○村田秀三君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
行政機関の職員の定員に関する
法律案に対し、反対の討論を行なうものであります。(
拍手)
まず問題なのは、本
法案の示す性格とその本質が、佐藤内閣の憲法無視、
国民不在の政治姿勢を象徴しているとみなされることであります。
そもそも、民主主義
制度におきましては、単に政治のみならず、行政においてもまた、常に、人民のための人民の手による行政が行なわれなければなりません。その意味において、
政府は、行政の
現状を
国民の前に明らかにするとともに、その質と量に対応する適正な人員配置を行ない、かつ、
国民の行政に寄せる要望を可能な限りすみやかに実現する義務を有するのであります。これが憲法の精神であり、国家行政
組織法制定の
原則であろうかと考えます。しかも、この
原則に従って、行政紬織と定員とは表裏の関係にあり、それゆえにこそ、行政の機構、
組織を
規定する各省設置法の中の重要な部分として定員を法定したものと理解できるのであります。しかるに、今回、この
法案によって、国家行政
組織法第十九条の定員に関する
規定を削除し、各省設置法の定員
規定を排除して、一片の政令によって自由自在に定員を移動せしめ得る道を講じようとすることは、
国会の
審議権を無視し、
国民の行政に対する意思表明の道をはばみ、行政が内閣の恣意のままに行なわれる結果を招くものであり、行政の民主化に逆行する
措置であると言わねばなりません。このことは、官僚のばっこを許し、専横政治への道を開くものであり、憲法の精神を踏みにじるものとして、断じて許すことのできないところであります。
また、この
法案が提出されるに至った背景は、佐藤内閣の主たる政策である行政改革の推進がその根拠になっておるようであります。しかしながら、その経緯を見るに、
国民が望む真の行政改革を行なわんとする意欲を見受けることはできないのであります。すなわち、
昭和三十九年、臨時行政
調査会は、社会の進展に伴って必然的な行政改革の課題に対して一定の
答申を行なったのでありますが、佐藤内閣は、発足以来、口で行政改革を唱えながら、緊急を要するこの課題に対して抜本的な
施策を講じようとはしなかったのであります。
しかるところ、
昭和四十二年十二月、財政
制度審議会が、財政硬直化打開のための諸方策を打ち出すや、直ちに、行政機構の簡素能率化をはかると称して、一省庁一局削減の方針を明らかにし、かつ、定員の三カ年五%削減の計画作成を指示したのでありました。その結果を見るに、一省庁一局削減に至っては、なるほど局という名称は十八局減少し、課、室二つの減と、事務局次長一名の減員はあったものの、これに伴って、むしろ局中の部五、官房中の部四、部と官房それぞれ一の新設となり、総括整理職及び分掌職が十七名も増員される結果となりました。その上、
組織系統は前よりも複雑になったと見られる向きもあって、
政府のいう簡素能率化の事実は見受けられないのであります。
政府は、この
措置を行政改革の起爆力とすると言っておりましたが、起爆どころか不発に終わったと見ることができるのであります。脚さらに、問題なのは、五%定員削減計画でありますが、その
内容を見まするに、さきの一省庁一局削減と同様、削減をしなければならない理論的背景はないにひとしいと言わざるを得ません。あるとすれば、ただ許認可、報告事務の整理がわずかながら進められているにすぎないのであります。申すまでもなく、本来定員算定の基礎は、行政の末端の単位における仕事の質と量を前提に積み上げられなければならないのは当然であります。しかる後、行政の規模に応じ職を置き、恒常的に必要な定員を算定配置することは、行政の初歩的理論と言わねばなりません。しかして、複雑多岐にわたる今日の行政の
実情と機構の
実態の上に立って行政改革を進めんとするならば、いかに困難であろうともその事実を明らかにし、どの部分に行政需要の消長が存在し、どのような変革を加えるべきかについて考究するなど、行政の
内容と規模、人事管理のあり方、定員算定の基準などについて抜本的な
検討が加えられ、
国民と、そしてまた、現在その職にある公務員の理解と納得の上に行なわれるべきものであります。
審議を通じ、
政府はこの立論の正当性を認めました。佐藤
総理も、また荒木行政管理庁長官も、その作業の手順について木末転倒であることを肯定いたしたのであります。このように行政改革と新定員配置は不可分のものであることが立証された現在、「社会
経済の進展に相応する行政需要にマッチして定員配置を行なうために総定員法が必要である」とする
政府の説明は、抜本的な、しかも民主的な行政改革案の前提なくしては成り立たないのであります。
では一体、何ゆえこの理論も根拠もない総定員法の制定を強行しようとするのでありましょうか。思うに、その真のねらいは、一省一局削減に見られるごとく、行政改革に期待する素朴な
国民の目をそらし、かつは財政硬直化打開への見せかけの姿勢を示しながら、実は五%定員削減計画の中で
政府の隠された意図、すなわち治安、徴税など、
国民を支配管理する体制の一そうの
強化をはかろうとするものであると看破せざるを得ないのであります。すなわち、この五%削減計画をしさいに
検討するに、具体的な行政改革の構想もないままに、各省庁別の削減率は、高い省で、行管、建設、農林など八%台を占め、低いところは、
総理府の二・三七%、法務、国家公安
委員会関係、大蔵などの三%台と、いずれも企画、管理部門の削減率は低いのでありまして、警察官五千名の増員
措置とあわせ考え、
政府の意図するところを明らかにしているのであります。
また、この計画は、「適正定員の配置」、「行政サービスの
向上」という
政府の宣伝文句とは逆に、すでに予想されたごとく、弱い、しかも
国民からあまり目立たない行政部門にしわ寄せされてきております。大阪管区気象台における気象観測の回数削減は、もちろん観測課員の減少によるものでありますが、関西
地方全域、とりわけ港湾関係の
地域に大きな不安を与えております。また、ある三種飛行場の航空管制官の定数引き揚げによって、その飛行場を利用する
人々に動揺を与えている事実があります。いずれも根拠のない五%定員削減を押しつけた結果にほかならないのであります。このような人命軽視の定員配置は許すことができません。
国民は必要な業務をカットしてまで行政改革を望んではおらないのであります。この事例は、もちろん定員が法定されている今日の問題であります。定員が法定され、その配置が義務づけられているにもかかわらず、単なる行政
措置によって、定員の保留、補充及びその配置を思うままに進めてきた
政府は、本
法案の制定によって強権的に政令を発動し、ますます恣意のままに
国民不在の行政を進めるであろうことは想像にかたくないのであります。
特に問題なのは、防衛庁の職員(非自衛官)を防衛庁設置法第四条に定められる自衛隊の職員定数より除外し、政令によって行政的に
増加せしめることができることであります。現在の防衛本庁の非自衛官職員は、防衛庁設置法及び自衛隊法によって、その任務と服務は自衛官と全く同一に
規定をされております。でありますから、防衛庁設置法に自衛官のみの定員を法定し、その定数が表面上今日よりも減少したとしても、実質は
政府の恣意のまま大幅に
増加できることとなり、政令による防衛力の増強が遺憾なく発揮できる道を講じたことは、憲法違反の上乗せをするものであり、絶対容認できないのであります。もしかりに、
政府の説明のごとく、全く一般公務員と同一であるとするならば、その職員組合の結成を許し、団結権を保証すべきであります。
次に問題なのは、本
法案の制定によって、職員の身分が著しく不安定になり、
生活権が脅かされるという問題であります。すでに、いま進められている根拠のない五%定員削減計画が、職員及びその家族に対し大きな不安と動揺を与えております。本
法案審議の中で、
総理及び荒木行政管理庁長官は、出血整理は考えていない、また本人の意に反する不当な強制配転はあってはならない旨、再三言明をされました。しかしながら、現在の公務員は、憲法によって
労働者に保障されている労働基本権が著しく制約されており、みずからの
労働条件について交渉する権限も与えられておらないのであります。しかも、現在の国家公務員法では、その第七十八条において、「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」、本人の意に反して降任及び免職ができる、と
規定されているのでありまして、いま進めようとしている
政府の定員管理方式は、この機会を今日まで以上につくり出される結果となることによって、職員の不安の増大もまた理解できるのであります。
政府はすみやかにこれら不安を解消するために、職員団体と誠意ある協議を進め、真に職員の納得の上に計画が進行できるような体制を確立することを強く望むものであります。
以上申し述べました点を総合して
判断いたしまするに、抜本的な行政改革は総定員法の成立を待って行なうとの
政府の答弁は何らの保障がないのみか、総定員法の成立はただに行政権の拡大を意味し、官僚のばっこを許し、一党独裁専横政治への道を開くものであると断言せざるを得ないのであります。よって、わが党は、本
法案に断固反対をし、その撤回を強く求めるものであります。
以上反対討論を終わります。(
拍手)
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