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1969-03-05 第61回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月五日(水曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員の異動  二月二十四日     辞任         補欠選任      玉置 猛夫君     鬼丸 勝之君  二月二十五日     辞任         補欠選任      高山 恒雄君     萩原幽香子君  三月四日     辞任         補欠選任      山崎 竜男君     高橋  衛君  三月五日     辞任         補欠選任      西村 尚治君     佐藤  隆君      三木 忠雄君     多田 省吾君   出席者は左のとおり。     —————————————     委員長         塩見 俊二君     理 事                 内田 芳郎君                 江藤  智君                 栗原 祐幸君                 小林  章君                 米田 正文君                 秋山 長造君                 山本伊三郎君                 二宮 文造君                 片山 武夫君     委 員                 大谷藤之助君                 鬼丸 勝之君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 小枝 一雄君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 佐藤 一郎君                 柴田  栄君                 白井  勇君                 新谷寅三郎君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 高橋  衛君                 中村喜四郎君                 西田 信一君                 佐藤  隆君                 増原 恵吉君                 吉武 恵市君                 川村 清一君                 木村美智男君                 竹田 現照君                 中村 波男君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 松永 忠二君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 矢追 秀彦君                 萩原幽香子君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  西郷吉之助君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  長谷川四郎君        通商産業大臣   大平 正芳君        運 輸 大 臣  原田  憲君        郵 政 大 臣  河本 敏夫君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  坪川 信三君        自 治 大 臣  野田 武夫君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  菅野和太郎君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  床次 徳二君        国 務 大 臣  保利  茂君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        青少年対策本部        次長       今村 武俊君        警察庁警備局長  川島 広守君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        経済企画庁調査        局長       矢野 智雄君        科学技術庁計画        局長       鈴木 春夫君        法務省刑事局長  川井 英良君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省条約局長  佐藤 正二君        外務省国際連合        局長       重光  晶君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省理財局長  青山  俊君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        大蔵省国際金融        局長       村井 七郎君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        厚生省環境衛生        局長       金光 克己君        厚生省保険局長  梅本 純正君        農林政務次官   玉置 和郎君        農林大臣官房長  大和田啓気君        水産庁長官    森本  修君        通商産業省通商        局長       宮沢 鉄蔵君        通商産業省鉱山        石炭局長     中川理一郎君        工業技術院長   朝永 良夫君        運輸省航空局長  手塚 良成君        労働省労政局長  松永 正男君        建設省計画局長  川島  博君        建設省都市局長  竹内 藤男君        自治省財政局長  細郷 道一君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十四年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十四年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件     —————————————
  2. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会開会いたします。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  まず、理事会におきまして、三案の取り扱いについて協議を行ないましたので、その要旨について御報告申し上げます。  総括質疑は本日から開始いたしまして七日間と決定をいたしました。その質疑総時間は千五十六分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ三百九十六分、公明党百三十二分、民主社会党六十六分、日本共産党及び第二院クラブはそれぞれ三十三分といたしました。  質疑順位は、お手元に配付いたしました質疑通告表順位とすることといたします。  以上御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいをいたします。     —————————————
  4. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についておはかりをいたします。  公聴会は、来たる十七日及び十八日の二日間開会することとし、公聴会の問題、公述人の数及び選定等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 御異議ないと認め、公聴会開会承認要求書を議長に提出することにいたします。     —————————————
  6. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) これより総括質疑に入ります。山本伊三郎君。
  7. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いよいよ昭和四十四年度予算案が本院に回りまして、冒頭質問に立ったんでございますが、きょうはひとつ外交問題と財政問題を主として取り上げようと思っております。  外交問題は、やはり冒頭に、佐藤総理に、すでに総理は、安保体制を持続するということはたびたび言明されておりますので、その安保体制を持続するという理由をかねて、いまの国際情勢分析ならびに現状認識を、冒頭にひとつ総理から、国民に向かって言うということをかねてひとつ御説明を願いたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は日米安全保障体制を堅持する、こういうことをいままで言ってきております。また、今後もそれを続けていく、そうしてその続ける形はどういう形をするか、これはまだわからないが、とにかく現在の国際情勢下においては、日本日米安全保障体制を必要とする、こういうように実は申しております。そこで、一体どういう気持ちでさようなことを言うかというお尋ねだと思います。もちろんもう日米安全保障条約をつくってから十年たっている。この十年間に国際的変化もあれば、日本の国情の変化もある。それに相変わらずの日米安全保障体制である、こういうことだろうと思う。ことに国際的には平和共存の機運がある。そういう際にその必要があるのか、あるいはまた米ソ大国、それだけでなくやはり国際は多極化しつつある。そういう際に、やはり日米安全保障体制を必要とするのか等々の問題があるからこそ、いまのようなお尋ねであろうかと思うのであります。いわゆる平和共存方向に向かっておることは、これは何といっても核という、これがその威力を発揮することになれば人類を破滅に導くことになる。かように考えて、核保有の米ソ両国がそういう点でどうしても戦争してはならない。こういう気持ち平和共存だと思います。しかし、その米ソ大国中心にしてそれぞれの同盟あるいは安全保障条約を締結しておることは世界現状である。しかも、それぞれの陣営においてそれぞれ、まだまだ大戦争には至らないが、それぞれの紛争が次々に起こっている。たとえばチェコの問題、あるいは中近東の問題、ベトナムはもうすでにその以前から起こっている。こういうような情勢でございます。したがいまして、われわれの理想とするところのもの、それは各国とも望むところではあるが、現実は必ずしもそういう方向にいっておらない。いわゆる多極化とはいいながらも、やっぱり米ソ中心にしている二つの陣営、そのもとにおいて世界の平和の維持ができている。かように実は考えておるのであります。かようなことを考えますと、日本などは平和憲法のもとで平和に徹する外交、そうして国づくりをしておる。その立場にありますが、やはりわが国自身として、その存立を守るために、また他国からの侵略を防ぐためにも、これはやっぱり日米安全保障体制を必要とする、これが私の結論であります。
  9. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体、自民党政府安保体制を持続するという必要性についての国際情勢分析がありましたが、私は冒頭社会党立場も明らかにしておきたいと思います。  御存じのように、太平洋戦争前に、時の日本政府は、ドイツナチスヒトラー軍事同盟を結んで、イタリーのファシスト、ムッソリーニと手を結んで太平洋戦争に突っ込んだのですね。その当時は私も実はアメリカと戦うべきではないという主張をいたしました。当時の大統領のルーズベルトの、鬼畜という文字を入れた似顔の踏み絵を踏めと言われたけれども踏まなかった。しかし、大東亜戦争に実は突っ込んでしまって、広島、長崎に原爆を落とされて日本は負けたわけですね。ところが時代は移りまして、今日、自民党皆さん方アメリカ軍事同盟を結んだ。一九五二年に吉田さんが平和条約と同時に同盟を結ばれた。もちろん日米安全保障条約という形でありますけれども、三十五年には岸総理がこれを強化して、今日、佐藤内閣も来年の六月二十三日の、この期限切れに対して再びこれを持続しようという、この軍事同盟の危険さというものが身にしみてわかるわけです。したがって、われわれは安保体制については反対である。こういう主張をしてきておるわけですね。したがって、この軍事同盟をそのまま続けるということがはたして極東の平和につながるかどうか。御存じだと思いますが、広島に落とされたあの原爆は二十キロ原爆ですね。今日沖繩のメースがかかえておる原爆は七百キロ、三十五倍も実は威力のある原爆がある。こういうものの戦いの中に、なぜ日本が進む道を堅持できるのか。これに対して佐藤総理の御意見あればおっしゃっていただきたいと存じます。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本の過去においてわれわれが選んだ道、いま言われるドイツヒトラーが、あるいはナチス、いわゆる全体主義的な行き方日本が同調しておった。しかし、その行き方はやはり間違っていた、真の行き方はやはり民主主義に徹することなんだ。その方向でわれわれの道を選び、われわれは不幸にしてアメリカと戦ったが、やはり民主主義方向が間違いのない方向だ。かように敗戦後目ざめたと、かように思います。そこで、敗戦ということでとうとい犠牲を払って、そこで一番大きな変化は何と言ってもわが国民主主義に徹する。そうして、平和を守る、この形だろうと思います。でありますから、その形において私ども国づくりは、これからその方向にいく、全体主義的な方向へはいかない。それがいわゆる共産主義の国ともくみしないゆえんである。ここにやはり考え方の対立がきまるのでございます。そうして、いま言われる社会党と私どもとの相違は、社会党はいま中立主義を言っておられる。中立主義、たいへんけっこうな一つのりっぱな見識だと思います。しかし、外国、欧州における中立主義の国はどういうような処置をとっておるか。それをオーストリーに、あるいはスイスに、これらの国々の行き方をみると、日本の場合とはだいぶ違っておるのですね。そういうことをまず考えて、日本中立主義よりも自由主義陣営、そうして、平和に徹する。こういう国柄をつくるのが望ましいのである。これがわれわれの選んでいるいまの道だと、こういうように私は思うのであります。あえて社会党の方と論争するつもりで申すわけではございません。ただいまのような次第でございます。
  11. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私はいま自由主義陣営といわゆる仲よくする、アメリカと仲よくするということについては否定しておらない。これは中国もそのとおりだと思います。ただ、二国間の軍事同盟という危険な安保体制というものに対してわれわれは否定しておるのですね。世界は、われわれ平和にならなくちゃならぬというこの原理、それはわれわれも考えておりますが、なぜ二国間に軍事同盟のようなものを結ばなくちゃならぬか。もしそれが、結ばなければ、アメリカ日本に対して敵対するか。そうじゃないでしょう。その点は、私は軍事同盟のこの形というものは、これはなくさなくちゃいけない。こういう趣旨なんです、この軍事同盟の問題は。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の説明が足りなかったのですが、いま申し上げるような自由主義陣営でいく、そのことはよろしい。そのもとにおいて存立を守る。そうして安全を確保する。いまの情勢から申しますと、一国だけの力ではなかなかそれができない。やはり同じような考え方を持つものが相提携しあって、そうして選んだ道がただいまの日米安全保障条約、それは日本の新しい憲法では、もちろん交戦権を認めていないし、あるいは積極的に他国に出ていく、こういうものではない。したがって、数国間で同盟条約を結ぶという、そういうことも考えませんが、いまのような同じ考え方を持つ国と提携して、そうして、平和に自分の、自己の存立を守っていく、こういう考え方アメリカと提携しよう。こういうことでございます。ただいまの国際情勢自身が全然その心配はない。もう一切戦争は起こらないんだ。かように考えると、この結論は違いますが、私はやはり一国の存立を守り、安全を確保するという、その立場に立つと、大事な上にも大事を踏んで、そうして万全の策を立てる。これがこの国の安全を確保するゆえんではないか、かように考えております。そういう意味において日米安全保障条約を締結する、こういうのでございます。
  13. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ具体的に聞いていきますが、日米安全条約軍事同盟であるわけですか。三十五年の岸総理も、これについて非常に微妙な答弁をされています。きょうそこにすわっておられる愛知外務大臣が、この人が質問者になっておりますね。そういうことで相当論争がありますが、日米安全保障条約軍事同盟であるかどうか、これをひとつまず具体的に。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 軍事同盟ということばもいろいろに使われるわけでございますが、私は、現在の日米安保条約というものが、いわゆる軍事同盟というふうには理解しておりません。と申しますのは、いろいろの点からいわれると思いますけれども国連ができましてから、いろいろのものの考え方は変わってきておる。いわゆる攻守同盟ということを含んだ軍事同盟というようなものが、私は、今日の世界においてはあまり考えられておらぬと思いますが、そういう点はともかくといたしまして、日米安保条約の前文から各条文を通じて通覧いたしますれば、これは、日本の安全を守る、あるいは日本を含む極東の安全に寄与するということが目的になっておって、国連憲章のいわゆる第五十一条をもとにした考え方であることは当然であると思います。また、この条約の中には、各条項ごとに経済的あるいは文化的、その他の面におけるところの日米両国の緊密な連携関係をうたわれておるというような関係からいたしましても、私は、軍事同盟という観念で律すべきものではないと思います。  同時に、一九五〇年の二月であったかと記憶いたしますが、中ソ友好同盟条約、この条約のごときは、条約上明白に日本を敵国として規定しておる。こういうふうな条約と比べてみました場合に、私は、中ソ友好同盟条約というようなものは、あるいは昔からいわれておるような軍事同盟条約である、こう理解すべきであって、これと日米安保条約とは性格が異なるものである、私はかように理解いたしております。
  15. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ戦時国際法なり戦争法は十分熟知した上のことだと思いますが、あの軍事条項がありますが、日米安全保障条約は、しからば、中立と言えるのですか。同盟でなければ中立ということが言えるのですか。これをお聞きしたい。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 中立とは何ぞやということがまた私は非常に問題であると思いますが、ただいまのお尋ねの問題は、安保条約性格の問題である、かように思いますから、それに限定をしてお答えいたしますれば、先ほど申し上げたとおりでありまして、安全を守るための防御的な性格、こういうふうに御理解いただければいいんじゃないかと思います。そうして、一国だけでは安全を十分に守ることはできないから、そこで国連憲章にいわゆる集団安全保障、この考え方をとって、日米両国が協力して安全を守る、こういうふうに申すべきであって、これはまた、いわゆる中立論ということをどういうふうな角度でお尋ねか、私によく理解できませんけれども日米安保条約というものはそういうものであるということだけは、きわめて明確であると思います。
  17. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはいままで衆議院とか何とかで答弁されましたが、それは私は通じないと思うんですね。一九〇七年、第二回のネザーランドのハーグ国際会議で、初めて慣習的な戦争法というものが成文的な条約に変わりましたね。その第五号条約中立という規定、それが一種の中立のいわゆる規定なんですね。概念なんです。したがって、戦争法でありますから、日米安全保障条約も、あの軍事条項は、武力をもってまあこちらに攻めてくるかは別として、そういう戦争状態がなければそれは発動されない。戦争というものは無条約状態になるのですね。それでもなおかつ戦争の場合はこれだけの限度は守ろうというのが、あのハーグの第二回国際会議決定の、十三項ほどあったと思うのですね、条約、その中立条項日米安全保障条約関係すると、中立と言わない。で、中立でなければ同盟と言わない。では中立同盟の間に何があるか。これを説明してもらいたい。
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど来申しておりますように、こういう条約関係——あるいは条約関係というのも、いささか狭過ぎるかもしれませんけれども国連憲章ができて以来の安全保障考え方というものは、旧来の中立とか、あるいは軍事同盟とかいうような概念だけでは律し切れないような私は新しい考え方から発足しているものだと思います。そうして……。
  19. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それを言うてください、新しい考え方を。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ですから、それは戦争未然に防止する、戦争というような手段に訴えないで国際紛争を解決できるようにしようと、こういう私は基本的な考え方だと思うのです。ですから、日米安保条約も、私は戦争脅威にさらされないようにする、戦争脅威というものが起こらないように、これを未然に防止するというところが私はほんとうのねらいであると、よく戦争に巻き込まれる云々の議論がございますが、これは私は本末転倒の議論である、かように考えます。
  21. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まああんたはぼくはもうだめだと思う。現在あの一九〇七年のハーグ国際会議中立事項というものが今日ないのだ、新たに国連憲章に変わったと言われるならば、追及しますよ。  あのとき、きめられた赤十字事項があるでしょう。降伏した戦闘員に対してはそれを殺戮してはいけない。毒ガスに対しては、これは使用してはいけない。これは全部生きておるのですよ。なぜ中立の項だけが、国連憲章ができたからといって、これは新しいものに変わったと言う、そんな学者おりますか。あんたの意見でしょうが。これを聞きたいのですよ。あんたの意見は聞きたくない。
  22. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私の意見はいまも申し上げておるとおりであります。たとえば、そこでハーグ戦時国際法に関連する中立というようなこと、あるいは戦争が実際に起こったようなときに適用すべきものについては、現在でも適用するのが妥当だと思うことは、それによって適用すべきが当然だと思いますけれども、私の考え方というのは、そういう事態が起こらないようにしたいと、少なくとも日本の場合。
  23. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あんたの考え聞かない。
  24. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いや、私の考えを申し上げておるのです。
  25. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総理話——あんたが出てきた。総理の話を聞いておるのです。
  26. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いや、私からお答えして——こういう問題は私の所管でございますから。
  27. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 所管みたいなもの、聞きたくない。
  28. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあお聞きいただきたいと思います。
  29. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 政府の見解。
  30. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私が先ほどから申し上げているのは、政府の見解でございます。
  31. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総理大臣。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま外務大臣が答えたのは、これはもう専門的な立場で、何にも知らぬわけじゃないから、最もよく知っているのですから、私は信頼しております。いま戦争がある、そういう場合の中立という議論、これはもう日本などは戦争しないから、そういう意味ではもうはっきり中立だと思います。その中立である日本がなぜ安全保障条約が要るのだと、これは日本存立を確保するために。いま外務大臣が言いますように、日本戦争を起こさない、また起こされないと、そういう立場を守ると、これがいわゆる日本安全保障条約の締結のゆえんだと、ただいま外務大臣が答えたとおりであります。
  33. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あのね、総理ね、そういう論議が第一次欧州大戦の後、国際連盟の規約をつくるとき論議された。同じ精神です。もう戦争はだめだ、平和で貫こうというのが、国連憲章の全般を通じた精神で、この規約が、憲章ができておるのですね。それでもなお戦いというものは、これはやむを得ず起こるという場合があるから、戦争法規ができておるのですね。その場合における中立同盟、個々に対する処遇は違うんですね、交戦国は。たとえば同盟国となると、相手国はその国にある軍事基地に対しては、敵国の軍事基地に対しては、合意を与えておる限りは、その国は同盟国として敵国に準ずるということになるのです。だから中立同盟国以外に、日米安全保障条約攻守同盟でないから、軍事同盟でないというものは、その戦時国際法概念から出てこないのですよ。これはあなたがここでそうでありますと私に屈服しないと思うが、これは一ぺん十分学者なり専門家に聞いて、これは軍事同盟——岸総理は非常に微妙な答弁をしておるのですよ、三十五年に。読まれたですか、そのくらい読んでおきなさい。重要な問題が実はいま論議がされていないのです。愛知さんのは、あんなのは常識といいますか——おそらく、これは放送でしょう、国民全般聞いておられるから、国際法学者も聞いておると思うのです、笑われますよ。そういうことを言っておっては、国会は何を論議しているのかと。もう少し突っ込んだ専門的な解釈というものをしてほしいと思うのです、戦争法に対して。国連憲章できたからこれだけでいいんだ。他の戦争法なり戦時国際法は全部ないのだと言われるならまた反駁するが、認めるという、中立の定義だけは国連憲章で私はこう思いますと、こういう答弁でしょう。これじゃ納得できない。条約局長でもいいですよ、専門家でもいいですよ。許しますよ。
  34. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) お答えいたします。  先生よく御承知のとおり、第一次大戦以前、戦争というものが、戦争をやる自由というものがあったわけでございます。したがって、その戦争の両当事者というものは、両方とも何と申しますか、違法の行為をやっておるわけではなかったわけでございます。したがってそこの違法でない二つの国、違法でない行為をやっている二つの国の間に中立というものは当然ありまして、その中立国というものは、それぞれ義務も持ち権利も持った、そういうふうな観念でやっておったわけです。ところが一九二八年に不戦条約ができまして、その後戦争というものが違法なものだという観念がだんだん出てまいりまして、国際連盟の規約につきましても、そういう思想が少しずつ出てきたわけでございます。それが国際連合の憲章に至りまして、このいわゆる武力行使というものは違法なものである、何と申しますか、本来的に違法なものであるというふうな観念が出てまいりまして、それに対する唯一の例外として自衛というものを認めたわけでございます。  したがって国際連合憲章で考えますれば、国がやる武力行使というものを適法にやるとすれば、それは侵略に対する自衛という形の武力行使というものが唯一の適法のものというふうに考えられるわけでございます。したがって戦争状態というものは、御承知のとおり、あるA国からB国に武力行使が起こりまして、武力行使がなされまして、それに対して自衛権を行使しましたときに、これは戦争状態が当然起こるわけでございます。その場合のA国、侵略国というものは、これは違法な行為をやっているというふうに観念するわけでございます。したがってその場合には、昔のような考え方の二つの国が戦争をやる自由を持っておって、対等な形で両方とも適法にやっていたという観念でなく、一方は侵略国であり、一方はそれに対する自衛の権利を行使している、そういう観念にいまの憲章の考え方はなっておるわけでございます。したがって、そういった両方全く適法なものが、適法な行為をやっている二つの国の中に中立というものがあったという観念は現在はなくなってくる、憲章上ではなくなってきている。そういうふうに観念するよりほかしかたがないわけでございます。ただそこで戦時法というものがなくなったかというふうになりますと、それはやはり戦争状態というものは起こり得るわけでございますから、戦争状態の中でどういうふうな、いかに戦争状態を行なうか、いわゆる人道的な考え方による戦争法規というもの、たとえば捕虜の取り扱いとか、あるいは文民の取り扱いとか、そういった戦争のやり方とか、そういうふうな戦争法規というものは、依然としてこれは残っておると考えざるを得ないと思います。またそうであるべきなんでございます。しかしその中立とかというような、昔のいわゆる伝統的国際法にあった中立概念というものは、現在国際連合の憲章上ではなくなったというふうに私は考えております。
  35. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あんたの言われるのは、きわめてぼくから言えば、詭弁とは言わぬけれども、非常に苦しい答弁です。先ほど言われた中に、侵略国と被侵略国といいますか、いまの国連憲章で、一体それはだれが認めるかということですよ。いろいろ事件起こっているでしょう。おのおのの国は侵略国といいませんよ。軍隊が国境を越えて入っても、入る原因をつくったからということで侵略国で、お互いにそう言っている。安保理事会でもそれは解決できないのですよ。国連憲章が絶対性のあるものじゃないんだ、いまは。おそらく将来も相当続くでしょう。そこで国連憲章五十二条の地域取りきめということで、おのおの地域的な安全保障を守ろうということも許しているんですね。だからいま言われた中立国の概念はなくなったというならば、しからばベトナムとアメリカ戦争をしていますね。その間におけるいろいろの中立国に対する待遇をしていますね。たとえばこの国を旅行する場合に、中立国の者はこうだけれども同盟国はこうだという規定していますね。中立国は依然としてやはりその概念が残っていますよ。消えたのではないですよ。そういうことを言って、私は条約局長も相当政府に引きずられていると思いますが、闘志がないと思いますよ。私はそういう点をはっきり——時間がないからこれ以上追及しませんが、これは私ははっきりしておかなけりゃ、私は安全保障条約はりっぱな軍事同盟であると、そう言ってもいいと思うのですよ。岸さんは、ある意味においては軍事同盟でもある、こういうふうな表現をしていますね、三十五年には。そういう点を考えて、私はなぜこう言うかと申しますと、軍事同盟国に対する中立国でなければ、たとえば要領書きに書いておきましたけれどもアメリカはいろいろの国と実は条約を結んでおりますね。その結んでおる条約国、たとえばANZUS、これはオーストラリア、それからニュージーランドとアメリカ、東南アジア、これはSEATOと申しますか、一九五四年に、それから米比、米韓、米タイ、特にANZUS条約と相互防衛条約と米比相互防衛条約の四条を見ますると、四条、五条を見ますると、これは直接日本を攻撃するのは別ですよ。条約上から見ると、太平洋上にあるアメリカの基地については、フィリッピンがどこかの国と戦っても、日本にあるアメリカの軍事基地に対して攻撃を加えることができるということになるのですね、条約上は。やるやらぬは別ですよ。そういう危険性があるから、軍事同盟であるか、あるいは中立であるかということを執拗に聞いたわけです。  したがってわれわれは、社会党は、日米安全保障条約というのは軍事条項なけりゃ歓迎ですよ。これはアメリカといろいろ経済、貿易状態を見ても、五割以上がアメリカに依存しておる。核のかさじゃなくて、経済のかさに日本現状はおるということも認識できると思うのですよ。だからそういう点を私は追及しておるんですが、その意味においてこれは平行線でしょう。最初冒頭にあなた言われたのと、私社会党の態度を表明したのですが、平行線だが、私は国民が、私の言うことと佐藤総理の言ったことについて、判断をしてもらうということで論議を十分間費やしたわけなんです。その点は十分ひとつ考えてもらいたいと思いますが、そこでこの問題を続けるのですが、一体もう来年、六月二十三日ですが、政府はこの持続するというやり方についてどういう考えにおられるのか、これまた白紙です。この点聞いておきたい。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほども申しましたように、日米安全保障条約は持続する、かように考えております。
  37. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 やる方法。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 堅持すると、だからそういう条約を続けていくということを言っております。ただその形はどんなにするかは、これはまだきめておりません。
  39. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 持続する、延長する、いろいろ表現ありますが、結局堅持するということであれば、いわゆる自動延長、あの条約十条によるその自動延長ということにはならぬと思うんですがね、あなたの言うことばの印象から見るとね。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は堅持するということばを使っておりますが、その堅持ということばには非常な長期的な意味があるということで、それで何か不適当だとおっしゃるのは、これは御自由だと思います。とにかく私は、日米安全保障条約を続けていこう、こういう考え方でございます。
  41. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 しからば、自動延長でなくて、いわゆる新たに条約改定、更改といいますか、改正案を出して、体制を続けると、こういう意味にとっていいですか。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまその形はどういうふうにするか、自動延長あるいは固定延長、あるいは改定、あるいはこれは破棄だというようなことでございますが、続いていくのですから破棄はございません。この三つのものについていろんな御意見があろうかと思います。私はそういう方向で考えておるというのであります。
  43. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあいよいよ来年ですからね、そのときに一応対決しなきゃならぬと思います。この問題については相当まあ国内でいろいろ問題があると思います。あなたのほうも機動隊をふやしてなんとか考えておられるようですが、これはまたそのときに対決をいたします。  次に本日の重要問題、沖繩の返還問題、もうこれはおそらく総理衆議院じゃあなたはいやというほど答弁なさっておるので、大体言うことは私は先にわかっております。しかし、すでに愛知外務大臣は六月にあなたの使いとしてまず伝達に行こうという段階ですね。しかもあなたは、一昨年ジョンソンとの共同声明から見ると、やはり基地の必要性は認めておるのだから、社会党の基地抜きの返還ということは一応別としても、もう大体姿は見えておるのだが、ただ問題は、あなたのほうとしては、核をどうするかという問題が残っておるのですね。三木さんとか、あるいは前尾さん、中曾根さん、いわゆるあなたの党の有力者といわれる方の意見が新聞に出ておりますね。あなた一人はそうでないと私は言えないと思うんですね。これは政治の常識からいって、いかにあなたが総裁であっても。だからそういう方向国民は見ていいのかどうか、もうすでに、あなたは両三年にめどをつけると言われたでしょう。もうことしの十一月で実は二年。したがって両三年のうちの一つに入っていくのですが、この点についてお伺いしたい。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう衆議院の段階でずいぶん議論をされました。もちろんお尋ねになるのですから、その応答もよく御承知の上でのお尋ねだと、かように思いますが、どうも同じことを言うので相すまないと思いますが、私は、御記憶のようにこの十一月以降にアメリカを訪問するという大体のスケジュールをジョンソン国務次官と、米国に帰る前に、十分相談をして、そうして当方としては、まず外務大臣をアメリカに、ワシントンに送りたいし、さらにまた日米閣僚会議があるから、その際も主としてこういう問題についての個別的折衝をしよう。そうして自分は十一月まではなかなか余裕がないから、十一月ごろになると時間がとれるようになるから、それ以降においてアメリカを訪問して、ニクソン大統領とこの問題で話をしたい。大体のスケジュール、そういう考えでおるのでございます。アメリカ側もそれを受け入れるようにひとつ十分検討してくれないか、こういう話を申し入れてあるのであります。その結果、ですから、外務大臣が六月に出かける、向こうで待っておる、こういう話に実はなっております。したがって、このジョンソン大統領と私との、両三年以内に返還のめどをつけるというその話し合いの一つのまあ軌道を敷いたような、レールを敷いたような気持ちでいまいるのであります。  そうしていまの国民気持ち——これは早期返還については、だれも異存はない、とにかく早く返してくれと、それが沖繩同胞のためにも、また日本国民のためにも、また現状を救う上からも、どうしてもそのことが必要である。みなその点で議論は一致しておるようであります。また、最も好ましい方向としては、これはいろいろな核抜き本土並みというような、こういうような希望意見、そういうものが強く出ておる。これも実は私承知しております。しかし私自身は、なおまだ返ってくるかどうか、このアメリカの基地、その基地のあり方という、これについては、まだ結論を出しておりません。したがいまして、私はあらゆる方面の方に機会あるごとに、ひとつ知恵をつけてください、日本国民の将来のために間違いが起こらないように、正しい選択ができるように、皆さん方からのお知恵をひとつ拝借したいと謙虚に伺ってまいりました。こういって、ただいまは白紙の状態だということを申しておるのであります。この考え方は、衆議院の段階で、昨日も締めくくり質問でもそういうお尋ねがありましたので、私の気持ちを率直にお答えしたのでございます。だから、そのきのうの翌日、きょう、山本君のお尋ねでありますが、そのいままでの考え方に、私まだ変わってはおりません。その点を御了承いただきたい。いい案があればひとつ知恵をつけていただきたい、よろしくお願いいたします。
  45. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ずっとあなたの答弁を聞いておると、これはもう衆議院、参議院の段階を聞いておりますが、非常に論理的に合わないのですね。日本憲法は守る、これはもう当然のことですね。沖繩が返還されてくれば、これは日本の領土ですから、日本憲法というものがこれはもう適用されることは事実なんですね。その場合に核は置いて実は返せないじゃないですか、日本憲法現存する間は。いまの沖繩にはメースBという二千二百キロの実は爆撃機、核弾道弾がついたやつがありますね。だから国民も、佐藤総理の言うことはわからない、日本憲法があるのなら当然そんなことはできない。それだのに、社会党のいわゆる核抜きとか基地抜きということは一応別としても、どうもそれが理解できないというのが——この放送を通じてもそう思っていますよ。何であれ言わないのだろう。アメリカのほうにはどえらい気がねしている、こういうことですが、その点わからない。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アメリカに気がねしている、こう言われるけれども、私も日本総理として、日本の国益に合致し、国民のために私はいろいろ考えておる、そういう意味から私もいろいろ考えております。事柄はまことに重大なことだし、これはやっぱり相手のあることですから、その点これから交渉するというその立場において、どういうような——こう出ればああ考える、こう出る、それぞれの策もなさなければなりませんし、いろいろのことを考えていくのが当然のことだろうと思います。
  47. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはあなたの心配はよくわかりますよ、ヘラルド紙とか、ワールド・レポートですか、それからニューヨーク・タイムスなんかには、あなたの心配するような記事がいつも載っております。アメリカは実は沖繩のあの基地というものは放してはいけないという強い執念を持っておることがあらわれておるんですね。そうすると、われわれ心配するのはここなんですよ。もし核抜きだということになれば、返還の時期というものをあなたは両三年と言ったけれども、それが実現するのかどうかということが一つ心配になってきておるんですよ。だから、私の言うことはこれでおきますけれども——おくというより続けますけれども、この問題についてはね。あなたが両三年と言うと、まるまる待っても来年の十一月が来ればこれは両三年ですね。それまでにもしそれが実現しなければ、あなたはやめられるかどうか知りません、四選されるか、三選でやめられるか、そんなことは知りませんけれども、もしそれまでに実現しなかったら、一体どうなるんだ、佐藤さんの言ったことはどうなるんだ、この心配があるんですね。これについて、今度のニクソン大統領とこの秋会われたときにあなたの自信ありやなしや、この点ひとつ聞いておきたい。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま山本君の言われるように、まことに重大な問題でございます。いまアメリカからいろいろ報道されておる。また、打ち返しの、日本からアメリカへもいろいろなことが報道されている。これも一々私も目を通しております。したがって、ただいまのジョンソン前大統領と私が話をしたこと、この解決はたんたんたる交渉の道ではないと思う。なかなか紆余曲折のある問題ではないかと思う。そういう際、ただいまたいへん御理解のあるお話を聞いて、私もそういうことは望ましい。幾ら野党といっても、これはやっぱり日本の大問題だ、だからそういう意味でこの問題のむずかしさというものをやっぱり理解していただきたいと思っておりましたが、そのいまのお話の中に片言が出ている。これは社会党と私どもは基本的に違いますから、その立場は違ってもよろしいのです。違ってもよろしいが、この問題はやはり、佐藤のためにどうこうではない、沖繩県百万のために、また日本国民のために、この問題を解決しなければならない、この立場においていろいろの御意見が聞きたいということを申すのですから、その中の皆さん方のほうからも、この問題はむずかしい問題だぞ、おまえそんなに簡単に考えているが、そんなにいくのか、こう言われること自体、私はそういう意味では激励を受けつつただいまのお話を聞いたわけです。同時に、アメリカの話も話ですが、何といっても日本国民の要望というか、とにかく二十数年間も異国に、他国に支配されている同胞は、たいへんな苦しみをしている。しかも、これはさきの戦争の激戦地です。そして、その激戦を経験した諸君が、いまなおこの占領下において非常に苦痛を受けておる、そこに非常な苦しみがあるということであります。でありますから、私はそういう問題に取り組むためにとにかくどうしたらいいか。いま言われますように、簡単に、憲法でどうなっているじゃないか、こう言われる。これもまた、他の機会にお答えしたように、私は、沖繩が返ってくれば、これは日本憲法はそのまま適用されますとはっきり申し上げておる。ただ、私がいま幾分かでも期待をかけるとすれば、両三年内に返還の時期を話し合う、こういうことをきめるということを言っておるので、両三年のうちにすべての問題が解決するものでもないこともありますね。だから、そういうところの実際に返還される時期にどういう状態になるのかということを考える、そこにまだ余裕があると、かようにも思います。しかしながら、おそらくこの基地と返還、それを分離してはなかなか考えられないのじゃないか、そこに一体どういうような問題を考えればいいのか、私の白紙というか、いまきめかねる問題はそういうところにあるわけであります。問題は、やっぱりいつまでもこういう問題をずるずるに引っぱっていく——これは国民も心配だろうと思う。そういうことでないようにすぱっときめることができれば、それにこしたことはございません。しかし、いまなかなか重大なる問題でございますだけに、私がきめかねる。しかし私が出かける前にはきめざるを得ない、かように思いまするが、いまのところこの段階で、ただいま申し上げたことでいたずらに問題を起こすよりも、もう少し検討して、私が確信を得る、その上できめたい、これが私のほんとうの気持ちなんです。
  49. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうもじっと耳をすまして聞いたのですが、どこがどこでつかまえていいかわからないのですね、いろいろ考えておったのですが。どういう意味を言っておられるかということなんですが、むずかしいむずかしいと言う——それはむずかしいでしょう。しかし、私らの立場から言うと、冒頭に申し上げたように、アメリカとは太平洋戦争で戦うべきでないと——それは沖繩県民も純粋な人はそうであったと思うのですね。その犠牲となって実は沖繩アメリカの施政権下にあるのですね。したがって、そういうことを考えると、結局いまのアメリカ極東政策というものの犠牲になっておるということを私は言いたいのですよ。あれは基地があるために実は返さないのですよ。あの向こうの新聞記事を見ると、それだけなんですよ。百万の日本人については、それは気の毒だということを書いてあるのですよ。あの基地をいかにして確保しようかということがアメリカの一つの希望なんですね。その基地を持つということはアメリカ極東政策ですね。中国敵視のあのアメリカ極東政策、それの犠牲になっておる。したがって、私は安保の問題をここで取り上げてきたのです。これがわかれば、私は、強引に、政府は強気をもって主張してもらいたいと思うのですよ。沖繩百万の人がなぜ犠牲にならなくちゃいけないのですか。日本が負けたのは、あの沖繩百万の同胞のためじゃないでしょう。内地の人が、こういうぐあいに経済復興で、相当、戦前以上に生活が戻っておるけれども沖繩百万の人は一体どうしておるのですか。日本の戦前における政府の外交政策を誤ったためにああいううき目を見ておるのでしょう。百万の人が一億の国民にかわって苦労しておるのですよ。その点を十分訴えて、強気でこれを解決してもらいたいと思うのですが、先ほどの答弁ではわからないので、一体どうされるのだ、両三年のうちに返還するという方法についてめどをつけるのか、どうもわからないのですね、その点を明らかにしていただきたい。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 両三年以内に返還のめどをつける、こういうことであります。  先ほど来申しましたように、私の結論は、早期返還、これは何としても実現したい、なるべく努力する、また基地のあり方についてはただいま白紙だ、これが私の考え方でございます。  また、先ほど来の山本君の御意見あるいはお尋ねを通じて、私が誤っていなければ、山本君の御意見を御意見として伺い得たように私は感ずるのであります。
  51. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。返還の態様については、山本さんがこれから詳しく質問されると思いますが、かりに返還のめどがついた場合に、正式に何年か先に返還されたときにはもちろん協定ができますね。ところが、ワシントンでニクソン大統領と会談をして、つまり何年先というめどがついたとき、その時点では単に共同声明だけなのかどうか。なぜ私がこういう質問をするかといいますと、本会議お尋ねしたように、国際情勢変化で、そうは言ったが、いまそのとおりにはいかないということも、向こうが主張する情勢が出てこないとも限らないわけですね。したがって、返還されるその時点ではもちろん正式な協定ができるけれども日米間で、今度の秋の訪問の際に、この前私が申し上げたように、何回も訪問されることがあるかもしれないということを申し上げましたが、かりにもし一回勝負で話がついたような場合——二回でも三回でもかまいません、その場合には何らかの取りきめというものができるのか、単なる共同声明で終わるのか、この辺が私は国際情勢変化と関連して非常に重要な問題だと思いますので、この機会に総理の見解を伺わしていただきたい。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、小笠原が返還した、つい最近、昨年実現したばかりであります。私どもは、その例もございますし、その例にならって処置するつもりでございます。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっとそれではわかりかねるので、小笠原返還の場合と問題が——いま山本委員が指摘されたように、基地の重要性等からいって非常にこれは重要な問題なので、あのときと同じケースで処理されられるとは考えられないのでありますね。したがって、その場合にはどういう形をとるか、これはもう十分お考えがあってしかるべきじゃないかと思います。ただ、二人で会談をして、しゃべりっぱなしで、共同声明で事は終わるというようなことで済まされるものではない。これは必ず国際情勢変化によってはどういうことでも向こうが言い出せるようなことになると私は思う。ですから、その意味で、私は何年先ということになるなら、私たちは即時無条件返還の要求ですが、現実が必ずしもそうはいかない場合には、それを確実に、総理主張なり日本主張を、返還の主張を確実にするためのもっと正確な取りきめが必要なのではないか、そういうことであります。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 小笠原の例を申したのは、一応共同コミュニケはどういう形にしますか、ある程度はっきりしたものが共同声明の形になるか、あるいは大統領と私との間ですぐ細目についての協定ができるというものでもないかと思います。私は、共同声明でもっと早く了解がとれて、そしてそれに引き続いてあとで協定を結ぶものだ、かように考えております。
  55. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連。いままでの話を聞いておりますと、結局政府の腹が白紙ですから、態度が白紙ですから、いまのところ、だから今日までのところ外交ルートを通じての沖繩返還問題に対する具体的な話し合いというものは全然進んでいないということになるわけですね。もちろん態度が白紙なんですからね。そこらはどうなっているのですか。共同声明に基づいて継続協議をやるということになっていますね。で、去年の夏、三木さんとジョンソン大使と一回やられました。そのときは、日本側が全然方針がきまっていないということで、ただ顔合わせした。去年の暮れの予算委員会で私が聞いたときには、愛知外務大臣は、何か近日中に、年末に、第二回目をやるとかいう話もあったのですが、そこらでどういう程度の話が行なわれているかさっぱりわからない。しかも、ジョンソン大使は国務省のほうに帰られたわけですね。それで今日まで後任の大使というものが全然きまっていないのですね。まあ政権交代ということがあったということはわかりますけれども、しかし、それにしても、この戦後の日米交渉——いろんな外交交渉の中で沖繩返還問題は最大の課題だと思うのですね。その最大の課題を日米間に迎えておるこの重大なときに、大使が帰ったままで、やめたままで、いつまでたっても後任の大使が来ないというような状態で、一体、日米交渉、日米交渉とおっしゃるけれども、どういうことが行なわれているのか。主としてワシントンの大使館を通じてやっておられるのかもしれぬけれども、そのワシントンでやっておられる下田さんと政府との間でも、わざわざいまごろになって総理大臣や外務大臣が陳謝をしたり取り消したりせなきゃならぬほど意思の疎通を欠いているわけでしょう。一体どこでどういう話が行なわれておるのか、ただ六月に外務大臣が行って会うという日程だけがきまっておるので、その内容については何にも話し合いが行なわれてないのか、あるのか、そこらの点をこの際はっきりしていただきたい。それから、大使の後任が全然できないということも、その後どういう事情でできぬのか、これは例のないことでしょう、この点もはっきりしていただきたい。
  56. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いろいろのお尋ねでございますが、まず何から申し上げましょうか——いわゆる佐藤・ジョンソン会談ができましてからあと、沖繩は返還という方向に向かって日米間でずっと随時話し合いをすることになっております。で、その後いろいろ時間も経過してまいりましたが、六月早々に私はロジャーズ国務長官と会談することになっておりますが、いわば常識的に申しますと、ここからがだんだんレールを敷いてまいりまして、十一月以降の総理とニクソンの会談のときに、最も実りのある、また国民の期待に沿い得るような結果をつくり上げるということをめどといいますか、目的にいたしまして、六月からだんだんと本格的な話し合いに入ってまいりたい、こういう意味で、ただいま総理がお話しになりましたように、日程としては双方の合意が原則的にできましたわけで、私はこれは非常に大切なことだと思います。少なくとも話し合いの日程が正式にきまってきたということは、これは促進されつつあるということを意味するものと私は期待いたしております。  それから、一昨年の共同コミュニケ以後、三木大臣の時代に、一回何と申しますか会談が行なわれましたが、その後私も、前ジョンソン大使が在任中は、いろいろの機会におきまして、双方の情報交換という程度の話し合いは続けてまいりました。  それから、その次の問題は、アメリカの大使がまだきまらないではないかというお話ですが、これは私どもも早くきまることが望ましいわけですが、同時にアメリカ側といたしましては、現在オズボーン氏を臨時代理大使にしておるわけでございます。これは臨時代理大使との間にも常に接触を保っております。沖繩の問題に限りませんで、日米間にはいろいろの問題もございますし、また常時双方の意思疎通がきわめて必要でございますから、いまのところ十分意思疎通はできております。一日もすみやかに後任の大使が決定してもらいたいということは私も念願いたしておりますが、さしあたりのところは十分双方の意思疎通はできておる、かように申し上げて間違いないと思います。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの外務大臣の話、問題は、ジョンソン大統領と私との話、それをニクソン大統領が承認したかどうか、こういう問題が一つあると思います。これは御記憶に存するように、朝日新聞の記者と会った際にニクソンは、この佐藤・ジョンソンコミュニケ、その線で交渉する、そういうことを言っておりますから、その点では新しい事態になったけれども、話はできるということであります。これはもうすでに新聞に報道されている。それからもう一つ、先ほど羽生君のお話ですが、私も事柄が大事でございますから、ことに、取りきめた時と返還の時期との間に国際情勢変化があったらどうなるか、こういうお話がございますが、これは普通の状態なら、国際情勢変化があろうが、取りきめる際にそういうことをもやはり一応考えてきめなきゃならない問題だと、かように思っておりますので、あのときにあんなに約束したが、こんなに変わってきたからもうだめだとか、そんなことは言わないように、これは私が注意すべき御注意として伺っておきます。
  58. 秋山長造

    ○秋山長造君 簡単にもう一度お尋ねしますが、大使がいなくてもオズボーン代理大使で日本政府との間の意思は十分に疎通していると自信満々のことをおっしゃいますが、しかし、これは事実ですか、ほんとうに。そういう事実なら、オズボーン大使がわざわざ川島副総裁をたずねて、佐藤さんが国会でおっしゃったことはさっぱりわからぬ、理解できぬというようなことをわざわざ新聞記事にまでそれが載るというような不細工なことになるはずはないと思うのですよ。意思の疎通は、日本の出先の下田大使との間でさえ意思の疎通ができておらぬのに、代理大使ができるはずがないですよ。そんないいかげんなことを言わないで、これはワシントンでばかり交渉しないで、東京で、あんた、日本ベースでもう少しきちっとした交渉をしなさい。それが一つと、それから、去年十二月に私がお尋ねしたときも総理大臣は、ニクソンが朝日新聞に語っておるからだいじょうぶだと、それだけですね。これは新聞記事というものもそれは大切ですよ、大切ですけれどもね、いやしくもこれだけの重大問題——日本の政府とアメリカの政府との間の接触が、ただたまたま選挙中にニクソンが飛行機の中かどこかで語られたことが朝日新聞に報道された。その新聞記事以外には何もない。二言目には、あの新聞記事があるからだいじょうぶだと言われるんでは、あまりにも無責任であり、お粗末であり、たよりない。だから、われわれいまも、今日ただいままで、実は山本委員の質問に御答弁を幾らできても、やはり代理大使と同じ感じを持たざるを得ない。わからぬ。何をしようとされておるのかわからぬ。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それでは、新聞記事を引き合いに出したことが悪いようですが……。
  60. 秋山長造

    ○秋山長造君 悪いとは言わない。それだけじゃいかぬと言っているんです。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その新聞記事が一番わかりいいかと思って出したのですが、それでその点では、その他にもございますので、もちろん、私どもがなかなか何もかもみんな申し上げかねますが、とにかくニクソン大統領、これは新しい大統領でございますけれども、在来の方針を引き継ぐ、かような確証を持っておるということだけつけ加えて申しておきます。  それから、オズボーン代理大使との話、これも実はいまの新聞記事が出てくるのであります。国会の審議の経過を聞くと、どうも新聞記事がまちまちだ、あるものはこう言い……(「また新聞記事だ」と呼ぶ者あり)そのまた新聞記事が出ますから、ちょっとそのまま聞いてもらいたいのですが、どうしてもわからない。なるほどわからないのがもっともなんで、私が白紙だと言っておるんですから。これが何か方向をきめていればそれはわかるだろう。だから、新聞記事としても、とにかく白紙じゃこれは困るから、何か書きたいだろうから、そこでいろいろ、それはこういうことだろうとか、ああだろうとかいうようなものが出てくる。これはしかたがないと思っております。だから、オズボーン大使は、それを見てもどうもわからない、一体政府はどういうふうに言っておるのか、そういうようなお尋ねであったらしいのです、川島君との話。そこで川島君との話、これは外務省が直接話をすればそういう誤解がないじゃないか。もちろん、いま言われるように、ワシントンばかりで交渉するわけじゃございません。秋山君の指摘されるように、東京においても私ども必要なことをしなければならぬ。それで、そんなわからないのならよく話をしてやると。外務大臣はよく話をしているはずです。だから、いまはもうそういうことはございません。その辺はひとつ誤解のないようにお願いします。
  62. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実は総理大臣、あなた新聞のことを言われますがね、これは実際わからないですよ、ほんとうに。というのは、そこでぼくが去年の八月にやりましたね。衆議院で問題になったこの意訳の問題でも、非常に疑問があるのですよ、あなたの言っていることと。これはぼくは蒸し返すことはしませんがね。これは私が最初取り上げたのですが、実際これを読んでたら、あなたの答弁のような、現在また過去におけるいわゆる重要性ということでなくして、将来も引き続いた主張であるという認識に立っているということは出ているのですよ。これは私の意見だけではないのだ。それで、一体この「コンティニュー・ツー・プレイ・ア・バイタル・ロール」というこの訳はどなたがされたのか、これをひとつその人から言ってもらわぬと。あなたは私の質問にこう答えているのですよ。「語学になりますと実はたいへん弱いもので、これは外務当局のそのほうの専門家にまかして」と、こうなっているのだから、その外務当局のまかした人に一ぺん来てもらうしかしかたがないと思うのですがね。この点どうですか。
  63. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点は衆議院予算委員会でもお尋ねがございましたが、幸いにそのときの衝に当たっております者が東郷アメリカ局長ですから、東郷アメリカ局長からお聞き取り願いたいと思います。
  64. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) このコミュニケの日本語と英文の問題でございますが、これは双方からいろいろ持ち寄って固めていきますものですから、ある一つのものをつくってそれを直訳するというような経過ではないこともひとつ御了承願いたいと思います。そこで、いまの「コンティニュー」という字の問題でございますが、この「重要な役割りを演ずる」ということは、これはやはり継続性のある問題でございます。そこで、そういう継続性を念頭に置きながら、過去のことに重点を置くか、現在に置くか、あるいは未来に置くかということにまあなるわけでございます。そこで、われわれコミュニケを、草案を準備いたしました者といたしましては、もとより現状に重点を置いてつくったわけでございます。でき上がったものは、一方は「コンティニュー・ツー」という字が入っております。日本語は「演じて」という意味でございます。そういう二つのものが、両方の考えていたことを最も正確に日本語及び英語において表現するということで、日本語は日本語、英語は英語ということで最終的になりましたものでございまして、起草に当たった者としては、それが最も両方の意図しているところを伝えるもの、その間に食い違いがあるということはわれわれとしては考えておりません。
  65. 野上元

    ○野上元君 関連。この際、発言者と委員長にお許しをいただきたいのですが、この問題は、一つの質問で一つ答えたら解決する問題でないために、少し時間をいただくことをお許しをいただきたいと思います。
  66. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 野上君に申し上げますが、なるべく簡単に願います。
  67. 野上元

    ○野上元君 御迷惑をかけるつもりはありませんから、その点御了解いただきたいと思います。まず最初に外務大臣にお聞きしたいのは、佐藤・ジョンソン共同コミュニケは、この原本は英文であるのか、日本文であるのか、その点をまず最初にはっきりしてもらいたい。
  68. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いまもお聞きのように、その当時の衝に当たった者がおるわけでございますから、東郷アメリカ局長からお答えをさせるのが適当と思います。
  69. 野上元

    ○野上元君 それはおかしいじゃないですか。外務大臣が所管でしょう。これは重大な公式文書なんですよ。その点はっきりしてください。
  70. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 日英両文とも、いわば正文であるということでございます。
  71. 野上元

    ○野上元君 外務大臣もそう認められておりますか。
  72. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、正確を期する意味で、当事者のそこにおりました者からまず証言をさせまして、私はそれを、そのとおりでございますと言いたかったわけでございます。そのとおりでございます。
  73. 野上元

    ○野上元君 それじゃ聞きますが、いま私の手元に、外務省から、英文のものと日本文のものが参りました。英文のほうには、訳文とは書いてありません。しかし、日本文のほうには、「訳文」と書いてあります。これは明らかに原本は英文であるという証拠じゃないですか。英文を解釈すればこうなるのだと、その解釈を日本文の正文として発表したのじゃないですか。「訳文」と書いてありますよ、これには。その点をはっきりしてください。どちらが原本なんですか。でなかったら、「訳文」を取り消してください。
  74. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) ただいま申し上げましたように、これは両方とも正文でございます。手続的に、最終的に固めるときに、私が、たとえば向こうの担当官と話す場合には、これはおのずから英語で固めるという経過がございます。しかし、同時に、日本訳につきましても、日本語につきましても、向こう側の語学の専門家もこれを見まして、間違いないということで、両方とも正文ということでございます。
  75. 野上元

    ○野上元君 委員会に配付された資料に、日本文の場合には「訳文」と書かれておりますが、これは誤りですか。このとおりのもの、その訳文のとおりのものが日本文の正文として発表されているのじゃありませんか。その点を明らかにしてください。
  76. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 条約のようなものでございますと、場合によっては、どちらかが正文でどちらかがその訳であるという場合もございますが、この場合には、両方とも権威を持ったものということで御了承願います。
  77. 野上元

    ○野上元君 私の言っているのは、あなたのほうから配付した資料に「訳文」となっておるから、それならば、その日本文における「訳文」という字句は間違いなのかということを聞いているのです。
  78. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 先ほど申しましたように、作成の過程において英語で話を固め、その後、その英語について国務省側の語学の専門家にも目を通させましてできたということは、経過的にはそういうことでございます。で、その意味において、最初に固めた英語を日本語にしたということはございますが、いまの、どちらが、英語で申しますとオーセンティックかという意味において、日本語がその訳であるというのは適当ではないかと存じます。
  79. 野上元

    ○野上元君 はっきりよくわからないのですが、外務大臣は衆議院予算委員会の答弁において、向こう側がどうということは別にして、わがほうの交渉にあたってはこう読むのだという信念をもって交渉に当たる、こういうふうに言っているわけですね。あるいはまた、あなたは、この共同コミュニケは将来についてはコミットしていないのだ、こういうことも言われておるわけですね。そういうことになると、これは日本文の正文が一つなければいわゆる正式なものがなければ、訳文でそういうことを言っておったんでは権威がないと思うのですね。したがって、私はその点をやかましく言っておるわけなんです。訳文であるならば、そういう独断的な解釈はできるはずはないですね。そんな共同コミュニケというものは無効ですよ、かってにばらばらに解釈できるような共同コミュニケは。そういうものではないと思うのですよ。そういう点をもっとはっきりしてください。
  80. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 作成に当たりました経過等につきましては、ただいま東郷局長から御説明申し上げたとおり、したがいまして、日本側といたしましては、この日本語のものが正文である、こういう立場におきまして私は考えていってしかるべきものだと思います。  それから誤解があるといけませんから念のために申し上げますと、将来を拘束するものでないということは全体について言っているわけではなくて、「コンティニュー・ツー・プレイ・ア・バイタル・ロール」というその字句の解釈において、これはまあ私の常識的に申しますれば、現にこうであるということの日本語でございますね、それをそのとおり読むべきものであって、未来永劫拘束するというようなことではない。その分について申しましたのであって、常識的に言えば、英語のいわゆる現在完了というか、現在継続中というか、そういうふうに読むべきであると、そういうふうにとるのです。未来永劫という意味ではございません。
  81. 野上元

    ○野上元君 私、関連質問ですからあまり長くやりたくないのですが、ただ、はっきりしておきたいと思うのは、東郷局長が当時の起草者の一人だそうですからこの際聞いておきたいのでありますが、「コンティニュー・ツー・プレイ・ア・バイタル・ロール」というこの「コンティニュー・ツー」というのは、未来を拘束する字句なんですね、どんなに解釈しても。それで私ども、きのうはない知恵をしぼって、ウェブスターを見たのですよ。全部調べてみましたら、「コンティニュー」ということばには、ずうっと続く未来があるのです。しかも、こういうふうになっているのです。「ゴーイング・オン・ウイズアウト・エンディング」となっているのですね。これが「コンティニュー」の意味だというのですよ、ウェブスターでは。ということになると、終わりのないゴーイングだ、これが「コンティニュー」だというのです。したがって、あなた方の言われるように、現在を拘束したいのだったら、なぜ現在進行形を使わなかったのですか。アー・プレイイングという文字があるのですから、なぜそれを使わなかったのです。「コンティニュー・ツー」を使ったところが私は非常に意味深長である。したがって私は、この日米共同コミュニケの日本文とこれには重大な食い違いがあると思うのです。その点をはっきりしてもらいたいということと、もう一つは、「バイタル・ロール」という「バイタル」という解釈ですね。日本文ではただ単に「重要な役割り」と、こう書いてありますが、そんなもの、ウエブスターを幾ら見たってありませんよ。「バイタル」というのは重要なという意味ではありませんよ。もっとエッセンシャルなものなんですよ。もっと本質的なものなんです。機能的なものなんです。生きているのですよ。有機体なんです。だから、「コンティニュー」と「バイタル」とは明らかに続いているのですよ。したがって、将来も拘束されるのだ、コミットしているのだ、こういうふうに解釈するのが私は正しい解釈だと思う。必ずこの問題は将来問題が起きるのではないかと思うのですが、その点、愛知外相は、この問題については将来をコミットしておらない、こういうふうに答弁しておられるけれども、その答弁は誤りだと思うのですが、その点をひとつ東郷さん、はっきりしてもらいたい。
  82. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) この「バイタル」という字を「重要」と訳すか「死活的」と訳すか、これは程度の問題だと思いますが、この場合に「重要」と訳しても——極端に申せば、向こうが「死活的」と考え、わがほうがそれをそれほどではないということでわざわざ「重大」という字に変えたというようなことは毛頭ございませんし、この問題は、「重要」と訳しても「重大」と訳しても十分その意味はそれであらわれていると思うわけでございます。  それから、「コンティニュー」ということでございますが、国際情勢というのはやはり生きものでございますから、先ほど申し上げたように、継続性はあるわけでございますが、未来永劫あるいは予見し得る将来以上先にわたってどうこうということをそもそも書くということはおかしいことでございます。そこで、もしそういう意味を出そうとするならば、同じ「コンティニュー」という字といたしましても、ウイル・コンティニューなり、シャル・コンティニューなりということにしなければ、そういう意味は出てこないと思います。「コンティニュー」という字を現在形に使いましたことは、これに対する日本語としては、共同声明にある日本語で十分意味は出ておるし、その間に食い違いはないと考えて、またわれわれのみならず国務省側の語学の専門家も、その間に何ら矛盾を見出さなかったので、それぞれああいう字になっておるわけでございます。
  83. 野上元

    ○野上元君 関連質問でたいへん失礼でございますが、いずれまた日を改めて明らかにしたいと思うのですが、この際、愛知外務大臣にお聞きしておきたいのですが、あなたの言われておる、将来をコミットしないということは、その将来というのはいつを基点としての将来なんですか。共同コミュニケを発表したときを基点として、将来をコミットしないと言っておるのか、あるいは、一体どこを基点として、将来はコミットしないと言っておるのですか、この「コンティニュー・ツー」にからんで。そしてだれがそういう解釈を下すのか。共同コミュニケの中にそういうものがないのですね。ないから、一体だれがそういうことを判断を下すのか、この点を明らかにしてください。
  84. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、この日本語が非常に正確だと思うのです。現に占めておる、現に占めておるというところで、この意味が非常にはっきりわかっていると思うのです。これを、何といいますか、別な側面から見れば、この沖繩のいわゆる基地の態様について、これは十分今後において相談をするということについて、それをしてはいけないとか、してはならないとかいうようなことを拘束しておる意味ではない、こう解するのが当然だということを私は言っておりますし、またそう信じております。
  85. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それ、野上君はそういう答弁で了解されるかしりませんが、私は、これはとても了解できない。これは共同コミュニケですからね、アメリカがどう解釈しておるかということについてわれわれはわからない。したがってこの問題は、これ全文を通じて、私はこの前英文で読んで言いましたがね、これが先ほどから総理が言われておるものに全部つながってくる。したがって、そういう微妙な問題があるから、あなたの党の人でも疑問がある、早稲田の英文専門家の人も、これは問題があるといってこれは取り上げられておるのですね。したがって、どういう専門家の人にこれ訳してもらったかは別として、われわれでは、昔の中学校の英語を知っておる人だったらこれはすぐわかるのですね。そういうものを総理が共同声明で受けられたというところに責任が私はあると思うのですね。したがって、私は、先ほど東郷氏がこのコンティニューを、続くということもあるけれども、こうこうというような、ちょっと変な答弁をしておりましたが、これは、私は、明らかにアメリカの大使館でもこれをこう了解しておるのだということが明らかにされない限りは、共同コミュニケですからね、だから、その点だけ、私は、ない限りこの問題から次に進むことについては困る。その点は考えてもらいたい。
  86. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと議事進行について。これはやっぱりいまのような問題では解決しませんわ。大体ほかの問題と違うのですから、それはもう沖繩の返還問題、いま山本委員が言ったとおり、これは「コンティニュー・ツー」ということをどう受け取るか、どう解釈するかということが沖繩のあらゆる問題にからんでくるわけですから、だからきわめてある意味では重大な問題なんですね、これ。日本側がいくらこれを抜かしたようなことを信念だといっておりましても、これは返す返さぬは向こうの腹一つでしょう。「コンティニュー」ということを突いてきたらどうするんですか。これ約束しておるじゃないか。合意したじゃないか。これは、その公算は大だとわれわれは思うのです。だから、「コンティニュー・ツー」をいまのような、外相が言っておるようなことを、これを入学試験で書いてごらんなさい。満点はくれません。必ず十点か、二十点か、三十点か減点されるのです。われわれもこうまで言うからには、何も思いつきで言っておるのじゃない。去年の夏から言っておるわけですから、今日までの間にあらゆる専門家の意見も聞いておるのですから、ウェブスターの字引きも見ておるのですから。ですから思いつきで言っておるのではない。それで、去年の夏から参議院でも、衆議院でも繰り返されてきて、いまだに衆議院でもケリがついておらぬのです。それが証拠には、自民党の中の某代議士ですらこれはおかしいという疑問を表明しておるでしょう、総裁のところへ。自民党であろうと、社会党であろうと、そういうことは別として、これはだれでもまともに読んだら、「コンティニュー・ツー」というのが、日本の訳文もあるのですから、何のために「コンティニュー・ツー」とわざわざ入っておるのだろうと思うのですよ。シャルとか、ウィルとかいうのがあるはずだというのはそれはごまかしですよ、そんなものはなくてもいいです。「プレイ」だけあればそれで十分なんです、満点なんです。ですから、「コンティニュー・ツー」ということをはっきりしてください。なぜこれを抜いたのか、だから委員長、これ笑いごとじゃないですよ。この点はっきりしてください。新聞の投書なんかでもみんなこの点については、その筋の専門家が疑問を表明しておるじゃないですか。そういうことを今国会でまじめに国民の前で明らかにしてもらいたいということを言っておるでしょう。だから委員長、ひとつこの点をお願いしたいと思うのです。この際休憩するなり何なりして、扱いをはっきりしてください。
  87. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 外務大臣。
  88. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど来、ですからそのときの当事者に説明をさせたわけでございまして、それで明らかでありますように、この日本語の文章につきましては、アメリカでも合意しているわけです、合作なんです。したがって、私はこの日本語を、日本側としては正文としてこれをもとにしていくことは何らの支障はございません。私は、今後の問題におきましてもそれで十分であると、かように考えております。
  89. 秋山長造

    ○秋山長造君 これは、私からこんなことを申し上げることもどうかと思うのですけれども、これは、こういうものは文章になった以上は文章が生きていくのですから、文章が動いていくのですから、だから、大臣がいまそうおっしゃっても、愛知さんもいつまでも大臣をやられるわけでもないでしょう。そのときそのときの人がかわるのです。だから変わらぬものは文章でしょう、だから、やっぱり「コンティニュー・ツー」というものをはっきりしておかないと、それはそのときそのときの都合のいい解釈で動いていくのですよ。これをたてにとられたらどうするのですか。だからこれをはっきりしてくださいよ。明確にしておかなきゃだめですよ。それはもうはっきりしてください。
  90. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会を休憩いたしまして、ただいまの問題、理事会で協議をし、一時から再開をいたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  91. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前中の質疑に関しまして愛知外務大臣から発言を求められておりますので、これを許可いたします。愛知外務大臣
  92. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 午前中に問題になりました共同声明の日本文は、日米双方で確認、合意したものであります。政府としては、あくまで日本文に従い対処する方針でございます。
  93. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣がお話ししたように、その趣旨で私もこれからアメリカと交渉するつもりでございます。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もちろん問題はあると思いますが、沖繩返還の問題は微妙な問題で、ただわれわれ共同コミュニケの英訳をどうこうという問題ではない、沖繩返還に重要な要素を持っているということでわれわれ追及をしましたので、その点は、いま総理も言われたように、日本国民の期待にこたえて今後とも努力してもらいたいと思います。  なお、沖繩問題で、重要な問題ですが、結局、返還する時期と、私が先ほど申しましたように、姿との間に関連性がある。しかし、関連性があっても、核はおそらく持ち込むことはしないだろうという国民の信念ですね。非核三原則は、憲法には違憲ではないけれども、政策上の問題としてやらないとか言っておりますけれども、そんなものじゃないと思います。この点について、総理、姿の問題として。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまのお尋ねは、あるいは憲法の条章にも関係することかと思います。憲法では、いままで、戦力は持たない、何が戦力なのか、防御的な兵器はこれは持ってもいいのか、いろいろな議論もございます。その議論はどうあろうと、私自身は、佐藤内閣としては、核はつくらず、持たず、これはもうはっきり申し上げます、こう言って明確にしておるつもりであります。憲法論の問題ならば法制局長官からもひとつ十分お答えをいたさせますが、私自身はただいまのように決意しております。
  96. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 持ち込みが抜けております。つくらず、持たず——持ち込みが一つあなた抜けていましたね。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は持たない、自分自身が持たない、自分がつくらない、ただいまの持ち込みを許さない、これはいわゆる非核三原則の原則であります。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 憲法上の問題についていろいろあとで一緒に答えてもらいたいと思いますが、核兵器は、これはもう常識や科学的に見て防衛的だという判断は成り立たない。ただ、防衛庁の一つの、これは何もはっきり正式な見解じゃないが、敵機の襲来に対して防御的に何か核をつけたミサイルを発射するということもあり得るというような見解もあるようでありますけれども、常識的に見て核というものは防衛的でないというわれわれ考え方をしておるのですが、したがって憲法はそれを許しておらない、こういう関連性があると思うのですが、この点について。
  99. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げますが、ただいままでに、核兵器と憲法という問題については、実は何回となく議論が出ておりますので、あまりそれで時間をとるのもどうかと思いますが、ごく筋合いだけを申し上げますと、現在自衛隊法に基づいて自衛隊というものをわれわれが持ち——つまり自衛力、広くいえば自衛力ということになりましょうが、自衛力の限界の問題が従来からございます。これはむろん際限もなしに持ってもいいというのじゃなくて、やはり一国に対して武力攻撃があり、国民の生存と安全が危うくされる、そういう場合には、国民の生存と安全を維持するために、武力でもって抵抗すること、これは許されるであろう、その限度内のものであればよろしいであろうというのが基本の原理になっておるわけです。したがって、その限度内のものであればよろしゅうございますが、限度をこえれば、たとえ通常兵器であってもいけないということなのでございます。すなわち、核兵器と通常兵器との間にはそういう意味では別に憲法上区別はない。しかし、御存じのとおりに、原子力基本法等がありますし、また一国の政策というものも大きなものでございまして、そういう特に原子力基本法によって核を持ちあるいは製造するということはしないことになっておりますから、憲法上の問題としては全く理論的満足を得るためだけの議論になるものであると私は思っております。しかし、それにしましても、いまのような憲法理論というものはあり得る。ところで、いま御指摘の、核兵器というものに防御的なものがあるか。私はいわゆる国民の生存と安全を保持する限度のものということばを常に使っておりますが、それをこえるものはむろん持てない。こえないものがあれば持てるというだけでございまして、現実にこえないものがないものなら、むろん持てないということになるわけです。いままでも、政府答弁としまして、いわゆる原子爆弾とか、ICBMとか——RBM、そういうたぐいのものは、むろん憲法で申します限度を当然こえるものである。兵器の種類、私必ずしも十分存じておりませんが、いまの基準が大事であって、基準をこえないものがないとすれば、むろんそんなものは持てないということになるわけであります。
  100. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 何べん聞いても、あなた同じレコードを回すようなことを言っているのですが、そこで具体的に聞きますが、沖繩の基地からB52がベトナムとかそういう方面に爆撃をしているかどうかわかりませんが、派兵している。アメリカの派兵というものは国連憲章の何章、何条の権利を発動してやっておるか、これを先に伺います。
  101. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 国連憲章等の解釈等につきましては、まず事務当局から御答弁いたさせます。
  102. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) ベトナムに対するアメリカの行動がどういうものであるかというお尋ねだと了解いたしますが、ベトナムに対しては、御承知のとおり、戦争行動に移りましたときとその前と二つの問題があると思いますが、戦争行動に移りましたときだけについて御説明いたしますと、北越から侵略があった、それに対して自衛権の行使——集団的自衛権と申し上げてもよろしゅうございますが、そういうような観念で武力行使が行なわれているというように思っております。
  103. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、国連憲章の何条。
  104. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 失礼いたしました。国連憲章五十一条でございます。
  105. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 国連憲章五十一条、これが自衛権発動のいわゆる基本の条章であることは、そのとおりであります。そうすると、侵害されたか侵害されないかは、これは交戦国の一つの認識だろうと思うのです。したがって、あの五十一条の個別的、集団的自衛権というものは、いわゆる防衛だと言っているけれども、国境を越えていわゆる派兵する、戦争ができるということについては、実証しておりますですね、この点。
  106. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点は、午前中にも論議があったかと思いますけれども国連憲章が制定されて以来、戦争というものの見方というものは変わってきた。そこで、ベトナムに対する現在の出撃については、侵略に対する国連憲章によるところの自衛といいますか、安全を守るために、当時南越が米軍に要請し、米国がその規定によりまして、防衛的な国連憲章五十一条によるところの根拠によって出動しておる、かように理解をいたしております。
  107. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 説明の的がはずれております。そういうことでなくして、五十一条の個別的、集団的自衛権というものは、侵略的かどうか別にして、一応アメリカが他の国に派遣をして戦い得るというものも含まれておる、これを尋ねておるのです。それは事実だから、それは否定できない。
  108. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その根拠の五十一条であって、そうしてその点が、私もちょっとことばが足りなかったかと思いますが、午前中にもありましたように、そうして出撃した、そうしてその結果がいわゆる戦争状態になっている、事実関係——こういうように考えてしかるべきだと思います。
  109. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうなると、日本憲法第九条によるいわゆる自衛権と、国連憲章五十一条からする個別的、いわゆる集的自衛権とは、区別をされていると思うのですが、その点はどうですか。
  110. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは憲法論にもなりますから、私からお答えするのが適当であるかどうか別といたしまして、憲法にいわゆる何といいますか、自衛といいますか、安全をはかる、これは安保条約の目的にございますが、観念的には五十一条の個別的自衛あるいは集団的自衛というものは分けて考えられるかもしれませんけれども、私は実際問題としては同じ範疇に入るものではなかろうかと、かように考えております。
  111. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは間違いないですね。いいですね、間違いないですね。そうすると、同じ範疇と言いますが、日本の場合は、たとえ自衛権の発動でもいわゆる外国には派兵はできない、これは明らかですね。日本の場合は派兵できませんよ。しかし、国連憲章五十一条によるやつは、たとえば中近東におけるイスラエルとアラブ諸国との間でも、これはおのおの侵略と言っておりますけれども、国境を越えた、これは五十一条の発動なんですね。そうすると、同じ法源だとすると、その解釈からいくと、日本の場合の憲法の規約は一応別とする。あなたの言うように、派兵できないというのは、あの個別的自衛権の中には出てこないんですね。
  112. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 守るべき安全ということについていかに対処するかということについては、同じような範疇で考えていいのではないかと思いますが、しかし同時に、いま御指摘のとおり、日本憲法によれば、海外派兵というものはできない、これはまた厳然たる事実であると思います。
  113. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 外務大臣からお話がありましたので十分だとは思いますけれども、念のために幾らか補足をさせていただきますが、きわめて明白に違いますと思う点が一点ございますのは、国連憲章の五十一条には、これは条文の上では、個別的、集団的固有の自衛権ということばがございます。これは、実は「固有」とは書いてはございますが、個別的自衛権、わが憲法で考えておりますのはあくまでも個別的自衛権のほうに限定をされておるというのがきわめて明白に申し上げたいところの一点でございます。と申しますのは、まあ、それが主題ではございませんからこれも簡単にいたしますけれども、要するに、憲法九条がございまして、御承知のような規定がございます。しかし、国際法上認められておる自衛権というものが、日本憲法九条があるといっても、これを否定しておる趣旨ではないであろう、これは一貫した考え方でございますけれども、そういう自衛権、要するに、急迫性の侵害がある、国民の生存と安全が危うくされる、その場合には一国あっての憲法国民の生存と安全あっての憲法、その憲法国民の生存と安全を危うくすることを認めておるとはとうてい考えられない。したがって、そういう際には、微力であっても剣を持って立つ、武力攻撃を押えるということをやるのは憲法上否認されておるとは言えないであろう。しかしながら、わが国とまあ連帯的関係がかりにあるとしましても、他国の安全のためにわが国が武力を用いるというのは憲法九条の上では許されると見るわけにはいかないだろうというのが、これは再々申し上げておることでありまして、いわゆる集団的自衛権、わが国が、これはかってな話かもしれませんが、わが国が集団的自衛権の恩恵を受けるのはともかくとして、わが国他国の安全のために兵力を派出してそれを守るというようなことは憲法九条のもとには許されないであろうという趣旨で、集団的自衛権というものは憲法九条で認めておらぬだろうというのがわれわれの考え方でございます。しこうして、その憲法の言う、私のただいま申しております自衛権、これもむろんわれわれの平和憲法のもとではきわめてこれを厳密なる自衛権として解すべきであろう。いわゆる三要件といいますか、そういうものを厳密に解して行動をするなり、あるいは装備をするなりということがあるだろう。その点から、兵器の種類の問題とか、海外派兵の問題とかいうのが出てまいりますが、これはいずれも自衛権の限界を問題として出てくるというわけでございます。その程度にとどめまして、何か御質疑があればお答えいたします。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私の尋ねておるのは、いわゆる憲法第九条があるから個別的自衛権でもこれは派兵しない、これははっきり言われておるでしょう。派兵しないんでしょう。それがあいまいになったら困る。日本国を守るためであればですよ、あるいは派兵してもいいということをあなた含んでおるか。そうではないんでしょう。派兵は絶対にできないんでしょう。それを踏まえると、愛知外務大臣が、国連憲章五十一条と根源を同じゅうすると、五十一条も、同じ個別的自衛権でも、結局は派兵できるんでしょう。現実にやっているですね。それが侵略を防止するか、自衛権の発動であるか、これは別として、事実はあるんですね。それとは異なっているじゃないかというのが私の質問の要点なんです。それは違います、国連憲章五十一条と日本憲法はそれ以上それは制約してるんだという答弁があればけっこうなんです。
  115. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまお答え申し上げた中に、集団的自衛権というものは、わが憲法の上から見ればこうだということを申し上げました。集団的自衛権の行使となれば、これはおのずから他国に兵力を派遣してそこで武力行使が行なわれるということがございますから、そういうことはないということは、まず先ほどのお話でおわかりになると思います。  それから、個別的自衛権の場合でございますが、これは自衛権というものが本来国際法上の慣例であるということからすれば、先ほど外務大臣がおっしゃったとおりに、そういう意味のものと解してかまわないと思いますけれども、わが憲法のもとでは、九条あるいは平和憲法の精神からいいまして、自衛の要件といいますか、自衛行動の要件といいますか、自衛権発動の要件といいますか、そういうものをえらく厳格に、えらく神経質に考えておりますから、現象面としてそういう点が国際社会の場合とあるいは違うことがあるかもしれません。あるかもしれませんが、要は、日本憲法の中では自衛というものを最も厳密に解していくべきであるという態度を堅持してまいることが絶対に必要であると私は思っております。
  116. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 重要な問題で、個別的自衛権というのは、これは戦争というものはですよ、侵略であるか侵略でないかということは、おのおの国がきめることでしょう。その場合、国連憲章の五十一条の場合は、現実に他国に派兵して戦うことができるという事実がある、事実が。ところが、日本憲法があるから、かりに自衛権の発動だといっても、防衛といっても派兵しないんだ、したがって、そこに同じ個別的自衛権でも区別がある。区別があるというのは、五十一条より以上厳格にそれを覊束しているんだ、拘束しているんだ、こういうものであるんじゃないかというのが私の質問の要点ですよ。総理大臣に対して。
  117. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 憲法九条のもとでの話でございますから、その自衛権というものは、全く国民の生存と安全を守るためだけ、したがって、めったやたらに海外派兵をするというような点が御質問の要点だと思いますが、そういうことはあり得ないし、また、現にこの参議院で、かつて、何年であるか忘れましたけれども、御決議もあることでございますし、海外派兵はいたしませんということは繰り返し述べておることでありますから、その点の御心配はないと思います。  それからもう一つ、首を横に振っていらっしゃるところから見ますと、憲法と五十一条の個別的自衛権との相違をお聞きが要点のようでございますが、国連憲章五十一条の解釈は、私、もし間違っておりましたら外務当局から直してもらいたいと思いますが、やはり、この自衛権を両方が行使していて戦闘が始まるということはあり得ないことで、いずれか一方の武力攻撃というものがなくて自衛権の行使というのはあり得ないわけでございますから、必ずやはり武力攻撃があって自衛権が発動する。その場合の自衛権というのは、やはり自衛ということから来る制約というものはあると思います。あると思いますが、日本憲法でいえば、特に非常に神経質なその点に関しては考えでございますから、特にまた一つ一つの行動について十分に意を用いて行動をすべきである、そういう面で国際社会における自衛権の行使とはいくらか違うものがあるかもしれない。しかし、法律的に言えば自衛権というものは同じ性質のものであろうと思っております。
  118. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはね、それは大きい問題ですよ。これは総理に聞きますけれども、自衛行動権、自衛権というものは、わが国の派兵はしない、これはもう憲法が明らかにきめているということはたびたびこれは言われているのですね。ところが、いまの私の質問からくると、国連憲章五十一条の場合は、これは自衛の処置であろうとも、事実上派兵しても自衛権の発動として国際法上認められておるのですよ。認めるかどうかは安保理事会がきめます、最後には。事実はやっている。しかし、そういう場合でも日本は派兵しない。したがって、国連憲章五十一条の個別的自衛権のまたそれ以上に日本の自衛権というものは覊束されておるのだ。これを認めるか認めぬかの問題です。いらぬことは言わぬでもいい。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、この法律論になると、観念論になりがちで……。
  120. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 観念論じゃない。
  121. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) で、いまお尋ねが観念論でないとはっきり言われておりますが、まあ自衛権、自衛行動権、これは外国には向かってはいきません。はっきり申し上げておきます。
  122. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはね、これははっきりしておかないと将来問題があるのです。国連憲章五十一条の自衛権とわが憲法によって規定する自衛権とは違いますということを明らかにしておかぬと問題になる。と言うのは、平和条約第五条の(C)項にはこういうことを書いてあるのですよ。これはおそらく、それが一つの問題になるのですね。第五条の(C)項に、「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的」、これはいいです。「集団的自衛の固有の権利を有すること」を承認する。したがって、あの一九五二年の平和条約を結んだときには、一応、日本には国連憲章第五十一条の個別的自衛権を与えたということなのですね。したがって、ここは覚えておいてください。しかし、日本憲法があるからこれはやらないという規定はこの条約のどこにもない。交換文書も何もない、ないのです。そうすると、日本憲法によってできないというけれども、他の連合国から見ると、日本もやはりいま各国連加盟の国が持っておるような、事実上外国に派兵もでき得るということになるのですね。これがあるから、平和条約の第五条において与えられたこれも違うということを、もっとここに明らかにしておいてもらわないと相当危険なのです。
  123. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 平和条約第五条の(C)項をおあげになりましたが、これはたしか、私はいま確認しておりませんけれども、日ソ共同宣言にも同じような規定がございます。要するに、国際社会、国際法としては、個別的自衛権なり集団的自衛権を一国が持つというのは、これはあたりまえのこととまあ考えられておる、国際法としては。そこで、これも一つの条約でございますから、条約の範囲ではむろんそういうことが言われてもかまいませんけれども、しかし、たとえばいまの集団的自衛権を有すると、この条約に書いてあるから、わが国は集団的自衛権があるのだというふうに思われるはずはむろんないと思います。したがって、この個別的自衛権というほうでも本来は国際法上の観念でございますから、国際法との関係があるということは大いに言われますけれども、しかし、もっとやはりわれわれの憲法である日本憲法がこうである、日本憲法がこういう厳格なものであるということで、われわれとしては実はそれで足りるわけで、外国がどう言おうと、一国の根本規範である憲法を、われわれは自信をもって、それを主張すれば十分ではないか。かりにこういう条約にそういうものがあるからと言って、その点が変わることは毛頭ないということを申し上げたいと思います。
  124. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その解釈でいいんです。ただしかし、これをはっきり総理からとっておかないと、一応、国連憲章なり平和条約から見ると、日本が派兵でき得る権利は一応与えられておる。ただ、日本憲法はそれはできません、核兵器がまたいろいろ問題で、これは政策問題で言われるから、日本憲法が現存する以上は国連憲章五十一条の個別的自衛権があろうと、あるいはまた平和条約五条の(C)項があろうと、憲法がある以上派兵はしないのだと、これを先ほど総理は言われましたけれども、これはしつこいようでありますが、重要な問題ですから、もう一度。
  125. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど答えたのですが、もう一度念を押されると、これは何と言われようが、まず憲法を守ることが私の第一の責任であります。したがって、憲法の許さないことはできません。はっきり申し上げておきます。
  126. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ一応それで、この問題については非常に、しかし法律上の問題が残りますけれども総理がそこまではっきり言われるのですから、国連憲章五十一条の自衛権についても、日本の場合はそれとは別なものであるということが明らかになったわけです。  そこで、沖繩問題で最後に一つ聞いておきますが、沖繩がそういうもし——これは仮定の問題ですからね。核を持って返還されたとすると、将来、たとえば北ベトナムは報復手段として沖繩を反撃しないと思いますが、そういう状態があるという、非常に法律上、条約上から出てきますからね、その解釈をどうされるのか。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩の基地については幾度も申し上げておりますように、白紙で、まだきめておりません、ということを申しております。しかし、これだけは言えることです。沖繩日本に返ってきた場合に特別地域であり得るかどうか、そういうことはなかなか——日本の本土と一体になって日本憲法はそのまま施行されると、こういうことになるんだと思いますね。まあそれを、交渉の段階ですから、私は特別な約束がない限りと、こういうことを言っておりますが、そこに問題がある。いま私がきめかねておる問題がある。そこでいろいろまた皆さんから、国民の一部からもいろいろ尋ねられる。沖繩日本に返ってきたら日本の本土とどういう区別をするのか、憲法の施行についても制限をさすのかというような問題があると私は思います。とにかく私自身がそういう点にまだ最後の結論を出しておらないということ、こういうことなんです。一番大事なところが明確でないと言われれば、そのとおりでございます。まだ明確でない。そこで国民に、日本の将来を誤らないような最も賢明な方法は何か、こういうことで皆さん方の御意見も実は十分に聞く、こういう態度でいまいるわけであります。
  128. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっとまた観測が狂ってきたんですがね。もちろん返還されれば憲法沖繩にも適用される、したがって、憲法が許さないものについては沖繩といえどこといえ許されないということになるのですね。したがって、本土の状態がそのまま沖繩に適用されると、こう私らは思っておるのですがね。これは間違いないのですか。
  129. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法はそのとおりでございます。また、沖繩の基地、私どもは何とかして特別な地域を考えないでそのままを日本に返してくれ、そういう方法が一番賢明な方法だと、こうも考えております。だから、そこに問題があると思う。そういうことで十分説得のできる方法を考えていきたい。これは私の決意、まあ方向の決意と申しますか、そういう考え方でございます。だから理論的に申せば、いま言われるとおり、憲法自身が除外される区域ができる、そんなことは考えられぬじゃないかと言われればそのとおりだろうと思いますが、しかし過去におきましては、そういうのを除外した区域をつくった例が歴史にはあるわけですね。しかし、それが最も賢明な方法だとは私は思わない、こうも言っておるわけです。
  130. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 非常に微妙な発言で、それはそこに一つのあなたの理由があると思いますがね。私は、返還されれば、憲法を変えぬ限りは、これは日本国民は同一の要するに待遇を受けるのだから、まあ憲法の適用は間違いないのだが、それが別な扱いをするかもしれぬ、かもしれぬ。要するに、いわゆる可能性の問題ですが、かもしれぬということは、また別なものもあり得ると、こういうことですか。
  131. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあこういうことはたいへん誤解を招きやすいことで、私はやりたくないことだから、それを言っているのですが、施政権の及ばない地域を設けるかどうか、いま現に潜在主権はあるといいながら、沖繩憲法は除外されてる、そのまた沖繩のうちにそういう特別地域をつくるかどうかという、そういう議論もあるだろうと思うのです。そういうようなことについての考え方もあるのだと、これは観念的に申すのですよ。私がこのことをやるという意味じゃございません。そういうようないろんな議論が出てくるだろう。そういうことも含めて、やっぱり私が最終的な結論を出す。そのために白紙ということを言っておるのです。だからくれぐれも申しますが、これは観念的な問題で、あり得るという問題じゃないのです。観念的にいうと、いろいろ分割すればそういうことも考えのうちに一つはあるのだと、だけど、そういうことを自分がやろうというわけでもない。とにかくいまのところ、基地のあり方については自分は白紙だ。こういうことをはっきり申し上げる。
  132. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはぼくもあなたの立場、かわって総理大臣になれば、またそう言うかもしれませんがね。事ここまできたら、どうなんですか、もうあなたは大体腹はきまってると思うのです。しかし、そうなる、ならぬは、相手があるのですからね、外交ですから。しかしもうこうだと、国民にはこういう考えでいくと、しかし、それは外交で、相手方があるのだから、それはそのとおりいかないかわからないが、日本国民の期待というものはこうということはわかってると、それくらいは言えないのですか。
  133. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) おそらく日本国民の、何も考えない、率直な希望で理想的な形、それは無条件返還、即時返還と、こういうことだろうと、そのくらいは私も知っております。私もそのぐらいのことは知っておりますけれども、しかし、そういうことを頭の中にちゃんと入れている、そういうことでございますが、同時に私がいままでしばしば申し上げたところ、これは野上君からいろいろ分析されて、この間お尋ねを受けたのでございますが、これからの兵器の発達もございましょうし、あるいはまた世論の動き方もあるし、またこういう問題との取り組み方の問題もあるし、いろいろ国際情勢変化もあるし、考えなければならない問題が非常に多いのですね。いま先ほど来から御議論がありました、たとえば国連というものが平和機構としての十分の機能を発揮する、そうして国連軍に全部たよる、こういうような事態になれば、これは何も要らない。これは一つの理想の境地なんですね。しかしまあそこまではいかないが、少なくともただいまは、二大強国が併存、平和共存の形にとにかく進んでおると、だから比較的に申して、昔のような、戦争の危険というものを昔のように感ずる、こういうことはない、かように思いますね。しかし、まあ私ども今日の状態から見ると、日本存立を維持し、そうして平和に徹するためには、日米安全保障条約が要るのだ、こういう話を一番最初にも申し上げた。そういうこともございますから、これからの問題で、いまいろいろ心配すれば際限ございませんけれども、一つの結論を出してもしかるべきだ、こう言われることもわからないではありません。しかし、事柄は何といっても日本存立日本の平和、それに関連する事柄でありますから、私どもがまあ慎重な態度をとっている、このこともおわかりがいただけるのじゃないかと思っております。しかし、いつまでも慎重だということでほうっておくわけにいきません。愛知君ももうとにかく六月には出かけるし、私もそれから後、半年のうちには出かける、十一月ごろには出かけることになっておりますから、とにかく私自身も、そういつまでも慎重だ、慎重だ、こう言っているわけではない。ただ、きょうの新聞あたりもごらんになると、日本の国内だけではなく、極東地域の近隣の国からもいろいろな議論が出ている。私は、わが国の目的を達するためにも、また平和を、友好親善関係を続けていく上からも、こういう事柄がスムーズに、とにかく日本に返ってくるようにやらないことには、何が何でもおれだけこれができればいいんだというようなものではない、かように私は基本的に考えるのです。そこらに、やや理屈だけではものごとは解決しない、さように思うがゆえに、私、まだ白紙だ、かようなことを申しておる、この点も御理解がいただきたいとお願いをいたす次第でございます。
  134. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 事は、返せないけれど、理屈でいけば早く返さなくちゃいかぬですね。やっぱりいろいろ国際情勢その他の問題で、いろいろ複雑な問題があると思います。ただそこで、これは幾ら言っておっても水かけ論ですね、食い違い論。今度秋に訪米されて、ニクソン新大統領と会われますが、その際に、突き進んでいまのような話をされる考えか。
  135. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん出向きましたら、この問題を中心にし、沖繩の問題を中心にし、各般の問題について率直な意見の交換をするつもりであります。
  136. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ沖繩問題から、次に中国問題……。
  137. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと簡単なことで一つお尋ねしたい。  下田大使が、外交というものは相手があるからフィフティー・フィフティーと、こういうことを言いましたですね。ところが、出発点をどこへ置くかということが非常に問題だと思う。だから、五十から出発すれば、歩みよれば二十五になるかもしれません。その最初の出発点をどこに置くか。相手がありますから、対米交渉の結果として、それは無条件即時返還というようなことができぬような事態が起こるかもしれぬ、それはよくわかります。だから最初の出発点をどこへ置くか、これが私は問題だと思う。ですから、われわれはわれわれなりの考えを持っていますが、政府としては一体どういうことを考えておられるか、内容の詳細については言えないけれども。それは外交交渉の基本だと思いますね。下田さんは、あまりにもそれについてとんでもないことを言ったので批判をこうむっておる、そんなところを伺いたい。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、私が出かけてかけ引きをするつもりはございません。いわゆる出発点がどの辺か、それで割ってどうなるかというようなかけ引きの問題ではない。私は、基本的な日本の本来の主張がございますから、その主張のとおりやってこよう、かように実は思っておるのであります。私は、その意味では皆さん方の御期待に沿い得る、そういう、基本的には違っておりましても、その立場においては。その交渉を、いわゆるかけ引き、そういうことはするつもりはございません。
  139. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ中国問題に入りますが、総理が、本国会の劈頭の施政演説では、まあこれはあなたのつもりはどうかしりませんが、非常に表現は、中国との友好的な印象を実は受けたわけです。ところがなかなか、その後見ていますと、そういっていないが、これは率直に申しますと、佐藤総理は中国を敵視しておるのか。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はもう口ぐせのように、平和に徹すると、かように申しております。その立場からも、中国であろうがどこであろうが、敵視政策、敵視しては平和に徹するわけにはまいりません。その点では誤解のないようにお願いをします。
  141. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実は一九五〇年、平和条約の前ですが、吉田さんがダレス長官に書簡を送っていますね。その中には重要な意味が含まれておるのですね。これは全文読むと長くなりますから、私の時間が減りますからね、ちょっと読みますが・一九五〇年、モスコーにおいて締結された中ソ友好条約及び相互援助条約は、実際上日本に向けられた軍事的同盟であり、事実、中国の共産党政権は、日本憲法及び現在の政府を強力をもって転覆せんとする意図があるので、中国との二国間条約は結びません。こう言っておるのですが、これはまあ吉田さんの言うことですが、こういう考えは、これはもう全然消えたものと思われますか。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ私も吉田さんの薫陶を受けた一人でございますが、その意味で、吉田さんの考えられたとおりを引き継ぐのかと、こういうお尋ねかと思います。いまの中ソ同盟条約、これが日本を仮想敵国にしておることは、私が言うまでもなく御承知のとおりだと思います。しかし、ただいま中ソの関係は、当時とは違って必ずしも一枚岩ではない。現にきのうあたりの新聞は、ウスリーの中州における国境紛争、そこらで兵が動いている、こういうようなことを報道しております。したがって、これはやっぱり、両国の関係においてもいろいろの変わり方があるだろうと思うのです。しかし、その同盟条約をどちらかというと一方的に破棄したという報告はまだない。お互いに争っておってもその同盟条約は残っております。こういうようなことは、過去においてもいろいろ批判の種になってきた。しかし、まあいままでそれによってソ連と日本が特別に不仲になった、中国と日本がそのために非常に不仲になったかというと、そうでもない。そういうものはあっても、ソ連との間にはシベリア開発について特別な話し合いが進んでおるし、中共との間には民間貿易がどんどん進んでおる。したがって、そういう一つの事柄だけで方向づけるというものじゃないように私は思うのです。また、そういうことがあればあるほど、また平和に徹するという立場から考えれば、お互いにその垣根を除くように努力をすることが必要だろうと、かように私は思います。今回、わが党の古井君と田川君が出かけるについても、そういう点では誤解のないようにいろいろ話し合っておった次第でございます。しかし、いま日本の態度は、北京政府あるいは台湾政府が言っておるように、あれは一つの中国である、こういう立場に立って、ただいま中共に対しては、いわゆる政経分離という形で交流しようじゃないか、とにかく積み重ねていこうと、こういう態度でございますから、いわゆる私の敵視政策というものは、どういうようにあろうとそういうものはございません。これはもうはっきり言える。私のこの気持ちはやっぱり理解をしてもらいたい、かように思います。
  143. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 日本の場合は、そういう総理が言われた、前の歴史的過程は一応別としてですね、それは、私は、あなたがそう言うことはそうだと思うのですが、実際問題で、アメリカと現在やっぱり中国との間の問題は、そうは関係が簡単にいかない。SEATOの条約、相互防衛条約の一番了解事項としても、明らかにアメリカは、SEATOというものはいわゆる中国を敵視した形で書いていますね、条約の中に。したがって、これは結局アメリカと中国があるから、それでアメリカ日本がくっついているから問題があるということ。それが、あなたが非常に気がねをして、中国の今度の国連総会での重要事項指定方式は、日本がこれの発案者になるということを聞いておるのですが、それはほんとうですか。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米国が中共に対してどういう態度をとるか、それは両国の問題でございます。私どもの態度は、米国がどうあろうと、米国の言いなりになっておるわけじゃない。だから、最初に私がワシントンに参りましてジョンソン大統領との共同コミュニケに、日本はこういう態度をとるとはっきり申して、政経分離で交渉もすると、かようにはっきり申しておりますから、これはもう御理解がいただけると思います。ただ、私がそれをあえて言うのは、どうも一部に、日本アメリカの言いなりになっている、アメリカに従属している、みずからを卑下した言い方が国民の一部にございます。私は、そのことはまことに残念ですから、そんなものじゃない、アメリカに従属はしない、はっきり自分の言うことだけは言うと、これを申し上げたいから、少し古いことを申したのであります。  次の問題は、いまの国連加入の問題ですが、これについては、これはまだこの秋の問題ですから、いまからとやかく言うことはないと思っております。しかし、重要問題という事柄について、これは何だかこの加盟を断わることのように言われますけれども、とにかく、いま一応中国を代表しておるものとかわって他の国が、北京が中国代表権を持つのだと、このことぐらいは、これはほんとうに重要なる課題じゃないか、かように私は思いますので、この重要課題ということについては、私自身は変わらない考えております。
  145. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それによってあなたが変わらぬということは、まあ重要事項指定で日本も臨むということらしいですね。私は、もうすでにカナダ、イタリーその他、いわゆるこの国を、中国を認めなくちゃならぬという、実態がそうなっておる。日本の場合も、経済的には非常にこれは密接な交渉を持たなくちゃいかぬというので、あなたの党の古井さんも田川氏も派遣してやっておって、もう経済的にはこれは密着したと。政治的にはこれは交際しなきゃならぬ。しかしもう歴史的に見て、日本アメリカに私は従属しておるとは言っていません、あなたはがんばっておると言いますけれども、事実を見ると、やはり従属したような、言いなりになっておるような形なんですよ。いやそれは、あなたと私いつまで言っても議論わかりません。国民は聞いていますからね、どちらが正しいかわかる。私はそう思っておる。したがって、そういう点は水かけ論だから言いませんけれども、しかし中国に関しては、もう少し日本アメリカと中国間に立って、何千年来の文化をともにしてきた中国七億の民ですからね、もう少しやり方があると思うのですがね、総理、あなたが大政治家として歴史に残る人であれば。そういう点は、ひとつあなたの気持ちを聞いておきたい。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この中国問題は、いま山本君が御指摘のように、日本と中国、これは中国大陸との間にはずいぶん古くからの交流があります。これは密接な問題でございます。私どもが一番問題にしておるのは、やはり中国は一つだということでございます。中国が一つだというところに問題があります。そうして私どもは、最初のサンフランシスコ条約平和条約において、中華民国を中国の代表者として選んだ。こういう状況で今日まで経緯しております。したがいまして、その基本的な態度をわれわれは変えるわけにいかない。これが今日の状況で、国内問題で、中国の国内で解決さるべき問題を私どもがとやかく言わない。したがってわれわれは、国際条約を結んでおる台湾にある中華民国とこれは国際上の権利義務を持っておる。しかし中国大陸に施政権は及んでおらない。この大陸にある実力者、北京政府、これとの間の交流、これを中国は一つという前提に立って、いかに処理すべきか。これにはやはり政経分離の形で交流を重ねていくことが一番望ましい形ではないか。したがって、アメリカが何と言おうと、われわれは、北京政府、その間において政経分離の形で積み重ねていこうといって、ただいまやっているのが現状でございます。いま、イタリアがどうした、カナダがどうしたとか、こういうお話をしておられますが、いろいろの外交の動きはあるようですが、イタリアにしても、カナダにしても、行き詰まってくるところは、やはり中国は一つだ、その扱い方においてやはり行き詰まってくるんじゃないか。その態度はもっと考えなきゃならないんじゃないか、かように私は思っております。
  147. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私も現実をまず非常に重要視するんですね。外交問題は現実が非常に重点になるが、そういう台湾政府の関係、これは吉田書簡に関係あると言われておるが、吉田書簡は出されないからわかりませんが、政経分離ということを言われますが、もっと経のほうを積極的に、日本の場合でも、そういうふうに積極的に日本政府はやるということについてはいいんでしょう、積極的に。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの貿易状態から見まして、私はもっと拡大できるんだと思います。そこで、いま問題になる肉を日本が入れるか入れないか、こういう問題になりますと、これは幾ら何でも好意の問題だけでは済まない問題なんです。口蹄疫がもしも日本に入ってきたら、それこそたいへんな問題になると、かように私は思いますので、これは好意が幾らありましても、そういう危険があれば、それを入れるわけにはいかない。しかし、かように申すことが、何か中国を侮辱したようにでもとられること、かようなことを私は非常に残念に思っております。お互いに繁栄するためには、こういうことについての危険は危険として、やっぱり考えていかなければならない、かように私は思います。
  149. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、ずっと極東、アジアの歴史を見ても、やはり中国の安定というのが平和というものの中心になっていますね。したがって、日本はりっぱな国になりました。しかし、やはり中国というものが非常に安定しなければ、アジアの発展、平和というものはないと思うんですね。その中国は、いま実は国際的にもほとんどめくらなんですね。原爆は持っておるけれども国際社会に出てこられない。これがひとつ大きな不安をかもしていると思うんですね。この点については、日本政府がやはり積極的にそれを考えて、国際場裏の中で、むしろ中国を助けるような形でいくべきであるというのがわれわれの基本的考えです。台湾政府に牽制されるように言われましたけれども、しかし、その点はもう少し政府は積極的に前向きに——現実にどうしろということは将来の問題で、前向きにやるということ、そういう意思はいまのあなたの答弁の中に含まれておるのかどうか。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の施政演説でも、また、その後の私の態度でも、政治姿勢でも、これは看取できるだろうと思います。私は敵視政策はもちろんとっておらない。仲よくしたい、近隣諸国と友好親善関係を重ねてこそ、りっぱな国際社会がつくれるのでありますから、ことに東南アジア諸国に対しましても、中国民が各地に出て非常に活動しておるその実態を考えれば、その本国である中国そのもの、これを十分その存在を意識し、その力を十分考えて、これから国際外交を進めていかない限り、これは極東の安全、平和はなかなかない。ましてや、ただいま大国であります、核を持っておる、人口は七億五千万もいる。これだけの強力な力を持つ国、それが国際社会に復帰することの一日も早いことが望ましい。これは日本自身が中国のあり方をとやかく批判すれば、これは内政干渉にもなると、かように思いますので、さような失礼なことは申しませんが、中国自身の持っておる力はすばらしい力だ。どうして国際社会に復帰することをみずからお考えにならないか。私どもは、いつでもそういうことについては援助するつもりでございます。そういうことを考えて、お互いに仲よくしていく、このことが望ましい。ただいま平和五原則ということを言われている。平和五原則がいわゆる北京政府の基本的態度だろうと思います。私は、やはり平和共存という事柄がそういううちに含まれていると思う。特殊な条件のもとにおいてのみこれが遂げられる、かように考えないで、各国はそれぞれの政治形態を持っております。それぞれの考え方でその国をやっているんですから、それぞれの国のあり方についても、その存在は無視しない、独立は尊重する、内政には干渉しない。やはり五原則もけっこうだが、基本的にはお互いにその態度で交際していけば問題はないんじゃないかと、かように私は思います。
  151. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われたことには、反駁することはたくさんありますがね。中国を何か他国の自主独立を侵害するような国であるというような印象を受けたんですが、そうでないと思いますけれども、これは現在の各国、世界を見まして、他国の自主独立よりもむしろ民族独立の運動のほうが高いんですから、植民地からの。私はそういうことは考えません。中国はそんなことは考えませんが、時間の関係もございますので、最後に、これは参議院で言うとどうも——衆議院の方のことですからと思いますがね、非常に解散ということばが出ている。これは、私らには関係ないんですから言う必要はないんですけれども、むしろここで言うたほうが気楽に言えると思う。どうですか、これはあなたのこれこそ腕の中にあるんですがね。安保条約改定も間近だし、また沖繩返還の問題がありますが、近いうちに解散ということを考えておられるかどうか。それによってわれわれの参議院の審議にも関係がありますので、これを伺っておきたい。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 何度も申しましたので、もう私の言うことはちゃんと御承知だと思います。私は一切解散を考えていないということ、その返事を期待しておっしゃったんだろうと思います。私は、こういう問題は、衆議院でも申しましたし、また衆議院が解散になれば、参議院の職務が一そう重くなる、こういう意味で御心配でもあろうかと思いますが、私は、しかし、ただいま解散は考えておりません。そこまではっきり申し上げておいて、参議院の職責をまだお考えにならぬでもいいんじゃないか、かように思います。
  153. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、いよいよ最後の財政問題について。時間がなくなりましたので、外交問題は以上で終わります。  そこで、時間がございませんから、大蔵大臣に聞きますけれども、ずばり、今度の予算編成を六兆七千億程度の予算規模でつくられましたが、この基礎となる経済成長率一四・四%と押えられた根拠、それをひとつ聞いておきたい。
  154. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 主として国際経済の見通しでございます。その上に立ちまして、今年度の実績に修正を加え一四・四%、かようにいたしたわけでございます。
  155. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう少し詳しく根拠を。
  156. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 企画庁の政府委員説明さしていただきます。
  157. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) お答えいたします。  四十四年度の国民総生産でございますが、国内あるいは海外両方面からこれを検討いたしております。国内情勢につきましては、御承知のように、国民総生産を構成いたします個人消費支出は引き続き堅調でございます上に、さらに成長の主要な要因でございます民間企業設備等も、四十三年度に比べますと、さらに一六%強伸びるというような増勢である、在庫投資もゆるやかに伸びる、また住宅建設もある程度高い伸びを示すといったようなことから、おおむね四十四年度におきましては五十七兆八千六百億円程度の規模になるんじゃないか、こういうことが推定される結果、前年度と比較いたしまして一四・四%の規模になる、かように推定をいたしたわけでございます。
  158. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実は、私はそう思っておらぬわけですね。この前の予算委員会でも水田大蔵大臣に会ったんですが、政府は一二・一%だと、実は私は一六%と言ったやつが私のほうが、一%余り狂っているけれども、はるかに近いですね。賭けようと思えば賭けないと、そのはずだ、よう知っておった。今度の場合も、民間団体のこの経済見通し、これはあなたもとっておられますが、銀行筋——銀行筋は大体控え目に出すんですね。代表、三菱銀行は一五・六%、富士は一六・二%、一番公正に出す国民経済研究協会、これは稲葉さんのやっておられますが、これは一六・八%、日本経済研究センター、これは三段階に分けておりますけれども、一七%か一八%、三つ出ておりますね。しかも、政府の経済企画庁の研究所の経済見通しは、三つモデルを出しておりますが、一番低いやつ一五%、それから一六%、それから一六・三%。どうもこれは、どういうぐあいに修正されたかしりませんが、経済企画庁の研究所の数字すら政府は認めない。一四・四%、こういうことは納得できないんですがね、これはどういうことなんですか。
  159. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十一年からまあ日本の経済は非常に高い成長を続けておるわけです。これが少し高過ぎるという感じを持っておるのであります。まあ何とかして実質一〇%以内、こういう姿にすることが望ましい。ことに昭和四十四年度、この経済を考えてみますと、先ほど申し上げましたように、世界経済の見通しが非常にむずかしい。もうこんなむずかしい年は実はないくらいにむずかしいと思います。そういう世界経済情勢、環境下において日本経済をどういうふうに持っていくかということになるんですよ。これは四十三年のような非常に高い一二%を実質がこえるというような状態、一七%をノミナルでこえるという状態、そうでなくてこれは基調としてはもう少し安定ぎみな九%を切るという状態ですね、これでいくべきである。ですから、客観的見通しから言うと、ほっとけばですよ、あるいは過熱状態になって高い成長を出現するかもしれない。しかし、そうほっておいちゃいかぬのだ。ここでその政策の意欲も込めまして九・八、一四・四と、こういうふうにしたわけですね。私どもの予算の編成もその立場に立ち、予算の内容もそれに浴うてやっておる、こういうふうに御了承願います。
  160. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 政府は過熱を押えるために、いわゆる大体考えられるものよりも押えて政治的判断をした、こういうことですか。
  161. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおりなんですが、貿易の伸びなんか、こういうものを押えろといってもなかなか押えるわけにはいかない。そういうようなことで私どもが経済を動かすかじとして、これは主として財政と金融です。ですから、一面において金融政策でも、いまポジション指導を日銀がやっておりまするけれども、この方式を続けていく。また財政におきましても、まあ一五・八という伸びにはなりまするけれども、政府の需要する在貨サービス、これなんかからは一二・二、三%、その程度の増加にとどまる、そういう規模の予算を編成すると、こういうことにいたしたわけであります。
  162. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは経済政策のみに考えておるというと国民は大きな迷惑をするのですが、それはあとから私はあなたと論争します。しかし実勢から見ると、これは私は政府の資料でずっと分析したのですが、まず第一の景気動向の指標として鉱工業生産指数、四十三年度に引き続いて上昇の傾向である、御存じのとおり。もっともその次の年度の景気の情勢を見るいわゆる先行指標としては、機械受注量がこれが四十三年度下期はずっと上がって、一月には上昇率はややにぶりましたけれども、四十四年度の景気を左右するということはない、低くなるということはない形勢にあります。それから企業収益が七期連続の増収増益なんですね、七期です。これはもうイザナギ景気よりもアメノミナカ景気ですよ。これは私がきょうつくったことばなんです。これはおそらく私は、あなたのほうは努力するが、いまの資本主義経済ではこれは押えられない。しかも、実は大企業の合併等々あってなかなかそれは押え切れない。しかも、資本の自由化——私はあとで言いますけれども、もし、あなたが当たるか私が当たらぬことか、あとで約束してもらいたい。これはあやまるとかそういうものじゃない、今度は。しかも、民間設備投資は海運を除いても相当上昇しておる。その他個人消費も伸びておる。こういう経済指標を見て一四・四%に踏むということは、よほど政治的な策略が——策略というのは悪いけれども。したがって、ずっと民間の経済成長を見ても一四%台にないのですが、私はことしも一六%台にのぼると思います。これは議論しませんよ、結果はわかるのだから、この前わかったのだ。私は二千億以上の自然増収はふえますよと言ったんだけれども、そういうことはないないと言って、結局二千六百億多かったわけですね、四十三年度。事実ですからね、うそはつけぬ。したがって、私の言うことについては、反駁があるかどうか、私は一六%台にのぼる、こういう見通しであるが、これは間違いであるか、根拠を示してください。
  163. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 山本さんは貿易を一体どう見るのか。つまり世界経済の今後の動きはどうだ、それからまた、それに伴いまして日本の輸出環境がどうなるかという問題、それから日本の輸出に非常に影響するのはアメリカの景気なんです。これを一体どう見るか、その辺を大体掘り下げていくと一四・四%、こういうところに自然なってくる。そういうふうな見方をしておるのです。
  164. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはあとに残してある。そんなことを抜かして私はいませんよ。なるほどアメリカの景気に若干かげりがあることは新聞報道どおりですよ。しかし、もしそれがために押えておくということは、いわゆる国内消費の問題で需給の問題が出てくる。したがって、私は輸入は少々ふえても三十億ドルの外貨の準備はできたんですね。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 これは国民の努力の結晶ですよ。大蔵省の努力でためたのじゃない。三十億ドルの外貨準備があれば、この間五億や十億ドルかりに貿易収支が若干赤字が出ても十分経済を運営するだけの余裕はある。したがって、これを押えることによって私は逆の供給過多、設備投資はふえているのだから品物はできますよ。貿易はちょっと減る、内需でこれを消化しなければ日本経済の円滑な運営はできないという、私はそういう見通しをしているのですが、これが間違いかどうか。
  165. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一面において私は山本さんのいまのお考えですね、当たっておると思うのです、一面においては。しかし、非常に大きな問題においては当たらない。というのは、これは何してもいま一番大きな問題は物価の問題です。あまり高度の成長でありますと、これは総需要を刺激する、そういう関係で物価に響くのです。皆さんも物価問題には非常に熱心なんですが、あんまり高い成長が四年も五年も続くと、これは物価問題がおさまらぬ。そういうようなことを考えておるのでございます。  それから、一面において当たると申し上げましたが、それは三年間の高度設備ですね、この結果、設備能力が非常に出てきた。だんだんだんだん設備が、供給能力が需要に追いついてきた。それがクロス、接点にきておるのじゃないかという感じがするのです。もしそういう見方が正しい見方である、そしてさらにその傾向が続くということになると、供給過剰というか、いわゆるデフレギャップの状況を現出する、こういうことになる。そういうことになるという場合がある。そうならしちゃまたいけないのですが、ほうっておくとなる。そういう意味合いにおきましては、あなたの見方は、私は一つの見方である、こういうふうに思いますが、しかし経済を運営する大きな指針といたしましては、なだらかな成長、そうして物価を安定させる、そして国民の期待にこたえる、こういうことじゃあるまいか、さように思うのです。
  166. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。簡単なことですが、しかし山本君の言うように、もし趨勢として高度成長になった場合、非常な高い成長が続いた場合に、金融操作だけじゃなしに、財政上この予算の繰り延べ支出等もやらなければ、趨勢がそういう状態にあるときには押える方法がないのですが、予算の繰り延べの支出をやられますか、どうですか。
  167. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはあれですから、総需要と総供給がどうなるか、その状況によりましては、財政のほうの繰り延べをする場合もあります。また繰り上げをする場合もある。財政も金融も弾力的に世界環境の動きに即応していく、こういうかまえをとろうとしております。
  168. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは一四・四%に政府が押えたいという気持ちは否定してないのですよ。基本的な態度は否定してない。しかし実勢はそうでないということを言っておる、実勢が。物価の問題にいたしましてもそのとおりなんです。しかし五%というのを見ておるのですね、政府は。五%と見れば、経済成長で、ずっと私三十年から経済成長率と物価の上昇率を比較してみると、五%台に入ると、大体経済成長は一六%、池田内閣のときに二〇%の名目の経済成長をしていたときに一番高く上がったですね。これから見ると、そういう程度になるのですよ。だから、政府は一四・四%に押える努力はいいけれども、現実はそうじゃない。そうなったときに政府はどうするかというわけです。しかし時間もないから私は次に入りますけれども、もし一四・四%と言われるならば、私は一六%と言うのですよ、実勢から見ると。そうなった場合に、税収が、これは私の計算ですよ。あなた専門家がおるから、間違いないように聞いてもらうといい。二%経済成長すると、国民総生産五十七兆幾らだと思いますから、だから一兆二千億程度、一兆一千億程度の国民総生産が金額でふえる。それに弾性値を幾らかけるか知りませんが、少なく見たって私は千五百億という増収、四十四年度に見積もられた自然増収以上に私はあるという判断をするのですが、これは大蔵大臣水田にかわって福田さんですが、どうしますかというのです。
  169. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 税収の見積もりは、一四・四%という成長率に合わしておるのです。ですから、この成長率が変わってくると税収もまた変わってくる、こういう性格のものである、かように御了承願いたいと思います。ただ、成長率につきましては、いろいろ慎重に経済企画庁が中心になって検討いたしました結果、まあ政策運営の意欲も込めまして一四・四と、こう見ておるのであります。まあ大体その辺だろうというふうに確信をしておりますので、租税収入のほうも大かた狂いあるまい、かように考えます。
  170. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ税制については同僚委員がまた後日やられますから、私は税制のほうは触れませんが、去年もそうなんですよ。というのは、経済成長をいわゆる低目で見積もったということは、言いかえれば、やはり税金の取り過ぎということになるのですよ。取り過ぎになる。したがって私は千五百億とことしは見ておるのです。もっとありますよ。あるが、安全率を見なくちゃいかぬからね。千五百億はいわゆる見積もってもいい増収であると見ておるんですよ。増収というのは、見込まれた以上にあるのが千五百億。したがって私は、私が大蔵大臣になれば五百億はやっぱり減税にやって、これは二千億になる。千五百億か七百億か幾らの減税になっておりますけれども、これは二千億。あとの五百億は、総理も聞いてくださいよ、私はあなたの大蔵大臣になりませんけれどもね、参考までに聞いてもらいたいのですが、五百億はこれは社会保障に回す。そうすれば一兆円台に社会保障がいくのじゃないか。あとの五百億は、これは公害、物価対策その他緊急なものくらいは予算がいく。それで物価は、さきに言われましたが、経済成長の要因だけでは上がらない。経済成長の要因も一つありますけれども、すべてじゃない。その施策を五百億の中から、物価の流通機構の問題とかその他やれば、私は、これはこんなことを言って佐藤内閣を助ける必要はございませんけれども、私は財政的に——防衛庁の費用を削るとかそういうことはまた別として——当然やり得る財源を隠しておいて、あって、それをできてから公債減額とかなんとかいって減税をするというようなことについては、これじゃ国民をだましておると思います。それを私は言っておる。だからこれは議論していてもしかたがないのだが、現実にそうなったときに私の言うとおりするかどうか、これさえ約束してもらったら、もうこれで、時間があるけれども、終えてもいいと思います。
  171. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 結果においてはそうなるのでありますが、しかし、実際手続的に昭和四十四年度の見積もり以上の増収を、四十四年度の途中において直せるかというと、これは非常に困難です。ですから、その自然増収が四十四年度においてこうなったという事実を踏んまえて、四十四年度、五年度において、あなたのおっしゃるような方向でしょうが、たぶん、そういうことで処理する。つまり公債も返します、その財源にも使います。同時に、減税のほうにも使います。さらに社会保障にも使います。大きくいうと、四十五年度においてそれが実現される、そういうふうに考えております。
  172. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは、あなたとぼくあたりと——財政運用について国民は非常に疑点としているのですがね。四十五年でやるというが、実際それが四十五年度は四十五年度で、また税の増収とかあるいは税の実体を見て別途再編するのですよ。必ずしもいい景気のときばかりじゃないですよ。だからその場合には、あるいはまた公債をふやさなくちゃならぬ、いまの政府のやり方はそうなるかもわからぬです。公債の発行をふやさなくちゃならぬ。私はその年にある税金を、取れる税金を、それを取るだけは取っておいて、それを出さずにおくということは、国民にこれは非常に不公平だと思う。減税に回してあげればもっと私は減税財源がふえてくると思うのですよ。だから、もしそういうことがあれば、それだけの財源というものは別に取っておいて、そのままそういう運用をするというと、かりに年度一年おくれてもそういう措置をとりますか、そのとおり。
  173. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) もしかりに四十四年度で見積もり以上の収入があるという際には、私としては四十四年度の措置としては、四十四年度に予定された公債を発行額を減らしていきたい、こういうふうに考えるのです。しかしそれだけの自然増収があるという事実は四十五年度にもまた続いてくるわけなんです。その四十五年度においては、いまおっしゃられるような方向で財政の内容を考えていく、こういうことになるであろう、また、そうしたいと思います。
  174. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私はそれで承服しないのですよ。この前もあった。結局ああいうことになってしまいましたからね。いわゆる総合予算だといっておりながら、増収二千六百億もかりにあって、これが何で財政の硬直化と言えますか、実際問題として。当初の予算編成にあやまちがあったと言わざるを得ぬでしょう。実際、二千六百億の税収の狂いがあったのですよ、四十三年度。それは好ましいミスですというようなことばを使っていますが、国民からいったら、非常に迷惑ですよ。それは足らないよりも政府はいいかもしれませんが、それだけの大きい、二千億以上の狂いの税を取っておいて、それは一つも返さない。これじゃ私は、そういう予算規模の問題、私の言っていることについては、十分国民の皆さんが納得されているかどうか知りません、この放送を通じて。わかりませんが、非常に不満があるんですね、政府に対して。そういうものが積もり積もって政治不信というものにつながってくるのですよ。われわれの論戦は論戦だけだけれども、事実それがどう生きてくるかということを国民は期待しておるのですね。したがって、それをここで幾ら言ったところで、政府は答弁だけして、済んだら済んだでそのままだというのでは、議会民主主義というものは崩壊しますよ。いま、それが問題なんです。われわれが力を入れて、わずかな——わずかじゃなしに、財政規模の問題を話しておるけれども、ほんとうに自分らのための政治が国会で行なわれておるかどうかということ、これが、問題の性質は別といたしまして、一番大事なんです。それがいつもそのとおりいっていない。今度の場合も、私最後に言いますが、少なくとも千五百億の見積もり外の増収がある。しかしそれは、あなたのほうは一四・四%で押えるという努力、景気刺激しないという努力はわかるんですよ。しかし、実際はそうじゃない。いままでの政府にはそれを押えるだけの力がないんでしょう。自由主義経済じゃ、それがない。富士と八幡の合併の問題とか、いろいろあったけれども、力に押されてしまう、問題があっても。この経済組織の実態というものを政府は十分考えなければ。大学の問題はまたあとで同僚諸君がやりますけれども、あれは現象面は暴力学生とかゲバ棒とかなんとか言っておるけれども、何によってそれがくるかということと、若人がなぜああいうエネルギーを発散させてやるかという、その根源というものを政治家はやはり見るべきだと思うんですね。暴力そのものをわれわれは肯定いたしませんよ。しかし、なぜそういうものが出てくるかということを、つかまなければ。私は一年前、去年のいまごろ社会労働委員長をしておりました。インターンの廃止、要するに医師法改正を私は委員長としてしました。全国の学生が私のところに来ました。陳情じゃない、抗議ですよ。ものすごく、毎日毎日三時間粘られる。東京も来れば神奈川も来て。だから私は、いまの学生の——医学部だけではございません、それから発生したのでございますけれども——その学生の心理をわかったときに、非常にりつ然としたですよ。だから、総理も、いまはそうかもしれませんが、やはりそういう若い人、学生と会って、身近にものを感じなければわかりません。あれがトロッキストとか、あるいはアナーキストとかなんとか言って新聞で批評したところで、それはおさまらぬですよ。あれは金もうけでやっているのと違うですよ。毎日毎日やって、あれはえらいことですよ。あんなことは、ぼくら若いときは相当元気あったけれども、あそこまでするか。金もうけであれば、それはまた別として、金もうけにならぬ、自分の勉強はできない、それであれだけの犠牲になっているでしょう。何千人という学生が将来をほうってしまっておりますよ。ここを私は政治家というものは十分考えてもらいたい。これは質問ではないのです。私はずっと朝からだいぶ長いことやりました。迷惑している方もあると思いますけれども、私の時間はいよいよ消えかかっておりますけれども、私はこれだけの、こういう機会は私もそうない。代表質問を社会党のトップ・バッターでやるということはおそらく今後ないでしょう、順番がありますからね。だから、そういう意味において、私の言うたことを耳朶にとめてください。これは文部大臣もおられますし、荒木国家公安委員長ですか、皆関係大臣おられますけれども、あなたら二人だけの問題じゃなく、これは佐藤内閣なり、われわれにもともに責任あると思っておるんですよ。この責任をどう果たすかということを十分考えられたい。私の質問はこれで打ち切りたい。(拍手)
  175. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 以上をもちまして山本君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  176. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 次に、西田信一君の質疑を行ないます。西田信一君。
  177. 西田信一

    ○西田信一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、当面の幾つかの問題について政府の答弁を求めたいと思います。  まず第一に、わが国安全保障の問題でございますが、日本世界に珍しい経済発展をしておる、しかも平和のうちにこれをなし遂げた、これは何と申しましても日米安全保障条約というものが大きな効果をもたらしておるということは疑いないと思うのです。九年前のことを思い出しますと、六十年の安保騒動、たいへんな騒ぎであった。こういうことをすれば日本はすぐ戦争に巻き込まれると、こういうような非常に大きな騒ぎがございましたけれども、九年間を振り返ってみると、何の心配もなくこのような経済発展をした。私は非常に感慨深いのでありますが、しかし、なお国内に存在する安保反対勢力は、日米安全保障条約の破棄を強く主張をいたしております。いろいろ安保に対する考え方も党によって違うようでありますけれども、野党の第一党であります社会党さんは、世界のいまだ経験しない非武装中立論、これを掲げておられます。そうしてその手段として日、米、ソ連、中共の相互不可侵条約を結んでその安全をはかるのだ、こういうような主張をされておるように聞くものでございます。われわれは、このような主張やあるいは政策が現実的なものとはどうしても受け取れないのでございます。あの第二次大戦末期におきますところの、不可侵条約というものが存在しておったにかかわらず、ソ連があのような姿で参戦をしたということを思い起こすまでもなく、最近、共産圏内におきまして起きました例のなまなましいチェコ事件、また、ごく最近には友好軍事同盟を結んでおるところの中ソの間におきまして決定的といわれるような対立抗争が起きておる。これは私どもは、社会党さんの言われるようなことが現実性を持っておらないという実証であると考えるのでありますが、総理のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  178. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま西田君がお尋ねになりましたが、あの戦後の荒廃から二十数年たった今日、このすばらしい発展、これは一体何によるか、申すまでもなく、日本国民の優秀性、それと同時に、その間政局を担当してきたわが自由民主党の功績、これまた忘れることはできない、かように思います。ただ自由民主党がこの政局を担当してきた、また国民が十分その才能を発揮し得た、それは何といっても基本的に日本存立を確保した、安全を確保してくれた日米安全保障条約のあったことであります。これはもう歴史の示すところであって、これは別に議論の余地のないところだと思います。ただ、ただいままでの情勢では、私は先ほども山本君にお答えしたのでありますが、国連平和機構、国連がまだ不十分でございますから、いわゆる理想の境地に立っての状態で、国の存立を守るということはなかなかできない現状においては、やはり国連も認めているような集団保障方式、安全保障方式、それにたよることがいいんだと思います。その意味で過去におきまして、日本アメリカ——この志を同じくしているアメリカとの間に日米安全保障条約を結んで、そうして平和に徹して、そして繁栄への道を歩んできた。かように私は考えております。また、そういう意味で、今後もこの体制を維持していく、堅持していく、こういうことをお答えしたのであります。国民大多数の方は必ずや十分の理解を持たれ、また、わが党のこの政策を支持してくださる、かように私は確信しております。最近の世論調査などに出てきたものも、その数字をはっきり出しております。この際でございますから、他党のそれぞれの立場も、それらについては十分触れませんけれども、大多数の方々がただいまのようにわが党の政策を支持してくれている、かよう確信しております。
  179. 西田信一

    ○西田信一君 一九五一年に発足した日米安全保障条約、これは締結以来今日まで改定が行なわれましたが、一貫して流れている両国の精神は、この条約の中にも明記されておりまするように、国連日本地域における平和と安全を維持し得るに足るところの十分な能力と手段を持つまでの間、両国の集団安全保障体制をとるんだと、こういうことの精神で貫かれておると思うのでありますが、この私の認識に間違いないかどうか、お答えを願いたい。
  180. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 午前中にも、その点に触れて私もお答えいたしましたが、日米安保体制というものは、日本の安全を守る、そしてこれを含む極東の安全に寄与するということがおもな目的であり、またさように言われておりますけれども、同時にいま御指摘がございましたように、経済その他の面におきましても、十分な協力をいたしていく、これもまた具体的に非常に大きな実績をあげておると思いますので、こういう体制を基本にして、外交はもとよりでございますけれども、他のいろいろの発展につきましても、なお一そうの協力をいたしてまいりたいと考えております。
  181. 西田信一

    ○西田信一君 ただいまのような観点に立ちますならば、現在の世界あるいは極東情勢から見まして、政府が日米安全保障条約を堅持する、こういう姿勢を持っておられることは、私は当然であると考えます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、国内には、いろいろな意見が分かれております。これをできるだけ国民的合意に持っていくようになすのが、政府の責任であると思いますが、総理の信念をお伺いいたしたいと思います。
  182. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのように、基本的な国の考え方と申しますか国民合意の上に、この政策が支持されることが望ましいことであることは、これは申すまでもございません。そういう意味におきまして、わが自由民主党の責任もたいへん重いと思うし、また、政府自身も、この政策をより国民に理解してもらい、より支持してもらうように積極的政策をとる、これは当然だと思います。私は、どうもいままでのやり方が、ややPRに抜かっておる点があるんじゃないかと思っております。問題は基本的な問題でありますだけに国民にうんと理解してもらう、こういうことが望ましい。一部の政治家だけの占有じゃない、かように私思いますので、ただいま御指摘のように、国民の合意の上にこの政策が支持される、こういうことの方向に持っていきたいと思います。
  183. 西田信一

    ○西田信一君 政府の最善の努力を御期待いたしまして、次は、沖繩の問題に移りたいと思います。  沖繩問題は衆参を通しまして、いろいろな立場において、かなりの議論が行なわれてまいりましたが、総理の言われることは、いろいろな表現で出ておりますけれども、これを要約すれば、年内に早期返還の約束を取りつける、それから返還の時期と基地の態様については、国際情勢変化もあるし、あるいは科学の進歩もあるし、あるいは世論の動向等を見きわめながら、わが国及びわが国を含む極東の安全をそこなわないような解決をはかるんだということに尽きるように思うのでございます。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕 結局その重点を早期返還に置きながら、基地のあり方につきましては、まだ明確に示されておりません。私考えまするのに、沖繩の問題はなかなかこれはむずかしい問題でありまするし、一口に言うならば、日米両国の将来に非常に大きな影響を持つ、長期的にあるいは短期的に日米共通の利益をどこに求めるか、こういうことに帰着すると考えるのでございます。両国の国民感情も違うでありましょうし、あるいはまたそれぞれ政治情勢も違う、こういう中におきまして、非常に大きな困難があるし、また現在アメリカの態度がまだきまっておらない、ニクソン政権になってから、まだ態度も明確になっておらない現段階で、外交権を持つ政府がきわめて慎重な態度をとっておられることにつきましては、十分私は理解ができるのであります。しかしながら、先ほど来の再三の質問にもありますように、もう日米交渉のスケジュールはきまっておる、私はできるだけ早く、できるならば、愛知さんの訪米前にでも、政府の考え方をまとめられまして、そうして私は、国民に明確なガイダンスを与える、こういうことを政府としてはやるべきだと思いますが、どのようにお考えでありますか。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、ただいまも御指摘になりますように、たいへん重大な、また重要な問題だし、また将来長きにわたってのわが国の命運を決するような重大問題でもあります。そこで、私はたいへん慎重な態度をとっておます。ただいま言われましたように、まだ帰ってくる時期、それをどこに置くのか、また、その際に沖繩の基地がどういうようなあり方であるのか、そういう点については明確でございません。まだきめておらないというのが実情でございます。しかし、皆さん方から見れば、これは一日も早くそういうものを聞かしてくれ、政府自身には考えがあるはずだ、こういうことで社会党の皆さんからも、また民社の方からも、また公明党からも、また共産党からも、そういう点でずいぶん尋ねられております。しかし、まあ一貫してまだまだと、かように私は申しております。大体今日までのところ、衆議院の段階におきまして、いわゆる国民の動向、国民にかわってのお尋ねというか、そういうものは、ある程度出たのではないかと、かようにも思います。しかしながら、なかなか国民の動向というものも、国会だけではございませんし、それぞれの方が、それぞれの方の代表としての発言には違いありませんけれども、あるいは直ちに国民の意向を反映しておるとも考えられない面がありますので、できるだけ私はさらに慎重を期したい、かように思っております。  ところで、ただいまもお触れになりましたように、アメリカ考え方もありましょうが、ともかくそれよりも先に、日本国民に迷惑にならないようにほんとうに国益を進めると、こういう意味の結論を出すことが、私に課せられた責務でございます。もうしかし、そういつまでもと言っちゃおれないし、六月になれば愛知外務大臣は出かける、出かける以上やはりある試案は持たざるを得ないと、こういうように私思っておりますので、できるだけそういう方向に進んでまいるつもりでございます。過日、これは衆議院段階でございますが、そういう際に党の代表するものと話し合うことがあるかと、こういうようなお尋ねがございました。そういうことも必要ではないかと、かように思うので、率直にそういう点もお話をしたのであります。私は、本来秘密外交をするつもりはございませんし、また国民世論を背景にしてこそ初めてこの種の重大問題は解決できると、かように思っておりますので、それぞれの立場立場としても、この沖繩返還問題については、できれば超党派的な支持を得たいと、かように思っておりますので、十分国民世論を反映するような、そういう形を取りつけたい、かように考えておる次第であります。
  185. 西田信一

    ○西田信一君 最近総理の諮問機関である懇談会の外部機関ですか、基地問題研究会というのが一応の考え方を出されましたですね。これも一つの考え方だと思いますが、そこで、総理は再々おっしゃっているように、国民の支持がなくては外交は行なえない、こういうことを申しておられまするし、私もその点は十分各方面の意見を聞き、各党の意見もお聞きになって、そうして周到な検討の結果を出されるということに期待をいたします。  そこで、一つの提案を申し上げますが、幾つか想定される態様というものはそう数はない。五つあるか、六つあるか、あるいは三つであるか、こういうような基地の態様につきまして、それぞれの利害得失があると思うのです。どうか国民にわかるように解明をして、そして国民の理解と協力を求める、そして誤りなき判断をする、国民にも理解してもらう、判断をしてもらう、こういうことが私は必要だと思うのでありますが、そういうことをなさるお考えはございませんか。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 時期来たらば、そういうこともしたいと思います。実は、衆議院段階でございますが、一体どういうことが考えられるか、白紙でけっこうだが、考えられるあらゆる場合をひとつここへ披露してくれないか、こういう話もございました。それはただいまお断わりしたような次第でございます。私は時期至れば、ただいまのような国民の理解を得る、そして国民の支持を得るという方向に進まなきゃならない、こう思っております。
  187. 西田信一

    ○西田信一君 沖繩の返還なくして日本の戦後はないと総理が申されましたし、沖繩の同胞のことを考えますと、われわれも一日も早い返還を望むものでありまするけれども、しかし、極東情勢もなお流動的である、なかなか不安定な要素も存在しておるという立場から、この地域に重大な関心を持っておるアメリカが、沖繩基地について戦略的な価値を保有したいというような気持ちを持つことも予想されるわけでありますが、しかしながら、国内におきましていろんな議論がある、本土並みだ、いろいろございます。しかしながら、私はここで、まだ白紙の総理にどういう態様で交渉するかというようなことをお尋ねすることはいたしません。どうか十分ひとつわが国益に沿うような、日米間の友好を阻害しないような交渉を願いたいことを希望申し上げておきます。  そこで、一つお尋ねしたいのは、沖繩問題は日米両国間の問題であることは間違いございません。しかしながら、御承知のようにアメリカは韓国あるいは中華民国、フィリピン等とそれぞれ相互防衛条約を結んでおります。そういう立場からいたしまするならば、アメリカにとっても、いろいろな考えが出てくると思うのでありまするが、この沖繩返還交渉にあたって、日本立場から、これらの間接的な関係を有する国との間に、どういうふうな態度で臨まれるか、どういうお考えであるか、あるいはどういう折衝をされるかということをひとつ……。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 折衝するときの心がまえ、これは断片的にはいままでもそれぞれの立場でお話をしたつもりでございます。ことに、日本総理としての立場からも話をいたしております。いまお尋ねがありました、アメリカへ行って交渉する——アメリカが、私ども沖繩に対して持っている祖国復帰への熱願、この願望、この強さというものを十分理解してくれなければ、話はできないわけであります。幸いにしてジョンソン大総領は、あの共同コミュニケにもはっきり書いておりますように、祖国復帰への熱願並びに日本国民の願望、これはよく理解すると、かようなことが一節入っております。しかし、アメリカ自身、アメリカ国民自身が、すべてがジョンソンあるいはワシントン政府筋と同じような考え方を持っているわけではありません。ときに日本に来た連中、これは沖繩の重要性というものはよく知っており、また、日本人がどういう考え方を持っているか、これも理解してくれると思います。しかし、それはおそらく限られた諸君ではないだろうか。問題はそこにあるように思います。過日来、あるいは京都においてあるいはまたアメリカの国会の議員諸君が日本を訪問し、会合をそれぞれ持ちました、またこちらから出かけてカリフォルニアで会議をした。それらの経過を見ましても、この沖繩問題に対する理解の程度、認識の程度、これは日本人とアメリカ人とではよほど相違しておる。これはもう当然のことでやむを得ない仕儀だと思います。ことに、さきの戦争で占領した地域、そういう感じがアメリカにはどうしてもあります。その占領した地域を平和のうちに返すんだ、——取り返すんだ、こういう考え方でございますから、これは歴史上ほとんどないことなんです。そこにむずかしさがございます。この席でいろいろな議論をしておりますが、そういうなまやさしいものではない。血を流して多数の戦死者を出して、そうして占領したその地域を、話し合いで今度は返すんだ。それはなるほどちゃんと理屈はある。潜在主権は認めているんだから、これを顕在主権にしろ、あるいはサンフランシスコ条約の第三条ではっきりしておるじゃないか。そういう意味で日本に返せ等々の理屈はございますが、やはりアメリカ側でも理論だけではございません。感情的な問題も残っておるわけであります。私は、そういうこと等考えながら、このことはたいへんむずかしい問題だと思っております。ただ、私どもは友好親善のうちにこの問題を解決をしたい、かように念願しておりますが、ただいまの日本国民のほんとうの願い、これをそのままひとつ理解していただくように、これは国民全体にひとつ協力してもらいたいと思います。私は、政府だけがそれはできることじゃないと思う。幸いにいたしまして、日米経済交流がいまたいへん密接でございますから、経済人からも、産業人からもよくこの沖繩に対するわれわれの考え方、感じ方、また沖繩にいる県民の本土への復帰の念願、これをよくひとつアメリカにも理解してもらうように伝えていただくことが、これは大事なことだと思います。まあそういう意味で、理屈もさることだが、この国内の方々が、やっぱりただいま申し上げるような点に触れて、アメリカにも理解してもらう、それで初めて平和なうちに祖国復帰が実現する、かように私考えますので、そういう努力ももっとしなきゃならない、かように私感じておるような次第であります。
  189. 西田信一

    ○西田信一君 外務大臣から、さっき私お尋ねしました問題、間接的な関係のある極東の自由諸国ですね、これらの理解も必要と思いますが、日米交渉にあたって、アメリカ側の立場からでなくて、日本としてどんなふうにこの問題に対処していくかというお考えをひとつ。
  190. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま総理からも詳しくお話がございましたが、まあこの問題の取り上げ方は、これはあくまで日米間の交渉事でございますけれども、やはり日本の友好国、ことに周辺の国々が関心を持っているということも事実でございますので、こういったような点につきましては、アメリカも関心を持って考えるでございましょうが、同時に、主体的に、私ども立場といたしましても、十分これらの人たちの考え方というものもよくわきまえて、そして事に当たる必要があろうかと思います。何と申しましても、第一義的には、沖繩を含む日本の安全を確保するその方法はいかにあるべきかということが第一義的な問題でございますが、関連して、それらのことも十分わきまえて事に当たりたいと思います。
  191. 西田信一

    ○西田信一君 総理がおっしゃいましたように、私も、日本国民沖繩に抱いているような熱意、感情とアメリカではだいぶ違うと思うんです。でございますから、先ほど総理はお答えになったようでございますが、できるならばこっちのほうから相当出ていって、多く広く接触を持って、そしてアメリカ国民の理解を高めるというようなことをなさる必要があると思いますが、具体的にそういうお考えはございませんか。
  192. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまもお答えしたとおりでございますが、もうあらゆる機会を使ってそういう方向国民の協力がほしい、かように私ども経団連その他にもよくお話をするつもりでございます。まあみんなして、国民一致して、この先の戦争のあと始末をしたい、こういう方向でいきたいと思います。
  193. 西田信一

    ○西田信一君 佐藤・ジョンソン共同声明にもはっきり書いてありますが、返還に備えて、沖繩の返還後の一体化のための措置をやると、こういうことが明記されております。で、沖繩がどんな形で返ってこようとも、これは当然日本憲法下に入りまするし、したがって、すべての日本の法律の適用を受けるわけでございます。そういう意味から申しまして、私は、まだ返還に備えるための具体化の準備というものは十分そこまでいっておらない、こういうふうに思うわけでございますが、この点につきまして数点、ひとつお尋ねいたしますから、関係大臣からそれぞれお答えを願いたいと思いますが、まず、日本領土になりました場合の防衛の義務は第一義的に日本がこれを担当することになる、これに対するところの具体的な用意はどういうふうに考えられておるか。  それから次に、沖繩は、現在はいわゆるアメリカの基地経済にささえられた経済だと思うんです。百万の同胞がおりますが、しかしながら、沖繩産業はいかにもみじめだ。ほとんど産業らしいものはない。砂糖キビ、パイナップル、これを日本に買ってもらっておる状態であります。そこで、そういった産業方面、またそれに伴って沖繩県民の生活水準を本土並みに上げていくという産業上の政策、その他が必要であると思いますが、これをどういうふうにいま進めておられるか。  それから、教育の問題につきましても同様であると思います。沖繩の教育は、本土に比べて非常に水準が低いということはもちろんでありますが、教育の問題もあります。  それから、具体的にいまお聞きいたしますが、たとえばこの食管ですね、沖繩日本に返ってくれば、当然食管制度の適用を受けると思うんです。現在は安い加州米をたしか配給されていると思いますが、そうなれば現在の二倍くらいの内地米を食べなければならぬということにもなると思うし、あるいはまた外国資本が入ってきておる。たとえば石油なんか相当の外国資本が入ってきておる。これなども当然返還後は日本の法律、つまり石油産業法というものの適用を受ける、制約を受けるということになると思うんだが、こういう問題もあります。あるいは通貨、貨幣の問題もあるというような、まだいろいろございましょうが、もろもろの対策というものがどんなふうに進められ、どんなふうに計画を立てられておるのかということを、それぞれお答え願いたいと思います。
  194. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) まず、最初のお尋ね沖繩が返還されれば、日本において防衛をやらなければならぬが、これがどうなるかということ。御指摘のように名実ともに日本の領土となるわけでございますから、わが自衛隊が、陸・海・空ともに防衛の責任を持たなくちゃ、一応の責任を持たなくちゃいけない、こういうことになるわけであります。もちろん日米安全保障体制のもとにおいてやることになるわけでございますが、しからばどういうような陸上部隊を設け、どういうような海上部隊を設け、どういうような航空部隊を設けるかということになりますと、まだ御承知のように沖繩の返還の基地の態様について詰めができておりませんので、具体的にかくかくというわけには申されませんが、そういうことを考えつつ私どもはいま検討中ということでございます。
  195. 床次徳二

    国務大臣(床次徳二君) 沖繩の返還に際しまして、できるだけ施政権の返還が円滑に、また、この間に摩擦を生じないようにいたしたいという立場から、今日アメリカにおきましても、日本と話し合いまして、一体化を促進するという考え方を持っておるのであります。昨年以来、諮問委員会を設けると同時に、本土政府といたしましても一体化政策を確立いたしまして、本年度をその第一年次といたしまして、実施に着手しておるわけでありますが、なお関連いたしましてお話がありましたごとく、その一体化ということは、制度的に申しまして相当大きな異なった制度が実施されております。これが将来、本土の法律と同じ法律を受けるようになりまするから、それに支障のないように、今日からあらかじめ内容的において本土の法律と同じようなものを実施するというような制度的の一体化ということが考えられるわけでございます。同時に、生活経済等におきましてお話がありましたごとく、本土の状態とはかなり格差が出ております。毎年毎年埋めてはまいりましたけれども、なおその間に低いところがあるのでありまして、これをできるだけ早く水準を高めるということは本土としての大きな責務である。大体この点につきましても関連を持ちまして、本土並みの水準にいたしたく努力いたしておるわけであります。  さような見地から今日努力しておりまする一体化の内容といたしましては、第一に教育の問題でございます。元来教育の制度は本土と同じ制度を実施いたしておりますが、しかしその義務教育等におきまして、設備等におきましては著しく落ちておるのであります。普通教室はよろしゅうございますが、特別教室、標本設備等あるいは屋体、プール等におきましては著しい差がある。なお、社会教育等におきましてもかなりの差が認められておりまして、これをできるだけすみやかに充実いたしたいと思っておるわけであります。  それから社会保障につきまして、これまたかなり格差がございまして、今日まで漸次本土の制度を移行して取り入れてまいりましたが、特に私どもが関心を持ちますのは医療制度であります。本土におきましては国民皆保険を実行いたしておりまして、これが住民福祉に大きな影響を与えておりまするが、沖繩におきましては、医療制度がきわめて不自由、医者が足らない、施設が足らないというところに大きな困難性がありまするが、将来可及的すみやかに国民皆保険が実行できるという意味におきましての医療制度の充実の準備等をいたしておるわけでありまして、琉球大学に保健学部を設けましてそうして保健関係者を養成しよう、並びにその実施機関のための病院を新設いたしておる等もこのためでございます。その他社会保障等におきまして、施設等におきまして、漸次充実をいたしたいと思っておるのであります。  次の問題は、産業基盤の拡充という問題であります。長い間の戦後の状態であり、なお基地経済に依存しておりましたために、これを早く本土並みに充実すると同時に、将来沖繩がいわゆる基地経済を脱却して、自治経済、自立経済になって、本土の経済の一環として発展できるようにすることが必要でありますが、この点、特にお話がありましたが、沖繩の特色と申しましてはやはり基地に依存する程度が高いということ、第三次産業中心の消費経済である、主要産業はある程度まで保護政策によって行なわれておるという点でありまして、この点を漸次性格的に改善いたしまして、体質、内容の充実が必要であると思います。基本的には、将来の沖繩が持っておりまするところの特色というものを十分発揮いたしまして、そうして沖繩経済というものをささえることのできるような状態にいたしたいと思っておるのでありますが、さしあたり第一次産業におきましては、現在沖繩中心産業でありますところの砂糖、パイン栽培というものをできるだけ合理化して競争にたえ得る力をこしらえる。なお、沖繩の有する天然自然の条件と申しますか、亜熱帯地域の農業としての性格を確立する。あるいは非常に水産資源に恵まれておって、あるいは営業等の進出に便利な地位にあります。したがって、この水産業の振興等も考えなければならぬ。また、畜産業の振興等も、農業としては非常に期待されるものであります。それから第二次産業といたしましては、将来期待できるところの産業をつくり上げなければなりませんが、そのための基盤を養成しなければならない。たとえば、港湾等の充実も必要であろうと思うのであります。その基盤、資本等も同時に導入することをできるだけ考えてまいりたい。なお、特殊なものといたしましては、天然ガス等の資源もあるわけでございます。こういうことの開発、中小企業の育成強化、第三次産業につきましては観光事業等があるわけでありますけれども、これらの産業の開発、まことに重要な問題でありまするが、今日におきましては、本土の実業団並びに地元の実業団におきまして、互いに相互研究をいたして、将来を期しますと同時に、日琉両政府におきましても振興計画を検討しておる。なお、日米間におきましてはいわゆる諮問委員会をもちまして、この問題を検討いたしまして、将来の産業対策に当たる考えでありまして、すみやかにこれを充実してまいりたいと思うのであります。  なお、もう一点、一体化の重要な問題といたしましては、市町村の財政の充実、地方財政の充実という問題であります。今日沖繩の琉球政府並びに市町村というものが、かなり財政的に貧弱であります。同時に、本土の制度とも異なっております関係上、これを本土並みの法制化に改めてまいりまして、同時に、その力をつけさせてまいりたいというところに第四点として努力をいたしておりまして、本年度におきましても、特別ないわゆる地方財政交付金という援助をいたしますと同時に、その事務等の内容の向上と申しますか、事務能力の向上等にも努力をいたしておる次第であります。  以上、きわめて簡単に一体化のことを申し上げましたが、特にお尋ねの食管制度の問題、これは制度を単純に一体化するというものではなくして、むしろ御指摘のごとく、米価は本土よりも著しく安い米価を持っておる次第であります。これを直ちに一体化いたすということは住民の生活に非常に大きな影響があります。かようなことを考えまして、今後の食管制度の導入と申しまするか、この意味の一体化につきましては、暫定的な処置でもって住民の立場を考えなければならないと思うのであります。  なお、今日地元におきましては、やはりさような経過的な処置と申しますか、処置によりまして、特別に考慮すべきものが数点ありまして、今日十分にこの点に対しては努力をいたしておる次第であります。  なお、外資を受けまする産業等につきましても、これは将来の復帰という場合を考えますると、本土の産業とのいろいろな立場がありまして、琉球政府に対しましてもこの点を考慮いたしまして、これに対処するように連絡をとっておる次第であります。  以上きわめて簡単でありまするが、お答えいたします。
  196. 西田信一

    ○西田信一君 きわめて詳細な御答弁をいただきましたが、お聞きしたいのは、いま沖繩に百万おりますね。たしか私の記憶では、戦前は六十万ぐらいじゃなかったかと思うのですが、非常に人口がふえているのじゃないかと思うのです。百万の人口を持つ沖繩が、非常に産業的に恵まれないのですが、いろいろな対策を講じられるといたしましても、将来、百万の人口が沖繩県民として自立できるという状態まで持っていけるのかどうかという点は、どのように考えていらっしゃいますか。
  197. 床次徳二

    国務大臣(床次徳二君) 沖繩におきましては、一番大きな問題は、基地の態様が今後どうなるかということも大きな要素でありまするが、しかし、基地を別といたしましても、沖繩、本土の特色というものを十分考えまするならば、やはりその特色というものを発揮できるのではないか。先ほどもちょっと申し上げましたが、自然的温度というものが別なものであります。これが農業その他におきまして、大きな有利な立場をとり得ると思っております。  なお、資源といたしましては、天然ガスあるいは海底資源等も調査中でありますが、今後大いに期待できる。さらに東南アジア等に対しましては最も有利な地位にあるわけであります。したがって、港等の公共施設等を考えますると、加工貿易等いろいろの中心ともなり得るのではないか。今日かようなことを考えながら検討いたしておるわけであります。  なお、地元住民といたしましても、今日、ほとんど百万近く、当然これは近いうちになるものと考えて——九十六万として、いずれ百万になると思います。私はこの有力なる労働力と申しますか、これはむしろ沖繩の大きな期待されるもので、消極的にこれが他に出て職を求めなければならないのだ、かように考えますよりも、積極的に地元で消化するということを考えて計画中であります。
  198. 西田信一

    ○西田信一君 私は、かつて、移民は沖繩が一番多かったのですね、ですからそういうこと、それからまた将来あそこでは生活できなくて、そうして労働力の供給源になるというような姿にならないように、十分なひとつしっかりした対策を立てていただきたいということを希望申し上げておきます。  この沖繩の問題、非常にやかましい議論になっておりますが、同じ領土の問題で、北方領土の問題は、どうも盛り上がりが足りないように思うわけであります。一方的なソ連の主張国際法上何らの根拠もないことは明白でございます。カイロ宣言あるいはポツダム宣言、これにも固有の領土は奪わないとはっきり書いてある。はっきりとうたっておる。にもかかわらず、全くこれは全然取りつく島もないという状態にいま置かれておると思うのでありまするが、この北方領土返還——回復につきまして、政府はよほどしっかりやっていただきたいと思いますが、政府の決意のほどをお伺い申し上げます。
  199. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 北方領土の問題は、御案内のように、この国会の冒頭総理の施政方針演説にも、また、私の外交演説にも、特に強調しておるところでございまして、政府としては一貫して固有の権限の主張を強く要請している次第でございます。  御承知のように、先般コスイギンの中間提案というようなものが世に出ましたわけでございますが、そういうこともこれあり、こういう点も一つの足がかりにいたしまして、すべて日ソ間の友好親善関係というものは、この北方領土の返還なくして真の友好親善はあり得ないという立場を強くとって、対ソ外交に当たっておるつもりでございます。ソ連との間におきましては、いろいろの問題について、いわゆる親善的ムードも出ておりますけれども、やはり日本としては、この北方領土というものが何としても解決しなければならぬ問題である。執拗に忍耐深く、この態度をもって終局の目的を達成いたしたいと、かように考えております。
  200. 床次徳二

    国務大臣(床次徳二君) 北方問題に対しましては、ただいま外務大臣からお答えいたしましたが、国内におきましても、北方問題に対する関心が非常に強くなりました。過去においては十分でなかったのが、沖繩問題とともに高潮してまいりました。今回、政府におきましても、この固有の領土の回復に関して、国民の思想統一と申しますか知識の普及を目ざしまして、特に特殊法人といたしまして北方領土問題対策協会という団体を設立し、本年度予算を二千七百万円要求いたしておりますが、この団体を中心といたしまして活動いたしたいと考えておる次第であります。
  201. 西田信一

    ○西田信一君 次に、昨年からことしにかけて東大をはじめといたしまして学園紛争、大学紛争が頻発をいたしまして、ますます激化の様相を呈しておりまして、国民はほんとうにこの問題を心配をいたしております。これから大学問題についてお尋ねをしたいのでありますが、まず最初に、いままでの状況をお伺いする意味において若干お尋ねをいたします。  現在紛争中の大学は一体どのくらいあるのか。それからまた、あわせて、学園が封鎖状態に置かれておるもの、あるいはまた、いわゆる大衆団交、こういったことが行なわれておる大学はどのぐらいの数があるのかということをまずひとつお伺いしたい。
  202. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えいたします。  紛争の程度を、授業放棄、試験放棄あるいは施設の占拠、封鎖などを行なっておりますものに限りますと、現在四十六校の国公私立大学において紛争が生じております。授業放棄、試験放棄を行なっているものは、国立二十六校、公立二校、私立六校、計三十四校。施設の占拠、封鎖を行なっておるものは、国立二十七校、公立二校、私立六校、計三十五校に及んでおります。なお、紛争中の大学におきましては、いずれも学生側から大衆団交の要求が出ております。
  203. 西田信一

    ○西田信一君 全部で幾らですか。
  204. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 三十五校であります。
  205. 西田信一

    ○西田信一君 そんなものですか。
  206. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 現在、国公私立全体は四十六校であります。
  207. 西田信一

    ○西田信一君 国民が持っておる権利、大学に入る受験の権利は、これはもう当然のことでありますが、この入学試験を阻止するという非常に不穏な行動が各大学において起きております。幸いにいたしまして、いまのところ国立大学の第一期校は、どうやら警察に守られながら試験が進行しておるようでありまするが、一体どういう状況なのかということと、それからもう一つは、入試を中止した東大、教育大の定員を振りかえるという文部省の方針は、一体どういう受け入れ状態であるかということをひとつお伺いいたします。
  208. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 昨年の十二月二十九日と三十日におきまして、東京大学及び教育大学におきまして入試中止を決定——東大の場合におきましては一月二十日、最終的に決定をいたしたわけでございますが、この点については非常に国民の皆さま方に御心配をかけ、また、同時に志願者の方々に申しわけなく思っておる次第でありまして、十二月の段階におきまして、他の国立大学に何とかして増員をお願いするという形で行政措置もとった次第でございます。で、入試を実施いたしまする学校におきましても、ただいま先生御指摘のような状況で、いついかなるときにこの暴力的な学生がおどり込まんとも限らないというような状況下でございまして、その三千数百名の増員を願った入学志願者の人たちが、おもに京都大学を中心とした関西その他の地方大学に試験を受けるわけでございますから、その点につきまして、われわれ最高責任の地位にある者といたしまして、何としてもこの入試実施だけは平穏にやらなきゃいかぬと心を砕きまして、警察御当局とも緊密な連絡をとり、また同時に大学の学長等におきましても、あらゆる指導助言を通じましてやったわけでございますが、おかげで一応今日までのところ、多少の大学におきましては、京都大学におきまして火炎びんを投げられるというような事態もございまして、またきのうの段階で、広島で若干の入学受験生が何か投げ出したというような事件もございましたけれども、一応まあ平穏に行なわれたということをもって、ほんとうに志願者の方々に対しておわびのような気持ちを持っておるわけでございます。また国民の方々に対しても、一応私としての責任を果たし得たというような気持ちでおるわけでございます。  なお、東大と教育大学の振りかえの問題については、東大及び東京教育大の入試中止によりまして、国立大学の門戸が狭まれるのを少しでも緩和するために、文部省といたしましては他の国立大学に、東大とそれから教育大学の入学定員に見合う数を目標といたしまして、入学者増の協力を要請してまいりましたことは先ほど申しましたとおりでございますが、この入学者増は現在までのところ千二百名程度にはなるものと予想されております。このほか国立大学の新規増員分もございますし、また私立大学の増員見込みも相当数にのぼり、入学志願者数が四十四年度からは漸減するものと見込まれておることでもございますので、全体として来年度の入試競争が四十三年度より激化することはないと、こう考えるわけでございます。大体国立の新規の増員が計一千二十人、それから国公私立増員予定が八千六百九十五人でございまして、全体としてはカバーできるわけでございます。しかしながら何と申しましても経済的に恵まれない方々が国立に集中をいたしますので、その分のしわ寄せというものが当然あるというわけでございます。
  209. 西田信一

    ○西田信一君 文部大臣、大学に学生自治会というものがございますね。これがいわゆる三派全学連によってほとんど実権を握られているというようなものも相当あるようでございます。私はよく事情を知りませんが、全学連に加入するという形をとっているのかどうか知りませんが、こういった姿にある自治会はどのくらいの数に及んでいるのかということ、これをひとつ。
  210. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  現在日共系及び反日共糸の全学連に加盟ないしは支持結集しています学生自治会はおよそ五百二十でございまして、そのうち約六五%が日共系でございます。残りの三五%ぐらいが反日共系と言われております。
  211. 西田信一

    ○西田信一君 この大学紛争は、これはたいへんな全国的な騒ぎになっておりますが、ああいう大がかりな紛争をやるためにはただじゃできない。地方からも相当の人を集めるとか、学生を集めるとか、いろいろやっておりますが、一体こういう学生の資金というものはどこで集められているのか、どういう資金源によってああいう紛争が行なわれているかということの御調査がございますか。
  212. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) 暴力集団に関する資金の面でございますが、公安調査庁等においていろいろ調べておりまして、大体こういうところから行っているのじゃないかという見当はつきますけれども、実際に確証を握るということは非常に困難でございますが、鋭意これはわかりますように努力しておる最中でございます。
  213. 西田信一

    ○西田信一君 自治会は決算のようなものをやって、どこかへ届けておるのじゃないんですか。どこかおかわりになりませんですか。
  214. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  まあ大学自体で発表するわけでございますが、一応警察庁の政府委員から、警備局長から一応の答えをさしていただきます。
  215. 川島広守

    政府委員川島広守君) お答え申し上げます。  警察庁のほうで把握をしています限りにおいてお答え申し上げますと、大体会計年度が四月一日から三月三十一日というやつと、六月一日から五月三十一日というふうな会計年度をとっているようでございます。例をあげますと、日本共産党系の場合は、昨年から本年度におきましての総予算額は二千二百万、革マル系全学連の場合には五百五十万程度の財政規模でございます。その中で、一応パーセンテージを申し上げますと、おおむね自治会費からの上納金でございます。これが大体四五%程度、それから寄付金、いわゆるカンパでございますが、これが大体二五、六%、その他機関紙でございますとか、あるいはパンフレットの売り上げでございますとか、そういうものによるやつが残余のもの、そのほか生活協同組合等がございますので、そういう売り上げ金からの上納金というようなもので充てているようでございます。大体大きな事件のあります際の場合には、おおむね街頭におきますカンパ、こういうものでおおむね四〇%程度まかなっておるというのが私どものほうで調査して判明している点でございます。
  216. 西田信一

    ○西田信一君 まあ資金源についてはっきりつかんでおらないが、出所等についても調べているというお話でございますが、そこで、この大学紛争が起きましてから、東大をはじめ、要請により、あるいは自発的に機動隊あるいは警察官が相当出動いたしておりますね。一体どういうような出動状況かというようなことをひとつお聞きしたいと思います。
  217. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  警察は、大学紛争に伴う不法監禁あるいは建物の不法占拠、封鎖、あるいは学生同士の乱闘事件など、刑罰法令に触れるような不法事案の発生を知りましたときは、現実問題としまして、そのつど大学当局に適時適切な措置を講ずるように要望いたしております。実際は応答はあんまりございません。そこで、実際問題といたしまして、大学の協力がなければ出動いたしましてもその出動効果があがりません。証拠の収集にいたしましても、あるいはいろんな事情聴取にいたしましても、大学側の不協力のときには何のために出動したかわけがわからないという懸念がございますので、原則として大学側の応答ないしは要請に応じるということが実際的であろう、こんなふうな考え方でやってきておりますが、むろん警察独自の判断によりまして出動いたしたこともございます。  学内出動についての事例を少し申し上げてみますると、昨年中におきまして不法監禁、不法占拠、乱闘、入学試験妨害などで大学側の要請による出動が七回でございます。大学側の要請によらないで出動しましたのが一回、さらに要請がございませんで、令状をもって捜索、差し押え、検証等のために学内に出動しました回数が二十二回、本年になりましては去る三月一日の京都大学事件を含めまして、不法監禁、乱闘、不法占拠などで要請による出動が三十回、要請によらない出動が三回、さらに要請によらず令状によりまして、捜索、差し押え、検証のための学内立ち入りが八回でございます。ただ、本日午後二時長崎大学に同じようにして令状により立ち入りましたものを含めますれば、合計九回という状況でございます。
  218. 西田信一

    ○西田信一君 わかりましたが、ことしの分だけでもよろしいのですが、出動の回数はわかりましたが、延べ出動いたしました警官隊の数はわかりますか。
  219. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私自身具体的な数は念頭にございませんので、政府委員からお答え申し上げます。
  220. 川島広守

    政府委員川島広守君) 全体の数字はいま手元に持っておりませんので、のちほどお届けいたしたいと思いますが、参考まで、三月三日の今回の国立一期校の入試につきまして警備出動として一万五千名、昨日が一万四千、きょうも一万四千が警備に当たっております。詳しい数字はあらためて御提出申し上げます。
  221. 西田信一

    ○西田信一君 数字はあとから伺いますが、こういう非常に、いまお聞きしただけでも入学試験だけで四万幾らになっておりますが、おそらくたいへんな数字にのぼると思う。そこで昨日の出動等によりまして、相当警察官、学生間におきますところの衝突というような状態が起きておると思う。それによって新聞に出ておるだけでもおびただしい負傷者が出ておると思います。これは警官側にどのくらいあったか、学生側にどのくらいあったか、おわかりでございましたらお聞きをいたします。
  222. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  お尋ねは、大学紛争におきまする警察官や学生の負傷者数がどういう状況かというお尋ねかと思いますが、大学の紛争をはじめとします学化運動に伴います不法行為の警備取り締まりに対しまして負傷しました警察官は、昨年一カ年間で七千二百六十人でございます。そのうち一名が学生の投石によって殉職いたしましたことは、御承知のとおりでございますが、入院した者が百九十九人、現在依然として入院しております者がたしか二十五か六名だったと記憶をいたしております。学生の負傷でございますが、学生側にも負傷者は相当程度あると思われますが、大学側が必ずしも届け出をしてくれません。また本人も負傷しましても、行くえをくらます、学生同士の乱闘のために、それを秘匿する必要があるのかどうか存じませんけれども、その点は具体的には把握いたしかねておるのが実情でございます。
  223. 西田信一

    ○西田信一君 去年だけで七千二百名というから、ことしを加えたらおそらくこの倍じゃきかない、二万名ぐらいになるのじゃないかと思いますが、実にたいへんなできごとだと思います。  次に、そういう出動によって、不法な行為によって検挙された学生の数はどれくらいあるか。それから検挙された学生のうち、起訴された者はどのくらいあるか。それからもう一つ、起訴された学生はそれぞれ起訴理由があると思うが、できれば理由別に分けたらどういう状態か、それから学生を学校別に分けたらどうなるかという調べがあったらひとつ。
  224. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) お答え申し上げますが、羽田事件以降今日まで、学生の検挙数は七千六百五十七名でありまして、このうち起訴数が千二百九十四名でございます。なお、成年以下の者は、家庭裁判所に送致いたしました者千四百二十四名、捜査中の者二千二百八十一名でございます。なお、御参考に申し上げておきますが、ただいまの発表の数字の中で、一月十八、十九両日、東大安田講堂の封鎖解除の際に検挙いたしました数は七百三十二名でございまして、そのうち五百九名を大量起訴いたした次第でございます。なお、学校別の数でございますが、だいぶございますが、東大が、これは検挙し起訴された数でありますが、東大が七十九名、明大が十六名、早稲田が二十三名、慶応が四名、法政大学が十六名、専修大学十名、それから学芸大六名、東京農大九名、立教大学八名、それから東洋大六名、立正大十一名、芝工大が十四名、その他多数ございますが、一、二名の者が大部分でございますから省略いたします。
  225. 西田信一

    ○西田信一君 これは理由別にわかりませんか。起訴された罪名ですね。
  226. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) 罪名別にわからぬことはございませんけれども、東大等のあれは、ほとんど不退去罪、それから凶器準備集合罪、そういう二、三種の罪名でございます。
  227. 西田信一

    ○西田信一君 伺いますと、たいへんな、千二百九十四名も起訴されておるという、少年院へやったのが千四百名、こういう暴力行為は、少年院に送ったのは別といたしまして、起訴された人の名前は全然発表されておらぬように思いますが、ちょっと町のチンピラがいろんなことをやっても新聞に出るんだが、発表されておらぬ理由は、これは一体どういう理由なのか、ちょっと納得がいかないのでございますが、理由をひとつ。
  228. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) お答え申し上げますけれども、いま、なぜ氏名を発表しないかという点でございますが、今日まで従来の慣例といたしまして、起訴いたしました者につきましても公判の前には、従来、氏名、年齢その他を発表しないというような慣例になっております。しかし、特別の場合には発表する場合もございまして、今回、東大事件等においては、先ほど申し上げましたとおり、一ぺんに五百九名も起訴いたしましたので、この中でおもだった者三十数名は東京地検から氏名を発表したのでございます。以上でございます。
  229. 西田信一

    ○西田信一君 私は、学生の将来をおもんぱかると、いろんなことがあると思うのでございますけれども、しかしながら、公判まで発表しないというのは、ちょっと私は他の犯罪と違う扱いだと思うんですが、まあ、発表することがいいか悪いか、これは問題があるでしょう。しかしながら、発表されないということによって、これはまたマイナスの面も非常にあると思うのです。十分御検討いただきたいと思います。  それから逮捕者の中、あるいは起訴者の中に学生以外の者が相当入っていますね。一般人であるとか、ことにけしからぬのは国家公務員などが入っておる。こういうのも何も名前が出ておらぬ。非常にふしぎに思うんでありますが、これはどういうわけですか。
  230. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) 大量の検挙でございますので、先般の新宿駅を襲撃したような場合には、だいぶ民間人も入っておったようでございますけれども、いまここですべて区別した数字を持っておりませんが、一般の者が一緒になってやって、いま起訴されたというのはごくわずかでございます。大部分が学生でございます。
  231. 西田信一

    ○西田信一君 わずかなことはわかっておるのでありますが、たとえば東京都の水道局員とか何とか新聞に出ておりますが、名前が出ておらぬ。こういうのは私は、もっと厳格にやってもらったほうがよろしいと思う意味でお尋ねしたのであります。  それから、これはちょっと御苦労なさっているのに恐縮でありますけれども、東大の山本義隆あるいは日大の秋田、こういう人たちが首謀者だと思うのでありますが、つかまらない。しかも、テレビに堂々と出てくる、新聞記者会見には出る、雑誌には出る。あるいは集会に出てそうして支持演説をやる、アジ演説をやる、こういうような状態でありますが、どうしてこれが逮捕できないのか。国民はふしぎに思っておると思うのでありますが、何か理由がありましょうか。
  232. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  御指摘の東大の全学共闘会議の議長山本義隆、日本大学全学共闘会議の議長の秋田明大、この二人につきましては逮捕状は出ておりますが、御指摘のとおりまだつかまえきれないでおります。共産党のほうから言わせますと、警察が泳がしているのだとよく言われるわけですが、現実につかまえてみませんことには、何をぐずぐずしておるかいうおしかりが出てもやむを得ないと思います。私もその疑問を持ちまして、事務当局等にもかねて聞いておりますが、実際上、これをつかまえるのは容易でない。先日、新聞に出ました、共闘会議の大会みたいなことをやりまして数千人集まっておるときに、大演説をぶっておるのに何でつかまえないのかという話も出るわけですが、そのときにも五百名余りの機動隊が出動いたしまして、令状を持って逮捕すべく出向きましたけれども、数千名の者が取り囲んでこれを渡すまいとする。そういう状態のもとではなかなか現実問題でむずかしい趣であります。ただ、集団の暴力ざたを制止し、制圧するということは容易ではございませんけれども、やりやすい。しかし、そのほかのたった一人をつかまえるというときに、数千名の者がそれを擁護しております状態では、よほど多数の機動隊でも準備いたしましてでなければ、現実、つかまえかねるという話を聞かされているわけでありまして、別に共産党に皮肉られるように、泳がしているわけではございません。令状を執行して現実にこういう者を逮捕することは当然の責任と心得て、せっかく努力中でございます。
  233. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) 先ほどの西田さんの、学生以外の検挙された者、わかりましたので申し上げます。  どの学校かわかりませんが、浪人している浪人組、これが七名、公務員一名、工員一名、店員二名、それから黙否権を行使しておりまして職業その他がわからない者が十七名。
  234. 西田信一

    ○西田信一君 起訴をしたからには、私は氏名はわかっておるのだと思いますが、公表できないならば、法務大臣、氏名をわれわれにだけでも示していただくことはできませんか、資料として。
  235. 西郷吉之助

    国務大臣西郷吉之助君) お答えいたしますが、先ほど申し上げましたとおり、東大事件のときには五百九名の大量検挙、起訴いたしましたので、東京地検から三十二、三名の氏名を発表いたしましたが、いまお話のとおり、これも発表して、名前は申し上げていいのでございますけれども、学生で、若者でございますから、ただ名前を申し上げてもあまり御参考にならぬのじゃないかと思いますが、資料として差し上げることはけっこうでございます。
  236. 西田信一

    ○西田信一君 それじゃ資料を出してくださるそうでございますから、委員長のほうでおはかり願います。  次に、京都大学に井上という教授がおりますね。それからもう一人、九大の井上法学部長ですか、どうも非常に私は教員として、教育者としてあるまじき行動が、目に余る行動があると思うんでありますが、文部当局はこれに対してどういう措置をとっておられるのか。
  237. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたしたいと思います。  京都大学の井上教授が共闘会議の暴力を肯定し、そしてまたそれに対して支援をするような手紙を書いたという事実は、まことにこれは遺憾なことだと思うんでございます。そうして、さっそく私のところで、まず京都大学当局に対しましてその調査を依頼いたしました。で、その調査の結果、手紙を書いたことは大体週刊誌等に出ておるとおりであるということを申してまいりました。また、これに対しまして、これを東大の全共闘で張り紙をしたというところまで本人は考えてなかったと、こういう回答でございます。しかしながら、これに対しましては、私といたしましては、いま、いずれそういうような国家公務員として、また教員、教授といたしまして、まことに私は不穏当な言辞であるというふうに思うんでございまして、現在学内において暴力というものを排除しなきゃならぬ、また良識、良心の最高学府であるそこにおいて、学生たちが暴力をふるって、そして学問の自由と大学の自治とを侵しておるわけでございますから、そのことについて世間も心配をし、そしていま先生が御指摘のようないろいろ警察官の負傷者も出ますし、学生同士の負傷者も出ますし、そうしてまた、学ぶ自由を持っておる幾多の善良な学生たちが学ぶことができない、また、教授たちは研究することができないという状況にあるわけでございますが、これはまさにその暴力というものを否定し得ないというところにあるかと思います。学生の暴力もさることながら、教授がこういうような言辞を吐くということ、少なくとも学問研究、真理追求のために自分のいろいろの思想を持ち、あるいはイデオロギーを持たれることはけっこうでございます。また、その真理追求の問題について、学問的にこれを教授されることも憲法の保障するところであると思うのでございますけれども、いやしくも教授は教育という一面を持っておる地位にあるわけであります。同時に、社会的影響というものを持っておるわけでございます。しかも今日、大学紛争というものはこういう形においてエスカレートしておる、こういうことを考えまするならば、この公務員法違反とか、あるいは何かという法律的な問題をこえて、むしろ最高学府に学ぶ者あるいは教える者というものは、一般の市民社会における規制、つまり法律的規制より以上の道徳的規制というものをみずから持たなければ、教授たるの資格はないと私は思うのでございます。また、そういう意味合いにおきまして、こういう人たちに対してどのような措置をとるかということは、これまた、しかしながら基本的な問題でもございますし、学問の自由を守る意味における身分保障というものも一面にあるわけでございますから、人事院御当局ともよく御相談をしながら、慎重にいま検討をいたしておる段階でございます。  そういう状況でございます。
  238. 西田信一

    ○西田信一君 それだけの許しがたき、教授としても許しがたい行動をしておるならば、あまり慎重過ぎてはいかぬと思うのでありますが、特に急いで善処を願いたいと思う。  それから東大でありますが、これはもう一年あまりにわたって暴力学生のじゅうりんにまかせたということ、その結果、あのように建物も研究設備も器物も、貴重な資料もみんなこれが損壊ざれた。しかも四、五億にのぼっておる、こういうことでありますが、これは国有財産である、国民の財産である。したがって、これに対しまして学校は管理の責任があるし、これは一体だれが責任を負うのか、少なくともこれを簡単に国で始末するというようなことでは私は問題だと思うのでありますが、これに対しましてどういう一体だれに責任を負わせるのか、損害賠償等についてはどう考えるのかということをひとつお伺いをいたします。
  239. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたしたいと思いますが、西田さんの御指摘のとおりでございますね、今回の東大紛争の過程における損害だけでも四億五千万というような貴重な実は国民の財産を破壊しておるわけでございまして、まことに遺憾なことだと思うわけでございます。しかもこの学生だちに対しましては、普通の国立大学においては一人当たり七十六万円も国民は税金を支払っておる、また東大においては百二十六万円も払っておる、こういう現実を踏まえて、やはり東大当局というものが第一義的に、第一次的に責任というものを感じなければならない、社会的責任というものを感じなければならない、かように思うわけでございます。  われわれといたしましては、大学の管理運営につきましては、物的管理の問題とあわせまして教育研究の正常な運営、大学全体のやはり秩序維持など種々いま検討する点もございますけれども、このような見地に立っての配慮から国有財産管理者としての努力を払うべきということは当然であると思いますが、施設設備が不法に占拠され、または損害を受けるに至ったことは、国有財産の管理権を有する学長の職務及び責任から見てきわめて遺憾なことであると考えます。  大学紛争によりまして生じました国有財産の損害につきましては、加害者が当然責任を負うべきものであり、国はこの不法行為によって生じた損害について加害者に対し損害賠償責任を追及できるものと考えておりますが、その取り扱いにつきましては関係省庁と十分打ち合わせを行なった上進める所存でございます。
  240. 西田信一

    ○西田信一君 まだ何もやっていないですね。責任を明らかにしていただきたいということです。  それから例の確認書の問題でありますが、これはずいぶん議論されておりますからくどく申しませんが、文部大臣の要望も無視されてああいう確認書になったことは事実、そこでその内容には非常に重大なものがあります。しかも学生の反省あるいは学生の義務なんということには一語も触れておらないのでありまして、私は内容自身は申しませんけれども、これは暴力学生の圧力に屈した無条件降伏にひとしいものだと思うのです。まさしく教育の敗北である、そうしてこれが全国にだんだんその影響が波及しておる、かように思うわけでございまして、総理もいろいろ見解を述べておられるようでありますが、この東大の確認書をめぐる措置あるいはまたこの影響、これに対しましてどういうふうに対処せられますか、文部大臣と総理大臣からひとつ御見解を伺いたい。
  241. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 確認書の問題は非常にみんなが心配した点でございます。十二月の二日にこの加藤提案なるものが出ました。ところがこの見解はまことにあいまいでございまして、あるいは法にもひっかかる、あるいは教育的見地から申しましても、妥当性を欠くという提案に見受けられたわけでございます。また、十二月の二十六日のときに、基本見解なるものを大学当局は発表いたしました。それでもなおかつわからないわけです。  それから、また、ことしになりましてから、御承知の七学部集会等が行なわれまして、確認書が取りかわされて、そして一月の二十八日に加藤代行が分厚な、ここに持っておりますけれども、こういうような説明書、あるいは経過、背景というものを書いておるわけでございます。そのように見てまいりますと、一体どれをほんとうの確認書の内容と考えたらいいかどうか、実はわからぬわけでございまして、しかしながら、この点につきましては、十二月の段階にも、また、一月十七日の東大当局と私との協議の間においても、私はこの点について疑問点がある、あるいは法的におかしいところがあるということを指摘いたしたわけでございます。したがいまして、私は法制局長官にお願いをいたしまして、法制局長官の見解というものを出していただいたわけでございますが、それを私が受け取りましたのが一月三十一日です。それから二月の……。
  242. 西田信一

    ○西田信一君 経過はよろしいのです。
  243. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) はい。まあそういうようなことで、非常にわからない点があるわけでございますが、しかし、文部省見解と、それから法制局見解というものを出しまして、多少の影響を与えたというふうに私は思っておるわけでございます。そうして全体の二十六項目のうち——十項目と称しますけれども、二十六項目ありますが、批准をいたしましたのは、当局と学生ともに了承をしたという十五項目だけが批准をされておるということでございます。そういうわけでございまして、おそらくこれは紛争解決の一つの手段として考えられたと見るべきではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。  それから、また、加藤執行部におきましては、新たなる大学というものはどうあるべきかという問題についてただいま取り組んでおるようなわけでございまして、一応これはケリがついたというような気持ちを持っておるようでありますが、私といたしましては、文部省からこのときの法制局見解を手渡し、また、文部省見解を手渡しましたときにおきましても、なおかつ疑問の点があるというようなことで、今後この点についていろいろ話し合いをしたいということを申しておりますし、また、向こうもそれについて了承しておるわけでございまして、今後とも指導、助言によってこれが定着をしないという形に持っていきたいというふうに考えております。しかし、確認書は手段でございまするから、最初は学生側から見るならばこういうことも考え、違法性もある面が出てくる。それから、加藤君の最終的なものをよく読みますと、たとえば団体交渉というような、団体交渉権ということばすら今度は考えると申しておりまするが、その中におきまして交渉する内容というものは、人事権は含まない、あるいは予算等の経理の面については含まないというようなことをはっきり言っておるわけでございまして、それから、また、警察官導入につきましても、ここは少しおかしいわけでございますけれども、とにかく大河内さんのときの警察官導入というものは、あれは適切ではなかったのだと、いかなる場合にでも入れないというわけではないのだと、こういうわけでございまして、現在までも、御承知のように、十八、十九日におきましても警察官導入をいたしておりますし、きのうの段階におきましても、駒場においてあの教官をかん詰めをしたというようなことで要請をしておるということで、われわれが心配しました数個の点については、事実をもって加藤執行部の解釈というものはそう読むべきではなかろうかというふうに考えますけれども、しかし、なおかついろいろの疑問点があるというわけでございまして、私どもといたしましては、やはり大学の基本にかかわり、ほかの大学にも影響を及ぼす重要な問題でございまするので、十分これに対しましては注意をいたし、指導、助言をいたし、かつ、まさにこの点につきまして中教審で諮問をいたし、いま検討をいたしておるところでございまするので、そのような中間報告等をも考え合わせながら大学当局も考え直していただきたい、かように考えておる次第でございます。
  244. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指名がございませんでしたが、補足さしていただきます。教育的立場からあの提案ないしは確認書をどう受けとめるかは、いま文部大臣からお話がありました。私は治安の責任者という立場からいささか懸念にたえない、現行法上から懸念にたえない点を補足さしていただきます。  まず、第一に、昨年の一月以来の暴力ざたをはじめとする不法事案が幾多ございましたことは御案内のとおりでありますが、このことにつきましても、確認書の署名されたといわれる中にありますことですが、学則に照らして教育的立場からの処分はしないということが含んでおると承知いたしておりますが、このことは、直接的には教育プロパーの問題ではございますけれども、この事案の裏には、たとえば暴行罪、あるいは監禁罪、あるいは不退去罪ないしは建造物損壊罪、さらには公務執行妨害罪、あるいは器物毀棄罪等の数々の罪名に関するものが現に逮捕され、検挙されておるわけですが、もしそれ、これが刑事事犯といたしまして処断されましたならどうするかということとの関連において考えますると、そういうことになるならぬにかかわらず、教育的立場からの処分はしない、本人が反省するであろうという注釈つきの状態で放任されておることは、これはゆゆしき法秩序無視の考え方を最高学府の代表格の東大で、学校側とがんぜない分別のない学生集団との間にその考え方が現実には定着しつつある、将来それが改善されることをむろん期待しますけれども、現実問題としては定着されつつあることが全国に蔓延するおそれを感ずるのであります。もしそうだとしますれば、治安の責任を国民のために負います立場からも、最高学府でそういう愚かなことはしてもらいたくないということを要望せざるを得ない。  さらに、第二の点は、本院の本会議でもお答え申し上げましたように、警察当局が令状を持って捜査に参りましても、その当否は大学当局が自主的に判断する、原則として協力しないという趣旨のことがあったと私は承知をいたしておりますが、むろん加藤代行の一つの注釈的な考え方には、令状を持ってきたときに拒むわけにはいかないけれどもという前提はあるようでありますけれども、そのことは、調印というか、いわゆる批准されましたものの中にはそういう注釈なしで、いわば分別のない、そういうことに双手をあげて賛成しそうな傾向にある学生集団との間に以上申し上げたようなことが、このことに関してもし定着していきまするならば、刑事訴訟法が命じますところの、また、警察法が命じますところの治安当局の国民に対する責任は果たせないことがあり得るということを連想せざるを得ない。この点はもっと明確にする必要があるであろう。さらに、学生自治会活動については、警察官の調査、捜査などは拒否するということがあります。捜査には協力しないということも、「原則として協力しない」とあります。現行犯は、憲法にも明記しておりますように、令状なくして捜査、検証、逮捕できる。また、なさねばならない警察の責任が法律上負わされておるわけでございますが、学園がいわゆる治外法権でないということは申し上げるまでもないところですけれども、そういうことは万万人一倍明確に法律的にも承知しておるであろうはずの大学の中で、さようなことが学生集団との間に批准され、それで有効になったというふうなことで、理屈抜きに現実にそういう不当な状態が定着しますことを、前の二つの問題と同じ意味合いにおいて懸念するわけでございまして、将来大学の正常な姿を維持しますために、国会でも御審議願うことがあるかどうか存じませんけれども、十分の御検討をいただかねばならぬとは思いますけども、現行法上許されないことをかって気ままにやれそうにしか思えないことが学生集団をして思い上がらせはせぬだろうかということをおそれるのであります。そういう点は文部大臣のさっきのお話の線に沿って、十分の指導、助言のもとに、ばかなことにならないように期待するものであります。
  245. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほど東京大学七学部集会における確認書につきまして、文部省の所見というものを申し上げたわけでございます。その中で、ただいま荒木先生がおっしゃいましたようなことにつきまして、「この確認書には、内閣法制局の指摘どおり、法律上もいろいろ問題があるが、特に大学教育、大学の自治及び大学の管理運営のあり方に関し、次のような基本的に重要な問題がある。」、(一)学生に対する懲戒処分について」、「紛争中の集団的な抗議行動に含まれる不法行為について、教育上個々にその責任を追及することが事実上困難なことは分らないでもないが、これらの行動が、教育・研究の自由を妨害し、「建物侵入、封鎖、器物破壊、監禁、暴行傷害など」のような暴力事犯の形で行なわれたことは、明らかである。これに対し、「大学側に重大な誤まりがあった」ことを理由として大学当局が処分の対象とせず、学生側の自省の保障もないままこれを道義的責任のみに委ね、過失相殺のごとき対処の仕方をすることは、今後の学園紛争の処理に悪影響をおよぼすおそれがあるだけでなく、大学の態度としてきわめて遺憾である。また、かかる対処の仕方は、結果として、学園内の暴力を容認するかのごとき風潮を招くおそれがある。」というような意味の、まだ数項目にわたっておりますが、以上の所見を申し述べまして向こうに伝えた次第であります。
  246. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはいま国内の内政上の問題では最も緊急を要する一番重大問題であります。各政党とも、これには多大の関心を持っておる。また、国民も、父兄であろうとなかろうと、大学がいかになったのか、たいへん心配しておられる問題だと思っております。そういう意味におきまして、政府もこの問題とは取り組まざるを得ない。先ほど来文部大臣あるいは荒木君からお答えしたのも、そういう意味合いで申し上げたのであります。したがいまして、あの答弁でおわかりだと思いますが、学園の自治は尊重する、その立場におきましても、覚え書きなるものは、いわゆる大学の将来を基礎づける、拘束する重大な問題だと、かように考えますがゆえに、文部省から法制局のいわゆる解釈、これを求めて、そうして文部省はその結果によって、いわゆる文部大臣が持つ助言と進言、その立場において大学側にその意見を知らせたのであります。これは別にいわゆる干渉ではなく、問題が問題でありますだけに、政府が当然なすべきことをしたんだと、私はかように考えておる。そうしてさらにその問題をトレースして、そして結果のほどをはっきりさせないとこの問題は重大なる結果を招来するのではないかと、実は非常に心配しております。したがいまして、ただいまの説明もずいぶん長くなりましたが、要はその点に尽きると、かように御了承いただきたいと思います。
  247. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 関連。(「委員長、議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり)
  248. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 中村君に発言を許しました。
  249. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は、文部大臣の答弁、国家公安委員長の答弁を聞いておりまして、たとえば九州大学、京都大学の両井上教授の問題についても、まことに遺憾であるという文部大臣の答弁、あるいは東大における器物損壊や暴行傷害等々、こういう事態に対しましても、まことに遺憾であるという、遺憾であるということばだけでは国民は納得しないと思うわけであります。また、東大の確認書の問題につきましても、あらゆる角度から検討して、法的にも疑義があるばかりではなく、教育的立場から見てもまことに残念なところがあると、公安委員長が、大学側に不法これこれのことがあって、大学側に助言あるいは勧告等をしても応答なし、あるいはやろうと思っても、協力なければできないのだと、こういうところを説明を受けたわけです。それだけの説明では国民は納得しないはずであります。じゃ、どうすればいいのだと、それは法的な不備な問題があるのだ。たとえば大学に対しまして指導、助言があっても、それをさらに詰めて国民が考えていくような、政府が考えているようなそういう処置が、命令する、あるいは法的規制する根拠がないところに大きな責任があるわけです。東大の確認書の問題につきましても同様でございます。大臣が指導、助言をいかにしようとも、確認書の内容が大学の教授側と学生側のすべて力関係によって解釈が生まれるということも念頭に置かなければならない、こういうところに将来の課題が残っている。こういう点から私は総理にお伺いいたします。これらの法的な問題に関連して、大学をほんとうの国民の大学にするために、大学の正常化をはかるために、国民の声を反映した立場において大学が運営されるように法的な措置を今後考えていく必要があると思うが、総理のお考え方をお伺いしたい。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中村君にお答えいたします。  お説のとおりだと思います。ただいま政府は中教審に、あらゆる問題を含めての改革案といいますか、正常化、それについての諮問をいましております。中教審の答申を得て、しかる上で法制的に整備すべきものは整備すると、こういう処置をとらなければならないと、かように政府は考えております。
  251. 西田信一

    ○西田信一君 先ほど荒木公安委員長が申されましたように、私は、東大のああいう動きというものが、これが全国の大学に波及し、影響を受け、そして既成事実がつくられ、そしてこれがだんだん定着してきている状態になってきていると思うのです。一々具体的に申し上げませんが、たとえば北海道大学で、学長選任に学生や大学院生の信任投票が行なわれた、しかも、あげられた推薦候補三人に対して、学生のアンケートですね、思想調査のようなものが行なわれた、こういったことが一体許されるのかどうか、これに対して文部大臣はどういうふうに措置をとっておられるのか。
  252. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) この点につきましては、すでに衆議院の文教委員会におきましても取り上げられた問題でございますが、ただいまその事実の有無につきまして調査をいたしておる段階でございます。もしこの思想調査ということを前提としてそういうようなことが行なわれるとするならば、これまさに大学の基本的な問題にかかわる問題と私は心得ておるわけでございます。世上伝えられるところのいわゆるアンケートというものが、どういうものであるかということをまず私は確認をいたしてから行動をいたしたいというふうに措置をいたしたいと考えております。
  253. 西田信一

    ○西田信一君 どういうふうに調査をしておられるのか、だいぶ時間がたっておるんですけれども、私は、そういうことが、非常に手ぬるくて、そして学園紛争がだんだんエスカレートしていくんじゃないかと思うんですが、一体いつわかるんでしょうか。
  254. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 北海道大学の教育学部の学部長選考に対しまして、御質問のような事実、すなわち事前に学生の信任を問うような投票をやり、さらにその前提としてアンケートをしたという事実はございました。そこで、その事実関係を現在正確に調査中でございます。詳細につきましてまだ大学側からの回答が正式には参っておりません。一応口答での事情聴取は行ないましたけれども、正式な報告を待ちまして、さらに的確に判断をした上で処置をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  255. 西田信一

    ○西田信一君 大学問題はいろいろあるのでありますけれども、私はほんとうに今日の状況を憂えるものでございますが、大学生は、一定期間、勤労から離れておるわけですね、同じ年配の人が働いておるのに。だからして、大学生は、大学に学んでおる以上は、社会的に修学の責任があると思うんですね。この義務を果たしておらない、責任を果たしておらない、こういうふうに思います。また、大学教授なり学校当局には、それぞれの責任がある。これが全く果たされておらない状態だと思うんです。私はまことに日本の教育制度の根本的な改革が必要だと思いますが、そのことは別といたしまして、当面学園の正常化をはかるために、少なくとも最小限度の措置が必要である。いま関連質問で聞かれまして、中教審の答申を待ってからというお答えがございましたけども、そういう答申が一体いつ出るのか。どうもじんぜん日を送っているような気がいたしますが、具体的にひとつ見通しをお聞きいたしたいと思います。
  256. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 昨年の暮れから、第二十四特別委員会におきまして、四項目につきまして、たとえば、一般教育の問題、それから学生参加の問題、それからもう一つはそれに関連いたします管理運営について、それからまた続発いたしますところの紛争処理の問題につきまして、四項目にわたって検討をいたしておるわけでございますが、一両日中に、その中の参加の問題、学生の地位の問題については、中間草案が発表になるというふうに考えております。
  257. 西田信一

    ○西田信一君 そうすると、中教審の答申が一両日に出れば、当面の応急措置は講ずる、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  258. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 紛争処理の問題は、またその次に中教審において検討になるわけでございます。ただし、いま、西田さんが、むしろ秩序回復のために何らかの措置が必要ではないかというようなことでございます。私どもも、今日のような大学におきまして、あのような暴行が横行し、こういう状況が続発をするということであれば、もし制度上どうしてもこれがやれないというようなことであるとするならば、これについて何らかの措置を考えなければいかぬのじゃないか。しかし、その点につきましても、ちょうど私のところではそういうような問題を含めまして中教審にお願いをしておるところでございますので、その辺のところもまたやはり法律となりますると国会の御承認を得なければなりません。そういうようなことも考えあわせまして、各党間におきましてもいろいろ御配慮があるということも承っております。そういうこともにらみ合わせまして、私はそれにこたえたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  259. 西田信一

    ○西田信一君 私は大学問題とあわせてもう一つ大事なことは、高等学校に火がついて、高等学校がいわゆる安保闘争の予備軍のような状態の、そういったことを堂々と言っている。これが全国に蔓延している、こういう状態だと思いますが、高校の問題についてはどういうふうに文部当局は対処しておりますか。
  260. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 大学紛争もさることながら、これがまたその前段階でございます高等学校の段階に入ってきている。しかして、三派系あるいはまた民青系というものが一万数千人もあるということも承知をいたしておりますし、全国にわたりましてそういう激しい政治運動が行なわれているということ、これは教育上まことにゆゆしい問題だというふうに考えておりまして、私たちの法の許す範囲内におきます指導、助言を通じましてせっかく努力をいたしているところでございます。
  261. 西田信一

    ○西田信一君 私は、日本の大学紛争は、世界各国学生騒ぎがありますけれども、非常に特徴的だと思います。非常に思想的であり、非常に長期にわたっている、こういう点で非常に違うと思います。一体、日本の大学紛争がどうして起きたのか、原因はどこにあるか、これをひとつ聞きたい。どうしてこんなにもなっているか、私は相当長い間の累積がこうなっていると思うのでありますが、その原因はどこにあると認識されておりますか。
  262. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは種々の原因があるかと思いますけれども、第一義的には、やはり政治的な主張を暴力でもって貫こうと、そうして大学がいわば治外法権の場であるかのごとく考えまして、その弱点をついて、それを拠点としてその政治活動をやっている。また、これを管理運営するところの大学当局におきましても、これに対するき然とした態度というものがない、教育基本法の第八条の教育の中立性というような問題について深く思いをいたしておらないというところにあるかと思うのでございます。御案内のように、戦前におきまして、いろいろ大学教授の地位というものが軍部やあるいはその他の国家権力から侵犯されようとした事例があることは事実でございますし、その影響を受けていることもわかります。しかしながら、戦後は主権在民の新しい憲法のもとに、国家権力というものが発動することは、国民大多数のためにあるわけでございます。いわんや、今日の学園内における学問の自由と大学の自治をおかしておりますのは、国家権力にあらずして、むしろその学生、あるいは外部の学生、あるいはそれを使嗾している諸団体というところこそ学問の自由を守らなければならない。にもかかわらず、大学の先生たち自身が、戦後二十七年間にわたって大学の自治というものをどう解釈されているのか。国家権力から守ってさえいればいいのだ、学生の暴力によって学問の自由あるいは大学の自治が破壊されているという、そういうことに対する気持ちがないというところかと思うのでございまして、この教授の意識の変化といいますか、転換ということがまず第一に考えられなければならないものであって、従来それは考えられなかった。そうして、大学の自治と申しながら、それならば一体こういうような紛争という問題について、われわれに、政府が政府がとおっしゃいますけれども、大学自治であるならば、第一義的には大学当局みずからが責任を負わなければならない社会的責任というものについての認識というものが実に幼稚であると言わざるを得ないのでございまして、この点の回復なくしては、幾ら制度を変えましても、なかなかこれはむずかしい問題じゃないかということすら私は言いたいのでございます。そういうわけでございまして、これは学生の意識の問題もありますし、その他の問題もございますけれども、何はさておきましても、第一義的に政治的偏向の暴力学生ということが直接の原因かと思うわけでございます。
  263. 西田信一

    ○西田信一君 私は私なりに考えを持っております。まあいろいろあると思いますが、私は、大学と学生の乱造、これもあると思います。それから入学すれば卒業はきまっているというような日本の大学制度のあり方にも問題があると思います。あるいは終戦以来の長い間の教育の欠陥も影響していると思う。あるいは官学の偏重ということにも問題があるかと思いますし、とにかく旧時代的な大学制度にも問題がある、こういうふうに思います。どうかひとつこれらの点につきまして十分な検討を加えられまして、そうして百年の大計である基本的な対策を立てていただきたいということを、この際、総理並びに皆さんにお願いをいたします。
  264. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 関連。総理の答弁で、中教審の答申を待って考えるということ、それから坂田文部大臣は、いまのもろもろの説明の中で、制度上に欠陥がありますと、欠陥は御自身で気がつかれているわけです。長期的な展望に立つ大学をどうするかということについては十分検討しなくちゃならないけれども、いまの学園紛争を正常化するための緊急にとるべき措置というのは当然私は必要だと思う。中教審の答申の内容を考えてみましても、あさってあたり出るであろうその内容は、学生参加の問題、学生の地位をどう認めるかということの問題で、大学正常化への一つの点だけであります。大学の内部の問題、あるいは教授制の問題、人事の問題、もろもろの問題で関連して、私は、この際、大学正常化のための緊急の措置をすべき事態になっていると、法的な問題をあらためて考える必要があると思います。中教審の答申を単に待って善処するということだけじゃなくて、政府の責任において考えるべきものがあると思いますが、重ねて総理の所信をお尋ねいたします。
  265. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中村君にお答えいたしますが、いま政府の責任においてとはどういうことを言われるのか、ちょっと私つかみかねるんです。ただいま、中教審が中間的な報告があるだろう、あと一両日待ってほしい、かように申しております。また、荒木公安委員長が先ほど学園の自治と申しました、これは治外法権の場所ではない、かように申しておりますので、政府のやるべきことはいまやっておる。その上に何を要求するのか、いまのをもっと具体的に私にもわかりいいようにお話しを願いたいと存じます。
  266. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま総理の答弁の中で、私の真意がつかめないというお話でございますが、たとえば井上教授等々の問題も、当然文部大臣としては、遺憾である、教育者としてふさわしくないという考え方が打ち出されたけれども、現在の法律の中で、学校教育基本法の中では、これは遺憾というだけで、どういうふうにもできない。あるいは、大学が混乱の中にずっと続いておるけれども、たとえば国民の中には、一時閉鎖をして安穏になって静かな中で学生も教授も考えて善処策を生むべきという声もあるけれども、これらに対しましても、政府としては何らの処置する方法もないわけです。中教審の答申の中には、こういう問題はいまただちに出るはずがないわけです。こういうもろもろの欠陥について政府は考えて法制化するような積極的な態度があってほしいのではなかろうか、これが国民の声である、こういうことを私は申し上げました。
  267. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一般的な治安の問題については、先ほど申しますように、学園の自治が暴力を許すものではない、かように申しておる。暴力に遠慮はしない。もうおわかりのとおり、暴力がまかり通る、かようなことは許さない。また、いま具体的な人名をあげて、不適当な教授、こういうことを言いたいんだろうと思います。それについては、政府は必要なる助言、これはできることでございます。そういうことの処置が行なわれております。これは直ちに切れと、こう言われましても、それはただいまの法律では無理だ。それじゃ管理法を出す、まだそこまで政府は考えていない。また、政府自身がそういう学校管理法をつくるという、これは一方的にだけは、これはいろんなこともあるだろうと思うんで、それこそ慎重にやっていきたい、かように私は思っております。いまの制度でやり得る、これは助言と進言はできることですから。そういう意味で、確認書に対して東大加藤代行がとったような処置を、文部省がやはりこういうことについて幾らでもとれることじゃない、かように私は申しました。  さらに、いまの、積極的に基本的な法律の問題になれば、それこそ中教審という制度がありますから、それによって、しかる後に問題を提起する、これがよろしいのではないか、かように思います。  問題の治安そのものについては、先ほどの公安委員長説明でおわかりだと思います。
  268. 西田信一

    ○西田信一君 次に、問題を移しまして、経済計画でございますが、先ほどもお尋ねがあったようであります。私は数字を申し上げますことはやめます、時間がありませんから。しかしながら、国民総生産でも四十三年度もたいへんなズレが出た、まあいい意味のズレが出ておるんですけれども。それからまた、民間の設備投資でも予定されたのがもうすでに達成してしまっているんですね。こういうふうに非常に違ってきておるわけです。これは喜ぶべきことかもしれませんが。しかしながら、日本のような自由経済下におきますところの計画のむずかしいことはわかります。わかりますが、せっかく政府がこういう計画を立てるならば、これが長期的制度でありますから、だから民間なら民間が、十分これを基礎にして、標準にして、そうしてこれを指標としていろんな計画を立てていくというような青写真でなければ、意味がないと思うんです。こういう意味におきまして、いままでの非常な狂いというものは、私は国民からやや信頼を失っていると思うのでありますが、現在改定を進められておるようでありまするが、どういう構想で、具体的な内容をどういうふうに考えられておるのか、いままでのようなことのないような計画が立つのかどうか、お答えを願いたい。
  269. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話のとおり、昭和四十二年から始めました経済社会発展計画も、それから四十三年度の経済見通しも、これは見通しと実績と違っております。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 その点はまことに遺憾に思っておるのでありますが、経済社会発展計画は、これは昭和四十年度の最も不景なときに数字を基礎として計算しておりましたことが第一の間違いであります。当時は、もちろんその策定していた時点においては、もろもろの材料をすべて集めて、それの基礎によっていろいろ計算を立てておるのでありますが、しかし、その後において、策定をした以後において予見すべからざる事件が起きてきたということ、すなわち、経済が予想以上に発展してきた、それによってなしてきたのであります。したがいまして、今後は、いまそれだけ違ってまいりましたから、昭和四十二年度の計画を補正して、現在までの実勢に基づいてやりたい、それからもちろん各方面の英知を集めてやりたいという考えをしております。それから、根本的には、大体そういう計画など、答申など出ても、これはもう答申だけを見て実行しなかったというのが、いままで私はいろいろそういう欠陥があったと思いますからして、今度はほんとうに権威のあるものをつくって、そしてほんとうにこれを実行してもらうということでありますからして、今度立てます経済社会発展計画は、それによって各省も経済政策を立ててもらうとして、民間もまたそれによって民間の経済活動の指針にしてもらいたい、そういうことで権威のあるものをつくりたいということで、目下それの準備をいたしておる次第であります。
  270. 西田信一

    ○西田信一君 菅野長官に御期待を申し上げます。  次に、貿易と資源の関係でございます。日本の経済発展と資源の関係と申したほうがよろしいと思います。  日本は、非常に貿易が伸びて、自由世界では第二位になった。それからまた、世界の貿易の伸び率に対して倍伸びておる。シェアも世界の五・五%になった。こういうことですね。しかし、これは考えてみますというと、大部分のものは海外から資源を持ってきてやっておって、そうしてこういう貿易をやっているんです、従来から。そこで私は、国土総合開発におきましても、あるいは経済計画におきましても、将来アメリカを抜くような考え方でたいへんけっこうな計画が立っておるけれども、その裏づけというものは、私は資源をどうして確保するかということにあると思うんです。資源政策においては、どうも私は少し手ぬかりがありはせぬかと、こう思うんです。科学技術庁にあった資源局というのも、今度の一局削減で犠牲になっちゃった。科学技術庁に資源局があったって問題にならぬと思いますが、私は、後ほど申し上げるいろいろな問題を含めまして、できるならば、資源政策をしっかり立てる、できるならば、科学技術庁を昇格しても資源省というぐらいのものをつくるというぐらいにいかないと、将来の日本世界的に貿易を拡大し、経済発展をしていくということは不可能じゃないかと思いますので、これはひとつ、どなたがよろしいか、総理からも、また関係大臣からもお考えをお聞きしたい。
  271. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話のとおり、日本の資源というものはほとんど海外から獲得しておりますからして、したがって、日本の産業の発展のためには、非常にこれ重大な問題であります。そこで、いかにして確実に安全に海外の資源を確保するかという問題、これは、今日までにおきましては、たとえば、石油の問題であれば通産省がいろいろ計画を立てておりますし、石油開発公団などはその一つのあらわれであります。農産物につきましては農林省が立てる、あるいは科学的なことについては科学技術庁がやるということをやっておるのでありますが、これを総合調整する必要があると思いますので、私どもが今度立てようとする経済社会発展計画の中には、それを総合して案を立てたい、こう考えておる次第であります。
  272. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、日本の昔からの資源局、これのあり方等を考えてみて、戦前の資源局のあり方、その考え方をそのまま引き継いで、科学技術庁に一局を置いてきた。しかし、いまの資源は、国内開発資源ももちろんございます。たとえば海洋などもこれからの大きな問題ですし、あるいは原子力も、そういう意味で資源開発に大いに役立つ。しかし、やっぱり海外で、いま企画庁長官が申しましたように、資源のあり方が、また確保すべき資源が、よほど昔とは変わっておるんですよ、広い範囲になっておりますから。そこで、いまのように、思い切って資源省をつくったらどうだ、こういうような御提案だと思います。このことはよく考えなきゃならぬことですが、ただ、いま省をつくることは、私は、どちらかというと慎重にやるべきだと。ただ、問題は、どういうような資源をこれから開発していくか、確保していこうか、そういう方向を示すことが何よりも大事なことではないか、かように私は考えております。
  273. 西田信一

    ○西田信一君 私は、ほんとうに資源の確保なくして日本の経済発展も貿易の伸長もないと、こういう意味から、役所をふやすことだけじゃなくて、それは変えてもいいんですが、そういった、どっか総合的なものが必要じゃないかということを御提唱申し上げておるわけです。  そこで、いま、国内の米や石炭が非常に問題になっておる。これだって、私はやっぱり国内の資源問題だと思う。食糧資源とエネルギー資源に対するところの、どちらかといえば、転換の時期が少しおくれた、転換対策のおくれでないか、これが今日の苦境をなしておるのじゃないかと思いますが、これだけに限らず、国内資源につきましても、やっぱりこれを育成するとか転換するということになると、相当長い時期と金がかかります。そういう意味におきまして、やはり早目に手を打たなければならぬと思うのでありますが、そういう点についてどうお考えになるか。それから同時に、いま非常に問題になっておる石炭対策が立ちましたけれども、国内において非常に不安動揺もあるようでありますが、ひとつこの石炭政策について通産大臣からお伺いしたいと思います。国内の資源の問題もあわせまして。
  274. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、国内資源ばかりでなく、海外資源もあわせて調査、探鉱に努力をいたしております。たとえば、国内におきましては二十七の有望地域を指定いたしまして、広域調査、精密調査、企業化調査という三段式のかまえでやっておるのでございますが、何さま、これはお金がかかることでございまして、また危険を伴うものでございますから、政府のほうで思い切った財政的な支援が必要でございます。で、いまの予算は必ずしも十分とは申し上げられませんけれども、去年に比べまして、やや例年よりも割りにましな予算をちょうだいいたしまして、鋭意努力をいたしておるところでございます。  それから、石炭の問題でございますが、仰せのように、たいへんほかのエネルギー資源の進歩が早くて、転換の速度がおくれたということ、仰せのとおりでございます。精一ぱい政府のほうでもやったわけでございますけれども、内外のいろいろな条件がかみ合いませんので、御案内のような危機に立ち至っておることはたいへん残念でございますけれども、これは、国内にありまする資源といたしましては大宗でございまするし、粘結炭、電力用炭につきましては相当安定した需要が見込めまするし、また、相当社会的な問題もいろいろございますので、今度第四次の計画を立てさしていただきまして、御審議を願っておるわけでございます。これにつきましていろいろな議論があるわけでございますけれども、しかし、いま非常に、まあ瀕死の病人でございますから、これをどうにか早いところ仕上げていただきまして、早急に手をつけないと、ますますテンポがおくれやしないかということを心配いたしておりますので、十分御審議を願いたいのでございまするけれども、早急に御承認を願うようにお願いしたいものと、祈るような気持ちでおるわけでございます。
  275. 西田信一

    ○西田信一君 誤解があるといけませんので。私は、石炭の転換政策というのは、何もつぶすことじゃなくて、国内で唯一のエネルギー資源でありますから、りっぱにひとつ石炭産業が成り立つようにやってもらいたいという、政策の点、あれがおそかった、こういう意味でございますから、誤解のないように。  それから、ひとつこの機会に、資源の問題に関連しまして、大陸だなの問題、漁業専管水域の問題、それから領海の問題、これをひとつお聞きしたいのです。もうすでに、世界の各国の大勢がそういう方向にあると思います。もちろん、これはいろいろ事情がございましょうけれども、まあ大陸だな、日本の面積が、海洋に領土を伸ばしていって、約八割もふえるというわけでありますから。これにつきましても、もうすでに外国資本が入ってきて、いろいろ試掘をやっておるとかという問題があります。それからまた、ソ連の船が伊豆の沖、北海道に——ここにも地図がありますが、二十一日も来て、三千トン、四千トンの船がすぐそばに来てやっておるという状態で、たいへん心配してきております。まあ、こういう問題もございます。そこで、大陸だな条約の加入国も相当になっておりますし、それから専管水域も、十二海里にきめておる国も三十七カ国ということでございます。それからまた、領海の問題、これも三海里ということがいいのかどうか、もうその事態は緊急の事態じゃないかと思いますが、こういう点につきまして、それぞれひとつお答えを願いたいことと、海洋開発につきまして、若干予算がふえておりますけれども、とても外国に比べて問題にならない。海洋開発について、もう少し積極的な姿勢がほしいと思いますが、これらについて、それぞれお答えを願いたい。
  276. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず、領海の問題でございますが、これは申し上げるまでもないところでありますけれども、海洋自由といいますか、公海自由の原則と、それからまあ領土主権拡大的な主張ということ、二つの角度から見なければならないことは御案内のとおりでございます。それと、日本の場合には、こちらも漁業につきましては相当世界的にも発展いたしております。それらの関係がございますので、いま御指摘もございましたが、世界的な動向等も十分にらみ合わせて対処してまいりたい。たとえば、一九六〇年に、領海三海里、それから漁業水域三海里という、いわゆる米・カ共同提案というものがございまして、まあその辺のところが、私、私見でございますけれども、一つの線ではないかと考えるわけですが、一九六〇年当時の国際会議でもこれは成立しなかったわけでございます、反対国が相当ございまして。しかし、いま御指摘のような関係もございますので、そういう点については、さらに検討いたしたいと考えております。  それから大陸だな条約につきましては、これは日本は現在入っておりませんけれども、これも考え方がいろいろございますけれども、従来の考え方は、入ることのわがほうとしての利害得失ということからいいまして、入らないでおっても日本の国益は害されないというか、あるいは国益から見て、もうしばらく様子を見ておってもいいのじゃなかろうかというような経過もございますようですが、それらの点をあわせまして検討をいたしたいと思います。ただ、これも申すまでもないところでございますが、一方的にこれを宣言してみましても、関係する国際間の約定といいますか、みんなの合意を得なければ効果はございませんし、それから専管水域の問題などは、日本と韓国との間のごときは、二国間で取りきめができて円満に操業ができておるわけでございます。そういうふうな国際的な問題と、それから二国間の問題と、いろいろ練り合わせまして、西田委員の御趣旨とされておるような考え方を十分体しまして考えてまいりたいと思います。  いま、ちょっと私言い違えましたが、米・カ共同提案というものが出ましたときは、領海六海里、それから漁業水域六海里、合計十二海里説でございます。私「三」と申しましたそうですが、三は間違いで六、「六」でございます。
  277. 木内四郎

    国務大臣(木内四郎君) ただいま西田先生からお話しの海洋開発ということは、きわめて重要な問題だと思うのです。御案内のように、最近、科学技術が急速な進歩をしてきまして、その結果として、資源の豊富な海洋開発に非常に範囲が拡大してきたわけです。そこで、各国におきましても相当関心が高まりまして、先進諸国によりましては、大規模に、しかも総合的に長期の計画を立ててやっております。しからば日本はどうかと申しますと、海洋国でもありまするし、資源も御承知のとおり貧弱なんですが、わが国としては、この海洋開発が非常に重要だと思うのです。そこで、従来どうしていたかと申しますと、いまのお話のようなもの、あるいは鉱物資源は通産省、あるいは農林省というふうに、関係各省において、鉱物資源とか水産資源等、それぞれについて今日まで研究開発をやってまいりました。ところが、最近の海洋開発というのは、各国の例に見ましても、非常に科学が進歩してきた、その先端的の技術を集めまして海洋工学が非常に進歩してきました、この海洋工学を駆使しまして大規模にやっておる。しかも、長期的に総合的にやっておるというのが、いまの各国の姿でございます。  そこで、わが国におきましては、従来の伝統的の技術によりまして、ある程度のことは、いま申しましたように、やっておるのですけれども、遺憾ながら、先進各国に比べまして、ある程度おくれておる。これは認めなければならぬと思います。そこで、わが国におきましても、従来からやっておることに加えて、今度私のほうにできておりまするところの海洋科学技術審議会というのがありますが、ここにおきまして海洋開発の長期的の計画を立てる、こういうことになっておりまして、四月あるいは五月のころまでにはその答申が得られると思います。そこで、その答申を得ましたならば、それに基づきまして、いま申しました関係各省と十分に連絡し協力いたしまして、この海洋開発の計画を強力に進めてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  278. 西田信一

    ○西田信一君 日本の貿易の一番のお得意さんはアメリカでございますが、ところが、貿易の自由化の推進者であるアメリカさんが、ことにニクソンさんが大統領になられましてから特に強くなったようにも感じますが、保護貿易の動きが非常に強くなってきた。アメリカの議会には、繊維、酪農、食肉、鉄鋼、五十七件も制限法案が出ておるそうでございますが、何と申しましても、こういったことが、日本の貿易に影響するだけじゃなくて、世界の貿易経済縮小というようなことにもなりかねないと思うわけであります。これに対しまする政府の対策と考えをお聞きしたいのでありますが、同時に、長期的な考えからいえば、日本もだいぶんたくさんの残存輸入制限品目を持っておりますが、これなどもなるべく早くはずしていくというようなことが、やはり対外的にも必要じゃないかというふうに思います。ことにアメリカなんかでは輸入制限の理由にされるのではないかということを考えますが、こういう点につきまして、ひとつお考えを。
  279. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず、繊維等のアメリカの輸入制限的な動向でございますが、これは二月の六日であったかと思いますけれども、ニクソン大統領の記者会見の中身がたいへん気になるわけでございます。前段は国際自由貿易主義を唱えておられるわけですが、後段のほうになりますと、繊維等の主要輸出国に対して自主規制を要請するというような課題がございますので、さっそく外務省といたしましてもアメリカの政府に要請的な申し入れをいたしております。幸いに、いまの段階では政府としての動きはまだ具体的になっておりませんようでありますけれども、やはり、ただいまもお示しのように、業界等を通じて国会などでは相当の問題になる可能性がある、こういうふうに見られますので、十分注視を怠りませんで、できるならばそういう動きがとまることを望んで、いろいろと要請を今後も続けてまいりたいと思います。  一方、残存輸入制限につきましては、向こうの言い分、あるいは、これはアメリカに限りません、日本と貿易関係のありまする他の国からも相当の要請があって、これらの点につきましては、昨年以来あらためて折衝に応じているわけでありますが、しかし、これにつきましても、品目からいえば百二十数品目はまだ残っているわけですけれども、これは世界一に多く残っているわけでありますが、やはり日本の農業政策あるいは中小企業政策というような点からいいますと、日本の国益として非常に大切なものも多いわけでございますので、この扱い方の姿勢としてはなるべく自由化をしたい、しかし国益は守らなければならない、こういう態度で、各省の協力を得まして対処してまいりたいと思っております。
  280. 西田信一

    ○西田信一君 物価の問題は、同僚高橋委員から専門的にお尋ねがありますから、私はただ一点だけお聞きをしておきたい。  物価指数の中で、政府が直接間接に関与し、調整し得るのは、これは財政金融だと思いますが、専門家の調べによると、卸売り物価には大体四九%くらい、消費者物価には六一%くらいの影響力を持っている、こういうことでありますが、そういう意味から申しますと、この物価安定のかじとりは、政府がやる部分が非常に多いと思うわけでございます。そういう意味におきまして、物価と経済安定を大眼目とする昭和四十四年度の予算、つまり財政並びに金融の運営につきまして基本的にどういうお考えをお持ちか、これは大蔵大臣か経済企画庁長官にお答え願います。
  281. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十四年度は、先ほども社会党のほうから御質問がありまして、非常に見通しがむずかしい年だと思う——経済関係の見通しがむずかしいんです。したがいまして、この見通しのむずかしい環境の中で日本経済をどうやって運営していくか。これはよほどかじとりに気をつけなければならぬ、そういうふうに考えております。そこでねらうところは、やはり成長と物価の安定と、これはともどもに達成するということでなければならぬというふうに考えます。そのためにやっぱり有力なかじは何であるかというと、財政金融でございます。財政の運用にあたりまして機動的にやっていきたい。それから金融のほうも、これも弾力的にやってまいりたい。そういうことに対しまして世界経済に大変動があればなかなか望むことはむずかしいのでございますけれども、多少の変動がありましてもびくともしない、かような体制で運営していきたい、かように考えております。
  282. 西田信一

    ○西田信一君 簡潔にお尋ねしますが、公債減額の問題ですが、来年度はことしに比べて千五百億減額されますね。この間の補正予算で千六百億余り発行予定を押えました。この減額は財政の抑制をはかるということにつながるわけでありますが、しかしながら、この三千億からの公債発行を減額すれば、市中から吸い上げる資金がそれだけ減るわけでありますから、市中銀行の信用創造に回るという可能性がある。したがって場合によっては、それが景気刺激的に作用することも考えられるんではないかというふうに思うわけでありまして、したがって国債を減した以上は、市中銀行の信用の創造をどういうふうに吸収するかということがなくては意味をなさないと思うのでありますが、これに対する大蔵大臣の御見解をお伺いしたい。
  283. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) さような説をなす人があるんでありますが、公債の発行の額が減りますと、その説のように市中銀行の手元はそれだけ楽になる。そこでその楽になった額が貸し出しに回っていくのじゃあるまいか、こういうようなことなんでございますが、市中銀行に対しましては日本銀行が常にポジション指導、つまり全体の資金状態を見て、売りオペレーション、買いオペレーションをやっているわけであります。日本銀行の通貨の供給、この総量は国債の発行が減って市中銀行が楽になろうとも変化はないんです。そういうふうに金融政策をやっていくんです。ですから国債が減額されましても、市中銀行の景気を刺激する要因にはならない。これははっきりそういうふうに申し上げることができると思います。逆に、これが国債の減額に回らないで歳出の増加に回ったということになれば、これはかなり刺激的な行き方になる、さように見ております。
  284. 西田信一

    ○西田信一君 それは理解いたしますが、金融制度の再編成というのは、去年からですか、小さい金融機関の合併促進ということが始まりましたね。そこで現在、私は、それから上の銀行の再編成時代に入っておる、政府もそれに対していろいろ考えておられると思います。競争原理の導入あるいは合併、こういったことも考えられておる。要するに、いままでの金融機関に対する政府の過保護を少しはずすといいますか、金融の自由化をはかると申しますか、こういったような前提で考えられておると思うのでございますが、そうなりますと、預金吸収面も自由になり、弾力的になるということになると思いますが、金融再編成の実施段階としてどういうふうに大蔵大臣は考えておられるのか、そのお考えをお聞きいたしたいのでありますし、もう一つは、日本の企業の資金調達ですね、これはまあ間接金融にたよっておるのが大部分でありますけれども、資本市場、公社債市場というものがまず不十分な現段階では、どうしても間接金融にたよらざるを得ないということだと思いますが、これとの関連におきまして、公社債に対しますところのいろいろ対策を考えておられるようでありますが、あわせてひとつお答えを願いたい。
  285. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昨年、国会におきましていわゆる金融二法を成立させていただいたんです。その結果、中小金融機関を含めまして合併が非常に容易になり、推進される環境ができたわけであります。この二つの法案の期するところに従いまして、これからも金融行政を進めていきたい、かように考えますが、根本は、やはり世界はもう自由化の態勢でございます。まあ世界に激しいいわゆる貿易競争が展開されるその中にありまして、わが国の産業も近代化、合理化を急いでおるわけです。金融機関がただひとり、のほほんとしておっていいかというと、そうじゃない。やっぱり金融機関、産業、これはもう車の両輪であります。そういう意味において金融機関の全体の近代化、合理化、そうして効率化をしていかなければならぬ。その一つの行き方が合併というような方向にもあらわれてきておるわけでありまするが、同時に、いま西田さんが御指摘の金融機関の中にも、これはまあ大蔵省が監督行政を行なっておる——いま過保護だというようなお話もありまするが、まあ少し風を入れる、つまり競争原理を導入する、あるいは店舗行政におきまして、あるいは金利の面におきまして、あるいは配当の面におきまして、あらゆる角度で自由競争原理を導入するということを考える、そういう時期にきているのじゃあるまいか、さように考えております。しかし、これは急に実行するわけにもいきませんので、逐次そういう気持ちで環境づくりをまずやっていきたい、かように考えておるのであります。  直接金融を重視すべしというお話でございますが、これは全く同感であります。いままでは何といっても間接金融、これでやってきた日本でございまするが、もう証券市場の育成、そういうことをほんとうに真剣に考えなきゃならぬ時期にきておると思います。その方向でやっておる、また、やっていきたいと、かように存じておる次第であります。
  286. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 西田君の質疑は途中ですが、残余の質疑は明日行なうことといたしまして、本日はこの程度にとどめ、明日は午後一時開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会      —————・—————