○三木忠雄君 私は公明党を代表して、
国有鉄道運賃法の一部を
改正する
法律案外一案に対し、
反対の
意見を表明するものであります。
討論に入る前に、去る四月二十四日の参議院
運輸委員会における
委員長及び
自民党理事による
質疑の強行打ち切りについて、議会民主主義を守るためにも一言触れておかなければならないと思うのであります。
わが党は、
国鉄二
法案が
運輸委員会に付託された当初より、重要
法案として特に
慎重審議を主張し、
委員長並びに与野党間の約束として、公党の信義を重んずる立場を貫き通してきたのであります。しかるに、
衆議院の
運輸委員会理事会及び四党国対
委員長会談の申し合わせを一方的に踏みにじり、
委員会において
審議も十分に尽くさないまま
強行採決を行ない、続いて参議院においても、またもやこのような暴挙を繰り返し、
国民の心に政治不信の種をまた一つ植えつけてしまったことは、まことに遺憾にたえないのであります。与党の理不尽な態度に深い反省を求めるとともに、わが党は今後も議会民主主義を守り、国会の正常化と話し合いを
期待する
国民大衆の負託にこたえていかんとするものであります。
さて、まず第一に、
国鉄運賃法の
改定は、佐藤
内閣の
物価政策の矛盾をさらけ出し、いよいよ
内閣不信を招くことは必至であります。
運賃そのものの上昇率もきわめて高く、平均一五%とはいうものの、これはあくまでも基本
運賃の上昇率にすぎず、たとえば、大衆、特に
都市生活者が最も多く利用する二十円区間は三十円となり、五〇%もの
値上げであります。三十円区間は四十円となり、これまた三三%という大幅の
値上げになるのであります。さらに定期代においては、昨年四月の
改定以前から平均七〇%の
値上げとなり、中にはここ数年足らずのうちに三倍から四倍近い
値上げとなる区間もでき、
通勤通学者や
都市生活者は、実質的に五〇%から六〇%もの
値上げを押しつけられ、不当に生活を圧迫されることになるのであります。また、総合原価主義のたてまえからはずされており、いわば独立した路線を走り、
国鉄のドル箱とまでいわれる東海道新
幹線のような大幅黒字線においても、
運賃値上げをきめており、このような無謀な
運賃改定は断じて認めるわけにはいかないのであります。
次に、一般
物価への
影響についても深く憂慮するものであります。
国鉄運賃は公共
料金の王様といわれ、
値上げが直接、間接に一般
物価に波及していくことは火を見るよりも明らかであります。バス、タクシー、地下鉄等は便乗
値上げをねらって、その動きはきわめて活発な上、一昨年十月から鉄道部門の
経営悪化を
理由に、大幅な
値上げを申請している
私鉄大手十四社には、
政府みずからの手によって、
値上げへの有力な口実を与えることになるのであります。すなわち、今回の
値上げは、並行区間の従来の
運賃格差をさらに大きくし、たとえば新宿—八王子間の
定期運賃で比較するならば、
国鉄は一カ月四千二百八十円と、実に千八百四十円も高くつくのであります。また、品川−横浜間は、
国鉄が一カ月二千六百四十円に対して、京浜急行は一カ月千六百三十円と、千十円も格差が生じてくるのであります。
運輸委員会においても、並行区間の
料金問題についての
政府の態度は、当然のことながら歯切れも悪く、
経済企画庁長官は、便乗
値上げを認めないとしながらも、運輸省は、すでに
値上げを認めざるを得ないとの考えに立っておるともいわれており、運輸大臣は、「
国鉄と
私鉄料金の格差についてあくまでもバランスというものが必要ではないかという御
意見は、私もそのとおりであると思う」とか、あるいはまた「
物価に
影響しない
程度で別途検討する」などと
発言をしており、これによっても明らかなように、
私鉄運賃値上げ抑制は不可能であるということを示す以外の何ものでもありません。
このように、自由
経済の基本原則と
政策上のジレンマにおちいった
政府は、すみやかに総退陣すべきことを主張するものであります。こうした公通
料金の一斉
値上げは、消費者
物価を〇・一%上昇させ、これに
国鉄運賃の
値上げ分を合算すると、〇・三%の
物価上昇になると予想されるのであります。さらに、
物価全体の輸送費の
値上げへとはね返り、生鮮食料品を中心に、ほとんどすべての
物価を引き上げることになるのであります。このような無謀な
運賃改定は、断じて認めるわけにはいかないのであります。
物価安定という
国民の切なる願いは、常に佐藤
内閣の手によってつぶされており、今回の
値上げは、残念ながらまことに無謀な
政策と言わざるを得ないのであります。
次に、
国鉄財政とその
経営について申し上げるならば、
政府の
国鉄を含む総合輸送
政策の欠除が、今日の
国鉄の大幅な
赤字の根本
原因となっているのであります。
すなわち、戦前はむろん、戦後しばらくの間、
国鉄は中長距離の輸送と大
都市の
通勤通学輸送を独占した時代がありましたが、最近のモータリゼーションの発達は、鉄道輸送から自動車輸送へと大きく輸送革命が進行し、特に
貨物輸送の分野における比率が大きく変化し、いままでの鉄道輸送の地位は次第に失なわれ、その結果、今日の
国鉄は、
旅客輸送が全体の四二%のシェアを保っているのに対し、
貨物輸送は全体のやっと二四%を確保するにとどまっているのであります。この
国鉄の輸送量の変転は、
政府の総合輸送
政策の欠除と、過去における
近代化と合理化への投資不足がもたらしたものであり、これが今日の
国鉄財政の悪化となってあらわれたのであります。
この根本対策としては、何よりもまず、
輸送機関の各分野での基盤を明らかにした総合
政策を確立し、その中における
国鉄の地位とその特性を十分に生かした中長距離輸送、高速
幹線輸送、大
都市通勤輸送を主体とする全国的輸送網を確立することであります。しかるに
政府は、この総合交通輸送
政策の確立なく、ただ
運賃の
値上げのみをもって
国鉄の
再建だけをもくろもうとすることは、みずからの無策無能を証明するものであり、
国民大衆にその
責任を転嫁し、何ら抜本的
改正にならないのであります。たとえば
政府は、今日まで
国鉄に対して
独立採算制をたてまえにさせ、かつ受益者
負担の原則を振りかざし、何ら
財政面での積極的な援助を講じなかったのであります。ヨーロッパ諸国の
国鉄に対する
財政援助額は、日本の二十倍から六十倍以上に達しているのであります。このように
国鉄財政が悪化し、
独立採算制がその限界を越えた
原因は、
国鉄自身の放漫
経営はもとより、
政府の総合交通輸送
政策の欠除によって生じたことは明らかであります。しかるに
政府並びに
国鉄の
財政政策に対し、わが党は終始一貫、
国鉄四十七万職員の日夜の懸命なる
国民へのサービス確保の努力を多としながらも、
国鉄経営のあり方について、残念ながら幾つかの問題点を指摘せざるを得ないのであります。たとえば、
昭和三十六年を初年度とする第二次五カ年計画は、
内容的にも、計画の
見通しについてもきわめて無理があったため、中途挫折を余儀なくされ、その結果、
昭和三十九年、それまで続いてきた黒字がついに
赤字に転落し、以降、第三次七カ年計画においても多額の設備投資を続け、今日では一兆数千億をこえる負債を背負い、
民間企業であるならばとっくに破産しているはずであります。そのほか、
国鉄の用地売買に見られる放漫でずさんな処分や、民衆駅の用地貸し付け契約の不当に安い貸し付け
条件と駅ビル等の民間団体への高級幹部の天下り、さらに電力会社と
国鉄が相互に電力を供給するときに見られる不平等な電力
料金の処理等、われわれ
国民にはどうしても納得できない点が数多くあるのであります。(
拍手)
以上、
国鉄財政と
政府の姿勢について幾つかの問題点に触れましたが、最後に、あの殺人的なラッシュ対策の確立や、さらに
国鉄の資産の再評価等々、
国鉄の一そうの
企業努力を望むとともに、わが党がかねてより主張するように、
国鉄に対する
政府の大幅な
財政援助によって、
国民への過大なる
負担をなくし、
国鉄の
再建をはかるよう強く
政府に望み、私の
反対の
討論を終わります。(
拍手)
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