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国務大臣(
荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
学園騒動に象徴されます暴力学生対策というような
意味で、現行法令でやっているのじゃないかというような趣旨の
お尋ねであったかと思います。結論的には、治安当局として現行法令以外に立法論として何かを
考えねばならぬとただいま思っております。現在の過激派学生の動向等を見ますると、今後どういう事態が発生するかということにつきましては、むろん的確に見定めることは困難でございますけれ
ども、警察としましては、どんな事態が発生しましょうとも、
国民に対する責任を果たさねばならないという覚悟でおりますし、同時にまた関係機関あるいは
国民の皆さま方も暴力を許さないということが民主主義の基本である、言わずもがなのことでございますけれ
ども。冷静にそれを受けとめていただいた上での御協力をお願い申し上げまして、現行法令を的確に運用して厳正な取り締まりを実施してまいりたいと存じておるのであります。ただ、現状におきましては、警備体制の上からはいささか不十分とも存じまして、その強化をはかる
意味合いから、来年度におきまして、御審議願っております予算の中に、すでに御案内のとおり機動隊二千五百人、公安捜査要員一千人、合わせて三千五百人の要員の増員をお願い申し上げておるわけでありまして、これを含めまして、少なくとも来年度におきまする治安当局の
国民に対する責任は果たし得ようと思っておりまするし、全力を尽くしたいと存じます。先ほど申し上げましたように関係機関の御協力と申しますのは、なかんずく大学問題でありますれば、少なくとも大学内における不法行為事犯等につきましては、
理解ある協力をしていただきたいと希望する次第であります。申すまでもなく
憲法は刑事訴訟法を通じまして、暴力をはじめ不法行為排除のためには
国民ことごとくが主権者として現行犯逮捕権を与えておるぐらいである。いわんや国立大学を特に例にとりますれば、その中でも特に東大をとりますれば、毎度申し上げますように八千人に余る国家公務員、教職員がおります。個人として現行犯逮捕ができることはあえて要望しないまでも、公務員なるがゆえに、刑事訴訟法は公務員が職務に関して不法行為事案があると認めたときは、告発しなければならないという
国民に対する義務づけをいたしておるのであります。残念ながら昨年来の東大の様子を見ましても、今年に入りましてからは別ですが、だれ一人として、法律上に義務づけされておるにかかわらず、公務員が不法事案を告発したことがございませんことはまことに私は奇異に感じますと同時に、残念に思うものであります。ですから、今後大学制度その他教育的立場からの立法論も展開されましょうし、あるいは立法措置も講じられるとも思いますけれ
ども、それ以前の問題として、いやしくも国家公務員が
国民に対する責任、大学全体に対する責任、それはとりもなおさず議会制民主主義に対する責任を果たしてもらうということが定着しない限りは、いかなる立法が行なわれましょうとも、相変わらずの大学騒ぎは私は継続するんじゃないかとおそれる次第であります。令状を持って行きまするときには、公務所の責任者はみずからか、もしくは代理人を立ち会い人として出して、大学全体の管理責任上の立場から立ち会う権利を与えられておる。その権利あるいは責任を行使してもらうことによって治安当局との御協力が得られるにかかわらず、それを自主的判断で当否をきめる、あるいは協力しないというがごとき風潮があるやに思われますることは、教育プロパーの問題以前の課題としてまことに遺憾に思うところでございます。
憲法も現行犯逮捕の場合は令状は要らないという趣旨のことを明記いたしておりますが、大学内といえ
ども、いつも言われますように、治外法権の場でない限り、警察は請求を待つまでもなく現行犯逮捕をすべき責任を法律上
国民に負わされておるわけでございます。それにもかかわらず、そういう場合でも拒否する——とでも
考えられるような言動があるようでありこれには原則として協力しないという態度も、同じような趣旨において責任を果たします上に少なくともはなはだしく不便である。ことに、暴力学生が講堂その他を占拠しております状態は、これは不退去罪をもって律せられるべきことですけれ
ども、これは管理責任者が退去命令を正式に出してくれませんことには不退去罪は成立しない。器物毀棄罪は親告罪でございます。また建物を占拠しております状態、建造物損壊罪は親告罪じゃございませんけれ
ども、その不法事案を目の前にして、最もよく知り得ておる、
国民に対する責任を負っておるその大学なら大学の公務員が、これは不法占拠の状態で、大学の教育、
研究の場の機能を阻害しておるのだということで警告を発し、退去を命じても出ないならば、みずからの実力でどうするという職責権限はないわけですから、暴力に対して暴力をもって臨むことそれ自体が不法行為でございますから、そのために警察力を行使する、協力させる権限と職責を公務員は持っておる。そういうことで相呼応して不法事案を絶無にしてみせるという協力体制、心がまえこそが根本的に必要であろう。そういう御協力を得まするならば、私
どもは今度の増員をお認めいただくことによって、全力を尽くして御安心願う状態を確保したいという
考えでおります。