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衆議院議員(
久保三郎君) お尋ねは三点のようであります。
まず第一に、
目的についてお尋ねがありました。特に前文並びに第一条に
関係して、本
基本法の精神、これは
人命尊重、それを中心に考えておるのだろうが、そのとおりであるかどうか、というお話であります。全くそのとおりでございまして、
基本法についてのものの考え方でひとつ申し上げたいと思うのでありますが、これは
基本法でありますから、この
基本法だけでは、実際の
政策というか、そういうものは出てこぬはずであります。ただ問題は、
政府自身のいわゆる取り組み方をひとつ宣言するというか、これが
一つであると思います。それからもう
一つは、大きくわれわれが
提案いたしておりますとおり、
政策の目標をひとつぴたっときめていくというその目標について、具体的に実効あらしめる
体制を整える、この三段なり、四段がまえが
基本法の中に盛られなければ、
基本法の値打ちはないのではなかろうか、というふうに考えております。
そこで、前へ戻りますが、まさに、いま強調してもし過ぎないのは
人命尊重の問題であり、人間性回復の問題だと思うのであります。そういう意味で、しかも、それは一般的ではなくて、いま
交通事故と人間の
関係は、御承知のように、直接的に
人命、
身体、
財産、こういうふうに直接的なかかわり合いが出てまいりましたので、特に、その旨をはっきり
規定することが、われわれ自身の目標を内外に示すことだと思うのであります。ところが、
政府案については、すでに御案内のとおり、
責任のあり個所は、国、
地方公共団体のほかに、いろいろございます。そういうものを
規定しました。
そうしますと、国あるいは
地方公共団体の
責任というのが何か、あとからこれもお答え申し上げますが、歩行者の
責任と同列に薄められる危険性があるわけであります。いわば、ことばをかえて言えば、総ざんげのような形で出てくる。これであっては、
政策の
実施も、
責任のあり個所も明確にならないのではなかろうかというふうに、てまえどもは考えておるわけであります。特に前文は、
政府案じゃありませんから、第一条の
目的は、少なくとも
国民の
生命、
身体、
財産、それを
交通事故から守るのだという宣言が私は必要だと思うのでありますが、
政府案にはない。われわれのほうでは、御承知のように、第一条には「
国民の
生命、
身体及び
財産を
交通による危害から保護し、」云々、こういうふうに考えて書いているわけであります。先ほど
総理からの御答弁では、なるほどお答えの中では、
人命尊重を強調されておりますが、そうだとするならば、何がゆえに、この
法律案には書かなかったのかというふうにも考える次第であります。
いずれにいたしましても、われわれは、
人命を
尊重するという立場を貫き通していきたいというのが
基本法提案の大きな柱であります。
次に、歩行者の
責任というのが
政府案では書いてあるが、衆法においては、どうなるのかということであります。これは歩行者の
責任ばかりではありませんで、私どもの
提案にはないのが、たくさん
政府案には
責任が所在しております。たとえば
車両等の
使用者の
責任、
車両の
運転者等の
責任、それから歩行者の
責任、変わったところでは、住民の
責任というのがございます。私どものほうには、いわゆる国及び
地方公共団体の
責任と運輸事業者の
責任を明確にしただけであります。歩行者の
責任について類似するものということでありますが、あれば、一般
国民の協力であります。これは第六条において、「
国民は、
交通の安全に関する国及び
地方公共団体の
施策に協力しなければならない。」ということで、いわゆる訓示
規定をここに設けました。これは、
提案の
説明でも申し上げたように、まさに総力戦でありますから、
国民もこれに協力していただくということは当然かと思うのであります。ただし、歩行者の
責務でありますが、これは、ここで
政府案がいうものは、おそらくこういうものの担保は、
道路交通法の中で担保されるべき筋合いのものである。あるいはそれぞれ航空法、あるいは海上運送法、あるいは索道法、あるいは地方
鉄道法、地方軌道法、そういうもので、それぞれの
規定がありますので、ことさらに、この歩行者の
責務をこの中に入れる必要はない。むしろこれによって、何か
責任のあり個所がぼけてきはしないかというふうに考えるわけであります。それから、先ほど申し上げたように、
運転者の
責務とか、そういうものは、すべてそれぞれの関連
法律の中で
責任を担保してありますし、また、担保をきつくするなら、そこできつくすることであると考えているわけであります。
最後に、いわゆる
政策実行あるいは立案の
体制についてであります。
御指摘があったように、
交通運輸ばかりでなくて、すべてそうなのでありますが、特に現在当面する
交通安全に局限いたしましても、
交通安全を担当するそれぞれの省庁はたくさんございます。運輸省、警察庁、
建設省、文部省、厚生省そのほかにもございます。そういうふうなことで、特に、仄聞するところによりますというと、
政府案の
交通安全対策基本法案をつくる際に、各省庁間においていわゆる意見の調整ができないままに
提案が長引いたという話を聞いております。
法案の中にもそういうのが散見しております。そのことは別として、いずれにしても、いま最も大事なのは、この安全
施策を着実に一体として
実行するような
体制を築くことが何よりも大事だと思うのであります。そのためには、ただいま申し上げたように、各
行政機関をひとつ一元化するということだと思う。しかし、各省庁の権限を全部一元化することも、これまた現実的にはなかなか不可能に近いこともあります。そこで、少なくとも
交通安全に対してのみは、この一元化をしていこうということで、先ほど御
説明申し上げましたように、国家
行政組織法第三条によるところの
行政機関として
交通安全対策委員会を
設置しよう。で、
交通安全対策委員会では、これは先ほど申し上げましたように、別途、
交通安全対策委員会設置法案を
提案いたしておるところでありますが、そこでは特に、
交通の安全に関する
基本的な
計画を
策定する、
交通の安全に関する
基本的な
計画の
実施を
推進する、
交通の安全に関して
関係各
行政機関が講ずる
施策の総合調整を行なうこと、まあこういうことを特別につかさどらせようというので、
総理府の外局としてこれは設ける。さらにこれだけじゃなくて、民間専門家の意見も聴取しようということでありますので、いわゆる審議会を
総理府の附属
機関として設けることが、われわれの
提案の骨子であります。
政府案においては、御案内のとおり、
総理府の附属
機関として、
交通安全対策会議を設けようと。なるほど
総理大臣が会長でございます。重みがあるようでありますが、いままでの経験からすれば、御承知のように、これは一回か二回の
国民会議で経験したようなかっこうになりはしないか。あとの具体的な、先ほど御質問にあったように緊急の場合の
対策、これは各省庁ばらばらであります。そうなった場合には、
提案説明でも申し上げたように、いわゆる
機動性を必要とするこの種の問題に対しての対応する
体制が、いまと同じであってはならないということであります。そういう意味で、われわれのほうは特別な
対策を立てたわけであります。
以上お答え申し上げます。(
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