○藤原房雄君 私は、公明党を代表して、ただいま
報告のありました
昭和四十三年度
農業の
動向に関する
年次報告及び
昭和四十四年度において講じようとする
農業施策に対して、
総理並びに
関係大臣に若干の
質問をするものであります。
政府は、
昭和三十六年
農業基本法の制定により、
農業構造改善事業をはじめ、
農業経営規模の増大、
機械化や
農地保有の
合理化、
農業経営の
近代化等をうたってきたのであります。しかし、現実には、
政府の行なった
施策は、ことごとく
農民を失望させる以外の何ものでもなかったのであります。
たとえば、予算措置
一つを見ても、
農業基本法、
農政の柱である
農業構造改善事業予算が全
農林予算の三、四%であり、これでは
近代化にはほど遠いものと言わざるを得ません。さらに、
わが国の
農林予算は国家予算の総ワクの中のわずか一〇%、財政投融資では五・五%程度であり、諸外国に比して非常に少ないのであります。本気で
近代化を実現しようとするならば、
農林予算の大幅な増額をはかるべきであります。この少ない
農業投資を見ても、何を基準にして、どのように判断しておられるのか、明確な指針に乏しい。このことがいたずらに
農民を不安におとしいれ、
農業が国際水準より大きく立ちおくれ、また、
経済成長より取り残されてしまったのであります。この深刻な
わが国農業の
現状を打開するためには、長期展望に基づいた現実的な
農業の明確な
政策を
推進し、
農業の健全な
発展と農村生活の安定充実をはかるべきであると思うのでありますが、
総理の所信をお伺いいたしたいと思います。
さて、ここで大事なことは、主要
農産物を自給でまかなうのか、それとも
輸入によってまかなうのかという基本的な
考え方によって、未来のビジョンは大きく変わってくるのであります。言うまでもなく、
国民に
食糧を適正価格で安定的に供給することが
農業本来の使命であります。一方、
国民の食
生活水準の
向上により、
食糧需要は年々増加の一途をたどっております。さらに、今後の
所得水準の
向上とともに、でん粉食偏重の食生活はますます
改善され、畜産製品等、油脂や良質の動物性たん白質、ビタミン類を含む食品の
需要が増加して、
食糧消費の高度化が進むことは明らかであります。このような食生活の変化に基づいて、
総理は、主要
農産物は自給を中心とするか、
輸入によってまかなうか、いずれによるべきと思っておられるのか、
総理の姿勢を伺いたいのであります。
最近、特に政界や財界の一部には、
食糧自給の強化を、前時代的、非
経済的との批判をする者があるが、言語道断と言わねばなりません。フランス、カナダ、オランダ等の自給率は一〇〇%以上か、それに近く、また、西ドイツでも七五%台が維持されているのであります。
食糧の余っている
アメリカにおいてさえも、
政府はあらゆる財政的援助を惜しまないという明確な基本理念が確立されているのであります。
白書によると、自給率は四十一年度の八〇%から四十二年度八三%と回復したといっておりますが、四十二年度は、米の記録的な豊作により、
生産が
需要を大幅に上回ったためであって、米を除いた主食用
農産物の自給率は、四十二年度は六九%で、三十五年当時の八〇%から見ると、大幅に低下しているのであります。また、
わが国の四十二年度の
農産物輸入総額は二十三億五千万ドルで、総
輸入額の二〇%にも及んでいるのであります。もし
農業の荒廃を放置するならば、いかに
わが国経済の成長力が高くても、ばく大な
食糧輸入が
日本の国際収支を悪化させることは明らかであります。さらに、世界の
食糧事情から見ても、
食糧自給率の
向上こそ国家の重要
施策として強力に
推進すべきと確信するのでありますが、
総理並びに
農林大臣の所信をお伺いしたいのであります。
次に、
農産物の価格補償についてであります。
今日の
日本農業におきましては、
農産物の
生産は多数の零細
農家によって占められ、多少の
生産過剰によっても価格が変動するという、弾力性に乏しく、しかも自然
条件に左右されやすく、その価格はきわめて流動的であります。これを放置すれば、
農産物の安定した供給を確保することは困難であり、
農業所得や消費者家計の安定を阻害することは明らかであります。米以外の
農産物については、
農産物価格安定法などによる各種の価格補償制により、
農産物の七割近く価格の安定が維持されるようになっておりますが、その価格が
生産費を下らないという保証はないのであります。これは
わが国のこれまでの
農業経営が米麦中心であったことによるものであります。しかも、唯一の完全な価格補償のされている米について見ても、現在この恩恵を受けているのはわずか全
農家の七・六%程度の大
農家であり、残りの九二・四%の中小
農家はわずかばかりの恩恵を受けるにとどまっているのであります。むしろ、一般
農産物の価格の不安定等、価格
政策の不徹底のため、米麦中心の非能率的な
経営から近代的な
経営へと脱皮し切れないのであります。米麦作地帯の
合理化を進める一方、適地適作主義に基づく畜産、果樹、園芸作物などの
経営を
振興して、
土地の集約的
利用による
生産性の
向上をはかるため、米麦中心から一般
農産物の価格安定
政策へと
発展させる決意がおありかどうか。さらに、当面する四十四年度の米価問題、
食管制度の今後の方針、乳価問題に関する
対策について、大蔵
大臣並びに
農林大臣の所見をお伺いいたします。
次に、
農業生産基盤整備についてであります。
農業は、単に保護されていくだけではなく、さらに積極的に
発展させていくためには、
農業生産の能率化を促進することが必要であります。また、
農業生産に必要な農用資材、すなわち肥料、農機具等の購入価格の引き下げ、さらに集団栽培や
農地の交換分合を進め、一方においては十分な国庫補助により耕地基盤
整備を強力に
推進し、
生産性の
向上をはかるべきと思いますが、いかがお
考えか承りたいのであります。
また、
農地問題は、国全体の最も重要で、
解決を急がなければならない問題であります。また、
農地問題は
農業の分野だけでは
解決不可能であり、特に都市周辺の近郊
農地の宅地化や工業用地化、さらに山間僻地等の過疎化等による
農地の荒廃現象は顕著となっております。この問題
解決には、全体的視野に立った総合的
国土開発計画のもとに
推進していかねばならないと思うのでありますが、具体的なお
考えがおありかどうか、建設
大臣並びに
農林大臣にお伺いいたします。
わが国の耕地率は、わずか一六%と、きわめて低いのであります。
政府は、農用地の造成
開発が
農地流動化とともに
経営規模拡大の重要な点であるという見地から、全額国庫負担による農用地
開発造成を最重点の
一つとした
農政に改むべきと思うが、
農林大臣の所見をお伺いしたい。
次に、融資
制度の充実であります。
農業経営の安定化をはかるためには、資金の面から積極的に援助を行なわなければならない。
経営規模の
拡大や
機械化等によって
農業の体質
改善を促進するためにも、多額の資金を必要とするのであります。現在それに対しいろいろな形で投融資が行なわれておりますが、はたしてそれが効果的に投融資されているか、どう力を発揮しているか、変動する
社会経済情勢に耐えられるだけの力を
農業経営に与えているかどうかが問題であります。
昭和四十三年度から、新たに総合資金
制度がスタートいたしました。これは従来より一歩前進したものでありますが、しかし幾多の問題が残されているのであります。その
一つは、融資
対策を選別する事項があげられていますが、
農家をどう選別し
育成するのか、その基準と方針をお伺いしたいのであります。また、貸し付け金の利率も高く、据え置きが短く、融資対象となった
農家はその巨額な資金の返済の負担が大き過ぎますし、さらに担保評価額の問題等山積みしておりますが、もう一歩資金援助があれば浮揚できる
農家に、思い切った
施策が必要であります。自立化へのめどが立てば、後継者問題もかなり
解決すると思われるのであります。
さらに、東北、北海道等における開拓
農家及び開拓農協は、入殖以来、困難な営農
条件により、累積負債の固定化のため、開拓者の営農はもちろんのこと、開拓農協の運営整理に重大な阻害要因となっている
現状からして、十分なる考慮が必要と思いますが、
総理並びに
農林大臣の所見をお伺いしたいのであります。
最後に、
農業労働力の減少についてであります。
農家戸数は、この一年間、八万一千戸減少し、就業人口もついに九百万となり、全就業人口の二割を割る状態となったのであります。これは、労働力から見た
産業構造を数字の上から見れば、先進国並みといわれるが、都市
政策や
農業政策が総合的に確立されないため、多くの問題を提起しているのであります。
農業の体質
改善の道程において、離農あるいは転職が見られる場合は、職業訓練の充実、また、職業選択の自由を保障するとともに、
産業の
発展に応ずる適切な転職訓練を実施し、生活安定と、公営の勤労者住宅の確保等を、国は責任を持ってなすべきであります。また、離農、
経営委譲、老齢者のための
農業者年金
制度を、一日も早く実現すべきであると思うのでありますが、
総理の御所見をお伺いいたします。
以上、基本的な問題について、
政府の具体性ある答弁を期待して、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕