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1969-03-07 第61回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月七日(金曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  三月七日     辞任         補欠選任      大谷藤之助君     黒木 利克君      市川 房枝君     山田  勇君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塩見 俊二君     理 事                 内田 芳郎君                 江藤  智君                 栗原 祐幸君                 小林  章君                 米田 正文君                 秋山 長造君                 山本伊三郎君                 二宮 文造君                 片山 武夫君     委 員                 大谷藤之助君                 鬼丸 勝之君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 黒木 利克君                 小枝 一雄君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 佐藤 一郎君                 柴田  栄君                 白井  勇君                 新谷寅三郎君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 高橋  衛君                 中村喜四郎君                 西田 信一君                 西村 尚治君                 増原 恵吉君                 吉武 恵市君                 川村 清一君                 竹田 現照君                 中村 波男君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 松永 忠二君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 鈴木 一弘君                 矢追 秀彦君                 萩原幽香子君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  西郷吉之助君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  長谷川四郎君        通商産業大臣   大平 正芳君        運 輸 大 臣  原田  憲君        郵 政 大 臣  河本 敏夫君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  坪川 信三君        自 治 大 臣  野田 武夫君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  菅野和太郎君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  床次 徳二君        国 務 大 臣  保利  茂君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        法務省刑事局長  川井 英良君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省国際金融        局長       村井 七郎君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省保険局長  梅本 純正君        厚生省年金局長  伊部 英男君        農林大臣官房長  大和田啓気君        農林省農政局長  池田 俊也君        農林省畜産局長  太田 康二君        食糧庁長官    檜垣徳太郎君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省自動車局        長        黒住 忠行君        労働省職業安定        局長       村上 茂利君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君    事務局側        常任委員会        専 門 員    首藤 俊彦君    説明員        外務省大臣官房        外務参事官    内田  宏君        国税庁直税部長  川村博太郎君        日本国有鉄道総        裁        石田 禮助君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十四年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会開会いたします。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続きまして総括質疑を行ないます。高橋衛君。
  3. 高橋衛

    高橋衛君 昨日この委員会で、総理は、最近いたずらに権利のみを主張してその反面義務を軽んずると申しますか、考えないという風潮一般的になってきているということに論及されました。それで、その風潮一つ責任と申しますか、なぜそういうふうな風潮が出てきたかという一半の責任は、やはり政治にあるんじゃなかろうかということを私は感ずるのであります。それは民主政治においておちいりやすいところの一つの欠陥であろうかと思いますが、選挙ともなれば政治家はうまいことずくめの話をしがちでございます。多少はったりがなければというのが一般の常識のようにすらなっておるように思われるのであります。そのことがいわば国民にとっては、何でも、われわれは義務を果たさなくても、反面義務を果たさなくても、こういうことをやってもらえるんだという感じを受け取りがちでございます。そういうことが国民に、何でもやってもらえるんだ、できなかったことはすべて政府責任だ、政治責任だというふうになるところの一つの結果ではなかろうかというふうに感じられるのでございます。  そこで、実は先般の総理はじめ各大臣施政方針演説物価に関連してしさいに実は読み返してみたのであります。その中で、いずれも物価の問題を非常に重要に取り上げられまして、そしてこれに対して政府があらゆる施策をするというふうに言っておられますが、その間にこれは自由主義経済のもとにおきましては、私は政府のみで物価の安定ができることではないと思います。政府のなし得ることというものは、これは限界がある。にもかかわらず、この演説におきましては国民協力を求める、政府はこれだけのことをやるから、国民においてもその点についての協力をしてもらいたい、理解協力を求めるということばが見当たらない。この点を私は非常に残念に思います。大蔵大臣経済の高度の成長物価の安定という、この二つのことを実現するために最大努力をするというふうに言っておられます。これは実は日本のように、いままでのような高度の成長、そういうふうなことをしておきながら物価を安定させるということは私は至難のわざであると思います。しかし、最大努力をいたしますというふうに言われますと、国民に、それができるのだ、それほど困難じゃなしにできるのだというふうな感じを抱かせることになろうかと思います。その点についても政府努力をすると言われるだけでなしに、それについては国民に対しても、たとえば消費の面においても、また貯蓄の面においても協力を求めるという姿勢がなければならぬと思うのであります。そういう点について私自身非常にもの足りなさを感じたわけでございます。そういう意味におきまして、私は政治は、もっと政府はどこまでができるんだと、国民にこういうことを要請するんだという、その限界を明確にして、国民理解協力を求める。いわば真実を国民に訴えて、国民協力を求めるという姿勢が私はあるべき姿であると、かように存じます。そういう点について、総理のひとつ御見解をお伺いいたしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの高橋君のお話、御意見、私はしごくごもっともだと思います。いま私が申し上げるまでもなく、民主政治のもと、主権在民、この形において政治を行なっておるわれわれは、その主権者の命ずるところによって仕事をするというのが本来の基本的態度でなきゃならないと思います。選挙で約束したこと、公約事項、これは国民の支持を得て初めて行なわれるのであります。だから、さように考えて、本末を転倒しないで政治が行なわれると、ただいまのような疑問がなくなるのではないだろうかと思います。物価の問題、あるいは大学自治の問題等々にしても同じような形で行なわれるのであります。  物価の問題は、御指摘のように、幾ら政府がいろいろのことを指示いたしましても、国民理解協力なくしては、これが行なわれないことであります。このくらいはっきりした問題はない。政府が五%以内にとどめるとすれば、国民も十分理解されて、そうしてその消費者立場において政府にも協力しようじゃないかという問題にもなるだろうし、あるいは賃上げの問題にしても物価に多大の影響がある。そういうことを十分理解して、みずからがみずからの墓穴を掘るようなことは避ける。その意味においての理解協力はどうしても必要であります。  いま問題になっておる大学自治、これこそ自治権者のやるべきことだ。しかしながら、大学自治はこの国家の中において、国法のもとにおいて、初めて許される範囲があるのでありまして、いわゆる自治だといって、何事でもできる、わがままができるという、いわゆる治外法権的なものでは絶対ない。この点も十分国民理解をいただければ、国民自身からもまたその範囲を明確にされるだろうと思います。自治と言いながら学生が、あるいは教官がみずからの責任も果たさずしてその自治はあり得ない。政府が何か話しすれば直ちに干渉だ、こういうことにもなろうかと思います。そのための前提としては、実情国民によく知らすことなんであります。国民に知ってもらわなければ、われわれはその問題を曲げて国民に訴えられても批判することができない場合があると思います。今回の大学の騒ぎはまことに不幸なことではありましたが、こう長きにわたっての騒動でありますだけに、国民関心も高まり、国民理解も深まってきたと思います。私どもは、ただいま政府は何にもしないじゃないか、なぜかような重大問題が起きておるのに何にもしないのか、政府としてのやることはうんとあるのじゃないか、どうしてそれをやらないのか、こういうような国民のいま怒りを込めての批判すら、実は私どもの耳に入っております。私は、しかし、いま政府がやるべきことは指導と助言の関係に立って、最善を尽くすというたてまえでございますし、同時にまた、いわゆる治外法権的な学生自治、学園の自治、これはあり得ないという国民からの強い御意見も出ております。したがいまして、これらの点については、管理者もまた国民も十分に自治の許される範囲、これは認識されるだろうと思います。また、いずれにいたしましても、どんなことがあろうとも暴力は排除しなければならない、暴力を認めるわけにはいかない。一部学生の行動について理解を示される方にいたしましても、理解は示すと言いながらも、暴力は否定する、暴力があってはならない、必ずそのことばは出てくるのであります。私はこれらの点を考えますと、まず、政府のなすべき事柄、これはございますが、そのためにも十分に事態を主権者である国民認識をしていただく。その認識の上に立ってはじめて政府責任のある処置をとる。その責任のある処置をとった場合に、あとでいいか悪いか、これこそが選挙を通じて国民批判、それに出てくるのだ、これが民主主義民主政治だ、かように実は考えておる次第であります。ただいまむずかしい問題に当面をすればするほど、こういう点を明確にしたいと思います。しかも、ただいま国会開会中でございますから、民主政治のもとにおきましては、国会こそ、この場所こそ、この場こそ国民に訴える最適の場所であります。またこの機会を通じて、真に信ずるところを国民に訴える、こういう気持ちでこの問題を究明していこう、これが望ましい形じゃないだろうか、私はかように考える次第であります。
  5. 高橋衛

    高橋衛君 私はただいま総理に御所見をお聞きしましたもう一つ反面は、最近の風潮が、他を責めるに急であって、みずから省みるということが少ないという点であるわけでございます。孔子さまは、君子はこれをおのれに求めるということを言っておられますが、やはりそういうふうな気持ち政治家の言動の中になければ国民を指導することもできない、全般的にそれが悪い風潮になるのじゃないかということを感じておるものでございます。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、先ほどの御意見にもございましたが、まず政治家のみずからが正すべきこと、これは大いにあるだろう、こういうことも言われました。また、私は、社会的責任についての言辞をただいま申したのであります。また最近の社会的風潮としては、ただいま御指摘になりましたように、権利を主張することに非常に強く、みずからがその義務を果たすこと、これを忘れておるのではないか。ことにそれが個人的の関係においてのみその権利が主張され、社会的連帯感、そういう立場に立っての権利あるいは義務、こういうものを主張することに非常に欠けておる、こういうことを感ぜざるを得ないのであります。こういう点について、今後、国民理解協力を得る点があると、私もかように思う次第でございます。
  7. 高橋衛

    高橋衛君 私はきょうは物価の問題にのみ限定して、以上のような考え方のもとにお伺いをしたいと思います。  まず最初に、物価と申しましても、卸売り物価消費者物価とあるわけでございますが、日本の場合におきましては外国と比較いたしまして、たとえば三十年代、また四十年代に入りましても、わりあいに卸売り物価は安定いたしております。ことに昨年一年間の外国との比較におきましても、日本卸売り物価はむしろ非常に安定しておるほうで、その結果が国際競争力を増して、日本の力強い輸出増進につながってきている、かように存じます。しかしながら、一方、消費者物価においては逆の現象を示しておる。これは他の外国に見られないところの、日本経済の持つところの特異な体質に基づくものであろうかと思いますが、そういう点について、総理は、大体この日本経済の持つ特異体質をどう評価しておられるか、この点についての総理の御所見を伺いたいと思います。
  8. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 物価の問題でありますから、私からお答えいたしたいと思います。  日本卸売り物価があまり動揺しなくて消費者物価が上がっておるということは、これはやはり私は日本の特異な現象だと思います。そこで、なぜ卸売り物価が安定しておるかということは、大体卸売り物価においては生産性の高い生産が多い、したがって、それほど価格影響を及ぼさないということ、消費者物価において重要な要素を占めるものはやはり生産性の低い食料品とかいうようなものが多い、したがって、生産性が低いがために、その価格が上がらざるを得ないというような関係、そういう関係にあると思います。それ以外に配給機構の問題も私は含まれておると思うのでありまして、しかしながら、卸売り物価消費者物価がこれほど違うこと自体は決していいことではないと思っておるのでありまして、これを何とかしてもう少し接近するように政府としても努力したいと、こう考えておる次第であります。
  9. 高橋衛

    高橋衛君 卸売り物価については問題はないと申すわけではございません。長期的に見て、やはり卸売り物価も今後どうなるかということについて重大な関心を払わざるを得ないと思うのでありますが、さしあたり、当面の問題としては私は消費者物価の問題に限定してものを考えていいのではなかろうかと、かように考えておるわけであります。ところで、物価全般の問題として物価問題を考える場合においては、なぜ一体物価が上がるかという原因について的確な判断がなければ対策の向上がないはずでございます。その面についてちょうど昭和三十七、八年ごろでございますか、一体物価上昇原因コストプッシュなのか、ディマンド・プルなのか、いわば生産費であるか、それとも需給関係であるかということが論じられたわけでありますが、これは経済企画庁長官にお聞きしたいと思いますが、大体どういうふうにいまそれを受けとめておられますか。
  10. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) その原因が一方——どちらか一つというわけでは私はないと思います。両方に原因はあると、こう考えておるのであって、コスト関係でも物価は上がり、また需要関係、総需要関係においても物価は上がっておると、こう考えておる次第であります。
  11. 高橋衛

    高橋衛君 まことに……。私の所見をまず申し上げますならば、大体、生産費が基礎になって、生産費物価を大勢として動かすが、その生産費がたとえば高くなった場合において、それを実現するところの条件を与えるのは需要供給関係であると、かように私は受けとめておるわけであります。そういう面において生産費がどうなるかということが非常に大きな問題になると思うのであります。そこで、まずコストの面から私は問題を進めたいと思いますが、私が総理並びに各大臣演説を読んでみて、これまた非常に奇異に感ずる点は、たとえばアメリカの大統領の年次教書を読んでみますると、ずっと毎年、物価の問題にやはり言及しておる。その場合にどういうことを書いてあるか。必ず賃金物価との悪循環という形で問題をとらえておる。日本の場合においてはいつでも物価の問題だけ、賃金との関係なしに物価だけを問題として演説においてとらえておられる。けさもラジオのニュースを聞いておりますると、フランスにおいてさらにポンドフランの非常な動揺が起こってきておる。その場合において、なぜその動揺が起こったか、それはフランスにおけるところの労使の交渉、その結果として相当大幅な賃上げが行なわれるのじゃなかろうかという予想からポンドフラン動揺が激しくなってきておるということをけさのテレビも報じております。その点を私は非常にふしぎにむしろ感じておるのでありますが、たとえば、総理演説におきましても公共料金の問題をもっぱら取り上げて、これだけやればそれで問題は解決するかのような、感じを与えるかのような内容になっております。その点についてまず総理のひとつ御見解を伺っておきたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、物価賃金との関係は全然無視できない、これはもう承知しております。ただいま言われるコストを形成するもの、いわゆる賃金、そういう意味からもコストが高くなればやっぱり需要がどうなるか、そこに物価の問題があると思います。しかし同時に、賃金生活の問題である、生活水準の問題である。この生活水準の低い国と生活水準の非常に高いところ、所得の非常に高いところと非常に低いところ、そこの扱い方にもまた問題があろうと思います。たとえばアメリカにおいての賃金、これも世界一だ、同時に生活水準も非常に高い。われわれやっぱり経済活動をやる場合において、お互いの生活向上をはかる、こういう意味においての経済活動を計画していくわけですから、賃金そのものをいつも念頭に置いて押えていくだけでそれで事が足りると、こういうものでも実はないように思っています。ことに賃金平準化とでも申しますか、非常に能率のいいところの賃金能率の悪いところの賃金、これが能率のいいところの賃金平準化していく、そういう傾向もある賃金でございますから、いわゆる産業構造的の面からも生産性を上げることによってその平準化の悪弊を除くことができると、こうも考えるわけであります。だから賃金の問題について私は一つのある程度生活水準が保たれれば、ここでひとつしんぼうしてください、こういうことが言えるかと思います。そういう状態に早く持っていきたい。だから、いま日本のたとえば工業生産力が世界で第三位、自由陣営では第二位と言っております。しかしながら・個人所得の面からいくと、これは二十位前後だ、そういうことになりますと、これはいかにも生活程度は低いということにもなる。私どもはもっとそれらの点においては考えていかなければならない。しかし、物価自身がうんと引き上がるようなことでは、幾ら賃金を上げましても、賃金はいわゆる実質賃金の高騰ということにはならない。それではだめですから、そこらにひとつしんぼうしていただかなければならないものがある。でありますから、私は高橋君の言われようとするところのものと、政府のいまねらっておるものと必ずしも矛盾するとは思いません。思いませんが、何もかも賃金を押えればそれで事が足りるんだと、こういうことは言えない。ことに賃金平準化の方向を見れば、もっと生産性の低いものを生産性を高くしてそして高い生産性のものと賃金が一緒になる。そうでないと労働力の不足、偏在を来たす、こういうことで経済上のたいへんな問題だと、かように思いますので、この問題は簡単にとにかくいかないんだ、非常に複雑な問題だ、よくさような点を実情について考えていかないと間違ってくるんではないかと、かように私は思います。
  13. 高橋衛

    高橋衛君 私は賃金を押えろと言っているのではないのでございます。生活水準をだんだん上げていくということが政治の目的である、したがって、賃金を押えろと言っているのではございません。しかしながら、賃金がモデレートな程度において実質上の賃金上昇になるようなやり方でいくことが妥当なんだと、そういう意味において私の申しましたことは、たとえばアメリカにおいては賃金物価との悪循環という姿においてとらえておる。したがって、双方ともモデレートしていく、安定させていくということがあるべき姿だ、そういう意味において、なぜそういうふうな問題のとらえ方をされていないかということを申し上げたわけでございます。その点は総理がいまちょっと私の質問を取り違えておられるようでありますから、なおひとつ正確に御答弁願います。(「総理、全くいいことを言う」と呼ぶ者あり)
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) めずらしく社会党から声援を受けております。私はいまアメリカ賃金物価との関係、この例を日本に直ちに持ってくることはできないだろうということをちょっと触れたつもりでございます。アメリカ賃金水準、また生活水準、これは最高をいくものなんで、日本の場合はそうじゃないんだ、したがって、そう簡単にはアメリカの考えどおりにはいかぬ、こういうことを簡単に触れたつもりでございます。社会党から支援を受けておりますが、わが党も高橋君もその点では御理解いただけるだろうと思います。
  15. 高橋衛

    高橋衛君 さらに個々の具体的な問題に入って、この点について総理並びに関係大臣の御所見を伺いたいと思いますが、施政方針演説においても、国鉄運賃を除きという表現をしておられる。国鉄運賃については今回運賃の値上げについての提案をしておられる。ところで、国鉄運賃の値上げは昭和三十二年、三十六年、四十一年、四十三年、本年と、ずっと引き続き運賃の引き上げをやってまいっておるわけでございますが、私はこの提案理由の説明を各回ごとについて実は読んでみたのでございます。たとえば三十二年度におきましてはどういうふうな理由になっているかと申しますと、老朽資産の取りかえを可能ならしめる減価償却費の計上、採算のとれない輸送力の増強施設のための経費に充当すべき自己資本の捻出のためというふうに言っておられます。ところが、現実に結果はどうなっているかということを見てみますると、昭和三十二年度におきましては一三%の引き上げ、三百六十五億円の増収を予定しておられる。三十六年度には一二%、四百八十六億円の増収を予定しておられる。四十一年度には二五%、千六百三十億円という増収を予定しておられる。四十三年は三百億円。ところが、その増収分がはたして説明されたとおり老朽資産の取りかえの経費とか、または採算の合わぬ経費に充てられたかどうかという実情を調べてみますると、それらの必要な資金はほとんど借り入れ金に結果としては依存しておる。そうしてその増収分はほとんど国鉄のベースアップの資金に充てられてしまっているというのが実績でございます。これは詳しくは政府のほうでよりよく御承知でありますから、あえて数字を申し上げません。そうしてその結果として、三十二年ごろにはあまり借金がなかった、今日、累積債務は二兆円になっておる。それでなおかつ今回の提案の理由におきましては、国鉄財政再建のためという、はなはだ不明確な表現によって説明をされておるのでございますが、この点、私は非常に奇異な感じを受ける。むしろ率直に、国鉄としてはコストとして国鉄の職員の待遇を改善することはこれは当然でございます。他の一般国民所得に権衡のとれた生活を保障して差し上げる、これはもう当然のことでございます。そのために運賃の引き上げは当然必要なんだと、結果としてははっきりそうなっておるにかかわらず、政府の説明は一貫してそのことに言及しておられない。これまた私は非常にふしぎな、奇異な感じを持つのでございますが、その点について、これは具体的な問題でございますから、運輸大臣並びに国鉄総裁から率直な御意見を伺いたいと存じます。
  16. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) お答えを申し上げます。  高橋さんは、三十年度来からの国鉄の運賃改定による収入が、具体的には人件費に食われてしまっておるんじゃないか、だから、これを率直に言ったほうがいいんじゃないか、今度の国鉄財政再建のための運賃改定の理由にも、財政をよくするためだといっておるのを奇異に感ずると、こういうことでございますが、具体的な数字を示されると、人件費だけを取り上げると、私は決してそれを否定いたしません。国鉄財政再建推進会議の意見書の中にも、「国鉄財政悪化の他の大きな原因は、人件費の増嵩と資本経費の増加である。国鉄の人件費は、その特異な年令構成、公共企業体等労働関係法による仲裁々定等により、昭和三十年度以降定期昇給を含めて年率九・五%上昇してきているが、その間の生産性向上が年率四・五%であり、また消費者物価上昇が年率四%であったことを考慮してもなお大幅であったといえる。このため、国鉄の運輸収入に対する人件費の比率は、四十二年度において五六%とかなり高いものとなっている。」と指摘いたしております。しかし、財政を再建するという中には、人件費の増高ということも含んで計画を立てておるのでありまして、これが全部食べてしまったということではないように思うのであります。コストの話が出ましたが、コストの中に含まれる人件費、利子、あるいは償却費、これらの部面でやはり財政というものは悪化した。その中に人件費があるということは、私は否定いたしませんが、それだけではない、すなわち、そのあとに、「資本経費は特に四十年度を初年度とする第三次長期計画の進行に伴い、年々その負担を増すに至っている。第三次長期計画は、大都市通勤輸送の増強、幹線輸送力の充実及び直接的保安対策を三つの柱として、四十年度以降四十六年度までの七年間に総額約三兆円の投資を行なうことを内容とするものである。四十三年度までの前期四年間におよそ一兆四千三百億円の投資が実施されてきているが、これによる投資規模の拡大及びその投資の殆んどを外部からの借入れに依存せざるをえなかったことによる利子負担の増加が、資本経費の大幅な増嵩をもたらして、国鉄財政を圧迫する大きな要因となっている。」と、このまあ二つを国鉄財政悪化の大きな原因指摘しておるのであります。したがって、私どもは、いま高橋さんが指摘されました人件費の増高というものに対して、国民の御理解を願い、また労組の諸君の理解を願って、いまここに指摘されておる生産性向上等を勘案して、また、消費者物価上昇等を勘案して必要最小限度にとどめるべきであると考えるものであります。この推進会議の意見書の中でも、「少くとも、財政再建期間中における給与単価の引上げは、原則として消費者物価上昇生産性向上等を勘案し必要最少限度にとどめるべきものと考える。」と指摘いたしておるのであります。私はやはり人件費というものは、ほかの産業が上がっておるのに国鉄だけが安い賃金で働けと言うことは、それは間違っておると思うのであります。国鉄の総裁が公企体の賃金問題のときに、こんなことを申したら何ですけれども、速記録に残っていると思いますが、たばこ巻きと同じような値段で働けるかというようなことをおっしゃっておることを、他の産業と比較して国鉄の働く人たちに対する給与というものを総裁として考えておられる。私はその意味で国鉄の労組、国鉄当局者が今度の再建策の根本で、あなたの議論からいうと、もう賃上げだけは運賃値上げで持ったらいい、そうしてあとは低利、長期の金を貸してやったら、それで再建できるんじゃないかという財政審議会の答申にやや近いようになってくると私は思うのであります。しかし、国鉄は公共負担というものを確かにいたしております。それから運賃の値上げというものだけにたよるならば、それはできないことはありませんが、それはやはり物価へも影響いたすと思いますので、この際そういうことを国鉄管理者並びに組合の方々がよく認識してやってもらいたいと、こう考えるのであります。  いま世間で不人気な中に、わがほうの荒木大臣ことばをかりますと、わが守備範囲の中で、タクシーの乗車拒否、それから国鉄のストライキ、これほど不人気なものはございません。賃金を上げろという主張はわかりますが、電車、汽車をとめて、そして迷惑をかけて、自分たちの目的を達成する、そういうことは天下が支持しておらない、こう考えますので、その点は十分国鉄関係者に協力を願うように、行政を進めていきたいと思います。
  17. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 高橋さんの御質問に対しましては、いま運輸大臣が申されたことで大体カバーされておると思いますが、ただ国鉄総裁として申し上げにゃならぬことは、国鉄のベースアップの問題というものは、これは普通の営利会社と同じようなさまで考えるわけにはいかない、仕事の性質上。赤字線の問題だとか、その他いろいろ公共負担の問題で、国鉄というものはうまくいったところでパー、あたりまえにいけばもうマイナスが出る、こういうふうなことなんで、これをベーシスにしてベースアップを進めるなんていうことはとうていできやせぬ。それで今度の運賃の値上げにいたしましても、その大部分はベースアップに食われるというのですが、これは運賃を上げなくたってやはりベースアップはやらにゃならぬのでありますからして、この点はひとつお考え願わにゃならぬということは、今度のつまり運賃値上げなんていうものは、御承知のとおり過去における国鉄の投資というものがいかに少なかったか、そのために国鉄というものは日本の輸送機関の根幹としての責務を尽くすことはできぬ、輸送力が不足で。それでひとつ思い切ってやらにゃならぬということで、四十年からやったのでありまするが、そのほかに特にひとつ御苦慮願わなければならぬのは、通勤輸送の問題です。とにかく過去における通勤輸送力の増強というものに対しては、国鉄は十分やっておらない、できなかった、ところが最近における通勤輸送は全く交通地獄だ、これは人道問題だということで、国鉄としてはこれは思い切ってやらにゃいかぬということで、あとに収支の問題について大きな問題が起こるということはわかっておりましたが、私としては国鉄総裁の責任として、四十年からまず五千五、六百億をかける。さらに今度の四十四年からのあれで三千億ばかりをかけまして、合計でもって八千億以上をかける。しかもこの通勤輸送なんていうのは、御承知のとおり工事費に非常に金がかかる。土地代だけで四割も五割も出さにゃならぬ。そこにもってきて収入というものは何かというと、まずもって五割の運賃割引をやる、そのほかにまたプラス・エックスということで、五割を入れるというと、国鉄の通勤輸送による収入というものは二千八百億も国鉄は犠牲になっておる。こういうようなことで、これは利息のつく金をもってしては絶対にこれは収支は償わぬ、これはやらにゃならぬというようなことで、今度のつまり四十四年度の予算におきましては、一方において最近における国鉄の収入というものは、トラックそのほかの競争によりまして、収入の増というものは一年にせいぜい七%ぐらいのもの、それに対しまして経費というものは一割二分もかかる。どうしてこれを独立採算のもとにおいてやるか、こういうことになるというと、やはりこれは利息のつかない収入を得にゃならぬ、ここにおいて運賃の増。しかも御承知のとおり日本の運賃というものは世界じゅうで一番安い。これに対しましては公共負担というものがありますが、これに対しましては大蔵省にお願いして、四十四年度の予算においてはずいぶん思い切った援助をしていただいた。あとは、社会党の皆さんは、政府からお金を出させたらいいじゃないか、こう言うが、政府の金だって天から降ってくるマナじゃない、これは納税によるものだ。一般の人のつまり犠牲においてやるか、あるいは利用者の負担においてやるかと、こういう問題で、私はこれは問題ない、ここにおいて運賃の値上げと、こういうことにいたした次第であります。
  18. 高橋衛

    高橋衛君 運輸大臣は、私があたかも財政審議会の意見を支持しておるかのような御返答をされましたが、私はそういうことを言っているのじゃございません。その点は誤解のないように……。  そこで私が聞いておることは、かつての実績がどうであったか、どういうふうに評価されるかということ、並びに今回の値上げの理由についていかにもあいまいじゃないか、その辺を明確にされたらどうかということが趣旨でございます。ただいまお読みになった中にも、人件費の値上がり、それから消費の増高、こういう二つの理由をあげておる。その消費の増高は一体何になって生じたか、昭和三十二年ごろのあの提案理由の説明のとおり行なわれておればその消費の増高はなかったはずです。それが結局人件費に食われて、そうしてそれらの本来老朽設備の改善、またはその他のことに使わなければならなかったところの増収分を、借り入れ金に依存せざるを得なかったという結果が今日の消費の増高になってきた。言ってみれば、それらもまた結局人件費の増高の結果として出てきたのである。そういうふうに事実は事実のままに認められることのほうが、国民に誤解を与えないで済むのじゃないか、その点を私は質問しておるわけでございます。私は何も賃上げをとめろと言うのじゃございません。私は国家公務員につきましても、公共企業体についても、十分な待遇をしてあげるということは、これはもう当然の話である、そういう前提のもとに立って、しかしながらなぜそうなるかということの説明に、いかにも何か逃げて回っておるという姿がおかしいのではなかろうかということを質問しておるわけでございます。いま一回御答弁を願います。
  19. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 提案の理由の中に財政の再建をするためにということだけを言っておるが、その実態は人件費の増高というものが一番大きな原因になっておるのじゃないか、そのことをもっと率直に言ったらどうだと、こういう御趣旨であろうと思います。私は、提案理由には、やはり国鉄財政というものを再建する中に、先ほども言いましたように、確かに人件費の増高というものがあることは趣旨説明で申し上げておるのであります。資本費の増高、人件費の増高、こういうものがある。高橋さんのお尋ねは、その人件費の増高というものがもっと強調をして明らかにしなければ、ほんとうの運賃値上げというものを、国鉄というものがなぜそうなっておるかということが、国民の中に理解が求められないじゃないかと、こういうことであろうと、私は、ことばが余ったのか足りなかったのか、高橋さんにかえって誤解を与えたようでございますが、私が財政再建推進会議の中で指摘されておる賃金に対する指摘というものは、今後国鉄の賃金というものに対してどうあるべきかということを言っておるということで、国民の皆さん方にここを通じて聞いていただいていると考えておるのであります。  もう一つは、国鉄の従業員の賃金だけというもので物価というものを論じられない。先ほどからおっしゃっているように、賃金というものが物価と非常に大きな関係がある。ゆえに賃金というものを、ほかの産業で働いておる人たちの賃金だけが上がって、国鉄で働いておる人たちが安い賃金で働けというわけにはいかないのでありますから、そこにバランスというものがとられなければならない。こういうことが、私は物価賃金との間の重要な問題であろうと考えるのでありまして、このことから、やはり国鉄の財政の中で従業員の賃金というものがどう影響されておるかということを考えてもらわなければならぬと思うのであります。たとえば私鉄におきましても国鉄におきましても、先ほど総裁が言われた、運賃というもの、これをもって収入のもととなっておる人が犠牲になって安い賃金で、ほかの産業の人だけが高い賃金をもらうということはあり得ないことであるし、またそういうことをしておったならば経済のバランスのとれた発展というものはない、物価賃金というものはそういうものであろうと私は考える次第でありまして、いま御指摘のように、賃金というものが国鉄財政の中で重要な問題であるということは私も重々承知して対処していきたいと存じます。
  20. 高橋衛

    高橋衛君 どうも必ずしも明確な御答弁じゃありませんが、次の問題に移りたいと思います。  政府は、かつて、昭和三十九年において、物価の問題を解消するために一年間公共料金のストップということをやったことがございます。私もその当時責任者だったわけでございますが、ただいま振り返ってそのことを反省してみますると、ああいうふうな強引なやり方というものはこれはやるべきじゃないというのが私のただいまの心境でございます。要するに、政府の事業でやる場合においては、それはいわゆるお役所仕事ということで能率が悪いという面があるということは、これはある程度認めざるを得ぬかと思います。そういう意味で、さらに努力を要することがあろうかと思いますが、民間の企業について、それを収益、採算を無視してただ押えるというあり方は、これは結局その後に無理がかかってくる。したがって、あの当時の実績を見てみましても、三十九年度においては四・五%の上昇にとどまりましたけれども、四十年度の非常な不況期においてなおかつ七・四%という逆に非常な悪い結果を来たしておる。ずっとならしてみれば、これはむしろそういうことはなすべきじゃない、やはり自由主義経済である以上、民間の採算ということは十分に考えながら物価対策を考えて処置しなければならぬというふうに私は今日考えておるわけでございますが、その点について総理の御見解を伺っておきたい。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もう結論はそのとおりだと私かようにおえ答をいたしますが、もう少しつけ加えて申せば、とにかく一応はできますが、その期間経過後に一体どういうことができるか、それを考えると混乱を増すだけのように思います。ことに私ども、本来の物価のあり方というところから見れば、これはやはり産業構造、その点と取り組んでいって、そうして生産性を上げていかないと、本来の姿ではないだろうと思います。まあそういう意味で、この生産性のうんと上がっておるところ、そこでひとつ賃金を上げるよりも、もっと生産性の上がった利益を消費者に還元すると、こういう政策をとっていただきたい、これが最も望ましい方向だと思います。その上がったところのものの利益を資本と労働にだけ分配して、消費者に分配しないところに、他の産業がついていけないという結果になる。ことに農業だとか、あるいは中小企業だとか、こういう生産性の上がらないもの、またあるいはサービス業などが迷惑をこうむるんだと。とにかく賃金平準化していかなきゃならない。そこを考えると、生産性の最も上がった成績のいいところの部類は、ただその利益を労働と資本にだけ分配するということをしないで、さらに消費者に分配する、そういう考え方で賃金を押えていく、そういう気持ちになってほしいと思いますし、また配当を押えていかなきゃならないと、かように思うのであります。これが先ほど来いろいろお尋ねになりました高橋君の言わんとするところではないだろうか。いわゆる賃金を、生活水準をもっと充実ささなければならないけれども、それにしても、そんなものを野方図にやらないで、順次そういうことができるように、そういう状態をつくれと、こういうのが本来の御趣旨だろうと思います。私もそれについては異論はございません。また、それで全体が初めて浮揚できるのだと、かように私は考える次第であります。
  22. 高橋衛

    高橋衛君 公共料金を採算を無視して無理に押えるべきじゃないという点については、総理も御同意のようでございますが、そういう前提のもとに立って、私鉄運賃の問題、これは申請があったと思いますが、それから通運料金、港湾運送料金、バス、ハイヤー、タクシー等についてもそういう問題が次々と出てくるわけでございますが、こういう問題について具体的な問題もあろうかと思いますが、一般的な考え方として運輸大臣一体どういうふうにそれを処置するつもりでございますか。
  23. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) お答えいたします。  先ほど高橋さんは、私の答弁でちょっとまだ不十分なようだというおことばがありました。結局私は、国鉄みずからが近代化、合理化につとめる、こういうことを言わなかったので、そこを言われたのであると思いますので、つけ足して、徹底的に近代化、合理化をみずからはかるということを申し上げておきたいと思います。  それから、いま公共料金の問題と比べて民間の私鉄運賃、あるいはそのほかバス、トラック通運、こういうものの運賃はどう考えるかというお尋ねでございます。私は、高橋さんのおっしゃることがたてまえであると思います。しかしながら、いま日本の国が一番、今年度の予算を見ても、一四・四%の経済成長率を見て、いわゆる警戒型というより、中立型といいますか、安定した経済の発展を願っていこうということを考えていくときに、一番大事なのはやはり物価の問題である。その物価の問題の中で占めておる私どもが担当いたしております運賃という問題につきましても、国鉄の場合は、これがひっくり返ってしまったならば逆に経済のバランスというものが失墜するようなことになるというので、特にこれだけは値上げを認めるというたてまえをとっておるわけであります。したがいまして、ほかの運賃につきましては、できるだけ、極力抑制につとめていきたい、こういうのが基本的な立場であります。しかしながら、これはもう高橋さんもよく御存じのとおり、日本全国的一律に考えるべきものと、またそうでないものとあるわけであります。たとえば、大都市におけるところのハイヤー、タクシーというものと地方におけるハイヤー、タクシー、あるいは通運業でも、大都市におけるところのものと地方におけるものとはおのずからやはり同じ業種であっても違った面がありますから、地方におけるようなものはケース・バイ・ケースで処理していくべきものであると思います。大都市におけるところの大きな私鉄の問題をとってみますと、やはり私鉄の持っておる各社の経営内容、それから輸送力増強計画、あるいは他の交通機関との関係、そして物価というような面から勘案して慎重に対処すべきものであると考える次第でございます。これが私どものいまの考え方でございます。
  24. 高橋衛

    高橋衛君 国鉄が赤字に悩んでおる、その一つ原因は貨物輸送にあるわけでございます。大体推算するところによりますると、貨物輸送でもって七百億以上の赤字になっておる、したがって運賃の引き上げをする場合においても貨物運賃の引き上げはとうていこれはできない、逆の結果を来たすということになっておるようでございます。それで、なぜそうなるか、これはもっぱらトラックに対するところの競争力が少ないという点にあるわけでございます。そこで、トラックはどうであるかと申しますると、トラックについては、これは国が全部施設をしたところの道路の上を走っておる。そこで、道路と鉄道と国民経済的に見てバランスをとってイコール・フッティングで待遇するのが私はあるべき姿じゃなかろうかと考える。アメリカでもってその道路に与えるところの損傷度についての道路試験が行なわれておる。その結果によりますると、乗用車に対する五トンのトラックを例にとってみますと、乗用車に対して五トンのトラックは一万倍のつまり損傷を道路に対して与える、そういうことに結果が出ているようでございます。一九六五年のジョンソンの年頭教書にはこのことを取り上げて、そしてその施策を訴えております。道路と鉄道の間に公平なつまり貨物の配分ができるような方向で政策を考えるべきじゃないかということが言われております。ヨーロッパにおいてもそういうことが言われておるわけでございますが、そういう点について、日本においてもやはり基本的にこの問題を取り上げて検討すべきじゃないかと思いますが、総理は鉄道についての専門家でもいらっしゃるわけでございますが、どういうふうに総理はこの点についてお考えでございましょうか。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 道路と鉄道との関係、その前に一つ物価の問題、自動車で輸送をする、これが物価を押えることに役立つ、あるいは安定さすことに役立つならば、何をか言わんや、かように思います。いま貨物運賃を上げることができないのも、これが自動車による、そのほうへ移るというわけじゃなくて、貨物運賃を上げればそれだけもうすぐ物価影響するんじゃないか、これは非常に自明の理であります。そういう意味でこの貨物運賃にはさわらなかった、これが鉄道運賃改正の場合の基礎でもあります。ところで、自動車のほうはなぜしからば同じ輸送費でも安いのか。それは、いま言われるように、道路について全部国が持っているじゃないか、ガソリン税は払っているけれども、あるいは自動車取得税は払っているけれども、その他はない。そういうので、これについてのある程度の制限をするものと、もう一つは、鉄道に対して特別な援助ができるかどうか、こういう問題と、二つあると思います。両方ともいま取りかかろうとして、あるいは自動車の走り方も、時間的に無制限にいま走っておりますけれども、こういうのもやはり時間帯を設けることが必要じゃないか。そうすると、労働の問題から見ましても、夜間にのみ走るということになれば、これは労働過重にもなりますから、必ずしも自動車輸送が楽だという、安く済むとばかりはいかなくなるだろう。また、いまのような自動車交通の事故等から見ましても、この自動車についての制限はある程度せざるを得ない、こういう形であります。また、鉄道自身に対しまして、非常な閑散地、いなかにおいては、これについてのある程度の援助をせざるを得ないんじゃないか。幾ら鉄道をやめて自動車輸送にかわりましても、その自動車は引き合わないというような路線がある。そういうようなところについては、国がある程度めんどうを見ていく、補償していく。自動車の取得について国が補助をするばかりではなくて、今度は日常の経営についても国がある程度めんどうを見ていく、こういうことをするとか、あるいはもう一つは、通勤輸送について特別な施設をする場合に、国もある程度負担してやるとか、こういうようなことが考えられているのであります。もちろん、ただいまのところいまの程度処置で、これで十分だと申すのではありません。政府が、支出の面から見まして、他の面の支出等と勘案しながら、自動車の費用、また鉄道の費用、建設費用等についてもできるだけの援助をしよう、こういうような考え方をとっておる。ここに経営上の一応の目安がつき、そうしてそれが今後物価の問題にどういうようにはね返っていくか、これを考えていく、こういうことだと思います。
  26. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 各種輸送手段間の競争条件を均衡化する、イコール・フッティングに立ってこれから考えなければならぬのじゃないかという御意見、お尋ねでございます。私は、そのとおりじゃないかと思うのであります。合理的な総合交通体系の形成をはかる必要が確かにあると私は考えます。その競争条件の不均衡を是正するためには、その実態というものを正確に判断をする必要がございます。そこで、その事業の実態、それからやはり国の財政状態というものも勘案しなければならぬと思います。この国の財政状態を勘案しつつ適切な施策を講じていく必要があると思います。かてて加えて、交通事故というもののこの大きな問題から考えてみましても、私は、このいま御指摘の各種輸送手段間の競争条件の均衡ということは、早急に慎重にはかってゆかなければならぬのではないかと思います。
  27. 高橋衛

    高橋衛君 四十四年度の予算を編成する前に、トラック税その他の構想が、これは道路整備の財源として言われておったわけでございます。もちろんこれは新しい税の創設ということは非常に重要な問題であります。したがって、どこまでも慎重でなければならぬというわれわれの考えでございますが、しかしながら、同時に、財源の問題のみならず、ただいま問題にしております各種交通機関間のイコール・フッティングの問題、そういう観点から、この問題を建設大臣一体どういうふうに考えておりますか。
  28. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) お答えいたします。  先ほど総理がお述べになりましたとおりでございますが、最近の道路を別用しましての輸送状況を見ますと、短距離の百キロ以内は貨物自動車でほとんど占めているというような状況——具体的に申し上げますならば、十キロ以内はもう大体、繊維品、あるいは日用品、あるいは食料品等は一〇〇%占めておる、またそれ以下でございますが、   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 五十キロ以内につきましてはやはり九五%を占めておる、百キロ以内で大体八一%が貨物自動車が占めておるというような現況を考えてみますと、私といたしましては、量的にも、また質的にも、あるいは路線の密度等も考えまして、そして輸送費用というものをやはり十分考えていかなければならぬ、こう考えますとともに、輸送の効率状況も見ますときに、やはり距離、あるいは時間、あるいは品目あるいは貯蔵の量等も考えてみると、これらの点を踏まえまして十分考えていかなければなりませんとともに、道路のほうにおきましては、御承知のとおりに、燃料税、あるいは取得税、あるいは有料道路の料金、かなり私は道路維持につきましてこれらのいわゆる貨物自動車が負担を多く持っておるというようなことを考えますと、先ほど原田大臣もおっしゃったごとく、これらの両面にわたって十分検討を加えながら推し進めてまいりたいと——財源の確保等を含めまして、こういうような考えであることを表明申し上げておきたいと思います。
  29. 高橋衛

    高橋衛君 米価の問題につきましては、総理は、生産者米価も消費者米価も据え置くと、こう言っておられます。この問題について総理からは答弁は求めません。  ところで、農林大臣にお伺いいたしますが、生産者米価については生産費及び所得補償方式というものがいままでとられておったわけでありますが、その算定の方式のもとになっておる基本的な考え方について、その考え方をこれからもお続けになるおつもりであるかどうか。
  30. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 従来とっておりました生産費所得補償方式、これはそのまま行なう考え方でございます。したがって、その中に入ります最高標準価格、標準価格、さらに限界反収、これらのとりかたによっても幾ぶんか是正しなければならない点があるだろう、こういうふうに考えます。しかしながら、生産費所得補償方式というものはそのまま行なっていく考え方であります。
  31. 高橋衛

    高橋衛君 まあ私は、総理が据え置くと言われたのは、何でもかんでも理屈に反してもそのままくぎづけにするんだという意味じゃなしに、大体そういう気持ちで米価に対処するんだと、こういう気持ちだと私は受け取っているわけでございますが。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 消費者米価は、これは政府でできることでございますから、このほうはもうはっきり方針は貫けると、私はかように確信しております。まあ、問題は生産者米価。生産者米価は、これは政府だけできめるものじゃございません。ちゃんと法律の命ずるところによって米価審議会の議を経てそれで政府がきめるわけであります。米価審議会の構成についてもまだきまらない際にこのことを言うのはどうか、かように考えますが、やはり、政府の方針は方針としてはっきり打ち出すことが望ましいことではないか。ことに物価に最も影響のある問題でございます。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕 先ほど、鉄道運賃について旅客運賃は上げますと、上げざるを得ないと、そういうことを申すと同時に、もう一つの大きな物価の柱である米価、これについては生産者、消費者両方とも上げない方針でありますということを実ははっきり申したのであります。これはただいま高橋委員の言われるとおり、私は、生産者米価をきめるのに、法律の定めるところでございますから、その議を経てこの方針に十分の理解を得るような措置をとるつもりでございます。
  33. 高橋衛

    高橋衛君 米に関連して私は農林大臣に、やは物価に関連する問題でございますので、お聞きいたしておきたいのは、小麦価格並びに飼料の価格についてでございます。小麦の払い下げ価格は、これは過去十六年間据え置かれた。そうして、その結果としてであるかどうかは存じませんが、一方、生産の面においては、かつて過剰であったところの大麦、裸麦までが非常な不足を来たしている。畑作は非常な減退を来たしている。そうして、なるほど食糧の自給率は八〇%、カロリーでいって七〇%ということになっておりますが、いわゆる農業基本法で言うところの選択的拡大、これは私は結果として見ればほとんど成果があがってない、意図するところはきわめて良好であったけれども、ほとんど成果があがってないと、こう見ていいと思うんです。なぜそうなったか。これは私は価格政策にもっぱら原因があると思うのであります。お米の値段は、生産費所得補償方式によって農民の生活水準が他と比較のできる程度に認められてきた。ところが、小麦なり飼料作物についてはそういうことがない。これが一番大きな原因であったと思うのであります。私は、その意味において、物価に多少影響があっても、たとえば小麦の価格もある程度上げる、そうして昔やったような米麦の比価、こういうふうな自然にできた米麦の比価というものは、私は相当考慮してしかるべきものだと思うのでありますが、そういうことも考えながら、小麦の払い下げ価格もある程度上げる。ことに濃厚飼料につきましては、今日自給率はわずかに二七%、畜産を振興したとはいいながら、これは実は農業としての畜産じゃないんです。むしろ工場生産的な公害をもたらすところの養鶏であり養豚であるというふうな姿を実際露呈している。したがって、ほんとうに畜産を振興しようとするならば、やはり飼料作物の増産奨励をすべきである。これが成り立つようにすべきである、そう思うんでありますが、そういう、つまり総合農政全般の立場から、一方において米価は据え置くんだと、そうして他方、麦やその他の価格についてもこれはもう押えていくんだと。やはりこれは価格政策というものが介入しなければほんとうに選択的拡大もできなければ総合農政も成果をあげることはとうていできない。ある程度物価との関係があっても、さらに総合的に見ていいのならばそこに接近すべきだと私は思うのでありますが、その点について農林大臣の御所見を伺っておきたい。
  34. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 小麦につきましては昭和二十七年以来価格を据え置いてある。今年度に入りましても小麦を値上げしようという意見はいろいろたくさん出ましたけれども、何といっても、今年度の物価安定というこういうような点から考えてみて、小麦も本年度は上げべきではないというような考えのもとに本年も据え置くことにしたわけでございまして、反面、お説のようなこともごもっともだと思うのでございますけれども、小麦そのものは据え置きましても、第二次製品であるパンというようなものになってまいりますると、賃金上昇というような点について、これらもだいぶ二次製品になりますと高くなってきておる。この現状を見ますと、さらに玄麦を高くするということはさらにそれに拍車をかけることであろうというような点で本年は特に留意し、その点も物価安定という立場に立ってまずまずということにことしはきめたわけでございます。  さらにまた飼料の点でございますけれども、えさの、濃厚飼料というお話でございますけれども、ごもっともで、私も高橋さんのお出しになったパンフレットを見まして——一昨年でございましたか——ごもっともだと、こうやるべきではないかというような考え方に大いに賛成をし、あとからまた追加をいただきに行ったようなことでございましたけれども、なるほど、農林省の中に入ってやってみますると、たとえばトウモロコシとかあるいはコウリャンだとか、こういうようなものになりますと、国内でこの作付を奨励してみても、決してそのそろばんといいましょうか、国策上有利であるかどうかという点については大いなるまだ疑問も反面出てくるわけでございます。しかし、それではそれでいいかというわけにはいきません。御承知のように、食糧というものが、食糧構造が変わりまして、したがって、畜産物というようなものに大体一般消費者が要求が多くなってきておる。この現実の上に立って見て、なかなかそうもまいりません。そこで、まあ草地の改良をやるとか構造改善等をやりまして、少なくともこれらをある程度満たすような方向に持っていかなければならない、こういうことでございます。しかし、申し上げたように、トウモロコシとかコウリャンだとか、つまり、マイロだとかというようなものに対しては、これはどちらにすべきかという点についてはよほど考慮をする必要がある、こういうように考えておる。したがって、お説のように、粗飼料についてはできるだけ国内においてこれが自給を満たすような努力をしなければならぬ、こういう方向に向かってせっかくいまいろいろな施策を加えておるところでございます。
  35. 高橋衛

    高橋衛君 時間がございませんので、非常に十分私の申し上げたいことを言い尽くすことができぬようでございますが、以上でもって大体物価コスト面についての私の質問をお答え願ったわけでございますが、もう一つ需要面、総需要対策というものについてお伺いいたしたいのであります。まあ、昭和四十四年度においては千五百億の減税をしておる。この減税ということは、これは総需要を刺激するところの要因であると思います。もちろん、そのことは私どもいいと考えて賛成しておるわけでございますが、しかし、総需要対策面から見てそういうふうなマイナスの要因があるものを何によってカバーしようとしているか。アメリカにおいては昨年の七月から法人税所得税の一割の増徴をいたしました。そうして政府の財政を黒字にした。ニクソンも今年は引き続きそれを続けるだろうという観測が一般でございます。日本においても連続六期増収、増益というのが現在の見通しのようでございます。そういう場合に、今日総需要として一番問題になっておるものは設備投資であろうと思います。その設備投資をどうして抑制するかということが一番のポイントじゃなかろうかと私は思います。そういう意味で、財政面から昨日の御答弁では税制じゃ間に合わぬのだという御答弁でございましたけれども、私はそんなに短期的な問題じゃなしに、日本の設備投資というのは相当持続的に長く続いてきておる。それに対処する意味において、何か、金融方面であってもまた税制方面であっても、たとえば法人税の増徴をしたらどうか、または間接税の増徴をしたらどうかという意見があり得るわけでございますが、そういう点について大蔵大臣の御所見をお願いいたします。これは、総需要対策について、どう考えても、十分であるということが私どもには納得できない。おそらくは国民もその点について疑問を感じておるだろうからという意味においてお伺いをするわけでございます。
  36. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま総需要と言いますが、結局、議論といたしますと、国の総需要と総供給が見合う状態に置かなきゃならぬのだと、こういうことかと思うのであります。そういう面で供給面も配慮しなければなりませんが、需要面ですね、これは、その需要最大要因は何といっても国民消費です。それから財政の消費また設備投資、民間消費、こういうことになると思うのでありますが、いま御指摘の減税問題は、民間消費とつながってくる問題かと思うのであります。民間の生活消費、これとつながってくると思います。その償いを一体どういうふうにとるかということでございまするが、税の面だけでいえば、確かに国民消費需要をそれだけ解放したと、そういうことになるわけでございますが、しかし、その解放されたそれが生活消費となる。と、それがまた生活物資の需要となる。またそれが経済の動く要因になってくるわけでございますが、それに対しては、個々に一つ一つそれに対応した対策という考え方じゃなくって、総合的に他の財政需要を調整する。これは財政の規模だとかあるいは財政投融資の問題でございますとか、そういう問題もありましょう。また、供給面は一体どうだろうかといって供給面のほうも診察をする、これも怠っておりません。いま私ども経済を非常に慎重にながめておりますが、むしろ実勢から言うと、設備投資がだんだんだんだん伸びてまいりまして需要を越すか越さないかと、つまり、デフレ・ギャップというような状態が出るか出ないかというような瞬間に大体来ておる感じがいたすわけであります。そういう瞬間において千五百億程度の減税による消費活動が起こってどういう日本経済全体に影響があるか、これは私はそう気に病んでおりません。むしろこの際は、一兆二千億もの自然増収があるならば、何がしかを減税に振り当てて国民生活の充実という方向に向けるほうがいいんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。千五百億程度の減税がさほど景気の動向に影響があるというふうなとり方はしておりません。
  37. 高橋衛

    高橋衛君 私が御質問申し上げましたのは、そういうふうな傾向を持つと、それはそれほど心配した程度需要を増す効果を持つとは言えないという点については同感でございますけれども、しからば設備投資は過去二年間非常な増加を示しておる。しかも今日その増勢はそうおさまっておるとは見えない。私は、おそらくは見通しにおけるところの経済よりもより大きくなるのじゃなかろうかということを考えるわけでございますが、そういう意味において、たとえば英国がああいうふうな公定歩合の引き上げをした、その他いろいろな施策を各国とも苦労してやっておるわけでございますが、何か総需要対策として、供給がふえるのだから心配ないのだというふうなことではなかなか納得できぬのじゃなかろうか。そういう意味においてその点についてのもう少し国民の納得できるような御説明をお願いしたいと思います。
  38. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、当面一番日本経済で大事だと思いますのはやはり経済を安定的に成長さしていくことだ、つまり、経済成長の基本路線は維持しながら物価も安定させる、また国際収支にもひびを入らせない、こういうことだろうと思うのです。財政の運営もこの基本路線に乗ってやっていく。これはもう申し上げるまでもないところでございますが、さあ、そのいま御指摘の減税の問題でございますが、これがこういう世界情勢の見方、また国内における需給の見方、非常にそういうものがむずかしいデリケートな段階において大幅な減税をここでいたしましたというようなことになると、これは私は景気に影響するが、まあ千五百億程度の減税があって、それが何ほどかの影響を与えるかというと、私は、現実の問題としてはそういうことはあるまいと思うのです。ただ、全体の国の需給を保ち、物価をどうやって安定さしていくか、その面におきまして、御指摘の設備投資、これは非常に重大な問題であるということは私もそう考えます。したがいまして、設備投資の抑制、これはもうどうしても民間金融の担当、タッチする部分でございまするが、日本銀行を中心として、日本銀行のやっておるポジション指導、この体制は堅持してまいる。まあ、そういうことを中心に、さらに日本銀行の金融調整は三割調整だというふうにもいわれますが、その調整の分野も拡大をするということを考えておりますが、まあ、金融政策を機動的、弾力的に活用しまして行き過ぎのないように調整を進めていきたい、かように考えております。
  39. 高橋衛

    高橋衛君 どうも必ずしも十分とは思われないわけでございますが、なお、別の機会に御質問申し上げたいと思います。  ところで、見通しでは、来年度消費者物価上昇の割合を五%としておられるのでありますが、この五%そのものが一体そう行けるのかどうかということについて国民は非常な疑念を持っております。それで、その理由を一つ申し上げますと、この見通しの表を見てみますると、国民所得の計算において、雇用所得の伸びを、昭和四十三年が四十二年度に対して一六・九%の増でありますが、それが来年度においては一三・八%、つまり、三・一%下回るという予想を立てておられるのでありますが、これは雇用の伸びが両年度とも二・八%になっておる。そういう面から見ますると、私は賃金のベースアップが三%程度下がらなければこの雇用所得の伸びがここでとどまるということは考え得られない、常識の問題として。そうすれば、そういうふうに賃金上昇率が本年は下がると思っておられるかどうか。先般NHKのベースアップがきまったようでございますが、これは昨年、一昨年とわりあいに低かったのでありますが、本年は相当高くなってきておる。全般の春闘の結果の予想はつきかねると思いますけれども、私はなかなか昨年より下回るという予想を立てるということは困難じゃなかろうか、そう思うのであります。そういう意味において、そういうふうな雇用所得の伸びが低いという前提のもとに五%にとまるのだという考え方は、私は、そのとおりできれば非常にけっこうでございますが、できるかどうかということについて多少ならずむしろ非常な疑念を持つわけでございますが、その点について経済企画庁長官の御答弁をお願いします。
  40. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいまの高橋さんの御疑念もごもっともかと思いますが、大体賃金というものは、御承知のとおり、労使の間できめられる問題でありますが、しかしそのきめ方によっては、これがいろいろ消費者物価影響を及ぼしますし、また国民経済にも影響を及ぼしますので、したがいまして賃金というものは、できれば、この余剰価値の範囲内において適宜適正にきめてもらうということにしなけばならぬので、お話のとおり、賃金のきめ方が高くなると、したがって、それが消費者物価影響を及ぼすということになりますからして、これはひとつ経営者側においても、また労働者側においても、適正に賃金をきめるという方針でやってもらうことがよいと思うので、またそういうふうにわれわれも指導して、消費者物価をできるだけ五%の範囲内に押えたい、こう考えておる次第であります。
  41. 高橋衛

    高橋衛君 私は、そういう要素について、そういう前提のもとに五%というものが行なわれるのだということを国民にやはり正直に告げておくということが政治姿勢として正しいと思う。そういう条件が満たされぬ場合においては、多少上がることはやむを得ぬのだと、そういうことを率直に言ってもらいたいと、こういう趣旨でございます。  私は、なおもう一点だけ質問申し上げまして、時間がきたようでございますから終わりますが、それは社会資本と民間設備投資とのバランスの問題でございます。これについて、まず経済社会発展計画におきましては、このバランスを昭和四十六年度において六〇%を妥当なりとして、その目標に到達するようにということでもって計画をお立てになっておる。ところが、現実には計画が実行に入ったとたんからそれがむしろ下降線をたどって、四十三年度においてはおそらくは四〇%を切るのじゃなかろうかと思います。それが政府の言っておられるところの効率性の高いところの経済の運営をするということと逆になってきておる。そのことは経済企画庁長官のこの演説を読んでみますと、その中に社会資本と民間設備投資との不均衡ということを指摘しておられます。指摘しっぱなしで、不均衡だから一体どうするのだという答弁は、この演説の中には何も示してない。そうしてむしろ四十四年度においても、さらにそれが激化するという方向にきておる。私はこのことを非常に心配するのであります。さっき申しませんでしたけれども、ハイヤー、タクシーの問題、これもガソリンの値段は上がってない、自動車は質がよくなって値段は下がっておる。賃金も上がったけれども、やはりタクシーの効率が、いままで三百五十キロ走れたものが三百キロしか走れない。そういうふうな、つまり社会資本の不足の結果がそういうふうなところに物価影響してきておるという面は、至るところに私はあると、こう見ておるのであります。こういう問題については、私はもちろんそのときどきの年におけるところの経済情勢、経済の運営について、いろいろな面も考えなければいけませんから、すぐ四十四年度においてやるべきだと、もっと思い切ってやるべきだということを申し上げるのではございませんが、しかし、問題を指摘するだけで、どうするのだという答弁がないことは、これは国民としては非常な不満でございます。そういう意味において明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  42. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話のとおり、社会資本の伸びが、民間設備投資よりも伸びが低いということはお説のとおりであります。それがかえって経済の効率化を害しておるということは事実であります。そこで、元来この民間設備投資と社会資本とは均等に伸展さして、そうして経済の効率化をあげることが経済社会発展計画の目標といたしておったのでありますが、なぜそこに食い違いがあらわれてきたかといえば、これはやはり経済成長が急激に発展してきたということで、民間設備投資により多くの重点が置かれたというところに原因があると、また、民間設備投資が盛んだったおかげで、それだけ日本経済成長して輸出も盛んになるということも考えられますが、しかし今後においては、やはり社会資本のほうに重点を置かなければならぬというように考えておりますが、しかし全般的に見まして、長い期間を見ますと、民間設備投資に対する公共投資の比率は漸次上がっており、三十五年と四十二年とを比較いたしますと上がっておるのでありますからして、比率的に言えば、社会資本のほうに漸次重点を置きつつあるということは事実ですが、しかしまだ現在のもとにおいては決して十分とは言えません。今後社会資本のほうに重点を置いて政策を立てるべきであると、こう考えております。
  43. 高橋衛

    高橋衛君 以上をもって私の質疑を終わりますが、御答弁をいただきましたけれども、必ずしも全部が全部満足なるお答えを得られたものではございません。国民もおそらくは十分に納得したというわけにはいくまいと思います。これはまた別の機会において政府側から積極的に御説明を願って、そうして国民が十分な理解のもとに協力できる体制をおつくり願うということを希望いたしまして、私の質疑を終わります。(拍手)
  44. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして、高橋君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  45. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、中村波男君の質疑を行ないます。中村波男君。
  46. 中村波男

    中村波男君 私は、本日は食糧管理の問題を中心にして、自主流通、選択的拡大を目ざしております総合農政について質問を申し上げる予定でおるのでありますが、それに先立ちまして、総理も御存じのように、参議院議員源田実氏がアメリカ講演旅行中でございますが、アメリカの国内において講演中止の火の手が上がっておることは私が申し上げますまでもなく先刻御承知のことであると思うのであります。  そこで私が質問を申し上げますのは、源田氏は参議院議員として、開会中に渡米をしておられるのでありますし、自民党の有力な党員である。したがって源田氏の発言というのは、個人、私人の発言として見のがすことのできない重大な発言であると思うのであります。その発言を新聞によって表示をいたしますと、「米国が原爆を投下したことは戦争なのだから、そう深刻には考えない。」、「日本も原爆をもっていたら使っただろう」と言い切っております。さらに、日本人記者団との会見で、「極東の平和を維持するために沖繩に核兵器を置くことが必要なら、本土にも核を持ち込める条件にして、沖繩に差別をつけないことが一つの解決策だと思う。」と、明らかに非核三原則を否定いたしておるのであります。  そこで、総理にお聞きいたしたいと思いますのは、自民党の総裁として、あるいは内閣総理大臣として、この発言をどう受けとめ、どう対処されるのか、まず、お伺いをいたします。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も新聞を見まして実は驚いております。いまお尋ねがありましたが、ただいまの段階では新聞に報道された程度であります。さっそく調査しておる、これは外務省を通じまして実情を十分把握して、そうして行き過ぎのないようにぜひとも注意しなければならない、かように思っておりますが、一応ただいま外務省をして調査させておりますから、外務省の調査の結果はまだまいっておりません、返事が。しかし、外務省で照会した点を、外務大臣から御報告いたさせます。
  48. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 源田議員がアメリカに行かれたということを実は私も承知していなかったのでございます。そこで、昨日参議院の事務総長からの御照会がございましたので、源田議員のアメリカにおける行動等につきまして、連絡、照会をいたしておるところでございます。そこで、その御依頼によって照会しております点につきましては、事務当局から説明させることにいたします。
  49. 内田宏

    説明員内田宏君) ただいまの愛知外務大臣からの御答弁を補足させていただきます。ただいままでに入っております報告をここに読み上げます。  三月五日在米大使館発源田議員の記者会見に関する報告要旨。  源田議員は冒頭、今回の訪米はUSネーバル・インスティチュートの招待によるもので、個人的立場で述べる旨前置きした後、質問に答え次のとおり述べた。一、訪問の目的についてUSネーバル・インスティチュートの招待により帝国海軍の戦略戦術計画の変遷を話すためである。  第二の質問は、アナポリスにおける講演中、原爆使用の問題について。  答、あれは戦争中のことであり、国の運命が決せられるという場合、日本でも他の国でも持っていれば使ったであろうという意味である。  三番、問、日本の核兵器保有について。  答、核兵器があれば危険であるというのは間違いであり、核兵器があろうとなかろうと、戦いが起これば攻撃を受けることについては同じである。  四番、問、議会や米軍戦死者の家族等からの抗議をどう思うか。  答、私自身あての抗議や反対はなく、全部ネーバル・インスティチュートあてのものである。戦死した人々の血縁者や負傷者が私に対して好感を持っていないことはよくわかる。しかし、私の弟も戦死したし、郷里の親族は原爆にあっている。戦争を終わっていま感情的にはともかく、国交関係にもってくることはよくないと思う。  五番、問、日米安保条約について。  答、日本は安保条約を継続すべである。アメリカと手を切って日本は生存できない。  以上がワシントンより報告が入っております。
  50. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連。ただいまの事務当局のこの説明も、これはきわめて不十分だと思う。しかし、いまそんなことは問題じゃないと思う。これは大体容易ならぬ大問題だと私は思う。単なる源田さんの個人的な発言とか、放言だとか、私言だとかいう性質のものではないんですよ。これは言うまでもなく現職の参議院議員であって、この憲法を擁護し尊重する責任を持っておるということは、これは言うまでもないが、しかし、その前に元の航空幕僚長なんです。ですから、防衛庁に対する影響力というものも非常にある、現実にある。しかもその上に、政府与党の最も重大なポストであるところの国防部長をやっておられんでしょう。第三次、第四次防衛計画なんというものは、ここで大体事実上の作業は進められているんでしょう。それだけの重大な責任を持っておられる人が、しかもアメリカにおいて、いま、この核問題なり沖繩問題なりの交渉を前にして非常に微妙な重大な時局の中で、しかも国会開会中に、国内を留守にして、そして発言をしておられる。しかも繰り返し発言をしておられるんですから、ですからその点がまずきわめて重大だと思う。しかもその内容におきましても、日本が原爆を持っておったら落としただろう云々、これも戦争に対する反省というようなことから考えれば、きわめて重大な内容を含んでおりますが、さらに一そう聞き捨てならぬのは、記者会見において語られたと、各新聞がそれぞれの特派員の報道として伝えられておるんですからね、ですからこれは非常に信憑性のあることなんです。しかもその内容たるや、沖繩の返還問題をめぐって、あるいは核つきか核抜きかというようなことで、国民ひとしくその動向を非常に注目し心配しておる。この国会においても、政府とわれわれとの間に真剣な論議が毎日続いておる。今後も続くでしょう。しかも政府自身は、日米交渉という——重大な日米交渉を直前に控えておられるとき、こういうときにあたって、こういう重大な役目をになっておるところの人が、しかも相手国のアメリカへ行って、そうしてこういう発言をずばずばやられるということは、これは個人の問題じゃないと思うんです。で、政府は従来核問題につきましてもきわめて微妙な発言をしてきておられるわけです。つまり核兵器と名がつくからといって一切の核兵器が憲法違反だとは言えないと、ただし政府としては、政策として、つくらず、持たず、持ち込まずという三原則は断じて堅持するんだと、こういう発言をしてこられた。それはそのとおりわれわれも受け取ってきたが、しかし、憲法違反ではない、憲法上持ち得る、しかし政策としては持たない。その裏には、政策は時とともに変わる可能性がある、したがって事と次第によっては、自衛という名において何らかの形の核兵器を持ち得る、あるいは持つ場合があるということを予想さしておる。それに対して私どもは非常な疑念を持っておる、懸念を持っておる。同時にまた沖繩の返還問題につきましても、あの核抜きか核つきかという問題、返還形式の問題と、従来政府が言ってこられた核兵器三原則との関係いかんという問題については、佐藤首相はきわめて微妙な発言をしてきておられる。そこらから私どもまた、あるいは事と場合によっては、政府は何らかの形で核つきの返還というような道を選ばれるんじゃないか、そういうおそれはないのか、これは依然として今日ただいま私どもは懸念を持っておる、深い懸念を持っておる。で、そういうやさきに、こういうやさきにこれだけの重要な肩書きを持った、地位を持った人がアメリカへ行って、そしてああいう発言をされるということは、これは個人の不謹慎とか何とかいうこともあります。しかし同時に、あれは政府自民党の底意を率直にアメリカにおいて発言をされたものじゃないか、こう断ぜざるを得ないんですよ。しかも、そういう源田発言のような路線で三次防、四次防というようなものが行なわれるとすれば、これは容易ならぬ大問題、容易ならぬ大問題ですよ。私はもう一ぺん総理大臣の率直な御所見総理大臣として、あるいは自由民主党の総裁としての責任、同時にこれをどう処理するのか、はっきりしていただきたい。
  51. 羽生三七

    ○羽生三七君 答弁される前にちょっと。いま秋山委員総理見解を問われました。
  52. 秋山長造

    ○秋山長造君 いや、自由民主党……。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 まあ自由民主党でもいいですが、そうでなしに、源田氏の、源田参議院議員の発言についてどう思うかということが主なんであります。そうでないと、総理自身が、私は核を持ち込む意思はないとか何とかという答弁をされると、それは問題が違ってしまいますから、本旨は源田氏の言動をどう処置するかと、こういう問題であると思いますから、念のために。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総理として、また自民党総裁として、ただいまの源田君の発言ということでお話し申し上げます。  ただ、まあいま源田君ここにおらない、そういう際に、いまの外務省で一応調べたところのものが、先ほど申したようなことでありますが、いま会議になって議論されておるのは、とにかく新聞記事の問題であります。まあ秋山君にも申しますが、とにかくその記事自身で直ちに結論を出して、まああまり先ばしらないように、ひとつ落ちついて聞いていただきたい。とにかくこの源田君を派遣いたしたと、政府の代表として派遣さしたものでもございません。源田君が言っておることがそのとおりであるならば、とにかくネーバル・インスティチュートの招待で自分は来ているのだ、こういうことを申しております。それでもおわかりのように、政府関係のない、これはもうはっきりわかっております。だからその意味において、この源田発言から政府の意向をとやかく言われることは、たいへん政府としても迷惑でありますし、また党としても迷惑であります。私ははっきり申し上げますが、核基地についての、米軍基地についてのあり方については、まだ私は白紙でございます。これは何度も申し上げております。したがって、ただいまの源田発言そのものは、政府や政党等に関係のない問題、かように御了承いただきたい。
  55. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。総理まあ別にあなたは興奮しているとは言いませんが、慎重に、やはり日本として、政府関係ないと言われますが、政府もわれわれ国会議員も、これは慎重に考えるべきだ。あなたはけさの、きのうですか、アメリカの新聞見られたと思うのですが、きわめて大きな世論を買っておるのですよ、これは。したがって、いま言われたように、政府、政党に関係ないということで済ませるならば、われわれ黙っておりますよ。この重要な予算委員会の時間をとってわが党はこういうことを質問しないのですよ。いかにアメリカの世論が、要するに日米友好をあなたが一つのモットーとされておるアメリカ国民に、非常に大きな反感を買っておりますね。この事態を政府はどう見るかというわけなんですよ。政府関係あるとか、党に関係あるとかというよりも、総理としてこの源田発言はどう考えられておるか、また日本影響あるかどうかということを、それを追及しておるわけなんです。  それから、これは新聞じゃないんですよ。いま配ってもらった三月五日の在米大使館からの報告書をいま政府委員が読んだでしょう。それに一つ抜けているものがありますね。最後の第六項に、「憲法について」、「憲法の解釈が学者によって百八十度違う。憲法はだれにでも同じように解釈でき、守れるものでなければならない。国家あっての憲法であって憲法あっての国家ではない。」こういう発言をしておる。これを裏返しますと、国の基本法である憲法は、いわゆる国のためには変えても、いつでもいいんだと、そういう理論も成り立つけれども、現在そういう状態にないでしょう。憲法はどうでもいいんじゃないかという解釈ができるんですね、これは。そういう——違うなら違うであとで答弁しなさいよ。こういう表現をされておることについては、ここがほんとうであるかどうかという問題ですよ。これはもう憲法についてはいろいろ議論ありますよ。しかし、あの憲法は、昭和二十二年に国民の総意できめたのでしょう。憲法がきめてあるのだ。それを学者が批判するならいいけれども、その憲法のもと、われわれ国会、議会民主主義で議員に選ばれているのでしょう。その議員がこういうことを言うことになれば、一体どうなるんですか。その点について責任のある御答弁を願いたい。
  56. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほども申しますように、政府や政党という、関係のあるものではないということだけはっきり申し上げておきます。しかし、私も非常に意外な記事に驚いたのは——先ほど調査をさっそく命じたのだと、かように申しました。このことで政府も非常な関心を示していると、この点は御了解をいただきたいと思います。  それからなお、ただいまの九十九条についての発言、これは個人的な意見にしろ、そういうことは不謹慎きわまるものだと、かように思いますので、ひとつ十分しかりおく、ひとつ御了承得たいと思います。
  57. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連もう一度さしてください。大体ね、これはさっき外務当局から読み上げられたといっても、最後の重要なところをあんた落としておるじゃないですか。落とした。故意に落としたのか、あるいはそこで切れておったのか、はっきりしてくださいよ。大体この重要な問題、一番重大なポイントをあなたは落としておるのじゃないか。まだまだ、それでも落としておるのだから、あと外務大臣から言ってくださいよ。外務大臣、重要な問題だからね、外務大臣からはっきり言ってくださいよ。故意に落としている。
  58. 内田宏

    説明員内田宏君) お答え申し上げます。  ただいまの点は、御質問にございませんでしたので申し上げませんでした。
  59. 秋山長造

    ○秋山長造君 ばかなことを君、言ってもらっては困りますよ。質問になかった、あったからということで答弁したんじゃないでしょうが。外務大臣アメリカの大使館に照会した結果、こういう返答がきたという、その返答をあなたは読み上げたのじゃないですか。その辺、重要な返答の中で落としているじゃないか。議運へ提出したものより落としているじゃないですか。外務大臣どうですか、いまのあの外務省の事務当局から答えただけで、あれで十分なんですか。
  60. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私は、先ほども申しましたように、私は実は源田議員がアメリカに行かれたということも実は存じませんでした。そうして私も新聞で見ましてその事実を知りましたが、先ほど申し上げましたように、昨日、参議院の事務総長から外務省の事務当局に御照会があった。そこでその言動について、いわば外務省としては郵便局の役割りをいたしたわけでございますから、郵便局の役割りとしての外務省の事務当局の説明を先ほどさせるようにお願いをいたしたわけでございます。  なお、これは私が御答弁するのには適当でないかと思いますけれども、自由民主党の参議院の幹事長から、幹事長の名前で、言動を厳に慎むようにということの連絡をしたいという御依頼があったので、その旨を伝えてございますが、旅行先でありますので、これはその伝言を大使館から出先の御本人に対して電話で連絡をいたしたと、私は承知いたしております。
  61. 秋山長造

    ○秋山長造君 これは事実関係ですがね、外務省から、アメリカ大使館からの報告として議運のほうへ出されたのは六項目あるはずなんです。それでいま山本君の関連質問は、その第六項のことをいま質問されたのです。ところが、先ほど外務当局が読み上げたのは、第五項で切っておるのじゃないですか。あとの第六項をなぜ抜いたのですか。ごまかすために抜いたのですか。そういうふまじめな、公式の会議においてふまじめな報告をしてですよ、それで何だかんだと言うてごまかすというようなことは、われわれ承知できませんよ。はっきりしてくださいよ。
  62. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま私の手元にもこれが参りましたが、なるほど、先ほど読みましたものからは抜けているところがあったようでございますから、これは先ほどのお話があった点、憲法について書いてございます。これをあらためて読ませます。
  63. 秋山長造

    ○秋山長造君 そんなふまじめな説明なんか聞かぬでいいですよ。だめですよ。要らぬよ。
  64. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 委員長から申し上げます。  ただいま中村君の質疑中でございまするが、なおこれの問題につきまして、理事会でも協議をし、ただいまから休憩をいたすことにいたします。  休憩にいたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  65. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  この際、愛知外務大臣から発言を求められております。これを許します。愛知外務大臣
  66. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど問題になりました、参議院事務総長からの御依頼によって照会いたしました源田議員の記者会見の発言要旨の中で、政府委員の説明中読み落とした部分がございまして、申しわけございませんでした。私からその部分を御報告いたします。  憲法の解釈について、「憲法の解釈が学者によって百八十度違う。憲法は、だれにでも同じように解釈でき、守れるものでなければならない。国家あっての憲法であって、憲法あっての国家ではない。」  以上でございます。
  67. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 議事進行。まあ、本件につきましては、源田実議員個人の問題であれば、予算委員会でここまで大きく取り上げる必要はないと思いますが、事、発言の内容を見ますと、やがて愛知外務大臣が訪米されまして、沖繩返還の問題等々でいろいろ打ち合わせされるというやさきなんですね、これがアメリカ国民に与える大きい影響があったということが新聞に報じられております。したがって、この詳報を——きょう配付されました、まあ配付と申しますか、議運に出されましたこの大使館の報告に漏れておるものも私はあると見ておる。したがって、早急に、外務省を通じまして、その詳報を送っていただきたい。これを第一点にお願いしておきます。  なお、この問題につきましては、先ほど申しましたように、相当、党としても問題がある、また、院としても問題がある問題でありますから、予算委員会としては、これ以上この問題は追及しても、総理としても、これに対してまだ処置するということもできないかと思います。しかし、この問題については、相当大きい問題でありますので、今後この問題を議運なり党の間で問題にするといたしまして、本日これから予算委員会を継続するように理事会できまりました。この問題に対して、一応総理大臣見解と申しますか、それをお示し願いたい、かように思うのであります。
  68. 塩見俊二

  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 山本君並びに皆さんにお答えいたします。  問題の性格は、個人の問題にしろ、たいへん重大な問題でありますし、また、発言の時期、場所等、ほんとうに慎重を期さなければならないところだと思っております。ことに、これがわが党の党員であるという、そのたてまえにおきまして、私自身たいへん実は心配しております。この詳細をどうしてももっと詳しく知りたい、かように思っております。ただいま、まず第一の問題として、もっと詳報が知りたいと言われたことについて、私どもはできるだけその実情を調査したい、かように考えております。  また、ただいまその扱い方等について申されましたが、もちろん、院の問題であること、それについても私も関心なきにしもあらず、幾ら参議院の問題にしても、参議院議員の問題にしても、私自身の総裁である自民党の参議院議員でございますから、私もたいへん実は心配をいたしております。ただいまの昼の休みにも、田中参議院幹事長を呼び出して、そしてこれの扱い方についてもいろいろ私も腐心しておる点を田中君に率直に話をしたわけであります。田中幹事長も、たいへん皆さん方に御迷惑をおかけしていることについてあやまっておりますが、腐心をしておるようであります。しかし、いずれにいたしましても、源田君がこの場所にいないということ、こういうたてまえもございますし、また、院議でこの出張を許された——これは別に、皆さん方あるいは参議院に責任を転嫁するつもりで申すわけではございませんが、そういうようないきさつもありますので、この上に間違いがないように、十分田中君からも注意いたしますが、私自身、党員としての源田君でありますから、今後の問題について一そう注意するように、こういうことを特にただいま注意を喚起したような次第でございます。  以上のような点を御了承賜わりまして、ただいま言われるように、ひとつ予算委員会委員会として、この問題はこの問題として、さらにそれが明らかになるように私も努力するつもりでございますが、皆さん方にもどうかひとつ御了承を得たいと思います。
  70. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 中村波男君の質疑を続行いたします。中村君。
  71. 中村波男

    中村波男君 源田問題につきましては、理事会においていろいろ協議が行なわれまして、その取り扱いがきまったようでありますので、私は予定をしております質問に移りたいと思うのでありますが、その前に、ただいま総理から、この問題の重大性にかんがみまして、よく調査をして善処する旨の御発言があったのでありますが、重ねて申し上げますまでもなく、世界で最初で最後の原爆投下を受けて五十万の生命を失い、傷ついた日本、したがって、沖繩返還の態様についても、本土並みというのが大体国民の合意であろうと言われておる上に立ちまして、参議院議員個人、私人としての発言としてこれを見のがすことにはいかないと思うのであります。もちろん、自民党の国防部会長、参議院の政審の安全保障特別委員長という肩書きからいたしましても、適当な時期に、自民党として、さらに具体的に国民にこの問題に対する態度なり方針というものを明らかにされる必要があると思うのであります。したがいまして、私も、この問題については機会を見てさらに究明をいたすことにいたしまして、本論に入りたいと思うのであります。  第一番に質問を申し上げたいと思いますのは、食管法の基本姿勢についてであります。  佐藤総理は、施設方針演説におきまして、農産物の需給の均衡をはかり、消費者物価を抑制するために生産者米価を据え置くということを表明されました。また、大蔵大臣からも同趣旨の言明がなされておるのであります。これに対しましては、すでに衆議院の予算委員会などにおきまして、現行食管法のたてまえからして脱法である、違法であるという追及がなされておりますので、さらにここで蒸し返したくはありませんけれども、米価の据え置き、自主流通米制度の発足は明らかに食管法違反の政策であると私は考えますので、あらためて総理の所信を伺いたいと思うのであります。  申し上げますまでもなく、食管法第三条二項で、「政府の買い入れ価格生産費及び物価その他の経済事情を参酌して米穀の再生産を確保することを旨」と定めておるのであります。この条文をよりどころといたしまして生産者米価はきめられてきたのであります。算定方式につきましては、最初はパリティ方式がとられましたけれども、その後いろいろくふうをされまして、生産費所得補償方式による計算方式が今日とられておるのであります。したがいまして、その根底は、私は、あくまでも生産費物価を勘案して再生産を確保することにあると考えておるのであります。四十四年産米価につきましては、現時点におきまして正確な予測はできないにいたしましても、政府みずからが見通しておりますように、諸物価は五%上がるということである点からいいましても、一方で物価上昇がありながら、生産費、労賃の高騰に目をつぶって米だけを据え置くということは、実際には生産者米価の切り下げになると思うのであります。そういう点から考えまして、私は、物価悪循環の根を米価に求めて、生産者米価の抑制にかかることは本末転倒ではないかというふうに考えておるのであります。したがって、食管法に基づく米価算定のあり方と食管赤字の対策とは、おのずから私は次元が違う問題である、こういうふうに考えておりますがゆえに、政府の食管法に対する基本姿勢について、まずお伺いをいたしたいと思います。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 基本的な問題ですから、私一言申しまして、足らない点から補足さしたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、食管法、これは、食糧の確保、また、そのために生産者の所得を十分補償すると、こういう二つの目的を持っておる。目的は一つだけれども、見方によっては二つある、かように私は思います。それで、いま言われるのは、ただいまのような需給状況のもとにおいての価格のあり方ということになり、しかも、生産者の生産価格生産所得、それの維持ができるかできないか、こういう問題、この二つを考えていくのがたてまえだと思います。でありますから、いま政府がとった方針がいわゆる食管法を無視した、こういうものでないと、私はかように考えております。  また、いま私ども政府がとった方針というか、これが最終的にそのとおり決定されるかどうか、これはまだ問題がございます。もちろん、米価も、生産者米価の決定については、これは私が申し上げるまでもなく、中村君御承知のとおり、米価審議会を経て、それできめる。ただし、消費者米価については、これは政府自身でやれることですから、このほうは政府自身でやりますと、こういうことを衆議院においても実は申したのであります。  で、私、それらのことを考えますと、政府は、いわゆる食管法そのものに違反はしておらない、また、これからきめようとするその方向も、食管法で定めておる米価審議会の議を経てきめようと、かようにしております。ただ、その方針として政府が明示することが、植えつけ前にやっぱり必要なことではないだろうか、混乱に導かないためにも、植えつけ前、いわゆる苗しろをつくる前に、やはりこういうような方針をはっきりさすことが望ましいんではないかと、かように私は考えます。
  73. 中村波男

    中村波男君 総理は、いわゆる米価の据え置きは食管法違反でないという御答弁であるわけでありますが、しからば、据え置きということがきまった場合に、再生産を確保するというこの条文に照らしてどういう結果になるのかということを、まず私は考えていただきたい。米価は、去年の時点においていろいろ問題はありましたけれども、再生産を確保するいわゆる生産費所得補償方式によってきめられたのであります。したがって、一年間で物価上昇に見合ういわゆる生産性が上がったというならば別であります。もちろん、今日いろいろ農林省として作業を進めておるようでありますが、しかし客観的に見て、常識的に見まして、多少の生産性は上がったといたしましても、物価の値上がりと相殺をいたします場合に、据え置きということは、これは引き下げに通ずるということは否定できない事実だと思うのであります。そういう点について重ねて御質問を申し上げるわけであります。  もう一つは、具体的な発言について、この際明らかにしておきたいというふうに思うわけであります。福田大蔵大臣は、いわゆる平均反収方式で計算をすれば大体据え置き価格というものが出るのじゃないかという考え方のようでありまして、したがって、衆議院の質疑を読んでみますと、米審に対しては説得をすると、こういうことを言っておられるのであります。米審とは、政治米価をきめる、審議をするところでは私はないと思うのであります。その点がまず一点。  それから長谷川農林大臣は、いわゆる平均反収方式はとらないと、こういう答弁を繰り返していらっしゃるのであります。少なくとも、財政を握る大蔵大臣と、担当である農林省の大臣との意見が明らかに大きく違っておる。これはたいへんなことでありまして、そういう意味で、ひとつ総理から、いわゆる米審に諮問をされる前の算定方式の考え方として、昨年のように限界反収方式をもって計算をするのか、あるいは大蔵大臣の言っておられるような平均反収方式をもって計算をして、その額によって諮問をするのか、これを、まず統一見解として明らかにしていただきたいと、こう思うわけです。
  74. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私と長谷川農林大臣意見が違うというようなことはないのであります。私は、衆議院の質問におきまして、据え置く場合に一体その中身はどうなるのかというおことばでございますから、限界反収、これをかりに平均反収ということにいたしましても、数千円の違いが出てくるのだ、そのことを申し上げたわけなんです。そこで、そういうふうにきめたわけじゃない。まだこれから、米価審議会、これにはかってきめなければならぬわけでありますから。私どもは、そういうことを考えましても、これは理論的に説明できるのでありますということを申し上げておるわけなんです。それからもう一つは、米価審議会に対して、よく説明し、納得をしていただくように努力します、こういうふうに申し上げております。私は、これは政治的圧力をかけるのでもない何でもない。農村問題というのは非常にいま大事な段階に来ている。ことに米が二百万トンも余ってしまっておる。古米を食べる、古古米を食べなければならぬ、こういう状態になる。たいへんな時代である。これをどうするか、こういうことを考えることが当面の課題ですが、私は、農村が一番いま悩んでいる問題もそこにあるのだろうと思います。農村は、悩んだあげく、食管制度、これをぜひ守り抜いてもらいたいということをこいねがっているのだろうと思います。しかし、食管制度の堅持ということを考えると、いまのこの段階で何らかの改善措置を加えなければ、これはとうていやっていけないのだ。その改善措置は何かというと、米の需給の改善という問題、いま物価問題がわが国の当面の大きな問題になっておりますが、物価問題を考える、それから米の需給の問題を改善いたしまして、そうして食管制度が維持できる根底をつちかう、こういう二つの面を考えますと、どうしても、生産者米価、これはこの辺で一休みということをいたしませんと、これは目的が達せられない、こういうふうに考える。それを率直に申し上げたわけであります。
  75. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) お答え申し上げます。  ちょっとお間違いがあるようでございますので……。大蔵大臣は平均反収だけでいくというが、それでいくのかという御質問でございましたものですから、それは違います。平均反収だけではない、限界反収ももちろん入れなければなりません、こういう御答弁を申し上げたのでございまして、平均反収だけで米価をあらわすということは非常に困難ではないか、当然限界反収というものも入れなければならぬ、初めて、そこによって、御承知のような生産費所得補償方式というものを基礎に置いて、そうして米価をきめていく、こういう考え方でございまして、この点は御了解願いたいと思います。
  76. 中村波男

    中村波男君 御両者のお話を聞きましても、さっぱり要領を得ないのでありますが、すでに農林省としては、田植え前に米価をきめて農民に示そうというので作業をしていらっしゃる。そこで、限界反収方式でやるのか、平均反収方式でやるのかという、これをきめなければ作業ができぬじゃないですか。したがって、いろいろ考え方はあっても、これはやむを得ぬと思いますが、当面してきめなければならぬ段階でありますので、政府の統一見解として、本年度は平均反収方式を採用して計算をするならするということを言ってもらわなければ、聞く者はわからないというふうに思うのでありますが、いかがですか。総理、どうですか。
  77. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 限界反収というものをどこにとるかという、こういうことであろうと思うのでございますが、それはまだ決定をしておらないのでございまして、いま、ただいまいろいろ作業をやって、まず統計を出してもらいたいという、そういう作業をやっておりまして、そうして限界反収をどこできめるかという、ここまではまだきめていないもんですから、ただいまお答え申し上げるわけにはまいらないので、申しわけありません。
  78. 中村波男

    中村波男君 時間が限られておりますから、この問題についてはそれ以上議論をいたしませんけれども、次の問題は、いよいよことしの秋から自由米制度というのが発足をするわけでありますが、私は、この制度そのものが食管法の違反であるという、こういう見解を持っておるのであります。したがって、その点について、私の考えをいま少し申し上げまして、政府見解を承りたいと思うのであります。  御承知のように、食糧管理法というのは、昭和十七年の戦時下において、食糧が不足するという非常事態に直面して、その食糧の増産と、生産された米穀等の強力な統制をはかる、これを意図いたしまして制定されたことは言うまでもないのであります。したがって、時の井野農林大臣は、その提案理由を次のように説明をしておられます。「米麦の国家管理を単に臨時応急の措置たるに止らず、恒久的制度としまして確立することが緊要であると信ずるのであります。即ち、主要食糧に関する限り農民が安んじて生産し得るよう、生産せられましたる米麦は必ず政府が之を買うという態勢を明らかに致しまして、国民食糧の確保と国民経済の安定を図らんとするのであります。」このように、政府の買い入れの義務、それも全量買い入れの義務をはっきりいたしておるわけであります。したがって、私は、米が余剰になったからといって、全量買い上げをやめるということは、この立法の趣旨からいっても、明らかに間違っておると思うのであります。食管法は、食糧統制の恒久的制度の確立にあったはずでありまして、このことは、食管法制定の際の帝国議会の質疑を通じて、ただいま私が申しましたように、井野農林大臣は、「たとえ米の過剰時代になってもこの方式でいくんだ、」と明白に答弁をいたしております。したがって、今回発足をさせようとする自主流通米制度というのは、この立法の趣旨からいいましても、また、条文に照らしてみましても、明らかに脱法的な措置であるというふうに考えるのでありますが、この点についての政府見解をお述べいただきたいと思います。
  79. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 昭和十七年の二月に発足した食糧管理法というものが、目的は、いかに、消費者に少ないものだろうと、それを平均に分配するか、こういうことが基礎となり、まず消費者の安定をうたってあるだろうと考えられる、それが第一の目的であろうと思います。しかし、その目的を達するためには、どうしても生産という面にも協力を願わなければならぬ。したがって、ここにいろいろな保護政策というものを加えまして、その目的を達するために今日まで行なってまいったと考えられるのでございます。したがって、たとえば食管法第三条の規定は、食管法第一条の目的を達成するために必要な米を政府が農家から法制的に買い上げることができる旨を定めたものだと考えられるのでございます。とするならば、政府によって全量を買い上げるのを義務づけたものではないだろう、こういうふうに私たちは解釈をしているのでありまして、今日のように米が過剰になった状態になりますと、初めてここで自主流通米を認める、米の価格と需給の調整を行なう必要が当然あり、政府はこれら管理米の量は十分に保障する。ですから、消費者が必要の量だけは政府が必ず手持ちを持っております。消費者が必要だという量は消費者全体に全量配給いたします。こういうような上にありますから、食管法の違反ではない、こういうような解釈を持っておるのでございます。
  80. 中村波男

    中村波男君 農林大臣は、いま、全量買い上げの義務はない、こういうふうにおっしゃっておりますが、しかし、最近の国会答弁等によりまして私の承知いたすところでは、全量買い上げをすのだ、こういうことを繰り返し繰り返し答弁をしていらっしゃるのでありますが、その全量買い上げの中身ですね、これは、自主流通米を除く全量を買い上げるという意味なのか、自主流通米制度というのは食管法のワクの操作でありますから、これをやめた場合には、やめた場合でも全量を買い上げるという考え方なのか、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  81. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) もし生産者が、自主流通米でなくて、全部政府に売り渡したい、こういう御意見であるならば、全量買い上げをいたします。
  82. 中村波男

    中村波男君 そうだといたしますと、自主流通米には関係なく全量買い上げをするというふうに取ってよろしいわけですね。
  83. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) まことに恐縮ですが、いま一度。
  84. 中村波男

    中村波男君 全量買い上げという内容ですが、自主流通米に関係なく全部買い上げるということですか。
  85. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ですから、申し上げたように、自主流通米に売りたくない、出したくないという方がもしおありとするならば、その全量を政府責任を持って買い上げをいたします。
  86. 中村波男

    中村波男君 だとするならば、自主流通米制度というのは、食管制度の中に農林省はどのように位置づけをして、これは恒久的な構想として、方針として考えておるのか、暫定的な余剰対策として考えておる制度なのかを、まず明らかにしてもらいたい。
  87. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 大臣からのお答えにもございましたように、自主流通米は、現在の需給状況のもとで消費者需要動向に即応する、自由といいますか、食糧管理制度の上に立った行政的規制のもとで自由な流通を認めようということでございまして、したがいまして、需給事情が非常に窮迫をするというような状態のもとで現在構想しておりますような自主流通が可能になるかという問題は、私は問題であって、そういうような需給事情が非常に緊迫をするという状態のもとでは、自主流通米という構想は私は成り立たないと思います。
  88. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。重要な問題だと思うのですが、大蔵大臣に聞きますが、自主流通米として百七十万トンといわれているのですが、それが全部買い上げを希望するとなれば予算措置はどうなっておるのですか、その点だけ聞いておきます。
  89. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。かりに百七十万トンと見込んでおります自主流通米が、自主流通にならないで政府食管のほうへ流れてくるということになりますと、食管の赤字が三百億見当ふえるかと思います。
  90. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ。これはもう重要な問題で国民関心を持っております。特に農家では関心を持っておるものと思いますが、その場合の食管会計が、いま言われたように三百億ほど赤字がふえるということは、そうなれば結局予算の補正、そういうものが当然出てくると思いますが、大蔵省はそれは覚悟しておるのですか。
  91. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 大体百七十万トンと見た自主流通米が全部なくなっちゃう、そういうことは予想はいたしておりません。そんなことはあり得ません。多少のまあ伸び縮みはあるかもしらぬ。しかし全部が全部というようなことは絶対にありません。
  92. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あった場合は。
  93. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) かりにあった場合におきましては、二つ問題があるのですね。一つは食管会計の内部の問題です。つまり政府が百七十万トンいま見込んでいる以上に買わなきゃならぬ、その予算措置をどうするのだ、こういう問題があります。これは予備費、それから予備費でおそらく足りませんでしょうから、弾力条項の発動ということで買い入れはいたします。それから今度は買い入れによって三百億程度赤字が生ずる。これをほうっておくわけにいきませんから、これは何とかしなきゃならぬが、一つは、食管の運営というものは数量だけの要因で赤字になったり黒字になったりするのじゃありませんです、損益は。ほかにもいろいろな要因があり、また米のほかに麦もありますし、輸入食糧の関係もあります。そういう問題がありますが、かりにそういう他の要因はこれは変化ないのだ、こういたしまして、米だけが違ってきたと、しかも数量だけが違ったという際には、まあそれだけの赤字を補給しなきゃならぬ、補てんしなきゃならぬ。これはそういう際には総合予算主義というたてまえから、既定の予算のワク内で何とかこれを補てんできないかという最大限の努力をしてみます。みましても、なかなかそれができないと、こういうことになりますれば、補正予算の御審議をお願いしなきゃならぬ。かように思います。これは理屈の上でございます。
  94. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。その問題ですが、四十三年が八百五万トンで、結果的には千十万トンだった。今度食管会計のほうで予算化しているのは七百五十万トンで、それにいま話の出てきている自主流通米を合わせて百七十万トン。そうなってくると、いまお話しのように自主流通米で売ることを承知しないものは全量買い上げるということになると、千十万トン四十三年に補正をして石高を買い入れたのに、七百五十万トンしか予算化していない。そうすると二百六十万トン前年と比べてみて不足をする。それを、百七十万トン自主流通米が全部予定したようにあったとしても、九十万トン前年と比べると不足するつまり七百五十万トンを予算化しているわけです。一体総合農政をやって、いきなり百七十万トンの自主流通米、それだけはけるかどうかということも問題がある。しかし、まあ政府の言うとおり百七十万トン全部はけたとしても、それを一括しても、これはいま勘定したように四十三年度と比較して九十万トン不足しているわけです。しかも、これはあなたがおっしゃるとおり、いや九百億は予備費に組んでいるんだというお話だけれども、これはよくあなたがおっしゃる総合予算を堅持をするんだというたてまえからいっても、これは明確にもっと七百五十万トンを上げた石数を出しておくということのほうが、そこを予算化していくというのが正しい総合予算のあり方じゃないか。私は、実は総合予算の場合に予備費を九百億計上していくということは、できるだけ総合予算のたてまえからそうたくさんの予備費を予定をするというのでなしに、明確にやはりしていく必要があると思う。これは給与についても私は同じだと思う。そうなると、いまお話しの出てくるように、これはおそらく中村君も実は質問があると思うのですが、ちょうど石高の関連になっているので、総合予算、総合農政を行なう最初の年として百七十万トンは無理じゃない。しかもその百七十万トン全部入れたとしても前年よりも九十万トンも少ない七百五十万トン予算化しておいて、そうしてこれが総合予算です、やむを得ない場合においてのみ補正をするのですという考え方、そこにも問題があるし、また、予備費の中から出す出すと、こう言っているけれども、あらかじめ予想できるものを明確にしておくということが総合予算のたてまえでしょう。そういう意味から言って、いや自主流通米を希望しないものについては全量買い上げするという農林大臣の説明ですから、そういう意味で、私は、七百五十万トンは不足をしている、もっと計上しておくべきだ、予備費に九百億も入れる余裕があるならば明確にそこへある程度の予想をしておくことが正しい総合予算のあり方ではないかという考え方を持っておるわけです。それについてひとつ大蔵大臣の答弁をいただきたい。それとともに、農林大臣のほうでは、いや七百五十万トンで十分なんですという、そういう見通しを持っておられる。だからその見通しも聞くし、いや百七十万トンもけっこう確実なものですというお話ならば、その確実な根拠をひとつはっきりお示しください。
  95. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府が買い上げようといたしております七百五十万トンですね、これは米の平年作から見た従来の政府買い上げ量が九百二十万トンぐらいになろう、その中で百七十万トンが、これが自主流通米に回るであろう、そうすると七百五十万トンが政府にくるんだと、こういうことでそういう数字を取り上げたわけですが、これには農林省とも十分に検討を遂げまして、まずこの辺で間違いなかろう、こういうことでございます。それで先ほど農林大臣が全量買い上げますと、こう申し上げた。申し上げたのは、それは理屈で、もし万一自由米というものが出てこないという際には、それを全部買いますということなんですが、そういうことはありません。十分検討した結果、大体百七十万トン見当は自主流通に回りそうだということでございます。多少の違いが出てくる、あるいは多少以上の違いが出てくるかもしらぬ。そういう際に備えまして、まあそうたいしたことでないといたしますれば、これは食糧勘定というか、食管のほうの予備費、それから弾力条項、これは支障はなく運行する。ただ赤字が多少出てくるかもしらぬ。その赤字に対しましては、これは何とか一般会計から補給するという手段を講じなければならぬ理屈が出てくるわけでありまするが、これはあくまでも理屈のことでございまして、現実にはそれは考えておりませんです。
  96. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 累年の生産高、そういうものを統計からあらわしまして、そしてその数字をどこに根拠を置いたかというこの数字について、いま長官からその数字についての御説明をいたさせます。
  97. 松永忠二

    ○松永忠二君 委員長、ちょっと一言。  よく大蔵大臣は非常に自信があるようなことをたっぷり言われておいて、たとえば今度の補正なんかについても、実質上の補正をやるというときには、異常な事態が出たんですというような言い方をするわけですね。しかし、私はやはりそういう点はひとつちゃんと記憶をしておいていただきたい。そうして総合予算というもののたてまえ上、計上したものを、七百五十万と計上しておきながら、予備費からこっちへ持っていくということも実は少し考え方が甘かったんだということにもなるわけです。前回もその他の補正のときにもいろいろありましたが、あなたはその点をたいへんに明確におっしゃるのに、それからまた直ったときにはしゃあしゃあとまたそれをあたりまえのようなことを言われる。それではちょっと納得ができない。別に御答弁いただかなくてもいいですがね、あなたのほうでもそうおっしゃるのだから私のほうでもそう言う。  もう一つ。農林大臣、自主流通米が百七十万トン確実に入るのだという、そういう根拠を聞かしてくれと言ったんですがね、その質問したことだけははっきりひとつ御答弁願いたい、関連ですからそんなに長くはやりません。
  98. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 自主流通米は今回が初めて発足をしようとする年でございますから、これをどういう根拠で確かに百七十万トンは確実であるということを言うのかということになりますと、これは私はやはり一つの見込みにすぎないと正直に申し上げざるを得ないと思います。ただ、百七十万トンのうち七十万トンは酒米、もち米等の加工用原料米でございまして、加工用米は年間約八十六万トン程度の売り渡しを従来やってきておるのでございますが、これは政府の経費負担というものを全くいたしておりません、コスト価格で売っておりますので、したがって自主流通米としては最もなじみやすいものであるということで、季節的に政府の操作にたよらざるを得ないであろうという数量を差し引きました七十万トンを見込んだのでございます。これは相当に私は確実性が高いというふうに思っております。あと百万トンの一般消費用につきましては、生産関係あるいは流通関係の学識者等からも見解を聞きました上で、大体末端の需要において百万トン程度需要は十分に見込めるということで見込んだのでございますが、現段階でも流通段階等では末端の需要の積み上げをいたしておるようでございますが、おおむね百万トン程度需要があるということはほぼ確実であるということを申しておりまして、私ども現在までの検討の経過の中では、百七十万トンがおおむね実施できるという確信を持っておるのでございます。
  99. 中村波男

    中村波男君 私が、自主流通米制度は短期的なものなのか、かなりの長期的なものなのかという質問に対して、檜垣食糧庁長官の答弁は、実に明確でないわけです。したがって、政府は長期の需給計画に基づいていろいろ計画を立てておられるわけであります、そういう面から考えても、ある程度の計画というものは長期的に立てられておらなければならぬと思うのであります。もう一つは、ことしはいわゆる一般消費者用として百万トン、この数量はおそらく、いまも質問がありましたように、的確な資料あるいは条件等々から出た数字ではないように思うのであります。腰だめだと思うのであります。やってみてその上で勝負するという、これ以外の何ものでもないということを私は断定してはばからぬと思う。それはそれといたしまして、この制度を来年はさらに拡大をしていくという計画の上に立っておるのかどうか、そういう意味、内容も含めまして、短期的なものか長期的なものかをまずお伺いをいたしたいと思うわけであります。
  100. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 需給と生産量と、こういうもののバランスの上からいきますから、もしそれ来年度需給の面に対して不足を生ずるというようなことがあるとするならば、この制度を続けるわけにはまいらないと考えます。もしお説のようにこれがさらに過剰したという場合があるなら、そのときにあたってまた考え方を変えていかなければならぬだろう、こういうふうに思います。申し上げたように、食管法を基礎に置きますから、あくまで消費者消費の安定というもの、この上に立っての操作でございますから、そのように御了承賜わりたいと存じます。
  101. 中村波男

    中村波男君 農林大臣、それは責任大臣として私は全く聞きのがせない構想だと思うのであります。もちろん四十四年度産が大風水害等によって千二百万トン割るという事態がないという証明は私もできません。しかし少なくとも政府の長期計画によるならば、相当の期間米が余っていくということは明らかであります。だから作付転換等において二十五万町歩、三十万町歩をいわゆる稲作から転換をさせるという計画が片方で用意されておる、そういう見通しに立って自主米制度というものをつくり上げたのでありまするから、もちろんそういう天災地変等というような場合には、幾ら計画がありましても変更せざるを得ませんと。そのことはわれわれだって認めざるを得ません。しかし、少なくとも平年というものを基礎にいたしまして今後の需給というものを見通して、自主米というものをどういうふうに位置づけて、どういう計画で今後進めようとしておられるのか、これを具体的にしてもらわなければ予算審議になりませんよ。
  102. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 需給のバランスが、これが現在のような状態になっております。したがって本年度は一万ヘクタールを御協力を願うために、その施策を講じていることは御承知のとおりでございます。したがって、他に新たなる開田は当分の間見合わせてもらいたい、そういうようなものを含ませて、そうして来年度の生産というものを、大体ただいま御報告申し上げたようなもので大体見合うだろう、こういうような考え方をもって本年の予算案を編成したわけでございます。
  103. 中村波男

    中村波男君 大臣、私はことばじりをとらえたくありませんがね、来年度一万町歩稲作の転換をやるから、来年度の需給はバランスがとれるだろうなんというふうにいま聞こえましたが、そういうことはあり得ないですよ。
  104. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 来年度は一万ヘクタールかりに御協力を願ったとして、本年のような豊作が続くとするならば、増産はもっとより高くなるだろう、しかし、さらにいままでのような開田——新たに田をふやすというようなことは、これは極力抑制をしております。そういう点も合わせまして、そうしてそのバランスをとろうという考え方でございます。
  105. 中村波男

    中村波男君 その問題はあとから私また聞こうと思っておる問題でありますから、これ以上深追いいたしませんが、私の聞いているのは、自主流通米制度は短期的な構想なのか長期的なものか、そのことだけ答えてください。
  106. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ですからその点につきましては、たとえば生産と需給のバランスがとれなくなった——ちょうど生産されたものが消費者に分配をする、配給をするのにちょうどそれにぴったり合うというようなときがあるならば、自主流通米をやることはできません。こういうことを申し上げたわけでございます。
  107. 中村波男

    中村波男君 全く答弁に私はなっておらぬと思うのであります。  そこで、大臣にお聞きをするわけでありますが、大臣が二月二十三日にですね、いわゆる宮城県の仙台へ自民党の臨時大会においでになったときに、記者会見をおやりになった。その記者会見の中で、これは河北新報に出ておるのでありますが、「自主流通米は、うまい米を望む消費者の要望に応じ、需給のバランスをとるため一時的に設けられたもので、食管制度をくずすものではない。」と、こういうまあ重大な発言をしていらっしゃるわけです。私は一時的といいましても、一年二年でも一時的でありますし、三年でも一時的かもしれませんから、具体的な計画というものをお聞きしておきたいと、こう思って質問しておるわけです。
  108. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 私は一時的にこれを行なおうと言ったつもりはございませんし、ただそういうようなお話がございましたから、食管制度、現在の上に立って皆さん方が売ってくれと、どうしても政府で買えという米があるならば、全量買い入れをいたします。したがってその中に立って、自主流通米というような制度も、一つ消費者が喜こぶ、要求する米を、さていまの制度で政府がこれは新しいおいしい米をつくらなければいけないというような強制することはできないのです。であるから、これらも自主流通米をやることによって、幾らでも生産者という方々のほうにおいしいものをつくれば、それだけの所得といいましょうか、ものはあるんだというような点にも一つのかてになるだろうと、こういうようなお話を申し上げたのでありまして、河北新報がどういうふうに取り上げたか知りませんけれども、全新聞社はたくさんおりまして、全部の新聞に同じことを申し上げたわけでございます。
  109. 中村波男

    中村波男君 何度質疑応答を重ねましても、私に対する質問に対して正確な答えが出ません。私は一時的なのか長期的なのかということを聞いておるわけであります。したがって、それがまだきまらぬということになるならば、これは重大問題だと思うのであります。政府としてひとつまずこの構想というのは、一時的なのか長期的なのか。長期といっても二十年、三十年を私はさすものではないと思いますが、それをまず明らかにしてもらいたい。統一見解を出してもらいたい。
  110. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 自主流通米の制度を構想するに至りましたのは、現在の需給事情、それから現在に接続いたします将来の需給事情を見通しての上であることは申すまでもございません。で、農業白書でも御報告申し上げましたとおり、現在の平年反収を基礎にして反収の増を見込みますと、将来十年後におきましても、現在の作付反別に変動なかりせば、約百八十万トン程度の米の供給過剰になるという見通しを持っておるわけでございます。少なくとも私は自主流通米はそのような需給の見通しのもとでは、当分の間制度として有効に働くものであるというふうに考えておるのでございます。
  111. 中村波男

    中村波男君 当分の間というのも全く抽象的な表現でありますが、いまの想定では何年ぐらいを考えておりますか。
  112. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 農林省の需給見通しというものは、全省的に見通しをきめたものでございます。その見通しの上に立ちます限り、今後十年間の間に、自主流通制度をくずすような需給状態というものは起こらないであろう、というふうに私どもは見ております。
  113. 中村波男

    中村波男君 さらに、松永委員から関連質問で質問があったのでありますが、答弁が正確でなかったと思うのでありますが、一応ことしは百七十万トン。業務用七十万トン、一般用百万トン、これはまあやってみなければわからぬということのようでありますが、少なくとも計画としては来年度はこれを百五十万トンにふやすという、二百万トンに次はふやしていくという、こういうまあ目安というものを持っておられるのかどうか。また食糧の安定的需給ということ、価格の安定的供給という立場で、いわゆる政府の考え方によるならば、政府管理米を握っておって、足らないときにはそれを放出する、高くなったときも放出するというこういう需給価格面での操作をしようということでありますが、その限度をどれだけというふうに見て、自主流通米というものを今後運用されなければならんと思うのでありますが、その基本的な数字、考え方をお聞きいたしたいと思うわけであります。
  114. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 先ほど申し上げましたとおり、自主流通米は消費者需要動向に応じて、その選別購入ができるようにしたいという趣旨でございますから、したがって、ことしの一般配給用の百万トンというのが、お話しのとおり格別の科学的根拠があって積算をしたものではなく、一つの見通しにすぎませんということは、そのとおりでございますが、明年度それをどういうふうにするかということは、私はことしの自主流通の実績の推移を見て考えるべきであって、あらかじめ自主流通の量をこういうふうにふやすとか、あるいは据え置くとかいうようなことを決定することは、現段階では早過ぎると思うのでございます。  なお多少私見をまじえて申し上げますれば、現在の価格関係のもとで、現在の需要面の動向から推察しますと、これが非常に大きくなる、非常に急激に増大するということは、私は期待できないと思っております。なお、自主流通米の制度とあわせて政府管理米の需給操作について、どういうようなことをめどにやるかということでございますが、申すまでもなく今後も米の配給のシステムというものは、従来どおり続けるわけでございますから、したがって消費者において政府管理米、政府の定めた価格で一定量を購入したいという需要のある限り、その需要を十二分に満たすような操作をすれば私は足りることであって、そのことによって需給の調整はもちろんのこと、価格につきましても異常な高騰を抑止する機能は十分に果たせるものだというふうに思っております。
  115. 中村波男

    中村波男君 見通しとしては、自主流通米はそんなに量的な増大はないであろうという御答弁でありますが、またその前の前提としては、消費者の好みによって自主流通米のいわゆる購買というのがきまるわけでありますから、したがって消費者はうまい米を求めておるというこの流通がある限りにおいては、自主流通米をうまい米という立場において制度化いたした一つの大きな目的でありますから、ふえていけばですね、だんだんと自主流通米の操作を多くして、政府の買い入れ米は少なくしていく。こういう結果になると思うのでありますが、そういうふうに考えてよろしいですか。
  116. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 自主流通米がいまおっしゃるような、だんだんと嗜好に沿うようなものになっている。したがって生産されるものがだんだんそうなっていったときには、自主流通米というものは逆に少なくなっていくだろうと、私のほうは考えております。
  117. 中村波男

    中村波男君 自主流通米につきましては、いろいろ問題がありますから、さらに具体的に質問をいたしたいと思うのでありますが、その前にですね、大臣が全量買い上げということを踏み切られたというのは、いままでの政府見解としては初めてだったと思うのであります。政府は全量買い上げの義務はないのだという、こういうことで終始答弁をしてきたのであります。その点については、多くの農民は一つの安堵感を持ったと思うのであります。政府が自主流通米制度をつくることによって食管法をなしくずしにするんじゃないかという不満を持っておりましたが、新農林大臣長谷川さんが、全量を買い上げるということを言われたことにおいて、農民はほっとしておると私は思うのであります。そこで、ただ農林大臣の言明だけではなしに、いわゆる食管法四条にありますところの麦の無制限買い入れの規定のように、米についてもひとつ、食管法を改正して全量買い入れということを規定していただきますと、これは政策といわゆる食管法とが一つになりまして、不動のものになると思うのでありますが、そういうひとつ大英断で食管法の改正をおやりいただく、そういうお考えはありませんですか。
  118. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 御指摘のように、麦につきましては、食管法第四条によって生産者の要望がある限り、無制限に政府は買い入れをしなければならないという規定があるわけでございます。これは、麦は申すまでもなく政府が米のような需給の必要からして直接管理をするというような制度に立たないで、自由流通を前提にいたしまして、そうして農家が政府の定めた買い入れ価格政府買い入れを希望した場合には無制限に買い入れるという保証を与えておるものでございます。で、米につきましては三条の規定で、一条の目的達成のために必要な米は、これは農家から強制的に買い上げをする、いわゆる直接管理の方式を制度として確立をいたしておるのでございます。その際に政府集荷の保証をするために、現在政令の五条の五で、生産者は一定の除外例の場合を除いて全量を政府に売らなければならない。したがって裏側から申せば、政府としては、生産者の政府売り渡しの希望がある限り、無制限に買い入れざるを得ないという形になっておるのでございます。で、私は、米についての買い入れについてどういうような方策をとるかということは、これは法律上の問題であると同時に、またそれは政治、政策の問題であろうと思うのでございます。でございますので、現段階で食管法の改正をしなければ、その点についての法律上の不都合が起こるという問題ではなかろうというふうに思うのでございまして、食糧管理法の改正ということは、軽々に手をつけるべきではないではないかというふうに考えております。
  119. 中村波男

    中村波男君 まあ全量買い入れの規定を本法に入れよということについては、軽々に食管法は改正すべきでない、まあこういう御答弁でありますが、しからば自主流通米制度は、食管法の中では運用できないのでありますから、食管法の施行令を改正されなければならぬと思うのでありますが、どういうように改正をされる予定ですか。
  120. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 御指摘のように、現行の食糧管理法施行令第五条の五、第六条の規定では自主流通米は制度として完備しない、できないことになっております。で、したがって自主流通米を実施いたしますためには、政令の改正が必要なのでございますが、現在私ども内部でいろいろ検討いたしておりますが、考え方としては、政令五条の五の一項の本文、生産者は、その生産した米穀は政府以外に売ってはならないという規定はそのままに残しておきたい。ただし、現在もただし書きがついておりますが、ただし書きの中で農林大臣の承認ということばにしますか、許可ということにいたしますか、行政規制のもとで生産者か集荷業者——農協等の集荷業者に委託をして、こうこうこういうところへ販売する場合は、この限りでないという規定にいたしたい。なお、六条は買い受けをできる者として、登録卸売り業者、それから農林大臣の指定した実需者、これは米穀の買い受けをすることができるという規定の改正をいたしたい、というふうに思っておるのでございます。
  121. 中村波男

    中村波男君 いま、食糧庁長官の御説明によりますと、施行令第五条の五の、米穀の生産者は政府以外の者に売り渡してはならない。これはもう手をつけない、こういうことでありますから、おのずから食糧管理法によるいわゆる罰則規定というのも、もちろん手をつけられないと思うのでありますが、そのとおりでありますか。
  122. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 罰則規定については、手を触れないつもりでございます。
  123. 中村波男

    中村波男君 国税庁のだれか、おいでいただいておりますか。これは大蔵委員会等であったと思うのでありますが、国税庁が、いわゆる米屋の卸しはどうかと思いますが、小売り業者に対する課税をされる場合に、いわゆる自由米販売というものがなされておる、俗に言うやみ米を扱っておる。だから、そういう収入もある程度課税標準の中に入れて徴収をなさっておるということを聞いたことがありますが、その実態をひとつ御説明をいただきたい。これは大蔵大臣から御説明願ったほうがいいですか。
  124. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 税と刑法のほうは別々の考え方でやっております。
  125. 中村波男

    中村波男君 やっていらっしゃるわけですね。
  126. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そうです。
  127. 中村波男

    中村波男君 どれくらいですか、その内容は。
  128. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 内容までは存じませんが、税法は税法で、かりにやみ米でありましても、それによる所得がありますればそれに対して課税をすると、こういうたてまえでございます。
  129. 中村波男

    中村波男君 内容をひとつお願いします。
  130. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 計数のことでございますので、私から御答弁いたします。  昭和三十九年に東京国税局管内で米の卸し売り業者あるいは小売り業者の課税漏れがかなり発見されまして以来、毎年税務当局といたしまして、は米の販売業者に対しまして調査をいたしております。その結果、かなりの申告漏れがなお継続して出ております。この申告漏れ所得の内訳は、いま御質問にありましたような、いわゆるやみ米の収入に基づきますものと、正規の配給米を格上げする、あるいは自由米にして売るというような所得も合わせて入っておりますので、御質問のやみ米収入といいますか、いわゆる配給米以外のルートによります収入が幾らでありますかは、必ずしもつまびらかではございません。国税庁といたしまして、いままで販売業者につきまして課税漏れの結果を総体的に集計しておりますわけではございませんので、ある程度サンプルになるかと思いますが、若干の例を申し上げますと、法人の販売業者につきましては、昭和四十二年度におきまして実調しました一件当たりで百万円程度の増産所得が上がっております。したがって、課税漏れと見られます所得額といたしましては、総額で十億九千、それから個人のほうにつきましては、東京局管内の税務署で調べました例からいたしますと、一件当たり五十万から百万ぐらの申告漏れが発見されております。
  131. 中村波男

    中村波男君 総理府の生計統計によりますと、大都市では大体やみ米というのを四〇%、その他でも三〇%以上消費者が食べておるということが明らかになっておるのであります。この点を踏まえまして、いわゆる自主流通米のメリットの中に、やみ米を自主流通米に吸収するという一つの項目があると思うのであります。長谷川農林大臣もそのことを強調していらっしゃったのであります。そこで、農林省としては、今日大体いわゆるやみ米というのがどれくらい流通をしておりましてですね——このやみ米というのは、これは食管法違反という経済事案だけではなしに米全体の流通を混乱させておるのでありますから、こういうやみ流通というのを、これは政策的にいいましても何としても少なくしなければならぬと思うのであります。そういう意味において、自主流通米にやみ米が吸収されるということに実効があがりますならば、自主流通米の目的の一つとして、これは大きな成果があるというふうに私は評価するのにやぶさかではございません。自主流通米そのものには反対でありますが、現象的には評価をいたします。  そこで具体的に聞きますが、農林省は、それがどれくらい流通しておって、百万トンの自主流通米の中でどれだけこれを吸収するかという計画があると思うのでありますが、お示しいただきたいと思います。
  132. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 政府管理にかかわらない米の流通という意味でそれをかりにやみ米というふうに呼びますならば、農家が保有したもののうち、自家消費以外のものを政府以外に売っておるという数量が需給推算の上で出てくるのでございますが、その数量が七十万トンないし百万トンという、年ごとに違いますが、そういう数字がございます。いま国税庁のほうからの答弁にございましたものには、そのほかに、はなはだ好ましくないことでございますが、政府管理米を格上げ販売をしておるということが指摘をされておるのでございます。この数量は私ども把握することが不可能でございます。家計調査であらわれました全都市約三〇%の非配給米という記帳につきましては、消費者の意識としては、自分は正規の配給米でないものを受配をして食っているという意識があるということだけは私は確実であると思うのでございます。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 それがはたしていわゆる格上げ米であるか、あるいはやみ米であるかは、私はどうもなお疑問の点もあるのでございます。いずれにしましても、消費者の意識として三割程度のものが非配給米であるという意識で受配をしておるということだけは間違いない。したがって、消費者のサイドでは、全体の受配量約七百万トン余りということで考えられますれば、二百万トン程度のものは配給米でなく自分の選好において米を選びたいという意識を持っておるということだけは確実に言えるかと思うのでございます。したがいまして、百万トンの自主流通米が、従来のいわゆるやみ米なりあるいは格上げ販売米をどういうふうに吸収するかということを計画的にどう考えておるかということについては、ちょっと私どもとしては、こういうふうに考えておるというふうにはなかなか申し上げにくい。しかし、正規のルートで公明正大に消費者需要に対応できるような流通経路ができるということは、私は従来の不明朗なものを排除するのに非常に大きな役割りを果たすだろうということだけは言えると思います。
  133. 中村波男

    中村波男君 まあ答弁としては檜垣さんの人柄が出ておりましてわりかた正直な答弁をいただいたと思うのでありますが、私は実際には農家が売ります量というのは、まあ七十万トンと言われておるのでありますが、それはまあその程度じゃないかと思いますが、問題は政府の管理米が卸、小売りの段階で、いわゆる強化米、自由米という名前で横流しがされておるというところに問題があると思うのであります。これには全くいままで政府は手をつけるということをしてこなかった。そこで、今度は自主流通米制度を設けることによって、いわゆるそれを防ごうという考えでありますが、ここに大きな矛盾点が私はあると思います。なぜ自主米、やみ米がそれほど消費者需要にこたえなければならないかということは、管理米がまずいからであります。そうでしょう。安くてうまい米が管理米として配給されるならば、いわゆる管理米、百五十二円よりも、私も買っておるのでありますが、百九十円から二百円、総理の御家庭で奥さんに聞いていただいてもわかると思うのでありますが、おそらくこの中に管理米を食べていらっしゃる方は多くはないと思う。そこで、今度自主流通米を百七十万トン、うまい米を政府は、いわゆる公認をして流通をさせるのでありますから、いままでまずかった政府米がさらにまずくなるという、こういう結果が出てくると思います。したがって、消費者はさらに管理米からやみ米、自由米を食べなければならない。選好をしなければならぬという悪循環があると思うのでありますが、その点どう考えていられますか。
  134. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 一応そういうようにもとられますけれども、私たちの考え方は本年度の大体の数量からいって、いままでのような制度を改革することができるだろう。たとえば、自主流通米に対しましては、生産県及び生産者団体、したがって、その種類までもはっきり明記をして、そうして、小袋詰めにして出していこう。こういうような考え方も持っておりますから、したがって、自主流通米と管理米というものの区別ははっきりつけることができ得る。こういうような考え方をもって、いませっかく操作をしておるところでございます。それから、もう一つ何でしたか。
  135. 中村波男

    中村波男君 まあいいです。  自主流通米は、やみ米や政府米と区別をするということを盛んに言っていらっしゃいますが、たとえば、袋へ入れると言いましても、袋へ入れておそらく表示はされるであろうけれども、封印までするというわけにはいかぬと思うのです。したがって、そういうことが、そういう措置をとるから流通米はやみ米というような、そういうことにはならぬのだということには私は断じてならぬと思うのであります。特に価格統制というものの制約がないのでありまするから、いわば政府の公認したやみ米であります、自主流通米は。もう一つ、いま大臣にお答えいただかなかったのは、百万トンといううまい米を、政府の買い入れ米の中から抜くのでありますから、いままででさえまずかった政府管理米がさらにまずくなる。実際にまずくなるかまずくならないかは別にしても、消費者はそう受け取らざるを得ないのであります。そうすれば、うまい米ということで、今度は自由米とやみ米が競合すると思うのであります。また、農協等につきましても、農協県団体、全国団体を通じてということに要綱はなっておりますが、農協の団体から小売り業者、卸業者へ売られるということを食いとめる方法はないと思うのであります。そういう流通の実態というものを想定いたしますと、結局は自主流通米を認めることによってやみ米を多くするという、私はこういう結果に必ずなると思う。そこで、このやみ米を今日でもほとんど食管法違反として検挙をされたことはないのでありますから、法務大臣から、ひとつ、この事案について、検挙数等についても、参考までに私はお聞きをしておきたい、こう思うわけです。
  136. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) お答えいたします。  いまお話しのやみ米のような事件につきましては、検察庁が独自で最初検挙をするというようなことは従来やっておりませんで、やはり、最初には警察が取り締まりまして、そうして送検されてまいりまして、私どもの検察の仕事になるわけでございますが、検察庁におきまして受理いたしました人員を統計によって見ますと、最近の五カ年間の平均は九百三十三名でございまして、そのうち起訴の平均は三百九十一名、要するに起訴率は六五%強と、こういうことになっております。昭和三十年の統計では、受理人員が十三万七千七百八十四名、非常に多いのでございますが、三十五年には、これが八千百四十三名、さらに最近では、前述のように、年平均千名弱というようなことになっております。こういうこの人員の漸減の理由は、法務省としてもそう的確につかんでおるわけではございませんが、一般的に考えまして、非常に需給関係が緩和してまいりましたので、だんだん減ってきたのではないかと考えます。しかし、やみ米は、必ず、やはり違反事件でございますから、なるべく軽微なものは避けまして、大口な大量を、暴利をむさぼったりするような大もののやみ米業者は、今後、やはり検挙していかなければいかぬのじゃないか、さように考えます。
  137. 中村波男

    中村波男君 法務大臣、ひとつ、認識をあらためてもらいたいと思うのでありますが、食糧庁長官が、農民が売るやみ米が七十万トン、その他の段階で二百万トンということを言っておりますし、それから内閣の統計においても、大都市においては四割以上がやみ米を食べておる、大阪においては公然とやみ米の市場が立っておる、最近、東京でも正米市場が立とうとしておる、こういう情勢ですね。したがって、食糧の需給関係が実にうまくなりまして、いまでは余剰ぎみだという中で法律だけ残っておりますから問題が出ると思うのでありますが、こういう底抜けの、玄関から大手を振ってまかり通るような、こういう法律がほかにあるかどうか。ひとつ、参考までに聞かしてみてください。
  138. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) どうも、やみ米取り締まりの法律のようなものがほかにあるかというお尋ねでございますが、寡聞にしてそういうことは聞いておりませんが、今後とも、いま御意見もございましたので、こういう食管関係の違反事件については、まあ微妙なところもございますから、今後、大いに検討していきたいと思います。
  139. 中村波男

    中村波男君 そこで、農林大臣に質問を戻しますが、問題は、私が先に指摘をいたしましたように、自主流通米ができたからやみ米が吸収されるのではなくて、おそらくやみ米と自主流通米が競合する形で総体の量というのはふえていくのじゃないか、そのことが今度は自主流通米の政府の考えておる、いわゆる集荷量なり流通量というものにも影響が及びますし、それから価格面でもこれはますます高くなるという、こういう結果になると思うのであります。したがって、このやみ米を流通上においてどのように規制をして正規なルートに乗せるかという対策をお考えになっておるのかどうか。また、いま法務大臣から報告のあったような食管法にしても食糧緊急措置令等にいたしましても、全く底抜けの状態にあるわけでありますが、こういう関係とにらみ合わせてどう対処されようとしておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  140. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 自主流通米が正規の流通経路を通して取り扱われていることになれば、それだけ消費者の選択にこたえやすくなる。したがって、従来のような配給の乱れというようなものをある程度防止することもできるであろう、こういうふうに考えております。だから、いわゆるただいまお話しのようなやみ米というものは、むしろ少なくなっていくのだろう、こういうふうにも考えておりますし、特に今年度の作付等を見ましても、農家自身がやはり何といっても消費者の好むものをつくらなければならないのだという、こういうような考え方が非常に強くなってきているということは見のがすことのできない事実だと思うのであります。これらをあわせまして、ただいまお話しのような点については、まあまあ少なくとも現在のやみ米というようなものは少なくなって、やはり自主流通という面はやはりわれわれが見込んだぐらいな程度のものには大体落ち着くだろう、こういうふうに考えており、反面また配給米だからといって御指摘のようにまずくなるということはおそらくないのじゃないか、こういうふうに考えるのです。ただいま申し上げたように、農家自身がいままでのように、たくさんつくればいいのだ、量産すればいいのだという、こういう考え方ばかりでなくなってきておる。こういうような点等を思い合わせたとき、そのようなことはだんだん少なくなっていくだろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  141. 中村波男

    中村波男君 まあ時間がありませんので、うまい米とはいかなるものかという問題についてもいろいろお聞きをしたいと思っておったわけでありますが、次の質問は、卸売り販売業者の卸売り価格と小売り販売業者の小売り価格について、物統令第四条に基づいて農林大臣が告示をすることによりまして最高価格を統制しておったのでありますが、これを今回ははずすという方針だと聞きますが、その真意についてお伺いいたします。
  142. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 先ほど来申し上げておりますように、自主流通米につきましては、需要の動向に対応して価格形成を即応させていくというところに妙味があるわけでございますので、したがって、物統令による最高販売価格の設定というような画一的な価格規制にはなじまないというふうに考えますので、自主流通米につきましては、末端価格価格規制ということをやめたいというふうに考えておるのでございます。ただ、政府管理米の最終末端価格につきましては、行政上の基準価格なり、あるいは何らかの法的規制なり、消費者に一定の価格で一定の量が配給し得るような措置は講じたいというふうに考えております。
  143. 中村波男

    中村波男君 私は、また議論の繰り返しになりますが、価格統制を廃止すること自体も食管法のもとで自由化するということについては、食管法の違反であるというふうに考えておるのであります。これはまあ財政的に考えてみましても、大蔵大臣、二重価格制をとっておって、そうして国が多額な財政負担をしておるわけです。今度は国の管理米についても物統令がはずれるということは、これはそれ以上で売ってはならぬというきめ手をなくするわけです。そこで、農林省は基準価格をつくって指導するという、こういう方針でありますが、これも需給関係によって実態というのは違ってくると思いますが、問題は、やみ米、あるいは自由米、うまい米という、こういう関係において自主米が出たから、さっき国税庁の発表にあったように、いまの米屋の段階で政府米が相当いわゆるやみ米として売られておるという、こういう実態からいたしまして、百万トンの自主米ができたからこれが押えられるかというと、押えられないと思う。したがって、政府管理米の中の上質米というのは、依然として自主米、自由米、やみ米として売られていく。それは政府の基準価格よりも十キロに対して二千円なり千八百円なり高いものである。二重価格政府が行ないながら、そういうことを放任するという、こういう結果になるのではないかというふうに思うわけです。したがって、これは、そういう政府が常に言われます国民の税金をむだづかいしてはならぬという、こういう立場から見ても、少なくとも政府の管理米だけは、いわゆる価格規制というものを、物統令を廃止しなくて、押える必要がある、こういう私は所論を持つのでありますが、したがって財政ともからみますので、農林大臣あるいは大蔵大臣お二人からひとつ御見解を承わりたいと思うわけです。
  144. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 政府管理米につきましては、これは基準価格をつけまして、この監督は十分できるような方途を切り開いていく考え方でございます。
  145. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府の管理するほうの米は、これはかりに物統令がはずれるとしますか——はずれるということになるか、その部面だけ残しておくかということはまだきまっておりませんけれども、あるいははずれることになるとして、はずれるその場合のことを考えてみますと、そうしますと、これはよほど農林省がその末端価格に対しまして指導をしなければならぬ立場にあると思うのです。で、お話のように、これは政府が二重価格までとっておるのですから、その趣旨が徹底するような指導をしなければならぬ。これはまあしかし、小売り、卸、この販売店に対しましては登録制度というようなことを農林省はやっておるわけであります。そういう方面のにらみ、また一面において自主流通米も流通するわけですが、それについてもおそらく農林省はこれを指導するということになると思いますが、この自主流通米の価格、これの牽制力というものもこれは働いてくると、こういうふうに思いますので、私はそもそも政府管理米の末端価格については心配いたしておりません。
  146. 中村波男

    中村波男君 農林大臣はそういうことのないように指導すると言われますが、指導というものには限界があるのでありましてね。私はやはり、今後の事態を考えるならば、食管法の十条というものをいまから考えて、政令としてきめ手というものを持っておくようなことも必要じゃないか、こういうふうに考えておるわけです。そこで、いま大蔵大臣は、まだ物統令をいわゆる食糧から除外することについてはきまっておらないということでありましたが、これはまだ政府で統一した見解として廃止するということになっておらないのかどうか、さらに御質問を申し上げるわけであります。  次に、経企庁長官にお尋ねをするわけでありますが、この米を物統令からはずすかはずさないかということについては、経企庁としては、相当問題があるというので、いわゆる首をかしげて慎重な態度をとっておられた、こういうことを聞いておるのであります。その理由としては、自主流通米制度ができ上がることによってすでにやみ米が千円はね上がったという実態があるわけであります。したがって、ますますいわゆるうまい米という名前において米の自主米、やみ米というのがふえていく。そうなりますと、なるほど政府がことしは物価を五%に押えたいという政策目標を持っておりまするけれども、米の上がるということは計算に入っておらぬわけです。上がったとしても、六百何十万トンの政府の管理米が上がるということが計算の基礎に私はなるのではないかと思うのでありますが、これは量からいいますと、大ざっぱに言って半分ぐらいになるわけでありますから、相当物価を押し上げるという面から見ても重大だと思うのです。したがって、経企庁長官として、物価との関係においていわゆる食糧を物統令からはずすことについてはどういう意見を持っておられるか、また今後のいわゆる自由米、自主米というものの値上がりというのをどういうふうに見ておられるかどうかをあわせてひとつこの機会にお聞きをしておきたい、こう思うわけです。
  147. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お答えいたしますが、物統令の廃止ということについては、まだ私どものほうへ正式な御相談ありません。しかし、そこでもし物統令が廃止されても、先ほど農林大臣食糧庁長官のおことばによれば、それほど米価上がらないというようなことでありますが、しかし万が一予想に反して米価が上がるような危険があるというようなことであれば、それはそれについてのやはり何か取り締まりの方法を講じなきゃならぬ、そうして米価はあくまで上げないという方針でいきたい、こう考えております。
  148. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 物価統制令からはずすかはずさないかというようなお話でございましたが、大蔵大臣がおっしゃったように、まだそれが決定的なものではないということだけは申し上げられると思います。いま事務的にいろいろこの面について折衝をいたしておるわけでございまして、それからやみ米が非常にはね上がったではないかというようなお話でございますけれども、そういう反面もございます。それはなぜかとなると、自主流通米ができるから、誕生するから、それによって上がったという意味ではなくて、御承知のように、ことしは政府の買い入れという、政府に全部出してしまおうじゃないかというような点で、飯米もほとんどないぐらいにまで全部供出をしてしまっておる、これは事実でございます。そういうような点で、やみ米に売る米が非常に少なくなっておる。そういう点から、幾ぶんか上昇しているということだけは見のがすことのできない事実だと考えられます。
  149. 村田秀三

    ○村田秀三君 関連。ただいまの末端米価の問題でありますが、いまの論議を聞いておりますると、大蔵大臣も、農林大臣も、また経企庁長官も、末端米価を物統令からはずす考えはない、こういうそれぞれの発言でありますが、前回補正予算の際に、わがほうの木村委員の質問に答えて、食糧庁長官は、物統令はこれをはずし、そうして末端価格は行政指導するということを明らかに表明をいたしました。その際に、閣僚は何も打ち消しをしておらない。それはそのままで通っておって、今日の段階で閣僚すべてがその意思統一をなされておらないということは、はなはだ疑問があるし、問題がある。私はそう思いますので、食糧庁長官も含めまして、政府の統一的な見解を明らかにしていただきたいと思います。
  150. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 補正予算の際もお答え申し上げました関係から、私からまず事情を御説明申し上げますが、政府内部で、自主流通米の発足にあたって、自主流通米については物価統制令の適用を除外する、適用しないということについては意見の一致を見ております。それから政府管理米の末端価格については、何らかの価格規制を必要とする、何らかの価格規制を行なう考えであるという点も、関係各省間で見解が統一されております。ただその際に、物価統制令の適用を政府管理米のみについて残せるものであるかどうかという法律上の見解の問題をなお詰めなければいかぬ点もございますし、また行政価格指導で実効があがるのならば、そういう方向も考えられる。また、先ほどちょっと中村先生からもお話が出ましたが、食糧管理法十条のいわゆる伝家の宝刀というものが控えておるもとでどういう考え方をとったらいいかという点について、関係各省間で最終の結論を持ちませんで、結論までに達しておりませんが、慎重に協議を進めておるという段階である。ただ、私食糧庁長官としては、現在の需給事情のもとでは、もはや法的規制までやらなくとも、政府の行政指導価格としての基準価格を設け、それを厳格に守らせるような指導をすることのほうが適切ではないかという考え方を持っておるということを申し上げたのでございます。
  151. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) お答え申し上げます。  ただいま檜垣長官が申されましたように、物価統制令というものをはずすというその精神には変わりはございませんけれども、まだその事務的の段階を済んでおりませんので、その事務的の段階を済まして、そうした後に行なっていきたいと、こういう考え方でございますので、まだそこまで詰めてないと、こういうことは申し上げられると思うのでございます。  それから基準価格でございますが、基準価格については、中村さんの御心配もあると、われわれも心配をしております。この点については、その点が十分に監督のできるような方法を開いて、そして厳格にこれらを守っていくようにやってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  152. 中村波男

    中村波男君 時間がありませんから、法制局長官にも物統令の廃止について食管法との関係でお聞きをしたいと思っておりましたが、まだきまっておらぬということでありますからい最終的には法制局において審査をされると思いますので、衆議院等の答弁等に照らしまして、ひとつ間違いのない取り扱いをしていただきたいということを要望いたしまして、次の質問に入りたいと思うのでありますが、長谷川農林大臣は、米価審議会の委員の選任につきまして、本年度は生産者、消費者の代表を入れるということをまあ就任以来たびたび言明をしておられるのであります。また、その方針にのっとりまして、できるだけ早く人選を進めて、田植え前に米審を開きたいということであったようでありますが、それがいろいろな関係でおくれておる。また、ここ一日二日の新聞によりますと、生産者あるいは消費者代表を入れることについて相当問題が出てきたというような報道もなされておるのであります。また、農協は、生産者三分の一、消費者三分の一、いわゆる学識経験者——中立委員三分の一で構成せよという要請を農林省にいたしたとも伝えられておるのであります。これは私は、当然な、公正な構成を期するという意味において、要求だと思うのでありますが、本年度の米審につきまして、時間がありませんから端的にお伺いいたしますが、生産者代表として、従来は日本農民組合の組織から出しておられたのであります。また消費者代表としては、いわゆる総評から選任が行なわれておったと私は思うのであります。そういう点を含めまして、ほんとうの生産者、ほんとうの消費者代表として、従来の慣例等から考えまして、どのような選任を行なおうとしておるのか、お聞きをいたします。
  153. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 昨年の経緯もございますので、また私が昨年体験をいたしましたいろいろな点がございますので、これらをあわせまして、それらの基礎において今年の審議会の委員の任命を行なっていきたい、こう考えております。しかしまだ、生産者団体はどこを入れるとか、消費者団体を何にするという、そういう段階までは進んでおらないのでございます。ただいま、新聞に、こういうお話でございましたが、新聞もまだ推測だと思うのでございまして、私のほうはまだそこまで行っておらない。ただ、昨年の経緯もありますので、十分その点を留意し、尊重しながら、今回の審議会委員の任命をしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  154. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連。ちょっと話があとに戻って恐縮なんですけれども、先ほどの統制令をはずすかはずさぬかという点ですね。これ、大臣と長官の御答弁の間に微妙な食い違いがありますよ。まず第一として、自主流通米については統制令をはずす、これはもうはっきりしておるのですね。この点ももう一ぺん答えてください、明確に。  それから第二の点として、政府買い入れ米については、長官の御答弁は、統制令をはずすかどうかまだ未定だ、もしはずすとすればどういう方法があるか、長官としては、基準価格のようなものを設けてそれで指導するという方法が適切だろうと思う——これは仮定の問題での個人的な見解として述べられていることで、統制令をはずすかどうかは未定だと、こういうようにまだクエスチョンマークがついておるのですね。ところが、大臣の御答弁は、はずすという精神はきまっておる——精神とは何ですか、精神とはすなわち方針ということでしょう、その点をはっきりしておいてくださいよ。農林大臣は、はずすという精神はきまっておるけれども、まだ事務的には調整がついてないと言う。そこに微妙な食い違いがあるのですよ。これは非常に影響のある問題ですからね。だから、大臣と長官だけでこそこそ話をしているだけでは足りぬと思う。またほかの大臣が別なことを言われたら、すぐこれは裏切られるのですからね。統一見解をはっきりきめて、政府としての、はずすかはずさぬか、その点をぴしゃっと答弁してください。よけいなことは要りませんよ。
  155. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 管理米につきましては、まだ各省との意見の一致を見ておりませんので、はっきり申せと言われても——自主流通米については、長官がお答え申し上げたように、その精神でいくつもりでございます。しかし、管理米については、いかにするかということをまだ各省と連絡中でございますので、その解決がつくまではっきりしたことを申し上げるわけにはまいらないのであります。
  156. 秋山長造

    ○秋山長造君 さっきの御答弁とはまた違うのですよ。さっきは、自主流通米については、これはもう食糧庁長官のおっしゃったとおりなんですね。さっきの大臣の御答弁は、政府の買い入れ米についての話なんです。買い入れ米についてはずすという精神はきまっておるけれども事務的な調整がついてないからと、こういうお話だった。いまのお話では、それからちょっと後退して、買い入れ米についてはまだ精神もきまっておらぬ。精神があと戻りしておる。だから、その点を明確にしてくださいよ。イエスかノーかはっきりしてください。いろんなことをおっしゃらぬでよろしいから、政府の統一した見解をぴしっと言ってください。
  157. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 同じようなことをお答え申し上げて何でございますけれども、自主流通米につきましては、はずすというその精神をそのまま持っていく、したがって、管理米いかにということでございますが、管理米は、大体農林省の私の意見をその中へ加えたということで、まだこれらは各省との意見の統一をしておりませんので、いずれこれらが統一いたしましたらば——ごく近いうちにこれらは統一見解をはっきりしなければならぬ問題でございますので、その節までお待ち願いたいと存じます。
  158. 秋山長造

    ○秋山長造君 はずすならはずすとはっきりしてください。経企長官、政府の統一見解を明確に答えてくださいよ。だれか代表的な閣僚、はっきり答えてください。総理大臣、ぴしっと答えてください。まことにあいまいなんです。
  159. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ただいま申し上げましたとおり、管理米については、いませっかくいろいろ各省との協議をしているところでございますので、ここで明言するわけにはまいらないということであります。
  160. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういうあいまいなことを言わないで、方針がきまっておりませんならきまっておりませんとはっきり言ってくださいよ。もう一度明確に言ってください、明確に。
  161. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 管理米につきましては、農林省だけの見解をもって行なうわけにはいきませんので、各省とも十分連絡をいたしまして、その協議の結果を皆さんに御発表申し上げたいと考えておるわけであります。
  162. 秋山長造

    ○秋山長造君 もう一ぺん、もう一ぺん答弁やり直し。
  163. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 物統令の関係で、私のほうからお答えしたほうが適当じゃないかと思うのでありますが、自主流通米につきましてはこれをはずすという方針でありますが、まだ物価対策閣僚会議へかけておりません。これ、近くかけます。かけたら確定いたします。政府筋で方針が確定いたします。それから、管理米につきましては事務当局と相談中でありますからして、相談がまとまり次第、また閣僚会議へかけて決定するということにいたします。
  164. 秋山長造

    ○秋山長造君 せっかく長官のお答えですけれども、そうなると、さっきの農林大臣は、ただ農林省としてはずすというのですか。自主流通米については政府としての方針を聞いておるのですよ、中村君は。大臣政府としての御答弁のはずなんです。政府としては自主流通米については統制令をはずす、ここをさっきはっきり言われたのです。それをいまの菅野長官の話では、政府としてはまだ関係閣僚会議にかけていないから云々と言う。そうすると、どういうことになるのですか。われわれは政府の方針を聞いておるのですから、農林省だけの方針を聞いておるのじゃないですよ。
  165. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 自主流通米については、政府としてはまだ閣僚会議にもかけておりません。けれども、農林省としては、自主流通米についてはこれをはずす精神でございます、こういうふうに先ほど申し上げております。したがって、(「精神、精神」と呼ぶ者あり)精神とは何ぞやと言うけれども、精神とは、その方針でございますと、こういうことを申し上げておるのでございまして、したがって、管理米については、まだ各省との打ち合わせがついておりませんから、これらについては、はっきりいま申し上げるわけにはまいりませんと、こういうように申し上げたわけであります。——自主流通米につきましては、政府としては、物統令からはずす方針でございますけれども、まだ最終の閣議にかかっておりません。それから、管理米につきましては、各省との打ち合わせがまだ始まったばかりでございますので、近いうちにこの結論を出しまして御発表申し上げる考え方でございます。(「予算の関係はどうなるのだ」と呼ぶ者あり)
  166. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 予算との関係いかんという声でございますが、予算は予算できめてあるわけで、これはもう固定して動きません。末端の価格がどういうふうになろうと、予算のほうには関係はありません。(「調整して、調整して」「事務当局から文句が出るのだから、そんなことを言ってもだめですよ」と呼ぶ者あり)いま、事務当局が出てきたのはどういうわけかというお話でございますが、いまの答弁について言い方が多少修正されたらいいじゃないかという話でございましたが、私から、こういうふうに考えるのが妥当であると申し上げまして、それでよかったですねと、こういうことでございますから御了承願います。
  167. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。大蔵大臣、ちょっと理解ができないのですがね。かりに物統令が閣議でどうきまろうとも予算には影響ない、こういう趣旨ですか。その点がわれわれとしては納得できない。
  168. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府の売り渡し価格が固定しておりますので、末端価格に多少の異同がありましても予算には影響はございません。
  169. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 農林大臣、いま一度発言をしてはっきりさしていただきたいと思います。
  170. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 自主流通米につきましては物統合からはずす、そういう考え方でありますけれども、閣議にまだかけておりませんので、正式にこれを申し上げるわけにいきませんけれども、その精神でおります。それから管理米につきましては、まだ各省との連絡をしているところでございまして、なるべく早くこれを決定いたしまして御発表申し上げたいと存じております。
  171. 中村波男

    中村波男君 時間がありませんから。物統令の、まだ今日政府がきめておらないということ自体が、大蔵大臣は数字の上で予算に関係がないとおっしゃいますけれども、物統令をはずすか、はずさないかによって政府の管理米というものの中身が違ってくる、こういうことが一つあります。それから、基準価格というものをどうするかということによって米の価格というものに大きな影響がある。そういう点から見ましても、予算の数字には関係がないからよろしいということには、予算を審議するという広い意味においては私は怠慢だと思う。ましてやこの物統令をはずすということは食管法違反の疑いが多分にあるのでありまするから、したがって、予算を審議する前提としては、物統令をはずすかはずさないかということを政府で決定をしていただいて、その決定される前の段階でわれわれにもう一度意見を言う機会をぜひひとつ農林省は与えてもらいたい。そういうことを申し上げまして、最後に、きょうの新聞を見ますと、韓国援助米三十三万トンが来週調印される、その条件としては、十年据え置き二十年で現物弁済だということになったようでありますが、この問題は、前農林大臣の西村さん時代から韓国から申し込みがありまして、農林省としては、いわゆる食管法のたしか第七条を受けて立ちまして、政令で無償で貸すことについては問題があるということで、手続上で今日まで延びておったと思うのであります。それが先般、佐藤総理と張副総理ですか、とのトップ会談で、これが大体承諾をされまして、今回政令をもって貸すという手続をされたことについて、私たちは大きな疑問を持っておるわけであります。したがって、政令をもって貸されるということについての見解と、これを貸されますまでの経過を総理からひとつお伺いいたしたい、こう思うわけであります。
  172. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 経過につきましてはただいまもお話がございましたが、韓国におきまして引き続く干ばつ等のために食糧に不足を来たしておる、昨年の秋からこの話が、韓国側からも希望が出ておりまして、三十三万トンを韓国に対してしかるべき方法において供与をいたしたいということで、両国間におきましても相談をいたしておりましたし、それからこちらの手続の問題につきましては、関係省庁の間にも十二分に協議を遂げまして、食管法に基づきます政令の改正を行なってもらって、それによりまして、ごく最近の機会に契約をすることに相なっておるわけでございます。  法制的な関係等につきましては、法制局長官から説明を願うことが適当かと思います。
  173. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまの法制上の関係について申し上げますが、御質疑の中に農林省の見解を御引用になりましたが、終局的に農林省その他関係省庁を含めまして、私どももむろん入りましたが、それで統一的な見解に到達し、その見解にしたがって政令を出すということになったわけでありますが、御疑問の点をむしろ御指摘いただくといいのでありますが、食糧管理法の第三条では、米穀の生産者に対して政府に米穀の売り渡し義務を課しておる、そういうものでありますから、めったやたらに政府がこれをかってに処分することはむろんできませんが、食糧管理法の第七条をごらんになりますと、これは十分御存じのとおりに、「政府ハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ貸付又ハ交付ヲ為スコトヲ得」この貸し付けをなすことを得、というのが、明瞭に食糧管理法の七条の規定にございます。したがって、この法律に基づく貸し付けとして今回の措置を講じたわけです。むろん「政令ノ定ムル所ニ依リ」でありますから、そのための政令を制定したと、こういうわけでございます。
  174. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは法文をそのまま見るとありますが、食管法というのは国内法ですね。財政法から見て、これは韓国、いわゆる外国にそれを無償交付するということは、もう一段階踏まなくちゃならぬと私は思うのですよ、食管法は国内法だから。それをあなたの解釈は、ぼくらとしては常識的に考えて納得できないですね。だからもう一段階踏んで、国有財産ですからね、一応。それを処分するんだから。その条文だけでは私は納得できないですがね。
  175. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) まさに国内法でございますが、この食糧管理法上の、先ほども申し上げましたが、この米穀の生産者が政府に売り渡し義務に応じて売り渡すというものでありますから、法律の根拠なくしてこれをかってに処置することはできない、これはさっき申し上げたとおり。しかし、したがって食糧管理法はどういう場合にできるかということを、限定してむろん規定してございます。ただ、その第七条をごらんになれば、こめ条文をごらんになっていただくのが一番いいわけですが、「政府ハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ貸付」をなすことを得、貸し付けをするについては、先ほど御質疑の中にございましたけれども、どこでなきゃいかぬということは別に規定がございません。そういうものは一にあげて「政令ノ定ムル所ニ依リ」ということに規定がなっておるわけですから、こういう規定の解釈については、それほど御質疑にありますような疑点はないと思いますが、要するに関係省庁協議の結果、慎重に検討の結果、それでよろしいという最終的な結論に到達したわけでございます。
  176. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 食管法自体、あんたいつも言われるように、国内の米の需給というものの調整というものは基本的にあるんでしょう。それをかってに、貸し付けだといって外国へやる——私は外国へやることをいい悪いと言ってないんですよ。言ってないんですよ。法律的にやはり一段階踏んで、国有財産の処分だから、そういう手続を踏まなけりゃ、あんたの解釈で食管法第七条にこう出ているからといって、どこへでもやるということについては、私は食管法の立法精神といいますか、規定に対して私は反しておると、こう言っているのですよ。
  177. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 御質疑の趣旨はよくわかりました。要するに食糧管理法上の、生産者が売り渡し義務を課された米穀でありますから、むろん食管法の、国民食糧の確保及び国民経済の安定をはかるためという、食糧を管理するという、こういう規定と無縁にやってよろしいというわけにはいかない。むろんそういう貸し付けをし、政令の定めるというのにはそれなりの合理的理由がむろん要ります。しかし合理的理由の有無にかかわらず、そういうものがあるにしても、一切貸し付けばできないのだということは、むろんこの条文の七条の規定の解釈としてはそういうことは言えません。確かに七条は、「政府ハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ貸付又ハ交付ヲ為スコトヲ得」むろん現在政令はございませんから、その政令を特設する必要はございます。しこうして、その韓国に貸し付けることについての合理性があれば、その政令の定むるところによってこれを貸し付けることは条文のとおりであって、それにお疑いを持たれる理由、ただいま申された理由については、食管法上の目的から見た合理性が必要であるということを申し上げたいと思います。もしその合理性は何であるかというお尋ねがあるなら、これは当局のほうから御説明をしてもらいたいと思います。
  178. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 たとえば、そういうことになれば、諸外国に対して食管法による米の交付というものは、交付と言いますか、無償交付になりますが、たぶん私は南ベトナムに対しての援助については、別の営団、公団ですか、つくって、そこに交付をして、そしてベトナム援助物資としてやられたという記憶があるのですね。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕 したがってやはり外国に対する処置については、食管法の第七条自体を私はこれを解釈でやるということは、将来食管法の運営に大きい問題を残す。あなたは法制局長官だから、牽強付会とは言わぬけれども、そういう合理性をもってやろうとしますけれども、これは政治的に、国際的に見たって問題が残る。これを私は主張しているのですよ。総理はどうですか。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  私は、法律的にはただいまの法制局長官の答弁のとおり、かように考えて私ども処理するという考えでございます。
  180. 野上元

    ○野上元君 関連。これは食管法でやるのは無理なのじゃないですか。法制局長官が食管法の解釈をされましたが、しかしこれも法律のつくられた精神、環境、その精神から見て、当時米が足らなかったわけですね、日本には。それで米を統制しようとしたわけです。食糧を管理しなければならぬ、こういうときにおいて、貸し付けというのを、外国に貸し付けるなんということは考えられない。当時の状態で。これは国内の特に必要なものに貸し付けるというような場合に考えられたものと思うのです。それを今日、そういう字句があるからといって、外国にこれを貸し付けていいのだという、そういう法律の解釈はあまりに演繹過ぎるのじゃないですか。私はむしろ食管法で貸すのじゃなくて、貸すなと言っているのじゃないのですよ、われわれは。困る人に貸してもけっこうです。しかし、食管法をたてにとって、できるのだという解釈は私は誤りだと思う。かりに、たとえばアメリカが第二次大戦のときに武器貸与法というものをつくりましたね。そして法律を国会で承認をして武器を貸与していった。それと同じで、米麦貸与法というものを国会に出すべきですよ、そういう必要があれば。その法律に基づいて貸していくということであれば、これは国民の皆さんも納得してくれると思うのです。しかし、あの状態の中でつくられた食管法を牽強付会に解釈をして、これをどこにでも貸してもいいんだ、別に禁止しておらないんだというような解釈は、これはあまりにも法制局長官の解釈としては私は適当でない、かように思います。
  181. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) せっかくのお尋ねでございますけれども、繰り返しになって恐縮でございますが、政令の定むるところにより貸し付けをなすことを得、この貸し付けの対象が限定されるということをおっしゃるわけですが、この限定されているということは、どうしても条文からは出てまいらぬわけです。そこで、その韓国に対して、韓国でなくてもよろしゅうございますが、その外国に貸し付けることができるかどうかということについての疑問点、これは初めから私どもどこも疑問を持ったことは実はないわけです。政令の定むるところにより貸し付けをなすことを得というこの規定がなければ、むろんおっしゃるように法律を制定したり、あるいは条約をつくって御承認を得たりということが必要でございますが、ともかくも食糧管理法の第七条には貸し付けに関する規定があって、しかもまた交付については、現に政令で規定がございます。交付については、政令の定むるところによってという、政令によって交付することができる規定がございますが、この貸し付けについては、今度そのために政令を定めるという必要はございますけれども外国であってはいけない——これは法律論であるよりも、むしろ私どもからみれば、これはむしろ立法論ではないか。もしそういう方法がいけなければ、むしろ食管法を改正すべきではないかというふうな、おっしゃるようなふうに限定的にしようと思えば、むしろ立法論として食管法を改正すべきではないか。私どもはいまの現行規定をながめまして、いまのような政令の定めるところにより貸し付けることができるということは、まさに政令の定め方によって貸し付けることができるということを、国会が、これは古い法律でございますけれども、成規の手続を経て成立した法律に基づいてそれをやろうと、ただそれに必要な政令をこの際つくらなければならぬ、それはむろんでございますけれども、解釈の基本の筋としては少しもおかしいところはないと私は確信を持っております。
  182. 野上元

    ○野上元君 あなたの言うのは……。
  183. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) まだ許可しておりません、何ですか。
  184. 野上元

    ○野上元君 関連です。いまの関連です。それはあなたの言うのは純法律的な解釈ですね。食管法を見たら、どこを見ても貸し付けは限定されておらないのだから、外国でもいいじゃないか、そのためには政令を出せばいいんじゃないかと、こう言っておるのですね。しかし、それは法律論ですよ。そうじゃなくて、米の貸借、米というものは国民の生命をあずかる、それこそバイタルなものですよ。したがって、これを当時の食管法を解釈して外国に貸すということのほうがむしろ私はおかしいのであって、そうでなくて、——貸すことはけっこうでしょう、いま余裕があるならば。しかし、貸すためには別の法律をつくって、国民にやはり承認をしてもらう、政令なんかではなくて法律でやっぱり国民に承認してもらう、いまの米の需給状態、こういう状態ですということを明らかにしてやることが、これが正しい政治的な立場だと思うのです。そうでないと、古い法律をもってきて貸せるのだというような言い方は、これは国民に対して私は親切な法律解釈ではないと思います。したがって、総理からお聞きしたいのですが、政治的な立場でこの問題を判断するならば、やはり米麦貸与法というものを——将来韓国だけでなくて、あなたが共同コミュニケで約束されておるように、開発途上である国に経済的援助を与えるということは日本にとっても重要な役割りなんだということを述べられておりますから、将来そういう可能性も出てくるでしょう。そのときに全部食管法でやるということになると、これは問題ですよ。やはりはっきりと法律で国民の承認を得る、こういう立場が私は正しい、こういうふうにあくまでも考えますがね。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、法律には法制局長官のほうが権威があるかもわかりませんけれども、大体いまの野上君の言われるように、法律論としてはこれはいい、可能だ、こういうことをいま言われました。食管法で米穀、これは食糧だ、そういうことで政府が管理しているものだ、それを処理するのはもっと別な法律のほうが望ましいのではないか、こういうことを言われたと、私かように伺ったつもりであります。これも一案かと思います。しかし私は、いま食管法で米穀、米を政府が管理しておる、その基礎になる食管法にちゃんと規定がある、それに基づいて政令をつくって貸す、これでよろしいのではないか、かように私は思います。
  186. 中村波男

    中村波男君 もう私時間が経過しておりますし、私の指摘しようといたしておりました点も、先輩の委員から相当言い尽くされたのでありますが、いま法制局長官は、食管法七条の政令の定むるところから見て違法でないとおっしゃいますけれども、この七条の政令の解釈というのは、施行令の第三条においてきちっと書いているわけです。「食糧管理法第七条第一項の規定による主要食糧の交付は、公共団体、公益法人その他農林大臣の適当と認める者が主要食糧を試験研究の用に供しようとする場合にこれを行う。」、こう書いてあるわけです。まあこれはこれといたしまして、食管法というものの第一条がもとになるわけです。食管法の第一条は、言うまでもなく、「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為」とあるわけです。韓国は日本の国ではありません。したがって国民ではございません。国民に限って、政令で貸与することができると解釈すべきが私は当然だと思うのです。したがって、われわれがこの問題を提起いたしましたのは、韓国に米を貸与してはならぬという前提に立っているわけではありません。したがって、法治国家として総理が常に法を守れとおっしゃるならば、行政権を乱用して一番安易な方法でこれを取り扱うということについては、私たちは承服するわけにいきません。時間もありませんから、この問題についてはまた機会をあらためてひとつ論争をいたすことにいたします。  最後に委員長に要望しておきますが、物統令の問題については、ああいう答弁では私たち承服するわけにまいりません。したがって、さらに理事会で検討をして、これの今後の取り扱いについては御協議いただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わるわけでありますが、最後に総理見解をお尋ねいたします。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの食管法は日本国民の食糧管理、このために大事な法律でございまして、いまの需給の状況等を見まして何ら心配がない、そういう状況でございますから、むしろそのほうが、韓国もたいへんいま困っている、そういう際だから、これでいいかと私は思っております。それから先の問題は、これはもう貸すことはよろしいという、いまその趣旨はよろしい、しかし、食管法によるのがけしからぬと言われますが、私はその点は遺憾ながら意見が違っている。むしろ、貸す以上、もとになる食管法に基づいて貸すこともできるのだ、このほうがよほどはっきりしていていいのではないか。それは米の管理の方向が二途に出ることよりも一本の法律、それに基づいて食糧を確保する、これこそ私は筋の通ったことだ。この点では遺憾ながら皆さんと私の考え方が相違をいたしております。どうも意見の相違のようでございます。
  188. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) それでは中村波男君に申し上げます。  ただいま物統令につきまして委員長に御要望がありました点につきましては、理事会におきまして検討をいたします。  以上をもちまして中村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  189. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、黒木利克君の質疑を行ないます。黒木君。
  190. 黒木利克

    黒木利克君 私は、気分を一新しまして、わが国の人口問題から質問を始めます。  わが国戦後の人口の変化は世界に例がないといわれております。出生率、死亡率とも戦後十年間で半分に減ったというのであります。このため年齢構造も短期間に大きな変化を遂げました。子供人口の激減、老人人口の激増がそれであります。フランスにおきましては百五十年間もかかってなし遂げましたことを、わが国では僅々二十年でそうなったのであります。政策はいずれズレがちなものでございますが、これほど急速なしかも大きな変化に追いつく政治あるいは経済政策、社会政策というものが必要だと思いますが、世界に例のないだけになかなかむずかしい問題だと思うのであります。よほど真剣な認識が必要であると思うのであります。  そこでまず厚生大臣にお伺いをいたします。厚生大臣は人口問題の専門家であられますからいろいろ御発表願いたいのでありますが、時間がなくなりましたので、事務官でもけっこうでありますが、大臣で失礼でありますけれども、この二十年間の十五歳ないし二十九歳の男女労働力人口の統計について、特に、できれば前半と後半に分けましてお教えを願いたいのであります。
  191. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) お尋ねに沿うかどうかわかりませんが、一応私から申し上げます。  いまおっしゃいますように、わが国におきます出生率はここ十数年来非常に低下をいたしておりますが、しかしながら死亡率のまた激減によりまして、また平均余命が延びてきたことによりまして、総人口といたしましては、昭和三十年以来一%前後の伸びを示しております。そうして、人口問題研究所の推計によりますと、昭和七十年には一億二千万になるだろう、しかしながら昭和八十年ごろからこれが減少傾向を示していく、これは人口の総数であります。そこで出生率は、昭和二十四年までは人口千人に対して三十人以上の出生率を見ておりました。ところが昭和二十五年以降、これが二十人台、千人に対して出生者が二十人というように減ってまいりました。それが昭和三十年になりまして、人口千人について十七人ないし十八人の出生率というように、世界最低の出生率をここ十四年間続けてきているわけでございます。さらに女子の人口純再生産率、これが、人口が維持できるか減っていくかという率でありますが、純再生産率が一であるということは、これは人口はそのまま維持できるという数字でございますが、これが昭和三十一年以来一を割っているのでございます。こういうようにもう十数年間人口の純再生産率を割っているという国はよそにはありません。また、西欧の先進国におきましても数カ年間人口の減少傾向を示した国はありますけれども、十数年間人口の再生産率を割ったという国はイギリス、アメリカはもちろんでありますが、西独にも、またフランスにもないわけでございます。そういうわけでございますので、将来、日本の若年労働はここ数年異常に不足を来たしてくると思いますが、試みに、零歳から十四歳までの総人口は昭和三十五年には二千九百七十九万人であったものが、五年後の昭和四十年には二千四百万、約五百万減少いたしております。昭和四十五年、来年の推計は零歳から十四歳までのいわゆる若い人たちの数は二千三百万というように減ってまいるわけでございまするので、したがって、この人口の減少していく要因を一日も早く食いとめていかなければならぬのではないだろうか、このままに放置をしておいて、そうしてここ数年の間にこれが回復してくるという見込みがあるかどうか、これはいろいろな意見の問題になると思いますが、私はいろいろな諸要因から考えて、まだとうていそういう状態にはなるまいと、かように考えております。  若年労働につきましては、新規の学卒、中学校、高等学校、大学の就職者の数は昭和四十一年には百五十万人でございましたが、これをピークといたしまして年々急速に減少の一途をたどってまいりますことは、先ほど零歳から十四歳までの総人口の数が減っておることからも推測ができると、かように思います。他方、平均寿命が延びてまいりましたために日本の老齢人口が非常にふえてまいりました。六十五歳以上の老齢人口は、昨今は総人口の六・八%を占めておりますが、これがだんだんその割合がふえてまいりまして、昭和六十五年から七十年の間には、総人口に占める割合が一一ないし一二%となるであろうと思いますが、この数字は御承知のように、西欧の先進国並みのいわゆる老齢人口の割合になるわけでございます。昭和六十五年から七十年、そのころになれば老齢人口の総人口に対する割合は西欧並みになる、まだ西欧並みになっておらぬわけであります。そうしてさらにこのまま続いていくとすれば、昭和九十年には二〇%を占めるであろうという推計を人口問題研究所ではいたしておるわけでございます。一応これで概略申し上げました。
  192. 黒木利克

    黒木利克君 出生率の激減のお答えがございましたが、これに関連いたしまして、人工妊娠中絶の現状と対策についてお尋ねをしたいのであります。  なお、先ほどお尋ねをいたしました十五歳から二十九歳の男女人口がこの二十年間にどれくらい一体減るという御推定か、それを重ねてお伺いをいたします。
  193. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 十九歳から二十……。
  194. 黒木利克

    黒木利克君 十五歳から二十九歳。
  195. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 十五歳から二十九歳まで、その数字は後刻政府委員から申し上げます。  それから、人口中絶の状況は、本年度の予算におきまして、その調査費をいまお願いいたしているわけでありますが、それによってある程度の実態をつかみたいと思っております。御承知のように、優生保護法によりまして、その手続を経てやっておりまする数字は幾らか年々減っておりまして、最近は七、八十万人、かように考えております。しかしながら、やみのいわゆる人口中絶がどのぐらいあるかということは、ちょっとただいまここで公に推計を発表する程度にいたっておりませんが、そういう事柄もできるだけ先ほど申しました調査費をいただいて調査を進めてまいりたい。相当数にのぼるのではないだろうかと、かように考えております。人口中絶以外に、いわゆる家族計画として避妊と申しますか、子供を生まないと申しますか、こういった考え方で人口調節をしておられる人たちがこれまた相当多いと思います。だから、中絶だけではないと、かように思っているわけでございます。
  196. 黒木利克

    黒木利克君 わが国の人口革命につきましては、ただいま厚生大臣からお述べになりましたことで一斑がわかりますが、それを踏まえて一つ総理大臣にお伺いをしたいと思います。  私の手元の資料では、十五歳から二十九歳までの男女人口はこの二十年間に五百万人激減をする。しかも、後半の十年間に四百万人というものが一挙に激減をするという数字があるのであります。これは予測ではございません。必ずそうなるのでございます。政府はしかし、はたしてこういうことについて真剣に認識をして、たとえば労働力対策を考えておられるかどうか。これをあえて労働大臣には問いませんけれども、たとえば第三次産業へ行く人口が放任をされております。労働力が不足だというのにこういう状況であります。また、産業界におきましてもこれに対する積極的なかまえがない。ただ、賃金を上げさえすりゃ自分の会社に必要な労働力が確保できるというような程度にとどまっておるんでありますけれども、しかし、こういうことでは間に合わない、追いつかないときが必ず来るわけでございます。先ほど申しましたように、人口推計というのは正確に予測できるのでありまして、経済予測が一年後のことすら合ったためしがない。これは経済企画庁の経済見通しなどが最もその典型的な例だと思うのでございますが、どうも人口推計がこれと同じように当てにならぬのだというような御認識があるのではないか。しかし、この人口統計というのはコンピューターよりも正確に予測ができるわけでありまして、こういうような人口統計につきまして真剣にこれを政府施策の中に取り入れて活用しなくちゃならぬという、私はこれが政治の基本だと思いますが、総理の御認識と御所見を伺いたいと思います。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 黒木君、さすがにそのほうの専門というか、うんちくのあるところを御指摘のようであります。経済社会発展計画、十年先、二十年先、さらにまた二十一世紀は一体どうなるのか、そういう長期計画を持つとき、いつもその基本になるのは人口の問題であります。この人口の問題は取り組み方によっては必ずしもいまのような下降線ばかりたどるわけでもなく、ただ、指導よろしきを得れば適正なる人口増加もできるだろう、こういうように私は考えるのであります。その点が守られて初めて長期計画が達成される。しかしどうもいま、先ほど厚生大臣が説明いたしましたように、これを急に上げるといいましても、それぞれの手続を経ないと、下降線をたどっているものを上昇線に向けるということはなかなかむずかしいことであります。ことに最近は家庭が核化しておると、そういうこともありますから、なおさらただいまのような人口をふやすという、そういう意味ではむずかしいことであります。まず片一方で老齢化する、そういうようになっておりますので、人口構造が、これが二十年先にたいへん変わってくるだろう、そういうものについての予測をひとつ立てて、また予測というよりも意欲ある計画のもとに二十年先を考える、こういうことでないと経済社会発展計画が立たないのです。そういう意味でたいへん重要にこの問題と取り組んでおるということ、この一事を申し上げておきます。なおまた差し迫っての問題では若年労働、これが不足いたしておりますから、この点も厚生省としても一番腐心しておる最中であります。御指摘のとおりであります。
  198. 黒木利克

    黒木利克君 こういう若年労働力の今後の予測は私はコンピューターよりも正確だと思いますが、しかし、人口の変化には予測困難なものが実はあると思うのであります。  そこで、厚生大臣にお伺いいたしますが、こういうような人口変化というものの調査が十分行なわれませんというと、問題解決に失敗するおそれが多分にあるのではないか。たとえば、都市化現象についてでありますが、今日過密とか過疎の問題が非常にやかましく言われております。そのわりには実態が実はつかまれていないと私は言えると思うのであります。農村から都会へ人口が無限に出ていくような錯覚がありまして、どうもそういう前提で対策が練られておる。なるほど昭和三十五年から四十年までのこの五年間の人口の移動というものは非常にはなはだしかったのであります。したがって、これが実際以上に国民に不安感を与えたと思えるのでありますが、しかし、どこかでこれは曲がりかどがあるはずでありまして、最近の人口の動きを見ますというと、大都市から逆に地方へのいわゆる還流人口というものがふえつつあります。これは人口のUターン現象と言われておりますけれども、これについて最近の人口統計ないし厚生省の調査についてお伺いをしたいと思います。
  199. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 黒木委員のおっしゃいますように、都市からまた農村のほうへUターンしていくといういわゆるUターン現象が若干見えかけておるわけでございますが、これは住民登録人口の移動状況調べによりますると、たとえば昭和四十年ごろまでは九州あるいは東北地方から大都市への人口の流入が年々多くなっておりました。しかしながら、四十年からは若干鈍化いたしておる。四十年、四十一年は非常にこれが少なくなってきた。そうして大都市から東北あるいは九州へ移動をする人口が若干ふえております。しかしながら、四十二年はまた幾らか逆の現象も見ております、四十三年はわかりませんが。四十年、四十一年は実は若干不景気というような状況で大都市への集中傾向が少なくなって、反対のほうが幾らかふえたということでありますが、このUターン現象がどういうようになっていくか、まだその先の統計がわかりませんので、ちょっと推測がつきかねておるのであります。まあ若干は都市集中が鈍化をしてきて、都市から農村へ行く人たちが若干ふえていく。しかしながら、差し引きしてどうかというと、差し引きして大都市から農村のほうへ出ていく人口のほうが多くなっていくということにはまだなっておりません。まだその傾向が見られるかどうかは、今後の日本経済諸施策その他の諸施策によることであろうと、かように考えております。
  200. 黒木利克

    黒木利克君 そこで、総理にお伺いをいたしたいのでありますが、この過疎、過密対策にいたしましても、人口の変化のしかたなど、その実態をつかむことが前提になると思うのでありますけれども、ただいま厚生大臣の御答弁がございましたが、現状ではいささか心もとない感がいたすわけでございます。先進国なり開発途上国の例を調べてみますというと、大学には必ず人口問題研究機関というものがございます。わが国では大学に研究機関もなければ、人口の講座さえ一つもないのでございます。国立の研究機関はたった一つございますけれども、実は人口問題研究所を調べてみますと、わずかに研究員は二十人にすぎないのでございます。実はわが国の五百三十の都市で将来人口がどうなるかということは、これは推計をぜひともしなければなりません。そうしなければ各都市の長期計画が立たないわけでございます。ところが、現在の人口問題研究所では、日本全体の人口とか都道府県別の人口とか労働力人口というような推計で手一ぱいでございまして、こういうような地方都市の人口、将来人口の推計というものはやっていないし、また、やるとすると、現在の二十名の研究員が、先ほど申しました本来の仕事を全部やめてもなお二カ年間かかるといわれているのであります。しかも、それに対しまして各地方の大学にも人口問題の研究機関がない、講座がないというようなことでは、これは各都市の長期計画というものが立ちっこないというようなことになるのであります。しかも、そのわが国の人口変化というものは、先ほど申しましたように、歴史的にも、世界各国とも経験したことがないというような急激なものでございますから、こういういわば人口革命期に、はたしてこういうような研究の体制でいいのかどうか、総理の御認識なり御見解を伺いたいと思うのであります。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この人口問題と取り組む基本的な姿勢、これはたいへん大事なのでございまして、まあ明治、大正、日本の発展期、生めよふやせよ、こういうような政策がとられた、これが一つの行く方向を間違えた原因でもあったと思います。したがいまして、人口問題の取り組む基本政策、その態度、これはなかなかむずかしい問題を幾つも持っていると思うのであります。そうして今日多く人口問題だといわれるのは、いわゆる人口のはんらんしておるそういうところに対して適当な家族計画を持て、そういう方向で声が大であります。最もはなはだしいのはいまインド、ここはたいへんな人口の急激な増加をしておる、しかも、たくさん生まれて、そしてたくさん幼児のうちに死んでおる、こういう国であります。そうしていま日本が当面しておるのは、これらの国とは違って、逆に、いまの力を維持すること、それすらも懸念されるような状況だと、かつてのフランスがそういう状況であったと思います。しかし、そのフランスが立ち直って、人口は適度に維持あるいは増加、そういう方向でいま国ができつつある、こういうことでありますから、いまこの人口問題と取り組む際に、いかにも昔に返るのだと、生めよふやせよの政策をとるのだ、かように誤解をされることは困ると思います。ただいまお話があったわが国の人口問題の研究機関、これも非常に少ない、これをもっとふやしたらどうか、こういうお話、これなども、私は、もう当然自然の要求というか、日本の繁栄のために、社会的秩序の維持のためにもいま必要な条件が整いつつある、そういう意味からこの必要な機関がだんだん整備されるのじゃないかと思うのであります。私そういうように思いまして、この人口問題と取り組む方々に対しましては、その基本的な態度を十分ひとつ理解してもらおう。ことに最近は性生活あるいは性道徳と申しますか、そういう性倫理がすっかりこわれて、そういう状態のもとにおいて適正な出産計画を持つとか、あるいは核化する家庭状況のもとにおいてそういうものを維持することはなかなかたいへんむずかしいことだと思います。または、日本堕胎天国だといわれております。これはたいへん残念ながらそういうことをいわれておる。日本へ行けば外国の人も簡単に堕胎ができると、そういうようにまた宣伝もしておると、かように聞きますけれども、これなどはたいへんまずい、また、不名誉なことだと思います。それには、やはり正しい人口問題、そういうものの解決をすること、そのための機関、これなどが必要だと、かように思います。最近の人口問題と取り組んでおる方々は、機関としてはわずかでありますけれども、しかし、これに理解を持つ人、また、そういうものをいまのままにしてはいかぬという、しかも、これは主として性道徳の問題から出発しておる人たちの活動はなかなか活発でございまするが、そういう意味で私は必ずしも悲観はしないつもりであります。しかし、もっとこれらについての総合的な対策が立てられなければならない、この点では同じような心配をしておる一人でございます。
  202. 黒木利克

    黒木利克君 人口問題の調査研究を強化しなくてはならぬという総理の御答弁で安心をしましたが、ひとつ大蔵大臣もよく聞いておいていただきたい点であります。実は、この人口問題につきまして、わが国では社会科学者というものがさっぱり興味を持たない。勉強しないというか、そういう欠陥がございまして、なおさら私、政策立案等につきまして欠陥が出てくるのではないかという心配をしておるから御質問を申し上げるようなわけでございますが、さて、それに関連いたしまして建設大臣にお伺いしたいと思います。  先ほど人口の都市集中の話から、都市化現象のことに触れましたけれども、現在都市化というものがいかにも悪いことであるかのごときイメージというものが国民に与えられておるように思うのであります。わが国には都市化政策というものがないからだとも思うのでありますけれども、しかし、いかに健全な都市化政策を実施するかということが政治において私は大切なことではないかと思うのであります。都市計画法という法律もございますけれども、読んでみますというと、道路とか公園などの公共設備や、ごく限られた目的を持つにすぎないのでございます。大づかみに都市そのものの機能の回復をするとか、美観の保持をするとか、快的な生活の環境を整備する、こういうような考慮に欠けておる。今回政府が都市再開発法を制定されるというようなことでございますが、一体、建設大臣はどのようにお考えか。ただ、都市再開発法案をおつくりになる場合に、ひとつお願いをしておきたいのでありますが、実は都市老人の問題というのが、先進国の例から見ても、大きな混乱を起こしておるのでございます。というのは、いなかから出てきた働く人たちがだんだん老人になってまいる。核家族と申しまして、子供と離れるわけでございます。しかし、老人は、まだまだ老齢年金の十分でないところにおきましては、自分でやはり職場を見つけなければならぬ。職場はやはり都心、都の中心にしかないわけであります。したがって、都心に住まわざるを得ない。ところが、都心にはりっぱなマンションができますけれども、老人の住むような家がない。結局老人の住む地域というものはスラム化してしまうというのが先進国の都市の現状でございますが、わが国の都市再開発法案におきましてはこういうことのないように御考慮が願いたい、こういうことにつきましての建設大臣の御所見を伺いたいと思います。
  203. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) お答えいたします。  御指摘になりました最近の都市化の現象、まことに無秩序な、また混乱、これらの問題点を指摘され、また、それに対する御憂慮、全く私も感を共にする一人でございます。したがいまして、政府といたしましては、新都市計画法の制定をいただきましたので、これを六月からいよいよ運用いたす段階に相なりますので、この適切な運用をはかりますとともに、五十五国会において御承知のとおり都市再開発法案が廃案になりましたが、この都市再開発法案に若干の修正を加えまして、そして近日中にこの開発法案を御審議を願う予定をいたしておりますが、この開発法案の目標は御承知のとおりでございまして、都市における土地の計画的な健全な有効な利用を行なうというのが目標でございます。したがいまして、この目標とともに、運用につきましては、やはり何といいましてもいわゆる敷地——土地でございます——とともに、その敷地の上に建てる建物、建築物、そしてまた建築物の内容、いわゆる公共施設、言いかえますならば、土地と建物とそして内容、この三つを一元化いたしました有効な都市計画開発を行なうというのが本法の内容でございますので、したがいまして、これを制定いたしまして、御指摘になりました都市化の現象を防いでまいりまして、政府は鋭意これに対して努力をいたしておるような次第でありますとともに、最後に御指摘になりました老人のお気の毒な方々に対するところの施策、これは、交通の上からも、あるいは道路の上からも、あるいは住宅の上からも、十分そんたくいたさなければならぬと思っておりますけれども、本年度は特に住宅の面におきまして建設省は力を入れまして、去年は老人あるいは母子世帯あるいは身体障害者を対象とする住宅は三千戸でございましたが、新たなる四十四年度には倍の六千戸にふやしまして、そして質と量、内容等も十分配慮いたしまして、あるいはエレベーターの問題とか、あるいは冷暖房の問題とか、非常ベルの問題等もきめこまやかに配慮いたしまして、お気の毒な老人に対する住宅環境の整備を完備いたしてまいりたい、こういうように考えておるのでございます。  私も、最近日本へ来られましたロンドン大学のロプソンという人が、日本の都市問題に対して非常に示唆に富んだ意見を開陳されておることを新聞で散見いたしましたり、あるいは、二年前に離日されるときに、日本の都市問題の基本は土地に対して少し寛大過ぎるのじゃないかというようなまことに適切な示唆に富んだ意見を述べられたことを頭に入れながら、こういうような重大なる都市対策につきまして、生活環境の整備、都市環境の整備につきましては、政府建設省といたしましても最善の努力を続けてまいりたいと、こういう考えでおりますことを御了承願いたいと思います。
  204. 黒木利克

    黒木利克君 次いで、経済企画庁長官にお伺いをいたしますが、いま出ました過密対策あるいは過疎対策として、経済企画庁では国土の総合開発が取り上げられておるようであります。私はたまたまこの第三次試案というのを、本年の一月の末に出ておりますが、これを拝見しまして実は意外に思ったのでありますけれども、公害関係が全然オミットされておるのであります。ある省の要求で公害対策というものが第四次案では入ったのではないかと思うのでありますけれども、こういう国土開発計画に公害の関係の事項を落とすということは一体どういう感覚なのか、これは事後の措置だからこういうような公害対策はこういう計画には入れぬでもいいというようなお考えなのか、その辺のことをお伺いをし、また、最近のこの構想がどんなふうに改定されておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  205. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いま御指摘の公害の問題は、実は、第四次の試案がもうすでにできておるのですが、そこでは公害の問題を取り入れて詳しく書いてあります。問題は、公害という問題は、申すまでもないことではありますが、経済の発展に伴っていわゆる都市化という問題、都市化は同時に過密、同時にまたいなかの過疎という問題になってきたのであります。都市化という問題は、それ自体悪いことではないのでありますが、しかし、そこにやはり公害という問題が起こってきた。したがいまして、この公害をどうして発生しないように都市化するかというところに重点があると思いまするし、また、いなかのほうにおきましてもやはり公害というものが起こっております。たとえば工場誘致の場合でも、公害ということを考えて工場誘致を考えるというようなことになっておりますので、そういう公害という観点から、今後の日本はどうあるべきかということを第四次案には大体書いてあるのでありますが、なお、この問題につきましては、もう少し研究して、各方面からもっともっと完全なものにしたい、こう考えておる次第であります。
  206. 黒木利克

    黒木利克君 総理大臣に伺いますが、はしなくも第三次案までは公害のことは気がつかなかったというような、しかし第四次案で改めたとおっしゃるのですからけっこうでありますが、しかし、人間不在の国土開発というものは私はあり得ないと思うのであります。単に道路をつくったり、そういう物動計画では総合開発計画とは言えない。やっぱり人間を中心とした国土計画でなくちゃならぬと思うのであります。総理は、組閣の当初から、人間疎外を是正する政治とか、あるいは人間尊重というものをお取り上げになりましたが、それがだんだんしりつぼみになりつつある。故意か偶然かわかりませんが、こういう国家的な計画にもそういう人間尊重の大事な問題がつい取りこぼされるというような印象を国民が持っておるのではないかと思うのであります。総理の御方針を実際の政策に反映させる努力が足りない政府機関があるように実は思う。申すまでもなく、行政は、すべて人間との関係一体と見るべきでありまして、各省の事業はすべて人間を中心とした考えで当たるべきであるというのが総理の御本心と思うのであります。したがって、国土開発の中心というものは、あくまでも社会開発、先ほど申しました人間を中心とした公害対策、あるいは自然保護、あるいは社会保障、社会福祉、生活環境の整備ということにあるべきだと思うのでありますが、総理の御所見を伺いたいのであります。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 黒木君、これは誤解はないと思いますが、経済生活が活発になった、経済が発展する、そうすると、その恩恵をとにかく人間みんなが受けるように、そういうようにするのがわれわれの経済発展計画だ、かように思っております。ただ、人間をまず第一に考えてものごとをやっていく段階だと。しばしばいままでよくいわれるように、生産が大事か、分配が先か、こういう問題にもなるわけですね。だから、生産をふやしてそうして分配をやるのだ、こういうように両々相まってやるというところに問題があると思います。いまやられておることはあるいはどうも人間疎外じゃないかといって指摘される。最もはっきりしたものが、都市の公害問題、あるいは炭鉱災害等々、あると思いますね。したがって、いま、経済社会発展計画をつくるその基盤になるものをまず考える。そういう段階では、いまの公害問題の取り扱い方もやや表面に出てきていない、こういうものがあるようです。しかし、この経済社会発展計画、これが長期にわたってその基盤をまず整備し、その上に地方にそれぞれの事業が分散される、そうして過疎過密対策をあわして考えていく、こうなると、いわゆる人間尊重の社会開発もはっきりその上に出てくる、かように私は思うのであります。別に矛盾はしておりません。ただ、しばしば指摘されるところでありますが、一部から見ると、政府はどうも生産官庁、生産については非常に熱意がある、その恩恵を受けるというかそういう方面に意が足らないのじゃないか、したがって、各省でやっておる仕事にしても、どうも公害というようなことについての気の配り方が足らない、生産保護ばかりだ、それよりも、もっとやはり消費生活消費者の保護というものをなぜ考えないか、ここらに人間尊重が欠けるのだ、こういうような批判をしばしば受けます。しかし、私どもは、ただいま基本的に申しましたように、まず経済を発展さしていく。その際に、人間にその経済発展の効果をまんべんなく平等に与えるように、そういうことを絶えず考えていかなければならない。これは、しかし、注意されないととかく忘れがちになる、かように私は思います。したがって、これから先の計画は、ただいま言われるように問題がそれぞれありますから、それぞれのものについて十分注意していかなければならぬと思います。過密過疎の問題でも、生産は上がったけれども、どうも消費者にはあまり均てんしていない。依然として物価は高い。これはあるいは流通機構の整備に欠陥があるのか、あるいはまた、生産性は上がったが、ただ単に生産性の上がった利益を資本と労働にだけ分配していいのかとか、いろいろ見方があろうと思います。しかし、結局、最終的な目的は、お互いの人間の生活向上させ豊かにさす、ここにあるのでありますから、絶えずそれは念頭に置かないといろいろの計画は立っていかない、かように私は考えております。
  208. 黒木利克

    黒木利克君 私は、総理がことさら人間尊重とか社会開発というものを政治の基本的な御方針としてお示しになったことを、実は高く評価したいのであります。考えてみれば、すでにおそ過ぎた感がある。今日の学生騒動も、こういう機械文明といいますか、これによりまして人間が疎外されるというところに若い人たちの反発があるともいわれておるのでありますから、私は、そういう意味で、総理の人間尊重、社会開発のお考えというものは非常に尊敬をしておるわけであります。そこで、実は、総理と、これは大蔵大臣にもあわせてお伺いしたいのでありますが、先ほど来申し上げました人口の構造の問題からいろいろ分析をしてみますというと、昭和四十年代の十年間こそ、社会開発の最もやりやすい、あるいは、またとない時代だと思うのであります。なぜならば、生産年齢人口というものを分母といたしまして、十五歳末満の子供と六十歳以上の老人を分子としたいわゆる従属負担係数というのがございますが、これは社会保障の学問で盛んに使われておることばでございますけれども、この従属負担係数というものが昭和四十年代ではわが国では最も低いという時期でございます。つまり、現在の働き手が、社会保障をやるにしても社会開発をやるにしても、最も負担が軽いという時代でございます。したがって、こういうまたとない時代に思い切った社会政策、社会開発を重点的にやる。私は、そういう観点から総理が社会開発というものを特に施政の根本方針としてお取り上げになったというふうにそんたくをしておったのであります。一体総理の御認識なり、あるいはこれについては大蔵大臣はどのように御共鳴をいただけるかどうか、あわせてお伺いをしたいと思います。  しかし、それにしても、人間尊重なり社会開発というものがあまり生かされていない行政機関があることはさきに述べたとおりでありますが、そうしてみると、総理の頭と各省の頭がどうも統一していない、いささか分裂ぎみと思える節が私には感じられるのであります。これは総理の御本心では絶対ないと思いますが、総理のブレーントラストを強化なさるなり、あるいは専門にこういう部局を設けられるなり、あるいはさらに指導力を御発揮なさる必要があると思うのでありますけれども、あわせて総理の御所見を伺えれば幸いであります。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御指摘のとおりの数字が出ております。私は、わが党に黒木君のような有力な方がおられることを、たいへん誇りに感じております。もちろん、いまのブレーントラストの問題も皆さん方に知恵をつけていただく、また、各省が統一された、そのもとに進んでいくように、これは私の責任でありますから、そう別々な方向には向いておらないと現在思っておりますから、なおさら力を入れるようにいたしたいと思います。
  210. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も、昭和四十年代の年代は、人づくりというか、そういう問題が非常に重要になってきていると思います。戦後の日本の国づくりを見ますと、物的というか、経済の繁栄、これには成功している、私はこう見る。もう一つの側面である人間形成ですね、こっちのほうが立ちおくれている、そういうように思えます。これからの政治は、むしろ経済はもう財界にまかして、かじとりだけやっていればいい。人間の問題に政府はまっ正面から取り組むべき時期にきている、かように考えます。ただいまお話しの負担系数、これもそういうために非常にいい環境を与えている、これを利用すべきである、かような考えであります。
  211. 黒木利克

    黒木利克君 この負担系数は、昭和五十年代になりますと、つまりいまの若い人たちが一倍半なり二倍の生産性をあげなければ子供や老人を養えない時代が来るわけでありますから、ぜひわれわれの時代にこういうことの解決の基礎をつくっていただきたいと思うのであります。  そこで、総理にもう一言お伺いしたいのでありますけれども、先ほど申しましたような人口構造とか産業構造とも関連する問題でありますが、農業政策の基本的な姿勢についてお伺いをしたいのであります。  先ほども食管問題についていろいろな論議がございましたけれども、わが国ではまだ産業構造の高度化というものをさらに進めなければならぬので、人口の従業上の地位について雇用労働力がもっともっと増加するでございましょう。その際に、農村から人口が脱落するのでなくして、より生産性の高い職業へ転換をさせなければなりません。また、都会から還流した人口をその土地に安定させなければなりません。ここに労働大臣なり厚生大臣責任は重大だと思うのでありますけれども、これについてはあとでお伺いすることにして、私は雇用労働者と資本家だけの社会というものは安定性に乏しいのではないかと思う。どうしても自営業者の存在というものが必要である。こういう意味で、ヨーロッパの自由主義諸国の農業政策が、単なる生産政策とか経済政策としてではなくて、自営業者の安定をはかって社会の秩序を維持する、さらには民族政策といいますか、たくましい健全な人口の培養というような観点から取り組んでおることを見て参りまして非常にうらやましく思っている一人でありますが、中小企業対策についても同じようなことが言えるのではないか。この点は、わが国のこれらの施策がいささか欠くるところがあるように思いますから御質問するわけでありますが、総理は、農政並びに中小企業対策の心がまえについて、どのように一体お考えか、お伺いをしたいと思います。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御指摘のように、自営業者、農業、あるいは中小企業、ただいまのずいぶん世相の激しい変転にもかかわらず、これらの方々は、つとに質実剛健だと、私はかように考えております。この国の将来をになう、それはこういうところにあるのではないかと思います。最近の問題などについても、私はかように考えるのであります。黒木君のお尋ねは、あるいはそういう点とは別なことかとも思いますけれども、そういう意味におきまして、ただいま御指摘になりました自営業者をもっと大事にしろ、このことは当然のことだと思います。そう考えると、やはり中小企業や農業に対する政策はまだまだ不十分じゃないか、そういう意味政府自身反省もしていかなければならぬ、かように思っております。このたび中小企業対策、あるいは農政等についてもいろいろのくふう、改善などをはかっておりますのも、ただいま私が申しましたような基本的な立場に立っての改善でございます。御了承いただきたいと思います。
  213. 黒木利克

    黒木利克君 厚生大臣にお伺いしますが、先ほど来のいろいろな質疑応答から、社会開発あるいは社会保障についての総理なり大蔵大臣の御熱意のほどはおわかりになったと思いますが、しかしそれにしては、実は社会保障制度審議会が昭和三十七年に政府に勧告を出しまして、わが国の社会保障が十年間に、つまり昭和四十五年度までに先進国に追いつくようにというようなことを言うておるんでありますが、そういう点から見るとまだまだ足りないのでございます。幸い先ほどの負担係数の問題で、この四十年代に大いに伸ばすんだというお話でありますから、ひとつ厚生大臣も大いにがんばっていただきたいんでありますが、ただ、最近厚生省でいわゆる二万円年金というようなものを本年から実現するというようなことを発表なさっております。そこでこの二万円年金というものが、一体国際水準から見て、あるいはイギリスとか西ドイツとか、こういうところと比べて一体どの程度になっておるとお考えなのか、ひとつお伺いをいたしたいのであります。
  214. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 先ほど、日本の社会保障制度がまだ世界水準並みじゃないとおっしゃいましたが、これは私も否定をいたしません。いよいよこれからだと、かように考えております。  ただその一つは、たとえば年金制度にいたしましても、まだ発足したばかりでありまして、そして年金受給者の数がきわめて少ない。社会保障の水準は、いわゆる社会保障の振りかえ所得国民の総所得との比較をいたしておりますが、年金制度も年がたってまいれば受給者がいよいよできてくるわけでありますから、そういたしますると、この振りかえ所得はぐっとふえてくることになると、かように考えております。これは振りかえ所得の一例でありますが、したがってまだ基礎が浅く、始まったばかりでありますので、今後一そう留意をして、そして世界のいわゆる先進国といわれるものに負けないような状態にしたいと、かように思っておりますし、またなり得るだろうと確信をいたしておるわけでございます。  二万円年金は、ただいまお尋ねがございましたが、欧米諸国の年金水準に比べまして必ずしも劣るものとは考えておりません。大体これで西欧諸国並みだ、かように思うわけでございます。たとえばイギリスにおきましては、妻のある労働者に対しましては二万七千円ということになっております。それから西ドイツは、労働者が、二万二千円、職員が二万七千円、アメリカでは三万五千円ということになっているのでございますが、これを日本とこれらの国との賃金水準、あるいは生活水準と比べまして、これで大体世界並みであろう、かように考えております。今後物価上昇生活水準向上に伴って、それに見合った改訂を時々必要によりやってまいることによって十分目的は達せられるものと、かように考えている次第でございます。  それから日本の人口問題研究所、あるいは大学における講座のお話がございました。私は人口問題研究所の人員の足りないことは就任当初から承知をいたしておりましたので、人口問題研究所長には必ず増員はするという約束をいたしておるんであります。総定員法が通りましたら、振りかえてこちらのほうに相当の人員をつけたいと、かように考えております。同時に、日本の人口問題研究所は世界で相当注目をされている権威のある機関になっておりますので、私はわずかな人員でそれだけの業績をあげております研究所を高くひとつ評価だけはしてやっていただきたいということを申し添えたいと思います。
  215. 黒木利克

    黒木利克君 さらに厚生大臣にお伺いいたしますが、ただいまの御答弁で、年金という所得保障につきましては、わが国でも国際水準までようやく来たということで、これはまことにうれしいことでございますが、それにしても医療保障につきましては、給付の水準はこれはもう世界の水準をはるかに越しておるわけでございますけれども、依然としてトラブルが引き続いておるのでございます。従来の社会保障というものは、消費の増大という角度から議論されてまいりました。しかしながら、社会保障をこのような目的意識だけで考えるときは、確かに高度の経済成長とは相反するものがあるとされるかもしれないと思うんであります。しかし、社会保障のねらいというものは、あくまでも貧困の惨害を未然に防止すること、さらには、貧困のもたらす各種の破壊的な行動を制止しよう、こういうところに置かれております。もし社会保障というものがなかったとしたならば、貧困のもたらす破壊的な影響というものは、社会的にも経済的にも拡大波及してとどまるところがなくなるでありましょう。特に社会不安や政治不安の時世にはなおさらでございます。  さらにまた未然に防止されなかった疾病や貧困というものが何倍か増加し、悪化した形で社会に犠牲をしいることになるのであります。そのような意味で、社会保障は国民生活の安定策でもあり、同時に合理化の施策でもあり、また、貧困と戦う個人や家族の力を社会的に結集して、これを効率化するための施策であると言うことができるんでありますが、わが国の社会保障の確立には、このような国民的な自覚が私は必要であるとともに、その意識の上に現在の日本の社会保障の姿というものを、先ほど来申しました大きな変化を来たしつつあるわが国の社会経済構造に、実際に適応した制度に改善することを急がねばならないと思うのであります。そのためにも社会保障の前提となる施策をさらに充実をし、相協力して真剣に取り組まなければならないということはもちろんだと思うんであります。  その意味からして、現在のような医療保障をめぐって医療担当者と保険者との感情的対立と申しますか、それがあるために抜本的対策も難行してると思うんでありますけれども、これは社会保障というこのような大きな課題を前にして、少なくとも建設的なあり方とは考えられないものがあります。どうか、早急にこれらを止揚してほしいと祈りたい思いがいたすのでありますが、国民福祉のためにも、古語のいわゆる「相求めるにあらずして、相向かうにあらねばならない」ということをしみじみ感じておるのであります。その際に、医療担当者なり保険者側の両者の心理的状態というものをよく理解して、それに基づいて医療保障の抜本解決に取り組むべきだと私は思うのであります。たとえば厚生省が保険者となって医療担当者と対決をするようなそういう現在の仕組みというものは、これはひとつ考えものだ、たとえば保険公社というようなものをつくって、厚生大臣はこの保険公社と医療担当者との上に立って、国民的な立場で公平に処理をするというようなことも必要だと思うんですが、厚生大臣一体どうお考えになるか、このトラブルを引き続いて起こしておりまする医療担当者と保険者との間の問題をどうなさるおつもりか、お伺いをしたいのであります。  さらに、時間もありませんが、私は社会保障の運用についてもっとくふうがあってしかるべきではないかと思うのであります。先年日本にもやってまいりました、フランスの社会保障長官をやったラロークという方は、社会保険基金からわざわざ金を出して、人間心理の勉強を中心とした、これはもちろんお医者さんの心理状態を研究するための社会保障大学、社会保険大学というふうなものを創立をいたしております。社会保障を効果的に運用する、これは単に経済的な効率をはかるだけでなしに、人間、人格をそこなわないように、要するになまけた人たちを発生せしめないように、そういう人間理解といいますか、人間心理というものを専門に勉強した、あるいは勉強をする専門家を養成をはかるとか、また、そういう人たちに社会保障の担当をさせるとか、あるいは医療担当者側に当たらせるとかいうようなことが必要だと思いますが、厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  216. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 黒木さんのおっしゃいますように社会保障を充実し、その効果をあらしめますためには、やはり全体に社会連帯的な考えといいますか、そういう考えをもとにし、またそういう考えの横溢するようなやり方でないと、ただ物的にだけに考えておったのではとうていいくまいと、かように考えております。医療保険制度が社会保障制度の非常に重要な柱をなしておりますことはおっしゃるとおりでございます。これにつきましても、保険者側と、それから医療担当者側との対立ということもおっしゃっておられましたが、これもおっしゃるとおりでありますが、さらに医療担当側と、それからいわゆる保険料を払う被保険者側と、これとの対立もまああるわけでございます。そういうようなことにかんがみまして、いま御承知の医療保険の抜本改正と取り組んでおりますが、その際にもそういうことを十分考慮に入れまして、そういうことのないように、そしてまた保険公社というのも一つの案であろうと考えております。そういう制度も、保険公社の制度も十分考えまして、よければその制度でいくのも一案ではなかろうかと、私現在考えているような次第でございます。  また、社会保障関係の仕事に携わっておられる人たちにもつと人格形成と申しますか、あるいはケースワーカーとしても、対象になる人たちをほんとうに人間的に育て上げて、そして元気をつけて、生活に邁進をさせるという人間的な精神力を与えていくということが、私も肝要だと思っております。御承知のように厚生省の社会保障の大学あるいは大阪の短大にも委託をいたして、そういった専門家の養成をいたしておりますが、そういった養成機関に対しましてもただいまおっしゃいますような趣旨に基づきまして、そういう人たちの養成に力を尽くしてまいりたい。ことに広く携わっておられます、社会事業に携わっておられます人たちに対しましても、待遇は十分いたしますと同時に、そういった精神面といいますか、というものを充実をしていただけるような施策を編み出していかなきゃならないと考えております。黒木さんにおかれましても、そういう方面で今後さらに御協力、また御指導をいただきたいと思います。
  217. 黒木利克

    黒木利克君 総理大臣に最後にお尋ねをいたしますが、実はその西ドイツでは年金など社会保障を所管をしておりまする省の名前が、労働並びに社会秩序省というのであります。私はこの社会秩序省というのに非常に深い意味があると思うのでありますが、なお社会保障には、御承知のようにドイツ型とイギリス型と二つの型がこれは世界的にございまして、わが国はこのイギリス方式をお手本にしておる。いわゆる進歩的な学者はこのイギリス方式というのを金科玉条にいたしまして、この原則は、第一は、全国民に皆保険とか皆年金とかいっておりますが、全国民に。そうしてフリーサービス、無料で、国民の税金で。そして第三は、フラット制という均一の、大体給付も均一、保険料も均一というようなフラット制というものを支持しておるのでございます。ところがことしの二月、つい先月でございますが、イギリスの労働党のウィルソン内閣は、この金科玉条を廃棄いたしまして、社会保障の大転進でございますが、無料サービスあるいはフラット制という原則を破棄いたしまして、年金改革というものをなしとげたということが報告されております。  また、最近出版されましたイギリスのシャンクスという、これも労働党系の方でございますが、学者で、「行き詰まった社会イギリスは停滞から脱却できるか」という本がございますが、これを読んでみますというと、イギリスの社会保障の全国民に平等にというやり方が、イギリス社会保障が今日ヨーロッパにおいて非常に国際水準的に落後しておる、これの原因だといって反省をいたしておるのでございます。これに対して西ドイツ方式というのは、必要な国民へ必要な給付を、自己責任の原則と申しますか、つまり無料ではなくて、保険の原則で行なって成功いたしておるのであります。わが国の社会保障の方式も、このドイツ型に転換する要があるのではないか。これは私のかねてからの主張でございますが、少くともドイツ型になることを社会保障の後退というような考えを持たぬようにすべきではないかということを私は日ごろ考えておるのでありますが、共鳴していただけるかどうか、御所見をお伺いしたいと思います。
  218. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) いま御意見がありましたとおりに私も考えております。イギリスのやり方も行き詰まってしまって、そしていまおっしゃいますように大転換をいたそうといたしております。私はドイツ主義と申しますか、その国に適したやり方が一番いい。日本日本の行き方としてまた別にあるだろう。ドイツの行き方も日本の行き方と違ったところがあることは御承知のとおりであります。各国のいい点はとってまいらなければなりませんが、イギリスがなぜ行き詰まったかという点も十分に考えてまいらなければなりませんので、私はイギリスのいままでのまねをすることは、イギリスの失敗を繰り返すものだと、かように考えておりまするし今後また御鞭撻を賜わってよりよい制度をつくり上げてまいりたいと考えます。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本の社会保障制度は、先進国に比べましてたいへんおくれておると思います。私どもはいろいろこれから充実し、整備していかなければならないと思います。そういう際に、英国式にものごとをすべてやれるという力がまだあるとは思いません。そういう意味におきましても、広範にわたるまた内容を充実していき、社会保障制度、これには真剣に取り組み、その選択の方法に間違いのないようにすることが望ましいことだと、かように考えております。
  220. 黒木利克

    黒木利克君 実は社会保障の国会論議では必ずこういうようなドイツ方式かイギリス方式か、どちらが進歩的かという論議がやかましくて、これが対立の原因になっておるだけに、私は特に関心を持っておるのでありますが、実はわが国の進歩的な社会保障学者と称する人たちの種本があるのであります。これはイギリスのフェビアン協会の学者でありますが、アベル・スミスという人が書いた「ソシァル・セキュリティー・リフォーム」というものがあります。これがいわば進歩的な人たちの社会保障についてのバイブルでございます。私は御本人にも会ったのでありますけれども、十年前に、これはまだ保守党の内閣時代でありましたが、当時の野党である労働党が年金改革法案というものを出しまして、これは、年金が行き詰まって、年金の給付額を上げなくてはならぬ、そのためには、増税はできない、やむを得ず、その保険料というものを復活をいたしまして、しかし、保険料は強制徴収でございますから、そしてフラット制で均一でとるということになりますというと、低所得者に対しては非常にこれは過酷になる。そこで、やむを得ず比例報酬制をとらざるを得なくなったということで、まあこの辺から私はイギリスの社会保障の転換が来たのだと思うのでありますけれども、私は、この案をつくった労働党のブレーンのアベル・スミスに会いまして、なぜこういうふうに転進をしたのかということを問い詰めましたら、私には、若げの至りだということを答えてくれました。なるほど彼は、二十三ぐらいでケンブリッジ大学の教授になったくらいでございますから、まあ若げの至りということもわからないでもないのでありますが、しかし、われわれ日本の社会保障の専門家たちが、あなたをいわば先生にして、そうして学んでおるのに、若げの至りでは相済まぬじゃないかということで弁明を求めましたら、東洋の古語にも、乏しきをひとしく分かち合うということがあるじゃないか。イギリスは戦後非常に貧乏であった。だから平等に乏しきを分かち合った。しかし、いまやイギリスは国が富んだ、そこで、こういう原則をこれは取りかえたって何がおかしいのだ、われわれは現実的な国民だ、政治というものは、そういう理論だけで、信念だけでいくもんじゃないのだというようなことを聞いたのでございます。私は、そういう意味で、今後の国会論議において社会保障の進歩論争というものが必ずまた蒸し返されますから、あえて説明をいたした次第でございますが、最後に、ひとつ文部大臣にお伺いをしたいと思います。  先ほど来、人口問題の研究機関、あるいは人口講座というものを大学に設ける必要があるということを述べました。これについても大臣のお考えを伺いたいところなんですが、しかし、まあ今日のような大学では、人口講座よりも、まあ秩序の維持こそ緊要でございますから、答弁は求めませんが、ただ、この暴力行為を禁ずるための立法措置の問題がいろいろ論ぜられておるようでありますけれども、そういう立法措置をとる前に、大学における警官導入を避ける慣行というものを是正させることが必要のように思うのであります。これは、大学政府協力して、この憎むべき暴力を排除する、こういうような行政措置がとれないものかどうか。これについてお伺いをしたいと思います。なお、きょうは、先ほど午前中、国会議員なり国家公務員の発言は慎重を要するということをしみじみまあ勉強させられたばかりでございますが、それにしては、国家公務員たる大学教授が、この憎むべき暴力を是認し、あるいはこれを慫慂するがごとき言動をやったということは、私は国家公務員のこれは名誉と面目を傷つけると思うのであります。文部大臣にはこれを処分する権限がないということでございますけれども、私は国家公務員の服務規律を所管をしておる人事院というものがあるのでありますから、文部大臣が人事院に要請をして、一体処分ができないものか。処分されてしかるべきだと思いますが、御所見を伺いまして、私の質問を終わります。
  221. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほどから黒木さんのお話を聞いておりまして、人口問題等について非常に興味深く私は聞いたわけでございます。と申しますのは、スチューデント・パワー、今日の大学紛争の原因、やはりここにあるかと思うのです。この十年来の人口の移動といいますか、これはやはり世界的な初めての現象と言ってもいいかと思うのであります。しかも大学のその六〇%というもの、あるいは学生の六〇%というものが七大都市に集中をしておる。こういう点につきまして紛争が起こっておるということ、まあそういう文明史論的ないろいろの意味があることを踏まえてのお尋ねだったと思うのでございます。そういう意味合いにおきまして、私はやはりこれから、こういうような問題についての独立した研究所等が出てこなければならない。あるいは、大学からいまは要請がなければ、われわれのほうでやりますと、干渉をするとか何とかいうふうにすぐ言われるわけでございます。したがいまして、そういうようなことがこれから大学から出てくるように、私はやはり指導助言をしていかなければならないのじゃないか。また政府としても、文部省としても、そういうような問題から、すべての施策というものを考えていかなければならない。長期的にもまた世界的にも、あるいはこの歴史的一つの転換期というものが、そういう研究所を通じて考えられていかなければならないのじゃないかということを前提といたしましてお答えを申し上げたいと思いますが、当面の荒れ狂っておりまするこの暴力事犯というもの、これが大学の、いわば理性の府である、あるいは良識の府であるというところにおいて行なわれておる。これに対しまして、大学の学長やあるいは管理の責任者というものが、そういう学問の自由と大学自治がまさに侵されておるのに、これに対して警察力の要請をしないというこういう慣行が、実は今日の紛争というものをエスカレートしてきたものであるという認識に立つものでございます。したがいまして、従来、確かにわれわれ文部省とそれから大学当局というものの間におきまして、対立関係みたいな、向こうもわれわれを信頼しない、私たちも向こうを信頼しない、こういうことでは今日の大学の制度というものは運用が実はできないと思います。幾ら法律を作ってみましても、こういうことではだめであって、私は第一義的には、何と申しましても、お互いが協力し合って、この暴力排除について、あるいはまた大学の再建について考えなければならぬ時期に来ておるのじゃないかというふうに思うわけでございまして、私は、まずわれわれが大学におけるアカデミック・フリーダムというものを認めると同時に、大学側も謙虚に、われわれに対しまして、国民責任を負っておる文部省の立場、あるいは大学そのものが社会的責任を持っておるのだという意味合いにおいて、相協力して相互に、たとえばある程度意見の相違はあっても、話し合いを通じ協議を通じて、そうして大学の秩序を回復し、そうして真に多くの教授たちや多くの学生たちが、研究をしよう、学びをしようということに対してこたえなければならないというふうに思うわけでございます。そういうような大学としてのたたずまいがあるのに、いま御指摘のような井上教授のごとき人がおって、そうしてまあこれを、共闘会議を、何と言いますか、激励し、かつ英雄視する、しかも、単に手紙を書いただけじゃなくて、二回も三回も続けまして講演をして歩いておる。あるいは激励の会場に乗り込んでおるということは、これは教育者として、また国家公務員として私は不適当な人である。もしそういうことをおやりになりたければ、むしろ政治家におなりになったほうがよろしいのであって、少なくとも教育者として、学者として、自分の真理の追求のためには——それは私は思想の自由がありますし、イデオロギーの自由がありますし、学問的な自分の信念というものがあるわけですから、それは守られておるけれども、しかし、学生影響を及ぼすというようなことについては、私は学者としては、カッコで包むべき性質のものである。そのことが教育基本法の八条の精神だろうと私は思うのでございます。しかしながら、この身分の問題につきましては実は非常にむずかしい問題がございまして、その大学の評議会がこの審査をするということになっております。したがいまして、いま京都大学のほうにも、私はこの点についてはまことに遺憾である、どうだということを申しまして、先ほど申し上げましたような手紙の実態も報告をいたしまして、それから、人文科学研究所の所員でございますから、所長からまことに不穏当である、以後気をつけろというような勧告もいたしました。しかしながら、まだ評議会を開いて、奥田学長からは何らの依頼はございません。ございませんけれども、ちょうど入試の最中でございましたから、おそらく奥田さん自身もお考えになってはおるだろうけれども、まだそこまでは至っておられないのかと思います。しかも、また伊藤教授が言っておりますことは、ゲバ棒やそういうものでの破壊こそ建設なんだというような、何だかわけのわからぬ暴力肯定の言辞を弄しておるわけでございますが、その一つの前提として、奥田さんが日本共産党と結んで管理運営をやっている、そういう姿をきびしくこれは批判をしているわけです。今日やはり大学紛争の一つ原因は、こういう、ある教授たちが三派を支持し、あるいは民青を支持して、そうしてそういうようなカッコに包まなければならないものをはずして、そうして政治家気どりでやりますところに問題があるかと思うわけでございまして、もう黒木さんのおっしゃるとおり、この点につきましては、行政措置といたしまして指導助言をいたしまして、何とかそういうような教授がカッコの中に入ってくるようにいたしたいと考えております。
  222. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして黒木君の質疑は終了いたしました。  次回は明日午前十時開会することにいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後五時二分散会