○亀田得治君 私は、
日本社会党を代表して、ただいまの
有田国務大臣の
報告に関連し、
政府の
所信を伺いたいと存じます。
昨日の米国国防総省の発表によりますと、米国は、再開された北朝鮮近海の偵察飛行護衛のために、航空母艦四隻を主力とし、合計二十三隻から成る第七十一機動艦隊を新たに編成し、
日本海に展開させているのであります。ベトナム戦争で大国の力の限界を知ったはずの米国が、相変わらず大国意識をもって、力で
相手を威圧しようとしているのであります。私たちは、現在、米国と北朝鮮との間に起きておる事件の平和的解決を心から望んでおるのであります。しかるに、事件を平和的に解決するための努力をしないで、このような大機動艦隊を新しく編成するようなやり方に対し、激しいいきどおりを感ずるものであります。(
拍手)
以上のような
立場から、私は以下、
政府の考えを具体的にお聞きいたします。
最初に、
総理に対し、八つの点につきお尋ねをいたします。
その第一点は、米国と北朝鮮との板門店会談を再開し、事実を究明し、その基礎の上に立って事件の解決をはかるように、
総理は米国に要請すべきであると思いますが、どのようにお考えになられますでしょうか。本件では、撃墜されたEC121機がどのような行動をしていたかということが重大な争点になっております。北朝鮮側は、米機が領空を侵したと
主張していますが、米国側は、北朝鮮の
沿岸から六十キロ以内に近づいたことはないと言っております。米国側はその論拠として、事件発生直後には、EC121機に対して北朝鮮の海岸線九十キロ以内に近寄るなと命令してあることを
主張していたのでありますが、しかし、その飛行機が命令どおりに行動していたかどうかは不明であります。その後、米国はレーダーによる確認など、若干の物的証拠を引用しておるのでありますが、しかし、それらもきわめて抽象的説明にすぎず、その程度の挙証によってEC121機が当時いかなる時点においても北朝鮮の領空を侵したことはないと断定できる根拠にはならないと思われるのであります。米国上院外交委員長フルブライト氏も、事件の翌四月十六日に、「私は自分自身が調査に当たったトンキン湾事件以来、国防総省の発表の一部にきわめて懐疑的になっている」と述べ、今回の事件についても疑念を表明しておるのであります。
このように双方の
主張が対立しているときには、互いに
相手方の
主張を聞き、疑問点についてただし合うことが重要であり、それが真相発見のための最も近道であります。現在、米国と北朝鮮とが接触できるのは板門店しかないのでありますが、その板門店会談が去る四月十八日に開かれました。しかし、残念ながらこの会談は、双方の議論を尽くす場とはならず、米側代表ナップ少将は一方的に退場しておるのであります。このことはあらゆるマスコミが
指摘したところであり、当時の写真を見ても、ナップ少将が立ち上がり、他の代表が着席している中を退場していく姿が写っているのであります。このような米国側の態度は、事件の平和的解決という
立場からはなはだ遺憾と言わなければなりません。しかし、北鮮側は引き続き板門店会談を開きたい
希望のようであります。あの困難な朝鮮戦争の休戦、昨年のプエブロ号事件も、結局板門店で結末がついたのであります。
総理がもし今回の事件について、真に平和的解決を望んでおるのであれば、米国に対して、威圧的な護衛偵察を中止し、板門店会談を再開するよう注意を喚起すべきであると思いますが、
総理の所見をお伺いいたします。(
拍手)
第二に、過剰な偵察行動を抑制するよう米国に要請すべきであると思います。
元来、偵察行動、すなわち
相手方の内部事情、秘密を探るスパイ行為の評価については、人によりまちまちでありますが、このような行動を積極的によいこととして評価している人は少ないのであります。換言すれば、大手を振って野方図にやれることではありません。やむを得ない限度にとどめるべきものであります。今回のEC121機の偵察行為が法的に合法であるかどうかは別として、
日本国民の多くは、このような行動に対し苦々しく思っておるのであります。ところが、ニクソン大統領は四月十八日、「今回のような偵察行動は過去二十年にわたって行なってきており、ことしになってからもすでに百九十回も行なっている」旨、言明したのであります。われわれは、その回数があまりにも多いことに再度驚いた次第であります。かりに米国が、その海岸近くを毎日
平均二回も連続して偵察されたとしたら、はたしてじっとしておられるでしょうか。米軍が北朝鮮海岸で続けておる偵察行動は過剰であり、必要以上に
相手方を刺激しておるのであり、このことが今回の事件の
最大の遠因であると思うのであります。(
拍手)
総理は、こういう
立場から、米国に対して過剰偵察を控えるよう要請すべきであると思いますが、その
所信を伺います。
第三に、護衛偵察は当然事前協議の対象にすべきではないかという点であります。
すなわち、護衛機は、
相手方の出方によって戦闘に入る蓋然性がきわめて強いのであります。
相手方より攻撃をされれば直ちにそのまま戦う用意をして出て行くのでありますから、当然事前協議の対象に入れて考えるべきであります。もちろん米国は、今回の護衛機については、
日本の基地より発進させることはしない旨述べておるようでありますが、その場合といえども、偵察機と護衛機とは一体のものであり、
相手方からは一つのものとして受け取られるのでありまして、交換公文の精神からすれば、同様、事前協議の対象とすべきであると思うのであります。しかるに、
政府の
見解によれば、護衛機が
日本の基地より発進しない場合はもちろん、たとえそれが
日本の基地より発進する場合でも事前協議の対象にならないと解釈しているようでありますが、米国側が
主張するならまだしも、
日本政府が進んでそのような解釈をすることは、
政府みずから事前協議条項を空文化するものであり、また、
日本基地からの護衛機の発進を誘発するのでありまして、
国民大衆に大きな不安を与えておるのであります。
さらに、
政府は、昨日統一
見解を発表し、現在
日本海で行動しておる第七十一機動艦隊が、今後
日本の港に入港することがあっても、それが一時的なものであれば、事前協議の対象にならないとしておるのであります。しかし、艦隊の全部または一部が反復入港してくるような場合には、結局、第七十一艦隊と
日本の港とは不可分の
関係に立つのでありまして、そのような場合には、当然事前協議の対象にしなければ、交換公文の精神に反するのであります。昨日の
政府の統一
見解は、このような後者の場合をも含めて事前協議の対象からはずしているのかどうか、明確にされたい。私は、この際、
政府が事前協議についてルーズに考え過ぎておる従来の態度を反省し、
国民が安心するように、その解釈、運用面について再検討を加えるべきであると思うのでありますが、
総理の所見を伺います。
四月十八日、ニクソン大統領は、「もし必要ならば
日本あるいは他の同盟国と協議する」旨、言明しております。私が
指摘した以上三つの問題、すなわち、板門店会談の再開、過剰偵察の抑制、事前協議条項の解釈などについて、至急日米会談を開くよう努力することは、平和的解決を望む
日本国民の
希望にこたえるゆえんであると思うのでありますが、
総理にその意思がおありかどうか、お伺いをいたします。
次に、
政府は今回の米国の大がかりな護衛出動を一時的なものと理解しているのか。また護衛出動をしても、米軍が北朝鮮の攻撃を受けることはないとの見通しを持っておるのか。この二点について、
政府は米国側よりいかなる説明を受け、
政府自身としてはどのように見ておるか、明らかにしていただきたいと思います。
総理に対する
最後の
質問として、
日本と北朝鮮の
関係について一言触れておきたいと存じます。
すなわち、今回のような事件が起こると、
日本の現在の国際的地位からいたしまして、どうしても北朝鮮に対し冷たくなる
傾向が生まれることをおそれるものであります。米国と北朝鮮との紛糾にもかかわらず、
日本人と朝鮮人との歴史的
関係に深く配慮し、両国の
関係をさらに悪くしないように努力すべきだと思います。特に、人道的問題である在日朝鮮人の帰国問題や里帰り問題にまで波及させてはならないと思うのでありますが、
総理の
所信をお伺いいたします。
次に、防衛庁長官に三点につきお尋ねいたします。
すなわち、第一、EC121偵察機は厚木基地に何機おるのか。
第二、厚木基地以外の基地におる偵察機の種類、機数及びその基地名はどうなっておるか。
第三、さらに昨日の報道によると、情報収集艦バナー号は佐世保港を出て北朝鮮海域に向かったというが、このような軍艦が何隻
日本海で活動しているか、明らかにされたい。
最後に、
運輸大臣にお伺いいたしますが、今回の米国の大機動艦隊の出動によって
日本船舶の航行の安全が保証されるよういかなる
措置をとっておるのか。また、実際に妨害された場合にどのように処置する
方針であるか、明らかにされたいと思うのであります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕