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国務大臣(
菅野和太郎君) 物価の問題につきましていかなる政策をとってきたかということについては、抽象的にいままでたびたびお答えしたのでありますが、具体的にという御質問がありましたから、少し長くなりますが、具体的にお答えしたいと思います。
なお、この物価という問題は、
政府の
経済政策のみならず、国民の
経済活動の総結果として物価というものがあらわれてくるのでありますから、
政府の政策ばかりで物価がきまるようにお
考えになると間違いが生じやすいと思いますから、念のためにその点だけつけ加えておきたいと思います。
そこで、要するに、物価がずっと上がってきたということは、一口に言えば、
日本の
経済成長が急激であったということが原因だと思いますが、しかし、それをもう少し詳細に申し上げますと、問題は、
科学技術発展の結果として新しい商品が出てきておる、したがって、われわれの需要が非常に多様化してきております。その需要の多様化してきておることに対して供給をいかにして合わすかというところに、やはり
政府はいろいろ苦心をいたしておるのでありまして、たとえば、農業については総合農政政策をとりまして、食べるものが違ってきておる。そういうものに対して、新しい需要が起こってきたから、それに対して、そういうものをより多くつくるというような政策をとるとか、あるいは都市集中化にしたがいまして、いろいろとわれわれの
生活が変わってまいります。したがって、そういう都市集中化によって生ずるところのわれわれの
生活の必需品に対して、その供給を十分にするというようなこと、あるいはその流通
関係を簡素化するというようなことも、その間に含まれておると思います。それから第三番目には、労働力の不足という問題、これは、
経済が急激に発展したために、労力の不足というふうな問題が起こっておりますから、この労働体制の改善ということをやはりやらなければならない、この点をいろいろと
政府は苦心をいたしておるのであります。それからなお、需要品が国内において生産ができない、足らないという場合には、海外から輸入してその価格を下げるということは、たとえば豚肉が不足したときに海外から豚肉を輸入するという
方法をとっておりまして、これはいままでずっと
政府がとっておる方策でありますが、しかし、これらの方策は地道なものでありますから、
政府は何もしていないかのようにお
考えになるかもしれませんが、
政府はそれに対していろいろ苦心をいたしておるのであります。
それから第二番目には、生産性の低い生産部門の生産性を高めて、生産の格差をなくするということであります。その第一の問題は、農業構造の改善、これは、いままで、たとえば米の問題などでも、米が豊作になって、でき過ぎたということは、農業改善の
一つのあらわれかと
考えております。それからなお、中小企業の生産性が低いということで、中小企業についてはずいぶんたくさんの法律を出しております。中小企業を育成するために、ずいぶんたくさん、通産省のほう、あるいは農林省のほうから、いろいろ法律を出しております。それによって中小企業の振興をはかってきておるのであります。
第三番目には、競争条件を整備しまして、そうして営業価値を労使の間で分配せずして、これを価格の上に分配するということ、すなわち、売り値を安くするということでありまして、それについては独占禁止法を適用してやっていくとか、あるいはまた行政介入を再検討して行政指導をするというようなやり方を
考えておるのであります。その点は、いずれも今日までやってきておる問題であります。
それから第四番目には、需要供給の均衡をはかって適正な
経済の発展をはかるということが必要でありまして、それについては、財政金融上でいろいろ対策を講じております。たとえば、最近
政府がとりました公債政策な
どもその
一つのあらわれでありますし、あるいはまた、金利政策な
どもその
一つのあらわれであります。それからまた、
政府が長期的な観点から
経済社会の発展計画を立てて、それによって大体国民の
経済活動を指導して、
政府の政策もその計画に従ってやっていくということにすれば、需要供給の
関係が大体均衡を保つんじゃないかというようなことでやってきておるのであります。
そういうようなことをいろいろやってきておりますが、しかし、これらは地道なやり方でありますから、具体的にそれの効果というものは、そうにわかに出てこない。で、即効的に物価を下げようと思えば、デフレ政策をとればすぐ下がります。これは、ドイツが
昭和四十一年にやって失敗したのでありまして、デフレ政策をとれば物価は下がりますが、失業者は出る、産業は衰えるというのでありまして、
政府といたしましては、安定した
経済を成長持続せしめるという政策をとっておる。同時に、あわせて物価を安定せしめるという、この二つの方策をとっておりますので、そこに
政府としては非常な苦心をいたしておるのであります。
それから最近の問題といたしましては、物価は
政府が主導しておるんじゃないかという、公共料金をどんどん上げておるから、したがって物価が上がっておるんじゃないかというように世間の人も
考えておるのでありますからして、この際、物価というものは
政府が主導してないということを国民に示す必要がある。それは公共料金を押えるということである。御承知のとおり、鉄道料金以外の公共料金は極力押えるという方針をとっておりますし、ことに物価に影響を与えるのは米価でありますから、生産者米価あるいは消費者米価を抑制する、そのままでいく、ということで、
政府は方針をきめておるのであります。
以上が、
政府が今日までとってきた方策でありまして、この方策をもしとらなければ――四十三年の上半期の物価の指数は五・七%上がったのでありますが、おそらく、私は、
政府がこういう方策をとらなければ、あるいは物価指数というものが六%以上になっておるのではないかと、こう思うのであります。そこで、
政府はこういうような方策をとりまして、四十三年度において、一年間においては五・四%で押えようということでやったのでありますが、幸い、天候の
関係で農産物やくだものがたくさんできましたので、五・四%よりは下がるという見込みをしておりますが、まだ具体的には発表はできません。そういうようなことで、いろいろ
政府としては政策をとっておるので、物価がこのまま自然にほっとけば上がるべきものを、できるだけ上げないように苦心をしてやっておるという点を、ひとつ評価していただきたいと思う次第であります。