでありますが、畜産を振興するという、こういう立場に立てば、政策的な費用として私は安いものではないかと思うのでありますが、これはひとつ農林大臣が決断される問題だと思いますので、所信をお伺いして私の質問を終わります。
  316. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 限度額に対してはおっしゃるとおりで、本年度補助額をいまふやすというわけにはいきませんけれども、その中で調整のほうを十分行ない、しかしなおのみならず足らぬ、不足するという場合は、何とか考えなければならないだろうというような考え方をもって、いませっかくいろいろな努力をしております。しかし、まだその数量がどのくらいになるかということもはっきりしておりませんので、しかしそれを全部「おおようがす、引き受けました」というぐあいにまいらないかもしれませんけれども、その点については十分意を用いて今後の交渉をしてまいりたいと考えております。
  317. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして、中村君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  318. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、森中守義君の質疑を行ないます。  森中君に申し上げますが、通産大臣はいま途中でございまするが。
  319. 森中守義

    ○森中守義君 来るまで待ちましょう。
  320. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 森中君。
  321. 森中守義

    ○森中守義君 通産大臣並びに法務大臣に、例の日工展の訴訟がどういうように進展をしているのか、またその見通し等が、現状において説明できる範囲で御説明願いたい。
  322. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は訴訟の成り行きにつきましてつまびらかにいたしておりませんので、政府委員から答弁いたさせます。
  323. 原田明

    政府委員原田明君) お答え申し上げます。  日工展の訴訟につきましては、訴えが提起されました以後、第一回の口頭弁論、第二回の口頭弁論が終わりまして、本日双方の証人が呼ばれまして、証人調べというのが行なわれているという段階でございます。どちらも訴状及び準備書面によりまして、その立場をはっきりいたしておる段階でございまして、どういうふうになるかというような結末は、全くいまの段階では申し上げられないという状態でございます。
  324. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) いまの点につきましては、裁判所のほうでございまして、私のほうではございませんから。
  325. 森中守義

    ○森中守義君 その次に、運輸大臣に、けさの新聞でしたか、中国との航空機の乗り入れがたいへんまずい結果になったように出ておりますが、しかもアメリカからかなり強い歯どめがあったと、こういう記事等も散見をしております。経過をひとつ詳しく御説明願いたい。
  326. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 本日一部新聞に、「日中乗り入れ断念、臨時航空便、米が難色」という見出しで、日中間の民間レベルにおける臨時航空便の相互乗り入れは、米政府から非公式に反対意見表明を考慮し、政府首脳陣もこれを断念することになった、こういうことでございますが、これは事実は全くございません。この報道は事実無根であります。政府の方針というのは、森中さんも委員会で御質問になりましたが、いま覚え書き貿易のために古井、田川両代議士が向こうへ行かれます際に愛知外務大臣総理大臣に会った際に、この日中の間で航空便を設けるという話が出たようだが、そのことについてどうだというお問いが私にもございました。私はこのことにつきまして外務大臣に話を聞いておりましたが、これはこちらから持ち出したのではなく、話を向こうへ行ったときにそういうことが出るかわからぬ、というような状況の話でございました。あくまで覚え書き貿易改定のために今度はお二人は行っておられるので、もしもそういうことが出てきたならば前向きで検討しようと思っておる、こういう答弁をいたしておったのでございまして、その後話が出てきたということも聞いておりませんし、外務省ではこのことについて確認はいたしておらない、ということを連絡を受けております。
  327. 森中守義

    ○森中守義君 どうもやっぱり外務大臣がおいでにならないと、なかなか話が先へ進まないのですがね。もう間もなくだろうが、ちょっと待ちましょうか。それでないと、私の時間も制限がございますからね。
  328. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 関係のない別の問題たくさんおありと思いますから、そのほうからお願いします。
  329. 森中守義

    ○森中守義君 関係があるのだ、みんな。同じ質問をまた外務大臣というわけにもいきませんから。あと何分ぐらいで来られるのかな。
  330. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 森中君に申し上げます。すでに外務省を出発をして、向かっておる途中でございます。
  331. 森中守義

    ○森中守義君 外務大臣、さっき運輸大臣にお尋ねしまして、あなたにも同じような質問なんです。ちょっと質問の内容をお聞きになって、それからひとつ先に答えてください。
  332. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) おくれまして申しわけございませんでしたが、この三月二十日の日本経済新聞に出ている記事の問題と思いますが、ただいま運輸大臣からお答えしたことであると同じことと思いますが、現状におきましては、この日中間の飛行機の問題というのは、全然いま問題になっておりませんので、その点、私からもお答えを申し上げます。
  333. 森中守義

    ○森中守義君 MTの交渉においでになっていた田川代議士がきのう帰られたようですね。経過はお聞きになりましたか。また、それに対して非常にむずかしい暗礁に乗り上げているように伝えられております。近況あるいは経過がどういうものであるか、ひとつ外務省と通産省、両省からお答え願いたい。
  334. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ちょっと私おくれてまいりましたから、あるいは前の御質問とちぐはぐになるかもしれませんけれども、いまお尋ねの田川君は帰ってまいりましたが、私、まだ国会その他の関係で時間の余裕がございませんので、直接、私、田川君とまだ会っておりません。大体の話を間接に聞きました程度でございますが、私どもとしては、この日中間のいわゆる覚え書き貿易というものについては、何とかして引き続き、あるいはできるならばもう少し幅広く、あるいは時間も長くということで期待をいたしておるわけでございますが、なかなか古井、田川御両君も非常に苦労をしておられるようでございます。私どもとしては、その実りの多い結果が出ることをこれ期待していると、こういう状況でございます。
  335. 森中守義

    ○森中守義君 内容はどうですか、暗礁に乗り上げている主要な問題点について。
  336. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 暗礁に乗り上げているというふうには聞いておりませんけれども、いわゆる政治問題というものについていろいろ従来話があったようでございますが、それについても、なかなか両君としては非常に困難な立場に立っておられるというふうに、私は間接に承知いたしております。  それから同時に十六日の日に岡崎嘉平太氏が参りまして、もうすでに北京に入っておるはずでございますが、岡崎嘉平太氏が立ちます前に、私は非公式に懇談をいたしまして、日中貿易についてのいま申しましたような気持ちは岡崎さんにも十分伝えたつもりでございます。
  337. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田川さんからお知らせがございまして、石井さんがお帰りになりまして、御一緒にお話を申し上げる機会を持ちたいということで、ただいままだお目にかかる機会を持っておりません。
  338. 森中守義

    ○森中守義君 この段階で、政府としての一つの取りまとめといっても困難かと思うのですが、少なくとも交渉の前段的なものとして政治問題がかなりあるわけです。したがって、むろん政府代表というわけではございませんから、その責任が政府にあるとは言いませんけれども、少なくともこの局面を打開するために、何かの方策――先般もMTが本筋だ、こういうお話がある限りにおいては、何かまとめた対策というものをおとりになってもいいんじゃないか、こう思うのですが、通産大臣いかがでしょうか。
  339. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、いまもお触れになりましたように、実際問題として、政治交渉とか外交交渉の問題ではございませんものですから、そういう点についてとかく申し上げることはございませんが、貿易の関係は、これは通産省なり農林省なりその他の関係もございますので、そのほうからも御答弁願いたいと思いますが、私といたしましては、先ほど申しましたような気持ちでございますから、たとえば向こう側から、こちらとして適当な買うものがなかなか品目も限定されているようですし、したがって、数量、価格等におきましてもあまり多くを期待することはできない、これも一つの難点でもございます。そこでこちらとしてはなかなかむずかしいことでありますが、そういう気持ちに即して関係各省も相当の協力を惜しまない、こういう態度でおられる、このことを私は評価しておるわけでございます。
  340. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 交渉の全局は、岡崎事務所の御責任でやられておることでございます。問題は交渉の過程におきまして、政府とかかわりを持ってくる部面にまいりますると、内相談がおありかと思うのですけれども、ただいまのところ訪中いたしました岡崎さんからは、まだ何らの御通報を受けておりません。
  341. 森中守義

    ○森中守義君 時期がはっきりいたしませんけれども、ごく最近ココムの総会が開かれたようですね。これに対して、日本政府としてはどういう方針で望んでおられるのか。この点は非常に重要ですから、できるだけ具体的に御説明を外務、通産両大臣からお願いします。
  342. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまお話がございましたココムリストの問題について、引き続きパリにおいて、関係者の間で話し合いが行なわれておりますが、この内容等につきましては、まだきまらないものも、話し合いが進まぬものもあるようでございますが、ひとつ事務当局から現在までの経緯の御説明を御聴取いただきたいと思います。
  343. 原田明

    政府委員原田明君) 私どもは直接会議に参加をいたしておりませんので、ときどき外務省から伺う程度でございます。ただいままでのところでは、品目ごとに各国がそれぞれの見解を述べておるというだけでございまして、どれにつきましても、はっきりした結論は全然出ていないという段階のように伺っております。
  344. 森中守義

    ○森中守義君 外務省にも聞いている。
  345. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 外務省の事務当局から御説明ございませんか。
  346. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その担当の局長がちょっといまここにおりませんので、至急出先から呼びますから、しばらくお待ち願いたいと思います。
  347. 森中守義

    ○森中守義君 それじゃ、それはちょっと答弁留保して先へ進みましょう。  先般来、たとえば東京の都議会等で日工展への補助金の問題がかなり議論されたようです。ついては、この補助金は将来どういうことになるのか、その辺のことをひとつ大蔵大臣通産大臣いずれからでも御答弁願いたい。
  348. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私のほうは、御案内のように貿易拡大ということを基本の政策として推進いたしております。したがいまして、日工展の開催ということがわが国の貿易振興に役立つという観点から補助金の交付を予定いたしておるわけでございます。したがいまして、条件さえ整えば、この補助金の交付をするという態度は変えておりません。訴訟の問題とか、その他いろいろの派生的な問題はあるようでございますけれども、そういう問題とは一応切り離しまして、この問題につきましては、基本の姿勢は変えていない。こういうことでございます。
  349. 森中守義

    ○森中守義君 この件ですがね、大体諸外国の実際出されている補助金等をいろいろ聞いてみますと、かなりわが国の場合には国際水準を下回っている。こういうことのようです。したがって、諸外国の補助金の出し方等と比べてみて、わが国がどうなのか、その辺、検討されたことはありましょうか。大蔵大臣もひとつ御一緒にお答えいただきたいと思います。
  350. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) せっかくのお話でございますけれども、諸外国の補助金を出しているかどうか、そういった点、またその金額はどうか、条件はどうか、そういったことにつきましては、残念でございますけれども、詳かにいたしておりません。
  351. 森中守義

    ○森中守義君 いまの点は多少私も資料を持っておりますけれども、また次の機会にお尋ねいたします。  それから先般来問題となっていた北京の抑留者の取り扱いですね、これは先般本会議あるいは総括質問の際に、かなり前向きの姿勢で政府が接触をしたい、こういうお話のようでしたけれども、具体的にどういう接触を、どこで、だれとだれがやったのか、経過はどうなのか、見通しはどうか、この辺のことをお尋ねしたいと思います。
  352. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 抑留といいますか、何と言いますか、とにかく消息がわからない、抑留されていると想像される人たちが大体十三人はおられる。その中には非常にはっきりした氏名、あるいははっきりした職業という方々もおられるわけでございます。これらの方々については、ほんとうにこれはもう人道的にも憂慮にたえない問題でございますから、先般もこの席でもお話をいたしましたように、中共の在外公館と日本の在外公館と、同じ国、同じ場所にあるものもかなりございますから、そういうルートをたどりまして、こちらからいろいろと接触を試みております。これはどこのどこで、だれがどうということは事柄の性質上、また現在のところ先方から何らの反応がないわけでございますが、まことに微妙な段階でございまして、こちら側からどこのどこで、いつということを申し上げるのは、私は不適当ではなかろうかと思いますので、その点は御了承をお願いいたしたいと思います。で、この点につきましては、先方がたとえばこれを政府間の交渉にするあるいはたとえば領事同士とか、参事官同士の話し合いということにするというふうに受け入れてくれるならば、これはいわゆる政府間交渉として喜んでこちらとしてもその話し合いに乗っていきたいという態度でアプローチにつとめておりますが、これはいろいろの努力をいたしておるのでございますが、まだ残念ながらその反応が出てまいっておりません。これがいまの実情で、なお努力は一生懸命続けたいと思っております。
  353. 森中守義

    ○森中守義君 それから、かねて問題になっておりました遺骨の送還ですね、あるいは受け取り、これは大体いつごろ目鼻をおつけになる予定でございますか。
  354. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 遺骨の送還につきましては、これは御承知のように、昭和三十年には本件についての総領事会談というのが行なわれたこともあるわけでございますが、その後、政府間の折衝というものができませんので、赤十字にお願いをいたしまして意思の疎通をはかりたいと考えておりますが、向こうにも日本人の遺骨がある程度あるということは情報によって確認をされております。  それから、いろいろと御承知のような経過がございましたけれども、当方としてはほとんど全部の送還が赤十字等の手を通して終わったという段階でございましたところが、その後もまた残った部分があることが判明いたしましたので、その遺骨は、十体余りと私いま記憶しておりますが、詳細は政府委員からお答えいたさせますが、東京の回向院で十分に供養をして保管をいたしております。何時でもルートがつけば、先方が御希望になれば、丁重に送還するというかまえで現在丁重に保管をいたしておると、こういう状況になっております。
  355. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) ではお答え申し上げます。  現状は大体いま外務大臣から御返事申し上げたとおりでございますが、御存じのとおり、華人労務者で戦争中に日本に参りまして亡くなった方約六千名でございますが、その遺骨は大部分が終戦後華人労務者が引き揚げられたときに一緒に持って帰られたわけでございます。その後八回にわたりまして、昭和三十三年までに二千八百四十九柱送還いたしておるわけでございまして、その後昭和三十九年の十一月にさらに二柱でございますが、現在十一柱残っておりまして、それは文京区の伝通院に保管いたしておるのが現状でございまして、一昨年のことでございますが、日赤から紅十字会のほうに引き取り方申し入れたわけでございますが、まだ返事がないままに推移しておるわけでございまして、先方で引き取るという御意向があれば、いつでも引き渡しできるという状況で保管しておるという現状でございます。
  356. 森中守義

    ○森中守義君 あえてマラッカ構想などという呼び方が適当であるかどうかわかりませんけれども、昨年の「東洋経済」等の表現を借りれば、明らかにマラッカ構想、こういうわけです。しかも、この計画がかなり進展をしてまいったものでありますが、どういう経過になっておりますか、運輸大臣、外務大臣。さらにまた、予算もだいぶついているようですから、大蔵大臣からもそれぞれお答えいただきたい。
  357. 原田憲

    国務大臣原田憲君) マラッカ海峡の航路整備は、同海峡における大型タンカー等の船舶の安全な航行を確保するために行なおうとするものでありまして、軍事的な目的は全くないものでございます。なお、マラッカ海峡の航路整備については、昭和四十二年十二月、IMCOにおいてその必要性が認められているものでございます。
  358. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) マラッカ海峡の海底、航路調査と申しますか、これはいま運輸大臣からお話しになったとおりでありますが、昨年の末から本年にかけまして、運輸省の関係の方にも現地においでいただきまして、マレーシア、シンガポール、インドネシア三国政府と話し合いまして、現在マラッカ海峡航路の一応予備調査をやっておるという現状でございます。
  359. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お尋ねのことは、私、何もまだ聞いておりません。
  360. 森中守義

    ○森中守義君 だれも来ていませんか、主計局長
  361. 井上弘

    説明員(井上弘君) 御答弁申し上げます。  マラッカ海峡の水路の予備調査ということで、本年の一月より最近まで調査を実施したのでございますが、それにつきます予算は、科学技術庁の特別研究促進調整費というところから一千八百十九万五千円いただいております。
  362. 森中守義

    ○森中守義君 すでに航洋丸とかという船が調査船として派遣をされている、もう帰ってきたのか、あるいは近々帰るというふうに聞いておるわけですけれども、その辺の具体的な計画というものが、残念ながら運輸大臣からお話しになっていない。もう一回その辺の経過を詳しく御説明いただきたい。
  363. 井上弘

    説明員(井上弘君) 御答弁申し上げます。  今回の予備調査は、マラッカ海峡の全航程を航洋丸という船で、大体大型タンカーの通ります航路筋につきまして全航程を概略の測深をいたしました。それからなお、その航路筋におきます四、五点の難所というのがございますが、その点について、比較的精密な調査を実施いたしたわけでございます。それからなお、マラッカ海峡の中におきまする海底の土質の調査、こういったことを実施いたしたわけでございます。  それからこの調査は、本年の一月十四日に日本を出港いたしまして、数日前、調査実施が終わりまして、本船は本月の末に帰港してくる予定でございます。
  364. 森中守義

    ○森中守義君 これはどうなんでしょう。マレーシア、シンガポール、インドネシア、こういう関係三カ国との当然外交交渉が伴ったと思うわけです。したがって、私が知る限りにおいては、個別にこれは三カ国と協定が進みました。きわめて利害関係のある、また海域によっては、領海がほとんど接近しておる状態の中で、どうして個別に協定が成立したのか、この辺のいきさつを外務大臣からお答えいただきたい。
  365. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) なぜ個別になったかという御質問でございますが、要するに、それぞれの国の領海でございますし、別に三国及び日本と共同してというのじゃなくて、むしろそのそれぞれの領海のところの部分については、それぞれの国の了解といいますか、同意を得て航路の測量をするという問題でございますので、もちろんその合意の内容は、実体的に同じでございますけれども、一応三カ国と別々に交渉して行なう了解を取りつけたということでございます。
  366. 森中守義

    ○森中守義君 これは杞憂であればいいのですけれども、過去の戦争の経験を持っているわけです。したがって、もし日本がそういう方向に進出をするということは、再び何か意図しているんではないか、したがって、にわかに同意しがたい、こういうふうなわけで相当強い猜疑心というものがこれは三カ国にあったのではないか、こういう推察をするわけです。杞憂であればこれに越したことはありませんけれども、その辺の真相をひとつもうちょっとこまかくお述べいただけませんか。
  367. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) その点でございますれば、今回の計画が始まりましてから、御指摘のような問題は全然起こっておりません。マレーシア、シンガポールに関しましては、話し合いはきわめて円滑にまいりましたし、それからインドネシアとの関係で、若干経費の負担等の問題がありましたけれども、いまの御指摘のような問題は起きておりません。もちろん調査しました結果は公表するわけでございますし、関係参加国とも、その点についての疑念ないし懸念は持っていないとわれわれ了解しております。
  368. 森中守義

    ○森中守義君 先ほど全部投入された調査費というものが明らかにされましたが、総額一億八千余万の中で国費が非常に少ない、民間が相当金を出しているのですね。同時に、協議会というものができておるようですけれども、大体調査の主体、さらに将来、先ほど標識をつくるとか、あるいは拡幅をする、こういう説明があったのですけれども、究極において何をなさんとするのか、つまり将来の権益の問題にもこれは重大な関係がありますから、そういう将来の構想をどうしてもこの際は承っておきたいと思います。
  369. 井上弘

    説明員(井上弘君) 御答弁申し上げます。  マラッカ海峡は、極東とアジアを通じます主要な航路でございまして、国際航路としても重要なところでございます。近年におきまして、大型タンカーがかなり多く航行するようになりました。しかるに、海峡の水路は、戦前、一九三六年でございますか、イギリスによって測量された海図が出されておりまして、その後大型船が航行するには不安な状態ということでございます。また一昨年でございましたか、イギリスの近海におきまして、トリー・キャニヨン号の大事故がございました。それでIMCOという国際政府間海事機構というものがございまして、ここでこういう大型船に対する安全のための対策がいろいろ研究されているわけでございますが、ここで世界的にこういうむずかしい航路につきましては、航路分離の方式をとる必要があるということで、各国から提案を持ち合うように話があったわけでございます。そこで、日本国とそれからシンガポール、これがマラッカ海峡につきまして航路分離の方式をとってほしいということを申し入れたわけでございます。そこで、IMCOの会議におきまして、それはまことに研究に必要であろう、しかしながら、そのためにはマラッカ海峡の水深の問題、それから航行援助施設、灯台等の援助施設でございます。こういったものが整備された暁においてやることが妥当ではないか、そのために関係各国とよく連絡し合って、それを検討してほしいと、こういうような申し合わせになったわけでございます。そこで、わが国が、このマラッカ海峡を通ります航行船舶を持ちます最大の利益国でございまして、また極東におきまして、最も水路関係につきまして実力を持っておる国でございますので、それを取り上げようということになりまして、沿岸三カ国ともよく協議いたしまして、そして、実施を行なったという経緯でございます。
  370. 森中守義

    ○森中守義君 主体はどこですか、将来の権益問題、究極の目的。
  371. 井上弘

    説明員(井上弘君) 今回の調査は予備調査でございまして、予備調査を本船が帰りまして、データを持ってまいります。これを解析いたしまして、その上で具体的な方法と、それから主体の問題を検討する。この主体は、いずれにせよ国際協力でやらなければならない、こういうふうに考えております。国際協力は沿岸三国はもちろんでございますが、これを利用します主要の海運国を全部合わせた形でやることが妥当であると、こういうふうに考えるわけです。
  372. 森中守義

    ○森中守義君 出資し合っているわけだから、政府と民間が、いまの日本の場合には。それで、政府の出資が非常に少ない。民間が非常に多い。したがって、政府が出したのは助成金的な意味を持つのか、あるいは補助金的な意味合いを持つのか、一体日本の場合の主体はだれなのか、政府かあるいは民間か。
  373. 井上弘

    説明員(井上弘君) これは両方でございます。
  374. 森中守義

    ○森中守義君 将来。
  375. 井上弘

    説明員(井上弘君) 将来本格的な事業が開始されますときには、国際的な取りきめをもちまして、各国の分担というものをきめると思いますが、国内的には政府と民間と協同の体制でやるというような形にしております。
  376. 森中守義

    ○森中守義君 こういう計画が調査に移行するということは、一定の目標を持っているわけだから、だから何年度ぐらいにこれは敢行する、本調査にはいつ入る、また、ついては、調査の結果どういうことをやりたいのか、やらんとするのか。これは二回も、三回も聞いてなかなかお答えがない。時間が私はないのだから、もっと正確に要領よく答えてください。
  377. 井上弘

    説明員(井上弘君) 予備調査の結果を解析いたしまして、本格調査の具体的な内容をきめるということになっておりますが、一応私ども考えておりますのは、水路の精測を要する個所はどこであるか、それをどういうふうにやるかという問題、それから航行援助施設として、どういう地点にどういうものを置いたらいいかということを検討したいということ、それから航路筋におきまして、沈船だとかあるいはその他の障害物があれば、これを除去しなければならない。これはどこであって、どういうことをしたらいいのか、あるいはしゅんせつを要する個所があれば、そのしゅんせつをどうやる、こういったことが具体的な問題になると思います。これはいつから開始するかということはまだきまっておりませんけれども、各国とも協議を進めてやらなければなりませんが、私どものほうとしましては、予備調査の解析を行なうと同時に関係国と話し合いを進めてなるべく早く本格的な事業のほうに持っていきたいと、こういうふうに考えております。
  378. 森中守義

    ○森中守義君 おおむね概要がわかってきましたが、防衛庁長官これどうなんでございましょうかね。四次防がきのう、きょうあたりそろそろ手をつけられるようなお話を聞いておる。それで、これもいまの答弁に関する限り、その心配はないんですけれども、しかし、すでに五十万トン・タンカー、こういう非常に超大型化になってきている。しかも原油をどんどんどんどん運んでくるわけですから、相当この海峡の将来というものは注目されますよ。ひいては、どうしても海上自衛隊による船団護衛的なものが将来考えられる。したがって、四次防の中に、そういうものが採用されるのか、まあおそらく現状見たらないでしょう。ないけれども、予定される、予想される将来としてはこのことが考えられる。その場合どうされますか。それが一つと、それからすでにシンガポールが七一年には英軍が撤退をする。そのあとに、何としても日本の海上自衛隊によって真空状態になったこの地域の防衛分担をやってもらいたい、こういう話があるようです。これも仄聞するところですから、確証を握っての話じゃない。しかし、すでに二、三年前にアメリカ政府は日本政府にそういう趣旨を申し出てきた。あるいは昨年の下田における日米会議等にかなり強いそういう意思が表明されたと、こういうように聞いておるんですが、これもあわせて外務大臣、防衛庁長官お二方からお答えを願いたい。
  379. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 御指摘のような、アメリカのほうから、そういう要請がわが防衛庁にあるかということでございますが、私のほうはそういう事実はございません。  なお、マラッカ海峡の問題ですが、わが海上自衛隊は船団護衛――有事の際の船団護衛の任務は持っておりますけれども、マラッカ海峡がよくなったからといって、すぐ紛争が起こるとも想像されません。したがいまして、われわれといたしまして、第四次防に、そういうことを具体的に考え計画はしようとはいまのところでは考えておりません。
  380. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 要するに御質問の趣旨は、アメリカ等から日本を含む多国間の防衛計画ということについて、何か要求をされておるのかというような御趣意かと思いますけれども、さようなことは全然ございません。
  381. 森中守義

    ○森中守義君 まだ、そのこれからというときにだめ押しもどうかと思いますがね、防衛庁長官、いまのところということは、将来はそれがあるかもわからぬ、こういうように受け取っていいですか。
  382. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 将来も、いろいろございますがね。遠い将来でどういうことがあるかということは、これはいま予測の限りでありませんけれども、少なくとも現段階における近き将来というような、さっき四次防というお話がありましたが、四次防に、そういうことを考えてというようなことは、少なくともいまのところでは、そういうようなことを考える必要はなかろう、こういう見解でおります。
  383. 森中守義

    ○森中守義君 外務大臣に主としてお尋ねをいたしますが、沖縄にいままで政府あるいはアメリカが背負わせてきた任務というのは一体具体的にどういうことですか。
  384. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは返還後のことになりますれば明確にお答えができるようになるのが筋であると思いますけれども現状あるいは現在までにおいていかなる考え方でやっておるかということについては、私から正確にお答えできる筋合いのものではないと、こう申し上げざるを得ないと思うのであります。そういうようなところが、これからの沖縄の問題をめぐって、従来アメリカがどういうふうな態度あるいはどういうふうなねらいで沖縄のいわゆる基地というものを活用していたかということを、私どもとしてはこれから十分承知をするということが返還交渉の一つの重要な点になるのではなかろうかと考えておりますので、現在のところでは何ともお答えをいたしかねますし、また、私がかりに想像をたくましゅうしてお答えをいたしましても、それは正確なものでないことは申すまでもないところであると思います。
  385. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと答弁の趣旨が違うのです。私は、これから先の返還後の沖縄と、こう言っているのじゃない。いままで二十三年という長い間あの状態に置かねばならなかった理由は何なのか、これを聞いておる。これはしかし、答えられないということはないでしょう。
  386. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それだからお答えができない、あるいは想像をたくましゅうしてお答えをすることは当を得ないのじゃないかと申すのでありまして、それは御意見はいろいろございましょうが、いままでアメリカの施政権下にあったわけでございますから、その施政権下において米軍がどういう意図を持って、どういうふうな体制をしいておったかということは、これは私からお答えする筋ではないのであって、それこそまさに、返還後はどうあるべきかということでございますなら、日本の、第一次的には防衛に対して必要にして十分な措置はいかにあるべきかということで、これから考えていかなければならぬ問題と、こういうふうに考えております。
  387. 森中守義

    ○森中守義君 これは全く納得できませんよ。たとえば、佐藤・ジョンソン共同声明であるとかあるいは外務省見解とか、いわんや、国会において、政府と私どもの間には沖縄を数十年にわたって議論した。しかしそれにかかわらず、その衝に当たる外務大臣は、いままで沖縄がになわされてきた責任、それが何であったかと聞かれて、それは私ら答える筋はないなんて、そんなばかな話はないですよ。そうじゃないですか。私はその答えでは絶対に承服できない。わかっているはずですよ。また、そのことを、なぜ沖縄をこういうように放置してさておいたのか、少なくとも条約三条に端を発して、すでに条約三条はもう消滅したと一緒じゃないですか。それなのにいま答える筋はないというようなことでは、これは沖縄百万の同胞に対しても、国民に対しても、それは親切な政府の答えではないと思う。聞かしてください。
  388. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは私の言い方が、そういうふうにお取りになるとたいへん困るのでありまして、これはアメリカが、アメリカの必要性といいますか、向こうからいえばそういうことでもって沖縄に軍事的な体制をしいておった、これは事実なんであります。そうして先ほど来御論議もありますように、沖縄においては、現に、防衛というようなことは日本側としては担当していないわけでございますね。ですから、沖縄の戦略的体制というものが、これこれしかじかの具体的な様相においてこういう使命を持ってやっていたんだということについては、これはアメリカからでなければ正確な詳細にわたるお答えはできない、というのが私のお答えなんであります。こちらとして沖縄の基地の態様その他について、こちらが責任を持って、自分の権限をもってこれをやっていたわけではない、ということを含めてお答えをいたしましたのですから、私の申し上げることを御理解をいただけると思います。それならばアメリカはどういうふうな重要性を置いていたであろうかということになりますれば、極東全体の安定ということについてそういうかまえをしておったのだろう、かように私は考えるわけでございます。
  389. 森中守義

    ○森中守義君 私は、そのことをお話しになるのは何もアメリカの批判でも何でもないと思う。日本の領土ですよ。少なくとも、憲法は潜在的に及んでいる。この事実ははっきりしておりますね。しかも今日、返還をいつ迎えるのか、どういう態様にするかということがわが国最大の問題ですよ。であるならば、なぜ二十三年という長い間あの状態に置かれていたかという、それに対する政府の固有の見解をお持ちになるのは、私は当然だと思う。すべては施政権がない、アメリカにあるんだから、それは日本政府が言うべきでないということは、どう考えてみても了承できません。たいへんしつこいようですけれども、もう一回、私は、正確にそのことをお答えいただかないと、これから先の質問ができません。
  390. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 基本的に、御批判は別といたしまして、沖縄の施政権というものが、われわれの政府の見解としては、平和条約第三条に根拠しているわけでございます。それに基づきまして沖縄に施政権を持っている。別な、たとえばこの間からいろいろ御論議がございましたが、たとえば戸籍の問題とか、あるいは憲法の解釈とか、いろいろございますけれども、現実に占有して施政権を持ち、そこに米軍が駐留しておるわけでございますから、その駐留しておる米軍に対しては、日本の軍でもなければ、あるいはその軍隊の責任、権限を分担しておるわけでもございませんから、その態様について私が御説明できないというのは、これは御理解をいただけると思うのです。現実の事態がそうなんですから、これはおわかりいただけると思います。  それから、なぜ何年も放置していたのか。いたからこそわれわれとしては、おそきに失しておりますかもしれませんけれども、この際こそ早期返還ということに、ほんとうにあらゆる努力を傾けて早期返還の実現をはかりたい。そうして返還になりますれば、私は、これは私のいわゆる守備範囲ではございませんけれども、沖縄はやはり日本の自衛隊法の許す限りにおいてこれを守るという備えをしなければならない。そうしてそれから先、米軍がかりにいるということになれば、これは安保条約の――これは将来の問題ですが、かりに申せば、適用下にあるところの米軍ということになる。あるいは、その目的のための基地ということになります。そうすれば現在とはすっかり変わってまいりまして、私ども政府側としても、的確な御満足のいくような御答弁は、いまよりもずっとはるかに的確にするようになれると思います。
  391. 森中守義

    ○森中守義君 全然私の質問にお答えにならない。そういうことでとても満足できるものじゃないのです。私はそういうことを、期限を聞いておるのじゃない。何が目的のために、どういう任務のもとに沖縄がこの状態にあったのか、その理由を聞かしてくれと、こう言っておるのです。何も平和条約三条云々ということは、これは私も多少知っておりますから、そういう答弁は要りませんよ。要するに、沖縄が背負わされてきた任務は何なのか。これは日本政府として固有の意見があってもいいはずですよ。それを聞かしてくれと言っておるのです。その正確な答えが出なければ質問しませんよ。
  392. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) しかし、正確、正確でないとおっしゃっても、私に理解できない。いまだって沖縄にいるところの米軍というものはあれでございましょう、日本としての管轄下にないんですね、これは残念ながら。これをなぜ放置しておったかとおっしゃられれば、これはどうもお互いに残念なことでございますから、早期返還ということにほんとうに一生懸命やって、今度こそは結末をつけたい、こう申し上げておるわけでございまして、これまで二十数年にわたりまして、沖縄にある米軍がこういう、何といいますか、体制のもとに、こういうかまえ方でおったんだということについて私に説明をしろとおっしゃられても、これは御無理じゃないんでしょうか。私は、答弁がこれ以上は、この点については遺憾ながらできません。
  393. 森中守義

    ○森中守義君 私は逆に、責任ある日本政府の外務大臣が、何のために沖縄がこういう状態にあったのか、その理由をお述べにならないということになれば、遺憾ながら先の私の質問はできない。むしろそれは政治常識じゃないですか。何もその言われることがアメリカに抵抗するとか、アメリカの内部事情を日本政府が非難をする、そういうことにはならないと思う。それはやはり国民には率直にこうこう、こういう理由のもとにこうやったのだというようなことを、それは国会を通じて示すのは当然じゃないですか。これは一番大きな問題ですよ。ただ、それをアメリカだアメリカだ、施政権は日本にないのだからそれはできないと言われるんじゃ困る。したがって、これはどうしてもお答えできなければ、ひとつ委員長理事協議してもらって、一通り得心のいくような説明を私はもらいたい。そうしなければ質問進めませんよ。
  394. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。これはその質問の趣旨は、基地の態様がどうだとか、メースBがあるとかないとか、何がどうということでなしに、やはり極東の平和と安全という問題について、沖縄の戦略的地位を非常に重く見て云々と、そういうことにかかっている質問だと思うのです。ですから、そういうことをおっしゃればいいんじゃないですか。
  395. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) たびたびの御質問で私の答えが御満足いかぬようで恐縮なんでありますが、要するに、二十何年にもわたってアメリカがなぜ日本に施政権を返還しなかったんだろうかということを推測してみますと、やはり一つの大きな理由というものは、アメリカの立場から見て、沖縄の地理的条件その他からいって、極東の平和に対しての占めている軍事的な重要性というものが、ここに、施政権に執着しておったゆえんではなかろうかと存じます。これに対して、先ほど申し上げましたように、わが方といたしましては、いままでだって返還してしかるべきだったんだ、少なくとも、いまこそこの問題にケリをつけてほしいというのが現在の政府の見解でございます。
  396. 森中守義

    ○森中守義君 けさの読売新聞によれば、レアード国防長官が、中国の核の脅威が七十年代にはアメリカにとって非常に最大のものになるだろう、こういう証言を上院でしておりますね。ついては、いまその論評の限りではないでしょうけれども、要するに、中国の核の開発に対しては、どういうお考えをお持ちですか。
  397. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 中共の核開発の現状というものにつきましては、公式の発表その他もさだかでございませんので、まあアメリカのレアード長官がどう見ているかということは別といたしましても、私どもの集めたいわば情報、これをもとにいたしまして観測を申し上げますと、次のとおりでございます。  一九六四年十月に第一回の原爆実験がございました。昨年の十二月の水爆実験に至るまで合計八回の核実験を行なったわけでございます。で、中共側は、先ほど申しましたように、核兵器の研究、開発状況を一切公表しておりませんことは、御承知のとおりでございますが、ただいま申しましたようないろいろの情報等を総合いたしてみますと、一つは、すでに標準の原爆、これは威力二十キロトン級と想定されますが、それから強化原爆、威力が二百キロトン級、それから水爆、その威力は三メガトン級の三種を保有しているものと想像いたされます。その三種はいずれも航空機による運搬が可能でありますが、水爆につきましては、ミサイルで運搬し得るほど軽量小型化し得たかどうかは疑問でございます。それからその次に、当面核爆弾をミサイル弾頭用に小型軽量化すること、並びにミサイルの長射程化に研究開発の重点を指向しているように観測せられます。  次に、中共はすでに短距離及び中距離ミサイルの開発に成功しているものと推定されますが、その数と軍事的の見解等については確認されたものがございません。また長距離ミサイルにつきましては、ここ数年内に最初の実験に成功する可能性があるようでございます。なおミサイル搭載可能の潜水艦を少数は保有しているものと見られますが、将来この面でも研究開発が行なわれる可能性はあるようでございます。  以上がわれわれとして、いろいろの情報等から総合いたしました想像でございます。
  398. 森中守義

    ○森中守義君 先ほどに関連したことになりますがね。どうなんでしょうか、なかなかこれもお答えがむずかしいじゃないかという気もしますけれどもね。少なくともアメリカが沖縄を必要としたその理由の一つとして、あげていけばこれはたくさんありますけれども、端的な言い方をすれば一つには対中国にあった、こういう見方については、どういうお考えでしょうか。
  399. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点についてはアメリカも、この水爆に至る八回の実験ということについては、アメリカとしての所見もございましょうし、また中共周辺の国が脅威を感じているということも事実のようでございますから、それらのところを総合いたしまして、アメリカとしては、沖縄というものの重要性というものを、先ほど申しましたように考えていたのではなかろうかと推測ができるわけでございます。
  400. 森中守義

    ○森中守義君 そこで、いま中国の核の開発がいい悪いというその議論の段階でもはやないと思う。すでに開発の途上にあると見るべきか、いま言われたようなのが真相であるか、それもよくわかりません。しかし、沖縄を中心にして長期に展開された――いまはしなくも私が一つの例として申し上げたことが、もしかりに事実であったとするならば、中国の核の開発というものは、アメリカによって包囲された、あるいは展開された、核に対するつまり核ということで対応してきたのではないか、こういう観測も成り立つように思うのですが、どうでしょうか。
  401. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) またどうもたいへん恐縮なんですが、御指摘になっているポイントがどうも私につかめないのでありますけれども、先ほど申し上げましたところでカバーされるのではないでしょうか。また、たいへん恐縮ですが、もしそうでなければ御質問願いたいと思います。
  402. 森中守義

    ○森中守義君 こういうことですよ。アメリカの核が中国の核開発を誘発したのじゃないか、そういう意味ですよ。
  403. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まあその辺のところはわかりませんが、お答えにならないかもしれませんが、私は、日本の立場からいって、私は中共の現段階における核の実験というものが、直接日本に対する脅威に出動してくるというふうには考えたくないと思います。また、そういうことはないことを希望するわけでございますが、やはりこれは相当時間をかけて論議をしなければならぬ問題ではなかろうかと思いますが、私ども考え方というものは、やはりその終局の目標というものに対して、非常に私なども個人的には理想的な形態を描いて、それに近づきたいけれども、やはり現状においては核の抑止力ということがやはり一番大切なのであって、むしろアメリカとしては、やはり従来からの東西の対立ということが主として頭にあるかもしれません。やはり自国における核の抑止力というものが一番強力でなければ、現実において世界の核戦争というものは未然に防止することはできない、こういう考え方に立っているのではなかろうかと思うのでございます。  したがいまして、必ずしも中共の核というもののありようの姿について、それがアメリカの核の戦力増強をエスカレートしたものではなく、これは全体的、総合的に見て、核の抑止力を常に時勢の進歩におくれずに強大であらしめたいと、これは理想からいえば、こういう姿であることは、私どもも残念なことだとは思いますけれども、現実に、ありようの姿というものは、それが抑止力として大きな戦争は未然に防止しているし、また日本もその核の抑止力ということにたよっているということが、現実的な視野から見て日本の安全を確保していくゆえんである、これが実績上もそれが正しかったということを、大多数の国民方々が評価してくださっている。こういうふうな私は認識に立っているわけでございます。
  404. 森中守義

    ○森中守義君 その辺になりますと、少し意見が異なるわけですがね。それはそれとして、先般のセンチネル計画ですね、この際におけるニクソンの声明の中に、非常に重要な点を指摘した。どういうことか、これはもう外務大臣一番御存じだと思うのですがね。中国における核の将来というものが非常に重要だ、こういうわけでICBMの基地を守ろう、これが一つ。さらにまた、昨年の総理とジョンソン大統領との共同声明にも同じようなことが言われておる。そこで、先ほどお述べになったように、中国の核の開発というものがテンポが速いのかどうなのか、それはまた別の問題として、ニクソン大統領が指摘をするような状態が七〇年の初期あるいは半ばあたりに来た場合、一体アジアの状況はどうなりますか、まあその点私はよほど思いを深くしなければならぬ問題だと思う。ついては、外務大臣は、アメリカの核の抑止のために平和が保たれ、安全が保障をされた、こう言われるのだが、いまこういったようにだんだんだんだんエスカレートしていった状態で、将来なお言われるような状態が保たれるかどうか、私はたいへん心配になる。したがって、その辺の御見解をこの際ひとつ聞いておきたいと思う。
  405. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) そういう長期的な問題、あるいは核武装というような問題についてのいろいろな考え方ということについては、ある意味で私も憂いを共にし、また御同感の点も多々あるように存ずるわけでございます。  そこで、まず具体的ないまのお尋ねですが、なるほど、アメリカのたとえば今度のABMの問題についての発表などを見ますと、中共ということも指摘してございます。ただいま御指摘のとおりでございます。それは、たとえば十年先にどういうふうにこれがエスカレートしていくであろうかということについての認識や、情勢分析は、アメリカはアメリカなりの分析をしているのでございましょう。とにかく、そういうスピードで行くとするならば、ABMのいわゆる抑止力と申しますか――というものをより強化しておかなければならないと考える要素の一つには入っていることは、発表によっても私は明らかだと思うのですが、結局、それらを総合いたしまして、対立する陣営と言うとまたことばが激しくなるのかもしれませんけれども、現に対立している陣営に対しまして、アメリカ自身としては、自分のところの抑止力、またこのごろいわれておる第二撃能力というようなことも含めて、抑止力を先行きいつでも対立する陣営よりも優位に置いておかなければならない、考えられるあらゆる想定に対して優位でなければならないということを考えて、アメリカとしては政策をとっているのだと私は思います。現実には、私どももそれを認めなければならない。ただ、しかし、そういう状態が十年続き、二十年続き、もう永久にエスカレーションの対立同士でもって、その均衡の中に平和が保たれているという姿は、決して望ましいものではない。したがって、私ども日本としては、まだそこまでの実力があると自分で見るのは早計かもしれませんけれども、たとえば拡散条約にいたしましても、あの企図しているような核軍縮というようなことがほんとうに大国間で持てる国同士が結ばれるように、あるいは日本もさしあたり軍縮委員会に参加をする、あるいは、これも時間がかかりなかなか困難な道でありましょうが、国連に対しては日本が安保常任理事国に登場するというようなことも、いろいろの方法から考えていくことが、私は日本の行くべき道ではなかろうかと思います。ただその理想だけを追って、またそういうことが実現しないうちに安易に考えることは、国の安全という国家存立の目的から申しまして、私どもは不適当だと思っております。こういう点は、御異論のあるところかと思いますけれども、私の考え方はそういう考に方に立脚しているということを申し添えておきたいと思います。
  406. 森中守義

    ○森中守義君 ここで、歴史は再び繰り返すなどということもいわれますが、どうなんでしょうか。要するに、キューバ事件をやっぱり私どもは忘れない。相当中国の核というものが大きくなってきた場合――むろん沖縄がどういう態様になるかはこれは別ですよ。少なくとも私どもは核つきなんということはもう許されない。ですけれども一つの仮定として、万が一核つきということで沖縄が返ってきた場合、核の力を保有した中国が、ここでひとつ沖縄から核は引いてくれ、こういうようなことが、ちょうど過去のキューバ事件と同じように予想される。むろん過去において中国は、お互いに核は使うまい、こういうことを提案の形で宣言をしたことがありますね。アメリカはこれに全然反応を示さなかった。したがって、だんだん沖縄返還の問題が具体的段階に近づくにつれて、もし万一核つきというようなことが答えとして与えられた場合、そういう第二キューバ事件的なものは全く予想されませんか。むしろ私は、その可能性が非常に強い、いよいよもってあぶない、こういうように若干将来を憂うるんですけれども、外務大臣はどういうお考えでしょう。
  407. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) いろいろの角度から真剣に御心配になっておるそのお気持ちは、私もよく理解できるつもりでございます。そこで、まず沖縄が核つきで返ってきたらばという前提のお尋ねでございましたが、この点はもう詳しく申し上げませんけれども、これはそれこそそこまで考えて決定的な意見を申し上げるまだ段階ではない。腹案ができない白紙の状態でございますから、それはひとつ仮定の問題としていただきたいと思うのですが、それを仮定いたしました場合に、どういうふうな事態、どういうふうな受け取られ方が国際的にされるかということなども、これは積極、消極両方の見方が私は国際的にもあり縛るかと思いますが、その辺のところも、私どもとしては十二分にいろいろの情勢ということを検討し、分析して対処しなければならない。ここが沖縄返還問題の私は非常にむずかしい点ではなかろうかと思いますが、お話しになっておりまする点、御懸念の点などは、十分ひとつ私どもも傾聴してまいりたいと思います。
  408. 森中守義

    ○森中守義君 まあそこですべてが、将来のことだし、仮定ということになりますが、私は、外務大臣が核の抑止力のためにわが国の安全が保たれた、そういう見方は持たない。逆だと思うのですよ。先般総理も、東南アジアの各国を回って見て、日本はそうじゃないのだが、よその国が中国にたいへんな脅威を感じておる、こういう説明がありました。しかし、先ほどちょっと私が申し上げたように、中国の場合には、お互いに核は使うまい、こういう提案をしておる。しかも、いままで、今回の中ソ紛争等が那辺に原因があるか別ですけれども、さほど脅威脅威ということばが言われなければならないように、あるいは戦略としてとらねばならないような状態にあったとは私は思わない。しかるに、結果においては、そういう包囲された体制の中に、逆に中国のほうは脅威を感じている。したがって、核という対応措置を講じたということになれば、緊張がむしろ増加したことになる、危険がかえって増加したことになる、こういうことに私はいままで進んできたと思う。ですから、いや何も再びキューバ事件みたいなものが起こる心配がないよということであれば何をか言う必要はございませんけれども、その可能性が全くないとは言えない。したがって、ここでとり得べきものは何か。私は一つの提案ということにもなりましょうけれども、かつて核停条約を一つの俎上に上げて、さっき申し上げる相互不使用協定を結ぼうではないか、こういうことを中国は提案の形で声明をしたわけでありますから、私はいまからでもおそくないと思う。かなり緊張激化の方向に進みつつあるアジアの情勢を何とかここで歯どめをするために、ひとつこの際日本が中に入って、こういう核絶対不使用のアジア宣言というようなもの、アメリカなりあるいは中国なり、こういう国々に橋渡しという意味で核不使用の提案等はできませんか。
  409. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まあ、それは理想論としてそういうことができるということを望むことにおいては私もあなたと変わるところはございませんが、しかし、先般も私この席で申しましたように、まず現実の状況のもとにおきまして、私は少なくとも過去二十年近くの間におきまして、日本が世界じゅうのどこよりも私は自由が享受し得たと、あえて経済の繁栄だけではないと思います。そして、だれもがおなかの中では、外からの脅威がない、おなかの中で、あしたうちの子供が戦争にとられる、戦争に巻き込まれて日本の上に原爆が襲われるというような恐怖感をほんとうはだれもがおなかの中で私は持ってないと思うのです。そういう安全な状況というものをかもし出してきたものが、やっぱりいままでやってまいりました、まあ私流に申しますれば、平和憲法のもとにおける陸海空の自衛隊と、それから安保の抑止力、このコンビネーションというものが日本の国民の感情にも合致するし、財政経済上の負担も非常に少なく済んだし、しかも、目的とするところの安全と自由が保てたのである、私はかように確信いたします。そして、そういうことを試験的にやめてみようじゃないかということで、武装も最小限度の自衛隊でやめて、安保も廃棄するといって、そしてその結果がどういうことになるか予測できませんけれども、そこに危険が起こってくるということになったら、これは取り返しがつかない。そういう角度で考えなければならない。私は、同じような考え方で、現実に中共は核を持っている、そしてどんどん実験も進んでいる。これは今後十年間に、アメリカの当局が見ているように進むかどうかということは、これはどうかわかりません。そういう事実は現実であって、そしてまた、これは総理のおことばを引用されましたけれども、現実の中共周辺の国々も脅威を感じていることは私は事実だと思うのです。この認識は変わらないと思うのです。こういう事態でございますから、しかられるかもしれませんが、いたずらに理想的な、しかも実験ということを、現状においてはきわめて困難、至難なものをやろうといいましても、これは現実の政策の上から申しまして、現内閣としてはそこまで展開をした政策はとりにくい、私はかように考えるわけでございます。
  410. 森中守義

    ○森中守義君 たいへん意地悪いような質問になりますけれども、いまそういうお答えになりますと、結局、沖縄の返還ということはずいぶん今度の国会で幾つか移り変わりがあります、政府の答弁には。しかし、結果においてはどうなんですか、要するに、アジアの脅威、中国の核の脅威がある、それを一つの前提において、アメリカの抑止のもとに安全を保っていこうということであれば、結果においては、沖縄にやはり核つきというようなことが一応予想されるんじゃないですか、どうなんですか。
  411. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 沖縄の核つきとか核ぬきとかというようなことについては、政府としてはまだ腹案をきめておりませんから、白紙でございますから、これは、この御答弁を繰り返すよりほかにございません。  それから本質的な御意見に対しましては、私はこう思うんですが、中共の脅威というものに限定した考え方ではございません。先ほども私ちょっと申しましたように、中共が日本に攻めてくるというようなことは考えられないと、しかし、考えられないというのはどうしてだろうかといえば、私の意見をもっていたしますれば、日本としての安全を守り、自由を守る体制というものができているから脅威が来ないのであって、脅威が――それは中共だけを言っているわけじゃございませんよ――脅威というものがないといま判定し得るものはその根拠があって、その根拠なくすればあるのかないのか、少なくとも不分明な状態に日本国を置くことになるのではないか、こういうふうに私は考えているわけで、あえてこれは中共の核の脅威が日本にすぐ攻めてくるとか何とかということを現在の状態から言っているわけではございませんが、そういうことを言えるのはそれだけの根拠が私はあると、その根拠なくすれば、これはちょうど中共を取り巻く、陸上的に隣接している地帯におきましても、いろいろの政策をとっている国がございます。非同盟の国もあれば、中立政策の国もございますが、そういう国ほど心理的にも非常な脅威にさらされているというのが現実の世界の状態ではないでしょうか。こういうことを達観いたしますると、私は、現にとっておる日本の政策というものが正しい、これが最上の選択である、かように確信をいたすわけでございます。そういう角度から沖縄の問題にさらに戻って触れますれば、そういう角度からいって、沖縄の返還を早期にして、そしてわれわれと同じように、本土の者と同じように沖縄の人たちに安全であってほしい、自由を享受してほしい、本土と同じように繁栄をしてもらいたいということからこの返還の方式を考えるというのが、私は政府としての最高の考えなければならない指針ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。くどいようでございますが、基地の態様につきましては、十七日の参議院の本会議で総理からもあらためて申しましたように、最終的にはこの点については白紙と申し上げざるを得ませんということを申し上げておりますのも、そういうな考え方に出ておるものである、かように御理解を願いたいと思います。
  412. 森中守義

    ○森中守義君 このことはいままでずいぶん論戦がかわされてきたんですけれども、いかなる形であろうと沖縄が返ってきた場合ですね、まあ、当然これは本土と区別されるようなことはございませんね。
  413. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点はやはり基地の態様の問題と関連をいたしますから、基地の態様の問題といたしましては白紙でございます。いろいろの考え方がございましょう。しかし、政府として白紙に字を書くまでに至っておりません、こう申し上げざるを得ないわけでございます。
  414. 森中守義

    ○森中守義君 最後になるといつも白紙だと、こういうことなんですがね、大体夏には外務大臣がアメリカに行かれる。秋には総理が行かれる。まあ、そうなると、来年の六月二十二日か三日に当然安保の時間切れの問題で何ぶん処理をしなければならぬ。そこで、そういうことを考えれば、一体いつの時代まで白紙なのか、きのうの外務委員会等の質問及び外務大臣答弁等を見ておりますと、場合によっては今日の安保条約を変えねばならぬような事態がくるかもわからない、あるかもわからない、総理もできるだけそういうことはしたくないのだが、まかり間違えばそういうことになるかもしれない、しかし白紙だということで、何かこう非常に用心深いと言えば用心深いんでしょうけれども、結果的に安保条約という限定された時間、それに沖縄がおっかぶさってくるということになれば、私は当然安保と沖縄というものはセットという状態で処理されるべきではないか、こういうふうに思うのですが、要するにぎりぎり最終的に政府が白紙を具体的に詰められる時期はいつなのか、いわんや安保と沖縄とはセットでいくのか別々であるか、分離されるのか、その辺も、この白紙の問題にからんで非常に重要ですから、この際お聞きしておきたいと思う。
  415. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一昨日外務委員会で私が答弁申し上げましたことは、十七日の、総理大臣の参議院の本会議において申し上げましたことと寸分違わないことを申し上げておるわけでございます。これは御満足がいただけないと思います、この答弁では。それを前提にいたしますが、この沖縄返還問題というものは、ただ一つ考え方を突きつけて、イエスかノーかということで、対決でそれでしまうようなことでは、私はなかなか解決できない困難な問題だと思うのです。そこで、総理答弁をいたしておりますように、六月初めに私、愛知がロジャーズと会談することがきまっておる、それから七月の末か八月ごろには、アメリカの主要閣僚が日本へ参りまして、それからさらにそのほかにも接触の機会がありましょう、それらを通じて折衝を積み重ねて、十一月末といま予想いたしておりまする自分とニクソンとの会談において、そこで決着をつけたい、こういう趣旨を申しておりますのと同時に、この問題は相手方のあることでもございますから、およそ外交交渉というものには、フリーハンドというものも政府にある程度必要なものとしてお認めをいただきたいということも申し添えているわけでございます。その辺のところからいまのところは御想像願いたいと思いますが、同時にわれわれとしては、国民世論というものを十分に踏んまえて、そしてこれも総理のことばどおり、この決着の方式は、将来長きにわたって、あのときのこの方式決着がよかったというふうに評価されるように、十二分の努力を傾倒してまいりたいと、こう申しておるわけでございます。その辺のところも十分ひとつ御理解を進めていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  416. 森中守義

    ○森中守義君 それで、その沖縄に非常に重要な背景を持つ問題ですが、持たず、つくらずというのは憲法上の問題である、持ち込まずということは政策上の問題である、こういって過日総理衆議院でお答えになった。そこで、この問題、むろん本院のこの委員会でもずいぶん議論された。ものと理解しておりますが、必要があれば、政策上の問題だということであれば、政策判断において持ち込みがあり得るという、こういう逆説的なことも私は成り立ってくると思うのです。したがって、日米の交渉の経過の中でどういうことが議論されるか、それは全く想像つきません。しかし話の進展いかん、内容いかんによってはこういうことがあり得るというように、政策上ということであれば理解しなきゃならぬのですが、どういうように理解したらいいでしょうか。
  417. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 非常に大切な点でございますから、正確にお答えいたしたいと思います。  沖縄に非核三原則を適用するかどうかの問題は、従来あらゆる角度から議論してまいったわけでございます。しかし、この問題は、返還交渉の最大のポイントでありまする基地の態様と関連する問題であります。と申しますのは、現在沖縄基地に核兵器があるということは常識的になっておることでございます。これを今後どのように取り扱うかにつきましては、さらに十分な検討を加えなければならない、かように存ずるわけでございまして、したがいまして、現在、今日この時点におきまして、これに対して的確なお答えはできないので、また戻りますけれども、白紙と申し上げざるを得ないということに相なるわけでございます。
  418. 森中守義

    ○森中守義君 要するに解釈上の問題ですが、あまり深刻にお考えにならないで、要するに総理が言われたように、持たず、つくらずということは憲法上の問題なんだ、持ち込まずということは、国民感情に基づいた政策上の問題だと、こう言われている。したがって、裏を返せば、政策上の問題ならば、政策判断において持ち込むことがあり得るということも通念として成り立つんじゃないか。むろん私は、憲法上あるいは政策上この非核三原則というものは絶対的なものである、不動のものであって侵犯すべからざるものである、こういう理解をしておった。ところが、こういう答弁になってくると、いよいよこの非核三原則というものは怪しみを持ってきますし、しかも交渉の進展いかんにおいては、へたすると沖縄にこのことがズバリ当てはめられる可能性が出てくるのではないか、したがってそれは困る、こういうことを主張したい。したがって、通念としてどうなんですか。
  419. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 通念というおことばはどういう定義で理解していいかわかりませんが、ある意味で、憲法論とか法律論とかいう意味を含めてのお尋ねであると私理解させていただきますれば、非核三原則のうちの二つは憲法にかかわる問題であるということをよく法制局長官が申しておりますが、しかし、かかわる問題だけれども、そこまでまあくどくどと申し上げる必要はございますまい、これはもう議事録もいっぱい出ておるはずでございますから。それから、外国の軍隊に、まあ私のことばで言えば持ち込まさせないということは、これは私は憲法論から言えば、持ち込んでかりにきたとしても、これは憲法になじめない、砂川判決等のいっていることから見ても、私は、常識論的にいえばなじめない問題じゃないかと思うのですけれども、それはそうとして、持ち込まさせないということは従来からの政治の基本方針であり、そのように安保条約体制というものができておりますことはもうよくよく御承知のことだと思うのでございます。しかし、さらに正確に言えば、それは沖縄の返還以前の本土について申しておりますことでございまして、そこで、先ほど正確に申しましたように、沖縄に非核三原則を適用するかどうかの問題については、従来もあらゆる角度から議論がございましたが、しかしこの問題は返還交渉の最大のポイントである基地の態様と関連する問題であります。と申しますのは、現在沖縄基地に核兵器が配備されておるということは、国際的にも常識だといえることだろうと思います。したがって、これを今後どのように取り扱うかということについては、さらに検討を加えなければならない問題であると考えておるわけでございます。
  420. 森中守義

    ○森中守義君 いま一つお尋ねしておきたいのは、この三原則には前提がついてるんですね。つまり、沖縄を含むアメリカの抑止力がアジアの平和に有効に働くという保証、これですよ。だから有効に働いているかどうか、むろんこれは具体的な事実を中心にした認定の問題でもありましょうがね。もし有効に働いていないという、こういう見地に立った場合には、いまの持ち込まずということが政策判断として生きてくるんじゃないですか。それをむしろ非常に警戒をするわけなんです。どうなんです。
  421. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 非核三原則につきましては、昨年も国会におきまして大きな問題として取り上げられました。で、それを裸の、ということばが悪うございますが、非核三原則というものをたとえば国会の決議にしたらどうだろうかという御議論もございましたが、そのときに、私ども考え方と申しますものは、安保体制の抑止力というものがもう一つ考え方であると、それから原子力の平和利用ということが確保されなければならないということ、そして非核三原則、それから核によるところの軍備に対しては、核軍縮を世界的にやってもらわなければならないと、こういうふうな四つの組み合わせの中の一つが非核三原則であると、われわれの考え方はそうなんですということから、まあほかのことはともかくといたしまして、安保体制ということについて御反対の方々も相当ございましたので、そういう意味の大きな四原則の中の非核三原則ということではわれわれは賛成できないという方々が相当いらしたので、これはまとまらなかったわけであります。まとまらなかったのはおまえらの考え方が悪いとおっしゃられれば、その御批判は御批判として受けなければならないと思いますが、私たちの基本的考え方はまさにそのとおりでございます。しかし、これも念を入れて申し上げますれば、これができましたのは、いよいよ沖縄の返還問題というものをなまの政治日程にのせて現内閣が主力を尽くしてやろうとしておるよりは前の時代だったということも、あわせて御記憶願いたいと思います。
  422. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。どうも気にかかる問題でありますので、ちょっとここで確認しておきたいのですが、非核三原則で、つくらない、持たないは、憲法上これは許せない。持ち込ませないということは、日本が必要を感じないのに、他国が、アメリカならアメリカが、他国が持ち込んでくることは拒否する。しかし日本が防衛上必要であるということを認めた場合には、いわゆる核の持ち込みと申しますか、その場合はあり得る、この一点だけはやはり残されておるのかどうか、これを明確にしていただきたい。
  423. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは私の御説明がまだ足りなかったようにも思いますが、先ほど来私も区別して申し上げているつもりですが、御質問なさる方の御立場からいえば、これは沖縄と一体としての御意見をもとにしてお尋ねになる、それから政府の立場は、沖縄の基地の態様は白紙であるということを、これは幾らおしかりをいただいても、これだけの大事な問題でございますから、現在のところは白紙であると申し上げざるを得ない。その理由、背景等については、まだまだ御理解をしていただけないようですけれども、われわれとしては、今日の段階はそういう立場に立っておるわけでございますから、観念的には、沖縄の問題は一応横へおいて、そうして先ほど申しましたように、本土ということで申しますれば、持ち込まさせない、これがもう明らかなる政策であって、現内閣においてはこれを厳守していかなければならない基本的な政策であると考えております。したがいまして、そういう点については、これもまた御不満の方が相当いらっしゃることも私認めますけれども、私は安保条約第六条、交換公文、それに基づくところの了解、それにさらに支柱になっておる共同声明というようなことで、核についてはもう特に事前協議の対象になる。そうして日本の欲せざるようなことについては、事前協議があったって断りますよということを米側も理解をしておる、こういう体制になっておる。しかしこれは沖縄問題と別にしてというと、またそこへすぐ御議論がくることは私も承知の上で申しておるのですけれども、問題は正確にしなければなりませんから、よし悪しとか、今後どうするかということは一応観念的に別に、こうやっておいて、従来からの本土についての御議論という御質疑でありますならば、まさにそれは幾ら御確認いただきましても、非核三原則というのは、二つは憲法にかかわる問題であるかもしれない、あるいは一つはかかわらない問題であるかもしれない。しかし政策としては三位一体で、これが政府の基本方針である、こういうふうに御理解いただいて私はけっこうだと思います。
  424. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は沖縄の問題を言っておるのではない。外務大臣なりあるいは、法制局長官があれだけここで言われましたが、いまちょっと外務大臣のことばが濁ってきたわけですが、つくらない、持たないは憲法上許せない、許せないかもわからないという、かもを取ってもらわぬと、許せない、つくることと持つことは許せない、これは日本自身ですね。次の政策論になってくると、これは他国、具体的にいうとアメリカが持ち込もうとしても、日本政府は必要でないということを考えれば持ち込ませない、いわゆる事前協議においてこれは拒否、ノーと言う、しかし日本が防衛上必要であるという場合、この場合は、事前協議でイエスということもあり得るという道が残っているかどうか、それもないのだ、この点を私は明らかにしていただきたい。そこが一点だけ、核が日本に現存する、沖縄じゃありませんよ、日本に持ち込むかどうかは別として、あるということの残された一つの道がそこにあるのじゃないかという、ことばを裏返せばそうなるのじゃないかと思いますので、その点を明らかにしていただきたい。
  425. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 仰せのように沖縄を別にしてお答えをいたしますれば、まずその憲法論議もこの間からお聞き及びのとおりですね。まあ法制局長官の御説明をここで私流にまた申し上げますと、さらに御質疑が出てくるかと思いますけれども、法制局長官の答弁は、憲法にかかわる問題でありましょうと言っているのですね、二つは。そうして、観念的な、純粋な憲法論からいいますならば、核兵器の中に純粋に防御的なものというものがもしありとするならば、それは憲法でも認められるものでございましょう。通常兵器でございましても、もっぱら攻撃的で侵略的なものであるならば、これは憲法で許されません、こういうふうな解釈を申し上げております。ですから、私は二つのものは、持たず、つくらずというのが憲法にかかわる問題であるというふうに政府は言っておりますと、申し上げたとおりでございます。憲法に違反すると言うと、法制局長官をもって代表している政府の答弁と、私食い違いますから、この点また論議を起こすかもしれませんが、正確に申し上げておきます。そうして、今度は事前協議の問題です。これも正確に事理を明らかにしておきたいと思いますが、法体系とでも申しましょうか、この安保条約、交換公文、そして了解事項、そして共同声明という、この一連のこの体系、法体系からいえば、事前協議というのは早晩かかってくるのですから、イエスと言うこともあり、ノーと言うこともあるのですね、この法理解釈からいけば。また、そう解するのが私当然だと思うのですが、ただ、そこで、核の問題。核の問題は、いま沖縄別という話でございましたから、そういう点で申し上げますならば、これは政策の問題でございますけれども、核を、私のことばで言えば、持ち込まさせないというのが基本方針でございますと、これは明らかにいたしたいと思います。現内閣といたしましては。それでよろしゅうございますか。そこで……。
  426. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 必要がある場合。
  427. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) そういうことは、必要がある場合というようなことは考えたくないと、こう申し上げたらよろしいんじゃないんでしょうか。
  428. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そりゃ考えたくない。
  429. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 持ち込まさせないというのが政府の見解でございます。こう申し上げておきます。
  430. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、持ち込ませないということは、いま言われたように、防衛上日本が必要と認めた場合でも、それはそういうことはあり得ないということですか。そういう防衛上必要であると認めたときでも、それは拒否するということなんですか、その点がちょっとわからないのですがね。だから、私の言うのは、政策上の問題にしろ、あるいは憲法にかかわる問題にせよ、核はいまのところ日本としては防衛上も、いわゆる攻撃用ではなしに、防衛上もそういうものは必要でない、本土の場合ですね。沖縄は一応のけておきましょう、沖縄だって返って本土並みになれば同じことなんですから。その点だけ明らかにしてもらえれば安心ができると思うのですがね。
  431. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは何べんでも申し上げますが、何べんでも申し上げますと、うんと時間がかかると思うのです。私は先ほどから申し上げておりますように、安保条約の体系、でき方、一連のこれから言えば、事前協議というものはイエスと言うこともあります、ということは、これはもうできたときから、三十五年以来の政府の解釈であり、そうして、これは何も、私が初めて言っているわけでは全然ございませんことは、私は速記録も十二分に調べましての私の見解でございますし、政府の見解なんです。よろしゅうございますか。それはそれでおわかりいただけますね。それから今度は、核についての、本土についての、現内閣といたしましては持ち込まさせないというのが政府の政策でございます。
  432. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 事前協議があってもノーと。
  433. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ですから、そういうときには事前協議の一連の体系の中には、核弾頭とか中・長距離ミサイルにつきましては事前協議であります。必ずかけなければなりません。それからもう一つ、この体系の中には、まあ正確な条文はいまここに持っていませんからなにですが、日本の欲せざるところは事前協議にかけてノーと言われてもしかたがございませんという趣旨が共同声明で明らかになっておりますね。だから、一連のあれはそういうことでございますと申し上げれば、これでもう必要にして十分なお答えである、私はかように思います。それ以上にはお答えできません。
  434. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 たとえばあなたは持ち込まさせないということはわかるのです。そのときには日本の意思であるからそれはだめだと、こう思うのですが、もし防衛上必要だという場合がかりにあったとすれば、事前協議のときに、その場合でもノーと言うのかどうか。核の場合には一切持ち込ませないとか、事前協議にかかったときには、これは防御用であろうが――攻撃用の場合はもうはっきりわかりました。その場合でもノーと言うのかどうかと、こういうことを言っているのです、核の場合について。
  435. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは私がいま申しましたことで必要にして十分なお答えだと思います。その点については従来しばしば御答弁を明確にしていると思うのです。現内閣といたしましては、核を持ち込まさせないということが現内閣の方針でございます。
  436. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連。非常に一つ矛盾が出てきますね。本土には持ち込ませない。これは言い回しのいかんにかかわらず、本土には持ち込ませない、本土には。沖縄のことはまだ白紙であると言われる。沖縄に固定の、地上に固定の核を置くという場合は、これはまだ紙かもしれません。しかし、そうでなしに、持ち込むか持ち込ませないかということになれば、本土も沖縄も区別ないはずだ。よろしゅうございますか。地上の固定的な核装備を残すか残さぬかという問題になれば、これはまだ態様はきまらない、これは白紙ということはわかります。だが、そういうこととは別に、持ち込ませるか持ち込ませないかという議論になれば、本土と沖縄に区別はないはずです。これは私同じことだと思う。
  437. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほどから申し上げておりますように、一応沖縄ということを別にしていま御答弁を申し上げておるわけでございまして、沖縄につきましては、基地の態様、それに関連する問題でございますから、十七日の総理答弁によって御了承をいただきたい、かように存ずる次第でございます。
  438. 羽生三七

    ○羽生三七君 基地の態様じゃないのですよ。基地の態様のことは別なんです、私の言うのは。一般的な政策として持ち込むか持ち込ませないかということになれば、場所を選ぶはずはない、日本の中ではどこでも同じかっこうになる。本土は別だと言われましても、固定のものを地上に残すという場合は別ですよこれは。残すか残さぬか、これからの態様できまるわけですけれども、持ち込むか持ち込ませないかということになれば、これはどこだって、区別があるはずないんじゃないですか。
  439. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、先ほども申しましたとおりでございまして、現在沖縄の基地に核装備がされていると見るのが常識だと思いますですね。そういうところで一つ違った条件がございます。やはりこれに関連した問題として、いま羽生さんのお話しの点は、私どもとして十分検討していきたいと考えております。
  440. 森中守義

    ○森中守義君 これもせんだっての総理答弁の中で、要するに、むろん私本土並みとかそういうことを前提とした、肯定したあれはありませんけれども、要するに、本土並みで、核抜きで、しかも平和が保障されるという、両立するようなことはないかどうか。両立するようなことを探究したい。言いかえるならばですね、そういう趣旨のことをお答えになった。具体的に何を意味するのでしょう。むろん、これは総理お答えになったことですから、外務大臣お答えをもらうのは少々無理かわかりませんけれども、これも重要な問題だと思うのですよ。どうですか。
  441. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私から御答弁申し上げることは無理かもしれませんけれども、私の繰り返えしておりますことは、考えようによっては、ものごとは二律背反的に取り上げなければならない問題もございましょうが、そうじゃなくて、同じ方向に向かって二つを調整して、そしてできるだけ国民の御理解が強く繰り返えされ、御支持が与えられるようにするということで私どもはこれから大いに――これからというか、現に非常に頭を悩ましているわけですが、そういう気持ちをあるいは言われたのかなといまふっと思います。思いますけれども、正確な答弁はあるいは私から無理かと思いますから、この程度でごかんべん願いたい。
  442. 森中守義

    ○森中守義君 もう時間がありませんので、ある意味では意見あるいは要望ということになりましょうけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、核の抑止ないしは日米安保という、まあこれはどう考えてみても現在あるいは将来においてほんとうに安全と平和がそのことによって保障されるとは思われない。動かしがたい中国の核というのがアメリカにおいても脅威だといわれる。じゃその谷間にある日本が一体どうなるかということになれば、そういう緊張激化あるいは脅威を一そう増大するようなことはやはりとるべきではない。むしろやっぱりそれよりも、どうすればほんとうにアジア、日本に平和が訪れるかという別な角度から私はお考えになるほうが、国あるいは民族の将来のためにより有益だと思うのです。したがって、白紙だとこう言われますから、それ以上お尋ねすることももうこの時間ではできませんけれども、絶対にひとつ核などということは、いままでしばしばおっしゃったことを私は極力信頼したいと思うのですけれども、持ち込まないように、むしろアメリカに対して、そういう力の政策、こういうものはやめようじゃないかというように逆に説得をされるような、こういう交渉の態度というものを私は望ましいと思うのです。これは要望でもございまするけれども、ひとつその辺のことに対して御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  443. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 御高見をいろいろの角度から総合して承りまして、私としてもたいへん参考になる次第でございます。とにかく私どもとしては、まず第一が安保体制の堅持、そうしてその中で沖縄の早期返還、そうして国民の願望あるいは国民世論の動向というものを十二分に理解して事に当たる、こういう決心でおるわけであります。いろいろと御意見ありがとうございました。
  444. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして森中君の質疑は終了いたしました。  次回は明後二十二日午前十時開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後七時三十一分散会