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国務大臣(床次徳二君)
沖繩の返還に際しまして、できるだけ施政権の返還が円滑に、また、この間に摩擦を生じないようにいたしたいという
立場から、今日
アメリカにおきましても、
日本と話し合いまして、一体化を促進するという
考え方を持っておるのであります。昨年以来、諮問
委員会を設けると同時に、本土政府といたしましても一体化政策を確立いたしまして、本年度をその第一年次といたしまして、実施に着手しておるわけでありますが、なお関連いたしましてお話がありましたごとく、その一体化ということは、制度的に申しまして相当大きな異なった制度が実施されております。これが将来、本土の法律と同じ法律を受けるようになりまするから、それに支障のないように、今日からあらかじめ内容的において本土の法律と同じようなものを実施するというような制度的の一体化ということが考えられるわけでございます。同時に、生活経済等におきましてお話がありましたごとく、本土の状態とはかなり格差が出ております。毎年毎年埋めてはまいりましたけれ
ども、なおその間に低いところがあるのでありまして、これをできるだけ早く水準を高めるということは本土としての大きな責務である。大体この点につきましても関連を持ちまして、本土並みの水準にいたしたく努力いたしておるわけであります。
さような見地から今日努力しておりまする一体化の内容といたしましては、第一に教育の問題でございます。元来教育の制度は本土と同じ制度を実施いたしておりますが、しかしその義務教育等におきまして、設備等におきましては著しく落ちておるのであります。普通教室はよろしゅうございますが、特別教室、標本設備等あるいは屋体、プール等におきましては著しい差がある。なお、社会教育等におきましてもかなりの差が認められておりまして、これをできるだけすみやかに充実いたしたいと思っておるわけであります。
それから社会保障につきまして、これまたかなり格差がございまして、今日まで漸次本土の制度を移行して取り入れてまいりましたが、特に私
どもが関心を持ちますのは医療制度であります。本土におきましては
国民皆保険を実行いたしておりまして、これが住民福祉に大きな影響を与えておりまするが、
沖繩におきましては、医療制度がきわめて不自由、医者が足らない、施設が足らないというところに大きな困難性がありまするが、将来可及的すみやかに
国民皆保険が実行できるという意味におきましての医療制度の充実の準備等をいたしておるわけでありまして、琉球大学に保健学部を設けましてそうして保健
関係者を養成しよう、並びにその実施機関のための病院を新設いたしておる等もこのためでございます。その他社会保障等におきまして、施設等におきまして、漸次充実をいたしたいと思っておるのであります。
次の問題は、産業基盤の拡充という問題であります。長い間の戦後の状態であり、なお基地経済に依存しておりましたために、これを早く本土並みに充実すると同時に、将来
沖繩がいわゆる基地経済を脱却して、自治経済、自立経済になって、本土の経済の一環として発展できるようにすることが必要でありますが、この点、特にお話がありましたが、
沖繩の特色と申しましてはやはり基地に依存する程度が高いということ、第三次産業
中心の消費経済である、主要産業はある程度まで保護政策によって行なわれておるという点でありまして、この点を漸次
性格的に改善いたしまして、体質、内容の充実が必要であると思います。基本的には、将来の
沖繩が持っておりまするところの特色というものを十分発揮いたしまして、そうして
沖繩経済というものをささえることのできるような状態にいたしたいと思っておるのでありますが、さしあたり第一次産業におきましては、現在
沖繩の
中心産業でありますところの砂糖、パイン栽培というものをできるだけ合理化して競争にたえ得る力をこしらえる。なお、
沖繩の有する天然自然の条件と申しますか、亜熱帯地域の農業としての
性格を確立する。あるいは非常に水産資源に恵まれておって、あるいは営業等の進出に便利な地位にあります。したがって、この水産業の振興等も考えなければならぬ。また、畜産業の振興等も、農業としては非常に期待されるものであります。それから第二次産業といたしましては、将来期待できるところの産業をつくり上げなければなりませんが、そのための基盤を養成しなければならない。たとえば、港湾等の充実も必要であろうと思うのであります。その基盤、資本等も同時に導入することをできるだけ考えてまいりたい。なお、特殊なものといたしましては、天然ガス等の資源もあるわけでございます。こういうことの開発、中小企業の育成強化、第三次産業につきましては観光事業等があるわけでありますけれ
ども、これらの産業の開発、まことに重要な問題でありまするが、今日におきましては、本土の実業団並びに地元の実業団におきまして、互いに相互研究をいたして、将来を期しますと同時に、日琉両政府におきましても振興計画を検討しておる。なお、
日米間におきましてはいわゆる諮問
委員会をもちまして、この問題を検討いたしまして、将来の産業対策に当たる考えでありまして、すみやかにこれを充実してまいりたいと思うのであります。
なお、もう一点、一体化の重要な問題といたしましては、市町村の財政の充実、地方財政の充実という問題であります。今日
沖繩の琉球政府並びに市町村というものが、かなり財政的に貧弱であります。同時に、本土の制度とも異なっております
関係上、これを本土並みの法制化に改めてまいりまして、同時に、その力をつけさせてまいりたいというところに第四点として努力をいたしておりまして、本年度におきましても、特別ないわゆる地方財政交付金という援助をいたしますと同時に、その事務等の内容の向上と申しますか、事務能力の向上等にも努力をいたしておる次第であります。
以上、きわめて簡単に一体化のことを申し上げましたが、特に
お尋ねの食管制度の問題、これは制度を単純に一体化するというものではなくして、むしろ御指摘のごとく、米価は本土よりも著しく安い米価を持っておる次第であります。これを直ちに一体化いたすということは住民の生活に非常に大きな影響があります。かようなことを考えまして、今後の食管制度の導入と申しまするか、この意味の一体化につきましては、暫定的な処置でもって住民の
立場を考えなければならないと思うのであります。
なお、今日地元におきましては、やはりさような経過的な処置と申しますか、処置によりまして、特別に考慮すべきものが数点ありまして、今日十分にこの点に対しては努力をいたしておる次第であります。
なお、外資を受けまする産業等につきましても、これは将来の復帰という場合を考えますると、本土の産業とのいろいろな
立場がありまして、琉球政府に対しましてもこの点を考慮いたしまして、これに対処するように連絡をとっておる次第であります。
以上きわめて簡単でありまするが、お答えいたします。