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国務大臣(坂田
道太君) 先ほどから
黒木さんのお話を聞いておりまして、人口問題等について非常に興味深く私は聞いたわけでございます。と申しますのは、スチューデント・パワー、今日の
大学紛争の
原因、やはりここにあるかと思うのです。この十年来の人口の移動といいますか、これはやはり世界的な初めての
現象と言ってもいいかと思うのであります。しかも
大学のその六〇%というもの、あるいは
学生の六〇%というものが七大都市に集中をしておる。こういう点につきまして紛争が起こっておるということ、まあそういう文明史論的ないろいろの
意味があることを踏まえてのお尋ねだったと思うのでございます。そういう
意味合いにおきまして、私はやはりこれから、こういうような問題についての独立した研究所等が出てこなければならない。あるいは、
大学からいまは要請がなければ、われわれのほうでやりますと、干渉をするとか何とかいうふうにすぐ言われるわけでございます。したがいまして、そういうようなことがこれから
大学から出てくるように、私はやはり指導助言をしていかなければならないのじゃないか。また
政府としても、文部省としても、そういうような問題から、すべての施策というものを考えていかなければならない。長期的にもまた世界的にも、あるいはこの歴史的
一つの転換期というものが、そういう研究所を通じて考えられていかなければならないのじゃないかということを前提といたしましてお答えを申し上げたいと思いますが、当面の荒れ狂っておりまするこの
暴力事犯というもの、これが
大学の、いわば理性の府である、あるいは良識の府であるというところにおいて行なわれておる。これに対しまして、
大学の学長やあるいは管理の
責任者というものが、そういう学問の自由と
大学の
自治がまさに侵されておるのに、これに対して警察力の要請をしないというこういう慣行が、実は今日の紛争というものをエスカレートしてきたものであるという
認識に立つものでございます。したがいまして、従来、確かにわれわれ文部省とそれから
大学当局というものの間におきまして、対立
関係みたいな、向こうもわれわれを信頼しない、私たちも向こうを信頼しない、こういうことでは今日の
大学の制度というものは運用が実はできないと思います。幾ら法律を作ってみましても、こういうことではだめであって、私は第一義的には、何と申しましても、お互いが
協力し合って、この
暴力排除について、あるいはまた
大学の再建について考えなければならぬ時期に来ておるのじゃないかというふうに思うわけでございまして、私は、まずわれわれが
大学におけるアカデミック・フリーダムというものを認めると同時に、
大学側も謙虚に、われわれに対しまして、
国民的
責任を負っておる文部省の
立場、あるいは
大学そのものが
社会的責任を持っておるのだという
意味合いにおいて、相
協力して相互に、たとえばある
程度意見の相違はあっても、話し合いを通じ協議を通じて、そうして
大学の秩序を回復し、そうして真に多くの教授たちや多くの
学生たちが、研究をしよう、学びをしようということに対してこたえなければならないというふうに思うわけでございます。そういうような
大学としてのたたずまいがあるのに、いま御
指摘のような井上教授のごとき人がおって、そうしてまあこれを、共闘会議を、何と言いますか、激励し、かつ英雄視する、しかも、単に手紙を書いただけじゃなくて、二回も三回も続けまして講演をして歩いておる。あるいは激励の会場に乗り込んでおるということは、これは教育者として、また国家公務員として私は不適当な人である。もしそういうことをおやりになりたければ、むしろ
政治家におなりになったほうがよろしいのであって、少なくとも教育者として、学者として、自分の真理の追求のためには——それは私は思想の自由がありますし、イデオロギーの自由がありますし、学問的な自分の信念というものがあるわけですから、それは守られておるけれ
ども、しかし、
学生に
影響を及ぼすというようなことについては、私は学者としては、カッコで包むべき性質のものである。そのことが教育基本法の八条の精神だろうと私は思うのでございます。しかしながら、この身分の問題につきましては実は非常にむずかしい問題がございまして、その
大学の評議会がこの審査をするということになっております。したがいまして、いま京都
大学のほうにも、私はこの点についてはまことに遺憾である、どうだということを申しまして、先ほど申し上げましたような手紙の実態も報告をいたしまして、それから、人文科学研究所の所員でございますから、所長からまことに不穏当である、以後気をつけろというような勧告もいたしました。しかしながら、まだ評議会を開いて、奥田学長からは何らの依頼はございません。ございませんけれ
ども、ちょうど入試の最中でございましたから、おそらく奥田さん自身もお考えになってはおるだろうけれ
ども、まだそこまでは至っておられないのかと思います。しかも、また伊藤教授が言っておりますことは、ゲバ棒やそういうものでの破壊こそ建設なんだというような、何だかわけのわからぬ
暴力肯定の言辞を弄しておるわけでございますが、その
一つの前提として、奥田さんが
日本共産党と結んで管理運営をやっている、そういう姿をきびしくこれは
批判をしているわけです。今日やはり
大学紛争の
一つの
原因は、こういう、ある教授たちが三派を支持し、あるいは民青を支持して、そうしてそういうようなカッコに包まなければならないものをはずして、そうして
政治家気どりでやりますところに問題があるかと思うわけでございまして、もう
黒木さんのおっしゃるとおり、この点につきましては、行政措置といたしまして指導助言をいたしまして、何とかそういうような教授がカッコの中に入ってくるようにいたしたいと考えております。